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1978/04/03 第87回国会 参議院 参議院会議録情報 第087回国会 予算委員会 第21号
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1978/04/03 第87回国会 参議院

参議院会議録情報 第087回国会 予算委員会 第21号

#1
第087回国会 予算委員会 第21号
昭和五十四年四月三日(火曜日)
   午前十時四分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月三日
    辞任         補欠選任
     阿部 憲一君     相沢 武彦君
     橋本  敦君     神谷信之助君
     野末 陳平君     柿沢 弘治君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         町村 金五君
    理 事
                井上 吉夫君
                岩動 道行君
                糸山英太郎君
                嶋崎  均君
                久保  亘君
                瀬谷 英行君
                多田 省吾君
                内藤  功君
                栗林 卓司君
    委 員
                浅野  拡君
                石破 二朗君
                上田  稔君
                小澤 太郎君
                上條 勝久君
                亀長 友義君
                熊谷  弘君
                下条進一郎君
                鈴木 正一君
                田代由紀男君
                玉置 和郎君
                鍋島 直紹君
                成相 善十君
                秦野  章君
                林  ゆう君
                真鍋 賢二君
                八木 一郎君
                山本 富雄君
                粕谷 照美君
                小柳  勇君
                野田  哲君
                広田 幸一君
                福間 知之君
                矢田部 理君
                吉田忠三郎君
                和田 静夫君
                相沢 武彦君
                太田 淳夫君
                矢追 秀彦君
                矢原 秀男君
                市川 正一君
                神谷信之助君
                井上  計君
                下村  泰君
                柿沢 弘治君
   国務大臣
       内閣総理大臣   大平 正芳君
       法 務 大 臣  古井 喜實君
       外 務 大 臣  園田  直君
       大 蔵 大 臣  金子 一平君
       文 部 大 臣  内藤誉三郎君
       厚 生 大 臣  橋本龍太郎君
       農林水産大臣   渡辺美智雄君
       通商産業大臣   江崎 真澄君
       運 輸 大 臣  森山 欽司君
       郵 政 大 臣  白浜 仁吉君
       労 働 大 臣  栗原 祐幸君
       建 設 大 臣  渡海元三郎君
       自 治 大 臣
       国 務 大 臣
       (国家公安委員
       会委員長)
       (北海道開発庁
       長官)      澁谷 直藏君
       国 務 大 臣
       (内閣官房長
       官)       田中 六助君
       国 務 大 臣
       (総理府総務長
       官)
       (沖繩開発庁長
       官)       三原 朝雄君
       国 務 大 臣
       (行政管理庁長
       官)       金井 元彦君
       国 務 大 臣
       (防衛庁長官)  山下 元利君
       国 務 大 臣
       (経済企画庁長
       官)       小坂徳三郎君
       国 務 大 臣
       (科学技術庁長
       官)       金子 岩三君
       国 務 大 臣
       (環境庁長官)  上村千一郎君
       国 務 大 臣
       (国土庁長官)  中野 四郎君
   政府委員
       内閣法制局長官  真田 秀夫君
       公正取引委員会
       委員長      橋口  收君
       警察庁警備局長  鈴木 貞敏君
       防衛庁参事官   岡崎 久彦君
       防衛庁参事官   佐々 淳行君
       防衛庁参事官   古賀 速雄君
       防衛庁参事官   番匠 敦彦君
       防衛庁長官官房
       防衛審議官    上野 隆史君
       防衛庁防衛局長  原   徹君
       防衛庁装備局長  倉部 行雄君
       防衛施設庁長官  玉木 清司君
       防衛施設庁施設
       部長       多田 欣二君
       経済企画庁調整
       局長       宮崎  勇君
       経済企画庁物価
       局長       藤井 直樹君
       経済企画庁調査
       局長       佐々木孝男君
       科学技術庁原子
       力安全局長    牧村 信之君
       国土庁長官官房
       審議官      四柳  修君
       国土庁土地局長  山岡 一男君
       国土庁水資源局
       長        北野  章君
       法務省民事局長  香川 保一君
       法務省刑事局長  伊藤 榮樹君
       公安調査庁次長  鎌田 好夫君
       外務大臣官房長  山崎 敏夫君
       外務省アジア局
       長        柳谷 謙介君
       外務省アメリカ
       局長       中島敏次郎君
       外務省欧亜局長  宮澤  泰君
       外務省中近東ア
       フリカ局長    千葉 一夫君
       外務省経済局長  手島れい志君
       外務省経済局次
       長        羽澄 光彦君
       外務省条約局長  伊達 宗起君
       外務省国際連合
       局長       賀陽 治憲君
       大蔵大臣官房審
       議官       米里  恕君
       大蔵省主計局長  長岡  實君
       大蔵省主税局長  高橋  元君
       大蔵省理財局長  田中  敬君
       大蔵省理財局次
       長        迫田 泰章君
       大蔵省銀行局長  徳田 博美君
       国税庁長官    磯邊 律男君
       文部省大学局長  佐野文一郎君
       文部省学術国際
       局長       篠澤 公平君
       文部省管理局長  三角 哲生君
       厚生省公衆衛生
       局長       田中 明夫君
       厚生省環境衛生
       局水道環境部長  国川 建二君
       厚生省医務局長  佐分利輝彦君
       厚生省社会局長  山下 眞臣君
       厚生省援護局長  河野 義男君
       農林水産省経済
       局長       今村 宣夫君
       通商産業大臣官
       房審議官     島田 春樹君
       通商産業省通商
       政策局長     宮本 四郎君
       通商産業省立地
       公害局長    伊勢谷三樹郎君
       通商産業省基礎
       産業局長     大永 勇作君
       通商産業省機械
       情報産業局長   森山 信吾君
       通商産業省生活
       産業局長     栗原 昭平君
       資源エネルギー
       庁長官      天谷 直弘君
       資源エネルギー
       庁次長      児玉 清隆君
       資源エネルギー
       庁長官官房審議
       官        児玉 勝臣君
       運輸省鉄道監督
       局長       山上 孝史君
       郵政大臣官房電
       気通信監理官   寺島 角夫君
       郵政大臣官房電  
       気通信監理官   神保 健二君
       労働省労働基準  
       局長       岩崎 隆造君
       労働省職業安定  
       局長       細野  正君
       労働省職業訓練
       局長       石井 甲二君
       建設大臣官房長  粟屋 敏信君
       建設省都市局長  小林 幸雄君
       建設省住宅局長  救仁郷 斉君
       自治大臣官房審
       議官       花岡 圭三君
       自治省行政局選
       挙部長      大橋茂二郎君
       自治省税務局長  土屋 佳照君
       消防庁長官    近藤 隆之君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        菊地  拓君
   参考人
       日本銀行総裁   森永貞一郎君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○昭和五十四年度一般会計予算(内閣提出、衆議
 院送付)
○昭和五十四年度特別会計予算(内閣提出、衆議
 院送付)
○昭和五十四年度政府関係機関予算(内閣提出、
 衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(町村金五君) ただいまから予算委員会を開会いたします。
 昭和五十四年度一般会計予算
 昭和五十四年度特別会計予算
 昭和五十四年度政府関係機関予算
 以上三案を一括して議題といたします。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(町村金五君) まず、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 昭和五十四年度総予算三案審査のため、本日の委員会に日本銀行総裁森永貞一郎君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(町村金五君) 御異議ないと認めます。
 なお、出席時刻等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○委員長(町村金五君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#6
○委員長(町村金五君) それでは、昨日に引き続き多田省吾君の締めくくり総括質疑を行います。多田君。
#7
○多田省吾君 最初に法務省の刑事局長にお尋ねいたします。
 日商岩井海部八郎前副社長が昨日外為法違反の疑いで逮捕されましたが、昨日から本日にかけまして捜査の進展状況についてお伺いしたいと思います。
#8
○政府委員(伊藤榮樹君) 何分逮捕しましたのが昨日夕刻でございまして、それから夜に入りまして、夜が明けて間もないことでございますので、まだ特段の進展はございません。
#9
○多田省吾君 刑事局長にお尋ねいたしますが、当予算委員会でも偽証罪の告発をしたわけですが、これは外為法違反以外の要素も加わっていると思います。したがって、三点確認しておきたいと思います。
 海部の逮捕容疑は外為法違反でございますが、山岡との文書偽造等の共犯としての関係はあるかどうか。
 二番目に、海部は、使途不明金四十七万ドルについては島田常務が独断で処理していたと言っておりますが、これに対して海部前副社長に対する容疑はあるのかどうか。
 三番目に、百五万ドルの中の八十五万ドル隠したことについての関係があるのかどうか。
 この三点をお伺いします。
#10
○政府委員(伊藤榮樹君) 御指摘のように、海部氏の逮捕事実は外為法違反だけでございますが、その事実が一番証拠上はっきりしておりますのでそれで逮捕したものと思われますけれども、ただいま御指摘の私文書偽造の関係、それから四十七万ドルの使途の関係、さらには日商岩井の山村証人などが証言されました架空口座に入れたと言われる八十五万ドルの関係、これらは要するに外為法違反と密接不可分の関係にあるケースでございますので、これらにつきまして従来から検察当局は捜査を進めておりますが、さらに海部氏のこれらとのかかわり合いにつきましても今後鋭意詰めていくことになると思います。
#11
○多田省吾君 それから第二次の強制捜査では航空機部門以外に、建設、電機、海外プロジェクト、また故島田常務宅まで捜査されたようでございますが、他の部門も含めた大がかりな事件に発展すると思われますけれども、検察当局はこれを含めた捜査を行っていると考えてよろしいのかどうか。
#12
○政府委員(伊藤榮樹君) 捜査は証拠を追って次第に進展するものでございます。そういう捜査を進める上におきまして、毎々申し上げておりますように、今回の諸問題を広い角度でとらえて念頭に置きながらやっておるわけでございます。したがいまして、今後捜査がどういう方向に進展す三か、いまから即断することはできませんけれども、可能性としてはいろいろな方面に目を注ぎたがら捜査を進めていくと、かようなことになろうと思います。
#13
○多田省吾君 刑事局長にさらにお伺いしますが、予算委員会の告発を待たないで検察当局が海部副社長の逮捕に踏み切ったということは、日歯岩井の一連のいわゆる裏金づくり、それから金の出の全容というものが急速に解明されつつあると思いますけれども、その見通しはどうなのか。
 また、昨日も刑事局長は上部への波及ということを示唆されましたけれども、これはいわゆる金の出の方、すなわち政治家とか政府高官に対する政治工作をも意味するものかどうか、お尋ねしたいと思います。
#14
○政府委員(伊藤榮樹君) ただいまのお尋ねにつきましては、いろいろ今後の捜査の手順といたしまして微妙な点があるわけでございますけれども、いずれにしましても海部氏の身柄を拘束いたしましたということはあるいは実は遅きに過ぎたのかもしれないと、捜査の手順の点から言いますと、まあそういうこともあるいは言えるのではないかと思うのでございますが、いずれにしましても国会で重要な国政調査の一環としてお調べになっておりました経緯もございまして、また、待って待てないような捜査上の手順でもございませんでしたので昨日に至ったわけでございますが、昨日の委員会でもちょっと申し上げましたように、この四日にはすでに勾留されております二名が勾留満期になりますので、その前には調べたいということでございましたので、そんなタイミングできのう海部氏の調べに取りかかったと、こういうことで御理解を願いたいと思うわけでございます。
 なお、先ほども申しましたように、いろいろな観点を念頭に置きまして捜査を進めておりますので、もちろん御指摘のようないろいろな点につきまして犯罪の容疑が認められれば当然厳しく究明していくことになろうと思います。しかしながら、それらは今後の捜査の発展にまたなければならぬ、こういう状況でございます。
#15
○多田省吾君 法務大臣と大平総理大臣にお伺いしますが、海部前副社長が昨日逮捕されたことによりまして、いわゆる一連の裏金づくりから今度は政治工作の有無などの解明も急速に進んでいくことと思いますけれども、本予算委員会でも海部証人の偽証罪告発が決められたわけです。航空機導入にまつわる疑惑の徹底解明をおっしゃっておられる古井法務大臣と大平総理の率直な御感想をお伺いしたいと思います。
#16
○国務大臣(古井喜實君) 毎々申し上げておりますとおりに、これだけの事件でありますし、国民全体に大きなショックを与え、また政治に対する信頼も揺るぎかねないような気もいたすわけでありますから、とにかく真相を究明して十分納得していただけるようにやるだけのことをやると、こういうことで終始一貫やっていく考え方でおります。それからまた、将来こんなことが起こらぬようにという問題もやがて次に本腰で検討しなきゃならぬと、こういうふうに考えております。
#17
○国務大臣(大平正芳君) 当面、真相の解明が進展いたしまして事案が明らかになり、刑事事件としての処理が行われてまいりますことを期待いたしておりますが、あわせて、政府といたしまして、こういった事案の再発防止のためには、なすべきこと、なすべからざることに、従来からも手をつけておりますけれども、今後これと並行いたしまして一層精力的に当たらなければならぬと考えております。
#18
○多田省吾君 それから総理並びに法務大臣にもう一点お伺いしますけれども、大平総理に海部前副社長の逮捕について事前に連絡があったと聞いておりますが、商社の前副社長の逮捕の事前連絡というのは、やはり奥にかなり重要な事柄があるからだと思いますけれども、これは政治家への波及を示唆しているのか、あるいはそのほかの理由によるものと思われますが、総理はどうお考えですか。
#19
○国務大臣(大平正芳君) きのう新聞社の方に海部さんの逮捕について連絡があったかと聞かれましたので、時間ははっきりしないけれども連絡を受けたと。その時期に果たしてどういうアクションがとられておったのか私は定かに存じません。こういったことにつきましては捜査当局に信頼して任せてございますので、私に事前に連絡があるとかないとかいうようなことに対しましては私は大して重要なこととは考えておりません。
#20
○多田省吾君 大平総理は、かつて、ロッキード事件のさなかも、今後必要なのは出直し的改革だと、こうおっしゃったし、昨日も疑惑解明には決して消極的じゃないんだと、このように明言なさったわけです。このような政治浄化、疑惑解明につきまして、今後、政治家の証人喚問、あるいは資料要求に対する協力、あるいは時効にかかっても政治的道義的責任のある灰色高官の発表等につきまして、自民党総裁といたしまして、今後積極的に指導的役割りを果たしていく、こういう御決意がございますか。
#21
○国務大臣(大平正芳君) たびたび申し上げておりますように、政府として捜査当局並びに関係当局が真相解明に鋭意当たるということ、そして国会の調査権の発動に対しましては全幅の協力をいたすという基本方針は、あくまでも貫いてまいる責任があると考えておるわけでございまして、積極とか消極とかいうように政治的なものではないと私は考えています。厳しい義務であると考えてやっておるわけでございます。
#22
○多田省吾君 総理が再発防止対策も積極的にやるとおっしゃっていますけれども、アメリカではすでにウオーターゲート事件の後、上院の改革法案の可決、カーター大統領の行政命令としての厳しい高官服務規程、あるいは五十二年十二月二十日に成立したアメリカの企業及びその海外子会社の不正支払い禁止法等に比べますと、わが国は非常におくれております。各野党からも案が出ておるのでございますから、政府与党は積極的にこの防止法を考えなければならないと思いますが、どう思いますか。
#23
○国務大臣(大平正芳君) 多田さんも御承知のように、そしてこの委員会におきましてもすでに御報告申し上げておりますように、再発防止につきまして、かねがね三木内閣以来、われわれといたしましては、法律の制定とか、条約の締結とか、それからそこにまだ至りませんけれどもいろいろの検討をいたしておるわけでございまして、日本としてできることはちゅうちょなくいたしておるつもりでございます。多国籍企業の活動につきましても、すでにその行動指針なるものはOECDでつくりましたものを各社に周知徹底をいたしておりまするし、国連を中心といたしまして多国籍企業の行動を規制する条約、協定というようなものの作案について検討が行われておりますが、それにも進んで参加をいたしておるわけでございまして、われわれといたしましては積極的にそういった国内外を通じての対策の充実拡充に努めてまいりましたが、今後一層精力的にやってまいるつもりです。
#24
○多田省吾君 続いて、大平総理にお伺いしますけれども、昨日の審議にも明らかなように、政治家個人への献金というものが野放しになっている。アメリカに比べても非常に野放しになっているということがやはり悪の根源の一つになっていると思います。私は、具体的に政治資金規正法を改正いたしまして、その中に、毎年十二月三十一日現在でその政治家の受けた政治献金とともに一年間のその人の役職を届けさせて責任を明確にする措置というようなものを考えた方がよろしいと思いますが、どう思いますか。
#25
○国務大臣(大平正芳君) 政治家は広く国民の有権者の支持、厳正な選択過程を経て公職についておるわけでございまして、法律があるとかないとか、規制があるとかないとかにかかわりませず、政治家といたしましては常にみずから身を持するに厳でなければならぬものと考えております。したがって、規制以上に大事なのはそれぞれの政治家の自覚であると思います。しかし、あなたが言われるように立法政策の問題として政治家個人の政治献金の収支を明らかにしてそれを公示するというような制度を設けるべきかどうかという問題は、確かに立法政策上大きな課題であるに違いないと思います。政治資金規正法が改正になりましてこれは五年以内にこの法律はもう一度その実施の状況を見て見直すということになっておりますので、この委員会を通じても私が申し上げておりますように、すでに三期にわたっての申告もなされておるわけでございまするから、そういったものを材料にいたしまして今度の政治資金規正法を改正すべきかどうかというような点につきましては検討しなければならぬと考えております。その場合に、個人というものを規制の対象にするかどうかという問題があなたのいま御指摘になられた点だと思いますが、これは立法政策上の相当の問題だろうと思いますので、私どもといたしましては十分検討して対処しなければならぬと考えております。
 それからもう一つ、これは税法上の雑所得といたしまして取り扱っておることについてこの委員会を通じて論議をされたわけでございますけれども、私は税法上の問題としてこれを取り扱うことについては賛成いたしかねるわけでございまして、あなたの仰せのように政治資金規正法の領域の問題として慎重に検討しなければならぬ課題だと考えています。
#26
○多田省吾君 私は税法上の問題で改革していただきたいと思います。
 それから政治資金規正法の改正について私は二つの点を提案したいと思うのです。一つは、やはり企業の政治献金を禁止の方向に向かわせるということ、それからもう一つは、自民党さんで言えば国民協会というような政治資金団体がありますけれども、これは私は前にも中立機関というような話もあったのですから、政党の国民的基盤を失わせまして、政財界癒着のもととなるものですから、これは廃止の方に向かったらいいのじゃないかと、こう思いますが、この二つの提案はどうですか。
