くにさくロゴ
1978/10/18 第85回国会 参議院 参議院会議録情報 第085回国会 本会議 第6号
姉妹サイト
 
1978/10/18 第85回国会 参議院

参議院会議録情報 第085回国会 本会議 第6号

#1
第085回国会 本会議 第6号
昭和五十三年十月十八日(水曜日)
   午後四時二十三分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第六号
  昭和五十三年十月十八日
   午後四時開議
 第一 医療法の一部を改正する法律案(衆議院
  提出)
 第二 特定船舶製造業安定事業協会法案(内閣
  提出、衆議院送付)
 第三 日本放送協会昭和五十年度財産目録、貸
  借対照表及び損益計算書並びにこれに関する
  説明書
 第四 地方交付税法等の一部を改正する法律案
  (内閣提出、衆議院送付)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、日程第一より第四まで
 一、地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期
  日等の臨時特例に関する法律案(内閣提出、
  衆議院送付)
 一、無限連鎖講の防止に関する法律案(衆議院
  提出)
 一、日本国と中華人民共和国との間の平和友好
  条約の締結について承認を求めるの件(衆議
  院送付)
     ―――――・―――――
#3
○議長(安井謙君) これより会議を開きます。
 日程第一 医療法の一部を改正する法律案(衆議院提出)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。社会労働委員長対馬孝且君。
  〔対馬孝且君登壇、拍手〕
#4
○対馬孝且君 ただいま議題となりました医療法の一部を改正する法律案につきまして、社会労働委員会の審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本法律案の内容は、近年における医学医術の著しい進歩に伴い、診療技術が専門分化していることにかんがみ、病院、診療所が広告できる診療科名を追加するものであり、医業については美容外科、呼吸器外科、心臓血管外科及び小児外科を、歯科医業については矯正歯科及び小児歯科を、それぞれ加えようとするものであります。
 なお、本案は衆議院社会労働委員長の提出によるものであります。
 委員会におきましては、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決しました。
 以上報告をいたします。(拍手)
#5
○議長(安井謙君) これより採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#6
○議長(安井謙君) 過半数と認めます。よって、本案は可決されました。
     ―――――・―――――
#7
○議長(安井謙君) 日程第二 特定船舶製造業安定事業協会法案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。運輸委員長三木忠雄君。
  〔三木忠雄君登壇、拍手〕
#8
○三木忠雄君 ただいま議題となりました特定船舶製造業安定事業協会法案につきまして、運輸委員会における審査の経過及び結果について御報告申し上げます。
 本法律案は、最近における船舶製造業をめぐる内外の経済的事情の著しい変化にかんがみ、特定船舶製造業における不況の克服と経営の安定を図るため、設備の計画的な処理を促進しようとするもので、その主な内容は、特定船舶製造業の用に供する設備及び土地の買収等を行う特定船舶製造業安定事業協会を設立することとし、協会設立の手続、業務内容、協会に対する納付金制度等、所要の規定を設けようとするものであります。
 委員会における質疑の詳細は会議録により御承知願いたいと思います。
 質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本共産党を代表して内藤委員より反対する旨の意見が述べられ、採決の結果、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本案に対し、青木理事より、各派共同提案による、造船不況対策の推進と雇用の安定を内容とする附帯決議案が提出され、全会一致をもってこれを本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
#9
○議長(安井謙君) これより採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#10
○議長(安井謙君) 過半数と認めます。よって、本案は可決されました。
     ―――――・―――――
#11
○議長(安井謙君) 日程第三 日本放送協会昭和五十年度財産目録、貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関する説明書を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。逓信委員長赤桐操君。
    ―――――――――――――
  〔審査報告書は都合により追録に掲載〕
  〔赤桐操君登壇、拍手〕
#12
○赤桐操君 ただいま議題となりました案件について、逓信委員会における審査の経過及び結果を御報告いたします。
 本件は、日本放送協会の昭和五十年度決算に係るものでありまして、放送法第四十条第三項の規定に基づき、会計検査院の検査を経て内閣より提出されたものであります。
