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1978/03/16 第87回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第087回国会 法務委員会 第6号
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1978/03/16 第87回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第087回国会 法務委員会 第6号

#1
第087回国会 法務委員会 第6号
昭和五十四年三月十六日(金曜日)
    午前十時十一分開議
 出席委員
   委員長 佐藤 文生君
   理事 青木 正久君 理事 鳩山 邦夫君
   理事 濱野 清吾君 理事 山崎武三郎君
   理事 西宮  弘君 理事 横山 利秋君
   理事 沖本 泰幸君 理事 中村 正雄君
      稻葉  修君    越智 伊平君
      篠田 弘作君    二階堂 進君
      福永 健司君    三池  信君
      森  美秀君    稲葉 誠一君
      下平 正一君    飯田 忠雄君
      長谷雄幸久君    正森 成二君
      小林 正巳君    阿部 昭吾君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 古井 喜實君
 出席政府委員
        法務大臣官房長 前田  宏君
        法務大臣官房司
        法法制調査部長 枇杷田泰助君
        法務省刑事局長 伊藤 榮樹君
        法務省保護局長 稲田 克巳君
        法務省人権擁護
        局長      鬼塚賢太郎君
 委員外の出席者
        警察庁刑事局鑑
        識課長     仲村 規雄君
        最高裁判所事務
        総局総務局長  大西 勝也君
        最高裁判所事務
        総局人事局長  勝見 嘉美君
        最高裁判所事務
        総局刑事局長  岡垣  勲君
        法務委員会調査
        室長      清水 達雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月十六日
 辞任         補欠選任
  原 健三郎君     越智 伊平君
  前尾繁三郎君     森  美秀君
  横路 孝弘君     稲葉 誠一君
  飯田 忠雄君     長田 武士君
同日
 辞任         補欠選任
  越智 伊平君     原 健三郎君
  森  美秀君     前尾繁三郎君
  長田 武士君     飯田 忠雄君
    ―――――――――――――
三月十六日
 民事訴訟費用等に関する法律及び刑事訴訟費用
 等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣
 提出第五四号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
三月十六日
 国籍法の一部を改正する法律案(衆法第五号)の
 提出者「横山利秋君外五名」を「横山利秋君外六
 名」に訂正する。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内
 閣提出第三号)
 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の
 一部を改正する法律案(内閣提出第一一号)
     ――――◇―――――
#2
○佐藤委員長 これより会議を開きます。
 お諮りいたします。
 本日、最高裁判所大西総務局長、勝見人事局長、岡垣刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
#4
○佐藤委員長 内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案、同じく下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。正森成二君。
#5
○正森委員 私は、まず、大臣が先日行われました所信表明演説に関連して、この中でいわゆるダグラス、グラマン問題については「検察当局を信頼し、事態の速やかな解明を期待しております。」こういうぐあいにお書きになっておりますので、その関係について、まず最初に若干質問をさせていただきたいと思います。
 御承知のように、先日日商岩井の山岡、今村両名が逮捕されました。それに関連して、十四日でございましたか、参議院の予算委員会で質疑が行われました。まだ速記録が出ておりませんので、念のためにお伺いするわけですが、ある新聞によりますと、伊藤刑事局長はボーイング社の三十万ドルについて答弁をされた中で、私のいま引用しております新聞では、「架空預金たらい回し」という見出しで、「日商岩井がボーイング社との仲介手数料という名目で決済した三十万ドルは、ボーイング社から出たものではなく、日商岩井の架空預金をたらい回しした感じのものだ」、こういう伊藤刑事局長の答弁がされたやに報道されております。
 それで、その点についてそう承ってよろしいのかどうか、念のために御答弁を願います。
#6
○伊藤(榮)政府委員 そのとおりお答えをいたしております。そのたらい回しをいたしました架空預金のさらによって来るゆえんについては、何も申し上げておらぬわけでございます。
#7
○正森委員 そういうことは、別の言葉で言いますと、ボーイング社から日本航空に納めた七機の民間機、一機十五万ドル、計百五万ドル、その中の――札に一々これがそのための金だと印刷してあるわけではございませんけれども、その百五万ドルの中の三十万ドルとは必ずしも言い切れない、たらい回しの金であるから、そういうように承ってよろしいですね。
#8
○伊藤(榮)政府委員 札に印がないという意味において、そのとおりでございます。
#9
○正森委員 そこで私は、両名の逮捕状といいますか、それは全部見ておるわけではございませんけれども、その被疑事実の日付に非常に注目をしているわけです。
 これを見ますと、アンゴラ航空へのB737型機二機を販売した手数料として受け取ったと見せかける文書を偽造したのは、五十一年の三月末ごろとなっております。そして、まず文書を偽造しておいてから、その文書に基づいてでしょう、五十一年の今度は六月十六日ごろ、同社のカリフォルニア・ファーストパンク・ロサンゼルスにキヨシ・ニシヤマの名義で預金してあった三十万ドルを米国日商との交互計算勘定で引き出した、そしてこれを日商に送金した、こうなっているのですね。
 この五十一年三月末ごろと五十一年六月十六日ごろというのは、それぞれこれらの犯罪が行われた推定日時であると思われますが、間違いありませんか。
#10
○伊藤(榮)政府委員 そのとおりです。
#11
○正森委員 そこで法務大臣に伺いたいのです。
 五十一年の三月ごろ、五十一年の六月ごろというのは、政治的にどういう日時であったと思われますか。
#12
○古井国務大臣 とっさのことでありますので、正確かどうかはわかりませんけれども、例のロッキードの問題が表に出て相当にぎやかになっておった、あの時期のように思いますね。
#13
○正森委員 御名答であります。なお、正確に申しますと、五十一年の三月というのは、ロッキード事件が表に出ましたのが二月の四日ごろでございまして、その後二月と三月に二回にわたって衆議院の予算委員会で証人喚問等が行われた時期、これが五十一年三月であります。五十一年の六月の時期というのは、六月二十二日より一連の逮捕が始まっております。つまり、いよいよ逮捕が出るぐらいまで被疑事実が固まったということで、新聞紙上に頻々とこれらが報道されていた時期であります。
 したがって、これらの今回の日商岩井の私文書偽造あるいは外為法違反の事実は、これはロッキード事件の発覚に伴って、場合によったらそれに関連して調べられるかもしれないことをおもんぱかっての一連の証拠隠滅、それが結局裏目に出て今回の逮捕につながったというように考えられると思うのですが、いかがですか。
#14
○伊藤(榮)政府委員 ただいま、五十一年三月というのと六月というのと、二つの時点についての御推論を拝聴したわけですが、三月の時点は、ただいま御指摘のような御推論が成立し得る余地があると思います。六月の場合は、これは交互計算勘定をいたします決算期末でございます。したがって、このことには余り意味がないと思います。
#15
○正森委員 詳細な指摘はありがたいと思いますが、しかしいずれにせよ、交互計算で引き出すには三月のこの私文書偽造がなければできないわけですから、いま伊藤刑事局長がおっしゃったのは、六月十六日以前に結局こういうことが計画された、それは三月の私文書偽造以後に実行されたものであるという、範囲をより特定なさったという意味があると思います。
