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1978/03/22 第87回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第087回国会 科学技術振興対策特別委員会 第5号
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1978/03/22 第87回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第087回国会 科学技術振興対策特別委員会 第5号

#1
第087回国会 科学技術振興対策特別委員会 第5号
昭和五十四年三月二十二日(木曜日)
   午前十時三分開議
 出席委員
   委員長 大橋 敏雄君
   理事 木野 晴夫君 理事 塚原 俊平君
   理事 与謝野 馨君 理事 田畑政一郎君
   理事 日野 市朗君 理事 貝沼 次郎君
   理事 吉田 之久君
      伊藤宗一郎君    小沢 一郎君
      玉沢徳一郎君    塚田  徹君
      中村 弘海君    原田昇左右君
      宮崎 茂一君    渡辺 栄一君
      安島 友義君    石野 久男君
      上坂  昇君    渡部 行雄君
      瀬崎 博義君    大成 正雄君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣
        (科学技術庁長
        官)      金子 岩三君
 出席政府委員
        科学技術庁長官
        官房長     半澤 治雄君
        科学技術庁原子
        力局長     山野 正登君
        科学技術庁原子
        力安全局長   牧村 信之君
        科学技術庁原子
        力安全局次長  宮本 二郎君
        資源エネルギー
        庁長官官房審議
        官       児玉 勝臣君
 委員外の出席者
        科学技術庁原子
        力局政策課長  村野啓一郎君
        放射線医学総合
        研究所遺伝研究
        部長      中井  斌君
        労働省労働基準
        局労災管理課長 中岡 靖忠君
        労働省労働基準
        局補償課長   原  敏治君
        特別委員会第二
        調査室長    曽根原幸雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
二月二十二日
 辞任         補欠選任
  佐々木義武君     塚田  徹君
同日
 辞任         補欠選任
  塚田  徹君     佐々木義武君
    ―――――――――――――
三月十七日
 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関
 する法律及び放射性同位元素等による放射線障
 害の防止に関する法律の一部を改正する法律案
 (内閣提出第五五号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正す
 る法律案(内閣提出第九号)
 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関
 する法律及び放射性同位元素等による放射線障
 害の防止に関する法律の一部を改正する法律案
 (内閣提出第五五号)
     ――――◇―――――
#2
○大橋委員長 これより会議を開きます。
 原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑の申し出かあります。順次これを許します。原田昇左右君。
#3
○原田(昇)委員 今回提案されました原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律案について、私は若干の質問をいたしたいと存じます。
 改正の主要点であります従業員損害の問題は、本法制定当時より大いに議論かあったところでございますし、本委員会及び参議院商工委員会においても、従業員損害の補償について立法その他の措置を講じ、その保護に遺憾なきを期すよう附帯決議がなされております。しかしながら、昭和四十六年の法改正当時にはその趣旨が実現せず、再度参議院、衆議院両院の科学技術振興対策特別委員会におきまして同趣旨の附帯決議がなされました。このような事情を背景として、今回ここに従業員損害を原子力賠償法の対象に取り込むという長年の懸案事項がこの法律によって解決されるわけでございます。その点政府の御努力を評価いたしますとともに、大変喜ばしいことと存じます。そこで、第一に御質問申し上げたいのは、原賠法制定以来これまで、この法律か適用になるような事故とか損害賠償の事例があったかどうか、あればその内容についても御説明いただきたいと存じます。また、諸外国においてもこういう事例があるかどうか、簡単にひとつお伺いしたいわけでございます。
#4
○山野政府委員 わが国におきましても、また諸外国におきましても、原子力損害賠償法による賠償が行われたという事例は過去に一件もございません。
#5
○原田(昇)委員 原子力も約二十年の実績を積んでおりまして、発足当時何か起こるかわからないという非常な不安感があったと思うのでございますが、そういう時代はもう過ぎて、いまの御説明のように、これまで何も事故がないということであれば、この法律もすでに不要ではないかという感じもいたすわけでございます。しかし、それはさておいて、さらに万一の際における損害賠償制度というものを確立して被害者の保護に遺憾なきを期すということは、国民の不安感を除く上にも大変いいことだと思うのです。この点について政府の見解を伺いたいと思います。
#6
○山野政府委員 先生御指摘のように、従来私ども原子力の開発利用を進めるに当たりまして、安全の確保というものを大前提に進めてまいったわけでございまして、幸いにして先ほど申し上げましたように原賠法の対象となるような事例は一件もないわけでございますが、今後ますますこの厳格な安全規制というものを前提としながらも、なおかつ引き続き国民の理解と協力をいただくために、また原子力事業の健全な発展に資するためにも、万々一の場合に対しますこのような法制というものはやはり必要ではないかと考えておりますので、安全規制を厳格に行うということを前提としながらも、引き続きこのような制度の存続が必要であるというふうに考えております。
#7
○原田(昇)委員 それでは次にお伺いしたいのですが、各国の原子力賠償法制とわが国の制度と比較した場合に、概略においてどういう点が違っておるか、どういう点が似通っておるか、簡単に御説明いただきたい。
#8
○山野政府委員 諸外国の制度とわが国の制度とを比較しました場合に、各国とも非常に似通った補償賠償制度を採用いたしております。その中の特徴的な幾つかの柱につきまして比較いたしますと、まず、わが国におきましては無過失責任という原則をとっておるわけでございますが、諸外国におきましても英国、西独、フランスといった諸国がわが国と同じ原則によっております。
 それから、第二点としまして賠償責任の集中、これは原子力事業者に賠償責任を集中するという原則でございますが、わが国が採用しておることはもちろんでございますが、英国、フランス、西独といった国々も同じような原則を採用いたしております。
 それから、賠償措置を確実に行わしめるための賠償措置の強制ということにつきましても、わが国と同様、米国、英国、西独、フランスといった国々が採用いたしております。
 それから、賠償責任についての制限でございますが、この点だけがわが国と諸外国と制度的に異なっておりまして、わが国におきましては賠償責任の制限額を設けませんで無限責任を原則といたしておりますけれども、米国、西独、英国、フランスの諸国は、いずれも制限額を設けておるという点がございます。この点が大きな相違点であろうかと考えます。
#9
○原田(昇)委員 いまの御説明ですと、諸外国との違いの主な点は、責任に限度を設けて、その上は国家補償というような形を諸外国はとっておるというように伺いましたけれども、わが国でも同様の構成にしないのはどのような理由によるか、お聞かせいただきたいと思います。
#10
○山野政府委員 諸外国と同じように賠償の制限を設けるというふうなことにいたしますと、原子力事業者がある金額以上は免責になりまして、被害者が賠償を受けられないという事態が発生する可能性が出てまいるわけでございまして、わが国におきましては、むしろそういうふうなことよりも、責任を制限しないで無限責任にした方がよろしいというふうに判断いたしまして、このような制度をとっておるわけでございます。
#11
○原田(昇)委員 それでは、ここで法律案の内容について御質問申し上げます。
 今回、従業員損害を原賠法の対象に含めるということにいたしますと、当然のことながら、万一損害発生の際には、従業員に対しても、保険であるとか補償契約であるとかの損害補償措置から支払われることになると思いますが、そうすると周辺第三者に対するファンドとしての賠償措置額がその分だけ減少すると考えられることになりはしないか、この点について見解を伺いたいと思います。
#12
○山野政府委員 今回、従業員損害を原賠法の対象に加えるに当たりまして、原子力委員会の中に担当の専門部会をつくりましていろいろ検討願ったわけでございますが、その検討の結論としまして、従業員損害を加えた場合に労災保険の補償との関係という点につきましていろいろ御審議を願ったわけでございますが、この点につきまして、労災保険の補償をまず先行して行いまして、これを超える部分については原賠法によって賠償するというふうな調整規定というものを今回設けることにしたわけでございまして、このような調整を行うことによりまして、御指摘のような一般の第三者に対する賠償ファンドの減少というものを極力最小限に抑えるという努力をしたものでございます。
#13
○原田(昇)委員 いま調整の問題のお話がありましたけれども、これによって被害者たる従業員の保護に欠けるようなことがあっては大変だと思うのですが、労災と原賠と両建てになりますが、どのような適用になるのか、この点について御説明願いたいと思います。
#14
○山野政府委員 御質問の具体的な調整の方法でございますが、まず全体の損害額から将来給付されるべき年金相当額というものを差し引いた残額を原子力事業者が従業員またはその遺族に対して賠償するということにいたしておりまして、全体の損害額と賠償との差額というものは労災給付の終了する時点までその履行を猶予するということにいたしております。
 次に、毎年年金が支給されます都度、原子力事業者の残額についての賠償責任というものが減っていくわけでございまして、予定どおり労災による給付が全部完了しました時点で全体の損害が賠償されたことになる、このような仕組みになっておるわけでございます。もちろん将来給付予定額が予定どおり実現しなくなった場合、そのときには残額につきましてもすべて原賠法によりまして賠償が行われるという仕組みでございます。
#15
○原田(昇)委員 それでは次に、賠償措置額の引き上げについて質問いたしたいと存じます。
 賠償措置額の六十億円を今回百億円とするように改めておるわけですが、その経緯と根拠というものを伺いたいと思います。
#16
○山野政府委員 現行の六十億円という賠償措置額は、昭和四十六年の法改正時に引き上げられたものでございますが、その後かなり大きな物価の上昇があるわけでございまして、この六十億円というファンドとしての実質はかなり目減りがしておるわけでございます。
 そこで、今回の改正をするに当たりまして、この賠償措置額につきましても見直しを行いまして、万一の場合における被害者の保護に遺漏なきを期すという努力をしたわけでございますけれども、四十五年当時と現在とでは消費者物価は二倍以上に上がっておるわけでございます。そういうふうなこともあわせ考え、また一方、賠償措置につきまして中心的な役割りを果たしております保険契約につきましては、その引受額の八割程度は海外に再保険しておるという事情にもございますので、海外におきます再保険の引受能力というものともあわせ勘案いたしまして今回の百億円という措置額を設定したものでございます。
#17
○原田(昇)委員 海外の再保険の問題ですが、いま円高でこちらとしては非常にやりよくなっておるのではないかと思うのですが、その点はどうですか。
#18
○山野政府委員 先ほど申し上げました物価の上昇の問題と海外の再保険の引受能力というものがバランスして伸びておりますと非常に扱いやすいのでございますが、海外における再保険の引受能力は、最近のドルやポンドの貨幣価値の下落によりまして、再保険します場合には円建てで再保険するわけでございますが、四十五、六年当時から見ますと、それほど大きな伸びは期待できないというのが現状でございます。
#19
○原田(昇)委員 いまの御説明で了解しました。
 ところで、ちょっと話は違いますが、最近、三月十五日付の日経に出ておったのですが、ウェーク島に使用済み核燃料の国際貯蔵センターをつくる構想にわが国も参加するようにアメリカから申し入れてきたということがあります。これに対して政府はどういうように対処するのか。
 また、使用済み燃料の貯蔵並びに処理に対してINFCEでいろいろ検討されておると思いますが、その状況について説明してください。
#20
○山野政府委員 御指摘の国際貯蔵センターの問題と申しますのは、ことしの二月に行われました日米原子力協定に関する協議の際に、米側から使用済み燃料の太平洋暫定貯蔵施設構想というものにつきまして説明があったわけでございます。米側の説明いたしました趣旨は、関心のある国々と、この施設についての構想の成立の可否というものを検討していきたいという趣旨でございまして、その際、具体的な場所につきましても、太平洋上の幾つかの島が候補とされておるというふうな説明がございました。
 わが国としましては、この申し出につきましては、ただいま進められております国際核燃料サイクル評価における検討状況ともあわせ考えて今後慎重に対処していきたいというふうに考えておるわけでございます。
 一方、同じく御質問のINFCEにおける使用済み燃料の貯蔵あるいは管理といったふうな問題につきましては、INFCEの中の第六作業部会で担当してやっておるわけでございます。現在ことしの五月の末を目標といたしましてこの部会の報告書を取りまとめておる段階でございまして、米側が今回わが方に説明いたしました問題につきましては、直接にはこの部会ではやっていない。この部会としましては、一般論として使用済み燃料の管理の問題を議論しているわけでございまして、将来このINFCEの結論が出ました暁に、その一般論を踏まえながら、またあわせてこのような具体的な構想につきましても検討するといったふうなことになるのではないかと考えております。
#21
○原田(昇)委員 これは大臣にお伺いしたいのですが、日本が核燃料サイクルをわが国の自主開発によって確立するということは非常に大事なことだと思うのです。それと矛盾しない範囲で日米で核燃料センターをつくって、いま仰せのような構想を共同で実現していくということがアメリカとの関係において非常にうまくいくということであれば、私はこれは大いに進めるべきではないかと思いますが、いかがですか。
#22
○山野政府委員 一言補足させてください。
 先ほど申し上げました使用済み燃料の管理の構想あるいは貯蔵の構想、そういったふうなもののみならず核燃料サイクル全般にわたりまして御指摘のように日米協力というのは大事な問題でございますけれども、しかしそれに加えまして、国際核燃料サイクル評価計画がございますように、この核の不拡散問題というのは多国間の問題にもなっておるわけでございます。そういう意味で、先ほど申し上げましたように、日米間でもちろんいろいろ協議は進めてまいりますか、その際、多国間での協議というものもゆるがせにできない、むしろ多国間協議をベースに置きながら二国間の問題もあわせ考えていくというのか私どもの基本的な姿勢でございます。
#23
○金子(岩)国務大臣 アメリカと協調をしていくということは非常にいいことで、私どもも推進していきたいと思うのでございますが、やはり一方、日本の場合非核三原則を主張しておりまして、日本が積極的に核のいわゆる平和利用を推進、開発することを多少アメリカが気にしてブレーキをかけておるような傾向があるわけなんですね。そういうことを考えますと、いまのところ、アメリカの言うことをよく説明を聞いていく程度にして、日本からは余り意見は申し上げていないというのが現状でございます。
#24
○原田(昇)委員 この点について、アメリカが核不拡散ということを非常に考えて日本に対してもいろいろブレーキをかけてくるということは当然考えられるわけですが、日本の自主開発ということが世界の平和につながり、しかも全然核の拡散にならないということについて十分理解させ、そして積極的に自主開発ということについても十分な理解と協力を得るということはきわめて大事なことだと思いますし、また、アメリカ側の協力要請については、こちらのいまの原則と矛盾しない範囲で日米で協力していくということはきわめて大事なことじゃないかと私は思うのです。そういう意味で、この問題も、ひとつぜひアメリカ政府と隔意ない意見交換をしていただきまして、前向きで検討していただきますように政府側として御努力いただきたいと思うのです。大臣にぜひひとつその点を伺いたいと思います。
#25
○金子(岩)国務大臣 御指摘のとおり全く同感でございます。御趣旨を体してひとつ積極的に努力いたしたいと思います。
#26
○原田(昇)委員 この法律案に戻るわけでございますが、いまのような日米協力あるいは現在原子力に関して原子力事業者、メーカーあるいは政府機関から、アメリカ並びにヨーロッパ諸国に派遣されておる原子力関係の技術者というものがすでに存在し、今後も増加することが予想されるわけです。
 そこで、こういう技術者がアメリカ等の原子力施設において研究または研修に従事するということになりますが、これらの者が原子力損害を万が一こうむった場合に、わが国の原賠法は適用されないということになるわけです。そうすると、その補償についてどういうことになるかということが非常に心配になるわけでございますが、当然ながらそういう場合においても政府としては補償について万全を期すべきだと思うのです。この点に関して政府の見解を承りたいと思います。
#27
○山野政府委員 海外に派遣されております日本人技術者が海外において原子力損害を受けたというふうな場合につきましても、諸外国には、先ほど申し上げましたように、わが国と同様に特別な賠償制度というものが用意されておるわけでございますから、わが国の国民でございましても、日本人といえども、その制度の保護のもとに置かれるということは間違いないわけでございまして、そういう意味で大きな問題はないと考えますが、もし御指摘の趣旨が、諸外国におきましては賠償に関して限度額がある、わが国には限度額がない、そういう意味で、この海外に派遣された技術者が海外にいるために不利をこうむるといったふうなことがあってはならないという御趣旨でございますれば、まことに同感でございまして、その点はそのようなことにならないように原子力事業者というものを十分に指導してまいりたいと考えております。
#28
○原田(昇)委員 最後にお伺いしたいのですが、政府も原子力の安全に関しては実によくいろいろな面から万全を期しておられると思うわけでございますが、今回の改正によって原賠法は一層その内容が充実することになります。しかし、そもそもこの法律というものは万が一にもその適用があってはならない性格のものであると思うのです。将来とも本法が発動することがないように、安全対策をより強化する必要があると思います、この点について大臣から、今後の安全対策の方向、方針についてしかと承りたいと思います。
#29
○金子(岩)国務大臣 原田先生の御指摘には全く同感でございまして、行政庁でいろいろな慎重な審査をやって許可、認可をおろしていったのでございますけれども、御承知のとおり安全委員会ができましたし、むろん安全局もできております。この安全委員会は、やはり優秀な専門的なその道の第一流の権威者を集めて構成しておりまして、ここで行政庁の審査したものをダブルチェックしていくように、いわば念には念を入れてということでやっております。その上、やはりこの原子力を開発していくのには、何といっても安全を確立して、関係住民を初め国民に理解を求めることが先決でございますから、今後ともひとつ細心の注意を払って積極的に安全の確立に鋭意努力を続けたいと思います。
#30
○原田(昇)委員 エネルギー情勢がこういうように非常に揺れ動くときでございます。原子力エネルギーの確保に関しまして国民の要望は非常に強いと思います。今後ともひとつ安全確保と安全の審査の効率化並びに原子力開発の促進について、大臣並びに政府御当局の御努力を要望いたしまして、私の質問を終わります。
#31
○大橋委員長 原田君の質疑は終了いたしました。
 次に、安島友義君。
#32
○安島委員 賠償の仕組みと国の責任とのかかわりについて、まず御質問をしたいと思うのです。今回賠償措置額を現行の六十億から百億に引き上げるわけですけれども、保険会社には年間幾ら保険料を納めることになるのですか。
#33
○山野政府委員 賠償措置額を百億円に引き上げるのに伴いまして、万一損露が発生しましたときに保険会社が支払うべき保険金の額というものは増加するわけでございますから、当然に保険料もある程度上がるわけでございますが、どの程度上がるかということは今後当事者間で交渉して決めるべき問題でございまして、現在のところはまだ決まっていないわけでございます。
 御参考までに同じ賠償措置額に関係しております補償契約による補償料率というものにつきましては、これは政令で一万分の五、特に研究炉は一万分の二・五というふうに定められておりますので、この補償料の方は賠償措置額の引き上げに比例して引き上げることになると考えております。御参考までに申し上げますと、現在の保険料というのは、百万キロワットの原発の場合で年間約三千万円、それから補償料の方が年間約三百万円ということでございます。
#34
○安島委員 政府と原子力事業主との補償契約によって、政府に原子力事業者が一種の、保険料ではないけれども、納付しているわけですね。これは今回の改正によって幾らになるのですか。
#35
○山野政府委員 今回、五十四年度の補償の限度額といたしまして千二十三億円というものを予定いたしております。
#36
○安島委員 今回の改正によって、百億円を超える原子力損害が発生した場合には政府が一定の条件のもとに援助することになっているわけですが、具体的にそういう事例が発生した場合には、援助すべき金額の算定及び処理手続はどういうことになるのですか。
#37
○山野政府委員 いまの御質問に答弁いたします前に、先ほどの御質問でございますが、限度額を申し上げましたが、あわせて補償料の方は五十四年度におきまして約五千七百四十四万円を予定いたしております。申し上げておきます。
 それから、ただいまの御質問でございますが、賠償措置額を超えた損害につきまして原子力事業者がすべてを賠償し切れない場合には、その損害の規模とかあるいはその損害の態様、さらに原子力事業者の資力といった具体的な事情に応じまして、政府が最も適切な形というものを考えまして援助を行うわけでございます。この援助の中には、低利による融資であるとか、あるいは融資についての利子補給であるとか、あるいはさらに融資のあっせん、補助金の交付といったいろいろな形が考えられるわけでございます。
 このような政府の援助を行うに当たりましては、もちろん国会の議決によりまして、政府に属しております権限の範囲内において行うものでございまして、たとえば予備費等で処理し切れないといったふうな場合には改めて国会の議決をいただくということになろうかと考えます。
 それからさらに、原賠法の十九条の二項で「政府は、原子力損害が生じた場合において、原子力委員会又は原子力安全委員会が損害の処理及び損害の防止等に関する意見書を内閣総理大臣に提出したときは、これを国会に提出しなければならない。」という規定がございますので、御指摘のような問題を処理するに当たりましては、原子力委員会並びに原子力安全委員会というものが大きな役割りを果たすことになろうかと考えております。
#38
○安島委員 現行法では、被害者が損害賠償請求を起こす手続は訴訟以外にはないと思いますが、その点いかがですか。
#39
○山野政府委員 原則といたしましては、損害が発生しました場合には、被害者はまず加害者に請求をいたしまして、原子力事業者が賠償義務があるということを認めますれば、その損害を賠償して解決されるということになるわけでございまして、これがまず第一義的なあり方でございます。その際に、賠償の義務かあるかないか、あるいはあるとしましてもその損害額がいかほどのものであるかといったふうなことにつきまして当事者間で争いがあれば、御指摘のように裁判所の判断を求めることが必要になるわけでございまして、その場合には訴訟に持ち込まれるということでございます。
#40
○安島委員 原子力事業者と保険会社の原子力損害にかかわる保険契約は、具体的に支払い義務が生ずるような場合はどういう場合なのですか。その法的な根拠というか、基準というものはあるのでしょうか。
#41
○山野政府委員 保険契約の中に両当事者間で約束した事項、つまり保険の約款に従いまして必要な保険金が支払われるということになっております。
#42
○安島委員 集団訴訟の場合はともかくとして、個々には非常にこの法律ではなじまないと思うのです。つまり労災の適用範囲を超えて本法の適用を受けようとするものについて、一体この賠償措置というものの性格はどういうものかという点に私は非常に疑問を感ずるわけです。少なくとも通常の保険契約という点で考えれば、保険会社は営利会社ですから、やはり賠償請求等というのはいろいろなことが考えられますから、すべてその責めに任ずる義務はないとしても、一応こういう場合にはこういう基準で支払うというものが定めてなければ、この賠償措置としての性格は全く意味が薄れるように思うのですが、その点どういうふうに考えておられますか。
#43
○山野政府委員 いま御指摘のような基準といったふうなものはないのかという点でございますが、これは過去において、この原賠法の対象となるような事例というのは一件も発生していないわけでございますので、そういう意味で、具体的な認定の基準といったふうなものをつくるというのは大変むずかしいわけでございまして、何かの前堤を置きまして無理につくってみましても、将来いろいろな形の損害というものはあり得るわけでございますが、それらに柔軟に対応できるかどうかということもきわめて疑問なわけでございます。そういうふうな努力が望ましいということは、まさに先生御指摘のとおりではございますが、かといって客観的な基準というのがすぐにできるかと申しますと、きわめてむずかしい問題であるというふうに考えております。
#44
○安島委員 その点はまた後で触れることにいたしまして、賠償措置額、つまり百億を超えるような事故が発生したような場合については、これは迅速に処理すべきだと思うのです。そういう点で、一たん国がその超える金額のすべてを肩がわりし、さらにその事故の発生要因とか原子力事業者のいわば負担能力、そういうことを考えて、国がその後に妥当な額を原子力事業主に請求するというように措置すべきであると思いますが、この点についてはいかがですか。
#45
○山野政府委員 百億円を超えた場合に、まず国が賠償して、その後で事業者に妥当な額を請求するようにさせるわけにいかぬかという点でございますが、まず、わが国の原賠法というのは、第三者に対する賠償は一次的には原子力事業者が責任を負うというたてまえになっておるわけでございまして、当然一次的には当事者間で解決されるべき問題ではございますけれども、しかし、事業者だけに任しておくというわけではなくて、政府も、保険でカバーできない部分につきましては補償契約を結ぶとか、あるいは賠償措置を超える部分について必要な援助を行うというふうにいたしまして、被害者の保護に万全を期するというふうになっておるわけでございまして、直ちに国が直接賠償するというふうな措置をとらなくとも、被害者の保護に遺漏はないというふうに考えております。
 それから、外国におきましては、賠償措置額を超える損害につきまして国が補償を行うという場合もありますけれども、これはあくまでも一定額までの問題でございまして、わが国のように原子力事業者が無限の責任を負っておるといったふうな体制とは異なる体制下の話でございまして、この外国の例をもちまして直ちにわが国に適用するというわけにはいかないだろうというふうに考えております。
#46
○安島委員 いわば政府がそういう損害の一部を負担するという仕組みの中で、正常運転による原子力損害、地震、噴火、津波による原子力損害、発生後十年以降の請求によるものということで、一応政府の責任において措置すべき範囲を定めているわけです。そこで、正常運転による原子力責任ということですが、一体原子力の正常運転による事故と一般的な事故による原子力損害というものの区別は何によってされるのですか、その基準を明確に示してもらいたい。
#47
○山野政府委員 正常運転と申しますのは、原子力損害賠償補償契約法の三条二号によりまして、「政令で定める状態において行なわれる原子炉の運転等をいう。」というふうになっておるわけでございますが、この法律の施行令におきまして、この条件といたしまして三つ挙げております。
 まず一つは、原子炉等規制法の規定による保安規定、保安のために講ずべき措置、使用、運搬等の各種の基準に対する違反がない状態であること、第二点は、施設の損傷がない状態であること、第三点は、天災地変または第三者の行為がない状態であること、この三つの条件をすべて備えている場合は正常運転であるという趣旨でございます。
#48
○安島委員 これまでも長い間、この委員会等で、原子力の安全性を確保するための措置として、現在の原子炉等についていろいろ問題点が指摘されてきたわけですが、特にわが党は、現在の原子炉の構造設計上に万全とは言えない面がある、あるいは材質等も、現段階ではまだ完全とは言い切れないというふうな問題をたびたび指摘しているわけですけれども、いまのお答えは、定められている関係諸法規を守っている場合は正常運転とみなす、つまり原子炉等の構造上の欠陥とか、いままで解明されていない材質上の問題が大きな事故につながるというようなケースは、現行法規の解釈の中では正常運転とみなす、こういうふうに考えられますが、いかがですか。
#49
○山野政府委員 先ほど正常運転の定義を申し上げたわけでございまして、先生の御指摘のような問題か個別具体的に示されました場合に、先ほどのような規制法の諸規定に違反していない、あるいは施設の損傷がない状態かどうか、そういったふうなことを判断しなければならないわけでございまして、一般論として一概に言うのはむずかしいというふうに考えます。
#50
○安島委員 どうもあなたの答弁は、監督行政官庁という立場でなくて、何か第三者的のような判断基準を示している。それでは困るんですね。勝手に電力会社か原発を動かしているわけじゃないのでしょう。その点の国の責任、こういう場合、世界的に見ても、原子炉の構造上の問題や材質上の問題についてはまだまだ未解明の部分がある。にもかかわらず、やはり原子力開発というのが進められてきている。そういう考え方からするならば、いまの説明ではどうも納得しかねる。何か原子力事業主の責任であって、国に責任がないというふうな解釈にとれますが、事故発生の要因が具体的に客観的に、そして事前に防止するような措置があったにもかかわらず事故が発生したという場合は別ですよ。特に通常の場合、そういう問題点が発見されずに事故か発生したような場合のことを聞いているわけです。それは正常運転とは言えないという解釈かどうかを明らかにしてもらいたい。これは政府の責任との存在のかかわりで重要な問題なので、正常運転による事故と、一般的事故によるこの判断基準をもう少し明確にしてほしいと思う。
#51
○山野政府委員 まず、正常運転については、先ほど申し上げましたように、原子力損害賠償補償契約法の施行令におきまして具体的にそろえるべき条件が決められておるわけでございまして、これを具体的な事例にどのように適用するかという問題であろうかと存じますが、この正常運転による原子力損害であるか、あるいはそれ以外の一般的事故による原子力損害であるかということを問わず、いずれの場合におきましても、原子力損害が起こりました場合には賠償措置というものは必ず講じられる。この賠償措置を講じます際に、それが民間の責任保険契約によるか、あるいは政府の補償契約によるかという問題になるわけでございまして、そういう意味で、正常運転というものがある具体的な事例の場合にどちらに入るか、これが正常運転ということによりまして政府の補償契約によることになるのか、あるいは一般的事故による原子力損宙ということになるのかという判断は、その時点で行われる問題であるというふうに考えております。
#52
○安島委員 どうもこれまで関係者から聞いた説明と、いまの局長の説明はずいぶん違うのですがね。その辺、まず内部の方で意思統一しておいてもらわないとちょっと困るのです。私がなぜこれを聞くかというと、大体今回の賠償措置額を仮に六十億から百億に引き上げたとしても、大きな事故が発生した場合は、当然これは緊急避難命令、ある一定期間はそこに居住するということもできなくなるというふうな事態が想像される。そうすると、大きな事故か発生した場合には、六十億が百億でも、とても措置できるとは思えない。そういう場合の国の責任というものは何によって――この正常運転か一般的な事故かということがやはり一つの基準になるわけでしょう。それを超える場合に政府が一部肩がわりしますよというところは、どちらの場合でもはっきりしていますから、そのことではなくて、その限度額を超えた場合の国の責任というものか正常運転か一般的な事故による損害かによってはおのずと異ってくるわけだ。
 そこで私は、いずれにしましても国の責任で原子力開発が行われてきたのだけれども、これは民間企業が具体的に操業しているというか動かしているということから、法の立て方は、通常原子力事業主が責めを負うというたてまえになるのは理解できますよ。しかし、事原子力開発に関しては、いろいろな問題点があるにもかかわらず、やはり政府は政府としてのエネルギー政策の中の原子力発電の必要性という点から推進してきたわけでしょう。そしてその中には、これまでも何回も繰り返しましたけれども、まだまだ十分安全性が万全とは言えないという現状の中で動かしているわけですから、毎日チェックしていても思わざるような、これまで解明されなかったような事由で事故か発生する可能性はまだあるわけですよ。あり得るわけだ。そういう場合のここで言う正常運転と一般的事故、つまり原子力事業主が責めを負うというのは何によって区別されるのか、どうもその辺が依然としてはっきりしない。
#53
○山野政府委員 まず、原子力損害の賠償責任というものはすべて原子力事業者が負っておるわけでございまして、これはあらゆる場合に原子力事業者が賠償の責任は持っておるわけでございます。ただ、原子力事業者が賠償を履行するに際しまして、その履行を確実に行わしめるために賠償措置というものを設けておるわけでございまして、さらにこの賠償措置の中に、原因によりまして民間責任補償契約で保険金を支払う場合と、政府補償契約で補償金を支払う場合というのが方法としてあるわけでございまして、あくまでもそれらの保険金なり補償金でもって資金のてん補は受けますが、賠償する責任は原子力事業者が持っておるという体制になっておるわけでございます。
 さらに、この賠償履行を確実ならしめるため、賠償措置額を超えて原子力事業者が損害賠償をしなければならないといったふうな事態が発生し、しかも原子力事業者が資金的にそれらの賠償の責めに任ずることができないといったふうな場合には、原因のいかんによらず政府が必要な援助を行う。六十億円を超える場合には、正常運転であろうとそうであるまいとすべて政府が必要な援助を行うというのがこの法制の体系でございまして、私どもは現在の賠償法の仕組みで十分に被害者の保護というものは達成し得るというふうに考えておるわけでございます。
#54
○安島委員 政府は、大きな事故か発生するということは概念の上では想定しても、どうも現実的な問題として受けとめていないような感じがいたします。
 ところで、東電の福島、これは第一だか第二かの場合の七七年度の財産保険は、二千五百九十五億円を保険会社との間に契約しております。年間に納付する保険料は七億一千二百万円、そしていまの説明の一般的事故か正常運転かの問題は別としても、政府が具体的に措置しなければならないという事態を考えているという場合には、一時に巨額の出費が必要となるという事態を現実に想定しているのかどうかという点が疑問である。
 さらに、原子力事業主に義務づけられているこの保険金額というものか少なくとも人命尊重というたてまえが貫かれているとも思えない。いずれにしても保険契約によるこの措置も不十分である。政府自体がこういう事態を具体的に想定しているとも思えない。この辺のところに、私は現在のこの定めに非常に不備があるように思うのですが、その点科学技術庁長官は、いまの質疑を聞いてどういうふうにお感じになりましたか。
#55
○山野政府委員 ちょっと大臣答弁の前に、具体的な点を若干補足的に説明申し上げたいと思います。
 まず、国が責任を負うような事態を具体的に想定しているのかという点でございますが、これは私ども原子炉等の運転につきましては、原子炉等規制法によりましてきわめて厳しい安全規制を行っておるわけでございまして、先ほど先生御指摘のように、このような原賠法を発動しなければならない事態というのがそう起こるものではないというふうに考えておるわけではございますが、しかし、万々一正常運転によって損害が発生した場合といったふうな場合には、速やかにこれに対応する必要があるわけでございまして、予備費の使用といったふうな所要の予算措置をとることによって十分これに対処し得るというふうに考えておるわけでございます。
 それから、財産保険と責任保険との関連でございますが、財産保険にはきわめて多額の財産保険が掛けられておるのに、責任保険の方は低いのじゃないかという点でございますが、確かに保険金額としましては財産保険と責任保険というものはかなり金額的に違うわけでございます。これはいずれの場合もこの保険の引受額の大半を海外に再保険しておるわけでございまして、再保険いたします場合に、海外の再保険を引き受ける枠というものが両方の保険で区分けされておる。つまり枠自体の問題であるという点があるわけでございます。だからといって、責任保険による、原賠法による被害者の保護が軽率に扱われているかというと、私どもはそうではないと考えておるわけでございます。確かに賠償措置額は財産保険額に比べますと金額的には小そうございますが、それを超えるものにつきましては、先ほども申し上げましたように政府が必要な援助を行うという規定、これは諸外国と違いまして限度額はないわけでございまして、事業者に無限の責任を負わせ、しかも必要に応じて政府がこれに援助するという体制になっておるわけでございますから、十分に被害者の保護というものには配慮されておると考えておる次第でございます。
#56
○金子(岩)国務大臣 いま安島先生と質疑応答を交わしていらっしゃいます内容を究明していくと、いまの法制ではいろいろ物足りない、心配が残るというようなお気持ちでございますが、最終的には事業者に無限の責任を負わして、その事業者が支払い能力が万一ないような事態が生じた場合は政府が全部補てんすることになっておるのでございますから、具体的に扱い上の問題でいろいろ疑問がおありかもしれませんけれども、最終的には政府か責任を持って賠償はすべて完璧を期していくというような精神の法律でございますから、ひとつこの法律を通していただいて、そして実際にやってみていろいろとまた疑問が生じてきた場合に改正が必要であれば、それは当然のことだと考えております。
 このたびはひとつこの立法措置を御理解いただいて、御賛同いただきたいと思うのでございます。
#57
○安島委員 前にちょっと戻りますが、たとえば火災等の通常の保険の場合、全焼とか半焼とか、その被害の程度によって全額もしくは一定の給付か行われることになっているわけです。原子力損害の場合は、その点客観的に基準を示すのが非常にむずかしいと思うけれども、少なくとも原子力事業主の責めというものがこの法では当然義務づけられているわけですから、そのための賠償措置として一挙に多額の金を支出するのは大変ですから、それに備えるための保険契約であれば、保険契約の内容、一体どういう場合にどういう基準で一定の保険金が支払われるのかという点は、集団訴訟等の場合ですといろいろな要素が加味されますから、これは当然保険会社としてその全額の責めを負うということにはならないと思いますが、通常死亡の場合とかあるいは疾病、傷痍といっても不具廃疾に近いような状態の場合とか、そのような損害の程度に応じて一定の保険金が支払われるという仕組みにならないと、先ほども触れました通常の労災の適用を超えるような部分について発生した場合を考えてみますと、いきなり訴訟だという手続上の問題もあるけれども、大きな事故が発生しない場合には保険会社は何の責めも負わないということになりますね。その辺の問題についてはもっと専門家筋とも相談をして、そういう客観的な一応の物差しというものの中において保険給付が行われるということを定めておかないと、本来の賠償措置としての機能は十分生かされないように思うのですが、その点についてどうお考えになりますか。
#58
○山野政府委員 原子力損害が起こりまして被害者と原子力事業者が話し合いをいたします際に、何らかの具体的な基準があればその事案が処理しやすいということはおっしゃるとおりであると考えますが、先ほど申し上げましたように、なかなか過去にこのような損害の発生した事例もないということもございますし、また将来を考えました場合にいろいろ考えられるケースは多種多様でございますので、なかなか画一的な具体的な基準がつくりにくい問題であるという点は御理解いただいたかと存ずるわけでございます。
 実際の問題といたしましては、いま例に出されました労災を超える部分についてどうであろうかといった点につきましては、労災の方には認定についてのある基準が定められておるわけでございまして、労災を超えて原賠法で賠償するといった際には、労災の認定の基準が非常に大きな参考の材料になると考えられますけれども、原賠法自体の具体的基準はまだつくる条件がそろってないと考えるわけでございます。
 この点につきましては、今後低レベルの放射線の人体に与える影響といった問題につきましていろいろ政府機関におきましても研究を進めておりますが、こういった研究を鋭意進めまして、できるだけ御指摘のようなものができる方向で努力は続けていきたいと考えますが、現在の時点で直ちに具体的な基準をつくることはきわめて困難な問題であるという点は御理解をいただきたいと考えております。
#59
○安島委員 どうも時間がだんだん少なくなってきますので、これ以上余りできませんが、最後に一言、もっと具体的に、天災地変によらない大きな事故が発生した場合、そしてその損害が百億を超えるような大きな損害の場合には、百億を限度としての保険契約の保険金は、百億は現行法でおりるのですか。
#60
○山野政府委員 百億円を超えるような大きな損害が起こりました際に、原子力事業者はその賠償の責めに任ずるわけでございますが、その際、賠償措置の方からは保険料あるいは政府による補償料、いずれかの形で百億円が原子力事業者に対しててん補されるということになろうかと考えております。
#61
○安島委員 保険会社に支払い義務が生ずる、こう考えていいのかと聞いているのです。
#62
○山野政府委員 賠償措置額が原子力事業者にてん補されます場合に、それが保険会社からてん補されるか、あるいは政府の補償契約によっててん補されるか、その区分けは保険契約の約款に照らして決められると考えております。
#63
○安島委員 どうもまだ疑問点が残りますが、これだけやっているわけにいきませんから、次に進みます。
 安全性を確保するための関係法規が本当に守られているのかどうかという観点から、以下御質問いたします。
 原子炉規制法、放射線障害防止法というものかございまして、原子力施設やラジオアイソトープ取扱事業所内において働く人あるいは立ち入る人が一定レベル以上の放射線を浴びることがないような規制措置がとられているわけですが、具体的に説明してもらいたい。たとえば年間の許容量とか、あるいは問題によっては一日とか短い時間であっても、その作業に携わる一回にかなりの被曝を受けるおそれもある、そういう場合の基準は定められているのかどうか、その点についてお伺いしたい。
#64
○牧村政府委員 お答えいたします。
 原子炉規制法あるいは放射線障害防止法に基づきまして、先生御指摘の従業員等の被曝をできるだけ少なくするための措置をとるように厳重に行うことを義務づけておるわけでございます。原子炉規制法におきましては、従業者の被曝線量を想定いたしまして、これを遵守させるために管理区域の設定であるとか、管理区域に出入管理する方法、従業者の被曝線量の測定あるいは記録をとっておくというようなことを義務づけておるわけでございます。
 法令的には、従業者は三カ月三レム、年間五レム以下に抑えるように義務づけられておりまして、これらを守るために、従業者が働く形等につきまして、ただいま申し上げましたような管理区域の設定あるいは管理区域の出入管理を厳重にするということを義務づけておるわけでございます。また、管理区域内のある場所での放射線量率あるいは空気中の放射線の濃度を常時監視するというようなこと、あるいはフィルムバッジであるとかポケット線量計を従業者の方に持たせるというようなこと、あるいは仕事の態様によりましてマスク等を装着するというようなことにつきましての具体的な実施の方法については、原子炉設置者に保安規定というものを定めさせまして、これを守らせるというふうな仕組みで万全の措置を講じておる次第でございます。
 放射線同位元素等を使用する事業所につきましても、以上私が申し上げました原子炉規制法に準じた同様の規制が行われているところでございます。
#65
○安島委員 ラジオアイソトープの使用が対象外になっているのは何ゆえか、また今後これを本法の適用を受けるようにすべきだと思うが、この点についてお伺いしたい。
 現在、工業、農業、医学等、広い範囲にアイソトープが利用されているわけです。五十三年二月現在で科技庁の許可を得て行っているのが約三千七百件、これからもどんどんふえる見込みだと思うのですが、この点についてお伺いしたい。
#66
○山野政府委員 現在の原賠法と申しますのは、原子力の利用に伴いまして万一臨界事故等が発生したような場合、つまり大規模かつ集団的な損害を頭に置いて立法されておるわけでございまして、それに対して無過失責任、責任の集中、賠償措置の強制といった非常に特色のある制度にいたしておるわけでございます。これに対しまして放射性同位元素による損害というのは、放射線による損害ではございましても、いま申し上げましたような臨界事故等による損害といったふうな部類には属さないものでございまして、そういう意味で、従来はこの原賠法の対象とはしていないものでございます。この放射性同位元素による損害の救済措置としましては、現在の労災制度あるいは民法を効率的に運用して対処していく問題ではないかというふうに考えております。
#67
○安島委員 この原賠法で定めているような事故というのは、これはまず一たんそういう事故が発生したという場合は、法律でどう定めているかという域を越えた問題、社会的、政治的問題に発展するという内容ですよね。それまで発生するようなことでは、これは内閣総辞職問題ですな。そうすると、これは念には念を入れておくための法律ですから、通常低線量であっても、現在の医学や科学では、それが将来にわたる人体に及ぼす影響についての因果関係というのは立証されていない。そしていままでは主として原子力発電所等あるいはその原子力に関連するような施設の中で働いている者ということを対象にしていましたが、いま申し上げましたように、アイソトープ関係の使用が非常に広範に行われるようになっているという、このかなり年数を経過した現時点で考えれば、そういうようなことに対してもっともっと安全性を確保するための細かい配慮が行われてしかるべきではないか。だから、具体的には、そういうような何か大きな事故以外にはこの損害賠償法の適用を受けるようなことはないのではないかというふうな考え方に立っておられるように思うのだけれども、それはやはり同じように長い間こういう仕事についていたような場合は、一日の被曝量が仮にそのいま決めているものの水準よりは低くても、長期にわたる場合の人体に及ぼす影響ということを考えるならば、当然将来起こり得る、あるいは近い将来において起こり得ると想定されるわけですが、この点についてはどう考えるのですか。また、この低線量の人体に及ぼす影響についての研究をもっともっと積極的に進めるべきだと思うが、この点についてお伺いしたいと思う。
#68
○山野政府委員 低線量についての研究、低レベル放射線が人体にどのような影響を与えるかという研究につきまして、これは先生御指摘のように、きわめて重大かつ重要な問題でございまして、政府としましても極力力を入れて今後進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございまして、放射線医学総合研究所において、この低レベル放射線の発がんあるいは遺伝的障害に対する影響といったふうなことにつきましていろいろ検討が進められております。また、この放医研以外の政府機関におきましても研究が進められておるわけでございまして、従来も相当な成果が上がっておるわけでございますが、先生御指摘のように、なお未解明の問題というのもあるわけでございますから、今後原子力研究の重要項目として一層力を入れていきたいというふうに考えております。それから、この原賠法の適用の問題につきましては、これは大事故以外に小さな損害を与えたような場合でも、現在の原子炉の運転等の因果関係があれば賠償の責任というものは当然出てまいるわけでございまして、そういう場合に当然に賠償義務は履行されるわけでございますが、放射性同位元素を使用した場合というのは、現在の姿ではこの原賠法の体系ではなくて、労災保険並びに民法というものの体系の中で処理されておるという状況にあるわけでございます。先生の御質問の趣旨が、現在のこの放射性同位元素による損害というものも原賠法の体系の中に移すべきではないかという御趣旨であるといたしますれば、いま直ちに私どもはその必要があるというふうに考えておるわけではないわけではございますが、しかし、せっかくの先生の御指摘でもございますので、諸外国の法制の方向といったふうなものもあわせ考えながら、今後の検討課題とさしていただきたいというふうに考えます。
#69
○安島委員 原子力施設内で働く下請作業者等の安全管理がどのように行われているのかをお伺いしたいのです。
 何か聞くところによりますと、その施設内で作業する間だけは原子力事業主がチェックするために被曝管理手帳、これは仮称ですが、要するに被曝量というものを記録させておいて、そうしてそういうものを一つの目安にして作業させているというふうに関いているわけですが、その作業が終われば、つまり契約が終われば、その手帳は引き上げるというふうに聞いていますが、これは事実ですか。もしそうだとすれば、後で将来にわたって人体にどういうふうに影響を及ぼすかという記録は残らないということになりますが、この点に対して、どういうふうにいままで措置されてきたのか、お伺いしたい。
#70
○牧村政府委員 下請従事者を含めまして原子力施設等で作業に従事する方々の被曝管理につきましては、原子炉等規制法に基づきまして事業者の責任におきまして全く同等に自分の従業者あるいは下請企業の従業者に対する管理も行うように義務づけられておりますし、また指導をしておるところでございます。そうして、下請の従事者は、そのほかに労働衛生法等に基づきまして同様の管理を行うように下請事業者に義務づけが行われておるところでございます。
 先生御指摘の放射線作業に従事する方々に手交しております放射線管理手帳につきましては、実は従来事業者の任意の形で行われておったところでございまして、ある意味では先生御指摘のようなことも起こり得たわけでございます。そういう制度を使ってない事業者もあったわけでございます。しかしながら、今回昭和五十二年の十一月に放射線作業に従事している者の受けた放射線を一元的に登録管理しようということで、下請従業者を含めまして放射線従業者中央登録制度というものを発足させたわけでございます。ここにおきまして、各事業者が使いました従業員、下請の従業員を含めまして、そこで受けました被曝の線量を登録いたしまして、それを一カ所の登録センターに経年的に統一して登録しておこうという制度が発足したわけでございます。これは現在原子炉等規制法にかかわる作業者を中心に制度を運営しておりますけれども、このような制度が近く完全に機能を果たすようになる予定でございますので、これからは個人がいつどこでどれだけの被曝を受けたかということが正確に把握できるような制度ができ上がったわけでございます。
 その制度の実施と関連いたしまして、今後はこの登録センターか放射線の管理手帳を個人ごとに統一的にナンバリングをつけると申しますか、統一的に管理いたしまして、その管理された手帳を事業者が交付していくというふうな制度を強力に進めるようにいま努力中でございますので、先生が御指摘のようなことは、これからはもう起こってこないというふうに考えております。従業者もそれによりましてみずから被曝線量を確認できるような制度になるわけでございます。
 なお、特に下請従事者の方が原子力事業者のところに参りまして作業を行うときに、一時的に手帳を保管することがございます。これはあたかも健康保険等の証書を医者に参りましたときに預けておくように、作業が終わりましたときに記録をつけてもらうというような形での保管の状態はあるかとも思いますけれども、今後この制度の運用を厳密に行うことによりまして、安全管理上の問題は万全を期していけるものというふうに考えておりまして、この登録センターの業務を積極的に私どもも支援してまいりたいと考えておるところでございます。
#71
○安島委員 いまの答弁は一応前向きな姿勢として評価します。
 これは大臣にお伺いいたしますが、いまの局長の説明も、これは法的強制力を持っているわけではなく、あくまでも行政指導というか、強力にそういう指導をするということであって、法的な拘束力は持っていない、したがって事業主はもちろん作業に従事する者にもこれを義務づけるためには、どうしてもそれを義務づける法律が制定されなければならない、したがって被曝線量の中央登録及び放射線管理手帳の交付及び作業者は常に所持しなければならないということを法的に義務づけるべきであると思いますか、その点についての大臣の見解を伺いたい。
#72
○金子(岩)国務大臣 御指摘のとおり同感であります。今後義務づけるようにひとつ努力をいたしたいと思います。
#73
○安島委員 いま申し上げましたように、これまでは一定の定められている許容量を超えたとしても、証拠と言ってはなんですけれども、その記録が残らない。それから、その事実が明らかになると、他の事業所では雇ってくれないという問題がありまして、作業者自身も余りこれを所持したがらないという傾向もあったと聞いておるわけであります。
 そこで、法的に義務づけるということは、単に事業主の思惑や作業者の主観的判断であってはいけないのであって、それを義務づけるわけですが、ここで問題なのは、いま言ったような現実の問題が出てまいりますから、特定の事業所において、いわゆる被曝許容量を超える、あるいは限度いっぱいの作業をさせたような者については、少なくともその施設で働かせた原子力事業主が、一定期間やはりそういう問題を具体的にチェックし、問題が生じた場合のいわば責めを負うようなことをしないと、一方的に下請作業者等にしわ寄せされる。そのことが生活やいろいろな問題にも波及するおそれかある。したがって、この辺の問題についてどのようにお考えですか。
#74
○金子(岩)国務大臣 御指摘の点はよく理解できますので、今後法令等によって規制することもできますし、義務づけることができますし、前向きに検討をいたしたいと思います。
#75
○安島委員 ところで、先ほども現在の許容量というものが三カ月あるいは年間にどの程度が目安というか限度だということが定められていると聞いたわけですが、事故等、これはトラブルとかミスというようなことを当事者は言っているわけですが、そういう場合にはかなり短い時間でもかなりの被曝を受けるおそれがあるような作業が現実にいま行われているわけだ。そういう点を考えますと、原子力にかかわる関係諸法規が制定されてからもう十数年もたっているという現実の実態に照らして、その辺もっときめの細かい措置が必要であると思いますが、この点については、いまどういうように検討されているのですか。
#76
○牧村政府委員 従業員が放射線業務に従事するに当たりまして、その作業基準についての御指摘であろうかと思いますが、まず法制的な問題につきましては、先ほどもお答えいたしましたように、日本の場合にはICRPの勧告に従いまして、三カ月三レム、年間五レムという形の、これ以上受けないような管理を義務づけておるわけでございます。しかしながら、最近のICRPの勧告では、被曝線量につきましては、三カ月三レムというものはもう必要なくて、年間五レムを十分管理すればいいというようなこと、あるいは日量の管理等につきましても、年間五レムにおさまるのであれば特に必要はないというような勧告が、過去二十年来の原子力施設等の管理の経験あるいは放射線医学的なデータの蓄積から出されておることも事実でございます。
 しかしながら、いずれにいたしましても、ただいまの私どもの立場といたしましては、現行法においては三カ月三レム、年間五レムというものを守らせる必要があるわけでございます。このようなことを守らせるために、原子炉設置者が保安規定等によりまして、ある作業ごとに計画的にこの程度以下の被曝に抑えるような作業計画をつくる、あるいは通常的な作業であれば、一日にこれ以上当たってはいけないというような線量を定めて作業を進めていくということは、その年間あるいは三カ月間に受ける被曝を管理する上にきわめて適切な作業マニュアルと申しますか、作業の進め方だと思っておりますので、政府といたしましても、今後ともこのような作業基準をちゃんとつくって、それを守っていくというようなことにつきまして、関係省庁ともよく連絡し合い、事業者を強力に指導していきたいというふうに考えておるところでございます。
#77
○山野政府委員 先ほど来の先生の御質問で一点答弁漏れがあると思いますのでちょっと申し上げておきますが、許容限度まで作業をした場合にそれ以上はもう作業はできないといったふうな場合には、原子力事業者が何らかの補償をするとか援助をするとか考えるべきではないかという点でございますが、これはもともと、先ほど安全局長が答弁しましたように、厳重な安全規制を行いまして許容限度を超えないように指導してまいっておるわけでございますが、もし許容限度近くまで被曝をしまして、それ以降は作業転換をしなければならないといったふうな場合が発生しました場合に、直ちに原子力事業者に補償をさせるかどうかという問題、これはまさに基本的には労使間の問題でございまして、当庁として直接本件についてとかくの見解を申し上げるという立場にはないという点は、御理解いただきたいと存じます。
#78
○安島委員 何のためにわざわざ答弁に出てきたのか理解に苦しむような答弁ですね。それは時間がないから先へ進めたいが、そういうことでは困るのですよ。これはケースは違うけれども、いま労働省等でも災害現場に行って調べているあのトンネル事故の場合でも、危険作業というものほど下請作業者につかせているというのは、もう隠れもない事実なんです。だから、もっともっとそういうところに現実に目を向けた対策がとられなければ、どんな法律をつくったって、それが本当に適用されるべき人に適用されないという法の矛盾が具体的にあるんだということを指摘しているわけですから、むずかしい問題だというふうなことでわれわれはその方のことを一々言う立場にないなどという答弁では困る。
 次に、労災補償にかかわる認定について若干お伺いしたいのですが、現在までにどのような基準を定めて運用されてきたのか、これは簡単に御説明願いたい。そして、これまでに具体的事例があったかどうかも含めて御説明いただきたいと思う。
#79
○原説明員 労災保険の関係での放射線障害の認定に関しましては、従来から医学的、専門的な事項でございますので、専門家の御検討をいただきまして認定基準というものを具体的に定めまして、その基準に従って認定をしてきております。しかも、その認定基準につきましては、三十八年につくっておりましたものを再度見直しをいたしまして、五十一年に新しい認定基準にして、新しい知見に基づいて補償していくような形をとっております。
 現在までのところ、認定をいたしておりますものを過去七年間で見てみますと、放射線障害として認定されたものが二十四件ございます。ただ、この中には原子力発電所関係の事例は入っておりません。請求が出ておりませんので、認定がなされておらないという状況でございます。
#80
○安島委員 かなり労働省側の立場からは、いま医学的、科学的に十分解明、立証されていない放射線の人体に及ぼす影響について将来にわたってまでもという点で弾力的な運用が行われるような行政指導が行われていることは認めるわけですが、この場合は所轄の労働基準局長が認定権者ということになるわけですが、労働基準局長がすべてそういう専門的な知識を持っているわけでもない。ですから、それを立証するために認定補助機関というものが設置されるべきであるという意見書が、これまでの経過を見ますと専門部会の方から出されているようですか、いまもってこの認定補助機関は設置されていないと思うのですが、いかがですか。
#81
○原説明員 お答えいたします。
 御指摘の認定補助機関という形のものは現在のところ設けられておりません。職業性疾病一般につきまして認定をするにつきましては、高度の医学的な知識が必要でございますが、補償を行う主体が労働省の行政機関に任されておりますので、実際の認定は監督署長が行う権限を持っておるわけでございますが、実際に認定をする際には、先ほど申しました専門的な知識に基づきましてつくられました認定基準に基づいて具体的にやるとともに、各基準局に非常勤の医師を委嘱しておりますので、その医師等の意見を徴しながらやっております。特に高度に専門的な知識を必要とします放射線障害の関係につきましては、なかなかむずかしい問題もございまして認定が困難なものも出てこようかと思いますが、こういうものにつきましては、その都度個別事案ごとに中央に稟伺をさせまして、これに関する専門的な先生の意見等を聴取しながら適正な認定を行っているところでございます。
#82
○安島委員 いかに弾力的な運用を行うといっても、この体制が整備されていないという点では、私は問題があると思うのです。ですから、たとえば認定補助機関というようなことが現状無理だとするならば、業務上の疾病、傷疾というものをどう認定するかという場合に、やはりこれまでの論議、経過等を踏まえて、少なくとも各都道府県の労働基準局ぐらいには、関係する専門医の登録あるいは言うならば配置ですね、これは非常勤でもいいですけれども、そういう具体的にそれを立証づける立場にあるような者を通常やはりはっきりしておくべきではないかと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
#83
○原説明員 御指摘のございました非常勤等の医師の嘱託に関しましては、従来から認定の実情等に見合いまして、特に最近は職業性疾病問題が大変多くなってまいりますし、むずかしい問題がふえてまいっておりますので、その実情に応じまして予算的措置を講じまして増員を図ってきております。今後この放射線障害の問題に関係する分野についても、そういう意味での充実を図っていくよう配慮いたしてまいりたいと思います。
#84
○安島委員 因果関係の推定については、労働省に設置されている専門家会議で認定基準の見直しを行ってきたはずですか、現在どういうふうになっておりますか。
#85
○原説明員 放射線障害の関係の認定に関しましては、先ほど申し上げましたように、認定基準を専門家の先生方の御検討をいただきましてつくっておりますか、この中で、三十八年当時から認定基準をつくっておりましたが、その後の医学的知見の進展等もございましたので、五十年から検討をさらに再開をしていただきまして、新しい認定基準をつくっていただきました。現在のところ、その新しい五十一年の認定基準でこの放射線障害の認定は適正に行われているものと私ども考えております。
#86
○安島委員 今回の改正によりまして、原子力事業主と雇用関係にある従業員が本法の適用を受けるわけですが、先ほどから国の責任と現在の保険契約や、それが保険会社としてどの部分について適用されるのかという問題を時間をかけて聞いたのは、たとえば労災補償の適用範囲を超えるような問題について、現行法ではどう処置されているのかということに対しては、先ほど大きな事故が発生したというふうな場合は、これは個々の請求というよりも集団請求訴訟になるわけですから別としましても、そういう個々のケースを考えていった場合には、先ほどからの答弁ですと原子力事業主にそういう請求を起こせばよいという話ですが、それは下請作業者、下請に従事しているような者については一体どうなるのか。それだけの問題じゃないが、ここでもその問題については労働組合があるところは恐らく黙っていないわけでしょうから、そういうことは当然言わずもがな、これは原子力事業主と交渉することになりますよ。そして交渉で解決しなければ、これは訴訟に踏み切るというケースなんでしょうが、そうすると、一般の下請作業者等の場合には、ここでも一応これは民事訴訟の手続をすればいいんですよと言うけれども、毎日の生活に追われるような状況の中で働いている個々のケースの場合、それでは本当にこの法の適用というものが具体的にされるとは思えない。そこで、そういう場合の問題等をもう少し訴訟に発展しない段階において何らか解決するような道、たとえば原子力損害賠償の紛争を処理するための審査委員会とか、そういうものを速やかに設置すべきだと思うわけですが、この点についてはどう考えておりますか。
#87
○山野政府委員 原子力損害賠償法の場合は被害者が原子力事業者に損害賠償を請求するわけでございますが、これに対してなかなか両者間で話し合いがつかないといったふうな場合に備えまして、原子力損害賠償紛争審査会というものを科学技術庁に臨時に設置いたしまして、原子力損害の賠償に関する紛争についての和解の仲介をするといったふうなことが決められておりますので、御指摘のような場合には、裁判に持ち込みます前に、このような紛争審査会を活用して国もできるだけの協力をするというふうにしたいと考えております。
#88
○安島委員 紛争処理の審査委員会は設置されているのですか。
#89
○山野政府委員 先ほど来申し上げておりますように、過去におきましてこのような原子力損害賠償を行うような事例が起こっていないわけでございます。したがって、これまではこのような紛争審査会というものの設置の必要はなかったわけでございまして、私どもとしましては、今後万々一そういったふうなものが必要であるという事態が発生した場合に臨時的機関として置けば十分であろうというふうに考えていたものでございます。
#90
○安島委員 何度も言うように、この原子力損害賠償法の定めというのは、本会議でも質問したように、起こしてはならない事故が万が一起こった場合を考えてこういう定めがあるというように考えるべきなんです。そういう問題を離れると、むしろ現在では日常こういう放射線関係の作業に従事している作業者に問題が出てくるおそれが出てきている。その点では労災の適用がまず第一次になると思うけれども、その因果関係とか運用基準というようなもの、あるいは認定補助機関の必要性、被曝を立証させるための中央登録や手帳の義務というふうなものを総括して考えていかなければならない。そして、仮に現在の労災になじまない部分というよりも超えるような将来にわたっても補償すべき義務、それだけに足る事由というようなものが起こり得た場合に、やはりこの紛争処理機関というものが設置されて、そのときになって初めて動くのではなくて、少なくともそういう問題が発生した場合には、速やかにその紛争処理機関が介入して紛争を処理するというようにすべきではないのか、こう言っているわけです。いかがですか。
#91
○山野政府委員 紛争審査会は政令の定めるところにより置くことができるとなっているわけでございまして、先生御指摘のように、できるだけ機動的に対応するという観点から現在直ちに政令というものを決めまして、いつでも将来この紛争審査会ができるように準備をしておくということも非常に意味のあることだと考えますので、御指摘のように、政令等を整備するということを検討してまいりたいと考えております。
#92
○安島委員 これは私も今度本会議で質問するようになって、正直のところいろいろ勉強させていただいた。ところが、どうも私も専門的な知識を持っているわけじゃないか、この法が制定されたころから現在に至るまでの間、幸いにして、小さなトラブルやミスは生じても大きな事故に発展しなかった。それは結構だが、そのために、現行法の見直しというもの――今回提案されているような骨格部分も大事ですが、十数年もたった現状ではどういうように具体的に現場で作業が行われているのかというものをもっと見直し、改善をすべき余地というのが非常に多いということを痛切に感じたわけなんです。その中で、特に行政体制の充実整備を図らないと、どんな法律を制定したり、あるいは行政指導を強力に行いますとか、一つの作業基準とか、いろいろな許容量はこれ以上上回ってはいけないというような基準を単に決めただけでは、完全な作業者の安全確保ということにはならないという、いろんな問題が絡んできているわけです。
 たとえば一つの例ですが、原子力施設の中とかあるいは放射線関係の作業をしている作業所内等については、これは労働省がこの法の定めによる監督指導の責任を持っているわけです。ところが、その施設や作業所内の外に一歩出ますというと、これは科学技術庁とか、その仕事の内容によって所轄官庁がいろいろ分かれている。ですから、この法の完全実施を図ろうとするならば、そういう被害を受けた者あるいは自分で被害を受けたというように思った者が、自分はどの程度の被曝をしたのか、あるいはその場合には、どこでどういうふうに措置されてくるのか、相談するところはどこに行けばいいのかという点がきわめてあいまいなんだ。ですから、仮に大きな問題に発生しない問題であったとしても、少なくとも国の基本政策として原子力行政を定め、そして今日相当技術の改良、進歩、発展を遂げて、それがいろいろなかかわりが深い範囲において事業が行われて、そこに作業する従業員というか、作業者の数も非常に多くなっているという現状、あるいは施設内に立ち入らなくても、あるいは作業所内に立ち入らなくても、その周りを通っていたというような場合でも、全く問題が起きないとは言えない。
 昨年、これは問題が余り発展しないで済んだのですけれども、現に溶接接合部分を放射線で検査をする業務をしているところを通りかかった者が、この人は一定の知識を持っているために、その検査のためには一分間にどの程度の放射線かということがわかっている人であるがゆえに、自分がそのそばを通ったところか、決められているいわば防壁等も、どうも見たところ不十分のようだった、だからストレートに自分はその放射線を浴びたと思って私のところに相談に来たわけだ。これは専門病院で診てもらったら、幸い許容量とか、それほど被曝を受けなかったというケースはありますが、現在の原子力とか放射線に関する知識というのは、専門家の間ですらもまだ解明されてない。ましてや、そのような許容量基準でありますから心配ございませんと言われたって、そう簡単に納得できない。
 こういう問題が生じたような場合には、やはり速やかにどこに行けばそういう相談に乗って、そして心配はないと思うけれども、では指定しているこの専門病院で診てもらいなさいとか、あるいはそれが一定の許容量を超えるというふうなことがあり得た場合には、それに対してはどういう措置をすべきかというふうな、まあ一つの例ですが、少なくとも現行法の安全遵守を図ろうとするならば、行政官庁としていろいろ監督指導権限が分散しているこれらの問題について関係者、いわゆる専門家でのこういう見直しを行って、そういう事態に際した場合に速やかな処理が行えるように改善すべきだと思いますけれども、最後に大臣の見解を求めたいと思います。
#93
○山野政府委員 まず、御指摘の点きわめて大事な問題でございますので、被害者の保護救済ができるだけ万全に行われますように、現行の諸制度の機動的な運用をする、またこの完全な履行を図るという意味におきまして、関係省庁間で連絡を密にしなければならないというふうに考えております。
 それからさらに、専門家の意見も個々の方々が聞きやすいように配慮するという点につきましても、幸い当庁には放医研に専門家もいることでございますので、必要に応じまして被害者の申し出等にも十分対応していけると考えておりますので、そのようなことも活用いたしますし、何にも増しまして御指摘のように現行の諸制度の間にギャップかできないように十分検討してまいりたいというふうに考えております。
#94
○金子(岩)国務大臣 安島先生の御意見まことに適切でありまして、原子力の研究開発、平和利用を積極的に推進するとするならば、やはり微に入り細に入り懇切丁寧に、いわゆる関係住民の関係者、国民に被害を与えないように、いかにしてそれを小さくするかということ、これが大前提の役所の努力項目でございます。
 そのように考えますと、ただいまいろいろと御指摘をいただきました点につきまして、先ほども申し上げたとおり、法令等によって規制を厳しくしたり、また、いま仮にいささか心配になる者が健康診断でも受けたりして安心感を得るための相談相手もいないじゃないかということも、まことに適切な御意見でございます。科学技術庁にも専門の担当がいるといま局長も申しておりましたけれども、特にこの原子力関係の研究施設あるいは発電所、こういう施設のある関係住民が安心していっでも相談に駆け込んでいけるような機関をつくることも緊急な問題ではないか、このように感じました。
 いろいろ御指摘いただきましたので、われわれもこれから鋭意検討する問題をたくさん抱えたと思いますので、御期待に沿うように努力をいたしたいと思います。
#95
○安島委員 以上で終わります。
#96
○大橋委員長 安島君の質疑は終了いたしました。
 次に、貝沼次郎君。
#97
○貝沼委員 原賠法の改正に当たりまして、この法律は私ども賛成法案でありますので、簡単に若干の点について質問をさせていただきたいと思います。
 まず初めに、原賠法の目的は被害者保護、それから原子力事業の健全な発達、こうなっておりますか、この被害者保護の内容というものはどういうふうに考えておられますか。
#98
○山野政府委員 原子力の開発に当たりまして、災害防止のために安全性の確保が大前提であるということを常日ごろ私どもも考えておるわけでございますが、なおそれにも加えて、万々一の損害発生のために対処しておくというのがこの原賠法の立法の趣旨でございまして、このような万々一の損害が発生した場合に被害者による賠償請求を容易にしようということで、原子力事業者にあらかじめ賠償覆行のための措置を講じさせておくということによりまして、常日ごろから被害者のための十分な配慮を加えておくというのがその主なねらいでございます。
#99
○貝沼委員 内容はわかるのです。わかりますが、私は、この被害者保護という精神に立つならば、今回の法律だけでは足りない部分があるのではないか、あるいはこの法律の裏となるものが必要ではないか、こう考えておるわけであります。
 つまり、今回の法律あるいは被害者保護という面には二つの局面があるのではないか。その一つは、この法律で言うように、いわば経済的な面で賠償したいという面ですね。それからもう一つの面は、起こってはならないことでしょうけれども、何か起こった場合に、しかもそれが人的障害がある場合、そういう場合にやはり医療体制というものをきちっとつくっておかないといけないんじゃないか。ただお金をもらったからいいというものではないと私は思うのですね。しかも、医療体制そのものが、普通の病院がその辺にあるからその病院に担ぎ込めばいいとか、そういう簡単なものではない。というのは、この原子力災害の特殊性というところから見ても、原子力による人的障害というのは因果か非常にむずかしい。原因がわかっても治療法がわからないとか、非常にむずかしい。あるいは晩発性という問題も絡んでおる。それから、これがたくさん事例があるなら研究も進むでしょうけれども、そういうものは起こっても全くまれなことであるということ、それから現在まだ研究段階にあるために治療法が決定的なものとは言えないということ、あるいは専門の医師がわりと少ない、しかも原子力施設はふえつつあるけれども、概してこの原子力施設そのものは大部分が場所も僻地であるということを考えた場合に、賠償法があることは、これはこれで結構だけれども、その裏として医療体制あるいは放射線に対する研究体制、治療法の発見等について対策がなされなければならぬと考えるわけでありますが、当局はこの点についてどのようにお考えですか。
#100
○山野政府委員 ただいまの医療対策もきわめて大切な問題でございまして、私ども関係省庁とこの種の問題には相協力して産業界等を指導していかなければならないというふうに考えておりますが、原子力発電事業者は、被災者に対する除染等を含む応急処置を行うことのできる設備をすべての事業所に設けておりまして、また近接の病院に対しましても平常から産業医を委嘱するなど協力を求めて、緊急時には医師の派遣等によって応急医療を受けさせることができるような措置というのは講じられているとは思いますが、なお一層の充実というものを図る必要があるかと考えます。
 それから、放射線医学総合研究所では、放射線障害者に対しまして直接医療活動を行って、いろいろな経験というようなものを積み重ねておるわけでございますので、今後これらの経験等を生かしてさらに研究を進めてまいりたいというふうに考えております。
 それから直接科学技術庁の関係では、来年度におきまして動燃事業団に緊急医療等の建設の経費というものを計上させていただこうと考えておりますし、それから放射線医学総合研究所にプルトニウムの内部被曝実験等の建設経費というものも政府予算原案に計上いたしておるわけでございまして、このような緊急医療対策あるいは研究の強化というものを図っていきたいと考えております。
 それから、このような緊急医療体制というものも、いま申し上げましたように整備されつつありますけれども、さらに諸外国の動向も考慮に入れまして、国情に合った緊急医療体制というものの整備を関係省庁とも協力して進めていきたいというふうに考えております。
#101
○貝沼委員 これは積極的に進めなければならぬと思います。この原賠法が適用されないそういう事故であっても、やはり研究は大事であるわけですから、これは進めなければなりません。
 いま局長は、諸外国の動向をもにらみ合わせてということだったと思いますが、諸外国のいろいろなデータあるいは情報というものを手に入れようとするときにいつも困る問題は、わが国の情報を提供しなければなかなか手に入れることができない、いわゆるギブ・アンド・テークである、こういうことなんですね。そのためにはやはり諸外国でやっておると同じような方法で、諸外国が日本のデータも参考になると言うようなデータを出していかないと、これは比較になりません。また、向こうの情報を手に入れることもできません。こういうようなところから、やはりただ放医研でもって研究しておるからというだけではなしに、原子力発電所は全国にまたがっておるわけでありますから、全国規模においてやはり研究はなされなければなりません。また、緊急医療体制にしても、ただ、そこの都道府県がよければいいというのではなしに、全国規模においてこれはとられなければなりません。早い話が、Aという原子力発電所で何かが起こったという場合には、そのことが直ちに全国組織の中の中央レベルにきちっと報告され、そして多年研究をしてきた方法によって治療ないしは応急処置がとられるように、しかもその処置が対外的に見ても妥当である、どういうような内容の体制をとっていかなくてはならないと私は思うのです。ただ単に、何か起こった場合はここの病院に担ぎ込み、そして治療すればいい、それから対策を考えてということではいけません。後で申し上げますけれども、トロトラストの問題などは、ドイツは国が一丸となって一つの組織で研究しており、日本の場合は、これは都道府県に分かれてしまっておるということでは比較にならないのですね。したがって、こういうような問題については、むしろ全国組織をもって当たるべきであるということを私は主張したいわけであります。これが一点であります。
 それからもう一点は、先ほど低レベル放射線の人体に与える影響について放医研の方でいろいろ検討しておる、一層力を入れてまいりたい、こういうことでございますけれども、これは一層力を入れていただきたいことを私からも要望しておきたいと思います。
 この二点について答弁を求めます。
#102
○中井説明員 お答えいたします。
 いまの私どもへの御質問は三点あると存じます。
 第一点の緊急時の医療についての研究は、先生もおっしゃいましたように、イリジウムの事故というような経験がございまして、当研究所においてその辺の研究を十分進めております。それと同時に、その経験をもとにいたしまして、そのような緊急時の問題が発生しました場合の今後のマニュアルといったようなものについて詳細の詰めを行っております。なお、それとともに、これは動物実験でございますが、緊急時の場合のたとえばキレート剤の使用の問題あるいは肺洗浄の問題といったようなことにつきまして、放医研の指定研究及び今後実施いたします特別研究でもって研究を進める予定になっております。
 それから、第二番目のトロトラストの問題は、わが国における原爆と並びまして実際上の非常に重要な問題でございまして、放医研におきましては、これは指定研究で研究を実施しておりますし、また、科学技術庁における原子力安全研究協会の研究においても、この方面の研究を実施いたしております。
 三番目の低線量の問題につきましては、これは数年来放医研の重要な特別研究の項目といたしまして、晩発障害及び遺伝障害につきまして低レベルの問題について解明を行っております。
 簡単でございますけれども、以上でございます。
#103
○貝沼委員 もう一点は、先ほどの質問のところでは、ギブ・アンド・テークであるから、これは日本は全国的な組織の上に立っての体制でなければならないということを私は主張しておるわけですが、それでは、あなたの答弁の後、大臣からもお願いします。
#104
○中井説明員 国内外の協力の問題でございますが、まず国外との関係におきましては二点ございまして、一つは研究情報の交換の問題その次は国際共同研究と二つあるかと存じます。
 第一点につきましては、ICRPあるいはIAEAあるいはUNSCEARといったところに私ども参りまして、勧告の作成にも協力いたしておりますし、また、いろいろな研究情報の交換もいたしております。
 なお、国際共同研究につきましては、まだ十分とは言えないと思いますが、一部私どものところでIAEAの主宰のもとにおける国際共同研究を実施しております。
 国内の体制につきましては、もちろん学界を通じての研究もございますし、そのほか、原子力安全研究協会を通じまして特に各大学関係と密接な研究協力をいたしております。
#105
○牧村政府委員 緊急医療の制度につきましては、先生御指摘のように原子力の安全規制と密接な関連がある問題でございます。したがいまして、従来からも事業者等に、その緊急時における被曝の現場における治療の施設等々につきまして指導してきておるわけでございますが、ICRPにおきましても、どういうような段階での医療体制が必要であるかというような問題等の勧告が昨年十二月に出されておるところでございます。
 そこにおきましても、まず第一段階としては、その現場における救急処置第二段階といたしましては、それをサポートする支援病院の設置、それから第三段階といたしましては、放射線障害を受けた人々の治療並びに評価を行うセンターというような構想が打ち出されておるところでございます。したがいまして、私どもといたしましては、このような問題につきまして放射線審議会等におきます検討を今後これから積極的に行っていくとともに、現段階においては特に第一段階、第二段階の充実強化を図るというようなことをぜひ事業者に積極的に指導してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
#106
○貝沼委員 それでトロトラストの話をさっきちょっと出したのですが、これは議事録に残しておいた方がいいと思いますから、私申し上げますけれども、「太平洋戦争直前、戦傷兵の外科手術に際し、負傷部位の血行障害状況を調べる手段として、旧陸海軍が、X線造影剤「トロトラスト」の注射を行った患者の実数は、三万人に及ぶと推定されている。」「「トロトラスト」の注射は、これにより外科手術の作業を容易ならしめた利点があったことは確かであるが、反面次に述べる致命的な一大欠陥を包蔵していたことに対しては、」ここが大事なんですね。「当時の医学的知識水準では、これを殆ど無害と看做し、回復し得ない恐るべき薬害の存在についての適切な配慮を全く欠いていたことは、かえすがえすも遺憾な次第なのであった。」ですから、当時としてはこれは安全であったわけですね。「即ちこの「トロトラスト」の主成分は、放射性物質トリウムであり、現在原子力発電等で重大な社会問題となっている放射性元素プルトニウムと同一種類の放射線、即ちα線を半永久的一半減期百四十億年一に放出する。そのため、一度これを人体内に注入した場合は、「トロトラスト」は永久に人体内に沈着して、絶えず放射線を放出し続ける所謂内部被曝の結果、爾後三十−四十年後には、普通人に比較して、肝癌(二十二倍)白血病(四倍)等を発生させる危険極まりない造影剤なのであった。(因みに昭和二十五年厚生省はその使用を禁止した。)」こうなっております。事実日本と西ドイツは一番多いわけでありますけれども、統計を見ますと、二十年間潜伏しておりまして二十年後発がんした患者数というものは圧倒的にふえておるわけです。
 ところが、その後十数年後西ドイツは下り坂になりました。これはなぜかというと、国家的な施策として、患者一人につき一人のホームドクターをつけてめんどうを見たため少なくなってきたという結果がございます。日本はそういうことはまだやっておりません。さらに西ドイツは、先ほど申し上げましたように、国が一つの組織としてこれに当たっております。ところが、日本の場合はまだそこまでいっておりません。さらに、死亡率を見ましても、日本の場合は世界一高いような状況になっております。こういうところから、トロトラストの問題は非常に大きな問題を持っておるわけでありまして、この方々の救済をしなければならぬということはもちろん第一義であります。
 しかし、それと同時にさらに問題とされておるのはWHOの報告書であります。「ラジウム及びナトリウムの人体に対する長期的影響に関するWHO科学委員会報告書」というのがあります。このWHOの報告書によりますと、「この研究が、原子力産業におけるプルトニウムその他の超ウラン元素の使用に関連性を有することは明らかである。」ということ、また、WHOの勧告の中にも、「これらの研究の結果は公共保健施策、特にプルトニウムおよびアメリシウムその他の超ウラン元素についての一般人口を対象とした線量限度の設定の基礎資料として役立つことが要求される。これらの線量限度を環境衛生との関連において正確に評価することは、原子力産業の発展にとって不可欠の要件である。」というふうに述べられております。
 まだいろいろありますが、要するに、今後人体がこういう被曝を受けることがあってはならないわけでありますし、恐らくないでしょうけれども、こういうふうに考えますと、人体に対する被曝の問題としては非常にまれな、しかもかけがえのない資料となっておるわけでありまして、これをわが国がどのようにとらえて、さらにこの研究結果を生かそうとされるのか、この辺のところは非常に大事だと私は思うわけであります。
 しかも、この方々は、いま申し上げましたように傷痍軍人の方が圧倒的に多いわけでありまして、あと二、三十年もたてば、大体もうその例はなくなるわけであります。したがって、救済が第一義であることは当然だけれども、しかし、いまあるその資料をさらによりよく活用し、そして今後の人体に対する被曝の基準を設定するなり、研究のための重大な資料と私は考えるわけでありますが、この点について当局はどのように受け取っておられますか。
#107
○中井説明員 私より研究面についてだけお答え申し上げたいと思います。
 三点ございまして、第一点のトロトラストの患者は今後の原子力の人体の障害の研究を使命とする上におきまして非常に重要なものであるという点は、全くおっしゃるとおりでございます。
 次に、どのようにして研究を進めていったらよいのかということにつきまして二点ございます。これは人体にかかわります研究でありますために、いわゆる疫学的な研究に属してくるわけでございます。この場合に、大変問題点がございまして、一つは国民感情、特に日本の場合の国民感情をどのように考えて研究を進めていくのかということが第一点であります。
 第二点は、わが国の研究費の使い方と申しますか、たとえば会計検査院等が絡みます研究費の問題、これは量でございませんで、出し方の問題が非常にむずかしゅうございまして、現実にいま申し上げました二点からいたしまして、研究そのものは大変困難を感じている次第でございます。
#108
○山野政府委員 本件についての調査研究は、いま御答弁いたしました放医研において行われておるのみならず、別途原子力平和利用研究委託費による調査研究も行われておるわけでございますが、今後ともできるだけこの関係機関における研究というものを充実しまして、御指摘のように、それらの資料をできるだけ活用して被曝線量あるいは臨床検査といったものについて生かしていきたいというふうに考えております。
#109
○貝沼委員 それで、私はいまどういうふうにやっているかということは知っておるわけですけれども、ただ、先ほどから何回も言っておりますように、日本で得た資料というものが外国では使えないのです。早い話が、検査項目についても、名古屋でやっておる検査項目はこれだけ、あるいはさらに東北でやっている分はこれだけ、九州はこれだけというように、みんなばらばらなんです。こういうことではいけないので、やはりギブ・アンド・テークの考えからいくならば、日本の資料がそのまま外国でも欲しがるようなものでなければなりません。そのためには、全国組織的なものでなければだめじゃありませんかということを私は言っておるわけですから、その点含んでおいていただきたいと思います。
 それから原賠法、この法律のところで二、三お尋ねしておきたいと思いますが、よく聞く言葉ですけれども、原賠法は本来適用されるようなことがあってはならないという言葉なんですね。そういう事故が起こってはならないという意味は私はよくわかりますが、適用されるようなことがあってはならないということになると、ちょっとこれは疑問がありますので、こういう言葉であらわそうとする意味というものを大臣はどういうふうにお考えですか。
#110
○山野政府委員 端的に申し上げれば、適用するようなことがあってはならないというのは原子力損害賠償法によって賠償するような事例、事故があってはならないという趣旨でございまして、政府としましては、御承知のように安全の確保を大前提に進めておるわけでございまして、そういう意味で、本来この法律が適用されるような事例というのは発生するはずはないと考えておるわけでございますが、それでも万々一に備えてそういったふうな制度を設けておるという趣旨でございまして、今後ともこの安全の確保という問題を最重点に考えまして、原賠法を発動して原賠法による賠償を行わなければならないといったふうな事態が発生しないように努力をする、そういう趣旨でございます。
#111
○貝沼委員 それで私は尋ねておるわけです。原賠法が発動されるようなことがあってはならないということなんですけれども、これは場合によっては原賠法をなるべく適用したくないという、原賠法の適用をむずかしくさせることになりはしないかということなんです。だから、原賠法が適用されるけれども、労災法の範囲でやる場合もあるわけですね。その辺のところをもう一度答弁をお願いします。
#112
○山野政府委員 万々一事故が起こった場合には、原賠法をなおかつ適用しないという趣旨ではもちろんないわけでございまして、被害者の救済というものを第一義に考えるわけでございます。労災との組み合わせによって被害者の救済に遺漏なきを期するということには変わりがないわけでございます。そういう意味でこの原賠法を適用するようなことがあってはならないという言葉を使う場合には、その前後にはっきり諸条件というものを明示する必要があろうかと考えます。
#113
○貝沼委員 それから、調整規定のことでちょっとお尋ねしておきたいと思います。この調整規定は附則に入っておりますが、今回の改正では最も大切なところだと私は思うわけです。こういう重要なことが附則に入って本則に入っておらない理由というのはどういうことですか。
#114
○山野政府委員 これはこの内容がきわめて法律技術的な問題であるということで本則ではなく附則になっておるわけでございまして、重要でないから附則に置いたという趣旨ではないわけでございます。重要度においては本則、附則とも変わりがないということでございます。
#115
○貝沼委員 この調整規定には「当分の間、次に定めるところによるものとする。」となっておりますが、この「当分の間」という言葉の意味はどういうことですか。
#116
○山野政府委員 このような問題につきましては、今後労働災害一般の問題と民事賠償の問題でも必要な調整というものが行い得るわけでございまして、そういったことが行われた場合には、それとあわせ再度検討する必要があるという趣旨でございます。それまでの間はこのような暫定的な措置をとるという趣旨でございます。
#117
○貝沼委員 たとえば船員保険法とか国家公務員災害補償法との調整というようなものを考えての「当分の間」とは違いますか。
#118
○山野政府委員 さようではございませんで、一般論との調整という意味でございます。
#119
○貝沼委員 そうすると、やれる範囲ではこれでやっていく。「当分の間」という言葉は、実は意味がたくさんありまして、租税特別措置法などでも「当分の間」という言葉が使われておりますが、これは政策目標達成までという意味も含まれておるわけであります。「当分の間」という言葉は、法律ではよく使われますけれども、私はいつも内容がわかりません。したがって、なるべくならこういうものははっきり書いた方がいいと私は思うのですけれども、この考え方についてはいかがですか。
#120
○山野政府委員 今回の調整と申しますのは、労災保険と原賠法という民事上の損害賠償責任の特殊な分野との間に関係するものでございますが、同一の損害に対する二重てん補の可能性という問題は、労災保険等と民法上の一般の損害賠償責任との間にもあるものでございますので、将来この問題について仮に検討が行われまして何らかの調整が行われることになれば、今回の原子力という特殊な分野における調整についても、それらの問題との関係で見直しが必要であるという意味でこの「当分の間」という言葉を設けたわけでございまして、先生が御質問になっておられるような意味での当分の間という意味ではないわけでございます。当分の間この暫定調整措置でまいりまして、将来見直したあげくこれを弱体化するという趣旨では決してないわけでございますので、その点御理解をいただきたいと存じます。
#121
○貝沼委員 これは統計上の問題ですが、改正案によりますと、労災給付で間に合った原子力損害は、たとえ原子力損害事故であっても労災法が適用される、こうなっておるわけでありますが、表面上は単なる労災事故として処理されて、統計上もう原子力損害事故としては出てこないのではないかという心配があるわけですけれども、原子力事故は原子力事故として統計はきちっと処理されていきますか、その点を尋ねておきます。
#122
○村野説明員 御指摘の統計の問題でございますけれども、これは労災に当たります場合には当然労災の方の統計には出てまいりますが、同時に原子力の事故であるという性格を持っておりますので、原子力事故としての統計がございますれば当然出てまいると思います。ただ、いままで原子力事故という形での統計が正式のものとしてはございませんので、もしそういう事故が発生しました場合には、そういった統計を後でつくるかどうかという問題になってくるかと思います。いずれにしても両方に当たりますので、別に原子力事故としては掲上しないということにはならないと思います。
#123
○貝沼委員 それから労災法について少しお尋ねしておきたいと思います。
 と申しますのは、「原子力事業従業員の原子力災害補償に必要な措置について」という昭和四十年のいわゆる我妻委員会の報告書というものがあるわけでありまして、この中にいろいろと、こうした方がいいという提案がなされております。ところが、それが現在まだなされておりません。そういう観点からお尋ねするわけでありますが、その中に労災法の改正すべき点が述べられております。これは四十年報告でありますが、その後五十年報告においてもやはり同じようなことが述べられております。
 そこで、現在労災法においては、放射線による不妊症とか流産死産、早産、こういったものはどういうふうに取り扱われておりますか。
#124
○原説明員 お答えいたします。
 早産、流産等が放射線障害としてあらわれてくるということは私ども聞いておりますが、労災保険法での補償の体系は、業務との因果関係があることと、それからその損害が本人の稼得能力なり労働能力の損失のてん補という関係になるものについて対象としていくということに制度的になっておりますので、私どもの認定基準でも早産、流産の問題については直接触れておらないわけでございます。
#125
○貝沼委員 まあ、そうなのですけれども、大臣、これは原子力委員長あての報告書なのです。したがって、原子力委員長もこれには関心を持ってもらわなければならないわけであります。昭和四十年に原子力委員長あてに出された「原子力事業従業員の原子力災害補償に必要な措置について」という文書によりますと、「労災法は、従来その補償の対象として「労働能力の喪失又は減少」による損害を補償するという考え方に立脚してきたが、」先ほどの答弁のとおりです。「その基本的考え方を改めて「人間らしい生活を営む能力の喪失又は減少」として補償の対象の拡大を図り、放射線障害による業務起因性の立証される不妊症、流(早、死)産についても補償を行なう必要があろう。」こういう提言になっておるわけであります。これについて大臣は前向きに検討されますか、それとも一蹴されますか。
#126
○山野政府委員 いまおっしゃいます労災保険の補償対象を拡大するという問題は、労災補償制度の基本的な性格に係る重大な問題であろうかと思いますので、労働省の方において検討を進めていかれるべき問題かと存じますか、この早流産等につきましては、原子力損害との因果関係があれば当然原賠法の対象になるようになっておるわけでございますので、被害者を保護するという立場においては、現行制度でも特段のふぐあいというものはないのではないかというふうに考えます。
 労災補償制度の対象拡大の問題というのは、私が答弁するのはいささかふさわしくない問題であるので、その点は御理解いただきたいと思います。
#127
○金子(岩)国務大臣 貝沼先生の御所見はよく理解いたしましたので、ひとつ御期待に沿うように努力を続けます。
#128
○貝沼委員 労働省、いま大臣は努力すると言っておりますが、そうなりますと、この「労働能力の喪失又は減少」ということと、「人間らしい生活を営む能力の喪失又は減少」ということが問題になってきますが、どうですか、前向きに検討されますか。
#129
○中岡説明員 いま先生御指摘になりました問題は、文字どおり重要な問題としてわれわれは従来から認識しておったわけですが、ただ、その報告書にもございますように、労災保険制度という制度の基本的考え方を変えない限りできないものというのもまた事実でございます。われわれとしては、先生のお話もございますので、非常に困難な問題かとは存じますが、慎重にひとつ検討させていただきたいと思っております。
#130
○貝沼委員 それからもう一点労働省に伺っておきたいと思います。
 この報告書の中に、「また、放射線障害の非特異性、潜行性等から、現行の労基法施行規則第三十五条第四号の趣旨を推めて、有害放射線にさらされる業務の内容及び病名を詳細に規定し、一定期間以上その業務に従事した場合には因果関係の証明を不要とするいわゆる「みなし認定制」の確立が望ましい。」となっておるわけですか、これは先ほどの五十一年度になされた措置というものがこれに相当するわけですか、それともほかに考えますか。
#131
○原説明員 御指摘の放射線関係の障害についてのみなし認定的な扱いにつきましては、五十一年の認定基準の改正におきまして明らかにいたしまして、あの認定基準に例挙されているものは、扱いといたしましてはみなし認定的な形になっているわけでございます。
 その後、法制の整備につきましても、関係法令、特に規定がございますのは労働基準法の施行規則三十五条でございますが、その改正を昨年実施しまして、昨年の四月から実施いたしたわけでございますが、この中で、放射線障害等についても症状等を列記をいたしておりまして、それと以前の認定基準との関係でみなし認定的な扱いが明らかになってきているわけでございます。
#132
○貝沼委員 それから、先ほど質問にも出ておりましたが、認定補助機関の設定の問題でありますけれども、これは質問がありましたので、私くどくど申しません。やはり設けた方がよろしいと私は考えます。したがって、それは前向きに検討されることを望みたいと思います。
 時間がなくなってまいりましたので、あと一点だけ伺っておきたいと思いますが、五十三年六月に「放射線作業従事者等の健康診断のあり方について」という放射線作業従事者等健康診断検討会からの報告が出ておるわけでございます。この報告の内容は、従来のものと比較いたしてみますと非常に緩和された内容になっておるわけであります。たとえば「年間四回行っている就業中定期放射線健康診断の頻度を一回でよい。」こう言っておりますね。それから「現在、実施している皮膚の診断は医師が必要と認めた時だけ行う。」とか、大幅緩和を打ち出しておるわけでありますが、これは牧村局長あてになっておりますけれども、科技庁としては、これをどういうふうに受けとめておりますか。
#133
○牧村政府委員 先生御指摘のとおりでございますが、この作業グループにお願いいたしまして、いろいろ健康診断につきまして、いまのあり方がいいのかどうか、それからICRPでは新しい勧告として若干緩和の線を出しておるが、それを日本で当てはめた場合に、最近の医学の進歩等を考えた場合にどうあるべきかということで、専門の医学者を中心にいたしまして検討をお願いした結果、先生御指摘のような回答が私のところへ提出されておるところでございます。
 その中で、健康診断につきましては、現行法令におきましてやっております検査、健康診断等は緩和しても差し支えないと考えるというようなことを言っておるわけでございますけれども、私どもといたしましては、一見この健康管理等を緩和する方向で国民の方々あるいは原子力事業に従事される方々のコンセンサスが得られるかどうかの問題もあるわけでございますので、この報告については慎重な対応をいたしてまいりたいというふうに考えておりまして、現在におきましても、関係いたしております労働組合の方々の意見を聞くなどしておるところでございまして、まだ役所として結論を出していないわけでございます。
 この点につきましては、関係する省庁も数多くございますし、そういうところの意見等も踏まえつつ、場合によりましては再度放射線審議会に御検討をいただく、あるいは制度の基本にもかかわることにつきましては安全委員会の御意見も徴すというような慎重な態度で対処してまいりたいと考えております。
 いずれにいたしましても、今回のICRPの新しい勧告におきましては、これ以外にも被曝線量を管理する基準につきまして、たとえば現行の日本で行っております三カ月三レムにつきましてはもう必要ない、年間五レムで管理すればいいというような、あたかも緩和の感じにとれる勧告も出ておるわけでございますので、これをわが国の法制にどうなじませていくかということにつきましては、この問題を含めまして慎重に対応していきたいと考えておるところでございます。
#134
○貝沼委員 その答弁のとおり、慎重にやっていただきたいと私は思います。特にこういう大幅の緩和、後退ということは、学者の中からもずいぶん批判の声が出ておりますし、それから、いま顔を逆なでするようなことをやるべきではないと私は考えますし、それからもう一つは、放射線障害防止法ができて以来二十年の間やってきた、このことが、一片の報告書によって四回か一回にぽんと変わるというようなことになりますと、いままで一体何をやってきたということになるでしょうし、私どもは、余りにも歴史というものの見方が甘いような気もいたします。したがって、いまの答弁のとおり、慎重に対処されることを望みたいと思います。
 以上で終わります。
#135
○大橋委員長 貝沼次郎君の質疑は終了いたしました。
 この際、暫時休憩いたします。
    午後零時五十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時五十分開議
#136
○大橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。渡部行雄君。
#137
○渡部(行)委員 まず、長官にお伺いいたしますが、長官は、原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律案の提案理由説明の中で、原子力の開発利用を進める上で安全の確保を図ることか大前提であると申されましたが、具体的に安全確保の中身について御説明をお願いいたします。
#138
○金子(岩)国務大臣 安全規制については、原子炉の設置許可、設計工事方法の認可、使用前検査、定期検査の実施等、一連の施設に関する規制が行われているほか、保安規定の認可等、その運用についても所要の規制が行われています。これらの諸手続を行うに際しましては、厳正な安全審査、検査を実施する等、安全性の確保につき慎重な配慮を払ってきたところであります。今後とも安全の確保に遺漏なきを期してまいりたいという所存であります。
#139
○渡部(行)委員 そこで、私は一応安全という問題についてある程度明確にしておく必要があろうと思うわけであります。つまり、われわれの周囲にあるもので絶対安全というものはないと思うわけであります。たとえば毎日食べておる御飯にしても食い過ぎれば健康を害しますし、こうしてさわっておる紙にいたしましても、たまにこれで手を切ることさえあるわけであります。このように、すべてのものというのは安全と危険とがうらはらに絶えず存在しておることは否めない事実でございます。
 そこで、科学技術庁は、この危険度が容認できる水準以下である場合またはこの危険性が人間によって管理できる場合に、これを一応安全であると定義づけておるようでありますが、私は果たしてこれだけでよいだろうか、またこの思想を原子力という特殊なものにまで発展させてよいだろうか、非常に疑問があるわけであります。なぜならば、原子力以外の場合は、危険か継続して蓄積されるというようなことはないのであります。しかし、原子力の場合は、御存じのとおり必ず放射線利用に伴うものでありまして、これは現代においては許容限度内の安全性が保たれたといたしましても、これから遠い二千年あるいは三千年の将来に対して考えますときに、その影響というものは非常に莫大なものがあるのではないだろうか。また、それに対する疑問はとうてい消えないのであります。ましてや今日地球上の核爆弾の量あるいはこれからさらに開発されるであろう原子力利用の世界的な趨勢というものを思いますときに、果たして、われわれは後世の子孫や人類に責任が負えるだろうか、こういうふうに考えますと、この「安全」という二字をめぐる問題は、まさに人類史上の重大な論争として残るものではないかと思うわけであります。そういう点について、もう一度長官の所信のほどをお伺いいたします。
#140
○牧村政府委員 少しく中身につきまして私から御説明さしていただきます。
 確かに工学的に申し上げましても、この科学技術が進んでおります現段階で、原子力におきまして一〇〇%の絶対安全をいまの時点で確保できるかという御質問であれば、これは一〇〇%でないかもしれません。しかし、原子力につきましては、そのスタートのときからの考え方は、事前にその安全性につきまして十分安全のアセスメントをした上で、しかも原子炉を設置するような場合には、科学的には考えられないような事故を想定もいたしまして、その想定のもとにおいても、たとえば敷地の境界を十分とるというようなこと、あるいは原子力施設そのものを厳重な二重、三重な囲いで囲むというようなことを、それぞれ非常に細かい安全の配慮を加えました上で、地域住民に対しましても、そのような考えられないような事故が起きても影響を与えないということを事前にアセスメントをした上で設置を許可するというふうな考え方で進んでおるところでございます。したがいまして、他の原子力以外のいろいろな危険に対する考え方は最近では非常に進んでまいりましたけれども、なお原子力がその面におきましては最も厳しく対応しておるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
 それから、ただそれだけで十分であるかということになりますと、なお新しい技術をどんどん取り入れていっております原子力でございますので、私どもとしては安全研究を十分推進いたしまして、そういう知見に基づいてまた安全規制を見直していくというふうな態度で進めておるところでございます。
 また、先生御指摘のように、放射線の影響というものは、単にその時点において影響を受けるだけではなくて、いわゆる晩発的な効果もあるわけでございますが、これにつきましても、放射線を人類が使うようになりましてから相当の歴史的な経験も持っておりまして、国際的にはICRPという学会の場で、いままでの試験研究の結果等を国際的な学者の中で十分議論した結果をそのICRPの勧告という形で、国際的に出されておる規制の基準の考え方、こういうものを法令に積極的に取り入れて対処しておるところでございまして、私どもとしては厳重な安全規制を進めるという体制のもとにおきまして、原子力はその細心の注意を払うことによって安全確保がし得るものというふうな考え方のもとに推進をし、また規制をする私どもの立場におきましても十分な規制を進めていきたい、このような考え方で進めておるところでございます。
#141
○渡部(行)委員 大臣。
#142
○金子(岩)国務大臣 御指摘のとおり一〇〇%安全が確保、確立されるかということにつきましては、全く私も御指摘のとおり考えます。
 そこで、わが国が原子力の平和利用についてこれ以上研究開発を推進するためには、何としても安全の確保を図ることが大前提でございますので、屋上屋を重ねるような形になる場合もあるかもしれませんけれども、やはり行政庁の責任だけにこれをお任せするということはいささか不安もあります。そこで、原子力委員会と安全委員会というものが別に発足いたしておりまして、この原子力安全委員会の委員のメンバーは、それぞれ放射線医学を初め、専門的な、いわゆる高度の知識層の方を集めて構成をしておるのでございまして、ここでダブルチェックをやって念には念を入れ、そして一〇〇%安全を目標として、最善を尽くしていく、こういう段取りをいたしておるのでございます。日本だけでなくて、世界的な科学技術の進歩を考えますと、やがては一〇〇%安全の時代も来るのじゃないでしょうか、それまではやはりずっと精力的に努力を続けていかなければならない、このように考えております。
#143
○渡部(行)委員 これはどういう対策があるから安心していい、こういうような問題として私は議論をするのではなくて、この核というもの、放射線というものの持つ人類に与える影響としての一つの歴史的な意義について私は議論しておるわけでございます。したがって、ただわれわれが一時的にはまあそれほど被害はないだろうということが言い得ても、実際にこの地球全体を考えた場合に、年々地球上の放射能が増している、放射線が蓄積されている、こういうふうになっていった場合、将来一体どうなるだろうか、こういう心配が出るわけでございます。
 そこで、原子力というものについては、やはり最小限度にとどめるという、それは絶対にやむを得ない限度の中でという思想がここにないと、これから再処理工場の開発等がどんどんとされていく、そこにブレーキがかからないような状態でこれが突っ走った場合に、何といいますか、そういう一つの力学的な、ますますエスカレートする、開発に加速が加わる、こういうような状態になることを私は非常に恐れているわけです。この核というものは、大臣御承知のように、その物理的な性質から言っても科学的な性質から言っても、絶対安全という域には達しないと思うのです。そういう特殊なものだけに、とてもいまの科学ではこれを完全に処理できる能力はない。そういう中でその良心的な歯どめをなくして、この開発に追い込むようなことになれば大変な事態に追い込まれるのではないか。こういう意味でのまずその思想としての議論を私はしたわけでありますので、その点についてもう一度お願いいたします。
#144
○牧村政府委員 大変むずかしい御質問であろうかと思いますが、私、安全行政を担当しております者として、先生の御懸念に対しましての御答弁としては、原子力がエネルギーの事情から申しましても、当面の問題として石油の代替エネルギーとしてどうしても必要であるということで、いま開発が進められておる。その原子力に対していかなる安全規制を進めていかなければいけないかというときに、私どもといたしましては、できるだけ可能な限りそこに働く従業員はもとより一般国民が放射線の害を受けないようにしていくかということを考えることが最も大事ではないか、しかも、その量にいたしましても、科学技術の進歩に伴いまして、可能な限りそれを少なくしていくというような姿勢で進めなければならないものではなかろうかというふうに考える次第でございます。
#145
○渡部(行)委員 先ほど国際放射線防護委員会、いわゆるICRPが勧告した線に沿ってやっておるのだから差し支えない、こういうような御答弁がありました。しかし、午前中の御答弁を聞いていますと、三カ月に三レムまではよいのだ、あるいは一年間に五レムまでは差し支えない、こういう勧告だから別段年間通じて問題はないのだ、こういうことを言われましたけれども、これは科学技術庁の出したパンフレットですが、この中には「放射線の被曝は線量の合計が同じでも、短期被曝の方が長期被曝より影響ははるかに大きい。つまり、被曝線量のほかに、どれだけの期間にそれを受けたかが大きな意味を持つわけである。」と書いてあるわけです。
 こうなると、年間通じて五レムだけ受けてもいいという、これはなるほどずっとこれを一年に薄めていけば大したことはないでしょうが、一時にこれを受けたとすれば相当な障害が出るのではないか、あるいはその前の年に四レムだけ被曝していて、そしてその一日越えた新しい年にすぐ五レム被曝した場合には、一体そういう考え方でこの安全性を守ることができるのか、そういう問題が当然に出てくると私は思うのですが、その辺に対する御答弁をお願いします。
#146
○牧村政府委員 先ほど私の答弁の中で、日本の法規では現在三カ月最大三レム、それで年間に直しますと五レムを超えるようであってはいけないという体系で規制をしておることを申し上げました。最近のICRPの勧告におきましては、その三カ月三レムというものを特に規定する必要はないというふうな、年間五レムでやれば十分安全を確保できるというような趣旨の勧告が出ておるわけでございますが、これにつきましては、日本でそれを採用しておるわけではございませんので、今後なお慎重に検討の上、放射線審議会等の議を経て、国がもしこれを採用する場合には、審議会の結論を待って法令等の改正が必要になるわけでございます。
 そこで、ただいま先生御指摘の年間四レムを被曝しておって、次の年五レム短期間に浴びた場合という問題でございますが、ICRPの考え方では、短期にこの程度の放射線を浴びて影響が出てくる、そういうことにつきまして、必ずしも医学的に現段階において出てくるという確証もないわけでございます。そういうようなことから、このような考え方が出されておると思っておりますけれども、そのようなものを日本に採用する場合に、現在、二十年間この方式を採用してきておるわけでございますので、いろいろ慎重な配慮の必要があるものというふうに考えておるところでございます。
#147
○渡部(行)委員 そこで出したパンフレットで、いま読んだことですが、こういうものが正しいとすれば、やはり常に慎重に、そしてなるべく短期的被曝を避けるような配慮というものが大事ではないか、こういうふうに考えますので、その辺は、これからの指導の上で十分強めていただきたいと思います。
 次は、長官にお願いいたしますが、「被害者の保護に遺漏なきを期すことにより国民の不安感を除去するとともに、原子力事業の健全な発展に資する」云々と提案理由の中で述べられております。つまり、この原賠法ができれば国民の不安感を除去することができるという認識、そしてまた、原子力事業の健全な発展に資することができるという認識でございますが、本当に長官は除去できると思っておるのでしょうか。また、原子力事業の健全な発展などというものが果たしてあり得るのだろうか、こういうことを本気で考えておられるのかどうか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
#148
○山野政府委員 まず、不安感の除去の点でございますが、これは原子力の開発利用を進めるに当たりまして、原子力に対する国民の不安を払拭することが非常に重要であるという点で申し上げているわけでございます。その方法としまして、万一原子力損害が生じた場合の備えとしてこの原子力損害賠償法が定められておるということをそこに説明したにとどまるものでございまして、その大前提としまして、原子力開発利用を進めるに際しましては、絶えず安全の確保を図るということがあるわけでございますので、原子力損害賠償法を発動しなければならないような事態が生じないように安全の確保に万全を期することが肝要であるということは、その大前提としてあるわけでございます。こういう確立された安全規制と、それから今回お願いしております賠償制度、この両方を一体としまして国民の不安感を除去できるというふうに考えておるものでございます。
 それから、いま一つの健全なる原子力事業の発展という点でございますが、これはこの原賠法の法体制としまして、原子力損害というものを原子力事業者に集中的に賠償責任を負わせておるわけでございまして、何らかの原子力損害が万々一起こりました場合には、原子力事業者、原子炉の運転等を行っておる者が集中的に責任を負うわけでございまして、機器等を納入しております原子力産業の方には賠償責任は及ばないというふうに仕組んであるわけでございます。そういう意味におきまして、この原賠法というものは、一面におきましてそのような原子力産業を助成する、あるいは保護するという観点があろうかと考えております。
#149
○渡部(行)委員 私が大臣に聞いたときには、まず大臣の答弁を待って、その答弁が不足しておった場合に局長が補足するというなら話はわかるけれども、大臣の答弁を横取りしてやるようなことはこれからやめてほしい。
 そこで、この不安感というものを除去できるというのは、安全性が完全に確保されたというときに初めて不安感が国民からなくなっていく。しかし、原賠法が適用されるというのは、すでに事故が起きたときに適用されるのであるわけです。そうすると、事故の起きたときに適用する、いわゆる事故を前提とした法律によってどうして国民の不安感を除去することができるのか、非常にここに論理の矛盾があるのではないかと私は思うのです。
 そこで、むしろ私はこの点は、国民の不安感を緩和するとともに、仮にそういう事故が起きても、こういう補償制度があるから泣き寝入りする必要はないのだよということで、ある程度不安ではあるが、しかし、そういうもので緩和される、こういうことが正しいのじゃないかと思うのです。だから、この不安感を緩和するとともに、やむを得ざるものとして原子力事業の推進に資することが必要であると言った方が正しいのではないだろうか、これについて大臣の所信をお伺いします。
#150
○金子(岩)国務大臣 私は文学者じゃないから、文章をどういうふうに書いた方が、あるいは読んだ方が、受ける感じがどのような成果を上げるかということは、そこまで判断はつきませんけれども、ただ、この法律を御審議いただいておるのは、先ほどから渡部先生も申されておるとおり、一〇〇%安全だということはないのだということは、そのとおり私もそれは同感でございます。一〇〇%安全が確立されないのだとするならば、万が一の場合には何をもって償いをするかということもあわせて考えなければ、これを開発あるいは研究をしていく、あるいはこれを事業としていく、仮に原発のごときですね、こういう事業を推進する事業者にとりましても、万が一の場合にはやはりこのような手だてをしてというような考え方でこの法律は改正しようとするものでございますので、先ほどから渡部先生は思想的な問題をいろいろ申されておりましたけれども、日本の場合、石油代替を何に求めるかというと、いまのところさしあたって原子力によってこれを補完しなければめどは立たないのじゃないでしょうか。そういう考え方で私どもは、いろいろ問題はありましても、やはり世界的にこれの研究開発、将来絶対安全が確立されるものとして研究開発を進めておるわけでございますから、世界の先進諸国に劣らないように、わが国でも積極的にこれに取り組んでいくことが、将来のわが国のあらゆる面においての重要な課題であろうかと思うのでございます。
#151
○渡部(行)委員 石油エネルギーの代替エネルギーとして開発をするというのは、これは何回か繰り返し論じられておりますので、きょうはここで原賠法についての質問ですから、この論争は避けたいと思います。ただ一言、石油の代替エネルギーとして一般には考えられておりますが、ウラン原料そのものが有限であり、しかも石油が掘り尽くされてなくなる以前になくなるのではないかとさえ言われておるわけですから、その辺は非常に議論のあるところでありますことを一応ここで申し述べて、次に移りたいと思います。
 本法律案の原子力損害とは、具体的に言えばどういうことを指しているのか。つまり放射線障害には身体的影響あるいは遺伝的影響があるわけでございます。しかも、その中で早発性の効果あるいは晩発性の効果というふうに分けられておるわけですが、こういう複雑な影響の中で、どこからこれが原子力被害であると認定できるのか。その範囲と申しますか、その境界線というか、その線引きはどういうふうにされておるのか、具体的にお伺いしたいと思います。
#152
○山野政府委員 原子力損害の範囲と申しますのは、原賠法に規定されておりますように原子核分裂の過程の作用による損害でありまして、これにつきましては、原子核分裂の連鎖反応に際して発生する放射線による損害及びその際発生する熱的エネルギーまたは機械的エネルギーによる損害、それから第二が核燃料物質等の放射線の作用による損害でございまして、これにつきましては、核燃料物質等の放射線の作用による損害の中身としまして核燃料物質、原子核分裂生成物等の放射線による損害、第三が核燃料物質等の毒性的作用による損害でございまして、これにつきましては、核燃料物質そのものの性質による毒性的作用による損害で、その摂取、吸入等による内臓の障害等というふうになっておるわけでございますが、この損害には、先生御指摘のように、身体的な損害だけではなく、精神的な損害あるいは物的な損害も含まれるわけでございまして、放射線の作用と疾病との間に因果関係のある限りにおいて、御指摘の晩発性の障害というものもこの損害に含まれるわけでございます。
 それで、この原子力の損害というものが発生しました場合に、どこまでが原子力損害でどこから先が原子力損害でないかという先生のおっしゃいます線引きという点でございますが、これはただいま申し上げました原賠法の規定の解釈の問題でございまして、一義的にはこれは原子力事業者と被害者の間で被害者の請求に応じて話し合われて決められるべき問題でございまして、もし当時者間で話し合いのつかないといったふうな場合には、政府で設置する紛争審査会等でこの和解の仲介を図ることもございましょうし、あるいはこの法律の解釈の問題としまして、最後は裁判所の判断を待つといったふうなこともあろうかと存じます。
 これに加えまして、けさほど来この認定の基準といったふうなものをつくるのはどうであろうかという問題が論議されておるわけでございますが、これにつきましては、過去にこのような原子力損害の事例というのはもちろんないわけでございまして、今後発生するものをいろいろ予測しながら行うわけでございますので、この想定されます損害がきわめて多種多様である、広範囲にわたるという意味におきまして、なかなか一律的な基準というものはつくるのが大変むずかしい問題でございますし、もともと本件は原子力事業者と被害者の間のいわば民事に属する問題でございまして、その認定の中身まで政府が積極的に立ち入るということは妥当でないという面もございますので、この問題につきましては、国としましては、低レベルの放射線の影響といったふうな、今後この認定に活用できる研究というものにつきまして大いにこれを進めてまいりまして、それらの成果を活用しながら御指摘のようなものが次第に整備されていくといったふうなことを期してまいりたいというふうに考えております。
#153
○渡部(行)委員 そこで、この損害というものは、いま申されたような原因によってできた場合、一体患者がそういう症状を訴えて、その症状の度合いによってその原因を追求していくのか、その患者がすでに働いてきた生活の経緯を記録しておいて原因を究明していくのか、その辺はどうなんでしょうか。
#154
○山野政府委員 被害者が原子力事業者に賠償を請求するに際しまして因果関係を立証するに際しまして、いま先生御指摘のような過去の被曝の記録といったふうなものも、当然証拠として示すことになるというふうに考えますので、いまあらゆるケースに該当する問題として一般論としてお答えはできないかもしれませんが、御指摘の被曝記録といったふうなものは、因果関係を立証する上できわめて大きな決め手になるべき問題ではなかろうかと考えております。
#155
○渡部(行)委員 そこで、先ほどそういう問題の中身に入っては民事に任せる。いわゆる民事に任せるということは、言葉をかえて言えば、民事訴訟によって民法上の損害賠償の請求をさせる、こういうことだろうと思います。そういうことに任せるということになれば、ますますこの不安感は除去されないわけでございます。大体今日の日本の裁判というのは、長いのになると十年以上、民事でさえかかっておるのでございます。そういう状況の中で、この緊急な措置を必要とする原子力損害の被害者に対して、民事裁判に持ち込ませるようなそういうものにゆだねておくということは、私は対策が非常に消極的ではないか、むしろある一つのケースを想定して、推定して、そういうものに当てはまる場合はそこで認定を速やかにやる、そしてまず被害者についての補償をやっていく、こういう積極的な姿勢が必要ではないかと思うわけですが、その辺は一体どうなんでしょうか。
#156
○山野政府委員 当事者間で話し合いがつかない場合に、直ちに訴訟に持ち込むということではなくて、先ほど申し上げましたように、原子力損害賠償紛争審査会といったふうなものも活用しまして、この紛争審査会は、原子力損害の賠償に関する紛争について和解の仲介をするということで政府に臨時の付属機関として設けることになっておるわけでございますが、このような機関も積極的に活用しまして、できるだけ裁判所に持ち込む前に和解が成立するように、事案が円満裏に解決できるように努力をしたいと思っております。
#157
○渡部(行)委員 この問題は、いろいろな問題にかかわりを持ちますので、また後で若干蒸し返すことがあるかもしれませんが、時間の関係もありますので、次に移らせていただきます。
 原子力事業者と被害者の因果関係についてでありますが、これはこの法律案で原子力事業者への責任集中をうたっているわけでございます。その際、たとえば被害者が複数の事業所で数次にわたって作業をし、その結果障害をこうむった場合、その責任はどこに集中されていくのか、あるいはまた核ジャック等によりまして、その結果国民に大きな被害を与えたような場合は、一体その賠償責任はどこにあるのか、その核ジャックをした本人が今度は障害を受けたような場合、その核ジャックした犯人に対する賠償はやるのかやらないのか、そういう問題についてひとつ具体的に御説明願いたいと思います。
#158
○山野政府委員 まず、原子力事業者の複数にまたがって被曝をしたことが原因で原子力損害が発生したという場合の賠償責任でございますが、これは両者、つまり両原子力事業者の連帯責任によって賠償が行われるということになろうかと思います。
 それから、原子力事業者が核ジャック等によって原子力損害が発生したという場合でございますが、原子炉等の運転等の際に核ジャックのような第三者の行為によって生じた損害が原子力損害であれば、これは当然原賠法の賠償の対象になろうかと思います。しかし、核ジャックによって核物質が盗まれまして、その後それによって損害が生じたという場合に、これが法律で言っております因果関係の範囲にあるかどうか、つまり原子炉の運転等に際して発生した原子力損害と言えるかどうか、これは個々のケースに従って判断されるべき問題でありまして、画一的に申し上げることはなかなかむずかしかろうと思います。
#159
○渡部(行)委員 核ジャックによって犯人がみずから被害を受けた場合は、因果関係によって判断がむずかしいと言われましたが、しかしこれはどうなのでしょうか。その因果というのは、つまり事業所が不完全なために、たとえばプルトニウムなりその他の放射性物質が運び去られた、その結果運び去った人が被曝した、これは被曝というまさに原子力障害に間違いないわけです。ただ、そこに犯行という違法行為が存在するだけであって、この原賠法の言ういわゆる原子力障害者に対する賠償というものと、その違法行為は別の次元のものだと私は思いますが、その辺はどうでしょうか。
#160
○村野説明員 御質問は、たとえば核ジャッカーがそういったものを盗んでみずから被曝した場合に原賠法上の請求ができるかどうかという問題だと思いますが、原賠法の規定に直接そういったものを規定しておる条文はないわけでございますけれども、一般に不法行為の場合、人の不法行為によって損害を受けた者が損害賠償の請求をする場合にも、その受けた本人にいろいろ責任がある、たとえば過失があったという場合には、過失相殺といった一般的な法理論によります相殺規定がございますために、いまおっしゃった例でいきますと、まず不法行為をした側、違法行為をした側については請求権は相殺されてしまうのではないかというふうに思うわけでございます。
#161
○渡部(行)委員 そこで、話が変わりますけれども、いままで従業員いわゆる原子力事業所に働く従事者については、原賠法の適用がなくて労災法で救済をしておったわけでございますけれども、今度の法律からこれが適用されるということになったわけであります。今回適用になったということは、いままでの労働者災害補償保険法によってはなかなか救済しがたい面がある、つまりカバーし切れない面があるということが想定され、かつまた、こういう原子力障害というのは一般の障害とは質的に違うのだ、こういう思想から今日従業員を対象に入れたと思うのですが、その点はどうなのでしょうか。
#162
○山野政府委員 従来、従業員が業務上受けた損害につきましては労働者災害補償制度のみによっておったわけでございますが、この労災法の制度は、労働者の稼得能力の喪失を補償するという性格のものであり、かつまた、一定の限度以上のものは支給されないということになっておりますので、労災補償でカバーし切れないような損害、つまり慰謝料であるとか遺伝障害であるとか流産、早産といった問題につきましては原賠法による賠償を受けられるようにしようというのが今回の法改正の趣旨でございまして、これによりまして、従業員も、単に稼得能力の喪失のみならず、あらゆる損害について賠償の請求ができるというふうになるものでございます。
#163
○渡部(行)委員 その点は、私は今度の法律というのは非常に進歩しておると思いますけれども、ただここで、労災法で補償し切れない面を原賠法で補償するということの意味は、原賠法のいわゆる原子力障害というものは、労災法のいまの基準で考えていった場合、とてもその基準に当てはまらない面が相当出てくるだろう。もちろん労災法というのは、実際に受けた障害について実損だけの補償に終わっておるわけです。慰謝料とか、そういうものは一切考えられていない。その点、原賠法は労災法の適用範囲を超える部分があると考えられることは、つまり慰謝料等の精神的な補償も含んで考えていい、こういうふうに解釈していいのでしょうか。
#164
○山野政府委員 労災の場合に加わるものとしましては、ただいま御指摘の精神的な損害はもちろんでございますが、さらにそれに加えまして物的損害というのも対象になります。
#165
○渡部(行)委員 そこで、従業員の障害についての認定は、どの機関でどのような基準に基づいて行われるのか、その最初から最後の確定までの流れをわかりやすく具体的に御説明してくださいませんか。
#166
○山野政府委員 原子力損害が発生いたしますと、まずこれに原賠法が適用されるわけでございますが、従業員の場合につきましては労災が先行するということでございますので、労災は通常、年金になっておるわけでございますから、この受けるべき損害賠償額の全額から将来取得すべき年金相当額というものを差し引きまして、そのものをまず原賠法で支給をする。そしてこの労災給付されるべき年金と申しますのは、その後で各年給付が行われまして、給付が完全に終了したところで補償は完結したということになるわけでございます。もしこの労災による年金の支給というものが何らかの事情で途中で打ち切られるというふうな事態が発生しました場合には、その時点で改めてその差額を原賠法により支弁をする、こういった仕組みになろうかと考えます。
#167
○渡部(行)委員 そこで、労災法を先行させて、そして労災法の支給が終わって、その足らない点は原賠法ということになると、いろいろな問題が出てくると私は思うわけでございます。労災法は、先ほど言ったように非常に低い格づけで、精神的とか物質的とか、そういう補償なしに補償額を決めていくわけです。そこで被害者がそれについて不服があれば、これは裁判に持ち込まなければならない。裁判に持ち込まれた場合、その判決というものはこれまた何年先に延びるのかわからない。そうした場合、受けたこの被害について即座にというか、比較的速やかに補償していくということにはならなくなって、むしろこういうシステムが逆に原賠法の適用を先へ引き延ばす役割りを果たしているのではないか、こういうふうに考えるのですが、この辺はどうでしょうか。
#168
○山野政府委員 労災でカバーし切れないものというのは二種類ありまして、一つは、範囲としまして労災では救済し得ない範囲、つまり精神的な損害と物的損害というものでございますが、これは原賠法によりまして直ちに賠償が実行されるわけでございます。それに加えて、労災の対象になるけれども、労災の方は金額的に限度がございますので、その限度を超えてしまう部分があるという場合に、この限度を超える部分につきまして、先ほど私が申し上げましたように、将来労災で年金としてもらうものは控除しまして残額をさらに原賠法で支給をする。それ以降、年金が支給されるに従いましてこの賠償責任というものはそれだけ減額をしてまいりまして、年金の支給が完全に完了しました時点でそのような稼得能力の喪失に伴う損害というものが完全に賠償される、このような仕組みになっておるわけでございます。
#169
○渡部(行)委員 そこで、私は提案したいのですが、これを逆さまにして考えてみてはどうか。つまり原賠法を優先させて考えて、被害者については即座に原賠法の範囲で補償をしていく、そして労災に適用される部分については、後からその分を労災保険会社との間で相殺をしていく。そうしていけばこれは非常に速やかに解決するし、むしろ少しくらい不満があっても訴訟に及ぶというようなことなしに解決されるのではないだろうか。そうでないと、ややもすると、中間に必ずといっていいくらい訴訟事件が起こる危険性がいまのシステムではあるのではないか、こういうふうに考えられるわけですが、その点はいかがでしょうか。
#170
○山野政府委員 労災保険制度といえども、これは労働災害の迅速な救助、救済というものを目的として設けられているものでございまして、労災を先行させたことによりまして被害者の救済が円滑を欠くような事態になるというふうには考えていないわけでございまして、この労災と原賠法の関係につきましては、原子力委員会の中に設けました担当の懇談会でもって慎重に検討をしました結果、労災給付を先行させて、これでカバーし切れないものについて原賠法で賠償するというふうに調整されて、今回の改正法をつくったわけでございまして、こういうふうなことをすることによって特に被災者の救済が遅延する、あるいは円滑を欠くということにはならないと考えております。将来ともこの労災法、労災保険制度が労働災害を迅速に救済するという方向で運用されるものというふうに考えておりますので、このシステムによりましても、先生のおっしゃいます趣旨は確保し得るというふうに考えております。
#171
○渡部(行)委員 考えるということについては、これは人の考えだからどうにもならないわけですが、しかし現実にいま労災の適用をめぐって訴訟事件が各所に起きていることは御承知だろうと思います。労災にいたしましても、なかなか認定しがたい場合もあろうかと私は思うのです。というのは、たとえば自然突然変異と放射線誘発突然変異をどこでどう区別して認定できるのか。今日の医学では、これは区別できないとされておるわけですよ。そうした場合に、労災では、保険会社では、一体その人が原子力障害者であるかどうかというデータも何も持たないという場合に、自分の設けた基準で勝手に相手の病状をはかっていったならば、ここにどうもしっくり合わないというものがやはり出てくるのではないか。その障害の質的なものが普通の労災と原子力障害とは違っておるわけです。そういうものが違っておれば違っておるなりに、それにしっくりとした対応の仕方というのは、むしろ原子力専門委員会とかあるいは紛争処理委員会とか、そういう一つの専門機関でまず最初に原賠法を適用してやる。そうして後は、時間をかけても何してもいいでしょう。そうして一時給付した金額というものは後から今度は労災の保険会社と相殺すれば、どこにも何ら迷惑をかけるものではない。しかも、原賠法の対象は、先ほども何回か繰り返されているように物的、精神的な補償まで考えている、こうなると、この法を先行させていけば慰謝料の請求を訴訟しなくても、ある程度ここで解決ができていく、こういうふうに私は考えるのですが、その辺はどうでしょうか。
#172
○山野政府委員 まず認定の問題でございますが、因果関係の立証が大変むずかしい場合があるということは一般論として言えることでございまして、原賠法による場合も労災保険による場合も、ケースとして認定の非常にむずかしいケースがあるということは同じであろうかと思うのでございます。
 いま一つ、そういう意味でもし当事者間でなかなか話し合いがつかないという場合に、最後の手段として訴訟に持ち込まれるという事情につきましては、これは原賠法も労災補償制度も全く同じような事情にあるというふうに考えておるわけでございます。
 なお、今回労災の方を先行させるというふうな制度にしましたのは、新しく原子力の従業員を原子力損害の対象に加えることによりまして、一般第三者のための賠償措置額というものが実質大きく減少してはいけないという配慮もありまして、従業員につきましてはまず原賠法を先行させるという方がよかろうという判断をしたのでございます。
 それからいま一つ、訴訟に持ち込みます前に、できるだけそのような手段によらないで早期に円満に事案を解決するということが望ましいわけでございますので、そういう意味で、原賠法の方は紛争審査会といったふうな制度もございますが、労災保険の方は国が直接当事者でもございますので、できるだけ被害者を保護するという観点からいろいろな努力というものが当然行われておるというふうに理解しております。
#173
○渡部(行)委員 ちょっと私理解できないのです。労災法を先行させても原賠法を先行させても同じだということですが、何かあるのですか。
#174
○山野政府委員 大変失礼しました。私言い違いをしたようでございまして、原賠法先行と言ったようでございますが労災法先行というのが正しいわけでございますので、訂正させていただきます。
#175
○渡部(行)委員 そこで、原賠法の対象というのは、たとえば原賠法から見ればこの被害額は八十万円です。その際労災の立場から見ると四十万である。四十万円から解決していくのと八十万円から解決していくのと、この順序が違っただけで相当違うのですが、どっちから見ても同じだというような考え方はどうしても承服できないのです。まず八十万円を原子力損害賠償法によって先に補償して支払ってやる。そしてあとの四十万円の労災法適用分については後から労災保険と相殺すればいいじゃないか。それは後から補てんしてもらえばいいじゃないか。そのことと、まず最初に四十万円の補償をしておいて、これで足りない部分の四十万円を後から原賠法でやるのと同じだという理屈はどうしても私は納得できない。これをひとつ納得いくように御説明願いたい。
#176
○山野政府委員 まず全体の損害が八十億円、それから原賠法の限度額四十億円と申します場合に、先ほど先生の指摘されました慰謝料とか物的損害というのは、もともと労災保険には関係のない話でございますので、これは直ちに賠償が原賠法によって実行されるわけでございまして、残りました稼得能力の部分についてのみ原賠法に先駆けて労災保険が先行するということでございます。確かに労災の場合と原賠法の場合と全く同じ認定が行われるといったふうなことが成立します場合には、その部門の従業員だけに関する限りにおきましては、原賠法が先行する方が被害者の受けるべき賠償というのは一時に全額が入るわけでございますから、そういう意味では大きいわけでございますが、一方そういうふうなことをすることによりまして、先ほども私が申し上げましたように、従業員以外の一般第三者の受けるべき損害賠償のファンドというものはそれだけ減額するわけでございまして、従業員を厚くするために一般の人々の受けるべき賠償措置額というものが減額するわけでございます。
 そういう意味で、私どもは従来同様に一般の人々の賠償ファンドというものに及ぼす影響を極力少なくする形で、しかも従業員を従来以上に損害賠償ができるように保護を厚くしていこう、こういう二つの問題を解決するために今回のような法改正の内容にしたものでございまして、従業員だけを取り上げますと、まさに先生の御指摘のようなことになるかと存じますが、全体としましては私どもの考えておる方向でまあ妥当ではないかというふうに考えております。
#177
○渡部(行)委員 従業員については私の意見の方が妥当だということは認めてもらいました。
 そこで私は、そのために一般が薄くなるという理屈がわからないのです。というのは、従業員が労災を適用されるのは、雇用関係があるから、そしてそこに労災保険をかけているから労災が適用されるのであって、一般のそういう関係にない人が被曝した場合に、その人は原賠法で見て薄くなるということはどういうことでしょうか。一般の人が従業員と同時に被曝して損害を受けたという場合に、二人の被曝者に対してたとえば百万円の場合に、従業員に六十万払ったからあとの四十万ということで一般の人は少なくなる、そういうものなら話はわかるけれども、そういう性質のものじゃないでしょう。仮に一般の人か従業員と無関係に被曝することがあると思うのです。そういう場合に、従業員の立場がよくなることは一般の人が悪くなるという理屈がさっぱりわからないのですが、ひとつ教えていただきたい。
#178
○山野政府委員 ファンドの減少と申しておりますのは、賠償の全体の額が減るという意味ではないわけでございまして、賠償につきましては天井のない無限の賠償責任を持っておるわけでございます。しかしながら、賠償履行を確実にいたしますために賠償措置というものを原子力事業者に義務づけておるわけでございまして、これを確実にするためのファンド、つまり賠償措置額というものが現行では六十億円、新しい改正では百億円になっておるわけでございますが、これは一事故当たりでございますので、これに従業員が加わることによりまして当然に従業員以外の一般公衆に対する賠償措置額というものは減る方向で影響を受けるわけでございます。そういう意味で申し上げておるわけでございまして、全体の賠償額というものに対する影響ではなく、賠償措置を確実にするための賠償措置額というものの減額であるというふうに御理解いただきたいと存じます。
#179
○渡部(行)委員 どうもこれは私が頭が悪いせいですかな、賠償措置額というのは今度六十億から百億に上げられましたけれども、しかしこれは無限責任であって、百億を超えるとあとは政府の援助で全部やっていく、こういう筋合いのものですから、一般の人が被害を受けた場合に、職員が受けたからその分おまえの方は少なくなるという理屈はどこから来るのですか。
#180
○山野政府委員 そのように申し上げておるわけではないわけでございまして、賠償そのものは、従業員が加わりましても額として影響はないわけでございますが、原子力事業者に賠償義務を確実に履行せしめるために賠償措置というものを強制しておるわけでございますか、その強制された範囲内において考えました場合には、これは従業員が新しく入ったことによりまして従業員が一部の賠償を得るわけでございますから、そういうことによりまして賠償措置額の範囲内においては一般の方々の受けるべき賠償措置額というもののファンドは当然減少する、こういうことを申し上げておるわけでございまして、あくまでも賠償措置額の範囲内の話でございます。
#181
○渡部(行)委員 全くこれは観念論争で、私は大体そういう事態はあり得ないと思いますよ。賠償措置額全部が、そういう一般と従業員との間で、措置額の中身で取り合いするような事態がもしあるとするならば、これは大変な事態です。だから、そういう御心配でなくて、本当にそこで働く人はすべて同じように補償されるんだ、その補償するにはこういう積極的な政府の姿勢でやるんだ、こういうものを示していかないと、そうでなくても働く人にはひがみがありますよ。やはりこれは原子力事業者の肩を持って、彼らに幾らかでも利益を保障しようとしておれたちをこんなふうにしているんじゃないか、こういうような感情を与えてはならないと思うのです。
 私は、政治というものはやはり温か味というものがなければならないと思うのですよ。だからどっちの側でわれわれがこの法案を考えていくのか、どっちの側に立ってそれを運用していくのか、こういうふうに考えますと、私は、先ほど私の言ったことがいいと認めていただいたならば、これからいますぐここでそれじゃ改めますということにはなかなかならないでしょうが、これから検討して十分そういう趣旨にこたえたいというぐらいの誠意はあってしかるべきじゃないかと思いますが、ひとつ大臣にこの辺はお願いいたします。
#182
○金子(岩)国務大臣 御趣旨はよく了承いたしました。ひとつ検討させます。
#183
○山野政府委員 大臣が御答弁申し上げましたように検討させていただきますが、一つの事情としまして、原子力事業者というものは、従業員に対しましてはまず労災保険制度では保険料を払っておるわけでございます。あわせて原賠法によりまして責任保険の保険料というものも原子力事業者は払っておるわけでございまして、そういう関係におきまして、もし従業員に対しまして原賠法をまず全面的に先行させるということになりますと、事業主たる原子力事業者は一つの損害について相異なる二重の保険を強制されるという問題が出てまいるわけでございまして、この労災保険と原賠法の保険を二重に掛けるという問題が原子力委員会で本件を検討しました場合の非常にむずかしい問題でもあったわけでございまして、大臣が御答弁いたしましたように検討はいたしますが、そういうきわめてむずかしい問題があるということも先生御理解いただきたいと思います。
#184
○渡部(行)委員 確かにそういう二重負担という点もあることはわかります。しかし、どっちみち二つの法律が適用されるのですから、ただその順序が違うだけのことなんですよ。結果は私は同じだと思うのです。どちらが比較的速やかに賠償責任を果たしていくかという、そこに焦点があるわけです。もしそれがなおかつ日本の法体系の中でどうしても矛盾があるとするならば、やはり原子力障害というものは一般障害と全く切り離して独立させて、そしてそこに一つの法律体系を築いていく、こういうふうにしなければ、このつじつまは合わないと思うのです。そういう点については一体どうなんでしょうか。
#185
○山野政府委員 そのような点もあわせて検討課題にさせていただきます。
#186
○渡部(行)委員 そこで、今度は労働省にお伺いいたしますが、この現行の労災法は原子力障害者の救済に対して一体万全であるのかどうなのか、その辺についてひとつお伺いをいたします。
#187
○中岡説明員 お答えいたします。
 私どもの労災保険制度は、原子力産業に従事する労働者に限らず全産業に従事する労働者のために存在するわけでございますが、万全かどうかという御質問のお答えになるかどうかあれでございますが、私どもの現在の労災保険制度の持っております給付の水準あるいは内容といったものは、国際的に見ましても十分遜色のない評価を受けておると考えております。
#188
○渡部(行)委員 国際的に見て遜色がないと言われますけれども、私の言わんとしておるのは、この原子力障害についての労災法というものは実際まだ適用されたことはないのじゃないかと思うのですが、そういう点で言っておられるのか。実際これから非常にむずかしい症状について、たとえばいまのところはそういうことはないでしょうが、自分の先代が、いわゆる父がものすごい被曝をされて、その息子に今度は一つの突然変異というか身体障害者ができた、こういう場合に一体労災ではどういう救済の方法を考えているのでしょうか、お伺いします。
#189
○中岡説明員 労災保険の給付の目的は、先ほど来話が出ておりますが、その被災した労働者の労働能力といいますか、具体的に賃金を稼得する能力が失われた場合に、それをてん補する仕組みというか、それが基本的な考え方でございます。したがいまして、御質問のようなケースについては、私ども対応することにはなっておりません。
#190
○渡部(行)委員 だから私が先ほどから言っているのはそこなんです。結局いまの労災法ではどうにもならない分野がたくさんあるのです。それをさも労災法が完璧のような言い方をするから国民は惑わされる。惑う。逆にそれか不安に変わっていくのです。そうではなくて、労災法はここまでしか救済できません、あとの救済できない部分は原賠法でします、しかしこの労災法と原賠法の間で非常に矛盾がある場合は、これは独立させて考えます、こういうようにやっていかないと、これは本当に不安の除去にはならない。それを私は強く訴えるものであります。お答えを願います。
#191
○山野政府委員 原賠法と労災法との関係、これは私ども先ほど来説明申し上げておりますように、従業員は従来労災制度によってのみ被害の救済を考えられておったわけでございますが、新しくこれを原賠法の対象にするということによりまして、労災法では見切れないもの、つまり稼得能力の喪失につながらないような精神的な損害であるとか物的な損害であるとか、あるいは早産流産、死産といったふうなものも対象にし得るように従業員の被害というものの救済を厚くしたわけでございますし、また、受けるべき賠償の金額につきましても、労災法の限度を超えるものにつきましては原賠法でこれをてん補するというふうに、大幅に従業員に対して被害の救済という観点からは法律を改善したつもりでございます。
 この法律を改善するに当たりまして、これも先ほど来申し上げておりますように、従来法律の対象になっております下請従業員とか、あるいは一般人というものに対する保護というものが手薄にならないようにという配慮もあわせ行ったものであるわけでございまして、先生の言っておられます観点からの全体の原子力損害の補償についての見直しというものは、先ほど申し上げましたように今後の検討課題としていただきますけれども、今回の法改正というものが従業員の被害救済という面におきまして大きな前進であるという点もあわせ御理解いただきたいと考えます。
#192
○渡部(行)委員 次には、中央登録管理制度と放射線管理手帳のかかわり合いについてお伺いいたしますが、この中央登録管理機関に対して登録される対象となる者は一体どういう人たちか。たとえば従業員とかあるいは下請業者とか下請作業員とかあるいはその他、とにかく施設の中に出入りした一般人を含めて全部登録するのか、それからこの手帳はどういう範囲に交付するのか、このことについてお伺いいたします。
#193
○牧村政府委員 先生御指摘の被曝線量につきましての中央登録管理制度に入ります範囲でございますが、これは原子力従事者並びに原子力事業者におきまして、いろいろな放射線下の作業をいたします際に雇われます下請事業者の従事者すべてが含まれます。その範囲は、当然放射線下の作業をされた方が含まれるわけでございます。
 それから、放射線管理手帳の交付の適用でございますが、従来管理手帳を交付いたしておりましたのは原子力事業者の任意によってやられておったわけでございますが、この中央登録管理制度を事業者あるいは原子力製造会社の方々等を中心にしてつくりましたときに、この登録管理を扱っておりますセンターにおきまして統一的なナンバーを付しまして、すべての方にこの放射線管理手帳を交付してまいりたいという考え方のもとに、いま鋭意努力をしておるところでございます。
#194
○渡部(行)委員 そうすると、この放射線を浴びるところに出入りするすべての人というふうに理解していいわけですか。
#195
○牧村政府委員 現在のところ先生の御指摘のとおりでございますが、原子炉等規制法に基づく監督を受けておる事業者についてまず開始しておるところでございまして、放射線障害防止法の監督を受けておりますRIを使用している事業者につきましてはこれから対象にしていこうというふうに考えておるところでございます。
 しかしながら、その一部でございます被破壊検査をする業界につきましては、これは原子力発電所の工事等に密接に関連する事業を行っておる方々でございまして、当然原子力事業の一環として考慮しなければいけませんので、この方々については早急にこの制度の中に入っていただきたいということで、いま話し合いが続けられておるところでございます。
#196
○渡部(行)委員 時間が大分迫ってまいりましたので結論に入りますけれども、この放射線管理手帳というものを渡して、全般的にそういうもので一元化していくことは非常にいいことだと思います。ただその場合、いま何か下請業者は一たんそこの作業をやめるとその手帳を取り上げられてしまうというようなことかあるやに聞いておりますが、そういうことがないように、常にそういう転々と各事業所を歩くような人については、やはりその手帳を継続して持たせる、そしてそれの記録を中央登録機関に絶えず記録していく、こういう体制が必要かと思います。
 それからもう一つ、ここでお伺いしたいのは、大分外国の技術者なり労務者が来ているやに聞いております。来ているやでなくて、実際に来ているわけでございます。こういう者に対する放射線管理のあり方はどういうふうにしているのか。これからますますこういうものは国際的になってまいりますだけに、そういう場合の法的な体制あるいは基準のあり方、そういうものはある程度国際的に通用するものであるべきだろうと思いますが、その点はいかがでしょうか。
#197
○牧村政府委員 放射線管理手帳につきましては、これはたてまえとして当然作業従事者が保持するたてまえでございます。
 しかしながら、雇用期間中ある作業をしておるとき等におきましては、その事業者がその従業者が受けた被曝の量をその手帳に書き込むということを確実ならしめるために一時預かるというようなことは当然あるわけでございます。その下請の事業者でございましても、事業者は作業員が退職するような場合には、当然手帳を従事者に返していく、返却するたてまえをとっておる。退職された方がまた放射線下の作業をするというときには、この手帳が引き続き使えるように持っていくというようなことを考えておりまして、先ほど御説明いたいましたが、登録管理センターの業務に一元的に個人個人の手帳がすべて行き渡るようにしていきたいということで努力しておるわけでございます。
 また、外国の労働者等が日本の原子力事業において働く場合におきましての管理の仕方でございますけれども、これは全く日本人と同じ制度のもとに管理させておるわけでございます。また、被曝した量等につきましては、このセンターに登録するように現在すでに行われておるところでございます。
 また、国際的な管理制度との関連につきましては、私どもも外国におきますこういう放射線の管理の実態を常々フォローいたしまして、日本におきますこの管理制度につきまして改善を加えたいというふうに考えておる次第でございます。
#198
○渡部(行)委員 最後に一言、その従業員なりそこに出入りする人たちにフィルムバッジというものをつけさせて放射線の被曝線量を測定しているそうでございますが、そのフィルムバッジは現像してデータにするまで一カ月ぐらいかかるらしいのですが、そのフィルムバッジを検査して、その結論が出る間の一カ月ぐらいの期間、これについての緊急的な従業員の被曝線量を知らせる方法をこれから十分講じていかなければならないと思います。
 そういう点で、これだけ科学の発達した世の中でございますから、十分その点に留意して今後の行政指導に当たっていただきたいということを一言申し添えて、私の質問を終わります。
#199
○大橋委員長 渡部君の質疑は終了いたしました。
 次に、瀬崎博義君。
#200
○瀬崎委員 今回の法改正で、原子力事業従業員の業務上の原子力災害にも適用の範囲が広げられることになったという点は一歩前進であるとわれわれも評価をしております。原子力による損害の賠償制度で国民の立場から大事な点は、一つは、補償内容を充実させることだと思うのです。いま一つは、その前提となる因果関係の立証の困難さの解決が十分でなければならぬ、こういうことだと思うのです。そしてまた、今回の法改正に対して現在懸念が表明されているのもその点、つまりせっかくの改正が実際に効果を発揮するかどうか、より大きく言えば、現在のこの原賠法が国民にとって実際に役立つかどうか、ここに一つの大きな論議の焦点がいまあると思うのです。私も順序としてその問題から質問していきたいと思うのです。
 因果関係の存在が被害者救済のための不可欠の前提条件になっているわけですが、科学的あるいは専門的な知識、資料を持ち合わせていない被害者の側が、こういった知識、資料、経験を事実上専有している事業者に対抗して因果関係を立証するというのは、いわば不可能に近い作業と言わなければならぬと思います。したがって、客観的には因果関係があるんだけれども、被害者が無力であるためにこれが立証できない、こういうことの結果、賠償を求めることが不可能だ、こういうことは何としても救済されなければならないと思うのです。政府としては、この事業者と被害者との間で話がつかなければ裁判にゆだねればよいのだ、こういう論理になるわけでありますが、そこへいくと、いま申し上げましたように立証が非常に困難で被害者は困るわけです。したがって、当然行政手段によって介入してこういう弱者を救済する必要があると思うのですが、政府側の考えを聞きたいと思います。
#201
○山野政府委員 因果関係の立証、認定の問題は、確かに御指摘のように、大変重要な問題でありながら非常な困難を伴う問題でございまして、放射線の被曝と疾病との因果関係が立証できない場合が多いだろうということは御指摘のとおりでございます。
 これにつきましては、一義的には被害者が原子力事業者に請求の申し立てをするわけでございますが、その際、被害者が非常に必要な知識がないとか無力であるということのためになかなか立証できないといったふうな場合も例示されましたが、こういうケースにつきましては、たとえば科学技術庁では放射線医学総合研究所で低レベル放射線の人体に与える影響についての研究といったふうなこともいたしておりますし、また専門の研究者なり医師もいるわけでございますので、そういう機関を活用していただくとか、従来そのような研究の成果というものも私どもは公開いたしておるわけでございますから、そういったふうなものをできるだけ活用できるように配慮しなければならないと考えております。
 また、この認定の問題がむずかしいからといってすぐに裁判所に持ち込まれるということではなくて、やはりその前に行政としましても臨時に政府に設けられることになっております原子力損害賠償の紛争審査会の機能も最大限に活用しまして、できるだけ当事者間の和解の仲介に努めるといったふうなことも必要ではないかと考えております。
#202
○瀬崎委員 そう言われるのであれば、なぜその放医研などの研究成果を国民に結びつけるような行政上の措置を今回の改正に織り込んで制度化しなかったのか、これが一点。
 それから、原子力損害賠償紛争審査会もあるじゃないかと言われたけれども、現在これをつくる政令すらまだつくられていない。こういうことで果たして政府にそれだけの熱意があると言えますか。
#203
○山野政府委員 資料を一般の閲覧に供するようにしておることは、これは法的に制度化するまでもなく基本法の精神にのっとりまして公開資料室というものを設けまして、先ほど申し上げましたような研究の成果も、だれでも見られるようにしておるわけでございます。
 それから、紛争審査会の方は政令でもって設置を決めることになっておるわけでございまして、このような原子力損害賠償法が発動されなければならないような事例というのは過去に起こっておるわけではございませんし、また将来もこのようなことがあってはならないと考えておるわけでございます。そういう意味におきまして、この紛争審査会が常設の機関である必要はないと私どもは考えておるわけでございまして、実際に原子力損害が発生した場合に政令をもってこれを設置し、またその機能を終了すれば政令をもって廃止するというふうな臨時の機関に位置づけておったわけでございます。
 いま先生、この政令も定めていないという点を指摘されたのでございますが、私どもは臨時の機関で政令をもって設置し、政令をもって廃止するというふうに従来は考えていたわけでございますが、この政令を制定する期間というものも今後考慮に入れるべき問題であろうかと考えられますので、この審査会の組織なり運用につきまして用意すべき政令といったふうなものにつきましては、今後これをできるだけ早く整備することを検討しまして、必要な事態が発生した場合には直ちにその制定された政令によって紛争審査会を組織するといったふうなことも考慮しなければならないというふうに考えております。
#204
○瀬崎委員 因果関係の立証については、推定規定を設ける必要性のあることもずいぶんと今日まで指摘されていますね。これについては、四十七年五月十七日の公害特別委員会で、参考人として出席した日弁連の公害対策委員長関田政雄氏が、このときは富山県のイタイイタイ病と、それから新潟の水俣訴訟を例に挙げながらの話なんですが、「過失責任か無過失責任かは、訴訟上ではたいした差がないということに立証されたと思うのであります。訴訟を非常に困難ならしめ、遅延せしめておるものは、因果関係の立証であります。」「公害訴訟をはばんでおるもの、換言しますと、被害の救済をはばんでおるものは、」「因果関係の立証なのだ、」と陳述をしていらっしゃるわけですね。また、この日の参考人で我妻榮東大名誉教授も出ておられまして、「因果関係の推定規定があると実際上どんな効果が生ずるかということは、一言にしていえば、訴訟が促進されるということであります。理論としては、おそらく現在の裁判所の理論で推定が認められているといってもいいだろうと私も思いますし、多くの学者もそう言っているようであります。しかし、判例理論で認められたことでも、裁判所の実際の訴訟の運用の上でそれが認められるまでには、非常に長い時間がかかります。そして、それが被害者にとって非常な不利益であるということは、あらためて申すまでもないことであります。」「私は訴訟を促進させるという大きな効果のために推定規定のあることを望む、そしてそれを入れても、一部の人がおそれるほど、そんなにむちゃなものではないということをつけ加え」たいと、この必要性を強調されているわけです。
 化学物質等による公害に比べればはるかに放射性物質による公害の方が立証が困難なんであります。当然のことながら、こういう意見は法改正に取り入れてしかるべきではなかったかと私は思うのですが、いかがですか。
#205
○山野政府委員 御指摘の因果関係の推定という問題につきましては、これは原子力損害賠償問題のみならず一般の民事賠償制度全体のあり方にかかわる大変むずかしい問題でございまして、先生が引用されました公害関係の法令につきましての理論というのも私伺いましたが、まだ結論が出ていない問題であるというふうに承知しておるわけでございます。このような問題をこれまで具体的な適用例も出ていない原賠法の分野でまず先行させて採用する、特にこれを法制化するといったふうなことは、大変むずかしい問題であろうかと考えます。
 認定の問題はもちろん非常に大事な問題でございますから、私先ほど申し上げましたように、因果関係の解明に役立ち得るような成果を生み出すように、今後この低レベル放射線についての人体への影響等の研究を鋭意進めていく必要があるわけでございますが、これに加えまして、長期にわたって被曝する可能性のある従業員についての健康管理であるとか、あるいは被曝放射線量のデータの把握といったふうな問題、これは現在事業者に法令で義務づけられておりますが、こういったふうなものも、一昨年設けられました放射線従業者の中央登録センターに登録するといったふうなことをしまして、あらゆる方策を講じて因果関係の立証が容易になるような努力というのは政府においても引き続き行っていくつもりでおりますけれども、いま直ちに推定の問題についてこれを法制化するというのは困難な問題ではないかと考えております。
#206
○瀬崎委員 それじゃ根本的な考え方が大事なので、これは大臣に伺っておきたいのです。
 実はいま申し上げました公害の問題に関連して、当時の大石武一環境庁長官は、「因果関係の推定の問題にしましても、これは確かにおっしゃるとおり患者に因果関係を証明させることは不可能であります。それはやはり当然推定の方向でいかなければならないことはおっしゃるとおり、われわれもそういうことを考えておりました。」「いずれこの推定規定は私は要ると思います。いずれつけ加えなければならぬと思いますけれども、今回出すには少しわれわれの準備が不完全であった、」こういう答弁をしております。
 そこで、大臣に三つの点を伺いたい。まず、大石さんは患者に因果関係を証明させることは不可能だとおっしゃっている。じゃ大臣はどうお考えかということ。それから第二は、推定の方向でいかなければならない、こう言っていらっしゃる。金子大臣はこの点をどうお考えなのか。第三点は、原子力の損害賠償で先行させることはできぬとおっしゃったが、立証の困難性から言えば、先ほど申し上げましたように、化学物質による災害の立証よりもこの放射線、放射能物質関係の災害の立証の方が困難なことはわかり切っているわけですから、一番困難なところが先行しなければならないと私は思うが、大臣はいかがですか。この三点をお答えいただきます。これは大臣が過去国会で答弁されていることなので私は大臣に答えていただきたい。これはひとつ委員長にお願いいたします。
#207
○金子(岩)国務大臣 三点の問題大変むずかしい問題でございます。しかし、やはり原子力を研究開発させるためには、どうしてもそういう困難な問題も、関係住民の安全性に対する信頼と安心感を持たせるためには、どんな困難があろうとも検討を続けて、いま瀬崎先生が指摘なさっておるような点を片づけていかなければならないと考えています。
#208
○瀬崎委員 そこまでおっしゃるのであれば重ねて伺いたいのですが、大石さんの答弁というのは、原子力関係よりは立証のまだしやすい一般の公害についておっしゃったことです。そこで因果関係を患者に証明させることは困難だ、推定の方向でいかなければならぬ、こう言われておるのです。そうすれば、やはり一番立証の困難なこの原子力の分野でいま大臣がおっしゃったような趣旨を生かして、まずここでこの因果関係の推定を制度化していく、こういうふうなお考えをぜひ示していただきたいと思うのです。
#209
○金子(岩)国務大臣 因果関係、原子力災害の場合は推定以外にないというようなお考え方に立っているのか、結局御指摘なさっておる気持ちはよく私も理解できるのですが、ここで推定でこの問題を処理していくというようなことを私は言い切ることはきょうの場合はできませんけれども、御指摘なさっておるその精神を十分生かすようにひとつ検討を鋭意続ける、このように御理解をいただきたいと思います。
#210
○山野政府委員 ただいまの大臣の答弁をちょっと補足させていただきます。
 まず、一般の民事賠償制度のあり方と申しますのは、あくまでも因果関係を立証するというのが基本的な考え方でございますので、先生御指摘のように、今後できるだけ賠償がスムーズに行い得るようにまず因果関係の立証を容易化するということが先行すべき問題だと思うわけでございまして、その点に鋭意力を入れたいと考えております。
 因果関係の立証の容易化ということに加えまして、いま御指摘の推定の問題でございますが、現在労災保険においても、国が認定を行うにつきまして認定の容易化の努力というのは行われておるわけでございまして、原賠法で今回の労災保険との調整規定を設けておりまして労災を先行させておりますが、しかし、この労災の認定基準というものが原賠法の賠償においても事実上有力な判断の材料にもなるというふうにも私どもは思います。
#211
○瀬崎委員 一番立証の困難な原子力関係でまずその問題を先行させろと私は言っているのです。
#212
○山野政府委員 しかし、先生のおっしゃる、まずほかの問題に先行して、原子力の容易化という方向ではなくて、推定という方向で先行するということは、まだこのような原子力の事例も起こっておりませんし、起こるべき損害の内容の推定がなかなかむずかしい段階においてはきわめて困難な問題であろうというふうに考えております。
#213
○瀬崎委員 その必要性を方向として認めながら、いざ実行ということに対してはきわめて消極的という矛盾した答弁が出ていると思うのですね。しかし、ここを突破しない限り、せっかくの今回の法改正も実効ある措置にはなりかたいと私は思いますので、大臣、ぜひ先ほどの答弁を具体化していただきたいと思うのです。本来はこういう原賠法か全面的に発動されるような事態が絶対あってはならないわけでありますけれども、現実には部分的にこの原賠法自身が役立たざるを得ないような問題が起こります。
 そういう点では、つい最近も関電の美浜三号機で支持ピンの欠損事故があった。点検修理ということになれば当然汚染の危険というものは非常に大きくなるわけですね。そういう意味で、若干この問題についてお尋ねしておきたいのです。
 この制御棒案内管の支持ピン欠損事故について、これまでの原因説明によればナットの締め過ぎだという説明だったのですが、その締め過ぎという意味は、十九キログラムメーターという締めつけ基準といいましょうか、設計諸元といいましょうか、これに問題があるという意味なのか、それとも美浜三号の支持ピンの締めつけが何らかの理由で十九キログラムメーターという諸元を超えていたのか、どちらの意味ですか。
#214
○児玉(勝)政府委員 ただいま先生の御指摘のあった点につきましては、このたびのピンの損傷の一つの原因と考えておりまして、それだけが問題だというふうには考えておりません。それで、いまおっしゃいましたナットの締めつけ応力十九キログラムメートルということでございますけれども、一応設計といたしましては四十一・八キログラム・パー・スクエアミリメートルということになっておりますので、ただそれだけの問題ではそのボルトがちぎれるということにはいまのところなっておらないわけでございます。(瀬崎委員「どっちなんですか」と呼ぶ)それ以外に熱応力の問題がございまして、ボルトはインコネルでございますし、真ん中にはさんでおりますのがステンレスでございますので、そういう材料の違うものの熱膨張の差というものも考えなければいかぬということでございます。したがいまして、そういうものの設計応力の中で考えますと、ナットの締めつけ応力と熱応力両方考えましても、一応設計の場合では実際の引っ張り強さに比べまして約二分の一ということなので、その……
#215
○瀬崎委員 もういいですよ。質問に答えてほしいのですが、締めつけの基準どおりになっておったのか、たまたま美浜か締めつけの基準を超えておったのか、そのどっちかということを私は聞いておるわけです。
#216
○児玉(勝)政府委員 基準どおりに締めつけております。
#217
○瀬崎委員 基準どおりであってこれがちぎれている。まずこれが一点、はっきりしましたね。
 それから、いま少し触れられたのは私がこれから聞こうと思っていた問題なんです。やはり原因の一つとして、いわゆる上部炉心板がステンレス、それから支持ピンがインコネル、これで制御棒案内管を締めつけていたことになっているのだけれども、この両方の膨張度の違いが無理な力を生じたのではないか、こういうことなんでしょう。そこで聞きますが、このステンレスとインコネルの膨張度の違いは、たとえばこの原子炉の最高温度の場合どのくらいのずれになってあらわれているのか、これが一点。
 第二点は、どのくらいのずれには対応できるように設計されているのか。
 それから第三点は、そもそも、もしそういう膨張時のずれによってこのナットがちぎれるようだということになるとすると、そういうステンレスとインコネルという組み合わせそのものに問題があるのではないかと思うのですが、その点はどうか、この三つをお答えください。
#218
○児玉(勝)政府委員 お答えいたします。
 熱応力の発生の力といたしましては、原子炉の運転時の温度三百二十二・八度Cのもとで、十七・七キログラム・パー・スクエアミリメートルでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたナットの締めつけ応力とこの熱応力を加算したものが五十九・五キログラム・パー・スクエアミリメートルでございまして、材料そのものの強さは百二十キログラム・パー・スクエアミリメートルということでございますので、材料の強さだけで考えますと、約半分以下の負荷荷重で十分持つという計算になっておったわけでございます。
#219
○瀬崎委員 計算上は、いまお話しのように一応熱膨張で加わった圧力約六十キログラム・パー・スクエアミリメートルで許容限度の約半分以下、こういうことですね。にもかかわらず、ちぎれている。相当ゆとりがあるはずなのにちぎれているわけでしょう。そういう点がはっきりしましたね。
 それから、今回欠損したものです。私もこの間美浜に行って、その実物大の模型を見せてもらいました。二・五センチ掛ける五センチぐらいの非常に大きなものなんです。私もっと小さいものかと思っておった。しかも、この発見されたのは蒸気発生器の底。それで原子炉の圧力容器との位置関係を見てみますと、圧力容器が下にあって蒸気発生器が上、こういう関係にあります。そこまでそれだけの大きさのものが送り込まれたわけですね。だから相当激しい勢いがついておったのではないかと思うのです。したがって、こういう大きなものが圧力容器から激しい勢いで蒸気発生器まで送られたとすれば、当然途中のパイプその他にも傷がついたりする危険性はあるんじゃないかと思うのですが、どうですか。
#220
○児玉(勝)政府委員 先生のおっしゃいますように、相当大きな鉄のかたまりでございますので、実はそういう問題も考えまして、定検に際しまして、その通った経路についてのいろいろな部門について点検いたしましたけれども、傷はついておりませんし、それからナット自身につきましても大きな損傷もございません。またメーカーにおきまして、全負荷運転時における速度でもって、水流でもってそれだけの重さのものを実際に運動させたときにどういうふうになるかということの実験もいたしまして、いまのところ、そういうぐらいのものであれば問題はないということを確認しております。
#221
○瀬崎委員 関西電力の話によれば、蒸気発生器の底からいまの破片が発見されたとき真っ黒こげで、一体何だろう、工具の破片かなと思ったというわけですね。もしそのまま工具の破片と誤認してしまっておったら、果たしてこの支持ピンの故障というか、欠損事故は発見できたのですか。
#222
○児玉(勝)政府委員 ちょうど定検の最初のときでございますので、恐らくそういうようなことがあったのかと思いますが、いずれ原子炉の上層の構造物を全部取り外しまして、そこでもって外観の検査もいたしますので、ピンがとれておるということは、時間的にはおくれますけれども、発見されるはずでございます。
#223
○瀬崎委員 これも関電の説明によりますと、この支持ピンというのは、一般的な外観検査という意味では点検の中には入っているとは言えようが、個別の点検項目には入っていないということだったのです。
 それでは、もしもこういうかけらが発見されなかった場合、今回百六本全部に対してやられたようないわゆる超音波探傷検査は普通の定検ではやられるのですか。
#224
○児玉(勝)政府委員 普通の定期点検においては行いません。
#225
○瀬崎委員 しかも、実際点検してみたら百六本全部にひび割れがあった。まともなのは一つも残ってない、こういう結果なんです。だから、今回たまたま幸か不幸か一本ちぎれておったから全部の検査に至ったけれども、もしこれがなかったら恐らく超音波探傷検査もやっていない。ひび割れにも気がつかない。そのまま運転に入ってしまったら、今度の定期検査までには相当数がちぎれたのじゃないかという危険を素人ながら考えるのですが、そういう危険はなかったのですか。
#226
○児玉(勝)政府委員 先生のようなそういう想定をいたしますと、まさに傷が進みまして運転中にちぎれるものが一本では済まないというようなことはあり得ると思います。
#227
○瀬崎委員 そこで、時間が来ておりますので、最後に、これは安全審査と定期検査のやり方の根本について伺って終わりたいと思うのです。
 それは先ほど来の児玉さんの説明のように、まず第一に締めつけ応力というのですか、これは基準値どおりであった、こういうことですね。それから熱膨張に対するゆとりも十分にあったはずだ、こういうことなんですね。にもかかわらず、ちぎれているわけなんです。ということは、そういう膨張のあるところをねじで締めている、こういう構造自身が私は問題ではないかと思いますので、そういう点は基本設計そのものに立ち返って、このような構造の安全性について原子力安全委員会も含めて検討をし直すべきじゃないかなと思います。この点に対する見解を聞きたい。
 それからもう一点は、いまお聞きのように、残念ながらたまたまこれは破片か発見されたので検査しただけのことで、通常なら検査はしないのです。だから、このまま運転という仮定をいたしますと、百六本全部とは言わぬけれども、次の機会には相当数ちぎれておったかもしれないという危険が指摘されます。そういう点では定期検査の方法についても検討し直す必要があるのじゃないかと思うのです。それぞれの関係の方からお答えをいただいて終わりたいと思います。
#228
○児玉(勝)政府委員 今回のトラブルにつきましては、各方面からいまその原因を調査しております。たとえば損傷部の破面の調査とか、それから材料の化学成分の検査、それから機械的性質の問題、それから金属組織の問題、そういうことで実際の材料を使いましての検査ということもいま実施しておりまして、これは通産省の技術顧問会にいずれその報告をいたしまして、その後安全委員会にも報告いたしまして、その辺の処分といいますか、対応策の妥当性について御承認いただきたい、こう思っております。
#229
○牧村政府委員 安全委員会におきましても、今回の美浜のピンの欠損につきましての問題につきましては、逐次通産省からすでに報告を数回にわたって受けております。このような通産省が現在実施しております種々の炉外におきます実験データ等も踏まえまして、通産省がこれから行う本件故障の原因並びに処理につきましての方針が固まりました段階で、安全委員会としても十分慎重に審議することといたしておるところでございます。
 なお、先生御指摘のこのピンの設計上の問題点につきましても、当然安全委員会におきましても専門的な立場から検討されるものと考えております。
 なお、定検のあり方等につきましても、この件を貴重な体験にいたしまして通産省等にも十分検討してもらうようにお願いしたいというふうに考えておるところでございます。
#230
○大橋委員長 瀬崎君の質疑は終了いたしました。
 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
#231
○大橋委員長 これより本案を討論に付するのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。
 原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#232
○大橋委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
#233
○大橋委員長 この際、塚原俊平君外五名から、本案に対し、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 その趣旨の説明を求めます。塚原俊平君。
#234
○塚原委員 ただいま提出いたしました附帯決議案につきまして、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同及び新自由クラブの提案者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。
 まず、案文を朗読いたします。
    原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法施行にあたり、本法を発動しなければならない事態を起こさないよう、安全の確保に万全を期するとともに、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。
 一 下請従業員を含む原子力事業従事者の被ばく線量の中央登録及び放射線管理手帳の交付、所持を義務づける制度の確立を図る等、従業員被ばく対策を強化すること。
 二 放射線業務に係る作業基準について、従業員被ばくの低減の見地から見直しを行うよう強力に指導すること。
 三 労働者災害補償保険給付に係る認定の弾力的運用を図るほか、無過失損害賠償責任の趣旨を生かし、迅速な被害者救済が行われるよう、制度の活用を図ること。
 四 低線量放射線の人体への影響等、放射線の影響に関する研究を一層推進すること。
 五 不測の事態が発生した場合の緊急医療対策等の体制整備を図ること。
以上でございます。
 本附帯決議案の趣旨につきましては、先般来の当委員会における質疑並びに案文を通じまして十分理解願えることと存じますので、詳細の説明は省略させていただきます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
#235
○大橋委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#236
○大橋委員長 起立総員。よって、塚原俊平君外五名提出の動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
 この際、金子国務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。国務大臣金子岩三君。
#237
○金子(岩)国務大臣 ただいま原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、慎重御審議の上御可決をいただきましたこと、まことにありがとうございました。
 なお、ただいま議決をいただきました附帯決議の趣旨を十分尊重いたしまして、原子力行政の遂行に全力を尽くしてまいる所存でございます。何とぞよろしくお願い申し上げます。
    ―――――――――――――
#238
○大橋委員長 お諮りいたします。
 ただいま可決いたしました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#239
○大橋委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
#240
○大橋委員長 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律及び放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 趣旨の説明を聴取いたします。金子国務大臣。核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関
 する法律及び放射性同位元素等による放射線
 障害の防止に関する法律の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
#241
○金子(岩)国務大臣 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律及び放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明いたします。
 この法律案は、廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約の実施に伴い、核原料物質または核燃料物質によって汚染された物等の海洋投棄の制限について所要の規定の整備を図ろうとするものであります。
 同条約は、海洋に投棄されるすべての物を対象として、その投棄によって海洋汚染が生じないよう各国が相協力することを目的とする条約であり、環境の保全に関する国際協力の推進という見地からも、この条約の早期批准が望まれるところであります。
 この条約においては、放射性物質の海洋投棄についても規定がなされており、放射性物質は、低レベルのものに限り、政府の特別の許しを得た場合等一定の場合にのみ海洋投棄をすることができるものとされております。
 原子炉設置者等原子力事業者の行う海洋投棄に関しては、すでに十分安全を確保し得るような法規制の体系が整備されているところであります。
 しかしながら、同条約は、原子力事業者に限らずすべての者によって行われる海洋投棄を規制の対象としております関係上、今般原子力関係の二つの法律を改正し、従来の法規制に加えて、原子力事業者が政府の確認を受けて海洋投棄をする場合等一定の場合以外は、何人による放射性物質の海洋投棄もすべて禁止することにより、条約上の要請にこたえようとするものであります。
 以上、本法案を提出いたします理由につきまして御説明申し上げました。
 次に、本法案の要旨を述べさせていただきます。
 第一に、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律につきましては、核原料物質、核燃料物質またはこれらによって汚染された物は、原子炉設置者等が廃棄に関する確認を受けて海洋投棄をする場合等一定の場合以外は、海洋投棄をしてはならないものといたしております。
 第二に、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律につきましては、放射性同位元素または放射性同位元素によって汚染された物は、使用者等が廃棄に関する確認を受けて海洋投棄をする場合等一定の場合以外は、海洋投棄をしてはならないものといたしますとともに、使用者等が工場または事業所の外において放射性同位元素または放射性同位元素によって汚染された物を廃棄する場合においては、その廃棄が技術上の基準に適合することにつき、科学技術庁長官の確認を受けることを義務づけるものといたしております。
 以上、この法律案の提案理由及びその要旨を御説明申し上げました。
 何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
#242
○大橋委員長 以上で提案理由の説明は終わりました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時四分散会
ソース: 国立国会図書館
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