#27
○国務大臣(澁谷直藏君) 企業の政治献金の問題については、いろいろと議論があることは十分承知をいたしておりますが、企業も一つの社会的実在であり、現に税金も納めており、したがって政治活動、選挙活動の自由も持っておるということは、これは判例上もはっきりしておるわけでございまして、ただいまのところこれを禁示するという措置をとるという考えは持っておりません。
 それからもう一つは、政治資金団体を廃止したらどうかという御指摘でございますが、これは御承知のように五十年の政治資金規正法で初めて設けられた制度で現在実施されておる。ただいま総理から答弁もございましたように、五年間の実績を踏まえて全面的に検討をすると、こういうことになっておりますので、いま直ちに廃止するというような考え方は持っておらないわけでございます。
#28
○国務大臣(大平正芳君) いま自治大臣が御答弁申し上げたとおりでございますが、ただ、政策の問題といたしまして企業からの政治献金をできるだけ少なくしていく、個人へだんだん切りかえていくという努力はしなければならぬと存じまして、自由民主党におきましてもそういう方向で鋭意努力をいたして漸次実績を上げつつある段階でございます。
#29
○多田省吾君 私は、いまの自治大臣のお答えは、まあいわゆる八幡製鉄判決なんかをもとにしておられると思いますが、多分に誤解があると思うのです。この問題につきましては詳しくは機会を設けてやりたいと思います。
 通産大臣にお伺いしたいのは、昨日逮捕された海部前副社長が昭和五十年以来石炭鉱業審議会委員となっておりまして、昨年十二月にも委員を再任されたばかりでありますけれども、政府任命の審議会委員の不祥事に対しましてどういう処置をとろうとなされておりますか。
#30
○国務大臣(江崎真澄君) この会長は稲山嘉寛さんでありまするので、稲山さんと直ちに相談をして、辞任していただくよう必要な措置をとりたいというふうに考えております。任期はことしの十二月までであったというふうに記憶いたしております。
#31
○多田省吾君 総理に、参議院地方区の議員定数不均衡問題で即時是正の意見があるかどうか、お伺いしたいと思います。これは昨年も大変問題になったのでありますが、いま保革伯仲、いわゆる超伯仲時代でございます。国民の権利を無視して党利党略を前面に押して議員定数不均衡をそのままにしておくということは非常によくないと思うのです。野党はすでに一致して対案を出し、選挙も来年に控えているわけでございますから、また、さらに今日まで十件も相次いで選挙無効の民衆訴訟も起こっているときでございますから、これは総理の指導力で早急に是正すべきではないか、このように思いますが、どうお考えですか。
#32
○国務大臣(大平正芳君) 選挙法は各党が競い合う土俵でございますので、各党が一致して公正な結論を出していただくことを期待いたしておりまするし、自由民主党といたしましてもそういう方向で対処していきたいと思います。
#33
○多田省吾君 次に、安全保障問題で一、二御質問いたします。
 大平総理は、安全保障研究グループを昨日発足させたそうですが、この前も、総合安全保障の問題で、一には防衛力の整備、二には内政全般、三には外交努力というような三点を挙げたわけでございますが、あくまでも防衛力を根幹にするんだというようなことを強調されて、どうも総合安全保障ということをせっかくおっしゃったにもかかわらずわれわれから見れば逆なような、むしろわれわれは内政、外交を根幹にしてやるべきだ、このように思いますが、どうお考えですか。
 それから第二番目に、非核三原則につきましては前福田内閣も国是として守っていくと強く決意されておりますが、大平総理はいかがですか。
#34
○国務大臣(大平正芳君) 総合安全保障という考え方でございますが、これは内政の秩序正しい活力のある展開、平和な国際環境を招来するところの精力的な外交の展開、それから質の高い節度のある防衛力の整備ということ、そういうようなことが一緒になって総合安全保障に貢献いたしておるものと私どもは考えておるわけでございまして、いずれも根幹でありまして、片方は根幹で他は枝葉であるなんて私は考えていないのでありまして、バランスのとれた緊張した協力によって安全保障を実現してまいるということが政治の基本でなけりゃならぬと考えております。
 それから第二に、非核三原則でございますが、これは政府の基本の政策であるばかりでなく、国会におきましても一致した結論でございまして、これは厳粛に護持していかなければならないものであると考えております。
#35
○多田省吾君 沖繩の核用の八インチ砲について若干質問します。
 アメリカの軍備管理・軍縮局は、アメリカ議会に対して、「一九八〇会計年度の米主要兵器計画が軍備に及ぼす影響に関する報告書」というものを提出しております。これですが、その中で、局地戦用の核兵器システム向上計画の一環に八インチ砲の核砲弾の改良計画が詳細に説明され、その際、八インチ砲の海外配備地として欧州、韓国と並んで沖繩が明記されております。この報告書の中で、米国防当局は、現在八インチ砲核弾頭として用意されているM422核弾頭を、取り扱いや貯蔵の安全性を高めるため、W79核弾頭を利用したXM753弾頭に八〇会計年度から切りかえていく計画を明らかにしておりますが、事実関係はどうなのか、外務省にお尋ねしたいと思います。
#36
○政府委員(岡崎久彦君) 事実関係は、いまお話のあったとおりでございます。
#37
○多田省吾君 この説明の直後に、米八インチ砲部隊は海外では欧州、韓国、沖繩に配置されているとはっきり明記されているわけです。そうすれば、沖繩に八インチ砲用のM422核弾頭が配置されていると、このように解されるけれども、これはどうですか。
#38
○政府委員(岡崎久彦君) 御指摘の八インチ砲は、核・非核両用でございます。それで、八インチ砲が沖繩に配備されておりますということと核弾頭が沖繩に配備されているということは、直接の関係はございません。
#39
○多田省吾君 沖繩の八インチ砲が通常砲弾だけならば、この報告書の局地戦核兵器システムの中の八インチ砲から発射される核弾頭(AFAP)W79弾頭、XM753砲弾という核弾頭だけに言及した部分にわざわざ沖繩配置を入れる必要はないではありませんか。
#40
○政府委員(岡崎久彦君) 本報告におきましては核弾頭の改良について説明してございまして、こういう核弾頭を使用し得る大砲といたしまして八インチ砲を説明いたしまして、それにつきまして八インチ砲が配備されている地域はヨーロッパ、韓国及び沖繩と書いてあるわけでございます。このことは、同じ報告書のランスについても同様でございまして、弾頭の説明をいたしますときに、それを発射する大砲も説明し、大砲の説明をしますときにその配備地も説明してあるということであると了解しております。
#41
○多田省吾君 すでに沖縄の米軍海兵隊は八インチ砲を保有されていると思いますが、政府はどう思われておりますか。
#42
○国務大臣(山下元利君) ただいま政府委員が御答弁申し上げましたとおりに、沖縄には配備されておりますけれども、核兵器につきましては、先ほど総理大臣からもお話しございましたように、政府としては従来より非核三原則を堅持する方針をとっております。また、わが国への持ち込みは安保条約上すべて事前協議の対象とされておりますが、米国がわが国に対しましてこれまでその持ち込みについての事前協議をしてまいっておりませんので、沖縄に核は持ち込まれていないことは明らかであります。
#43
○多田省吾君 じゃ、その八インチ砲はどの基地にありますか。
#44
○政府委員(岡崎久彦君) 八インチ砲が配備されておりますのは、嘉手納の第十二海兵連隊であると承知しております。
#45
○多田省吾君 それは海兵隊のうちの第三海兵師団第十二海兵連隊であると思いますが、どの基地にあるのかと私は言っているのです。
#46
○政府委員(岡崎久彦君) 失礼いたしました。私、地図を見間違えまして。瑞慶覧の基地でございます。
#47
○多田省吾君 このキャンプ瑞慶覧に八インチ砲が保有されている。それで第十二海兵連隊が所有しているということですが、何門ありますか。
#48
○政府委員(岡崎久彦君) 八インチ砲は二門と承知しております。
#49
○多田省吾君 これは、われわれが沖縄のキャンプ瑞慶覧で撮った写真でありますが、八インチ砲であるかどうか、防衛庁で確かめていただけますか。
#50
○政府委員(岡崎久彦君) 拝見させていただきます。――拝見させていただきました写真は、これはM110と思われます。もし仰せのとおりこの写真が沖縄の米軍基地で撮られたものであるといたしますならば、これは在沖縄米軍が保有しておりますM110八インチ自走りゅう弾砲であると考えます。
#51
○多田省吾君 先ほど外務省あるいは防衛庁が、アメリカから事前協議を申し込まれたことはないから沖縄に核弾頭はないのだと、あるいはこの八インチ自走りゅう弾砲M110は核・非核両用だからということを言っておりますけれども、このアメリカの報告書にもありますように、全部これは核弾頭の説明の中に書かれてある報告であり、その中に、沖縄に配備と、こういうふうに強調されているわけです。いまの写真にもわかりますように、沖縄に八インチりゅう弾砲が二門はっきりあるわけです。また、これを取り扱う第三海兵師団第十二海兵連隊も配置されているわけです。そういうことから見て、私は核用として最も威力を発揮する八インチ砲があるかもしれないという疑いが強いということははっきり言えると思うのです。
 私は、事前協議が申し込まれてこないから核の持ち込みがないと説明されても、納得できない。事前協議であってもこっちからも申し込めるはずでございますし、随時協議というものもあるわけでございます。このような報告書が出た以上、私は、そういう客観的な傍証もある以上、政府ははっきりとアメリカに確かめるべきだ、特に外務省は、そう思いますが、どうですか。
#52
○国務大臣(園田直君) ただいまの八インチりゅう弾砲は防衛庁が御報告したとおりでありまして、両用のものであって、その砲を有する部隊の展開だけを例示したものであるとその報告書には書いてございます。したがいまして、いままでもそうでありますが、核兵器持ち込みはこれは事前協議の対象となっておるから、そういうことは万あるまいと存じまするけれども、本件は念のため照会いたしましたところ、いままでの約束どおり、約束は遵守しておると、こういう返答であります。
#53
○多田省吾君 それじゃ、通常弾用の八インチ砲が日本に配備されることは、極東の安全、日本の安全にとってどういうふうに必要なんですか。
#54
○政府委員(岡崎久彦君) お答え申し上げます。
 在日米海兵隊の任務は、極東におきます有事に際しまして日本基地から出動し、あるいは日本を防衛するためのものでございます。通常弾頭を保有いたします八インチ砲は、米海兵隊の軍事行動にとりまして重要な意義を持つものと考えます。
#55
○多田省吾君 私は、重要な意義を持つという言葉の裏に、核・非核両用だ、しかし、この報告書にもありますように、核用として使う用意があるという考えがあるのじゃないか、このように疑惑を持ちます。
 この核持ち込みにつきましては、復帰前は沖縄に核弾頭があったと思われますし、また、最近におきましてもラロック証言あるいはその他の証言によって沖縄、岩国、横須賀に核が持ち込まれたと疑われるようなことが多々あります。また、この前もランスの核部隊が横田基地を通過したというようなことがございました。私は、こういった疑われやすい兵器というものは沖縄に配備すべきではない。しかも、沖縄は、面積からいっても、あるいは割合からいっても、大変な米軍基地を擁しておりますし、国民生活にも大変悪影響を及ぼしております。しかも、その上に核用の八インチ砲があるのじゃないかというような疑惑を持たれては、最も早く戦争に巻き込まれるおそれもございますし、また、その核の管理いかんによっては今度のアメリカの原発事故のようなことが起これば大変なことでございますし、何よりも非核三原則を大平内閣が厳格に守ると言っている以上、こういう疑惑の八インチ砲は置いてはならない、このように思いますが、大平総理はどう思いますか。
#56
○国務大臣(大平正芳君) 日米間の安全保障に対する協力関係は、相互の信頼に立って運営されておるわけでございます。日本が非核三原則を堅持しておるということにつきましては米側はよく承知の上で対処いたしておると信頼をしておるわけでございます。したがって、私どもといたしましては、いま御指摘にあるような非核三原則にもとるような事態があるとは考えておりません。
 それから沖縄の基地につきましては、復帰後も漸次整理縮小の方向をたどってまいったわけでございますけれども、今後も安全保障上支障のない限りにおきましては、そういう方向で基地対策を進めて住民の期待にこたえなければならぬと考えております。
#57
○委員長(町村金五君) 以上で多田君の締めくくり総括質疑は終了いたしました。(拍手)
#58
○委員長(町村金五君) 次に、内藤功君の締めくくり総括質疑を行います。内藤君。
#59
○内藤功君 最初に法務省にお伺いをしたいと思います。
 昨日の海部氏の逮捕によりまして、海部氏がいままで証言で述べておりました百五万ドルについて自分は関知せずという証言については偽証の疑いが客観的に明白になってきた、かように思いますが、法務省のお考えを伺いたい。
#60
○政府委員(伊藤榮樹君) 国会での証言につきまして、これが偽証に当たるかどうかにつきましては、もっぱら国会で御判断になることでございまして、私からとやかく申し上げる筋合いではございませんが、ただいま御指摘の部分は、少なくとも捜査上明らかにされております客観的事実と相違する御証言であったと、かように思います。
#61
○内藤功君 偽証罪の告発状が提出をされますと、罪名の追加がなされて、偽証罪としても本格的に検察の取り調べが始められる、かようなことになりますか。
#62
○政府委員(伊藤榮樹君) 偽証で告発がなされますれば、告発状の内容を十分吟味させていただきまして、真剣に受けとめまして速やかな捜査をいたしたいと、かような考えでおります。
 ただ、ただいまの御質問で罪名が追加されてというちょっとお言葉がございましたけれども、そういう関係には必ずしもならないわけでございまして、昨日逮捕いたしました外為違反の案件は案件として厳正に捜査をいたしますし、偽証につきましては告発がなされますればそれなりに受けとめまして適正な捜査を尽くしたいと、こういうことでございます。
#63
○内藤功君 海部逮捕は捜査の新たな段階、私は第三段階だと思うのです。新たな発展が当然あるべきものであります。たとえば、海部八郎は機械本部の管掌役員であります。航空機部でつくられた裏金がプールされて機械本部全体の活動資金、工作資金に使われた疑いもあります。機械本部全体の金の出について捜査上留意することになると思いますが、この点はいかがですか。
#64
○政府委員(伊藤榮樹君) すでに御承知のように、いま検察当局がやっておりますのは、航空機輸入をめぐります諸般の問題の中で不当な金の動きがあったのではないか、あるいはこれをめぐって犯罪となるものがあるのではないか、こういう観点から証拠を追い求めて捜査を進めておるわけでございますが、その関連におきまして、ただいま御指摘のように、航空機輸入に関して、たとえば裏金がつくられてこれが他の方面にも流れておるというようなことがございますれば、当然これを看過するわけにはいかないわけでございまして、そのような観点から捜査が進められていくと、こういうふうに存じます。
#65
○内藤功君 本命の航空機については、ボーイング747SR、E2Cはもとより、F15についても裏金が使用された疑いありと見てこれを調査する必要があると思いますが、いかがですか。
#66
○政府委員(伊藤榮樹君) 頭からF15に怪しい金が動いたはずだというようなことで調べるわけにはまいりませんでしょうけれども、あらわれてまいりました金の動きなどを証拠から証拠を追って調べていく、その過程におきましていかような関連が生ずるか、これは今後の捜査の進展に待たなければならないというところであろうと思います。
#67
○内藤功君 四十七万ドルの使途不明金については、中東、インドネシア方面のプロジェクト獲得のためだと言われてまいりました。問題はE2Cのコンサルタント、中東淡水化プロジェクトのコンサルタントであったハリー・カーン氏へ流れた疑いが私はほぼ間違いないのではないか、非常に疑いが強いと思いますが、この点の御見解を伺いたい。
#68
○政府委員(伊藤榮樹君) 四十七万ドルの行方につきましては現在鋭意解明を行っておるところでございまして、解明を行うに当たりましてはいろいろなことを念頭に置きながら証拠によって詰めておるわけでございまして、現段階でどのような結果になっておるか、あるいはどのような感触を持っておるかというような点につきましては、しばらく御容赦をいただきたいと思います。
#69
○内藤功君 そこで、法務大臣に伺いたいのですが、捜査は海部逮捕で新しい段階に入ったと思うのです。海部の責任追及とともにいわゆる政界への関係、つながりというものを調べる段階に入っていると思います。法務大臣のこの段階での真相究明についての姿勢をお伺いしたい。
#70
○国務大臣(古井喜實君) 商社の関係をまた一段進んで洗っていくことになるわけでありますが、その過程においてどういうことがかかわりが起こってくるか、これは捜査を進めて積み上げていくしかないことだろうと思います。政治家にかかわりがあるかないか、そういうこともこれから調査を進めていく上においてどっちになるものか、出てくる問題だと思っております。
#71
○内藤功君 次に、総理並びに国家公安委員長にお伺いしたい。
 三月三十一日、明治公園で行われた三・三一青空政談演説会におきまして、わが党の宮本顕治委員長が演説中、布を巻きつけた両手で刃渡り十三・五センチの狩猟用ナイフを胸の高さに構えて宮本委員長に向かい突進してきた男がありました。警備員などに阻止されましたけれども、この事件は、言論の自由が最も保障されるべき選挙戦の中で公党の委員長の殺害の目的でなされた野蛮きわまるテロ行為でありまして、断じて許すことができないのであります。この白刃はひとり公党の宮本委員長のみに向けられたものではなく、日本の民主主義に向けられた凶刃であると言ってよいと思うのでございます。総理大臣の本件に対する見解をまず承っておきたい。
#72
○国務大臣(澁谷直藏君) 申すまでもなく、民主主義の基盤は法の尊重と社会秩序の維持にあり、事のいかんを問わず暴力により自己の目的を達成しようとすることは何人たりとも絶対に許されることではございません。警察としては、公共の安全と秩序の維持を全うするため、違法行為は絶対に看過しないという方針のもとに、特にこの種事案については厳重な取り締まりを行ってまいっておりまするし、今後ともこの方針を堅持してまいります。
#73
○国務大臣(大平正芳君) いま国家公安委員長が申し上げたとおり私も心得ております。
#74
○内藤功君 三月三十一日付の殺人未遂罪の告発状が日本共産党から検事総長あてに出されておりますが、法務大臣の本件についての御見解を伺っておきたい。
#75
○国務大臣(古井喜實君) 検察の方でこの問題は十分検討している段階だと思っております。
 なお、この種の暴力行為は、さっきも内藤さんの方からお話もありましたように、とにかく右であろうが左であろうが、事由のいかんを問わず間違いですから、これに対しては厳正にやっていく、こういう考えであることはだれしも共通だと、そう思っております。
#76
○内藤功君 本件に対する警察の対応、捜査の進行の現段階についてお伺いしたいと思います。
#77
○政府委員(鈴木貞敏君) お答えします。
 事案の概要につきましては紙上その他いろいろ論じられておりますので省略させていただきますけれども、当日の事件発生前の警護警戒体制がどうであったかという問題でございますけれども、警察としましては、この演説会の開催に先立ちまして主催者側と打ち合わせを行い、選挙という特別の事情もございます、また主催者側の要望もございます、そういう面を勘案いたしまして、当日は所轄の四谷警察署を中心といたしまして約二百名の制私服警官をもちまして所要の警護警戒を実施したわけでございます。結果的に先ほどのこういった事件があってまことに遺憾であったわけでございますけれども、これにつきまして、両手を白い包帯で巻いておったというふうに委員が先ほど言われましたが、本人は現在鋭意取り調べ中でございますが、数年前に薬品で全身のやけどを負いましてケロイド症状というふうなことで、手には相当そういうあれで外に見えないように巻いておるというふうなこともあったようでございますが、いずれにしましても、当日は約二百名で会場内外にわたりまして厳重な警戒警備に当たったというふうな状況でございます。
 本人を逮捕いたしましてから直ちに身柄は四谷警察署に持ってまいりまして、四月二日に送致しているわけでございますけれども、御指摘のとおり、これは殺人未遂及び銃砲刀取締法の違反、それから公選違反と、この三罪の違反容疑で逮捕しまして、その罪名で送っておるというふうなことでございます。現在鋭意取り調べ中でございますけれども、この三罪で東京地検に身柄づきで送致いたしておりますが、背後関係という問題も含めまして引き続き捜査中でございますが、被疑者が所持しておりました登山ナイフ、それから遺書も押収いたしております。また、引き続きまして被疑者の自宅及び被疑者の所属する大日本憂国同志会事務所、これを捜索いたしまして、遺書の下書きなりあるいは機関紙、こういったものを押収しておるというふうな状況でございまして、今後とも多角的に十分な捜査を遂げてまいりたいと、こういうふうな態度でございます。
#78
○内藤功君 犯人の所属しておった大日本憂国同志会、この団体の目的、性格、いままでの行動についてはどのように把握していますか。
#79
○政府委員(鈴木貞敏君) 犯人の所属いたしまする大日本憂国同志会でございますが、この会は昭和四十七年の十一月に結成された団体でございまして、事務所は東京都中央区銀座にございます。構成員は現在のところ約七名と見られます。しかし、街頭宣伝、そういった面では若干この七名よりもふえる、いわば準構成員的な会員もいるというふうに見受けられます。
 この大日本憂国同志会の目的、性格でございますけれども、これは同志会そのものの結成趣意書というものがございます。それによりますると、皇室中心の日本建設、それから国家自衛のための建軍、また共産主義の排除と、こういったものを主な一つの目的、趣旨として掲げておりまして、いままでの活動状況を見ますると、主として日教組大会であるとかこういった場合には反対活動をやる、さらにまた反共街頭宣伝をやるというふうな活動をやっておるというふうなことでございます。
 この同志会のいままでの行動でございますが、御指摘のとおり、過去におきましても数次にわたって各種の違法行為を行っておるわけでございまして、五十年、五十二年等の段階で違法行為をし、それぞれ数名ずつ逮捕されておるというふうな事情がございます。
#80
○内藤功君 国家公安委員長に伺いますが、本件は、いまのお話のように、背後関係、共謀関係の徹底的な捜査が必要でございます。このことについての国家公安委員長の姿勢をお伺いしたい。
#81
○国務大臣(澁谷直藏君) 先ほどもお答えいたしましたように、この種の事案というものは絶対これは許すべからざるものでございますから、もう厳然たる姿勢でその背後関係も含めて、徹底的な捜査をやってまいる決意でございます。
#82
