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1978/10/16 第85回国会 参議院 参議院会議録情報 第085回国会 外務委員会 第3号
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1978/10/16 第85回国会 参議院

参議院会議録情報 第085回国会 外務委員会 第3号

#1
第085回国会 外務委員会 第3号
昭和五十三年十月十六日(月曜日)
   午後四時六分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 十月十三日
    辞任         補欠選任
     町村 金五君     前田 勲男君
     柳澤 錬造君     和田 春生君
 十月十六日
    辞任         補欠選任
     徳永 正利君     降矢 敬義君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         菅野 儀作君
    理 事
                稲嶺 一郎君
                鳩山威一郎君
                戸叶  武君
                渋谷 邦彦君
    委 員
                安孫子藤吉君
                大鷹 淑子君
                玉置 和郎君
                秦野  章君
                二木 謙吾君
                降矢 敬義君
                前田 勲男君
                上田  哲君
                小野  明君
                田中寿美子君
                立木  洋君
                和田 春生君
                田  英夫君
   国務大臣
       外 務 大 臣  園田  直君
   政府委員
       外務省アジア局
       長        中江 要介君
       外務省アメリカ
       局長       中島敏次郎君
       外務省欧亜局長  宮澤  泰君
       外務省経済協力
       局長       武藤 利昭君
       外務省条約局長  大森 誠一君
       水産庁長官    森  整治君
       資源エネルギー
       庁石油部長    神谷 和男君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山本 義彰君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
一、日本国と中華人民共和国との間の平和友好条
 約の締結について承認を求めるの件(内閣提
 出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(菅野儀作君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る十三日、町村金五君及び柳澤錬造君が委員を辞任され、その補欠として前田勲男君及び和田春生君がそれぞれ選任されました。
 また、本日、徳永正利君が委員を辞任され、その補欠として降矢敬義君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(菅野儀作君) 日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。園田外務大臣。
#4
○国務大臣(園田直君) ただいま議題となりました日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
 一九七二年九月二十九日に発出された日中共同声明の第八項において、日中両国政府は、両国間の平和友好関係を強固にし、発展させるために、平和友好条約の締結を目的として交渉を行う旨合意されたことに従い、政府は、一九七四年十一月以来、中華人民共和国政府との間に、この締結のための交渉を行ってまいりました。交渉は、一九七六年以降は断続的に進められてまいりましたが、本年七月二十一日より北京において、日本側佐藤大使、中国側韓念龍外交部副部長をそれぞれ首席代表とする両国代表団の間で集中的な交渉が行われ、さらに、八月八日総理の御指示により本大臣が訪中し、中国側政府首脳と会談を行い、その結果、条約交渉は最終的に妥結し、八月十二日に本大臣と黄華外交部長との間でこの条約の署名調印が行われた次第であります。
 この条約は、前文、本文五カ条及び末文から成っておりますが、その概要は次のとおりであります。
 前文において日中両国は、両国間の平和友好関係を強固にし、発展させるためにこの条約を締結するという条約締結の目的が明らかにされております。
 第一条においては、日中両国が恒久的な平和友好関係を発展させることを定め、その際の指針となるべき諸原則を掲げております。
 第二条においては、日中両国が、いずれも覇権を求めるべきではないこと、また、覇権を確立しようとする他のいかなる国または国の集団による試みにも反対することを表明しております。
 第三条においては、日中両国間の経済・文化関係の発展及び両国民の交流の促進のための努力を規定しております。
 第四条においては、この条約は、第三国との関係に関する各締約国の立場に影響を及ぼすものではない旨を明記しております。これにより、わが国としては、日米関係を基軸としていずれの国とも友好関係を維持し発展させるよう努力するというわが国外交の基本的立場を将来にわたって確保した次第であります。
 第五条においては、この条約の批准、効力発生、有効期間及び終了について定めております。
 この条約の締結により、日中両国間の友好関係を一層発展させるための基礎が築かれ、両国間の友好関係が長期にわたり安定的なものとして確保されることはアジア及び世界の平和と安定に貢献するものと期待されます。
 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、本件につき速やかに御承認あらんことをお願いをいたします。
#5
○委員長(菅野儀作君) 以上で説明は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#6
○戸叶武君 日中平和友好条約の承認を前にし、この条約の締結を心から祝福いたします。
 福田首相は、この国会の劈頭において、日中関係は幾多の変遷を経てきたが、このたび、互恵平等の精神に基づいた両国間の長期的な友好親善関係の基礎固めができたことはきわめて意義深い、日中両国が高い立場に立って双方の満足がいく結論を得たことは御同慶にたえないとの所信表明を行い、また、園田外相も、この成果を得たのは与野党の方々を初め、各界各層の先輩、友人の御苦労の賜りものだと謙虚に感謝の意を表しておりますが、この調印に至るまでの当事者としての園田さんがこのためには命をなげうってもというほど思い詰めて責任をとった御苦労に対しては、特に、私は、日本の今後における武器なき国における、戦争を拒否している国における国際紛争に当たっては、有事立法などということを言うよりも、戦争への危機を導かないために、政治家が命がけで国の安全と近隣諸国に特に迷惑のかからないような政治行動を起こすのが政治家としての当然の任務だと思いますので、その点で、特に、私は、園田君のこの捨て身とも言ってもよい政治行動に対して、心から新しい歴史の記録をつくった政治家の一人であるというふうに高く評価いたします。
 ところで、世界の人々も、日本の人たちは一体何を考えているのか、あの最終段階まではらはら手に汗を握らせて、わけのわからないことばかりだというふうな感想を述べております。必ずしも政治的演出とは思えませんが、福田首相は、わが国の外交は一言で言えば全方位平和外交だと言うべく、世界のすべての方向に向かって、あらゆる地域、あらゆる国との間に平和友好の関係を求めることにほかならないと全方位外交なるものを説明しておりますが、園田外相はどのような御見解でございますか。
#7
○国務大臣(園田直君) 総理が言われる全方位外交を具体的に言うと、私が臨時国会の冒頭に申し上げました演説の中の遠近、大小、政治形態のいかんにかかわらず、どの国とも外交を進めていくということを一言にして言われた言葉であると解釈をいたしておりますが、その全方位外交の基本とするところはあくまで戦争防止、各地域における紛争を防止し、わが国自体が平和に徹し、そしてアジアから、ひいては世界の平和と安定を図る一本の基本線に向かって前進することが全方位外交でなければならぬと考えております。
#8
○戸叶武君 外交は相手あっての外交です。問題は、相手側がどう受けとめるか。福田さんと園田さんの表現にも若干ウエートの置き方が違っているようなニュアンスを感ずるのでありまして、その点の解明からまず私はお願いしたいと思います。
 福田さんは「わが国の平和を確保し得る国際環境を整備するとともに、進んで、世界のために積極的かつ重要な役割りを果たすことができる」、それはいわゆる日米間における協力、日米安保体制を基軸とするものであるというふうに受け取れるような表現を行っております。保守党歴代の外交方針はそのようなものであったかもしれませんが、この日中平和友好条約は在来の軍事同盟なり安保条約とは異なるところにその特筆すべきところがあるのだと思います。その点をもっと明確に述べていただきたいと思います。
#9
○国務大臣(園田直君) 六年前の日中共同声明が安保体制にかかわらず出されたように、今回の交渉でも、安保体制にかかわりなく交渉が進められ、妥結をしたものでございます。
#10
○戸叶武君 ところが、今国会の劈頭において、福田首相は「日米安全保障体制の上に立った米国との友好協力関係は、わが国の平和と安全を保障し、今日の繁栄を実現する上で大きな役割りを果たして」きたと、この言を前提とし、「いまや、両国の関係は、さらに一歩を進め、両国が相携えて平和で友好的な国際社会の建設に寄与するという、世界のための日米協力、世界のための日米提携の関係にまで高め」ていますと力説しております。福田さんのこの見解とあなたの見解はどこかそぐわないものがあるように感ぜられるのでありますが、違っておりませんか。
#11
○国務大臣(園田直君) 外務大臣は総理の御指示によって外交を進めておりますが、その日米関係を基軸にして日本の外交を進めていくということは総理と同じ意見でございます。
#12
○戸叶武君 それは園田さんの言うとおりだと思いますが、ウエートのかかり方が大分違う面がありますので、まず、この全方位外交を説く福田首相及び園田外相に対して、わが国の全方位外交なるものはいかなるものか。最初に二十年前にこれを説いたフランスのドゴール大統領の全方位外交の発想並びに内容とは違っておるようであります。
 ドゴールはNATOをも解消して世界の平和共存体制をつくりたいという大きな悲願を抱いておりました。フランスと日本との置かれている立場も違うから、同じ全方位外交でもドゴールの構想と福田さんの構想とが違っても一向差し支えありません。しかしながら、中国の言葉に羊頭を掲げて狗肉を売るという言葉があります。羊の肉がおいしいからそのおいしい肉を提供すると掲げながら、食べてみたら犬の肉だったでは、私は中身によってずいぶん偽られることもあるという誤解を、特に言葉の吟味においては厳しい中国ではそういうおそれもあると思いますが、園田さんはきわめて善意に物を解釈する人でありますが、その点の心配はありませんか。
#13
○国務大臣(園田直君) 日本と米国との安保体制も、発出当時とは国際情勢は大きく変化し、アメリカ自体の方略等も変化をしてきておりまして、ただいまはこの体制というものは均衡による平和というか抑止力による平和ということであって、戦に備えるということよりもむしろ均衡による平和を維持しながら世界の平和を願うというふうに変わってきておりますので、そういうことはないと存じます。
#14
○戸叶武君 全方位外交と言ってもドゴール大統領と福田首相の言わんとしているところは必ずしも同じでない。国の置かれている立場なり、時の推移によって異なるという園田外務大臣の説明はそれなりにわかります。しかし、問題は、福田首相の説く全方位外交と園田外相の受けとめている全方位外交は、人が変われば品変わるで、その間に違いがありはしないかというような誤解をも生ずるような面もなきにしもあらずだと私は危倶しておるのであります。
 園田外相は「米国との安保体制を含む緊密な友好協力関係は、わが国の平和と安全を確保し国民生活の繁栄を実現する上で欠くことのできない重要な関係であり、わが国外交政策の基軸で」あると説明して、福田首相とその点の見解は同じであります。しかしながら、福田首相と園田外相との違いは、あるいは違いというのは言い過ぎかもしれませんが、福田首相は、世界経済の安定的な拡大を確保することを含めて、広く世界全体の平和と繁栄を確保するために日米両国が協力すべき分野はますます増しておりますというふうに、アメリカに力点を置いております。園田外相は、それをそれなりに受けとめながらも、ソ連との友好関係を維持し促進することはわが国外交の重要な課題であると受けとめております。福田さんはアメリカの方を向き過ぎ、園田さんはソ連のことを気にかけているようであります。右左、前と後ろに二人が一体となって目を配っているのかもしれませんが、そこいらの関係はうらはらの関係かどうかわかりませんが、どのようにわれわれが観察したらよろしいでしょうか。
