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1978/10/19 第85回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第085回国会 物価問題等に関する特別委員会 第4号
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1978/10/19 第85回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第085回国会 物価問題等に関する特別委員会 第4号

#1
第085回国会 物価問題等に関する特別委員会 第4号
昭和五十三年十月十九日(木曜日)
    午前十時三十分開議
 出席委員
   委員長 美濃 政市君
   理事 加藤 紘一君 理事 片岡 清一君
   理事 平泉  渉君 理事 堀内 光雄君
   理事 武部  文君 理事 中川 嘉美君
      鹿野 道彦君    関谷 勝嗣君
      中村  靖君    西宮  弘君
      長田 武士君    宮地 正介君
      藤原ひろ子君    依田  実君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣
        (経済企画庁長
        官)      宮澤 喜一君
 出席政府委員
        公正取引委員会
        委員長     橋口  收君
        経済企画庁調整
        局長      宮崎  勇君
        経済企画庁国民
        生活局長    井川  博君
        経済企画庁物価
        局長      藤井 直樹君
        経済企画庁調査
        局長      岩田 幸基君
 委員外の出席者
        法務省民事局参
        事官      青山 正明君
        通商産業省立地
        公害局保安課長 水野  哲君
        資源エネルギー
        庁石油部流通課
        長       廣重 博一君
        資源エネルギー
        庁公益事業部ガ
        ス事業課長   内田 禎夫君
        運輸省鉄道監督
        局民営鉄道部長 石月 昭二君
        特別委員会第二
        調査室長    曽根原幸雄君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 閉会中審査に関する件
 物価問題等に関する件
 請 願
 一 ネズミ講禁止法の立法化に関する請願外一
   件(近江巳記夫君紹介)(第六二七号)
 二 同(美濃政市君紹介)(第六二八号)
 三 同外一件(片岡清一君紹介)(第七七五
   号)
 四 同外二件(米沢隆君紹介)(第九二七号)
 五 輸入農産物・石油製品等の円高差益還元に
   関する請願(安田純治君紹介)(第一四〇
   九号)
 六 ネズミ講の禁止、規制措置確立に関する請
   願(田中伊三次君紹介)(第一四一一号)
 七 同(加地和君紹介)(第一五〇八号)
 八 同(玉置一徳君紹介)(第一五〇九号)
 九 同(西中清君紹介)(第一五一〇号)
一〇 同(野口幸一君紹介)(第一五一一号)
一一 ネズミ講禁止法の立法化に関する請願(藤
   原ひろ子君紹介)(第一六一六号)
一二 同外一件(横路孝弘君紹介)(第一八〇八
   号)
一三 ネズミ講の禁止、規制措置確立に関する請
   願(藤原ひろ子君紹介)(第一六一七号)
一四 ネズミ講禁止法の立法化に関する請願(藤
   原ひろ子君紹介)(第二一一三号)
一五 同(藤原ひろ子君紹介)(第二四七七号)
     ――――◇―――――
#2
○美濃委員長 これより会議を開きます。
 まず、本日の請願日程全部を議題とし、審査を行います。
 請願の趣旨につきましては、すでに文書表によって御承知のところであり、また、その取り扱いにつきましては、理事会においても協議いたしましたので、その結果に基づき、直ちに採否の決定に入りたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○美濃委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 それでは、本日の請願日程中、輸入農産物・石油製品等の円高差益還元に関する請願一件を採択の上、内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○美濃委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 ただいま議決いたしました請願に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○美濃委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
#6
○美濃委員長 次に、閉会中審査申し出の件についてお諮りいたします。
 本委員会といたしましては、閉会中もなお審査を行うため、物価問題等に関する件について、議長に対し、閉会中審査の申し出をすることとし、その手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○美濃委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 次に、閉会中審査案件が付託された場合の諸件についてお諮りいたします。
 まず、閉会中委員派遣の必要が生じた場合には、派遣委員の選定、派遣地、派遣期間等につきましては、委員長に御一任願い議長の承認を求めることにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○美濃委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 次に、閉会中審査のため、参考人より意見を聴取する必要が生じた場合には、人選その他所要の手続等につきましては、あらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#9
○美濃委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
     ――――◇―――――
#10
○美濃委員長 次に、物価問題等に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平泉渉君。
#11
○平泉委員 本日は、今回の国会の最終段階でございます。十分時間がとれません。
 先般、八月に恒例の経済白書が政府によって発表いたされました。まだこれを十分審査する機会がございませんでしたので、きょうは非常に簡単でございますが、この経済白書につきまして直接担当の宮澤国務大臣また関連の局長さん方に――経済白書は言うまでもなく、わが国の経済全般の問題について非常にアンビシャスなプロジェクトでございますから、財政当局や各経済官庁にいずれもわたる広範な問題でございます。きょうは時間もございません。そうたくさんの方をお呼びするのも大変でございますから、ごく一部の方しかお呼びをしておらないわけでございますが、御答弁をいただきたいし、勉強さしていただきたいと思うわけでございます。
 ことしの経済白書は、昨年の経済白書と比べますと非常に慎重になっておられるという印象をまず受けるのであります。大変印象的で恐縮でございますが、昨年はたしか安定、均衡への道か何か、そういうことでかなり安定的均衡の道に進みつつあるんだ、均衡が回復しつつあるんだという副題でございました。倉成長官の名前の白書があったわけでございます。このたびの宮澤長官の白書は、副題は構造転換を進めつつあるということでございまして、宮澤大臣卸自身も公表に当たっての文書の中では、非常に美観を許さない問題があるとか転換をしなければならぬということを言っておられますし、また「はじめに」というところでも経済の足取りも不確かなものである――どうも、去年と比べて大分慎重になっておられるというか、感じが違ってきておると思うわけであります。
 それと関連しまして、実はこれが八月に出るに先立って、宮澤大臣は牛場大臣とともにOECDの第十七回閣僚理事会を議長として主宰をされまして、この閣僚理事会でも先進諸国の経済政策の全般にわたる非常に広範な問題を取り上げたコミュニケが出されております。それに引き続いて本年の七月十六日及び十七日、いずれもこの経済白書の直前に、言うまでもなくボンで首脳会談が行われて、OECDの閣僚理事会を恐らく直接受けた形で、各国首脳が経済施策の重要な問題についての発言をしておられるわけであります。
 恐らく、こういったものを全部受けられての今度の経済白書ではないかと私は思うわけでございまして、その辺の経緯といいますか、どうもまだ国会では、非常に国会自身が、先般も私委員長に申し上げたように、いささか古めかしい機構でありまして、経済政策全般を取り扱う適当な場所が十分に備わっておらないということで、どうもその辺がまだ国会で明らかになっているのかいないのか、あるいはもう商工委員会なり外務委員会でばらばらに行われているのか、よくわかりません。とりあえず、物価という経済の先端現象をとらえて実は経済の本質に迫ろうとする本委員会で、こういったまず経済白書の成り立ちの点について、直接最も担当しておられる宮澤大臣からお話を承りたいと思うのであります。
#12
○宮澤国務大臣 OECDの閣僚理事会についての御観察とこの経済白書ができました背景と、非常に広い問題についてお尋ねがあったわけでございますけれども、一九七三年から起こりました石油危機が起こしましたいろいろな問題が、世界の先進国を今日も非常に悩まし続けておるわけでございますが、石油危機以前の状態に先進国の経済がもう一遍戻れるという状態ではどうもなさそうでありまして、やはり石油危機の後遺症が一つ一つ解決をしていくといたしましても、その後の世界の先進国の経済は、石油危機以前の先進国の経済とはやはりいろいろ変わってくるのではないかというふうに思われます。わが国につきましても、そのことはある程度やはり言えるのではないかという感じがいたしております。
 一つは雇用の問題でございますが、先進工業国がある程度の生活水準にすべて達しておりますから、現在の失業者、ことにヨーロッパの場合には若年失業がかなり多くなって社会問題になっておるわけでございますけれども、この人たちはいわゆる食えないから何でも仕事があれば喜んでするというような種類の失業ではないようでありまして、ある意味では社会福祉政策が進んだせいもあろうと思いますけれども、自分の気に入った仕事でなければ喜んで就業しないというような新しい物の考え方をし始めておるのではないかと思われます。
 わが国の場合には幸いにして――幸いにしてという言葉は適当でないかもしれませんが、失業は若年層よりは中高年齢層に出ておりますので、いわゆる若い人中心の社会不安というものは西欧に比べますと出ておりませんけれども、しかし仮に失業対策事業でも起こせばこの中高年齢層がすぐに就労するであろうかといえば、必ずしもそうではないらしい傾向はわが国にも見えておるわけでございます。
 ただいま雇用のことだけを例にとって申し上げたわけでございますけれども、それ以外にも、世界的に見ましていわゆるブレトンウッズ体制の崩壊というものはほぼ明らかでありますし、それにかわる体制が具体的な形をとってあらわれつつあるわけでもない。これも石油危機以前の体制に戻れそうにはないというふうに考えられます。
 他方で、いわゆる発展途上国がかなりのものがテークオフの段階を過ぎまして、新しく工業国家として世界市場にあらわれようとしておりまして、これはそういう意味で先進工業国家の経済社会のあり方に変革を迫るような力になりつつあると思われます。
 これらのことをいろいろ考えますと、石油危機以前の先進工業国家グループの世界にもう一遍戻れるというふうにはどうも考えにくい。しかし、それならば新しい姿というものはどういうものであろうかということもはっきりいたさない。そういうところにいまわれわれはいるのではないかと考えております。
 わが国は石油危機には比較的巧みに対処をした、あるいは世界の中で一番上手ご対処をした国であるかもしれないと思いますけれども、そのわが国ですら、ただいま申し上げましたようないろいろな問題に直面しております。それは、一言でいえば日本経済そのものが構造転換をしなければならない事態に立ち至っている、こういうふうに考えておりまして、したがいまして経済白書の副題もそのようにつけてみたわけでございます。
#13
○平泉委員 この首脳会談のコミュニケというのは、よく読んでみるとそれほど大したことは書いてないのですね。非常に簡単でございまして、実際こういうことをやるんだということは書いてありますけれども、分析なんかは余り十分行われていない。というのは、むしろOECDの閣僚理事会の方に譲られたのではあるまいか。大体それを踏まえているのだという文言がある。この閣僚理事会の内容と経済白書の内容がかなり似ておるのであります。
 いま大臣からもお話がありましたけれども、特に大臣がおっしゃったことの中で私が注目いたしましたのは、石油危機以前の経済状態には戻れそうもないのではないかということを何度も繰り返しおっしゃっておるわけでありまして、これは非常に大事なことではないか。それを今度は政治の面で、あるいは社会の風潮の上でどういうふうに具体化するのかということが実はなかなかわからない問題でございまして、不確かなわけでありますけれども、その辺の認識をもう少し深めてみる必要がある。その意味ではことしの経済白書は非常に重大な内容がたくさん含まれているように私は思うわけであります。
 そこで、少し具体的に進めますが、たとえばこの白書自身が非常に不確かなんですね。これは率直に言いまして、不確かなのは非常に正直なのかもしれません。しかし、たとえば、国際的には順調に脱却したというような文言が第一ページの冒頭にあるわけでありますが、一方その後に、十分満足すべき状態でないというのがあります。それから最後の結びの段階では、いま非常にむずかしい重要な段階に来ているのだ。ここのところをちょっと読みますと、二百七十三ページ「むすび」の冒頭ですが、「我が国経済の現局面の複雑さを示すと同時に、今後の対応が決して容易なものではなく、短期的な量気循環的側面と合せて、中長期的な国際的側面、経済構造的側面からの針路の設定が今ほど重要な時はないことを示唆しているように思われる。」
 これを見ますと、いま剣が峰にいるのだというような感じであります。順調に脱却しつつあると冒頭で書いておられて、最後のところを見るとこういうふうに書いてありまして、全体が非常にアンビバレントと申しますか、慎重と申しますか、また逆にちょっとわかりにくいところがある。私は本当はこれが正直なところではないかと思いますけれども、まさにこういう状態であるならば、たてまえをもっとはっきりと打ち出していただいた方があるいはよかったのではあるまいか。政府の政策というのは、どうしてもいろいろな関係があって楽観的な方に傾きがちな説明を政治家はしたがるし、また、した方が景気がよく聞こえるわけであります。ところが、よく読んでみると必ずしもそうでもない。私は先般、当院を代表する議員団としてOECDと欧州評議会との討論国会みたいなところに出張を命ぜられて行ってまいりました。その席でも私は私なりにそういう演説をしてまいったのであります。こういう現下のような経済情勢では、えてして発言というのがロージーなピクチャーを描きがちになるけれども、むしろ政府側が国民諸君に対して率直に経済の実態というのを明らかにすることは政府の大きな責任ではあるまいかということを述べたわけであります。今般の経済白書をよく読んでみますと容易ならざることが書いてあると私は思うので、その点について担当大臣のコメントをいただきたいと思います。
#14
○宮澤国務大臣 石油危機が起こりましたときに、わが国初め各国が考えましたことは、将来必要とする石油資源を買い得るか、それだけの外貨を持ち得るかということであったと思います。この点は、今日わが国はその問題を処理してしまいましたけれども、まだ西欧先進工業国の中にはいわゆる国際収支の回復に必死になって努力をしている国が多々ございまして、そういう国にとっては、当面の目標は国際収支の回復であるということで比較的問題の焦点をしぼりやすいわけでございますが、実はわが国はその問題は処理をしてしまいまして、今度は逆の問題にぶつかっておるわけでございます。西欧諸国が的をしぼっておるその問題を処理してしまっておるだけに、そのほかの問題の帰趨というものがわれわれの当面の課題であるわけでありまして、しかもそれが、ただいま平泉委員の言われましたように、一口に経済構造の転換と言えば何かわかったようでありますけれども、実はそこのところがどういうふうな形に転換をしていいのか、正直に言えばはっきりしたビジョンが描けるわけでもございませんし、いわんやそこへ到達する道行き、経路というものも本当はよくわからない。そういうことがございますものですから、わが国は一つ国際収支の問題の処理をしてしまいましただけに、次にとりかからなければならない問題とその行き着く姿というものがはっきりしないというのが現状ではなかろうかと思います。そういう意味では、国際収支そのものに取り組んでおる西欧の多くの国よりはわが国の方がもう一つ先の段階でむずかしい問題に取り組もう、しかしその問題はなかなかうまく転位できない、解決策もよくわからない、そういったようなことが御指摘になっております白書の中のいろいろな、あるときには楽観的に、しかしあるときにはいろいろな疑問を提出する形で叙述がなされておるということなのではないかと私は考えております。
#15
○平泉委員 少し先へ進みまして、景気の問題です。
 先般も前通常国会の末期に宮澤長官にその点を伺ったと思いますが、今回も公共投資をどんどんやって、年の前半はうまくいったのだけれども、後半はどうかということを白書も非常に心配しております。六月ごろは長官も、大変今度は本物だと言っておられましたが、ことしはどうでございましょう。
#16
○宮澤国務大臣 いま感じておりますことは、政府が公共投資主導で不況の克服を図りつつあるその努力は、私はまず順調な軌道の上にあると考えておりまして、四−六月における実質成長は一・一という相当低いものであったには違いありませんけれども、しかし国内需要に関します限り二・三でございますから、これは九・四、五%の年率になっております。今後七−九月あるいはその後を想像いたしてみますと、ただいまの情勢である限り、内需が非常に落ち込むというふうには恐らく考えなくていいのではないか。たとえば昨年の七−九は内需がゼロになってしまったわけでございますけれども、そういう情勢ではなさそうだと考えますので、内需に関する限りは、まずまずいいところに来ておるのではないかとただいまは考えております。
 問題は、こうやってわが国が政策努力によりまして、また円高もございますけれども、輸出を減らしていこう、それから輸入、ことに製品輸入をふやしていこうということから来ますところの内需以外の海外関係の要素が当然のことながら成長の足を引っ張るわけでございまして、年度を通じましてその足を引っ張るマイナスの寄与というものが、七%に対して一・二%ぐらいはどうも見込まざるを得ないであろう、あるいはそれで済まないかもしれないというような感じすらいたします。ということは内需は七%では済みませんで、それをカバーするだけの、仮に八・二%とかなんとかいうものがございませんと、ネットで七%にならないことになりますので……。これは輸出を何とか抑制しなければいけない、輸入をふやしていこうというのは、われわれの国際的な関係から見ました政策努力の目標でございますので、それ自身は簡単に変えるわけにはまいらない。しかし他方でそれが成長の足を引っ張るという、その間のトレードオフの関係がかなりはっきりしてまいりましたものですから、内需そのものはまず順調な軌道に乗っておると考えますものの、それが海外経常余剰のマイナス要因をカバーできるほど強くいけるかどうか、そこのところをいまの段階では注目をいたしておるところでございます。
#17
○平泉委員 白書は、在庫の調整が済んでいないために、従来は公共投資の効果がなかなかあらわれない、これは公共投資自身の経済効果が変わったのではなくて、単に在庫調整が終了していなかったからだという説を繰り返し述べておるのですね。そして在庫調整はほぼ終了したと判断をしておる。そして今後はもう最終需要の問題だ、こう言っておるようでありますが、この辺、確かにそれは言い切れるわけでしょうか。
#18
○宮澤国務大臣 この点は昨年の暮れからことしの春にかけまして、本院でもずいぶん御議論になったところでございましたけれども、結果として、振り返ってみますと、私どもが申し上げていたこと、あるいは白書が述べておりますことが、ほぼ現実に的中しておったということを申し上げられるのではないかと思います。それは当時世の中でいろいろな議論がございましたことは御記憶のとおりですけれども、異論を持っておった方々も、いまとなりましては大筋ではやはりそうであったということを認めておられるのではないかと思います。その後夏になりまして、なお在庫が統計の上では減り続けておりますけれども、これは別の要因によるもののように思われます。すなわち、この夏場に家庭電機関係のいろいろな機具、施設、クーラーでありますとか、冷蔵庫でありますとかいう、いわゆる白物と言われるものでございますが、非常に売れて、実はこの在庫が底をついてしまったというようなこと、あるいは建築公共事業等の関係で、銅でありますとかアルミニウムでありますとかいうものの需要が起こってきて、そこの在庫がまた減り始めておるといったようなことの反映であって、一般的に在庫調整は夏前にはほぼ終了をしておったというふうに考えてよろしいのではないかと思います。
#19
○平泉委員 そうすると最終需要……。従来日本経済は、ここにも書いてありますように、設備投資主導型で来た。この設備投資がどうも今回はうまくいっていない。そこに大変大きな需要ギャップが出てしまっておる。設備投資の動向についていま現状をどう御判断でございますか。
#20
○岩田政府委員 設備投資の動向でございますが、昨年とことしとでは大分設備投資の意欲が変わってきたというように考えております。それは白書でも書いていることでございますけれども、確かに現在まだ国全体といたしますと、デフレギャップが相当ある、過剰設備があるということは間違いないわけでございますが、昨年まではちょうど高度成長時代の後遺症と申しますか、たとえば鉄とか化学とかいうような重化学工業部門で、継続工事が相当昨年までは続いておりました。その関係で、一方で生産がふえてまいりましても、一方で生産能力が依然としてかなりのテンポでふえるというような情勢がありまして、なかなか思うようにデフレギャップが縮小しなかった。しかし、昨年いっぱいでほぼこの継続工事も終わりまして、生産能力はことしに入りましてからは余りふえないというような状態になってまいりました。恐らくデフレギャップは今後はかなりのテンポで減っていくのではないかというような局面の変化が一つございます。そういうことを反映したものでもあると思いますけれども、御承知のように、ことしの四月あるいは七月、さらに九月というように、開発銀行とか日本銀行とか長期信用銀行とか、いろいろの銀行がことしの設備投資計画の調査をやっておりますけれども、期を追うごとにこれは上方修正をされてきております。そしてごく最近では、名目で申しますと、前年に比べましてほぼ一五%から一七%ぐらいふえるというような数字になってきております。また現実に機械の受注の動きなどを見ましても、そうした傾向がはっきりあらわれてきているわけであります。
 それからまた設備投資の中身も、確かに大きく設備投資を引っ張っておりますのは、電力関係の設備投資でございますけれども、最近ではそのほかに、製造業で申しますと、ビール等の食品工業あるいは備蓄投資の関係だと思いますけれども、石油精製業あるいはセメントというようなところで設備投資需要が出てきておりますし、また非製造業部門で申しますと、マンション等の不動産業それから流通産業あるいは金融機関等といったように、電力以外の部門でも、限られた部門ではございますけれども、かなり設備投資意欲が出ている。そうした意味で考えますと、昔のように設備投資がどんどんふえていくということではもちろんございませんけれども、昨年、一昨年と比べますとやや設備投資需要もふえ始めているという判断をしているわけでございます。
#21
○平泉委員 ことしの見通しとして最終的にGNPの中でどのくらいのパーセンテージでございましょうか。
#22
○宮崎(勇)政府委員 現在の設備投資の状況につきましては、ただいま調査局長から御報告がありましたとおりで、徐々に回復をしております。まだ製造業で見ますと基調は弱いわけでございますが、特に非製造業で電力を中心にして伸びております。今回補正予算の提出とあわせて経済見通しを改定いたしましたが、その見通しにおける設備投資は本年度名目で二%前年度に比べてふえるという予測になっております。中身は、製造業が昨年に引き続きまして若干の微減、非製造業が伸びるという形になっております。
#23
○平泉委員 昔のようなGNPの中における大きな比率を占めるほどにはなりそうもないが、かなり明るくなってきたというお話であります。白書の中では、企業の適応はかなり進んできておるのだ、ただ家計の方の問題というのが一つ出てきておりまして、また先般も宮澤長官と私、議論というか問答をいたしましたが、貯蓄の問題が出ておりました。高貯蓄というごとについて経済政策全般から見るとかなり問題がある。これは私、先般も貯蓄はいいことじゃないかという説を唱えたのでありますが、どうも経済企画庁内部では貯蓄という問題は非常に頭を悩ませておられるような節々が見られるわけであります。そこで、頭を悩ませているということは、高貯蓄の理由は何かというところで大分分析をしておられて、白書の中ではその中をいろいろ分析をして計算をしておられると思うのであります。私はその中に書いてあることはみんな正しいと思うのですけれども、特に私は、消費性向が石油危機後減ってきておるのは日本の特徴的な現象ではないかという感じがいたします。これは私、専門家ではありませんし、資料もありませんから私の勘で言うわけでありますけれども。先ほど長官がおっしゃった石油危機以後はもう余り同じふうにはならないんだ。それか一つは消費が余り減らないところ、アメリカや西欧では国際収支が赤字になってもいいというような形で、消費の方は全然減らない場合もある。日本の場合はがくんと消費が減っておる。ことに家計消費が減っておるという形で、国際収支の方は早急に黒字化してしまうというような関係が恐らくあるのではないか。これはやはり日本人というのが石油危機に対するショックでユニークな対応の仕方をしておることのあらわれではあるまいか。現に当時の経済企画庁長官だった福田現総理も声高に、省資源時代の到来でありますということを言われた。一つの発想の仕方として非常に日本的じゃないかと私は思うのです。もう資源はないんだ、しかし、資源はないのにどうして経済成長ができるのか。今度の首脳会談でも、資源が非常に減少しておるけれども経済成長はしなければならないんだ、だから、ことにエネルギーの消費との関係のレシオを〇・八に抑えるんだということを首脳会談としては非常に珍しく技術的なことまでつかみ出して言っておられるのです。確かにそこによりむずかしい問題があって、ことに日本のように資源を外国から買わなければならない国というのは石油ショックのようなものに対する対応の仕方か非常にヒステリカルというか心理的な打撃が大きくなってくる。そうすると、消費マインドというのが非常に萎縮してしまうのではないか。白書も、たとえば縮こまったというようなことをどこかで使っておられましたが、そういうまさに心理の動きというのが非常にあって、それが個人の家計の場合では何よりも貯蓄という形でしかあらわれざるを得ない。個人というものは弱いものでありますから、それ以外の方法はないわけです。貯蓄しておけば何か役に立つのかということで貯蓄になってしまう。それが結局一億一千万の国民で積もり積もれば膨大な額の経済に循環しない資産というようなものが出てしまうということなんだろうと思うのでありますが、私は、その辺が非常に深刻な問題で、だから、これはおまえの方に金が余っているんなら税で取るぞ、そして国が使ってやろうという解決も確かにあるだろう。理論的にはあるだろうけれども、果たしてそれで問題の解決になるのか。ただ、しかし、国民が個々で貯蓄をしておるというのが全体として見れば非常な国民経済のマイナスになるというのは有名な経済学の初歩理論にございます。この貯蓄をどう活用したらいいのかというのはまさに日本に特有な重大問題ではないかと私は思うのです。これを単にとにかく使ってくれと言って騒ぎ回るのか。これは恐らくアメリカやヨーロッパの政治家は考えなくていい、むしろ全然逆なことを心配しているんだろうと私は思うのです。日本の場合はまさにこれを心配しなければならぬ。そこのところをまさにユニークな経済政策をぜひ打ち出していただきたい。単に困る困るという話でなしに、あるいは税で取るぞ――どうもちらほら最近財政当局の方から、おれの方はとても大変なんだ、そんな国民が余っているんなら税で取るぞ、それは非常にわかります。その心理は、財政当局の気持ちとしては非常にわかりますが、果たしてナショナルエコノミーがそれで、うまく運営されるのかどうかは、私ははなはだ疑問があるような気がいたします。というのは、国民のサイドには非常に不安感が起きている。取られてしまうのは困る。私が演説してはいけませんから、その辺、大臣の方から御所見を承りたいのです。
#24
○宮澤国務大臣 これは一人一人の経済政策の考え方によって違ってくるのだと思いますけれども、私自身は、どちらかと申しますと、小さな政府、大きな政府と言いましたときに、わが国の場合には比較的小さな政府の方が国民経済にとってはいいのではないかという考え方を原則としてはしておりますから、いま平泉委員の言われたようなことの意味を私なりによく理解ができるつもりで伺っておりました。他方で、しかし、いまの段階を考えますと、国全体のインフラストラクチュアはかつての高度経済成長時代の結果もありまして相当おくれております。したがって、この際は、原則は小さな政府を好ましいと思いますけれども、かなりそういうインフラストラクチュアの手当てをしなければならないし、また経済情勢から見て、それがやれるいい機会であるというふうに思われます。したがいまして、そのように国民に貯蓄があることはそういう観点からは望ましいことであると思います。