○内藤功君 総理にもう一回伺いますが、先ほどの御答弁では、国家公安委員長の言うとおりであるという趣旨のお話でございました。総理、最近右翼の暴力行為は目に余るものがございます。本年三月だけでも、右翼による日本共産党への暴力事件を例にとりましても二十二件に上っております。この中には下田京子議員に対する暴力事件も含まれておる。日教組などの集会その他に対する妨害、暴力も相次いでおります。われわれが重視するのは、公党の委員長に対する政治テロというものは、最近の政府の右翼暴力団に対する姿勢が十分に徹底したものでないということによって助長されているのではないかと思うのでございます。右翼のテロ暴力に対して暴力集団の徹底的な取り締まりを行って、言論戦を中心とする民主主義政治を守るという姿勢を堅持すべきであります。戦前の五・一五、二・二六のクーデター、これが日本のファシズムへの道を開いた歴史を忘れてはならぬと思いますし、戦後は浅沼稲次郎委員長殺害事件を初めとする日本政治へのテロの果たした役割りを決して軽視してはならぬ、毅然たる態度をとらなきやならぬと思うのです。再び総理のこの点についての政治姿勢を問いたいと思います。
#83
○国務大臣(澁谷直藏君) 右翼並びに暴力団に対する取り締まりが甘いのではないかという御指摘でございますが、そのようなことは全くございません。私どもは、あくまでも暴力団の撃滅、それから右翼に対する徹底的な取り締まり、これは警察の再重点項目としてやっておるわけでございますから、そのような御指摘は納得できません。
#84
○国務大臣(大平正芳君) いかなる意味におきましても暴力行為は許されるべきものじゃございません。また、政府といたしまして、厳正公平に暴力の取り締まりに当たらなければならないことは申すまでもないわけでございまして、その方針は徹底いたしておるつもりでございます。今後とも民主社会を守るために一層の努力を重ねてまいるつもりです。
#85
○内藤功君 次に、軍人勅諭の問題についてお伺いをしたいと思います。
 まず、いま問題になっておりますが、軍人勅諭とか教育勅語とかいうものがいまこうして問題になること自体がおかしいんですが、これを持ち出す人がいるので、われわれはこれを明らかにしておきたいと思う。軍人勅諭と教育勅語が戦後法制上効力を失うに至ったその根拠は、法制局長官、何でございますか。
#86
○政府委員(真田秀夫君) ただいま御指摘の、いわゆる軍人勅諭あるいは教育勅語、これはいずれも主権在君といいますか、国の元首として統治権を総攬された天皇がお出しになったものでございまして、現在の憲法の大原則である主権在民の思想とは相入れないものである、したがいまして現在の憲法が施行された今日においてはもはやそれは効力がないと、こういうふうに考えております。
#87
○内藤功君 法制局長官、昭和二十三年六月二十日の国会両院の決議というのがありますが、この国会両院の決議は、日本国憲法によって軍人勅諭等が効力を失ったということを国権の最高機関が確認をした、こういう性格のものと理解してよろしいですか。
#88
○政府委員(真田秀夫君) 正確に申しますと、昭和二十三年の六月十九日でございまして、まずその点を御指摘申し上げておきます。
 そこで、その日に衆議院及び参議院においてそれぞれ御決議がなされておりますが、衆議院の方では教育勅語等排除に関する決議、参議院の方では教育勅語等の失効確認という形の御決議になっております。国会の御決議の内容につきまして、実は私が公権的に解釈をし、ここで申し上げるべき立場にございませんけれども、この両決議の表現なりあるいはその提案の御趣旨等を見ますと、どうも、すでにもう憲法施行によって効力を失っておる、過去の文章である、したがってそれはすでに無効になっておるということを確認するんだという御趣旨のように受け取られるわけでございます。
#89
○内藤功君 いま総理はお聞きになりまして、法制局長官が説明された法理はそのとおりと確認されますか。
#90
○国務大臣(大平正芳君) そのとおりであると思います。
#91
○内藤功君 たびたび申しわけありません、総理、いま指摘された、国権の最高機関である昭和二十三年六月の両院の決議は尊重されますか。
#92
○国務大臣(大平正芳君) 当然のことと思います。
#93
○内藤功君 法制局長官、主権在君の理念に立っているから主権在民の日本国憲法に反すると、そのとおりだと思いますが、軍人勅諭の文言の中のたとえばどういうところが主権在君の思想であり、主権在民の憲法に反していると考えられるか、二、三指摘をしていただきたい。
#94
○政府委員(真田秀夫君) 六月十九日の決議では、教育勅語等も一緒にあわせて排除あるいは失効確認の御決議があったわけなんですが、御指摘の軍人勅諭について申しますと、どうもこれも非常に難解な文章なんですが、たとえば「朕は汝等軍人の大元帥なるそされは朕は汝等を股肱と頼み汝等は朕を頭首と仰ぎてそ其親は特に深かるへき」というような言葉があるわけなんですね。これは、現在の憲法で申しますと、御承知のとおり天皇は国政に関する権能をお持ちにならないわけなんでございまして、ただいま読み上げましたような中身はまさしく国政に関することでございますので、その点から言っても、現在の主権在民の、つまり天皇は象徴である、国事に関する行為のみ行う権能をお持ちであるという大原則に真っ向から衝突すると、かように思うわけでございます。
#95
○内藤功君 法制局長官、この衆議院の決議には、軍人勅諭などは「神話的国体観に基いている」と、こういうことが提案の案文の中に明示されておりますが、大変明快にいまお答えいただいたんで、もう一回、軍人勅諭の中の「神話的国体観に基いている」という部分はたとえばどんなところでございますか。
#96
○政府委員(真田秀夫君) この軍人勅諭そのものが、先ほど申しましたように、朕は大元帥である、陸海軍を統帥するという思想があるわけでございまして、それはなるほどこの軍人勅諭が出ましたのは明治十五年一月四日なんですが、その後の旧帝国憲法の第十一条によりますと、「天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス」という規定がございまして、すべて国権の大もとは天皇であるという思想に満ち満ちておるわけなんでございまして、そういう思想が背景にあって、そして軍人勅諭が出されたというふうに理解できるわけでございますので、そういう意味合いからして天皇神格性がこの背後にはあるというふうに考えるわけでございます。
#97
○内藤功君 法制局長官、引き続いてお伺いいたします。
 憲法の主権在民の原理に相反するということを言われました。憲法の前文の第一段、あるいは前段と申しますか、その最後に、「われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」という文言がありますが、これが日本憲法の主権在民の原理に反するものを排除するその根拠であると理解をしてよろしいですね。
#98
○政府委員(真田秀夫君) 憲法の前文にはただいま御指摘になりましたような文言がまさしく書いてございます。その意味合いといたしましては、日本国憲法の各条章にあらわれている精神に反する一切の法令は排除するばかりでなく、将来にわたっても憲法の条章に反するような各法令は効力を持たないよということが、これが九十八条などにも似たような条文があるわけなんですが、それと両々相まちましてただいま申しましたような、思想がそこに出ていると、こういうふうに御理解になっていただきたいと思います。
#99
○内藤功君 大分法律論で御見解を煩わしましたが、そこで、軍人勅諭には五カ条と言われるものがあるんですが、この第一番目の「忠節」というもの、これは天皇に対する忠節として、そのほかのもう解釈の余地はなく実践され、また教育をされてきたと思うのですが、この点は、法制局長官、どのようにお考えになりますか。
#100
○政府委員(真田秀夫君) ただいま御指摘の五カ条の訓示規定と申しますか、心構えが書いてあるわけでございますが、どうも私事にわたって申しわけございませんが、私は、陸軍の二等兵であると同時に海軍の中尉でもございまして、陸海軍両方の経験があるという珍しい経歴なんですが、その陸軍におりますときに例の「チレブシシ」といって教育されたものなんです。チというのは「忠節を尽すを本分とすへし」、レは「礼儀を正くすへし」、ブは「武勇を尚ふへし」、シは「信義を重んすへし」、最後のシは「質素を旨とすへし」ということなんで、いずれも軍人として平素から肝に銘じて心がけよというお諭しだと思うのですが、その最初のチ「忠節を尽すを本分とすへし」というのは、これは国家に対する忠節だろうと思うのです。ただ、御注意申し上げたいのは、その当時の国家というのは天皇によって具現されているというような思想がございましたので、これは天皇に対する忠節というふうにお考えになってもよろしいと思いますが、私は、感じとしては国家に対する忠節というふうに理解しております。
#101
○内藤功君 これは、忠節という言葉自体が、たとえばロイアルティーというような意味ではなくて、臣下の天皇に対する忠節という意味にこれは理解をされておったし、また実践されておったと思うのです。園田外務大臣、いかがですか。忠節は天皇に対するものだ、これはもう当然おわかりになっていると思いますが、一言園田国務大臣にお願いします。
#102
○国務大臣(園田直君) 私の所管ではございませんが、私、若いときに奉公しましたときには、国家と天皇は一緒でありましたから、国家に対する忠節は天皇に対する忠節と教えられたわけであります。ただいまは違います。
#103
○内藤功君 あと閣僚にお聞きしたいのですが、むだな時間を使ってもいけません。
 これはまず言葉からいきますと、忠節あるいは忠義というのは、中国語からも来ておって、臣下が君主に対する忠節をささげるということにどんな辞典でも書いてあります。
 私は、ここに、昭和七年に陸軍の偕行社というところで出した古い本を借りてきたんです。「軍人勅諭拝受五十周年を迎へて」という、こういう陸軍大将クラスが明治十五年に軍人勅諭を受けたときの感想をずっと書いております。全部これは天皇の軍隊だということを言っております。
 それからここに教育総監部という陸軍のつくった「皇軍史」という本で、これは陸軍の下級将校に対して軍人勅諭を教えるときの参考文献として書いた本であります。これにも天皇に対する忠節ということは明確に書いてあるわけです。
 いまお二人の答弁でも、国家というのは即当時においては天皇に対する忠節と同じだという答弁がありました。そうして、いまこういうような軍人勅諭というものが再び話題に上り、中にはこれが価値のあるものだと言う人も出てきておるということを、私は、さっきからお話しの憲法の趣旨から言って、たとえ少数の人間であってもさような者が出てくることは民主主義のために見逃し得ないと思うのであります。
 法制局長官に伺いますが、この国会決議に言う「排除」というのは一体どういうことであるか。衆参両院の決議、特に衆議院の決議に言います「排除」というのは、その詔勅の存在を絶対的に否定をすると、こういう意味ではないのですか。
#104
○政府委員(真田秀夫君) 先ほども申しましたように、国会における御決議の内容につきまして私がここで解釈をするというような立場じゃございませんが、衆議院の決議の中身を読みますと、「既に過去の文書となっている教育勅語並びに陸海軍軍人に賜わりたる勅諭その他の教育に関する諸詔勅が、今日もなお国民道徳の指導原理としての性格を持続しているかの如く誤解されるのは、」困るというような文句がございますので、恐らくそういう趣旨でお書きになったのだろうと思います。
#105
○内藤功君 こういうものはもう排除すべきだということが衆議院の決議ではっきりしておるのであります。
 そこで、いま園田外務大臣も含めて答弁がありましたように、軍人勅諭に言う忠節というのは、これは天皇に対する忠節だと。こういうような軍人勅諭に言う忠節というようなものをいまの自衛隊やいまの国民の中に持ち込んで評価をしていくということは、これは絶対に許されないことだと思いますが、防衛庁長官、この点を確認しておきたい。
#106
○国務大臣(山下元利君) 軍人勅諭につきましては、先ほど来御答弁もございましたように、すでに国会の決議によって失効されておるわけでございます。私どもの自衛隊は、戦前とは違いまして、国民のための自隊衛でございまして、それにふさわしい教育をいたしておる次第でございます。
#107
○内藤功君 間接的に答えたのかもしれませんが、防衛庁長官、こういう軍人勅諭にあるような忠節を自衛隊の中に持ち込むことは、これは絶対に許されないということですね、いまの御答弁は。それを確認したい。
#108
○国務大臣(山下元利君) 私は、石田元長官が防衛大学校卒業式において来賓として祝辞を言われました中において、国への忠節、礼儀、武勇、信義、そして質素というふうに項目を挙げて、時代は変わっても忘却してはならない金言と、このように言っておられます。軍人勅諭自体は失効されております。また、自衛隊は、戦後の民主主義を基調とする国の安全と平和を守るために努力いたしておる次第でございますが、このいま挙げられた徳目は、すでにそのもとである軍人勅諭は失効いたしております。これはもうはっきり申し上げております。しかし、この徳目自体には普遍的な意味合いを持つ徳目があるということを申し上げておるわけでございまして、それを実は来賓としておいでになった方が自分のお考えとしてお話しになった。そのときには、その軍人勅諭は失効いたしておりますけれども、徳目としてはお伺いしたと、このように私は申し上げておる次第でございます。
#109
○内藤功君 ですから、軍人勅諭の忠節というものはいまの自衛隊の中に持ち込むことは許されない、そうなんですね。
#110
○国務大臣(山下元利君) 戦前と戦後と憲法は変わりまして、いろいろ国のあり方については先ほど来御答弁のありましたとおりでございますが、国への忠節と言うときの国というものをどう考えるか、私どもは国というのはあくまでいまの現行憲法におきますところの国であると考えておる次第でございます。
#111
○内藤功君 全然答弁になっていない。軍人勅諭で言う忠節は自衛隊の中に持ち込まないということを確認できるかどうかという問題ですよ。そこはもう当然の答えじゃないですか。
#112
○国務大臣(山下元利君) 繰り返し申し上げておりますが、軍人勅諭は効力を失っております。そして、われわれとしては、戦後の憲法の決めますところの民主主義を基調とする国の平和と安全のために努力いたしております。しかしながら、その徳目といたしましては普遍的な徳目はいろいろございますが、その一つの例としてお話しになったものであると受けとめておるわけでございます。
#113
○内藤功君 石田和外氏のこの祝辞、これはかしこくも明治天皇のお諭しの中の忠節と、こう言っているんですよ。ですから、石田和外氏は、まさに明治天皇のお諭しの忠節、軍人勅諭の忠節を自衛隊の中に持ち込んできたわけです。そうでしょう。こういうことが許されるかと言うんです。石田和外氏に限らず、この軍人勅諭に言う忠節というものを持ち込むということが許されるか。これは許されない。ここをまず確認してください、ここが大事なところだから。(発言する者あり)
#114
○国務大臣(山下元利君) 石田和外元最高裁判所長官がお話しになりましたことは、これは確かにいまの御指摘のような文言を使っておられますが、それは石田和外氏のお考えであると思います。私どもは来賓としてのお話を承ったわけでございますが、それは受けとめる方で十分その点はしっかりとした戦後の憲法の民主主義を基調とすることを持っておるわけでございますから、そうしたことの関係を通じまして普遍的な徳目として考えればいいのでありまして、いま持ち込むとかいうふうな表現がございますけれども、私どもは、これはあくまで軍人勅諭は失効いたしておる、が、普遍的な徳目として受けとめると、このように考えておる次第でございます。
#115
○内藤功君 軍人勅諭は失効しておる、しかもさっきの法制局長官の答弁のように、これを排除するということなんですね、否定する。ところが、忠節というのは、単なるたとえばロイアルティーというような概念じゃないんですね。明治十五年以来言われてきた天皇に対する忠節なんです。それを自衛隊の中へ持ち込むということ、これは来賓であっても、これに対しては、防衛庁長官は、これは防衛庁の教育方針とは違うことである、防衛庁で一つの教育方針がやられているんですから、それと違うことが言われた場合に――取り消しを求めろとぼくらそんなことを言うのじゃない。この考え方は自衛隊の教育方針と違うんだということをはっきりとやはり隊内にはさせるべきなんじゃないかと思うのですね。つまり、軍人勅諭に言う忠節というのはわれわれは認めないということをここではっきりさせるべきだと思うのです。これを再度お聞きしたい。その言葉でなぜ言えないのですか。
#116
○国務大臣(山下元利君) 自衛隊は、戦後の憲法、そしてまた自衛隊法第五十二条に「服務の本旨」ということを定められております。それにのっとりました自衛官の心構えということに基づきまして教育をいたしておる次第でございます。
 私は、繰り返し申し上げるようでございますが、戦後は、確かにこの両院の御決議によりまして軍人勅諭は失効いたしております。また、自衛隊は、国民のための自衛隊でございまして、天皇のための軍隊ではございません。それはきわめてはっきりいたしておるのでございます。その根本がはっきりいたしておりますので、具体的な徳目等につきましては、普遍的なものにつきましては来賓のお言葉として受けとめていけばよろしいと思います。私は、自衛隊の教育方針につきましては、先ほど申し上げたとおり、この自衛隊法五十二条、そしてまた自衛官の心構えに基づきまして教育されておるわけでございますが、しかし、普遍的な徳目として――基本がいま私が申し上げておるとおりにすでに失効いたしておるのでございますから、普遍的な徳目として受けとめておればよろしいと思いますわけでございます。
#117
○内藤功君 小銃一丁自体が天皇陛下からいただいたものだと。海軍では軍艦そのものが陛下の船だと。兵器すべてが陛下からいただいたものだと。兵隊の給与は大元帥陛下からいただいたものだと。そして、捕虜を縛りつけてそれを虐殺する、一つの標的にする、これも天皇の名において行われた。三百十万人の人が命を奪われた。これはすべて天皇の名において行われた。これはもう厳然たる歴史的事実であります。そのもとになったのが軍人勅諭、なかんずく忠節であります。これを普遍的な徳目だと言うのは、とんでもない話であります。また、憲法上も許せないことなんです、さっきから話すように。私は、この点についての明言をあくまで避けられる、さっきから何回も聞きましたが明言を避けられるということは、非常に遺憾だと思うのです。
 防衛庁長官にさらに伺いますが、自衛隊内では、それでは、自衛隊発足以来、軍人勅諭の配付や教育や研究や掲示などは一切やられていないと思いますけれども、今後もそのようなことは絶対にしないと、こういうことを確約をここでされますか。
#118
○国務大臣(山下元利君) 自衛隊は、先ほど申しましたように、自衛隊法並びにそれにのっとりました心構えに従いまして教育いたしておるわけでございます。今後もその方針で進めてまいりたいと思っております。
#119
○内藤功君 防衛庁長官、先日の石田和外氏――名前をちょっと言い間違えました。私らは和外と呼んでおったものですから出ましたが、ちょうど私が内藤功と呼ばれるようなものでございます。石田和外氏の祝辞を印刷して、先日の卒業した候補生や在校生やその他隊員に配付してはいませんか。
#120
○国務大臣(山下元利君) そのときの卒業式におきますところの大平総理大臣の御訓辞、それから私の訓辞、並びに防衛大学校長の訓辞は、防衛大学校報として配付いたしておりますが、来賓の御祝辞については配付いたしておらないと思います。
#121
○内藤功君 おらないですか。はっきりしていますか。
#122
○国務大臣(山下元利君) おりません。
#123
○内藤功君 おりませんね。
 そこで、最後に、総理、先ほど指摘しました両院の教育勅語、軍人勅諭についての決議を、今後その趣旨を一層徹底して、あの決議にあるように、軍人勅諭を道徳の指導原理的なものとして是認肯定しない、これを排除するというこの両院の決議に基づく姿勢を貫くということをここで確約をしていただきたい。
#124
○国務大臣(大平正芳君) 現憲法は民主主義を基調といたしております。主権在民でございまして、自衛隊は国民の自衛隊としてその役割りを果たしておるわけでございまして、すでに失効いたしました軍人勅諭というようなものを指導精神としておるものでは決してございません。
#125
○内藤功君 最後に、先ごろの原発事故の問題に関連をして二、三お伺いしておきたいと思います。
 まず、これは科学技術庁。わが国では、数の上では世界第二の商業原子炉を持つ国であり、しかも平地面積当たりの原発立地密度は、アメリカに比べて何と十四・六倍、世界一の高濃密立地国であります。この点で昨日、通産省は、災害対策基本法により各地方自治体が防災計画を持って緊急避難等の対策をとるようになっていると、こう答弁しましたが、具体的にすでに運転中の原子炉を持つ七つの県で、果たして今回のような事故に備える現実の対策がとられているというふうに政府はお考えになるかどうか、まずこの点を伺いたい。
#126
○国務大臣(江崎真澄君) 万一事故が発生した場合には、電力会社から直ちに国及び地方公共団体に連絡をすることになっております。事故を最小限に食いとめるために、保安規定、加えて運転要領等に基づいて必要な対策に全力を挙げることになっております。また、放射性物質の大量放出のように事故が外部に影響を及ぼすおそれがあると認められる場合には、災害対策基本法で定めておるところに従いまして必要な応急措置がとられることになっておるのであります。これは、地方公共団体は、その地域防災計画にのっとって、住民に迅速な避難をさせる。また、関係省庁においては、それぞれ防災業務計画に基づいて、相協力して地方公共団体等に対しまして必要な助言をする、指示をする、専門家の意見をどんどん献策する、また専門家を派遣する、こういった措置を講ずることになっております。しかし、日本の場合は、特に安全を期しまして、アメリカの安全度の何%強いなどという数値であらわすことはこれは言いにくいと思いますが、相当な安全確率を期しまして今日まで対策をしておるところであります。しかし、今朝の閣議におきまして特に総理からも指示がございました。それは、アメリカのまだ原因等々明らかになっておりませんが、十分原因を究明すると同時に、カーター大統領も、アメリカ市民はもとよりのこと、世界に対して、この事故がどうして起こったかということははっきり進んで訴えることによって将来の原子エネルギーの安全のために資したいという基本方針をすでに語っております。したがいまして、そういった情報を的確にキャッチして誤りのないように、また、もし万一、災害というものはもうまさに万一の場合でありまするので、それに備えて十分対策をするようにという指示であります。総理府総務長官が中心になりまして、まあ現在でもすでにそういった災害対策基本法に盛り込まれておりまするものの、具体的な今度の事故に徴して、過ちなきを期すような対策を具体的にとることにいたしておるところであります。
#127
○内藤功君 いまのお話でありますが、私は、今日の防災計画の実態は、ほとんど例外なしに単なる机上のプランになっているのではないかと考えるのでありますが、科学技術庁、通産省はこの防災計画の実態をどこまで把握されておりますか。
#128
○政府委員(児玉勝臣君) 災害に関しましては、総理府に設けられました中央防災会議、それに各省にすでに定められております防災業務計画、それに各地域におきます地域防災計画、そういうことで通産省におきましては通産省の防災業務計画に基づいて行動するということで、毎年一回これは地震想定をいたしまして、そういう災害の起こったときの問題についての訓練ということをやっております。また、地方の業務計画につきましては、その業務計画の内容について机上でございますが検討は加えておりまして、放射線の問題については、科学技術庁の専門家からのアドバイスを受けまして、一般住民の退避にかかわる線量等についての検討等々をやっております。
#129