#15
○国務大臣(園田直君) いまは過渡期でありますからいろいろ意見はあると思いますが、西欧の諸国にしても、アジアの国々にしても、あるいは他の国々にしても、今日一番大きな問題は、米ソの対立を激化させることなしに何とかしてこれを緩和の方向へ、そして平和の方向へ持っていく、これが第一の願いでなければならぬと考えておりまするし、また、他の国々の方々と会ってもさように私は判断をいたします。
 一方、また、ソ連の指導者ともしばしば会いましたが、ソ連の指導者も苦しい中に軍備をやりつつありますけれども、やはり均衡の平和ということを考えて非常に苦労をしておられるようであります。米国の指導者も、やはりソ連と米国が正面切って対決をし、これが火を噴くことは避けようとして努力をしておられます。こういうことから見ても、私は、やはりいろいろ手段、方法、基軸、こういうものはありますけれども、願いは米ソの対立を初め各地域で火を噴くようなことが絶対にあってはならぬということに外交の重点はなければならぬと考えております。その点は総理も同じであると存じます。
#16
○戸叶武君 福田首相は、日中平和友好条約締結によってソ連に無用な刺激を与えないようにとの配慮のもとに、「ソ連との間に正しい相互理解に根差した友好関係を増進することは、わが国外交の重要な課題の一つで」あると、園田さんが問題にしているように、やはりこれを注意深く受けとめているのは事実であります。園田外務大臣が言ったように、いま世界の責任を持つ政治家は、戦争か平和か、いずれを選ぶかと言うならば、戦争を選ぶ者は少し頭の変な人以外にはないと思います。このごろ日本には大分変な人が多くなったので私は心配でありますが、日中平和友好条約に便乗して、アメリカの一部の軍の指導者なりあるいは軍需産業の商人なりメジャーなりが米日中の結合によってソ連を包囲し孤立化させなければならないというような動きを示しているので、ソ連がソ連なりに、われわれからすれば無用と思うような神経をとがらしているのも事実であります。米ソの指導者も一本調子ではないと思います。
 私は、ブレジネフさんがあの不自由な体を引きずりながら西ドイツを訪問してお互いの理解を深めようとする写真を見たときに、ソ連の指導者も、中ソ国境でトラブルのあった後でありますが、ノモソハンの事件以上に警戒して行き過ぎのないようにという形でこれを世界に訴え、また自国の主戦論者を抑えたのではないかと思っているのであります。いまアメリカのカーター大統領でも核兵器の制限ということに全力を注いでおります。米ソ両大国が持っている軍事力の支配によって、威喝によって世界をコントロールする時代は去ったということを認識できない政治家は政治家としての価値が余りありません。みずから三流の政治家のはったりと私は本人たちが自覚するときがなければならないと思います。そういうときに、いたずらに反ソ的な言動をまき散らしてソ連を敵視していくというような三流、四流の愛国者と称する者によっては世界の中の日本の前途を指導し責任を持つことは私はできないということを国民はすでに感じております。
 いま、次の総裁選挙で夢中になって頭にきている人たちもあるでしょうが、いまのこの次期政権をめぐる駆け引きのいやらしさというものを見るならば、これが日本の政治かとだれも慨嘆せざる者はないし、心ある政治家は、これでは日本は大変だというむなしさを私は感じておると思います。必ずこの反撃が国民世論の中から私は火を噴いてくると思うのであります。こんな激動変革の時代において政治家の一挙手一投足が注目の的となっているときに、あの狂乱のていたらくは何事ですか。これは他党に干渉するのではありません。政治家として席を連ねる者として私たちはこれで日本の政治はよいのか。自民党の中においても本当に国を憂うる者はこのようなぶざまな政治は政治が国民から遊離する最大の原因をつくっているというふうに慨嘆していると思うのです。情けないことですが、これは自民党の中にもやがて私は心ある人も出てくるのではないかと思っております。あるいは出ないかもしれません。
 そこで、福田さんなりあなたなりが戦争への先制攻撃ともいうべきものを考える前に、戦争が起こらないような火の用心、世界の中における日本の役割り、これをしっかり認識して、それに一貫性を持たなければ国際信義は生まれないのであります。
 説教はよけいでありますが、せっかく日中平和友好条約の中に国連憲章の精神、再び戦争はしまいとして、軍備も持つまいとして内外に示した日本憲法の精神、非核三原則、核拡散防止条約の批准、その積み重ねの上に立って二国間条約をりっぱにつくり上げたのであります。しかし、りっぱな二国間条約が日中両国のわれわれも覇権主義はとるまいという誓いの上につくられたにもかかわらず、仏つくって魂入れずのかっこうでは、見場はよいが中身が違っているでは、前の言葉ではありませんが、羊頭狗肉のにせものということになります。その点において、そういうにせもの、イカサマ師の外交ではないということを国の内外に示すためには、福田さんでも園田さんでも体を張って全身全霊を傾けて外交の基本方針というものをぐらぐらさせないようにすることが何よりも肝要と思います。あなたにはできているようですが、福田さんにも恐らくはできているが、何しろあそこは八本節の本場ですから、四角四面のやぐらの上で三角やろうが音頭を取りながら円陣を回っているところですが、この全方位外交は丸です。
 ドゴールは、ミスターフランスとして、あの危機に立って、小党分裂無責任時代に、われ祖国の難問題と取っ組んでこの問題を解決して世界の平和に貢献しようという、それを学者としての見識人ルネ・キャピタンなり、あるいはアンドレ・マルローのような人物が補佐しながらあの退勢を、あの危機を切り抜けたのであります。いまあなたのところを見ていると気の毒な気がします。よく園田さんも福田さんも政治が好きだから逃げるわけにはいかないんだろうが、まるであさましいほど党内が混乱して、外よりも内の方の足元に気をつけないと殺されるような修羅の中に立っていると思うのであります。しかし、この中に立っても、進退両難にあっても貫く精神、進むとか退くとか、成功するとか成功しないとかという野望、私心を断ち切って、両頭を裁断すれば一剣天にかかって寒しという厳しい言葉もありますが、ひたむきに私は祈りをささげながら祖国の前途に対して光を求めていかなければならない。それをあなたがやっている。
 そこで、私が心配なのは福田さんで、福田さんにはまた後で福田さんから直接お伺いするのでありますが、日ソ関係を真に安定した基礎の上に置くためには、全国民の一致した要望である北方四島が祖国復帰して平和条約を結ぶことが不可欠であるという信念を福田さんもあなたも吐露しておりますが、この信念が、相手あっての信念の活用でありますが、相手にいつごろまでには通ずると測定しておりますか。
#17
○国務大臣(園田直君) 先般の国連総会で友好条約締結後初めてソ連のグロムイコ外務大臣と私の会談があったわけでありますが、その際に、私の方は友好条約締結後従来の方針に従って今度は日ソの関係をもっと進めていきたい、こういう話をいたしましたし、向こうも、また、これには同意をされました。
 そこで善隣友好条約の話が出ましたから、私はこれに対しては次のように答えておきました。日本の基本方針は未解決の問題、四島返還を含む平和条約を解決して、その次に友好条約という順番になっておる。なお、いま出されておる善隣友好条約の内容には同意するわけにはいきません。しかし、こういう問題も含めて日本の基本方針は進めますけれども、あくまで友好条約は拒否するというつもりではございません、お互いに相互理解するように今後話し合おうじゃないか、こういうことをグロムイコ外務大臣に申し上げましたところ、向こうも話を進めることには賛成だと、しかし、この場で何月何日に日本に行くということは約束できぬ、こういうことでありまして、いまこういういろんな問題をとらえて逐次相互理解を深め誤解を解き、そして方針を貫きつつ弾力的な方法で話を進めていきたいと考えております。
#18
○戸叶武君 歯舞、色丹、国後、択捉の四島返還を言うことはやすいが、これを実現するまでには相手あってのことで、なかなか私は困難なイバラの道だと思います。しかしながら、日中平和友好条約を結んだ後における日本の動きというものは世界から見守られております。国際紛争を武力に訴えないで、相互理解を深めることによって平和的に解決しようとするのが日本の国是であります。つらいけれども、これを貫かなければ日本の外交の基本方針というものは生きてこないと思うのであります。そこで、いろいろな北方領土の問題に対して議論があり、わが国固有の領土である北方領土を全部返還してもらうという要求が正しいのにもかかわらず、歯舞、色丹、国後、択捉という四島に限っているのはどういうのか。ある者は歯舞、色丹だけで早期平和条約を一応結んで、平和条約はできないにしてもソ連側との関係に融和をつくり上げて、その上で問題を解決しようとする提言もありますが、いまでは国民世論の圧倒的な多数が現実的な四島返還によって国民の合意も得られるというところまで私は来ておると思うのであります。
 そこで、一番問題点は、あのサンフランシスコにおける講和条約が全面講和条約でなくて、結局、ソ連も中国も加わっておりませんでした。あのときに領土問題があいまいにされたことは遺憾でありますが、戦争の後における暫定的な処理としては、われわれは反対であったが、政府当局としては苦心のあった点があるのではないかともわれわれは推定できます。しかしながら、領土問題はきわめて平和条約にとっては重要な問題です。人間の肉体の一部を引き裂かれるようなものですから、この問題をめぐっていつも戦争が過去においては起きているような戦争原因をもつくり上げたのであります。しかし、ベルサイユ講和会議なりアトランティックチャーターなりポツダム宣言なりを貫いている精神というものは、戦争に勝った国が敗れた国から他国の主権を侵して領土を取らないというような新しい国際関係のモラルが生まれていると思います。ところが、一九四五年二月十一日に、戦争中に軍事謀略秘密協定としてアメリカのルーズベルト、イギリスのチャーチル、ソ連のスターリンで結んだヤルタ協定は、戦時中だからやむを得なかったとするならばそれまでとして、次の平和条約をつくり上げる前提条件としては非常に不合理なものでございます。
 われわれがわが国固有の領土を返せという要求よりもむしろ次の平和を保障すべき条件を具備するために、ソ連だけでなく、ソ連をだましたとまで言われているアメリカあるいはイギリス共同の責任においてヤルタ協定を自発的に解消するというところまで踏ん切らなけりゃ、ソ連だけに難癖をつけているのでは北方領土問題の基本的な解決はあり得ないのではないかと憂惧している人もありますが、外務大臣はその点はどのように見ておりますか。
#19
○国務大臣(園田直君) 未解決の問題を解決するといっても、なかなか困難であることは御発言のとおりであると思います。したがいましてソ連に対しても粘り強く理解を求め、あるいは他の問題とも相互に理解を深くしていくことも必要でありますが、関係諸国との間にもこの了解を求めながら国際環境の中でそういう雰囲気をつくっていくことは御発言のとおりきわめて大事であると考えます。
#20
○戸叶武君 第一次世界戦争のときに、一九一五年にイタリアを連合国に加担させるための連合国の謀略外交として、イタリアに北アフリカとエーゲ海のかなたのユーゴスラビアの海岸地域とを与えるというようなロンドン秘密協定が結ばれておりましたが、デモクラシーを守るという名のもとにアメリカの青年の血を流したルーズベルトはこれに応じなかったのであります。サンフランシスコ講和条約においてアメリカが領土問題に対してもあいまいな態度を示したのは自分のすねに傷を持っていたからであります。もう言ってもすねの傷を痛めることはない、われわれはいまでは知らぬ顔だで済ましているかもしれませんが、こういうところに私は戦争から平和へのこの波の中にどこに問題点があるかを冷静に客観的に観察して、これに対処する必要があると思います。
 御承知のように、第一次世界大戦の前線を従軍記者として尽くしたノルマン・エンゼルが過去の戦争は知らないが、今後の戦争においては勝った国が負けた国から莫大な賠償金を取るとか、領土を奪って、それによって戦勝国が有利になるというようなことはあり得ない。不生産的な破壊によってともに苦しまなければならない目に遭うから、もはや戦争はなすべきでないということを説き、ロマン・ローランのような人が高らかに再びこの人類に戦争をさせてはいけないという主張をなしたのであります。
 私は、いまソ連についても、この間、ソ連の文学者が日本を訪れてトルストイの百五十年祭の記念講演をした後で、日光を見たいというので、このごろソ連の人と物を言うのが物憂くなったのでありますが、立場は違っても親切にと思って、日光の東照宮と日光の自然を案内しながら語ったのでありますが、キム博士はその中で、別にクレムリンと比較しての発言ではないでしょうが、人工の美と自然とが調和した形においてつくり上げられている日本の文化、堂塔というものをそれなりに高く評価しなければならないということを言っておりました。戦争か平和か、ナポレオンの侵略、クリミア戦争への従軍、あのどろ沼の中にのたうった記録を詳細に集めて、トルストイはすでに「戦争と平和」の名著を残しております。あのヒューマニズムがロシアの人々の根底にいまよみがえってこないとは私は言えないと思います。
 レーニンの革命外交も、戦争の中に敗残兵をまとめながら、民族相克のそれを認めながら、他国の土地を侵略せず、われわれの祖国の寸土だに割かず、平和外交を国是とするのだと言ったレーニンの革命外交が本物の革命外交であったということを私は回想するときも、ソ連からそろそろ始まってもよい時期になったのではないかと思います。
 いまの非常に活動家というソ連関係の張り切りボーイに会うと、ソ連のやったことは皆正しいので日本のやったことはけしからぬ。日ソ平和友好条約はぶち壊してみせるなんと言うから、絶対に壊せない。そうしたら、その次にはとうとうとその警戒すべき点を述べておりますが、われわれもわかっている。しかし、人を責める前に、みずからの自覚のもとに、みずからの主体性を確立しないで人を説得することは効果がないと思います。日本にしても、中国にしても、日中平和友好条約をお互いに激論を闘わしながらあそこまでまとめ上げたからには、両者とも自分の主張だけを述べず、相手の立場、相手の苦悩をも理解しながら、私は明日への平和の道を切り開くだけの見識がなければ文明国民とは言えないと思うのであります。
 そういう意味において、この歴史的な外交条約は、世界各国から、今後、あの激しい中国、あのどっちを向いて走っているのかさっぱりわからない霧の中の日本民族、これが直感的に世界の危機を感じてわれわれから変わらなければならないと歩き出したが、さてその行方はいかにと見守られております。そのときに、私はいまの自民党には内政干渉しませんが、ごちゃごちゃになっていて、いろいろバラエティーに富んでいるのはいいが、日中平和友好条約をどうしてもぶち壊すんだと、国会を挙げて共産党に至るまでいろんな苦労を経てきていながらも、それを乗り越えて次の平和を求める足がかりとして日中平和友好条約をとりあえず承認しようというところまで、言うべきことは言うけれども、私らの果たすべきことは果たそうという決意ができたときに、福田さんは自民党の総裁であり自民党内閣の内閣総理大臣であります。私は、党内にいろいろな人たちが自由な言論をするのはよいが、特に参議院においては衆議院と違って慎重審議をするのはよいが、もう終点に近づいたのであります。わけのわからない人は途中下車でも差し支えないのですから、やはり下車してもらって終点にまでは真っすぐにやっぱりいかなければ、日本人というのは相手にしづらい、本当に心と形と一致してないんだというばらばらな感じを与えたのでは、派閥連合体としての自民党は近代政党でなく、前世紀的な原始的な派閥集団の連合だというふうな誤解を招かないとも限らないと思うのであります。
 エール大学の学者が日本の派閥の研究に来たときに、私が言ったのは、派閥は政治のあるところにある。しかし、派閥だけの政権たらい回しは議会民主主義の運営においては致命的な欠陥である。これを是正しなければ、民主主義は観念的な主権論争でなく、民主的な主権者である国民にはっきりわかるような政治運営がなされなければ、近代政党としての価値はないのです。解体しろという叫び声が国民の中から起きないとも限りません。日中平和友好条約にわれわれは賛成するのだが、この与党があいまいもことしてどこへ突っ走るのかわからないような悍馬であるならば、その悍馬に乗せて歴史的なこの条約を自民党がつくったのだと言って声高らかに外交権を持つとは言いながらも、魂なき人民に背く外交権の発動に対して、私は世論は怒りを持ってこれに対抗すると思うのであります。自民党の中だけで通用するような言動が国際社会において通用するかどうか。これはあなたに言うのよりも福田さんに次に言いたいところでありますが、あなたはどのように考えておりますか。
#21
○国務大臣(園田直君) 私も御発言のとおりに考えております。
#22
○戸叶武君 どうもこれはのれんに腕押しというのじゃなくて、がっちりそういうふうに真っ向から受けとめられると次の質問の出ばなを折られちゃうのですが、しかし、それだけに体を張っている園田君は男だな、やっぱり女がほれるのも本当だなという感じがします。
 いずれにしても、私たちは、遠くのことでなくて、特に隣で苦しんでいる南北朝鮮の苦悩に対してはもっといたわりのあるものを持たなけりゃ、日本の伊藤博文を、信義を裏切られたがゆえにクリスチャンであり教育者であった安重根が身を殺してハルビン駅頭において民族を偽った者としてこれを倒しておりますが、伊藤博文の浅学非才からカイザーにおだてられビスマルクにおだてられてドイツ憲法にもないような統帥権を挿入して明治憲法を台なしにした点。あるいは軍部を天皇の股肱の臣なりとして、いわゆる前線において、有事立法どころか、軍が勝手な行動ができるような余地を残した点。日本と中国との戦火が昭和十二年七月七日に始まったときにも、真相を宗哲元にしても何應欽にしてもきわめようとするのに、また陸軍参謀本部の中には石原莞爾将軍のような見識人があり、陸軍省の軍務局長には柴山兼四郎君のような見識人があっても、前戦連隊長の牟田口何とか――ムダクチと言うんだから余りいい名前じゃありません、これが聞かない。それでついに戦争への道を食いとめることができなかった。そういうシビリアンコントロールどころか、前線でこれは大変なことだという前線部隊長の受けとめ方によって戦火を開いたら、どんな人の力でもなかなか戦争を抑えることができないのです。
 有事立法を口にする前に、戦争への道を封ずるような、自分だけじゃなく相手にも封じさせるような手を次から次へと先回りして打っていくのが日本の平和外交の躍動する姿ではないでしょうか。それができないような外務省はなくしてしまった方がいいのです。それをなすことのできないような見識を持たない総理大臣はとっととやめてもらいたい。これは今日の総裁選挙で大平さんと中曽根さんの争いの課題になっているようですが、あの人たちの争いの中にわれわれは巻き込まれたくはないが、心して日本の今日置かれている立場というものを把握しなければ、国民はばかじゃありません、本物とにせものの見分けをちゃんと見詰めておるのであります。だれが次期政権を担当するようになっても、この道以外に日本の行く道はないとひたむきに行けるような外交の基本的な精神並びにその実績をいまつくるのが今日の課題です。
 二十一世紀まであと二十二年、第二次世界戦争後三十三年、二十二年のうち日中平和友好条約の期間は十年です。中期的な期間です。十年を見守るのでなく、今後の一年、今後の二年、今後の三年が世界の戦争を食いとめるために全世界の人々の協力を求めなければならないときであります。あなたが国連に行ったときに、地域婦人会の人たちも平和を守るために、原爆戦争をなくさせるために、母として婦人として全世界の人々に訴えたあのけなげな精神というものは、アメリカの人たちにおいても、日本人が遠慮して原爆のことを口にしなかったが、原爆は日本だけの課題ではない、核戦争は世界全体の滅亡につながるという形で平和運動が最もノーマルな形で大衆の中に私はよみがえってきたと思うのであります。未来はこの平和を好む婦人と未来を安かれと祈る青年たちの手に託されなければならないのであって、戦争の惨禍を知らないむちゃくちゃな連中に若さとばかさが同居して突っ走られるのでは、これはダンプカーの暴走と同じであって、あたり迷惑でございます。迷惑と信じないのは自分だけのことであります。どうぞそういう意味において、全体とは言わなくてもいい、少なくとも国の政治の中枢にある総理大臣とか外務大臣は命がけでこの日本民族の悲願を守り抜いていただきたい。
 逃げても、インフレとデノミの波の中に昭和五年浜口雄幸は殺され、昭和七年二月九日前の大蔵大臣井上準之助は殺され、その年の五月十五日に犬養毅も、話せばわかると言うが、話し切れないうちにピストルで命を消されたのであります。本当にそのときとそれ以上に厳しい世界の渦が巻き、絶望的なテロリストは至るところに出没しておりますが、テロに対する警戒よりも、テロの余地、戦争の余地を与えないような政治の姿勢がいま一番大切で、政治家の責任は、教育者や医者にいろいろな泥をなすりつける前に、まず政治の姿勢を改めることが大切ではないかと思うんです。いまのような金のかかる政治、ずうずうしいやつがまかり通る政治、にせもの横行時代の政治、私が国会で言わなくても、国民は皆それを憂えているんです。
 どうぞそういう意味において、今日アジアにおいて南北朝鮮も苦しんでおります。自主的な話し合いによって統一の悲願に対してじゃまをするようなことはしてもらいたくない。ベトナムと中国との関係、カンボジアとの関係も悪化しております。しかしながら、冷静に物を見詰め、実態を把握し、軽々率々に、あのアラブとイスラエルの戦いのような中東の禍乱はイギリスのバルフォア宣言以来の帝国主義謀略の過ちであり、また、その後における米ソ角逐の責任なしとは言えないのであります。しかしながら、いま米ソに頼って血を流しても得るところはないという反省がアラブからもイスラエルからも起きてきていると思うのであります。どうぞそういう意味において、世界は危機に直面しておりますが、再び朝鮮戦争やベトナム戦争のような惨禍を起こさせないための努力というものが日本としては最大の関心事になってくるんじゃないかと私は思います。
 ソ連に行っても、あなたもずいぶん攻撃を受けているが、しかし、やはりあれは日本人だということなっております。私もクレムリン宮殿の最高幹部の部屋で、ソ連共産党と日本の社会党は違うんだ、ソ連の共産党はプロレタリア独裁の名によって国の運命を決する権限があるかもしれないが、日本は人民主権の国である。社会党たりと共産党たりといえども、国民の合意を得られないような条件のもとに平和条約は締結できないんだということを言い放ったのであります。本当のことを言ったんだから後じゃ憎まれないで、戸叶さん、あれは日本人だという証明になったようであります。在野の政治家だから勝手な放言もできるんですが、園田さんもなかなか窮屈なかみしもを着ておりますから、すべからざるは宮仕えと言いますけれども、その地位にある間は、毒舌家の私は、心はやさしいが、あなたが途方に暮れたときに、一福田首相の忠犬ハチ公ではだめだぞと言ってあなたに気合いをかけたことがあります。大変失礼なことでありますが。
 田中正造以来の在野の政治家は、田中正造が私の生まれた一日後に牢獄から出て叫んだ声は、野獣のような戦争はすべきではない、全世界の陸海軍を廃止しなければならないと、明治三十六年二月十二日、掛川在の南郷村で参議院の議長をやっていた河井さんのお父さんの主催の政談演説会で述べております。この予言者の声を私はヨハネの声のように受けとめております。二十歳にして浅沼とともに半殺しになった軍事教育反対の反軍国主義運動を早稲田大学の一角で起こしたのも、この田中正造の在野政治家の貫く抵抗の精神を実践したのにすぎないんです。
 どうぞ朝にあると野にあるとを問わず、日本人は武器をとって戦っても強かったが、それ以上に平和の使徒としてローマに進軍したペテロ以上の情熱を持って平和の世界をつくり上げたという記録を――あなたの力なら福田さんでも引っ張っていけそうなものだ。福田さんは頼り気ないようなところがあるが、しんはしっかりしたという評判もありますが、評判倒れということもありますから私は保証はできません。どうぞあなたたちの総裁、あなたたちの総理大臣に担いだ以上は、終わりを全うして、あいつはインチキ政治家だというようなそしりを受けないように、政治家の生命は見識であり、政治家の評価は棺を覆うて初めて定まる、その進退によって決するのでありますから、進退を間違わせないように御苦労のほどをお願いし、私の質問を打ち切ることにいたします。
#23
○稲嶺一郎君 日中平和友好条約締結に対する政府の努力に対しまして深い敬意を表する次第でございます。
 一九七二年、日中共同声明が発表されてから約六カ年間、覇権条項、台湾、尖閣列島等の諸問題について激しい論議を繰り返したのでございますが、それにもかかわらず、若干の疑問を残しながらも条約締結にこぎつけたのは、一にアジア・太平洋の安全と平和を志向念願したからにほかならないと存ずる次第でございます。世界の平和、アジアの平和の維持発展は人類の目標であり、われわれはこれがために全力を傾倒しなければならないと思います。日中平和友好条約締結によって、日本と中国はアジア・太平洋の平和の維持に重大なる責任を負うことになったと存ずる次第でございます。日中平和友好条約の締結は、アジア諸国はもちろん、世界の国々に対して大なり小なりインパクトを与え、これによって諸国間には国際関係の再編の動きさえ見られたのでございます。この条約がそれに内包する意義を十分に生かすためには、この条約の影響を受けた国々が本条約を支持し、かつまた目的の達成のために協力しない限り、日本と中国の期待を裏切られるような事態があらわれてくるかもしれません。かかる観点からいたしまして、私は日中に関する経済、領土の問題や、それと関連して各国とのかかわり合いのあり方について質疑を進めていきたいと存じます。
 第一の問題といたしましては、日本と中国との経済交流の問題についてでございます。
 目下、中国は四つの近代化を進めるために広く資材や技術を海外に求め、特にわが国に対しては、上海近郊の宝山製鉄を初めとして次々とプラント輸入の引き合いがなされ、金額としてすでに四十億ドルの成約がなされ、商談中のものを加えると百億ドルを超すとされ言われております。輸出に多くの制約を受けつつあるわが国にとってこれらプラントの輸出は喜ばしいことではありますが、中国としてはこれに応ずる外貨は少ない。したがって、石炭と石油の増産とその輸出によって外貨を獲得しようとし、特に石油に重点を置いて、国内エネルギー消費には多く石炭を使用して石油の輸出をそれだけ高めようとしている模様でありまして、日中長期貿易協定によると初年度七百六十万トン、その後漸増して一九八二年では千五百万トン、合計四千七百十万トンが輸入されることになっておりますが、新聞紙上に伝えられるところによりますと、これを五千万トンに引き上げ、さらに将来はわが国石油消費量の一〇%を中国石油によるとの話もあります。言うまでもなく、ここ十カ年における世界の石油事情あるいはわが国の代替エネルギーの開発状況からしますと、隣接する中国からの石油輸入を増加していくことは、わが国エネルギー需給の安全性から見て大きな意義を持つものと言えます。
 しかし一面、この中国石油の輸入促進は、わが国のエネルギー政策に便乗してプラント輸出増加のためのものではないかとの見方もされております。この点で、石油業界の一部にあってはこの輸入増加については難色を示しておりまして、強いてその輸入の増加をするならば、政府の責任において中国系原油を備蓄に充てるとか、あるいは中国原油の精製装置に対し政府の特別支出を望むとかのことが新聞紙上で見られるのでございますが、政府としてはこの中国原油についてどの程度にその輸入をなさるのか、また、その輸入に関連してわが国のエネルギー対策はどう進められていくのか、この点についてお伺いしたいと存じます。
#24
○政府委員(神谷和男君) 中国からの石油の輸入につきましては、先生御指摘のとおり日中長期貿易取り決めにおきまして、千五百万トン、一九八二年度現在輸入するというところまで取り決めに記載されております。それ以降の三年間は千五百万トン以上ということで、これにつきましても現在鋭意その数量を固めるべく努力しておるところでございますが、御指摘のように、先般通産大臣が訪中いたしました際に、日中貿易を大幅に拡大することが望ましい、こういう観点から油の引き取りを期間を延長しても大幅に増量することが望ましいのではないか、こういう観点から、その可能性につきまして中国側責任者と話し合いをしてまいったところでございまして、基本的には大幅に中国原油を将来引き取っていく、こういう基本方針についての基本的な了解に達したわけでございます。
 この話し合いを踏まえまして、現在関係者で鋭意諸情報を交換しながら、現実性のある数字を固めていくような努力をしておるところでございまして、この努力を今後とも続けてまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。中国原油につきましては、日中貿易を拡大するという観点のみではなくして、わが国のエネルギー政策上、特に原油輸入の供給源の多角化、こういう観点からもやはり中国からの輸入をできるだけ増大させていきたいというふうに考えております。先ほど先生御指摘のような数字も有識者の中で一部言われておることは確かでございまして、こういうことが実現できればわれわれも望ましいと考えておりますが、御指摘のように中国原油は重質油でございまして、その点わが国の需要構造、これは世界的なものでございますけれども、需要構造は軽いものに移りつつある。他方世界的にも原油の供給は重質化しつつある、こういう状況にございますので、重質油の消化というものはなかなかむずかしい問題がございます。そういう意味で、業界も難色という御指摘がございましたが、いろいろ多くの問題を抱えておるという問題点を指摘しており、政府と一致してこの問題に取り組まなければならないという点を種々の表現で指摘しておるものとわれわれは了解いたしておりまして、この問題につきましては需要業界の協力も得ると同時に、重質油分解の施設の技術的問題を解決すると同時に、これの適切な時期における導入というものに官民一致となって取り組んでまいりたいと考えております。この問題が解決されれば原油輸入の多角化、中国貿易の拡大という観点からの中国原油の輸入の拡大は可能であろう、こういうふうに考えております。
#25
○稲嶺一郎君 ただいま中国石油についてお伺いいたしたのでございますが、わが国の石油の需要について考えてみますと、低速経済ではございますが、七%成長になりますと当然その需要は増加すると思うのでございますが、いまの時点におきまして私が非常に気になることは、中国石油の輸入はインドネシアからの輸入の減少につながるのではないかということでございます。このインドネシアの原油は中国系のものと同質のもので、硫黄分が低い点で輸入されていたのでありますが、硫黄分除去の技術の進歩とともに、かつては三百万トンも使用していた製鉄業界の需要がなくなっている上に、中国原油の輸入増加があるとさらに減少する可能性もあり、価格の高いことも手伝って一層この現象に拍車をかけるんじゃないかというふうに考えておるような次第でございます。
 アメリカは、対インドネシア政策も手伝ってこの高い石油を買い続けているとのことでございますが、これに反して日本のインドネシア石油の輸入がいまの時点では減少していくのではないかとの不安がインドネシアの方面に強く流れているのでございます。わが国はあくまでも全方位外交をとるのでありますが、これは友好友好と言って肩をたたくだけのものではない、この友好を裏づける経済協力が開発面にあっても貿易面にあってもなくてはならないと思うのでございます。この際、インドネシア原油輸入に対してどういうふうに考えておるか、外務大臣並びに通産当局にお伺いいたしたいと存じます。
#26
○政府委員(神谷和男君) 先生御指摘のように、インドネシア原油もローサルファという面のメリットはございますが、重質油であるという性格を持っておりますし、ローサルファというメリットを十分評価して価格が決められたという面で、最近のように硫黄分の多寡よりも、むしろ重質であるか軽質であるかということが原油の価格決定に大きな要素となってまいりましたような情勢下におきましては、一部割り高感を感じる向きもあるというふうに考えられておりますが、しかしながらインドネシア原油につきましては、ローサルファというメリットを十分生かして現在生だきの方に活用をいたしておるわけでございます。したがいまして、中国原油が増大することによってインドネシア原油が減少するということでございますと、先ほど御説明いたしました供給源の多角化、特に中東依存の過重というものを減少させていくという政策目的に必ずも沿いませんので、われわれとしてはインドネシア原油もできるだけ引き取りながら、その上でさらに中国原油も引き取ってまいりたい、こういうふうに考えております。減速経済下のもとで、成長率は確かに低くなってはおりますが、私どもの試算でも、まだ昭和六十年ごろには四億三千二百万トンまで原油をふやしていかなければならないという状況にございますので、その増分の中で中国原油もふやし、インドネシア原油も国際的に競争力のある価格のもとにおいてはできるだけ増大してまいりたい、このように考えております。
#27
○国務大臣(園田直君) 石油の輸入につきましてはいま御発言のとおりでありまして、インドネシアのみならずイラン等も非常に心配をいたしております。御承知のごとく、景気の後退のために需要量が減った、脱硫装置の発達等によっていままでもインドネシアの原油の輸入量は減っておるわけでございます。しかしまた一方、いま通産当局が言いましたとおり、中国の原油についてもいろいろ問題があるわけでありますから、インドネシアその他については、中国との経済交流によって悪影響を与えないよう配慮しつつ相談しながら進めていかなければならぬと考えております。
#28
○稲嶺一郎君 いま大臣を初め通産当局から話をお伺いいたしまして安心したのでございますが、実はこの前、大統領の側近が私のところへ参りまして、非常に気になるからこの問題については特に考えてもらいたいということがございましたので、お尋ねをした次第でございます。
 次に、中国の渤海湾の海底油田の開発についてお伺いいたしたいと存じます。
 伝えられるところによりますと、中国においては渤海湾海底油田を積極的に開発を進める意向で日本の参加を求めているやに伺いますが、すでに日中の責任者が接触を進めているかどうか、またアメリカはすでに中国との間に具体的に話を進めているやにも聞き及んでいるのでありますが、中国の石油開発について、中国、日本、アメリカとの間に具体的な交渉があったかどうか、日本としてまた中国の石油開発に参加する用意があるのかどうか、承りたいと存じます。この際、特にお聞きしておきたいことは、数年前にシベリアのチュメニ油田の開発が大きく報道されたことがあったが、これには日本として見切りをつけたのかどうか、またソ連はこれについてどう考えているかどうか、中国の問題と、それからソビエトのチュメニの問題の両方について御答弁を願いたいと存じます。
#29
○政府委員(神谷和男君) 渤海湾の石油開発につきましては、これも先般通産大臣が中国を訪問いたしました際に、基本的には中国側とこの共同開発を前向きに検討しようと、こういう基本方針を相互に了解し合っておるわけでございます。これに基づきまして十月の九日から石油公団の専門家を主体といたしました石油公団の交渉団が中国を現在訪問いたしておりまして、具体的技術的な話し合いを現在詰めておるところでございます。渤海湾につきましては、話し合いがかなり具体的なものとして進むことが期待されておりますが、このほか珠江近辺、中国の南部等における探鉱開発についても日本の協力が求められておるわけでございまして、この地域につきましては、日本以外の石油会社等にも打診があったという情報をわれわれは得ておりますが、この地域における開発形態がどのようになっていくか、このあたりは渤海湾ほどはまだ決まっておらないというふうに了解いたしております。日本、中国、アメリカ三者合同の共同開発というものが行われる可能性というものは皆無ではございませんが、現在具体的にそのような話し合いは行われておりません。
 それからシベリアのチュメニ開発につきましては、御指摘のように昭和四十七年二月の第五回日ソ経済委員会でソ連側から提案がなされたわけでございまして、日本側におきましてもその後使節団を派遣する等、前向きに積極的に取り組んで検討を行ってまいったわけでございますが、その後ソ連側からの対日石油の供給量の削減であるとか、あるいは必要資金量の増大といったような問題が提起されまして、その後昭和四十九年十月の第六回日ソ経済委員会で本件が取り上げられましたが、双方の意見が一致するに至らず、その後具体的な話し合いが進まないまま今日に至っておる状況でございます。特に見切りをつけたとか、そういうわけではございませんが、意見の不一致を見たまま現状に至っておる、こういう状況でございます。
#30
○稲嶺一郎君 チュメニ油田の問題は、私はソビエトがシベリアを開発する場合においては重点的な問題と存じまするので、必ずやこの問題は将来においても出てくる問題であるということを信ずるものでございます。ただこの際、私考えますのは、ソビエトの場合においてはアメリカと提携しながら開発に参加するという方式をとった方がいいんじゃないかというふうに考えておりますが、その点大臣はどうお考えですか。
#31
○国務大臣(園田直君) シベリアの開発については、具体的ではございませんが、先般国連総会の場合にもグロムイコ外務大臣から話がありました。そこでわが方はできるだけ協力したいと考えておる――君はそう言うが、通産大臣も財界もわが方にひとつも来ないじゃないか、こういう話がありましたから、今後機会をとらえつつ話し合いを進めていけば、通産大臣でも財界人でも行くように努力いたしますと、こう言っておいたわけでありますが、いまの油田については、おっしゃるとおり、わが方としてはできれば日米ソの三者でやった方がいろいろな点について容易であるし無難であると考えております。
#32
○稲嶺一郎君 次に、尖閣列島の問題についてお伺いいたしたいと存じます。
 尖閣列島海域はわが日本のすばらしい好漁場でもありますが、また東シナ海の石油埋蔵地域のほぼ三分の一がこの周辺にあるとされております。また、こうしたことから領有権の問題が出たのでありますが、今回の日中平和友好条約の締結に当たって、中国は再びこの水域を侵犯することはないと表明しているようでございます。これは中国がその領有権の主張を放棄したことにはならないが、たとえ非公式であるにしても実質的にはわが国の支配を認めたものとして、私はそのように評価いたしたいと存じております。
 去る十一日、中国漁業代表肖鵬団長は新聞記者との会見におきまして、中国においても二百海里宣言をする旨の発言をしておりますが、その場合において尖閣列島をめぐる線引きが必ずや問題になってくると考えるのでございますが、当局の御意見はいかがでございますか。
#33
○政府委員(森整治君) 中国が従来から二百海里水域の設定につきまして、国際的にこれを支持する旨の姿勢を示しているわけでございます。ただ自国につきましては、御承知のように二百海里の漁業水域についてはまだ設定をしておらないのでございます。そこで現在、日中の漁業関係としましては、日中漁業協定というのがございまして、ことしの暮れに一応期限が切れますが、その修正につきまして、向こうから修正についての協議を行いたいということで、いまその具体的な設定をどこでどうやるかということをいま両国で協議を行っておる最中でございます。
 いま御質問の問題につきましては、私どもいま直ちに二百海里の漁業水域を設定するという具体的な動きがいまあるというふうにはまだ考えておりませんけれども、もし仮に将来そういう二百海里の漁業水域を設定するということになりました場合には、もちろん政府内部としていろいろ相談をいたしますし、もちろんまた中国側とも十分な話し合いを行いまして、わが国の漁業が円滑に操業できる、また継続して操業できるようにできる限りの努力をしたいというふうに思っておるわけでございます。
#34
○政府委員(中江要介君) 外務省といたしましては、累次申し上げておりますように、尖閣諸島は紛れもない日本の固有の領土でございますので、将来漁業水域の問題などが起きましても、これは日本の固有の領土であるという立場から、その線引きなりその操業のあり方というようなものを検討してまいるというふうに対処してまいることになると思います。
#35
○稲嶺一郎君 ここで、今後この領有権の問題がまた出てくると思いますが、この点についてはしっかりと腹を決めてこの問題に対処するようにひとつ希望をいたす次第でございます。
 次に、この尖閣列島周辺の石油開発の問題についてお伺いいたしたいと存じます。
 尖閣列島周辺の石油開発につきましては、沖繩の日本復帰以前に、琉球政府時代においてすでに石油試掘権許可申請がなされたことは御承知のことと存じますが、通産省は今日までこれをどう取り扱ってこられたか承りたいと存じます。なお、ESCAPの調査報告によりますと、きわめて豊富な埋蔵量があるとされておりますが、日本はもちろん、アジアのエネルギー開発問題の解決にも寄与するところが大であると確信いたしておりますので、速やかに試掘権を認可され開発を進めるような具体的な措置を講じてもらいたいと考えておる次第でございます。この点についてしっかりした当局の答弁を願います。
#36
○政府委員(神谷和男君) 尖閣列島の周辺海域におきましては、広範な範囲にわたりまして膨大な件数の鉱業出願がなされております。この処理についてでございますけれども、これは他の周辺水域につきましても全く同様でございますが、具体的な試掘計画というものを持つに至った者が出願処理に係る促進願というものを提出いたしまして、漁業関係者等との調整を終えた段階で必要な範囲に限って試掘権の許可を与える、これが通例の取り扱いでございます。尖閣列島周辺の出願につきまして、現段階においてこの促進願の提出が出ておりませんので、他の周辺海域と同様出願を受理したという状態の取り扱いになっておるわけでございます。
#37
○政府委員(中江要介君) 外務省の立場からいたしますと、この尖閣諸島は、先ほど申し上げましたように日本の固有の領土でございますが、他方いまの国際法秩序のもとにおきましては、領海の幅員を越えて延びております大陸だなの中の石油資源の開発ということになりますと、海洋法の秩序というものがございます。この尖閣諸島は、御案内のように中国大陸から延びております大陸だなの上に乗っておる島でありますので、この周辺の海域、特に領海の幅員を越えて沖に向かって大陸だなを開発するということになりますと、境界画定という作業が必要になります。したがいまして、鉱区を設定するに当たりましては、中国との間に境界線画定の話し合いをして、はっきりした境界線の上に立って日本側に属する部分を日本が開発する、こういうことになるのが通常の開発の仕方であろうかと、こういうふうに思っております。
#38
○稲嶺一郎君 私どもは、日韓大陸だなの開発というものを共同でやることになっておりまして、私は日本のエネルギー政策から考えまして、これは非常いいに結果を招来するんじゃないかと思っております。尖閣列島の問題につきましてもその方式を採用すれば、私は可能になるというふうに考えております。
 これは先ほどの通産省の御答弁には、私がお尋ねをしました試掘権の認可の問題には触れていないのでございますが、この点について通産省のお答えをお聞きいたしたいと存じます。
 なお、日韓大陸だなとの関連においてもひとつ御答弁を外務省の方と通産省からお願いいたしたいと存じます。
#39
○政府委員(神谷和男君) 出願は大陸だなの境界画定で、ただいま御説明のございましたような、問題になります中間線のところあたりまでほぼ出願が出ております。具体的な促進願が出てまいりました場合にはそれについて私どもとして処理をするわけでございますが、外務省からただいま御答弁のございましたように外交問題の関連する分野もございますので、十分検討した上で処理してまいりたいと考えております。
#40
○政府委員(中江要介君) 日韓大陸だなの南部共同開発に関する協定の御審議の際に、私どもが御説明いたしましたところは、あの地域をなぜ共同開発にするかと申しますと、この部分について日本と韓国の大陸だなに対する主権的権利を行使し得るというその主張が重なったということが前提になっておりたわけでございます。なぜそれが重なったかということはもう繰り返しませんが、あの海底に眠る大陸だなの姿が国際法的に見まして、いま非常にむずかしい、法秩序が形成される途中にあるためにはっきりした基準が示し得なかったということがあるわけです。ところが、尖閣諸島周辺につきましては、先ほど申し上げましたように、中国大陸との間には日韓の場合に問題になったような大陸だなの存在そのものについて主権的権利の主張の相違が起きようはずはないような姿になっております。したがいまして、境界画定についてはそれほどの困難はないかと思いますが、他方、尖閣諸島から太平洋の方に向かいますと、またここで大陸だなの限界をどこにするかという問題はおのずから出てくるわけでございますので、その辺のところは日本と中国とがこの大陸だなの地形に即してどういう境界線が妥当であるかということの話し合いがまず先行いたしまして、いきなり共同開発というようなことにはならないのではないかと、これは推測でございますが、日韓の場合とは大陸だなの存在の仕方が、海底の地形の姿が相当違うということは念頭に置いておく必要があろうかと、こういうふうに思っております。
#41
○稲嶺一郎君 私は日中条約が批准された後においては、いまの尖閣列島周辺の様相は異なってくるんじゃないか、新しい段階に入るというふうに理解をしているのでございますが、石油資源のない日本としては、こういう自分の領土内にあるものを開発しないということに対して私どもとしては割り切れないものがございます。どうかこの点については、政府においてもしっかりした、領有権がわれわれの方にあるということはわかっているので、ぜひ開発を進めるような方向において問題を取り上げていただきたいというように考える次第でございます。
 次に、一般的な経済協力についてお伺いいたします。
 中国では思ったよりも早くかつ具体的に四つの近代化を進めている模様で、中国としてはかつての大躍進の経済の低落、文革後期の経済混乱による生産低下を取り戻して、一段と高くその経済の発展を求めることは当然であり、また、われわれとしてもそれを望むものではあります。ただ、われわれからすると、中国がその経済の回復と成長を急ぐ気持ちはわかるのでありますが、その開発の規模が大き過ぎかつそのテンポが速過ぎるのではないか。もちろん工業生産についていえば年間一〇%以上ということで、かつてのように高いものではありません。例の一九五八年の大躍進のときには、中国では工業生産六〇%、これを訂正した外国の推計でも四五%の成長としておりますが、このたびはこれほどではない。しかし国そのものが大き過ぎるために国策がすみずみまで行き渡ることは困難であります。また、四人組打倒後の時の勢いということもあって、いわば開発なだれ現象ということもあります。どうもいまの中国はそうではないかと考えるのでございます。かねや太鼓で開発と増産に猛進するとなると、その過熱の反動が必ず出てくるのでございます。
 しかし、いずれにしても李先念副総理の説明によると、一九七八年から八五年の八年間に一兆元の投資がなされるとのことでございまして、いまの日本円のレートで換算するとほぼ百兆円となり、その開発の規模はきわめて大なるものでありますが、反面外貨保有は限られております。内外債のないことを誇りとしていたのでございますが、民間ベースでの外債借り入れを伝えたり、ホテル開発のための外貨を歓迎したり、香港の中国企業が不動産経営に走ったり、華僑資本の導入を奨励したり、日本やフランスの一流デザイナーを招聘して輸出国のデザインを考えたりするのは、いずれも外貨獲得のためのものであると存じます。これは中国では外貨が不足しているからであって、それだけに中国の輸入はもっぱら延べ払いになることになります。中国では昔からこの延べ払いは債務とは考えていないのでございます。一層今後は積極的にこの延べ払いがふえていくのではないかと思うのでございます。言うまでもなく、これら延べ払いは代金は分割払いで償還されるものでございますが、主として政府からの輸銀融資によって賄われるものであって、政府の負担となることには変わりはありません。歳入のほぼ三分の一が公債で賄われている国家財政から、政府の一般の経済協力が中国への協力増大によって制約され、アジアその他諸国への経済協力が低下するのではないか、ASEANの諸国の代表者が私に心配をしてきております。わが国の全方位外交上の立場からいたしまして、今後これらの諸国に対する経済協力が、中国との経済協力によって影響を受けて、ASEAN諸国その他に対するところの経済協力の額が減るようなことがあると、私はせっかく日中平和友好条約ができた後において、そういう面に悪い影響を与えるのじゃないかということを深く心配するものでございます。この点について、外務大臣のお答えをお伺いします。
#42
○政府委員(武藤利昭君) ASEANを初めといたしますアジアその他開発途上国に対する経済協力の重要性、これはまことに大事であるということはただいま御指摘のとおりでございまして、政府といたしましてもその経済協力の重要性を十分認識した上で、開発途上国に対する経済協力の拡充に積極的に努めているところでございます。
 片や日中間の経済協力も日中平和友好条約の精神に基づき、両国間の友好関係を促進させる上で意義のあることでございますので、可能な限り積極的にこれを進めていきたいと考えている次第でございます。と申しましても、日中間で経済協力を進める結果、先ほど申し上げましたようなアジアその他開発途上国全般に対するわが国の経済協力の推進がおろそかになるというようなことはあってはならないことでございまして、この点は十分に留意しながら今後措置してまいりたいと考えております。
#43
○国務大臣(園田直君) 中国の経済状態は、いま稲嶺議員が言われたとおりでございまして、外貨は非常に不足をしているわけであります。したがいまして、中国はまず借款とそれから技術協力による国内開発が重点になってくるわけでございますが、借款等については、日本の中央銀行等を主にしているようでございますが、日本ばかりでなく、西欧の諸国にもいろいろ話はしておるようでございます。いろいろ問題点は挙げられておりますが、まだ具体的に話は詰まっておりませんので、いまの御注意を十分配慮しながら今後やっていきたいと考えます。
#44
○稲嶺一郎君 次に、日台関係についてお伺いいたしたいと存じます。
 日中平和友好条約の締結は台湾にも大きな影響を与えまして、台湾の対日感情にも相当の変化をもたらしております。一時は台湾では「日本人帰れ」が叫ばれ、また尖閣列島問題についての北京の取り扱い方に対し、これを売国奴として厳しく批判する等、きわめて複雑な反応が見えたのでございますが、その後どういう状態になっておるか。また日中平和友好条約が締結されれば、台湾とソ連とが結びつく懸念もあるのではないかというふうなこともございましたが、この点どうなっておるかお尋ねいたします。
#45
○政府委員(中江要介君) 日中平和友好条約と台湾との関係につきましては、御承知のように、この条約は一九七二年の共同声明の第八項で約束した締結交渉が結実したものでありますし、また、この条約の前文において、日中共同声明の精神を尊重してこれを遵守していくということになっておりますわけでありますので、台湾との関係は一九七二年の共同声明のラインのとおりということで、この条約の締結によって何らかの変化がもたらされるというものではないわけでございます。しかし、他方、いま先生の御指摘のように、台湾の方ではいろいろの反応が出ておることは私どもも承知しておりますけれども、日台関係はあの国交正常化のときに、従来の公の政府間の関係は維持継続はできないけれども、民間の事実上の実務関係は維持継続するということについて中国側の理解が得られているという前提のもとでいままで円滑に維持されてきております。この日本政府の考え方、つまり公の政府間のものとしてではなくて、民間の非公式の実務的な関係としては引き続きいままでどおり維持継続していくという方針には変わりがない、こういうことでございます。
#46
○稲嶺一郎君 日本と台湾との関係は、先ほど中江局長が言われたように一九七二年後、私いろいろ考えますと、いろいろな摩擦があったような感じがいたすのでございますが、しかし両者の協力によって民間の領事館的な機関が設立されて両方の交流が続けられ、あるいはまた民間輸送機の相互乗り入れもある、また日本の投資というものがその後ますますふえてきた。こういうことで、私どもとしては今日までうまくいっているなあという感じを持っているのでございます。また、その後台湾では十大プロジェクトを中心とする経済の開発進展計画があって経済は上昇しております。政治も蒋経国大統領就任で安定しておりまして、台湾はGNP世界第二十位となりまして、もう先進国の仲間入りをするようなところまで来ておるのでございます。私はいまの台湾はアジアにおける自由陣営の模範生ではないかというふうに考えております。私はこの躍動を秘めた台湾の安定した姿に対して限りない敬意を表するものでございます。わが日本といたしましても、台湾が平和であり、今日のような安定した姿が永続するようあらゆる配慮を払うことが日本の良心であると信じて疑わないのでございますが、大臣の御意見はいかがでございますか。
#47
○国務大臣(園田直君) 今度の会談、交渉において台湾の問題は両方からとも全然議論は出なかったわけでありますが、日中共同声明がこれに関係なしに結ばれたように、今度の問題もこれに関係なしに結ばれたものでありますから、日本と台湾との関係に変化があってはならぬと考えております。
#48
○稲嶺一郎君 時間がないようでございますので、最後にソ連に関する問題についてお尋ねいたしたいと存じます。
 アジア・太平洋の安全にとって最も大きなウエートを持つものはソ連であると存じますが、それだけこの地域の安全のためにはソ連との協力が必要であります。もちろんそれについては日米安保を基礎としなくてはなりませんが、しかし、この地域への侵略を防ぐと同時に、他方、安全をつくり出さなくてはなりません。いまのところ中国はソ連の覇権主義に反対し、ソ連は中国の大国主義に反対しているのでございます。覇権反対を含めて日中平和友好条約が生まれ、将来、大国主義反対を含めてソ連との善隣友好条約が生まれるとすると、日本の存在はコウモリのようなものとなり、その存在の意義はないし、またそれではアジア・太平洋安全もなく、ただアメリカの武力だけがその安全を保つこととなり、有事の際には究極するところアメリカの都合を伺ってからその行動をとらなくてはならないことにもなりかねないのでございます。このようなことのないよう、わが国としては工夫をこらさなければなりません。日本はアジア・太平洋の平和を希求し、これを維持発展させることを念願といたしております。その点についてソ連もアメリカも中国もアジア諸国も私は日本の考え方と変わりないと存ずるのでございます。
 日本は中間地帯でございまして、その持っておる意思のいかにかかわらず、必ず他国との関連が生まれてくるのでございます。いまわが日本においては、いかにすればアジア・太平洋の恒久平和が維持できるかということで、中間地帯であるがゆえに、ほかの国よりもなお真剣にこれを受け取って考えているのでございますが、私は、この問題については、日本一国がこの点について悩むだけじゃなく、関連諸国が参加する中で、いずれの国あるいは集団の覇権主義にも反対し、また大国主義にも反対する条約を結ぶことは可能であるのではないか。具体的に言いますと、アジア・太平洋安全会議のような組織がこの目的のためには役立つのではないかというふうにも考えるのでございますが、外務大臣の御所見を拝聴したいと存じます。
#49
○国務大臣(園田直君) 友好条約締結後の日本の重要な外交課題の一つは、重要な隣国であるソ連との友好関係を推進していく、こういうことがきわめて緊要であることは御発言のとおりだと考えております。先般、ニューヨークでグロムイコ大臣と会いましていろいろ率直に意見の交換をいたしましたが、日ソ両国は機会を求め、数を重ねてこの友好関係を推進していくということには意見は一致したわけでございますから、北方四島の問題以外はソ連と日本の間には相反する利害はないわけでありまして、共通する利害が多いわけであります。そういう問題等々とらえ、話し合いの機会を重ね、逐次相互理解を深めていきたいと考えております。
 なお、アジア安全保障会議ということは、きわめてこれは大事なことであって、貴重な意見として拝見をいたしますが、ASEANの状況その他の状況は、日本がこれを言い出したり、日本がイニシアチブをとると誤解を受けるおそれがまだ多分にある状態でございまするので、十分腹に置きながら検討していきたいと存じます。
#50
○稲嶺一郎君 次に、北方領土の問題についてお伺いいたします。
 御承知のように、沖繩は何ら武力によるところなくして祖国に返ってきたのでございまして、北方領土もこうした形で返ることを切望するものでございます。しかし、ソ連は現在この問題については、すでに解決したとして断固拒否をいたしております。まことに遺憾にたえません。元来、ソ連の外交を見ますと、イエスとノーとしかなく、それを決定するものは力の原理でございます。常に力をもって問題の解決を図るのがソ連の外交のあり方であります。これは恐らくソ連の社会主義こそが絶対の真理であるとしているところから来るのでありましょうが、しかし、この多様化社会にあっては必ずしも真理は一つではないことを知り、わが国はわが国としての対応を考え、回りくどいようではあるが、アジア・太平洋の平和と安全を原則として対応し、その中から問題解決の糸口を見つけていかなくてはならないのではないか、イエスかノーだけでは戦争をするかしないかでございまして、どうしても問題が解決しないのでございます。
 だから、中国が尖閣列島でとった態度、日本がこれに応じた態度から一つの示唆を見つけていくことができないものかどうか。言いかえますと、北方領土は日本の領土であることを原則として、さしあたってはこの問題を全体の中の一つの問題として、アジア・太平洋の安全平和の問題あるいは共同解決の問題の中で、時間をかけて解決の道を開いていく方法はないものかどうか。いまや北方領土がわが国の領土たることを広い視野から探求し、かついずれかの解決を図る時期に来ているのではなかろうか。日中平和友好条約の締結以来、日ソの関係は何となくぎくしゃくしておりますが、何とか打開の道を開くべく双方が努力をすべきではなかろうか。私は真剣にこの問題を考えておりまして、何らかの解決の方法を日本もソビエトも一緒になって考えるべきではないかというふうに考えているのでございますが、外務大臣いかがでございますか。
#51
○国務大臣(園田直君) まずソ連の新聞あるいは発言等から見ましても、今度の友好条約が米中日の包囲網であるということに非常に疑心を抱いているわけであります。先般会いましたときには、条約文からこの説明をいたしまして、いかに日本がこういうことに苦労したかということの理解を求めました。また、正月に参りましたときにも、中ソの対立が緩和に向かうようにわれわれは願っているのだ、こういうことを言いました。ソ連は現在、今後の日本の行動を見ながら逐次進めていこうというのが本心のような気がいたします。したがいまして、いまおっしゃいましたとおり、未解決の問題を解決をして平和条約、それから続いて友好という順番でありますけれども、日本はその基本方針は守りながら、真にアジアの平和と繁栄をいま願っておるということを理解してもらい、あるいは実行しつつ、一本やりではなくて各所からいろいろ詰めていって漸次理解を求める方法をとっていきたい、研究をいたします。
#52
○稲嶺一郎君 時間がございませんので、漁業問題に触れようと思っておりましたが、最後に私は日中条約の問題を含めて、非常にこの条約の関係するところが深くて、かつ多岐にわたっている。この点から考えまして、これがうまくいくかどうかということはきめ細かく各国の情勢を判断しながらこれに対応していくということが私はきわめて重大じゃないかと思っております。どうかその点において、外務大臣におかれては常に全方位をにらみながら、この日中平和友好条約の精神が十分に生かされるように今後とも大いに努力をしてもらいたいと期待をする次第でございます。
 これでもって、時間が来ましたので私の質問は終わることにいたします。
#53
○小野明君 今回の日中平和友好条約締結につきまして、わが社会党といたしましても、御案内のように多年にわたりまして外交の最重点課題として努力をいたしてまいりました。それが今回園田外務大臣を初めといたします政府の御努力によりまして実を結んだわけでありますが、この御努力に対しまして、まず敬意を表したいと思うのであります。
 そこでまず、日中平和友好条約締結の意義という問題について若干質問を申し上げたいと思うのでありますが、外務大臣は今回の条約締結につきましては、日中共同声明の単なる延長線上の帰結と、このように説明があっておるようでありますけれども、私はさらに、わが国外交の新しい一つの選択と、このように見るべき観点があるのではないか、こう考えるわけであります。いわばこの条約には二面的な解釈がなされる、こう見るべきだと思いますが、外務大臣いかがでありましょう。
#54
○国務大臣(園田直君) 今度できました友好条約は日中共同声明第八項の規定に基づいて締結したものでありまして、今度の両国間の関係を律する諸原則として日中条約において遵守を約した原則は共同声明に示されているものと同じであります。かかる点からすれば、日中平和友好条約は日中共同声明の延長上にあるものであるということができまするけれども、しかし、これがなぜ歴史的な条約であるか、いわゆる一般的なことから言いますれば、これは日中の友好に基づいてアジアの平和を確保し、ひいては世界の平和に貢献するという新しい角度から出てきたものであると考えております。
#55
○小野明君 御説明がありましたように私も思います。
 そこで、日中共同声明によって日中関係が正常化をされたわけでありますが、そのことは今回の条約の第一条におきまして、平和五原則に基づいて互いに日中は争わない、日中再び戦わずということが最終的に確認をされております。そればかりではありません。多面にわたりまして、すでに御説明があっておりますが、日中両国間の不正常な関係が清算をされて真の意味での国交回復が達成をされたと思うのであります。さらに、第二条前段におきまして、両国がアジア・太平洋その他いかなる地域におきましても互いに覇権を求めないということを約束をした点につきまして、国交を回復した両国がともにアジアの安定と平和に寄与するという点につきましては非常に意義が深いと思うわけであります。ただ、私が申し上げたいのは、後段でありますが、日中共同声明の単なる延長ということだけではなくて、外交上の選択としてこの日中条約の締結を見た場合に、問題なしとしないわけであります。
 その第一は覇権に関する事項であります。政府は、第四条を置くことによりまして中ソ対立に巻き込まれまいとする立場、わが国の自主的な立場は十分確保されたといたしております。そのことは私も評価をいたします。しかしながら、外務大臣が八月十八日、調印の直後帰国されての本委員会におきまして、中国が反覇権条項第二条について、これをどう利用するかは関知しない、こう述べておられるわけであります。中国がこの条項に基づいてソ連の覇権主義に対抗する可能性までは排除しないことを外務大臣みずから暗に認められたわけであります。この点についてどういう御見解をお持ちでありますか。
#56
○政府委員(中江要介君) ただいまの御質問の点を条約に即して私から御説明いたしますと、中国が第三国たるソ連との間でどういう立場をとるかということについては、第四条でやはりその自由といいますか、影響をされないということが確保されておるわけでございます。で、第二条の覇権を求めず、また覇権を求める試みには反対するというこの大原則については日中間に完全な意見の一致はございます。それに基づいて第三国との関係でどういう立場をとるかということになりますと、第四条にありますように、日本は日本としての立場から第三国との関係を律してまいりますし、中国は中国の立場から第三国との関係を律してまいるということでございますので、外務大臣が帰国直後の委員会において申されましたのはそのことを意味しておられる、条文に即しますとそういうことになろうかと思います。
#57
○国務大臣(園田直君) 私が十八日に申し上げたのは言葉が足らなかったかもわかりませんが、第四条においてお互いに自国の外交の基本的なものは拘束しないということを主張する意味で言ったわけでありまして、条文の解釈上に過ぎたかもわかりませんが、日本の外交方針としては、中ソの対立を激化しないように、緩和するように努力をすることが日本の使命でございますから、日本は中国のソ連に対する感情なり外交方針に干渉するわけにはまいりませんが、言葉は悪いがブレーキ役としてこれが対立が激化しないようにしなければならぬことは当然であると考えております。
#58
○小野明君 おっしゃる気持ちは私もわかるのであります。しかしながら、公式の委員会でそういった関知しないという御説明があった、そこに御趣旨であります中ソ対立を激化しないというお言葉とはうらはらに、反対効果が出ていると私は思うんです。そのためだけではありませんけれども、ソ連がこの条約は反ソであると、こうきめつけております。たとえ、いま局長や大臣が言われましたが、わが国に関する限りソ連を覇権国扱いするものではない、これは条約上保証されておるんだと、こう説明をいたしましても、中国に対してそのような可能性を認めた条約をわが国が結んだ、このことに対しましてソ連が非難をする気持ちになったとしても、これは大臣、全く的外れである、こうは断言できない点があるのではないでしょうか、いかがでしょう。
#59
○国務大臣(園田直君) いまの御指摘の点は十分反省をいたします。
 ただし、会談の冒頭において、私がまず中国に合意を得たことは、この友好条約の覇権というものが特定の第三国を意味するものであれば、それは国際情勢の変化によって再び名存実亡の時代が来るだろう、われわれは特定の第三国を意識することなしに、中国と日本というものを中心にしてまずお互いの覇権行為をやらぬということからやりましょうと、特定の第三国のことを念頭において条約を結ぶことは適当でありませんということをはっきり申し上げて、向こうもそれ以来会談においては特定の第三国の話は全然出さないでございました。
#60
○小野明君 問題は、大臣もすでに言われておるわけでありますが、ソ連も言っておりますように、要は今後のわが国の行動の実績にある、こう言っておるわけであります。この行動の点については後ほどまたお尋ねをいたします。
 さらにソ連が、この日中平和友好条約がソ連に向けられていることを警戒するばかりではなくして、日中条約の締結を契機といたしまして、日中米三国協商あるいは事実上の同盟と表現をしてもよろしいかと思うんでありますが、その悪夢が今後ソ連をさいなむことに相なるのではなかろうかと思うんであります。この点の大臣の御見解を伺いたいと思います。
#61
○国務大臣(園田直君) いまの御指摘の点が一番大事なところであると存じますが、そもそも私が一番最初に中ソ問題を話し、遠からず友好条約を締結しますよと外国に通告したのはソ連が第一でございます。その次にアメリカで、日米首脳者会談のときにそういう意向を言ったわけであります。アメリカはこれに対して成功を祈るという外交的な辞令があったわけでありますが、しばしば世界の国際情勢、軍事情勢の認識を率直に私は意見を交換してございますが、米国の方でも軍備そのものはなかなか遅々として縮小は進みませんけれども、やはり米ソの間に火を吹かないように均衡による平和を考えていることは事実であります。またソ連の方でも、ソ連の指導者、特にブレジネフ書記長は均衡による平和ということを考えておられることは、これまた非常な事実でございまして、アメリカはむしろアジアにおいて紛争が火を吹くことを好んでいない、こういうことは私は明確に断言できると存じます。したがいまして、米国、日本、中国、この三者がソ連に対して包囲網をつくるということはこれは断じてございませんが、この点は大事でございますから、この点については今後も機会を繰り返し、あるいは実行によってソ連に理解を求めるべく努力をしなければならないと考えております。
#62
○小野明君 御努力のお気持ちはよくわかりますが、そうあってほしいと思うのであります。
 しかしながら、もう大臣は先刻御承知のように、わが国をめぐります周囲の情勢はそれほど単純ではございません。七二年、上海コミュニケで反覇権を米中両国がうたっておりました。米中両国というのは国交正常化に向けて着々足固めをいたしているところであろうと思います。私はそう見ております。しかも、この五月に訪中したブレジンスキー大統領補佐官は、強い中国は米国の利益である、そうして米中の共同利益を大合唱してまいっておることは御承知のとおりであります。さらに一方、中国におきましても、わが国にとって日米関係が最優先することを認めておる、日米安保体制の評価をいたしてまいっておるところであります。これらを踏まえて、今回の日中平和友好条約締結の意義というものを考えてまいりますと、ソ連のみならず、わが国あるいは欧米の識者によって日中米三国協商の成立という評価を与えられても根拠なしと、こういうふうに退けるわけにはいかない事実が積み重ねられてきておる、こう残念ながら言わなければならないのではないかと私は思う。したがいまして、日本外交としてはこれらの見方を覆す具体策を持たなければならぬと思うんです。この具体策についてひとつ大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。
#63
○国務大臣(園田直君) ブレジンスキーが中国に行かれて話をされ、帰って話をされたこと、直接話も承りました。その後バンス国務長官と私会いまして、中ソが対立をしておると、一見中ソの対立によって、ソ連の軍事勢力の一部がアジアで牽制されるから有利なようではあるけれども、この中ソの対立を外交に利用することはきわめて危険であって冒険である、したがって、あえてわが日本はとらない、中ソ対立の緩和に微力ながらも努力をするということには米国も合意をされたわけであります。しかし取り巻く環境というものは、いま御発言のとおりなかなかソ連の誤解を解くことは厳しいかも存じませんけれども、折あるごとに話し合いの機会を求めあるいは会談を求めて、これについての理解を求める。そしてまた、今後日本と中国、日本と米国、この具体的な問題等でそういう誤解を逐次解いていくように努力をしたいと考えております。
#64
○小野明君 非常にこれはむずかしいことであろうかと思いますが、米国内におきましてもいわゆるデタント派と米中派と二通りの動きがあるということは御案内のとおりでありまして、それらの複雑な関係をひとつ十分見落とさないように、わが国の独自の外交政策を打ち立てていただきたいと思うのであります。
 次に、わが国の平和外交の戦略についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。
 福田総理は、もう御案内のように全方位外交というものを打ち出されております。この言葉はすでにお話があったかと思いますが、ドゴールがアメリカに対して欧州の結束を打ち出す、それを戦略に盛った言葉が全方位外交であります。これらを見ましたときに、いささか福田さんの全方位外交というのは内容がなさ過ぎるんではないかと私は思う。説得力がないんではないか、こう思います。わが国において平和外交の戦略というものが一体あるのかないのか、それは大臣としてはどういう構想をお持ちであるのか、その点をお尋ねいたしたいと思います。
#65
○国務大臣(園田直君) 平和戦略の土台というか出発点というか、基礎というものはまずみずからにあると存じます。したがって第一は、日本の国内での体制が平和に徹し、そして日本の持っている力で世界に貢献をする。そうして世界の国々から日本はなくてはならない国だ、ソ連からも日本は役に立つ国だと、こういうことを外に向かって示すことが大事であります。したがいまして、私はこれは職務の違いもありますけれども、防衛庁長官は国土を守ることが責任であり、外務大臣は有事というものがないように精魂を尽くすことが私の責任であると思います。したがいまして、いま有事体制、有事立法が論じられておりますが、まず外務大臣の職務から言えば、それはあくまで憲法の枠内であり、隣国及び他国に再び日本が何かやるのではないかという不安を与えないような範囲内でやっていただきたいという希望を述べておるわけであります。なお、その平和に徹するということは、いかなる事情にしろ、いかなる体制にあろうと、世界どこの地域においても紛争が火を吹くことがないように努力をすることが第一の日本の責任であると考えます。
 第二に、それに対する繁栄に貢献をすること、このように考えておりまして、日本の安全保障、これは外務省の持ち分も非常に大きいわけでありますが、安保体制そのものが均衡による平和というか、抑止力による平和というか、戦争を起こさないための一つの体制である、こういうことに徹して、今後両国が協議をしていくことが必要である、このように考えております。
#66
○小野明君 この三月に外務大臣が口を滑らしたと言っては語弊があるかもしれませんが、日中平和友好条約をアメリカが米国の戦略の一環として評価していることは紛れもない事実であります。これは大臣が三月にお話しになっている。ただ、これは今回の日中平和友好条約が米国の戦略に乗せられて締結したということを私は言おうとしておるのではありません。また、わが国がこの日中平和友好条約は独自の立場で結んでおるということを否定しようとするものでもございません。ただ、アメリカがみずからの立場で戦略上の観点から日中条約を評価することはこれはアメリカの自由でしょう。アメリカにはアメリカの外交戦略がある。その観点から評価を下すということは不思議なことではございません。他方また、中国には中国の戦略上日中条約の位置づけがあることもこれは確かなことであります。そこで、この二国を踏まえて見た場合におきましても、わが国には一体外交戦略というものがあるのであろうか。もちろんこれは軍事戦略という意味ではありませんよ、平和外交の戦略というものであります。この戦略から見た場合に、日中平和友好条約はどういう位置づけをされるのであろうかということを私は考えるわけであります。この日中条約は日中間の平和友好関係の維持発展の基礎固め以外の何物でもない、アジアの平和と安定に寄与する目的以外の何物でもないという説明だけでは、ただいま国内体制の問題のお話もございましたけれども、日中米三国協商の成立という批判をかわすには不十分ではないのか。いずれの国とも仲よくする全方位外交、その間に濃淡はあるという程度では戦略とは言えないのではないか。私は、サンフランシスコ講和条約は、御案内のように片面条約でございました。今回の日中条約によって、これは全面講和への転換を始めている第一歩である、こう私自身は見ておるわけであります。こういった点をあわせ考えましたときに、外務大臣の平和外交の戦略というものについて、さらにもう一度御所見を伺いたいわけであります。
#67
○国務大臣(園田直君) 友好条約締結後の日本の第一の仕事は、先ほどから御指摘を受けておりまする日本とソ連との関係の友好関係を進めていって、そしていまなお残っておるソ連と日本の間に正常な条約が締結されること、次には朝鮮半島の安定、この二つが当面日本が重点を置かなきゃならぬ問題であると考えております。
#68
○小野明君 朝鮮半島の問題は後ほど私も触れたいし、わが党の田中寿美子委員がまた触れると思いますが、問題の第一はやっぱり対ソ外交であろうかと思います。今後の対ソ外交をどう具体的に展開をするのか、これが第一の課題ではないか、こう考えております。ソ連が、先ほども申し上げましたように、反ソ条約であるかどうかは今後の日本の行動を見、その実績によって判断すると、こう言っておりますね。この今後の行動という言葉が日本側の考えるような、先ほど大臣からお話がありましたようななまやさしいものではないことは御承知のとおりではないかと思うのであります。この日本側の今後の行動、この実績を見ると言っておりますが、その対ソ外交の具体的展開、この第一着手は一体何であるとお考えになりますか。
#69
○国務大臣(園田直君) ソ連の側から希望することは、第一は善隣友好条約の問題であり、第二はシベリアを中心とする経済協力の問題であります。
#70
○小野明君 私もそうだと思います。ただ、従来の政府の御説明でありますと、領土問題の解決を含む平和条約の締結、これが先であって、平和条約を放置して善隣協力条約を結べば北方領土はますます遠のくという判断を示されております。この点についてはいかがでしょうか。
#71
○国務大臣(園田直君) 私がグロムイコ外務大臣に申し上げたことは、日ソの関係をどんどん進めていきたい、話し合いを進めていきたい、しかし、日本は未解決の問題を解決して平和条約を締結して、その後友好条約だと考えておる。ただし、いま出されておる友好条約の内容にはそのまま賛成いたすわけにはまいりません、友好条約については全然拒否という腹ではございませんと、この程度まで話してございます。
#72
○小野明君 そういたしますと、先ほど私が申し上げた領土問題の解決を含む平和条約の締結よりも、その前にソ連側が提示した善隣協力条約ですか、これはもう友好条約でも私はいいと思うんでありますが、これを先に検討することもあり得る、こう見てよろしゅうございますか。
#73
○国務大臣(園田直君) 私はあくまで、いままで言っておったとおりに、未解決の問題を含む平和条約の締結が先であって、その後友好条約である、このように申してございます。
#74
○小野明君 もう一度お尋ねいたしますが、善隣協力条約をこれは拒否するんではない。しかし、これはまあ事実上どれが先でどれが後と、こういう関係になりますが、そういういまの大臣の御主張を貫けば領土問題の解決が近づくという見通しはございますか。
#75
○国務大臣(園田直君) いまの善隣友好条約の内容は反対であると言いましたが、いろいろ問題はありますけれども、第一は、それには北方四島問題が全然入っておらぬわけであります。これが入れば先でもいいのかなどというもろもろの問題は今後出てくる問題でありますから、外務大臣としての答弁は、いまのような方針でやるということでとどめさしていただきたいと存じます。
#76
○小野明君 お話でありますから先に進みますが、領土問題の解決がわが国にとっては当面最大の課題で、先ほど稲嶺委員も御指摘になったとおりでありますね。この領土問題の解決というのは、これは本当に友好関係の確立した中で、友好的な雰囲気の中でもたらされるものでしかないと、私はこう思います。そういった立場からいきますならば、ソ連側がまず善隣協力条約の締結を求めてきておる、こういうことでありますならば、これを受けて立つという発想の転換はできないものかどうか。もちろん私は、ソ連の条約案をそのままのめと、こういうことを言っておるんではないのです。この点はお話がすでにありましたが、ソ連側も十分協議すると言っておりますね。同時にこの善隣協力条約においても最重要なのは、言うまでもなく領土問題の未解決という確認でありますね。これはどうしてもやらなければいかぬ。しかも、もうすでにソ連側だけは発表しておりますが、あの条約案の前文には平和条約締結交渉を続ける意図を確認しという言葉が挿入されておりますね。これは大臣も御案内のとおり。わが方としては、大臣もおっしゃっておりますように、領土問題の解決なくしては平和条約はあり得ないという立場でありまするから、前文にあるこういった条項を足がかりにしてこの条約の検討をしてはどうか、こう思うんです。ただ留意しなければなりませんのは、有事の際の協議とか日ソ安保体制の樹立、こういうつながるような条項はもちろん排除しなければなりません。日中条約と同じようにパワーゲームに巻き込まれないような歯どめは必要でしょう。善隣協力という名前がなじまないならば友好条約でもいいではないか。これが私は全方位外交でなければなりませんし、平和外交戦略の一環をなすものと、こう見て差し支えないのではないか、こう思います。いかがでしょうか。
#77
○国務大臣(園田直君) いま出されておる善隣友好条約の中には平和条約という言葉はありますけれども、ソ連はいまのところは平和条約の論題になるべきものはすでに解決しておる、こういう態度でありますから、それをわれわれ了承するわけにはまいりません。ただ、いまおっしゃったとおりに、不法占拠だ、けしからぬ、返せ返せと刺激しながら強く言うことだけによっては解決をしない。やはりおっしゃるとおりに本当の理解ができ、本当の友好関係ができ、両国がお互いの立場を了解するという方法をとらなければならぬということは私も考えておるところでありますけれども、いまちょうどのときにそれ以上のことは外務大臣としては答弁するわけにはまいりませんので、お許しを願いたいと存じます。
#78
○小野明君 私が申し上げたいのは、前文に平和条約締結交渉を続ける意図を確認しという一文が入っております。ですから前後の関係はあるにいたしましても、これを逆にする発想の転換はいかがなものか、こう提案をいたしておるわけであります。
 これはこれとしておきまして、次に、ソ連が善隣協力条約案を一方的にぽんと発表をいたしました。これに対応して大臣がわが国の平和条約案をぽんと出された、こういうふうにお聞きをいたしておるわけであります。もともと外交文書は公表をしないということが慣例であると聞いておりますが、ソ連側が先にぽんと出したわけですね。ですから大臣がお持ちになっておるわが国の平和条約案、これを公表されても別に非礼にはならぬのではないか。これはソ連側に対応する措置として許されるんではないか。しかも、この平和条約案というのはもちろん大臣が言われるように領土問題が書かれていると思います。最重点課題として書かれていると思うんでありますが、この平和条約案を発表をされることがこの北方領土問題に対する政府の熱意、これを国民が理解をし支持することに相なるのではないか、どうして大臣がお持ちになった平和条約案を公表をしないのか、この辺が私にはわからないのです。いかがですか。
#79
○国務大臣(園田直君) お互いにこの文章は両方とも預かるだけだということになっておるわけであります。そこで、外交慣例に反してあなたはこれを一方的に公表をされたと、こう言ったら、グロムイコ外務大臣は笑いながら、公表しないという約束はあのときしなかった、こう言われたわけで、私はそれ以上追及はしませんでした。なお、わが方の平和条約の案というものは、私は向こうが発表したからといって、これと報復的というか対抗的に出すべきものではなくて、やはりこれを中心に今後進めていきたいと思いますので、もうしばらくは公表する考えはございません。
#80
○小野明君 それが私にはわからぬわけですね。先ほどどなたかソ連外交にはイエスかノーしかない、こういうふうなお話もあったわけですが、やっぱりソ連に対しては言うべきは言い述べるべきは述べると、はっきりした態度がいいのではないか。それで友好的な雰囲気を壊すということであれば別でありますが、これは大臣が一月にソ連に行かれたときに、これは領土問題の未解決というような言葉が入らぬような共同声明はだめだとぽんとけられて帰られた、まあ非常に強い態度であると思いますよ。しかし今回は、このソ連が原案を出した。そうすればわが国の平和条約案なるものを公表したって、これは対等でありますからこれを出さないというのが私はどうも理解ができない。しかし、これはすでに大臣のお答えがありましたから次に進みます。
 朝鮮問題について若干お尋ねをしたいと思います。
 外務大臣は八月十八日の本委員会で、朝鮮民主主義人民共和国との関係について、今後折に触れ問題に触れて話し合いの場所を求めて前向きに進めたい、こう答弁をされております。このことは私ども委員といたしましては政府間の接触を図ると、こういう意味に解しておるわけでありますが、これはそのとおりですか。
#81
○政府委員(中江要介君) 大臣の申されましたのは非常に広い意味での日朝間の接触ということでございまして、具体的にどういう問題が生じますかわかりませんが、たとえば、先生も御案内のように朝鮮半島の北部水域における漁業問題、そういったような問題になりますれば、その実際的解決のためにいかなることが必要か、わが漁民の利益を守るために政府としてもなすべきことがあれば検討する必要があろう、こういう趣旨に御了解いただくのが適当かと思います。
#82
○国務大臣(園田直君) 今度の日中友好条約の締結によって、朝鮮半島の問題は私は緊張の方には向かわないで、量は幾らか知らぬが対話の方向へ進む可能性が出てきた、いい影響を与えると少なくとも考えておるわけであります。北朝鮮と中国の関係、それからソ連が韓国と人事交流を始めた、こういう点もその一つでありますから、こういうことをにらみつつ事あるごとにこれに政府が関係することがあれば関係をし、お互いに人事交流をし、話し合いを進めて、そして朝鮮半島で両方が話し合いをする国際環境をつくることがわれわれの責任だと考えております。
#83
○小野明君 その際に、中江局長の御答弁には私再度お尋ねをしたい点がございます。
 ただ、大臣の環境づくりという点につきましては、朝鮮民族の自決権ですね。南北の自主的な平和統一、これを促進するものでなければならない、こう思いますが、大臣いかがですか。
#84
○国務大臣(園田直君) 御発言のとおりでございます。
#85
○小野明君 大臣が八月十八日に北朝鮮の問題に触れて言われた点については、私は政府間接触を意味するものと、こう考えておったわけですが、問題に触れ折に触れてと、こういうふうに言われて、たとえば中江局長が日朝漁業の問題等と、こう言われましたが、これは日朝漁業協定の日本政府による保証、こういう問題についても先方の意図が具体的に判明した段階で検討するということになっておりまするが、こういう問題こそとらえて政府間接触を図るべきではないのか、こう私は思います。政府は例の松生丸事件の際にもモスクワ等で政府間接触を図ろうとして失敗しております。この問題は粘り強くやはり行わなければならぬと思うのであります。ところが日朝漁業協定の政府保証もない。こういう問題等で政府間接触を図ろうという積極的な努力をしてもらいたいと私は思うんです。いかがですか。
#86
○政府委員(中江要介君) いま日朝間で政府間の接触という問題が必ずしも御期待されるように進行していないことには、二つの理由が私ども事務的に見ておりますとあるように思います。
 一つは、日本と北朝鮮の双方の当局の間にまだ完全な信頼関係が打ち立てられてないんではないか。と申しますのは、日本政策について北朝鮮の当局の方でいろいろコメントを公にされております。そういうものを拝見しておりまと、必ずしも正確に御理解いただいてない。そういう点は、先ほど大臣も申されましたように、幅の広い交流を通じてだんだん日本の政府がとっている考え方というものにも理解をしてもらいたいと思いますし、日本の政府の方からは、それこそいまよく使われます言葉で申しますれば全方位平和外交ということでありますので、日本が北朝鮮を敵視するということはとったことはないつもりでおるんですけれども、北朝鮮の方ではそういうことをよく言われるわけです。これが一つの障害ではないか。これはおっしゃいますように、しんぼう強くこれを解きほぐしていく努力をしなきゃならぬと思っております。
 もう一つは、これは日本が御承知のように一九六五年に国交を正常化いたしました大韓民国という隣国があるわけです。日本と大韓民国との関係は、これはやはり重要な隣国でございますので、この関係の犠牲において北朝鮮との関係をどうするというわけにはやはりまいらない。国際社会では、御案内のようにすでに五十三カ国が南北両朝鮮を承認しておりますし、のみならず国際連合の機関を初めとして、国際機関でももう十一の国際機関で南北両朝鮮が同時加盟をしておるわけです。したがいまして、北朝鮮の方でも韓国に対して、いまの南の政権のある間は話をしないというようなことではなくて、やはり現実に即した政策をとってくるようになりますれば、これは日本としても南北両方の対話の促進に役立つのみならず、行く行く朝鮮半島の問題を朝鮮半島の人たちの手で解決するという国際環境が生まれるのではないか、こういう意味で、北朝鮮側の政策にももう少し現実的な配慮があってもいいんじゃないだろうか。この二点が私ども事務を処理しておりまして、まだもう一つ物足りないという感じでございますが、双方とも、特に後者の方は、今度の日中条約が国際環境に影響するという意味でその好転を期待する、こういうことでございます。
#87
○小野明君 やっぱり日本がやってきたことが、これは南北朝鮮の固定化をやっておるんだと、こういうふうに見られておるところに問題がある。そこで、やはり大臣が先ほど答弁されておりますように、民族自決権を尊重しながら南北の自主的統一を図っていく、こういう面でひとつ長い努力をしていただきたい。これはもう大臣の答弁に尽きておりますから。
 最後に一問、文化交流の点でありますが、中国から一万人ですか、来年度は五百人の留学生が来るという。これを受け入れることに外務大臣も努力をされておるようでありまして非常に結構であります。わが方からも予備教育のために日本語教師を派遣する、こういう計画もあるようであります。ただ、この文化交流で中国の近代化への推進という一面のみをとらえるならば、私は視野の狭い目先のものになるんではないか、こう思います。そこで長い伝統的な日中間の文化交流があるわけですから、それを考えなければならない。そのため条約第三条にはわざわざ文化交流がうたい込まれておるわけですね。この第三条を生かす、こういった意味からも、この長い伝統を踏まえた本格的な文化交流の発展を私は図らなければならぬ。
 そこで、せっかく本条にうたい込まれている意味を考えてみますときに、この独立の文化協定を結ぶ必要があるのではないか。視野の広い文化の交流、長年の伝統を踏まえた交流を行うべきではないかと思いますが、この独立の文化交流を結ぶという点について、大臣のお考えを承りたいと思います。
#88
○国務大臣(園田直君) 外交でいままで経済協力であるとかいろいろ言われておりましたが、外交の一番大事なものはやはり文化交流であると考えております。特に日本と中国の間には長い伝統と歴史と交流の関係があるわけでありますから、これを改めて深く踏み込んでいくことは、これ本当に日中友好条約の第一の目的であると考えております。
 そこで、いままでは御承知のとおりに民間の文化交流が盛んでありまして、その後国交正常化以来、政府間の交流もだんだん行われてきておるわけであって、これは今後ふやしていかなきゃならぬと考えております。いまの文化協定は、まだ中国からも話がありませんし、こちらからも話がありませんが、今後の過程において貴重な御意見として承り、十分検討していきたいと考えております。
#89
○小野明君 検討課題ということではなくて、積極的に文化協定の締結に努力をするという意味に解してよろしゅうございますか。
#90
○国務大臣(園田直君) 今後必ずそういう話が出てくると思いますから、前向きで検討をいたします。
#91
○小野明君 終わります。
#92
○委員長(菅野儀作君) 本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。
   午後六時五十九分散会
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ソース: 国立国会図書館
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