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1978/02/20 第87回国会 参議院 参議院会議録情報 第087回国会 外務委員会 第3号
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1978/02/20 第87回国会 参議院

参議院会議録情報 第087回国会 外務委員会 第3号

#1
第087回国会 外務委員会 第3号
昭和五十四年二月二十日(火曜日)
   午後二時四十二分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         菅野 儀作君
    理 事
                鳩山威一郎君
                田中寿美子君
                渋谷 邦彦君
    委 員
                安孫子藤吉君
                大鷹 淑子君
                二木 謙吾君
                町村 金五君
                戸叶  武君
                塩出 啓典君
                立木  洋君
                田  英夫君
   国務大臣
       外 務 大 臣  園田  直君
   政府委員
       防衛庁参事官   岡崎 久彦君
       外務大臣官房領
       事移住部長    塚本 政雄君
       外務省アジア局
       長        柳谷 謙介君
       外務省欧亜局長  宮澤  泰君
       外務省中近東ア
       フリカ局長    千葉 一夫君
       外務省経済局長  手島れい志君
       外務省条約局外
       務参事官     山田 中正君
       外務省国際連合
       局長       賀陽 治憲君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山本 義彰君
   説明員
       法務省入国管理
       局入国審査課長  黒岩 周六君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○国際情勢等に関する調査
 (中越紛争に関する件)
 (南北朝鮮問題に関する件)
 (北方領土問題に関する件)
 (カンボジア問題に関する件)
 (金大中事件に関する件)
 (韓国官憲による日本人記者取り調べ事件に関
 する件)
 (イラン在留邦人に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(菅野儀作君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 国際情勢等に関する調査を議題として、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#3
○田中寿美子君 外務大臣、もうすでに衆議院の外務委員会並びに予算委員会で問題にされてきておりますので、そして中越国境紛争の問題で大変私たちも遺憾な問題だと思っているんですけれども、政府の態度としては、すでに中越両方の政府当局に兵を撤退することと軍事行動をやめることを申し入れたというふうに説明されておりますし、なおまたソ連の方にも慎重にしてほしいということの申し入れをしたというふうに伝えられておりますので、それ以上のことは何にもまだやっておいでにならないんであろうと思いますが、それでよろしいですか。
#4
○国務大臣(園田直君) いままでやりましたことはただいま御発言のとおりでありまして、今後とも、引き続いて関係国には努力を続けるつもりでおります。
#5
○田中寿美子君 私たちは日本政府がこの紛争が大規模な戦争に発展していかないためのあらゆる努力をしてほしいと思うのですが、日中、米中の平和友好条約などで反覇権の宣言をしているわけでございますね。今度の事態もその覇権主義反対というそれには触れていない、そういうふうに解釈をしていらっしゃいますわけですか。
#6
○国務大臣(園田直君) 日中友好条約の覇権は、御承知のとおりに、まず一般普遍的な覇権に反対をし、起こるべき事態に対する覇権の判断、行動等は一切独自の立場だと、こういうことを言っている経緯があるわけでありますが、いまわが方は、ベトナムに対する中国の軍の侵入、カンボジアに対するベトナムの軍の侵入、それぞれ立場は違うという意見もありますけれども、われわれは、これが覇権であるとか覇権でないとか、正当であるとかないとかということは後回しにして、まず現実の問題として、力で紛争を解決し、軍を動かして他国に入れることに反対、即時停戦、軍の撤退、こういうものを強く要望しているところでございます。
#7
○田中寿美子君 覇権主義というようなレッテルを張ってしまうことは非常にまた国際関係を複雑にしますので、そのような態度をとっていらっしゃると思いますし、私も慎重にしていただきたいと思っておりますが、きょう、実は、私は南北朝鮮の対話の再開の問題に集中してお尋ねしたいと思っているわけで、たぶん中越その他の問題は戸叶先生がなさいますと思いますが、ただ、一つ、私が今回中越国境紛争が起こったことで非常に心配になりますのは、せっかく始まった朝鮮南北の雪解けの機運に対してこの紛争が阻害要因にならないかどうか、その辺は外務大臣はどうお考えでございますか。
#8
○国務大臣(園田直君) なかなか複雑な問題で一言には言えませんが、いまのインドシナ半島の事件というものが南北の統一対話に直ちに影響するとは考えません。
#9
○田中寿美子君 そのように私も希望するわけでございますが、今回の南北の朝鮮の対話の再開というのは意外にスピーディーに両方が呼応し合ったわけですね。一月十九日の朴大統領の記者会見で、どこでも、だれとでも、どんなレベルででも話し合いに応じるというような言い方をされ、それに対して直ちに北側から逆提案をしていく。互いに逆提案をしながら二月十七日には板門店で会うことができたという事実ですね、これは私は本当にいいことだったなと思っているものなんでございます。
 七二年の七・四共同声明以後、せっかく始まった対話の機運が、金大中氏事件以来、北の方がそういう非民主的なことをやる者との交渉はできないというふうに言って打ち切ったわけですが、今回、北の共和国側からお互いに中傷、誹謗をやめようではないかということを提案しておりますし、私どもも本当にその点は気をつけて、どっちに対してもそれを阻害するような言葉や行動を慎まなければならないというふうに思っているわけなんですが、この間の十七日の板門店での会合が新聞報道によりますと「アンニョン・ハシムニカ」と、これは私も朝鮮に行って覚えた言葉ですけれども、本当にやわらかいいい音の言葉なんで、「こんにちは」でも「ごきげんよろしゅう」でもいいんですが、南からそういう言葉がかけられ、北の方からは雪が降ってこれはいいことですねというふうな言葉があったというようなことは、いままで厳しく対立していた者が大変やわらかい雰囲気で顔を合わせて、写真を見ますと笑顔が載っておりますので、私も実は板門店の中立国監視委員会会議室というのを二回ぐらい入って見ておりますが、いろいろと想像してこの話し合いの始まったことがいいと思っているのです。
 そして一回限りで終わるのじゃないかなどというマスコミの批判もあった。私はマスコミの批判も本当に気をつけてほしいというふうに思っておりますけれども、それにもかかわらず三月七日のもう一度の会談、それからホットラインの設置、そういうところに合意したということですね、これも本当にいいことで、一回限りではなかったということですし、それから両方の代表の資格なんかも要求していることと食い違っているわけですね、韓国側からは政府当局同士の話し合いをと言っているし、それから共和国側からは祖国統一民主主義戦線の代表を含めて民主レベルでというようなことを言いながら、それでもその食い違いを無視して会談ができた、こういうことなんで、このことから考えますと、双方とも対話を続けていきたいという熱意があるからだと思うんですが、この会談がずっと続いていくというふうに政府では見通していらっしゃいますか、どうですか。
#10
○国務大臣(園田直君) いまおっしゃったとおりでありまして、非常に両方が敏感に反応し合い、かつまた立場の違いはありながら、少しの食い違いも乗り越えて会談に至り、次の会談まで話が進んだ。しかも会談の内容は別として、非常に友好的な雰囲気であった。これは、一つは、やはり南北当事者それぞれが自主的に解決したいという意向があったということもありましょうし、また、国際情勢の変化がお互いが話し合わないで対立していることを許さない状態にもなったということでありましょうけれども、少なくとも、いままでの模様から見ておりまして、南北両方とも自分の責任においてこの対話を壊したくないという意向は各所に見えておりますから、希望的な願望も含めて、この南北間の接触と対話が立場の相違を乗り越えて少しずつでも統一の方に前進することを願うものでございます。
#11
○田中寿美子君 これまでの長い長いお互いの敵視とも言えるような沈黙の後に、突然、今年に入ってこの大変素早いお互いの対話をというその要因ですけれども、いま外務大臣は国際情勢の変化もあってというふうにおっしゃいましたが、その要因は、国際情勢の変化といえば、たとえばどういうことがそういう要因になったとお思いになりますでしょうか。
#12
○国務大臣(園田直君) 国際情勢が、御承知のとおり、停滞をしたり、話し合いの方向に進んだり、また対立をしたりしておりますけれども、基本的な方向は話し合いの方向に進んでおる。それから朝鮮半島における南北の対立というのは両方にとって決して有利ではないということも私は言えると存じますが、日中、米中の友好、正常化というものもこれは悪い方には影響はしなかっただろうと、そういうもろもろのことを考えておるわけであります。
#13
○田中寿美子君 日中、米中の関係正常化というのが、私は、いま外務大臣がおっしゃいました以上に、非常に積極的な要因になっているんではないかというふうに想像しているわけなんです。
 特に米中の正常化ですね、これは少なくとも形の上でも台湾はアメリカ側が切り捨てたという形になっている。そういう状況ですと、韓国側から考えますと、それにもう一つは在韓米軍の撤退の決議があった後、撤退が少しですけれども始まってきた。こういう状況の中で、かねて北側の共和国の方からはアメリカとの会談を申し入れているわけですね。アメリカと朝鮮との間は停戦協定だけでそのままである、だから米朝の間の平和協定を結びたいという提案をしてきているわけですね。ですから、韓国からすれば、米中があんなに速やかに正常化してしまった状況の中で、もし頭越しに米朝の接近があったんでは困るんではないかという心配、おそれがあったんではないか。それから、一方、北の共和国の方からしますと、最近、韓国とソ連との間の結びつきがうわさされている、こういう状況でもしよく言われている米中日ソのクロス承認みたいな方向に持っていかれると、二つの朝鮮が固定化されるのではないかという、こういう心配もあって、両方とももういつまでも黙っている時期は過ぎた、こういうふうに思ったのではないかと思いますけれども、外務大臣はそういう私の解釈をどうお考えになりますか。
#14
○国務大臣(園田直君) 私も、ただいまの御発言の各種要素がこういう方向に持ってきた一つの要素になったと判断しております。
#15
○田中寿美子君 大臣からは積極的にお言いにくいかもしれませんが、私は多分そういうことが多くの要素になっていやしないか。もちろん朝鮮民族が長い間分断されたままであるということは、両方とも非常に統一を望んでいるという点からは民族の願いであるという点が一番基本にありますけれども、二つの違った体制の間でなかなか一緒になれなかった問題が、もういつまでもほうっておくと、外からの条件、圧力があるというようなことになったのでは、自分たちの考えているような自主的な平和的な統一はできない、こういうことなのではないかというふうに私は推側しております。
 そこで、この前、日中平和友好条約の批准案件が国会で審議されましたときに、私ちょうど大臣にお尋ねしたことがありましたね。日中の間で朝鮮半島に関しては意見の非常に大きな違いがあるというふうに当時の福田総理大臣がお答えになった。その後、日中平和友好条約の批准がされてケ小平氏が見えられたわけですが、福田さんとケ小平との会談の席上、あるいは今度またケ小平が来られて大平・ケ小平会談の席上、多分外務大臣も同席されたと思うんですけれども、朝鮮の問題に対してどういうようなことが話し合われたか、どういう意見の交換があったか、お漏らしいただきたいと思いますが。
#16
○国務大臣(園田直君) 福田前総理、大平総理との間に朝鮮問題についての意見交換が行われたと聞いております。その内容をそのまま申し上げることは遠慮いたしますけれども、大体の趣旨は、福田前総理の話はひとつ韓国と中国と何らか交流の可能性はないかというような趣旨の話だったと存じます。それから大平総理との会談では、南北を含んで朝鮮がお互いに話し合いのできるようなことにしてもらうためには、われわれも北の方とも話し合いたいし、中国も南の方とも話し合ってはどうかという趣旨の話があったのが大体要旨でございます。
 これに対しては、中国側は、北朝鮮の立場を支持するという基本的な姿勢が表面の発言であります。また、もう一方は、北朝鮮が何らかの行動をとるような疑いは断じてない、この点は自分が保証するというような北側の立場からの発言があったようでありますが、横で聞いておった私は、何らこちらの言ったことに反応のある発言はありませんでしたけれども、いまちょうど北朝鮮と中国は関係がスムーズにいっている状態でございますから、これに対する反応はなかったけれども、こちらの言ったことは相当理解されたのではないかと判断をいたします。
#17
○田中寿美子君 私は、日本政府は韓国と国交を持っている、非常に親密な関係にある、それから第二次大戦前は朝鮮を植民地にしていた国でもございますので、南北の対話が進み統一が進むためには、相当の責任を持ってもいいんではないかというふうに思うわけですね。
 それで日本としては何をしようとしているのか、その環境づくりをというふうにいつも外務大臣はおっしゃいますが、その環境づくりとは一体何をしようとするのかということを具体的に伺いたいわけなんですが、いまもおっしゃいましたが、この間、ケ小平副主席が見えたときに、園田外務大臣は韓国の当局者と会わせようとなさったというふうに報道されましたが、それは事実でしょうか。
#18
○国務大臣(園田直君) そういう事実は全くございません。
#19
○田中寿美子君 そうですか。
 先ほど、福田さんが韓国と中国が接触してはどうかということを話されたと、大平総理はそういう話をなさらなかったわけですか。
#20
○国務大臣(園田直君) 大平総理からの話の一部には、南北対話の機運の盛り上がりを反映して、そして南北対話についても話が及んだわけでありますが、総理からは、韓国が中国との交流を望んでいるようだが、せめて人間とか経済の交流ぐらいはできるようにはならぬかという意味の話があったように覚えております。
#21
○田中寿美子君 ですから、大体、韓国と中国との接触を望むということが、日本政府の側では、この南北問題について努力をしてこられたその方向のように伺いますが、北ですね、共和国の方との関係を日本政府は一体どうしようと思っていらっしゃるのかということなんですね。
 六五年の日韓条約、あのときの合意ですね、日韓基本関係条約の中で韓国が朝鮮半島における唯一の合法的な政権であるという条文が入っているわけですが、これについて、当時も、日本側と韓国側とでは考え方に食い違いがありましたわけですね。韓国側は、朝鮮半島全体、韓半島全体の唯一合法的な政権であるという解釈に立っているし、日本の方は、大韓民国政府というのは国連総会決議第百九十五号に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認されるというふうになっていて、つまり朝鮮全土に唯一の合法的な政権として韓国を認めるんではないという意味がそこに含まれておりますね。いかがですか、これはもうすでに日韓条約のときに議論されたことですけれども、もう一遍確認をしたいわけです。
#22
○国務大臣(園田直君) 日本側では韓国のことばかり言ったというのは、中国と北の方とは密接に友好関係を結び、緊密な関係にあるわけでありますから、私が外務大臣に言ったのは、中国の方で韓国の方を相手にしてもらうとわれわれも北の方と話しやすい機運が出てくる、こういう趣旨のことを言ったわけであります。
 なお、後のことについては、これは現実の問題として韓国政府が朝鮮半島を統一した政府でないことは、これはもう現実明瞭でありますが、法的には局長から――。
#23
○政府委員(柳谷謙介君) これはもう御存じのことの繰り返しかと思いますけれども、かつての日韓諸条約の国会審議の際に再々御答弁申し上げたことをもう一度申し上げますと、当時の日韓基本条約におきましては、これは御指摘のとおり国連決議第百九十五号に示されているとおりの、その意味における朝鮮における唯一の合法的な政府である、こういうふうに規定しておりまして、それでは北の部分はどうかという点につきましては、北朝鮮については触れておらず、したがって白紙の状態である、こういうのが従来政府の立場でございます。
#24
○田中寿美子君 日韓条約締結当時の佐藤総理大臣、それから椎名外務大臣も、北に政権というか、政権という言葉は使わなかったかもしれないけれども、権威といいますか、オーソリティーがあるということについては認められておったわけなんですね。
 私がいまなぜそんなことを申すかといいますと、こういうふうに南北対話の機運が動いてきているときに、日本政府がそのための環境づくりをすると言うなら、韓国とは自由に交流ができている、北との間に日本政府は何かできないか、接触の可能性があるのかないのか、どうしようと思っていらっしゃるのか、それを伺いたいわけなんです。
#25
○国務大臣(園田直君) 政府は、いまの現実の状態を踏まえて、北の方ともなるべく話し合いをする機会をつかみ、あるいは経済その他の問題で一つずつ積み重ねていって、いままでの政府の態度から現実の朝鮮半島の状況に即するようにやっていきたいと考えております。
#26
○田中寿美子君 今回の南北の会談の最初の提案は韓国側から出ているわけですね、それに北もすぐに反応してきた、こういう事態になっているものでございますので、日本の政府も、もう少し北側との接触について一歩進めていただかなければ、日本が何もやったということにはならないような気がするんですね。そして、政府側は、民間の人事交流がある、それから経済交流とか漁業関係の問題や何かで北の政府当局者との接触をするという、この考えはおありになるんですか。
#27
○国務大臣(園田直君) そういう方向を見詰めながら努力をする所存でございます。
#28
○田中寿美子君 具体的にぜひそういうことを進めていただかないと、環境づくりにはならないような気がいたします。北をいまの東北アジアで孤立させておくというような状況ではやっぱりいけない。だから、日本は、日中それから米中の関係ができている、この中でやはりそういうことをやらなければならないんではないか。
 私は、ただ、その際に韓国と北の共和国とをそれぞれ承認することによって二つの朝鮮の政権をつくり出すような動きをしてもらっては困りますので、いわゆるクロス承認とか二つの国連同時加盟とかということについては、そういうことにならないような努力はしていただきたいけれども、しかし、政府が接触がありませんと大変情報不足になると思うんです。私は、どうも民間の者が行っていろいろな情報を持ってきても、政府には少しも北側の情報が入っていかないというようなことではいけないので、この際、ぜひ一歩進めるようにしていただきたいと思うんです。
 その一つのあらわれは、今度の北からの入国の問題だと思います。社会党が招待しております朝鮮労働党の代表の問題ですが、法務当局は前向きに検討するという話をお答えしていらっしゃるように思いますけれども、それはどのあたりまでいま進んでおりますでしょうか。
#29
○説明員(黒岩周六君) お答えいたします。
 北朝鮮労働党代表団の入国につきましては、先般来、関係者の方より法務省に対しましても非公式に話がございましたもので、法務省といたしましては、目下、関係省庁と鋭意慎重に検討中でございます。
#30
○田中寿美子君 鋭意慎重にじゃ困るんです。いつでもこういう問題に関しては、外務省の方は前向きになっているけれども、法務省はどうしてもこれをチェックなさるんですが、このような状況になって、日本が南北対話の環境づくりの一つぐらいはいいことをやってもらいたいと思うんですね。ですから、いつまでも慎重に鋭意検討じゃなくて、具体的にみんな北からの入国を、政治的な人でありますけれども、しかし、その入国について進める、こういうふうにね、これは外務大臣はその方向で努力を法務大臣に対してしてくださいますか。
#31
○国務大臣(園田直君) いまの問題は、鋭意、解決すべく検討している段階でございまして……
#32
○田中寿美子君 言葉が少し、鋭意解決では……。
 このくらいひとつ一歩前進していただくと、やっぱり日本は南北の接近のための努力をしているんだなと。今回は韓国の側から提案があって北が受けた、それですから日本がやったって多少の抵抗があったとしても一歩進めることになるんじゃないかと思いますので、要望しておきます。
 それから、もう一つは、有事立法に関係してですけれども、福田政権のもとで有事立法を準備していらした。そのときに大平総理大臣は有事立法に余り肯定的ではなかったわけですね。この有事立法の目標というのが朝鮮の北の部分の共産主義政権である。で三矢作戦以来、朝鮮が仮想敵国にされているわけですね。去年のチームスピリット78だってですね、あの大きな演習というのはやっぱり北を目標にしてやられていたわけなんですが、いまでも、外務大臣、大平総理大臣は総裁の候補であった当時と同じように有事立法に対しては否定的な立場をとっていらっしゃるんでしょうか、どうでしょうか。
#33
○国務大臣(園田直君) 私が答えることが適当かどうか知りませんが、大平総理は、やはり有事立法というのは、現在の自衛隊法というのも有事の際の立法である、したがって、このままでやっても大変な過ちはないんじゃなかろうか、必要があれば、そのとき研究すればいいというような御趣旨のようだと拝察をいたしました。
#34
○田中寿美子君 ですから、少なくとも北側の共和国を対象にして仮想敵国とするような立法をするというようなことをしますと、これもまたせっかくのいまの話し合いのムードを阻害していくことになりますので、私はぜひそういうことは気をつけてもらわなければならないと思っております。そういう意味で、できる限りの南北の対話のための雰囲気づくりというか条件づくりをすることに力を尽くしていただきたいんです。
 同時に、この南北の緊張緩和ということは、韓国の中にある緊張緩和につながらなければ私はいけないと思うんです。朴政権がとってきたこれまでのいろいろの政策というのは、金大中氏事件一つをとってみましても、大変そういう意味では韓国内の民主的な勢力に対して反発を与えていたものでございました。今回、金大中氏を釈放し、それから政治犯を釈放したということが、北が南の提案を受け入れられる一つの条件づくりになったように思うんですね。そうしますと、日本の国内にもこの南北対立みたいなものが在日の朝鮮人、韓国人の方々の中にはあるわけですね。ですから、日本の政府がこれからとろうとする対朝鮮、対韓国の政策というのは、韓国の中の民主的な人々を敵にしてはいけない。民主的な人々の要求を入れて結びついていけるようなそういう政策、つまりやたらに朴政権がとってきたこれまでのような非民主的な政策を支持するというようなやり方でないということがあらわれるように、少し日本政府はしていただきたいと思うんですが、その点いかがですか。
#35
○国務大臣(園田直君) ただいまの御意見は参考として十分拝聴いたしておきます。
#36
○田中寿美子君 大変用心深くていらっしゃいますから、なかなかこれは大変また言いにくいことでもありますので、私も無理だろうと思いますけれども、しかし、やっぱりたとえば反共法だとか、それから大統領の緊急措置なんというのは、本当はあれがあったんではというのが最初は北の方の条件でございましたね。しかし、あれはそのままで少なくとも金大中氏の釈放と政治犯の釈放ということがあったということが、一歩前進だというふうに私は北側は評価したんだろうと思いますね。そうして、そうやってお互いに話し合いをしている中で進んでいくものであろう、こういうふうに思いますので、慎重もよろしいんですけども、時には一歩進めていただくことが必要だろうと思います。
 私は、ぜひ日本の政府と北の当局者との接触が進んでいくように、民間人の接触で日中平和友好条約も先行したわけですけれども、朝鮮の問題も民間人が先行しておりますけれども、政府が一歩も二歩も前進していただきたいということを要望したいと思います。外務大臣いかがですか。
#37
○国務大臣(園田直君) ただいまの御意見を踏まえて努力をいたします。
#38
○戸叶武君 このたびの中国とベトナムとの国境における戦争に等しい紛争というものはきわめて重大であり、この問題を円満に話し合いで解決つけないと、今後に私は尾を引くのではないかと思うのであります。
 今回、大平内閣における大平首相なり園田外相はきわめて敏速にこれに対応して、中国、ベトナム両国に対しても紛争を拡大しないように協力してもらうことを努力し、また、十九日朝には、ポリャンスキーソ連の駐日大使とも会談して、平和的解決の合意を得たということでありますが、問題は、その合意の内容ですけれども、武力行使の即時停止、他国からの軍隊の撤退の要求、そういうものをポリャンスキー大使は十分にのみ込んで合意を与えてくれたのでしょうか、その点を承ります。
#39
○国務大臣(園田直君) 私が中国側に対して即時停戦、軍の撤退を強く要望したことはポリャンスキー氏に詳しく説明しておきました。向こうも理解されたところであります。
#40
○戸叶武君 問題は、中国とベトナムでありますけれども、ベトナムの背後にはソ連の支援があり、中国とアメリカとは接近している。日本も日中平和条約を締結してソ連に対抗しようとしているんじゃないかという疑心暗鬼がソ連にはいまだに解けていないようでありますが、ポリャンスキー大使の園田さんとの会談における対応の具体的な内容、その表現はどのようなものでしたか。
#41
○国務大臣(園田直君) 会談の内容を全部申し上げるわけにはまいりませんけれども、少なくとも日本が戦争防止、拡大防止、こういうことで強く申し入れしていることについては理解があったようで、ソ連側の不満を言えば、さらにもう一歩進んで悪い者は悪いときめつけろ、こういう点が足りない、こういうことでありますが、大体、私の中国にやっておりまする要請については理解されたようで、ソ連は一貫して戦争反対、戦争拡大防止、この一貫したことは御理解を願いたい、こういう話でございました。
#42