○内藤功君 私、ここに持ってきましたのは原子炉を八基抱えている福井県の「放射性物質の大量放出による災害に関する予防計画」という文書であります。これを見ますと、特に最後の別表を見てみますと、この計画は四十七年一月にいまから七年前につくられたものでそのままである。この計画以後に稼働した高浜原発、大飯原発は、いまもってこの計画の対象になっておらず、別表にも載っていない。また、二番目には、県の原子力防災部会はこの十年間一度も招集されていない。三番目には、関係町長である高浜、大飯両町長はそのメンバーにも入っていない。四番目には、県の原子力関係予算が一円も計上されていない。かような実態であることがわれわれの調査でわかっております。こういうような実態は非常にひどいものであります。科技庁はこの事実を承知しておりますか。
#130
○政府委員(児玉勝臣君) ただいまの問題については承知しておりません。
#131
○内藤功君 私がさっき聞いたのは、そういう実態を把握しておるかと。一番大事なところを把握しておらないのであります。私が述べたのはほんの一例にすぎません。
 最後に、総理、きょう閣議で御指示があったやに先ほど通産大臣がお話ししておられましたが、一体いま指摘したような事実がある、こういうもとで原発事故の防災体制が万全だなどということは私は毛頭言えないと思うのです。災害対策基本法第三条によりまして中央政府にその責任があることは明確であります。こういうことが放置されているのは、私は政府に重大な責任があると思うのです。いま問題に出した福井県の当局者は、国はめんどうなことになるとすべて地元に任せ切りだと述べておりますが、安全対策抜きの原発推進計画を住民にいままで押しつけてきた、これは政府の責任だと思うのであります。総理に、どのように責任を持って今後万全な対策を立てていくのかというお考えを改めてこの場でお伺いしたいと思います。
#132
○国務大臣(大平正芳君) お言葉でございますが、安全対策抜きの原子力発電を地元に押しつけたというようなことはいたしておりません。私ども、原子力発電は安全性第一と心得まして非常に周到な配慮をいたしておるところでございます。安全性対策を第一義と心得てやっておりまするので、その点につきましては御理解をいただいておきたいと思います。
 それから三十七年に制定されました災害対策基本法は、広範にわたりまして中央地方を通じまして災害対策に対応する組織、対処する方針が示されておりますけれども、しかし、原子力発電という特異な災害でございますので、これに対応いたしますために、なお一層彫り深く、あなたが言われるように、実情を掌握の上対応策を前もって十分検討しておかなければならぬと存じまして、したがいまして総理府を中心といたしまして改めて各省庁の関係者を集めましてその対策を練るように、また、アメリカにおける今回の災害につきましても、原因、状況がまだつまびらかではございませんけれども、これをいち早くキャッチいたしまして日本の安全対策に裨益する面はこれを吸収いたしまして当たらなければならぬと存じておるわけでございます。われわれは、あくまでも安全第一と心得まして、全力を尽くして石油代替エネルギーとして一番いま期待されておる原子力発電を可能にする条件をつくらにゃいかぬと存じまして努力をいたしておりますので、さように御理解いただき、御協力をお願いしたいと思います。
#133
○委員長(町村金五君) 以上で内藤君の締めくくり総括質疑は終了いたしました。(拍手)
 午前の質疑はこの程度にとどめます。
 午後零時五十分から委員会を再開することとし、これにて休憩いたします。
   午前十一時四十六分休憩
     ―――――・―――――
   午後零時五十三分開会
#134
○委員長(町村金五君) 予算委員会を再開いたします。
 昭和五十四年度総予算三案を一括して議題とし、矢追秀彦君の締めくくり総括質疑を行います。矢追君。
#135
○矢追秀彦君 私は、初めに物価動向について伺いたいと思います。
 本予算委員会の分科会におきましても、いろいろ私も指摘をしてまいりましたが、最近かなり物価が高くなっておりまして、政府としても警戒水域に入ったと、こう言っておられます。二月二十六日に物価担当官会議で「物価対策の総合的推進について」を発表されておりますが、これはただ単なる監視政策程度だと思います。これでは私はなまぬるいと思っておりますが、この監視政策の中で物価問題にどんな変化があらわれておるのか、具体的に監視の結果どのようになっておるのか御報告いただきたいと思います。
#136
○政府委員(藤井直樹君) 二月二十六日の物価担当官会議で決めました対策につきましては、第一番目、第二番目の項目は生活関連物資とか、それから国民経済上重要な物資、それから石油製品等についての価格の動向を監視して、そしてその状況に応じて供給の確保を図るとか、また便乗値上げ等については業界に要請をするというようなことを内容としているわけでございます。そのほか三番目の項目としては通貨供給量の監視の問題、それから生活必需物資の安定的供給と価格の安定を図るという問題、それから第五番目が円高の効果の物価への関係、それから、第六番目につきましては公共料金の取り扱いを厳正にいたしますということと、第七番目に地価の監視の問題、第八番目に地方公共団体に対しても同様な物価対策をやっていただくように要請をするということでございます。
 この対策につきまして、現在関係各省において実施しているわけでございますけれども、現在までのところでは、第一の項目につきましてはカルテルの問題がございます。カルテルにつきましては、対策の決定をいたしましたときには六品目あったものでございますけれども、現在の時点では一品目になっております。
 それから石油製品、それから石油に関連する製品についての便乗値上げ等に対する対応といたしましては、三月三十日に通産省より関係団体に対しまして文書で要請を行っております。
 それから、供給の確保による価格の安定という件につきましては、すでに合板とか鉄くずの放出が行われていたわけでございますけれども、二月の末に銅製品について放出を行った。
 それから食料品の価格安定の項目におきましては、対策決定後、牛肉の輸入枠を五千トン増枠するというようなことをいたしております。
 それから地方公共団体に対しましては、自治省と経済企画庁連名で文書で要請を行っているわけでございます。
 さらにこれからの問題といたしましては、いま御指摘にありました需給、価格動向の調査、監視等につきまして、そのフォローをしていく必要がございますので、今週中に物価担当官会議を開いて関係省庁の間で検討をするということにいたしております。
#137
○矢追秀彦君 これは通産大臣にお伺いしますが、石油製品について文書で要請されたということですが、いま現実に石油製品は大変上がってきておりますが、その実態は掌握をされておりますか。
#138
○国務大臣(江崎真澄君) 実態は十分把握をしております。後から事務当局から細かく御説明申し上げますが、今度の場合、特に本省としましては大口取引の実態を的確に把握していく、それから地方の通産局がございますが、これはブロック別にありまするので、石油関連製品、これらの値段がどういうふうに動いておるかということを一週間に最低一度という割合で十分現実に即して調査をする、こういうことで対策をとっておるわけであります。
 それから文書で便乗値上げなどというようなことがかりそめにもないよう、もとより需給両者の間によって値決めのされるものでありますが、この石油及び石油関連製品というものは物価に与える影響が非常に大きい。これはもう公共料金、公益料金に比しても決して劣らないものであります。したがいまして、十分自重を私自身も業界の代表を直接招致いたしまして、よく協力方をお願いしておいたところでございます。
#139
○政府委員(島田春樹君) お答え申し上げます。
 石油製品の最近の状況でございますが、石油製品につきましての全体のWPI、五十四年の一月からでございますが、九三・五、九四・一、九四・二、九五・八というかっこうで推移しております。またC重油につきましても、WPIでは一月八八、七……、失礼、さっきの数字、ちょっと誤解があるといけません。最初の一月が九三・五、それから二月が九四・一、それから三月の上旬が九四・二、中旬が九五・八ということでございます。それから同じような数字でございますが、C重油につきましては一月が八八・七、二月が八八・七、それから三月の上旬が八八・七、中旬も同じというかっこうになっております。またガソリンにつきましては、一月が九七・一、二月が九七・二、三月上旬同じく九七・二、中旬が一〇一・六ということになっております。
#140
○矢追秀彦君 いまC重油とかガソリンは言われましたが、具体的な製品の動きについては掌握をされておりますか。
#141
○政府委員(島田春樹君) お答え申し上げます。
 把握する体制につきましては、先ほど大臣が申しましたように通産局、それからそのほかに、灯油とLPGにつきましてはモニターの調査も行っております。
 いま申しましたほかに、ナフサでございますが、ナフサについては、一月が九二・一、それから二月が九二・一、三月になっても指数では同じでございます。
 それから灯油につきましては、一月が九九・〇、二月が九九・三、三月上旬、中旬横ばいという指数になっております。
#142
○矢追秀彦君 まあいまのようなものはそんなに、少しは動きがありますが、ナフサなぞはそう動いていないにもかかわらず、私が具体的に聞きたいのは、たとえばビニールパイプ一つを取り上げても、二月二十一日から四月二十日までにはもう二割アップ、四月二十一日からまた五%アップ、こういう通達が業者に来ているわけです。
  〔委員長退席、理事嶋崎均君着席〕
それから、ナフサからできるところのフタル酸、こういったものも、私の調査では、五十三年には一キログラム当たり百二十五円から百二十円であったものが、五十四年の二月では十円の値上げで百三十五円から百三十円、三月で十五円、四月で三十円ないし三十五円と、ここまでしますと、去年からことしにかけて四八%の値上げ。これはもう小売で私は調べてきたんです。五月になるとまだ上がるんじゃないか。
 あるいはスチレンモノマー一つ取り上げても、五十二年の二月百二十円、三月一日で百三十五円、四月一日で百七十五円、これで四五・八%の値上げ。これはどう考えても、先ほどの説明と比べると、その途中における買い占め売り惜しみがあると私は考えざるを得ないわけですが、これは通産大臣、経企庁長官いかがですか。
#143
○国務大臣(江崎真澄君) 実態については後刻事務当局から御説明をさせたいと思いますが、私ども、今後ともまだ需給ギャップありというふうに見ております。これは、たとえば一月の稼働率指数を見ましても一一七%。これは五十年を一〇〇としてですから、御承知の昭和四十五年の基準ですと、おおむねこれに七を掛けます。そうするとまだ八一%程度です。したがって、中には老朽施設もありましょうが、やはりそういう極端なものにつきましては増産をするように行政指導をする余地も十分ありまするし、御指摘の点については、細心の注意を払って値上がりを極力抑制するように努力してまいりたいと考えます。
#144
○政府委員(大永勇作君) ただいま塩ビパイプの御質問が出たわけでございますが、塩ビパイプの生産につきましては、最近の生産量は一七%、それから出荷量で二四%、対前年同期で増加いたしております。三月に入りましても大体同じぐらいで増産いたしておりますので、売り惜しみ、そういったようなことはございません。
 それから価格につきましては、この塩化ビニールは、五十二年からずっと不況でまいったわけでございまして、価格もずっと下がってまいったわけでございますが、この三月だけについて見ますと、原料関係が若干値戻しをいたしましたので、日銀の卸売物価指数で、塩化ビニールパイプは三月に二月に比べまして七%だけ、これはまあ値戻しということでございますが、上昇をしております。四月以降の問題につきましては、結局は大もとの原料になりまするナフサの価格がどういうふうになるかということが非常に大きな影響を及ぼすであろう。ただ、需給関係につきましては、相当過大な過剰設備を持っておりますので、塩化ビニールの段階で生産が不足して出荷を制限するというふうなことは考えられないというふうに思っております。
#145
○矢追秀彦君 いまのお話だと値上がりがないはずでしょう。それがどうして二割も上がるんですか、現実に上がっているわけですから。おかしいと思いませんか、大臣。
#146
○政府委員(大永勇作君) 塩化ビニールのパイプの価格につきましては、実績で出ておりますところは、いま申し上げましたように、三月で対前月七%のアップということでございます。まあ二割とか一割とか、要するに四月以降のいろんな……
#147
○矢追秀彦君 いや、二月でもう二割上がっているんだ。いま上げたんだ、二月の二十日以降に。四月からまた五%上げるという通達が来ているんだ。だからおかしいというんだ。
#148
○政府委員(大永勇作君) 塩化ビニールのパイプの財団法人経済調査会の積算資料というのがございます。これによりますると、昨年の七、八月ごろは七千六、七百円しておったわけですが、それがずっと下がりまして、ことしの一月は七千七十円――これは百五十ミリのパイプの五メートルもの一本の値段でございますが、一月が七千七十円、それから二月も七千七十円でございまして、三月が七千二百十円。三月に入りまして、この数字で申しますと、三%程度でございますが上がっております。
 それから日銀の卸売物価指数につきましては、これは塩ビパイプでございますが、十二月、一月、二月は横ばいでございまして、三月がいま申し上げましたように七%上がっておるということでございますので、われわれのつかんでおります資料では、そういう形で三月に若干上がっておるという程度であるというふうに把握をいたしておる次第でございます。
#149
○矢追秀彦君 通産省のとられるデータは業界の方から発表されたものだと思うんですよ。だから実態と違うわけですよね。私はもう最末端のところからとったんですが、いま言われた百五十ミリでこの二月二十日までが七千五百九十七円、これでもう五百円違う。それからいま言われた七千七十円と七千二百十円、これはもういま九千百十六円しているんです。それで、四月二十一日以降は九千五百七十二円と、これは小売等によって少々の違いはあるにせよ、二千円もあいているということはかなり開き過ぎであると私は指摘をせざるを得ないわけですが、その点いかがですか。
#150
○国務大臣(江崎真澄君) よく実態に即しまして調査をして、また御報告申し上げたいと思います。
#151
○矢追秀彦君 時間がありませんので細かく全部できませんけれども、大体先ほど申し上げたような品物、そのほか、たとえば洋服の裏に使うナイロンタフタ、背広の裏地ですね、こういったもの、値段が上がっているだけではなくて物がない、売ってくれない、こういう声を大変聞くわけです。これはこの間経企庁長官にも申し上げまして、具体的な実態があったら教えてもらいたいということで、きょう二、三持ってきたわけでございますけれども、現実にそういう一番末端のことを聞かないで業界の方から聞いたって、これは絶対出てこないですよ。一番下の方をきちんと私はやっていただきたい。特にフタル酸については一斉値上げになっているわけです。八社ありますけれども、一斉値上げ。
 これは公取にお伺いしたいんですが、この一斉値上げの事実を掌握しておられますか。もしあるとすれば、これは独禁法にひっかかると私は思いますが、いかがですか。
#152
○政府委員(橋口收君) 石油製品及び石油関連製品の価格の動向につきましては、かねてから十分な関心を持って注視をいたしておるところでございますが、いまお話がございました無水フタル酸の価格の値上げの状況につきましては正確に把握をいたしておりません。ただ、石油関連の製品につきまして、最近相次いで値上げが行われている、あるいは、おっしゃいますような出荷制限なり供給制限がある、物が手に入らないという苦情が当委員会の方にも来ているわけでございまして、そういう点から申しまして重大な関心を持っておるところでございまして、矢追先生からはかねがね大変貴重な情報をいただいておるわけでございまして、それらの情報を総合的に把握をいたしまして善処をいたしたいというふうに考えております。
#153
○矢追秀彦君 経企庁長官にお伺いしますが、買い占め及び売り惜しみに対する法律が四十八年にできたわけですが、これは総理の管轄ですが、実際は経企庁ということになりますが、もう私はいまの状況においてやはり第二条「物資の指定」、それから第三条の「調査」、これはもう入ってもいいんじゃないかと。これはおくれますといまのうちにやっちゃいますから、みんな買い占めを。だから上がってしまうと。そこへもってきてまたOPECが上げてきたらまた上げると、こういうことになって狂乱物価という前回の状況が出ることを私は大変憂えておるわけですから、もうぼつぼつこれは発動すべきであると思うんですが、いかがですか。
#154
○国務大臣(小坂徳三郎君) 矢追委員にお答え申し上げますが、いま現在の卸売物価の全体の情勢でございますが、特にいま御指摘のような個々の商品につきましては、この木曜日に物価担当官会議を開きまして、本日御指摘のございました諸種の点につきましても十分実態を確かめてみなければならぬと思うんでございますが、いまお示しのようなそのような事態、そういうような法律的な発動をいますぐするということは、やや時期が早いのではないかと思うんです。それはまず第一に、現在やっておりまする物価の総合対策そのものが大いに軌道に乗って活動していくということが私は一義的に必要なことだと思います。
 それから第二点には、やはりこの便乗値上げに対しましては、これは徹底的にわれわれ抑え込んでいきたいということで、これが主目的になっておるわけでございますが、もう一つなおしなければならぬことは、やはり私は国内の産業界や経済界がやはり能率を向上して生産性を上げていくということ、それによる物価の吸収ということがやや今日までの物価対策ではおろそかになっているんではないか、こうした点について民間あるいは日本の経済界に大いに呼びかけて、生産性向上によって上昇するコストプッシュを消化する、これは非常に重要な点でありまして、ただいまお示しのような物価の強烈な抑え込み対策の前に、ぜひわれわれとしてはこの民間の生産性の向上と能率化ということをもう一度ひとつやってもらうような政策的な努力をしたいと思うんです。
 それからもう一つは、やはりいまわれわれが抱えております省エネルギー、私は最低五%まではやるということを何としても全経済界及び国民生活の中で実現するということ、私はこれは間接的ではありますけれども、非常に大きな物価対策になるというふうに思っておるところでございます。
 それからまた、一般的な物価上昇を非常にあおるものとしてM2、通貨の流通量がございます。これは国債の発行の問題でもありますが、これはまた一種の景気対策ともつながる点でございますが、私はこのM2の動向を十分監視をするということを進めるとともに、もう一つ見落とされていることは、いわゆる貿易の経常収支の黒字をやはりこれをもう少し機動的に使っていくことによって、いわゆる過剰な円の吸い上げにもなるし、また同時に経常黒字を機動的に使わせるということによる私は一種の円対策にもなるというふうに考えておりまして、これらの諸点をさらに十分踏まえながら、政府が先般来五十四年度で目標といたしております卸売物価の一・六%ライン、また消費者物価の四・九%ラインを守る努力をまずしていきたい、このように思うわけでございます。
#155
○矢追秀彦君 私は、いま経企庁長官が言われたように、物価を抑え込んで景気まで抑え込もうというのじゃなくて、要するに需給のバランスの上から言っても、いま言ったように倉庫にしまい込んであるものは出させる、そういう意味での発動を言っておるわけでして、決して私は物価だけをやることによって景気まで抑え込んでしまう、そういうことではないのでして、その点は誤解のないようにしてもらいたいと思いますが、これは総理はどう思われますか、いままでの議論を通じて、これはどうされますか。本気になってこういう問題が起こらないように、いまの経企庁長官の考えも私はある程度は賛成の面もございます。いかがですか。
#156
○国務大臣(大平正芳君) 根本はいまお話しにもございましたけれども、国の内外からの各物資の供給の安定を確保することが第一だと思います。それから大事な品物につきましての節約の励行、これも物価対策上進めなければならぬことだと思いますが、金融面からの警戒的な姿勢もこの際大切なことだと考えておりまして、またカルテル政策――大部分外してまいりましたけれども、政府の物価の監視を通じまして各業界の協力を求めるように努力して、総合的な力を結集いたしまして、せっかくの安定基調を何としても保障してまいらないといけないと思います。
 きょう、予算を成立さしていただきますけれども、これの執行につきましても、物価政策の面からよほど緊張した姿勢で当たらなければならぬと考えております。総じて、しかしながら私は、今日われわれが気を配って周到に配慮してまいりますならば、物価安定基調を崩すようなことはなくていけるし、またいかなければならぬと思っております。
#157
○国務大臣(江崎真澄君) いま総理がお答えになったとおりでございます。
 先ほどまた経企長官からもお話がございましたが、いま経企長官と座席で相談をいたしまして、矢追さんは関西方面ですから、いま通産省の把握しておる指数と現実が違っておるなんというようなことはこれは容易ならぬことで、しかも石油業者に自粛を求めておってもその関連製品がどんどん上がるということはこれはよくありません。もし現実ならば、これはやっぱりいまから十分注意しなければならぬ事態でございますので、早速実態調査をそれぞれの、経企庁は経企庁、私どもは通産局もありまするので、現実に即して調査をいたします。追って御報告いたしたいと思います。
 それから念のために申し上げますと、いま石油関連製品の値上がり分は、一月から五%OPECの約定によって上がったあれの問題ですね、それから円安の分と、こう言っておりますが、今度の値上げ分については特定なスポットもの以外の石油は六月末ごろから値段に反映してくる、こういうわけでありまするので、それ以外はまさに便乗値上げということも言えると思います。先々のところで関連製品が上がっておったのじゃこれはいけませんので十分注意したいと思っております。
#158
○矢追秀彦君 日銀総裁にお伺いをいたしますが、日銀総裁は先日の予算委員会でも、最近の物価動向は狂乱物価を引き起こした当時と似ていると、こうおっしゃっておりますが、現在でもその認識は変わりませんか。
#159
○参考人(森永貞一郎君) 現在の卸売物価の動きは四十七年の秋ごろの動きに大変似通っておるわけでございます。その当時と今日とでは背景はいろいろ違う点もございますし、似た点もございますが、卸売物価の動きを警戒しなければならないということにおいては四十七年ごろの事態と同じぐらいの警戒を必要とするような状態だと私は思っております。
#160
○矢追秀彦君 金融引き締めの話がいろいろ出てきておるわけですが、私は、先ほども経企庁長官が少し言われましたが、いま直ちに引き締めに転じた場合、総理は否定されておりますけれども、せっかくの安定成長、景気はよくなりつつあるのに水をかけるという点で、いますぐは大変問題だと思いますが、ただ、私は先ほど申し上げたような、そういう大変不正な取引等が行われる、そういったところを何とか金融面でチェックできないか、締められないか。しかし企業は現在金を持っていますからそっちへ走る可能性がある。その辺はどうお考えになりますか。
#161
○参考人(森永貞一郎君) 御承知のごとく、景気の方は底がたい回復の動きをとっておりますし、国際収支の黒字幅縮小も顕著に進んでおるわけでございますが、その間ただ物価について警戒を要するという事情が起こっておるわけでございます。卸売物価の現在のような騰勢が今後も長く続くようでございますれば、先高感から国民のインフレ心理にも影響するというようなことで、そうなりますとせっかく回復の道を歩いておりまする景気も短命に終わり、また国際収支の黒字幅縮小も定着できないようなことになるわけでございますので、私どもといたしましては金融面からはインフレの再燃は絶対避けなければならない。それによって息の長い景気の回復を維持し、国際収支の黒字縮小の傾向も定着させなければならぬのが現在の金融政策の目標であるべきだと思います。そのためには、現在やや過剰と認められる流動性をやはり吸収ぎみに運営することが必要だと思いますので、先般来申し上げておりますように、金融政策のスタンスを警戒的中立姿勢に移したわけでございます。これによりまして過剰流動性の一部が吸収されることを期しておるわけでございます。現在のところ、それ以上に公定歩合を引き上げるとかなどの引き締め措置をとりますことは、具体的には考えておりません。今後の情勢の推移いかんにもよることでございますが、現在のところは具体的にそういう問題は検討はいたしておりません。今後とも情勢の推移を厳しく見きわめながら、施策に誤りなきを期したいと思っておるところでございます。
#162
○矢追秀彦君 国債が大変大量に発行されて、しかも大変値崩れが起こって、そのために銀行等ではかなりの欠損が出てきておるわけです。そういった状況の中でのやはり金融引き締めということは、ますます国債消化に大きな影響が出ますので、そういったことも含めていま日銀総裁はおっしゃったと思いますが、この国債の大量発行下におけるマネー・サプライ・コントロールのあり方、これは日銀総裁としてはいまいろいろ言われましたけれども、もう一つ私にぴんとこないんですけれども、大蔵大臣にお伺いしたいと思います。
#163
○国務大臣(金子一平君) 国債の大量発行下のことでございますから、今日の金融緩和の状況だけはひとつ維持したい。すぐ長期金利を引き上げるというような方向にいま転ずべき時期でないというふうに考えておる次第でございます。もちろん卸売物価の騰勢等もございますし、マネーサプライも若干増加しておりまするけれども、いますぐ大きな引き締め政策に転換するべき時期とは私どもは考えておりません。
#164
○参考人(森永貞一郎君) マネーサプライのM2は昨年の半ば以後少しずつ上がってまいりまして、現在は前年比一二%ぐらいでございます。二月の数字がきょう午後発表される予定でございますが、一二・三ぐらいのところでございまして、その数字そのものは落ちついた数字になっておるわけでございますが、M2の動きだけではなかなか安心できない点が起こっておりますのは、企業の短期保有有価証券がふえておるということ。それから企業が金融機関から金を借りやすい、借り入れアベイラビリティーが大変ふえてきておるというようなことから申しますと、一二%で落ちついているということだけでもう絶対安心だというわけにもいかないのが現状じゃないかと思います。今後のことを考えますと、昨年来財政によるマネーサプライの増加の寄与度が少しずつ高まっておるわけでございますが、五十四年度になりまして十五兆の国債が出るということになりますと、また財政の寄与度が高まってくることは想像にかたくないわけでございますし、しかも財政が小回りがききませんので、マネーサプライのコントロール上にもいろいろむずかしい問題が生じてくるわけでございます。しかも景気が回復してくるに伴いまして、民間資金の需要も起こってまいりますので、民間資金と財政資金、公共資金をどう調整するかということが、このマネーサプライのコントロール上大変むずかしい問題になっていくような感じがするわけでございまして、私どもといたしましてはそのような事態に備えて、どうやってこのマネーサプライを適当な範囲内にコントロールしていくか、いまからいろいろと検討もし準備もしてかからなければならない問題だと思っておる次第であります。
#165
○矢追秀彦君 次に日銀総裁、時間ですので簡単に伺いますが、円レートはけさ二百十三円ということを聞きましたが、かなり急ピッチで円安になってきております。オイルショックの直後もかなり円安になりました。今後のOPECの値上げを展望した場合、大体どのような方向になるとお考えになっておるのか。また、きょうの値下がりをどう考えておられるのか、お答えいただきたいと思います。
#166
○参考人(森永貞一郎君) 最近の円安傾向の背景にございますのは、何と申しましても日本の経常収支の黒字幅が顕著に縮小しつつあるということ。もう一つは、円建て債その他の長期資本の流出がかなりの規模で行われておりまするので、基礎収支あるいは総合収支が赤字化してきておるということ、そういうことが基本的な背景としてあるわけでございますが、そのことが為替市場の需給に反映されてくるわけでございます。昨日、きょうともう二百十円台、きょうはおっしゃるように二百十三円台になりましたのは、月商における輸出手形の持ち込みの減少。しかも輸入決済の方はそれにもかかわらずかなり多いということ。それと円の先安等の思惑からの輸出予約の持ち込みがそれに影響されておるといったようなこと、いろんなことがございまして、きのうきょうとかなり安い相場に落ちついておるわけでございますが、為替市場は御承知のようにフロート制でございますので、乱高下に対しましては適時、昨今はかなり大胆に介入をいたしておるわけでございますけれども、市場における相場決定にゆだねなければならないわけでございまして、
  〔理事嶋崎均君退席、委員長着席〕
これをある特定の点に固定し、あるいは誘導するというような態度は避けなければならないかと思っております。
 ただ、円安が行き過ぎますといろんな面で問題が生じます。一つは物価の面でございます。もう一つは、せっかく黒字幅が縮小しかけてきておるのに、円安によってまた輸出がふえて黒字幅がまた拡大するというそういう心配もあるわけでございますので、余り行き過ぎた円安にならないよう、願わくば安定した相場づきに早く戻ってくれますよう、こいねがっておる次第でございます。
#167
○矢追秀彦君 いま日銀総裁は黒字幅が減ったことが円安を招いておると言われました。私はもちろんそれもわかりますが、いま申し上げたようにやはり日本の経済が大変石油の値上げに弱いと、こういうことがやはり先ほど申し上げたように、あのオイルショックの後の円安の状況から見て言えると思うんです。これについてはどうですか。
#168
○参考人(森永貞一郎君) 海外の為替市場で、ドイツ・マルクあるいはスイス・フランに対して、円が独歩安みたいな感じになっております。もっとも昨日はドイツ・マルク、スイス・フランともに少し軟化しましたけれども、しかし軟化の程度は円の方がはるかに大きいわけでございますが、その裏には、いま申し上げましたような国際収支の背景のほかに、石油問題に対して日本経済が弱いのではないかというような思惑が入っているということは否定できないような感じがいたします。
#169
○矢追秀彦君 総理、私は最初に狂乱物価になる可能性があると、物価が上がると大変です。これも抑えなくちゃいけない。上がってきた場合に下手に公定歩合の引き上げをいたしますと、今度は大量国債発行下において、国債がまたこれ売れなくなって、最後は日銀が買い支えをして、またこれマネーサプライの増加と、こういうふうなことで大変またそれがインフレへいく、これも抑えなくちゃいかぬ。と言って、せっかく回復しつつある景気をいま安定成長に乗せる瀬戸際に来ている。さらに東京サミットを迎えるに当たって、相当海外からの厳しい状況がある。しかも、円安傾向も出てきておる。いま経済の運営を間違えますと、これはもう国民は狂乱物価で泣くか、またその次に出てくる長期の不況ということでも悩まなくちゃいけない、大変むずかしいときに差しかかっておりますが、総理、どういうかじ取りをきちんとして乗り切ろうとされておりますか。国民が安心できるように、具体的にきちんとおっしゃっていただきたい。
#170
○国務大臣(大平正芳君) 仰せのように、大変デリケートな状況であることは御指摘のとおりだと思います。しかしながら、先進各国は反目し合うのではなくて協力し合うと、協力し合わなければいけないという意識が非常に強うございますし、また協力の手だてもだんだんと整ってきておるわけでございます。で、サミットみたいなような会合を通じまして、さらにその信認を確認し合うということは、今日の状況を管理する上におきまして私は大変プラスだと思います。
 一方国内でございますが、国内は冷えてもいかぬし熱くなってもいけないし、あなたの言うように大変むずかしい状況でございますが、一番肝心なことは、政府がきちんとしておることと、国民がワイズ、賢明であっていただかなけりゃならぬことでございます。私どもといたしましてはできるだけ慎重に、緩急よろしきを得て経済政策を持っていきたいと思っておりますけれども、国民の側におきましても、あわてふためいていろいろな物の仮需要が起こるというようなことになりますと、これはお互い自分を苦しめることになるわけでございまして、この前の石油危機のときの経験はいま繰り返してはならぬことをみんながよく承知してくれておると思います。したがって、私は楽観論ではございませんけれども、国の内外ともこの前の石油危機を経験したときよりは条件はよくなってきておるんではないか、したがって、それを手がたく維持してまいりまして、あなたが言われるまことに微妙な段階を乗り越えていかなければならぬと思いますし、またそれはいけるのではないかと考えております。
#171
○矢追秀彦君 総理が楽観論を言われるのは当然だと思いますが、私はオイルショックの経験があるから知恵が出せる、逆に悪徳商法はそのときの経験があるからもっと陰湿にうまくやろうというのが現実にあることは事実です。だから私は政府が先手を打っていただきたい、こう強くお願いする次第です。
 最後にもう一点だけ、申しわけありませんが中水道について。これは名称が大変ばらばらであります。これは各省できちんとしていただきたい。今後の中水道を普及する上においていろいろ問題となっております建築基準法のことあるいは税制のこと、いろいろございます。こういった点で、各省からこの中水道普及に対しての今後の方向また名称、これをお伺いして終わりたいと思います。
#172
○国務大臣(中野四郎君) お説のように、建設省ではこれを中水道と言い、国土庁では雑用水と言うております。これが一本化されることは好ましいことであります。同時に、これはなかなか雑用水化す、いわゆる中水道化すという施設が大変な金がかかるのでありまして、従来、東京市の時分でも砂町にああして再生をした水を使ったりあるいは全国のふろ屋さんがやはり同じような形をとっておるんですけれども設備に相当金がかかる。名前も一本化したいし、これをば簡素化しまして、でき得るだけ一本化した上に立って、今後の金融措置あるいはいろいろな指導をするようにいたしたいと考えております。
#173
○国務大臣(渡海元三郎君) いま国土庁長官からお話がございましたが、建設省は下水処理に関連しての再処理でございますので、下水処理水再利用という名前で呼んでおります。いま中野長官からお話がございましたとおり、大変第三次の高度な処理が必要でございますので、経済性と見合いながら計画、指針ができるように検討を持っていきたい。なお来年度におきまして、最も水飢饉でございます福岡で具体的にモデルケースとして事業に予算をつけておりますので、今後ともに検討し努力していきたい、かように考えております。
#174
○国務大臣(江崎真澄君) 私どもは工業用水を所管しておりまするが、これなどとの関連の上において、各省庁と十分協議して対策したいと思います。
#175
○矢追秀彦君 名称はどうですか。
#176
○国務大臣(江崎真澄君) これは関連省庁間で一致させたいと思います。協調します。
#177
○国務大臣(橋本龍太郎君) 厚生省は雑用水道という名称を使っていることは御承知のとおりでありますが、私どもはいま上水水源の枯渇に非常に困難を感じております状況でありますので、むしろ今後ともに積極的にこれに対して取り組んでまいりたいと思います。すでに五年間調査を継続いたしておりますが、確かにいろいろな問題点はございます。ございますが、今後、たとえば団地の建設等においてこういうものを布設することになれば、それだけでも水資源対策として非常に有効なわけでありまして、私どもとしては五十二年の水道法改正の時点においても、これは議員立法、超党派でお願いをしたものでありますが、そのときに雑用水を法制化していただきたいというお願いをしておったことも御承知のとおりでございまして、積極的に取り組みたいつもりに考えております。
#178
○国務大臣(江崎真澄君) 失礼しました。ちょっとお聞きの意味が私とれなかったものですから。中水道とは言わないで雑用水道と通産省では現在そう呼んでおります。
#179
○矢追秀彦君 総理、最後にこの中水道について総理のお考えをお伺いして終わりたいと思います。
#180
○国務大臣(大平正芳君) まあ各省の調整を図りまして、名称はもとよりでございますが、施策につきましても統合したものに仕上げていくように努力したいと思います。
#181
○委員長(町村金五君) 以上で、矢追君の締めくくり総括質疑は終了いたしました。(拍手)
    ―――――――――――――
#182
○委員長(町村金五君) 次に、栗林卓司君の締めくくり総括質疑を行います。栗林君。
#183
○栗林卓司君 私は、昨今きわめて深刻になってまいりました日米の通商問題についてお尋ねをしたいと思うんですが、最初に総理にお尋ねをしますけれども、電電公社の物資調達問題がいわば物別れでいま終わっているわけでありますが、その経過を含めて、背景としてどういうお感じをお持ちになっているのか、御所見をまず承りたいと思います。
#184
○国務大臣(園田直君) 日米経済摩擦はなかなか緊張した状態にあるわけでありますが、それにしても、両国ともこれをなるべく早く解決したいと努力をしておる最中でございます。
 先般、牛場代表が米国に参りましてストラウス米国代表といろいろ折衝をいたしましたが、まだ話し合いがつく段階には至っておりません。両国ともなるべく早く解決できるよう努力をしておる状態でございます。
#185
○栗林卓司君 新聞報道によりますと、牛場さんの御意見として、日本の提案は交渉のたたき台にもならなかった、こう述べておられるようですけれども、これは事実そのようでございますか。
#186
○国務大臣(園田直君) 質、量等において、お互いにまだ話し合う段階には至っておりません。
#187
○栗林卓司君 アメリカ側の態度を見ておりますと、非常に強硬だという印象を私は受けるんですけれども、その点は同じ御印象でしょうか。
#188
○国務大臣(園田直君) 相当強い主張であることは、私もそのように印象を受けております。
#189
○栗林卓司君 この電電公社の問題というのは、日米で話し合いをしながら解決をしていきたいというお話なんですが、この電電公社の問題という個別の問題を超えた意味を持つに至った、少なくも米側はそう理解をしている。したがって、個別にこの問題を取り上げて解決をしようとしても、実はその背景にあるものを含めてテーブルにのせていかないと議論にならぬのじゃないか、こんな感じを持ちますが、いかがですか。
#190
○国務大臣(園田直君) この問題は、米国の政府と議会の関係は若干差異のあるところでありまして、日米不均衡の大幅黒字を背景にしながら、インフレ、雇用、そういう問題も抱えながら、この電電公社の問題については、米国はこういう問題をオープンにするので日本もオープンにしろと迫っているわけでありますけれども、やはり議会等には相当のいら立ちがあることも事実でございます。しかし、相当緊張してはおるとは申しますものの、それが日米の政治関係に決定的打撃を与えるようなそういうことではなくて、やはり貿易不均衡を是正するについて貿易障害をお互いに排除しようと、こういうことから出てきておることであると私は判断をしております。
#191
○栗林卓司君 これは外務省からたしかいただいたのですけれども「米国の主要な対日関心事項」とございまして、電電公社の問題に触れて「米側は本件を日本政府関係機関自身の対外的閉鎖性の象徴と考えるに至っている」、いわばもう一種の踏み絵みたいになりまして、非常に大きな意味を持つに至ったということはお認めにならないですか。
#192
○国務大臣(園田直君) 電電公社の問題が日本の市場閉鎖のシンボルという認識をアメリカに与えていることは若干あると存じます。そういう意味で、米国としてはこの問題の解決が日本の市場開放の一つの道だと、こういうことできておるということは私も同じように判断をいたします。
#193
○栗林卓司君 それで、外務大臣は先ほどアメリカ側のいら立ちと言われたんですけれども、私もやはり背景にあるのはアメリカのいら立ちではないかと思うんです。そこでアメリカのそういう不満、不安というものを私なりに整理をして三つにまとめてみたんですけれども、御異論がなければその内容について伺ってまいりたいと思うんです。一つは米側から見て貿易収支赤字が思ったように減らないということ。二つ目は口で言っただけではとても聞いてもらえないのではないかという不満と不安。三つ目は自分たちの悩みを理解してくれないのではないかという不安と不満。整理をしてみますとこの三つじゃないか。御所見はいかがですか。
#194
○国務大臣(園田直君) 第一の大幅黒字が背景になっていることはおっしゃるとおりだと思いますけれども、しかし、これは御承知のとおりに、ごく最近米国は通年の日米の貿易の数字を出したわけでありますが、その数字においては漸次黒字が縮小されていることは、これは政府も民間もだんだん理解してきているところでありますけれども、やはり大幅黒字が一つの原因をなしていることは事実でございます。
 それから後の方は、まあいろいろ感情的な問題もありましょうけれども、やはり今後の折衝の問題であろうと思いますが、そういうことも参考にしながら判断していきたいと存じております。
#195
○栗林卓司君 いま言われたように、貿易収支赤字が米側から見て減ってきたかというと、まあやっぱり一番先に目に入るのが昨年の数字なんですね。これが一昨年が七十三億ドル、昨年が百一億ドル、相当大きな政治的後遺症をこれは残した事例だと思うんですが、おっしゃるとおり、昨今ではこの赤字、日本側から言えば黒字が縮小基調にあることはおっしゃるとおりです。ではアメリカが結構だと言うかというと、一つ私は問題がある気がします。
 そこで経企庁長官に伺いたいんですけれども、ブルメンソールさんが来たときにお会いになったときの印象として、日本が景気引き締めにまた入るんじゃないかということをばかに心配しておったと大臣の談話が出ておりましたが、そういう話が出ましたでしょうか。
#196
○国務大臣(小坂徳三郎君) 私は、ブルメンソール氏にはお目にかからないで、次官の方に会いましたが、やはり同じような意向を聞きました。しかし私は、引き締めあるいは金利の引き上げ等は現時点では考えてないと、その理由は、今年度のわれわれが掲げておる経済運営の目標に対していまそういうことをする時期ではないということと、それからもう一つは、これまでの実績の中で七%がなかなかいかないという事態の説明をし、しかしその原因が、内需は八%程度、その当時でもいく予測が立っておるし、現実にいまもうそこまでいっておるわけでありますが、しかし異常な円高による輸入の増大と輸出の停滞ということでマイナス要因になったと、そういうような事態であるから、基本的に言うならば、内需を拡大するという基本方針のもとで、いまこの時点で金利を上げたりあるいはまた金融の引き締めをすぐやるということは考えてないということを申したわけであります。
#197
○栗林卓司君 アメリカ側の気持ちを想像してみますと、石油危機のときを思い返して、あれが大幅な円安を片方では招きながら片方では、多少の経過はありますけれども日本の集中豪雨の輸出になってきたと、そのときの政府の構えというのは、実は総需要抑制、金融引き締めでありました。今回もまた原油の値段が上がってくる。しかも円安である。当然のこととして、またという、悪夢がもう一度来るのかという心配がこれはあっても無理はない。あっても無理はない気がするんですが、感じとしてどうお考えになりますか。
#198
○国務大臣(小坂徳三郎君) 私は、次官と会ったときにはそういう感じは得ませんでしたけれども、後でお目にかかった方々からはそのような印象を多少受けました。しかし、私はそういう事態はもうわれわれの経済計画そのものにもないんだし、ああした事態が果たして日本に非常にプラスであったかどうか考えてみると、マイナスの後遺症の方が多かったということを考えているし、われわれとして最もいま重視していることは、国内の失業率の問題と経常収支の縮小にあるんだから、そうした目標を達成するということ即内需の振興であるというような考えであるからということを申したわけでありまして、大体において皆さんは私と会った限りにおいては大変理解を示して帰られたと思います。
#199
○栗林卓司君 いずれにしても、ここのところの日本政府の政策というのは、はたの目を気にしながら非常に慎重にしていかなきゃいかぬということだと思うんです。
 そこで、去年の十一月に牛場さんとストラウスが共同声明のいわば中間報告という形で会議を行いました。その議事録要約として発表されたものによると、そこでは日本政府は七%成長を何としてもやりますと、こう書いてあるんですが、あわせて金利も三・五%になりましたということを非常に印象深く付記してあります。いわば金融緩和のこれもまた象徴としてその数字を扱っている。また三・五%というのはECとの共同声明の中にも明記をしてあるということからいうと、実は日銀総裁に伺いたいんですけれども、新聞紙上で聞く限りでは公定歩合の引き上げも考える方向にいくんではないか、西ドイツも一%上げた、こういつたところから何か考えるような雰囲気が新聞紙上では醸成されつつあるわけですけれども、日本と西ドイツでは状況が違うんでありまして、しかも金融緩和のいわばシンボルとして昨年まで説明してきた三・五%、そういう国際的なそれを変えることによる影響も含めてこの公定歩合政策も慎重にしていかなきゃいかぬ、したがって市場にそういううわさが出ているだけにこれは慎重にするということと、きっぱりと考えておりませんということをおっしゃっていただくことの方が日本のためになるんではないかという意味から御質問申し上げます。
#200
○参考人(森永貞一郎君) いままでこの景気刺激の立場もございまして金融緩和の促進、そして途中では金融緩和基調の維持ということでまいったわけでございますが、昨今の景気、物価の動向等から見まして、流動性にやや過剰にわたる部分がございますと認めましたので、この過剰流動性を少し吸い上げる意味での中立的な姿勢、警戒的な中立姿勢ということで金融政策の運営に当たっておるわけでございまして、そのことは四−六月の窓口指導の上にももうすでにあらわれておるわけでございます。
 公定歩合につきましては、当面これを引き上げるということは具体的には何も考えておりません。新聞紙上等に先走った記事もございますが、私どもといたしましては警戒的中立姿勢ということで当面の金融政策の運営に当たっておる次第でございまして、当面公定歩合を引き上げるということは考えておりません。もちろん今後の事態の推移いかんにもよることでございますが、現在のところは考えていないことをはっきりと申し上げたいと存じます。
#201
○栗林卓司君 今後の事態ということに関連して、これは経企庁長官にまずお尋ねします。
 OPECが原油の値上げを発表して、さらに追加分も乗せながらという構えになっておるわけですが、これが日本経済にどういう影響を与えるか、簡単に御説明いただきたいと思います。
#202
○国務大臣(小坂徳三郎君) 大体今度の基本料金の値上げの影響が消費者物価に〇・四、卸売物価に〇・八、その程度の影響と、国際収支には約三十億ドルの支出増加ということになると計算しておるわけです。
 ただ、いまおっしゃいましたサーチャージが幾らかかるかはまだはっきりいたしておりませんし、その契約がどうなるかによってわかりませんが、一ドル上がりますとその影響は消費者物価に〇・二程度、卸売物価に〇・四程度の影響があるであろう、また一ドル上がることによって約十六億ドル支出がふえるというような考えで今後を見ておるわけでありますが、こうした事態を余り先走って取り入れるわけにもいかないし、またこうした先方の要求のサーチャージがどれぐらい実現するか。私先般来申し上げておりますが、日本の石油消費の五%節約というものを全国民的な目標の中で達成する自信とその成果が上がるならば、私はこのサーチャージというものはきわめて軽微になし得るのではないか、同時にまた世界的にこうした五%節約運動の実が実ればこのサーチャージというものもそう言われているような巨額なものにはならないで済むのではないか、そうした意味において国内的と国際的に最も協力をなすべき問題点がここにあるというふうに考えております。
#203
○栗林卓司君 原油値上げを考えるときに当然物価への影響ということがまず頭に浮かぶわけですけれども、その前に購買力の国際移転の問題の方が先にくるんだろうと思います。端的に言うと、その分だけ有効需要が日本のマーケットから消えてデフレ効果が出るということだと思うんです。お話のように先般の値上げですとそれだけで三十億ドル、さらに一ドルぐらいの追加がされたと仮定すると経企庁の試算では十六億ドル、したがって四十六億ドルだけ黙ってこれは日本の市場からなくなる。これに対して実は波及効果というものもあるわけですから、含めて考えると一体どのぐらい有効需要が日本のマーケットから海外流出するか。その点はどうごらんになっていますか。
#204
○国務大臣(小坂徳三郎君) これは全くの試算でございますけれども、〇・一五程度の成長率の低下ということを考えております。
#205
○栗林卓司君 額で。
#206
○国務大臣(小坂徳三郎君) 額はちょっと私いま申し上げかねます。
#207
○栗林卓司君 では、ちょうどたまたま石油危機のときに経企庁が分析をした数字をそのまま使って申し上げたいと思うんですけれども、あのときにOECD平均として波及効果の数字が二一三六八でございました。日本は二・〇六三です。四十六億ドルということは二百十円で計算しますと九千六百六十億円、二・〇六三を掛けますと一兆九千九百二十九億円、簡単に言って二兆円需要が減るだろうと推定しても間違いないんではないか。この二兆円というのは決して小さな数字ではない。といってびっくりする数字じゃないですよ。ただし無視し得る数字ではなくて、相当のデフレ効果が出るであろうということを警戒的に見る数字である。その点いかがですか。
#208
○国務大臣(小坂徳三郎君) もちろんいまのような二兆円であろうが何であろうが、これはわれわれとしましてはマイナスでございますから警戒すべきものだと思うのでございます。しかし一方、消費節約、省エネルギーというものが達成されますればこれらのものはいわゆるプラスマイナスもちろんなるし、むしろプラスが残るのではないかというふうにも思うわけでして、私は現時点でサーチャージが今後一ドル程度であるならば、これは先ほどから申し上げているいろんな前提がございますけれども、その前提が達成されるとした場合に、それは本当に日本がひっくり返るようなものにはならないというふうに考えておりますし、同時に先ほどもちょっと物価のところで申し上げましたが、やはり日本の産業界、経済界がより効率的、能率的な運営をやっていろいろな上昇要因を吸収していくということが一つの大きな私は勝負手になるというふうに思っております。
#209
○栗林卓司君 石油危機のときと比べてあんなびっくりしたかっこうになるなどと申し上げているんではないんでありまして、ただ無視していい数字ではない、常に頭に置いておかなければいけない一つの要因だということを申し上げているんです。
 そこで、実はいままでお伺いしてきたのは日銀総裁にお尋ねをしたくて伺ってきたんですけれども、それで二兆円かどうかは別にして、有効需要がある程度減るであろうということは当然想像されます。それを頭に置いた今後の金融政策ということをひとつしていくべきではないか。なぜこう申し上げるかといいますと、石油ショックのときにはいま申し上げた二兆円というのは八兆から九兆でございました。その結果どうなったかというと、四十八年の暮れに石油ショックが起こったのですけれども、翌四十九年の四−六月で法人部門の通貨需給バランスは逆転をしているんです。さしもの過剰流動性を吹っ飛ばすだけのすさまじい力をあの石油ショックというのは持っていたということだと思うんです。今回は、地震としては中規模でありますけれども、やっぱり兆のけたで起こってくる。現在はまだこれからでありますから、御心配になる、何となく熱くなってきたなという感じはあるかもしれない。それもこれも含めて、私は慎重にぜひ対処をしていただきたい。なぜ申し上げるかといいますと、私の個人的な感じですが、石油ショックのときは、四十九年の四−六では法人需給バランスは逆転しているんですが、その後ずうっと引き締めが続いた。あれは果たしてよかったのだろうか悪かったのだろうか、物価だけ過度に安定したんではないかとかねて思うものですから、そういうバランスの中で、先ほど警戒中立とおっしゃいましたけれども、その警戒の方は極力薄めながら、本当に中立に、しかも適時適応の金融政策をお願いしたいと思ってお尋ねします。
#210
○参考人(森永貞一郎君) 私ども、前回の石油ショックの経験から教えられましたことは、これは日本だけの例じゃございません、世界的にも共通の教訓だと思いますが、まずインフレ的な影響が出ましたり先行いたしまして、その後にデフレ的影響が出てくると、そういうことであったと思うわけでございます。そして各国のこの問題に対する処理の仕方を見ますと、初めにインフレ対策の面で思い切った対策を講じたところはデフレ的な影響も比較的軽易で済んだ、そういう教訓を得ておるわけでございます。今度の場合は、前回のように何倍にもなるというようなことではなくて、じわじわと影響が出てくるわけでございますので、インフレ的な意味での対策も十分講じるゆとりもあると思いますし、また、その結果としてデフレ的な影響も十分吸収し得る余地があるのではないかと思っております。もちろん、先般の九%のほかに各国の上積みが一体どうなるのか、あるいは追加的値上げがあるのかどうか、それを国内が受けとめるかどうか、まあいろんな問題がございまして、今後の影響は慎重に私ども見守ってまいりたいと思いますが、いずれにいたしましても、日本経済の息の長い成長を維持すると、そのためにはやはりインフレを避けなくちゃならぬということでございますので、お説の点は私どもは十分理解いたしておるつもりでございます。
#211
○栗林卓司君 日銀総裁は結構です。
#212
○委員長(町村金五君) 森永参考人には御繁忙中のところ御出席いただき、ありがとうございました。御退席いただいて結構でございます。
#213
○栗林卓司君 では、また日米通商問題に戻りまして、私が勝手に挙げた二番目の理由、口で言っただけでは聞いてもらえないんじゃないかという不満。これは確かにわかる気がしますのは、ロンドン・サミットでは、経常収支赤字の七億ドル、結果は逆転大幅黒字。ボン・サミットはどうかというと、貿易収支黒字百億ドルを六十億ドルに下げるということをおおむねにおわせながら、年末実績は二百億ドル、基礎収支は年末までに赤字だと言いながら百三十億ドルの黒字、経済成長率は七%と言いながら五%台。確かにいら立ちが私は高まると思うんです。
 そこで、電電公社の問題に私は移しまして、郵政大臣にお尋ねをしますが、ことしに入ってからにわかにこの問題が起こってきたかのような印象が強いわけですけれども、実は政府調達物資の開放化問題というのはいつから提起をされた問題なんでしょうか。
#214
○国務大臣(白浜仁吉君) 私の方ではいつからという明言をする立場にないのでございますので、ひとつ外務大臣からでもお答えいただければありがたいと思います。
#215
○栗林卓司君 郵政大臣にお尋ねをしますけれども、去年の一月に結ばれました牛場・ストラウスの日米共同声明はお読みになっておりますか。
#216
○国務大臣(園田直君) 御承知のごとく、牛場・ストラウスの共同声明は、日米が世界経済にどのように貢献するかという前提のもとに日米経済関係を強化しようということで、大幅黒字の問題その他の問題等を含めて公表されたものでございます。そして、その後紆余曲折はありますけれども、日本側の努力というものは逐次理解されてきておると私は判断をしております。
#217
○栗林卓司君 私がお尋ねをしたのは、日米共同声明の中に政府調達物資の開放化問題が重要な日本政府の施策として特記されておりますねということを伺ったんです。
#218
○国務大臣(園田直君) そのとおりでございます。
#219
○栗林卓司君 それを郵政大臣が一々外務大臣に聞かなきゃ答えられないということに私は問題を感ずるんです。
 で、その中間報告として、十一月の二日でありますけれども、ストラウスと牛場さんとの間で交わされました討議のサマリー、これはごらんになっていますか。
#220
○国務大臣(白浜仁吉君) 残念ながら不勉強で読んでおりません。
#221
○栗林卓司君 これを見ますと、またそこで改めて日本政府として強調をし、追加をして、国鉄も買います、労働省も買いますと、こう書いてあるんです。これをあなたは読まないで電電の開放問題を云々する資格がないじゃないですか。なぜ読まなかったんですか。それはあなたの就任前かもしれませんよ。国務大臣もしくは国会議員としては当然そのぐらいのことは知るべきでしょう。いかがお考えですか。
#222
○国務大臣(白浜仁吉君) 外交交渉の過程で、私どもの方には、事務当局同士のお話があったかもしれませんけれども、就任が私は十二月の七日でございますので、詳しい経緯については承っておりません。
#223
○栗林卓司君 就任したら聞けばいいじゃないですか、その件はどうなっているかと。
 私、ここに雑誌を持っているんですけれども、とりたてて集めたわけじゃないんです。ここには去年の日米財界人会議のクライン報告、クラインというのはカーターの経済顧問です。今度は外交問題協議会のレポート、さらにはソロモン財務次官の報告、この一連のレポートというのは回を軍ねるたびに焦点を電電に向けているんです。それでまずいというのならなぜ去年言わないんですか。あなたはこういうのを読んだことがあるんですか。
#224
○国務大臣(白浜仁吉君) 読んだことはありません。
#225
○栗林卓司君 これは総理にお尋ねしますけれども、だから幾ら口で言ったってだめだって言われちゃうんですよ。かのジョーンズ報告ですけれども、中に何と書いてあるか一部読みます。「日本の政府や産業界は、こうした厳しい措置を進んでとろうとはしないから、われわれはもっと受け入れがたい代案を提示することによって、こうした強硬措置のほうがまだましだという気持にさせねばならない。」――失礼な文章だと思うけれども、ここまで相手を追い込んだ責任は一体どっちですか。去年の日米共同声明に書いてあるんですよ、十一月にはちゃんとやるというんです。担当大臣は読んだことがない、雑誌を見たことがない。しかも、いま電電問題というのはまさに時の、日本がどういう開放経済体制をとるかという象徴の問題になっているわけです。こういう政府の態度をどうごらんになりますか。
#226
○国務大臣(大平正芳君) 日米間は、栗林さんも御承知のように、往復四百億ドルもの貿易をやっておる間柄でございまして、電電の問題ばかりでなく、日米間にはしょっちゅう問題があるわけでございまして、それをそのときどき冷静に解決しながら今日までつないできたわけでございます。しかし、その道程におきまして、いまあなたが御指摘のように、ここ二、三年大変な日本の経常収支の黒字が記録され、その約六割は対米黒字であるということでございまして、たびたびの日本政府の予測にもかかわらず、減らないばかりか黒字幅が拡大するという記録になってまいりまして、アメリカが大変ないら立ちを覚えるに至りましたことは、私といたしましてもよく理解できるわけでございます。
 そこで、日本政府は特別に政府代表をお願いいたしまして、この間の緊密な連絡、接触、交渉に当たっていただいておりまして、前内閣以来牛場君がこれに当たっていただいたわけでございますが、私の内閣になりまして以来もそのままお続けいただきまして、そのめんどうな交渉の担当をお願いいたしておるわけでございます。したがって、日本政府といたしまして、特にこれを怠けたということではございません。それだけの努力は重ねてきたわけでございますけれども、なお、彼我の間に見解の見地に相違がございます。いまそれをどう埋めるかということに努力いたしておりまするけれども、この電電問題に関しましては、これは決裂に至っているわけではないのでありまして、ひとつの交渉の中断になっておりまするけれども、一方、進行中のMTNの終結は日米両国とも協力して急いでおりまするし、この問題につきましては引き続き交渉しようじゃないかと、いまこれを仕上げるということにはまだ熟しないということで中断をいたしておるところでございまして、これを私は最悪の事態にあるとは考えていないわけでございまして、冷静に建設的にできるだけ早く対処しなければならないし、また、それはできないはずはないと考えています。
#227
○栗林卓司君 わりあい国際交渉の場合ですと、こうやってお互いに書いたものあるいは言ったこと、それは非常に重要に扱うのが慣例だそうでありまして、それはいまたまたま郵政大臣を挙げて失礼でしたけれども、各大臣とも十二分に御注意をいただきたいところだと思います。
 彼らはやぶから棒に出てこないんですよ、必ず前に言うんです。だから、だめだったらそのときに言えばいいんであって、ずっと延ばしてきていよいよになってとてもできないなんてやるもんだからどうにもならない感情問題が出てきてしまう、私はこうだと思います。
 時間がありませんから、最後の自分たちの悩みを理解してくれないという不安の問題について外務大臣に伺いますけれども、輸入課徴金をつけるかもしれないという報道が流れておりますけれども、カーター大統領は輸入課徴金をつけたいと思っているのでしょうか。
#228
○国務大臣(園田直君) 輸入課徴金の法案が米国議会に出されることは必至であるという情報さえ流れているような状態でございます。大統領初め米国政府はこの課徴金の法案を通過させないためにいろいろ努力をしておる。その努力が成功する一環としても、日本がこういう政府調達問題その他をなるべく早く解決してくれと、こういうのが大体米国の趣旨でございます。
#229
○栗林卓司君 いまアメリカの悩みは二けたインフレでありまして、それに輸入課徴金をつけたらもっとインフレをあおることになる。カーターとしては何とかそれを避けたい、頭にあるのは来年の大統領選挙であります。大統領選挙を考えながら、日米関係が際立って悪くなることをカーターは望んでいるのでしょうか。
#230
○国務大臣(園田直君) ただいまの御発言の問題がこの政府調達問題の解決の背景にも大きく響いておると考えております。
#231
○栗林卓司君 同時に、保護貿易、自由貿易と比べた場合に、どちらをカーターはとりたいと思っているでしょうか。
#232
○国務大臣(園田直君) カーター大統領のみならずすべての指導者、日本の大平総理も貿易障害というのはなるべくお互いに取り除いて自由化の方へ前進したいということは、これは基本線として考えておるところであると存じます。
#233
○委員長(町村金五君) 栗林君、時間が参りました。
#234
○栗林卓司君 時間がありませんので、最後に一言だけ総理の御所見を承って終わりたいと思うんですけれども、例のジョーンズ報告というのは米国下院歳入委員会日米経済関係のタスクフォースの報告書でありまして、これは牛場・ストラウスの共同声明の進行状況を監視するためにつくられたタスクフォースであります。このメンバーが、去年の暮れ行われました日米議員シンポジウムに参加をしておりまして、私も日本側として参加をした一人なんです。その経験をお話し申し上げたいと思うんですけれども、当然貿易黒字の問題が話題になる。したがって日本側とすると、おまえの方ももっと努力をしろと、安くていいものをつくれなどということを長々と実は主張したんです。そうしたら向こうが何と言ったかというと、われわれはそんな長い議論をしようと思って今回日本に来たのではないんです、皆さんにシンプルメッセージ、簡単な言葉を伝えようと思って来たんです。その簡単な言葉、シンプルメッセージというのはヘルプ・アス、助けてくれ、それだけなんだ。なかなかほかの国の議会に来て、その議員に向かって助けてくれというのはよう言えないせりふでありまして、補足しますと、何とか自由貿易は守りたい、守りたいけれども、おれたちの手にはもう余っちまった。何か日本がしかるべき犠牲を払ってくれないか。助けてくれ。
 いよいよ東京サミットを控え、五月にUNCTADの五回総会を控えながら、これからむずかしい国際関係に向かって大平内閣が船出をしていくのでありますけれども、これからは官僚の作文で切り抜けられる時代では絶対ない。しかもアメリカの上院の約半分が任期一期であります。下院の半分が任期四年以下です。二期やっていない。頭にあるのは選挙区のことばかり。日本も同じであります。そこの中で政治家同士がどう苦労をするのか。それを官僚任せの作文でやっている。本当はそんな問題にしなくてもよかったかもしれない電電問題が、いまや日米の厳しい対立を象徴する問題にまで浮かび上がってしまう、こういうことはこれからはぜひ避けていただきたい。御所見を求めて終わります。
#235
○国務大臣(大平正芳君) 大変建設的な御批判と激励をいただきましたことは感謝いたします。いま御指摘のジョーンズ報告でございますが、厳しい中に正鵠な判断が込められておりまするし、日米両国の利益はもとよりでございますけれども、何とかして自由貿易体制を守りたいという願望が込められておる公正な御意見であると私どもも評価いたしておるわけでございまして、私どもといたしましてもそういうラインに沿いまして、日米両国の問題はもとよりでございますけれども、世界経済に対する両国の責任を果たすということのために努力を重ねてまいりたいと思います。
#236
○委員長(町村金五君) 以上で栗林君の締めくくり総括質疑は終了いたしました。(拍手)
    ―――――――――――――
#237
○委員長(町村金五君) 次に、下村泰君の締めくくり総括質疑を行います。下村君。
#238
○下村泰君 実子特例法と言われております特別養子制度についてまずお伺いいたしますが、四十八年四月、産まれたばかりの男の赤ちゃんをわが子のように育ててくださる方はいませんかという新聞広告に端を発しまして、大変社会的に問題を起こしたわけでありますが、宮城県石巻市の菊田昇医師が提唱しております実子特例法、特別養子制度と申しますか、これに賛同する各地の地方自治体で推進する意見書の採択されたのがどのくらいありますか。厚生省ですか、法務省でしょうか、これはどのくらい数があるかおわかりですか。
#239
○政府委員(香川保一君) 法務省に参っておりますのは八件ばかりあろうかと思います。
#240
○下村泰君 それは大体内訳わかりますか。
#241
○政府委員(香川保一君) 千葉市議会、それから宮城県の河北町議会、それから矢本町議会、それから宮城県の桃生町議会、それから札幌市議会、それから宮城県の町村であと二つございます。
#242
○下村泰君 まだ法務省の方には大分届けられてないように、いまのところお聞きいたしました。県議会では長野県議会と秋田県議会、それから市議会では千葉市議会、札幌市議会、気仙沼市議会、飯田市議会を初めとして七つの市議会、それから町議会では、いま香川民事局長のおっしゃられたようにいろいろございますが、八つ、締めて十七県市町村議会で推進するようにという意見書の採択をされております。
 菊田医師はこの事件以来いろいろの罰を受けまして、この事件は菊田医師個人のことはおくといたしまして、法務省並びに厚生省当局は、望まれないで産まれてくる赤ちゃんの子捨て、子殺しというのがいまだに後を絶ちませんが、それに対する方策といいますか、お考えはありましょうか。
#243
○政府委員(香川保一君) 御提案の実子特例法と言われておるものにつきましては、法務省の法制審議会で過去に三年ばかり審議されたことがございますが、何分にも問題が親族法、相続法あるいは戸籍制度等の根幹に触れる問題でございますので、結論を得ないまま留保ということで今日に至っておるわけでございます。
 私どもといたしまして、外国の法制等も検討してまいりましたが、基本的には、言葉は悪うございますけれども、いろいろのメリットが一方にあるとしても、うそで固める面があるわけでございまして、そういったことの是非、これは根本的な問題でございますので、それも含めまして検討してまいっているわけでございますけれども、ただいま法制審議会におきましては、御承知のとおり、世論的にも非常に急がれております相続法の改正にずっと取り組んでまいっておりまして、いましばらくいたしますれば結論がまとまろうかと思いますので、その次には親族法、養子制度を含めまして御論議いただく予定になっておりますので、国会でもたびたび議論のある問題でございますので、再度、法制審議会において審議していただこうというふうに考えておるわけでございます。
#244
○下村泰君 子捨て、子殺しに対してどういう処置を考えているかというふうに私お尋ねしたんですけれども、いまのお話はこれから後に伺おうとすることのお答えになっちまったんですけれども、厚生省はどういうふうに考えていらっしゃいましょうか。
#245
○国務大臣(橋本龍太郎君) 私どもとしては、法制的にはこれは法務省の御所管でありますが、産んだ子供を殺すということ自体あってはならないことだと考えております。むしろ母子福祉全体の体系の中で、どうやったらその産まれた子供さんのより健康な、心も体も健康な発育を促していくかということを考えるのがわれわれの役目でありまして、そういう、むしろ産まれた子供さんを殺すということ自体を私どもとしては考えたくありません。
#246
○下村泰君 法務大臣に伺いますが、明治学院大学の中川高男教授が特別養子制度の私案というのを作成されておりますが、ごらんになったことございますか。
#247
○国務大臣(古井喜實君) 詳しくは知りませんけれども、一べつは、ざっとは目を通しまして、この問題は実にむずかしい問題だという実は感想を持っております。お尋ねでないから私の意見は先にしたいと思いますけれども、それなりに私も考えてみておることもあるんであります。
#248
○下村泰君 先ほども香川民事局長がお答えくださいましたけれども、私もたびたびこの法案につきまして法務委員会でもお願いしてきたんですが、完全養子を認めている国はアメリカ、ソビエトを初めとして十六カ国、断絶養子を認めている国が中国を含めて六カ国ございます。こういった先進諸国がこういった制度をとっているのに依然としてわが国がおくれておるわけです。改めてお尋ねしますが、法務大臣としては、この件に関しましてどういうお考えを持っていらっしゃいましょうか。
#249
○国務大臣(古井喜實君) 子供の要らない、欲しくない親、また一方では、欲しいけれども子供のない親、それをお医者さんが結びつける、善意で結びつける、実子として戸籍に入れてしまいたい、実子同然にしたい、こういう問題は、さっき民事局長も申しましたが、そういうアイデアは一つのメリットもあるんですね。子供の幸せ、それから親の希望を満たすというような一方においてメリットもあるんですけれども、また他方、いままでの日本の親族、相続制度あるいは戸籍制度の根幹は実子主義であり血統主義なんですね。こういういままでのこの原則というものとの関係も起こってくるわけでありますね。そこで、この問題をどう考えるか、一方にはいいところもある、だけどそういう点もある。考えにくい点があるんであります。
