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1947/08/25 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 労働委員会 第3号
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1947/08/25 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 労働委員会 第3号

#1
第001回国会 労働委員会 第3号
  付託事件
○職業安定法案(内閣送付)
  ―――――――――――――
昭和二十二年八月二十五日(月曜日)
   午後二時二十四分開會
  ―――――――――――――
  本日の會議に付した事件
○職業安定法案
  ―――――――――――――
#2
○委員長(原虎一君) それでは只今より委員會を開催いたします。先日御相談申上げました職業安定所視察につきましては、本日本會議で、承認を受けました通りの人員が來る二十八日に視察いたすことに決定いたしました。さよう御承知を願いたいと思います。
 本日は安定局長の説明を求めることになつておりますが、GHQの方に参りまして、まだ歸つて參りませんので、先日米窪國務大臣から説明いたしました點につきましての御質問を受け、そのうちに局長が參ることと思いますから、そういう順序に運びたいと思います。さよう御承知を願いたいと思います。御質問がございましたら、どうぞ御遠慮なく願いたいと思います。
#3
○平野善治郎君 この前大臣の御説明の中に、地方自治の點に關しまして、地方における自治の進捗を非常に御考慮の上で、このいろいろな勞働法規の解釋、或いは安定所のことをやられるようにありましたが、第六條、第七條等を見ますというと、都道府縣知事に對することが書かれておりまして、安定局長が第六條におきましては都道府縣知事を指揮監督するとなつております。又第七條においては、都道府縣知事は勞働大臣の指揮監督を受けて、この法律の施行に關して職業安定所の業務の連絡統一、或いは指揮をするということになつておりますが、この際に都道府縣知事は勞働大臣の指揮監督を受けることにいたしまして、職業安定、この問題につきまして勞働省の職業安定局長は直接に都道府縣知事を指揮監督をするというようなことでないように取計う方が、地方自治の本旨から行きまして、又知事のいろいろな權限の問題が、今中央の出先の者が餘りにも地方の自治に對して指揮監督が多いと言われておる今日、適當ではなかろうかと思いますが、この點如何なものでしようか。
#4
○國務大臣(米窪滿亮君) これは中間監督機關としての都道府縣知事とそれから大臣との關係、そうして實際その職にあたる安定局長と都道府縣知事との關係を、法文的にここに一應規定したのであります。そうせんというと、やはり一元的に命令をする場合の一貫性というものが現われないので、一應こうしたのですが、實務は勞働基準法の場合と違つて、職業紹介については、實際においては知事の監督の下にある勞働部、勞働部のない所においては職業安定事務をとつておる課の者に實際の運營をやらせまして、ただ身分は、從來は厚生省、將來は勞働省に屬する關係上、こういう規定を設けたのでありまするが、實際の紹介事務については、地方自治の精神に基ずきまして、そこの需給關係を考慮してやることにして參つておるのでありまして、地方の要求は、窓口行政を統一してくれということで、必ずしも勞働大臣が都道府縣知事を監督するということについては異議がない。そこで實際窓口が幾つもあつて、民衆に接する事務が複雜になることを恐れていろいろな意見が出ておるのでございまして、指揮監督するということは、全國の需給關係を總括的に見る關係上、どうしても命令系統とか監督系統は、やはり中央から一應は行く。こういうことに考えておるのでございまして、實務は、地方自治の精神を尊重して、成るべく知事の意見を尊重し、又地方の自治を尊重してやる。こういう工合に考えておるのであります。この點は飽くまでも、ダイレクト・ラインでやつて行かなければならん。勞働基準法のやり方とは大分違う。こう考えておるのであります。
#5
○委員長(原虎一君) よろしゆうございますか。
#6
○平野善治郎君 分りました。
#7
○深川タマヱ君 日本の紡績業は、これは今後失業救濟に大變いい所と存じますけれども、只今聯合國の方で四百萬錘だけ日本の紡績を許可されておりますが、その施設が足りない。ところが一方では聯合國の方から賠償の指定を受けている相當の機械がありますが、四百萬錘に充てる程度にあれを少し拂い下げて貰えないか。懇請の餘地があるのかどうかといふことであります。第二點は、先だつてもお尋ねしたと思いますが、日本の紡績業では、六〇%だけ女工が就職して、四〇%だけ口が殘つておりますが、勞働基準法で、男子と女子とは給料が同額と決めてあると思いますが、男子は千六百圓、女子は八百圓で、これではまた就職希望者がないと思いますが、女子を千六百圓まで上げてくれるということにはなりませんか。第三は失業手當でありますが、失業手當は、多分三人家族で八百圓、四人家族で千圓ぐらいでございますが、今日これでは食べて行けないことは分つておりますので、職業にありつくまで何か貯えのあることを前提として首切ることになつております。併し今日それ程貯えのある勤勞者は餘り澤山ありません。首切るのは本當に首切るので、職の切れ目が命の切れ目である。これは次に生きる道を得ることを前提として首切らなければならんと思います。あれでは主人が首になれば家族が大變だと思いますが、この點に對してどうお考えでありますか。第四は、職業補導所でありますが、あすこで稽古して卒業した人でも、技術の練習が足りないので、又失業する。或いはあすこで練習中に既に生活ができなくなるので、補導所にいる人にもう少し給料を殖やさなければならんと思いますが、その點についてお尋ねいたします。
#8
○國務大臣(米窪滿亮君) この紡績會社の四百萬錘の分をGHQが抑えているのを返して貰うという話でありますが、これは資料が手許にないのでありますが、事務當局から調査して、次の機會にお答えしたいと思います。第二の、男女の給料を同額にするというような御意見ですが、これは憲法にも、同じ勞働價値に對しては同じ賃金、こういうことになつているので、同じ紡績會社に働いている場合においても、男と女の勞働價値が若し違う場合においては、やはりそこに若干の給與の點でも高低が起つて來るのは止むを得ない。そういうように考えておりますから、男が千六百圓取つているから、女も千六百圓よこせと言われても、女の擧げ得る勞働價値と男の擧げ得る勞働價値が違う場合においては、給與に差違が生じて來るのは止むを得ないと、こういう工合にお考えを願いたいと思います。それから失業手當でありますが、これは大體我々としては、近くこの國會にも提出して御審議願わなければなりませんが、大體、まだはつきりしたことは申上げられませんが、今まで取つておつた給與を標準として、そうしてそれの何パーセント、こういうことで大體決めて行くのでありまして、家族の點は餘り基準にしない。この方針で參りたい。即ち獨り者でも、或いは家族持ちでも、それによつて失業手當の額を調節するということはしない方針でおるのであります。大體失業する前の給與を標準とするので、最低五百圓、最高千三百圓ぐらいのところを抑えまして、そうして平均を取つて、大體一ケ月間千圓ぐらいを標準に取つて、そうして最高限度四ケ月間手當を支給しよう。こういう方針で參りたいと存じます。それから職業補導のことについては、職業安定局長から御説明いたします。
#9
○政府委員(上山顯君) 補導所を出ました者が、十分技倆がなくて又失業するというお尋ねでございますが、只今補導所の補導期間は大體六ケ月でございますが、ものによりましては、それだけの補導では足りませずに、中途半端というような感じのものもできております。それで私たちといたしましては、補導施設の全體につきまして、今いろいろ改善を考えておりまして、ものによりましては、補導期間を更に一ヶ年にも延長したいということを考えております。尚只今の現況といたしましては、御質問として御指摘になりましたように、なかなか生活困難のために、六ヶ月の補導期間でさえも長過ぎるというところから、四ケ月くらいで少し手に職を覺えたので、直ぐ又就職するというような者もありますことは事實でございまして、補導期間中の手當につきましては、いろいろ考えておるのでございますが、只今は實は一日三圓でございまして、交通費にも足りないというような状況であります。それで今囘近く御審議頂きます追加豫算では、これを十圓程度に上げたい豫定でございますが、これとても決して十分とは思えないわけでございます。それで失業保險なり、失業手當ができますれば、そういう手當を受けておる人は、手當を受けております期間補導所へ參りますれば、非常に好都合になるのであります。その他につきましては、十圓程度でも勿論十分ではないと思つておるのでございますが、財政等の關係もございまして、只今はその程度で實は我慢しなければならんような實情であります。
#10
○委員長(原虎一君) 外に何も御質問がないようでありまするから、局長の説明を求めることにいたします。
#11
○政府委員(上山顯君) それでは職業安定法案につきまして、主な條項の趣旨を御説明いたしたいと思います。大體の趣旨なり構想につきましては、米窪國務大臣から提案理由として御説明申上げた次第でございますが、尚若干補足いたしたいと思います。第一條には法律の目的が規定してございますが、特にここで私たちが強調いたしております點は、今までの職業行政が、殊に戰時中におきましては強制的な勞務の配置というような色合が非常に強うございましたに對して、終戰後はそういう色彩の拂拭には努力して參つたと思うのでありますが、今囘この法律には、その點を特にはつきりいたしまして、各人の自由な職業選擇ということを趣旨といたしまして、そうして各人にその有する能力に適當な職業に就く機會を與えるということを非常に強調いたしておるような次第であります。それと同時に一面、工業その他産業に必要な勞働力を充足いたしまして、經濟の向上に資しようということを申しておるわけであります。第二條は職業選擇の自由のことでございまして、これは憲法第二十二條の趣旨をもう一度繰返したような次第であります第三條は、均等待遇の規定でございまして、勞働基準法にも同じような趣旨の規定があるわけでございます。第三條の本文で規定いたしておりますのは、それは職業紹介なり、職業補導等をいたす者に對しまして、法律的な義務としてこういうことを命じて參るのであります。それでまあ雇主に對しましては社會的、道徳的な義務として均等待遇の義務があるということになるのでございます。從いまして但書にございます勞働協約に別段の定がありますような場合には、特にこの規定がございませんでも、法律上は勿論差別的取扱ということにならないというので問題はないのでございますが、特に念のためにこういう規定を設けておるような次第でございます。第四條は、後程出て參ります政府の行います業務を掻い摘んで書いてあるのでございます。第五條は定義でございまして、特に御説明は要りません。
 第二章は政府の行います職業紹介、職業指導及び職業補導について規定したのでございます。第一節は通則といたしまして、行政機構その他が規定してございます。第六條、第七條、第八條等の趣旨につきましては、先刻來、御質問に對して大臣からもお答えしておつた點でございまして、職業行政というのは、勞務の流れを見ましてやつて參る仕事でありまして、府縣等の行政區劃には限られないわけでございますから、全然府縣知事限りでやつて參るという仕事ではないのでございまして、どうしてもこれは國家的に運營されなければならんわけでございます。一面、地方行政全般と密接な關係がございますので、都道府縣知事の指揮監督下に置きまして、國の機關として一體的に運營するという要求と、地方行政の他の面と關聯を持たすという要求、この二つの要求を調和さして參りたいという趣旨でございます。第六條の第二項に、職業安定事務所というのがございますが、これは今までの職業行政の機構の考え方としましては、職業行政がこういう國家的な機構で運營されなければならないというので、ブロック別に職業安定事務局というようなものを拵えたいという考え方が今まであつたのでございますが、これは地方自治を尊重するという別の考え方からいたしまして、いろいろ檢討を要する點もございまして、この案ではそういう考えを採用しなかつたわけでございます。ただここに職業安定事務所を設置いたしましたのは、二以上の都道府縣にわたります業務と非常に密接な聯關がございまして、どうしても一體として運營しなければならんというようなわけでございます。これは私たち最近この勞働市場というような名前を以ちまして、いろいろ研究いたしておるのでございますが、只今考えておりますのは、東京、横濱を中心としましての南關東、それから阪神地方、それから中京地方、それから關門地方、北九州と山口縣の一部を含みました地方、こういう地方につきましては、府縣の區域を越えまして、いわば勞働市場というようなものが成り立つておるわけでございまして、そういうところの紹介の仕事、即ち府縣にわたりますところの安定所間のカードの交換というような仕事になりますが、そういう仕事をなしますには、やはり何らか特に機關が必要だというので、この職業安定事務所を設けたい考えでございます。それから尚將來必要によりましては技術に關する事務、即ち職業指導でございますとか、職業補導というような仕事につきましては、非常に専門的な技術が必要でございますが、只今各府縣にはそういう專門家は餘りいないわけでございます。そうしてこういう專門的な技術に當りますような人を數府縣にまとめて置くというような場合に、この職業安定事務所というものを設置いたしたいという考えであります。但し職業安定事務所の仕事等につきましては、成るたけ關係府縣の中の一人の知事に實際の仕事を委任するというようなことも考えたいと思つております。それから第九條には人事のことが書いてございますが、これも先刻いろいろ關聯しましてのお話が出ておつたようでありますが、一體として運營いたしたいために特殊の資格を設け、又一定の基準によりまして、人事をやつて參りたい。かように考えております。それで、若干御説明が要るかと思いますのは、第九條の二項に「前項に規定する官吏その他の職員については、職業安定機關に通ずる一定の基準によつて、勤續年數の計算及び補職、給與その他の人事を行い、竝びにその意に反して、職業安定機關以外の機關の職に轉じさせることはないものとする。」という規定がございますが、これは必ずしも職業安定機關としましては、封鎖的な人事を強行いたしまして、よそからは人を貰わない。他方には人をやらないというような挟い氣持はないのでありますが、成るたけ專門家を養成して參りたい。從つて専門家がその意思に反して他の職に轉じないようにいたしたいと考えております。但し勿論懲戒の場合でございますとか、行政整理というような場合に、やめますことを制限する趣旨ではないのでございまして、成るだけ專門的な仕事に從事させたい。こういう趣旨でございます。それから第十條には連絡委員というのが設けてございまして、市町村との間に立ちまして、安定所の業務を補助させることにいたしております。こういうものの人の任命なり運營なりにつきましては、十分行政民主化の線に沿いたいつもりでございまして、殊に勞働組合方面の十二分の御協力を願いたいつもりでおります。第十二條に職業安定委員會の規定がございますが、これは中央にありますもの、それから今申したような勞働市場、ここではそれを特別地區職業安定委員會と稱しておりますが、そういう勞働市場を管轄區域といたしますもの、更に府縣内の一部の地域を管轄區域といたしますものとの區別があるのでございますが、すべてを通じまして、職業行政について關係者の意向を十二分反映する行政を運營して參りたいという趣旨に基いておるようなわけであります。
 それから少し飛びまして、第十六條以下に職業紹介のことが書いてございます。職業安定法の實際の運營の中心を成しますものはこの職業紹介の仕事でございまして、將來更に大いに刷新をいたしたいつもりでございますが、十六條、十七條等については特に御説明する必要はないかと思いますが、ただこの十七條の第三項に「特殊な業務に對する求職者の適否を決定するため必要があると認めるときは、試驗及び技能の檢査を行うことができる。」いわゆる技能檢査というようなこと、適性檢査というような言葉も使つておりますが、そういうものもやりたいことを書いてございます。實は只今のところでは專門家が非常に少い點、又これの準備が非常に少い點等から申しまして、十二分に行つていないのでありますが、將來この方面にも力を注ぎたいつもりでございます。それから十九條の第二項が若干の御説明が要るかと思うのでありますが、これは「公共職業安定所は、求職者に對し、できるだけその住所又は居所の變更を必要としない就職先に、これを紹介するよう努めなければならない。」ということが規定してございまして、これは後に出ますところの第三十九條の募集地域の原則といたしまして、「勞働者の募集を行おうとする者は、通常通勤することができる地域から、勞働者を募集し、その地域から、勞働者を募集することが困難なときは、その地域に近接する地域から、勞働者を募集するように努めなければならない」。という規定、これと相關聯いたした規定でございます。この點につきましては、前にこの委員會でもいろいろ御意見が出た點でございまして、私たち職業行政の理想といたしましては、外の條件が許しますならば、成るたけ通勤できるような、つまり職場に通えるような建前が望ましいと考えております。從いまして將來の工場立地というような場合には、こういう點も十二分に頭の中に入れて、工場立地を考えて貰いたいという希望を持つております、殊に私たち現在のような大都市には相當失業者がおりまして、而も都市の食糧事情が惡いというような場合に、わざわざ都市の失業者をおきまして、遠い農村等から勞働者を募集するというようなことは望ましくないことだと思つておりまして、できるだけ通勤地域からの募集なり、又そこへの就職斡旋に努めたいと思つておりますが、ただ現状におきましては工場立地がこういう點が考えられずに、今まで立地されておりますし、尚將來におきましても外の工場立地の諸條件から考えまして、必ずしも通勤地主義というものが採用できないことは私たちも承知いたしておりますので、これの運用に當りましては、産業の實情にも合い、勞務の需給の状況にも合いますように運營いたしたいとは思つておりますが、一つの原則といたし、方針といたしては、こういう方針を採りたいつもりでございます。第二十條は、爭議行爲に對する不介入の規定でございまして、公共職業安定所は、爭議におきまする中立の立場を維持しますため、現に爭議行爲が發生しております業務の部門は勿論でありますが、現に發生していなくても、發生の虞れあることが明らかな業務の部門につきましては、求職者を紹介してはならないということになつております。ただ第二項にもございますように、紹介しようとする業務の部門が、爭議が發生しておる、又は發生する虞れのある部門以外の場合におきましては、場合によつてはその部門に求職者を斡旋しても差支えないという規定でございます。但し實際問題といたしましては、第一項にもございますように、爭議行爲の發生する虞れがあるような場合には求職者を紹介してはならないということになつておるわけでありますので、第二項のような場合につきましても、安定所としましては十分愼重な態度を採りまして、勞政事務所等とも連絡をとりまして、爭議行爲に對する不介入の原則に反しないような場合に限つて、その部門に求職者を斡旋するというようにいたしたつもりでございます。尚もう一つ、誤解のないために申しておきますが、これはその紹介する部門が、現に爭議行爲が發生しておる部門と全然別な部門であることが必要なのでございまして、必ずしもそこの工場の全職工が、全從業員が爭議しておる場合に限らないのでありまして、一部の從業員が爭議しておる場合におきましても、とにかくその部門としては一部でも爭議しておりますれば、それは第一項に入るのでございまして、そういう所へは求職者を紹介してはならない。かような趣旨でございます。それから第二十二條以下に職業指導、第二十六條以下に職業補導の規定がございますが、この邊につきましては特に御説明は必要ないかと思います。
 それから第三章は、政府以外の者の行う職業紹介、勞働者募集及び勞働者供給事業でございます。第三十二條に、有料營利職業紹介事業というのが規定してございます。第三十三條に、無料職業紹介事業というのが規定してございます。それで只今の職業紹介法におきましては、職業紹介法が制定になりました當時に現に有料営利職業紹介なり無料職業紹介なりを營んでおります者は、經過規定として、その仕事を續けて參ることができますが、新たな許可は認めない。即ち職業紹介事業といたしましては、全部國でやつて參るという建前で、只今の職業紹介法はできておるのでございます。ところが新らしい安定法におきましては、最初の大臣の提案理由説明にもございましたように、弊害がないものにつきましては、できるだけ自由を認めて參りたい。こういう趣旨からいたしまして、嚴格なる條件、監督の下におきまして、有料營利なり、無料の職業紹介事業を認めて參りたい趣旨でございます。第三十二條に有料營利職業紹介事業を認めておりますのは、美術、音樂、演藝その他特別の技術を必要とする職業に從事する者の職業斡旋を目的とする職業紹介事業でございまして、こういうものにつきましては、一般の職業安定所でやりますことは必ずしも効果的でないという考えからいたしまして、こういうものに限つて勞働大臣の許可を得て行い得ることにいたしておるのであります。尚この點についてでありますが、國際勞働總會におきましても、條約でも、最初の國際總會の場合には、有料營利は原則として禁止いたしまして、ただ無料のみを認めておつたのでございますが、この但書の場合のようなものにつきましては有料營利も認めるということに、その後の國際勞働總會の決定といたしまして認められておるような次第でございます。但しこれについては豫め中央職業安定委員會に諮問いたしますとか、許可の有効期間は一ケ年とするとかいうような嚴格なる條件がついております。第三十三條は無料でございまして、これにつきましても中央職業安定委員會に諮問し、有効期間は二年というような嚴格な條件の下に許可をすることに相成つております。それから第三十五條の文書による募集でございますが、これは現在は許可主義でございますが、これも大した弊害のないものは自由を認めようという趣旨からいたしまして、通勤できる區域のものは全然自由、通勤することのできない遠い地域からの募集の場合は公共職業安定所長に通報するということで、認めることにいたしております。それから第三十六條のみずから又は被用者を使用して勞働者を募集させます場合につきましては、現在においても許可主義でございますが、新らしい安定法では、原則としてはやはり許可主義を採つておりますが、通勤できる區域からのは自由を認めるということにいたしております。委託募集は、現在も許可主義でございまして、これは本法においてもやはり踏襲いたしております。
 第三十九條の募集地域の原則については、先刻申上げました。その他の規定は大體現在の職業紹介法に基きましての命令に規定してありますようなものを、法律の中に織り込んだ規定のものであります。第四十四條に勞働者供給事業の禁止を規定しております。これは現在の紹介法では労働者供給事業を認めておるのでございますが、これは勞働民主化という點からいたしまして、いろいろ望ましくない點がありますので、既に昭和二十年の十月から、進駐軍關係の勞務につきましては勞働者供給事業というものを認めずに、國の、只今で申せば勞働安定所がこれを直接やつておるような次第でございます。それで今囘法律の制定をいたすに當りまして、原則といたしましては、全面的にこれを禁止いたしたいという考えでございます。ただ第四十五條にございますように、勞働組合がやります場合には弊害がないと思いますので、勞働大臣の許可を受けさせましてこれを認めることにいたしております。それで勞働者供給事業を行なつておりますものの現在の數でございますが、本年四月末現在の調査におきまして、業者數が約二千七百、所属勞働者數といたしましては約七萬三千八百いるわれでございます。それで、これが全面的に禁止になりますと、いろいろ影響があるわけでございますが、私たちといたしましては、本法が公布になりましてから三ヶ月間の間は、過渡的の措置といたしまして勞働者供給事業を繼續して行うことを認めておりますので、その期間の間に善後措置を講じたいつもりでおりますが、大體考えておりますことといたしましては、三つ乃至四つのことを考えております。第一番は、現在この勞務供給業で供給を受けておりますのは、工場の雜役工などが相當多いのでありますが、そういうものは成るたけ工場の常傭にして貰いまして、勞務供給業の手から外して貰いたい。それが第一でございます。それから第二は、今御説明いたしました勞働組合によらせる方法でございまして、殊に派出婦が現在勞務供給事業に該當しておるのでありますが、派出婦等につきましては、これは組合によりまして今までと似た仕事を續けて參るようにいたしたいと考えております。それから第三は、一般なり日傭いの、職業安定所の活動によりまして、安定所自身が勞務を斡旋いたすというようにいたしたいと思つております。第四といたしましては、現在勞務供給業者といたしましては、いろいろの請負作業を兼業いたしておるようなものが多いのであります。この勞務供給事業がなくなりました場合には、その兼業の方面の常傭に替るという恰好によりまして、その仕事を續けて參るということにいたしたいと考えております。
 それから第四章雜則につきましては、多く御説明は要らないと存じますが、若干問題がございますものに、第五十六條以下の都道府縣知事に對する監督がございます。これは都道府縣知事のやりました處分が、この法律なり又この法律の規定に基いて發する命令、又はこれに基いてなす處分に違反いたしました場合には、勞働大臣は都道府縣知事に對しまして是正命令を出すことができる。更にどうしても是正をいたさないというような場合には、高等裁判所に對しまして、知事に對する是正命令を出して貰いたいという請求ができる。更に知事がどうしても是正いたさない場合には、勞働大臣が代執行ができるというような種類の規定があるわけでございます。現在知事に對しましての一般的な中央官廳の監督規定といたしましては、行政官廳法の第七條の中におきまして、知事のやりましたことが違法でありました場合には、その措置を停止し又は取消すことができるという規定があるのでございますが、違法のみならず、更に不當な場合、それから單なる取消でありませずに積極的な是正の行爲をやるということにつきましては、行政官廳法には規定がないのでございまして、こういうことを勞働大臣が知事にやることができますように五十六條以下の規定ができておるわけでございます。それで御質問があるかと思います點の一つは、裁判所がこういうことをやるのはおかしいじやないかというような御疑念が一つあるのじやないかと思いますが、これは御承知のように、從來は行政裁判所でこういうようなことをやつておりましたが、只今の裁判所は司法裁判の外に行政裁判をやることになつておりますので、殊に五十七條等の規定に基きまして裁判所がやりますことは、これはいわば行政裁判所的な機能を裁判所がやるのでございまして、現に裁判所法にも、他の法律で定めた權限を持ち得ることを決めておるのでございまして、そういう趣旨でございますことを御了承願いたいのでございます。それからもう一つは、知事に對して自治權尊重の點からどうこうというような御疑念もあるのじやないかと思いますが、とにかく都道府縣知事としましては、一方地方自治體の長でありますと共に、國の行政機關でありますところの面を持つておるわけでございまして、それの違法、不當な行爲に對しましては、何らかの形で是正しなければならんわけでございまして、むしろ地方自治を認めましたために、こういう若干繁雜なと申しますか、そういう手續を以て是正するということにいたした次第でございます。以上、大體問題がございますような點について御説明申上げた次第であります。
#12
○委員長(原虎一君) お諮りいたします。續いて質問に入りますか。それとも今日はこの程度で打切りにいたしましようか。
#13
○姫井伊介君 會期の都合はどうなりましようね。
#14
○委員長(原虎一君) 今衆議院の方はどうなつておりますか。
#15
○國務大臣(米窪滿亮君) 衆議院は、あと一囘か二囘で質疑を終つて、委員會で討論することになるでしよう。
#16
○姫井伊介君 本月中には衆議院は本會議に廻りますか。
#17
○國務大臣(米窪滿亮君) 多分そうなるだろうと思います。
#18
○姫井伊介君 今一時、會は休もうか延期しようかというお話がありますが、衆議院の決定を持つてやるとすれば、今少し勉強しておいたらどうでありますか。
#19
○國務大臣(米窪滿亮君) 會期の再延長ということは國会がお決めになるのですが、政府のそれに對する希望は、大體明日の閣議で決まると思います。
#20
○深川タマヱ君 これと直接聯關があるかどうか存じませんが、只今傾斜生産が行われておりまして、犠牲産業の企業整備が著々行われております。承わるところによりますと、最近川崎の電氣工場と、それから足尾の銅山で三分の一ばかりの首切りが出たそうでありますが、集團で首を切られて、集團的に基礎産業の配置轉換をなさるのですか。又失業者として街に出して、見舞金くらいな失業手當金を出して失業救濟をなさつて行くのでありますか。そのあたりの消息がお分りになつていらつしやいましようか。
#21
○委員長(原虎一君) ちよつと深川さんに申上げますが、本案の審議の方法について今御相談をいたしておりますから、その質問は次會にお讓り願つて、審議の方法をお決め願います。
#22
○天田勝正君 會期の問題も出ましたが、毎日二つ乃至三つの委員會に掛け持ちで以てやつておられる方が多いので、實はこの委員會だけの勉強というので我々委員は濟むのでないのでありまして、從つて相當勉強する期間がなければならんというので、かなり休會などという意見すら出て來る状態でありますから、本日はまだ時間の早いという點も多少ありますが、この程度で一つやめて頂きまして、次會に質問を一括してやるというような方法を採りまして、その間に詳細勉強して參る。こういうふうに願いたいと思います。
#23
○小川久義君 この法案を檢討するに當りまして、丁度私調査に出ておりまして、このことで缺席しておりましたが、何か衆議院の方と參議院の考えとが食い違いのあるようなことをちよつと耳に挾んでおりますが、若しあるとしますと、將來我々審議するに當りまして、それをお聽きする必要があると思います。
#24
○委員長(原虎一君) ちよつとそれはお聽きしますが、衆議院との方の食い違いというのは勞働省設置法案の方じやないかと思います。これはまだ衆議院の方でも二三囘委員會を開いて審議中でありますから、まだ意思決定をしておりません。更に二十八日に現地視察もいたしまして、いろいろ質問條項を取り纏めて、次會に質問するということにいたしまして、本日はこの程度で閉會いたしたいと存じます。御苦勞樣でございました。これにて散會いたします。
   午後三時十五分散會
 出席者は左の通り。
   委員長     原  虎一君
   理事
           堀  末治君
           小川 久義君
           栗山 良夫君
   委員
           天田 勝正君
           山田 節男君
           木下 盛雄君
           平野善治郎君
           深川タマヱ君
           奥 むめお君
           竹下 豐次君
           姫井 伊介君
           藤井 丙午君
           穗積眞六郎君
  國務大臣
   國 務 大 臣 米窪 滿亮君
  政府委員
   厚生事務官
   (職業安定局
   長)      上山  顯君
ソース: 国立国会図書館
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