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1978/02/22 第87回国会 参議院 参議院会議録情報 第087回国会 外務委員会 第4号
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1978/02/22 第87回国会 参議院

参議院会議録情報 第087回国会 外務委員会 第4号

#1
第087回国会 外務委員会 第4号
昭和五十四年二月二十二日(木曜日)
   午前十時七分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 二月二十二日
    辞任         補欠選任
     勝又 武一君     上田  哲君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         菅野 儀作君
    理 事
                鳩山威一郎君
                田中寿美子君
                渋谷 邦彦君
    委 員
                安孫子藤吉君
                大鷹 淑子君
                二木 謙吾君
                小野  明君
                戸叶  武君
                塩出 啓典君
                立木  洋君
                和田 春生君
   政府委員
       外務政務次官   志賀  節君
       外務省条約局外
       務参事官     山田 中正君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山本 義彰君
   説明員
       環境庁自然保護
       局鳥獣保護課長  野辺 忠光君
       外務大臣官房外
       務参事官     井口 武夫君
       外務省欧亜局外
       務参事官     加藤 吉弥君
       外務省欧亜局東
       欧第二課長    宮本 信生君
       外務省経済局外
       務参事官     国広 道彦君
       外務省国際連合
       局外務参事官   小林 俊二君
       外務省国際連合
       局科学課長    久米 邦貞君
       水産庁海洋漁業
       部遠洋課長    上田 大和君
       水産庁研究部資
       源課長      谷川 高士君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○日本国とポーランド人民共和国との間の通商及
 び航海に関する条約の締結について承認を求め
 るの件(内閣提出)
○特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に
 関する条約の締結について承認を求めるの件
 (内閣提出)
○南極のあざらしの保存に関する条約の締結につ
 いて承認を求めるの件(内閣提出)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(菅野儀作君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 日本国とポーランド人民共和国との間の通商及び航海に関する条約の締結について承認を求めるの件、特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約の締結について承認を求めるの件及び南極のあざらしの保存に関する条約の締結について承認を求めるの件、以上三件を便宜一括して議題とし、政府から、順次、趣旨説明を聴取いたします。志賀外務政務次官。
#3
○政府委員(志賀節君) 日本国とポーランド人民共和国との間の通商及び航海に関する条約の締結について承認を求めるの件、特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約の締結について求めるの件、南極のあざらしの保存に関する条約の締結について承認を求めるの件、ただいま以上が議題となりましたが、日本国とポーランド人民共和国との間の通商及び航海に関する条約の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
 わが国とポーランド人民共和国との間には、昭和三十四年に締結された通商に関する条約がありますが、昭和五十三年二月にポーランド側より、ポーランドのガット加盟、両国間の貿易の飛躍的な発展等に伴い、現行条約に比してより広範な事項について規定する新しい通商航海条約を締結したい旨の申し入れがありました。政府としては、このような新条約の締結が両国間の経済交流等の一層の発展に資するところ大であることを考慮してこの申し入れに応ずることとし、昭和五十三年九月及び十月に両国政府間で交渉を行いました結果、条約案文につき最終的合意を見るに至り、昭和五十三年十一月十六日に東京において、わが方園田外務大臣と先方ヴジャシュチック閣僚会議副議長との間で、この条約の署名調印が行われた次第であります。
 この条約は、本文二十カ条及び議定書から成っております。この条約は、まず、両国間の貿易の発展及び経済関係の強化のために協力することを規定しております。次に、関税、租税、事業活動等に関する事項についての最恵国待遇、輸出入制限についての無差別待遇、身体及び財産の保護、出訴権についての内国民待遇及び相互主義に基づく最恵国待遇、商船の出入港等についての内国民待遇及び最恵国待遇等を相互に保障しております。また、この条約は、相手国国民を拘禁した場合の領事官への通報義務、その場合の領事官との面会及び通信、入港船舶に対する領事官の援助、両国間の輸送及び通信の促進、仲裁判断の承認及び執行、自由交換可能通貨による支払い、合同委員会の設置等についても定めております。この条約の締結により、わが国とポーランドとの間の経済交流がさらに安定的な基盤の上に一層促進されるものと期待されます。
 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。
 次に、特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
 この条約は、特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地及びその動植物の保全を促進することを目的として、昭和四十六年二月にイランのラムサールで開催されました湿地及び水鳥の保全に関する国際会議において採択されたものであります。沼沢地、湿原、干がたを初めとする湿地は、経済上、文化上、科学上及びレクリエーション上大きな価値を有しており、また、そこに生息する水鳥等を保護するとの観点からも湿地の環境保全の必要性が関係国の間で認識されるに至り、この条約として結実したものであります。
 この条約は、昭和五十年十二月二十一日に効力を生じ、イラン、ソ連、西ドイツ等の二十二カ国が締約国となっております。
 この条約は、各締約国が、その領域内にある湿地を指定するとともに、その保全及び適正利用を図り、湿地に生息する動植物、特に水鳥の保護を促進することを主たる内容としております。
 わが国は、自然環境の保全を促進する政策を推進してきておりますが、わが国がこの条約を締結することは、自然環境全般の保全に資することとなるだけでなく、環境保全の分野における国際協力を推進する見地からも望ましいものと考えられます。
 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。
 次に、南極のあざらしの保存に関する条約の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
 この条約は、南極のアザラシを保護するとともに、これについて科学的な研究を行い、合理的な利用を図ることを目的として、昭和四十七年二月にロンドンで開催されました南極のあざらしの保存に関する会議において採択されたものであります。南極大陸周辺の浮氷水域に生息するアザラシはいまだ大規模な商業的猟獲の対象となったことはありませんが、商業的猟獲が開始される前に何らかの措置をとることの必要性が関係国の間で認識されるに至り、この条約として結実したものであります。
 この条約は、昭和五十三年三月十一日に効力を生じ、米国、英国等の八カ国が締約国となっております。
 この条約は、締約国の国民または船舶がこの条約の規定及び附属書に規定される規制措置に従う場合を除くほか、南極のアザラシを殺さずまたは捕獲しないことを主たる内容としております。
 わが国は、この条約の適用される区域でアザラシの商業的猟獲を行っておらず、また、近い将来これを行うことも予想されておりませんが、わが国がこの条約を締結することは、南極のアザラシの保存のための国際的協力を推進する見地から望ましいものと考えられております。
 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。
 以上、三件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
    ―――――――――――――
#4
○委員長(菅野儀作君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、勝又武一君が委員を辞任され、その補欠として上田哲君が選任されました。
    ―――――――――――――
#5
○委員長(菅野儀作君) 以上で説明は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#6
○戸叶武君 日本国とポーランド人民共和国との間の通商及び航海に関する条約について御質問いたします。
 この条約の第一条に「両国間の貿易を発展させ及び経済関係を強化することを目的として相互の利益のため協力するよう並びに、この目的の達成のための発意及び措置を奨励するよう、それぞれの国の法令に従い、努力するものとする。」と書いてありますが、「発意及び措置を奨励する」という意味は何か、具体的な事例を示して御説明願います。
#7
○政府委員(山田中正君) 第一条で申しております「発意及び措置」とは、両国間の貿易、経済関係の発展、強化のために、主として民間で行われます種々の創意工夫及びこれを実現するための行為を指しておりまして、たとえば新たな貿易品目の開拓でございますとか、いわゆる産業協力、第三国における両国企業の協力等が考えられる次第でございます。
 これを「奨励する」と申しますのは、政府といたしまして、民間のこのような動きを精神的に支持いたしますとか、また必要な情報を与え、問題点の克服のための有益な助言を与え、国内法令上可能な場合には、その他の具体的援助を与えるということを意味いたしておるものでございます。
#8
○戸叶武君 「発意及び措置を奨励する」というような表現はいままで余り使われていなかったんじゃないでしょうか。こういうふうな形において開発なり協力というものを具体的に進めていこうという考え方を意味するのですか。
#9
○政府委員(山田中正君) 確かに先生おっしゃいますように、従来の通商航海条約の中で「発意」という文言を使った例はないと思います。今回、これが入っておりますのは、先方が特にこの民間側のいろいろな努力というものを政府として援助していきたいという希望がございまして入った次第でございます。
#10
○戸叶武君 先方からの要請と言いますが、いずれにしても「発意及び措置を奨励する」というような形で新しい発想の転換を求めているという行き方は、この試みというものは非常に注目に値する。ポーランド側としては非常に苦慮して、その言外の意味がこの中には含まれているんじゃないかとも思われるんですが、外務省では向こう側からの提案だからという形で軽く受けとめているんでしょうか。
#11
○説明員(加藤吉弥君) この条約交渉に当たりまして、ポーランド側が特に目的として主張いたしましたのは、わが国との産業経済関係の協力、それから資金協力、こういうものを増進したい。そして向こう側の最初の提案も経済、産業、科学及び技術協力の発展に関する長期協定を結びたい、こういう主張をしてまいったわけでございます。しかしながら、わが国の経済体制は御案内のとおり自由貿易、民間主導という形をとっておりまして、先方のそのような要求には直接こたえることがむずかしい情勢にあったため、通商航海条約という形でこれをまとめた、そういう経緯が背後にございます。
#12
○戸叶武君 このことを私があえて指摘するのは、ポーランドは日本とともに高度経済成長政策によって相当の成果を上げてきたのが事実でありますが、この数年間というものは、そのひずみによって悩み、しかも食糧の減産がいま見られているような段階ですが、どうやってこの窮地を打開するかという面において具体的に日本から学ぶものがあるという認定のもとに私はこの新しい五カ年計画の方向づけをここで求めているんだと思うんです。
 そこで、第二条の「関税及び課徴金」の問題について、2の(a)「当該一方の締約国の船舶によって採捕された天然の海産物に与える特別の利益」(b)の「海上において当該一方の締約国の船舶内で天然の海産物に加工し又は天然の海産物から製造して得た産品に与える特別の利益」には適用していないと記されているが、他の国で制限を受けているような事例があるんで、そのようなことをここに明記したのでしょうか。第二条の2の(a)及び(b)です。
#13
○政府委員(山田中正君) ただいま先生御指摘の第二条2項の(a)、(b)でございますが、これは自国の領土外で採捕されたもの、または領土外で製造されたものでございますが、自国船が行う活動でございますので、一般にそのようなものにつきましては自国の国内産品と見るというのが通例でございます。わが国につきましても、そのような意味で日本に持ってまいりました場合にも税金をかけることはいたしません。したがいまして、このようなものについては貿易の対象といたしておりませんので、最恵国待遇から除外するという趣旨でございまして、これは通常の通商航海条約に入れておる条項でございます。
#14
○戸叶武君 二百海里問題に海洋関係の問題が広げられてから、所によっては国内からとれた産品に対してもいろんな一つの企てがなされている向きもあると思われますが、そういうような事例で悩まされているような点はいままでないですか。
#15
○説明員(加藤吉弥君) ただいま先生の御指摘になった事例として、私が思い当たりますのはニュージーランドでございます。ニュージーランドの二百海里内でとれたイカ、これを日本に輸出するに当たって、日本の漁船がとったイカと同じ待遇、つまり関税をゼロにしてくれ、こういう要求がきた経緯はございます。
#16
○戸叶武君 ニュージーランドにはニュージーランドとしての悲願があるようですが、それはそれとしてポーランドとの間にこのような新しい事例をつくり上げる、いままでも大体そういう方向にあったという判定のように外務省の答弁は聞こえるんですが、これは完全なポーランドとの間に合意が得られたものと認めますが、合意を得られる過程において何ら問題はなかったでしょうか。
#17
○説明員(加藤吉弥君) ただいま私ニュージーランドの例を出しましたけれども、同様な要求はポーランドから全然行われたことはございません。この条項を合意するに当たっても何ら困難なく合意が達成された、かような次第でございます。
#18
○戸叶武君 日本はポーランドから最近ハムやソーセージの原料となる肉を相当量輸入しておりますが、それはどの程度の量と、どの程度の金額になっておるでしょうか。
#19
○説明員(加藤吉弥君) 統計であらわれておりますのは、一昨年、一九七七年の資料しか持ち合わせておりませんが、ハムの場合は七七年で五十八トン、金額にして十六万ドルでございます。ソーセージにつきましてはいま手元に資料がございませんので、別途調べて先生の方にお答え申し上げます。
#20
○戸叶武君 まだその量は、ポーランドと日本の貿易のアンバランスの問題があるのに、それを是正する面においてそれほどの効果は奏していないようですが、ポーランドからの輸入肉が相当評判がよいのは、いままでポーランドにおいては肉に病菌等の問題でトラブルが起きたことがないからではないでしょうか、その点はどうでしょうか。
#21
○説明員(加藤吉弥君) 御質問でございますが、私専門でもございませんので、農林水産省、主管官庁の詳細な説明を聞いて、別途お答えいたしたいと思います。
#22
○戸叶武君 それでは後からの報告でもよろしゅうございますが、第三の2の「1の規定は、各締約国が、重大な安全上の利益の保護、公衆衛生の保護並びに病気、害虫及び寄生物に対する動植物の保護に関する措置を採用し又は実施することを妨げるものと解してはならない。」との規定がつけられておりますが、さようなことが過去にあったかどうかも、後日、報告をお願いします。
 第七条1に「各締約国は、国家企業を設立し若しくは維持し又はいずれかの企業に対して排他的な若しくは特別の特権を正式に若しくは事実上与える場合には、それらの企業を、輸入又は輸出を伴う購入又は販売に際し、無差別待遇の一般原則に合致する方法で行動させることを約束する。」このような規定が載っておりますが、これをまとめるまでには社会主義国としてのポーランドと日本の民間の資本主義的な物の考え方の中に調節に至るまでには多少の論議があったと思いますが、そういう論議は尽くされなかったかどうか、何もないでスムーズに合意に達したものか、その経過を承りたいと思います。
#23
○説明員(加藤吉弥君) 交渉の過程におきまして、ただいま戸叶先生御指摘のような論議は行われておりません。
#24
○戸叶武君 この第七条の2の「商業的考慮のみに従ってすべての1にいう購入又は販売を行うことを要求する」ということは、それでは両者がスムーズに合意に達したということを意味しますか。
#25
○説明員(加藤吉弥君) さようでございます。
#26
○戸叶武君 いま承っただけでも、苦悩しているポーランドが新しい活路を貿易面、経済協力の面に求めるためには、相当日本との相互理解が深められ、しかも信頼感によってこのことが進められているから、そのとおりの、イデオロギーや国家性格において若干異なっているが、きわめてスムーズに物事が運んでいるように受けとめられるのでありますが、問題は、日本とポーランドの間に、第二次大戦後、国交が回復したのが一九五四年であり、またニューヨークで国交回復に関する協定に調印されたのが一九五七年、いまから二十二年前のことであります。この二十二年間におけるポーランドの政情にはいろんな変化がありましたが、ポーランドには強い自主的な独立の念願と、もう一つは、自由を要求する民族的な悲願、平和を求める態度というものが根底に強く流れております。そういう意味において、たとえばポーランドの背後において政治的にコントロールしているんじゃないかというふうに見られているソ連においても、ポーランドに対する政策はきわめて慎重で、ある程度寛容と思われる面を出していかざるを得ない状態にあると思います。
 そこで、この二十年間におけるポーランドと日本との貿易関係の発展でありますが、通産関係の人や貿易を担当している方はこの間に百倍の伸びがあったと言うが、一九七七年の輸出入総額は七億七千三百十万ドル。この統計を基礎として見るときには、依然としてポーランドと日本は輸出入においてアンバランスの面があるのであります。四対一程度だと思いますが、わが国の輸出品目は機械機器、化学品、繊維品、輸入は石炭、その他機械、アルミニウム、原毛、毛皮というふうになっておりますが、この輸出入の極端なアンバランスというものを、民間の延べ払い信用枠で一九七二年から七六年まで総額十・三億ドル設定して柔軟さを示そうとしているようですが、七八年三月、一年延期となったのは、三・五億ドルの未消化があっても、その上にこの延期ということになったんですけれども、一年間の延期によって何らか前途に打開の兆しを見出したかどうか、この三月にまたもう一度延期というような方式をとるのかどうか、その点をひとつ御説明願います。
#27
○説明員(宮本信生君) 本年三月末で効力が失効いたします民間借款につきましては、これを再度延長することは不可能でございまして、したがいまして本年四月一日以降の新しい民借枠につきまして、ポーランド当局と日本の民間企業の間で話し合いが現在進行中でございます。
#28
○戸叶武君 ポーランド政府と民間とに任せているということでありますが、当然、これは政府が道義的には責任を持たなくてはならないのですが、三月に今度は延期ができない、その前にという話ですから、いつごろまでにそれはめどをつけるつもりですか。もう二月で、三月には日もないようですが。
#29
○説明員(宮本信生君) 現在、日本の民間企業とそれに輸出入銀行等が内々で協議しておりまして、三月末日までには新しい民借枠について基本的な合意が成立するものと期待されております。
#30
○戸叶武君 日本の民間並びに政府もポーランドの置かれている地位、苦悩というものはよく深く理解しているようでありますが、この条約もさることながら、基本的には、ポーランドと日本との関係において具体的にアンバランスの貿易――アメリカに対するドル減らしのことばっかりを考えていないで、アメリカ以上に苦悩している、東欧諸国の中において一番良心的な苦悩を続けているポーランドに私はもっと理解のある手を差し伸べないと、漫然とした政策でずるずる一年、またずるずる一年というのでは、政府の計画的な外交政策というものがないに等しいものに見られるんじゃないかと思うのであります。
 この三月において改定しなければならないというならば、私たちはポーランドの持っているものを物的なものだけに見ないで、やはり東欧諸国においてヨーロッパ一の大国になったこともある国であり、ロシア、ドイツ、オーストリア等によって幾たびか分割され非常にひどい目に遭いながらも文化の伝統のともしびは続けておるし、いまローマンカソリックの法王もポーランドから出たというふうに、ヨーロッパにおいては民族的な文化的な頭脳としてはすぐれたものがあると思うのです。やはりコペルニクスにおいて見られるようなコペルニクス的転換が新しい科学の力によって世界観を変えていったような転換の一つのモデルだと思うのでありますし、またショパンのような音楽の天才も生み出しておるし、また婦人としてキュリー夫人のような一九〇三年にノーベル物理学賞をもらい一九一一年にノーベル化学賞をもらったようなすぐれた女性も出ておるのです。国は幾たびかイバラの道を歩んでおりますけれども、民族文化の伝統の最大の宝は私はこの知性だと思うのです。
 ポーランド自身の大学において、日本文化の研究というものはヨーロッパ諸国の中で最高というほどの真剣な取り組みがなされているんです。日本ではそれがなされておりません。金はたまったけれども、知恵のないやつの金の使い方の下手さかげんはそこいらに見られると思うのであります。しかも、音楽なんかで女性の大部分がポーランドに留学するというような状態、そういうときにはポーランドからあべこべに、日本の今日の音楽に対する家庭内の注目を浴びてきたときに、音楽関係でポーランドに行かなくても、ある程度まで日本で学べるような優秀な音楽家を受け入れるなり、資源のない国において、科学教育を――コペルニクスやキュリーから学ぶのじゃないが、やはり日本に一つの国際関係大学の構想というものも国連大学以外に民間からも模索が続けられておりますが、困ったポーランドあたりからすぐれた学者なり何なりをも呼んで、文化交流を通じて、日本の文化、科学協力、さらにそれを経済協力へ発展するというだけの発想の転換を、一番最初に大分「発意」ということが強調されているが、非常に抽象的な発想であって、具体的な発想がそれに伴っていないところが、日本のエリートによって構成せられた、苦悩を忘れている人々の形式的な外交の私は浅さじゃないかと思うのです。
 政務次官のような人はいまでも若いのであるから、若いときに文学青年だし、大分スペインなんかにも乗り込んでいったりしましたが、スペインだけでダンスだフラメンコだよりも、やはり苦悩しているポーランドの知性に触れながら、あなたあたりからもう少し、日本とポーランドの文化交流によってヨーロッパ、特に東欧のソ連圏の国々に希望の光を与えた、暗黒の中に光を差し与えたというぐらいな発想の転換をやらないと、やる人はいないと思うのだが、志賀君、しがないことを言ってはなはだ失礼だけれども、ひとつそこいらうまくやってくださいよ。
#31
○政府委員(志賀節君) 名指しで私のことも大分お触れいただきましたので、ちょっとお答えをさしていただきます。
 大変ポーランドについての該博な戸叶先生からの御高見をお教えいただきまして、まことにありがとうございました。私も、実は、ポーランドに対しては並み並みならぬ関心を有しておる一人でございます。象徴的なこととして申し上げさしていただくと、ポーランドもまた国旗が赤と白の二色でございます。非常に日本とそういうところも共通のものを感じますし、親しいものを感ずるわけでございます。そのポーランドのいままで置かれていた歴史的な環境というものが御指摘のとおりに大変に苦難に満ちたものであった。そういう中で、世界の音楽の中でもモーツァルトとショパンといえば美しい音楽の双壁でございます。この美しい音楽の作曲家の一人ショパンがあらわれたということは、そういうつらい苦しい人生の中でも常に美しいものを見ることを忘れなかった一つの民族的な特質として私は敬服をしておるわけでございます。そのポーランドと私どもこの日本の間におきましては、外交関係をめぐりまして、学術的な面でも、たとえば科学技術交流協定あるいは文化取り決め、こういうことは昨年度中に行っておりますし、外務省としてもおさおさ怠りのない努力をしておるわけでございます。しかし、御指摘のように、まだまだ、人間のいたしますこと、至らざる点があろうかと思いますので、戸叶先生を初め諸先生の御指摘、御指導をいただきながら万遺漏なきを期したいと考えております。
 また、ヨーロッパの中でもポーランドが特に日本に深い関心を寄せてくれておるわけでありますから、私どもは大変好意的にこの国を見ておりますが、ポーランドには御承知のとおり西側の債務がたくさん累積しております。これも主としてプラント等、大規模な金額を要するものがそういうところに累積してきたわけでありますから、これからはこのプラント等を活用して、ポーランドが先進工業諸国の技術を取り入れながら、輸出を拡大して、種々な困難な問題があるにいたしましても、必ずそれを克服して対外債務を減少の方向に持っていくであろうということも期待をしておるところでございます。そういう面からも私どもは温かい目を向けて、温かい手を差し伸べながら日ポ両国関係の親善を一層深めてまいる所存でございますので、よろしくお願いを申し上げます。
#32
○戸叶武君 私はロシア語はかいもくわからないんで、ポーランドでヤニナ・ロドスカという若い女性から、ロシアに入るときに片言でも要領よく話ができるように、ロシア語を学んだことがありましたが、彼女はウクライナ人でまだイエナの大学の医学部のインターンで勉強をしていた人でありますが、ポーランドは美人が多いし、それに日本人と同じような農業国民として感情の深さがあります。
 ところで、最近、ポーランドの大使館の人にある席で承ると、かつて一九二四年度にノーベル文学賞をもらったところのレイモントの「農民」という農民文学が、最近、テレビのドラマに採用せられて非常な反響を生んでいるということであります。ポーランドは、御承知のように、あなたの方の岩手県と同じように東北の風土と似ており、シラカバと赤松の林の平原が多く、沼沢地も多いですが、そういうところであのレイモントの「農民」は、農村の暗さと農村の女性の耐え忍んでいくものを最も巧妙に描き出しているんですが、私は、いまの日本の農業政策の無定見の中に苦悩している農民に光を与えるのには、このレイモントの「農民」のテレビドラマなんかを日本にあなたでも行って持ってきて、その金がもうかったらでもいいから、それを基金にしてでもポーランドの音楽家でも文学者でも呼んでくるような、そういう一つの具体的な発想――抽象的な発想からは創意は生まれない。あなたはポーランドの旗は赤と白だと言うが、今日の対決は、赤と白よりも、やみと光、戦争と平和との対決です。そういうものをやはり明確に日本が示すのには、それぐらいな苦労をした同士の柔軟な交わりによって、世界に、一つの新しいタイプの外交というものは、文化交流というものはこういうもんだというぐらいな見本を示す方が一番具体的で手っ取り早いと思うんですが、あなたはドン・キホーテの国にも行ってきただけに行動力が旺盛な方ですから、ひとつハムレットじゃなくドン・キホーテになって、そこいらぐらいのことをやってのけたらどうかと思いますが、どうでしょうか。
#33
○政府委員(志賀節君) 御忠告、御勧告をいただきまして、まことにありがとうございました。
 実は、今晩、私ポーランドの大使とお目にかかる予定がございますので、大変貴重な示唆に富んだお話を賜りましたから、そのお話等をお目にかかりましたポーランド大使に申し上げて、そして具体的な行動を移せるものならば移させていただきたいと存じます。特に現在の外務大臣園田直先生は、外務政務次官時代にポーランドと日本との国交回復をめぐっての動きの中で大変御活躍になったことも聞いておりまして、そのことが私のような最近政務次官を承りました者にとりましては大きな刺激になっておるところでございます。それだけに戸叶先生のお言葉は身にしみてありがたく、これを具体化する方向で鋭意検討させていただきたいと思います。ありがとうございます。
#34
○戸叶武君 次に、水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約について、二、三の質問をいたしたいと思います。
 特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約の締結について承認を求めるの件の提案理由の説明がなされておりますが、この条約は昭和四十六年二月にイランのラムサールで開催された湿地及び水鳥の保全に関する国際会議において採択されたもので、その提案理由というものは「沼沢地、湿原、干がたを初めとする湿地は、経済上、文化上、料学上及びレクリエーション上大きな価値を有しており、また、そこに生息する水鳥等を保護するとの観点からも湿地の環境保全の必要性が関係国の間で認識されるに至り、この条約として結実したものであります。」との説明がありますが、このような条約は、水鳥の性格からいきましても、渡り鳥でありまするから、一国だけでどうするということもできないので、国際的な協力を得なければならぬということは当然でありますが、昭和五十年十二月二十一日に効力を生じ、イラン、ソ連、西ドイツ等の三十二カ国が締約国になっておるのにもかかわらず、日本が大分おくれておりますが、そのおくれた理由はどういうところにありますか。
#35
○説明員(小林俊二君) 環境保全その他の国内的手続を要する条約の批准につきましては、いずれの場合におきましても国内体制の整備、必要な法的措置に関する確認といったような作業が必然的に起こってまいります。本件条約につきましても、そうした作業が今日まで続けられて至ったということでございますが、特に、この条約につきましては、少なくとも一カ所の湿原を指定して登録し、その保全についての国際的な義務を負うという条項がございます。そこで、具体的にいかなる湿原を指定するかということについての国内的な調整も必要だったわけでございまして、そうした国内的な調整及び作業のために今日まで時日を経過したということでございます。
#36
○戸叶武君 ほかの国でも当然そういう手続が必要であるでしょうが、ソ連なり西ドイツはいつごろこれを締結したか、参考のために承りたいと思います。
#37
○説明員(小林俊二君) ソ連は一九七六年の九月に批准をいたしております。西ドイツは七六年三月にこれも批准をいたしております。
 実は、この水鳥、湿地の保護に関するこの条約は非常に長い経緯がございまして、発生的にはヨーロッパを中心とする国々、すなわち国境を接しておる比較的面積の小さな国々が自国内の湿地保護のためには国際的な協力が必要であるという当然の理由から、民間国際機関を中心として始まった話でございまして、そうした経緯におきましては、当初、日本はその協議に加わっていなかったという事情がございます。そうして最後のこの条約の採択されましたラムサールにおける国際会議にもわが国は参加を招請されていなかったという事実がございます。これは、結局、ヨーロッパを中心とするそういう国際的な協議あるいは運動が次第に広がっていってラムサール会議に至ったという発生的な経緯によるものでございまして、わが国あるいは米国のように水鳥の飛来ということも相手国が非常に限られておる島国あるいはヨーロッパから離れているという事情によって、それぞれの必要のある相手国との間において協議をすれば、その国際的な移動をする水鳥の保護については目的を達し得るという事情にある国と、非常に小さな面積の国々が境を接しておって多数国間の協力を必然的に要求されるという国々との間の事情の相違として説明申し上げることができると思います。そういうことで、わが国はその協議の段階において参画していなかったということがこの条約の批准を若干おくらせる淵源的な理由となっているということは申し上げることができるかと存じます。
#38
○戸叶武君 外国の説明はわかりましたが、日本においては国内の湿地に対する法措置を現在までどのような形においてなしてきたのでしょうか。
#39
○説明員(野辺忠光君) 鳥獣保護の立場からお答え申し上げます。
 私どもの鳥獣保護という立場でございますと、通常は、森林生の鳥獣を主体に従来は保護を図ってまいったわけでございますが、近年、干がたでございますとか、あるいはこういった湿地全般にわたりましてのいろいろな社会情勢の変化とともに相当な変革が見られております。そういう意味で、特に水鳥の生息地がだんだん狭くなってきておるということもございまして、私どもといたしましては鳥獣保護法に基づきます鳥獣保護区に指定をし、それによる環境の保全、水鳥の保護を図っていくというたてまえで現在まで及んでまいっております。
#40
○戸叶武君 日本にすんでいるところの水鳥は、種類はどのくらいありますか。
#41
○説明員(野辺忠光君) わが国には、全体で大体五百種類の鳥類が生息しておると言われておりますが、そのうち約二百種程度が水鳥でございます。
#42
○戸叶武君 このたびモデル地区というか、指定地域として北海道のタンチョウヅルなんかが生息する地帯を決めることになっているということですが、それはどの程度進捗しておりますか。
#43
○説明員(野辺忠光君) 現在、この条約の加盟に際しましてリストに挙げていこうと予定しております釧路につきましては、現段階ではクッチャロ太という名称の国設の鳥獣保護区がございますが、これが三月の末日で期限が切れるということで、先般、公聴会等を開催いたしまして、続きまして自然環境保全審議会に諮問をいたしております。三月の末日までには農林省の協議を経て告示をするという段取りでございますので、引き続きまして三月末日から鳥獣保護区に新しく設定をしてまいるということでございます。
#44
○戸叶武君 あそこにはタンチョウヅルその他二十種ぐらいが主な水鳥ということでありますが、主なる水鳥はタンチョウヅル以外にどういう鳥でしょうか。
#45
○説明員(野辺忠光君) タンチョウを頂点にいたしまして、それ以外にはガン・カモ類、一部シギ・千鳥類等が生息いたしております。
#46
○戸叶武君 水鳥は渡り鳥が多いのでありますが、渡り鳥との関係はソ連と日本との関係が一番深いと思いますが、ソ連側での湿原地帯の保護及び水鳥の保護というものはどの程度保護されているか、それは調査が行われているのですか。
#47
○説明員(野辺忠光君) 残念ながら、私ども、ソ連の湿地等の保護につきまして、あるいは渡り鳥の保護につきまして、どういう状況であるか十分調査した資料は持ち合わせてございません。
#48
○戸叶武君 ソ連との関係はなかなかむずかしいでしょうが、純学問的な見地からこういう機会に、ソ連がいち早く締結国になったという事例もあるのですから、日本の状態をもソ連に見てもらうと同時に、一方だけではできないんだから、ソ連の方の湿原地帯の保護の問題あるいは水鳥の保護の問題、そういうものを純学術的な立場からお互いに交換して調査するというぐらいな寛容さがなければ、鉄のとびらは開かれた開かれたと言って、さらに人間にも鳥にも開かれていないことで、開かれないとびらの内でお互いに話し合ってみても、これはそれほどの成果は上がらないんじゃないか。一方的に、日本だけでもできない、ソ連だけでもできない、お互いにということなら、お互いにオープンに胸を開いて、そうして実態調査をやるぐらいな積極的な姿勢というものがやはり条約締結には前提条件になるんじゃないかと思います。
 そういうことは、ソ連側には領土の問題でも遠慮しているから、鳥の問題でも遠慮するという習性がついてしまったんでしょうか。条約を結ぶに当たっては、人間の不信感を乗り越えて、鳥の方がもっと正直だから、その辺はやはりもっと私はお互いに実態調査をするのが本当だと思います。いままではできなかったと言うけれども、今後、この条約をめぐってそのことは可能じゃありませんか。
#49
○説明員(野辺忠光君) 先生御指摘のように、ソ連等はすでにこれに加盟いたしておりますので、本条約がわが国としても批准をされました暁には、私どもも十分そういった各国との情報交換ができると思います。そういうことを通じまして、今後、鋭意いままで足りなかった分を努力をして取り返していくというふうにいたしたいと思っております。
#50
○戸叶武君 人間が窮屈でがんこな場合には、鳥の方からでも窓を開くということが必要なんで、それもドアをたたかないでいきなり突き破るという方式でなくて、たたけよ、しからば開かれんというので、たたきもしないで、五里霧中でもって条約だけ締結してみても、そんなことがそれほどの効果が上がらないことは火を見るよりも明らかじゃないかと思うんです。
 これは鳥だけの問題でなくて、沼沢地の問題に対しては、沼の多いイギリスでも、沼沢地の相当あるドイツでも、早くから日本と違って乱暴なブルドーザーで土地を崩しちゃうというふうな公害を振りまくようなことはずいぶん慎んでやっているようです。
 私が二十年ほど前に農林水産常任委員長の時分に西ドイツを訪ねましたときに、時の農林食糧大臣リュプケ、後で大統領になりましたが、あの人はアデナウアーと同じ考えで、エアハルトのやっているような高度経済成長政策を急ぐと、成長の面において、所得の面においてアンバランスが起きて、そこに混乱が巻き起こる危険性があるというので、農業問題に対しても、日本の農林官僚やいままでのはったりを主とした農林大臣と違って、きわめて慎重に具体的にその面のアンバランスの是正というところに力を入れて、主要農畜産物の価格の安定を目指していったんです。安上がり農政で農民をごまかすというようなことをやっているから、いまのようなめちゃくちゃな混乱が起きているんです。
 そのリュプケ博士と私は、ボンで長い間一つ一つ質問を用意して一問一答しましたが、その中において、やはりドイツにおいては、ライン沿岸の果樹栽培を主とする地帯と、それからハノーバーのような東ドイツに接近した地帯と、大農を行っている、機械化農業をやっている地帯とをよく見てもらいたい、それと同時に、ドイツにあるこの沼地、森林、湿地地帯、そういうものに急激な変化を加えると、天候異変も起きるし、水の問題においても農民を悩ますような問題が必ず起きるから、そういう問題に対しても慎重な態度を払うというだけの科学的な合理的な実際的な処置をやって、水田をつくれと言ったり水田を減らせと言ったり、そのときどきの思いつき農政をやっている日本のふまじめな行政と違ったものを、ドイツにおいては、高度経済成長政策が強行されているさなかにおいても、文明史観と哲学を持たない民族は滅びるというアデナウアーの哲学を基点として、そういう政治の中に歴史観と哲学が入っているのであります。
 思いつきの砂利トラ農政、これがいま根釧原野においても非常に混乱を巻き起こしております。重粘土地帯で米がとれない。米がとれなくとも、全部とれなければ農業災害で六割程度、米が冷害でとれなくとも六割程度の収入があるから、ほかのものをつくるよりは得だといって、北海道では余りおいしい米がとれない地帯までも水田耕作をやった。今度は、途中でもって土地基盤の整備によって酪農がいいといって、そこへ国家におけるいろんな形の資本を投下した。その中には政治的な実力者があったから中央から金を持ってきたんだといっていばっている。けれども、いま二百頭、三百頭という乳牛をそれによって飼うことができた連中が東京へフェリーで牛乳を送って大変な金持ちになっております。魚よりもあるいは農業よりも酪農がいい。しかし、根釧原野一帯とあのところだけがそう潤っても、内地の農民は、あの地点を一帯とした畜産本位の農政、国家資本の投下、そういうことによって大犠牲を払っていかなくちゃならないというような、こういうえげつない農政が日本にはびこっております。
 やはり、私は、ポーランドとでもドイツとでもソ連とでも相談して、どうやって湿原を保護するか、水鳥を保護するか、国際連帯の力でもってもっと科学的な合理的な農政なり酪農なり鳥獣保護というものがなされなけりゃ、その国だけの思いつきでやられたんじゃあたり迷惑だと思いますが、どういうふうに政務次官はお考えですか。これは大臣がいないから、あなたに質問するのは少し酷ですが、あなたでなくても、だれか専門家の人に、まあ後でこれは大臣にしますか。――
 とにかく日本の外交と農政、教育部門、厚生、でたらめ過ぎて、こんなことが政治の不信を生み、今度は映画になるそうだが、高橋是清さんだって殺されたんですよ。高橋是清なんてまじめなユーモアたっぷりな人でもなぜ殺されたか、突風のようなあらしが底流に流れているという現実を知らないで、いまのような政治不信の情が高まっているときにおける外交と、少なくとも農政を気をつけてやらなければ、大変なことになると思うので、一言私は警告だけで答弁を求めないで、ひとつ大臣に物申してやってください。
 要らぬことかもしらぬけれども、イランのエネルギーの問題あるいはベトナムと中国との激突の問題、同じプリミティブなナショナリズムが横行している。共産主義でも何でもない、きわめて原始的な闘争が繰り広げられている。国家が消滅すると言うけれども、国家という名のもとに人類が本当に八つ裂きにされようとしている。こういう第二次戦争が起きる前のファシズムより悪性な一つの病菌が世界に広がっているんですから、どうぞ鳥のことだけでなく、人間のことにももっと親切な処置が講ぜられるよう、それがためには、鳥を説得して鳥に潮時を聞いても、私にはわからない、「私しゃ立つ鳥、波に聞け」というように、すっぽ抜かされないように、ひとつこの水鳥対策も講じてもらいたいことを一言付加して、私の質問の結びといたしますか、まあ志賀君ひとつ――。
#51
○政府委員(志賀節君) 答弁は求めないというお言葉でございますが、一言申し上げさしていただきます。
 御趣旨は政務次官である私から園田外務大臣に伝えるようにさせていただきます。
 なお、ただいま御指摘の高橋是清元総理は、私ども岩手県の選出でございまして、盛岡を地盤として国会に送り出された人でございます。その前任者原敬先生もまた高橋是清先生とともども魔手に倒れた人でございます。そういうことで、私にとりましては、いわば人ごとでないことでございますので、大変身にしみて御注告を感じた次第でございます。
 実は、この水鳥の問題は、こういう鳥獣を保護するという温かい動物愛護の気持ち、あるいは環境を保全するという人類の非常に心温まる気持ちを、それこそ国境を越えて、ナショナリズムを越えてこういうところに結集をしつつ条約として結実しつつあることでございますから、ただいま先生が非常な危惧を抱いておられることを解消する何がしのお役に立つものであると考えるわけでございます。もちろん農業の問題、工業の問題等、必ずしもこれだけで十分に解決できる問題ではございませんが、しかし、こういう小さなことの積み重ねによって人類のよりよい前進を図っていく、こういう面から私ども外務省としては今後とも全力を尽くしてまいる所存でございますので、重ねて御指導、御鞭撻をお願いする次第でございます。
#52
○塩出啓典君 それでは、最初に、南極のあざらしの保存に関する条約の締結について承認を求めるの件について二、三お尋ねをいたしたいと思います。
 これは外務省からいただきました資料の中にも、十八世紀末から十九世紀前半においてアザラシが非常に乱獲をされた、こういうところから将来の乱獲を防止するためにこういう条約が締結されたとのことでございますが、十八世紀末から十九世紀前半と申しますともう百数十年も前の話でありまして、それが現代このような条約が必要なほど乱獲の危険性というものがあるのかどうか、この点御説明をいただきたいと思います。
#53
○説明員(国広道彦君) 御指摘のとおり、南半球におけるアザラシの乱獲は、十八世紀末から十九世紀前半にかけましてフォークランド島を中心に行われたと言われておりますが、これらの水域における一部のアザラシは乱獲され、絶滅の危機にさらされるという事態になりました。他方、南極大陸周辺の浮氷海域に生息するアザラシは、実は、いまだ大規模な商業的乱獲の対象となったことはございません。しかしながら、フォークランド島のアザラシの例にもかんがみまして、商業的乱獲が開始される前に、予防的な意味におきまして何らかの措置をとることの必要性が南極条約の関係国の間で認識されるに至ったのであります。
#54
○塩出啓典君 理論的にはそういう乱獲の危険性ということはあると思うんですけれども、そういうようなことはたくさんあると思うんですけれども、そういう心配から国際条約を結ぶんであればいろんな条約を結ばなきゃならぬと思うんですけれども、余り緊急性のないようなこういう条約がなぜ成立したのか、そのあたりのいきさつがちょっと理解に苦しむんですけれども、それはどうなんでしょうかね。
#55
○説明員(国広道彦君) 確かに予防的な措置を必要とする分野はこのほかにもいろんなものがあろうかと存じます。しかしながら、この協議がなされた直接の契機として私どもが承知しておりますのは、この協議が行われるに至った時点の直前に、情報としましてノルウェー、ソ連等が南極の方においても商業的な大規模な捕獲を開始するということが伝えられておりまして、それが南極の条約の協議国の間で非常な関心事項となりまして、先ほどお話しのような経緯に至ったというふうに了解しております。
#56
○塩出啓典君 先般から、鯨を余りとるなと、アメリカの自然保護団体あたりがそういうことをどんどん言っておる。確かに鯨は非常に悲しい音を立てて鳴く、そういうのをテープにとって鯨が泣いているんじゃないかとかですね。しかし、そういうアメリカにおいても、じゃ牛肉は食べていないかというと、牛肉は食べているわけですね。そういうような点、日本人の感覚から見るとちょっとどうかなと思うところもあるんですけれどもね、そういうやっぱり自然保護団体などの意向というものがこういう条約制定に至ったんではないか、こういう感じがするんですが、その点はどうなんですか。
#57
○説明員(国広道彦君) 確かに自然保護関係者、環境保護運動者の考え方の中に、米国等の方々のお考えの中に、私ども日本人の従来の食生活、社会慣習から申しますとちょっと行き過ぎではないかというようにちょっと異質的なものを感じることが時折ございますけれども、この鯨の場合は、資源保護ということから相当突っ込んだ科学的な研究をいたしまして、私どもが条約に基づく国際協力をやっています範囲では、そういう非常に厳しい科学的な検討を参考としつつ政策決定を行ってきております。
 本件のこの条約につきましても、環境保護的な考え方が全くなかったというと誤りになると思います。そういう考え方の影響もございましたが、この条約は御存じのとおり非常に予防的なものになっておりますし、また対策としましても相当幅のある対策でございますので、ここら辺に条約上の均衡はあろうかと判断しております。
#58
○塩出啓典君 新聞の報道によりますと、イギリスのオークニー諸島でアザラシの間引きをやっておる。目的は、魚類をアザラシから守るという名目で雌五百頭、子アザラシ四千頭を目標にアザラシの射殺が行われたと。これは余りアザラシがふえると魚を食っちゃって魚がなくなる、そういうことでアザラシを殺したということで、日本でも先般イルカの例であったわけですけれども、そういうことでアザラシを守るのもいいわけだけれども、アザラシがふえ過ぎて魚をばくばく食えば魚がなくなってくるんじゃないかと、そういうような点は水産庁はどう考えているんですかね。
#59
○説明員(上田大和君) イギリスのオークニー諸島周辺のアザラシにつきまして英国の方においてとられました措置につきましては、漁民の生活を守るために行われたものであるというふうに理解しておりまして、わが国としまして特に問題とすることはないであろうというふうに考えております。
 それから、イルカ捕殺の問題でございますけれども、イルカと魚との関係は、いま先生御指摘のとおり、非常に利害が対立する問題がございまして、漁民としてはその生活を守るためにやはりイルカによるところの食害を防がなければならないという現実的な問題もあるわけでございます。そういった現実の生活の問題と資源保護の問題をいかに調和させるかということは非常にむずかしい問題でございますけれども、やはり漁民といたしましては、自分の生活を守るということから、一般世論との調和を考えながらそういった問題を処理していく必要があるというふうに考えております。
#60
○塩出啓典君 アザラシが余りふえると逆に魚が食われる。そういう点で南極のこのアザラシの保存に関する条約ですけれども、南極においてはそういう点の配慮はどうなのか、その点のお答えがなかったと思うんですけれどもね。
#61
○説明員(上田大和君) 南極のアザラシの場合には、これは主としてオキアミを主食としておりまして、南極に生息しますところのいわゆる魚類等を食餌しているというようなことは余りございません。
#62
○塩出啓典君 そうすると、アザラシは南極にいるオキアミを食べておると。
 いま、先般から二百海里時代を迎えて、わが国におけるたん白源としての漁業というものが見直されてきておるわけでありますが、そういう中でこのオキアミというものが大きく見直されてきておるわけですね。わが国としても、最近、特にこのオキアミについてのいろいろな研究、利用方法、そういうものを鋭意努力をしていると思うんですが、オキアミについての取り組みの状況はどのようになっておりますか。
#63
○説明員(谷川高士君) オキアミについては、先生御指摘のように、わが国として貴重なたん白資源の開発、こういうことでございまして、特に南極オキアミの調査につきましては昭和四十七年からやってございまして、海洋水産資源開発センターというところで企業化調査ということをやってございます。この漁場の選定でありますとか、漁獲方法、それから漁獲物の処理技術の開発ということを行っております。特に昭和五十二年からは大量処理の加工方法の確立をしたいということで、母船式の開発調査を実施しております。
#64
○塩出啓典君 オキアミの将来性はどうなのか。わが国は一年間に一千万トンぐらいの魚を漁獲してきたわけですが、そのうちのかなりの部分が外国の二百海里の中に入り、日ソ漁業交渉あるいは日米の漁業交渉等を見ましても、年々、環境は悪くなってきておると思うわけでありますが、そういう中でオキアミというものが、現在のところ、どの程度の可能性があるのか、水産庁としてはどういう見通しを持っておられますか、その点をお伺いいたします。
#65
○説明員(谷川高士君) オキアミにつきましては、現在、開発途上でございます。資源量全体につきましても諸説いろいろございまして、五十億トンと言う学者もございます。そういう中におきまして、私どもが、現在、これは企業化段階でございますが、とっておりますのが五十二年度で二万六千トン、このぐらいとっております。現在、五十三年度の出漁最中でございますが、三万七千トンぐらい今年はとるという計画で進んでおるわけでございます。
 オキアミにつきましては、皆様よくその名前は御存じだということでありますが、なかなか食べる方のなじみがない、こういうことで、現在、処理加工技術の検討などをしておる最中でございます。それで、これをわが国の、先生御指摘のありました水産物一千万トン、これの支え、こういうものにしていきたいというふうに考えております。
#66
○塩出啓典君 現在、わが国では二万六千トンあるいは今年度三万七千トン、これはどういうぐあいに、何に使われておるんですか。
#67
○説明員(谷川高士君) これはとったものを冷凍にする、それから煮沸――ボイルといっておりますけれども、ボイルにしまして持ってくるものが大半でございます。それで、これは現段階では人間の口に入れるものと、それから魚のえさとか、そういう形で処理されております。
#68
○塩出啓典君 人間の口へ入るというのはどういう形で入っているんですか、われわれ食べているんですか。
#69
○説明員(谷川高士君) いろいろ製品の中に、いわゆるせんべい類でございますとかエビのシューマイ、そういうような形で入っておると思います。
#70
○塩出啓典君 世界の各国でオキアミをとっている国はどういうのがあるのか、あるいはそのとっている量はわが国より多いのか少ないのか、その点どうなんですか。
#71
○説明員(谷川高士君) オキアミの統計につきましてはなかなかわからない面が多いわけでございます。それで、一番利用しておりますのがソ連、こういうことになっております。それから、やはり立地条件からいたしまして南米の一部の国、こういう国が現在利用したいということでやっているわけでございます。ただ、これが食用にどういう形で持っていくのかというのが各国とも問題点でございまして、食用への開発方式というものを見出そうとしているわけでございます。このほか、情報として韓国でありますとか中国というところも出たいというふうに聞いております。
#72
○塩出啓典君 私が聞いている範囲では、南極でオキアミをとるにはかなり船も小さい船ではだめだし、すべての国がこれに参加できるわけではない。現在ではごく一部の国がわずかとっているにすぎない状態でありますが、しかし、このオキアミにつきましても、やっぱりオキアミの資源を保存しなければならない、こういうところからオキアミ漁を規制する動きがあるように聞いておるわけでございますが、そのあたりはどうなんでしょうか。
#73
○説明員(井口武夫君) 確かにオキアミを中心にいたしまして、南極の海洋生物資源全体を保存しようということで南極条約協議国会議というところでそういう考え方が数年来強くなりまして、実は、一昨年九月にロンドンで開催された第九回南極条約協議国会合でオキアミを中心とする南極の海洋生物資源の保存に関する条約を作成することが合意されたわけでございます。それで昨年二月に豪州のキャンベラでこの条約を締結する会合が開かれまして、さらに七月にアルゼンチンのブエノスアイレスで二回目の特別会合が持たれました。そうして目標は、実はできれば昨年中にも締結したいということでございましたが、若干最後の詰めが行われておりまして、本年半ばには条約の採択を行えるということが期待されているわけでございます。で、条約ができれば、オキアミを中心とした南極――これは南極の生態系全体をとらえるという条約でございますけれども、科学的なデータに基づく保存とそれから合理的な利用というものを委員会を通して国際協力によって解決していくという方向が打ち出される予定でございます。
#74
○塩出啓典君 その点、いまのお話では十億トンあるいは五十億トンもあると言われているオキアミ、そうして現在漁獲されているのはわが国が数万トン、ソ連もその程度じゃないかと思うのですが、そういうものが規制をされていく、今回の南極のあざらしの保存に関する条約にしても差し迫った危険性がないのにこういう条約が結ばれるということから考えて、オキアミの保存の条約が締結され、そのことがわが国のたん白源の獲得に非常に大きな支障を来すおそれはないのかどうか、そういう点を私たちは心配をしておるわけでありますが、そういう点の見通しはどうなんでしょうか。
#75
○説明員(井口武夫君) 確かにオキアミに関しましては非常に資源の賦存量は大きいという立場で私どもはもちろん考えておりますが、この南極の海洋生物資源全体を保存しようという考え方が非常に国際的に高まっておりまして、やはり国際協力というものの中でいろいろ生物資源の合理的な利用というものもやっていくということが国際的な大勢でございまして、日本以外の南大洋における遠洋漁業国であります、先ほど水産庁から指摘しました、たとえばソ連というような国も、その他試験操業みたいなことをやっているポーランドとか西独もございますけれども、こういう国々もやはり国際的な枠組みの中でやっていくという考え方でございまして、それがわが国の今後のオキアミの漁業というものに支障を来すという判断には立っておりません。
#76
○塩出啓典君 そうなればいいわけなんですが、これは政務次官にお尋ねしたい、また要望したいわけですけれども、やはりわが国はいままで世界の海へ出かけていって、そしてごっそり魚をとってきた、そういうような過去の日本の歴史というものに対して恐らくはかの国々も警戒をしておる。このままほうっておいたら、南極のオキアミも全部日本に漁獲されるのじゃないか、こういうような心配を持っているかもしれない、そのあたり私にはよくわかりませんけれどもね。当然、そういう点は、わが国も資源保護の立場から、日本だけよければいいという、そういう考えを捨てていかなければならないと思うのですが、しかし、一方、オキアミを保存する、イルカを保存する、これは確かにいいわけですけれども、それ以上に大事なことは日本人を保存してもらわなくちゃ困るわけでありまして、そういうやはり人間の生存という立場から資源は適度に有効に利用していかなくちゃいけないのじゃないかと思うのです。そういう意味から、オキアミ漁の規制にしても、余りこれが人間を無視した、ただ規制すればいいんだと、こういうような方向にならないようにしていかなくちゃいかぬ。そのためには国際外交において日本の置かれた立場というものを十分PRしていかなくちゃいけませんし、また一方、いままでの日本の遠洋漁業における乱獲というものに対する謙虚な反省も与え、決してわが国はそのようなむちゃなことはもうしないのだと、こういうことをどんどんPRしていかなければいけないんじゃないかなと、私はそのように考えるわけですけれども、外務省としてはこういう問題についてはどう取り組んでいくのか、その御所見を承っておきます。
#77
○政府委員(志賀節君) 全く私は塩出先生の御意見と同じポイントに立つものでございます。日本のいままでの漁業に対する姿勢というものの深刻な反省期に入っているということ、その反省の上に立って私どもがやっていかない限り国際的に孤児になることはやむを得ないのでありますが、さればと言って、これがあつものにこりてなますを吹くたぐいのものであってもいけない、これはその先生の御意見どおりでございます。私は、そういう面から、今後もただいま申し上げました線で進んでまいりたいと思います。
 ただ、一言ちょっと、私、従来考えていることをつけ加えさせていただきますと、私の曾祖父は生涯四つ足を食べない人でございました。これは宗教的なものであるかどうであるかよくわかりませんが、私の曾祖父以外も大体同じ年輩の人たちは不浄と称して四つ足の肉を食わなかったと承知をいたしております。ところが、どうも世界じゅうが一つの文化的な背景がないにもかかわらず――たとえば回教国では豚を食うことを禁じております。インドでは牛は神聖な動物であります。あるいは朝鮮、中国においては犬を食うことを異とせざるところであります。そういうそれぞれの文化的背景が別であるにもかかわらず、特定の文化的背景によって、どこそこの国が鯨を食うことはいかぬことであるとか、どこがどういうことをやることがいかぬという押しつけがあることははなはだ私は遺憾としておるものでございます。そういうようなことから、今後、お互い国際的に理解を深めて、こういうことの誤解やあるいは行き過ぎを解いていく努力が外務省に課せられている一つの使命であると考えておる次第でございます。そのような面からも、特に今後とも間断ないひとつ私どもに対する御忠告を賜りたいと思うわけであります。
#78
○塩出啓典君 それから南極の資源、いわゆる陸上資源の問題についてお尋ねをしたいと思います。
 いままで私たちは、南極は雪に覆われた大地で、学術的以外には余り価値がないと思っておったのですが、最近は鉱物資源、そういうものがたくさんある、そういうことで非常に問題になってきておるようでありますが、大体南極の面積はどの程度なんですか。それから資源はどういうものがあるんですか。
#79
○説明員(久米邦貞君) 南極の面積につきましては、約千三百五十万平方キロメートルと言われておりまして、日本の面積と比較いたしますと、日本の面積の約三十七倍ということになっております。
 南極の鉱物資源につきましては、これまで必ずしも十分に確認はされてないわけでございますけれども、かなりいろいろな種類の鉱物資源が存在する徴候がございまして、例を挙げますれば、石油、天然ガス、それから石炭、ウラン、ニッケル、そういったものがある徴候があるという程度でございます。ただ、南極は御指摘のとおり非常に厚い氷に覆われておりまして、その下にございます鉱物資源の確認というのは非常にむずかしいということもございまして、これは経済的商業的に活用できるかどうかというところまでは必ずしもまだ現段階でははっきりしたことはわかっていないというのが現状でございます。
#80
○塩出啓典君 新聞の報道によりますと、南極では鉄鉱石が世界で二百年間使う分ぐらい発見されておる、あるいは石油は三百から六百億バレルで、アラスカの油田に匹敵するものが発見されておる、こういうようなことが新聞では報道されておるわけでありますが、日本の三十七倍もの広さでございますので、しかも雪の中に覆われておるわけで、こういう調査もどの程度の調査の結果わかったものであるのか、私たちもちょっと判断に苦しむわけですけれども、そのあたりはどうなんでしょうかね、どの程度わかっているんですかね。
#81
○説明員(久米邦貞君) 先ほどお答えいたしましたとおり、南極につきましては非常に自然の制約条件が厳しいこともございまして、いろいろな御指摘のとおりの推定ないし推測の記事というのは資料が出ているかと思いますけれども、現段階では必ずしも詳しいデータというのは確認されていないというのが現状でございまして、ただ、非常に豊富な鉱物資源が存在しておるということは申し上げられると思います。
#82
○塩出啓典君 いま各国が南極の地下資源の調査にも競って取り組んでおる、このように聞いておるわけですが、わが国はどのように取り組んでおりますか。
#83
○説明員(久米邦貞君) わが国の観測隊は、これまでのところは、余り大がかりな地質調査というのは行っておりませんけれども、今回行っております二十次観測隊から鉱物資源の探査開発に関する基礎的な地学調査というものを三年計画で開始するということになっております。
#84
○塩出啓典君 この南極の領有権の問題につきまして、領有権を主張している国がたくさんあって、お互いに領有権を主張してきた歴史があるように聞いておるわけでありますが、南極の領有権の問題については現状ではどうなっておるのか御説明をいただきたいと思います。
#85
○政府委員(山田中正君) 先生御指摘のように、南極に領土主権を主張している国が確かにございます。七カ国でございまして、英国、ニュージーランド、オーストラリア、フランス、ノルウェー、アルゼンチン、チリ、この七カ国が領有権を主張いたしております。
 領有権の問題につきましては、昭和三十六年に発効いたしまして、これらの国も加盟いたしております南極条約の第四条に規定がございます。この規定によりまして主張しておる国はその主張を取り下げたわけではございませんけれども、この領有権を認めない国、たとえばわが国などは南極におきましていかなる国の領有権をも認めておらないわけでございますが、その国の立場をも害さない、いわゆる法的な凍結が行われておるのが現状でございます。
#86
○塩出啓典君 南極を七カ国もがそれぞれ領有を主張するというのは、それぞれどういう根拠があるんですか。たしかわが国もかつて白瀬中尉ですか、南極へ乗り込んで日の丸の旗を立てた、そういういきさつもあるわけですが、各国の領有権の主張というのはそういうようにその国のだれかがそこへ行って旗を立てた、そういう歴史的ないきさつからそれぞれ主張しておるのかどうか、その点は根拠のある主張なんですか。
#87
○政府委員(山田中正君) 先ほど申し上げました七カ国のうち、アルゼンチンとチリを除きます五カ国、したがいまして英国、ニュージーランド、豪州、フランス、ノルウェーでございますが、これは根拠といたしましては発見及び探査活動を根拠といたしております。それからアルゼンチン及びチリに関しましては、それぞれの本土からの近接した地域であるということ、またスペインから分離いたしました際に、それぞれの国の南方にございます南極大陸についても継承したという主張をいたしております。
#88
○塩出啓典君 資源有限時代あるいは世界的な油の不足、そういう点から考えて、今後、この南極をめぐる各国の領有権争いというものは一九九一年以後、あるいはそれより前からも、もっと激しくなるんじゃないかと私たちもそういう点を実は憂慮をしておるわけであります。
 報道によりますと、一九七七年アルゼンチン陸軍は南極移住計画を発表し、南極基地に勤務する兵士は家族同伴が許され、また、昨年、七八年初めにはエスペランサ基地で初の南極っ子の赤ちゃんが誕生した。さらに同年三月には移住者の子弟のために南極分校も開設している。このようにアルゼンチンが南極大陸に既成事実を積み上げようとする動きがあるように聞いておるわけでありますが、このようなことは事実であるのかどうか、また外務省としてはこういう動きをどう考えておるのかお伺いいたします。
#89
○説明員(久米邦貞君) アルゼンチンが南極大陸におきまして御指摘のとおりのような活動をやっておるという報道は承知しておりますけれども、これが具体的にどういう活動であるかについて正確には確認しておりません。ただ、いずれにいたしましても、先ほど申し上げました南極条約第四条の二項というのがございまして、この条約の有効期間中に行われたいかなる活動も今後南極地域における領土に関する請求権の主張、これを主張しあるいは否認する根拠とはなり得ないという規定がございまして、こういう現在行われておりますアルゼンチンの活動が将来根拠となるということにはならないと承知しております。
#90
○塩出啓典君 御存じのように深海底の鉱物資源が開発可能な段階を迎えまして、国連総会でも海底の鉱物資源は人類共通の財産である、このように決議をされたわけであります。私たちも、今日まで海底の鉱物資源をとる技術のない時代には問題にならなかったわけでありますが、そういう技術がだんだん進んでくると問題になってくる。しかも限られたすぐれた技術を持った国がこういう鉱物資源を独占するということは許されないわけでありまして、そういう点から海底の鉱物資源を人類共通の財産とした国連総会の決議は非常に妥当であると考えておるわけであります。
 そういう点から、今後、南極の資源開発というのが非常にもう問題になってくるんじゃないか、むしろこのアザラシなんかよりよっぽどこっちの方が急ぐ大事な問題のように思うわけであります。そういう意味で、わが国といたしまして、国際舞台において、国連総会等においてこの南極の領有権問題についてどういう姿勢をとっていくかということは非常にこれは大事な問題じゃないかと思うんですが、この問題についてはどういう考えで臨むのか、この点をお伺いしておきます。
#91
○説明員(久米邦貞君) 深海海底の鉱物資源を人類の共同財産として国際的に管理するという海洋法会議を中心にいたしました考え方の影響もございまして、いま御指摘のように、南極についてもそういう考え方を適用しようという考え方が一部にあることは承知しておりますけれども、これはいずれの国際的なフォーラムにおいてもまだ正式には出されていないと理解しております。また、その南極の協議国のメンバーといたしまして、南極の鉱物資源の問題、領有権の問題というのは、まず南極に直接関係のある国の間で話し合うべきだという立場を日本は他の南極条約加盟国とともにとっておりまして、現在、この鉱物資源の開発の問題につきましても、南極条約に基づきました南極協議会というのがございまして、その場を中心にしていろいろ議論が行われているところでございます。
#92
○塩出啓典君 いまのはよく聞こえなかったんですが、これは海底資源のように人類共有の財産というのではなしに、現在まで協議をしている関係国の話し合いによっていくべきであると、こういう主張できておるということなんですね、わが国の場合は。
#93
○説明員(久米邦貞君) その領土権の問題、鉱物資源の問題をどういうふうに扱っていくか、そういうことを含めまして、こういう問題全般につきまして、まずその関係国間で協議すべきだという立場から、現在すでに南極協議会を中心にいたしましてそういう問題を国際的に話し合っているというのが現状でございます。
#94
○塩出啓典君 この問題の最後に、政務次官に要望しておきますが、南極の領有権問題は非常に大きな問題であると思います。これは単なる鉱物資源のみならず、現在は二百海里という時代になりましたので領有権の問題が即漁業に影響してくる、わが国の将来のオキアミの漁業にも大きな支障になりかねない。そういう状態の中で南極の領有権がどうなっていくか、資源開発がどうなっていくか、これはわが国にとっても非常に大きな問題ではないかと思います。
 したがって、そこであんまり醜い争いはできれば回避したい。しかし、また一方、わが国の国益も守っていかなくちゃいかぬ、あんまり日本はかっこうのいいことばかり言って結局得るものなかった、これでは話にならぬわけでありまして、そういう点に外交のむずかしさというものがあるんじゃないかと思うんですけれどもね。そういう点、外務省としても世界各国の情報も十分集めて、この南極の領有権問題の行方についても円満に、しかもわが国にとって国益を守れる方向で行くように努力してもらいたい。日本の三十七倍の広さもあるわけですから、ある面から言えば、これば北方領土よりもはるかに大事とも言える問題のような気もするわけなんですが、そういう点、今後の取り組みについてお考えを承っておきます。
#95
○政府委員(志賀節君) 南極の領有権問題という面にしぼって大変鋭い御指摘をいただきました点、先ほど来拝聴いたしておりまして私非常に啓発されるところ大でございます。
 この南極における従来の地質学的面からの資源の有無につきまして、あるいはある場合には何があるのかという、そういう内容につきましての信頼性、信憑性は私は定かでございません。しかしながら、今後、もしたとえば石油がある場合には、石油資源が枯渇に瀕するような場合には、当然、これの重要性が見直されるわけでございまして、と申しますのは、現在置かれている自然条件の厳しさの中からなかなか経済的技術的な面からこれのくみ上げが容易にできない、できても非常にお金がかかったり技術的に困難がある、こういう面でちょっと敬遠されておるものも、経済ベースに乗ったり、あるいはその必要性からその技術が進んで、そういうもののくみ上げが可能になる、こういうことが予想されますので、当然、先生御指摘のようなこの領有権というものも浮かび上がってくる可能性なきにしもあらずと私は考えます。
 しかし、先ほど来外務省からお話をしてまいりましたとおり、すでに取り結ばれた南極条約の第四条によりまして、極力、私ども、この領有権をめぐって醜い争いが起きないような方向に、もし新しい取り決めをしなければならない場合にもきわめて円満の中にこういうことが取り結ばれるような努力をしてまいりたい、もって将来の世界人類に益するような点をともども見出していきたい、このように考えております。そのような私どもの姿勢で対処したいと存じます。
#96
○塩出啓典君 次に、水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約の締結についての問題であります。
 一九七二年、国連人間環境会議がストックホルムで開かれて以来、環境問題をめぐる各国の国際協力は一段と進んでいるわけでありますが、その中にあってわが国の対応のおくれが目立つわけであります。同会議で締結を約束し、その後調印をした国際条約でいまだ批准をしていないものがあるわけであります。時間がございませんので私の方から申し上げますが、絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引に関する条約、いわゆるワシントン条約であります。また、世界の文化遺産および自然遺産の保護に関する条約、また、廃棄物その他の投棄による海洋汚染の防止に関する条約などでありますが、そういうものがなぜ批准がおくれているのか。
 今回のこのラムサール条約にいたしましても、四十六年二月に採択をされ、五十年に効力を発して、すでに二十二カ国が締約国になっておる。特にわが国は水鳥にも関係の深いそういう国でありまして、資源保護団体からも、なぜこの条約を批准しないのか、こういう声が長くあったわけでありますが、この本提案の条約は今回ようやく提案されたわけでありますが、この条約及びいま申し上げたそういう条約ですね、これらがまだ出されていないということはわが国の姿勢に関する問題じゃないかと思うんですけれども、その点の状況をお聞かせいただきたいと思います。
#97
○説明員(小林俊二君) ただいま御指摘のございましたワシントン条約及び海洋汚染防止のための投棄に関する条約につきましては、いずれも外務省といたしましては、早期に批准の御承認を仰ぐ措置をとるべく、国内の調整に非常に積極的に取り組んでおるところでございまして、いずれも、できればこの国会あるいは次の国会には提出できるようにしたいということで協議を進めておる問題でございます。したがいまして、この姿勢に関する限りは先生の御指摘の方向に十分合致し得るつもりで努力を進めておるところでございます。
 第三番目の文化・自然遺産保護条約につきましては、この条約の内容が各国内におきます文化財保護の問題と並びまして、国際的な文化財保護のための協力、さらにはっきり申し上げますれば、主として途上国における保護のための援助といった面を含んでおりまして、そのための予算措置を要するという内容になっておりますので、そうした予算措置の観点から、若干単なる国内における体制整備とは異なった面を含んでおりますので、その観点からこれに加入することが適当であるかどうかということを検討中であるというので、若干そのポジションにおきましては前二者とは異なっております。
 しかしながら、環境関係に最も直接的な影響のある前二者につきましては、一刻も早く御承認をいただくことをめどとしておるという現況でございます。
#98
○塩出啓典君 中でもストックホルム会議で採択されました人間環境宣言と行動計画の中でも強調された廃棄物などの海洋投棄規制条約も、同会議の直後一九七二年十一月ロンドンで開かれた国際会議で採択され、七五年八月に発効しておるわけであります。それは米、英、独、仏など三十七カ国が批准をし、先進国の中で批准をしていないのは日本だけであります。関連国内法としては現行の海洋汚染防止法あるいは廃棄物処理法があり、手続の面ではさほどめんどうではないんじゃないか。特に、わが国は海洋国、海運国でありますので、それが特におくれているというのは、一体、その理由は何ですか。
#99
○説明員(井口武夫君) 確かに先生のおっしゃいますとおり、この条約は七三年六月に署名されまして、わが国を含めて署名されたわけでございまして、ほとんどの先進国は確かにすでに加入しております。わが国も基本的にこの条約そのものにはきわめて前向きに考えておりますが、やはり廃棄物全般の海洋投棄というものを規制の対象にしておりまして、かなり複雑な構成になっております。関係する国内法令もたくさんございまして、関係省庁もなかなか多うございます。そうして、この条約をどういうふうに解釈して運用するかという点での準備等にかなり時間を要しましておくれておりますが、現在、関係省庁で法令の整備作業が進められておりますので、同作業が終了次第、この条約についてできる限り今国会御承認を求めるということで準備が進められておるわけでございます。
#100
○塩出啓典君 この廃棄物その他の投棄による海洋汚染の防止に関する条約に関しては、わが国の国内法では、亜鉛とか銅、弗素化合物の規制措置が全くない、投棄が野放しになっておるわけであります。亜鉛、銅は化合物として捨てられるとイオンになって解け、毒性が強いが、精錬工場、メッキ工場などは鉱滓や汚泥の形で海洋投棄を自由に行ってきておるわけであります。これを当然規制をしていかなければ批准はできない。ということは、わが国のそういう公害規制というものが国際的にもおくれておる。こういう点を直していかなくちゃならぬわけでありまして、そういう点はひとつ、外務大臣はおりませんけれども、外務大臣にもよく伝えて、特に閣僚の一員として、いやしくも日本の国が、国民総生産においては自由世界二位になりながら、こういう公害規制においては国際的なレベルからおくれておる、こういうことは非常によくないわけでありまして、そういう点をひとつ御努力をしていただきたい。
 それから、絶滅のおそれのある野性動植物の国際取引に関する条約にいたしましても、わが国は加盟はしていない。これを批准をして発効いたしますと、現在行われております象牙やワシの剥製、べっこう、ワニの皮製品などが商業取引が禁止になる、こういう問題も出てくるわけでありますが、しかし、こういう問題も国際的に禁止になっておるのに日本の商売人だけがやっておるということは、これはやはり国際的にも許されない。商売をやっている人の立場はわかると思うんですけれどもね、そういう点も国際的なレベルに近づくように努力をしていただきたい。このことはひとつ外務大臣にもしっかり伝えていただきたいと思うのであります。
 本日のこの三つの案件の審議にしても、きのうようやく政府から説明を聞いて、けさ本委員会で提案理由の説明があって、すぐ審議をする、私が昔外務委員をやっているときはそういうことはなかったわけであります。提案理由の説明を聞けば、その次に審議をする。それを、国会の外務委員会としてはほんとにえらい猛スピードで審議に協力をして、外務省の条約がたまって国際的に批判されては困ると、そういうところから党派を挙げて委員会としては取り組んでおるわけでありまして、私はそういう姿勢は非常にいいんじゃないかと思うんでありますが、そりに対してやはり政府もそれにこたえて、やるべきものは早く準備していただく、こういうことでないと、われわれとしても非常に了解しがたい点もありますので、その点を政務次官からも大臣にしかと伝えて、いま申しましたような条約も速やかに提案できるように努力をしていただきたい、このことを要望いたします。
#101
○政府委員(志賀節君) 全く私といたしまして一言の反論もないお考えでございまして、しかと外務大臣に私から伝えさしていただきます。
 なお、再三同じことを申し上げるようでございますが、ただいま御指摘の二つの条約につきましては、できるだけ今国会におきまして、関係国内法をも含めまして御審議をいただき、あるいは御承認をしていただく、こういう方向で鋭意努力をさせていただく所存でございます。
 なお、いわゆるワシントン条約につきまして私からちょっと申し上げさしていただきたいんでございますが、実は、私、外務省に参りますまで、猛獣ペットの取り締まりをすべきであるということを申しまして、このことにつきましては若干の先生、特に本日御出席の先生の中では大鷹淑子先生ほかいろいろ御指導をいただいております。これを研究すればするほどワシントン条約の批准の喫緊性を私は考えまして、外務省に参りましてからこれを急ぎ批准をするように私からも申しておる次第でございます。
 なお、これだけではとうていカバーできないような面が、猛獣ペットがこれだけ野放し的に日本国じゅうで飼われている際、当然出てくることも予想されますので、それをカバーするための猛獣ペット取締法とでもいうようなものを、また諸先生のお力添えによってこれを成立させ、そして市民の生命の安全を期したい、このようなことも考えておりますので、この機会によくお願いを申し上げる次第でございます。
#102
○塩出啓典君 最後に、時間がございませんので、ポーランドとの通商航海条約については一問だけ。
 昨年、ヤロシェビッチ首相も日本へ来られておるわけでありますが、わが国の外務大臣も近い将来訪問すべきであると思うのであります。そういう見通しはどうなのか、それだけお聞きをいたしまして、あともし質問できる機会がございましたならば質問をさしていただきたい、なければこれで終わりといたします。
#103
○説明員(加藤吉弥君) ヤロシェビッチ首相が訪日いたしましたときには、当時の福田総理に対してもぜひポーランドを訪問するように招請がございまして、福田総理の方も原則としてお受けする、喜んでこれを感謝するということを申されております。外務大臣のポーランド訪問につきましても、できるだけ早い時期にそれを実現したいと事務当局でも考えておりますし、大臣御自身もさようにお考えであるとかように承知しております。具体的な日取りその他につきましては、事務当局同士で今後詰めていきたいと考えております。
#104
○委員長(菅野儀作君) 午前の質疑はこの程度として、午後一時三十分まで休憩いたします。
   午後零時二十三分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時三十六分開会
#105
○委員長(菅野儀作君) ただいまから外務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、日本国とポーランド人民共和国との間の通商及び航海に関する条約の締結について承認を求めるの件、特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約の締結について承認を求めるの件及び南極のあざらしの保存に関する条約の締結について承認を求めるの件、以上三件を便宜一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#106
○田中寿美子君 午前中に、もうポーランドとの修好条約の問題については、わが方は戸叶委員がするお約束でございましたからやられたと思うんです、私おりませんでしたものですから。さらに水鳥に関してもアザラシの条約に関しても、それぞれ相当もう質疑されましたと伺っておりますので、なるべくダブらないようにしてしたいと思いますけれども、私は、最初に、水鳥の方の条約の問題についてお尋ねをしたいと思います。
 水鳥にしてもアザラシにしても、私は、生物資源を守っていくという考え方に立っている、そういう意味では日本が単に生物資源を守るだけじゃなくて、そのことが自然環境を守り人間環境を守ることになるのであって、両方とも大いに賛成でございます。むしろ早くこういう条約には参加するべきであったというふうに思っているわけですが、大変形式的なことになりますが、私も旅行の道々読んできたものですから十分理解していないところがあるかと思いますが、特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約、この「特に」というのはどういう意味が含まれているんでしょうか、ちょっと御説明いただきたいんですが。
#107
○政府委員(山田中正君) この条約が対象といたしておりますのは国際的に重要な湿地でございますが、その湿地をとらえてみます場合に、水鳥が湿地に非常に依存しておるという実情がございます。かつ水鳥というのは渡り鳥でございますので、国際的な保護の措置が必要であるということがございます。したがいまして、この条約を結びました際に、一般的には国際的に重要な湿地ということを対象といたしたわけではございますが、特に水鳥の生息地として考えられておる湿地というのがなかんずく重要であるということで、このような題名になったと承知いたしております。
#108
○田中寿美子君 何かこう「特に」ということの意味が何となくはっきりしないような気がしますけれども、非常に強調したという意味にとってよろしいんですね。
#109
○政府委員(山田中正君) 先生のおっしゃるとおりでございます。
#110
○田中寿美子君 それで、実は、私も外務省の方がつくってくださったこの説明書を道々読んでおりまして、いつも感じていることで、この際、御要望を申し上げたいと思っているんですが、慣習として条約は、私は別に元号法案の問題をここで出すつもりはないんですけれども、全部昭和何年となっておりますね。それで条約そのものは昭和というのが慣行だろうと思いますけれども、説明書を見るときに、私は一々これを西暦に自分の頭でかえながら考えなくちゃならないんです。これは国際的にはもちろん西暦でやっていらっしゃると思うんです。ですから、今後、外務省当局が出される条約の説明書などは私はぜひ西暦を入れていただきたいと思いますが、いかがですか。きょう、私、考えるのに一々赤字で入れて――別に条約そのものということじゃなくて、説明書ですからね。
#111
○政府委員(志賀節君) 国内のいわゆる公文書には従来も元号を使っておりますものでございますから、そのようにさせていただいておりますし、ただ、対外的には、元号をそのまま用いることがなかなかコモンでないといいますかポピュラーでない、こういうようなことから西暦を使う、こういう慣行になっておりますので、そういう方針でずっと今後もやらしていただきたい、このように考えておるわけでございます。
#112
○田中寿美子君 私の意味はね、条約を西暦に直せということを言っているんではなくて、この解説書、説明書ですね。私たちは国際的な問題を考えるときに全部西暦で考えるわけなんです。それでこの解説書をいただいています、条約の解説書を外務省から出していらっしゃいますが、それにはせめて昭和四十六年というところに括弧して一九七一年というふうに入れてもらわないと、大変私なんかは一々直しながら考えなきゃならない。そういう意味で、公文書を直せという問題はこれは別の問題ですからここで議論する問題ではございませんけれども、私どもが考えるのについて説明書には西暦を入れていただきたいということなんですが、どうでしょう。
#113
○政府委員(志賀節君) 田中先生の御意見、早速検討させていただきまして、お答えをさせていただきたいと思います。
#114
○田中寿美子君 当然のこととして国際会議では西暦で話し合いをしていらっしゃると思いますので、国際的な問題を取り扱うときに西暦を――条約の中に入れるという問題は、これはまた別の問題として議論にならなければなりませんから、そういうことではなくて、私どもが考えるのについて入れていただきたいという意味ですから、御要望しておきます。
 それで午前中に大分水鳥の生息地だとか種類だとか数とか、そういう御質問があって、相当に御説明があったというふうに聞いておりますので、多少この法律に沿ったところでお尋ねしたいと思いますけれども、少なくとも一カ所の湿地を指定するということにしてありますが、国によって湿地がたくさんのところもあったり、それから一カ所ぐらいしかないところもあるかもしれませんが、日本の場合、ここでは釧路湿原ということになっております。これは私も昨年公害の委員長をしておりましたときに視察に参りましたところでございますが、釧路湿原一カ所をまず指定すれば、この条約には加盟できる、条約に加盟する義務としては一カ所は指定しなきゃいけないということですね。そうすると、非常にたくさんある国はどういう国があるのか、それから日本の場合にまだ指定すべきような湿原があるのかどうか、御説明いただきたいと思います。
#115
○説明員(野辺忠光君) 今回は指定をいたしますのは、たまたま当面一カ所を考えておりますけれども、これに続きまして、これに準ずるような個所も幾らかございますので、できるだけ早い機会に地元の御協力等を得ながら、できるだけたくさん指定をしていくという考え方で当面対処してまいりたいと思っております。
#116
○田中寿美子君 たとえば、ほかにどういうところが湿原あるいは湿地として水鳥の生息する場所がありますでしょうか。
#117
○説明員(野辺忠光君) 水鳥の生息地としては、湖沼、沼を合わせますと相当ございますけれども、現段階では、地元とこのリストに挙げたいということで接触をいたしておりますのは、釧路湿原のほかに、北海道の風蓮湖でございますとか、それからもう一カ所は伊豆沼、この二カ所を当面地元の御協力を得たいということで話を進めている段階でございます。
#118
○田中寿美子君 昨年、公害対策及び環境保全特別委員会で鳥獣保護法を通しましたですね。あれ以来、鳥獣保護区というのをつくったはずでございますが、何カ所ぐらいあって、そしてその中にいまのこの対象になる釧路湿原なんかはどういう扱いになっておりますでしょうか。
#119
○説明員(野辺忠光君) 昨年の鳥獣保護法の改正では鳥獣保護区の管理強化といったようなことも中心にいろいろと御論議をいただいたわけでございますが、この鳥獣保護区は従来からずっとございまして、昭和三十八年でございますか、その段階で従来禁猟区と申し上げておりましたものを鳥獣保護区と名称を変えまして、自来、計画的に鳥獣保護区を設定、指定いたしております。この鳥獣保護区は国設の分と県設の分とございますが、合計いたしますとおおむね二千カ所以上現在指定いたしております。
#120
○田中寿美子君 釧路湿原はどういう扱いになっておりましたですか。
#121
○説明員(野辺忠光君) 釧路湿原はただいまはクッチャロ太鳥獣保護区ということで国設でございますが、現在期限切れになっております。三月の終わりで期限が切れますので、これを更新するとともに、区域をさらに拡大したいということで、地元の方の公聴会を先般終えまして、つい最近自然環境保全審議会の審議を経まして、現在、農林省と協議をしておる段階でございます。三月の終わりには告示をして設定が終わるということになっております。
#122
○田中寿美子君 それで、今回、この条約に加盟しますと自然保護区というものを設定することになっておりますね。そうしますと、いままでの鳥獣保護区であった部分は、釧路湿原を指定するならば、やっぱり自然保護区ということになるんですか。
#123
○説明員(野辺忠光君) リストに挙げる場合には、鳥獣保護区の現在予定しております特別保護地区を予定いたしておるわけでございますが、さらに文化財でも天然記念物に指定いたしておりますので、その地域を含めまして鳥獣保護区全体を指定をしようというふうに考えております。たまたま先生のいま御質問ございました自然保護区というのとは若干違いまして、性格的にはそれをわざわざ設定する必要はないと考えております。
#124
○田中寿美子君 外務省ではどうでしょうか。これは今度自然保護区を設定するということになっていますけれども、釧路湿原のところはいまのようなことでよろしいんですか。少なくとも一つは登録しなきゃいけないわけですね。
#125
○政府委員(山田中正君) 釧路湿原につきましては、ただいま答弁ございましたように、近く拡大されます鳥獣保護区と、それから従来から文化財保護法で指定されております天然記念物としての釧路湿原、これが一致するということでございます。そしてその区域の指定を、条約上の湿地としての指定を予定いたしておるわけでございますが、先生御指摘の、その中の条約上言っておる自然保護区の問題でございますが、これは国設鳥獣保護区となりますと、それによりましてその条約で言っております自然保護区と同じ扱いができるというふうに考えております。
#126
○田中寿美子君 そうすれば、いまの取り扱いのままで自然保護区の登録ができるというふうに解釈しましてよろしいんですね。
#127
○政府委員(山田中正君) 条約上指定いたしますのは湿地でございますので、湿地として指定いたすわけでございますが、たまたま釧路湿原の場合は全体が自然保護区の形になるということで、自然保護区としての登録という必要は条約上はございません。ただ、そういう措置をとるということは当然連絡いたします。
#128
○田中寿美子君 わかりました。
 これは鳥獣保護区を昨年指定するということになって、今回もそれとダブらせながらやっていくわけですけれども、昨年の鳥獣保護法ができた後、その鳥獣の保護とか監視とか、それから繁殖なんかについて何か特別の施策が進んだんでしょうか。
#129
○説明員(野辺忠光君) 昨年の鳥獣保護法の改正に伴いまして、特に今後国が鳥獣保護の面におきます管理強化と申しますか、そういうものに強力に力をいたすようにという御答申とか、あるいは保護法のそういう趣旨があったわけでございますが、環境庁といたしましては、五十四年度の予算に今後国設鳥獣保護区の管理強化の面につきましての構想を大蔵に出しておりますが、そういうようなことで、特に国が渡り鳥の渡来地でございますとか、あるいは特殊鳥類等、絶滅の危機に瀕した鳥類の保護、そういったような個所について重点的に保護を加えるべき個所、そういうものにつきましては、先生がいまお話しございましたような管理体制の強化全体を含めまして見直しをいたしまして、近く基準等を改正し、五十四年度から計画的にそういうものに力を入れていきたい、かように考えております。
#130
○田中寿美子君 それで釧路湿原の場合はタンチョウヅルですけれども、あれはえづけしておりますね。それでもともと渡り鳥だったのが渡らなくなったらしいように聞いておりますが、そういうことでよろしいんですか。結局、タンチョウヅルが絶えないようにえづけをする、それであそこにずっと永住しているということで、鳥の幸せというか、あるいは渡り鳥としてそれでよろしいんですか。私は専門的知識がないもんですから、それでいいのかなというふうに思っているんですが。
#131
○説明員(野辺忠光君) 御指摘のように、えづけという問題につきましてはいろいろ専門的には論議のあるところでございまして、やはりえづけというのは原則的には緊急避難的なものを中心にいたしまして、できるだけ自然の状態に野生鳥獣は置いておくということがたてまえであろうかと思いますが、ただ、釧路湿原のタンチョウにつきましては、非常に数も少ないということから積極的に増殖をいたしたいという考え方を持っておりますので、そういう意味ではやはり一般の鳥獣とはやや性格を異にいたしまして、若干人工的にそういった、特にえさとか休息地であるとかというところを十分確保するという意味で必要であろうというふうに考えているわけでございます。
#132
○田中寿美子君 釧路湿原には、そうしますとそのほかに渡ってくる鳥、あそこにどんな種類があるんですか。
#133
○説明員(野辺忠光君) 釧路湿原には、現在、大体百五十種類程度の鳥類が生息しておりますが、その中で特に渡り鳥と申しますか、冬鳥と申しますとガン・カモ類、水鳥の類でございます。それからシギ・千鳥も若干中には入っております。それからまた湿原自体に生息いたしております森林生の鳥も幾らかおります。
#134
○田中寿美子君 二つ以上の国に水系が及んでいて渡り鳥が渡っている国があるということですけれども、五条のところですね、「二以上の締約国に水系が及んでいる場合には、この条約に基づく義務の履行につき、相互に協議する。」とありますけれども、たとえばどういう国にそういうものがありますでしょうか。
#135
○説明員(小林俊二君) 五条にございますのは、御指摘のように、湿地が二つ以上の締約国、この条約の締約国の両国にわたっているといったようなケースでございますが、私ども承知しているところでは、現在までに登録された湿地ではそういうケースがまだ出てないというふうに言われております。
#136
○田中寿美子君 ということは、そういう国があるはずだけれども、この条約に加盟していないということではないんでしょうか。
#137
○説明員(小林俊二君) 恐らく条約に加盟している国の場合にもそういう湿地が存在するということは十分考えられるわけでございますが、まだ登録されていない、したがってまだこの条約の対象として取り扱うということについての協議が整っていないということが十分あり得ると思います。もちろん締約国以外にもそういうケースを抱えている国があるということは想像されます。
#138
○田中寿美子君 具体的に言って、これはラムサール条約というようにイランを中心にしてヨーロッパ諸国が最初に条約をつくる準備をしてきたわけで、あのあたりには相当の湿地が幾つかの国をまたいであるんだろうと思うんですが、たとえばどういうところがということをちょっと――。
#139
○説明員(小林俊二君) この条約の締約国の関係では、パキスタンが指定している湿地がインドの国境を越えて及んでいるというケースがあるそうでございますが、インドがまだこの条約に加盟しておりませんので、この条約上の協議の対象とはまだなっていないというケースがあるそうでございます。
#140
○田中寿美子君 そうしますと、条約に加盟していない国にはこの条約の効果は及ぼすことができないんでしょうか。
#141
○政府委員(山田中正君) 先生仰せのように、条約に加盟していない国に対しては及ぼすわけにはまいりません。
#142
○田中寿美子君 それだと余り効果が上がらないんじゃないかと思いますけれども、それはどういう方法をもって、たとえば情報を伝えるとか、何かそういう方法はないんですか。
#143
○説明員(小林俊二君) 実は、日本だけについて申し上げれば、午前中の答弁でもちょっと申し上げましたが、日本が島国であるということで、渡り鳥の関係で関係が出てくる国というものは非常に数において限られておるという状況にございますので若干状態が変わってくるわけでございますけれども、国境を接している国が多い場合のケースを主として対象としてこういう条約が発展してきたわけでございます。したがいまして、この条約が淵源的にヨーロッパから話が始まってだんだん西に及んできたということで、ラムサール会議にも西アジア諸国までが加盟したというような経緯があるわけでございます。
 しかしながら、でき上がったものを見ますと、日本としても、これに加盟して国際的にそういう協力体制というものを促進することは意味があるということで、おくればせながら今回加盟について御承認をいただくことになったわけでございます。日本の立場から申しますれば、日本が加盟することによって、すなわちより多くの国が加盟することによって、この条約がより普遍的なものとして世界に広がっていくということが期待されるわけでございまして、日本の加盟自体がたとえばインドのような国あるいはその他の有力な湿地を抱えておる国の加盟を促進する意味を持つということになるわけでございまして、この条約を通ずる情報交換とか協議とか、そういった国際的な動きが加盟を促進する結果になることを期待し得ると存じます。
#144
○田中寿美子君 日本の加盟する意義はそうだと思いますけれども、たとえば釧路湿原あるいは日本の湿原に渡ってくる鳥がせっかく日本の方ではこれを保護しても、相手国の方でそれをやらないという場合にはどうなるわけなんですか。それはどうしようもないわけ。
#145
○説明員(小林俊二君) わが国につきましても、またこの条約に加盟しておりませんアメリカにつきましても、二国間の渡り鳥の保護に関する条約の制定という動きは現在までもあったわけでございまして、こういう多国間の条約のみならず、二国間の条約によって相互に保護の実を上げるということは可能なわけでございます。したがいまして、もし日本の関心を有する渡り鳥保護ということにつきまして、この条約に加盟していない国があるために保護が徹底しない場合には二国間の話し合いをすることはできるわけでございますけれども、現在のところ、わが国といたしましてはそういう困難に直面しているという状況にはないように承知しております。
#146
○田中寿美子君 西欧諸国では自然保護運動がものすごく活発なわけですね、日本の方がおくれているわけですから、私は、そういう意味では動物や鳥をいじめるということ、あるいはそれの保護をするという点から言えば日本以上に心配することはない国が相当あるかと思いますけれども、それでもやっぱりもし今後せっかくこの条約に加盟して、そして日本で保護した鳥が十分の保護を受けないというようなことがあるということがわかれば、やっぱり日本政府としてはその相手国に対して要望をするとか、あるいは条約に加盟するとか、あるいは二国間条約を結ぶとかということについて努力をなさいますでしょうか。
#147
○説明員(小林俊二君) この条約は、午前中も御説明申し上げましたように、かなり前から国際民間機関を中心として話が進んできたわけでございますけれども、一九七二年の国連人間環境会議におきましても、その勧告の一つとしてこういう湿地に関する条約の締結ということを勧告する一文が採択されております。そういう世界的な会議の場におきましてもこういう問題が世界的な関心事として取り上げられておりますので、そういう会議における協議あるいは審議を通じて、わが国もそういった世論の形成に一翼を担うということも可能なわけでございまして、現在までにそういう役割りも果たしてきたわけでございます。
#148
○田中寿美子君 そういうふうに私も要望しておきます。
 そしてもう時間の関係でアザラシの方に移りたいと思いますけれども、私両方とも、ちょっと大変素朴な質問ですが、御説明願いたいと思いますのは、締約国と、それから署名、加盟、それから批准というような関係ですね、条約ごとにそれは違うのかどうか。つまり七カ国の締約国によって発効するとか、八カ国で発効するとかありますね、それば条約ごとに順序が違うのか。たとえば批准しなくてもいい国もあるようにどっかに書いてありますね、日本の場合は批准しなきゃなりませんけれども、署名さえすればいいとかいうのもあるみたいで、ちょっとその辺の関係をはっきり説明していただけませんでしょうか。
#149
○政府委員(山田中正君) 条約によりましてそれぞれどういう形でそれに加盟いたします国が拘束されるかという手続、それから発効要件というのがいろいろ違っているのがこれは実情でございます。先生の御趣旨はいろんな手続とかについての一般的な考え方をということだと思いますが、ある国がある条約に拘束されることを同意する行為、これを一般に条約を締結する行為と言っております。そしてその締結する行為の中にいろいろな手続があるわけでございますが、まず署名でございますが、署名には二種類ございまして、先ほど先生も少しお触れになりましたように、署名で発効する場合と署名では発効しない場合がございます。
 先生が御指摘になりましたのは水鳥条約だろうと思いますが、水鳥条約の場合には、これに加盟する国の選択によりまして署名することだけで発効させることが九条の二項の(a)項でできるようになっておりますので、その場合の署名は締結行為でございます。ただ、締結行為でない署名といいますのは、通常二国間条約で行っております署名は条約のテキストを確定する意味を持った署名でございます。それから多数国間条約につきましては、条約のテキストを確定する行為というのは、大体、採択行為で行われておりまして、それに加えまして署名が行われるわけでございますが、その場合の署名と申しますのは、ある国がその条約の趣旨に賛成であり、その条約に加盟することを考えたいという意図を示すものでございまして、むしろ政治的な意図と申しますか、そういうものを示すものでございまして、法的効果はそれからは特に出てまいりません。で署名で発効しない場合の署名をした場合、もしくは署名をしないで条約に入る方法といたしまして、批准でございますとか受諾でございますとか加入でございますとか種々の手続があるわけでございますが、これらの手続はいずれも一番最初に申し上げました条約を締結する行為でございます。
#150
○田中寿美子君 少しわかったような、わからないような――。
 それでは南極のあざらしの保存に関する条約ですが、私いままで長い間アザラシとオットセイとわからなかったんです。それからセイウチというのもありますね。この間初めてアザラシとオットセイの写真を見せていただいてその差がわかったんですが、これはアザラシは北極にもいますね、南極に限ったというのはどういうことなんでしょう。
 実は、私、北の方のアラスカなんかにおりますエスキモーインディアンのことを研究したことがありますので、あのエスキモーインディアンは――英語で言えばシールと言うので、私はそれをアザラシなのかオットセイなのか何なのかと思っておりました、字引にはみんな書いてありますから。シールの肉も食べるし、脂もとるし、皮も衣服に使うし、舟をつくるのにもテントにも、みんなそれを使っているわけなんですね。相当北極にもいると思うんですが、特に南極が問題になってきたのにはいろんな理由があると思いますし、あるいは北は全然問題ないのかどうか、ちょっとその辺を説明していただいて納得したいと思うわけです。
 この前、犬ぞりで探険なさった植村さんでしたか、あの方はたくさんの犬には恐らくアザラシかオットセイかの肉を食べさせたんじゃないかと思いますけれども、今度この条約に入りますと、アザラシを捕獲するのにも許可が要るわけでしょう。北の方はそれはまだ問題にならないということなのかどうか、ちょっと説明していただきたいと思うんです。
#151
○説明員(上田大和君) それでは、北の方ではやってないけれども、南の方だけについて何でやる必要があるのかという御質問について私の方からお答えいたします。
 北方水域のオットセイにつきましては、相当以前からこれが商業的な猟獲として相当猟されておりまして……
#152
○田中寿美子君 どの地方で。
#153
○説明員(上田大和君) これは日本も以前はとっておったわけでございまして……
#154
○田中寿美子君 北ですか。
#155
○説明員(上田大和君) はい。
 それで、現在、日本、アメリカ、カナダ、ソ連、この四カ国でオットセイ条約というのを結んでおります。この条約は、海上猟獲は原則的に禁止されておりまして、陸上捕獲だけが認められております。それで繁殖地を持っておりますところの米国とソ連が陸上で猟獲を行っておりまして、日本とカナダは陸上猟獲分の一五%の拠出を受けるという条約の仕組みになっております。
 それからアザラシ類につきましては、北西大西洋の漁業条約というのがございまして、その中で若干の規制について措置がとられております。
 それから南の方につきましては、以前猟獲が行われておったわけでございますけれども、これは主に、先生も御承知のように、ミナミゾウアザラシとか、そういう大型のアザラシにつきまして、これから脂をとるという目的で猟獲を行っておったわけでございますけれども、その猟獲の結果、そういった大型のアザラシ類につきまして資源に危険信号が出たということで、その後猟獲が停止されて、現在では商業猟獲は行われておりません。そういったことからいわゆる南極という特殊地域にあるアザラシ類をこの際国際的に保護しようという観点から今回の条約ができたというふうに考えております。
#156
○田中寿美子君 そうしますと、北の方については一応心配がないというふうに私はいま理解したわけですけれども、アンカレジなんかですね、あそこの空港なんかにはもういっぱいファーコートを売っているし、それからアザラシなのかオットセイなのか私見分けがつかないんですが、ハンドバッグからいろんなものをつくって売っておりますね。ああいう商業行為、あれはどこのものか、アメリカだからアメリカのものか、それとも――そういうことをお聞きしてもわかりにくいかとも思いますけれども。
 もう余りそういうことをお尋ねするのはやめまして、南極の方ですが、いま乱獲の心配が、フォークランドという島の付近で乱獲している、だからそうならないうちにということだと思いますが、この場合の「適用範囲」というのをちょっとこの第一条のところで見ますと、中に「みなみおつとせい属」なんて書いてありますね。これはオットセイも全部含めるということでしょうか。
 それから、私大変字句に拘泥して申しわけないけれども、最初の前文のところに「南極の動物相」というんですか、これは英文を見ればわかったかもしれないですけれども、英文を持ってきませんでしたので、これはどういう意味なのか、「動物相」「植物相」というのは。科学者はわかっていると思うんだけれども。それと、それから「みなみおつとせい属」というのはオットセイ全部を含めるのか。それから、ついでのことですから、セイウチというのはどんなふうに違うんですか、教えてください。入るのか入らないのか、「みなみおつとせい属」という中に入るんですか。
#157
○説明員(上田大和君) まず、「みなみおつとせい属」でございますけれども、これはアザラシとは科が違うわけでございまして、いわゆるアザラシと違うオットセイ属になります。
#158
○田中寿美子君 それはそうでしょうね、(笑声)絵でも見せてもらわないと。
#159
○説明員(上田大和君) 南極地域にすむオットセイのことをミナミオットセイと言うわけでございますけれども、生態的にはアザラシと全く同じような生態系を持っているわけでございまして、この中にはすんでいる地名がそれぞれついておりまして、たとえばニュージーランドにすむオットセイにつきましてはニュージーランドオットセイであるとか、チリオットセイ、ケルゲレンオットセイ、フォークランドオットセイというふうに、すんでいる地域によりましてそれぞれ名前がついております。そういうことで相当種類のオットセイがすんでいるわけでございますけれども、今回は生態系が全く同じであるということでアザラシも条約の中に全部包括されたということでございます。
 それからセイウチは、これは非常に専門的なあれで御理解できないかもしれませんけれども、セイウチとアシカというのが一番上の方にございまして、オットセイはアシカ科の下につくわけでございます。それからセイウチの方はいわゆるアシカ科でないセイウチ科の方の下につきまして、いろいろとセイウチの種類があるわけでございまして、基本的には違うということになります。
#160
○田中寿美子君 結局、南極にいるアザラシ及びオットセイ類は全部含まれるのでしょうか。いまおっしゃったアシカとかセイウチなんかもみんなこの条約は含めているのでしょうか。それともアザラシに重点を置いてあるのでしょうか。
#161
○説明員(上田大和君) 南極に生息分布しておりますところのアザラシ並びにオットセイは全部含められます。
 それからセイウチ類は南極には、この条約対象水域には生息しておりません。
#162
○田中寿美子君 結局、アザラシ及オットセイ類全部を含めて乱獲の心配があるから、これを保護するというふうに考えてよろしいんですね。
#163
○説明員(上田大和君) 先ほど御説明いたしましたように、ミナミゾウアザラシ、そういったような大型のアザラシにつきましては、以前、外国によって相当猟されたという実態がございます。ただし、カニクイアザラシとか、そういった小型のアザラシにつきましてはいままで余り商業的な猟は行われておらなかった。したがいまして、そういった大型の種につきましては若干資源上の問題があったわけでありますけれども、小型の種につきましてはそういった乱獲の傾向があるといったようなことはないというふうに考えております。
#164
○田中寿美子君 ですけれども、それがまた乱獲されないこと、予防的な意味で全部を含めるというふうに理解してよろしいですね。
#165
○説明員(上田大和君) そのように御理解いただいて結構だと思います。
#166
○田中寿美子君 それでは第一条で「南極条約第四条の規定を確認する。」というのを、これもし午前中なさったらあれですけれども、「第四条の規定を確認する。」という意味を説明していただいて、どういう義務をこの締約国が持つのかということを御説明願いたいと思いますが。
#167
○政府委員(山田中正君) お答え申し上げます。
 南極条約第四条、これは南極地域におけるいわゆる領土権の主張もしくはそれの否認、これを現状維持の状態に置くことでございまして、いわゆる南極における法的凍結を規定いたしておるわけでございますが、四条の規定をこのいま御審議いただいております第一条で確認いたしましたのは、この南極あざらし条約が適用される南緯六十度以南の海域についても、それと同じ立場であるということを確認する趣旨でございます。
#168
○田中寿美子君 南極条約第四条で、私時間がなくて調べることができませんでしたが、領土主権の主張というのを、現在、南極に関してどういう主張をどういう国がしているんですか、何カ国ぐらいが領土権の主張あるいは請求権を主張しているんでしょうか。
#169
○政府委員(山田中正君) お答え申し上げます。
 現在のところ、南極に領土権を主張いたしております国は七カ国ございます。英国、ニュージーランド、豪州、フランス、ノルウェー、アルゼンチン及びチリの七カ国でございます。
 これらの国が南極におきまして領土権を主張いたしておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、これらの国は南極条約にも加盟いたしておりまして、その第四条において、その主張を凍結すると申しますか、彼らの主張を南極条約で放棄したわけではございませんけれども、一方、これらの国の領有権を認めない他国の立場もこの四条で害されないということになっておりますので、そのような凍結が行われておるというのが南極条約のもとにおける法的な現状でございます。
#170
○田中寿美子君 日本はどういう立場をそれに対してとっておりますですか、南極に対する主張に。
#171
○政府委員(山田中正君) 日本は、南極におきましていずれの国の領土権の主張も認めないという立場をとっております。なお、日本自身につきましては、平和条約におきまして南極に対する請求権を放棄いたしております。
#172
○田中寿美子君 それで南極というところはいま探検やいろいろな意味の研究が行われておりますね、あそこに。ことしNHKがテレビをあそこから放映してまいりましたが、ああいう科学的な活動といいますか、あれはどういう意味を持つとお思いになりますでしょうか。
#173
○説明員(久米邦貞君) 御質問の趣旨は、領土権の主張との関係でという御趣旨でございますか。
#174
○田中寿美子君 いろんな意味で、あらゆる意味で、科学的な。
#175
○説明員(久米邦貞君) 南極の観測活動は、南極条約が六一年に結ばれたわけでございますけれども、当時は科学的な調査を国際協力のもとに進めるということから始まってまいりましたけれども、最近におきましては、南極の大陸に非常に豊富な鉱物資源があるということで鉱物資源という見地からも非常に大きな意味を持ってきているということでございます。
#176
○田中寿美子君 興味を持っているということですか。――鉱物資源があるということを言われていて、そして各国とも相当の興味を持っているということだと思いますけれども、それに関しては南極研究科学委員会というのは何らかそういうことに関して合意といいますか、そういうことがあるんでしょうか。
#177
○説明員(久米邦貞君) 六一年の南極条約のもとでつくられております国際的な――これは南極に実際に基地を置いております国は十三カ国でございますけれども、この十三カ国が参加いたしましてつくっております南極協議会という国際機関がございます。これの活動は、従来は、先ほど申し上げましたとおり、科学調査の面での国際的な協力を進めるということが中心になってきたわけでございますけれども、この協議会の場におきましても、この二、三年でございますが、特に資源の問題というのがクローズアップされてきております。ただ、南極の資源は非常に厚い氷に覆われておりまして、まだ十分な調査は行われていないというふうな現状でございます。
#178
○田中寿美子君 NHKのテレビ放送、あれはどんなふうに評価されていますか、国際的に。
#179
○説明員(久米邦貞君) 南極からの生の中継というのは世界でも初めての試みでございます。そういう意味で今回のNHKの中継というのは非常に大きな注目は浴びておりますけれども、こういうことが南極条約との関係でどうなっているのかという点につきましては、特にしていいとか、いかぬというような規定は南極条約にはございませんけれども、今回の中継の企画を始めます前に、一応、日本としてはこういう企画を考えているということで各国に通報いたしまして、各国からも特に異議のようなものは一切来ておりません。
#180
○田中寿美子君 どういうふうに評価されているのかと私思うんですけれども、別に非難はありませんでしたですか。
#181
○説明員(久米邦貞君) 特に非難というものはございません。
#182
○田中寿美子君 むしろ評価されているということですか。――
 それでは、この条約に加盟した後、国内法に手を入れなきゃならないんではないかと思いますね、水産資源に関するものですね、それはどういうふうな法律にどういう手を入れなきゃならないことになりますでしょうか。
#183
○説明員(上田大和君) 漁業法、それから水産資源保護法といういま法律があるわけでございまして、この漁業法の第六十五条並びに水産資源保護法の第四条に基づく農林水産省令がございます。具体的な名称は指定漁業の許可及び取締り等に関する省令という名前のものでございますけれども、この中に一条を設けまして、南極水域におけるいわゆる条約の対象となっております六種類のアザラシにつきましては、農林水産大臣の許可を受けた場合以外にはこれを採捕してはならないという規定を設けまして、今後、南極アザラシを採捕したいという希望者が出ました場合には、これに基づいて許可を発給する、そしてこの許可の発給の中でいろんなその他のサブ的な規制措置は実施していきたい、このように考えておる次第でございます。
#184
○田中寿美子君 日本は捕鯨なんかで大分非難を浴びていたり、イルカを殺すといって非難を浴びていたりしますが、アザラシに関してはまだ何もとがめられるようなことはしていない、そういうことだろうと推測しますけれども、それで、この際、早くこういう条約には加盟して国際協力の姿勢をはっきりさせる、こういう必要が確かにあるし、また実際資源保護の意味ではぜひそうしなきゃならないことだと思いますが、この国際学術連合会議と、その中に南極研究科学委員会が設けられている、そこに情報を今後提供しなければならないということになっておりますね。この南極研究科学委員会というのはどういう国で構成されていて、どんな権限で、どういうことをやっておりますか。
#185
○説明員(国広道彦君) 南極研究科学委員会は、この条約に書いてありますように、国際学術連合会議の一部というか下にございまして、その国際学術連合会議と申しますのは、一九三一年に自然科学の諸分野におきまして国際学術連合の活動を推進、調整すること、各国の関連団体の行政機関の中心として活動をすることなどを目的に設立されました。これはちなみに六十三の各国代表団及び十六の国際学術連合が加入しております。
 御質問の南極研究科学委員会と申しますのは、南極における科学活動の調整を行うという目的のために、国際学術連合会議のもとに一九五三年に設立された委員会であります。で、わが国は日本学術会議が両者に加入しておりまして、国際学術連合会議には日本学術会議の小委員会が、また南極研究科学委員会には日本学術会議の南極特別委員会が入っております。
#186
○田中寿美子君 で、どういう権限というか、何を仕事としているのですか。
#187
○説明員(国広道彦君) これは、先ほど申しましたように、南極における国際科学活動の調整を促進しておる、こういうふうに聞いております。
#188
○田中寿美子君 最初にお尋ねした、たとえば今度も南極観測隊が日本では行っているわけで、そしてあそこでそりはやっぱり犬が引いているんだろうと思いますね。相当たくさんの犬が引いているかと思いますが、そういうものの食糧ですね、それはやっぱりオットセイとかアザラシの肉などを使っているのかどうか、どういうものを使っているのかおわかりになりますでしょうか。私の想像では、さっき言った北極の探検をなさった方の場合は、いままでの条約の関係で許可をとって、そして、オットセイの肉なりアザラシの肉を使っていたんじゃないかというふうに考えられますけれども、南の場合はやはりそういうことなのか、それとも日本から持っていっている食糧がそんなに長く一年も二年も続くはずはないと思うので、そういうことはどういう規制を受けているのですか。
#189
○説明員(久米邦貞君) はっきり確認しておりませんけれども、われわれが承知しているところでは、犬は現在の観測隊では使ってないということを聞いております。
#190
○田中寿美子君 犬を使っていないんですか。そりは何を使っていますか。
#191
○説明員(久米邦貞君) 雪上車を使っているそうです。
#192
○田中寿美子君 雪上車を。もう犬は使ってないんですか、ああそうですか。
 じゃ大変知識不足なものですから変な質問ばっかりいたしましたけれども、私は、このアザラシの条約も、それから水鳥の条約も、両方とも日本が今後生物資源を守っていくということと、それは人間の環境を守っていくことであり、自然環境を守っていくことだという意味で大いに積極的に協力しなければならないものだというふうに思っているわけですが、政務次官いかがですか。
#193
○政府委員(志賀節君) 全く田中先生と私同じ考え方でございまして、先ほど来の御質問の御趣旨を一々承りまして、やはり国際的な協力関係をこういういいことを通じて高めていく、そういう意味で意義があると思います。
 それから午前中にも私申し上げたわけでございますが、それぞれいろいろな国、民族に文化的な背景がございますから、私どもの文化的背景をスタンダードとして、たとえば回教国の豚を食わないことがけしからぬとか、あるいはインドの牛を神聖視するのはおかしい、あるいは朝鮮、中国において犬の肉を食うことはけしからぬ、そういうことは言えないことだと私は考えておるんでございますが、そういう面も、たとえば鯨とかその他さまざまな問題で、一々例は挙げることは差し控えますが、みずからの持っている文化的背景、これを是として、他を非とするような独善的なことのないような国際的な協力関係あるいは信頼関係あるいはまた相互理解というものを深めてまいらなければいかぬ、こういう考え方に立っておることをこの機会に付言さしていただきます。
#194
○田中寿美子君 私もそう思うんですけれども、やっぱり日本が国際条約にどんどん入って、そして日本の文化とかそれから食生活とか、そういうものの情報を十分に向こうにも与え、そしてほかの国の情報も文化も十分理解するという姿勢が必要だろうと思いますので、こういう条約はほかにもあればどんどん私は加盟すべきだろうというふうに思っております。
 以上で終わります。
#195
○立木洋君 水鳥の方からお尋ねしますけれども、この湿地に関する条約ですね、これに加入すればどのような国際的な義務が生じるのか。これはいろいろ指定していく上でも、地元の人々の了解を得る上でも、いろいろ誤解が生じたりして困るようなことがあってはいけないわけですから、国際的にどういう義務が生じるのかということを最初にはっきりさしておいていただきたいと思うんですが。
#196
○説明員(小林俊二君) この条約に基づく加盟国の義務は非常に多岐にわたるわけでございますが、その中で最も基本的なのは、この三条一項に掲げてございます登録簿に登録するということがまずございます。それから「登録簿に掲げられている湿地の保全を促進し」その適正利用を促進するために「計画を作成し、実施する。」ということでございまして、直接の最も重要な義務は、その登録の対象となった湿地の保全を促進するということでございます。その他にも関連していろいろ細かい規定はございますけれども、一言で申し上げればそういうことになると思います。
#197
○立木洋君 その点について後でもう少しまたお尋ねしますけれども、ここで言われている「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地」というふうになっていますですね。日本だけで湿地が、ここが重要で、あすこが重要でないじゃなくて、これは「国際的に重要な湿地」と。ですから「国際的に重要な湿地」と言われる場合、日本はどこがそういうふうに重要な湿地だというふうに考えられるのか。これはそこを直ちに指定するだとか指定しないとかという問題は別にして、「国際的に重要な湿地」というのはどういうところにあるのか、それをちょっとお尋ねしたいんです。
#198
○説明員(小林俊二君) 「国際的に重要な」ということの意味はいろいろございます。
 まず第一に、ある一種類の水鳥の世界総数のかなりの部分がそこにすんでいるということ、すなわちその水鳥の保全ということが世界的な観点から重要であるというようなそういう湿地でございます。それから第二に、国際的に移動する水鳥が相当数すんでいる、そういう意味での国際性でございます。一国内だけですむんでなくて、渡りをするという、そういう水鳥がすんでいる湿地。それから第三番目には、絶滅のおそれのある水鳥の種類が継続的に生息しておる。これも世界的な重要性を認められる問題点でございますので、そういう意味での重要性。それから第四番目に、渡りをする水鳥の主要なルートに位置している、一つの場所から他の場所へ渡りをする場合の経過地点になっておるという、そういう意味での国際的な重要性を持つ湿地、そういう重要性でございます。それから最後に、水鳥が生息していない場合でも、特殊な動植物が生息していて、生態学上あるいは動植物学上、国際的に重要性が認められているもの。また、湿地そのものが、湖沼学上あるいは水文学上、国際的な価値を持つものというような意味での国際的な重要性。そういういろいろな面があるわけでございます。
#199
○立木洋君 いや、それは大体わかるんですけれどもね、そうじゃなくて、そういう重要な湿地というのは日本はどこどこに何カ所あるのか、具体的に日本の個所を教えていただきたいということです、これは外務省じゃないかもしれませんが。
#200
○説明員(野辺忠光君) ただいま先生の方からお話ございました点につきましては、釧路湿原というのは非常に世界的にも有名でございますし、鳥の保護という面から見ますと、それ以上に重要だというふうに考えておりますのがやはり風蓮湖でございますとか伊豆沼、そういったものがございます。
 それ以外に、干がた、湖沼でかなりの数の湿地に類するものがございますが、これは世界的にと申し上げますと、先ほど御説明ございましたように、いろんな意味で重要性があるわけでございまして、そういう点では、北の方から申し上げますと、たとえば小湊付近でございますとか、あるいは東京湾では谷津の干がたでございますとか、あるいは名古屋では汐川の干がたでございますとか、全国で私ども非常に重要だと思っておるのが二十数カ所、湖沼、干がたでございます。
#201
○立木洋君 それはもちろん国際的に見て重要な湿地と言われるわけですから、そういう国際的な関連においてここは当然重要だというふうなことはずうっと系統的に調査されておるわけでしょうね。
#202
○説明員(野辺忠光君) 鳥類の保護のための干がたということでは、従来わりと森林生鳥獣の保護というものに重点を置いておりまして、だんだん東京湾等で見られますように、干がた等が非常に少なくなってきておるというようなこともございまして、環境庁といたしましては、昭和四十七年からでございますが、干がたの保全を図るべきであるという見地から基礎的な調査をずっと続けてまいっております。そういう調査結果に基づきまして、私どもといたしましては、第四次の鳥獣保護事業計画を現在五十二年度から実施いたしておりますけれども、その第四次の鳥獣保護事業計画をつくります場合に、特に干がた、湖沼についてはより重点的にできるだけ地元の御協力を得て鳥獣保護区に設定をしていくようにということを各県に指導いたしております。
#203
○立木洋君 いま言われたように、水鳥の保護で重要なのはやっぱり干がただと思うんですね、これの保存が非常に重要だと。だけれども、いろいろ見てみますと、重要な干がたのところでは大分開発が進んでおる、いわゆる開発されなくとも開発の計画があるというのがもうほとんどのところだと思うんですよ。
 それから東京湾なんかでも、結局、いままで生息しておった水鳥が偏住といいますか、偏ってしまって、だんだんそこで生息する条件がいろいろ奪われていってしまう、そういうふうな状態なんかもあって、七六年の十二月でしたか、行政管理庁ですかがこの対策の手おくれがあると干がたの保存について重視した新聞報道が出されているわけですが、この干がたの現状ですね、先ほど言われたそういう非常に水鳥が生息していく上で重要な干がた、この干がたの現状というのはどういうふうになっているんでしょうか。
#204
○説明員(野辺忠光君) 干がたは、現在、私どもが調査をいたしました結果では、鳥類が生息をしております特に重要だと考えておりますのは全国で大体百四十カ所程度考えられるわけでございますが、こういう干がたというのはやはり人間の生活にとって非常に身近でもございますし、開発との関連でもそういう影響を受けやすいということもございまして、鳥類の保護という面からではそういう干がたを保存したいという気持ちを環境庁としては持っているわけでございますけれども、やはり地域の住民の方あるいはまた産業開発といったような面から見まして別の要請も非常に強いわけでございます。そういう意味では、私どもといたしましては、十分その地域の皆様方のコンセンサスを得て、どちらを考えていくか十分調整をした上で、やはり保存すべきものは保存をしていくということでまいりたいと考えております。
#205
○立木洋君 その点、先ほどの質問と関連して後でお尋ねしますけれども、環境庁が七二年、七三年に水鳥の保護のための主要な干がた二十カ所ですか、調査をされたと思うのですが、調査の結果というのは非常に開発のために破壊されておるというふうな状況があるわけですが、それについて、その後、どういうふうな対策を環境庁の方としては立てられて実施しているんでしょうか。
#206
○説明員(野辺忠光君) 干がたの保存につきましては、先ほどちょっと触れましたけれども、第四次鳥獣保護事業計画というものが五十二年度からスタートいたしておりまして、その中で、干がただけではございませんけれども、特に今後渡り鳥の生息地でございますとか、あるいは特殊鳥類等の生息地といったようなものを含めまして、重点的に保護を加えるべき個所というものについて積極的に鳥獣保護区を設定するようにということを指導いたしておりますが、それとあわせまして、国といたしましても、今後、国設の鳥獣保護区にすべきものはするということで現在検討しておる段階でございます。
 従来、国設鳥獣保護区と申しますのは、国有地が五割以上あれば国設鳥獣保護区であるといったような形で物理的に決めていたわけでございますけれども、今後は、国設鳥獣保護区というのはいろんな意味で鳥獣保護の政策的な観点から見て重要な個所に限定をし、さらに国設として名前にふさわしいそういう中身の充実した管理をやっていきたいということから管理計画的なものを立てまして、それについては国が責任をもってやっていけるような体制を一日も早くつくりたいということで、五十四年度予算から具体化するための調査費等を現在御審議をいただいておる段階でございます。
#207
○立木洋君 そうすると、この間、七三年に調査した後ですね、二十カ所ほど調査して、新たに鳥獣保護区を設けたというところはまだないわけですか。
#208
○説明員(野辺忠光君) 現段階では、浜甲子園でございますか、あそこは昨年度具体的に鳥獣保護区を設定いたしまして、国設ということで今後管理を強化したいというふうにいたしております。
#209
○立木洋君 特に水鳥の保護の問題で、いままでは森林の関係の鳥類の保護に重視が置かれておって、干がたの保存ということも非常に重要になってきておるという段階ですから、この水鳥の保護のためにも、また自然保護のためにも、やっぱり干がたの破壊を野放しにするんではなくて、これをきちっと規制していくというふうなことを十分に検討していただきたいと思うんですが、その点はいいですか。
#210
○説明員(野辺忠光君) 先生の御指摘のように、今後、地元の方の御理解を極力得まして、できるだけ地域の発展にもつながりますように、そういうことに配慮しながらできるだけ鳥獣保護区を設定をしてまいるということで努力をしたいと考えております。
#211
○立木洋君 今回の場合に、この条約に加盟する条件として指定一カ所ということになって、釧路湿原ということになっているわけですが、こういう指定は今後ふやしていくというふうなお考えなんでしょうか、どうなんでしょうか。それとも一カ所だけでとどめておいてというお考えなのかどうなのか。
#212
○説明員(野辺忠光君) 現段階では、地元との話が一応御理解を得られたと考えておりますのは釧路湿原でございますが、それ以外の個所につきましても、それに準じたようなところについては順次やはり地元との接触をしながら拡大をしていく、追加指定をしていくということにいたしたいと考えております。
#213
○立木洋君 このラムサール条約に加盟しておる二十二カ国が登録しておる湿地の数を見てみますと、十カ所以上指定しているのが九カ国、おたくの方からもらった資料だから間違いないと思うんですが、一カ所しか指定してないのが六カ国というふうな状況になっているのですけれども、先ほど非常に重要だと言われた風蓮湖や伊豆沼ですね、これはいまのところ鳥獣保護区としては県設だと思うんですが、こういうところの地元との話し合いなんかはまだ進んでないんですか。
#214
○説明員(野辺忠光君) 風蓮湖、伊豆沼両方につきまして、私どもの環境庁からも何回か参っておりますし、また都道府県を通じまして、道と県でございますが、地元との接触を数回やっております。現在なおその話し合いをいろいろ続けておる段階でございます。
#215
○立木洋君 先ほど出なかったんですけれども、九州の有明海ですね、あそこの諌早の干がたですか、あそこはどういうふうな状況ですか。
#216
○説明員(野辺忠光君) 有明につきましては、現在では鳥獣保護区に設定をされておりません、大部分の個所が。これは有明というのはやはり九州だけでございませんで、全国的な立場から見ましても干がたとしては非常に重要な地域でございますので、私どもといたしましては都道府県に第四次あるいは第五次でできるだけ早い機会に協力を得られるようにということで鳥獣保護区設定についての指導を強化しておるところでございます。
#217
○立木洋君 さっきの釧路湿原を指定するということで、先ほど来ずっとお伺いしてよくまだ十分にわからない点があるんです。
 これはおたくの方からいただいた地図で見ますと、鳥獣保護区になっているのが五千十二ヘクタールあるんですね、いただいた地図で。それから特別保護地区になっているのが三千八百三十三ヘクタールある。道設の既設鳥獣保護区が二千八百四十八ヘクタールというふうになっているんですが、今度この条約で言われている自然保護区として登録する場合、どの地域を登録するのか。この鳥獣保護区全体を登録するのか、特別保護地区だけなのか、既設鳥獣保護区なのか、あるいはそれをさらにふやすのか、この区画の決め方というのはどういうふうにいまお考えになっておられるでしょうか。
#218
○説明員(野辺忠光君) 現在では五千ヘクタールの分を登録をいたしたいと考えております。
#219
○立木洋君 五千十二ヘクタールの鳥獣保護区を。これを拡大する考えというのはないんですか。
#220
○説明員(野辺忠光君) 現段階では持っておりません。
#221
○立木洋君 それから先ほど来出ておりましたけれども、ちょっと私さっき田中議員が質問されて答弁されたのをそうだろうかと思って聞いたんですが、「特に」という意味ですね。さっきのお答えの仕方がどうも私にははっきりしないんです。
 ここで言われておる「湿地」というのは、言うならばここで言われている経済上、文化上、科学上、レクリエーション上湿地というのは価値を持っている、だけど、ここで言う湿地に関する条約というのは、つまり「特に水鳥の生息地として」重要に考えないといけないという意味での「特に」ではないのでしょうか。そのことを特に強調するという意味ではなく――先ほど何か強調する意味だとかと言われたのだけれども、この点はっきりしておかないと、この湿地というのは経済上もいろいろ問題があるし価値があるし、文化上もあるし科学上もあるし、レクリエーション上もあるわけですよ。だけど、ここで言われておる「特に」というのは、やっぱり水鳥の生息地としての湿地ということで、それを保護する、そういうものとして考えないと、この条約を締結して今後施策を具体的に進めていく場合に、いろいろ間で問題が出てくると思うのですね。たとえば地元住民がレクリエーションとしてはこんなふうにしたいんだとか、いわゆる経済的に開発するためにこういうふうに使いたいだとか、いろいろあると思うのですよ。その間の予盾が出てくるわけですから、それを正しくやっぱり地元の人々と話し合いながら調整していく。そういうことを十分考える必要があるだろうと思うので、私はこの「特に」ということをもう一遍改めてお尋ねしておきたいんです。
#222
○説明員(山田中正君) いま先生御指摘の「特に」というのをどのように解するかということだろうと思うのでございますが、この条約が作成される経緯からいたしまして、当事者の頭にありましたことは、やはり水鳥を保護するということが第一点にあったと思います。そして湿地というものが水鳥の生息地である、したがってその湿地をということであったと思います。
 ただ、最終的にここでまとまっております形は「国際的に重要な湿地に関する条約」ということでございまして、「特に」という言葉のかかりぐあいでございますが、原文でごらんいただきますと御理解いただけるかと思いますが、「特に」エスペシャリというのは、「重要」ということのみにかかるのではなく、「特に水鳥の生息地として」というふうにかかっております。したがいまして作成の経緯からいたしましても、当事者の頭の中にございましたのは、その水鳥の保護という関連からでございますが、この条約の中にもところどころ出てまいりますように、湿地の植物などについての保護ということもございますので、水鳥だけに限らないということでございます。
#223
○立木洋君 この「特に」だけで議論しておったら時間がなくなりそうだから、あなたの解釈されているのはそういうことでいいでしょうけれども、問題が出てくるのは、具体的に今後指定していく、いままで県設の鳥獣保護区あるいは国設の鳥獣保護区というのがいろいろあるわけですよね、国設の鳥獣保護区が具体的に指定されたらどういう変化がその指定地に起こるんでしょうか、国設の場合ですよ。県設の場合にはわかりますけれども、国設の場合。
#224
○説明員(野辺忠光君) 鳥獣保護法のたてまえからは、県設の場合も国設の場合も制度的には内容は同じでございます。
#225
○立木洋君 もちろん国設ならば国の費用が出てくるということはあるわけですが、国設の場合に、この条約で言う指定になった場合には何か変化が起こるんですか、具体的に。
#226
○説明員(野辺忠光君) 国設でございましても県設でも制限の内容は同じでございますが、ただ、その管理をしていく体制でございますとか、そういった点についてはそれぞれの国、県の場合には若干の違いが出てくると思います。もちろん県ごとにも違いますが、今後、国設という形で、先ほど新しい意味での国設鳥獣保護区をつくっていきたいと申し上げたわけでございますが、そういう場合にはやはり国設のふさわしい管理体制の強化を図っていくということで、いわば各県設の鳥獣保護区のモデルになるようなものを考えていきたいというように考えております。
#227
○立木洋君 先ほど出された風蓮湖、ここは白鳥のあれとしてなかなか有名なところですが、ここでは将来漁業開発との関係があるというふうなことから、ここが指定なんかにされていくと規制が強まるんではないか、そして一たん指定になると、これを開発のときにやめにするというのはむずかしいのではないかというような一部関係者の心配もあるわけですね。現在のお話を聞きますと、管理体制の強化はあるけれども、いままで県設鳥獣保護区としてやっている場合とさして変わりがないということになれば、そういう地元の関係者との話の中でも解決ついていけることができるだろうと思うんですけれども、この風蓮湖の関係者の人々との話し合いの中ではそういう問題は出されていなかったんでしょうか。
#228
○説明員(野辺忠光君) そういうお話がございました。特にそういった網をかぶせますとやはり制限が強化されるんではないかというような御心配を受けておられまして、その点についての御理解を得るという意味で、何回か私どもも足を運んでおるわけでございますが、やはりそうは言いながらも、内容はわかってもなおかつ国設になりますと、国の方までいろんな許可行為――許可を要する行為が幾つかございますが、そういったものの場合に、いままでは道で済んでよかったものが国まで来なくちゃならない、非常にめんどうだというようなことも言っておられますし、またさらに、そういうネームバリューがかなり上がるんじゃないかということで、いろんな意味で注目をされる、法律上の制限はないにしても実質的な制限が加わるんじゃないかというような御心配があるようでございますが、そこらにつきましては、十分地元にお話を申し上げまして、できるだけこの趣旨を御理解いただくように現在努力をしておる段階でございます。
#229
○立木洋君 この風蓮湖の白鳥なんかの場合には、そんなものなくてもいいなんというふうに考えている人は実際いないだろうと思うし、今後の自分たちの立場から見てどうなるんだろうかという心配があると思うんですね。ですから、一番最初の問題に返りますけれども、これが国際的にどういう義務が生じるのかという問題もはっきりさして、その中で地元の人々との話し合いを通じて、この精神で自然を保護し、そして水鳥の生息地としての湿地をちゃんと保護できるような理解を得ることは私はできるだろうと思うんです。
 それからもう一つ、宮城の伊豆沼、ここではガンだとかカモ等々だと思うんですが、この近くのところで問題になっておるのを聞きますと、秋になると周辺のたんぼの稲を非常に食べる。それが狭い部分ではなくて広範囲にわたって、あるところでは壊滅的な損害を受けておる農家もある、だから何とかこの問題を考えてくれないかというふうな話もあるんですがね。これは周辺の農民の方々の要求は、もちろん指定するには反対はいたしません、反対ではないけれども、そういうような鳥害についての補償、この問題を何とか考えられないかと、実は、きょう、あそこの若柳町の町議会で鳥害の補償条例を審議しているんですよ。きょう審議しているんですが、それは結果はどうなるかわかりませんが、そういうふうな住民の直接要求として審議がされているわけですけれども、こういう問題あたりもやっぱり考えていかなければならない点ではないだろうかと思うんですが、これは環境庁にお尋ねしていいんでしょうが、いかがでしょうか、そういう点は。
#230
○説明員(野辺忠光君) 近年、鳥獣保護区の設定をする場合に、そういう保護をすることによって鳥獣が増加し、一方では地域の農林業等に被害が相当出てくるといったようなことから、保護と被害という問題が常に論議をされるようになってまいっておりますが、私どもの立場では、そういうような保護と被害との問題については何か調和点があるんではないかということを基本的に考えておるわけでございます。
 一般論といたしましては、やはり鳥獣による被害があります場合には、その鳥獣の保護も図り、あるいは農林業の振興も図るというたてまえから、必要な有害鳥獣の許可というのを出しております。これは申請がございました場合に、生息状況でございますとか被害の状況を把握した上で、それの調和を図りながら許可を出すというたてまえにしておるわけでございますが、しかし、そうは言いながらも、なおかつやはり実態上相当の被害がある、そういう場合に補償というような問題もあるわけでございますけれども、現在の鳥獣保護法では、特別保護地区におきまして一定の行為について許可が要るということになっておりますが、その許可をしなかった場合でございますとか、許可に条件をつけた場合に通常生ずる損失を補償するという規定はございますけれども、一般論的な保護と被害といったような観点での補償の規定等はないわけでございます。
 これにつきましては非常にむずかしい問題がございますので、現段階では、環境庁の中に被害問題検討会といったようなことで検討会をつくりまして、鋭意、現在、去年とことしにかけまして検討いたしておる段階でございますので、これは伊豆沼の問題に限りませず、全国的な基本的な問題だというような認識から、十分理論的にも実際的にもどういうふうに対応していくか、これは農林行政のたてまえの問題もございますし、環境行政のたてまえの分野もございましょうし、そこらのところも十分検討してみたいと考えておるわけでございます。
#231
○立木洋君 もう一点、さっき申し上げました干がたの問題ですが、現在の場合で言いますと、開発が進んで海面の埋め立て等々が進められておる。重要なところではほとんどそういう開発がやられておるかあるいは計画がなされておるわけですが、現状を見ますと、公有水面埋立法によりますと、地方公共団体がいわゆる漁業補償さえ話が進めば大体行うことができる。だけど、それが今度水鳥の生息の保存といいますか保護といいますか、そういう観点だとか、あるいはレクリエーションの場としてその干がたを使う地元住民という観点からは、この埋め立てについてどうかというふうなことは法的な規制が全くないわけですよね。こういう問題なんかもよく考えてみる必要があるんじゃないかと私は思うんですが、これも環境庁の方にお尋ねせぬとあれですが、ちょっとその点についての考え方を聞かしておいていただきたいんですが。
#232
○説明員(野辺忠光君) 私の立場からは鳥獣保護の観点でのお答えしかできないわけでございますが、現在の鳥獣保護法では、指定をした個所のそのうちでもまた特別保護地区に指定した個所、それについてのみ制限があるわけでございまして、それも原則は特に理由がなければその申請について許可をしなければならないというたてまえになっておりまして、そういう意味では非常に制度的には弱い制度でございます。したがいまして、私ども、いわばそういったいろんな開発等の問題がある場合には、むしろお願いを申し上げるという立場で各省にお願いを申し上げながら、御理解を得て地元の方にも説得を重ねながら、そこで調和のつくようなものについて鳥獣保護区を設定するというようなたてまえをとっているわけでございます。また、鳥獣保護区を設定する場合には、制度的には公聴会を開きまして地元の御意見を聞くという制度がございますが、そういった鳥獣保護区を設定いたしましても、本当に鳥獣の保護を図っていくという場合には、地元の皆さん方の御協力がなければ本来の保護を図れませんので、強行して保護区を設定するというようなことはむしろ避けたいというふうに考えておりますし、その点では私ども誠心誠意努力をする以外にない、かように考えておるわけでございます。
#233
○立木洋君 この問題の最後に、政務次官にお願いもあり、お尋ねもしておきたいんですが、この水鳥の生息地としての湿地、この条約というのはそういう意味では非常に大切な私は条約だろうと思うんですよ、自然的なあれや水鳥の保護という点から考えるならば。これは非常に重要なんですが、ですから、外務省としては一カ所指定して登録して、それで条約が一本上げられた、それでもう外務省は関係ないということではもちろんないでしょうけれども、今後、具体的に、こういう実質に日本の国内で水鳥の生息地としての国際的に重要な湿地、これをきちっと確保しながら、また先ほど言いましたこれは経済上、文化上、科学上、レクリエーション上のいろいろな地元民との関係でこれを十分に理解してもらいながら、なおかつそれが保護していけるというあり方ですね。
 それからまた、それによって生じる先ほど言った農民の方々の損害、被害ですか、これなんかについてもどういう手当てをしていくのか。あるいはまた開発で海面を埋め立てていくというふうな形で干がたがどんどん破壊されて、そういう生息の条件が破壊されていくという問題等との兼ね合いですね、法的にはこれは非常に弱い立場にいま環境庁があるわけですし、そういうことを考えてみると、国内的に考えていかなければならない問題点というのはたくさんあると思うんですよ。これを現実に重要な条約が批准されても、具体的にこの精神にのっとってやっぱりやっていける体制をつくるというためにはいろいろな問題点が私はあると思うので、この点はぜひ関係省庁とも十分にお話し合いをしていただいて、この条約の精神がきちっと生かされるように、ある人々の場合にはこれは指定されると大変規制が強まっておれたちが困るから反対だという人も、まだ理解ができないために起こっておる状態もあるでしょうし、そういうことならば、これはこういう形で兼ね合って十分にやれるという人たちも出てくるでしょうし、そういう点を十分に関係省庁ともお話し合いを進めて、この条約の精神を貫いていくことができるようなそういう努力をお願いしたいということと、いままでの質疑をお聞きになっての政務次官の所見を最後に、この問題の最後ですが、お尋ねしておきたいと思うんです。
#234
○政府委員(志賀節君) むしろ質疑のやりとりの整理は私の方でしなきゃならないのに、立木先生の方からみごとに最後整理していただいたような結果になりまして、ありがとうございました。
 私、さきに申し上げましたように、外務省に参ります前に、猛獣ペットの取り締まりをしなければいけないということで動いておりました。ところが、これの基本は動物愛護の精神なんです。ライオンが二日間も腹をすかしていて、どうして人間が、よしんば飼い主であろうが、入っていったときにかみついて食わないはずがあるだろうか、あるいは野ざらしの中にいてどうしてライオンとかトラが鳴いたりほえたりしないはずがあるだろうか。ちょっとおかしな表現かもしれませんが、そういうほえたり人を食ったりしてきらわれることは彼らの何も求めての姿ではない。むしろ、そういうところに追い込んでおる人間の方の心の荒廃が実は問題であるという私はとらえ方をずっとしてきておるわけです。
 そういうことを御理解いただけると、あと私の申し上げたいことも御理解いただけると思うんですが、この水鳥に対するわれわれの対応というものも、基本的にはこういうものに対する愛情でなければいけない、その愛情が帰するところ、こういう湿地に対してそういう保護を加えるような状態をつくり出していかなければいけない。また、そのことを通じて諸外国の人たちも、なるほど日本人もともども動物愛護の精神には十分に富んでおる国民である、民族である、こういうようなところにたどり着くことが実は国際平和にも国際政治にも大きく益するのではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。
 したがいまして、ただいままでの立木先生のお話を承りまして、実にそういう点御理解をいただいておりまして、私、ありがたいやらうれしいやらでございます。もとより釧路湿原一カ所でお茶を濁してあとはというような気持ちではございません。これから、先ほど来担当官から御説明を申し上げましたとおり、地元住民との対話を通じて本当の得心がいき納得がいく、そういうところでやはりきめの細かいこの面での行政をしてまいりたい、そのように考えております。よろしくお願いを申し上げます。
#235
○立木洋君 次に、アザラシですが、先ほど来の午前中の同僚議員の質疑でもあったのですけれども、「商業的猟獲が開始される前に何らかの措置をとることの必要性」ある意味で言えば予防的なものである。それからもう一点は、「わが国は、この条約の適用される区域でアザラシの商業的猟獲を行っておらず、また、近い将来、これを行うことも予想されておりませんが、わが国がこの条約を締結することは、南極のアザラシの保存のための国際協力を推進する見地」ということなんですが、重ねてお尋ねするようなかっこうになるのですけれども、アザラシのこの条約に加入する場合、加入するということでわが国との関係というのは具体的にどういう関係が生ずるのか。表現が適切でないかどうかわかりませんが、どういう得失があるのか。つくっておるからわれわれは国際的な協力という意味で加入するだけなのか、そのあたりをちょっともう少し説明していただきたいんです。
#236
○説明員(国広道彦君) この条約のできる相談の母体となりましたのは、南極条約に参加している国の南極協議国が母体になってこれが行われたわけですが、一つには、海だけではなくて、南極に関するいろんな国際協力との関係も考えられております。それからけさ申しましたように、当時は、いまよりももうちょっとソ連がとるかもしれないと、いまのところとり始めるかもしれないというもうちょっと緊急性がありまして話がずっと前に進んだというエピソード的ないきさつがありまして、それで物事は動いてできまして、しかも五十三年十一月にはもうこれは実は当事国、八カ国の間では効力を生じているわけであります。余りおくれないうちに日本もこれに参加して、こういう南極をめぐる国際協力関係におきまして日本が後ろ向きでないという姿勢を示すこと、これが一番大きな意義でございまして、いまのところ差し迫って、これを結びますといろんな情報提供とかありますけれども、失の方は別に余り、特にこれという失はございませんで、そういう若干の負担があるだけだというふうに了解しております。以上でございます。
#237
○立木洋君 そういう点、外務省は非常にいま利害得失が非常に深い関係にあるんではないけれども、いろいろな関係から見て、国際協力という観点から見ても加入することが望ましいと。もちろん加入することがいかぬという意味で私は言っているわけではありませんけれども、そういう点では非常に積極的な姿勢を示されておるんですが、他方、絶滅に近い動物というのがたくさんあるわけですよ、いわゆるそういう保護の問題に関して言うならば。ところが、いろいろ問題になっていますけれども、動物の剥製をどんどんどんどん日本に輸入する、そういう絶滅に近い動物の。あるいは先ほど政務次官が言われたペットの問題もそうですけれども。そういうことを非常に輸入をして大々的に広告で宣伝をして、こういうふうな状態というのを放置してはいかぬということでワシントンの条約もあるわけですからね。こういう状態が放置されておるということについては、これはもう政務次官のお話は先ほど午前中お伺いしましたけれども、いままで外務省はどういうふうな考え方をしておったですか。
#238
○説明員(国広道彦君) まず、外務省といたしましては、資源保護の観点からほとんどあらゆる面で積極的に国際的に協力してきていると言えると思います。今後も、資源保護の観点からの国際協力というのは必要な限り積極的に進めていくという方針を申し上げて間違いないと思います。
 それから、ごく最近も新聞報道に出ておりましたけれども、絶滅しかけた鳥などの輸入とか、あれは密輸でございますけれども、ああいうものに対して、本当にその国との関係、二国間の関係でも、それから国際的にも大変恥ずかしいことでございまして、政府が持っております法的な権限及び説得力をもちまして、こういうものは本当にぜひとも防止したいと思っております。
#239
○政府委員(志賀節君) 実は、担当官からは歯にきぬ着せないで物を言えないと思いますので、私の方からちょっと私の体験上得たことによってお答えをさせていただきます。
 先ほど来申し上げておりますとおり、私は議員立法で猛獣ペット取締法なるものをつくりたいと大分動いてまいりました。ところが、これにはいろいろネックがございましたが、とりわけ大きなネックはこの主管庁をどこにするか、どこがこの法律をできた暁にはつかさどってもらえるか、こういう問題がございまして、これをいろいろな省と相談すると、それは私のところの管轄ではないという、一言で言うと逃げに終始いたしまして非常に苦労いたしました。私まだこれを全部仕上げておりませんから、今後どういうことになるか、いずれ御報告できる機会があれば幸いでありますけれども、そういう苦労をしている中で、ワシントン条約がなかなか批准に至ることができないで、いろいろな省庁との意見調整というものにいかに苦労しているかということも側面から私知る機会を得たわけでございます。そういうことで、必ずしも、これを署名をしたのみで後はたなざらしにして外務省が何もしていなかったのではないということを、当時から私は直接間接あるいは仄聞をするという形で承知をいたしておりましたので、この面もひとつ御理解を賜りたいと思います。
 以上、私の体験から出たことでございます。
#240
○立木洋君 これは来年この問題で日本で国際会議が開かれるわけでしょう。いままでこの問題で問題になってきておったのは、特にこういう絶滅に近い動物の商業用の目的で行われる輸入輸出等々では、輸入の面では日本が一番厳しく問題になっておった国ですし、それから輸出の面ではインドネシア。ところがインドネシアは昨年の暮れに加入したわけですよね。そういう点で国際的に問題になっている国で言うならば、輸入国である日本。この関係者や専門家は、恥ずかしくて来年こういう国際会議に出て外国の人々と顔を合わすことができぬ、何とかしてくれないかという意見もあるんですよね。
 それで、私はもう時間があれですから言いませんけれども、先ほど政務次官の方から今国会にでも何とか上程するように努力したいというふうなお話があったわけですが、ことしの一月二十九日の外務省の方から提出された今国会提出予定の法案というのが二十挙げられていますし、それから、いま提出するかどうかを検討しておる条約が二十挙げられているわけですが、いま検討しておる条約の中にも入っていないのですよ、これは現実にね。それで、これは午前中の御答弁でしたか、小林さんが答弁されて、今国会にでもできるだけ早くところ参事官はおっしゃったけれども、これは入っていないのですよ。事務当局が私の方にくれた資料にだって入っていない。だから委員会の答弁では積極的にというふうに言われるけれども、具体的にそういうものが目に見えてこないと、どうも小林さんの午前中の発言もどうだったんだろうかというふうに思わざるを得ないわけで、そこらあたりは本当に先ほどから言われている問題点をよく考えていただいて、そうして積極的に取り組んでいくようなそういう立場をやっぱり、自然保護、動植物の保護というふうな関係者の人々の切実な要求もあるわけですし、それからすべての人々にとってもこれは非常に重要な問題ですから、積極的な対応を示していただきたいということを最後にお願いし、その点で改めて御答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
#241
○政府委員(志賀節君) お答えをさせていただきます。
 多分、立木先生何かの間違いがあるかと思いますが、実は、多数国間条約というさきにお渡しいたしました方の書類で、野生動植物取引規制条約、いわゆるワシントン条約でございますが、これがお手元の方にお届けした書類に出ているはずなんでございますが、もし届いていなければ当方の手落ちでございますので深くおわびを申し上げます。
 なお、この条約を何ゆえ検討中の方に入れているかと申しますと、この条約を発効させた場合の関係省庁の中でいまだに意見の調整が調っていないところがある。これが調いますと、もうきちんとその前の方に出せるのでございますが、検討中の方に入れているというのはそのためでございまして、可及的速やかに意見の調整を終えてこの国会に出したい。しかし、相手もあることでございますから、意見の調整ができない場合にはどうも万やむを得ないことになるわけでございますが、私どもとしては、そういう場合を予想しないようにして特に全力を尽くしてやっておる、こういう実情にあることを御理解を賜りたいと思う次第でございます。
#242
○立木洋君 失礼しました。最後のページに入っております。
 ぜひ、そういう意味で積極的に進めていただくように最後にお願いしておきます。終わります。
#243
○委員長(菅野儀作君) 他に御発言もないようでありますから、質疑は終局したものと認めます。
 三件の自後の審査は、後日に譲ります。本日はこれにて散会いたします。
  午後三時二十九分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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