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1949/03/07 第7回国会 参議院 参議院会議録情報 第007回国会 大蔵委員会 第18号
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1949/03/07 第7回国会 参議院

参議院会議録情報 第007回国会 大蔵委員会 第18号

#1
第007回国会 大蔵委員会 第18号
昭和二十五年三月七日(火曜日)
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○所得税法の一部を改正する法律案
 (内閣送付)
○酒税法の一部を改正する法律案
 (内閣送付)
○有価証券移転税法を廃止する法律案
 (内閣送付)
○法人税法の一部を改正する法律案
 (内閣送付)
○富裕税法案(内閣送付)
○知行税法の一部を改正する法律案
 (内閣送付)
   午前十時三十一分開会
#2
○理事(黒田英雄君) これより大蔵委員会、公聽会を開会いたします。
 先ず公述人のお方々にお礼を申上げたいと思いますが、本日は所得税法の改正その他に関しまする御意見をお伺いいたしますために公述を願うことにいたしたのであります。御多忙の中をお繰合せ下さいまして御出席賜わりましたことを厚くお礼を申上げます。
 申上げるまでもなく本案員会におきましては、只今付託されております所得税法の改正その他各種の国税に関しまする税法の改正案を審議いたしておるのでありまするが、皆様の御意見を十分に伺いまして、我々審議に誤りなきことを期したいと存じておるような次第であります。つきましては、どうぞ皆様も十分に、これに対しまする御意見をお述べ下さいますことをお願い申上げるのであります。ただ多数のお方の御意見を伺いまするので、又時間が少いのでありますので、甚だ恐縮でありますが、大体お一人については三十分間を所要時間としておりますので、お述べになりますのは、どうぞ二十分以内ぐらいにお願しまして、尚委員の中から御質問がありましたならば、お答えを願いたいと存ずる次第であります。一言御挨拶を申上げます。
 それでは先ず東京大学の助教授の大内力君にお願いを申上げます。
#3
○公述人(大内力君) 私は大内であります。私は農業問題を專門にしておりますので、今日も特に農民の側から見た場合に、この所得税法、その他の税法がどういう関係にあるかということを中心にしてお託したいと思つて参つたのであります。殊に農民に関しましては所得税法が一番問題でございますから、外の税法のことは一応抜きにして所得税法についてだけ二、三の問題を申上げたい、こういうふうに思うわけであります。
 御承知の通り農村の所得税の負担というものは戰後非常に重要な問題になりまして、そうしてそれが農家経済を非常に圧迫しておるということが最近におけるいわゆる農業恐慌というような現象が起る一つの重大な原因になつておるというふうに考えられるわけであります。そうして従来の所得税法におきましては、我々の見るところではいろいろ農民にとつて不合理な点、或いは不利な点というものが数多くあつたと思うのであります。そこで今度の所得税法の改正に際しまして、そういう農民にとつて非常に不合理であり、不利であるという点を、成るべく合理的なものとして頂きたいというふうに考えるわけでありますが、ここに出ております政府の原案というものを拝見いたしますると、まだその点において非常に不十分であるという印象を私は受けたわけであります。
 そこで、どういう点が不十分であるかということについて簡單に申上げたいと考えるわけでありますが、先ず原則的なことを申上げますと、この従来の所得税法でもそうでありますし、それから今度の改正所得税法におきましても、農業所得というものが事業所得として扱われておるということが根本的な疑問ではないかというふうに私は考えるのであります。それは、この法律案の第八條の四というところに、これは九頁ですが、「商業、工業、農業、水産業、医業、著述業その他の事業」云々ということで、こういうふうに一括されて農業が入つておるわけであります。その点でつまり農業所得は事業所得として取扱われているわけでありますが、私は日本の農業の場合は農業所得を事業所得として取扱うことが正しいかどうかということに大いに疑問を持つものであります。成る程この形の上から申しますと日本の農業は、或いは日本の農民は、今日では大部分が自分自身の土地を持つております。それから自分自身の農具や家畜や、その他の生産手段を持つております。自分自身で農業という営業をやつているという意味においては、形の上では成る程事業というふうに考えられます。併し今日の農産物価格の條件から申しますと、一切この農民が得ている所得というものの中には、土地の地代部分とか、或いはその他の彼の持つている資本の利潤部分というものは殆んど全く存在していないというふうに申してよろしいと思うのであります。その証拠にはすでに昭和二十三年に農林省で発表しております農家生計費調査というものを見てみましても、一町五反までを経営する農家はすでに家計全体が、経済全体が赤字を出している。そうして赤字を出すという意味は農業からの所得で以てしては、彼の家計費を賄うことができないということを意味しておる。而もその家計費と申しますのは、物価指数で以て、これを戰前の水準に直してみまするならば、大体戰前の同等の農家の四〇%ぐらいの家計費にしか相当しない。戰前でさえ農民の生活程度というものは非常に低いと言われているのでありますが、その四〇%ぐらいに下つている農民の家計というものが如何に低いか、つまり最低生活或いはそれ以下であるというふうに申していいと思うのでありますが、而も今日の農業の所得というものはその最低生活さえ賄えないで、尚且つ赤字が出るという状態に置かれているわけであります。そういう事実を我々が認めるならば、農業所得というものを事業とみなすことは実態に即しない。むしろ農業所得というものは農民が働いた結果得られた彼自身の労賃に過ぎない。或いは労賃さえも全部は彼に與すられていない程度であるというふうに我々は考えておる。そういう意味で私は所得税法においては、農業所得は勤労所得と同等に扱うということを建前とすべきであるというふうに考えるわけであります。その点からこの所得税法を見ますならば、先ず第一に問題になりますことは農業所得についてはいわゆる勤労控除というものがないということであります。で勤労控除はいわゆる勤労所得にのみ認められておりまして、そうして農業所得にはこれが認められていないわけでありますが、今申しましたような意味から)農業所得を一種の勤労所得であるとみなすならば、当然これに勤労控除を認めなければならないということが第一の点であります。
 それから第二に考えられますことは、農家の家族従業者の扱い方でございます。これは従来の所得税法では基礎控除というものは、農家の場合には世帯主一人にのみ基礎控除を認められておる。家族従業者は大体において扶養家族にも入らないという原則であつたのであります。今度の所得税法の改正におきましては、家族従業者を扶養家族と認めて、そうして家族従業者一人について一万二千円の扶養控除を認める、こういう制度になつております。併し日本の農業におききましては、世帶主ばかりでなく家族の中の働ける者全部が働いて、その結果、前に申しましたように家計費にも足りない程の小さな所得を挙げているということであるわけでありますから、従つてむしろ日本の農業の所得というものはそういう家族が皆働いた結果の勤労所得の合計であるというふうに考える方が正しいのでないかと私は思うのであります。そういう立場から申しますならば、家族従業者というものに対しても、扶養控除を確めるのではなくて、むしろ基礎掛除を認める。労働者の場合には、同一家族において二人の勤労所得者がありますと、一人々々について基礎控除が認められるわけでありますから、それと同じ扱いをいたしまして、農民の場合にも世帯主ばかけでなく、家族従業者一人々たについて二万五千円の基礎控除を認めるべきであるというふうに私は考えるものであります。ただその場合に家族従業者という範囲をどこにとるかということは、相当むずかしい問題が残つておりますが、大体いろいろな計算からいたしまして、一年間の中に百五十日以上農業に従事する者というものを家族従業者とみなすということが、大体日本の農業の実態に即した妥当な点ではないかというふうに私は考えますから、従つてそれ以上の者に対しては基礎控除を一人一人について認めるというふうにして頂いた方が適当ではないかというふうに考えるのであります。
 それから第三の点は税率の問題、つまりこの改正法で申しますと十三條の税率の問題でありますが、この税率は大体の考え方といたしまして、十万円以下の所得者というものに割合税率が従来よりも軽くなる。それから五十万円を超える所得者というものに対しても、従来に比べますと非常に税率が軽くなります。併し十万円と五十万円の間という中間の階級におきましては、それ程税率が従来と変らないという扱いを受けておるというふうに考えられるのであります。ところで、日本の農家の所得が大体どのくらいの水準にあるかということは、まだ正確に推定する資料が発表されておりませんが、昭和二十三年の例で申しますならば、五反未満の農家の所得というものはほぼ八万円くらいの水準だと思います。それから一町未滞、五反から一町の間の農家の所得が九万円余り、それから一町から一町五反において十万円を超える、大体そのくらいの見当であります。ところで昭和二十三年よりは二十四年、二十五年の方が米価も上つておりますし、又一般の物価水準が可なり上つております。そこで恐らくは昭和二十五年におきましては農家の所得というものは、名目的に申しますれば、少くとも一町から一町を超える農家というものにおきましては、必ず十万円を超える、それから恐らく大部分の農家は、五反から一町の間の農家でも所得は十万円を超えるのではないかというふうに推定されるわけでありますが、そういたしますと、割合に今度の改正によつて税率が変らないというところに日本の農家の非常に多くのものが含まれて来ます。そういう意味で、この税率にしてももう少し上の方まで、例えば十五万円なり二十万円なりの間というものをもう少し税率を軽くするという方法を考える必要がありはしないかというふうに考えます。でそれからもう一つ、これは税率の問題として扱うべきか、或いは一種の控除の問題として扱うべきか、そこは私にもはつきり分りませんが、農民の場合にはこういう問題があるわけであります。つまり御承知の通り日本の農家におきましては、まだ貨幣化しない部分いわゆる自然経済の部場分というものが相当存在しておるわけであります。例えば自分の家で消費する飯米とか、或いは自給肥料というようなものは貨幣化しない。つまり自分の家で自給自足をしておるわけであります。それが、まあどのくらい、農家の経済全体としてとのぐらいの割合になるかということは非常に計算がむづかしい問題でございますが、まあ大ざつぱに申しまして、大体四割は自給自足の部分であり、六割は現金化しておるくらいの見当を付けて誤りないというふうに私は考えるものであります。ところで現在の所得税におきまして、又今度の所得税におきましても、そういう現物部分までが全部評価されて、そうしてそれが農家の所得とみなされる、そうしてそれに対して税率がかけられる、基礎控除などがありますが、この税率がかけられる、こういうことになります。ところが農家の方から申しますと、そういうふうにしてかけられました税金というものは無論現金で納めなければならないということでありますが、従つて農家の経済全体として、こういう所得税を負担しても必ずしも赤字にならないという場合でありましても、農家の現金部分としての計算から申しますと、税金を拂うと非常に赤字になるという、とがあり得るわけであります。そういう場合には農家としてはたとえ全体の経済として黒字であるといたしましても、やはり税金を抑うためには借金をしなければならないということになりまして、そうしてそれが農家の経済に対する一つの圧迫になるわけであります。又税率の方から申しますと、たとえそれが赤字にならないといたしましても、農家の経済全体として例えば所得税の負担が二〇%なら二〇%といたしましても、現金部分だけで計算いたしますと、三〇%になり或いは三五%くらいになるということになりまして、非常に過重負担になるという傾向を持つわけであります。そういうふうにつまり経済が全部現金化していないという農家の経済の実態を考えますならば、農家に対する所得税というものは、普通の全部の経済が現金化しておる者より、多少税率を軽くするとか、或いは税率が軽くできないならば、農民に対しては例えば農業控除というような制度を認めて特殊の控除を附けて、それによつて租税負担が過重になることを防ぐ必要がある。そうしないと、たとえ全体としての負担率が他の階級と公平であるといたしましても、それにも拘わらず農民はやはり借金をして没落せざるを得ないという状態に置かれる危険性が非常にあるということを私は考えるわけであります。そういう意味で、この税率を軽くするか或いは農業控除というような新らしい考え方を導き入れるかということを、一つ御研究頂きたいというふうに考える次第であります。それが第三の点であります。
 それから第四の点は、これは多少細かい技術的な問題になりますが、この申告の予定申告及び確定申告の時期の問題であります。で、今度の改正におきましては従来の制度より農業の取扱が変つておりまして、多少合理的になつておると思うのでありますが、最初の七月の農業予定申告というものは私は合理的だと思いますが、その次の十一月の農業予定申告というものは私はもう少し後へ延ばした方がいいんじやないか、せめて十二月にこれを移して頂いた方が農家としては楽ではないかというふうに考えるので、あります。と申しますのは、十一月と申しますならばまだ米の收穫中で、ありまして、農家にとつては最も忙しいときの一つでありますし、それからまた供出がそれ程行われていないときでありますから、十分に所得というものが分らない、そういう意味で十二月になれば大体農閑期になりまして、農家としてむゆつくり申告もできるという岬期でありますから、この十一月を十二月に移して頂きたいとうことが必要ではないかというふうに考えるのであります。
 それから次の確定申告の二月提出というのも、これは農家にとつては多少無理ではないかと思うのであります。と申しますのは、二月にはまだ供出が全部完了しておりませんし、況んやその供出代金とい了ものはまだ農家に入つていない。そこで二月に納税をするということは農家の経済にとつては相当苦痛であると存ずるのであります。そこで、これもできますならば、これは明会計年度の関係もありまして、殊に困難だと思うのでありますが、できますならば二月を三月に移して頂きたいということが農家にとつては楽であるというふうに考えられるのであります。それが第四であります。
 最後にもう一つ申上げたいことは、これは所得税の問題というよりは、むしろ税務署の取扱の問題になると思うのでありますが、例の青色申告制度というものが所得税法の改正の中に導き入れられておるわけです。併し実際問題といたしまして、日本の農家において従来も簿記をやつておりました、記帳をやつておりました農家というものは、全体の農家の一割にも満たないという統計が出ておるくらいです。そうしてその再色申告制度を、例えば法律的に取入れたといたしましても、実際問題として日本の農家のどのくらいのものが青色申告を出すことに十分な程の記帳をなし得るかと申しますと、私は日本の農家の現状においては非常に少いものであろうというふうに考えるわけであります。そこで大部分の農家におきましては、やはり晦色申告によらない普通の申告しか行えないのではないかというふうに考えられるのでありますが、その場合の査定なり、確定、更生決定なりを税務署が如何に扱うかということは相当重大な問題だと思うのです、率直に申しますならば、今までの税務署の反当所得標準というものによる所得の査定、それに基く更正決定というものが非常に過重であつた、非常に水増しされておつたというふうに私は考えますし、それは幾つか発表されております調査によつてもそれは明つかにされておるのであります。
 シヤウプ勧告はそういう標準によつて査定をすることはよろしくないから、もつと正確な、生産量とか供出とかそういう正確な資料に基いて確定申告をすべきであるということが書かれておりますが、ただ実際問題として、そういうことを税務署がどこまで親切にやつて呉れるかということが相当疑問の余地が残つておるのではないかというように考えられるのであります。そこでそれをどういうふうに法律の中に持ち込むべきであるか、或いは法律で規定するのでなくて国会の附帯決議のようなもので解決すべきであるか、そういう技術的なことは私は分りません。とにかく税務署の扱い方が従来のような一方的な、いわば税務署が勝手に水増しをして決めるというようなことでなくて、もつと合理的な基礎に基いたはつきりした形で決定するというふうに税務署の運用方法を持つて行くということを十分に考えて頂きたいということが第五の要望であります。
 それからも、一つついでに附加えて置きますと、これも税法の問題であるか、それとも扱い方の問題であるか、私にははつきり分らないのでありますが、税法で申しますならば、第八條の先程申しました四号というものが問題になるわけでありますが、総收入金額から必要な経費を控除した金額というのが出ております。九頁の最後から三行目から二行目にかけてでありますが、この総收入金額というものが従来でも非常に農業の場合は曖昧であつたわけであります。従来の税務署の取扱で申しますと、総收入金額というものが、農家の收穫物のあつたときを以て收入のときとみなすという扱いをしていたようであります。つまり例えば十一月なら十一月に米が八十俵なら八十俵穫れますと、八十俵分がそのときの農家の所得であるという考え方をしていたわけであります。併しこの考え方は少しおかしいのじやないか。たとえ收穫物はあつてもそれが貨幣化しない、或いは農家自身が消費しないうちはまだ所得になつていないのでありまして、收穫物が売られて貨幣化するか、或いは農家自身が消費したときに、初めて所得として実現されたと言えるのではないか、こういうふうに考えられます。そういたしますと従来問題となつております米の供出代金というものの大部分が翌年の一月か二月頃に延びるわけでありますし、又農家の飯米の消費というものが翌年の十月頃までずつと続くわけであります。そういう翌年度に実現さるべき所得を、従来の取扱では前年度の收穫のあつたときの所得とみなして税をかけていたわけでありますけれども、農家の所得で見ますと、まだ金が入らないうちに税金を取られるということで、非常に不合理ではないかと考えられますので、その点ももう少し合理的にいたしまして、実際の收入というものは、農産物が売られたとき、或いは農家が消費したときに收入のあつたときとみなすように税法のどこかに明記して頂きたいと考えるわけであります。その外まだ細かい問題が幾つか拾えばございますが、時間が限られていることでもございますから、大体私の気付いた点の主なことだけを申上げて、以上でございます。
#4
○理事(黒田英雄君) 御質問がありますれば簡單に一つお願いしたいのですが……。御質問がないようでありますから、次に東京商工指導所長の中西寅雄君にお願いいたします。大体二十分くらいで一つ済むように要点をよくお話願いたいと思います。
#5
○公述人(中西寅雄君) 国税の方につきましても、もう各方面で長い間論議が盡されておりまして、一般的な点は皆様方も十分御存じのことであろうと思いますが、私は本日は比較的まだ一般に論じられていない点について申上げて見たいと思います。先ず第一に、これは或いは税法そのものの問題か、或いは運営の問題になるか、はつきりいろいろのことに関係があることでありますが、税務の合計と企業の会計制度の調和或いは一致ということについて一つ申上げたいのでございます。第二の問題は、資産再評価に関する問題でございます。第三の点は、中小企業の青色申告制に関する問題でございます。
 先ず第一に税務会計と企業会計との関係の問題でございますが、シヤウプ勧告を見ますと、一般に事業において公正妥当と認められておるところの会計処理の方法、いわゆる一般に会計原則と言われるところのものが税法に非常に沢山取入れられておりまして、そうしてすべてが会計を基礎としたところの客観的な事実によつて税を決定して行く、そうしてその税の計算方法は一般的な会計原則に従つてやつて行くということを基本として行なつておるように思うのでございます。例えばシヤウプ勧告に基きまして今度の税法の法人税の方におきまして、或いは所得税法におきまして、減価償却の方法につきましていろいろの原価償却の方法を考え、これらのものをいずれを採用してもいい、ただこれを変更するときには一度決めたものは永くこれを守るべきであつて、変更するときには税務当局の方の許可を得なくちやならん、或いは又棚下し資産の評価につきましても同じようないろいろの方法があります。これらの方法のいずれを採つても差支がない。併しながうそれを変更する場合におきましてはこれを税務の方の許可を得なくちやならん。これは会計原則にいうところの継続性の原則ということの適用であります。こういつた点において今度の税制には非常に進歩した点があるように思うのでございます。或いは又従来とかくの問題がございました貸倒引当金を認めるかどうかというふうな点につきましても、今度の税制においては一定の限度において貸倒引当金を認める、こういつた点も従来の税法の考え方と違いまして、会計原則にいう安全性の原則というものを採用しておるというふうな点において、今度の税制においてはこういつたふうの会社企業において行われておるところの会計の原則に近寄つて来ておるということにつきましては非常に喜ばしいことであると思うのでございます。従来最も問題になつておりますのは、企業の計算するところの所得というものと、税務が認定するところの所得というものの間に非常な食違いがあるということがいろいろ紛争の種になつておるように思うのでございます。税法の方面において例えば法人税において所得とは何かということを言う場合において、税法ではただ総益金から総掛金を差引いたものに過ぎないものであるということを規定しておるだけでありまして、後はすべて通牒に讓られておつたように思うのでございます。そうしてその通牒は税務当局と極く一部の税務代理士の人達が知つておるところのものだけであつて、国民一般は何らその内容がどういうものであるかということは知らないわけであります。そうして企業の方におきましては企業の方面において一般に公正妥当と認められるところの方法に従つて、従つて又一般に経済界において所得と認められておるものを計算したととろで、それがその通牒に反しておるような場合におきましては、それが否認される、こういうふうな問題が非常にあつたわけであります。又所得税の方におきましても所得税の所得とは何かということにつきましては單に收入金額から必要経費を差引いたということを規定しておるだけでありまして、必要経費とは何かということは全く税務当局の裁量に俟つというふうなことになつておるようであります。これらの点につきまして或る一つの考え方から言うならば、企業の会計のいうところの所得というものと、それら税にいうところの所得というものは目的が違うから、その内容も変つても差支がないのだという一つの意見もございますが、併し企業会計のいうところの所得というものでありましても、單に当該企業の主観的な考え方によつて決定されるものではなくして、やはり社会的に公正妥当として一般に所得として認めらるべきものを計算しておるのでありまして、この点はやはり税務の方もそれを認めて、そうしてそれに税を課して行くということにするのが、これがやはり正しい行き方ではないかと思うのであります。イギリスにおきましては税務会計の方の所得と又企業会計における所得との間に何らの背馳がない。又アメリカにおいても多少異なるところはありますけれども、原則的なところは何ら異なつておるところがない。然るに我が国において非常に違ふところがあるように思います。何とかしてこれを一致するように省令等において所得といつたものの内容を規定して頂く、又規定する場合においてその点を十分に考慮して頂きたいと思うのでございます。
 一、この問題を申上げますと、今日事業界において法人税において最も問題になつておりますのは修繕費の取扱の問題でございます。或る修練に使つたところのものを修繕費と認めるか、或いは又改良費としてこれを資産の増加として認めるかということが非常に大きな問題になつておるわけでございます。今日のような場合においてはできるだけ修繕ということによつて設備を改良して行くということが経済上止むを得ないことになつております。従つて修繕費というものは相当多額の金額になつておるのでございます。この場合ごの修繕費というものを改良費として認めるか、いわゆる資本的支出として認めるか、或いは又これを損金として認めるかということは所得の計算にとつて非常に大きな問題になるだろうと思うのでございます。省令の方におきましては、修繕の場合におきましても費用が耐用命数を増加せしめる、或いは資産の価値を増加せしめる、或いば資産の能率を増加せしめるというような場合においては、これは修繕費ではなくして改良費として認めるというふうに規定として考えておるといつたふうなことを伺つておりますが、成る程これは理論的には非常にはつきりしたことでございますが、現実の問題になりまして税務当局がそれを如何に認定するかということになりますと非常にむずかしい問題が生ずるだろうと思うのであります。例えば一つのプラントというものの一部分を替えた場合に、その部分だけを取つて見ますれば、これは非常に耐用命数は延びたかも知れないが、プラント全体を考えた場合においては何らそのプラント全体の壽命、命数を増加したことにはならない。こういつたふうな場合においてそれをどういうふうに取扱うかということは、これはそれぞれの業界におけるところの一つの構成におけるところの会計の観念、会計原則によつて決定すべきところのものではないかと思す。これを單に法律の末節にこだわつてこだわるということは却つて目的を逸するようになるのではないか、或いは又修繕の場合におきまして修繕引当金の制度というふうのことが問題になるだろうと思います。化学工業のように一時に多額の修繕吉を要する場合においては年々その修繕の引当のために利益の一部をば積立てて行かなければならない。これは長い眼から見るならば損金に属すべきところのものであるというふうに一般の会計においては考えるという場合におきまして、こういうものを損金として認めるかというふうなことも、これは一つ今度の税法の改革におきまして是非考えて貰わなければならない問題ではないかというふうに考えます。
 又法人税と個人の所得税とを見ますと、その所得という場合において非常に内容の違つた点があるように思うのでございます。勿論個人の事業というものを事業として見ないで、家計として見るというような場合においては違つで来ることは当然であります。一方において現在の税法の建前から見ますと、個人の事業の場合においても事業と家計を嚴密に区別するということになつておりますならば、個人の事業も法人の事業と同じように企業或いは事業として取扱わなければならないので、はないか、こうなつて参りますと所得の内容がそう異なるべき性質のものではないのではないか、然をに現在の個人の所得の場合におきましては評価損というようなものしか認められない。或いは徹底したところの原価主義を個人所得の計算においては探つておりまして、棚卸資産の評価損ということが認められない。或いは財産の売却損といつたふうのものは、これは事業の損或いは利益として財産の売却損益というものを認めない。或いは法人税においては寄附金が或る程度認められておるに拘わらず個人の所得税においては認められないこういつたふうないろいろの食違いがあるように考えるのでございます。それから又所得を計算する場合において、その各期間の所得をどういうふうに計算するかという問題につきまして現在の所得税法というものは、非常に嚴格なるところの発生主義というものを採つておるように考えるのでございます。そこで先の方もお話しになつたように、例えば農家の所得を計算するという場合においても農家の收益というものは、農家の作物ができたときにおいてその收益が発生したものである。或いはその費用というものはその期間的な配分ということから見ると、麦なんか、或いは豚なんかが生長の途中にあるものは仕掛品として仕掛の計算をするといつたふうの非常に発生主義ということに徹底して、そうしてそれを非常に窮屈に解して細かにいわゆる計算を要求し、それに従つて所得を決定するというふうなやり方になつておるように思うのでございます。そういう意味におきまして、個人所得税の計算、農家の所得税の計算といつたふうなものが非常に複雑性を帯びて来ておる。青色申告においてできるだけ帳簿組織を簡單にしようとしても現在の税法がある限りにおいてどうしても非常に細かい計算をしなければならない。こういつた羽目になつておるのでございまして、こういつた点はもう少し合計の常識というふうなことを考えて一般に妥当と考えられておるところの会計の処理の方法に従つて所得を計算するということを考えて頂かなければならないのではないか。又ここで附加価値税の計算方法がどういうふうになるか分りませんが、附加価値税においては收支の計算といつたふうな計算方法を採つておる。片方において所得税、或いは法人税においては損益計算主義というか、発生主義の計算主審を採つておる。こういうふうになつて参りますと、大きな企業におきよし、も二軍の計算制度をやらなければならない。同じ目的の、結局附加価値という利益を算出する一つの要素になるのでありまするからして、両方が背馳すべからざるものであるのに計算方法が異なつておる。争ういつたふうにいろいろ計算方法が複雑であるとか、或いは又いろいろな計算方法を要求するというふうなことになつて参りますと、もう正確なる所得を計算するということは却つて困難になるのではないか。計算方法を比較的簡單にして、少し大掴みであるが、大体の所得をば掴むということの方が、むしろ負担の公印ということを余りに強く考え過ぎまして、こうして細かい計算をして却つて所得の計算を混乱せしめるというようなここよりも遥かによいのではないか。こういうふうな点につきまして、どうしてもやはり商法なり、或いは又一般の会計原則、証券取引参員会なんかにおいて認められたところの、認められるであろうところの会計原則と、税の方の計算の方法というものを調和して企業としては一本の計算でやつて行けるように是非して頂きたいというかように考えるのであります。
 第二の点は、資産再評価の問題でございますが、シヤウプ勧告の場合において、資産再評価の目的というものはインフレーシヨンによるところの資産の食潰し、名目的な利益というものを排除して、真の利益をば算出するようするために資産の再評価をするというのが一つの大きな目的になつておりす。そうしてシヤウプ勧告にも言つておるよう、ここで新らしい貨幣水準に従つて評価替えをして行く。そこで新らしき発出点において皆が共通の会計の基準に従つて計算をやつて行く。それによつて初めて事業の自由競争が効果があり、税の負担の公平ということも得られるのだということを申されております。そこでそういう意味においてシヤウプ勧告におきましては、この資産の再評価というものは任意ではなくして強制的ということになつております。併しこれが一般の実業界方面において非常なるところの反対を起した結果、これが課渡所得以外の場合におきましては任意であつてよい。又そのやるとやるまいと任意でよい。或いは最高限以内ならとの点でやろうと專業者の自由であるというふうに決められたようであります。このことは何故実業界の方で、そういうふうに資産再評価の強制ということについて反対、があつたかというと、資産再評価そのものに対する決して反対ではないのであつて、この資産再評価によつて生じて来るところの評価差益というものは、これは何ら利益というものを現わすものではない。單に計算上の、修正したところの名目的なものに外ならない。これに対して非常に高い税金を課せられるからして、こういうふうな高い税金が課せられると、この税を佛うためには事業の規模を縮小する以外にない。こういつた点から非常にこの資産再評価に対して一部の実業界において反対があつたように思うのであります。又同時にこれとの関連において固定資産税という地方税ということを考えます六ば、資産再評価をした場合において、最初の年度等においては土地家屋等は別といたしましても、資産再評価したその価額に固定資産税というものが事実上課せられることになるのではないか。こういうふうな場合におきましては資産再評価税以外に固定資産税も多額に負担しなければならない。こういつた危惧から資産再評価ということを我々があれ程熱望していた資産再評価に対して反対を唱えること‘なつたのではないかと思うのでございます。併しながらこれを任意にするということは、これは資産再評価の目的そのものを日本経済の立場から見まして、これを失つてしまつておるのではないかというふうに考えます。問題はむしろ資産再評価を任意にするかどうかという点よりも、できるだけ多数の人に資産再評価をして企業の基礎健全にして貰う、その代りにそれが実業界のなし得るよう資産再評価差益というものに対してできるだけ税を課せない、理論的にいうならば何ら税金を課すべき性質のものではないのでありますから、いろいろな関係からして止む得ず税を課するとしても、二%ぐらいの税課するのが妥当の点ではないか。現在の六%の税を二%に引下げたところで、多数の者がそれに従つて喜んで資産再評価をするということになるならば、四百五十億の税收入を得るということは決してむすかしいことではない。そこで税率はできるだけ下げて、こうしてできるだけ多数の者が資産再評価をなし得るようなふうに資産再評価というものの立法をいたしで頂きたいというのがこれは私達の願望でございます。
 もう一つここで明らかにして置いて頂きたい問題は、この資産再評価というものは、差額というものは決して利益の性質を持つたものではない。これに税金を課するのは別の理由から、財産税的な性質の形で課するに外ならないのだ。ところでこの資産再評価差額というものは数年間一つの積立金の形で留保されておりました。約四分の三はその後において株式なり、利益配当という形でこれを処理することができるようになつております。この場合においてこの税務の上においてこの資産再評価の差額というものを何と解釈するか、これを利益と解釈するか、或いは又そうでないところの資本の剰余と解釈するかと、うことの場合の相違によつてこれを積立金に、この積立金を切崩す場合において、それに課税をするかしないかという問題が将来起つて来る、必ず起つて来るのではないかというふうに考える。そこでこの点をはつきりするために、この資産再評価の差額というものは何ら通常の意味におけるところの評価益というものとは全然性質の異なつたものであろということをはつきり現わして置くことが必要じやないかというふうに考えられます。
 第三の問題は、青色申告制度の問題でございますが、この青色申告制度は、税務行政の運営において画期的なことであります。昨年来税務当局と中小企業の業者の間にいろいろの税のいさかいがあつた場合におきましても、税務当局が割当課税をするとか、外形標準によつて税を課するとか、或いは又標準率を余りにも機械的に適用して実情に即しないで、上から天下り的に税を課するというふ、なことが言われ、これに対して業者の方も、むしろこういうふうにやられるのであつたならば、帳面をつけてその帳面によつてはつきりと税を決めて貰う方がいいというような気運が非常に高まつて来たわけであります。こういうふうなときにおきまして、このシヤウプ勧告に従つて、今度青色申告によつて帳面を基礎として税を決めるということをされたことは、これは非常に今後日本の税務行政を合理化するという点において喜ばしいことであると考えるのであります。併しながらこの青色申告をやつて行くということのためには、現在の税法が非常に複雑てございますからして、それに適応するために帳面をつけるということになれば、相当にこれは帳面もむずかしくならさるを得ないという一つの悩みがあるのでございます。それで同時に今の、今度の春色申告のための基礎どなる帳簿というものは十二月の十五日の大蔵省令によつて、一月一日からこれこれの帳面を記載しろ、つけろ、そうしたものについては、青色申告が議会を通過したという場合において、その特典を認めるというふうなことになつておるわけです。十二月十五日に省令を発布してそうして一月一日から帳面をつける、そのために一月一日の状態の棚卸しの資産の表をば税灘署々提出するというふうなことば余りにも官庁的なやり方である、時間の余裕というものがないのではないか、大小業において新たな会計制度を立てるためには一年の日子を要すると言われておつたけれども、中小企業だつて帳面のつけ方を覚え、又自分のところの帳面の制度を確立するということのためには、どうしても数ケ月の時日を要するのではないか。そこで若しこの青色申告制が議会を通つたといたしますれば、この青色申告をなし得るところの朝間を何とかしてここ数ケ月延長して、その後において帳面をつけたものも、今年は過渡的なこととして、青色申告の特典者としてやはりその帳面というものを参酌して行く。そうしてまあ二ケ月なり三ケ月の間帳面がつけていなくてもそれはその後においてつけた帳面からして一年の所得を推定すると、ごういつたふうな方法を是非採つて頂きたいというふうに考えるのでございます。
 それからもう一つ、今業者の方で非常に青色申告制について一般の注意が喚起され、又帳面をつけるということについては非常に熱意を持つておるわけでございます。ただその帳面が比較的複雑であるという点もありますが、これは現在の税法上止むを得ないことになつておるのでございますが、併しながら一方において帳面をつける意思能力はあるといたしましても、果して帳面をつけた場合においてやはり帳面を認めて呉れるかどうか、却つて正直者は馬鹿を見るというふうな結果を生じはしないかというふうなことに対して非常に危惧の念を持つております。そういう意味においてこの青色申告をする人が比較的少いという事実が現われて来ておるのではないかと思うのでございます。勿論国税庁或いは国税局におきましてはこの青色申告制に対して非常にこれを普及するために力を盡しておられるということは事実でございますが、税務署の末端に行きしますと、どうも青色申告制というものの趣意というものを理解し、そうしてこれを本当に推進して行くべきものであるという、こういつたふうの考え方が足りないのではないか。そういうふうな事柄からして、この青色申告制というものが非常に業者の間にいろいろの危惧の念を持つておられる。そういうふうなことになりますと却つていろいろな混乱が生じて来るようになりますので、どうか青色申告制というものが、これが施行されるということになりますれば、税務当局が全力を挙げてこれを普及するようにして貰いたい。そうして最初の過渡期の場合においては少しくらい記載要件などが間違つておつたところがありましても、それが悪意のものでない限りできるだけこれを指導して、この制度をば確立するためにやつて行く、こういうふうな態度を以て臨んで貰いたい。これが中小企業者が一般に青色申告について望んでおるところであります。簡單でございますが……。
#6
○木村禧八郎君 再評価益、これは一種のインフレ利得をずつと先に延ばしておいた、こういうふうに考えられるのですが、今後これに継ぎ足しで政府は資金計画の中でこれをやはり設備資金として将来使い得る、そういうふうに考えておるのですね。これは一種のインフレ利得として考えるべきものではないのですか。
#7
○公述人(中西寅雄君) 私が只今申上げましたように、これは普通の場合における評価益とは、貨幣の価値そのもの、従つて物の価値を計るところの貨幣の單位、貨幣価値そのものが一定した場合において物価の変動によつて生じて来るところの評価益というものとは全然性質が異なるものであつて、貨幣価値そのものが変つて来る、貨幣価値そのものの変動したものをこれを修正する性質のものであるからして、これによつて生じて来るところの評価益と申しますか、評価差額というものは全然これはそういつたふうのインフレ利益という、通常の意味における利益というものとは全然性質の異なつたものである。若しインフレ利益というものをそれは單に計算上の架空の利益であればそれはインフレ利益でありましよう。併しシヤウプも言つておるように、インフレ利益というものは、これは真の利益でないのだから、こういうものはできるだけ排除しなければならない、こういうふうな考え方のようでございます。世界どの国におきましてもこの利益を以て真の利益と考える人は少いのではないか。私はこういうふうに考えております。
#8
○理事(黒田英雄君) 次に前全国財務労働組合副委員長をされておりました徳島米三郎君にお願いいたします。
#9
○公述人(徳島米三郎君) 私徳島でございます。今度の税制改正案によりまして大体我々の朝待しておつたシヤウプ勧告というものが全面的に実施されるようになつたわけであります。こういうふうに他の国の人たが我が国の税制を批判して、そうして新らしい制度を勧告するという場合に、我々としてはどうしても日本の今までの徴税機構或いは納税者の意識水準、そういうものにマッチした税制ができなければ決して成功しないということを我々は今までに非常に苦い経験を嘗めたことによつて知つておるのであります。と申しますのは、我々今税金の問題で一番困難な問題は所得税の問題をどうするかということであります。毎年社会問題となつておるこの所得税の問題をどういうふうに解決するかということが我我のシヤウプ博士に一番期待しておつたことでありますけれども、それが今度のシヤウプ勧告によつて果してうまく解決されるかどうかという点につきましては、私は多大の疑問を持つものであります。この前に昭和二十二年度から所得税の予算課税に基くところの申告納税制度というものが実施されましたけれども、あの場合においても理論的には非常に優れておつても、果して現在の日本の実情からいつてそれが成功するかどうかについては多大の疑問が持たれておつたのであります。これはそれを実施する責任官庁である大蔵省の主税局の責任者の人々も大体はこれに反対するような意見を持つておつたのでありますけれども、あれが実施されたその結果はどうかと申しますと、非常に税務官吏も困るし、納税者も又非常な迷惑を受けた。又税務官庁にも責任はありますけれども、併しながら現在の納税者の水準或いは現在の納税機構の現状というものから言つて少し無理があつた。それと同じようなことが今度の所得税におきましていろいろ出て来るのではないか、こういうふうに考えます。
 その第一の反応といたしましてはシヤウプ博士が非常に力を入れておつた青色申告制度が現在までのところ非常な不成績でございます。最近税のしるべに発表されましたところによりますと、法人関係で青色申告の届出をした者が四四%、個人の事業関係、事業所得関係で届出をした者が僅かに二・七%、こういうふうに非常に不成績であります。この点につきましては、前と同じように主税当局御自身がこれに一向乗気でなかつたということが大きな原因だろうと思います。けれどもやはりこの制度自体に非常に批判すべき点があると私は考えます。先ずこの青色申告制度が何故こういうふうに不成績であつたかという第一の原因として指摘できるのは、これは所得税制度の現在一番困難な問題でありますけれども、基礎控除、或いはその他の控除金額は現在の生活の実体から考えて余りにも低過ぎるということであります。この点はシヤウプ勧告においてもはつきりと指摘されておりまして、現在の日本の所得税制度の結果についてあのシヤウプ勧告は非常に痒いところに手の届くような徴に入つた解説をいたしまして、現在の日本の所得税制度が一方においては高い税率と、それから高度の脱税というものが一つの悪循環をなしておる、又税務行政の面においては、納税者とそれから税務官吏がお互いに騙し合いをしておる、こういうふうな二つの悪循環を鋭く衝いておりますけれども、その二つの欠点を打開する途は、基礎控除その他の控除金額の引上げ、税率を引下げるということが先す第一歩であると勧告は指摘しております。併しそういうふうな正しい指摘にも拘わらず、実際面に現われたこの基礎控除額というものは殆んど変つていないのであります。今までの基礎控除額と殆んど実質的には変らないような勧告しかなされておらない。その勧告自体に大きな矛盾を持つておる。片一方では現在の所得税制度の欠陥は、控除金額は余りにも低いと言いながら、片一方の方では現在の日本の所得税の基礎控除はアメリカの場合と比べて余り大差がない、と申しますのは現在日本の平均的な労働者の賃金は一ケ月に一万円取つておる、それに対して現行の基礎控除、これは改正前の基礎控除でありますけれども一万五千円であつて、大体一月半分にあたる、平均的な労働者のアメリカの賃金とアメリカの所得税の基礎控除とを比較したときにアメリカでは大体ニケ月分に相当しておる、従つて基礎控除額そのものについては余り大差がない、だから強いて変更する必要はない、こういう意見でございます。その結果基礎控除額自体には一万五千円、シヤウプ勧告では二万四千円、今度の改正案では二万五千円というふうに増加しておりますけれども、その内容をなすものは片一方の方では勤労控除を減らして、シヤウプ勧告では二五%であつた現行法を一〇%に減らす、今度の政府案では十五%に減らすというふうになつておつて、その差額を基礎控除の中へ織込んだというだけでありまして、シヤウプ博士の考えとしては基礎控除の一万五千円は変更する意思がないというふうにシヤウプ勧告からは受け取計るのであります。そういうふうに片一方では基礎控除が低いというのが現在の日本の所得税制度の欠陥であるということを一応認めながら、片一方の方では現在の一万五千円の基礎控除はほぼ妥当であるというふうな見解が見える。これは大きな矛盾ではないかと私は考えるのであります。そういうふうにシヤウプ博士も指摘するように基礎控除の制度が現在の所得税制度の欠陥であり、これを是正しなくては今までいろいろ指摘された所得税制度の欠陥を実は打開できないのであります。それが結局この青色申告倒産において日本の納税者がこれに飛び付いて行かない原因ではないかとこういうふうに考えるのであります。これが最も根本的な原因であります。その一つの例としては同じ国税庁が監修しておる税のしるべというこの新聞に何故青色申告をしないかという納税者の談話が出ております。これによりますと、青色申告をしないで従来通り税務署に適当に決めて貰つた方がいい、青色申告をすれば正しいことを前提としなくくてはならない、正しくすれば生活はできないし、正しくあるべきものに偽わるのは自分の良心が許さない、だから生きるために青色申告などはできないし、そんなことをして税務署へも迷惑はかけたくない、税率が下つて低額所得者の生活権を認めるならいつでも正直に記帳して、適正に納税する、その方が気持がさばさばしていい、こういうふうな意見が税のしるべという新聞に出ております。これが大体現在青色申告をしない人の殆んど大部分の気持ではないかと私考えるのであります。その外にいろいろ申告をしない理由としては、この規則が余りにもむずかし過ぎる、こういうふうな点が挙げられ、且つ青色申告の届出でをしても税務署は理窟をつけて認めないのではないかというふうな心配もありますけれども、これは根本的な問題が解決されたならばおのずから解決すべき問題であります。
 先ず、規則がむずかし過ぎるという点につきましては、前の方からも御指摘がありましたけれども、これについても先ず今の税務官庁自体がこの青色申告制度について乗気でないということがこういうところにも現われておるわけであります。この乗気でないという一つの事例として、私共の聞いた話では、大阪の或る税務署では、納税者が、税務署は青色申告して貰つたら、余り沢山こういう青色申告の届出が出れば却つて税務署は困る。そういう届出をした人を一々嚴重に調査するだけの今人手がない、だから余りしない方が税務署は助かるのだというふうなことを、納税者自身が我々に言つておるような状態でありますし、又、私が直接会つた或る税務署長は、この青色申告制度について増税者からいろいろ相談があつても、これに対して確定的な返事をしないことが今一番大切だ、こういうことを言つておりまして、直接の責任者である税務署長その他が、本当にこの制度に対して確信を持つていないということが、この青色申告制度を普及せしめない第二番目の原因ではないかと考えます。で、この規則がむずかしいということも、そういうふうな心構えが苦し改善されるならば、もつといろいろな点について改善が施されるのではないかと新えます。譬えて申しますと、現在一番この青色申告制度をやつて貰わなければならない小さな業者にこれを実施させるにば、やはり業種別に、魚屋さんば魚屋さん、或いは自転車屋は自転車やさんの業種に合つたような一つの制度を拵え、或いはこれはそういう組合の人々に来て貰つて、そういう首脳者の方と相談した上でその業種に合つたような一つの規則を桁えてやるぐらいの輝切さがなければ、この問題は解決しない、こういうふうに考えるわけであります。それからこの青色申告の届出をした者について税務署が帳簿を認めないというふうな心配もありますけれども、これはそういう前提が今まで述べたような二つの欠点が是正されたならば、税務署としてもそういう点については、法律として決まつた問題については、大した問題がない、私はこういうふうに考えます。ただこの場合税務署が警戒するのは、やはり一番最初に言つたような根本的な陣因から納税者が青色申告の届出をしても、果して本当に実際のものを出すかどうかについては多大の危惧を持つ、こういうふうに考えます。私最近この税金の新聞に少し関係をいたしまして、その関係でいろいろな人がいろいろな問題を提げて参るのでありますけれどもへ最近特におかしく感じたのは青色申告の届出をしたが、一体何制くらいの所得を出せば税務署が認めるか、百パーセント出せばとてもたまらないから、税務署が認めるような範囲を少し聞かして呉れないか、七割くらいか、或いは八割くらい帳面につけて置けば大体認めるのではないかというふうな質問が出るほど、納税者はこの問題について果して裸になるならば、特色申告制度は少し考慮しなければならない、こういうふうな気持を持つておると考えます。
 以上は大体所得税についての今度の改正案に対する私の見解でありますけれども、次に問題になるのは法人税の性格を変えたという問題であります。この点については、私は大体反対の意見を持つております。これは大体アメリカにおいてもこういうふうな考え方を持つ人、例えばシヤウプ博士のような人、それと又全然反対に改正前の現行法のような考え方を持つ人と、二派に分れておるのでありますけれども、我々としてはどうしても現在の理論的な問題から、或いは税務行政上の実際的な見地から言つて、これには反対せざるを得ないのであります。と申しますのは、現在の法人の中で、特に税金を沢山納税しておるところの大法人というものの性格を考えて見ます場合に、これは一つの法人としてこそ一つの独立的な基礎を持ち、そうして又信用を持ち、そうして税金の担税力というものも大きなものでありますけれども、これを株主に分配して、今まで会社で取つておつた税金を、今度は株主から徴收するというようなことは、これは理論的に育つても少しおかしいし、又実際的に言つてもこれは非常に税務行政を困難にする因であります。現在日本の税金問題の一つの欠陥は、これはシヤウプ勧告でも指摘されておるように法人税の税收入が少な過ぎるということであります。これは戰前或いは戰時中におきましては、大体個人の事業所得関係と法人関係から上つて来る税金とほぼ同額であつたわけでありますけれども、現在ではこれが殆んど比較にならないようなパーセンテージを占めておりまして、所得税が二十五年度の予算では大体五六%これに対して法人税関係が九%こういうふうに非常な開きを示しておるということが、現在の税金問題を困難にしておる一つの原因でありますので、この法人税については、我んはやはり或る程度のこれに累進課税をして、そうして法人税として税金を取る方が税務行政を容易にする原因だと私は指摘したいのであります。それかり次にシヤウプ勧告ではいろいろな点で脱税の抜け道を塞ぐような措置を講じております。例えば所得税の補完税として富裕税を持つて来たということも表面の理由としては、これは表面の理由と言うよりも大体は外資導入のためにこういうものを持つて来たわけでありますけれども、景気税率を五五%で打切つて、その代りに富裕税をその補完税として設ける、そうしてその高い税率の点は、この財産に対する課税で補充するというふうな制度になつておりますけれども、これは考えようによれば、所得税の欠点を一つの資産の面から捕捉して、そうしてその抜け穴をこういうところで捕えよう、これは税金そのものが目的ではなくして、抜けておる資産をこういう面から捕捉するということが一つの狙いではないか、こういうふうに考えるわけであります。
 それからもう一つの問題は無記名預金を禁止する、或いは仮装預金を禁止する。こういう一つの制度と、それからもう一つは有価証券の名義書換の規定を設ける。必ず名義書換をすべしという規定を設ける。この二つの点が非常に重大な問題として投げ出されております。この問題については御承知のように、非常に金融方面、或いは証券業者の方面から反対意見が出ておりまして現在難航を続けております。前の無記名預金の問題につきましては、大体十月一杯を以てこの制度を廃止する。それから有価証券の名義書換の問題につきましては、大体今年一杯は困難ではないかというふうな雲行であります。この問題にいたしましても我々として特に注意しなければならないのは、こういう問題は同時にやらなければ余り効果がないということであります。つまり無記名預金と有価証券というものは、現在脱税の一つの隠れ場としては両横綱のような恰好を呈しております。で、これを片つ方の無記名預金の方を先に実施して、あとの有価証券の書換を遅らしてしまう、そういうと、この時間的なズレの間に片つ方の抜け道を塞がれたところの無記名預金は、今度は証券界の方に流れて来る。こういうことが十分予想されるわけであります。この無記名預金の問題にいたしましても、この預金の殆んど大部分がこの脱税の抜け道であるということは、すでに有名になつておりますけれども、有価証券の問題にいたしましても、これはいろいろ指摘されておるように、現在の有価証券というものは利潤証券ではなくて財産隠匿証券である、こういうふうな、とが今年一月三十日の産業経済の証券欄に出ております。こういうふうに現在この有価証券に対する世間の眼も、これを以て配当を貰うというのじやなしに、配当は犠牲にしても、とにかく所得税、の他の税金を逃がれるために、こういうものに資産を隠してしまうということが、はやつておるのでありまして、こういう点について通切な手を打たないと、又それに対して熱意を示さないと、果して政府は現在の脱税に対してこれを捕捉するような熱意を持つておるかどうか疑わしいと思われても仕方ないと考えるのであります。
 それから次に問題になるのは、外人に対する課税の問題であります。これはまだ本格的に決まつていないようでありますけれども、新聞等に伝えられるところによりますと、外資の入つた会社に対する免税の規定、或いは外人の給與に対する免税の規定、これが出ております。ところが、この問題について我々の思い起すのは、昭和二十三年の一月頃に私外人記者クラブへ呼ばれまして、池田今の大蔵大臣とGHQのシヤベルという人と私と、三人で税金問題の講演会をした後で、外人記者からいろいろな質問がだされましたが、その中で或るアメリカの記者であつたと思いますが、現在第三国人その他の外人に対する課税が非常に手ぬるい、従つて同じように営業しておつても、日本の業者は税金の問題のために非常に困難であるように聞いておるが、この点について何故徹底して税金を取らないか、というふうな質問が出されました。このときには一応表面上は課税できるようになつておつたのでありますけれども、池田現在の大蔵大臣は、いろいろな事情からこれには課税できない、今の日本の力ではうまく課税できないというふうな答弁をしておりました。そういうふうにアメリカの記者が指摘するように、現在のこの重い税金をかけられるかどうかによつて現在の自由競争の時代では非常に大きなハソデイキヤツプが正直な納税者の上にかかつて来るということを十分考えなければならないのであります。従つて我々はこの問題については、我々が日本人であるという立場から、日本の産業を護るという立場から、冷静に考えなければならない問題であると思います。
 時間がございませんので、非常に纏まりのつかない話でありましたけれども、大体私の申上げたいことをこれで終り参たいと思います。
#10
○理事(黒田英雄君) 何かお尋ねがありますか。御質問がなければ次に移ります。
 次に前全国銀行従業員組合連合会委員長の大倉眞君にお願いします。
#11
○公述人(大倉眞君) 簡單に所得税を、中心としまして、我々の同じ生活環境にある連中の意見を代表して申上げます。私は銀行員でありまして、我々の大体同じ銀行員のサラリーマンは曾て堅実な中産階級であつたものが、このインフレによつて転落して、非常に生活苦に喘いでいる、そういう連中の声と思つて聽いて頂きたい。
 この間も私は、この資料として頂きました改正案を、大体四十前後の人々に見せたところが、この税率を見ただけでも、我々は働くのは嫌になつちまう、我々の子供はとても我々と同じ程度の教育を施せないと、全然この人は組合運動にも関係のない極めて保守的な人でありましたが、そういう切実な意見を申しておりました。結論から申しますと、今度の改正案によつて我々は大した軽減にはなるまいという、勿論軽減されることの期待は殆んど持たなかつたのでありますが、この案を目るに及んでますますその感を強くした。そうして大蔵省の主税局あたりの計算によると、やや軽減されるように計算してありますけれども、実際市町村税からその他地方税まで総合して見た場合には、現在の税金よりも我々にとつては重いということは、はつきわ数字に当つて言えると思うのでありすす。その例として申上げますと、これは大蔵省の機関誌と申上げてもいいと思います財政経済弘報、の百六十九号に、いわゆる現行税法と改正案によろ勤労者の税題の負担のところがございます。これは五万円、十万円、十五万円と、扶養家族数も書いて出ておりますが、みんな述べますと時間が長くたりますので、ちよつと申上げますと、年收十万円の点だけを申上げますと、この経済弘報の計算によりますと、現行は大体所得税、地租、家屋税、住印税を合せて一万四千百七十四円、これは夫婦だけでございます、子供はございません。ところが改正案においては、一万三千八百三十七円になる。そうし、負担率が一四二七%、二一七四%になる、こういうふうになつておりますが、私がこれを計算いたし牛したところが、と申しますのは、これは成る程所得税のへ国税の所得税については軽減になりますが、地方税の地租、家屋税においては大体これが三、五倍になるということは間違いないのでありますが、その計算がここにおいては千九百九十七円になつておる。ところがこれが三・五倍に実際して見ますと、二千二百八十九円になります。それから住民税がやはりこの計算では二千二百四十円ですが、均等割が大体東京都として一千円にしてもそれからいわゆる所得割が前年度の所得税の二割という計算にいたしますと、その住民税が三千六百四十円になり、合計額が一万五千五百二十九円ということであつて、現行よりも約千四百円高くなつておる。これは五万円の所得の人について計算しても、十五万円の人を計算しても、いずれもこれは高くなつております。従つてこういう計算は我々をごまかす一つのインチキであるとしか思われないいのであります。
 次は第二点として、所得税における基礎控除の問題であります。これはシヤウプ勧告において明確に指摘しております通りに、所得税の基礎控除はいわば資産の減価償却と同じに労働力の減価償却であるということをはつきり指摘されておる。ところが、つまりインフレによつて食潰しを受けましたのは資本のみならず、最も被害の多かつたのは労働力であるといつても私は過言でないと思います。ところが、一体昭和九年当時の基礎控除は確か千二百円くらいであつたと記憶しております。ところが、どのくらいインフレによつて貨幣価値が低落しておるかと考えて見ますと、大体今年の一月の東京都の卸売物価の消費財の指数を見ますと、昭和九――十一年平均の二百四十九倍になつておる。だから、これを二百四十倍にしませんでも、二百倍として計算しましても、大体現在二十四万円というものは全額基礎控除を受けられるということになるわけであります。二万五千円では僅かに二十倍しか認められていないということになる。従つて我々のインフレ中における労働力の非常な食潰しということは、何ら補填されていない。ところが、一方資本の方におきましては、再取得価格に基く百パーセントの減価償却を認めておる。従つて我々が労働力というものと資本というものとを対比して考えた場合に、これは当然そう考えるべきもんだと思いますが、今度の改革案というものは極めて余りにも労働力にとつて過重な負担をかぶせている。従つて我々として要求しますことは、資本の通りに百パーセントの減価償却を認めて頂かなくともよろしい。この程度は妥協します。せめて基礎控除と勤労控除を合せて十万円くらいの基礎控除を認めて貰いたい。これは戰前の約半分くらいの労働力の減価償却でありまして、極めて謙遜の要求であると思う。ところがシヤウプ勧告におきまして、つまりそういう要求を我々も闘いたけれども、十万円前後の所得までも、十万円までも全部基礎控除を認めてしまうというと、税收が全然確保されないと言われておりますから、私はそこに問題があると思います。と言いますのは、大体税收を決めます場合に問題になりますのは、いわゆる国民の、所得階層における所得の分布の問題であります。ところがシヤウプ博士に提出して、その博士のああいう勧告の基礎になつたところの分布表なるものは、大蔵省のいわゆる昭和二十二年ですかの徴税実績に基いたと推定されます。二十二年か、二十三年か分りませんが、とにかく徴税実績に著いてやられておる。ところが二十二年、二十三年というものは、最もインフレの状態が激しくて、二、れか国民の道徳水準が低くて、脱税も最も大規模に行われたときであります。従つてこのとき捕捉されたいわゆる所得階層というものは、我々勤労階級というものが、最も確実に源泉課税によつて捕捉されております。従つてこの所得階癖は安定したときにおいて、経済の安定したときに新らしく調査をし直す必要がある。だからシヤウプ博士の前提となるその統計というものが、科学的に極めて不備であるどいうことを指摘しておるのであります。そういう点からも、我々勤労階級に極めて不利になる。
 次は扶養控除の問題でありますが、扶養控除の一万二千円というものは寡少に過ぎます。これは最低限度二万二千円にして頂きたい。その根拠を申上げますと、これはいわゆる東京都の消費者の家計調査によりますと、その家計の支出のうち、これは二十四年の七月から十一月まででありますが、一人当りの支出が大体三千円でございます。三千円をちよつと上廻るときもあ力ますが、百円或いは百円前後を上下しておりますが、大体平均三千円です。そのうち配給代金、勿論配給物資だけでは我々は生活して行くことはできないということは、もう天下周知の事実でありますが、その配給代金だけが二千円であります。そうするとこれを十二ケ月分に掛けますと、二万四千円になります。さつきの二万二千円と申上げましたのは間違いでございます。二万四千円であります。この程度み額は当然ごの扶養控除として認めるべきである。この二万四千円では最低限度の生活を維持することはできないということが明らかでありますから、今度の改正案の一万二千円というのは寡少に過ぎるということを申上げます。
 それからもう一つ申上げます点は、ちよつと前に拔かしましたが、十万円の基礎控除の点でございますが、これに関してさつき所得分布の調査が不備であるということを申上げましたが……、ではですね、一体日本の経済は、つまりそのときシヤウプ博士は、日本の経済は敗戰国であるし、資源が乏しいのだから、このくらいは当然我慢すべきである、勧告通りの基礎控除も我慢すべきであると言つておる。では一体日本の復興経済はどうかということを見ますと、安本の昭和二十五年度経済の見通しというものによりますというと、昭和五乃至九年の人口が六千六百三十三万です。一人当りの所得が百七十四円、そうしで鉱業の活動指数を百としますと、今年二十五年は人口が八十三百三十七万であります。一人当りが百四十六円となつております。二割減であります。そするというと、我々がいわゆる昭和七、八、九年当時の基礎控除の半分くらいは認めてくれというのは、極めて至当な要求であると言わざるを得ない。つまり昭和五―九年の基準年度の人口一人当り所得の二割減程度で、若し二十五年があるとするならば、一体我々勤労者にのみこういう税金を盛るというのは一体何故であるかということを考えてみると、非常にどこかに大きな部分に脱税がされているということを推定せざるを得ないのであります。
 それと我々はこういうふうに今度の改正案によつて、この我々の所得に対する税金が過重であるのに対して、資本というものは如何に優遇されているかということを指摘したいと思います。つまりさつきいろいろ前の公述人の方が言われておりました資産の再評価の問題にしましても、それから配当所得の源泉課税の廃止の問題、それ九ら総合課税におけるいわゆる配当所得の二五%控除の問題、等々を見ましても、今度のシヤウプ勧告というものが資本の蓄積を極度に優遇しているということを申上げて間違いないと思うのでありますが、ところが一方一体大資本というものがそれ程資産再評価に要した償却費を十分に計上してやる程に食潰しをしているかということに関して、私は否定的な考えを持つております。と、申しますのは我我銀行関係で審査に行きまして、全国の非常に大資本であるところの石炭、或いは肥料、それから大化学工場等々を見ますというと、帳簿上にない、全然計上されていない莫大な修理を、つまりこればさつき中西公述人が言われましたところの、当然改良費と認められるような莫大な支出、それは数億、一社において数億に上るような支出がされておる。つまりこれは何によつてなされたかというと、種々の補助金、或いは復金融資、それから一部製品の闇流しというものによつて、十分にその資産の食潰しは実質上においてもう再評価されておるという点が多く見られるのであります。勿論中小工業においてはそういうとはございません。殊に独占的な地位にある大企業程、その今申上げたように、そういう実質上の再評価をやつて、その償却も済ましているということが多いのであります。そうして而も更に今年の支出面におきましても、価格調整費であるとか、それから債務償還というような点において、依然として支出面においても資本は非常に優遇されておる。ところが我々勤労者に廻つて来るような社会政策的なものというものは殆んどない。つまり税收というものはまあ支出と見合つて当然その本質を考えなければならないことは申上げるまでもないと思いますが、そういう点から見ても余りに資本偏重に過ぎる、こうすると資本のための資本蓄積によつて、資本はますます肥つて、我々勤労者の給與は依然として低く、そして税金は極めて高く、国内の購買力は極めて低くなつて、国際市場は狭くなつて、そうして無償労働、海外ダンピングをするという昔ながらの姿が、現在昔よりもつとみじめな姿において行われているということを指摘せざるを得ないのであります。
 以上簡單でございますが、これで終ります。
#12
○理事(黒田英雄君) では次に日本労働総同盟本部調査部長の清水愼三君にお願いいたします。
#13
○公述人(清水愼三君) 私は総同盟の清水でございます。実は今日の公聽会にちよつと錯覚いたしまして、国税、地方税両方だと思い込んでおりましたが、若干公述するところ混乱があるかも分りませんが、できるだけ国税だけに限定いたしまして、我々総同盟が考えておるところを、要望したいところを申上げたいと思います。
 この今度の国会に提出されました税制改革全般を通じまして、議論はすでにいろいろな方面で論じ盡くされておりますので、一般論的なことは差控えたいと思います。ただ我々総同盟が、今度の税草案全体に対して持つておりまする考え方と申しまするか、態度と申しまするか、それを冒頭に極く簡單に申上げまして、それから個々の問題に移りたいと思います。
 今度の税革案が、大体シヤウプ博士の勧告に基いて出されたものであることは言うまでもないところでありまして、その税草案全般を通じて見まけて中央地方を通じて税調をできるだだけすつきりさせたい、合理化させたいという目標を持つておる。その目標に努力を向けているという点につきましては、我々労働組合といたしましても、これは諒とするものであむまするが、その本質、その階級的な性格につきましては、先程の公述人からも若干申述べられておりまするように、我々としては多大の不満を持たざるを得ないのであります。簡單に申上げまして、第一点といたしましては、資本と労働との関連におきまして、資本の蓄積、なかんずく私的資本の蓄積に重点が置かれて、勤労大衆の生活安定ということは背後に押しやられておるという事実。第二に高額所得者と低額所得者との関連におきまして、明らかに低額所得者の負担の程度が強い。高額所得者を優遇されておる。そういう事実。第三点といたしましては、財政支出の面におきましていわゆる超均衡財故がとられる結果、それだけ多くの大衆負担を、低い層にかけら、れて来る。つまり二重に重加される。こういう事実であります。そういう点に関しましては、労働組合といたしましては、根本的に反対意見を表明せざるを得ないのであります。
 次に個々の税制に亘つて申上げたいと思います。第一に給與所得税につきまして我々の要望するところを申上げます。今度の改正案で給與所得に対しましては、低い方の面、低い所得暦につきましては、国税だけで見ましても軽減の度合が甚だ薄い。初めの宣伝に比べまして、これは問題にならない程度であるということは、先程来も指摘されておられる通りであります。これを更に地方税を一貫して見ますると、これはてんで問題にならない状態であります。そこで現実に今の税制に即しまして、我々が何を要望するか、そういう点でありまするが、何を基準として考えるかという、考え方の面はいろいろあると思います。又理想を言えばいろいろ理想的な要求は出るのでありまするが、ご承知の通り、現在家計調査の上から、勤労大衆の生活は赤字であります。大体その赤字の出ておる層、その辺を基準において、そこから下に対しては免除して貰いたいというのが根本の考え方であります。併しながら家計調査に出て来る赤字と、それから赤字を出す所得層と、それから給與所得税のいろいろの控除、税率等を正確に出すということは技術的に困難であります。そこで差当り暫定的に私共の要望いたしたいところは、基礎控除といたしまして四万円、扶養控除二万円で、勤労控除といたしまして最高額年收三十万円まで、三〇%、こういう要望を我々はかねて持つておるのであります。扶養控除につきましての二万円と言いました根拠は、大体先程中されたお方の御意見と同様であります。ただ東京都を中心に出されたのを全国的に開いて見ただけのことであります。又勤労控除について、最高三十万円ということを指摘いたしました根拠は、やはり戰前におきまして千二百円の免税であつたうそれを今の物価と換算して出してみたわけでありまするが、併し基礎控除、勤労控除を混乱しているではないかと、そういうことが言えると思うのでありますが、これは現状における妥協的な考え方でそういう線を出してみたわけであります。
 次に税率につきまして、今度の改正案では、五十万円超につきましては五五%、そこから上は一本になりておすまするが、やはり我々といたしましては、これを更に累進させることを要望いたします。富裕税の面におきましてそれを捕捉する、そのアイデア自身はよく分るのでありまするが、累進させて行くか、富裕税とじて捕捉して行くか、この点はどれだけ多くとれるかという点から判断して決定したらいいのじやないかと思つております。
 次に給與所得に附随した問題でありまするが、退職所得に対する課税であります。今度の改正案で、退職所得に対しまする課税方法が根本的に変更されております。考え方といたしまして、退職した年に全部取上げるということでなく、次年度にならして行くという考え方が出ているようでありまして、その考え方自体に対しましては私共も賛成でありまするが、併し実際の徴税方法を見てみますると、それで一体元のアイデイアが十分出ているのかどうかということは甚だ疑問を感じます。併しともかくも非常に徴税方法が変つて参りましたので、現行法との負担の対照を出すのには非常に技術的にむずかしいものがあると思いまするが、所得分布、家族数の差異、勤続年数分布等で一応テスト計数を出して計算してみますると、仮に私は、退職所得の五万の場合と、十万の場合二十万の場合、五十万の場合を算定してみたのでありまするが、現行法と較べまして、軽減されるものは五十万の場合のみでありまして、二十万以下は皆重加されることに相成つているようであります。なかんずく退職所得十万というところが、負担の率が比較的高い、そういう結果になつているように見られます。むろん今度の徴税方法によりますると、その年の所得がものを言いますので、いつ何月に退職したかというようなことも関連して参りまするので、正確な計算までは申上げかねますが、大体の傾向は出ているものと思われます。退職所得十万という人を、具体的にどの程度の所得属の人かということを、東京大阪等の通常の工場の場合で申上げますと、大体年令にいたしまして三十七、八才、勤続年数十年、月收が大体一万四千円くらいの人が、自己退職した場合の退職所得になります。この辺のランクに対しまして、最も課税負相が殖える。そういうことでありまするならば、これはその課税方法の、アイデアにおいて、抽象的には大いに諒とするものがあるにいたしましても、徴税方法のどこかに難点があるに違いないわけであります。この点につきまして私共は税率をもつと累進させて行く、そういう方向によつて新徴税方法を退職所得層の多い方に、より多くかかるような方向に改めて頂きたい、かように考えておるものであります。
 次に法人税であります。もともと今度の改正案が資本の蓄積ということに最重点が置かれておる。それでありますから法人税の場合におきまして、いろいろの優遇措置が講じられておるであろう。そういうことは初めから想像できるところであつたわけであります。事実いろいろの優遇措置が資本の蓄積に対して取られております。超過利得税の廃止、或いは配当利得の源泉徴收を廃めるということ、その他二、三の面に現れております。この点につきまして私共はやはり個人所得との対比の関係上課税負担を公平にさせる、そういう意味からも法人可得に対しましても何らかの累進措置々採つて貰いたい、かように考えるわけであります。超過利得税そのものの復活も我々といたしましては結構たと思うのでありますが、これがこういう超過利得税という税制自体がいいか悪いか、争ういろいろの理論的な問題もある思います。私共といたしましては、超過利得税を復活するなり、或いは又法人税の累進を考えるなり、どちらでもいいからここで三十五%ということたけで放り離しにするのでないことを要望いたすのであります。更に又配当所得め源泉徴收の廃止等いろいろ優遇いたしておりまするが、これは一般論といたしまして長期資金、証券市場を勤労大衆の懐にまで拡充するといつでも、これは現実の問題にはならない。争ういうところで資本調達ができるわけではないと思いまするし、結局長期資金の調達ということは、争ういう面でない面におきまして、解決する外ないと考えておる次第であります。従つて実益の面からいつても、こういうことは決して優遇する必要はない。これは取上けたらいいと考えておるわけであります。更に法人税につきまして細かい話でありますが、労働組合として是非お願いしたいことが残つているわけでありす。それは今度の税制では労働組合が行いまする厚生事業や、生活協同組合の商業に対しまして同じように税今がかかるわけでありまするが、現情におきまして労働組合の行なつており、するこういう事業は、実質賃金の維持のために、若干でも維持するためにやつておりまする、極めてつつましやかなささやかな事業でありますので、こういうところに普通の営利法人と同じようにかけられるということは止めて頂きたい。その免除を要求するものであります。尚只今申上げました組合の厚生事業及び生活協同組合に対する課税は、附加価値税も同じようにかかるようになつておりまするが、附加価値税につきましては我々は附加価値税自身に反対でありまするが、こういうものを一切免除して頂きたい、かように考えているわけであります。
 次に資産再評価の問題であります。この問題は先程からいろいろ取扱われたわけでありまするが、事実インフレーシヨンの收束が実際問題としてとられておる現在におきまして、資産を再評価して償却をも十分にやつて実体資本の充実を図る、こういう目標自体は我我として何ら反対すべきものはないのでありますが、これが任意であつていいか、又今の税率がいいかとうかということには若干の疑点を持つものであります。結論的に我々の要望を申上げまけろと、現在の経済情勢下におきまして、各産業別又企業の規模別に見まして、ドツジライン下の負担はいろいろ区々であり、非常にアンバランスでありますので、任意ということは一応根拠があることに認めるのでありまするが、併しながら作意にするだけでなく、若干の強制力を持たせることは必要であろうと考えているわけであります。それには大体作業別に基準を作つて頂きまして、その枠内におきましていわゆる陳腐化した資産、或いは客観的に見てアーニングパワーの資産、そういうものに対しては別個に考慮することが望ましいと思うのであります。尚税率につきましては、これは先程中西さんから今の六%を更に下げろ、そういうお話でありましたが、私共は逆に十%くらいの課税を要求するものであります。
 最後に社会保障税関係につきまして箇中に申上げたいと思います。シヤウプ勧告におきまして、この考え方が採り入れられて、政府部内におきまして、いろいろ検討されていることは伺つておりまするが、これも結論から簡單に申上げまして、一年間は少くともこういう税金は見合せて、現在の社会保障制度全般に対しまして十分再検討して、合理的な方策を考えて頂きたい、かように思うのであります。現在政府の内部におきまして、社会保障制度審議会が置かれておりまして、総合的にいろいろと検討されているわけであります。その結果を待つて頂くということも理由の一つであります。又同時に現在非常に貧弱な制度ながい幾つかあるわけでありまするが、その行政の管轄が非常にはらはらであり、社会保険経済の管理もはらはらになつております。こういう点をもつと根本的に改めることが無論必要でありまするが、この一年間に現在の制度の地道な改善を十分図つて頂きたい。現在の行政機構のままでこういう税金を課してやつて行きますと、結局行政費が嵩はるだけだという結果になつて、何ら大衆の方には還元しない。そういうようなことに相成るのではないかと思います。特に現在の健康保険の赤字の処理の問題、更に厚生年金の莫大な金が活用されていないという状態、こういう状態に対する改善を図つて頂きたいと思うのであります。時間も余りありませんので、ごく雑駁な話でありまするが、これで公述を終りたいと思います。
#14
○委員長(黒田英雄君) それではこの程度にいたしまして、午後一時半から再開いたします。それでは休憩いたします。
   午後零時二十九分休憩
   ―――――・―――――
   午後一時五十九分開会
#15
○理事(黒田英雄君) これより休憩前に引続きまして大蔵委員会公聴会々開会いたします。
 先ず日本租税研究協会副会長千代田銀行頭取千金良宗三郎君にお願いいたします。
 千金良さんに申上げます。本日は本当にお急がしいところをわざわざお繰合せ下さいまして誠に有難うございました。大体三十分くらいとみなしまして、そうしてまあ大体二十分くらいでお話を終りまして、後質問の時間にいたしたいと思つております。併し多少延びましても差支えありません。どうぞ。
#16
○公述人(千金良宗三郎君) 私の関係いたしておりまする日本租税協会が、経済界、学界、弁論会その他の面から、各界の租税に関する專門家に対しして行、ました意見の照会から得ましたこの結論は、最も有力な意見を代表するものと考えますので、これを中心にお話を申上げたいと思います。先す今回の改正案が税体系として適当であるか、又は国家財政の現状及び国民生活の失体から見て負担が重過ぎるか、或いは軽いを見るかこういう問題に対する見解を極く総括的に述べますると、特に所得税の負担が重きに失するというものが圧倒的に多いのであります。成る程基礎控除、扶養控除、勤労控除等の各種の控除に増加いたしましたが尚これではまた足りない、又最高税率の五五%の適用所得をもう少し引上げてカーブを緩やかにして、負担の軽減を図る必要があるという意見が多いのでございます。最高税率の適用所得につきましては、改正案はシヤウプ勧告の三十万円を五十万円まで引上げましたが、これを百万円まで引上げればカーブもかなり緩やかになる、所得階層の大部分を占める中級の所得者の負担を軽減することができる。従つてこの点に特段の御考慮が拂われたい、こういう希望が多いのでございます。勿論このような措置を講じますると、それによつて所得税はかなりの減收を予想しなければなりませんが、これに対しては間接税、流通税による増收を以て補うのが適当と考え、税体系全体としても今回の改正案は、理論的には誠にすつきりとした近代税制の典型的な形式は備えておるが、一方実際上の我が国の実情を考慮しますると、もう少し間接税、流通税を加味して所得税の比重を低めることの方が実情に適合するというふうな意見が多数あります。
 第二は富裕税についてでありますが、富裕税については大勢としては、所得税の補完税としてその必要を認めておるのでございます。併し富裕税の創設に賛成する者でも、五百万円を課税の最低限度とすることは国民生活の実情から見まして、尚低きに失すると見る者が多いので、これを一千万円程度まで課税価格の引上げを行うということが要望されております。
 第三には法人課税の問題でありますが、この法人課税の問題は、專ら地方税に問題が集中した感がありまして国税、法人税の改正については、大体において今回の改正の趣旨に賛成をしております。ただ留保所得税、留保所得と課税の問題は、会社の経理の健全性ということを確保するためにはどうも行き方が逆行しておるのではないか、今日の会社経理の実情から見まして、この突施を見合わせて欲しいという要望が特に経済界から強いのであります。尚又この金融機関の最近問題となつておりまする滯り貸準備金のごときものは法定準備金でありまして、而もこれは株主の私有にならないもの、即ち普通の配当をただ延ばすというのではなくて、これは配当にはなり得ないものである、そういう糖類のものについては免税をするとか、或いは個々の率を減少するとかという考慮が拂われたい、こういう意見でございます。
 第四に固定資産の再評価の問題でありまするが、今回の改正案は強制一率の評価を避けまして、そういうものを会社の自由選択に委せた、このことは誠に時宜を得た措置として全面的に賛成をいたしておりますが、併し評価の時期に関しましては街多くの意見があすまして、本年一月一日を基準日とするのでありますが、これは少なくとも、実施を一ケ年間延長をして欲しい、法案によりますると、この点は多少改善が施されております。例えば持経会社、第二会社、在外会社等の資産、又賠償指定施設の資産評価、この基準日は例外規定を設けてありますが、尚これでは今の実情に即応するのに十分でない、殊に最近経済界の実情は御案内の通り機械であるとか、車輌であるとか、海運であるとか、化学工業であるとか、各部門は事実上現在の收益は非常に減少しております。或いは全然ありません。これは将来の收益を目標にいたしまして、再評価の程度を定めるのでありますが、現在としては見通しがなかなか付きかねるという部面が多々あります。極く最近の例を取りましても、仮に船舶運営会の活動が停止せられる、そうしますと、現在において船舶の外航は制限を受けておりますし、又補給金もなくなる、又一方船舶の内海航路にしましても、船舶は非常に過剰でるというよう現状で、なかなか評価の基準どいうものが付きかねるという意見が多数でございます。尚又この事業收益が只今申上げましたように、非常に上らない、最初の年度におきまして三%の評価益に対する税を納め、第二年度、第三年度において一%半ずつ納めるというようなこのやり方は、なかなか納税ということを実行するのに困難を感じせしめる、これは納税の期間をいずれも三年でありますが、これを五年とか六年とかに分けて少なくとも均等納税というようなことが望まれておるわけであります。
 尚第五の相続税についてでありますが、先ず税率が所得税の最高税率に比べまして著しく高過ぎると見られております。次に相続及び聽輿によるところの財産の取得に対して、親等の遠近についての考慮が拂われていない、これは現在の我が国の社会情勢から見まして、必らずしも適当でない、この点が強く主張されております。即ち今回の改正では配偶者に限つて受領した遺産額の半額を控除することになつておりますが、これを直系卑属にまで及ぼすべきであろう、これは今回の法案の中に僅かに十八歳に満たぬ者の相続の場合とか、或いは十年以内に頻繁に相続の起る場合ということについて特例はありまするが、これはもつと親等の遠近を考慮すべきものだという主張であります。
 更に税体系として難点を言えば、やはり一生を通じて遺産及び授與額を通算するということでありまするが、これはなかなか煩雑でありまして、実際問題としては実行困難ではないか、こういうことが虞れられております。
 第六には株式の名義書替並びに無記名社公債の登録についてでありますが、これは今の申告制度の趣旨から申しますると、誠に趣旨一貫しておるわけでありまするけれども、併しどうも徴税の面のみに重点を置き過ぎて、経済全般の面についての考慮が足りないとする意見が強くあります。現在資本の欠乏していることは申上げるまでもないのでありまするが、そのときにはどうしても資本の蓄積を大いに増進するように意を用うべきである。ただ徴税面だけで税制を作られては、今般の経済の進展ということに果して利益であるかどうか、こういう点からして非常に憂慮されております。尚又これから経済界の再建整備に一層必要になつて来る証券の流通ということが考えられるのでありまするが、この流通の促進、或いは流通を阻害する原因を除くという点からいたしますると、やはりこの有価証券移転税というものを残して、むしろこれを以て株式の譲渡所得税に代らしめる方が時宜に適しているのではないか、こういうふうな意見が多数ございます。
 税の方かつ申しますると、大体只今申上げたような次第でありますが、現在我々が関係しておりまする仕事の面から申しますると、税の方はむしろ非常に能率よく徴收されておりまするので、順調以上と言つてもいいくらいな税收が上つておるのじやないか、従つて平衡財政の予算を実行して行きまして、通貨の面では常に引上超過になる。従つて実際予算編成のときに考えられた以上にデフレの表情を呈しておる実情でありまして、この点からして、どうも経済再建の支障になりつつある。従つて現在においてはむしろ歳出の面と申しますか、予算の運用ということにもう少し工夫をして貰いたい、こう考えております。二十五年度の一般会計の直接の国費以上に支出される部分がありまするが、例えばこれは債務償還、これが七百億一般会計で計上されておることは申上げるまでもありませんが、その外に更に見返リ勘定からして五百億、合計千二百億円という債務償還が見込まれております。この引上げ資金が再び環流しないというと、結局デフレの傾向になつて行く、初め考えられましたようなデス、インフレというような、うまい通貨の状態にあり得ないのでありまするが、この環流は結局直接投資をするか、又は金融機関を通じて出すか、この二つより外ないのであります。現在債務償還以外で、直接投資面で予算に現われておりますものは、見返り資金勘定の公企業に対する融投資四百億円、並びに私企業に対する融投資四百億円であります。この点では二十四年度の見返り勘定の運用は私企業、公企業に対する融投資は合計四百七十億円でありました。それで大部分は債務償還に使われる勘定になつております。即ち八百億円が債務償還、二十五年度の方の見返資金の予算では公企業、私企業に対しての融投資が八百億円、債務償還が五百億円、結局二十四年と二十五年度とは債務償還に使われる高と私企業、公企業に融投資される高とが逆になつている。この点では誠にむしろ進歩と私は見ているのでありますが、それではこの国債の千二百億円を今度償還をするという場合に、どういうふうな形になるか、これを考えてみますると十二月末日の数字でありますが、国債のあり場所と申しますか、あり場所は金融機関の持つているもの、これは金融機関と言つても全般ではありませんが、銀行並びに信託が持つている国債が六百七十六億円であります。それから日本銀行の持つているのは千六億円、預金部の持つておりますのは六百三十七億円、この金融機関の持つておりまする六百七十六億円の中で、約半分は日本銀行の担保になつております。従つて結局これを償還しましても、国債を出すためにはやはり日本銀行に対する金融機関の借入金を返さなけれ、はならんので、恐らくは日本銀行の借入金と、金融機関が日本銀行に対する借入金と、政府の償還金とで相殺されるという場面が起つて来るのじやないか、その部分だけは通貨の調整に役立たないことになるのであります。又今度復金の所有のものが、これが償還されましても殆んど銀行を通してでなければ放出することができませんからして、これもやはり金融機関の持つております六百七十六億円の申分と同じように、金融機関を通じなければ出ないものであります。但し預金部の所有のものは、最近の預全部余裕金の指定預金制度というものがありまして、これによつて預金部の余裕金は金融機関に預託するという制度がありますから、この預託が行われれば少なくとも短期資金の充足には役立つ。但しこれは一般の預金のようには役立ちません。何故かと申しますると、一般の預金の場合には、金融機関は大体従来の経験と実績を見まして、一つの預金が引出されても尚外の預金が入つて来る。常に出入をしております預金、引出される預金と入る金との測定ということが行われておりますからして、先ずその間の資金の淀みと言いますか、淀みを見まして、これを長期投資にも使われるし、又適当な機関への投資にも用いられるのでありますが、預金部の資金を預かる場合には、入るか出るかでなく、一遍入る或いはそれが出されてしまえば、あとから入つて来るという望みはないのでありますから、非常に不安な預金を持つているわけであります。同じような場合の預金でも必ずしも性質が一致しないというようなわけでありますからして、やはり放出の部面も本当の短期にしか使われない、現在の日本の経済再建のため非常な短期の金はそう大して役立たない、というと少し言い過ぎますが、どうしても放出した金が予期通り帰らないということが実情でありますので、従つてこの要求拂の預金をされたのでは本式の放出ということが困難かと見られます。最近は復金の余裕金というのが期限付きで預けられまして、これは復興金庫が持つております償還金の中で、今政府に納付する必要のないもの、それを一時一年とか、或いは六ケ月とかいう期限を限りまして、市中の金融機関に予託したのでありますが、この方がむしろ預けられた金融機関も放出に大体の見当がつきしまして便利であります。又実情にも添うのであります。預金部の金は今のように期限付きで預けるか、或いは法令を改めまして預金部が直接に株式乃至社債に投資ができるようにしたならば一審効果があると思います。金融機関の中で金融機関の持つておりまする国債が償還された、その資金の中で利用できる、即ち半分の金額と、それから日本銀行の方に返つて来る国債の償還金と、これは全部金融機関を通して出ることになりますが、どうもこのドツジ予算は結局償還金の放出ということを、一種の金融機関の篩にかけて放出する、なるべく放出目的を嚴選するためにはいわゆる健全金融という面からして、嚴選して出す方がいいには違いありませんが、こういたしますというと、自然とその融資に対する償還力、或いはその担保、いろいろのことに対して嚴重になります。仮に担保の面を考えましても、復興金庫の融資を受けておるものがあるとか、或いは見返資金の融資を受けておる部分があるとか、担保の関係が非常に複雑になる、従待つてなかなかその間の担保関係は簡單に行きませんしも又償還力の問題でも、これは先程申上げた通りでありまして、必ずしも見通しがつかないというものも相当あります。殊にこれは基本産業であるとか、重要産業に非常にそういう部面が多いのでありまして、初期の嚴選の目的或いは健全金融の篩にかけるということでやりますと、債権のために用いる目的と調節することが誠に困難になる。この点で復興金庫が廃止された後の市中の金融機関というものは相当な譲歩をしまして、このむつかしい場面を調節して来たのであります。つまりこの面ではやはり財政の尻を金融が拭つて来たという恰好をとつたのでありますが、最近のアメリカ方面の銀行検査でも、我が国の金融の弱点がどうも担保が非常に不十分であることということが指摘されておるのでありまして、この点から初めの金融の篩にかけて引揚資金を再放出するということが、なかなか困難になつて来るという情勢であります。従つてやはり或る部分、或いは大部分の政府資金が政府機関からの直接投資になるというふうにしたほうが、むしろ資金の出がいいのじやないかというふうにさえ考えられるのでありますが、又この面から考えますと、今までの実績ではどうも見返り勘定なんかの資金放出は誠に成績がふるわなかつたのであります。例えば二十四年度の実績を見ますると、二月の末日におきまする見返り勘定の数字は、貿易会計からの繰入れが千百九十九億円、これに運用利子を加えますと千二百九億円という原資があつたのであります。その中から公企業への放出がどのくらい行われたかと申しますと、初めの公企業への放出の予算は二百七十億円であつたのでありますが、そのうちの百六十人億円が例の鉄道通信等の公企業に放出されております。又私企業のほうの予算は二百億円であつたのでありますが、そのうちの百四十五億が放出されておるのであります。併しこの百四十五億円の放出の速度では非常に鈍かつたのでありまして、二月中に七十二億円という大額の放出を行いまして、それでやつと百四十五億という高に達したのであります。即ち二月以前においてはその半分しかなかつた、やつと年度末に近付いてこれだけ出ましてそれでも尚百四十五億円であります。本年度の公私企業への見返り勘定からの放出は全体で八百億円でありまして、この直接投資の数字の殖えたことは非常に結構でありまするが、速度がやはり二十四年度の実績のごとくに非常に遅々たるものであると、それだけ資金調整に影響するところの差支と言いますか、支障が一層多いということになりますから、この面で資産の調節のためにも一層見返り勘定からの公私企業に対する放出は工夫を要するのではないか、例えば直接投資を迅速にするために、何か官庁的に一元的な設備ができるとか何とかいたしまして、従来のように一つの融資をするのに長くかかるということのないようにしたらば大変に助けになる、こう存じておる次第であります。私の申上げるのは以上であります。
#17
○理事(黒田英雄君) 有難うございました。それでは次に日本経済新聞論説委員田中信太郎君にお願いいたしま
#18
○公述人(田中信太郎君) シヤウプ勧告案にはる税制改革は、これは非常に広汎な税制改革でありまして、その全般に亘つて細かく論ずることは到底私もやれませんので、気のつきましたところを二三申述べまして御参考に供したいと思います。
 御承知のようにシヤウプ勧告案の特徴はいろいろありますが、一番大きな特徴は租税体系全体が一つのシステムになつて、非常に高度の合理性をもつて貫かれておる、こういうところに一番大きな特徴があると思うのであります。これは今までの日本の戰時戰後を通、じまして日本の租税体系とは本質的に違つておるのではないかと思います。つまり従来は大体建増し的な、つぎはぎ的な税制、局部的の税制改革の連続でやつて来た傾向があるのであります。併し今度のシヤウプ勧告による税制改革は、非常に体系がしつかりしておる、コンシステントになつておる、こういうところにあると思うのです。この点はシヤウプ教授が帰国される前に談話の中で、自分の勧告案は局部だけ見て論じて貰いたくない、全体を見てその一環としての問題を一つ論義してくれと、こういうことを言つておられたのですが、この点を見ましても、このシヤウプ勧告案による税制体系というものは、体系として非常に意味がある、重要な意味があるとこういうふうに言えると思うのです。そういう点からいいまし、も、とにかく相当高度の近代性を持つたいい税制改革案だと思うのでありますが、祈角のこの勧告案を、日本も終戰後もう五年近くなりますので、この際にこの勧告案をうまく日本の土の上に育て上げまして、合理的な、且つ恒久的な租税体系の一つの本建築をこの際建てることが重要だと考えるのであります。そうすることによりまして、これからの再建日本が、日本の経済界なり、社会生活なりが円滑に動いて行くというふうにしたい、従つて成るべくシヤウプ勧告に盛られておる根本精神を損わずに、日本の現実に即した改正を、改正なり補正、修正を加えまして、日本の税体系を作り上げる必要があると思います。併しこういう完璧な税体系も、現実の日本の財界の情勢を見ますと、決してこれは、平常時ではないのでありまして、大きな転換期に直面しておるわけであります。この点はもう御案内のことと思いますが、つまり、昨年の春以来のドツヂラインの実行によりまして、日本の経済がインフレからつまり安定に向つて来つつある。全体としてはインフレの終熄と経済の安定化、これが現実にそういう傾向になつておりますと同時に、政府の政策自体がやはりこれを至上の命題としておる。それからもう一つは、ドツヂラインにやはり即応しまして本年度から明年度にかけまして超均衡財政というものが強行される。この超均衡財政は勿論入るを量つて出ずるを制するという健全財政主義を徹底さすものでありまして、これが経済安定政策の又原動力をなしておるのでありますが、この財政の建て方が歳入の方はますます取り上げる、一方歳出の方は極力抑える。又村政以外の点から考えましても、先程お話がありましたように一般会計、それから見返資金を通じまして本年度は千五百億、来年度は千二百億という巨額の債務償還がある。つまりこういす点かつ金融面に畑当なシヨツク、影響がある。この結果資金の給供が非常に梗塞される。その外にまあ頼みとするのは銀行預金ということになりますが、これも安本あたりの推定では来年度は本年度より相当少くなるとう状況でありまじて、財政の運用そのものが財界に影響を與え、且つ税制の施行に相当障害を及ぼす、こういうことが考えられると思うのであります。即ちごの税制改革案はそれ自体としては非常に完全にできておるのでありますが、これを失行する場合にはいろいろな障害が予想される。これにつきましてはシヤウプ教授自身も自分の勧告案については日本の各界各層の人が忌憚なく討議をして十分検討を盡して貰いたいという非常に謙虚な談話があつたのであります。こういういろいろな客観状勢から眺めましても、今後の税革案そのままではなかなか実施面におきましても、又税の税收を確保するという点から行きましても問題があると思うのであります。そこで差当つて私が取り上げたいと思う問題は、来年度の税制改革が産業の税負担面に相当過重になるのじやないか。これは先刻もお話がありましたが、やはりそれの中心問題となりますのは、国税では資産再評価問題、それから地方税では固定資産税、それから附加価値税、この三つであると思うのです。それでこの三つの国税と地方税が重なり合いまして日本の企業の税負担に相当大きな影響を與えると、こういうことが予想されると思うのであります。勿論シヤウプ勧告案における地方税体系というものは、税制体系自体として若干偏頗のあれがありましても、その狙つておるところは、つまり地方財政を強化して、それから地方自治を確立して、それでやがては地方分権制度という行政面の改革まで持つて行こうという大きな狙いがあると思うのでありますが、併し企業の税負担という点から見ますと、国税も地方税も同じことでありまして、やはり企業の経理には相当の影響を與えるわけであります。そういう観点から見ますと、先、ず国税である資産再評価差益税、それからあと地方税の固定資産税、附加価値税、この三つが企業の税負担にどういうふうに影響するかということは、これはもう御承知のように企業の中でも第一に固定資産の多い企業企業の中で最も不利を蒙むるのは固定資産が多く、それから收益力が低く、従業員を多く使つておる企業、この三つの條件を持つ企業が大体この三つの税から相当な負担を蒙むる。つまり固定資産の多い企業は固定資産税、再評価差益税、これが重く課かつで来る。それから收益力の少い企業は今度廃止になりまする法人の超過所得税が廃止されることによる思惑を余り蒙むらない。それから従業員を沢山使つております企業は、御承知のように附加価値税が重く課かつて来る。こういうことになりまして、この三つの條件を備えておる企業は非常に不利に税負担が急に高まつて来る。つまり電鉄とか、電力、鉄鋼、造船、機械工業こういう重工業関係に非常に税負担が重くなるということが予想されると思います。それでほんのこれは特殊な一例でありますけれども、今申しましたような條件とは逆に比較的固定資産が少く、従業員も割りに少く、收益力もそう低くない、こういう企業の例としましてここに綿紡績繊維協会のこれは作つたものでありますが、綿紡績の五万錘の標準工場、これの税負担というものを比較して見ますと、大体次のようになつております。これは先ず最初に地方税でありまする固定資産税と附加価値税これだけが課かつた場合、その税負担というものを見ますと、先ず利益率一割の場合、その場合に現行の税制によりますと、租税の負担率、つまりこれは税を控除する前の利益に対する租税でありますが、租税の負担率は四八%、四割八分であります。ところが新税制によりまして、固定資産税と附加価値税をここに課けますと、利益率一割の場合で九三%の税負担になります。それから利益率二割の場合で考えますと、大体現行税制で四七%、それから新税制で四九%、それから三割の利益率が向上しますと現行税制による税負担と新税制による税負担の差が段々縮まつて来まして、三割の利益率におきまして現行税制が四六%、新税制が四四%、逆に軽くなつて来るわけです。ところがこれに国税である再評価差益税、これを加えまして、第一年度三%の税ということで見ますと、利率の低い、つまり一割の場合になりますと、第一年度の新税制による税負掛は一四〇%になります。つまり利益を全部出しても拂い切れない、こういう勘定になります。固定資産税と附加価値税の場合だけは九三%でありますが、ここに再評価差益税というものが課つて来ますと一躍一四%に増加します。それから利益率二割の場合は、再評価差益税が課りますと七三%、これは地引税だけの場合、固定資産税と附加価値税の場合は四九%ですが、それが七三%に上るわけです。大体こういうような工合でありまして、結局利益率の低い企業は地方税、つまり固定資産税、附加価値税それに再評価産益税が重なつて来ますと、第一年度の税負担は一四〇%、利益に対する一四〇%の税金を拂わなければならん。第二年度におきましても、二七%ということでありましてこれでは企業がやつていけるわけはないわけであります。それからそういう企業の存立ということを除いて考えましても、大体地方税における重課ということが企業の資産再評価というものを非常に税の側面から阻害しやしないか、十分なる資産の再評価を企業がやらない、こういう結果を招くのじやないかということが懸念されるわけであります。従いましてもうすでに問題になつておるのでありますが、固定資産税、附加価値税それから資産再評価税の改革案を作ります場合に、その税率の高低、或いは経過規定その他いろいろな救済措置ということを条程考えておく必要があるのではないかと思うのであります。それでこれが平常時の経済状態であり評すれば、多少税負担が重くなりましても却つて企業努力と申しますが、企業の経営上の改革その他によりまして引受けることもできるのでありますが、これらの日本の経済界、企業の收益力というものは必ずしも楽観はできない事情にある。
 それからもう一つはこれから日本が起つて行く途は、要するに貿易でありまして、これについても盛んにする、こういう点から申しましても、企業のコストを成るべく下げるということが大きな重点にならなければならんと思うのであります。幸い国税体系の改正案には、比較的業者の意見というものが採り入れられまして、それでいろいろな緩和策が講じられておるようでありますが、地方税の方はそういうことが余りない。俗な言葉で言いますと、相当乱暴な高率な税がそのまま行われようとしておるということでありますから、どうかその点も、余程考慮に入れて国税、地方税を通じて本当に合理的な税制を作ることが必要ではないかと思うのであります。
 それからもう一つは附加価値税のような全く世界に類のないような新しい税ができ、又固定資産税と申しましても、これは税源の捕捉やその他に時日を要する税でありますが、それが地方の貧弱な徴税機情で完全に行くかどうか、こういう点にも一つの問題があると思います。それから只今申しました徴税上の問題でありますけれども、これはやはり余程徴税当局が考慮してやらないと新らしい税制が完全であるだけに弊害も又多いのではないか、こういうふうに考えます。従来の税でありますと所得税がちよつと高くても、地方住民税で逃れるとかいろいろな言わば抜け穴があつたのでありますが、今度のシヤウプ勧告案による税制は、そういう抜け穴が全部ではありませんが、とにかく大体ふさがれてしまつておる。それで各税と税との間に密接な連繋がある。例えば資産再評価税と固定資産税の中には徴税上資料の転換ができる、それから所得税と住民税の所得割との間にも関係がある、こういう工合になかなか抜道のない税体系であります。従つてこの税体系を以ちまして徴税する場合に、従来の税務署のやり方のような見積査定ということをやりますと非常な重税になつて来る、こう考えるのであります。従来は税率の高低ということよりもむしろ課税標準のとり方、それから課税対象の査定の仕方如何によりまして税率がはげしく働く、そういう状況であつたのでありますが、今度の勧告案によりますと税率だけとる、税率ぎりぎり目一杯にとる、併し税率だけはとるけれども、それを万遍なく抜道のないようにとつて行こう、つまり本当の意味の徴税の公正化を期そう、又そういうようなシステムにでき上つておると思います。それでありますから、ここで言わば正宗の名刀を使う徴税の方たが余程注意しないといろいろな、障碍なり、徴税の非常な苛斂誅求ということが生じて来やしないか、こういうふうに考えます。実際に従来の徴税方法は非常に杜撰と申しますか、不合理と申しますか、私がちよつと調べたところによりますと、東京都の或る区で業者に税を課けるという場合に、その区の税務署が業者団体に割当るわけです。ところが大体国税庁が区の税務署に対して割当る税額、その税額を区の税務署において又それを五割乃至十割というふうに水増しをしまして業者団体に課ける。そこで業者団体は区の税務署と掛合つて、それでそこにいろいろな不正事実も出て来るというような話です。それでその業者の話によりますと、大体二十四年度の事業所得は、国税庁の見積りというのは、大体二十三年度の五、六割増加である。ところがこれが区の税務署に来ましてその更正決定がどうなつたかというと、二十三年度の税額の三倍かかつて来た。つまり区の税務署で水増しをして割当をやる。然らば実際の事業所得はどうかと申しますと、二十三年度から比較しまして二、三割はむしろ下つておる。つまり実際の收入が二、三割下るところへ更正決定は三倍になつて来る、こういうべらぼうな話が方々で開かれるわけであげますが、こういうような乱暴な徴税を続けて行きますと、折角のシヤウプ勧告案もとんでもない悪作用になるのではないかと、こういうふうに考えるのであります。それで結局徴税面におけるシヤウプ勧告の理想とするところは、公正な課税つまり現実にあつた所得を基礎にしてそれに公正な税金をかけるこういう精神だと思うのでありますが、よく政府の当局者は、戰後納税義務者の道義が落ちてなかなか協力して呉れないからだということがあるのでありますが、こういうような課税方法をやつておつて協力しで契れというのは無理でありまして、むしろこの際徴税機構というものを根本的に刷新しまして、強化しまして、そうして先ず公正に課税をするということを押進めて行きますれば、納税義務者も必らずそれに協力するという気分が沸いて来る、こう考えるのであります。以上簡單でありますけれども私の意見を申上げました。
#19
○理事(黒田英雄君) 何かお尋ねありませんか……、ありませんければ次は税務代理士の田中友章君にお願いいたします。
#20
○公述人(田中友章君) 私は只今御紹介を頂きました税務代理士の田中友章であります。大体今次の税制改革に対しまして、一応日本の経済の基盤が如何なる立場にあるかということを先ず大前提として考えて見ましても、戰争前の日本の領土が約四割五分減少いたしまして、戰後現在は三十六万九千平方キロと、これは丁度日清戰争当時の領土よりも約一万三千平方キロ減少しておる、こういう状況で領土の面では非常に跼蹐されておる。人口の面では相当に増加を余儀なくせしめられておるというようなことで、結論的に私がここで申上げることも、要すれば日本が敗戰国であるというようなことを徹底して考えたならば、税の負担について我々は軽いということを願うということはやや無理じやないか、かように考えておるのです。従つて税のあり方は、税の組立方がどういうような組立方をされておるかということについて私達がもう一度考えて見なければならんと思います。それは私は現行の秤法のあり方は、昭和二十二年に自申告自納税制度というものを採用されたのでありますから、その制度を徹底してやつて頂いたならば、この今度のシヤウプ勧告のような、こういうような勧告ももう少し緩和されておつたのじやないか、かように考えておる次第であります。私が自分の職業柄、主として中小商工業者を対象としておりまするので、話の、考え方も勢いその範囲に限局されるかと思いまするけれども、一応その点は御了承頂きたいと思います。実は第一次財産税の当時、私も各組合業者を通じまじて、現行の財産税というものは敗戰税だ、併しこの財産税は五ケ年間遡及して徴收することができるのだからして、あなた方も正直に申告しなければいけないというように私は指導して参りました。それに対しまして今度の昭和二十五年度の税制改革は、この意味からいえば、第二次財産税と私は考えております。ここで振返つて考えて見なければなりませんのは、等一次財産税の当時には、御承知のように、個人では個人財産税、個人材産増加税、法人におきましては、法人財産税と法人戰時利得税、この四本建であつたのがいつの間にか結局財産税一本になつてしまつた。いわば当時は大法人の方々は、成る程度税の負担を免かれたと申しましようか、比較的軽課された、さように私は考えられるのじやないかと思います。戰時中に実は私が勤務しておりました、伊藤忠商事におりました当時、現在日本鋼管の重役をやつていらつしやいます伍堂輝雄さんと同席したことがあるのであります。その時分にいわゆる官の慫慂によつて企業整備を失行されたのでありますが、そのとき私は伍堂さんに、如何です皆さんのようなお立場の場合は或る程度御自分の着物なり或いは家財なりをお売りになつていらつしやいますかと私が質問いたしましたら、いやまだそこまでは行つておらん、こういうお答えでした。当時の中小商工業者のあり万は、いわば多年、十年なり二十年、或いは数代に亘つて築き上げたのれんをすつかり返上いたしまして、皆企業整備に掛つた実情であります。いわば中小商工業者の犠牲におきまして大東亜戰争を遂行したというように申上げても決して私は極論でないと考えております。ところがかくいたしまして御承知のように敗戰になつた現在、やはり中小商工業者は、やや痛めつけられておるのではないか、かように考える次第であります。この点是非共御一考を頂きたいと私は考えておる次第であります。それは結局税の組立方あり方がどういうような階級意識によつて組立てられておるか、いわば税法の階級性ということを一応掘下げて考えて見なければならんと私は思います。それから現在税務機構或はい税法そのものは確かに立派でありまするが、どうという点が非常にこの税の執行面において過ちを犯しているかと申しまするならば、取りも直さずこれは税務の機構の執行に当つておる税務職員の素質の非常な低下であります。例を上げて申上げますると、昭和十二年当時、或る税務署の係の次席程度の方が現在税務署長になつております。それから現在まで約十三年を経過しておりますから、現在の税務署の職員のかなり上級の人があと十三、四年経つて税務署長になるだけの素養があり、素質もあるかということを考えたときに、おのずと現在の職員が非常に低下しておるということがお分りになるだろうと存じます。それからそういうような非常に低下されたところの税務職員によつて、国税の徴收がどういうようなことで行われておるかということを私が数字を以て申上げて見ますというと、例えばこれは或る豆腐商でありますが、本人の取引高税の申告は二千六百六十六円に対しまして、税務署では六千円と見ております。二千六百七十三円に対して七千三百三十円、二千三百十三円に対して六千円、二千六百五十五円に対して四千九百二十六円、二千二百四十九円に対して四千五百六十六円というような調子で、或いは二千四百八十六円に対して七千円……、この中七千円の方は、これは余り場所を挙げて甚だ恐縮なのですが、田園調布の四丁目、というと大体財閥の多いところでありますが、多摩川園から少しく離れた田園調布におる方で七千三百三十円……、豆腐、一丁十円といたしまして二丁ずつ売ると二百人が並ばなければならんという結果になる、ここにもちよつと意味のないことがあります。それからこれは取引高税に関することでありますが、例えば水道を引き込みますときに、東京都へ水道のいわゆる引込料というものを賦課金の形で納付いたします。これは当然その水道工事人の收入にはならないのでありますが、これも取引高税の対象にすべかりしであつたのを、たまたま私が注意をしてそれは抜いた。その程度のいわゆる素質の者が大体現在間税におります。それから直税の関係……。
#21
○理事(黒田英雄君) 成るべく税法の改正案に重点を置いて下さい。
#22
○公述人(田中友章君) そこでそういうような比較的に職員関係において十分でないということがこういう点に現われて来るのであります。実は税務署の代帳組織ですね、あれを今少しく改めて頂きたいと思います。それはどういう点であるかと申しますというと、大体自申告自納税の制度でありますからして、一応本人が申告したものに対して仮更正、確定申告をした場合の本更正というものに対して收入の割合関係が必らずしも……、代帳整理が不十分であるために遠隔の地まで呼出されるというようなことも非常に本人といたしましては苦痛であります。そういう点を今少しく税務署の職員を通じて、いわゆるビジネスライクに、要するに事務的に運んで頂きたい、かように考えておる次第であります。
 それから実は私がこちらに参りますとき調べ上げたのでございますが、非常に一般人といたしましては、歳入面に対しまして、歳計現金の割合がどういうふうになつておるかを調べて見ますというと、昭和十一年当時が約五%になつております。十二年が六%、十三年が一〇%、十四年が一二%、十五年が十三%、十六年が一四%、十七年度が七%、十八年度が一一%、十九年度が一〇%、二十年と二十一年は不明です。二十二年は歳計現金が私の調べたところでは計上されておりません。二十三年が一%、二十四年が六%、二十五年度が五%かようになつておりまするからして、実は一応今次予算の組立方が均衡予算を含んだという建前上、どうしてもこの歳計現金に十分な裕りを持たなければならんということは、これは当然のことであります。ところがここで考えて頂きたいことは、とかく税務署の徴税官の立場になりまするというと、昭和二十四年度現年度につきましては、相当の徴收にいわゆる何と言いますか、徴收を徹底させまするが、過年度についてはとかく手心を加えるというか徴收が十分に手廻らない。そういう関係で例えは今まで昭和二十二年或いは二十三年において、非常にまじめにやつた方々が、二十四年になつてぐつと状態が悪くなつたという場合に、どうしても納らない。そういう方たが差押えをされる、処分をされるという羽目合に陥つてしまつて、二十二年とか或いは二十三年に或る程度横着を構えた者が現二十四年度はすつきり納めて、後はむしろ欠損処分で棒引をするような方策を講じるという点も今少しく事務的に掘り下げて頂きたい。私はかように考えております。
 それから私が昨年、実は八丈島に参りましてあちらの税制の事情を調べたのでありますが、実は日本に税法が布かれましてから、小笠原及び伊豆七島というものは、全然除外されておつた。何故除外されておつたかということは、むしろ委員長さんも大蔵省に長くいらつしやつたのでよく御存知だと思いますが、実は私はあちらをずうつと、あすこの五箇村でありますが、経廻りまして土地の有志ともいろいろ懇談いたしましたが、丁度八丈島では利益を上げた分だけが芝の税務署へ税金として吸い上げられてしまうという状況にあります。同様のことを私は日本が、日本全体の地域から考えて見ましたときに、或いは日本が税という形でもつてすつかり吸い上げられてしまつて、結局すべてが貧乏するということになるのじやないかという実は感じを受けたのであすます。特に八丈島、あの伊豆七島につきましては、従来税の特例ということを何故設けられたかということを例を以て申上げますと、非常に自然に作用されるのです。そのために例えば私が参りましたのは丁度九月末から十月の初めですが、その後にキティー台風があつたために相当の数千万円かけた波止場がすつかり波浪にさらわれてしまつた。又畠もすつかり汐をかぶつてしまつたということで、税務署の方で内地並の税をかけられるということは自然を相手に闘つておるあの農業又漁村では非常にきつい状況であります。而も主として伊豆七島の大部分では御承知のように焼酎を造つておりますが、これは彼もの生活のための生活必需品であります。これもやはり内地並の税金よりやや下廻つておりますが、現行では内地同様になつたと私は記憶しております。一つ伊豆七島に関しましては或る程度の税の軽課ということを是非共お取上げ頂いて、いわゆるむしろあの日本で唯一の南海の島において、是非共税の面を通じて日本の食糧市場を賄う一つの大洋の漁場としての伊豆七島を、もう一度別の目で見て頂くということを私は某非お願いしたいと思つております。
 これを要するに税の執行、たしかに税法は立派でございます。併しながらこれを執行するには人にあるという。それからシヤウプ勧告の中に最後に各大学に税法の講座を置けということがはつきり希望して勧告されておりまするが、実はこの税の統計というものは余り発表されておりません。この税務統計について今少しく私は発表をして頂いて、我々が税についてのいろいろな今後の意見を述べるについての数字的な裏付けを成るべく與えて頂くように、一つ是非努力して頂きたいかように考えておる次第であります。
 それから賦課漏れ調査について私はちよつとかような……。
#23
○理事(黒田英雄君) 成るべく税法の改正案について述べて頂きたい。
#24
○公述人(田中友章君) 今税法を執行する上について、税の賦課漏れ調査、結局言わば所得税法なり、或いは法人税法によつて一応記載されておりまする事項以外に、その台帳に載つてしまえば宜しいのであります。台帳に載らないというと結局全然賦課漏れになつてしまう。これはどういう点に過ちがあつたかと申しまするならば、私は曾ての第一種所得税、或いは第二種所得税、第三所得税、当時の旧税法の時分に減損更訂という制度がございました。この制度をもう一応現行税法の中に組込んで頂く。それからあの中には所得調査員という制度がございました。あの所得調査員という制度を今少しく拡大強化して頂くように税法の中に組込んで頂く。例えば東京都の蒲田区には地租といたしまして、一万五千筆ございます。一万五千筆のこの筆数に対しまして、僅か二ケ月間そこそこで五人か六人の調査員が一応その改訂をしなければならんというような現行の税のあり方であります。それには一応いま少しく周知を集めるという意味において十分な人数を活用して、そうして税の賦課漏れを徹底的になくするように草案化するということが絶対必要であると私は考えております。
 それでは結論を申上げます。只今申上げましたような観点からいたしまして、私は付議せられました原案につきましては一応賛意を表せざるを得ないと思います。これは日本が敗戰国でありまするから、いかに意見を述べろといいましても、結局においてはやはり私は至正命令というふうに考えて行かなければならんと私は自分で考えております。併しながらこの税法を人的配置を徹底せしめることによつて公平に徹底して徴收をして頂くように関係当局が努力をして頂くということが私の意見であります。
#25
○理事(黒田英雄君) それでは本日はこれにて散会をいたします。明日は午前十時から委員会を開きますからどうぞ御出席願います。
   午後三時二十一分散会
 出席者は左の通り。
   理事
           黒田 英雄君
           伊藤 保平君
   委員
           森下 政一君
           玉屋 喜章君
           西川甚五郎君
           平沼彌太郎君
           木内 四郎君
           油井賢太郎君
           小宮山常吉君
           高橋龍太郎君
           川上  嘉君
           木村禧八郎君
  公述人
   東京大学助教授 大内  力君
   東京商工指導所
   長       中西 寅雄君
   前全国財務労働
   組合副委員長  徳島米三郎君
   前全国銀行従業
   員組合連合会委
   員長      大倉  眞君
   日本労働組合総
   同盟本部調査部
   長       清水 愼三君
   日本租税研究会
   副会長千代田銀
   行頭取    千金良宗三郎君
   日本経済新聞論
   説委員     田中信太郎君
   税務代理士   田中 友章君
ソース: 国立国会図書館
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