 まず、その概要を申し上げますると、協会の五十年度末における財産状況は、資産総額一千四百七十一億二千九百万円、負債総額七百三十一億三千七百万円、資本総額七百三十九億九千二百万円となっております。
 また、当年度中の損益の状況は、経常事業収入一千三百十三億七千四百万円に対し、経常事業支出一千四百九十三億四千四百万円であり、差し引き経常事業収支は百七十九億七千万円の欠損であり、これに固定資産売却損益等の特別収支を含めた事業収支全体では百八十九億六百万円の欠損となっております。
 なお、この欠損金は資本収支の差金をもって補てんされております。
 本件には、会計検査院の「記述すべき意見はない」旨の検査結果が付されております。
 委員会におきましては、災害時における報道体制を初め、番組編集のあり方、経営委員会の構成、今後の経営見通しなど、協会運営の各般にわたる問題のほか、FM・多重放送の普及、辺地テレビ難視の解消促進と地域住民の負担軽減、成田新国際空港の開港に伴う受信障害対策等について政府並びに協会当局等に質疑を行い、慎重審議の結果、本件については全会一致をもってこれを是認すべきものと決定いたしました。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
#13
○議長(安井謙君) これより採決をいたします。
 本件は委員長報告のとおり是認することに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#14
○議長(安井謙君) 総員起立と認めます。よって、本件は全会一致をもって委員長報告のとおり是認することに決しました。
     ―――――・―――――
#15
○議長(安井謙君) 日程第四 地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。地方行政委員長永野嚴雄君。
  〔永野嚴雄君登壇、拍手〕
#16
○永野嚴雄君 ただいま議題となりました地方交付税法等の一部を改正する法律案について、地方行政委員会における審査の経過及び結果を御報告いたします。
 今回の補正予算において、昭和五十二年分所得税の特別減税による減収が歳入に計上されたことに伴い、地方交付税も九百六十億円の落ち込みを生ずることとなったのでありますが、本法律案は、当初予算に計上された地方交付税の総額を確保するため、交付税及び譲与税配付金特別会計における借入金を九百六十億円増額することとし、この借入金の償還金については、昭和五十九年度から昭和六十八年度までの各年度において、それぞれの償還額と同額の臨時地方特例交付金を一般会計から交付税及び譲与税配付金特別会計に繰り入れる措置を講じようとするものであります。
 委員会におきましては、明年度地方財政収支の見通しと財源対策、一般消費税構想と地方自主財源の強化対策、経済不況と地域政策のあり方等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録に譲ることを御了承願います。
 質疑を終わり、討論なく、採決の結果、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上御報告いたします。(拍手)
#17
○議長(安井謙君) これより採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#18
○議長(安井謙君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決されました。
     ―――――・―――――
#19
○議長(安井謙君) この際、日程に追加して、
 地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題とすることに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#20
○議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。
 まず、委員長の報告を求めます。公職選挙法改正に関する特別委員長原文兵衛君。
  〔原文兵衛君登壇、拍手〕
#21
○原文兵衛君 ただいま議題となりました地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律案について、公職選挙法改正に関する特別委員会における審査の経過及び結果を御報告いたします。
 本法律案は、全国多数の地方公共団体の議会の議員または長の任期が昭和五十四年三月から五月にかけて満了することとなっている実情にかんがみて、これらの選挙の期日を、都道府県及び指定都市の議会の議員及び長の選挙は昭和五十四年四月八日、指定都市以外の市、町村及び特別区の議会の議員及び長の選挙は四月二十二日に統一することとし、それに伴う所要の規定の整備を行おうとするものであります。
 委員会におきましては、選挙期日の統一の効果、選挙期日の設定の仕方、地方選挙における公報の発行、在宅投票制度の拡充等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録に譲ります。
 質疑を終わり、討論もなく、採決の結果、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上御報告いたします。(拍手)
#22
○議長(安井謙君) これより採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#23
○議長(安井謙君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決されました。
     ―――――・―――――
#24
○議長(安井謙君) この際、日程に追加して、
 無限連鎖講の防止に関する法律案(衆議院提出)を議題とすることに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#25
○議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。
 まず、委員長の報告を求めます。物価等対策特別委員長夏目忠雄君。
  〔夏目忠雄君登壇、拍手〕
#26
○夏目忠雄君 ただいま議題となりました無限連鎖講の防止に関する法律案につきまして、委員会における審査の経過並びに結果を御報告いたします。
 本案は、衆議院物価問題等に関する特別委員長提出によるものでありまして、無限連鎖講、いわゆるネズミ講が終局において破綻すべき性質のものであるにもかかわらず、いたずらに関係者の射幸心をあおり、加入者の相当部分の者に経済的な損失を与えるに至るものであるため、この開設、運営など無限連鎖講に関与する行為を禁止して罰則を設けるとともに、その防止に関する調査及び啓蒙活動を推進し、無限連鎖講がもたらす社会的な害悪を防止しようとするものであります。
 委員会におきましては、立案に至るまでの経緯、立法の趣旨及び運用、法施行までの経過措置、ネズミ講の被害の実態等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録により御承知を願います。
 質疑を終わり、討論に入りましたところ、別に発言もなく、採決の結果、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上であります。(拍手)
#27
○議長(安井謙君) これより採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#28
○議長(安井謙君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決されました。
     ―――――・―――――
#29
○議長(安井謙君) この際、日程に追加して、
 日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)を議題とすることに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#30
○議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。
 まず、委員長の報告を求めます。外務委員長菅野儀作君。
  〔菅野儀作君登壇、拍手〕
#31
○菅野儀作君 ただいま議題となりました日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約につきまして、外務委員会における審議の経過と結果を御報告いたします。
 この条約は、一九七二年の日中共同声明第八項において、日中両国間の平和友好関係を強固にし、発展させるため、平和友好条約の締結交渉を行う旨合意したことに従い、日中両政府間で交渉を行った結果、本年八月十二日に北京で署名調印されたものでありまして、日中両国が主権・領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政不干渉、平等互恵及び平和共存の諸原則の基礎の上に恒久的な平和友好関係を発展させること、日中両国の相互関係においてすべての紛争を平和的手段で解決し、武力または武力による威嚇に訴えないこと、日中両国は、いずれも、アジア・太平洋地域または他のいずれの地域においても覇権を求めるべきではなく、また、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国または国の集団による試みにも反対すること、日中両国は、両国間の経済文化関係の一層の発展と両国民の交流の促進のために努力すること、この条約は、第三国との関係に関する日中各国の立場に影響を及ぼすものではないこと等を定めたものであります。
 本委員会におきましては、福田内閣総理大臣、園田外務大臣、砂田文部大臣並びに政府委員に対し、日中平和友好条約の基本的性格と意義、中国及び米国の世界戦略とこの条約との関連、覇権の意味をめぐる日中間の認識の相違と条約運用上の問題、今後のわが国の対ソ、対朝鮮外交のあり方、この条約と日米安保条約との関連、尖閣諸島の問題、今後の日中間の経済文化交流、中ソ対立及び米中関係の現状と見通し、中ソ同盟条約廃棄の問題等各般にわたって質疑が行われましたが、詳細は会議録によって御承知を願います。
 本日、質疑を終え、討論に入りましたところ、自由民主党・自由国民会議を代表して鳩山委員、日本社会党を代表して戸叶委員、公明党を代表して渋谷委員、日本共産党を代表して上田委員、民社党を代表して和田委員、社会民主連合を代表して秦委員より、それぞれ賛成の意見が述べられました。
 次いで、採決の結果、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。
 以上御報告いたします。(拍手)
#32
○議長(安井謙君) 本件に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。稲嶺一郎君。
  〔稲嶺一郎君登壇、拍手〕
#33
○稲嶺一郎君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、ただいま議題となっております日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約に対して賛成の意見を述べたいと存じます。
 六年前日中関係が正常化されて以来、懸案でありました日中平和友好条約は、本院における国会審議を終え、いよいよ来る二十三日には両国間で批准書の交換が行われる予定でありますが、戦後の日本外交の最も重要なる成果の一つであり、新しい日本外交のスタートとしてきわめて意義深いものがあります。ここに至りますまでの福田総理の適確なる決意、外務大臣を初めとする外務省当局の御労苦を多とするとともに、国民世論の力強い声援に深く感謝いたすものであります。
 以下、本条約の特色について二、三触れてみたいと存じます。
 その第一は、本条約締結に際して、全方位平和外交の精神のもとに自主外交を貫いた点であります。
 わが国は、今回の中国との条約交渉に当たっては、日中共同声明の原則に基づくとともに、いかなる国とも善隣友好関係を維持発展するという全方位平和外交を基本原則として交渉に当たったことは御承知のとおりであります。これに対し、中国は、反覇権を基本姿勢として強く主張され、このため十六回にわたり両国の会談が積み重ねられました。結果的には両国首脳の決断により、首尾よく妥結に至っておりますが、これには日中双方の政治情勢がお互いにタイムリーに合致した、いわゆる時の氏神が味方したというラッキーな面もありましょうが、外務省当局が、複雑困難な国際的背景の中で、誠心誠意、粘り強く交渉を行い、独力でその血路を開いた結果、双方が満足のいく形でまとまったことも事実であり、これはわが国自主外交の輝かしい成果として高く評価できるものと思うものであります。
 第二は、反覇権条項の歯どめとして第三国条項が規定されたことにより、わが国の基本的立場が将来にわたり確保されている点であります。
 本条約の締結に当初慎重であった意見の多くは、覇権問題の帰趨いかんにより、わが国は中ソ対立の渦中に組み込まれるのではないか、ソ連を敵に回すととは北方領土、漁業問題などで得策でないとする意見があり、この覇権問題の処理が交渉妥結の行方を決めるポイントとして重大な意義を持っておりました。この件について、訪中された園田外相は、黄華外交部長との政治折衝で、覇権にどう対処するかはその国の主体的判断で決まるものであり、日中平和友好条約における覇権反対は日中両国のいずれも覇権を求めないことを確認するのが本旨である、また、この条約はある一国を念頭に置いたものではなく、国際情勢が変化しても変わらぬ長期的な日中友好を確立するということを主張され、結果的にはこの趣旨にのっとって条約がまとめられております。したがいまして、第二条において、日中両国は、そのいずれも、アジア・太平洋地域に限らず、他のいずれの地域においても、いかなる国または国の集団による覇権の試みがあれば反対するのですから、特定の国を指してないことは明らかであります。
 また、第四条で、各締約国が第三国との関係に関する立場に何ら影響を及ぼさない旨を規定しておりますことは、日米関係を基軸とするわが国外交の基本的立場がこの条項によって将来にわたって確保されておることであります。東南アジア諸国には中国の覇権に懸念を抱いていた国もありましただけに、この二条の規定は、これら諸国に安堵感を与えるという副次的効果も認められるのでありまして、今回の日中条約が条約本文に反覇権条項を規定するという新しい条約スタイルとなっておりますが、わが国の全方位平和外交の精神が十分盛り込まれたものとして高く評価できるのであります。
 第三は、中ソ友好同盟相互援助条約及び尖閣諸島の問題でありますが、これは条約そのものと直接関係はないとしても、これが帰結は大きな問題であり、国民的関心の的でありましたが、外務大臣はケ小平副主席との会談で、前者については、先方より来年四月には同条約廃棄のための必要な措置をとるとの強い感触を得、また、後者については、先方が再び先般の事件のような争いを起こすことはないと述べたと談話を通じて明らかにしておりますが、私はこれを是とし、国際信義の上からこれを全面的に信じたいのであります。尖閣諸島は、将来日ソ間の領土問題との関連においても心配をする向きがありますので、この際、同諸島の実効的支配の維持については毅然たる態度で臨んでいただきたいと存ずる次第でございます。
 以上申し上げましたように、今回締結を見ました日中条約は、悠久三千年、歴史的にも文化的にも一衣帯水の深い関係にあった両国が、共同声明に明記された基本原則に従い、平和友好関係を確固にする基礎を築くものでありまして、政府は、新しい日中新時代を踏まえ、将来にわたってこれが長期的かつ安定的な関係への樹立のために、経済、文化面の交流を含めて一層の貢献に努められ、もってアジア及び世界の平和と安定に寄与することを期待して、本条約の賛成討論を終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
#34
○議長(安井謙君) 小野明君。
  〔小野明君登壇、拍手〕
#35
○小野明君 私は、日本社会党を代表し、日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約に賛成の討論を行わんとするものであります。
 顧みますれば、過去一世紀におけるわが国と中国との間の関係は、まことに不幸な歴史の連続でありました。近代国家として出発した明治の日本が、外国との間に初めて対等の条約を結んだのは一八七一年、明治四年の日清修好条規であります。これにより、日清両国は対等の基礎の上に、恒久的友誼と相互不可侵を約束し合ったのでありまするが、やがて、朝鮮半島における覇権をめぐりまして抗争状態に陥り、戦火を交えることと相なりました。自来、日本の軍閥と財閥による中国への拡張と支配の政策は、とどまることなく着んと進められ、ついには日中間の本格的戦争へと発展をし、第二次世界大戦におけるわが国の敗戦へと導かれたのであります。
 この間、日本の侵略政策が中国の民衆に与えた苦痛と屈辱は言語に絶するものがありました。しかも、このような日中間のゆがんだ関係は、戦後においても長い間是正されなかったのであります。すなわち、全面講和を主張するわが党の強い要求にもかかわらず片面講和を結んだ保守党政府が、中国本土を有効に支配し、大多数の中国人民を正統に代表する中華人民共和国政府ではなしに、台湾の国府を講和の相手として選択したことによりまして、日中間には新たな対立と変則状態がもたらされたのであります。
 このような不幸は歴史を振り返って見るとき、いまここに、日中両国が名実ともに過去の不幸な関係を清算し、子々孫々に至る友好と不戦を誓い合い、アジアにおける平和と安定の基礎を打ち立てるべく平和友好条約を調印するに至りましたことは、まことに意義深いものがあり、わが党は心からこれを歓迎するものであります。(拍手)
 わが党は、結党以来、日中関係のひずみを正すべく、日中国交回復を外交の基本政策の一つに掲げ、そのために国民の先頭に立って、たゆまざる努力を続けてまいりました。その間、故浅沼稲次郎委員長の命を賭した努力があったことも御承知のとおりであります。中国には、「水を飲む者は井戸を掘った人を忘れてはならない」という有名なことわざがございまするが、言うならば、この条約は、単にここ数年来の政府間の交渉によってのみ調印に導かれたものではなく、多くの先覚者たちの血のにじむような努力と犠牲によって切り開かれてきたものであります。それを思うとき、本条約が国会で承認される今日、私はひとしお感慨なきを得ないのであります。
 さて、本条約は今後子々孫々に至る日中両国間の平和友好関係の基礎となるべきものでありまするが、しかし、本条約を締結することは、決してわが国と中国とが同じ政策をとることを意味するものではありません。わが国にとっていま最も肝要なことは、本条約を基礎に中国との間に真の平和友好関係を発展させつつも、アジアの平和と安定のために、いかにしてわが国独自の平和外交戦略を打ち立て、それを実行に移していくかということであります。そのために、私は特に次の諸点を強調したいのであります。
 その第一は、本条約で反覇権を約束したわが国は、文字どおり、それをわが国の平和憲法と国連憲章の精神に立脚する普遍原則として受けとめ、いやしくもそれをアジアにおけるパワーゲームに利用したり、また、巻き込まれたりしてはならないということであります。
 最近、ややもすれば、反覇権についての中国の独自の認識に便乗し、ことさらに日米安保体制を正当化したり、わが国の有事立法問題の提起に見られるごとく、防衛力の強化をあおる風潮が見られまするが、これこそまさに、わが国がパワーゲームに巻き込まれる危険な道であると言わなければなりません。(拍手)この際わが国がとるべき平和戦略の基本は、特定の国との軍事体制の強化や、有事立法、防衛力の増強を図ることではなくして、緊張を緩和し、紛争を未然に防止するための多角的な外交努力を展開することであります。とりわけ、もう一つの隣国であるソ連との間には領土問題という困難な問題はあるにいたしましても、経済、文化、その他あらゆる側面において交流と理解を深め、正常な友好関係を発展させ、その中で領土問題を解決していく努力が必要であります。
 第二には、朝鮮半島に対する政策の転換であります。
 わが国と朝鮮半島との間には、日中関係と同じような不幸な歴史が存在したわけでありまするが、朝鮮民主主義人民共和国に関する限り、いまだにこの不幸な関係は全く清算されていないのであります。わが国がいまとるべき道は、韓国への一方的なてこ入れを強化することではなくして、朝鮮民主主義人民共和国とも政府間の接触と交流に努め、それにより朝鮮半島の緊張緩和に寄与し、自主的平和統一の実現に少しでも貢献していくことであらねばなりません。
 第三には、ASEANを初めとし、アジア諸国との真の友好関係の発展を図ることであります。
 覇権とは、単に軍事的、政治的支配を意味するだけでなく、経済的支配もまた覇権行為にほかなりません。わが国が、もしその圧倒的経済力を背景に、アジア諸国の特定政権の延命等に寄与したり、あるいはアジア諸国の民衆の生活に不当な影響を及ぼすようなことがありとすれば、それこそまさしく覇権というそしりを免れないでありましょう。わが国に与えられた使命は、アジアの一員として、アジアの民衆の真のニーズに即した経済技術協力を通じて、アジアの人々の平和と福祉に貢献することであります。その意味で、ややもすれば単に市場や原料供給地としてしか見ないわが国のアジアへの経済進出は、この際抜本的に見直されなければなりません。同じことは、今後の中国との経済交流についても言えるのであります。国家間の真の友好とは、相手が中国であれ、アジア諸国であれ、あるいはどこの国であろうとも、民衆と民衆との触れ合いと理解を通じてのみ生ずるものであります。そこから諸国家間の平和と安定の基礎も生じるのであります。
 願わくは、この歴史的な条約が、わが国と中国との間の民衆の強いきずなの基礎となり、さらにわが国の平和外交戦略の新たなる出発点となることを強く要望して、私の賛成討論を終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
#36
○議長(安井謙君) 渋谷邦彦君。
  〔渋谷邦彦君登壇、拍手〕
#37
○渋谷邦彦君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約の締結について承認を求めるの件に対し、賛成の討論を行うものであります。
 一九七二年九月、長年にわたる日中両国の不幸な関係に終止符を打ち、歴史的な日中共同声明により国交正常化が実現して以来六年余、ようやく日中双方の満足する形で平和友好条約が批准されますことは、まさしくわが国外交史上特筆すべきことであり、心から歓迎するものであります。
 日中両国は一衣帯水の隣国として、一時期を除いては、今日まで長い伝統と友好の関係が保たれてきましたことは歴史にも明らかであります。日中両国間には社会体制の相違はあるにせよ、本条約は日中共同声明の原則と精神を踏まえ、恒久的平和友好関係の確立、国連憲章の原則に基づく紛争の平和的解決、反覇権の取り決めが盛り込まれた画期的な条約であります。特に反覇権条項は、国連憲章の平和原則の精神であり、同時に、わが国の憲法に明示されている恒久平和主義にも合致するものでありまして、過去の暗い軍国主義の反省と戒めとなるべきものであると確信するものであります。
 本条約のもう一つの特徴は、政治体制の異なる国の平和共存のモデルをつくり上げたことであります。自由主義国家と社会主義国家が永遠の友好を誓い合うとともに、双方とも覇権を求めず、他国のそうした試みにも反対することを条約でうたったのは前例のないことであります。したがいまして、本条約の締結は、新たな日中友好の発展にとどまらず、アジアの、ひいては世界の平和安定に寄与するとともに、同時に、わが国の平和外交の基礎となるべきものであることを強く主張するものであります。それゆえに、アジアと世界の緊張緩和、恒久平和達成には、今後の日本政府の外交姿勢と努力が大きく左右することを指摘しておきたいのであります。
 さて、本条約の締結に至るまでの経緯にかんがみ、将来を展望するとき、わが国の置かれている国際環境は決してなまやさしいものではなく、また、政府の外交政策もきわめて多くの問題点を抱えていると思うのであります。それは、大国間の微妙な関係の中で右顧左べんを続けてきた無原則な政府の外交姿勢が国際的な不信を高め、それによって大きな誤解を生み、ひいてはわが国の立場を困難にする危険性をはらんでいるとも言えるからであります。本条約の締結をわが国外交の一つの転換の原点として、厳粛な認識に立ち、従来の場当たり的とも言える外交政策を改め、真の自主・平和・中立の等距離完全中立外交政策を確立すべき必要のあることを強く訴えておきたいのであります。
 わが公明党は、今日まで、日中平和友好関係の確立こそ、わが国の平和と安定、さらにはアジアの発展と繁栄のために欠かすことのできない重要課題であるとの認識に立ち、等距離中立平和外交の観点から、昭和四十六年、わが党の訪中団と中日友好協会との間に共同声明を発表し、日中復交五原則を明らかにしました。また、日中国交正常化実現の直前には、わが党の竹入委員長が故周恩来総理と長時間にわたり、共同声明の骨格について具体的な詰めをいたしました。さらに、本年三月、わが党の第六次訪中団に対し、中国政府より四項目の見解が示され、本条約締結のために基礎的な準備を果たすことができました。
 いずれにせよ、この条約の発効は日中両国の新たな出発点であり、日中共同声明並びに本条約に盛り込まれた精神と諸原則を誠実に履行し、さらにそれを発展させ、子々孫々に至るまで日中間の平和友好関係の樹立を不動のものにすることはもちろん、アジアと世界の平和と安定に貢献することがわれわれに課せられた重大な使命であります。
 私は、政府に対し、本条約の締結を機といたしまして、強力な真の平和外交を推進すべきことを重ねて要望し、賛成の討論を終わるものであります。(拍手)
    ―――――――――――――
#38
○議長(安井謙君) 立木洋君。
  〔立木洋君登壇、拍手〕
#39
○立木洋君 私は、日本共産党を代表して、日中平和友好条約批准案件に対し、賛成の討論を行うものであります。
 日中両国間に平和五原則に基づく友好関係を正しく確立することが、両国関係の今後にとってだけでなく、両国がそれぞれ重要な地位を占めるアジアの将来にとってもきわめて重要な課題であることは言うまでもありません。
 その点で、まず初めに、日中両国の関係を不正常なものにしてきた過去及び現在の事情について明らかにする必要があります。
 第一に、戦前、日本軍国主義が中国に対して侵略戦争を行い、中国人民に甚大な被害を与え、また戦後も、日本政府はアメリカと共同して、台湾政権を中国を代表する正統な政府とみなすという不当な虚構に固執し、さらに、中華人民共和国の領土である台湾を日米軍事同盟の発動地域に加え、中国の主権を侵害する態度を国交回復後の現在もなおとり続けているということであります。
 第二に重大なことは、中国側が、この十余年来、日本国民の運動に対する武装闘争路線の押しつけを図り、放送や出版物でこれを呼びかけ、あるいはにせ左翼暴力集団の暴力と破壊の活動を公然と励ますなど、自分の路線を他国民に押しつける大国主義的覇権主義的行為に出ていることであります。たとえば、昨年の七月十一日の日本向け北京放送は、「鉄砲から政権が生まれる」と言い、武装闘争の用意を公然と呼びかけているのであります。また、両国間の各種の公的な交流においても、こうした押しつけに日本共産党が反対していることを理由に、わが党の党員の排除を要求するといった不法な干渉行為にまで及んでいるのであります。
 今回の条約締結交渉に当たって、中国側は反覇権条項に最後まで固執しましたが、その最大の動機が、特定の国を敵として世界的な共同戦線をつくろうとする中国の特殊な外交路線――三つの世界論と反覇権国際統一戦線論にわが国を同調させる、そのような干渉的押しつけの新たな企てにあったことは言うまでもないところであります。
 このような状況のもとで、わが党は、戦前、あらゆる迫害に抗して中国侵略戦争に断固として反対し、日中両国人民の真の友好と連帯の立場を貫いてまいりました。戦後は、中華人民共和国成立以来、その承認と国交回復、平和五原則に基づく友好関係の確立のために積極的な努力を続けてきました。そして、わが党は、日本国民の運動に対する中国側からの大国主義的干渉と覇権行為に対して、その誤りを道理をもって指摘し、いかなる不当な干渉も許さない自主独立の態度を確固として堅持してきた政党であります。
 わが党は、本条約の審議に当たり、以上の立場から、この条約が今日の両国関係の複雑な現実に照らして、平和五原則に基づく両国関係を正しく確立する上で具体的にどのような意味と役割りを持つかを徹底的に解明することを重視してきたのであります。これは、日本の進路に対する政党としての当然の責任であります。
 その結果、わが党は、次の諸点に関し政府答弁が明確にした日中間の合意や日本政府の公的解釈を確認し、それを条件として、本条約承認案件に賛成の態度を表明するものであります。
 その第一は、この条約の最大の問題点である反覇権条項に関して、政府が、反覇権は特定の第三国を指したものではないということ、覇権行為の認定は日中両国がそれぞれの立場とやり方で自主的に行うということ、この条約によって日本と中国の共同行動が義務づけられるものではないということについて日中間の合意があると答弁したことであります。また、政府は、日本の外交がこの条約によって、中国側の特殊な外交路線に拘束されるようなことはないし、日中あるいは米日中の同盟につながるものでは絶対にないということを繰り返して言明しました。
 第二は、中国のわが国に対する内政干渉について、政府が、他国にその意思に反して自分の意思を押しつける政治的強制や干渉は、力の行使に直接よらない場合も、この条約が反対している覇権行為の内容に含まれることを明らかにしたことであります。中国側の特定の路線の押しつけや、中国への入国に際しての不当な差別を不正常であると認め、その改善の努力を約束しました。
 第三は、政府が、尖閣列島をわが国の歴史的領土とみなす正当な立場を貫くことを言明し、また、この問題が中国側から両国間の紛争問題として再び提起されることはないだろうという見通しも明らかにしたことであります。
 わが党は、政府が、これらの言明を日本国民と世界に対する公約として厳格に実行するとともに、いかなる干渉をも黙過せず、条約に明記された平和五原則をかたく守ることを強く要求するものであります。しかし、同時に、日中平和友好条約の成立によって日中両国間の平和五原則に背く不正常な関係が全面的に解決されたことを意味するものでないことを率直に指摘しなければなりません。
 すなわち、アジアの平和を脅かす覇権主義の性格を持った日米安保条約による日米軍事同盟の強化と日本軍国主義復活の策動が、軍事ファシズムにほかならない有事立法を含めて、強力に推進されているのであります。一方、対ソ戦略の思惑から日米軍事同盟賛成に方向転換した中国政府が、本条約成立を機会に、両国間の軍事的交流の促進を初め、日本をその外交・軍事戦略に巻き込もうとする要求を一層あからさまにしつつあるのであります。こうした状況のもとで、もし政府の言明が厳格に実行されないようなことがあるなら、この条約が力の立場に基づく大国間の抗争に日本を巻き込む新たな契機となる危険があるのであります。
 また、日本国民の運動に対する中国側の政治的干渉や覇権主義的行為が清算されていないことも、平和五原則に基づく両国と両国国民の真の友好関係にかかわる重大問題であります。私は、日中両国が「そのいずれも……覇権を求めるべきではなく」とした誓約が厳重に守られるべきであるという立場から、今後の中国側の動向を厳しく見守るものであります。
 台湾問題についても、政府は、台湾が中華人民共和国の不可分の領土であることを承認しようとせず、日米安保条約の極東条項や一九六九年の日米共同声明の台湾条項に対する態度を依然として変えておりません。
 私は、これらの諸問題がわが国の将来と日中両国人民の真の友好、アジアの平和に重大なかかわりを持つことを強く指摘するとともに、わが党が今後とも事態の展開と日本政府の態度を注視しつつ、問題の原則的解決のために国民とともに積極的に努力することを重ねて表明しまして、討論を終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
  〔和田春生君登壇、拍手〕
#40
○和田春生君 私は、民社党を代表し、日中平和友好条約の承認に賛成の立場から討論を行います。
 このたび締結調印された本条約は、日中共同声明以来六年にわたる懸案がここに解決を見たという点において、まことに意義深いものがあります。条約条文中わが国の主張をほぼ実現した日中平和友好条約の締結を歓迎するとともに、この条約交渉に当たり、福田総理、園田外務大臣を初め、関係者各位の払われた御努力に心から敬意を表する次第であります。
 しかし、およそ国家間の関係や条約には表裏があり、積極的な面とネガティブな面もあります。また、二国間関係の発展が、当事国のみにとどまらず、周辺諸国を含め、国際情勢にさまざまな波紋を描くこともしばしば見られるところであります。その積極面にのみ目を奪われ、新たな期待感の波の中に看過し得ない問題点を埋没させてはなりません。
 翻って、日中共同声明以来の中国側の体制や外交戦略の幾変遷を顧み、条約交渉が難渋した経緯や、本院審議における政府側の説明、答弁などを率直に検証いたしますに、歓迎し首肯に値するものとともに、かなりの疑念をも禁じ得ません。しかし、いまこの時点に立って、すでに締結調印済みの本条約について、その利害得失を大局的に勘案した場合、これを承認することに、わが国益を開き世界の平和に寄与し得る道ありと判断し、本案件に賛成するものであります。したがって、あえて表現すれば、手放しではない賛成というのが私どもの偽りのない立場であります。
 以下、その主たる理由を四点にわたって述べたいと思います。
 まず第一は、条約第二条の反覇権条項であります。
 覇権反対が国際間の一般的、普遍的な原則として承認されることには、もとよりもろ手を挙げて賛成であります。しかし、われわれのこの主張と、主要な敵をソ連とし社会帝国主義反対の反覇権統一戦線結成を目指す中国の立場との間には、越えがたい決定的なみぞがあります。この彼我の間の深いみぞのゆえに条約交渉も難渋を重ねたという事実は何人の目にも明らかであります。そのみぞは、今回の友好条約締結によっても埋められておりません。第四条のいわゆる第三国条項を設けることによって、それぞれの立場を留保しながら本質的な問題の回避が図られたわけであります。その点、事をここまで運んだ政府の精力的な外交努力を多とするにやぶさかではありませんが、一方、反覇権条約の成立について、外交辞令は別とし、諸外国の論調の多くが中国外交の大成功と称していることも見逃がし得ないところであります。そうまでして反覇権条項を本文化したことにいかなるメリットを考え得るでありましょうか。対ソ関係を初め、今日の国際情勢にあっては、それがデメリットとしてわが国に反作用を及ぼす危険性の方がはるかに大であります。ポスト日中条約の外交政策上、重ね重ね賢明な配慮と慎重な言動を要望する次第であります。
 第二は、条約締結を契機とし、過熱ぎみとさえ見られる日中経済関係についてであります。
 日中経済協力の進展と中国の四つの近代化政策とは不可分の関係にありますが、経済力と軍事力の間には境界がありません。たとえば、鉄鋼は軍備の主要な材料の一つであり、石油もしかり、高度のコンピューター技術は近代兵器の管制誘導システムに不可欠のものであります。中国政府は、四つの近代化のうち、とりわけ軍事力の近代化と増強のために、工業と技術の急速な近代化を求め、日本を含む西側先進工業国との経済的提携に積極的な意図をいささかも隠そうとはいたしておりません。日中経済関係の発展が必然的にもたらす中国軍事力の強大化が、いつの日か周辺諸国への脅威の要因となり、ひいてはわが国の立場にネガティブな影響をもたらすおそれがあるのであります。
 いまや世界屈指の経済大国となり、大きな対外影響力を持つに至った日本は、わが国政府や国民の主観的意図にかかわらず、国際的なパワーゲームの外に超然とすることは現実的に不可能な地位に置かれております。その日本が、日本的観念で経済と軍事力を形式的に引き離し、ひとりいい子になろうとしても、他の国から素直にそのまま理解されるとは考えられません。日中条約の締結に浮かれることなく、また、政府と経済人が目先の利に走り後でほぞをかむことにならないよう、特に注文をつけておきたいところであります。
 第三は、尖閣諸島の問題についてであります。
 本件について、日本政府は、日中条約交渉におけるケ小平副総理の言明に信頼し、一件落着とする態度を示しておりますが、事の本質に対する理解のずさんさには深刻な不安を覚えざるを得ません。ケ副総理を初め中国政府首脳は、尖閣列島領有権の主張を決して取り下げてはいないのであります。それどころか、文献が示すように、「尖閣列島確保の工作を波状的に継続することが、台湾問題とからめ、やりがいのある工作である」旨を別の機会に強調しているのであります。
 さて、現状のまま過ぎれば、尖閣周辺海域に紛争が生じないといたしましても、伝えられるごとく、中国政府も早晩二百海里経済水域実施の意向であるとしますなら、その事態を迎えたとき、日本も同様、線引きで対応せざるを得ないのであります。そのとき、尖閣諸島領有権の問題は、二百海里海域と中間線の線引きにとって決定的な争点となります。尖閣諸島が日本固有の領土たることについては疑念はいささかもありません。しかし、他方、中国政府の言動が示すところによれば、中国側が領有権の基本的な主張を引っ込めるという保証はどこにも見当たらないのであります。二百海里と大陸だなをめぐり、今後日中間における深刻な課題となり得る尖閣諸島について、政府が甘い期待をぬぐい去り、厳しい姿勢と的確な外交戦略で臨まれるよう、警告を含めて要望しておきたいと思います。
 他にも多くの問題点が認められますが、いずれにせよ、日中条約の締結は、問題の帰結というよりも新たな課題へのスタートであります。この条約が世界の平和に真に寄与する基礎となり得るか否かは、わが国と中国双方のこれからの対応いかんにかかっていることを深く銘記したいと思うのであります。
 さて、最後の問題は、台湾地域を含む東アジアの安全保障と、中華民国政府との事実関係の将来についてでありますが、この点については、本院外務委員会の質疑を通して、変化を望まず、現状の維持を好ましいとする政府の意図を承知いたしましたので、個々の問題に重ねて言及はいたしません。日本との正式国交が絶たれたとはいえ、現に中華民国政府の統治下にある台湾地域など約二千万人に近い民族の大多数も、また、かつての日本による侵略と植民地支配の被害者であります。しかも、この人々とその国とは、いまに至るまで、日本国と日本人には恩讐を越えて親愛感を抱き続け、よりよき交流を発展させてきた点で、特筆すべきあり方を示していると言わねばなりません。こうした歴史と経緯の上に現在の事実関係が存在しているわけでありますから、今日、日中平和友好条約が締結されたもとにあっても、この関係を大切に考え、日本側から傷つけるようなことがあってはなりません。それは、国家間の公式関係やパワーゲームののりを越え、日本人の心と生きざまの問題であると信ずるからであります。
 以上の所見を特に付して、私の賛成討論を終わります。ありがとうございました。(拍手)
#41
○議長(安井謙君) これにて討論は終局いたしました。
 これより採決をいたします。
 本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#42
○議長(安井謙君) 過半数と認めます。よって、本件は承認することに決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後五時三十二分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト