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1978/02/27 第87回国会 参議院 参議院会議録情報 第087回国会 法務委員会 第5号
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1978/02/27 第87回国会 参議院

参議院会議録情報 第087回国会 法務委員会 第5号

#1
第087回国会 法務委員会 第5号
昭和五十四年二月二十七日(火曜日)
   午前十時七分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 二月二十三日
    辞任         補欠選任
     内藤  功君     宮本 顕治君
 二月二十七日
    辞任         補欠選任
     阿具根 登君     安恒 良一君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         峯山 昭範君
    理 事
                上田  稔君
                平井 卓志君
                宮崎 正義君
    委 員
                大石 武一君
                熊谷太三郎君
                佐々木 満君
                丸茂 重貞君
                秋山 長造君
                寺田 熊雄君
                安恒 良一君
                橋本  敦君
                円山 雅也君
                江田 五月君
   国務大臣
       法 務 大 臣  古井 喜實君
   政府委員
       法務政務次官   最上  進君
       法務大臣官房長  前田  宏君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  枇杷田泰助君
       法務省民事局長  香川 保一君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局民事局長   西山 俊彦君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        奥村 俊光君
   参考人
       東京地方裁判所
       執行官室執行部
       長        田中 利正君
       東京執行官室労
       働組合書記長   田中 一志君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○民事執行法案(第八十四回国会内閣提出、衆議
 院送付)(継続案件)
○民事執行法の施行に伴う関係法律の整理等に関
 する法律案(内閣提出)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(峯山昭範君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る二月二十三日、内藤功君が委員を辞任され、その補欠として宮本顕治君が選任されました。
 また、本日阿具根登君が委員を辞任され、その補欠として安恒良一君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(峯山昭範君) 民事執行法案を議題といたします。
 本日は、本法案について参考人から意見を聴取し、質疑を行います。
 この際、参考人の方に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は御多忙中のところ、本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。
 民事執行法案について参考人の方から忌憚のない御意見を拝聴し、本案審査の参考にしたいと存じております。
 つきましては、議事の進行上、田中利正参考人、田中一志参考人の順で、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 それでは、まず、田中利正参考人にお願いいたします。
#4
○参考人(田中利正君) 東京地方裁判所執行官田中利正でございます。
 長い間改正が叫ばれておりましたわが国の強制執行法が、皆様方の御努力によりましてここにその完成を目前にいたしまして、私ども執行の実務に携わる者といたしまして、まことに感慨の深いものがございます。この法改正に当たりましては、われわれ執行官側といたしましても、その基礎的な実態調査の段階から協力してまいりました。また、第一次、第二次試案を経まして今日に至るまで、機会あるごとに意見を述べ、微力ではございますが、われわれとしましていささかは寄与しておるというふうに考えておるのでございまして、新法の制定には心から賛意を表し、早期成立を期待するものでございます。
 さて、新法におきましては執行官の職務並びに権限が拡大強化されておりますので、執行官の事務は量質ともに増大するものと予想されております。そこで、これらの点に関しまして若干意見を述べさせていただきたいというふうに思うのでございます。
 まず第一といたしまして、執行官の権限の強化拡大についてでございますが、新法では、執行官の職務権限が拡大され、民事執行の一翼を担う執行官にふさわしい職務内容となっていると考えるものであります。
 動産執行におきましては、動産執行の対象が拡大され、これまで執行裁判所が執行機関として差し押さえをしていた手形、小切手等の有価証券類や二十トン未満の船舶が動産執行として執行官においてこれを差し押さえ、競売することになっております。また、執行官が差し押さえをした物件に対しましては、債務者に差し押さえ物の使用を許可し、またはその許可を取り消す権限が与えられております。次に、適正な売却の実施を妨げる者を、売却の場所、いわゆる競売場でございますが、競売場から退場させる等、執行官に売却の場所の秩序維持に関する権限が与えられております。さらにまた、配当関係におきましては、これまで仮差し押さえ債権者等未確定債権者があるときは執行官が配当の協議をさせることができなかったのでございますが、このような場合にも執行官が協議配当することができるようになっております。
 不動産関係部門におきましては、これまで強制権限を与えられておりませんでした賃貸借等取り調べにつきまして、次元の高い現況調査として装いを新たにしたものとして登場し、これにつきましては、執行官に質問権、強制立入権等を与えております。さらに、不動産の売却に関しまして、動産の場合と同様、いわゆる競売場の秩序維持に関する権限を与えております。そのほか、保全処分の執行におきましては、これまで目的動産につきまして著しい価格の減少のおそれ等があるときは執行裁判所の命令によってこれを換価すべきものとされておりますが、このような場合には執行官が自己の判断に基づいて換価すれば足りるというようなことになっております。
 次に、第二といたしまして、事務の合理化という面からながめてまいりますと、新法は、運用に不都合を表していた現行の規定を改正し、執行官の事務の合理化を所々で図っております。すなわち、現行法は、執行官が職務の執行に当たり抵抗を受けるとき、または債務者不在の場合には、市町村の吏員または警察官を立会人とする場合は一名、その他の場合は成年者二名を立ち会わせなければならないというふうになっておりますが、新法では、立会人の人数を定めないということにいたしましたので、相当と認められる者一人を立ち会わせれば足りるということになっております。
 次に、現行法は、休日または夜間に執行行為をする場合には執行裁判所の許可が必要であるということにされておりますが、新法では、人の住居に立ち入って職務を執行する場合だけに限り許可を要するということになりましたので、住居外で職務を執行する場合には、たとえば執行が長引きまして午後七時を超えるというような場合でも、特に許可を要せず、執行官限りの判断で執行を続行することができるというようなふうになっております。
 次に、現行法は債務名義を有しない債権者の配当要求を無制限に認めておりますけれども、新法は、優先権を有する債権者に限り配当要求を認めるということにいたしましたので、虚偽債権による配当要求を防止すると同時に、配当申し立て事件は激減することが予想されますほか、配当要求認否を債務者に問う手続も不要となりましたので、執行官の配当事務は著しく軽減されたものと考えます。
 次に、新法は、差し押さえ物につきまして相当な方法により売却を実施しても、なおかつ売却の見込みがないときは、職権により差し押さえを取り消すことができる旨の規定を新設いたしました。そこで、これまでのように売却の見込みがないのにいたずらに売却期日を重ねるというようなことがないように配慮されております。
 さらに、現行法は、不動産の明け渡し執行等におきまして、執行官が執行の目的外動産、いわゆる遺留品でございますが、を売却するには、その都度執行裁判所の許可を要するものとされておりますが、新法は、右の売却については執行官限りで行うことができるようにしております。
 また、動産の任意競売関係につきましては、新法は明確な方法を示しておりますので、現行法のように競売期日に目的物が提出されるかどうか確認できないまま競売手続を進めなければならないというような不合理さが一掃されました。
 以上のほか、いろいろな改正がなされているわけでございますが、これらの改正点を通じ、特に現況調査制度や執行官の裁量権の拡大等、新法が執行官を信頼し、これに期待する姿勢を示していることに対しまして、私どもはこれを高く評価しているものでございます。
 次に、第三といたしまして、新法の施行により執行官の事務量はどの程度増加するのであろうかという点につきまして申し上げたいと思います。
 改正法によりまして執行官の事務量が増加するであろうということは間違いのないところであると思うのでございますが、私どもの見方を申し上げますと、今次改正によりまして執行官の事務量が増加すると思われる部分は、法第五十七条のいわゆる現況調査の事務並びに法第百二十二条の動産執行の対象の拡大、この二点にしぼられるのではなかろうかと思います。
 まず、現況調査事務でございますが、新法の趣旨から見まして、この現況調査のための事務は、現在の賃貸借等取り調べの事務に比し、法定地上権の成否とか賃貸借関係以外の契約関係等に関する法律知識能力を必要とするものでありまして、質的に見て相当高度な事務となると思いますほか、これを事務量の観点からながめますと、現況調査は現在の賃貸借取り調べよりはるかに詳細な調査を要します。また、調査のために面接する人の範囲も拡大し、調査のための見聞あるいは質問のための時間、報告書の作成等、その事務量は量質ともに増大することは明白であります。ただいまその事務量を正確に数字的に申し上げることはできませんけれども、事件には取り調べに困難なものから比較的容易なものもございますので、私は、この増加量は大体現在の一倍半ないし三倍ぐらい、平均いたしまして二倍以上になるであろうと推定しております。しかしながら、この取り調べ事件の数は、東京におきましても、執行官の全取り扱い事件から見まして約一割にしかすぎません。したがいまして、取り扱い事件の多い東京などの場合は格別、係属事件数の多くない庁におきましてはそれほどの影響はないのではなかろうかというふうに考えております。
 次に、動産執行の対象の拡大の点でございますが、新たに対象となりました手形、小切手等の差し押さえについてでありますが、実務上の経験に照らしまして、現場においてこれらの有価証券をそう数多く発見できるとは考えられませんし、二十トン未満の船舶に至りましては、東京地裁におきまして過去二十年間に一件というような実績しか持っておりません。したがいまして、本条による事務量の増加につきましては、さして心配する必要はないのではなかろうか。もちろん、将来の運用を見た上でなければ正しい申し上げ方はできませんけれども、現段階ではそんな感じがいたしております。
 以上、二つの点について申し上げましたが、他面、今次改正によりまして事務の合理化を図っている面も相当ございますので、これらを総合的に判断いたしますと、もちろん、特別な場合は別といたしまして、新法の施行に当たり、執行官側は現在の人員をもって一応これに当たり得るであろうというふうに推測している次第でございます。もっとも、執行官の事務量が従来に比し量質ともに増加することは、これは間違いのない事実と思われますので、執行官といたしましても、新法の負託にこたえるため一層の努力と十分な勉強をしなければならないと思っておりますけれども、同時に、当局側におかれましても、有効適切な配慮をぜひともお願いしたいと思うのでございます。
 そこで、第四といたしまして、この機会に次のように要望したいと思います。
 一、民事執行は、国民の財産上の紛争を公正な立場で解決する本来明るいカラーのものであるべきと思うのでございますが、これに対する一般の認識が必ずしも十分ではなく、常に暗い面でとらえられているというふうに思います。そこで、この際、民事執行の正しい意義につきまして国民の理解を深めるような措置、いわゆるPRですが、を講ぜられるよう提案いたします。
 二、同じ趣旨におきまして、執行官室の執務環境の改善、特に競売場につきまして――は、その位置、施設等につきまして新法の趣旨に即応した配慮がぜひとも望ましいというふうに考えます。
 三といたしまして、新法における職務の遂行に必要な知識を修得するための協議会とか、あるいは研修の実施、執務資料の刊行というようなことをこの際要望いたします。
 四、現況調査の手数料の額につきましては、これは特段の配慮をお願いしたい。また、この際、その他の手数料につきましても、再検討の上、職務に見合うような改正を望みます。また、執行官の地位、待遇につきましても、新しい執行官にふさわしい方向に改善されるよう要望いたします。
 五、執行官室に勤務する職員についても、これは間接的かもしれませんけれども、できるだけの当局の御配慮をお願いしたいと思います。
 六、送達事務につきましては、執行官の負担が増大している実情にかんがみまして、民事訴訟の送達制度全体につきまして、この際ぜひ再検討してくださるようお願いいたします。
 以上、雑駁でございますが、私の発言を終わらせていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。
#5
○委員長(峯山昭範君) どうもありがとうございました。
 次に、田中一志参考人にお願いいたします。
#6
○参考人(田中一志君) ただいま御指名いただきました東京執行官室労組の書記長をやっております田中でございます。
 本日は、委員の皆様の御協力により、参考人として意見を述べる機会を与えていただき、ありがとうございました。
 早速本論に入りたいと思いますが、私の方は、執行官室の職員における実態についてお話をさしていただきたいというふうに思います。
 冒頭申し上げたいことは、昭和四十一年の衆議院法務委員会における附帯決議のことであります。詳細は同委員会の議事録四十四号をごらんいただければおわかりになりますが、ここで次のように決議しておるわけです。「執行吏代理をはじめ執行事務に従事する職員の処遇並びにその地位の安定と雇用条件について格別の配慮を行うこと、なお執行吏代理の執行官への登用については、その経験等を参酌してできる限り有利な取扱いを行うこと。」、また、「執行官以下執行事務の処理に当る職員の教育並びに研修について、予算上の手当その他必要な措置を講じること。」とあるわけですが、十余年を経過した今日、職員に関しては全くほごにされている状況であります。
 東京の場合、労働組合があります。したがって、私ども組合では、職員の身分保障と地位の向上のため職員の公務員化、執行官への優先的採用を主張してきました。職員の執行事務、送達業務、賃貸借取り調べ等、その内容は国民と直接に接触する、まさに公権力の行使であります。当然、職員の職務について収賄罪あるいは公務執行妨害等が適用されると理解しております。ところが、これらの職務に従事する職員は、国家公務員である執行官に私的に雇用され、公務員ではありません。十年前の執行官法制定、今回の民事執行法案の審議により、法律は一歩一歩前進しておりますが、執行官制度そのものは、明治以来一歩も前進しておりません。幾らりっぱな法律がつくられても、そこに働く者の環境が整備されなければ、絵にかいたもちに等しいのではないかというように思います。手数料制執行官を改めない限り、法の趣旨は全うできないと言っても過言ではないというふうに思います。
 手数料制は、必然的に能率のみを要求します。また、常に収入の不安を伴います。国家権力の行使をつかさどる執行官がこの状態で、果たして十分な機能をなし得るか、私たちは疑問を投げかけてきた次第であります。国会決議の実施と私たちのこの主張に最高裁当局は一べつも与えませんでした。
 以下、私たちは今日どのような状況になっているかについて、三つの職務にわたってお話を申し上げたいと思います。
 まず最初に、職員の送達業務について申し上げます。
 昭和四十一年当時、東京二十三区、この全域が対象で仕事をしておりました。二十七名の送達代理者が民事、刑事の書類を処理しておりました。しかしながら、執行官法制定により代理制度が廃止されました。その結果、代理者の定年退職、あるいは健康上の障害、内勤事務への人員補充等によって、送達業務に従事する職員が減少してまいりました。同時に、人件費節減あるいは送達区域を漸次縮小し、昭和四十五年十月より今日までに都内二十三区のうち二十区が廃止となり、現在は千代田、中央、港の三区だけになっております。これによって、廃止区域については執行官が執行事件を処理する合い間に、それも日曜、祭日等を利用して処理に当たっています。休日も満足に休めず、当事者からも催促される等、まさに今日の社会の生活観、労働観とはほど遠い状態です。また、廃止区域の通常送達が裁判所職員によって郵便送達に切りかえられましたので、裁判所職員に対して労働量の増加となっているように思います。反面、通常送達で不可能な書類、夜間送達と送達困難な書類のみが執行官室の方に回ってくるという状況です。都内全区を担当していたころは、送達件数も多く、手数料収入と送達のために要する諸経費との収支の採算がとれていたわけですが、区域が減少した現在では赤字となっております。刑事送達に至っては、旅費だけで全く手数料がありません。現在残っている三区についても、旅費すら取れない警視庁の関係を初め、警察署及び拘置所など、手数料のない刑事送達の業務だけを残して、年内に廃止していくという方向が考えられているようです。
 次に、新法で現況調査となる賃貸借取り調べと不動産競売について述べたいと思います。
 賃貸借取り調べは、新法によって、調査と報告書作成に相当な時間が必要になってくると思われます。実際の調査に当たっては、現在、テープレコーダーやあるいはカメラ等を使い、必要に応じて写真を添付したり、陳述を録音し、その要旨をまとめ、報告書を作成するわけですが、執行裁判所の命令に基づく提出期限までにほとんどが報告できません。こうしたことは、不動産競売の迅速性という面から見れば、決して好ましい状況ではないというように思います。
 また、新法によって報告書には、さらに細目にわたる調査内容が要求されております。また、権限が強化されますが、当事者や利害関係人の陳述等を的確に把握するためには、相当な経験と人間関係の微妙な情感を感じとる人格が要求され、調査にも相当な時間を要するわけで、権限を強化するだけではすべてを処理できない面が出てくるものと思われます。こうした職務に従事している臨時職務代行者の歩合は、交通費も含めて職務遂行手数料の三〇%であります。現在の手数料も大変安い、このように感じておる次第です。これら送達や賃貸借取り調べに従事している職員は、自転車、バイク等も自費で使用しており、労災補償の制度もなく、危険な状況で職務に当たっております。
 不動産競売については、新法によって、入札、競り売りのほかの競売方法として、最高裁規則で定めることになっておりますが、この内容の一つとして郵便による方法も考えられているようです。これに関与する人員の点で私ども不安があります。また、競売場における権限も強化されますが、これに従事する職員の人員やあるいは身分の点も考える必要があるのではないかと思います。
 最後に、執行事件に携わる職員について述べます。
 現在、外勤の執行官が十三名、これに、職員である執行代理としての臨時職務代行者が一名、内勤には執行官が二名おり、そのうちの一名は事務員と同じような執務に当たっております。ほかに事務員が十一名、アルバイトが五名おります。職務内容は、執行事件の受付、取り下げの受付等、法律事務の遂行に当たっておりますが、まさに書記官並みの職務を行っているわけです。執行事件は、当事者間のトラブル、債務者と執行行為のトラブルもあり、苦情、問い合わせが電話で殺到し、一日数百件に及んでおります。これから一つ一つに法律的知識と社会的道義的態度をもって説明に当たらなければなりません。以上が東京の現状です。
 さて、私ども組合で全国の地裁管内に昨年アンケートをとりましたが、その労働条件は、ほとんどの人が高年齢で、しかも賃金は十万円以下という状況であります。具体的報告の二、三を申し上げますと、長崎からは、裁判所職員の二倍から三倍の労務をしておる、年休もとれない、また、刑事送達は手数料をつけてほしい、裁判所職員にしてもらいたいと報告されております。また松江では、昭和四十一年の附帯決議が何ら進展しないまま高年齢になるばかりですと、不安を訴えております。さらに沖繩からは、病休、産休、生理休暇などきちんと決めてほしい、このように訴えているわけであります。こうした状況を直視するとき、公務員化はまさに切実な声であります。
 以上が職員と執行官室の実態です。しかも、その経済的基盤が手数料収入だけに依存しているということです。この手数料収入は安定度を欠き、この収入状況によって職員の賃金を初めとする労働条件が左右されるのであります。
 東京の場合、手数料収入の半分以上が不動産競売の収入で占めており、これによって一時金の財源が捻出できると言っても過言ではありません。しかも、不動産競売は不安定要素を持っており、執行事件同様、社会情勢の変化によって大きく影響されます。たとえば、高度成長期の昭和四十八年、四十九年はおよそ一億七千万の収入があり、昭和四十九年六月に手数料が改正され、昭和五十年には若干収入増の傾向となりました。昭和五十一年以後三億九千万、三億四千万、五十三年には三億六千万という高収入を得てきております。手数料そのものは債務者の負担に帰すべきものであり、かつ、公共料金的性格を持っております。したがって、手数料改正もたびたび行うわけにはいかないようです。しかも、手数料が改正されても、事件数が少なければ必ずしも増収にはなり得ません。手数料制のもとでは執行官の収入にも地域差があり、安心して働く環境にはならないということであります。
 昨年七月に、全国書記官協議会主催で最高裁民事局との座談会において、山田課長補佐が次のように述べております。「執行官の給源が枯渇している。しかも、七十歳を超えた執行官が多く、六十歳以上は半数いる現状である。」また、昭和四十一年、衆議院法務委員会では、菅野最高裁判所長官代理者は、執行吏代理の経歴等を調査した結果新しい執行官に採用できる人もいる旨発言しております。ところが、現状は執行官登用の道は全く狭き門となっておるのでございます。また、幾つかの裁判所では、書記官や事務官によって執行事件の受付等をしております。これによって、執行官室に従事する職員が退職せざるを得なくなったという話も聞いております。裁判所の職務として取り込んでいくことが可能であるならば、現在の職員を事務官なり書記官にすることも可能ではないか、かように考えます。
 新法はかなり改正され、確かに進歩しましたが、法律に基づく執務処理に従事する職員が不安定かつ劣悪な労働条件のままでよいのか、このような執務体制で国家機関の重要な公務を十分処理できるのか、大変疑問であります。また、不安も出てくるのであります。さらに、公務員が職員を雇用して利益を上げるということが近代日本の法体制のもとであるべき姿なのでしょうか。私は、制度改正に着手することなく新法は決して生かされないということを再度申し上げたいと思います。人員補充、資格の認可等、昭和四十一年の附帯決議をさらに具体的計画をもって考えていただき、一日も早く制度改正に着手していただくことを要望して、私の発言を終わりにします。
 どうもありがとうございました。
#7
○委員長(峯山昭範君) どうもありがとうございました。
 それでは、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#8
○寺田熊雄君 田中利正参考人にお尋ねをします。
 いま、田中一志参考人の意見陳述とあなたの意見陳述と、多少観点も違いますし、それから結論にも異なる面があるように思うのでありますが、それぞれのお立場がありますので、私どもとして、いまどちらをよしとし、どちらをあしとするわけじゃないのですが、将来の制度の改善に資するために率直なお考えをいただきたいと思うのです。
 田中利正参考人は、昭和四十一年の執行法案の成立当時における衆議院の附帯決議、これはあなたも御存じでしょうけれども、田中一志参考人のいまの御意見では、この附帯決議が実施に移されておらないと、そういう結論でしたね。あなたはこれについてはどんなふうにお考えになりますか。
#9
○参考人(田中利正君) 田中でございます。
 あの附帯決議の最も根幹的なところは、執行官の制度は将来俸給制にすべきであるというようなところにあったかと思うのでございます。もちろんそれ以外にもございますけれども、そういった意味におきまして、私ども執行官側といたしましても、俸給制是か非かというようなことにつきましては、これまでいろいろと検討してまいりました。私個人の考えといたしましては、現在の手数料制公務員というような制度は、国民の感情にも合いませんし、また、一般の方々の共感を得られるということにはなりそうもない。また、もちろん手数料制にはいろいろな長所もございますけれども、そうしたものがすでに一般の国民に受け入れられるようなものではないというようなこと、それから、執行官の手数料収入が、すなわち当事者の、最終的には債務者の負担になる、それがストレートに執行官の収入になるというようなところに、いろいろすっきりしない面がございます。そういったようなこと、並びに、執行官の収入そのものが事件の多少によりまして非常に安定性を欠いている、また全国的に見ましても、大都会と地方とでは収入のアンバランスが非常に大きい、というようないろいろな面もございます。それからさらには、現在の執行官の独任制、一人の執行官が執行を行うという基本的な体制、もちろんこれは現在でも援助執行官という制度がございますけれども、将来の執行のあり方としましては、やはり複数制の執行官が事件を処理するという方が、公正的な観点からしましても望ましいというようなことから考えまして、やはりこの制度は、好むと好まざるとにかかわらず、いずれは俸給制執行官に移行せざるを得ないのではないかというふうに考えております。
 しかし、反面、この俸給制の問題につきましては、結局俸給制となった場合にどのように格付けされるかということによりまして、われわれの仲間でも賛否が分かれるわけでございます。そこで、これを全国的な意味で賛成か否かということになりますと、たとえば昭和四十八、九年ごろには相当、半数以上の俸給制賛成者がございました。しかし、現段階は、幸いといいますか、比較的収入が安定している時代でございますので、この時点でいま一度アンケートをとりますと、必ずしもこの前のアンケートと同じような結果が出るとは限らないというふうに思いまして、非常に微妙なものがございます。それはそれとしまして、私個人といたしましては、いずれは俸給制に移行すべきものである、また、そういったことによりましてあらゆる懸案が解決するであろうというふうに考えております。
 なお、あのときの附帯決議には、もちろんそれ以外にもございまして、たとえば先ほど田中参考人も言われましたように、執行官並びに執行官の職員に対していろいろ注文もございます。これにつきまして、恐らく当局といたしましても、いろいろな努力はされたと思いますけれども、私どもに関しましても、たとえば執務環境の整備あるいは備品の充実というような点につきまして、当局は御当局なりの御努力はされていると私たちは理解しておりますけれども、事務職員につきましては、何分にも私どもがプライベートにこれをお願いしているというような関係がございまして、どうしても国との間には間接的なことになります。それにしましても、たとえば執行官室の事務職員の定期健康診断は裁判所で一緒にお願いしているというようなこと、あるいは執行官室の職員を裁判所の職員に吸収していただくというようなこともやっておりまして、現に東京の場合でも、過去にすでに十人近くの人々が裁判所に移動しております。そうしたようなことで、あの附帯決議が十分な守られ方をしているとは思いませんけれども、それはそれなりの努力はされているというふうに私どもは考えております。
#10
○寺田熊雄君 確かに、いま東京などの執行官はかなりの手数料収入を得ていらっしゃるからして、これが一般の公務員のように俸給制になった場合に、その格付けをよほど考えませんと収入減になるという、これは避けなきゃいけませんので、大変むずかしい面があることは事実だと思うのです。ことに、執行官の制度が、まあどちらかというと人にいやがられる職務内容を持っていますから、それだけに、普通の公務員と比べて、何らかそういう、いやな仕事をすることに対する手当を俸給の中に見込まないと、それは不公平になる、社会的な不公正という批判を免れないと私は思うのです。しかし、その一面、それは非常に精神的に、さっきあなたもおっしゃったけれども、精神的な満足感というのがそこにあると思いますね。手数料という債務者から取り立てるものによってみずからの利益が増大するという、精神面で何かいやな面を持ちますね。そういうものはなくなりますし、それから、不動産競売が仮に経済情勢の変化によって減少したときの収入減を避けることにもなります。安定性が得られるということから、私はやっぱり俸給制に踏み切るようにするのが当然だと思うのですが、いまあなたは、全国の執行官にアンケートをとったということをおっしゃったのですが、何か執行官には全体で一つの組織的なものができておるのでしょうか、それとも、ばらばらなんでしょうか。その点は、公務員としての性格で、労働組合をつくるわけにはもちろんいかないけれども、いまの現行法ではね。何か、集まって、意思の統一を図るような機関というのはできておるのかどうか、その点をちょっとお尋ねしたい。
 それから、田中一志参考人の御意見の中で、いまの職員が、四十一年決議の趣旨が実践せられずに登用の道がふさがれているということだけでなくして、たとえば、いろいろな社会保険、労災保険のことを言われましたが、労災保険が得られないという、そこに入れないという、そんないろいろな面がある。これは入らないことはないのだと思うけれども、現実に入ってないようですね。任意加入の道はあるのじゃないかと思うけれども、しかし、東京のように労働組合があって、みずからの権利を主張し得るところはいいけれども、地方の裁判所で、執行官室にただ一人女性が執務しているというようなところは、これはもう完全にあらゆる社会保険の権利というものが奪われておるのですね。これはやはりこういう職員の労働組合が全国的なものになるか、あるいは執行官が人道的な立場で配慮するか、国がそこに介入してそういう権利の実現を図るか、どちらかでないと、そういう面が非常におろそかになりますから、その点はあなたはどう考えるか。
 この二点について、田中利正参考人の御意見を伺いたいと思います。
#11
○参考人(田中利正君) 田中でございます。
 それでは、まず執行官の全国組織の点につきまして申し上げたいと思います。
 日本執行官連盟というものを全国の執行官でもって組織しております。これは昭和三十八年の一月に結成いたしまして、もうすでに満十六年を経ております。性格としましては、親睦団体、一種の任意団体でございまして、親睦を主としておりますけれども、相互の親睦と地位の向上、福祉の増進というようなことを目標にしております。現在、会員数は本年の一月一日現在をもちまして三百二十三名でございます。これを年齢層的に見ますと、四十代の者五十八名、五十代の者百二十二名、六十代の者百三十二名、七十歳を超える者十九名、もちろんこの中には連盟に入っていない人々が若干含まれますけれども、平均年齢として五十八歳というようなことが言われております。
 それから、その次の待遇の問題でございますけれども、東京におきまして、労災保険につきましてはそういったことをやっておりませんけれども、普通の社会保険には加入しております。
 そのほか、私どもといたしましては、先ほど田中参考人からも言われましたように、何といたしましても、職員の職務内容は、いわば公務、強いて申し上げれば公務に従事する者とでも言えるかとも思いますので、私どもも、給与のあり方につきましては、一般の公務員に準ずる待遇をぜひしたいというのを目標にしておりまして、東京におきましては、現在の職員の平均給与はたしか十九万九千五百円ぐらいに当たるかと思います。これに対しまして、全公務員の平均は、昨年度におきまして十九万八千円ぐらいでしょうか。そして昨年の九月にベースアップをいたしましたから、ベースアップが三・八%というふうになっておりますので、現在の公務員の給与は恐らく二十万五千円ぐらいに上がるのではなかろうか。十九万九千円対二十万五千円というようなところでございまして、若干遜色はございますけれども、おおむね一般公務員と同じか、それに近づけるという努力をいままでもしてきておりますということを申し上げたいと思います。ただ、東京以外の全国各庁におきますと、大体これはもう平均的に申し上げますと、執行官とほぼ同数の事務職員がございます。と申しますことは、執行官一人に対して一人というふうなところになろうかと思うのでございますが、これは外国の例もございますけれども、その執行官の奥さんとか娘さんとか、そういったような家族の方が職員になっておるというような場合もございまして、なかなかこれを全国的に統一的な処遇というような観点から申し上げますと、非常にむずかしい現状にあるというようなことが言えるかと思うのでございます。
 以上でございます。
#12
○寺田熊雄君 さっき私が労働組合の結成は現行法上困難かもしれぬと言ったのですが、法律的には労働組合をつくっても一向差し支えないわけですね。警察官でもないし、刑務所の職員でもないし、消防職員でもない。現行法上あなた方が労働組合がつくれないという法律的な制限は全くないと思うのですけれども、現実の問題として、なかなか労働組合を結成するというのは困難かもしれない。しかし、親睦団体である執行官連盟というものができているということですが、そこで、いまあなたのお話では、現在では公務員化、一般の俸給制にするということですね。一般の俸給制にするということ、これはむしろ多数意見にはならないかもしれないというお話があったようです。それからまた、社会保険には加入しておるという話もあった。これは、職員が社会保険に全部加入しているという、そういう趣旨でおっしゃったのでしょうか。ひとつその点。
#13
○参考人(田中利正君) 社会保険につきましては、まさに東京の執行宮室の職員に対してでございます。私どもは国民健康保険に入っております。
#14
○寺田熊雄君 国民健康保険に入っているという点が、あなた方自体につきましても、ちょっと普通の公務員とは違う点ですね。それから、もちろん恩給制度はないですね、執行官としての。その点はどうなんですか。
#15
○参考人(田中利正君) 私ども執行官のそうした給与関係につきましては非常に特異な状態にございまして、まず、執行官に任命される最低年齢基準は、四十歳でございます。したがいまして、四十歳以上、すでに前職におきまして恩給もしくは年金受給資格がある者が執行官になるという事例が非常に多いわけでございまして、現在、執行官の中で、このように前職の恩給または年金を受給している者は約八〇%ぐらいあろうかと思います。そして、この恩給あるいは年金はもちろん年齢制限もございますけれども――をいただきながらこの仕事に携われるというところに独特なメリットがございます。
 私どもも、かつて、国民健康保険ではなく、あるいは政府の共済組合的制度に何とか加入させてほしいというような方向におきまして、これは最高裁当局とも御一緒にいろいろと検討させていただいたことがございます。一方、執行官は、執行官となりまして十七年間を経過いたしますと、今度は執行官の恩給が別につくことになっております。ただ、この執行官恩給は、これはいわゆる一代限りのものでございまして本人が在世中だけいただく、普通の場合ですと、本人が亡くなりますと遺族扶助料的なものが継続されますけれども、執行官の恩給に関しましては一代限りのもので、なおかつ金額的に申し上げましても余り高額なものではございません。そうしたようなこと、もし仮に一般公務員と同様に、共済組合制度における短期給付というようなものがございますけれども、ああいったようなシステムに入った場合は、当然従来いただいておりました恩給は、これはもらうわけにはいかなくて、ただ従来と継続していくというような形にどうもなるようでございます。そうしたこと並びに恩給受給者が――いわゆる平均余命というものがございまして、大体七十何歳というようなふうにこれは考えられているようでございますけれども、そうしたようなこと、すべてのことを勘案いたしまして、いまの制度をやめて全面的に共済組合制度に加入した場合と、現状維持でした場合、一体どちらが全体的に言えば得なのか損なのかというようなことを検討しました結果、どうもこれを変更しても余りメリットがないというような結論が出まして、この問題につきましては、さらに将来に向かって検討していこうというようなことで考えておる段階でございます。
#16
○寺田熊雄君 いま、田中一志参考人の言われた送達業務、これは現実には代理の方がやっていらっしゃることの方が多いのじゃないかと思うのですけれども、刑事送達の場合、警視庁に送達する場合には手数料もない、旅費もない、拘置所に行く場合には、いま拘置所が大分離れているのでありますが、これは手数料はなくて旅費のみだという、そういうちょっと非近代的な労務管理といいますか、そんなものが行われているようですが、これはあなたとしても、当然廃止せらるべきか、もう廃止が不可能とすると手数料がつかなくてはいけないというふうにお考えになるのだろうか、その点いかがですか。簡単に結論だけ。
#17
○参考人(田中利正君) 送達の問題につきまして、私どもも常に頭の痛い問題でございまして、まず、現在の執行官が送達を担当するということが果たして職務の内容から見て適当なのかどうかというようなことをまず出発点として考えておるわけでございまして、先ほどもちょっと要望事項として申し上げましたけれども、われわれの考えといたしましては、できれば執行官の職務の中から送達事務は取り外してほしいというのが長年の念願なんでございます。しかしながら、やはり民事訴訟法の規定もございますし、どうしてもこれはある程度やらざるを得ない。また反面、私どものこの考え方は当局側におかれましても十分理解されておりまして、裁判所といたしましては、送達に関しましては、もう原則として郵便送達でやるというような方針が打ち立てられたかに伺っておりまして、東京におきましても、東京都二十三区中、郵便送達に逐次切りかえをしていただきまして、現在まだその切りかえが終わっていないのは、残り三区だけになっております。あとの二十区は全部郵便に切りかえられた次第なんです。この三区につきましても、近い本年中、恐らく八月ごろと思いますが、廃止されるであろうというふうにわれわれは期待しているわけなんでございますが、そうなりますと、この送達業務というのは激減いたします。しかし、それにしましても、結局は、郵便でできない、不可能な、たとえば相手方が不在で、あるいは相手方が拒否して、実際上郵便では行い得ないというようなものは、やはり依然として執行官の方に送達の依頼が参ります。これらはおおむね夜間送達的な方向で依頼があるわけでして、これがまた最近執行官の大きな負担となっているわけです。
 一方、刑事送達につきましては、昨年度におきまして、東京地方裁判所の執行官室では約二万件の事件を処理しております。そのうち約一万件が、先ほど申し上げました残り三区のところから出ているわけでございます。でございますので、この三区が近々廃止されますと、刑事送達事件は恐らくその半分、一万件になるだろうというふうに判断しておりまして、しかも、この一万件は実は小菅の東京拘置所あてのものが大部分なんでございます。しかも、この東京拘置所あての送達書類はある程度まとまって物を送達いたしますので、その事務の処理という観点からすれば、さほど骨の折れるものではないというふうに考えられるわけでございます。私どもも、刑事送達が手数料がないという点につきましては、長年有料化を主張してまいりました。けれども、現在ある刑事送達事件は、ほとんど全国的に言いましても激減しておりまして、もうすでにこの問題を論議するだけのメリットがなくなってしまっておるというふうに考えている次第でございます。
 以上でございます。
#18
○寺田熊雄君 それから、いまの田中利正参考人の意見は、ちょっと田中一志参考人の意見と違うようですね。田中一志参考人の方は、刑事送達の無料制というのは不合理だという意見を持っておるようですね。その点、もう一遍田中一志参考人にその点をお尋ねしたいのと、それから、いまのいろいろな執行官の職務の遂行に当たって、現実に職員が大変その負担をかぶるというようなものがあると思うのです。たとえば、恐らく現況調査報告書の作成なんというのも、現実には執行官なり執行官代理が現場に臨んでいろいろ調査をされる。しかし、報告書の作成だというようなことになると、おのずからやはり事務的にそれが事務職員にかかってくるというようなことも考えられないではない。それから、競売場の問題でも、あるいは競売手続の遂行の問題でも、送達の問題でも、あるいは電話の応接でも、すべて職員に負担がかからざるを得ないと思うのですけれども、そういう点、あなた方の事務量の増大は同時に職員の事務量の増大にはね返るというようなことはないのかどうか、その点。それから田中一志参考人にはいまの刑事送達の問題も含めて、ちょっと両参考人に最後に御意見を聞かしていただきたい。
#19
○参考人(田中一志君) まず、刑事送達の件ですが、先ほど田中参考人の方から話がありましたように、件数としては減少してきているということで、確かに論議するような性格にあるいはなってないかもしれません。しかし、手数料制度のもとにおいては、こうした刑事送達の手数料も収入源としてやはり請求すべきではないかというふうに考えるわけです。
 それから、現況調査、現在、賃貸借ということで職務をしておりますが、現在これに関与している者が、職員では執行事件を処理している職務代行者が執行事件の処理の片手間に賃貸借取り調べもやっておる。それと、賃貸借専門に従事しているということで二名ほどおります。これらの職員は自分で現地に行って調査等をするわけですが、報告書の段階では単に利害関係人あるいは当事者の発言をそのまま書くというわけにはいかないで、やはり法律的な内容に基づいて要旨簡潔にして要を得た内容にして報告書をまとめなければならないということになると思います。
 それから、競売場の手続、不動産競売の手続の点ですが、具体的な内容として最高裁の規則で決められるということで多少伺っておるわけですが、細かい点がまだわれわれ職員の方には知らされておりません。したがいまして、具体的にどういうふうになるのかという点が細かくわからないわけですが、いまわかっている範囲では、郵便等の入札の申し込みを受け付けするということで伺っております。これが全国的に窓口を広くするということになりますと、そういう窓口に対する、知らせるという仕事と、さらにその郵便物を処理するということで、かなり仕事がふえるのではないかというように思うわけです。この仕事を裁判所職員の方にやらせるか、あるいは執行官室の従業員の方にやらせるかという点についても現在不明でありますが、恐らく執行官室の従業員の方で全部処理に当たらせるのではないかというふうに思われるわけです。
 最後に、不動産競売場の秩序の問題ですが、新法によれば、かなり権限も強化され、それに伴って秩序維持にいろいろな面で改正されていくということがうかがえるわけですが、それに要する人員――先日不動産競売場の方をごらんいただいたわけですが、普段はもっと、八十名なり百名近い競売ブローカーといいますか、そういう人間がたくさん入ってくるわけです。そうした多くの人員を整理し、秩序を保つということになりますと、現在競売場に入っております職員だけではちょっとむずかしいのではないかというふうに思うわけです。
#20
○参考人(田中利正君) 現況調査報告書の作成の点でございますけれども、現在、私どもの方にも、いま田中参考人が言われましたように、二人、執行職務代行者職員なる者がございます。しかし、私どもの方はこの人々は執行官として一応は考えておりまして、いわゆる事務職員の事務処理というような方面では考えていなかったわけでございます。その方々が現況の取り調べをいたしますと大変骨が折れますし、同時に、報告書が従来よりまさに労力の多いものになろうかというふうに存じます。ただ、一般的に言いましても、現況調査の取り調べ報告書は、これは事務職員にしていただく事柄でございませんで、その担当の執行官がすべてそれまでは作成することになります。したがいまして、それによりまして事務職員の方にしわ寄せがいくというようなことはあり得ないというふうに考えます。
 それから刑事送達の有料化の点についてでございますが、私、先ほどメリットがないというような表現のいたし方をしましたけれども、もちろん、刑事送達が有料の方向にいくべきであるということに関しましては同感であります。
 それから、不動産競売手続につきまして、従来の競り売りまたは入札のほかに、最高裁判所の規則によりまして、いろいろな有効適切な換価の方法が定められるものと思われ、なかんずく、その中では、同じ入札でも期間入札と言いまして、ある一定の期間の間に、郵便でもよし、あるいは直接裁判所に届けてもよいけれども、あらかじめ入札書を届けるというようなことの方法も考えられているようでございます。その場合に、そうしたものの入札書を執行官室の方で保管することになるということはまず間違いないというふうに考えますので、これらの事務も増加することは否めないと思います。ただ、さてそれではその仕事は一体どんな形で行われるかといいますと、たとえば、そういった書面が参りますと、それを一定の金庫におさめまして、そして入札期日のときまではこれはあけないと、当然、あけてはなりませんから、あけないことになろうかと思います。そうしますと、量的に言いますと、そうした書面が来ましたらそれを金庫にしまうというようなことが、いままでよりふえるのじゃないかというようなことは考えておりますけれども、事務量がそれによって非常に増加するというような方向では実は考えておらないのでございます。
 それから最後に、競売場の秩序維持の問題なんでございますけれども、私どもも現在、東京の場合におきましては、執行官一名に事務職員二名で、皆さんごらんになりましたような形でやっておりますけれども、随時その競売場に執行官を増員いたしまして、場合によっては執行官二名と事務職員というような構成で今後やってみる必要があろうかというふうに考えておりますし、現に、全国のほかの庁では執行官全員でやっているというところが非常に多うございます。そういうようなことを考えまして、その部分につきまして特に事務職員側に多大の負担をかけるというようなことはないであろうと思いますし、また、してはならぬというふうに考えております。ただ、これに関連しまして、執行官が競売場の秩序維持の権限を与えられましたけれども、真にこれを実施するためには、執行官みずからが行きまして退場をがえんじない者を退場させるということは実際上はできないのじゃないかと思います。そこで、どうしても、たとえば警備員に常に巡回していただくとかいうような裁判所側のバックアップが必要ではなかろうかというようなふうには考えております。
 以上でございます。
#21
○宮崎正義君 田中利正さん、また田中一志さん、参考人としての御出席、本当に御苦労さんでございます。
 まず最初に、田中利正参考人にお伺いいたしますが、日本執行官連盟が三十八年の一月に発会式を行ってこられて、今日までそのことをおやりになっているようでございますが、この会合は年にどれくらいおやりになって、全国からお集まりになって、そして、親睦が目的というものの、いろいろな意見交換等が行われるんじゃなかろうかと思うんでございますが、この内容等について、まずお伺いをいたしたいと思います。
#22
○参考人(田中利正君) お答えいたします。
 日本執行官連盟の組織を申し上げますと、一番末端に、まず各地方裁判所ごとに分会というものがございます。そういたしまして、各高等裁判所ごとに支部がございまして、そして東京に本部を持っておるというような形でございまして、この連盟の運営は、東京におきます全国総会を年に一回開きまして、そこでいろいろな議案を練ることにしております。また、その下部組織の各支部の総会は、それぞれ年一回ないし二回開かれております。そして、その末端組織の各分会がこの支部総会に集まりまして、そしていろいろな問題を提案し、そして、これを最終的には全国の連盟総会に提案するというような形をしております。もともと、この連盟を発足させました最初のねらいは、それまで全国各地にばらばらに存在しておりました執行官が全く横の連絡もないというような点からかんがみまして、どうしてもこれはそうした全国的なものをつくる必要があるということで出発をしたものでございますけれども、そういうわけで、まず最初のねらいは、全国の執行官がお互いに仲よくしよう、要するに親睦を深めようというのが最大のねらいでございましたけれども、その後、執行官の制度が手数料制というようなことがございまして、どうしてもそういったようなことから、総会の議題では、手数料を何とか上げてもらうような方向でお願いしようじゃないかというような、ある程度要望的な要素が次第に深まってきて現在に及んでいるというようなふうに考えております。
#23
○宮崎正義君 そうしますと、全国総会のときには全国の事情が……。そのときばかりじゃなくて、随時報告はお互いに支部総会とかいうようなことで、報告なんてのは東京の方にみんな集合されるわけでありますか。
#24
○参考人(田中利正君) さようでございます。
#25
○宮崎正義君 そうしますと、地域の状態というものが、たとえば連盟の会長さんと言われますか、各地域の実態というものが全部会長さんのもとに報告があり、それを掌握されていると、こう解釈してよろしゅうございますか。
#26
○参考人(田中利正君) そのとおりで結構だと存じます。
#27
○宮崎正義君 そうしますと、同時に、執行官の様相はもちろんでございますが、事務的なことにつきましても、どれだけの事件件数があったとか、こういう事件があったとか、こうだとかああだとかいうその内容の具体性、それから事務職員の状態なんかも、そういうところでいろいろお話がありますか。私が先ほどからお伺いいたしておりますと、東京の関係を中心におっしゃっておられるように承ったものですから、地域における、地方における、地裁における状態というものを掌握されておるかいないかということがお聞きしたかったので伺っているわけですが、いかがでしょうか。
#28
○参考人(田中利正君) 実は、本日は東京地方裁判所の執行官の一名として参上したつもりでございましたので、できるだけその立場に立ちまして申し上げたわけでございますが、まあ連盟として、あるいは全国的な観点から申し上げますと、また若干違った面は出てくると思います。私ども、全国八つの支部総会が開かれますと、本部役員としてこれに参加いたしております。その席上で各地方庁のいろいろな実情は承りますけれども、先生が御指摘になりましたように、たとえばその庁に事務職員がどのくらいいるかとか、その事務職員がどのような処遇を受けているのかとかというようなことまでは実は存じておりません。その支部における非常に大きなといいますか、比較的大きいような問題についてはいろいろ発言もございますし、たとえば寒いところですと、ほかの庁と違いまして、特に冬季になりますと雪の関係でほとんど執行ができなくなってしまうというような実情、まあ、そういったような観点からしますと、当然そういったような地域のところには寒冷地手当とか、あるいはそういったようなものが必要ではないか、それを要望するというような声は聞いておりますけれども、余り詳しいことまでは存じておりません。
#29
○宮崎正義君 お立場で、きょうはお立場は東京地裁の方の関係、東京を主体にしてのお考えでございますということは私も承知はいたしておりますけれども、この会長さんはたしか田中利正参考人であったと私は思っておりますが、そうでございますか。
#30
○参考人(田中利正君) いかにも昨年七月から会長に就任しております。
#31
○宮崎正義君 私はここで要請をしておきたいことがあるわけなんですが、全国の地域差によりましては、相当事件のあるところとないところと、まちまちだと思います。東京もやはり同じだと思うんです。東京は最も多いと、こういうふうに解釈しているんですが、非常に事件件数のない方々の執行官の収入というものは、これは国庫補助によって最低限度は決められておりますが、そういう面と、それから事件数の多い、一口にわかりやすく言えば収入の多いというところと、相当の差があると思います。そういうところであるがゆえに、執行官の方々のところにやはり事務職員の方がおれば、それに伴って同じようなことが想像されるわけなんですが、そういうふうな面をどんなふうに今後とらえていかれるか、また、そういう全国的な総会等がおありになったときに、また、支部の総会のときに御出席をされるというようなお話もございましたので、特にそういう点につきまして今後御高配をいただいて、じっくりと相談をなさっていって、先ほど寺田委員の方から種々御質問がありましたような一つ一つのことについて御調査を願えれば、全国的な話がストレートで会長さんの回答によってできるんじゃなかろうかと、こうも思えますし、と同時に、事務職員の人たちがどういうふうな環境の中にあられるかということも当然わかってくると思います。お話にありましたように、北国になりますとこれはまた特別な事情がありますし、そういうところの事務職員も執行官も相当苦労の度合いが違うと思うんでありますが、そういうふうな面も考慮をいただいて、そしてその全国的な掌握をしていただくことが今回の大きな新法ができます上において処置をされていく態度じゃなかろうか、このように私は思うわけでございますが、そのお考えのほどを伺っておきたいと思います。
#32
○参考人(田中利正君) まことにごもっともな御意見でございまして、われわれ執行官は、全国的にも特に取り扱い事件数あるいは収入の面について非常にアンバランスがございます。また、それに伴いまして、事務職員の方につきましてもそれなりの影響があるということは、まさに御指摘のとおりでございます。これは私個人の考えということになるかもしれませんけれども、私、少なくともこの執行官の収入の格差につきましては、できるだけ平均化するような方向に努力をしていきたいというふうに考えております。その一つの方法といたしましては、少なくとも地方裁判所単位に執行官が収受関係におきまして一体化するというようなこと、あるいはもっと細かい点におきましては、ある部分をお互いにプールしていくというようなことを当然考えられた方がいいんじゃないかというようなことを考えておりまして、そういったような観点から、各支部におじやましましたときには、そういうような方向でぜひとも考えてほしいというような発言の仕方をいままでもしてきておりますけれども、ただいま宮崎先生のおっしゃいましたようなことを十分体しまして、今後もそうした方向に向かいまして努力したいというふうに考えます。
#33
○宮崎正義君 そのようにしていきますと、勢い、職員の方々も同じような形で、待遇、処遇の問題につきましても同時に考えていかれるのじゃないかと思います。呼吸が合って初めて一つのことが達成できるということは御案内のとおりでございますし、執行官の方々と職員の方々が一体の大事な仕事をなさっているわけでありますので、執行官のその生活の問題は、即それが、もっと厳しく言うならば収入の少ない職員の方々に目を大きく向けられて、いつもお互いが喜び合って、励まし合って、その執行事務すべてのことが整ってできるようにいくのが私は今後の大きな課題だというふうに思うわけであります。
 それから田中一志参考人にお伺いいたしますが、手数料のことについて、最近のいろいろな社会情勢の変化によりましてどういう点をどのようにしなきゃならないかという、何か詳細の記録でも、また、こういうふうに願いたいというような要望でも一覧表にできておれば、それこそ参考に見せていただければありがたいと思っていますが、それにつきまして、田中一志参考人にも申し上げたいのは、全国的な職員の方々の生活状態といいますか、処遇状態といいますか、そういうふうな、先ほどアンケートをおとりになったというお話でございますが、私もアンケートの参考、これ、いただいておりますけれども、一部分の人たちがまだアンケートを出されてないように思われるわけですが、こういう全国組織としての考え方というものをどんなふうにしてお考えになっているのか、その点も伺っておきたいと思います。
#34
○参考人(田中一志君) まず、アンケートの件ですが、私ども組合の方で、地裁管内及び支部を含めて、執行官と従業員に対して百通余りのアンケートを出したわけです。その結果、執行官の方からは四通、それからそのほか従業員の方からは十何通か届いたわけでありますが、先ほど執行官である田中参考人の方からも話がありましたように、執行官の家族が事務員として雇われているという場合も多いので、そういう関係の事務員の方からはアンケートが来なかったのではないかというふうに推察されるわけです。組合の方に集計しましたアンケートの中身を見ますと、いわば、現在の労働組合法とか労働基準法とか、そういうものに基づいて、執行官の家族ということじゃなくて、全く別なところの人間が雇用されているというふうに思えるわけです。そういう関係がありますので、私ども組合としましても全国的組織をつくりまして、もう少し地位の安定あるいは身分の安定、そうした方向に職員一体となって努力する方が望ましいのじゃないか、こういうことも論議されたわけですが、先ほど申したように、そうした職員の関係もありますので、なかなか全国統一組織、単一組織をつくるというわけにいかないのであります。しかしながら、四十一年の衆議院の附帯決議の問題とか、あるいは今回審議されております民事執行法の問題とか、こういった状況等については機会あるごとにそれぞれの執行官室の従業員の方に連絡をとりながら、また報告を伝えながら、いろいろ職員の状態を把握しているわけでございます。
 今後も、この機会を契機にしながら、さらに全国的に連絡を深めて強化していきたいというふうに思っています。これはまだ私の私案という域を出ないわけですが、できれば公務員化実現の連絡会議とか、あるいは協議会とか、そういったものを全国的に呼びかけていきたいというふうに考えておる次第です。
#35
○宮崎正義君 お二人の参考人のいろいろな御意見は、また私ども同僚の委員の質問は、後ろの方に法務省の方々がいらっしゃいますので、将来に向けての大きな改正がなされるのじゃなかろうかという私は確信を持っているわけでありますが、ともあれ、田中利正参考人、田中一志参考人のそれぞれの御意見、また要望等、後ろの方で全部お聞きでございますし、将来に向かってのお二人のそれぞれのお考えが実現できるように、私は特に声を大きくして要請をしながら、お二人のきょうの御苦労のことをお礼を申し上げます。
 ありがとうございました。
#36
○橋本敦君 両参考人、本日はまことにありがとうございました。いろいろ貴重な御意見を伺いまして、大変参考にさしていただきました。
 一、二点私も質問したいと思うのですが、まず、田中利正執行官に御意見として伺っておきたいのですが、今回執行官の権限が強化拡大をされた、そのこと自体私は異論はございませんが、そのことは、同時に、この執行という問題が、債務者、執行される側との関係で、人権にかかわるいろいろな問題があるわけでございますので、法全体が執行官の権限を強化して執行体制の早期促進ということに向かっておりますが、一面では、差し押さえを受けたり、あるいはいろいろ立入検査ないし質問を受けるという側の人権をどのようにバランスをとっていくかという問題があるように思っておるのです。たとえば、現場に臨んで動産執行を行う場合、差し押さえ禁止物件というのは一応法ではそれなりに出ておるわけですが、しかし、実際の現場の判断は執行官の裁量判断に任される、こういうことになるわけですね。あるいは質問ということを一つとってみましても、不当に質問を拒否すれば制裁もあるわけですけれども、受ける側にとっては、身体状況、精神状況、病状、いろいろな関係がありまして、実際はなかなかやっぱりむずかしい、御苦労なさると思うのです。そういう意味で、今回の執行法の整備、執行官の権限強化と、一方、人権に配慮するという、そういうお考えが特に必要かと思いますが、その点についてどのようにお考えでしょうか。
#37
○参考人(田中利正君) 権限が強化されるということは、まさに御指摘のような懸念が生ずるおそれがあるということは間違いないところでございます。しかしながら、現在、私どもの基本的な精神と申しますか、基本的な執行実施の精神は、債権者の権利を守ると同時に債務者の立場も保護するということを常に念頭に置いて、その両者の中間に立って公正に行うというようなことをモットーにしております。そういったような意味におきまして、執行官たるべき者は、それにふさわしい知識が必要であると同時に、そうしたことを十分理解できるようなりっぱな人格が必要である。知識と人格であるというようなことで私どもも常々後輩を指導しております。そういったようなことでございますので、いま御懸念のあるようなことにつきましては十分留意いたしまして、そうしたことのないように今後とも一層指導をしていきたいというふうに考えております。
#38
○橋本敦君 そういう立場でお仕事をなさっていただくという、そういうお考え結構でございますが、実際の、たとえば動産執行、不動産調査、それに執行官がお行きになる場合に、債権者側の代理人といいますか、人間が一緒に随行いたしまして、そして、たとえば動産執行の場合でも、執行官がこれは差し押さえ物件から排除したいというお考えがおありの場合でも、ぜひそのものを押さえてほしい、これを押さえてほしい、こういう要求を現場でする場合がありますね。執行官がお困りになる。そういう場合に、暴力団的な、あるいはそれに関係する者が債権者となった場合に、強引に執行官に、執行官の意思に反しても、これを執行せよとか、いろいろなことを強要的にやるという事例が、これまでもないわけじゃないし、執行官がお困りの場合がある。そういう場合は、私は、断固としてそれを排除していただかないと人権侵害という問題も起こると思うのですが、現実に執行にお行きになる場合に、不当な要求ないし、あるいは暴力団が強引にやるということを排除するために何らかのいい方法というのはないものでしょうか。そういう者は連れていかないとか、立ち会わせないとか、そういうことはできませんか。
#39
○参考人(田中利正君) 実際問題といたしまして、なかなかむずかしい問題でございます。現在、東京地裁におきましては、日々百数十カ所といいますか、百数十件の事件を二十三区にわたりまして処理しておりますので、その中にはいろいろな問題が起きます。あるいは債権者側が強硬に差し押さえを主張するというような場合もありますし、逆に債務者側が強烈に拒否するというようなことがございまして、往年と違いまして、現在の強制執行はなかなか思うようにスムーズにはいかないものでございます。
 いま先生から御指摘ありましたように、暴力団的な者があくまで強硬に主張したといたしましても、いま私どもでは、とにかく当事者に振り回されるなというようなことをモットーにしておりまして、一つの例を申し上げますれば、ある日本人以外の第三国人の債権者が差し押さえに行きまして、そして、執行官の目から見ますときわめて善良な債務者であろうと思われるのですけれども、トラックを一緒に持ってまいりまして、何が何でも引き揚げてほしいというようなことがあったのですけれども、その場合、それを直ちに引き揚げるということは、なるほど現在の法律でいきますと、運搬に困難な事情があるときにはその債務者のところに置いておいてよろしいと、逆に、運搬に困難でなければ何が何でも引き揚げなければならないというような規定になっておりますですね。そういうような場合、トラックを持って、何が何でも引き揚げてくれと言われますと、実は執行官としても困るわけです。ただしかし、そういうことをいたしますと、まさに過酷な執行というようなそしりを免れませんので、まず、そのような場合に、引き揚げて保管する場所が果たして適当かどうかというような点にかんがみまして、まず保管する場所が適当であるかを見きわめない限りそれはできないというような形で、そうした申し立てを却下したという事例もございます。そのようにいたしまして、過酷な執行というようなことにつきましてはできるだけ避けるというふうな努力を常に重ねておるということを申し上げることができると思います。
#40
○橋本敦君 大変御苦労願っておることはわかりました。
 たとえば、競売場なんかで秩序維持の権限がある、これはわかるのですが、動産執行の現場に臨んで、不当な要求をする債権者もしくは代理人を、過酷な執行排除もしくは人権侵害になることを排除するために、執行官が権限を持って排除できるということが具体的に行われていきますと一層いいと思うのですが、逆に、不当な執行妨害には公務執行妨害ということで警察官を要請するということができるのですけれども、私が言ったのは、逆に、最近暴力金融等がふえておりますので、そういう点での具体的な執行官の公正な職務執行について何らかの考え方なり方針を監督官である裁判所ともやっぱり相協議していただく必要が社会的にはあるのじゃないかということを心配しておりますので、今後御検討をいただきたいと、こう思います。
 それから、田中利正参考人の方から六点にわたりまして要望が述べられました。私はいずれも妥当な御要望だと承っておりますが、その問題と田中一志参考人の御意見とあわせて考えますと、要するに、執行官及び職員の皆さんも含め、民事執行法体制が大きく前向きに進んだ現段階において、実際の実務を扱っていらっしゃる皆さんの待遇あるいは手数料制も含めて、具体的な執行段階における近代化といいますか、そういう関係をみんなで知恵を集めて大きく進めねばならぬということが最大の課題ではないか、結論づけて言えばそういう気がするのですが、結論的に私はそう理解しておるのですが、私の理解に間違いがあるかどうか、田中利正参考人の御意見はいかがでしょう。
#41
○参考人(田中利正君) まさに先生のおっしゃるようなことが理想でございまして、われわれといたしましても、そういった方向にぜひ進めていきたいというふうに考えております。
#42
○橋本敦君 次に、田中一志参考人に若干お伺いしたいと思うのですが、先ほど給与の問題が出まして、私もいただいた資料で地方の方の現状を見ますと、十万円以下という基本給の方がたくさんいらっしゃる。東京の場合、いま田中利正参考人からお話がございまして、平均いたしまして十九万六千何がしということになっているというお話がございました。このアンバランスというのはぜひ解消しなきゃなりませんが、この解消に実はやっぱり手数料制ということが一つは根幹にあるということは否めないと思うのですね。だから、やっぱりこれを解決するには、田中一志参考人も強く主張された公務員体制化への移行ということが大きな課題だろうと思うのです。たとえば東京の場合でも、十九万何がしという平均数値は一カ月給料として出ていますが、平均年齢を見ますと五十一・七歳、平均勤続年数二十四・八年、つまり二十五年という長い勤務、この平均年齢と平均勤続年数がこれほどにまで及んでいるということを考えますと、一カ月の平均給与が東京でさえ二十万を切れるというのは、これは私は低いと、どう考えても低いと、こう思うわけですね。ですから、そういうことと、私的契約関係に置かれている中で、いわゆる年次休暇あるいはその他休暇が確実にとれるようにしなきゃならぬといういろいろな労働条件の問題を考えますと、私は、この問題はやっぱり根幹としての手数料制は近代的に合理化するということに大きくメスを入れないと、なかなか田中一志参考人の言われる要求も実現しないのじゃないか。大きな根は一つはそこにあると、こう考えておりますが、田中一志参考人の御意見はいかがですか。
#43
○参考人(田中一志君) まさに先生のおっしゃるとおりであります。
 先ほども話しましたように、手数料収入は、大都市と地方においてはかなりの収入のアンバランスがあります。したがいまして、そこにいる執行官はもとより、その執行官のもとに働いている事務員についても、やはり賃金水準が大都市と地方ではアンバランスとなってあらわれております。同時に、そのアンバランス自体も、きわめて低い賃金水準になっているというのが実情ではないかというふうに思います。昨年のアンケートの結果も、全国の執行官室から把握されているわけではありませんが、その幾つかを見ても、そのことが言えるのではないかというふうに思います。
 それから、東京の場合、賃金水準、先ほど執行官である田中参考人の方から発言がありましたが、私どもの平均年齢あるいは平均勤続という点から見れば、やはり低いと言わざるを得ません。特に二十三年、二十五年勤めている職員は、送達事件が何万件という多大な件数があったときに採用された者で、その人員が今日そのまま就業しておるという状況になっております。
 終わります。
#44
○橋本敦君 先ほど田中利正参考人も、執行官自体の地方の皆さんの収入と、それから大きなところの東京、大阪等との収入のアンバランスを連盟の会長としてもできるだけ格差をなくしていく方向で努力したいという御意見がございました。私はぜひそれは努力をしていただきたいと思うのですが、そういう問題について連盟として最高裁当局とお話し合いなさるような機会がこれまでにありましたでしょうか、いかがでしょうか。
#45
○参考人(田中利正君) 田中でございます。
 こうした問題につきまして正式にそのような協議をしたということはございませんけれども、いろいろな場面で、個人的といいますか、公の協議の後でいろいろ雑談をするというような機会にはこうした問題が間々出ておりまして、最高裁の御意見も私どもの考えている意見も、ほぼ同じ方向を示しているというようなふうに感得いたしております。
#46
○橋本敦君 それならまたいずれ最高裁にもお伺いして、同じ方向ということなら実現の可能性、見込みもあるやに伺いますので、最高裁の御意見も別の機会にまたお伺いしたいと思います。
 最後に、田中一志参考人に一つだけお伺いをして終わりますけれども、さっきあなたのお話の中にありました、職員の皆さんが、バイクだとか自転車だとか、そういうものを自分であがなって、たとえば送達の場合ですが、それでお行きになる。旅費は支給されるとしても、刑事送達の場合は手数料がない。そういうことで、持ち出しということも実際は多いかと思うのですね。で、職員の皆さんに交通手当とか実費の請求とか、そういうものは制度化されているというようなことがあるのでしょうか。あるいは、先ほどおっしゃったカメラ、テープレコーダー、こういうものによって調査や職務の正確性を期するという、こういう意味では、それは職務に付随した大事な道具であるわけですが、こういったものについて制度的に執行官室に整備をしておくとかなんとかいう制度的な体制になっているのか、職員の自前なのか、この点はいかがですか。職務の実態についてお伺いしておきたいと思います。
#47
○参考人(田中一志君) テープレコーダー、カメラ等の機器については、昨年から執行官の方から支給され、これは自費ということではありません。
 それから自転車等については、これは自費で購入するわけですが、修繕する費用あるいはそれに伴う諸経費等については、いわば職員の歩率という形でそれを手直ししながら、そういうかかった費用の補助をするという形で行われておるわけです。社会情勢の変化、特に公共料金等が値上げ改正されますと、それに伴って、労使ということで執行官側と協議しながら適正な価格にしていくということで、そういった関係の是正は少しずつやられてはおります。ただ、はっきりとした制度ということでなく、その社会情勢の必要を見ながら協議し決めていくということでやっております。
 なお、カメラ、テープレコーダーの支給の点についても、別に制度というわけではなくて、仕事の必要上これは組合あるいは仕事の関係で必要と思われるというように労使の間で協議が調えば、その方向で進んでいくということになるわけです。
#48
○橋本敦君 ありがとうございました。終わります。
#49
○円山雅也君 長時間お疲れと思いますが、最後に一点だけお尋ねをさしていただきます。
 送達事務に関してですけれども、まず田中利正参考人にお伺いします。先ほど、何といいますか、送達事務は執行業務からむしろ外してもらいたいというのが執行官の意向であるというお話をされましたが、これは、いわゆる理論的というか、理念的に、本来そういう送達事務は執行官のやるべきことではないという意味で外してもらいたいと言われたのか、それとも、そういう送達事務は採算に合わないというか、メリットがないという意味でおっしゃられておられるのか、その点、まずお尋ねをしたいと思います。
#50
○参考人(田中利正君) 送達業務を執行官の職務から外してほしいというわれわれの希望は前者にございまして、要するに、現在、公務員の四等級七号俸といいますと、大体一般公務員の課長、係長クラスでございますね、の資格を最低限とする執行官が送達、まあ郵政事務に近い送達事務を行うというようなことは、どうもその職務内容から見て、ふさわしくないと、そういうような観点から、できるだけこれを外してほしいというふうに申し上げている次第でございます。
#51
○円山雅也君 そうしますと、送達事務を扱うことは、採算には合う、つまり実益はかなりあるということでございますか、やれば、収入には。
#52
○参考人(田中利正君) 現在、送達の業務につきましては、収入の面におきましては全く赤字でございまして、そういう意味では収入の実益はございません。
#53
○円山雅也君 そうしますと、田中一志参考人にお尋ねをいたします。私の聞き違いかもしれませんが、先ほど田中一志参考人は、東京の場合、たとえば二十区の送達が廃止されたことによってかなりの減収を来しておると、また、残りの三区さえもなくなってくる、これが非常に何か経済面を脅かしておるというような御発言があったように記憶しますが、その点まず……。
#54
○参考人(田中一志君) 昭和四十一年当時は、都内二十三区全区を担当しておりました。したがって、その全区にわたってかなりの送達件数が出ておったわけです。したがいまして、そこに従事する職員の人件費との関係で言えば採算がとれたということでして、現在は区域も縮小され、また、それに伴い送達件数も減少してくるということで、それに関与している人件費の関係では赤字になっていると、先ほど執行官の田中参考人の方からもありましたように、そういう状況になっているということであります。
#55
○円山雅也君 最後に田中利正参考人にお伺いします。
 そうしますと、経済面からいけば、送達事務を返すよりも、逆に二十区の方の送達事務を復活さしてもらった方が経済的には執行官の方々のあれは豊かになるということになりますか。
#56
○参考人(田中利正君) その点に関しましては、仮にそういうことになりましても、とうてい人件費を賄って余りあるようなことにはならないと思います。
#57
○円山雅也君 終わります。
#58
○委員長(峯山昭範君) 以上で参考人に対する質疑は終了したしました。
 参考人の方には、本日は長時間にわたり貴重な御意見をお聞かせいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して、厚く御礼を申し上げます。
 本案に対する午前の審査はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。
   午後零時三分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時五分開会
#59
○委員長(峯山昭範君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 民事執行法案及び民事執行法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案を便宜一括して議題といたします。
 まず、民事執行法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案について政府から趣旨説明を聴取いたします。古井法務大臣。
#60
○国務大臣(古井喜實君) 民事執行法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 この法律案は、現在御審議をいただいております民事執行法案が可決されました場合、その施行に当たり、民事訴訟法外六十の関連する諸法律について、字句の修正、条文の整理その他関連事項の改正を行う必要がありますので、これら所要の改正を一括して行おうとするものであります。
 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
#61
○委員長(峯山昭範君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 これより両案についての質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#62
○寺田熊雄君 一昨日競売場の視察をいたしまして、不動産の買い受けの申し出をしようとする者は現行法で大体一〇%の現金による保証金を積むということが行われておるようであります。今度の改正法によりますと、六十六条で「不動産の買受けの申出をしようとする者は、最高裁判所規則で定めるところにより、執行裁判所が定める額及び方法による保証を提供しなければならない。」という規定になっておるわけでありますが、何らか現在のあり方を改めようとする意図のもとの条文なのか、その点ちょっと御説明いただきたいと思います。
#63
○政府委員(香川保一君) 趣旨におきましては、特に改正する意図ではございませんので、その態様におきまして、やはりケース・バイ・ケースで合理的な扱いができるようにということで弾力的な規定に変えたと、かような趣旨でございます。
#64
○寺田熊雄君 ただ、現金をかばんに入れて持ってくるというのが非常に手間ですから、また、危険も伴うので、そこで「最高裁判所規則で定めるところにより、」というのが、そういうことに対する何らかの修正を意図したものなのでしょう。そういう点をちょっと。
#65
○政府委員(香川保一君) 現金を原則にいたしますと、いろいろの問題がございますので、さような点はケース・バイ・ケースで弾力的に処理できるようにということで、その額につきましても、あるいはどのような保証を提供するかにつきましても、最高裁規則に委任いたしておるわけでございまして、ただいま最高裁の事務当局において御検討中の規則案を承りますと、現金のほかに銀行振り出しの小切手あるいはいわゆる保険会社とのボンドでございますが、そういったいわば現金と同じようなものを中心に考えておられるようでありまして、額につきましては最低競売価額の十分の二程度を原則にしてはいかがかというふうな案を準備されておるように承っております。
#66
○寺田熊雄君 一昨日競売場の視察に参りましたときには、再競売のときには五〇%だということを執行官が告げておりましたね。これもやはりそういう趣旨は貫かれるわけでしょうか。
#67
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) ただいま法務省の民事局長の方から御説明申し上げましたことは、最初の段階におきます保証の提供の方法また額でございまして、ただいま寺田委員御指摘がありましたような、再競売のときに十分の幾つとかいうふうに高額なものを提供する場合に、なお同じ方法でやるかどうかということにつきましては、現在規則を立案するに当たって検討中でございます。
#68
○寺田熊雄君 これは、競売制度をスムーズに行うという観点からいたしますと、余り高額の保証を必要とするということになりますと若干障害になるおそれもありますし、さればとて、余り安くしますと、これはいたずらに競売制度をいじるにすぎない、そういう結果にもなるわけで、その辺のあんばいが非常にむずかしいのでしょうけれども、そうして結局そういう保証を積みまして、そして競買の申し出を履行しない、みずからがその入札した価額を支払わないという場合は、その保証金をどういうふうに処置するということになりますか。
#69
○政府委員(香川保一君) お尋ねの場合におきましては、その保証金をいわば没収いたしまして、それを代金に算入するということにして、それを配当財源にするわけでございます。
#70
○寺田熊雄君 そうといたしますと、再競売の場合に五〇%もの保証金を必要とするという点、ちょっと首をひねる余地もあるようですが、これは検討するという――何もいま最高裁の民事局長が言われたことを、そのとおりにならないからといって責任を追及するわけじゃないので、安心してお答えいただきたいのですが、どういうふうに考えておられます。その再競売のときの五〇%の保証金という問題について、あなたはどういうふうに思っておられるか。
#71
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 現在の十分の一というのを、私どもが現在考えております規則では、これを十分の二に高めたいというふうに考えておるわけでございますが、その場合に、再競売になりましたときにその額をさらに高めるかという点につきましては、先ほど寺田議員が御指摘になりましたように、あるいは競売をしにくくするという面があるかと思われますので、そこまでは高くしないで処理するということは考えなければいけないというふうに思っております。
#72
○寺田熊雄君 きょう御答弁になって、そしてそれと違った結果が生じたからといって、私があえてあなた方の責任を問うということはいたしませんから、この問題に関する限り。これは非常に技術的な法案だから、何やかや非常にいろいろな面を考えて結論を出さないと過ちますので、慎重によく考えてください。
 それから、今度の法案によりますと、最高裁規則で定めることが非常にふえました。これはまあいいことか悪いことか、私ども実務に携わる者としては多少首を傾げる面もあるのですが、その中の一つで、不動産の売却方法、これをやはり執行裁判所が定める――先ほど執行官並びに執行官事務所に働いておられる職員の代表の参考人意見の陳述を聞いたのですが、執行裁判所の定める売却方法の中で郵便による入札の方法も考慮しているようだという話がありました。そういうものも考慮しておられるのか。それから、入札、競り売りのほか、随意売却を考慮しておられるということのようですが、そういう点の抱負をちょっとお聞かせいただきたいと思います。これは最高裁判所。
#73
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 御指摘の郵便による入札の制度は、今回の改正に当たりまして導入しようというふうに考えておるわけでございます。その趣旨としましては、場所的あるいは時間的な入札についての制約をなるべく克服して、広く買受人を募るためのよい方法ではないかということから、そういうことを考えておるわけでございます。
 それから売却の方法としましては、今度の改正では入札を原則にしたいというふうに考えておるわけでございますが、競り売りがその次の順位として上がっておるわけでございます。そのほかに、法案では、その他の方法というのを最高裁の規則にゆだねられておりますので、それについての手当てをいたすつもりでございますが、これについては具体的に売却の方法を一々掲げるということではなくして、物件に応じて柔軟な売却方法をとることができるという程度の規定にとどめて、あとは運用に任せていきたいというふうに考えておるわけでございます。
#74
○寺田熊雄君 そうすると、ここに言う「最高裁判所規則で定める」というのは、現実には執行裁判所が適宜判断をして決めるということで、執行裁判所の権限あるいは裁量というものが非常にふえてくる、こういうことになりますね。私は、いま局長の言われた郵便による入札制度の導入ということは、確かに、競売ブローカーなどが蝟集するところに一般の素人がなかなか入りにくい、威圧されるというような実態にかんがみますと、なかなかおもしろい制度だと考えるのですが、まあ差し押さえられて競売に付せられるということは、関係者はかなりよくこれを了知することができる。しかし一般には、裁判所の掲示場にそのことが掲示されるということ、あの掲示場に行って裁判所の掲示を見るというのは、やはりこれは職業的な事件屋、競売屋、ブローカーなどに限られるように思うのですが、たしか前回の質問でしたか、法務省の民事局長は、落札価額が恐らく高額になるであろう、そういう不動産については日刊新聞に掲示することも考慮するというような御答弁があったと思いますけれども、これは一般に周知させる方法について何らか考慮する余地はないのか、現在ではもうそれしかないのか、その辺のところはどうでしょうかね。これは両民事局長、ちょっとお考えを聞かしていただきたいと思います。
#75
○政府委員(香川保一君) 個人的な考えで恐縮でございますけれども、確かに周知する必要はまさにあるわけでございまして、その手段は、金をいとわなければいろいろ考えられると思うのですけれども、何分そういった費用というものが債務者に結局は負担させることになる関係がございますので、おのずとその負担の面から限度があるだろう。私、思いつきでございますけれども、たとえばいろいろ不動産の取引の状況等をニュース的に出しておる新聞があるわけでございまして、そういった新聞に掲載するということになれば比較的安価に掲載できるだろうと思いますし、場合によっては、各市町村あるいは役所等のわりあい人が出入りするようなところに掲示させてもらうというふうなことも考えていいのじゃないかと、いろいろ地域によりましてはこの問題は真剣に考えれば、おのずといろいろの知恵が出てくるだろうというふうに考えているわけでございますけれども、それを法律なり規則で、こうでなきゃならぬというふうに余りきめつけないで、やはり執行裁判所の費用の面を考慮しながらも徹底するような方法を弾力的に考えてもらうというのがいいのじゃないかというふうに思っております。
#76
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 公売物件を広く一般の人に知らせるという方法につきましては、裁判所の方でも長年にわたっていろいろの手を尽くして苦労しているところでございますけれども、なかなかうまい方法が見つからないというのが実情でございます。現在の取り扱いといたしましては、裁判所の掲示板に公告をするというのを原則にして、そのほかに市町村の掲示板に掲示してもらうという方法をとっております。それから、日刊新聞に公告をするというのは御指摘のとおりでございますが、そのほかにどういうふうな方法があるかと申しますと、いろいろ考えてはおりますが、たとえばパンフレットをつくってそれを配布することはどうかというふうなことも考えてみましたが、それをどうやって一般人がわかるようなところに配布するかという問題それからその配布の事務あるいは各所に郵送するというふうな場合に、その事務をだれがやるか、その印刷費はどうするかというふうな問題にぶつかって、なかなか実現が困難であるという状況にございます。一つの考えられる方法としましては、各市町村が出しております広報がございます。それに掲載してもらうというのが一般人に対する知らせ方としては非常に広く行き渡るものではないかということで、そういうことを考えておりますが、そのほかの点につきましてもいろいろ知恵をしぼりまして、これから一層充実さしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
#77
○寺田熊雄君 あなた方のいろいろ御苦心のほどはよくわかったけれども、一つは、やはり民事事件というものは、私益と私益の追求であるとか、あるいは衝突であるとか、そういう見地からだけつかまずに、やはり私法秩序を維持するということは国家にとっても非常に大切な問題である。したがって、そういう私法秩序を維持していく、それから、私権が侵害されずに救済を得るということは私人の問題であると同時に国家の問題である――これは裁判制度をそのために置いているわけですから、そういう考え方から出ていることは当然だけれども、したがって、民事訴訟の分野においても競売制度というものを円滑に理想的に行うためには、多少の費用はかかってもそれはやはり国の方から支出してもらう、全部債務者の負担にすべきではないのだという考えで、費用が要る場合にもあなた方が胸を張って財政当局にこれを請求していただくという態度をやっぱり希望したいですね。ですから、いま最高裁の民事局長の言われた市町村の広報というのは、これは恐らく市町村が無料でやってくれるのではないかと思うけれども、それ以外に、もし多少の経費が必要だという場合には、それはやはり予算を請求するということであってほしいと思います。これは要望として申し上げておきます。
 それから、先ほど執行官並びに執行官役場の職員の代表の参考人意見を伺って、ちょっとお話があったですね。執行官の田中利正氏の意見でありましたが、現実には私どもが三人ぐらいの執行官で競売場に臨むと、したがって、今度この法案で与えられた秩序維持の権限を行使する上においてはそう困難はないと思うけれども、しかし、現実に退場を命じた人間が動かないときに実力でこれを出すというわけにはいかない。したがって、警備員の巡視というものをやってもらいたいというような意見をさっき述べられました。しかし、裁判所には、警備員というのは、一般には、東京地裁なんかはあるのかもしれないけれども、小さな裁判所では、どうも警備員なんというのは、あるのかもしれないけれども、巡回する姿など私は見たことがない。多少の配慮をそこにしなければいけないように思うのですけれども、この点はどうなんでしょうね、どういうふうにお考えですか。
#78
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) まず、入札場あるいは競売場にそういうふうないかがわしい者が入り込まないようにするというのが第一の方法でございますが、その点につきましては、従前からも、執行官の監督官であります裁判官あるいは監督官の補助官であります首席書記官あるいは執行部の主任書記官というふうな者が競売場に臨席をして、そういう者が入って来ないように、いわば無言に圧力を加えるというふうなことをするようにわれわれの方としては要望しておるわけでございます。
 しかし、それにしても、いろいろ雑多な人が自由に出入りできるという場でございますから、そういう人が入り込まないとも限らないということでございます。そのために、法案では秩序維持の規定が設けられましたし、それに対応して規則の方でもその具体的な方法を考えなければいけないわけでございますけれども、それをどうしたらいいかということについては、本当のところは、まだ固まっていないというのが実情でございます。
 まず、執行官としては、自分で、競売というか、競り売り、入札の手続をしながらそういう者に退場を命ずるということは、これは事実上困難であるということは否めないと思います。そのためには、事務員の人を使うとか、あるいは他の執行官の援助を受けるとかというふうなことで、手分けをして処置をしなければならないということになろうかと思いますが、それで処置できない場合も当然考えなければならないことで、その場合には、私どもとしては、必要に応じて執行裁判所に援助を求めることができるという趣旨の規定を設けたいというふうに思っておるわけでございます。それでもなおかつ退場しないというふうなことになりますれば、これは庁舎管理権の発動を促して排除するということにならざるを得ないかと思います。しかし、いま御指摘のように、大きな裁判所では警備員がおりますけれども、小さい裁判所ではそれは実行困難ではないかというふうな御指摘て、その点になりますと若干心もとない面もないわけではございませんが、庁舎管理権の実行に当たっての事務官の応援といいますか、そういうものによってその点は遺憾なくやっていきたいというふうに考えておるわけでございます。
#79
○寺田熊雄君 これは、執行官のいろいろな権限を妨げる者、これに対する罰則の問題にも関係を持ってくるわけですね。現況調査に関しては、執行官がたとえば質問をするのに答えなかった、あるいは虚偽の返答をしたというような者に対しては、今度新たに罰則を設けたようですね。ところが、そのほかの点については案外罰則というものを、どうしてか非常に謙抑的に、余り設けることをしなかったということがうかがえるわけであります。まあ、暴行、脅迫を伴う場合には公務執行妨害になるので、それ以外の点に余り罰則を設けるのもどうかという配慮をなさったのだろうと思いますから、余り私としても民事事件で罰則を厳しくするのはどうかという、そういう考え方もあります。しかし、何分にも相手はかなり海千山千のすさまじい人物が多いわけで、これがもし暴行、脅迫に至らざる程度の妨害あるいは不退去というような問題こういう場合にはこれは不退去罪になるということなんだろうか、不退去罪にはならないけれども罰則まではそれを処置する必要はないというのだろうか、その点の配慮はどうなんでしょう。これは法務省の民事局長に。
#80
○政府委員(香川保一君) 刑事関係でございますが、不退去罪には一般的にはならないように思いますけれども、公務執行妨害に至らないような妨害の場合に、業務妨害罪が成立するということは考えられると思うのであります。やはり、執行官が現地に臨んでいろいろな調査をする等のことは、業務妨害罪における「業務」でございますから、それを妨害するということになれば、業務妨害が成立するということは十分考えられるだろうというふうに思っております。
#81
○寺田熊雄君 しかし、業務妨害罪は、あなたも御存じのように、威力を用いなければならない。威力を用い、あるいは欺計を用いる。したがって、威力も用いない、欺計も用いない、そして退去せよと言っても動かない、あるいは、威力や欺計には至らないけれども、その他の方法で、たとえば現況調査に対して、執行官が家に入ろうとするのをはいれなくする、それは壊す権限はあるだろうけれども、しかし壊せないようながんじょうな鉄のとびらでロックしちゃった場合、これは威力ではないし、欺計でもない、したがって威力業務妨害罪にはならないと思いますが、そういう場合に、何らかの民事罰を考慮する必要はないでしょうか。
#82
○政府委員(香川保一君) 過料の民事罰も検討したのでございますけれども、やはり私どもの一つの感覚的なものとしまして、目的を達成するほかの手段があればそれによってやるのが本筋で、いたずらにと申しますか、そういった民事罰にしろ、過料の制裁をふやすことはやはり慎重でなければならない、基本的にはそういうように思うのでございまして、ただいまお尋ねのような場合に、仮に業務妨害罪が成立しないというふうな程度のもののときには、やはり執行官は門扉を開く権限もございますし、そういう妨害を排除する権限もあるわけでございまして、それが自力ではなかなかできないというときには警察力の援助も得られるわけでございますので、そういった方法によって妨害を排除することに努めるのが本筋じゃなかろうかということで、あえて民事罰を設けなかった次第でございます。
#83
○寺田熊雄君 この点はどうですか。最高裁の民事局長は、民事罰を設ける点についての考慮はなさらなかったのですか、また、その必要はいまはまだないというふうなお考えでしょうか。
#84
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 私どもの立場としては、そういうふうにいろいろ注文していいかどうかということは疑問であるわけですが、いま問題になっておりますような程度の妨害というのは、いままでぶつからなかったのじゃないか、したがって、それがそういう罰則を設けてくれという要求というか、希望までにはいかなかったのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
#85
○寺田熊雄君 そんなことはないので、かなり執行官も現場では苦心をしておられるようですよ。なかなか言うことを聞かないやつもおるし、それから私どもが一番経験していますのは、明け渡しの強制執行の際に、私が現実にぶつかったのは、これは暴力団が家に入っていて、なかなか執行官もはいれない。警察官の援助を求めたのだけれども、警察がなかなか来ない。小さい巡査が一人来てまごまごしておって、これはだめだというので、さらに請求して、今度は刑事課長が来たけれども、この刑事課長が来てくれるまでにもなかなか手間が要って、裁判所の事務局長から署長にかけ合って、やっと刑事課長が来た。それでも結局らちが明かずに、しょうがないから私が先頭になって入っていった。それで執行官が後からやはり入ってきた。これはかなりお年寄りの執行官でしたけれども、そういう現実の事例もある。しかし、そういうような具体的な事例がすべて法務省なり最高裁の方に一つ一つ上がっていくものとは思われない。だから最高裁のお耳に入らないから、そういう事例がないのだというふうにちょっと即断していただいては困る。やはりそれは検討していただかなければいけない。
 それから、いまの警察官の援助を求めることができるというのは第六条に今度はあるわけで、これは先ほど執行官がこの委員会にお見えになったのだけれども、時間がなくてこの点の質問をすることができなかったのですが、警察の援助を求めることができるといって、執行官は現実にこういう援助を求めてスムーズにいままで援助が得られているのかどうか。その辺の実態調査はなさっておられますか。これはどちらの局長でも結構ですから。
#86
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 特に実態的な調査をしたわけではございませんが、そういう事件がありました場合には事後的に報告を受けているわけでございますが、その報告の限りでは、仮に時間がかかったにしても、どうやら執行は終わっているというふうな結果になっているようでございます。
#87
○寺田熊雄君 そうなんですね。確かにいろいろ苦心惨たんして――私もそういう意味では非常に苦心したのですが、自分がどんどん入っていって、そして私には暴行を加えなかった、暴力団が。それでどうにか皆を出して、そして執行官に頼んで、今度は簡単に出入りのできないような厳重な材木で扉を新しくつくってもらって、そして立入禁止の仮処分ですか、それが完成したということなんですね。ですから、これは執行官の方々がそういうことをすべて詳細に裁判所に報告をしているのかどうか、私どもとしては疑いなきを得ないわけです。その点はひとつよく実態をこれから調査されて、執行官が警察官の援助を得やすいように、また、警察はそのときに即応して援助の態勢をとることができるように、たとえば最高裁の民事局長と警察庁の刑事局長との間でそういう点の合意をするとか、あるいは法務省の民事局長でも結構ですが、警察庁の刑事局長との間で十分な意思の疎通を図るというようなことも考えていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
#88
○政府委員(香川保一君) もちろん、これは実効あらしめるためには、そういった行政的な取り決めと申しますか、そういったことも十分考えなきゃならぬわけでございまして、実は、この法案作成のときも、私どもの耳に入っておる限りでは、大都市は別といたしまして、所によってはなかなか警察の援助が得にくいというふうなことも十分承知いたしておるわけでございますが、この辺のところが、いろいろの方法を講じまして、いま御指示のありましたような警察庁と協議をするというふうなこともその一つの方法かと思いますが、いろいろのことを考え、方法を講じて実効あらしめるように努力してまいりたいというふうに考えております。
#89
○寺田熊雄君 第六十八条は、「債務者は、買受けの申出をすることができない。」ということがありますね。これは、現実には債務者が自己の計算で他人に買い受けの申し出をさせることが多いのではないかというふうに私どもは考えております。これは結局七十一条の第三号に当たるわけでしょうか。もちろん、そのことがはっきりすれば、すぐこれは不許可の決定がなされると思うのですけれども、現実にはそういうことを一々調査はなさらないわけでしょう。その点どうでしょうか。
#90
○政府委員(香川保一君) 執行裁判所が売却許可決定をいたします場合には、もちろん、買い受け申し出人が買い受ける資格があるかどうかということは、当然これは調査すべきことだと思うのであります。ただ、表面には債務者があらわれないで、債務者の計算において第三者が買い受けの申し出をするというふうなときは、なかなかそういった内部的な計算関係というのはケースによっては裁判所にわかりにくいことがあろうかと思いますけれども、しかし、やはりそういったことも含めて、たてまえとしては調査すべきことだろうと思うのであります。したがって、そういうことがわかりますれば、七十一条の三号によって不許可にし、また、一たんそういうことが確知できなくて売却許可決定をいたしました後に明らかになれば、その許可決定を取り消すということも当然すべきだろうというふうに考えております。
#91
○寺田熊雄君 第八十三条の「引渡命令」に関してちょっとお尋ねをしますが、この引き渡し命令というのは、これは債務名義としての効力を持つのでしょうね。これに対しては執行抗告をすることができるということになっておるようですね。そうすると、第五項で、これは確定するまでは効力を生じないということがあるので、命令が出てから一週間というのは執行ができないと、こういうことになるわけですか。
#92
○政府委員(香川保一君) そのとおりでございます。
#93
○寺田熊雄君 今般の改正で、執行裁判所の権限を裁判所書記官の権限に移した。これは裁判所書記官の地位の向上にも大変役立つし、また、手続が簡素化して大変よかったと思うのですね。実際上は練達の書記官がやってしまって、私ども執行部の裁判官をしたことがあるけれども、余り細かい実務というのはむしろ書記官の方がよく知っておられるということを経験したわけですが、しかし、それにしても、やはりこの民事執行の関係というのは非常に技術的なものですから、執行関係の書記官にはある程度やはり研修その他の制度を徹底さしていただく必要があると思うのですね。これはいまでもやっておられるわけでしょうか。
#94
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 書記官に対する研修につきましては、裁判所書記官研修所におきまして執行事務研修というテーマでたびたび催しております。そういう点につきましては、今後も同じようなことで、あるいは今度の改正でそういう権限が直接自分のものとして委譲されるようになりましたものですから、そういう点も考慮いたしまして、一層の研修の充実を図っていきたいというふうに考えておるわけでございます。
#95
○寺田熊雄君 動産執行の段階で、今度、手形、小切手その他有価証券を執行官が差し押さえる場合が非常にふえてまいりましたが、午前のこの委員会で、田中利正執行官もその点について言及をせられたわけであります。しかし、それを執行官が押さえる場合に、その手形の提示をする義務が生じた、これは従来もそういう場合がなかったわけではないようでありますけれども、今回は、これは一般的に、手形、小切手その他の有価証券を押さえる、そうして手形、小切手の提示をしなければいけない、債務者にかわって提示をすると。そういうことになりますと、これは執行官の事務がやはりそれだけふえることになります。忙しくなるというだけでなくして、その事務は、支払い場所に臨んで、そうしてそれを現実に提示するということになりますと、その事務はやはり一つの独立した執行官の義務としてとらえることができるわけですね。そうすると、それに対する手数料なども当然考慮しなければいけないということになるわけですが、その点の考慮はなさっておられるのでしょうか。
#96
○政府委員(枇杷田泰助君) 民事執行法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案の中で執行官法の改正を考えておるわけでございますが、その中の八条に、手数料を受ける事務単位の規定がございます。これにつきまして、現行の規定の上では、ただいまの提示の関係については必ずしもはっきりいたしませんで、実務的には、八条の二号の差し押さえの執行に付随する事務としてその中に一括評価されておったようでございます。今度は少し様相が変わってまいりますので、そのものを明記してはございませんけれども、そういう趣旨も入れまして、新しい法律の方の八条の六号に、「売却又はその他の換価の実施に係る事務」というふうな規定を設けまして、この六号の事務の中で、その提示にかかる手数料を評価しようという考えでおるわけでございます。したがいまして、この六号の規定を受けました最高裁判所の執行官手数料規則の中でそのようなことが織り込まれるというふうに考えておるわけであります。
 なお、費用の関係につきましては、執行官法の第十条に、その受けられる費用のことが決められてございますけれども、そこには、十条の第五号といたしまして、ただいま御指摘の「民事執行法第百三十六条又は第百三十八条に規定する事務を行うための費用」、これは当然に執行官が支払いを受けられるというふうに明記いたしておる次第でございます。
#97
○寺田熊雄君 そうしますと、それだけを独立してとらえないで、換価全体の中の手数料で、それを加味して定めようと、こういうことになるわけですね。
#98
○政府委員(枇杷田泰助君) 手数料につきましては、そうでございます。
#99
○寺田熊雄君 それから、その評価が問題でありますけれども、執行官がその評価をみずから定める場合も出てくるわけですね。それはどうでしょうか。
 それからまた、その評価を執行官にやらせるということは、これは執行官に困難を強いることにはならぬのでしょうか。この点いかがです。
#100
○政府委員(香川保一君) まあ、いろいろ差し押さえいたします場合にも、当然その評価というのが問題になってくるわけでございまして、たとえば超過差し押さえの禁止の規定の関係から、どの程度押さえれば超過にならないかというふうなときには、差し押さえの客体について執行官が当然評価しなきゃならぬわけでございます。お尋ねの場合の小切手、手形につきましても、執行官というのはそういった仕事の当然の要請としていろいろの財産についての評価能力を持っているものだということを前提にいたしておるわけでございまして、実際問題としてもさして困難だとは聞いておりません。
#101
○寺田熊雄君 いや、実は非常に私は困難だと思うのですよ。執行官が万有についてその適正な価格を知っておるという、そういうことを肯定し得ないことは当然なんで、それをやっているわけでしょう、彼らは。だから、それは執行官にはむずかしいことだと思うので、執行官なかなか大変なんです。それでまた私どもも執行の場合には、よに道具屋というものをどうしてもやっぱり用いざるを得ない。よき道具屋に聞きますと、執行官の評価は高くて困ると言ってこぼしておる。それからまた、債務者の方は安過ぎると言って怒るし、なかなかむずかしいので、決して、民事局長、あなたの言われるように、執行官は楽々とやっているわけじゃありません。それはよく聞いてみてください。ことに貴金属なんというものの評価を執行官がやるということになると、これは大変なことになりますが、これはどういうふうにしますか。
#102
○政府委員(香川保一君) まあ、私も実は執行官の評価能力というのはそんなにないだろうと思っておったのですけれども、ただいま寺田委員のお言葉を返すようでございますけれども、意外に精通しているようでございます。もちろん、それは楽々とという意味じゃございません。平素のいろいろの訓練もございましょうし、知識の修得もあってのことでございますけれども。ただしかし、いろいろの差し押さえ物があるわけでございますから、物によっては初めてぶつかるような物もあるということは当然考えられるわけでございます。そういった場合に、自分がやはり適正な評価がやりにくい、あるいは困難だというときには、鑑定人に評価させるというふうな道も規則の方で設けられるように承っております。
#103
○寺田熊雄君 貴金属の評価なんというのは、どういうふうに評価するか。これは規則で定めるということですが、これは、最高裁の民事局長、どんなふうにやりますか。
#104
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 現行法では鑑定人による評価が義務づけられておりますが、ただいま考えております執行規則案におきましては、貴金属については地金以下で売ってはならないという原則的な制限を設けているだけでございまして、そのほかの一般的に必要があった場合に鑑定人に評価させることができるという規定を設けるつもりでおるわけでございます。
#105
○寺田熊雄君 そうすると、たとえば鑑定人なんというのは執行官が選任するわけですか。あるいは鑑定人の名簿なんというのをあらかじめつくっておくのか、執行官としても迷わざるを得ないわけでしょう。たとえば、その土地の有名な貴金属商とか、あるいはデパートがあればデパートの宝石部長、鑑定士の資格を持っている宝石部長なんかを選ぶとか、そういう点、執行官に一任しちゃうのでしょうか、どうでしょう。
#106
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 結論から申し上げますと、執行官に一任するということになるかと思いますが、それにつきましては、執行官にその鑑定評価をするにふさわしい評価人が得られるようにリストアップをしてもらうようにお願いして、そのリストアップについては裁判所の方も協力していくというふうにしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
#107
○寺田熊雄君 それから、法務省の民事局長、非常に執行官を、都下と言っちゃ何だけれども、関係者だから高く評価しておられるけれども、しかし、執行官といえども、たとえば手形の評価なんというのはきわめてむずかしいので、手形の振出人あるいは為替手形の引受人の支払い能力なんというのは、とうていそれは察知すべくもないし、小切手の場合は一々銀行に問い合わせないと預金があるかどうかもわからないし、なかなかこれは評価といっても執行官は困るのじゃないかと思いますが、こういう点も、最高裁としては、もう執行官に一任しちゃうわけですか。
#108
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) ただいま私どもで考えておりますのは、手形、小切手の場合には、これはもちろん評価しなければなりませんけれども、その場合の評価をどうするかという点は、ただいま御指摘のように非常にむずかしい問題がございますので、原則としては額面額をもって評価額とせざるを得ないのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。ただ、そうしますと、先ほど来問題になっておりますような超過差し押さえの問題が起こってきます。実際には債務者の支払い能力がないというのに、額面で評価をするというふうなことで超過差し押さえの問題が起こってまいりますけれども、そういうことが仮に債権者の方から指摘された場合には、やはり実価を評価しなければならないのではなかろうかと。その場合には、やはり評価人を選任して評価をしてもらうということにつきましては、先ほどと同じように、評価人のリストをつくっておいてもらって、その中から適任者を選ぶという方向でやっていくことになるのではなかろうかというふうに思っております。
#109
○寺田熊雄君 百二十五条の、仮差し押さえの執行があったものについてはさらに差し押さえることができないと、この点はどういう見地からこういう条文を設けておられるか、ちょっと説明していただきたいと思います。
#110
○政府委員(香川保一君) 御承知のとおり、現行法におきましては二重差し押さえができることになっておるわけでございますけれども、やはり二重差し押さえを前提としましての後続のいろいろの手続を考えますと、やはり初めの段階で二重差し押さえを禁止いたしまして、そうして第二の申し立ての関係は、併合して事件の後続手続を進めるということの方がむしろ合理的ではないか。その方が法律的にもよくわかるし、現行の御承知のとおりの照査手続というのはなかなか厄介でございますし、いろいろ方法があろうかと思いますけれども、いろいろ議論いたしまして、やはりこの案のような二重差し押さえの禁止のうらはらとしまして、事件を併合するという形で手続を進めた方がわかりがいいと申しますか、合理的ではなかろうか、それだけのことでございます。
#111
○寺田熊雄君 配当要求の問題に移らしてもらいますが、今度は、先ほど田中利正執行官が配当要求をすることができるもの、これは今度は制限をいたしましたので、配当手続が非常に楽になったという話がありました。そうして、民事局長も、この民事執行法案を作成する場合に、労働者の立場を非常に考慮したということで、賃金債権のような一般の先取特権者は、債務名義を有しない場合といえども配当要求をなし得るのだという点を特に挙げておられたわけであります。そこで、私どもも、没落に瀕する、あるいは倒産に瀕する企業なんかの場合、たくさんの労働者から遅配賃金の支払い、獲得について相談を受けることが多いわけでありますが、そういう場合の証明資料といいますか、これはどの程度のものを要求しておられるのか。これを余り厳格にせられると労働者としては非常に困る場合があるのですが、そこをちょっと説明していただきたい。
#112
○政府委員(香川保一君) 先取特権者が配当要求をいたします場合の、その先取特権の存在、つまり、先取特権で保護される当該債権の存在を証する書面を提出しなければならぬわけでありますが、この書面としてどういうものがあるか。一番典型的なと申しますか、通常考えられるものは、雇用会社の方からの幾ら幾らの賃料が不払いだということの証明書があれば一番いいわけでございますが、そのほかのものとしまして、私ども、たとえば直接役所の仕事ではございませんけれども、労働基準監督署あたりは、そういった実態をわりあい知っておられるわけでございますので、そういったところから証明してもらえないだろうかというようなことをいろいろお願いもいたしておるわけでございまして、これは具体的にどういう書面、現在でも競売法では、先取特権についての競売を認めているわけでございますけれども、そういった実態を踏まえて、どういう書面が一番適当かということを考えなければならぬわけでございますが、実際問題としては、そのものずばりの入手できる書面というのはむずかしい場合があろうかと思うのであります。これは、したがいまして、執行機関におきまして、その権利を証する書面なりや否やというところは、ある程度そのものずばりの明白なものでなくとも、存在が推認できるというようなものであれば、この書面として扱うというふうな運用を期待したいわけでございます。
#113
○寺田熊雄君 これは最高裁の方では実務上把握しておられますか。どの程度のもので一般に執行官なり裁判所がその申し出を許容しているか。なるべく余り厳格にいろいろな書面の要求をしないで、スムーズに労働者の賃金債権が得られるように、その趣旨はできるだけ徹底していただきたいと思うのですけれども、その徹底の方法は、先ほど最高裁の民事局長が言われたような司法研修所における教養の課程でなさる場合もあるでしょうし、そういう点はいかがでしょうか。
#114
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 先取特権を証する文書の種類については、実務の取り扱いといたしましても特に制限をしているわけではございませんで、執行官あるいは執行手続でどういう証明文書が多く用いられているかということは実際にはわかりませんが、仮に賃金支払いの仮処分の事件なんかの例によって考えてみますと、倒産をしたという企業であってもまだ会計係が残っている場合がございまして、その会計係の人が給与に関する証明を出してくれるという例もありますし、それから賃金台帳を持参してくるという例もございます。それから、そういうものがない場合でも、過去に毎月毎月賃金をもらっていたその賃金の明細書を各人労働者持っておるわけでございまして、それを提出してもらって賃金額を決めているというのが実情でございまして、かなり融通的な取り扱いがなされているのではないかというふうに考えておるわけでございます。
#115
○寺田熊雄君 いまの御答弁、大変満足する面もあるし、不満足な面もあるのですよ。だけど、細かいことだから、余り言わずに、できるだけそういう点で余り厳格な証明を要求しないで、心証が得られた場合はできるだけ寛大な処置をとってもらいたいという要望をしておきます。
 配当について、譲渡担保権者の権利行使の方法が従来の取り扱いと変わるのか、あるいは従来の取り扱いと一緒なのか、この点の御説明をいただきたい。
#116
○政府委員(香川保一君) 譲渡担保権の場合には、通常はその動産を占有していない場合が多かろうと思うのでありますが、それを債務者の所有の物ということで差し押さえられました場合には、当然譲渡担保権者はいわゆる第三者異議ということでその執行を排除する、こういう方向でいくべきだろう、したがって、譲渡担保権者自身をいわゆる担保権者として優先弁済権の行使を認めるというところまでは考えておりません。
#117
○寺田熊雄君 そうすると、これは配当要求は認めない、訴訟で異議を申し立てて自己の所有権を主張しろと、こういうことですか。
#118
○政府委員(香川保一君) そのとおりでございます。
#119
○寺田熊雄君 百五十二条の「差押禁止債権」の問題に入りますが、この第一項の括弧書きの部分ですね。一般には給与その他の給付の四分の一だけが差し押さえを許されるとなっておりますが、この括弧書きで「(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)」、これは現実には、最高裁としては――これは法務省かな、どちらでも結構ですが、どの程度の額、たとえば一定の給与の場合には二分の一までいいのだとか、あるいは四分の一を三分の一にするのだとか、そういう具体的なお考えをすでに持っていらっしゃるのか、そして標準的な世帯の必要生計費というのはどういう資料で認定をされるのか、この辺のところをちょっと説明していただきたい。
#120
○政府委員(香川保一君) これは、たとえば現在生活扶助の関係、五十三年度の数字でございますが、これが親子四人の世帯で大体十三万三千円ぐらいが標準生計費というふうになっておるわけでございます。他方、国税徴収法の関係で、同じような差し押さえ禁止の関係から、標準的な世帯の必要生計費というものを現在のところでは十七万円ぐらいに決めておられるわけでございます。それこれ勘案しながら、二十万円程度あるいはそれ以下のところで政令で決めたいというふうに現在考えておりますが、関係各省いろいろ御意見を承って、実態に合った額を見出していきたい、かような考えでございます。
#121
○寺田熊雄君 それはわかりましたが、その二十万円を一応標準とされるという、何らかの数字で限りませんとやっぱりいかぬので、その二十万円が適当かどうかという点は皆さんの御認定にまつ以外にないのですが、それをオーバーした場合にはどの程度まで差し押さえを許容しようとするのか、その差し押さえ許容範囲についても何か具体的な抱負をお持ちですか。
#122
○政府委員(香川保一君) この関係は、仮に政令で二十万円というふうに決めますれば、二十万円を超過する部分は全部差し押さえていいと、こういうことになるわけでございます。
#123
○寺田熊雄君 二十万円と決めた場合、それを超過したら全部差し押さえていい――はあ、そういう趣旨か。そうすると、ずいぶんこれはあれですね、たとえば百万円の所得があるという人は五分の四は差し押さえられちゃうという、そういうことになりますね。一般は、たとえば二十万円以下であれば四分の一しか差し押さえられない、ところが、二十万円超過したらこれは五分の四までを、あるいは二百万円の所得の人だったらほとんど全部を、十分の九まで差し押さえていいということになってしまう。ちょっとこれは、なるほど二十万円あれば人並みに生きていけるじゃないかという考えだろうと思って、多少理解できないわけではないけれども、あんまり差し押さえ許容範囲が一挙に拡大し過ぎるような印象を受けますが、その点どうでしょうね。
#124
○政府委員(香川保一君) この問題はすぐれて政策的な問題でございますので、そんなに私ども自信があるわけじゃないのですけれども、こういうふうにいたしました基本的な考え方は、やはり一方で差し押さえ債権者の保護と申しますか、極端なことを申し上げますれば、あしたの生活にも困るために差し押さえをするということもあるわけでございまして、したがって、やはり他人様に迷惑をかけておる、借金しておるということになりますれば、それは百万円の所得者であろうと、やはり最低の生活でがまんすべきだ、借金は先に返すべきだと、こういう簡単な一つの倫理観と申しますか、そういうことで踏み切ったわけでございまして、そこのところは、百万円の給与所得のある人が――月額でございますから、そういう人が他人から借金して差し押さえられる場合に、五十万円だけは残してもらうというのは余りにも虫がよ過ぎるのじゃないかと、こういうふうな、簡単に申しますれば、感じでございます。
#125
○寺田熊雄君 こういうものは、あなた方がいろいろ想定なさることが、アリストテレスじゃないけれども、世間の森羅万象を全部掌握できるものじゃないので、たとえばこれは最高裁の民事局長の御答弁についても言えることなんですけれども、やっぱりあなた方が把握なさる事象というものは全部じゃないわけです。一部分なんだから、余りそれだけでもってすべてだというふうに断定なされますと、ちょっとやっぱり結果的におもしろくないことが起きるのじゃないでしょうか。
 たとえば、好悪な債務者が善良な債権者の追及を避けようとするということになりますと、民事局長のおっしゃるような、それはもう十分の九まで押さえてもいいじゃないかということになりますが、たとえば、サラ金業者が保証人を立てさせるということが絶対条件のような場合がありますね。その保証人がサラ金業者のために、もう毎月の収入のほとんどを持っていかれちゃうというようなことを考えますと、これはやっぱりある程度制限した方がいいという考慮も成り立つので、私は、それは本当にそういう場合は強者が弱者をいじめるに等しいことになりますから、ですから、民事局長のように、二十万円の場合は、たとえば医師の優遇税制の場合大蔵省がとったような段階的な差し押さえの許容範囲を定めるというようなこともお考えいただいた方が現実に即応するように思いますが、その点どうでしょうか。
#126
○政府委員(香川保一君) ただいま例示されましたサラ金の場合なんかは、むしろ現在利息制限法がございますし、最高裁の判例は御承知のとおりでございますので、その判例の趣旨から考えますと、なるほどそのサラ金業者というのは酷だということはあるにいたしましても、現在の利息制限法のもとにおける元本と利息合計したものについては、これは酷な債権者ではないはずでございます。だから、むしろ、そういう超過する利息部分等は私法上無効だということで、差し押さえそのものをはねのけるように債務者の方で努力すべきじゃなかろうかと思うのであります。それも含めまして、いま御提示のような段階的にというふうなこともいろいろ考えたのでございますけれども、やはり高額所得者はそれなりの、何といいますか、所得に合った――ぜいたくなとまでは申しませんが、生活をしておる。そういった生活を勘案して、その生活を維持するに足る部分だけは残しておくという考え方と、一方、差し押さえて債権を回収しなきゃならない債権者の立場というものを比較考量いたしますと、少々生活は窮屈になっても払うべきものはやっぱり払うということの方が筋ではなかろうかと。しかし、差し押さえられたためにあしたの生活が困るというふうな窮状になっては、これはやはり人道上も問題でございますので、そこのところを、標準生計費というふうなものを、必要生計費というものを持ってまいりまして、先ほど申しましたように、大体二十万程度というふうなことでがまんしてもらう、そういうところしか知恵がなかったわけでございますが、いろいろのことが議論されたようでございますし、私ども考えたのですけれども、どうもやはりこう一律的な形にしないと、高額所得者が差し押さえを免れる部分が多くなるという説明はどういうふうにできるか。
  〔委員長退席、理事上田稔君着席〕
つまり、必要生計費というものが所得によって高低があるのだという考え方を取り入れることが果たして差し押さえ債権者の立場から考えまして適当かどうかといろいろ考えたわけでございますけれども、結局、やはりそれは最小限の生活ができる程度は残されても、それ以上のものはやはり返すべき借金に充てるべきだと、こういうふうな考えになったわけでございまして、あるいは知恵のないやり方かもしれませんが、私どもとしてはそれが精いっぱいでございます。
#127
○寺田熊雄君 確かに、あなた方のそういうお考えもできると思いますよ。ただ、親戚から頼まれて保証を余儀なくされたというような場合に、それが主債務者が倒産してしまって保証人が一身にその債務を引き受けるような場合がどうしてもありますね。われわれはもう常にそういう相談をよく受けますから。そういう場合に、二十万を超えたものは全部取られちゃうということになりますと、たとえば最近でも俸給生活者が二十万ぐらいの給与を取っているのはざらにあります。そうして、奥さんもやはり共かせぎをして十五万取っていると、合わせて三十五万になりますね。そこで両方が元気を出して銀行からローンを借りて家を建てたというような場合に、今度は全部押さえられちゃうとローンが返せないという家庭がずいぶんありますよ。いまはもう非常に俸給生活者がかなり若い者でもどんどん家を建てている。見てみると、みんな銀行や住金からお金を借り入れている。そういうような家計のやりくりでやっているものを、たまたま保証したから三十万円を超えたら全部差し押さえられちゃうと、返せなくなっちゃう。今度は、その建てた家を取られなければいかぬ。そこはやはりあなたのおっしゃるように、民事秩序を守るのですから支払いはさせなければいかぬ。しかし、それには漸次返還さしてもいいわけですからね。一挙に返還させなくたって目的は達するのだから。だから、もしも民事局長のおっしゃるように全部その差し押さえを許容するのだということになりますと、それは二十万じゃちょっと余りにも低額過ぎますよ。これはもう三十万ぐらいにしてもらわないといかぬ場合も出てくるかもしれません。ですから、その点はもうすでにお決めになったのじゃないでしょうけれども、いろいろな事情を勘案しておやりくださることか、あるいはさっきお話ししたような段階的な制度を設けるか、その点は考えていただきたいと思います。どうでしょうか。
#128
○政府委員(香川保一君) ただいま私が申し上げましたのは、原則的にこの百五十二条の考え方を申し上げたわけでございまして、ここで段階的な手当てをするのも一つの方法かと思いますけれども、そこまでなかなか知恵が、いい段階的な方法を考えることができなかったわけでございますが、おっしゃるように、そのケースによりましては非常に酷な場合が出てくることはもう百も承知いたしておりまして、そういうときに備えまして、百五十三条の規定を設けまして、ここで範囲の減縮、拡張を執行裁判所がケースごとに考えて判断していただいてやるというふうな弾力的な支えを一つ設けておるわけでございまして、これが寺田委員のおっしゃるようないろいろのケースを賄うことができるかどうか、これは運用の問題かと思いますけれども、一律的に所得幾らの方は幾ら残すというふうな形よりは、やはり最低のところを原則的に押さえておいて、そしてケースごとに減縮伸長のこの規定を運用して、よろしい結果が得られるようにしていただくというふうな配慮をしたつもりなのでございます。
#129
○寺田熊雄君 いま、最高裁の民事局長、お聞きいただいておったと思いますが、この百五十三条の運用について、非常に過酷な場合が生ずる場合を救済できるように、その点は裁判官なり執行官が運用について過ちがないように、よく全体を御監督くださるように、その点を特に要望いたしたいと思いますが、いかがでしょうか。
#130
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 差し押さえ禁止の範囲の変更につきましては、現行法でも規定があるところでございまして、多分、御指摘のようなことは誤りなく行われているのではなかろうかというふうには考えておりますけれども、御趣旨の点は、この新法の施行に先立ちましてのいろいろな研修、それから会同、そういった際にそういう議論があったということを紹介して、誤りのないようにしていきたいというふうに考えております。
#131
○寺田熊雄君 百六十八条の「不動産の引き渡し等の強制執行」、これは明け渡しの強制執行の場合に私どもがしばしば遭遇する問題でありますが、債務者が執行妨害のために他人をその家屋に住まわせた場合、この場合は、その他人を確認して、やはり承継執行文をとって執行するという手続をしておるようですが、これはこの改正民事執行法でも従来の執行方法と変わりありませんか。
#132
○政府委員(香川保一君) 特に変わりございません。
#133
○寺田熊雄君 その場合、執行官に聞きますと、その他人を確認することに非常に苦心をしておられるようであります。昼間行ったら絶対いない。表札は立っておる。たとえば山田なら山田という表札はあるので、山田何がしがおるということで確認しようと思って行ってみても、なかなかおらない。仕方ないから夜行くと、夜も非常に遅くなってからでないと帰らないということで、夜間にのみ把握し得るような場合があるようであります。そういう場合、これはやはりいまでもそうですが、現行法でも、たとえ夜間といえどもそこに臨んで、そしてやっぱりその人間に会って氏名を確かめ、そして占有の事情などを聞いて、その上で債権者に承継執行文をとらして、それから執行するということにならざるを得ないわけですね。
#134
○政府委員(香川保一君) そのとおりでございます。
#135
○寺田熊雄君 それから第四項でありますけれども、これは家屋明け渡しの際に、中にある動産をどうするかというので現実的にはいろいろな問題が起きてまいります。この第四項によりますと、まず債務者に引き取らせる、これはまあ一番自然な方法でありますけれども、債務者がいない場合はその代理人。この「代理人」というのは、またこれ非常に範囲が広いようで不明確でありますが、この「代理人」というのは一体何を考えておられるのか。それから「同居の親族若しくは使用人その他の従業者で相当のわきまえのあるものに引き渡さなければならない。」、これはずいぶん民事局長御苦心の作だと思うのだけれども、「相当のわきまえのあるもの」、なかなかこれは苦心をされたなあと思って読んだのだけれども、これはどういうことを意味したのか。私は現実にこういう場合に出くわして、この条文ではどうしても賄えない場合に遭遇したことがあるので、これは後にお尋ねをするけれども、まずそれについてお答えいただきたいと思います。
#136
○政府委員(香川保一君) 債務者の代理人と申しますのは、これはまあ自然人の場合に余り問題にならないと思いますが、強いて考えますれば、その執行関係で委任を受けておる弁護士が考えられるわけでございますけれども、これはほとんど問題にならないと思います。主として会社の場合なんかに代理人というのが物を言ってくるのじゃないかというふうに考えております。
 それから、「従業者で相当のわきまえのあるもの」と申しますのは、これはやはり執行官がその債務者の動産を取り除いて、それを引き渡すわけでございます。あくまでも他人の、つまり債務者の固有の物でございますので、めったやたらに不適当な者に引き渡したのでは債務者が損害を受けることがあるわけでございますので、したがって、抽象的ではございますけれども、やはり善管義務が尽くせるような者に渡すべきだということをこういう表現であらわしておるわけでございます。
#137
○寺田熊雄君 この第四項に、たとえばこういうものを、「その他執行官において適当と認めるもの」というふうにすると、余りにも広くなっちゃって乱用の危険があると思ったのかどうかしりませんけれども、私が遭遇したものは、「同居の親族」という、「同居」というのが邪魔になる場合があったわけですね。つまり、単身で居住しておると。ただ一人の娘が他に嫁しておると、しかし、娘に引き取らしたら一番いいという場合。しかし、これは同居してない。そういう場合、この「同居」なんという条件がかえって邪魔になっちゃうのですね。もうちょっとこれを広げた方がよかったのじゃないでしょうか。
#138
○政府委員(香川保一君) 現行法におきましてもその問題は確かにあるのでございますが、さればといって、この「同居」を取り外しますと、現実の執行の場面を想定いたしましたときに、動産を取り除いて、それをどこか親族を探してそこまで執行官が持っていかなきゃならぬ、あるいは親族にそこへ来てもらって引き渡すというふうなこと、そういうことが実際問題としてなかなかできにくいのじゃなかろうかと。したがって、まあ、これは簡易なと申しますか、その場でともかくしかるべき者に引き渡しておく、それができないときにはむしろ執行官みずからが保管するということにした方がベターではなかろうかと、こういうふうに考えたわけでございます。
#139
○寺田熊雄君 そういう、いろいろお考えになったのだろうけど、いまは御承知のようにもう核家族化しちゃって、同居の親族なんていうのは夫婦以外にはおらぬのですよ。もう息子、娘もみんな独立して家を持っている。だから、余り「同居」にこだわらない方が現実に即応するわけで、同一の市内に娘も息子も居住している場合があるのです。それでまた明け渡しなんというのは現実には非常に困難なんで、債権者の方でもいきなりそういう執行をするわけじゃありません。いついつまでに出るかとか、荷物をもういいかげんに引き取れとか、息子にも要求したり娘にも要求したり、いろいろそういう準備段階があるので、いきなり強制執行をして明け渡しちゃうなんていうのは希有なんですがね。だから、むしろ局長がおっしゃるように、その場でなんというのじゃなくて、やはり現在の社会の実態に合うということを考えますと、「同居」というのは私は取った方がよかったと。ただ、これも「同居」を取ったからやたらに何でもというのじゃないので、執行官にその幅を持たせるわけですから。私はそう思いますよ。こだわるわけじゃないけれども、どうですか。
#140
○政府委員(香川保一君) これは、実際の便宜といいますか、そういうことをあるいは強く考え過ぎておるのかもしれませんけれども、たとえば細かなことで恐縮でございますけれども、「同居」を取りました場合に、やはり執行官としては、この規定の関係から親族を探さなきゃならぬわけでございまして、その親族がおるのにその者に引き渡さないで、みずから保管したというふうな場合を考えますと、その保管はむしろ違法だということになってくるおそれがあるわけであります。それから、さらにまた、離れたところに住んでおる親族がおりましても、そこへ運搬していく、そういった費用は一体どうなるのかというふうないろいろの問題が派生的に出てまいるわけでございまして、それやこれや考えますと、実際の執行の場面においては、やはり身近におる者で適当な人に渡すということを限度にいたしまして、それができないときには執行官の責任において保管するということの方が実情に合うのではなかろうかというふうに考えたわけでございます。
#141
○寺田熊雄君 こういう問題を論議していくと無限に時間がかかっちゃうので、もう余りこだわらぬけれども、同居の親族が一緒に出ちゃうのだから、その出ている者に預けるというのがそもそも矛盾なんで、それは他に一軒構えて、その物を収容し得る能力のあるところにやっぱり預けないと、おやじと一緒に追い出される子供に預けるというのは矛盾なんで、それはやっぱり……。それでまた債権者は、こういう場合、よく探すわけですよ。
  〔理事上田稔君退席、委員長着席〕
それで、もうわれわれ実際問題として明け渡しなんという強制執行をやる場合に、いわば悪しき債務者の場合でも、やはり相当情けをかけて、できるだけ損害を少なくして明け渡させようとしますね。ですから、もうちょっとそれは局長、考えていただきたかった。それで、これを修正しろといったって、いま無理なことだから、あえて修正しろということをあなたにお話しするわけじゃない。ただ、やはりこの場合は執行官にもう少し幅を持たして、執行官が一々運ぶというのも大変なことで、親族が来て引き取ってくれれば一番いいので、物も丁寧に扱いますしね。私は、これは少し配慮が足りなかったのではないかというふうに考えているのですよ。しかし、よろしいわ、そう大きな問題じゃないから。このことでまたあなたといろいろやりとりしてもしようがないから、この程度でおさめておくから。
 それから、現行法では、任意競売の場合に、抵当権の存在を争う者は、まず抵当権設定登記の抹消登記請求を本訴で起こして、それから競売手続の停止を仮処分によって求めていくという方法をとっておりますね。これは今度の改正法でも現行法どおりなんでしょうか。その点いかがでしょうか。
#142
○政府委員(香川保一君) 同じでございます。
#143
○寺田熊雄君 現行法でも、即時抗告や執行異議の問題で、限界ですね、その境界をどの辺に置くのかという点で、われわれもずいぶんわからないことがあったのですが、この改正法で、「執行抗告」、これは第十条。それから十一条の「執行異議」、これは条文を見れば大体わかるようだけれども、現実の問題でこの境界というのははっきりしていますか、どういうふうにわれわれが理解していったらいいのか。執行抗告と執行異議と。
#144
○政府委員(香川保一君) 執行抗告は、特にそれぞれの執行裁判所の執行処分について執行抗若ができるという規定があるものに限るわけでございます。したがって、執行抗告ができない執行裁判所の処分については執行異議ができると、こういうことになるわけでございますので、したがって、今回の改正によりまして、そういった限界と申しますか、区分がややこしくなるということは解消されたというふうに考えておるわけでございます。
#145
○寺田熊雄君 百五十二条の問題にまた戻って――あちこち戻るのだけれども、生活保護を国から受けているその給付金というものは、これは差し押さえることはできませんね。ところが、実際には、これをずいぶん現実にはサラ金業者が差し押さえと同じように、その支給のところへ行ってすぐ取り立てるというような事象が行われているようですね。これは御存じですか。
#146
○政府委員(香川保一君) そういうことは耳にいたしておりませんけれども、法律的にはできないことだと思います。
#147
○寺田熊雄君 その法律的にはできないことを、現実にそこへ臨んで、まあ恩給でもそうですけれども、恩給証書を取っちゃって、そして支給を受けているものを事実上取り上げているということが多いわけで、生活保護の場合が一番悲惨なんですけれどもね。これは、事実上そこへついていって、支給を受けたらすぐそこから取り上げてしまうというようなサラ金業者が現実におるわけで、これは現行法の舞台に上ってこない、事実上の行為だから。これはどうしようもないわけでしょう、民事局長の手腕をもってしても。
#148
○政府委員(香川保一君) 支給する方の側は、もちろんこれは法律的には直接払いでございますから、当然生活保護を受けている方を確認して渡すわけでしょうから、そのところへついていって、そこで生活保護を受けている人が任意にそれを渡せば問題ありませんけれども、強制的に取り上げるとなると、これは強盗か何かになる問題でございまして、やはりそういうことはしかるべき方法で防除しなければならぬ問題だと思います。
#149
○寺田熊雄君 暴行脅迫だと強盗になるけれども、暴行脅迫に至らない強制で取っちゃうんだから、それは強盗にはならぬけれども、これはどうしても法律のあれに上がってこないのかね。それとも、民事局長の快腕をもってしてもどうしようもないかな、これは。
 百五十七条の第五項、ちょっと私どもが読んでもこれはわかりにくい条文で、これをもうちょっとわかりやすく説明してもらいたい。
#150
○政府委員(香川保一君) これは原則的には現行法と変わってないところでございますが、債権を差し押さえまして、そして裁判所――今回は、債権差し押さえによって取り立て命令もくっついておる形にしておるわけでございます。したがって、取り立て権を行使して任意に払ってくれればそれで済むわけでございますが、任意に支払えないというときに取り立ての方法で執行しようとするならば、取り立て訴訟というものを起こさなきゃならぬことになってくるわけでございます。その場合に、本来の取り立て訴訟の相手にするのはもちろん第三債務者であるわけでありますけれども、差し押さえ債権者は先ほど申しました差し押さえ命令によって取り立て権能を取得いたしておりますから当然原告適格はあると、こういうことにもなるわけでございます。しかし、第三債務者の立場になりますと、ほかの債権者で差し押さえをしてくる者があるわけでございまして、そういう者を除外して一方で取り立て訴訟だけ進行いたしますと不利益になりますので、したがって、第三債務者が受訴裁判所に申し立ててほかの差し押さえ債権者を共同訴訟人として原告に参加させるという道を開いておるわけでございます。そういうことにしまして、結局、その取り立て訴訟の判決の既判力は、命じられたのに参加してこなかった者に対しても効力を及ぶことにいたしまして一律に処理されるというふうな手当てをいたしておるわけでございます。
 そこで、取り立て訴訟で結局原告勝訴判決がなされますときには、通常ならば当然支払えということで済むわけでございますけれども、この場合には共同訴訟人もおるわけでございまして、したがって、直接に支払うのではなくて、供託の方法で支払いなさい、つまり、第三債務者は支払いを命じられた額を供託をしなさいということを主文に併記するということにして、そして、供託されますれば、それがいわば執行財産になりまして配当という形に進んでいくと、こういう構造をとっているわけでございます。
#151
○寺田熊雄君 従来、これは現行法でも債権の差し押さえと転付命令は同時に申請することが許容されておりますね。これは今度の民事執行法でもやはり同じですか。
#152
○政府委員(香川保一君) その点は同じでございます。
#153
○寺田熊雄君 この第三項で「転付命令が第三債務者に送達される時までに、転付命令に係る金銭債権について、他の債権者が差押え、仮差押えの執行又は配当要求をしたときは、転付命令は、その効力を生じない。」、こうなっておりますが、同時に申請することが許されるということになりますと、ほかの債権者がまごまごしている間に、あるいは情けをかけている間に、強力な債権者があっという間もなく債務者の持っておる第三債務者に対する債権をひっさらっていってしまう、ほかの債権者はもう何にも取れないという場合に私どもよく遭遇するわけでありますけれども、これは「転付命令は、確定しなければその効力を生じない。」というのが第五項にありますね。したがって、この第三項と第五項とのいろいろな比較考量からいたしますと、第三項は「第三債務者に送達される時まで」でなくして、確定するまではやはり配当要求やそのほかの債権者の差し押さえを許容することができるようにした方がよかったのじゃないかというふうな考えを持つのですが、この点はどうでしょう。
#154
○政府委員(香川保一君) おっしゃるようなことも一つの方法であり、あるいはできるだけ平等主義と申しますか、他の債権者も加えて配当という形に行った方がいいのか、あるいは早い者勝ちということの方が債権に対する執行としてはいいのか、その辺は非常に問題だと思うのであります。現在、御承知のとおり、転付命令の制度は非常によく利用されておるわけでありまして、ほとんど転付命令によるものと言っていいかと思うのであります。それを、もしもおっしゃるように確定するまでほかの者が差し押さえしてきたときには転付命令の効力を失わしてしまうというやり方にいたしますと、早い者勝ちという意味の悪さは残るかもしれませんけれども、かえって非常に執行を膠着させるといいますか、転付命令なんという制度があっても意味がないといいますか、さような結果になるのではなかろうかと。結局のところは、もう取り立て命令一本の執行ということになってしまうような実態ではなかろうかと思うのであります。したがって、早い者勝ちといういやさは残りますけれども、やはり現在そういうことが一つのメリットで転付命令の制度が非常に利用されているという実態を考えますと、やはり利用しやすいと申しますか、それだけのメリットがあるような形にしてやはり残さざるを得ないのではないかと、そういうふうに考えたわけでございますけれども、おっしゃるような方法をとるとすれば、恐らくは転付命令は使われなくなるだろうというふうな見通しのもとで、やはり非常にこれは早い者勝ちといういやさは残るにいたしましても、非常に簡便な執行でございますので、そういうことをあれこれ考えまして、このような形で残すことにしたわけでございます。
#155
○寺田熊雄君 すばしっこい人間に味方する法律であると、どうもそういうそしりは免れないけれども、まあ、いたし方ない。
 それから第六項で、この「裁判を留保」するという規定がありますね。これは留保してどうするのでしょう。その点ちょっと説明していただきたい。
#156
○政府委員(香川保一君) これは結局三十九条の一項七号、八号をごらんいただきますとわかりますように、そちらの方でつまり勝負はついてくるわけでございますから、したがって、執行抗告について裁判をしても意味がないと言っては誤弊がございますけれども、留保しておきまして三十九条の方の結末を待つと、こういうふうな意味でございます。
#157
○寺田熊雄君 そうすると、第一項八号の場合は四週間待つと、それから弁済猶予の場合、これは二回に限って六月を超えることができないという規定が第三項にあるので、まあ待っても六月だと。で、自然に解決がつくと、それまで待っていると、こういうことですか。
#158
○政府委員(香川保一君) そのとおりでございます。
#159
○寺田熊雄君 第三者が強制執行の目的物を占有している場合、これはわれわれが実務でも大変厄介なことで、実際によくもうあきらめるような場合が多いわけですけれども、この百七十条によりますと、引渡請求権を差し押える、そうして債権者にその請求権の行使を許す、そういう命令を発すると、こうありますね。そして、これは債務者が、つまり第三債務者がその請求権の行使に従わず物を引き渡さないときは、これはやはり本訴を起こすということなんでしょうか。この点いかがでしょう。
#160
○政府委員(香川保一君) この場合は物の引き渡しの強制執行でございますから、したがって、債務名義が当然要るわけでございまして、だから、この規定でその引き渡し請求権を差し押さえただけで強制的に取り上げるというわけにはやはりまいらないわけでございまして、本訴を起こさなきゃならぬということになるわけでございます。
#161
○寺田熊雄君 なお、執行官の実務の場合、入札が非常に――この間も私現地に臨んで、まあ、あのときはわれわれが行ったので大分おとなしかったのだという人もありましたが、それから人数も非常にいつもよりは少なかったということが先ほど参考人から意見が述べられたわけで、入札制度というものは競りと比べると非常に平穏に行われる、雰囲気がね。そういうよさがあるのだけれども、何か入札で一字違うともうそれがペケになっちゃうので困るなんて言う人もあるのだけれども、そういうことはないんですか。実際の実務はどうなんでしょう、ちょっとお伺いしたい。
#162
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 実情を正確に把握しているわけではありませんので、明確なお答えはできないので恐縮なんでございますけれども、一字程度違っていることでペケにするということはないかと存じますけれども、入札の正確性と申しますか、その物件の表示あるいは金額の点等について正確に記載してもらわないと、要するに買い受けの意思表示が明確でないという点で入札を認められないという例は、ないわけじゃないというふうに聞いておりますが、……。
#163
○寺田熊雄君 余り細かいことを局長が一々御存じないとしてもこれはしようがないので、よくお調べいただきたいと思うのですが、何か事件番号をちょっと間違えたらもうだめなんだと。なかなか素人にはできにくいですよというようなことを言う人もあります。この点はよく実情を把握されて、実務の指導の場合にどうあるべきかということをよく考えていただきたい。これは要望しておきますから。よろしいですね。
#164
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 余り硬直な取り扱いはしないようによく指導してまいりたいというふうに考えております。
#165
○寺田熊雄君 それから、私ども現実に強制執行いたします場合に、われわれがやはりその執行の現場に臨むというのは、これはよほどの場合であります。たとえば、暴力団がおってなかなか忠実な執行官といえどもやはり一気に踏み込めない、もたもたしてはかどらないので私どもが行って先頭に立って入っちゃうと。よほどの場合でなければわれわれは行きません。そこで、ふだんは非常に善良な道具屋といいますか、これはもう弁護士仲間で定評のある善良な道具屋というのはおるわけで、との弁護士も皆それを頼むと。立会人なんでしょうねあれは。そうすると、動産執行でも家屋明け渡しの執行でも非常にスムーズにいくというのでありますけれども、これはやはり法務当局なり最高裁判所当局でも実態を把握しておられて、そういうやはり善良な道具屋というのはやむを得ない存在であるというふうに認めておられるのでしょうかな、どうでしょうか。
#166
○政府委員(香川保一君) 動産の強制執行について、売却がうまくいくかどうかということが一番の大きな問題でございまして、公設の売却場を設けるというふうなことも議論されたわけでございますけれども、なかなかすぐにはそういう制度をとり得ない状況がございまして、そうなりますと、結局、私ども聞いている限りでは、なかなかその買い手がないために動産というのは二束三文に売り飛ばされてしまうと。そのときに、いまおっしゃいましたような善良な道具屋が一緒に来てくれれば、買い手がないときにはそれが適当な価格で――適当というよりは適正な価格で引き取ってもらえるということで、執行官が非常に助かっておるというふうに聞いておるわけでございまして、だから問題は、連れていくといいますか、同行する道具屋の善良かどうかということが一つの大きな問題になるわけでございまして、この点はそれなりのメリットが十分あるわけでございますから、したがって、執行官がそういう善良なという認定を十分いたしまして、そういうものに援助を受けるといいますか、同行してもらうということは、これは残して一向差し支えないやり方ではなかろうかというふうにいま考えておるわけでございます。
#167
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 裁判所の方でも同じように考えておりまして、道具屋すべてが悪いものだと直ちにきめつけて排斥をしなければならないというふうには考えておりませんで、適正な価格で買ってくれる人、あるいはよく、動産の場合ですと、その場でまた債務者が買い戻すというふうな場合があるわけでございますけれども、そういう場合に余り暴利をむさぼらないで買い戻しに広じてくれるような、いわば執行の迅速、円滑な遂行に協力してくれるような人を道具屋の中でも従前からも認めておりますし、これからもやっぱりそういう人たちの協力がなくしては円滑な遂行ができないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
#168
○寺田熊雄君 これはもうすでに各委員の御質問の中で出た問題でもあるのですけれども、もう一度、最高裁の民事局長、法務省の民事局長、御両人にお尋ねをしたいわけですけれども、現在の執行官法が生まれたとき、昭和四十一年の附帯決議ですね。先ほども田中利正参考人は、手数料制度の所得よりもこれは俸給の方が望ましいのだと、しかし現在の収入を下回るというようなことではやっぱり執行官の同意というものは得にくいだろう、したがって格づけが問題であるというような意見が述べられたのでありますけれども、これは相当な事実上の困難を伴うけれども、やはりあの四十一年の決議というものは正しい方向を示しているとわれわれは考えざるを得ないわけです。いまの所得が飛び抜けて多いといたしますと、その飛び抜けて多い一部の執行官のために、あるべき姿が実現できないというのもいかがであろうかとわれわれは考えるわけですね。この点相当むずかしいけれども、やっぱりこういう方向に向かって努力していただかなきゃいかぬ。これは執行官の問題です。
 それから、執行官を補助する職員の問題。これは確かに、きょう参考人としてここへ出席した職員である田中参考人、論旨も非常に整然としておるし、言いたいことも言うだけのなかなか気力もあるし、公務員としての資格は十分に備わっておるように私は思うのですが、公務員としてこれを採用して執行官の事務を補助させるということがやっぱり望ましいように思う。それから、まあそこまでいかない、純粋に窓口事務程度のことで、あるいは帳面をつけるという程度で、これは執行官の奥さんやお嬢さんがやってやれないことはないという程度の仕事をしておる、その程度の事務をとっておられる職員としても、やはり社会保険、たとえば失業保険であるとか、あるいは労災であるとか、あるいは健康保険であるとか、そういう社会保険をつけるというぐらいの配慮が当然これはあってしかるべきではないか。しかしそれができていない。こういう点についてはもう少し御努力があってしかるべきではないかと思うのですが、これは最高裁の民事局長と法務省の民事局長と、御両人にお考えを述べていただきたいと思います。
#169
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 午前中は各参考人からも非常に有意義な指摘をいただきました。特に問題になっておりますのは、手数料制から固定俸給制への移行の問題でありますし、それに関連しての事務員の公務員化という二点であったろうかというふうに思われます。いずれも私どもが執行官法制定以来常に考えてきたことでございますが、何分にも、毎々申しておりますが、八十年以上の歴史をしょっている制度を急に変えられるものかという一つの歴史的な重みというものもございます。それから、先ほど御指摘のような地域的な面での収入の格差という問題もございます。それからまた、執行官の年齢の問題そういったようなことが現実の問題として直ちに公務員に切りかえるということが非常に困難な問題として残っておるわけでございます。ただ、そういう点は、執行官法制定当時は、少なくとも執行官法の執行官の制度自体を幾らかでも新しいものにして、それをもって執行手続の改正の基礎にするし、また、その執行手続が変わったらそれにふさわしいような執行官制度をつくっていくのだと、こういうふうな因となり果となるような形の問題提起をしてまいりまして、それが今日までに及んでいる状況でございます。先ほどの田中利正参考人の御意見にもありましたように、あるときには執行官の中でも手数料制がよろしいという考え方の人もおりましたし、あるときには固定俸給制が望ましいという意見の人が多数を占めているというふうなことでございまして、経済事情の変遷に応じてそういう希望の有無というものが変わっている状態にございます。
 そういうことから申しますと、経済的な問題収入の問題だけを考えてやっていたのではいつまでも決着はつかないと、むしろ非常に不況で競売事件が少ないという時期が俸給制への切りかえのチャンスであるということにもなってしまいますが、そういうことは全般的に好ましくないことはもちろんでございまして、そういう時期にならないで、しかも俸給制に切りかえられるような下地というものをつくる必要があるということは言えるのではなかろうかと思います。そういう点につきましては、執行官法が制定されましてから十数年の経験を経まして、執行宮室及び競売場等の環境の整備ができましたし、いろいろな設備も改善されてまいりました。それから執行官が裁判所の職員としていろいろな面で本来の裁判所の職員と交流をすることになって、お互いの意識がよそ者扱いということから同僚的な意識になってきておるという、そういう意識の上の変革というものがこれは見逃せない状況であろうかというふうに思われます。そういう点で、かなり俸給制に移るための検討の下地というものは熟してきたのではないかというふうに考えておるわけでございます。
 しかし、問題は、執行官制度そのものだけを考えて済むものではなくして、現在の執行官が五十八・余歳という年齢層に平均的にあるわけでございまして、これを公務員として裁判所の同じ枠の屋根の下に、そのまま同じような意味で、資格で取り込んでいくということになりますと、ほかの職員との、何といいますか、格づけといいますか、位置づけの問題もあります。多くは執行官に任用されるのが、一応主任書記官なりあるいは首席書記官というところまでを終わったような人が、いわば第二の御奉公として執行官に任命されるというのが実情でございます。そういう人たちが再び同じような俸給制の執行官になってきて、それとほかの裁判所職員との間の交流がどうなるのかという問題も考えなければならないということになります。そういういろいろなむずかしい問題があるかと思いますが、そういう問題点も考えながら法務省の方とも御相談して、そういう切りかえについての問題点を検討して、前向きの姿勢で進めるようにしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
 それから事務員の問題は、これは俸給制に切りかえることが公務員化の前提と考えざるを得ないわけでございますが、その場合に、現在の事務員になっている人がそのまま横すべりで公務員になれるかということになりますと、これもやはり年齢の点、その他一般公務員としての任用資格という面で非常に特例的な措置を大幅に設けないと全面的な救済はできないのではないかという感じを持っておるわけでございます。その点の問題をどういうふうに克服するかということが問題になろうかと思われます。
 そういうことで、俸給制あるいは公務員化ということについての今後努力をやっていきたいというふうに考えておりますが、御参考までに、従前、この執行官法が制定されましてからも、若干ではありますが、執行官の事務員の中から能力、資格において裁判所職員としてふさわしい者は職員に任命している、それからまた、執行吏代理と言われている人も、その資格がある人は執行官に任用しているというふうなことで、救える人といいますか、そういう資格のある人はなるべくそういう形で救済していくという方法がとられていることを申し添えておきたいというふうに思うわけでございます。
#170
○政府委員(枇杷田泰助君) 法務省民事局長にという御質問でございましたが、執行官法は司法法制調査部の所管になっておりますので、私からお答え申し上げたいと思います。
 御指摘のとおり、執行官は公務員でありながら手数料制をとっておるということから、いろいろすっきりしない問題がたくさんございまして、附帯決議にもたびたび御指摘を受けているわけでございます。私どもも十分その問題点は認識しておりまして、方向としては、附帯決議にございますとおり俸給制に移行すべきものであるという考え方は持っておるわけでございます。しかしながら、ただいま最高裁判所の民事局長からもお話がございましたように、現実問題といたしますと非常に多くの問題を抱えておるわけでございます。手数料制が八十年の歴史を持っておるということは、それなりのメリットも一方にあるわけでございまして、諸外国の例を見ましても、手数料制をしいているところもかなりございます。俸給制に切りかえたというところも、西ドイツの州あたりにもあるようでございますが、それはまた切りかえにつきましていろいろな問題を経験しておるようでございます。私どもといたしましては、白紙で新しい制度をつくるわけにはまいりませんので、現状からどのような段階を経て理想的な形に持っていくかという道を発見したいということでかねがね苦慮いたしておるわけでございます。今後また、民事執行法が成立されまして、執行官の責任等も変わってまいりますのを機会に、もう一度検討してみたいと考えておりますけれども、相当実際上は困難な問題が多かろうと思っております。
 なお、執行官のところにおられます事務職の方々の処遇につきましては、これもまた、ただいま最高裁判所の民事局長が御指摘になったような問題があるわけでございますが、基本的には、まず執行官の身分あるいはその収入というものをどういう形態にするかということが先決問題であろうと思いますので、執行官制度の抜本的なあり方というものをこれから十分検討を進めてまいりたいと思います。
#171
○寺田熊雄君 やはり執行官登用の道というのは、最高裁判所当局におかれては裁判所書記官から登用する、それを原則として考えておられるわけですか。いまの東京地裁の執行官役場に働いておられる事務員の中では、代理もまだ残っておられる。その代理を執行官に登用するとか、あるいはまた事務員に対して代理の資格を与えるということも考えていいのではないかと思いますが、その点はどうなんでしょうか。
#172
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 執行官の任用資格といたしましては、執行官規則で、一般職の行(一)の四等級以上の職にあった者またはこれに準ずる職歴を有する者で最高裁判所が定める基準に該当する者というふうになっておるわけでございます。それで、規定の上からは裁判所職員であることを原則とするということはございませんが、何分職務の内容から申しまして、いろいろ法律的な素養を必要とするという職務でございますので、どうしても給源が裁判所書記官になってくるという実情にあるわけでございます。ただ、裁判所書記官ばかりで構成されておるかといいますと、そういう者ばかりではございませんで、検察事務官あるいは警察職員というふうな人も来てもらっておるわけでございます。現在、執行官職務代行者と言われております――昔、執行官法制定前には執行吏代理と言われていた人でございますが、そういう人たちの中からも適格の人は数十名執行官に登用しておるわけでございます。
 それから、現在執行官室で事務をとっている人たちの中から執行官に採用することはどうかという御質問がございましたが、先ほどの行(一)の四等級に相当するような人、それに要するに準ずる者として最高裁判所が認める者であれば、資格としては受験資格がございますものですから、筆記試験その他の試験を受けて執行官に登用するということは道が開かれておるわけでございます。ただ、執行吏代理あるいは執行官職務代行者というのは執行官法で認められました暫定的な制度でございますので、事務員の人を執行官職務代行者に任用するというのは現在では道がないという状況になっておるわけでございます。
#173
○寺田熊雄君 先ほど、送達業務は執行官の職務としては廃止してもらいたいと、執行官という、まあいわば非常に法律的な素養を持った重い地位のある者が純粋の事実行為である送達というようなものまで引き受けなければならないのだろうかという疑問が執行官によって提起されましたね。これはやはり最高裁なり法務省としましても次第に廃止していくというお考えなのか、あるいは、やはりどうしてもこれは残しておくべき合理性があると考えておられるのか、その辺はどうでしょう。
#174
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 民事訴訟法で「送達ハ執行官又ハ郵便ニ依リ之ヲ為ス」という規定がございますので、そういう規定から申しますと、執行官に送達の事務をやってもらわないというわけには法律上のたてまえとしてはいかないのが現状でございます。しかし、先ほど田中利正執行官のお話にもありましたように、いわばそれは執達吏という制度であった当時の名残といえば名残であるということで、執行官の現行法における地位の向上にかんがみますと、それをいつまでも民訴に規定があるからといって仕事として残しておいていいかどうかということは、これはわれわれとして検討しなければならない問題ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
 事実、送達事務と申しますのは非常に単純であり、しかも苦労の多いものでございます。そういう点ではなるべくそういう雑務から軽くして、本来の執行事務に専念してもらいたいということで、そういうふうな方向を裁判所としては考えておるわけでございます。そのほかに、送達事務と申しますのは、あっちに一つ送ったら今度別なところへ行かなければいけないというふうに、本来の事務としては非常に費用と手間がかかるわりには効率が悪いという面がございまして、それに見合うだけの手数料、あるいは費用もそうですが、そういう費用、手数料を含めて、送達事務に従事する人の収入が安定し、かつ十分なものと言えるかどうかという点になりますと、これは非常に趣旨には沿わないというのが実情でございます。そういう面からいきましても、いたずらに労多くして効の少ない事務はなるべく執行官の仕事から除いていきたいというふうに考えているのが実情でございます。
#175
○政府委員(枇杷田泰助君) 現行の民事訴訟法の規定によりますと、執行官が送達機関というふうに定められておりますので、現行法を前提とする限り、執行官が送達をするということはやむを得ないことでございますけれども、しかし、執行官が送達事務からは、いわば解放されて執行事務の方に専念したいという御希望は理解できないわけでもないわけでございます。しかし、そのためそういう観点で制度の改正を考える場合には、送達方法そのものをどういうふうにしていったらいいかということの改善が検討されなければならないということだろうと思いますので、執行官の実情、それからまた送達の意義というようなものも総合勘案して将来検討すべき課題であろうと考えております。
#176
○橋本敦君 いま寺田委員から御質問がありました同じ問題については、当委員会のすべての同僚委員も深い関心を持っておる問題でありまして、そういう意味では、この民事執行法の制定に当たりましてきょう田中参考人等から貴重な意見を聞いたことは、本院における審査として私は非常によかったと思っております。
 いまもお話がございましたが、四十一年の国会決議がなされて今日まで十数年、最高裁もあるいは法務省の調査部におきましても、それなりの努力をなさったというお話でございますけれども、しかし、実際はなかなか執行官及び職員の公務員体制化への移行というのは、これは目に見える形では全然手つかずであるわけであります。きょうも参考人からその点について大変強い要望が出されたわけですが、私は、これはいま最高裁民事局長並びに調査部長のお話を聞いておりましても、そういう決議が示された、まあ言ってみれば執行官体制の近代的な方向へ向けての思い切った施策の前進というものが要るように思いますし、その方向づけについては御異論がないというように伺います。
 問題は、八十年続いてきたこの制度を一挙に変えるということがなかなか容易でないという困難な面をいろいろ弁解的に御指摘になった。それはそれなりに私ども理解するわけです。しかし、この民事執行法がこの世に整合あるものとしてつくられました。恐らくこれは長年にわたってこういうことで特段の改正なしに進められるでしょう。執行官法は四十一年にできまして今日までずっと来ておる。過去八十年と言いますけれども、やっぱりこれを機会に思い切った近代的な体制への移行ということを真剣にやりませんと、私はこれは残されていってしまうという心配をぬぐい切れないのです。
 そこで、最高裁民事局長も、いろいろな意味で下地はできつつあるというお話でもありますし、思い切ってこれはやっぱり具体的な協議機関を設け、そして五年先にとか三年先にとか、こういっためどをつけた研究と体制について議論を進めていただかなくちゃならぬと、こう思うわけです。そういう意味で、具体的なめどを持って、そして困難な条件は困難な条件として解決の善後策をも研究をするということで、最高裁としても積極的にこれについての研究協議実現の体制をこの際思い切ってとると、こういうお考えはありませんか。
#177
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 先ほど申し上げましたようないろいろな問題点を検討することも含めまして検討してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
#178
○橋本敦君 これは法務省の調査部長にお伺いしますが、これは法案ということで出てくるとなれば、最高裁は直接法案をお出しになりませんし、法務省のそれなりの御尽力、お力添えもいただかなくちゃなりませんが、いま言ったような問題を法務省調査部としても最高裁と定期的に継続協議するという体制をこの際おつくりになるお考えはありませんか。
#179
○政府委員(枇杷田泰助君) この問題は、従来からも最高裁判所と協議をいたしておる点でございます。最高裁判所の民事局におきましても、この民事執行法が成立いたしますと、その施行のための準備、規則の制定をも含めて準備が成り終わるだろうと思いますが、そういうことが一段落ついた段階で、その次は執行官の問題について私どもも積極的に協議を進めてまいりたいというふうに考えております。
#180
○橋本敦君 実情は、執行官もお年ですし、東京サイドで見ましても、職員の皆さんは長年これに従事をされて平均年齢は五十二歳ぐらいにおなりになっている。だから、やっぱり長年苦労された方に報いるという意味でも、これは私は急がなくちゃならぬと思うのです。だから、いま調査部長がおっしゃったように、この法案が通った後、最高裁規則の制定、それが片づけば、こういうことでありますけれども、めどとして、私は、今後三年をめどに一定の方針を立てるとか、あるいは具体案をつくるとか、やっぱりめどなしには進まぬと思うのです。そこらあたり、今後どれくらいのめどでおやりになる御決意があるのか、最高裁並びに法務省の調査部にお伺いしたいのです。
#181
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) にわかな御質問でありますので、何年先ということは直ちにはお答えできませんけれども、少なくとも五十五年の十月には、スムーズに執行法が成立いたしました暁には、新執行手続が施行されるということでございます。そのときには屋台が新しくなっておりますものですから、そこに働く立て役者としての執行官というものも当然近代的な装いを持った役者でなきゃいかぬというふうに考えますので、そう何年も先というふうにはまいらない問題であろうかと思われます。そういう施行の時期を踏まえて、直ちにというわけにはいきませんけれども、なるべく早い時期にそれにふさわしい執行官になり得るような努力を続けてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
#182
○橋本敦君 五十五年十月、まさにその発足の時期に執行官並びに職員の皆さんの公務員体制化への移行ということに窓を切り開くという決意でぜひやってもらいたい。
 法務大臣は午前中いらっしゃいませんでしたので、意見はお聞きになっていらっしゃらないわけですが、寺田委員の質問に対する答弁その他を通じても御理解はいただいておると思いますが、まあ私は、五十五年十月、そのときには次の、きょう指摘されている執行官、職員の体制の合理的近代化ということにも同時にやっぱり方針をきっちり出すということぐらいで――私はそれで結構だと言いません、もっと早くやってほしいのですが、法務大臣としてもせっかくの御指導と御協力をぜひお願いしたい、そういうことを法務大臣にお願いをして、大臣の御見解を伺って、質問を終わります。
#183
○国務大臣(古井喜實君) 正直なところ、私は十分な知識と素養がないものですから、軽率なことを言ってしまうわけにもいかぬようにも思います。私もまあちょっとの間弁護士などをいたしましたが、その当時は執行吏という制度でありまして、お願い申して仮差し押さえしに行くとかやった経験もありますが、経験も少ないし、知識もそう十分でありませんので、ちょっとすぐさまこの問題について自分の腹の底からの考えというものが正直にまだ立たないのでございますから、研究したいと思いますが、まあ執行吏の処遇を合理化するということは必要なよいことだと、これはそう思うのであります。それを公務員にするとか、公務員という鋳型にはめてしまうことがよいのか悪いのか、また、うまさが失われるというような一面もないものだろうか。そこで、そういう辺が十分私は、さっき申すようなわけで、自分なりの考えも正直言って、いま立っておらぬ状況でありますので、午前中のことや、そのほか皆さんの御意見、御論議などをよく聞きまして、その上で、なるほどこうだと、こういう考えを立ててみたい。どうもきょうの段階では私はそれ以上のことを言う自信がありませんもので、そういう辺で御了解願いたいと思うのであります。
 私はどうも個人的に言うと、画一主義が気に食わぬので、何でも同じかっこうにしてしまう便宜主義で、まことに便宜な一面もあろうけれども、うまみもなくなるというようなこともありまして、これは個人の趣味ですからそんなことを言いはしませんが、一遍よく研究さして考えを立てたいと思いますので、御了解願いたいと思います。
#184
○橋本敦君 これは大臣の意見聞かぬ方がよかったような話もありました。(笑声)これは大臣の言う八十年前の執行吏時代に引き戻される危険がある。これはまあしっかり御勉強いただくということで、終わります。
#185
○委員長(峯山昭範君) 両案についての本日の質疑はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時四十八分散会
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ソース: 国立国会図書館
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