くにさくロゴ
1978/05/22 第87回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第087回国会 本会議 第27号
姉妹サイト
 
1978/05/22 第87回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第087回国会 本会議 第27号

#1
第087回国会 本会議 第27号
昭和五十四年五月二十二日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第二十六号
  昭和五十四年五月二十二日
    午後一時開議
 第 一 日本専売公社法等の一部を改正する法
     律案(内閣提出)
 第 二 船員の雇用の促進に関する特別措置法
     の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第 三 防衛庁職員給与法の一部を改正する法
     律案(内閣提出)
 第 四 繭糸価格安定法の一部を改正する法律
     案(農林水産委員長提出)
 第 五 農業者年金基金法の一部を改正する法
     律案(内閣提出)
 第 六 通信・放送衛星機構法案(内閣提出)
 第 七 昭和五十二年度一般会計
     予備費使用総調書及び各
     省各庁所管使用調書(そ
     の2)
     昭和五十二年度特別会計
     予備費使用総調書及び各
     省各庁所管使用調書(そ
     の2)
     昭和五十二年度特別会計
     予算総則第十一条に基づ
     く経費増額総調書及び各
     省各庁所管経費増額調書 (承諾を求
     (その2)       めるの件)
 第 八 昭和五十三年度一般会計
     予備費使用総調書及び各
     省各庁所管使用調書(そ
     の1)
     昭和五十三年度特別会計
     予備費使用総調書及び各
     省各庁所管使用調書(そ
     の1)
     昭和五十三年度特別会計
     予算総則第十一条に基づ
     く経費増額総調書及び各
     省各庁所管経費増額調書 (承諾を求
     (その1)       めるの件)
 第 九 昭和五十二年度一般会計国庫債務負担
     行為総調書
 第 十 昭和五十二年度特別会計国庫債務負担
     行為総調書
 第十一 昭和五十三年度一般会計国庫債務負担
     行為総調書(その1)
 第十二 エネルギーの使用の合理化に関する法
     律案(第八十四回国会、内閣提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議員請暇の件
 皇室会議予備議員の選挙
 国土審議会委員の選挙
 日程第一 日本専売公社法等の一部を改正する
  法律案(内閣提出)
 日程第二 船員の雇用の促進に関する特別措置
  法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第三 防衛庁職員給与法の一部を改正する
  法律案(内閣提出)
 日程第四 繭糸価格安定法の一部を改正する法
  律案(農林水産委員長提出)
 日程第五 農業者年金基金法の一部を改正する
  法律案(内閣提出)
 日程第六 通信・放送衛星機構法案(内閣提出)
 日程 昭和五十二年度一般会計予
 第七 備費使用総調書及び各省各
    庁所管使用調書(その2)
    昭和五十二年度特別会計予
    備費使用総調書及び各省各
    庁所管使用調書(その2)
    昭和五十二年度特別会計予
    算総則第十一条に基づく経
    費増額総調書及び各省各庁 (承諾を求
    所管経費増額調書(その2) めるの件)
 日程 昭和五十三年度一般会計予
 第八 備費使用総調書及び各省各
    庁所管使用調書(その1)
    昭和五十三年度特別会計予
    備費使用総調書及び各省各
    庁所管使用調書(その1)
    昭和五十三年度特別会計予
    算総則第十一条に基づく経
    費増額総調書及び各省各庁 (承諾を求
    所管経費増額調書(その1) めるの件)
 日程第九 昭和五十二年度一般会計国庫債務負
  担行為総調書
 日程第十 昭和五十二年度特別会計国庫債務負
  担行為総調書
 日程第十一 昭和五十三年度一般会計国庫債務
  負担行為総調書(その1)
 日程第十二 エネルギーの使用の合理化に関す
  る法律案(第八十四回国会、内閣提出)
 大平内閣総理大臣の訪米並びに第五回国連貿易
  開発会議出席及び訪比に関する報告及び質疑
    午後一時五分開議
#2
○議長(灘尾弘吉君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 議員請暇の件
#3
○議長(灘尾弘吉君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。
 池田行彦君、今井勇君、鈴木善幸君、中西啓介君及び原田昇左右君から、五月二十人目より六月十一日まで十五日間、右いずれも海外旅行のため、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(灘尾弘吉君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 皇室会議予備議員の選挙
 国土審議会委員の選挙
#5
○議長(灘尾弘吉君) 皇室会議予備議員及び国土審議会委員の選挙を行います。
#6
○玉沢徳一郎君 皇室会議予備議員及び国土審議会委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名せられ、皇室会議予備議員の職務を行う順序については、議長において定められんことを望みます。
#7
○議長(灘尾弘吉君) 玉沢徳一郎君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○議長(灘尾弘吉君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 議長は、皇室会議予備議員に原健三郎君を指名いたします。
 なお、その職務を行う順序は、原健三郎君を第二順位とし、第二順位の予備議員である前尾繁三郎君を第一順位といたします。
 次に、国土審議会委員に
      三池  信君    野田 卯一君
      天野 光晴君    田澤 吉郎君
      村田敬次郎君    井上 普方君
      村山 喜一君    松本 忠助君
   及び 竹本 孫一君
を指名いたします。
     ――――◇―――――
 日程第一 日本専売公社法等の一部を改正す
  る法律案(内閣提出)
#9
○議長(灘尾弘吉君) 日程第一、日本専売公社法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。大蔵委員長加藤六月君。
    〔加藤六月君登壇〕
#10
○加藤六月君 ただいま議題となりました日本専売公社法等の一部を改正する法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、この法律案の概要を申し上げますと、
 第一に、製造たばこの小売定価は昭和五十年十二月以来据え置かれておりますが、売り上げに占める専売納付金の比率は、製造原価の上昇に伴い、相当の低下を見ております。このような製造たばこの原価の上昇に対処し、あわせて財政収入の確保等を図るため、小売定価を改定することとし、その限度となる種類、等級別の最高価格を引き上げることといたしております。
 第二に、現行の専売納付金制度は、日本専売公社の純利益から一定の内部留保を控除した金額を国庫に納付することとなっておりますが、従来から指摘されていた税相当分を明らかにするような価格形成方式の明確化、財政収入の安定的確保と、日本専売公社の自主性の向上、その経営の効率化を図るため、所要の改正を行うことといたしております。
 すなわち、専売納付金の算定方法を、製造たばこの品質を基準に定率を設定し、小売定価にその率を乗ずる、いわゆる納付金率法定制に改めることといたしております。
 また、この専売納付金制度の改正によりまして、日本専売公社の企業努力だけでは吸収し得ない原価の上昇によって経営が圧迫されるおそれが生ずることとなることにかんがみ、現行の最高価格法定制を基本的に維持しつつ、客観的指標に基づく限界を設けるなど、一定の条件のもとに製造たばこの最高価格の特例を設け、定価法定制を緩和することといたしております。
 以上のほか、製造たばこに係る関税率を改定する等、所要の改正を行うことといたしております。
 本案につきましては、参考人から意見を聴取するなど、慎重な審査を行いました。特に、小売定価引き上げの物価等国民生活に与える影響、納付金率法定化等に伴うたばこ事業関係者への影響、定価法定制の緩和と財政法第三条との関係、今後のたばこ産業の展望と公社の経営、喫煙と健康、葉たばこ耕作者対策等の諸問題について熱心な論議が交わされましたが、その詳細は会議録に譲ることといたします。
 かくて、去る八日質疑を終了いたしましたが、稲村利幸君外三名から、自由民主党提案に係る修正案が提出されました。その内容は、昭和五十四年四月一日とされていた施行期日を公布の日に改めるとともに、関連規定について所要の整備を行おうとするものであります。
 次いで、討論を行い、採決いたしましたところ、修正案並びに修正部分を除く原案はいずれも多数をもって可決され、よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
 なお、本案に対しましては、附帯決議が付されましたことを申し添えます。以上、御報告申し上げます。(拍手)
#11
○議長(灘尾弘吉君) 討論の通告があります。順次これを許します。沢田広君。
    〔沢田広君登壇〕
#12
○沢田広君 私は、日本社会党を代表いたしまして、政府提案の日本専売公社法等の一部を改正する法律案、すなわち日本専売公社法、たばこ専売法、製造たばこ定価法、関税定率法、製塩施設法、大蔵省設置法、以上六法の一部を改正する法律案に反対の意思を表明し、討論を行うものであります。(拍手)
 第一に、今回の改正による専売納付金の法定化は、今日までの公社運営の不安定感を除く上に一歩前進と評価することは可能だと思います。しかしながら、紙巻きたばこで四四・五%から五六・五%という専売納付金率はきわめて高率の設定であり、昭和五十四年度予算で七千五百三十億、そのうち二千二百四十四億円を増として見込まれております。このことにより、公社である公共性が失われ、国民大衆からの収奪を目的とする財政専売に終始するのみであるとのそしりを受けることは必至であります。かつ、公社としての自主性、独自性にはほど遠い制度となることが問題であります。言うならば、企業の親子関係において、親会社が子会社の収益の五六%を吸い上げることになるのでありまして、子会社の経営難は必至となることは明らかであります。
 第二には、たばこ自体の値上げであります。
 今日の各種公共料金の値上げ、卸売物価の連続騰勢、円相場の不安定、土地の値上がり、国債価格の暴落などなど、まさにインフレへの進行を進めております。かかるとき、たばこ価格引き上げによって、庶民のささやかな憩い、安らぎあるいは人間関係の円満化、団らん、いらいらからの解消にすら多額な税金を取られる国民、消費者は、財政専売のまさに犠牲者であると申せましょう。言うならば、一般消費税の先取り的やり方という以外の何物でもありません。
 マイルドセブン百五十円が一挙に百八十円になります。四十本、二箱を毎日喫煙するとして、月におよそ二千円の支出増となるのであります。ささやかな賃上げ分の二〇%は煙となって消えていくということになります。加えて、百八十円の価格は、何と百二円が税金、納付金であり、小売店はわずかに十八円のマージン、五十円が原価、十円の内部留保となっております。これでは、すべて税金を吸っていると言っても過言ではありません。
 第三には、定価の改定とその手続についてであります。
 今日まで、たばこの定価改正はすべて国会の審議を必要としてきたものであります。ところが、たばこ定価法の変更によって、今回、値上げ幅三〇%までは国会の審議を省き、若干の条件はあるにしてもほとんど政府にゆだねるということは、国会を軽視するのみならず、安易に値上げを行い得るための行政権力の拡大強化につながるものであります。これは、財政法の精神はもちろん、国民、消費者不在の中でたばこ価格が決まるという、財政民主主義の後退にほかなりません。
 したがって、第四の問題としましては、たばこ値上げが行われる際の諮問機関である専売事業審議会は現在わずか九名で構成されており、きわめて弱体というものであります。この審議会を強化しないならば、密室と弱体のそしりを受けることは必至となります。
 そこで、政府は、特に大蔵大臣は、これらの値上げに当たっては、より慎重に取り扱うことが求められていることは当然であり、各方面の意見をより徴するには、審議会の民主化と公開を図り、公社に働く人々の代表、消費者の代表、学識経験者、特に医学者、中でもがん研究者などなどの代表を加え、値上げの審議だけでなく、小売店の待遇改善、葉たばこの生産者等の権利と生活を守り、さらに喫煙者の健康問題、公社の運営など、広範な問題を審議する制度的措置が講ぜられることを強く求めるものであります。
 第五は、たばこの有害に対応する公社の怠慢についてであります。
 大蔵委員会における参考人の指摘されたところによれば、たばこの喫煙により四万六千人に及ぶ人が死亡し、たばこを吸うことによりがんの危険性はきわめて強く、平均五年の寿命を縮めることになり、特に婦人の喫煙による子供に対する有害性など、きわめて憂慮すべき研究結果も明らかにされております。厚生省のある室長の発表によれば、煙の代償は年に一兆一千億円と言われております。専売公社が国民にその害を正確に伝えることを怠ってきたことは、きわめて遺憾と言わなければなりません。
 公社はみずから率先して、かかる有害現状に対する研究の強化とその成果の発表、表示など、良心的に行うべきことを強く指摘するものであります。
 第六には、葉たばこ耕作関係であります。
 今日、国内原料葉たばこは、輸入たばこと過剰在庫の圧迫を受け、逐次減反が進められ、かつての耕作面積八万ヘクタールから、いまや五万ヘクタールにも縮小されてきております。このままでは、早晩壊滅の状況になることは必至と言わなければなりません。
 公社並びに政府は、専売制度の目的に沿って、葉たばこ耕作者の生活擁護の立場はもとより、総合的には、食糧などとあわせて自給率の向上のため抜本的対策を樹立すべきであり、今日までの海外依存を中心としたたばこ行政は許されないことを指摘し、強く政府に反省を求めるものであります。
 以上、数点にわたって反対理由を申し上げましたが、一言で言えば、インフレの促進を図り、国会の審議権を奪い、値上げによる収奪を強要し、公社としての自主性、独自性を阻害するものであります。専売事業推進に当たって、この法案は、国民との合意は得られないものと確信をするものであります。このことは、たばこの買い控えにつながり、政府の歳入財源の意図は必ずや崩れ去るものと存じます。
 以上をもって、私の、日本専売公社法等の一部を改正する法律案に断固反対の立場からの討論を終わるものであります。(拍手)
#13
○議長(灘尾弘吉君) 貝沼次郎君。
    〔貝沼次郎君登壇〕
#14
○貝沼次郎君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました日本専売公社法等の一部を改正する法律案並びに同修正案について、反対の態度を表明し、討論を行うものであります。(拍手)
 まず、反対する理由の第一は、政府が、当面の経済運営について物価の安定を主な課題としながらも、その責任を民間や国民生活に転嫁しようとしていることであります。
 最近の物価動向は、改めて指摘するまでもなく、昨年十一月以来の卸売物価の連騰、高水準で推移するマネーサプライ、加えて急激な円安傾向、地価の急騰などから、その先行きが大いに懸念されております。そのために、政府も、物価安定を図る意味も含めて公定歩合の引き上げに踏み切られたものと考えます。しかし、公定歩合の引き上げについては、民間からも、わが国の経済情勢が一時の最悪期からやや持ち直してきているとはいえ、いまだに安定成長が確立していないという観点から、時期尚早という強い反対意見があったこともまた事実であります。
 したがって、こうした時期に政府が優先すべき施策は、たばこ定価の引き上げなど必然性のない公共料金の値上げを積極的に抑制し、政府みずから物価安定の範をたれることであります。しかしながら、政府は、本年に入ってからだけでも、本日の議題であるたばこ定価の引き上げを初め、消費者米価、国鉄運賃、医療費、公立学校の入学金など一連の公共料金の強行値上げを画策しているのであります。これでは、政府が幾ら物価安定を強調しても国民は信用しないでありましょうし、また、企業の製品値上げに対しても政府は指導することができなくなるでありましょう。
 反対する理由の第二は、政府が直面する財政難を安易な大衆負担の強化によって克服しようとしていることであります。
 確かにたばこは嗜好品であります。しかし、その愛好者は三千五百万人にも及んでいることから、安易な値上げが大衆負担の強化につながることは明白であります。特に、今回の引き上げ理由は、その主たるものが財政上のものであって、公社の益金率及び総合納付金率を見ても、前回の引き上げ前ほど悪化していないことからもきわめて必然性を欠くものであります。これでは、財政難に便乗した値上げと指摘されてもやむを得ないのであります。
 しかも、値上げ率は、平均で二一%となっていますが、個別銘柄で見ると、ハイライトとわかばは二五%、しんせいは二八%と、より大衆的なたばこほど値上げ率が高くなっております。加えて、政府が五十四年度に所得税減税を見送り、五十五年度に一般消費税の導入を予定していることなど考え合わせると、これはやみくもに大衆課税の強化を図り、国民生活に犠牲を強いるものであり、とうてい容認できるものではありません。
 理由の第三は、今回の改正案が、たばこ定価の三〇%以内の引き上げならばその権限を大蔵大臣に与えるという、いわゆる法定制緩和を盛り込み、立法府たる国会の地位を著しく軽視していることであります。
 すなわち、たばこ定価は、その一定部分が専売納付金及び地方たばこ消費税となっていることや、今回の改正で税相当部分をより明示していることから、その性格が税であることは明らかであります。この課税については、憲法第八十四条で「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める條件によることを必要とする。」と、租税法律主義が規定されております。また、財政法第三条、財政収入と国会の権限では、租税のほか「国権に基いて収納する課徴金及び法律上又は事実上国の独占に属する事業における専売価格若しくは事業料金については、すべて法律又は国会の議決に基いて定めなければならない。」と規定されているとおりであります。したがって、政府は、憲法や財政法から見て、より厳格を期すべき課税や財政収入に対し、今回の改正のように、一回の審議で二回以上の値上げを認めさせようとしたり、あるいは都合のよい法解釈を押しつけることはきわめて遺憾であります。
 また、このことについて、われわれは本会議及び委員会の審議を通じて、その明確なる理論的根拠を求めてきたのでありますが、一向に明示されないのであります。しかも、われわれの法定制緩和削除要求についても、根拠なしにかたくなな姿勢をとっているのであります。こうした政府の姿勢は、まさに財政民主主義のルールを形骸化するものであると断言せざるを得ないのであります。
 理由の第四は、国民の強い要望であったたばこの輸入問題等対外諸国との調整や、喫煙と健康などの諸問題に対し、いずれも政府の明確な回答がなく、いたずらに国民の不安を助長させていることであります。
 対外調整問題及び専売公社の民営化論は、葉たばこ生産農家、公社職員、関連業種に従事する方々にとって、その成り行きは死活問題に直結する重大な問題であります。したがって、これらの問題について政府がその対策を一日延ばしに延ばすというあいまいな取り組みは、決して好影響を与えるものではありませんし、不満足であります。
 また、喫煙と健康の問題についても、多くの疫学的データから、肺がん、呼吸器疾患、脳卒中、心筋梗塞などと、統計的に見て相関関係があると指摘されています。しかも、本院の大蔵委員会でも、昭和五十年に「国民の喫煙と健康に関する関心にかんがみ、喫煙と健康に関する科学的研究を一層強化し、国民がより安心して吸えるたばこの供給に努めること。」という附帯決議がなされているのでありますが、その後、政府の答弁は、いつも、ただいま研究中のためはっきりしたことが言えないという趣旨であり、一歩も前進をしていないのであります。
 このように、政府は、たばこに関する諸問題についていずれも満足のいく回答をしようとせず、単に値上げのみ強行しようとすることは、とうてい国民の合意が得られるものではありません。
 以上の立場から、日本専売公社法等の一部を改正する法律案及び同修正案に反対し、私の討論を終わります。(拍手)
#15
○議長(灘尾弘吉君) これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
#16
○議長(灘尾弘吉君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#17
○議長(灘尾弘吉君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。(拍手)
    ―――――――――――――
 日程第二 船員の雇用の促進に関する特別措
  置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
#18
○議長(灘尾弘吉君) 日程第二、船員の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。運輸委員長箕輪登君。
    ―――――――――――――
    〔箕輪登君登壇〕
#19
○箕輪登君 ただいま議題となりました船員の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、運輸委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、本法の附則第二項に基づく就職促進給付金の支給に関する特別措置の対象業種である近海海運業、内航海運業、はしけ運送業、船舶製造・修理業の四業種において、今後も引き続き事業規模の縮小等がなされ、これに伴い、離職船員が相当数発生すると予想される状況にかんがみ、この特別措置の対象となる船員の離職日に関する期限を、他の不況対策立法の期限に合わせ、昭和五十八年六月三十日まで延長しようとするものであります。
 本案は、去る三月二日当委員会に付託され、四月二十五日政府から提案理由の説明を聴取し、五月八日質疑を行い、同日採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#20
○議長(灘尾弘吉君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#21
○議長(灘尾弘吉君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第三 防衛庁職員給与法の一部を改正す
  る法律案(内閣提出)
#22
○議長(灘尾弘吉君) 日程第三、防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。内閣委員長蔵内修治君。
    ―――――――――――――
    〔藏内修治君登壇〕
#23
○藏内修治君 ただいま議題となりました防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、予備自衛官手当の月額を二千円から三千円に改定しようとするものであります。
 本案は、三月十六日本委員会に付託され、三月二十日山下国務大臣より提案理由の説明を聴取し、四月二十六日質疑に入り、慎重に審査を行い、五月八日質疑を終了いたしましたところ、自由民主党の竹中修一君より施行期日に関する修正案が提出され、趣旨説明を聴取した後、討論に入り、日本共産党・革新共同の柴田睦夫君より反対の意見が述べられ、次いで、採決をいたしましたところ、本案は多数をもって修正案のとおり修正議決すべきものと決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#24
○議長(灘尾弘吉君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#25
○議長(灘尾弘吉君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。(拍手)
     ――――◇―――――
#26
○議長(灘尾弘吉君) 日程第四は、委員長提出の議案でありますから、委員会の審査を省略するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#27
○議長(灘尾弘吉君) 御異議なしと認めます。
    ―――――――――――――
 日程第四 繭糸価格安定法の一部を改正する
  法律案(農林水産委員長提出)
 日程第五 農業者年金基金法の一部を改正す
  る法律案(内閣提出)
#28
○議長(灘尾弘吉君) 日程第四、繭糸価格安定法の一部を改正する法律・案、日程第五、農業者年金基金法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。
 委員長の趣旨弁明及び報告を求めます。農林水産委員長佐藤隆君。
    ―――――――――――――
    〔佐藤隆君登壇〕
#29
○佐藤隆君 ただいま議題となりました両案について申し上げます。
 最初に、農林水産委員長提出の繭糸価格安定法の一部を改正する法律案について、提案の趣旨及びその主な内容を御説明申し上げます。
 日本蚕糸事業団は、繭糸価格安定法に基づき、その業務の一つとして、従来から蚕糸業の振興に資するための事業に対する助成を行ってきております。
 しかしながら、現行法によるこの助成事業は、中間安定等勘定における前々事業年度の利益金の額により毎年度の助成事業の額の範囲を定めることとしていることから、円滑な助成事業の実施ができにくい面があります。
 今回の改正は、このような実情にかんがみ、日本蚕糸事業団の中間安定等勘定に蚕糸業振興資金を設け、この助成事業のより円滑な実施を図ろうとするものであります。
 以下、改正案の主な内容について申し上げます。
 第一は、日本蚕糸事業団は、中間安定等勘定に蚕糸業振興資金を置くことができることといたしております。
 すなわち、事業団は、中間安定等勘定において残余を生じた場合には、翌事業年度にその一定割合の範囲内の額を蚕糸業振興資金に充てることができ、これを財源として、蚕糸業の振興に資するための補助及び出資を行うことができることといたしております。
 第二は、蚕糸業振興資金に充てることができる残余の額は、日本蚕糸事業団の昭和五十三事業年度の残余の額からといたしております。
 以上が、提案の趣旨及びその主な内容であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
 次に、農業者年金基金法の一部を改正する法律案について、農林水産委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、農業者の老後の生活の安定に資するため、昭和五十四年度において、昭和五十三年度の消費者物価上昇率が五%を超えない場合であっても、国民年金に準じ特例として年金給付の額の改定措置を講ずるとともに、農業後継者の確保に資するため、加入時期を逸し加入できなくなっている農業後継者について、加入の救済措置を講じようとするものであります。
 委員会におきましては、五月八日渡辺農林水産大臣から提案理由の説明を聴取し、五月九日に参考人から意見を聴取するなど、慎重に審査を行い、同日質疑を終局いたしましたところ、日本社会党から修正案が提出され、採決の結果、修正案を否決し、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 なお、本案に対し、附帯決議が付されました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
#30
○議長(灘尾弘吉君) これより採決に入ります。
 まず、日程第四につき採決いたします。
 本案を可決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#31
○議長(灘尾弘吉君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
 次に、日程第五につき採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#32
○議長(灘尾弘吉君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第六 通信・放送衛星機構法案(内閣提
  出)
#33
○議長(灘尾弘吉君) 日程第六、通信・放送衛星機構法案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。逓信委員長石野久男君。
    ―――――――――――――
    〔石野久男君登壇〕
#34
○石野久男君 ただいま議題となりました通信・放送衛星機構法案につきまして、逓信委員会における審査の経過及び結果を御報告いたします。
 本案は、通信衛星及び放送衛星の管理運用を効率的に行う通信・放送衛星機構を設立すべく、その設立の根拠法を制定しようとするものでありまして、その主な内容を申し上げますと、
 まず、この機構は、通信衛星及び放送衛星の管理運用を効率的に行うことによって、宇宙における無線通信の普及発達と電波の有効利用を図ることを目的として、一を限って設立される法人とし、その資本金は、政府及び政府以外の者の出資により構成されることとしております。そして、この機構の設立につきましては、発起人から申請があった場合、郵政大臣は、この法律に規定する基準に適合するか否かを審査して、認可することとしております。
 次に、この機構の組織につきましては、役員として、理事長、理事及び監事を置き、理事長及び監事は郵政大臣が任命するものとし、また、政府以外の出資者及び学識経験者から成る運営評議会を設け、機構の運営に関する重要事項を審議するものとしております。
 さらに、機構の業務としましては、通信衛星及び放送衛星について、他に委託して打ち上げること、位置、姿勢等を制御すること及び搭載無線設備を宇宙局の開設者に利用させること等を行うこととしております。
 その他、機構の財務、会計及び機構に対する国の監督等について所要の規定を設けております。
 なお、施行期日は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日としております。
 本案は、二月二十日国会に提出され、三月二十日本会議において趣旨説明があり、同日逓信委員会に付託されました。
 逓信委員会においては、四月十一日白浜郵政大臣から提案理由の説明を聴取し、慎重に審査を行いましたが、去る五月九日本案に対する質疑を終了し、討論もなく、採決を行いましたところ、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
 なお、本案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党及び新自由クラブの五党共同提案に係る附帯決議を付したことを申し添えます。
 以上、御報告いたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#35
○議長(灘尾弘吉君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#36
○議長(灘尾弘吉君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程 昭和五十二年度一般会計予
 第七 備費使用総調書及び各省各
    庁所管使用調書(その2)
    昭和五十二年度特別会計予
    備費使用総調書及び各省各
    庁所管使用調書(その2)
    昭和五十二年度特別会計予
    算総則第十一条に基づく経
    費増額総調書及び各省各庁
    所管経費増額調書(その  (承諾を求
    2)           めるの件)
 日程 昭和五十三年度一般会計予
 第八 備費使用総調書及び各省各
    庁所管使用調書(その1)
    昭和五十三年度特別会計予
    備費使用総調書及び各省各
    庁所管使用調書(その1)
    昭和五十二年度特別会計予
    算総則第十一条に基づく経
    費増額総調書及び各省各庁 (承諾を求
    所管経費増額調書(その1) めるの件)
 日程第九 昭和五十二年度一般会計国庫債務
  負担行為総調書
 日程第十 昭和五十二年度特別会計国庫債務
  負担行為総調書
 日程第十一 昭和五十三年度一般会計国庫債
  務負担行為総調書(その1)
#37
○議長(灘尾弘吉君) 日程第七、昭和五十二年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その2)外二件(承諾を求めるの件)、日程第八、昭和五十三年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その1)外二件(承諾を求めるの件)、日程第九、昭和五十二年度一般会計国庫債務負担行為総調書、日程第十、昭和五十二年度特別会計国庫債務負担行為総調書、日程第十一、昭和五十三年度一般会計国庫債務負担行為総調書(その1)、右九件を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。決算委員長加藤清二君。
    ―――――――――――――
    〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔加藤清二君登壇〕
#38
○加藤清二君 ただいま議題となりました各件について、決算委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、予備費等について申し上げます。
 これらは、財政法の規定に基づき、国会の事後承諾を求めるため提出されたものであります。
 そのうち、昭和五十二年度分は、昭和五十三年一月から三月までの間に使用が決定されたもので、一般会計予備費は、国民健康保険事業に対する国庫負担金の不足を補うために必要な経費等二十六件で、その金額は三百四十四億円余であります。
 特別会計予備費は、食糧管理特別会計等六特別会計の十件で、その金額は合計八百十九億九千二百万円余であります。
 特別会計予算総則第十一条に基づく経費増額は、郵便貯金特別会計等四特別会計の五件で、その金額の合計は三百四十六億五千七百万円余であります。
 次に、昭和五十三年度分は、昭和五十三年四月から十二月までの間に使用が決定されたもので、一般会計予備費は、サケ・マス漁業の減船に伴う漁業者の救済に必要な経費等四十九件で、その金額は一千三百四十五億一千九百万円余であります。
 特別会計予備費は、食糧管理特別会計等七特別会計の九件で、その金額は合計六百四十六億五千八百万円余であります。
 特別会計予算総則第十一条に基づく経費増額は、食糧管理特別会計等七特別会計の十四件で、その金額は合計百七十一億四千四百万円余であります。
 次に、国庫債務負担行為について申し上げます。
 昭和五十二年度一般会計分については、昭和五十二年発生河川等災害復旧事業費補助等三件に九十八億六千二百万円の範囲内で債務を負担することといたしたものであります。
 また、特別会計分につきましては、空港整備特別会計で、新東京国際空港空港用管制施設復旧整備等二件に九千八百万円余の範囲内で債務を負担することといたしたものであります。
 昭和五十三年度一般会計分については、迎賓館施設の整備に四億三千四百万円余の範囲内で債務を負担することといたしたものであります。
 委員会におきましては、昭和五十二年度の予備費等は昨年十二月二十六日、昭和五十三年度の予備費等及び国庫債務負担行為は本年二月二十七日にそれぞれ付託され、去る九日大蔵大臣から説明を聴取した後、質疑を行いました。
 質疑終了後、予備費等を討論に付し、自由民主党は各件に賛成、日本社会党及び公明党・国民会議は各件に反対、日本共産党・革新共同は、昭和五十二年度一般会計予備費及び昭和五十三年度一般会計予備費外二件に反対、その他の各件には賛成の意見が表明されました。
 次いで、採決の結果、各件はいずれも多数をもって承諾を与えるべきものと議決いたしました。
 次に、昭和五十二年度国庫債務負担行為外一件及び昭和五十三年度国庫債務負担行為については、採決の結果、全会一致をもって異議がないと議決いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#39
○議長(灘尾弘吉君) これより採決に入ります。
 まず、日程第七の三件中、昭和五十二年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その2)につき採決いたします。
 本件は委員長報告のとおり承諾を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#40
○議長(灘尾弘吉君) 起立多数。よって、本件は委員長報告のとおり承諾を与えるに決しました。
 次に、日程第七のうち、昭和五十二年度特別会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その2)及び昭和五十二年度特別会計予算総則第十一条に基づく経費増額総調書及び各省各庁所管経費増額調書(その2)の両件を一括して採決いたします。
 両件は委員長報告のとおり承諾を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#41
○議長(灘尾弘吉君) 起立多数。よって、両件とも委員長報告のとおり承諾を与えるに決しました。
 次に、日程第八の三件を一括して採決いたします。
 三件は委員長報告のとおり承諾を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#42
○議長(灘尾弘吉君) 起立多数。よって、三件とも委員長報告のとおり承諾を与えるに決しました。
 次に、日程第九ないし第十一の三件を一括して採決いたします。
 三件の委員長の報告はいずれも異議がないと決したものであります。三件は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#43
○議長(灘尾弘吉君) 御異議なしと認めます。よって、三件とも委員長報告のとおり決しました。
     ――――◇―――――
 日程第十二 エネルギーの使用の合理化に関
  する法律案(第八十四回国会、内閣提出)
#44
○議長(灘尾弘吉君) 日程第十二、エネルギーの使用の合理化に関する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。商工委員長橋口隆君。
    ―――――――――――――
    〔橋口隆君登壇〕
#45
○橋口隆君 ただいま議題となりましたエネルギーの使用の合理化に関する法律案につきまして、商工委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 御承知のとおり、わが国はエネルギー資源の大半を海外からの輸入に依存しておりますが、最近の国際石油情勢はますます流動的となり、エネルギー供給面の不安定な情勢は今後とも続くと見られております。
 したがって、わが国経済社会の安定的発展を期するためには、 エネルギー消費の増加に対応して、長期的に整合性と実効性のある総合的なエネルギー政策をより一層強力に推進する必要があり、その一環として、省エネルギー政策の推進が強く要請されているところであります。
 本案は、かかる観点から、エネルギー消費において大きな比重を占める工場、建築物及び特定の機械器具について、エネルギーの使用の合理化に関する措置を講じようとするものでありまして、その主な内容は、
 第一に、工場の事業者、建築物の建築主及び自動車等の特定機械器具の製造事業者に対し、それぞれエネルギーの使用の合理化に関する判断基準を示して合理化の努力を求め、必要な場合には勧告等の措置を講ずること。
 第二に、国は、エネルギーの使用の合理化を促進するために、金融上及び税制上の措置、科学技術の振興を図るための措置並びに国民の理解を深めるための措置等を講ずるよう努めなければならないこと、第三に、本法制定に伴い熱管理法を廃止することなどであります。
 本案は、昨年五月十二日第八十四回国会に提出され、以来、継続審査となってまいりました。
 今国会においては、去る十二月二十二日当委員会に付託され、四月二十四日江崎通商産業大臣から提案理由の説明を聴取し、以来、参考人から意見を聴取するなど、慎重に審査を重ね、五月九日質疑を終了いたしましたところ、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党及び新自由クラブの五党共同提案に係る修正案及び日本共産党・革新共同提案の修正案が提出され、採決の結果、本案は全会一致をもって五党共同提案に係る修正案のとおり修正議決すべきものと決した次第であります。
 この修正点は、金融上及び税制上の措置等に関する国の努力義務は、エネルギーの使用の合理化に関する措置にとどまらないものとすること、内外のエネルギー事情等の推移に応じ、本案の内容に検討を加え、必要な措置を講ずるものとする検討条項を加えることなどであります。
 なお、本案に対し、総合的な省エネルギー対策の拡充強化及び代替エネルギーの開発導入の推進等に関する附帯決議が付されましたことを申し添えます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#46
○議長(灘尾弘吉君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#47
○議長(灘尾弘吉君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。
     ――――◇―――――
 内閣総理大臣の発言(訪米並びに第五回国連
  貿易開発会議出席及び訪比に関する報告)
#48
○議長(灘尾弘吉君) 内閣総理大臣から、訪米並びに第五回国連貿易開発会議出席及び訪比に関する報告のため、発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣大平正芳君。
    〔内閣総理大臣大平正芳君登壇〕
#49
○内閣総理大臣(大平正芳君) 私は、四月三十日から五月七日まで園田外務大臣とともに米国を訪問し、カーター大統領と前後二回の会談を行ったほかバンス国務長官ほか関係閣僚、米国議会両院の指導者、米国財界人及び日本関係者等と懇談いたしました。さらに、ナショナルプレスクラブにおいて、わが国の内外経済政策、外交姿勢並びに日米関係の現状及び将来について演説を行いました。
 私の今回の訪米は、最近の国際情勢を踏まえ、世界経済のために日米両国が相協力して対処すべき諸問題及び当面の経済的懸案を含む二国間問題につき意見を交換し、その解決を促進するとともに、重要な国際政治全般につき相互理解を深めるためのものでありました。
 カーター大統領との会談は、相互の信頼と友好的な雰囲気の中で、日米経済関係、安全保障問題国際情勢、世界経済問題等幅広い分野にわたりました。会談の成果につきましては、私とカーター大統領との間の共同声明に表明されておりますが、この際、特に次の諸点を指摘しておきたいと思います。
 第一は、国際情勢についてでありますが、アジアを中心に意見交換を行い、日米双方がそれぞれの国際的責任を自覚し、互いに協力しつつ応分の役割りを果たしてまいることが、世界の平和と安定のために重要であるとの点で意見の一致を見ました。
 第二に、日米安全保障関係については、現在それが円滑に運営されているとの認識で一致を見ました。
 第三に、経済関係につきましては、日本は内需拡大や市場開放等を通じ、また、米国は、インフレ対策や石油輸入の抑制等を通じてそれぞれの国際収支不均衡の是正に努めるという中期的な展望をより明確にし、そのような展望のもとで、世界経済の安定的発展のために日米間の協力と話し合いを進めていくことにつき、意見の一致を見ました。
 また、エネルギー政策の協力的な推進のため、日米科学技術協力基本協定が成立いたしましたことは一つの成果でありました。
 政府調達問題を中心とする日米間の当面の貿易経済問題については、できる限り早期に解決すべく鋭意話し合いを継続することを相互に確認いたしました。
 また、六月に開催予定の主要国首脳会議につきましても、これを有益かつ建設的なものにするため、日米両国政府が十分意思疎通を図りつつ、かつ他の国々とも協力して準備を進めていくことについて意見の一致を見ました。
 さらに、カーター大統領御夫妻を主要国首脳会議の直前に国賓として日本に迎えることとなっておりますが、同大統領御夫妻の来日は、日米友好の見地からきわめて重要な意味を持つものと考えております。
 今回の訪米、特に米議会訪問を通じて、改めて日米貿易経済問題についての対日批判の根強さを感じました。私は、これら批判に対し、日本の立場を説明し、議会指導者等の理解を求めてまいりましたが、今後とも、日米両国のためのみならず、世界経済全体のために、今般の会談を通じて日米間において意見の一致を見たところにのっとり、引き続き精力的に努力する必要があると考えます。
 今回の訪米により、私とカーター大統領との間に、一層の理解と信頼が深まったと感じており、双方は今後とも緊密な接触を維持することに意見の一致を見ました。さらに、日米が協力して世界の平和と安定のためにそれぞれの役割りを果たしていくべきことが再確認されたことは、日米関係を一九八〇年代に向けて実り豊かなパートナーシップとして築き上げていく上できわめて重要な成果であったと考えております。政府としては、今後とも米国との協力、協調関係を基礎としつつ、わが国の国際社会に対する応分の責任を果たしてまいる所存であります。
 私はまた、五月九日より十一日まで、第五回国連貿易開発会議総会において、わが国の南北問題に対する姿勢を明らかにいたしますとともに、日比関係及び日本とASEAN諸国との関係の一層の強化を図るため、園田外務大臣とともにマニラを訪問いたしました。
 UNCTADの今次の総会は、第三次国連開発戦略の策定を明年に控え、八〇年代の南北対話の方向づけ、そのための枠組みづくりを行い、二十一世紀に向かって、南北関係の展望を示す機会として重要な意義を有するものであります。
 わが国はアジアの先進国として南北問題に積極的に貢献を果たしてまいる立場から、南北問題に対するわが国の基本姿勢を表明するとともに、本総会の成果を六月下旬の主要国首脳会議に反映させるため、私自身出席することにいたしました。
 わが国は、発展途上国の描く新国際経済秩序への共感を表明し、わが国の経済力にふさわしい国際的責任を果たすため、共通基金の第二の窓について日本が国力にふさわしい拠出を行う用意があること、及びODAの質量両面にわたる改善についての決意を述べますとともに、特にその中心を国づくりの基礎としての人づくりと農業開発に向ける用意のあることを申し述べました。
 今次のフィリピン訪問では、長年の懸案であった日比友好通商航海条約の署名が行われ、また、マルコス大統領との会談では、きわめて打ち解けた雰囲気の中で、アジア全体の平和と安定という見地より日比関係の一層の増進、アジア問題、とりわけインドシナ問題等につき意見を交換いたしました。
 なお、私は、福田前総理がマニラで明らかにされた対東南アジア政策の三原則にうたわれたASEAN重視の姿勢を明確にいたしますとともに、人づくりへの協力重視との関連で、受け入れ国が希望すれば対ASEAN奨学資金構想を実現する用意のあることを表明いたしました。
 さらに、私は、マニラ滞在中のフレーザー豪州首相と会談し、現在行われている第五回UNCTAD及び来るべき主要国首脳会議で議題として予想される主要な国際経済問題につき、有益な意見の交換を行いました。
 さらに、日豪両国が関心を有するアジア・太平洋情勢、両国貿易・経済関係を中心として、建設的な意見の交換を行いました。
 以上が、私の米国訪問及び第五回国連貿易開発会議出席及びフィリピン訪問についての概要の報告であります。わが国の果たすべき国際的責任と役割りの遂行につき、一層の御理解と御支援をお願いする次第であります。(拍手)
     ――――◇―――――
 内閣総理大臣の発言(訪米並びに第五回国連
  貿易開発会議出席及び訪比に関する報告)
  に対する質疑
#50
○議長(灘尾弘吉君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。川崎寛治君。
    〔川崎寛治君登壇〕
#51
○川崎寛治君 今日、世界は、政治的にも経済的にも大きな構造変化の過渡期にあります。激動する国際情勢の中で、国民生活の安定と平和の確保を図ることは国会に課せられた最重要の課題であります。
 私は日本社会党を代表して、ただいま報告のありました日米首脳会談並びに国連貿易開発会議などについて、大平総理にお尋ねしたいと思います。(拍手)
 大平総理や園田外務大臣は、手放しで今回の日米首脳会談を大成功と評価していますが、決してそうではありません。アメリカペースで終始した会談は、日本国民に重い負担を担わせました。政府調達問題は外交交渉の拙劣さを暴露しました。日米安保はアジア安保、世界安保へ拡大し、軍事力の増強を約束し、アメリカの世界戦略の枠内における日米協力にすぎないことがますます明らかになったのであります。
 お尋ねしたい第一は、安全保障関係であります。
 共同声明は、日米二国間の関係にとどまらず、・広くアジア、世界の諸地域での日米両国の密接な防衛協力をうたっています。
 大平総理、あなたは、総裁選当時は外交努力を含む幅広い総合安全保障政策を強調していたはずであります。しかし、総理就任とともに姿勢を一変しました。防衛大学の卒業式では、軍事力の増強が総合安保政策の根幹だと主張するまでに至ったのであります。
 日本の軍事力増強を土台とした日米安保体制のアジア安保、世界安保への転換を企図する日米間の緊密な協力関係が、日米共同声明の言うようにアジアにおける平和と安定の礎であるはずはありません。むしろ、それはアジアと世界の緊張を激化させ、平和を脅かす根源になっています。
 日米共同声明は、このように日米安保体制の危険な転換点をなすものです。日本国民の願いは、こうした方向にはありません。アジアと世界の平和創造、敵対する諸勢力の本質的な和解の達成への積極的な役割りを日本が担うことにあると思います。大平総理の見解を伺いたいのであります。(拍手)
 特に、朝鮮半島に関しては、二つの朝鮮への分断固定に向けて共同行動をとることを共同声明は確認しています。今日、日本がしなければならないことは、朝鮮半島における緊張緩和と自主的平和的統一へ向けて、南北差別のない経済協力関係や、人的、文化的交流の具体的活動の展開でなければなりません。大平総理の明確な方針を示していただきたいのであります。
 なお、この際、金大中氏事件についてお尋ねします。
 金大中氏事件の第一次政治決着は、総理、あなたが外務大臣のときにつけられました。あなたと同じクリスチャンである一人のすぐれた民主政治家が、自来六年間、自由と人権を奪われ、また、日本の主権は侵害されたまま、まいっておるのであります。
 韓国中央情報部の介入は明白になりました。公権力の介入が明らかになれば政治決着を見直すとあなたは約束しました。田中元、福田前総理も繰り返し約束しました。大平総理、あなたは見直しを恐れています。なぜできないのですか。米韓で確認されていることが、何がゆえに日韓では明らかにできないのでありますか。田中元法務大臣は、日韓癒着だからだと言明しました。本院予算委員会、決算委員会で繰り返し取り上げられたソウル地下鉄汚職で、自民党の首相経験者二人に一億五千万円渡っていることが検察、国税庁で確認されていることも報道されています。自由と人権の回復を妨げ、日本の主権の回復をあえて進めようとしない自民党政府の外交は秘密外交であり、韓国の国益を守り日本の国益を放棄する日韓癒着にほかなりません。(拍手)
 大平総理、大平内閣の寿命には限りがあります。しかし、人権と自由、国の主権を守ることは永遠の課題であります。ちゅうちょすることなく、政治決着を白紙に戻し、金大中氏の原状回復を図るべきであります。大平総理の勇気ある決断を求めてやみません。(拍手)
 次には、軍縮の問題でお尋ねをします。
 総理は、プレスクラブの演説では、あえて、世界は米国の強さを背景とした確固たるリーダーシップを期待しているとまで直言していますが、これはアメリカの世界戦略への追随でしかありません。今日、世界は、人類の願望に反してますます軍備増強の方向にあります。昨年の国連軍縮特別総会において、ワルトハイム事務総長は指摘しました。世界じゅうの軍事費は、年間四千億ドルにも達しております。その五%を削減して開発援助に回せば、その額は二百億ドルにも上るのであります。平和憲法を掲げる日本こそ世界軍縮へのイニシアチブをとるべきではないでしょうか。まさに、そのことが日本の世界平和への最大の貢献の道であると確信をいたします。総理の見解を伺いたいのであります。
 次の問題は、日米経済摩擦への対応についてであります。
 今回の日米首脳会談のもう一つの主題であった日米間の経済摩擦への対応においても、大平内閣は危険な方向に踏み出しました。
 第一に、日米間の経済摩擦の解消のために、共同声明で、内需の拡大、日本の市場の開放、黒字減らしなどを対外的に公約し、その上、個別経済問題にすぎない政府間調達問題については東京サミット前に解決することを約束しました。ことし一月末のジョーンズ報告でも明らかなように、アメリカの政府、議会、産業界は一体となって、実質成長率七%の公約の達成、赤字国債増発による景気拡大、日本の製品輸入化率の引き上げ、産業構造の転換などの対日要求を公然と突きつけて、本来わが国の経済主権にかかわる経済政策全般のあり方や産業政策、金融財政政策の変更を強要しています。自由貿易主義に反する内政干渉であります。今回の共同声明で、これらの不当な要求に屈して、日本の経済主権を放棄し、これらの政策変更を外国政府に約束するに至った点で、大平内閣の責任はきわめて重大であります。
 第二に、日米間の経済摩擦は、もともと日米双方の政府の経済政策に責任があります。日本の歴代自民党政府の輸出至上主義、国民生活無視の高度経済成長政策が一方にあり、他方には、実質上の基軸通貨としてのドルの地位を利用して、世界の憲兵としての軍事支出や海外援助を進め、石油輸入削減を行わず、慢性的なドルの海外たれ流しとインフレ政策に何ら歯どめをかけ得なかった米国政府の重大な責任があります。IMF、ガット体制の崩壊をどう再建していくかが、日米経済摩擦を解決していく上での国際的な枠組みとならなければなりません。変動為替相場制による円の切り上げ政策によって自国の国際競争力の強化を図り、それが成功しないとわかるや、日本の経済主権に公然と介入するカーター政権の姿勢は厳しく批判されなければなりません。この点についての大平総理の所見を明らかにしていただきたいのであります。
 電電公社問題に関する対米交渉は最も拙劣、屈辱的なものでした。基本方針がないまま理不尽なアメリカの要求に屈し、交渉内容はばらばらと、新聞に報道される始末でした。中期、長期の産業構造転換においては、電気通信産業は知識集約産業として発展させなければならないものであります。その展望をどうお持ちでしょうか。私は、交渉経過について、政府の最高責任者としての総理の責任を追及するとともに、電電公社問題解決の方針を明らかに示していただきたいと思います。
 次にお尋ねいたしますことは、南北問題への取り組みの姿勢についてであります。
 大平総理は、国連貿易開発会議の第五回総会で南北問題への日本政府の基本方針を明らかにされました。しかし、この基本方針は、南北問題の正しい解決を図るものでは決してありません。南の発展途上国の求めているものは、二月にタンザニアで七十七カ国グループが採択したアルーシャ決議に示されていますように、現行秩序の不公平かつ不正義が発展途上国の開発を阻害しているとして、国際経済秩序の根本的な構造改革、すなわち新国際経済秩序の確立であります。
 ところが、大平内閣の基本方針は、政府開発援助の増額と借款条件の改善、国際的目標である対国民総生産比〇・七%援助への接近などを提起しているだけであります。発展途上国から見れば、南の要求のつまみ食いにしか映っていないのであります。現に、南北協調は人づくりからという第五回総会での大平総理の演説に対して、発展途上国の政府代表の多くや地元新聞記者からは、平板で具体性に乏しい、説得力に欠け、新経済秩序に消極的だ、エコノミックアニマルの汚名を薄めようとしているにすぎないなど、強い不満が上がっていると伝えられております。
 日本の対外経済政策が国際的な非難を浴びているのは、日本の取り組み方が、日本対アメリカ、日本対EC、日本対ASEANといった、そのときどきの相手側との間に起きる危機の打開ばかりを考えているからであります。世界共通の危機であるインフレや失業あるいは貧困や飢え、公害などに対処していく心構えや政策の確立を急がなければならないのであります。UNCTADマニラ総会が終わるとすぐに東京サミットが始まります。八〇年代を展望し、日本は南北のかけ橋として平和的な世界秩序の創出、地球的な共同体の形成に役割りと責任を果たさなければなりません。大平総理の見解を明らかにしていただきたいのであります。
 最後に、私は、大平総理の政治姿勢についてお尋ねします。
 航空機疑惑捜査はついに巨悪を取り逃がし、日商岩井不正事件に終わりました。疑惑解明について、大平総理は本気で取り組もうとしたでありましょうか。三木内閣のそれよりもはるかに後退したものであると国民は受け取っています。
 ロッキード、ダグラス、グラマン事件等における軍用機、民間機購入に関する汚職はすべて、日米安保体制のもとで、軍事力の増強や黒字減らしのための緊急輸入などの政策と密接に関連しています。そして、総理大臣や防衛庁長官や、その経験者などがかかわっている政権がらみの構造汚職でありました。それはまさに日米安保汚職でありました。たび重なる構造汚職とあいまいな決着に国民の怒りは頂点に達し、政治への不信はますます深まっています。
 私は、与党自民党の諸君に申し上げたい。諸君は国政調査権を骨抜きにしようとしています。それは国会の自殺行為であり、諸君は自由と民主主義の墓掘り人になろうとしているのであります。証人喚問、灰色高官の氏名を公表し、政治的、道義的責任を国民の前に明らかにするとともに、不正支払い防止の制度確立のために国会は全力を挙げなければなりません。
 大平総理、航空機疑惑の徹底解明と、あなたが予算委員会で約束された会計検査院法の改正や日本版SECの新設など、構造汚職根絶についての決意を国民の前に明らかにされることを求めます。
 また、古井法務大臣からも、汚職防止制度確立の方向を明らかにされることを要求して、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣大平正芳君登壇〕
#52
○内閣総理大臣(大平正芳君) 安全保障に関する私の姿勢についてのお尋ねがまず最初にございました。
 私は、安全保障は総合的に考えるべきものであると思っております。防衛力だけで足れりとするものではございませんが、防衛力が重要であると私は考えております。これが私の一貫した考え方でございまして、最近、私の姿勢を変えたということはございません。わが国といたしましては、国際社会全体の平和と繁栄に尽くすこと自体が、みずからの平和と繁栄を確保する道であることはよくわかっております。あくまでも平和国家としての立場から、広く世界の平和と安定のために、わが国にふさわしい外交的、政治的責任と役割りを果たしてまいる覚悟でおります。川崎さんが仰せになりましたように、平和の創造、争いの和解に徹せよというお考えは私も全く同感に存じます。
 それから第二に、朝鮮半島の問題についての御質疑でございました。
 朝鮮半島の将来は、基本的には朝鮮半島における南北の両当事者が決定すべき問題であると考えます。したがいまして、去る七二年七月、南北双方は共同声明を発表いたしまして、自主的、平和的統一に踏み出したわけでございますし、最近におきましても、南北両当事者間におきましては対話再開について新たな動きが見られたようでございます。なお南北の立場には相当の隔たりがあるようでございますが、わが国といたしましては、対話が再開されまして実りある成果を上げることを期待いたしたいと考えております。
 一方、政府といたしましては従来より、朝鮮半島の緊張緩和のための国際環境づくりに可能な限り貢献したいと考えております。具体的には、米中ソを初め、各国首脳等との会談の機会に、朝鮮半島の緊張緩和の必要性を強調する等の努力を払っておるつもりでございます。
 第三には、軍縮についてのお尋ねがございました。
 御指摘のように、今度の日米共同声明には、なるほど軍縮一般については言及いたしておりません。けれども、米ソ間の第二次戦略兵器制限交渉につきましては、その妥結への努力を支持することを明確にいたしております。また、川崎さん御指摘のように、世界各国の総意に基づきまして、より多くの資源が、開発援助ばかりでなく、広く世界の経済的開発に向け得ることになれば大変結構なことだと私も考えております。
 いわゆる金大中事件についてのお尋ねがございました。これに関連して、アメリカ国務省はKCIAのこの事件に対する関与を意味する秘密公電の存在を認めたが、政府は政治的決着を見直す意思はあるかというお尋ねでございました。
 この事件に関しましては、これまでも事件の真相究明のための努力がなされてきております。今回、本件事件に関する米国国務省の文書が公開されたことに対し、政府は米側にその提供を要請し、まずその内容の調査を行っておるところであります。今後の対応ぶりに関しましては、右調査結果を踏まえて、捜査当局の意見も徴した上で慎重に検討してまいりたいと思います。
 なお、金大中事件の政治的決着につきましては、当時の政府が大局的見地から決断を下したものでございまして、軽々にその見直しを論ずることは差し控えたいと思います。
 次に、経済政策についてのお尋ねでございました。
 今度の訪米を通じまして大きな荷物を背負ってきたのではないか、経済主権を放棄したのではないかという極論が示されたのでございますが、そういうことはございません。先般のカーター大統領との会談では、世界経済の安定的発展のために日米それぞれが何をなすかを語り合い、その結果は共同声明に盛られておるとおりでございます。それは、一方が他方に干渉して制約を課するようなものではございません。日米両国がそれぞれ積極的に世界経済への貢献の方途につき具体的な方針を明確にし、両国間の相互理解と協調を基礎としてこの共同声明が書かれてあるわけでございます。そのように御理解を賜りたいと思うのであります。
 川崎さんは、IMF、ガット体制は崩壊したではないか、国際経済体制の立て直しがいま必要なときに来ておるのではないかという御見解でございました。
 私は、いささか見解を異にいたします。IMF、ガット体制は、いろいろな問題はございましたけれども、過去三十年以上にわたりまして、国際経済社会の変化に効果的に対応して、世界経済の安定を支える枠組みとして有効に機能してきておるものと私は考えております。その背後には、日、米、EC等、各国がそれぞれの責任を自覚いたしまして、国際協調の精神に立脚して、情勢の変化に対処してきたからであると思います。最近の事例といたしましても、東京ラウンド交渉が実り、これによりまして今後長期にわたる開放貿易体制の基盤が拡充強化されることが期待されておるわけでございまして、わが国は今後とも、世界経済の安定的な発展を確保するために、各国と協調いたしまして、IMF、ガット体制を堅持してまいらなければならぬと考えております。
 次に、電電公社問題の処理と、わが国の今後の産業構造のあるべき姿についてのお尋ねでございました。
 私は、わが国の産業の発展は、川崎さんが御指摘のように、知識集約的な産業を目指すことが一つの大きな道標であろうと考えておりますが、同時に、わが国はこういう資源のない国といたしまして、国際的な開放体制を維持してまいることがわが国の国益に合致するゆえんであると考えております。したがいまして、この両方の要請を賢明に調整いたしました上で個々の問題を解決して、適正な解決点を見出さなければならぬと考えておりまして、電電公社問題につきましても、そういう観点からいま鋭意解決の枠組みについて相談をいたしておるところでございます。何とかサミット前にこの問題を解決の軌道に乗せたいと、鋭意努力をいたしておるところでございます。
 南北問題についてのお尋ねでございました。
 御指摘のように、わが国といたしましては、開発途上国が国づくりに邁進する意欲を十分にそのアルーシャ宣言において明らかにしておることに共感を覚えておるものでございます。と同時に、今後の世界経済が新しい秩序を形成するのでなければならないということにつきましても共感を覚えるものでございますけれども、こういった問題は、非常に壮大な、時間のかかる、手数のかかる巨大な問題でございますので、また開発途上国だけの力でできるわけでもございませんので、先進国、開発途上国、力を合わせまして、建設的な協力をするところから解決の糸口が見出されるものでございまして、わが国はそういう立場に立ちまして、開発途上国の決意とビジョンに対しまして共感を覚えつつも、建設的な先進国との間の協力を求めながら、引き続き経済協力を進めてまいるつもりでございます。
 最後に、航空機輸入に絡まる疑惑の問題につきましてお尋ねでございました。
 この問題は、捜査当局の努力によりまして一応の段落がついたわけでございますけれども、政治的道義的責任の追及は本来国会において行われるべきものであると承知いたしております。国会の国政調査権の実行に当たりましては、政府といたしましてもできる限り御協力を申し上げてまいるつもりでございます。
 一方、今後再びかかる事件の再発を招かないようにする対策が重要でないかという御指摘は、仰せのとおりでございます。政府といたしましては、すでに、ロッキード事件を契機といたしまして、種々対策を講じてまいっておるところでございますが、今回の事案を契機といたしまして、さらに新しい視点から実効ある防止対策を検討いたしまして、政治倫理の確立等を図るべく、本日の閣議におきまして了解を得て、私の諮問機関として、航空機疑惑問題等防止対策に関する協議会を設置いたしました。この協議会では、政治や企業の倫理の確立、行政の公正を図る等の観点からいろいろ御検討をいただきまして、その意見を政府の施策に反映させたいと考えております。
 それから、一方、SECと同様な機関を日本に設けるつもりはないかということでございますが、証券行政の観点からはその必要を私どもは認めていないのでございますが、しかし、この問題につきましてはまたアメリカと日本との間の法制の仕組み全体に差異がある問題もありまするし、一方、政策上工夫しなければならぬいろいろの問題もありますので、この問題は、会計検査院の権限強化とあわせまして、慎重に検討を要するべき問題と考えております。
 会計検査院の権限強化の問題につきましては、会計検査院自体において関係方面との調整に努めておられるようでございますが、まだ十分な調整がついた段階とは聞いておりません。この問題は、行政から一応独立した機関の権限をどういう範囲に認めるかという、立法政策上重要な問題でございますので、先ほど申しましたように、慎重に今後検討すべき問題と考えております。(拍手)
    〔国務大臣古井喜實君登壇〕
#53
○国務大臣(古井喜實君) 航空機購入をめぐる疑惑問題等の再発防止対策についてお答えを申し上げます。
 これにつきましては、まずもって発生した事案の真相を究明して、これに対して厳正な処理をすることが将来への最善の防止対策であるという観点から、法務、検察といたしましてはできるだけの努力を尽くしたつもりでおります。しかし、今回の処理については、国民の間に割り切れない気持ちを残したことも覆えないと思っております。考えてみなければならぬと思います。
 たまたま本日の閣議におきまして、先ほども総理が言われましたように、防止対策のために閣僚及び閣外の有識者をもって協議会をつくって、ここで真剣に討議しようということに相なりましたので、この協議会の場において、きょうの時点に立って、法務省所管の分野のみならず、私といたしましても広く各般の問題について十分論議、検討をし、他面において国会における御論議等を深く傾聴いたしまして、ただ刑罰法規の整備だけではなく、また予防的な行政的なチェックシステムなども含め、さらにさかのぼって、何ゆえにこういうことが起こるかというようなことに対する、根本問題に対する対策なども含めて十分論議を尽くして、実効のある対策を実現をしていきたい、そのために最善を払っていきたいと思っておりますので、さように御承知をお願いいたします。
    ―――――――――――――
#54
○議長(灘尾弘吉君) 渡部一郎君。
    〔渡部一郎君登壇〕
#55
○渡部一郎君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、総理に対し、ただいまの御報告に関連し、若干の質問を行いたいと存じます。
 大平首相、御就任以来、故意に、わが国にとって死活の重要性を持つ日米関係の調整を放置されまして、じんぜん日を送っておられることに対しまして、私どもは強い不満を表明してまいりました。今回の訪米、首脳会談に大きな期待を持って見ておったのでありますが、発表された共同声明については、いたずらに抽象的、羅列的であり、内容は不可解、失望を禁じ得ないものであります。
    〔議長退席、副議長着席〕
 まず、共同声明は「千九百八十年代に向っての実り豊かなパートナーシップ」という表題がついておるのでありますが、この実質的な意義から御説明を願いたい。
 また、共同声明の第一項に述べられている「日米両国が分かち合う政治上及び経済上の理念」とは何か。また、「世界における両国」、なかんずくわが国の「責任」とはどういうものなのかも、この際、明確にしていただきたいと思うのであります。
 大平内閣は、組閣以来、一九八〇年代に向かっての国内的、国際的政治ビジョンをまだ何も国民の前には示しておられませんのに、共同声明でポーズのみの言葉が先行することは許されないのであります。もし、総理が八〇年代へ向けてのビジョンというものを取り上げられるならば、国民の代表である本院において、まずここに具体的に明らかに説明せらるべきでありましょう。
 総理と大統領は、日米の安保関係が現代ほど強く、かつ有益であったことはないとして、その理由を、日米防衛協力の指針の採択、米国からの防衛装備の調達の増大、米軍の在日駐留費の日本側財政支援の増大などを挙げ、日本側の負担増のみを高く評価し、また総理は、日本の自衛力の質的改善のために努力することを明らかにしているのであります。このようなお約束は具体的に何を意味するものでありましょうか。まず、こうした措置を必要とするような国際情勢が発生したのかどうか、なかんずくソ連の極東への伝えられる軍事的増強をどのように認識しておられるのか、御説明を賜りたいのであります。
 また、大平総理が述べられてきた総合的安全保障政策の実態というのは軍事力の強化であったかとの批判もこの際強いのでありますから、あわせて御説明をいただきたいのであります。
 P3C、F15、E2Cなど、最新鋭兵器を米国から調達したわが国が、さらに共同声明の中で「質的改善」を図ると約束されたのはきわめて重大な発言と言わざるを得ないのであります。この点も御説明を承りたい。
 総理は、一日のアメリカ・マスコミとの会見において、わが国の防衛費負担はGNP一%でコンセンサスができており、これ以上でもこれ以下でも国民は納得しないと述べられたのでありますが、この根拠は何でありましょうか。こうした国民的コンセンサスがいつでき上がったのかもお伺いしたいのであります。逆に、政府は、いかなる場合においても上限としてGNPの一%を超えるような防衛費は認めないという方針であるかどうかも、この際改めて明らかにしていただきたいと存ずるのであります。
 国際関係については、対中・対ソ外交について日米共同声明では全く具体的な内容が示されておりませんけれども、SALTUの協定締結寸前でもありますから、当然お話にも出たことであろうと思いますし、御説明をいただきたい。
 また、朝鮮問題について、同半島における緊張緩和のために協力するとの合意は、何らかの行動、計画が予定されたものなのかどうなのか、北側との国交樹立というような平和的な一歩前進の方途を日米両国とも考えておられるのかどうか、この辺も御説明をいただきたい。
 また、第三に、インドシナ問題についてであります。
 共同声明では、この地域における緊張緩和のための最善の努力を払うとしているのでありますけれども、日米両政府は、カンボジア問題、中越紛争に関し、いかなる認識を持っておられるのかどうか、また、両国が払う「最善の努力」とは何なのか、それぞれ明らかにしていただきたい。また、共同声明では、ベトナムのソ連基地提供について懸念を表明しておられますが、すでにソ連・ベトナム外交当局と日本外務省との接触において、カムラン湾におけるソ連海軍の所在というものは明らかでありますし、その影響というものは軽視できないものであります。この際、政府としては、共同声明に基づいてどういう行動に出られるのか、また、ベトナム援助など対ベトナム政策を変更することになるのかどうなのかも伺いたいのであります。
 第四に、インドシナ難民問題についてであります。
 ベトナム政府がこうした大量の難民をつくり出しつつあることについて、その実態はどうか、お伺いしたい。
 また、わが国政府は、当然こうした問題について毅然とした態度であるべきでありますが、さらに、現在すでに存在しております数十万と言われる難民に対して、人道的かつ適切な措置というものをとるべきでありましょう。去る四月三日の閣議決定で、わずか五百人の定住実現に努力するということを御決定になりましたけれども、数十万のインドシナ難民に対する香港、マレーシア、タイ、アメリカ、フランス、オーストラリア、カナダ等々の諸国と比べて、きわめて冷淡と言わざるを得ないのであります。この際、誠意を持った外交施策をとるべきではないかと思いますが、政府の所信をお伺いしたいのであります。
 また、懸案の難民条約に政府は参加する意思はあるかどうかもお伺いしたい。
 また、日本国内にあるベトナム系難民に対しても、帰化の促進、就職の便宜化など適切な措置をとるべきだということは常に問題になっているところでありますが、これもあわせてお伺いしたいと思いますが、どうでしょうか。第五に、中東問題についてであります。
 日本としてアラブ中東政策は必ずしも明確でないまま今回の日米会談に臨まれたわけでありますが、アラブ諸国の意向をある意味では顧みることなく、エジプト・イスラエル平和条約をのみ高く評価したわけであります。わが国の中東政策はいかなるものか、中近東アラブ友好外交を今後どう進めていくか、これは大きな問題でありますが、この際、明らかにしていただきたいと存ずるのであります。次に、日米経済関係に取り組む政府の姿勢についてお伺いいたします。総理に対し、まず、今回の訪米あるいは共同声明によって、日米経済摩擦は解消できると考えておられるのかどうか、率直な御見解を承りたい。
 第二に、共同声明で示された日米合意の具体的内容と、その実現の方途についてであります。
 日米共同声明では、日米両国は「今後数年間にわたって各々が遂行する基本的政策につき、明確な了解に達した。」と述べ、二国間で継続して討議することで「意見の一致をみた。」としております。そして、その討議は「個々の措置に焦点をあてるものではないことを認めた。」とされているのでありますが、まずお伺いしたいのは、ここにある日米両国の「基本的政策」とは何かということであります。基本的政策を確認し合ったのみで、個々の措置に焦点を当てないのでありますならば、当面する日米経済摩擦というものは解決するはずがないのであります。たとえば、わが国政府が公約した内需の拡大、日本市場の一層の開放について、どこまで進めればアメリカ側は満足するのか、その公約を実現する具体策というものをお伺いしなければならぬのであります。共同声明によって日米経済摩擦に終止符が打たれたとは考えられない。依然として残されておりまする電電公社の門戸開放を初めとする諸懸案について早期に決着が可能なのかどうか、その目途と政府の方針を示していただきたい。
 また、今後、わが国の経常収支の不均衡が改善されたといたしましても、対米黒字が減少しない可能性はきわめて高いわけであります。大統領選挙を目前にしたアメリカでは、次から次へと別の個別問題を提出されて、それをわが国に突きつけてくるという可能性というのはきわめて多いわけでありますけれども、そうした事態は回避される見通しがあるのかどうか、わが国企業が大きく心配している点もあわせて明確にしていただきたいと思うのであります。
 第三は、今回の共同声明に対する米国議会の反応であります。
 米国議会においては、対日貿易不均衡に関する強硬論が根強く存在しておると見られております。今回の共同声明は、ジョーンズ・レポート等に象徴される最近の米国議会の討議に対しても説得力を持つものであるかどうか、この辺も率直な御意見を承りたいのであります。
 第四に、エネルギー問題についてであります。
 総理が持たれているエネルギー問題についての基本的な見解をお伺いしたい。
 今回の日米首脳会談の際に締結された日米エネルギー技術協力協定は、私ども高く評価しているものであります。わが国政府としては、エネルギー技術の早期完成のため特段の配慮を望むものでありますが、いかがでしょうか。
 また、今回の共同声明の中に「日本と米国が、必要かつ経済的正当性を有する原子力開発計画に不当な制約を課することを避けつつ、」とありますけれども、これは、現在、日本が核燃料サイクルを独自に確立するための再処理工場や高速増殖炉の計画についての日本の方針を理解し、制約しないという何らかのめどが立ったのかどうか、これもあわせてお伺いしたいのでございます。エネルギー問題は重要な問題であり、この際、政府として、これに対する特段の姿勢を示されることを希望するものであります。
 次に、わが国の南北問題に取り組む姿勢について、このUNCTAD第五回総会の出席とあわせ、総理の御見解を求めます。
 総理が今回、日本の総理大臣としては初めて第五回総会へ出席され、開発途上国の声を直接耳にされるとともに、わが国の基本姿勢を説明されたという、その積極的姿勢については評価いたします。しかし、その反面、その具体的内容はきわめて抽象的だという批判が数多く存在するのであります。南側世界に対する日本の依存度が他の先進国に比べてきわめて高いのがわが国の特色であります。七七年実績から見ましても、輸出で四七%、輸入で五六%、対外投資で五七%に上る現在、uNCTADに対する態度がおざなりであるということになりますと、深刻な事態を引き起こさなければなりません。
 総理は、本年二月開発途上国七十七カ国グループが合意したアルーシャ宣言に対し、大きな感銘と深い同意という言葉で、アルーシャ宣言に凝縮された南側の立場に理念としての共鳴ないしは賛意を示されました。しかし、このような後発開発途上国に対する一般特恵関税特別措置にせよ、共通基金への拠出にせよ、ODAの質の改善にせよ、いわゆる人づくりへの協力にせよ、今後日本が進めていく行動は、いずれも大綱は示されておりますけれども具体的な点で明らかではありません。総理のアルーシャ宣言に対応する具体的、政策的取り組みをまず明示していただきたいのであります。
 次に、総理は、開発途上国との貿易について演説され、東京ラウンドに臨む決意を披瀝されましたが、開発途上国としては、現実的に東京ラウンドそれ自体に不満を表明しているのであります。この不満をどのように評価し、どういうように受けとめていこうとなされているか、お伺いしたいのであります。
 さらに、一次産品共通基金の「第二の窓」について、任意拠出についても応分の協力を行う所存であるとの演説でありますが、「第二の窓」への取り組みあるいはどの程度の拠出の意思があるのか、明確にしていただきたいのであります。
 次に、南側開発戦略は、一九七三年の国連アジア太平洋経済社会委員会東京総会が象徴いたしましたように、農業重視の路線を示しております。総理が強調されました人づくりの最も緊急課題の一つは、農業の振興と農村建設のために経済協力援助というものを重点に置くべきものだと思うのでございますけれども、その内容、具体的方法等について、これを示していただきたいと存じます。
 私は、質問を数多く具体的に並べましたが、今回の御行動に関してきわめて不明朗な点が多いため、やむを得ずたくさん申し上げましたので、詳しく御説明を賜りたいと存じます。
 最後に、日米首脳会談で現在話題になっております金大中拉致事件についてどういうお話し合いがされたのか、お伺いをいたします。
 最近明らかにされたアメリカ国務省の公式電報は、同拉致事件が韓国のKCIAの犯行であることを強く示唆しており、日韓両国政府の間で成立したいわゆる政治的決着は、米国政府の手によって瓦解したと言うべきでありましょう。したがって、当然アメリカ側からの説明が行われたことでありましょうし、その内容について承りたいのであります。
 総理は、事件当時の外務大臣でいらっしゃいまして、そうしてその当初、問題の処理に当たられた方であり、責任は今日といえども決して軽くないと言わざるを得ないのであります。わが国の主権侵害という深刻な事態が発生していたにもかかわらず、当時のわが国政府はその真相の徹底究明を進めず、二度にわたるあいまいな政治的決着を行われた結果、国民の不信を増大し、日韓間の不協和音を高めたことはきわめて遺憾であります。
 わが党は、朝鮮半島の自主的、平和的統一を前提といたしまして、日韓両国民の真の友好親善を進めていきたいと念願しているものでありますが、こうした主権侵害にかかわる事件を放置したままにすれば、いたずらに両国間に不信を増大することになり、きわめて残念な結果になるものと考えます。
 政府としては、同事件と政治的決着を改めて見直し、再検討すべきだと思いますけれども、どうでしょうか。また、同氏の日本に対する出国、原状回復から物事は始めるべきだと存じますが、どうでしょうか。また、今後の韓国問題に対する取り組みというものはどのようにするのか、この際まとめてお伺いしたいと存じまして、私の質問とさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣大平正芳君登壇〕
#56
○内閣総理大臣(大平正芳君) 渡部さんの御質疑にお答えいたします。
 第一の御質疑は、共同声明にうたわれておる「千九百八十年代に向つての実り豊かなパートナーシップ」というものの実質的な意味は何かということでございました。
 今次首脳会談におきましては、現在の日米間のパートナーシップが相互の信頼関係に支えられてきわめて強固であることを踏まえて、一九八〇年代に向かって、両国がそれぞれの政治経済両面での活力を生かしまして、世界の平和と安定のためにさらに一層幅広く協力を行っていくことを両首脳の間で確認し合った次第でございます。そういう意味におきまして、この副題が選ばれたわけでございます。
 第二に、「日米両国が分かち合う政治上及び経済上の理念」とは何かという御質問でございました。
 これは申すまでもなく、日米両国は、政治的には、民主主義と個人の自由、尊厳を尊重するという立場をとっております。経済的には、自由市場経済を基調といたしまして経済の運営を図っておりまして、そういうことを共通の理念としておることを述べたものでございます。
 それから、渡部さんは、私の外交政策を国会におきましてもっと具体的に、また精力的に説明すべきではないかという御指摘でございました。私の外交の考え方につきましては、施政方針その他両院の質疑におきまして随時申し述べておるつもりでございますけれども、今後一層精を出してまいるつもりでございます。
 それから、自衛力の質的改善ということは今日それを必要とする国際情勢が発生したかというお尋ねでございましたが、そうではなくて、アメリカとわが国との安全保障体制を基調としながら、わが国みずからの防衛力の質的改善に努めるということは、すでに防衛計画大綱等において明らかにしてきたところでございまして、共同声明におきましてはこの基本的政策を確認したまでのものでございまして、今日の国際情勢にかんがみましてにわかに思いついた考え方ではないのであります。
 防衛力の質的改善とは、諸外国の軍事技術の動向に対応いたしまして装備の更新、近代化等を着実にやってまいるということを意味するものでございますが、わが国の憲法、非核三原則を前提といたしておるものでございますから、核戦略を含めたものでないことは言うまでもないことを、ここに念のため申し添えておきたいと思います。
 それから、わが国の防衛費負担はGNP一%でコンセンサスができておる、これ以上でも以下でも国民は納得しないだろうという意味のことを私が述べたという御指摘でございまして、大体そういう意味のことを述べたわけでございます。これは、渡部さんも御承知のように、各年度の防衛関係費の総額は当面GNPの一%を超えないところをめどにいたして編成いたしておるつもりでございまして、私は、このような従来からの政府の方針を踏まえて申したつもりでございます。
 なお、最近のこれに関しましての世論調査を見ましても、渡部さんも御承知かと思いますけれども、増額した方がよろしいというのが四十七年に一〇%、五十三年に二〇%出ております。いまの程度でよいというのが四十七年には四二%、五十三年には四八%、いまより少なくてよいという意見が四十七年に二三%、五十三年には一〇%というような傾向を示しておりまするので、ただいま政府がとっておる政策は、ほぼ国民の世論にも合致しておるのではないかという判断を踏まえて申したつもりでございます。
 それから、渡部さんは、対ソ、対中、対ベトナム等についてのどういう話をしたかということについてのお尋ねがございました。
 中国との間では、日米両国とも安定した建設的な関係を維持していくこと、そして中国の近代化に対しましては、平等の立場で協力しようということで意見の一致があったわけでございます。
 ソ連との間におきましては、未解決の問題はございますけれども、経済その他の交流を進めて、安定した関係をもって進めてまいりたいと私が述べたに対しまして、カーター大統領よりは、SALTUの合意を得るために努力しており、近く妥結の見込みであるとの説明がございました。私より、日本はこのような米国の努力を評価しており、成功を祈ると申し述べておきました。
 朝鮮問題につきましては、何らかの合意があったかというお尋ねでございましたが、今回の首脳会談におきましては、朝鮮問題につきましては、南北間の対話が実を結ぶことを期待しながら、日米両国が朝鮮半島における緊張を緩和するため、その国際的環境づくりに努力を続けるということで合意を見たわけでございます。
 北朝鮮との国交樹立につきましては、今次首脳会談におきましてはお話は出ませんでした。
 ベトナムでございますが、日米両国は、カンボジアにおきまして依然として武力紛争が継続しており、中越間では紛争解決のための話し合いが行われておるものの、依然としてインドシナ半島は緊張状態が続いておるということを懸念して、主権、領土保全及び独立の尊重の原則によりましてこの地域における緊張の緩和と平和の確立が図られることが望ましいという認識で、見解の一致を見たわけでございます。
 わが国は、ソ連海空軍のベトナム基地利用が、その態様及び頻度によってはアジアにおける不安定要因になりかねないことはすでにベトナムにもソ連にもこの懸念を伝えてございまするし、米国も同様の申し入れをソ連に対して行ったと承知いたしております。わが国としては、今後とも深い関心を持ちながら事態の推移を見守ってまいるつもりでございまするけれども、現段階で対越政策を見直すということは考えておりません。
 それから、インドシナの難民問題についてのお尋ねでございました。
 この問題が、今度の首脳会談における重要な議題の一つでございましたことをここに御報告を申し上げます。わが国といたしましては、この難民問題に対するアメリカ側の大変な努力に対しまして敬意と謝意を表しますとともに、わが国自身も、人道的見地から、国連の難民高等弁務官事務所にその費用の約四分の一を負担してまいったことでございますが、さらに御指摘のように、定住条件の範囲を拡大するということにせっかく努力をし、その他を含めて八項目の総合的な対策を決めて取り組むことにいたしたことをアメリカ側に申し述べておきました。
 なお、政府はさらに先般、難民流出抑制をベトナム政府が行ってもらわなければならぬということを、ベトナム政府に要請をいたしたところでございます。
 それから、難民条約、難民の地位に関する条約、同議定書への加入でございますが、次期通常国会におきまして御承認を求める方向でただいま検討をいたしております。
 中東政策についてのお尋ねでございました。
 結論から申しますと、わが国の中東政策は全然変更をいたしていないわけでございます。つまり、わが国といたしましては、中東地域が国際政治経済の上からもちまして非常に重要な立場を持っておること、それからわが国との相互依存関係が非常に深いことを頭に置きまして、この中東地域の各国々との間には友好関係を持っておるわけでございまするし、それらの国々の工業化を含めての国づくりのためには経済協力もいたしてまいっておるところでございまして、この基本的な関係は今後も続けてまいるつもりでございます。
 カーター大統領の努力によりまして、イスラエルとエジプトの間に平和条約が締結されるようになりましたことは、日本といたしましては、この条約が中東和平へ向けての前進をもたらすものでなければならないとの立場をとっております。で、包括的和平を望むアラブ側の意向にも十分理解を示しておるつもりでございます。
 このように、わが国は、中東政策につきましてはその継続性と独自性を堅持しておるものでございまして、米国に同調してこれを変更しておるというようなことはいささかもいたしておりません。
 次に、経済摩擦についての解消についてのお尋ねでございました。
 日米間には往復四百億ドルに近い巨大な貿易が行われておるわけでございますから、日ごろ経済摩擦が起きても不思議はないと思うのでありまして、問題は、起きました問題を次々に手際よく相互信頼の中で片づけてまいることが大事だと考えておりまして、今日までも、農産物の輸入問題、皮革の問題、繊維の問題あるいは関税引き下げの前倒し問題等につきましては合意を見て解決をしてまいったのでございますが、残念ながら、解決しようと思いましたけれども政府調達問題だけが残りましたことは大変残念に思っております。しかし、これも、日米首脳会談におきまして、できるだけ早く解決の軌道をつくり上げようじゃないかということ、継続案件として引き続き協議しようということで確認し合っておるわけでございまして、相互信頼がある限りにおきまして、私は、あらゆる問題が解決できないはずはないし、今日までも解決をしてまいりましたことは御案内のとおりでございますし、いまある懸案も遠からず解決できるものと確信をいたしております。
 それから、日米共同声明の中の、われわれが遂行する「基本的政策」とは何かというお尋ねでございますが、これは共同声明に盛られておるとおり、わが国としては内需拡大、市場開放を通じまして、また、米国としてはインフレ対策や石油輸入の抑制等を通じまして、それぞれの国際収支の不均衡の是正に努めるという中期的な展望に基づく政策を、ここに「基本的政策」と申し上げたつもりでございます。
 渡部さんは、それではどこまでやればアメリカは満足するのかというお尋ねでございました。これに対しましては、また共同声明にもございますように、わが国の経常収支の黒字が、世界的に見て国際貿易及び支払いの上で撹乱要因になっておりますることは、これは否定できない事実でございますので、それが「均衡がとれかつ持続可能な国際貿易及び支払のパターンと合致した状態となるまで、」と書いてございます。そういう状態になるまで日本はこういう政策を進めてまいるということで、合意をいたしておるわけでございます。
 しからば、内需の拡大はいまのような状態で果たして公約を果たすことができるかということでございますが、輸出は引き続き低調に推移しておりますけれども、国内需要は、御案内のように個人消費、設備投資とも着実に伸びておりまして、今後とも、物価の安定に気をつけながら、引き続き現在の内需拡大基調を維持してまいりたいと私は考えております。
 次に、渡部さんは、市場開放の公約をどうして果たすかという具体策についてお尋ねでございました。
 御案内のように、ここ二十年ほど、わが国政府は、資本において、貿易におきまして、その自由化のために鋭意努力をしてまいったわけでございまして、私は、いまわが国の市場開放の度合いがそんなに諸先進国に比較いたしまして遜色があるものとは考えていないわけでございますけれども、今日、そうでありながらも日本の黒字幅が異常に拡大するというような状況は決して健全とは言えないわけでございますので、政府としては、今後とも、東京ラウンド交渉において各国が合意した関税の引き下げ及び規格検査、政府調達等の各種のコードに沿いまして、できるものから早期に開放に当たってまいるつもりでございます。このような努力によりまして、国際的にも信任が得られるものと確信をいたしております。
 それから、大統領選挙を前にいたしまして、もう次から次とアメリカが問題を提起してくるではないかということでございますが、先ほど申しましたように、若干の問題の提起がありましたけれども、これはそれぞれ解決がつきまして、残った政府調達の問題も、近く解決の展望を持っておるということで御理解をいただきたいと思うのであります。
 米国議会との関係でございますが、私も両院に参上いたしまして、指導者と時間をかけて会談をいたしたつもりでございます。なるほど米議会の対日批判は相当厳しいものがございますが、先ほど申しましたように、日米両国が地域的な展望に立ちましてそれぞれの政策を精力的にやってまいりますならば、この解消は不可能でないということにつきまして相当の御理解が得られたものと確信をいたしております。
 それから、エネルギーの政策についてのお尋ねでございました。
 今日、エネルギーの問題が日本にとりまして死活の問題でありますことは御指摘のとおりでございまして、この安定供給を確保し、それから価格においても数量におきましてもどうして確保するか、石油代替エネルギーをどう開発してまいるか、新エネルギーをどのように開発してまいるかというような問題につきましては、精力的に諸外国との協調も得ながら、大胆に周到な政策を行っていかなければならぬと考えておりますが、詳細は今後国会でも論議されますので省略をいたしますが、とりわけ東京サミットを控えまして、この東京サミットはエネルギー問題が最大の焦点になるのではないかと考えておりまして、省エネルギー、代替エネルギーの開発導入、新エネルギーの研究開発等に対しまして、先進主要国が一致してエネルギー問題と取り組むという状況と決意が内外に示されることが必要であろうと考えております。
 それから、原子力開発計画に対するアメリカ側の見解でございます。
 渡部さんが御懸念になっておりますのは、恐らく、アメリカが原子力開発計画に対しまして消極的になって、わが国の燃料サイクルを独自に確立しようというようなもくろみに対しましてあるいは消極的な態度を示したのではないかという御懸念かと思いますけれども、そういうことはございませんでした。今度の共同声明にもありまするように、日米間では、核不拡散政策を進めるに当たり、必要かつ経済的正当性を有する原子力の開発計画に不当な制約が課されてはならないという原則について、意見の一致を見ましたことは御案内のとおりでございます。
 それから、アルーシャ宣言についての見解を求められたわけでございますが、先ほど川崎さんにも申し上げましたように、われわれは開発途上国の決意と主張に対しまして理解と共感を持っておるわけでございますけれども、しかし、「第二の窓」に対するわが国のコミットメントを具体的にしなかったゆえんのものは、まだこの内容が、運営の形態が明らかでございませんし、拠出国の範囲が明確でございませんので、現段階では明らかにし得ない面がございまするので遠慮いたしましたけれども、今後他の先進国との協調を図りながら、わが国としての責任は果たしてまいるつもりでございます。
 また、人づくりの問題と並んで農業問題が非常に重要であることは御指摘のとおりでございますし、人づくりの問題も農業開発の問題と一体となって進めるべきではないかという御意見は、全く御同感でございます。
 それから、金大中事件につきましては、先ほど川崎さんにお答え申し上げたとおりでございます。今度の日米首脳会談におきましては、この話は一切出ませんでした。(拍手)
    ―――――――――――――
#57
○副議長(三宅正一君) 渡辺朗君。
    〔渡辺朗君登壇〕
#58
○渡辺朗君 私は、民社党を代表して、日米首脳会談等に関し、総理に質問をいたしたいと存じます。
 最近の日米関係は、経済、貿易上の摩擦によりまして、きわめて憂慮すべき状態になっておりました。しかも、アメリカにおいては保護主義的な傾向が高まっていたことも周知のとおりであります。その要因を根本的に取り除いて、両国関係を友好的なものにすることは当面の急務と言わねばなりません。したがって、このたびの総理の訪米は、そこに大きな目的があったと信じます。
 総理は、首脳会談を通じて所期の目的を達成することができたとお考えでありましょうか、まず率直な御感想を聞かせていただきたいと存じます。
 日米共同声明を見るとき、総理が経済対立の解消のために苦慮された跡は歴然としております。すなわち、電電公社調達問題など個別の処理は後回しにして、中長期的な解決目標を掲げることによって問題の解決を引き延ばされているのであります。このことによって、日本側にとってはかえって過重な約束を背負い込む結果になったとも考えられるのでありますが、いかがでございましょうか。内需拡大による経済成長あるいは日本市場の開放、経常収支の黒字縮小などの約束がこれであります。一時的に時をかせいだにしても、火種は消えたわけではございません。しかも、これらの対米公約を数年のうちに実現することが果たして可能でありましょうか、懸念するところであります。石油価格の高騰など、変動するエネルギー事情によって、わが国のこれからの経済成長そのものがきわめて不透明になっているのが現状ではないでしょうか。総理は、確固たる成算を持ってこれらの約束をされたのでありましょうか、国民の懸念に対して答えていただきたいのであります。
 訪米中、総理は、ナショナルプレスクラブでの演説を通じて、わが国の経済構造の転換を行うという決意を内外に向かって表明されました。まさにわが国をめぐる状況はそのとおり厳しいものがあると私も考えます。そして、わが国がいま、いやおうなしに取り組まなければならない重要な課題を総理は指摘しているのであります。
 しかし、総理、問題は、どのようなプログラムをもって具体的にわが国経済の構造転換を実行しようとしておられるのか、その点にかかっております。ことに国民生活と重大なかかわり合いを持つ問題であるだけに、国民の前に具体策を提示して合意を得る努力がなければ、国民にとっては不安のみが大きくなってまいります。また、国際的にも信頼を失うことになるのではないでしょうか。総理のいま実行力が問われていると言うべきであります。私は、総理の明確な構想を聞かせていただきたいと存じます。
 次いで、政治的な問題についても幾つかの質問をさせていただきたいと思います。
 共同声明では、安全保障、中国問題、朝鮮半島から中東情勢に及ぶ広範な国際関係に言及しておられます。しかしながら、いずれの項目についても、わが国の独自な主張と役割りが少しも盛り込まれていないことを私は遺憾に思うものであります。総理は、米国の世界政策を追認し、わが国がその補完的な役割りを果たしていくという受け身の約束をしてこられたのではないのでしょうか。
 たとえば、総理は、わが国の自衛力の質的改善を図ることを言明されておりますが、この質的改善とは具体的に何を意味するのでありましょう。共同声明の文脈から読み取れるものは、米国からの防衛装備の調達を増大していくことではありませんか。総理が本当に自衛力の質を高めようとされるならば、本来真剣な安全保障の論議をもっと積み重ねるべきであります。そしてまた、徹底的に疑惑の解明に当たることによってモラルを高め、防衛についての国民的合意をつくり出す努力、これを進めることから始めるべきであろうと思いますが、いかがでございましょうか。米国からの装備購入増大が即防衛力の質的改善では断じてあり得ないことを銘記すべきだと存じます。
 総理の姿勢は、みずから進んでわが国の独自の立場を明らかにする、その点において欠けていると言わねばなりません。国際関係の諸問題について特にそのことが顕著であります。
 総理は、朝鮮半島の緊張緩和のために日米協力、これを共同声明の中にうたわれております。具体的にどのような行動を意味するものでありましょうか、ぜひ聞かしていただきたいのであります。
 これに関連して、このたびの、金大中事件について米国務省文書の公開にかかわる問題は、総理がみずから責任を持って明確な形で真相を究明されることを私は強く要求するものであります。(拍手)われわれは、日韓両国の友好関係がアジアの安定に重要であると確信しているものでありますが、この事件は、わが国の主権侵害にかかわることであり、国民の納得のいく形で解決をしなければ禍根を将来に残すことになるでありましょう。総理の御答弁をお願い申し上げます。(拍手)
 また、総理、わが国のエネルギー政策と深い関係を持つ中東情勢についても、共同声明の中では積極的な協力、これを述べておられます。だが、その意味が明確ではありません。アメリカのあっせんによってエジプトとイスラエルの平和条約はできました。しかし、その後、中東地域には憂慮すべき不安定な状態が生じていることも事実であります。このような情勢に対処して、わが国としては、アメリカの中東政策を追認し、これに協力することでいいのでありましょうか。むしろ、わが国はフリーハンドを持って行動することの方がより大きく国際平和のために貢献する道となるのではないでしょうか。この点、お答えをいただきたいのでございます。
 こうして見るとき、共同声明は、八〇年代を展望する世界の中で、わが国として果たすべき役割りと責任がまことに不鮮明であります。そこには、わが国にとってのビジョンがありません。目指すべき世界像が欠けております。両国首脳の間で米ソ間のSALT交渉は論議をされました。しかしながら、総理の口から国際軍縮への力強い呼びかけはなぜ表明できなかったのでありましょうか。核軍縮や包括的な核実験禁止協定へのわが国民の声が、そこに欠落していることを私は指摘せざるを得ないのであります。
 また、わが国の生きる道が途上国との協調と相互依存にあるという認識のもとに、南北問題への積極的な取り組みが明示されてしかるべきだったと私は信じます。そのようにした後、マニラの国連貿易開発会議に総理が臨まれたならば、より御出席の意義を高めたでありましょう。
 私は、総理が、マニラ会議において一次産品の共通基金を初め幾つか前向きの発言をされたことについては評価するにやぶさかではございません。しかしながら、総理が掲げられた途上国の人づくり援助の構想につきましても、これを演説に終わらしてはならないのであります。今後、息長いフォローアップのあり方にかかっている問題であります。総理は、これをどのように具体的に進めていかれるのか、お尋ねをしたいのであります。
 途上国援助は、わが国国民の理解と支持なしには効果を上げることができない問題であります。ことに途上国が強く要望している製品輸出、いわゆる市場アクセスの要求は、わが国の経済に多大の影響を及ぼすものであります。いま、わが国は、先進国側からと途上国側からの双方から市場開放の要求を迫られているわけであります。これに対し、総理はどのように対応を用意しておられるのか、お聞きしたいところであります。
 さらに、総理は、マニラ演説の中で、最も肝心なわが国の経済協力の質の向上については抽象的に、大変あいまいな言い方にとどまっておられるのを残念に思います。現在、わが国の政府開発援助はGNPの〇・二一二%という数字の示しているようにきわめて低い、そして世界から批判を受ける理由となっているのであります。総理、この際政府は思い切って、少なくともGNP一%を政府開発援助に充てることをわが国の長期的な目標として決定する必要があると存じますが、いかがでしょうか。このことは、わが国の南北問題に対する姿勢を明確に示すのみならず、資源エネルギーの安定確保を図る観点からも重要なことだと私は思います。また、これは、非軍事的な手段によって国際政治へのわが国の発言権を拡大するゆえんでもあると存じます。総理の所信をお伺いしたいのであります。
 先般来、途上国七十七グループはアルーシャ宣言を発表し、新国際経済秩序の構想を掲げてまいりました。これに対して、わが国政府が留保をつけ、消極的な態度であることを、私はまことに残念に思うものであります。
 この構想の個々の内容については、理想に走り過ぎる点もございましょう。また、一挙に達成できるものでもございません。しかしながら、こうした目標に向かってともに努力していこうとする姿勢そのものが、途上国側の信頼と友好を生み出し、南と北との間により建設的な協力関係を促進していくことになるのではないでしょうか。(拍手)ここにまた、南北の間のかけ橋になろうとするわが国の役割りがあると信ずるものであります。
 総理の御見解を改めてお尋ねするとともに、総理が、先進国首脳会議を前にして、わが国の南北問題への積極的かつ明確な方針を打ち出されるよう強く要望をいたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣大平正芳君登壇〕
#59
○内閣総理大臣(大平正芳君) 今度の首脳会談を通じまして所期の成果を上げ得たと考えるかどうかという御質問でございました。
 私といたしましては、日米間の相互理解を深めて、当面の問題、それから今後中長期にわたる問題についての展望を明らかにすることによって、日米間の緊張を緩和いたしますとともに、諸問題の解決への素地ができたのではないかと考えております。
 次に、内需の拡大による成長率の維持にいたしましても、経常収支の黒字幅の縮小にいたしましても、これは大変容易ならぬ公約ではないか、これにどういう成算を持って対処していくかという御質問でございました。
 先ほども申しましたように、わが国の当面の経済は、輸出が低調でございますけれども、国内需要、すなわち個人消費、設備投資等は漸次強含みに進んでまいっておりまするし、現に貿易収支、国際収支とも急速に改善の方向を見ておるわけでございまするから、私どもといたしましては、いま遂行しておる政策基調を崩さずに、精力的に維持して努力してまいりますならば、この共同声明にうたわれました展望は実現できるのではないかと考えております。
 それから、市場の開放につきましても、これまでも努力してまいりましたけれども、今後は、せっかく成立いたしました東京ラウンドを踏まえまして、関税の引き下げ、もろもろの非関税障壁の除去に努めてこの期待にこたえなければならぬと存じております。
 次に、渡辺さんは、わが国の経済構造、先進国からも開発途上国からも挾撃を受けておるわけでございますけれども、これに対しましてどのようにやってまいるか、経済構造の転換についてどう考えているかという御指摘でございました。
 これは、かねがね政府が申し上げておりまするように、これまでの日本の経済は、輸出と設備投資主導型の経済でございました。しかし、これを漸次内需中心、生活環境整備中心に持っていこうということ、これは野党各党からも精力的に御主張されておるところでございまして、われわれといたしましては、そういう大きな産業構造の重心を漸次内需中心に移すという方向でこの問題にこたえていきたいと思っております。現に政府が策定いたしておりまする新経済社会七カ年計画もそういう構想でやりつつありますることは、御案内のとおりでございます。
 その次には、各地域にわたっての政治問題でございまして、まず中東政策でございます。
 これはアメリカの政策の補完的役割りを果たしておるにすぎないではないかということでございますが、先ほど御説明申し上げましたとおり、わが国の中東政策は継続性と独自性を持って展開しておるつもりでございまして、アメリカの政策の補完的役割りを果たしておるものではないということは、先ほどお答えしたとおりでございます。
 それから、南北問題につきましてイニシアチブを積極的に発揮いたしまして、UNCTADにもこの立場で臨むべきであったと考えるがという御指摘でございます。
 私どもといたしましても、これは、南北問題に対する基本的姿勢を示す絶好の機会でもございまするし、アジアで開かれる最初の総会でもございまするし、また東京サミットを控えておるという立場から申しましても、どうしても私自身が出てまいりましてわれわれの立場を鮮明にする必要があると感じましたことは、御理解いただけておると思います。
 ただ、その演説の中でも、共通基金の早期設立のための協力、政府開発援助の拡充、開発途上国の人づくりへの協力等がどうも具体性を欠いておる、消極的であるという御指摘でございますが、私どもといたしましては、すでに示された方針に従いまして、共通基金につきましても、内容が固まってくるに従いまして日本としての役割りを果たしてまいりたいと考えております。
 政府開発援助の拡充でございますが、渡辺さんは、一%程度思い切って計上するぐらいの決意で当たらなければならぬということでございます。私どももそれを望むものでございますけれども、ただいま〇・二%ぐらいでございます。漸次これを三年間に倍増しようということで、いま鋭意やっておるところでございます。一%を出せということはいま直ちに応諾いたしかねまするけれども、今後とも積極的姿勢を堅持いたしまして、政府開発援助の量質ともの改善に鋭意努力をしてまいるつもりでございます。御支援をお願いしたいと思います。
 それから、開発途上国からの競争にどう対応するかという問題でございまして、これは、わが国の産業構造、貿易構造の上から見まして非常に大問題でございまして、先ほどからも論点になっておりました問題でございますけれども、私どもとしては、一層知識集約化を努めることは当然でございますが、とりわけ農業につきましては一番深刻な問題を抱えておるわけでございまして、わが国はこういう特殊性を抱えておりますので、わが国農業の特殊性も十分頭に置きながらこの構造転換には対処していくべきであると考えておるわけでございます。
 それから、防衛力の問題につきまして、その質的改善についてのお尋ねでございました。
 これは先ほども申し上げましたように、諸外国の軍事技術の動向に対応いたしまして、装備の更新、近代化を進めることを質的改善とわれわれは心得ておる。しかし、これは何も外国から近代兵器を購入するということだけが質的改善ではないのでございまして、高度な要員を訓練しなければならぬことも考えなければならぬわけでございまして、私どもといたしましては、防衛大綱に示された方針に従いまして、節度のある防衛力の質的な向上に努めていきたいと考えております。
 朝鮮半島に対しまして、日米共同で何をやるのかということでございました。これは先ほども申しましたように、半島をめぐる平和的な国際環境形成のために協力しようということで御理解をいただきたいと思います。
 金大中事件につきましては、先ほどお答え申し上げたところで御理解をいただきたいと思いますが、この問題につきましては米韓両方に照会をいたしておる段階でございますことは、御答弁申し上げたとおりでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#60
○副議長(三宅正一君) 工藤晃君。
    〔工藤晃君登壇〕
#61
○工藤晃君(共) 私は、日本共産党・革新共同を代表し、日米首脳会談等について質問します。
 今回の日米首脳会談での合意は、「実り豊かなパートナーシップ」というふれ込みでありますが、その中身は、日米安保条約を軸に、政治、経済、軍事の各方面にわたって、日本をカーター政権の世界戦略に一段と深く組み込み、とりわけ、日本の補完的な軍事責任分担の強化を図るなど、日米支配層の八〇年代戦略の基本構図が描かれたものだと考えます。
 まず、外交、安保の問題であります。
 第一に、中国のベトナム侵略についてであります。
 わが党の宮本委員長は、日米首脳会談の直前に、総理に対して、中国のベトナム侵略には厳しい態度をとるよう求めました、総理は、一体、中国の覇権行為に反対することをカーター大統領に表明したのですか。総理はアジアの平和を口にされますが、それならばどうして、現実にアジアの平和を破壊した中国のベトナム侵略に対して、また、日米首脳会談直前のケ小平副首相のベトナム再侵略の意図表明に対して何らの批判もしなかったのでしょうか。仮に、今後、中国のベトナム再侵略戦争が現実となれば、二月の戦闘で見せた中国軍の残虐非道な戦法はさらに大規模に拡大されるでしょうし、ベトナム、インドシナ人民を言語に尽くせぬ惨禍に巻き込むばかりか、アジア全体の平和にはかり知れない脅威を与えることは言うまでもありません。これは絶対に許してはならないのであります。(拍手)
 今回の日米首脳会談は、中国幹部による再三のベトナム再侵略の意図表明がその危険を浮かび上がらせているときに、中国のいわゆる近代化計画への日米共同の協力を初め、日米の親中国的な態度を表明しました。これは中国の侵略的策動に激励を与えたと言わなければなりません。政府は、日中平和友好条約の反覇権条項に照らしても、いま直ちに中国のベトナム再侵略戦争に反対することを中国政府に申し入れるべきであります。総理の明確な答弁を求めます。(拍手)
 第二に、日米共同作戦のガイドラインについてであります。
 今回の共同声明が、日米安保条約をアジアにおける平和と安定の礎などと評価しながら、さらに日米防衛協力のためのガイドラインに基づく日米共同作戦の本格的強化、アメリカからの新鋭兵器の大量導入による自衛隊増強の方向を公然と示したことなどは、日本国民の平和、中立への願いを踏みにじるものであります。
 この点で特に指摘しなければならないことは、日米防衛協力のためのガイドラインの確認に加えて、初めて自衛力の質的改善の努力を公約として明記したことであります。今日すでに、アメリカ軍と自衛隊の間では、核攻撃空母ミッドウェーを直接護衛する共同演習などを強化する一方、ガイドラインによって、新たに米本土から日本・極東に至るアメリカ軍の海上兵たん線の輸送にまで自衛隊の分担が広げられようとしております。このように、自衛力の質的改善とは、こうした日米共同作戦の範囲と自衛隊の軍事行動の東アジア全域ないし太平洋地域への拡大を意味するものではありませんか。
 現実に進みつつあることからこの共同声明を読めば、総理は、八〇年代に向けて、こうした日米共同作戦体制を引き続き推進する決意を会談でアメリカに約束したとしか考えられませんが、所見を求めるものであります。
 第三に、有事立法についてであります。
 二十四日から予定されている陸海空三自衛隊の初の統合実動演習は、主眼は兵員輸送訓練であり、その際の攻撃への有事対処がねらいでありますが、これだけ大規模な部隊移動、戦闘演習に新たな法的保障が求められるようになるのは必然だと思います。このような演習が行われる裏では、軍事優先を保障し、国民への規制あるいは協力確保のための有事立法研究が進んでいるに違いありませんが、その全容について報告されることを求めます。
 総理は、この三月、有事立法研究は進行中だと答弁されました。山下防衛庁長官も、五月十四日付日経新聞で、有事立法についてはもう少し整備しなければならないと述べています。共同声明でガイドラインをこのように評価したからには、有事立法、戦時立法づくりの促進を暗黙にしろ約束してきたのではありませんか。この点についても、総理並びに防衛庁長官の答弁を求めます。
 次に、経済関係の問題であります。
 第一に、日米経済摩擦に対処する基本方針についてであります。
 今回の日米首脳会談に至る一連の経済交渉が、七七年、七八年と、日米貿易関係で日本の側に大きな黒字が出た状況を背景としていることは確かであります。だが、事柄をはっきりさせる必要があります。
 まず、アメリカの国際収支の慢性的赤字傾向の原因には、アメリカの大企業が多国籍企業として、海外での売り上げをアメリカ本国からの輸出の四ないし五倍になるところまで世界市場支配を強めたはね返りがあります。また、アメリカが海外に多くの軍事基地を設け、力の政策を推し進めているはね返りもあります。したがって、アメリカ政府がとっている、国際収支の不均衡は黒字国日本側へのしわ寄せで解決を図るという戦略、それに基づく対日圧力には迎合する必要はないし、迎合してはならないのであります。
 次に、もちろん、日本の大企業がむやみに輸出を伸ばして世界経済を撹乱し、あるいは発展途上国への経済進出で海外諸国民からの非難を浴びる問題も重要であります。わが党が繰り返し主張したように、大企業の国際競争力の異常な強さと、日本の貿易収支の黒字傾向の原因である低賃金、長時間労働、激しい労働強化など劣悪な労働条件や下請中小企業への締めつけでコストダウンを図る仕組みを根本的に改善し、同時に、国民生活優先のつり合いのとれた経済の拡大発展を進めることであります。
 ところが、今回の日米首脳会談の結果は、日米経済摩擦問題を、アメリカ側の立場と要求をほとんど受け入れ、日本国民に負担と犠牲を押しかぶせることで解決を図ったと言わなければなりません。総理がもしそうでないと言うなら、円高や、日本の側の無謀なインフレ政策や、農産物から工業製品にわたるアメリカ関心品目の市場開放など、アメリカ側の数多くの具体的な対日要求はほとんど達成された反面、アメリカ側が約束したことは、インフレ率の低下、石油輸入抑制といった、きわめて抽象的なことにとどまったのは一体なぜか、釈明されるべきであります。
 第二に、インフレとの関係についてであります。
 政府・自民党は、七七年ごろからのアメリカの対日経済攻勢に屈して、国債依存度三〇%上限論を捨てました。その結果、五十四年度予算の国債依存度は四〇%に達し、既発債の累積もふくれ上がり、インフレ爆発の条件が出そろっただけでなく、すでに四月の卸売物価が年率二二・四%という激しい上昇傾向があらわれているのであります。
 ところが、今回の共同声明でも、アメリカ側はインフレ抑制、日本側は内需拡大という、牛場・ストラウス共同声明と同じことが繰り返されたのであります。これでは、政府が対米協調のためには国内のインフレ対策をおろそかにするとみなさざるを得ません。総理の明快な答弁を求めます。
 第三に、雇用との関係についてであります。
 総理は、ナショナルプレスクラブ演説で、世界経済の発展に一層適応し得るよう、わが国の経済構造の転換を図ると明言しました。しかし、ワシントンで総理自身望ましいとした一ドル二百円といった異常円高に加えて、今後広範で徹底した市場開放が進められるとき、経済構造の転換とは、国際競争力の強い大企業が支配する限られた産業以外はつぶれていっても構わないという政策を意味するのであります。総理は、同じ演説の中で、国際協調のためには、国内的には困難を伴うような調整であっても、これをあえて回避することができない立場にあると述べております。
 そこで総理に伺います。市場開放に効能があるような経済構造の転換であるならば、それに伴う失業の増大などの困難を国民は耐え忍べというのでしょうか。そうではないと言われるのであるならば、このような経済構造の転換を行ってもなお就業機会が広がり、雇用がふえるという確実な見通しと、具体的な対策及び計画を国民にはっきり示すべきであります。総理の見解を求めます。
 第四に、継続的討議の枠組みについてであります。
 共同声明は、日米両国の国際収支不均衡是正にはなお数年間かかるとして、この期間、二国間の継続的討議を行うとしております。
 牛場・ストラウス共同声明をきっかけとして、通商円滑化委員会など日米共同の諸機構が活発に活動を進めると同時に、アメリカ議会にこの声明の実施状況を監視する機構がつくられました。その活動の結果はジョーンズ委員会報告として知られております。今回の共同声明は、現存する日米間の高級事務レベル会議を続けるとともに、日本の首相とアメリカの大統領に勧告を行う民間レベルの日米共同の機構を新設することを決めたのでありますが、これらがアメリカからの監視と督促の場となることは、これまでの経過から見て明らかではありませんか。
 私は、総理が共同声明でとった立場は、八〇年代においてもわが国の経済運営の自主性を放棄した立場であることを強く指摘し、総理の所見を求めるものであります。(拍手)
 次に、航空機疑獄について伺います。
 本院は、二月八日に、真相解明を徹底的かつ迅速に進める決議を行いました。しかし、真相究明に不可欠な岸信介氏の証人喚問は、自民党の反対でいまだに実現しておりません。これこそ、自民党の党利党略を主権者である国民と国会の上に置くものであり、断じて許せません。総理、自民党総裁であるあなたは、この自民党の理不尽な妨害を直ちにやめさせるべきであります。明確にお答えください。(拍手)
 次に、ソウル地下鉄問題について伺います。
 ソウル地下鉄問題でも、日本に還流した百三十万ドルのうち一億数千万円が総理経験者二名に渡されたことが、二十日付の東京新聞などで報道されました刀総理は、この件について法務、検察当局及び国税当局から詳細な報告を受け、直ちに国会に対し事実を報告すべきであります。総理の答弁を求めます。(拍手)
 最後に、金大中事件について伺います。
 このほど明らかにされたアメリカ国務省の秘密公式文書は、金大中事件がKCIAによるわが国に対する主権侵害行為であることを疑問の余地なく示しております。ところが、政府はいまだにこの新しい事態に対応する姿勢をとっておりません。これは、韓国政府公権力の犯行であることを示す新事実が出れば政治決着の見直しもあり得ると国会で答弁してきた政府にとって、国民に対する重大な背信行為であり、断じて許されないことであります。(拍手)この事件で主権を侵害された被害者は日本国民ではないですか。それを忘れたのですか。政府が、加害者の自白以外はどんな確実な証拠も犯行の証拠とはしないのは加害者擁護の立場をとっているのに等しいのでありますが、それこそ恥ずべき立場であります。
 さらに、十九日付毎日新聞によると、十八日に当時の法務大臣田中伊三次氏が、金大中事件の直後、KCIAの犯行であることを政府高官から報告を受けたとの新事実を明らかにしております。
 政府は、国民への約束を守り、第一に、政治決着を白紙撤回してわが国の主権を回復する措置をとり、第二に、韓国政府に金大中氏の原状回復、金東雲の引き渡しを要求し、徹底的な真相究明に乗り出すべきであります。総理にその意思があるかどうか、はっきりした回答を求めるものであります。
 以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣大平正芳君登壇〕
#62
○内閣総理大臣(大平正芳君) 最初の御質問は、インドシナ半島の事態に対しての御質疑でございました。
 今度の会談におきましては、日米両国は、この地域における緊張を緩和して、主権、領土保全及び独立の尊重の原則に立って恒久的な平和の確立が図られるよう、できる限りの努力を払うことで意見の一致を見たと共同声明にも書いてあるとおりでございます。そういう方針で日米両国は対処いたしておるところでございます。
 第二の御質問は、防衛力の質的改善についてでございました。
 これはいままでの御質疑にもお答え申し上げましたとおり、わが国の防衛力は、節度のある質の高いものでなければならぬと私は考えております。防衛力の質的改善とは、諸外国の軍事技術の動向に対応いたしまして、装備の更新、近代化を進めることを意味するものでございます。日米安保条約はそういう意味で今後とも堅持して、この地域の安全確保に対応していきたいと考えております。
 それから、五月二十四日から初の三軍の統合訓練を行い、大がかりな輸送作戦を行うと聞いておる、このようなことを行うからには有事研究が伴っていると考えられるが、これについて報告をせよ、また、有事立法に関しまして新しい約束を米側としてきたのか、という御質問でございました。
 防衛庁長官からも御答弁があろうかと思いますけれども、このたびの統合演習は、陸海空三自衛隊の協力の要領を訓練することを目的として実施されるものと聞いております。有事法制の研究とは関係がないものと承知しております。また、有事法制の研究に関し米側と何の約束もいたしておりません。
 それから、経済摩擦についてのお尋ねでございます。これは全く一方的な押しつけではないかということでございます。
 私どもといたしましては、この今日のような状況におきまして、日米両国がそれぞれの力量に応じて果たすべき役割りを中長期にわたって展望いたしたわけででございまして、一方が他方に押しつけたというような性質のものでは全くないことも、先ほど御答弁申し上げましたとおりでございます。
 その次には、インフレ対策についての御心配とお尋ねでございました。
 御指摘を待つまでもなく、石油の供給が価格、分量ともに不安でございまするし、円安の状況、卸売物価の急騰というようなことを考えますと、わが国の物価情勢、インフレ情勢、これは楽観を許しません。御指摘のとおりでございます。したがいまして、先般、日本銀行は公定歩合の引き上げを行いまして、警戒態勢に入っておるわけでございます。われわれといたしましても、あらゆる角度から物価安定の施策を講じまして、インフレ招来ということのないように鋭意努力してまいるつもりでございます。
 経済構造の転換と雇用の関係についてのお尋ねでございました。
 わが国の産業構造は、今後、知識集約的なものと、第三次産業が発展する方向に向くのではないかと考えられますけれども、これらの分野は概して雇用吸収力が強いと考えております。また、生産年齢人口の増勢鈍化を反映いたしまして、労働力人口の伸びも鈍化すると見られますので、全体としての労働力需給の均衡を回復して、完全雇用を達成することは不可能でないと私どもは見ておるわけでございます。
 それから、日米間の継続討議の枠組みができたということで、これでまた一層アメリカの枠組みの中に日本が吸収されるのではないかという御懸念でございますが、そういうように私は被害者意識を持たないのでありまして、われわれは、共同声明でうたわれておる高級事務レベルの会合におきましては、日米経済関係に及ぼす各種の政策の進捗ぶり及びその成果等について意見の交換をする賢人グループと称するものにおきましては、日米両国間の健全な経済関係の維持に資すると考えられる措置に関する勧告を日米それぞれの首脳に提出するということが期待されておるわけでございまして、いずれにいたしましても、右枠組みを通じましての議論は互恵的なものであり、かつ、日米両国が共同して世界経済の安定のためにいかにして寄与するかという点を中心に行われるものでございまして、米国からの圧力云々ということは当たらないものと考えております。
 岸信介氏の喚問についてのお尋ねがございました。
 この問題は、国会の当該委員会におきまして各党の間で話し合いでお決めいただくことと考えております。
 それから、某新聞に、韓国地下鉄をめぐって総理経験者二人に金が流れているという情報が流れておるということでございますが、関係当局から報告を受けたか、国会に報告しろということでございます。
 御指摘のような報道が一部になされておりますけれども、関係当局からの報告によると、そのような事実は全く承知していないということでございまして、国税当局の方からも、御指摘のような報道があったことは承知しているが、税務当局からはそのような事実は確認していないということでございました。御報告申し上げます。
 それから、金大中事件につきましてのお尋ねでございますが、これにつきましてはただいままで御答弁申し上げたとおりでございまして、私ども、当時の政府が、大局的な見地から慎重に検討いたしまして政治的決着をつけたものでございますので、よくよくのことのない限り、この政治決着を見直すということは慎重でなければならぬと考えております。(拍手)
    〔国務大臣山下元利君登壇〕
#63
○国務大臣(山下元利君) 統合演習につきましては、総理大臣からもすでにお話がございましたが、陸上、海上、航空各自衛隊の協同連けいの要領を総合的に演練することを目的とするものでございまして、従来から各自衛隊が行っている演習とその内容を特に異にするものではなく、規模においても特に大きなものではございませんし、また、有事法制の研究はこの演習とは別個のものでございます。
 なお、有事法制につきまして、日経新聞に掲載されました私の所見を引用しての御意見がございましたが、この中におきましても、私は「有事法制の根幹は整備されているが、」ということを申しておる次第でございまして、有事法制の研究は昨年九月に示した統一見解に基づいて行っているところでありますが、この研究は時間をかけ慎重に行うものでございます。したがいまして、まだまとまった成果は得られておりません。(拍手)
    ―――――――――――――
#64
○副議長(三宅正一君) 永原稔君。
    〔永原稔君登壇〕
#65
○永原稔君 私は、新自由クラブを代表して、総理から御報告がありました日米首脳会談並びに国連貿易開発会議に関連し、また、御答弁にも触れながら若干の質問をいたしたいと思います。
 総理は、日米経済関係が極度に緊張した情勢のもとでカーター大統領との会談に臨まれたわけで、その成果については内外の関心も強く、また総理御自身の真価を問われる会談であったと申しても過言ではありません。
 最近、日米首脳会談が頻繁に行われてまいりましたが、両国首脳が率直に意見を交換することは有意義であると存じます。しかし、会談が共同声明だけで終われりとなっては意味がありません。前回の会談がいかなる成果を上げたかをまず反省し合い、新たな事態にいかに対応し合うかが討議されなければならないと思いますが、さきの福田・カーター共同声明の成果はいかに評価されたのでしょうか、不問に終わってしまったのでしょうか、まず伺いたいと存じます。
 次に、今回、総理は、「実り豊かなパートナーシップ」という美辞麗句をもって修飾するほどに、日米関係が強固な基盤を築き得るとの自信を持ってお帰りになったのか、お伺いいたします。
 僅々一年間の経済関係を見ただけでも問題の困難さは並み大抵のものではなく、日本政府において抜本対策を講じなければ、その解決は不可能と思われるような約束がなされております。しかも、米国政府の対日アプローチを見てまいりますと、一年前のオレンジと牛肉、次いで最近の電電公社の買い付けへの参加というように、次々と個別的問題を持ち出してきたわけでありますが、米国としては、国内の諸事情を未調整のままわれわれにぶつけてきたとしか思われず、果たして今後何が飛び出すかわからないような不安をわれわれに抱かせるものであります。
 米国のこのような交渉態度は正常のものであったとはとうてい思われませんが、総理はこの点についてどうお考えになっておりますか。特に、米国議会における保護貿易立法化の動き、課徴金問題などが報ぜられていますが、カーター政権はこれにどう対応しようとしているのか、総理の印象はいかがでしたでしょうか。
 私は、率直に言って、今後、日米経済関係はますます複雑化することは避けられず、従来のような外圧利用による形でアメリカが日本に対し解決を求めてこようとしても、もはや限界に来ていると思うのであります。日本としては、自主的にかつ勇気を持って内需拡大、市場開放、流通機構の整備、産業構造の転換、発展途上国の援助等を行って、真の国際協調を進める以外に日本の生存を確保する道はないと理解しております。
 しかし、このことは、言うはやすく行うはかたきことであります。総理は、国内的には多くの困難を覚悟の上でこのような施策を約束されたと思いますが、実り豊かなパートナーシップというきれいな言葉の背景に、私は、難きを強いられたという印象をぬぐい切れません。総理はどのようにしてこの約束を実現に移そうとなさるのか、御決意のほどをお伺いいたします。
 次に、総理は、米国との間の安全保障関係が現在ほど強く、かつ相互に有益であったことはないとの御認識をカーター大統領との間で確認し合い、さらに、今後、米国は東アジアにおける現在の軍事力の質を改善していき、他方、日本も自衛力の質的改善の努力をする旨を約束し合いました。
 いま、アジア情勢を顧みますと、日中平和友好条約締結と米中国交樹立後、とみにインドシナ地域に緊張が増加してきております。それに伴い、ソ連がベトナムを支援し、その施設を使用していることが公然化してまいりました。ソ連の軍事力がアジアにおいて増強されつつあることは、われわれのひとしく憂慮するところであります。このような情勢を見るとき、共同声明に述べられている日本の自衛力の質的改善とは何を意味するものでありましょうか。
 総理は、わが国の防衛力、特に装備の更新、近代化について具体的に米側と話し合われたのかどうか、お伺いいたしたいのであります。
 次に、中東和平についてでありますが、過般のエジプト・イスラエル平和条約の成立は、中東諸国を二分せしめ、エジプトのアラブ世界における孤立を招きつつあります。この条約に反対する中東諸国の中には、日本にとってエネルギー確保のため無関心ではいられない重要性を有する国々も含まれております。しかし、日本の対エジプト援助は、米国の中東政策の一環となりつつあるような印象を一般に与えてはいないかと懸念されます。
 私は、総理が日本の独自の中東政策をより鮮明にされ、いやしくもこのような印象なり誤解なりを払拭されんことを要望いたします。この点について総理の御所信をお伺いいたします。
 また、朝鮮半島、インドシナにおける緊張緩和のためどのような具体的行動をとろうとするのか、国際環境づくりに日本の果たすべき役割りをどうお考えか、イニシアチブをとって各国への働きかけをするのか、総理のお考えをあわせて伺います。
 また、このたび、金大中氏拉致事件に関する米国務省の秘密文書が公表されました。さきの日米首脳会談においてはこの問題に触れられなかったとお答えになりましたが、こんな重要なことが話題にすらならなかったとは残念でなりません。
 新自由クラブは、日韓の間にわだかまる本事件が究明されることは、両国の正常な関係を増進する上に欠かせない要件であると主張してまいりました。
 政府は、本件を政治的に決着させるに当たり、金大中氏拉致に関し公権力が関与した新たな証拠が見つかれば政治決着を見直すとの基本態度を明らかにしています。このたび公表された米国務省の秘密文書は、本件に明らかに公権力が介入した事実を明確にしております。総理は、この文書をどう評価されますか。日本政府の基本的態度に照らし、当然さきの政治決着を見直し、わが国の主権が不法に侵された事実を重視して、直ちに原状回復を求めるべきだと考えます。軽々に論ずることは控えたい、見直しは慎重でなければならないでは国民も納得できません。総理の明快な答弁を求めます。
 次に、マニラで開催されたUNCTAD総会について質問をいたしたいと存じます。
 今回の総会に総理がみずから出席し、南北問題に取り組むわが国の姿勢を世界に明らかにされたことに対して敬意を表するものであります。
 大平総理はこの演説の中で、七十七カ国グループのアルーシャ宣言が自助に基づく基本的構造改革の推進、政治的自由と経済社会開発による秩序ある発展をうたっていることに対し、大きな感銘と深い同意を表明するとともに、南北問題に対する開発途上国の考え方を、六月東京で開催される先進国首脳会議に十分伝えたいと表明いたしております。
 南側の要求は、新国際経済秩序宣言、今回のアルーシャ宣言を見るまでもなく、きわめて広範多岐かつ複雑な問題を抱えております。大平総理が、今回の総会における南側の要求を単に東京サミットに伝えるだけのメッセンジャーの役で終わるようなことであれば、南側の期待を裏切るばかりでなく、わが国が不信を買うのは明らかであります。
 総理の南北問題に対処する決意と東京サミットへの反映について、まず伺っておきたいのであります。
 次に、総理は、国づくりの基礎は人づくりにあり、人づくりのための国際協力こそ今世紀に残された二十年間にとってきわめて大きな歴史的意義を有すると発言しておられますが、わが新自由クラブは教育立国を第一の命題に掲げており、ここに視点を当てて訴えられた総理に共鳴を感じます。
 総理は、ASEAN諸国に対し、今後十年間に毎年百万ドル奨学資金を提供する用意がある旨発言されております。この構想には率直に賛意を表します。しかし、今日まで、時の総理はとかく海外において単発的、場当たり的に、思いつきとも思われるような経済援助の約束をしてきております。今回の総理の人づくりの発言に対し、ASEAN諸国等から何らの反響も聞かれませんのは、またかといった評価を物語っているのではないかと思うのであります。
 総理の言われる人づくりに、もしも金さえ出せばといった意図が少しでもあれば、必ず途上国の反発を招きます。在日留学生が真に望んでいるものは、物質的な待遇はもちろんですが、むしろ精神的な支え、日常生活における日本人との心の触れ合いではないかと存じます。
 そのためには、留学生政策を総合的に確立、実施すべきではないか、また、日本の一般社会が留学生を温かく受け入れるにはどうしたらよいか、総理の見解を求めたいのであります。
 なお、私は、現情勢を顧みるとき、国際的に課せられた日本の負荷の重さに身を引き締め、困難を伴う国内問題について国民との対話を図ることを総理に期待しつつ、情操豊かに文化を説き、世界の人類の平和と発展に貢献できる日本のあり方をともに考え、ともに精進し合うことを申し述べて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣大平正芳君登壇〕
#66
○内閣総理大臣(大平正芳君) 今度の首脳会談のあり方といたしまして、これまでの経緯を踏まえてやらなければならぬこと、そして共同声明の発出をもって終わりとすべきでないという二つの点が御指摘になりまして、これは私としても十分心得て事に当たったつもりでございまして、過去の経緯を十分探索し、踏まえた上で会談に臨み、成果を共同声明に盛り込みましたけれども、これは誠意をもって着実に実行しなければならぬ政治責任を感じながらいたしたことであることを、御了承いただきたいと思います。
 それから、永原さんは、このプロダクティブパートナーシップというような美辞の陰に、何か大変な重荷を負って、かたき任務を負って帰ってきたのではないかという御指摘でございます。
 これは恐らく、アメリカの交渉態度が大変激しいものであったから、われわれの方も譲歩に譲歩を重ねざるを得なかったのではないかという御懸念から生まれたことと思うのでございますが、確かに、御指摘のようにアメリカの交渉態度は厳しいものがございました。これは、過去三年間にわたりまして二百七十億ドルもに上る対日経常収支の赤字を記録したわけでございますから、アメリカにとっては容易なことではないと思うのでございます。立場をかえて、われわれが向こうの立場になれば理解できないことではないと思うのでございます。アメリカ議会での懇談におきましても、そういった点が指摘されて、あなたの言われる課徴金を課する誘惑から逃れ得ないかもしれないという懸念を表明された方も一、二にとどまらなかったことは、私も経験いたしたわけでございます。けれども、事態はすでに改善の方向に向かっておるわけでございまして、四月の対米収支、グローバルな国際収支は大変な改善ぶりでございまして、米国がこれまで交渉のベースに踏まえておりました事実は、すでに大幅な改善を見ておるわけでございます。
 同時に、今度の会談を通じまして、中長期の展望をお互いに踏まえて、こういうことで国際収支のあるべきパターンを追求しようという合意に達したことから、緊張は漸次緩和を見せておるように私は思うのでございまして、いま御心配になるように非常にかたき任務を持って、荷物を持って帰ってきたというようには思っていないわけでございます。そういう約束はされたのではないと御理解をいただきたいと思います。
 それから、防衛力の質的改善について具体的な話し合いをしたかということでございますが、米国の国防報告書にもありますように、日米間の現在の安保条約の運営については先方も満足をいたしておりますので、新たな問題の提起はありませんでした。したがって、具体的に話し合うという必要も私は感じなかったのであります。
 それから、中東和平の問題でございますが、これは先ほどの御答弁にも申し上げましたとおり、わが国は継続性と自主性をもってこの政策を進めておるということを御理解いただきたいと思うのでございまして、アメリカの手先になっておるわけでは決してございません。
 それから、朝鮮半島の問題でございますが、これはあくまでも基本的には南北両当事者間の話し合いで解決すべき問題であると心得ておる、われわれのなすべきことは、この半島をめぐる国際的な平和環境を形成していくということに尽きるということを申し上げたとおりでございまして、そのように御理解を賜りたいと思います。
 インドシナ半島におきましては、わが国は幸いに中国並びにベトナムとも外交関係を持っておる数少ない国の一つでございます。したがいまして、この紛争につきましては、中越両国が互譲の精神にのっとりまして、忍耐強く話し合いを続けて紛争解決の合意に達するよう、今後も働きかけてまいるつもりでございます。
 カンボジア紛争につきましては、一日も早く平和回復が達成されるよう、ASEAN諸国と協力しながら外交的努力を続けてまいるつもりでございます。
 UNCTADにつきましていろいろ評価もいただき、激励もいただきましたことを感謝します。
 われわれは、アルーシァ宣言に示された主張、そこに示されたビジョンに対しまして共感を覚えるものでございますけれども、しかし、公正かつ公平な国際経済秩序を目指す願望の実現は開発途上国だけの努力ではできないわけでございますので、先進国との間の建設的な協力にまたなければならぬと思うわけでございまして、日本はそういう立場に立ちまして南北問題に対処してまいるつもりでございます。東京サミットにおきましても、単に願望を伝達するにとどまらず、具体的な前進を図る契機にいたしたいと念願をいたしておるわけでございます。
 それから、人づくりの問題でございますが、経済協力が全部そうでありますように、受益国の側の立場に立って、その希望に沿ってやらなければならぬわけでございまして、押しつけるわけにはまいらぬと思うのでございます。したがいまして、先方が希望するのでございますならば、私は、三年間に倍増しようというODAの大きな財政の枠内におきまして、毎年百万ドル十年間、ASEAN諸国を中心に有為の青少年が高等教育を受ける機会を、日本ばかりでなくグローバリーに得られるチャンスを提供しようということを申し出ておるわけでございます。この問題につきましては、すでにフィリピンは賛成をしてくれておりますけれども、ASEAN諸国とも相談をいたしまして、できるだけ早く具体化いたしたいと考えております。
 最後に、金大中問題につきまして日米間で話がなかったというのはおかしいじゃないかということでございますが、話がなかったわけでございますから報告のしようもないわけでございます。ああいう情報が出てまいりましたのは私どもの会談が終わった後のことでございまして、全く私ども関知しなかったことは御了承いただきたいと思います。(拍手)
#67
○副議長(三宅正一君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#68
○副議長(三宅正一君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時三十七分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  大平 正芳君
        法 務 大 臣 古井 喜實君
        大 蔵 大 臣 金子 一平君
        農林水産大臣  渡辺美智雄君
        通商産業大臣臨
        時代理
        国 務 大 臣 小坂徳三郎君
        運 輸 大 臣 森山 欽司君
        郵 政 大 臣 白浜 仁吉君
        国 務 大 臣 山下 元利君
 出席政府委員
        外務省アジア局
        長       柳谷 謙介君
        外務省アジア局
        次長      三宅 和助君
        外務省アメリカ
        局長      中島敏次郎君
        外務省経済局次
        長       羽澄 光彦君
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト