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1978/04/27 第87回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第087回国会 本会議 第22号
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1978/04/27 第87回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第087回国会 本会議 第22号

#1
第087回国会 本会議 第22号
昭和五十四年四月二十七日(金曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第二十号
  昭和五十四年四月二十七日
    午後一時開議
 第一 地方交付税法の一部を改正する法律案
    (内閣提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議員請暇の件
 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す
  る法律案(内閣提出、参議院回付)
 昭和五十四年度の公債の発行の特例に関する法
  律案(内閣提出、参議院回付)
 日程第一 地方交付税法の一部を改正する法律
  案(内閣提出)
 健康保険法等の一部を改正する法律案(第八十
  四回国会、内閣提出)の趣旨説明及び質疑
    午後一時三十四分開議
#2
○議長(灘尾弘吉君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 議員請暇の件
#3
○議長(灘尾弘吉君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。
 新村勝雄君から、海外旅行のため、四月二十八日から五月十二日まで十五日間、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(灘尾弘吉君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
#5
○議長(灘尾弘吉君) お諮りいたします。
 参議院から、内閣提出、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案及び昭和五十四年度の公債の発行の特例に関する法律案が回付されました。この際、議事日程に追加して、右両回付案を順次議題とするに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(灘尾弘吉君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
    ―――――――――――――
 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正
  する法律案(内閣提出、参議院回付)
#7
○議長(灘尾弘吉君) まず、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案の参議院回付案を議題といたします。
    ―――――――――――――
 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す
  る法律案の参議院回付案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
#8
○議長(灘尾弘吉君) 採決いたします。
 本案の参議院の修正に同意するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#9
○議長(灘尾弘吉君) 御異議なしと認めます。よって、参議院の修正に同意するに決しました。
    ―――――――――――――
 昭和五十四年度の公債の発行の特例に関する
  法律案(内閣提出、参議院回付)
#10
○議長(灘尾弘吉君) 次に、昭和五十四年度の公債の発行の特例に関する法律案の参議院回付案を議題といたします。
    ―――――――――――――
 昭和五十四年度の公債の発行の特例に関する法
  律案の参議院回付案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
#11
○議長(灘尾弘吉君) 採決いたします。
 本案の参議院の修正に同意の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#12
○議長(灘尾弘吉君) 起立多数。よって、参議院の修正に同意するに決しました。
     ――――◇―――――
 日程第一 地方交付税法の一部を改正する法
  律案(内閣提出)
#13
○議長(灘尾弘吉君) 日程第一、地方交付税法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。地方行政委員長松野幸泰君。
    ―――――――――――――
 地方交付税法の一部を改正する法律案及び同報
  告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔松野幸泰君登壇〕
#14
○松野幸泰君 ただいま議題となりました地方交付税法の一部を改正する法律案につきまして、地方行政委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、地方財政の状況にかんがみ、
 第一に、昭和五十四年度分の地方交付税の総額については、現行の法定額に、一般会計から交付税及び譲与税配付金特別会計に繰り入れる臨時地方特例交付金及び同特別会計における借入金を加算した額とするとともに、後年度における地方交付税の総額の確保に資するため、昭和五十四年度における借入純増加額の二分の一に相当する額を、昭和六十年度から昭和六十九年度までの各年度において、臨時地方特例交付金として一般会計から同特別会計に繰り入れようとするものであります。
 第二に、昭和五十四年度の普通交付税の算定方法については、社会福祉施策の充実、教育水準の向上、住民生活に直結する公共施設の計画的な整備及び維持管理等に要する経費、過疎過密対策、消防救急対策、地方税減収補てん債及び財源対策債等の元利償還金等に要する経費の財源の確保を図るため、関係費目の単位費用を改定するほか、地方道路譲与税、自動車取得税交付金等の基準税額等の算定基礎を前年度の譲与額または交付額としようとするものであります。
 本案は、二月二十七日当委員会に付託され、三月二十二日澁谷自治大臣から提案理由の説明を聴取し、四月十日には参考人の意見を聴取するなど、本案はもとより、地方財政全般にわたって熱心に審査を行いました。
 昨二十六日本案に対する質疑を終了しましたところ、日本社会党、公明党・国民会議、民社党及び日本共産党・革新共同の四党共同提案により、地方交付税率の引き上げ、臨時地方特例交付金の増額等を内容とする修正案が提出され、佐藤敬治君からその趣旨説明を聴取いたしました。
 次いで、討論を行いましたところ、自由民主党を代表して染谷誠君は、本案に賛成、修正案に反対、日本社会党を代表して新村勝雄君、公明党・国民会議を代表して和田一郎君、民社党を代表して西村章三君及び日本共産党・革新共同を代表して三谷秀治君は、それぞれ本案に反対、修正案に賛成、新自由クラブを代表して加地和君は、本案に賛成、修正案に反対の意見を述べられました。
 討論を終わり、採決を行いましたところ、修正案は賛成少数をもって否決され、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#15
○議長(灘尾弘吉君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#16
○議長(灘尾弘吉君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。(拍手)
     ――――◇―――――
  健康保険法等の一部を改正する法律案(第八
   十四回国会、内閣提出)の趣旨説明
#17
○議長(灘尾弘吉君) この際、第八十四回国会、内閣提出、健康保険法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生大臣橋本龍太郎君。
    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕
#18
○国務大臣(橋本龍太郎君) ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 医療保険制度の基本的改革は、かねてから重要な課題となっているところでありますが、医療保険をめぐる諸情勢は近年厳しさを加えております。かつてのような高度経済成長が期待できない情勢のもとにおいては、人口構成の老齢化や医療の高度化等により、医療費の伸びが賃金の伸びを大幅に上回る状況が続くものと考えられます。また、医療費問題のみならず、救急医療などの医療体制の整備、老人医療の確保、医薬品副作用被害の救済など、早急に解決を図るべき諸問題が山積しており、一昨年の健康保険改正法案の国会審議の際、これらの諸課題の解決に取り組むことをお約束いたした次第であります。
 したがいまして、医療保険制度の基本的改革に当たりましては、医療保険制度のみにとどまらず、医療制度、薬事制度、健康管理対策など、関連各分野においても逐次改善を図ってまいる考えでありますが、今回は、今後に予測される社会経済情勢に即応して医療保険制度の健全な発展とその合理化を図るため、その第一段階として、健康保険制度と船員保険制度について必要な改正を行おうとするものであります。
 今回の改正に当たりましては、給付の平等、負担の公平、物と技術との分離、家計の高額な負担の解消、医療費審査の改善の五原則を柱とし、これらの基本的考え方を盛り込んで改正法案を策定した次第であります。
 以下、この法律案の内容について概略を御説明申し上げます。
 まず、健康保険法の改正について申し上げます。
 第一は、医療給付に関する改正でありますが、被保険者と被扶養者との医療給付の格差を是正し、同一水準の給付を確保することを基本とし、このため患者負担を適正なものとするとともに、高額療養費の支給等により、真に医療費負担による家計の破綻を防止しようとするものであります。
 患者負担につきましては、初診時の負担を千円とし、投薬、注射に係る薬剤または歯科材料に要する費用の二分の一を新たに負担願うことといたしております。ただし、高価かつ長期間連続して投与される薬剤や、検査、麻酔に使用される薬剤は、負担の対象としないこととしております。さらに、入院の場合には一日につき給食料に相当する額を負担していただくこととしております。
 これらの患者負担の額が著しく高額となったときは、高額療養費を支給することとしており、患者負担の限度額は、現行被扶養者に対する高額療養費制度では月額三万九千円となっておりますが、今回はその約半分の月額二万円程度にする予定であります。
 また、療養費の支給要件を緩和し、保険医療機関または保険薬局以外の医療機関等で療養を受けた場合であってもやむを得ない場合には、療養費を支給することとしております。
 第二は、分娩費等の給付に関する改正でありますが、分娩費等の最低保障額や配偶者分娩費等の額を実情に即して改定できるものとするため、政令で定めることといたしております。
 第三は、保険料に関する改正でありますが、保険料負担の公平を図るため、賞与等についても保険料を徴収することとし、賞与等の支払いを受けた月においては、その月の保険料額は、標準報酬月額と賞与等の額を合算した額に保険料率を乗じて算定することとしております。
 なお、保険料徴収の対象となる賞与等の額は、その月に受ける賞与等の額につき、各被保険者の標準報酬月額の二倍に相当する額を限度とすることとしております。
 次に、給与の実態に即して標準報酬等級の上限を調整できることとするため、上限に該当する被保険者の割合が百分の三を超えた場合には、社会保険審議会の意見を聞いて政令をもって上限を改定できることとしております。
 また、政府管掌健康保険の保険料率は、厚生大臣が社会保険審議会の議を経て千分の八十を超えない範囲内において定めることができることとしております。健康保険組合の保険料率も同じく千分の八十を超えない範囲内において決定するものといたしております。
 第四は、国庫補助に関する改正でありますが、政府管掌健康保険についての保険料率の調整に連動した国庫補助率の調整規定を廃止し、国庫補助率は、主要な保険給付に要する費用の現行の千分の百六十四から千分の二百の範囲内において政令で定めることといたしております。
 第五は、財政調整についてであります。今後、全被用者医療保険間において財政調整措置を講ずることとしておりますが、その措置が講ぜられるまでの間、健康保険組合間の財政を調整するため、健康保険組合連合会は、政令の定めるところにより、健康保険組合からの拠出をもって一定の健康保険組合に対し交付金の交付事業を行うこととするものであります。
 第六は、保険医療機関等の登録、指定等に関する改正でありますが、個人開業医については、保険医の登録があった場合、保険医療機関の指定があったものとみなすものとして手続の簡素化を図る規定、保険医療機関等の指定を拒否できる事由を法定する規定、未払いの一部負担金について、保険者が保険医療機関等の請求により徴収処分をすることができるものとする規定を設けることとしております。
 その他、給付の平等を図る見地から健康保険組合の付加給付を規制する規定を設けるほか、海外にある被保険者等に対する保険給付の実施と保険料の徴収を行うための規定、その他の規定の整備を行うこととしております。次に、船員保険法の改正について申し上げます。
 船員保険の疾病部門につきましても、医療給付、分娩費等の給付などについて、さきに述べました健康保険の改正に準じて所要の改正を行うものであります。
 次に、社会保険診療報酬支払基金法の改正について申し上げます。
 社会保険診療報酬支払基金における審査について、再審査に関する規定を整備するものであります。
 なお、この法律の実施時期につきましては、公布の日から起算して一年を超えない範囲において政令で定める日から施行することとしております。
 以上が健康保険法等の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 健康保険法等の一部を改正する法律案(第八
  十四回国会、内閣提出)の趣旨説明に対す
  る質疑
#19
○議長(灘尾弘吉君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。村山富市君。
    〔村山富市君登壇〕
#20
○村山富市君 日本の医療が、国民や患者から見て、ますます荒廃と混迷を深めている中でだれも責任を持つ者がいない。
 私は、日本社会党を代表して、ただいま趣旨説明のありました健康保険法の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)
 医療の荒廃が叫ばれ、医療保険の抜本改正が唱えられてからすでに二十五年近く経過しています。しかし、医療保険の矛盾は激化するばかりであります。すなわち、一方で国民医療費は、国民所得の伸び率をはるかに超えて大幅な膨張をし続けて、国民の負担は年々加重されつつあるのに対し、他方、薬づけ医療、検査づけ医療が端的に物語っているように、質的には低下しています。その上に、差額ベッド等保険外負担も重く国民の肩にのしかかっているのであります。このような状況のもとに提案されたのがこの改正案であります。
 まず、私は、この法案をめぐる政府・与党の無責任な実態を明らかにし、総理の見解を承りたいと存じます。(拍手)
 この健康保険改正案は、昨年の第八十四通常国会の会期延長ぎりぎりの五月二十六日提案されたのでありますが、第八十五、第八十六国会と、いずれも一度の審議もされないまま、一年近くもたなざらしにされてきたのであります。それは、国会に提出は認めるが、自民党としてその内容は承認したものではないという、政党政治の常識では考えられない無責任なものであります。(拍手)
 その上、昨年十二月二十二日、自民党は医師優遇税制の手直し案を日本医師会に持参したとき、日本医師会会長より武見メモが示されたのであります。すなわち、健康保険組合を労使から保険料を徴収する機関とし、支払いは支払基金を通じて行うというものであります。齋藤自民党幹事長はこの武見メモにこたえて、十二月二十五日、医療政策の基本方針を提出、すなわち、医療の抜本改革はさしあたり政管健保と組合健保との負担、給付の不公平是正を行うというものであります。
 議院内閣制のもとで、政府は、与党の内容の承認されない改正案を国会に提出し、与党である自民党は、保険制度の根幹に触れる異質の赤字対策案を日本医師会に約束するという、全く国会と国民を無視した態度をとり続けてきたのであります。(拍手)一体、医療はだれのものなのか。
 大平総理、このような無責任な法案をわれわれは責任を持って審議することはできません。(拍手)自民党の総裁であり、内閣総理大臣であるあなたの明快な見解を承りたいと存じます。(拍手)
 次に、荒廃した日本の医療の現状について、その幾つかの問題点を指摘し、見解を承りたいと存じます。
 まず、薬づけ医療の解消についてであります。
 現在、国民の負担する医療費は、昭和五十三年十兆四千億円、五十四年十一兆六千億円、五十八年には二十兆三千億円に達すると言われているのであります。本年の国民一人当たり医療費は実に十一万円に達するのであります。しかも、その総医療費のうち約四〇%近くが、世界に類例のない、薬剤費で占められているのであります。
 巨額に上る薬剤費のうちには少なからぬ浪費が含まれていることは、いまや世間の常識であります。その原因は、投薬が、薬価基準と購入価格との差額による利ざやがあるからであります。たとえば、ある抗生物質の薬価基準は二百九十四円であるのに、医師の購入する値段は三十円という安値であると言われています。しかも、悲惨なスモン患者に見るまでもなく、薬害列島日本の汚名を受け、今国会に薬害被害者救済基金法案を提出しなければならないほど、薬害は広がろうとしているのであります。薬づけ医療の解消は当面の緊急な課題であります。
 政府が、改正案の中で薬剤費二分の一患者負担を導入しようとしているのも、薬剤費の削減をねらっているのかもしれませんが、それは、薬剤浪費の原因が一部患者の側にあるとしても、患者の責任と負担にのみ転嫁しようとするもので、これだけで解決しようとする考え方は筋違いの方策と言わなければなりません。(拍手)
 政府は薬づけ医療の実態についてどのような認識を持っておられるのか、また、これが改善についてどのような方策を持っておられるのか、承りたいと存じます。
 また、そのための一つの方策として、医薬分業について今後積極的に推進する意思があるのかどうか、承りたいと存じます。
 医師と薬剤師の機能を分化して、薬の管理、投与等についてのチェック機能を強化することは、安全性を高める意味で必要なことであります。また、薬づけ、検査づけなど、医療費浪費の原因が点数出来高払い制に起因すると言われております。悪貨が良貨を駆逐するような現行の制度は何らかの改善が必要であります。これらの問題について、政府の見解を承りたいと存じます。
 次に、老人医療の問題について承りたい。
 老人医療の問題は、もはや放置することは許されません。政府は、昨年の十月、老人医療についての方針を出すということを国会と国民に約束してきたのでありますが、その後どうなっているのか。
 老齢被保険者が他の制度の二倍を超える国民健康保険では、その財政的困難は一段と深刻であります。さらに、急激な老齢化につれて、老人医療費が増大することは自明の理であります。
 わが党は、老人医療の無料化は堅持しながら、老人保健は別建てとして、健康増進からリハビリテーションまで、給付と施設を総合的に確立する、特に老人の健康管理については、開業医登録制、固定俸給制の導入など、思い切った改革案を主張しているのでありますが、老人医療保健制度の創設は、各種の保険財政から考えても最も優先して取り組まなければならないものであると考えるのでありますが、老人医療をどうする考えでいるのか、承りたいと存じます。(拍手)
 次に、健康保険法の改正案について若干承りたいと存じます。
 政府は、改正案策定の前提として、物と技術の分離、負担の公平、給付の平等、審査機能の確立など五原則を掲げて改正案を策定したと説明しています。しかし、改正案の内容は、現行の本人、家族を含めて八八%の給付水準が八三%以下に引き下げられるものでありまして、保険料の増額と保険給付費の削減によって収支の均衡を図ろうとするものであります。それは高負担低福祉を最も露骨に企図したものであると言わなければなりません。
 政府は、今回の改正による昭和五十四年から昭和五十五年にわたる政管健保の財政見込みを発表しておりますが、医療制度と医療保険制度の構造的欠陥にメスを入れない限り、二年もたたずして早晩赤字の繰り返しになることは明らかだと思うのでありますが、見通しを明確にしていただきたいと存じます。
 さらに、医療費給付の条件を、本人、家族ともに同率にすることはむしろ当然なことでありますが、国民健康保険の現行の本人、家族七割給付について、給付費を平等にするというたてまえからすれば、何らかの改善が必要であると思うが、今後の方針について承りたいと存じます。
 さらに、差額ベッドや付添看護料の解消について具体的に承りたい。
 これらの保険外負担の解消についてはたびたび指摘されてきたととろでありますが、一向に改善の兆しは見えません。健康保険に加入すれば十割の給付が保障されるという公的な契約に基づいて加入している被保険者からすれば、保険外負担を取られるということは詐欺的行為であると言わなければなりません。特に、基準看護病院においては付添看護料は取ってはならないことになっているのであります。
 保険外負担の解消について、その見解と対策を承りたいと存じます。
 次に、財政調整の問題について承りたい。
 健康保険の財政調整は、当面、組合健保間の財政調整を行うというものでありますが、一方で、すべての被用者医療保険制度を通じて財政調整をしようとする動きもあります。組合健保の持っている診療報酬支払いのチェック機能や健康管理など、組合管理の持つメリットや、みずからの経営努力によって給付の改善を図ろうと努めているその歴史と現状を無視して、負担と給付の公平、平等を名目に、健保組合をして単に保険料の徴収機関にするとか、単なる赤字解消の財政対策としてしか考えられないような財政調整については、断じて承服できないものであります。
 現在、政管健保に対して一六・四%、国保に対して四〇%プラス五%の調整機能を加味した国の補助が出されております。各種保険制度間の財政調整を行うことは、制度そのもののあり方を根本的に崩すことになるのでありまして、むしろ組合主義を積極的に推進し、政管健保も組合方式に改編をして、自主的なチェック機能を生かし、医療費のむだを排除することこそ必要だと思うのであります。
 財政調整について、自民党はこれらの実情を無視をして、医師会との約束に基づき今国会に提出する準備を進めているやに聞くのでありますが、大平総理、総理・総裁としてのあなたの見解を明確にしていただきたいと存じます。(拍手)同時に、所管大臣である厚生大臣にも、この問題についての見解を承っておきたいと存じます。
 最後に、総理にお尋ねをしたい。
 重ねて申し上げますが、医療制度の抜本的改革なくして医療保険の健全化はありません。保険制度は、形の上では国民皆保険として社会化されているのでありますが、これに対する医療供給体制は、自由開業医制を主体として全く野放しの状態にあるのであります。したがって、重複診療、薬剤の重複投与、医療機関の無秩序な重複投資が行われているのが現状であります。その上、保険あって医療なし、三時間待って三分診療、僻地や都市における休日夜間の無医地区化、救急医療に対する不安など、一刻も放置できない問題ばかりであります。いつでも、どこでも、だれでも安心して医療を受けられるよう制度を保障する、このことは当然の責任であり、今日の医療改革に対する国民的要請でもあります。
 総理は、これからの日本の医療の総合的な改革についていかなる方策を持っておられるのか、国民のための医療のあるべき姿についてどのように考えておられるのか、承りたいと存じます。
 以上、幾つかの問題点について質問を行いましたが、責任ある明確な答弁を期待するとともに、冒頭に申し上げましたように、この改正案をめぐる政府与党の無責任な言動から考えても、この際、この改正案はむしろ撤回すべきであるという見解を付言をいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣大平正芳君登壇〕
#21
○内閣総理大臣(大平正芳君) 政府といたしましては、今回の健康保険法等の一部改正案について、できるだけ早く国会で御審議をいただくようお願いしてきたところでございます。
 政管健保と組合健保の財政調整は、保険者間の財政力の格差の是正、負担の公平という見地から必要であると考えております。
 齋藤自民党幹事長と武見日本医師会会長との間の合意事項のうち、政管健保と組合健保との間の財政調整の問題につきましては自由民主党医療基本問題調査会正副会長会議におきまして、今後の取り扱いも含め、目下鋭意検討が進められておりまして、近く成案が得られるように聞いております。したがいまして、現在の段階で、いつ国会に提出できるかということを申し上げられる時期にはまだ至っておりません。
 総合的な医療改革についての私の考え方についてのお尋ねでございました。
 医療保険制度の改革につきましては、一昨年十一月にお示しをいたしました十四項目にわたります基本的考え方に従いまして、段階的に進めていくことにいたしております。
 医療供給体制の整備につきましては、従来より、医学の進歩、疾病構造の変化に対応いたしまして、医療施設の整備、医療関係者の養成確保の両面から、総合的に各種の施策の充実に努めております。特に、救急医療、僻地医療など、重要性の高い分野には、今後とも重点的に取り組んでまいる所存でございます。
    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕
#22
○国務大臣(橋本龍太郎君) 村山議員の御質問にお答えを申し上げます。
 最初に、現在趣旨説明を終わりました政府の提出いたしました健康保険法案を撤回しろというお話でありますが、私どもは撤回をいたす意思はございません。一昨年の十一月、国会に御提示をいたしました十四項目の医療保険制度の改正の方向に基づき、その第一着手として、私どもとしては最善を尽くした案のつもりでありますので、今後、国会における御審議の中において、さらに国民的なコンセンサスを得られる御意見をちょうだいをいたしたい、そのように存じます。
 いま各分野から御質問をいただきました部分についてお答えを申し上げますが、まず第一点の御指摘は、薬づけの医療の実態をどう認識し、その解決を図るかという御指摘でありました。
 確かに、わが国の医療保険制度におきましては、いわゆる薬づけ医療等の薬剤をめぐる問題が指摘をされておりまして、増高する医療費の負担とともに、その解決が緊要な課題であることは私どもも認識をいたしております。
 そこで、政府といたしましては、一昨年十一月にお示しをした、医療制度、医薬制度を含めた十四項目にわたる基本的改革の方向に基づき、制度の改革を進めてまいりたいと考えておるわけでありまして、また、保険診療の適正化の観点から、薬価基準の適正化、指導監査の推進等を図っていく以外に、改正法案におきましても、薬剤の患者負担の導入をし、給付の面から薬剤問題の改善をしようとしております。
 私どもは、医薬分業につきましても、当然これが必要なことであることを認識をいたしております。医薬分業が進みますためには、まず第一に関係者間の積極的な話し合いが行われることが必要でありますが、国としても、これを推進するため、薬剤師に対する調剤研修、医薬分業の意義についての国民に対する普及、啓蒙を行ってまいりました。今年におきましても、処方せん受け入れ体制をより充実させるための調剤センター等の設備補助を行うなど、今後も一層推進を図っていこうといたしております。
 また、出来高払いの御質問があったわけでありますが、確かに、診療報酬の支払い方式には、団体請負方式でありますとかあるいは人頭登録方式等がございます。これらはそれぞれ一長一短を持っておりますが、現行の出来高払い方式が、他の方式に比べれば、私どもは現在の日本の現状に合致をするものと考えております。しかし、種々問題があるという御指摘もありますので、今後の研究課題とさせていただきたいと思います。
 また、老人医療につきましても御指摘をいただいたところであります。
 老人保健医療問題懇談会からの意見書に示された考え方を基調とし、現在総合的な対策を確立すべく具体案を検討中でありますが、本格的な高齢化社会を迎えるに当たっての慎重な検討を要することと、多数にわたる関係団体との調整を要する部分等が多岐にわたっていることなどの理由から、現在まで成案を得るに至っておりません。この点はおわびを申し上げます。今後各方面とも鋭意調整の上具体案を取りまとめ、できるだけ早い機会に実施をいたせるよう努力をいたしてまいります。
 また、今回の改正案によって政管健保の財政が果たして立ち直るのかという御指摘をいただきました。
 今回の健康保険法の改正案が成立をいたしました場合、五十四年度及び五十五年度の二カ年間におきまして四十九年度以降の累積収支不足を解消いたしまして、五十五年度末には政府管掌健康保険の財政収支の均衡が図られる見通しでございます。なお、この改正案におきまして、私どもは、おおむね五年程度の財政の安定が図れるものと考えております。
 また、給付を平等にするという観点から国保の問題の御指摘がございました。
 私どもは、国民健康保険制度の改正につきましては、現在御審議をいただこうとしております健康保険法の改正に引き続き実現をいたすべく、現在、老人保健医療制度のあり方と並行して検討を進めている最中でございます。
 また、保険外負担の解消をどう図るつもりかという御指摘をいただきましたが、これにつきましては、昨年二月の診療報酬改定の際に、部屋代及び看護料等の入院料関係につきまして約二〇%の引き上げを行いましたことは御承知のとおりでありますが、これとともに基準看護の二類特別加算を新設するなど、この問題の解決のための条件整備を図ってまいっております。
 また、その際に、保険局長通知をもちまして、その適正化について指導の徹底を図るよう指示してまいりました。その結果、この一年間で私どもはある程度改善の実は進んでおると考えておりますが、今後とも改善に向けて努力してまいりたいと存じます。
 また、政府管掌健康保険はむしろ改編して、組合方式を積極的に推進すべきではないかという御指摘がございましたが、これは私どもとしてはにわかに賛成はいたしがたい御提案でございます。確かに、組合方式には小集団であることからの効率的な事業運営といったメリットがございます。しかし、同時に、危険分散の点で非常に不安定な面もあるととは御承知のとおりでありまして、それが現在の組合管掌健康保険内部における財政調整を必要とする要因であることも御承知のとおりであります。ですから、私どもは、政府管掌健康保険を改編して、仮に組合方式をとるといたしましても、その方法等については非常に慎重な考慮を必要とすることであると考えております。医療保険を効果的また安定的に運営していく土での一つの大きな課題でありますので、十分今後私どもも検討させていただきたいと存じます。
 また、先ほど、齋藤幹事長と日本医師会会長との約束に基づく財政調整法L案を用意していると聞くが、それについての意見というお尋ねがございましたが、総理がお答えを申し上げたのと同等でございます(拍手)
    ―――――――――――――
#23
○議長(灘尾弘吉君) 平石磨作太郎君。
    〔平石磨作太郎君登壇〕
#24
○平石磨作太郎君 私は、公明党・国民会議を代表し、ただいま趣旨説明のありました健康保険法等の一部を改正する法律案について、総理並びに関係閣僚に対し若干の質疑を行うものでございます。
 わが国は、昭和七十年には老人人口が一五%台に達すると言われ、高齢化社会に入るわけであります。これに伴って医療需要が増大し、加えて高度な医療技術の導入など医療費の自然増等、国民医療費の急速なふくらみが予測されているところであります。当然、医療の費用負担と給付水準をどのように設定するか、また、医療保険の効率的運営と負担の公平、給付の平等をいかに確立するかということが、単に現在の問題にとどまらず、むしろ将来の課題としてきわめて重要であります。
 私は、医療の抜本改革が言われて久しくなりますが、本案が、国民の生命の安全と健康の維持増進にどれだけ寄与し得るのか、問題点を明らかにしつつ、政府の見解を承ってまいりたいと考えます。
    〔議長退席、副議長着席〕
 まず、大平総理にお伺いいたします。
 与党である自民党の医療基本問題調査会が、財政調整法案を今国会に議員提案すべく準備中と聞くが、政府の健保法案との関連についてどのようにお考えか承りたいのであります。
 また、健保法案の提案以来、自民党内には丸茂案、橋本案、田中案など数々の発表がなされております。このような私案が出されていることは、いわば本法案が与党から信任されていないということを示すものであり、まさに国会を軽視し、国民を愚弄していると言わなくてはなりません。(拍手)すなわち、本法案について、政府も与党も本気でないのではないかと大きな疑念をもたざるを得ないのであります。
 総理、あなたも本法案について真剣に成立を望んでいないのではありませんか。これら与党案と政府案との関係において、本改正案は撤回すべきものと断ぜざるを得ない。総理の見解を承りたいのであります。
 次に、厚生大臣にお伺いいたします。
 厚生省は、昨年、国民医療費の将来推計を発表し、五年後に国民医療費が二十兆円に達すると言われている。しかも、これは国民が負担しなければならない。負担し切れるかどうかという問題が差し迫っております。
 適正医療を確保し、国民が安定的に医療費負担を行うためには、疾病を担保とする医療費負担だけでなく、積極的に予防、医学的な健康管理やリハビリテーション等の推進を図り、診療報酬支払い審査機能の強化改善等、国民、患者への負担増を願う以上、医療行政を掛当する大臣は、当然これらの措置、対策を一方において整備すべきと考えるものであります。
 このような措置がないまま、財源対策を中心とした患者負担の増大につながる今回の改正案は、とうてい理解できません。厚生大臣の所見を伺うものであります。
 次に、私は、抜本改正を行う場合、医療供給体制の改革を並行して行わなければならないと考えるものであります。
 すなわち、保険と医療とは医療保障を支える車の両輪であり、密接不可分であります。これが適切に連動していないところに今日の医療の混乱があると考えるものであります。政府が、一昨年、参議院社労委員会に対し、十四項目にわたり「医療保険制度改革の基本的考え方について」を示していることは承知しています。医療供給体制の整備について五十三年度から逐次実施されていることになっているが、具体的にどのように対応されたのか、また、今後のスケジュールについて説明をいただきたいのであります。
 次に、医療の危機あるいは荒廃ということが国民から指摘されているが、厚生大臣は、医療の危機についてどのように認識されておられるか。すなわち、財政的視点からか、あるいは医療の質、供給体制の不備等に置かれているのか、お伺いをいたしたい。
 さらに、医療の荒廃ということについて、その状況は複雑であり、原因もまた数々あると思われるが、私は、低医療費だから医療が荒廃しているとは言い切れないと考えるものであります。つまり、医療資源の効率的配分を適正に行うべきだと考えるものでありますが、大臣はどのように考えておられるか、承りたいのであります。
 次に、本案の内容についてお伺いいたします。
 第一に、家族給付等を被保険者本人と同水準にまで引き上げたことは、これまで社会保障のたてまえから言って問題とされてきた経緯からも一応評価できるが、その代償として患者の医療費負担−が増大する点については納得しがたいのであります。
 特に、入院時患者負担が二百円から一気に千円へと五倍にもはね上がったことは、入院患者にとっては多大な経済的圧迫となり、身体の疾患に加えてさらに精神的負担もまた少なくないと思われるのであります。特に長期入院治療を要する政管健保、国保、生保世帯等の患者にとってはきわめて大きな負担増になるのであります。軽症に厚く、重症に薄い医療のあり方は社会保障のたてまえにそぐわないと考えられるが、見解を承りたいと存じます。
 また、年金生活者など低所得世帯の人々にとっては、初診料が千円にもなることは、非常に高い負担率となり、受診抑制につながることは明らかであります。何らかの支払い免除の措置等を講ずるというきめ細かな対策が必要であると思うのでありますが、あわせて答弁をいただきたいのであります。
 第二には、薬剤費、歯科材料費の半額が患者負担になるということであります。
 わが国の薬剤費の医療費に占める割合が異常に高いことについては、予算委員会においてわが党の矢野書記長が指摘したとおりであります。本改正案によって、薬剤の大量投与や副作用問題がある程度解消されることは評価できますが、この結果、必要な投薬や受診を抑制されるという大きな危惧があるのであります。すなわち、一部償還制でありますから、一時的にせよ患者が現金を窓口で用意しなければならず、直ちに現金の支払いが困難な階層の人々に対する配慮が欠けていると思うが、この点について大臣の見解を承りたいのであります。
 また、これは単に低所得者だけの問題ではなく、一般国民にとっても深刻な負担となるのであります。さらに、医療機関においてもこれらの事務量は大幅にふえ、患者とのトラブルも予想され、単に保険だけの問題にはとどまらないと思うのであります。この点、政府はいかように対処されるのか、明確にしていただきたいのであります。
 第三には、高額療養費の限度額を二万円にするということでありますが、その根拠について明らかにしていただきたいのであります。
 聞くところによれば、家計負担の能力により算定したとのことでありますが、かつての薬剤の一部負担の際は、標準報酬によって負担額を算定しました。本案では家計負担能力ということでありますが、もしそうであるならば、家計の中で二万円というのは、五人世帯の平均所得十八万二百七十円という現状ではきわめて高いと思われますが、どういうお考えなのか、明らかにしていただきたいのであります。
 第四に、改正案には明らかではないが、いま国民が最も困惑しているのは差額ベッド料、付添看護料などの保険外負担であります。このために療養の中断とか家庭生活破壊の例が多いのであります。
 政府の保険制度改革の基本的な考え方では、次期診療報酬の改定時から順次実施すると言うが、診療報酬改定の時期をいつごろと考えておられるか、また、診療報酬の改定で保険外負担は完全に解消できるのか、あるいは診療報酬改定以外に解消の道はないのか、お伺いしたいのであります。
 第五に、保険料徴収の算定基礎である標準報酬に賞与を含めることとしていますが、この措置によっても特段の給付改善が示されていないということであります。
 すなわち、総報酬制をとるということであるならば、保険料率を思い切って引き下げ、被保険者の負担を軽減する措置が必要と考えるのであります。何ゆえに諮問案より大幅に後退したのか、その理由をお伺いするものであります。
 最後に、高齢化社会の必然的到来に対処するため、医療資源の効率的配分と医療保険の再編成は必至であり、福祉充実とあわせて、これは国民の大多数の声であります。
 現在の分立している各制度を、わが党は、地域保険、職域保険及び老人医療保険の三制度に統合整理することを主張するものでありますが、厚生大臣はどのような見解をお持ちか、お伺いいたします。
 特に国保制度の財政事情はきわめて逼迫しており、その意味からも老人医療制度の創設は急務であります。国保制度の改善、老人保健制度の創設についてどういう展望をお持ちか、あわせて答弁を求めるものであります。
 以上、数点にわたりお尋ねいたしましたが、当初に申し上げたとおり、本法案については、与党である自民党ですら異論のある法案であるだけでなく、国民の期待に全く反する内容であり、わが党は、本法案について容認することはできないのであります。よって、撤回を要求するものであります。
 総理並びに厚生大臣の誠意ある答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣大平正芳君登壇〕
#25
○内閣総理大臣(大平正芳君) 被用者保険制度間の財政調整の問題につきましては、現在、自由民主党の医療基本問題調査会におきまして鋭意検討が進められておりまして、先ほど申し上げましたように、近く成案が得られるように聞いております。御指摘の、固有名詞を冠した案がたくさんあると言われておりますけれども、これは、自由民主党の基本問題調査会の小委員会における検討の過程におきまして、議論を進めるための素材として示されたものであると承知しております。したがって、そのままが基本問題調査会の案であるとは考えておりません。
 なお、政府提案の健康保険法等の一部改正案におきましては、将来、全被用者医療保険間におきまして財政調整を行うことを予定いたしまして、その措置が講ぜられるまでの間、健康保険組合間の財政調整を行うということにいたしておるところでございます。したがいまして、同法案と自民党において検討されておる財政調整法案とは、方向として同一でありまして、考え方として矛盾するものではございません。したがって、ただいま提案中の法案の御審議を急ぎお願い申し上げる次第でございます。
    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕
#26
○国務大臣(橋本龍太郎君) 平石議員にお答え申し上げます。
 最後に強調されましたが、先ほど村山議員にもお答えをいたしましたとおり、私どもは撤回をする意思はございません。むしろ、この審議を通じて、より国民のコンセンサスの得られる方向を模索していきたいと考えております。
 非常に具体的な各項目にわたりましての御質問があったわけでありますが、私どもといたしましては、これは単なる財政対策法案だとは考えておりません。と申しますのは、医療保険制度につきまして保険財政の長期的な安定を図ることはもとより当然でありますけれども、今回の健康保険法の一部改正案の中には、給付の平等、負担の公平、高額な家計負担の解消等を主たる目的としているものがあるわけでありまして、単なる政管健保の財政対策立法だとは私どもは考えておらないのであります。
 健康管理等の施策の推進につきましては、確かに御指摘のように、予防医学的な健康管理やあるいはリハビリテーションあるいはその他の分野を通じて、積極的な健康増進を図るための生涯にわたる健康づくり対策というものが必要なことは間違いありませんし、現在も推進しているところでございます。
 また、支払基金における審査につきましては、五十四年度予算におきまして審査委員及び専任審査委員を増員し、今回の健保法改正案の中におきましても、再審査に関する規定の整備等を図って審査の改善に努めているところでございます。
 医療供給体制につきましては、従来からも、医学の進歩、疾病構造の変化等に対応しながら各種の施策の充実に努めてきたところであります。特に緊急性の高い救急医療対策及び僻地医療対策の推進、また、がん、循環器疾患などについての専門的医療施設の整備、医師、看護婦等の医療関係者の養成確保及び資質の向上に、今後とも重点的に取り組んでまいりたいと考えております。
 また、医療の危機、荒廃という現状において、一体医療資源の効率的配分をどうやっていくのか、適正に行う必要があるがという御指摘はそのとおりでありまして、これが重要であることは間違いありません。そのため、従来から、救急医療対策や僻地医療対策の推進、また、がん、循環器疾患などの専門的医療施設の体系的整備といった、より緊急性の高い諸施策に重点を置いて取り組んでおるところでございます。すべての国民がひとしく適切な医療を享受できるよう、従来からこの地域的な偏在の是正に努めてきたところでありますが、ややもすると、医師あるいは看護婦等のマンパワーの偏在が指摘をされてまいりました。私どもといたしましては、それが特に著しい僻地につきまして、僻地中核病院の整備を初めとする所要の諸施策を重点的に講じたところでありまして、今後とも国民医療の確保については一層の努力をしてまいりたいと考えております。
 また、入院時一部負担についての御指摘がございました。
 今回の改正案におきましては、手術などの技術料は全額保険給付といたします。また、薬剤につきましても、手術、検査、麻酔、輸血等に使用される薬剤及び高価でありかつ長期間連続して投与されるような薬剤は、一部負担の対象とはいたしません。また、高額療養費を支給することによって、患者の自己負担限度額は一カ月二万円でございます。
 こうした措置によりまして、重症で高額の費用がかかる患者の負担は相対的に減少し、給付率は上がることになっておるわけでありまして、そうした観点から私どもはこの水準を設定した次第でございます。
 初診時一部負担金の具体的な額は、診療報酬の初診料等の額を考慮しながら、全体の給付率との兼ね合いで千円を設定いたしました。この程度の負担というものは、私どもは、最近における医療費の額及び平均標準報酬の額の動向から見て適正なものであると考えております。
 御指摘のありました低所得の方々に対しては、この初診時の一部負担金も含めて、その負担限度額を月額一万円として抑えているところでありまして、こうした点にも私どもなりの考慮を払ったつもりでございます。
 また、薬剤の一部負担によって、必要な投薬や受診が抑制される心配はないかという御指摘をいただきました。
 こうした点は、私どもも当初から危惧したところでありまして、いま申し上げましたように、特殊な薬剤につきましては一部負担の対象としないこととし、その結果、重症で高額の費用のかかる患者の窓口負担というものも相対的に減少するわけでありますし、さらに、薬価基準の適正化を図ることによりましても窓口負担は軽減をされていくわけでありまして、必要な医療が阻害されることはないと信じております。
 また、薬剤の一部負担は医療機関の事務量の増につながるという御指摘がございました。
 確かに、被保険者本人につきましては、これまで定額の一部負担であったものが、使用された薬剤によって個々の患者ごとに一部負担の額が異なり、その計算をするわけでありますから、窓口事務は繁雑になります。しかし、被扶養者につきましては、これまで総医療費用の三割が患者負担であったので、窓口で総費用をまず計算するという手順があったわけでありますが、今後は窓口で薬剤料だけを計算すればよいわけでありまして、この面での窓口事務は軽減されることになりまして、重大な支障が生ずるとは考えておりません。
 なお、医薬分業を行っている医療機関については、御指摘のような問題は起こり得ないわけであります。
 また、高額療養費の限度額二万円につきましては、私どもは患者負担のあり方を合理的に見直し、現時点での家計における医療費負担の限度として無理のないものを考えて設定をしたわけでございます。
 ただ、診療報酬改定の実施時期はいまのところ未定でございます。しかし、診療報酬は、国民の経済力や賃金、物価の動向を勘案しながら、従来から必要に応じて適正化に努めてきたところでありまして、今後とも、中医協の御審議を踏まえて対処してまいりたいと考えております。
 保険外負担の解消につきましては、昨年二月の診療報酬改定の際に、入院料関係につきまして二〇%の引き上げを行い、局長通知においてその適正化の指導を行っているところでありまして、この一年置で札当程度改善が進んだと考えて繁ります。
 また、諮問時に比べて保険料率が高くなりましたのは、累積赤字の解消を二年間で行うこととしたことと、実施時期が当初考えておりましたよりおくれたこと、賞与等の見込みが当初より落ち込んだという原因でありまして、そういう状況の中ではありますけれども、現在の千分の八十の政管健保の保険料率は、四十九年度以降の累積赤字解消分も含めて千分の七十に下がることになるわけでございます。
 分立している制度を、御指摘のように地域保険、職域保険、老人医療保険のような三保険に考える、あるいは完全な一元化、いろいろな御意見もあるわけでありますが、私どもは、いずれも実現の上には相当の困難があろうかと存じます。政府としては、むしろ医療保険制度全般にわたって、給付の平等、負担の公平というものを実現する方向で改革を図るべきでありまして、現在提案の健康保険法もそういう考え方でお願いを申し上げておるわけであります。
 国民健康保険につきましては、引き続いて現在作業を進めておりまして、老人保健医療とともに、できるだけ早い機会の御審議をお願いできるように努力をしてまいります。(拍手)
    ―――――――――――――
#27
○副議長(三宅正一君) 米沢隆君。
    〔米沢隆君登壇〕
#28
○米沢隆君 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました健康保険法等の一部を改正する法律案につきまして、総理並びに厚生大臣に若干の所信をただしたいと存じます。
 すでに御案内のとおり、今日の医療保険を取り巻く情勢は、医療費の急増による財政不安、制度間の不均衡の顕在化、保険外負担の増高による保険機能の低下、資源配分の非効率性など、基本的な問題が数多く噴出し、その上、一部医療の荒廃、退廃ぶりが指摘されるなど、きわめて深刻な状況にあります。それゆえ、国民のニーズに対応して公正かつ高度な医療保障制度を確立するためには、従来のようにその場しのぎの小手先だけの対応策であっては、今日の苦境に立つ医療保険制度の局面打開はきわめて困難であると言わねばなりません。
 しかるに、今回の健保改正法案は、依然として、患者の負担増によって財政収支のつじつまだけを合わせようという現状糊塗的な改正に終始しているところに、私どもは大きな不満を持つものであります。
 そこで総理、まず第一に、あなたは、今日のわが国の医療を取り巻く状況、医療保険を取り巻く状況をどのように理解をされ、今後どのような発想で抜本改正に取り組もうとされているのか、その所信を明らかにしていただきたいと思います。
 あわせて、厚生大臣、この法案は当初から修正せらるべき運命を持った法案であると言われておりますが、あなたは、今後の審議次第でありますけれども、修正要求には柔軟に対応される姿勢があるかどうか、率直な御意見を承りたいと存じます。
 さて、本題に入ります。
 本法案の第一の問題点は、新たに設置される薬剤等の半額負担制の導入の問題であります。
 これは、高額療養費制度によって補給措置はありますものの、明らかに患者にとっては過重負担となり、家計を圧迫することは必定であります。確かに、薬剤費の患者負担により、どういう薬をどの程度飲まされているか、これまで不明、不安でありました薬剤使用が明確になることはメリットの一つかもしれません。また、それは過剰投薬の是正にも通ずると考えられます。しかし、政府案の半額負担は、余りにも患者の負担が過重になるため、結果として、真に医療の必要な人までも、場合によっては受診の過度の抑制を招きかねないことになり、それでは、保険のあり方から見て適当な措置とは言えないことは無論のこと、医療の基本であります早期発見、早期治療の道をふさぐものでありまして、私どもはとうてい容認することはできません。
 少なくとも、国民が納得できるよう、その負担割合を大幅に軽減すべきだと考えますが、政府の見解を明らかにしていただきたいと思います。
 第二の問題点は、入院時負担の問題であります。
 現在、入院時負担は、一日につき二百円、一カ月間までとなっておりますが、改正案によりますと、一挙に五倍も引き上げ、一日千円、それも入院生活全期間徴収となっておりますので、この負担増はきわめて大きいものがあります。入院した場合には、通常、所得が六割と大幅に減少し、しかも差額ベッドや付添看護婦料といった保険外負担も強いられており、この上さらに一日千円の給食費を課すことは、過酷な措置と言わざるを得ません。
 私どもは、保険外負担の解消を図った後におきましても、患者の支払い能力からいたしまして、入院時一部負担は一日四百円とするのがぎりぎりの線であると考えます。政府は、この修正要求にどのように対処される方針でありますか、誠意ある答弁を期待いたします。
 さて第三に、負担の問題に関連いたしまして、保険料の改定についてお尋ねいたします。
 政府案で考えられております保険料改定は、第一に保険料算定基礎の変更、第二に保険料率改定手続の変更、第三に標準報酬上限額改定手続の変更の三点であります。
 今回のこの一連の保険料改定は、たとえば本法案が実施されれば、平均医療給付率が実際は低下することでもおわかりのとおり、家族の医療給付の引き上げに関連して改定するというよりは、急激に、しかも大幅に上昇していく医療費を賄うためのものという性格が顕著にあらわれており、この点が基本的に問われねばなりません。
 確かに、政管健保は五十四年度末には二千五百億円を超す赤字であると言われますから、この財政赤字対策を放置することはできません。だからこそ、この財政赤字の原因となる一方では、医療費増大を効率化する施策が今日ほど各方面から強く求められているときはないのであります。が、これに対する政府の対策は遅々として進まない感じがいたしてなりません。
 そこで、薬価の公正確実な調査と、それに基づく薬価の改定、検査に対する厳重な指導、診療報酬出来高払い制の改正、請求書審査の厳重な実施、不正請求の徹底した取り締まりなど、総合的な観点からの効率化対策の策定と、その実施体制が速やかに整えられることこそ緊急の課題だと信じます。
 政府は、この重要な効率化対策にどのように取り組まれているのか、否、取り組まれようとしておるのか、総理の見解をお伺いしたい。こうした施策をさておいて、医療費増大に安易に順応させようとする保険料改定の意図は片手落ちもはなはだしいと思うが、あわせて御答弁を賜りたいと存じます。
 以上述べましたように、今回の特に保険料率の弾力的な運営の実施につきましては、大きな問題があると指摘せざるを得ないのであります。賞与等も算定基礎に含める保険料率が、厚生大臣によって弾力的に運営されるということは、保険収支の結果だけを保険料率に転嫁させようとするもので、医療費の効率化対策よりも、保険料率引き上げに依存する傾向を助長するおそれが強くなります。したがって、弾力条項は、医療費の効率化対策の強化に連動して、あるいは国庫補助との連動など、発動基準が明らかになった上で実施するのが正しいあり方であります。
 政府は、国庫補助との連動において、弾力条項発動基準を明らかにする方針を持っておられるかどうか、見解を示していただきたいのであります。
 われわれは、健保財政の改善については以上の対策を求めましたけれども、もとより、合理的な制度のもとにおける合理的な負担の増を否定するものではないことを付言いたしておきたいと存じます。
 さて次は、当面しております抜本改正の問題に触れてみたいと思います。それは、今日、患者の不安を高めておる最大の問題であります保険外負担の解消であります。この解決なくして国民医療の改善向上はあり得ません。
 わが党は、次の措置により保険外負担を解消すべきであると考えます。
 まず、差額ベッドでありますが、現行の診療報酬点数で一律適用といたしております室料の現状を再検討し、新たに診療報酬の室料に段階制を設け、段階的な室料を設定し、これを診療報酬として医療機関に支払うことによって、患者からの徴収を全面的に禁止すべきであります。政府の見解を明確にしていただきたいと思います。
 また、付添看護による患者負担も、これまた家計を大きく圧迫しており、その解消は緊急重点課題であります。したがって、第一に、現行の特二基準看護病院を含め、さらに強化される看護体制、すなわち完全看護病院制を新たに設け、そこには必要とする看護婦の充当を確実に行い、付き添いは全く行わないようにすること。第二に、現行の特一基準看護病院以下の病院においては、必要に応じ看護婦の充当を図ることは当然でありますが、その充当がなされるまでの間は、付添看護に要する職員を新たに配置して看護体制を補完することとし、この場合、診療報酬に付添看護職員の費用を設けて、それを医療機関に支払うようにすれば、付添看護による患者負担を全面的に解消できると考えますが、政府の見解をただしたいと思います。
 次に、出産給付についてお伺いいたします。
 御承知のとおり、ILO百二号条約では、分娩の場合、一部負担を認めず、全額を保険給付とするように定めております。しかし、わが国の場合、分娩費は出産給付として現物給付化されることが久しく望まれておりますけれども、分娩費の最低保障額の適用に代替されて、ILO百二号条約で定める国際基準に比べて達していないのが現状であります。この国際基準を満たすよう、出産給付として現物給付方式を早急に採用すべきでありますが、政府はいかなる見解を持っているのか、明らかにしていただきたいと思います。
 次に、定年退職者の継続医療制度と高齢者の医療制度の創設に取り組む姿勢を明確にすべきであります。
 現在の被用者医療保険は、企業による定年制によって当該被保険者の資格が失われると、当人はその親族の被扶養者となるか、新たに国民健保に加入するしかありません。一方、国民健保は、ただでさえ高齢化傾向にあるものが、それによってさらにこの傾向に拍車をかけられているという欠陥を持っております。核家族化の風潮から、これらの人々が国民健保に流れ込むことは必定であり、ただでさえ運営上多くの矛盾と問題を抱えている国民健保は、とうてい持ちこたえ得るものではありません。特にその財政は一層困窮化することになるでありましょう。
 このような欠陥を是正するためには、定年退職者の継続医療制度の適用年数を六十五歳まで延長すると同時に、それ以後は高齢者医療制度を創設することが不可欠でありますが、こうした問題に対し、政府は具体的にどう取り組んでいくのか、明らかにしていただきたいのであります。
 最後に、財政調整についてお尋ねいたします。
 現在、政管健保と組合健保との間の財政調整が論議されておりますが、私は、両制度間の財政調整は軽率に行ってはならないと考えます。
 その理由は、第一に、政管健保には、財政調整的な役割りを果たす、かなりの率による国庫補助が現になされていること。第二に、両制度間にお整は自主管理の努力、医療費効率化の自助努力を摘み取ること。第三に、構造上の問題である年齢、すなわち高齢化比率につきましては、現在新たな高齢者医療構想が練られつつあり、こうした点を考えるとき、両制度の財政調整を行う理由は全くないと断ぜざるを得ません。
 両制度間の財政調整の問題について、あわせて、当面問題になっております齋藤自民党幹事長と武見日医会長との合意メモをやる気か、やらない気か、どう処理されるおつもりか、総理並びに厚生大臣の見解をただしたいのであります。
 国民医療の充実は、保険制度の抜本改正とともに、医療供給体制の改革が不可欠であります。したがって、速やかに医療供給制度の改革についても計画的にそれを促進するよう政府に強く要求し、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣大平正芳君登壇〕
#29
○内閣総理大臣(大平正芳君) 最初の御質問は、医療保険を取り巻く状況が大変厳しい、これにどういう態度で取り組むかというお尋ねでございます。
 医療費は、昭和五十三年度十兆円、五年後には二十兆円にも達すると言われております。この増高する医療費を減速経済のもとにおきましてどのようにして負担してまいるか考えますと、医療保険をめぐる状況は、御指摘のようにきわめて厳しい状況にあると認識しなければならぬと考えております。
 政府といたしましては、今後の社会経済の変化に対応いたしまして、医療保険制度の抜本的改革につきまして、すでに明らかにした方針に従いまして進めてまいらなければならぬと考えております。
 最後にお話がございました財政調整でございますが、先ほどもお答え申し上げましたように、自民党の幹事長と日本医師会長との間の合意事項のうち、政管健保と組合健保との間の財政調整の問題につきまして目下鋭意検討中と聞いております。近く成案が得られるように承っておりますので、この成案を期待いたしたいと考えております。(拍手)
    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕
#30
○国務大臣(橋本龍太郎君) お答えを申し上げます。
 米沢さんの御質問の一番中心にありましたものは、修正に政府は応じるかというお話でありました。
 私どもは、本日から御審議を願う健康保険法につきまして、一昨年の十一月にお示しをした十四項目に基づいて、その第一着手として、自分たちとしての最善を考えて御提案を申し上げたわけでありますが、今後の国会の御審議において、なお国民的なコンセンサスが得られるように努力をしてまいりたいと考えております。
 薬剤の半額負担は患者の負担が過度になるのではないか、それをできるだけ避けるべきであるという御趣旨の御発言がありましたが、これは私どもとしても理解のできるものでありまして、薬価基準の適正化等によって実質的な患者負担の軽減を図る方向等で努力をしてまいりたいと思います。
 また、入院時の一部負担が高過ぎるという御指摘があったわけでありますが、私どもは、この入院時一部負担金につきましては、入院をする、しないにかかわらず、必要である食費というものから逆に考えまして、普通給食料相当額を一部負担として計上いたしたものでございます。しかし、今回の改正案の中で、患者負担の限度額についても家計の高額負担にならないように配慮をいたしておりますし、患者負担につきましては、保険外負担の解消も重要な問題でありますので、今後とも努力をしてまいりたいと考えております。
 また、保険料算定基礎に賞与等を含めましたのは、保険料負担の公平を図るという見地からでありまして、これを現金給付の額について賞与の額をはね返らせるということは、給付のあり方の面から言うと問題もあるわけでありまして、いろいろな議論が分かれるところでありますが、今後ともに検討をいたしたいと思います。
 保険料についてもいろいろな御所論がございました。これが保険料率の改定については、審議会等の意見を十分に聞いて定めるということは当然でありまして、そのとおりに考えております。
 ただ、国庫補助につきましては、現在すでに大変高額のものとなっておるわけでありまして、現在の厳しい国家財政の状況からして国庫への依存をこれ以上期待できないところから、また他の制度との均衡を考えてまいりますと、保険料と国庫補助率との連動を廃止して、一六・四%から二〇%の範囲内での定率補助としたものでございます。
 差額ベッドの問題、また付添看護の問題につままして、民社党としての御意見をちょうだいをいたしました。
 それなりにお考えをされた案であると考えておりますが、差額ベッドの問題につきましては、一つは診療報酬における室料のあり方でありますとか、保険医療の水準のあり方等の問題もございますので、今後とも総合的に検討してまいりたいと考えます。
 また、付添看護の問題につきましては、御意目は私どもとして参考にさせていただきたいと存じます。ただ、看護婦の確保等マンパワーの問題やあるいは基準看護制度のあり方などに厳しい問題があるわけでありまして、今後ともに検討をいたしてまいります。
 また、出産給付について、現物給付をという御意見がございました。しかし、現行制度では医療機関以外の助産婦による出産も認められておるわけでありまして、現物給付化した場合、これをどう位置づけるかがむずかしい。これを初めとした幾つかの問題点がございまして、これはなかなか困難でございます。
 また、退職者継続医療制度、高齢者医療制度の創設という点についての御指摘がございました。
 退職者継続医療につきましても従来から議論をされてきた問題でありまして、こうした制度上の矛盾の解決策については多くの御意見があるわけでありますが、退職者医療制度につきましては、一昨年の秋に示されました十四の検討項目の中でも取り上げておるわけでありまして、今後とも検討を続けてまいりたいと存じます。
 また、老人保健医療対策というものにつきましては、残念ながらまだ具体案ができておりません点を先ほどもおわびを申し上げたわけでありますが、今後できるだけ早い機会に具体案をお示しをいたしたいと存じております。
 また、先ほど制度間財政調整についての御意見がございました。
 政府は、現在国会に提出し、御審議を願おうとしておりますこの健康保険法改正案におきまして、将来、別の立法措置をもって、政府管掌健康保険、組合管掌健康保険だけではなくて、共済をも含めた全被用者保険間の財政調整を実施しようといたしておるわけであります。しかし、そこまでの過程において幾つかの過渡的な問題がありますので、制度間の財政調整は、これらの条件整備が終わりますまでの間、現在の健保組合間での財政調整を実施しようとしているところであります。
 なお、医療供給体制の改革について大変強い御指摘がございました。今後ともに努力をしてまいります。(拍手)
    ―――――――――――――
#31
○副議長(三宅正一君) 浦井洋君。
    〔浦井洋君登壇〕
#32
○浦井洋君 私は、日本共産党・革新共同を代表いたしまして、健康保険法等の一部改正案について、総理並びに関係閣僚に質問をするものであります。
 医療保険制度の抜本改正の第一弾と銘打たれた本法案は、新たに薬剤費などの半額を患者に負担させ、従来、本人のみの初診時六百円、入院時一日二百円の一部負担を、本人、家族とも一挙にそれぞれ千円に引き上げようとするものであります。これによって大幅な給付削減、患者負担の増大となることは、厚生省の試算でも平均医療給付率が現行の八八%から八三%となっていることでも明らかであります。
 その上、保険料についても、月収と同率でボーナスからも徴収をし、大幅な保険料負担増を、国会審議を経ずに大臣の権限で行おうとしております。さらに、付加給付の禁止や、法文上の規定はないものの、現在平均四対六である組合健保の保険料の労使負担割合を行政指導で折半負担に逆行させるなど、長年にわたる労働者の運動の成果をも一挙に葬り去ろうとしておるのであります。これでは、医療保障の重大な後退を招く近来まれに見る悪法と言わなければなりません。(拍手)
 政府は、本法案における抜本改正の一つとして、給付の平等化、負担の公平を挙げておりますが、その実態は、さきに述べたように、現行より給付水準を大幅に引き下げる給付の平等化と、高い負担を押しつける負担の公平なのであります。
 また、抜本改正のもう一つの柱である物と技術の分離なるものも、薬剤費の半額負担、給食料相当額の入院時一部負担など、患者に多額の経済的負担を押しつけ、受診抑制をねらう口実にすぎないのであります。
 そもそも、医療保険制度は、国民が病気になったときに、安心をして医療を受けられるために設けられておる社会保障の重要な制度ではありませんか。この法改正では、重い負担増に耐えられない貧しい国民から医療を受ける機会を奪うことになるのであります。国民皆保険の名によって多額の保険料負担を強いられながら、病気になっても保険証が使えないという事態をますます深刻にさせようというのでありますか、総理の見解をお伺いしたいのであります。
 同時に、いまでさえ差額ベッド料など多額の保険外負担が横行をいたしております。政府は、こうした不当な保険外負担をいつまでに解消しようとするのか、具体的に示していただきたいのであります。
 次に、私は、低成長時代などと言われながら国民医療費が毎年二〇%前後も急増をしておるもとで、保健医療制度をどのように改めていくのかという問題についてお尋ねをしたいのであります。
 自民党政府は、本法案が端的に示しておるように、これまで保険財政の危機を患者負担の増大、受診抑制によって切り抜けようとしてまいりました。しかし、医療費の中にあるむだやゆがみを改めることこそ、真っ先にやるべきではないでしょうか。
 その一つは、製薬大企業が保険財政に寄生して、もうけをほしいままにしておるのに、これまで政府が何の対策もとらず、全く放置してきたという問題であります。
 製薬大企業は、薬価の価格差をよりどころにして、医療機関への薬剤の売り込みを強め、薬の不必要な大量消費を押しつけ、薬害までも引き起こしているのであります。そして、日銀の主要企業経営分析を見ても、一九七七年度の主要製造企業の売上高経常利益率が二・九%であるのに対し、製薬大手九社は九・五%と、実に三倍以上もの高利潤を上げているのであります。そのために、医療費が急激にふくれ上がってきているのであります。
 私は、薬価基準の決定方式を、製造原価に基づいて適正な価格に定めるよう、根本的に改める以外にはないと考えますが、政府にその意思があるのかどうか、その見解を求めるものであります。
 仮に一歩譲るといたしましても、現行方式のもとでも、業者の任意によって行われておる市場価格調査に法的根拠を持たせて強制的な権限で行えるようにし、実勢価格を反映できる方式に改めるようにすべきではないでしょうか、政府の明確な答弁を求めるものであります。
 第二の問題は、製薬大企業の成長とともに、最近著しいのは、総合電気メーカーなどの巨大資本が医療機器やME機器の分野へ進出をしてきていることであります。医療機器の開発は、医学、医療技術の進歩を示しておりますけれども、一方、検査づけ医療などと言われる新たなゆがみも拡大をいたしております。
 政府は、高価な機器の価格と乱用を抑えて、適正な配置と利用を図るためにどのような対策を持っているか、厚生大臣にお尋ねをしたいのであります。
 同時に、こうしたむだの排除だけでは済まされないところに来ているのも事実であります。いまこそ、国民医療費の急増の背景になっておる国民の健康破壊に、根本的な対策をとることに踏み切る必要があります。
 今日、国民の八・六人に一人が病気にかかっております。しかし、病気の種類は、かつての結核や伝染病から、高血圧や脳卒中などの慢性疾患中心に移ってきております。加えて、高齢人口の増加によって疾病構造が大きく変わってきております。
 ところが、わが国の医療制度は、依然として治療中心の医療体制に偏り、健康管理の体制が立ちおくれておるために、慢性疾患に対する日常の健康管理まで、治療という形でしか医師にかかれない仕組みになっておるのであります。そのため、有病率の上昇はそのまま患者数の増大となり、国民医療費をふくれ上がらせ、ひいては医療保険財政をも破綻に追い込んでいるのであります。
 ところが、地方自治体と医師、保健婦などが協力をして、重くならないうちに健康診断や保健指導を徹底して行い、受診率は上がっても医療費は下がるという貴重な経験がすでに生み出されているのであります。また、かつて、わが国で国民病と言われた結核対策では、保健所と医療機関の協力によって大きな成果を上げた経験を持っております。
 いまこそ、保健所活動を今日の疾病構造の変化に対応できるよう、保健、予防体制の具体的な年次計画を立てて、本格的に取り組むべきであります。これは、健康に暮らしたいという国民の願いにこたえる政府としての当然の責務であるとともに、保険財政の安定にも大きく役立つものであると考えられますが、総理並びに厚生大臣の見解を求めるものであります。
 次に、私がお尋ねをするのは、老人保健医療制度の問題であります。
 今日、お年寄りに豊かな老後の暮らしを保障することは、政治の中心課題となっております。そのためには、病気になったときに、医療費の心配なしに治療が受けられる老人医療費の無料化とともに、住宅など社会的生活条件の改善、機能訓練、食事や運動などの日常的健康管理など、福祉、保健を含めた総合的な対策が必要となってきております。
 私は、政府がこうした総合的な老人保健医療制度の確立に具体的に着手することを要求するとともに、老人医療費の無料化を堅持し、有料化へ後退させないことを、総理の責任で明確にここで答弁をしていただきたいのであります。(拍手)
 最後に、私は、本法案の国会提出そのものが、国民の強い反対を無視して強行されたことを指摘したいのであります。
 そのことは、総理、厚生大臣の諮問機関である社会保障制度審議会、社会保険審議会の答申で強い不満が表明されていたことでも明らかであります。そればかりか、政府与党である自民党でさえ、国会提出後修正もあり得るという条件をつけておるのであります。国会提出後も、まる一年間にわたって本法案が審議もできず、たなざらしとなったこと自体、政府の政策が破綻をしておることを示しておるのであります。
 加えて、所管大臣である橋本厚生大臣でさえ、一月十九日の社会保険審議会で、国会で各党の意見を出していただき、柔軟に対処、対応させていただきたいと、修正をほのめかしておるではありませんか。しかも、政府与党である自民党内では、政府案でさえ触れることができなかった制度間の財政調整という、医療保険制度の体系にかかわる根本問題を一方的に推し進めようと準備をしていることが伝えられております。
 法案の審議にも入らないうちから、政府与党内ばかりか、閣僚からさえ修正をほのめかす発言が出るとは、全く異常な事態であり、大平内閣の政治そのものの政策的破綻を証明しておるのであります。
 私は、この際、安心してよい医療を受けたいという、国民の切実な願いに逆行する本法案を直ちに撤回をするよう強く要求をするものであります。
 総理のこの点についての見解を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣大平正芳君登壇〕
#33
○内閣総理大臣(大平正芳君) 政府提出の法案は、負担の増加、給付率の引き下げ等を含む改悪案ではないかということでございますが、そのようには考えておりません。
 健康保険法等の一部改正法案は、今後に予想される医療費の増高、社会経済情勢の変化に即応いたしました医療保険制度の改革を図りますとともに、負担の公平、給付の平等、高額な家計負担の解消等の原則に従いまして苦心作案したものでございます。政府といたしましては、慎重に御審議の上、今国会での速やかな可決、成立をお願いいたしたいと存じます。
 第二の御質問は、老人医療の有料化はすべきでないという御意見でございます。
 新しい老人保健医療対策につきましては、老人保健医療問題懇談会の意見書に示されました考え方を基調といたしまして、総合的な対策を確立すべく検討中でございますが、まだ成案を得るには至っておりません。けれども、老人の医療費の負担のあり方につきましては、老齢化社会における老人保健医療のあるべき方向という観点から、慎重に検討すべき問題であると考えております。
 自余の問題は、厚生大臣からお答えいたします。(拍手)
    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕
#34
○国務大臣(橋本龍太郎君) 浦井さんにお答えをいたします。
 第一に御指摘のありました保険外負担の解消につきましては、昨年二月の診療報酬改定の際、入院料関係につきましては約二〇%の引き上げを行い、同時に基準看護の二類特別加算を新設するなど、条件整備を図って解決に努力してまいりました。
 また、保険局長通知をもちまして、この適正化について指導を行ってきたわけでありますが、その結果、相当程度の改善が進んでおると考えておりますし、今後も努力をしてまいります。
 また、現制度の上に乗って不当な利益を上げている製薬企業を規制すべきであるというお話でありましたが、私どもとしては、市場価格と乖離している薬価の問題等、御指摘を受けておりますので、できるだけ実態に近づける努力をいたしてまいります。
 また、高額医療機器の価格規制あるいはその適正配置等についての御指摘がありました。
 御指摘のように、価格面について問題がないわけではありませんので、種々検討を試みてみたいと考えております。また、CTスキャナー等、高額医療機械の配置につきましては、現行の各種補助金、特別地方債、年金福祉事業団及び医療金融公庫等の公的資金の配分を通じて、適正配置を推進してまいりたいと思います。
 疾病構造の変化に即応するような健康管理あるいは保健対策を本気でやるべきであるという御指摘はそのとおりでありまして、今日までもそういう方向で努めてまいっておりますが、予想される高齢化社会に対応し、専門家の意見をも聴取をいたしながら、長期的な計画のもとに成人病対策を進めてまいりたいと考えております。
 また、老人医療の有料化についての御意見がございましたが、老人の医療費の負担のあり方につきましては、老齢化社会における老人保健医療対策のあるべき方向という観点から、慎重に検討すべき問題であると考えております。
    ―――――――――――――
#35
○副議長(三宅正一君) 工藤晃君。
    〔工藤晃君登壇〕
#36
○工藤晃君(新自) 私は、新自由クラブを代表し、ただいま提案されました健康保険法等の一部を改正する法律案の趣旨説明に対し、本法律案提出の政府の基本姿勢を中心に質問するものであります。
 質問の第一は、健康保険法改正をめぐる政府並びに自由民主党の対応姿勢に対してであります。
 この法案は、与党からの了解も十分得られないままに、修正されることを前提として、急速、第八十四延長国会に持ち込まれてきたものであります。その後、実質審議は一度もなされておらず、たなざらしになったまま現在に至っております。
 この経過から見ても、政府が真剣にかつ責任ある法律案を提出してきたとは考えられないので、国会の審議に値しないと考えますが、その御見解を承りたいのであります。
 質問の第二点は、とのような不備な法案を提出したまま一年近くも、みずから差しかえるでもなく放置してきた政府の意図はどこにあったのかということであります。
 質問の第三点は、日ごろ、国会における予算審議に当たっては、常に、ベストを尽くした結果の予算案であるので、野党の意見など盛り込む余地は全くなく、予算の修正には絶対応じられないと頑強に主張してきた政府及び自由民主党の裏側からのぞいたベストとは、この健康保険法の審議過程が示す程度のものであることを総理は率直にお認めになるべきであると考えますが、明確なる御答弁をお聞かせいただきたいと存じます。
 関連して申し上げますが、新自由クラブは、硬直化した予算編成方式を改め、比較的早い時期において、次年度予算の骨子を決める目的をもって臨時国会を開催し、積極的に各党との意見を交換して、衆知を集め、よりよい予算案の作成を図られるべきであると主張してまいりましたが、この際、メンツにこだわることなく、思い切ってわが党の提案を聞き入れるお気持ちがあるかどうか、お聞かせ願いたいのであります。
 二十一世紀にかけての高齢化社会における国家繁栄の基礎は、知性の開発と健康人社会の創出にあると考えます。
 戦後三十年間に、平均寿命は五十歳から七十五歳を超え、世界一の長寿国となりました。六十五歳以上の老人の全人口に占める割合は、五十三年度で八・五%であるが、今後二十年以内に一四・二%と、ヨーロッパ先進国並みの成熟社会が到来することが予測されております。その上、平均寿命は今後十五年間に八十歳まで延びると言われております。それに伴う国民医療費は、昭和五十三年度で十兆四千億円、昭和五十八年度で二十兆二千八百億円と推定されております。
 七十歳以上の老人比率は、五十二年度で政管が三・六%、組合二・七%、国保七・五%であります。国保においては七・五%の老人で医療費の二五・二%を消費すると言われ、老人医療費の保険財政に及ぼす影響がいかに大きいかを物語っております。ヨーロッパ先進国においても、一〇%の老人で医療費の三分の一を消費すると言われ、各国とも老人医療対策に苦慮しているのが現状であります。
 アンケート調査資料によりますと、その七六・一%が、全国民の負担と給付を平等にするため各種の保険を統合すべきだとしております。年齢別では、六十五歳以上で八二・八%、保険種別では、国保の八七・八%、政管七五・三%、組合健保に所属する者ですら六〇・六%が賛成していることを見ても、大多数の国民がそれを強く要求していることは明らかであります。
 九種類にも分かれている保険制度の中で、政管健保と組合健保の財政状況を比較すると、中小企業の未組織労働者を中心とした政管健保の五十三年度の赤字推定額は二百四十七億円、四十九年度以降の累積赤字額は千六百四十一億円となっており、大企業の組織労働者を中心とした組合健保は、五十二年度において付加給付や保健施設費等の投資を差し引いても一千三百五十四億円の黒字となっております。
 国庫負担については、政管健保の給付費の一六・四%、国保に対しては医療費の四五%、五十四年度予算では一兆五千六百億円で、今後も負担は確実に増大していくはずでございます。国庫負担の有無は、財政基盤の強弱を明確に示すものであり、給付に格差をもたらす要因となっております。
 保険料率も、各制度間において公平な整合性を見出すことはできないのであります。現在の医療保険制度は、人命を平等に尊重するという医の倫理からしても、公正な所得の再配分という立場からしても、社会的不公平と言わざるを得ないのであります。
 最近、私は、腎透析患者の陳情に立ち会いました。そのときの患者の一人の切なる訴えを、この機会に、ぜひ総理のお耳に入れておきたいと存じます。
 ある過疎地の小さな村の国保の加入者であるその患者は、腎透析という近代医学の恩恵に浴して細々と命を長らえているわけでありますが、ただ一人の透析患者の医療費がこの小さな村では大問題となりました。その理由は、国保財政を圧迫し、保険料が値上げになったからであります。村人たちからは白い目で見られ、逃れる先もなく、夜、人目を避けて病院通いをしているそうであります。
 総理、あなたは、この患者が何を訴えていたかを推測してお答えをいただきたい。あわせて、このような立場の人をどのようにしたら救済できるか、行政的見解をお聞かせ願いたい。
 いまここでお聞きいただいている議員諸公にも、この患者の訴えを真剣に受けとめていただきますよう心からお願いを申し上げる次第であります。
 ちなみに、大平さんが総理になられる前にどのような種類の健康保険証をお持ちになっておられたのか、その保険証を御利用された経験の有無、今後もまた万一入院されるようなことがあったときには、その一片の保険証にあなたの命を託す信頼感をお持ちになっているかどうか、大変ぶしつけな質問で恐縮ですが、率直に御感想をお聞かせ願いたいのであります。
 次に、健保法の改正に関連してお伺いをいたします。
 政府の参考資料によりますと、「今回の改正に当たりましては、給付の平等、負担の公平、物と技術との分離、家計の高額な負担の解消、医療費審査の改善の五原則を柱として、これらの基本的考え方を盛り込んで改正法案を策定した」と、提案理由として述べられております。一方では、法案の概略説明で、財政調整について、「今後、全被用者医療保険間において財政調整措置を講ずることとしておりますが、その措置が講じられるまでの間、健康保険組合間の財政を調整する」と述べられている。
 なぜ、直ちに各制度間の財政調整作業に入らないで、別途調整保険料を徴収し、拠出する方法での健保組合間の財政調整というこそく手段に終わらせているのか、その理由と、制度間においても同じ拠出金方式で財政調整を考えているのか、あるいは別途の方法を考えているのか、その辺の事情を総理に明確にお答えをいただきたい。
 第二に、制度間の財政調整をするための立法化の時期はいつごろかを明確にしていただきたい。
 第三に、負担と給付の格差の大きい乱立した制度のもとでは、医学、医術の進歩に対応しがたく、質の低下につながり、それは患者の社会復帰を遅延させ、それだけ経済活力を低下させる。見えないところでの社会的損失ははかり知れないものがあると思うが、総理の御見解を承りたい。
 第五に、医療の公共性を確保するという前向きの姿勢がなければ良質な医療サービスは期待できない。総理はこの問題をどのようにお考えか、具体的提言があれば承りたい。
 第六に、十分なる制度間の財政調整を行わずして老人医療を別建てとすると、結果的に健保組合をより優遇することになると思うが、その点、どのように対処されるおつもりか、所見を承りたい。
 第七に、今回の健保法の改正案によると、健保組合においては、付加給付の中止、自己負担金の増加等により黒字がなお一層ふえるような場合には、保険料率を下げるつもりがあるのかどうか。また、支出に見合って下げた場合、政管健保の保険料率との格差が拡大する可能性があると考えるが、そのような場合にはどのような措置をするのか、お考えをお聞きしたい。
 第八に、各制度間の十分なる財政調整が行われないままに、医療費の増大に伴い国庫負担や補助金を増額することに対して、大蔵省は了解していくのか、あるいはまた医療費抑止策を強化する考えなのか、その辺の見解を明らかにしていただきたい。
 先ほどから厚生大臣の答弁を聞いておりますと、改正法案の撤回は一切する意思はないと、その内容について満々たる自信を持って何度も述べられておりますが、与党自由民主党から修正案が出てまいっても原案の修正は一切受け付ける意思がないのかどうか、明確にお答えをいただきたいのであります。
 最後に、高齢化社会に対応するため、予防対策に注目するとともに、医療保険制度は、負担の公平、・給付の平等の基本理念が確立されなければ成り立たないと考えます。
 総理は、勇気と決断をもって抜本改正に取り組む姿勢を国民の前に明らかに示していただけるよう強く要望して、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣大平正芳君登壇〕
#37
○内閣総理大臣(大平正芳君) 大変広範多岐にわたる御質問でございましたが、主なる点につきまして私が御答弁申し上げて、あとは厚生大臣からお答えさせることにいたします。
 健康保険法案は実質のない案なので、撤回の上出直してはどうかということでございますが、われわれは、もとよりこれを完全な案とは考えておりませんけれども、基本的改革の第一歩であると考えておりますので、そういう意味で、建設的な御審議を期待したいと思います。
 それから第二の、予算案の編成の時期、方法についての御意見を交えての御質問でございましたが、私ども、国会の審議を踏まえ、各党各界の御意見を参考にしながら予算の編成に当たっておるつもりでございます。夏ごろ臨時国会を開いて予算案編成の第一歩、それから始めてはどうだ、臨時国会から始めてはどうだという御意見でございますけれども、夏でございますと、歳入の見込みその他、まだ少し予算編成に必要なデータをとらえるには早急に過ぎるのではないかと考えております。もとより各党各界の御意見を十分尊重する基本姿勢をわれわれはあくまでも貫いてまいるつもりでございます。
 また、ある患者の訴えについて言及されたのでございますけれども、過疎地帯におきましてかかる難病が発生した場合における状況というのは、理解できないわけじゃございません。したがいまして、こういう点につきましての制度上の工夫も考えて差し上げなければならないし、現にそういう制度は、財政交付の制度はあるようでございますけれども、なお一層努力をしなければならないのではないかと考えます。
 私自身の医療保険の経験でございますが、私は、地域の国民健康保険に加入いたしておりましたが、幸いに健康でございますので、定期的な健康診断以外は御厄介になっておりません。
 それから、医療保険の乱立を戒めなければならぬという御趣旨でございましたが、医療保険の一本化あるいは統合というような点につきましては、また新たな問題が出てくるわけでございますので、われわれといたしましては、給付の平等化、負担の公平化という点を主にいたしまして、じみちに医療制度の改革に取り組んでいきたいと考えます。
 それから、財政負担の問題でございますが、これはたびたび申し上げておるとおりでございまして、自民党の成案をいま期待いたしておるところでございます。いつごろになりますか、いまの段階で時期を明確にお答えすることはできませんけれども、成案の早く提出されますことを期待いたしております。
 自余の案件、たくさんございましたけれども、橋本厚生大臣からお答えいたすことにいたします。(拍手)
    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕
#38
○国務大臣(橋本龍太郎君) 工藤議員から御指摘の一番最初にありましたものが、今回の健康保険法をなぜ政府は一年近く放置してきたかという御指摘でありますが、政府といたしましては、国会提出以来、ぜひとも早い時期に御審議を願いたいとお願いを申し上げ続けてまいったところでございます。
 また、老人別建てについては、健康保険組合の黒字を一層増加させるものであるというお話がございました。老人保健医療対策のあり方につきましては、非常に関係団体等も多岐にわたり、その調整を必要とする分野も複雑でありますために、まだ成案に至っておりませんが、今後、成案を取りまとめていく段階におきまして、御意見等も参考にさせていただきたいと存じます。
 また、医療の公共性という観点から、技術料評価というものを高めていく、そのための原資を確保する上からも財政調整を行えという御指摘がございました。
 私どもは、将来、別の立法措置をもちまして、政府管掌健康保険、組合管掌健康保険だけではなく、共済をも含めた全被用者保険間の財政調整を実施することを考えております。そこに行くまでの過程において、現在、私どもは、制度間の財政調整は、これらの条件整備を図った結果、段階的に図るべきものと考えております。
 また、付加給付の廃止により、政府管掌健康保険と組合管掌健康保険の中における保険料率の格差が増大するという御指摘がございました。
 健保法改正が実現をいたしました場合、付加給付が廃止をされますれば、その分だけ健康保険組合の保険料率が低下をすることは事実であります。しかし、付加給付の廃止は、医療保険制度全体を通ずる医療給付の平等の実現のために、私どもは必要な措置だと考えております。
 また、調整保険料を別建てとした点についての御指摘がございましたが、これは、本来の健康保険事業と財政調整事業とが別個のものであるという形式的な理由にすぎません。健康保険組合が保険者である以上は、この方式が妥当なものであると考えております。将来、被用者保険制度間の財政調整を行う時点におきましてどのような拠出方式をとるかについては、現在のところまだ決定をいたしておりません。
 繰り返し御質問のありました、組合管掌健康保険の間の財政調整にとどめた理由、一挙に制度間財政調整まで行かなかった理由は、先ほどまとめてお答えを申し上げたとおりでございます。
 全被用者保険間の財政調整の実施の時期という問題が御指摘にありましたが、これはまだ、いつまでにできるという状態のものではございません。制度的なもの、給付、負担及び管理運営面での条件をそろえていくこと、あるいは累積赤字の処理等の問題がございますので、できるだけ早い時期に条件整備に努めたいと考えております。
 以上でございます。(拍手)
#39
○副議長(三宅正一君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#40
○副議長(三宅正一君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時三十六分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  大平 正芳君
        大 蔵 大 臣 金子 一平君
        厚 生 大 臣 橋本龍太郎君
        自 治 大 臣 澁谷 直藏君
 出席政府委員
        厚生省保険局長 石野 清治君
ソース: 国立国会図書館
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