 そこで、私は、いまおまえに任せると言われても、どっちに決めるか、これをやるかやらぬか、非常にこれは決断に苦しむ問題であろうとひそかに思うんであります。こういうことは法制審議会でさっき申しましたように一遍審議したこともあるんですけれども、結論を得ないで検討事項ということになって残っている。またかけてみるのも一つだと思うんですが、かけてもなかなかこれは結論が出ないんじゃないかとまた思うんですね。こういうことは、あるいは住民投票というか国民投票というか、そういうもので勝負をつけてしまう、決めてしまうという方がいいのかもしらぬような気さえするんです。全国的にできなけりゃ、地域的に住民投票で、何も日本がいっときにやらないでもいいですから、やってみてということも一つかとさえ私は実は思うんです。それほどこれは決断のむずかしい問題だと思うんです。メリットはあるけれども、余りに機械的合理的過ぎまして、国民感情から言ってもそう簡単に割り切りにくい、こういうことでありますので、これをどう処理したらいいか。また、きょう国民投票しても、十年後の国民投票はまた違った結果が出るかもしらぬ、また二十年後になると違った結果が出るかもしらぬ、実にむずかしい考えにくい問題だと思いますので、私自身もどうしたらいいかわからぬでいまおるという正直なところ難問でございますので、その処理の仕方についてももう少し考えて、これしかないという行き方で処理をするということに一致するほかはなかろうかと、きょうの段階では思っております。
#250
○下村泰君 大変事細かに、しかもアイデアまで出してくれてありがとうございました。
 これは総理大臣にお伺いしようと思ったんですが、政府側の方から、大臣に説明してないからやめてくれと言うんでやめます。ただいまの問題ですけれども、一晩じゅうかかりそうなんです、大臣に御説明するのが。やめてくれと言われましたから、やめます。
 文部省に伺いますが、社会福祉の部科を設置した大学、短大、その他各種学校というのは何校ぐらいありますか。
#251
○政府委員(佐野文一郎君) 国立の大学には社会福祉関係の独立の学部学科はございません。公私立の大学で二十二の大学に五つの学部と二十五の学科、二つの専攻が設けられております。
#252
○下村泰君 私の調べたところでは、県立の学校が三校、府立が三校、市立が一校、あとは全部私立です。国立が一校もないんですね。
 そこで、ちょっと厚生大臣に伺いますが、社会事業大学というのがございますが、これはどういう性質のものでしょう。
#253
○国務大臣(橋本龍太郎君) 日本社会事業大学は、学校法人日本社会事業大学が設置、経営をいたしておりまして、厚生省が社会福祉専門職員の養成訓練を委託いたしております。
#254
○下村泰君 それはそうなんですが、大体、厚生省としてはその社会事業大学に満足のいくくらいの予算がありますか。
#255
○国務大臣(橋本龍太郎君) 満足がいくと言われますと、大変お答えがしにくいんでありますが、たとえば五十四年度の場合を申しますと、一億七千五十五万三千円を計上いたしておりまして、その中身は人件費、管理費等学校経営に必要なものでございます。ただし、こういうものは幾ら予算がありましても、それで結構という性格のものではございません。
#256
○下村泰君 厚生省の方で、それでは大臣に伺いますが、その学校の中身の御報告を受けたことございましょうか。
#257
○国務大臣(橋本龍太郎君) 学校の中身の報告は受けております、というよりもいろいろな形でいま御相談をいたしておるさなかでございます。と申しますのは、下村さんよく御承知のように、相当建物が実はおんぼろでありまして、また、たとえば車いすをお使いの方等、障害者の方々が利用をされる場合の設備、構造の上で非常に不備な点が多いというようなことから、これを何とか移転改築したいということでしばらく前から御相談を受け、目下も御相談を受けております。
#258
○下村泰君 大分おわかりのようでございますので、これは改めて社労委員会の方でひとつ伺いたいと思いますが、こういったことで、大臣に伺いますが、先進国だ先進国だ言われながら、こういう社会福祉がますますむずかしくなってくる世の中に、国立の社会福祉に対する事業をしようとするようなことを勉強する大学があってもいいんじゃないかと思うんですが、いかがですか、国立の。
#259
○国務大臣(大平正芳君) 望ましいことだと思います。
#260
○下村泰君 そうしますと、予算をとって、そういったたとえばいま申し上げた社会事業大学のようなものを国立に昇格させるとか、そういうようなお考えはございましょうか。
#261
○国務大臣(大平正芳君) 官公私立、国立であろうと公立であろうと私立であろうと方法はいずれにいたしましても、社会福祉関係の要員の育成ということに役立つことでございますならば、政府としても配慮しなければならぬと思います。
#262
○下村泰君 ありがとうございました。
 それでは、今度は遺骨収集の問題について伺いますが、第二次大戦による戦没者の遺骨収集、これは大変な事業だと思います。海外戦没者二百四十万、遺骨送還収集が百二十万と承っておりますが、せんだって厚生省が二月末から三月にかけてサイパン島に出かけられたそうですが、そのときの模様を説明してください。
#263
○政府委員(河野義男君) 先般、サイパン島に遺骨収集団を派遣したわけでございますが、遺骨収集団は、政府の責任で政府が団長となりまして、民間の日本遺族会、学生遺骨収集団、あるいは非常な洞窟等危険な個所もございますので、長野県の山岳会の会員の方々、そういった方の協力を得まして遺骨収集を実施したわけでございます。その際、遺骨収集に常駐しておるわけではございませんので、現地の方で収集された遺骨とか、あるいは民間で収集された遺骨、仮納骨堂がございますが、そういった遺骨も、遺骨収集に行った際に焼骨して故国に奉還する、こういうようなことをやってまいったわけでございます。
#264
○下村泰君 その厚生省が今回やられたことは、昭和五十二年二月にこういった書類が出ておりますけれども、こういうものに基づいておやりになったんですか、収集する場所も。
#265
○政府委員(河野義男君) 遺骨収集につきましては、講和条約が発効しまして昭和二十七年から遺骨収集を実施しておるわけでございまして、大変苦労の多い、また危険の伴う作業でもございますので、遺骨収集につきましては、収集の仕方、その他要領を策定しまして、関係者に十分周知徹底しまして遺骨収集を実施しておるわけでございます。
#266
○下村泰君 ところがね、ずいぶんあなたはあちらこちらきれいにやったようなお話ですが、実は、私も本年の一月の十九、二十日、二十一日にサイパンへ行ったんです。そうして到着日の半日、そして明くる日一日をかけまして、頭蓋骨を一、大腿骨を二本、これを一体とします。腰骨一でこれを一体とします。そうしますと三百体近く私だけで収容してきたんです。そのぐらいの数やってきましたか。
#267
○政府委員(河野義男君) 先般、サイパンに遺骨収集に参りまして収骨した遺骨の数は千四百四十体でございます。それから、この数え方は、いま先生からお話がございましたように、大腿骨二本を一柱というふうに計算するように従来からいたしております。
#268
○下村泰君 その節、マニアナスホテルの社長で松岡福利さんという方がおっしゃるんですが、この方から、私のところの所有地の中に遺骨が大変多い、開発をしようと思ったが、たまたま遺骨が出てきたので、ぜひ厚生省に収集に来てほしいとお頼みになったそうですが、厚生省がお断りになったと、その理由は何ですか。
#269
○国務大臣(橋本龍太郎君) 下村さんも遺骨収集においでをいただいたということであれば、現地の実情はよく御承知だと思いますが、実は、昭和四十六年七月二十二日付、外務省のアメリカ局長から厚生省の援護局長に対しまして「ミクロネシアにおける遺骨収集の問題点について」という文書が参りました。これは「今般在京米国大使館より、太平洋諸島信託統治地域高等弁務官府から同大使館へ連絡越したミクロネシア地域における遺骨収集の問題点をメモにとりまとめの上、当省へ提示越しましたので、同メモ写一部別添送付します。」ということでありまして、そういうふうなだいま御指摘のようなケースに対して、勝手に国があるいは民間の遺骨収集団が動くことに対して、現地の高等弁務官府としては正式に日本政府に抗議を申し込んできたことがございます。私どもとしては、その中には実は幾つかの問題点がありまして、確かに高等弁務官府として黙視できないということで日本政府に抗議をされた部分もあろうかと存じまして、自来、先ほど局長からお答えを申し上げましたような形で遺骨収集作業を執行いたしております。
 なお、実はミクロネシアばかりではございませんで、最近になりまして幾つかの地域から同じような抗議を日本は受けておりまして、国がきちんとルールを立てた遺骨収集団を派遣するようにという手厳しい御注意を受けておることも申し添えます。
#270
○下村泰君 それは個人でいろいろ行かれる方もいらっしゃいましょうし、ルールをあるいは知らずして犯した方もいらっしゃいましょう。しかし、その遺骨を収集したいという気持ちに何ら私は変わるところはないと思います。
 総理、ここに私写真を撮ってまいりました。これを見てください。これは鉄かぶとなんです、この鉄かぶとの下にちゃんと頭蓋骨が入っておるんです。これは歯が全部そろっているんです、というのは二十代ですね、本当に若い人たちです。これはもう私は思わず泣けてしようがなかった。いまこの閣僚の中には経験がおありでございましょう。よく見ておいてください。外務大臣なんかもおわかりだと思うんです。次がこれ地下たびです。地下たびに小指がついているんです。こういう遺骨がまだあるんです、サイパンには。これが掘り出された頭蓋骨です。そしてこういうふうに積み上げて荼毘をするわけです。よろしゅうございますか。そして私どもはこうして泣きの涙で荼毘をしてきました。このときに骨が泣くんです、この瞬間に笛のような音を出すんです。理屈はわかってますよ、こういう目鼻の穴の中に空気が吹き込む、そのときに音が発生するんです。しかし、それが単なるいわゆる科学的現象ではとらえられない、何か人の霊が、魂が訴えておるような音に聞こえるんです。
 先般、総理大臣も初めて厚生省の七階にある霊安室へお出かけになって、クリスチャンとして敬虔なお祈りをささげてこられたそうですが、まだまだたくさんの遺骨があります。霊は恐らくわが国に帰りたいと願っているでしょう。こういうことがあるんですが、これからこういう問題についてどういうふうに対処なさいますか、お聞かせください。
#271
○国務大臣(大平正芳君) 御指摘いただきました問題は、戦後政治の原点にある厳しい厳粛な問題でございます。私どもといたしましては亡くなられた方々の心を心として戦後経営に当たらなければなりませんが、同時に、亡くなられた方々の冥福のためになすべきことは全力を挙げてやらなければならぬと考えております。
#272
○下村泰君 一言だけ言わせてください。
 こういう方々の遺骨がわが国に帰ってこなければ、本当の平和はまだないと私は心得ております。どうぞ閣僚の皆様方もこういうことに対して御援助くださることをお願いします。厚生大臣よろしく。
#273
○国務大臣(橋本龍太郎君) このごろ次第に世間の関心が薄れてまいっております遺骨収集作業について激励をいただきましたことを心からお礼を申し上げます。私自身も何カ所か参っておりますし、これから先も厚生省の職員は一生懸命努力をしてまいります。
#274
○下村泰君 ありがとうございました。(拍手)
#275
○委員長(町村金五君) 以上で下村君の締めくくり総括質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
#276
○委員長(町村金五君) 次に、柿沢弘治君の締めくくり総括質疑を行います。柿沢君。
#277
○柿沢弘治君 本予算委員会の総括締めくくりの最後になりましたので、これからの財政運営について基本的なお話を少しお伺いをいたしたいと思います。
 財政の赤字の是正、財政再建が現在のわが国にとって大きな課題であることは与野党を問わず全員の認めるところだと思います。しかし、その再建の方途についてはそれぞれ考え方の違いがあろうかと思います。まず、わが国の財政は小さい、だから高福祉高負担の路線に基づいて規模を大きくするべきだという考え方が安易に議論をされておりますが、その点については、私ども、もう一度見直してみる必要があるんじゃないだろうかというふうに考えております。
 ここに数字が少しございますが、大蔵省が衆議院の予算委員会に提出された資料と財政統計で試算をしまして、国防費を除いた国の予算の規模というものをGNPと比較をしてみますと、予想されるように必ずしも日本は小さな政府ではない、国防費を除いて考えますと、世界各国の中でほどほどのところまで規模がいっているんじゃないだろうかということが数字上認められるわけです。七八年の日本の一般会計で国防費を除いてGNPと比較をしますと一五・四%、同じ七八年の特別会計を含めた純計で言いますと二八・九%、これも大蔵省の数字で試算したわけですけれども、アメリカの七八年の総合予算の一七・八%と比較すれば一般会計・特別会計純計では日本の方が大きい。イギリスの総合国庫資金予算で比較をいたしますと、これが二七・六%、日本の一般会計・特別会計純計とほぼ同じ程度の規模でございます。西ドイツの連邦予算で見ますと、これは一一・七%ということですから、かなり小さいんですけれども、これは西ドイツが連邦であるということを考えて、地方政府といいますか州政府の部分も加えて修正をいたしますと、これもなかなかむずかしいんですけれども、三二%ぐらいになる。日本はそれに比べて地方も入れますと五七%ぐらいになるということで、決して小さいという数字は出てこない。そういう意味では、西ドイツはですから非常に小さい予算としか言えない。フランスも国防費を除いて考えますと、七七年の総予算純計で一五・八%。日本の財政規模が小さいというのは、一つは大きな理由はやはり防衛費の小ささというものに大きく依存しているというふうに考えるわけですけれども、その点について大蔵大臣どうお考えでしょうか。
#278
○政府委員(長岡實君) お答え申し上げます。
 柿沢委員も御指摘になりましたけれども、財政規模の比較は、その国の何と申しますか、連邦制であるか、あるいはそうでないかといったような相違によっても違ってまいりますし、それからまた予算の制度そのものが各国によって非常に異なっております。私ども何とか的確な財政の規模の比較をしてみたいと考えておりますけれども、現在までのところでは、一番われわれとして間違っていないだろうと思われる国際的な比較は、国民経済に占める財政の大きさを考えます場合に、国、地方、それから政府関係機関、ただし政府企業を除きましたものを総計いたしまして、いわゆる国民経済計算ベースによる財政の大きさを比較いたしております。
 それによりますと、一九七六年で申しまして、防衛費を除きますと、日本が二六・六、アメリカが二九・一、イギリスが四〇・六、西ドイツが四一・五、フランスが四〇・〇。アメリカと日本が二、三%の差でございます。これはいま一九七六年の数字で申し上げましたが、一九七五年で申しますと、日本が七六年から景気対策のために財政規模を非常に大きくした年でございますけれども、一年前で申しますと、国防費を除きました比率は日本とアメリカでは五%ぐらい違っておる。五%なり二、三%なりの差がそれほど大きなものではないかもしれませんけれども、また、私ども決して日本の財政規模は非常に小さいということを申し上げているつもりはございませんけれども、相対的に見ますと欧米主要国の中では小さい方であるということは言えると思います。
#279
○柿沢弘治君 なかなかむずかしいというお話がございました。
 いま主計局長の方から別の数字が出されましたけれども、この国民経済計算ベースで比較をいたしますと、日本が小さく出ている一番大きな理由は、振替支出がほかの国に比べて小さいわけですね。七五年ですと振替支出の割合が七・二%、それから七八年でも九・一%で、ほかの国々が一九%台、一八%台、一六%台に比べて小さい。この辺は日本の社会保障体系、年金体系が成熟化をしてきますと、そのままでも大きくなっていくという点がございますので、その点から見ても決して日本の財政規模は言われるほどに小さなものではないというふうに思うわけですけれども、その点についてもう一度しっかりと見直して、これからの財政再建の方途を探っていくという必要があろうかと思いますけれども、その点について、大蔵大臣、いかがでございましょう。
#280
○国務大臣(金子一平君) いまの財政規模の国際比較、これはいろんな見方がありますから一概に言えないと思うんですけれども、言えることは、私は、石油ショック以後の日本の経済を支えるために財政規模をずっと伸ばしてきておる。ヨーロッパ各国はあの石油ショックの後、企業と家計を突っ放しました。国の負担をしないで、それはひとつ自前でやってくださいよといって突っぱねたのが各国の財政赤字が少なくなった原因でございます。それを日本は極力国で引き受けて、企業と家計の負担を極力軽くしようとした、それが相当大きく今日の日本の財政に響いてきておると思うんです。
 それからもう一つは、大事なことは、高度成長時代の惰性で予算編成その他をやってきておる、それはもうそろそろこういった時代に入ったんですから、私はしっかり見直さなきゃいかぬ。特にやっといまことしの初めから民間の景気が回復し出して、どうやら一人前に歩けるようになりつつあるわけでございますから、うんとこれを伸ばして極力財政を身軽にすることが今後の日本の経済を大きく伸ばすゆえんではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
#281
○柿沢弘治君 五十四年度予算についても、骨まで切ったというふうに言われております。確かに伸び率が一二・六%と、過去に比べてかなり低い数字になっている点はそうした努力が実ったことと思いますけれども、しさいに検討してみますと、賃金と物価の安定で予算の伸びが低まった。たとえば義務教育費の伸びが四・七におさまったとか、社会保障費の中の物価スライド分が非常に低かったとか、地方財政関係費の伸びが二・五%とかなり低い数字であったということが貢献をしているのではないかと思うわけです。
 それの一つの証拠として、国民経済計算ベースでの、経済見通しの中での政府の財貨サービス購入、特に財政消費、政府消費支出の伸びを実質で見てみますと、五十三年度も六%程度、五十四年度も六%程度ということで、政府消費支出の実質の伸びは去年とほとんど同じという数字になっているわけですけれども、それが一つの証拠ではないだろうかと思いますが、経済企画庁長官どうでしょうか。
#282
○政府委員(宮崎勇君) 若干数字の点にわたりますので私からお答えいたします。
 GNPベースで政府のサービスを秤量するということは大変むずかしいことでございますが、五十四年度の見通しについて申しますと、名目で見ましても実質で見ましても、その伸び率はGNPの伸び率よりは低くなっているわけでございます。それで、いま先生の御指摘の経常経費を節約するという点から言えば、実質ベースで見るのも一つの考え方ではございますが、国民の負担という意味のコスト面ということから言えば、むしろ名目ベースで見ていただいた方がよろしいかと思います。そういう点から見ますと、名目の伸び率は五十四年度は九・一考と五十三年度の一〇・二%を約一%下回っておりまして、四十年に入りましてからの最低の伸び率になっております。
#283
○柿沢弘治君 私が申し上げたいのは、最初の総括質問でも申し上げましたように、これから財政構造を考えていく場合に、いわば三Kと言われるような構造的な赤字、これに思い切ってやっぱりメスを入れていくということが必要ではないだろうか。食管制度の是正については渡辺農林水産大臣から前向きのお答えがございまして、かなり高い評価も私のところへいろんな手紙が来ておりますが、その点について、大蔵省として、もう一度その覚悟といいますか、決意のほどを伺いたいと思うわけです。
#284
○国務大臣(金子一平君) 国の財政構造の赤字、特に三Kの赤字につきまして、先般も柿沢さんから御指摘がありました。それぞれの赤字につきましていま担当の省を中心にいたしまして、いろいろこの解消策を講じてもらっております。国鉄しかり、食管しかり、あるいは健保しかり、私どもも関係の省庁と十分連絡しまして、そういった構造的なものに思い切ったメスを入れるように最善の努力をしてまいるつもりであります。
#285
○柿沢弘治君 財政収支試算というのをことしも出していらっしゃいますけれども、去年がA、B、Cと三つのケースを出していたのに比べて、ことしは一つしか出しておりません。しかし、参考ケースとして見ておりますと、歳出削減依存型というのがありますが、そちらの方が私は望ましいんじゃないだろうかと思いますけれども、どうでしょうか。歳出削減のケースB、これでも社会保障移転支出、財政の中の支出は八・二%の伸びになっております。基本のケースでは一〇・九ということですから、それほど大きな違いはない。金額にして六十年度をとってみて十六兆八千九百億と十四兆五千七百億ですから、二兆三千億の違い。社会保障支出で二兆三千億の違いというのは、たとえば医療保険に対する支出その他を改善をしていけば、一兆六千億のたとえば医薬品代の過剰といいますか、切っていくというような努力をしていけば何とかなるんじゃないだろうか、そういう気もするわけですけれども。
#286
○国務大臣(金子一平君) 両極端の数字を御参考にごらんに入れたわけでございますが、私どもは、将来のわが国財政のあるべき姿、経済のあるべき姿を想定して歳出削減も思い切ってやります。そのかわり歳入増につきましても、うんと勉強さしていただきます、御協力いただきたい、こういうようなことでお願いを申し上げておる次第でございます。
#287
○委員長(町村金五君) 以上で柿沢君の締めくくり総括質疑は終了いたしました。(拍手)
 これにて質疑通告者の発言はすべて終了いたしました。総予算三案に対する質疑は終局したものと認めます。
    ―――――――――――――
#288
○委員長(町村金五君) それでは、これより総予算三案に対する討論に入ります。
 討論の通告がございますので、順次これを許します。なお、発言者は賛否を明らかにしてお述べ願います。久保亘君。
#289
○久保亘君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました一九七九年度一般会計予算、同特別会計予算及び同政府関係機関予算、以上三案に対し反対の討論を行います。
 わが国経済は不況局面を脱出し、順調な回復過程をたどりつつあるとの一部の明るい見通しが出ている一方では、肝心な雇用、中でも中高年齢者の雇用情勢は依然として改善のめどは立っていません。確かに企業収益は増大してきていますが、減量経営、すなわち人減らし、合理化による利益の追求が定着した企業は、景気が回復したからといっても雇用量を増加させないのが現在の特徴なのであります。しかも、景気が上昇すれば物価がそれを上回る速度で上昇し、景気の足かせとなる現代資本主義経済の抱える矛盾がすでにあらわれてきていることから、今後も勤労国民の雇用、所得、生活等々が大福に好転する見込みは持てません。
 長期不況を克服して日本経済の転換を図るためには、内需中心の経済構造を確立することが必要であり、その実現が六月末開催の東京サミットにおけるわが国の国際的責務を果たすことになるのであります。しかし、そのおくれが現在ECからの貿易不均衡是正の要望となり、日米通商問題におけるアメリカからの圧力の原因となっているのであります。加えて、経済構造の転換が達成されない中で、国内的にはインフレ再燃の危険性が高まり、原油価格の値上げが実施されるのであります。まさに日本経済は、国内外両面にわたって未解決な課題を抱えた不安定な状態にあると言っても過言ではありません。
 かかる経済問題を抱えている一方では、E2C早期警戒機の購入問題に露出したように、政財官の癒着した航空機汚職構造は、経済の軍事化を促進しようとする危険な動きと相まって、政治に対する不信を増幅しているのが実情であり、自民党政治の欠陥と限界を示したのであります。
 そこで、予算は政府の顔と言われるわけでありますが、政府予算案の具体的問題点を指摘し、反対の理由を明らかにしたいと思います。
 まず第一には、雇用、失業対策が十分でないことであります。
 政府は、十万人の雇用創出と九万人の失業防止対策を講じ、さらに情勢を見て追加措置をとるとの方針を明らかにされておりますが、最も重要な施策としての民間企業の人員削減防止策が欠落していますし、政府みずから新規雇用機会の拡大を図る面で特記すべきものは何もありません。国が雇用対策を進めれば、企業が人減らしをふやすというのでは、百二十万人を超える完全失業者が減少する見込みはないのであり、高齢者社会への移行過程の中で、生活責任の重い中高年齢者の就業の前途に明るさは見出せないのであります。
 また、先進諸国で週休二日制を実施していないのはわが国だけであり、これでは外国から貿易の不均衡、国際収支のアンバランスについての批判を招くのは当然とも言えるのであります。政府の決断が求められているのでありますが、その意欲は見られず、かかる面からの雇用拡大策も図られていません。
 第二には、福祉切り捨ての公共事業中心の景気対策、内需拡大策についてであります。
 不況克服のために公共事業投資の拡大を軸にする景気刺激策は従来からのパターンでありますが、一言で言えば、公共事業費の増大が必ずしもかつての成長過程と同様な需要効果は発揮し得なくなってきているのがわが国の需要構造の変化であります。中でも、政府の公共事業内容は道路、港湾などの大型プロジェクト中心の投資が継続されており、近年の住宅、下水道等の生活基盤整備投資の増加も成長率優先のもとでは抑制されぎみであります。公共事業の需要効果を雇用効果の点から見ますと、生活関連投資の方がより有効であることは明らかでありますが、政府の投資にはその認識が見られないと思います。新経済社会七カ年計画を見ても、二〇%が道路投資では、いわゆる低成長経済下での雇用確保、生活安定のための公共投資構造とは認めがたいのであります。
 第三には、社会保障の停滞と各種公共料金の値上げによる負担の増加と物価の上昇による国民負担であります。
 安上がりの政府論に立って、初診料の引き上げ、薬代の二分の一負担など、医療制度の改革に着手することなしに受益者負担を口実にして国民の負担を強化していますが、低成長経済の時代こそ社会福祉の充実を必要としているのであり、この予算での社会保障の見直し、すなわち高負担先行は国民の断じて認めがたいところであります。さらに、医療費負担にたばこの値上げ、国鉄運賃の値上げ、授業料の引き上げ等々、公共料金の軒並みの値上げで国民の負担は高まる一方であり、その上卸売物価は四カ月連続で上昇しており、年率では一〇%を超え、消費者物価も東京都区部では三月に年率一〇%を超えました。加えて原油価格は当初の予定を半年繰り上げたこの四月から一四・五%の値上げとなり、円のレートも最近では二百円台に下がりぎみであることから、物価の動向にはすでに危険信号が出ているのであります。特に物価上昇要因が地価の騰貴、公共料金、国債の大量発行など次第に国内要因主導に移ってきている折から、物価抑制対策が重点施策とならなければならないのでありますが、その対応策に見るべきものがなく、国民負担を一段と高める無策は許されないと思います。
 第四としては、財政再建に関しての問題であります。
 その一つは、十五兆二千七百億円の巨額の国債発行によって国債依存率三九・六%、いまや財政史上かって見られない深刻な赤字財政に陥ったことからいかに脱却するかは財政上の最大の課題であります。それは歳出の洗い直しと歳入の改革でありますが、補助金支出の削減一つを見ても、わずかに千二百億円の整理にすぎないのであって、歳出の洗い直しを思い切った財政再建の足がかりとすべきであります。また、歳入の面でも、税制改正は物価調整減税の見送り等を含めると実に一兆円に上る大増税を行っておりますが、その内容は、たばこの価格改定による負担増、ガソリン税など取りやすいところから取る大衆増税であり、その一方で、大企業、資産家に対する不公平な優遇税制の是正については、社会保険診療報酬課税の特例措置の全く不十分な手直し、土地税制の緩和、企業の準備金・引当金制度の微温的な改正等々、不公平税制がすべて温存されております。このような状況で、一般消費税を新設して大衆課税による財政再建を実施しようとしても、国民の大きな批判を招くのは火を見るよりも明らかであります。これでは財政赤字脱出の方途が明らかにされたとは言えません。
 その二つは、国債管理政策が欠落していることであります。国債償還が今後ますます重要な課題となることは言うまでもありませんが、特に今日の時点で指摘しておかなければならないのは、国債消化とインフレの問題であります。大量の国債発行が市中消化難から通貨供給増につながる通貨当局の介入が予測されますが、すでに三千億円の買いオペが行われるなど予測どおりの事態があります。さきに見た物価上昇の動きに拍車をかける国債の発行と消化についての対策が具体化されていないのは危険きわまりない姿勢と言わなければなりません。
 第五には、財政改革の大きな柱としての地方財政改革に対する問題であります。
 地方債の残高は五十四年度末に二十五兆円に達し、三割自治の地方自治体にとっては大きな負担となり、財政危機は国以上に深刻になっています。地方交付税制度は実質的には破綻してしまったのでありますが、自主課税権も起債権も制限されている現状では、地方分権の確立は望むべくもありません。国と地方との財政構造の改革は経済の転換と密接不可分な関係にありますが、政府はその認識に全く欠けていると言わなければなりません。
 最後に、防衛関係費についてであります。
 防衛関係費二兆円は世界第八位の軍事費支出国であります。福祉予算は真っ先に見直しの対象にされますが、軍事費こそ俎上に上せるべき不要不急経費の最たるものと言えます。今回のE2C機購入予算をめぐっての一連の黒い動きは、わが国の再軍備増強過程に絶えずつきまとってきた疑惑が表面化したにすぎないのであり、今後の軍備増強がこれらの黒い疑惑を拡大再生産する可能性を否定することはできないのであります。防衛大綱の修正の要求が制服組によって根強く主張されていることからしても、いま政府は軍事力の縮小、防衛関係費の圧縮、削減こそ必要でありますが、政府にはこれに逆行する姿勢が顕著になりつつあり、加えて元号の法制化、教育勅語、軍人勅諭の礼賛などに見られるように、政治反動化が目立っていることを憂慮しなければなりません。これは真に日本の安全保障となり得ないことを強調しておきたいのであります。
 最後に、航空機輸入をめぐる疑惑の解明に当たって、政府・与党が終始政治家の国会喚問に反対し、事件を商社の不正に矮小化して、戦後政治の構造的汚職の解明を妨げていることに対し強く遺憾の意を表します。国民の信頼をかち得るために、さらに今後積極的な解明の姿勢をとられること、またE2C予算凍結の参議院の意思を体し、議会民主主義の道を誤ることなきよう措置されることを強く要求し、政府予算案に対する私の反対討論といたします。(拍手)
#290
○委員長(町村金五君) 次に、井上吉夫君。
#291
○井上吉夫君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、ただいま議題となりました昭和五十四年度一般会計予算外二件に対し賛成の討論を行うものであります。
 賛成の第一の理由は、厳しい財政事情のもとで財政健全化の努力を払いつつ、景気の着実な回復に取り組んでいることであります。
 新年度のわが国経済運営の課題は、第一に、四年余にわたって低迷を続けてきた民間内需はこのところ好転の兆しが見られておりますが、これを本格的な景気回復の基調に定着させ雇用情勢の改善を図ることであり、第二に、先行き懸念含みの物価を引き続き安定させることであり、第三に、経常収支の均衡に努め、国際的要請にこたえることにあります。
 石油危機以降、国民経済の停滞に対処するため、財政が景気回復の主役として積極的にその役割りを果たしてきた結果、ここにようやくその成果があらわれつつありますが、これは反面において大量の国債を抱えた借金財政を招くに至っております。
 すなわち、わが国財政は、五十年度以降、赤字公債を含む大量の公債に依存する状況のもとで、特に昨年度は財政による内需拡大に重点を置き、公共事業の拡大を中心とする臨時異例の積極財政の展開を図ったため、財政収支の極度の悪化を招いたことは御承知のとおりであります。さらに、本年度の予算編成においては、五十三年度が所属年度の変更によって十三カ月分の税収が組み込まれたせいもあって、前年度に比し自然増収が全く見込まれないという厳しい財政事情のもとで、財政面からの景気回復と、他方、財政の健全化という二つの要請が絡む困難な局面の中で、この相反する課題の両立を図る工夫がなされておることに特色があります。
 まず、財政面からの景気対策を見ますと、一般会計において需要創出効果の高い公共事業関係費、文教、社会福祉施設整備費等の投資部門を一八・六%伸ばし、特に一般公共事業費の伸び率二二・五%は、昨年度には及ばないものの五十一、五十二の両年度を上回っているほか、公共事業等予備費の計上や財政投融資計画の弾力的運用等から総需要に対して大きな波及効果を生むものと期待され、この結果、住宅、下水道、環境衛生施設など国民生活に直接関係する社会資本の充実が推進されると同時に、内需の堅調な伸びとあわせ、景気の本格的な回復と雇用の増大に資するものと思われます。
 次に、財政の健全化につきましては、予算規模の伸び率は一二・六%で、前年度の二〇・三%に比べ大幅に抑制しており、特に、国債費を除く経常的経費の伸び率は八・六%に抑えておりますほか、行政事務費の三年据え置きや補助金等の整理合理化が極力図られ、効率的な政府を目指す姿勢がうかがえます。
 また、税制面においては、長い間の懸案でありました社会保険診療報酬課税が二十五年ぶりに是正されることになりましたほか、企業関係の租税特別措置の整理合理化が強力に進められ、不公平税制の見直しを行う一方で、税源確保のための増収措置や受益者負担の適正化のための公共料金等の引き上げを行っておりまして、本年度予算は、これまでのように景気優先で財政健全化を犠牲にした過去の財政運営から転換し、財政健全化の足がかりをつくろうとする努力の跡が十分うかがえ評価できるものと思います。
 第二は、雇用対策に対する積極的な対応がなされている点であります。
 国民生活の安定にとって雇用機会の確保が何より優先すべき政策課題であることは申すまでもないことであり、これまでの政府の景気対策により、この二月の完全失業率は一・八%と一年四カ月ぶりに二%を割り、雇用情勢は幾分改善の方向にありますものの、特定の地域や業種あるいは産業間でいまだ厳しい情勢が続き、特に中高年齢者の雇用不安は深刻であります。このような雇用情勢の打開を図るため、新年度予算では、さきに述べました公共事業関係を中心とする景気対策とあわせ、雇用安定対策の充実が図られております。すなわち、中高年齢者を中心に十万人の雇用増を目指し、雇用開発給付金制度の拡充や定年延長奨励金の充実を初め、失業給付や職業訓練等にきめ細かく配慮されていることは評価できると思いますが、さらに、政府は、産業構造の変化に即応した新しい雇用創出についても積極的に対応していただきたいと思います。
 第三は、重要施策について予算が効率的に配分されておることであります。
 これまでにない緊縮財政の中で、社会保障を初めとして、文教、科学技術、農林漁業、中小企業、エネルギー対策等、国家的に緊要な施策について、限られた予算を施策の優先順位にのっとり重点的に配分されているほか、歳出内容の質的充実が図られていることは、わが国経済の均衡ある発展に資するものと思われます。
 最後に、政府に要望いたしたいのであります。
 その第一は、財政再建の問題であります。
 本年度予算における公債発行額十五兆二千七百億円は、いまや米英独仏四カ国の赤字総計を上回る額となり、これにより公債依存度は三九・六%、年度末の公債残高は五十九兆円、国債費は四兆円を超えるという状態になっております。五十年度以降累増する公債発行は、年ごとに財政悪化をもたらしているばかりか、公債の消化が壁にぶつかるところまで追い込まれております。これが将来にわたって続けば、財政はますます硬直、非効率化し、利払いのための国債発行に追い込まれるだけでなく、後代にそのツケを回し、やがてはインフレの懸念さえ生じかねません。
 いま要請されることは、国債発行を速やかに圧縮し、財政の再建を図ることにあります。今回の予算編成、税制改正を通じてそれなりの評価はいたしますものの、さらに一層行政経費の節減のため、既定施策、行政組織の徹底的な洗い直しを図り、財政運営の効率化に格段の配慮を加えるべきであり、これを十分踏まえた上で、一般消費税の導入については国民の理解と協力が十分得られるよう慎重に配慮願いたいと思うものであります。
 第二は、今後の経済財政の運営についてであります。
 卸売物価はこのところ五カ月連騰しております。これは海外市況の高騰、円高の鎮静、内需の強まり、国債増発によるマネーサプライの増加によるものであり、さらに今後の原油値上げの影響等を考慮すると、目下せっかく鎮静している消費者物価にも当然はね返ることが予測され、物価問題はすでに警戒水域に入っていると思われます。景気と物価との関係から見て、物価の急騰は需要を減退して景気の足を引っ張りかねないだけに、景気回復と物価の安定が命題とされているわが国経済財政の運営については、予算の執行、金融対策等適切に対応され、新年度が景気対策の総仕上げの年となることを期待いたしたいのであります。
 以上、要望いたしまして、予算三案に対する私の賛成討論を終わります。(拍手)
#292
○委員長(町村金五君) 次に、多田省吾君。
#293
○多田省吾君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました昭和五十四年度予算三案に対し反対の討論を行います。
 大平内閣初の予算編成による昭和五十四年度予算三案は、従来の自民党政権の政策からいかに脱皮の第一歩を踏み出すかを示す重要な試金石であったはずであります。しかしながら、予算の内容は、総理の主張にはほど遠く、財政再建、福祉対策、景気回復、雇用対策等は不十分であり、国民負担を増大させる予算と言わざるを得ません。
 以下、反対する主な理由を申し上げます。
 反対の第一の理由は、雇用対策が不十分であるということであります。
 現在、景気は幾分回復しつつあると言われておりますが、これは幾つかの要因がありましょうが、最大の要因は減量経営の定着にあります。そのためかつてない多数の完全失業者が生まれ、その対策が重要なのにもかかわらず、政府は予算の範囲で事足れりとし、中期的な展望に立ったわれわれの具体的提案に対しても積極的な対応に欠けたうらみがあります。これでは国民の不安解消と雇用問題解決は望めないと言わざるを得ないのであります。
 反対理由の第二は、福祉関係予算が後退を余儀なくされていることであります。
 長期不況の中で、社会的に弱い立場の人々は苦しい生活を強いられ、今日ほど温かい施策の充実が求められているときはありません。しかし、五十四年度予算は、財政再建を最優先させ、福祉施策を足踏みさせ、実質的に福祉を後退させる予算となっているのであります。これは社会保障関係費の伸び率が一二・五%にとどまっていることからも明らかであります。
 反対理由の第三は、財政再建に抜本的な進展が見られないことであります。
 歳入の面では、大企業の租税優遇措置やいわゆる医師優遇税制などの不公平税制是正は若干の改正が行われたものの、抜本的是正については明確な方針が定まらず問題を残しております。また、歳出の面では、行政改革も型ばかりのもので、国民の期待する行政機構の肥大化に対する改革にはほど遠いと言わざるを得ません。こうした予算のままで政府は一般消費税導入に見られる安易な増税の道を歩む姿勢はとうてい納得できるものではなく、強く反対せざるを得ません。
 反対理由の第四は、節度のない大量国債発行であります。
 明確な財政計画もないまま、また公債管理政策の確立を放置したままで、大量の国債発行を続けたため、インフレや民間資金需要の圧迫、財政の硬直化、国民に過重な税負担を強いる等の弊害を招こうとしております。また、大量の国債も市場原理を無視した発行のため消化難を生み、今後の経済財政に一層の不安を与えております。このような節度のない国債の大量発行には反対せざるを得ません。
 反対の第五の理由は、物価調整減税をも見送り、地方税減税も不十分なことであります。
 公共料金の一斉値上げで実質増税と受益者負担原則を強化していることは、国民生活を圧迫し、卸売物価の高騰の中で消費者物価上昇を促進して個人消費を抑え、景気回復に逆行することになります。政府は少なくとも物価調整減税を行い、国民の家計の可処分所得の伸びを図ることは、国民の生活を守り、GNPの五七%を占める個人消費を喚起する上からも必要不可欠なことであります。したがって所得税減税見送りははなはだ遺憾なことと言わなければなりません。
 以上、五点に要約して申し述べました理由によりまして、昭和五十四年度政府予算三案に反対の態度を表明するとともに、本予算委員会においてしばしば論議された航空機購入に伴う不正取引問題について、政府の積極的な徹底的解明姿勢により国民の疑惑を晴らし、政治を正し、適切な再発防止策を講ずることを強く要望いたしまして、反対討論を終わります。(拍手)
#294
○委員長(町村金五君) 次に、内藤功君。
#295
○内藤功君 私は、日本共産党を代表して、昭和五十四年度政府予算三葉に対し反対の討論を行います。
 反対理由の第一は、国際的にも国内的にも破綻した福田前内閣の大企業本位の景気対策を継続し、国民生活に多くの犠牲を負わせつつ、わが国の経済と財政の危機を一層深めていることであります。
 大平内閣は、予算の二分割方式をさらに徹底させ、大型プロジェクト中心の公共事業費を二二・五%も伸ばす一方で、福祉、文教などの国債費を除く経常部門の経費の伸びをわずか八・七%に抑えています。また、所得減税を見送りながら、ガソリン税、たばこ定価の引き上げ、国鉄運賃など一連の公共料金の引き上げを盛り込み、昭和五十五年度には最悪の大衆課税である一般消費税の導入を強行しようとしております。雇用問題でも、政府は、国民の苦しみをよそに、史上最高の利益を上げた大企業の減量経営による人減らしは野放しにし、完全失業者百三十万人の見通しを持ちながら、雇用効果の大きい生活密着型公共投資の拡大を抑え、中高年者雇用率の法定化さえ拒否するなど、積極的な雇用対策をとろうとしていません。
 反対理由の第二は、歳入の四〇%、十五兆二千億円余の巨額の国債を発行し、わが国の財政を最悪の状態に陥れようとしていることであります。
 昭和五十四年度末の国債発行残高は十八兆七千億に達する見込みで、これは予算額の一・五倍、国民総生産の実に二五%を占めるに至るのであります。国債の大増発は予算に占める国債費を急増させ、本年度予算では四兆円を超え、対前年度比二六・六%の増で、予算の一〇%を超えるに至っております。こうした国債の大増発は、公共投資の増を機とする卸売物価、地価等の騰貴と相まって、再び悪性インフレーションの危険を激化させていることは日本銀行も認めているところであります。
 こうして、本予算案は、失敗した従来型景気対策を引き継ぎ、国民に対しては大幅な負担増で購買力を抑圧し、かえって不況を長引かせ、また一方でインフレの危機を鋭くさせ、国債等の増発、累積で財政危機をも破局的段階に進める景気・財政両破綻型予算と言わなければなりません。
 反対理由の第三は、対米追随的軍国主義復活を強める予算案だということであります。
 日米共同作戦ガイドラインや有事立法の策定など、軍事体制の再編強化、軍人勅諭の礼賛発言、兵器生産財界人の集まりで陸幕長が防衛計画大綱の修正を講演するところまでエスカレートし、国民に大きな不安を与えています。軍事費はついに二兆円の大台を超えましたが、これは実に一九六〇年度の十二倍、資本主義諸国の軍事費の中でも飛び抜けた増加率であり、この中には疑惑に包まれたE2C早期警戒機、F15戦闘機、P3C対潜哨戒機等の購入費が含まれております。ここにこそ日米軍事同盟に深く根差した構造的疑獄の物的基盤があることを指摘せざるを得ないのであります。
 以上、私は、本予算案の危険な内容、反国民的特徴を指摘し、反対の討論を終わるものであります。(拍手)
#296
○委員長(町村金五君) 栗林卓司君。
#297
○栗林卓司君 私は、民社党を代表して、ただいま議題となりました昭和五十四年度政府予算三案に対し反対の討論を行います。
 七〇年代を振り返って最も特徴的なことは、ガット及びIMFに代表される戦後の国際経済体制が大きく動揺し、国際関係が著しく不安定になったことだと思います。
 その原因の一つは、石油危機に象徴される資源ナショナリズムの動きであり、さらに、国際経済体制を撹乱する第二の要因として、欧米先進諸国は日本を名指しして非難を強めつつあるようであります。しかし、戦後、自由世界では米国のみがずば抜けて強力であり、日本は敗戦の痛手から立ち直れなかったころつくられた国際経済体制が今日の実情に適合しなくなることはむしろ当然であります。しかし、日本としては、日本の経済成長が国際社会に及ぼすインパクトに対し細心な配慮をすべきであり、また、現状に適合した新しい国際秩序の形成に当たっては責務の一端を担う用意をすべきであります。そして恐らく八〇年代は、片方に戦争の危険をさえはらむ不安定要因を大きく抱えながら、他方では、新しい国際秩序形成に向けての精力的な試行錯誤が続けられていくものと思います。本年開かれるUNCTADの第五回総会及び東京サミットの中心議題も当然その点に置かれるでありましょう。
 では、日本としてどのように対応しようとするのか。昭和五十四年度予算はこの疑問にこたえなければなりません。しかし、残念ながら、本予算案は、予算の全体を通して強力なリーダーシップのもとに重点施策を選択したというよりも、むしろ無性格であり、逆に内外に印象づけた点は、財政の再建を重視し、前内閣が公約した七%成長に対しては冷淡な内閣の姿勢でありました。そしてこのことが日本に対する国際的な評価をゆがめたことは否定できません。今日、内にあっては高齢化社会への対応、外にあっては内需中心の経済構造への転換の問題として、内外がひとしく求めていることは、国民の福祉、特に年金、住宅、生活環境に対して思い切って予算の配分をふやすことであります。限られた財源のもとでこのことを行うためには、行政改革の断行は避けて通れない課題であります。しかし、この予算案はこの要請にこたえておりません。
 今後、政策の全体を見直し、適切な政策の追加を行うことを要望して、反対の討論を終わります。(拍手)
#298
○委員長(町村金五君) 以上で討論通告者の発言はすべて終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
 それでは、これより採決に入ります。
 昭和五十四年度一般会計予鈴、昭和五十四年度特別会計予算、昭和五十四年度政府関係機関予算、以上三案を一括して問題に供します。三案に賛成の方の起立を願います。
   〔賛成者起立〕
#299
○委員長(町村金五君) 可否同数と認めます。よって、国会法第五十条後段の規定に基づき、委員長において三案に対する可否を決します。
 三案について、委員長はこれを可と決します。よって、三案は原案どおり可決すべきものと決定いたしました。(拍手)
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#300
○委員長(町村金五君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 これにて散会いたします。
   午後三時三十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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