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1978/03/01 第87回国会 参議院 参議院会議録情報 第087回国会 法務委員会 第6号
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1978/03/01 第87回国会 参議院

参議院会議録情報 第087回国会 法務委員会 第6号

#1
第087回国会 法務委員会 第6号
昭和五十四年三月一日(木曜日)
   午前十時六分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 二月二十八日
    辞任         補欠選任
     宮本 顕治君     内藤  功君
     江田 五月君     秦   豊君
 三月一日
    辞任         補欠選任
     内藤誉三郎君     長谷川 信君
     矢田部 理君     片岡 勝治君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         峯山 昭範君
    理 事
                上田  稔君
                平井 卓志君
                宮崎 正義君
    委 員
                大石 武一君
                金井 元彦君
                熊谷太三郎君
                佐々木 満君
                長谷川 信君
                八木 一郎君
                秋山 長造君
                片岡 勝治君
                寺田 熊雄君
                安恒 良一君
                内藤  功君
                橋本  敦君
                円山 雅也君
                秦   豊君
   国務大臣
       法 務 大 臣  古井 喜實君
   政府委員
       法務政務次官   最上  進君
       法務大臣官房長  前田  宏君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  枇杷田泰助君
       法務省民事局長  香川 保一君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局民事局長   西山 俊彦君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        奥村 俊光君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○民事執行法案(第八十四回国会内閣提出、衆議
 院送付)(継続案件)
○民事執行法の施行に伴う関係法律の整理等に関
 する法律案(内閣提出)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(峯山昭範君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨二十八日、宮本顕治君及び江田五月君が委員を辞任され、その補欠として内藤功君及び秦豊君が選任されました。
 また、本日、内藤誉三郎君が委員を辞任され、その補欠として長谷川信君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(峯山昭範君) 民事執行法案及び民事執行法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案を便宜一括して議題といたします。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#4
○寺田熊雄君 まず、民事局長にお尋ねをいたしますが、この民事執行法案の第五十五条、七十七条等の運用面におきまして、債務者が自己の手下あるいは懇意な暴力的な人物に依頼をいたしまして、そして差し押さえ後に不動産を占有さして執行を妨害せんとするような場合には、私どもの見解では、その債務者の委託によって不動産を占有する者は債務者の手足とか機関とかいうような見方をいたしまして、つまり、債務者と同一視してこれを排除するということが可能だと思いますが、この点いかがでしょうか。
#5
○政府委員(香川保一君) そのとおりだと存じます。
#6
○寺田熊雄君 次に、民事執行法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律についてお尋ねをするわけです。
 第二条で民法の第三百六十八条を削除をいたしております。次に、三百八十四条第三項を削除しておるのでありますが、この点の「第三百六十八条を次のように改める。第三百六十八条 削除第三百八十四条第三項を削る。」――これは、よく条文を読んで考えれば、その趣旨が理解できないわけではありませんけれども、ここのところをわかりやすく御説明いただきたいと思います。
#7
○政府委員(香川保一君) 民法の三百六十八条の規定は、御案内のとおり、質権者は民事訴訟法の定める執行方法によって債権に対する質権の実行ができるということを規定しておるわけでございます。その関係につきまして、民事執行法案におきまして、百九十三条で、およそ債権に対する担保権の実行手続を全部決めておるわけでございまして、したがって、いわば民法の三百六十八条の規定が実体的な分も含めまして手続法である民事執行法案の百九十三条に規定されたということに相なりますので、したがって、民法三百六十八条を存置する必要はなくなる、こういうことでございます。
 その次の三百八十四条の第三項の削除でございますが、これは、現行の三百八十四条の三項は増価競売の場合の規定でございます。これにつきましても、やはり民法にむしろ規定するよりは手続法において規定した方がベターであるということで、同種の規定を民事執行法案に持ってまいりましたので、したがってまあ必要がなくなると、こういうことで削除した次第でございます。
#8
○寺田熊雄君 第二十七条の「道路運送車両法の一部を次のように改正する。」、そして「第九十七条第一項中「強制執行」の下に「及び仮差押えの執行」を加え、同項に次のただし書を加える。」、このただし書きなるものは「ただし、仮差押えの執行で最高裁判所規則で定めるものについては、地方裁判所以外の裁判所が執行裁判所として、これを管轄する。」、この「地方裁判所以外の裁判所」というのは、わかりやすく言いますと簡易裁判所の意味でしょうか。あるいは上級裁判所をさらに意味しますか。いかがでしょう。
#9
○政府委員(香川保一君) これは、発令裁判所、つまり仮差し押さえ、仮処分命令が必ずしも地方裁判所には限りませんで、簡易裁判所で発せられることもあるわけでございます。そういった場合を考えた規定でございます。発令裁判所を考えておるということでございます。したがって、高等裁判所も発令裁判所になる場合には執行裁判所になるということに相なるわけでございます。
#10
○寺田熊雄君 ここで法務大臣にお尋ねをいたしたいのですが、先般来、民事執行法案につきましては、私ども不十分ではありますけれども、若干の質疑をいたしてまいりました。しかし、その不十分な質疑の中でも、法務当局の大変な御苦心と長い間の御労作といいますか、それは評価するにやぶさかではありませんけれども、やはり部分的に、運用面でどういう結果が生ずるか、果たして社会生活の実態に即応できるものかどうか、多少疑問を抱かざるを得ないような部分的な個所もないではありません。そういう点につきまして、やはりこういう国民生活に大変大きな影響を持つ大法典でありますからして、この今度の法案の成立で満足することなく、その運用の実態をよく見て、修正すべき個所があるならば修正するというような作業をやはり今後も続けていくべきではないかと考えておるのですが、その点、法務大臣としての御所感をちょっと承りたいと思います。
#11
○国務大臣(古井喜實君) 御案内のように、ずいぶんここまで来ますには長い間法制審議会等でも審議をしたり、また世論に問うたり、その上に国会でも御審議を願って、その間にいろいろ有益な御意見も出ておると、こういうわけでありますので、一応こういうところできょうは発足をしてもいいのじゃないだろうかというような気持ちでおりますけれども、しかし、実際やってみまして、どうもこのままではなくて何かを改善しなきゃいかぬというようなところも、これはなきにしもあらずだと思うのです。何しろ広範な法律でありますし、実際手続もいろいろたくさんありますし、社会も変わるでしょうし、そういう点は、やってみながら、またいろいろな意見も聞きながら、一層完璧を期する意味で検討を加えることは、これは怠ってはいけないと、やめてはいけないと、そういうふうにいま思っておりますので、この上も、幸いにできたからといって済んだというわけにはとてもいかぬだろうと思っております。御了承願います。
#12
○寺田熊雄君 それから、もう一つちょっとお耳に痛いことを申し上げるのですが、前回の委員会で、橋本委員が執行官の問題で大臣に御質問いたしましたね。大臣のお答え、いささか旧時代になじむような御答弁がございまして、まあちょっと執達吏時代の郷愁を感ぜしめるようなトーンがなきにしもあらずでありました。しかし、これは近代的な法律制度をわれわれが追求していくことになりますと、やはりいまのままの執行官制度でいいかどうか、多分に疑いなきを得ないわけであります。それから執行官自体が世人の尊敬を得るということを考えますと、その必要性を考えますと、やはり困窮した債務者から取り立てるもので自己の所得をふやすという経済的な結果に依存するというようなことは、やっぱり好ましいことではないように思うわけであります。
 御承知のように、もう法務大臣も弁護士の資格をお持ちでございますので、十分御承知とは思いますが、すべて執行費用は債務者の負担とするというような結果になっております。したがって、最も執行官の収入源である手数料が、困窮した債務者から取り立てるということに依存するということは、やはり国民として、国民の情感として、どうも同調しがたいものがあります。まあそれはみずから招いたことで、しようがないと言ってしまえば、なるほど理屈では割り切れますけれども、やはり情感としてどうも受け入れがたいものがあります。私法秩序を維持するということは国家的な問題で、私人相互間の自治にゆだねらるべきものではないので、これは国が私法秩序というものを守ることが大切だと、したがって、ある程度の出費を要することは当然なんだと、執行官の分野においてもまたそうだと私どもは考えるわけであります。したがって、願わくば、執行官を俸給制度にして、できるだけその手数料制というものを漸減、最終的には廃止していくのがあたりまえではないか、至当ではないかと考えるわけであります。こういう点について法務大臣が再検討をせられて、そういう面について前向きにお考えくださることを希望するのですが、この点いかがでしょうか。
#13
○国務大臣(古井喜實君) 前回の委員会でも、その問題に触れてお尋ねがあったり、私の考えを申し上げたりしたわけでありますが、その節も少々私は煮え切らぬことを言ったように思っておるのであります。で、それはまあ、あの節も申しましたけれども、この処遇を合理化していくことは本当に考えていかなきゃいかぬと思うのですが、そこで、公務員というかっこうに何でもしてしまうと、いわば鋳型にはめてしまうということに私がちょっと胸につかえるようなものがあったものですから、よし悪しのこともありまして、何でも役人役人、官僚組織のようなことにしてしまうことがいいものか悪いものか。それからメリットもあるけれどもデメリットもあるのですね。きょうこの膨大な官僚組織を見ておって、それは一方にはメリットもありましょうけれども、デメリットもたくさんあるのですな、これは全体論ですけれども。これは全体的にこういう体制というものは考えぬと、民主的な社会が生まれないのじゃないかという気もしないではないのです。そこで、よその国の自治体などにしても、シティー・マネジャー・システムだとか、民間人を用いて、そして市の公の事務でも、四角四面なお役人式の者がやるのでなしにやった方がみんなの気持ちにも要望にも合うし、かえって能率も上がるなんという例もあるのですね。それで、私の気持ちの中に、何でも公務員一色、役人の官という字をつけてやるのが、そういう考え方がいいものかいなというような――全体論ですよ、これは。――疑問が腹の中にあるものですから。
 しかし、そんなことでもないかもしらぬし、特にこの執行官という具体問題になればまた執行官の問題として、あるいはもうそんな一般論などは抜きにして直進すべきものかもしらぬし、そこは私は、正直に言って腹の中が十分固まらぬというのか、そうだったものですから、ちょっと煮え切らぬことを申し上げたのです。否定する意味でも何でもないのです。これはもっと勉強さしてもらいたいと。しかし、皆さんのここで出ました御意見は、これは重々伺って、これをよくかみしめて考えてみなきゃならぬと、こういうふうに思っておりますのが正直なところでありますので、そういうふうに御了承願いたいと思うのです。拒否する意味じゃないのです。
 それから、まあ私の知識は古いのですから、弁護士の知識。ただし、ちょっと何があるようですが、執達吏時代じゃなくて、執行吏時代ですから、まだ少しは……。それほど大昔の時代でもないですから、多少このごろに近づいておるわけですから、ここはひとつ御理解願っておきたいと思います。
#14
○寺田熊雄君 終わります。
#15
○宮崎正義君 執行法案の方をちょっと先に触れて、あと整理法の方にいきたいと思います。
 船舶に対する強制執行の方法のことについてでありますが、御案内のように、従来トン数が制定されておりませんで、しかも船舶は非常に小さな船でも価格が高いわけですね。五トンぐらいでも、漁船なんかになりますと三千万から四千万という現在の価格の状態であります。従来から、この権利関係というものは相当複雑な事案がずいぶん出ているわけです。私の手元にありますものを見ていきましても、法曹会の決議だとか、民事局長が言われたものの中にもいろいろなものがあるわけです。「造船中の船舶であつて、抵当権の登記があるもの、竜骨または航の据付を終つたものについては、強制執行上船舶として取り扱うものとする。」とか、あるいは「三馬力ないし五馬力の機関または電気モーターを備えつけて運転している二〇瓲未満の磯舟、川崎舟、鰊起舟等に対する強制執行は、民訴法七一七条以下の規定を適用すべきである。」とかというような、過去においていろいろな問題点がいっぱい出されているわけですね。そういうふうに非常に複雑であったというわけです。
 それと同時に、今回は二十トン未満を動産にして、二十トンから今度は不動産の取り扱いをして船舶の国籍証書を与えて登記をさせるというようなことになるわけでありますが、この商法の二十トンを規定したその時代ということも、今日の時代に、船の近代化されている、精密化されている船の形態からいきまして、それでその二十トンの単位で、限界点でいいんだろうかなという私は疑問があるわけです、素朴な疑問ですが。特に漁船なんかにいきますと、五トンでもう二百海里のところまで行けるような状態の力がありますし、特にまた四・八だとか十九・九だとか、いろいろな問題があるために二十トン未満にしてやっているような船の状態等も御案内のようだと思いますが、いずれにしましても、そういう船の力というものが時代に即応したやはり考え方に持っていくようにしていかなきゃいけないんじゃないかと、こういうように思うわけです。これは私の考えでありますが、そこで、そのことを一つお伺いをしながら、百十五条に、「船舶執行の申立て前に船舶国籍証書等を取り上げなければ船舶執行が著しく困難となるおそれがあるとき」、この「著しく困難となるおそれがあるとき」という、この「著しく困難」ということ。それから後尾の方に、「急迫の事情があるときは、船舶の所在地を管轄する地方裁判所も、この命令を発することができる。」、この「急迫の事情があるとき」、実務でどんなふうなことを言うているのかですね、この二点についてお答えを願いたいと思います。
#16
○政府委員(香川保一君) この法案の百十五条一項の「船舶執行が著しく困難となるおそれがあるとき」と申しますのは、船舶は常に航行を目的とするものでございますので、航行中におきましては船舶執行ができないわけでございます。したがって、当該船舶が長く港に停泊をしておればともかく、港に入ってすぐまた出ていくというふうなことになりますと、「著しく困難」どころか、不可能になってくるわけでございまして、そういう場合に、その船舶の航行をいわば事実上差しとめるというふうなことが必要になってくるわけでございまして、そういう意味から、そのままにしておけば船舶が出港するために執行ができなくなる、そういったことを考えた規定でございます。
 それから、「急迫の事情」も同じようなことでございまして、これもやはり港に入ってすぐ長期の航海に出て、次に港に入ってくるのが相当先になるというふうな場合、しかしいま執行しなければ債権の回収ができなくて債権者自身が困るというふうなことがございました場合に、一時停泊しているその船舶所在地の裁判所においてこの命令を発することができるようにしておこうと、こういう趣旨でございます。
#17
○宮崎正義君 主にどういう船舶をねらったものなのですか。
#18
○政府委員(香川保一君) 国内船と申しますか、わが国の港を転々と移っておるというふうな船舶の場合には、さしてこういうふうな「急迫の事情」というふうなことはまずなかろうと思うのでありますが、外航船舶、つまり外国に行ってしまうというふうな場合が典型的な例として考えられると思います。
#19
○宮崎正義君 外国船のことなんかにつきましては、また後で送達の事項等でいろいろ伺っておきたいと思います。
 私が最高裁判所の事務局の方からいただいた資料があるのですが、「五二年度 船舶に対する強制競売、任意競売既済事件数」という五十三年十一月二十九日の書類をいただいているわけですが、前回の委員会で参考人の方から船舶のことに一言触れましたけれども、東京地裁の方では一件ぐらいしかなかったという参考人のお話でございましたけれども、全国的にいきますと相当な件数があるわけであります。ともあれ、五十二年度だけでもかなりの隻数があるわけであります。そういうふうなことから考えまして、私は、特に今後漁船なんかは、これは原簿に当然載っておるわけでありますが、五トン以上になりますと問題点が非常に出てくるのじゃなかろうかと思うわけでありますが、そういうものもひっくるめてのデータだと思いますが、この中の強制競売あるいは任意競売の中に「その他」ということがありますが、「その他」の主なるものはどういうものがあるのでしょうか。これをまずお伺いしておきたいと思います。
#20
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) ただいまの「昭和五二年度 船舶に対する強制競売、任意競売既済事件数」についての御説明を申し上げますと、同年度の強制競売の事件といたしましては合計して十九件ございまして、それがその既済の事由といたしましては、取り下げが十六件、その他が三件、こういうことになっております。それから、任意競売の方におきましては、総数が百四十五件、既済事由のうち終結になりましたのが四十六件、棄却または却下で終わったものが二件、取り下げが六十二件、その他が三十五件、こういう結果になっております。
 それで、「その他」ということでございますが、これは、競売法による競売手続に対して、それが進行している間にその同一の目的物について強制競売の申し立てがあって、記録添付されて配当が実施されたという場合、それから二つの強制競売の申し立てがありまして、後の申し立てが最初の執行記録に添付されたというふうな場合には、後の事件は「その他」ということで既済の扱いをしておるわけでございます。それが一つ。
 それから二番目は、会社更生計画の認可決定、会社整理開始決定、特別清算開始決定、それから和議開始決定の確定によりまして、それまで中止しておりました強制執行、競売法による競売等の手続が失効した場合、これも「その他」として処理をいたします。
 それから三番目は、強制執行事件の進行中に同一の債務者に対して破産宣告があった場合には「その他」ということで処理をいたします。
 それから四番目は、競落許可決定確定した後に、債務者が費用及び債権額を全額債権者に弁済して、結局競落代金が全額債務者に返されるようになったというふうな場合には「その他」として処理しているという、その四つの場合が含まれておるわけでございます。
#21
○宮崎正義君 その内容については、いろいろな事例を私も伺っておるわけですが、時間がございませんので、きょうは割愛をしていきたいと思います。
 それで、もう一つの方の五十二年度の船舶に対する任意競売の既済の事件の「目的船舶の規模等」ということでありますが、監守保存処分執行のものがあるものとないものとがありますが、このデータによりますと、非常に複雑しているということを知らせるために、この考えが、あるものが多いというように私は思うのですが、それだけにいろいろな諸問題が介在をされているというふうに私は見ているのですが、そう解釈してよろしゅうございますか。
#22
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 船舶の監守保存処分が行われましたのは、件数から言いますとかなりの件数になりますが、そのうちで、執行官が監守保存処分を命ぜられた分と、それから執行官以外の人が命ぜられた分とがございます。いずれにしましても、その中では執行官が監守保存処分を命ぜられている件数の方が多いのではなかろうかというふうに思われます。それからまた、全体として監守保存処分がなされる場合が、なされないのに比べると多い割合になっておると思いますが、やはり船舶が移動しやすいものであるという特殊な困難性に基づいて、そういう監守保存処分がなされているのであろうというふうに推察されるわけでございます。
#23
○宮崎正義君 この中には、たった一つだけ、松山の宇和島の支所の方で四・七三というのがありますけれども、概してこれをずっと見ていきましても普通の汽船関係が多いようですが、いずれにしましても、いま答弁がありましたように、相当船舶のことについては非常にむずかしい問題が伏在されているということを承知をなさってのことだと思います。
 そこで、決められた時間が余りありませんので次へ進んでいきますけれども、百十六条の「執行裁判所は、差押債権者の申立により、必要があると認めるときは、強制競売の開始決定がされた船舶について保管人を選任することができる。」、この保管人の選任ということが規定されておりますが、この保管人と、それからこの中の四項の「第九十四条第二項、第九十六条及び第九十九条から第百三条までの規定は、第一項の保管人について準用する。」というふうになっていますが、この規定で言う管理人とこの保管人とはどう違うのか、保管人とはどういうふうなことを主体として保管と言うのか、管理人はどういうことを主体として管理人と言うのか、そういう定義をひとつ簡単に御説明を願いたいと思います。
#24
○政府委員(香川保一君) この法案の百十六条の保管人は、船舶のいわば保存行為と申しますか、その価値を減少させることのないようにいろいろの管理をしなきゃならぬわけでございまして、いわばそういった保存行為をするというにとどまるわけでございます。で、もう一つの不動産の強制管理の場合における管理人と申しますのは、そういった保存行為のみならず、収益を取り上げるというふうなことまでやるわけでございまして、大きな違いはそういうことだろうというふうに思います。
#25
○宮崎正義君 収益の違いということですね。片一方は、いまの御答弁だと、管理人の方が収益を主体にする、それから保管というのはただ保管をすることであるというふうな解釈ですか。
#26
○政府委員(香川保一君) 強制管理の場合の管理人は、たとえばその不動産を管理しながら、場合によりましては新たに人にそれを賃貸するというふうな権限もあるわけでございまして、そして賃貸いたしました場合には、その賃料を取り立てて債権者に配当するというふうなことまでやる権限を持っておるわけでございますが、船舶の保管人はそういったことは一切できないわけでございまして、その価値を保存するためのいわば保管だけをすると、そういうことでございます。
#27
○宮崎正義君 何だかわかったようなわからないようなことですが、時間がございませんから、次へ進んでいきたいと思います。
 民事執行法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案について、一条についてもいろいろお伺いしたい点がありますが、先に進んで、十条の方の問題に入りたいと思います。
 改正案の十条の公証人法の一部改正において、公証人による送達の規定を明確になされたものと私は思うわけですが、この公証人法の五十七条の二による民事執行法案第二十二条第五号と第二十九条による送達は「郵便又ハ最高裁判所規則ノ定ムル方法ニ依ル」とあるが、この「最高裁判所規則ノ定ムル方法」とはどんなふうな方法なのか、この点について御説明を願いたいと思います。
#28
○政府委員(香川保一君) この点は最高裁において規則でお決めになることでございますが、私どもの承っておる限りで申し上げますれば、この公証人法におきましては、公証人のする送達は郵便による送達のみを規定いたしまして、最高裁規則では、現在やっておりますように、執行官に申し立てをして執行官が送達するということを考えておられるようでございます。
#29
○宮崎正義君 そうすると、公証人はいままで――これは端的な、率直な質問なんですが、送達事務なんかやってなかったんですか。
#30
○政府委員(香川保一君) まあ、私どもの考えるところでは、本来はやはり公証人が債務名義を作成するわけでございますから、その関係の送達の規定は公証人法に規定されておってしかるべきだと考えるのでありますが、それは現在ないわけでございまして、いわば法律の不備かと思うのであります。したがって、解釈で現在は執行官送達を基本にしてやっておるわけでございますが、その辺の不備もあわせて解消するという意味で今回改正した次第でございます。
#31
○宮崎正義君 送達ということにつきましては、本委員会においても何回か論議されてまいりましたけれども、民事執行の手続上きわめて重要な要件でございますし、その規定については民事訴訟法の第百六十条から第百八十一条に至っての趣旨が明らかにされているわけでありますが、今日の郵便配達の実情等を考えてみたときに、現行の郵便による送達ということが果たして完璧と言えるのかどうなのか、いささか私は疑問とする面があるわけですが、郵便が届かなかったという事例等もずいぶん新聞に発表されておりますし、特に年賀はがきが一番大きく動くものですから、大きな問題として一万五千通も未配達だったとか、あるいは郵便が送られてなかったとかというようないろいろな報道が出ておりますが、いずれにいたしましても、一つの私の方の例を言ってみましても、書留が来ていた、留守にして、約二週間の間日にちが決められて、いついつまでに来なければ差出人に戻しますと、こういうふうになっております。そして、そのときが過ぎて帰宅をして見た場合に、それは知らなかったわけです、返されてしまったものですから。その通知書だけが残っていた。それで郵便局へ行きましても、もう差出人に戻しましたということで、差出人と連絡をとり合ってみたら、こういうものを送ったんですよということがやっと後でわかったわけです。こういうふうな事例は数多くあるように私は思うのです。旅行したとか、あるいはちょっと国内を回ってもそれぐらいの日数を経ることはあるでありましょうし、外国旅行なんか行った場合だと相当そういうことはあると思うのです。したがって、郵便による送達ということ、このこともいろいろな問題点が――口頭弁論の場合なんか取り上げましても、その訴えが提起されてから三十日以内でなけりゃいけないとか、あるいは民訴法の三百六十六条の、控訴は判決の送達のあった日から三日から二週間の以内にこれを提起することを要す云々とか、こういうような規定もございますし、そういうような問題等を考えてみますと、送達ということが民事執行法においても同じことが言えてくると思うのです。執行法はもちろんでありますが……。
 それで、送達という定義ですね。送達という定義は何なのか。民訴法の方にはありますけれども、定義そのものはどういうことなのかですね。
#32
○政府委員(香川保一君) 送達の定義でございますが、読んで字のごとくでございますが、民事執行法の関係で申しますれば、裁判所が一定の方式によりまして、一定の書類を当事者その他の関係人に送付しまして、その内容を告知する、そういうことを目的とする行為であるわけでありまして、お説のとおり、その送達があることによりまして関係人は何らかの行為をしなければならぬというような場合が多いわけでございまして、したがって、厳格な方式を採用しておる送付方法というふうに考えていただいていいのじゃないかと思います。
#33
○宮崎正義君 法律の規定は確かにそうでございますけれども、送達というのは、送達の完了、送達の効力、名あて人が受領して、その名あて人が内容を確知する、そうして了解をし得たことを目的としているのじゃないでしょうかね。
#34
○政府委員(香川保一君) 送達の目的は、まさにそのとおりでございます。
#35
○宮崎正義君 そうであれば、この送達ということに対して権利関係等が相当かかってくるわけですね。そうしますと、民法の第九十七条ですか、「隔地者ニ対スル意思表示ハ其通知ノ相手方ニ到達シタル時ヨリ其効力ヲ生ス」、通知を相手方に出したというときからその効力を発するということなんですが、そういうふうに解釈していいのですか。
#36
○政府委員(香川保一君) 意思表示一般で申しますれば、原則的にはいわゆる到達主義でございまして、相手方にその意思表示が到達しないと効力は生じない。例外的な場合には特別に法律で発信主義をとっておる例外もございますが、原則的には到達主義をとっておるわけでございます。
#37
○宮崎正義君 そうであれば、この送達ということの重要性ということから十分に考えていかなきゃならないと思うのですが、一昨日の参考人の方々の中から要望事項として、送達に関する全般的な再検討を願い、できれば法改正をしてもらいたいというような要望があったわけですが、これはどのように受けとめられておりますか。これは両局長にひとつ御答弁願いたいと思います。
#38
○政府委員(香川保一君) この前の委員会で、参考人の御意見として、執行官から送達事務をはずしてほしいという御要望が開陳されておりましたが、それは執行官の立場からお考えになればごもっともな要望でもあろうかと思うのでありますけれども、そういたしますと、郵便送達が現在の場合には原則になってくるということでございますが、この郵便送達も、ただいま宮崎委員御指摘のとおり、いろいろ問題があるわけでございまして、特に夜間における送達というのは、現在郵便送達ではできないわけでございます。最近におきましては、御承知のとおり、夫婦共かせぎの者も多いわけでございまして、昼間においては留守にされておる、どうしても夜間送達でなければできないというふうな事例がふえつつあるわけでございます。そういたしますと、郵便送達では現実的にこれはやっていただけないわけでございますので、そういう場合には現在では執行官送達によらざるを得ないというふうなことで、少なくとも現状におきましては執行官送達を廃止するというわけにはまいらぬわけであります。しかし、裁判所の関係での送達事務を考えました場合には、やはり裁判所がそういった関係を確実ならしめる、そういった、いわば送達機関について責任を持ち、十分な監督あるいはその運用についていろいろの方策をみずから講ずることができるような機関でもって送達を考えなければならぬわけでございます。そういう意味から、現在ではそういうものとして執行官送達があるわけでございますけれども、他方、果たして現在の執行官送達、それが執行官の立場も含めて考えました場合に、これでいいかという問題は確かにあるわけでございまして、したがって、早急にこの送達のあり方、送達機関の問題も含めまして、やはり検討を急がなきゃならぬ問題であるというふうに考えております。
#39
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 送達の関係は、ただいま宮崎委員が御指摘になられましたように、その送達が完了したかどうか、内容が正確に告知できたかどうかということが非常に問題でありまして、裁判手続の関係では、一々事前に送達ができたかどうかということをチェックして手続の進行を図っておるわけでございます。そういう意味では、送達は間違いなく実施されておるということが前提でありますが、そういう効果の面と、それから送達事務自体の姿と申しますか、それが非常にアンバランスな形になっておるわけでございまして、送達行為自体は、極端に申しますれば、てくてく歩いていって人に物を渡すという形になっておるわけでございます。そういうことで、裁判所の立場といたしましては、執行官は送達実施機関の一つにはなっておりますけれども、本来の仕事はやはり執行事務を適正かつ十分にやっていただくということに主たる責務があるというふうに考えておりますので、なるべく送達の関係の負担を除きたいというふうに考えておるわけでございます。そういうことで、従前は数十万件の送達事務が、事件数がありましたけれども、最近では、なるべく郵便送達を原則にしてやっていくという指導をしてまいった結果、最近では非常に数は少なく、一ころに比べると二〇%程度に減少しているという実情にございます。しかし、そうは申しましても、先ほど御指摘ありましたような郵便事情による送達の実施不可能、不能な面がございます。そういう場合にはどうしても執行常の送達に頼らざるを得ない。むしろ、その面では執行官に頼めば必ず送達をやり遂げてくれるという意味での信頼を私どもは持っておるわけでございますけれども、そういうときには、夜間の執行、夜間の送達あるいは休日の送達ということで、なるべく送達を受ける人が送達場所にいることが間違いないような時間帯を見計らって執行、送達をしてもらうというふうな体制になっておるわけでございます。そのかわり、それに基づきまして、休日に出なければいけない、あるいは夜間に行かなければいけない。夜間の場合には、最近の都市の状況から申しまして、なかなか場所の識別が困難である。大きなビルあるいはマンションの同じような建物が並んでいる中で、建物を識別して、その中でまた部屋を探し歩かなければならないというふうな面で、一回行っただけで済むかどうかというふうな苦労もなさっておるようでございまして、そういう点では、かなりの労力を使っているということがございます。そういうことによってそれが執行事務の方に悪い影響を及ぼしては困るというふうにも考えるわけですが、現状においてはどうもいかんともしがたいということでおるわけでございます。
    ―――――――――――――
#40
○委員長(峯山昭範君) 委員の異動について御報告いたします。
 本日、矢田部理君が委員を辞任され、その補欠として片岡勝治君が選任されました。
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#41
○宮崎正義君 参考人の田中一志参考人が、この区域が廃止された場合の、今度は具体的なその仕方というか、施行法というか、それをどういうふうなことをやるか、具体的な案というものが煮詰まっていないのじゃないかというような御意見もございましたけれども、いまお話がありましたように、夜間をねらうということは、昼間行ってもだめだから夜間ならばいるだろうということで夜間が中心になってくる。また、夜間に行ってもだめだから日曜日ならいるだろうというようなことで日曜も夜間も返上してこの事務に当たっておられるということは、お話もございましたとおりでありますし、われわれが考えているようななまやさしいことじゃないと私は思うわけですが、そういうことで、裁判所法六十二条から、今度は四十一年にできました執行官法の八条、「(手数料を受ける場合)」、「執行官は、次の各号に掲げる事務ごとに、その手数料を受けるものとする。」と、こういうふうにこの条文で明らかになっておりますが、この附則の十条の2を見ますと、「刑事事件及び少年の保護事件における書類の送達については、当分の間、この法律中手数料に関する規定を適用しない。」と、こうあります。何年たったらこの「当分の間」がとれるのか。「当分の間」。この前も私は、ほかの法案の問題のときにも、この「当分の間」ということについて伺ったことがあるのですが、これらのことにつきましても問題点が相当残されております。さらに、衆議院の附帯決議の中からでも送達の問題等がるる取り上げてあるわけですが、この「当分の間」というのはいつまでを指して「当分の間」と言うのでしょうか。
#42
○政府委員(枇杷田泰助君) 「当分の間」といいますのは、いわば期間を明記することができない場合に使う言葉でございますので、ここで何年間というふうなことが表現されているというわけではございませんが、こういう言葉が使われる場合には、このことはいわば暫定的なものであって、なるべく早い時期に検討し解消されるということの期待が込められて表現されているものであるというふうに承知いたしております。
#43
○宮崎正義君 期待が込められているだけじゃしようがないと思うんですがね。しかも、これもう何年たっているんですか。何年たって、まだ期待を持たなきゃいけないんです。
#44
○政府委員(枇杷田泰助君) 四十一年にこの法律ができたわけでございますので、約十三年間経過をいたしておるわけでございます。刑事送達についての関係についてはかねがね問題があるわけでございますが、この四十一年の法律ができたころにはかなりの量がございまして、それについてにわかに手数料の中に盛り込むということが実際上なかなかむずかしいというところから、こういう規定が設けられたものと思います。現実的には、刑事送達につきましても逐次その量は減っておるというふうなこともございますので、制度的には何らの改善、改正がなされておりませんけれども、実務的には漸次役場における刑事送達の事務量は減少するという方向に指導されておるものというふうに承知いたしております。
#45
○宮崎正義君 具体案がどうなっているのかな。区域が廃止された後の処置方法はどうなんですか。――裁判所の方でしょう。
#46
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 送達に関しましては、先ほど来申し上げましたように、なるべく減少させる方向で努力していきたいということでございまして、現在、東京都内におきましても二十三区のうち三区しか残らないで、あとはもう郵便送達に切りかえていると。その三区についてもなるべく切りかえるように努力をしているという段階にあるわけでございまして、そういうことになってまいりますと、手数料収入の問題、あるいは手数料、旅費も含めましての収入の問題も関連してまいりますが、そういうものをにらみ合わせながら、だんだんに軽減を図っていきたいというふうに考えておるわけでございます。
#47
○宮崎正義君 時間が過ぎているという注意がございましたので、これでやめますけれども、民事執行法案において民訴法の規定を引用している個所が九カ所ございます。と思うのです。十条十項、十三条一項、十五条二項、十六条三項、二十条、二十四条三項、四十一条三項、四十二条七項、百七十九条一項、このように引用されてございますが、この民訴法につきましても、もうそろそろ総体的な基本的な考え方をしなきゃならない時期になっているのじゃなかろうかと思うんです。枝葉の子供がいっぱいできた法律が、それぞれがそれぞれで今度中身を変えていくようになって、国民の側から言えば大変わからない。法律ってのはやっぱりわからないものだなというような印象を受けることだけは事実だと思うんです。こういうふうなことから考えていきましても、今回の民事執行法案をおつくりになった努力は多といたしましても、私たちの実社会のうちの中から見ると、まだいろいろな問題が処理されていくのには不便じゃないかという問題がずいぶんあると思うんです。こういう面から考えていきましても、民訴法もここで大きく考えてメスを入れていく時期が来ているのじゃなかろうかと、こういうふうに思うわけですが、これは民事局長と大臣に伺って、私の質問を終わりたいと思います。
#48
○政府委員(香川保一君) 民事訴訟法は、御案内のとおり、民事裁判の手続法でございまして、民事裁判をできるだけ適正迅速に行うようにするという意味から、民訴法につきましても改正は早急に検討したいというふうに考えておるわけでございます。
#49
○国務大臣(古井喜實君) 民事訴訟法は、実体法が何ぼりっぱでも手続法がよく整っていないというと法律はうまく実行できないわけですから、大切な問題だと思うのであります。しかし、大事な基本法でもありますので、これからよく検討して、改むべき点があれば改善をしていく、こういう必要があろうかと思っております。
#50
○橋本敦君 一般的な問題に属することですが、若干執行法に関して質問をしたいと思います。
 まず第一点は、今回配当要求に関して五十一条関係で債務名義主義が貫かれるということになってくるわけでありますが、この問題で、一つは公正証書というのが非常に増加するという傾向が出るだろう、そのことは、公正証書というのは大抵債務者が費用を負担するということが多くありますので、債務者の負担というのが増大するという傾向も助長するでしょうし、また一方、小さな債権者の立場に立ってみますと、債務者が公正証書の作成に同意してくれないということもこれはあり得る。そうすると、その小債権者が配当要求をするという権利が侵害されるという、そういう問題も起こり得ないだろうか。こういった問題について民事局長がどうお考えか、また、その見通しはどう持っていらっしゃるか、いかがでしょうか。
#51
○政府委員(香川保一君) 配当要求につきまして有名義主義をとるかどうかというのは大問題でございます。御承知のとおり、現行法におきましては債務名義のない者の配当要求も認めておるわけでございますが、その結果、非常に虚偽債権の配当要求があったり、あるいは当事者間に争いがある債権の配当要求が出てくるということから、勢いそういったものの決着をつけなきゃなりませんので、どうしても競売手続そのものが長期化するということに相なってくるわけであります。他方、有名義主義をとりますと、そういった問題は一切解消するわけでございますけれども、やはり債務名義がたまたまそのときない者は配当要求できないということから、債権の実現が困難になるという問題があるわけでございます。したがって、大ざっぱに申し上げまして一長一短あるわけでございますけれども、全体としてどちらがメリットがより多いかという比較考量の問題としまして、今回は有名義主義を採用したというわけでございます。
 ただ、その場合も、御承知のとおり、この法案におきましては、債務名義がなくても仮差し押さえ債権者については配当要求を認めておるわけでございますので、そういった仮差し押さえすることによって配当に参加するという方法が一つ考えられるわけでございます。これもしかし、仮差し押さえそれ自身はやはりそれなりの手続と費用を要するわけでございますから、問題がないとは決して考えておりません。
 他方、債務名義の中で、判決は、これは訴訟ということでございますので、時間もかかれば費用もかかるというような実態があるものですから、そこで、補完的な意味で、現行法どおり、執行証書と公証人の作成する公正証書を債務名義に入れておるわけでございます。御承知のとおり、公正証書の報酬手数料というのは、これは政令で定めておりまして、それ自体、私どもといたしましては、できるだけ国民の法律生活というのは後で紛争にならないようにということから、公正証書の活用をむしろ期待しておるわけでございます。
  〔委員長退席、理事上田稔君着席〕
そういう観点から、公正証書の作成の費用につきましては、少額の債権についてはきわめて低廉なところで政令で抑えておるわけでございまして、そういった意味から、先ほど申しましたような予防手法と申しますか、そういう見地からは公正証書の活用を期待いたしておるわけでございますけれども、なかなかこれ、いろいろの事情から余り活用されないという面があるわけでございまして、今回民事執行法案におきまして有名義主義をとったことから、公正証書がさほどふえるかと申しますと、私どもとしては現状どおりじゃなかろうかというふうに考えておるわけでございまして、現在でも、公正証書をつくっておきますればそれだけのメリットはあるわけでございますけれども、少額の債権については特殊な場合を除きましては活用されてないわけでございまして、民事執行法の施行に伴って公正証書が大幅にふえるというふうなことは考えていないわけでございます。
#52
○橋本敦君 しかし、実際問題としては、今後この問題に関して市民間でどういう問題が出てくるか、これは検討をしておく必要が、注意をして見守っていく必要があるというふうに私は感じております。
 もう一つの問題は、配当要求というのは終期が定められるということになりますが、その配当要求の終期が定められたときに、ここの規定によりますと終期の公告ということがなされる。だからしたがって、その終期の公告を熟知しなければ、小口債権者は配当要求を出すという、そのことを知らない間に、なさないまま執行手続が進んでしまって、後になるとできないという問題が起こりはしないか。そうなりますと、この配当要求の終期の定め方及び公告の方法、これを十分に関係小口債権者あるいは一般先取り特権を有する者に告知し得るということで自信がおありの公告方法があるだろうか。その点はいかがでしょう。私は、これは大変むずかしい問題じゃないかと思っております。
  〔理事上田稔君退席、委員長着席〕
#53
○政府委員(香川保一君) 現在考えております公告の方法は、裁判所の掲示板に掲示するというほかに、日刊新聞紙とかあるいは市町村の広報等を利用して公告するということを考えておるわけでございます。それで十分周知されるかということでございますけれども、必ずしも十分だというふうには考えておりません。しかし、さればといって、ほかにもっといい方法があるだろうかということになりますと、まことに申しわけないのですが、ちょっといい方法も考えられないわけでございます。したがって、そういうことだとすれば、現行法のような配当要求ができる期間が実質的に長くなるようなことをやっぱり考えるべきじゃないかという考え方もあろうかと思うのであります。しかし、現行法で一番因っておりますのは、御承知のとおり、競売期日まで配当要求を認めることになります結果、例の剰余主義の関係との衝突を来たしまして、せっかく手続を進めてまいりましても配当要求の関係から競売をやめなきゃならぬというふうなこともあるわけでございまして、そういったことをあれこれ考えますと、そういったことがむだのない時期において終期を定めて制限するということは、やはりやむを得ないことだろうというふうに考えるわけであります。
 ただ、そうしました場合に、その配当要求ができなくなる関係人が出てくるわけでございますから、これを救済するために、第一回の競売期日で競売ができません場合には当然自動的に延長されるというふうなこと、あるいは関係人の多寡を考えまして、裁判所の方であらかじめ終期を変更するというふうな措置、そういった運用で若干カバーしていただくというふうな程度の知恵しかないわけでございまして、相当問題であることは十分承知いたしておりますけれども、やはりどちらが全体としていいかというふうにあれこれ考えますと、こういった終期を定めるということがやはり競売手続としては一番合理的だろう。ただ、先ほど申しましたように、その場合の支えとなる公告の方法につきましては、先ほど申しましたとおりのことしか現在考えられないわけでございますけれども、より徹底する方法をやはり検討してまいらなきゃならぬというふうに考えております。
#54
○橋本敦君 確かに、局長がおっしゃるように、この点私もどうしたらいいか、なかなかむずかしい問題で、問題が残ると思うのですが、小債権者保護という観点での運用の適正を今後得たいと思っているわけですね。
 配当要求を出して、それが終期におくれたということでこれは却下をされる可能性がありますね。そうなりますと、執行抗告しか方法はありませんか。
#55
○政府委員(香川保一君) 終期におくれた配当要求も、その段階で直ちに却下するということは考えていないわけでございまして、と申しますのは、先ほどちょっと触れましたように、自動延長があるわけでございまして、その場合には結局配当要求の効力がございますので、直ちに却下ということは考えていないわけでございます。
#56
○橋本敦君 だから、したがって、実際の正当な債権者の要求であると認めれば自動延長という運用の方法によっても救済し得る余地は考えている、こういうお話ですね。それはわかりました。
 もう一つ私がむずかしい問題だなと思っているのは、同僚委員から御質問もありましたが、一般先取り特権者の債権の証明ですね。百三十三条関係ですが、これは、労働債権の場合は給与台帳その他一定の証明をとるということは比較的可能だろうと思うのですね。ところが、民法の三百十条で規定してありますような日用品供給の先取り特権、さてこれはどういう先取り特権を証する書面を提出すれば足りるということになるのか、この点は非常に私はむずかしいと思うのですね。ところが、実際私も破産管財人をやった経験がありますけれども、やっぱりかなりの食料その他たまっている債権があるという配当要求が出てまいります。こういう場合に、百三十三条で言うこの債権の証明というのはどういうようにお考えでしょうか。
#57
○政府委員(香川保一君) 一般の先取り特権者がその先取り特権の存在を証する書面を提出して、競売の申し立てなり配当要求をするという関係は、確かに証する書面が一体いかなるものを言うのかということで非常に問題があるわけでございます。率直に申し上げますと、一般の先取り特権につきましては登記がないのが大部分でございますから、したがって、有名義主義を貫いて配当要求を認めないというのが一番すっきりするわけでございます。外国の立法例は御承知のとおりそういったことになっておるわけでございますが、日本の特殊性と申しますか、そういうことから、やはり一般の先取り特権は少額のものが多うございますし、しかも賃金債権等を考えますれば、これはやはり優先的に保護しなければならないものでございますので、そこで有名義主義の一大例外としまして、一般の先取り特権者の配当要求を認めたわけなんでございます。しかし、これも認める以上は当然手続におきまして一般の先取り特権が存在することが明らかになりませんと、手続の参加ができないのは当然のことなんでございます。したがって、法文上は先取り特権の存在を証する書面を提出するということにせざるを得ないわけでございますけれども、実際問題としては、明確にその先取り特権が現在あるということを、確定的にと申しますか、そういうことを証する書面というのは非常に少なかろうと思います。したがって、この問題はやはり裁判所がかくかくの債権がなおあるというふうなことが推認できる程度の書面をもって先取り特権の存在を証する書面、という扱いをしていただきたいというふうに私どもとしては考えておるわけでございまして、それにいたしましても、ただいま御例示の日用品の供給の場合は、これは通常は契約書もございませんし、請求書を出すというふうな関係もないわけでございますけれども、思いつきのことで恐縮でございますが、何かそういう債権がたまっているといたしますれば、一度請求書を相手に郵便等で送りまして、内容証明郵便で送って、それの控えを裁判所に出すというふうなことでも私は足りるのではないかというふうに考えているわけでございますが、そういう意味で裁判所のこの書面の取り扱いについては、相当弾力的に考えていただければというふうに考えております。
#58
○橋本敦君 局長の御意見、私ももっともだと思うのですね。で、これは日用的供給の一般先取り特権ですから、あらかじめ極度額を決めて公正証書を結んでおくという、これはできませんし、非常にむずかしい問題で、しかし実際は、八百屋さんにしろ、その他日用品を供給する立場の債権者からすると問題がある。局長からいまのような御見解がありましたが、裁判所としては、この百三十三条の運用と先取り特権の保護についてどういうお考えでしょう。
#59
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 裁判所規則におきましては、特にそういう文書の種類を制限するとか、あるいは例示をするというふうなことまで考えておりませんで、結局は、いま法務省民事局長から言われたような取り扱いで処理をしていくのではなかろうかというふうに思われるわけでございます。で、その取引の内容によって要求される資料というのは、おのずからやはり何らかの定型的なものができ上がってくるのではなかろうかというふうに考えております。たとえば、八百屋の売り上げというふうな場合でも、全然記帳しないで客に届けるというふうなことが現金取引以外にあり得るかというと、やはり大福帳にしろ、そういうものはあるのではないか、あるいは最近では伝票と請求書と兼ねたようなものでちょこっと書くというふうなことも行われているようでございますので、そういうふうな伝票でもやはり証明する文書としては足りるというふうに考えておるわけでございます。
#60
○橋本敦君 わかりました。
 そういうことで、実際に、民法上権利を有する一般先取り特権者、これは小口債権者になるかわかりませんが、その権利保障という点も運用の面で十分御配慮いただきたいと思います。
 それからその次に、これはもう同僚委員からも指摘があった問題ですが、三十九条の強制執行の停止関係についてお伺いをしておきたいと思います。
 三十九条の三項は、この規定に明確にありますように、弁済猶予の承諾の書面で強制執行の停止、これをやっていただくのは「二回に限り、かつ、通じて六月を超えることができない。」という大変厳しい規定になっております。で、実際本当に債務者と債権者が誠実に話し合いをいたしまして二回は弁済猶予をしてもらった、その期限ぎりぎりに、もう一週間たてばお互いに和解もしくは弁済が可能だというようなぎりぎりの状況があるという場合も、社会生活では間々あるわけですね。そういう意味で、私的な民事紛争というのは双方の和解やまた誠実な解決ということが基本的に私望まれると思うのですが、こう限ってしまわないと限度がなくなるとおっしゃる意見もわかるのですが、そういうぎりぎりの場合に当事者間の解決が具体的に見込まれるというような事情がある場合、そういう場合に債権者と債務者が双方で強制執行の停止もしくは延期を、三回目になるけれども文書でお願いをしたという場合に、この三十九条三項の規定によりますと、それはもうあれですか、執行官もしくは執行裁判所としてはどうにもならない強行的な規定だと、こうなってしまうのでしょうか。
#61
○政府委員(香川保一君) この規定は、理屈を申しますと相当無理のある規定だということは十分承知いたしております。しかし、今日の競売の非常に遅延しておる実態の最たる原因がこの弁済の猶予を証する書面の提出による停止の悪用と申しますか、それが一番大きいわけでございまして、そういうことから、今回の法案におきまして、できるだけ競売手続を迅速に進めるということからかような強行的な制限を課したわけでございます。ただ、おっしゃるように、全く形式的に、二回、しかも六カ月ということを経過すればあくまでも競売を強行するというふうなことは考えていないわけでございまして、御承知のとおり、この手続の続行の次のものとして売却期日の指定があるわけでございます。したがって、債権者、債務者間で真摯にできるだけ早く話がつくというふうなことが裁判中に明らかになりますれば、当然、裁判所としては売却期日の指定を先に延ばすというふうな運用でやるべきだろうと。しかし、背景にやはりこういう規定がございませんと、それがまたずるずる延びるというふうなことになっては、他の債権者に非常に迷惑を及ぼすわけでございますので、そういった運用よろしきを得るということで、まあ債権者、債務者間の真摯な話し合いが実を結ぶような配慮もしなきゃならぬと、こういうふうに考えておるわけでございます。
#62
○橋本敦君 いま売却期日の指定をある程度幅をもたして延ばすという運用の方法ということをおっしゃいました。私もそれはあり得ることだし、やっていただきたいことだと思うのですね。だから、これもまた運用の問題にかかるわけですが、そういう弾力的な運用ということで私的紛争の当事者間の誠実な私的解決をも期待をするということはぜひやってほしいのですが、そういう運用について最高裁としてはどういうお考えでしょうか。あるいは、そういう運用が可能であるという問題について、この三十九条三項について特段の事情のある場合は特例を認めるということを規則で示しておくということによって、いま民事局長がおっしゃった弾力的運用を図る余地をはっきりしておくということもいいのではないかと思ったりするのですが、最高裁のお考えはいかがでしょう。
#63
○最高裁判所長官代理者(西山俊彦君) 後の方からお答え申し上げますと、最高裁規則で三十九条三項についての弾力的な運用を許容するような規定を書くかということについては、考えておらないわけでございます。それで、現在――現在というか、いま考えておりますところでは、裁判所の方でもうすでに指定して公告までした不動産の競売期日につきましては、三十九条一項八号の弁済猶予書面の提出があった場合に、この三項の規定に違反して二回を超え、あるいは通じて六月を超えて手続を停止するということは一般的には考えられないところであります。しかし、そういうことは、この新しい規定が従前のわれわれが実務をやっておりました際に痛感させられた手続の遅延ということの防止ということについて非常に適切な規定であるというふうに考えておるわけでございまして、そういう点では、この三項の規定を超えて手続を停止するということは、恐らく実務の取り扱いとしてはあり得ないことだろうと思います。しかし、この規定は、私どもの見るところでは、いわば当事者の方から権利として二回にわたり六カ月間にわたってというふうに読めるわけでございます。要するに、当事者の権利として弁済猶予書面による執行停止の回数と期間について制限しているということでございまして、裁判所が職権によって売却期日を延期するということまでこの規定で制限されているかどうかということについては、むしろ制限されていないのだというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、三十九条三項をしゃくし定規に適用したのでは正義に反すると思われるような特別な事情があるときには、職権によって売却期日を延期するという運用も考えられるところであろうかというふうに思っております。ただ、この三項の趣旨が、当事者間の合意による執行手続の延期を認めないというところにあることからいたしますと、いま申しましたように、職権で売却期日の延期を制限していないからといって安易に延期を認めるということは適当でなかろうというふうに考えておるわけでございます。なお、競売期日が指定されたりあるいはその公告される前にこのような書面の提出があって延期の申し出があったという場合には、まだ関係者というか、利害関係を持っている人の出現というものがない段階でございますので、事案によっては、いま申し上げたところよりももっと弾力的な運用が考えられるのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
#64
○橋本敦君 これは事情による問題ですから、いま言った弾力的運用ということも、法全体のたてまえなり趣旨を崩さないような範囲でぜひお願いしたいと思うのですが、ただ、最高裁の局長がおっしゃったことに関して言えば、債権者自体が弁済を猶予するという正当な真摯な意思を表明をし、債務者もそのために誠実に弁済をすることを約している、こういう状況があるときに、一応の国家的な手続は進んではいるけれども何が何でも競売をしなきゃならぬのだということになってしまうというのも、私はこれはやっぱり考えるべきところがあると思いますよ。ただ、競売期日の指定、その他関係者がそういう手続に乗ってきているという、そこの利益も考えなければならぬという趣旨はいまおっしゃった中にあるのだろうと思うのですが、しかし、私、やっぱり債務者から弁済を受けるためにその持っている不動産ないし財産を処分するという法的、国家的な処分を強行的にやるわけですが、これは債権者もそれを望んでいない、そしてまた弁済の見込みが誠実にあると双方で話ができている場合に、国家の立場で進めた手続をあくまで進め切らなければならぬか、そういう問題はやっぱりある問題ですからね。だから、いまおっしゃった職権による処置ということも弾力的運用の中でぜひとも事情によっては考えていただく必要があると、私はこう思っております。この点はそういう立場でお願いをし、また、局長の答弁も私の趣旨とそう違わないというふうに理解をして、この点は終わります。
 次に、整理法の関係ですが、膨大な関係法律の整理が提案をされました。浦野参事官から私説明をいただきまして、この膨大な関係法の整理に大変な御苦心と御苦労があったことを伺いまして、敬意を表しておるわけですが、一般的に言いまして、この関係法令の整理は、いわゆる字句の修正、あるいは整合性を持たせる整理ということにとどまっておるというお話ですから、そのとおりだと思うのですが、大体そういうことに間違いはないかと思うのですが、物によっては、たとえば立木に関する法律あるいは公証人法、これなどは新設の規定があるわけですね。この新設ということの趣旨も、実質的には立木法の改正、公証人法の内容の改正ということじゃなくて、全体の整理統合の範囲内だというように理解できるのじゃないかと思うのですが、その点間違いございませんか。
#65
○政府委員(香川保一君) そのとおりでございます。つまり、民事執行法において法定地上権の制度が御案内のとおりに改められました場合に、同じ性質の他の法律における扱いがそれと著しく異なるということではやはり整合性がないわけでございますので、やはりこれは必然的に同じ趣旨に改めるというのが妥当であろうと、かような配慮でございます。
#66
○橋本敦君 以上で質問は終わります。
#67
○委員長(峯山昭範君) ほかに御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#68
○委員長(峯山昭範君) 御異議ないと認めます。
 寺田君から委員長の手元に民事執行法案に対する修正案が提出されております。修正案の内容はお手元に配付のとおりでございます。
 この際、本修正案を議題といたします。
 寺田君から修正案の趣旨説明をお願いします。寺田君。
#69
○寺田熊雄君 私は、ただいま議題となっております民事執行法案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党、日本共産党及び新自由クラブの各派共同に係る修正案を提案いたします。
 まず、修正案の趣旨について御説明いたします。
 原案の第五十五条は、売却のための保全処分、第七十七条は、最高価買い受け申し出人または買い受け人のための保全処分、また、第八十三条は、買い受け人のための引き渡し命令について、それぞれ規定いたしております。
 これらの規定に対しましては、差し押さえ前より合法的に不動産を占有している労働組合や労働者の権利を不当に脅かすおそれがあるとする労働界の意見がありました。その意見の是非はひとまずおくといたしましても、第五十五条及び第七十七条は、差し押さえ手続中、買い受け人が所有権を取得する以前の段階におきまして、占有者の権原の存否が未確定のまま、これらの占有者を排除し、不動産を執行官の占有に移す等の保全処分を認めんとするもので、不動産に対する物理的な価格減少行為を防止する法的手段は他に幾多あることを考慮いたしますと、正当な権原による占有者の立場の配慮に薄く、債権者の保護に厚いきらいがあるという批判を免れないと考えます。また、第八十三条も、引き渡し命令という簡易な債務名義により、あとう限り有利な状態で不動産を買い受け人に引き渡そうとするものでありますが、これにより、差し押さえ前より正当な権原により不動産を占有する者の排除まで認容せんとすることは、これまた前同様の批判を免れず、かかる占有者の排除については、買い受け人をして通常の訴訟手続によりその権利の実現を図らしむることが、むしろ妥当と考えられるのであります。
 本修正案は、以上の点の是正を図らんとするものであります。
 修正案の内容は、次のとおりであります。第一は、差し押さえ後の不動産価格を減少させる行為を未然に防止するための保全処分の相手方を債務者とすることであります。
 第二は、最高価買い受け申し出人または買い受け人に対し不動産の引き渡しを困難にする行為等を防止するための保全処分の相手方を債務者とすることであります。
 第三は、代金を納付した買い受け人のための不動産引き渡し命令の相手方を、債務者または事件の記録上差し押さえの効力発生前から権原により占有している者でないと認められる不動産の占有者とすること。ただし、差し押さえの効力発生後に占有した者で、占有権原を買い受け人に対抗することができると認められるものは、この限りでないものとすることであります。
 以上が修正案の趣旨及び内容であります。
 委員各位の御賛同を賜りますようお願いいたします。
#70
○委員長(峯山昭範君) それでは、ただいまの修正案に対し質疑のある方は順次御発言願います。――別に御発言もないようですから、これより両案並びに修正案について便宜一括して討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
#71
○寺田熊雄君 ただいまの修正案につきましては、私自身いまその提案理由の御説明を申し上げましたように、この修正案にまず賛成の立場を明らかにするものでございます。
 この修正は、先般衆議院におきまして、第五十五条は削除、第七十七条は削除または修正の希望意見がございまして、政府において十分これを配慮する旨の御答弁があったものに係るわけでございます。このような経緯にかんがみてみましても、本修正は時宜を得たものではないかと考えておるわけでございます。
 まず、その立場を離れて意見を申し述べたいと存じますが、民事訴訟法は、御承知のごとく、明治二十三年にできました法律でございます。なお、競売法も明治三十一年の法律でございます。で、この民事訴訟法、競売法は国民生活に非常に大きな影響を持つ法律でございますので、今日に至るまで部分的な修正は幾多ございました。しかし、この民事執行法案のごとき大規模な改正はいままでなかったのであります。今回の改正は、この民事訴訟制度のうち、執行部門を占める執行関係の法律のいわば大改正、画期的な改正と目されるのであります。その改正の趣旨の中に流れるものは、債権者及び抵当権者の保護と申しますか、強制執行をできるだけ迅速にこれを行いまして、債権者及び抵当権者の地位を守らんとする立場であるように思われるのであります。その意味におきまして、資本主義的な法律の立場を厳守するものであることは申すまでもございませんけれども、従来のいろいろさまざまな欠陥を補完したという立場におきましては、私どもこれを高く評価するにやぶさかではございません。ことに、従来さまざまな面で学説や判例が非常に対立をいたしておりました。たとえば、法定地上権が、所有者を同じくする建物及び土地でありました場合にその一方が競売に付せられた場合に法定地上権が成立するものなりや否や、あるいは引き渡し命令の性質なり、その対象となる相手方がどの範囲であるかなどにつきましては学説も判例も千々に乱れておりました。しかし、それを本法案は一挙に解決を図ったのでありまして、そういうような立場では、私どもはこの新しい法案の意図するところを十分に了解することができるわけであります。
 しかし、そうは申しましても、この法案が果たして国民生活の現実の需要に、あるいは必要性にマッチし得るものかどうか、これは今後の運用にまたなければなりません。私は、先ほど法務大臣に御質問申し上げたのでありますけれども、たとえば商法二百九十五条、民法にも同じくございますけれども、労働者の労働賃金、あるいは雇用関係から生ずる債権の範囲などにつきましては、まだ私どもと政府当局との間で必ずしも意見が一致するものとは思われません。また、差し押さえ禁止範囲などにつきましても、私どもと政府当局との間に意見の相違がありますことは質問の段階で明らかになりました。また、執行官制度につきましても、私どもは、昭和四十一年の執行官法が成立いたしましたときの衆議院の附帯決議がまだ十分に尊重され、実行に移されたとは考えておりません。これらは、今後の運用と同時に、十分政府当局におかれてこれを検討され、現実の国民生活の要請にマッチするように改正をなさるように、私どもとしては強く希望をいたす次第でございます。
 それから、いま一つは、この法案が、従来民事訴訟法の中に規定されていましたものを最高裁の規則にゆだねた部分が非常に多く見受けられるのであります。民事訴訟法にこれを規定いたしますと、これは国会の審議を経るわけでございますけれども、最高裁規則の場合は、われわれ国会議員が全然これにタッチする機会が与えられておらないのであります。そういう意味におきまして、最高裁規則を制定される最高裁当局におかれては、その規則の制定に当たって国民の各界各層の意見を十分に取り入れて、過誤なきを期せられたいと考えるのであります。
 以上の点を申し述べまして、私の討論といたしたいと存じます。
#72
○宮崎正義君 民事執行法案に賛成の立場の上から意見を申し上げます。
 昭和四十三年十一月から、その後の本執行法案を改正をするのに努力をなされ、法務省民事局参事官室で取りまとめた参事官第一次試案及び第二次試案として公表をされておりまして、広くこのことは実務家に大きな関心を起こしておりました。そういう長い歴史的な中で、大変紆余曲折の末本法案が提案をされてまいりまして、これからこの立案当局がいかにこれを生かしていかれるか、改正作業に一応の終止符を打ったようなものの、今後の実務の運用にゆだねられるということになってまいります。このことにつきましては、いまもお話がありましたように、最高裁判所規則等によって決められることが多いわけでございますが、その中でも特に私は、衆議院の四十一年の附帯決議、この四項目につきましては、いまの時点から一つ一つの項目について再検討をしていかれるように、そして、少なくともこの民事執行法案の施行をするその期日ごろまでには、何らかの一つ一つの項目が実施ができたというような配慮を希望をいたしたいと思います。そういう実務に当たる執行官の問題等を考えますと、これに携わる事務をなさっている職員の方々の処遇等もこの四項目の中に明らかに明示されております。今回の当委員会における各委員の質問あるいは政府の答弁等に基づきまして、この民事執行法案の施行が国民にわかりやすい法律にその施行ができるように希望を述べて、私の意見といたします。
#73
○橋本敦君 私も、本修正案並びに法案に賛成の立場で一言意見を述べたいと思います。
 いま寺田委員あるいは宮崎委員から御意見がありましたが、今日この執行関係法がこのような形で大きく近代化の方向へ整合されるという、そのことについては基本的に関係者の御苦労を謝すと同時に、賛成するものでありますが、しかし同時に、これが実際の運用という場合において、当委員会でも議論がされましたように、執行官並びにそこで働く職員の皆さんの地位と生活、権利の保障という執行官の実務体制を含めた近代化という点が、これがこのままなおざりにされてはならないというこの問題は、当委員会でも強く指摘されたとおりであります。質疑の中でも、最高裁民事局長は、本法案が五十五年秋には施行されるという、そういうことを踏まえましてせっかくの努力をするという、そういうお話もございました。ぜひともこの点については、手数料問題の根本的な見直しと、それから決議を踏まえた公務員体制下への移行という問題を具体的な日程に上せて、抜本的な検討を進めていただきたいと思うのであります。
 第二点として、この執行法案の審議に当たりまして、私は、当参議院においては参考人の意見の聴取あるいは競売場の視察等を含め、各派協力で慎重な審議が遂げられた上に、労働組合等から強い意見もあり、問題となった関係法令について各派共同で修正の努力が実るという、こういうことについて私は文字どおり参議院らしい審議ができたということを喜んでいるわけであります。ただ、今後の運用の問題につきまして、きょうも私は質問で指摘をいたしましたが、この執行体制の整備、債権者の保護ということに重点が移り過ぎて、その中でも小口債権者ないしは債務者の生活、権利の保全という面で運用上十分配慮をしていただきたい点が多々あることも事実であります。今日厳しい不況の中で誠実に働きながら、どうしても債務の負担に苦しむという、そういった市民あるいは中小企業、そういった生活関係が多いことにかんがみましても、私はこの運用の中で執行体制あるいは手続を進める上で、執行官を含む皆さんが十分に市民の債務者となった人たちの生活の保全をも考えるという、そういう気持ちで運用していただかなければならぬということを強く感じるものであります。そういう点での今後の運用に期待をして、賛成の意見を終わります。
#74
○委員長(峯山昭範君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#75
○委員長(峯山昭範君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより採決に入ります。
 民事執行法案及び同案に対する修正案について採決いたします。
 まず、寺田君提出の修正案を問題に供します。寺田君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#76
○委員長(峯山昭範君) 全会一致と認めます。よって、寺田君提出の修正案は可決されました。
 次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#77
○委員長(峯山昭範君) 全会一致と認めます。よって、修正部分を除いた原案は可決されました。
 以上の結果、本案は全会一致をもって修正議決すべきものと決定いたしました。
 次に、民事執行法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#78
○委員長(峯山昭範君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、両案についての審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#79
○委員長(峯山昭範君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時一分散会
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ソース: 国立国会図書館
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