 問題は、それをいかにしてインフラストラクチュアに導入するかということになるはずでありまして、ある部分は税金という形になるのもやむを得ないかもしれないと思いますけれども、必ずしも税金という形をとりませんでも、国債の発行という形で金融資産と取りかえる形で処理できないわけではない。でありますから、そういう貯蓄超過という国民経済のバランスはそういう形でわが国の場合には十分に有意義に使い得るのが現状であると考えておりますので、政府もそういう形で今年度の予算も編成しておりますし、来年度もそういうことになるであろうと思っております。しかし、そういう仕事がいつの日にかほぼ完成いたしましたときには、もともと経済活動は市場経済で行われるのが本来でありますから、現在のような高い貯蓄でなく、もう少し国民が自由に、いろいろな意味での消費をしてくれる、広い意味での消費をしてくれるということは好ましいことであろうと存じますけれども、幸か不幸か、恐らく幸いだと思われますが、わが国の場合には、現在そのような貯蓄超過を国民全体の資産として将来に残していけるようなチャンス、あるいはそれだけインフラストラクチュアが不足であるということでございますけれども、そういう機会に恵まれたと私は考えるわけでございます。
#25
○平泉委員 私、同意見でございます。まさにその辺をぜひ打ち出しをしていただきたい。経済副総理としての宮澤大臣にぜひお願いいたしたい。
 この辺について政府部内の意見が分かれておるとか、あるいはどう理解すべきなのかということについて、どうも国民にPRが十分なされておらないとかいうことがあると、せっかくの、まさにおっしゃるいいチャンスが失われるのではないか。国民は本当に不安で貯金をしているのだと私は思うのです。非常に不安なんです。この不安は本当は正しい不安で、私は決して世界経済の先行きをそう楽観いたしておりません。これは私個人の主観でございますから、こんなところで申し上げるのは失礼でございますが、楽観すべき状態ではない。
 私をして言わしめれば、今回の経済白書でたった一つ大きな欠落があるとするならばそこの点である。OECDの閣僚理事会のコミュニケですかにも、また先進国首脳会談、サミットのコミュニケでも、いずれもエネルギーの問題というのは経済問題全体を覆う大問題として取り上げておられるわけで、今回の経済白書で私が不満なのはその点を正面からお取り上げにならなかったことだと思うのです。まさに石油危機以来とおっしゃるのはそこに問題があるわけであって、われわれは何も通常の経済の循環上の問題を論じているのではなくて、従来の経済とは全く違うということはまさに大臣がおっしゃっておられる。その原因は、エネルギーの先行き不安であり、それならば、本当に長期的な投資もできにくいし、また先行き、われわれの現在の生活水準が長きにわたって維持されるかどうかということについてすら実は不安がある。とすれば、どうしても貨幣の形における貯蓄が強く行われるインセンティブが働くであろう。それをやってみたところで決して生産は維持できません。生活の消費が保障されるわけではない。しかし、そこに集約されざるを得ない形において政府がそれを活用していくべきではないか。
 先般私は、英国に飛びましたときに、テレビを見ておりましたら、労働党の大会で左翼の闘将のベン君が大議論をやっておりまして、現在の経済問題は、従来なら必ず戦争で解決したのだ、資本家は必ず戦争に訴える、われわれ労働党は戦争に訴えないでこれを解決する案を提案するのだという大演説をぶっておりまして、大拍手が沸き起こっている情景が中継されておりました。
 私は今回の問題、戦争とかなんとかという問題は別にしても、非常に大変な問題だと思う。経済に大きな、根本的な不均衡が生じた、それを改めるには大変な、通常の手段ではない経済政策を動員しなければならぬ、経済政策というより、むしろ政策全体を動員しなければならぬ。極端に言えば、戦争のときに行われるような大規模な政策手段の動員が必要だという認識は正しいのではないか。そういう観点からいま、まさに大臣がおっしゃったようなわが国のインフラストラクチュアの従来金が回らなかった点を真っ正面から取り上げられて大きな政策を実行されると国民にも安心感が出てくる。国がやることなら結局利子は払ってくれるだろうということで、一つの資産として持ち続けることができるし、現実にそれが具体化していくような政策をもっと積極的におとりになる必要があるのではないかと私は思うわけでございます。重ねて大臣からひとつ御所見をいただきたい。
#26
○宮澤国務大臣 財政当局としては、先ほど平泉委員の言われましたような心配をするのは当然でございますし、また国会内におきましても、将来の国債償還計画についての御発言がしばしば聞かれまして、これもごもっともなことだと思います。でございますから、そこにはおのずから何かめどがなければならないことはそのとおりであると思いますけれども、わが国の国民経済がこの際、将来に向かって資産を残していくということは決して、いわゆる特例国債を消費に使ってしまうというのとは違うわけでございますから、そこのところを余り消極的に考える必要はないというふうに思います。
#27
○平泉委員 時間がだんだんなくなってきましたので、少しはしょりますが、住宅の問題というのは、確かに非常に大きな喫緊の問題ではないかと思うわけであります。特に白書も、住宅のことについて一つのセクションを設けて書いておられるわけであります。
 全般的にこの経済白書は、経済全体の問題を専門家の立場から取り上げておられる、非常に明晰な部分も多いわけですが、各省マターになるとどうも歯切れが悪くなる傾向がある。これはわが国の行政機関の縦割り行政の遺憾な部分ではあるまいか。せっかくエコノミストのエキスパートが、経済的に見てこういうことであるということをおっしゃっておられる分析であるならば、またそれを各省がアクセプトしたのであるならば、その先のことについてももう少し具体的に迫力を持ってやっていただきたいと思うのですが、どうもうまくいきません。その辺ぜひ、経済企画庁の本来の調整機能を発揮をしていただきたい。
 ことに住宅の問題について指摘しておられるところは、一々ごもっともだと思います。たとえば土地の価格が、もともと水準が高過ぎるなんという問題は、私は非常に深刻な問題だと思います。さきの危機感に対しての貯蓄と相並んで、住宅を求めての貯蓄というのがわが国の貯蓄の大きな原因をなしていることは、もう言わず語らず全員が知っておることだと思います。家のために貯金して、その貯金した金がほかに回ったために土地が高くなってまた再び貯蓄してということになれば、馬の前にニンジンをぶら下げて走らせているようなものだ。わが国の貯蓄率を恒常的に高める要素にはなって、従来の経済ならば資本蓄積が大変強行されるけれども、わが国の福祉は決して水準が高まらないということになりかねない。どうかひとつ住宅の問題については、福田総理もたしか住宅省を設けたいということをかつて言っておられたことがあるように思いますので、現段階としても、ますます強調していただきたいと思います。大臣、御要望をいたします。
#28
○宮澤国務大臣 ごもっともだとは思います。今年度の経済見通しにおきましても、住宅には相当大きな期待をしておるわけでございますし、明年もそれに違いございません。国民生活の需要からいえばもちろんでございますが、どうもここにいろいろ問題がありまして、政府が予算をつければ順調に住宅投資がふえていくというふうになかなかつながらないいろいろな問題がございますので、これはやはりどこの役所がいいとか悪いとかいうことではなく、政府挙げて努力しなければならない問題だというふうに考えております。
#29
○平泉委員 あと経済収支の黒字の問題です。私はいろいろな問題の中で一つ心配なのは、アメリカがインフレでけしからぬじゃないか、アメリカがドルをたれ流しにしておるじゃないか、こういうことを首脳会談でも言って、カーターはみんなから問責された形になっている。しかし本当にそうなんだろうかという疑問がちょっと私はあるのです。というのは、わが国は経常収支が大幅な黒字だ、黒字だと言われるが、もしアメリカがああいう消費性向の国で、しかもその上にこの二年来の大変な景気刺激策をやって雇用の維持に努めるという政策で、かなりインフレの危険を冒しているやり方をやっておるということがなかったら、果たしてそんなに黒字があったのだろうかという気がいたします。一方でアメリカに経済拡大をさせておいて、その中でみんなが黒字になっていくという形がどこかあるんじゃあるまいか。もし本当にアメリカが引き締めたら今度は逆に国際収支がそれほど均衡しなくなるのではあるまいかという気がしないでもない。私は、日本の国際収支、そんなに弱いとは思いません。むしろ強い経済だと思いますけれども、しかし日本の経常収支の黒字は、早くアメリカ、インフレやめろということばかり言っておるけれども、本当を言うとアメリカがインフレをやっているので西欧はかなり助かっておるんじゃあるまいか。日本もかなりそれで、ある意味では表面上雇用が輸出によって創出されている面があったりするんではあるまいか。その辺アメリカは悪者になっているけれども、実はどうも私はアメリカという国が逆に世界経済を支えているような気がしてならないのです。だとすれば、アメリカがこの首脳会談では非常に健全化するということを誓っておりますが、できないんじゃないかと思いますけれども、もし本当にそれをやるという決意になったら、果たしていまみんながそう得意になっているほどアメリカをみんなでけなすことができるのかどうか、ちょっとその辺が心配でございます。どんな感触でございますか、大臣。
#30
○宮澤国務大臣 それはおっしゃるとおりだと私も思います。日本の場合にはこれだけ大きな黒字を持っておりますから、それほど感じませんけれども、西欧の多くの国のように黒字になるか赤字になるかというところで非常に苦労をしているところは、まさにアメリカか急に引き締めに入りましたら、すぐにその影響を受けるということでございますから、おっしゃっているようなことは確かにございます。ですから、せめて申せることは、あなたの国は基軸通貨の国であるから、その基軸通貨の国としての節度というのはやはり内政をやる上でもよく意識をしておいてくれよというようなことに尽きるのではないだろうか。平泉委員の言われることは私も全くそのとおりだと思っておりますものですから、まあそれにも限度があるでしょうというようなことになっていくのではないかと思っております。
#31
○平泉委員 ちょっと心配なのは、アメリカの経済がこうやって基軸通貨であり、ドルを印刷すればどんどん石油が入ってくる国だというので、そういうことをみんなか半は軽べつしながら――軽べつという言葉はよくありませんが、ちょっとリプローチしながら、現実はそれに乗って一応経済の構造が成り立っておるが、その圧力が全部アメリカに本当にかかっているとすれば、アメリカのこういう状態に対して、それでは産油国の方ではこういうドルはもうマッシブに引き上げるんだというようなことはいつでも起こる可能性がある。アメリカの巨大な信用の上に成り立っているという非常にフラジャイルな構造自身は消えていない。われわれのささやかな黒字なるものもそれに寄生して存在しているという感じから抜けられない。そうだとすれば、私どもの見かけの国際収支は相当強くて、国際的にはトリレンマから脱却したのだとか、経済は順調に回復基調にあるとかということが果たして本当なのだろうか。最終的にどこかそこにデウス・エクス・マキナが隠れてやしないかという、これは私の思い過ごしかもしれませんが、しかし、そういう危険をはらんでいるということを、私は白書にもう少し書いていただいた方が国民のためによかったのかもしれないという感じがしてなりません。一応私の所感でございますから申し上げておきます。
 次に、構造変化の問題、もう時間が本当に少なくなってまいりましたので申し上げますが、私、このことについて白書が二百十三ページあたりでやられた分析は大変鋭利な、すばらしい分析だと思うのです。まさにわが国においていま最も必要とされている認識だと思うのです。その辺、これは物価対策とかいろんな問題とも絡めて、わが国のこれからの経済というものをどう構想するか。かつて宮澤長官は、流通問題にメスを入れるということは一国の文化文明にメスを入れることだとおっしゃいました。さすがだと思いました。まさにそのとおりで、経済のあり方というのはその国の人生観のあらわれであるし、文化のあり方なのだと思います。一体、わが国では物すごい産業間の生産性の格差があるという御指摘であります。何ですか八十倍ですか、ちょっと私は数字に弱いので忘れましたが、そういうふうな御指摘がある。その最も象徴的なものが恐らく流通関係の段階、それから零細な飲食店、レストランのようなものにかなりのあれがあるとか、さらに大宗は恐らく農林水産業の問題であろうと思います。そこで私は、まさにそういう点で経済企画庁が農林水産省と全面的に協力されて、大きなる政策を打ち出していただきたいということを非常に痛感をいたすのであります。この白書ではせっかく鋭利なことが出ておるのですが、先ほど申し上げたように具体的な問題になると一切これは関係各省のマターであるということで、手がふっと上がってしまう。農林関係についてはわざわざ分析しておられるのです。わざわざ分析しておられて、雇用の問題には含んでおられます。たとえば、いまの農業の構造を改善して生産性を高めなければならない。当然に雇用が縮小します。その雇用が縮小する部分についてはどうするかという重大な問題がその次にあるわけですが、その辺のところは何となく書いておられない。問題を指摘しておられるだけです。これだったら解決にならぬのですね。まさに私は、流通業の問題は都会産業の問題ですから徐々に行くと思うのですけれども、農業の問題というのは非常に深刻な問題ではあるまいか。現に東京ラウンドの最終段階でスタンプリングブロックになっておりますね。こういうことを含めて、農業について経済白書の専門的な立場からの分析を踏まえられて、大臣はどういう御所見でいらっしゃるのか、御答弁いただきたい。
#32
○宮澤国務大臣 私も経済企画庁に何度か勤めております間に幾つかの白書にも関係いたしましたし、幾つかの中長期の計画の作成にも関係をいたしました。その間、農業というのは常に、非常に率直に申し上げれば、どういうふうに考えていいかわからない、わからないと申し上げてしまいますと余り正直過ぎるのかもしれませんけれども、そのぐらいむずかしい問題だと考えてまいりました。戦後からきょうまで振り返りまして相当な高い米価を維持してきたということは、ある意味では所得政策であった。戦後の成長に農村が都会の成長から脱落せずに一緒に歩いてこられたということは、わが国の戦後史で非常に大事な要素であったと思います。その間に亀裂が生じなかったということはきわめて大事なことであったと思いますし、また当時三千万以上おりました農村人口が購買力を持つことによって、わが国の経済の成長が可能であった。また輸出もコストを下げていって今日の大きな輸出能力を持つようになりましたのも、国内にそういう購買力があったからであるということも、私は疑いない事実ではないかと思います。したがって、一般に高来価ということの功罪を論じた場合に、罪の方が多かったというふうには私にはどうも考えられない。いろいろ問題は今日残っておりますけれども、やはり三十年間のそういう政策というのはそれなりの効果を上げてきたのではないかというふうに考えております。しかし、ある段階で自立経営農家というものをある程度つくっていくという政策は、農業基本法にあったわけでございますけれども、その残りはいわゆる兼業農家として、農業所得はともかく、農家所得の方は結構ふえていける、したがってそれは兼業農家という形で処理していけばいいということが漠然と理解をされていたように私は思うのであります。したがって、その部分についてはどういう農業政策をしたらいいのかということは、自立経営農家は別といたしまして、兼業農家についての農業政策というものは、きわめてはっきりしないままで十何年過ごしてきてしまったのではないかと考えております。そのことの代償をいまいろいろに払わなければならないことになっておるのではないかと思っていまして、しかし、それならいまどういうビジョンを与え得るかと言えば、農家が信頼してついてきてくれるようなビジョンというのは、兼業農家のためになかなか掲げることがむずかしいというのが実情なのではないかと私は思っております。これは大変正直なことを申し上げたので、農林大臣は別の御所見をお持ちかもしれないと思いますけれども、私はそんな感じを持っております。
#33
○平泉委員 大体時間でありますが、ちょっともう一、二問だけ。
 いまのお話は非常に大事で、わが国はどうも縦割りの社会で、農業問題となると、農業関係に直接関係している者でないと何となく発言権がないような雰囲気がございます。当国会でもそういう感じで、私、初めて農林水産委員会に所属しましたら、あなた、委員会を間違ったのではないですかと言って人がやってくるんで、いや、私はあなたのところの委員ですと言ったら、顔を二、三回見られましたが、そういうことがある。私は、日本の農業のようなこんな高度の経済、何千ドルという所得のパーキャピタインカムのような経済においては、もはやいわゆる普通の形の農業が日本のような人口密度で存在するはずはないので、わが国の農業というのは特殊な農業であるし、まさに長官がおっしゃったようなものでありますだけに、いわゆる農業にしか関心を持たない人が分析していると間違うのではあるまいかと思う。まさにいま長官がおっしゃったように、兼業農家というのがわが国農家の恐らく七〇%以上を占めるというものに対しての対策が正面から、農林水産省サイドから余り出てこなかったのではないか、余りにも農業を愛するがゆえに農家に対する関心が少なかったというような点を、まさに今度の経済白書にもっと突いていただきたかったと私は思います。そうして、わが国におけるトランスファーインカムとしてわが国の社会のスタビリティーに非常に貢献した、大都会への人口の集中を抑制することができた、その他、わが国は一二%に及ぶ農業人口を持っているということは、先般福田総理も、あれはいいことなんだということで、どこかアメリカで言われたような記憶がありますが、いいことなら、それに対する所得の保障の仕方というのをもっといろいろディバイスする必要があるのであって、その辺がどうも西ヨーロッパの方が少しうまくいっているのではないかという気がします。日本はこれからまさにそういう点で精密な国づくりをしていただきたいので、今度の経済白書の産業構造の最後のところ、特に三分の一くらいは割いてその点を書いてくださっているわけでありますが、単に純粋な製造工業とか都会的な部分だけでなしに、日本の国全体を立体的に浮かび上がらせるような経済雇用政策をぜひひとつ描いていただきたいし、そうしてまた、指導力を持って関係各省庁に対して御協議願いたい。要望を申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
#34
○美濃委員長 武部文君。
#35
○武部委員 きょうは本会議の関係で時間がないそうですから、私は三十分しかありません。
 八月二十九日、当委員会で円高差益の集中審議をやりまして、電力、ガスの還元が一応決まりました。内容については大変問題点もありまして、これから果たしてあの金額が妥当な金額であるかどうかについてはさらに調査をしていかなければならぬと思っております。きょうはプロパンガスの問題ですが、明くる三十日に商工委員会でこの問題が取り上げられまして、私もその委員会のやりとりを聞いておりました。きょうは最初に都市ガスの問題ですが、せっかく来てもらったのですけれども、時間の関係で、プロパンガスの方が大変内容が複雑なので、あなたの方にはちょっと注文をしておきたいのです。
 九月五日付で資源エネルギー庁の公益事業部長から、日本瓦斯協会会長安西浩殿ということで、「地方ガス事業者の円高差益の取扱いについて」という文書が出ておりまして、この写しが全国都市ガスの全部の会社に流れておるのであります。円高差益の問題は、全国各地で消費者団体が当該の会社に対して円高差益の還元を要求して、値段を下げてほしいという交渉が持たれておるようですが、そのときに、実はこの通達の中に「これを不当に社外流出させず料金の安定等のために活用し、」という言葉があるわけですが、これを経営者が逆手にとって、不当に社外流出させてはいかぬという通達が通産省から出ておるので、若干の円高差益はあるけれども、これはお返しできません、社内にちゃんと保留しておいて、そうしてできるだけ価格をこのまま引き延ばす、上げない、そのために使うのだというふうに、どうも同じようなことを各地で言っておるのですね。これは全くあなた方の真意を逆にとったようなことにしか思われない。ですから、きょうはこのことをやりとりしておるとすぐ時間がたってしまいますので、このことをぜひあなた方の方でも関心を持っていただいて、そんなものではないのだというふうに指導してもらわないと、いま二百五十二のうち三つの大手の瓦斯は確かに還元をいたしましたけれども、本省の認可である西部、東部瓦斯も値下げしておりませんね。そのほかの二百四十九ですかのものはほとんど還元をしていないという事実がありますが、その背景にこの通達があったとすると、これはあなた方としても全く心外かもしらぬが、私どもとしては大いに問題にしなくちゃならぬというふうに考えますので、きょうはせっかく来てもらったけれども、次の機会にもう一遍やりますから、ひとつよく検討して具体的な事実をつかんでおいてもらいたい。都市ガスの還元の実態を調査しておいていただきたいと思います。それだけ……。
#36
○内田説明員 ただいま武部先生から御指摘がございましたけれども、いま地方の都市ガス業者が、私どもの方から出しました通達を盾にとって下げないというような実態があるかどうか、これは私ども承知しておりません。しかし、私どもは、地方の都市ガス業者につきましては、状況がそれぞれ違いますので、大手三社のような一律の指導をすることは適当ではないと考えております。ただ、円高の間接メリットが生じている事業者もあるわけでございますので、そういう生じたメリットにつきましては、地方の都市ガス業者は大手三社とは経営規模も違いますから、非常に零細なところも多うございます。赤字のところもございますので、これを料金安定に役立てるということを原則として、そのためにきちっと経理もやりなさい、それから通産局はそれを指導しなさいという趣旨で通達を出したわけでありまして、先生のおっしゃるとおりに、それを値上げをしないことの理由に使うということは正しい使い方ではございません。ということで、私どもいまいろいろ地方ガス事業者の円高のメリットの実態というようなものも調べておりますけれども、そういうことでメリットのあるところはこれを下げろという形で大手三社のような指導をするということは、いまのところ考えていないわけでございますけれども、これはそれぞれの立場で料金の安定に役立てていく。もちろん大手三社と同様な状況にありまして、下げてもなおかつ当分その後も料金の安定ができるというところがあるかもしれません。この実態があるかどうか、私どもいま調べておりますけれども、そういうところまで下げるなという趣旨でこれを出したという意味ではないというふうに御運解いただきたいと思っております。ただ、いまのところ、その辺は各事業者がそれぞれの経営の実態に応じて判断すべきものと考えておりますけれども、下げられるようなところがあるかどうかということについては、私どもは、そういうところはあったとしてもごくわずかではないかというふうに考えております。また、金額的にも非常に微々たるものではないかというふうに考えておりますので、原則はやはり据え置きということで指導するのが一番よろしいかと私ども考えておる次第でございます。
#37
○武部委員 わかりました。そのことはまたこの次にいたしましょう。
 そこで、経済企画庁には時間の関係で質問いたしませんが、円高差益の還元についていまどのような動きをしておるかということの一例をきょう通産省とやりとりいたしますから、それをぜひお聞きをいただいて、適切な指導をいただきたいのであります。
 プロパンガスの需要家は千八百万ないし千九百万世帯、こういうふうに言われております。輸入は八百三十万トン。このプロパンガスの円建て輸入価格は、CIF価格でこの一年間にトン約七千円程度下がっておるということは商工委員会で通産省も認めたところであります。そうすると、大体六百億円の差益がプロパンガスの段階で出てくる。野党の委員の追及では大体九百億ないし一千億という金額が出ておりました。仮に通産省の六百億円という差益といたしまして、その翌々日にマスコミは、六百億円を一世帯に還元すれば、年間三千三百円のプロパンガスの差益を消費者に還元することができるという報道をいたしたのであります。こういう数字は国民の側には真っすぐに入ってくるのであって、新聞を見たら、プロパンガスはなるほどこれで一年間に一世帯で三千三百円も下がるのかなあという気持ちを持つのです。ところが、現実に調べてみると、そうはならないですね。その辺で、きょうはわずかな時間ですが、少し具体的な話を聞いてみたいと思います。
 こういうふうにして下がっておるのに、末端価格は逆に下がらないで、わずかですけれども上がっておるということが通産省のモニターの調査でも出ておりますね。五十二年の六月は十キロで輸入が三百九十五円だったのが、五十三年六月には三百二十三円になっておる。元売りも五百円から五百七十円だったものが四百五十円から五百円に下がっておる。卸売も七百五十円から七百八十円のものが七百円から七百三十円に下がっておる。ところが逆に小売になってくると、去年の六月に千六百七十二円だったものが、小売では千六百八十二円、私どもの調べた通産省モニターの調査では千七百五十二円、これは逆に上がっておりますね。輸入価格も下がり、元売り価格も下がり、卸売価格も下がっておるのに、末端の小売価格が上がっておる。これは一体どういうことなのか、こういう疑問を持つのであります。
 そこで、あなた方の方は九月四日に通達を出して、「家庭用液化石油ガスの価格について」というものを各方面に出しておられるようですが、どういうところにお出しになったのですか。
#38
○廣重説明員 私どもは先生御指摘のとおり、九月四日に石油部長名をもちましてLP関係の流通業界、具体的には全国LPガス卸売協議会、それから日本LPガス連合会、前者が卸、後者が小売の団体でございますが、それと農業協同組合関係でLPGを取り扱っておりますので、全国農業協同組合連合会、この三者へ通達いたしまして、先生御指摘のとおりLPGの輸入価格、それから元売り仕切り価格が下がっておるという実情を踏まえて、その為替メリットが消費者にも還元をされるように、こういう通達を出した次第でございます。
#39
○武部委員 通達を出されたわけですが、この通達で差益の還元というものが末端まで反映されるというふうにお考えになっているでしょうか。この通達の内容をちょっと私見ますと、確かにこの文章にはなっておるが、この通達の内容には、還元額の幅とか期間とか時期とか、そんなものは何にも書いてありませんね。そういうようなまことに抽象的な文書を出して、一体、その通達によって、プロパンガスがこれほど差益が出ておって、さっきから申し上げるように、一世帯に年に三千三百円も返ってくるかなあと思っておる庶民にとって、何の現実のメリットも出てこない。しかも通達を見ると大変抽象的な、いま申し上げたような幅もなければ時期もないし、金額も書いてないということで、そんなことが実現するというふうにあなた方はお考えでしょうか。それはどうですか。
#40
○廣重説明員 私どもの通達を受けまして、九月下旬にはそれぞれの団体におきまして値下げの方針を決定いたしております。ただ、具体的な値下げの額なりあるいは値下げの時期につきましては、それぞれ各事業者によりまして事情が違います。そういったことを踏まえまして自主的に各事業者で判断していただくというふうに決まっておると聞いております。また、具体的な値下げ幅等につきまして指導することにつきましては、若干独禁法上の懸念もある、こういう意見もございます。この点につきましては、二、三の都道府県のLP協会におきまして、公正取引委員会に文書で照会も出しているというふうにも聞いておりますが、その辺についての回答があったというふうにも聞いておりません。ただ、私どもといたしましては、こういった全国団体の意向を受けまして、それぞれ各地の事業者において的確に対応していただけるものと考えております。現実に時期につきましては、おおむね十月から値下げできるのではないか。また、その下げ幅につきましては、これはそれぞれ地域的な事情なりあるいは個々の事業者の事情によって異なりますが、それぞれ卸あるいは小売の各段階におきまして最大限の努力をしていただいて、その結果が末端価格に反映するようにというふうに考えております。これらの点につきましては、私どもの出先でございます通産局でありますとかあるいは都道府県を通じまして、それぞれ必要に応じてきめ細かな指導を今後とも続けてまいりたいと考えております。
#41
○武部委員 八月三十日の商工委員会で天谷資源エネルギー庁長官は、私どもの同僚の委員の質問に答えて、可能な限り強力な行政指導をやるという答弁がありました。また通産大臣も、もし下がらぬというようなことがあるならば適切な行政指導をやるということを八月三十日にはっきりと明言しておられますね。しかし、先ほど申し上げたようなこの通達では、一体どうしていいかわからぬ、むしろこれによって幅も金額も時期も何にも明示されておらぬから、なるほどあなたがおっしゃるように、このプロパンガス業界というものは流通機構が非常に複雑です。末端は四万五千軒も小売店があるそうですから、そういう点から見ると複雑だし、仕切りの元売りもそうだし、五十も六十もあるしというようなことでなかなかむずかしいが、それならば、むしろもっと的確に、確かに公正取引委員会のこともあなたがおっしゃるとおりあります。しかし、それならば、この金額はこの辺からこの辺まで、何十円から何十円ぐらいまでというような幅を持ったそういう指導をある程度おやりになる必要があるのじゃないか、こう思うのです。近ごろマスコミの報道によると、埼玉県は十キロで二十五円、愛知県は十キロで七十円、これもてんでんばらばらですね。そういうことが末端では出てきておるわけですが、あなた方の指導にはそれがない。だから、たとえば五十円とか百円の間とか、あなた方はトン七千円下がったとおっしゃるのですから、これは十キロで七十円ですよ。平均家庭は二十キロ使っているのだから百四十円は大体間違いなく、あなた方の言明でも一カ月に下がるはずですよ。家庭に還元されるはずだ。ところが、今度は還元する期間というものはいつまでかというと、一年なのか半年なのかわからぬでしょう。半年なら倍になりますよ。そういう点もこの通達では明示がないから、各業界はみんな横の方を見て、あれはどうするだろうかあれはどうするだろうかというような疑心暗鬼でやっておるから、一向に具体的に進展しないというふうに思われます。したがって公正取引委員会の問題というのは、確かに一斉にやれば問題があるかもしれませんが、金額にある程度の幅を持たせたような、あなた方の見解から幅を持たせたような指導をされれば、私は決して公取の法律に違反をするとは思わない。そういうことをおやりになる意思はないでしょうか。
#42
○廣重説明員 LPガスの販売店というのは全国で約四万六千くらいあるわけでございますが、販売形態なり取引条件がそれぞれ異なっております。たとえば十立米、五立米当たりの金額につきましても現在でも相当な幅がございます。したがって、それにつきまして一律に値下げ指導をするということは現実問題としても困難ではないかと思っております。ただ私どもといたしましては、先ほど先生もお触れになりましたように、輸入価格の値下げ幅でございますとか元売り仕切り価格の値下げ幅、こういったものは業界に示しております。それを受けまして、卸段階で幾ら下げるかあるいは小売段階で幾ら下げるか、こういったことは各事業者でそれぞれ計算もできるわけでございまして、そういった数字を踏まえて最大限の努力をしていただきたいと考えておるところでございます。したがいまして、私どもとしては、若干地域によって差はあろうかと思いますが、一応十月分から先生お述べになりましたような数字ぐらいのところで値下げが実現することを期待しているところでございます。
#43
○武部委員 それは十キロ七十円ないし百円程度というふうに理解していいですか。
#44
○廣重説明員 具体的な金額につきましてはそれぞれケース・バイ・ケースによって、私どもから一概に申し上げることはできないかと考えております。
#45
○武部委員 そこが問題なのです。たとえばLPGの日本LPガス協会というのかありますね、これはあなた方の通達をもらってから理事会を開いた、そして差益の還元については各企業の実態に応じて、還元できるところは還元しなさいというふうに決めたようですね。ところが、さっき言うように、消費者への還元額の幅なり期間、そういうものはまた各企業の判断にゆだねておるようです。ここが問題なんですよ。幅もありますが、期間、そういうものが全く明示されないままで各企業でやれと言ったって、それはもうみんな疑心暗鬼で、他の業者はどうするだろうかというようなことをお互いに探り合っておるだけのことであって一向に前進しないというのが私の意見なんですよ。そういうことがありますから、やはりある程度の、大体これぐらいな値段が下がっておるのだから、差益は出ておるのだから、この程度のことは通産省として日本LPガス協会に対して指導をすべきではないか。そうしなければ、エネルギー庁長官や通産大臣が、強力な行政指導をやる、やらなかったものについては適切な措置をとる、こう言ったって、現実には一つも進展しません、そのように私は思うのです。ただ、あなたがおっしゃるように十月からのことですから、結果は来月になってみなければわかりませんね。ですから、ここでやりとりしておってもしようがないが、そういうことが考えられるので、来月になって業者がどういうことをやったかそれを十分調査していただいて、ああいうふうにはっきりとおっしゃったんだからそのことが実現できるように調査をして、そしてまた私どもに対してその内容をお示しいただきたい、こう思いますが、いかがですか。
#46
○廣重説明員 私どもは、従来からLPガスの小売価格につきましてはモニター制度を使いまして把握しておるわけでございます。十月分の価格につきましてもいずれその結果が出るかと思いますが、そういった実績を踏まえてさらに、現在でも各通産局等とも情報を交換いたしまして各地の動向なりあるいは具体的な値下げ幅等の把握を進めておるところでございますが、結果が出ましたところで、またその御報告をさせていただきたいと思っております。
#47
○武部委員 ガス事業法第三章に「簡易ガス事業」というのがありますね。全国で約百万世帯ぐらいがこれに加入しておるようでございますが、この簡易ガス事業の為替差益というものは一体どのぐらいあるというふうに見ておられるか。同時に、需要家一戸当たりについて還元額がどの程度になると思っておられるか。また、この通達、さっき言いましたね、公益事業部長の通達は簡易ガス事業者に対しても出してあるのか、この点はいかがですか。
#48
○内田説明員 お答え申し上げます。
 簡易ガス事業者は先生の御指摘のとおりの規模でございますが、この円高差益がどのぐらいあるかという実態につきましては、何分数も多いものでございますから、個々に調査するということは、現在のところ非常にむずかしゅうございます。私どもいまできるだけ調べておるわけでございます。大体のところといたしましては、簡易ガス事業者の現在のガスの生産量からいきますと、全国で大体八千万立方メートルぐらいかと思います。そういたしますと、この八千万立方メートルのプロパンガスを発生させますために必要なLPGの量ということで考えますと、大体十六、七万トンというLPGを使うことになろうかと思います。したがいまして、そちらから大体の概算をいたしますと、円高メリット、つまり値下がりの分がどのぐらいあるかということでございますが、せいぜい十億から十二、三億というような金額になるのではないかと考えております。したがいまして、これが百万世帯ということになりますと、それを百万で割りますとまあ一世帯当たりは千円ぐらいということになろうかと思いますが、これは一年間でございますので月当たりに直せば数十円というようなことになりまして、非常に小さな額になるのではないかというふうに考えております。
#49
○武部委員 それはわかりましたが、この通達を出しておるかどうかです。
#50
○内田説明員 お答え漏れいたしまして失礼いたしました。
 この通達につきましては、先ほどの二百四十九社の地方ガス事業者を念頭に置いて出した通達でございますけれども、簡易ガス事業者はそれ以上に小さいところでございます。私ども、簡易ガスの方につきましてはまだはっきりした実態がつかめていないということもございましてこの通達の直接の対象にしておりませんが、考え方としては同じような考え方で、出ております円高メリットにつきましては、これをできるだけ現行料金の維持ということに使っていくということが一番適切な解決方法ではながろうかというふうに考えております。
#51
○武部委員 この簡易ガスというのは地域が非常に限定されたところであるのですから、ほかの方の小売が一々一本でも下げて山の上まで持っていくのとちょっと違うのですから、そういう面から見ると、やはりこの簡易ガスというものも、プロパンガスあるいは都市ガス同様にあなた方の指導なり通達なりを出してもらって同じようなことをやってもらわなければ片手落ちだと思うのですよ。きょうはそれ以上のことは言いませんが、やはり通達も出し――百万世帯が加入しておるのですし、それこそさっき言うように、地域が限定されておって、何か途中の流通経路が大変複雑でというのじゃないですから、そういう面ではメリットが大分違うと思うのですよ。そういう面から見ると、どこか一つが突破口で円高メリットが消費者に還元されたということは、やはりこの面から何かいい方法が出てきはしないだろうかというようなことも私は考えるので、ぜひこの通達の問題は検討していただいて、出してないようですから、出してもらわなければ困ります。
#52
○内田説明員 そういう方向で検討いたします。
 先ほど申し上げましたように、できるだけ長期的に現行料金を維持していくということに有効に使い、なお、不当に社外流出させないという趣旨で地方ガス事業者と同様な指導を現在しておりますので、その趣旨の通達は出すことを早速検討いたしたいと思っております。
#53
○武部委員 通産省はプロパンガスの爆発の問題を重く見て、消費者を保護するためにプロパンガスを使用する全国千八百万世帯を対象にいわゆるLPガス保険を十月から発足させるということで、年間わずか二百円で最高一千万円まで補償します。こういうキャッチフレーズで宣伝をしておるようですが、この計画の現在の経過というものはどうなっておるか、ちょっと知らせてほしいと思います。
#54
○水野説明員 昨年八月に私ども高圧ガス保安審議会から答申をいただきまして、これに基づきましてLPガス事故に伴う被害者救済のあり方、こういう答申をいただいたわけでございますが、この答申の骨格が、被害者救済に関しまして二点ございます。
 まず第一は、LPガスを使っておりまして、たとえばその家の前を歩いた第三者が事故にたまたま巻き込まれて亡くなられた、こういつた悲惨な事態がありまして、原因を起こしました消費者自体も亡くなられる、こういった場合に、なかなかその第三者の被害に対して救済すべき道がない。それで審議会ではその辺の事態を重く見まして、現在LPガス業者賠償責任保険というのを実施いたしておりますが、これで実は見舞い金というのがございまして、一件当たり、現在までは非常に少額で五万円程度、こういうことになっておりましたが、これの拡充をすべきだという指摘が一つございました。
 それからもう一つ。それであっても、明らかに消費者がミスをして、そのために事故が起きた場合には、現在の業者賠償責任保険の対象には実はならないわけでございます。したがいまして、そういう消費者にミスがあったということが明らかな場合は、まさに当該消費者が責任を負うわけでございますか、そこのところかなかなか――消費者は千八百万世帯ございますので、それを何らかの救済資金をプールして対応したらどうか、これが二点目でございます。
 この二点につきまして、私どもこの十月一日から、先ほどの五万円につきましては百万円に引き上げたいということで検討してまいりまして、一件当たり百万円ということで見舞い金の内容強化を図りました。
 それから二点目の資金プールにつきましては、いろいろ業界と話をいたしまして、業界から二億円、それからあと競輪資金等で二億円の資金を用意いたしまして、合計四億円の資金プールをいたしまして、第三者被害に対する見舞い金の制度をもっと充実したい、こういう制度を検討して、この十月一日から実施いたすことになりました。そして、先生御指摘になりました第三点、そのほかに、そもそも消費者に原因があるので、消費者が加入する保険制度をつくれ、こういう指摘が答申にございます。この点につきましては、私どもいま検討いたしておりますけれども、先ほどおっしゃられましたように、なるべく安い金額で、たとえば年間二百円とか三百円、こういった金額を掛けることによって、一千万とかそういう補償が得られる、こういったことを現在検討中でございます。
 ただ、一千八百万世帯という非常に大きな世帯を相手にする話でもございますし、業界自体も四万七千軒という販売業者を相手にすることでもございます。そんなことで、いろいろ問題点がございますので、現在鋭意詰めておる、こういう状況でございます。
#55
○武部委員 この補償制度というのは非常に効果があると思うのです。
 そこでひとつ宿題として、いまあなたも検討のようですから考えていただきたいのですが、この年間二百円で一千万円という補償、それをいわゆる需要者に負担させないで、差益があるのですし、なかなか差益の還元が複雑でむずかしいとあなた方は言うのだから、わずか年間二百円ほどだから、この差益の中から業者がこれを負担して、消費者のそういう不慮の災害に対する補償を見てやるというようなことは一体できぬものだろうか。差益の還元というのは、さっきから言うように、あの手この手が入ってきてなかなか実現をいたしませんし、数字を的確につかむこともなかなかむずかしいというようなことかあるから、この機会に――プロパンガスの事故というのはどこの家庭でも心配しておりますよ。いっどんなことになるかわからぬ、プロパンガスの爆発などということもよくありますし、そういうことから見て、年間二百円くらいのことですから、差益還元の一環として業者がこれを負担するという形で消費者保護というか、そういう補償の面を一遍検討してもらえぬものだろうか、私は宿題として通産省にぜひこれをお願いしたい、これは要望でありますからお答えは結構ですが、そういうことをまた何かの機会にやりたいと思いますので、考えていただきたいと思います。
 時間が来ましたから、最後に企画庁にも聞いていただきたいのですが、プロパンガスの利益、差益還元、いろいろなことをずっと調べておりますと、生産輸入業者というのは、約五十社が参加をして日本LPガス協会というものをつくっておるのです。その人たちは、自分たちは円高で利益がトン七千円ぐらい出たので、この生産輸入業者は卸業者に七千円を下げて実は売っておるということを明書しております。今度大手卸売業者というのは、これまた全国LPガス協議会というものに加盟しておるのが約五十社くらいありますし、そのほかにも小さなものがございますが、下げてもらった七千円の大体八割から九割というものは値段を下げて、卸二次、三次ということでやっております。こう言っておるのです。問題はこの一番下の小売のところまでいくと、下げたはずのものが実はここで消えてしまって、むしろ逆に、さっきから言うようにちょっと上がっておるというのが現実の姿です。プロパンガスの差益の流れを追ってみると、現実にそうなるのです。確かに複雑な流通過程がございますから、このものがどんずばり下まで直ちに反映するということは考えられないでしょう。若干の人件費も上がったり、いろいろなこともありますからそれはそれとして、しかし上でずっと下がってきたものが、同じように金額が下がったものが一番末端で何で消えてしまうか、ここが国民の側から見れば非常に不思議だと思うわけです。この点にメスを入れて、仮にそこで人件費の高騰が幾らあるならばあるというようなことも明らかにして、それによって月に十キロのボンベならばこれぐらい、二十キロは一世帯だからこれぐらいというのが大体の幅であり、期間としてはこのぐらい、電気、ガスに右へならえしなければいけませんから、そういうかっこうで差益還元というものの内容を国民の前に明らかにしていただく必要がある。私はそういうことはぜひやっていただきたい、こう思うのです。企画庁も通産省と協議をしていただいて、このプロパンガスの問題についての的確な指導をぜひやっていただきたい、これを最後に要望しておきますから通産省の意見を聞いて終わりたいと思います。
#56
○宮澤国務大臣 御指摘のことはごもっともだと思います。最初の段階でそれだけの値下げがあったものが、いろいろ末端にコストをふやす要因がございましょうけれども、何となく消えてしまったということでは消費者が納得いたしませんから、その辺はよく通産省と協力いたしまして、私どもも実態を明らかにいたしたいと思います。
#57
○武部委員 終わります。
#58
○美濃委員長 長田武士君。
#59
○長田委員 まず初めに消費者被害救済についてお尋ねしたいと思っております。
 本年一月、経済企画庁から消費者被害調査の結果が発表されております。この調査の結果かち推定した消費者被害をこうむっておる世帯は百九十一万五千世帯ということで、これは全世帯の六・八%に及ぶ大きなものとなっておるわけであります。またこの調査によりますと、一年間当たりの消費者被害発生件数は全体で二百七十七万一千件、そのうち拡大損害等は四十四万件となっております。商品の瑕疵被害等は百四十七万三千件、取引等によるものは四十七万件、サービスによるものが三十八万六千件に上っておるわけであります。この中で生命や身体に及ぶという被害も非常に大きな割合を占めておるわけであります。
 また商品を原因とする火災発生の実態調査によりますと、全国の火災発生件数は、五十年で六万二千二百十二件、そのうち商品類が発火源となって発生しました火災は四万三千百六十件であります。これは総火災件数の七割弱を占めておるわけであります。この中で材質、構造の不良という欠陥商品による火災は、五十年では千九百九十二件となっております。死者が二十名、損害額は約四十億円に上っておるわけであります。このような、商品や取引等をめぐって消費者が非常に大きな被害を受けておるという実情がこの調査で浮き彫りにされております。
 そこで、政府はこうした消費者被害の実態についてどのように考えておるのか、またこの原因はどのようなところにあるのか、この点まずお尋ねをいたします。
#60
○井川政府委員 お話のございました調査二つは、実は消費者被害救済制度の確立を検討すべしという消費者保護会議の決定がございまして、従来いろいろ個別の話はあるわけでございますが、総合的に一体どの程度になるものかというふうなことで経済企画庁の方で出した調査でございます。
 先生おっしゃいました最初の方の被害調査は、実はサンプリング調査からいわば全世帯を推定をしたという数字でございまして、われわれとしてもこれが初めての試みでございますし、かつまた、この調査結果については中身をより詳細に検討してみないとわからないという面もございますので、さらに今後ともそれを続けていきたいと思いますが、一つはやはり使用者自体の誤使用の結果によるいろいろな身体障害、火災というものも相当多い。この点については、やはりわれわれの消費者啓蒙でも今後とも大いにやっていかなければならないだろう。しかし、同時に商品欠陥によるそうした被害というものもあるということで、いまお話しのような数字が推定で出てまいっておるわけでございます。
 われわれといたしましては、大体こういうようなものだということをそのまま認めるわけにはいきませんけれども、これを前提にした上で各種の調査を進めてまいりたい。
 さらに、どうしてこういうふうになったかというお話でございますけれども、やはり商品が非常に複雑になり、しかも大量生産されるというふうなことになってまいりますと、どうしてもそこに商品の欠陥が中には生まれてくる。そういうことのために被害があらわれてくるのではないかというように考えているわけでございます。
#61
○長田委員 このような多大な消費者被害を救済する体制は現在どのようになっているのでしょうか。消費者保護基本法ではこうした消費者被害は救済できないのではないかと考えますが、その点はどうでしょうか。
#62
○井川政府委員 消費者保護基本法は、消費者保護に関しまして国なり事業者なり、あるいはまた消費者自身の責務なり役割りを決め、かつまた基本的な施策を規定しておるということで、この法律で直接そうした救済というふうなことは規定はされておりません。しかしながら、事実上、苦情の処理というふうなことでこの問題の処理は頭に置いているわけでございまして、事実上どうして救済をされるかということになりますと、まず事業者に対する相対交渉、直接店へ行く、あるいはメーカーにかけ合うという方法、さらには、それで解決できない場合に中央の国民生活センターであるとか地方の消費生活センターへ持っていって、そこに介入してもらって解決する方法、それから最終的には裁判、こういう方法があろうかと思うわけでございます。
#63
○長田委員 ただいま御答弁がありました国民生活センター法では、国民生活の向上のための情報の提供かセンターの第一の業務ですね。したがって、国民からの苦情や問い合わせについても、情報の提供か主体でありますから、企業と消費者の間に立ち入ってまで消費者の苦情等について解決する権限はないと私は思っております。あくまでも企業の良心を前提とした苦情処理であり、多数の大きな被害については国民生活センター、消費生活センターではどうにもならぬ、これが実情ではないかと思うわけであります。この点いかがでしょうか。
#64
○井川政府委員 国民生活センターにつきましては、センター法の十八条で「国民生活に関する苦情、問合せ等に対して情報を提供すること。」という条項でやっておりますことは、いま先生のおっしゃったとおりでございます。しかしながら、実際上、国民生活センターなり地方の生活センターなりが第三の公的な機関として、しかもそこの判断がきわめて適正であるというふうなことになりますと、世間一般、事業者に対して非常に重要な力を発揮していく、現在そういうふうなことになって、事実上それで解決しているというのが実情でございます。
#65
○長田委員 実際には、被害を受けた消費者に対する事業者の責任は、法的には民法、商法などの市民法の一般原則によって処理されておるのが実態なんです。しかし、今日のようにわが国経済の高度に発達をした段階においては、事業者と消費者の間に大きな力の差があります。したがって、法的に消費者が事業者に対抗するのには非常に困難をきわめておる現状であります。このようなわが国の法体系のもとでは、実際上消費者被害の救済はあり得ないのではないかと私は考えますが、その点はどうでしょうか。
#66
○井川政府委員 現実問題といたしましては、実態の処理は相対交渉で相当部分解決しておりますし、それが国民生活センターなり消費生活センターに上がってまいりますと、先ほど申し上げましたような最近のセンター側の実力という面から、持ち込まれたものについても相当数が解決をしている。われわれが過去においてそういう実態調査をいたしましても、消費者自体がセンターに持ち込んだ場合に相当満足すべき解決ができたというのが半分程度もあるという実態も出ておるわけでございます。
 しかしながら、最終的にどうかということになりますと、これはやはり裁判上の問題になるわけでございまして、民法上の契約責任あるいは不法行為責任ということで、裁判で争うということになるわけでございます。しかし、実態的な面ではそこまでまいりますのはきわめてまれで、事実上そうした苦情処理体制の中で相当部分解決をしていっているというのが実態ではなかろうかと考えております。
#67
○長田委員 次に、国民生活審議会の消費者保護部会から消費者被害の救済に関する報告書が出ておりますが、その内容についてお知らせ願いたいと思います。
#68
○井川政府委員 国民生活審議会消費者保護部会が五十一年十月二十七日に消費者被害の救済について全般的にその考え方、段取り等、その内容を発表いたしまして中間報告といたしたわけでございます。
 いろいろ書いてございますけれども、中心になりますのはやはり危険な欠陥商品によって身体あるいは財産に大きい影響を与える製造物責任でございますが、この製造物責任については、事実上考え方として行われている面もあるけれども、わが国においてそういう考え方を早急に理論的に確立をする、そして法制の整備をしていったらどうか、しかしながらそのためにはいろいろな調査その他も必要であろう、それで、わが国の実情に即した制度の検討を進めていくように、こういうことがその内容でございます。
#69
○長田委員 ただいま御答弁ありましたとおり、この報告書では、製造物責任制度の必要性を指摘しておるわけであります。
 そこで私は、今日の大量生産大量消費のもとにおいては、消費者被害もこの経済構造のもとで構造的なものであると考えるわけであります。したがって、消費者被害を救済するために製造物責任制度の確立は本当に必要ではないかと思いますが、この点どうでしょうか。
#70
○井川政府委員 製造物責任というものの法制ということになりますと、実は現在のわが国の民法の基本に関するきわめて大きい問題でございます。われわれといたしましては、そこへまいります前にいろいろな段取りが必要であろう、四つばかり考えております。
 一つは、先ほどの報告書にも書いてございますけれども、まず行政面でできるような中身を充実していく。このためには、苦情処理体制を全国的に整備をするとか、あるいは危害情報システムの整備を図っていくとか、あるいはまた、その中心になります国民生活センターの機能を充実していく、そういう面が必要であろう。
 第二番目は、先ほど先生が挙げられました二件の調査もそうでございますが、各種のわが国の実態について調査を進めて、そこらあたりがどうなっているかということを十分調べる必要があるし、かつまた海外の状況も調査する必要がある。そういう意味で昨年の秋には、われわれは海外調査団を派遣いたしまして欧米の実情も調査をいたしてきたわけでございます。アメリカ等は相当進んでおります。しかし、ヨーロッパにおきましては、そうした統一法制をつくろうとして案を出しておりますけれども、まだいろいろ問題があるということで検討中だということでございます。
 それと同時に第三点は、これは製造物責任ということになりますと、大企業も中小企業も全部同じ問題でございますし、そのためにはバックになる制度の確立、たとえば保険制度をどうするのかというふうなことが十分検討されていかなくちゃならないわけでございます。こうした間に国民的なコンセンサスを得まして、その上で法制が必要なのかどうか、それがいかなる形であるべきかというふうなことを進めていく、そういうステップを踏んでやるべきじゃないかと考えておるわけでございます。
#71
○長田委員 そうなりますと、まだ段階がありますけれども、最終的には立法化を進めるという意味でございますか。
#72
○井川政府委員 先ほど申し上げましたような段取りを踏まえ、かつまた国民的なコンセンサスが得られるということであれば、これはいろいろなやり方があろうと思います。たとえば、現在厚生省で検討されております薬害防止法といったようなものもその一つでございます。したがって、それぞれの問題に応じてどういう形でやっていくかというふうなことを検討していくべきではないかと考えているわけでございます。
#73
○長田委員 ただいま時期が来たらという御答弁でありましたけれども、当然情報の収集等は私は必要だろうと思っております。私が先ほど述べた経企庁の調査では、国民世帯の被害の推定は被害全体で二百七十七万件もあるわけなんです。また火災の原因となっておる欠陥商品もきわめて多く発生しておる状況であります。このような実態の中にあっては、政府はまだその時期が来ていないというようなのんきなことを言っておられないのじゃないかと私は思うのですね。こうしたときだからこそ、私は立法化を推進すべきである、このように思いますが、再度御答弁をいただきたいと思います。
#74
○井川政府委員 問題が重要でありますだけに、いろいろな調査をし、いろいろな内容を検討していかなくちゃならない。しかしながら、その間それに相応する解決がおくれるということがあってはいけない。そういうことのために行政的な整備を十分充実してやりたい、こういうことを考えておるわけでございます。
#75
○長田委員 一つの提案でありますけれども、この製造物責任者制度の立法化がなされた場合に、当然事業者は非常に大きな影響を受けることになります。そういう意味で、私は救済制度や保険制度をあわせて行うことによってこの影響をもろに受けないで済むのじゃないかと思うわけであります。
 そこで、再度伺いたいのでありますが、立法化を進める意思はないのかどうか、またその立法化を進めるとすればその時期はいつごろ考えておるか、もうちょっと具体的にお示しください。
#76
○井川政府委員 先ほど申し上げましたように、立法化の前にいろいろなすべきことがある、しかもそれがたくさんあるわけでございまして、われわれはいま段階を追って調査なり行政的な施策の充実を図っておるわけでございまして、いま、いつごろ、どういう形でというのは申し上げられる状況にはございません。
#77
○長田委員 それでは法務省にお尋ねしたいのでありますけれども、見えていますか。――立法を考える場合、製造物責任者制度をどのようにするお考えであるか。現行民法のとっておりますところの過失責任の原則を修正して、無過失責任の原則をとるのか。あるいはそれとも民法の過失責任の原則をそのままにして、民法の特別法として製造物責任者制度を採用する場合が考えられるわけでありますが、政府の方向としてはどちらが好ましいと考えていらっしゃいますか。
#78
○青山説明員 わが国の民法は、損害の発生について故意または過失があった者だけが責任を負うという過失責任の原則を採用しているわけでございますが、この原則のもとでは、注意を払って行動しさえすれば他人から損害賠償の請求を受けることはないということでございますので、個人の自由活発な活動を保障するという機能を持っているわけでございまして、この過失責任の原則というのは非常に合理性があるものであるというふうに私ども考えているわけでございます。私どもの日常生活にも適用がございます。般法である民法におきましては、この過失責任の原則をあくまでも維持すべきであるというふうに考えるわけでございます。
 ただ、欠陥商品による被害者の救済という観点からこの過失責任の原則を修正いたしまして、欠陥商品によって損害が生じた場合には、製造者に過失がなくても責任を負うという制度を導入すべきであるという議論につきましては、これはやはり検討を要する問題であるというふうに考えております。
 ただ、一口に欠陥商品と申しましても、欠陥の態様はいろいろございますし、その欠陥の持っている危険性の程度も違いますし、それによって生ずる被害の種類とか態様も千差万別でございます。でございますから、あらゆる欠陥商品による損害の賠償について一律に無過失責任を導入するというのは恐らく当を得ないであろうというふうに思うわけでございます。したがいまして、もし仮に無過失責任の原則というものを導入するといたしますれば、商品の種類とか欠陥の種類、態様等に応じまして個別、具体的に検討して、真にその無過失責任の原則を導入することが必要であり、またかつ合理的であるというふうに考えられるものに限って行うのが妥当であるというように考えるわけでございます。そういった意味で、やはり無過失責任の原則の導入を考えるとするならば、特別法をもってするのが相当であろうというふうに私どもは考えております。
#79
○長田委員 この製造物責任者制度の確立とともに大事なことは、消費者被害をどのように防止するかということが私は大きな課題ではなかろうかと思うのです。これまでも欠陥商品などによる被害の顕在により製品の安全基準の設定や表示の義務づけなどが、法的規制が強化された商品も少しは見られるわけでありますが、これだけをもって被害を十分に防止することは私はできないのじゃないかと思うのであります。その上、欠陥商品などによる痛ましい事故などの記憶が十分生かされてないで、しばしば同じような商品によるところの事故が繰り返し発生しているわけであります。これらの被害情報の収集あるいは提供のシステムは現在どのようになっていましょうか。
#80
○井川政府委員 消費者保護の第一義は安全の確保ということでございまして、いま先生のおっしゃいました危害の防止というのが非常に大きい意味合いを持っておるわけでございます。必要な分野については御案内のように各種の法規制でいろいろな規制をしていくというやり方をやっておりますが、他面そういう規制が全般に及ぶわけでもない、使っているときに、いろいろな面での規制では十分覆い尽くせない危害というものも出てくる、そういうふうな情報を全般的に集め、これを調査分析して消費者に知らせる、これが危害情報システムでございますけれども、わが国の場合少しアメリカあたりに比べて立ちおくれておりますが、順次その整備が整いつつある。特に国民生活センターにおきましては、ここ数年その危害情報システムの収集体制ということで力を入れてまいりまして、今後、各地方のセンターあるいは消費者それからまたできれば医療機関等の協力を得て、そういう関係からそうした情報を収集をしていくことを考えておりますし、現段階でもそうした情報をもとにいたしまして一部について消費者に知らせるべく、こういうふうな事例があった、こういうことをやるとこの商品の場合にはこんな問題が出てくるんだというふうな危害の中身を知らせるということをやっているわけでございます。今後そのシステムを徹底してまいりたいというふうに考えております。
#81
○長田委員 国民生活センターでやっております危害情報の収集提供は、地方自治体の役所である消費生活センター、そこから情報収集するだけなんですね。これらの地方の機関に申し出はないが、企業には苦情という形で申し出ている件数が相当あるのじゃないかと思います。そこで、国民生活センターではこれらの苦情を十分に収集できる体制というものをつくられる必要があると思いますが、どうでしょうか。
#82
○井川政府委員 企業のところへ現実に言っている苦情等はあるんであろうと思います。ただ、国民生活センターが集めるデータが公正でなければいけないという性格がございまして、企業自体からその資料をとるということが当を得ているのかどうかという問題がございます。われわれといたしましては、もしとれればそれが参考になるという程度のものでございますけれども、それをとる方法等についてはいろいろ検討する必要があろうかと思います。それよりもむしろわれわれといたしましては、いままで余り手を差し伸べておりませんでした医療機関、病院等の協力を得て、そこで出てまいっているけがその他、それが何の原因かというふうなことで、きわめて公正なかっこうで危害情報を集める、これが最も適切なかっこうではないか、現在そういう方向に進めておるわけでございます。
#83
○長田委員 たとえば自動車の構造上の欠陥は道路運送法に基づいて届け出を企業に義務づけております。LPG法でも届け出を義務づけていますね。さらに食中毒などについても保健所へ届け出が義務づけられているわけであります。したがって、企業のつかんでいる危害情報についても国民生活センターで収集できる体制が必要ではないかと私は思いますが、再度御答弁願います。
#84
○井川政府委員 いま先生がお話になりました件は、それぞれ法律に基づいてそういうものの届け出が義務づけられている、したがって法律でそれぞれ所管省が情報を収集しているという分野でございます。この分野につきましては、われわれとしてはその法律的な面はそれぞれの省がその必要性に基づいてそのデータを使っておるわけでございますので、それ以外のものについて充実していくのが相互補完という意味で最も効果的なやり方ではないかというふうに考えておるわけでございます。
#85
○長田委員 国民生活センターでは危害情報提供システムによって危害の情報を出しておるわけでありますが、どのような方法でやっておるのですか。
#86
○井川政府委員 それぞれのセンターに全国でこういう事例があるということで集めましたデータを毎月送りますと同時に、他面、その内容を分析いたしまして、それをパンフレット等にし、一般の消費者にわかりやすいかっこうで配布をしているということでございまして、たとえば歩行器であるとか二段ベッドであるとか、そういうものについては過去にこういう例があった、「くらしの危険」というかっこうで、ここではたまたま歩行器についていろいろ分析しておりますが、この中では、どういうところでどういう使い方をしたためにどういうけがをしたか、これはその商品の欠陥もありましょうし、あるいは使い方も一部含まれるかもしれません。しかしながら、消費者で必要なことはそういう使い方をするとこういう問題、こういう事故が起こるぞということでございまして、そういうことも含めまして商品の危険の内容を周知させておるわけでございます。
#87
○長田委員 私は、そういう点で、消費者保護という立場でこれは広く周知徹底する必要があると思うのです。そういう点、「くらしの危険」というのは何部ぐらい出しておるのですか。
#88
○井川政府委員 その部数はいま承知いたしておりませんが、たしか数万は出しているのじゃないかと思います。
#89
○長田委員 それでは周知徹底できるわけがないですね、事実上。そういう意味で、二百七十七万とも言われる被害を救済しなくてはいけない、責任を明らかにしなくてはならない、私はこういうことを強く要望しておるわけなんです。どうかその点については十分審議をしていただいて、速やかな責任制度の確立を望んでおきます。
 次に、私鉄運賃の値上げについてお尋ねをいたします。
 大手十三社は八月中旬、初乗りを六十円から八十円とする値上げを含め一普通運賃一七・一%、定期代二五・二%、平均二〇・五%の運賃値上げ申請を運輸大臣に提出をいたしております。これについて九月初旬には運輸審議会に諮問されたわけでありますが、答申はいつごろの予定なのかお尋ねをいたします。
#90
○石月説明員 ただいま先生お話がございましたように、大手民鉄十三社の運賃改定申請は八月十二日に運輸省に提出されまして、運輸省で申請内容につきましてヒヤリング等を行いました後に、九月七日に運輸審議会に諮問いたしまして、現在運輸審議会におきまして審査中でございます。私どもが聞き及んでいるところといたしましては、運輸審議会では、本件につきまして今月の二十六、二十七日の両日、東京におきまして公聴会を行い、また三十一日、十一月一日の両日、大阪におきまして公聴会の開催を予定している段階でございます。
#91
○長田委員 運輸省は答申後いつごろまでに結論を出し、もし値上げされるとすればいつごろを予定しておるのかお尋ねをいたします。
#92
○石月説明員 これはただいま運輸審議会で慎重に審査いたしておるところでございますから、運輸省といたしましては運輸審議会に対しまして公平かつ合理的なる御審査を期待しておると申し上げる以外にちょっと申し上げかねると思います。
#93
○長田委員 今回の値上げの理由について御説明をいただきたいと思います。
#94
○石月説明員 今回の申請は、先回の値上げが昭和五十年十二月でございまして、以来二年八カ月を経過している。その間、人件費、物件費等の値上がりもあり、また今回は昭和五十四年度を平年度といたしまして、その五十四年度の収支が相均衡するように値上げを申請いたしておるわけでございますので、五十三年度、五十四年度の収入不足を償うということがその目的でございます。要すれば、現在までに先回の値上げの後に若干の人件費物件費の値上がりもございましたし、また五十三年度、五十四年度の、来る五十四年度までの間に人件費物件費、それから輸送力増強等の投資等の資本費の増加もございますので、これらの費用を償いまして、五十四年度におきまして収支が相償うように運賃を値上げしたいということが申請の目的でございます。
#95
○長田委員 五十四年度までにどのくらいの赤字が出る見込みですか。
#96
○石月説明員 五十二年度につきましては、鉄軌道部門の収支率が九六・七%、赤字額の総計が、配当後でございますが、百六十六億あるわけでございます。これが五十三年度にまいりますと、収支率が五十三年度には八九・五%、赤字額が五百七十一億円。それから五十四年度、運賃改定の平年度でございます五十四年度になりますと、収支率が八四・九%、八百八十四億円の赤字が出るというぐあいに推定されております。
#97
○長田委員 一般的に言いまして、運輸事業が健全な経営を維持しながら公共的使命を達成していくためには、能率的な経営のもとで、原価を償い、再投資を可能にする運賃収入が必要であるということは、私もよく理解ができております。しかし、今回の大手十三社における大幅値上げ案には、多くの疑問点を私は感ずるわけであります。
 そこで、お尋ねしたいのでありますけれども、大手十三社の五十二年度における鉄道部門の収支はそれほど悪化していないと私は思っているのですが、その点はいかがでしょうか。収支が均衡または黒字の企業はどのくらいあるのか、お尋ねをいたします。
#98
○石月説明員 五十二年度の収支でございますが、ただいま申し上げましたように、九六・七%の収支率であり、赤字額が百六十六億円でございます。しかし、この赤字額というのは配当した後の赤字でございますので、これをどう見るか、その評価の仕方によろうかと思います。
 なお、今回の申請に当たりまして、おおむねの企業が若干の赤字になっておりますが、収支率を申し上げますと、中には近畿日本鉄道のように、一〇二・九%という、現在、五十二年度の時点におきましては黒字の企業もございます。
#99
○長田委員 もっとはっきり答弁してください。よくわかりにくい。経常収支段階では、この表によりますと、五社黒字ですね。差し引き損益では一社、近畿だけ黒字なんです。間違いありませんね。
#100
○石月説明員 御指摘のように、経常収支段階では、京王帝都、小田急電鉄、近畿日本鉄道、京阪電気鉄道、阪神電鉄の五社が黒字でございまして、近畿日本鉄道は配当後の収支におきましても黒字になっております。
#101
○長田委員 私鉄企業において経営状態を判断する場合、一つの目安として総収入を総費用で割った収支率をもって考えることができますけれども、一つのめどとして、それでよろしいですか。
#102
○石月説明員 それでよろしいと思います。
#103
○長田委員 前回の値上げのときに、平均収支率はどのくらいであったのでしょうか。また、五十二年度末における十三社の平均収支率はどのぐらいであるか。
#104
○石月説明員 前回の値上げは五十年度の十二月に行われたわけでございますが、このときには、四十九年度を実績年度といたしまして、五十一年度を平年度とする値上げ申請が行われたわけでございます。このときには、実績年度でございました四十九年度の収支率は八四・二%でございました。
#105
○長田委員 五十二年度の末の十三社の平均……。
#106
○石月説明員 五十二年度の十三社の平均では九六・七%でございました。
#107
○長田委員 そうしますと、前回の値上げ時点より今回は約一二ポイント収支率が高くなっておりますね。間違いありませんね。
#108
○石月説明員 御指摘のように約一二ポイント高くなっておりますが、前回の四十九年度の改定時の状況を申し上げますと、実は四十七年の七月に二九・二%の増収を目的とする申請が出ておりましたのですが、当時の厳しい物価情勢等を反映いたしまして、これが約二年間抑制されまして、四十九年度の七月に至りまして二八・八%の値上げが行われたわけでございます。しかしその値上げでも、そのように長い抑制の結果でございましたので、八四・二%という悪い収支率である、したがいましてその八四・二%の収支率をもとにしまして翌年再値上げが行われたという状態でございまして、前回の例はいささか異例に属する例ではないかと私ども考えております。
#109
○長田委員 いま御答弁がありましたけれども、前回の値上げというのは、先ほど御答弁がありましたとおり八四・二、そこで二四・八%の値上げが行われました。今回は九六・七%でありながら前回とほぼ同水準の値上げをするということですね。この点が非常に納得いかないのです。
#110
○石月説明員 先ほども申し上げましたように、確かに五十二年度の時点におきましては収支率は九六・七でございまして、収支の状況は前回よりはるかによろしいわけでございますけれども、これが五十三年度、五十四年度に至りました場合に、収支率も八四・九%、それから赤字額も八百八十四億円というような形に非常に膨大になってまいりまして、このままでは、やはり必要な輸送力増強投資や保安度の向上というようないろいろな投資等も必要でございますし、また、先ほど先生おっしゃいましたように、私企業でございます民営鉄道でございますので、やはり運賃の改定は、厳正には行わなければならぬかと考えますけれども、やはり企業として能率的な経営を行う限り適正な利潤が確保されるような水準でなければならぬ、このように私ども考えております。
#111
○長田委員 前回の値上げ審査に当たりまして、運輸省は、収支率を九八%にするという目標を立てたわけですね。鉄道部門の収支率についてはどのくらいが適切なものと見ておりますか。
#112
○石月説明員 前回たしか、先生お話ございましたように、最高のものでも、経営努力目標というような意味で、収支率の一〇〇の改定は行わなかったわけでございます。平均いたしまして九八%、一番上のもので九九%、経営努力の足りないものは九六%という査定を行いました。今回は御承知のように運輸審議会において審査中でございまして、現時点におきましてどのような収支率にするということはちょっと申し上げかねるわけでございますが、いずれにいたしましても、今後審査査定の段階を通じまして、何らかの形で経営努力というようなものが運賃の増収率に関連するような形での改定をやるように努力してみたいと考えております。
#113
○長田委員 もう一度お尋ねしたいのでありますが、近鉄、阪神、小田急、京王、京阪、各社における五十二年度末の収支率はどのようになっておりますか。
#114
○石月説明員 京王につきましては五十二年度末、九九・一でございます。小田急につきましては九九・六、それから近鉄につきましては一〇二・九、阪神につきましては九九・九、京阪は九八・〇でございます。
#115
○長田委員 そうしますと、近鉄など、いま読み上げていただきました五社ですね。運輸省が前回の値上げ時に考えておりました九八%収支率、これを実際上回っておりますね、そうですね。そうなりますと、少なくとも私はこの五社については今回値上げすべきではないと思いますが、どうでしょうか。
#116
○石月説明員 先ほども申し上げましたように、今回の運賃改定申請は、五十四年度を平年度といたしまして、五十四年度に収支が均衡するように運賃を設定したいという申請でございます。ちなみに、五十四年度におきます先生が御指摘の各社の収支率を申し上げますと、京王につきましては八二・一、それから小田急につきましては八六・五、それから近鉄につきましては八八・八、京阪につきましては八五・五、阪神につきましては八九・八という形で、かなりの赤字の状態になる予定でございます。
#117
○長田委員 もし、今回値上げができなかったとすれば、いま御答弁ありましたとおり、五十四年度においては八四・九ですか。
#118
○石月説明員 平均でございますか。全体の平均で申しますと八四・九でございます。
#119
○長田委員 そうしますと、九八%を上回る企業はございますか。
#120
○石月説明員 五十四年度におきましては、九〇%を上回るものはございません。
#121
○長田委員 民鉄協会の五十三年度末の収支率見通しでは、値上げがなくても十三社では八九・五%と予想しておるのですね。御存じですか。したがって、今回値上げが行われなくても、前回値上げの八四・一%よりも五ポイント強、収支率が高くなるわけであります。そういう意味で、私は今時点における値上げの根拠というのが前回に比べて非常に弱いものではないかと思いますが、どうでしょうか。
#122
○石月説明員 値上げの申請時点における経営の内容が前回と比べてどうかと申されれば、おっしゃるとおりかと思いますけれども、私どもといたしましては、私鉄の運賃につきましては能率的な経営のもとにおきまして、適正な利潤が確保されるような形でなければならない。そうでなければ必要な投資なりというものも的確に遂行できませんし、サービス水準の向上ということも期待できない。したがいまして、そういう意味では運賃水準はそのような水準でなければならない。五十四年度の収支を推定いたします限りにおきましては、かなりの赤字になるわけでございますので、何らかの形での運賃の改定は必要なのではないかと考えております。
#123
○長田委員 それでは別の面でお尋ねをいたします。
 今回の値上げの第一の理由といたしまして設備投資を挙げておるのですね。大手十三社における設備投資の見通しについて、年次別に示していただきたいと思っております。その総額はどのぐらいになるのか。
#124
○石月説明員 総額で申し上げますと、五十三年度の投資額が千五百七十億、五十四年度の投資額が千五百七億、五十五年、五十六年につきましては見込み額でございますが、両年合わせまして三千五百二億、単年度、単純に二で割りますと、千七百五十一億ということになっております。
#125
○長田委員 民鉄協会では大手私鉄十三社における五十六年度までの設備投資の見通しをまとめておるのでありますが、いま御答弁になったとおり、今年度が千五百七十億円、そして五十四年度の計画では千五百七億円。そうしますと五十二年度の見通しよりも約四%ほどマイナスしているのですね、前年対比で。これを企業別に見てまいりますと、東武が八・七%、西武においては一一・八%、近鉄七・三%といったところが目立つだけであります。名鉄の三八・五%、東急の二五・〇%、京王の一八・三%というこの三社はマイナスとなっておるわけであります。また、他の企業はほぼ横ばいの状況であります。こうした状況を見てまいりますと、設備投資費用の増大が値上げの理由の一つになっておるのでありますけれども、そんなに急増するものとは私はどうしても思えないのですが、どうでしょうか。
#126
○石月説明員 お答え申し上げます。
 設備投資の額がどうなるかということでございますけれども、御承知のように投資の増加と申しますのは連続的にまいりませんで、あるステップでぐっとふえるという形になるわけでございます。たとえば昨今の私鉄の投資で一番金がかかりますものは、都心乗り入れというようなかっこうで非常に金がかかるわけでございますが、たとえば先生御指摘の京王で申し上げますと、京王につきましては、新宿−笹塚間の地下化、高架化というものに四十七年から五十三年にかけまして三百二十六億円の工事をやったわけでございます。この工事量ががたんと落ちてしまう。これが今年の十月三十一日から一応新しい新宿駅ができますので、これが落ちてしまう。それから東急につきましても御承知の新玉川線というのがございまして、この工事が車庫の工事を残しまして大部分完了いたしまして、この工事の金額も、車庫を除きまして約四百九十六億円という巨額なものでございました。これが一応終わりましたので投資額が若干落ちるという形になってまいります。それから名鉄等につきましても、これも瀬戸線の栄町乗り入れという名古屋の都心乗り入れ工事がございまして、これが約百億ほどかかったわけでございますが、これが完了いたしましたので工事額が落ちているというような形でございまして、全体から見ますと、波動はございますけれども、総工事区域のペースには大きな変動はないというぐあいに考えております。
#127
○長田委員 五十五年度、五十六年度の設備投資については民鉄協会では三千五百二億円を予想しておるわけであります。これを平均しますと、年次別ですと千七百五十一億円、こうなりますね。これは五十三年度比一一・五%増となるわけでありますが、私はこれを直ちに運賃値上げの理由に結びつけるというのはどうも納得しかねるのです。この点、どうですか。
#128
○石月説明員 設備投資の費用をだれか負担するかという問題かと思いますけれども、やはり利用者が特定しております民鉄の場合には、基本的には運賃で設備投資の負担を回収すべきであろうかと思います。現在私どもといたしましては、利用者の急激な負担増を避けるために、都心乗り入れ工事など非常に金のかかる工事につきましては鉄道建設公団で工事をいたしまして、でき上がったものを私鉄が買い取る。その場合の鉄道建設公団の工事は五%という金利コストにいたしまして、現実かかりました金利との差を国と地方公共団体で利子補給するというような助成策を講じておりますが、基本的な考え方といたしましては、やはり利用者が負担すべきものと考えております。
#129
○長田委員 第二番目の理由に、人件費のコスト増も挙げてございますね。この人件費の動向をどのように見ておるのか。さらに、平均収支のバランスを五十四年度で考えておるようでありますが、この場合、人件費のアップ率をどのくらいに見込んでおりますか。
#130
○石月説明員 五十四年度六・五%と見込んでの申請でございます。
#131
○長田委員 さらに、今回の値上げ案は、私鉄各社によって値上げ幅に大きな差があるのですね。たとえば普通運賃を見ても、京王の二一・七%、東急の二一・五%、これに対して阪神は一一・七%、近鉄では一二・八%と、格差が非常に著しいわけであります。この数字は収支率から見ても納得がいきません。根拠はどういうところにあるのでしょうか。
#132
○石月説明員 お答え申し上げます。
 各社の置かれました経営状況が区々でございまして、たとえば阪神の例でございますと、旅客の輸送量が伸びが少なくなってきた。したがいまして、余り新規の投資も必要ないという形で、投資額その他が非常に少なくなっております。たとえば一つの例を挙げますと、京王帝都の率が一番高くなっておりますが、これは先ほど申し上げましたような新しい都心乗り入れ工事が完成いたしまして、それの資本費の増高が運賃の値上げの方に反映しておるというぐあいに御理解いただきたいと思います。
#133
○長田委員 私鉄の運賃の値上げについては、実は大手各社が足並みをそろえておるわけであります。毎回同時期に行われるのですね。今回も値上げ幅に約倍近い開きがありますし、収支率でも当然格差がございます。そうしますと、同時に私鉄が値上げをしなくちゃならない理由がどうも私は理解できない。部分的に、ある社は収支率が非常に落ちておる、申請していくというように、十三社一遍でなくて個々に値上げをすべきだと私は考えるのです。この点どうですか。
#134
○石月説明員 運賃改定の平年度である五十四年度の収支見込みにおきまして黒の会社があるとすれば、先生おっしゃるように申請するのはおかしいのではないかと思いますが、現在私どもが受け取っております申請に基づきますと、各社とも五十四年度においては赤字になるという状況でございますので、大手十三社で申請をするというのもやむを得ないのではないかというぐあいに考えております。
#135
○長田委員 次は、円高差益でもって、電力料金が十月より来年三月まで実質的な値下がりをいたします。そこで、この差益還元は、私鉄各社の動力費の軽減をもたらすと私は思うのでありますけれども、これはどのくらいになりますか。
#136
○石月説明員 今回の電力料金の割引額でございますが、大手民鉄十三社合計で、昭和五十三年度二十四億五千万円でございます。これは総支出額五千四百二十六億円の約〇・四五%、動力費は三百六十九億が総額でございますが、これに対して六・六五%に当たっております。
#137
○長田委員 この動力費の軽減は値上げ申請時には想定してなかったと思いますけれども、実際メリットが出ていますね。これを料金にどのような反映といいますか、考え方ですか。
#138
○石月説明員 今回の運賃改定申請は、五十四年度における収支を均衡させようとするものでございます。一方、今回の割引措置は、五十三年度に限った措置でございまして、したがいまして、収支の計算におきましては直接影響は出てこないわけでございます。しかし、今後の審査は、このような割引措置が五十三年度において行われたということを十分に念頭に置きまして進めたい、こういうぐあいに考えております。
#139
○長田委員 どうも話がおかしいですね。年度はまたがりましても、社内留保とかいろいろな方法があるのですよ。そうじゃございませんか。決算をやっていれば、一切関係ないのですか。
#140
○石月説明員 お答え申し上げます。
 五十四年度におきまして大体どういう支出増があるかというものを計算いたしまして、それと五十四年度の収入をバランスさせるという形の運賃改定を行うわけでございます。それから五十三年度につきましてはすでに赤字になっておりますので、これは会社の経理の中で引いてしまっているというぐあいに考えていただいて結構かと思います。
#141
○長田委員 以上、種々の問題について私は指摘をしてまいったわけでございますが、今回の運賃値上げについては、私鉄各社の経営実態から見ましても、まず第一番目には大幅過ぎるように私は感じます。そういう意味では、はっきり言えば値上げ申請が一年早いのじゃないかという感じを持っております。この点どうですか。
#142
○石月説明員 現在私どもといたしましては、運輸審議会におきまして公平かつ合理的な審査をお願いしておる段階でございますので、申請の内容を厳重に審査いたしまして、できるだけ合理的な運賃の形成に努めたいということをもってお答えにかえさせていただきたいと思います。
#143
○長田委員 それでは申請の値上げのパーセント、これは圧縮する考え方があるのですね。
#144
○石月説明員 運賃の決定に当たりましては、運輸審議会の答申を尊重してこれを行わなければならぬというたてまえになっておりますので、ただいま運輸審議会に諮問中でございますので、この点についてはちょっと答弁を控えさせていただきたいと思います。
#145
○長田委員 次に、経済企画庁長官にお尋ねをいたします。
 ことしに入りまして、福田総理の物価安定の言葉とはうらはらに、公共料金の値上げラッシュが家計を圧迫しておるわけであります。すでに値上げが実施された公共料金の主なものは、国鉄運賃、それから料金、国民年金保険料、住宅公団家賃、国立学校授業料を初めとする教育費並びに酒類などが挙げられるわけであります。これに加えて、ただいま指摘してまいりました私鉄運賃の値上げがもし年内に実施されるならば、これに続いて来年も多くの公共料金の値上げが待ち構えているのではないかと思うのです。
 そこで、経企庁長官は、こうした一連の公共料金の値上げについて物価政策上どのように考えていらっしゃるのかお尋ねをいたします。
#146
○宮澤国務大臣 今年も幾つか公共料金の値上げがございましたけれども、例年に比べれば、物価に与える影響はどちらかと申しますとまあまあ少ない年であるように見ております。
 一般に公共料金をどう考えるかということなのでございますけれども、先ほども運輸省からお話が出ておりましたが、それは経営の合理化努力というものは最大限にしてもらわなければなりませんが、そのことを前提といたしました上で、やはり基本的には利用者なり受益者なりが負担をするということが本来であろうというふうに考えております。
#147
○長田委員 最後に公取委員長にお尋ねをいたします。
 橋口委員長は、去る十月十一日の記者会見で、書籍の再販について再販制度廃止の方向を打ち出すとともに、取引実態を究明するために調査を急ぐ方針を明らかにされ、またレコード再販価格制度についても弊害があるとした報道がなされたわけであります。
 そこで、委員長の法定再販に対する考え方はこの報道のとおりであるかどうか、お尋ねをいたします。
#148
○橋口政府委員 現在公正取引委員会は、流通問題に本格的に取り組んでおる最中でございます。幾つかの商品につきまして、その流通の実態、制度に関する問題について調査を行い、また調査の計画をいたしております。
 その調査対象商品の中に、御指摘がございました法定再販商品としての書籍その他の出版物、レコード、音盤等があるわけでございます。私どもは、まず流通の実態の調査を先行させておりますので、最初から予断を持って法定再販制度が適当でないというような見解を持っているわけではございません。
 ただ、御承知のように法定再販制度ができましたのは昭和二十八年でございますから、今日まで四分の一世紀を経過いたしておりまして、その間、経済、社会の実態も大きな変化がございますし、文化状況につきましても、いわゆる大衆文化とか使い捨て文化というような時代になってきておるところでございます。そういう時間の経過というものを考えてみますと、四分の一世紀前にできました法定再販の制度がすべていいのかどうかという問題意識を持っているわけでございます。
 しかしながら、流通の実態を調査いたしまして、仮に法定再販がその流通における競争の阻害的要因になっているということであれば、まず現行独禁法を活用いたしまして、たとえば一般消費者の利益を不当に害するような再販行為であれば、これは是正を命ずるわけでございますし、それから、たとえば書籍で申しますと、出版者の意思に反して中間段階の取次店が法定再販を励行しているということになりますと、これは法律の規定によりまして、出版者の意思に反してやることはできないわけでございますから、その是正も可能でございます。したがいまして、当面は調査の結果をよく見まして、もし法定再販の制度が弊害があるということであれば、まず弊害の是正ということを考えていきたい。
 それから先、法定再販制度の法的な根拠というものについて果たして従来のままでいいかどうかという問題は次に出てくるというふうに考えております。したがいまして、いま直ちに法定再販制度を廃止するという見解をかたくなに持っているわけではございません。
#149
○長田委員 欧米諸国における書籍、レコードの再販制度はどのようになっておるのでしょうか。
#150
○橋口政府委員 欧米諸国の再販制度の現況と申しますか、傾向を申し上げますと、一口で申しますと、再販売価格維持行為はできるだけ廃止する、あるいは範囲の縮小を図るというのが一般的な傾向でございます。
 レコードにつきましては、諸外国におきまして再販制度が適用されておる国はございません。書籍につきまして日本と同じような厳格な再販制度がございますのは西独だけでございまして、限定された形あるいは緩やかな形で再販制度が認められておりますのがイギリスでございまして、これは一定期間経過後は再販制度はなくなる、こういうたてまえでございます。そのほかデンマークは独占規制庁の許可によるというような制度でございまして、アメリカ、フランス等は再販制度はございません。なお、スウェーデンは従来書籍について再販制度はございましたが、一九七〇年の四月以降は認めていないわけでございまして、もう一回申し上げますと、アメリカ、フランス、カナダも書籍についての再販制度というものはございません。したがいまして、全体として昔ございました再販制度というものは逐次廃止ないし縮小の方向にあるということだけは間違いないと思います。
#151
○長田委員 具体的には次の機会に譲りまして、本日は、以上で終わります。
#152
○美濃委員長 本日は、これにて散会いたします。
    午後一時十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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