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1978/03/22 第87回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第087回国会 本会議 第17号
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1978/03/22 第87回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第087回国会 本会議 第17号

#1
第087回国会 本会議 第17号
昭和五十四年三月二十二日(木曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第十五号
  昭和五十四年三月二十二日
    午後一時開議
 第一 船舶整備公団法の一部を改正する法律案
    (内閣提出)
 第二 沿岸漁業改善資金助成法案(内閣提出)
 第三 繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改
    正する法律案(内閣提出)
 第四 雇用保険法等の一部を改正する法律案
    (内閣提出)
 第五 昭和五十四年度の公債の発行の特例に関
    する法律案(内閣提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 日程第一 船舶整備公団法の一部を改正する法
  律案(内閣提出)
 日程第二 沿岸漁業改善資金助成法案(内閣提
  出)
 日程第三 繊維工業構造改善臨時措置法の一部
  を改正する法律案(内閣提出)
 日程第四 雇用保険法等の一部を改正する法律
  案(内閣提出)
 日程第五 昭和五十四年度の公債の発行の特例
  に関する法律案(内閣提出)
 医薬品副作用被害救済基金法案(内閣提出)の趣
  旨説明及び質疑
    午後一時五分開議
#2
○議長(灘尾弘吉君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 日程第一 船舶整備公団法の一部を改正する
  法律案(内閣提出)
#3
○議長(灘尾弘吉君) 日程第一、船舶整備公団法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。運輸委員長箕輪登君。
    〔箕輪登君登壇〕
#4
○箕輪登君 ただいま議題となりました船舶整備公団法の一部を改正する法律案につきまして、運輸委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、内航貨物船の近代化の促進と内航海運業者の経営の安定を図るため、内航海運業者等が金融機関から借り入れる代替建造資金等について船舶整備公団による債務保証制度を創設しようとするもので、その主な内容は、
 第一に、公団が行う債務保証業務の基金として、政府は、昭和五十四年度に同公団に対し二億円の出資を予定しておりますので、追加出資に関する規定を整備し、その出資額により資本金を増加できることとすること、
 第二に、老朽貨物船等の解撤等を行って遠洋区域を航行区域とするものを除く鋼製の貨物船を建造しようとする海上貨物運送事業者または貨物船貸渡業者がこれに要する資金を金融機関から借り入れる場合及び公団と費用を分担して建造した貨物船を同公団と共有している海上貨物運送事業者または貨物船貸渡業者がその事業継続に必要な資金を金融機関から借り入れる場合、これらの借り入れについて同公団が債務保証を行えるよう業務の範囲を拡大すること等であります。
 本案は、去る二月九日本委員会に付託され、三月二日政府から提案理由の説明を聴取し、十六日質疑を行い、二十日採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#5
○議長(灘尾弘吉君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(灘尾弘吉君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第二 沿岸漁業改善資金助成法案(内閣
  提出)
#7
○議長(灘尾弘吉君) 日程第二、沿岸漁業改善資
 金助成法案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。農林水産委員長佐藤隆君。
    〔佐藤隆君登壇〕
#8
○佐藤隆君 ただいま議題となりました沿岸漁業改善資金助成法案につきまして、農林水産委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、新しい海洋秩序の形成により、わが国沿岸漁業の振興が一層重要となってきている情勢にかんがみ、新しい生産技術の導入、漁家の生活改善及び漁業後継者の養成等を助長するため、沿岸漁業従事者等に必要な無利子資金の貸し付けを行う都道府県に対し、政府が必要な助成を行う制度を確立しようとするものであります。委員会におきましては、−三月一日渡辺農林水産大臣から提案理由の説明を聴取し、三月二十日慎重に審査を行い、同日質疑を終了、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきなお、本案に対し、附帯決議が付されました。以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○議長(灘尾弘吉君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○議長(灘尾弘吉君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第三 繊維工業構造改善臨時措置法の一
  部を改正する法律案(内閣提出)
#11
○議長(灘尾弘吉君) 日程第三、繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。商工委員長橋口隆君。
    〔橋口隆君登壇〕
    ―――――――――――――
構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、商工委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 わが国の繊維産業は、明治以来、国民経済及び地域経済の振興に大きく貢献してきた重要な産業でありますが、近時、発展途上国の追い上げ等により、繊維工業をめぐる経済環境はきわめて厳しいものがあります。
 現行法は、このような環境の中で昭和四十九年から繊維工業の知識集約化を目指して構造改善を進めてまいりましたが、石油ショックや円相場の急騰等により、構造改善事業は必ずしも順調に進んでいないのであります。
 本案は、このような実情に対処して、法律の廃止期限を五年間延長するとともに、構造改善の一層の促進を図ることを目的として提案されたものでありまして、その内容は、
 第一に、法律の廃止期限を昭和五十九年六月三十日までとすること、
 第二に、産元、親機等、原材料等を提供して行う製造、加工の委託の事業を繊維工業の範囲に加えるとともに、同業種で組織された特定組合についても、一定の要件に該当するものは、単独で構造改善事業計画を作成し、通商産業大臣の承認が受けられるようにすること、
 第三に、繊維工業構造改善事業協会の業務に、新たに衣服に関する新商品の開発、人材育成事業に、同協会に人材育成基金を設置すること等であります。
 本案は、去る二月十六日当委員会に付託され一二月二十八日江崎通商産業大臣から提案理由の説明を聴取した後、参考人の意見を聞くなど、審査を重ね、三月二十日に至り質疑を終了し、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
 なお、本案に対し、繊維産業の位置づけ及び構造改善事業の計画的推進等についての附帯決議が付されましたことを申し添えます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#12
○議長(灘尾弘吉君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#13
○議長(灘尾弘吉君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第四 雇用保険法等の一部を改正する法
  律案(内閣提出)
#14
○議長(灘尾弘吉君) 日程第四、雇用保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。社会労働委員長森下元晴君。
    ―――――――――――――雇用保険法等の一部を改正する法律案及び同報
 告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔森下元晴君登壇〕
#15
○森下元晴君 ただいま議題となりました雇用保険法等の一部を改正する法律案について、社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、最近における雇用失業情勢にかんがみ、離職者の再就職の援助及び雇用機会の増大のための施策を充実するとともに、これらに要する費用の負担について所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、
 第一に、雇用保険の受給資格者が公共職業訓練等を受けるために待期している場合及び公共職業訓練等を受け終わってもなお就職が困難な場合については、一定の日数を限度として失業給付の給付日数を延長することができるものとすること、
 第二に、雇用保険における雇用安定事業の一環として、雇用機会の増大を図るために必要な事業を行うこととすること、
 第三に、賃金の千分の三・五の率となっている雇用安定事業等の四事業に係る保険料率に弾力条項を創設し、雇用安定資金の残高が四事業に充てるべき保険料徴収額の一年分に相当する額を超えるに至った場合には、四事業に係る保険料率を一年間千分の三に変更するものとすること、
 第四に、船員保険についても雇用保険と同様、職業補導延長給付の措置の充実を図るとともに、船員保険の失業部門の保険料率を当分の間、現行の保険料率に千分の三を加えた率に改定するものとすること
等であります。
 本案は、二月二十日付託となり、三月二十日の委員会において質疑を終了し、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 なお、本案に対し、附帯決議を付することに決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#16
○議長(灘尾弘吉君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#17
○議長(灘尾弘吉君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第五 昭和五十四年度の公債の発行の特
  例に関する法律案(内閣提出)
#18
○議長(灘尾弘吉君) 日程第五、昭和五十四年度の公債の発行の特例に関する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。大蔵委員長加藤六月君。
    〔加藤六月君登壇〕
#19
○加藤六月君 ただいま議題となりました昭和五十四年度の公債の発行の特例に関する法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 この法律案は、昭和五十四年度の租税収入の動向等にかんがみ、同年度の財政運営に必要な財源を確保し、もって国民生活と国民経済の安定に資するため、昭和五十四年度の特例措置として、財政法第四条第一項ただし書きの規定により公債を発行する場合のほか、一般会計において特例公債を発行することができることとしようとするもので、その内容を申し上げますと、
 まず第一に、昭和五十四年度の一般会計歳出の財源に充てるため、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で特例公債を発行することができることといたしております。
 第二に、特例公債の発行は、昭和五十五年六月三十日まで行うことができることとし、同年四月一日以後に発行される特例公債に係る収入は、昭和五十四年度所属の歳入とすることといたしております。
 第三に、この法律の規定に基づく公債の発行限度額について国会の議決を経ようとするときは、その公債の償還の計画を国会に提出しなければならないことといたしております。
 第四に、この法律に基づいて発行される公債については、償還のための起債は行わないものといたしております。
 本案につきましては、参考人を招致してその意見を聴取する等、慎重に審査を行い、歳入歳出両面にわたる財政再建策、長期財政計画導入の必要性、景気の回復とクラウディングアウトヘの配慮、マネーサプライ重視の金融政策などインフレヘの対応策、国債管理政策の確立等、国債の大量発行に伴う財政金融上の諸問題につき熱心な論議が交わされましたが、その詳細は会議録に譲ります。
 かくして、一昨二十日、質疑を終了し、討論に入りましたところ、自由民主党を代表して愛知和男君からは賛成の旨の一日本社会党を代表して大島弘君、公明党・国民会議を代表して坂口力君、日本共産党・革新共同を代表して安田純治君からは、それぞれ反対の旨の意見が述べられました。
 次いで、採決いたしました結果、本案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 なお、本案に対しましては、附帯決議が付せられましたことを申し添えます。以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#20
○議長(灘尾弘吉君) 討論の通告があります。これを許します。大島弘君。
    〔大島弘君登壇〕
#21
○大島弘君 私は、ただいま議題となりました昭和五十四年度の公債の発行の特例に関する法律案につき、日本社会党を代表いたしまして反対の討論をなすものであります。(拍手)
 昭和五十四年度一般会計歳出予算約三十八兆六千億のうち、国債発行額は約十五兆二千七百億、その依存度は約四〇%でありまして、国債を抱えた財政ではなく、国債に抱えられた財政であります。しかも、驚くべきことには、この約十五兆二千七百億のうち、本法案による特例公債、すなわちいわゆる赤字公債は約八兆五百五十億で、財政法四条のいわゆる建設公債よりもその発行額が多いのであります。
 さらに、目を海外に転ずれば、オイルショック時は世界的に各国とも公債の発行がふえておりますが、それ以降各国は、節度ある財政政策により公債発行額が減少していることは、その依存度、アメリカ五・五%、イギリス一六・五%、西ドイツ一七・六%、フランスに至ってはわずか二・九%であることによっても明らかでありまして、わが国の依存度四〇%と対照的であり、しかも、この約十五兆という大量公債はドル換算で約八百億ドル、まさにアメリカ、イギリス、西ドイツ、フランスの国債発行合計額六百八十億ドルをはるかに上回るものであります。
 さらに、この大量公債の発行により、日本人で生まれたばかりの赤ん坊から寝たきり老人に至るまで、一人当たり五十五万円の公債による借金を背負っていることとなるのであります。
 以下、私は、以上のような大量公債発行のわが国財政経済に及ぼす問題点を指摘して、反対の理由を明らかにするものであります。
 まず第一に、大量の国債発行は、財政の健全化と民主化に反し、後世国民にはかり知れない負担を課することとなるのであります。
 いまから二百年前、アダム・スミスは、租税はその源泉が収入であるのに対し、公債の源泉は、すでに存在している資本であるのみならず、その利払いのためにさらに増税を招くから、資本の蓄積を害する程度は租税よりも公債の方がはるかに大きいとして、公債の排撃をしたことは有名な話であります。
 つまり、公債とは、資本の蓄積を阻害するのみでなく、租税の前取りであり、したがって、その負担は一般国民及びその子孫に及ぶものであります。しかも、現在のような構造的不況のもとにおいては、たとえ景気が回復し、自然増収があるとしてもなお赤字財政、構造的不況が消滅することは考えられず、したがって、この場合、償還財源は直接税によることは期待できず、一般消費税のごとく安易な大衆課税に頼らざるを得ないことは歴史の示すところであり、その結果、重圧が中小零細企業や一般大衆にかかり、労働力は市場にあふれて労賃の低下を招き、資本による労働力の搾取となるのであります。
 しかも、このままで推移すれば、昭和六十年代におきましては、国債費だけで歳出予算全体の二割に及ぶことは確実であり、その額は、恐らくその時分の社会保障費総額にも匹敵するでありましょう。まさに、財政の硬直化を招き、健全財政を阻害する最大の敵は、この大量の公債発行なのであります。
 第二に、大量国債の発行とインフレーションの関係であります。
 国債の発行は、その大部分が金融機関によって保有されますので、それは必ず日本銀行の買いオペレーション、すなわちマネーサプライの増加、ひいてはインフレの危険を必然的に含むものであります。特に、昭和五十四年度十五兆余という大量国債の発行の結果、五十四年度末においては、国債発行残高はまさに五十兆に及ばんとしているのであります。このような大量の国債の発行と巨額な累積国債の状況のもとでは、円滑に市場消化が行われたとしてもなおインフレは避けることはできません。
 昭和五年、世界恐慌の勃発により深刻な事態に直面した日本資本主義が、この恐慌から脱出するためにとった措置は、金輸出再禁止と赤字公債による積極財政であります。そうして、その対象は主として軍事拡張費であり、日銀引き受けによる強制的な民間消化も不可能となり、インフレは激化の一途をたどり、そうしてその帰結は次々と拡大していく戦争であり、そうして敗戦であり、さらにあの激しいインフレーションであったのであります。そうして、それゆえにこそ、この苦い経験により、恐るべき赤字国債を禁じたのが財政法四条、五条なのであります。政府は、戦後三十年を経た現在、再び昭和初期の赤字公債による積極財政に復帰することを考えておられるのでしょうか。
 第三に、大量国債の発行が民間金融、特に中小企業や庶民金融に及ぼす影響であります。
 国債の価格やその売れ行きは、国家に対する信頼度を示す一つの尺度でありますが、現実には、その発行価格と実勢価格との間には乖離が生じ、個人消化も思うに任せず、その結果、国債の大半は民間金融機関によって保有され、これがクラウディングアウトとなって、民間金融、特に中小金融や一般庶民の金融を封ずることとなるのであります。
 ここに二隻の船があります。一隻は日本政府を積んだ日本丸、他の一隻はイギリス政府を積んだイギリス丸であります。二隻の船は果てしなき航海の旅に出ておりましたが、そこへ赤字公債という猛台風が襲撃してきたのであります。イギリス丸の船長は、スミスやリカルドの教えによってこの台風のこわさを知っておりましたから、安上がりの政府と中立的な租税政策によって、その積み荷も軽く、またその進路を示す羅針盤の針も正確でありましたので、この台風を無事乗り切ったのであります。他方、日本丸の方は、日本政府という重い積み荷を積んでおり、また羅針盤の針も狂っておりましたので、まさに沈没直前でありました。(拍手)
 私は、ここにおいて、読書好きの大平総理に対し、二冊の書物を推薦申し上げます。その一冊は、沈没寸前の日本丸を描いた「昭和財政史」であり、これには、高橋蔵相から金子現蔵相に至るまで、赤字公債という台風のこわさを知らない歴代蔵相の無策な財政政策が刻明に描かれているのであります。他の一冊は「イギリス近代財政史」でありまして、これには、スミスやリカルドによって赤字公債のこわさを知り、安上がりの政府と中立的な租税政策によってこの台風を乗り切った歴史が描かれており、古くはディスレリーやグラッドストン名蔵相からヒーリー現蔵相に至るまで、歴代イギリス蔵相の節度ある財政政策が書かれているのであります。
 総理におかれましては、速やかにこの「昭和財政史」と「イギリス近代財政史」をお読みになられ、もし頭脳が冷静になられましたら、日本丸の船長としての責任において、膨大な行政機構やその外郭団体あるいは補助金というような重過ぎる積み荷や、あるいはE2Cのような不要不急の荷物は直ちに海中に投棄して身軽になり、さらには、一般消費税という方向に向かっている羅針盤の針をもとの正しい位置に戻して、この台風を乗り切られるよう強く要請いたします。(拍手)
 最後になりましたが、オイルショック以降放漫な赤字財政をとり続けてきた政府の政策が今日の構造的不況を招いた現在、もはや政府は国民に対して何をなすべきかを問う権利も資格もなく、むしろ、いまこそ一億国民が政府に対し何をなすべきかを問う時期が到来したことを申し添えまして、私の反対討論といたします。(拍手)
#22
○議長(灘尾弘吉君) これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
#23
○議長(灘尾弘吉君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#24
○議長(灘尾弘吉君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。(拍手)
     ――――◇―――――
 医薬品副作用被害救済基金法案(内閣提出)の
  趣旨説明
#25
○議長(灘尾弘吉君) この際、内閣提出、医薬品副作用被害救済基金法案について、趣旨の説明を求めます。厚生大臣橋本龍太郎君。
    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕
#26
○国務大臣(橋本龍太郎君) ただいま議題となりました医薬品副作用被害救済基金法案について、その趣旨の御説明を申し上げます。
 医薬品は、今日、医療上必要不可欠なものとして、国民の生命、健康の保持及び増進に大きく貢献しているところでありますが、他方、このような医薬品の副作用による健康被害の発生もまた、近年見逃すことのできない問題となっております。
 これら医薬品の副作用による健康被害対策の基本は、その発生防止にあることは申すまでもありません。このため、国は、医薬品の承認審査の厳格化、医薬品副作用情報収集体制の整備、既承認医薬品の安全性及び有効性の再評価など各般の対策を進めてまいったところであり、また、今般、この観点から、これまでの行政の実績を踏まえて薬事法改正の実現を図りたいと考えているところであります。
 しかしながら、医薬品の特殊性から、現在の医学、薬学の水準によっては、医薬品の副作用による健康被害の発生を完全に防止することはむずかしいことも事実であります。これらの健康被害については、現行法制度のもとでは、その救済を円滑に図ることが困難である場合が多いことから、その救済のための制度を一刻も早く確立することが社会的に強く要請されているところであります。この要請にこたえるため、医薬品の副作用による健康被害に関し所要の給付を行うことを業務とする医薬品副作用被害救済基金を設立することとし、この法案を提案した次第であります。
 以下、この法案の主な内容につきまして御説明申し上げます。
 第一に、医薬品副作用被害救済基金は、医薬品の副作用による健康被害の救済について学識経験を有する者が発起人となり、厚生大臣の認可を受けて設立することといたしております。
 第二に、医薬品副作用被害救済基金は、医薬品の副作用による疾病、廃疾または死亡につき、医療費、医療手当、障害年金、障害児養育年金、遺族年金、遺族一時金及び葬祭料の給付を行うことといたしております。
 第三に、医薬品副作用被害救済基金がこれらの給付を行うに当たり、医薬品と健康被害との因果関係など専門的判定を要すると認められる事項については、同基金の申し出により、厚生大臣が中央薬事審議会の意見を聞いて、判定を行うことといたしております。
 第四に、医薬品の製造業者及び輸入販売業者は、医薬品副作用被害救済基金の業務に要する経費に充てるため、同基金に拠出金を納付しなければならないこととしております。
 第五に、著しい健康被害が多発した場合などにおける医薬品副作用被害救済基金に対する政府の補助その他同基金に対する監督命令等、所要の規定を設けることといたしております。
 第六に、この法律の施行期日は、この法律の公布の日から起算して六カ月を超えない範囲内において政令で定める日といたしております。また、救済給付は、医薬品副作用被害救済基金設立の日以降において、厚生大臣が告示で定める日から起算して六カ月を経過した日以降の医薬品の使用により生じた健康被害について行うことといたしております。
 以上が医薬品副作用被害救済基金法案の趣旨でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 医薬品副作用被害救済基金法案(内閣提出)の
  趣旨説明に対する質疑
#27
○議長(灘尾弘吉君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。水田稔君。
    〔水田稔君登壇〕
#28
○水田稔君 私は、ただいま趣旨説明のありました医薬品副作用被害救済基金法案について、日本社会党を代表して質問いたします。
 わが国の医薬品の副作用による被害、いわゆる薬害は、薬事、医事の両制度の欠陥から、サリドマイド、キノホルム、クロロキン、クロマイなどの連続過剰投与によって、多くの悲惨な被害者を出してきたのであります。
    〔議長退席、副議長着席〕
 ことに、キノホルムによるスモンは、アメリカで五名、イギリス九名、フランス八名、西ドイツ四名と、いずれの国も一けたの被害で食いとめているにもかかわらず、わが国のみが一万一千七名という世界に類例のない被害者を出したことは、政府が医薬品の製造許可に当たって、その有効性のみを判断基準として許可し、安全性と薬づけ医療についてのチェックが欠落していたことに基本的な原因があります。その上、薬害が発生した場合の対応が適正を欠き、さらに、国も製薬会社も被害者救済の責任を逃れようとしてきたのであります。
 そのため、スモン患者およそ四千人が原告となって、国、製薬会社を相手に損害賠償請求訴訟を起こし、国に対してはさらに恒久対策も要求してきたのであります。
 その結果、金沢、東京、福岡判決に続いて、本年二月二十二日、広島判決が下され、「厚生大臣は薬事法上医薬品の製造許可等につき医薬品の安全性を確保すべき義務がある」、また「国及び製薬会社は、遅くとも昭和三十一年一月十七日以後キノホルム剤の危険に対する予見が可能で、国はその製造許可、また製造会社はその製造、輸入販売にあたり、適応症をアメーバ赤痢に限定するなどの措置をとらなかった点でいずれも過失がある」と、安全性確保の義務違反と過失責任が問われているのであります。
 政府は、この医薬品副作用救済基金法案提出に当たっては、当然これらの判決をしっかりと受けとめ、深い反省を前提にしなければならないと思うのでありますが、総理大臣は、こうした悲惨な薬害被害者を出した政府の責任について、どのような反省をし、また、今後どう対処される決意を持っておられるか、その所信を伺いたいのであります。(拍手)
 また、政府は、早期救済を求める多くのスモン患者の切なる願いを無視して、今回の広島判決についてもまた控訴したのであります。厚生大臣は、これまでわが国で多くの薬害被害がなぜ起こったのか、薬事行政に何が欠けていたと考えられるのか、その反省を含めてお答え願いたいのであります。
 さらに、厚生大臣は、二月二十二日の社会労働委員会におけるわが党議員の質問に対して、広島判決を受けて、全面的な一括解決を図りたい、また、そのための各党の協力も要望したのであります。われわれも、解決のための協力はやぶさかではありません。しかし、スモン患者の救済、解決なくして、薬害救済の制度化はあり得ないと私は考えるのでありますが、(拍手)投薬証明のない被害者を含め、一体どのような全面的な一括解決を図ろうと考えておられるのか、伺いたいのであります。
 さて、次は、この救済基金法案の内容についてであります。
 第一には、現に発生している被害者の救済についてであります。
 基金の救済は、この基金ができてから一定の日以後の医薬品の使用による疾病等に適用して救済することになっており、現に発生している医薬品による疾病については適用しないことになっているのであります。その理由は、恐らく、一つには、法律不遡及ということで将来に限った、二つには、現に発生しているものは判決等で製薬会社の責任が明らかになっている、三つには、既発生を救済するとすれば莫大な金額を要し、基金が負担し切れない、四つには、既発生の救済資金の徴収に困難性がある等であろうと思うのでありますが、私は、現に発生している疾病等についても救済給付すべきだと思うのでありますが、なぜ現に発生している疾病を除外したのか、その理由を伺いたいのであります。
 第二には、責任が明らかな場合についてであります。
 基金の給付は、製薬会社の責任が明らかな場合には給付しないことになっており、また、給付していても、責任が明らかになれば給付をストップすることになっているのでありますが、明らかなとは一体どういう場合なのか、明確にしておく必要があると思うのであります。考えられることは、一つには、患者を診療した医師または科学者らが、Aという医薬品の副作用だと診断または判定したとき、二つには、第一審判決で製薬会社の責任を認めたとき、三つには、控訴、上告があって、またはなくとも判決が確定したとき、四つには、その他和解が成立したときなどでありますが、政府はどのような場合を明確な場合と考えているのか、伺いたいのであります。
 また、輸入薬品の場合、外国の製薬会社の責任が明らかとなった場合はどうなるのか。さらに、被害者が特定の製薬会社を相手に訴訟を提起したら明らかな場合と言えるのかどうかといった点についても明確にしておかないと、基金の運用上混乱が起きると思うのでありますが、この点も含め、お答え願いたいのであります。
 第三には、製薬会社の責任についてであります。
 製薬会社は、取引額の千分の二を超えない範囲の拠出金の納付を義務づけられております。しかし、この救済基金で救済されるのは、原因者が明らかでない疾病と原因者が明らかになるまでの応急的な救済であり、給付内容も予防接種事故の被害救済と横並びを考えているようでありますから、完全救済のためにはやはり被害者が最終的には民事訴訟で争う以外にないのであります。したがって、さきに触れたように、責任が明らかになった場合、国の一部負担などの運用いかんによっては、製薬会社の責任回避に利用される懸念もないとは言えないと思うのでありますが、そのような心配はないのかどうか、伺いたいのであります。
 第四には、国の責任についてであります。
 政府は、著しい健康被害が多発し、必要がある場合には、基金に対し、救済給付に要する費用の一部を負担することができるとしているのであります。これでは、どれだけの責任を国が果たすのか明確でありません。著しい健康被害が多発し、必要がある場合というのは、一体どの程度の被害が発生した場合を言うのか、また、一部補助するという一部とはどれくらいの負担を考えているのか、明らかにしていただきたいのであります。
 最後に、政府の薬害発生防止についての総合的な施策について質問したいと思います。
 わが国の医療は、売薬医療ひいては人体破壊医療と言われることはすでに周知のところであります。国民医療費における薬剤費は、売薬を除いても四割近くを占め、諸外国に比べて薬剤依存の度合いが著しく高くなっているのであります。このような事態をもたらした原因として、私は次の二つを指摘したいと思うのであります。
 すなわち、一つには、多くの投薬、注射をするほど医療機関の収入がふえるという構造、言いかえれば、薬価基準及び点数出来高払い方式の矛盾、さらに医薬分業の未確立であります。二つには、形骸化した保健所に象徴されるように、保健、予防のシステムがなく、三時間待って三分間の治療と言われるように、疾病を日常生活の中でコントロールするという原則が軽視されていることであります。
 したがって、薬剤依存医療を克服するためには、健康管理、治療、リハビリ等包括医療制度を確立し、保健所を中心とする保健指導の徹底、医薬分業による薬剤師のチェック機能の活用、薬価調査、薬価基準の適正化、プライマリーケアにおける診療人頭払いまたは登録人頭払いへの転換など、総合的に推進しなければならないと思うのでありますが、こうした点について、政府の方針をお伺いしたいと思うのであります。
 なお、これらの薬害防止のための総合的な施策の推進の中で初めて健康保険財政の健全化を実現することができるのであり、したがって、これらの施策は、現在継続審査になっている政府の健保改正案を審議するための前提条件でもあることを付言して、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
    〔内閣総理大臣大平正芳君登壇〕
#29
○内閣総理大臣(大平正芳君) 水田さんの私に対する御質問は、各地に見られるスモン判決について、国はこれをどう受けとめておるか、また、今後どう対処していくつもりかというお尋ねでございました。
 スモン訴訟について、政府は、国の法的な責任は認められないという従来からの立場に変わりはございませんけれども、患者の早期救済につきましては、これとは別に和解により全面的に解決するよう重ねて努力してまいりたいと思います。(拍手)
    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕
#30
○国務大臣(橋本龍太郎君) 水田さんにお答えをいたします。
 最初にお尋ねのありました薬事行政への反省、それはどう受けとめるのかというお話でありましたが、先般、広島地裁における判決が出ました直後の本院の社会労働委員会におきまして、これをきわめて厳しいものと受けとめると同時に、この際、全面一括解決に踏み切りたいと、政府として初めて申し上げた言葉をもって私の気持ちはお察しいただきたいと思うのであります。
 ただ、その中におきまして、第二の御質問にありましたように、全面一括解決というものについて幾つかの問題点があることは事実であります。
 一つは、投薬証明のない患者の方々に対してどう対処をするか。これは一前内閣の時代におきまして、可部和解の延長線上の問題として、投薬証明のない方々に対しても国として救済措置を講じることを前提にしながら、その方向について、東京地裁に現在裁判所としての所見を求めておる段階でありまして、そう遠くない将来に私はそのお答えが裁判所からちょうだいができるものと思っております。
 また、もう一つの問題点でありました田辺製薬、これは、原因についての論争とは別に、患者救済の一点については政府と同一の歩調をとるということを約束してくれておりますので、この方針には今後においても変わりがないものと考えておりまして、今後、そうした状態を踏まえて、恒久対策等患者の方々の御要望をも含めた話し合いの土俵づくりというものに、私は全力を挙げていきたいと考えておる次第でございます。
 こういう状況の中で、今回、私どもは、今後こうした問題に対処すべく、薬事法そのものの改正を近いうちに国会に提出をすることを前提に、この救済基金制度の御審議を願うことにいたしたわけでありますが、第一の問題として指摘をされました、なぜ既往の発生被害をこの対象に入れないかということにつきましては、この救済制度そのものは、医薬品の副作用による重大な健康被害をすべての製薬企業から徴収した拠出金によって救済しようという考え方をとり、この方式自体が一種の保険制度であることから、既発生被害を本制度の救済として取り入れることは制度上むずかしいと考えたからであります。
 また、第二に、救済給付について、国は一体どういうふうな考え方のもとにどういう助成を行うかという御指摘でありましたが、これにつきましては、これまでの医薬品副作用被害の発生状況から見まして、サリドマイドあるいはスモンのような大規模な被害が発生した場合につきましては、国としてその一部を補助することを当面考えておる次第でございます。
 また、最後の御指摘としてございました医療制度全般にわたる基本的な問題につきましては、いま御指摘のありましたような、いわゆる薬づけ医療等薬剤をめぐる問題が医療制度上の問題として指摘をされておるわけでありますし、また、増高する医療費の負担の問題とともに、この解決はきわめて重要な問題であるというように認識をいたしております。
 政府としては、一昨年の十一月に国会にお示しをいたしました医療制度、医薬制度を含めた十四項目にわたる医療保険制度改革の基本的な考え方に基づいて制度の改革を進めていくこととしておるわけでありまして、特に、薬づけあるいは検査づけと言われるような状態につきましては、保険診療の適正化の観点からも、薬価基準の適正化、また指導監査の推進等を図ってまいりたいと考えております。
 ただ、この制度につきましては、率直に申しまして、世界に類例を見ない新しい制度でありますだけに、私どもとして最善を尽くして案を取りまとめたつもりではありますが、いろいろな観点からなお補足をしていただくべき部分あるいは今後の検討にゆだねておる部分があることも事実でありまして、そうした分野が、この国会の審議を通じまして私どもに積極的な御示唆としてあらわれるように心から祈っておる次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#31
○副議長(三宅正一君) 谷口是巨君。
    〔谷口是巨君登壇〕
#32
○谷口是巨君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま説明のありました医薬品副作用被害救済基金法案について、総理並びに関係閣僚に対し、若干の質問を行うものであります。
 現在、わが国において、サリドマイドによる被害者千二百名、スモン病患者約一万名、その他コラルジル、クロロキン、エタンブトール等による薬害に見られるごとく、広範囲にわたって医薬品の副作用による被害が多発しており、その薬害の内容はきわめて深刻かつ多様であります。これらの被害者は、ある者は生命を奪われ、ある者は身体奇形となり、さらには失明、寝たきり等の回復しがたい薬害によって、日々さながらの生き地獄の苦しみにさいなまれております。
 かかる状況下で被害者が救済される手段として、現状では、被害者に多大の時間と労力、負担を要求する訴訟しかほかに方法がなく、その救済が大幅におくれてきたことはきわめて遺憾であります。その意味において、多くの被害や国民から被害者救済の立法が強く望まれていたところであります。しかるに、政府提出による本法案の内容はその期待に十分こたえられるものではなく、幾つかの問題をはらんでおります。以下、順次問題点を明らかにし、政府の見解を求めるものであります。
 まず第一に、制度の性格についてであります。
 本法案の性格は、民事責任の欠如した、企業の恩恵的給付制度であると言わざるを得ません。すなわち、基金制度の給付対象となる副作用被害は、企業等第三者の民事責任のないものとなっておりますが、企業にも医療機関等にも何らの責任がない副作用被害というものが果たしてあり得るものでありましょうか、はなはだ疑問であります。なぜならば、現実の副作用被害のほとんどが医療機関の責任とか企業の過失とか、さまざまの原因が複合して発生しているのが実態であるからであります。
 かかる意味において、本制度の性格として、企業の恩恵的給付制度としてではなく、民事責任原則に基づく損害賠償制度として立法化すべきであると考えるものでありますが、見解を承りたいのであります。(拍手)
 第二は、無過失責任の導入の可否についてであります。
 本法案については、無過失責任について採用するところとはならなかったのでありますが、その人命尊重及び被害者救済の立場からすれば、無過失責任の導入は必要不可欠であります。それは世界の国々の趨勢でもあり、わが国においてはすでに公害立法、鉱業法、自動車損害賠償保障法、原子力損害賠償法等において実現し、西独においては、薬事法において限定的無過失責任を採用しております。
 被害者の迅速かつ広範囲な救済を図ろうとするならば、当然この考え方に立つべきであり、わが国において何ゆえに採用し得なかったのか、その理由を明らかにしていただきたいのであります。第三に、被害者救済の範囲についてであります。
 本法案においては、既発生の薬害についてその対象から除外しておりますが、法案の土台となったと言われる厚生省の医薬品の副作用による被害者の救済制度研究会報告においては、既発生の被害については一定の被害を指定し、それらに限定して救済を行うこととするのが妥当であると述べているのであります。そもそもこの制度が考えられた理由は、スモンとかサリドマイド等の悲惨な薬害に苦しんでいる被害者を何とか救済しようとするところにあったのであります。
 その意味で、過去のものについて切り捨てようとすることは、こうした制度の存在意義の大半を失わせるものでありますが、何ゆえに除外したのか、その理由を明らかにしていただきたいのであります。
 さらにまた、過去の副作用被害を除くほか、たとえば企業に過失があるもの、医療過誤、自己の不適正使用、軽い副作用、制がん剤、免疫抑制剤による副作用等々を対象の範囲から除くとするならば、果たして現実に本制度によってどの程度の救済が行われるのか、はなはだ疑問であり、きわめて限定されたものしか救済されないのではないかと危惧するものであります。
 わが党は、初めから救済の対象を狭く限定せず、できるだけ広範囲の副作用被害をその対象とすべきであると主張してきたところでありますが、この点についてどのように考えているか、所見を承りたいのであります。
 第四に、副作用被害の判定についてであります。
 本法案においては、副作用被害であるかどうかの判断は中央薬事審議会の判定部会が行うことになっているが、判定の基礎になる必要な資料を医療機関や企業に対し請求する権限が明記されておらず、どのようにして資料を収集するのか疑問であります。
 また、副作用被害の給付を受けるためには、あくまで被害者が必要な資料を提出した上で決定されることになっておりますが、その必要な資料が企業や医療機関の拒否に遭って収集できない場合は、いつまでも救済が放置されるのかどうか、明確にしていただきたいのであります。現状においてはその可能性がきわめて濃厚なのであります。
 したがって、このような場合、被害者本人にかわって、判定部会が必要な資料を収集できる権限を付与すべきであると考えるのでありますが、見解を承りたいのであります。
 さらに、中央薬事審議会判定部会の委員の構成についてお伺いいたします。
 判定部会の委員の構成について、多くの被害者は、これまでの政府の態度に見られたように企業サイドの学識経験者や専門家のみをもって構成するのではなく、被害者の推薦する学識経験者を含めて構成すべきであると主張するものでありますが、この点についての御見解を承りたいのであります。
 第五に、給付水準についてであります。
 給付水準については、今後政令によって決定されることになりますが、政府においては、予防接種法の給付と同一水準となると説明しております。給付水準については、当初、公害健康被害補償法と同一水準で検討されていたのでありますが、これは明らかな後退と言わざるを得ません。現に、政府の医薬品副作用被害者救済制度研究会のある委員は、当然公害健康被害補償法と同一水準にすべきであると主張しております。また、予防接種被害に対する給付補償は、社会防衛上必要欠くべからざる予防接種を国民に強制する結果発生する被害に対して国が補償給付を行うものであり、企業責任が必ず伴う薬害とはその性格を全く異にするのであります。さらに、薬害被害者の置かれている悲惨な現状を考えれば、当然最低限、少なくとも公害健康被害補償法と同一水準にすべきであると主張しますが、いかがでしょうか。
 さらに問題は、厚生省の最初の試案に含まれていた保健福祉事業がきれいさっぱりと削除されていることであります。公害補償法の中で「公害保健福祉事業」として規定されているように、被害者にとっては、単なる金銭給付よりも、むしろ、被害者の受けた被害を治癒させ、健康回復を図る事業の実施がきわめて重要であります。
 その意味で、給付の対象から除外したことは制度の画竜点睛を欠くものとなったと考えるものでありますが、御見解を承りたいのであります。
 第六に、本法第三十条において、救済給付を受けている者に係る疾病、廃疾または死亡について民事責任が明らかにされた場合には、以後、救済給付が中止されるとされております。しかし、救済給付は年金等の形で給付されるのであり、その被害者の療養設計や生活設計に組み込まれているのであります。したがって、その突然の中止は被害者の生活を大きく狂わすことになるのではないか。そうした場合、被害者が影響を受けないようにする措置が必要であると考えますが、政府の見解を承りたい。
 第七に、本制度における国の責任についてであります。
 われわれは、薬害の発生については、あくまで企業が第一義責任を負うものであり、国は、医薬品の安全性をチェックすべき責任があることから、第二義的責任があるものと考えるのであります。また、被害者が長きにわたって悲惨な状態に置かれていることを考えれば、社会保障的見地からも十分の責任を果たすべきことは当然であると考えるのであります。しかしながら、本法案における国の果たすべき役割りとして、サリドマイドやスモン並みの大規模な薬害が発生した場合の企業に対する補助が規定されているのみであります。その補助も、今後サリドマイドやスモン等の大規模の薬害が発生することはあり得ないとされているのでありますから、政府のこうした立場からは、通常は国の責任を果たす規定が全くないと言わざるを得ません。
 しかし、被害者にとって重要なのは、一日も早い健康回復であり、社会復帰であります。それを促進し、助成する保健福祉事業が当然給付の内容に含まるべきであり、それに対して、政府は応分の負担を行ってその責任を果たすべきであると主張するものであり、補助のみでなく、相当の負担金で対処すべきであると考えますが、政府の見解を伺いたい。
 第八に、本制度の対象から除外される医療過誤による副作用被害の救済についてであります。
 現実には、医療過誤による副作用被害が被害の中でかなりの比重を占めていると推定されており、それが除外されるとなれば、数多くの副作用被害が放置されることになることが考えられるのであります。したがって、それらに対して何らかの救済措置が新たに必要になると考えますが、この点についての政府の見解を求めるものであります。
 第九に、今日、薬害多発の背景に、乱診乱療、薬づけ医療とか言われることが存在していることは否定できない事実であります。
 一つには、現行健康保険制度の中で薬の大量消費を助長する側面があり、二つには、企業の大量生産に基づく添付や値引きの不当な販売姿勢に原因を求めることができるのであります。したがって、薬害防止のためには、薬事法の改正のみならず、健康保険制度の改革や一日も早い医薬分業の完全実施等の強力な施策が要求されるのであります。さらに重要なことは、企業のプロモーション活動に対する法的規制が必要であると考えられるのでありますが、政府はいかに対応する考えか、見解を承りたいのであります。
 最後に、製造物責任の法制化について総理にお伺いいたします。
 医薬品を含め、各種各様の製造物の瑕疵、欠陥によって生ずる生命、身体及び財産に対する被害は、経済企画庁の推計によれば、年間二百七十七万件にも及ぶ膨大な数に上っております。こうした被害について、現状においては何ら救済策がなく、ほとんどの国民が泣き寝入りしている現状であります。
 欧米先進国においては、製造物責任が各種の形で立法化され、消費者の受けた被害に対して機敏に対応がなされているのであります。わが国においてもさきに、国民生活審議会の消費者保護部会が五十一年十一月に製造物責任制度の確立を提言し、民間の学者たちもすでに製造物責任法要綱試案を発表しております。聞くところによりますと、この製造物責任の法制化について、政府はきわめて消極的であると言われ、その実現が危ぶまれているのであります。もし政府がこうした態度に終始するならば、国民や消費者が受けている被害の救済について全く熱意がないと断ぜざるを得ないのであります。
 製造物責任があらゆる分野に影響を与える性質のものである以上、その法制化には総理の強力なリーダーシップが必要であります。総理の御見解を承って、私の代表質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣大平正芳君登壇〕
#33
○内閣総理大臣(大平正芳君) 谷口さんの私に対する御質問は、製造物責任の法制化についてのお尋ねでございました。
 製造物責任の法制化につきましては、現行の損害賠償制度の基本的な原則にかかわる問題を含んでおりますことは御案内のとおりでありますし、また、このことは各界への影響も大きくございますので、政府としては、結論を急ぐことなく、慎重な検討を続けてまいることにいたしております。そこで当面は、各種の情報の収集、実態調査を進めてまいりまして、消費者の救済に関する施策を強めてまいることにいたしております。
    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕
#34
○国務大臣(橋本龍太郎君) 谷口さんからの御質問にお答えを申し上げます。
 先ほど水田さんにも申し上げましたように、私ども、この法律案を取りまとめます過程で、いろいろな考え方を取捨選択しながら、現状においてはこうした形が最適と思いまして取りまとめたわけでありまして、先ほど谷口さんから御指摘のありましたような考え方というものを私は決して否定するものではございません。
 最初にお尋ねのありました、民事責任の原則に基づいて損害賠償請求制度としての立法を考えるべきではなかったか、また、最後に総理に対してお尋ねのありました製造物責任についてのお考え等、これらの考え方を私どもも検討してこなかったわけではありません。ただ、御承知のように、こうした制度自体が世界に類例のない制度でありますだけに、私どもなりに判断をいたしてまいります過程において西ドイツの法制その他も参考にしたわけでありますが、御承知のように、無過失賠償責任と言いますより製造物責任をまさに取り上げておる立法体系でありますが、同時に、これは企業責任のみが記されまして、国の責任は一切入っておらないわけであります。わが国の現在までの医薬品による健康被害についての世論の動向、また今日まで出てまいりました各裁判所の判決等を考えてまいります場合に、果たして、製造物責任論によって企業のみの責任とし、国の責任を放てきする考え方が国民に受け入れられ得るものかどうか、こうした点も私どもの考え方の一部にあったことは事実でありまして、そうしたものを踏まえて、いま御審議を願うような法律案の形態をとってきたわけでございます。
 以上、前提を置きまして、御指摘の点についてお答えを申し上げてまいりたいと思いますが、そうした考え方の中から、私どもは、この医薬品の副作用による健康被害について無過失責任を導入することは、現行の民事責任の体系に対する重要な修正でもありますし、医薬品の特殊性、他への影響等を考えていきますと、むしろ民事責任関係とは切り離して、純粋に副作用による健康被害者を迅速に救済するということに焦点をしぼることが最も現実的であり、妥当な方法であると実は判断をいたしました。
 そうした中で、この救済制度は、医薬品による副作用で重大な健康被害を生じた方々に対する対応というものを、すべての製薬企業から徴収した拠出金によって救済をしようとする考え方をとりましたので、一種の保険制度ということから、既発生被害を本制度の救済対象から外しておるわけでございます。
 ただ、先ほど御指摘のありました中で、救済対象を狭くというお話がありましたが、必ずしも私どもこれは狭くとっておるつもりはございません。御承知のように、医薬品の副作用による健康被害のうちで、医薬品の適正な使用に起因するものを救済対象として全部をとっておるわけでありますから、給付の要件に該当する方であれば、それこそ疾病を指定することなしに、広く救済対象としていくわけでございます。
 また、被害者の申請に必要な資料等が医療機関等の拒否によって入手できないような場合どうすべきか、そうした場合に対しての対応を考えるべきであるという御指摘は、そのとおり私どもも率直に受けとめて、本制度が円滑に運用されるため、施行に当たって周到な準備をしてまいりたいと存じます。この提出資料の範囲というもの自体が、厚生大臣の行う判定と密切な関係がございますので、こうした面からも専門家の意見は十分に聞きながら事前の準備を行いたいと思います。
 その中における被害者のこうした書証の入手についての限界というものは、確かに御指摘のような危険性はあると私どもも思いますので、判定部会が事務局の充実をも十分に図っておくことによって、判定が円滑に行われるような体系を確保したいと考えております。
 同時に、御質問の順番からちょっと外れますが、その判定部会の委員の構成というものを民主的に行えという御指摘は、私どもとしては、医学、薬学、法律学等の専門性を確保する以外に、公平な判定を確保するというもう一つの大事な責任があるわけでありますから、十分そうした点には配慮をいたしてまいります。
 また、給付水準を公害健康被害補償制度に準ずべきではなかったかという御指摘でありましたが、私どもは、制度の性格、また被害の態様等から考えて、既存の制度とすれば予防接種事故の救済制度に近いものであるという認識のもとに、それに準ずる考え方の方が妥当であると考えてこうした体系を組みました。
 基金の事業について、保健福祉事業を入れるべきではなかったかという御指摘をいただいたわけでありますが、確かに答申の中にそうしたものがあったわけであります。しかし、本救済制度は、これは日本だけではなくて、世界的にも完全に新しい制度でありまして、その中核である給付及び費用の徴収業務の円滑な運用を図ることをやはり全力目標としておる次第でありまして、当面これら以外の業務まで取り込めるという自信がございません。
 ただ、給付につきましては、もっと明確に示せという御指摘をいただきましたが、むしろ政令で定めることにいたしておりまして、今後国会の御審議等を十分に私どもは反映して基準を設定いたしたいと考えております。
 また、その救済給付が突然に中止される場合、被害者の療養や生活設計を大きく狂わせるという御指摘があったわけでありますが、基金からの給付が中止されるケースとすれば、たとえば途中において判決が下り、その損害補てんを行う者が明確になったような場合でありまして、このような場合においては、むしろ責任者による補償等によって患者の救済が図られるということで、私どもは十分に対応できるものと考えております。しかし、その給付内容につきまして周知徹底を図ること、また、計画的な生活設計を患者の方々が行えるようなきめ細かい配慮を加えていくという必要性については、御指摘のとおりであると、そのように考えております。
 こうした制度の中で被害者を救済すべき第一義の責任は、私どもは製薬企業が負うべきものと考えております。しかし同時に、国としても、救済主体である基金の監督等を通じ、副作用による被害者の公正かつ円滑な救済を確保するということで、国の持つ行政的な責任を果たしていくことは言うまでもありません。
 そこで、御指摘のような医療過誤による副作用の救済はどうするかということでありますが、医事紛争におきましては、患者と医療機関側との話し合いで解決される場合も多くあると思いますけれども、そのほかにも訴訟あるいは調停、医師会の損害賠償責任保険等によっても解決が図られている例は御指摘のとおりでありまして、こうした事態を踏まえまして、厚生省は四十八年七月から、学識経験者から成る医事紛争に対する研究班をつくりまして、今日まで検討をお願いをしてまいりました。しかし、これは、医学教育、医療供給体制あるいは訴訟、調停等、多方面にわたっておる研究でありますために、研究班としてもまだ結論を取りまとめるまでに至っておりません。
 また、薬害被害を救済するためには、むしろ健康保険制度の改革あるいは医薬分業の推進、ことに企業のプロモーション活動に対する規制等をもっと考えろという御指摘をいただいたわけでありますが、私どももその点においては同感でありまして、医薬品の副作用による健康被害の発生防止のための法律上の体系整備のために、薬事法の一部改正を今国会に提案をいたそうといたしておるわけであります。
 また、薬づけ医療等薬剤問題につきましては、現在国会に御提案しております健康保険法等の一部改正法案等を初めとし、今後ともその適正化に努力をいたすつもりでありますし、医薬分業の推進につきましても、従来から積極的に力を入れてまいったわけでございます。
 そのプロパーの質的向上、またプロモーション活動というものについての規制につきましては、本年六月を目標に、業界に対して自主的対応策をまとめるよう要請しておるところでありまして、現在その結論を待っておる状態でございます。
 以上、御報告を申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#35
○副議長(三宅正一君) 西村章三君。
    〔西村章三君登壇〕
#36
○西村章三君 私は、民社党を代表し、ただいま趣旨説明のありました医薬品副作用被害救済基金法案につきまして、総理並びに厚生大臣に対し、質問を行うものであります。
 最近における医学、医術の進歩は、まさに日進月歩の観があり、かつては不治の病とされた疾患もその治癒を可能にしたことは紛れもない事実であります。とりわけ医薬品の開発は目覚ましいものがあり、国民の生命と健康を守るために大きく寄与してきたと申し上げても決して過言ではありません。しかし同時に、われわれは、医薬品の副作用によって国民のとうとい生命が奪われ、健康が破壊されてきた事実をも直視しなければならないわけであります。
 サリドマイドやスモンなどに見られる悲惨な医薬品の副作用問題は国民に大きな衝撃を与えており、国民は、医薬品の安全性の確保を軽視してきた今日までの政府の薬務行政に強いふんまんの声を上げております。そして、いま国民は、過剰な投薬など、いわゆる薬づけ医療に対しても大きな疑念を抱き、目に見えない不安に脅かされておるのであります。まさに、薬づけ医療は、医薬品の副作用問題を引き起こす温床になっておると申し上げても差し支えないでありましょう。さらに、最近に至っては新たに、検査公害と言われる過大なレントゲン照射や試験薬品の使用など、国民の医療に対する不信を一段と高めており、薬づけや検査づけ、乱診乱療、神風診療というような言葉まで生まれるに至った現在の医療の実態を是正することこそ、わが国の医療を正しく発展させるために欠かすことのできない問題であります。
 こうした医療の傾向を是正し、国民医療の正しいあり方について、今後政府はいかなる方針でもって臨もうとされるのか、総理の基本的な見解を承っておきたいのであります。
 申すまでもなく、医療は医師と患者との強固な信頼関係の上に成り立っております。しかし、最近とみに、薬づけ医療などを契機として、一方では政府の医療行政並びに製薬業界などに対する不信の念が高まるとともに、他方では国民の医師に対する信頼が低下し出したのではないかとさえ私どもは危惧をいたしております。もし国民が医師に対する信頼を失ったとするならば、わが国の医療はその根底から崩壊しかねないものでありますし、そのような事態を招かないようにするためには、その根源にある医の倫理をいま以上に高揚せしめることがきわめて緊要でございます。
 この見地から、倫理性の高い医療と、それに対応し得る医療行政を形成するよう政府が明確な方針を示し、強い指導性を発揮すべきだと存ずるのでありますが、この点についての総理の見解と方針をお伺いいたしたいのであります。(拍手)
 次に、本法案の内容につきまして、厚生大臣に具体的にお尋ねをいたします。
 まず第一に、判定業務についてでありますが、本法案におきまして最も重要な事項は、医薬品の副作用か否かの判定をどうするのかという問題であります。
 これにつきましては、本法案第二十九条に、「救済給付の請求のあった者に係る疾病、廃疾又は死亡が、医薬品の副作用によるものであるかどうかその他医学的薬学的判定を要すると認められる事項に関し、厚生大臣に判定を申し出ることができる。」と規定をされ、その二項で、厚生大臣は「判定の申出があったときは、中央薬事審議会の意見を聴いて判定を行い、基金に対し、その結果を通知するものとする。」とありますが、この判定業務は、基金の中にも何らかの形の判定機構があってこれを審議し、そこで判別が下せない、むずかしいものについてのみ厚生大臣に判定を申し出ることになるのか、あるいは実質的にはすべて厚生大臣が判定を行うのか、この点について明らかにしていただきたい。
 第二に私がお尋ねをいたしたいのは、この基金が実現した場合の救済の実効性についてであります。
 薬の副作用による多数の被害者が発生する場合は、サリドマイド、キノホルムの例に見られますように、大きな社会問題となり、放置しようにも放置できない事態になり得ますが、被害者がごく少数である場合に、救済が本法によって完全に行われるのかどうかについて必ずしも疑問なしとしないのであります。
 たとえば第二条の二項で定義する適正使用目的、適正使用という条件を満たしている場合におきましても、被害者が救済を請求するためには、医療に当たった医師の証明が必要となるわけであります。医療行為に当たっては患者個々の体質に応じて薬品の投与量、投与期間などが判断されるのは当然であります。したがって、当該医師の判断と中央薬事審議会の判定との間に相違、対立が生じた場合、仮に当該医師の処方が間違いであるとすれば、それは当該医師の過誤となり、賠償責任は医師に課せられるのは論理的帰結であります。ところが、現在社会で問題となっておりますのは、医師の過誤が訴訟によっても明白な判示を受けた例がなく、ほとんど泣き寝入りせざるを得ない実態であります。したがって、こうした場合の個人の救済は事実上不可能だと言わなければなりません。
 また、本法によって、中央薬事審議会の判定がより権威あるものとして一般化するといたしましても、当該医師が個別的判断において当然正当性を主張するでありましょうから、それが訴訟等において結論が出されるまでには、相当長期間を要することになってまいります。
 したがって、被害者の早期救済という見地からも、本救済基金が、その間、代位弁済たることも含めて、暫定救済措置をとる必要があると思うのでありますが、これらについては本法の運用上考慮をされておられるのか、あるいはほかに何らかの救済措置が講じられるのか、政府の見解を求めるものであります。
 最後に、既発の薬害被害者に対する救済についてお伺いをいたします。
 本法案による救済の対象は、来年四月一日以降に発生する新しい副作用被害者に限られ、スモンなど既発の被害者救済は除外されることになっております。しかし、現在最も苦しんでいる薬害被害者は、キノホルムを初めコラルジル、クロラムフェニコール、クロロキンなど、現在裁判で係争中の被害者であります。これら被害者の悲願は、国による恒久補償対策の実現であります。政府は、こうした国民の声を厳粛に受けとめ、それを行政に反映させることこそ政府の責務であります。にもかかわらず、いまなお恒久対策を講じようとしない政府の姿勢は、余りにも冷酷に過ぎると断ぜざるを得ないのでありまして、現在薬害で苦しみ抜いている被害者に対し、今後いかなる救済対策を講ずる方針であるのか、政府の見解を明らかにしていただきたいのであります。
 スモンなどの被害者救済対策を早急に講ずることと、再びこのような悲劇が生じないよう、薬害の発生防止に万全の措置を講ずることを強く政府に要求をいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣大平正芳君登壇〕
#37
○内閣総理大臣(大平正芳君) 西村さんのお尋ねは、乱診乱療その他薬づけ医療等、医療の実態の改善についての基本の方針はどうかという意味の御質問でございました。
 わが国の医療につきましては、御指摘のように、乱診乱療、いわゆる薬づけ医療等の薬剤をめぐる問題が、増高する医療費の負担の問題とともに、その解決が迫られておると思います。御指摘のとおりでございます。
 このため、政府といたしましては、各医療制度間の格差の是正でございますとか、物と技術の分離でございますとか、一部負担の適正化であるとか、薬価基準の適正化、医療保険の安定その他、一昨年十一月には十四項目にわたりまする医療保険制度改革の基本的な考え方を決めまして、これに基づきまして目下制度の改革を進めておるところでございます。
 また、医療の倫理性については、御指摘のように、今日強く求められておることでございますが、これは行政とかあるいは立法によってなし得るところではございませんで、私どもといたしましては、名誉ある医業に携わる方々の自覚に強くまちたいと考えております。(拍手)
    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕
#38
○国務大臣(橋本龍太郎君) 西村さんにお答えを申し上げます。
 最初に御指摘を受けました、救済制度を創設するに当たっての国の責任というものは、私どもは、副作用による被害者の救済の責任は第一義的には製薬企業である。しかし、国としても、その被害者の救済が公正に行われるように制度を制定し、また、救済主体である基金の監督等を行うことによって、制度の円滑な運営を図るべき責任を果たさなければならない、そのように考えております。
 また、厚生大臣の行う因果関係などの判定について、これは一体基金の任意の申し出によるのか、それともすべてのケースに行うのかという点の御指摘でありますが、これは、本来は給付主体である基金の責任で行わるべきものであります。しかし、副作用被害である旨の判定というものは、非常に高度な専門的判断を要するものでありますので、最終的には厚生大臣がこれを行うという方が適切であると考えられまして、このような制度をとりました。したがって、現実には全ケースについて基金は厚生大臣に判定を申し出られ、中央薬事審議会の議を経て判定を下すという結果になろうと考えております。
 また、その実効性についてはどうかというお話でありましたが、私どもは、日本の医療における医学常識の線でこれは判定をするということでありまして、医療過誤と、またこの救済制度にのるべき患者との振り分け等も迅速に行うことによって、被害者救済が敏速に行われるというところにこのねらいを置いておるところでございます。
 この救済制度の創設に際しまして、なぜ既発生患者を対象としなかったかというお話につきましては、私どもは、この制度を、すべての製薬企業から徴収した拠出金によって救済しようという、一種の保険方式による制度を組み立てましたことから、既発生被害はこの制度の対象から外した次第であります。
 ただ、既発の被害で一番大きなものはスモンの問題でありますが、私どもとしては、現在和解によりまして統一的かつ速やかな被害者の救済を図ろうとして努力をいたしておるところでありまして、院の御協力をも心からお願いを申し上げる次第でございます。その他の既発生の健康被害につきましては、やはりその内容に応じて個別的に解決が図られていくべきものである、そのように考えております。(拍手)
#39
○副議長(三宅正一君) これにて質疑は終了いたしました。
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#40
○副議長(三宅正一君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後二時三十五分散会
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ソース: 国立国会図書館
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