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1978/05/31 第87回国会 参議院 参議院会議録情報 第087回国会 法務委員会 第10号
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1978/05/31 第87回国会 参議院

参議院会議録情報 第087回国会 法務委員会 第10号

#1
第087回国会 法務委員会 第10号
昭和五十四年五月三十一日(木曜日)
   午前十時五分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月二十九日
    辞任         補欠選任
     森下 昭司君     阿具根 登君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         峯山 昭範君
    理 事
                上田  稔君
                平井 卓志君
                矢田部 理君
                宮崎 正義君
    委 員
                大石 武一君
                熊谷太三郎君
                宮田  輝君
                八木 一郎君
                阿具根 登君
                秋山 長造君
                寺田 熊雄君
                橋本  敦君
                円山 雅也君
                江田 五月君
   国務大臣
       法 務 大 臣  古井 喜實君
   政府委員
       法務政務次官   最上  進君
       法務大臣官房長  前田  宏君
       法務大臣官房審
       議官       水原 敏博君
       法務省民事局長  香川 保一君
       法務省刑事局長  伊藤 榮樹君
       外務省アジア局
       長        柳谷 謙介君
       外務省アジア局
       次長       三宅 和助君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   岡垣  勲君
       最高裁判所事務
       総局家庭局長   原田 直郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        奥村 俊光君
   説明員
       警察庁刑事局調
       査統計官     小池 康雄君
       警察庁警備局外
       事課長      鳴海 国博君
       国税庁直税部所
       得税課長     小野 博義君
       運輸省航空局監
       理部監督課長   早川  章君
       運輸省航空局技
       術部長      森永 昌良君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 (金大中事件に関する件)
 (陪審制度に関する件)
 (家庭裁判所内における傷害事件等に関する
 件)
 (航空機輸入問題等に関する件)
 (犯罪被害者補償に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(峯山昭範君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る五月二十九日、森下昭司君が委員を辞任され、その補欠として阿具根登君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(峯山昭範君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 土地家屋調査士法の一部を改正する法律案の審査のため、来る六月七日に参考人の出席を求め、その意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(峯山昭範君) 御異議ないと認めます。
 なお、人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○委員長(峯山昭範君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#6
○委員長(峯山昭範君) 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#7
○寺田熊雄君 まず、金大中事件からお尋ねをいたしたいと思います。
 これはきのう決算委員会で総理に対しても質問いたしたのでありますけれども、この事件につきましては第一次の政治決着が行われました昭和四十八年十一月二日、この政治決着の内容につきましては、日本と韓国側の発表の間にかなり大きな相違があります。たとえば日本側はこの事件の解決のために金鍾泌韓国総理が日本に来られたというような発表をいたしておりますが、金鍾泌が韓国会で発表いたしましたところは、さまざまな懸案がありますので、その解決のために行ったついでにこの問題について話をし、陳謝をしたのであるというような点。しかし、最も大きな相違点は、この事件の日本側の捜査はもうあの時点で打ち切りとしたと、そういうことを協議し、合意したという発表になっておるのでありますが、日本側は捜査は依然として継続をする、そして新たな事実が出たならば、この事件の外交的決着、政治的決着を見直すということを口頭で申し入れ、先方もこれを了解したというふうに発表いたし、きのう大平総理もそのように御答弁になっておるわけであります。
 そこで、私きのう大平総理に真実そういうふうな合意がなされていたかどうかという点をお尋ねをしたわけであります。大平総理、大分お答えを渋っておりましたけれども、最後にはそういう合意はありませんでしたということをはっきり認めました。そういう合意が存在しないのに、一国の総理が存在したかのごとく自国の国会で発表するという、その欺瞞性といいますか、不信といいますか、信義に背いた行為に対しては、私どもはこれを軽々しく見逃すことができないのではないかということを追及いたしましたのに、大平総理の方では他国のことであるのでというようなことで、その点明快なお答えがついに得られなかった。
 そこで、私はアジア局長にお尋ねをするのですが、そういう食い違いを明らかにするために。これはやはりその会議の議事録あるいは記録はおつくりになっていらっしゃるでしょう、いかがでしょうか。
#8
○政府委員(柳谷謙介君) お答え申し上げます。
 昨日、私別な委員会にずっと出ておりまして、きのうの大平総理との一問一答の詳細まで実は伺っておりません。出席しました三宅次長から概略だけは聞いてまいったわけでございます。したがいまして、いま委員の御指摘のありました総理の答えのその部分については、ちょっと私正確には議事録によらないと自信ございませんですけれども、当時の記録を私どもがずっと整理してみます限りは、田中総理と金鍾泌国務総理との間のいわゆる首脳会談というものが開かれまして、これはそのときの双方が作成した合意議事録のようなものはないわけでございます。これは首脳会談の性格上、通常そうであろうかと思います。したがいまして、私どもが承知しておりますのは、そのときのわが方が作成した記録はあるわけでございますが、それに基づきましてすでにたびたび御説明申し上げております十一月二日の田中・金会談の際の日韓間の了解というものが四項目に整理されて発表されておりますので、自来日本政府は、これがこのときの両首脳会談の了解の内容である、外交的決着の内容であるというふうに理解し、そのように御説明申し上げているわけでございます。これについては、その後韓国側からもそういう了解は違うというような指摘等を受けた事実はないわけでございます。
#9
○寺田熊雄君 局長、私がお尋ねしたのは、その会談の記録というのはやっぱりわが方でつくっていらっしゃるんでしょうということなんです。
#10
○政府委員(柳谷謙介君) 陪席いたしました当時のアジア局長が作成したメモは存在いたします。
#11
○寺田熊雄君 そのメモがおたくの方のオフィシャルな記録、唯一の記録だと承っていいわけですか。
#12
○政府委員(柳谷謙介君) オフィシャルと申しますか、最近でも行われます総理と相手国の総理とか大統領との間の首脳同士の話し合いについては、そこに陪席いたしました者が作成するメモ、あるいは陪席する者がない場合、本当に二人だけのような場合は後で総理に伺いまして作成したメモというものをとどめておくわけでございます。
#13
○寺田熊雄君 それはいまでも存在しているわけでしょうね。あなたの方、保管していらっしゃるわけでしょうね。
#14
○政府委員(柳谷謙介君) アジア局に保管されておるわけであります。
#15
○寺田熊雄君 つまり、この事件では両国の公式の発表が食い違うわけですから、私どもとしましてはこれは非常にそこに重要な意味を見るわけであります。つまり、片方はもう日本の捜査は終わったんだと言うんでしょう。それに合意したと言うんでしょう。それじゃ日本側の捜査官憲が韓国に対して協力を求めても先方は応ずる道理がないわけですよね。だから、この間も外務委員会で警察の方にいろいろと伺うというと、やっぱり満足すべき報告に接しておらないという、そういう回答、答弁を見るわけであります。ですから、それは決して軽々に見逃がすことができないので、その間の事実を明らかにするために、また一面、きのう私大平総理にお尋ねをしましたのは、真相の究明というものを犠牲にしていわゆる友好の維持というもの、友好を保つというために真相の究明を犠牲にしたのじゃないかと、私どもはそういう感じを持たざるを得ない。園田外務大臣が大局的見地からああいう政治的決着をしたんだということをおっしゃるその真意ですね。それから大平総理もやはりそれに似たような御答弁なさったわけです。だから非常にその間重要な意味を持つので、そのメモを当委員会に御提出を願いたいと思いますが、いかがでしょうか。
#16
○政府委員(柳谷謙介君) 外交上の慣例といたしまして、メモそのものにつきましては、これは他にもたくさんそういう事例はあるわけでございますけれども、メモそのものにつきまして、これをメモとして提出することにつきましては私どもの外交実施上の慣例からしてお引き受けしかねるところでございますが、そのメモの内容はすでに公になっております外交的決着の内容そのものをそのとおり記録したものというふうに御理解いただきたいと思います。
#17
○寺田熊雄君 これは後でスナイダー公電のことだんだんお尋ねしますけど、アメリカ側でもE2Cに関するハワイ会談の記録があるということでしたね。メモがあると言うんでしょう。日本側はその記録はないということで、まあそのメモとか記録とかいうことがかなりやっぱり両国間の主張の食い違いを明らかにする上で重要な意味を持ちますので、これは当委員会に提出するように理事会でお諮りをいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
#18
○委員長(峯山昭範君) それでは、ただいまの問題につきましては後ほど理事会で検討することといたします。
#19
○寺田熊雄君 次に、スナイダー公電あるいはハビブ公電。この間外務省から発表せられました一連の資料についてお尋ねをしたいと思うのですが、この金大中事件というのは二つの側面を持っておるわけであります。一つは政治的外交的な案件として、一つは刑事事件としてメモを持っております。それは相互に絡み合っているというのがこの事件の真相でもあり、また複雑な一面でもあるわけであります。外交的な立場を貫けば、スナイダー公電あるいはハビブ公電というようなものは、これは伝聞であるとか伝聞でないとか、そういうようなことをあえて重く見て論議する必要はないわけで、これは公の一国の電報であります。この証明力とか信用性とかいうものをどういうふうに見るかという問題しかないわけですね。ところが、前にも金炯旭証言の場合に福田総理がこれは伝聞であると、したがって金炯旭にこの事件でKCIAが関与したということを纏綿と語った金在権元公使、これは正式な名称は金基完というようですが、これを直接に調べないとどうのこうのというようなことをおっしゃって、何か刑事訴訟的な面を外交的政治的な面に絡めてきたわけですね。そこでわれわれとしましても、刑事訴訟的な面とそれから外交的な面とを相互にやはり絡み合わせて検討せざるを得ないという立場に追い込まれたわけであります。しかしどうです、アジア局長にお尋ねするが、外交的な立場からいえば、この公の電報の証明力、信用性というもの、これを吟味すれば足りるのであって、それが伝聞であるとか――伝聞の証拠能力であるとか、刑事訴訟的な面を一々追及しなければならないという、そういうことにはならないんでしょう、いかがですか。
#20
○政府委員(柳谷謙介君) 外交的な側面と申しますか、外交文書というとらえ方での御提起かと思いますけれども、これは米国の説明によれば、本来公表されるべからざるものが手違いで公表されたんだという説明が一つついているわけでございますけれども、それを一応除いて、出てしまったと申しますか、出たものとして受け取りますと、これは在韓大使から本国の長官に送った公電でございますから、かつ、その公電の存在は米国側が認めたわけでございますから、その限りにおきましては、これはやはり重要な外交文書であるというふうに理解するものでございます。
 ただ、外務大臣が別な委員会でもうすでにお答えになってますように、こういう事件が東京で起こってソウルにそれが移ったときに、当然、出先の大使なりアメリカの外交機関がいろいろな情報を収集して本国へ送ったことは間違いなく、あるいはその情報の中には相互に必ずしも一致しない内容のいろいろな種類の情報があったことも推定はされるわけでございますが、それはあるいはソウル以外の地からもそれなりに側面的な情報が本国へ送られたことも推定できるわけでございますが、当時の米国政府当局がこれらの電報をどのように評価し判断し分析していたかということは、これは、その電報そのものの表面に書いてある内容とは必ずしも同じものではない、別な問題であるということは外務大臣も指摘しているとおりでございます。そういうこともございましたので、あの電報が公開されました後に、この電報について、米国側の評価といいますか、見解というものを聞かしてもらいたい、日本において非常な関心があるからということで米国側に申し入れたわけでございますけれども、これもすでに申し上げておりますとおり、米国政府としては、この金大中事件というのは日韓間に起こった問題であって米国としては介入しないという立場であるから、仮にこういう電報が公開された事実はあったり、あるいは過去においていろいろな証言、発言等があったときもそうでございましたけれども、これについて米国政府としては論評をする立場にないんだという返事が返ってきたことは御承知のとおりでございます。
#21
○寺田熊雄君 まあ、これは重要な外交文書であることは認めるというのでありますから、この重要な外交文書がアメリカの外交官によって、しかも一国を代表する大使によって国務長官にあてられた公文書であるという点において、この証明力とかあるいは信用性というものは重く見ざるを得ないと私は思いますが、この点いかがでしょうか。
#22
○政府委員(柳谷謙介君) これは第三国の外交機関の間に交わされた文書でございますから、私どもと申しますか、日本側から、この文書が当時発出されたという事実とかそこに書いてあります内容について、これを重く見るとか軽く見るとか、あるいは非常に真相に近いだろうとか必ずしも近くないであろうとか、いろいろそういうようなコメントというのは、これはやはり控えたいと思います。
 で、それもありまして、米国側がどのように考えておるかということが関心事であって、何らかの説明が得られれば、という努力はしたわけでございますけれども、この電報の当事者でございます米国政府からは、論評する立場にないという回答がありましたので、それはそれとして受け取っている次第でございます。
#23
○寺田熊雄君 いや、私がお尋ねするのは、アメリカ政府がどう評価するかという点をあなたにお伺いしているんじゃないんです。アメリカ大使のアメリカ国務長官にあてたこういう秘密の公の外交文書が、その信用性やあるいは証明力についてあなたがアジア局長として重く見るのか、それとも軽くくずかごに捨ててしまうのか、そのあなたの局長としてのお立場を伺っておる。
#24
○政府委員(柳谷謙介君) くずかごに捨てるようなことはいたしません。ちょっと先ほど申しましたことの繰り返しでございますけれども、やはりこれは出先の大使から本国へ送られた電報ということでございますから、その持っている重みというものはもちろんそういうふうに受けとめている次第でございます。
#25
○寺田熊雄君 それは当然でしょうね。これはやっぱり重く見ざるを得ないわけですよ。
 それで、きのう大平総理大臣のお言葉では、これを警察と言ったか捜査と言ったか、官憲とも、アメリカからいろいろの資料を吟味するのに警察と打ち合わせをしているとか協議しているとかいう趣旨の御答弁があったが、これはそのとおりですか。
#26
○政府委員(柳谷謙介君) 総理のお言葉詳細には存じませんけれども、これらが、何回かに分けてこの文書が電報ないしはパウチで東京に接到いたしましたので、その都度警察当局にはお伝えしたわけでございますし、警察当局においても当局の立場からいろいろ御検討いただくことになっておりまして、いろいろコメント等があったら伺いたいと、それから私どもはそれなりにみずからも検討分析いたしまして、先ほども御披露したようなこと等を米国及び韓国の政府にも照会等行っているわけでございます。その結果はまた当局にもお伝えいたしまして、近日中にはまた当局側の見解と申しますか、これを伺う機会を持ちたいと思っておりまして、それらを含めまして、全体として目下のところ検討を引き続き継続しているという状況でございます。
#27
○寺田熊雄君 これ、警察の方にお伺いするけれども、金大中事件の捜査、これは刑事事件の捜査というのはいまなお継続していらっしゃるわけですか。
#28
○説明員(鳴海国博君) 先生仰せのとおりでございます。
#29
○寺田熊雄君 私はここでお尋ねをするけれども、警察の方で捜査なさっていらっしゃるのは、刑事事件の捜査なんだから、この事件のいろんな証拠を御収集になる場合に、これはやはり金東雲ら犯人の刑事責任を追及するという立場だと思います。それはそういう犯人が起訴し得る立場にあるならば、これを起訴して検察庁の方へ送らにゃいかぬ。そしてそれを刑事責任を公判廷で追及していくということを前提にした捜査であることはもう間違いないと思うが、この点どうでしょう。
#30
○説明員(鳴海国博君) 先生もただいま仰せられましたが、私ども捜査当局がこの金大中事件ということで捜査しておりますものは、御案内のごとく逮捕・監禁罪、それから略取・国外移送罪ということでございまして、鋭意このそれぞれの罪の証拠を固めるべく、その収集に努力しておるところでございます。が、この証拠の収集が終わり、捜査が一応終結いたしますと、これは検察庁の方へ立件送致いたすわけでございますが、私どもこの捜査に当たりましては、もちろんこの犯人の行為そのものということがこういった罪の証拠を固める上においてもちろん収集すべき事柄であるというふうには考えておりますけれども、なおやはりこの事案の真相を究明していくという見地からは、この犯罪の行われました動機であるとかあるいはその背後関係、組織性といったようなもの――と申しますのは、これは単に単独の犯行ではなく、少なくとも私どもが現場的に掌握しておるだけでも、現場には六人の犯人がいたということでございますので、そういった共謀の関係、そういった点もあわせ立証していかなければならぬというふうに考えておるところでございます。
#31
○寺田熊雄君 これは法務省の刑事局長にお尋ねをするけれども、これは五月二十八日の決算委員会で穐山篤委員が、
  金大中氏拉致事件に関係してお伺いします。
  最初に、法務大臣。実は先日、寺田委員が外
 務委員会におきまして質問をしております。そ
 れは、金大中氏拉致事件に関連しまして、アメ
 リカ国務省から極秘電報が次々に発表されてい
 るわけですが、それが刑事訴訟法三百二十三条
 二号または三号の証拠物として証拠能力がある
 かどうか、こういう御指摘をしたわけですが、
 その際、官房審議官の方では、その記載内容に
 証拠能力があるかどうかは、刑訴法第三百二十
 一条第一項第三号によりますので、もっと事実
 をよく調べたい、こういう意味の回答、見解が
 表明されたわけです。
  外務省は一昨日も極秘電報を公開をしており
 ます。これはすでに御案内のとおり、非常に重
 要な中身でありますが、たとえば事件が起きた
 のは昭和四十八年の八月の八日、電報は八月の
 十日、十一日が金大中氏が韓国の自宅で発見さ
 れたと、そういう微妙な時期でありますが、そ
 の微妙な時期の十日の公電が発表されているわ
 けです。これらは、証拠能力が十分あるものと
 いうふうに私どもは考えますけれども、法務大
 臣、その点まず最初にお伺いをしておきます。
 こういう質問に対して刑事局長が、
  訴訟法上の問題でございますので、私からお
 答え申し上げます。
  ただいまも御指摘がございましたように、過
 日の外務委員会におきまして、刑事担当の官房
 審議官が、刑事卒件の公判審理におきます証拠
 資料の証拠能力一般につきまして一般論をお答
 えいたしましたところ、一部報道におきまして、
 証拠能力を肯定したとかというような報道がな
 されまして、意外に思っておるところでござい
 ます。
  そこで、あえて御説明申し上げますと、証拠
 能力と申しますのは、具体的な刑事事件が公判
 で審理されます場合に、その当該事件の公訴事
 実あるいは立証の趣旨等に関連いたしましてそ
 の有無が問題になってくる、きわめて刑事訴訟
 法上特有の概念でございます。したがいまして 
 、そういう場面が存在いたしません今日、一般 
 的な問題として証拠能力の有無を論ずるという 
 ことは不可能なことでございまして、また、意 
 味がないことだというふうに考えております。
  で、仮に金大中氏拉致事件に関しまして、刑
 事事件が公判に係属した場合を想定いたしまし
 てあえてお答えをいたすといたしますと、先般
 来問題になっております電文の内容、これらは
 刑事訴訟法上伝聞証拠になるわけでございまし
 て、そういう意味で原則として証拠能力はない
 と、こういうふうなお答えになろうかと思いま
 す。
 こういう答えをしていらっしゃる。
 しかし、国会議員が委員会でまじめに質問をし、論議をしているのに、そんなことは論議するのは意味がないというような論評をするような答弁をするというのは、余りにも傲慢だというか、ちょっと思い上がっているんじゃないだろうか。これはどうですか。
#32
○政府委員(伊藤榮樹君) そのときにもよく御説明いたしておりますように、証拠能力というものは刑事訴訟法上の概念でございます。したがいまして、刑事訴訟法上具体的な立証に関連いたしまして証拠能力の有無が問題になるわけでございます。
 ところで、具体的な事件がない場合において、一般的に証拠能力がそのものにあるかどうかというふうなことを議論するということは、それ自体意味のないことである、議論をする根拠がない、こういう趣旨のことを申し上げておるわけでございます。
#33
○寺田熊雄君 これはしかし、公判にならなければ証拠能力の吟味ができないということにならぬでしょ。現実にこれは警察は犯罪として捜査しているわけです。犯罪として捜査するというのは、犯人の刑事責任を追及することです。刑事責任を追及するということは、最終的には、もう警察だけで捜査を打ち切ってしまうということではなくして、これが刑事事件として成立すれば検察庁に送ると、検察庁はそれを公訴を提起すると、それが公判に係属すると。その場合に、これは証拠能力を持つだろうかというような吟味は、これは何も公判に係属しなくたって、犯罪を捜査する場合には、当然これは警察であろうと検察庁であろうと吟味しなければなりません。それはお認めになるでしょう。
#34
○政府委員(伊藤榮樹君) 場面を二つに分けて考える必要があると思います。
 捜査の段階で、捜査を次第に進展させていく、その間に、たとえば逮捕状を請求する、あるいは捜索差し押さえ令状を請求する、かような場合には証拠能力の問題は起きないわけでございます。
 問題は、公判で厳格な証明を要する事項につきまして厳格な証明をしようとする場合に、初めて証拠能力のことが問題になるわけでございます。
 そこで、お尋ねの趣旨が、捜査に当たって、このものが参考になるかどうかとおっしゃれば、参考になるとお答えをするわけでございます。ただ、証拠能力はどうかというふうにお尋ねになりますれば、このものについて訴因、立証の趣旨が特定していない現在、何とも申し上げかねるということでございまして、他の委員会でもちょっと申し上げたと思いますけれども、ただいまお読み上げになりましたところでも申しておるわけでございますが、たとえば金東雲という人が金大中氏事件の監禁、略取等の罪で公判に係属しておるといたしました場合に、その罪体の立証のために当該電文が利用できるかといいますと、そういう仮定の前提に立って申し上げれば、一般的には証拠能力がないであろう、かようなお答えをしておるわけでございます。
#35
○寺田熊雄君 その証拠能力がないという点では後でお尋ねをするけれども、一体何で、いま現に犯罪が行われている場合に、いろんな証拠が提示されている――警察の方では指紋があるとか、あるいは金東雲を現場で見た日本人が数名おるとか、あるいは自動車が劉永福所有の自動車であることが判明したとか、あるいはいまの電報の問題も来ておる。そういうものの証拠能力を、金東雲なり犯人が挙がった場合に、公判に係属する場合に、果たしてこれがKCIAの犯罪として立証されあとうであろうか、有罪の判決があり得るであろうかというようなことをわれわれが論議することはきわめて適切である。意味がないということはどういうことですか。
#36
○政府委員(伊藤榮樹君) そういうことを問題とされ、かつ御質問になるということについて、意味がないなどと私ちっとも申しておりません。
 私が申しておりますのは、具体的な公判係属案件がない場合において、特定の思想の記述されました紙をお示しになって、証拠能力がこのものにあるかどうかということをお尋ねいただいても、何ともお答えしかねる問題でありまして、抽象的に、全く具体的な事件を前提としないで証拠能力の有無を議論するということは不可能であり、かつ意味のないことである、こういうことを申し上げたにすぎないのでございます。
#37
○寺田熊雄君 これは具体的な事件は局長、特定しているんですよ。これは六名の犯人が金大中を拉致して国外に移送した、これは明らかに犯罪でしょう。その犯罪事件が現に捜査の過程にある。それがいま非常に重要な問題になっている。だから、それにいろんな証拠が纏綿してくる、沸き上がってくる。その証拠の証拠能力というものを論ずるということは一般的、抽象的ではないので、金東雲が起訴された場合に、これがその証拠となり得るであろうか、証拠能力を持つであろうか、そういう意味でわれわれはこれを検討しているわけです。それはおわかりになるでしょう。それは意味があるでしょう。
#38
○政府委員(伊藤榮樹君) ですから、そのときにもお答えいたしておりますように、もし金東雲という人が金大中氏事件に関連して、金大中氏を監禁し、略取、誘拐したという罪で公判に係属している場合を仮に仮定をすれば、証拠能力の問題はある程度判断できますと、判断してみると、原則として証拠能力はないものと思いますと、そういうふうにつけ加えて御説明しておる次第でございます。
#39
○寺田熊雄君 そこで、その証拠能力をさらに検討してみることにするけれども、これはアメリカのスナイダーという韓国駐在の大使が、いいですか、金東作という韓国の外務大臣から、金東雲はKCIAであると、KCIA要員であるという話を聞かされたと。金東作外務大臣がアメリカの大使にそういうことを語ったという点についての証拠として出す場合には、これは証拠能力がありますよ、これは。そうすると、それはあなたお認めにならないのかね、いかがです。
#40
○政府委員(伊藤榮樹君) 公判が開始されたと仮定をいたしましてお答えをいたしますが、まず刑事訴訟法の原則は、その書面の作成者でありますスナイダー氏が証人に立ってその内容について証言されるということが原則でございます。次に、スナイダー氏がわが国の法廷に証人としてお立ちになれない場合であって、その記載内容が犯罪の証明に欠くべからざるものである場合には、刑事訴訟法三百二十一条一項三号の規定が適用されます。されますが、それはスナイダー氏が自分の見たところ、聞いたところのその具体的な状態を米本国に対して連絡をされたと、そういう事柄については証拠能力を持つ場合があると思います。しかしながら、内容を拝見いたしますと、金東祚氏からスナイダー氏が聞いたということがまた内容になっております。したがいまして、金東祚氏語るという部分は伝聞証拠の中における伝聞でございます。したがいまして、その部分は証拠能力を持ち得ないということでございます。
 そこで、スナイダー氏の金東祚氏からかくかくと聞いたということを内容とする伝聞を私どもざっと拝見いたしますと、その内容のほとんどは、金東祚氏かく語りきということが内容になっておりまして、その金東作氏が語った内容というものは、現在の刑事訴訟法上では、被告人、弁護人の同意がない限り証拠能力を持たないと、こういうことでございます。
#41
○寺田熊雄君 これはアメリカの政府から、これが金東作外相がスナイダーに語った電報であるということの証明がついておる公文書なんですね。それはスナイダーがわが法廷に出て証言しなければ裁判所が採用し得ないというものじゃない。これはもうその成立について疑いなく証明されておる公文書なんです。スナイダーがその作成を立証しなければならないというものじゃありません。
 それからもう一つは、刑事局長は誤解していらっしゃるけれども、これは判例でもはっきりとそれが確立されておるんですね。つまり、AがBに語ったと、こういうふうに語ったという事実を文書でもって立証するということは、これは直接証拠なんです。間接、伝聞ではないんです。ところが、その内容が、金東雲がKCIAであるというそのことを認めようとすると、それは伝聞になる。これは白鳥事件で明瞭な判例があることはあなたも御存じだと思うんですね。白鳥事件に関する最高裁判所刑事判例集十七巻第十号の千七百九十六ぺ−ジ。これはその判決要旨として、判例集に出ておることは、第一が、「証拠によって認定した事実は、他の事実の証拠となり得る。」と、これはいま言った、その他人の言ったことが判決の証拠になっているのは少しも差し支えないということを言っているので、第二番目がいまの関連ですが、「伝聞供述となるかどうかは、要証事実と当該供述者の知覚との関係により決せられるものと解すべきであって、甲が一定内容の発言をしたこと自体を要証事実とする場合には、その発言を直接知覚した乙の供述は伝聞供述にあたらないが、」つまり本件の場合は、金東祚がスナイダーに語ったと、「一定内容の発言をした」と、その「こと自体を要証事実とする場合には、その発言を直接知覚した乙の供述」、これはスナイダー大使ですね。これは「伝聞供述にあたらないが、甲の発言内容に符合する事実を要証事実とする場合には、その発言を直接知覚したのみで、要証事実自体を直接知覚していない乙の供述は伝聞供述にあたる。」つまり金東雲がKCIA要員であるということをその電文によって認めようとする場合には、それは伝聞になるけれども、スナイダーに対して金東祚がそういう話をしたということを立証する場合には、これは伝聞に当たらないと。これは白鳥事件で明瞭に判例があるわけですね。その点は刑事局長ちょっと誤解しておられるんじゃないか。
#42
○政府委員(伊藤榮樹君) それですから、私は冒頭から申し上げておりますが、立証趣旨が定まらなければ証拠能力は決められないということを申し上げておるわけでございます。私、常識的に金東雲というような人が、先ほど言いましたような事件で公判になった場合には、金東雲氏がKCIAの一員としてそういう行動に出たということが要証事実になるわけでございまして、そういう事実を立証するためには証拠能力がないことは明らかでございます。スナイダー氏が米本国に対して、そこに記載されたような内容の電文を発したということを立証するということならば、もちろん証拠能力はございましょう。しかしそのスナイダー氏がそういう電文を米本国に打ったということを立証してみましても、罪体についての立証とは、私は、関係がございませんので、まずもって証拠としての関連性なしということで証拠に採用されないと、もう証拠能力以前の問題を生ずるんじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。
#43
○寺田熊雄君 それならどうして無理な議論をして、この証拠をあくまでも否定しようとなさるのかね。金東作という一国の外務大臣が、スナイダーというアメリカを代表する大使に、こういう、つまり金東雲はKCIA要員ですよと語った事実を、それを立証するということは裁判の上でも非常な重要な意味を持つので、それは裁判官がその事実によってKCIA要員であると認定する、しないは自由心証に任せればいいのであって、その一国の外相が大使にそういうことを語ったということを立証しようとする場合、それは決して伝聞でないというその事実はそれじゃお認めになるのかね、ならないのかね。
#44
○政府委員(伊藤榮樹君) 先ほど申しましたように、一般論として伝聞証拠の中の伝聞でございます。それはいかに社会的地位のある方がお語りになりましても、そのことのゆえをもって、被告人に保障されております反対尋問権を放棄せしめることはできないと思います。反対尋問権の保障という意味で、証拠能力の制限というものはあるわけでございまして、その面から証拠は厳格に考えていかなければならないと思います。
#45
○寺田熊雄君 これはそうすると最高裁の刑事局長の御意見を伺いますが、いいですか、この白鳥事件の判決では、真正の犯人とせられる人間から、ある人間が、あれが犯人なんだよと聞いたんですよね。その聞いた事実を検察官は立証して、それがこの事件の有罪の証拠になっている。それが上告理由になったときに最高裁判所は、その聞いたという知覚を、その一定の内容を話を聞いた、そのことを立証するために証拠として出す場合にはそれは伝聞ではないと。つまり、この事件では金東作がスナイダーに、金東雲はKCIA要員ですよと語った、その語ったという事実を立証する場合には、それは伝聞ではないんだという判例が最高裁判所の判例がはっきりとあるんです。これはいま、もし詳しく見たければごらんになったらよろしい。そのことを立証する場合には、それは伝聞証拠とならないという判例なんです。したがって、将来金東雲が刑事事件に、公判に係属した場合にこのことを検察官が、金東祚外務大臣がスナイダーにこういうことを語った、そのことを立証するためにこれをお出ししますと言った場合に、それは伝聞にならないと思いますが、あなたはどういうふうにお考えになりますか。
#46
○最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 具体的事件について、将来どうなるかわかりませんけれども、こうこうこういう場合に検察官の方ではこう主張される、弁護人の方ではこう主張されると。そこで証拠能力が問題になった場合には当該裁判官が自分のお考えで判断されることでありまして、具体的な事件に絡んで私の方でここで御意見を申し上げることは差し控えさせていただきます。
 ただ一般的に申し上げますと、証拠能力というのは、先ほど御指摘のありましたように白鳥事件でもはっきり書いてございますように、立証すべき事実は何であるかということとの関連で証拠能力が決まってくるわけでございます。これは私、先ほど横から伺っておりまして、伊藤局長の言っておられるのもそういうことだと思いますし、それから委員のおっしゃっていることもそういうことで、そう食い違いはないのじゃなかろうか。要するに、立証事項が何であるか。それとの関係で出そうとするものが伝聞になるのか証拠になるのかということだろうと存じます。早い話が、だれかが贈収賄を受けたというふうなことで文書をまき散らしたという場合には、そういう文書というものの中でだれかが贈収賄をもらったということが書いてありますが、それはそういうふうなものをまき散らしたということが立証事項になる場合にはそれは伝聞ではないでありましょうが、しかし、贈収賄したということがあったかなかったかということについてはもう明らかな伝聞である、こういうことだろうと存じますので、これぐらいしか私どもとしては申し上げられません。
#47
○寺田熊雄君 これは先ほど刑事局長も立証、要証事実によってはそれは伝聞にならないということをちょっとお認めになって、それから今度は急に立場を変えて、観念性の問題を持ち出したんだけれども、また今度は伝聞だということを言い張ってまたもとに戻ったんだけれども、刑事局長が、これは最高裁の刑事局長がおっしゃるように、何を立証せんとするかによって伝聞となり伝聞でないという、それは確かにそのとおりなんで、判例もそれを言っているわけですね。だからこの場合には、つまり、金東祚がスナイダーに、金東雲はKCIA要員なんですよと語った、その語った事実、またそれを聞いた事実、それを立証することは、証拠として出す場合には一向伝聞にならないというそのことはお認めになっていいじゃないですか。判例をあなた方は尊重する立場にあって、現に白鳥事件の判例をお見せしておるのにそれをあいまいにする必要はないので、これは最高裁の刑事局長どうですか。何もあいまいにして逃げなくてもいいわけですから。
#48
○最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 私、逃げているつもりはございませんで、ただ裁判所という立場から考えますと、やはり個々の具体的事件に即したお答えというものはできにくいわけでありまして……
#49
○寺田熊雄君 一般論でいいです。
#50
○最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 原則はどうかとおっしゃれば、まさにそこに書いてある、御指摘の白鳥事件に書いてある最高裁の御判断のとおりだというふうに私は思います。
#51
○寺田熊雄君 法務省の刑事局長、どうですか。
#52
○政府委員(伊藤榮樹君) ですから、この前も申し上げましたが、具体的な事件がないのに証拠能力の有無を論ずるということは、しかく複雑微妙な問題になってまいりまして、どういうお答えをしても誤解を招くおそれがありますので、きわめて適当でない。適当でないというよりも、むしろそういう抽象的な前提のもとにおいて証拠能力を論ずるということは困難でございますし、法律的に意味がないことだというふうに申し上げておるわけでございます。まあ、お尋ねでございますからあえて申し上げれば、スナイダー氏が金東祚氏からこういうことを聞いたということが電文で知らされる。その電文が公になったために、たとえば金東祚氏の名誉が棄損されたとか、そういうような事実関係であれば、立証の趣旨として、スナイダー氏が電文でそういうことを書いて送った事実を立証いたします、こう言って検察官が主張すれば、いまの白鳥事件の判決でしたか、決定でしたか、はっきりいたしませんが、のような場合に当たってまいります。また、さらに……
#53
○寺田熊雄君 伝聞というからね。
#54
○政府委員(伊藤榮樹君) 判例の中には被告人の自白を内容とする伝聞証拠、伝聞証拠中、被告人からの伝聞を内容とし、かつそれが自白であるというような場合についての判例もいろいろございますが、それらは個々具体的な立証の趣旨に応じて判断をされるべきものでございまして、私は先ほど申し上げましたように、金東雲氏の罪体を立証するためには使えないのじゃないかというふうに申し上げただけでございます。
#55
○寺田熊雄君 あくまでも自説を固持されるから、それで私はあえてまた追及せざるを得ないのです。あなたは電文、テレグラムと、それからいわゆる伝聞証拠の伝聞と同じようなあれで言うからちょっとややこしくなるのですが、そこのところをはっきりして……テレグラムとヒヤセイと違うから。
 そこでもう一遍お尋ねをするけれども、あなたは金東祚の名誉棄損の事件のような場合には、これは証拠になるんだと。いわゆる伝聞証拠じゃなくて、真正の証拠になる、直接証拠になるということを言われるけれども、何も金東祚の名誉棄損事件の証拠として出さなくたっていいわけで、金東雲が犯罪を犯したわけでしょう。それでKCIAというのはいわゆる秘密警察であって、そしていろいろ非合法なこともあえてする。したがってプライベートな人間としての、オフィシャルな人間としての区別がつけがたい、そういう役割りを担当するものだから、だから金東雲が起訴された場合に、その人間がどういう人間なのか、真正な外交官であったかどうかというようなことが問題になる。KCIA要員であったかということが問題になる。そのときに、KCIA要員だということを自白しない場合に、これはなかなか証拠はないわけですね。そういう場合に検察官は、しかしこういう金東雲についてこれはKCIA要員だということをその上司である外務大臣が一国の大使に語ったことがあるんですよということを要証事実としてこの公電、公の電報を裁判所に提出することは毫も差し支えないんです。これはできませんとか、意味はないとかというようなそこまでがんばる必要は少しもないと思いますよ。そういう要証事実を裁判官がどう見るかというのは、いまの裁判官は、あなたも御承知のように、非常に広範な自由心証でその証明力というものを見るわけだから、その裁判官が自由心証でその証明力をいかに評価するかということは裁判官に任せればいいことで、あなたが、検察官がそう何も頭から決め込んで、そうしてがんばる必要は毫もないんで、もう少し謙虚にひとつ議論を進めてもらいたいんですが、どうです。
#56
○政府委員(伊藤榮樹君) ただいま御指摘のように、金東雲がKCIAであるということを立証するために、先ほど来御指摘の電文を、テレグラムを出しますことは、証拠能力上否定されると思います。検察官としての立場ということもおっしゃいましたけれども、私は法律問題としてお答えをしておるわけでございます。現場の検察官でございますれば、証拠能力が多少怪しくても相手方が同意すれば証拠になるわけですから、みんな出してみるということもよろしゅうございましょう、実際上の立証上の作戦としては。しかしながら、法律論としては幾らおっしゃいましても、遺憾ながら私、法律解釈としてはただいま申しますように、金東雲がKCIAであるということを立証するために、当該電信文を証拠として出しました場合には、当該部分は証拠能力を否定されるというふうにお答えせざるを得ません。
#57
○寺田熊雄君 いや、よく私の質問を正確に聞いてくださいよ。そうじゃなくて、もう重ねて言わないから、金東祚外務大臣が、つまり金東雲の上司である外務大臣が、あの男はKCIA要員なんですよということを、一国のアメリカの大使に語ったということをこれで立証しますということを言う場合には、それは伝聞証拠ではありませんと、そのことは間違いないでしょうとお伺いしているんです。学問的な問題で結構です。
#58
○政府委員(伊藤榮樹君) そういう立証趣旨でありますれば犯罪の証明と関連性がありませんから、もう証拠能力を論ずるまでもなく、検察官が証拠として申請することが適当でありませんし、裁判所も採用されないと思います。証拠能力以前の問題でございます。
#59
○寺田熊雄君 関連性があるかないかは、そのときは恐らく裁判所が判定するでしょうし、関連性がないと言い切れないでしょう。金東雲がKCIA要員として日本に来て、そうして犯罪を犯したという、そういう疑いが顕著な事件に、それは金東雲についてこういう容疑があるということを立証することは関連性がないとは言い切れないでしょう。
 それから、まあ関連性があるかないかは後回しとして、私の問いは、そういうことを証明するための証拠としては、これは伝聞証拠ではないでしょうと言って伺ったわけで、関連性についてお伺いしたわけじゃない。関連性をいまあなたは逃げずに、それが伝聞証拠か、そういう場合には伝聞証拠にならないかについてお答えをいただきたい。
#60
○政府委員(伊藤榮樹君) 全く仮定の抽象的な問題でございまして、どういう訴因で起訴されておる場合でございましょう。それがはっきりしませんと、何ともお答えいたしかねます。
#61
○寺田熊雄君 それは金東雲がほかの五名と共謀して金大中を拉致した。しかし、それは金東雲が外交官として一等書記官の在任中にやったんだという、もちろんそれはそういう前書きはつくでしょう。しかしこれは、一等書記官というのはこれは肩書だけであって、実際はKCIA要員である疑いが顕著なんですという、そういう事案なんです、本件は。そうでしょう。そういう事案についての起訴があった場合をわれわれは前提にして証拠能力を論議しているわけですよ。いかがです。
#62
○政府委員(伊藤榮樹君) そういう事件が起訴されている場合に、検察官側として金東雲氏がKCIAの一員であるということを立証するために当該証拠を出すことになると思いますが、そういうことであれば、先ほど来申し上げておりますように、証拠能力は否定されると思います。
#63
○国務大臣(古井喜實君) 非常に高級な刑事訴訟法の論議でありまして、とても私は正直に言ってついていけないわけでありますが、きょうの問題を考えますと、一応外交決着というものをつけたと、前二回にわたって。ただし、公の権力は関与しておったということについて新しい確たる証拠が起こってくれば、これを見直すということもあり得るというふうなことであったように私は了解をしておるのでありますが、そこでいま、アメリカサイドからのあのような資料が出ましたについて、公の権力が関与したということがあれでもうはっきりしたということで外交決着を見直すか、あれだけではまだそこまでいかないと。韓国側の方は記録がないとかいろんなことを言っておるという事実もあるようですし、そこのみならず、日本の国内でその後も捜査は打ち切っておるわけじゃないと。こういうことでありますから、事実がどうであったか、どういう事実があり、だれがどうしたのか、日本の国内捜査でも検討をしておる材料もあるでありましょうし、そこで、新しい公権力関与ということについての確たるここに事実があらわれてきたかと、それを判断をするという、そこで認められなければ政治決着は見直さないと、その判断をするのは、いまの場合ではこれは訴訟問題じゃなくて政治問題であって、判断をする立場におる者は政府だろうと思うのでありますね。裁判所のいま訴訟の問題じゃないので、きょうの段階は。政府が判断する問題だろうと思うのでありまして、それについては外務省でも、もうすでにお聞きのように、綿密にいろいろな資料、アメリカの資料も含めて検討をしておるとの、こういう状況でございますね。
 そこで、もし見直すとなれば、これは外交問題になってしまうんです、韓国との。今度は外交問題のコースヘこれは発展する筋になるんじゃないだろうか。すぐさま裁判所の方の事件の問題というよりも、そういう段階になってくる方向、順序になってくるんじゃないだろうか。そうといたしますれば、日本の裁判所にあらわれて刑事訴訟なり証拠の問題なりということの前に、大きなその前提というか、段階があるような気がするのでありますね。そこで、一番真っ先の段階においてアメリカ側から出た資料をどう評価するかとか、新しい事実とこれを見ていいか、こういうことがいまの中心問題、これは政治問題であるというように私は思うのであります。
 それで、刑事訴訟法の法理の問題は、とてもこれは伺っておれば伺うほどなるほどこれは深いものだ、高級な議論をしなければいけないと思いますが、そこでこの見直しかどうかという問題の点において、アメリカの資料がどれだけの価値があるかどうかですね。政治的に見直す上において、訴訟じゃなくて、政治的に見直す上においてどれだけ価値があるかがきょう問題ではないだろうか。そうしますれば、これは政府の判断ということにきょうの段階はなるんじゃないかというような気がいたすのでありますけれども、私の考えは間違っておりましょうか。どんなものでありましょうか。
#64
○寺田熊雄君 確かに法務大臣のおっしゃるとおりなんです。で、この事件をそもそも重要な外交文書で重く見るという立場を貫いてくださればもうそれでいいわけなんです。それが、伝聞であるとか、金炯旭証言のときも福田総理が、あれは伝聞だからどうも信用力ないなんていうことをおっしゃるから。ところが、フレーザー委員会は御承知のように、金炯旭証言を非常に重く見てああいう決定をしたわけです、KCIAがやったんだという。つまり、政治とか外交の分野ではそういうことをこだわる必要はないんで、信用性とか証明力というか、もうストレートに見ればいい。ところが、政府の方が、伝聞、伝聞というようなことを盛んに言うし、また一方では、この事件は刑事事件として係属しておりますしね。だから、そういう意味で、一体これが金東雲らの一連の事件が刑事事件として公判に係属した場合に、いまのスナイダー電文なんていうものがどういう証拠能力を持つかということも、これは検討することは意味がないわけじゃない。それを意味がないなんて言って、証拠能力をやたらに否定しようとして。それから、だんだんとこの判例を突きつけていくと、いや関連性がないなんて逃げたり、意地になって否定するから、それでちょっとしつこいようだけれども、もっとフランクに、学問的な一般問題としてこれは判例なんてものは出てくるんで、判例要旨として出てくる場合には、これは伝聞証拠となるかどうかは要証事実と当該供述者の知覚との関係により決せられるものと解すべきである。だから、甲が一定内容の発言をしたこと自体を要証事実とする場合には、その発言を直接知覚した乙の供述は伝聞証拠に当たらないと、これははっきりと、そういう最高裁の判例があるわけですからね。これは学問的な問題として、そうして論じた場合には、金東祚がスナイダーに語ったと、こういうことを語りましたということを証明する証拠としては少しも伝聞でないわけなんです。それを何かいろいろ、関連性がないとか、いろいろなことで否定しようとするから、私もあえて追及せざるを得ないわけです。学問的な問題としてやってもいい。それで、これは私も質問する以上はいろいろな書物を見、学者にも直接当たり、私の意見が正しいということを十分に吟味した上で、きょう御質問しておるわけです。まあこの著書の場合は、これは実務家の非常に参考になる本は青柳文雄教授の「刑事訴訟法通論」でありますが、その一番最新の下巻の、これは三百五十二ページ、これでも明らかに白鳥事件の判例を引いて、そしていまの私がお尋ねしたようなことを肯定しておるわけです。そう刑事局長がむきになって否定するということはおかしいからね。
 どうしてもそれ承認しないと言うなら、これはまあ水かけ論になってしまうからもうこれで終わるけれども、しかし、両刑事局長にもこの際お尋ねをするけれども、日本の刑事裁判の一般では、むしろ伝聞証拠を裁判所が採用して、検察官がそれを出す場合の方が多いんですよ。これは刑事訴訟法の三百二十条で、三百二十一条から三百二十八条までの例外を除いては、伝聞証拠は証拠とならないということを規定しているから、恐らく法務省刑事局長はそのことを正面に振りかざしているんだと思うけれども、刑事裁判の実際ではその例外の方が多いんです。これはもう法務省の刑事局長にお尋ねをするけれども、あなた方が非常に努力をなさったロッキード事件でも、あのコーチャンのコーチャン調書、クラッター調書、これも伝聞証拠だ、もともと。それをあなた方は、これは非常に重大な証拠であるということで裁判所にお出しして、弁護人は反対尋問経てないということで大変反対をしたけれども、裁判所はやはり事体的真実のためにこれを採用してるんですよ。このコーチャン調書やクラッター調書が三百二十一条の一項三号書面であるということはお認めになるでしょう。つまり、伝聞証拠ではあるけれども、その例外によって証拠として採用されたものだということはお認めになるでしょう。
#65
○政府委員(伊藤榮樹君) コーチャン、クラッター両氏の嘱託証人尋問調書が三百二十一条一項三号の書面として採用されたことはもちろん承知しております。ただし、その中のさらに伝聞の部分は証拠から排除されております。
 それから、先ほど白鳥事件の判決を再度お引きになりましていろいろ仰せになりましたけれども、詳しくは申しませんけれども、白鳥判決で申しておりますのは、公判廷における供述の中の伝聞部分でございまして、今度の公電の問題は、公電自体が伝聞でございます、その中の伝聞という、二つの伝聞が重なる場合でございます。その辺も十分お考えの上と思いますが、大変恐縮でございますが、私も刑事訴訟法に関する書物を幾つか書いた者といたしまして、刑事訴訟法の解釈につきましては一応、多少がんこなふうにお聞き取りいただけるようなお答えを申し上げるかもしれませんけれども、私は私の勉強しました知識と良心に従ってお答えしておるわけでございますので、その点は御運解いただきたいと思います。
#66
○寺田熊雄君 これは伝聞の伝聞だなんていうことをまたおっしゃるから、またこれも一言せざるを得ないんでね。これは、伝聞を出す場合にはこれは証拠物でしょう。証拠物の中の内容が書面として問題になるんであって、その中の内容は、スナイダーが金東祚から聞いたということで、それは間接的な伝聞じゃない、直接聞いたという、そのことですよ。
#67
○政府委員(伊藤榮樹君) 電文という紙切れがあるということを立証するためには証拠物ということになります。しかしながら、ただいまおっしゃいましたように、証拠物たる書面の思想内容が証拠として使われるべき場合には伝聞法則の適用を受けますから、このスナイダー氏は反対尋問を受けておりませんから、その公電の内容に記載された事項は伝聞供述でございます。さらに、金東祚氏からスナイダー氏が聞いたという部分は、伝聞供述中の伝聞になるわけでございます。白鳥事件と相当違うようにも思いますし、まあ先ほど大臣からもちょっと、余り私がそういうことを長々と答えない方がいいかのような御発言もありましたので長くは申し上げませんが、その辺は私も、まあ、万に一つも違いないと思いますが、なお勉強してみますけれども、ひとつ、よく御検討いただきたいと思います。
#68
○寺田熊雄君 これはね、私どもの方も十分に検討した上でお話しをしておるので、伝聞か伝聞でないかという点の法理としては全然相互に違いはないんですよ。英米法なんかむしろ公文書の方が信頼性を持っておるので、ことに第三者に対して語られたKCIAかどうかという問題に関しては、金東祚という外務大臣はこれはいわば被疑者みたいなものなんだ、一国を代表する。あなたは金東雲にまた持っていこうとするかもしれないけれども、もしこれをKCIAかKCIAでないかということに論点をしぼれば、これは李厚洛というKCIA部長、あるいは金東祚という外務大臣、これはまさにいわば被疑者の一に当たる人間なんだ。つまり、金東雲の上司なんだ。で、実際それがKCIA要員だとすれば李厚洛が上司になるし、一等書記官であるということになれば外務大臣が上司になる。外務大臣が、私の部下であるあれはKCIA要員であるということを言ったことは、それはいわば自白に等しいものなんだね。それをスナイダーという者がそういう金東祚が語った事実というものを私は聞いたという伝聞をそれは証拠物の中に語っているわけだから、そのこと自体を語ったという事実を立証する場合には少しも伝聞でない。これは私も間違いないと思う、譲らない。これは判例がまさに――判例、なるほど証言であるけれども、証言であると書証であると、それは伝聞法理が支配するか支配しないかということはそれは同一なんだ、原則は。どうしてもがんばるんだったらそれをもう一遍お尋ねするけれども、刑事裁判の実際ではそういう伝聞証拠というものが公判に採用されている事実というのはこれは認められるわけかな、どうです。
#69
○政府委員(伊藤榮樹君) 公判係属事件の、大ざっぱに言って約九割は自白事件でございまして、それらの事件におきましては、検察官提出の書証をすべて証拠とすることに同意をされまして、三百二十六条によって証拠能力が与えられて済んでおるのが実情でございます。争われておる事件は別でございますが、そういう事情でございます。
 それから、先ほど重ねていろいろお話がございましたけれども、伝聞証拠であるかどうかは被告人の反対尋問権が保証されているかどうかと、そこから始まるわけでございまして、証言であろうが書証であろうが同じではないかという御議論は私は全く納得できませんので、その点だけ申し上げておきます。
#70
○寺田熊雄君 その点はまさに三面二十一条の一項三号でコーチャン調書やクラッター調書について、これは証拠としてあなた方が裁判所にお出しになり、裁判所が採用されたと全く一緒なんですね。つまりあれは弁護人、反対側の弁護人が反対尋問権を全然奪われておるけれども、ああいう公文書であるということで証拠として採用されたんですね、そうでしょう。あれは反対尋問権がなかったことをお認めになるでしょう。反対尋問がありましたか。
#71
○政府委員(伊藤榮樹君) 公文書だから採用されたというような関係ではないので、要するに第三者であるコーチャン、クラッター両氏の供述が記載された書面である。しかしながら、両氏は国外におって法廷で証言することができないという事情があり、かつそれらの供述内容が犯罪の証明に欠くべかざるものであるし、かつ信用すべき状況のもとに作成されたという三百二十一条一項三号の所定の要件を満たしましたので、いわゆる伝聞供述ではありますけれども反対尋問権を経ないままで例外的に証拠とされたわけでございます。しかしながら、その中でコーチャン氏やクラッター氏がまた別の人から聞いた、そのことの内容は原則として証拠能力なしとして排除されておるわけでございます。ですから、そのひそみにならいますれば、このスナイダー公電が、三百二十一条一項三号で採用されることがございましても、金東祚氏が語った内容につきましては証拠から排除される、これはコーチャン、クラッター両証言と同じ扱いをすればそうなるわけでございます。
#72
○寺田熊雄君 それはまた元に戻るけれども、金東雲がKCIA要員であるということを立証、主張した場合にはあなたのおっしゃるとおりであるけれども、金東祚が語ったという、つまりスナイダーがそれを直覚したというその発言内容を聞いたという事実を立証する場合には、全然それは伝聞の伝聞ではありませんよ。それをまたスナイダーが何ぴとかに裁判官か何かの面前でやったというんじゃないのだから。
 それからあなたはロッキード事件なんかでもまたあれでしょう、証人が検事調書と違った供述をすれば検面調書はやはり証拠として三百二十一条一項二号書面としてお出しになるわけでしょう。これはやはり伝聞証拠が刑事裁判の実際ではむしろ最も争われているそういう証拠なんだということを証明するわけですよ。それであなたはクラッター調書やコーチャン調書を、クラッターやコーチャンが外国におって日本に来れないということを言うけれども、この問題に関しても金東祚を日本に連れてきて、金東祚を尋問するなんということもできない。スナイダーもできないでしょう。しかもKCIA要員であるということを立証する場合においては恐らくこれは唯一の証拠になるでしょう。しかもそれは信用すべき状況だということは、第三者である全然利害関係のない、これは利害関係のない第三国の大使に外務大臣が語っている。しかもそれを秘密にしてくれというようなことも言っておる。そういう状況からわれわれはきわめて信用性の高いものであるというふうに見ているわけで、そういうきわめて信用性が高いということや、それから外務大臣金東祚やスナイダーを日本に連れて来れないというような事情は、これはあなたもお認めにならざるを得ないと思う。それがまさに三百二十一条一項三号書面としてこの法理に準じて証拠物としての伝聞を出す場合にはこれが生きてくる。だから証拠能力を持つ場合もあるということを私は言わなければ、ただ原則として証拠能力はないんですという三百二十条の本文だけを言って、これこれの例外を除いてはというその例外がむしろ刑事事件の場合は実際に多いんだということを度外視して、ただ本文だけをあなたが力説されるから、それは非常に偏ってはいないかということを私はお尋ねしているわけです。
#73
○政府委員(伊藤榮樹君) ですから、私もその当該公電が三百二十一条一項三号の書面として証拠能力を持ち得る場合はあると申し上げておるわけで、ただし、その公電の中に書いてある金東祚氏が語った内容は証拠能力がないということを申し上げておるわけで、その公電に書いてあるものの信用性が高いとかいうようなことでございますとか、社会的政治的に重みがあるものであるとかいうことを私は否定するつもりは全くありません。ありませんが、刑事訴訟法の三百二十条から二十八条にまで至ります証拠法の解釈としてお答えする限りにおいて、金東祚氏がスナイダー氏に語った内容を証拠とするすべはないということは、私の学徒としての良心に従って申し上げるより仕方がございません。
#74
○寺田熊雄君 これはもう全く私どもは不満で、まあしかし最後にあなたはこれが三百二十一条一項三号書面として証拠能力を持つ場合もあることは肯定するということを言われたから――これは言われたね、いま。だから、ある程度のあなたは譲歩をされたわけだ。ただその場合に金東作がスナイダーに語ったということを、証拠を排除されるといった、そんな話だったけれども、私はそれはそれこそがまさに金東祚がスナイダーに語ったという、そのスナイダーの知覚した事実を立証する場合には、これはむしろ直接的な証拠としても生きてくる。まして一項三号書面としては生きてくると私は信ずるし、これは私の方が正しいと考えるんですね。
 これはもうすでに一時間半にわたって議論したからこれでもうやめるけれども、最高裁の刑事局長に裁判の実際では三百二十条の伝聞法則の例外となる三百二十一条以下の規定の方がむしろ実際には多いということは、これは裁判の実際としてお認めになるでしょうか。
#75
○最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 結論的に多いか多くないかということ、ちょっといま申し上げるだけの資料はありませんが、先ほどちょっと話にも出ましたとおりに、大体八十数%は自白事件でございますから、それの証拠というものは書面で伝聞証拠がそのまま同意されて出てくるわけであります。争いのある事件であっても、たとえば被告人が不出頭でそのままでやれるというふうな場合には、同意したものとみなされて出てくるということがございますから、ですからそういう要するに三百二十六条関係で出る書面というものが相当量から言えばもう圧倒的に多い。これは事実でございます。それから、先ほど寺田委員もおっしゃいましたように、たとえば三百二十一条の一項二号、検察官調書でございますが、これが法律に定められた条件、つまり公判廷で違った食い違う証言があって、そしてしかも、その検察官調書が作成されたときの情況が特に示すべき情況にあるというふうな要件が認められればこれは採用される。これもかなりあることは事実でございます。それから、検察官調書のほかには実況見聞調書だとかそれから鑑定書だとか、いずれも書面で出てくるわけでございます。それは作成者について尋問するということが、要件が規定してあります。で、それが要件が定まればやれる。要するに法律の定められた要件が満たされれば、そうすれば当然裁判所は採用すると。で、それはまた人間の思想内容、意識というものを固定する場合、書面が多いこともこれも事実でございますからわれわれ日常生活に。ですから、最としては恐らく多いであろうとそれは思います。
#76
○寺田熊雄君 大体いまの御答弁で結構ですが、それからこの事件は金東雲、それからそのほかの共犯、これが全部国外におる事件だと私は見ていいと思うんですが、これは警察の方でお認めになりますか。
#77
○説明員(鳴海国博君) ただいままで私どもの捜査いたしました結果としましては、被疑者金東雲を初めその共犯と見られる他の五名の者は国内におらないということでございます。
#78
○寺田熊雄君 国内におらないということは、国外におるということだね。そうすると、これは時効は国外におる間は完成しないんだね。これはどうですか。
#79
○説明員(鳴海国博君) 時効につきましては、これは刑事訴訟法の規定がございまして、犯人が国外におります場合、すなわち国内にいないという場合には時効の進行が停止するということでございます。
 なお、一言先ほどの答弁に付加して申し上げますと、他の五人の共犯について私国内におらないといったような感じがするわけでございますが、これについて正確に申し上げますと、これについては目下捜査中であって、国外におるものやら国内におるものやらわからないというのが正直なところでございます。
#80
○寺田熊雄君 そうすると、あなたのおっしゃったのは金東雲はあれでしょう、被疑者である。それから劉永福というのも被疑者になっているんでしょう。
#81
○説明員(鳴海国博君) 金東雲は私ども指紋等の証拠によりまして重要容疑者、すなわち被疑者の一人として断定いたしております。が、劉永福、当時横浜領事館の副領事でございますが、この方につきましては、この方の当時所有しておりました車が犯行に使用された容疑濃厚ということを割り出したということでございまして、この劉永福氏自体の容疑はいまだつまびらかでないということでございます。
#82
○寺田熊雄君 そうするとあれですか、あなたのおっしゃるのだと、国内にも被疑者がひそんでいる可能性というのはそれをお認めになったことになるんですか、国内ですよ。
#83
○説明員(鳴海国博君) 捜査中でございまして、何ともいま判然とするわけではございませんが、少なくとも金東雲、われわれが割り出しました金東雲という被疑者は国内におらないということははっきりいたしております。が、しかしその他の者については国内におるか国外におるか、いまだ捜査中であるということでございます。
#84
○寺田熊雄君 そうすると少なくも金東雲についてはもうはっきりしていまして、そのほかの者も共犯が判明した場合に当時国内におらなかったということになると、これは刑事訴訟法の二百五十五条だね。「犯人が国外にいる場合又は犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達若しくは略式命令の告知ができなかった場合には、時効は、その国外にいる期間又は逃げ隠れている期間その進行を停止する。」と、この条文によるんだと、これは法務省の刑事局長の方がいいかもしれない。
#85
○政府委員(伊藤榮樹君) そのとおりでございます。
#86
○寺田熊雄君 そうすると、これはもう時効はないんだから、これからもう無限に捜査を存続してくださる、そういう御意思かね。
#87
○説明員(鳴海国博君) 時効の進行が停止いたしておるわけでございます。私ども現在の考えでは、今後とも継続して捜査は続行していくという考えでございます。
#88
○矢田部理君 関連。
 金大中事件に関連して二、三の点でお尋ねしたいと思いますが、アメリカ側の電報の一つに一九七三年八月十日付の電報がございます。トップシークレット466と言われるものでありますが、ハビブ氏が送った電文でありますが、その第一項に御承知だと思いますが、「本使は、金大中の誘拐に関する判断を表明することを、より多くの情報が入手できるまで差し控えてきた。当初より、われわれは韓国政府が、その秘密警察行動を通じて、このような行動の明白な愚かさにもかかわらず、その計画の背後にいることを恐れてきた。」と書いた上で、その後に「本官の指示によって、それ故、SRFは情報を求めてあらゆる情報源の調査を強化した。彼らは優れた仕事を行ない、韓国CIAが犯罪者であることをますます指し示めすのっぴきならない証拠として見られるほかないものを持ち出してきた。このことに関する要員の報告は、SRFのチャンネルを通じてもたらされてきたものである。」というくだりがございます。八月十日でありますからかなり早い時期の電報でありますが、そこで私どもが重視をしておきたいのは、韓国のアメリカ大使館が「のっぴきならない証拠」をつかんだという事実であります。その経路はここにSRFと書いてあります、これはどういうふうな意味なのか、ちょっと私はわかりにくいんでありますが、人によってはスペシャル・リサーチ・フォースというような言い方をする人もいます。外務省、これはどういう組織、略号なのかということについて一点お尋ねをしたい。その上で大事なのはアメリカ大使館がのっぴきならない証拠をつかんだ、動かしがたい証拠をつかんだ、こういうことでありますから、当然のことながら金大中事件の真相解明のためには、外交チャンネルを通して、さらにアメリカ側にこののっぴきならない証拠の存在及び内容について問い合わせる。司法共助ということが適当かどうかは検討する必要があると思いますが、警察庁等がこの証拠を明らかにしてもらうような方法を講じる方法があると思いますが、この点についてまず見解を伺っておきます。
#89
○政府委員(柳谷謙介君) 初めにいま御引用の電報は八月十日と仰せられになりましたが、これは八月十一日の電報ではないかと思いますが、「のっぴきならない」という表現があるのは十一日で、もう一つ十日にも電報ございますが、十一日の電報をお指しのことと解釈いたします。
#90
○矢田部理君 そうかもしれません。
#91
○政府委員(柳谷謙介君) SRFという記号が出てまいりますことはこの十一日の電報でございます。で、これはアメリカの公電の中で使用している一種の略号といいますか、暗号というか、符牒というものかと思いまして、これ私ども何を指すかは承知しておりません。先般、とりあえず米国側にこのことも含めていろいろ照会した中で、このSRFについて何か説明が得られるかということも含めて照会したわけでございますけれども、この部分につきましてもアメリカの返答は、コメントできないという返答でございました。
 第二のお尋ねの、のっぴきならぬ証拠についてわが国の警察当局等からの要請があれば米国にこの証拠の提示方を申し入れるかというお尋ねだと思いますが、これは、この電報が非常に今回の電報の中でも重要な電報であるということは私どもも同じように考えておりますが、ほかの百四十件の中にもいろいろ注目すべき点もありまして、それらを含めて全体をいま検討を続けております。捜査当局にも御検討をお願いしているわけでございます。
 これらの検討結果を待たず、いまのSRFの点も含めて米国にすでに照会した部分もございますけれども、今後どのような形で、どういう言い方で照会するかという点については、もう少し時間をかけて検討の上、照会する場合の照会の仕方等は考えてみたいと思っておるのが現状でございます。
 なお、一つつけ加えますと、これはきのうの衆議院の委員会でも私御答弁したわけでございますけれども、こののっぴきならぬ証拠という点については、とりあえずの質問として韓国政府にもコメントを求めたわけでございますが、一昨日、私を来訪しました在京韓国大使館の呉公使は、こののっぴきならぬ証拠というこの電報のこの部分につきまして、米国が何をもってのっぴきならぬ証拠と言ったのか、韓国側として知るすべがないという説明を受けたことを申し添えておきます。
#92
○矢田部理君 警察庁。
#93
○説明員(鳴海国博君) ただいま御指摘の八月十一日のハビブ大使の電報、仮訳、外務省から逐次いただいております資料の一つとして私どももいただいております。
 で、これいただきまして、この該当部分、熟読玩味いたしたわけでございますが、ここにいま御指摘のように「のっぴきならない証拠」としかみなし得ないものを得たというくだりがございます。ただいま外務省アジア局長よりも御答弁ございましたように、私どもとしましては、これに限らず、今回のいろいろな公電、あるいは資料についてすでに外務省にこれについての全体的な御検討、あるいは事実調査、そういったことをお願いし、その結果をいただき、それを踏まえながら私どもの捜査の手がかりを発見していこうということでお願いをいたしておるところでございます。このくだりが一体何を意味するものか、私どもこの文面のみではどういうことかわかりませんので、まずこれが何を意味するか、いま外務省からの御検討、あるいは御調査の結果を待って私どもとしての検討を進めてまいりたいと、かように考えております。
#94
○矢田部理君 公電の中には幾つか重要な事項があるわけですが、いま私が指摘した「のっぴきならない証拠」をつかんだという、これはきわめて重要な部分だと思うわけですね。ですから、しかもこのつかんだ経路はSRFが何であるかというか、意味がわからないということでありますが、どうもやっぱり私がさっき言ったみたいに特別調査機関の略ではないかと思われる節が多いわけです。
  〔委員長退席、理事上田稔君着席〕
したがって、まだアメリカは具体的には答えられないという言い方になっているだろうと思うわけでありますが、どういう機関であったとしても、動かしがたい証拠、「のっぴきならない証拠」をつかんだということであるとすれば、しかも入手経路がそういうことであるとすれば、韓国政府に聞くんじゃなくてアメリカ政府に聞くのが筋じゃありませんか。他の検討も、それはそれで結構でありますが、こういう重要な事実については、一刻も早く問い合わせをして日本の捜査に役立てる、あるいはこの金大中事件の真相解明を全面的に私は進める、こういう姿勢が大事だと思いますので、ぜひ緊急に問い合わせをしてほしいし、すべきだと考えますが、御検討いただけますか。
#95
○政府委員(柳谷謙介君) 先ほど申しました全体についてもやはり検討を進めなければならないと、また、そういう意味での検討が終わっていないということを申し上げたわけでございますが、あわせて申し上げましたとおり、出てきたものにつきましてはとりあえずの照会、評価を求めるという努力はすでに尽くしつつあるわけでございまして、確かに米国政府の方が大事だという御指摘はごもっともでございます。韓国にもやはり聞くべきものは聞くべきだということで聞いたということで、先方の答えを御紹介したまででございまして、米国にももちろん聞いたわけでございます。
  〔理事上田稔君退席、委員長着席〕
 これまでの照会の経緯は幾つかございますけれども、公開された直後には参事官から部長クラスの照会を何回かやっておりましたが、先週の末には東郷駐米大使が先方の国務次官と会見いたしまして、それまで何回か話し合っていた経緯を踏まえましてこの事件についての日本の重大な関心等を伝えつついろいろ具体的にもさらに問い合わせたわけでございます。それに対する先方の答えは、すでに御披露してあることでございますけれども、かつ先ほども申し上げましたとおり、従来どおり米国政府としてはこのことについてはコメントする立場でないという返答でございましたが、それでわれわれが引き下がったわけではなく、東郷大使もさらに必要に応じて長官に会見する等の計画を持ち、私どもからはこちらからさらに問いたいことが出てきた場合に追加的にそれも伝えて、そういう意味におけるできる限りの米国側からの説明と申しますか、こういうものを得るための努力は引き続き継続してまいる所存でございます。
#96
○矢田部理君 ちょっと一点だけ。
 一般的にどうやっているかということは、もういいですよ。いま私が指摘をしたのは、KCIAが犯罪者であることを指摘してのっぴきならない証拠をつかんでいると言うのであります。この問題について具体的に尋ねたのですか、尋ねなかったのですか。それからここまで来ている以上、警察庁としても、外交チャンネルを通ずるにしても司法共助その他の本格的な体制をつくった上で要請をするというのが筋だろうと思いますけれども、そういう面でもう一度この点について明確な答えをしていただきたいし、それから十分説明がなかったとしても、さらに突っ込んだ踏み込み方をしてほしいというふうに考えているわけです。
#97
○政府委員(柳谷謙介君) 御指摘のとおりしているつもりでございます。すなわち八月十日と十一日二木、ハビブ電報がございます。その二本の内容と、それから例の金東祚・スナイダー会談、七五年になってからですが、この三本といいますか、二種類のものを特に取り上げてこれまでも先方と話しております。今後も続ける所存でございます。
#98
○矢田部理君 突っ込んでやるか。
#99
○政府委員(柳谷謙介君) そのとおりでございます。
#100
○寺田熊雄君 いまの電文のあれとまた関連してくるのだけれども、アメリカのフレーザー委員会が金炯旭を証人として喚問いたしました。そのフレーザーの証言というものは、すべて金大中事件が起きたときに韓国の日本駐在の公使でありました金在権、本名は金基完と言いますが、金星完から聞いたということを証言しているわけでしょう。それをフレーザー委員会が非常に重く見て認定の一つの証拠としておるのですが、その際フレーザー委員会としては金基完を証人として喚問しようとした。ところが金基完はアメリカに永住権を持って妻子を置いておって住所はアメリカにある。しかし、それが何かの拍子に韓国に帰ったという。韓国が軟禁してしまって、再びアメリカに出国することを不可能ならしめている、そういう事実がフレーザー委員会の報告書に出ておりますが、これは、アジア局長御存じでしょう。
#101
○政府委員(柳谷謙介君) まず、お尋ねの点、そのような記録があることは承知しております。
#102
○寺田熊雄君 そうしますと、これは金炯旭を日本に呼ぶなり、金炯旭に外務省の方が当たって、金炯旭から金在権から聞いたことを綿密にやはり尋ねるということも意味があるわけですね。というのは、本人を韓国が握って出さないんだから、本人に聞くすべがないんだから。どうしてもやはり金炯旭に聞かざるを得ない。さっきの伝聞と一緒です。聞こうとしたって聞けないんだから。だから私は、外務省は当然金炯旭に当たってその事情を聴取すべきであると思いますが、これはどうですか。
#103
○政府委員(柳谷謙介君) これまでの記録によりますと、金在権氏から聞いてみたいということはずっとございまして、住所を調べるとか、どこでどういう条件ならば会ってもらえるだろうかということをやった経緯は委員も御承知のとおりだと思います。これまでのところ、金炯旭氏自身に当たるとか聞くということを考えたことは、これまではございません。
#104
○寺田熊雄君 だから金在権に直接当たって聞くということは最もふさわしいんですよ。だけど、それを韓国が、つまり何かの拍子に本国へ旅行したときに押さえちゃって出さないんだから、それはフレーザー委員会のこの調査報告に出ている。これはあなたもお認めになった。そうすると、金在権に聞くすべがないわけだから、それだったらしようがないから、金炯旭に聞こうということにならざるを得ないと思いますが、聞いたらいいじゃないですか。どうだろうか。
#105
○政府委員(柳谷謙介君) 私が承知しておりますところでは、これまでの捜査当局と御相談したことでは、金炯旭氏の発言は金在権氏からの聞いたことであるということなので、やはりこの捜査の必要上から言えば、金在権氏からぜひ聞きたいということを伺っておりましたし、当時、金在権氏が米国におるという等々のことがあったので、金在権氏に当たることでずっと今日まではやってきたと承知しております。
 なお、金在権氏がどこにいるかということでございましたが、現在、私どもが聞いておりますところでは、韓国におられるということを聞いております。
#106
○寺田熊雄君 そうじゃないんです。私がお尋ねしているのは、金在権にあなたが聞こうとする、日本が聞こうとする試みは成功しないわけだ。韓国が押さえちゃって放さないんだから。だから、しようがないから、そのときはもう金炯旭にお聞きになったらどうでしょうかとお尋ねしているんです。
#107
○政府委員(柳谷謙介君) どなたにどういう順序で聞くかという問題は、これは外務省が判断いたすよりも捜査当局にお決め願うことでございまして、今日まではまた聞き等々の理由から、金在権氏ということできたわけでございますが、今後、捜査当局と御相談しまして、いま委員の御指摘のように、金在権氏にはとても接触が不可能だから、他にかわる方法として云々ということでございましたらば、また捜査当局と御相談してみたいと思います。
#108
○寺田熊雄君 警察の方はどうです。
#109
○説明員(鳴海国博君) 当時、この問題がいろいろ論議され、詳細に外務当局とも検討がされたと承知いたしておるわけでございますが、結局、金炯旭氏につきましては、これまでのアメリカの議会における証言の中でも、金炯旭氏の発言以前に、金東雲がKCIA要員であったという文脈ですでに語られていることをその当時言われたということでございまして、私どもの捜査では、それを裏づける証拠はないということは再三申し上げておるわけでございます。
 と同時に、これもいま御議論がございましたように、この金炯旭氏の発言というのは、そもそも金炯旭氏は、あの事件発生当時はすでに職を退いておられたという関係もございまして、人から聞いたというまた聞きといったようなもの、あるいはいろいろその中には不正確な部分とか信用できない部分もあるということでございまして、捜査上金炯旭氏から直接聞くことは、そういう意味から言っても有用ではないという結論に達したと聞いておるわけでございます。
 それで、むしろその金炯旭氏が発言をするに当たって、その根拠として引用しあるいは聞かれたという金在権氏から直接そのお話を聞く方が捜査上より有用であるということの結論に達したというふうに聞いております。
#110
○寺田熊雄君 ちっともこっちの言うことを聞いてくれていない。
 金在権からは聞けないんだから。韓国が出さないんだから、協力しないんだから。だからしようがないから、その場合には第二次的な手段として金炯旭に当たって聞いてみたらいいじゃないかと言ってお尋ねしておる。
#111
○説明員(鳴海国博君) その意味でございますれば、私どもいまも当時と同じ判断でございまして、金炯旭氏に当たっていろいろお話を伺うということは、その意味で捜査上は有用でないと判断をいたしておるところでございます。
#112
○寺田熊雄君 それば本当におかしい。
 これは金在権が金炯旭に語ったのは、この事件がKCIAの組織的犯行だということを語っておるのだから。だから有用でないと言ったって、あなた、あれでしょう、アメリカのフレーザー委員会なんかは非常に重く見ているんですよ。どうしてあなた方が有用でないと決めつけちゃうか。また伝聞に戻るわけですか。伝聞だけれども、その伝聞の場合に、本人より聞き得ない場合はしようがないでしょう。どうですか。
#113
○説明員(鳴海国博君) 伝聞であるということ以外に、もっと基本的に、捜査的に考えた場合に、私どもが捜査上欲しておりますことは何かというと、金東雲はいわゆるKCIA要員であるとか、あるいはKCIAの犯行であると言ったその結論部分だけを聞きましても、それは一つの御意見として、それぞれ相応の敬意を表するわけではございますけれども、だからといって、私どもそれを直ちにそうだと断定するわけにはいかない。断定するためにはその発言を裏づける証拠といったようなものが必要になるわけでございまして、私ども捜査の立場におきましては、そういった捜査の手がかりが得られるということであるならば、これは鋭意そういった追及に努力するわけでございますけれども、結論だけということでございますと、これはちょっと捜査上手がかりとしては役に立つものではないというふうに考えておるところでございます。
#114
○寺田熊雄君 結論だけじゃどうかわからないじゃありませんか、金炯旭氏に会って聞かなければ。どうしてそんな、あなたかたくなにがんばるの。あれだけフレーザー委員会が重要な証人としていろいろな事実を金炯旭が語っている、それを捜査の一環として――あなた方、さっきおっしゃったでしょう。犯罪事実だけじゃなくて、冒頭に、いろいろこれが背後関係がどうかとかいうようなことも調査するんだということをおっしゃっておられたでしょう、あなた自身が。それならば何で金炯旭を、むだだむだだと言うて初めから、頭から拒否してしまうんです。むだかむだでないか、当たって聞いてみたらいいじゃありませんか。どうしてそんなにかたくなにがんばるんだろう。わけがわからぬ。
 もう一遍お答え願いたい。
#115
○説明員(鳴海国博君) これは私どもあらゆる可能性を求めることにやぶさかではございませんが、この金炯旭氏の発言というものをしさいに私ども当時分析してみたわけでございますが、そういたしますと、その中にはかなり不確かな事柄であるとか、あるいは事実無根の事柄であるとか、あるいは(「福田総理と同じようなことを言う」と呼ぶ者あり)虚偽に類することといったようなことが混入しておるわけでございまして、その理由の一つは、やはりこれはまた聞きということで、これはまた聞きの聞いた先もはっきりわかっておるわけでございます。そういうことで、このような理由から、私ども当面その必要性は、直接会って金炯旭氏より話を伺うという必要性は感じておらないというところでございます。
#116
○寺田熊雄君 アメリカの議会の誠実な調査権の行使とあなた方とがどうしてそんなに違うのか、全く了解できないけど、これはまたがんばるんだから、他日また局長にでもゆっくりお尋ねするけれども、ただ、このフレーザー委員会の中で、フレーザー委員会がアメリカの政府からの報告という句が随所に出てくるんですね。たとえば、外務省からいただいた資料の中で、「本報告及び韓国系アメリカ人に対するいやがらせに関する種々の非難の結果、国務省は、かかる活動を中止し、国務省が問題の主因とみなしていたKCIAの駐在代表を召還するよう韓国政府に圧力をかけ始めた。」、それから十五ぺ−ジの「一九七三年以前に、いくつかの行政府報告は朴大統領自身が米国における工作活動について承知していることを示していた。」とか、いろいろ行政府との接触それから報告を受けているという記載がこのフレーザー調査委員会の報告書の中に出てきますね。こういうものは、やっぱり外務省はアメリカから資料をお取りになったらどうだろうか、その点どうでしょうか。
#117
○政府委員(柳谷謙介君) 御承知のとおり、フレーザー委員会の報告、この検討の内容は、在米KCIAのことに関して調査をして、そこで日本の絡みも幾つか出てくるという性格でございます。いま御引用になりましたのも、たしか、アメリカにおけるKCIAと申しますか、外国機関の活動に関して米国政府の見解をいろいろ出した文書だと思います。これは、いままでのところ、直接日本の金大中事件と申しますか、KCIA関連のことと直接かかわっておりませんので、その行政府の報告について、これを提供を求めたという事例はございません。ただ、今般のいろいろな最近の動きと関連いたしまして、私どももう一度フレーザー委員会の報告はやはり見直したいと思っておることでございまして、その全体の見直しの中で、このフレーザー報告書に出てまいります米政府から提供があったと言われている文章の中で金大中事件、つまり、わが国に直接かかわるようなものに関連があるようなものがあると思われるときはこれはそれだけというわけではございませんけれども、米国に対してのいろんな事情照会、資料提供の要請の一環として今後の課題であろうかと考えます。
#118
○寺田熊雄君 最後に法務大臣にお尋ねしますが、先般青木英五郎氏が朝日新聞に陪審制度を復活させよという一文を出しておりました。これは私どもも戦前に陪審裁判というものを見て、それなりのよさがあるということは認めるわけなんですが、いまは陪審法が、これは停止されたままになっておりますね。それから裁判所法の中には第三条第三項ですか、これは陪審制度を採用することを妨げるものではないというような規定がございますね。陪審制度の採用あるいは復活に関して法務大臣としてはどういう御所見でしょうか。最後にそれをお伺いしたいんですが。
#119
○国務大臣(古井喜實君) お話のように、かつて陪審制度を行ったことがあるんですけれども、やめになってしまったという経過でありますが、ああいうふうな、何といいますか、エキスパートだけでなしに、国民自身、庶民感情、そういうものが司法の分野にも一つの働きをなすということは、多きに何というか望ましいというのはどうかしりませんが、心引かれるという気がするんでありますが、しかし、過去の実績も考えてみなくちゃいかぬ。何さま私のこれは素朴な考えですけれども、日本の社会は人情社会でして、大体寄って話をするとかばってしまう、合理主義がなかなか行われぬと、こういう傾向があるように思うんですね。これは陪審制度だけじゃないと思います。国会がそうだとは言いません。言いませんけれども、そういう傾向が日本の社会にはあるんですね。だもんだから、公正な審判ということがなかなか行われないというようなことがきょうの段階でもあるんじゃないだろうか。そういう気もいたしますんで、私は事柄の筋としては非常に魅力を持つんですけれども、さて、やってどういうことになるだろうかに疑問というか、すっきりした見通しが立ちませんもので、実はようはっきりした御返事を申し上げることはできないんでありますんで、これはもう少し議論をして、私がそう考え違いしているかもしらぬし、議論して大方の意見がやっぱりあれやった方がいいということになるかならぬか、議論の段階をもう少しこれは置いていただく方がいいんじゃないかしらん、いまはそういうふうに思っております。
#120
○寺田熊雄君 家庭局長にお尋ねします、せっかく来ていただいたので。
 家庭裁判所で、私ども離婚事件などについて弁護を頼まれまして参ります場合に、妻を弁護して離婚の調停などを申し立てる場合に、相手方が狂暴な人間である場合に、非常に妻が恐怖しますね。そして一緒に調停室に入るとか、あるいは一緒の待合室に入るということを非常にいやがるわけです。この問題で先般傷害事件が起きた旨の新聞報道がございましたね。これは局長も御存じでしょうけれども、五十四年五月二十二日付読売新聞で「家裁で妻を刺し自殺 調停委の目前 別れ話に逆上の男」という記事がありました。こういう事件はずいぶん多いんでしょうかね。それからまた、統計がありましたら、時間がありませんので、簡単で結構ですから。
 それから、その対策としてはどういうふうに考えていらっしゃるのか。その二点についてお答えいただきたいと思います。
#121
○最高裁判所長官代理者(原田直郎君) まず、それでは件数から申し上げます。
 急遽でございましたが、過去十年にさかのぼりまして調べてまいりました数字でございます。発生件数が十二件、うち死亡事故二件、負傷事故八件、暴行にとどまったもの二件、こういうことになっております。ただ、この死亡事故二件のうちの一件は、広い意味で調停継続中ではございますが、妻の実家に夫たる者が押しかけて、そこで妻の兄嫁を刃物をふるって死亡させたという事件でございます。したがって、狭く考えますと庁舎内で調停中にということになりますと、一件引くことになろうかと思います。それと現在起こりました神戸の事件、これを合わせますと十三件、こういうことに相なろうかと思います。
 それから、事故対策の関係でございますが、委員も御存じのとおり、家庭裁判所の基本的な建物の構造といたしまして、申し立て人方と相手方の待合室、控え室はセパレートして設置されておるのが通常でございます。ですから、申し立て人と相手方とを同じ部屋に待機させるということはまずあり得ないことではないかと考えます。このようにして過去十年間にいろいろ傷害事故なども起こっておりますので、その対策はいかがかという御質問でございますが、これにつきましては去る四十七年の十月ごろに、すでに最高裁家庭局長名で各家庭裁判所にあてて注意を呼びかけた通知を出しておるところでございます。また、今回の事故につきましても、まさに調停中の事故でございますので、私どもとしては深刻に受けとめております。ただ、二十一日に起こった事故でございまして、私どもは神戸家裁に対しまして急遽事故報告を求めておりますが、神戸家裁からの報告によりますと、二十九日の夕方に正確な報告書を送ったということでございまして、私、ここへ出てまいるまでにその報告書を手に入れるべく待っておったわけでございますが、ついにここへ参るまでには間に合いませんでした。それももう帰ればあるいは届いておるかもしれませんが、それをも見た上で抜本的に何らかの手を打つ必要性があるのではないか、このようにも考えております。
 以上でございます。
#122
○寺田熊雄君 終わります。
#123
○委員長(峯山昭範君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。
   午後零時十三分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時七分開会
#124
○委員長(峯山昭範君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、検察及び裁判の運営に関する調査を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#125
○宮崎正義君 午前中、二時間以上にわたりまして金大中氏の拉致事件の問題を事細やかに質疑が交わされてまいりましたんですが、私は、同じようなことを伺わないで、総括的に、今後この事件についてどう処置をされていこうとされるのか、それぞれのお立場の中でお伺いをいたしたいと思いますし、昨日の本会議におきましてわが党の田代議員がこの問題を取り上げまして総理に質問をいたしました。
 総理は、韓国の公権力関与という明確な証拠が出てくれば、当然政治決着の見直しとなるが、入手した資料は、そこまで踏み切るには至っていない、これは今回ということだと私は思うわけですが、総理じゃありませんので、どの程度のものを資料とした――今回と限ったものなのか、従来から、この一九七三年当時の事件から今日に至るまでのあらゆるものの資料を指したのか、特に私は、今回ということが主体じゃなかろうかと思うわけであります。それは米国務省の秘密文書で、金東雲が韓国中央情報部のKCIA要員である、二は、金大中事件に金東雲が関与していた、この二つの点が明らかとなりましたが、これらのことだとか、先ほど午前中にほかの委員から質問がありましたようなこと等をとらえておっしゃっておられるのか、総理に聞かなきゃわかりませんけれども、いずれにしましても、これらを踏まえて、総理の考え方からいきましても、非常に何といいますか、政治決着を見直すというような証拠書類がないんだというふうに受け取られるような発言をしておりますが、この事件が起きました当時に、当時の法務大臣で、田中法務大臣でありました、当時の大臣は、第六感として某国の秘密警察がやったことに違いないような意味のことを述べられておるというようなことから、このいま申し上げました政治決着ということについては、午前中、大臣も、政治問題であり、政治的見直しができるかどうか、するかしないか、この問題は政治決着による以外にないような御発言がありましたけれども、法務大臣として歴代の法務大臣からこの事件についてどのような事務の受け継ぎをされてこられたか。また、先ほど午前中の答弁には、私はどうもまだぼやっとしている点が相当あると思われますので、法務大臣のこの件につきましての確たる今後の行き方、そういうものも伺っておきたいと思います。
 さらに、アジア局長もアジア局長の立場で、先ほども、まだこれからフレーザー委員会の問題については調査する、その上で問題について取り組んでいきたいというようなお話もありました。
 また、警察庁の鳴海課長の答弁の中にも、外務省の手がかりとなるものを受け入れた上で調査をしていきたいというような、外務省を頼りにしたような考え方をしている、そういう面。
 それから、刑事局長は刑事局長の立場でこの問題をどうとらえて今後いかれようとしているのか。法務大臣並びに刑事局長、アジア局長、警視庁の側から、それぞれの今後の締めくくりをどういうふうにして持っていくかということについて御答弁を願いたいと思います。
#126
○国務大臣(古井喜實君) この問題は超日本の政治問題の一番大きいものの一つになっておるわけでありまして、これに対して政治としてどう結末をつけるかということは当然総理が考えておる問題だと思います。私はまあ総理でもありませんし、伴食の一大臣にすぎませんから余り広げて物を言うわけにはいきません立場にありますが、まあ、いまお話しのように、あの当時、当時の法務大臣であられた田中伊三次先生、その後もこういうことがあった、ああだったと、こういうことを言っておられたりするようでありますが、そういうことも現職の時代にわかっておったり、そういうこともあったり、いろんなことがあったにかかわらず、要するに政治決着ということで、二回にわたって決着をつけたというのが過去であるんでありますね。で、それについては当時から釈然としない人もあったかもしらぬし、そんなことをいつまで言ってもしようがないと、政治というのはそういうものだというんで割り切った人もあるかもしらぬし、してきておったと思うんであります。それに対して、また昨今アメリカサイドから相当この重要な資料が出てきたと、こういうことになったわけでありますね。で、まあ政治決着はつけたけれども、それは当時として、公権力が関与したということについての確たる証拠、そういうものもないし、それだけでなかったかもしらぬが、かたがたもって政治決着をつけたという。で、あと新しいことが起こればというようなひもがついておったわけです。新しいことというのは、事実は過去のことですから起こりようがないんで、この過去の事実に対する新しい確たる証拠というか、資料というものが出たらという意味だろうと思うんでありますね、事実はもういまさら起こりようがないんですから。そこでまあアメリカの資料が出たと、それで外務省がいろいろ検討してくださっていると。ところが片方の関係の韓国側は記録がない、あるいははっきりせぬとかいうので、そっち側はまだ残っておるわけであります。
 それから日本の国内は引き続いて捜査はやっておるわけで、実際はどこまでやっておられるか知りませんけれども、たてまえ上打ち切ってはいないんで、日本の中でもまた何か資料があるのかもしらぬし、私はよく知りませんけれども、そういう状況でアメリカサイドの資料が出ておるという、いまのところまででありますね。やはり、これは一応政治的に決着をつけましたということは大きなことですから、見直すということは、これ覆すということですから、いろいろあったけれども、結局、つけたのを覆すという問題になれば、これはよほど資料も検討したり、綿密に調査したりして決断をしなきゃならぬ問題だと思うのであります。どっちともつかぬときとは違うと思うんですな、一遍処理したんですから。そういう意味でいまは外務省でお聞きのとおりにたくさんの資料、また、もっとより以上の資料を求めるとか、検討して、そこにまた手がかりが出るかもしらぬ、出ないかもしれませんが、出るかもしれない。韓国側の問題もある。国内のその後の捜査というか、調査の事実もある。そういうことを全部ひっくるめて、要するにまたここでいわゆる見直しをするか、せぬかということに決断をする問題になるだろうと思うんであります。いまはまだ全部そういう資料なり調査が済んだということは言えない段階だと思うんであります。これは外務省側からの説明でもよくおわかりだと思うんであります。その上で覆すという重大決心をするか、いやそれには足らぬということになるかということにこれはならざるを得ぬと思うわけでありますから、きょうの段階では、もう少しこれはやるべきこと、調べることなりやって、最後的には政治的に決断をしてもらうと、するということにならざるを得ぬ、決断せぬわけにはいかぬと思うのでございます。
#127
○政府委員(伊藤榮樹君) いま大臣がおっしゃったことに尽きるわけでございますが、この事件につきましては、現在警察が中心となられまして、検察もこれに御協力申し上げながら捜査を進めておるわけでございます。したがって、私どもの立場からすれば、政治決着ということは別の次元の問題としてさておきまして、やはり、着実な捜査を進めていくということであろうと思います。御指摘の政治決着というものが存在しますために、捜査の手法の中で一部限られる面が現実にあるわけでございます。で、その一部限られる面が見直しによって解消するかどうか、こういう問題になるわけでございますが、その点につきましては、もともと政治的あるいは外交的決着というものは捜査当局の捜査と別の次元で行われたものでございます。したがいまして、現在外務当局におきまして最近出ました資料、種々ございますようで、それを見直すといいますか、検討しておられるようでございまして、その御検討の過程におきまして、私どもの意見をお求めになることがあれば、私どもも率直に意見を申し上げさせていただいて、そして外務省を中心といたしまして今回の新しい資料の問題が、政治決着というものを見直すに足ることになるのかならないのか、その辺を私どもも見守ってまいりたいと、かように思っておる次第でございます。
#128
○説明員(鳴海国博君) 警察といたしましては、この金大中氏逮捕、監禁、略取事件、これの捜査を推進いたしておるところでございます。で、今回の米国務省文書につきましても、これが捜査の進展に役立つ新たな手がかりが得られるかどうか関心を持っておるところでございます。
 御案内のごとく、この文書などにつきましては、現在外務省におかれまして全体的な検討と事実関係の御調査が進められておるところでございます。そういう段階でございますので、私どもといたしましては、その結果を待ちまして捜査上の観点から検討を重ねてまいるという方針でございます。ただ、いままでも逐次、この公電あるいは米側から外務省が入手されました文書といったものを逐次御提供いただいておるわけでございますが、それを捜査上という立場から見ます限りにおきまして、とりあえずの感想といたしましては、これらのものが直接捜査の進展に役立つ手がかりではないという感触をいまのところとりあえず持っているわけでございますが、なおまだ外務省せっかく御調査中でございます。それを待ちましてあわせ検討してまいりたいと、かように思っております。
 また、この事件そのものについてでございますが、警察は引き続き現在の捜査体制を維持してまいりまして、新しい情報の掘り起こし、あるいは関係者の洗い直し捜査、既存捜査資料の再検討あるいは補完捜査などを推進いたしまして、この金大中氏逮捕、監禁、略取事件の解明に努めてまいる所存でございます。
#129
○政府委員(柳谷謙介君) 米側から提供を受けました今回の資料は百四十四点でございます。すでに御承知のことかと思いますけれども、これは日韓両国における新聞報道とか国会質疑等の報告、その他まあこの事件に余り直接関係ないと思われるものも若干入っておるわけでございますが、大ざっぱな内訳といたしましては、手紙が十一件でございます。ただ、この手紙の中には、ほかの問題も入っておるようで、主として選挙区からの陳情のようなものをカバーしている手紙でございます。それから平文と申しますか、平文の資料が十五件、これも記者会見の報告とか、米国政府としての対外応答要領とかあるいは韓国の新聞の報道ぶりというようなものが入っております。それから部内資料、リミテッド・オフィシャル・ユースと言っているようですが、これが九十三件。この中には、国会の質疑あるいは事実関係の報告とか情報のようなものが入っているようでございます。それから、秘と仮に訳しますならば秘でございますか、コンフィデンシャルというものが二十三件、これは情報とか判断とか意見具申とか訓令、このようなものを中身としていると思われます。そのほかに極秘と訳しますか、これが二件、その中に例のハビブ電というのが入るわけでございます。私どもはこれらの中には、申しましたように、新聞報道とか国会質疑のようなもので、それ自体十分検討はしておりますけれども、特に注目しておりますのは、すでにたびたび御議論がありましたところのこのスナイダー電あるいはハビブ報告ということがやはりこれまで検討を進めた中でも最も注目されるものであるということは、そのとおりに感じております。これらの電報は駐韓米国大使がその収集した情報や判断あるいは韓国の外相との話し合いに関する報告というものでございまして、いわば日本は第三国でございますので、やはりこれについて判断、評価を下すためには、その当事国であるところのアメリカ、韓国にさらに照会する必要があるということで、全体の資料の検討を終わるのを待つまでもなく、報道されました直後から米側に対してとりあえずの照会等を行なったわけでございまして、そのとりあえずの照会に対する先方の答えは、すでに国会においても再々御報告しておりますとおり、一口で申しますと、米側としてはこの日韓間の問題に介入する立場にないので、コメントする立場にないということでございます。韓国側につきましては、スナイダー・金東祚会談にしぼって聞きましたところ、記憶がない、あるいは記録がないというのが返答でございます。
 私どもこれでああそうかと引き下がったわけではございませんし、なお検討も進めておりますので、先ほどすでに答弁のありましたように、とりあえずの感触というものは持っておりますけれども、これに終わることなく、捜査当局等とさらに意見を交わしながら、さらに米側、さらには韓国側に対して見解あるいは評価あるいは事実の照会というようなことを続けて、少しでも真相の究明に役立てるようなことができればということで、いま取り組んでおる状況でございます。
#130
○宮崎正義君 大臣も、そして刑事局長も、今回の米国からのサイドのものが、新しいことが出てくれば、これはその政治決着も覆す重大な決心をするような事態もあると、こういうふうに私は判断してよろしゅうございますね。いまのアジア局長の調査に待ってということでありましょうけれども、その中で新しい重大な超政治的な問題を処理するためには、その明確になった点が出れば政治決着といって一回、二回と行ってきたものを覆していくというふうにとってよろしゅうございますね。
#131
○国務大臣(古井喜實君) まあ、事柄が重大でありますから、私が軽率なことを言うわけにいかぬわけでありますけれども、この事柄は日本の主権に関する問題であります。他国の公権力が日本の領域内に勝手に入り込んで、その権力を行うなんということを見過ごしたんでは、これは日本の主権というものが傷つけられることになる。そういう意味でこれは重大な問題だと思うのであります。それで、そういう面がありますが、一方、先ほど申しましたように、いろいろな田中元法務大臣のような、現職で事実を相当知っておるというような人もおるにかかわらず、またそのほかのいろいろな事実があったにかかわらず、ああいう政治決着をつけたという事実もあるわけですね。これを見直す、つまり覆すということは、日韓関係に非常に重要な事態を起こすのじゃないかと、こういうこともありますので、そう軽々に、まあこれ一つの資料があったから、これをひっくり返すとか、そうはいかぬと思うのですね。絶対に覆してはいかぬというものじゃない。そんなことは約束になっていないと思うんですよ。そうはなっていないはずだと私は了解しておるんです。けれども、覆すだけの重大な新しい証拠というか、がないものにはそうはやれない。で、私は、これは素人の感触ですけれども、どっちかこっちか五分五分だったら覆すなどということはしちゃいかぬと思うんです。五分五分程度なら。素人論ですよ。もっと、より以上、覆すだけのしっかりしたよりどころがないといかぬのじゃないだろうか。じゃ、きょうは果たしてどうなんだろう、それを判断するにはまだ十分な段階でないように私は思っております。
#132
○宮崎正義君 私は、そういうふうな重大、超政治的判断に基づくものだと言われておる問題であれば、やはり捜査当局にしましても、外務省も、もう少しこの真相解明のために、思い切って係員を派遣して調査をしていくのが当然のように思うわけなんですが、この点はどんなふうにお考えになっていますか。
#133
○説明員(鳴海国博君) 捜査員の派遣あるいは協力要請という事柄でございますが、振り返ってみますと、警察といたしましては、事件発生の直後から数回にわたりまして、外交ルートを通じまして韓国側に対し、被害者あるいは参考人からの事情聴取、あるいは捜査上必要な事項についての協力要請ということを行ったわけでございます。が、しかし、その結果は、結論的あるいは全体的に見まして、わが方が期待したようなものは得られなかったということで推移しておるわけでございます。
 今回の米国務省文書に関しましては、先ほども申し上げましたが、外務省において事実確認のため、米国あるいは韓国に対し必要な御照会等、その他事実調査を行っておられると承っておるわけでございます。そういう次第でございますので、韓国に、あるいは米国におる参考人その他の人々からの事情聴取ということにつきましては、もちろん捜査当局としましては深い関心を持っておるところでございますが、この実現、具体化ということにつきましては、これは国と国の関係にかかわるということでもございますので、外務当局ともよく御相談の上、検討を進めてまいりたいと、かように考えております。
#134
○政府委員(柳谷謙介君) 捜査員を海外に派遣して、わが国の捜査当局がいろいろ事情聴取をなさるという件につきましては、これは基本的に、まずは捜査当局のお考えに従うわけでございますが、いまも御指摘ありましたように、これは相手国の同意を得るということが必要になりますし、それから、いわゆる国家間の相互信義の問題というのが出てくるかとも思いますので、これはやはり具体的に、どういう対象に対してどういうことをいつというような、やっぱり具体的に案件が出た段階で、その相手国との関係とか等々の、いま申しましたような諸事情を勘案する必要があると考えております。その際は、外務省としても、この事件の真相究明に役立つことであれば、できる限りの御協力といいますか、努力を払う所存でございます。
#135
○宮崎正義君 国家間の相互関係があるがゆえに、これはまた一面では話し合いをして、一九七三年から一九七九年、今日に至るまで尾を引いてきているわけでありますが、その中で、大臣、二月三日の衆議院の予算委員会でこのように御答弁なさっていることがあるんですが、外交決着は尊重するが、経過とか処置は釈然としないというような中身のことをお述べになっておられますが、そういう面から考えまして、私は、閣議で今日までこの問題をどう取り上げまして討議をなさったか、いろいろなやりとりを閣議の中でどれぐらいおやりになったのか、一々いままでの経緯を、各閣僚の答弁を拾い出してみますとさまざまな答弁がいっぱいあるわけなんです。それを私はきょうやる時間がありませんのでやりませんけれども、お一人お一人の今日までの御答弁なさった答弁の内容を少し集めてあるんですけれども、それはきょうは割愛いたしますんですが、いずれにいたしましても、こういう国家間の問題について、日本の総理大臣を初め、閣僚の、内閣の方々がどういうふうな方向づけの会議をなさってきたのか、また今後どういうふうにしてやっていこうとなされるのか。その一点を私伺っておきたいと思うんですがね。
#136
○国務大臣(古井喜實君) 二月三日でありましたか、衆議院の予算委員会でお話のようなことが出ました。それは国会で言ったんじゃないですけれども、国会以外の場所で言った言葉を民社党のある方が持ってきてやかましいことを言われましたよね。で、衆議院の予算委員会の議事もちょっと停とんするというようなことも起こりましたよ。そういうこともありましたが、そのときのことですけれども、とにかく当時どう思っておったかということは人々によっていろいろあるにしても、政府が政治決着をつけた、二度もやったと、こういうことは、これは尊重しますよ。尊重しますよと私もそう言った以上は、その後、この問題については、過去どう思っておったなんて言わないです。一遍尊重しますよと言いましたんですから。過去のことでありまして。それからその後、政府部内あるいは閣内で閣議などでこの問題議論したかというと、私の記憶する限りではそういう議論をしたことはないです、これ。見直しとか、あれが後、尾を引いておるとか。ただ今回、またアメリカサイドからの資料があらわれたということでこういうふうな政治問題になっておるわけでありますから、これはめいめいが、皆、考えているだろうと思うんであります。それについて議論をしたということは、私の記憶ではありません。が、恐らくは、既定方針というか、政治決着をつけたという事実を尊重するということできょうまでは来ているんではないか。新しくそれを覆すとかいうことになるならば、その議論として議論がされるんじゃないだろうか、そういうふうなことだと私は承知しております。
#137
○宮崎正義君 念を押しますと、そうしますと、今度の米国からの新しい問題が出されたものについて閣議で取り上げられたということはなかったわけですか。
#138
○国務大臣(古井喜實君) ことさらにはなかったように思いますが、しかし、当然、まずもって外務省がさらに足らぬ資料、また、ある資料を検討する、こういう努力をやっておられることはわかっておりますし、それから、関係のほかの部署においても検討しておられるということは当然のことで、わかっておりまするから、それをいまは皆見ている、時期が来たら、また論ずる必要があれば論ずるということじゃないかと思うんであります。
#139
○宮崎正義君 いずれにしましても政治決着を二回もやっている問題だということが、先入意識が手伝って、閣議でもなかなか話し合いができてないように私は思えるんですが、したがいまして、総理もいま現在今回のを含めたかどうかわかりませんけれども、資料ではどうも従前どおりいく以外にないみたいな考え方のようですから、非常に国民の方の側からしてみれば、どういうふうな政治決着なのか、政治決着、政治決着と言うけれども、政治決着というのはどういうことをやったのかということを国民に明らかにするためにも、私は、この際明確にして、閣議で取り上げられていくことが必要じゃなかろうかということを意見として、要請として申し上げておきたいと思います。
 金大中の問題につきましては以上で終わりまして、次は航空機輸入調査に関する、航空機輸入の問題につきまして、今日まで何回も衆参両議院で航特の委員会もつくられて論じられてまいりまして、松野証人喚問まで衆参両方で行われてまいりまして、それぞれの立場でいろんな質問の、各委員の質問の都度、刑事局長の明確なる御答弁と、また明確でなさそうな何かぼやかした、ぼやかされているような御答弁がずうっと繰り返されてまいりました。
 そこで私は、二十八日の参議院の航特委員会のときのわが党の黒柳議員が質問を、証人とやりとりをやっている点につきまして、その確認の意味で刑事局長にその内容を伺いたいと思うわけですが、その中にこういうのがございますが、黒柳氏が、海部氏や島田氏から直接F4Eの売り込み工作の依頼はなかったかと、こういうふうに質問をいたしますと、松野証人は、工作の依頼を受けたことはないと、こういうふうに明確に答弁をしているわけでありますが、昨日、衆議院の航特の方で伊藤刑事局長が御答弁をなさっているその中で、工作費が一に対して報酬は三であるというような面を伺っているわけですが、昨日の御答弁をなさった内容について、繰り返すようになりますけれども、ここでお伺いをいたしたいと思いますが。
#140
○政府委員(伊藤榮樹君) 昨日の御答弁に関連してのお尋ねでございますが、私は新聞の見出しになりましたような工作費が一、成功報酬が三というようなお答えはしておらないのでございます。私がお答えしておりますのは、日商岩井側から松野氏に渡りましたお金は約五億円である、そのお金を日商岩井が出した気持ちはF4ファントムのわが国への導入、これについて力になっていただく方であるので、これだけのものをお出しするのである、そういう趣旨で出しておるということを申し上げたのでございます。これに対しまして、ある委員からお尋ねがございまして、この導入決定前の受け渡し金額と導入決定後の受け渡し金額とはどうなっておるかというお尋ねでございましたから、導入決定前に渡ったものが、全体を四とすれば一ぐらい、導入決定後に渡ったのが三ぐらいという返事をしたわけでございます。また別の御質問の際に日商岩井の五億円を出しました趣旨につきまして、F4ファントムの関係と、こういうことでございますが、このお金を渡しました時期はファントム導入決定の時期の前後にまたがっておりますので、そういう点に着眼いたしますと、導入決定前はいわゆる工作費的な性格があるでしょうし、導入決定後は導入が決定したことに対するお礼といいますか、そういう気持ちがということに理屈の上でなるでございましょう、こういう御答弁を申し上げたことがあるわけでございまして、それらを総合して、先ほど御指摘のような新聞の見出し等になったんじゃないかと、こういうふうに思っております。
#141
○宮崎正義君 そうしますと、端的にお伺いして、申し上げて導入前の分は工作費というふうに端的に受けとめていいものなんでしょうか、いまの刑事局長の御答弁も総合して、そうとってもよろしいんでしょうか。
#142
○政府委員(伊藤榮樹君) 工作費という言葉の理解の仕方でございますが、日商岩井側の認識を申し上げておるわけですから、日商岩井側としては松野さんにお金を渡すということ自体が一種の工作というような感じがするわけでございます。すなわち日商岩井から松野氏に対しまして、これこれこういう工作をしてくださいというふうに依頼したということは認められないのでございまして、よろしくお願いをしたいという抽象的な陳情をいたしておりますので、そのことを日商岩井から見た場合には松野氏に対する工作の金というようなことになろうかと思います。工作費という言葉の意味の問題だと思います。
#143
○宮崎正義君 そうしますと、わが党の黒柳委員が工作の依頼はなかったかと、松野証人は工作の依頼を受けたことはない、こういう点については、これは日商岩井とすれば工作の依頼をしたというふうにとればとれるわけですね。そうなりますと、この松野氏の使途といいますか、五億円の使途の分析をどのように今日まで具体的に捜査をされたか、いろいろ複雑に分かれていると思いますけれども、五億円の使途の捜査を日商岩井とのこの捜査の中で合わせながら、捜査をどのようになさっていかれたか、その点について。
#144
○政府委員(伊藤榮樹君) まず最初にお断りしておきますけれども、日商岩井から松野氏に対してこれこれこういう工作をしてくださいというふうな具体的な依頼をしたという事実関係は証拠上認められません。したがって、松野氏が、ただいま御指摘のように、工作の依頼を受けたことはないという証言をされたとすれば、それはそれなりに間違っていないと言わざるを得ないと思います。
 一方、松野氏に渡りました五億円の使途につきましてはほとんど解明されておりません。と申しますのは、私どもが、検察当局が何ゆえこの五億円というものの存在に関心を抱き捜査を遂げたかと申しますと、すでに御承知のとおり、起訴しました案件といたしまして、マクダネル・ダグラス社からの二百三十八万ドルという妙なお金の捜査に絡んで、四十五万ドルを名目を変えて国内へ持ち込んできたことに関する私文書偽造、同行使というものがございます。それからもう一つ、当院予算委員会からの告発がございました関係の海部氏の、自分は二百三十八万ドルの問題には当時関与していなかったという偽証の問題と、この二つが訴因となって起訴されておるわけでございます。そういたしますと、二百三十八万ドルに海部氏が関与していたということを私どもは立証しなければなりません。これを立証しようとしますと、必然的にかねて日商岩井は松野氏に五億円という大金を渡していたために経理に穴があいていたと、その穴を埋めるために無理をして二百三十八万ドルという裏手数料のようなものをもらってこれを埋めざるを得なかったと、こういう事情を公判において立証する必要があるわけでございます。その関係で、果たして本当に日商岩井から松野氏に五億円が出されたかどうかということを鋭意捜査を遂げたわけでございます。ところが、松野氏に渡りましてからそれから先の問題は、ただいま申し上げました刑事訴追をしました問題からしますと、間接的な事実のまた間接的な事実になりまして、公判で立証を要する事項でもありませんし、そうなりますと、検察としてその五億円を松野氏がどういうふうに使われたか、これを調べるのは検察権行使の限度からいってできないことでございます。そういう関係で、調べの間でおのずからにしてわかったごく一部分は判明しておりますけれども、その判明しない大部分について追及的にその行くえを調べるということはしなかったと、こういうのが実情でございます。
#145
○宮崎正義君 それで、いま御答弁になりましたそのほかのものについて追及をしなかったとおっしゃいますが、これにつきましては今後時効の問題に触れていることが主体だから追及はしないというふうにお考えなんでしょうか。
#146
○政府委員(伊藤榮樹君) 松野氏が受領されましたこの五億円につきましては、当時松野氏にF4ファントムの採否を決定する職務権限がございませんので、収賄罪で言いますところの「職務ニ関シ」という要件がございません。したがって、その一点で犯罪を構成しないわけでございました。もし仮にこの五億円に関して刑事訴追の可能性があるといたしますと、そのもらい受けた金の行くえでございますとか、もらい受けるに至った動機またはもらい受けた方の心境、こういうものをつぶさに追及し確定をいたしまして、当該事件の公訴を維持する必要があるわけでございますが、これが訴追の対象にならない金の授受でございますために、当然のことながらそれから先を追及するということは捜査権の域外の問題であると、こういうことになったわけでございます。
#147
○宮崎正義君 二十八日の証人との黒柳氏のまた質疑の中の問題をもう一つ取り上げてみたいと思います。
 黒柳氏がこのように質問をしております。衆議院では故高畑氏との古いつき合いから献金を受けたと証言しているが、五億円の出所が高畑氏の意思であったとなると、日商岩井の航空機事件のすべての元凶は高畑氏ということになる。いまもって個人献金であると考えているのかと、こういう質問に対して、松野証人は、高畑氏とのつき合いがなければ政治献金も流れてこなかったろうし、海部氏とも知り合うことはなかったと思うと、また安易に政治献金をもらうこともなかったろうと、これは不思議な因縁のようなもので、これに私が心を許したことは事実である。こういうふうにこの高畑氏との関係を非常に濃く結びつけているわけでありますが、この問題につきまして報じられているところによりますと、刑事局長は、天億円と高畑氏は関係ない、日商は五億円の捻出に苦心をしたが、知っていたのは海部のほか西川社長、島田常務それに財経本部の者だと、高畑氏が関与していないことを御答弁をされたということになってまいりますと、何かこの中で高畑氏と島田氏はもう故人で亡くなっておられますから、そうしますと法務当局の方は、この供述以外に何かの証拠をお持ちになってこういうふうなことを御答弁なさっているのかどうか、この点について。
#148
○政府委員(伊藤榮樹君) 私いつも御答弁申し上げておりますのは、客観的な事実に基づいて御報告を申し上げておるわけでございまして、ただいまお読み上げになりました私のお答え、それはそのとおり申し上げていると思います。もちろん日商岩井側の五億円のお金の出し方あるいはこの五億円というものについての認識につきましては、日商岩井の当時の関係者で現在生存しておる人たち、そういう方たちからも話を聞いておりますし、それからいろんなこの支出関係の経理操作あるいは使いました預金口座とかあるいはそれだけの金を出して引き合うかどうかという採算を見ましたようなそういう資料とかそういうものが残っておるわけでございまして、それらのものを総合してお答えをしておる次第でございます。
#149
○宮崎正義君 そうしますと、もう一点その四十二年の春ということと四十二年の秋ということで二つの事柄が言われておりますが、この辺の間の事情について御説明を願いたいと思います。
#150
○政府委員(伊藤榮樹君) 私は日商岩井から松野氏に渡りました五億円、これの受け渡しの時期が昭和四十二年秋から昭和四十六年終わりごろまでの間であると、こういうふうに御説明申し上げておるわけでございます。
 一方松野氏は議院における証言の中で、四十二年の春に二、三百万円の何といいますか、陣中の事後見舞いというのでしょうか、手みやげというのでしょうか、を持って海部氏がやってきたということを御証言になっておったわけでございます。したがいまして、宣誓の上、そういうことをおっしゃっておりますから、そのころ二、三百万円を受け取られた事実はあると思います。しかし、これは五億円の外の問題であると、そういうふうに認め、かつお答えをしておる次第でございます。
#151
○宮崎正義君 与えられた時間が短いものですから、もう少し詰めていきたいんですが、譲りまして、そしてもう一つは、二十九日の衆議院の法務委員会において、松野氏の証言にある一万一千ドルの海外での授受は五億円の枠外の金であると答弁をされていますが、この海外での松野氏に流れていった金については数回ということ御答弁にあるように思いますが、これは捜査中における資料等で、西暦何年何月何日というふうな具体的な数字と、そして、どこでいつというふうな明確な資料をそろえておられますかどうか。
#152
○政府委員(伊藤榮樹君) 海外で渡りました分につきましては、日時、場所、金額、いずれも資料ではっきりいたしております。で、これらにつきましては、先ほどもちょっと申し上げましたように、海部氏の偽証事件の立証の段階でこれを明らかにしてまいらなければなりませんので、いましばらく明らかにすることを御容赦いただきたいと、こう思っておるわけでございます。
#153
○宮崎正義君 そうしますと、五億円プラス三百万、プラス一万一千ドル、そのほかに奥さんがもらったというお金は、五億円プラスでございますね。
#154
○政府委員(伊藤榮樹君) 松野氏の御証言の中で出ておりました、奥さんがロンドンで一千ドルぐらいでしたでしょうか、それから、松野氏自身がアメリカへ行かれたときに五千ドル、五千ドルというお話が出ておったようでございますが、それは、その場所とか、受け取られた方とか、金額とか、そういうものから判断いたしますと、五億円の外のもののように思われます。しかしながら、その点についてもう一歩突っ込んだ御尋問がございませんでしたので、確言はいたしかねますが、ただいまの申し上げたような内容であるとすると、五億円の外であろうというふうに見ております。
#155
○宮崎正義君 国税庁の方、どなたか……。
 今回の衆参両院の航空機輸入調査の特別委員会における松野氏の証言で、わが党の坂井議員がいろいろ質問をしておりますが、この中の質疑の中で、資産形成あるいは所得についての問題点、これを証人の喚問があった後、どのように対応なさっておられるか。しかも、松野氏は、衆議院での証人喚問のときでも、五年前でも、また六年前でも追徴を受けているというふうに証言をしているわけですが、こういうふうな事実関係につきましても、今日の段階で追徴しているようなこと等含めて、調査はどういうふうにやっておられるか、この点について伺っておきたいと思います。
#156
○説明員(小野博義君) お答え申し上げます。
 今回の事件でいろいろと問題になってる方々につきましては、私ども国税当局といたしましても、いままで各種の資料、情報等を整備、検討してきたところでございますが、このほど検察当局の捜査が終了したというようなこと等から、この間に報道されました事項とかあるいは証言等も参考といたしまして、税務当局といたしましては早急に見直し調査を行いたいと考えているところでございます。
#157
○宮崎正義君 もう少しやりたいんですが、時間が来ましたので、今後の対策といたしまして大臣にお伺いしたいんですが、首相が、私的諮問機関として航空機疑惑問題等防止対策協議会を設置したい、そして、将来にわたってこういうふうな問題については処置をしていきたいというふうな答弁もありましたし、発表にもなっておりますが、この協議会設置原案をおまとめになったのは古井法務大臣じゃございませんでしたでしょうか。また、そのねらいというもの、これを構想されたそのねらいというもの――申し上げるまでもなく、かつての三木内閣当時のロッキード事件の再発防止懇談会等もありましたけれども、いつの間にか何となくぼやっとしてしまっているような感覚を受けてしょうがないんでありますが、またさらに今回は改まってそういう協議会をおつくりになったと、このことについては私は非常に賛同をするものでありますが、どういうふうなお考えのもとに、今回の事件を通して、今回の事件を顧みながら、今回の事件をどういうふうに受けとめになっておられるか、それに対して自分がこういうふうな原案をまとめていったんだというような、その間の所信、所見を伺っておきたいと思うんですが。
#158
○国務大臣(古井喜實君) 協議会は総理の考えでつくったものでありますので、私がどうこうということではないわけでありますが、総理もだんだん、これは本気で考えなきゃいかぬという気持ちを強くしているとまあ私は見ております。
 私としましては、きょうまでのいろんな経過を見ておって、国民の間の政治不信が高まっておると見るんです。政治不信が高まっておると私は憂えております。で、まことに率直なことを申しますけれども、私はそう思っております。それで、まあああいう、こういう出来事が何回か繰り返して起こったということ自体が政治に対する不信を非常に高めたことは申すまでもありません、そのこと自体が。それから、起こりました後、この問題に対する処理、この処理の経過というものを国民が見て、またこの政治不信を加えたんじゃないかと私は憂えておるんです、実を申しますと。そこで、一政治家の問題とか、それもありますけれども、そういうことじゃない、政治全体の信用を失うことが情けないと私は思っておるんです、実を申しますと。
 で、それについては反省してみなきやならぬ点があります。われわれの面接関係する面においてもですね、アメリカから種が出てから初めて始めたんじゃないか、もう手おくれじゃなかったかと、何だと。まことにそう言われりゃあそうですよ。なぜああなったのかと、もっと早く始めていれば時効も何もなかったんじゃないかと、そういうことにも通ずるんですね。何でああいうことになったのかも反省してみなきやならぬ。これは捜査当局の責任なりや、日本の制度の責任なりや、これも考えてみなきゃ同じことを繰り返すと私はそう思うんです。そういうことも含めまして、しかし与えられた条件のもとでは、率直に言っておくれた、始めたのが遅かったという点はありますけれども、私は捜査当局はやるだけやったと、そう思っております。条件のもとでは本当にやったと私は思っております。で、そう思いますけれども、じゃそれだけで割り切れたかというと、この結末を見てなかなか国民は得心しないじゃないかと思いますね。そこでいまは捜査を結了しました後は、もっぱら国会がどうされるかを国民が見ていると思うんです。国政調査を見ていると思うんです、国民は。ここに注目していると思うんです。これに対して国民が満足しているとお考えになっているか、不満だとお考えになっているか、これは国会の皆さんも、私も国会の一員としてよく考えてみなきゃならぬ問題点だと、そう思っておりますが、この点をどう判断したらよいか、これは国会の人としてまた全体として考えなきゃならぬことですから、いま政府の中におります一員としてかれこれ意見を言う問題じゃないと、言いたいことは山ほどありますけれども、私は言うべき立場じゃないと思っております。ただ一つ関連する面から言わしていただきますれば、法律の責任は重いけれども、政治の責任はもっと重いと、法律より政治がより大きい問題だと私は思うんです。しかるところ、法律上の責任論の追及はやかましいけれども、政治という観点は非常に軽いように私は思えてならぬのです。法律の問題ばかりになってしまう。これは法律だけですよ。政治はもっとより大きいし、より重いものじゃないだろうかと、国民はそこに何かを感じているんじゃないだろうかと、こうしきりに思うんです。たとえば政治献金でありましても、これは法律的には明瞭にシロでしょう。でありましても巨額な政治献金がある人に行ったと、しかも環境、条件はこういうことであったと、そういう事実を全体を見て政治家のあり方として国民は、あああれが政治家のあり方だと思っているのかと、その政治献金が巨額なものがまあ貧乏な人にこれをくれてやったんだと、まあ義賊のようなね、まだ国民は、おかしな話だけれども、何か許す気持ちも起こるかもしらぬが、個人――自分の政治活動だけに使いました、あるいはわずかは、そこはよくわからぬけれども、私的なことに使いましただけで、巨額の政治献金をもらいましたと、こういういろいろな条件のもとでですね。こういう事実を見て一体政治家のあり方としてどうなんだという判断はありそうなものだと私は思う。国民はそれを求めていると思う。しかるにかかわらず、クロかシロか、賄賂性があるかないかという法律論の延長のようなことばかりで国会が終始されるということは、私はちょっと言い過ぎですよ、これは。勘弁してもらわぬといけませんけれども、国民が満足するだろうか。アメリカでウオーターゲート事件が起こったときに、法律の問題は消してもいいというんだったんですよ。政治問題として片をつければ、罪勘弁してやってもいい。軽いんですよ、その方が。より国会の大事な問題として考えているんですな。私はこういう辺について、私というんじゃありません、国民の見る目がどういうものであるかということに国会が答えられないと、この一連の経過で国民が政治に対してどういうふうに思うか、またこれ憂慮しております、実は。
 こういうことは大変どうも言い過ぎて恐縮でありましたけれども、どう思っておるかと言われますもので、言い過ぎがあったらひとつ御容赦願いたいと思っております。
#159
○橋本敦君 私はきょうは航空機輸入問題をめぐって幾つかの質問をしたいと思いますが、まずDC10をめぐる問題について質問をしたいと思うのです。
 いまDC10はシカゴの空港における墜落という問題がありまして、全世界がこの点を非常に注目をしてその安全性の問題に大変な不安と危惧を抱いております。日本でも日本航空がDC10を導入しておるわけでありますが、まず運輸省にこのDC10の安全対策について根本的にはどのような対応をお考えか、そして運航許可ということが日本政府はやられているようですが、世界的には運航の全面停止ということが当面重大な問題として提起されておる。こういう中でこのDC10の安全対策についてまず最初にお伺いをしたいと思います。
#160
○説明員(森永昌良君) お答え申し上げます。
 シカゴの事故が起こりまして早速にアメリカの航空局は、この事故の原因が主として主翼とエンジンをつないでおります途中の支えているパイロンと称する部門の中のいわゆるエンジンの発生する推力を伝達する機構の中にございます二本のボルトの折損によるという判断をいたしまして、このボルトに重点を置いた点検を指示する、専門用語で言いますとAD、日本語で耐空性改善命令というのを二十九日、これ日本時間でございますが、深夜にまず出しました。この改善命令は、本来はアメリカの国籍の飛行機に対するものでございますけれども、私どもとしても事の重大性にかんがみましてこれに準じた措置をとることにいたしまして、直ちに日本航空に対しまして指示を発しまして、現在日本航空が所有しております同型九機――国際線用が三機、国内線用が六機ございますが、これに対しまして同様の点検を二十九日じゅうに行わせることといたしまして、さらにわが国としてのアメリカのADに相当するTCDというのを発令したわけでございます。これに伴いまして、日本航空は二十九日の夜までにすべてのボルトの点検を完了いたしまして、現在ついておりましたボルトを全部新品に交換をいたしたわけでございます。取り外した部品についても、ボルトにつきましてもその後磁気探傷検査を現在かなりの程度やっておりますが、いままでの報告を受けたところ一つも欠陥のものはないということでございます。ところが一夜明けまして、この世界じゅうに広がったいわゆるDC10についての点検の結果、アメリカ国内最大の航空会社でございますユナイテッド・エアラインがシカゴ空港で同社の飛行機を点検しておりましたところ、DC10の中の一機にいわゆる先ほど申し上げましたパイロン構造の問題のありましたボルトの位置より少し後ろのボックス構造になっております水平の部分の板に約二十インチの長さのクラックがあったと、さらにはその板に大体百個ほどのボルトがついておりますが、径が約八ミリ程度、長さが二十七ミリ程度でございますが、その中で二十七個が脱落しておった、さらには六個に緩みがあったということが発見されまして、これをFAAに通報したものですから、いやこれは大変だということで、今度はやはりボルトが切れる前の段階に、むしろボックス構造のそういう亀裂なりボルトの脱落、緩みなりがまず最初に起こって、その結果としてボルトが切れ、さらにはエンジンが落ちたのではないかというふうな考え方に少し変わりまして、二番目の命令として、今度はそういう方向に重点を置いた再度のADを出したわけでございます。これが日本時間の昨日の午前二時でございまして、二時の段階にはどういうふうに整備していいかどうかFAA自体がわからないで、まあとにかくとめなさいと、そのうちに点検の方法は日本時間の午前中に少なくともお知らせしますという状況でございまして、私どもも朝そういうことを連絡を受けまして、昨日の朝から全機とめました。たまたま当時ニューヨークからアンカレジに一機飛んでおりましたけれども、これは途中ちょうどカナダの上空でございましたので、九時過ぎにアンカレジまでは飛ばしまして、アンカレジでおろしたわけでございます。そうして大体昼ちょっと過ぎに具体的なADの中身が入りまして、これに基づきまして昨夜半までかなり時間をかけまして全機について二回目の、今度はその二回目の重点事項についての点検をすべてやったわけでございます。もちろん法的にも私どもいわゆるADに相当するTCDを発令しまして作業をさしたわけでございます。そこでいろいろ調べました結果、一機実はこの機会にほかの整備事項をあわせて施行している飛行機が成田にございまして、これはいま現在まだいろんな整備をやっておりますけれども、それを除く八機につきましては、昨日の夜半すべての点検が終わりまして、八機のうちで三機について若干のふぐあい事項が発見されましたけれども、これはすべて直ちに修理をいたしまして完全な状態になったということを昨夜半、正確にはけさの午前一時でございますか、私ども会社の幹部に来てもらいまして、十分その辺を確認した上でけさ早朝からのフライトの再開を許したわけでございます。
 そこで、いま先生からの御指摘で、外国ではみんな全部とめているのに日本だけ飛ばしたじゃないかというような御指摘が若干ございましたけれども、これは時差のせいでどこの国も夜が明ける時間が違いますので、飛び出す時間は違いますけれども、私どもが得ている情報によりますと、まだ飛行機をたくさん持っているところではすべての点検が終わってないところもございます。また、日本航空みたいに少ない機数のところは、比較的早く手の打ち方の早いところは終わっているところもございますが、いま現在かなりの部分が飛んでおりまして、日本航空のいま一機整備中、これは別の整備を主としてやっているわけでございますが、それ以外に外国ではユナイテッド航空で例のカナダで発見された一機、それ以外にアメリカンで一機、コンチネンタルで二機、それからフィリピン・エアで一機、さらにはベネズエラ・エアで一機、合計七機が現在グラウンドしているというふうに情報を受け取りました。それ以外の飛行機は点検が終わり、またフライトを始めているというふうに聞いております。
 一応いままでの経緯はこのとおりでございますが、あくまでもこれはアメリカのADに基づく私どもの同様の指示によって取りあえず緊急対策としてやったわけでございまして、そのADの中にはさらに十日もしくは百時間ごとに繰り返し点検するような指示が出ておりますし、さらにはベアリングの中の一部構造のものについては飛び出し始めました後、さらに十日もしくは百時間以内にある部品を新品とかえなきゃならぬという指示も来ておりますし、まだあくまでもこれで終わったわけじゃございません。引き続きそういう点検をしていかなきゃならない。それについては十分私ども指導監督をしてまいりたい。しかし、それはあくまでもいままでの説明でおわかりのように、アメリカのFAAからの情報あるいはそのFAAの情報のもとになっているアメリカの国家運輸安全委員会、そこのいわゆる事故原因調査の方から来ている、それを待っているだけじゃいかぬじゃないかという御指摘もあろうかと思いますので、私ども、それ以外のルートを通じ、いろいろ情報をたくさん、少しでも取り入れて私ども万全を期しておったつもりでございますが、やはりこういう事態も起きましたので、もっと漏ればないかというようなことでわが国独自の緊急のチェックの仕方をいまいろいろ検討しているところでございます。いずれにしても、まだ原因自体がアメリカのその専門機関によって調査の緒についたばかりでございまして、先ほど御説明しましたように、最初はボルトかと思ったのが次はこういうことになったということで、また三番目のことが起こる可能性もあるわけでございますので、その辺も十分注目しながら今後速やかに対応していって、利用者の方々に御不安が起こらないように私ども万全を期してまいりたいと思っております。
#161
○橋本敦君 エアバス商戦が華やかであった、そこに登場したのは問題のDC10、ロッキードのトライスター、ボーイングの747LR、こういう機種が華やかに登場したのですが、今日までこれらの三機種が飛んでいる中で事故を起こしたのは、DC10は墜落事故は一体何件あったか、その他の747、トライスターはどうか、これはどうなっておりますか。
#162
○説明員(森永昌良君) 大変申しわけございませんが、わが国のDC10は昭和五十一年から五十二年にかけまして六機、さらには昨年の暮れからことしの春にかけまして三機、合計九機ございまして、いずれもおわかりのように比較的新しい年次に入ってきております。その後の運用状況でございますが、きわめて順調に運用いたしておりまして、いわゆる機材の品質を評価する国際的な指標として定時出発率というのがございます。要するにタイムテーブルに示された時刻に十五分以内のおくれでスタートすることを言うわけでございますが、それがほとんど一〇〇%に近い九九・幾らという形でずっときているような機体でございまして、いわばそういうことでございまして、事故はそういう意味で日本では起こっておりません。
 ただ、世界的に言いますと、大きなものとしては、パリ郊外で起きましたトルコ航空の事故がございます。これは御承知のように地上の整備員が貨物ドアを閉めるときに十分閉めなかったために中の減圧が起こり、それによって客室と貨物室との境の気圧の差ができまして、床が抜けて、その床の下を走っておりました操縦系統のリンク装置がおかしくなって墜落をしたわけでございますが、これが大きな事故でございます。
 それからもう一つは、最近のものとしては、ロスアンゼルスで離陸滑走中にタイヤがバーストしまして滑走路から逸脱いたしまして途中で炎上した大きな事故がございまして、具体的にはそれ以外にいわゆるDC10特有のという形のものは、いわばトルコ航空、この類似の事故がちょっと前にアメリカン航空でも起きておりますけれども、それ以外にいわば今度の事故みたいなものは全くいままでには記録されておりません。
 それから、ロッキード、トライスターと比べてどうかというような点については、いま資料を持ち合わせておりませんので、ちょっと正確には……
#163
○橋本敦君 いや、比べてじゃなくて、トライスター、747が墜落事故を起こしたという事例御存じですかと……
#164
○説明員(森永昌良君) その機材のちょっといま細かい資料を持ってきておりませんのであれでございますが、日本ではジャンボにつきましては墜落事故というのは……
#165
○橋本敦君 日本でないのはわかっているのです。
#166
○説明員(森永昌良君) はい、ちょっといま正確にお答えできませんので……。
#167
○橋本敦君 率直に言ってDC10の事故が、これが一番やっぱり具体的に出てきているのですね。それで、今回の事故についてもある専門家の話では、エアバス商戦時代に入ってDC10、そして対抗機としてトライスター、そして747、これが出てきた。で、今度の事故についても、実は構造上の欠陥があるのではないか、そのことをはっきり調べるためには、試験飛行の段階あるいは工場テストの段階、いろんな段階でとられた十分なデータの集積が、これが不足していたのではないか。それはなぜかといえば早くエアバス商戦に乗り込んでいくために、早く完成機を飛ばすために、そういう基礎的なデータ収集が実は手が抜かれたのではないかということも含めて、基本的に構造上の欠陥の有無を、この際思い切ってDC10については検討すべきだという専門家の意見がありますが、私はこの意見は今後の問題として傾聴するに値する意見だと思う。いかにお考えでしょうか。
#168
○説明員(森永昌良君) 先生御承知のように、この飛行機はアメリカのマクダネル・ダグラス社でつくられた飛行機でございまして、それぞれそのつくられた国の政府がそこの国の所属する会社でつくった飛行機につきまして、いわゆる、安全に空を飛べるかどうかのチェックをするわけでございます。アメリカの場合は、連邦航空局長官の定める連邦航空規則というのに細かく規定されておりまして、わが国では航空法の施行規則に当たるものでございますが、航空機の安全性のみならず、運航の問題、航空交通管制の問題、飛行場無線施設の問題あるいは航空の技術的な面のほとんどをカバーする世界では一番いわば確立した規定になっております。そこで、わが国を初め、フランス、西ドイツ、オランダ等も、自国で航空機を生産している国はほぼアメリカのこの耐空性基準を自分の国の耐空性基準として採用しているほど権威があるものでございます。一時はICAOがそういう役を果たした時代もございましたが、いまは全くそういう状態になっておりませんで、いわば世界の航空機をつくる基準がアメリカの連邦政府のいわゆるFARと言っておりますけれども、これをもとにしていると、いわばその国でこの基準に基づいて、プランニングの段階から、テストフライトの段階からあるいはその量産に至るまで、詳細に各般のチェックをいたして、その上で世界各国にデリバリして、現在すでに二百七十機ほどが、四十二、三の会社で運航されているわけでございまして、すでに初号機が飛び始めましてから、四十六年でございますので、八年ほど経過しているわけでございまして、その間いろいろあったかと思いますけれども、いわば今回のように大変な事態になるようなことはこの飛行機についてはなかったように私どもは理解しておりますが、いまのトルコ航空の問題が当時ちょっと、トルコ航空の問題を除きましては、これほどの大きな問題はなかったわけでございますが、何分YS11を私どもの国で開発の段階から市場に売り出すまでにやったようなものは、みずからの国の政府の責任においてやっておりますけれども、これはやはり何といってもアメリカでやったことでございますので、私どもちょっと十分な自分の方でやったようなきめの細かさで的確なお話をできないのは大変遺憾に存ずるところでございます。
#169
○橋本敦君 御丁寧な答弁で長くなりましたが、要するに、わが国独自の厳しいチェックができないという点もあるということはおっしゃったとおりですが、それだけにいま私が指摘したようなプランニングからテストフライト、そしていよいよロールアウトされて飛んでいくと、そういう段階での収集したデータ全部を含めて、構造上の欠陥の有無を今後追求するという必要があるということははっきりしているのじゃないですか、その点だけ。
#170
○説明員(森永昌良君) 今回の事故を契機に、FAAは世界じゅうに向かって再度にわたりADを出したわけでございますし、それをもとに各国政府がそれぞれの国の所属する航空機について徹底的な検査をいまやっているわけで、そのデータがすべてこの数日中にワシントンに入ると思いますし、それをもとに新たなまたいろんな全般的な情報が入るかと思います。さらには先生の御指摘の、同じ時代にいろいろ開発を始められましたフランスのエアバスA300あるいはロッキードのトライスター一〇一一、この種のものにつきましても同様の指摘がいろいろなされております。したがって、この種のものにつきましても、私ども極力現在、日本航空、全日空等の航空会社の航空機製造メーカーに駐在している技術員等を動員しまして、いま精いっぱい情報の収集に努めているところで、決して私どもDC10だけにとどまらず、この際、私どもとしてはジャンボ、それからトライスター、さらには近いうちに入ります東亜国内航空のA300含めて、いわゆるワイドボディ、第三世代のジェット旅客機といわれるこの種のものについて、全般的なやはり新しい視点で、技術的な面から徹底的に安全性の追求を見直すべきときではないかと、十分自覚してやろうと思っております。
#171
○橋本敦君 どうしても民間航空機、まあこれは商業ベースでプランニングから生産、売り込みと、こう入っていくわけですから、いかに厳しいチェックをアメリカがやったと、こう言っても、こういう予測をし得ざると言っていいような事故が起こってくる、構造上の欠陥という問題もしきりに指摘されているわけで、この点が民間ベースで航空機売り込み商戦に絡んで転機があったのかどうかも含めて、徹底的に調査をやってもらいたい。
 そこで価格の問題に移ってまいりますが、運輸省が資料としてまとめて、私がいただいております航空機の購入状況の資料、これを見ながらちょっと質問をしたいと思うのです。運輸省もおわかりと思いますから、資料のまず一枚目を見ていただきたいと思うのです。これによりますと、DC10の価格でありますが、四十九年六月十二日に契約をして、五十一年導入、最後の六機目は四十九年六月に契約をして五十一年導入、こうなっております。これの価格はまず一機目が八十三億、そしてその次が八十七億、八十八億、八十七億、こうなってまいりまして、DC10一機の価格というのは八十数億という非常に高価な額になっております。同じころに契約をされ、導入をされました日航が導入しておりますボーイングの747LR、これの価格を見ますと、同じく八十八億、あるものは八十三億、つまりボーイング747LRとDC10、この価格がこれが大体同じぐらいだと、こういうことになるわけであります。もう一方、トライスターでありますが、運輸省が同じく調べていらっしゃると思います、この表にはございませんが、L一〇一一トライスター、これを見ますと、四十八年契約で一機、四十九年契約、そして五十年契約とずっとたくさん入ってくるわけでありますけれども、四十八年契約分が五十一億三千百万円、四十九年契約になりますと五十四億三千万円、また五十一億、五十億の分も四十九年度にあります。五十年度導入で五十六億円あるいは五十五億円となります。だからしたがって、トライスターの価格は大体五十億円少々、ところがこのDC10は747に匹敵する八十数億という高価なものであります。ところが御存じのように、このDC10はエンジンが三基、747はエンジンが一基多い四基、そしてキャパシティ――搭載人員も約百名ぐらい川が多くなる、こういう大きな飛行機であります。私が不思議に思うのは、トライスターよりも一機当たり二十億円も高い、そして同じ日航が導入したボーイングの747LR、これと比べるとエンジンも一基多いし、搭載人員――キャパシティも百ぐらい多いのにかかわらず、八十数億という値段がこれがほぼ匹敵をしておる。なぜこのDC10という飛行機はトライスターに比べて三十億も高く、大きな飛行機の747と同じくらいの価格になっているのか、運輸省としてはこれはどうお考えになっていらっしゃいますか。
#172
○説明員(早川章君) 先生ただいま御指摘の資料につきましては運輸省から提出したものでございまして、このような数字であることは御指摘のとおりでございます。
 そこで、DC10と、ことにLRあたりの値段が非常に接近しているではないか、機材、あるいは大きさの相違、あるいはエンジンの数の相違にかかわらずこのような形になっているということでございますが、われわれの方といたしましては、まずその747の購入機数といいますのは、日本航空はこれはたしか昭和四十四年から入りだした航空機と考えますが、具体的には四十一年の段階で747というのは購入を決定いたしておりまして、その後、機数にしまして約三十機を超えるいわゆるシリーズで購入することが決定されている飛行機でございます。それに対しまして、DC10につきましては、恐らくこの四十九年度段階でLR747を補強する機材として購入を決めまして、現在までわずかに六機ほど入ってきていると、こういうことでございまして、そのタイミング、あるいはその購入の規模、そういうものがまず第一に作用をいたしたかと思います。
 さらに、このDC10につきましてはコックピットの仕様をこの747に合わせる等の、いわばパイロットが同じようなコックピット、操縦席の座りでいろいろな機器の配置状況というものを把握した方が結構だろうということでございますので、そういうような形のいわゆる仕様の変更その他を行っております。
 さらに、この昭和五十一年時点になりますと、いわゆる為替の問題でございますけれども、約三百円ぐらいにまで、一度オイルショックの後に円が高くなりました後、また安くなった段階でございまして、こういうもの、これは取得価格といいましても、いわゆる試算価格といいまして試算に計上いたした段階の価格でございますが、その段階で円に換算する率が高くなっている等の問題があろうかと考えています。したがいまして、たとえば、この八十七億の八五三五の機材等につきましてはこの形になっておりますが、このことしの五十四年の四月四日に受領いたしました九号機というのがございますが、これちょっと申し上げますと、機体のといいますか、取得価格そのものが七十五億円程度で換算されている。まあこれはいわゆる換算の問題もございますけれども、そういうような形で、必ずしもこの八十七億という形のものがDC10のストレートの価格であるというふうにならないのじゃないかと、そういうような点で、必ずしも割り高であるというふうには考えておりません。
#173
○橋本敦君 その認識が問題なんだね。五十一年の例は私は指摘してないから例にならないですね。どっちにしても客観的に割り高であることはこの価格の数値自体から明らかなんですよ。
 そこで、運輸省に聞きますが、この日航はダグラスからDC10を入れるについては商社を介在せずに直接契約で購入するというたてまえで、また、事実そのようにした、これは間違いありませんか。
#174
○説明員(早川章君) 御指摘のとおり、そのとおりでございます。
#175
○橋本敦君 運輸省は航空機の価格について日航が直接契約で導入する場合、契約前に価格のチェックということができますか。また、やっておりますか、契約直前に。
#176
○説明員(早川章君) 航空機の価格につきましては、先ほども御説明いたしましたとおり、仕様の問題、あるいはどの程度の、たとえば座席等のいわゆるデラックスさにするかとかというような種種の問題がございますたびに、非常に専門的にわたるということでございます。日本航空につきましては、他の民間航空会社と違いまして、いわゆる資産の取得、重要財産の取得につきましてはわれわれがもちろんチェックをしているところでございますが、そのチェックは、その価格というもの等の問題に至るのではなく、いわばそういうものに対しての予算上の日本航空の収支予算、あるいは資金計画その他との絡みでそういうことが可能かどうかという程度のチェックでございますので……。
#177
○橋本敦君 わかりました。だから、したがって運輸省としては、日航がDC10を四十九年に契約して、基本価格幾らで入れると、そういう契約そのもののときに価格をチェックするという、そういうシステムではないということははっきりしていますね。
 そこで二枚目の資料を見てください。二枚目の資料を見ますとはっきりするのですが、飛行機の購入はまず契約で基本価格を決めます。ところが、オプションがあり、契約のときがあり、それから引き渡しの時期と、こういうように延びてまいりますから、当然そこでその飛行機の購入には価格の調整条項というのが当然ついてまいりますね、通常エスカレーション条項という。そうしてそういうエスカレーション条項があって、片方でまた、売り込み側の会社がいろいろな値引き条件を提示するという複雑な構造になってまいるわけですが、この価格調整条項、ここのところがこのDC10については実に大きな疑問がある、私はそう見るのですね。この二枚目の資料は、日本航空の社内資料、私が入手をいたしまして、その社内資料をここにこのように写してコピーとして差し上げたわけでありますが、初と比べていただきますと、まず一番上の、四十九年導入の最初の747、これは価格調整がこれが金額がそこに書いてございますが、一三・九%の上昇率という係数になるのです。後は一四・九、一三・九。ところがDC10を見ていただきますと、最初のJA八五三〇番号の機は、この価格調整が二七・九%、その次の飛行機は二七・九、JA八五三二という飛行機になりますと、三三・二%。
 そしてあとその三枚目ですが、八五三三機になりますと三三・二%、後は三三・一%、三三・一%。ところが747の方はこのような二十何%、三〇%、こういうようなエスカレーション指数はなくて、全部一三%、一四%台と、こうなっている。このエスカレーション指数というのは一体どこからとるか、これは運輸省、百も承知でありますけれども、これは航空会社が勝手に計算をしてエスカレーション指数をとるわけにいかない。御存じのとおりにアメリカの航空会社との契約、たとえばトライスターの契約書を私ここに持っておりますが、これによりますと、この契約指数は米国労働省労働統計局発表の労働者の一日当たりの平均時間給、これのアップ率をとる。そしてそれに補正係数として工業生産、卸売価格、WP指数という名称でこれをとっていく。だからこの指数のとり方は、アメリカの航空会社が、ダグラスであれロッキードであれボーイングであれ、日本の航空会社に売るときにこの価格調整として出してくる指数は、基本的にアメリカの政府の公的資料を基準とするという契約になるわけですから、本来同じ年度ころの同じ導入であればこれが片や十数%、片や三〇%、これだけふくれ上がるというのは、これは疑問がある。トライスターの場合はこの契約書によりますと、大体十数%でとまっております。常識的な線ですね。そこでなぜDC10だけこんなに高いエスカレーション指数をとって価格を大きく引き上げねばならぬのか、これは重大な疑問がある。これについて運輸省は調査をされたことがありますか。調査しているか、していないか。
#178
○説明員(早川章君) ただいま先生の御指摘、私ども具体的に調査をいたしたわけではございません。ただし、申し上げられますことは、このエスカレーション条項といいますのは、契約のタイミングでその引き渡しまでの値段の変更を見るわけでございますので、契約年月日が、たとえば747のこの八一二四の場合でございますと、四十九年の三月に契約いたしまして、その十一月には引き渡すということでございますので、具体的に言いますと、その飛行機の契約から引き渡しまでの価格の変動を生ずるであろう予定期間というのはわずかに八カ月程度と考えられますが、それに対しまして同じく四十九年の六月に契約いたしましたこのDC10につきまして申し上げますれば、これから約一年と十ヵ月余を経過する時点で引き渡す形が予想されていると。その間に、これはその時点その時点で先生御指摘のような労働者の賃金といいますか、アメリカの賃金その他のアップ率というのはインフレ期にあるかどうかということで違ってくると思いますが、その期間、予定する引き渡しまでの期間の、長さによってやはりこれは変動するものであろうかと考えております。
#179
○橋本敦君 その点、私は一定の期間でとりますから変動はないとは言いませんが、高過ぎるというのです。八カ月ですよ片方は。片方は一年数カ月でしょう。そんなに三年も四年も違わないのですよ。違わないのにこれだけ大きな数字があるというのは、たとえば労働者の賃金上昇率を六%、七%ととっても二年で一四%の違いが出てくるということですからね。それにしても余りにも違い過ぎると。ここに重大な疑問がある。DC10がこんなに高い飛行機であるというのはこの価格調整、ここのところのエスカレーション条項で非常に価格をアップしているという、こういう疑問がある。運輸省はこれを厳密に調査してないというからそれ以上の答弁は期待しませんが、ここに問題がある。
 ところで、このDC10を日航と直接取引だとこう言いながら、ダグラスはこの代理店である三井物産にこの日航に売った六機、これに関連をしてコミッションを支払っていることが明らかになりましたが、伊藤刑事局長、これは御存じと思いますが、国税庁も国会で答弁しましたが、九十万ドルが三井物産に入っておる。これは間違いございませんか。
#180
○政府委員(伊藤榮樹君) 一機十五万ドル、六機合計九十万ドルが三井物産へ手数料として入っております。
#181
○橋本敦君 いま伊藤刑事局長御答弁のように、JALが直接取引したにかかわらず、言ってみればただ取り口銭とよく国会でも言われましたが、三井物産に九十万ドル、一機十五万ドルで入っている。ほかにDC9を売り込んでおりますから、それも含めますと百四十万ドルという金が三井物産に入った。
 そこで、このDC10を売り込むについて飛行機の価格をこのように高くして日航に買わせて、そして莫大な利益をそこに含んで、そして三井物産は何もしないといったら悪いのですが、いろいろ工作をやったようですが、三井物産に日航と運輸省に隠して九十万ドルを支払う、こういう問題が出てくる。利益づくりの仕掛けの一つがここにあるのではないか。運輸省は、三井物産に九十万ドル、DC10六機日航導入で入っている事実は最近まで知らなかったことは間違いありませんね。どうですか。
#182
○説明員(早川章君) 御指摘のように、私どもが監督いたしております範囲は、日本航空が購入いたしました航空機、購入の最終段階から具体的に飛行機が飛んで行くという過程を監督いたしておりまして、その間メーカーの方からその商社等の代理店、メーカーの側の代理店にどのような金銭の授受が行われたかについては全く関知いたしておりません。
#183
○橋本敦君 知りませんね。
 だから、ダグラスにとってみたら契約のいろいろな交渉から、それからどこでデリバリーするか、あるいはそれをどのように日本航空に納めるか、こういったことも含めて一切ダグラス自体は三井物産の世話にならなくてもいいわけですし、日航へ私も調査に行きましたが、一切世話になっておりませんと、全部自分のところの職員を派遣してデリバリーを受けて日本へ持ってくるのですと。日航の費用と負担でやるのです。こう言っていますよ。だからまさにダグラスにとっては、本来この契約が直接取引であるならば支払わなくていい金を三井物産に支払っていることになる、九十万ドルが。DC9を含めれば百四十万ドルですよ。これはなぜ支払ったのかというと、私は、三井物産があのエアバス商戦の渦中で、このDC10を日本のエアラインのどこかに売り込む、JALを含めてどこかに売り込む、この工作を三井物産にやらせた。三井物産と一緒にやった。三井物産はその工作を一生懸命やった。だから、したがって、その工作費用ということで九十万ドルを三井物産に払った。こういうように理解するのが妥当だと思うのであります。
 そこで、伊藤刑事局長に伺いますが、いま公判になっております丸紅ルート、ロッキード事件、その他の公判の冒頭陳述を拝見いたしますと、一つは、「田中(角榮)は、同四十五年から四十六年末ごろまでの間前後三、四回にわたり、砂防会館内の田中事務所で三井物産副社長石黒規一から(中略)全日空がDC10型航空機を採用するよう三井物産を援助してもらいたい旨の陳情を受けた」という冒頭陳述の記載があります。
 そしてまた、同じく丸紅ルートの冒頭陳述によりますと、「田中は四十五年中ごろ若狭社長に電話で〃三井物産からDC10を買うよう口添えしてくれといわれているので、検討してほしい〃旨」、田中角榮が若狭に電話をして要望したという事実も冒頭陳述に記載されている。
 伊藤刑事局長に伺いますが、当然冒頭陳述は証拠によって検察官が証明しようとする事実の記載でありますから、いま指摘をした事実に沿う証拠は、捜査の結果客観的に存在しておった。これは間違いございませんね。
#184
○政府委員(伊藤榮樹君) そのとおりであります。
#185
○橋本敦君 そしてまた別のところでは、五十三年九月二十七日付の丸紅ルート五十五回公判で検察官によって明らかにされた検察官の調書によりますと、「四十七年十月二十日ごろの夜、私の家に三井物産の石黒副社長と村上常務が尋ねてきて、実は自局党の田中派、大平派など主だった派閥の方々にあいさつして手をうってありますから、DC10をよろしくといわれた。国会議員の方々に手を打ったとは、お金を差し上げたことであると感じた」という記載のある供述調書が法廷で出されている。これは今後の公判でいろいろ問題になっていくところで最終認定は裁判所にお任せすることになりますけれども、以上挙げた検察官が責任を持って法廷に提出された資料を見ても、三井物産の石黒副社長らがDC10売り込みのために直接田中角榮に陳情し、あるいはまた若狭、あるいは全日空関係のところに行っていろいろ陳情しておる。大平派、田中派などに手を打ったという言葉まで飛び出してくるということで、いろいろな工作をしておったという事実が、あのロッキードの捜査の中でその一端が検察庁の手によって明らかにされた。だからしたがって、ダグラスはいま航空機輸入疑獄問題で問題になっておりますE2C、RF4Eあるいはファントム、こういった問題と同時に、このDC10の日本への売り込み工作についてもダグラスは三井物産を使い工作をした。この事実は、工作内容は別ですよ、工作をしたというこの事実は、これはもう動かせないはっきりした事実だと言ってよいかと思うのですが、刑事局長、いかがですか。
#186
○政府委員(伊藤榮樹君) 先ほど来御指摘のような冒頭陳述があり、またたしか藤原供述の証言の際の検事調書の中に御指摘のような話が出てくることは事実でございます。
#187
○橋本敦君 局長はそういう限度で慎重に御答弁なさいますが、これが証拠によって、検察官によって指摘された事実ですから、DC10の工作について三井物産が売り込み工作をやった一端がこれであるということは明らかであります。そういたしますと、直接取引だという日航とダグラスとのDC10の導入について形をとりながら、三井物産が九十万ドルをダグラスからもらってきたということが裏づけられてくるわけであります。
 刑事局長に伺いますが、当時の捜査、あるいは今回のSEC指摘に伴う検察庁の広範な捜査の中で、この九十万ドルは三井物産が行った日本での売り込み工作に対するいわばコンペンセーション、報酬である、こう認定して差し支えない性格の金だと私は思うのですが、いかがでしょうか。
#188
○政府委員(伊藤榮樹君) 三井物産は代理店ということになっておりませんから、結局一種のコンサルタント的な活動に対して支払われたものと思われます。
#189
○橋本敦君 御指摘のとおりであります。
 だからしたがって、たとえば郷氏が最初にリテイナーとして何方ドルか受け取ったという性格と違う、まさにコンサルタント。そしてその内容はここにあらわれたような工作をやった。コンサルタント料、つまり工作をやったことに対する支払いであり、報酬であるという性格をはっきり持ってくると。で、こういう九十万ドルという金を三井物産に、直接の販売は日本航空に三井物産の世話にならずにやったけれども、これを出しているというのは、いま私が指摘したようにまさに工作費と言っていいと思うのですが、この金を生み出してくるのにDC10を日本航空に高い金で買わしたのじゃないか、こういう疑問を私は指摘しているわけであります。運輸省はエスカレーション条項について、形だけ契約と引き渡し時までの間の時間的差が他の飛行機と違うからとおっしゃいました。これは私は、そういう差をとっても十分説明し切れない高い価格調整指数を入れているという疑問をまだ全部説明できたとは思いません。残っております。スペック、仕様の変更をおっしゃいました。ところが、資料を見ていただいたらわかるように、747も仕様変更、そしてまたDC10も仕様変更ということで、それぞれ基本価格にプラスする価格がそこでちゃんと出ているわけですから、どっちも仕様変更やるのですから、DC10だけ仕様変更やるのじゃないのですから、それも十分な説明にならないのです。だから、アメリカの航空会社はこのように日本航空に、あるいは防衛庁にと言いたいのですが、これはきょうは質問は別ですが、高い飛行機を高い価格で売り込んで利益を上げて、その利益を商社にコンサルタント料あるいは工作費、あるいはRF4Eの場合は二百三十八万ドルの事務所経費、名目はいろいろですが、要するに工作費が出ていくというのは、結局、こういう形で大きな利益を上げるという商法のメカニズムがあるのではないか。この点を徹底的に追及しなければ本当に航空機輸入をめぐる疑惑の真相の全面解明には至らぬと私は思うのです。
 伊藤刑事局長に伺いますが、冒険でここまで指摘をされた当時のDC10の三井物産がやった売り込み工作、これについてかなり捜査をやられたと思うのですが、この関係では犯罪の容疑は全くなかったのでしょうか。あるいは当時の捜査は関連的にDC10売り込みで問題になったので、徹底的に詰めた捜査はやっていないという結果、起訴とか、あるいは逮捕とかいう点に至らなかったのでしょうか。どちらでしょうか。
#190
○政府委員(伊藤榮樹君) もちろん捜査の過程で犯罪の嫌疑が認められればそれ相当の処置をとったと思いますが、結論的には、その関係では犯罪の嫌疑は認められなかったわけでございます。なぜ認められなかったかと言えば、やはりロッキード、丸紅、全日空中心の捜査でございましたから、そういう意味でDC10あるいは三井物産の関係を徹底的に調べるということはしていないと思います。したがって、あるのに見過ごしたのか、結局、調べてみてもなかったのか、その辺は何とも申し上げかねるところでございます。
#191
○橋本敦君 その点はおっしゃるとおりでしょう。だが、徹底的にこれを調べておれば、田中派、大平派にあいさつをしてあるという問題も含めて、犯罪の容疑が浮かび上がっておったかもしれぬという、そういう状況がこのDC10をめぐってまだあるわけであります。
 私は、いま大問題になっているDC10の墜落事故、これでもって全世界が不安になっておりますが、こういった構造欠陥があるのではないかといま言われておるDC10という飛行機を日航にやすやすと高値で売り込んで、そして工作費を捻出をして、そして三井物産を使って工作をやらせる。私はもう、このダグラスの商法というのはけしからぬと思うのですね、承知ならぬと思うのです。これはもう悪徳商法どころじゃないと思うのです。
 そこで運輸省に聞きたいのですが、運輸省は日本航空がダグラスと直接取引をやる、あるいは他の会社の飛行機を買う場合でもいいですが、コンサルタントや商社にコミッション料やコンサルタント料を直接取引だから一切払わないと、こういう誓約なりシステムをはっきりとらしてやらないと国民に迷惑かかるじゃありませんか。汚い商法をやすやすと許すじゃありませんか。こういう点について、今後こういう航空疑獄を起こさないという再発防止の観点からも、監督機能を強化するという観点から、価格調整機能は調査していない、そして飛行機の購入は予算審査するだけだ、一機ごとのチェックはやらない、こういう態度を改めて、監督監査体制をもっと厳密に、飛行機の一機ごとに、価格が不正かどうか、商社にコミッションや他の名目の支払いがなされていないかどうか、いないことを確認するという、こういう処置を今後厳密な方策としてとるべきだと思いますが、どうお考えでしょうか。考え方だけで結構です、結論だけ。
#192
○説明員(早川章君) 私どもの立場は、御承知かと思いますが、航空機の購入の観点はある意味でコマーシャルベースの問題であろうかというふうに考えておりまして、いま日本航空あるいはさらに民間航空会社の航空機の購入の一々について厳重な監督上の処置をとっていくという方向には実は必ずしもないわけでございますが、ただ……
#193
○橋本敦君 今後どうするかと聞いている。
#194
○説明員(早川章君) 今度の日本航空のように、自分は航空機メーカーと直接すべて交渉しておるのにかかわらず、何やら知らない間にめんどうな問題に巻き込まれていくというようなことがあってはいかぬということは感じておりまして、われわれは、その買い手側として十分その辺については遺憾のないよう対応してほしいということを航空会社に対して厳重に要望していくと申しますか、要請していくという文書でございます。
#195
○橋本敦君 日航に要望する、要請するだけじゃ、またやられますよ。チェックしなければだめですよ。契約雷を出させる、基本価格及びエスカレーション条項、それからいろいろな提示されてくる値引き条項、いろいろやらなくちゃだめですよ。たとえばDC10だって、広告料として値引き条件で一機当たり何万ドル支払うというのがあるのですよ。提示された条件を私は知っているのです。これはボーイングだってみんな航空会社はやっているのです。その金が一体正規に入金されたかどうか。これはほかの会社では裏金になったり、いろいろあるのですよ。そんなことをチェックしないで、要望するというだけで再発防止なんということが、これは政府の姿勢としてできませんよ。法務大臣、お聞きになってどう思われますか。閣僚協開いてやると言うのです、大平内閣。結構です。運輸大臣その中に入っておりますか。こういう問題について厳しくチェックするということを閣僚協で、きょう問題になったということを大臣から提起していただけませんか。運輸大臣きょうお越しいただけないものですから、あなたの御意見を聞くのです。
#196
○国務大臣(古井喜實君) いまのチェックシステムというところに非常に問題がある、これを整備する問題があるということを実は重要に考えているのでありますが……
#197
○橋本敦君 おわかりいただいたでしょう。
#198
○国務大臣(古井喜實君) 問題は認識しております。知恵を出すべき問題点だと思っております。
#199
○橋本敦君 運輸省はきょうは大臣、局長がお越しいただけないので、大臣が政治的な責任のある答弁ができないのはわかりますけれども、いまおっしゃった、厳重に要望していく、それを越えて厳重にチェックをしないとだめですよ。
 それで、このDC10の売り込みで、田中角榮元総理のところまでこういう工作がやられていた。一方、トライスターも工作をした。まさに総理を頂点として、トライスターもDC10も、両方が工作をした結果、トライスターが五億円というあの賄賂の約束をして売り込みに勝った、こういう結果になっている。
 伊藤刑事局長に伺いますが、いろいろあの事件を御捜査になって、結局トライスターが採用されたのは、コーチャンの売り込み作戦、丸紅を使っての工作、これが三井物産DC10の工作よりも工作戦においてトライスターが勝ったと。田中総理のところへは両方から工作がいっている事実ははっきりしているのですから、結局トライスターが決まったのは、こういう工作をめぐる商戦の結果コーチャン派、丸紅派が勝ったと、こういう結果だというような御認識をお持ちじゃないかと思いますが、いかがですか。
#200
○政府委員(伊藤榮樹君) 機材そのもののよしあしということは私どもよくわかりませんけれども、現在公判で立証にかかっておるところによりますると、ただいま仰せになりましたような観点が相当影響しておるのじゃないかと思っております。
#201
○橋本敦君 全くそのとおりですね。結局工作で賄賂を巨額に使った方が勝った。これが日本の航空機輸入をめぐる今日まで明らかになった大事な問題なんですね。それで、アメリカの会社は、それぞれ売り込み航空機で損をしてまで賄賂や工作費出しませんからね、利益を上げている。ところがその利益を上げるいろいろな仕組みが、複雑な航空機の売り込み契約条件の中にひそんでくるのだけれども、運輸省はそれをなかなかチェックできない、この仕組みが問題ですね、どう考えても。
 そこで、もう一つ法務大臣に伺いたいと思うのですが、こういうエアバス商戦の一端がこういうように出てきたのですが、運輸省がこの価格をチェックしますのは、あなたがさっきおっしゃったように、日航の予算上の監督ということだけじゃなくて、幾らの飛行機を買うかという問題は、航空運賃の認可、算定、これにも関係があるということから、運輸省は機材の購入価格についても関心を持って調査をしておられる、私はこう思うのですが、いかがですか、その点はあるでしょう。
#202
○説明員(早川章君) 先生御指摘のとおり、航空運賃は、その原価要素の一つとして、機体の購入価格といいますか、機材の購入価格が関係してくることは事実でございます。
#203
○橋本敦君 法務大臣お聞きのように、賄賂を引き出すたびに工作して高い金で売り込んだら、それは運賃の算定の基礎になるのですよ、機体購入価格は。運輸省はそのからくりがわからなかったら、グローバルに、よその国でもどれぐらいで買っているかなと、これぐらいだったら不当じゃないなという程度の審査で受け付けて、それが運賃算定の基礎として出てきたら運賃認可するのですよ。結局国民が高い飛行機運賃で乗らされるのですよ。その金はダグラスの利益に回り、工作費に回っていくのです。国民にとっても重大な問題なんです。だから、先ほど法務大臣は、これは重大な関心を持つ問題だとおっしゃいましたが、国民の立場から見ても、再発防止という点から見ても、わが国の航空行政はここのところの仕組みを徹底的にチェックするという、こういう監査あるいは監督の仕組みを、今日航空行政というのはきわめて公的な公共性を持つものですから、思い切ってこれをやるという方向で何らかの知恵を出さねばならぬ、いかがでしょうか。
#204
○国務大臣(古井喜實君) 現在、航空機が一番大きな商品だということは、そういま思っておるんであります。こんな大きないい商品はないじゃないかと……
#205
○橋本敦君 いい商品じゃない、いい商売。
#206
○国務大臣(古井喜實君) これをめぐっていろんなことが起こってくる。それのみならず、次には何が大きな商品になるだろうかと思ってみたりしているんですけれども、現在は航空機が一番目ぼしい。しかも、今度は軍用機という国防に関係する飛行機という問題にもこれは広がっていくと。いまは航空機が大変重要な問題でもありますし、それで、おっしゃるようないろいろな面がありましょうけれども、買うときの価格のチェックといいますか、取引のチェックですね、運輸省は当然、運賃だ何だ、手がかりは持っておられるのですから、チェックするチャンスはあるわけですね。そういうことを一層発揮してもらえば足るものかもしらぬし、あるいは直接かかわりのない場所も、チェックの目を光らせると言えば悪いが、という役割りも、ほかの関係ないような機構も持つ方がよいことか、またそれが必要か、いろんな点があろうと思うんですね。で、どこまでよい知恵が出るかわかりませんけれども、知恵をしぼってみようと、そういう大事な問題だと思っております。
#207
○橋本敦君 いまおっしゃった機構も含めて知恵をしぼっていただきたい。
 そこで、伊藤刑事局長に伺いますが、この九十万ドル、これはSECの告発状で、第十二項で言われておりますが、一九六九年以降MDC等は、外国における商取引、これに関連をいたしまして、合計七百三十万ドルをコミッション料として支払うというようにしたわけですが、これはこの支払いについて、実際MDCはこれらコミッションの一部が政府関係者及び、または航空会社職員に対して流れたかもしれないということをMDCは知っていたかまたは知るべきであったという、こういう告発状で指摘をしております。三井物産に流れた九十万ドルについても、この十二項の中に含まれておる指摘に該当するというのは、わが党の調査団が確認をして、SECから聞いてきたわけですが、MDCのDC10売り込みに関連をして、この九十万ドルの金の流れ、三井物産に入ったこの金の流れ、これがどこへ行ったかというところまでは、先ほどもお話がありましたが、当時の事情もあって、捜査を金の出については全部遂げていないと、こういういま実情でございますか。もし遂げておれば、どこへ行ったか教えていただきたい。
#208
○政府委員(伊藤榮樹君) DC10の九十万ドルそれからDC9の五十万ドル、合わせて百四十万ドルの金は、買い手には取得されておったという意味においていろんな可能性があるものというふうに認定されたようでございますが、現実の捜査の結果は、すべて小切手で三井物産の正規の経理に入っておりまして、正規の経理資産と一体となっておるわけでございまして、したがって、その後の支出というものは、資産が全部渾然一体となって運用されておりますので、それから先は追及ができておりません。
#209
○橋本敦君 渾然一体となっていますから、政治献金とか盆募れの歳暮とかいろいろなことで変質をして出たかもしれないという可能性もいまの御答弁からうかがえますね。
 さて、もう時間が参りましたので、あと一、二問だけで終わります。
 刑事局長にお伺いしますが、有森氏が証言拒否罪で起訴されましたということは、彼が証言拒否の正当理由として主張いたしました外為法違反とか、あるいは彼自身が、私は三十九年から四十三年ごろまで口には言えない良心に恥ずる行為をやったと、こう言って証言をいたしましたが、彼自身が犯罪行為をやったという事実はないということから起訴ということになったのか。そうではなくて、当時外為法違反その他の行為はあるけれども、それは時効の関係で証言拒否の正当理由にならないという御判断があって不起訴にならず起訴になったのか、その他の理由があるのか、この点はいかがなんでしょうか。
#210
○政府委員(伊藤榮樹君) 恐らく有森氏の公判では、随伴者となられました弁護士さんが弁護人におつきになれば、そこが一つの争点になると思いますので、余り詳細を申し上げるわけにはまいりませんが、要するに有森氏は、自分が実際行ったことに関して、外為法違反に触れるというような問題ではなかったと、こういうことでございます。
#211
○橋本敦君 そういたしますと、もう少し詳しくいろいろ聞きたい点もありますが、有森氏は一体何をやったか。彼が証言しているところでは、第二次FXファントム売り込みの最高責任者が海部さんでした、私もそのスタッフの一人でした、こう証言しました。そして、かばんを持って数回岸事務所を訪れましたと、こう言いました。だから、外為違反という犯罪にならないというお話ですが、それは別として、有森氏が海部の指示を受けてファントム売り込み工作に従事していた事実、これは間違いなくあったわけですか。
#212
○政府委員(伊藤榮樹君) 当然、有森氏は退社するまで海部氏の部下でございましたから、F4ファントムの導入に関する陳情活動その他、販売活動には従事しておったようでございます。
#213
○橋本敦君 彼はその販売売り込み活動で海部氏の指示あるいは島田氏の指示を受けて松野さんのところへ行ったという事実はありましたか。
#214
○政府委員(伊藤榮樹君) それはございません。
#215
○橋本敦君 そういたしますと、彼は主としてどういうところへ販売活動として仕事をしておったのですか。
#216
○政府委員(伊藤榮樹君) 必ずしも有森氏の在籍当時の行動を逐一把握しているわけではありませんが、いわば海部氏のかばん持ちみたいなことをよくやっておったようでございます。
#217
○橋本敦君 そのかばん持ちで岸事務所を数回訪れたというのですから、私は岸さんとの関係をこの前も局長に指摘したら、海部はむしろ松野氏の方を頼りにしておったという御答弁が返ってきたのですが、岸事務所へ訪れたことはファントム売り込みと全く関係がなかったとも言い切れないのじゃありませんか、海部、有森のメンバーが行くということは。
#218
○政府委員(伊藤榮樹君) 有森氏は何しろかばん持ちでありますから、余り問題にならぬのでありますが、海部氏が岸事務所の関係の方と接触があったことは事実でございまして、これは航空機の問題を離れましても、いろいろな問題について相談をしてみたり陳情めいた話をしてみたり、そういうことはどうもあったようでございますが、いずれにしても犯罪と関連いたしませんので、突っ込んだ捜査はいたしておりません。
#219
○橋本敦君 四十年、フォーサイス・岸・海部会談があった。岸事務所へ数回行った。だからいろいろな話はあったが、ファントムの話が全然な払ったということまで言い切れない状況だと思うのですが、いかがですか。
#220
○政府委員(伊藤榮樹君) 私自身が立ち会ったわけではありませんので、そういう話はなかったともお答えできません。
#221
○橋本敦君 最後に伺います。
 島田さんが亡くなったことは、私も本当に心痛いのですが、島田さんの死は捜査上、検察庁が徹底的に捜査をお進めになる上で一つのやっぱりチェックになったのじゃないかと、率直に言ってそう思いますが、いかがでしょう。そして、私は島田さんが亡くなったのは、松野さんが言うように政治献金だったら何にも後ろめたい思いはありません。持っていってもだれにも言っていいでしょう。また、言うことも可能でしょう。そしてまた、日商自体があれだけ苦労して金の工作をやっているのですから、財経本部も、その他もみんな知っている、そういう状況でやっているのですから、彼一人が死ななきゃならぬという理由はない。私はやっぱり島田さんが亡くなったのは、思い余って、政治献金じゃなくて、やっぱりこの金は黒い金だという、そういう心があって、それを松野氏に自分が何遍も届けた、そのことはやっぱり天下に言いたくないという、そういう思い詰めた気持ちで亡くなったのじゃないかといまは推測するのですが、自殺の動機についてお考えがあればお話しいただきたい。
 これで質問を終わります。
#222
○政府委員(伊藤榮樹君) 島田氏が早期に亡くなられましたために、捜査の進めぐあいで相当程度のマイナス面があったことは否定できません。それでは、なぜ島田さんがお亡くなりになったかということにつきましては、何しろ亡くなられた方のことでございますので、その動機等について私どもが軽々に申し上げることはいかがかと存じます。
#223
○橋本敦君 終わります。
#224
○江田五月君 金大中事件とか、航空機の事件とかという華やかな話題と違いまして、少しじみな問題についてお考えをお聞かせ願いたいと思います。
 犯罪被害者補償法のことでございますが、最初に法務大臣にお考えを伺いたいと思います。
 昭和五十年の二月十二日、衆議院の法務委員会で当時の稻葉法務大臣が「犯罪の被害者救済制度が今日わが国にはできておりません。」「文明国の名に恥じるという気持ちであります。」というふうにお話になった。同じ年の七月二日には衆議院で参考人のお話も聞いた。そして、その後、去年の十月十九日、参議院の法務委員会では当時の瀬戸山法務大臣が、次の通常国会には法案を出したいという、そういうことで精力的に準備を進めさせておる。伊藤刑事局長は、最後の詰めの段階であるというようなことまでおっしゃった。その前に、去年の九月の二十三日、新聞で所管争いでこの実施がおくれるのではないかというようなことが報ぜられたことについて、そういうことは全くないという、そういうお話であったわけです。その間に、昭和五十年七月の二日の公聴会でおいで願った市瀬さんはお亡くなりになり、市瀬さんをめぐる事件については佐藤秀郎という方の「衝動殺人」という本が出て、それが映画化されるというような状態になってきている。関係者はいまにもこの制度が実現できるんじゃないかというところまできて、そして今年二月十六日、衆議院の予算委員会になりますと、古井法務大臣のお答えは「関係省庁の間で検討しておるという段階」だと、これはやはりどう考えても大きく後退したとしか言いようがないんじゃないかと思うんですが、一体法務大臣、この問題どういう認識でいらっしゃるのか、お聞かせ願いたいと思います。
#225
○国務大臣(古井喜實君) ただいまの犯罪被害者補償制度は必要だと、まず思っております。早く実現すべきものだと思っております。
 そこで、いままでの経過は、この問題の制度化について法務省が中心になって関係省庁と話を進めてきておったんでありますが、しかし、この仕事の実施機関が地方自治体を実施機関にするほかはないということになりましたにつれて、やっぱりこれは警察庁が中心になってこの問題は進めた方がよろしいと、こういうことになりましたもので、法務省はこれに協力をして、警察庁中心、法務省は協力と、こういう行き方が、少し扱いの行き方が変わってきたものですから、いまはこれに協力するという立場でおるわけでありまして、警察庁が中心になっていまこの問題は作業を進めておる、こういう状況であります。
#226
○江田五月君 中心、協力ということでありますが、いままでは法務省が中心、いつ警察庁が中心におなりになったのか。何か手続みたいなものがあったんですか、ないんですか。
#227
○政府委員(伊藤榮樹君) 前々申し上げておりますように、この被害者補償制度というのは一刻も早く実現をしなければならぬわけであります。そういうことで、もう申し上げるまでもなく法務省で二回にわたって実態調査をし、諸外国の状況等も調べまして制度の実態については十分詰めを行ってきておったわけでございます。先ほど御引用になりましたように、私としてもあと一歩のところまでもう詰めてきたつもりでございます。
 ところで、最後に残りました問題は、補償の実施機関をどうするかという問題でございます。理想的な案は、たとえば公明党の御提案その他見ましても、中央に独立の機関をつくりまして、各都道府県単位にこれまた独立の裁定委員会というようなものをつくってそこでやるというのが理想的であることは私どももよくわかっておるわけでございますが、現在の行政簡素化の問題、それから経費の問題からいたしますと、既存の組織のどこかに寄りかかってやらざるを得ない。そこで考えられますのが、たとえば検察庁でやるかというようなことになり、あるいは警察でやるか、こういうことになりますと、捜査を実際担当します者が補償をするということは必ずしも適当ではないのではないか、それよりむしろ都道府県の民生、福祉部門で御担当いただくのが最も行政効率の点からもよろしいのではないか、こういう結論に達したわけでございます。それが昨年の秋以降のことでございます。
 一方、警察庁におかれましても、法務省と同様に、この被害者補償の問題については調査費等の予算措置が講ぜられておりまして、両々相まって検討を続けてまいっておったのでございますが、何分地方自治体にお願いをするということになりますと、私どもよりも警察庁の方がはるかに密接な従来からの経緯がおありでございます。そういう観点から警察庁と御相談申し上げましたところ、警察庁がそれじゃ主管となってやろう、こういうことでございまして、私どもとしては従来調査しました資料はもちろん全部警察庁に提供いたしますし、また検察庁等を通じて今後とも調査すべきことがあればもちろん調査をし、どちらかの省庁が主管にならなければなりませんけれども、いわば二人三脚でいこう、こういうことで昨年の終わりごろから警察庁が中心になっていく、私どもが全面的にこれに御協力して一刻も早い実現を期する、こういう体制でやるようになった次第でございます。
#228
○江田五月君 いろいろと詳しくお教えいただいてありがたいんですが、私がお尋ねしたのはいつどういう手続で中心が変わったのかということだけをお尋ねしたわけで、質問にどうぞ端的にお答え願いたいと思うんです。この中心が変わったというのは、国民にとってみればこれは何とも不可解なことでありまして、犯罪の被害に泣かされている人にとって、法務省が中心であろうが警察庁が中心であろうがそれは別に構わないことなんであって、一日も早くこういう制度が実現されることが必要なわけで、そういうふうにあっちへ行きこっちへ行きすることは、金大中事件あるいは航空機の問題に劣らずやはり国民に政治不信を引き起こしてくるわけで、政治に対する期待が何とむなしいものであるかというようなことを思い知らされるわけでありまして、そういうことではちょっと非常に困るんではないかと思うのです。この中心とわき役とが変わったというわけですが、それでもやはりこれまではその二つの機関が協力をして検討を進めてこられたんではないかと思うんですが、両々相まってとおっしゃいましたが、この意味は一体どういうことなんですか。
#229
○政府委員(伊藤榮樹君) 両々相まって検討し、実現方に向かってどういう手順をとったらいいか研究をしてきた、こういうことでございます。
#230
○江田五月君 いや、法務省と警察庁との間でもちろん連絡をとられていたことは当然だと思うんですが、協力して検討を進めてこられたということじゃないんですか。
#231
○政府委員(伊藤榮樹君) 協力して検討を進めてきたということです。
  〔委員長退席、理事上田稔君着席〕
#232
○江田五月君 警察庁の方は法務省と協力していままでもずっと検討を進めてきたということでよろしいわけでしょう。
#233
○説明員(小池康雄君) 法務省と協力しながら内容の検討を進めてきたところでございます。
#234
○江田五月君 したがって、昭和五十二年の初め、あるいは五十二年の暮れに、本当かどうかまではいろいろ御意見もあろうかと思いますが、新聞で法務省案がまとまるというような報道があった。法務省案としてまとまったところまでできていたかどうかは別として、そうした次第に法務省案というものが形をあらわす用意を整えてきていたという事態はあっただろうと思うんですけれども、こういう法務省案に次第に形を整えてくる一つの構想というもの、これはやはり警察庁の検討も当然その中に加味されておったと考えていいんですか。
#235
○政府委員(伊藤榮樹君) そのとおりです。
#236
○江田五月君 警察庁の方もそのとおりでよろしいですね。
#237
○説明員(小池康雄君) そのとおりでございます。
#238
○江田五月君 そして伊藤刑事局長は去年、五十三年十月十九日の参議院の法務委員会、最後の詰めをいたしておるんだと。最後の詰めというのは、現在まで法務省でなし得る作業はすべて終わっておって補償の実施機関が残っておるだけだという、そういうお答えであった。そこまで警察庁の方も協力して案が詰まっておったというふうに理解していいわけですか。
#239
○政府委員(伊藤榮樹君) そういうことでございます。論点をはっきりさせますために一言御説明しますが、要するに予算要求をどこの省庁がやるか、そういう問題が中心に結局なるわけでございます。
#240
○江田五月君 そしてそれを資料等々すべて一緒に昨年の秋に警察庁の方に引き継いだと、そういうことでいいわけですね。
#241
○政府委員(伊藤榮樹君) 引き継ぎましたが、法務省にそれじゃ何も残っていないかという、そういうことではなくて、資料は従来から交換しておりましたが、残っているものも全部その内容について警察庁にお渡しをしておると、こういう意味です。
#242
○江田五月君 それは警察庁になって今度は一体どうなったかというと、何だか必要ではある、そして緊密な連絡をとりながら内容を詰めておる、検討しておるというようなことになってしまうわけで、いまにももう案が出るというところまでいってぱっと主体が変わって、今度はぐっと内容が薄まってしまう。そして恐らく今度は国会の審議も法務委員会からどこかよその委員会にというようなことになるんじゃ、これはちょっと、いままで五十二年から法務省にこの関係の予算がついておったわけですけれども、こういう予算がむだになってしまうというようなことになってしまうんじゃないんでしょうか。警察庁はいまどの段階に法案のこの準備の段階があるというふうにお考えですか。
#243
○説明員(小池康雄君) 法務省と警察庁の間で検討した内容というのは、伊藤局長からの答弁のように相当具体的になっておりますが、いずれにしても関係省庁と協議と申しますか、しなければならない事項がいろいろあるわけでございます、特に財源を含めまして。そういう点で現在関係の、具体的には自治省あるいは大蔵省などと相談を続けていると、そういう段階でございます。
#244
○江田五月君 どうもよくわからないんで、五十三年十月十九日の法務省の伊藤刑事局長、最後の詰めだと、あと補償の実施機関が残っておるんだと、法務省でなし得る作業はすべて終わっておるんだという。
  〔理事上田稔君退席、委員長着席〕
つまりどういうことですか、その法案の、たとえばいろんな要件の問題、故意犯、過失犯をどうするか、遡求のことをどうするか、求償をどうするか、そういうような検討はすべて終わっておって、あとは実施機関の問題だけだという、その段階ではないんですか。
#245
○説明員(小池康雄君) 若干御説明さしていただきますと、法務省あるいは警察庁として考えられる案というものが一つの段階に達したという点は伊藤刑事局長から御答弁のあったとおりでございますが、これにつきまして、たとえばいま御指摘の遡及の問題とか、それから実施機関の問題もそうなんですけれども、これを政府内で最終的にどういう形をとるかという点につきましては関係省庁と折衝をしていかなければならないので、いまそれを続けさせていただいておるという段階でございます。
#246
○江田五月君 そこで、この実施機関については、法務省中心から警察庁中心に移ったということは、少なくとも犯罪被害補償委員会というようなものを各地方自治体単位でつくって、これが実施の機関になるという考えはやめたという理解でいいんですか。どちらでも……。
#247
○説明員(小池康雄君) 実施機関につきましては、既存の機関が実施を担当するという制度が現実的ではなかろうかということで、一応私どものいまの段階では都道府県の機関にお願いして、この事務を実施してもらう制度が最もわが国の現実に即した合理的な制度ではないかということを考えておるわけでございます。
#248
○江田五月君 ですから、独立した一つの委員会制度をこの犯罪被害者補償の実施機関として設けるということはおやめになるという、そういうことですね。
#249
○説明員(小池康雄君) そういう意味でございます。
#250
○江田五月君 そして、どうも余りすっきりとはしないんですけれども、いままで法務委員会、衆・参あわせてこういう犯罪被害者補償の問題についていろいろな議論がなされてきた。そして、それについて法務省の方からいろいろなお答えがあった。いろいろと議論もされた。そういう経過を踏まえて警察庁では成案を得る努力をいま続けておるということはよろしいわけですね。
#251
○説明員(小池康雄君) そのとおりでございまして、法務省と一緒に検討してまいりました結果というものを踏まえての段階でございます。
#252
○江田五月君 そういうことでなければ困ると思うのですが、さらに進んで私はちょっと話がでかくなるかもしれないんですけれども、日本における何といいますか、立法の制度といいますか、立法過程といいますか、あるいは法案をどういうふうにつくっていくか、本来ならば国会でもう少し政府が出してくる法案についていろいろ修正その他が、多くの知恵を集めながらできた方がいいと思うのですが、現在ではなかなかそうはなっていない。そこで、政府が法律案をまとめる段階、この段階を一体どういうふうに公開していくのか、どういうふうにこの段階にいろいろな英知を集めていくのかというようなことをもっと政府部内の皆さん真剣に考えていただきたいと思うわけで、いろいろと利害が錯綜している関係の法律について、余りそうあっちも聞き、こっちも聞きをすると予算ばかりふくれ上がってどうしようもないというようなことも一つの難点としてはあるかもしれませんが、この犯罪被害者補償法案、仮にそういう法案ができたとすれば、こういうものはそうした圧力団体がいろんな利害関係を持っているというようなものとちょっと越を異にする。むしろそうした大きな圧力団体がないからなかなか法務省を相手にしていたらあっという間に警察庁にかわってしまうというふうなことになるんじゃないかという気持ちを国民が持つと思うんですね。そういうことではなくて、もっとこの法案作成の段階にいろいろな人の意見をどんどん聞いていく、いろいろな衆知を集めていくという努力を何かした方がいいんじゃないかと思うんですけれども、いままでどういう手続で法案の作成というものをなさっていらっしゃるのか、ちょっと話が漠然とするかもしれませんがお答え願える範囲で聞かしていただければ幸いです。
#253
○説明員(小池康雄君) 一つにはすでに諸外国で、相当先進諸国の多くがこの制度を実施しておりますので、諸外国における考え方それから制度の中身等につきまして調査しているということが一つと、それから犯罪被害、これは法務省の方でも同様のことを一緒にやってこられましたけれども、現実に犯罪の被害を受けた人たちの実態、それから受けるに至った実態、こういうような調査、これはいままでも若干やりましたし、いまもやっておるわけでございます。それからさらに衆知を集めるという点では、この問題は特にまあ学会では被害者と申しますか、刑事法の分野の学者で大変関心を持たれ、著書などお書きになっている方もございますし、そういう方々の意見も一部聞いてまいりました。しかし今後さらにこの案を具体的に固める段階ではいろいろの方面の方の御意見もお聞きしていくということをやらなければいけないのじゃないかと、かように考えております。
#254
○江田五月君 そうすると、いまの海外の調査あるいは実態、日本の国内における実態の調査、そして学者の方々からの意見の聴取、そういうふうなことで昭和五十二年以来この関係で予算がついておりますが、これが使われてきた、これは法務省も同じでございますね。
#255
○政府委員(伊藤榮樹君) 予算がつきましたのは、お金のかかる部分についてついておるわけでございまして、そういう予算を使いまして全国的な被害者の実情を調査をして、比較的詳細な資料をつくっておるわけでございます。また外国の資料も取り寄せる、こういうことをやっております。そのほかにお金のかからないものとしては、実際の犯罪被害者の方から生の声を聞く。それからさらには、もう従来何回も国会の各委員会で御質問がありまして、その都度貴重な御意見をちょうだいしておる、そういうようなものが累積をされまして五十二年の秋ごろに法務省案と申しますか、法務省とあるいは警察と、こういう実際に担当する部門で今日的な観点から実現可能な範囲の一つの案というものを固めたわけでございまして、これを今度はそれを中心にして実施機関を都道府県ということにすれば、自治省との折衝をしなければならない、またその結果によって予算額が決まってきますから、それを踏まえて大蔵省と折衝しなければならない、その折衝の段階で警察庁にお願いをした、こういうことでございます。
#256
○江田五月君 どうも何か実態調査なるものですけれども、なさった、なさったというんですが、数字をあれこれと出してくると、一体たとえば過失犯まで含めると何件ぐらいになって、金額がどのくらいになるかというような調査はされるけれども、本当にこの被害者の人がどういう状態に置かれているか、それもその収入が幾らで、支出が幾らでというようなことだけではなくて、もう少しその被害者の毎日の生活の中で日々起こってくるいろいろな悲しみとか苦しみとかいうような感情にわたってまで本当に心の通う調査がなされているのかどうか、いささか心配もあるんですが、きょうはもう時間も大分たちました。中身についていろいろと伺いたいことがございますが、一点伺っておきますと、この補償の対象となる被害、これは恐らく生命、身体に対して――生命の場合はこれは生命を失うということですが、身体に対して著しい危害が加わったような場合という程度の限定になっているんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
#257
○説明員(小池康雄君) ただいまの段階で申し上げたいと思いますけれども、御指摘のようにやはり被害として最も大きいものは死亡でございます。また、死亡でない場合でも労働能力を全部喪失するというような障害を受けた場合には同じような悲惨さということが言えようかと思いますが、考え方としては、犯罪による被害といっても大変広いわけですけれども、やはり現実にともかくこういう犯罪の対策として必要な制度を一刻も早く実現したいということで、死亡あるいはそれと同じような被害と見られるものにまず限定して、そこから制度を必要とするかどうかというようなことで検討しているわけでございます。
#258
○江田五月君 過失犯によってそういう結果が生じた場合はいかがですか。
#259
○説明員(小池康雄君) 過失犯につきましては、これは一つの問題でございます。過失も犯罪であることはもう当然なんでございますが、過失につきましては、たとえば自賠責あるいは労災保険というような他の法律の給付の対象になる場合も多いわけでございますし、一般的に言って過失犯による被害というものは、このような損害保険制度というものが一応機能し得る分野ではないかというふうに、そういうような考えもあるわけでございます。
 それで一方、故意犯による犯罪というもの、これは損害保険制度というものはおよそ考えられない分野でございまして、諸外国の例を見ましても過失による被害というものをこの制度の給付の対象にしていない国が圧倒的に多いというような実情から、私どもも故意犯による被害を対象にこの制度を考えるというような方向で検討しているわけでございます。
#260
○江田五月君 問題は、故意か過失かがはっきりしている場合はいいんですけれども、何らかの犯罪によって殺された、生命を奪われたということははっきりしているが、故意か過失かがわからないというようなケースもあるわけですね。車を使って殺人を犯すこともこれは当然できるわけでして、そういう故意か過失かわからないというようなケースはどうされるおつもりですか。
#261
○説明員(小池康雄君) これは実際の運用に当たっては大きな問題だろうと思うのですが、たとえば故意、過失の間にそういう問題があると同時に、あるいは過失を仮に制度として、過失犯による被害を受けた場合にも過失か無過失かというような認定の問題がございます。それから犯罪か犯罪じゃないかという大きな認定――それは具体的には非常にボーダーライン的なケースがあろうかと思います。それはやはりできるだけの資料で給付を担当する機関が合理的な判断をする以外にはないんじゃないか、こういうふうに考えております。
#262
○江田五月君 いろいろとまだまだ内容についても聞きたいことが山ほどありますが、いずれにしてもとにかくいまのような事態では、これは昨年の九月に新聞で所管争いで実施が延びる、なわ張り争いがこんなところでも起こっているというようなニュアンスのことを書かれて、それを否定されても否定し切れない、やはりそうじゃないかというようなことになってしまう。一日も早く実施をしなければいけないと思いますが、いつをめどに案をまとめて実施ということにされるおつもりなのか。これは法務大臣はわき役かもしれませんが、法務大臣とそれから警察庁と両方からお答えを伺って質問を終わりにしたいと思います。
#263
○国務大臣(古井喜實君) あなたの方からやってください、私はわき役だから。
#264
○説明員(小池康雄君) 昭和五十五年度に実施したいということで、具体的には来年度予算で要求するということを目標にして準備を進めておるわけでございます。
#265
○国務大臣(古井喜實君) 警察庁が考えておられる案、多分五十五年度実施ということでまとめられると思いますので、それより早うといったってもう間に合いませんから、それが最短距離だと思いますので、それを極力実行できるようにわれわれの方は協力していきたいと思います。
#266
○江田五月君 わき役とおっしゃらずに、ひとつ主役をさらに前へ進めるように努力をお願いして質問を終わります。
 ありがとうございました。
#267
○委員長(峯山昭範君) 本日の調査はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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