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1978/09/20 第85回国会 参議院 参議院会議録情報 第085回国会 本会議 第2号
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1978/09/20 第85回国会 参議院

参議院会議録情報 第085回国会 本会議 第2号

#1
第085回国会 本会議 第2号
昭和五十三年九月二十日(水曜日)
   午後二時四十三分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第二号
  昭和五十三年九月二十日
   午後二時三十分開議
 第一 国務大臣の演説に関する件
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、国家公務員等の任命に関する件
 以下 議事日程のとおり
     ―――――・―――――
#3
○議長(安井謙君) これより会議を開きます。
 この際、国家公務員等の任命に関する件についてお諮りいたします。
 内閣から、検査官に鎌田英夫君を任命することについて、本院の同意を求めてまいりました。
 内閣申し出のとおり、これに同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#4
○議長(安井謙君) 総員起立と認めます。よって、全会一致をもってこれに同意することに決しました。
     ―――――・―――――
#5
○議長(安井謙君) 日程第一 国務大臣の演説に関する件。
 内閣総理大臣から所信に関し、外務大臣から外交に関し、大蔵大臣から財政に関し、それぞれ発言を求められております。これより順次発言を許します。福田内閣総理大臣。
   〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(福田赳夫君) 第八十五回国会が開かれるに当たりまして、所信の一端を申し述べます。
 日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約は、去る八月十二日、北京において署名調印されました。
 日中両国の関係は、歴史的に幾多の変遷をたどってまいりましたが、このたび、互恵平等の精神に基づいた両国間の長期的な友好親善関係の基礎固めができましたことは、きわめて意義深いことと存じます。
 日中両国が高い立場に立って、双方の満足のいく結果を得たことは、御同慶にたえません。国民の皆様と喜びをともにいたしたいと思います。
 日中条約が調印に至るまでの間、国民各界各層から多くの関心が寄せられ、さまざまな立場から御支援、御協力を賜りましたことに対し、心から敬意と謝意を表したいと思います。
 政府は、この条約の締結によって、日中両国の関係をさらに安定した基盤の上に置き、両国の長い将来にわたる平和友好関係を強固にするのみならず、アジア、ひいては世界の平和と安定に寄与すべく、最善の努力を払う決意であります。
 ここに、国会の速やかな御承認をお願いする次第であります。
 今日、国際社会の相互依存関係が急速に深まり、また、わが国の国力が充実するに従って、わが国の外交もまた、単に世界の動きに受け身で対応し、これを処理するというだけでは済まされない新しい時代に入ってまいりました。
 長年にわたる外交諸懸案は一段落いたしました。わが国といたしましては、さらに進んで、世界の平和、世界の繁栄のため、積極的な役割りを果たすべきときが到来したのであります。
 国際社会は、強くそのことをわが国に求めておるのであります。
 過日、私が、わが国の総理大臣として、史上初めてイラン、カタル、アラブ首長国連邦及びサウジアラビアの四カ国を公式訪問いたしましたのは、まさにこのようなわが国の外交努力の一環であります。
 中東和平は、現下世界政治の最大の焦点であります。この訪問におきまして、中東における公正かつ永続的な和平の実現を切望するわが国の立場を明らかにするとともに、これらの国々の首脳と、国際的視野に立って建設的な意見の交換を行うことができました。
 同時に、文化的、歴史的に長い伝統を持つこれら諸国は、今日、世界の発展にとって欠くことのできないエネルギー源の供給国であり、国際経済面においても重要な地位を占めておるのであります。これら諸国との間におきまして、今後、経済・技術協力、文化交流などの面で相互の関係を一層促進することについて意見の一致を見、将来にわたる友好親善の礎が築かれました。政府は、今回の訪問の成果を踏まえて、今後とも中東地域諸国との友好協力関係を拡大し、その安定と発展に資するべく努力を続けてまいる所存であります。
 なお、今回のキャンプ・デービッド会談において、米国、エジプト、イスラエル三国間に今後の中東和平に向けての交渉の枠組みにつき進展が見られましたことを高く評価するものであります。
 わが国の近隣であるアジア地域の安定と繁栄のため積極的役割りを果たすことが、わが国外交の大きな柱の一つであることは、もとより申すまでもないところであります。昨年夏、私は、ASEANなど東南アジア諸国を歴訪し、特に最後の訪問地であったマニラで、東南アジアに臨むわが国の基本方針を明らかにいたしました。この基本方針は、そのままわが国のアジアに対する姿勢であり、この姿勢のもと、アジア諸国に対する平和的貢献は、着実に実りつつあるのであります。
 朝鮮半島の情勢は、わが国を含むアジアの平和と安定に深いかかわりを持っておるのであります。政府は、南北間の緊張が緩和され、平和的な統一への道につながることを期待するものであります。
 韓国との間においては、四年半にわたる懸案であった日韓大陸だな協定がようやく発効を見るに至りましたが、今後とも両国間の友好関係を一層揺るぎないものにするための努力を重ねていく方針であります。
 ソ連との間に正しい相互理解に根差した友好関係を増進することは、わが国外交の重要な課題の一つであります。私は、経済、文化、貿易、人的交流などの各分野において、今後とも、両国の幅広い交流を積極的に推進してまいります。しかしながら、その際、日ソの関係を真に安定した基礎の上に発展させるためには、北方四島の祖国復帰を実現して平和条約を締結することが不可欠であり、政府は、このために粘り強く対ソ折衝を続けてまいる決意であります。
 同じ先進民主主義工業国として、共通の価値観を分かち合う日本と欧州諸国が、その協調関係を強めることは、世界の平和のためにきわめて重要であります。私は、先般主要国首脳会議のみぎり、ブラッセルに赴きまして、欧州共同体本部を訪問いたしましたが、欧州各国のわが国に対する期待の大きさと同時に、わが国の国際的責任の重大さを改めて痛感いたしました。
 私は、これを契機に、歴史的にも密接な関係にある日欧間のきずなを一層強め、日欧の協力関係をさらに緊密化するよう努力する所存でございます。
 以上申し述べましたわが国の外交は、これを一言で言えば、いわば全方位平和外交とも申すべく、世界のすべての方向に向かって、あらゆる地域、あらゆる国との間に平和友好の関係を求めることにほかなりません。そのような努力を通じまして、わが国の平和を確保し得る国際環境を整備するとともに、進んで、世界のために積極的かつ重要な役割りを果たすことができるのであります。
 このようなわが国の外交努力を可能にする基軸として、揺るぎのない日米関係の存在が不可欠であることは、申すまでもないところであります。
 日米安全保障体制の上に立った米国との友好協力関係は、わが国の平和と安全を保障し、今日の繁栄を実現する上で大きな役割りを果たしてまいりましたが、いまや、両国の関係は、さらに一歩を進め、両国が相携えて平和で友好的な国際社会の建設に寄与するという、世界のための日米協力、世界のための日米提携の関係にまで高められてきておるのであります。
 私は、日米間の友好と信頼の関係をさらに一層揺るぎないものとして確保するために、今後とも全力を傾けてまいりたいと存じます。
 さて、現在国際社会が当面している最大の課題は、経済問題であります。
 御承知のとおり、五年前の石油危機を契機として、国際経済全体が大きな変動を受けました。各国ともこれによってもたらされた困難から脱出すべく懸命な努力を続けておりますが、先進工業諸国の景気回復の足取りはいまだに重く、失業率も高く、各国内には、ややもすれば保護主義に傾こうとする動きが見られます。国際通貨情勢もきわめて不安定であります。加えて、世界のエネルギー事情は、幾多の制約と困難のもとにあります。さらに南北問題の解決は、現下の大きな国際的課題となっておるのであります。
 このような世界経済の当面している多くの困難を乗り切るために、去る七月、西独の首都ボンにおいて、主要国首脳会議が開かれました。この会議におきましては、参加各国が、互いに一つの運命共同体を形成しているとの明確な認識のもとに、まさに私が言う協調と連帯の精神に基づいて、世界経済を健全な軌道に乗せるための総合戦略について、率直な話し合いを行ったのであります。
 その結果、参加各国は、自国の可能性をぎりぎり追求することによって、国際経済の安定と拡大に努力することを決意し、各国経済の実情に即した成長政策、インフレ対策、エネルギー政策など、各国が責任を持って実行すべき具体策を織り込んだ共同宣言が発せられたのであります。
 私は、それぞれ困難な問題を抱えた各国首脳が、共通の目的を達成するため、みずから進んで具体的な政策を宣言に織り込む決断をしたこと自体が、世界経済全体の先行きに対する信頼を高めるものとして、その意義を高く評価するものであります。
 しかしながら、これらの具体策が、国際経済の安定となって実を結ぶか否かは、かかって今後の各国の取り組み方いかんにあります。
 政府は、わが国が国際経済の安定と発展のために果たすべき大きな責務にかんがみ、諸政策を機動的かつ積極的に推進し、東京ラウンド交渉の早期妥結に一層の努力を払うなど、ボン会議で合意した目標の達成に最善を尽くします。
 わが国を初めとするこのような国際間の努力がその成果を上げるためには、基軸通貨であるドルの安定が何よりも必要であります。私は、ボンの首脳会議においても、この点について米国の適確な対応を促したのでありますが、米国政府が先般来一連のドル防衛策に乗り出したことを歓迎し、その効果を期待するとともに、さらに一層の努力を望むものであります。政府は、今後とも、随時通貨当局間で意見の交換を行うなど、間断なき対話を通じて、国際通貨の安定に尽力する方針であります。
 なお、来年の主要国首脳会議の東京開催について、各国から強い期待が寄せられておるのであります。このことは、国際社会でのわが国の責任が、いよいよ重きを加えつつあることを示すものであります。
 私は、わが国がその責任を自覚し、その役割りを果たし、世界の期待にこたえるよう全力を尽くす決意であります。
 最近のわが国の経済情勢を見ますと、その基礎とも申すべき物価は、先進国の中でもきわめて安定した推移を続けておるのであります。
 次に、景気の側面でありますが、公共投資の大幅な拡大、在庫調整の進展などにより、国内需要はおおむね政府の経済見通しに沿った回復を示しており、わが国経済の各方面にわたり、次第に明るさが広がりつつあります。
 しかしながら、昨年来の急激な円高と輸出の自粛により、輸出数量に減少の傾向があらわれておるのであります。このことは、国際社会から求められている経常収支の黒字幅の縮小の効果を持つものと期待される反面、中小企業を初め、国内産業に与える影響が懸念されるのであります。
 また、業種間、地域間で景気、不景気の格差が見られ、雇用情勢にもいま一歩のもどかしさが感ぜられるのであります。
 政府は、このような情勢にかんがみ、円高などによる影響を国内需要の振興によって補い、景気の着実な回復と雇用の改善を図ることにいたしております。このため、住宅、文教、保健、福祉等に関する施設の整備などに重点を置いた事業規模約二兆五千億円に上る公共投資の追加を初め、構造不況業種対策、中小企業円高対策、特定不況地域対策、緊急輸入対策、円高差益還元対策などをも含む総合経済対策を決定いたしました。
 このような措置により、政府経済見通しが想定する実質七彩程度の成長を達成するとともに、経常収支黒字幅の縮小を図り、物価の安定を推持し、財政の健全化にも留意しつつ、今後の適切な経済運営によって、明年以降の明るい展望を切り開いてまいります。
 政府は、以上のような対策を実施するに際しまして、新たに必要となる予算措置につきましては、今国会に所要の補正予算を提出いたします。
 速やかな御審議をお願いする次第であります。
 私は、この補正予算を手始めとして、国民の健康、教育、福祉、文化などに関する豊かな環境づくりによって、わが国社会の新しい活力を掘り起こし、国民生活の充実を目指したいと考えます。そのためには、今後、国際環境の変化と資源・エネルギーの制約などに対応し、かつ、国民の要望と国際化時代の推移に見合うよう、わが国経済社会の体質改善を行って、持続的な経済成長を達成しなければならないと考えます。
 政府は、すでに第三次全国総合開発計画を策定し、その実施のための諸準備を着々進めております。定住圏構想を中心とするこの計画は、地方を振興し、過密、過疎に対処しながら、地域住民の参加と連帯のもとに、健全で調和のとれた地域社会づくりに取り組み、歴史と伝統文化に根差した豊かな定住圏を計画的に創造しようとするものであります。
 政府は、このような考え方に配慮しつつ、速やかに中期経済計画の立案に着手し、今後のわが国経済社会の向かうべき姿を明らかにする方針であります。
 われわれは、二十一世紀への明るい展望を持つために、内外の英知を結集し、新たな技術革新の時代を招来しなければならないと思います。
 資源有限という人類にとっての制約条件を、ただ手をこまねいて甘受することは許されません。積極的にこの問題に対処するためには、科学技術を振興し、資源の合理的利用を図るとともに、新しいエネルギーの開発を推進しなければならないと思います。
 また、宇宙開発、海洋開発などビッグサイエンスの研究とともに、美しい国土を守る技術、省エネルギー技術、新交通技術、廃棄物の再資源化など国民生活に直結する技術の開発にも、多くの未開拓の分野が残されておるのであります。
 私は、少なくとも二十一世紀初頭には、核融合エネルギーの実現を目指すべきだと思います。今後研究投資の拡大など総合的な対策を講じ、研究開発の飛躍的な促進を図る考えであります。
 このためには、国際的協力が必要であります。特に日米間の協力については、さきの日米首脳会談でも合意を見たところであり、核融合及びその他の新エネルギーの分野における日米の共同研究を活発に推進する方針であります。
 科学技術の振興による新たな発展分野の創造は、二十一世紀に向かっての斬新な国民的目標となると同時に、それこそ、わが国が人類の進歩発屋に進んで貢献するゆえんにほかならないと思うのであります。
 私は、本年春以来、さまざまな機会に世界の指導者と話し合いを行いました。これらの機会を通じ、私は、今日が大いなる変化の時代であり、これに対応し、新しい時代の明るい発展を見出すべく、世界の国々が苦悩し、模索していることを強く感じ取りました。
 わが国とても例外ではありません。明治以来百十年、われわれ日本民族は、「追いつき追い越せ」の目標のもと、今日ようやく先進諸国と肩を並べるところにまでまいりました。いまや、国際社会に対するわが国の責任はきわめて重く、一九八〇年代へ移行するに際して、さらに進んで先導的役割りを果たすことを強く求められておるのであります。
 世界は、いま、まさに転機に立っておるのであります。
 このときに当たり、私は、改めて政治の責任の重大さに思いをいたすものであります。われわれ日本民族発展の方向を確立することこそ、政治の当面する最大の課題であると考えるのであります。私は、これに全力を挙げて取り組む決意であります。
 もとより、現下の内外情勢に対する厳しい認識のもとに、防衛体制の整備、大規模災害への備え、資源・エネルギー、食糧の安定的確保、二百海里時代に対応する水産業対策及び海上保安、社会・生活環境の整備、法と秩序の維持など、父祖から受け継いできたわが国土の安全と国民生活の安定を守る方策を力強く推進していかなければならないと考えております。
 同時に、わが国の長期的発展を目指すためには、民族興隆の基盤である人づくりの原点に立ち戻って、新しい積み重ねの努力を始めるべきであると考えます。
 一世紀にわたる近代化の歩みの中で、われわれ日本民族は、幾たびか変動の時代を切り抜けてまいりました。それには、国際環境がわれわれに幸いしたという幸運もありましたが、基本的には、家庭で、学校で、社会で、教育が重視され、勤勉さ、豊かな創造力など、すぐれた資質の日本人が育てられてきたことによるものにほかならないと思うのであります。
 私はいま、変化する時代に臨んで、われわれ日本民族の新しい活力の源泉を再びここにこそ求めるべきであると確信するものであります。
 創造的な国民の資質と雄渾な気風は、いかなる変動にも耐え抜く国力となり、国の将来に明るい展望をもたらすものと確信をいたします。
 私は、そのような人づくり、国づくりに全力を傾倒する決意でございます。
 国民の皆様の御理解と御協力を切にお願いするものであります。(拍手)
    ―――――――――――――
#7
○議長(安井謙君) 園田外務大臣。
   〔国務大臣園田直君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(園田直君) 第八十五回国会の開会に当たり、本年一月以降の主要外交問題について御報告をいたします。
 まず、日中平和友好条約について御報告をいたします。
 一九七二年九月二十九日に国交正常化が実現して以来着実に進展してまいりました日中両国関係において、重要な懸案として残されていた日中平和友好条約につきましては、政府は、従来から日中双方が満足し得る形でできる限り速やかにその締結を図るとの基本方針のもとに、最善の努力を尽くしてまいりました。しかるところ、機ようやく至り、本年七月二十一日から北京で行われました日中双方の交渉団による交渉の努力と経緯を踏まえて、福田総理の的確な決断のもとに命を受けて、私は、八月八日から中国を訪問し、今後長期にわたる日中関係のあり方及び国際情勢について、中国の指導者と誠意を持って率直に意見交換を行い、これを通じて同条約交渉を日中双方が満足する形で妥結すべく、全力を傾注いたしました。その結果、わが国の長期的国益に資するものと判断し得る形で交渉が妥結し、八月十二日に日中平和友好条約に署名調印することができました。私は、同条約の調印を喜ぶものでありますが、この調印こそは、ひとえに、それぞれの立場からこの問題に御理解と御尽力をいただきました与野党各党の皆様方を初め、各界各層の先輩及び友人の方々の御苦労のたまものであることに思いをいたし、ここに改めて感謝の意を表明する次第であります。(拍手)
 日中平和友好条約は、日中両国間の友好関係を長期的に安定したものとして確保するための基礎を築くものであるばかりでなく、かくして両国間の友好関係が長期にわたって安定することは、そのこと自体、アジア及び世界の平和と安定に寄与するものと確信をいたします。政府としては、この新しい日中関係を踏まえて、今後、アジア、さらには世界の平和と安定のために一層の貢献をしたいと考えます。
 私は、ここに、この条約を一日も早く批准できますよう、できる限り速やかな御審議を賜り、御承認いただけますようお願い申し上げる次第であります。
 広くアジア諸国とわが国は、平和と繁栄を分かち合う隣人関係にあり、これらの国々との関係は、わが国外交の基盤であります。アジア諸国との相互理解と友好協力関係を増進し、この地域の平和と繁栄に寄与することは、わが国外交の基本的課題の第一であります。政府は、このような考え方に立って、アジア外交の強化に努めてまいりました。
 特に東南アジアは、わが国がその平和と安定のために積極的な役割りを果たすべき重要な地域であります。本年六月、私は、タイにおいてASEAN五カ国外相と会談をいたしました。これは、昨年八月の福田総理のASEANとの首脳会議及び東南アジア歴訪の後を受けて、わが国とASEAN諸国との間の「心と心の触れ合う関係」を具体化することを目的とするものでありました。私は、この外相会談等を通じて、わが国とこれら諸国との間の友好協力と相互信頼の関係が一層深まったと確信いたしております。他方、インドシナ諸国との関係につきましては、政府は、ベトナムとの間で債権債務問題を解決し、新たに経済協力を行うとともに、ベトナム及びカンボジアの要人を招き緊密な意見交換を行うなどの努力を行いました。その結果、インドシナ諸国との間の相互理解も着々と深まりつつあります。政府としては、このようにして深まりつつあるASEAN諸国及びビルマとの間の友好協力関係とインドシナ諸国との間の相互理解を基礎に、東南アジア全域にわたる平和と繁栄の形成に積極的に貢献していく方針であります。
 わが国の重要な隣国である韓国との関係につきましては、先般、関係閣僚とともに日韓定期閣僚会議に出席し、将来に向かって、政治、経済、文化等幅広い分野において相互交流を拡大し、相互信頼の増進を図ることを基調とする新しい協力関係を築くべく、韓国政府首脳との間で、率直かつ忌憚のない意見交換を行ってまいりました。政府としては、今後とも、この方向で韓国との友好協力関係の維持発展に努めてまいる方針であります。と同時に、北朝鮮との間の関係につきましては、今後とも貿易、経済、文化、人的交流等の分野における関係を漸次積み重ねることにより、何よりもまず、相互理解の増進を図ることが肝要と考えます。
 わが国としては、朝鮮半島に真の平和と安定をもたらすための国際環境の形成について従来にも増して積極的に協力してまいる方針であります。
 さらに、東南アジア諸国との間においても友好関係を一層強化すべく引き続き努力し、この地域の安定と発展に寄与してまいる考えでございます。
 米国との間の安保体制を含む緊密な友好協力関係は、わが国の平和と安全を確保し国民生活の繁栄を表現する上で欠くことのできない重要な関係であり、わが国外交政策の基軸であります。また、わが国の経済力と政治的影響力が増大した結果、いまや日米間の緊密な友好協力関係は、アジア・太平洋地域の平和と安定のための不可欠の前提となっております。同時に、世界経済の安定的な拡大を確保することを含めて広く世界全体の平和と繁栄を確保するために日米両国が協力すべき分野はますます増しております。本年五月の日米首脳者会議において、日米両国が世界の平和と繁栄のためにいかに協力し、それぞれいかなる役割りを果たすべきかについて具体的に話し合われたことは、この意味で時宜にかなうものでありました。政府としては、日米両国がともに担っているこのような責任を十分認識し、その遂行に引き続き努力する方針であります。
 わが国の重要な隣国であるソ連との間の友好関係を維持し促進することが、これまたわが国外交の重要な課題であることは申すまでもありません。
 政府が従来から一貫して主張しておりますように、日ソ関係を真に安定した基礎の上に置くためには、全国民の一致した要望である北方四島の祖国復帰を実現をして平和条約を締結することが不可欠であります。そして、その必要性は、今日ますます痛感されるところであります。私は、このような認識のもとに、本年一月訪ソいたしました。政府としては、今後ともこの問題の解決のために一層の努力を傾ける方針でございます。
 他方、日ソ両国の関係は、近年、貿易、経済、文化、人的交流など、広い分野において着実に進展しておりますが、政府としては、今後とも漁業を含め、これらの実務面における協力を拡大し、各種の交流を促進することにより、両国間の友好関係の増進を図るべく積極的に努力する方針であります。
 中東諸国は、わが国にとって相互依好関係にある重要な国々であります。私は、本年一月に中東諸国を訪問し、各国首脳と率直な意見の交換を行いましたが、今般、福田総理がわが国の総理大臣として初めてイラン、カタル、アラブ首長国連邦及びサウジアラビアを公式訪問されたことは、中東諸国との相互理解を深め友好協力関係を一層確固たるものとしていく上で画期的な意義を持つものでありました。政府としては、今回の総理の中東訪問を新たな契機として、中東諸国との間に長期的な視野に立った緊密な協力関係を確立するよう一層の努力を払う方針であります。また、政府としては、中東地域の平和と安定が世界の平和と繁栄のために不可欠であるとの認識のもとに、この地域の平和と安定のためにできる限りの協力を行っていく方針であります。
 今般のキャンプ・デービッドにおける米国・エジプト・イスラエル三国首脳会談において、エジプトとイスラエルとの間で和平協定締結を目指すことで合意し、ジョルダン川西岸及びガザ地区の取り扱い並びにパレスチナ問題につき交渉の枠組みが合意されるに至りました。このことは、今後の中東和平へ向けての一層の前進につき希望をもたらすものであります。政府としてもこれを高く評価いたします。わが国としては、このような国際的な和平努力が実を結ぶことを強く期待するものであります。
 先進民主主義国としてわが国と立場をともにする西欧諸国との協力関係は、近年ますますその重要性を増しております。わが国としては、これら諸国との関係を一層緊密なものとするための努力を払わなければなりません。その意味で、本年七月ボンで開かれた主要国首脳会議の機会に総理が欧州を訪問されたことは、きわめて時宜を得たものであったと考えます。政府としては、今後とも西欧諸国との間で、幅広い人的交流を通じて相互理解を深めつつ、緊密な協力関係を確立するよう努力してまいる方針であります。
 同じアジア・太平洋地域に属し、かつ、わが国との交流が年々緊密となっておる豪州、ニュージーランド等の諸国及びカナダ、さらには中南米、アフリカ、東欧の諸国との関係を増進することもまた、わが外交の重要な課題であります。政府は、これら諸国との友好協力関係を確固としたものとするよう努力を重ねる方針でございます。
 さて、現在世界は、幾つかの重大な問題に直面しております。世界経済の問題、南北問題、資源・エネルギー問題、軍縮問題、海洋法秩序の問題等は、わが国の国益にも直接かかわる問題であり、わが国としても、その解決のために努力することが必要であり、同時に、このような世界的な問題の解決にできる限りの努力をしていくことは、先進工業国としてのわが国の責任でもあります。
 世界経済の問題につきましては、去る七月の主要国首脳会議において、各国が当面の主要経済問題について、積極的に政策目標を示し相互に相補いつつ世界経済の安定的拡大のために努力することに合意しました。このことは、世界経済の前途に対する信頼を強める上で大変有益でありましたが、主要国首脳会議の真の成果は、各国が宣言に掲げた政策目標をいかに達成するかにかかっております。政府としましても、世界経済の運営におけるわが国の役割りの増大を十分認識し、目標の達成に万全の努力を払う方針であります。
 自由貿易体制の維持強化は、わが国にとって基本的な要請であります。去る七月の主要国首脳会議で、東京ラウンド交渉を十二月十五日までに妥結させることにつき合意を見ましたので、わが国としましては、右期日までに成功裏に交渉をまとめるよう、関係国とも協調して努力していく決意でございます。
 国際通貨情勢の安定や世界経済のインフレなき拡大を確保するためには、関係国間の協力が必要であります。政府としては、一方で関係国の努力を引き続き求めていく方針でありますが、同時に、わが国としても大局的見地からその責任を果たすために格段の努力を行うことが必要と考えます。
 以上のような種々の観点からも、九月二日に決定されました総合経済対策は、重要な意味を持つものでございます。
 南北問題は、わが国として、一層真剣に取り組むべき重要な課題でありまして、政府は、政府開発援助の三年間倍増を実現するとともに、十一月に予定されておる一次産品共通基金についての交渉を成功裏に終結させるよう、できる限りの努力を払う方針であります。また、開発途上国の債務累積につきましても、三月の国連貿易開発理事会での決議に基づき、所要の措置をとることとしております。
 二十一世紀を展望して、長期的課題としてのエネルギー問題の解決を図るために、新エネルギーの研究開発に積極的に取り組むことは、世界的に重要な課題であり、去る五月の日米首脳者会談の際、福田総理が日米科学技術協力に一歩を進めるよう提案を行ったのも、まさにこのような考え方に基づくものでありますが、この提案は、米国政府の賛同を得て、現在その具体化のための交渉が両国間で鋭意進められております。
 軍縮の問題につきましては、本年五月、私は、国連軍縮特別総会に出席し、核軍縮を中心とした軍縮の促進を強く訴えました。政府としては、今後とも、この方向で努力を続けていく方針であります。
 なお、政府は、本年六月、国際人権両規約を国会に提出いたしましたが、両規約の意義及び国際的な重要性にかんがみ、その締結について速やかに御承認を賜りますよう、重ねてお願い申し上げます。
 前国会の外交演説において、私は、わが国の動向が国際社会に与える影響が大であるとの認識のもとに、わが国としては、積極的に国際社会の平和と繁栄に貢献する「世界に役立つ日本」となるよう努力することをその外交政策の基本的目標とすべきである旨強調いたしました。私は、こうした努力を通じて、わが国が世界の国々にとってなくてはならない日本としての地位を確立したときに、初めて、平和に徹することを国是とするわが国に真の平和と繁栄を確保する道が開けてくると確信しております。
 このためには、なお一層の努力を払わなければなりませんが、国民各位の一層の御理解と御協力を切にお願いする次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○議長(安井謙君) 村山大蔵大臣。
   〔国務大臣村山達雄君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(村山達雄君) ここに、昭和五十三年度補正予算を提出するに当たり、わが国の当面の経済情勢と財政金融政策についての所信の一端を申し述べますとともに、補正予算の大綱を御説明申し上げたいと存じます。
 わが国経済は、国民のたゆみない努力と節度ある経済運営により、石油危機を契機とした激しいインフレを克服し、景気も五十年春を底に緩やかな回復過程を歩むに至っております。
 最近の経済情勢を見ますと、物価が安定的に推移する中で、公共投資の拡充、在庫調整の進展、個人消費の回復等が見られます。また、昨年来の金利水準全般の引き下げ、金融の量的緩和のための措置の効果が実体面に浸透してきており、企業収益も改善の傾向を示すなど、内需を中心に、全体として順調な景気回復傾向が続いております。しかしながら、雇用情勢はいまだ目立った改善が見られず、また、輸出は最近の急激な円高の進行により数量では減少してきており、その国内経済に与える影響が懸念されるに至っております。一方、国際収支面では、輸出の数量での減少があるものの、ドル建て価格の上昇等により、経常収支ではかなりの黒字が続いております。
 このような経済情勢を考慮し、景気の回復を一層確実にするため、政府は、九月二日、総合経済対策を決定いたしました。
 まず、内需拡大策として、財政面におきましては、事業規模にして約二兆五千億円に上る公共投資等の追加を行い、道路、下水道、環境衛生施設などの社会資本の整備や住宅建設を推進するとともに、国民生活の基盤の充実を図るため、文教施設、社会福祉施設、病院等の整備を促進することとしております。
 さらに、今回の総合経済対策においては、不況地域の中小企業の経営、雇用の安定を図り、あわせて不況業種に対する対策等を推進するほか、国際収支の黒字縮小に寄与するため、緊急輸入の推進を図るとともに、世界貿易の拡大を目指して、東京ラウンド交渉に積極的に取り組むこととしております。また、後発開発途上国等に対する無償資金協力の追加を行うなど、政府開発援助の三年間倍増の方針に沿った経済協力の拡充を図ることとしております。
 これらの諸施策により、わが国経済は、本年度の政府見通しで想定した経済成長を確実に達成することができるものと考えます。
 また、今後におけるわが国の国際収支の動向につきましては、海外の景気動向、インフレの状況等に影響されるところが大でありますが、これらの内需拡大策等の政策効果の浸透により、黒字幅は次第に縮小に向かうものと見込まれます。
 私は、今日ほど、国際的な協調と連帯が必要なときはないと痛感いたしております。また、このことは、先般ボンにおいて開催された先進国首脳会議に出席した各国首脳の共通の認識でもありました。わが国が世界経済において大きな比重を占めるに至った今日、今後の経済政策は、ひとり自国経済のみならず、世界経済の安定と発展に貢献するものでなければならないと確信を強めている次第であります。
 私は、今回の総合経済対策の着実な実行により、現下の内外の要請に十分こたえていきたいと考えております。
 次に、今国会に提出することといたしております昭和五十三年度補正予算の大綱について御説明申し上げます。
 さきに御説明いたしました総合経済対策を実施するため、一般会計におきまして、公共事業関係費、文教・社会福祉関係の施設整備費、船舶建造費等の追加に必要な歳出予算として四千五百九十三億円を計上するとともに、所要の国庫債務負担行為の追加を行うことといたしております。そのほか、構造不況業種・中小企業等特別対策費、経済協力等特別対策費、水田利用再編対策費、国債整理基金特別会計への繰り入れ等につきましても、追加措置を講ずることといたしております。この結果、歳出の追加総額は七千百五十二億円となります。
 他方、一般行政経費その他の既定経費の節減二千二百九十二億円、公共事業等予備費の減額二千億円、一般予備費の減額四百五十億円のほか、昭和五十二年分所得税の特別減税による所得税の収入見込み額の減少に伴い、地方交付税交付金につき九百六十億円の減額を行っておりますので、歳出の修正減少額は五千七百二億円となります。
 歳入におきましては、この特別減税による所得税の減収見込み額三千億円を減額するとともに、建設公債二千八百億円、特例公債二百億円、合わせて三千億円の公債を増発することとしております。そのほか、前年度剰余金受け入れ一千二百八十億円及びその他の収入等百七十億円を計上しております。
 以上の結果、昭和五十三年度一般会計補正後予算の総額は、歳入歳出とも三十四兆四千四百億円となります。
 なお、地方交付税交付金が九百六十億円減額されることに伴い、交付税及び譲与税配付金特別会計において一般会計からの受け入れが減少することとなりますが、同特別会計において資金運用部資金から同額の借り入れを行うことにより、地方団体に交付すべき地方交付税交付金の総額を当初予算額どおり確保することとしております。この借入金の償還については、昭和五十九年度から昭和六十八年度までの各年度において、それぞれ償還額と同額の臨時地方特例交付金を一般会計から同特別会計へ計画的に繰り入れることといたしております。
 さらに、特別会計予算及び政府関係機関予算につきましたも、所要の補正を行うことといたしております。
 また、財政投融資計画につきましては、総合経済対策を推進するため、すでに弾力条項を発動して、住宅金融公庫の貸付枠七万三千戸の追加に要する資金等につき機動的に対処してまいりましたが、今回の予算補正において、日本国有鉄道等に対し総額一千三百六十九億円の追加を行うことといたしております。これらの結果、昭和五十三年度の財政投融資の追加の総額は、弾力条項の発動分も含め、六千五百十二億円になります。
 以上、昭和五十三年度の補正予算の大綱を御説明申し上げました。何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
 この機会に、財政の現状と今後の課題について申し述べたいと思います。
 わが国の財政は、昭和五十年度以降、停滞した経済情勢に対処するため、特例公債を含む大量の公債に依存しており、特に昭和五十三年度においては、実質的な公債依存度はきわめて高いものとなっております。
 経済の変動に機動的に対処し、その安定に資することが財政に課せられた重要な使命の一つであることはもちろんでありますが、財政収支の大幅な赤字をいつまでも放置しておくことは、後代に大きな負担を残し、また、将来、経済そのものの安定と発展を阻害するおそれがあります。したがいまして、中期的な展望のもとに財政の健全化を図っていくことが、いまや、緊急かつ重大な課題となっております。
 今回の補正予算の編成に当たりましては、このような基本的な考え方を踏まえて、その財源はできる限り既定経費の節減、前年度剰余金等により捻出することとし、公債の増発については、最近の公社債市場の動向等も勘案の上極力抑制し、すでに実施済みの昭和五十二年分所得税の特別減税三千億円に相当する額にとどめることとしたところでございます。
 昭和五十三年度の公債発行額は、この補正による増発分を含めますと、実に十一兆二千八百五十億円もの巨額に上ることになり、公債の消化を円滑に行うには、なお一層の努力を要する状況にあります。このため、今後とも、国債管理政策を機動的かつ適切に運営してまいる所存でございます。
 さらに、昭和五十四年度予算の編成に当たっても、厳しい財源事情のもとにあって、歳出面ではいわゆるスクラップ・アンド・ビルドの趣旨を一層徹底し、新規施策等の財源は極力既定経費の節減によることとし、歳出内容の合理化を図っていきたいと考えております。
 また、財政の現状を直視すれば、歳入面においても、今後、一般的な税負担の引き上げを求めることを真剣に検討しなければならないと考えます。
 私は、明日、IMF・世銀総会に出席のため、ワシントンに向け出発いたしますが、同総会において、わが国の経済情勢と政策努力について十分説明するとともに、国際通貨情勢の安定等、現在の世界経済が抱えている問題について率直な意見を申し述べ、各国の理解と協調を求めたいと考えております。
 世界経済は、幾多の試練を克服して、安定した成長路線に円滑に移行することを迫られております。
 その中にあって、わが国経済も新たな事態に対応するための構造的諸問題に直面しており、その本質を冷静に見きわめなければならない時期であります。この激動期における財政金融政策の運営に当たっては、中長期的視野のもとに、経済の均衡のとれた成長を目指し、地道な努力を積み重ねることにより、堅実で明るい社会を建設していきたいと考えております。
 国民各位の御理解と御協力をお願いする次第でございます。(拍手)
#11
○議長(安井謙君) ただいまの演説に対する質疑は次会に譲りたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#12
○議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。
 本日は、これにて散会いたします。
  午後三時三十六分散会
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ソース: 国立国会図書館
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