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1978/05/23 第87回国会 参議院 参議院会議録情報 第087回国会 本会議 第14号
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1978/05/23 第87回国会 参議院

参議院会議録情報 第087回国会 本会議 第14号

#1
第087回国会 本会議 第14号
昭和五十四年五月二十三日(水曜日)
   午前十時三分開議
―――――――――――――――――――――
#2
○議事日程 第十四号
  昭和五十四年五月二十三日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の報告に関する件(内閣総理大
  臣の訪米並びに第五回国連貿易開発会議出席
  及び訪比に関する報告)
 第二 国民年金法等の一部を改正する法律案
  (内閣提出、衆議院送付)
 第三 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関す
  る法律の一部を改正する法律案(内閣提出、
  衆議院送付)
 第四 地方交付税法の一部を改正する法律案
  (内閣提出、衆議院送付)
―――――――――――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 一、故元議員田口長治郎君に対し弔詞贈呈の件
 一、日程第一
 一、日本専売公社法等の一部を改正する法律案
  (趣旨説明)
 一、日程第二より第四まで
     ―――――・―――――
#3
○議長(安井謙君) これより会議を開きます。
 さきに院議をもって永年在職議員として表彰されました元議員田口長治郎君は、去る四日逝去せられました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。
 同君に対しましては、すでに弔詞を贈呈いたしました。
 ここにその弔詞を朗読いたします。
   〔総員起立〕
 参議院はわが国民主政治発展のため力を尽くし特に院議をもつて永年の功労を表彰せられました元議員従三位勲一等田口長治郎君の長逝に対しつつしんで哀悼の意を表しうやうやしく弔詞をささげます
     ―――――・―――――
#4
○議長(安井謙君) 日程第一 国務大臣の報告に関する件(内閣総理大臣の訪米並びに第五回国連貿易開発会議出席及び訪比に関する報告)
 内閣総理大臣から発言を求められております。発言を許します。大平内閣総理大臣。
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(大平正芳君) 私は、四月三十日から五月七日まで園田外務大臣とともに米国を訪問し、カーター大統領と前後二回の会談を行ったほか、バンス国務長官ほか関係閣僚、米国議会両院の指導者、米国財界人及び日本関係者等と懇談いたしました。さらに、ナショナルプレスクラブにおいて、わが国の内外経済政策、外交姿勢並びに日米関係の現状及び将来について演説を行いました。
 私の今回の訪米は、最近の国際情勢を踏まえ、世界経済のために日米が相協力して対処すべき諸問題及び当面の経済的懸案を含む二国間問題につき意見を交換し、その解決を促進いたしますとともに、重要な国際政治全般につき相互理解を深めるためのものでありました。
 カーター大統領との会談は、相互の信頼と友好的な雰囲気の中で、日米経済関係、安全保障問題、国際情勢、世界経済問題等幅広い分野にわたりました。会談の成果につきましては、私とカーター大統領との間の共同声明に表明されておりますが、この際、特に次の諸点を指摘しておきたいと存じます。
 国際情勢につきましては、アジアを中心に意見交換を行い、日米双方がそれぞれの国際的責任を自覚し、互いに協力しつつ応分の役割りを果たしていくことが世界の平和と安定のために重要であるとの点で意見の一致を見ました。
 日米安全保障関係については、現在それが円滑に運営されているとの認識で一致を見ました。
 経済関係につきましては、日本は内需拡大や市場開放等を通じ、また、米国はインフレ対策や石油輸入の抑制等を通じて、それぞれの国際収支の是正に努めるという中期的な展望をより明確にし、そのような展望のもとで世界経済の安定的発展のために日米間の協力と話し合いを進めていくことにつき、意見の一致を見ました。
 また、エネルギー政策の協力的な推進のため日米科学技術協力基本協定が成立いたしましたことは、一つの成果でありました。
 政府調達問題を中心とする日米間の当面の貿易経済問題については、できる限り早期に解決すべく鋭意話し合いを継続することを相互に確認いたしました。
 また、六月に開催予定の主要国首脳会議につきましても、これを有益かつ建設的なものにするため、日米両国政府が十分意思疎通を図りつつ、かつ、他の国々とも協力して準備を進めていくことについて意見の一致を見ました。
 さらに、カーター大統領御夫妻を主要国首脳会議の直前に国賓として日本に迎えることになっておりますが、同大統領御夫妻の来日は、日米友好の見地からきわめて重要な意味を持つものと考えます。
 今回の訪米、特に米議会訪問等を通じて、改めて日米貿易経済問題についての対日批判の根強さを感じました。私は、これら批判に対し、日本の立場を説明し、議会指導者等の理解を求めてまいりましたが、今後とも、日米両国のためのみならず、世界経済全体のために、今般の会談を通じて日米間において意見の一致を見たところにのっとり、引き続き精力的に努力する必要があると考えます。
 今回の訪米により、私とカーター大統領との間に一層の理解と信頼が深まったと感じており、双方は今後とも緊密な接触を維持することに意見の一致を見ました。さらに、日米が協力して世界の平和と安定のためにそれぞれの役割りを果たしていくべきことが再確認されたことは、日米関係を一九八〇年代に向けて実り豊かなパートナーシップとして築き上げていく上できわめて重要な成果であったと考えます。政府としては、今後とも米国との協力協調関係を基礎としつつ、わが国の国際社会に対する応分の責任を果たしてまいる所存であります。
 私は、また、五月九日から十一日まで、第五回国連貿易開発会議(UNCTAD)総会において、わが国の南北問題に対する姿勢を明らかにするとともに、日比関係及び日本とASEAN諸国との関係の一層の強化を図るため、園田外務大臣とともにマニラを訪問いたしました。
 UNCTADの今次総会は、第三次国連開発戦略の策定を明年に控え、八〇年代の南北対話の方向づけ、また、その枠組みづくりを行い、二十一世紀に向かって南北関係の展望を示す機会として重要な意義を有するものであります。
 わが国は、アジアの先進国として南北問題に積極的貢献を果たしておる立場から、南北問題に対するわが国の基本姿勢を表明いたしますとともに、本総会の成果を六月下旬の主要国首脳会議に反映させるため、私自身出席することにいたしました。
 わが国は、発展途上国の描く新国際経済秩序樹立への共感を表明し、わが国の経済力にふさわしい国際的責任を果たすため、共通基金の第二の窓について日本が国力にふさわしい拠出を行う用意があること、及びODAの質量両面にわたる改善についての決意を述べますとともに、特にその中心を国づくりの基礎としての人づくりと農業開発に向ける用意のあることを申し述べました。
 今次のフィリピン訪問では、長年の懸案であった日比友好通商航海条約の署名が行われ、また、マルコス大統領との会談では、きわめて打ち解けた雰囲気の中で、アジア全体の平和と安定という見地より日比関係の一層の増進、アジア問題、とりわけインドシナ問題等につき、意見を交換いたしました。
 なお、私は、福田前総理がマニラで明らかにされた対東南アジア政策の三原則にうたわれたASEAN重視の姿勢を再確認いたしますとともに、人づくりへの協力重視との関連で、受け入れ国が希望すれば対ASEAN奨学資金構想を実現する用意のあることを表明いたしました。
 さらに、私は、マニラ滞在中のフレーザー豪州首相と会談し、現在行われている第五回UNCTAD及び来るべき主要国首脳会議で議題として予想される主要な国際経済問題につき、有益な意見の交換を行いました。
 さらに、日豪両国が関心を有するアジア・太平洋情勢、両国の貿易、経済関係を中心として、建設的な意見の交換を行いました。
 以上が、私の米国訪問並びに第五回UNCTAD会議出席及びフィリピン訪問についての概要の報告であります。わが国の果たすべき国際的責任と役割りの遂行につき、一層の御理解と御支援をお願いする次第であります。(拍手)
#6
○議長(安井謙君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。吉田実君。
   〔吉田実君登壇、拍手〕
#7
○吉田実君 初めに、大平総理には、文字どおりの東奔西走、まことに御苦労さまでございました。
 ただいま御報告を承って、私は、自由民主党・自由国民会議を代表し、若干の質問を行います。
 まず、日米共同声明は、日米間だけでなく、中国、ソ連、中東、アジアにわたって、総理が強制された実り豊かな日米間のパートナーシップがうたい上げられており、私は、この共同声明が新たな日米友好親善関係の出発点となるものと信じます。
 また、マニラにおける総理の演説は、南北相互依存時代の中にあって、アジアの中にわが国の平和の道を求め、途上国に対し輸出の五五%、輸入の四五%を占めるわが国として、当然の配慮であったと思います。私は、このように、今回の総理の訪米、訪比の成果を高く評価するものであります。(拍手)
 それだけに、私は、総理が両会議でなされた約束や提言は必ず実行していただきたいと思います。しかし、約束の多くは財政負担を伴うものであり、それを税金によるか国債によるかは別として、結局国民全体が支えなければなりません。政府は、約束の内容を国民に、禅問答ではなく、わかりやすく説明して、その協力と合意を得なければならぬと思いますが、総理は約束の実行についてどのように実現をされていかれようとするのか、まず、総理の決意のほどをお伺いいたします。
 関連しまして、大蔵大臣に伺います。一体、今度の総理の約束はどれくらいのお金がかかるのでしょうか。総理のマニラ演説が抽象的であったと批判された陰に、大蔵省が総理の足を引っ張ったんだという報道もありますので、明らかにしていただきたいと思います。
 次に、経企庁長官に伺いますが、これら総理の約束によって、すでに基本構想の固まった新経済社会七カ年計画は根本的に見直す必要があるのではありませんでしょうか。その内容と方向を伺います。
 さて、今回の日米共同声明は二十項目にわたる膨大なものであります。当面、わが国におきましては、内需の増大、インフレの防止、貿易黒字減らしが課題となろうと思いますが、私は、ここでは国際協調に関連した三点だけを御質問いたします。
 第一点は、ただいま総理の御報告の中にも二度出てまいりましたが、「日米が協力しつつ世界平和のために応分の役割りを果たす」とありますが、わが国の防衛面においてこれはどのような範囲のものでしょうか。また、カーター大統領との会見の中で、第二次SALTの話が出ましたでしょうか。総理は、米ソ間の第二次SALTの合意によって、アジアやヨーロッパの緊張緩和にどの程度の影響を及ぼすものとお考えでございましょうか。
 第二点は、ただいまの報告の中にありましたように、エネルギー問題について先進国が二国または多国間で開発協力をやることの必要性はさらに増大したと共同声明の中にあります。
 さきに、米国、日本、西ドイツで、石炭液化開発プロジェクトが合意され、また今回、訪米の際に日米科学技術協定が結ばれました。日米間で行う今後のエネルギー共同開発研究は、一体日本側でどのような組織をつくり、そうしてまた、これにどれぐらいの費用がかかるのでしょうか。
 第三点は、共同声明の中に出てまいります日米ワイズマングループ、賢人会の勧告の拘束性についてであります。もし賢人会から発せられた勧告が単に尊重されるということで終わるならば、あるいは日米間のそれこそ文化摩擦が起こるおそれがあります。この点を総理から明らかにしていただきたいと存じます。
 次に、UNCTAD総会につきましても三点だけ御質問いたします。
 第一点は、総理がわざわざお出ましになりましたのは、その一つの原因は、東京サミットを成功させたいという御熱意からでありましょう。ところが、いままでのサミットは、単に個別対策を並べただけであって、さほど効果が上がらず、やはり中長期にわたる展望が必要であると言われています。幸い、ワシントンの準備会議では、中長期にわたる各国の経済構造あるいはエネルギー、インフレ、経済成長等の問題が論議されるようで、結構であると思いますが、総理は東京サミットについてどのような輪郭をつくるべきであるとお考えでございましょうか。
 第二点は、総理がマニラで提言された人づくり構想は、じみであっても時を得た提言であると高く評価いたします。御案内のとおり、オイスカ産業開発協力財団は過去十数年にわたりアジアを中心として農業開発と人づくりに大きな実績を上げております。総理は、このような民間ボランティア機関をもっと活用することをお考えになりませんか。
 第三点は、途上国の要望に対するわが国の態度であります。
 途上国の要望は、ただいま総理の報告にもありましたように、新しい国際経済秩序の樹立、「第二の窓」、すなわち、一次産品の緩衝在庫以外への拠出、そうして政府開発資金の増額であろうと思います。しかし、これに対し、フランスと西ドイツは消極的態度を表明し、アメリカは反対を表明しました。つまり、主なる欧米先進国は拒否をしている状態であります。総理は、演説の中で、七十七カ国グループの基本的態度に共鳴すると発言されております。一体、途上国の要望に対し日本が今後どのような態度をとるか、これは今後注目の的となりましょう。私は、総理は欧米先進国と途上国との間に立って、その橋渡し的役割りを果たさるべきであると思いますが、総理の御見解を伺います。
 終わりに、総理に望みたいと思います。私は、総理は深い哲学を持った政治家であると思っております。あなたの無理をしない「待ち」の姿勢もその一つでございましょう。しかし、ちまたには、日米農産物問題や今回の電電公社等の政府調達問題について、待っていて後手後手と回って必要以上に経済摩擦を大きくしたのではないかという声もあります。また、UNCTAD総会においても、オーストリア、オランダ、スウェーデンはすでに「第二の窓」への拠出金を表明し、また、フランスは貧困な後発途上国に対する政府債務の帳消しを表明しました。このような先手がやはりマニラの会議で私は打たれたものと思います。
 今回の総理の訪米、訪比に見る大平外交の展開はみごとなものでありました。しかし、真の評価は今後にあります。どうか、総理におかれましては、八〇年代に向かって実り豊かに今回の訪米、訪比の成果を実らせるためにも、ただいまの「待ち」の姿勢に加うるに「攻め」の政治姿勢を兼ね備えるリーダーとなられますよう、心から念願いたします。
 質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(大平正芳君) 吉田さんの御質問にお答えいたします。
 第一は、今回、UNCTAD総会におきまして私がお約束いたしましたことにつきましては巨大な財政負担を伴うものであるが、その処理はどうするかということでございます。仰せのように、将来の財政負担を必要とするお約束をいたしたことは事実でございますけれども、国際社会におきましてわが国はその果たすべき責任と役割りがございまして、これに応分の対応をしていかなければならぬと考えておりまして、そのことにつきましては、大綱として国民の支持と理解を得られるものと判断いたしております。御案内のように、日本のODA、政府開発援助は、十四億ドルを三年間倍増するという約束をいたしておりまして、いまその遂行の途中にございます。私が申し上げたようなことは、このODAの倍増計画の枠組みの中で消化できるものと私は考えております。
 第二に、吉田さんは、わが国の国力に相応した負担、協力ということを言っておるけれども、日本の国力に相応した防衛力、防衛の役割りとはどういうものであるかという意味の御質問がございました。今回の日米共同声明には、日本の国力に相応した防衛の役割りという言葉はございません。この共同声明におきましては、「日本の自衛力の質的改善のため今後とも努力する」という表現を用いておるわけでございます。この表現は、わが国の防衛力整備の大綱にすでに示されたことでございまして、新しいことではないと承知いたしております。
 それから吉田さんは、SALTIIにつきまして話があったかということでございますが、大統領からも、また、個別に持ちましたバンス国務長官との会談におきましても、詳しくアメリカ側の対ソ交渉の経過と現状と見通しにつきましてお話は伺いました。アメリカ側が当時予想いたしておりましたように、この問題はすでに解決を見たことは御案内のとおりでございまして、しからばこれはどういう国際政治的な成果であると評価するかというお尋ねでございますが、SALTIIの妥結は、核軍縮の達成に資するのみならず、米ソ関係の安定、ひいては国際的な平和と安定の維持に大きく貢献するものであると私は確信しております。
 それから第二に、吉田さんは、日米間のエネルギー政策上の協力につきましてのお尋ねがございました。御心配の、日米間でつくられておりまする合同委員会、また必要に応じて小委員会をつくる予定になっておりまするけれども、私どもとしては、すでにつくられておる合同委員会を中核といたしまして日米間の技術協力を進めてまいりたいと考えております。この費用の増額につきましては、今後の研究開発の促進に応じまして対応いたしていきたいと考えておる次第でございます。
 それから、東京サミットの指向する枠組みをどう考えておるかという御質問でございました。東京サミットにつきましては、御案内のように、いま準備会議が行われて、どのような議題をどういう手順で取り上げてまいるかという点につきまして、各国首脳の代表間におきまして協議が行われております。すでに第二回の準備会議が終わったわけでございまして、六月の中旬に行われるパリにおける第三次の準備会議で準備が整うことになっております。いま御指摘になりましたような問題は準備会議の管轄事項になっておりますので、私から特にここで差しおいて申し上げることを差し控えたいと思うのでありまするけれども、私は、今度の東京サミットが、このように政治的に多極化し、経済的な困難を抱えておる段階におきまして行われるものであるだけに、そしてまた、エネルギー問題がこのように緊張した環境の中で行われるものであるだけに、こういったエネルギー問題について、あるいはインフレ問題について、そういった問題につきまして首脳間の認識が一致いたしまして、これに対して協力の道標が確立するというようなものであってほしいと願っておるわけでございまして、私どももそういう方向で努力をしていかなければならぬと考えております。
 それから、今度のUNCTADにつきまして、人づくりの協力を初めといたしまして、いろいろな協力のやり方につきまして、御意見を交えての御質問がございました。とりわけ民間のボランタリー機関の活動をどう評価するかということもございました。私どもといたしましては、人づくりという問題、これはすべての開発途上国の一番大事な課題ではなかろうかと思います。もっとも、経済協力は受益国側の意向をくみ上げてやらなければなりませんので、押しつけるわけにはまいりませんけれども、受益国が希望する限りにおきましては、人づくりの問題に対して惜しみなく協力をしてまいるという基本姿勢を貫きたいものと考えておるわけでございます。現に、開発途上国からは、従来の専門技術者養成、留学生の派遣等のほかに、地域社会の発展への協力とか、教育の協力とか、人的文化的国際交流等の要請も参っておるわけでございましてこういった要請には可能な限り応じていかなければならぬと考えておる次第でございます。
 最後に、私に対する要望がございましたが、謹んで拝聴いたしておきます。(拍手)
   〔国務大臣金子一平君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(金子一平君) 総理がアメリカ、フィリピン御訪問の際のお話の中で、幾ら具体的に日本として財政負担をしなきゃいかぬことに決まったかというお話でございますが、国連の難民高等弁務官のインドシナ難民救済計画も、難民の一時収容センター構想も、まだ構想の段階でございまして、具体的に計画がセットされておりません。これは今後の問題と御了承賜りたいと思います。
 アメリカで具体的に決まった金額は、スミソニアン研究所の新東洋美術館とニューヨーク・メトロポリタン博物館の日本展示場の建設、それからマサチューセッツ工科大学の国際エネルギー政策研究のための基金の設立のための資金援助の三点でございまして、各百万ドルでございます。
 それから、フィリピンでお話の出ておりましたODAにつきましては、すでに総理からも三年間倍増のお話がございましたが、コモンファンドの「第二の窓」に対する任意拠出につきましては、これは具体的に大多数の国々の参加によってこの拠出が決まったならば応分の協力をいたしましょうということでございまして、金額的にまだセットをされておりません。ただ、総理もお触れになりましたように、ASEANの青年の人づくりの具体的な方策として、奨学金を毎年百万ドルずつ十年間寄贈することはお約束になっております。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣小坂徳三郎君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(小坂徳三郎君) お答えを申し上げます。
 先ほど来総理から御答弁がございました、そうした方向、つまり、新経済社会七カ年計画の基本的な構想は先ほどの総理の御答弁そのものであると考えておるわけでございまして、特に日本が、ことしでもすでに二百三十兆円の経済規模、これは全世界に対しての八分の一のシェアを持つ国柄でございまして、当然ここには諸外国から日本に対する経済的なあるいは政策的な要求が参りますし、あるいはまた日本に対する役割り分担の増加を求める声は当然でございますが、七カ年計画におきましては、こうした外的な要求と内政的な要求との適正な調和を図るということを目的につくっておるものでございまして、今回の総理の訪米、そしてまたUNCTADにおける総理の御発言、そうしたことに基づいて七カ年計画の抜本的な見直しというものは全く必要ないと私らは考えておるわけでございます。
 なお、ことしの一月、基本構想を発表いたしまして以来、基本的な各方面の御意見あるいは要望を参照しながら、最近の経済情勢あるいはエネルギー事情等の変化も踏まえて、本計画の内容をいま詰めているところでございますが、その際におきましても、先ほど来申し上げましているとおり、わが国経済の世界経済における地位と役割りを踏まえまして、国際的な調和や、あるいはまた国際経済社会発展への積極的な貢献等を十分留意してまいる方針にいたしております。(拍手)
    ―――――――――――――
#11
○議長(安井謙君) 田中寿美子君。
   〔田中寿美子君登壇、拍手〕
#12
○田中寿美子君 私は、日本社会党を代表し、ただいまの大平総理の報告に対して若干の質問を行います。
 申すまでもなく、今回の日米首脳会談は、来るべき東京サミットに備えて日米両国間の見解の調整を図るために行われたものであります。ところが、今回の日米首脳会談の印象は、アメリカ側が日本の国際的地位の向上を口実として、日本に防衛上、経済上過大な負担を要求し、日本側が結果として従来同様米国の要求を甘んじて受諾した従属的な姿であります。たとえば、防衛においては、わが国の防衛力は画期的増強を迫られ、アメリカの世界戦略の必要上、わが国の国際的協力の範囲が遠く中東地域にまで及ぶ結果となっているのであります。このように、日米間の協力が世界的規模に拡大され、また、日本側が米側の要請に一方的に押し切られたことについて総理はどのような考えを持っていられるのか、初めに伺います。
 次いで、私は、日米共同声明の内容についてお尋ねします。
 共同声明は、二十項目のうち九項目までが経済関係という異例のものであり、しかも、そこに盛り込まれた内容は、わが国の内需拡大型の経済成長への移行促進、外国製品に対する市場の開放、経常収支黒字幅の大幅削減など、その多くが甘木側の約束の表明となっており、明らかに米国のペースで押し切られております。会談後、カーター大統領は、これほどプロダクティブ、すなわち生産的な外交交渉は見たことがないと喜んだと言われますが、確かに米国側からすれば大いにプロダクティブで満足すべきものであったでしょう。しかし、翻って国民の立場からすれば、総理が国内産業、経済転換の手順、方法、見取り図も何ら明らかにしないまま、国際分業型の産業構造の転換と受け取られるところまで米国に約束したことは、きわめて東天であります。今後、この共同声明を盾に、米国の対日圧力がますます強まることは必至です。総理はこうした約束の履行が国民生活にいかなる影響を及ぼすと認識しているのか、責任ある見解を伺いたいのであります。
 また、政府調達問題について、米国側は東京サミットの前に解決の確約を得たと言っているのに対し、総理は、そのために努力することを約束したにすぎないと述べ、明らかに食い違っております。一体そのどちらが本当なのですか。いずれにせよ、サミットまでには解決策を提示する必要に迫られるわけでありますが、総理は、米国の要求する政府調達、特に電電公社電気通信機本体の開放がわが国の産業経済に与える影響をどのように認識しているのか、これらの点について明確に答えていただきたいのであります。
 防衛問題に関しては、共同声明第二項で、日米防衛協力のための指針、米国からの防衛調達の増大、米駐留軍費の一部肩がわり、東アジアにおける米軍事力の質の維持改善、日本の自衛力の質的改善などをうたっております。これは明らかに米国の世界戦略遂行の一環として日本の防衛力が位置づけられたものと解せざるを得ないのであります。しかも、共同声明には、中国、ソ連、朝鮮半島、東南アジア、インドシナ半島、中東の順で各地域への日米の対応が述べられ、従来日米間において一応合意されてきた地域をはるかに超えた両国の防衛上の役割り分担の構想がはっきりとうかがわれます。特に第六項では、朝鮮半島の緊張緩和のための国際環境づくりに努力するとうたつておりますが、日本はそのために一体これまで何をやってきたのか。これから何をやろうとするのか。さらに、南北朝鮮の対話を歓迎すると言いながら、その実、韓国に一方的に肩入れをして、在韓米地上軍の撤退に反対を唱えるなど、対話の条件を妨げてきたのはむしろ政府・自民党ではないでしょうか。この点をどう反省して共同声明を出されたのか、お尋ねします。
 ここで、私は、金大中事件についてお尋ねしなければなりません。
 今回外務省がアメリカ国務省から入手した百四十二通に及ぶ文書によって、金大中拉致事件が元在日韓国大使館一等書記官金東雲らKCIAの犯行であったことは、動かすことのできない事実であることが裏づけされています。金大中事件が韓国の公権力によって引き起こされたものであり、したがってわが国の主権が侵害されたという事実は、金東雲の指紋などにより事件当時から歴然としていたにもかかわらず、政府は、真実に目を覆い、政治決着というあいまいな解決を図りました。今回も、外務省の問い合わせに対して韓国政府はあくまで事実を否定し、しらを切っております。政府は、これまで、新事実が明らかになったときは政治決着を見直す、と国会でしばしば約束してきました。にもかかわらず、昨日も総理は、衆議院で緊急質問に対して、韓国側が否定している以上やむを得ないと、政治決着の見直しを渋っております。これは国会と国民を欺くものであり、日韓癒着を糾弾されても仕方がないのではありませんか。私は、政府の速やかに韓国公権力による日本の主権の侵害と金大中氏の人権侵害について韓国政府に抗議し、日韓政治決着を取り消し、金大中氏の原状回復を図るべきであると考えますが、いかがですか。
 次に、中東和平の問題ですが、総理はイスラエル、エジプト二国間の和平条約に協力することを約束してきましたが、二国間条約は中東の包括的和平にはつながりません。この条約にはアラブ諸国がこぞって反対しており、エジプトはアラブ世界から孤立しております。それにもかかわらず、総理はエジプトへの巨額の援助支出を受け入れる約束をしたと報じられておりますが、これについての政府の考えを説明していただきたい。他のアラブ諸国との関係悪化のおそれはないのか、また、それによって将来アラブ諸国からの石油資源確保に支障を来す心配はないのか、お尋ねします。
 なお、国連総会においては、パレスチナ人民の独立国家の建設を含む民族的権利についてたびたび決議の採択を行っていますが、その実現のために日本政府はいかに対処するつもりですか。パレスチナ問題の解決なくして真の中東和平はあり得ません。政府の見解をお尋ねします。
 次に、UNCTADについて伺います。
 私は、総理が米国から帰って休む間もなくマニラの会議に出席された御苦労を多といたします。しかし、率直に言って、マニラでの総理の演説は余りにも総花的で、抽象的な美辞麗句の羅列にすぎませんでした。そして総理は、七十七カ国グループが出したアルーシャ宣言の実質的要求事項については何ら日本としての具体的方針を示さなかったのであります。発展途上諸国が大平総理に期待したものは、協調とか相互依存といった美しい言葉の羅列ではなくて、アジアの最先進工業国である日本が南北問題解決のために具体的に何を寄与できるのか、できないのかという、率直明快な方針の吐露であったはずであります。総理は、たとえばアルーシャ宣言で言うUNCTADの機構強化の問題、高級専門家グループ設置問題、東京ラウンドに対する途上国の要求受け入れの問題、日本の政府開発援助のドル建てから円建てへの移行問題、共通基金の「第二の窓」への具体的な拠出額などについて、すべて避けて通ったわけでありますが、一体総理はこれらの問題についてどのような方針を持っているのか、この際、それぞれについて明確に示していただきたいのであります。
 総理演説の最大の目玉は、人づくり協力という点にありました。確かに発展の基礎が人間であることは言うを待ちませんが、たとえば、受験戦争によって荒廃に帰したわが国の教育の現状やベトナム難民救済を拒否している反人道的態度、さらに、お粗末なわが国の留学生受け入れ体制などを考えるとき、総理の言う人づくり協力は空疎に聞こえるのであります。人づくりは、単に金を出せばいいというものではなく、二十年、三十年にわたる長期の計画と、それを着実に実行するきめ細かな施策が必要と思われます。総理のお考えを具体的に示していただきたい。
 ところで、人づくりを説くためには、何よりも為政者自身の行動が公正で誠実でなければなりません。それでなければ国民は為政者を信頼せず、まして外国の人々から信頼を受けることはできません。そこで、私は国民がいま最大の関心を持って見守っている航空機疑惑についてお伺いいたします。
 自民党の松野頼三代議士は、F4E売り込みに絡む政治工作資金として日商岩井から五億円の支払いを受けたかどで検察当局から事情聴取を受け、それを認めました。さらに、岸元首相その他の政治家も黒いうわさの対象となっております。捜査はすでに時効という壁に突き当たり、刑事責任の追及をされることなく終結宣言が行われましたが、残された道は、国会において疑惑を徹底的に究明し、政治家としての政治的道義的責任を明らかにすることであります。ようやく松野氏の衆参両院における喚問が実現することになりましたが、大変時期おくれであります。検察庁の事情聴取前に野党の要求どおり松野、岸両氏の証人喚問が行われていれば、議院証言法による犯罪成立の可能性は濃厚でありました。政治家と民間人で法の適用の不平等を惹起せしめた政府・自民党の身内をかばった責任は重大と言わねばなりません。さらに、松野氏の証人喚問も終わらないうちに防衛庁側からE2Cの凍結予算の解除をにおわせていることは許しがたいことです。いかがお答えになりますか。
 なお、ロッキード事件の際には、衆参両院議長裁定及び国政調査権に基づいて、刑事訴訟法第四十七条ただし書きを背景として、いわゆる灰色高官名が国会に報告されたのであります。これは、政治権力を持つ者の場合、たとえ不起訴になってもその政治的道義的責任を国民の前に明らかにrべきだという民主政治の根本ルールに基づくものであります。今回も、法務大臣がみずから検察庁法第十四条に基づく一般的指揮権を発動して、国会の場で灰色高官名を公表することを強く要求するものであります。
 以上の点について、総理並びに法務大臣の明確な所見を求めます。
 最後に、私は、ECのいわゆる「ウサギ小屋」論について触れたいと存じます。
 来るべき東京サミットには、日本人を「ウサギ小屋に住む働き気違い」と酷評したEC諸国の首脳もやってまいります。そのときに当たり、卸売物価が昨年十一月以来高騰を続け、本年四月現在では、前月比一・七%上昇、年率にして二二%にも上る状況で、消費者物価の大幅上昇が心配されています。森永日銀総裁は、これをまさに石油ショック時の狂乱物価の前夜にも似ていると、インフレのおそれを警告しておりますが、インフレの危険をどう考えられますか。次々に値上げされる公共料金と相まって、国民生活は大きく圧迫されつつありますが、特に土地価格の暴騰により、住生活は一層困難の度を加えています。経済企画庁は最近新経済社会七カ年計画の構想をつくり上げたと報じられていますが、計画の終了時には一体わが国の平均的国民の住生活はどのように改善され、生活水準はどの程度に引き上げられるのか、その展望を具体的に示し、日本国民が「ウサギ小屋に住む働き気違い」の状況から解放される設計図を示して外国の非難にこたえていただきたいのであります。御答弁を求めます。
 以上、総理並びに関係各大臣の具体的な御答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(大平正芳君) 田中さんの御質問にお答えいたします。
 第一の御質問は、先進国首脳会談の開催といい、今度の私の訪米といい、全体としてアメリカの世界戦略の枠組みの中に巧みに組み込まれておるのではないかという御懸念の表明がございました。私は、この共同声明をごらんいただきましても御理解いただけますように、新たな防衛協力の約束はみじんもいたしておりません。今日日本がやっておりまする防衛政策というものについて丹念に説明をいたして、それを共同声明にうたったまでのことでございまして、また、アメリカから防衛努力に対する注文も一切ありません。その点は誤解のないようにお願いいたしたいと思います。
 しかし、世界経済の場におきましては、相互依存の高まっておりまする今日におきまして、経済力を持っておる日米両国の協力ということは、両国のためばかりでなく、世界経済全体の安定、繁栄にとりまして致命的に大事なことだと考えておるわけでございまして、それぞれの持つ経済的活力をどのようにして協力して世界の安定に役立てるかということについて話し合いまして、それを共同声明にうたったわけでございまして、一方が他方に押しつけたというような性質のものでないことは御理解をいただきたいと思います。
 それから第二に、今度のことを通じて国民経済への影響をどう考えるか、国際経済社会との調和を図らなければならぬ、一層の市場の開放をいたさなければならない、内需を中心といたしまして経済の発展を図ってまいる、そういう意味で、産業構造の転換も結果することになるが、そのことは国民経済、国民の生活、経済にどういう影響を及ぼすものであり、政府はそれに対してどういう方針で対処しようとするかという意味の御質問でございました。日本が資源を持たない国といたしまして世界に名誉ある生存を確保いたしまするためには、やはり国際経済社会のルールを守っていかなければならぬと思います。その意味で、国際経済社会との調和、それから一層わが国の市場を開放していくという方向について責任を持たなければならぬと思うのでございます。したがいまして、われわれといたしましては、経済政策の軸を、これまでのように輸出と設備投資主導型から漸次内需中心、生活中心に置きかえていく、これはかねがねわれわれが主張をいたしているところでございますし、また、あなたの属する社会党からもたびたび要請されておることでございますけれども、こういう政策の軸心を漸次生活中心に置きかえていくという方向はすでに示しておるところでございまして、そういう方向に沿ってわれわれの経済構造を考えていかなければならぬと存じておるわけでございます。
 もちろん、その過程におきましては、中進国の追い上げ等がございましたり、いろいろな発展途上国の要請もございまするので、産業構造の転換に当たりましてはいろいろな国内的困難が伴うことと予想いたしております。したがって、わが国の産業構造は漸次知識集約的なものに移していかなければならぬと思いますが、その道程におきましては、十分現存の産業構造、貿易構造というものに急変を与えないように周到な配慮を加えながら行っていくつもりでございます。
 それから第三の御質問は、政府調達についてのお話でございました。政府調達問題は、いま電電公社、国鉄等を中心に論議されておるわけでございますが、私ども政府といたしましては、これらの政府機関がそれぞれ持っておる責任、国民に対する責任、廉価にして安定したサービスを供給せなければならぬという責任を持っておることを承知いたしております。そして、そういう政府機関はそれぞれ非常に緻密な技術のシステムを持っておることも承知いたしておるわけでございまして、そういうものを守りながら、しかも開放経済下の日本の責任にこたえていかなければいかぬわけでございますので、その間の調和をどのように図ってまいるかというところに苦心をいたしておるところでございまして、との解決には二つ段階がございまして、解決いたしまして、実行は八一年の一月一日からでございますから、詳細な、具体的なプログラムはゆっくりやっていいわけでございますけれども、これを解決する軌道だけは設定しておこうと、方法とか手順とかということだけはサミット前にできたら合意したいものだという双方の考え方で、いませっかく折衝をいたしておるところでございまして、われわれは、こういう内外の要請を十分わきまえた上で、現実的な対応策を用意してまいりたいと考えております。
 それから、日本の防衛問題、防衛責任がなかなかグローバルな広がりを持つに至ったのではないかという田中さんの懸念でございますが、先ほど申しましたように、私は、いまの防衛大綱でやっておる日本の防衛政策をみじんも変えたつもりはないわけでございまして、もしありとすれば御指摘をいただきたいと思うのでございます。
 朝鮮半島の問題でございますが、これは、基本的には半島における両当事者の間でその運命を決めるべきものと思うのでございまして、私どもといたしましては、朝鮮半島をめぐる国際環境、平和的な国際環境の形成ということに協力をするというのがわれわれの任務であろうと考えております。それでは具体的に何をやっているんだというお尋ねでございますが、われわれは、米中ソを初め各国首脳との会談の機会に、朝鮮半島の緊張緩和の必要性をその都度強調する等努力しておりますけれども、今後ともなお精力的に努力をしてまいるつもりでございます。
 金大中事件についてのお尋ねでございました。本件に関する米国務省の文書が公開されたことに対しまして、目下政府は、米側に公開された文書の提供を要請して、その内容の調査を行っておるところでございます。今後の対応ぶりにつきましては、その調査結果を踏まえて、捜査当局の意見も十分徴した上で、慎重に検討していきたいと考えております。しかしなお、この金大中事件につきましては、田中さんも御承知のように、すでに政治的決着をいたしておりまして、その当時の政府が大局的な見地から決断をしたことでございますので、これを軽々に見直すということは差し控えなければならぬと私は考えております。(発言する者多し)
 中東政策についてのお尋ねでございました。私どもは、中東政策につきましては、継続性と独自性を堅持しておるつもりでございます。中東という地域は、戦略的に重要であるばかりでなく、資源の供給地といたしまして、わが国とも相当高度の依存関係にありますることは御指摘のとおりでございますから、中東政策についての対応は非常に慎重にやっておるつもりでございます。エジプトばかりでなく、この周辺の国々に対しまして、われわれは、そういう状態を考慮いたしまして、経済、社会開発、民生の安定を中心といたしましての経済協力を進めておるわけでございまして、今後も着実に進めていかなければならぬと考えておるわけでございます。
 今度の日米会談を通じまして、アメリカからエジプトに対する援助の要請を背負い込んできたのではないかという御懸念でございますけれども、いま申しますように、中東政策はわが国死活の問題でございますので、わが国が継続性と独自性をもって判断してやることでございます。すでにエジプトにつきましては相当程度の経済協力をいたしておりますが、今後これを積み増しをいたすにつきましても日本の独自の判断においていたすつもりでございまして、このことにつきましては周辺のアラブ各国も理解をしていただいておることと確信をいたしております。したがいまして、御懸念のように、そのために石油の安定供給に支障を来すようなことはないと承知いたしております。
 それから、パレスチナ問題についての政府の対処方針についてのお尋ねでございました。わが国は、パレスチナ問題が中東問題の核心をなす問題の一つであるとの認識に立っております。で、パレスチナ人の民族自決権を含む国連憲章に基づく正当な権利が承認されて尊重されることにより公正かつ永続的な和平が達成されるべきであるとの立場を一貫してとっております。国連の審議におきましても、同様の立場で終始一貫当たっておるわけでございます。わが国は、かかる立場に基づきまして、包括的な中東和平が一日も早く実現されることを希望いたしておる次第でございます。
 UNCTADについてのお尋ねでございました。
 まず第一は、UNCTADの機構強化、専門家グループの設置等に対して冷淡ではないかという意味の御質問でありましたが、UNCTADは、総会のほかに毎年開催される貿易開発理事会、TDBというものがございます、また、各種常設委員会もございますし、相当有力な事務局も持っておりますので、機構面では十分整備された会議体であると私は承知いたしております。十分機能できる状態にあると思っておりますので、この機構が非常に弱いとは考えていないのであります。
 それから第二の御質問でございまするODAでございますとか共通基金に対する日本の対応でございますが、先ほど吉田先生の御質問にも答えましたとおり、ODAにつきましては、三年間倍増という方針に基づいていま鋭意努力いたしておることは御承知のとおりでございます。共通基金につきましては、十分われわれとしては協力する用意があるけれども、この共通基金の内容、それからどれだけの国が参加するか、そういった点がまだ明らかになっておりませんので、それが明らかになれば日本といたしましては応分の協力をいたすつもりであるということを申し上げておるわけでございまして、いずれにいたしましても、わが国は一番最近近代化を遂げた国といたしまして、開発途上国の気持ちが一番よく理解できる立場にあるわけでございまするので、そういった精神をもって今後も精力的に協力していきたいと思っております。
 人づくりの問題でございますが、これは先ほど吉田さんにお答えしたところで御理解をいただきたいと存じます。
 最後に、航空機疑惑についてのお尋ねでございました。こういう事件が起きまして、あらわになりまして、まことに残念でございます。為政者が廉直で公正でなければならぬということは田中さんが御指摘のとおりだと考えます。政府といたしましては、まず、こういう事件が起きました以上、刑事責任を問わなければならぬというので、十分の調査を遂げて、先般その結果を発表いたしたわけでございます。残るところは政治的道義的責任の追及問題でございます。これは、いまの日本の制度といたしまして、国会の国政調査の場しかございません。この国会の国政調査権の発動につきましては、従来申し上げておるとおり、政府といたしましてできる限り御協力を申し上げるつもりでありますことで御理解をいただきたいと存じます。
 最後に、インフレの問題、国民生活の問題についてのお尋ねがございました。確かに、 エネルギーの量的確保、価格の不安定――確保が不安になってまいりましたし、価格が不安定になってまいりましたといったような事情、国際商品市況が活況を呈しますとか、あるいは為替市場が円安に傾斜してまいるとか、いろいろな事情がございまして、ことしに入りまして卸売物価の上げ足が非常に激しくなってまいりましたことは御指摘のとおりでございまして、この問題につきましては、政府は、これが消費者物価につながることのないように万般の処置を講じて国民生活を守り抜かねばならぬと考えておりまして、これからの施策につきましては、また十分の御批判と御協力を願わなければならぬと存じております。(拍手)
   〔国務大臣古井喜實君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(古井喜實君) いわゆる灰色高官名公表の問題について私からもお答えを申し上げます。
 申すまでもなく、犯罪問題につきましては厳密な法律的な基準がありまして、これにのっとって検察は捜査をするという状況でありますが、いわゆる灰色問題、すなわち政治家の政治的道義的責任につきましては、無論法律的基準があるわけではなく、これをどう考えるかということは国会においてその基準を考えられるほかはないと私は思うのであります。で、検察などという行政機関が政治家の政治的道義的な責任の基準を決めましたり、あるいはこれについて権力的な捜査をするなどということは、私はもってのほかだと思っております。そういうことは、いわゆる検察ファッショに通ずるものだと思います。そこで、国会において基準をお決めになり、その基準に基づいてお求めがありますならば、今後の犯罪の捜査とか訴訟の遂行上に支障のない限り、できるだけ御協力いたします。
 なお、関係者の名誉と人権の尊重につきましては、国会においても十分考慮を払われ、そして、国会のお決めになることについては国会で責任を負われることは当然の道理だと思いますので、念のために申し添えさせていただきたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣小坂徳三郎君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(小坂徳三郎君) お答え申し上げます。
 特に私に対する問題は、新経済社会七カ年計画に関連した部分でございますが、御承知のように、この七カ年計画におきましては、内需拡大ということを一番大きな柱にいたしておりますが、そのまた内需拡大の最も基本的な部分といたしまして、われわれは、生活関連社会資本の拡大ということ、そしてまた、これに対する公共投資等も全般の三分の一程度を投入していこうということを考えておるわけでございまして、このような計画の実施を通じまして、御指摘のような諸問題に対して、特に日本人の現在の生活水準、その他もろもろの環境が整備されることを期待をいたしておるわけでございます。
 特に住宅に関連いたしましては、質的になお不満の点が多々あることはよく了承しておりまして、こうした問題に対応いたしまして、計画においては、長期にわたって良質な、良好な資産となるような住宅を確保するということを目標にし、また、特に質的な問題といたしましては、大都市地域におきましての良質な住宅の供給を増大するということを大きなねらいといたしておるわけでございます。
 次に、このような住宅の問題の整備にあわせまして、下水道であるとか、あるいは都市公園あるいは文教施設、スポーツ施設等々の生活関連社会資本に重点的な投資を行って、いわゆる社会資本ストックを現状の二倍近くまで計画期間の間に拡大をしたい、こうしたことを考えておることが第一点。第二点は、先ほども総理からお答えがございましたが、インフレを未然に防いで、消費者物価の安定を図って、そのことによって実質的な所得水準の上昇と個人消費の増大を目標にするということが第二点でございます。第三点には、労働時間の短縮と自由時間の増加を確保し、そうしたことを通じてのゆとりのある生活環境をさらに拡大するということをこの計画においては最終的なねらいにいたしておるわけでございます。
 したがいまして、こうしたことの集積が達成されるならば必ずや日本人の生活水準が現状よりかなり改善をするということは、確実にわれわれとしては見込みたいと思うものでございます。
 なお、先日来日いたしましたECの前委員長であり、現在は副委員長をやっておりますオートリ氏が私のところに来たときに、先ほど議員が御指摘になりました「ウサギ小屋」という表現につきましては、きわめて不適当な、不穏当な言葉であったということを、遺憾の意を表明するということを言ってまいりましたので、あわせて申し上げておきます。(拍手)
    ―――――――――――――
#16
○議長(安井謙君) 渋谷邦彦君。
   〔渋谷邦彦君登壇、拍手〕
#17
○渋谷邦彦君 私は、公明党を代表して、ただいま報告のありました日米首脳会談及び国連貿易開発会議に関し、大平総理に若干の質問をいたしたいと思います。
 本論に入ります前に、金大中事件についてお尋ねをいたします。
 ただいまも御答弁がありましたけれども、大変不満足であります。あれほど権威ある国務省の秘密文書の公開についての事実認定というものに若干の調査を要するということはわからないわけではございませんけれども、事実が認定された場合に、かねて政府の方針どおり、政治決着を見直すということになるのか、もし事実関係が認められないとする場合には、国務省に対して日本政府はどういう措置をとられるのか、この点を重ねて明確にしていただきたいと思います。
 なお、現在警察当局も捜査中の段階であるということを考えますと、必ずしも政治決着がついたという印象を受けないわけであります。こうした絡みから、この点について、むしろ白紙に戻した方がよろしいのではないかと思いますけれども、いかがでありましょうか。
 次に、日米首脳会談についてであります。
 近年特に日米間の経済摩擦が強まり、不協和音の高まる厳しい状況のもとで行われましただけに、緊張感をやわらげ、完全な理解と合意を得るには手放しで喜べないと判断されるのであります。かねがね六十点主義を政治信条とされておると言われております総理は、今回の訪米の成果を総括的に見てどのように評価されておりますか。
 また、共同声明に示されておりますとおり、二十項目にわたる内容のうち約半分近くが経済問題で占められておりますのも、日米の懸案が経済貿易の摩擦にあることを端的に裏づけるものでありまして、かつ、今後わが国が果たさなければならない責任と負担は相当重いと見るべきではないでしょうか。
 ここで考えさせられますことは、過去においても何回か日米首脳会談というものが行われてきた経過があるわけであります。しかも、しばしば経済問題が話し合われてきたはずであり、その都度その話し合いをもとにした約束が取り交わされてきたにもかかわらず、恐らく、われわれの記憶では、何らその前進的な解決への道というものは示されていない。したがって、いたずらに日米間の不信感をつのらしてきたのではないか。今回もあるいはという危惧を抱くのも決して無理ではないと思いますが、いかがでありましょうか。
 たとえば、佐藤・ニクソン会談の際の日本の自由化促進と米国の対日輸出増、あるいは福田前総理の言う七%程度の経済成長、市場の開放、黒字幅の縮小などがそうであります。日米間における経常収支の均衡がとれるという確たる見通しが立っての上での共同声明でありましょうか。恐らく、現在のような不均衡が続く限り、紛争の種は尽きないでありましょう。
 先ほども質疑の中にございましたが、政府調達物資の市場開放問題は、国内においてもさまざまな波紋を招いているわけであります。米国の強硬な要求の前に、ついに妥協せざるを得ないところに追い込まれたというふうに伺っておるわけでありますが、その真相はどうでありましょうか。どだい、一国の通信事業はその国の戦略的事業に密接なかかわり合いを持っていると言われております。そういう面からも、秘密保持の上から、資材の調達であるとかあるいは技術の開発は自国において行われるということが常識とされているそうであります。いかがでございましょうか。政府の見解を重ねてただしておきたいと思うのであります。
 特に、昨今エレクトロニクス産業が盛んになってまいりました。たとえば、防衛庁の扱いを見ましても、電機、電算メーカーが上位を占めております。そこで、少々うがった見方になるかもしれませんけれども、電電公社を突破口として、こうした日本のエレクトロニクス産業の分野まで米国が手を伸ばしてくるおそれはないか、いかがでございましょうか。
 次に、経常収支不均衡是正という見地から、日本に対して内需拡大に基づく経済成長、市場の開放を約束させられたことは、米国の感情を鎮静することには役立つにいたしましても、国内における調整あるいは外圧に対する反発をどのように処理するおつもりなのでございましょうか。その上、最近の円安傾向、これが続くことによって、逆に輸出がふえるという懸念もあると伝えられております。果たして、共同声明の中に盛られております数年間ぐらいの期間で、このような目標が達成できるのかどうなのか、その所信のほどを伺いたいのであります。
 次に、安全保障関係についてであります。
 改めて日米防衛協力の指針が採択されたこと、日本による防衛装備の米国からの調達が増大したこと、米軍の日本駐留について財政負担が増加したこと、日本の自衛力の質的改善が明確にうたわれたことは、質的軍拡への危険な道を開くことになりはしまいか。これは、私のみならず、やはりおそれを抱くわけでございますが、いかがでありましょうか。
 さらに、カーター大統領は、大平総理歓迎式のあいさつの中で、日本はアジアのかなめ石である、アジアの安定と平和には日米友好協力関係は欠くことができないと表明されたわけであります。これも、意地悪に考えますと、日本の防衛力強化を経済問題と絡ませながら新たな要求を突きつけてくることになりはしまいか。そうなれば、総合的な対応の洗い直しをする必要があるというふうに考えられます。どうでしょうか。
 アジアの安定にとって当面の最大の課題は、インドシナ問題であります。共同声明では、「インドシナにおける最近の緊張の増大に懸念を表明した。日本と米国は、この地域における緊張を緩和するために最善の努力を払い、」云々とありますが、具体策に欠けるこれだけの内容で果たして事態の解決に役立つことになるのでありましょうか。
 さらに、インドシナにおける悲劇的問題は、申すまでもなく、難民の流出であります。わが国としてもようやく難民の定住枠を設け、その条件も緩和されたことは人権擁護の上から好ましいことではありますが、もちろん、これによって根本的な解決にならないことは言うまでもありません。とりわけ、ベトナムと数少ない国交のあるわが国は、積極的に接触を深め、むしろ流出を防止するための協力が望まれるのではないでしょうか。
 次に、東京サミットにおいても討議の対象になるでありましょうエネルギー需要に対応するためのエネルギー源の確保、開発などについてでありますが、特に印象的に思いますことは、日本にとって原子力が石油にかわるエネルギーとして短期、中期的には最も信頼性があるとし、「日本と米国が、必要かつ経済的正当性を有する原子力開発計画に不当な制約を課することを避けつつ、」云々とある。これは、原子力利用の安全性より経済的正当性を重視するとの判断に立っているのではないかと思われますが、所信を伺いたいと思います。
 国連貿易開発会議についてでありますが、総理の一般演説は、南北問題に臨む日本の積極的な姿勢を示すものとして一応評価いたしますものの、具体性に欠けるきらいがありましたことは、いささか残念なことであります。本年二月、開発途上国七十七カ国が合意したアルーシャ宣言は、開発途上国の共通した願望を示すものであり、その理念に賛意を示した政府は必然的に南側への貢献が迫られることでありましょう。
 時間が参りましたので、この点について包括的に総理の意のある御答弁を求めまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(大平正芳君) 渋谷さんにお答えいたします。
 金大中氏事件につきましては、先ほど田中さんにお答えいたしたとおりでございますが、御案内のように、すでに政府が発表いたしておりますように、政府は、アメリカ側に公開された文書の提供を要請してその内容の調査をいたしておりまして、今後その資料をどう評価すべきかということも含めまして、右調査を踏まえて慎重に今後の対応ぶりを検討してまいりたいと思います。ただ、一たん政府が責任を持って政治決着をした事件でございますので、これを見直すことは軽々にいたすべきでないと考えておりますことは御理解をいただきたいと思います。
 それから、第二の御質問は、今度の訪米に当たりまして米国議会において対日批判が非常に激しかったと、これに対しまして、今度の訪米によって一応の対応ができた、成果をおさめ得たと考えているかどうかということでございますけれども、私といたしましては最善を尽くして日本の立場を説明いたしましたし、また、昨秋以来わが国の国際収支の状況、対米収支ばかりでなく、対世界的な収支の状況が急速に改善の方向をたどっておることも数字的に説明をいたしました。とりわけ、四月に入りましてからは、貿易収支も経常収支も日本は赤字の状態であるということでございまして、アメリカの懸念にかかわらず、今日日本の国際収支は相当な速度で改善の方向に向かっておるということ、そして、そのために日本は非常な努力をしておるということを十分説明をいたしたつもりでございます。どこまで御理解を得られましたか、これはわかりませんけれども、なすべき時期になすべきことをやったという思いをいたしております。
 それから、今後アメリカとは次々と紛争の種が出てくるわけでございまして、いろいろな約束は過去においてもあったし、今度も約束いたしたけれども、それにもかかわらず紛争の種はこれで除去できたと思うかという御質問でございますが、私は実はそう考えないのであります。日米間には往復四百億ドルもの巨大な貿易をやっておるわけでございますから、こういう経済的な摩擦ということは往々にして起こり得ると思います。将来も起こる可能性は強いと思うのであります。問題は、起こりました問題をどのように相互信頼の中で解決していくかということがわれわれの課題だと考えております。紛争がないことを望むということは無理なことでございますが、ありました紛争をどのように解決するかということがわれわれの任務であると心得ております。
 それから、電電公社問題についての御心配でございます。電気通信事業が戦略産業であり、秘密保護の必要性もあり、兵器産業との関連からもして、資材調達、技術開発は各国とも自国で行っておるではないか、慎重を期すべきではないかという御意見でございました。ごもっともでございます。電電公社問題の解決に当たりましては、先ほども申しましたように、公衆電気通信事業の持つ使命と役割りが十分発揮されるように配慮いたしながら、一方において、日米関係の安定的な発展ということを確保しなければならない立場から対処いたしておるわけでございます。外国品を調達することとなる場合であっても、調達するものは単体たる機器でございまして、事業ないしシステムの管理はわが国が行うことは当然のことと心得ております。また、技術開発は直接にはコードの問題でないけれども、わが国の自主技術開発を促進しながら、同時に、必要と認められるものは取り入れるという方向で、電電公社事業に悪影響を生むことのないように対処してまいるつもりでございます。
 それから、日米間の収支の均衡、国際収支の不均衡是正は数年間を必要とするであろうと共同声明にも述べてあるが、その期間内で目標達成が可能かということでございますが、いまも申しましたように、急速に事態は改善の方向に向かっておりまして、数年も待たずして私は解決できるのではないかと考えております。しかしながら、過去の経験にもございますように、われわれの予想を超えた事態がいつ起こらないとも限りませんので、終始注意いたしながら、経済問題が政治問題に転化しないように配慮しながら、その一々の解決に周到でありたいと考えております。
 それから、最近の円安傾向で輸出増加の傾向が再び出てきはしないか、そうすることになると、せっかくの共同声明でうたわれている均衡化への方向に逆行するようになりはしないかということでございます。渋谷さんの御指摘されたような疑問はアメリカ側からも指摘されたわけでございますが、私の見るところ、まだ日本の国内にそういう徴候は見られないのでございます。そういった徴候が過度に出てまいるというような場合には、とれまでもやりましたように、輸出について自制していく措置も講じてまいらなければなりませんけれども、そういった徴候はいまのところ見当たりません。
 渋谷さんは、さらに、防衛力の質的改善というようなことを、やわらかい表現になっておるけれども、これは軍拡に道を開きはしないかという御懸念をお持ちのようでございますが、私どもは、そういうことについては警戒を緩めていないつもりでございます。私が申し上げておりますること、そして共同声明にうたっておりますることは、すでに防衛計画の大綱におきまして明らかにしておるところでございまして、新たに軍拡の道を開こうというようなものでないわけでございます。とりわけ、わが国は憲法と非核三原則の制約があることもよく承知いたしておるわけでございまして、そういった点につきましては御懸念のないようにいたしたいと考えております。
 インドシナ半島の問題、とりわけ難民問題について大変御心配をいただき、御指摘をいただきましたことを感謝します。この問題につきましては、この日米会談の最大の問題の一つでございました。アメリカはすでに二十万の難民を受け入れて、毎月七千人ずつの受け入れをいたしておるわけでございまして、わが国が今日の受け入れ対策で足れりとしておるわけにはまいらないことは御指摘のとおりでございます。したがいまして、政府は、先般難民問題に対する八項目の総合対策を決めまして、いまそれに取り組んでおりますことは御承知のとおりでございますが、しかし、渋谷さんが仰せになっておりまするように、難民流出をとめなければいけないじゃないかという御指摘はごもっともでございまして、政府といたしましても、ベトナム政府に対しまして、再三にわたりましてこの点についての自制を精力的に求めておりまするし、今後も求めてまいるつもりでございます。
 次に、原子力発電の問題につきましての御質問がございました。われわれ、いま石油がこのように安定供給に不安が持たれておる現在、一番確実性のある、信頼性のおけるエネルギー源といたしましては原子力が考えられるわけでございまして、これは各国ともそういう評価でございますけれども、御指摘のように、アメリカに不幸な原子力発電事故がございまして、いまその原因とその状況の究明に当たっておるわけでございますけれども、今後とも、安全性、信頼性の確保と環境の保全に万全を期して、その推進に当たってまいるつもりでございます。経済性だけを偏重してこの問題を政府は取り扱うというようなことは慎んでいきたいと考えております。
 それから、UNCTADの問題につきましての政府の、第一次産品の輸出実現のためにどういう方針で臨むかという意味の御質問がございました。一次産品の共通基金につきましては、本年三月の交渉会議で、今後の共通基金協定策定作業の基礎となる基本的な要素について合意が得られたことは大変幸いに思っております。この推進に日本が中心になって当たりましたことも、各国から評価されておりますことは御案内のとおりでございますが、わが国は従来の交渉会議におきまして開発途上国より高い評価を受けておりますけれども、わが国は、同基金が各グループの諸国にとり満足のいく形で早期に設立されるよう、さらに努力していかなければならぬと考えております。今次UNCTADにおきまして、「第二の窓」に対する任意拠出についても、共通基金が各グループ諸国にとり満足のいく形で設立されて、多数の国々の参加が期待される場合には、応分の協力を行う所存である旨私は表明いたしたわけでございます。いわゆるSTABEX、輸出所得補償制度につきましては、一次産品輸出所得の安定の一手段として、その意義等についてはなお慎重に検討をする必要があるのではないかと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#19
○議長(安井謙君) 市川正一君。
   〔市川正一君登壇、拍手〕
#20
○市川正一君 私は、日本共産党を代表して、ただいまの総理報告に対して、また、総理の政治姿勢に関して、質問を行うものであります。
 最初に、外交問題でありますが、共同声明には、アジアの平和と安定ということが述べられております。今日、アジアの平和と安定にとって最も重大な脅威は、核戦力を軸とするアメリカのアジアにおける軍事支配でありますが、それとともに、中国の大国主義的、覇権主義的行動があります。
   〔議長退席、副議長着席〕
 昨日の衆議院本会議でこのことをただしたわが党の工藤議員の質問に対して、総理はまともに答えないでおります。しかし、この五月に入ってからも、中国のケ小平副首相は、一日のワルトハイム国連事務総長との会談、十日のアメリカ記者団との会談、十六日の時事通信社訪中団に対する発言などで、ベトナムへの再制裁を繰り返し表明しており、再侵略の現実的な危険が増大しているのであります。さらにまた、中国軍のラオス国境への結集、武力脅迫、干渉、転覆活動の事実もラオス政府によって明らかにされており、四月二十六日にはラオス政府が国連に書簡を送って、ラオスに対する中国の軍事挑発と干渉を阻止するために適切な措置をとることを要請しております。
 一月のこの本会議において、わが党の宮本委員長は、代表質問において、ベトナム、カンボジア問題について、当時のポル・ポト側が長期にわたって無数の侵略を繰り返していたとき日本政府はどういう態度をとったのかとただしました。このときも、政府はこれに答えることができなかったではありませんか。今日、再び同様の事態が中国によってベトナムとラオスに対して行われているとき、日中平和友好条約で反覇権を取り決めた唯一の政府である日本政府は、中国に対してどういう態度をとろうとするのか、問題をそらさずに明確にお答え願いたい。
 第二に、経済問題について伺います。
 共同声明は、「日本の市場を外国品、特に製品に対し一層開放すること」を第十四項で明記しています。いま、長期にわたる不景気、インフレの新しい危険、異常な水準の円レートなどで、中小商工業者、また産地産業、さらに農業、水産業、林業など、深刻な状態に陥っております。こうした中で、アメリカの言いなりになって市場開放を進めるならば、これに与える打撃及び雇用問題に及ぼす影響はまことに重大であります。この点について総理の認識を伺いたい。
 さらに、総理がナショナル・プレスクラブでの演説において、「一ドル二百円前後が望ましい水準」と述べたことについて厳しい批判が出ております。私自身、商工委員会の一員として、産地中小企業対策臨時措置法案の審議に関連して、先日、愛知県瀬戸市に委員会調査に参りましたが、その際にも、この一ドル二百円論に対して、産地の実情を無視したものとして大きな怒りと悲痛な声が寄せられました。これは与党議員もよく御承知のところであります。総理はいまもそう考えておられるのかどうか、率直にお答えをいただきたい。
 次に、エネルギー問題であります。
 イランの政変、スリーマイル島原発事故などによって、わが国のメジャー依存、アメリカ一辺倒のエネルギー政策は重大な破綻に直面しております。日本共産党は、国の経済主権を守り、エネルギーの自主的供給基盤を強めるために、石炭切り捨て政策に一貫して反対してまいりました。そして、保安の確保を第一とする国内炭の民主的復興を訴えてまいりました。今日、わが党のこの主張の正しさと先見性は一層明らかになってきております。昨日終了した国際エネルギー機関、IEAの閣僚理事会でさえ、石炭利用拡大宣言を採択いたしております。
 そこで、日米共同声明とともに今回調印された日米エネルギー技術協力協定に基づく石炭液化の問題でありますが、これはアメリカのガルフ・オイル社のプロジェクトに二五%の資金を出して協力するものと言われております。しかし、この研究の対象となるのは、その石炭は米国炭に限定され、わが国の国内炭の活用にはつながらず、また、研究の成果を日本へ持ってこられるかどうか、これも明確になっておりません。金はつぎ込むが、技術は先方に独占され、国内の自主的開発は阻まれる、このような協定は再検討すべきではないか。真に国益を守る立場に立って、総理の所見を伺いたいのであります。
 第三に、経済の政治姿勢に関してであります。
 総理は、航空機疑獄について、国政調査権に協力すると、昨日も、また先ほども言明されました。もしそれが偽りでないならば、まず第一に、疑惑の中心人物である岸信介元総理の証人喚問に同意すること、第二に、灰色高官を公表すること、これがそのあかしであります。岸喚問は国会の判断にゆだねるなどと言いますが、反対しているのは、ただ自民党だけではありませんか。そういう詭弁ではなく、自民党総裁でもある総理の責任ある答弁を求めるものであります。
 次に、今回公表されたアメリカ国務省秘密公式文書は、韓国政府みずからが、金大中事件がKCIAの犯行であることを認めたことを示す重大な新事実であり、従来の政治決着を根底から覆すものであります。また、これは、事件発生当時外務大臣として、事実解明なくして解決なしと大みえを切っておきながら、不法不当な政治決着を推進してきた大平総理、あなたの責任を改めて問い直すものであります。
 総理は、昨日、政治決着はよほどのことでなければ見直せないとお答えになった。そしてまた先ほどは、軽々に見直せないと、こうもおっしゃった。しかし、韓国政府が駐韓米大使に犯行を認めていたというアメリカの公式文書の公表は、まさしく「よほど」の事態であり、政治決着を見直すのは、「軽々」どころか、当然のことではありませんか。答弁を求めるものであります。
 また、当の金東祚が「記憶がない」と言っておるのは、これは日本のロッキード事件でもしかるがごとく、否定ではなく、事実上の肯定を意味するのではありませんか。それとも、総理はスナイダー大使がうそをついていると言うのか、認識を伺いたい。
 最後に、ソウル地下鉄事件について、昨日の衆議院での答弁では、検察、国税両当局とも承知していないということでありましたが、不正リベートが日本に還流した事実は明らかであります。このことは、本院の決算委員会での私の質問に対して、法務省も内偵中であることを明確にしたところであります。そこで、これまでの捜査で金の流れをどこまで突きとめたのか、そして、政界に流れた疑いは全くないのか、国会と国民に対して責任ある答弁を求め、私の質問を終わるものであります。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(大平正芳君) まず、市川さんの第一の御質問は、インドシナ地域に対するわが国の姿勢でございます。とりわけ、これに関連して、中国に対してどういう態度をもって対処するかということでございます。先般の中越武力紛争は、アジアの平和と安全の見地からきわめて遺憾な事態であると心得ております。わが国は、公平、中立の立場から、中越両国に対しまして話し合いによる紛争の解決を強く呼びかけてまいりましたことは御承知のとおりでございます。わが国といたしましては、平和を願う立場から、中越双方が引き続き忍耐強く話し合いを継続して、一日も早くこの地域の平和が回復されることを期待しております。
 次に、経済の問題についての御質問でございました。
 国際経済の開放体制に対応していき、市場開放を進めてまいる上におきまして、わが国の産業構造、貿易構造には大きな変化がある、これに対してどう対応するか、とりわけ雇用問題についてどうするかという意味の御質問でございました。先ほども申し上げましたように、わが国の産業政策を推進するに当たりまして、国際的な開放体制を堅持すること、市場開放に努めることは当然の任務だと思っておりまするけれども、わが国の産業構造、貿易構造の変革につきまして慎重に対処しなければならぬことは御指摘を待つまでもないものと考えております。
 そこで、田中先生にもお話し申し上げましたように、内需を中心といたしまして、われわれといたしましては生活中心の需要に経済の軸心をシフトして今後の産業政策を進めていくと同時に、ますます知識集約型の産業に重心を移していくような配慮をしていかなければならぬと考えております。
 雇用の問題でございますけれども、第三次産業あるいは知識集約産業の雇用需要が期待できまするし、それから労働力適齢人口が鈍化してまいるというような傾向を考えますと、雇用の問題についてはそんなに私は深刻に心配する必要はないと考えております。
 中小企業、農業の対応につきまして、あるいは地場産業につきまして、先ほど申しましたように、周到に対応してまいることは当然と心得ております。日本の農業が特殊性を持っておりますることは、御指摘を待つまでもなく、政府はよく承知しておるつもりでございます。
 それから、ドル二百円を私が主張して大変迷惑をかけておるというようなお話でございましたが、私はそういうことを申したつもりはないのであります。私が申し上げましたのは、十一月から三月初旬にかけましておおむね対ドル円のレートが二百円前後で安定しておったことは、小康状態にありましたことは、為替相場が本来乱高下することなく安定しておるということは大事なことでございますので、安定しておったが、このようにいま変動いたしておりますことは大変残念だということを申し上げたにすぎないのでありまして、私は、二百円前後が適正な相場であるなどという、神様が言うようなことは言うた覚えはないのであります。為替相場は基本的には市場の需給によって決まるものでございますけれども、今後とも関係通貨当局と密接な連絡協調を保ちながら、相場の動向に応じて、行き過ぎを防止し、急激な変動をなだらかにするような適切な対処をいたしまして、経済運営に支障を来さないようにやらなければならぬと心得ております。
 それから、エネルギー政策について、石炭の見直しについてお話がございました。仰せのとおり、今朝の一EAの声明を見ましても、石炭を見直すということが第二にうたわれておるわけでございまして、われわれといたしましては、石炭の液化技術の実用化は大変急務であると考えておりますが、石炭液化技術は、市川さんも御承知のように、大変多様でございまして、種々のプロジェクトを取り上げることが液化技術の早期実用化を図る上で必要だと考えております。わが国は、従業から、サンシャイン計画の一環といたしまして独自の石炭液化プロジェクトを推進してきておりますけれども、今後もその強力な推進に努めるつもりでございます。
 それから岸信介氏の喚問問題についてのお尋ねがございました。これは、従来私から申し上げておるとおり、国会の国政調査権の運営は国会御自身がお決めになることでございまして、各党の間でお話が進められておることと承知いたしております。政府といたしましては最大限の協力を惜しむものではないことは、かねがねから申し上げておるとおりでございます。
 金大中事件につきましては、いまも各質疑をされた方々にお答え申し上げましたとおりでございまして、いま、米国から公開された文書の提供を受けて、その調査を行っておるところでございまして、この調査を踏まえた上で慎重に検討していきたいと考えております。
 ソウル地下鉄についての御質問でございますけれども、お尋ねのような資金の一部がわが国内に還流しておるということにつきましては、捜査当局からも国税当局からも、そういうことはないと、そういうことは承知していないという報告が私のところへ届いておりますることを御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#22
○副議長(加瀬完君) 栗林卓司君。
   〔栗林卓司君登壇、拍手〕
#23
○栗林卓司君 私は、民社党を代表して、ただいま報告がございました日米首脳会談を中心にしながら、国連貿易開発会議及び先進国首脳会談の問題にも触れながら、若干の質問をいたしたいと思います。
 この三つの会議の共通点は、それぞれが八〇年代に対する進路を探ることを最大の目的としている点であります。
 御承知のとおり、戦後の国際経済秩序を支えてきた二本の柱は、IMFとガットであります。しかし、そのIMF体制は、七〇年代初頭のいわゆるニクソン・ショックを契機として崩壊の道をたどり、残るガット体制もまた、いまや激しい保護貿易主義の攻撃を受けて動揺しております。一方、この間にあって、一九七三年に行われたオイルショックは、先進工業諸国の経済的優位性を痛撃いたしました。世界は、その打撃からいまだに回復しておりません。非産油開発途上諸国の現状も深刻なものがあります。加えて、最近では、激動する中東情勢のもとで、原油の供給見通しは著しく不安定となり、他方、ソ連の軍事力の台頭は目覚ましいものがあります。かくして世界は、混沌とした東西南北関係のもとで未来を模索せざるを得ない状況に立ち至ったと言わざるを得ません。八〇年代こそは、まさにその解決のための年代でなければなりません。そのためにこそ、国連貿易開発会議及び主要国首脳会議を前にして、自由主義諸国で第一位の経済力を持つ米国と第二位の経済力を持つ日本の首脳が国際的責任をかけて会談を行ったものと、まず理解しておきたいと思います。したがって、二国間の話し合いとは言うものの、その内容は、ECなどの先進工業諸国及び南側諸国をも対象とした日米それぞれの立場の表明であったと思います。この点について総理に御所見があればお尋ねをしておきます。
 そして、そこで日本に問われたものは主として経済問題であり、特に内需中心の経済成長と市場の開放化の問題であったことは言うまでもありません。しかし、この問題の解決は決して容易ではありません。元来、国際収支の不均衡が経常収支の段階で問題とされ、あるいは二国間の問題として論議されるのは、その背景にそれぞれの国の雇用問題があるからであります。同様に、日本として、自由貿易の原則を守り製品輸入の拡大に努力することが正しいとわかっていても容易に踏み切れないのは、国内の失業問題、産業問題があってのことであります。
 八〇年代に臨むに当たって日本がどのような政策を選択するかは、国際的関心にも増して、国内の関心の方がより切実で大きいと言わなければなりません。この点について、総理に対し、かねて政策を国民の前に明らかにするよう要請してまいりました。しかし、これまでのところ、内需拡大による高目の経済成長の問題にせよ、あるいは製品輸入の拡大にせよ、政府の中期的政策はきわめて不透明であります。しかし、今回の日米共同声明では、今後数年間にわたって遂行する基本政策について明確な了解に達したと書いてあります。本当に「明確な了解」、すなわちクリア・アンダスタンディングに達したのでありましょうか。また、「今後数年間」とは何年間を指すのでありましょうか。任期四年の大統領と総裁任期二年の総理との会談であります。長くても三、四年と理解するのが政治的に見た常識だと思うのですが、いかがでしょうか。
 しかも、その三、四年の間に、一、日本の経済成長を維持するに当たり、より内需の拡大に依存するような移行を促進すること、二、日本の市場を外国品、特に製品に対して一層開放すること、について日本がどのような政策を選択するのか、米国大統領は明確に理解したと言うのなら、同じことを日本の国民に対してもしてくれなければ困るのであります。
 総理は、国連貿易開発会議における演説で、「内需を中心に先進国の中で最も高い成長率を目指すと同時に、国内産業の高度化、合理化政策の推進についても決意を新たにしている」と述べておられます。日米共同声明と同じ趣旨とは思いますが、その「高度化、合理化政策」とは一体何を指しているのでありますか。総理は、外で言う前に、中で明らかにすべきであります。
 そこで、お尋ねをします。
 今後数年の間に政府調達物資の開放はどこまでやるのでありますか。
 主要国首脳会談までに解決の努力をすると約束された電電公社の開放問題についてはどうされますか。
 流通市場の合理化、近代化のためにどのようなプログラムが用意されておいでですか。
 農業製品の開放化はどこまで進めますか。
 輸入に関する検査手続についてどのように簡素化するのでありますか。
 また、関連して、カルテルとまで非難されている行政と産業の密着した関係を是正するために、許認可行政のあり方を見直すのですか、見直さないのですか。
 一般消費税は実施をするのですか。
 内需中心の景気拡大を図りながら財政の再建を進めるために、どのような方策が準備されているのでありますか。
 以上の諸点について、まず国民の前に、今後三、四年間の中期的プログラムを明確に示していただきたいと思います。
 しかも、来月の主要国首脳会談では、カーター大統領を除く各国首脳に対しても、日本が今後数年間にとるべき基本政策を明確に理解させる立場に立たされているわけであります。
 さらに、共同声明で注目すべきことは、従来からの高級事務レベル会議に加えて、民間からえり抜かれた著名な人物による小人数のグループの創設が合意されたことであります。このいわゆる賢人委員会は、勧告機関ではありますが、しかし、これは日本の審議会にありがちなように、勧告さえしていれば事が済むというものではないでありましょう。だとすると、この賢人委員会を日本の行政機構あるいは政治的意思決定機構との関連でどのように位置づけていくのでありますか。米国では、大統領が民間のスタッフを活用して政策に反映させる制度と慣行があります。しかし、日本の場合、行政は官僚が一手に掌握をしているのであります。もしこの賢人委員会の構想を生かすとしたら、総理は、行政に対する政治のリーダーシップの確立という積年の課題にいよいよ本腰を入れて取り組まなければならないと思います。
 そこで一体何が話し合われるかという問題があります。カーター大統領の経済ブレーンであるペンシルバニア大学のクライン教授は、昨年開かれた日米財界人会議において、次のような日本に対する注文を提出しております。すなわち、輸出圧力を減らすための金融的援助、利子に対する重課税、配当金課税の軽減、終身雇用制度の見直し、公共部門の調達の開放、預貯金金利の引き下げ、物品税の引き下げ、消費者信用制度の機能の円滑化、太平洋防衛コストの分担、エネルギー源の多様化、エネルギー集約部門に対する投資の減速化、そして、対米投資の増加と現在の流通機構の徹底的見直しであります。このクライン教授の見解は、米国の主たる民間人の共通した認識でもあるように思われます。したがって、賢人委員会が、開かれれば当然こうした問題が議題になると思われますが、いかがでしょうか。
 仮に、たとえば日本の貯蓄率の高さの問題が、輸出指向の産業構造の原因として、あるいは福祉水準、すなわち内需とのかかわり合いで提起された場合に、大蔵大臣としてどのように判断し、行動されますか。
 もちろん、これらはすべて国内問題であります。しかし、通常の外交交渉では注文のつけにくい問題でも、民間人なるがゆえに軽々と乗り越えて首を突っ込んでこれる仕組みが賢人委員会であります。この意味で、まことに洗練された内政干渉組織と言うべきであります。この意味で、今後数年間の日本政府の基本政策を明確に理解し、かつ優雅な内政干渉機構まで組み込んだ今回の共同声明は、カーター大統領にとって満足できる内容であったと思います。だからといって、日本にとって一方的に不利というわけではありません。日本もまた活用すればいいのであります。ただ、相手国に何を注文するかについて、米国には準備があるのに対して、日本には何の準備もコンセンサスもありません。ここに決定的な相違があることを申し上げておきたいと思います。
 最後に、総理に重ねて一言申し上げたいと思います。総理が約束された数年間という期間の重みは、決して軽視してよい問題ではないはずであります。一日も早く国民の前に中期的プログラムを明確な形で提示されることを要望して、質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(大平正芳君) 栗林さんの御質疑にお答えいたします。
 御指摘のように、日米会談も、東京サミットも、マニラのUNCTAD会談も、それぞれ政治的、経済的に大変むずかしい不透明な状況にある今日、八〇年代に向かって日米両国、それから発展途上国、先進主要国それぞれの立場から、これに対しまして、あなたの言われる挑戦に対応しようという問題意識を持った会合でございました。私もそのように理解をいたしております。
 それから、それはそうであっても国内の政策がいかにも不透明でないかということで、国内に対して日米会談の成果がはっきり示されていないじゃないかということ、それから第二に、国内政策自体が明らかでないじゃないかという二つの御指摘がございました。で、今回の共同声明で、わが国は内需の拡大と市場開放を通じて、また、米国はインフレ対策とエネルギーの輸入抑制等を通じて、それぞれの国際収支の不均衡の是正に努める、その程度は、持続性のある一つの国際収支のパターンを形成するまでそのように両方の政策を展開していこうじゃないかということで、御理解をいただきたいと思うのでございます。
 国内の政策につきまして第一にお尋ねでございましたのは、政府調達の問題でございます。政府調達におきましては、先ほど渋谷委員にお答えいたしましたとおりの方針で対処いたしますので、御理解をいただきたいと思います。
 流通市場の簡素化、合理化をしなければならない、これはかねがねから政府の念願でございますし、手を染めておりますけれども、大変至難な仕事でございますけれども、世界各国から、日本の流通市場へのアクセスが非常にむずかしいということについての指摘も各国から来ておる状況でございまするし、私どもといたしましても、この問題は経済政策の一つの大きな課題であろうと考えておりまして、今後鋭意その合理化に努めなければならぬと考えております。
 それから、輸入の自由化につきましてどういう対応をしていくか、市場の開放についてどういう対応をしていくかということでございますけれども、とりわけ農産物についての御質問、御心配でございましたけれども、日本はこれまでずいぶん貿易におきましても、資本におきましても自由化を進めてまいりました。貿易におきましては、いま二十七品目が輸入制限品目として残っておるわけでございまして、そのうち二十二が農産物でありますことも御指摘のとおりでございまして、これは、わが国の農業の基幹産物を形成するもの、あるいは地域的に重要な農業作物であるもの、あるいは沿岸漁業振興上不可欠の品目であると、そういうようなものしか残っていないわけでございまして、こういった品目の自由化についてはよほど慎重でなけりゃならぬとわれわれは考えておるわけでございます。
 第四の認許可問題の整理でございますが、これはことしの予算に当たりましても千項目ばかり整理をいたしましたことは御案内のとおりでございますけれども、今後なお精力的に進めてまいるつもりでございます。
 一般消費税を含めての財政再建の問題でございますけれども、財政再建はこのまま放置できないわけでございますので、八月の要求を待つまでもなく、すでに来年度の予算編成への準備作業を政府は進めておるわけでございまして、極力歳出を圧縮し、既存の歳入手段についての再吟味を加えて、なおどのように財源が不足するものかどうか、そういうところから一般消費税の対応態度を決めてまいりたいと考えておるわけでございます。
 それから、今度の会談におきまして決まりました賢人委員会の運営の問題、それからそれをECに対してもつくるかどうかというような問題でございますが、こういった問題につきましては、対米の関係は人選を急ぎたいと考えておりまして、政府からの独立した立場におきまして日米両国政府に健全な経済関係の勧告をお願いしようと考えておりますが、ECとの間におきましては、これをつくるというような考えは目下のところ持っておりません。
 それからさらに、市川先生にお答えいたしました中で、私の答弁がどうも正確でなかったところを訂正さしていただきます。
 あなたが御指摘になりましたソウル地下鉄に関して、お尋ねの資金の一部がわが国の政治家に還流した事実はないというように簡単に答えましたが、正確に申しますと、お尋ねの資金の一部がわが国の国内に還流していたことについては、関係当局の調査によってすでに明らかになっておるところである、しかし、関係当局からの報告によると、その後の資金の動きは承知していない、ということでございます。(拍手)
   〔国務大臣金子一平君登壇、拍手〕
#25
○国務大臣(金子一平君) 栗林さんにお答えいたします。
 第一点の、内需中心の経済成長をこれからどう考えるかということでございますが、御承知のとおり、今年度の予算編成に当たりましては、内需の拡大と財政の再建の双方を目指して編成いたしたのでございますが、現在、内需は着実に拡大しておりまして、民間経済の活力が十分発揮できる素地ができつつあると考えております。片や、経常収支の方も、最近相当製品輸入が増加いたしましたために、予想以上の黒字の圧縮が進んできております。今後は、インフレを回避しながら、日本の経済の着実な発展を図るためにも、財政の再建が緊要な課題となっておりますので、このためにも、歳出面での効率化を進めまして、一方また歳入面では、総理からお話のございました消費税導入についての準備を現在進めておる段階でございます。
 それから、第二点の貯蓄率の問題でございますが、日本の貯蓄率が二〇%台になっておりまして、ヨーロッパ諸国の一〇%強、あるいはアメリカの五%程度に比べて高いではないかと言われていることは事実でございます。日本の国民性の勤勉な点が背景にあることは当然でございますけれども、いろいろ原因を検討してみますと、日本ではボーナスが年収で大きなウエートを占めております結果、貯蓄率が高くなるとか、あるいは、個人の中には外国に比べますと多数の個人企業が含まれておりまして、個人企業の貯蓄率が高いというような点がありまするけれども、やはり、社会保障制度が最近急速に拡充されてきておりますとは言いましても、老後や不測の事態に備えての貯蓄意欲が非常に強いとか、あるいは住宅その他の実物資産の備蓄が不十分であるというような点が一つの大きな原因であろうと考えますので、今後社会保障制度が着実に充実されてまいります段階におきまして、こういった問題は漸次解消していくんじゃなかろうかと考えておる次第でございます。
 なお、貯蓄率に関連いたしまして、金利の自由化の問題もございまするけれども、一遍に金利全体を自由化することは不可能でございます。今後もできるだけ金利の弾力化を進める方向で政策を進めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣小坂徳三郎君登壇、拍手〕
#26
○国務大臣(小坂徳三郎君) お答え申し上げますが、御質問の流通問題につきましては、すでに総理から十分な御答弁があったと存じますので、簡単に補足的なわれわれの考えを申し述べさしていただきます。
 この流通機構の近代化あるいは合理化の問題は、単に製品輸入の拡大の観点からだけが問題ではないのでありまして、むしろ、われわれとしましては、これと加えて、物価対策あるいは中小流通業者の生産性向上対策等の観点からも不可欠なものであると考えておりまして、かねてから中小商工業の効率化、体質強化、あるいは物的流通の効率化等のための所要の施策を推進しているところでございまして、今後ともこの推進には大いに努めてまいりたいと考えておるものであります。(拍手)
   〔国務大臣白浜仁吉君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(白浜仁吉君) 栗林議員にお答えします。
 電電公社の資材調達問題につきましては、日米経済関係の安定的発展との兼ね合いを考慮しつつ、今後の電信電話事業の運営の円滑化と、国民の期待にこたえた適切な電気通信サービスの提供を期するという観点に立って、妥当な解決を見出すべく努力を続けてきたところであります。政府調達問題の中の電電公社の問題については、日米双方ともできる限り早く解決したいとの意図を有しており、今後の交渉の手順とその枠組みについて早急に米国との間に基本的了解に達することが日米関係の現状からきわめて重要であるということで、外交ルートを通じて鋭意努力しているところであります。(拍手)
#28
○副議長(加瀬完君) これにて質疑は終了いたしました。
 午後一時まで休憩いたします。
   午後零時二十四分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時五分開議
#29
○議長(安井謙君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 この際、日程に追加して、
 日本専売公社法等の一部を改正する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#30
○議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。金子大蔵大臣。
   〔国務大臣金子一平君登壇、拍手〕
#31
○国務大臣(金子一平君) 日本専売公社法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 わが国財政は、昭和五十年度以降、特例公債を含む大量の公債発行に依存する異常な状況にあり、わが国経済の発展のためには財政の再建が最も緊急な課題となっております。
 昭和五十四年度の予算編成に当たっては、歳出の一層の節減合理化に努めるとともに、税収及び税外収入について制度の見直しを行い、歳入の確保に努めることとしたところであります。その一環として、小売定価が昭和五十年末以来据え置かれてきた結果、製造原価の上昇に伴い、売り上げに占める専売納付金の比率が相当の低下を見ている製造たばこについて、その小売定価を改定することとし、所要の改正を行うことといたしたものであります。
 また、現在の専売納付金制度のあり方等につきましては、従来から種々の論議があり、制度の改正の必要を生じております。このため、昨年十二月の専売事業審議会の答申を踏まえ、製造たばこの価格形成方式の明確化、財政収入の安定的確保と日本専売公社の自主性の向上、その経営の効率化を図る見地から、所要の改正を行うこととしております。
 以下、その大要を申し上げます。
 第一に、製造たばこの小売定価を改定するため、その種類ごと、等級別に法定されている最高価格を、紙巻きたばこについては十本当たり十円ないし三十円、パイプたばこについては十グラム当たり十二円、葉巻きたばこについては一本当たり十円ないし四十円、それぞれ引き上げることとしております。
 第二に、専売納付金制度の改正につきましては、現在、専売納付金の額は、日本専売公社の純利益から内部留保の額を控除した額とされておりますが、これを製造たばこの種類ごと、等級別に応じ、小売定価に売り渡し数量を乗じた額に法律で定める一定の割合を乗じて得た額から、地方たばこ消費税の額を差し引いた額とすることとし、財政収入の安定的確保を図るとともに、小売定価に占める国及び地方の財政収入となる金額の割合を明らかにすることとしております。
 第三に、専売納付金制度を改正することに伴って、日本専売公社の経営がその企業努力だけでは吸収し得ない原価の上昇によって圧迫されるおそれが生ずることとなることにかんがみ、現行の最高価格法定制を基本的に維持しつつ、たばこ事業において損失が生じた場合または生ずることが確実な場合に限り、大蔵大臣は、あらかじめ専売事業審議会の議を経た上、法定された限度内で暫定的な最高価格を定めることができることとしております。
 このほか、専売納付金制度の改正に関連し、輸入製造たばこに係る関税率を改定する等、所要の改正を行うこととしております。
 以上、日本専売公社法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
#32
○議長(安井謙君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。勝又武一君。
   〔勝又武一君登壇、拍手〕
#33
○勝又武一君 私は、日本社会党を代表して、ただいま趣旨の説明がありました日本専売公社法等の一部を改正する法律案につきまして、総理及び関係大臣に対し、数点の質問をいたします。
 まず第一に、たばこにはなぜこんなにも高い税金がつくのかという問題です。
 今回の統一地方選挙に当たり、私は選挙民にこの法律案を文書で示しました。しかし、選挙民にはさっぱりわからないのであります。法律というのはなぜこうもわかりにくくしているのかというのが率直な意見でした。そこで、私は、百円のたばこで言えば、専売納付金とたばこ消費税を合わせて税金分が五十六円、小売店販売手数料十円、専売公社の内部留保四円、たばこの原価、つまりコストが三十円ですと説明すると、よくわかったと言うのです。ところが、どうして税金分として五十六円も取られなければならないのかと、庶民は素朴な疑問を持つのであります。
 私は、今日までのたばこの税金分にかかわる国会論議をつぶさに調べてみましたが、つまるところ、政府の説明は、一、専売制度であり、財源確保のためと、二、外国でもたばこの税金は日本より高いという二点に尽きているのであります。これ以外に税金分五六%の根拠があれば、具体的に庶民にわかるよう、大蔵大臣の説明をお願いいたします。
 今回、政府は、たばこの税金相当分を法律で明確にするという提案をいたしておりますが、この平均五六%という納付金率の根拠ははっきりいたしておりません。政府は、従来の納付金率の実績と現行のたばこ地方消費税が二八・四%ということを基準にして決めたと説明されていますが、それだけでは納得できません。納付金率を法定化したことは、消費税への移行と実質的に同じではないか。物品税ならば高いものでも一五%から二〇%程度であり、税金が五六%を超える消費税はほかに何があるであろうか。大衆の愛好品であるたばこにだけ五六%もの高い税金をなぜかけるのか。大蔵大臣から納得できる根拠を示していただきたい。
 次に、諸外国のたばこの値段と税金とがわが国より高いことを理由とされていますが、これも国民に対して説得力がありません。間接税の比重の高い諸外国の事例をあげつらうことは、わが国の総合的な税体系を無視するものであり、国民生活全般や社会保障との比較、さらに、庶民の生活実態と総合的な税負担の関係からいって、とうてい国民が容認できないところであります。あわせて大蔵大臣の明快な答弁を要求いたします。
 そこで、第二の問題として、総理に率直にお伺いいたします。
 今回の軍用機をめぐる疑惑、構造的汚職についてであります。五億円の金が政治家に渡り、しかも、その本人は元防衛庁長官であり、事は航空自衛隊が使う戦闘機、偵察機の売り込みにつながることです。すなわち、国の税金にかかわることであります。国民の税に対する信頼をこれほど裏切っていることはありません。まさに庶民の血税を食い物にし、国民の納税意欲を減退させる最たるものと、総理、お考えになりませんか。
 「悪い奴ほどよく眠る」という映画がありましたが、もっと悪いやつがその奥にいるのではないのですか。政治家一人の証人喚問で済まされる問題ではありません。検察の捜査報告の公表、特に他の疑惑政治家の証人喚問、国政調査権の強化、より根本的な構造汚職の打開策等について、総裁・総理としてみずからの政治的責任を明らかにしていただきたいのであります。そして、事税金にかかわるこの問題の決着がつかない限り、たばこ値上げなどとんでもないことだというのは偽らない国民感情だと思いますが、いかがでしょうか。この際、この値上げ法案を断念なさる意思はありませんか。総理の率直な見解をお聞かせください。
 第三の問題として、財政の再建と税体系の抜本的改善について、総理と大蔵大臣にお伺いします。
 わが国の財政危機の根本原因が成長優先の放漫な財政運営にあることは明らかです。予算を食う高度成長の残りかすの整理を行えば、四兆円規模の歳出削減も決して不可能ではないと言われています。総理は、かつて健保、国鉄、米価等の検討を指示されました。さらに政府は、五月十八日の閣議で、ゼロベース予算、財政支出削減の基本構想を打ち出しました。しかし、これらは、国民への増税説得のためのポーズであり、一般消費税の導入がその本音であると断定せざるを得ません。
 総理は、口癖のように、よく弱い政府の力でどうにもならないと言われますが、行政改革の断行、補助金の抜本的整理、不公平税制の是正等はまさに当面する政府の責務であり、その意思さえあれば直ちに実現できることであります。これらとあわせて、わが党が提唱している富裕税、土地増価税の創設、利子配当所得の総合課税、法人税の強化等をこそ勇断をもって実施すべきだと考えますが、いかがですか。これらの諸施策を実施すれば、一般消費税を断念し、しかも赤字国債の発行も漸減できると思いますが、いかがですか。このような立場に立っての綿密な財政収支試算の作成、財政計画の策定をこそ実行すべきだと思いますが、いかがですか。これらの諸点にわたっての総理の決意のほどをお伺いいたします。
 以上指摘してきたように、たばこ値上げの理由は財源の確保の一語に尽きており、今回で言えば、二千二百四十四億円の増収がねらいであります。これらを以上述べてきたような方法をもって抜本的財政改革を行えば、たばこの値上げも必要ないし、値下げさえ直ちに実現できるのでありますが、その意思はありませんか。
 なお、五六%の税を先取りして、残った四四%で総経費を賄えというやり方は、結果的に公社を収益向上のみに追い込み、専売公社の命とも言うべき公共性の維持さえ危うくさせることにならないか、あわせて大蔵大臣の見解をお聞きいたします。
 第四に、三割以内は法律によらずして値上げできるという法定制緩和についてお伺いします。
 五月二十日に値上げされた国鉄運賃は、私鉄よりも区間によっては約二倍高く、しかも、近距離とか、通学定期二七・九%引き上げとか、弱い層に値上げがしわ寄せされ、取れるところから取るという内容です。しかも、昨年七月、十月、本年の一月、そして今回と、一年足らずのうちに四回の値上げです。かかる暴挙は、国会の審議権を奪い、値上げの歯どめをなくしたからこそできるようになったのではないか、こんなことが法定制緩和以前に一度でもあったかどうか、お答えいただきたい。
 国鉄運賃においてこのとおりです。この国鉄運賃と違って、たばこの場合は専売制度であり、その価格形成には市場原理が働く余地はないのであります。しかも、たばこ価格の五六%は税金であり、直接租税にかかわっています。財政法第三条は、明確に、「事実上田の独占に属する事業における専売価格」は、「すべて法律又は国会の議決に基いて定めなければならない。」とあります。法定制緩和は明らかにこの第三条違反であります。国鉄運賃よりもなお一層厳密に法解釈をすべきであるにもかかわらず、法律違反でないとする政府の説明はまさに強弁であり、法の拡大解釈そのものであります。これらのそしりを受けないために定価改定に四条件を付してありますが、三割以内ということも、専売事業審議会の議を経てということも、国鉄運賃の例のごとく、歯どめの役割りは何一つとして果たし得ないのであります。
 以上指摘してきたように、このたばこの法定制緩和は、国会の審議権の否定であり、国会の使命を無視することであり、政治の根幹にかかわる問題と考えます。政治哲学を大切にされる大平総理の見解をただすものであります。
 最後に、インフレ抑制に対する政府の決意と、たばこの値上げの影響及びたばこの将来展望についてお伺いいたします。
 今回の値上げは、平均二一%、成年男子一人一カ月平均千円、年一万二千円の値上げに相当します。特に、相次ぐ物価上昇の中でのこの値上げが低所得者層を中心に庶民の消費生活に与える影響の大きさについて、どのように考えていますか。また、この値上げのただ一つの目的が増税であるだけに、大衆課税の強化以外の何物でもないと思いますが、いかがですか。
 さらにお聞きしますが、今後の物価上昇の動向、インフレ抑制についての政府の認識はきわめて甘いのではないかという点です。最近における卸売物価の年率二二%の急上昇をどう見ているのですか。本院の大蔵委員会でも再三の指摘があり、それなりに、政府は、公定歩合の〇・七五%の引き上げ等、対策を講じてこられたはずなのに、この状況です。まさに、新聞見出しのとおり、急騰です。消費者物価への影響は必至であります。今年度の消費者物価上昇率年率四・九%の政府の見通しについてどのように責任をとられようとするのか。物価上昇、インフレ抑制にどう対処なさるのか。このまま放置すれば狂乱物価の再来です。国鉄運賃を初めとする公共料金引き上げの中でのこのたばこ値上げについて猛反省すべきだと考えますが、いかがですか。これらの諸点について経済企画庁長官の見解を伺います。
 また、この値上げに伴うたばこ消費量の減退の見通しもきわめて甘いのではないのですか。数年間にわたる平均年六%台の伸び率が、昨年度でも〇・一%増にとどまっています。さらに今回の値上げで激減するのではないのですか。大蔵大臣、はっきりした見通しを承りたい。
 なお、近年高まりつつある嫌煙権運動の発展をどう見ますか。喫煙と健康の問題、たばこ消費量の減退に伴う公社の経営計画の再検討や、公共性維持のための専売公社の存在意義が問われているところであります。
 これらの課題に政府はどのように対処なさろうとしているのか、見解をお聞きをし、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#34
○国務大臣(大平正芳君) 勝又さんの最初の御質問は、航空機輸入に絡まる問題が疑惑が問われておるようなことで国民に値上げを通じて負担を求めるということは政治責任として許せないではないかという御趣旨の御質問でございました。今度の事件はまことに遺憾な事件でございます。捜査当局が丹念に捜査いたしまして、刑事責任の問題は一応処理が済んだようでございますが、この処理を通じまして政府には何も不正がないことが公表された捜査結果から明らかになったことは、勝又さんも御承知のとおりでございます。問題は、政治的道義的責任が問われておるわけでございまして、このことにつきましては国政調査権の発動の場において究明されることと思いますが、政府としてもできるだけこれに協力をしてまいる所存でありますことは、かねがね申し上げておるとおりでございます。仰せのとおり、政府として今後とも税金のむだ遣いといった批判が出ないよう、予算の執行に当たりまして十分注意してまいるつもりでございまして、この提案を撤回してはということでございますけれども、それは先ほど大蔵大臣の説明もございましたような財政事情もこれあり、撤回はひとつ御勘弁を願いたいと思います。
 第二の問題は、こういう提案をする前になすべきことが多いではないか、歳入歳出を十分見直す必要があるのではないか、行政整理をもっと徹底的にやるべきではないか、また、社会党初め野党から御提案がございまするもろもろの新税構想等について十分な検討を遂げて、その実現を図るべきでないかという御質疑でございました。仰せのとおり私も心得ておるわけでございまして、財政再建の根本は歳入歳出を一遍根本的に見直していくことであろうと存ずるのでございまして、行政整理につきましては、その意味におきまして、機構の肥大化を避けながら、定員の増加を避けながら、増大する行政需要をこなしていくように努力をいたしておるところでございまするし、認許可の整理につきましても鋭意努力いたしておりますが、今後ともこれは精力的に続けてまいるつもりでございます。
 歳出の見直しにつきましては、先般も、御承知のように、八月末の予算の概算要求を待つまでもなく、今日からすでに政府全体といたしまして明年度の予算の真剣な再建に取り組んでおるわけでございまして、ことしの予算現額の中ですべてを賄うとすればどういう不都合が起こるかというようなところからいま検討を始めておるところでございます。
 それから、野党から御提案のございますいろいろの新税でございますが、富裕税につきましては、資産の把握や評価等執行面に問題があることは国会における論戦を通じて御承知のとおりでございまして、その実現可能性についてはなお検討しなければならぬと考えております。土地増価税につきましては、税制調査会におきましても大勢は消極的な意見が多くございまして、いまのところ取り上げることは大変困難だと考えております。利子配当所得の総合課税の問題は、五十五年度改正時までに適切な結論を得たいといま努力中でございます。法人税率の引き上げにつきましては、税制調査会の中期答申でも指摘されるように、ある程度引き上げの余地はあるのではないかという御見解もございますので、今後の検討課題にいたしておるところでございます。
 政府といたしましては、いろいろやりまするけれども、どういたしましても国民に対して福祉その他のサービスを確保しなければなりません。一方において財政の再建を図ってまいらなければならぬという両面の要請にこたえるためにいろいろな努力はいたしまして、なお足らない財源があるかどうか、それはどれだけあるか、それをどう賄うかという議論を深めていただくようにお願いをいたしておりますることは、私の施政方針演説でもお聞き取りいただいたとおりでございまして、一般消費税の問題もそういう角度から御検討を願いたいと存ずるのでございまして、自余の問題につきましては所管大臣からお願いいたします。(拍手)
   〔国務大臣金子一平君登壇〕
#35
○国務大臣(金子一平君) 勝又さんからの御質問の第一点は、納付金率の五六%の根拠はどうなのか、高過ぎるじゃないかという御質問でございますが、たばこ事業収入の国及び地方財政に対する財政寄与の割合を定めるに当たりましては、過去における専売納付金と地方たばこ消費税の額の定価代金に占める割合でございますとか、たばこ事業の国、地方に対する財政寄与の割合を大体平年度において等しいものとしようとする点でございますとか、あるいは諸外国におけるたばこに対する税率が売り上げ税を含めますとおおむね七〇%以上であるというような点を考えまして、五六%程度としても決して高いとは考えられないということで、今回の御提案を申し上げた次第でございます。特に、関税収入−定価代金の〇・五%程度でございますが、これを含めて大体五六%となるものでございまするから、平均五五・五%という納付金の率は妥当なものと私どもは考えておる次第でございます。
 また、間接税に重点を置いてこれからの税制を考えていくのかという趣旨の御質問が次にございましたが、御承知のとおり、高度成長の時代が去りまして、これから安定成長、中成長の時代になりますると、やはり税制として考えなきゃいかぬのは、従来の直接税中心の体系とあわせて、ある程度間接税に重点を置いていかなければいかぬというふうに私ども考えておる次第でございまして、まあその一環として、たばこ消費税を取り上げておるような次第でございます。
 それから、このたばこの値上げをやる前になすべきことがたくさんあるじゃないかという問題につきましては、すでに総理からお答えがございましたので、触れませんけれども、財政法三条の精神に違反して、今度のやり方は国会の審議権の否定につながるではないかという御指摘でございまするけれども、財政法三条は、国の独占に属する事業の中の価格、料金について、法律に基づいて決めなければいけない旨を規定しておりますけれども、同条が法律に基づいてと定めておりますることからも明らかでございますように、同条は、あらゆる場合に法律で直接具体的金額を定めることを要求しておるものではないと考えております。しかも、今回の定価法定制度の緩和に当たりましては、従来の最高価格法定制度を基本としながら、勝又さんも御指摘ございました四つの大変厳しい条件のもとで大蔵大臣による最高価格の改定ができるように法律で定めようとするものでございまして、考え方として財政法三条の精神に反するものでは決してございませんし、また、国会の審議権を十分尊重したものと考えておる次第でございます。
 それから、今度の値上げによってどれぐらい消費の減を見込んでおるかという御質問でございますが、五十四年度の定価改定後で、定価改定がなかった場合に比べまして、消費量は大体三%の減少になるだろうと考えておる次第でございます。しかし、この減少は、従来の定価改定のときの場合と同様に、ある程度期間を置きますと漸次回復するものと考えておる次第でございます。ただ、傾向として、先ほど嫌煙権の問題にお触れになりましたけれども、喫煙と健康の問題嫌煙権の問題等がございますので、たばこ消費の大きな伸びを期待することは、これは私は必ずしも考えられないんじゃなかろうかと存じておる次第でございます。
 それから、納付金率の法定に伴って、専売公社は営利追求本位の経営に走るのではないかという御懸念がございましたけれども、今回の制度改正によりまして公社の経営責任がむしろ明確になりまして、その企業性が高められることとなるのでございまして、公社は公企体としての使命を自覚して、公社事業及びたばこ関連事業の発展にさらに努力するものと私ども考えておる次第でございます。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣小坂徳三郎君登壇〕
#36
○国務大臣(小坂徳三郎君) 物価に関連した点についてのお答えを申し上げたいと存じます。
 最近の物価動向は、消費者物価はきわめて落ちついておりますけれども、御承知のように、卸売物価がこのところ大幅に上昇しておるわけでございます。この原因は、原油価格等の海外一次産品の値上がり、為替相場の円安傾向、国内需給の改善等が要因であると考えておりますが、卸売物価の現在の状態はきわめて警戒すべき状態にあるという認識を持つものであります。このような情勢に対応いたしまして、政府は本年二月初めから早目早目に物価対策を行うことを決意いたしておりまして、物価担当官会議を開催し、生活関連物資及び国民経済上重要な物資につきましては、その需給、価格動向の調査、監視あるいは供給の確保を図るととなどを含めました八項目から成る対策を定めて、その政策の推進に当たっているところであります。四月五日には、現在の卸売物価の情勢が警戒すべきものであるという認識のもとに、さらに重ねて担当官会議を開きまして、具体的な措置の推進をいたしておるところであります。また、日本銀行は、こうした情勢に対応いたしまして、インフレ心理を断ち切るという意図のもとに、卸売物価の上昇を予防的に措置するということから、公定歩合の引き上げを先般実施いたしたような事態でございます。
 物価の安定につきましては、申すまでもなく、国民生活のきわめて重要なものでございまして、特に今後の日本の経済運営、そして国民生活全般に至大の影響を与えるものでございまして、われわれといたしましても全力を挙げて物価の安定に努力をいたしてまいる、そのような決意でございます。
 次に、卸売物価の状態とは別に、消費者物価の五十四年度の政府見通し四・九%は可能かという御質問でございますが、先ほど来申し上げておりますように、今日までのところ、卸売物価に比較して消費者物価はきわめて落ちついた動向であることは大変御同慶の至りと存ずるわけであります。しかし、この卸売物価に対応しての消費者物価の動向には、季節商品あるいはまたサービス料金など、卸売物価との関連の少ない小さな品目もたくさん含まれておりますので、卸売物価からのいわゆる上昇の波及が必ずしも急激に直ちに消費者物価に転嫁するものでないというふうにも考えておりますが、いずれにいたしましても、ある時間的な差をもちまして消費者物価への影響も考慮しなければならないというふうに考えておるわけでございます。しかし、現在におきましては、消費者物価につきましてはこの四・九%の維持が全く困難であるというような考え方は持っておりません。
 また同時に、消費者物価を維持するために、消費物資の輸入政策等も、もしも消費者物価の上昇が今後も激しい勢いになる傾向にあるとするならば、輸入政策を大いに活用いたしまして、国内における競争原理を働かせての安定ということについても積極的に今後対処してまいりたいと思っておるわけであります。
 最後に、たばこの今回の値上げによる消費者物価への影響を試算いたしますと、〇・三七%程度の上昇になるというふうに考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#37
○議長(安井謙君) 矢追秀彦君。
   〔矢追秀彦君登壇、拍手〕
#38
○矢追秀彦君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま議題となっております日本専売公社法等の一部を改正する法律案について、総理及び大蔵大臣に若干の質問を行うものであります。
 まず最初に、公共料金の値上げに対する政府の姿勢について伺います。
 最近の世論調査を見ましても、国民の政府に対する一番強い要望は物価の安定にあることは明らかであり、この要望にこたえるのは政府の責務であると思います。
 政府は、五十四年度経済見通しの中で、消費者物価上昇率四・九%を国民に約束をいたしました。ところが、最近の物価動向、特に卸売物価は昨年の十一月以来六カ月連続して大幅上昇しており、四月の卸売物価は前月比一・七%の上昇、年率換算では実に二二・四%の急上昇となっているのであります。素原材料の上昇が製品価格に影響が出るのはおよそ三カ月から六カ月程度はかかると言われておりますが、いずれにしろ、消費者物価に波及することは明らかであります。しかも、本年のわが国経済は昨年とはその状況を全く異にしていることを深刻に理解しなくてはなりません。昨年の物価安定の大きな要因となった円高効果、石油価格の安定、野菜等季節商品の落ちつき、公共料金の大幅引き上げの見送りなどが、本年になってことごとくさま変わりの状況を呈しているのであります。このような経済情勢を見るならば、当然、物価は危険水域に入ったと認識すべきであります。
 私は、本院予算委員会、大蔵委員会において、しばしば物価問題なかんずく、買い占め、売り惜しみがすでに始まっていると指摘し、国民が大変つらい思いをした石油ショック時の狂乱物価の状況を今後は絶対に引き起こしてはならないと強く主張してまいりました。しかし、政府は、物価上昇を海外要因にその原因の大部分があるとして、みずからの経済見通しの誤り、経済運営の誤りを認めようとせず、物価対策に真剣味が見られないのであります。先ほども経済企画庁長官は、真剣な物価対策をやっておる、いろんな調査をしていると言われましたが、全くその効果は出ておりません。そして、物価対策の一環として公定歩合の引き上げを行いましたが、これは住宅を求める庶民にとっては住宅ローンの引き上げとなり、また、資金力の弱い中小零細企業にとっては大変な負担増となり、また、手持ち資金の潤沢な大企業にはそれほどの影響はなく、物価対策として全く努果を奏しなかったのであります。そうして、その根拠としては、地価の高騰はますます続き、その他の物価もじりじりと上がり続けております。政府は、この際、あらゆる施策を動員して物価の安定に努めなければ大変なことになります。否、もうなっているのであります。政府の物価に対する現状認識及び今後の対策について、国民の安心できる具体的な答弁をお願いしたい。
 さらに、政府は、国民の強い要望であった所得税の減税を見送ったばかりでなく、政府の財政運営の失政を増税で賄おうと国民へ押しつけてきているのであります。いま国民生活は、物価上昇にも満たないベースアップと揮発油税などの増税で、家計は火の車であります。その上物価の急騰では踏んだりけったりで、やっと消費生活に動きの出てきた国民生活に水を注ぎ、ひいては経済の回復基調さえも逆戻りしかねないのであります。物価安定こそ最重要課題であります。
 政府は、先日、国民に大変評判の悪い国鉄運賃の値上げを行いました。この際、せめて物価上昇の大きな要因の一つである公共料金の引き上げを英断をもって撤回し、政府の物価に対する姿勢を国民に示すべきと思いますが、総理の明快なる答弁を伺いたいのであります。
 第二に、たばこ値上げとたばこ消費の関係についてであります。−今回の値上げの目的は、コストアップ分というよりも、増税にあることは明らかであります。ところが、健康問題、嫌煙権など、最近のたばこ離れ現象の中で二一%もの大幅値上げを行うとすれば、ますますたばこ離れを促進することになると思います。政府がもくろむ財政収入の増加がかえって裏目になりかねません。事実、五十年の値上げに際しては、需要回復についての見通しを誤り、そのため、職員の雇用と労働条件及び葉たばこ耕作者へも影響を及ぼしたのであります。政府は、今回の値上げと需要回復についてどのような見通しを持っているのか、伺いたいのであります。
 第三に、定価法定制の緩和化についてであります。
 国家の独占企業であるたばこ産業は、本来公共性、公益性が保障されなくてはなりません。そのため、値上げに際しては国会の審議にゆだねられていたのであります。しかるに、今回、国会の承認を経ずして定価の三〇%以内ならば政府の裁量で値上げが行える改定をもくろんでおります。これは、財政民主主義を根底から否定するものであり、断じて容認することはできません。国家財政の憲法とも言うべき財政法第三条には、「事実上田の独占に属する事業における専売価格」は、「すべて法律又は国会の議決に基いて定めなければならない。」と、明確に規定されております。たばこ事業は、国鉄のように私鉄との競合もなく、いわば完全な独占事業であります。このような、価格形成には全く市場原理が働く余地がないところから見ても、その価格は明らかに専売価格であり、まさに財政法第三条の求めているところであります。たばこの価格が財政法第三条に触れていないという理由はどこを見てもないのであります。政府が財政法第三条に該当しないと言うなら、その根拠を明確に示していただきたいのであります。先ほどの大蔵大臣の御答弁では、はなはだ不満足でございますので、重ねて明確にしていただきたいと思います。
 公共料金の値上げの決定権が政府の裁量権にゆだねられると、いかにその改定に歯どめをかけたとしてもその効果がないことは、さきの国鉄運賃の値上げを見ても明らかであります。今回の緩和化が政府主導型の公共料金つり上げにさらに拍車がかかることは必至であります。総理、大蔵大臣の答弁を伺いたいのであります。
 第四に、対外諸国との経済調整について伺います。
 今回の日米首脳会談の最大のテーマは、何といっても経済摩擦であります。共同声明も発表されておりますが、非常に抽象的であり、懸案であった両国間の摩擦を解消するためのルールもついに策定されなかったのであります。したがって、東京サミットを前に来日するカーター米大統領との話し合いに大きな期待は持てません。さらに、EC諸国の対日姿勢も決して楽観できるものではありません。経常収支も三月には赤字に転じ、四月にはさらに赤字は拡大し、例年輸出超過となる月であるにもかかわらず、季節調整前でも赤字を記録しているのであります。しかも、円安傾向が定着しつつある今日、今後のわが国経済の前途はきわめて厳しい状況にあります。その上、農産物を初めとする広範な自由化の波はひたひたと押し寄せており、たばこの輸入についても例外ではありません。
 葉たばこについては、輸入量が使用量の約三四%となっており、わが国の葉たばこ生産農家の実情から見て、急激に拡大する必要はないと思います。しかし、製造たばこについては、国内販売に占める外国たばこの割合が現在一%、本数にして約三十億本でありますが、フランスなどヨーロッパでは、外国たばこが一〇%程度のシェアを占めております。当然、わが国も外国製造たばこをヨーロッパ並みに拡大しろとの強い要求が出されているのは御承知のとおりであります。ところが、仮に一〇%に拡大したとすると、三百億本が国内産製造たばこに取ってかわられることになり、これが与える影響ははかり知れないものがあります。たばこの需要が大きく伸びるとは考えられない今日、三百億本は三ないし四工場分の製造本数であり、職員の首切り、合理化につながり、たばこ事業の根幹を揺るがしかねません。市場開放についての海外の要請を単純にはねつけることが困難なことは、電電公社の例を待つまでもなく、明白であります。政府は、これらの問題に慎重に対処するとともに、的確な先見性ある政策を進める必要が急務であると思いますが、大臣の所見を伺いたいのであります。
 第五に、たばこと健康について伺います。
 たばこと健康については各方面で研究せられており、その結果、肺がんを初めとする呼吸器疾患との関係、脳卒中や心筋梗塞など循環器系との関係などが統計的な有意な相関関係であると指摘されてきております。しかし、この発表の多くは民間研究機関によるものが多く、特に公社の委託研究によるものは皆無と言ってもよいのであります。専売公社は、喫煙と健康に関する委託研究として、五十三年度も二十ほどの大学研究機関に一億一千万円程度の予算をつけておりますが、研究結果を公表しておりません。国民の健康に関する重要問題でありますので、でき得る限り国民に知らせ、その判断が的確にできるようにすべきであると思います。また、たばこの売上高の多さに比し、健康に対する研究費一億円は余りに少な過ぎると思います。政府としても積極的に取り組むべく予算を増額すべきと思いますが、大臣の所見を伺いたいのであります。
 最後に、専売事業の経営問題について伺います。
 古くて新しい民営化問題に具体的回答を与えたのは、昨年六月の公共企業体等基本問題会議による「公共性及び経営の効率性から民営化が適当である。」との提言であります。閣議においてもその意見を尊重するとの立場をとっております。しかし、この意見書はきわめて重大な意味を持っております。たばこ事業関係者四十五万人の将来がかかっているのであり、民営化に伴う諸般の問題点はここでくどくど申しませんが、一体政府は、たばこ事業の将来展望について明確な青写真を持っているのでしょうか、お伺いします。政府がこの意見書を尊重するというのは具体的にどういう意味なのか、この際明確にしていただきたいのであります。
 以上何点か本改正案の問題点について伺いましたが、政府は、国民の多くが反対している一般消費税導入など大衆増税化路線の一環として、たばこの値上げを図っていることは明らかであります。国民に負担を強いる本改正案について、政府は勇断をもって撤回することを強く要求し、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#39
○国務大臣(大平正芳君) 矢追さんの御質問にお答えいたします。
 政府も、御指摘のように、物価政策を、物価の安定を重要な政策課題と心得ておるわけでございます。したがいまして、この観点からもろもろの施策をいたしておるわけでございます。それにもかかわらず、国鉄、たばこ等の値上げを策しておることは不可解でないかということでございますけれども、これは、こういう公共企業体の経営の徹底した合理化を進めつつ、また、国民生活への影響も踏まえながら、その時期、値上げの幅等について、国民生活への影響を配慮いたしまして、極力最小限度にとどめておるつもりでございます。いうところの四・九%の消費者物価の目標というものの中には、この国鉄、たばこの御提案申し上げておる値上げも含まれておるわけでございます。今後も、こういった公共料金の引き上げにつきましては極力警戒し、自粛してまいるつもりでございますが、今回提案いたしておりまするのは最小限度のものであるというように御理解をいただきたいと思います。
 それから第二点といたしまして、たばこ専売の経営形態の問題がございました。これは、御指摘のように、昨年六月、公共企業体等基本問題会議で意見書が出されておりまして、政府もその趣旨を尊重して対処することにいたしておるわけでございます。これは各界の有識者の検討の結果であること、おおむね現在における率直な国民の感情に即したものであるという点につきましては、政府も理解を持っておるつもりでございますけれども、しかし、御指摘のように、わが国葉たばこ産業をどう今後考えてまいるか、販売店の取り扱いをどうするか、その影響等も十分考えなければなりませんので、今後は、政府は関係各方面の意見を十分聴取しながら、この問題には慎重に対処していくつもりでございます。
 自余の問題につきましては、関係大臣からお聞き取りをいただきたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣金子一平君登壇、拍手〕
#40
○国務大臣(金子一平君) 矢追さんにお答えいたします。
 第一の、たばこの値上げと消費の関係でございますが、今回の改定によりまして、一時的に従来と同様の需要の減退が見込まれるものと考えております。三%ぐらいと先ほどもお答えいたしましたが、ただ、時の経過とともに回復するのではないかと存じます。しかし、長期的には、四十年代のような高い伸びは期待できないとしても、たばこに対する需要というものが安定的に推移するものと考えておる次第でございます。
 それから財政法三条との関係でございますが、先ほどもお答え申しておりまするように、第三条は、あらゆる場合に法律で直接具体的金額を定めることを要求しておるものではないというのが私どもの考え方でございます。今回の専売納付金に関する制度改正に伴いまして、公社の経営が企業努力だけでは十分吸収し得ない原価の上昇等によって圧迫をされるおそれが生じまして、このような原価の上昇等の原因に対して製造たばこの定価をある程度弾力的に規定できるようにする措置があわせてとられませんと、公社の運営に対して難きを強いるようなことになりますから、特にこういう御提案をいたしまして、お願いをしておるわけでございます。しかし、製造たばこの定価法定制の緩和を図るといたしましても、財政法第三条の趣旨から見て、その条件は厳格なものでなければならないと存じますので、従来の最高価格法定制を基本としながら、四つの厳しい条件のもとで大蔵大臣による最高価格の改定ができるように法律でお願いをしておる次第でございます。
 それから第三点、製造たばこの輸入拡大について今後どのように考えていくのかということでございますが、専売公社は、従来から、外国たばこにつきましては需要に応じて供給するということを基本原則として経営を行っておるのでございまして、今後もこの方針をとることに変わりございません。特に私どもといたしましては、わが国たばこ産業を構成しておる方々の経営の根幹を揺るがすような事態に立ち至ってはいかぬと考えておるのでございまして、このためには、ただいま提案しておるような適正な競争を可能にする関税制度等の確立を図るほか、さらには、わが国たばこ産業の生産性の向上に努めるという不断の企業努力ができるような体制で公社を指導してまいりたいと考えておる次第でございます。
 次に、たばこと健康についての公社の委託研究の結果の発表がないじゃないかという御指摘、これはまさにそのとおりであると考えます。と申しますのも、研究課題の多くはまだ研究の途上にあるものが大部分でございまして、公社は正式にはまだ発表しておりませんけれども、中間的なものは委託研究者から学会や医学の専門誌に発表してまいっております。しかし、喫煙と健康の問題は大変大事なものでございますので、今後広く国民の皆様の御理解をいただくために、研究状況に応じまして、何らかの形で公社が発表できるように、研究者の協力を得ながら進めてまいりたいと考えておる次第でございます。
 それから、研究委託費が少な過ぎるじゃないかという御指摘、これまたそのとおりだと存じます。一億円余りでございますので、今後予算の許す限り積極的に増額してまいりたいと考えております。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣小坂徳三郎君登壇〕
#41
○国務大臣(小坂徳三郎君) お答え申し上げます。
 物価に関連しては、先ほども申し上げましたように、卸売物価に関しましてはきわめて警戒すべき情勢であるという認識を持っておりまして、これを中心にいたしまして、現在、先ほど来申し述べておりますような施策を展開し、安定化に極力今後も努力してまいる方針でございます。ただ、先月の卸売物価の上昇率を、直ちにそれを十二倍しまして、年率に換算して二二%の上昇であるというような表現は、われわれといたしましては、むしろインフレマインドを大変誘うものではないかというので、非常にわれわれとしてはその点について苦慮をいたしておるわけでございますが、いずれにいたしましても、現在われわれが一番重点的に考えておりますことは、地価の安定と、もう一つは石油の末端における価格の動向でございまして、これにつきましては、特に通産省及び通産局を中心にいたしまして鋭意その動向を監視して、そしていろいろな売り惜しみ等々の事態の起こらないように指導を続けておることを申し添えたいと思います。
 なお、卸売物価の動向に関しましては、やはりこうした物価の問題は、政府だけの問題よりも、むしろ民間の経済界との強い協力の中でできるだけ安定の方向に努力すべきであるという考えのもとに、先般経済界の代表者とわれわれが会いまして、そして物価の現状についての話し合いをいたし、さらに需要に応じた供給を確保することや、あるいは海外産品の価格上昇を生産性向上によって埋めていただく努力を求めるとか、さらには、便乗値上げ等につきましては厳格に経済界においてもこれを監視をし、行わないような方向に進もうということ等についての協力を求めて、相互に理解を深めたところであります。(拍手)
    ―――――――――――――
#42
○議長(安井謙君) 小巻敏雄君。
   〔小巻敏雄君登壇、拍手〕
#43
○小巻敏雄君 私は、日本共産党を代表し、日本専売公社法等の一部を改正する法律案について、総理並びに大蔵大臣に質問いたします。
 今日のたばこは、年間販売高は二兆円を超し、葉たばこ耕作者は十二万人、たばこ販売店は二十五万店、これらを擁する一大産業であります。その経営の帰趨は、関連業界はもちろん、国民生活、わが国経済にも大きな影響をもたらす存在となっております。今回の法改正は、公社設立後三十年目にして初めて実施される重大な制度改正をも含んでおり、その影響はきわめて大きなものがあります。
 まず第一にお尋ねしたいのは、物価に関する問題であります。
 最近の物価をめぐる情勢はきわめて重大であります。昨年十一月以来、卸売物価は連騰し、四月は前月比一・七%、年率換算では二二・四%という急騰ぶりであります。これは、今年度の卸売物価上昇を一・六%とした政府見通しが早くも破綻し、今後消費者物価の高騰は必至となっていることを示すものであります。
 物価の安定こそは経済安定の基本であります。ところが、政府は、すでにガソリン税や国鉄運賃の引き上げを行い、さらに、このたばこを初め、健康保険など、国民生活にかかわる一連の公共料金引き上げを進めて、物価騰貴の先導の役割りを果たしているのであります。政府みずからが物価をつり上げながら、有効な物価安定策を講じることができるでしょうか。たばこの値上げなど公共料金を引き上げておきながら、総理、今年度の消費者物価の上昇を政府見通しのとおり四・九%にどうして抑えることができますか。また、そのためにどのような物価対策を講じるのか、伺いたいものであります。
 第二に、たばこ定価の大幅な引き上げと法定制緩和の問題であります。
 今回、現行たばこ定価の二一%引き上げで、セブンスターは百五十円が百八十円に、ハイライトは百二十円が百五十円になり、その増収額は今年度二千二百四十四億円程度と見込まれています。専売事業は、昨年度補正後予算においても五千九百二十九億円もの当期純利益を上げ、そのうち五千五百三十九億円を国庫納付金として国へ納めています。また、益金自体も年々増大し、前回五〇%値上げの昭和五十年度に比べて、五十三年度では実に一・六倍の高い伸び率となっているのであります。
 ところが、政府は、定価法定制緩和の措置を新たに設けたいというのであります。たばこ事業で「損失が生じた場合又は損失が生ずることが確実であると認められる場合」には、二一%引き上げになお上乗せして、その一・三倍、つまり現行の五七・三%までの引き上げを、国会の議決抜きに、大蔵大臣の手によって実施できるようにするというのであります。これだけ大もうけしてきた公社に対して、いま突然赤字経営を予想しなければならないのは何ゆえか。これは、今回の提案の国庫納付金率の法定化が実施されると、従来益金処分とされていた国庫納付金を経費として事前に国が売り上げから先取りをするために赤字を予想するのであります。大臣、そうではありませんか。
 そもそも、たばこ定価の決定に関しては、財政法第三条において、「法律上又は事実上田の独占に属する事業における専売価格若しくは事業料金については、すべて法律又は国会の議決に基いて定めなければならない。」とされております。また、憲法第八十三条は財政処理権限の国会議決主義を、さらに第八十四条は租税法律主義を規定をして、国会議決の重要性を明らかにしているのであります。今回の定価法定制の緩和は、これらの規定やその精神から著しく逸脱したものと言わざるを得ない。特に国営事業に対する国民の監視とコントロールのかなめとなる国会の審議と議決をないがしろにする点で、国鉄運賃法定制緩和に次ぐ第二弾であって、断じて認めることはできません。
 国鉄は、一昨年十二月の臨時国会で法定制緩和の先頭を切ったのでありますが、以来今日まで一年半に運賃及び料金の値上げを四回も繰り返し、おおよそ三五%も引き上げたばかりか、来年度もまた上げたいと言うに至っているのであります。国民生活に多大の犠牲を強いる法定制緩和が国鉄の再建に役に立ったか。全く役に立たず、かえって抜き差しならぬ経営状態に追いやる要因となったことは肝に銘じるべきでないですか。この悪例をたばこ事業に及ぼし、さらに郵便、電報、電話にまで波及させようとするに至っては、公共料金全体系の全面的な改悪の意図と言わざるを得ないのであります。
 総理、国鉄に続くこのような改悪はやめるべきです。そもそも、たばこ事業の基本問題の一つである定価について、国会の明確な議決を必要としないという根拠は一体どこにあるのか。何をもって憲法、財政法の規定及び精神にいささかも逸脱しないと言明できるのか。総理並びに大蔵大臣の明確な答弁を求めます。
 第三に、先ほども触れた国庫納付金率の法定化の問題であります。
 政府は、みずから招いた四割国債依存の危機的な財政下に、国庫収入の安定的確保のためには、公社経営に対するしわ寄せ合理化の強制、国民負担の増大を強行しようとしております。益金からの納付金の大幅先取りが、政府のインフレ、物価引き上げ政策のもとでの原材料価格の上昇と相まって、一段と公社経営を圧迫することは明らかであります。
 今回の改正は、税負担の明確化をていのよい口実とした国民収奪の強化にほかならないのではないのか。それでも、この改正が真に公社事業の発展、国民の利益にかなうものと言うことができますか、総理の所見を求めるものです。
 また、大蔵大臣に聞きます。今回の改正によって公社経営を悪化させることはないのか。公社はもとより、公社労働者、職員への不当な合理化、葉たばこ収納単価の低価格への抑え込みや減反の押しつけ、販売店へのしわ寄せ、さらには値上げに次ぐ値上げという事態が生じないと断言できるのか、所見を伺います。
 さらに、最近は、海外からの製品たばこ、原料葉たばこの輸入拡大を求める声が強まっておりますが、これの促進は、公社経営はもちろん、葉たばこ耕作者に重大な打撃となるものであります。今後この問題についていかなる態度で臨むのか、明らかにされたいのであります。
 最後に、私は、今回の法改正は、政府・自民党のみずから招いた財政危機の穴埋めを公社初め関連業界へのしわ寄せと国民負担の増強によって償おうとするきわめて反国民的なものであることを重ねて強調し、強い反対意思を表明して、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#44
○国務大臣(大平正芳君) 小巻さんの御質問の第一は、物価政策との関連でございました。
 今度のたばこ、国鉄料金の値上げでございますが、先ほどもお答え申し上げましたように、われわれといたしましては必要最小限度に抑えたつもりでございます。そして、これは四・九%目標の中でカウントいたしておるわけでございます。しからばこの四・九%目標というのはこういう状況で可能かという御質疑でございます。御指摘のように、卸売物価の上昇の上げ足は大変速いものがございまして、私どもも大変憂慮いたしておるわけでございます。原油の値上がり、円安基調が進むということでございまして、これがもし消費者物価に波及してくるということになりますならば、御心配のような事態が生じないとは限らぬと考えておるわけでございます。そこで、政府といたしましては、この種の卸売物価の値上がりが消費者物価に波及しないようにあらゆる施策を施してまいらなければならぬと考えております。あわせて、生活必需品の供給を確保してまいるということに力点を置きながら、金融政策も警戒基調に運営してまいって、引き続き景気の回復を着実に図りながら、物価安定基調は何とかこれを堅持してまいりたいと考えておるわけでございます。
 第二の問題は、製造たばこ定価法の緩和は憲法違反とも言えるのではないかというような御指摘でございました。製造たばこの定価は、租税そのものでないにいたしましても、これには相当の税相当部分が入っておることは御指摘のとおりでございまして、租税法定主義をとっておるわが国といたしまして、政府としても、そのことはよく踏まえた上でこの法律の提案をいたしておるわけでございまして、このことにつきましては、大蔵大臣から制度的、技術的な点につきましては説明をお願いすることにいたします。
 それから第三の問題は、今度の納付金率の法定制導入は公社事業の発展、国民の利益に沿うものと考えるかということでございますが、私は、今回のこのような改正でございますが、定価に占める税相当部分を定価の一定部分として法定したこと、たばこ専売事業の収入に占める税相当部分と企業収入部分を明らかにいたしたこと、それから、公社経営責任を明確にいたしたこと等を勘案いたしますると、今回の改正は公社及び国民の利益に沿うものであると判断いたしております。
 自余の点につきましては、大蔵大臣からお聞き取りをいただきます。(拍手)
   〔国務大臣金子一平君登壇、拍手〕
#45
○国務大臣(金子一平君) 小巻さんにお答えいたします。
 第一点の、たばこの定価改定について国会の議決を不要とするようなたばこ定価法の緩和化を図る理由は何かということでございますが、従来の国会論議にかんがみまして、今回、製造たばこの小売定価に含まれる専売納付金と地方たばこ消費税の合計額を定価の一定割合として法定することといたしましたその結果、専売公社は、今後企業努力では吸収できない原価の上昇によって赤字になり、その経営が圧迫されるおそれが生ずることになります。このような事情の変化にかんがみまして、最高価格法定制という従来の法律への基づき方を基本としながら、厳しい条件をつけて、ある程度弾力的に定価改定を行い得るように最高価格の特例を設けようとするものでございまして、いままで大きな利益を上げてきたのがなぜ突然赤字経営を予想するようなことになったのかということでございますが、現行制度のもとでは、専売公社の利益の中には税相当部分が含まれておりますが、納付金率の法定によりまして税相当部分と公社の企業利益部分が分離されまして、専売納付金が公社にとって経理上損金となるためでございます。
 それから、財政法との関係につきましては、先ほど来も繰り返してお答え申し上げておる次第でございますが、法律で一定の条件のもとに改正をやるわけでございますから、決して憲法、財政法の趣旨に反するものではないと考えておる次第でございます。
 それから、納付金率法定制の導入に伴いまして、公社労働者への合理化の圧迫、葉たばこ耕作者に対する単価の抑えつけ、販売店へのしわ寄せなどが生ずるような体質になると思うがどうかということでございますが、むしろ、今回の改正によりまして公社の経営責任が明確になりまして、長期的には公社事業及びたばこ関連産業全体の経営基盤が強化されるものと私どもは考えておるのでございまして、今後も、たばこ事業の運営に当たりましては、関係方面の意見を十分に聴取いたしまして、関係者の利益と協調の維持に努めてまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
 また、海外からのたばこの製品、葉たばこの輸入の自由化の要請が高まっておるけれども、いかにこれに対処するかということでございますが、これまた、需要の範囲内において製造たばこを入れますという基本原則には変わりございませんし、特に国内には多数の葉たばこ耕作者がおります。こういつた耕作者に優良葉を耕作してもらいまして、極力良質葉の自給ができるような体制にこれからも持っていく方針には変わりございません。以上お答えいたしました。
#46
○議長(安井謙君) これにて質疑は終了いたしました。
     ―――――・―――――
#47
○議長(安井謙君) 日程第二 国民年金法等の一部を改正する法律案
 日程第三 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案
  (いずれも内閣提出、衆議院送付)
 以上両案を一括して議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。社会労働委員長対馬孝且君。
   〔対馬孝且君登壇、拍手〕
#48
○対馬孝且君 ただいま議題となりました二法律案につきまして、社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、国民年金法等の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本法律案は、国民年金法のほか、関連する六法律を改正しようとするものであります。その主な内容は、第一に、国民年金については、老齢、障害、母子、準母子の各福祉年金額をそれぞれ引き上げること、第二に、厚生年金及び船員保険について、在職老齢年金の支給制限の緩和を行うとともに、寡婦加算額を引き上げること、第三に、昭和五十四年度において前年度の消費者物価上昇率が五%を超えない場合であっても、特例として年金額の改定措置を講ずることとし、その改定の実施時期を、厚生年金及び船員保険は六月、国民年金は七月に、それぞれ繰り上げること、第四に、児童扶養手当、特別児童扶養手当、福祉手当及び所得の低い者についての児童手当の額を引き上げること等であります。
 なお、本案については衆議院において、各福祉年金、五年年金、児童扶養手当及び特別児童扶養手当の額の引き上げについての修正が行われております。
 委員会におきましては、目指すべき年金改革の方向、年金支給開始年齢と定年との連動、遺族年金と被用者の妻の任意加入制度のあり方などの諸問題について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知を願います。
 質疑を終了し、討論はなく、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決しました。
 なお、本法律案に対し、公的年金の抜本改正、スライド制のあり方についての検討、児童手当制度の長期的展望に立っての改善等を内容とする各会派共同の附帯決議案が片山理事より提出をされ、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決しました。
    ―――――――――――――
 次に、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本法律案は、第一に、原爆症の認定を受け、現在負傷または疾病の状態にある者に支給する特別手当を月額三万三千円から六万円に、その状態にない者に支給する特別手当を月額一万六千五百円から三万円に、それぞれ引き上げること、第二に、健康管理手当を月額一万六千五百円から二万円に、保健手当を月額八千三百円から一万円に、それぞれ引き上げること等を内容とするものであります。
 なお、本案については、衆議院において、各手当額の引き上げについての修正が行われております。
 委員会におきましては、国家補償の精神に基づく援護対策、被爆者対策基本問題懇談会の発足と運営方法、被爆地域指定の拡大、原子力発電の安全性の確保策等の諸問題について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知を願います。
 質疑を終了し、討論はなく、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定をいたしました。
 なお、本法律案に対し、被爆者対策の基本的あり方を検討するための権威ある組織の設立、そこでの被爆者問題に関する基本理念の明確化、それに立脚した被爆者援護対策の確立等を内容とする自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党、民社党、第二院クラブ各派共同による附帯決議案が提出をされ、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決しました。
 以上報告をいたします。(拍手)
#49
○議長(安井謙君) これより両案を一括して採決いたします。
 両案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#50
○議長(安井謙君) 総員起立と認めます。よって、両案は全会一致をもって可決されました。
     ―――――・―――――
#51
○議長(安井謙君) 日程第四 地方交付税法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。地方行政委員長永野嚴雄君。
    ━━━━━━━━━━━━━
   〔永野嚴雄君登壇、拍手〕
#52
○永野嚴雄君 ただいま議題となりました地方交付税法の一部を改正する法律案について、委員会における審査の経過及び結果を御報告いたします。
 本法律案は、地方財政の状況にかんがみ、昭和五十四年度分の地方交付税の総額について、現行の法定額に、国の一般会計において負担される臨時地方特例交付金三千七百六十六億円及び交付税特別会計の借入金二兆二千八百億円を加算した額とすること、借入金については、その純増加額の二分の一に相当する額一兆八百九十五億円を国において負担し、昭和六十年度から同六十九年度にわたり臨時地方特例交付金として、交付税特別会計に繰り入れる旨の規定を設けること、普通交付税の算定方法について、新たに道府県分に経費の種類として特殊教育諸学校費を設けるほか、教育費、社会福祉費等に要する財源を確保するため測定単位及び単位費用の改定を行うこと、昭和五十三年度地方税減収補てん債及び財源対策債等の元利償還金を基準財政需要額に算入し、地方道路譲与税、自動車取得税交付金等の基準税額等の算定基礎を前年度の譲与額または交付額とすること等を主な内容とするものであります。
 委員会におきましては、参考人より意見を聴取する等、慎重に審査を行い、その間、地方分権と行財政制度のあり方、財政危機と赤字構造の改善、行政運営の合理化、国・地方間の経費の負担区分、地方公務員制度改正の方向、普通交付税の算定基準の改善等、当面する諸問題について熱心な質疑が行われました。
 質疑を終局し、次いで志苫委員より、日本社会党、公明党、日本共産党、民社党共同提出の、地方交付税率の八%引き上げ、臨時地方特例交付金の増額、基準財政需要額の算定方法の改正等を内容とする修正案について趣旨説明が行われました。本修正案は予算を伴うものであり、澁谷自治大臣から、政府としては賛成いたしかねるとの意見が述べられております。
 討論に入りましたところ、日本社会党を代表して佐藤委員、公明党を代表して上林委員、日本共産党を代表して神谷委員、民社党を代表して藤井委員より、それぞれ修正案に賛成、原案に反対の意見が、また、自由民主党・自由国民会議を代表して衛藤委員より、修正案に反対、原案に賛成の意見が述べられました。
 討論を終わり、採決の結果、修正案は賛成少数をもって否決され、本法律案は賛成多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上御報告いたします。(拍手)
#53
○議長(安井謙君) これより採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#54
○議長(安井謙君) 過半数と認めます。よって、本案は可決されました。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後二時三十六分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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