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1978/05/24 第87回国会 参議院 参議院会議録情報 第087回国会 外務委員会 第12号
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1978/05/24 第87回国会 参議院

参議院会議録情報 第087回国会 外務委員会 第12号

#1
第087回国会 外務委員会 第12号
昭和五十四年五月二十四日(木曜日)
   午前十時三十分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月二十三日
    辞任         補欠選任
     上田  哲君     寺田 熊雄君
 五月二十四日
    辞任         補欠選任
     寺田 熊雄君     上田  哲君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
   委員長          菅野 儀作君
   理 事
                稲嶺 一郎君
                鳩山威一郎君
                田中寿美子君
                渋谷 邦彦君
   委 員
                安孫子藤吉君
                大鷹 淑子君
                二木 謙吾君
                三浦 八水君
                寺田 熊雄君
                戸叶  武君
                塩出 啓典君
                立木  洋君
                和田 春生君
   国務大臣
       法 務 大 臣  古井 喜實君
   政府委員
       内閣法制局第一
       部長       茂串  俊君
       人事院事務総局
       任用局長     長橋  進君
       法務大臣官房審
       議官       水原 敏博君
       法務省人権擁護
       局長       鬼塚賢太郎君
       外務政務次官   志賀  節君
       外務省アジア局
       長        柳谷 謙介君
       外務省アジア局
       次長       三宅 和助君
       外務省条約局外
       務参事官     山田 中正君
       外務省国際連合
       局長       賀陽 治憲君
       厚生大臣官房審
       議官       松田  正君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山本 義彰君
   説明員
       内閣官房内閣審
       議官       黒木 忠正君
       警察庁警備局参
       事官       柴田 善憲君
       北海道開発庁企
       画室長      田中 貞夫君
       法務大臣官房参
       事官       藤岡  晋君
       外務大臣官房審
       議官       大鷹  正君
       外務大臣官房儀
       典官       荒  義尚君
       大蔵省国際金融
       局短期資金課長  藤田 恒郎君
       文部省初等中等
       教育局高等学校
       教育課長     菱村 幸彦君
       文部省管理局企
       画調整課長    塩津 有彦君
       通商産業省貿易
       局輸出課長    松田 岩夫君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規
 約の締結について承認を求めるの件(第八十四
 回国会内閣提出、第八十七回国会衆議院送付)
○市民的及び政治的権利に関する国際規約の締結
 について承認を求めるの件(第八十四回国会内
 閣提出、第八十七回国会衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(菅野儀作君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨二十三日、上田哲君が委員を辞任され、その補欠として寺田熊雄君が選任されました。
#3
○委員長(菅野儀作君) 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約の締結について承認を求めるの件及び市民的及び政治的権利に関する国際規約の締結について承認を求めるの件、以上両件を便宜一括して議題とし、前回に引き続き質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#4
○寺田熊雄君 きょうは、国際人権規約の中のB規約について一、二お尋ねをして、その後、金大中事件についてお尋ねをしたいと思います。金大中事件は、一人のすぐれた民族的な指導者が公権力によって人権をじゅうりんされた典型的な事件ですので、この国際人権規約の審議に当たって取り上げるのに一番ふさわしい課題だというふうに考えておるのです。
 まず一、二、この人権規約の条文についてお尋ねをするんですが、B規約の中の第十三条、外国人の追放の規定でありますが、この人権規約に基づいて国内法の整備を必要とすると思いますけれども、これについてはどのような御用意をなさっていらっしゃるのか、まず、その点ちょっと簡単に御説明いただきたいと思います。
#5
○説明員(藤岡晋君) お答えをいたします。
 御指摘のB規約第十三条のまず前段でございますが、そこに定められておりますことは、いわゆる合法的に在留しております外国人を追放するについては法律に従って出された決定によらなければならない、こういうことが書いてあると承知いたしておりますが、その点につきましては、わが国では法律としての効力を認められておりまするところの出入国管理令にのっとりまして、その出入国管理令の定める手続に基づきまして、いわゆる国外追放を行っておるわけでございますので、何ら国内法の手直しと申しますか改正と申しますか、そういうことは必要はない、かように考えております。
 それからB規約の十二条の後段の方にはいろいろ書いてございますけれども、その内容も、先ほど申しました出入国管理令の第五章の中で十分に手当てがしてございますので、結論的に申しまして、B規約十三条の関係において国内法の改正、手直しをする必要はない、かように理解をいたしております。
#6
○寺田熊雄君 いまの出入国管理令によって、このB規約で要求されております反対理由の提示権、それから審査権、これは完全に認められておるというような御解釈ですか。
#7
○説明員(藤岡晋君) そのとおりでございます。
#8
○寺田熊雄君 これは、私どもとしましては、多少論議の余地があって、いまの御答弁には大変不満ですけれども、きょうは金大中事件の方に早く移りたいので、一応、この程度にしておきます。
 それから第二十条の戦争宣伝の禁止の規定がありますね。これもやはり私は国内法の整備をすることが望ましいように思いますが、政府はどのようにお考えです。
#9
○政府委員(賀陽治憲君) 第二十条の点でございまするが、本件は、先生も御高承のように、憲法第十九条の精神が国内的にも十分浸透をしております現状におきましては、法律でこれを禁止するというほどに法益が侵害されておるという事態を現在政府は想定していないわけでございまして、審議経過から見ましても、表現の自由との関連もございますし、よく言われることでございまするが、ある場所で仮に二分なり三分なりスピーカーで戦争宣伝をしておったというようなときに、直ちにこれを犯罪の構成要件として考えるかどうかというような問題になりますると、表現の自由との関係で相当機微な問題を生ずるということでございまして、当面は、この立法の必要性を端的には認めておらないというのが実情でございまするけれども、御指摘のように、将来、社会の変遷時代の変遷に応じまして立法を考えるという事態がこないとは言えないというふうに私どもは考えておるわけでございます。
#10
○寺田熊雄君 戦前の昭和十年代に入りましてから次第に排外的な思想が高まってくる、好戦的な宣伝が行われる、対外憎悪をあおるような言論が次第に激しくなってくる、そういう長い歴史的な過程を経て大東亜戦争に突入したわけですね。早いうちにそういう芽を刈らないと非常に危ない。ことにいま大分政治が右寄りの傾向を強めてきております。右翼の活動なども非常に激しくなってきているような感じがします。私どもは、やはりそういう点歴史に学びながら立法の作業を準備しなければいけないと思うんですが、これは刑罰を伴う必要があるように思うので、法務省の刑事局の方では、たとえば刑法の将来の改正に当たってこの点を考慮する余地はないのかどうか、これはどういうふうに考えておられますか。
#11
○政府委員(水原敏博君) この問題につきましては、外務省から先ほど御答弁がありましたような現状認識におきましては法務省も同じでございます。したがいまして寺田委員御指摘のような時代の変遷または歴史の過程、こういうものをもよく踏まえまして、どういう場合が起きたときにどのような罰則を設けるべきか、それらにつきましては、今後ともに十分どのような事態が起きるであろうかというその事態をまず確定することが大事だと思いますし、それについて罰則を科するまでのものであるのか、また罰則を科する必要がないのかにつきましては、今後ともに、これは仮定の問題でございますが、検討していくべきではなかろうかというふうに考えております。
#12
○寺田熊雄君 次に、本来の課題であります金大中事件ですが、これはまず日本側でこの事件をどういうふうに見ているか。それから韓国側ではどう見ているか。第三国、中立的な立場にある国、この場合は主としてアメリカを指すのですが、アメリカではどう見ているかという三つの立場が考えられるわけです。
 日本側の方は、結論を出し得る証拠をたくさん握っておるのにもかかわらず、あえて結論を出そうとしない。
 一方、アメリカは、事実上、はっきりと結論を出している。アメリカの国会では、御承知の下院のフレーザー委員会がこれをはっきりと結論を出しておるわけですね。その結論を出す前提として、レイナード元アメリカ国務省朝鮮部長であるとか、金炯旭元KCIA部長であるとかというような証人を取り調べた上で結論を出しておるわけです。それから行政機関の方でも、今度のスナイダー報告あるいはその前のハビブ公電などでも、大体、アメリカの外交官がやはり公権力による犯行であるという結論を出しておると思います。出先の外交官の意見と異なった意見を国務長官が持ち得る道理はないので、アメリカの場合は、執行機関も議会も双方がやはり結論を出しているというのが妥当だと思います。
 ところが、韓国の方は、公権力の行使による犯罪であることも、金東雲らの個人犯行であることをもいまは否定し去っております。それどころか犯人の一人さえもいまだ見出し得ないという驚くべき不可解な現象を呈しておるわけであります。この不合理な現象がどうして生まれたか、これを明らかにしていきたいと思うわけであります。
 その前に、警察庁に一応お尋ねをしたいわけですが、従来、警察庁が国会で明らかにしている点の主なものは、金東雲一等書記官の指紋が犯行現場に残されていた。金大中を監禁し略取したことに使用された自動車が横浜総領事館の劉永福副領事所有のものであったということ。それから現場におった若干の日本人が金大中を見ているというようなことがいままで国会で説明されておりますね。これはそのとおり伺ってよろしいですか。
#13
○説明員(柴田善憲君) この事件につきまして、これまで捜査によりまして得ました証拠を整理して申し上げますと、まず、いま御指摘のように、金東雲当時一等書記官の指紋が犯行現場で得られておるということ。それから二点目は、事件当時ホテルの駐車場から一台の車が出て行った、この車が犯行に使用された車ではないか。その車は当時横浜領事館の劉永福副領事の所有の車であったのではないか。ただし、これは断定できるまでの証拠は得ておりません、非常に容疑が濃いという状況でございます。第三点の目撃につきましては、何人かの目撃者が犯行を目撃しておるというのは事実でございます。
#14
○寺田熊雄君 その目撃者というのは何を目撃したんですか。犯行を目撃したとおっしゃったが、金東雲のその場における存在を現認したという趣旨にとってよろしいですか。
#15
○説明員(柴田善憲君) 目撃者が金東雲を目撃しておるという証言がございます。
#16
○寺田熊雄君 それから、いまの犯行現場で発見された金東雲一等書記官の指紋というのは、睡眠薬を溶かして入れてあったドリンク剤のびんに付着していたんだという、そういう報道がなされておりますが、これはそのとおり伺ってよろしいですか。
#17
○説明員(柴田善憲君) いま御指摘のような議論があったことは承知いたしております。事実、麻酔薬が入っていたと認められますびんが犯行現場に遺留されておりまして、これは押収をいたしております。ただ、このびんから指紋が検出されましたかどうかにつきましては、非常に捜査上の機微な点に触れますので、申し上げますことはひとつ御容赦いただきたいと思います。
#18
○寺田熊雄君 捜査当局がいろいろ国会の質問を受けた場合に、どの程度開示し得るかという点では皆さん御苦心であると思います。これはロッキード事件にしろ今度のダグラス等の事件にしろそうなんだけれども、法務省の方も比較的国民の注視している事件で、できるだけ真相を知らせる必要があるというので、議員の質問に対してできるだけ答弁をしようというスタイルを見せておるわけで、この事件もいまの現状のままでいくと、金東雲やそのほかの犯人をつかまえて立件できるという可能性というか、それは比較的もう少なくなってしまったように思われますね、事実上。それで特にそういう点を秘匿しなければならない合理的理由というものは、私は見出しがたいと思うんだが、どうだろうか。
#19
○説明員(柴田善憲君) この事件は、現在、捜査継続中でございまして、私どもといたしましては、あくまでも捜査を継続の上真相解明に努めてまいる所存でございます。したがいまして、その真相解明に大変機微な関係を持っておりますのはこの指紋の問題でございますので、この指紋がどこについておったかという点につきましては、申し上げることは御容赦いただければ大変ありがたいと思います。
#20
○寺田熊雄君 指紋があなたは残されていたとおっしゃる。その指紋がどこに付着していたかということがどうしてそんなにデリケートなんだろうか、ちょっと了解しがたいのだけれども。そのびんの点をひとまずおくとしても、どこに付着していたかということは、あなたはその現場にとおっしゃったね、どうしてもできにくいですか。
#21
○説明員(柴田善憲君) 繰り返しになって恐縮でございますが、捜査はまさに継続しておりまして、将来の捜査の展望を考えましても、やはりどこに指紋があったかということは非常に決定的な点になってくるのじゃないかと思います。したがいまして、どこからという点だけはひとつ御勘弁をいただければ大変ありがたいわけでございます。
#22
○寺田熊雄君 それじゃ、その指紋は一カ所だったか、それとも複数の個所で発見されたのですか、どちらです。
#23
○説明員(柴田善憲君) 現在、現場からは数十個の指紋は得ておるわけでございますけれども、金東雲一等書記官の指紋と合致するものは一個でございます。
#24
○寺田熊雄君 それでは、そう本質的な問題じゃないから。
 それらの証拠、これは韓国側に全部送って、あちらでも捜査の参考にしたわけですか。現物を送るというわけにいかぬけれども、その内容は全部開示して、あちらの捜査の参考にしましたか。
#25
○説明員(柴田善憲君) 韓国側に対しましては、私どもの捜査しました結果の主な点をお知らせして、捜査の参考にしていただきました。
#26
○寺田熊雄君 そうすると、いまのあなたの金東雲一等書記官の指紋の発見の事実、それから複数の日本人が現場で金東雲を確認しておること、劉永福の自動車がホテル・グランドパレスの地下駐車場から出ていって、それが犯行に使われた容疑がきわめて濃いというそういう事実、そうした一連の事実は全部韓国側に通報したんでしょうね。
#27
○説明員(柴田善憲君) そのとおりでございます。
#28
○寺田熊雄君 ところが、韓国側は、四十八年の八月十九日に帰国しておる金東雲、その前にも一たん帰国しておるけれども、再入国しまた数日にして出国しておるその金東雲を逮捕もせず、本人否認のまま放置しているんです。その事実は警察で御存じですか。
#29
○説明員(柴田善憲君) 警察といたしましては、金東雲の犯行加担の確証を得ましたので、金東雲氏に昭和四十八年の九月の五日に任意出頭を求めたわけでございますが、御出頭いただけなかったということでございます。
#30
○寺田熊雄君 ちょっといま聞き漏らしましたが、何日に金東雲の出頭を求めたんですって。
#31
○説明員(柴田善憲君) 昭和四十八年の九月の五日でございます。
#32
○寺田熊雄君 金東雲の出入国の状況を法務省から資料を出していただいたんですが、それによりますと八月十九日にもう出国しているんですね。ですから、いまあなたが九月五日に出頭を求めたと言っても、そのときは日本におらなかったんじゃないですか。
#33
○説明員(柴田善憲君) 御指摘のとおりでございます。外交ルートを通じまして同人の出頭を九月の五日にお願いいたしましたが、その時点では、彼は日本を出国しておったわけでございます。
#34
○寺田熊雄君 この点では、韓国の国会の会議録を見ますと、韓国の国会においても、なぜ金東雲を逮捕しないのか、金東雲を逮捕しさえすれば共犯も明らかになるじゃないかという質問があります。ところが、これに対して韓国政府の答弁を見ますと、まだ逮捕するまでの証拠を見出し得ないというような逃げ口上を用いておるようですが、いま警察当局のお話によると、金東雲が犯行に加担したという証拠を握ったので、その証拠の主なる部分は全部韓国側に送ってあるとおっしゃる。ところが、それを受けた韓国の方では、いまだ金東雲を逮捕し得るだけの証拠を見出しがたいと言って逮捕もしない。これはもう韓国が本件についてまじめに捜査をするという意思を初めから持ち合わせていなかったと解釈する以外に道はないと思うんだけれども、この点は外務当局としてはどんなふうに考えていらっしゃる。
#35
○政府委員(柳谷謙介君) 韓国におけるあるいは−日本における捜査そのものにつきまして、私ども外務省として詳細に申し上げる立場にはないわけでございますけれども、韓国側から途中捜査の内容についての通報がありましたことがございまして、そのときは日本側においてこれでは不十分であるということで、再度、詳細なる捜査の継続を求めた経緯はあるわけでございますけれども、結局、昭和五十年の七月の先方の口上書というところに至ったわけでございます。この五十年の七月の先方の口上書に接しまして、これが韓国当局の捜査結果についての日本に対する正式な回答であったという事実にかんがみまして、これは韓国の捜査機関が責任を持って行った捜査の結果である、このように受け取ったというのが当時の経緯でございます。
#36
○寺田熊雄君 いまの点は、またさらにお尋ねをするわけだけれども、韓国の捜査当局が責任を持って捜査を行っておらないわけなんですね。
 いまの金東雲の拘束の問題でも、これは李宅敦という韓国の国会議員が金総理に対して詰め寄っている。
 一日も早く、この問題が解決しなければならないため、即刻拘束をもう一度要請し、また幸にも第一の容疑者金東雲が現われたからには、今後共犯やその他の真相究明は、大変楽観的だともみられます。
 二の際、彼らを一網打尽するという、何時までまた必ず私が私の職を賭して捕えるという決意と勇気と方針をこの席で明らかにする時がきた、少なくとも国内外的に明らかにする時がきたと、私はこう思います。
と言って金総理に迫っている。
 ところが、金総理それから法務部長官の申植秀、いずれもまだ金東雲を逮捕するだけの確証が得られないと言い張っている。
 そこで、今度は警察当局にお伺いするが、あなた方が加担したという確証を握ったというその刑事警察的な判断、その判断がどうして韓国側に通じないんだろうか、それが不思議でならぬと思うんだが、あなた方はどうお考えになります。
#37
○説明員(柴田善憲君) 私どもの日本国警察の捜査といたしましては、金東雲の犯行加担につきましては自信を持っておりまして、その容疑は逮捕ができる程度に固まっておる、このように理解をいたしております。
 ただ、お尋ねの韓国の捜査をどう思うかという点は、私どもとしては申し上げる立場にはないと思います。
#38
○寺田熊雄君 確かにあなたのおっしゃるように、私も司法の道に携わってもうすでに四十年以上になるけれども、これは逮捕し得る資料が捜査当局にあるということはもう一点の疑いも入れない。それを韓国はまだ逮捕できるだけの資料がないと言い張っている。こういう捜査の常識を全くじゅうりんしてしまうそういう捜査がどうして責任を持ってする捜査と言い得るんだろうか。これは、外務政務次官、どうお考えになります。
#39
○政府委員(志賀節君) やはり、この問題は、日本は日本の立場としてのあるいは常識がございますけれども、その立場を押し広げて、韓国がそうでないことはおかしいというふうに私どもは断定はできないと考えております。しかし、私が前回の委員会でも申し上げましたとおり、必ずしもこの事件が起きてからいわゆる決着を見るまで、そして見た後も、釈然としないものを覚えておる。したがいまして先生の御質問の御趣旨は十分理解できるつもりでございますけれども、いま申し上げたことに尽きると思います。
#40
○寺田熊雄君 刑事捜査の常識を全くじゅうりんした韓国の捜査がおかしいと思われないということになると、その方がちょっとおかしいんじゃないかと思うんだけれども、さらに問題がありますので、先へ進ませていただきます。
 いまアジア局長がおっしゃった最終的な韓国からの通告ですか、これはいつとおっしゃいましたか、いつ日本にあったとおっしゃったですか。
#41
○政府委員(柳谷謙介君) 私が先ほど申し上げましたものは、一九七五年七月二十二日の韓国側の口上書のことを指して申し上げたわけでございます。
#42
○寺田熊雄君 七五年の……
#43
○政府委員(柳谷謙介君) 七月二十二日の韓国側の口上書のことを指して申し上げたわけでございます。
#44
○寺田熊雄君 その口上書の結論を一口でおっしゃってみてください、どういう結論になります。
#45
○政府委員(柳谷謙介君) 一口で申し上げますと、一つは、金東雲の容疑事実を立証し得ないので、これを不起訴処分にした。それから二つは、金東雲の公務員の地位を喪失させた、この二点でございます。
#46
○寺田熊雄君 金東雲を起訴するに足る容疑事実を発見し得ないという点は、いまるる申し上げたように、まじめな捜査を初めからしていない、つまり常識的に当然逮捕し得るものも逮捕しない、否認のままほうりっ放しにしてあるというだけではないんですね。じゃどういうことがあるかといいますと、金東雲がシロだとするのに証拠にならないようなものを無理に証拠だと言い張っている、そういう事実があるんですよ。
 それはどういう点にあらわれているかといいますと、これはいまあなたがおっしゃった口上書に先立つ四十九年の八月十四日の口上書というのがありますね。これには犯行現場にいた金敬仁、梁一東、これが金東雲を犯行現場で目撃した事実がないと陳述している。金大中自身が金東雲の人相を自分らを拉致した人とは記憶しないと陳述している、こういうような理由を挙げて、本人も否認しておるし、これは金東雲はシロであるという結論を出しております。ところが、これについて金敬仁本人はどう言っているかといいますと、これははっきりとその点を否認しておるわけですね。否認しているというのは、いま私が述べたようなことを法務部長官の申植秀も国会で同趣旨の答弁をしておる。それをいたたまれないというか、聞きっ放しにできないという義憤から、質問でなく自分が率先して発言に立って、いま法務部長官が言った言葉は違うという点を明らかにしておるわけです。
 どこが違うかというと、自分と金大中が二人並んで廊下を歩いておった。梁一東の部屋を出て歩いておったときに、一方の部屋から二人が飛び出してきて自分を梁一東の部屋に押し込んだ。三人がまた別の部屋から出てきて金大中を別の部屋に押し込んだ。それはもうあっという間の出来事であるからして、金大中を連れていった三人の顔なんというのは自分にはわかる道理がない、そう言っておるわけですね。それから自分を梁一東の部屋に押し込んだ二人については、その部屋に入ってからいろいろ問答を交わしたので、それはわかる、その中には金東雲はおらなかった、こう言っているにすぎないんで、その調書には署名をしてやった。しかし、金大中を連れていった三人については、これはわからないと言っている。それを金東雲がいないという資料に韓国側は採用しておるわけですね。
 梁一東の方は、どう言っているかというと、金東雲がいたかいないかを示すのに、本人を日本の警察ならば面通しさせるんだけれども、日本の新聞に出た金東雲の写真を見せて、この男がいたかいないかを尋ねた。こんな写真を見せられたって、写真なんというのはどうにでも変えることができるんだから本人を連れてこいと言って、私は署名するのを拒んだ、こういうことを言っておる。それから金大中は、あっという間もない出来事なんで、人数はわかるけれども顔なんかをいま記憶していない、金大中がそう言っておるということを金敬仁が国会で説明をしておるわけです。そういう状況にあるものを金敬仁も梁一東も金大中もともに金東雲がいなかったと言っておるというでっち上げの証拠に使っておるわけですね、そうして金東雲をシロだという結論を出しておる。こんな偽りの捜査なんというものは日本ではとても考えられない。
 これは韓国の場合は裁判官も同じような批判を受けておるわけです。これは国会の会議録にはっきりと裁判官もいまや権力のかいらいに堕してしまったというような批判が公然と言われておるのですが、まして検察官はそういうでっち上げの証拠をとって金東雲をシロだという結論を出しておる。
 韓国の国会でももちろんその点は問題になっておりますが、私どもがいまここで取り上げたいのは、三木内閣当時の宮澤外相が、五十年の七月二十四日に韓国から帰国して、韓国側は金大中事件に対して最善を尽くしたと自分は判断した、これでこの問題は決着したと語っておることです。これは韓国の捜査のあり方や結果というものを全く無視してしまって、ただ形式的な捜査を無理やりにうのみにしてしまった。非常に無責任な国家的判断と言わざるを得ないわけです。国民を欺瞞するものと言わざるを得ないわけですね。日本の外交というものが相手方の言うことをうのみにしてしまうだけが任務と考えておるんだろうかと慨嘆にたえないわけなんですね。なぜもっとそういう捜査の矛盾をよく調査しないのか、相手方の言うことの真偽というものを判断しないでうのみにすることが日本の外交なのか。
 この点は外務政務次官にお尋ねするけれども、あなたはどういうふうにお考えになりますか。相手方の捜査がそういう矛盾に満ちておるものを、これはもう責任を持った最善を尽くしたものだというようなことを言って受け入れることが正当な外交と言えるでしょうか。
#47
○政府委員(志賀節君) 日本の捜査の仕方、それから韓国の捜査の仕方、これはそれぞれその国情によって捜査の仕方があると思います。われわれの基準からすればまことに不適当、不適切と思われるようなものであっても、果たしてそういうものに対して日本が、何と申しますか、教えるとか、あるいはその不備を指摘するというようなことはそれぞれの国家間においてなすことが妥当であるかどうか、これは私は必ずしも妥当だとは考えないわけであります。
 ただ、日本の捜査についての不適切、不的確な点があれば、これは当然この委員会においても、あるいは法務委員会等においても、御指摘をいただいて、これを是正していかなければいけない。いわば一種の内政干渉的なことはどうも私は妥当ではないというような気がいたします。もとより先生の御指摘のような面からの御批判とかお考えがあることは私も当然理解ができますけれども、やはり政府としてはその点いかがなものであろうか、このように考えておる次第でございます。
#48
○寺田熊雄君 わが国に関連のない事件について韓国の捜査を云為することは、これはあなたのおっしゃるとおりだと思いますよ。わが国の主権が侵害された疑いがあるわけですね、公権力の行使による犯行によってわが国の主権が侵害されたかされないかというそのまさに問題なんでしょう。そして日本の捜査では金東雲はクロだと言っている、向こうはシロだと言っている。あなたは日本の捜査のやはり常識に立つべきなんでしょう、捜査に関してはね。捜査に関して韓国の常識に立つ必要はないんだから、日本のお役人が。あちらの方が日本の常識に反した行動をとっておるのに、その重大な国家的な案件について相手方の主張をうのみにすることはないでしょう、違うなら違うと言うべきでしょう。
#49
○政府委員(志賀節君) それは先生のおっしゃるとおりだと思います。ただ、いま申し上げましたように、私、政府の立場でそういうことを申し上げるのもどうかと思いますが、やはりこの問題について日本の捜査当局はこれですべてを尽くしているかどうかということも、特に捜査当局も鋭意検討を加えていることだと思いますので、まだまだ捜査当局もやることがあるかもしれない。たとえば先ほど御指摘がございましたような金東雲一等書記官に対する捜査をしたいと思ったとき手おくれになっておったとか、いろいろそういうことがあるかもしれませんので、そういう点については、先生等の御指摘をいただきながら、これをやってまいらなければならぬと思いますけれども、あくまでも外国に対しては、何かこう物を教えるような立場で物をちょっと言いにくいことではないかと思うんであります。もとよりうのみにするということは結構なことだとは思いません。
#50
○寺田熊雄君 これは金東雲だけの問題じゃないんですよ。韓国でもこの犯行は金東雲外五名の犯行だとして、こちらに報告してきているんですね、つまり共犯がいるわけです。
 その中の一人に劉永福という自動車を使用した人間、これも犯行直後、四十八年の九月五日にもう本国へ帰ってしまった。これについても全然捜査結果の報告がないわけです。これは報告は劉永福についてはございませんね、これは警察庁にお伺いするわけです。
#51
○説明員(柴田善憲君) 劉永福につきましてはございません。
#52
○寺田熊雄君 それから容疑者金東雲外五名という韓国側の報告の中の金東雲以外の五名について何らの報告もないんでしょう、これは外務省にお尋ねするが。
#53
○政府委員(柳谷謙介君) さっきもちょっと話題になりましたその前の年の韓国側から参りました例の決定書というのがございます。その末段に、先ほどもちょっと御引用がございましたけれども、現段階では本件容疑者たちが、たちと複数でございますが、犯行に加担したという資料がないので本件内査を中止する、こういうことがございましたが、これも先ほど御引用になりました韓国の国会における議論等もわれわれももとより詳細に調べまして、日本の捜査当局との意見の交換も行いまして、とてもこのようなものでは不十分であるということで、その年の秋でございますか、さらに先方に対して再度この決定書では不十分であるということを申した経緯がございます。
 その過程におきましては、全部の捜査を金東雲に限らない形でいたわけでございますけれども、その後、七五年のものは金東雲というのが一番中心であるということになっており、先方も当方の申し入れを理解したか、さらに内査を進めたということでございまして、最終的には金東雲について先ほど申しました二点を内容とする口上書が五十年の七月に接到したというわけでございますので、その七五年の口上書においては、いま寺田委員御指摘のとおり、この対象は金東雲だけに限っているというのが実情でございます。
#54
○寺田熊雄君 時間の関係がありますので簡単にお願いしたいんだけれども、金東雲以外の人間についても、報告は金東雲などという表現はあるけれども、たとえば劉永福その他について、これはその他というのはなぜ私が申し上げるかというと、これはやはり九月六日に、尹英老、これは韓国大使館参事官、それから柳春国、これは二等書記官、これがもうきびすを接して帰国している、九月六日にともに出国してしまっている。これはいずれもアメリカのフレーザー委員会で証言をいたしました金炯旭証言によりますと、この柳春国や尹英老もやはり金在権公使の指揮下でこの事件に加担したという、そういう容疑者なんですよね。だから、そういう容疑者についても何らの報告がないわけです。この点はお認めになるでしょう、結論だけでよろしいよ。
#55
○政府委員(柳谷謙介君) この金東雲が非常に容疑が深い、指紋その他あるということで。
#56
○寺田熊雄君 金東雲はよろしい。
#57
○政府委員(柳谷謙介君) それで金東雲を中心にしてずうっと韓国側といろいろ捜査の続行を求めてきたわけでございます。日本の警察当局から見ても最も中心的な役割りを果たした、最も疑いの濃い金東雲について先方の五十年七月の返答がございましたので、それを踏まえまして、もちろん当時の時点においてもすべて納得したわけではございませんで、当時もいろいろ韓国側の、ことに金東雲を中心にする捜査の結果についての不満はありましたけれども、韓国側が二年近く行った捜査の結果ということを理解し、これをそれなりに韓国の当局の努力として評価して、その時点におきましていわゆる決着というものを行ったというのが当時の実情だと理解しております。
#58
○寺田熊雄君 それはあなたのおっしゃることはよくわかりますよ。ただ、私がお尋ねしたのは、金東雲以外の容疑者については何ら具体的な報告はなかったんでしょうと、それだけを伺ったんです。
#59
○政府委員(柳谷謙介君) ございませんでした。
#60
○寺田熊雄君 そういう不誠意な捜査を宮澤外相が韓国は最善を尽くしたと判断したとおっしゃる。日本の外交というものがいかに無責任なものか慨嘆にたえないのはそこにあるわけですよね。
 なお、韓国でも、この当時倉皇として出国をしました五名の外交官が追放に等しいような形でわが国に帰ってきたという、そういう質問をしておるわけですが、私どもが入管からいただいた資料によりますと、本件犯行の直後に帰国した表面上の外交官というのは四名なんですが、もう一人おったんでしょうか。これは外務省でも入管でもどちらでもよろしいから、お答えいただきたいと思うんですが。
#61
○説明員(藤岡晋君) お尋ねの五名につきましては、一昨年でございますか、寺田委員の方から御照会がありまして、御照会は五名でございましたけれども、私どもの方で調査いたしました結果は四名だけしか判明しない、したがって残り一名はいわゆる該当がないということでございました。その点は今日も同じことでございます。つまり五名ということでございますが、四名しかわかりませんということに変わりはないわけでございます。
#62
○寺田熊雄君 これは外務省でも把握していらっしゃらぬのですか。つまり韓国では五人倉皇として追放の形で帰ってきたという質問があって、金鍾泌首相もこの五名という数は否定していない。ただ、これは通常の異動ですという答弁をしているんだけれども、五名か四名か、その点あなた方にはおわかりになりませんか。
#63
○政府委員(柳谷謙介君) 韓国大使館は大世帯でございますから、ときどき入れかわりはもちろんあるわけでございまして、私どもが関係当局から聞いておりますところでは、事件後に離任した人は数名記録されております。
 申し上げますと、洪性採一等書記官、この離任は、先方からの通知の日でございますが、七三年九月五日。それから白哲鉉、これは七三年の十月十五日。
#64
○寺田熊雄君 これは役職は何でしょう。
#65
○政府委員(柳谷謙介君) 一等書記官でございます。
 それから同じ十月十五日、柳春国二等書記官。それから十月二十三日、金東雲一等書記官。同年中はこの四人等でございますが、さらに進みますと、七四年一月には金在権公使、さらに七六年になりますと手参事官、というようなのが時間順に見た先方の離任の記録でございます。
#66
○寺田熊雄君 いまの洪性採とか白哲鉱とかという者については、入管の方では出国の記録はないでしょうか。
#67
○説明員(藤岡晋君) 先ほど外務省の方から御答弁がありましたのは、離任ということで御答弁があったように横で聞いておったわけでございます。現実に日本から出ていった、いわゆる出国をしたか否かという事実だけに限りますれば、調査をすればわかるはずではございます。しかし、それは離任の時期と出国の時期とが同一であるかどうかはまた別問題であろう、かように存じます。
#68
○寺田熊雄君 それでは洪性採と白哲鉱の出入国の明細は御報告いただけますか。
#69
○説明員(藤岡晋君) 調査をいたします。
#70
○寺田熊雄君 なお、金東雲につきましては非常に韓国の国会でも問題になっておりまして、これはKCIAとはっきり名指しはしないけれども、正常な外交官ではないという、そういう鋭い質問がなされておって、これは非常に疑わしい人物だということはわかるんだが、その中で一つ、金東雲の住所なんというのは現実に存在しない住所が届けられているということを言っていますが、これは外務省お調べになりましたか。
#71
○説明員(荒義尚君) お答え申し上げます。
 在本邦の外国外交官の住所につきましては、外交団リスト、これを外務省で発行しておりますけれども、その発行ごとに各大使館より通報を受けて私どもが承知する、こういうことになっております。
#72
○寺田熊雄君 いやいや、どこが住所に届けられていたかということです。
#73
○説明員(荒義尚君) そこで、お尋ねの住所でございますけれども、昭和四十五年の一月に出しました外交団リスト、その時点から同年の十月に出しましたリストには――渋谷区神宮前五丁目三十七の一」となっております。その後、四十六年の四月号から四十八年の一月号までの外交団リストにおきましては、住所は「渋谷区神宮前二丁目三十七−一、マンションナンバー三〇四、二」となっております。その後、四十八年の四月号から十月のリストにおきましては、住所は「港区南麻布一丁目二の五」となっております。
#74
○寺田熊雄君 これは韓国の国会で彼の住所なんというのは現実にない住所を届けていたというようなことが論議されているんですが、これはそのうちのどれを意味するんですか、わかりますか。
#75
○説明員(荒義尚君) 私どもとしましては、外交官の住所につきましては通報を受けたものがもちろん正式通報でございますので、それを当該外交官の住所であるというふうに考えております。
#76
○寺田熊雄君 質問がよくわからぬらしいけれども、大事な問題じゃないから、あといきます。
 この金東雲については韓国の国会でもこれは正常な外交官ではないというきわめて具体的な生々しい発言があるわけですね。たとえば
  私も、どうもおかしいので金東雲という者の
 身元を少し調査してみました。
 年齢四十七歳であるが、これがそれなりに教育をうけた正常な外交官であれば、このような暴挙はできないと考えたので調査をしてみたところ、案の定、果たして、これが正常な外交官ではありません。
  四十二歳から五年前まで新聞記者をしていたが、五年前には外交官の編入生である。どんな根拠によって入ってきたのか知らないが、三等書記官として、駐日大使官勤務に発令されました。入ってきたことも納得いきませんが、彼が
 今一等書記官だといいますが、彼は勤務して二年ぶりに昇進して一等書記官になりました。私が知っているところでは、三等書記官から一等書記官に昇進しようとすれば普通八年ないし九年かかるものだと承知しております。この昇進からも変な人物である。
  また、外交官は駐在国日本国の外務省に、自分の家の住所を登録しましたが、とんでもない他人の家の住所でもしておれば、まだよいのだが、全然日本に番地もないところの番地もない家を自分の家として登録したおかしな人物である。その他に怪しいことは、一つ、二つではありません。
  このため、私はこのような結論を下します。彼は、大韓民国の外交官ではなく、外交官の面 をかぶった変な男である、ただ一つはっきりしたことは、権力の庇護をうけている者であると、私はこのように断言します。金総理、私の話が正しく、彼は権力の庇護をうけている者であるがために、現在まで拘束しないのではない
 ですか。どうして、妥結をみて五日経っても拘束されないのですか、拘束しない理由を明らかにしてください。こういうような質問が、これは李宅敦議員からなされておるわけですね。われわれは、今度スナイダー報告で、金東雲がKCIA要員だという見方をアメリカがとった、これは当然だと思うんですけれども、これが皆外交官の仮面をかぶって日本に入ってくる。これは田中元法務大臣も参議院の法務委員会でそういうことをおっしゃっておりますけれども、これらについてはKCIAの要員か正規の外交官かという点の識別は外務省にはとてもつきがたいことなんでしょうか。簡単にね、時間がないから。
#77
○政府委員(柳谷謙介君) 過去にも同じ御答弁がされていると思いますけれども、政府といたしましては、韓国中央情報部員――KCIAですか、の部員が日本国内に存在し、かつ活動を行っているという事実を把握いたしておりません。
#78
○寺田熊雄君 警察の方はどうです。
#79
○説明員(柴田善憲君) いわゆるKCIAにつきまして、警察としてもいろいろうわさは耳にいたしておりますけれども、具体的にだれがその要員であるかといったようなことは把握いたしておりません。
#80
○寺田熊雄君 これは後で私は高橋元警察庁長官を参考人としてこの委員会に喚問してもらいたいと思うんですけれども、あなた方の大先輩である高橋元警察庁長官が、これはかつて国会の論議になったけれども、警察友の会の教養講座で、KCIと言っているんだけれども、これはKCIAの間違いだろうと思うが、「KCIでないと言っておるが、KCIであることは間違いない。金東雲というのはある程度知っておったが、あのやろうがこんなことをやるとは思わなかった。逆手をとられたわけだ。」というような講演内容がありますね。これは三井警備局長の国会における答弁では速記があるんだということなんで、これは事実そういったことを言ったことは間違いないようだけれども、警察庁の長官が、うっかりした発言かどうか知らぬけれども、そういうことを言っている。KCIAというものが日本で活動しているという事実はあなた方も認識しておったんじゃないですか。
#81
