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1978/04/24 第87回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第087回国会 本会議 第20号
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1978/04/24 第87回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第087回国会 本会議 第20号

#1
第087回国会 本会議 第20号
昭和五十四年四月二十四日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第十八号
  昭和五十四年四月二十四日
    午後一時開議
 第一 海外経済協力基金法の一部を改正する法
    律案(内閣提出)
 第二 元号法案(内閣提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議員請暇の件
 日程第一 海外経済協力基金法の一部を改正す
  る法律案(内閣提出)
 日程第二 元号法案(内閣提出)
 港湾労働法の一部を改正する法律案(内閣提
 出)
 国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨
  時措置法及び特定不況業種離職者臨時措置法
  の一部を改正する法律案(内閣提出)
    午後一時四分開議
#2
○議長(灘尾弘吉君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 議員請暇の件
#3
○議長(灘尾弘吉君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。
 宮澤喜一君から、四月二十六日より五月四日まで九日間、河本敏夫君から、四月二十八日より五月六日まで九日間、中島衛君から、四月二十八日より五月七日まで十日間、野呂恭一君から、四月二十八日より五月十二日まで十五日間、右いずれも海外旅行のため、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(灘尾弘吉君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 日程第一 海外経済協力基金法の一部を改正
  する法律案(内閣提出)
#5
○議長(灘尾弘吉君) 日程第一、海外経済協力基金法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。商工委員長橋口隆君。
    ―――――――――――――
 海外経済協力基金法の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔橋口隆君登壇〕
#6
○橋口隆君 ただいま議題となりました海外経済協力基金法の一部を改正する法律案につきまして、商工委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 今日、発展途上国に対する経済協力がますます重要となってきていることは、先進国における共通の認識となっております。
 わが国も、さきの先進国首脳会議等において、政府開発援助の三年間倍増目標を表明するなど、積極的な姿勢を明らかにしております。これに従って、今後、政府開発援助を大幅に拡大するためには、その中心的な実施機関である海外経済協力基金の事業規模を一層拡充するとともに、事業実施の円滑化を図ることが必要となっております。
 本案は、こうした観点から、海外経済協力基金の資金調達を円滑化するとともに、事業運営の体制を整備強化するため提出されたものでありまして、その主な内容は、
 第一に、基金の借入金等の限度額を資本金等の額の三倍に引き上げること、
 第二に、基金の借入金または債券について、政府が保証することができること、
 第三に、基金に副総裁一人を置くこと等であります。
 本案は、去る二月二十八日当委員会に付託され、三月二十日小坂経済企画庁長官より提案理由の説明を聴取した後、各関係大臣及び参考人に対し質疑を行い、四月十一日には、特に大平内閣総理大臣の出席を求めて質疑を行い、同日質疑を終了、討論の後、採決をいたしました結果、本案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
 なお、本案に対し、政府開発援助の執行の迅速化、援助の効果の明確化など、五項目にわたる附帯決議が付されておりますことを申し添えます。(拍手)
    ―――――――――――――
#7
○議長(灘尾弘吉君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#8
○議長(灘尾弘吉君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第二 元号法案(内閣提出)
#9
○議長(灘尾弘吉君) 日程第二、元号法案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。内閣委員長藏内修治君。
    ―――――――――――――
 元号法案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔藏内修治君登壇〕
#10
○藏内修治君 ただいま議題となりました元号法案につきまして、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、国民の大多数が元号の存続を希望していることにかんがみ、元号に関する制度の明確化と安定化を図るため、その根拠を法律で規定しようとするものでありまして、その内容は、
 第一に、元号は、政令で定めること、
 第二に、元号は、皇位の継承があった場合に限り改めること、
 第三に、この法律は、公布の日から施行すること、
 第四に、昭和の元号は、この法律の規定に基づき定められたものとすること
であります。本案は、二月二日政府より提出され、三月十六日本会議において趣旨の説明及び質疑が行われた後、同日本委員会に付託され、三月二十日三原国務大臣より提案理由の説明を聴取し、四月十日から質疑に入り、四月十三日には五名の参考人を招致して意見を聴取し、四月十九日大平内閣総理大臣の出席を求めて質疑を行うなど、慎重に審査を行いました。
 本案に対する質疑の主な内容は、元号法制化の必要性、新憲法及び旧憲法下の天皇制と一世一元の元号との関係、法制化に伴う元号使用上の諸問題、政令で定める元号選定及び改元時期の問題など、広範多岐にわたる質疑が行われたのでありますが、その詳細につきましては会議録により御承知願いたいと存じます。
 かくて、四月十九日の深更に及ぶ委員会を散会し、引き続き二十日未明の委員会におきまして質疑を終了し、討論に入りましたところ、自由民主党の唐沢俊二郎君、公明党・国民会議の新井彬之君、民社党の吉田之久君及び新自由クラブの中川秀直君より、それぞれ賛成の意見が述べられ、また、日本社会党の岩垂寿喜男君及び日本共産党・革新共同の柴田睦夫君より、それぞれ反対の意見が述べられました。
 次いで、採決の結果、本案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#11
○議長(灘尾弘吉君) 討論の通告があります。順次これを許します。山花貞夫君。
    〔山花貞夫君登壇〕
#12
○山花貞夫君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました元号法案について反対の討論を行うものであります。
 元号法制化は、天皇を元首化、神格化しようとする思想的潮流に法的な保障を与えようとするものであり、主権在民を掲げる現憲法に明白に違反するものであります。わが党は、これを断じて認めることができません。
 政府は、元号法制化の論拠を象徴天皇制に求めました。しかしながら、現憲法における象徴天皇制は、明治憲法における天皇主権と、統治権の総攬者たる天皇を中心として構成されている国家の統治機構の全体を否定したところから誕生したものであります。天皇支配の国家体制を象徴した一世一元の元号制は、国民主権の原理を掲げる現憲法下で認められる余地はありません。
 政府は、この元号法案の今国会における成立を至上命令としてきました。委員会における審議も日程の消化だけが推し進められ、議論が尽くされないまま採決に持ち込まれたのであります。国民の間で意見が大きく分かれている元号法制化問題が、一政党内の派閥の調整に利用されてはなりません。また、多党化時代における政党連携の手段とされてもならないのであります。
 大平総理は、今日元号法制化を急ぐ理由として、元号が国民の日常生活に定着し、また、全国の自治体の多くが法制化の決議を行っていることを挙げました。しかしながら、事実たる慣習として元号が国民の日常生活の中に定着していることとその法制化とは、全く問題が別であります。国民の多数は、元号法制化に反対しているのであります。
 最近のマスコミの調査によれば、政府の主張とは全く逆の世論が明らかにされています。各新聞社の調査によると、元号法制化賛成はおよそ二〇%前後にすぎないのであります。この世論の動向に照らせば、全国の自治体における法制化決議の正体もまた明らかであると言わなければなりません。(拍手)多数の力による世論の捏造は、民主主義の危機をもたらすものであります。
 次に、元号法制化賛成論は、元号が千三百年以上も続いた国民的文化遺産であることを強調いたしました。時の権力者が、人民と領土を支配するとともに、その時代をも支配する象徴としてみずから権力的に決定した元号の制度をもって文化的伝統とするがごとき議論は、文化の何たるかを知らない議論であると言うべきであります。(拍手)仮にこれを文化的伝統と言うならば、それは権力者のための文化であり、国民とは無縁であります。文化は、国民の生活の中から生まれるものであり、国民の日常生活の中から創造されるものであります。文化を法律によってつくり出そうとする議論のごときは笑止と言わざるを得ません。
 改元は、国民生活に大きな影響、混乱、損害を与えるものであります。この元号問題についての国民的合意が形成されていないのはもちろん、これに関する議論もいまだ未成熟な中で、未来に生きる子供や孫たちに法的な拘束力をもって元号を押しつけることは許されません。それは、歴史に禍根を残すものであると言わざるを得ないのであります。(拍手)
 しかも、元号法制化は、思想、表現の自由など、国民の基本的人権を侵すものであります。政府は、この法律を国民には強制しないと強調いたしました。しかしながら、国会答弁においては、公務員にそれを強制することを通して、官公庁の窓口では事実上国民に強制することが明らかになったのであります。
 かつて、内閣は、源田実参議院議員の質問主意書に対し、こう言っております。もし元号の使用を国民に強制しようとするのであれば法律を必要とすることは当然であるが、そうでなければ必ずしも法律によることを必要としないものと考えられる、こう答えていたのであります。すなわち、元号の法制化は強制を伴うものであることを政府みずから認めていたのであります。
 また、元号法制化は、政教分離の原則を無視した、そして国家神道の復活に道を開くおそれがあるものと言わなければなりません。
 われわれの基本的態度は、去る十八日、わが党の飛鳥田委員長が大平総理に対し、元号法制化の反対を申し入れたとおりであります。
 元号が事実たる慣習であれば、西暦もまた事実たる慣習であります。したがって、その使用を法律で強制することなく、国民の自由な意思に任せること、国民に元号を強制するこの法案は撤回し、年号が必要と考える場合には内閣の判断で行うことであります。いまあわただしく世論の反対を押し切って法制化を図るべきではありません。さらに議論を深めるべきなのであります。この場合、政治、経済、文化の国際化が進んでいる今日、世界共通の尺度である西暦の採用こそ将来望まれる紀年法というべきであります。
 また、政府は、元号法制化はイデオロギーとは関係ないと繰り返し述べてきましたけれども、事の真相を押し隠そうとするものであると言わざるを得ません。元号法制化のねらいは、国民思想を天皇制のもとに統合しようとするところにあります。それは、君が代、日の丸、靖国、教育勅語、軍人勅諭などと深いかかわりを持って、天皇制賛美の思想的潮流の中心にあるものなのであります。天皇主権の復活を目指す一部勢力の要求にこたえたものであります。
 国民は、過日の防衛大学校の卒業式において、元号法制化実現国民会議議長石田和外元最高裁判所長官が軍人勅諭を賛美した事件や、東条英機元首相らA級戦犯が靖国神社に合祀され、これにクリスチャンである総理が参拝することに不安を感じているのであります。国会の参考人として出席して意見を述べただけで、右翼団体とおぼしきところから脅迫めいた文書が突きつけられるという事件に、この法案の持つ危険な本質を知るのであります。(拍手)
 わが党は、以上の立場から、大平内閣に対し元号法案の撤回を強く要求し、かかる反動的、反憲法的な法案を強行せんとする大平内閣の政治姿勢を強く糾弾するものであります。(拍手)
#13
○議長(灘尾弘吉君) 竹中修一君。
    〔竹中修一君登壇〕
#14
○竹中修一君 私は、自由民主党を代表し、元号法案に対して賛成の討論を行います。(拍手)
 元号は、遠く孝徳天皇時代の大化以来、千三百年以上の歴史を有し、国民の日常生活において長年使用され、広く国民の間に定着して、日本の伝統文化とも、また民族的遺産ともいうべきものであります。さらに、明治以降は、一世一元の元号として、国民の日常生活の中に溶け込み、なじまれてまいりました。
 しかしながら、元号について、旧皇室典範及び登極令が廃止されて以来、法的根拠を失い、現在の元号である昭和は、事実たる慣習として使用されているものであります。したがって、昭和の次の元号を、だれがどのような場合に定めるかについての規定がないのであります。政府の元号に関する世論調査によれば、日常元号を用いている者が約九割に上り、また、将来にわたり元号の存続を望む者が約八割に達しているのであります。このような事実を踏まえるならば、元号を将来にわたり制度として存続させるための方策をとるべきことは当然でありましょう。元号を将来にわたって存続させるために、だれがどのような場合に改元を行うかを明確に定めておく必要があります。
 その方法として、内閣告示でもよいのではないかという意見もありますが、仮に内閣告示によるとするならば、時の内閣の恣意的判断によってその存続が左右され、また、国民の意思を反映する機会もなく、制度としての安定性、明確性に難点があることは明白であります。
 このような見地からして、国民を代表する国会の定める法律によって規定するのが最も望ましい方法であり、また、最も民主的なやり方であることは言うまでもありません。(拍手)全国の四十六都道府県議会、千五百以上の市町村議会が元号制度の法制化の決議をしていることも、法制化を望む国民世論のあらわれであります。
 一世一元の元号は、国民主権を定めた憲法に反するとの反対論がありますが、憲法は、主権者である国民の総意に基づくものとして、その第一条に象徴天皇制を定めており、年の表示方法の一つである元号を天皇の在位期間と関連させることは、象徴天皇と国民とを結ぶ深いきずなとしてまことにふさわしいことであり、象徴天皇制を定めた現憲法の規定にいささかも反するものではないと確信するものであります。(拍手)
 また、元号は、わが国だけで通用するものであって、国際化の今日、元号にこだわることは世界の大勢におくれるという説をなす者もあります。大多数の国でキリスト暦である西暦を使用しているのは事実でありますが、その国によっては仏暦、回教暦等を併用するなど、各国の歴史や伝統により差異があることもまた事実であります。わが国においても同様に、固有の歴史や伝統は大切にすべきものであると考えます。元号を法制化した場合においても、西暦の使用については現状と同じで、格別制約を受けるわけではなく、時と場合に応じて元号と西暦とを使い分けていくのでありますから、諸外国との交流を深めていく上で、何ら障害となるものとは考えられないのであります。
 また、一部には、法制化は元号の使用の強制につながるということで、法制化に反対している向きもありますが、元号法案には元号の使用についての規定はなく、国会審議における政府の答弁から見ても、そのようなおそれがないことは明らかであり、あくまでも現在の元号の使用状況を何ら変更するものではなく、反対論は根拠のないもので、ためにする議論であると言わざるを得ないのであります。(拍手)
 新元号の選定手続については、国民のためによい元号を選ぶという観点から、政府としては慎重な配慮をすべきであると考えます。
 改元に伴う影響についても、改元という事態は頻繁に起こることではなく、また、その影響はひとしく全国民が受けるものでありますから、国民の一人一人が良識を発揮して、適宜対処していくべきものと思います。混乱が生じたり、一部の者に負担が偏ったりすることは好ましいことではないと思いますので、政府としてもその点に万全の注意を払うべきであると考えます。
 なお、本法案の内閣委員会においては━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━異例のことではありますが、二十日未明、質疑終了、各党それぞれ討論を済ませ、整々のうちに採決を行い得たことに対し、内閣委員長初め委員各位の労を多とするものであります。(拍手)
 以上、本法案は、元号を制度として明確にして、かつ、安定したものとするため、その根拠を定めようとするものであり、まことに適切なものであると考え、本法案に賛成の意見を表明する次第であります。(拍手)
#15
○議長(灘尾弘吉君) 柴田睦夫君。
    〔柴田睦夫君登壇〕
#16
○柴田睦夫君 私は、日本共産党・革新共同を代表して、元号法案に断固反対するものであります。(拍手)
 反対理由のまず第一は、本法案が、現憲法の主権在民原則に逆行するということであります。
 元号制度が中国でつくり出され、その後、わが国を含む東アジア諸国を中心にして使用された君主体制に固有の政治制度であり、明治になって一世一元制が制度化されて以降のわが国の元号制度が、天皇主権、天皇の統治権と不可分の政治制度であることは、政府みずからが委員会審議で認めたところであります。
 戦後、主権在民の現憲法施行と同時に、一世一元の元号制度の法的根拠が失われ、元号制度がなくなったのはきわめて当然であります。元号制度が現憲法の主権在民原則に逆行することは、新しい皇室典範から元号制定の項が削除されたことや、一九四六年の元号法制化の企てが、準備中の現憲法の精神に逆行するものとして断念された経過などによっても全く明白であります。
 天皇の在位期間に応じて年号を変える一世一元の元号を制度として復活させ、恒久的に固定化することは、現憲法の主権在民原則に逆行する、まさに時代錯誤の非文化的愚行と断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
 第二は、本法案が、天皇元首化、憲法改悪を目指す法制化推進派の反動的な企てと不可分であり、軍事ファシズムの路線に立った重大な政治・思想反動の一環をなすものであるということであります。
 各種右翼団体など、元号法制化推進派の中核勢力が、元号法制化を天皇元首化、憲法改悪への一里塚、あるいは解釈改憲と位置づけて策動してきたことは公然たる事実であります。これら右翼団体が、元号法制化に反対する学者、文化人らを暴力で脅迫するという、ゆゆしい事件さえ引き起こしていることも周知のとおりであります。重大なことは、政府みずからが、法制化推進派の中核勢力に公然たる激励を与え、彼らの策動に全面的に呼応しているだけでなく、これら一連の事実を明確に否定できず、事実上認めていることであります。
 本法案は、まさに、戦時立法、君が代国歌化、教育勅語や軍人勅諭の礼賛、靖国神社問題などとともに、対米従属下の軍国主義復活の路線に立った重大な政治・思想反動の一環をなすものであり、断じて認めることができないのであります。(拍手)
 第三は、本法案が、大多数の国民世論に真っ向から挑戦し、国会と国民を全く愚弄するものであるということであります。
 各種の世論調査で、多数の国民が元号法制化に賛成しておらず、法制化に賛成する世論がわずか二〇%前後にしかすぎないことは、政府みずからが委員会審議で認めたところであります。戦後、主権在民の現憲法施行と同時に元号制度がなくなり、その後、元号が西暦とともに慣習的に使われているにすぎないことも、政府みずからが認めているところであります。国民の多くが、元号存続に賛成でも法制化に賛成していないという各種世論調査の結果は、慣習としての現在の元号の存続には賛成でも、元号を制度として復活させることには賛成していないという、大多数の国民に定着した世論をリアルに表現したものであります。
 国民にとって、慣習的使用が不都合で、法制化しなければならないという理由は何ら存在しないのであります。元号存続の希望にこたえるのが政府の責任であるなどと称して、元号を制度として復活させるのは明らかにすりかえであります。存続の方式を国民の代表である国会で決めてもらうのが最も民主的であるなどと称して、多数を頼んで元号制度を復活させるのは全くの欺瞞であります。
 第四は、法制化しても一般国民には強制しないなどという政府答弁の欺瞞性が、委員会審議を通じてますます明らかになったことであります。
 元号法制化によって、元号の使用が事実上強制されている現状が制度的に固定化され、法制化された元号と非法制の西暦などとの間に法制上の優劣関係が生まれ、いま以上に元号の使用が強制されることは自明であります。法制化された以上、公的機関が元号を使うのは当然であるなどという法理を展開する政府が、法制化された以上、一般国民が元号を使うのは当然であるなどと言い出さない保障はどこにもありません。
 現に政府は、その保障を何ら示すことができなかったばかりか、公務員は、上司から元号使用を命令された場合、これに従わなければならない、従わない場合、懲戒処分もなし得るとか、元号法は、他の法令と相まって拘束性を持つこともあるなどと答弁し、一般国民には強制しないという言い分の欺瞞性をみずから暴露しているのであります。毎日新聞の世論調査で、約六割に上る人が、法制化による使用強制に不安を抱いているという結果が出ているのはきわめて当然であります。
 元号問題については、わが党が繰り返し主張してきたように、慣習としての元号の存続を望んでいる多数の国民世論を素直に尊重して、憲法の枠内で、現在の慣習的使用の延長として適切な措置を検討すべきであり、将来にわたって固定的に法律で拘束すべきものではありません。(拍手)いかなる紀年法を国民が用いるかは、歴史と国民自身の選択にゆだねるべきものであります。これこそ、大多数の国民の願いに素直にこたえる道理ある措置であります。(拍手)
 提起された疑問や問題点を国民の前に十分解明せず、また、徹底審議のためにわが党が行った、公聴会や連合審査、使用強制問題についての実態調査、さらに、必要とされる参考人意見聴取や資料提出などの道理ある提案には耳をかそうとせず、しゃにむに採決を強行することは、国民に対する国会の責務を放棄するとともに、国会の民主的運営を踏みにじる暴挙と断ぜざるを得ません。
 わが党は、広範な国民世論に挑戦して憲法の主権在民原則に逆行する元号を法制化することに断固反対し、多数を頼んで法案をごり押ししてきた政府・自民党と、これにくみした公明、民社、新自ク三党の反民主的姿勢を厳しく糾弾して、討論を終わります。(拍手)
#17
○議長(灘尾弘吉君) 新井彬之君。
    〔新井彬之君登壇〕
#18
○新井彬之君 私は、公明党・国民会議を代表し、ただいま議題となっております元号法案に対して賛成の討論を行います。(拍手)
 日本国憲法が施行されまして以来、すでに三十有余年を経ておりますが、年号について、国民の理解と感覚は、昭和と西暦の二重の基準を難なく吸収し、適宜にこれを自由に使い分けているのが実態であります。そこには、わが国民族と生活の中に溶け込んだ元号に対する国民の心情とともに、生活の営みの中の元号使用の便利さというものを無視することができません。これを裏づけるように、今日における各方面の世論調査の結果で、回答者の大多数は元号の存続を希望しております。
 したがって、公明党・国民会議は、元号に対するこうした国民感情、生活感覚と便利さ、世論の実態を踏まえ、さらには、主権在民、議会制民主主義の上に立って、象徴天皇の地位を明記した日本国憲法を擁護する立場から、この際、日本独自の元号を法律の定める手続によって存続することに賛成いたすものであります。(拍手)
 以下、賛成の理由を具体的に述べます。
 第一に、日本独自の元号はやはりあった方がよいということであります。
 言うまでもなく、元号の起源は古代中国にありますが、わが国では、大化の改新の成功によって初めて法令国家として出発したときから始まっております。以来、昭和まで、元号は二百四十七を数えており、平均五年に一回改元していることになります。また、歴史的事実として、古来、元号は吉凶、禍福、瑞祥などで、天皇の治世とは無関係で定められたのであります。それが、明治から、いわゆる天皇の治世を一元号とするようになったわけであります。その意味からは、古来の元号の定め方を、立憲君主国という国家体制への変革のもとで変質させたことになると考えるものであります。
 ところで、昭和という元号は、旧皇室典範第十二条等で固定されたものから、主権在民を宣言した日本国憲法のもとで、現在は事実たる慣習として用いられております。つまり、旧帝国憲法の天皇制、旧皇室典範で固定された元号からは全く変質したものとなっているのであります。
 その旧帝国憲法下と異なる昭和を、なぜ国民の大多数が元旦の年賀状に用いているのか、また、世論調査で大多数があった方がよいと回答するかを考えてみなければなりません。
 そこには、日本民族の伝統的な心情というものを考えざるを得ません。新年を祝い、心新たになったときに、大多数の国民がやはり昭和と記す奥底には、民族の紀年としての元号があることが、日本人にとっては一つの共感となり、時代の移り変わりをながめる民族独自の時代観があると思うのであります。
 こうした意味から、私は、民族独自の元号の必要があると判断いたします。
 第二は、本法案から見る元号は、主権在民の現憲法体制の中で法律に基づく手続で定めるものでありますから、国民が定めるものであるということであります。したがって、元号を法制化することが旧帝国憲法の天皇制への復帰に結びつくものではないということであります。
 私どもが、本法案によって定められる元号を国民の定める元号であるとするのは、日本国憲法の議会制民主主義は、主権を持つ国民によって公選された議員により国会を構成しているからであります。すなわち、元号に関する手続制度を法律によって定めるとする元号法案を国会で議決するのであり、その議決は国民主権に由来することは自明であります。したがって、この法律案に基づく元号は国民の定める元号であります。旧皇室典範に基づく元号とは全く別であることは明瞭であります。(拍手)
 いまここで元号を法制化することが、国民の主権を侵し、あるいは、やがて旧帝国憲法の天皇制の復帰に結びつくとの考えにつきましては、いずれにせよ現行憲法の象徴天皇を否定する考えに基づくもので、私どもは、この考えにくみするものではなく、あくまでも現行憲法を擁護する立場に立つものであります。(拍手)
 また、元号法制化が、いずれにせよ改憲につながる国民世論を培養するとする短絡的考察もいたしません。現行憲法に対する国民の認織と定着、さらに憲法に規定された改憲手続から見ても、そうした短絡的考察には同意できないのであります。
 第三に、本法案により元号が法制化されても、国民に対してそれを強制するのではなく、現在の昭和と西暦の使用が国民それぞれの考えで自由に使用されているのと同様に、自由に使用できるということであります。これは、憲法で保障された基本的人権、表現の自由からも当然であると言わねばなりません。
 ただし、官公庁における文書上の取り扱いについては、文書事務の統一性の必要から元号で統一することはやむを得ないと判断をいたしますし、そのことが直ちに国民の基本的人権、表現の自由、思想、信教の自由を侵すことにはならないと見るべきだろうと考えます。
 第四に、以上第一から第三までの考えに立って、元号に関する手続制度を法制化することが必要であると認めざるを得ないのであります。
 現在の昭和が、現行憲法のもとで事実たる慣習として用いられ、大多数の国民が元号の存続を認めていることを尊重することは、元号を、主権在民の法治国家として法律によって安定したものとすることにほかならないからであります。
 最後に、旧帝国憲法下の元号が、旧皇室典範等によって定められたいわゆる天皇の大権に属するものであったのに対し、本法案に基づく元号は、国民の主権に由来するものであります。したがって、改元に当たっては、国民の心情と生活に最もふさわしい配慮をいたすべきであります。
 その意味から、私どもは、改元は皇位の継承があった場合に限るとするも、改元のスタートは皇位継承のあった翌年一月元旦とすることが、国民主権に由来する元号にふさわしく、また、憲法第一条から見ても、日本国独自の元号として最もふさわしい改元のあり方であることを主張し、その実施を強く要望して、私の討論を終わります。(拍手)
#19
○議長(灘尾弘吉君) 青山丘君。
    〔青山丘君登壇〕
#20
○青山丘君 私は、民社党を代表して、ただいま議題となっております元号法案に関し、賛成の討論を行うものであります。(拍手)
 今日、元号は、時代を象徴するものとして国民に広く親しまれてきました。また、生活慣行としてもすっかり定着した文化的な所産となっております。
 昭和五十二年、総理府が行った世論調査によれば、日常生活において主に元号を使用している人は八九%と、圧倒的多数を占めています。また、元号の存続に反対する者はわずか六%に対して、積極的賛成が五九%、消極的な賛成が二〇%と、元号制度の存続を望む者は七九%にも達しています。(拍手)しかも、四十六都道府県議会と千数百の市町村議会において、元号法制化の決議がなされました。このことからしても、元号の存続に関する国民的合意は紛れもない事実と言わなければなりません。(拍手)
 したがって、このような実態に反して、ただイデオロギー上の反対や、西暦に一本化するとの論は、民意反映の政治としては絶対にとるべきではありません。(拍手)
 また、一部においては、西暦使用が世界の大勢であるとの立場から元号制度に反対する意見もありますが、それは、ユダヤ暦、回教暦、仏暦など、それぞれ民族固有の暦年を西暦と併用してその国の文化を維持し、継承している国が世界で二十数カ国もある事実に目を背けている、きわめて一方的な意見と言わなければなりません。国際化時代になればなるほど、民族固有の文化を高らかに誇りつつ、国際社会での調和を図ることがきわめて重要なのであります。
 こうした意味からも、元号制度を維持し、継承するのは当然のきわみと言うべきであります。
 第二は、では元号を民主主義の原則に照らして存続させる方法をいかにすべきかという問題であります。
 かつての一世一元制の元号制度には、行政官布告、旧皇室典範、登極令など、法律上の根拠がありました。しかし、昭和二十二年、明治憲法にかわって日本国憲法が施行されると同時に、旧皇室典範、登極令は廃止され、新しい皇室典範からは元号に関する規定が削除されました。また、行政官布告についても、その法的有効性に疑義が生じているなど、元号の法的根拠は実際上失われてしまったわけです。
 いまや、元号は、事実たる慣習として使用されているのが現状であります。仮にこの慣習に従うならば、将来、天皇の代がかわった場合、新元号がおのずからつくられるという考え方もありますけれども、果たして法治国家としてそれが妥当であるのかどうか、大きな疑問が生ずるのであります。
 特に指摘すべきは、だれがどういう手続を経て新しい元号を決定するのかという問題であります。この意味から、元号を存続させる根拠を早急に確定する必要があります。
 そこで、元号存続の方法には、内閣告示と法制化による二通りが考えられますが、内閣告示では、時の政権が、告示するかしないかの自由を持っているのであります。しかも、民族的伝統文化の所産である元号の維持、継承という点から見て、制度的にはきわめて不安定であります。私は、この種の問題は、内閣告示ではなく、国権の最高機関としての国会において、民主的に十分な論議を尽くして立法化するのが妥当であると考えるものであります。(拍手)
 第三は、法案の内容についてであります。
 本法案によれば、元号は政令で定められ、改元は皇位の継承があった場合に限るとされております。国民の一部には、法案が一世一元制の立場をとっているから、象徴天皇制を定めた現行憲法の精神に抵触するという危惧を持っている者もいます。また、元号法制化を推進する人々の中には、確かに天皇制復活を唱える向きもなくはありません。
 しかし、現行憲法下の象徴天皇の地位と権能は、もはや明治憲法下における統治権の総攬者とは全く異なっているのであります。現行憲法を正しく解釈するならば、主権在民が大原則であることは明々白々でありまして、かつての古い天皇制度の復活を夢見たり、はたまた古い天皇制復活につながるとして元号反対論を展開する者は、現行憲法を知らないか、あるいは憲法を厳正に守る意識を欠如している者の論議にしかすぎないのであります。(拍手)
 およそ、現行憲法の精神を正しく体得し、憲法の示す民主主義体制を堅持しようとする大多数の国民は、必ずや、憲法と調和した元号制度を守り、はぐくむでありましょう。
 また、われわれ政治の場にある者は、こうした大多数の国民の明確な意思を信頼すると同時に、それをますます高揚するよう働きかけ、努力する責務のあることを自覚すべきであります。政府もまた、法の運用とそれに伴う世論の動向に対しては、適切に対処して、いささかも古い天皇制復活の懸念を抱かせないよう万全の努力を尽くすべきであります。
 以上、元号法案に対する賛成の趣旨を述べるとともに、伝統文化と民主主義憲法を調和、発展させるわが党の意思をここに明らかにして、私の賛成の討論を終えるものであります。(拍手)
#21
○議長(灘尾弘吉君) これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
#22
○議長(灘尾弘吉君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#23
○議長(灘尾弘吉君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。(拍手)
     ――――◇―――――
#24
○玉沢徳一郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 すなわち、この際、内閣提出、港湾労働法の一部を改正する法律案、国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法及び特定不況業種離職者臨時措置法の一部を改正する法律案、右両案を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
#25
○議長(灘尾弘吉君) 玉沢徳一郎君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#26
○議長(灘尾弘吉君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
    ―――――――――――――
 港湾労働法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法及び特定不況業種離職者臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
#27
○議長(灘尾弘吉君) 港湾労働法の一部を改正する法律案、国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法及び特定不況業種離職者臨時措置法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。
 委員長の報告を求めます。社会労働委員長森下元晴君。
    ―――――――――――――
 港湾労働法の一部を改正する法律案及び同報告書
 国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法及び特定不況業種離職者臨時措置法の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔森下元晴君登壇〕
#28
○森下元晴君 ただいま議題となりました二法律案について、社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、港湾労働法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本案は、輸送革新の進展等に伴い、登録日雇港湾労働者の就労機会が減少し、これらの者に支給する雇用調整手当の収支状況も悪化していることにかんがみ、その改善を図る等の措置を講じようとするもので、その主な内容は、
 第一に、登録日雇港湾労働者に対して雇用保険法を適用するものとすること、
 第二に、雇用調整手当と雇用保険法の日雇労働求職者給付金等との調整でありまして、雇用調整手当の日額が日雇労働求職者給付金等の日額以下の場合は雇用調整手当を支給せず、上回る場合は、その差額の雇用調整手当を支給するものとすること
等であります。
 本案は、三月十四日付託となり、四月十日の委員会において質疑を終了し、本日採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 なお、本案に対し、附帯決議を付することに決しました。
 次に、国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法及び特定不況業種離職者臨時措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本案は、漁業離職者及び特定不況業種離職者の発生が今後においても引き続き予想される状況にかんがみ、国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法及び特定不況業種離職者臨時措置法の有効期限を、それぞれ昭和五十八年六月三十日まで延長するものであります。
 本案は、三月二十日に付託となり、本日の委員会において質疑を終了し、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#29
○議長(灘尾弘吉君) 両案を一括して採決いたします。
 両案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#30
○議長(灘尾弘吉君) 御異議なしと認めます。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
#31
○議長(灘尾弘吉君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後二時一分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        労 働 大 臣 栗原 祐幸君
        国 務 大 臣 小坂徳三郎君
        国 務 大 臣 三原 朝雄君
ソース: 国立国会図書館
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