 そこで私は伺いますが、この山岡と今村については一介の職員であります。代表権を持っておりません。そこで私は、手元に日商岩井の職務権限規定を持っております。この職務権限規定を見ますと、こういうようになっておるのですね。まず第一に、契約関係については、今回の契約というのは、アンゴラ航空にしましてもあるいはブリティッシュ・カレドニアン関係のものにいたしましても、金額が非常に大きいですね。そういう大きい金額のものについては、その決済は管掌役員がやらなければならない、こういうことになっております。それから交互計算の運用についてでありますが、これは為替関係ですが、これは財経本部長が決済をしなければならない、こういうことになっております。
 そうだといたしますと、正規の文書についてさえ、この決済は営業関係の本部長あるいは財経関係の本部長がやらなければならないわけでありますから、ましてや、それを偽造して行使するということになれば、一介の二職員ではとうていできないはずであります。それが正当な推論だと思いますが、検察はもちろんそれを念頭に置いて捜査していると思いますが、いかがですか。
#16
○伊藤(榮)政府委員 先ほどの逮捕は、実行行為者を特定できましたので逮捕に踏み切ったわけですが、それから先のことは今後の捜査にまつ部分だと思います。
#17
○正森委員 そういうことはよく知っております。私が聞いておりますのは、私が先ほど申し上げたようなことを念頭に置いて捜査をしておられるのでしょうねと、こう聞いておるのです。
#18
○伊藤(榮)政府委員 いろいろなことを念頭に置いて捜査していると思います。
#19
○正森委員 非常に間接的な形で私の質問を肯定されたと思います。
 そこで、念のために伺っておきますが、当時の機械部門の管掌並びに海外店管掌の役員というのが海部八郎氏であったことは承知しておりますか。
#20
○伊藤(榮)政府委員 私もおぼろげながらそういうことではないかと思いますが、検察当局はもちろん知っていると思います。
#21
○正森委員 私は、まだいま名前の挙がった人物について強制捜査が行われているわけではございませんから、そこまで申し上げて、これ以上申し上げることは差し控えたいと思います。
 その次に、有森氏について衆議院が証言拒絶罪で告発を行いましたので、それについての捜査の心構えあるいは見込み、やり方等について、答えられる範囲で結構ですから御答弁を願います。
#22
○伊藤(榮)政府委員 有森氏に対する告発は証言拒絶罪の告発でありますから、当然この証言の拒絶が正当な理由に基づくものかどうかというところが捜査の焦点になると思います。正当な理由があるかどうかにつきましては、実は率直に申し上げて、予算委員会における委員長等からの求釈明に対する有森氏の釈明は、必ずしも十分ではなかったというふうに見ておるわけでございますので、その点を突っ込んでお尋ねしていく、こういうことになると思います。
 ところで、証言拒絶事項はたしか十二項目にわたっておったかと思いますけれども、その十二項目のうちで最も最初に拒絶されましたのが、海部メモというものを示されたときの拒絶でございます。したがいまして、その海部メモを示されての質問に対して証言を拒否されたということが、有森氏の言う外為法違反の訴追のおそれとどういうふうに結びつくのか、この辺は十分吟味を要するところであろうと思います。
 そういう意味におきまして、予算委員会でも御答弁申し上げたかと思いますが、海部メモの性格等についてもある程度踏み込んでいかざるを得ないのじゃないか、そういうような感じを持っております。
#23
○正森委員 ただいまの刑事局長の御答弁は、特に三月五日の集中審議で大出委員の質問に対してお答えになった部分を指しておられると思います。あのとき私も予算委員会に入っておりましたので、ここに自分のメモを持っておりますが、あえてもう一度申し上げるのは省略させていただきたいと思います。
 そこで、要約いたしますと、有森氏の証言拒絶についてその当否を判断するためには、海部メモに記載されている内容そのものについても踏み込んでいかざるを得ないということだと思います。特に、これは福田赳夫氏からの告訴もあったので、一層そうであるということを大出氏の質問に対してはつけ加えておられると思います。
 そこで、私はあえて申し上げたいのですが、ここにオリンピックの海部メモを持っておりますが、このレターペーパーが当時オリンピックホテルで使われておったかどうかということについてはお調べになっておりますか。
#24
○伊藤(榮)政府委員 まだ、その点について捜査の程度がどの程度いっているか、報告を受けておりません。
#25
○正森委員 それでは私の方から、国会の超党派の使節団として参りましたときに調べてまいりました内容を申し上げて、御捜査の参考にしていただきたいと思います。
 私どもは、たまたまシアトルに参りましたときにオリンピックホテルに泊りました。オリンピックホテルに泊まりまして、私が部屋に案内されて最初にしたことは、備えつけてある机の引き出しをあけて、そこのレターペーパーを探すということでございました。ここにレターペーパーがあります。ここにその封筒もあります。念のために持ってまいりました。これを大臣と刑事局長に示しますが、ここで非常に興味深いことは、レターペーパーの内容は違っておるが、オリンピックホテルの印ですね、マークは完全に合っておるということであります。もちろん、われわれのところに回ってきておりますのは、コピーにコピーを重ねたものですからわかりませんが、そういうことは非常にはっきりわかります。住所はもちろん合っております。これは法務省に差し上げます。
 いまお示ししましたように、オリンピックホテルのシンボルマークというのは合致しているわけであります。ただし、レターペーパーの内容、体裁は著しく異なっております。そこで訪米調査団は、私は立ち会いませんでしたが、副団長クラスの方のお立ち合いによって、オリンピックホテルの支配人と、この点について問いただすというミーティングを持ちました。
 そこで、その支配人が言いましたことは、この海部メモに使われた形式のレターペーパーは、確かに使われていた時期があるということであります。それは一九七二年までは使われておったということを言っております。なぜ七二年等で変わるかといいますと、このオリンピックホテルでは、支配人の交代ごとにレターペーパーの様式を変えるというしきたりになっているのだそうです。たまたま私どもがオリンピックホテルに宿泊しましたときは、さらに新しい支配人の交代のある日でございました。それで昔のことをよく知っている人には面会できませんでしたが、その支配人の言うことには、支配人の交代ごとにレターペーパーの様式を変えるということと、それからこのマークが同じであるということと、かつて、この海部メモに使われたレターペーパーの様式は、一九七二年までは、六五年も含めて使われておったということを、口頭でございますが認めたということであります。
 そうだといたしますと、私は、海部メモそのものが本物である可能性もあるし、仮にそうでないとしても、ここに書かれてある内容自体については、有森氏の証言拒絶が真摯なものであるならば、真実である可能性も強いというように思いますが、もちろんその可能性もあるということを念頭に置いて捜査されるのでしょうね。
#26
○伊藤(榮)政府委員 ただいま御指摘のような点あるいは御調査の結果を十分踏まえて捜査すると思います。
#27
○正森委員 そこで私は、仮に有森氏の証言拒絶に相当な理由があるということになった場合には、今度は逆に、海部メモを全面的に否定なさった方の偽証罪の問題が起こると思いますが、それについても当然念頭にあると思いますが、いかがですか。
#28
○伊藤(榮)政府委員 どうも、そう短兵急にそういう結論になるかどうかは、私もちょっといまよくわからないのですが、いずれにしろ、いろいろな可能性を念頭に置いて捜査するであろうことは間違いございません。
#29
○正森委員 ここ一、二週間が非常に微妙なときですから、そこらまでぐらいの答弁しかできないと思いますが、私は、日商岩井の、名前は申しませんが、役員は、山岡、今村氏が逮捕されている事案についても、あるいは本院における偽証罪の関係についても、重大な疑惑の対象であり、それが解明されるのは日時の問題であろうということを指摘して、この問題に関係しての私の質問を一応終わらしていただきたいと思います。
 法務大臣にお伺いいたしたいと思いますが、法務大臣としては、本件がたとえ政界に波及しようとも、いささかも検察にストップをかけることなく事態の真相を明らかにする、そういう決意であると思いますが、いかがですか。
#30
○古井国務大臣 毎々申し上げておるのですけれども、これだけの大きな問題になって、政治の信用にもかかわっておるというようなわけでありますので、最も公正に、それから誤らぬように周到に捜査していくということは、これはあたりまえのことですから、それをどうのこうのということはしないで、公正に捜査を進めていくということにするのが至当であろうと思っております。
#31
○正森委員 それでは裁判所定員法関係について、非常に短い時間でございますが、質問をさせていただきたいと思います。
 今回、裁判官、判事が一定数増員されるわけですが、これは何年ぶりですか。
#32
○大西最高裁判所長官代理者 このたび判事五名の増員ということでございますが、約十年ぶりのことでございます。
#33
○正森委員 いままで判事補の増員は若干ずつ行われたのですが、判事の増員は十年ぶりで、私たちは、裁判官が足りない足りないということを、現地の各裁判所の弁護士、それから住民、職員、裁判官すらからも聞いておりますので、非常にその手当てがおくれているというように思わざるを得ません。
 そこで、それがどういうぐあいな悪影響を与えているかを、少し裁判所にもお調べを願ったので明らかにしておきたいと思いますが、裁判官が常駐していない庁というのは、現在二百五十庁ぐらいあると思うのです。これは四十一年には幾らぐらいでしたか。
#34
○大西最高裁判所長官代理者 裁判官が常駐しておりません庁は、五十三年度はただいま御指摘のように約二百五十庁でございますが、昭和四十一年では地家裁支部、簡易裁判所合わせまして二百二十庁ぐらいになるかと思います。
#35
○正森委員 つまり、裁判官のおらない裁判所というのはふえておるわけですね。この十年ほどの間に三十庁ほどふえているわけであります。
 そこで、次に伺いたいと思いますが、地裁の甲号支部というのは合議体を構成しなければならない裁判所であります。その甲号支部で、合議体を構成し得る三名の裁判官の配置のない支部というのは何庁ございますか。
#36
○大西最高裁判所長官代理者 現在、甲号支部で三人の裁判官が常駐していない庁、つまり二人以下の庁でございますが、三十六庁ございます。
#37
○正森委員 昭和四十一年当時は幾らございましたか。
#38
○大西最高裁判所長官代理者 ちょっといま手元に資料が見つかりませんが、いまよりは少し少なかったのではないかと思います。
#39
○正森委員 それでは申し上げましょう。
 私のところに裁判所からいただいた資料では、昭和四十一年当時は二人庁というのは二十だった。それが現在では三十六に、ほとんど倍増しているわけです。つまり、非常に裁判所の状況が悪化しているということを明らかに示していると思うわけであります。
 そこで次に伺いますが、以上の傾向は裁判所職員の場合にも言えると思うのです。独立簡裁というのがあります。――ちょっと間違えたかもしれない。独立簡裁で職員が二人のところがふえていると思うのですが、それはいかがですか。
#40
○大西最高裁判所長官代理者 先ほどのお尋ねは裁判官でございましたが、一般職の職員が独立簡易裁判所で二人しかいない庁は、昭和四十一年度におきまして二十でございましたが、五十三年度では三十六庁ということになったわけでございます。
#41
○正森委員 私のいまの質問もその点誤解がございまして、職員も含めて二人しかいないところが、かつては二十だったのが三十六にふえている、こういう意味でございます。
 次に伺いますが、そういうことであるのに、裁判官のうち判事の定員を増員しないというのは、どこに原因があったのだろうか。裁判官の判事の定員は千二百七十六名というのがずっとふえてこなかったわけです。お答えは大抵給源がないということだろうと思うのですが、終戦直後の数年間は、弁護士から裁判官になる数が非常に多かったのです。ところが、これが最近ではほとんどゼロないし一名で、逆に検事からは五名とか八名とか相当数なっているのですね。
 法曹三者の一体の上からいっても、全部法曹資格を持っておるわけですから、弁護士から裁判官になるというのを、弁護士会とも協力して制度的にもっと考えていくということをやったらいかがですか。
#42
○勝見最高裁判所長官代理者 弁護士から裁判官におなりいただいている方は、終戦直後に新制度発足の当初におきましては相当数あったわけでございますが、最近は、御指摘のとおり、本当に数えるほどしかございません。
 この原因といいますと、たびたびお尋ねがあり、またお答えしているところでございますが、いろいろな原因が考えられます。私どもといたしましては、裁判官適格の方が裁判所に来ていただくことは、むしろ積極的に歓迎しているところでございます。ぽつりぽつりではございますけれども、お申し出がございました際にには、ほとんど裁判官になっていただいているような最近の事情でございますが、御指摘の点は十分考えさせていただきたいと思います。
#43
○正森委員 その点について、私は特に裁判所側の御注意を喚起したいのは、久しい間法務省、最高裁、日弁連の三者協議というものがとだえておりました。それが昨年の秋ごろからやっと復活をしたということで、信頼関係がいま徐々に回復しつつあると聞いております。それは非常に結構なことだと思うのです。こういうように三者協議も開けないような状況であった。それは、私は一概に最高裁だけが悪いとは申しませんけれども、最高裁の方もそういう点について思いを新たにする点がなければ、弁護士としても、三者協議もできないような状況では、弁護士から思い切って裁判官になろうという気に必ずしもならないのは当然ではなかろうかというように考えるわけです。
 それで、もうあとほんのしばらく質問させていただきますが、念のために数字を挙げたいと思うのですが、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案関係資料の二十二ページに載っておることを確認したいのですが、昭和五十年から五十二年における地方裁判所の民事・刑事新受件数というのがございます。
 それを見ますと、第一審は民事も刑事もふえておるのですね。民事は昭和五十年が第一審が九万三千百十件、五十一年が十万四千二百七十二件、五十二年が十一万五千百九十件、大体一〇%程度ずつ伸びておるわけです。それから刑事については五十年が七万六千五百四十八、五十一年八万三千二百十二、五十二年八万七千二百七十四、これまた五%から八%ふえておるということになっておりますが、これは間違いありませんね。
#44
○大西最高裁判所長官代理者 最近における受件数の推移は、ただいま御指摘のとおりでございます。
#45
○正森委員 ところが、もう一枚紙をめくりました二十四ページを見ていただきますと、一つの事件の平均審理期間、一件を処理するのにどれだけかかったかという平均が書かれておるのです。
 それを見ますと、第一審の地方裁判所では、昭和五十年に民事では十六・一カ月かかった。五十一年はそれが十五・八カ月、五十二年は十四・七カ月に減っておるのですね。刑事事件について言いますと、昭和五十年は六・三カ月、五十一年は五・七カ月、五十二年は五・一カ月に大幅に減っております。
 一方では、裁判官が非常に少ないというのが、私がごく簡単に述べました数字でも出ておりますのに、事件処理の平均月数は大幅に縮まっている。つまり、縮めなければふえた件数を処理できないから、縮めざるを得ないわけであります。
 ここに、五十四年一月一日の「裁判所時報」で岡原昌男最高裁判所長官の「新年のことば」がありますが、その中では「迅速な裁判が望まれることは多言を要しない。」ということで、裁判の促進を非常に強調しておられるわけですね。ここから明らかに出てくることは、裁判官は足りないのに裁判は迅速にやれ、こういうことになる。だから、事件がふえておるのですから、前と同じ月数で処理をしておるというだけでも非常な能率アップだのに、ところが事件はふえておる、裁判官は余りふえないのに、処理月数は逆に縮まっておる。いかに審理促進という名で裁判が早められておるかということがわかると思うのですね。
 私は、このことを一概に全部悪いと言うのではありません。私は弁護士として裁判に携わったこともございますけれども、事件によっては、早く片づけるのは当然だ、片づけるということは悪うございますが、処理するのが当然だと思われる事件もあるわけです。しかし、非常な難事件もあります。これは三年、五年、七年とかかるのは、ある意味では当然だと思われるような事件もあるわけですね。それを一概に迅速、迅速ということから、どういうようなひずみが来ておるかということを、現場の裁判官の声を読み上げますから、それを最高裁並びに法務委員長も聞いていただきたいと思うのです。もちろん大臣も聞いていただきたいと思います。
 これは日本弁護士連合会が編集いたしました「裁判官」という本でございまして、日本評論社から出ております。この本の中の二ページないし三ページに「判例時報」七百三十九号に載りました全国裁判官懇話会の報告というのがあります。つまり、裁判官が集まって懇話会を開いた。そこで裁判官が言ったことを収録しているわけですね。その中でこう言っているのです。これは刑事ですね。
 本庁の単独事件が約一二〇件あり、週一開廷半で処理する体制をとっているが、時には午前中四、五件を審理するときもある。このような場合、事実上書証の証拠調を極めて簡略にしなければならないことが多い……訴訟法に照らしても、また被告人の立場に立ってみても、さらに広く法廷審理のあり方という点からみても、望ましいことではないと思って悔やんでいる。……証人、特に被告人側の証人の証言、そして、被告人の弁解、あるいは言い分を充分聞いたであろうかと反省することもある。……要点に入ることに急なあまり、あるいは別の事件が次々と控えている、時間の余裕がないというような場合に、本来の訴訟指揮のあり方をこえて職権的、糾問的な態度をとる、被告人に納得できない審理の仕方をして、ひいては重要な事実を逃しているのではないかというようなおそれも感じる。……しかし、ことの根本にさかのぼって物事を探究し、抱いた疑問を追求するには、単に心がけではなく、それ相応の研究、あるいは幅広い勉強が当然前提とされる。それが思うにまかされないという事情がある……現在、裁判官の増員の必要性が、極めて焦眉の問題になっているというように感じられる。多忙ということから、ややもすれば、あるべき裁判の姿がゆがめられてくるところに一つの問題がある
これが現場の裁判官の声であります。また、別の裁判官であろうと思いますが、こういうように言うておられるのですね。
 期日簿が月曜から金曜まで真黒になるほど事件がつまり、また毎日のように何件も落ちていく時期もある。そういう時期になると、遊びを犠牲にするのはやむを得ないとしても、まず家庭を犠牲にすることになる。
特に委員長にはお聞きいただきたいと思いますが、
 家庭を犠牲にしてなおかつ足りなくなると、今度は事件を犠牲にするようになる。……実刑か執行猶予かということを悩み始めるときりがない。……ところが、前科の関係で法律上執行猶予にできない事件であることが判明すると、被告本人には非常に不幸なことなんだけれどもこちらの方は心の余裕が生まれる。審理で非常にくたびれて法廷から四時半頃出て来ると勾留請求書が記録と共に机の上においてある。このごろはまず一番最初に請求書の被疑者の住居という欄をみる。住居不定というのは悩む必要がないのが大部分であるから
つまり、勾留できるというわけですね。
 それだけでほっとする。……破産寸前という状態に追い込まれてくると
これは財産のことを言っているのではないのです。自分の心境のことを言っているのです。
 品性が非常に卑しくなって、こういうことではおそらく良心に従った裁判には程遠いのではなかろうかと思う。……非常に忙しい状況の下で裁判官は悪魔に魂を奪われないで良心を守って裁判をするにはどうしたらいいのかという問題は、私にとって依然として深刻な問題である
こう言っております。こういう訴えを聞きますと、私どもは、こういう状態の裁判官に裁判をされるということは、基本的人権にとって非常に問題があるというように思わざるを得ないわけであります。
 それで、最高裁は毎年裁判官の増員を言っておられるようで、その御努力には敬意を表明しますが、必ずしもそれが予算上全部認められているわけではなくて、大幅にカットされております。現場のこういう声を心にとどめて、今後ともこれで十分とせずに努力を強めていただきたい、そして正しい意味での基本的人権を守るようにしていただきたい、こう思いますが、いかがでしょうか。御答弁を承って、質問を終わります。
#46
○大西最高裁判所長官代理者 現在の裁判官の定員が必ずしも十分でないということは、正森委員御指摘のとおりでございまして、最高裁判所といたしましても従前から、その他の施策をも含めてでございますが、増員の点も努力をしてまいりましたし、今後も努力をしてまいるつもりでございます。国民の皆様方に御迷惑をかけないような裁判所の体制をつくり上げることができるように今後も一層の努力をいたしたい、かように考えております。
#47
○正森委員 終わります。
#48
○佐藤委員長 横山利秋君。
#49
○横山委員 短い時間に御質問を進めますものですから、質問の要旨を各関係者に差し上げておきました。
 ここに、保護司に対する環境調整事件担当通知書なるものがございます。そしてその中で、きわめて詳細に犯歴が書いてあります。昭和二十五年十一月には道交法違反で科料二百円、二十九年にも科料五百円、三十年には覚せい剤取締法違反で罰金二千円、三十一年もあり、三十三年、三十四年、四十年と、この該当者の犯歴が詳細に記入をされております。
 また一方、三菱銀行事件で銀行を襲撃いたしました者の十九歳、未成年のときの銃砲刀剣類取締法違反が新聞紙上で出たことも御存じのとおりであります。また一方、私が承知をいたしております警備業者――警備業者は御存じのように、業法の三条並びに七条で、禁錮以上の刑に処せられて、「その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して三年を経過しない者」は雇用してはならないことになっておりますから、警備業者は本人の犯歴について常に何らかの方法で照会をする、そして、その目的を何らかの方法で達する、こういうことが言われておるわけであります。
 そうなりますと、刑法三十四条ノ二に決める刑の消滅の効果は一体どういうことなのか。また他方、人権擁護上、刑が終わった後にかかわらず、生涯その人の就職並びにその他の社会生活において、刑の消滅ということが何らの効果がない、こういうことは一体行政上にもどうあるべきかという点が私の焦点であります。
 まず、刑法三十四条ノ二の刑の消滅という意味は一体何であるか。ここで刑が終わったのであるから、本人は全く普通人として社会で公的にも私的にも活動をしていいという法律上の保護がある、こういうふうに解釈してよろしいものであるか、まず伺います。
#50
○伊藤(榮)政府委員 刑法三十四条ノ二で刑の消滅という制度を設けておりますが、御承知のように、一定の期間罰金以上の刑に処せられることなく経過いたしますと、刑の言い渡しに基づく法的効果を将来に向かって消滅させることにしておるわけでございます。
 こういう制度が設けられております趣旨は、御承知のように、ただいまも御指摘が一部はございましたけれども、刑の言い渡しを受けた者に対して、一定の資格を無制限に制限するという法令が少なからずありますことから、一定期間善行を保持したことを理由として、これらの資格制限を解除いたしまして、いわゆる法律上の復権を図ってあげるということ。それからまた、仮にいわゆる前科がある人でも、更生すれば前科のない人と同様の待遇を受けるという原則を樹立することによって更生を促す。この二つの観点から、こういう制度が認められたものと思われるわけでございまして、したがいまして、刑法三十四条ノ二の条件を満たしまして刑が消滅をいたしますれば、全く過去において刑に処せられなかった者と同じように社会的に扱われるべきものである、かように存じます。
#51
○横山委員 まさに私も同感だと思うのでありますが、しかしながら犯罪歴というものは、検察庁、市町村の犯罪者名簿あるいは道交法違反によるコンピューターに対する挿入等、役所の中では未来永劫にわたって犯罪者の記録というものが存置をされておる、そう考えられるのでありますが、犯罪歴を作成する法的根拠は一体何でありますか。
#52
○伊藤(榮)政府委員 まず、検察庁におきまして犯罪歴を把握しておりますのは、申し上げるまでもなく、刑法でございますとかあるいは刑事訴訟法等によりまして、たとえば執行猶予を付するための条件でございますとか、それから併合罪の場合の主文をどうするかとか、累犯加重をどうするか、あるいは仮出獄の取り消し事由がどうなるかという問題が、法律上必要とされるわけでございます。さらに、特定の被告人について、裁判所が刑を盛ります場合に、その犯罪傾向といいますか、そういうものを十分反映させる必要がある。
 かような、刑事訴訟法あるいは刑法等に基づきまして把握することが必要と認められております犯罪歴があるわけでございます。そういうものを把握いたしますために、検察庁におきまして、犯歴票制度というものを設けまして把握しておる、こういうことでございます。
 なお、市町村において犯罪人名簿というものを設けておるわけでございますが、これは地方自治法に基づきまして、市町村長は資格に関する証明等を行うものとされておりますので、その必要上、市町村役場に犯罪人名簿を備えつけておる、こういうことのようでございます。
#53
○横山委員 そういたしますと、市町村の犯罪人名簿ですか、その記録は検察庁から通告をする、あるいは警察における指紋台帳の中における犯歴というものは、すべてどこから通告を受け、そしてまた、その加除訂正をどういう指示をもって行うことになっておりますか。
#54
○伊藤(榮)政府委員 市町村にございます犯罪人名簿の整備につきましては、検察庁におきまして、刑が確定いたしますと、既決犯罪人通知というものを本籍地の市町村役場にお送り申し上げる、これによって整備されておるわけでございます。
 なお、市町村におきましては、先ほど申し上げました刑の消滅あるいは恩赦等がございますと、刑の言い渡しの効果がなくなるわけでございますので、そういったものについては、検察庁に定期的に照会をされるようでございます。これに対して検察庁からば、その後罰金以上の刑に処せられたことがないために刑が消滅しておるなどの御回答を申し上げる。そうすると、市町村役場では、これを痕跡をとどめないように削除して犯罪人名簿を再調製される、こういう手続のようでございます。
#55
○横山委員 指紋台帳の点はどうですか。
#56
○仲村説明員 鑑識課長でございます。お答えいたします。
 警察といたしましては、被疑者を逮捕した場合に、刑事訴訟法の第二百十八条第二項の規定に基づきまして、逮捕した被疑者の指紋を採取いたしまして、指紋原紙を作成、保管いたしております。
#57
○横山委員 その指紋台帳に記入される犯歴というものは、どうして整理をされるのですか。
#58
○仲村説明員 一たん作成されました指紋原紙の被疑者の処分結果につきましては、以後必要に応じて検察庁等に照会をいたしまして、その処分結果が明らかになり次第、その加除訂正等をやっております。
#59
○横山委員 犯歴に行政罰を含むのですか。私が先ほど紹介をいたしました保護司に対する犯歴につきましては、科料、罰金まで挿入されておるのでありますが、この種の問題についても犯罪歴の中にすべて入るわけでありますか。
#60
○伊藤(榮)政府委員 行政罰という言葉をどういう意味にお使いになったかはっきりいたしませんが、普通、行政罰といいます場合には、二つございまして、一つは、行政上の必要に基づいて各種行政法規に設けられておる罰則、これに基づいて、いわゆる刑罰が科せられる場合でございます。それからもう一つは、そうではなくて、過料等の秩序罰を行政上の必要から科する場合でございます。
 後者の、いわゆる秩序罰と言われますものにつきましては、検察庁の犯歴票にはもちろん登載されません。しかし、刑罰として罰金なり科料等に処せられたものにつきましては犯歴票に記入して把握をする、こういう取り扱いになっております。
#61
○横山委員 先ほど引用いたしました警備業法あるいは庶民金融業法、多くの法律の中に犯罪者の欠格条件を記入をいたしております。行政庁は、雇用者の刑歴者に関する刑歴照会に対して、答えておるわけでありますか。
#62
○伊藤(榮)政府委員 検察庁におきましては、一般の、ただいまお尋ねのような人の資格等に関する照会には一切応じておりません。
 検察庁で照会に応じますのは、警察当局等から参ります犯罪捜査上の必要に基づく犯歴の照会あるいは裁判所からの照会、そういったものに対して答えまして、人の資格に関する問題は、もっぱら市町村役場の方でお答えになっておると思います。
#63
○横山委員 警察庁は、実際問題として、警備業法等における欠格条件が、「禁錮以上の刑に処せられ、」「その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して三年を経過しない者」、たとえばそういうようなことについて民間である警備業者から照会を受けた場合に、どうしていますか。
#64
○仲村説明員 警察の方にはそういう照会もございませんし、また、もし照会がありましても、あくまでも犯罪捜査の利用のために持っておるわけでございますから、そういうものに対してはお答えしないというたてまえになっております。
#65
○横山委員 当委員会ではそうお答えになるだろうと私は思っておりました。
 しかし、警備業者の中には、かつて警察に勤務しておった者あるいはまたがって法曹界におった者がおりまして、それらの人が警察を通じて調査をすれば十分以内でわかる、こう言われておるわけであります。また仮にそうでない場合、あなたのおっしゃるような場合でも、第七条によって欠格者を警備員としてはならないことになっておるのでありますが、雇用の場合、本人がそれを率直に申告をしない場合、それを知らずして採用をしたということが、もしあなたの言うとおりであるとすれば、そうだということになるわけでありますが、それによって警備業法違反に問われる可能性がずいぶんあるわけであります。現実に、警備業に勤めておる職員が、その契約した会社荒らしをしたということについてはかなりの事例がある。そういう事例について警備業者が常に警戒をすることは当然である。
 警備業者に言わせれば、警察に調査を依頼すればすぐわかると言われておるのでありますが、この点をどうお考えですか。
#66
○仲村説明員 警備業法の関係につきましては所管外でございますので、つまびらかには存じておりませんが、一応、職員を採用する場合には、業者の方で興信所等を活用して身元等を調査して、それから採用するというふうに聞いております。
#67
○横山委員 保護司という仕事が、かなりその保護をする人間の経歴を知ってやらなければならぬことは、私もわからないわけではありません。しかしながら、保護司もしょせん民間人であります。この民間人がかくまで詳しく本人の犯歴を、科料に至りますまで承知をすることについて、行政上の秘密、人権擁護上の秘密、そういうことについてどうお考えでありますか。
#68
○稲田(克)政府委員 お答えします。
 御指摘のとおり、環境調整を担当いたします保護司に対しましては、本人の前歴等詳細に記載したものを示して、環境調整に当たらしております。環境調整を行います場合に、やはり本人の生活歴と申しますか、それを詳細知った上で行うことが、より適切に行われることとなろうかと思いまして、そういう生活歴を保護司に把握させるという観点から、その一環として犯歴が記載されておるというふうにしておるわけでございます。
 もちろん、御指摘のように保護司は民間人でございますが、保護司法によりまして秘密の尊重、保持は厳格に守らなければならないというふうに規定されておるところでございますし……。(横山委員「罰則はありますか」と呼ぶ)いや、罰則はございません。
 また、保護司の行います活動といいますのは、本人の改善、更生を図るというところに主たる目的がございまして、これを他に漏洩するというふうなことは、かえってその改善、更生を図る上において大きな支障を来すことになりますので、保護司自身が、仮にそういう本人の犯歴をしさいに認識いたしておりましたとしましても、これを第三者に漏洩するというふうなことはないものと、私どもとしては確信いたしておるわけでございます。
#69
○横山委員 法務大臣にお伺いをいたしますが、いままで私が整理をし、お答えを願ったように、刑の消滅ということを刑法三十四条ノ二で言いながら、実際は行政内部におきましては、まさに一人の人間が犯した犯罪というもの、犯歴というものは未来永劫に行政内部にとどめられる。そして、それがいろんな形をして現実に漏洩されておる。そして刑の消滅の法律的な効果、伊藤刑事局長が申しましたような、そういう法律的な効果が出ていない。漏らしていないと言いながら、保護司は特別だと、こうくる。警備業者が調べてくれと言えば、先輩、後輩の関係もあって、ないしょだが、あれはちょっとおかしいぞ、こういうことがあったぞというふうにないしょに漏らす。
 したがって、このことは刑法三十四条ノ二の刑の消滅の効果というものが、行政上にも法律上にも両面にわたって、消滅する効果がもたらされていない。そのことは人権擁護上きわめて重大なことだと私は思うのであります。三菱事件の犯人が銃砲刀剣類違反を十九歳のときに犯したということが、どうして新聞は承知ができるのか。これは明らかに、刑が消滅しておるにかかわらず、それを検察庁が漏らした、こう考えざるを得ないのであります。
 したがって、私はあなたにお伺いしたいことは、刑の消滅ということが、一たん消滅した以上は、一個の人間として法律上も罪を犯したということが全く白紙になって、法制上にも普通人と同様のあらゆる保護が受けられるということに、人権上も法律上も厳重に処置を厳しくする必要があると思いますが、いかがですか。
#70
○伊藤(榮)政府委員 大臣がお答えになります前に、お尋ねの中に、事実関係でちょっと気になるところがありましたので申し上げますが、三菱銀行事件の場合は、銃刀法の前科とか道交法の前科とか、そういうこともおっしゃいましたけれども、新聞等で一番報道されたのは強盗殺人の保護処分歴ということであったと思いますが、これらにつきましてはもちろん検察庁の犯歴票には載らない事柄でございまして、それに関連しまして、いまのお尋ねの中に、検察庁が漏らしたのではないかというお疑いのようなお言葉がありましたけれども、この点は全くそういうことがあり得ないわけでございますので、それを前提にお聞き取りいただきたいと思います。
#71
○古井国務大臣 刑が時効で消滅する、刑の時効あるいは公訴権の時効、消滅してしまった、そういう人について、きれいさっぱり何もなかったということでいかないと、人権擁護という立場から悪いのではないか、こういうふうな御論旨のように聞いたわけであります。
 私は、個人の意見かもしらぬが、人権ということの大切なことが少し徹底していないような実は感じを持っておるのです。人権宣言から大体民主主義社会は発展したのであって、これがもとだったのに、人権の問題はどうも少し認識が不十分じゃないかという気が前々からしているのであります。ですから、いろんなことで、そういう意味で人権擁護という人権尊重の立場から考えてみなければならぬことがあるのではないか。
 それで実は横山さんは、直接ではないかもしらぬけれども、時折考えがぴったり合わぬことがある。たとえば入管の記録を出せ。個人個人の行動を全部さらけ出す、古いときから。その人間の人権にかかわってくるのですけれども、しっかり出さなければならぬものか、あるいは、そこまで脱線したら、これはまたしかられてしまうかもしらぬが、この前もあったが、灰色高官というのは、金の授受はあったにしても時効でもう消えてしまっている。けれども、これをさらけ出せ、これは人権はどうなる、いわば人権という問題の考慮というもの、私は、いろいろ考えてみなければならぬ点があるように思うのです。それが一つです。
 一方、どうにもやむを得ぬ公益上の必要とか、そういう場合はそれではどうするか、どっちにウェートを置いて考えるべきか、非常に考えにくい場合も起こるのです、別のそういう要求もあり得ることですから。それで、手放しで議論をするというと、柱に人権擁護ということはある、また、片っ方には公益とかあるいはどうしてもそれが必要なような業務関係のこととかがありますもので、きれいさっぱり右と左、こういうことに考えてしまって、簡単明瞭に言っていいものか、私は、実は十分よく考え切れずにおるのです。
 しかしながら、どっちかというと、人権尊重という方がいままでちょっと弱いというような感じがしておるわけでありまして、右から左、一刀両断式でいけるものか、もっと規則や何かということを超越してというか、それ以上に考え方を立ててみなければいかぬじゃないか、こういうふうに思っております。いまの法制あるいは理屈などのことは、当局の方が説明申し上げておるのが現状だ、こういうことであります。
#72
○横山委員 法務大臣は、巧みに私の質問の趣旨をすり変えているような気がするわけです。
 犯罪歴というものと人権ということについて、抽象的でなくして、刑法三十四条ノ二に刑の消滅をうたっている、その刑の消滅という意味は、いま政府側と私どもとの間には意見の相違というものはないのです。その刑の消滅ということがありながら、事実は、行政上の必要によって犯罪歴が未来永劫なされている、そしてそれがゆえなく漏洩されておるという疑いがある、私はこう言っているのです。
 入管の記録は、犯罪歴をわれわれが追及しているわけではないのであります。このことを突き詰めていきますと、公益上の問題と人権の問題と、どちらが優先するかという問題にはなるではありましょう。なるではありましょうが、いま引用されました入管の記録というものは、公益上政府が守らなければならない行政上の秘密であるかどうかについては、これは疑わしい。むしろその問題で政府が言っているのではなくて、国会運営上言っておるのだと私どもは理解をしておるわけでありますから、気持ちはわからないわけではないのですけれども、引用の仕方について、ちょっと誤解があると私は申し上げておきます。
 そこで、時間がありませんけれども、恩赦については犯罪歴に記録されるのでありますが、刑の消滅をしたときに、コンピューターによる犯罪歴だと思うのでありますが、それらについて正確に、刑の消滅が何月何日に行われたということは記録され、それが市町村その他に通告をされているものでありますか、どうですか。
#73
○伊藤(榮)政府委員 検察庁が保管します犯歴票には、何月何日刑の消滅ということは記載いたしません。これは、犯歴票にすべてのいわゆる前科が載りますので、それを見ることによりまして、消滅しておる前科であるかどうかがすぐわかるからでございます。すなわち、犯歴票に基づく前科調書を見る人は法律家あるいは捜査官でございますので、そこまでの配慮はいたしておりません。
 一方、市町村の犯罪人名簿におきましては、刑の消滅あるいは恩赦等がありますと、その部分は全く読めないように削除して編製することとされておりまして、市町村に対しては、検察庁が市町村からの定期的な照会に応じて回答しておるところでございます。
#74
○横山委員 裁判の記録と保存及び公開と刑の消滅とは、どういうふうに処理をされておりますか。
#75
○伊藤(榮)政府委員 裁判の確定記録につきましては、一定の基準を設けまして、その期間保存をしておるわけでございます。
 そこで、お尋ねの趣旨に即して考えてみますと、保存期間の長い確定記録につきましては、当該被告人であった者について刑が消滅してしまっておる場合も起こり得るわけでございます。その場合に、たとえばこの記録を閲覧を許すか許さないかという問題が、そこに一つ起きるわけでございますが、何分裁判記録につきましては、刑事訴訟法五十三条で公開をするというのが原則とされておるわけでございます。この趣旨は、憲法で定めました裁判の公開の原則を補完する趣旨で、このような規定が置かれておると思うわけでございます。したがいまして、刑の消滅した裁判記録であるからということで、たとえば閲覧を拒むということは憲法八十二条の趣旨を補完いたします刑訴法五十三条の趣旨に反するということになりまして、一応お見せをする、こういうたてまえになっておるわけでございます。
 ただし、もちろん刑訴法五十三条にも書いてございますが、一般の閲覧に適さない性格の事件に関する確定記録は閲覧を許可いたしませんし、また閲覧する人が、記録で見ました内容を正当な理由もないのに流布して、関係人の名誉を棄損する行為に出るおそれがあるというような場合も、閲覧をお断りすることになっておりますが、原則としては、ただいま申し上げたような取り扱いをいたしておるわけでございます。
#76
○横山委員 それでは、時間がございませんので、関係の各省庁に強く希望をしておきたいと思います。
 犯罪者が一定の刑罰を受けて刑務所に入って、そして更生して、その更生の過程に並み並みならぬ官民の協力を受けて、更生をし、新しい職業について、そうして社会人として活躍する過程において、刑の消滅が実際にいまなお多くの障害に突き当たっておるということを考えざるを得ません。人権擁護局から発行されております本を見ましても、いわゆる前科ということが、どれほど本人の更生の上にも、あるいは就職とか人生経験の上にも障害になっておるかという記録を見ますと、どうしても各関係者に対しまして刑の消滅が本当に実効をあらわすように、行政の秘密が漏れておるという私の疑いが、いま具体的に、時間がございませんから、また支障がありますから申し上げることはできませんけれども、実際問題として、行政上の秘密が容易に漏洩されておる、そうして、それが善意であれ、悪意であれ、本人に非常な障害を与えておることを十分認識をされまして、これらの人間が支障のないように、行政上の秘密については十分な配慮をしてもらいたいと思いますが、法務大臣いかがでございますか。
#77
○古井国務大臣 御趣旨はまことにごもっとも千万だと思います。
#78
○横山委員 終わります。
#79
○佐藤委員長 西宮弘君。
#80
○西宮委員 私は、いま提案されております二法案に関連をして、若干お尋ねをしたいのであります。
 前回も、いま裁判官の数が足りないという問題について、一般の国民が、つまり裁判所を利用しなければならぬ関係当事者が大変に迷惑をしているという問題を指摘したのでありますが、いま同僚議員から、裁判官も困っているという話がありました。私は、前回も若干その点についても指摘をいたしまして、その際は、やめた裁判官、あるいはまた現職ならば名前を秘してA、B、Cといったような匿名で意見を述べているのは、まことに不明朗だということを言ったのでありますが、ここにはそれと反対の、堂々と名前を出している裁判官が出ております。ただし若干古いのでありますが、昭和四十六年の「法律時報」に載った野瀬高生という横浜地裁の裁判官でありますが、やはりこの人も「裁判官の実動員数が不足のため、裁判官一人の負担がいちじるしく過重となり、ひいては裁判官の健康を害し、仕事の能率にも響いて来るのである。」ということなどをるる述べております。そして「一人当たりの手持件数は増加し、民事部においては次回期日が六カ月先になるというのも、少なくない。こうなると、六カ月先に記録の読み直しをせねばならず、能率を害することおびただしい。」こういうことを主張しているわけです。
 そこで、私は、こういう状況下にあって、いわゆる裁判をしない裁判官というのが相当数あるということを問題にしたいのでありますが、このことは事前に申し上げておったので、数字があったらお示しを願います。
#81
○大西最高裁判所長官代理者 西宮委員御指摘の、裁判をしない裁判官ということで申し上げますと、現在、最高裁判所の事務総局で司法行政専務をやっております者が四十四名ございますが、そのほかに、高等裁判所の事務局長と申しまして、高等裁判所八つございますが、それぞれに一人ずつおりますので、それが八名で、合計五十二名現在おるということになっております。
#82
○西宮委員 まだそのほかに、たとえば研修所の教官とか、いろいろあるのじゃないですか。
#83
○大西最高裁判所長官代理者 研修所の教官も裁判を直接はやっていないという意味で申し上げますと、司法研修所、書記官研修所等の教官といたしまして三十五名、それから最高裁判所に裁判所調査官というのがおりますが、それが二十八名。それらを全部ひっくるめますと百十五名という人数になります。
#84
○西宮委員 そこで私は、こういう人たちが必ずしも裁判官でなければならぬということはないのじゃないか、余裕が十分あるならば無論裁判官でも結構だろうし、あるいは裁判官としての貴重な経験が生かされるということで結構だと思いますけれども、こんなに数が足りないということが問題になっている際に、大変もったいないと思うのですね。
 いまのお話では、事務総局に四十四名いるということですが、元来事務総局に配置をされる人は、事務次長あるいは局長、課長などでありますが、これはいずれも「裁判所事務官を以てこれに充てる。」という規定になっているわけですね。これは昭和二十二年の最高裁の規則であります。これが二十五年に、裁判官をもって充てることもできるというふうに改正されたと聞いておるのですが、実は私、現行の加除訂正された規則から抜いて持ってきたのですけれども、この二十二年十二月一日の規則は、いまはもう死んでしまったのですか。
#85
○大西最高裁判所長官代理者 最高裁判所事務総局におります事務次長、局長、課長等は、裁判所法によりまして裁判所事務官となっておりますのはそのとおりでございます。
 それで、実は当初はむしろ裁判官から裁判所事務官にかわりまして、事務官として勤務しておったという時代もあったわけでございますが、ただいまちょっとおっしゃいましたように、昭和二十五年に最高裁判所の規則といたしまして、司法行政上の職務に関する規則という規則ができまして、その規則によりますと、裁判官の身分のままで司法行政上の職務に充てることができる、こういう関係になったわけでございまして、その規則を受けまして、最高裁判所の裁判官会議でそれぞれ特定のポストを指定いたしまして、そのポストについては裁判官をもって充てることができる、こういうふうにしたわけでございます。
 法制上の根拠としては、以上のとおりでございます。
#86
○西宮委員 元来は、そういうふうに事務官をもって充てるというのが、いわば大原則であったわけですが、そしていまお話しのように、身分を裁判官から事務官に切りかえて、その仕事に従事をさせるということをしておったのだが、そうなると給料が下がってしまう、かわった人に大変気の毒だというので、裁判官を充ててもよろしいというふうに、昭和二十五年に変わったと聞いておるのですけれども、そういうことですか。
#87
○大西最高裁判所長官代理者 御指摘のとおりでございます。
#88
○西宮委員 私はまことにもったいないと思うのですね。単に給料関係だけで、裁判官の方が待遇がいいというので、その身分で司法事務をやらせる、司法行政をやらせるということは、まことにもったいない限り、だと思うのです。
 ついては、少し具体的にお尋ねをいたしますが、いわゆる事務総局の仕事は、事務次長のもとには秘書課、広報課というのがあって、あとは総務局、人事局、経理局、民事局、刑事局、行政局、家庭局、この局の名前だけ見て、まあ、確かに裁判官の知識経験を必要とするというふうに思われるところもあるように思いますけれども、純然たるいわゆる事務系統のやる仕事、そういうものがたくさんあるはずだと私は思うのです。
 その代表的な一例として、まず経理局についてお尋ねをしますが、経理局では局長と、それから課長のうちで裁判官はどれとどれですか、何課長ですか。
#89
○大西最高裁判所長官代理者 現在、経理局で裁判官をもって充てております職は、経理局長と総務課長と主計課長の合計三人でございます。それ以外に一般職の課長が四、五名おるということになっております。
#90
○西宮委員 総務課長、主計課長などというのは、私は、裁判――第一、局長が裁判官で銭勘定をしているというようなのも全くもったいない話ですし、総務課長しかり、主計課長しかり。これは恐らく主計課長なんというのは、大蔵省の主計局と対応するセクションであるかもしれませんが、予算の折衝なんかをやっておるのでしょう。そういう人が裁判官でなければならぬという必要は毫もないし、実にもったいないと思うのだけれども、これは改める意思はないのですか。
#91
○大西最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたように、経理局でも一般職員をもって充てておる課長の職があるわけでございます。用度課長でありますとか監査課長でございますとか厚生管理官でございますとか、課長職が幾つかあるわけでございますが、そういうものは一般職をもって充てております。
 ただいま申しましたような経理局長、それから主計課長、総務課長といいますものは、特に主計課長について申しますと、裁判所予算の全体についてまず大蔵省の主計と交渉いたします場合に、何と申しましても、裁判官としての実務の経験もあって実際の裁判というものをやった者でありませんと、なかなか十分に御説明もできないというようなこともございます。総務課長も経理局全体の仕事を総括的に見ておるということがございます。それ以外にも、営繕の関係もございます。裁判所の庁舎を建てますについて、もちろん細々とした技術的なことについては、それぞれの職員に任すわけでございますが、裁判所の庁舎として法廷が一体どういうふうにあるべきか、それから裁判官室とか書記官室とかはどうあるべきかというふうないろいろな問題がございますが、そういう場合には、何と申しましても、やはり裁判官としての実務経験を持った者がやる方が、たとえば大蔵省と折衝いたします場合にも迫力もありますし、十分な御説明もできるということに相なるわけでございます。
 そういうことでございまして、経理局長、総務課長、主計課長、決して銭勘定をやっておるという趣旨ではございませんで、銭勘定をやっておる者を総括して裁判所の予算全体を見ていく、こういう立場にあるわけでございまして、私どもとしても、西宮委員御指摘のように、できるだけ司法行政の仕事に裁判官を携わらすということはしないように、できるだけ減らしていく方向に行きたいというふうに考えておりますが、いま具体的に問題となっております経理局の局長、両課長につきましては、ちょっと一般の職員にかえるということはむしろできない職に当たるのではないかというふうに、現在のところは考えておるわけでございます。
#92
○西宮委員 先ほど総務局長の御答弁で、もともとは事務官をもって充てるということだったというわけでしょう。だから、いまの経理局長とかあるいはお話しの経理局の課長のごとき、これは当然事務官をもって充てるべきですよ。
 それをさっきの御答弁のとおり、それでは給料が安くなるというので、裁判官を現職の裁判官のままこれに充当しておるということなんだから、要するに、それほど裁判官としての経験が必要だというならば、裁判官の経験を豊富に持った人を充ててもいいけれども、それは事務官に切りかえて、そして給料面は何らかの方法で考慮するということにして、それでその人をそこに充当するということでりっぱにできて、そうすれば、少なくともこの経理局関係だけでも三名は人が浮く。それは、そういう経験を持った人の方が便利だという点は確かにあると思う。だけれども、単に便利だということだけで、この人の足りないときに、こういう人の使い方をするというのは、まことに不合理きわまると思うのです。
 時間がなくなりますから、続いてお尋ねをしますが、たとえば高裁の長官、事務局長というのでしたかな、この人はどうなるのですか。だから私は、高裁の長官が裁判はやらないというのも、これまたもったいないと思うのですね。最高裁の長官は裁判をやるわけですからね。それに比べて、高裁の長官が司法行政だけに専念するということは、実にもったいない。もしその局長もそうだというならば、ますますもって私は不経済だと思うのだ。どうですか。
#93
○大西最高裁判所長官代理者 まず、高等裁判所の長官でございますが、高裁の長官全部が全く裁判事務をやっていないというわけではございませんで、一番大きい東京高等裁判所でも、特別な事件については長官みずからが裁判をおやりになることもございますし、高等裁判所でも比較的小さいところでは、長官も過去において裁判をおやりになったところもございますし、現在でも、小さいところではあるのではないかというふうに考えております。もっとも普通の裁判官のように、フルにやっておるというわけではございませんで、司法行政事務もやり、裁判事務もごく一部やるというふうなことになっておるわけでございます。
 むしろ高裁の事務局長の方も、小さいところでは一部裁判事務をやっておるところもございますが、大部分はやっていないということになるわけでございますが、高等裁判所の、長官と事務局長につきましても、その高裁管内全体の司法行政事務がたくさんございまして、それはやはり裁判官としての先輩、裁判官としての経験を持っておる者がやるのが非常にぐあいがいいということがございます。
 特に裁判官の人事につきましては、最高裁判所だけがやっておるわけではございませんで、高等裁判所が管内の裁判官の人事についてある程度の立案もして、最高裁判所の方へ持っていくということもございます。人事以外にも司法行政のいろいろな企画立案をする事務がございまして、そういうものを事務局長が高裁長官を助けてやるという関係になっておりますので、そこら辺のところも私どもとしては、最小限度いまのところ、高裁長官のほかに事務局長一人くらいは司法行政をやる者がいないと、うまく動いていかないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
#94
○西宮委員 これは大臣に後から一括して御所見を伺いますが、いま私が申し上げている点は、本来裁判官でなければできない、つまり裁判ではない、そういう事務、雑務、いわゆる司法行政だけをやらしておる、そういう点で問題だということを私は指摘をしておるわけで、あるいはさっきのいわゆる研修所の教官みたいな人も、これは全く例外として、裁判所法の附則に「最高裁判所は、当分の間、特に必要があるときは、裁判官又は検察官を以て、司法研修所教官又は」云々というようなことで、それに「充てることができる。」ということになって、この裁判所法ができたとき、「当分の間、特に必要があるときは、」ということで、きわめて限定した例外措置として認めたわけですね。それがいま恒常化しているということは、これまた大変に不合理だと私は思う。どうですか。
#95
○大西最高裁判所長官代理者 先ほど西宮委員からも御指摘がございましたように、裁判官の官職を有したままやる、研修所教官ですとか、調査官ですとか、あるいは事務総局の職に充てられるという関係につきましては、できるだけそういう者が裁判官の職から離れて、たとえば転換をいたしましてそういう仕事をやればいいということも、確かにごもっともな面もあるわけでございますが、御承知のように、全体としての裁判官の給源、法曹の給源というものが限られております以上は、そういう者が、仮に給与上の問題はすべて解決いたしまして、そういう官職に転換いたしたといたしましても、裁判官の実数としては結局は変わらないわけでございまして、それだけ定員があけばどんどん埋まるということでございますと、それはそれとして、他の問題が解決しました場合にはそういうことも考えられるわけでございますが、いま申し上げましたように給源が限られております以上は、結局のところは裁判に実際に携わる人数には影響がないということに相なるわけでございまして、先ほど来重ね重ね申し上げておりますように、裁判所といたしましては、できるだけそういう裁判以外の仕事をしておる裁判官を少なくしていこう、いきたいということは考えておりますし、過去においてもそういうことをやってきてまいっておりますが、現状でこれ以上これを減らすということは、なかなか困難な事情にあるわけでございます。
#96
○西宮委員 その給源がないのだということになってしまえば、もう何をか言わんやで、論議する必要は全くないわけです。論議の余地は全然なくなってしまう。ちょうど、自衛隊の隊員をふやしてもさっぱり充員されない、定数だけふやしても何にもならぬということがよく問題になっておるようだけれども、それと全く同じことで、給源がないのだと言うなら、今回の定数の増員なども、ふやしてみても給源がなければどうしようもないので、問題にならないと思う。
 しかし、それは、どうしてその給源を拡大するかということはいろいろむずかしい問題がたくさんありましょう。必ずしも裁判官を志望しない、むしろ在野の方がいいというようなことを考見る人もあるだろうし、いろいろあるから、その辺にはいろいろな問題があると思うけれども、ただ給源がないからということだけで片づけてしまうというのには、余りにも重大な問題だと私は思わざるを得ません。
 いろいろさっきから指摘をされたように、裁判官が足りないために国民の側で迷惑をしている、あるいはさっき申し上げたように、裁判官が負担の過重に耐えかねて非常に疲労しているというようなことを裁判官自身も言っておるけれども、同時に、当事者の側からも、そのために非常に感情的な発言あるいは感情的な訴訟指揮、そういうことをやられて、全く萎縮してしまって、言いたいことも言えないというような苦情なども寄せられているわけです。そういうことを考えると、私はまさに重大問題だと言わざるを得ないわけです。
 だから、私の指摘したいのは、裁判官でなければやれない仕事は、これは当然だけれども、そうじゃないものはできるだけ一般の行政官に切りかえていくことが必要だということを強調したいと思います。
 これは狭山事件の判決のときの朝日新聞の社説でありますが、一審はわずか半年の期間で片づけてしまった、二審は十年以上かかった、まさに異常だということを指摘している。私は、いま狭山事件の問題をここで論議をするつもりはありませんけれども、そもそも一番基本になるべき一審で十分審理をしなかった結果だということを、この社説は主張しているわけだけれども、恐らくこれなども必ずしも人が足りないというだけではなかったかもしれないが、きわめて粗雑に一審で扱ってしまった。そういうことがそもそもの原因で、今日あれほど狭山事件というのが天下の大問題になっているということを考えると、私は、もう少し慎重に審理をするために、裁判官に余裕を持たせればよかったのじゃないかということを痛感するわけです。いま別にこれに対する回答はいただきません。
 もう一つは、これはちょっと変わったケースで、ただ私の地元に近い問題でありますから、こんなケースもあるのだ、これは一体どこに欠陥があるのだろうかということをつくづく感ずるのだけれども、具体的には何も通告をしておりませんから、御返事がなければなくても結構です。
 これは福島県の郡山で、運転手が酒に酔っぱらって車を運転していて、民家に突っ込んで大変な損害を与えたという事件なんです。それで、その運転席と助手席に二人、AとBと乗っておって、最初は検察官の方では、Aが運転者だということで訴追をしたわけです。そして五万円の罰金で簡裁から判決の言い渡しがあったわけです。そうしたら、本人Aはそれに不服だということで控訴をした結果、Aの控訴が認められて、Aは運転者ではないということで、彼は完全無罪になってしまった。そして郡山の区検は上告をしませんでしたから、それで確定してしまったわけです。そうしたら今度は、Aが無罪になったのでBが問題になったわけですね。ところが、郡山の区検ではいろいろ検討したけれども、やはり運転しておったのはAだ、Bは運転者ではなかった、助手席にいたのだ、そういう判断をして、これは不起訴に決めてしまったわけです。
 ですから、民家は堂々と壊されたわけだけれども、その犯人はAとBと全く無罪というか、全然対象にされないで終わっているわけですね。それで今日非常に困っているという問題があるのだけれども、これは、裁判官の数が足りなかったから、こうなったのじゃないかもしれませんけれども、この辺ももう少しちゃんとそのときに、その現場には警察官も行ったのだろうし、どっちが運転席に座っておったのか、その辺はもう少し慎重に確認されてしかるべきではなかったかと思うのです。
 最後に、時間が足りなくなってしまったけれども、私は今月号の「法学セミナー」に例の横川元札幌高裁の長官が連載している、随想録みたいなものを書いているわけですけれども、その中に、私は非常に感動したのは、できるだけ裁判官と検察官と弁護士とが事前に徹底的な協議を重ねて、それで今日まで私は非常にスムーズに裁判を運んできたということを、いろいろ例を挙げて言っているわけです。たとえば一例を挙げると、例の六〇年安保の際に国会に乱入したとか、あるいは羽田の空港で占拠をしたとか、それで彼は、そのうちの三十三名のグループ、それが最大のグループだったそうだけれども、それを引き受けて二百名余りの証人尋問をしながら、一年二カ月で結審してしまったということで、それは一つの例ですよ、事前に徹底的にそういう三者が、裁判官と検察官と弁護士とに集まってもらって、徹底的に段取り等について相談をしたということをるる書いているわけです。私は、そういう態度で行ったら、そこに初めて信頼関係が生まれてくるし、そこに初めて能率的な裁判が行われるということが言えると思うのです。
 もう時間がありませんから、最後に大臣に伺って終わりにいたしますが、いまのその問題もひっくるめて、裁判に臨む大臣の態度を、そういう点で一言お答えをいただきたいと思います。
#97
○古井国務大臣 問題は、大体、裁判所、最高裁、その筋でお考えになるのがよい問題でありまして、私の方から言うと、少しなわ張りの外みたいなことになるような気はいたしますけれども、しかし、裁判官の定員にしましても、国会に対しては改正案をわれわれが提案説明して、責任を持たなければならぬというようなことでもありますから、決して無関係ではないわけであります。大いに関心も持っておるわけであります。
 裁判官の数が足るか足らぬかという問題は、大体は足らない、少ないというのが定評になっているように思うのであります。ただし、それなら幾らでもどんどん裁判官をふやせるかというと、そうもいかぬ。裁判官から弁護士さんになる人はたくさんあるけれども、弁護士から裁判官になるという人はなかなか少ないのですね。御承知のように。だから、実際問題はいろいろあると思いますけれども、足らぬというのは定評みたいに思うのです。
 それじゃ、どうしたらふやせるか。議論は議論で、なかなか実際問題はたやすくないと私は思いますが、確かに問題だと思います。そうすると、十分に数をふやせないとするならば、裁判官の質の問題があると思うのです。研修の問題があると思うのです。それから手続の問題もあると思うのです。そういうことで、不十分であれば補っていくということも考えなければいかぬのじゃないだろうかと思うのであります。
 それについて、いま最後にあなたは、いまの法曹三者のことについてお話しでしたが、これはまことにごもっとも千万で、それは立場が違うから議論はしなければなりません。それは大いに、余すところなく議論はすべきです。しかし、けんかをしなければならぬ、つまり感情的に、かたきみたいに思うことはおかしいので、やはり三者が溶け合うということは残された大問題だと思うのです。幾らか最近――幾らかと言っては失礼だが、この関係がいい傾向に向いてきているように思います。何とかこれを、いい方向に来ておるのだから、発展させるようにできないものかへそういうふうに思っております。
 まことにぼやんとしたようなことで恐縮でありますが……。
#98
○佐藤委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
#99
○佐藤委員長 これより両案について討論に入るのでありますが、それぞれ討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 まず、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#100
○佐藤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#101
○佐藤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#102
○佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
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#103
○佐藤委員長 次回は、来る二十日火曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時五十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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