○説明員(柴田善憲君) 高橋長官の御指摘の発言につきましては、たびたび国会で御報告申し上げておるところでございますけれども、警察で本人に確かめましたところ、同氏が書きました警察歳時記、これの内容を講演するために話した話の中で、思い出話としまして金大中事件に触れた。発言の真意は、警察が非常に困難な条件の中で金東雲書記官を割り出した、それを非常に称揚した意味で言ったんであって、警察を激励するために言ったんだと。公職を離れたことでもあるし、気安い私的な立場で憶測を言ったんだ、こういうことを言っておるわけでございます。
#82
○寺田熊雄君 何にしてもうかつな話で、これは外務省も警察庁ももう少し目を見開いて活動していただかなきゃいかぬと思うんだけれども、アメリカでははっきりともうKCIAの犯行だと、これは後でスナイダー電文に触れるけれども、見ておるし、大体韓国でもKCIAの犯罪であるということは疑いないと言って断言している議員もおるわけですね、これは国会の議事録に出ておるわけです。それを日本だけが全然把握していないというのは余りにもうかつではないかと思うが、これは外務省としてどうです、政務次官にお伺いしようか。
#83
○政府委員(志賀節君) KCIAの犯行であるという見方、考え方がアメリカを初め諸国でこの問題に関して言われていることは私も承知をいたしております。しかし、私は、この問題でたとえばアメリカ政府がそのように断定しているのかどうか寡聞にしていまだ知らないわけでございますが、日本の国内においても議員でこれはKCIAの犯行であるという断定をなさっておられる方もあるわけでございまして、その限りにおきましては、私は日米両国とも類似の状態であると理解をいたしております。
#84
○寺田熊雄君 これは後でスナイダー報告の信憑性についてお尋ねするときにまたお話しするけれども、これは韓国の国会でこういう発言がある。参考になりますから、ちょっと読んでみますが、金国務総理に対する李宅敦議員の質問です。
 国務総理はどうして、これを個人行動だといい、日本政府もそうだといってうけ入れてやるのは、いくら政治だといっても私は理解できません。これは個人行動ではないという人の主張には、このような話もでてきましょう。資金も沢山かかり、人員も多く、自動車もあり、その他に大小の船舶を動かしたのであり、こんなことをどうして個人ができるのか、このような話がありますが、私はこのようなことは2番目、3番目だと思います。一体法外なことをするには、権力の庇護なくしては、介入なくしては、想像もできないことであるため、三尺の童子でも知っている話を私がこの場で言うのはバカげていますが、これは政治権力が政治権力自体の必要により今回のことが行われたものである、私はこのように確信します。のみならず、金東雲という者が真犯人であるかないかは知らないが、その背後やその上層部にはもっと恐ろしい権力的な組織体があるということも、われわれの常識に属する話であります。こういう発言をしております。
 金鍾泌総理もちょっと弱気になって、それを肯定するような、正面から肯定はしないけれども、柳珍山議員の質問がありまして、これは情報部組織法を改正する用意はないかという質問が金大中事件に関連してなされて、それに対する答弁として
  その次に情報部の組織を改正する用意はないかと尋ねられました。情報部の活動自体について、いろいろ機会あるごとに、皆様は御心配して下さっていることをよく承知しております。情報部も活動してみると、本意でなく、あるいは国民の皆様に御迷惑をかけることがあるだろうことは、そのように私は否定しはいたしません。しかし、情報部が、負った仕事において、最善を尽くしている難しい仕事を誠意の限り遂行しているということも、他方では激励して下さるものと信じます。いつでも、仕事をしてみると、そのような批判をうける過ちがあり得ることが、また、情報活動でありました。
 人が調べてくれないことを隠れてする情報部員を、そのように考えますと、ある時には間違いも犯しましょう。いつも内部の取締りを行い精神的な姿勢堅持を強調し、教育もし、また、その時々必要とする是正もしますが、未だ不十分なために、このように心配して下さることを、私ども、十分に知っておりますので、引き続き最善の勤務をすることができるように切磋琢磨いたします。
 これはいかにも過ちをすることがあるということを前提にして答弁をしておるので、こういう点を少し外務省もよく資料を収集されて、KCIAの日本における活動というものをもう少し注意深く見守る必要があると思いますが、これはどうでしょう。
#85
○政府委員(柳谷謙介君) 軍事革命の後、現在の政権ができたときに、このKCIAというのができまして、韓国国内におきましてもこのKCIAの活動の限界とか、その任務の性格とかということについては今日に至るまでたびたびいろんな論議があって、機構の改革とか人の入れかえとかいうようなものがあったことは承知しております。韓国内部における情勢についても私どもよく注目しなければならないと思いますけれども、いま御指摘のありましたように、在外における活動ということについてもいろいろもちろん話も聞いておるわけでございまして、御指摘の点は、今後ともできるだけの研究を続けたいと思います。
#86
○寺田熊雄君 次に、今回のスナイダー報告についてお尋ねをしますが、これは前任者のハビブ大使も八月二十一日の公電で、この事件に関連して「本使は冒頭電報においてスカリ大使により示された懸念に全く同意する。本省御承知のとおり、韓国内外における不満分子に対するいやがらせにおけると同様、金大中事件においても韓国CIAが関与していることを示す新聞報道は基本的に正しい。」こういう電文を国務長官にしておるわけですね。これはやはり一国を代表する大使がその地のいろいろな情報を総合して、そういうふうに認識した事実というものをはっきり示しておるでしょう。
 それから、金大中がいわば個人的な暴力団によって拉致されたものではなくして、これは明らかに政治犯的なものである。したがって金大中が恐らくアメリカ大使館に庇護を求めてくる可能性があるんだと「政治的な庇護の要請の可能性」と題して国務長官にやはり七四年の二月二十二日に電文を打っておるわけですね。つまり、これは明らかに個人的な暴力団の犯行ではなくして政治的な犯行だというふうに、これを前提にして電文を打っておる。それから、これに対してキッシンジャーなどが政治的な保護を求めてきた場合の対応策について返電をしておる。これが七四年三月八日。
 それから、いよいよ七五年の一月十日のスナイダーの問題の電文になるわけですね。これは当時の外相の金東作がスナイダーに対してはっきりと金東雲が韓国のCIA員だということを前提にしていろいろと話し合いをしておるわけですね。これは韓国の一国を代表する外務大臣のいわば自白なわけでしょう。それを受け取ったのが普通の私人ではなくして一国を代表する大使であった、だからその重みというものがこれはこの電文の中に秘められておるわけです。
 これは大使がその業務を遂行する、その業務の一環として行ったものなんでしょう。これは外務省に。
#87
○政府委員(柳谷謙介君) 前回のこの委員会でも若干御報告いたしたことでございますけれども、今回、米国務省が法律に基づく請求に対して提供した百四十三件の文書がございまして、その中にいま御引用になった文書もあるわけでございます。私どもは、これについての米国務省からの外交チャネルによる同じ資料の提供を受けた後、これを入手いたしました後、いま全部の百四十二件について慎重に検討しておるところでございます。
 そのうち、特に、すでに広く報道されました二、三の外交文書でございます。これについてももちろん御指摘のあったように重いものであるという印象は率直に持っているわけでございますが、これについてはなおもう少し時間をいただいて検討の上、さらに米国側それから韓国側に事実関係の確認と申しますか、そういうことについての照会等をして、より正確に事態を知りたいと思いまして、現在なおその検討に当たっているのが実情でございます。
#88
○寺田熊雄君 私のお尋ねしたのは、これはもう当然大使の公の職務の一環として行ったものでしょうとお尋ねしている。
#89
○政府委員(柳谷謙介君) 御質問の趣旨はよくわかったつもりでございますが、まず、この文書そのものについての事実関係を実は確認したいのが私どもの気持ちとしては……
#90
○寺田熊雄君 事実関係を聞いているんじゃない。電文を打ったことは大使の職務の遂行だろうと言って伺っている。
#91
○政府委員(柳谷謙介君) わかりました。それではアメリカ、韓国に関しては別途また照会したいことがあるわけでございますが、アメリカだけについて申しますと、このような現地の大使から国務省の長官あての公電というものの性格いかんという点につきましては、御指摘のとおり、米国の在外公館の活動の中での公的な活動として本省へ報告した一つの文書というふうに御質問のとおり理解しております。
#92
○寺田熊雄君 この証拠能力につきまして、大変いろいろまたけちをつけるような発言が政府筋から流されておるので、特にお尋ねしたわけです。
 これは伝聞であるというようなことを言って証拠価値を減殺しようとする試みがありますけれども、こういう公文書は日本の刑事訴訟法でも証拠能力を認められておるわけですね。これは専門家の審議官がいらっしゃるから、これは刑事訴訟法の証拠能力の規定のどの条文に該当しますか。
#93
○政府委員(水原敏博君) この公電そのものは証拠物たる書面の性格を持っていると思います。その内容につきましては三百二十「条以下の伝聞法則の適用を受ける性格のものだと考えております。
#94
○寺田熊雄君 それで、証拠物たる書面として、証拠能力は認められるでしょう。
#95
○政府委員(水原敏博君) 成立そのものに疑義がない限り、証拠能力が認められると考えます。
#96
○寺田熊雄君 いまも外務省が答弁なさったように、これは大使の業務の遂行として行ったものですということですからして、成立それ自体には何ら争いがないわけです。いかがですか。
#97
○政府委員(水原敏博君) 大使の通常の職務の過程において作成されたということがはっきりしておる限り、これは証拠物としての証拠能力は認められると考えます。
#98
○寺田熊雄君 ですから、これははっきりと大使の通常の業務の公の行為としてなされたということは外務省が認めていられるんですからして、これはもう明らかに証拠能力を持つわけで、これを何か証拠価値にけちをつけようとすることは非常におかしいんで特にお尋ねしたわけです。
 条文的にはどの証拠に該当しますか。
#99
○政府委員(水原敏博君) ちょっとお待ちください。
#100
○寺田熊雄君 三百二十三条の二号か三号かということですよ。
#101
○政府委員(水原敏博君) 委員の御指摘の三百二十三条は「その他の書面の証拠能力」ということで、私が申し上げるのは、証拠物としての能力は、これは一般法則に基づいて付与されるであろう、こういうふうに申し上げたわけでございます。
#102
○寺田熊雄君 これは、しかし、あなたのおっしゃる証拠物たる書面の証拠能力も、やっぱり普通解釈上これに当てはめて準用して考えていくでしょう。
#103
○政府委員(水原敏博君) この三百二十三条に規定されております証拠能力の付与された書面と申しますのは、ここにありますとおり「戸籍謄本、公正証書謄本その他公務員がその職務上証明することができる事実についてその公務員の作成した書面」とか商業帳簿だとか航海日誌その他特に信用すべき状況のもとに作成された書面ということになっておりまして、私は、この三百二十三条で証拠能力が付与されるとは考えておりません。
 したがいまして、その成立そのものに争いがなければ、証拠物としての証拠能力はございますが、そこに書かれております内容、すなわちだれそれがこういうふうに話したとか何とかいうものにつきましては、三百二十一条の伝聞法則の原則に戻りまして、三百二十一条の一項三号の書面、したがってここに「前二号に掲げる書面以外の書面については、供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明又は国外にいたるため公判準備又は公判期日において供述することができず、且つ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるとき。」には証拠能力が付与される、このような性格のものだと考えます。
#104
○寺田熊雄君 業務の通常の過程において作成された書面であれば、これは公文書たると私文書たるとを問わない。
 それから三号は「前二号に掲げるものの外特に信用すべき情況の下に作成された書面」とありますね。これは証拠物たる書面の内容を明らかにする場合にも三百二十三条の二号、三号が当然準用されてしかるべきものだと私は考えるがね。
#105
○政府委員(水原敏博君) 三百二十三条の解釈につきましては、寺田委員御指摘のような見解をとる学説もございます。しかし、私は、先ほど申し上げましたような、この文書に限って申し上げますならば、三百二十三条によって証拠能力の付与されるものはこの条文に書いておるものであって、当該文書はそれによる証拠能力を付与されるものとは考えないという説に立っておるわけでございます。
#106
○寺田熊雄君 これは裁判例をよく研究してもらわないと困るので、裁判例をよく研究してください。私はそのとおりだと思うけれども。
 本質的な問題じゃないから次に移りますが、以上のような韓国側の初めからこの事件の真相を究明するという意図が見られない事件で、最初に金鍾泌総理と田中総理との間で四十八年の十一月二日に外交的な決着をつけてしまいました。その中で、韓国の国会で金総理の報告を見ますと、日本の捜査はこれで終結した、これからはわが方がこの問題の捜査を続けるということを言って、この点は新聞でも当時報道されましたけれども、ただ金総理の国会における報告を見ますと、田中総理と私は次のような結論で合意をした、つまり合意ができているんだという、そういう説明がなされていますが、この点は外務省は把握しておられますか。
#107
○政府委員(柳谷謙介君) 御質問の意味が金鍾泌氏がそういう発言をされたということを把握しているかという御質問であれば、そういう発言があった事実は承知しております。
#108
○寺田熊雄君 それで合意はなされたんだろうか。
#109
○政府委員(柳谷謙介君) これもたびたび御説明したことの繰り返しでございますけれども、この時点におきます決着の中身というのは、これは当時発表されました双方の了解そのものでございます。これが双方によって了解された内容であって、金鍾泌氏と田中氏との間で到達され、そのように発表されたそのものが当時の合意の内容であるということでございます。
#110
○寺田熊雄君 そういう日本側の捜査を終結させるという合意はなされていないと見て、あなたはそういう意味でおっしゃるわけですか。
#111
○政府委員(柳谷謙介君) そのとおりでございます。
#112
○寺田熊雄君 そうすると、これは金鍾泌総理が韓国では全く偽りのことを報告しているということになる、これははっきりするわけですね。そういう韓国総理の報告はしたことは知っておる、しかし、そういう合意はないんだと。つまり金鍾泌が韓国で偽りの事実を国会で報告しているという結論にならざるを得ない。これは、外務政務次官、どういうふうに思います、そういう偽りを報告する人と誠実な合意ができるだろうか。
#113
○政府委員(志賀節君) 私が客観的に承知しておりますことは、ただいまもここに書面がございますけれども、いわゆる話し合いはあったわけでございますが、合意がなされたというふうには理解をしておりません。
 したがいまして、私は話し合いがあったということを、たとえばここにございます文書をちょっと読みますと、これは当時の金鍾泌国務総理が韓国の第八十八回国会の議事録で言っているところでございますけれども、「私は先刻も答弁で申し上げたように、日本ではどのように解釈をするか知らないが、諸般韓日間の懸案問題を協議するため、韓国の国務総理の資格で行き、日本の田中日本総理大臣と会った。このようにお話し申し上げました。そして」……
#114
○寺田熊雄君 それは何日の日付ですか。
#115
○政府委員(志賀節君) 一九七三年十一月六日の本会議です。
#116
○寺田熊雄君 まず五日から始めてください。五日が報告なんです、五日に金総理は国会に報告しているのです。その外務省の資料の二ページを読んでください。だから、いまアジア局長はその事実を認めたでしょう。事実はそういうふうに言っているので、それはもう明瞭なんです。あなたが御存じなければ別だけれども、外務省資料の二ページ。
#117
○政府委員(志賀節君) その前日の議事録、すなわち五日で申し上げると、いま先生の御指摘の点だと思いますが、「田中首相と私は金大中事件に関していろいろと協議し、また次のような結論に合意したので、この事件に関する韓日間の外交的な問題については決着をつけることになった」云々と、このくだりだと思うのですが、このことについては、私は、金鍾泌当時の国務総理には御認識に誤解があるのではないかと思います。何となれば、再三日本の国会で言われているように、捜査は終結をしておらないわけであります。
#118
○寺田熊雄君 わかった。それはよろしい、誤解とおっしゃるなら、それでよろしい。時間の関係がありますから、次官ね。
 また、さらにお尋ねするけれども、食い違いはそれだけにとどまらないわけですよ。その会談で、田中総理は、今回の事件は不幸な事件だったが、金首相が事件収拾のためにわざわざ来日したことを多とするというふうに、当時、政府は発表しているわけです、日本は。ところが、金総理の方は、いろいろな問題を協議するために日本に行ってきたんだ、そのついでに金大中事件に対する遺憾の意を表したと言っておられる。まず、その食い違い、それは細かいものだと言えばそれだけれども。
 それから、当時、政府の発表は、これは大事なところですが、金東雲の行動は公権力の行使ではなく個人の犯行であると金総理が説明したという発表を政府がなさって、それを各新聞が皆報道しているわけです。ところが、いまあなたが御指摘になりました十一月六日の韓国の国会、ここではもうはっきりと個人としての行動も公権力の行使としての行動も金東雲には認めがたいと、これは金総理も言いますし、申法務部長官も言っているわけです。これは非常な食い違いなんです。この食い違いをまず認めるか認めないか、外務省、どうです、次官は無理かもしれないけれども。
#119
○政府委員(柳谷謙介君) この四十八年の十一月二日に日韓首脳会談があったわけでございますけれども、当時の記録によりますと、韓国側は、金東雲の容疑があることを認めて取り調べを行い、それに対する相応な措置をとる、捜査の結果は日本に報告するというような意向を表明した、これが会談の内容であり、当時、そのとおり説明したものでございます。
 いま御引用になった部分と思いますが、総理が韓国に帰っての国会の発言につきましては、これは相手国の国会内における先方の発言でございますから、わが方からあれこれ余りせんさくすべきものとは思いませんけれども、いま申し上げました日韓首脳間において明示的に達成されました合意というものについては、日本はそのことをたびたび日本政府として説明しておりまして、この点について韓国側が一度もそれに対する異議を唱えたことはございませんし、また、その後、この日韓首脳間における合意の内容については、韓国側はそれを履行してきたという事実がございますので、そのようなことから見ましても、実際の合意は当時公にされました日韓首脳会談における合意として御説明申し上げている内容であったということに間違いはないというふうに御理解いただきたいと思います。
#120
○寺田熊雄君 時間の関係がありますので私の方からそれじゃ指摘しますが、あなたの方から提示されたこの韓国国会の会議録十一月六日の分の八十八ページをちょっと見てください。金鍾泌総理の答弁で「金東雲書記官が、今、犯人だという何らの証拠も私どもは持っていません。」と、こう言っているんです、全然シロだと言うんです。それからまた行をあけて「金大中氏事件に韓国の公権力が介在したとの何らの証拠も、現在としてはないということをはっきり申し上げます。」と、つまり犯人だという証拠もないし公権力が介入したという証拠もない、何らの証拠もないと。
 それから五十八ページから五十九ページ、これは申植秀法務部長官の答弁です。「日本政府が何と言おうが、わが捜査当局としては、金東雲氏についての金大中氏事件に対する関連事実を認定する証拠を得られずにいるのであります。」つまり金東雲はシロだと言っているんですよね、何らの証拠もないんだと言う。
 だから、こういう日本には容疑があると、まああなた方は容疑があるという、そういう公文書的な発表はあったのかもしれないが、しかし、スポークスマンは金鍾泌は個人の犯行は認めたと言っていらっしゃるのです。だから、それは翌日の新聞は全部そういう報道をしているわけです、日本のあらゆる新聞が。ところが、金鍾泌また法務部長官は、韓国の国会では、何らの証拠もないと言っている。あなた方はその食い違いを御存じでいて、ほうっていらっしゃるのか、目をつぶっていらっしゃるのか。あるいは、そういうことを指摘することが内政干渉だなんと言って、この問題をうやむやにするのか、どちらなんでしょうね。
#121
○政府委員(柳谷謙介君) いま御引用になりました韓国の国会における記録は、私どもも当時から詳細に目を通しているところでございます。この国務総理その他の発言の一々の表現とか言い回し等について、これを第三国の私どもからとやかく細かく言うことが適当かどうかはわかりませんですけれども、いま御引用になった部分をざっと見ますると、先方は、何らの証拠を持っていないということ、あるいは公権力の介在した証拠も現在はないということを言っているわけで、シロだと言っているのとは違うと思います。
 現に、このときの首脳会談の結果を踏まえて、わが方捜査当局が持っている資料を先方に提供し、その捜査結果を求め、また、その途中の経過の説明が不十分だということで再度説明を求めて七五年の七月に至るその後の発展を見ましても、先方が、国会で論議がありました七三年十一月の時点におきまして、全くシロであると……
#122
○寺田熊雄君 簡単にお願いします。
#123
○政府委員(柳谷謙介君) したがって、これは捜査する必要もないし捜査する気もないという立場だったとは、その後の経過から見ると、考えられないわけでございます。
#124
○寺田熊雄君 容疑があるというのは、何らかの証拠があるから容疑があるのです。それは公判を維持するに足る証拠かどうかということは第二の問題だ。ところが、何らの証拠もないというのと容疑があるというのは両立しないのですよ。これはニュアンスの問題じゃない、もうイエスかノーかの問題だ。だから、もうちょっといわゆる常識的な判断をしてくださらぬと、何かぼやっとして外交をしてくださっては困るわけだ。――よろしいです。もう明らかな問題をあなたがまたいろいろ陳弁することによって時間がたってもちょっと困るからね。
 ともかく、そういうふうな両方の食い違いが非常に激しいのに、こういう外交的な決着というのは、私は、意図的にこの事件の真相の究明を放棄したのじゃないだろうかという、そういう疑いさえ持つのですよ。だから、結局、この事件の真相を究明することは何か両国の友好を損なうのだというようなとんでもない考え方からして真相究明というものをもう放棄してしまう、そういうことによってこの事件の決着をつけるのだという意図が田中総理にも金鍾泌総理にもあって、そうしてああいう合意ができたのではないか、そういう疑いさえが起きるのだけれども、これはどうだろうか。
#125
○政府委員(柳谷謙介君) 当時のさまざまな記録によりまして、うやむやに決着するとか真相にふたをするとか、そういう意図で当時の決着が行われたとは私どもは思っておりません。現に、その後、捜査がずっと継続していたという事実から見ましても、その点は理解いただけるものと思っております。
#126
○寺田熊雄君 その後の韓国の捜査というものがいかに無責任なものかということはさっき申し上げたでしょう、ですから重ねてこれは申し上げません。
 最後に、法務大臣にはわざわざおいでいただいて、病院にいらっしゃったそうで本当に御苦労さまでございます。
 法務大臣にお尋ねをすることになるんですが、それは最近田中伊三次元法務大臣が非常にショッキングなことをおっしゃっておられるわけです。田中伊三次元法務大臣は、事件の直後にも、いわゆる第六感発言というものをなさって注目を引いたんですが、私がいま手にしておりますのは、五月十九日の毎日新聞の記事なんです。これは田中さんが法務大臣でいらっしゃったときに、法務大臣室に秘書官も通さずに政府の高官が入ってきて、直立不動で金大中が拉致されましたと、それで耳に口を寄せて韓国の秘密警察、KCIAですよと言った。こういう報道がございますので、私も、直接、田中さんにこういうことを新聞記者におっしゃいましたかと言って念を押したところが、そういう趣旨のことは確かに言った、内容も大体私の言ったことに合うているというお話があるわけです。
 こうなりますと、もうこれは事件のあった日で、田中さんが私に教えてくださったところでは、NHKが金大中が拉致されたということを放送する直前のことだとおっしゃるんですね、最初の放送の直前だと。そうなりますと、もう事件が起きてすぐそれが政府高官の耳に入っていた。入っていたならば、当然、警察が手を打てば金大中が国外に移送されることは食いとめ得たと考えられるわけです。だから、非常にこれは内容をせんさくしてみますと、ショッキングな発言なんですね。
 これについて法務大臣はどのようにお考えになりますか、この元の法務大臣の御発言です。私が特にきょう法務大臣にお越しをいただいたのは、これについて法務大臣がどのようなお考えを持っていらっしゃるかお伺いしたかったわけです。
#127
○国務大臣(古井喜實君) 田中伊三次元法務大臣がおっしゃった話のことでありますけれども、田中さんというのは自分で自称するごとく第六感抜群であるとこういうわけで、第六感をきかして解釈したり、物を言ったりされていることもあるんじゃないかと思うんですが、しかし、それはそれとしまして、田中発言はとにかくとして、ああいうことが起こった当時に、これは警察だってさんざん追及したもんだろうと思うんですね、当時ですね、そんなしないはずないと思うんです。しないような何というか間抜けな警察はあったもんじゃないと思うんで、しておるはずだと思います。しかし、そういうこともあったけれども、しょせん四十八年の秋第一回の例の外交決着、もう一遍また第二回三木内閣のときにも繰り返して外交決着を確認したわけでありますね。そういう経過をたどっておるということでありますので、それにつきましても公権力が関与しておったという事実について新しい確たる証拠が出てくれば、これはまた別問題だとはなっておりますが、一応決着をつけたわけですね。
 これを見直す、覆すということは外交上非常に大きな問題でありますわね、申すまでもなしに。のみならず、日本の国内の政治問題としてもこのとおりに大きな問題でありますね。ですから、アメリカサイドからの資料というものが公に出ておる一それは一つあるんですが、一方、韓国側は記録がないとかいう話だというように聞いておりますが、片方はそういうわけでわからないと。そこで外務省はいま手を尽くして事実を究明しようとかかっておられることはお聞きのとおりでありますね。事柄が非常に重大でありますから、やっぱりこれは外務省がいわば気のいくまで綿密に調査して、それでまたその後に起こったこの事態に対しては結末をつけるほかはないと思うんで、それでない限りは、とにもかくにもああいう外交的な決着をつけたもんでありますから、これはこれとしてわれわれも尊重していかなきゃならぬのじゃないかしらん。
 少々お尋ねの田中発言から脱線をいたしましたけれども、そういうふうに私もきょうは思っております。この問題は政治家一個としては私にとってははなはだ難問でございますが、そんなことは別にいたしまして、きょうの立場としては、いまのように思っております。
#128
○寺田熊雄君 大臣が予算委員会で民社党の塚本さんの質問にお答えになったときに、大臣はあの外交的決着は私釈然といたしませんよとおっしゃいましたが、そのお気持ちはいまでもお変わりになりませんか。
#129
○国務大臣(古井喜實君) 議場で言ったんじゃないですけれども、過去にそういうことを言ったという事実はありますし、過去にそう信じておってそう言ったということは確かにもう後になってどうするわけにもいきませんし、それから、そう人間の考えは場所によってぐらんぐらん風のまにまに変わるというわけのもんでもなかろう、これは一般論ですが、そういうもんだろうと思っております。
#130
○寺田熊雄君 最後に、いま法務大臣からもお話がございましたけれども、田中元法務大臣は以前は第六感ということをおっしゃったわけなんですが、私がこのいまの新聞報道を見て直接お尋ねをいたしますと、当時は第六感ということをたしか言った、しかし、こういう事実があったことは間違いないんだと。私はそれは国会で御証言いただけますかと言ってお尋ねしたところ、それは行って証言してもいいということまでおっしゃるわけです。ただ国対の問題があるから国対から国対に話をしてほしいという御意見もありまして、じゃ証人としてでもいいですかと言ってお尋ねしたところ、それは証人でもいいけれども、まあ参考人の方が適当だろうというお話があったわけです。
 そこで、私はスナイダー公電の証拠力は疑いないと思いますし、これが仮に内容が伝聞であろうと一国の外務大臣が一国の大使に語ったという重みは、これはもう否定しがたい重みを持っている事件です。それからまた日本の法務大臣が直接の体験で日本の政府の高官からKCIAの犯行だということを聞いたんだという、その重みもやはりこれは大事にしなきゃいけません。そういうことで、この委員会に参考人として田中伊三次元法務大臣を御喚問願いたい。
 それから、ついでと言っては失礼ですが、これは言った言わないということがいまさら問題になっておるようですけれども、やはり一国の警察庁長官がそういう発言をしたという事実は、これは否定しがたいものがあります。これは三井元警備局長が速記があるんですと言って高橋氏に尋ねたという、これは国会での答弁もあるわけですね。だから彼がそういう発言をしたという事実は否定することはできない。一国の警察庁長官がそんなに軽々に発言をするとは常識的に考えられない。そういうことを考えて、この際、高橋元警察庁長官もやはり参考人として当委員会に御喚問願いたい。そしてこの国家的な事件、一国の民族的な指導者が公権力によって人権を奪われ、日本の主権が侵害されたかされなかったかという重大な事件でございますので、ぜひこの委員会で真相を明らかにしていただきたいと思います。
#131
○委員長(菅野儀作君) 参考人の問題は理事会で打ち合わせをすることにいたします。
#132
○寺田熊雄君 終わります。
#133
○委員長(菅野儀作君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。
   午後零時三十一分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時三十一一分開会
#134
○委員長(菅野儀作君) ただいまから外務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約の締結について承認を求めるの件及び市民的及び政治的権利に関する国際規約の締結について承認を求めるの件を便宜一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#135
○渋谷邦彦君 きょうは、部分的なことについて若干政府側にお尋ねを申し上げたいと存じます。
 わが国の長い歴史といいましても、つい戦争が終わる直前ぐらいまでは残念ながら地域によってはいろんな差別問題というものがあった事実がございます。戦後になりまして、日本の平和憲法のもとでひとしく平等な扱いを受けるようにはなりましたけれども、なおかつそうした後遺症というものが残っていはしまいか。一昨日でございますか、政府側の御答弁の中にもございましたように、平和憲法はまことに世界に類例を見ないぐらいにすぐれたものである、そういう観点から見れば、今日においては日本という国はまことに恵まれている環境の中で営みが行われているんではあるまいか、そういう趣旨の御答弁がありまして、まさしく同感だと私は思うんであります。ただ、法律によって拘束されないというか、制約を受けないいわゆる人と人とのつながりの中で、長い伝統と歴史に培われた風習というものが今日なお残りながら、そこにいろんなトラブルが起こっているというようなこともないではございません。同和問題しかり、あるいはこれから触れようと思いますアイヌの問題等々ございますので、きょうは、そうした観点から若干触れてまいりたいというふうに思うわけでございます。
 アイヌという呼称すらも何かべっ視するという言い方なんだそうでございますね。伺いますと、これはウタリというのが正式な呼称である。今日置かれた現在のウタリの方々の実態は、一応資料をちょうだいしておりますので、概要については承知をしているつもりでございますけれども、それでも数年前ぐらいまでは差別に苦しんだという、そうしたことが新聞等においても伝えられているという事実がございました。果たして実態はどうなっているのか。また、国として、現在、数少ないウタリの方々に対してどのような保護といいますか、保護ということ自体も差別の印象を与える言葉になるんではないかと思うのでありますが、話の都合上、言いやすい面からそういう言葉をあえて使わしていただきたいと思いますけれども、総括的に実態的なことをまずお述べをいただきたいと思います。
#136
○説明員(田中貞夫君) 先生のお尋ねのウタリの実態がどうなっているかということにつきまして、北海道にどの程度の人が居住をしておるか、また、その就業の実態あるいは生活の実態がどうなっているかということにつきまして、簡単なお答えを申し上げたいと思います。
 まずウタリ、これはアイヌ語で仲間という意の言葉でございますが、このウタリは現在北海道に約二万二千人程度いるというふうにされております。その主な居住地は日高支庁、これは例の襟裳岬あるいは競馬馬の産地で有名なところでございます。あるいは胆振支庁、これは苫小牧やあるいは室蘭の属しておる支庁でございます。それから釧路支庁、この三つの支庁の管内に多く住んでおるという形でございます。
 それから職業につきましては、農林漁業に従事している人々が全体の約三六%を占めております。そのほか建設業に従事する人たち、あるいは木彫製品の製造、販売に従事する人々が多い現状でございます。
 また、生活の実態についてみますと、いわゆる生活保護世帯率が約一四%に上っております。さらに住民税の減免対象になっております世帯が約五三%を占めておるようなことで、低所得者層がきわめて多いというふうな状況でございます。
 また、子弟の教育の状況について申し上げますと、高校に進学する者いわゆる高校進学率について見ますと約五七%でございます。これは北海道全体では八九%程度になっておりますので低うございます。それから大学進学率について見ますと約一八%にとどまっております。これは北海道全体、全道について見ますと約三一%になっておる、こういう状況でございます。
#137
○渋谷邦彦君 確かにいま述べられた状況にかんがみて見ますと、全体的に見ると非常にレベルが低過ぎる。生活の実態もさることながら、教育の面におきましても平均値をはるかに下回っている。しかも、一方においては、教育の機会均等、また職業選択の自由、憲法で保障された、そういう立場に立って考えますと、余りにも道が閉ざされ過ぎているんではないだろうか。どういうところにそれが起因して、日本全体の平均値よりもはるかに低い、北海道全体の平均値よりも低い、どうしてそういう差別が生まれなければならなかったのかという経過はどうなっているんでしょうか。
#138
○説明員(田中貞夫君) 先生のいまのお尋ねの歴史的経過といったようなことにつきましては、私つまびらかにお答え申し上げる資料等を持ち合わせておりませんけれども、現実に先生のお話しのウタリに対する差別云々ということにつきましては、御指摘のように、このような事実は戦前にはいろいろあったように聞いております。しかし、最近におきましては、そのような事実はないというふうに私どもは承知いたしております。
 で、この差別意識の問題につきましては、帰するところ、ウタリの人たちが一般の人たちに比べていまなお生活レベルが低い、生活レベルの格差があるということに原因があるんじゃないだろうか、このことが差別意識を生み出すような結果になっているんじゃないだろうか。そういうことにならないようにやはりしていかなきゃいかぬのじゃないだろうか、こういうふうな考え方に立ちまして、教育の奨励あるいは職業の安定、住宅、生活環境の整備など、ウタリの社会的経済的な自立あるいは自活に必要な各般の施策の推進を通じましてウタリの生活水準の向上を図ることが重要ではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。
#139
○渋谷邦彦君 いまおっしゃったことについては、ようやく政府が本腰を入れ始めたというのが大体数年前でしょう。少なくとも戦後三十年余りたつてなおかつそういう人によってはきわめて悲惨な生活環境に置かれている状態をそのまま放置してこなければならなかった。それで昭和四十九年ごろからようやくこれではあかんと、それは世論の背景というものも当然あったろうと思うんですね。そういうことで国としても適切な措置を講じながら、その辺の格差というものを是正しなければならない。そこまで来る四、五年前までなぜ適切な措置が講じられなかったのか、考えてみると非常にこの辺にも矛盾を感ずるわけですね。
 いま国際人権規約がこう討議されている。しかも、これはもう二十年近くいろいろと審議の過程を経てきているわけです、御承知のとおり。そうすると、当然、国連あたりでそういうような問題について討議の対象になっているということは、国内においても政府側でも十分承知をしているはずです。また、日本国憲法というものに基づいて考えてみた場合でも、これはもう積極的に実は取り組まなければならなかった問題ではなかったろうか。そのおくれた理由というのはどこにあるんでしょうか。
#140
○説明員(田中貞夫君) 私どもが承知しておるといいますか、私どもなりに理解をしておりますのは、戦前にありましては、御案内のような旧土人保護法といったような特段の法制のもとで対策が講じられてきておったわけでございます。戦後、この種の問題につきましては北海道が主体的に北海道の一つの施策の中に踏み込み、関係の省庁も通常の施策の中に取り込んで対策を打つべくそれなりの努力を傾けてきたというふうに考えておりますが、いま先生から御指摘がございましたように、北海道におきまして、さきに昭和四十九年から特段の北海道ウタリ福祉対策というものを打ち出すというふうな状況になってまいりました。その辺の背景を私どもなりにひとつ受けとめながら、昭和四十九年から私どもの方が窓口になりました関係の省庁の連絡会議を置いて、所要の施策を打つというふうな形をとってきておる次第でございます。
#141
○渋谷邦彦君 あなたをとかく責めるつもりは毛頭ありませんけれども、北海道開発庁という役所は何年前ですか、設立されたのは。
#142
○説明員(田中貞夫君) 開発法ができましたのは昭和二十五年でございますが、北海道開発法で言う一つの、何といいますか、開発庁の業務の中では、御案内のように、北海道の国土資源を開発するということを本務とするような形になったまま、今日まで来ておるという事情にございます。
#143
○渋谷邦彦君 ですから、お役所仕事ということになるんだろうとぼくは思うんですがね、きわめて短絡的なんですよ。開発ということをもっと広義の意味に考えるか、狭義の意味に考えるかによって、その目標というものもそれぞれ違ってきますわね。
 いままでも余り私も関心を示さなかったというところに問題があるかもしれませんけれども、しかし、事こうした問題がいま表面に出てまいりますと、なぜというやはり疑問が残りますよ。それは資源の開発だとか何とか、それは結構でしょう。それに連動する必ず人というものが必要になってくるわけでしょう、これは常識ですね。ですから、いままでどんな仕事をやってきたんだろうという、端的に申し上げると、そういう私自身の気持ちの中では抵抗すら起こってくるわけです。
 それはともかくとして、ともあれ、ようやく気がついて、これから将来展望に立って何とかその辺の格差というものを強力に是正していこうと、そこで、もう少しく総括的なことを伺っておきたいと思うんですが、ようやく国としてもそこまで自覚をされまして、本腰を入れてお取り組みになっていらっしゃる。今後、一体、どういう展望に立って、この方々、いわゆる北海道道民の方々と、あるいは内地における人たちと大差がないという生活レベルまで押し上げていくためには、どういういまビジョンを持ちながらお進めになろうという御方針をお持ちなんでしょうか。
#144
○説明員(田中貞夫君) ウタリ対策について、今後、どのような対策を進めていこうとしておるのかというお尋ねであろうかと思いますが、先ほど御答弁申し上げましたことの繰り返しが若干ございますけれども、北海道のウタリ対策につきましては、昭和四十九年以降、わが開発庁が政府の窓口となりましてまいってきております。その推進に当たりましては、先ほど触れましたように、北海道が四十八年九月に策定いたしました北海道ウタリ福祉対策の考え方を尊重いたしまして、社会的、経済的、文化的に低位にあるウタリの生活水準の向上を図ることを基本方針といたしまして、所要の対策を講じているところでございます。
 この間、当庁といたしましては、各般の対策の充実に努めてまいってきておりますが、昭和五十四年度におきましては、特段の対策が発足いたしました昭和四十九年度に比べまして約六・四倍に当たる約九億三千万円の予算が関係省庁に計上されるような運びになってきておる次第でございます。で、今後とも、私どもといたしましては、ウタリと一般住民との生活格差の是正を対策の基本といたしまして、北海道初め、関係の機関並びにウタリ関係者の御意見を十分に聞きながら、所要の対策をより一層促進してまいりたいと考えておる次第でございます。
#145
○渋谷邦彦君 いまもお述べになりましたように、社会的、経済的あるいは文化的な向上を図る一環として、各省庁にそれぞれの予算が組み込まれたと、これも四十九年からようやく始まったわけでしょう。まあ九億、金額にしてみれば決して多い金額ではなかろう。果たしていまあなた方の方で策定しているいろんな方針というものを具体化するためには、これだけで間に合いますか、この金額、予算措置で間に合うんですか。
#146
○説明員(田中貞夫君) 金額の額の問題につきましては、この九億そのものの是非の議論がそれなりにあろうかと思いますけれども、私どもの承知しておりますところは、現在、五十四年度の予算額として計上しております九億三千万の額につきましては、北海道のウタリ協会あるいは北海道庁等の御要望の線をほとんど満度に受けとめた数字であるというふうに承知をしております。
#147
○渋谷邦彦君 確かに教育と経済の発展というものが、あらゆる問題のある中で集約的に考えると、これはもう大きなポイントだろうと思いますね。ある程度教育レベルが高まってまいりますれば社会進出というものも容易でありましょうし、また同時に、いろんな意味で、その人たちが進出したその影響の還元というものをそういうウタリの方々にも及ぼしていくであろうということを考えますと、たとえば文部省の関係で、昭和五十四年度の事業予算七千百万円ありますね。この中には高等学校進学奨励費あるいは文化保存事業費ですか振興費ですか、これをもうちょっと具体的に説明できますか、この機会ですから聞かしてください。
#148
○説明員(田中貞夫君) 文部省に計上されております予算でございますが、私どもの承知をしておりますところでは、今年度の予算額が七千百三十五万四千円になっておりますが、その内訳でございますけれども、ウタリ対策高等学校等進学奨励費補助、これが五千七百万になっております。この中身がいわゆる奨学金で、毎月支給される奨学金が五千四百万でございます。そのほかに通学用品等助成費、これは入学時に支給されるものが二百九十五万円。それからアイヌ民族文化財緊急調査、これが八百七十五万円。それからアイヌ民族文化財映画制作に要する費用五百六十万円。こういうふうに中身としてなっております。
#149
○渋谷邦彦君 これは五十五年度以降さらにその予算の枠というものはふやしていくような方向なんですか、現状維持ですか。
#150
○説明員(田中貞夫君) 具体的な予算計上は文部省の所管ではございますけれども、私どもといたしましては、その実態に即して所要の予算をぜひひとつ計上してほしいというふうに考えておる次第でございます。
#151
○渋谷邦彦君 そこで実態に即してということになると、この五十四年度の枠、年々こうふえてきておりますね、これは物価上昇ということもあるんですから、当然、ふえなきゃいけないと思うんです。その物価上昇の割合を考えると、ほとんどふえてないと言ってもいいかもしれない、見方によっては。そうすると、いまおっしゃったような方向があるわけですね。文部省に対して側面からもっと積み増しをしてくれということになるんだろうと思いますが、実態に即してということになると、この割合で間に合うんですか、足りないんですか。足りないとすれば、どのくらいあとあればまあまあそう不満も残らない、こちらとしても十分とはいかないまでもある程度の手当てができていくんではないだろうかと、その辺の割合というのは、これに対して考えてみた場合に、恐らく少ないんだろうと思うんです、いまの御答弁だと。あとどのぐらいあれば大体満足できるような施策ができるおつもりでございますか。
#152
○説明員(田中貞夫君) 先生の御質問でございますけれども、どのくらいあればよいかということについて特段の数字を申し上げられる立場にいまはございませんけれども、先ほど来申し上げておりますように、ひとつ生活格差、特に就学、就業といったような側面も含めまして、より積極的な対応ができるようなその施策を講ずるべく関係の省庁に御要請を申し上げていくという構え方でございます。
#153
○渋谷邦彦君 それは金額がすべてではもちろんないとは思うんですよ。ですが、やっぱり一つの見どころとしてその金額というものが一つの基準になるであろうということでいま申し上げたわけです。
 したがって、大体これくらいの金額であればもろもろの奨励をもっと手厚くやれるであろうという見込みも当然おありになるだろうと思うんですけれども、先ほどの答弁とちょっとその辺がまだ未整理の状態になっていらっしゃるんではないだろうかなという感じがするんです。本気になってお取り組みになれば、もっとこれだけの実態に即応した手当てを積み増しをするということになる、せめてこのくらいはふやしてもらうことによって何とか現状というものをさらに改善していくような方向へ向けることができるであろうという方向性が出るわけでしょう、そこでいま金額の点にあえて触れさしていただいたわけです。
 この点については、教育というのは特に重大でありますので、所管官庁が文部省ということじゃなくて、やはり総合的にあなたの方が窓口になっているということになれば、これからも積極的に取り組んで、そういう格差の是正に努めていただきたい。これも人権擁護の上からきわめて重要な課題ではなかろうかということで、きょうあえてウタリの問題をいま提起しているわけです。
 もともとウタリあるいは和人というその相関関係において、そこにいろんなべつ視の風潮があったりして、差別の問題が今日までずっと長い歴史の中で培われてきたということが言えるんだろうと思うんです。しかし、いまウタリの方といえども日本人であることには変わりがないわけでしょう。したがって過去のそうした傷というものを埋めて、一日も早く平等な機会というものを与えてあげる、これはもう常識でございますね、当然。
 さて次に、確かにおたくの方からいただいた所得水準の状況を見ますと、低過ぎるね、これは。いかにせん、これは低過ぎるという状況なんで、この低い状態をアップするためには、もちろん経済的な施策というものも、いろんな農林水産だとか通産だとか建設だとか、それぞれやはり予算措置がなされているようですけれども、果たして大丈夫かなという危惧を抱くんですよね。今後、経済的なレベルアップを図るという一環として基本的にどんなことをお考えになっていますか。なかなかあれもこれもということには手が回らぬと思うんですけれども、それから長い間のウタリの方々にしみ込んだ考え方というものをひっくり返しちゃって、直ちに同化せよ等々、いろんなそういう方向を与えてあげることもあるいは抵抗が出てくると思うんです。それはやっぱり長年の伝統というものを生かしたいというその心情もあるでしょうし、その心情を十分理解をしながら、なおかつ経済的にどういう対策が講じられれば、大体、北海道平均値に近いところまでいけるかどうか、どんなことをいま考えておられますか。
#154
○説明員(田中貞夫君) 直截的な御答弁にあるいはならないかもしれませんけれども、先ほど来お答え申し上げておりますように、ウタリの対策につきましては、関係の省庁の連絡会議を持って所要の施策の推進に当たってきておるわけでございますが、先生の御質問のように、やはり生活水準を向上させていくその背景には、生産の環境整備といったようなことにかなり大きな一つの条件がございましょうし、その限りにおいて、先ほどちょっとお答えいたしましたように、農林水産業に従事しておるそういうウタリの人々が総体的に多いわけでございます。そういった意味で、そういった農林関連の基盤の整備等につきましては農林省当局にも非常に力を入れてやっていただくことになろうかと思っておりますし、加えて通産省政策の中でも、中小企業関連の施策をそれなりに打っていただくということが日程に上っておるというふうに承知をしております。
 同時に、具体的な生活の一つの環境づくりにつきまして、厚生省なり、あるいは労働省なりのそれなりの御政策がございまして、その辺のところを十分ひとつそれなりの調整をしながら、一義的には道の方がウタリ協会等とのお話をされたものを十分に尊重して進めていくという立場で進めてまいってきておるわけでございます。
#155
○渋谷邦彦君 それから進学の状況については、これも大体平均的に非常に低いということに加えて、就職の割合も果たしてこの割合でどうなのかなということも考えられるんですが、かつて問題が起こった中でウタリということで結婚がだめになったなんというような話があるんですね。それは一件や二件の例にとどまらないということをわれわれも実は知っているわけです。そうしたことを背景に考えた場合に、就職の際にウタリ出身であるということの理由によって極端な差別を受けているような傾向はないのか。おたくの方の御説明を伺いますと、北海道庁あたりにもきちんと勤務をされて、それなりに仕事をされている現状であるので、その点は心配ないという御説明も伺っております。しかし、全体的に果たしてどうなんだろうか。
 学校を出た、ところが出たはいいけれども、それが高校であれ大学卒業であれ、その就職の先が非常に限定された幅の狭いことになりますと、やはり同じことの繰り返しが将来また続いていくであろう、いつまでたってもそこからはい出ることができないということが、これも当然考えられる問題です。そのためには、あるいは職業訓練というようなことも並行的に考えていかなければならぬ問題もあろうかと思いますけれども、その辺はいま私が申し上げたことを整理して、簡潔にひとつどんな現状になっているのか教えていただけませんか。
#156
○説明員(田中貞夫君) 簡単に御説明申し上げますが、先ほど関係の省庁の政策の中身につきまして、文部省につきましては少し立ち入って御説明申し上げましたが、厚生省につきましては、たとえば生活館の運営費でありますとか、保健福祉推進費、こういった巡回保健相談事業あるいはウタリ特別保育事業といったようなものについて予算が計上されております。それからさらに生活環境改善施設整備費といったようなものが計上されておりまして、厚生省の五十四年度の予算の総額は四億五千六百七十六万三千円というふうに相なっております。
 それから農林水産省につきましては……
#157
○渋谷邦彦君 それはいいや、こっちに資料があるから。ぼくがいま言った職業の問題等について。
#158
○説明員(田中貞夫君) 職業の関係につきましては労働省関連の予算でございますが、就職促進費あるいは就職資金貸付事業、職業訓練受講奨励金、職業訓練受講支度金、こういったものをあわせまして約二千五百万円の予算が計上されておる状況でございます。
#159
○渋谷邦彦君 私が聞いていることは、そうじゃないんだ。高校卒業だとか大学卒業で、しかも、これは低所得層が比重が大きいわけでしょう。非常に職業的に差別を受けているんではないかという観点でいまお尋ねをしているので、その実態がどうなっているのか、こういうことなんです。
#160
○説明員(田中貞夫君) お尋ねの件につきましては、私どもといたしまして承知しておりますのは、ウタリであるがために差別を受けておるというふうな形にはなっていない、こういうふうに承知をいたしておりますが、御案内のように、就職の機会、これは雇用者と被雇用者との間の問題でもございますので、いわゆる技術力その他がいま一つという場面等もなしとはしないのじゃないかと思います。その限りにおいて、先ほど触れましたような職業訓練といったような、できるだけそういう機会をつくることによって現実的な対応をしていかなきゃならぬのじゃないかと思っておりますけれども、冒頭申し上げましたように、そのことによっていわゆる格差といいますか差別といいますか、そういうことがあるというふうには承知をいたしておりません。
#161
○渋谷邦彦君 いずれにしても、繰り返しは避けたいと思いますけれども、低所得層がはるかに多いという実態、こういったところに象徴的に依然として道が閉ざされているのではあるまいかという印象を受けるわけです。ようやく気がついたのも遅ければ、ようやく本腰を入れて、これからそういった教育の面あるいは経済的なレベルアップの面で積極的に取り組もうといういまさなかでございますので、これは一日も早くこうした格差是正を、やはり格差がいつまでも残っているということはそれが差別につながらないとも限らない。そういったところにウタリの方々の切実な思いをかけた願いがあるのではなかろうか、こう思いますね。その点、きょうは、非常に短い時間でございまして、また実態を機会があったら調べてみると、もっとよく輪郭が私自身としてもつかめるのではないだろうか。
 いずれにしても、結論から申し上げると、今日においては、いま言うところの差別ということはないと判断してよろしゅうございますか、あらゆる面で。
#162
○説明員(田中貞夫君) 先生の御質問の趣旨に照らしまして、所得格差があるということがあたかもそういうふうな局面があるやに巷間考えられる場面がなしとしないとは思いますけれども、いわゆる差別というふうなものは、戦前はともかく、今日ないというふうに私どもなりに承知いたしております。
#163
○渋谷邦彦君 確信ありますね。
 北海道旧土人保護法というのはまだ生きているんでしょう、これは。
#164
○説明員(田中貞夫君) 明治三十二年の法律でございますが、厚生省所管という形で現在なお、言葉はどうですか、生きております。
#165
○渋谷邦彦君 ですから、この旧土人保護法というのは一体何だということになるんですよ。これはもう明らかにいまだに生きているんでしょう、明治三十二年にできていようとも。これ自体が差別感を与える一つの法律ではないか。それはウタリの人にとってみれば、この法律の中身はこれはいま外されると困るというお気持ちがあって、今日まだ継続されているということが言われているんだそうですけれども、それにしても、私は、これを見せていただきましたときに、旧土人保護法なんというのはまだ生きているのかなということで、腹が立つやらおかしな気持ちになりますよ。
 せめて、この中身を生かすなら生かすでいいですから、この旧土人保護法というやつは何とか改めるというような方向をいま考えていないんですか。
#166
○説明員(田中貞夫君) 先ほど来お答え申し上げておりますような関係省庁連絡会議の中でもいろいろと御意見なりがあるやに伺っておりますし、それから、いま先生のお話の中にもございましたように、ウタリ協会の中でもいろんな御議論があるやに伺っておりますが、旧土人保護法のねらいとしております趣旨につきまして、やはりこの際直ちにやめるということはどうかというような考え方がウタリないし北海道の方にもその種の御意見があるやに伺っておりますが、ただ、名称につきましてはいかがかなというようなことがどうもあるように承っております。
#167
○渋谷邦彦君 だれが考えたってそうじゃないですか、これはもう前近代的もいいところです、これは。これがまだ日本の平和憲法のもとにおいて生きていること自体が、それでまた皆さん方が気がついておりながらもなぜ改めようとする意思がおありにならないのかどうなのか。これは本当に不思議の中の不思議と言わざるを得ないんじゃないだろうか。国際人権規約をいま討議しているさなかで、日本にはまだこういう差別感を持った法律が残されているなんということ自体がおかしいと思いませんか。
 きょうは大臣がいないものですから、政治的な判断を求めるわけにいかないのが非常に残念でありますけれども、あなた自身の責任あるお立場としてはどんなお気持ちでいらっしゃるのですか、いま説明にとどまっているけれども、直した方がいいのかどうなのか。
#168
○説明員(田中貞夫君) 先生のせっかくの御質問でございますけれども、責任ある答弁を申し上げる立場にございませんけれども……
#169
○渋谷邦彦君 わかった。聞く必要ない。それはむずかしいかもしれない。じゃウタリはきょうのところはこの程度、お帰りくだすって結構です。
 次は、せっかく総理府の方が来ておられますので、大分時間が経過してしまいましたけれども、難民対策を一昨日に続いてお尋ねをしたいと思います。きょう伺う点は、先般も同僚議員の方から質疑が行われましたが、引き続いて確認を込めてお尋ねをしたいと思うんであります。
 大平さんが訪米されましてカーター大統領との間に結ばれた共同声明の中にもございますように、難民対策については日本も積極的に取り組む、今回定住枠を設け受け入れる体制も整っております、今後も引き続きこの問題について取り組んでいきたいという趣旨のことが盛られておるわけであります。
 さて、そこで、いま難民と一口に言いますけれども、いろんな見方が出てくると思うんですね。留学生の場合も難民かもしれない、それからこれから新たにベトナムあるいはカンボジア、ラオス等から入ってくる方々も難民であるかもしれない。まず、その定住についての基本的な考え方を再確認をしておきたいと思うんですが、これは昨年の閣議了解事項、それから今年の四月の閣議了解事項に基づいて進めていこう、こういう立場をいま政府がとられているようでございます。ただ、その内容を拝見いたしますと、先般も私申し上げたんですが、大変条件的には厳しいんではないだろうか。五百人のせっかくの枠を設けても、あるいは百人にも満たない状況というものがこれからしばらく続くのではないだろうかというような疑問も出てまいりますし、その五百人というところにセットした判断の基準、それから将来その辺の枠というものをさらに広げていこうとする政府としての方針があるのかどうなのかということから、まず伺っておきたいと思います。
#170
○説明員(黒木忠正君) 御説明いたします。
 五百人の枠を設定しました根拠と申しますのは、一つは、日本にこれまで参りました難民の数約二千名余りでございます。現在、日本におります難民が約五百名、こういう実態と、それから外国におりましてマレーシア、タイ等で保護されておりまして、日本に入国を希望している人たち、こういった人たちの数を勘案いたしまして、ほぼ五百名程度が順当なところではないかということでございます。
 それから、もう一点、お尋ねのこの五百の数は将来どうなるのかというお尋ねでございますが、これも定住の政策を進めていきまして、すぐにというわけにはまいらないと思いますけれども、いずれかの時期に五百に達しますれば、改めてまた一つの枠を設定していきたい、こういうふうに考えております。
#171
○渋谷邦彦君 きょうは外から新たに入ってくる問題を伏せておきます。
 まず、現在、日本国内にいままで生活をしている方、なかんずく留学生がその大半を占めるであろう。そちらの方の御説明なり資料によりますと、現在、日本に約八百人近くの方々がいらっしゃる。それも八年ぐらい前から留学生として日本へ来られた。帰る国もない、できることならば日本に定住をしたい、しかし、定住するについては余りにも条件が厳し過ぎる。たとえば一つの仕事を選ぶ場合にいたしましても、条件が、日本語というその言葉の習得の問題もございましょうけれども、非常に厳し過ぎて、人によっては一日二十四時間のうち二十時間ぐらい働かないと食べていけないような状態に追い込まれているというような例もあるというふうに聞いているわけです。これなんかも極端な一つの差別と言っていいのか、その辺の判断は非常にいろんな解釈の仕方、判断の仕方というものがあろうかと思いますけれども、まず、とりあえず、せっかく日本の環境、暮らしになれたそういう方々を収容して、日本に定住したいという希望、そしてまた職業についても適切な十分ここに腰を落ちつけてその仕事を通じてさらに人生設計ができるというような方向へいま考えておられるのかどうなのか、その辺お聞かせをいただきたいと思うんです。
#172
○説明員(黒木忠正君) お尋ねは二つの点があろうかと思います。
 まず最初、インドシナ半島の政変前から日本に滞在しております留学生、研修生、その他の目的で来ておりまして、その後インドシナ諸国に帰れなくなった人たち、これは現在約八百名余り日本に滞在しております。この中で、引き続き留学生として身分を保有し学業にいそしんでいる者二百三十名ほどございますが、学校を卒業しましてなおかつ帰れないということで、その余の約六百名がいるわけでございますが、これらの人たちの中で滞在期間を半年、百八十日間の期間で滞在を許可され、それを延ばし延ばしきている人たちが、ことしの三月の統計でございますが、約四百名余りおったわけでございます。
 この人たちにつきまして、そういった法的地位が安定しないということからなかなか就職の機会が得られないという声がございまして、先ほど先生お話のありました、ことし四月の閣議了解の際も、こういった人たちの法的地位を安定させるという必要を盛り込みまして定住化の実現に努めるという閣議了解がなされまして、その後、約一カ月余りたちましたけれども、すでにこの中の百名ぐらいの人が百八十日、半年という期間から一年という安定した法的地位、いわゆる定住の地位へ移っておりますし、これは半年の間にいずれは在留期間更新の機会がめぐってまいりますので、恐らくことしの四月からでございますから九月、十月ぐらいまでの間に大半の人たちが法的地位の安定した身分に切りかえられていくであろう、こういうふうに考えております。
 それからもう一点、日本に俗にボート難民と呼ばれておりますが、ベトナムから海上に脱出した難民の中で、現在、日本で保護されておりますのは、先ほど申しましたように、五百名余りおるわけでございますが、この中で日本に現在定住を希望したいという希望を申し出ている人が十九名おります。この人たちにつきまして、現在、日本語の教育とか社会教育を行っておりますし、また、これらの基礎的な教育が終わりました暁には職業紹介等を積極的に行って日本定住の道を開いていきたい、このように考えております。
#173
○渋谷邦彦君 私がこの問題をやかましく取り上げて申し上げていることは、せっかく日本に希望を持って留学をした。ところが、その扱いが非常に不平等というか厳し過ぎる、こういった生活経験を通しまして、あるいは母国へ帰るか、あるいはアメリカへさらに行くか、あるいはヨーロッパへ行くか、いろいろなケースが考えられると思うんです。その際、この日本という国の見方について、これもしばしば問題視されてきたあり方として、反日感情というものをそそり立てるような方向へ持っていきましたならば、日本としてもいたたまれない気持ちになると思うんです。これは当然承知をされているはずだと思うんです。
 最近にも、いろいろな例があるんですね。大体ここをキーステーションとして、それでもうアメリカへあるいはフランスへと、それで最近行ったフランスの留学生あたりの声を聞いても、もう日本へはとても永住なんかさせるわけにいかない、フランスの方がはるかに待遇もいい、できることならば一刻も早くフランスへ引き取りたい、アメリカへ引き取りたいという、そういうような傾向がいま出始まっているという。それを今度逆に考えてみた場合に、この日本の環境の中でそうした留学生という人たちがどういう仕打ちを受けながら日本で生活をしていたんだろう、そこに大きないろいろな意味での差別感というものが耐えられないという、そういう感情が将来非常にいろいろな意味で尾を引いたならば大変なことになるであろうというその立場から、その辺を明確にしておく必要もあるであろうし、日本として可能な限りの対策を講じて、その人たちが希望どおりの方向へ向けられるような道を開いていく。
 とにかく、やっている手の打ち方というものは、慎重は結構ですよ、どんな人が入ってくるかわかりませんから。慎重は結構だけれども、その法的措置についてもこれはもう前から問題になっていること。で、ようやくそれが最近において、法的措置を認めることをしなければ、なおかついま日本にいるベトナムの人たちを初めとする留学生諸君が大変なところに追い込まれるだろうと、ようやくいまその腰を上げて取り組もうとしている状況でございましょう。ですから、もっとやはり先手、先手を打って、アメリカはすでにそういうこともやっている、あるいはヨーロッパでもやっている、そのやり方はどうであろうとも、やはりアジア地域に占める日本として考えてみた場合に、なるほど日本という国はという、そういう理解と認識を持たしてあげるということと、それから日本という国はもうだれが住んでもまことに快適な国土であると、これが差別をなくす基本ではないだろうか。その観点に立たなければ本当の難民救済というものは私はできないと思うんです。
 対策室では、そういったところの展望を踏まえて十分取り組んでいるのかどうなのか、もう時間も大分経過しちゃっているものですから、その辺をまとめてちょっと意のあるところを述べてみてくれませんか、政治的な判断はまた大臣が出席したときに聞きますから。
#174
○説明員(黒木忠正君) ただいまの点につきまして、従来、留学生問題につきましてはインドシナ難民対策の対象外ということで実は臨んでおったわけでございますが、先生御指摘のような趣旨もございまして、ことしの四月の閣議了解から初めて留学生、元留学生問題もこの難民対策の一環として取り入れる、そしてまず当面やることは、先ほど申しました法的地位を安定させて定住化を図るということを決めたわけでございますが、これは四月の初めでございまして緒についたばかりということでございまして、さらにいろいろきめ細かい施策も必要になってくるだろうと思いますけれども、現在のところ、当面、先ほど申しました法的地位を安定させるということで事務を進めている、こういう現状でございます。
#175
○渋谷邦彦君 これは笑えない話なんですが、五月九日の朝日新聞をごらんになったろうと思うんですが、この見出しがふるっているんですよ、万年床が障害だというんです、ふえる希望者に文部省難色だという。それは学生時代というのは万年床というのはやりますよね、あなたはどうであったか知らぬけれども。われわれもよくやった、この万年床というやつは。そういったことが非衛生的であるというような見地から留学生を拒否するというようなことになりますと、ささやかな問題かもしれませんが、これ自体が差別を引き起こしていくことにつながりはしないかということを非常に心配するんです、そういう発想自体が。これは答弁要りませんよ。こういうこともあるということを含んで、もっとその辺も整理しながら、少なくともでき得る限りこの希望にこたえられるような難民救済の方途、その道を対策室としても十分ひとつ考えて取り組んでいただきたいということだけをきょうの段階で申し上げておきます。
#176
○塩出啓典君 それでは、人権規約の問題について質問をいたしたいと思います。質問の順序を多少変えまして、特に、本日は、具体的な問題をお尋ねしたいと思います。
 まず、外務省にお尋ねいたしますが、A規約につきましては、この第二条で「漸進的に達成するため、」と、すぐ達成できなくても徐々に達成していけばいいという、この点がB規約とは本質的に違うように理解をしておるわけでありますが、この「漸進的」というのは具体的にはどういう内容のものなのか、たとえば十年ぐらいあるいは二十年単位の話なのか、あるいは一歩一歩前進しておればいいものなのか、これはどうなんですか。
#177
○政府委員(賀陽治憲君) この「漸進的」の言葉でございますが、横文字ではこれはプログレシブリーという言葉を使っておるわけでございまして、絶えず前進をしておるということでございますが、私どもの理解としては、絶えず前進をするのみならず、若干加速的な意味においてたゆまざる努力をするというふうに考えておりますが、言葉の意味としては、これは何年であるとかということは、特定の年数はもちろん意味していない。もちろんこの人権規約の中身がきわめて多岐にわたる人権を内容としておりますものですから、必ずしもその内容の関連におきまして、あるものに何年、あるものに何年というような判断はなかなかできかねると思いますけれども、たゆまなき前進という考え方で対処すべきものと考えておるわけでございます。
#178
○塩出啓典君 そこで、先般の委員会でも同僚議員から問題になっておりましたが、このA規約の第十三条ですね、いわゆる教育の無償化の問題につきましてわが国が留保をした。特にA規約十三条の2の(b)と(c)ですね、これを留保した国は日本以外にはどこか一国だけだというふうに聞いたんですが、その点は間違いないんですか、その国はどこですか。
#179
○政府委員(賀陽治憲君) その国はルワンダでございます。
#180
○塩出啓典君 この十三条の(a)は、「初等教育は、義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとすること。」と、これはわが国は留保をしていないわけで、ところが(b)の中等教育あるいは(c)の高等教育というものは、世界の国でもルワンダという国と日本だけが留保をしたわけでありますが、外務省の説明を読みますと、わが国には私立学校の制度があるために、公立学校無償化の方向に行くと、余り差ができ過ぎて非常に困る、そういうような御説明だったと思うんですけれども、私立学校の制度というのは世界ではわが国だけの特殊事情なんですか。私は、世界の、どの先進国にもやはり公立の学校と私立の学校というのはあるんじゃないかと思うんですがね、その点どうなんですか。
#181
○政府委員(賀陽治憲君) 本件は文部省の御所管でございますけれども、私からとりあえず御答弁させていただきますると、この項目についてはいろいろ御協議を申し上げたわけでございまして、たとえば高等教育に関する限りにおきましては、日本と同じ立場に、たとえばアメリカ、フランス、イギリス等があるようでございます。したがいまして、これらの国がなぜ留保しなくて日本だけが留保をしたかという問題が出てまいるわけでございますが、これはやはりこれらの国々につきましては、先ほど御質問のございました漸進的な意味において無償化を達成するということが政策として確定しており、それを達成する自信を有するから留保をしていないと解釈せざるを得ないわけでございますが、日本の場合には、私学と公立校との関係で双方の均衡その他の御考慮もあって、これについては政策的に現在漸進的にせよ約束し得ないという御判断で留保になったものと伺っておるわけでございます。
#182
○塩出啓典君 文部省にお尋ねいたしますが、そういう事情はわかるような気もするんですけれども、こういう国際人権規約というものが国連においていろいろ論議もされ、国際的にそういう方向に行こうということが決まったのに、世界でルワンダと日本だけが留保をした。また、いろいろ問題はあるでしょうけれども、当然、わが国としても世界のレベルの方向に私はもっと努力をすべきじゃないか。米国やフランスやイギリスもやはり留保をしないで、そういう方向にスタートしたわけですから、わが国自体も政府を挙げてそういう方向に出発をすべきではないかと思うんですが、その点、文部省の御見解を承っておきます。
#183
○説明員(菱村幸彦君) ただいま外務省の方から御答弁がございましたように、日本では、私立学校の割合が大変多うございます。高等学校もかなり普及しておりますけれども、三割は私立でございまして、これは私立の関係から言いますと、やはり公立学校にも応分の負担を授業料という形でいただいております。私学を含めまして無償化にしたらどうかという御議論ももちろんあろうかと思いますけれども、これは私学の根本制度にかかわる問題もございますし、現段階において私学も含めてすべてを無償にするということは大変むつかしい状況でございます。したがいまして、現在の状況におきましては、漸進的にせよ無償に持っていくという方針がございませんので、留保いたしております。
 今後の問題につきましては、十分検討の課題になることと存じます。
#184
○塩出啓典君 ちょっと外務省にお尋ねしますけれども、この(a)は「初等教育は、義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとすること。」これは留保しなかったわけですね。いまでもいわゆる義務教育においても私立学校は存在するわけですね。けれども、人権規約の意味するところは、私立学校まで全部無料にしろということではないんじゃないか、お金を出してもどうしても私立学校へ行きたいという人は行ってもいいわけだけれども、教育を受けたいという人が受けられる機会を均等にするために、原則的にはまず公立の学校を無償にするという方向に努力をしていけばいいんじゃないかなと、そうでないと、この第十三条の2の(a)もわが国は留保しなければならないことになるんじゃないかと思うんですが、その点はどうなんでしょうか、ちょっといまの文部省の御見解を聞きますと、私立学校まで全部無償にしなければこれはいけないようにとっていらっしゃるが、その点はどうなんでしょうか。
#185
○説明員(菱村幸彦君) 初等教育につきましては、もちろん私学がございますが、大変割合が低うございます。そして公立学校を希望すれば公立学校のどこかの学校に入れるというふうにその整備も図っておりますし、したがいまして私立に行っておりますお子さんたちは、公立に行けるけれども、あえて授業料の負担を覚悟で行っているわけでございますから、その点は比較的問題が少のうございますが、高等学校につきましては、先ほど申し上げましたように、私立がかなり高い割合でありますし、その私立につきましては相当の授業料の負担というのが現実にあるわけでございます。したがいまして公立のみを無償にするということも公私の負担の関連から言いまして大変むずかしい状況にあるということを先ほど申し上げたわけでございます。
#186
○塩出啓典君 この点、この論議はここで時間もございませんのでやめたいと思うんですが、ただ、日本の教育制度というものが世界的に見てそれほど特異なものであるのか、そういう点、日本の教育制度が世界の各国の教育制度よりもよりすぐれた教育制度であるんであれば私はそれでもいいんじゃないかと思うんですが、しかし、日本だけがこれを留保しなければならない、こういう点に非常に理解に苦しむところがあるわけなんです。
 しかし、この前もたしか文部大臣からここでの答弁があったと思うんですけれども、文部省としても、これは留保するけれども、そういう方向に努力するという気持ちはあるのかないのか、その点はどうなんですか。
#187
○説明員(菱村幸彦君) もちろん、この規定は留保いたしましても、後期中等教育にしましても高等教育にしましても、その機会の確保という観点から、たとえば私学の助成でございますとか、育英奨学ないしは授業料の減免等、その充実を従来からも図っておりますが、今後とも、一層、そういう点に力を尽くしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
#188
○塩出啓典君 これは政務次官にもお尋ねしますけれども、これは漸進的に措置を講じてもいいということなんですからね、だから、その期間というのはいつまでということでもないわけですから、文部省としてもそういう方向にさらに努力をしていくというのであれば、やはり国際的に見ても経済大国と言われる日本がルワンダという国とただ二つだけ、こういう教育の問題について留保をするということは国際的にも余りよくないんじゃないか。できれば、私は、こういうものは留保しないで、これからは教育の時代と言われているんですから、少々困難があっても国を挙げてこの方向に努力をしていこう、こういうように留保をしないでやるべきではなかったかなと、私はそう思うんですが、これは留保した条約ではあるわけですけれども、政務次官の御見解を承っておきます。
#189
○政府委員(志賀節君) 私は、この国際人権規約は世界じゅうのいろいろな国のいろいろな考え方あるいは文化的伝統の中でお互いに共通項を見出して、その共通項の上に立って相互理解や人類が一体であるという認識に向かって邁進する非常に重要なエポックメーキング的な条約であるというふうに理解をいたしております。
 ただ、私がただいま申し上げましたとおり、その国々によってそれぞれの社会的経済的あるいは政治的伝統的なものの上に立脚しているものの中で、必ずしも共通項が見出せないものも中には当然出てくる。その出てきたものの中に、たまたまルワンダと日本がこの教育の問題についてどうしても留保をせざるを得なかったというふうに私は理解をしているわけであります。しかしながら、私がただいま申し上げましたように、共通項を見出すその作業とあわせて、共通の基盤というものがお互いなかったものも、いずれはともども人類としての共通のもの、共有のものとしてこれに到達しなければいけない。そういう面で漸進的という理解でございますから、私は、これを未来永劫に、あるいは非常に緩やかに漸進的な措置をとるのではなくて、できようことならば、なるべく早い機会に共通点に到達いたしたい、そういう認識を持っておるわけでございます。したがいまして、この教育の問題は、ただいま文部省当局からも種々答弁がございましたけれども、私は、できようことなら、なるべく早い時期にお互いの共通項としてこれを見出せるような努力をしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
#190
○塩出啓典君 日本には在日朝鮮人の朝鮮学校があるわけでありますが、この人権規約の内容から見ますと、日本の国内において初等教育を受ける者に対してはすべて無償にしなければならないという、こういう趣旨じゃないかと思うわけでありますが、私は、その精神から在日朝鮮人の学校教育等についても国はそれなりの援助をすべきではないかと思うわけですけれども、こういう点はいまどうなっておりますか。
#191
○説明員(塩津有彦君) お答え申し上げます。
 在日朝鮮人学校といいまして、いわゆる外国人学校といいますのは、先生御承知のとおり、学校教育法に定める各種学校として取り扱われておりまして、また、現にその大多数は各種学校として認可されているという現状でございます。したがいまして各種学校全体についての施策、その振興策というものの中で考えてまいりたい、かように考えておるところでございます。
#192
○塩出啓典君 現在は、これは各種学校だから全然国としては援助はしていない、そういうことなんですね。
#193
○説明員(塩津有彦君) そういう実態になっているわけでございますが、外国人の方が公立学校へ行こうと思えば行けるというふうな仕組みになっておりますし、そこでは、日本人と同等に、学校については無償ということになっておる状況でございます。
#194
○塩出啓典君 在日朝鮮人の学校においては、そういう義務教育的な教育と、それから民族的な教育とあると思うんですけれども、しかし、「初等教育は、義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとすること。」と、そういう点から考えれば、こういうものに対しては国が助成をするとか、そういう必要はないのかどうか、これはどうなりますか。
#195
○説明員(塩津有彦君) ただいま申しましたとおり、外国人の子弟が学校へ行こうという場合は、それに対して日本人と同等に門戸を開いております。日本人と同等の扱いをしておるものですから、条約の趣旨はそれによって十分達成できる、こういうふうに考えております。
 なお、先生のおっしゃいます、いわゆる外国人学校に対する施策は、現在各種学校として扱っておりますので、各種学校振興の全体の中で、その一環として扱ってまいりたい、かように考えておるところでございます。
#196
○塩出啓典君 外務省にお尋ねしますけれども、日本人でも外国に行っている人はたくさんいると思うんですね。そうして外国に家族一緒に行って、その子弟の教育――確かに日本人学校というのがあると思うんですけれども、そういう場合はどうなんですか。アメリカとかイギリスとか、そういう先進国を見た場合、もし日本人がその国の小学校に入れば無償で入れる、しかし独自に日本人学校といった場合には、これはその国からは援助は出ない、日本の国の費用でやっていかなきゃいかぬと、世界的にはそういう考え方で大体いいわけなんですか。
#197
○政府委員(賀陽治憲君) 先生の御指摘のとおりと存じまして、日本人の場合には日本人学校というものがございますが、その国の教育主権というものがございますから、その主権のもとにおいて日本人に対して日本政府が必要な財政補助をしながら教育をしていくという選択と、それから現地の小学校等に入って無償教育を受ける選択、これはその人に担保されておるわけでございまして、先生の御指摘のとおりのような状態にいまなっておる、こういうふうに思っております。
#198
○塩出啓典君 それでは、これは人事院になるのか、あるいは法制局になるのかちょっとわかりませんけれども、外国人が公務員になれるかどうか、この問題についての政府の見解というものはどういうものがありますか。
#199
○政府委員(茂串俊君) 政府は、従来から、公務員に関する当然の法理といたしまして、公権力の行使とか、あるいは公の意思の形成への参画に携わる公務員となるためには日本国籍を必要といたしますけれども、それ以外の公務員となるためには必ずしも日本国籍を必要としないというふうに解しておりまして、この点につきましては、国家公務員だけではなくて、地方公務員の場合も同様であるというふうに考えておるわけでございます。
#200
○塩出啓典君 いま公権力の行使とか、あるいは国家意思の形成に関与する仕事は日本の国籍を持っていなくちゃならぬと、そういう見解のようですけれども、これは大体何か文書になったものはあるんですか。たとえば何月何日の通達に基づいているとか、ただ慣例になっておるのか、あるいは法律事項になっておるのか、その根拠は何ですか。
#201
○政府委員(茂串俊君) 特別に政府として対外的にこれを文書として公表したというような例はございませんけれども、政府部内のいわば照会往復文書といたしましては、私どもの方に対しまして昭和二十八年でございましたか、内閣官房の方から御指摘の点につきまして御照会がございまして、それに対してお答えした例はございます。そのほかに、また過般のたしか参議院の予算委員会であったかと思いますけれども、これに関する質問が出まして、私どもの真田長官が先ほど私が申し上げたような線でお答えを申し上げておる次第でございます。
#202
○塩出啓典君 時間が参りましたので、最後の質問にしたいと思いますが、この場合、公権力の行使あるいは国家意思の形成に関与する仕事というのは、具体的に言えばどの範囲までやるのか、たとえば大学の研究機関の研究員として入る場合もじゃ外国人でも入れるのかどうかという、そのあたりの判断ですね、どういうように分けているのか、それをあと資料でもいいんですけれども、出していただきたいと思うんです。
 それと、外務省にお尋ねしますけれども、大体、いま言ったような公権力の行使とか国家意思の形成に関与する仕事は日本国民でなきゃならないという、そういう考え方は、世界的にもこれは通念であり、この人権規約の精神にも沿ったものであると言えるのかどうか、これをお尋ねして、あとの質問は次の機会に譲りたいと思うんです。
#203
○政府委員(賀陽治憲君) 私どもの方からお先に御答弁さしていただきますが、ただいまの外国人の公務員任用の世界的な実態はいかがかということでございますが、これは欧米主要国におきましては、その法律等を参酌いたしますると、原則的には公務員の地位は外国人には開放されていない。外国人に開放するか否かは、また、どの程度まで開放するかということは、各国の判断にゆだねられておるというのが実態のようでございます。特に米仏独におきましては、法律によって公務員任用を、原則としてという言葉がございますけれども、自国民に限っておるというような状況のようでございます。
#204
○政府委員(茂串俊君) ただいま公権力とかあるいは公の意思の形成への参画とは一体どういうものなのか、具体的にいわば公務員の職を分けて、これに当たるものと当たらないものについて資料を出してほしいというような御要望があったわけでございますが、公権力とかあるいは公の意思の形成への参画といいますのはきわめて抽象的な概念でございますとともに、公務員が携わる職務もきわめて複雑多岐にわたっておりますので、一般的にその範囲を確定するということは非常にむずかしゅうございます。それで個々具体の公務員の職の職務内容を検討しまして、そして個別に判定をするよりほかはないわけでございます。
 ただ、公務員の職の職務内容が単に学術的あるいは技術的な事務を処理するとか、または機械的な労務を提供するということにすぎないようなものでございましたら、これはここに言うところの公権力の行使とかあるいは公の意思の形成への参画というものには含まれてこないというふうに考えておるわけでございますが、いずれにしましても公務員の職は非常に複雑多岐にわたることは御承知のとおりでございまして、これにつきまして一々これは当たるとか、これは当たらないとかいったようなことで資料化することは非常に困難でございますので、その辺のところはひとつよろしく御了承のほどをお願いしたいと思います。
#205
○立木洋君 国際人権規約が批准されてしまえばそれで終わりということではなくて、これから実際に人権が十分に守られ、保障されていくということが非常に今後大切なことになると思うんです。これはただ単にそういう権利が恵みとして与えられるという性格のものではなくて、やはり国民の一人一人が自覚を持って自分たちの権利がどういうものであるかを十分に認識し、そしてそれがみんなの力によって正しく保障されていく、そういう状態をつくり出していくということが少なくとも考えていかなければならない点になるだろうと思うんです。
 もちろん留保されている問題についても、これは漸進的ということで徐々にそういう条件を整えていけるような方向に努力していくということはいままでのしばしばの答弁でもあるわけでありますけれども、そういう点から考えますと、六六年にこれが採択され、日本政府も賛成したわけですが、A規約、B規約と同時にBの決議がなされて、その中でこれをより多くの国民に知らせていく、あらゆる手段を通じて知らせていく、そういうPRをしなければならないという義務をやはり政府が負うということになっているわけですけれども、いままで私は政府がどういう文書を出されたのかちょっと見たことがないんですけれども、いままでどういうPRをされてきたのか、今日の段階までで結構ですからお話し願いたいと思います。
#206
○政府委員(賀陽治憲君) 先生の御指摘の点でございますけれども、外務省といたしましても、その審議の経緯、経過、その他につきましては、その都度、外務省の国連局で出しております「国連の事業」というのがございまして、あるいは御高覧を願ったかどうか存じませんが、これはかなり多数部数を刷っておりまして、これを地方公共団体の方とか国会の先生方とかに差し上げておるわけでございます。また、久保田きぬ子成蹊大学教授等に国内法と人権規約との関連等について、小冊子ではございますが、書いていただいて、お分けしたようなこともございますけれども、まさに御指摘のように、果たして人権にしぼって非常に有効なる広報活動を現在までやってまいったかどうかということになりますると、若干じくじたるものもないではないかもしれませんので、これは御指摘もございましたので、反省の具といたしまして、今後はさらに、人権の御批准を賜りました場合には、この規約について広報活動はさらに強化してまいりたい、かように思っておる次第でございます。
#207
○立木洋君 いつでしたか正確な記憶はあれしてないんですけれども、この人権規約がいよいよ国会でも上程されて審議が始まるという段階で、この訳文を要求したことがあるんです、出していただけないかと。そしたら、これは仮訳でございまして、責任を持って出せる文書はございませんと。もう審議が開始される前ですよ。そういうお話があって、これはどういうことなんだろうかと、いま仮訳で同じものでございますから、たとえばこういうものに載っておるのをごらんいただいてもというふうな話なんかもあったりして、これは本当に日本文として正確に訳文されるのはもうぎりぎりの段階までだ。これは審議のいろいろないままでの記録を見せていただいても、訳語をどうするかということによって、公の休日だとか、あるいは公務員の規定の仕方だとか、いろいろ問題もあって、こういう問題ももっと事前に早くから十分な訳語もつくって研究されるような態勢があればよかったんではないだろうかという感じもするんですけれども、その点はどういうことだったんでしょうか。
#208
○政府委員(賀陽治憲君) これは御指摘の点必ずしも先生の御要望に沿えなかった面があるいはあったかと存じまするけれども、今後、ひとつそういうことのないように拳々服膺してまいりたいと思います。
#209
○立木洋君 局長さん、これからできるだけ人権規約の内容や、これについての理解を深めるようなPRをやっていくというお言葉を信じて、今後、ぜひ積極的に努力をしていただきたいと思うんです。
 法務省の方おいでになっておりますか。これは先般衆議院でも問題になったんですけれども、一番最初に申し上げましたように、この人権規約がつくられてそれで終わりということでなくて、これがやはり正しく保障され守られておるかどうか、そして一人一人の国民がその権利を自覚してやっていく状態をつくり出していくという上から言っても、この人権規約の審議を通じ、これが批准された機会に、少なくともただ単なる犯罪白書というふうな狭い意味ではなくて、もっと権利全体がどういうふうな状態になっているかと言われるものを十分に検討できるような、そういう白書的なものを出されるようなお考えがないかどうか。衆議院の段階では、園田外務大臣から、まことに結構なことでございますから検討さしていただきたいというふうな御答弁があったんですけれども、法務省としてはどのようにお考えでしょうか。
#210
○政府委員(鬼塚賢太郎君) 法務省の所管の人権行政というのは、先生もよく御存じだと思いますが、本局それから地方法務局、これは全国にございますが、あと約一万人余りの人権擁護委員、こういう人たちが扱っております人権侵犯事件、人権相談、それから法律扶助、その他各種の人権に関する啓発活動ということでございまして、これは政府全体の扱っております人権問題からいたしますると、数量的にはごく一部にすぎないということが言えると思います。
 ただいまこの委員会で御審議いただいておりますこの国際人権規約は法務省以外の所管の事項が非常に多々ある。つまりそれだけ人権擁護ということは、これは申すまでもなく国政の基本でございまして、すべての官庁がこれをやはり基準として行政をしなきゃならない、そういう意味でございますので、具体的に申しますると、老人問題とか婦人問題あるいは児童問題、環境問題、社会福祉、外交問題ももちろんございます、それから委員会で非常に問題になっております差別の問題を含めまして、そういうすべての行政上の重要な問題をこの人権の立場からながめた場合には、やはり人権白書というような問題が生ずるかと思いますが、そういう関係がございますので、私も先生のおっしゃる趣旨にはまことに賛同いたしたいと思うんでございますが、実際問題としては、これはそうしますと法務省だけでなくて、行政全体の問題ではなかろうかというふうに考えるわけでございます。
 人権規約が批准御承認をいただきました機会に、今後、これを普及徹底すべきはもちろんでございますし、実は、私も午前中法務省内部の職員に対する講義でこの人権規約のことを少し説明いたしたんですが、人権擁護局といたしましても、外務省と御同様に、あらゆる機会を通じまして、先ほどの人権擁護委員なども含めまして、この人権規約の趣旨の普及徹底に努めているところでございますけれども、今後も、さらにまたあらゆる機会を見まして、こういう趣旨の普及徹底には尽くしたいと考えておるわけでございます。
#211
○立木洋君 その点よく御検討いただきたいんですけれども、次のことと関連するんですが、A規約の場合、これは先ほど来問題が出されております漸進的なものですから、しかし、これはこの十六条等々によっても当然国連にその状況を報告しなければならない。この第四部の実施措置のあたりにずっと書いてあるわけですが、国連に報告され、事務総長に出されて、それがさらに経済社会理事会にその写しが送付されて、そこで審議をされる。で審議された結果、この内容を見ますと、A規約の場合は、これは個々の国に名指しでそれに忠告を与えるというふうなところまではいかないように読めるわけですけれども、これは一般的にこういう傾向にあるからこの点は十分に注意しなければならないという注意を喚起するような、何というんですか、そういうものが公に発表されるのかどうなのか。その審議された実施状況がどういう形で監視されるというんですか、審査されて、いまの状況がどうなっているというふうなことがどういう形で知らされるのか、報告した結果がですね。その点についてはどういうふうなしきたりというかルールになっているのか、御説明いただきたいんですが。
#212
○政府委員(賀陽治憲君) ただいま御指摘の点でございますが、これはA規約、B規約において若干の手続上の違いはございますけれども……
#213
○立木洋君 B規約はまた別にお尋ねしようと思っています。
#214
○政府委員(賀陽治憲君) A規約の場合には、御承知のように、経済社会施策の社会権的な性格が強うございますので、これにつきましては経済社会理事会が中心となって人権委員会等において論議をし、先ほどそれぞれの加盟国に還流しないのではないかという御質問があったわけでございますが、それは必ずしもそうではなくて、いわゆる人権委員会が一般的な形の意見を出すという形において、その国はその審議結果を承知するという形になっておるわけでございます。
 また、人権委員会における審議の内容につきましては、これは特にこれが秘密に付せられるということはございませんので、部外者はこれをうかがい知ることができるということでございますし、そういう意味におきましては、この報告制度による内容の担保は相当程度これを信頼し期待してよいのではないかというふうに私どもは考えておるわけでございます。
#215
○立木洋君 それぞれの国に還流するということは、それはそうだろうと思うんですが、特に「一般的」という表現が使われておって、たとえば日本の国ではこの問題についてはこうなっているというふうなことが日本に返ってくるだけではなくて、外国までいくのかどうなのか。そうではなくて、この条項に関しては、大体何十%を一般的に言って達成しておるだとかという個々の国の明確な名指し、指摘まで含まれたものが返ってくるんでしょうか。
#216
○政府委員(賀陽治憲君) この点につきましては、実は、まだ実態的にいま御指摘のような例が出てきておりませんので、いま現実にそうなっておるということを申し上げたいんでございまするけれども、制度の中身といたしましては、そういうことが想定されておるということでございますので、しばらく実態を見守りまして、どういうふうに運用されますか、しかし、内容的にはそういうことが期待されておるということははっきり申し上げられるのではないかと思っております。
#217
○立木洋君 B規約の方では、この実施措置の中で、それぞれ権威のある人権委員会がつくられて、そこで審査されるということになるわけですが、それに関連して、本来、選択議定書ですか、B規約に関する選択議定書の内容そのものも本来ならばB規約の中に含めるべきであったけれども、それについていろいろ意見があって、それを分離した方がいいという形で分離をした。
 その選択議定書の中で問題にされている、つまり被害を受けた個人がもし国内で十分にその人権の救済が得られないとき人権委員会に直接申し出を行う道を開くという趣旨のこの議定書に対して、政府がとった態度というのは、どういう意味でこれに賛成されなかったのか、その趣旨をちょっと説明いただきたい。
#218
○政府委員(賀陽治憲君) この点につきましては、選択議定書の採択自体の投票がございますけれども、両規約はこれはコンセンサスで採択されたのでございますが、選択議定書は賛成六十六、反対二、棄権三十八(日本を含む)という形で採択をされて、この票数より御理解をいただけまするように、この制度の実効性については若干の疑念を持つ国が少なくなかったということでございます。
 その理由は、個人が国連の人権委員会に出訴するという感覚がこれはまだ一般的に国際的になじんでいないということが言えると思うわけでございますし、日本のように人権救済の制度が制度的にはきわめて完備しております段階におきまして、一定個人が国連に出訴するという形になりますと、国連としては当然のことながらこれは個人がその当該国においてどの程度の救済を現実に受け得られるか、それを十分尽くしたのかどうか、その他の点について問題が生ずるわけでございまして、国連の介入というものが一体その当該個人の権利侵害に対する救済にどの程度の実効を持つかどうか、これについてやはりまだなじまない国がかなりあるということがこの票数にあらわれておるわけでございまするけれども、この選択議定書につきましては、今回、御承認を賜るようにお願いをしておりませんけれども、今後、運用の実態を見まして、もしこの制度がきわめてすばらしいものであり、多くの実績を示すというようなことになれば、その暁には、これは文字どおり、名のごとく選択議定書ではございますけれども、そういう選択もあり得るのではないかというふうに考えておるわけでございます。
#219
○立木洋君 選択議定書もいま二十七カ国ですか
#220
○政府委員(賀陽治憲君) 二十一でございます。
#221
○立木洋君 二十一でしたか、発効しているわけですね。それで、いまの局長のお話では、これは全く反対であるという趣旨ではなくて、実効性があるかどうか、だからしばらく様子を見てみたい、そしてうまいぐあいに進んでおるならば日本も参加をしよう、そういう選び方もあるだろうからと。
 私は、これは大川さんが局長のときから何回か申し上げたことがあるんだけれども、日本政府の国際的な条約に対する態度というのは、いつもそういう悪く言えば日和見なんですよ。外国がどういう態度をとるかというのをこう大体見ておいて、大勢がずうっとこう流れていくと、便乗する。海洋法の問題なんかでもいろいろそういう局面があったわけです。それよりも、もっと進んで、たとえばこの問題に関しても、実効性が事実上出てくるように日本政府も参加をして、そしてその中でそれをつくり上げていく努力という道もあり得るんではないだろうか。いつもそういう日本政府の外交姿勢、国際条約に対する姿勢のあり方自身が常にいろいろな外交問題にでも私は反映するような懸念を持つもので、今回の場合も、反対ではないんだけれども、実際にうまくいくかどうかを横で見ておいてという、そういう感触にあんまり賛成できないんですけれども、どうでしょうかね。
#222
○政府委員(賀陽治憲君) 先生の御意見は十分拝聴いたしたわけでございますが、この選択議定書に関する限りにおいては、これはやはり先ほど棄権した国が三十数カ国あるということを申し上げたのでございまするけれども、これはやや条約採択の事態としては異例なることでございまして、そこであらわれておりますやっぱり国際的な若干の違和感がこの選択議定書にあるということはこれは否定できないわけでございまして、必ずしも日本が日和見であるからこれに乗っていかないのであるということではないのではないか、やはり運用を見てまいる実益はあるのではないかというのが私どもの感じでございますが、一般的なお諭しとしては私ども拝承してまいらなければならないと思います。
#223
○立木洋君 いろいろな外交姿勢の面でそういうことを感ずることが少なくないものですから、あえて申し上げたわけですけれども、よく御検討いただきたいと思うんです。
 それで、きょうは特に中心的に民族の主権の問題にかかわる点でお尋ねをしようと思っているわけですが、第一部に人民の自決権がそれぞれ指摘されてあって、その中の第一項でも「自決の権利を有する。」ということが明記されておりますし、二項でも、天然資源の恒久主権の問題にも触れられるというふうな内容のものになっているわけですが、こういう主権の問題に関する内容をきわめて重視したこの国際人権規約、この点で幾つかの具体的な例からお尋ねしたいんです。
 一九七三年の三月に国連が出された報告書で、一九七二年から七八年までの南アフリカに対する貸し付けというんですか、その状態について出されておりますね。コピーをあれしたんですが、この日本の銀行のいわゆるヨーロッパ支店等々の銀行の貸し付けの状態がこれによってどういうふうになっているのか、その要点についてまず御説明いただきたいんです。
#224
○説明員(藤田恒郎君) 御指摘にございました国連の報告書に出ております日本の銀行の南アに対する融資の関係でございますが、これは私どもこの報告書を見まして、事実を直ちに点検いたしましたところ、日本の銀行の海外支店によるものではなくて、日本の銀行がロンドンあるいはフランクフルト、こういった金融中心地におきまして外国の銀行と共同して、あるいは日本の銀行だけで設立いたしました現地法人でございますね、この現地の法人の融資なりあるいはまた証券の取得、こういう形でございます。
 それで、この実態関係からまず先に申し上げますと、内容は二つございまして、一つは、これら現地に設立されました銀行が南アに対して融資を行っているものと、それからもう一つは、現地に設立されましたこれらの現地法人が南アが発行いたしました証券を引き受けまして、これを他へ転売する、こういう二つの行為を行っているようでございます。それで、まず第一の点は、すでに全額回収済みで残高は残っておらない。それからさらに第二の証券の引き受けにつきましては、これはまず証券を一たん引き受けまして他へ転売するために引き受けるわけでございますから、いずれも他へ転売済みで売却済み、手持ちはない、こういうことに相なっております。
 それで、この現地法人と申しますのは、御承知のことで私の方から繰り返して御説明するまでもないと思いますけれども、現地の法律にのっとって現地の金融当局の認可あるいは許可をとって設立された法人でございまして、監督権あるいは検査権、こういったものは現地の金融当局にあるわけでございます。したがいまして、われわれがこういった現地法人に対して直接監督あるいは検査をするという立場にないわけでございますし、こういった南アに対する融資なり証券の引き受けを直接規制する立場に立つことは非常にむつかしい。特に先方の金融当局に対する監督権の侵害という問題、あるいはまた、ただ報告をとることにつきましても銀行の守秘義務との問題、そういったものに絡んでまいりますので非常にむつかしいわけでございますが、われわれといたしましては、国連の決議の趣旨をそんたくいたしまして、本邦の親会社と申しますか、日本の出資している方の法人、銀行に対しまして、できるだけこういったものを自粛するように指導するという方向で検討しているわけでございます。
#225
○立木洋君 いま御説明があったとおりだと思うんですけれども、現地法人で監督権や検査権が日本にはない、現地の法律に基づくものだと。しかし、資本の関係から言えば明確で、この十四社一連合ですか、私さあっと見ただけで数が合っているかどうかはわかりませんけれども、日興証券インターナショナル、野村証券インターナショナルあるいは新日本証券インターナショナルだとか、東京銀行ヨーロッパですか、日本銀行連合だとか、大和証券アメリカだとか、山一証券ニューヨークですか、資本の関係はもう明確なんですよね。
 それで、なぜ私が特にこのことを強調するかと言えば、いわゆる南アに対する問題というのはこれは国連で再々問題になっているんですよ、そして日本が名指しで批判を受けている事態なんですね。これは、その後、いまおっしゃったように現地法人で、それをいま述べられたように、私はざあっとこれを見ただけで正確に計算していないから、どうかわかりませんけれども、この十四社一連合で十八億ドルぐらいになっているんではないかというふうに見たんですが、これが貸付金は全部返済されて、また証券についても全部売却されているというふうに言われたのは、政府として何らかのそういう実態がわかって、いわゆる日本の親会社の方を通じてある程度の指摘をし、その結果そういうふうになったのか、あるいは日本政府としては何も手を打たなかったのかどうか、これがわかった時点で日本政府としては、大蔵の方としてはどういうふうな手を打たれたのか、その点はいかがでしょうか。
#226
○説明員(藤田恒郎君) 私の方から大蔵省の立場を繰り返し御説明申し上げますと、いろいろ問題があるかと思いますけれども、これら現地法人は現地の監督権に服しているわけでございますので、たとえば報告書を出せという指示をいたしましても、現地の金融当局から守秘義務との関係で報告書を出すことはまかりならぬと言われる場合もあるわけでございます。したがいまして常に南アに対する融資状況について報告書をとるという立場に立つことは非常にむつかしいのではないかというふうに考えております。
 ただ、こういう形で南アの国連の報告書に出たものですから、私どもとしては、親会社を通じまして実態関係はどうなっておるのかというのを調査いたしました。その調査の結果は、先ほど先生十八億ドルとおっしゃいましたけれども、これは日本の銀行が参加をした金額だけではなくて、たとえば一億ドルの貸し付けが行われますと、そのうち日本の銀行が一千万ドル参加したという場合に、これは一千万ドルと書いてなくて、一億ドルと書いてあるわけでございます。したがいまして日本の銀行が参加いたしましたのは十八億ドル合計ではなくて、そのうちの大体一割弱、非常にわずかの金額になっておるということが判明いたしましたし、それから銀行、証券会社の報告によりますと、先ほど御説明申し上げましたように、全額回収あるいは売却済みという結果が判明したわけでございます。したがいまして特に私どもがアクションをとった結果回収あるいは売却をしたということでは必ずしもないわけでございます。
#227
○立木洋君 現地法人から報告書がとれないといいましても、これは実際上田連ではこういうのがちゃんとできているわけですよね。その中で現地法人としても日本のあれがどの程度占めているかと、もちろん私はその正確な見方がちょっとわからないものでざっと計算して申し上げたんですから、それは正しいという意味で言ったわけではないですけれども、金額に関しては。
 ただ、これで返済期間等々を見てみますと、八七年から八八年ごろまでのものも入っているわけですから、いまの状態では全部返済され、あるいは売却されたということが大蔵省の方としては確実に確認されていたとしても、今後起こらないという保証は全くないわけですよね。いま全然ございませんというのは、どういう形で確認されたわけですか、相手から報告書がとれないという状況のもとで。
#228
○説明員(藤田恒郎君) 私どもがやりましたのは、出資しておる親会社に対して、この国連の報告書を示しまして、きわめて非公式に子会社の方にこの結果がどういうふうになっているのか調査してほしいという申し入れをしたわけでございます。その報告が融資につきましては全額返済――確かに融資の期間は、ここに報告書を先生お持ちかと思いますが、これには融資とそれから証券の引き受けと二つございまして、CRと書いてあるのが融資でございます。で、それは大体七七年とか七五年とかに返済期限が来ておりまして、大体、皆返済されておることは確実でございます。
 それから、いま御指摘のございました八八年とかいう長いものがあるではないかというお話でございますが、これは証券でございまして、証券は先ほど申し上げましたように、一たん日本のこの現地法人が引き受けまして、それを直ちに他へ転売しているわけでございます。したがいまして期間の長さにかかわらず、手持ちがないという報告につきましては、私どもも一応信頼に足るのではないかというふうに考えております。
#229
○立木洋君 現在の時点では、そういう非公式な形を通じて親会社から調べたところ、ないということであるけれども、今後、起こらないという保証は全くない。そうした状況について外務省の方としてはどういうふうにお考えでしょうか。それはもう現地法人だからやむを得ないと、国連では非難やいろいろされて問題にされるけれども、外務省の方としては、これについてはもう打つ手も何もないというふうにお考えになるわけでしょうか。
#230
○説明員(藤田恒郎君) 大蔵省の方からまず御説明しておきますけれども、私どもも打つ手が全くないと思っているわけではございませんで、先ほど申し上げましたように、親会社を通じて、法律的権限と申しますよりも、一種のモラル・スウェイジョンだと思いますけれども、そういったものでどの程度までできるか、いろいろと親会社の方と相談をしてみたいとは考えております。
#231
○政府委員(賀陽治憲君) 外務省の立場のお尋ねでございますが、本件につきましては、藤田課長からるる御説明があった点を外務省としても十分理解さしていただいておりますけれども、国連決議の精神にかんがみまして望ましくないことであることは、これは間違いないところでございますので、ただいま御答弁もございましたけれども、事務的には絶えず御連絡をしまして、そういう御指摘のようなことができるかどうかという点を絶えず検討探索するというのが外務省の立場だろうかと思っております。
#232
○立木洋君 外務省も大変その点もなまぬるいんじゃないかと思うんですけれども、もう一つあれしますと、いままで再三お尋ねして、政府としては南アに対しても貿易促進の措置はとらないということを繰り返しお述べになっているわけですが、通産省の方おいでになっていますね。政府が全額資本金を出資しておるジェトロですね、これは海外に事務所を置いておる場合に、主にどういう仕事をやるんでしょうか。
#233
○説明員(松田岩夫君) 日本貿易振興会と申しておりますが、海外におきまする一般的な経済・産業情報の調査・収集といった業務、それからわが国がかつて輸出を非常に振興いたしました時期と、最近のように輸入とか対外投資といったものに力点が移っていますので若干違いますが、一般論的に申しますと、わが国製品あるいはわが国産業の海外へのPR、それから最近では外国製品、外国産業のわが国へのPR、そういったこと、それからさらに具体的な引き合いの御照会、あっせん等の事務といったことが日本貿易振興会の主要な業務かと思います。
#234
○立木洋君 結局、わが国の貿易振興に関する事業を総合的にやる、その事業を、海外で事務所が存在する場合、その事務所がそれをいろいろ調査をしたり促進できるような状態をつくり出していく、そういう仕事になっているだろうと思うんですが、このジェトロの事務所はヨハネスブルクにあるわけですね。これは南アの最大の都市だというふうに思うんですが、日本政府は南アに対しては貿易促進の措置はとりませんと、国連での再々の指摘もありますし、という態度をとりながら、貿易を促進するその事務所が南アの都市にあるというのは、これはどういうことなんでしょうか。
#235
○説明員(松田岩夫君) ジェトロの一般的業務はただいま申しましたとおりでございますが、現在、南アフリカ共和国のヨハネスブルクに御指摘のようにジェトロが職員を一名派遣しておりまして、いわゆる一人事務所というのを設置しております。
 わが国と南ア、それからその周辺地域もこの事務所がカバーいたしておりますが、そういったところと、いわゆる通常の貿易関係、もちろん先生おっしゃるとおり別に促進をしておるわけではございませんが、通常の貿易関係に限ってとり行われておるものでございますので、そういった地域の一般的な経済関係情報の調査・収集というものを主たる業務として設置しておるわけでございます。特に南アへの貿易を促進するということではなくて、必要最小限の貿易関係が続いておるものでございますから、その関連で必要最小限の情報収集活動だけいたす、また、そういう方向で、現に通産省としてもあるいはジェトロ本部としても、そういう指導を現地事務所にいたしておりますし、そういう考え方で設置しておるわけでございます。
#236
○立木洋君 外務省の方は十分御存じだと思うんですけれども、ここ一九七四年、七五年、七六年とずっと南ア問題、それからナミビアあるいはローデシア等との経済関係その他の問題で国連でいろいろ議論されていますよね。
 その議論されている中で私ざっと繰ってみますと、いままで国連の中でも、南アフリカの軍事占領下にあるナミビアからの鉱物資源の輸入の問題や、南アフリカへの直接投資の問題や、ローデシアとの経済関係等々、いずれも国連決議によって禁止されているわけですが、二十九回総会あるいは三十回総会、三十一回総会等々の中を見ましても、非常に多くの国から日本がそういう国連決議の禁止事項に反したことをやっておるということが繰り返し非難されておるんですね。ナイジェリア、カメルーン、ブルンディ、ギニア、ジンバブエ、シエラレオネあるいはケニア、アフリカ民族会議、ガーナ、ベネズエラ、ベナン、ダオメー、これが延べ回数にすると三十回ぐらいあるんじゃないか。
 私は、たとえば日本がいわゆる開発途上国等々に対する対助の問題として考える場合でも、あるいは本当にそこの民族の主権を尊重し、そしてそれらの開発途上国の国々の主権の問題等々に対しても十分に尊重する立場に立つ外交姿勢をとるかどうか。国連の会議の席上に出ると、いろいろ主張する面ではまともなことを述べて相手の反発を買うようなことはしないけれども、ところが実際の状態を見ると、投資は、それは海外法人でございますといって、監視ができないからといって、実際には日本の親会社というのがそれを隠れみので、ある場合には勘ぐれば、やっているのではないかということだって言えないこともないわけですし、それから貿易の問題だっていま言ったようにジェトロ自身の事務所が南アに置かれているというふうなことになると、開発途上国の国々から見る日本の外交というものは、これはやっぱりうそを言っているのじゃないかというふうな見られ方を私はされかねないと思うんですよ。
 ぼくはあっちこっち行ってみて、外交官の話を聞いたのですけれども、あれは国連の常任理事国ですか、あの選挙の。日本が読んでおった票読みなんというのは全くでたらめですよ、聞いてみましたけれども。それはどこで聞いたなんというようなことは私は申し上げませんが、日本に必ず入れてくれるだろうと思っていた国なんかほとんど入れてないのが大分あるのですから、それがどこの国かというのはよく御存じじゃないかと私は思うんですけれども、私はそういう本当に開発途上国の意見にも耳を傾け、民族の主権を本当に尊重するというならば、いま私が述べたようなこういう南アフリカに対する対助の問題というのは相当な非難を国連で受けているわけですから、これは根本的にやっぱり考え直す必要があるんではないかと思うんですけれども、いかがですか。
#237
○政府委員(賀陽治憲君) 先生御指摘の点でございまするが、南アに対するわが方の態度と申しますのは、最近のナミビア問題に見られまするように、特にナミビアの選挙その他を実施するための国連の措置といったものに対する全面的な協力その他非常な積極的な努力をしておりますることも御評価をいただけるものだと思いますが、先生の御指摘の点は特に貿易の問題についてであろうかと存じます。わが国といたしましては、貿易についての国連決議がございまして、これは総会の決議でございまして直接の拘束力がないわけでございまするけれども、これをなるべく遵守するべきであるという国際的な判断は当然しなければならないわけでございまして、特に貿易を著しく増加せしめないという配慮は当然日本にも要請をされておるという認識のもとに、そのような発言も国連でしておるわけでございます。
 客観的に見ますると、特にいわゆるアフリカの諸国から見ました場合においては、現象的にそれが非常に不十分に映ずるという点があることは、これはまたやむを得ざる面があるかと思いますけれども、それにもかかわらず、わが国としてはできるだけの努力をするということで、この総会決議、勧告決議に対処してまいるというのが現在の立場であろうかと考えておるわけでございます。
#238
○立木洋君 政務次官、いまのお話お聞きになっておわかりだろうと思うんですけれども、私は、もちろん日本が先進国として先進国首脳会議を開く、この会議を開くこと自身が何も悪いというふうに言っている意味ではないんですよ。だけれども、それは先進国でありながらも、結局は何か開発途上国にときどきいいことを言うが、なかなか守ってはくれないというふうな不満だとか、言っていることとやっていることと違うではないかという非難だとかいうのは開発途上国でこれは少なくないのですよ。私は、その一つの例として南アの問題を出したんですけれども、国連でこれほど三年間にわたってそれこそ延べ三十カ国近くの国々から日本ということが名指しで非難されるような状態がありながら、いまなおかつこういう事態に放置しておるというふうなことではいけないんではないか。もう少し打開していける方向に考える必要があるんではないか。
 これはある国の大使なんか聞いてみましたけれども、これは名前を言いませんけどね、ある国が外務省のどなたかにお会いしたいと言ってももうけんもほろろらしいですね。大使が会いたいと言っても、なかなか上の方の方には会ってもらえないというふうなことを言っていましたよ、冷たいと言って。これは名前を言えばまたそれはあれかもしれませんから、その国の大使のことにかかわりますから、私は言いませんけれども。だから、どうしてもやっぱりそういう大国的な外交のあり方、で小さな国、いわゆる開発途上国の国々の意見については十分にやはり耳を傾けないというふうなことがあってはいけないので、そういう点はよりいわゆる日本としては外交姿勢の面ではよく考える必要があるんではないだろうかというふうなことを特に申し上げたいわけですが、政府次官、いかがでしょうか。
#239
○政府委員(志賀節君) 御指摘のようなことが現実にあれば大いに考えなければいけませんし、反省をすべきことだと存じます。
 その反省の一つとして、私自身かねて考えておりますことは、日本という国にはあたかも人種的偏見がないような日本人自身錯覚に陥っていると私は思うんでありますが、私は、ただいま先生が御指摘のようなことが一種の踏み絵でございまして、そういう人種的偏見を克服する努力が少なくとも日本の国内的にもなされなければいけないのではないか。外政というものは実は内政と一如でございますから、そういう考え方に私は立っておるわけでございます。
 それから、ただいまの外務省の高官に会いたいという申し入れが、駐日大使の方からの申し入れにもかかわらず、これが拒否されたり、あるいは言を左右にされるというようなことは……
#240
○立木洋君 拒否ではなく冷たくあしらわれるということ、相手方がそういう印象を持っているということですね。
#241
○政府委員(志賀節君) そういうようなことは私はただいま初耳でございますので、調査の上、もしその事実があれば十分に注意をいたします。
#242
○立木洋君 この点よく御検討いただきたいと思うんです。
 次に、もう一つチリの問題です。これは一九七五年二月に設置されて、九月にチリにおける人権侵害、特に拷問その他、残虐、非人道的あるいは人格無視の虐待あるいは刑罰に関する調査というので国連は調査する特別委員会をつくって調査書を作成したわけですが、この調査は基本的にどういうことを述べたものであるかお答えいただきたいと思うんです。
#243
○政府委員(賀陽治憲君) ただいまの事実調査ミッションの報告書でございますが、内容はかなり多岐にわたっておるんでございますが、ごく簡単に申し上げます。
 人権侵害のケースは依然として見られる。しかし、チリにおける人権の現状は、一九七三年の政府の交代に引き続く数年に比べますると、政治犯の釈放、新聞紙上における自由な意見の発表等の面で改善しておるということを指摘しておるようでございます。しかし、同時に、国連総会等の場で絶えずチリの事態に対して懸念が表明されるからこそ事態の改善が今後とも図られるであろうということを強調いたしまして、チリの人権尊重の程度が国際的水準に達するまで国連が引き続き本問題を注視すべきものであるということを勧告しておるというのが大体の中身であると承知しております。
#244
○立木洋君 私も見たわけですけれども、拷問が制度化されという表現もあるんですね。それから人権と基本的自由の否定、拷問と非人道的虐待はチリ政府の一つの政策になっておるという大変な指摘もあるわけで、いろいろなその他の報道や内容から見ましても、チリにおける事態は、その後いろいろな指摘がある中で多少は変わったかもしれませんけれども、そういう大変な事態があると思うんですが、こういうチリの事態に対して、この国際人権規約を批准する日本政府としてはどういうふうないまお考えを持っておられるでしょうか。
#245
○説明員(大鷹正君) いま立木先生おっしゃいましたように、一九七三年にクーデタがありまして現在の政権ができたわけですけれども、その発足の当初は、政治犯の逮捕とか拘留とか拷問とか基本的人権の侵害が行われたとして、一時、相当強い国際非難の的となりましたけれども、最近では、政治犯の大量釈放を始めまして、国連人権問題調査団の受け入れ、さらには秘密警察の解体に代表される前進的な民主化政策の推進等を通じまして、同国の人権問題には相当程度改善が見られているというふうに考えております。
 わが国といたしましては、基本的人権を尊重、擁護するとの基本的立場より、最近のチリ政府による人権問題改善のための一連の努力を評価しておりまして、この事実を十分勘案して今後の対チリ外交を推進していきたい、こういうふうに思っております。
#246
○立木洋君 改善の面を強調された御答弁ですけれども、日本政府としては一番大変なときに一カ月足らずで承認したわけですよね、チリの軍事政権を。そして、それから改善されたからいまはということじゃなくても、あのときからも日本政府の対チリに対する考え方というのは、私は、きわめて意図的といいますか、政治的な判断の仕方があったんではないかというふうに思うんですけれども、しかし、その後も、たとえばアメリカ、メキシコ、コスタリカ、アルゼンチン、イタリアなど他国の主権を侵害してまで、チリのいわゆる愛国的な人々を暗殺するような事件、また、そういう未遂に終わるような事件というのが実際に起こっているわけですね。日本ではこれまた大変な問題になった金大中事件、あれは暗殺未遂になりましたよね、実際には。これはあちこちでやっているんですよ、チリのこの軍事政権は。このためチリの人民連合政府の外相だったレテリエルという人がチリの軍事政権の秘密警察によって爆死させられるというふうなことがあって、アメリカ政府の調査によってこれら一連の暗殺行動が発覚して、アメリカ側からは、いわゆるチリの軍事政権の国家情報局ですか、長官ら三人のアメリカへの強制送還を要求した。しかし、それに応じないために、在チリのアメリカ大使の引き揚げの措置をとるというふうな状態まであったわけです。
 こういう事態を考えてみても、これは金大中事件で深刻な問題として議論されておる国会の状況を判断していただければおわかりのように、こういうことが次々と起こり、アメリカ自身がこの問題に対してチリに対する厳しい態度をとっておるということから見るならば、改善されておるというふうなことで、いわゆるチリの事態をそういう面からだけ見ておるというのでは、これはまさに正しい対応にはなり得ないんではないかというふうに思うんですが、いかがですか。
#247
○説明員(大鷹正君) いま立木先生が触れられましたのは、レテリエルという昔のチリの外務大臣がワシントンで暗殺されたという事件のことだろうと思いますけれども、確かにアメリカ政府はチリ政府に対して三人のアメリカ側が犯人と見る人の引き渡しを要求した。それに対してチリの裁判所が第一審で第一次的にそれを断ったということは事実でございますけれども、チリの制度では、これは第一審であって、最終的には最高裁でもう一度審理が行われて結論が出るというようになっておるようでございます。その結論はまだ出ておりません。
 それから犯人引き渡しを拒否したために、アメリカ大使を引き揚げたというふうにおっしゃいましたけれども、いまのようにまだ最終的なチリの裁判所の決定は出ておりませんし、また、アメリカの大使がワシントンに帰りましたのも、協議のために帰ったというふうに私たちは理解いたしております。
#248
○立木洋君 これ以上議論を続けていく時間がないわけですけれども、私は、やはりチリのピノチェト政権というのは、国際人権規約というものを審議することとの関連だけではなくして、やっぱりよく考えてみる必要がある政権だろうと思うんです。
 そういう政権に対して、いわゆる債権国会議等々では、日本としては、事実上、そういう軍事的な政権に援助を与えるような対応をしないようにということを前にも述べたことがあるわけですが、第三次チリ債権国会議では、イギリス、オランダ、デンマーク、スウェーデン、ベルギーなどが債権の繰り延べの会議に参加していないにもかかわらず、日本が他の数カ国と参加をして繰り延べを認める、そういう形で、事実上、このピノチェト政権に援助をするというふうなことをやっているわけです。こういう点については、私は、十分に検討して反省をしていただきたいということを要求したいわけです。
 それから、最近ちょっと聞いたわけですが、ピノチェトに来日を招待したというのは、これは事実なんですか。
#249
○説明員(大鷹正君) チリ政府から非公式にピノチェト大統領が訪日したいという希望の表明がありまして、それに対して、わが方として検討中というのが実情でございます。
#250
○立木洋君 この点は、私がいま述べましたように、チリの政権というものに対しての国際的な非難というのも厳しいわけですからね、先ほど南アの問題を私は出しましたが、決して南アとチリとを並べてとやかく言うわけじゃございませんけれども、やはり日本の外交のあり方というのは、よく考えて外交をしないと、世界の糾弾を受けている国々と手を結ぶというふうなことでは、これはやはり日本の外交が一体どういう方向に向いていこうとしているのかという、本当の意味でそれぞれの国の民族の主権、そしてそれぞれの国が求めておる民族のあり方に日本がどういう態度をとるのかという点については、私は、国際的にも非難を受けるようなことにならないように十分な対応をしていただきたいということで、きょうは、この人権規約の審議の中で南アの問題とチリの問題についての意見を述べたわけですが、最後に、その点についての政務次官の御意見を伺って、質問を終わりたいと思います。
#251
○政府委員(志賀節君) 先刻来、立木先生の御論旨は十分に拝聴いたしました。私ども、先生のお考え方を十分に心にとどめてやってまいりたいと思います。
#252
○委員長(菅野儀作君) 両件に対する本日の質疑はこの程度とし、本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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