○戸叶武君 ポリャンスキー大使が夏休み前と夏休みに帰った後の日本に対する考え方が大分柔軟に変わったという説もありますが、いままでソ連内における共産党の四位ぐらいの地位を占め、食糧問題の責任を負うて日本の大使になり、当初はソ連からの指令どおりに動いたのだと思いますが、冷静な方ですから、やはり日本の現実を見、また日本の人たちの考え方というものをある程度理解しようと努めて、モスクワに帰ってから、ただ硬直した姿勢だけでは日ソ間のむずかしい問題は打開できないというところまで、聡明な方だから、心境の変化が来たんではないかと思われる節もあるんですが、園田さんも直観力においては非常にすぐれた人ですが、その会談を通じてどういうようなあなた自身の受けとめ方ができたでしょうか。
#43
○国務大臣(園田直君) ソ連との話し合いは、正直に言うと領土問題以外は非常にお互いに話が通ずるわけでありまして、現に経済問題、民間の会談等は順調に進んでおるわけであります。この問題に対しても、非常にわかりのいい話でありまして、今度の中国に対するソ連の考え方を述べられた後、日本もこれが大規模な戦争にならぬように協力を頼むという話でございました。
#44
○戸叶武君 いま園田さんが言われているように、領土問題に関しては、われわれが想像する以上にソ連の首脳者はかたいんですが、これら領土問題についていろんなやはり重荷をソ連は背負っておるので、われわれが考えるように簡単にソ連がいま変わり得るとは思わないのですが、問題は、ソ連でなく、日本にあると思うんです。
 ソ連との友好親善は結構でありますが、ソ連の外交に対するペースにそのままうのみに埋没するようなことがあってはソ連を変えることはできないんじゃないか。日本の政治の中において一番欠けているのはみずからの主体性であります。主体性という言葉を口にしながらも、主体性がなくて相手の顔色だけを見てソ連に対応する悲しい風潮が戦争後日本には存在するのでありますが、園田さんは、一応ソ連の回答を求めたんじゃないが、日中平和友好条約を結んでからだとソ連側からいろんないちゃもんもつけられる危険性もあるし、誤解を招くおそれもある。ざっくばらんに自分が飛び込んで、言いづらいことだが、こうこういう態度で日中平和友好条約を結ぶんだということをソ連側にぶちまけてお話ししてきた。このことによって園田さんはずいぶんソ連側からも警戒されたようですが、外交というのは相手の顔色を見てやっちゃだめなんで、相手と腹をたたいてそうして胸襟を開いていくことが外交の難問題のとびらを開くことで、あのことは私は後でやはり相当に評価されてくると思うんです。そういう意味において、どうも園田というやつはいやなやつだと思ったが、案外率直に物を言うやつだというぐらいの評価には変わってきつつあると思うんです。ソ連側としては、ソ連側の在来の日本観というものがやはりこびりついております。で相互で話し合いと言っても、お互いに胸襟を開くところまで来なけりゃ、幾ら話し合いをしても、オープン・ザ・ドアと言ってドアをたたいてぶち壊しても心は通じないものです。そういう意味において一番むずかしい問題とオープンに話し合って、そうして語り合って、激論をやってでもそれによってお互いの立場は理解できると思うんです。
 今後においても、日本の固有の領土返還というものが確認されなければ、主権者である人民、国民の合意は得られないということをソ連側に、いますぐというわけじゃないけれども、理解されなければ、日ソ関係における平和条約は結ぶことが困難であるということをのみ込ませるのには、どういう手段、方法、プロセスを経ていかなけりゃならないとあなたは考えておりますか。
#45
○国務大臣(園田直君) 外交はすべてそうでありますが、特にソ連に対しては、いまの御発言のとおり、主張すべきものは主張し、ただすべきものはただし、こちらの立場を理解せしむるためには率直にこちらの立場を申し述べ、その上で向こうの主張も立場も理解をし、これを粘り強く繰り返すことによって腹蔵なく意見の交換ができる雰囲気をつくる。同時に、一番問題である領土問題ばかりでなく、共通の利害である経済問題やその他の問題については誠意を持ってお互いの繁栄のために話し合い努力をすることが必要だと、これを繰り返すことによって糸口が出てくると考えております。
#46
○戸叶武君 一番の難問題は領土問題でありますが、領土問題だけに埋没して前進できないということは、平和条約においては不可能であっても、ないのでありますから、やはりシベリア開発なり経済協力なりというものはあるところまで具体的に話し合いによってはなし得ると思うんですが、いま一番混迷を呈しているのは、与野党を通じて北方領土、固有の領土の返還をあたかも選挙や政争の具に供しようと思って感情的にあおりをかける、まあ一部の商売人は別として。そういうことが不必要ないら立ちをソ連側にも与えているのが事実であることと、もう一つは、相当の学究と思われる人でも領土問題の原点がどこにあるかということに対して思いつき議論が余りにも多いし、そういうソ連に同調するようなことを言えばそれが親善だと思って逆に日ソ関係を混乱させている向きがあると思います。
 一つの問題は、二島返還か四島返還かなどという議論もそうですが、議会民主主義のルールによると、四十八年の段階において、衆参両院において四島の返還ということは国会で議決されておるのであります。それにもかかわらず、党の議論でこの国民的な合意を得るであろう常識的な結論というものをほごにするようなことだと、それが日本のためソ連のためになると思っているのかもしれませんが、それでは民主主義のルールというものは確立しないのであります。
 それ以上に、たとえばサンフランシスコ平和条約においてすでに日本は領土放棄を宣言しているじゃないか。代表の吉田さんにそういう言動があったのは事実であるが、われわれ革新陣営の者はあのような不平等条約には反対であったはずであります。反対の主たる点は、アトランティックチャーターにおいても盛られているような、戦争が終わって、戦争に勝ったからといって他国の主権を無視して領土を取るようなことはしないというのが、これが第二次世界戦争後における平和条約締結の基本的な理念でなければならないのであります。それがひん曲がったのは、一九四五年二月十一日に、アメリカの国務省のソ連担当の者が秘密裏に動いて、ルーズベルト、スターリン、チャーチルの三者会談によって、ヤルタにおける戦時中の軍事秘密謀略協定において他国の主権を無視した領土の譲渡というものの密約が成立したんですが、ベルサイユ平和条約のときですから、ウッドロー・ウィルソンが、連合国とイタリアの間で締結された戦時中の軍事秘密協定、一九一五年におけるロンドン協定、このようなことは次の平和条約の阻害になるだけであって効果はない、われわれは民主主義を守るために、平和を獲得するために海を渡って青年を犠牲に供したというので、これはほごにされていったのであります。
 あの段階においても、それだけに、日本の外務省あたり、あるいは政府の御用学者が古い役に立たない憲法や国際法を引用するのと違って、世界の歴史の発展というものは平和を保障すべき条件を具備しつつ歴史の進展を図っているのでありまして、これに逆うことはできない。しかし、そういう失敗にくみしたがゆえにアメリカも共犯ですから――共犯と言っては悪いけれども、領土問題に対してきわめてあいまいな態度しかできずに、吉田さんもまた相当な人物であったが、何といっても宮廷外交官でその習性が抜けないから、言うべきことを言って闘わなかったから今日のような不徹底な領土問題未解決の状態が起きたんですけれども、これはわれわれの要求というよりは国際世論として当然前進しなければならない新しい国際法の理念でなければならないのであります。
 このことをソ連としても――ソ連だけじゃなくアメリカでもイギリスでも、まずいことをやったと百も承知しているから、非公式にはあれはいまごろ役に立たないんだということを口の中で言っているでしょうが、公ではそれのけじめがつかない。こういうことは率直にアメリカなりイギリスなりソ連なりが話し合って自発的に解消していくというだけの見識を持たないと、これこそ覇権主義の尤たるものであって、私は、今後における国際関係が非常にむずかしい段階に、世界の中におけるアメリカの外交、世界の中における日本の外交、世界の中におけるソ連の外交、その位置づけが行われなければならないときに、こんなゆがんだ一つの政治哲学においては国際関係のルールは壊されっ放しで収拾がつかないと思うのです。
 そういう点において、このことはなかなか時間がとれると思いますが、思いつきの議論はやめて、もっとやはり文明史観と哲学の上に立って、日本の平和憲法なり国際連合のあの精神なり、われわれが核拡散防止条約を批准した精神なり、それを盾とし、しかも現実的にベトナムにおける昔なら戦争にいくような紛争を、率先して火中のクリをも拾うつもりで、よく話をすれば中国でもベトナムでもソ連でもアメリカでもわからないはずはないのです。このことをあいまいな形でうろちょろしないで、祈るような気持ちで問題解決に当たるならば、私はアジアにおける平和の方向づけが具体的にこれによってできると思うのです。変なふうな形いおいて再軍備を強化したり、賄賂をもらいながら変な軍用機を整えたりしても、道義が腐った政治や外交によって人々を動かすことはできないです。気違いに刃物です。われわれは抽象的な形で物を言っているのじゃないが、烈々たるヒューマニズムの真心をもって、かつては敵と思っている者、考え方の違う者、民族を乗り越えても、それを説得し得るだけの外交の躍動が園田さんあたりにはできると思うのですが、あなたの方の確信はどうですか。
#47
○国務大臣(園田直君) 御発言のとおりでありまして、ただいまの御発言の趣旨をよくわきまえて最大の努力をする覚悟でございます。
#48
○戸叶武君 私は園田さんびいきというのじゃないけれども、園田さんは一身を投げ捨てて日中平和友好条約もまとめようとした、単なる剣道の達人じゃなくて、人を説得する体と心をぶっつけていくだけの私は土性骨があると思うのです。
 いま、これは日本と中国だけのことだというので、いろいろソ連のような疑い深い国においては、日本のやることは松岡洋右やあの東条なんという連中にひどい目に遭ったからという前の不信感がまだこびりついていると思いますが、原爆の洗礼を受け、日本民族だけでなく、世界のどの民族をもあのような悲惨な目に遣わしちゃいけないという悲願を込めて日本が外交をやっているのだということが私は各国の人たちに通るならば、いまのSALTの行き詰まった状態――行き詰まったんではなく、デタントの方向へソ連もアメリカもいかなければ、私はマンモスの化石みたいに両方とも武器を持ったまま残骸を後世に残すように滅びていくと思うので、その危機がアメリカでもソ連でもわからないはずはない。問題は、だれが粘り強くそのことを主張して――この行き詰まった状態の中から、平和共存体制の確立以外に、核兵器をなくする以外に、軍備をなくするように努力する以外に、世界の行き詰まりを打開することはできない。景気問題やなんかも、いまごろいろいろいじって土地問題やなんかもやっていますが、このままでいけばまたインフレですよ。こんなことを繰り返していたらどうしようもない。
 これは外交にはすべて問題があるが、結論的に私がお尋ねしたいのは、アメリカが石油ショック以前から軍需品だけでなく、エネルギーの問題と食糧の問題を戦略物資として取り扱ってきて以来、ニクソンがダレス以来の封じ込め政策はだめだ、もっと市場を開拓し――市場だけでなくって、東西の話し合いの場を広げなければアメリカ自身もまいってしまうという形で、私は中国、ソ連へも訪ねたと思うんです。田中さんでも、いろいろこのごろは評判が悪いけれども、やっぱり素朴な感情は、古い形の反共主義者のような形だけでは世界の中に日本の活路はないと思って、彼は彼なりの人生観なり世界観で、悪いとは知りながらも、あるいはそういうとき道義的に欠如したものがあったのかもしれませんが、まあ一生懸命やったんだと思うんです。
 いまのような状態だと、政治の中に見識の躍動がなく、官僚の中に聡明な人がそろっているけれども、悪いやつに命令されれば、権力の中枢にいるんだから仕方がないという形でモラルを失って何だかわかんないようなことをやっているんじゃ、これは政治への不信感というものがいつかは爆発します。あの世界経済恐慌の中に浜口さんなり、井上準之助なり、犬養毅でも相当な人物であったはずですが、重大なときに金本位制というようなことにこだわり過ぎて、日銀官僚なり大蔵官僚の古い一つの通貨政策なり基軸通貨に対する構想なりから出ていけなかったから、かえって統一のない、大衆の支持を受けないような形で自滅していったと思うんです。見てごらんなさい、もう二、三年景気がよくなると言われっ放しで、牧童がオオカミが来るという、あのだまし方と同じような結果をいつまで政治家が続けるつもりか、私は不気味な一つの地鳴りが始まっていると思うんです。
 だから、われわれ国会にある者が、われわれは政権を当分――あるいは急に来るかもしれませんが、取れないかもしれない。しかし、いま野党のやっている役割りというものは、漫然たる政府の発想能力がなく、創意を欠いているこのマンネリの、ふん詰まりの政治外交に対して、小さな揚げ足取りや、何だか外務省の外郭団体のような形でテレビか新聞にでも出れればいいんだというような問答をやっていたんでは国民がしびれを切らすと思うんです。その点では園田さんははっきり物を言う点でよくひっかからないなと思うけれども、やっぱりあなたが誠意があるから、あれは大まじめでやっているんだから園田にも腹を切らせるわけにいかぬというんで危ない橋も渡れるんだと思いますが、やはり身をなげうっていけば鬼神をも退けさせるんであって、私はいまソ連がわからず屋のうちは余りちょいちょい安売りのお医者みたいに打診に行くことはできないが、ソ連自身がいまのポリャンスキーさんのようながんこ一徹の人ですら幾らか雪解けで、その点でどうもソ連やヨーロッパより日本の方がことしは暖かくなって困ちゃっているんですが、そういうソ連の中に、中国の中に、いままでのようなばかげた権力主義やイデオロギーだけでは民衆を動かすことはできないということが私は必ず大衆の中から吹き上がってくると思うんです。そういう意味において、みずからの態勢をつくることによって、ソ連なり中国だって日本はがんこと思おうが、中国のペースにだけ乗っからないで、何か友好商社のことばかり熱心で往来した政治家が多かったなんて笑われないように、そういう意味において日本みずからの政治姿勢をつくることによって今後の外交も変えたいと思うんです。
 そこで日本の生産の原点に携わっている多くの人に、もっとざっくばらんに中国やソ連も見させ、ソ連の知識人あるいは各層の人にも日本を見せ、ストリップを見せるというんじゃないが、日本人の腹はこのぐらいでっかいんだ、こそこそ秘密なんかやらないで、こういう根性で一生懸命働き、通じないところもあるが一生懸命やっているんだということを見せる人間交流と技術交流、経済的な協力、こういうことが必要だと思いますが、先ほど外務大臣は領土問題のことはなかなかむずかしいが、その他のことではというふうに一応触れたようですが、具体的にどういう問題がいまソ連との間に話し合いに乗って実を結ぶような状態にまで来ているか、ソ連に何らかの変化の徴候があるか、そういう点をこの際承っておきたいと思います。
#49
○国務大臣(園田直君) ソ連の日本に対する態度を一言にしてきついとか、やわらかいとかと言うわけにまいりませんけれども、先般、御承知のとおり、民間を中心にする貿易・経済の会合が開かれたわけで、ソ連から各省の次官クラス及び貿易次官とかが出席をして、きわめて話はうまく進んだわけでありまして、しかも次の結論を出すべく会合まで話が進んでおります。なおまた事務合同会議等も逐次話が進んでおる状態でございます。そういう話が進んだものは、それを系口として、いまおっしゃいましたように、日本の実情をよくわかってもらう、日本もまた向こうの実情をよくわかるということに、この上とも努力をして、誠心誠意やりたいと考えております。
#50
○戸叶武君 そこで、この間、日本を一番よく知っている人の一人であったイシコフさんが政界を退きましたが、あの人はやはり水路の問題、漁業の問題等において二十年以上極東の海や魚を見て暮らした人で、あるところまで私は漁業問題に対しての柔軟な姿勢も持ち、最悪の場合においても日本ともっと話し合わなければならないと言って前向きの姿勢で取っ組んできた方だと思うんです。
 しかし、あの人が政界から退いても、ポリャンスキーさんたちも本当に日本を知ろうというので、この間、北海道大学なんかに行って、そうして自分の演説は短くして、みんなからの話を聞こうという謙虚な態度で取っ組んでいるというのを聞いて、革命家というのはどこでもおしゃべりで、革命やるために演説ばかりやっているからおしゃべりだが、聞く耳を持ってきたというのは、これはわれわれもポリャンスキーさんみたいに学ばなくちゃならぬと思ったんですが、そういう意味において、私は、相当一流と思われる革命家が、とにかく日本人の心をかち取るのにはやはりみんなから率直な意見を聞かなけりゃならないというふうに、耳をそばだてて聞こうという形に、このごろ見ると、耳相が、人相の中で耳相というのが一番大切ですが、全くよくなったようであります。これから見ると、コワレンコ君なんかは、あれで博士になったというので本を送ってきたけれども、あんたの引用している外交事例というものはソ連の外務省にある、外交文にあるソ連的解釈のもとにおける資料であって、国際的には通用しないよと言ってやったが、余り言ってもやっぱりそれにこっている人には通じないから、そのうちにゆっくり一つの国際社会において通用するような新しい国際的なルールをお互いにわれわれはどういうふうにつくるかということの意見を交換したいと思います。
 やはり日露戦争において負けたときのウィッチのアメリカへ行っての、負ける前からポーツマス条約に至るまでの、自分を変えていくために専念した苦心談というものを私は知っておりますけれども、すばらしいものです。やっぱり人間がサルと違うのは、サルは自分で変わろうとしてもなかなかどこか脳みそが人間の構造と違うので変えにくいようだが、人間は相当がんこなやつでも変えようとすれば自分の意志によって革命ができるんです。革命で一番困難なのは自己革命です。ソ連ですらも、中国ですらも、いま音を立てて大きな転換の時代に即応するような一つの変化をわれわれは身につけなけりゃならないという動きがあるのに、いまの日本の政治家や財界人や、あるいは当たりさわりがあるからその他言わないけれども、いろんな各層のリーダーがいまのような石頭とマンネリでは、私は、世界の動きに即応してタイミングの合う一つの発想の転換はできないと思うんです。
 外務省の方はこのごろ非常に評判がいいようですが、やはりそれはよそを見て、かわいい子には旅をさせろというように、外国を見て、これじゃいかぬという気持ちが起きているようですけれども、問題は――もう時間がありませんから、それでは、私は、過ぎたるは及ばざるがごとしで、これ以上やらないことにいたします。これで終わります。
#51
○渋谷邦彦君 大臣、連日の御活躍で大分お疲れのようでございますが、あと少々のしんぼうでございますから、聞きとれないところも先ほどあったようでございますから、よろしくお願いしたいと思います。
 これからお尋ねしたいことは、中越紛争に関することでございます。ともあれ大変残念な事態になりました。すでに外務省あるいは防衛庁におきましても、収集された情報の中からさまざまな角度に立っての分析がなされているようでございます。一方、きょうあたり伝えられるところによりますと、われわれが一番懸念しておりますベトナムの正規軍との衝突、あるいは拡大の方向へいくんではあるまいか、かと思うと、中国軍は撤退を開始したんではあるまいか、その辺で大変情報が混乱しているようであります。いずれにせよ、今回のこういう事態は好ましいことではございません。政府としてもいち早く中国、ベトナム両方に対しての平和的な解決についての強い要請がなされたことも伺っております。
 さてそこで、せっかくきょうは防衛庁の方おいでになっていらっしゃいますので、今後のこの事態の推移というものは、即断はできないと思うんでありますが、これが拡大の方向へ向かうのか、あるいは短期的に収拾の道が十二分に考えられるのかという点でございます。この方向いかんによっては極東全体に対する重大な影響が出てくることは論をまつまでもございません。特に日本としては最も関心を寄せなければならない今回の問題でありますだけに、その辺をどのように見ながら、今後どういう推移をたどるであろうかという、これは予測の域を出ないだろうと思いますけれども、その辺は専門的な立場に立っての分析、一番新しいデータに基づいての見解をまず最初にお示しをいただきたいというふうに思います。
#52
○政府委員(岡崎久彦君) お答えいたします。
 今回の中越紛争の中国側の意図につきましては、まず中国側の公表しておりますとおりに、国境紛争問題の解決、あるいはそのほかに昨年来の中越あるいはベトナム・カンボジア関係等の種々の経緯がその背後にあると存じます。かかる情勢から判断いたしますと、今回の中国の作戦は軍事的には種々の意味で限定された目的を持つ作戦であろうというふうに一応推定しております。
 具体的にいかなる限定された目的かと申し上げますと、中国の申しておりますベトナムの行動に対する一種の制裁、反撃、あるいは戦略的にもしその効果を考えますならば、ベトナム・カンボジア紛争に対する牽制というようなものではないかと考えられます。
 このように防衛庁といたしましても中国は限定的な軍事行動を意図していると考えておりますけれども、いずれにいたしましても、これはもうすでに戦闘を開始したことでございますので、今後の推移いかんによりましては、これはもちろん大規模衝突に発展する可能性は排除できないということで、重大な関心を持って事態の推移を注目してまいりたい、そう存じております。
#53
○渋谷邦彦君 防衛庁における岡崎さんのいまのお立場というのは非常に重要な位置に置かれているということを伺っております。さまざまな世界情勢の分析等もおやりになっているやに伺っております。
 過去の戦史を振り返るまでもなく、確かに日本もそういうわだちを踏んだことがあるわけです。不拡大方針というものを打ち出しながら、そうして拡大していったあの忌まわしい太平洋戦争のことに思いをいたすまでもなく、それとは異質の今回の状況かもしれませんけれども、戦争というものはえてしてそのきっかけいかんによって、あるいは収拾の方向をたどる場合もありましょうし、あるいは拡大の方向へいく場合もあるのではあるまいか、こういう点でわれわれは非常に懸念をするわけです。
 そういったところをもっとシビアに分析をなさっているのかどうなのか。ただ中国側が確かに限定戦争である、領土侵犯に対する制裁措置であるということだけで果たして済まされる問題であろうか。それにはもっともっと根深い一つの背景というものがあるのか。防衛庁さんは、すでに政治的な判断に基づくあり方ではないかというようなことも表明されているように伺っております。となれば、中国とベトナムという関係においては長い歴史の間においても大変深刻な根深い問題が横たわっているわけですね。それが政治的な確執に基づくものか、あるいはいま申し上げたように歴史的な経過とあるいは民族的なそういう問題というものが背景にどうしても抜き差しならないという、そういうものの対立というものが今回のいわゆる国境侵犯ということに名をかりて紛争が起こったのか、あるいはもう全くそれとは別個の、ソビエトを牽制する一つの意図のもとに行われたのかどうなのか、いろんなそういう軍事的な面、あるいはいままでの中国とベトナムという両国間における長い歴史の経過の中においての葛藤なのか、そういったような分析も当然やはり高い視野から見ていかなければならない、そうでないと根本的な解消というものはなかなかむずかしいのではないだろうか、こんなふうに私は見ているんですけれども、いかがでございましょうか。
#54
○政府委員(岡崎久彦君) 中国とベトナムの関係につきまして、歴史にさかのぼりまして判断するというようなことは、これはむしろ外務省の所管の問題と存じますが、われわれとしても、中越関係が悪化いたしましたのは、大体、昨年の初め以来と考えます。今回の中越関係の悪化は、それ自体とりましても過去一年間のことでございますし、その背景には、御指摘のとおり、これは非常に長い歴史における中国とベトナムとの間の、特にベトナムの方からの民族的な反発感情、あるいは中国の歴史的な支配に対する反発、そういうものが当然あるとは存じております。ただ、防衛庁といたしましては、日本の安全保障あるいはアジアの安全保障という観点から情勢を注視しているわけでございますけれども、現在の中国の行動そのものにつきましては、これは先のことは予断は許しませんけれども、現状におきましては限定的目標を持つ作戦であろう、そういうふうに理解しております。
#55
○渋谷邦彦君 これからも静観した方がいいのか、拱手傍観していった方がいいのか判断に非常に困るわけでありますが、中国が依然として戦況の推移については沈黙しているというふうに伝えられておりますね。一方、ベトナム側は大変なかくかくたる戦果を上げているというようなことが伝えられている。この辺が拡大に結びつくのか、あるいは収拾の方へ向くのかという一つの要素になり得るのかどうなのか。あるいは中国も世界世論というものを相当警戒しながら、かてて加えて中ソ国境あたりまで飛び火するのではあるまいかというようなことから、沈黙を守りつつ隠密裏に撤収が始まっているのか、できればわれわれとしては早く撤収をして平和的に解決をしていただくことが非常に望ましいわけですけれども、なかなか中国を軸にしてその取り巻く環境というものは必ずしもわれわれが願っているような方向にいくだろうかという、そういう疑念も持たざるを得ない、そういういま客観情勢であろうと思うわけでございます。
 そうした観点に立ちますと、果たしてこれからの推移がどう一体動くのか。いろいろあるようですね、軍事力から見ると中国側はむしろ劣勢を伝えられている、あるいはベトナム側はソビエト側からの武器の供給を受けて、大変近代化された装備を持っている。となりますと、そこにむしろ装備の点ではベトナムが非常に優越感を持っている、攻めてくるならば来い、いつでも迎え撃つぞ、こういうことになりかねない、これは非常に単純に見た場合です。その背景に、一体、政治的な収拾というものは果たして望まれるのかどうなのかという、そこらあたりまでやはり分析をしていきませんと、今度日本としてどういうふうに取り組まなければならないか、あるいは対応しなければならないかという判断が要求されてくるであろう、こう思うからいまお尋ねをしているわけです。
#56
○政府委員(岡崎久彦君) 非常に立ち入った分析に基づいた御質問で、お説のとおりなんでございますけれども、若干時期が悪いと申しますか、いまベトナムの情勢については、御指摘のとおり非常に混乱した情報が入っておりまして、これにつきましては各国政府の内部の情報関係者の間でも必ずしも本日の時点ではどうもはっきりした情勢が把握されていないようでございます。やはりこれは限定作戦で終わるのか、あるいは一部に報道されておりますように、主力が衝突している可能性があるのか、そういう一番基本的な事実さえもちょっと確認できない情勢でございます。
 これは一つはあの地域が各主要国にとりまして非常に遠隔の地域にございまして、特報収集が困難だということがございます。それからまた社会主義国同士の戦争でございまして、外部に対する情報の提供の仕方が普通社会主義以来の国の場合とは非常に異なるといういろいろな情勢が重なっておりまして、その基本的な事実関係から本日の時点では非常に困難な状況にございますので、先のことを卜するのにも非常に困難が伴うという事情でございますので、御了解いただきたいと思います。
#57
○渋谷邦彦君 日本といたしましては、最悪の事態というものは常に想定しながらその対応というものを考えていく必要がある、これはいつの場合でもぼくはあり得るのではないだろうか。今回の場合が単なる国境侵犯問題だけに限定されているのか、あるいはカンボジアのポル・ポト政権を擁立援護するための一つのデモンストレーション的な行動なのか、そういう点においてもいろいろな配慮というものがなされていかなければならない、また政府としてもその面に立っての今後の折衝というものが望まれてくるであろう、こう思うわけですね。そうした二面が考えられるという点についてはいかがですか、ポル・ポト政権に対する問題を含めて。
#58
○国務大臣(園田直君) 中国側は、現実には、カンボジアの問題その他過去の問題は一切言葉にしないで、ベトナム側がしばしば侵犯をしたから、反撃、自衛であるという点だけ言葉で言っております。しかし、問題は、歴史的な伝統もありまするし、近い過去、最近の状態では、ベトナムから中国は面目をつぶされたようなかっこうにもなっておりまするし、それからいまおっしゃいましたカンボジアの政権についての側面援助その他もいろいろあるのではなかろうかと思いますけれども、これは第三国のことでありますから、推測にすぎません。
 現状は、北部山間地帯は御承知のとおり非常に険阻な山でありまして、部隊の行動、補給等も谷間のような隘路を通っておるわけでありまして、しかも雨期が迫って霧は深い、飛行機の偵察その他の写真撮影等はきわめて困難な状態でありまして、われわれが判断する資料というものは各国からの情報を総合して判断したものにすぎません。それにいたしましても、現状では、いままでの経緯を大体総合してみると、間違いなかろうと思われるのは、中国正規軍は、深いところで国境から二十キロ、浅いところで十キロぐらいの山間地帯におって、そしてベトナム軍と戦闘を継続しておる。継続というのは続いておるというのじゃなくて、停滞をしたり戦闘があったりしておりますが、どうやら中国の正規軍が山間地帯でやっている、これを防止しているのは民兵の方がベトナムは多いんじゃないか、正規軍はハノイ周辺に展開をして、山間地帯にいままでのところは進もうとしない。
 こうなってまいりますると、冷静に第三者として批判すると、山間地帯まで侵入をした、そこでさあ話し合いをしようと。ところが、ベトナムはこれ心得ておりますから、後方に下がってじっくり構えて話し合いには応じない、われわれはあくまで反撃をする、こう言っている。こうなってくると、話し合いのきっかけというのはなかなかない。そこで中国は山間地帯から平地におりるか、あるいはベトナムのハノイ周辺におる正規軍が北方に向かって前進をするか、こういう段階まで行かなければ話し合いという空気は出てこないんじゃないかと思われるが、また、一面、そういうことになると、これは大規模の両国の戦争になる可能性が非常に強い。そうなってくると、これに誘因されて渋谷委員がおっしゃったような心配が非常に出てくる。この話し合いというのも、優劣が徹底的に決まるか、両方とも困るか、何かかっこうがつかなければ話し合いというのはなかなかいかぬわけでありまして、このかっこうがどうつくのか。しかも雨期を控えております。補給も相当楽ではない。そこへ沈黙を守っておりましたソ連がベトナムとの条約によってわれわれは義務は間違いなしに履行するぞ、こういう警告を発しておるわけであります。
 いまのところは、ソ連の意向を聞いても、戦争反対、拡大防止が一貫したことであると言っておりまするし、一方またベトナムに対する義務は尽くすというものの尽くし方にはいろいろあるわけであります。兵盟の供給、物資の補給、あるいは直接武力の介入ということも考えられるわけでありますが、いまのところは、公算としては、これが大きな戦争、ひいては中ソ、米ソの対決にいくようなことは、米国もソ連も非常に警戒をしておるのではなかろうか。わかりませんけれども、米国はソ連に対してこの事態が大きな平和の障害にならないようにという申し入れをしておるようでありますが、ソ連の方はアメリカと共同歩調はとらない。共同歩調はとらないが、戦争拡大防止には一貫して自分は努力する、こういうことであります。
 また、私の方から、中国に対して厳重に、事の経緯は別として、力をもって紛争を解決することはまことに遺憾である、しかも再三再四自重を求めたところである。まず即時停戦、ベトナムから軍を撤退されよ、そうして平和的な解決をされよという申し入れに対しては、黄華部長からは、やむを得ずやったことである、われわれは話し合いをしたいと考えておる、こういう返答でありますが、果たして話し合いをするきっかけがあるのかどうか、これは非常にむずかしい問題になってきたと思っております。
 なお、ベトナムに対しても、同様、平和的解決をされよ。中国に停戦、撤退を申し入れたと同様に、貴国もカンボジアから停戦、撤退されたい、事の経緯は問わない。こういうことに対しては、ベトナムの方は、長々と今度の事件は中国の侵略であることは明々白々たる事実であるという事実を並べて、そうして最後には日本は中国がわが領土内から撤退するよう努力をしてくれというような話でございます。
 これが率直に申し上げた現状でありますが、いまのところは、これが拡大する可能性はないけれども、少なくともいまの状態ではこれが長期化するおそれがあるのではないか。長期化してくれば、これが渋谷委員がおっしゃったように、どのような不測の事態が出てくるか。特にソ連に対してわれわれが協力を申し入れ、ソ連もまた日本に対してこれが平和的に解決するよう停戦、即時撤退ということに日本は努力されよと、こう言っているところでありますから、重大な懸念と心配は持ちながら事態をじっと見ておる、こういうところが正直ないまの状況でございます。
#59
○渋谷邦彦君 非常に明快にお述べいただいたと思いますし、特に山岳戦のくだりあたりは、外務大臣のかつての御経験のお立場から非常に私関心を持っていま伺ったのです。
 防衛庁の方にもう一つ伺いますが、いま外務大臣のそうした情勢判断、これは非常に貴重だと私は思うんです。もし長期化した場合というような想定もないではございません。そうした場合に考えられるのは、ソビエトの出方だと思うんです。ただ手をこまねいているだけに終わるだろうか。あるいは中国の、何といいますか、国境紛争の目を別な方へ向けさせるための行動に出るものか、いわゆる中ソ国境紛争ということ。あるいはそうではなくして、いままで伝えられておりますように、軍事援助というようなことの行動に出る可能性の方が強いだろうというのが大体専門家筋の一致した見解でございますね。そういたしますと、いまもカムラン湾あたりの海上においてソビエトの巡洋艦が遊よくしておるわけでございましょう。かねてからソビエトはカムラン湾あたりに軍事基地の設定を強くベトナムに要求していることも伝えられております。ソビエトとして、勘ぐるわけじゃございませんけれども、あるいは一つのチャンスであるかもしれない。そういったような行動に出はしまいかということがまたいろいろな意味の極東に対する不安感を助長する上で、われわれとしては心配の種が出てくるわけでございますけれども、その辺はどのように判断をなさっていらっしゃいますか。
#60
○政府委員(岡崎久彦君) 今岡の中越紛争に対しますソ連の出方、これはソ連の出方いかんによりましては国際情勢全般に非常な影響を及ぼす大きな問題でございますので、ソ連としても非常に慎重に配慮しなければならない問題だと思います。
 これ自身国際情勢全部にわたる判断を要する問題でございまして、これはむしろ外務省の方からお答えした方が適当かと存じますけれども、純軍事的な面から申し上げますと、まず第一に、われわれとしては、中ソ国境方面につきましては、いまのところ何ら新しい動きがあるというふうな情報に接しておりません。それから南シナ海におけるソ連艦艇の動向につきましては、これは諸方面から情報が入っておりまして、新聞等に報道されております情報につきましてわれわれは必ずしもそれを否定するような情報も持っておりませんし、また、今年初め以来、ソ連艦艇が若干隻対馬海峡を通りまして南下してまいりました。通常の場合ですと、それはインド洋の方に抜けるのでございますけれども、それがインド洋の方に抜けたという情報もございません。特に一番最近は、いま仰せのとおりクレスタ級の巡洋艦でございますね、これは軍事力としてもかなりのプレゼンスを意味する軍艦でございますけれども、それが通っていきまして、これもあのあたりにどうも滞留しているのではないかと推定されます。そういうような状況でございます。
 それでまさにソ連の出方につきましては御分析のとおりでございまして、常識的に分析いたしますと、ソ越条約というものがあります以上、ソ連としてベトナムに対して何か支援するとすれば、北方で支援するか、あるいはベトナムの力に信頼して軍事援助等に集中するか、そのいずれかであって、軍事専門家の意見は、大体、とりあえずはベトナムに対する物資等の供与の面であろう、そういう御判断もそのとおりだと思います。
 また、これも御指摘のとおりでございますけれども、防衛庁といたしましては、これはやはり西太平洋における安全保障に及ぼす影響という点がわれわれの一番の関心事でございます。その関心事の上から考えまして一番私ども関心を持っておりますのは、ソ連がベトナムに政治的軍事的影響力をどの程度及ぼすであろうか、特に海軍力あるいは空軍力を同地域において行使するに際してベトナムという国の地理的地位をいかに利用できるようになるか、この点については非常に深い関心を持っております。
#61
○渋谷邦彦君 先ほど、外務大臣は、あるいは長期化するおそれがあるんではないかということも非常に大きな懸念として残る、そうしたことを踏まえた上で中国側に対する強い要請、それに対する黄華外相の回答。しかし、残念ながら黄華外相の回答だけで果たして先行きの見通しができるかどうかということになりますと、これは結論が出てないんですね、はっきり申し上げまして。
 もう一つは、今回の国境紛争というものはもう単発的に起こったわけじゃなくて、長い期間の中に行ったり来たり、行きつ戻りつというような、そういうようなことがあったんだろう、果たしてどの時点で国境侵犯したのかということも問題でしょう。ベトナム側に言わすればベトナム側の言い分があり、中国側には中国側の言い分がある。どちらにも言い分があるということになると、果たして、先ほど表明なさいましたように、平和への、あるいは話し合いへの糸口というものがお互いの責任を相手方に転嫁するという情勢のもとでは可能性があるんだろうか。で国連の方でも何とか早く事態の収拾をということで動いたような気配があるようでございますが、これも陳楚大使は国連の介入は断るというふうに伝えられているわけです。この辺の事実関係はどうでございましょうか。
#62
○国務大臣(園田直君) 国連の安保理事会は点呼の関係もあってまだいままで開かれていないわけでございますが、中国はこれに反対しておるばかりではなく、カンボジア問題と現在の紛争の問題をあわせて国連で協議することにも反対をいたしております。
 そこで、この安保理事会が開かれて、今度はわが日本も国連の場所も利用し平和解決に努力したいとは考えておりますが、しかし、可能性から言えばなかなか複雑微妙な立場にあるわけであります。ASEANの国々及びこれに関連のある国々、したがって国連で平和解決への結論ができるかどうかということもなかなか困難ではないかと見ております。
 ソ連の艦艇がおりますが、いまのところは、軍事行動と言えば軍事行動ですが、カンボジアに対する補給の海上からの封鎖をやっているわけでありますが、ソ連としては空路または海路の物資の補給、または武器の援助をやると存じますが、海路の補給にしては相当時間がかかる。その時間がかかる間に何か話し合いの糸口ができれば結構ですが、できなければ、これがじりじりと追い込まれてきて、ソ連の方もいまは平静だが、果たして黙っておれるかどうか。ただ、いまちょっと防衛庁から話がありましたが、ソ連の艦艇はあの港湾におりますが、米国の艦隊は警戒態勢ではなくて演習態勢であるとは言っておるものの重大な懸念を持っておるわけでありまするから、どっかに集結をしていると思わなければならぬ、これが常識だと。しかし、米国もソ連もお互いに事を構えたくないということについては一致しておりますから、ここで、直接、たとえばソ連から物資輸送をする、それをアメリカの艦隊が妨害する、ここで騒動が起こるというようなことは私は懸念しなくてもよろしいのではないか、こう思いますけれども、先ほどから申し上げますとおり、話し合いのきっかけというものをどうやってつかむか。
 一方、ASEANの国々は、私はこういう大事なときでありますから、ありとあらゆる努力をしなければならぬが、ASEANと足並みをそろえることは非常に大事であります。ASEANは今度のことによって中国に対して非常な懸念を持っております。外相会議を招集しようという意見もありましたけれども、これはいまのところまだ実現に至っておりません。ASEANの議長国はいまインドネシアでありますが、インドネシアのモフタル外務大臣はASEANをずっと歴訪して、あす、あさっては日本に来るわけでありますから、このモフタル氏ともよく話し合いをしてみたい。
 それから米国の状況は御承知のとおりでありまして、ケ小平副主席が行ってから相当好意を持たれたようでありますが、今度のことで再びアメリカの国民感情というものは中国に対してやや停滞をしてきた、こういう状況。
 それから外交、戦の駆け引き、これは第三国のことでありますから私が言うのは穏当でありませんけれども、どうもベトナムの方が一枚上じゃないかという気がいたします。こういうことも考えると、なかなか解決の糸口、かっこうをつけながら解決するということはきわめて冷たい。第三者の判断でありますけれども、しかし、判断は自分の立場をもって判断しなければなりませんけれども、なかなかきっかけがつかめぬのじゃないか、長引く、これは非常な心配で、先ほどおっしゃったとおり、またもとに返りますが、長引くと不測の事態が次から次に出てくる、こういうことを考えております。
#63
○渋谷邦彦君 風聞みたいなことをここでお尋ねするのはいかがかと思うんですけれども、やはり気になる問題でございますので確認をさしておいていただきたいと思うことは、先般、ケ小平副首相が訪米をいたしまして、帰り際、ブレジンスキー特別補佐官のところへ寄られて相当の時間懇談をされた。その際に、恐らく、今回の国境紛争、いわゆる制裁を加えるぞと暗黙の了解があったのではないかという憶測が乱れ飛んでいるようでございます。こうしたことについての事実関係というのはいやなかなかむずかしいだろうと思うのですけれども、そういうような予測は外務省ではどうでしたか、判断の一つの材料となり得たでしょうか。
#64
○国務大臣(園田直君) 具体的に首脳者会談の内容はつまびらかにすることはできませんけれども、私の知ったところ、推測等をいたしますると、まず、米国における首脳者会議では、米国は中国に対して非常な自重を望んだ。それから中国と提携してソ連に対決することはやらないというような基本的な話や、ここで中国が軽率に行動を起こすとアジアに非常な撹乱が出てくるということを強く要望したようで、意見は一致してはいるみたいであります。
 日本でも、大体、同様のようなことであります。こちらが相当強く私は外務大臣に話し、米国や日本の国民やASEANのこと等も話しました。しかし、依然として中国は事の言い回しは非常に慎重で微妙でありましたけれども、やはり中国は考えるときはじっくり考え慎重にやるが、やるときにはやる、こういうようなことでありましたから、何らかの行動が起こるのではなかろうかと予期はしておったところでございます。
#65
○渋谷邦彦君 そこで、何とかわれわれとしても早く事態の収拾ということが最も強い願望であることは、これはもう否定できません。したがいまして先ほど国連の介入という問題についての経過についてもお話がございました。これはもう当分望めないだろう。となりますと、じゃこのままただ要請だけしていいのかという問題が残ります。
 いまお話の中にもございましたように、ASEAN諸国の外相等の意向というものも十分また取り入れていかなければならないというこれからの段取りもございましょう。そうした中にあっても、やはり日本の立場というのは非常に微妙でありますがゆえに、話し合いのテーブルに着かしめるための仲介の労を政府御自身がいまこれから用意をしなければならないという腹づもりがあるかどうか。
#66
○国務大臣(園田直君) 聞きようによっては、中国の方もベトナムの方もなかなか意味のある話ではありますけれども、ただ、問題は、いまのところは中国は自分の目的を達成して話し合えというように判断しております。ベトナムはベトナムで、自分たちは少しもへこたれていない、だから早く中国を去らせろということで、もちろんそうでありますけれども、自分の国の立場から主張しているだけであって、そこへ日本がとかくやってみても調停の労はできるとは考えておりません。
 しかし、うぬぼれるわけではありませんけれども、少々の危険はあっても、これが大規模の戦争に拡大し、あるいは大規模な騒動にならないためには、ありとあらゆる努力をすることが日本の責任だと存じます。そのためにカンボジアに対するベトナムにもわれわれは侵略であるとか覇権であるとかきめつけておりません。中国に対してもきめつけておりません。両方に話し合いのできる数少ない日本でありますから、まずASEANと足並みをそろえ、次いではアメリカ、ソ連、関係諸国と密接に連絡をし協力を願い、あるいは国連の場においても何とかこれが話になるように、ある方法はすべて努力をする覚悟はいたしております。
#67
○渋谷邦彦君 重ねて、くどいようですけれども、いま努力をなさるというその御決意の中には、両方いま言い分があるわけでございますので、なかなかそのきっかけをつかむことは大変だろうと思うんですね。相手から要請された場合というのが一つのきっかけでもございましょう。しかし、いまの状況ではなかなかそのようなことは望めないような推移のようでございます。なれば、日本としていろんな話かけというものがあると思うんですね、中国側に対して、ベトナム側に対して。もうすでに外務大臣御自身が言われておりますように、どちらも敵ではないんだと。そうした一番やりやすい環境に置かれていることを考えますと、戦争というような最悪の事態を引き起こさないということを大前提に考えるならば、いまおっしゃったように少々のあるいは危険があるかもしれないけれども、むしろこちらからその時期を見て働きかけをし、調停の場もつくるというようなことも含めての努力なのかどうなのか。
#68
○国務大臣(園田直君) いまその時期ではないとは考えまするが、流動的な情勢を見守りつつ、少しでもそういう可能性ができ潮どきが出てくれば、ありとあらゆる努力をすべきであると考えております。
#69
○渋谷邦彦君 終わります。
#70
○立木洋君 外務大臣、暴支膺懲という言葉がありましたよね。大臣御承知だと思うんですが、かつて盛んに叫ばれた暴支膺懲というのはどういう意味だったでしょうか。
#71
○国務大臣(園田直君) 一言にして言えば、暴支膺懲で日本は失敗したと思います。
#72
○立木洋君 いや、その暴支膺懲の中身をちょっと言ってやってください。
#73
○国務大臣(園田直君) それは読んで字のごとく、不当なる中国をこらしめてやる、こういうことであります。
#74
○立木洋君 それはいつごろ言われた言葉だったですか。
#75
○国務大臣(園田直君) その時分は、私は年が若くて上層部におりませんでした。単なる前線の一隊長であるんですから、よく存じておりません。
#76
○立木洋君 つまり中国はけしからぬからこらしめてやるというのが、日本がかつて中国を侵略したとき、これが盛んに叫ばれてやられたことだったわけですね。そういう暴支膺懲という言葉が叫ばれて、中国に対してかつて日本がとった行為について、大臣、いまはどのようにお考えでしょうか。
#77
○国務大臣(園田直君) 先ほど申し上げたとおり、その一審によって日本は失敗をした、こう考えております。
#78
○立木洋君 だから、私は、いろいろ国家間に紛争があろうとも、これは平和的な話し合いによって解決すべきであるということが国連憲章でも決められたわけですし、そういうふうな日本のかつて中国を侵略して多大な犠牲を中国に負わしたという反省もやっぱりそこから生まれてきただろうと思うんですね。今日、御承知のように、もう繰り返して言いませんけれども、ケ小平中国副首相がベトナムはけしからぬからこらしめてやるということによって今度の行動を行ったという経過から見て、私はやはり非常に重要なことだろうと思うんですよ。言うならば、これは侵略の論理になる。ですから、これはもうくどくど言いませんが、いま日本の政府がこういう状況の中でどういう態度をとるかということは私はきわめて重要だと思うんです。
 先ほど、大臣は、これが長期化する可能性もあるし、そうなると大変危険だというふうに言われた。いま最も重要なことは、中国がベトナムの領土に入っておる部隊を国境線まで完全に撤退させる、でいま行っておる戦闘行為、これを直ちに中止するということになれば、これはまた別の局面が生まれてくるだろうと思うんですよ。先ほどのお話のように、深くて二十キロ、浅いところで十キロもベトナムの領土に入っておる状況のもとで話し合いというのはなかなかむずかしいだろうと思うんです。ですから、そういう全部隊が国境線まで撤退をするということができれば、これは新しい局面もまた生まれるかもしれない。そのために、いま日本の政府は厳重にこのことを中国側に抗議を私はすべきだというふうに考えますが、いかがでしょうか。
#79
○国務大臣(園田直君) わが方は、中国に対しては、しばしば、しかも強く即時停戦、撤退を要求しておるところであります。また一方、同様、ベトナムに対してもカンボジアから停戦、即時撤退を要望しております。こう言うと、ベトナムのカンボジアに対する態度と中国のベトナムに対する態度とは違う、こういうお説もあるわけでありますけれども、問題は、われわれは裁判官じゃないわけでありますから、どちらが不正でどちらが正かということではなくて、現実に国境を越えて軍が入っておるということ、戦闘が継続されているということ、これは直ちにやめられたいという要望を両方に対してやっているところでございます。
#80
○立木洋君 きのうでしたか、衆議院の予算委員会で、中国には抗議をしたと大臣言われた。私はこれはやはり重要なことだったと思ったんですが、ところが、けさの新聞を見ると、それを訂正した、遺憾の意の表明であるというふうになっているんですが、これはやっぱり日中平和友好条約を結んだ日本の立場として、厳しくこの問題については抗議をするということが中国の反省を促す一つのきっかけになるだろうと思うのですよ。その点を私は重ねて大臣に強く要望しておきたいわけです。
 いま言われましたベトナムもカンボジアに入っているじゃないかと、ですからカンボジアからの撤退をと言われますけれども、これはどういう根拠に基づいておられるんでしょうか。
#81
○国務大臣(園田直君) 事の理由を問わず、経緯のいかんを問わず、紛争を力によって解決すること、軍隊を他国に入れることは反対、こういうことで両方に停戦、撤退を申し入れているわけであります。
 抗議という言葉は、ベトナムの方に抗議という言葉を使っておるので、強く申し入れ、要請をするということで、わが日本としては、これを平和的に解決する方法、ありとあらゆる努力をしたいということを考えてみますると、ベトナムに抗議だとか中国に抗議というよりも、抗議以上の強い要請をやっておるわけでありますから、その方が現実に平和的に話し合いを持っていくためには効果的である、こう考えておるからでございます。
#82
○立木洋君 それはベトナム軍がカンボジアに大量に入っているというのは根拠がないわけですか、園田さんの言われるのは。
#83
○国務大臣(園田直君) 根拠あるなしにかかわらず、他国に軍隊を入れることは反対であります。
#84
○立木洋君 それはまさにおかしいと思うのですよね、根拠がないのにそういうことを要望するということは。これは御承知のように、先ほど大臣が言われましたけれども、中国とベトナムとの関係で言えば、双方の言い分が異なっておる、だから大臣としては、それは慎重に、どちらがよくてどちらが悪いというふうな言い方はしないと、経過的に言うならば。だけど、ベトナムとカンボジアとの経過を見ても、一方では、これはベトナムが侵略したという言い方をしていますよね。だけど、一方では、ベトナム政府はそういうことは事実無根であると再三述べている。カンボジアの救国民族統一戦線の側も、われわれ自身があの人権じゅうりんをした悪質なポル・ポト政権を打倒したんだということを言っているわけですよ。だから両方のことを、根拠がないならば慎重に考えて、そういうふうなベトナムの軍隊が入っているということに基づいて撤退を要求するというふうなことは大臣としてはいささかおかしいんではないですか。
#85
○国務大臣(園田直君) 少しもおかしくないと考えます。われわれはカンボジアとベトナムの問題も、どちらがどうだという判定は下しておりません。ただ、紛争を力によって解決をし、他国に軍を入れ、戦闘をやることは、これはわが日本としてはいかなる事由であろうと反対、こういうことを表明しておるわけであります。
#86
○立木洋君 ベトナムがカンボジアに入っておるというふうには考えていないと、外国に武力でいろいろやるというようなことはいかぬけれども、カンボジアにベトナム軍が入っておるという認識に立っているわけではないというわけですね。
#87
○国務大臣(園田直君) 現実としてはカンボジア領内にベトナムの軍が入っていることは御承知のとおりであります。
#88
○立木洋君 これはいろいろな情報がもちろんありますけれども、かつてアメリカは、一九六四年、トンキン湾事件をでっち上げてやったわけですよ。そうしてこれを北ベトナムに対する爆撃を開始する国会決議までアメリカはした。ところが、ニクソン時代にこれが全くのでっち上げだったということが暴露されて、アメリカの国会でも大問題になった。事実上、そういうアメリカの方の一方的な解釈に従ってベトナムに対するアメリカの侵略戦争に協力加担するような態度を日本の政府がとってきたということも、当然、反省されなければならないと思うんですよ。そういうような問題を考えた場合に、今日のような措置を言うというふうなことは私はきわめて遺憾なことだと思うんです。
 時間がありませんから、話を進めますけれども、それでは現在のカンボジアと日本政府との国交、外交関係はどういうふうになっているんでしょうか。かつて中国におられる佐藤大使が去年の八月でしたか、カンボジアの大使を兼任しましたですよね、その後の事態はどうなっているんでしょうか、外交関係。
#89
○国務大臣(園田直君) ベトナムとの関係はずっと続いております。カンボジアとの関係はいまのところは連絡はございません。
#90
○立木洋君 連絡がないということは、依然として佐藤大使はカンボジアの大使として可能があればポル・ポト政権との連絡をとり得るというふうな立場にあるわけですか、外交関係は存続しているわけですね。
#91
○国務大臣(園田直君) さようでございます。
#92
○立木洋君 ポル・ポト政権がいま合法的な政権だというふうにお考えになっているのかどうなのか。そしてポル・ポト政権はいまカンボジアの人民によって崩壊させられた、全然実効的な支配というのがなされていないわけですね。カンボジア人民を何ら代表していない、こことの関係を依然として持続しておるというふうな政府の態度というものは、これはいかがなものでしょうか。
#93
○国務大臣(園田直君) ポル・ポト政権は首都及び都市を放棄して、国内各地で遊撃戦をやって反撃をやっていると伝えられております。同政権が首都を放棄したからといって直ちに外交関係が消滅するものではございません。そういう意味で継続しているという返答でございます。
#94
○立木洋君 前段の情報というのは、これはポル・ポト政権が流している放送ですよ。
 現に、この間、一月の三十日でしたか、タケオの州都、タケオという町ですね、そこをポル・ポト政権が新しいカンボジア政府から奪還をしたというニュースが流れた。その同じ日に、その同じタケオという町で、カンボジアの町の人々が三千人集まって解放の祝賀集会を開いたという放送が流れた。アメリカのUPIですらいわゆるポル・ポト政権の放送というのは全く誇張で根拠がないというふうなことを言わざるを得ないような状態になっているんですよ。ここら辺の判断というのは私はやっぱり正確にしておく必要があるだろうと思うんです。
 このポル・ポト政権がかつて行ってきたカンボジア人民に対する大変な人権じゅうりんと、いわゆる大量虐殺ですね、これはポル・ポト政権のイエン・サリ副首相も、かつてこの問題については記者団に答えて、大量虐殺はやむを得なかったものだと言って、事実上認めておる。国連に対する報告でも、ポル・ポト政権が大変な悪質な残虐行為を行ったということが各種の報告によっても提示されておりますし、また、シアヌーク氏が、先般、国連の安保理事会に行ったときも、ポル・ポト政権が大変な人権じゅうりんを行っておる悪質な政権であるというふうなことが言われているわけですが、こういうポル・ポト政権について大臣はどういうふうな御認識でしょうか、大変結構だというふうに思われているのかどうなのか。
#95
○国務大臣(園田直君) ポル・ポト政権のやり方に対する批判は別であります。外交上の問題では、国連ではポル・ポト政権の代表の資格が争われるに至っておりません。シアヌーク殿下もポル・ポト政権の代表として認められた。
 なお、わが国は、佐藤兼任大使との間では、北京在住のポル・ポト政権の大使と接触を保っておる、こういうことであります。
#96
○立木洋君 ポル・ポト政権の政策とは別でありますと言いますけれども、私はその外交関係と絡めて言っているんではなくて、そういうことをやっておるポル・ポト政権について大臣はどういう御認識でしょうか、大変りっぱな政権だというふうに思われているのかどうなのか。
#97
○国務大臣(園田直君) 大変りっぱだとは思っておりません。
#98
○立木洋君 大変ではなくて、少しはりっぱなんですか、どうなんですか、その辺ははっきりしておいてもらわないと。
#99
○国務大臣(園田直君) これはもう第三国のことでありますから、委員会で私が何かれと批判するわけではありませんけれども、私は、いま発言されたようなことは中国に話をしております。
#100
○立木洋君 私は事実上実効支配が行われていない、しかもカンボジア人民自身の手によって崩壊させられたポル・ポト政権ですから、これについてはやっぱり私は関係を断つべきだ、そして、現在、カンボジア人民によってつくられておる新しいカンボジア政権を承認するという態度を私はとるべきだと思うんですが、その前に、今日の新しいカンボジアの政権についてはどういう御認識でしょうか。
#101
○国務大臣(園田直君) 現在の段階でカンボジア人民革命評議会側がカンボジア国内に有効な支配を確立したと判断することはできません。したがいまして外交関係では依然として前政権と接触を保っているわけで、新しい政権というものを承認する段階ではないと考えております。
#102
○立木洋君 新しい政権の救国民族統一戦線、これが出しておる綱領の中でも、また、今回出された樹立の宣言の中でも「人民の真の自由と民主主義の権利を実現し、人格の尊厳を尊重する。」また、対外政策の問題でも「政治制度、社会制度のいかんを問わずすべての国との平和、友好、非同盟の外交政策を実行する。」さらに「独立、主権、領土保全の相互尊重を基礎に平和的交渉をつうじて近隣諸国とのあらゆる紛争を解決する。」と述べられているわけですね。そしてかつてのポル・ポト政権が行った国境紛争、これを終わらせる。「東南アジア諸国との友好・協力・善隣関係を回復し、平和、独立、自由、中立、安定および繁栄の東南アジアの建設に貢献する。」ということが述べられているんですが、これは、大臣も、本会議で繰り返し東南アジアにおける平和と繁栄がきわめて重要だというふうに強調された、そういう趣旨から言っても、当然、この新政権が述べられている外交政策というのは歓迎されるべきものだというふうに思いますけれども、その辺はどうでしょうか。
#103
○国務大臣(園田直君) その文句で言われたところはりっぱであると存じますけれども、評議会がカンボジアの国内を有効支配しているという段階ではないと思っております。
#104
○立木洋君 私は、やっぱりカンボジアの事態というのは、御承知のように、カンボジアとベトナムとの関係において、これは国境の戦争があったということは事実だろうと思うんです。国内ではカンボジアの人民がポル・ポト政権の残虐な人権じゅうりんの態度に対して反対をして蜂起をした、そしてポル・ポト政権を崩壊に導いた。だから私は二つの戦争があっただろうと思うんです。
 国境における戦争の場合、不幸にしてそういう戦争が起こるということは当然避けなければならないけれども、ベトナム側と当時のポル・ポト政権、カンボジアの政権との間で、どちらが話し合いの態度をとり、どちらがそれを拒否する態度をとったのか、その辺の御認識はいかがですか。
#105
○国務大臣(園田直君) 新しい革命評議会政権と言っておりますが、われわれの情報では、その兵力は約五千から一万、独力で戦闘する能力はない。したがって、いろんないい政策を出しておられますけれども、まだまだわれわれがこれをカンボジア国内を有効支配している政権と認める段階ではない、こう思っております。
#106
○立木洋君 大臣は言わないから私が申し上げますが、こういう事態がカンボジアとベトナムとの間に発生したときに、ベトナム側は一九七六年の六月会談を申し入れた。ところが、これは多忙であるという理由でカンボジア側から延期された。さらに、七七年六月、再度申し入れをしましたけれども、情勢が平静になってからということで、これも延期された。そしてカンボジア側はベトナムに対して六千四百回にもわたる今日までの武力侵犯が国境地帯で行われた。七七年十二月カンボジア側が一方的に国交を断絶したんですよ。そういう事態の後も、ベトナム側は、七八年二月五日、七八年六月六日、明確に話し合いで解決すべきである、軍隊を双方に撤退し切り離して話し合いをすべきであるということを申し述べてきたにもかかわらず、話し合いがされないで、そして去年の十二月、二十三個師団にわたる軍隊をカンボジア側はベトナム国境に配備し、総攻撃を開始した。これは明白だと思うんですよ、どちらが力の政策をとっているのか。
 ラオスに対してもポル・ポト政権は武力侵犯を行っているんです。国境問題というのは、一九七〇年四月、三国の首脳会議が行われた席上で、国境の問題に関しては今後平和五原則の立場に立って、まだ一致していない点も含めて平和的に話し合いをしていきましょうということが三国の首脳で確認をされているんです。それが今日こういう事態で破壊されてきたという経過は私は明白だと思うんですよ。ですから、私は、そういう経過を十分にやはり政府が自主的に科学的に判断する必要があるだろうと思うんですよ。いわゆる外国のいろいろな情報によって右往左往するような態度を私はとるべきではないと。
 それで、もう一点お伺いしますが、新政権の承認の問題と絡んで、イランで人民がパーレビ国王のあの体制を崩壊させましたね。そしてこれは人民がかつてのああいうパーレビ国王の大変なやり方に対して反発をして、これを倒す、そしてバザルガン内閣首相が新しく登場してやったわけですね。そういう状況が全国的に大体つくられてきたというのが二月の十二日ですよ。日本政府は、直ちに二月の十四日、イラン駐在の大使が首相に会見をして、日本は友好的な関係を保っていきたいということで、そして現地において黙示の承認を事実上行ったわけですね。わずか二日間ですよ。これはかつて福田前総理がイランに行ったとき何と言われたか。ペルシャ湾の安全は日本の安全だということを述べて、パーレビ体制、あの当時人民から大変な反撃を受けておったパーレビ体制を福田さんは支持してきたんですよ。
 今度、ひっくり返った。二日間で黙示の承認を与えた。私はそれは結構なことだと思うんですよ。そういう素早く行動することができる日本の政府でありながら、なぜカンボジアの新政権に対してそれができないのか。ある一部では、これはやっぱり石油だと、日本というのはエコノミックアニマルで石油の問題があるからそういう態度をとったんだというふうに批判されても仕方がない、私はこういう外交姿勢というのは日本はとるべきじゃないと思うんですよ。そういう点から考えてみても、このカンボジアの新政権に対する態度というのは私は真剣に考えてもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。
#107
○国務大臣(園田直君) イランに対して黙示の承認を行いましたのは、イランの今度の革命がイラン国民の大多数によって行われ、しかも、その後、手がたく安定の方向に進められておる、こういうことで、石油があるからやったわけではなくて、これは当然他国におくれずに承認すべきであると思って承認しましたから、これは間違いないと存じます。
 ベトナムの言い分は、いまあなたのおっしゃったような言い分はベトナムからよく聞いております。今度の申し入れに対してもベトナムはそのように言っておりますが、カンボジアはカンボジアでまる反対のことを言っておる、しかも現状は御承知のとおりである、こういうことでまだ承認の段階ではないと思います。
#108
○立木洋君 私たちは赤旗特派員を現地に送って、国境も視察をして、われわれはベトナムのことをうのみにして言っているんじゃないんですよ、われわれ共産党のちゃんとした情報に基づいて科学的に分析しているんですよ。そういう私の言っていることがベトナムと同じようなことを言っているというふうな形で私は話をそらしていただきたくない。私たちはそういう立場をとっていないんです。
 それで、問題は、先ほどイランのことについてお触れになりましたけれども、中国の政府に対して、中華人民共和国に対して二十三年間も承認をしなかったんですよ、日本政府は。ベトナム民主共和国、いまは社会主義共和国ですが、これも二十数年間承認しなかったんですよ。最も近いアジアの国々に対してそういう間違った態度をとってきたという反省がこの間の中国との国交正常化じゃなかったですか、ベトナムとの関係を友好にしなければならないという態度ではなかったんでしょうか、日本の政府は。そういうことから考えるならば、この問題というのは私は真剣に考えないとだめだと思うんですよ。その点でのお考えを明確にしておいていただきたい。
#109
○国務大臣(園田直君) 過去の反省と国際情勢の必然の変化というものもありますので、これはイランの承認はそれでいいと存じます。
 なお、いまのベトナム、カンボジアの問題については、われわれはいいかげんによそを向いているわけではありません。赤旗から送られた情報等もしさいに拝読をいたしております。しかしながら、いまなお、いまの段階で承認すべき段階ではない、こういう考え方に変わりはありません。
#110
○立木洋君 最後の一問ですが、いまの問題についてはこれからまた時間をかけてじっくりとやろうと思います。大臣、余り私がやって疲れがひどくなったら困るから、きょうはこれぐらいにしますけれども。
 別の問題ですが、きのうのソウルのロイターのあれによりますと、「韓国元野党大統領候補の金大中氏は十九日、ロイター通信と約一時間自宅で会見し、一九七三年八月に同氏を東京からら致したのが韓国中央情報部(KCIA)機関員であり、その人数が六人だったことを示す新しい証拠を持っていると語った。」という報道がなされております。日本政府は、この金大中氏の問題に関して新しい事実が出てきたならば、これに対してまた再び検討いたしましょうということが繰り返し国会でも言われてきた内容ですね。それで新しい事実、根拠を持っているというふうに金大中氏が言っているんですから、これは即刻政府は金大中氏と接触をして、これを確かめることは私は可能だと思うんですよ。そして問題をあいまいに済まさないで明確に解決する方向に私は努力すべきだと、政府がいままで言ってきていることから考えても、当然、そういう措置はとるべきだというふうに思いますが、いかがでしょうか。
#111
○国務大臣(園田直君) ただいまの御発言のような報道は承知をしております。したがいまして実情確認のためどのように対処すべきか検討中でございます。
#112
○立木洋君 一言だけ。それは早急に私はやっていただきたいということを重ねて強く要望して、私の質問を終わります。
#113
○田英夫君 ただいまの各委員との御質疑応答を伺いまして、中越問題についてはあえて御質問をいたしませんが、ただ、私の感想を一言で言えば、かつてベトナム戦争のさなかにベトナムを訪問したこともありますので、そうした当時のベトナムと現在のベトナムが大変変わったということを言わざるを得ないと思います。
 なぜベトナムがカンボジアにあのような形で介入をするのは、また、なぜ中越国境で現在のような紛争が起こったのか、これをベトナムの側からしっかりとその変化をつかむということが非常に重要じゃないか。私はこのベトナムの変化ということを非常に残念に思いますし、なぜそういう態度に変わってきたのかというところに一つの重要なポイントがあるんじゃないかという、そういう気がいたします。この問題については、いずれ時間を改めて御質問をしたいと思います。
 一つ韓国の問題で、いまも金大中氏の問題が取り上げられましたけれども、きわめて具体的な問題ですが、去る二月三日に日本のジャーナリストで石井清司さんという人がソウルで、ソウルを訪問取材中に六人の韓国側の官憲に身柄を拘束されて二月六日まで取り調べを受けたという事実が報道されておりますが、このことについて外務省はどういうふうに、どの程度把握しておられますか。
#114
○国務大臣(園田直君) まことに申しわけないことですが、私、詳細を存じておりませんので、事務当局から。
#115
○政府委員(塚本政雄君) ソウルの日本大使館は、二月五日、ソウルの入国管理事務所より石井氏を収容した旨の通報を受けましたので、直ちに入管所長に事実関係の確認及びその処遇見通しを照会するとともに、穏便な措置方を申し入れまして、あわせて同人との早期面会を要求する等、石井氏保護のため種々の措置を講じました。
#116
○田英夫君 私は帰国されてからの御本人と直接お会いしていろいろ当時の事情を伺ったわけですが、石井さんは、その後、ロッテホテルというところの一部屋に入れられて、昼間は入管事務所で、長時間入れかわり立ちかわり取り調べを受けるということで、主として韓国の朴体制批判側の人たちと会ったという問題について取り調べを受けたようでありますけれども、その間、一つの非常に重要な問題は、外部との接触を一切断たれ、御本人は、外務省、つまり大使館にそういう通告があったことももちろん内部でわからないわけでありまして、外部との連絡を求めたにもかかわらず、ついに六十時間全く外部との連絡を断たれて、最後に六十時間たったところでソウルにいる日本人記者に連絡をとることが許された。その間は全く行方不明状態にあったと自分では思っていたわけですね。この辺の事情はおわかりでしょうか。
#117
○政府委員(塚本政雄君) 大使館からの報告によりますと、六十時間ではなくて七十六時間の長きにわたって市内のロッテホテルに強制監禁された、そういう事実はわが方の大使館から報告が参っております。
#118
○田英夫君 拘束されてから出るまで確かに七十六時間なんですが、外との連絡は六十時間断たれていたというのが事実です。
 この問題は、従来からしばしばこの委員会でも私は取り上げてきた問題の一環だと思うんですけれども、最後に金浦空港から一方的に退去させられて、そのときに初めて前田一等書記官に空港で接触をすることができたというのが事実であります。
#119
○政府委員(塚本政雄君) 御指摘のとおりでございます。
#120
○田英夫君 この問題はひとつさらに詳しく調査をしていただかないと、韓国の問題は、従来からしばしばこういうことが起こってきて、一番近い国で、しかも日本人が一番多く訪問をする国でこういうことが起こっているということは非常に重大な問題であると思うんです。
 この問題で一つ最後に御質問したいのは、石井さんは最後に所持品――ジャーナリストですから写真のフィルムなどは非常に重要なものですけれども、そういうものも一切没収をされてしまって返還をされていませんが、これを本人が外務省を通じて返還を要求すれば、外務省は韓国政府にこういうことについて取り次がれるといいますか、要請をされることは可能でしょうか。
#121
○政府委員(塚本政雄君) 前田書記官もまさにその点を認めまして報告が参っておりますので、御当人からそういう御要求があれば、現地大使館を通じまして韓国側に申し入れたいと思っております。
#122
○田英夫君 これは私一つの例としていま申し上げたんですけれども、外務大臣、田中委員からきょう朝鮮の統一の問題についても御質問があったようでありますけれども、いま確かに大きな国際情勢の変化の中で、朝鮮半島でも一つの変化の兆しが出ていることは事実だと思います。しかし、一九七二年にもいわゆる自主的平和統一の共同声明を双方で調印しながら、その直後の十月に、朴政権は逆にその精神を踏みにじるような維新体制というものをとって、現在まで結局統一への前進がなかったといういきさつがあります。決してこの前途は容易ではない。ただ、大きな見通しは、朝鮮半島をめぐる周囲の情勢は、米中国交樹立といい、日中平和友好条約の締結といい、あるいはさらに南北朝鮮の今回の対話の開始といい、いい方向に向かっていると思うんですが、改めてそういう中で大臣の御見解を伺いたいと思います。
#123
○国務大臣(園田直君) 私、就任しましてから、報道機関に対する韓国のいろいろな問題は数件起こっております。自国内の法律でありますから、これは適用するのは当然でありますけれども、しかし、日本と韓国の間をよく理解するために行っている報道機関にはそれだけの待遇があってしかるべしだと私は考えております。仮にまた、法律から言えば若干の違反があった場合でも、たとえば石井さんが観光ビザで入っておって取材した、けしからぬということなら、その程度の注意で済むべき問題じゃないか。また、日本政府は、罪があったら仕方がないということではなくて、若干の間違いを起こしても、それを保護するのが日本政府の務めであります。
 今後、十分注意し、石井さんの所持品等についても、外務省から進んで石井さんに連絡をとって、向こうと交渉するようにいたします。
#124
○田英夫君 もう一つ具体的に、宇都宮衆議院議員が韓国を訪問するということでビザを申請されたにもかかわらず、これが拒絶をされているということを伺いますが、この点については外務省はどういうふうに把握をしておられますか。
#125
○政府委員(柳谷謙介君) 宇都宮議員から、韓国の実情を見たい、また古くからの友人である金大中氏にもお見舞いをしたいという気持ちを持っているというお考えがありまして、私どもも韓国側にそのお考えを、非公式でございますけれども、伝えた経緯がございます。最近、韓国側から消極的な反応があったようでございますけれども、別に拒否とかそういう段階ではなくて、つい先日伺ったところでも、いま宇都宮議員と韓国大使館との間で接触が行われているというふうに伺っております。
#126
○国務大臣(園田直君) 宇都宮議員の韓国入国問題については私も直接承っておりますから、事務当局に命じて、鋭意折衝しろということを命じております。
 ただ、宇都宮さんには、入国は別として、金大中氏との面会の点はなかなかむずかしいかもわからぬと、こういうふうに答えてございます。
#127
○田英夫君 金大中さんから私に、直接、電話の中で、ソウルを訪問してぜひ話し合いをしたいという申し入れが来ています。また、つい数日前には、人を介して、ぜひお会いしたいという伝言が来ておりまして、私自身もソウルを訪問して金大中さんとお会いをしたいという意思を持っているわけで、真剣に検討をしているわけでありますけれども、そういう中での問題であったのでいま伺ったわけですけれども、拒絶してきているわけではないといういまのお答えですから、われわれの方もそういう状態を踏まえて検討したいと思います。
 もう一つ、次の問題で、イランの問題ですけれども、いまイランでああいう状態になっている中で、イランには現在日本の人はどのくらい残っているのか、その点はどういうふうに把握しておられますか。
#128
○国務大臣(園田直君) 若干の違いはあるかもわかりませんが、二千六百名くらい残っておると記憶しております。
#129
○田英夫君 実は、これも昨日イランから脱出をしてきた人に会って直接話を聞いたのですけれども、おっしゃるとおり、大体二千数百名の日本人が残っているということを言っているんですけれども、その大部分は、テヘランではなくて、むしろいわゆるアバダンに近いバンダルシャープールというのですか、そこにいるのではないかというふうに言っておりましたが、この点はどういうふうに把握しておられますか。
#130
○政府委員(塚本政雄君) お説のとおり、バンダルシャープールに三井とジョイントベンチャーをやっておりますIJPCと思いますが、ここに二千三百五十名ほどの日本側の人が働いております。
#131
○田英夫君 その現状というのは、身辺の危険ということで言って、どういうふうに把握しておられますか。
#132
○政府委員(塚本政雄君) 公館側も、現地近くに、ホラムシャフルというところに総領事館がございますので、そこと連絡をとり、三井側も毎日のように電話が入っておりますけれども、少なくとも身辺への危険はないと承知しております。
#133
○田英夫君 私が会った人は、まさにその三井の系列の子会社で仕事をしていた人で、去る二月の四日にアバダンを経由してようやく脱出をしてきたということで最近日本に帰ってきたわけですけれども、その人の言葉によると、自分がバンダルシャープールを出るときには、三井系列の合弁会社の従業員のキャンプは軍によって守られていた、銃剣を持った軍によって守られていたということでありますが、その人の言葉によると、その直後に政権がひっくり返ったという形になって、軍自身が果たして守る力を持っているのかどうかということも非常に心配だと。私が会ったその人物自身額にけがをしておりまして、それはすでに混乱状態に陥っていてそのキャンプの中で食事をしに行った帰りに一般のイラン人に襲われて、時計を奪われそうになってそこでけがをした、こういうことです。ですから、必ずしも安全という状態ではないのではないかということ。
 そして、その日本の方は、テヘランにはいわゆる救援機が行って帰ってこられた方がかなり多いわけですけれども、三井側の人の言葉では、これを救援機と呼ばないでくれと。救援機というのはいかにも危険でそこから脱出しているような印象を与えるので日本に帰ってからは救援機と呼ばないでくれ、臨時便と呼んでくれというような言い方をしていたという話を聞くんです。それに対してイギリスや西ドイツはアバダンに直接飛行機をおろして、そしてその周辺の同国人を脱出さしている。それに比べて日本側の態度は大変甘いじゃないかということを言っているわけです。これは一人の人の言っている意見ですから必ずしもすべてを言い尽くしているかどうかはわかりませんけれども、私はお願いとして申し上げたいんですけれども、いまのイランの情勢というものに対して邦人の安全という面から御検討いただけないかいうことを思うわけですが、この点はいかがですか。
#134
○国務大臣(園田直君) いまの田委員のおっしゃることはそうかもわからぬと、私は内心思っております。と申しますことは、いまの政権ができてからしばらくはもうすべてのものに対する排他的な行動で、しかも国内の混乱は極に達しておる、味方撃ちまであるというような状況でございましたから、身辺の危険というものはなきにしもあらずであります。そこで日本は飛行機を待機せしめたり、海外から脱出する準備をしておりましたが、その後、新政権ができてから数日たちまして、だんだん政策等を出す段階になってから、いまの首相が日本人に対する意思の表明を行った後、いままでは大使館の職員等も小型の車でこっそり動いた方が安全であったが、近ごろはちゃんとした車に日の丸をつけて動いた方が安全だというように少しは変わってきているところであります。しかし、国内秩序は御承知のとおりでありますから、今後とも万全を期して注意をするように検討いたします。
 なお、生命の不安とまた別個に、日常生活というものはこれは想像を絶するものがあると考えますので、その点も十分考えていきたいと思っております。
#135
○田英夫君 いまの食糧の問題ではバンダルシャープールの三井の合弁会社の従業員に関する限り、二千数百人残っている人たちに関する限り、二月一ぱいで食糧はなくなる、自分たちの手持ちの米その他の食糧はなくなるということを帰ってきた人は言っております。この点も含めてひとつ御検討をいただきたいと思います。
 最後に、イランの情勢の背後にソ連の手があるというふうに感ぜざるを得ないのでありますけれども、今度の新しい政権というものが果たしてそういう背景を前提にして考えた場合に、どういう姿勢の政権になりつつあるのか、大変これは分析がむずかしいと思いますけれども、従来の王制というものに対してどこまで民主化されるのか、あるいはどこまでソ連寄りになってしまうのかというこの辺の判断が非常にこれからの日本の外交にとっても重要なポイントになると思いますが、政府は現状ではどう判断しておられますか。
#136
○国務大臣(園田直君) 新政権は、組閣その他政策の発表等を見ておりますと、わりに手がたくやっております。いまのところまだ見当はつきませんけれども、あの地域におけるソ連に対する感情、それからアメリカに対する感情はよく御承知のとおりでありまして、したがいましてこれがソ連の方に傾くということはないと存じますけれども、少なくとも非同盟中立主義ぐらいのところでいくんじゃないか、こう予測をいたしております。
#137
○田英夫君 イランといい、ベトナムをめぐるインドシナの情勢といい、これが朝鮮半島に及んでくると大変さらに身近なことになるわけでありまして、ソ連の覇権的な行為という影をわれわれはやはり感ぜざるを得ないので、この点はもっと明快に私は政府としても外交姿勢の中で打ち出していただきたいし、ただ、だからと言って平和国家、平和外交を目指す日本が対決という姿勢はとるべきでないことは言うまでもないのでありまして、先ほどからの御論議の中で中越国境をめぐる問題あるいはカンボジアを絡めた問題などについての現在の政府のとっておられる態度には敬意を表したいと思います。
 以上で終わります。
#138
○委員長(菅野儀作君) 本日の調査はこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時十七分散会
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ソース: 国立国会図書館
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