くにさくロゴ
1978/01/25 第87回国会 参議院 参議院会議録情報 第087回国会 本会議 第3号
姉妹サイト
 
1978/01/25 第87回国会 参議院

参議院会議録情報 第087回国会 本会議 第3号

#1
第087回国会 本会議 第3号
昭和五十四年一月二十五日(木曜日)
   〇開 会 式
 午前十時五十八分 参議院議長、衆議院参議院の副議長、常任委員長、特別委員長、議員、内閣総理大臣その他の国務大臣及び最高裁判所長官は、式場に入り、所定の位置に着いた。
 午前十一時 天皇陛下は、衆議院議長の前行で式場に入られ、お席に着かれた。
   〔一同敬礼〕
 午前十一時一分 衆議院議長保利茂君は、式場の中央に進み、次の式辞を述べた。
  式 辞
 天皇陛下の御臨席をいただき、第八十七回国会の開会式を行うにあたり、衆議院及び参議院を代表して、式辞を申し述べます。
 現下、わが国をめぐる内外の諸情勢はきわめて多端であります。このときにあたり、われわれは、外に対しては、流動する国際社会に対処して、広く各国との友好親善関係を深めるとともに、内にあつては、政治、経済、文化の各般にわたり、適切な施策を強力に推進し、国民福祉の向上につとめ、もつて国運の隆昌に一段の努力を払わなければなりません。
 ここに、開会式にあたり、われわれに負荷された重大な使命にかんがみ、日本国憲法の精神を体し、おのおの最善をつくしてその任務を遂行し、もつて国民の委託にこたえようとするものであります。次いで、天皇陛下から次のおことばを賜った。
   おことば
 本日、第八十七回国会の開会式に臨み、全国民を代表する諸君と親しく一堂に会することは、私の深く喜びとするところであります。
 国会が、永年にわたり、国運の進展と世界平和の実現のため、たゆみない努力を続けていることは、深く多とするところであります。
 現下の内外の諸情勢に処して、国民生活の安定向上を図るとともに、諸外国との友好親善を更に増進するためには、全国民が相協力し、なお一層努力することが必要であると思います。
 ここに、国会が、国権の最高機関として、その使命を遺憾なく果たし、国民の信託にこたえることを切に望みます。
   〔一同敬礼〕
衆議院議長は、おことば書をお受けした。
午前十一時七分 天皇陛下は、参議院議長の前行で式場を出られた。
次いで、一同は式場を出た。
    午前十一時八分式を終わる
      ─────・─────
昭和五十四年一月二十五日(木曜日)
   午後三時三分開議
    ―――――――――――――
○議事日程第三号
  昭和五十四年一月二十五日
   午後三時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 一、常任委員長辞任の件
 一、常任委員長の選挙
 一、裁判官訴追委員辞任の件
 一、裁判官訴追委員、国土総合開発審議会委
  員、首都圏整備審議会委員及び離島振興対策
  審議会委員の選挙
 以下議事日程のとおり
     ─────・─────
#2
○議長(安井謙君) これより会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。
 建設委員長安永英雄君から、常任委員長を辞任いたしたいとの申し出がございました。
 これを許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。よって、許可することに決しました。
     ─────・─────
#4
○議長(安井謙君) つきましては、この際、欠員となりました建設委員長の選挙を行います。
#5
○大塚喬君 建設委員長の選挙は、その手続を省略し、議長において指名することの動議を提出いたします。
#6
○戸塚進也君 私は、ただいまの大塚君の動議に賛成いたします。
#7
○議長(安井謙君) 大塚君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。
 よって、議長は、建設委員長に浜本万三君を指名いたします。
   〔拍手〕
     ─────・─────
#9
○議長(安井謙君) この際、お諮りいたします。
 戸叶武君から裁判官訴追委員を辞任いたしたいとの申し出がございました。
 これを許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。よって、許可することに決しました。
     ─────・─────
#11
○議長(安井謙君) つきましては、この際、
 裁判官訴追委員、
 国土総合開発審議会委員、
 首都圏整備審議会委員、
 離島振興対策審議会委員各一名の選挙
を行います。
#12
○大塚喬君 各種委員の選挙は、いずれもその手続を省略し、議長において指名することの動議を提出いたします。
#13
○中野明君 私は、ただいまの大塚君の動議に賛成いたします。
#14
○議長(安井謙君) 大塚君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#15
○議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。
 よって、議長は、裁判官訴追委員に藤田進君を、
 国土総合開発審議会委員に小柳勇君を、
 首都圏整備審議会委員に上田哲君を、
 離島振興対策審議会委員に内田善利君を、
それぞれ指名いたします。
     ─────・─────
#16
○議長(安井謙君) 日程第一 国務大臣の演説に関する件
 内閣総理大臣から施政方針に関し、外務大臣から外交に関し、大蔵大臣から財政に関し、小坂国務大臣から経済に関し、それぞれ発言を求められております。これより順次発言を許します。大平内閣総理大臣。
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(大平正芳君) 私は、さきに、国会において内閣の首班に選ばれ、組閣早々、来年度予算の編成を了し、ここに第八十七回国会を迎えました。この機会に、施政全般にわたっての私の所信を申し上げ、国民各位の御批判と御理解を得たいと思います。
 まず、私の時代認識と政治姿勢について申し上げます。
 戦後三十余年、わが国は、経済的豊かさを求めて、わき目も振らず邁進し、顕著な成果をおさめてまいりました。それは、欧米諸国を手本とする明治以降百余年にわたる近代化の精華でもありました。今日、われわれが享受している自由や平等、進歩や繁栄は、その間における国民のたゆまざる努力の結晶にほかなりません。
 しかしながら、われわれは、この過程で、自然と人間との調和、自由の責任の均衡、深く精神の内面に根ざした生きがい等に必ずしも十分な配慮を加えてきたとは申せません。いまや、国民の間にこれらに対する反省がとみに高まってまいりました。
 この事実は、もとより急速な経済の成長のもたらした都市化や近代合理主義に基づく物質文明自体が限界に来たことを示すものであると思います。いわば、近代化の時代から近代を超える時代に、経済中心の時代から文化重視の時代に至ったものと見るべきであります。
 われわれがいま目指している新しい社会は、不信と対立を克服し、理解と信頼を培いつつ、家庭や地域、国家や地球社会のすべてのレベルにわたって、真の生きがいが追求される社会であります。各人の創造力が生かされ、勤労が正当に報われる一方、法秩序が尊重され、みずから守るべき責任と節度、他者に対する理解と思いやりが行き届いた社会であります。
 私は、このように、文化の重視、人間性の回復をあらゆる施策の基本理念に据え、家庭基盤の充実、田園都市構想の推進等を通じて、公正で品格のある日本型福祉社会の建設に力をいたす決意であります。
 今日、われわれが住む地球は、共同体として、いよいよその相互依存の度を高め、ますます敏感に反応し合うようになってまいりました。この地球上に生起するどのような事件や問題も、またたく間に地球全体に鋭敏に影響し、地球全体を前提に考えなければ、その有効な対応が期待できなくなっております。対立と抗争を戒め、相互の理解と協力にまたなければ、人類の生存は困難となってまいりました。
 しかしながら、世界の現状を見ますと、国際政治は多元化の傾向を強め、その中で不安定要因も増大しつつあります。
 他方、戦後四半世紀にわたりまして国際経済秩序を支えてきたガット・IMF体制は、いまや大きい地殻変動に見舞われており、世界はそのための新しい対応策を模索しております。資源問題やナショナリズムによる緊張も異常な高まりを見せ、南北間の格差も一層拡大しつつあります。
 地球をめぐる現実は、そのようにきわめて厳しいものがあります。世界に対する甘い認識や安易な対応は、もはや許されません。世界を一つの共同体としてとらえ、世界に対するわが国の役割りと責任を踏まえて、内外にわたる施策を真剣に展開しなければなりません。
 日本の平和と安全を確保することは政治の最大の責任であります。そのためには、節度ある自衛力と、これを補完する日米安保条約とから成る安全保障体制を堅持することが必要であります。しかし、真の安全保障は防衛力だけで足れりとするものではありません。世界の現実に対する冷厳な認識に立って、内政全般の秩序正しい活力ある展開を図る一方、平和な国際環境をつくり上げるための積極的な外交努力が不可欠であることは申すまでもありません。
 今日、国民の間には、民主政治の基本に関する合意がすでに形成されるに至っております。
 その一つは議会制民主主義に基づく政治の運営であり、一つは秩序と活力のある自由市場経済の維持であり、一つは内政外交を通ずる総合的な安全保障の確保であります。すべての施策を行うに当たりましては、これらの基本的な枠組みを踏み外すことがあってはなりません。既成概念にとらわれた不毛な対立や、個人や集団の利害に固執する硬直した姿勢は、民主社会においてはもはや許されるところではありません。私は、民主的ルールに従い、謙虚に真実を語り、率直に当面する困難を訴えてまいるつもりであります。そして、国民に対する信頼の上に立って、厳しい現実に対する有効な対応策につき、柔軟な姿勢をもって、より広い国民的合意を形成していくことを政治の基本姿勢としてまいる決意であります。
 行政は国民のものであり、国民の活力の活発な展開を促すことが行政の任務であることに思いをいたせば、行政は簡素で効率的なものでなければなりません。しかるに、経済の成長に支えられ、中央、地方を通じて、政府に対する期待や行政の民間への介入は年とともに増大し、行政事務の煩瑣化と財政の肥大化とが、とみに進んでまいりました。政治の国民生活への過剰な介入や国民の政治への過度の期待は、この際改められなければなりません。
 確かに、社会的公正の確保、構造改革の推進等、行政が新たな役割りを担うべき領域は拡大しております。しかし一方、時代の要請に適さなくなった制度や慣行は不断に見直しを行い、行政機構や定員の抑制と合理化は一層進めなければならないと思います。今日、家庭や企業は厳しい現実に対する適応の努力を重ねております。政府も国民と苦しみを分かち合うところがなければなりません。
 なお、公務に従事するすべての者は、みずからの行動に常に反省を加え、いささかも綱紀の弛緩を招くことのないよう自戒するところがなければなりません。政府は、公務に従事するすべての者に対して、強くその自覚を促してまいる所存であります。
 最近、外国航空機の購入をめぐる疑惑が国民の間に大きな論議を呼び起こしております。このことは政治の信頼にかかわる問題でもあり、政府は事態を解明するため最善の努力をいたす所存であります。
 私は、以上の基本的考え方に立ちまして、わが国が当面する内外の諸問題につき、所見を申し述べることといたします。
 わが国の外交の基軸は、日米友好関係の維持強化にあることは申すまでもありません。日米間の友好関係は、各種の試練に耐え、ますます揺るぎないものとなっております。日米両国は、相互理解を一層深めつつ、当面する経済上の問題につきましても、世界経済の安定的拡大に資するため、その解決に協力しなければなりません。私は、そのために精力的に努力する所存であります。
 また、私は、わが国の隣国として、国際社会の中で重要な役割りを果たしている中国及びソ連との友好関係を一層推進してまいることも、わが国外交の最も重要な課題であると考えております、ソ連との間には未解決の北方領土の問題がありますが、しんぼう強くその解決を図り、平和条約の締結を目指してまいりたいと考えております。
 昨年秋、日中平和友好条約が締結され、本年元旦、米中外交関係が樹立されました。これら一連の外交的展開は、アジア・太平洋地域のみならず、世界の平和と安定に大きく寄与するものと期待しております。わが国としても、その方向に沿って、日中間の平和友好関係を着実に発展させたいと考えております。
 日韓関係は、年とともに緊密の度を加えております。私は、両国の信頼と友好の関係をより強固なものにするよう努力する一方、南北両当事者間の対話が再開され、朝鮮半島における緊張が一層緩和の方向に向かうことを期待するものであります。
 また、わが国は、今後とも、ASEAN諸国を初めとするアジア諸国の安定と発展のために、これら諸国の自主的努力に積極的に寄与してまいる方針であります。特に、私は、インドシナにおける最近の事態を深く憂慮し、平和の回復を強く希望するものであります。わが国としては、これまでも国連その他の場を通じ、外交努力を行ってまいりましたが、今後とも、東南アジアの平和と安定のための努力を一層強めてまいる考えであります。
 さらに、西欧諸国との調和のとれた協力関係は、世界の平和と繁栄にとりましてきわめて重要であります。私は、この認識に立って、日欧関係をより幅広く、より強固なものに発展させていくため一層努力を続けてまいります。
 中近東及びアフリカの諸国との友好と協力関係、さらには東欧諸国との交流と友好関係は、近年ますます拡大しております。わが国は、これらの国々との関係増進に今後とも努めてまいる考えであります。
 米国、カナダ、豪州、ニュージーランドなどの太平洋圏諸国との相互依存関係、中南米諸国との友好協力の関係は、ますます濃密なものになっております。私は、これら諸国との友好協力関係を一層揺るぎないものにするよう努力を重ねてまいる所存であります。
 わが国は、世界経済の運営に重要な役割りを果たしておりますけれども、今後とも率先して国際社会に受け入れられる経済運営に努め、世界の期待にこたえてまいる必要があると考えます。わが国としては、引き続き内需の拡大を図り、諸外国に向けて、より参入しやすい開かれた市場を提供できるよう努めなければなりません。他方、相手国にも喜ばれる輸出に心がけて、対外的な経済均衡を図るよう努力しなければなりません。
 本年、アジアにおいて初めての主要国首脳会議がわが国で開催される予定となりましたことは、きわめて意義深いものがあります。この会議は、世界経済の安定的拡大の諸方策につき関係国の首脳が率直に話し合い、国際協力の実現を目指す場としてきわめて重要な意味を持っております。わが国は、主催国として万全の準備を整えますとともに、関係国全体の協力を得て、その成功を期してまいりたいと考えております。
 また、完結に近づきました東京ラウンド交渉が実りある終結を見るよう努め、新しい貿易秩序の基礎固めに貢献するところがなければなりません。
 五月には、マニラにおいて第五回国連貿易開発会議の開催が予定されております。政府としては、一層積極的な姿勢で南北問題に取り組んでまいる所存であります。最近の南北問題の推移やアジア・太平洋地域との関係を考えるとき、わが国の経済協力はきわめて重要であります。私は、政府援助を三年間で倍増し、援助額の国民総生産に占める比率の改善に努めるという既定の方針は、苦しい財政事情の中にありましても、これを貫いてまいる所存であります。
 また、わが国の国際社会における立場を考えますと、先進国と発展途上国とを問わず、また、政府、民間を通じ、必要とされる資金、物資、知識、技術を可能な限り提供し、幅広く国際交流を進めてまいらなければなりません。特に、私は、留学生や研修生の受け入れ、学者や技術者等の派遣を通じて、相手国のマン・パワーの開発に対する協力を重視してまいりたいと考えております。
 昨年いっぱい変動の大きかった国際通貨情勢は、関係主要国の話し合いと協力によりまして、このところ小康を見ております。しかし、今後とも、より望ましい通貨秩序の形成を目指して、各国が、基礎的諸条件の改善と整備のため、それぞれの立場で協力することが必要であると考えております。
 なお、ここで一言付言したいことは、新時代にふさわしい国際性豊かな人材の養成であります。このところ、日本人の国際性がとみに向上を見せておりますることは、喜ばしいところであります。また、これまでわが国は、資金、物資の両面にわたりまして、自由化を進めてまいりました。さらに、文化の領域においても国際化を進めなければならない時代を迎えております。私は、この傾向を推し進め、国際性豊かな人材が各分野で幅広く活躍できるよう期待いたしますとともに、政府としても、そのための協力を惜しまない所存であります。
 当面の経済運営に当たっての課題は、物価の安定を保ちつつ、雇用の維持、拡大に努め、あわせて世界経済に対するわが国の責任を果たすとともに、財政再建の契機をつかむことであります。
 このため、雇用対策面では、中高年齢者、離職者等の雇用拡大に細心周到な配慮を加えますとともに、中小企業、構造不況業種等に対する対策をきめ細かく実施することといたしております。
 また、これらの対策とともに、適切な内需の拡大を図るため、厳しい財政的制約にもかかわらず、可能な限りの財政支出を確保し、民間経済活動の展開と相まちまして、景気の回復を定着させるため、精いっぱいの努力をいたしました。このことは、同時に、国際的要請の強い国際収支の均衡化にも資するものと考えております。
 物価の安定は不断に堅持すべき目標であります。最近までの物価動向は、円高の影響等から、卸売物価、消費者物価とも安定裏に推移いたしておりますが、今後はこれら諸条件の変化や諸物価の動向を十分注視しつつ、その安定基調の維持に万全を期してまいります。
 財政再建の問題は、いよいよ緊切な課題となってまいりました。今般の予算編成に当たりましても、歳出内容の厳しい洗い直しに取り組むとともに、社会保険診療報酬課税の特例を初めとする租税特別措置の主なる懸案事項について、その是正に努めました。しかし、財政の規模は、なお前年度を大幅に上回る公債に依存せざるを得ない状況であり、さらに、その将来の展望を考えますと、その再建は、いまこそ本格的に取り組まねばならない国民的課題であると思います。政府は、歳入、歳出を通じ、中央、地方にわたりまして、積極的に検討を進めてまいる決意であります。財政があらゆる要求にそれなりに適応することができた高度成長期の夢は、もはやこれを捨て去らなければなりません。私は、そういう観点に立ち、一般消費税の導入など税負担の問題についても、国会の内外において論議が深まることを強く望んでおります。
 当面の経済的課題の克服と並んで、わが国経済の中長期的発展の展望を示すことも、政府の重要な任務であると存じます。
 政府は、このたび、昭和六十年度までを展望する新しい経済計画の基本構想を取りまとめました。国民の先行きに対する不透明感を払拭し、均衡のとれた経済社会の発展に展望を開こうとしたものであります。政府は、この構想に基づく計画を速やかに作成し、それを指針として、今後の経済政策の具体的展開を図ってまいる考えであります。
 今日、資源・エネルギーの確保は、わが国の命運を左右する重大な意味を持っております。私は、省エネルギーの一層の推進、石油の安定供給の確保、石油代替エネルギーの開発、日米科学技術協力などによる核融合を初めとする新エネルギーの研究開発等、一連のエネルギー政策を精力的に進めてまいりたいと思います。
 また、国民食糧の総合的安定的確保は、政治の基本であります。私は、そのため、国内で生産可能なものは極力国内で生産することとし、生産性の高い近代的な農家を中核的な担い手として、需給の動向や地域の実態に即して、農業の再編成を図ってまいる所存であります。また、国内で不足する食糧については、多角的、安定的な秩序ある輸入によって、これを補うことといたします。
 あわせて、世界的な二百海里時代の本格的な到来に対処して、漁業外交の積極的な展開と沖合い沿岸漁業の振興に努めたいと思います。さらに、森林資源の維持、培養を図って、国土の保全と林業の発展に努めてまいる方針であります。
 経済的物質的豊かさとともに、われわれは、暮らしの中に、豊かな人間性、参加と連帯に生きるふるさとを取り戻したいと思います。その実行に当たって、私は、日本的な問題解決の手法を大切にしたいと思います。すなわち、日本人の持つ自立自助の精神、思いやりのある人間関係、相互扶助の仕組みを守りながら、これに適正な公的福祉を組み合わせた公正で活力のある日本型福祉社会の建設に努めたいと思います。
 そのため、私は、都市の持つ高い生産性、良質な情報と、民族の苗代とも言うべき田園の持つ豊かな自然、潤いのある人間関係とを結合させ、健康でゆとりのある田園都市づくりの構想を進めてまいりたいと考えます。緑と自然に包まれ、安らぎに満ち、郷土愛とみずみずしい人間関係が脈打つ地域生活圏が全国的に展開せられ、大都市、地方都市、農山漁村のそれぞれの地域の自主性と個性を生かしつつ、均衡のとれた多彩な国土を形成しなければなりません。私は、そうした究極的理念に照らして、公共事業計画、住宅対策、福祉対策、文教政策、交通対策、農山漁村対策、大都市対策、防災対策等、もろもろの政策を吟味し、その配列を考え、その推進に努めてまいりたいと思います。また、沖縄の振興開発についても、その実情に応じて、施策の充実を図ってまいりたいと思います。
 さらに、家庭は、社会の最も大切な中核であり、充実した家庭は、日本型福祉社会の基礎であります。ゆとりと風格のある家庭を実現するためには、各家庭の自主的努力と相まって、政府としては、住宅を初め家庭基盤の充実に資する諸施設の整備、老人対策、母子対策等の施策の前進に努めたいと思います。また、本年は国際児童年に当たっておりますが、児童、青少年のための諸施策を一層充実するよう努めてまいります。
 私は、教育の自発性と活力を尊重してまいりたいと存じます。多様化し、充実した教育の中から、個性を持つ、豊かな創造力とすぐれた国際感覚を身につけた若者が育ってくるものと信じます。そのため、教育に対する政治の側からの関与はできるだけ控えつつも、入試制度の改善、すぐれた教育者の確保、教育施設の整備等については、国公私立を問わず、政府の果たすべき役割は責任を持って遂行してまいりたいと思います。
 また、すべての国民が、自主的な選択により、生涯にわたって常にみずからを啓発し、それぞれの個性と能力を伸ばし、創造的な生活を享受できるよう、文化、教育、スポーツなどの諸条件の整備と充実を図ってまいります。
 われわれは、西欧型の近代化には目覚ましい成果をおさめましたが、その代償として、わが国に特有の精神文化のあり方を十分尊重してきたとは言えないように思います。私は、日本的なものを大切にし、それらをわれわれの生活の中に生き生きと位置づけたいと願うものであります。
 元号問題につきましても、私は、これが日常生活の中に定着しておるという事実を尊重して、今国会で、その法制化を果たしたいと願っております。
 現在、世界も日本も、新しい時代を迎えようとしております。旧来の発想や使い古された手法にとらわれていてはなりません。いま重要なことは、政治が、何とかして確かな未来への展望を国民の前を示し、国民とともに一歩一歩前進することであると思います。
 壮大な文化の創造、個性ある地域社会の形成、科学技術の革新と産業構造の刷新、海洋や宇宙の開発、厳しい世界の現実に対応しての総合的な安全保障の確保等は、いまわれわれが挑戦すべき重要な課題であります。
 私は、そうした課題にいどむ次の世代の持つ可能性を最大限に引き出すことが政治の責務であると確信します。
 以上、私は所信の一端を申し述べましたが、国民各位の良識と英知に支えられた御理解と御協力とを切にお願いするものであります。(拍手)
    ―――――――――――――
#18
○議長(安井謙君) 園田外務大臣。
   〔国務大臣園田直君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(園田直君) 第八十七回国会の再開に当たり、外交の基本方針につき所信の一端を申し述べます。
 本年は一九七〇年代の最後の年であり、一九八〇年代に向かう重要な転機の年であります。
 七〇年代は、時代の流れを変えるような幾つかの重要な動きがあらわれてきた時期であります。
 米中接近から国交正常化への動き、日中国交正常化と日中関係の進展、ベトナム戦争の終結とその後のインドシナ半島の動き、これらに対応してのASEAN諸国の動き、中東、アフリカ情勢の動揺等が見られました。経済面でも、石油危機を契機とする世界的な経済困難、それに伴う保護主義の圧力の高まり、開発途上国の経済困難の増大等が見られ、しかも、そうした中で世界経済の安定的拡大のためにわが国が積極的な役割りを果たすことに対する国際的な期待が強まりつつあります。
 こうした情勢を踏まえて一九八〇年代を展望すると、わが国を取り巻く国際環境は、今後一層厳しく、かつ複雑なものとなると覚悟せざるを得ません。
 このようなときに、わが国としては、その持てる経済力と政治的影響力を振りしぼって、世界の平和と繁栄のために進んで積極的な貢献をしていくことが必要であり、そうすることにのみ、これからの厳しい国際環境の中でわが国の真の平和と繁栄を確保する道があると考えます。
 私は、このような認識に立って、これからの外交を進めてまいる決意であります。以下、その方針について申し述べます。
 日米安保体制を基礎とした米国との友好協力関係は、わが国外交の基軸であり、わが国はもちろん、アジア、ひいては世界の平和と繁栄のために大きく貢献するに至っております。政府としては、このような日米間の友好協力関係を一層揺るぎないものとするために、各界の幅広い交流を強化し、日米間の相互信頼関係を一層深めるよう不断の努力を行うとともに、世界的な視野に立った米国との協力関係を一層発展させていく方針であります。
 アジアの平和と繁栄に積極的に寄与することは、わが国外交の最も重要な課題の一つであります。
 特に、東南アジアの平和と繁栄を確保することは、わが国にとって、きわめて重要な問題であります。政府としては、ASEAN諸国及びビルマとの間の幅広い友好協力関係の一層の増進に努めるとともに、インドシナ諸国との間にも相互理解の増進を図り、もって東南アジア全域にわたる平和と繁栄の構築に寄与してまいるつもりでございます。ASEAN諸国の強靱性強化のための努力は特にこれを重視し、これに対する支援、協力を一層強化してまいります。また、最近、米国、EC、豪州等の諸国がASEANに対する協力について積極的な姿勢を示していることは歓迎すべきことであります。政府としては、今後、ASEAN諸国に対する支援について、これら諸国とも緊密に協力してまいるつもりであります。
 他方、カンボジアをめぐる最近の事態はきわめて遺憾であり、内政不干渉と民族自決の原則にのっとって、一日も早く平和と安定が回復されることを強く希望いたします。この見地から、政府としては、ASEAN諸国等と協力しつつ、この地域の平和と安定のためにできる限りの努力を続けてまいる決意であります。
 また、インドシナ難民の増加は、アジア・太平洋地域の不安定要因となっております。政府としては、このような認識に立って、財政的支援を初めとする一連の措置に加えて、さらにとるべき方策を検討し、この問題の解決のための国際的な努力にできる限りの協力を行ってまいるつもりであります。
 韓国については、その内外諸情勢の展開をも踏まえ、新たな見地から幅広い協力関係を発展させるべく努力いたします。北朝鮮との関係についても、今後とも、経済、文化等の分野における交流を漸次積み重ね、相互理解の増進に努めてまいります。また、朝鮮半島に真の平和と安定をもたらすためには、まず南北対話の再開が必要であります。政府としては、そのための国際環境づくりに向かって関係国と協力しつつ努力してまいります。
 南西アジア諸国及びインド洋の平和と安定もわが国の大きな関心を有するところであります。今後とも、南西アジア諸国の安定のための自主的な努力に対する協力を進めてまいる考えであります。
 中国との関係については、日中平和友好条約を基礎として、相互理解の増進と友好関係の発展に努め、もって、新たな段階を迎えた日中関係がアジアひいては世界の平和と安定に寄与するものとなるよう、最大限の努力を払う考えであります。
 中国と並んで重要な隣国であるソ連との間の友好関係を維持発展させることも、わが国外交の基本課題であります。
 日ソ関係を真に安定した基礎の上に置くためには、北方四島の祖国復帰を実現して、平和条約を締結することが不可欠であります。この問題を解決するためには、日ソ間の実務的な協力関係を発展させつつ、ソ連との間で率直にして誠意ある対話を重ね、相互理解と相互信頼を深めていくことが必要であります。このために、政府としては、ソ連首脳の来日を実現することを含め、あらゆるレベルでの対話を積み上げるべく努力してまいります。
 世界の平和と繁栄に貢献することを目標とする外交を進めていく上で、西欧諸国並びにカナダ、豪州及びニュージーランドとの緊密な協力関係を維持することが近時ますます重要になっております。この見地から、これら諸国との幅広い協力関係の増進に特に配慮し、このために積極的な努力を行ってまいる所存であります。
 中近東諸国との間においては、長期的な相互補完関係を基礎として友好協力関係の強化に努めてまいります。最近のイランにおける情勢の推移については、わが国としては重大な関心を持っております。また、エジプト、イスラエル両国を初めとする関係諸国の努力により、中東における公正かつ永続的和平が一日も早く実現するよう切望しております。中近東地域の平和と安定のためにできる限りの貢献を行ってまいる方針であります。
 中南米の諸国との関係についても、さらにはアフリカの諸国との関係についても、政府首脳レベルの交流を含む各種レベルの交流を深め、相互協力の基盤を広げつつ、長期的な展望に立った友好協力関係を増進するよう、心を新たにして積極的な努力を展開してまいります。
 東欧諸国との間においても、相互理解の増進と友好関係の発展のために一層の努力を払ってまいる方針であります。
 以上のような国と国との関係に基礎を置いた外交とともに、軍縮、新しい海洋法秩序の確立など、国際政治の課題やハイジャック、テロ等国境を越えた国際社会の共通の課題を解決するための国際的な努力に積極的な協力を行うこともわが国外交の重要な課題であります。これらの分野においても、国連その他の場において一層積極的に協力を進めてまいる方針であります。
 以上、主として国際政治の面におけるわが国外交の基本的な方針について申し述べました。
 世界経済の問題も、世界の平和と繁栄を確保する上での重要な課題となっております。特にわが国の場合、経済面における努力はわが国のなし得る国際社会に対する貢献の最も大きなものであり、その意味で、政治面における努力と密接不可分の関係にあります。
 世界経済は、これまでの各国の努力の結果、最近明るさを取り戻してきた面もありますが、いまだ本格的な拡大基調を回復するには至っておりません。そうした状況のもとで、保護主義の圧力は根強いものとなっております。
 南北問題の分野においても、解決を要する多くの問題があり、エネルギーをめぐる国際情勢にも厳しいものがあります。
 世界経済の抱えるこれら問題の多くは、長期的あるいは構造的な見地からの対応策を必要としております。このような対応策を見出すことこそが、まさに一九八〇年代の世界経済の課題であり、こうした課題を解決するための国際的な努力に積極的に協力することこそ、世界の平和と繁栄の確保に寄与することを目指すわが国外交の進むべき道であります。このための努力は、しばしば国内的に多大の困難と苦痛に伴うものであります。しかし、わが国がこのような努力を行うことは、わが国自体の経済の持続的な繁栄を可能にする環境をつくることにつながるものであり、あえて進まねばならない道であります。
 このような認識に立って、わが国はこれまでも、世界経済の安定的拡大に資するために、各般の措置を講ずるとともに、諸外国からも同様の協力を得るべく努めてまいりました。妥結の方向に大きく前進した東京ラウンド交渉を一日も早く成功裏に終結させるべく、各国と協調してさらに一層の努力を払います。また、ようやくあらわれつつある経常収支の黒字幅の縮小傾向を一層定着させるべく、輸入の増大を中心として、さらに努力する考えであります。
 さらに、昨年の石油価格引き上げや最近のイラン情勢等をも踏まえ、資源・エネルギーの安定的供給の確保のために努力することが必要であり、同時に、日米間の新エネルギーの研究開発を目的とする科学技術協力を初めとして、エネルギー問題の長期的課題の解決に向けての国際協力に積極的に参画してまいります。
 本年は、わが国で主要国首脳会議が開催される予定であります。政府としては、以上述べたような方向の努力を積み重ねつつ、各国とともに、来るべき主要国首脳会議が世界経済の前途に一層の明るさをもたらす契機となるよう、最大限の努力を払ってまいります。
 このような経済問題の中でも、南北問題は、アジアの一員としてのわが国が特に重視すべき課題であります。南北間の著しい経済的な格差は、世界経済の安定的拡大にとっての障害であり、また、政治的な不安定要因でもあります。
 本年は第五回国連貿易開発会議が開催され、また、主要国首脳会議においても南北問題が重要な議題の一つとなる予定であります。政府としては、こうした機会をも含めて、南北間の調和、協調を図ることを旨として、南北問題の解決のための国際的な努力を成功に導くために積極的な役割りを果たしてまいる決意であります。
 このような見地に立って、政府としては、今後政府開発援助の三年間倍増の確実な達成を図り、さらに、援助額の国民総生産に占める比率の増大、援助の質の向上、執行方法の一層の改善に引き続き最大限の努力を払うとともに、共通基金の設立、一次産品所得の安定を初めとする開発途上国の貿易環境の改善のための諸施策の実現に一層努力してまいる方針であります。
 以上、政治経済両面にわたるわが国外交の基本的な進め方について申し述べました。
 申すまでもなく、外交は、国と国、人と人との相互信頼の上に成り立つものであります。したがって、わが国民と諸外国の国民との間の相互理解の増進に努めることは、外交の前提とも言うべき重要な課題であります。このような認識のもとに、文化面での諸外国との交流の促進、正しい対日理解の増進のために格段の努力を払ってまいります。
 私は、平和に徹することを国是とするわが国の憲法の精神は、人類の先覚者として誇り得るものであると自負する一人であります。この誇り高き憲法の精神にのっとり、世界の平和と繁栄がなければわが国の平和の繁栄もないとの認識に立って、国際社会をより平和でより豊かなものとするよう全力を傾けていくことが、わが国の使命であると考えております。
 このような道は決して安易なものではなく、むしろ試練に満ちたものであります。しかし、資源も乏しく、国土も狭く、国の存立を国際環境に大きく依存し、国民の英知と努力のみによって国の平和と繁栄を図らざるを得ないわが国にとって、進むべき道はこれ以外にはありません。
 私は、このような考え方に立って、これからの厳しい国際環境の中で一歩一歩着実に外交を進めてまいる決意であります。
 国民各位の一層の御理解と御支援をお願いする次であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#20
○議長(安井謙君) 金子大蔵大臣。
   〔国務大臣金子一平君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(金子一平君) ここに、昭和五十四年度予算の御審議をお願いするに当たりまして、当面の財政金融政策につき所信を申し述べますとともに、予算の大綱を御説明いたしたいと存じます。
 顧みれば、一九七〇年代は、わが国経済が高度成長から安定成長へ、量的拡大から質的向上へと転換を迫られ、加えて、石油危機を契機として、世界経済が戦後最大の不況と激しいインフレに見舞われた厳しい試練の年月でありました。
 本年は、その七〇年代の最後の年であり、八〇年代へ向けて新しい進路を開くための年であります。
 このようなときにおける財政金融政策の果たすべき使命は、まことに重大なものがあると痛感いたす次第であります。
 最近のわが国経済の情勢は、ようやく石油危機の後遺症から脱却して、安定した成長への道を着実に歩むに至っていると言えます。
 特に昨年は、物価が安定する中で、公共投資の拡充、施行促進の効果が浸透し、設備投資や個人消費も次第に堅調に向かい、内需を中心として順調に景気が回復した年でありました。また、企業収益にも改善の傾向が見受けられ、民間経済の活力が発揮できる素地ができ上がりつつあります。
 他面、雇用情勢は、求人数が増加するなど改善の兆しが見受けられまするけれども、新規労働力の増加等もあって、総じて厳しいものがあります。また、国際収支は、その改善のための諸努力に加え、大幅な円レートの上昇による調整効果もあり、輸出数量の減少、輸入数量の増大が見られ、経常収支の黒字縮小基調が顕著になってきておりますが、なお一層の縮小が国際的にも期待されております。
 こうした中にあって、政府は、国民生活の安定と経済の適正な成長を図るため、積極的な財政運営を行ってまいりましたが、その反面、財政収支の不均衡は、ここ数年、拡大の一途をたどっております。
 私は、このような内外情勢のもとにおいて、特に次の三点を緊要な課題として、一九八〇年代へ向けての政策運営に万全を期してまいりたいと考えております。
 すなわち、第一は、各分野において均衡のとれた経済社会を実現することであり、第二は、世界経済の安定と発展のために積極的に貢献することであります。第三は、危機的状況にあるわが国財政を再建するため一刻も早くその健全化への第一歩を踏み出すことであります。
 まず第一は、均衡のとれた経済社会の実現であります。
 現在、わが国経済は、重大な構造変革期を迎えております。
 すなわち、技術革新の鈍化、立地・環境等国土資源の制約、海外資源・エネルギー価格の高騰など、これまでの高度成長を支えてきた内外の諸条件の変化により、わが国経済は、成長率の低下、産業構造の変革等を余儀なくされるに至りました。この過程において、失業率の上昇、需給の不均衡、財政の赤字拡大等の種々の構造的問題が発生し、その国民経済に与える影響が憂慮されております。
 今後におきましては、従来のような高度成長の再現を求めても、その達成はもはや困難であります。また、現下の構造的諸問題は、経済全体の需要を拡大するだけでは解決できない面があると考えられます。私は、わが国経済が抱える諸問題に対処するためには、現在の構造変革期の実態を正確に把握し、新しい経済構造に即応した地道な努力を続けることが要請されておると思います。このためには、景気全般に対する配慮とあわせて、実態に即した個々の施策を着実に積み重ねてまいりたいと考えております。
 以上のような観点から、私は、今後においては、雇用、需給、物価、国際収支、財政等国民経済の各分野において均衡のとれた経済社会の実現を目指すことが、何よりも肝要であると考えます。このような各分野の調和の上に立った経済発展こそ、新しい社会の基盤を確立するものであると確信しておる次第であります。
 第二は、世界経済の安定と発展のために貢献することであります。
 各国経済の相互依存関係が近年とみに深まっておる情勢のもとで、いずれの国も、自国のことのみを考えて経済運営を行うことはできません。
 世界経済が現在抱えている課題は、雇用機会の増大、インフレの克服、国際収支の不均衡の是正等の諸問題であります。わが国は、世界経済に大きな影響を及ぼす立場にある国の一つとして、これらの課題の解決のため、積極的に貢献していかなければなりません。
 このため、わが国としては、まず、対外均衡の回復を一層確実なものとする必要があります。すでに、わが国の経常収支の黒字は顕著な減少傾向を示しているほか、長期資本収支における流出も増大しておりますが、この傾向が今後とも継続するよう努力してまいりたいと考えております。
 また、世界経済の円滑な発展のためには、通貨の安定が不可欠であります。
 このため、各国政府が基礎的諸条件の改善に努めるとともに、介入政策等の面で緊密な連絡と協調を保つことにより、為替相場の急激な変動を抑制し、あわせて市場の心理的不安感を除去することが大切であります。
 わが国としては、通貨安定のため、今後とも各国と緊密な協力をしてまいりたいと考えております。
 次に、世界貿易拡大のためには、自由貿易体制を維持強化していくことが急務であります。政府は、従前より東京ラウンド交渉に積極的に取り組んでまいりましたが、いまや、最終的段階を迎え、実りある内容をもって早期に完結するよう一層の努力を傾けてまいりたいと考えております。
 なお、外国為替管理制度等につきましては、その全面的な見直しを行い、原則自由の新しい法体系とするため、目下、鋭意作業を進めております。
 さらに、世界経済の均衡のとれた成長のためには、開発途上国の経済発展を支援していく必要があり、わが国としても、ODA三年倍増、援助条件の一層の改善等、経済協力の大幅な拡充強化を図ってまいることとしております。
 第三は、わが国財政の再建であります。
 わが国財政は、昭和五十年度以降、特例公債を含む大量の公債に依存する異常な状況にあり、昭和五十四年度においては、歳出、歳入についてのあらゆる努力にもかかわらず、なお十五兆円を上回る公債の発行を余儀なくされております。
 今日の財政収支の状況は、租税の自然増収によって均衡を回復することがとうてい期待できない、いわば構造的な赤字に陥っていると言えます。このまま安易に財政赤字を積み重ねれば、われわれの子孫に大きな負担を残し、財政の機動的運営を困難とするばかりでなく、経済にインフレ要因を持ち込み、経済そのものの安定を阻害するおそれがあります。
 わが国経済の健全な発展のためには、財政の再建がいまや最も緊要な課題であることを何人も否定できないと思います。
 財政再建のためには、まず、歳出の厳しい見直しが必要であります。昭和五十四年度予算編成に当たっては、一般行政経費を極力抑制するとともに、政策的経費についても根底から見直すなど、歳出の節減合理化へ一層の努力をいたしました。
 今後の財政運営に当たっても、国民各位の御理解と御協力を得て、引き続いて歳出内容の効率化を推進してまいる所存であります。
 同時に、福祉の充実等についての国民の強い要望を考えれば、今後とも、ある程度の財政規模を維持することはどうしても必要でありまして、したがって、これに見合う歳入を確保しなければなりません。
 このためには、まず、制度と執行の両面にわたる税負担の公平を図ることが強く要請され、政府としては、後に述べますように、社会保険診療報酬課税の特例の是正を初めとする租税特別措置の整理合理化を一層強力に進めることとしております。
 しかしながら、現在の財政収支の不均衡は、これらの努力のみでは解決が期待できない大きさになっております。わが国財政は、もはや一般的な税負担の引き上げによらなければ、経済の安定、福祉の向上という財政本来の使命を果たすことができないところまで来ているのであります。
 先般の税制調査会においても、このような考え方に立って、早期に一般消費税を実施すべきである旨、答申が取りまとめられました。
 政府といたしましては、この趣旨に沿って、一般消費税を昭和五十五年度のできるだけ早い時期に実施するために必要な諸準備を積極的に進めてまいる所存であります。
 財政再建への道が険しいことは覚悟いたしております。しかし、申すまでもなく、健全な財政運営なくして経済の発展と国民生活の向上は期しがたいところであり、それは国民の適正な負担に裏づけられて初めて成り立つものであります。
 財政収支の不均衡の解消は、究極的には、財政を支える国民各位の御協力によらざるを得ないのであります。国民各位の御理解を切にお願いする次第であります。
 昭和五十四年度予算は、以上申し述べました考え方に立って、現下の厳しい財源事情のもとで、経済情勢に適切に対処するとともに、できる限り財政の健全化に努めることを基本として編成いたしました。
 その大要は、次のとおりであります。
 第一に、一般会計予算におきましては、まず、経常的経費について、その節減合理化に努め、緊要な施策に重点的に配意しながら、全体として極力規模を抑制することといたしました。このため、各省庁の経常事務費を初めとする一般行政経費を極力抑制するとともに、政策的経費についても、既定経費を含め、各種施策の優先順位を十分考慮し、もって歳出内容の質的充実に努めたのであります。
 他方、投資的経費につきましては、景気情勢にもかんがみ、厳しい財源事情のもとではありますが、できるだけの規模を確保することとし、特に、公共事業関係費、文教・社会福祉施設整備費等の拡充に配意することといたしました。
 以上の結果、両部門を合わせた一般会計予算の規模は、前年度当初予算に対し一二・六%増の三十八兆六千一億円となっております。
 第二に、税制等の改正につきましては、まず、現下の厳しい財政事情に顧み、揮発油税等の税率の引き上げ、たばこの小売定価の改定を行い、歳入の確保に努めるほか、受益者負担の適正化を図ることとしております。
 また、税負担の公平確保の見地から、社会保険診療報酬課税の特例を是正するとともに、有価証券譲渡益課税を強化するほか、価格変動準備金の段階的整理を初めとして、企業関係租税特別措置の整理合理化等を一層強力に進めることとしております。
 他方、経済社会の要請に即応し、産業転換投資の促進、優良な住宅地の供給増加等に資するため、所要の措置を講ずることとしております。
 第三に、公債につきましては、昭和五十四年度の租税及び印紙収入予算額が、五十三年度において、五月分税収の年度所属区分を変更したこととの関連もあって、税制改正後で、前年度当初予算と同額程度しか見込まれず、歳出の増加額のほぼ全額を公債の増発によらざるを得ない状況にあります。公債の発行額は、十五兆二千七百億円を予定しており、公債依存度は、三九・六%に達しております。この公債発行額のうち、建設公債は七兆二千百五十億円、特例公債は八兆五百五十億円を予定しており、特例公債依存度は二七・一%となっております。
 なお、別途、特例公債の発行のため昭和五十四年度の公債の発行の特例に関する法律案を提出し、御審議をお願いすることといたしております。
 このように公債発行額が多額なものとなりましたので、資金運用部資金による一兆五千億円の引き受けを予定するほか、公募入札分を前年度の一兆円から二兆七千億円に拡大する等の措置を講ずることといたしております。
 第四に、財政投融資計画につきましては、民間資金の積極的活用を図りつつ、経済情勢に適切に対応するため、事業部門の事業規模の確保に特に配慮するとともに、住宅、生活環境整備、文教等国民生活の安定向上に直接役立つ分野に対し重点的に資金を配分することといたしております。この結果、財政投融資計画の規模は、十六兆八千三百二十七億円となり、前年度当初計画に比べ一三・一%の増加となっております。
 第五に、主要な経費について申し述べます。
 昭和五十四年度予算の編成に当たりましては、財源の重点的効率的配分に努めることとし、既定経費の整理合理化を図りながら、社会経済情勢の推移に即応した緊要な施策については、個々に所要の措置を講ずることといたしております。
 まず、公共事業関係費につきましては、前年度当初予算に対し二〇%の増加を確保しており、特に、災害復旧等事業費を除く一般公共事業関係費は、前年度当初予算に対し二二・五%の増加となっております。
 なお、公共事業関係費の内容につきましては、引き続き、住宅、下水道・環境衛生等の生活関連施設の拡充に重点を置いております。
 特に、住宅対策につきましては、住宅金融公庫の貸付限度の引き上げ、住宅宅地関連公共施設整備の一層の推進等、その充実を図ることとしております。
 次に、社会保障関係費につきましては、物価、賃金の安定等から、前年度当初予算に対し一二・五%の増加となっておりますが、真に緊要な施策について、重点的な配慮をいたしております。
 まず、生活保護基準の引き上げ、各種年金の改善等を行うとともに、心身障害者対策、老人対策、母子保健対策等の拡充に努めることとし、社会福祉関係施設の整備についても大幅に拡充することとしております。
 また、医療供給体制の整備を一層推進する一方、医療保険については、社会経済の変化に即応し、給付と負担の適正化を図る見地から、健康保険制度の改正を行うこととしております。
 雇用対策につきましては、特にその充実に努めたところであります。すなわち、景気の回復を通じて雇用の安定と増大を図るとともに、特に、再就職の困難な状況にある中高年齢者の雇用開発のための措置を大幅に拡充するほか、定年延長、職業訓練、心身障害者の雇用促進、職業紹介等各種施策の拡充に格段の配慮をいたしております。また、離職着の生活安定のため、失業給付の充実を図ることとし、支給期間について所要の延長措置を講ずることとしております。
 文教及び科学技術振興費につきましては、まず、小中学校校舎の新増築を中心とした公立文教施設等について、事業量の大幅な拡大を図ることとしておりまするほか、私立学校に対する助成や育英事業の充実等について特段の配慮をいたしております。
 中小企業対策費につきましては、円高等の影響を受けている産地中小企業に対する振興対策の推進及び中小企業信用保険公庫に対する出資の増額等、信用補完制度の充実に重点的に配意するとともに、政府系中小金融三機関等の融資規模の拡大を図ることとしております。
 エネルギー対策費につきましては、引き続き、原子力平和利用の促進、石油備蓄対策の拡充等を図るとともに、新エネルギー技術等の研究開発の一環として、日米協力による国際的な研究に着手することとしております。
 経済協力費につきましては、ODA三年倍増の方針に従い、二国間の無償援助及び技術協力の大幅な増額を図るとともに、国際機関に対する分担金、拠出金等についても積極的な協力を行うこととしております。
 以上のほか、総合農政の一層の推進のため、地域農業生産体制の再編成に必要な経費を計上することとしております。
 また、日本国有鉄道の予算につきましては、定員削減等の経営合理化及び所要の運賃改定を見込むほか、これらとあわせて必要な助成措置を講ずることとしております。
 第六に、地方財政対策について申し述べます。
 昭和五十四年度の地方財政におきましては、四兆一千億円の財源不足が見込まれますが、これに対しては、一般会計からの臨時地方特例交付金、資金運用部資金からの借り入れ及び建設地方債の増発により所要の財源措置を講じ、その運営に支障が生ずることのないよう配慮しております。
 地方交付税交付金については、国税三税の三二%相当額に臨時地方特例交付金等を加算し、これに資金運用部資金からの借入金二兆二千八百億円を加えるなどにより、総額七兆六千八百九十五億円を地方団体へ交付することとしております。
 また、地方債につきましては、その円滑な消化等を図るため、政府資金及び公営企業金融公庫資金による引き受けを四兆百三十億円と大幅に増額するとともに、一般市町村に係るいわゆる財源対策債につきましては、原則として全額政府資金で引き受けるなど、きめ細かい配慮をいたしております。
 この際、私は、地方公共団体に対し、国と同一の基調により、一般行政経費の節減合理化を推進するとともに、財源の重点的かつ効率的配分を行い、節度ある財政運営を図られるよう特に強く要請するものであります。
 以上、予算の大要について御説明いたしました。
 次に、当面の金融政策の運営について申し述べます。
 金融面におきましては、昭和五十年来講じられてきました金利水準全般の引き下げ、金融の量的緩和のための措置の効果が実体面に浸透しており、市中貸出金利は戦後最低の水準にまで低下しております。この結果、企業の資金繰りも総じて緩和基調で推移しております。
 当面の金融政策の運営に当たりましては、現在の緩和基調を維持することを基本として、引き続き、物価の安定に留意し、通貨供給の動向を見守りながら、金融情勢に適切に対処してまいりたいと考えております。
 さらに、昭和五十四年度におきましては、国債、地方債等の公共債の発行が実に二十六兆円に近い巨額なものになると見込まれますが、金融情勢等に十分配慮しながら円滑な消化に努めたいと考えております。また、国債の種類及び発行方式の多様化、安定的な投資家の育成、流通市場の整備等については、今後とも、なお一層配慮し、国債管理政策の適切な運営に努めてまいる所存であります。
 いまや、われわれは、国際的視野のもとに、均衡のとれた新しい経済社会に向かって歩み出さなければなりません。今後の流動的な内外の諸情勢を考えるとき、その行く手は決して平坦なものではなく、多くの困難な障害が予想されます。これらの障害を克服するに当たって、われわれは、新しい時代における経済各分野の姿はいかにあるべきか、そのため、政府は何をなすべきであり、何をなすべきでないかを常に問い直しながら、一歩一歩着実に前進していかなければならないと考えます。
 さらに、私は、単に経済面についてのみでなく、広く、人間と自然、個人と社会、経済と環境等、国民生活のすべてにわたって、調和とゆとりのある社会の実現を図らなければならないと考えます。今後の財政金融政策の運営に当たっては、このような観点をも踏まえて、全力を傾けてまいりたいと考えております。
 国民各位の御理解と御協力を切にお願いする次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#22
○議長(安井謙君) 小坂国務大臣。
   〔国務大臣小坂徳三郎君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(小坂徳三郎君) 第八十七回国会の再開に当たり、わが国経済の当面する課題と経済運営の基本的な考え方について所信を申し述べたいと存じます。
 わが国の国民総生産は、昭和五十三年度において約二百十兆円に達しております。これは、共産圏諸国を含めた世界の国民総生産のおよそ八分の一ないし九分の一に当たります。ちなみに、十年前におけるその割合は、およそ二十分の一でありました。
 わが国の経済は、このような規模にまで成長したのでありますが、われわれはこれを国際経済社会における責務が重きを増したものと受けとめ、同時に、経済成長の成果をより豊かな国民生活のために生かしていくよう心を砕いてまいらなければならないと考えております。
 最近の国際情勢を見ますと、各国の経済は、景気、物価等、経済の各面にわたり、相互にその依存性を強めております。また、欧州で経済統合が進展しているほか、中国経済は近代化を目指し、世界経済への参加の意欲を強めており、また、中進国の台頭が見られるなど、世界経済はさらに多元化の方向へと進んでおります。
 このような大きな流れの中で、今年の国際経済環境は、原油価格の引き上げや中近東諸国の政治情勢の複雑化など、なお厳しいものがありますが、わが国を含め先進諸国間において経済政策の協調的行動が進められ、世界経済を安定させるための精力的な努力が続けられております。
 このたび、主要国首脳会議が東京で開催される運びとなりました。その準備に万全を期したいと考えます。
 昭和五十四年は、石油危機後の調整をほぼ終えて、安定成長路線への移行を図るという新しい局面を迎え、いわば夜明けの年であるということができましょう。
 昭和四十八年末に起こった石油危機は、戦後わが国経済が体験した最大の衝撃であったと言っても過言ではありません。それによる経済的混乱はまことに大きいものがありました。
 自来、わが国経済は、その衝撃からいかにして立ち直るかという課題と取り組んでまいったのであります。
 その後の動きを物価、景気、国際収支について見ますと、まず、物価は一ころの騰勢が影をひそめ、今日では安定した基調で推移しておりますし、景気回復は緩やかながら息切れすることなく続いております。また、国際収支もすでに赤字から脱しております。
 経済成長を支える内容もかなり変わってまいりました。顧みますと、昨年は、近年では初めて、国内需要を中心に景気回復が進んだ年であります。これは、国内需要の拡大という、いわばみずからの力を主体として経済成長が行われたということでありまして、従来とは異なるものでありました。
 企業、家計の対応も着実に進みました。企業はなおかなりの需給ギャップを抱えておりますが、石油危機前の収益の水準をほぼ回復しており、以前のような高い成長のもとでなくとも収益が確保できるような体質を備えつつあるものと見られます。また、家計も、物価の高騰等の、将来に対する不安から徐々に解放されており、最近の消費は底がたい動きを示しております。
 しかしながら、その反面、財政が困難な事態に直面するとともに、雇用情勢には依然として厳しいものがございます。また、国際収支も均衡回復への動きが国際的に強く期待される状態にあります。
 このような時期に当たり、政府は、中長期にわたる経済運営の指針として新経済社会七カ年計画の基本構想を取りまとめました。五十四年度の経済運営は、計画の基本的な考え方を踏まえて行うことといたしております。
 五十四年において当面する課題は、わが国経済を新しい安定した成長軌道に移行させるという中長期的な展望に立って、景気回復を確実なものとし、雇用、物価の安定を維持するよう努めるとともに、財政健全化の足がかりをつくることであります。さらには、対外協調の一層の推進を図ることであります。
 昨年は、積極的な財政運営により、民間設備投資を初めとする内需に灯がともされた状態と考えられます。しかしながら、目下のところ、その灯は十分に強いとは申せません。
 そこで、昭和五十四年度予算においては、財政事情の許す範囲内においてできる限り積極的な財政運営を行うこととし、国民生活の充実に役立ち、かつ、需要創出効果の大きい公共事業の拡大に努めることといたした次第であります。
 このような財政面の動きとともに、最近における企業収益の改善、物価の安定等を背景として、民間経済の活力ある展開がなされるものと考えられます。
 以上、政府の諸施策と民間経済の活力とが一体となり、五十四年度の経済は、実質で六・三%程度の成長が見込まれております。
 なお、経済成長率などの経済見通しの数字は、わが国経済が民間を主体とする市場経済であり、また、特に国際環境の変化には予見しがたい要素が多いので、ある程度の幅を持って考えられるべきであるということは当然であります。
 次に、雇用の安定について申し述べます。
 最近の労働市場の動向を見ますと、景気回復に伴い、就業者の数は着実に増加しておりますが、他方、労働力人口が増加しており、また、企業の雇用調整が進んでいることもあって、完全失業者数はかなり高水準で推移いたしております。
 特に、構造不況業種、不況地域等、特定の業種、地域は深刻な状況を呈しております。
 このため、五十四年度においては、雇用対策として、中高年齢者雇用開発給付金制度を抜本的に充実するほか、雇用保険受給者等を雇い入れ、教育訓練を行う事業主に対し賃金助成を行う制度を新たに設けることといたしました。また、定年延長奨励金、継続雇用奨励金の大幅改善等の措置をあわせて講ずることといたしております。このように、中高年齢者あるいは生計の中心者の雇用環境の改善に重点を置きつつ、雇用の安定のために格段の努力を払うことといたしております。
 さらに、地域別の雇用情勢に配慮しながら公共事業の重点的配分を行う考えであります。
 これらの個別対策と並行して、五十四年度においては、主要先進諸国の中でも高い経済成長を目指し、雇用の安定のための基盤をつくり上げていくことといたしております。
 最近の物価動向は、円高の影響等から、卸売物価、消費者物価ともに近年になく落ちついた推移を示しており、西ドイツ、スイスと並んで安定した状態にあります。
 しかしながら、今後の物価動向は、物価の安定に大きく寄与してきた円高の影響が従前ほどには考えられないこと、原油価格の引き上げに見られる海外物価の動き等、十分注意をしていかなければならない情勢変化が生まれております。
 政府といたしましては、現下の物価安定基調を引き続き維持するよう全力を傾注してまいる所存であります。
 まず、家計に直結する生活必需物資について、その価格動向を監視するとともに、野菜、肉類、魚等の価格安定対策の機動的な運営を図るなど、生産、流通、販売の各面にわたる施策を推進し、良質で低廉な商品を求める消費者各位の切実な願望にこたえてまいりたいと考えております。
 また、輸入政策を積極的に活用し、輸入品の増加を図るとともに、これまでの円高の効果が国内販売価格面に一層浸透するように努力をいたします。
 さらには、中長期的な観点から、農業、中小企業等低生産性部門の近代化を図り、流通機構の合理化や競争条件の整備等、総合的な対策を着実に積み重ねてまいります。
 通貨供給の動向にも注意を怠らないよう努めてまいります。
 公共料金につきましては、経営の徹底した合理化を前提とし、物価、国民生活への影響に十分配意しつつ、厳正に取り扱う方針であります。
 なお、五十四年度予算編成に際しましては、一部公共料金の改定を予定いたしましたが、これも真にやむを得ないものに限るとともに、その実施時期や値上げ幅の調整には極力配慮いたした次第でございます。
 国民生活にとって、物価の安定と並んで消費者行政を一層充実していくことが肝要であります。
 政府は、新しい時代の要請にこたえ、消費者保護基本法の理念にのっとり、各種商品、サービスの安全性の確保、苦情処理体制の整備、消費者の商品選択に役立つ情報の提供、地方における消費者行政の拡充、その他所要の施策を行ってまいります。
 消費者行政につきましては、消費者各位の問題提起を期待し、その声を生かしつつ、たゆみない前進を図ってまいりたいと考えております。
 わが国経済の国際的な比重の高まりに伴い、その責務が一段と重くなってまいったことは、冒頭申し上げたとおりであります。また、わが国は、エネルギー、資源、食糧、その他の面では海外に依存するところが大きく、わが国経済社会の安定的発展のためにも、海外との協調を進めることが不可欠であります。
 このために、自由貿易体制の維持強化を図りつつ、先進諸国間における経済政策上の協調的行動を積極的に推し進めるとともに、発展途上国への経済協力を拡充するなど、国際協調の一層の推進を図っていかなければなりません。
 その第一は、国際収支をめぐる課題であります。
 わが国の国際収支は、基礎収支においてすでに均衡を回復しており、また、経済収支も着実に均衡に向かいつつあります。しかしながら、国際的にはさらに努力を払うことが期待されております。
 このような情勢を踏まえ、政府は、内需振興を柱として輸入の拡大を期することとしており、あわせて、引き続き緊急輸入に努めるなど、輸入促進のために力を注ぐことといたしております。
 第二は、経済協力の拡充についてであります。
 政府は昨年来、政府開発援助について、五十二年の援助実績を三年間で倍増することを目標とし、その対GNP比を先進国水準にまで高めるよう努力いたしております。
 そして、政府開発援助の推進体制の強化を図るとともに、技術協力の充実や経済協力に従事する人材の養成、確保を行い、同時に、相手国の事情に応じて、きめ細かく、かつ、積極的にその推進を図る所存であります。
 次に、中長期の経済運営の基本的方向について申し上げます。
 戦後四半世紀にわたり、わが国の高度経済成長を支えてきた条件は、内外の経済環境の変化により、大きく変容いたしております。
 ここに新しい時代を迎え、中長期的な視野から、確かな未来を築くための方向づけを行うことがぜひとも必要であります。
 このため、政府は、昭和五十四年度を初年度とし六十年度を最終年度とする新経済社会七カ年計画を策定することとし、目下鋭意作業を進めているところでありますが、現段階で取りまとめた基本的な考え方を申し述べたいと存じます。
 この計画の課題の第一は、わが国経済を新しい安定的な成長軌道に乗せることであります。
 そのためには、物価の安定を維持しつつ、雇用、需給、財政などの経済各面における不均衡を是正して、今後のわが国経済の明確な展望を開き、民間経済の活力ある展開を可能にするということが基本的な条件であります。
 そこで、計画期間を通じて経済成長を実質で年平均六%弱と想定いたしました。参考までに申し述べますと、昭和六十年度の国民総生産は五十三年度価格でおよそ三百十兆円程度と見込まれております。
 計画期間においては、厳しい財政事情のもとではありますが、七年間に二百四十兆円に及ぶ公共投資を行うことを決定しております。
 民間経済におきましても、その潜在的な活力を最大限発揮していただきたいと考える次第であります。
 これらを柱として、わが国経済を新たな安定した成長軌道に移行させるための構図をつくり上げてまいりたいと考えております。
 第二に、わが国経済の新たな発展にふさわしい方向へと産業構造の転換を進めていくことが重要な課題であります。
 わが国の産業構造は、厳しい資源・エネルギー事情、雇用の確保、国際分業の推進等の観点を踏まえ、知識集約化、高付加価値化に向けて転換を図っていかなければなりません。
 この過程は、自由な市場機構のもとで企業の自主的な行動を通じて推進されるべきものでありますが、政府といたしましては、経済の持続的成長を図るとともに、急激な転換に伴う摩擦、特に、雇用、中小企業、地域経済等への影響を最小限度にとどめるよう措置してまいる所存であります。
 産業構造の転換に関連いたしますが、今後、資源、エネルギーの安定的な供給体制を世界的な視野のもとに整えることが必要であり、また、総合的な食糧自給力の向上が望まれます。さらには、科学技術の自主的な開発を進める体制を極力充実していかなければなりません。
 第三に、新しい福祉社会を形成することであります。
 高度経済成長のもとで、われわれは個人として、また、職場において、その活力を十分に発揮いたしました。
 しかし、反面、ともすれば家庭や地域社会の人間的なつながりを見失いがちでありました。これからの国民福祉は、家庭や社会における潤いのある人間関係の上に打ち立てていかなければなりません。
 今後は、長期的な視点に立って、都市と農村が一体として結合された、公害のない緑あふれる国土の建設を目指して田園都市づくりを進め、精神的、文化的ゆとりと落ち着きのある社会の形成に、かたい決意をもって取り組む所存であります。
 そして、個人の自助努力と、家庭や社会の連帯を基礎とし、効率のよい政府が、公的福祉を必要に応じて保障するわが国独自の新しい福祉社会への道を求めて、計画の実施元年に当たる昭和五十四年度に、その第一歩を踏み出すことといたしたいと考えております。
 以上、わが国の経済における課題の数々と、その取り組み方について申し述べました。そのいずれもが、容易ならざるものがございます。
 しかしながら、わが国経済は、過去何回となく、まことに厳しい試練に直面してきたのでありますが、これを乗り切るたびに、新しい力、新しい発想を得てまいったのであります。今日の課題も、これまでの歴史の中で培われたわが国経済の強靱な適応力と、国民の一致した努力をもってすれば、必ずや解決し得るものと確信いたしております。
 政治の要諦は、真摯な努力をする人々が十分に報われる社会をつくることであります。物価、雇用、所得など、今後の経済動向が、これらの人々の堅実な期待に反するものであってはなりません。安定した経済、人間味のある社会、心豊かな国民生活を確かなものにするため、政府は全力を尽くします。
 国民各位の御理解と御協力を切にお願いする次第であります。(拍手)
#24
○議長(安井謙君) ただいまの演説に対する質疑は次会に譲りたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#25
○議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後四時三十二分散会
     ─────・─────
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト