くにさくロゴ
1978/02/22 第87回国会 参議院 参議院会議録情報 第087回国会 法務委員会 第4号
姉妹サイト
 
1978/02/22 第87回国会 参議院

参議院会議録情報 第087回国会 法務委員会 第4号

#1
第087回国会 法務委員会 第4号
昭和五十四年二月二十二日(木曜日)
   午前十時三分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 二月二十一日
    辞任         補欠選任
     下田 京子君     宮本 顕治君
 二月二十二日
    辞任         補欠選任
     宮本 顕治君     内藤  功君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         峯山 昭範君
    理 事
                上田  稔君
                平井 卓志君
                宮崎 正義君
    委 員
                大石 武一君
                熊谷太三郎君
                宮田  輝君
                八木 一郎君
                秋山 長造君
                寺田 熊雄君
                内藤  功君
                橋本  敦君
                円山 雅也君
                江田 五月君
   国務大臣
       法 務 大 臣  古井 喜實君
   政府委員
       法務政務次官   最上  進君
       法務大臣官房長  前田  宏君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  枇杷田泰助君
       法務省民事局長  香川 保一君
       法務省刑事局長  伊藤 榮樹君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局民事局長   西山 俊彦君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        奥村 俊光君
   説明員
       警察庁警備局外
       事課長      鳴海 国博君
       国税庁調査査察
       部調査課長    五味 雄治君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○民事執行法案(第八十四回国会内閣提出、衆議
 院送付)(継続案件)
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 (日商岩井に対する国税庁当局の調査等に関す
 る件)
 (金大中事件に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(峯山昭範君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 昨二十一日、下田京子君が委員を辞任され、その補欠として宮本顕治君が選任されました。
 また、本日、宮本顕治君が委員を辞任され、その補欠として内藤功君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(峯山昭範君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 民事執行法案の審査のため、来る二十七日の委員会に参考人として東京地方裁判所執行官室執行部長田中利正君及び東京執行官室労働組合書記長田中一志君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(峯山昭範君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#5
○委員長(峯山昭範君) 民事執行法案を議題といたします。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#6
○宮崎正義君 今回の民事執行法案の、何といいましても大きな責めを担われていくのが、執行官の御努力に大きくまつところがあると思います。と同時に、評価人という方々のお仕事ということも大きな問題を左右するような形になっていくと思われますし、また、執行官の現況調査等の時点によりましては、あるいはそれが事件の内容を大きく変えていくようにもなると思われるのでありますが、裁判所法の六十二条「執行官」の面につきまして、執行官に処する最高裁判所の方のお考えをお伺いしておきたいと思います。
 四十一年の六月の二十五日、二十七日には参議院の本会議でこの執行官法の法が成立をいたしてきております。それから考えますと、今日の時点でいきますと、昭和五十四年でございますので、五十三年としても大体十二年の歳月がたっておりますが、四十一年の法成立後から今日に至るまでどういう点が改良されてきているか、また、執行官の処遇等に対するものがどういうふうに行われてきたか、それらの点についてまずお伺いをいたしたいと思います。
#7
○政府委員(枇杷田泰助君) ただいまの御質問の昭和四十一年六月九日の附帯決議の件でございますけれども、この附帯決議の中には、いろいろな点についての御指摘が出されております。
 その中で、まず最初に、執行官につきまして直接固定俸給制をしいたらどうかというふうな点がまず前段として出ておるわけでございます。この点につきましては、私どもといたしましても、現在の執行官が裁判所の職員でございまして、公務員たる身分を持っておりますけれども、一方、その収入におきましては手数料制をしいておるというふうなことから、いわば変則的な状況になっておるということでございまして、それがいろいろな形で問題があるということは重々承知いたしておる次第でございます。四十一年の附帯決議を受けまして以来、その点につきまして検討を重ねてきておるわけでございますが、現在まで長年月かかっておりますけれども、正直申し上げましてまだ結論を得るに至っていないというのが現状でございます。
 なぜ結論を得るに至っていないかという点を申し上げますと、執行官の仕事と申しますのは、御承知のとおり、妙な表現であるかもしれませんけれども、いやな仕事であるという面を持っておることは否定できないわけでございます。そういう仕事をしていただく執行官の方々にとって手数料制というものはいわば自分がした仕事に応じて収入があるというふうな形になるものでございますために、一つの仕事のやりがいとかあるいは魅力とかいうものになっていることは否定できないわけでございます。そういう面におきまして諸外国の立法例を見ましても、固定俸給制をとっておるところもございますけれども、なお手数料制をしいておるところが多数でございます。中には歩合制というふうなところをとっておるところもございますが、この歩合制と申しますのは性質的にはやはり手数料と同じような考え方に基づくものではないかと思います。そういう状況でございます。また、西ドイツのある州では手数料制から俸給制に切りかえたところもございますけれども、そういうところは純粋な何といいますか正規の公務員というふうな形に名実ともになるわけでございますので、したがいまして、勤務形態等からいきましても、早朝・深夜の仕事というふうな面におきましてなかなかうまくいかない、そのためにかえって能率が落ちて人員も従前よりもよけいに必要になるというふうな問題も招来しておるようでございます。そういうふうな点から考えまして、現実にわが国の執行官制度を俸給制に切りかえてしまうことが果たして実情に合うことであるかどうかということについてはにわかに結論が出しにくい面がございます。また、執行官の現実の方々の御意見の中にも必ずしも固定俸給制を喜ばないというふうな面もあるわけでございまして、また、実際の収入面、これは私どもつまびらかに具体的な数字を把握いたしておりませんけれども、かえって固定俸給制にいたしますと待遇面においてむしろマイナスに働くというふうなこともありはしないかというふうなことも考えられるわけでございますので、今後、民事執行法ができました機会に、執行官の現実の仕事あるいは収入の状況等もなお見た上で慎重に検討してまいりたいと、この点につきましてはもちろん最高裁判所の御意見も十分に伺いながら制度の改正について検討を重ねてまいりたいというふうに考えておる状況でございます。
 附帯決議の前段部分については法務省としてさように考えていることをお答え申し上げまして、あとの個々の執行官の施設その他の関係につきましては最高裁判所の方からお答えがあるものと考えます。
#8
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 四十一年の六月九日に衆議院法務委員会でなされました附帯決議の配慮すべき事項として掲げられておりますのは四点ございますが、それについて順次改善の度合いについて申し上げてみたいというふうに思います。
 第一が、「各地方裁判所内に、執行官の執務場所を確保すること」それから「環境施設を明朗ならしめることに努力すること。」、こういう点でございますが、これにつきましては、執行官法施行当時は執行官の執務場所が裁判所庁舎外にあった庁が十七庁ございましたけれども、これについては執行官室を増設するということなどいたしまして、ほどなくすべて庁舎の中に執行官室が設けられた状況でございます。それからまた、多数の庁で執行官室の増改築、部屋の振替等が実施されまして、特に庁舎が新しくなる、あるいは増改築をされるという際には執行官室として必要なスペースを確保するように配慮しております。同時に、その中の執務環境でございますが、執行官用の机とかいすを配置いたしまして、そのほかに記録等を保管する保管庫が備えつけられております。それから入札場整備に要する器具、金庫等も順次備えつけられておりますほか、執行官が職務上使用するいろいろな書類、帳簿、調書等の用紙についても裁判所の方から配付しているということになっております。そういう、執行官の執務場所を庁舎の中に移した、それからまた、その中の設備を充実してきたということによりまして、裁判所の身内であるという形が徹底できたものでありますから、執行官の方も裁判所の一員としての仕事をしているのだという意識が高まってまいりましたし、それからそれを迎え入れている各裁判所の方の側におきましても、執行官を自分たちと同じ職員であるという意識で迎えております。そういう意識の点でもかなり一体感ができているというのが実情でございます。
 それから附帯決議の第二点といたしましては、執行吏代理をはじめ執行事務に従事する職員の処遇並びにその地位の安定と雇用条件について格別の配慮を行うこと、」という点がございますが、執行吏代理につきましては、これが新執行官法の施行に伴いまして執行官の職務代行者ということになりましたが、これについてはその特殊な地位にかんがみまして、なるべく職務内容に見合うような待遇をするように執行官を指導しております。同時に、その中から執行官に適任な者は執行官に登用する、それから裁判所の職員として任用をするのが相当であると思われる者については職員としての任用をしております。それから事務員につきましても、同じように職務内容に見合う待遇をするように執行官を指導しているということと同時に、若干名は裁判所職員に採用しているという状況でございます。
 それから附帯決議の第三点といたしまして、「手数料制度その他執行事務をめぐる各種の問題について改善を加え執務の公正の確保方について十分な努力をすること。」という点がございますが、これにつきましては、先ほど申し上げましたような執行官室の完備という点と、それから同時に執行官の執行事務が円滑に処理されますように執行官の取り扱い事件の受け付けをできるだけ裁判所職員が行うようにしておりまして、これは現在におきましてはほとんどの庁で実施されることになっております。そのほかに、従前執行官がみずから取り扱っておりました各種の金銭の受け渡しの関係、これを執行官の仕事から解放するということが執行関係を明朗ならしめる原因でありますので、その会計事務についてはこれをすべて裁判所の方に取り込んで処理するという状況にしておるわけでございます。
 それから四番目といたしまして、「執行官以下執行事務の処理に当る職員の教育並びに研修について、予算上の手当その他必要な措置を講じること。」というのがございますが、これはこの趣旨に従いまして、毎年執行官の研修をしております。研修の内容といたしましては、裁判所書記官研修所に各地から集めてやる方法と、それから各庁におきまして自庁研修あるいは実務協議会というふうなことを行って教育研修に努力を払っておるわけでございます。それから執務資料といたしまして、執行官関係の法規を解説いたしました「執行官提要」それから「執行事務協議会要録」それから「執行官関係法令集、」こういうものを各執行官に配付しておりまして、さらに最近では毎年定期刊行物として「執行官」という雑誌をつくりましてこれを執行官に配付しております。執行官の臨時職務代行者や事務員等の研修につきましても、裁判所としては直接はしておりませんけれども、執行官によるそういう職場研修を通して研修をしてもらうように指導をしておりますほかに、各庁で行われております自庁研修にオブザーバーとして参加させているというのが実情でございます。
 以上、附帯決議の各点についての実情を御報告申し上げました。
#9
○宮崎正義君 いま御説明ありましたのは衆議院の附帯決議でございまして、その当時は参議院の附帯決議はございませんでした。私は当時はほかの委員会に所属しておりましたので当委員会のあり方というのはわかりませんでしたけれども、話には薄々伺ってはおりましたのですが、この執行官の制度ができましても問題点は将来において残されていくだろうというふうな、「法曹時報」等においてもそういう論説を伺っておったわけでありますが、いま御説明がありまして、執行官の収入がいまだ収入高においてはつまびらかでないという御答弁もございましたけれども、どれぐらいお取りになっているのか。これは大都市で事件処理の件数なんかにおきますと相当な違いがありますし、また僻地に参りますとその手数料というものも相当な大きな差額がついてきていると思われるわけであります。そのために国庫で補助するようになっているわけでありますが、執行官の方々の財政、経済状態というようなことも、いま申し上げました大都市とそれから僻地というふうに考えていきますと相当なランクがあるのじゃなかろうかと思うのでありますが、そして、先ほど御説明がありましたように、俸給制にするかしないかというふうなことも論議をされて今日まできていると思いますが、この点につきましてもまだ正確なお打ち合わせがなされていないように私は思うわけですが、こういうこと等を考え合わせながら執行官法の手数料の問題、九条の問題とか十条の問題だとか、あるいは八条−七条から八条、十条に至るまでのこの点なんかにつきまして現時点ではどのような対処方をなさっているかというようなことも、処遇等におけることをにらみ合わせながら御答弁を願いたいと思います。
#10
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 執行官の収入につきましては、ただいま宮崎委員の御指摘のように、いろいろな要素がありまして、いろいろな点から見ての格差というものは否定できないところでございます。
 まず第一に、大都市と小都市、あるいは特に僻地、離島というふうなことになりますと、数倍の差があるというのが実情でございます。それから同じ大都市におきましても、特に不動産取引の活発なところとそうでないところとではまたこれも格差がございます。そういうふうなことで、執行官の収入は毎年行われます不動産競売の手数料が非常に重要な役割りを占めておるわけでございますけれども、それが年々多いときもあれば少ないときもあるというふうなことで不安定な面を持っていることも否定できないところでございます。試みに五十二年度の一番たくさん収入がありました東京地方裁判所を例にとってみますと、執行官の一人当たりの平均の収入は千七百万程度になります。これに対して、一番低いところの釧路地方裁判所の一人当たりの収入は四百万程度という開きがございます。こういうふうな開きがございますものですから、先ほどから問題になっております俸給制というものについて、直ちに俸給制に移行できるかどうかというふうな点については、そういう面からの困難があるわけでございます。執行官が数人おります庁では、なるべく収入の平均化を図るというために、手数料収入をプールいたしましてこれを平均するというふうなことが行われております。それから庁によっては配置するところによって格差があるものですから、それを適宜交代させるような形で収入の平均化を図るというふうなことにしております。いずれにしても、執行官の収入の安定を図る、それからその職務の特殊性とか困難性に見合った収入の取得を図るというのは、これはわれわれの方で考えなければならないものだということで、いろいろ検討はしておりますが、何分にも広い地域なものですから、いろいろ格差が出てくるというのが実情でございます。
#11
○宮崎正義君 いま国庫補助金はたしか二百十二万ぐらいでございますか、どうですか。
#12
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 金額といたしましては二百二十万九千二百円ということになっております。
#13
○宮崎正義君 そうしますと、大体一カ月、十二で割りますと幾らぐらいですか、十七、八万ですか、それぐらいでございますね。
#14
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) そのとおりでございます。
#15
○宮崎正義君 大変なことだと思うのです。それで執行官の多くの方々、大部分の方々だと思うのですが、これは私はしっかり調査したわけじゃございませんので、いいかげんなことになって御無礼を申し上げるかもわかりませんですけれども、年金を受けている方々が非常に多いようにお見受けしますので、そういうふうなことでむしろ僻地の方の方々は滅私奉公的な努力をなさっているというふうにも私は察知するのですが、いま局長がおっしゃられましたように、地域によりましては手数料をプールしてそうしてそれを分かち合っていられるというそういうところも私は二、三聞いておりますが、全国でどれくらいの個所でそういうふうなことをおやりになっているか。また、平均化をして平均に事件の処理件数に合わせながら価格を平均してやるというようなところも御答弁にありましたけれども、そういうところはどの程度のものがありますか。
#16
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 実情はつまびらかにしておりませんが、プール制をとっているというところでもいろいろな形態がございまして、全部の収入をプールしているというところも恐らくはあるだろうというふうに思います。これは余り断言はできませんが、主として聞いておりますのは、不動産の競売手数料をプールしてそれを平均化する。そのほかのいろいろな動産執行、送達の関係、それはそれぞれの人が働いた分だけ取得するというふうな形をとっているところが多いように思われます。ただ、そういうプール制がとれるところというのは数人の執行官がいるところに限られるわけでございまして、僻地とか離島とかいうことになりますと、数人置くわけにいかない、一人しか置けないというのが実情でございます。したがって、そういう意味での融通性というのが見られないということになろうかと思われます。
#17
○宮崎正義君 九条で決められております手数料の額、あるいは八条に規定されているもの、これらの点で、いまお話もありました内容の中で、離島だとか僻地だとかいうところの問題は御不自由のないようなことで対処をなさっているかどうか、そういう点をお調べになっていられるでしょうか。
#18
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) この手数料とか費用の額というのは、地域によって差を設けるというわけにはまいりませんものですから、一律の規定の仕方をしておりますが、その場合に、収入の少ないところを基準にするか、それとももっと別な要素で決めるかという点につきましては、なかなか決められない問題で、むしろ離島の生活が安定できるような趣旨で決められているのではないのではなかろうかという感じがしておるわけでございます。
#19
○宮崎正義君 費用の問題、また処遇の問題につきましてはいろいろ問題がございますので、私も私なりに調べたものがございますが、これはまた一々申し上げますと時間もありませんのできょうはとどめますけれども、いま御答弁のありましたように、寒冷地、または豪雪地帯だとか、そういったようなところで任務をなさっている方、離島なんという一応そういうふうな僻地も将来お考えを願いながら、ひとつ善処のことをお願いいたしたいと思いますと同時に、この際やはり、先ほどお話がありましたように、執行法案が成立をすると同時にもう一度初めから見直しをしていただけるようにしていただいて、そして何といっても安心して今度の重大な任務が果たしていけるようにしなければならないと私は思うわけですが、その点のお考えを伺っておきたいと思うのですが。
#20
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) ただいま宮崎委員から非常に御理解のあるお言葉をいただきまして、非常にありがたく存じておるわけでございます。執行官法が施行されましてから執行官の執務体制は一応整備されたというふうに言ってもよかろうかと思いますが、今度はその働く屋台骨と申しますか、民事執行法が新しくなりましたものですから、そういう民事執行法の手続の運営者としての地位にふさわしいような待遇をこれから考えていかなければならないということでございまして、その点については一層の努力をしていきたいというふうに念願しておるわけでございます。
#21
○宮崎正義君 先ほど、附帯決議に基づく執行官の研修の問題、資質向上の問題というようなお話がございまして、「執行官」という月刊雑誌も出している、研修所で研修もしている、各庁において自庁もそういうことをやっておられるとか、あるいは実務協議室を設けてやっているとか、職場研修もやっておられるということでございますが、四十一年のこの執行官法が成立をしました時点から今日に至るまでの社会情勢、また世界情勢、経済情勢等がもう目まぐるしいほど大きく転換をいたしております。そうしますと、勢いその内容の事件も大きく移り変わってきているわけであります。したがいまして、この資質向上ということに対するお考えは、従来考えておられるものでいままでやってこられたことでよろしいのでしょうか、どうなんでしょうか。そういう点は、こういうことを今度はやっていきたいんだというようなお考えがあれば伺っておきたいと思うのですが。
#22
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 御指摘の点はまことにごもっともだというふうに考えております。従前は単に物を押さえる、それを評価して売るということだけが主たる仕事でございましたけれども、特に民事執行法になりましてからは、現況調査その他の仕事はかなり専門技術的な知識を必要とするということでございますので、そういう技術の習得、それからその技術を使います器具の使い方というふうなことについても十分検討をして、新しい経済情勢、社会情勢の変化に対応した職務の遂行ができるように考えていきたいというふうに思っております。
#23
○宮崎正義君 どんなふうな御計画か、その計画内容を。
#24
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) まだ具体的には固まっておりませんが、来年の十月が一応この執行法の施行期日ということになっておりますので、それまでに鋭意研究をしていきたいというふうに考えております。
#25
○宮崎正義君 そうしますと、いま申し上げました点につきましては今後の課題ということになるわけでありますが、この執行官の今度は任命ということになりますが、採用といいますか、そういうことにつきましては具体的にどんなふうにおやりになるのでしょうか。たとえば試験制度をおやりになるのか、あるいはどんなふうな判断に基づいて採用というふうなことをお考えになるのでしょうか。
#26
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 執行官の任命の資格が、行政職俸給表の(一)の四等級以上の職にあった者またはこれに準ずる職歴を有する者だということと、それから年齢が四十歳以上の者であるということ、それから地方裁判所が行う筆記及び面接の試験に合格した者であるという、大体まあ三つの点が資格の前提になっておるわけでございます。それで、この職務の内容から申しまして、どうしても権利関係の実現というふうな点に関係をするものでありますから、給源となるのは書記官が中心にならざるを得ないということでございまして、裁判所職員の中からそれにふさわしい者を選んで執行官になるように勧めているというのが一番の主な任用の状態でございます。ただ、四等級と申しますと、一般職の中ではかなり高い資格になるものでありまして、それに該当するという者が必ずしも多くないというふうなところから、裁判所だけでは賄い切れないという面がございますので、広く、たとえば検察事務官であるとか、公安職の職員であるとか、場合によっては市の吏員をした人とか、そういう人で先ほどの四等級に相当するような人について試験をして採用していくというふうにやっておるのが実情でございます。
#27
○宮崎正義君 この執行法ができますと、執行官の過不足ということはどんなふうにお考えでございましょうか。
#28
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 現在の時点におきましては、現状の執行官はまあ一応現在の事務量を基準にして各庁に配置してあるものでありますけれども、事務量がそれほどたくさんはふえないのではないかという感じでおりまして、その事務の内容がかなり高度なものになってくる、あるいは非常に努力しなければその責務を遂行できないという面ではかなり深まってはまいりますけれども、仕事の量といいますか、そのものは余りふえないのではなかろうかというふうなことで、執行官の人数の増減というのはいまのところでは余り考えておらないというのが実情でございます。
#29
○宮崎正義君 大臣がおいでになり、民事局長がおいでになりますと、百三十一条等詳細にお伺いをしながら執行官の方々の御苦労をこの後で私は質問をしていく予定でございますが、相当いろいろなところに処遇をしなきゃならないというようなことから考えまして、都市なんかと僻地の方の方々というのは交流でもしておやりになって、地裁の方ではそういう交流の方法等を考えておやりになっているのかどうなのか。そして、その事件の処理数を間断なく処理をなさっている方法をおとりになっているのかどうなのか。いまお話ですと、不足はしていないというような、現状でいいのじゃないかというふうにお伺いしたわけですが、実際は大都市なんかになりますと相当の分量が積み重ねられているのじゃなかろうかと私は思うわけです。どうなんでございましょうか。
#30
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) ただいま御指摘のような、事務量が非常に多いので人数をふやす必要があるのではないかという面につきましては、その辺も私どもとしては常々監視をしておるところでございますけれども、先ほど申しましたような高額の収入を得ているところ、これは実際にはかなり忙しいということは言えるかと思いますけれども、それだけにそこに勤めております執行官としては非常に励みを持っているというふうなことで、事件の渋滞はそれほど起こっていないというのが実情であるわけでございまして、その点については余りその土地に増員をするという必要はいまのところ考えておらないわけでございます。
 それから収入の多いところと少ないところを平均させる意味で執行宮を転任させることはどうかということでございますが、最近の例でも、ある土地に執行官の有資格者が見つからないというふうなことでほかの庁から回した例がございますが、その場合でもやはり従前得ていた収入を減らさないような保障をする必要があるというふうなことで大体同じような収入のところから移しているというのが実情でございまして、たくさん取っているものを減らしてほかのところにやるというのはなかなかできにくいというのが偽らざるところでございます。
#31
○宮崎正義君 私はその逆だったんです、いまの答弁のね。僻地の方々の方といろいろな問題がある場合にはお互いが応援し合ってやっていく方法をおとりになっていくところが望ましいのじゃないかと思いましたので質問したわけなんですが、確かに収入の面からお考えになることも結構なんですが、事務量がいまの御説明だと十分励みを持ってやっておられるということでございますので、これもやはり先ほどの御説明がありましたように四十歳以上の方々でございますので、それでは執行官の方々の現在の平均年齢はどれぐらいか御承知になっておられますか。
#32
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 現在の平均年齢は五十八歳余でございます。
#33
○宮崎正義君 でありますから、いま五十八歳といいますと平均でございますので、相当高齢な方々が御苦労をなさっているわけであります。どの方に会いましても、お会いした方は本当にお元気でお年を考えられないようにお元気なんでございますが、それがそうかといってそのまま励みでそれをこなしていくというそれで征服できるかということになりますと、なかなか容易じゃなかろうというふうにも思うわけでありますし、そういう点も考えていきますと、採用のあり方というものも一考していかなければいけないのじゃなかろうかなんというふうに思ったものですから御質問したわけですが、それはひとつ将来の問題としてお考えいただきたいと思います。
 それから先ほど附帯決議の点で第一項の「環境施設を明朗ならしめることに努力すること。」先ほどの御説明でよくわかるわけでございますが、私、売却の場所、俗に言って競売場といいますか売却所、そこの点がどの程度環境整備がされておるのか、またしなきゃならない点がどういうふうにしてあるのか、六十五条の問題についての規則なんかはどんなふうにお考えになっておられるのか、その点を伺っておきたいと思うのです。
#34
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 先日もお答え申し上げましたように、実情におきましては、競売場がまだまだ庁舎の片すみにあるとか、その使われ方がほかの公衆控え室とかいうものと共用されて使われている場合が多いとかいうふうなことで、改善の余地が非常に多いということは、これは認めざるを得ないところでございます。そういう点につきましては、なるべく一般の人が競売に参加しやすいような環境を整えていくということが必要であろうというふうに考えて努力を続けていきたいというふうに考えております。その点につきまして、いろいろ私どもでいま内々考えております執行規則の方で手当てをするということは現在のところでは考えておらないわけでございます。
#35
○宮崎正義君 御案内だと思いますが、四十一年の六月二十七日に参議院の全会一致でこの法案を可決いたしましてから、この「法曹時報」のところを読んでみますと、「今後の課題と展望」という四十一年の時代の将来に向けての展望ということが出ているわけでありますが、この展望と、今日の時点においていままで局長にいろいろ伺ってみましたものについてどう変わってきているかということになりますと、その一部は変わった点もありますでしょうけれども、これからもいま私が質問いたしましたそれぞれの中では相当まだ考えなきゃならない。当時の展望といまと余り変わっていないのじゃないかというふうにも思うわけなんでございますがね。途中からなんですが、「執行官の制度の発足は、これに伴う監督の強化等の運用面の改善によってある程度の効果をもたらすことが考えられるものの、とうていこれが決定的な対策となりうるものとはいいかたいであろう。極言すれば、俸給制執行官制度の実現でさえ、必ずしもこの問題の抜本的解決を意味するものとは考えられないのである。結局、このような弊害を根絶するという目的を組織面の改善のみによって達成することは困難であり、むしろ直接的には、手続法の改正を軸とする手続面の再検討こそが、この問題の解決策を見いだすための最も有効な手段であるといわなければならないであろう。」と。この前段にもずっと「さしあたっての急務と目されるのは、強制執行及び競売の手続についての全面的な検討の作業を推進することであろう。」ということから、いま私が読み上げましたその課題と展望ということなんでございますが、それを当時のものを見てみますと、この心配されていることがそれぞれ一つ一つ解決をされていっているように私は余り受けとめられないのでございますが、こういう点につきましていまそれぞれ御答弁がございましたけれども、今後のあり方として、結局、執行官の権限強化に――権限強化と言いますか、執行官の執務に相当なウエートがかかってくる。お話しのようにいろいろな技術的な問題も変わってまいりますし、そして今度は現況調査をする場合にはその判断が重要になってくる。その判断が誤った場合には国家賠償法に訴訟されるような点も出てくるのじゃなかろうかというようなこと等を、これは私は素人なものですからよくわかりませんのですが、考えられることがあるのじゃなかろうか。そうした場合には、今度はその執行官の方々をどのように擁護し庇護していかれようとしているのか、この点も一音伺っておきたいと思います。
#36
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 先ほどもお答え申し上げましたように、執務環境を変えたことによりまして、執行官法改正以来この十数年の間に、かなり執務体制が整備されたということは言えるのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。従前は、債権者の委任に基づいて仕事を行うというたてまえでありましたし、実際の競売の関係でもかなり債権者に主導権を握られていて無理な執行をしたというふうな例もあったようでございますが、執行官法の制定以来、そういう従前の債権者との私的なつながりという面は失われて、かなり近代化してきたということは言えるのではなかろうかというふうに思われます。それで、また執務場所が裁判所の中に取り込められた、それから金銭の受け入れがすべて裁判所の職員によってなされるというふうなことから、仕事の面でもかなりすっきりしたものになってきまして、裁判所職員との間でも一体感というものができております。その点は執行官法この十数年の成果ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。しかし、何と申しましても、ただいま御指摘のように、手続法が整備されなければしょせんは中間的な措置にすぎないという点はまことにごもっともでございまして、今度執行法ができましたのを機会に、そういう点は名実ともに近代的な執行官制度になってもらいたいというふうに考えておるわけでございます。しかし、何分手数料制ということで発足しましてから八十年という歴史をしょっている制度でございまして、収入が先ほどからたびたび申し上げていますように各地において格差があるというふうな問題、それから任用の点では四十歳以上、しかも実際には五十歳を超えなければ執行官になる人がいないという面でかなり年齢が高いというふうなことから、そういう人あるいは収入の人を一挙に俸給制に切りかえられるか、それを普通の裁判所職員と同じように取り込めるかという問題がありまして、これはかなりむずかしい問題ではなかろうかというふうに考えておるわけでございますけれども、しかし、新しい執行法、執行制度ができましたのにふさわしいように改めていかなければならないということは考えておるわけでございまして、努力を続けていきたいというふうに考えております。
#37
○宮崎正義君 五十七条の「現況調査」等でそのいろいろな細かい点をお伺いしようと思いましたけれども、それはいまのお話を伺いながら了解をしていくようにいたしたいと思いますが、五十八条の「執行裁判所は、評価人を選任し、不動産の評価を命じなければならない。評価人は、第六条第二項の規定により執行官に対し援助を求めるには、執行裁判所の許可を受けなければならない。」等々ありますが、この評価人の選任ということにつきましてのお考えをお伺いをいたしたいと思います。
#38
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) この点につきましては、私どもでいま考えております民事執行規則におきましては、特に評価人の資格というものを限定して考えるということはいたしておりません。結局は現況の評価をしている人を引き続いて評価人として選任するということになろうかと思われますが、現状におきましては多くの庁におきまして不動産鑑定士を鑑定人に選任しております。ただ、実際には鑑定士の人が全国にまんべんなくいるというわけではございませんので、各地の実情に応じていろいろな人を選任しているというのが実情でございまして、鑑定士がいない場合には土地家屋調査士それから固定資産評価員、そういう人もいない場合には、市役所でいろいろな評価をする人、あるいは民間会社たとえば大きな電力会社なんかで土地の買い入れなんかをする場合に評価なんかの仕事をしている人がございますが、そういう人に頼むとか、それもいなければまた執行官に評価をしてもらうとかいうふうなことに今後ともならざるを得ないのではなかろうかというふうには考えております。ただ、裁判所としては、評価人のリストをつくって、なるべく適任の評価人が得られるように日ごろから準備をしていくということが必要だということで、そういう指導をしてまいっておるわけでございます。
#39
○宮崎正義君 これは大きな仕事に携わる方だと思うわけでありますが、この規則、あるいはその資格の限定等、お決めになっていないというような御説明ですけれども、また、御答弁の中にも不動産鑑定士のお話も出ましたけれども、この方々は本当にお話のように少ないわけでありますし、なかなかまたその方々を随所に用いられるということもいろいろな面で容易じゃない点もあるように私は承っております。お話の中の、会社のそういうものを扱っている人方という、これはいい人方ばっかりならばよろしいですが人選に当たり選任に当たりましては十分な御配慮を当然なさって今日まできておられると思いますけれども、私はこの新しい法が制定されると同時に、やはり一応のめどといいますか、こういうものでなければならないんだというような個条書き程度なものでも勘案をされていかれた方がよろしいのじゃなかろうかと、こう思って御質問をしていたわけなんですが、ともあれ大事な立場で評価をしていくわけでありますので、それによって大きく債務者も債権者も事件が繰り広がってくる原動力になってまいりますので、その点を十分に心にとめていただくように私は希望をいたしたいと思います。この点についてはもう一度重ねて御所見のほどを伺っておきたいと思うのです。
#40
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) おっしゃるとおりのことで、十分注意をしていくつもりでございます。特に評価が何と言っても売却の関係では中心になるものでございますので、その適正な評価、客観的な評価というものを誤らないようにしなければならないと、その点では評価人に人を得るということはもちろんでございますけれども、裁判所の方でもその評価が適正であるかどうかということについては、最低売却価額を決めるという点では十分に評価をする能力を持たなければならないということでございまして、裁判所自身がやはりそういう点についての研さんを怠らないようにしなければならないというふうに思われます。そういう点では、お話のありましたような何と申しますか、注意すべき要綱についていろいろ実務の指針になるようなものを作成してそういう運営に当たりたいというふうに考えておるわけでございます。特に不動産事件の評価と申しますのは、通常の評価と違いましてかなり権利関係が複雑になっております。法定地上権が成立するかどうかとか、あるいは借地権がある場合とない場合でどういうふうに違ってくるかというふうな点で、かなり権利関係の存否も含めた評価というものが必要になってくるわけでございまして、その辺は先ほどのような実務指針というものを考えることはもとよりでございますが、いろいろな協議会あるいは研修の際に周知徹底を図るようにしていきたいというふうに考えております。
#41
○宮崎正義君 香川民事局長がお見えになりまして、大臣もおそろいになりましたので質問をいたしたいと思いますが、質問を申し上げる前に、今回の民事執行法案をおつくりになって、その御努力はまことに大きなものがあると私は思っております。民事執行法案の要綱の「第一 総則」の趣旨によりますと、「この法律案は、強制執行、担保権の実行としての競売等民事執行に関する基本法として所要の手続を定めるものである」とありますように、基本法としてであれば、今度はいまの法案の第一条に言われております「民法、商法その他の法律の規定による換価のための競売については、他の法令に定めるもののほか、」とありますが、これは私ども素朴な素人の考えでいきますと、まだ他の法令があるのだというと、じゃ他の法令がわからなければこれまたわからないのかなあ、じゃ他の法令はどういうものがあるんだろうかというふうな素朴な質問が出てくると思うのです。これは私がいまさら申し上げるまでもなく、四十三年の十一月から民事部の参事官室で第一次試案、第二次試案を公表されましてから、これを広く実務界の方で非常な関心を集めて非常に大きな問題点として取り上げておられましたが、それが最終要綱に至って今日までこられるまでには相当の紆余曲折がなされて、そして今回の民事執行法案が実現された。先ほど申し上げましたように、その衝に当たられた方々の努力というのは大変なことだと思うのです。やっとこういうふうに日の目を見るようになりまして非常にうれしいことなんでございますが、その衝に当たられた方々の労をまことに私は感謝申し上げている一人なんでございます。
 ともあれ、いま申し上げましたように、この第一条を拝見いたしますと、「他の法令に定めるもの」と、こうありますと、なぜ基本法としておやりになったのに――できるだけのことはおやりになったと思う。それはわかるわけです。一つの船舶の方の問題を取り上げてみますと、商法の二十トンを基準にして不動産の対象にされたという商法の方の問題点をお持ちになっておられる。そういうふうなことはわかるわけなんですが、他の法令というのはまだほかに幾つぐらいありまして、どんなものがありますのか、それらが明確でなければ、明快にされなければ、中へ進んでいけないというふうに素朴な感じを私は受けたわけなんですが、この点についてどうなんでございましょうか。
#42
○政府委員(香川保一君) 非常に形式的なことから先に申し上げて恐縮でございますが、第一条に仮に「他の法令に定めるもののほか、」というのがないといたしましても、この民事執行法の特則的なものを他の法律で定めることは可能なわけでございまして、そういったことの関連を形式的に明らかにしておくというふうないわば例文的な一つのものだと思うのであります。
 実質的に申し上げますと、この民事執行法案で考えております強制執行等の対象財産というのは限定しておるわけでございますが、たとえば御承知のとおり企業担保法というのがございまして、これは動いている状態の企業、会社の総財産でございますが、それを一体的にとらえて企業担保権の目的にする、こういった場合のその企業担保権の実行、これはまさにこの一条で言います担保権の実行としての競売になるわけでございますけれども、何分不動産とか動産というふうなものと違った、生きている状態の企業の総財産でございますので、民事執行法案の手続規定では賄えないものがたくさんあるわけでございます。そういったものは企業担保法の中で企業担保権の実行手続として特則を設けておるというふうな点があるわけでございます。
 それに類するものとしまして、たとえば現行法で申し上げますと鉄道抵当法で鉄道財団というものがあるわけでありますが、これは動いている状態の鉄道のための総財産でもって鉄道財団というものを擬制的につくり上げまして、それが抵当権の目的になるということになるわけでございますが、しかし、この場合の抵当権の実行手続としましては、何分、鉄道というのは公益に関する部分が非常に多いわけでございますので、やはり民事執行法案とは違った特則を設けざるを得ないというふうな面もあるわけでございます。
 そのほかに、航空機とか自動車というふうなものがすでに抵当権の目的になることが現行法で決められておるわけでございますが、これらもいわば動産でございますけれども、金融等の必要から抵当権の客体に特別に認めておる。そういたしますと、必ずしもこの民事執行法案による抵当権の実行手続には若干なじまない面があるわけでございまして、そういうものはやはりそれぞれの法律で特則を設ける必要があるということが考えられるわけでございます。
 そういったことを考慮いたしまして、この第一条で「他の法令に定めるもののほか、」というふうに規定したわけでございまして、確かに一般の国民がこれをお読みになりますと、「他の法令」というのはどういうのがあるのかというふうなことは、これはまあ恐らくはおわかりにならない。そういう意味では不親切だと言えば不親切でございますけれども、これを一々現行法をもとにしまして現在ある他の法令をここへ列挙して書くということも一つの方法でございますけれども、そうなりますと、今後また特別法が制定されまして特則を設ける場合には、一々民事執行法自身のこの一条の部分を改正しなければならぬというふうな手間がかかるわけでありまして、そういう手間を惜しむのはいかぬとおっしゃればまさにそのとおりでございますけれども、一つの法文をつくる慣例と申しますか、約束事というか、そういうことでこういった素人にはちょっとわかりにくいと申しますか、こういう書き方をするわけでございまして、その点ひとつ御了承願いたいと思います。
#43
○宮崎正義君 その点はよく私も理解できると思うのですが、お話の中には建設機械なんかのお話がございません。ただ動く物に対するというようなお話で、建設機械、これなんかも含まれるのでございますか。
#44
○政府委員(香川保一君) 登録をしました建設機械については抵当権の目的にすることができる。これは建設機械は御承知のとおり動産でございますけれども、抵当権の目的にできることから抵当権の実行手続があるわけでございます。しかし、本質は動産でございますので、やはり特則的なものが必要になってくるというふうなことで、他の法令の中には、建設機械抵当法というふうなもの、それを受けた最高裁判所規則が入ってくるというふうになろうかと思います。
#45
○宮崎正義君 そういうふうにわからないのですがずいぶんあるわけなんですよ。御答弁の中にまだ大分あると思うのです。
 確かに、企業担保法の二条の二項ですか、「前項の規定は、会社の財産に対する強制執行又は担保権の実行としての競売の場合には、適用しない。」この企業担保法の面なんか見ていきますと、それぞれいま御答弁がありましたような中身はわかると思うのですけれども、なぜ私がこの建設機械ということを申し上げるようにしたかと言いますと、固定して動かないものがあるわけです、現在では。相当大がかりな機械がある。そういうふうに時代が変わってきているわけです。そういうふうなものから考えていきまして、やはり国民のための法律であり、国民がわかる法律ということになりますと、実際の現状と――あれも動産なのかな、あれは動かないじゃないかな、家と同じようじゃないかなというような建設機械等もあるわけなんですね。そういったようなことから考えていきますと、いまお話がありましたように、幾つも幾つも出すのは確かに大変でございましょうけれども、やっぱり第一条を読んでみて「他の法令に定める」となっていきますと、他の法令がわからなければ、それでは他の法令はどうなのかと、これはすぐ戸惑ってしまったわけなんです。そういうようなことから入っていきますと、いろいろな法律をあっちをめくりこっちをめくり、違った法律をめくっていってあわせてそしてその執行をしなければならないという、後で事例を申し上げますけれども、そういったようなものも中に相当あるわけでありますね。そういうふうな点から、私は御努力のことは本当に多としてむしろ心から敬意を表するわけでありますが、まだ今後の課題としてそういうふうなことを言っている者もいたというようなことを記憶に残しておきたい、こんなような勝手な考えから申し上げておいたわけなんです。
 それはそれといたしまして、先日私が御質問をいたしました第十三条の「代理人」の件なんでございますが、これはまた後で質問をするということを申し上げておったわけで、そういう関係で御質問をするわけですが、この代理人の、何といいますか、裁判所の許可を得れば代理人となることができるとあるその裁判所の許可、この許可がどういうふうな内容があるのか、規則があるのか。また、代理人というのは、先般のお話ですと、会社の従業員とか、あるいは親族関係だとかというふうなお話もありましたけれども、私は、そのときに、司法書士あるいは行政書士――確かに、前の法律でいきますと、弁護士、簡易裁判所においては代理人というような前の規定がございますけれども、今度は変わりましてから、広く代理人制度というものを設けるというふうになっているということなんですが、これはどういうふうな方々が含まれておるのか、範囲をひとつ御説明願いたいと思います。
#46
○政府委員(香川保一君) この第十三条の規定によりまして代理人となれる者の資格については、特に法律上は制約はございません。したがって、司法書士の人たちも許可を受ければ代理人になるわけでございまして、この規定はただいま御指摘の、一方ではこういう規定がございませんと弁護士でなければできないことになってくるわけでありますが、それでは余りにも簡易な手続について一々弁護士を代理人にしなければならぬということでは硬直になるおそれがございますのと、他方でまただれでもいいといたしましても、やはり本人、依頼人の権益の保護ということも考えなければなりませんので、両方を考え合わせまして、裁判所の許可によってだれでも代理人になれると、弁護士以外の者でも代理人になれると、こういうことにしておるわけでございます。したがって、そういう趣旨から、法律上は代理人となる資格の制限は何らございませんけれども、執行裁判所が許可をされる際にはそういった趣旨を踏まえて選別をしていただけると、こういうふうに期待いたしておるわけでございます。
#47
○宮崎正義君 裁判所の方のお考えをひとつお伺いいたします。
#48
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 現在の強制執行のたてまえでございますと、民事訴訟法の規定が準用されるということで、地方裁判所で行います強制競売につきましては弁護士でなければ代理人となれないということになっておりまして、事実そのような実務の取り扱いがなされておるわけでございます。それから一方、担保権の実行としての競売手続の関係は、これは訴訟事件というよりも、非訟手続、非訟事件手続法の規定に従ってやっていくということで、代理人は必ずしも弁護士でなくてもよろしいという状況になっておりまして、実務でもそのようなやり方をしておるわけでございます。しかし、任意競売の場合でも、実務におきましては余り関係のない者が代理人という形で出て来られては困るというふうなことで、基準を設けまして、本人と一定の関係にある者についてだけ許可を与える、許可というか、代理人として行動することを承認するというふうな取り扱いにしておるわけでございます。この新法の十三条につきましては、内々私どもで検討しております民事執行規則におきましてもその現在の実務のやり方を規則案のような形で明らかにしたいというふうに考えておりますが、その場合には、したがいまして、会社の従業員であるとか、それから本人と夫婦の関係にある、あるいは親子の関係にあるとか、そういう本人との関係を示すような文書を添付してもらって、それを見て許可を与えるかどうかを決めるという取り扱いにしたいと考えております。それは、やはり弁護士非弁活動を制限するという問題と、もう一つは、執行屋と申しますか、取り立て屋と申しますか、職業的に債権者にくっついて、あっちの債権の取り立て、こっちの債権の取り立てというふうな職業的にやるような人を排除するという実務的なねらいがあるわけでございます。
#49
○宮崎正義君 お話がありましたように、会社の従業員というふうな範囲になりますと、どういうふうな範囲になってくるのかなということが非常に心配になってくるわけです。いま御答弁がありましたように、この点につきましては、そういう人を専門に臨時雇いにするとかあるいは抱え込んでやるとかいうようなことも将来なきにしもあらずだというふうに私は心配するわけであります。この点については十二分にひとつお心がけをしていただかなければいけないのじゃないかというふうに思うわけであります。それでこの点は一点だけその点に触れておきたいと思ったわけであります。
 それから時間がもう大分ありませんので、午前中は私の質問で大体執行法の質問を終わりたいということなんですが、まだ大事な聞かなければならない点があるので大分はしょらなければならないのですけれども、先ほど、あっちからこっちからというふうに引っ張ってこなきゃわからないというみたいなお話をいたしましたのですが、第十四条の「費用の予納」ということでございますが、この執行裁判所に対する申し立てについて適用され、執行官に対する申し立てには適用されないと説明されている。その理由は、執行官法第十五条に同種の規定があるからと言われている。それでは執行官法第十五条の第一項に費用の予納についてのただし書きが掲示されている。こういう点から、本法の二十条は、民事訴訟法の準用、現行法の百二十条「救助の効力の物的範囲」によって適用されていくというようなことがずっと開いていってみなければなかなかわかってこないのじゃないかというふうに思うわけですから、こういう点について簡単にひとつ説明をお願いしたいと思います。
#50
○政府委員(香川保一君) ただいまの訴訟救助の関係でございますが、当然この民事執行の手続におきましても訴訟救助ということがあるわけでございまして、これはまさに民事執行法案の第二十条で特別の定めがある場合を除きまして民事訴訟法の規定が準用されるということになっております。この規定から、民事訴訟法の第百十八条以下の規定、これは訴訟救助に関する規定でございますが、これが準用されることになりますので、したがって、民事執行法案の十四条の関係での費用の予納という面につきましては、訴訟救助を受けた者は予納しなくてもいいことになるわけでございまして、そういった構造になっておるわけでございますが、これもはっきりと民事執行法の中で重複をいとわずに規定すればいいじゃないかということも考えられるわけでございますけれども、やはり訴訟救助の関係の規定を全部重複して民事訴訟法と同じような規定を執行法に書くということは、従来の立法形式と申しますか、そういう面では、やはり避けると言っては語弊がございますが、それを言い出しますと、訴訟救助だけではなくて、他のいろいろの点につきましても重複して全部書かなければならぬというふうなことになってまいりますので、非常に法律自身が膨大になるというふうなことから、訴訟救助の面では一般法としての民事訴訟法があり、それのいわば特則的にと申しますか、訴訟でない分野での民事執行の手続にそれが準用されるということを明らかにすればそれでいいのではないかというふうな立法技術上の問題でこういうことになっているわけであります。その辺もひとつ御了承願いたいと思います。
#51
○宮崎正義君 先ほど私が申し上げましたように、何といいますか、専門家の立場の上から法律を積み重ねてどんどんつくられて新しく法律家の立場で開いていかれる。そうすると、それが一般の国民から言わしてみれば、幾つも幾つも法律があって、その法律の一つ一つがわかっていかなければ何を言っているのかわからないみたいなことで戸惑うということが非常に多いわけなんです。これは当委員会ばかりじゃなくて、ほかの所属のところでも私はしばしばこういう問題を取り上げているわけですけれども、国民のための法律であり、国民のための法律ならば国民が見てわかるような法律、こういったような行き方がぜひできないものだろうかな、だんだんとできないものだろうかなというふうに考えておりましたのが、今度は民事執行法案がかなりわかりやすく平易に出ているので、これは大分いいなというふうに期待をいたしたわけなんです。ですが、いま申し上げますように、御答弁がありましたように、本条の二十条から現行法の民訴法の百二十条等を引いていかなければならないとかいうようなことだとなかなか容易じゃないと思うのですけれども、御説明によりますと、また他の方にも全部影響してくるということで、一応はこの点了解をせざるを得ないのでございますけれども、私の言わんとしているところをくみ取っていただきたいということが主体でございます。どうですか、大臣、いま私が申し上げていることについてお考えはいかかでしょうか。
#52
○国務大臣(古井喜實君) 私も、どうも専門的な点は十分は自信を持った考えもきょうは立ちませんですけれども、るるお話になりましたところを伺っておりまして、いろいろ技術的な面もあるようでもありますが、一般の人から見てどうだこうだと考えてみなきゃならぬ点もあるかもしらぬような気もいたしたので、これは私は十分きょうはこの段階ではわかっておりませんのでよく検討さしていただきたいと、そう思いますので、よろしくお願いします。
#53
○宮崎正義君 時間がありませんので、ずっと飛ばしまして、百三十一条に入りたいと思います。「差押禁止動産」というところでございますけれども、実務的な問題としての考え方と一般的常識論とどっちが優先するのかなというような素朴な考えのもとにお伺いをするわけですが、百三十一条の「次に掲げる動産は、差し押さえてはならない。」と、こうあるわけであります。ずっとございますが、これをやっていきますときょう午後までかかったって終わらないと思うので、主だった点だけをぽんぽんと拾って質問をいたしたいと思うのですが、第一番目の「債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具」、これらのことにつきまして、言わんとなさっている精神といいますか、そういうことを伺っておきたいと思います。
#54
○政府委員(香川保一君) たとえば、金を借りてそれが払えない、したがって強制執行を受けるということになりますと、あらゆる債務者の財産がその対象になってもいいという考えもあろうかと思いますけれども、しかし、そうかといってその財産が差し押さえられて売却されるということになると、あすから生活ができないというふうなぎりぎりの必要物があるわけでございます。そういったものはやはり債務者保護の観点から差し押さえ禁止財産にしなければならないということで、百三十一条の一号は「債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具」というふうなものを差し押さえ財産から除外しておると、こういうことでございます。
#55
○宮崎正義君 テレビとか冷蔵庫だとか洗たく機だとか電話だとかという、今日の生活ではテレビなんかは、きのうの事件なんか、誘拐事件ですか、けさ犯人がつかまったというのですけれども、あれなんかでも、テレビを見て報道を聞いていますと、すぐ手に取るようにわかるわけなんです。もう情報化時代というふうになってきますと、これにはテレビが入っていないのですが、テレビはどこの中に入ってくるのでしょうか、入らないんでしょうか。それから冷蔵庫はぜいたく品だって言えばそうかもわかりませんけれども、私が一番最初に執行法案の質問をいたしましたときに、非常に債務者を擁護する面で大きく考えてつくられたというようなことがございました。そういう意味から、電話なんかというものも、電話は個人で売買が幾らでもできる、動産としてできるわけでしょうけれども、こんなのが考えられないのかなというふうな疑問があるのですが、きょうなんか見てもすぐわかる。十歳の少年が自動車の車種まで覚えて、そしてどこへ行った、ここへ行ったということが一部始終言われている。ははあ千歳の飛行場に車を置いていた、そこから足がつくなと思っていたら、やはりそれがそうだったというような、推理小説をやりながら、犯罪を犯しながらまたそれをひっくり返すみたいなことをやっているというような、これも全部報道関係から出てくる問題でありますし、視聴覚が非常に発達している今日の情報化時代において、これは入っているものか入っていないものか、参考にお伺いしたいと思います。
#56
○政府委員(香川保一君) 結論的に申し上げますと、現在の社会生活の状況のもとでは、テレビとか電気冷蔵庫というふうなものはこの一号には入らないというふうに考えております。これは非常にむずかしい問題だと思うのでありますが、それぞれの時代における通常の社会生活、そういう面から考えますと、確かにテレビ、冷蔵庫というふうなものは欠くことのできない要家具ということになるかもしれませんけれども、事はそういう通常の社会生活水準というふうなことが言えないような、つまり債権者の立場に立ちますとその債権が回収できなければ自分の方がまいってしまうということもあるわけでございまして、そういう債権者の方の苦境と言いますか窮状と言うか、そういうものと、債務者側の差し押さえられることによる窮状とをやはり比較考量しまして、どこで限界を設けるかということでございますので、流動的な社会生活の変動に応じて一応変わるような概念ではあろうかと思いますけれども、今日の状況のもとでは、テレビ、冷蔵庫を差し押さえないと債権の回収ができないという債権者の立場も考えなければならぬということになりますと、やはりこの一号の差し押さえてはならぬ財産の範囲というのは相当厳しく限定的に考えざるを得ないのじゃないかというふうに考えるわけでございます。そういう意味からは、テレビあるいは冷蔵庫がなくても生活に欠くことにならぬわけでございますから、したがって、入らぬと、こういう解釈に現在はなろうかと思います。
#57
○宮崎正義君 「注解強制執行法」(2)というものを私はいまここに持っているわけですけれども、これなんかの意見なんかも非常に参考になると思うのですが、これをやっていますともう時間がありませんのでやりませんが、いま、それなりの御説明ですけれども、十分今後の課題としては検討しなきゃいけないのじゃないかと思います。
 それから三番目の「標準的な世帯の一月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭」というもの、この点なんかもどのようなことをお考えなのか。
 それからもう時間がありませんからずっと縮めてアウトラインだけ質問をいたしますと、四番目の「主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、」、この「器具」が問題であります。「肥料、労役の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するため
 に欠くことができない種子その他これに類する農産物」、これは脱穀機だとかトラクターだとか耕運機だとか田植え機、コンバイン、そういうものを器具とみなすか。これはやはり欠くことのできないものなんでございます、現在の農業をやるためには。
 それから五番目の「主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物」、時間がありませんからきょうはいまの三点だけ伺っておきたいのですが、船舶の規定も、先ほど申し上げましたように、二十トン未満のものは今度は動産としての取り扱いをされるわけですが、しかし、漁民にしてみれば、船が何よりも命の綱でございますから、そういったようなことを考えていきますと、あれは現行法の何条でしたかね、債権者と相談の上、かせがしてもいいというような船舶のところがございますね。そういう条項に漁船が適用できるのかどうなのか。それからまた、「農業を営む者」についての田植え機だとかコンバインだとか脱穀機だとかトラクターだとか、そういうものもこの中に含まれていくのかどうなのか、品名が明らかでないのでお伺いしているわけです。
 それから戻って三番目の「政令で定める額の金銭」というものは、どこの分を基準にしているのか、総理府なのかあるいは大蔵省なのか、その試算の根拠というものはどこに置いているのか、こういうことを伺ってきょうのところの質問は終わりたいと思うのです。
#58
○政府委員(香川保一君) まず、百三十一条三号の点でございますが、これはただいま政令を制定いたします場合にどういう考え方に立つべきかということの考えといたしまして、御承知のとおり、生活保護法では、最低基準として標準世帯につきまして十三万三千円ぐらいが標準額というふうになっておるようでございます。国税徴収法の関係では、現在約十七万円ぐらいになっていようかと思います。それやこれやを勘案いたしましてこの政令を定めることになるわけでございますが、大体二十万未満のところで落ちつくのではなかろうかというふうに考えております。
 それから四号でございますが、これは「自己の労力により農業を営む者」についてのことでございますが、御指摘のような器具は原則的には入るだろうというふうに解釈いたしておりますか、これもしかし規模によるわけでございまして、一律にはまいらぬかと思いますけれども、やはりその器具がなければその営んでおる農業ができなくなるというふうな趣旨でございますから、そういう趣旨に照らして、やはりケース・バイ・ケースで考えることだろうというふうに思うわけでございます。
 それから五号も大体同じようなことでございますが、これも「自己の労力により漁業を営む者」についての規定でございますので、したがって、小さな釣り船で漁業をやっておるというふうなそういう船は当然入ることになろうかと思いますけれども、ちょっとお触れになりましたような、登記した船舶で差し押さえされる場合に、航行の許可というふうな制度があるわけでございますが、そういった二十トン以上の大きな船舶になってまいりますれば、「主として自己の労力により」云々ということからも外れてくるのではないかというふうに考えるわけであります。ただ、基準的な考え方はそういうことでございますが、御承知のとおり、この法案では、こういった一律の規定を設けても、やはりケースごとに対応する場合にはちょっと不都合な場合が出てくるおそれがございますので、したがって、この範囲を縮めたりあるいは広げたりするようなことが具体的なケースごとに執行裁判所の判断によってできるようにいたしておるわけでありまして、そういった制度もあわせ活用していただいて、ケースごとに妥当な結果になるようにやってまいりたいと、かような考えでおるわけでございます。
#59
○宮崎正義君 二十万ぐらいというようなお話でございますが、これをまた論議すると大変な時間がかかると思いますが、これは一応そういう点のお考えだけをきょうは伺って終わりたいと思いますし、また漁船が問題だと思うのです。二十トン未満の場合の方がかなり多いのじゃないか。御案内のように日本の、いいか悪いかわかりませんけれども、二十トン未満というのは、十九トン九だとか、十九トン五だとか、二十トンと同じような力を持っているような船、それから今度は五十トン単位にしますと、四十九トン幾らだとか、四十八トン九だとか、そういった船が、同じような力を持っているようなのがその境目になってきますと、二十トンと言うけれども、二十トンと同等の程度の力のあるもの、そういうふうなものがあるわけです。急傾斜地法なんかにも三十度という角度がある。それじゃ二十九度はどうなるのか。その決められた範囲の境界というものは非常に微妙な問題が社会生活の中に含まれてくるということがある関係で、漁船なんか、お話がありましたように、二十トン以上のものについては今度は商法に照らしての漁船もその方の考えでいくんだというようなそういう趣旨のお話でございましたけれども、未満のものなんかは御考慮になるのかどうなのかということをもう一度伺っておきたいと思うのですが。
#60
○政府委員(香川保一君) 先ほど申し上げましたのは、百三十一条の五号は、いまおっしゃったとおり、二十トン未満の船舶が主として考えられると思うのであります。ただ、そういう船舶でも、その具体的な規模によりましては、必ずしもこの規定で差し押さえ禁止動産に入ってこないというふうな、形式的に申しまするればそういう場合もあるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、百三十一条は、どうしても一律的に基準を示すという型でしか規定できないわけでございまして、その一律的な基準というものが具体的なケースごとに必ずしも適合しないこともあり得るわけでございますので、債権者、債務者両方の立場を考えてこの差し押さえ禁止動産の範囲を広げたりあるいは縮めたりするようなことを裁判所の判断によってやっていただく、そういうことで調整をとっていくべきではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
#61
○宮崎正義君 ぶり返して申しわけございませんけれども、テレビは生活保護を受けている方々にもこれは現在は認められているというふうに私は思っている。そういうようなことから考えていきまして、テレビと言ってもカラーテレビもあるし白黒もありますし、白黒なんというのはもう時代おくれでありますし、テレビまで持っていこうとしたなんという、そんなものがあるから生活保護を受けさせないというような問題が社会問題として起きたこともございますので、そういうようなことを考えていったりなんかしますと、いまの銀行強盗なんかあの隠しカメラでやっているわけですね。そういうふうに時代というものは変わってきているわけです。ことしは一月に七件もあったと、昨年は一カ月に六件しかなかった、それがもう一件よけいあったとか、あるいは三菱銀行の北畠事件後にどんどんそういうものが連鎖反応を起こしている。昨年の二月は四件しかなかったけれども、ことしに入って二十一日までにもうすでに十件もある。こういうふうな情報化時代、それでその銀行は銀行としての保安をするためにはどうしたらいいかというようなこと等が毎日のように報道され、毎日のようにそういうものを見ていきますと、いまの家庭でテレビが本当にないという人がどれだけあるだろうか、こういうふうなことからいきますと、国民がそういう犯罪を防止するためにも、いろいろな構え方、考え方、措置の仕方というもの等も考えられるわけなんです、これは私のへ理屈かもわかりませんけれども。警視庁にしましても御苦労なさっておりますけれども、銀行のあれが現在の保安状態でいいのかどうか、アメリカ等の防備体制はどうとかこうとか、いろいろなことを論じられておりますけれども、そういったようなこと自体をわかっていくのも、やはりその中から流れてくるものによってわかってくるというようなことを考えますと、少し考えを改めていかなければならない時代じゃなかろうかというふうに思うわけですから、くどいようですけれどもそういうことを一言申し上げて、もう一度大臣並びに民事局長の所見等を伺ってきょうの質問を終わりたいと思います。
#62
○国務大臣(古井喜實君) お話のように、社会の情勢はこのように変化をいたしておることでありますし、これに適応しなきゃいかぬということは申すまでもないことでございます。この法律は基本的な大事な法律でもありますので、完璧を期しますように、御意見などを十分伺い、りっぱなものにこの法律を仕上げたいものだと思っておりますので、そういう意味で御意見を十分拝聴しておきたいと思っております。
#63
○委員長(峯山昭範君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十四分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時五分開会
#64
○委員長(峯山昭範君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 検察及び裁判の運営に関する調査を議題といたします。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#65
○橋本敦君 まず最初に国税庁にお伺いしたいのでありますが、実は十四日の証人喚問でもわが党の東中議員が取り上げた問題でありますが、これはわが党の訪米及び国内調査によって私どもが確実な事実として情報をつかんだ問題に関するわけであります。これについてまずお伺いをいたしたい。
 つまり、日商岩井自身もほぼ認めているように思いますが、アメリカの国税庁――IRSから情報提供があって、さきに国税庁がいわゆる百五万ドルにかかる使途不明金を含む問題について調査をされたわけですが、それ以外に日商岩井が約二百七十万ドルの領収証をボーイング社に出しているという事実、これについて調査をなさったと思いますが、いかがですか。
#66
○説明員(五味雄治君) お答えいたします。
 日米租税条約によりまして、IRS――アメリカの内国歳入庁、日本でいいますと国税庁に相当するところでございますけれども、そことの間で課税上必要な情報の提供をしているわけでございます。それからこれは日米租税条約第二十六条の規定によりまして行っているわけでございますが、これは交換された情報は相互に秘密として取り扱うべきことであって他にディスクローズすることは許されないという規定になっておりますので、情報内容についてはこれをディスクローズすることは差し控えさせていただきたいわけでございますけれども、ただいま橋本委員の御指摘の点でございますけれども、具体的な中身について触れることは差し控えさせていただきたいわけでございますけれども、このような情報に基づきまして国税庁の方も調査いたしましたところ、日本の納税義務者である日商岩井の収支には無関係であるということが判明いたしましたので、そのように処理した次第でございます。
#67
○橋本敦君 調査なさったことはいまの御答弁でわかったわけですが、私どもがつかんだ内容を詳しくここで指摘をいたしますと、ボーイング社が大韓航空に販売をした747型SR、これに関連をしていまのように約二百七十万ドルをボ社が実際に日商岩井に支払い、日商岩井のこれに対する領収証が、正確に言いますと昭和五十年、一九七五年の六月付で領収証が存在しているということであります。これは調査をなさっていまのような御回答があったわけですが、この調査に関して国税庁がアメリカIRSに回答をされたと思いますが、その回答の内容はともかく、回答した日付は五十二年の十一月二日付で回答されたと私どもは承知をしておりますが、その事実は間違いありませんか。
#68
○説明員(五味雄治君) はい、そのようなことになっております。
#69
○橋本敦君 したがって、この事実をお認めいただいたとおり、私どもの調査が正確であるということがその点からも明らかになると思うのでありますが、問題はこの調査に対して日商岩井がどういう説明を国税当局にしたかという問題であります。これについていま日商岩井の収支自体に直接の関係はなかったというそういうお話でありますが、私どもが得た情報によりますと、日商岩井は、これは名前を貸しただけである、こう調査に対して回答をし、その金は米国の日商岩井を通じて大韓航空、KALの社長趙重勲氏に支払ったものである、こういう事実を認めていると思うのであります。支払い日は四十八年の五月と八月の二回に分けて支払ったと、こういうように日商岩井は回答しているようであります。
 いまの御答弁で日商岩井の収支には関係がなかったという趣旨は、つまりこの領収証はKAL・趙重勲のために名義を貸しただけだと、こういうように日商岩井の主張をそのとおり調査によって認定されたということになろうと思いますが、そういう趣旨ですか、収支に関係なかったという趣旨は。
#70
○説明員(五味雄治君) かなり具体的な内容になりますので、その辺についての答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
#71
○橋本敦君 私は、答弁を差し控えられましたけれども、先ほど言ったように、国税庁の回答の日付も間違いないということで私どもの調査の正確性の一端が証明されておるわけですが、こういう内容で回答したという事実も間違いないと思うわけです。
 一方、KALの方が747をいつ買ったかというのを、手元に入手しております大韓航空――KALの「要務便覧」によって調べてみますと、一九七三年の五月二日――四十八年の五月二日に一機を導入、続いて同じく同年七月十二日に一機を導入、続いて七四年、翌年の六月十二日に、これは貨物機でありますが、ボーイングの747Cであります、これを一機導入、合計三機導入しているわけであります。したがって、KALがボーイングの導入に関連をしてというそういうことでKALがボーイングを導入した事実と照らし合わせてみますと、二回に分けて、つまり四十八年の五月と八月の二回に分けて二百七十万ドルが支払われた、こうなりますと、第一機目が四十八年五月二日に入っておりますから、KALが導入と同時に約二百七十万ドルの一部が払い込まれた。続いて第二機目は四十七年七月十二日でありますから、この導入の直後の八月に約二百七十万ドルの残りが支払われたという関係になります。
  〔委員長退席、理事上田稔君着席〕
ということは、つまり、文字どおりKALが講入したSR747型機の導入に関するキックバックリベート、それとして約二百七十万ドルが支払われたという関係が疑いもなく出てくるわけであります。
 そこで、さらに国税庁にお伺いをいたしますが、この約二百七十万ドルの領収証、この領収証は、金額はドル表示をされていたのか円表示をされている領収証であったのか。私は、IRSからの照会が約二百七十万ドルと、こうなっておりますから、円表示がされていたのを換算して約二百七十万ドルと、こういうようにIRSが表現したのではないか、実際は円表示の領収証ではないかと、こう思っております。その領収証について国税庁は点検をされておりますか。
#72
○説明員(五味雄治君) 繰り返しになって恐縮でございますけれども、IRSからの提供された情報の内容の問題にわたりますので、租税条約二十六条によりまして、恐縮でございますがその辺に関するディスクローズは差し控えさせていただきたいと思います。
#73
○橋本敦君 つかんでおられるけれども、IRS、二十六条の関係で言えないという趣旨ですね、お答えになれない趣旨は。
#74
○説明員(五味雄治君) その辺は御賢察にお任せしたいと思います。
#75
○橋本敦君 それでは、円表示の可能性があったという私の指摘についても否定はなさいませんね。
#76
○説明員(五味雄治君) その辺は非常に具体的な話になりますので、何らコメントをいたすことは差し控えさせていただきます。
#77
○橋本敦君 問題は、ロッキードのあの疑獄の際にピーナツ、ユニット領収証かチャーチ委員会から公表されて、それが事態解明の大きな発端になりました。そういう意味では、領収証か存在するという事実は事件解明の重要なかぎになるわけであります。そういう趣旨で、日本の政府が今回の日商をめぐる疑惑解明に積極的に協力する姿勢をおとりにならないというのは、私は政府の姿勢として大問題だと思います。
 この領収証がさらにもう一つはっきりさせねばならぬことは、だれの名義でだれのサインで出されているかという問題であります。私は、これは亡くなった島田氏あるいは海部氏のサインがある領収証だと、これは私の推察であります、そう見ておりますが、その点否定されますか。
#78
○説明員(五味雄治君) 恐縮でございますが、否定も肯定もいたしかねます。
#79
○橋本敦君 否定もされないという。まあ肯定もされないとおっしゃいましたが。ということで、一層この領収証の存在とその内容をはっきりさしてもらいたいというように思うわけであります。
 問題は、この国税庁調査は、大阪国税局の調査部ですか査察部が調査をなさったというように聞いておりますが、それは間違いありませんか。
#80
○説明員(五味雄治君) 日商岩井を所轄する国税庁の調査機関は大阪国税局になっておりますので、しかも、日商岩井は資本金が一億円以上でございますので、大阪の国税局において所管しております。
 それからなお、先ほど領収証があるかないかという御質問に関連しても私はコメントをいたさなかったわけでございますので、そのサインをした者がだれかということのコメントも差し控えるということは、領収証があるということを前提にしているわけではございませんので、念のためお断りしたいと思います。
#81
○橋本敦君 大分答弁を意識的に後退されたのです。
 そういう領収証があるからIRSからのサゼスチョンなりインフォメーションが来たわけですね。これは私どもかそういう領収証があるというそういう私どもの調査によっても照会内容は先ほど申し上げたとおりですから、これは間違いないですよ。領収証がないと断定できますか、あなた。できないでしょう。いかがですか。
#82
○説明員(五味雄治君) それも否定も肯定もいたしかねます。
#83
○橋本敦君 結構です。あるのですよ。
 そこで問題は、この二百七十万ドルと言われる約八億に上る莫大な金が、筋道からすれば、ボーイングのKALに対する747型機の売却のリベートとしてバックをされたという筋がこれは私が指摘した事実から疑いの余地もないのです。
  〔理事上田稔君退席、委員長着席〕
なぜそれか日商岩井に入り、そこから趙重勲というこういうルートをたどったか、これが疑惑の大きな焦点であります。
 いま、国税庁は、収支に関係ないとおっしゃることは、一たん日商岩井に入り、それが日商岩井の収益にならないでそのままKAL・趙重勲の方に送金をされる、あるいは支払われる、こういう関係であることを収支がないという表現でお認めになったと思うのですが、これは間違いないですね。日商に入ってない、通っていっただけだということは間違いないですね。
#84
○説明員(五味雄治君) 個別の問題ですので、答弁は差し控えさせていただきますが、一般論といたしまして、形式上通ってないという場合と、形式上通ってあっても実質的には通ってないのだという見方は一般論としてあると思います。
#85
○橋本敦君 形式上だけなのか、実質上通ったけれども実質上収支に関係ないという調査結果なのか、その点はっきりしてください。収支に関係なかったとあなた答弁されたんだから。その点、どうなんですか、実質上関係はないということでしょう。
#86
○説明員(五味雄治君) 個別の問題でございますので、そこは差し控えさせていただきます。
 私が申し上げたのはあくまで一般論ということで、収支に関係がないというのは、形式上なっている場合にそれをそのまま認めるか、あるいは形式上通っていっても実質上認めない場合があるというのは、あくまで一般論でございますので。
#87
○橋本敦君 調査結果、収支に関係がなかったという事実の結果をあなたは報告されたのですよ。これは一般論じゃないですよ。調査した事実を認めた上で……。
 そこで、もう一つ聞きますが、この約二百七十万ドルについて、国税庁は、その二百七十万ドルがどういうルートでどこへ行ったかということまで聞きませんが、そういう調査をなさいましたか。そういう調査はされましたか。
#88
○説明員(五味雄治君) やはり一般論でございますが、調査という以上は、ベテランがやりますので、相当な程度の調査はやっているということでございます。
#89
○橋本敦君 そうすると、そこも含めて調査をされた可能性がいまの御答弁から推測されるのですが、私はこの点について幾つかの疑惑と疑問を持っているのです。
 その第一は、何ゆえに日商岩井が八億円という莫大な巨額な金の受取の、名義だけか領収証を出す、あるいは受取の、経由することをKALに認めるというようなことをやる必要があったのか。ただならない仲がなければ普通こういうことは起こらない。だから、この点について、このいわゆる領収証で示された、約二百七十万ドルのこの領収証は、一体何を意味するのか、これは重大な疑惑があるわけです。こういうことを日商岩井がやったというそのことの裏に、私は一つの問題として、この金が趙重勲に仮にリベート・バックされるとしても、通常の飛行機の売り込みでリベート・バックされる金より著しく巨額である。たとえばダグラスのボガード氏は、わが党調査団に対して、大体リベート・バックする金は一機当たり五ないし十万ドルか、大体そのくらいだと、こう言っております。トライスターの場合も、捜査その他で明らかになっておりますように、大体五万ドル、リベート・バックはそのぐらいだということになっている。それに比べると、この二百七十万ドルというのは非常に巨額であります。私は、この巨額になった理として、趙重勲という男が一体どういう男かということとの関係で考えねばならぬと思うのですが、ボーイングの727をKALがリースで借り入れるということがあって国会でも論議をされたのです。その際、新聞でも大きく報道されましたけれども、趙重勲はその価格に水増し、上乗せをして、それをただ一人外人の大株主である小佐野賢治氏、彼と折半をしたということが新聞で報ぜられたことがある。さらに、御存じのコーチャン回想録というのがありますが、このコーチャン回想録でも、コーチャンは、小佐野氏と会ったときに、小佐野氏のところへボーイングの売り込みに来ていたということがあった事実を、百八十三ページでありますが、九月十六日の日記で、国際興業本社に着くと、児玉はすでに来ておって応接室で小佐野と話し込んでいた。そして、会うと、小佐野はいきなりポケットから外人の名刺を二、三枚出して見せ、ダグラスやボーイングの人も会いに来ますよと、こうコーチャンに言った。つまり、ボーイングは小佐野に売り込みの話を工作していたということはこれから明らかですね。その小佐野に工作したということは、大韓航空の大株主である小佐野でありますから、ボーイングの極東販売、エリアとしては韓国も含めた、そういう話の中に小佐野が立っていたというこういう疑惑がある。これはコーチャン回想録からうかがわれる。そして、この小佐野氏と趙重勲とは、いま言ったように新聞で報道されたところによると、ボーイングの727のリース、売却等で水増しした金を山分けしたという、そういう疑惑も報ぜられているただならない仲である。こうなりますと、日商岩井がなぞの領収証を出したその背景には、KALにボーイング747を売り込むためには当然小佐野の力も借りねばならぬ。そして、小佐野、趙重勲のそういう関係で売り込みに成功したとして、果たしてそのリベートをいきなりKALの領収証で出すわけにいかないので、日商との関係で、小佐野が働きかけたか趙重勲が働きかけたか、二百七十万ドルということをやった可能性がある。そして、いま私が指摘したように一機五ないし十万ドルよりはるかに高いものは、分け前を求める人数が多かったからではないか、こういう疑惑が出てくるのであります。したがって、二百七十万ドルが実際にどこへ行ったか、ベテランの調査員は必ず調査しているだろうというお話でありますが、この金が一体どこへ行ったか、それが政界工作に関連をして韓国か日本に還流をして使われなかったという保証があるか、これも含めて私は徹底的に調べる必要があると思うのであります。たとえば還流の問題で言えば、ソウル地下鉄の例の二百五十万ドル、これは還流された事実はみごとにはっきりいたしました。あれは、米国三菱が韓国外換銀行に払い込み、それが東京韓国外換銀行にバックしてきたわけであります。私どもの情報では、この金は日本の日商本社でなくてアメリカの日商岩井に二百七十万ドルが入り、そこで領収証が出されているという関係だと、私どもの調査はこうなっておりますから、ここからの金の行き先がソウルだけなのか、あるいは日本へ何らかの形で送金され還流されたというそういう疑いがあるのか、私は疑いがあると見ているのですが、こういう点についてまで厳密な調査をお遂げになったでしょうか。
#90
○説明員(五味雄治君) 一般的に、やはりわが国の課税権が及ぶ範囲内で税務調査を行うということになっておりますので、そういう原理原則から御推察いただきたいと思います。
#91
○橋本敦君 ここで私はレイナード氏の発言を提起をせざるを得ないのですが、レイナード氏は、国務省韓国部長であった当時、彼が職務上見た記録の中に、韓国の日本の政界工作に関連をして、政治献金送り主の側にしばしば趙重勲の名前を見たと、こういうことをレイナード氏は公に広言をしています。だから、相手が趙重勲だということは、私は、日本への還流を含めて、また小佐野氏の絡みからいって、これが日商岩井とのどこかの関係で還流をして日本の中で工作に使われたという疑いがないと言い切れない。だから、これの徹底調査を私は要求するわけであります。
 いま私が指摘したような点について、まだ調査が不十分であれば、国税庁の再調査を要求しますが、いかがですか。
#92
○説明員(五味雄治君) 一般的に、具体的な情報その他が出てまいりますれば、国税庁といたしましてはそれを十分念頭に置きまして調査をいたすというのが基本的なスタンスでございます。
#93
○橋本敦君 だから、したがって、この問題が、私がいまこの国会で提起しているように、新たな疑惑に関連する重大問題だという認識に立って、いま私が指摘した二百七十万ドルの行き先、日本に還流してないかどうか、そしてソウルへ行った金がどうなったか、日本の課税権の及ばない範囲ではあっても徹底的に調査をする、そういう必要がいま私が指摘した関係であると思いませんか。そして、必要ならばIRSからのインフォメーションだから、逆にIRSに対してアメリカにおける金の動きについてこちらから情報の要求をするという手続もあり得る。これもやってもらいたい。検討されますか。
#94
○説明員(五味雄治君) 情報も非常に具体的で、しかもデータなどに裏づけられました信頼すべき情報ということがありますれば、これをもとにして十分その調査はしていかなければならないというふうに考えております。また、当然のことながら課税権が及ばない範囲については調査権限がございませんので、そういうおのずから限界があるということは御承知願いたいと思います。
#95
○橋本敦君 ボーイング社が国際関係の不正支払い、これに関連をして調査の結果が出されておる部分と、今後SECが出される部分があるのですが、その中にただ一つだけ外国の名前を伏せて報告せられている部分がある。私はこの名前を伏せられたボ社の調査報告、これが日本と韓国にこのように複雑に絡まる関係で名前が伏せられた、そういう関係で、名前が伏せられた部分はまさに私が指摘をしたこの件に関連をしているのではないか、こういうように思うわけでありますが、いずれにしろ、この航空機輸入に関連をしてSEC等から資料を検察庁は最近入手をされて本格的な捜査を遂げていかれるわけでありますが、この関係は米国国税庁――IRSから日本の国税庁に情報提供があった問題ですから、SECの日本に提供される資料の中に含まれて日本に来ている可能性がある。この点について伊藤刑事局長の御判断はいかがですか。
#96
○政府委員(伊藤榮樹君) すでに到着しました非公開資料の中にどういうものがあるか、私も存じませんが、いまの御指摘の問題はボーイング社のもののように思いますから、多分含まれていないのじゃないかという感じを持ちながら伺っておりました。
#97
○橋本敦君 刑事局長がおっしゃったのは、確かにボ社関係だからということではあります。しかし、日本の捜査が、私が指摘したこの事実も含めて、日商岩井のなぞの領収証にかかわるこのなぞを解明するためには、必要な捜査協力をボ社に対しても資料提供を求めるようにお願いしてもらわねばならぬ、私はそう思いますが、局長はいかがお考えでしょうか。
#98
○政府委員(伊藤榮樹君) 検察当局としても国会における御論議は非常に注目を払っておるわけでございまして、そういったことを念頭に置きながら多角的なダグラス・グラマン問題を中心とする捜査を展開するわけでございます。その間におきまして何らかの犯罪の容疑というものに関連をして解明の必要が生じました場合には、あらゆる努力をするということは当然のことでございます。
#99
○橋本敦君 そうすれば、この二百七十万ドルといういわば常識を超える多額のリベートの金が日本に還流したかどうか、あるいは趙重勲がこれをどういうように使ったか。日商岩井が何よりもこの領収証を一体――普通じゃ書かない、書いてはならぬ、商社の取引から言えばまさに異例中の異例の忌まわしい行為でありますが、こういうことをなぜ日商岩井は当時やったのか。こういう関係について、いまグラマン・ダグラス問題が捜査の焦点のようでありますが、このボーイングも含めて、検察当局は十分な関心を持って私が指摘をした問題も視野に入れながら捜査を進めていただきたい。これは捜査当局に対する要求でありますが、いかがですか。
#100
○政府委員(伊藤榮樹君) ただいま御指摘の点は検察当局も十分傾聴いたすと思います。ただ、問題は、それが国内における犯罪とどういうかかわり合いがあるか、こういうことでございますので、そういう観点からよく分析をいたしまして、何らかのかかわり合いがあるということになればもちろん捜査の範囲に含めると思いますけれども、先ほど来御指摘の範囲では直ちに国内犯罪と結びつくというわけにはまいらぬと思いますが、今後の問題でございます。
#101
○橋本敦君 今後の問題として、捜査当局に、検討をするという素材として、捜査当局と国税庁との間でこの件について調査をされ報告を出されたことはもうはっきりしたのですから、それに関連をして状況あるいは報告を国税庁に求めるということは検察庁として可能ではありませんか。
#102
○政府委員(伊藤榮樹君) IRSとわが国税庁との関係におきまして、租税条約に基づいて相互援助をされました関係につきましては、検察当局も第三者ということになりますので、先ほど国税当局に対して御質問になっておりましたような事柄についてストレートな情報を国税当局からいただくわけにはまいらぬと思います。検察当局は検察当局として必要があればアメリカ合衆国との間で努力をする、こういう一般的な姿勢でおります。
#103
○橋本敦君 わかりました。それじゃ、そういう姿勢でも構いませんが、とにかく政府機関相協力してほしいと思って私は言ったのですが、今後の問題の解明に必要であれば捜査当局はアメリカとの関係で協力依頼をやってもらいたい、以上、強く要求しておきます。
 ただ、伊藤刑事局長、私は直接にいま犯罪の嫌疑は指摘したわけではありませんが、問題の解明として、八億円に上る巨額の領収証、なぞの領収証を出したという事実は、これはやっぱり国会サイドとしても事件の日商岩井にかかわる航空機売り込みの全容を解明する上でも非常に重要な問題だと思うのですね。これは参考までに指摘をしておきますが、この金が入りました四十八年五月、八月、これは私が前に国会で取り上げて質問したことからも局長御存じかもしれませんが、太平洋ドル箱路線を航空協定を改定をして延長をやるということでKALが飛躍的に太平洋線に進出をする、これが御存じの四十八年五月にこの航空協定の改定が日本との間でなされるわけです。そしてますます日本の航空関係における一方的にKALに有利な状況が相互主義じゃなくて進んでしまうわけですね。そしてこの航空協定の以遠権の獲得という年であります。同時に、四十八年の秋は、御存じ金大中事件の政治決着という事実を見まして、韓国の政界、日本に対する政界工作が云々されるという疑惑の年でもあるのです。だから、私は、こういうような日本、アメリカ、韓国を結ぶ国際的な大きな忌まわしい網の目が四十八年というのはあった年だという印象をぬぐい切れない。だが、ここで具体的に犯罪はこうあるということは指摘しませんが、このなぞの領収証の解明を突破口に徹底的に航空業界をめぐる動きの解明を可能な限り政府としてもやってほしい、こういうことを考えているわけであります。そういう観点からグラマン・ロッキード捜査、ボーイングにも関連をして、今後国会で指摘された問題は可能な限り徹底的な捜査をやるということで大臣の御決意を伺いたいと思います。
#104
○国務大臣(古井喜實君) いまのお話のように、また刑事局長申しましたように、ボーイングの関係がいまお話に出ておりますが、これについては、お話しのような事情があるのかないのか――あるとおっしゃっておるのですけれども、そこに犯罪ということの相当濃厚な疑惑、嫌疑が起こりますれば、そこにある犯罪の追及はしなきゃならぬことになるのでありますが、そうなればアメリカとの司法取り決めでまた資料を要求するとかありますけれども、いまのお話の段階で犯罪の嫌疑濃厚なりとしてそうそっちの方に進んでいくかどうかは、これはボーイングの関係は研究した上でないと何とも申し上げかねる、そう思っております。必要なら事はやらなきゃなりませんけれども、いまはそういうふうに思います。
#105
○橋本敦君 検察庁は、今度のグラマン・ダグラスで捜査開始宣言をされ、SEC資料が来るまで国内の基本的な調査を進められてきたわけですね。これは局長が何度も御答弁になっておられる。そういう事件の大きな枠で基礎的な捜査を遂げていくというそういうことの中に、具体的な犯罪が起こっていけばそうするのはあたりまえですから、事件を犯罪の嫌疑の有無を含めて調査をするという大きな視野に立って進めるという姿勢が要るのではないか、それでボーイングも含めて検討すべきだというように私は大臣の見解を求めたつもりですがね。要するに、将来の捜査発展いかんによってはボーイングも含めて徹底的に航空機疑惑は解明されるということに変わりはありませんか。
#106
○国務大臣(古井喜實君) ボーイングの関係は先ほど申し上げたようなことで今後は対処していきたいと思っております。従来のことは従来のとおりでやってみます。
#107
○橋本敦君 それじゃ、ボーイング関係はこれで終わりまして、時間がありませんので、金大中問題で一、二点だけお伺いをさしていただきます。
 警察庁も御存じと思いますが、最近、新聞が報ずるところでは、金大中氏みずからKCIAの数人による犯行だという確実な情報を得たということを記者に語られて、それが報道されております。この報道について、私は捜査に苦労しておられる警察当局は重大な関心をお持ちかと思いますが、いかがでしょう。
#108
○説明員(鳴海国博君) 今回の金大中氏の発言につきましては、私どもも報道で承知いたしておるところでございます。その中で、六人のいわゆるKCIAの犯行という点に限って申し上げてみますると、この点につきましては、金大中氏をホテルから拉致した犯人が六人であったということは、すでに事件の直後の金大中氏の供述などで知られておるところでございます。また、いわゆるKCIAI韓国中央情報部の犯行と、この点につきましては、これまでもレイナード発言を初めたびたび言われていることでございまして、こういった観点から見ますと、ことさら新たな関心を引く事項は含まれていないというように感ずるわけでございます。ただ、この金大中氏の発言の裏づけとなる情報を入手されておられるという点につきましてでありますが、その入手しておられるという情報の内容が、すでに過去公表されました金炯旭氏の証言といったことを指すものであるのか、あるいはそれともいままでに出ていない新たなものを指すのか、この点は不明でございますが。が、しかし、こういった点なども含めまして、金大中氏に来日の機会があらば日本において同氏から事情聴取をいたしたいと考えておる次第でございます。
#109
○橋本敦君 法務大臣、いま警察庁もこの金大中氏が言う情報の内容が新しいものか確実なものか関心を持って、来日されれば被害者ですからぜひ事情を聞きたいという意思を表明されました。当然私は金大中氏の来日を要請をしてこの捜査を遂げるべきだと、私はこう思うのですが、法務大臣、いかがですか。
#110
○国務大臣(古井喜實君) いまの日本の法の側であの問題について前回のときはしっかりした事実がつかめなかったと、そういうことを基礎にして政治決着をつけたわけです。ですから、こっちの方に相当しっかりしたことが新しくつかめれば、それを基礎にしながらあの問題をもう一遍検討しなきゃならぬでしょうが、お話しの金大中氏御本人の発言だけでそこに踏み込んでいくと……
#111
○橋本敦君 踏み込めと言っていない。警察庁は来日の機会があれば調べたいと言っているから、来日を要請したらどうですかと、こう言っている。踏み込めとは言っていないですよ。
#112
○国務大臣(古井喜實君) 要請するのが当時のはっきりした事実を解明するために要請することにあの発言だけでいくべきものかどうか、これはちょっとまたよう考えてみなければ、あの発言だけからではそうは言えないのであります。
 それからこれはまああなた十分御承知ですけれども、そう手軽に来日を求めると言って、韓国の政府が、まだあれは刑の停止を受けておるだけで受刑者の立場におるんです、出すか出さぬかも向こう側はね、そういうこともあるんですから、考えてやらぬと、外交としてはトラブルを起こすだけにならぬとも限らぬし、そういう面も私の所管というわけじゃありませんけれども、考えなきゃならぬでしょうから、これは来てもらいますと、その方向にいきますとはすぐはいま言ってしまえないと思っております。
#113
○橋本敦君 外務大臣、法務大臣、総理、この間で協議なさったらどうですか。
#114
○国務大臣(古井喜實君) これは必要なことは何ぼでも協議いたします、必要なことはですね。
#115
○橋本敦君 この件について協議してくださいと言っているのです。
#116
○国務大臣(古井喜實君) よくそのお話は伺っておきます。
#117
○橋本敦君 終わります。
#118
○委員長(峯山昭範君) 本日の調査はこの程度にとどめます。
    ―――――――――――――
#119
○委員長(峯山昭範君) 民事執行法案を議題といたします。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#120
○橋本敦君 それでは、民事執行法案につきまして御質問をさしていただきたいと思います。
 まず最初に、この法案が提起をされまして、国会審議の間、これが労働組合運動を抑圧もしくは規制するように使われないかというそういう向きの心配が提起されまして大変論議を呼んだことになったわけでございますが、その関係については、事実上、法務省の方も御協力をいただきまして、その心配がないように、法案の五十五条なりあるいは七十七条の修正、八十三条の修正等、こういう話が進んでおることを私は喜ぶわけであります。そこで、その問題について、そういう修正も含めまして、今後労働者が不況、倒産の中で、職場で生産再開、解雇反対を要求して、正当な職場活動を展開するという事例については、それをあえて抑圧するようなおそれはないというように局長も結論的には確信を持ってお考えいただいておりますかどうか、この点をまず伺いたいと思います。
#121
○政府委員(香川保一君) 当然のことでございますが、そういった民事執行法の執行あるいは運用によりまして労働組合の正当な運動を弾圧するというふうなことは絶対ないというふうに確認されております。
#122
○橋本敦君 私も議員に出さしていただくまでに、二十年近く弁護士をさしていただいておりまして、多くの労働事件にも関与したわけでありますが、実際に解雇、倒産という事態になりますと、労働組合は労働債権の確保あるいは生産再開を要求して職場で闘いを起こしてきたわけであります。その際に、工場に赤旗を立てる、あるいは解雇反対という大きな看板を入り口に立てる、そういったことで労働組合としての要求を公に明らかにしながら闘ってくるのが通例ですが、そういう赤旗を立てたりあるいは生産再開要求といったような看板を掲示をする、こういったことは、その不動産の価値を減少する、もしくはそのおそれがある、あるいは引き渡しを困難ならしめる行為ということにはもともと当たらない性質のものだと私は考えておりますが、いかがでしょうか。
#123
○政府委員(香川保一君) 法律的にはまさにお説のとおりだと思います。
#124
○橋本敦君 そこで問題なのは、建物にビラを貼付した行為が器物損壊罪に該当するといったような判例もある関係で労働組合がなお心配するわけでありますが、そういう器物損壊罪に当たるかどうかという具体的なケースの具体的な裁判所の刑事事案の判断とは別に、建物をことさらに棄損するというようなことのない通常容認される方法で看板等掲示する場合は、この執行法に言う「おそれ」にも該当しない、こう考えてよろしゅうございますか。
#125
○政府委員(香川保一君) そのように解されて間違いないと思います。
#126
○橋本敦君 では、次に、執行法の中身に若干踏み込んでお尋ねをさしていただきたいと思います。
 今度の執行法は、本当に全面的な改定であり、いわば執行関係法の整理と近代化という方向がうたわれております。そういう中で一つの問題は、債権者の権利の迅速な行使と実現ということが出ておるわけでありますが、そのこと自体私はあえて反対をしないのですが、それを貫いていく関係でいわゆる不当な不服申し立てによって強制執行手続が著しく遅延されることを防止したい、こういうお考えもあるようであります。そういう考え方から、いわゆる執行抗告、執行異議、この関係を整理されたというようでありますが、そういう観点から見て、十条、十一条の関係でどういう整理をし、どういうメリットがあるとお考えになっていらっしゃるのか、その点はいかかでしょう。
#127
○政府委員(香川保一君) 御承知のとおり、現在すべて即時抗告が認められておるわけでありまして、即時抗告は御承知のように上級裁判所に対しての申し立てであるわけであります。そういうことから、実際は実質的には何ら理由がなくても、執行を遅延させる意図で即時抗告がいわば乱用されておるという経験が長い間あるわけでございまして、これが現在の強制執行あるいは競売が非常に日時がかかるということの大きな原因だろうというふうに思っておるわけであります。
 この競売、強制執行が非常に時間がかかるということは、これは債権者にとっても不利益なことでございますけれども、債務者にとっても決して利益なことではないわけでございまして、そういうことから、今回の民事執行法案におきましては、債権者、債務者、あるいは利害関係人の利害を調整しながら、できるだけ早く、しかも高く物が売れるようにしようというのがまあ簡単に申しますれば骨子でございまして、その中におきまして、いま申しました不服申し立ての制度を合理的に整理しなければならない、こういう観点から、今回の法案におきましては、執行裁判所のする裁判でこれはやはりその時点で不服申し立てを認めておかないと関係者にとって非常に大きな損害が生ずるおそれがあるというふうなものを拾い出しまして、それについて執行抗告を認める。これは当然上級裁判所の判断を仰ぐことになるわけでございます。それ以外のものにつきましては、やはり不服があれば原審――執行裁判所に対しまして執行異議の申し立てを認めるということにいたしまして、御承知のとおり執行異議の関係ではさほど時間がかかるわけではないわけでありますので、そういった調整をしてできるだけ利害関係人の利益を害しないように考慮しつつ競売が早く進むようにということで振り分けをいたしておるわけでございます。
#128
○橋本敦君 趣旨はわかりました。
 そこで、「執行抗告」の第十条で「特別の定めがある場合に限り、執行抗告をする」という趣旨もいま御説明になったのですが、この「特別の定め」というのは具体的にどういうことになりますか。
#129
○政府委員(香川保一君) これは当該執行裁判所の執行手続に関する裁判がいろいろ規定があるわけでございまして、その規定におきましてこの裁判に対しては執行抗告ができるというふうな規定の仕方で執行抗告を認めておるわけでございますが、まあ例を申し上げますと……
#130
○橋本敦君 一例で結構です。
#131
○政府委員(香川保一君) 十条の五項で執行抗告が不適法ということで却下決定かございますと、これに対してさらに執行抗告ができるというふうな関係、各所にそういう規定があるわけでございます。
#132
○橋本敦君 最高裁にお伺いしたいのですが、この十条の第四項で、「執行抗告の理由は、最高裁判所規則で定めるところにより記載しなければならない。」と、こうありますので、最高裁規則がどうなるかということの関係も法案の審議では非常に重要なんですが、この点についていまのところここで言う最高裁規則でどういう定めをする御予定なのか、伺わしていただきたいと思います。
#133
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 規則案の中身はまだ固まっておるわけではございませんが、事務当局限りで検討しているものといたしましては、執行抗告の理由には原裁判を違法とする事由を具体的に記載してもらいたいという趣旨で、そのような規定を設けるつもりでおります。それから原裁判を違法とする事由が法令の違反であるという場合には、その法令の条項及びこれに該当する事由、また、事実の誤認であるということを理由にする場合には、その事実を具体的に摘示すべきであるとい、ことなどを最高裁の規則で規定するように検討しておるわけでございます。
 これは、先ほど法務省民事局長も申し上げましたが、即時抗告をする場合に全く理由を記載しないで単に抗告を申し立てるというふうな例が多いものでございますかち、そういうことによる引き延ばしを図ることを防止しようという趣旨でございます。
 なお、この法案の十条の四項の規定からも明らかでございますけれども、最高裁判所の規則で定めるのはそういったようなことでございまして、執行抗告の理由を制限するという趣旨は全く含まれておらないものでございますから、最高裁規則でもそのようなことは考えておらないわけでございます。
#134
○橋本敦君 こういうことなんですね。即時抗告だけ出して理由書を出さないでほったらかして遅延させる、これは例としてあるかもしれませんが、通常は、即時抗告を出せば、その理由は、自分の主張ですから、ちゃんとわれわれはやるべきだと思うし、やっていると思うのです。それはともかく、いまおっしゃったような、たとえば最高裁規則で事実が誤認だというならその事業を明確にする、そしてまた関係法令に違反して違法だというならその関係法令を摘示せよ、これは規則で決めなくても、常識的に言えば当然なことなんですね。それで、私はそうお書きになることにあえて反対しませんが、問題だと思いますのは、この執行抗告の申し立てが原裁判所で申し立て自体が不適式だというようになった場合は、原裁判所は第五項でその申し立てを却下してしまう。つまり、実体判断の審理に入っていく前に却下をしてしまうということもあり得る。そうなりますと、最高裁規則で定めるということは、最高裁規則に定めたとおりになっていない、その定めに違反しているということで却下ということもあり得るといたしますと、十分慎重にこれを決めないと、それに反し、最高裁規則に適式でないというだけで却下されるという心配を私はするから指摘をして質問をしたのですが、理由を制限するつもりはないと。これはいいですよ。いま私が言った関係でそれだけで形式的に却下されるという心配が私はないとは言えないので、その点がないようにせねばならぬと思うので質問しているのですが、いかがでしょうか。
#135
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 先ほどのような趣旨で規定を設けたいと考えておるわけでございますから、執行規則が制定された場合には、それに従った最小限度の記載は抗告人に要求したいところでございます。いまお説のように、理由があってするのであれば、普通ならば、拡告状に理由を記載して提出されるのが通常でありますが、そういう場合には新法になりましても五項で却下されるということはあり得ないというふうに思われるわけでございます。この五項で却下されることが予想されるのは、規則に掲げてある事項も記載していないような場合、あるいは仮に何か書いてあっても全く理由を付したと認められないというふうな場合に限るわけでございまして、そういう御心配のようなことは起こらないのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
#136
○橋本敦君 私が指摘した点も踏まえて慎重に規則はつくってほしいということはお願いしておきます。
 それからちょっと順序が飛びますが、執行官の皆さんの問題と執行体制の問題について先にちょっと聞いておきたいのですが、今回の執行法が定められたことによって執行官の権限の強化といいますか、地位の向上といいますか、そういう面はどういう方向で実現されるとお考えでしょうか、これは法務省と裁判所と両方にお伺いいたしたい。
#137
○政府委員(香川保一君) たとえば不動産に対する強制執行の場合に、執行官が裁判所の命を受けまして現況調査をする。この現況調査というのは、自後の競売手続には非常に重要な関係を持つ、そういったことを執行官の責任においてやらせるというふうな点が最たるものだと思います。
#138
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 法案の規定の上からでは、不動産執行、動産執行それぞれについて執行官の権限がかなり広められているという面があるかと思います。特に現況調査の点がそれでございますし、それから競売を実施する場合の競売場における秩序の維持についての権限と申しますか、そういう点についてかなり拡大されているというふうに考えるわけでございます。
#139
○橋本敦君 いま、執行官の権限が強化される一つとして現況調査ということが言われました。この現況調査で執行官がつくる調書というのが権利関係を含めた以後の執行手続の中で、訴訟資料的にも実体的にも重要な意味を持つという意味では執行官の責任は非常に私は重大になってくるというように思います。だから、責任が重くなったということが同時に地位の向上ということになるかどうかはこれは問題であります。この責任が重くなったということを考えますと 私はまず一つには、この現況調査というのは、現場へ行って占有関係を調査する、あるいは調査報告書をつくるに当たって関係資料のさらに整理調査をする、あるいは登記関係その他非常に高度の法律的な対抗力その他についても一定の判断なり見通しを持たねばならぬ。そういう意味で、責任と同時に仕事の内容の正確性についても重い責任が一層実体的にも加わってくる。こうなりますと、私は現在の執行官体制というものをこれにふさわしいようにやっていかなくちゃならない、こういう課題があると思うのです。その問題の一つとして、人数が少ないと、こういった現況調査その他の審査報告を厳密にやるというのは、これは執行官は不動産現況調査だけやるわけじゃありません、動産執行その他いろいろたくさんありますから、人数がやっぱりふえないと、私は十分に職務を保障してあげられないと思うのですが、私が見るところ、大きな裁判所、東京、大阪等でも、執行官が不足して労働強化、過重になっていらっしゃるのじゃないかと心配しております。この間の実情は、裁判所、いかがでしょう。
#140
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 現況調査に要する事務量も含めまして執行法によって執行官の総体的な事務量がどの程度増加するかということは、あわせて執行規則の制度といいますか、制定の完了を待たないとはっきりしないわけでございますが、現況調査の点だけをとってみますと、これは一つの手続の中でのある調査事項について、従前に要求されていたよりは高度な、しかも詳細な調査を要求される、その面では自分で能力の開発をしなければならない、また、裁判所の方でも、それに対して研修なり教育をしなければならないという面での負担の増が出てまいりますけれども、それはその事件の執行官の事務量がその限りで増大するということにあるわけでございまして、それが全体の執行官の執務事務量の増大につながるかどうかということまではまだにわかに断定できない面があるわけでございます。もちろん、そういう現況調査の事務が高度になってくるということに対しては、それに対する手数料の額というのはそれに応じたものに改定じていかなければならないということはございますけれども、それによって人員の増加まで考えなければならないかどうかというのは今後の体制の整備を待ってから検討していきたいというふうに考えておるわけでございます。
#141
○橋本敦君 手数料の改定等も考えねばならぬということをおっしゃったので、そのことは後で触れますが、現状のままで人数はいいと。大阪は何名、東京は何名いらっしゃいますか。私は足らないと見ているのですが、そして一人当たり何件ぐらい平均して一カ月に扱っておられますか。
#142
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 人数の点は東京地裁が十七名、大阪地裁が七名でございます。
 この執行法案につきまして、東京地裁の執行官その他の執行官の意見を聞いておりますけれども、これによって人員をふやしてもらわなければ困るという声はまだ実は聞いておらないわけでございます。
 失礼いたしました。いま大阪地裁は七名と申し上げましたが、八名でございます。
#143
○橋本敦君 それをよく調査してほしい。弁護士会からも、執行官は増員してほしい。というのは、執行が重なってなかなか段取りがうまくいかないということで弁護士さんが困っておられる例も実際私は大阪弁護士会で聞いてきておるのです。だから、増員については、いま直ちに必要だと思わぬという御答弁で私はなはだ残念なんですが、今後執行官の増員も含めて実情の調査をもっとやってもらいたい。たとえば一人当たり一カ月に何件ぐらい処理されているか、そういう統計はありますか。
#144
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 現在手持ちはございませんが、執行官につきましては定員というものがございませんので、事務量に応じて人をふやす、あるいは減らすということをしておるわけでございまして、それぞれの庁の執行官室の執務量と、それに対する現地の執行官の要望等を勘案して員数を決めておるわけでございますので、必要があればふやすということは一向に構わないことでございます。
#145
○橋本敦君 わかりました。
 これは同僚議員からも指摘をされた問題ですが、昭和四十一年の衆議院の方におきまして執行官法成立に際して決議がなされてきたわけでございます。こういう決議がその後どういうふうに進められたかの御答弁がありましたが、もう少し突っ込んで私は聞きたいのです。
 いま局長が答弁されたように、今度責任が加重されることによって執行官の研修等も一層必要になるということはお認めになった。これは前から研修をしっかりやるようにというそういう附帯決議の趣旨に沿った努力もしてこなければならぬのですが、今後一層必要になってくる。そのために今後の方針としておっしゃる研修は、執行官だけじゃなくて、執行官のもとで補助的な仕事をなさっている補助事務に従事していらっしゃる皆さん、この皆さんも含めて向上できるような研修ということが私は実際は望ましい。というのは、補助者は執行官と本当に同行その他なさったり、事務処理をして重要な役割りを果たされていますね。だから、執行官も補助者も両方とも資質が向上するような研修を執行官や補助者の負担にならない形で適正に行っていく必要があると思いますが、この点についてのお考えなり、おおよそめどのある計画なり、ございますか。
#146
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) いままでの研修と申しますのは、裁判所で実際にやっておりますのは、直接には執行官を対象にしたものでありまして、その執行官に対する研修を通して執行官が自分の使っている職務代行者にまた研修をしていただくということを期待しておるわけでございます。そのほかにまた各庁で行われております執行官の研修にオブザーバーとして執行官あるいは事務員の出席を認めるという形でやっております。しかし、新しい制度になりました場合には、それに対しての教育研修というものが必要であることは申すまでもございませんので、そういう執行官職務代行者あるいは事務員に対する研修の分も含めて予算要求をしていきたいというふうに考えております。
#147
○橋本敦君 それは予算要求その他で大いにやってもらいたいと思います。
 執行官の職務代行者あるいは補助者、そういうことでやっていらっしゃる皆さんというのは、これは身分的に言うとどういうことになりますか。身分の安定性はありますか。
#148
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) これは執行官との私的な契約でつながっている人たちでありますので、公務員としての地位は持っておりません。個人の使用人という形になっておるわけでございます。
#149
○橋本敦君 そういう関係で、たとえば一人あるいは二人しか補助者がいないというような場合も執行官によってはあるわけですが、そこで働く人たちが国の法執行にかかわる重大な仕事に補助者として従事しながら身分的にはきわめて不安定――たとえば、この人たちの労働条件について、大体給与はどのぐらいになっているか、あるいは健康保険、あるいは災害保険こういったものの保険に全部加入しているかどうか、こういう実態を裁判所は御存じですか。御調査なさったことがありますか。
  〔委員長退席、理事上田稔君着席〕
#150
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) そういう点の調査をしたことはございませんので、実態は申しわけございませんけれども把握しておらない実情でございます。
 ただ、たとえば事務員を例にとって申し上げますと、事務員は大体現在全国で三百名足らずおりますが、そのうちに一人の執行官について一人の事務員を使っているというのが三分の一の百名程度ございます。それから二人というのが三十名、三十庁程度、そういうことでございまして、その一人あるいは二人という場合の事務員というものがどういう人たちであるかということについても、これも実態は把握しておりませんけれども、場合によっては執行官の身内の者である親族がそういう手伝いをしているという場合がございます。それからパートタイム的に使っているという面もございまして、労働形態というのが非常に非近代的と申しますか、そういう形になっておるのではなかろうかというふうに思われるわけでございます。そのほかに、たとえば十名以上の事務員を使っているというところは東京等四庁程度でございまして、そこではかなりの一般職員、一般公務員並みの給与体系というものも恐らくでき上がっているのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
#151
○橋本敦君 その点、裁判所が全然把握されておらぬということがよくわかったのですが、これはやっぱり調査なり何なりされる必要がありますね。いま、あなたがおっしゃったように、この事務所で働く皆さんというのは、これは本当に前近代的な私的労働関係ということの中に置かれて、身分の保障はないし、賃金の将来にわたる保障というのもむずかしいし、本当に苦労して、しかも、何度も出ておりますように、人に喜ばれない暗い面の仕事を耐えてやっておられるのですね。だから、今度の執行法ということで執行手続の近代化ということはうたい文句になっているけれども、こういう人たちが近代化ということとは縁もゆかりもないまま残されるというのは私はよくないと思う。こういうことになってくる一つの理由として私は手数料制度というものがやっぱりあると思うのです。手数料制度であるから、まさに手数料の範囲で人を雇う以外に執行官も方法がない。そうなりますと、手数料の範囲で人を雇うとなれば、みずからの所得ということも考えねばなりませんから、ぎりぎりの人数しか雇わないということで、実際は安い給料で大変多くの労務をしなければならぬという、そういう関係になっている。
  〔理事上田稔君退席、委員長着席〕
執行官も、そういうわけで、手数料制度ですから、それ自体不安定ですから、仕事量に見合う人数を十分確保しておくということはなかなか容易でない。お互いの自己矛盾関係にある。こういうわけで、手数料制度というのは、これは基本的には私は補助事務員も含めて公務員制度体系に組み込んで固定俸給制度ということを将来目指さねばならぬ、こういうように思っておるのですが、この点についてはなかなかそうはいかないという御答弁がありました。そういう答弁をされる前に、いま私が指摘した実態調査さえやっていないのですから、やられたらいかがですか。
 さらにまた、執行官の皆さんのアンケートの結果を私は持っておりますが、この点について執行官の皆さんのアンケートによりましても、手数料制度がいいというのは少数の数ですよ。この点について、アンケート結果をごらんになったことが局長ありますか。
#152
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) いまおっしゃったアンケートを見たことはございません。
#153
○橋本敦君 いまのようなことで、実際、実情を裁判所は御存じないのだな。私がアンケート結果をいただいておるところによりますと、これは会員数三百三十八名中、俸給制度がよいとおっしゃっている執行官が二百四十五名、手数料支持が五十七名、未回答三十六名、こうなっておりまして、ほとんど多数の執行官が固定俸給制度がいいという御意見のようですよ。だから、手数料制度というのは、あなたが同僚議員に回答なさったように、仕事をすればするほどそれだけ収入メリットがあるという意味で捨てがたいとおっしゃったけれども、しかしながら、国の執行事務を身分は公務員という立場で厳正に行っていくというそのことを貫いて、それに見合う身分保障がなされるならば、不安定な手数料制度よりも固定俸給制度の方がよいというこういう考え方を執行官の皆さんは持っていらっしゃる。このことは補助事務に従事される方のもちろんの要求であります。だから、私は一挙にこれはむずかしいと思うけれども、一度執行官の御意見、補助事務員の実態調査、アンケート、こういったことも、裁判所は、一遍にはやれないかもしれませんが、この民事執行法がわが国執行体制の近代化というのであれば、今後そういう実態調査も行って検討を進めるということで一遍御検討を願う必要があると思いますが、いかがでしょう。
#154
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 執行官の現在やっております手数料制度を、直接固定俸給制というふうに持っていくということは、執行官法制定当時、あるいはその前からの、要するに執行制度の近代化という面では欠くべからざるものだということで、それが近代的な執行制度の前提とされているということは重々承知しておるわけでございまして常に念頭を離れたことはないわけでございますが、先ほども申し上げましたように、長年のそういう慣行を背負っている、歴史を背負っているものを急に変えるというわけにもなかなかいかない面もございます。
 それから執行官の平均年齢が五十八歳でございますが、そういう年齢の人が裁判所の一般職員でありますと、もうすでに退官をする時期になってきている。そういう高年齢の人を一挙に裁判所の中に入れてしまうということが果たして全体の枠の上でできるかどうかという問題。それから収入がいろいろの面で格差がございますが、それも一律の俸給制で実行できるかどうかという問題。それからさらに、執行官についております、先ほどの執行官の職務代行者、それから事務員、そういう者も、執行官を俸給制で公務員の中に取り入れるということになりますれば、そういう人たちの処遇も考えなければならないというふうな面で、非常に裁判所全体の制度の問題に響いてくるわけでございますので、なかなかむずかしい面がございます。御指摘になりました点は、制度の問題として、法務省の方とも御協議をお願いしなければならない点でございますけれども、執行法が制定されました機会に、改めて今度は新しい問題としてまた早急に解決をしていかなければならない問題だということで検討を続けさしていただきたいというふうに考えております。
#155
○橋本敦君 ぜひ検討を続けてください。執行法の根幹だけが近代化して、実際にそれが生きて動く部分で執行官やそこで働く人たちが前近代的な労使関係のまま放置されるというのは、これはこの法案にとって好ましくありませんからね。いま御指摘のむずかしい問題は私もわかります。わかりますけれども、ほうっておいてはならない問題ですから、いま局長がおっしゃったように、今後改善を目指して検討するということはぜひお願いをしておきます。
 それで、この手数料制度に関連をして私は問題だなと思っているのは、刑事送達の問題があるのです。東京の例で結構ですが、刑事送達は年間どれくらいの数がございますか。
#156
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 東京の場合について申し上げますと、昭和五十一年が五万四十九件、昭和五十二年度が三万百三十四件、こういう件数になっております。
#157
○橋本敦君 どういう種類のどういうところへの送達が多いですか。多いといいますか、ありますかと、こう聞きましょう。そこまで、多い少ないはわかりませんでしょうけれども、刑事送達というのはどういう内容のものですか。
#158
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 私、刑事の方を担当しておりませんものですから正確なところはわかりませんが、拘置所、弁護士会あるいは検察庁というふうなところではなかろうかというふうに思っております。
#159
○橋本敦君 これは手数料を払いますか払いませんか。無料でしょう。
#160
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 手数料は払わないと聞いております。
#161
○橋本敦君 むちゃくちゃじゃないですか。執行官が手数料制度だと。そこで働いている職員の皆さんもそれに関連をして重大な関連があるわけですがね。手数料制度を維持しながら、年間五万件、三万件という書類送達を、拘置所へ行ったり弁護士会へ行ったり、検察庁へ行ったり、これが執行官の事務に入っていて、そうして五万件も三万件も、タクシーを使うか地下鉄に乗るか知りませんが、苦労してやって、それが無料だと。国はこれでいいのですかね。長年の間無料で奉仕さしている。それで執行官の地位の向上だ、近代化だとよくまあ言えるものだと、私は思っているのですが、どう考えられますか。手数料制度だって、民間の人は金を払わぬとやってもらえぬ。お役所はただで幾らでもやる。年間五万件も三万件もやってもらえる。それで負担は執行官と補助員の皆さんにかけている。まあ、いままでよくこんなことで放置してきたものだと私は思うのですが、これはひどいじゃありませんか、こんな無料というのは。国が人をただ働きさせるなんということをやっちゃならぬですよ。法務大臣、どう思われます。これは私はひど過ぎると思いますよ。どうですか、これは。改善しようじゃありませんか。
#162
○国務大臣(古井喜實君) 他の例も十分知らぬで軽率に感想を申すのもどうかと思いますけれども、いま伺っている範囲では、ずいぶんひどい話だなあという感じを受けました。しかし、それ以上私はちょっといま申し上げかねます。
#163
○橋本敦君 じゃ、局長、いかがでしょう。
#164
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 根拠としましては執行官法の附則にあるようでございますので、この附則がどういう趣旨でできたかということについては、申しわけございませんけれども、私はいま存じておりません。
#165
○橋本敦君 その附則の趣旨を聞いているのではない。ひどいという実態だ。附則がある。それは改正すべきだと私は思っているのですが、最高裁は、これはこのままでいいとお考えですか。改正をしてやっぱり手数料を払うようにしてあげるべきだと、こうお考えですか。お考えを聞きたい。
#166
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 検討さしていただきたいというふうに考えております。
#167
○橋本敦君 本当にこれは検討してもらわなくちゃいけませんね。宮崎委員もたびたび指摘されたのですが、世の中の矛盾の終末の解決として本当に人にも喜ばれないところで苦労していらっしゃる皆さん、それの地位や権利の向上ということもあわせてやらなければならぬのに、ただで国の仕事はさせる、これはひどいです。だから、局長、いまおっしゃったように検討すると、附則改正も含めて検討するということをこの法案が通る機会にはっきり明言されたものとして、私は期待して今後見ていきたい、こう思うのです。
 それからもう一つ、これは各委員からも指摘されたのですが、執行事務やあるいは競売入札、これをやるところをもっと明るいすがすがしい場所にできないかということで裁判所もそれなりに御苦労なさって、執行官室の整備その他をおやりいただいておるようでありますが、今度、この法改正に伴いまして、たとえば動産の競売につきましても、競りだけじゃなくて随意契約ということもあり得るし、それから不動産についても競りだけじゃなくて入札あるいは最高裁規則で定めるその他の方法ということで、この法の改正趣旨それ自体の中にも、提案理由説明書で、一般の市民が広くその売却手続に参加できるようにもしたいということが言われておりますね。これはいいことですから、どうやってそうするかということが問題であります。暗い部屋で暗いところでというあのイメージを脱却して、一般市民も参加しやすい方式をとる。これは同時にそこで働く人たちにとってもよいことであります。これは卑近な例でありますが、いわゆる質屋さんのお店で質流れ物品を売っているところなんかは、町の中で公然ときれいな店舗を構えて、そしてそこで市民が好きなように買い物をする、一般のショッピングと変わらない明るい雰囲気になっております。昔はそうではなかったのです。そこまで裁判所がやったらいい。やれるとまでは申しませんけれども、一般市民が広く参加し得る明るい手続で競売その他を実施していくとなりますと、これはどうやったらいいか、私もなかなかむずかしいのですが、できたら裁判所の構内に物品展示場あるいは明るい雰囲気の競売場を、地下一階あるいは建物の端っこということじゃなくて設けることによって、一般市民が参加しやすい開放的な雰囲気のものをつくらにゃならぬのじゃないか、こう思っています。これは将来大変な計画になりますが、この提案理由説明書でも言っている一般市民が広く参加し得るようにという趣旨にも合致するような将来の展望としてどういう構想なりお考えをお持ちでしょうか、これは裁判所の方にお聞きせざるを得ないのですがね。
#168
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 現在の規則案を検討しております段階でまだ具体的な構想は持っておらないのが実情でございます。ただ、法にもありますように、競り売りあるいは入札以外に物件に応じて柔軟な売却方法をとるように規則で決めたいというふうに考えておりますが、その具体的な方法をどうするかということにつきましては、国税の関係あるいは諸外国で行われているような事例なんかを参考にして考えたいというふうに思っておりますが、ただいま橋本議員が例としてお挙げになりましたような陳列場を設けるというふうなことが果たしてうまくいくかどうかということには、ちょっと現在のところでは自信がないというのが偽らざるところでございます。
#169
○橋本敦君 将来検討すると言うのですから検討してほしいのですが、いまは具体的構想はないと。この民事執行法は、法務省、法務当局が衆知を集め、多年御苦労願って、法体系としては大きく進んだものをつくられたと敬意を表するのですが、裁判所が実際の具体的執行手続についてこういった法体系の転換と近代化に具体的についていくだけの構想も努力もまだ持っていない。これは法務省が法案についてなさった努力に比べたら、裁判所は本当にまだまだ足りませんよ。このままこの法案を通しちゃったら、それこそ下の方の大事なところで近代化は底抜けでいってしまいますよ。これはいまのようなまあ言ってみれば頼りない答弁で、私はこの法案はすぐ実行できる段階にならぬというぐらいに思いますね。私は、裁判所は、もっともっと熱心に、執行官やそこで働く人たち、一般市民との関係で、もっともっと具体的な構想を、法務省が法案自体について一生懸命勉強をなさったことと合わせてきょうまでもやってくるべきであったと思います。私は努力が足らぬと思う。こういう状態では、この執行法案が通って結構だというふうに私は言いにくい状態にあるのですが、今後せいぜい努力をお願いしておきます。
 私の予定した質問時間はきょうはこれでおしまいでございますので、あと次の機会に三十分ほどいただいて、次に法務省に対して条文に即して数点だけ伺わせていただきたい。きょうはこれで終わりたいと思います。
 どうもありがとうございました。
#170
○委員長(峯山昭範君) 本案に対する本日の審査はこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時三十五分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト