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1978/10/13 第85回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第085回国会 公害対策並びに環境保全特別委員会 第3号
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1978/10/13 第85回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第085回国会 公害対策並びに環境保全特別委員会 第3号

#1
第085回国会 公害対策並びに環境保全特別委員会 第3号
昭和五十三年十月十三日(金曜日)
    午前十時五十八分開議
 出席委員
   委員長 久保  等君
   理事 相沢 英之君 理事 池田 行彦君
   理事 登坂重次郎君 理事 林  義郎君
   理事 島本 虎三君 理事 水田  稔君
   理事 古寺  宏君 理事 中井  洽君
      西田  司君    萩原 幸雄君
      福島 譲二君    岩垂寿喜男君
      馬場  昇君    坂口  力君
      瀬野栄次郎君    東中 光雄君
      工藤  晃君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣
        (環境庁長官) 山田 久就君
 出席政府委員
        環境庁長官官房
        長       正田 泰央君
        環境庁企画調整
        局長      上村  一君
        環境庁企画調整
        局環境保健部長 本田  正君
 委員外の出席者
        議     員 福島 譲二君
        議     員 馬場  昇君
        特別委員会第一
        調査室長    綿貫 敏行君
    ―――――――――――――
委員の異動
十月十三日
 辞任         補欠選任
  坂口  力君     瀬野栄次郎君
同日
 辞任         補欠選任
  瀬野栄次郎君     坂口  力君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 水俣病問題総合調査法案(馬場昇君外二名提出、
 衆法第一号)
 水俣病の認定業務の促進に関する臨時措置法案
 (坂田道太君外九名提出、衆法第二号)
 公害対策並びに環境保全に関する件(水俣病問
 題)
     ――――◇―――――
#2
○久保委員長 これより会議を開きます。
 公害対策並びに環境保全に関する件、特に水俣病の認定に関する環境事務次官通知について、前回に続き調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。瀬野栄次郎君。
#3
○瀬野委員 水俣病対策について、環境庁長官並びに政府関係当局に質問いたします。
 水俣病については、熊本県側といたしましても、一歩前進ということで、不本意な点も多々あるわけでございますが、県債発行等の関係もあり、議員立法の成立を強く要請されているところでございます。
 そこで私は、本日の質疑の答弁を得て対処したい所存でありますので、答弁は問題の核心をとらえ、要点を簡潔にお答えいただきたいことを最初に申し上げておきます。
 五十三年七月三日の次官通知をめぐる水俣病認定に関する問題でございますが、水俣病の認定審査は大幅におくれ、昭和五十三年七月末現在で申請者総数が六千六百十一人、うち熊本県分六千百十八人、その他の県外で四百九十三人となっております。処理済みが認定千二百十六人、棄却四百六十一人となっておりまして、未処理が四千九百九十二人で、うち熊本県四千五百八十五人となっております。
 このような状況の中に、五十一年十二月、熊本県に対し不作為の判決が下されましたが、そうした違法状態はいまだ解消されるに至っていない現状であります。認定審査を受けられない未処理の患者が五千人近くにも達し、さらに毎月ふえつつある現状でございます。現在の審査認定体制では、五千人の認定審査が完了するのには三十年とも五十年とも言われております。その間、患者さんは、五十三年四月末現在で百十九人も亡くなられているという現状でございます。こうした停滞を招いたのは何も熊本県のみの責任ではないのでありまして、当然政府にも責任があることは言うまでもございません。政府も応分の責任を果たすべきであるとの指摘がなされてきたのも御承知のとおりでございます。
 こうした状況の中で、議員立法として水俣病認定業務促進臨時措置法案が今国会に提出されたわけであります。また、チッソの経営危機を受けて水俣病認定患者に対する補償費に充当することを目的とした県債の発行も決定しておるわけであります。県債の六割を国が引き受け、チッソの償還が不可能となった場合、国が債務保証をするという、明らかにPPPに違反する前例のないことが行われることも決定しておるわけであります。
 こうした背景の中で五十三年七月三日の環境庁事務次官通知が出されたのでありますが、この通知の内容が四十六年八月七日の次官通知、すなわち、これまで水俣病認定の基本方針となってきた、いわゆる「疑わしきは認定」を覆して、「疑わしきは棄却」と、従来の基本方針を百八十度転換するものであるとの批判が大方のマスコミ、水俣病被害者よりなされている現状でございます。
 こうした方針転換がなされた背景には、これ以上認定患者をふやせばチッソがパンクする、患者の補償金に公費、すなわち県債による融資を出す以上、患者の認定を厳しくせよとの主張がなされ、そのために患者に厳しい認定方針が出されたと指摘する向きもあるわけであります。
 それに対して環境庁は、四十六年八月の次官通知の精神をそのまま引き継いだもので、何ら内容の面で変わるものではない、これまでの諸通知、見解を統合整理したものだと答弁してきたのであります。そこで、同じものなら誤解を与えるようなものを何も出す必要がないと思うのだが、五十三年七月の次官通知が患者さんたちに大きな不安と反発を与えている以上、その真意を明らかにする必要があると考え、以下、政府の見解を逐条的に求めるものでございます。
 まず第一番目に、旧法、すなわち健康被害救済特別措置法及び新法、公害健康被害補償法について、この目的及び趣旨は何であるか、冒頭まずその点を明らかにしていただきたい。
#4
○山田国務大臣 公害による健康被害の救済につきましては、裁判等においてはなかなか因果関係の立証が困難である、事態の解決までに相当長時間かかる、こういうようなこと等の問題があるために、行政的にそうした被害者の迅速かつ公正な保護を図るべく旧救済法及び公害健康被害補償法というものが立法されることになったことは御承知のとおりであります。
 こうした立法の趣旨にのっとりまして、公害健康被害者の迅速、公平な保護を図るために環境行政の運営に当たりましては万全を期してまいりたい、その背景というものを与えられたのがこの法律であるというふうに御了承いただきたいと思います。
#5
○瀬野委員 公害健康被害者の迅速な救済と公正な保護を法律の最大目的としている、かように私は認識いたしておりますが、長官答弁のように、この水俣病の救済に当たっては、公害被害者の認定というものが問題になっておりますけれども、この認定はどうあるべきか。すなわち、法の目的からして認定に対して政府はどういう基本的な姿勢を持っておられるか、これもあわせてお答えをいただきたい。
#6
○山田国務大臣 少なくとも水俣病に該当する方は一人も漏れなく救済されるということが本法の目的でなければならないし、またそうあるべきものであると確信いたしております。
#7
○瀬野委員 本法の目的は、一人でも漏れなく救済するのが当然であるという長官の答弁でございますが、法律の目的と趣旨からするならば、認定が患者の切り捨てであったり、加害者すなわちチッソから補償金を受ける資格の認定であってはならないと私は思うのであります。あくまで公害被害者の立場に立ったものでなければならないと思いますが、この点も明確にしておきたいので、長官からお答えをいただきたい。
#8
○山田国務大臣 いま瀬野先生の御指摘のとおりでなければならない、こう確信いたしております。
#9
○瀬野委員 四十六年八月七日の次官通知は、幾つかの問題点ばあるが、できる限り幅広く被害者を救済しようというものであり、それがいわゆる疑わしきは救済とか疑わしきは認定とか言われてきたわけであります。
 ここでもう一度、四十六年八月の次官通知の趣旨について、以下、質問の都合等ございますので、簡潔に述べていただきたい。
#10
○本田政府委員 水俣病の認定に当たりまして、水俣病とは一体医学的にどういうものであるかという水俣病の範囲につきまして、いま御指摘のこの四十六年の次官通知によりまして明確にしたところでございます。従来はこういった通知がございませんで、研究会の研究報告によりまして水俣病が神経性の疾患であるというものだけをもちまして認定審査に当たっていたわけでございますが、この通知によりまして水俣病の範囲というものが明確になったと存じております。
#11
○瀬野委員 私が、四十六年八月七日の次官通知における水俣病認定の基本方針について要約して述べてみますと、この通知は、ややこしい表現になっておるわけでございますけれども、わかりやすく言えば次のようなことではないか、かように私は認識いたしております。
 一つには、申請書の症状のすべてが明らかに他の原因によるものであると認められる場合は水俣病ではないが、症状のうちいずれかの症状、一つの症状の場合も含むわけでありますが、いずれかの症状があっても、その症状が有機水銀による影響であると認められる場合は、他の原因がある場合であっても水俣病に含めること、そうして有機水銀の影響は一部であってもよい。
 二つに、一と関連し、申請者が明らかに有機水銀の暴露歴があり、かつ症状の全部または一部でも認められる場合は、その症状は有機水銀による影響でないと明確に証明するものがなければ水俣病に含めること。
 三つに、ある申請者が水俣病であると認定された場合に、その人の生活史やその他の疫学的資料などから判断して、その地域にかかわる水質汚濁の影響によるものであることを明らかに否定する材料がなければ、その水俣病はその地域にかかわる水質汚濁によるものと考えて認定することということになると思うのですが、この要約に対して間違いはないか、確認の意味でお答えをいただきたい。
#12
○本田政府委員 四十六年の通知に関しまして、水俣病の認定の範囲というものが示されたわけでございますが、いま御指摘のように幾つかの事項がございます。いま御指摘になったうちの一つは、四十六年通知の第1の(2)のところに当たることだと思います。ここにはこのようなことが書いてございます。いま御指摘の点とちょっとニュアンスが違うところがございますが、「いずれかの症状がある場合において、当該」――その前にいろいろの症状が組み合わせてございますので、四肢末端のしびれあるいは歩行障害等々の症状が列記してございますけれども、その「いずれかの症状がある場合において、当該症状のすべてが明らかに他の原因によるものであると認められる場合には水俣病の範囲に含まない」、つまり、ここでは棄却しなさいということが前段にあるわけです。これは当然なことでございまして、明らかに他の原因である場合には水俣病ではないわけでございますから、それを棄却する。
 いま先生御指摘の中に一つ問題がございますのは、「いずれかの症状」ということに関しまして、「いずれかの症状」というのは、いままで第1の前段に列記してあります症状の全部または一部であるというふうにお解しいただきたいと思います。このことは後刻公害保健課長通知でそれが明らかに示されております。この「いずれかの」というのは、一つの症状だという意味じゃないということ、全部または一部、症状の組み合わせであるということをここで言っているということが一つでございます。
 それと、そうではあっても、水銀による暴露歴というものが片一方にあるときには、その暴露歴というものをかみ合わせて認定しなさい、判断をしなさいということが書いてあるわけであります。それが後段に先生が御指摘になりました「否定し得ない場合」あるいは「影響が認められる場合」、こういうことでございまして、ここでつまり、いずれかの症状の組み合わせとそれから有機水銀の暴露が否定し得ない、そういう否定し得ないというのは後刻また御説明する機会もあろうかと思いますけれども、そういう組み合わせによって水俣病というものが判断されるんだということでございまして、この考え方は現在も踏襲しております。
#13
○瀬野委員 そこで、これはずいぶんややこしい通達になっておるんですけれども、国民の皆さんが会議録を見て簡明にこれを理解するために、いまの件をさらにかいつまんで端的に私は申し上げてみますが、こういう理解でいいか、確認の意味で御答弁をいただきたいと思う。
 一つ、水俣病で示すとされる諸症状のうち、いずれかを示していること、二に、有機水銀を含んだ魚を食べたことがあること、三つに、水俣病で示すとされる諸症状がすべて他の原因によるものであると認められないこと、この三つによって四十六年八月の次官通知の水俣病認定の要件として一般にわかりやすく理解する、こういうことになるのかどうか。先ほどの質問に対してさらにわかりやすくしぼって私は答弁を求めるわけでございますが、いまの私の質問に対して、政府は、このとおりである、このようにお答えになりますか、お答えをいただきたい。
#14
○本田政府委員 三点ほど御指摘になりましたが、ちょっと最後の点が私、聞き取れませんでしたので、後刻またお教えいただきたいと思います。
 第一の「いずれかの」という表現の点は、たくさん関係のある症状が水俣病にあるわけでございますが、一つではないということでございまして、全部または一部であるということでございます。つまり、組み合わせであるということを意味しております。
 それから二番目の、水銀による汚染の問題だと思います。有機水銀による汚染というのは水俣病、いわゆる暴露歴ということを御指摘だと思います。有機水銀に暴露されたかどうかということだけをもってこれを認定せよと四十六年通知では言っているものではございません。それは明らかに御理解賜りたいと思います。いずれかの症状、全部または一部の症状と暴露歴をあわせて考える、こういうことをこの通知では指摘いたしております。
#15
○瀬野委員 三番目の点は、水俣病で示すとされる諸症状がすべて他の原因によるものであると認められないことということについて、どうですか。
#16
○本田政府委員 幾つかの症状があって、それが水俣病の示す症状でもあり、それから他の疾患から来る症状でもある、こういう意味だと解しますならば、それをあわせ持っております場合には、暴露歴等を十分参考にして、そして高度の、これも課長通知とあわせてお読みいただきたいと思いますけれども、「高度の学識と豊富な経験」によってその関与の度合いというものを判断して水俣病と認定する、こういう意味でございます。
#17
○瀬野委員 次に、棄却の要件についてお尋ねしますけれども、四十六年通知において、明らかに水俣病でないとされる棄却の要件とは何かということについてお尋ねするわけです。
 すなわち、一つには、有機水銀を含んだ魚を食べたことがないこと、二つには、水俣病の示す症状があっても、それがすべて他の原因であると認められる場合、すなわち簡単に説明される場合、また証明される場合等は水俣病でないということかと、こういうふうに私は理解しておるのですけれども、水俣病でないと理解するについて、この棄却要件というものについては政府はどういうふうに説明をなさるのか、お答えをいただきたい。
#18
○本田政府委員 水俣病に関しましては、これは他の疾病、高血圧その他いろいろな疾病がございますけれども、そのように一定の基準をもってこっちからこっちは水俣病ということをしゃくし定規に決められない水俣病の特質があると存じます。
 そこで、いま一つの症状の組み合わせ、一つと言ったのは組み合わせが一つとお解しいただきたいと思いますが、いろいろな組み合わせがその間にございます。たとえば手足のしびれ、歩行障害あるいは難聴、こういう三つの組み合わせもあり得ると思います。しかし、それだけではほかにも疾病があるわけでございます。そういったほかの原因で起こる症状、水俣病で起こる症状というものを判定する場合にはどうしても暴露歴というものを参考にしなければいけないわけでございます。明らかに、いま御指摘のように、暴露歴がないと思われるものについては、たとえば三つなら三つの症状がそろっておりましても、それがもし高血圧等の他の疾患から来るということが明らかになる場合には、これは当然棄却でございます。
#19
○瀬野委員 四十六年通知は、すなわち医学的に厳密に証明することが不可能であるから、その人の示している症状、生活史、家族の状態などから考えて水俣病的症状を示している人はおおむね水俣病に含めるという趣旨のものであったと私は考えております。
 しかしながら、ただいまも答弁ございましたが、基本方針はこうした疑わしきは認定でありながら、認定の実態は患者にとって厳し過ぎていたと思うわけであります。認定されてきた者はほとんどがハンター・ラッセル症候群、すなわち感覚障害、運動失調、求心性視野狭窄、難聴を備えた典型患者でありまして、それ以外は切り捨てられてきたのが実情であります。これは明らかに水俣病の症状の一つでもあれば水俣病に含まるという四十六年八月の基本方針と食い違うものでないか、かように私は理解しておるのでありますが、この点はどうでございますか。
#20
○本田政府委員 四十六年の通知が出ました理由は、これもよく先生は御存じだと思いますけれども、いま御指摘にありましたハンター・ラッセル症候群というのは、典型的な四つないし五つの、これは有機水銀の工場等における中毒症状、いわば短期間における大量摂取によって起こる中毒だ、その際に発見されましたのがハンター・ラッセル症候群というのだろうと思います。
 そこで、この四十六年の通知が出たということは――それ以前の話でございますけれども、水俣病は一体どういう病像であるのか、何が原因であるのかということが、三十一年以降いろいろ研究が進められてまいったわけであります。典型的な症状を示すものとして示されたのが四十五年でございます。その当時には、御指摘のように、ハンター・ラッセル症候群だけをもって認定していたという時期がございます。しかし、それでは余り厳しいじゃないかということから、幾つかのハンター及びラッセル氏が示しました症状以外の症状でも水俣病に関係があるということがまた研究でわかってまいりましたので、それを取り入れまして四十六年の通知を出したわけでございます。したがって、四十六年以降はハンター・ラッセル症候群だけをもって認定しているということはございません。この通知に基づきまして認定が進められているというふうに理解しております。
#21
○瀬野委員 熊本大学体質医学研究所助教授の原田正純さんは、「水俣病の認定の遅れを問う――認定とは医学にとって何か――」ということで論文を出しておられます。当局も十分承知だと思いますが、ちなみに読んでみます。
  水俣病の歴史の中で医学者が疫学的視点を欠落したことは残念なことであった。
はしょって申し上げますが、
  汚染地区の住民の健康破壊は想像以上に深刻で対照地区とは明らかに異る特徴を示している。すなわち、知覚障害、聴力障害、失調、筋力低下、視野狭窄、などの神経系の障害が著しく高頻度に認められた。たとえば、知覚障害は二八%、聴力障害二九%、失調二四%、視野狭窄一四%等々である。したがって、これらの神経症状はたとえ一つであってもメチル水銀の影響の可能性がある。しかし、一方では典型的なメチル水銀中毒症状を全部そろえたものも七%にみられた。また、従来、他の原因によると思われた神経症状も高頻にみられ(たとえば筋萎縮とかてんかん様発作など)、これらの症状もまたメチル水銀の影響と考える方が妥当と思える。さらに、メチル水銀の影響は他の臓器にも重大な影響を与えている疑いが濃厚である。たとえば肝臓や腎臓、血管に及ぼす影響も考えられる。
  さらに、糖尿病、動脈硬化、高血圧、肝障害や腎障害については先に述べたようにメチル水銀そのものによって障害される可能性がある。
さらに、
  認定制度によって医学が歪められてしまい、十数年にわたって医学的立場を放棄していた。
  認定の遅れに関する責任は厖大な実態無視、医学的調査研究の怠慢に根ざす底の深いものであって技術上、制度上のことに歪曲されてはならない。
 全部読むことはできませんのではしょって読みましたけれども、こういったことから見ましても、私は、先ほど答弁いただきましたが、疑わしきは認定しようという通知がありながら、そういう典型的な症候群を認定したのが実情であったと理解をしてきておるわけであります。そういう点から、いまの政府の答弁に対しては私は不満を持つものでありますけれども、原田助教授のこういった論文等を含めて政府の見解をさらにお伺いしておきたいと思います。
#22
○本田政府委員 四十六年の通知の第1のところに、水俣病の示す症状にたくさんの症状があると書いてございます。第1の(1)の(イ)のところに「四肢末端、口囲のしびれ感にはじまり、言語障害、歩行障害、求心性視野狭窄、難聴などをきたすこと。また、精神障害、振戦、痙攣その他の不随意運動、筋強直などをきたす例もあること。」ということが書いてございます。これらの症状を呈する者を四十六年以降はその組み合わせと暴露歴をとって認定を進めている。合わない者は当然棄却ということになっておるわけであります。
 そこで、先生おっしゃるように、実はその後に、ずっと後になりまして、昭和五十年に水俣病認定促進委員会というのをつくっていただきまして、水俣病の経験の非常に深い先生方によりまして、以降二年間、いろいろその組み合わせ等によりまして、その後の医学の進歩等を踏まえた御検討をいただいた結果が、去年の七月に出しました「後天性水俣病の判断条件について」ということでまとめられたわけでございます。現在それによりまして認定が進んでいるわけでございますけれども、そのようにいろいろな症状をどうとるかということは、少なくとも現在、法によって認定制度があります以上は、やはり多くの権威者のコンセンサスを得られた――基準ではございません、判断条件といったものにのっとって審査を行うというのが常道だろうと思います。いろいろな意見もたくさんございます。あるいは将来そういったものがコンセンサスを得られるということもあり得ると思いますけれども、少なくとも現時点では二年間にわたりましてそういったコンセンサスを得た結果に基づいて判定をいたしている、こういう実情でございますので、御理解を賜りたいと思います。
#23
○瀬野委員 そこで、五十三年七月三日の次官通知の問題になるのでありますが、新次官通知の意味について、これまで環境庁が明らかにした見解によれば、今回の次官通知は、四十六年の次官通知以降いろいろな機会にいろいろな形で明らかにしてきた水俣病の範囲に関する基本的な考え方を、おおむね再度確認する目的をもって統合整理したものであって、四十六年の次官通知の精神をそのまま引き継いだものであるという見解のようでございますが、要約すれば、一つには、四十六年の次官通知以来のこれまでの諸通知を整理統合したもの、二つには、疑わしきは認定という基本方針は何ら変わるものではない、こういうふうに端的に説明しておられると思うわけです。
 また、山田環境庁長官も六月六日の閣議後の記者会見で、水俣病認定促進を国が一部肩がわりするため国にも審査会を設置することについて、国の審査においても、疑わしきは認定するという四十六年の次官通知で示した精神は変わらないと述べておられます。この言葉を信じたいが、それを信ずるには、五十三年七月三日の次官通知の内容が四十六年八月の基本方針を余りにも覆すほどの内容を持っていると私は思うのであります。患者が一斉に不安を持つのも当然である。環境庁が幾ら弁解しても、新次官通知の内容によって今後の認定が行われ、ほとんどマスコミや患者は、「疑わしきは認定」から「疑わしきは棄却」と百八十度方針を変えたと受けとめております。私もそのように同様な受けとめ方をしておりますが、この決定について重ねて明確に答弁を求めるものであります。
#24
○本田政府委員 法に基づきますところの認定審査制度というものを基礎にいたしまして認定審査が行われるわけでございますけれども、四十六年当時も現在も、当然認定さるべきものは認定しておりますし、当然棄却さるべきものは棄却する、これが認定制度だと存じます。「疑わしきは救済」という言葉をめぐりまして、そのとりようによって従来いろいろ誤解がございます。たとえば、暴露歴だけで認定するのが疑わしきものを認定するということなのだとおっしゃる方もおられますし、そうじゃない、やはり一定の判断条件に基づいて医学的に認定するのが、それでもなおかつ疑わしきものまでも認定する、そういう意味での「疑わしき」はございましょう。言葉のとられようによっていろいろございますが、私どもはそういう意味におきましても、環境庁長官もおっしゃったように「疑わしきは認定」という気持ちで現在もおります。
#25
○瀬野委員 そこで具体的に指摘してまいりますが、「医学的にみて水俣病である蓋然性が高いと判断される場合には、その者の症候が水俣病の範囲に含まれる」という一項についてでありますが、まず第一点は、「医学的にみて水俣病である蓋然性が高い」とは具体的にどういう状態を言うのですか、お答えをいただきたい。
#26
○本田政府委員 蓋然性という言葉は、言葉自体の意味は確からしさという意味でございます。その確からしさも、医学的に見た確からしさというふうにお解しいただきたいと思います。この蓋然性の定義をめぐりましては、四十六年通知では「否定し得ない」という言葉で表現いたしておりまして、その後の課長通知ではこれを高度の学識と豊富な経験によって医学的に判断さるべきだと表現いたしております。大石長官の国会における過去の答弁におきましてはこの「蓋然性」という言葉は使っておられませんけれども、五〇、六〇、七〇というような言葉で代表される御答弁をなさっております。その後に政府委員の答弁で「蓋然性」というのが出てくるわけです。つまり、この考え方というものは全く変わっておりませんで、確からしさというものだとお解しいただきたいと思います。
 そこで、どういうことかということを申し上げるのに、適切な例かどうか存じませんけれども、いまの御質問を御理解いただく上で申し上げてみますと、たとえば手足にしびれがあるということだけで水俣病の蓋然性はといいますと、これはすこぶる低うございます。それにあるいは有機水銀を摂取したということになりますと、蓋然性がやや高くというか、「蓋然性」という言葉で議論ができるくらいの程度になります。ところが、同じ手足のしびれでも四肢の末端のしびれなのかあるいは体の近くのしびれなのかによってまた違います。また、片方だけに起こっているのかあるいは両方に起こっているのか、こういうことによって、一つの症例を取り上げましても、非常に蓋然性ということは動いてくるわけでございます。そこに幾つかの症状がまた積み重なっていくということになりますと、これは蓋然性はうんと高くなります。そういうふうに蓋然性というものは相対的に患者の症状に応じて判断するべき、これはやはり高度の学識と豊富な経験によってしか判断できない、そういう性格のものでございます。しからば、幾つかの症状があって、その患者について蓋然性がある程度あると仮定された場合に、腹痛があるとか胃痛があるとかいう症状が加わったからといって、それじゃ水俣病に対する蓋然性が高くなるかというと、それは高くなりません。そういう性格のものでございます。
 したがいまして、医学的に見て水俣病である蓋然性が高いと判断される場合にはというただいまの御質問は、その前段に、水俣病に関する高度な学識と豊富な経験に基づいて総合的に検討した結果そうであるというふうにお解しいただきたいと思います。
#27
○瀬野委員 念のために確認の意味で申し上げますが、ただいまの大石長官の答弁でございます。昭和四十七年三月十日、わが党の岡本委員の質問に対して大石長官が答弁をしたわけです。大石長官は、「私が疑わしきものは救済せよという指示を出したのでございますが、これは一人でも公害病患者が見落とされることがないように、全部が正しく救われるようにいたしたいという気持ちから出したのでございます。ただし、疑わしきは救済せよということは、疑わしいということは、これは御承知かと思いますが、医学的な用語と普通俗に世間で使うことばとは内容が違います。」なお、「医学的には、そういうものは三%とか一〇%というものは疑わしいという範囲には入りません。まず五〇%、六〇%、七〇%も大体こうであろうけれども、まだいわゆる定型的な症状が出ておらぬとかなんとかいうような、そういうものが疑わしいという医学用語になるわけでございます。」こういうように言っておりますが、これは現在もこのとおり承知してよろしいですか。
#28
○本田政府委員 現在で言います「蓋然性」という言葉のある一つの御説明だと解していただいて結構でございます。したがいまして、全く「蓋然性」という言葉と同じでありますから、現在もその考え方を踏襲いたしております。
#29
○瀬野委員 この大石長官の発言から見まして、蓋然性ということについては一応説明がありましたが、「まず五〇%、六〇%、七〇%も大体こうであろうけれども、」云々とこうございますが、それじゃ政府は何%ぐらいというふうに考えておられるのですか。
#30
○本田政府委員 本来蓋然性というものをパーセントであらわすということはちょっと無理が実はあると思います。ただ、考え方として、蓋然性を説明する一つの方法としてと先ほど申し上げたのはそういう意味でございます。したがって、それを、蓋然性が高い、低いというのを決めるのは、これは物差しあるいは数字で決められるべきものじゃございません。したがって、今回の新しい次官通知の中では、水俣病に関する高度の学識と豊富な経験に基づいて総合的に判断するということが言われているわけでございます。したがって、いま御質問の現在の言葉遣いで言う蓋然性というのは何%とかということでございますけれども、そういうものでございます。あえて申し上げますならば、三%やら一〇%ぐらいの蓋然性というものは含まれない。つまり、大石長官の御発言のとおりだと解していただいて結構だと思います。
#31
○瀬野委員 そこで、「医学的にみて水俣病である蓋然性が高い」ということは、いまもいろいろ答弁ございましたが、たとえばある申請人が、水俣病で示すとされる諸症状のうちいずれか一つでも示しており、かつ有機水銀の暴露歴、すなわち魚を食べたというようなことが明らかであれば、「医学的にみて水俣病である蓋然性が高い」と言えるのかどうか。もしこれが言えないとすれば、四十六年八月の次官通知の認定要件に反するもの、こういうように私は理解をしているわけです。現在までそういうように理解をしているわけです。さっきからいろいろ課長通知とか云々とかありましたが、こういうふうに今日まで理解してきたのですが、こういう理解でいいのか、その点も明快にお答えをいただきたいと思う。
#32
○本田政府委員 一つの症状があって暴露歴がある場合には、蓋然性はきわめて低うございます。これは四十六年の通知でもそうでございます。「いずれかの症状」と、いま御指摘がございました。四十六年の通知の中にそういう言葉がございます。先ほども申し上げましたように、これは全部または一部の症状です。また、実際、水俣病であれば一つの症状だけということはちょっと考えられません。
 そこで、去年出しました判断条件でも示しておりますけれども、幾つかの症状の組み合わせというのが水俣病の特徴でございますので、いま御質問の、一つの症状があって、かつ暴露歴があるという場合には、蓋然性はきわめて低うございます。
#33
○瀬野委員 四十六年八月の次官通知は、医学的に因果関係を厳密に証明することは不可能であるから、一つには、水俣病で示すとされる諸症状のうち、いずれか一つでもこれを示すこと、二つには、有機水銀を含んだ魚を食べたことがあること、三つには、水俣病で示すとされる諸症状がすべて他の原因によるものと認められないことという三条件が示されれば、医学的厳密さがなくとも法的に水俣病に含めるという一種の行政的割り切りであったと思うのです。したがって、いまさら医学的に蓋然性が高いとされると、医学的に高度の証明が必要なのだ、こういうふうになってくるわけです。
 そこで、このような表現は患者にとって厳しい表現となってくるわけであります。四十六年の疑わしきは認定という方針のもとでさえ切り捨てが行われてきたわけであります。これを別の表現で誤解を与えない表現にすべきではないか、かようにも考えるわけですけれども、その点についてはどうですか。
#34
○本田政府委員 繰り返し申し上げますけれども、ぜひ御理解賜りたいのは、四十六年の通知で「いずれか」という表現は、この解釈は、その一カ月余り後に出ました課長通知ではっきり示しておりますように、たった一つの症状ではないということでございます。「いずれか」と表現されているのは幾つかの症状、手のしびれとか、足のしびれとか、難聴あるいは求心性視野狭窄とか、いろいろございますが、そういったものの組み合わせを言っておるというふうに御解釈いただきたいと思います。そうでございませんと、何か一つ症状さえあれば四十六年は認めてきたじゃないかとおっしゃっておられますけれども、決してそうじゃないということをぜひ御理解いただきたいと思います。
 そこで、「蓋然性」というものを他の表現に変えられないかということでございますが、蓋然性の具体的な中身というものは、先ほどもちょっと触れました五十二年の七月に環境保健部長通知をもって出しました「後天性水俣病の判断条件について」、その中身そのものが実は蓋然性の判断になる資料だと思います。どういうことが書いてあるかといいますと、水俣病に関係のある幾つかの症状が列記してございます。その中からこういう組み合わせのときで、こういう暴露歴があるときというようなことをある程度例示的に示しているもので、それが判断条件です。したがって、それと込みに読んでいただきますならば、蓋然性というものは具体的にはこういうことを判断の基準にしなさいというのが示されているわけでございますから、現在の「蓋然性」という事務次官の通知で十分だと私は思います。ただ、それでもわかりにくいというお説は当然あろうかと思います。しかしながら、水俣病という病気の本質が一つの物差しによって右か左かするということではございません。一人一人の患者につきまして症状の組み合わせなり程度なり、また暴露歴というものが違うわけでございますから、そういったものを総合的に判断していくのが水俣病の認定のむずかしさであろうと思うわけであります。したがって「蓋然性」一というむずかしい言葉を使わざるを得ないということを御理解賜りたいと存じます。
#35
○瀬野委員 素朴な質問になりますけれども、端的に言って一〇〇%水俣病でないという認定が出た場合には当然水俣病ではないが、一〇〇%出ない場合には、逆に言ってこれは水俣病ということが言える、こういうふうに理解できますか。
#36
○本田政府委員 水俣病というのは、病気からすれば一つでございます。これは理論的には、水俣病であれば水俣病であるし、水俣病でなければ水俣病でない、こういうわけであります。そこで、その判断をめぐりましていろいろとむずかしい問題があるのも事実でございます。現在示されました症状だけでは直ちに判断ができない、組み合わせだけでは判断ができないという事例がたくさんございます。そういったものが実は保留という形で審査会に残されるわけであります。いずれは認定または棄却ということでございますので、現状で判断がつかないというものを全部水俣病に認定するということはできないことだと存じます。
#37
○瀬野委員 山田環境庁長官、いまいろいろお聞きいただきましたが、そこで一つの結論として、「医学的にみて水俣病である蓋然性が高い」という部分を、「蓋然性が高い」じゃなくて「蓋然性がある」と修正するか、四十六年の次官通知の趣旨に合うように訂正をするということについては、長官はどういうふうにお考えでございますか。お答えをいただきたいと思います。
#38
○山田国務大臣 先ほども申し上げましたように、水俣病患者であればすべて認定されなければいけない、認定漏れがあってはいけないのだということが趣旨でございますから、水俣病患者というものは全部認定されなければいけないのだ。それでは一体何を水俣病患者と認めるか、これは非常に医学的な高度の知識を要するということで、これについていままで、もとの次官通牒、部長通知あるいは課長通知というものが出ておりまして、その内容そのものを格上げして一つにまとめる、その点では前と違わない、それをはっきりさせるということでやってまいっているわけですから、それに該当する限りは認定漏れがあってはならないのだということです。
 この点は専門的な点になりますので、いま御指摘の点、ちょっと補足的に部長から説明させたいと思います。
#39
○本田政府委員 高いとか低いとかじゃなしに「蓋然性がある」というふうに書きかえたらどうか、こういうことでございますけれども、蓋然性というのは先ほど申し上げましたように確からしさでございます。確からしさがある、可能性ということじゃないわけでございます。したがって蓋然性が高いか低いかという判断が必要になってくるので、これは「ある」というふうには変えられないと存じます。ただ、その判断の条件といたしまして先ほど申し上げました「後天性水俣病の判断条件」というものがございますので、それをもちまして審査会では共通の認識を持って、これを基準じゃございませんが条件としてその蓋然性を判断していくということでございますので、御理解賜りたいと思います。
#40
○瀬野委員 次に、申請後死亡された申請人について、「今後も認定に資する新たな資料を得ることが見込めない場合には、その者について水俣病である旨の認定を行うことができない」とあり、「所要の処分を行う」、すなわち棄却する、こういうふうに述べてありますが、ここに幾つか問題があるわけでございます。
 まず一つには、水俣病であるかどうかわからない患者を、それ以上資料がないからといって棄却することは法の趣旨と認定の方針に反すること、すなわち、どちらかわからない場合、ましてや有機水銀の暴露歴がはっきりしている場合は認定するのが法の趣旨ではないか、かように思うのですけれども、この点についてはどうでございますか。
#41
○本田政府委員 いま御指摘になったのは、今回の事務次官通知の4の(2)に記載されているところだと存じます。
 これもぜひ御理解賜りたいと思うのですけれども、認定申請中に不幸にして申請者が亡くなられた、そういうケースをいま御指摘になりました。その場合には、死亡なさったからといって直ちに認定とか棄却ということはできません。なぜならば、先ほどから申しておりますように、水俣病というものの認定あるいは棄却でございますので、よほど慎重に、生前のデータあるいはその後のデータ、その後のデータといいますと、典型的なのは剖検でございます。そういった資料をできるだけ集める努力をせよということがこの前段に書いてあるわけでございます。そして、亡くなられた後にいろいろ「暴露状況、既往歴、現疾患の経過及びその他の臨床医学的知見についての資料を広く集め、」というのがいま申し上げたようなことです。そして総合的に判断をなさい、こういうことでございます。
 ところが、どのような努力をいたしましても、どうしても資料が得られないというような場合が出てまいります。これは新しい資料が出てこないという例もあろうかと存じます。そういう場合にはその申請しっ放しの死亡なさった方は一体どうなるのかといいますと、認定にもできません、それから棄却もできません。そうなると、いつまでも保留ということで宙ぶらりんにしておかなければいかぬ、こういうことになりかねないわけでございます。そういうことになりますと、この通知の最後の方にも示しておりますように、その人を法的に非常に不安定な状況に置くわけでございます。
 したがいまして、不安定な状態にいつまでも置いておくということはいけないことでございますので、たとえば行政庁に対しますところの不服審査の道さえも閉ざしてしまうということがございますので、そういう場合は棄却してほしいということをこの事務次官通知で言っているわけでございます。
#42
○瀬野委員 皆さんもう百も承知のように、処分というのは棄却と認定と二つあるわけであります。
 そこで、認定の道もあるのに、なぜ一方的に棄却のみするのか、こういう県民の見解でございますが、その点についてはどうですか。
#43
○本田政府委員 これは、かつて不作為の違法が問われましたときに、その判決要旨の中にも実はあるわけでございますけれども、いつまでも不安定な状況に置いておく、そして、しかも審査の道さえも閉ざしてしまうことはできないということでございます。
 その棄却だけをといまおっしゃいますけれども、これは認定できなければ棄却するということになるわけでございますから、道とすれば棄却という道しか、非常に冷たいような言い方でございますけれども、ならざるを得ないわけでございます。しからば、棄却しなければどうなるかというと、これはまたもとに戻りまして、いつまでも保留という宙ぶらりんの形になるわけでございます。そういった意味を御理解賜りたいと思います。
#44
○瀬野委員 環境庁長官にお尋ねしますけれども、五十二年七月の通達で4の「処分にあたつて留意すべき事項について」の中で、(2)に「認定申請後検診が未了のうち死亡し剖検も実施されなかつた事例等所要の検診資料が得られないものについては、」云々、こうあります。「実施されなかつた事例等」というこの問題について、「等」とは何を意味するのか、長官はどういうふうに理解しておられるのか。死んだ人また死亡した以外の生存者も含めるのか。もしそうであるとすれば、生きている人も資料が得られぬといって切り捨てるということになりかねないわけですけれども、「等」という一字は大変意味が深い、かように思っておるわけです。長官からひとつこの点、明快にお答えをいただいておきたい、かように思います。
#45
○本田政府委員 いま御指摘の「等」は、事務次官通知の第4の(2)の当初に書いてある、わからなかった事例等の「等」だと存じますが、これは、いまの御心配は、この「等」を理由にめためたに切っていくのじゃないか、こういう御趣旨の御心配だろうと思います。決してそういうことはございません。
 と申しますのは、この前後の文章をよく読んでいただきますと、たとえば死亡し解剖さえもできなくて――剖検と言っておりますが、も実施されなかった事例等でございますから、これはどういう事例かといいますと、こういう事例だということは実は想定できないわけなので「等」という漠然とした言葉でくくっているわけです。あるいは死亡なさって解剖さえもできなかった事例、これと同等と判断されるような事例が今後出てくるかもしれない、出てくるおそれもあるということから「等」を設けたのであって、たまりたまっております保留をこの「等」にひっかけて全部切るというようなことは毛頭考えておりませんし、また、そういうことはこの文章からも出てこないと存じておりますので、その御心配はないと存じます。
#46
○瀬野委員 これは重要なことでございますので、長官からもあわせてお答えください。
#47
○山田国務大臣 いま部長から説明申し上げましたとおりに、そのいろいろな解剖も実施されなかった、つまりこのようなカテゴリーのものでほかに何かあるかということも含めた点でございまして、御懸念になるようなことは全くない、また考えておらぬということで御理解いただきたいと思います。
#48
○瀬野委員 そこで、認定に資する新資料を得る見込みがない場合ということですが、資料を得ようと審査会なり行政府が努力しなければ資料を得る見込みがないのでありまして、得ようとする努力があれば得られたはずのものであるわけです。したがって、これは役所の過去、現在、将来の怠慢をたな上げにするものである。そのことによって患者が切り捨てられたならば患者が立つ瀬がない、かように思うわけであるし、この点、患者の皆様も大変問題にしておられます。したがって、この文言もこの法の趣旨や疑わしきは認定という趣旨からいって、死亡者の場合は認定すると訂正すべきではないか、私はかように思うのですけれども、この点もさらにひとつ当局から御答弁をいただいておきたい。
#49
○本田政府委員 心情とすればわからぬではございませんけれども、先ほどから繰り返し御答弁申し上げておりますように、いまの水俣病の一定の判断基準によりまして、水俣病であるか水俣病でないかによって認定し棄却しているわけでございます。したがいまして、いまの御指摘のこのケースを認定とすることはできません。
#50
○瀬野委員 この辺が患者切り捨てにつながるということで大変地元でも問題になって患者の皆さんも憤りを感じているわけです。この辺が明快にならぬわけですけれども、資料を得ようと思っても亡くなった人は資料がなかなか得られないわけですから、疫学的に見て十分その症候があり、また家族の状況その他から見て十分そういったことが認定できる条件であれば、まことに気の毒な人でございますので、十分政府も弾力的な考えを持っていただきたい、私はかようにお願いするわけです。そこで、以上いろいろ申し上げてまいりましたが、以上の答弁を踏まえて私たちも十分党で検討してみたい、かように思っておるところでございます。
 そこで一つの結論として、環境庁長官にお尋ねいたしますが、五十三年七月三日の新次官通達は、いままで議論して明らかになってまいりましたように、明快になった点もあればわれわれが考えているのとほど遠いものもかなりあります。患者にとって厳しい通達になっておりますけれども、疑わしきは棄却とも受け取れるような通知であるということを地元の患者は叫んでおります。私たちもそういう感がしてなりません。したがって、私は、こうした誤解を与えないように表現を訂正するか補足通達を出すか、または新たに今回の質疑を通じて新次官通達にさらに新を加えて新々次官通達といいますか、こういった通達を出して十分不安のないようにするか、いろいろ考えられると思うのであります。本朝十時からの理事会でいろいろ検討されて、まだ案のたたき台でありますが、「今回の事務次官通知は、水俣病の範囲について四十六年の次官通知及び国会における大石長官の答弁をふまえ、これをより具体化・明確化して示したものである。この具体化・明確化により認定業務の促進に資するものと考える。」というようなことがいろいろ考えられておるように伺っておりますが、私は、地元として実に深刻なこの水俣病対策に当たって、政府ももっと真剣に取り組んで、患者の窮状を十分察知されて、先ほど申しましたように何らかの対策を講ずべきじゃないか。そして今回議員立法として提案されている問題等を含めて早急に検討すべきである、かように思うがゆえに私は一応の締めくくりとして申し上げるわけですけれども、山田環境庁長官から、以上の質問を通じ、ただいま私の質問に対してお考えを求めておきたい、かように思います。
#51
○山田国務大臣 いろいろ御懸念の点御披瀝いただきましてまことにありがとうございました。先ほども申し上げましたけれども、水俣病患者は一人残らず認定されなければいけないのだ、われわれはこういう基本的な立場に立っております。したがいまして、従来の判断条件、これを少しでも格上げし明確にしよう。また、資料不足のものについてはあらゆる努力を払って、認定される者が認定漏れにならないように、われわれはこういうことをさすべく努力も続けている次第でございます。
 いまのわれわれの真意が徹底する点についての不足の点は、あらゆる機会、あらゆる手段を通じてせいぜい鮮明にするようにしたいと思いますけれども、いま新しい意味の次官通牒を出すというわけにはいかないというのがわれわれの立場でございます。
 以上の点は、ひとつあらゆる点で理解を深め、御懸念のような点にこたえていくように努力したい、こう考えておりますので、御了承を賜りたいと思います。
#52
○瀬野委員 有機水銀の影響及び認定基準の緩和等の問題について、数点お伺いしたいと思います。
 まず第一点に、水俣病は有機水銀を経口摂取することにより起こる神経系疾患であると環境庁は定義しております。したがって、水俣病どのような症状を示すかは有機水銀の人体に与える影響を詳細に研究しなければならないわけであります。そして、その調査研究の進展によって水俣病の概念も当然変わってこなければなりません。四十六年八月の次官通知に示された水俣病の諸症状や概念はその後、研究によってどう変化したのか、どの点が変わってきたか、その点をまずお伺いしておきたいと思います。
#53
○本田政府委員 結論的には四十六年の水俣病と、それから現在の水俣病は違いがございません。ただ、個々の症状なり組み合わせ等によって明らかになってきた部分がございます。それが判断条件に示されている、これは判断条件全部とお解しいただきたいと思います。つまり、俗に申し上げますならば、もやっとしてわからなかった向こうの景色がある程度、その輪郭をつかむようなつかみ方であった時代もあったろうと思います、しかしながら近寄ってみますと、それが部分的に症状の組み合わせといったものが明らかになってきた、これが医学の進歩だと思います。
#54
○瀬野委員 有機水銀による人体への影響について、その全貌を把握しておるかどうか。有機水銀中毒、すなわち水俣病を神経のみならず全身を冒す全身病ととらえる学者がおりますけれども、この点については、政府はどういうような見解をお持ちでありますか。
#55
○本田政府委員 昨年の「後天性水俣病の判断条件」のところで、定義とは書いてございませんが、「水俣病は、魚介類に蓄積された有機水銀を経口摂取することにより起る神経系疾患であって、次のような症候を呈するものである」ということが決められております。これが現在におきますところの水俣病の定義と申しますか範囲でございます。これにつきましては、実はいろいろ御意見も学者の先生によってあろうかと思いますが、たくさんな学者の先生方によるところのコンセンサスを得られたものだとお解しいただきたいと思います。
 先ほども申し上げたかと存じますが、後天性水俣病の判断条件につきましては、過去二年間にわたりまして関係の県の審査会の主たるメンバーが相寄りまして、水俣病認定検討会――先ほど委員会と言ったかもしれませんが、検討会をつくりまして集約していただいた結果でございます。
#56
○瀬野委員 水俣病の研究で有名な、先ほども申し上げましたところの熊本大学の原田助教授は、有機水銀による病像として大きく四つに分けておられます。
 一つは、大量のメチル水銀暴露をした場合、急性劇症、すなわち麻痺、けいれん、意識障害、死亡、こういうふうになりますが、水俣病特有の病像はあらわれにくい。二つには、一より濃度の低いメチル水銀を受けた場合、これは知覚障害、視野狭窄、運動失調、難聴、言語障害、いわゆるハンター・ラッセル症候群であります。これは典型的水俣病、こういうふうに言われております。三つには、二に述べましたものよりもさらに低い濃度の場合、すなわち軽症、症状がそろわず、ある症状のみある場合、これは不全型水俣病、こういうふうに言っておられます。四つには、三より低い場合は一般的疾患、すなわち高血圧、肝、腎障害などとなっております。
 有機水銀の中毒は全身病としてとらえられておるわけでありまして、しかしながら、これまで認定されてきたのは、先ほど二に述べたいわゆるハンター・ラッセル症候群と言われた典型的水俣病のみであったわけであります。現在、棄却ないし保留にされているのは、三、四の形の不全型水俣病や、一般的疾患と区別のつかない症状を呈している患者であろうと思います。
 そこで伺いたいのは、原田助教授は、他の原因によると思われた神経症状、たとえば筋委縮とかてんかん発作などの症状もメチル水銀の影響と考えられる、また、メチル水銀の影響は他の臓器にも重大な影響を与えている疑いが強い、たとえば肝臓、腎臓や血管にも影響を与えると言っております。このことについては専門にわたる問題でありますので、詳細事前に通告しておきましたから、当局もこれについてひとつ、地元の関心の強いところでございますので、見解を明らかにしていただきたい、かように思います。
#57
○本田政府委員 水俣病のいろいろな研究をいろいろな先生方がなさっておる中で、いま御指摘になりました原田先生の御意見がこういう御意見であるということは、私承知いたしております。ただ、それがたくさんな先生方の中でどうやってコンセンサスを得られるかということが私は大事だと思います。そこで、水俣病が全身病であるということは、これはいまの後天性水俣病の判断条件についても、いろいろな症候が起こってくるわけでございますから、ある意味では全身症と言えるわけでございます。ただ、肝臓に害が出るとか、あるいは腎臓に害が出るということは、少なくともいままでのところ各学者のコンセンサスを得られてないわけでございます。かもしれません、しかし、将来そういうことが共通的に明確になりましたならばともかくといたしまして、現在ではやはりこの判断条件に基づきまして、これが各高度の知識を持った人たちの意見の集約でございますので、そしてしかも、一つの疾病では困りますけれども、水俣病で一つの症候があるということはほとんどあり得ないと言われております。幾つかの、少なくとも二つ以上の症候があるということは、これはまあ医学の常識だというふうに聞いておりますけれども、そういう組み合わせと、それから暴露歴というものの状況等を勘案して判断されるということが現状でございますので、いま御指摘の、いわゆる疑いということを肝臓とか胃とか肺とかその他の臓器に及ぼしましてこれを認定するということは、現状ではできません。
#58
○瀬野委員 そうしますと、こうした見解を否定する明確な根拠がない限り、水俣病を全身病ととらえ、認定基準を拡大すべきじゃないかというふうに考えるのですけれども、その点はどうですか。
#59
○本田政府委員 これは、申し上げましたように、コンセンサスが得られて――これは基準じゃございません、いま基準という言葉がございましたけれども。判断条件でございますが、判断条件を緩和するとかしないとかいうことじゃなしに、この判断条件の中に水俣病を判断する場合のいろいろな組み合わせを例示してございます。たとえば手足の麻痺と運動障害、運動障害が軽い場合はこういう症状があるという幾つかの事例が判断条件の中に示されております。そういったことで現在の水俣病を認定いただいているわけでございますけれども、過去二年間にわたってこういう集約をしたと同様に、将来においてもあるいは医学の進展を見てこういう集約がまた必要になることもあろうかと存じますが、少なくとも現在では、これをもって統一的な見解と解しております。
#60
○瀬野委員 現在の認定基準になっているのは五十二年の判断条件であります。この判断条件も、四十六年の次官通知における認定要件と比較して、進歩している面もあるけれども、逆に後退した面もたくさんあります。進歩している面といえば、水俣病の示す症状として、四十六年のときになかった眼球運動異常、味覚障害、嗅覚障害などが加えられている点でございます。また、後退している点は、四十六年の認定要件においては、水俣病の示す症状のうちいずれかの症状を示していてもその者の暴露歴より考えて水俣病に含めていたが、判断条件においては、水俣病に含める症状は感覚障害を中心とした二つ以上の症状の組み合わせがあった場合と、幾分限定しております。単独の症状の場合を全面的に否定しているわけではないけれども、実際の審査の場合は、単独症状はほとんど棄却ないし保留にされているのが実情でございます。単独の症状を示している場合にあっても、有機水銀の影響が認められる場合には水俣病に含めるとはっきり四十六年の認定要件のように書くべきであった、こういうふうに思うのですけれども、この点についても、政府はどういうふうに検討してこういうような通達をされたのか、ひとつ見解を求めます。
#61
○本田政府委員 四十六年の通知といま御指摘の五十二年の「後天性水俣病の判断条件について」というものを両方引用いただいて御指摘になっているわけですが、進歩しているという言葉でおっしゃいましたけれども、やはりその後の医学の進展に伴いまして、たとえば単に言葉が変わったところもございます。「知覚障害」と言ったものが「感覚障害」と言うのが正しいんだという用語の整理等もございます。それからいろいろ新しく、いまつけ加わった症状もあるとおっしゃいましたが、そういうものもございます。したがって、そういう意味では、学問の進歩に伴いまして非常に明確化されていると思います。水俣病が示すいろいろな症状が明確にされていると思います。それが今回の事務次官通知でいう「明確化」ということにつながってくるわけでございます。
 それから、これもぜひ御理解いただきたいと思いますのは、四十六年通知で「いずれかの症状」と言っているのは、たった一つの症状と言っているのじゃございません。これはその後の課長通知でもはっきり申し上げておりますように、「全部または一部」のという意味でございます。何度も御指摘いただいておりますけれども、いずれか一つのという意味、たった一つの症候があって、それで有機水銀の暴露歴というものが片一方にある、それだけをもって認定せよという御趣旨かと思いますけれども、これは四十六年の通知の当時から現在も変わりなく、全部または一部の症候、つまり組み合わせがあるということを四十六年の通知でも言っているわけでございますから、その辺を重ねて御理解賜りたいと存じます。
#62
○瀬野委員 さらに伺っておきますが、いわゆる水俣病の特異的症状を示さない場合であっても、有機水銀のはっきりした暴露歴があれば、有機水銀による影響であるかどうか慎重に判断することを判断条件の中に書くべきではないか、かように思うのですが、この点についてはどうでございますか。
#63
○本田政府委員 去年の七月の「後天性水俣病の判断条件について」の「記」のところの第二、これにこういうことが書いてございます。いままでいろいろ書いてきた症候、たくさん、手足のしびれとか、知覚障害とかあります。そういった症候はいずれ単独に取り上げてみるとこれは非特異的な症候である、ほかの病気からも来る症候である、水俣病だけ一つをとらえますと水俣病の特異的なたった一つの症候はないとここに書いてございます。どの一つをとっても「単独では一般に非特異的であると考えられるので、」云々ということであります。そこで、いま御指摘になりました暴露歴との関係がこの後段にずっと書いてあるわけでございます。一つ一つをとれば非特異的な症候であるけれども、「水俣病であることを判断するに当たつては、高度の学識と豊富な経験に基づき総合的に検討する必要がある」けれども、それに加うるに暴露歴を有する者にあっては――いろいろ暴露歴というものが例示されております。たとえば、その当時の頭髪に含まれている水銀の状況あるいは血液、尿、臍帯、それから家族歴あるいは職業歴、居住歴、ここに例示がアからエまでございますけれども、そういった暴露歴を参考にして、非特異的な症候の組み合わせと暴露歴を重ねてひとつ水俣病を判断しなさい、こういうものが判断条件の2のところに書いてあるわけでございます。
#64
○瀬野委員 時間が迫ってまいりましたが、若干はしょって、この機会にお尋ねしておきたいと思います。
 棄却の理由のことでございますが、棄却の理由をずっと見ますと、ほとんどの人は、あなたは水俣病ではありません、したがって申請を棄却します、こういうように簡単に扱っておられるようであります。これでは余りに不親切ではないかということで、いろいろわれわれ同僚議員の中でもしばしば問題になっておるわけですけれども、棄却された人がどのような理由で棄却されたのか、わからないわけでございます。また、自分の患っている病気が水俣病でないなら何の病気なのか、一向にわからないような書き方では、余りにも患者に対して不親切ではないか、かように思えてなりません。これらのことについて、たとえば、これこれこういうわけで水俣病ではありませんというような、懇切丁寧な棄却理由を書くようにすべきではないか、こういうように思います。私たちも、棄却理由の中には、いわば公然と書くことが、いろいろプライバシーに関する問題等があって問題があることも十分承知しておりますけれども、できるだけ具体的な理由を書いてやるべきだ、かように考えるわけですけれども、この点、患者の立場に立って改めるという考えはございませんか。
#65
○本田政府委員 いまプライバシーその他とおっしゃっていただきましたけれども、確かにそういう意味もございます。棄却する場合には、現在、御指摘のように、端的にいえば棄却である、こういう理由でということは一切書いてございません。と申しますのは、水俣病の認定審査に当たりましては、水俣病は先ほどから申し上げているように、いろいろな症候の組み合わせを見なくてはいけませんから、それを中心の検査ということ、検査成績ということが条件に、それが審査会に上がってきて、そこで水俣病を判断するわけです。たくさんな病気がある中で、いろんな検査が必要でございます。ある一人の患者さんがどういう病気であるかを診定するには、水俣病を診足する以外のたくさんな検査がございませんと、水俣病でない、棄却されるものが、たとえば高血圧であるのか、胃がんであるのか、あるいは糖尿病であるのか、いろんな病気を、診定するためには、実はたくさんな検査が要るわけでございます。そういう制度でございませんので、実はその心情については、私は、プライバシーの問題さえなければ、非常に理解できると思います。しかしながら、医学的にそこまで判断して差し上げる資料を水俣病の検査のためにとっておりませんので、言いたくても言えないというのが、判断したくても判断できないケースが多いということを御理解賜りたいと存じます。
#66
○瀬野委員 もう一つは、答申と処分保留者の多い理由の問題を伺っておきますが、熊本県だけに限っても、八月三十一日現在で、答申保留数が千百五十一名、うち旧法によるものが千百四十四人、処分保留数が六十七名、うち旧法によるもの六十七人、合計千二百十八人となっておりますが、どういう理由で保留にされているか、この点もひとつこの機会に御答弁を求めておきます。
#67
○本田政府委員 特に熊本県におきまして答申保留者が多いということは御指摘のとおりでございますが、これは被害者の救済に、先ほども長官がおっしゃっておられましたように、遺漏のないようにということ、つまり水俣病であるかもしれない人を棄却なんかにしちゃいけないわけでございます。そういうことから、念のために、もう少し一定期間を置いて症状の変化を見ようじゃないか、あるいはこういう検査をつけ加えてやってほしいというケースがあるわけでございます。直ちにそこで、めんどうくさいからここで判断するのだということじゃいけませんので、そういうことを慎重にやっておりますので、当然と言っては語弊があるかもしれませんが、保留者はいわゆる審査会保留というケースが多くなっているものだと存じております。
#68
○瀬野委員 以上いろいろと政府の見解を求めてまいりました。冒頭私申し上げましたように、熊本県側としても、一歩前進として、県債発行等の関係もありまして、議員立法問題の成立について強い要請が出ておりますが、ただいまの答弁を十分踏まえて私たち党でも十分検討した上で対処してまいりたい、こういうように思っております。
 なお、質問の残余の問題については、時間があとわずかでございますので、次回に譲ることにいたしまして、最後に山田環境庁長官に一点お伺いして見解を求めます。それは水俣病患者の就職の世話の問題でございます。
 御承知のように、石原前環境庁長官は、在任中、五十二年十月ごろ、若い水俣病患者の就職の世話をするための財団法人設立構想を述べられて、長官をやめるときにも、次の山田長官に引き継いでもらう、こういうふうに患者らに約束しておられるのであります。山田長官は何も受け継いでいないとしてこれを否定しておられましたが、山田長官も五十二年十二月二十九日の記者会見で正式に環境庁として財団構想を引き継ぐ意思のないことを言明し、財団法人ではなくとも患者さんたちの要望に沿えるよう努力したいと発言しておられる経過がございます。
 長官、思い出していただいたと思いますが、そこで、山田長官の発言のように、財団でなくても、就職難で困っている若い患者さんのために、環境庁長官として何らかの努力をすべきではないか、かように私は地元として思うわけでございます。余りこれは冷たいじゃないか、こういうふうに言っておるのですけれども、ぜひ最後に山田長官のお考えをひとつ全患者のために述べていただきたい、かように思います。
#69
○山田国務大臣 ただいま患者のためについての非常な温かい御指摘を承りまして、私も非常にありがたいと思います。
 一般に雇用機会の確保を図る、これは行政上の重大なる任務の一つであると考えております。したがいまして、環境庁といたしまして、この公害患者の救済を図る見地から大きな関心を寄せておるところでございまして、いま水俣病の患者、御指摘のような患者につきまして、職業安定当局にもお願いして、雇用の機会の確保を図るように私もひとつ十分努力するよう努めたいと考えております。
#70
○瀬野委員 山田長官からかたい決意の表明がございましたので、ぜひともそういうふうに前向きの姿勢で検討いただきますようお願いいたしまして、時間が参りましたので、質問を一応終わらせていただきます。
#71
○久保委員長 次に、中井洽君。
#72
○中井委員 二日間にわたって環境庁の事務次官のいわゆる新次官通牒の問題に限って質疑をしているわけでございます。すでにかなり明らかになった部分もございます。あるいはまだ不明な点もございます。この次官通知に限って私も、あるいは重なるかもしれませんが、疑惑な点をただして、次の方に進めていただければありがたい、このように考えるものでございます。
 まず最初に、環境庁に、この新次官通知というものをことしの七月という時点でお出しになった時期の理由、何か承れば、四月、五月ごろから準備をしたのだ、こういうことでございます。七月という時点になぜ通知を出さなければならなかったのか、その点をお尋ねいたします。
#73
○上村政府委員 昨日も馬場委員の御質問にお答えいたしましたように、熊本県議会の動きとも絡みまして、ことしの春ごろ、三月から五月ぐらいにかけまして、認定促進について協議を進め、その中で、こういった次官通知を出すことによって認定の促進を図りたいということが出てまいったわけでございます。その検討をいたしまして、まとめられた次官通達が出たのが七月である。六月でなければならぬ、七月でなければならぬ、八月でなければならぬということじゃございませんで、検討してまとまりましたので、一番早く出した時期が七月になった、それだけでございます。
#74
○中井委員 それは熊本県とのお約束でございますか、ちょっと、そんなふうに聞こえたのでございますが。
#75
○上村政府委員 通知を出すことが約束ということじゃございませんで、その認定促進について何らかの措置をとろうということにして、相談をしながら進めてまいった、その結果でございます。
#76
○中井委員 そうしますと、今度の次官通知は、いわゆるチッソ救済に関して県債方式をとる、この県債方式の一つの前提条件として出された、こういうふうに理解していいわけでございますか。
#77
○上村政府委員 ことしの六月二十日に水俣病対策につきまして閣議了解がありましたときに、一つは認定業務の促進ということであり、一つはチッソ株式会社に対する金融支援措置であったわけでございます。したがいまして、論理的には両者は別個のものでございます。認定業務を促進するということは、県債を発行しなくても必要なことであるわけでございますが、ただ実態的に見ますと、認定を促進することによってチッソの補償をしなければならない額がふえてまいる、それにはどうしても金融支援措置が必要になってまいるということでございますから、実態的には結びついておるというふうに御理解いただきたいと思います。
#78
○中井委員 実は、私がこういうことを聞きましたのは、率直に言わしてもらいますと、こんなの出してくれへんだったら、もっとさっさといろいろな方向に行けたのにと思うわけであります。何もこの次官通知を七月の時点に出す必要もないわけであります。逆に、七月の時点に出さなければならない、あるいは県債方式の前に――まあまあ密接な関係はないとか、前提条件ではないとは言うけれども、自民党さんのお出しになっている法案というものも結びついている。そういうのを考えますと、とにかく県債方式でやるんだ、そのためには中央にも審議会を設置していこう、それからこの次官通知を出して審議会をやっていこう、こう裏を勘ぐりますと、県債をすることによって、財務局かどこか知りませんが、財政、財源の枠をとにかくはめてしまおうじゃないか、そうじゃないと大変なことになるぞ、こういう前提があって、それから一たんずっと逆に来ているというふうに、曲がってとろうと思えばとれると私は思うのであります。別に、こんな次官通達は基本的に前のものと何も変わらぬ、ただ馬場先生の質疑の中にもありましたけれども、幾らか認定促進に役に立つ、このぐらいの次官通達なら、国会で社会党さんの出されている法案あるいは自民党さんの出されている法案、それらが通る、あるいは熊本県で県債の決定ができる、それから出された方が結果としてよほどよかったのじゃないですか。違いますか。
#79
○上村政府委員 結果としましては、いま御指摘になったことは事実でございますから、そうかなあというふうにも言わざるを得ないかもわかりませんけれども、ただ、どうも誤解されている向きがあるのじゃないかというふうに思うわけでございまして、認定の促進ということは従来からも努めてまいりましたし、ことに五十一年十二月の不作為の違法確認の判決がありましてから、県議会の動き、それから県と国との関係、そういったものを踏まえまして、早く認定を促進しようじゃないか、そういうことを踏まえたものがこの次官通達であり、一方また自由民主党の方でも、国も手伝えという趣旨の法案を準備されておるわけでございまして、先ほど申しましたように、それとは別個のものでございますけれども、微妙に絡み合っておるということになるわけでございます。
#80
○中井委員 くどくは申しませんが、何かそういうやり方の中で、県債方式という本当に画期的なというか新しいやり方、しかも、二度とほかに適用できない方法でやった。それがゆえに、何か金額的な枠をはめてしまおうという感じを持たれておるのじゃないか。私はそのことを心配するわけであります。
 大臣、県債ということでございまして、これからどういう形で処理していくのか、私どもはわかりません。ここに水田先生がおられるけれども、私も地方行政の委員でございます。大変いろいろと心配もあるわけでありますが、環境庁長官として、財政、財源という枠にとらわれることなく、チッソの患者さんをとにかく助けていくんだということをお約束をいただきたいと思います。
#81
○山田国務大臣 いま御指摘の点、先ほど申し上げておりますように、水俣病患者は全部救済されなければいけないのだ、このたてまえに立っておりまするから、このことはすべてに優先して、ただ財政金融問題というものにかかわりなく、そういう公正のことが実現されるような形で行われるべきである、また、そのような趣旨で努力してまいるつもりでございます。
#82
○中井委員 それでは、この新次官通知の中身について、幾つか疑問の点についてお尋ねいたします。
 皆さんの議論にもございました「蓋然性が高い」、この言葉で、もう一度御答弁をいただきます。昭和四十七年三月の、当時の大石環境庁長官の、疑わしいというのは、とにかく五〇%、六〇%、七〇%も大体こうであろうけれども、またいわゆる定型的な症状が出ておらぬとかなんとかいうようなものと云々というのがありますが、それと何ら変わりはない、このことを確認をお願い申し上げます。
#83
○本田政府委員 「蓋然性が高い」ということはどういうことかと申し上げますと、専門家の判断によりまして水俣病である疑いが強いという意味でありまして、大石長官の発言にあるとおりでございます。
#84
○中井委員 わかりました。
 それと、その上にございます「水俣病に関する高度の学識と豊富な経験に基づいて」「総合的に検討し、」こういうわけでありますが、いま日本じゅうに、水俣病に関する高度の学識と豊富な経験をお持ちになっている方は何人くらいおられるのですか。
#85
○本田政府委員 何人と数で申されるとちょっと困りますけれども、熊本大学を中心に、熊本大学の基礎医学、臨床医学の各部、それから新潟大学の研究部局、それから九州大学等々、各大学に幾つかそれを研究なさる、また診療なさっている方々がおられます。鹿児島大学もございます。そういった先生方を言っておりまして、全部で何人かということはお答えできませんので、お許しいただきたいと思います。
#86
○中井委員 そうしますとこの人は、えらい細かくつっつくようなことで悪いのですが、高度の学識と豊富な経験を水俣病に関して持っておられる、それを判断をされるのは環境庁ですか、熊本県ですか、患者さんですか。
#87
○本田政府委員 これは資格ではございませんので、判断するとかなんとかではございませんで、少なくとも水俣病の研究に携わり、患者も診ておられ、診たことのたくさんの例示数を持っておられる。それも基礎医学の面から、あるいは臨床医学の面からすべて一人で、たとえば神経内科も耳鼻科も、眼科も、基礎医学も病理解剖もということはできませんので、そういった、水俣病に何らかの形でいろいろ関与なさっている方々を高度の学識をお持ちの方というのであって、たとえば、患者は診れないけれども、病理組織をとってみて、水俣病の病理変化については権威であるという方もおられると思います。そういうふうにいろいろなケースがございますので、そういうふうに御判断願いたいと思います。
#88
○中井委員 そういう学者さんをどなたが決められるのか、こう聞いているわけです。環境庁がお決めになるのですか。環境庁が決められると、例のNO2のときのようないろいろな問題もあって、大変失礼な話だけれども、患者さんが、あの人は水俣病のことに関して学識なんか持っていない、こういう場合にはどうなるのか、そういうことをお聞きしているのです。
#89
○本田政府委員 この高度の学識、豊富な経験というのが役に立つのは認定審査会であるわけです。したがって、認定審査会の先生をお願いする場合に、この方であれば高度の学識、豊富な経験を持っておられるだろうということを県が判断いたしまして、認定審査会を構成するわけでございます。
#90
○中井委員 それから、次のページにございます4の(1)でございますけれども、「申請者の症候が2又は3によつて水俣病の範囲に含まれると判断される場合には、速やかにその者について水俣病である旨の認定を行うものであること。」こういう文章がございます。大体、私わからないのでありますが、水俣病の症状と認められるものというのは幾つぐらいあるわけでございますか。
#91
○本田政府委員 水俣病の症候が幾つあるか、これは数ではまたなかなか言いづらい面がございます。
 と申しますのは、一つのしびれにしても、いろいろ病名、症候名がつきますので、そこで例示的に総括的に挙げてございますのが、五十二年七月に出しました「後天性水俣病の判断条件について」というのがございます。四十六年の通知にもございましたけれども、若干整理いたしまして、記の1のところに書いてございます。たとえて申し上げますと、「四肢末端の感覚障害に始まり、運動失調、平衡機能障害、求心性視野狭窄、歩行障害、構音障害、筋力低下」等々、その症候が列記してございます。そういったものでございまして、この判断条件の中の症候を取り上げてみますと幾つということを言えますけれども、同じ感覚障害でもいろいろな症候がございますので、ちょっと数で申し上げることはできませんので、お許しいただきたいと思います。
#92
○中井委員 そうしますと、先ほどの、高い蓋然性という言葉が絡まれば、患者さんが申請をなさる、二つ三つ水俣病の症候と思われるものが見られたら水俣病となるのか。あるいは、その二つ三つの一つ一つの症候について高い蓋然性というものを求められるのか。二つ三つあればもう高い蓋然性で水俣病と認めるのか。そうではなしに、二つ三つの症候あるいは四つ五つかもしれない、その一つ一つに高い蓋然性を求めていくのか、どちらですか。
#93
○本田政府委員 一つ一つの症候、それにもいろいろございます。たとえば手足がしびれているというときに、四肢の末端から始まってくる、だんだんひどくなるしびれと、それから全体がしびれるしびれ、水俣病に関係のあるしびれは先の方からしびれてくるものだと言われております。一つの症候をとってみましてもそういうのが幾つかあるわけです。
 それらを組み合わせまして、たとえば判断条件の中でこういう例示がございます。一方に暴露歴、水銀をとったという証拠がありまして、それに加えて、たとえば感覚障害があり、かつ運動失調が認められる、この二つの組み合わせばきわめて蓋然性が高い。それから、あるいは感覚障害があって、運動失調の方は疑いである、しかしながら、平衡機能障害あるいは両側性の求心性視野狭窄がある場合にはこればきわめて蓋然性が高いということを幾つか例示してございます。蓋然性というものはそういうところを見て高度の学識、豊富な経験によって総合的に判断される、こういうふうに御解釈いただきたいと思います。
#94
○中井委員 そうしますと、この4の(1)の二つまたは三つによってというのと、蓋然性というのは直接的にはそう関係はない、こういうことですね。
#95
○本田政府委員 蓋然性を見るのにきわめて関係がございます、この組み合わせのあり方、それから、何でも三つあればいいという意味じゃございませんで、たとえば歩行障害と運動機能障害というのはきわめて水俣病らしい組み合わせである。それから、歩行障害がないときにはどうだというようなことで、いろいろケースによって違うと思います。そこで、やはり高度の医学の判断によらないといけない、こういうふうに解しております。
#96
○中井委員 高度の医学というのが出てくると引き下がらざるを得ないのでありまして、その高度の医学でも、水俣病というのはこういうものであるというはっきりしたものはわからない、あるいは治し方もわからない、こういう状況であろうかと思うのであります。その状況の中で、たとえば棄却をされる、あるいは保留されておる、こういうかっこうの方々がたくさんおられる。その人たちに対して、高度の医学がさらにもっと高度になって、いろいろなことがわかってきたときに、その再審というか、もう一度見直すというのをこの中で触れておられるのか、あるいはいままですでにそういう制度で保留処分の中からどんどん認定がされておられるのか、その点はどうでございますか。
#97
○本田政府委員 現在の審査会が決定なさることに、御指摘のように認定、それから棄却というのがある。その間にまだ結論が出ない、先ほど申し上げましたように、保留の中にはいろいろな検査を追加必要とするもの、あるいは一定期間を置いて見るものというものがあって、判断に現状迷っているものがございます。その棄却したものについて、いま御指摘は、さらに棄却を認定するような制度があるのかどうかということでございますが、棄却されたものについては再申請ができます。そういう例がたくさんございます。
 審査の件数がぐんぐんふえている一つの理由は、一遍棄却したものがまた再申請で上がってくるというケースがあるからでございます。それからまた、これもさらにどういう道があるかということは、棄却されたものについては当然行政不服審査の道がございます。
#98
○中井委員 4の(2)のここに書いてあることは、結局死亡してわからないという患者さんのことであろうと思うのであります。そうですね。たとえば馬場先生の御質疑の中で「臨床医学的知見についての資料を広く集め、」こういうのは新しい環境庁の見解である、こういうお話がございましたけれども、いままでの保留処分の中あるいはいままで棄却された人の中に、こういう形でさらに広く資料、材料というものを集めれば救える、あるいは救われるであろう、認定されるであろうと思われる患者さんというのはいらっしゃらないのですか。
#99
○本田政府委員 認定か棄却かで、むしろ棄却の方が問題になると存じますけれども、ここに書いてございますことは、非常にレアケースといたしまして、申請をして、残念ながら、いま、申請から認定までに、審査にかかるまでに時間がかかるわけです。その間に亡くなられた方については――生きている方については資料追加ができると思います、検診の機会もあり。ただ、検診の機会が少ないという御批判はあるかと思いますけれども、資料が出ると思います。しかしながら、亡くなられた方は一体どうするかということです。亡くなられる以上は、通常の場合だと、病院に入院されるとかあるいは家庭で医師の往診を受けて亡くなられる。亡くなられるぐらいですから、普通には何らかの資料があると思われますけれども、そういったものを広く集めて判断をするんだ、こういうことを前段で言っているわけでございます。
#100
○中井委員 そうしますと、たとえば、これに当てはまる、亡くなられた未検診の、あるいは解剖もされていない患者さん、申請をされておる患者さんというのは何人ぐらいおられるわけですか。
#101
○本田政府委員 死亡なさった方でこれに当たる者は六十六名ございます。
#102
○中井委員 そうしますと、この次官通知全体、聞いておりますと、私も専門家じゃありませんし、熊本出身でもございませんので、1、2、3についてはもうほとんど――3の「小児水俣病の判断について」は少々新しいことがあるかもしれませんが、ほとんど新しい点というのはない、基本的にはいままでのと一緒だ、こういうことで、変わったところといったら、(2)の六十数名の亡くなられた患者さんの方々に対する新しい通知、こういうことであろうかと思うのです。
 そうしますと、やはり初めに戻るわけでありまして、そう大して急いで出さぬでもよかったのじゃないかという感じが、まことに申しわけないのですが、実感として私はあるわけであります。そういうものをわざわざお出しになったというのは、やはり県債方式あるいは、まあこの後審議されるのかどうかわかりませんが、自民党さんのお出しになった認定に対する新しい法案、こういったものが一ぐるみになって、チッソ救済というか、水俣病の患者の人たちの救済のために立てられる、こういうことであろうと理解するわけでございます。それが、逆に切り捨て促進だという不信感を患者さんや熊本県の人や、あるいはジャーナリズムの人たち、あるいは私ども国会の中の大多数の政党に抱かせておると私は判断するわけでございます。環境庁長官として、最後に、そういった関連の中に出したか出さぬかはともかく、誠心誠意あるいは環境庁挙げて、そういったことじゃなしに、とにかく患者さんを救う、あるいは認定をただ促進していく、これだけのための通知である、こういったお言葉をいただきたいと思うわけでございます。
#103
○山田国務大臣 いま御指摘のとおりをわれわれは考えているわけでございまして、要するに水俣病患者というものは、これは一人も漏れなく認定される、それに落ち度があってはいけないのだということで、そのためにいろいろな、あいまいでいろいろ言われていたこと、それをここではっきりする、あるいは参考資料と言っていたものをここではっきり格上げしようということで、その目的を貫徹したいということの努力でございまして、御趣旨は十分体してやりたいと思っております。
#104
○中井委員 終わります。
#105
○久保委員長 この際、午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。
    午後零時五十四分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時開議
#106
○久保委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。東中光雄君。
#107
○東中委員 認定促進と政府の基本的な姿勢について、まずお聞きしておきたいのであります。
 すでに他の委員からも指摘されておりますように、水俣病は昭和三十一年の正式発見以来二十二年、政府がこれを公害病と認めてからすでに十年たっている。しかし、問題がずいぶん残っておるというよりは、問題の解決がますます困難になってきているというのが今日の状態だと思うのです。特に認定の促進について、認定申請者の滞留という問題は四十七年から始まっております。漫然とこれを放置しておったということから、五十一年暮れには熊本地裁での不作為の違法確認の判決が下された。これは明白に行政の怠慢が違法状態になっておるということを司法判断したということで、きわめて厳しい行政に対する批判であったということが言えると思うわけであります。ようやく昨年の七月に百五十人の検診、百二十人の審査という措置をあの通達で決められたわけですが、昨年来、認定申請者はどんどんふえてきておる、相当数の保留があるということで、政府の期待したようには進んでいない。政府はこの認定の促進について、昨年の通達の趣旨から見てどういうふうにする見通しを持っておられるのか、その点をまず聞いておきたいと思います。
#108
○本田政府委員 水俣病の認定に関しまして、申請者を審査にかけます場合には、認定か棄却かということに相なるわけでございますけれども、その間にすこぶる判断に困るような事例がございまして、現在、いま御指摘のように保留という形でたまっている申請者がいるわけでございます。そういったことで、後天性水俣病の判断条件を明らかにすることにより認定、棄却という判断をより明確にいたしますために、判断条件を昨年の七月につくったわけでございます。そういったことを審査会におきますところの技術的な判断の根拠にしていただきまして、そういうことによりまして認定を一層促進したい、こういうふうに存じております。
#109
○東中委員 私の聞いているのは、昨年のこの環境事務次官の「水俣病対策の推進について(回答)」によりますと、たとえば4のところで、「昭和五十五年度中に現在の滞留申請者の処分を終了するものとし、この目標を達成するため、検診については、毎月百二十件の審査を行うことを目標に、」云々、そして「検診医の増強」については、「当面毎月百五十人の検診を行うことを目途に」やっていくというふうになっているわけです。これが、五十五年中に滞留申請者を終わらしてしまうということでやっているけれども、そのようには進んでいない。それどころか、申請者が激増してきた、保留が非常に多いという中で、ここで出しておる見通し、目標というものは全く達成できないような状態になっている。それについて、どういう見通しを持っていまやっておるのかということを聞いているのです。
#110
○本田政府委員 御指摘のように百五十人を月に検診して、そしてそのうち百二十人を審査にかけていくということで、一年前の話でございますけれども、当時保留者が熊本県において三千七、八百名おられました。その方々は、月に百二十人の検診目標でいきますならば二年ないし三年で終わるわけでございます。そこをとらえまして昭和五十五年までにということを考えさしていただいたわけでございまして、その計画で現在進みつつございます。しかしながら、一方におきまして申請者が月に百名前後、最近は六十名という月もございますけれども、申請者が相次いでおります。そういった方々は、その後に審査が終わり次第それを審査にかけていくということになります。したがいまして、去年の百五十人検診、百二十人審査ということからいたしますならば、この五十五年までにはそれまでたまっておりました三千数百人の申請者の認定は済む、こういうふうなことで現在進めております。
#111
○東中委員 認定促進について、昨年八月に一応の、それなりの改善が得られた。それで今度また新次官通知が出たわけですが、この新通知に基づく先月の審査でも、百十九人中、実に六十人が保留、こうなっていますね。そして五十三年度分を見てみますと、八月末現在で申請者数は四百八十三名になっている。それに対して処分者は二百十五名、実に申請者の二分の一しか処理されていない。こういう事態が起こっているわけですね。したがって、昨年八月に決めた百五十人検診、百二十人審査というだけでは、滞留がいまでも大変なのに一層ふえていくという事態になっているじゃないか、それについてどういうふうにしようとしているのかということを聞いているわけです。
#112
○本田政府委員 御指摘のように、一年前のものは、約三年の計画をもちましてこの滞留がなくなるということで進めておりますが、現在でも、いま御指摘のように月々申請者がございます。そういった方々についてはさらに、この滞留しているものの大きなものが保留者で、いま御指摘もございましたが、答申保留の数でございます。そういったものを、判断基準を明確にすることによって、また医学の進歩をとらえましてしたわけでございますが、そういうことによりまして保留の件数を少なくしていきたい。現に、去年からことしにかけましての月別の保留件数を見てまいりますと、それは少なくなっております。現在それでも数としては多うございますけれども、五〇%近くまで減少しているのが事実でございます。
#113
○東中委員 私がいま言っている質問に対して、あなたは答えてないんですよ。私の言うのは、去年の八月にそれなりの検診体制を強化し、そして百五十人、百二十人審査という目標を立てて、それで進んできた。ところがその後の状態から見れば、総体から言えば滞留は一層ふえてくる状態になっている。だから、その滞留をこの前の通知の延長線上でさらに検診体制を強化し、そして審査件数をふやしていくというふうな方向にいかなければ、昨年進み出した方向といま逆の方向へ、逆というか全く違った方向へいま行っているわけだけれども、百五十人というのをたとえば三百人にする、そのための検診体制をどうするかとか、あるいは審査を百二十人といったところを三百人にふやす、そのための体制をどうするかというようなことをやっておるのかやっていないのか、そういうことについての体制をどうしているのか、どういう見通しで決めているのかいないのかということを聞いているのです。
#114
○本田政府委員 認定業務の促進につきましては、月々の審査の件数をふやすことが当面必要なことだと存じます。
 そこで、この審査をいたします場合には、審査にかけます前に、審査会にかけるための検診が必要でございます。したがいまして、検診医の増強と申しましょうか、検診機能の増強ということにつきまして、たとえば各大学に専任の医師の派遣をしていただくようにお願いいたしておるところでございます。そういった検診体制の増強と申しますか、そういったことをぜひやっていかなくちゃいけないということでいま力を入れておりますが、現時点では専任医のその後の確保はできていないのが現状でございます。しかし、この検診医の増強につきましては、ぜひとも毎月百五十人検診をもう少しふやすように、そのためには専任の医師を常置していただくように努力をいたしたいと存じております。
 それからさらに、いろいろ方法がございます。百二十人の審査の数を増しますために、もう一つ、たとえば熊本県におきまして審査会を設置できないかということも検討されております。これも熊本県とおいおいと協議いたしておりますが、残念ながらいま現在では第二の審査会を設けるべき専門医の確保、審査会に入っていただく諸先生の確保が非常に難航いたしております。と申しますのも、水俣病についての専門医が少のうございますので、県内で集めることにも現在難航いたしておりますが、そういうことをやることによりまして積もりつつございます申請者の認定業務の促進を図っていきたい、かように存じております。
#115
○東中委員 そうすると、昨年出された「当面毎月百五十人の検診を行うことを目途に各科ごとに所要の検診従事延日数を確保することについて協力する。」この線のままで行っておる、この一年間に滞留はさらにふえておるけれども、この百五十人体制をたとえば三百人あるいは五百人の体制にすることを目途にそういう体制をつくるということは全然やっていない、これをやっただけでそのまま何も進展していないということですね、あなたのいまの答弁は。
#116
○本田政府委員 その後に全く何もやっていないかというとそうじゃございませんで、たとえば百五十人検診体制をしきますために、専門医の確保こそその後にできませんでしたけれども、大学からのパートにおける協力といったものは進んでございます。したがいまして、検診の体制が一年前よりも非常にやりやすくなったということは言えるかと思います。そういう進展はございます。
#117
○東中委員 それは百五十人体制をつくるための協力措置をとったということをあなたは言っているのであって、私はそういう体制をとってきた中で一層滞留者がふえてくる事態が明白に、私はさっき数字を挙げましたけれども、起こっているのだから、そういう事態では百五十人目標体制ではなくて、その体制を三百人体制とかに変えるというふうにさらに増強する体制をとることについて環境庁としては何も考えていないのかということを言っているのです。いまの答弁では何も考えていないということと同じ答弁なんですけれども、それについてはさらにそういう検診体制を強化する、目標を挙げることを検討するかどうかということをまず最初に聞いているわけです。
#118
○本田政府委員 おっしゃられるまでもなく、認定業務を促進することは当面の重要な課題でございます。そこで、この審査会を設置するというのは熊本県でありまして、私ども熊本県とその後も機会あるごとに、と申しますより絶えずと言った方がよろしいかと思いますが、この認定業務の促進について意見を交換し、どうすれば早く、より多くの検診体制に入れるか、あるいは審査体制に入れるかということをいつも検討しているわけでございます。熊本県においても大変努力はしていただいているのですけれども、申し上げましたような現状でございます。部分的にはかなりは進んでいると思いますけれども、しからば百五十人をあしたからでも二百人にできるかという体制ではいまだない、それに向かって努力をしているということで御理解賜りたいと思います。
#119
○東中委員 百五十人体制に向かって努力する。百五十人の検診を行うことを目途にこの一年取り組んできた。そういう中で滞留が一層ふえてきた。だから今度は、この一年の経験にかんがみて、百五十人体制じゃなくて三百人体制にするとかあるいは五百人体制にするとかいうふうな目途を決めてそれに取り組む、そういう姿勢になっていないのじゃないですか、ここを聞いているんですよ。
 去年七月に出したものでは、検診医の増強が非常に大切だということを書いてあるんですよ。その立場に立てば、この体制だけでは、まだ百五十人目標ではだめなんだということが、滞留がふえてくるという事態の中で明らかになっているのだから、それを三百人体制にするという目途を立てて、そういう方向で進むという通知に今度なったというなら、まさに前の方針に従ってやっているということになるのだけれども、その点については、新しい目標設定、検診体制の強化という点では環境庁としては何にも方針も出してなければ、ただ前の通知だけでやっていくということにしかなっていないのでしょう。それではどんどん滞留がふえていくわけですよ。患者の側の要求はむしろ全く無視されているということになるわけです。
 だから、長官、ちょっとお聞きしたいのですけれども、私、ここで一つ例を聞いたのです。四年、五年とわたって放置され、または保留とされている人々の苦しみというのは大変なものです。ここに一つ例があるのです。
 浦上の藤本重造さんという一家なんですけれども、この方は代々漁業を営んできた。ある時期には年三百日以上漁業に従事して漁業協同組合から表彰を受けるほどだった。それだけに汚染された魚を大量に食べて、藤本さん夫婦とおばあちゃんが水俣病に冒された。そこで三人とも申請をしたわけです。藤本さん本人は昨年の暮れようやく認定されたのですけれども、奥さんとおばあちゃんは保留のまま放置されて、これで六年です。この間各地の病院を転々とする。横浜で就職していた長男も帰郷を余儀なくされる。そして、おばあちゃんの場合は、患者にとって大変苦痛な検診を実に三時間半にわたって行われた。ところが、あげく保留とされて、もういまは寝たっきりです。今度再審査に必要な検診を受けようと思っても、体力的に受けられなくなってきている。こういう状態になっています。だから、昭和三十年当時の典型的激症型の水俣病と違って最近の場合は慢性型で、その症状も非常に多様化している。藤本さん一家のように、同じ家ですから同じように汚染された魚を多食して、多少の違いはあったとしても同様な症状が出ている。しかし、こういうおばあちゃんの場合、奥さんの場合はそういう状態に置かれている。これは保留にしているあるいは滞留している、そういうことのないようにするのだということについて行政は本当に真剣に取っ組まなければいかぬじゃないか。いわばチッソの不法行為なんですからね。この間論告されたように犯罪行為なんですから。そのことによって受けたという被害者が行政の認定がおくれることによってあるいは保留されることによって、もう本当にどうもこうもならない状態に置かれているというのですから、こういう実情を長官よく知ってもらって、それを進めていく、検診体制を強める、それから認定促進を図る、そういう被害者を救済するためにそれをやるのが環境庁の任務なんですから、そういう姿勢に立たなければいかぬと思うのですけれども、長官、いかがでございますか。
#120
○山田国務大臣 まさに先生御指摘のとおりだと思います。実際問題といたしまして、その熱意は、私のところの環境庁の者も一生懸命になってやっていて、決してこれを等閑に付しているということはない。ことにだれが見てもよくわかるように、この審査の実体勢力というものを増加していくということが何としても非常に必要なことはわれわれも特に考えているわけでございます。ただ、いろいろな事情から、いわば非常に専門的な知識を要するとかその他の関係から医師の獲得ということが大変むずかしいということで、御案内のように現地でも二班制に持っていきたいということを熊本自身でも考えているが、それがなかなか実行できない。今度いろいろお願いいたしておりまして、われわれもいろいろな意味で、議員立法というような形で中央で審査の道を開くことが即促進ということに役立つということで、その道を開くことによってとにかく促進されるということを非常に念じているようなわけでございます。
 水俣病の研究センターの人選等もいろいろな意味での優遇措置なども講じて努力しておりまして、大体人選も進んではおりますけれども、そういう難点があるので、それを切り開きながら直接当たってがんばるというようなことでやっているような次第でございまして、いわば解釈の過ちというものも除去して促進されるように、次官通牒はその一つの努力のあらわれでございますけれども、それとともに今回の措置とあわせて全般として少しでも促進されるように、不幸な状態が放てきされないようにということで努力しているわけでございまして、先生方よく実情を御存じのことでございますが、その熱意と努力の点については多少なりとも御理解を得たいと思います。
#121
○東中委員 認定促進をやるためにどういう方法をとるのがいいのかということで、昨年の通知でいけばいま申し上げたような、たとえば検診医の体制を強化するというようなことが言われているわけですね。百五十人目標にする。それに努力しているということだけじゃなくて、さらに目標を上げて促進する、促進する保証をするということについて、環境庁長官はそういう方向でいくということなのか、あるいはもう百五十人体制でいいんだということなのか、そこのところはどうでしょう。
#122
○山田国務大臣 これは当然少しでも滞留を防ぐということでいかなければいけないわけでして、これは実際、物理的に増員ということになかなかむずかしいところがあるのを、とにかくこれは鞭撻し、各方面にも働きかけ、みんなの協力も得ながらこの業務に協力してくださるお医者の方々を充実するようにということの努力を続けてやっているわけです。目標は、少しでも検診の数を多くしていくようにというねらいでその体制を充実すべく努力しているわけでございます。この点はひとつ御理解いただければと思う次第でございます。
#123
○東中委員 ちょっと私、長官の言われていることがよくわからぬ面があるんですけれども、いま百五十人の検診を目標にして体制を強化するという方針なんですね。それを、百五十人目標を一遍に五百人ということにならないにしても、二百人にするとか三百人にするとか、目標をさらに上げて、それに向かって今度はたとえば常駐医をどうするかということについての協力、努力をするという御意向があるのかないのかということをお聞きしているのです。
#124
○山田国務大臣 繰り返し申し上げておりますように、われわれは現在の百五十人、二百人という問題が完全に行われるように、でき得ればさらに進んでということを考えておりますけれども、現状は非常な物理的な困難にぶつかってなかなか進まないので、何とか関係方面の理解を得ながら体制の増強ということに一生懸命になって努力している、これが現在の状況でございます。
#125
○東中委員 去年の通達の態度は百五十人目標なんです。さらにそれを上げていく。いま長官は二百人ということをちょっと言われたわけですが、上げていくという方向で、そういう体制、たとえば常駐医の確保というようなことについて環境庁としては万全の努力をするというふうにお聞きしていいわけですか。いま言われた趣旨はそういうふうにもとれるし、そうでないようにもとれますので、重ねてお聞きしておきたい。
#126
○山田国務大臣 物理的な困難を克服しながら、とにかく目標は一生懸命になって努力しているので、この点は御理解いただきたいと思います。
#127
○東中委員 目標を上げることについても努力するということでございますね。それで前の、去年の通達では五十二年の六月二十八日、水俣病に関する関係閣僚会議で「水俣病対策の推進について」という方針が出されて、それを受けて昨年の七月一日付で次官通達が出されておると思うのでありますが、この次官通牒の立場では、審査機関の設置については「住民と身近な立場にある地方公共団体の長の行うものとして制度が組み立てられているものである。」そして「国が直接これを行うことは適当なものとは考え難い。」、はっきりそう言っているわけですね。そして現行制度における本件認定業務を「貴県と一体となって促進することが肝要」だ、したがって、「国が審査機関を設置して自ら認定業務を行うことが適当でないことは」明白だ、こういう趣旨の通知ですね。ところか今度の閣議了解ていくと――これは閣議了解ですから、環境庁の方針であって閣議が了解したというわけですから、閣僚会議よりはもっと環境庁にウェートが重くなってきておるわけですから、それでいくと環境庁長官に認定処分を求めることができることとする立法措置を政府としても準備する。これは昨年の通知で言っていたこととまるっきり逆になっているじゃないですか。昨年の通知では理屈まで入れて書いてあるのですね。なぜ県知事がやらなければいかぬのかということについては、住民と身近な立場にある地方公共団体の長官が行う、これがたてまえなんです。こうなっているじゃありませんか。どうしてこういうふうに変わったのですか。
#128
○上村政府委員 いま御指摘になりました昨年七月一日の通知は熊本県知事あての回答でございます。熊本県知事あて回答をなすまでの経緯につきましては御案内のとおりでございますけれども、五十一年暮れに熊本地裁で水俣病の認定不作為違法確認の訴訟が原告勝訴になりまして、それ以来、関係閣僚会議を開き、その間、熊本県議会で水俣病認定業務の返上に関する決議等が行われた、そういった事情を踏まえまして閣僚会議を開き、いま申し上げましたような回答を熊本県知事あてに出したわけでございます。その時点では、何としてでも熊本県において、より認定業務を促進するような体制をとってもらいたい、国と県と比べた場合にどちらが適当かといえば県が適当であるという趣旨の回答をしたわけでございます。しかし、それにもかかわらず、先ほど来御指摘になっておりますように、認定はなかなか進まない、滞留者もふえてきておる、そういうことになりますと県もなかなか手に負えないということになれば、次善の策として国の方でも手伝わざるを得ないというふうなことになってまいりましたので、自由民主党の方でこういうことについて御検討になりましたから、先般の、ことしの六月の閣議了解では政府としてもそれについて円滑に行われるように準備をするというふうに変わってまいったわけでございます。
#129
○東中委員 そういう経過はわかっております。経過を聞いているのじゃなくて、前の通達では環境庁のたてまえ、仕組みというものを前面にして、そしてこれは国が直接行うことが適当なものとは考えがたい、これが環境庁の結論になったわけでしょう。環境庁は適当なものとは考えがたいといっておったものを、今度は適当なものとは考えがたいけれどもやるのだという閣議了解をとっているのですよ。これは大きな方針の転換じゃないですか。
#130
○上村政府委員 先ほど申し上げましたように、去年の七月、考えがたいというふうに考えておりましたけれども、その後の滞留者の状況を見ますとそういっては済ましておけないということになって、この六月の閣議了解で方針が変わってまいったということでございます。
#131
○東中委員 その後の滞留者が大きくなった原因は、たとえば百五十人検診体制でおるから起こっているのであって、そうでしょう、審査会の。環境庁にないから起こっているのじゃなくて、現場において審査会を二班制にせいという要求がありますね、そうしたら環境庁の当初の考え方、こういうことは適当でないといっておった考え方をとらなくても現場の審査会を二班制にすればいいじゃないですか、そういうふうに要求しておるんだから。そうしたら環境庁のもとの考えと一致しているということになる。ところが、そういう方法をとらないで、そして考えがたいといっていたことを今度はそこへいきます、これは大きな転換でなくて一体何ですか、地元の患者の人たちが要求している二班制をとらないで。二班制をとった場合は環境庁の基本的な考え方と一致していける。それは、考えがたいことを今度は考え直してそういう転換をする、これは環境庁の方針として大きな転換だということをはっきりと指摘しておきたいと思うのです。長官、どうですか。だって考えがたいと言っているのですよ。
#132
○山田国務大臣 促進するということが必要である。しかも現地の二班制がどうしてもなかなか進まぬということ、そういう事態についてわれわれが少しでも促進しようとするならばどうするかということについてのわれわれの努力による判断のあらわれであるとお受け取りいただきたいと思います。
#133
○東中委員 それは結局、自民党の方からそういう案が出てきたからとさっき言われましたけれども、それを認めることになった。環境庁としての、行政庁としての基本的な考え方が自民党の立法意思で変えられてきている。適当でないと言っておったことをそういう方向に変えられてきておるということをはっきりと指摘をしておきたいと思うのです。環境庁の方針が、これは朝令暮改と言ってもいいのです。去年やって、ことしは考えがたいことをやる、こういうのですから、そういう性質のものだということをはっきりと指摘をしておきたい。
 それからもう一つ、新次官通知の問題点について、もう余り時間がありませんので聞きますが、四十六年の次官通知、昨年の保健部長通知、そしてことしの次官通知、こうあるわけですけれども、今度の次官通知で新しいところといえば、非常に典型的に出てくる問題でありますが、4の(2)、死亡者のみに限定されたものではありますけれども、これは非常に危険な側面がある。これは死亡者で判断できないという答申があったもので、「今後も認定に資する新たな資料を得ることが見込めない場合には、」棄却処分とするということになっていますね。これは四十六年通知とは明白に違っておる。四十六年通知では「当該症状が経口摂取した有機水銀の影響によるものであることを否定し得ない場合」、この場合は認定するということになっているわけです。影響によるものであるということが否定し得ない場合は認定です。今度の場合は、否定し得ないのではなくてわからないときには、そして先が見込みがないときは棄却だ。これはもう主張、立証責任の転換じゃないですけれども、ころっと変わっているのです。変わってないとお思いですか。
#134
○本田政府委員 四十六年のいま御指摘の、言葉をはしょりまして、「否定し得ない」という言葉につきましては、この解釈をめぐって実は大変議論があったわけでございます。
 そこで「否定し得ない」というのはどういう意味かということで、その一月後で、当時の保健課長通知をもちまして「否定し得ない」ということは、豊富な経験に基づく判断と高度の医学的な判断によるものだ、これを込みにしてお読み取りいただきたいと思うわけでございますけれども、その後に国会答弁におきまして大石長官が、四十七年でございましたが、この「否定し得ない」をめぐりましてこういう意味であるという御答弁をなさっております。「否定し得ない」という言葉は、俗に言う「疑わしい」という言葉と、それから医学的な言葉は違うんだ、ここで「否定し得ない」と言っているのは、医学的に見て否定し得ないという意味である、それは一%でも三%でも一〇%でも可能性があれば否定し得ないということで救おうということでなしに、少なくとも五〇%、六〇%、七〇%以上あるものを否定し得ない、こういう意味だ、こういう解釈でございます。したがいまして、今回の事務次官通知で言っておりますことも全くそれと同じ意味であるわけでございます。ただ、先生いま御指摘の新しい次官通知の4の(2)というところは、ちょっといまの議論とは違った議論だと存じます。「否定し得ない」ということは、現在も、大石長官の言葉をお借りするならば五〇%、六〇%そういう医学的な高度な学識と豊富な経験によってそれが判断される、そういう意味での「否定し得ない」という言葉であるということを御理解賜りたいと存じます。
#135
○東中委員 この通牒は医学的なものであるかないかは、そういうふうには書かれていないのです。「法の趣旨に照らし、これを当該影響が認められる場合に含むものであること。」要するに、法の趣旨から書いてあるのです。だから、たとえばここで最近の例で言いますと、棄却者の多くはその症状について他の病名がつけられる。たとえば脳動脈硬化症と病名をつけて、この病名でその人の症状が説明できるということにして棄却にするのです。こっちから言うたらこういう他の原因による病気だという説明ができると言うたら、もう棄却にするのですね。ところが、ここに書いてある四十六年の認定についての通知によると、「当該症状のすべてが明らかに他の原因によるものであると認められる場合には水俣病の範囲に含まないが、」とある。だから、説明がつく病名があればというのじゃなくて、「症状のすべてが明らかに他の原因によるものであると認められる場合には水俣病の範囲に含まないが、」「経口摂取の影響が認められる場合には、他の原因がある場合であつても、これを水俣病の範囲に含むものであること。」こうあるのですね。ほかの原因でそういう病気になるということがあっても、水俣病の関係で経口摂取した、それの影響であるということが部分的にでもあれば、それは水俣病の範囲の中に入れるのだ。そして、さっき言った「当該症状が経口摂取した有機水銀の影響によるものであることを否定し得ない場合においては、法の趣旨に照らし、」これを認めるのだ、こういうふうになっているのですね。全然たてまえが違うのですよ。その蓋然性というのは、蓋然性が高いとか低いとかいうのは、これこそ全くその人によってそれぞれ違う、包括的な判断にしかすぎないわけですね。ここで言っているのは、きわめて明快に、いろんな原因でなってくるということがあっても、一部に、全部じゃなくて一部に、この汚染物質の影響によっておるのだということが否定できなかったら認めなければいかぬ、こうなっておるわけでしょう。たてまえは全然違うのですよ。これが一緒だったら何も改めて通知を出す必要はないじゃないですか。
#136
○本田政府委員 四十六年の通知に関しまして、いま先生が御指摘になりましたのは、通知の第1の(2)であろうかと思います。
 御質問の繰り返しになるかと存じますけれども、その前段、いまお読みいただきました前段はこういうことでございます。「症状のすべてが明らかに他の原因によるものであると認められる場合には水俣病の範囲」には含まれない。こういうことは、原因がすべてほかのもので説明できるのはこれは棄却しなさい、こういうことでございます、認められないということは。それが現在の通知で全く同じことが書いてございます。同じことでございます。
 それから、後段でおっしゃっていただきましたのは、ほかの原因かもしれないけれども、それに暴露歴と申しますか、有機水銀を経口的に多量に摂取したという暴露歴がある場合には、そこで棄却をせずに、その暴露歴というものを参酌して判断してください、こういう文書でございます。現在の通知、新しい事務官の通知、それから去年の七月に事務次官の通知にも盛り込んでおりますけれども、「後天性水俣病の判断条件について」というところにそれが明記してございます。
#137
○東中委員 私は、いま言うておるのは通牒じゃなくて、この新通牒が出されて後の棄却の場合に、たとえば脳動脈硬化症と病名をつけて、この病名でその人の症状が説明できるということになったら棄却にしている、それを問題にしているのですよ。そういうふうに切り捨ての方向に進んできたのはこの通牒が大いに作用しているのであって、そこのところを言っているのですから。
 さらに、たとえば水俣病に見られる一つ一つの症状は、この昨年の通知にも言っているわけですが、それぞれ単独では他の疾患にも見られる、すなわち、非特異的と言えるかもしれないけれども、それを区別するために、一つの症状ではだめだ、一定の症状の組み合わせがなければ認定しないと言って、認定範囲を狭めて、あまつさえ、その組み合わせが他疾患でも説明できる場合には慎重に検討せよ、こうなっていますね。だから、水俣病は有機水銀によってしか起こらないという意味では特異的だけれども、確かに個々の患者にあらわれる症状は多様で、なかなか他疾患との区別がむずかしい場合がある。だからこそ四十六年通知は、むずかしいけれども、これが有機水銀によるものでないという、その影響が否定できるということでなかったら水俣病として認めなさいということになっているのですよ。第一、完全に否定するのじゃなくて、水俣病は有機水銀による影響であるということが完全に一〇〇%わかっておるのだったら、補償は八〇%ではなくて一〇〇%補償するのがあたりまえですね。民事の問題ではなくて、一〇〇%ではなくて補償は八〇%だという考え方に立っているのは、これは公害補償法のたてまえからいって、いわゆる民事上の因果関係とかいうものまで至らなくても救済せねばいかぬということで、しかし額は減らしていく、こういうたてまえになっているのですね。そういう点からいって、いま一般の民事のような議論に戻してくるというのは、これは明らかに後退であり、変更であり、切り捨て通知だ、こういうことになるわけなんですよ。その点どうですか。
#138
○本田政府委員 繰り返し申し上げますけれども、四十六年の通知とそれから今回の通知は、この部分に関しても全く変わりはございません。もう一度申し上げますと、「否定し得ない」という言葉は、通俗的に何もかにも疑わしいというか、あるいは可能性があるというだけの意味ではないということを、その後にいろいろな機会を通じて、課長通知あるいは国会におけるところの環境庁長官の発言、そういったものを踏まえて踏まえられているわけでございます。したがって、ただ単に通俗的に疑いがあるとか、あるいは否定し得ないということじゃなくて、否定し得ないという判断の中には、豊富な経験と高度の学識をもって医学的に判断さるべき、そういう意味での「否定し得ない」という言葉であるということをぜひ御理解いただきたいと思います。
#139
○東中委員 それがごまかしなんだと言っているのですよ。ここに文書、通知というものが出されておって、日本語で書かれておって、日本語のとおりに読むのがあたりまえなので、そういう形の蓋然性が高いとか低いとかというふうな漠然としたものとはおよそ性質が違うということをはっきりと私は申し上げておきたい。
 時間がありませんので、もう一つ。昨年の保健部長通知についてでございますが、四十六年の通知と比べて大分問題がある。環境庁は、昨年の部長通知は四十六年の通知の具体化だ、こう言っているわけですけれども、保健部長通知を出された根拠は何なのですか、どういうことでこれが出されたわけですか。
#140
○本田政府委員 昨年の保健部長通知というのは、「後天性水俣病の判断条件について」という五十二年七月一日付の通知だと存じます。これは従来のいろいろな機会に水俣病の範囲に関しまして議論がなされましたものを、ひとつもう少し医学の進展を踏まえて明確化しようということで、昭和五十年に水俣病認定検討会というものが設置されまして、それから二年にわたりまして、三県一市の審査会のメンバーを中心にするところの先生方によって意見集約が行われたわけでございます。そうやってでき上がりましたのがこの「後天性水俣病の判断条件について」でございまして、そのでき上がったものを通知として出したわけでございます。
#141
○東中委員 その検討会で検討した結論に基づいた、こういうことなんだけれども、通知の根拠になった資料を検討会でいろいろ検討されたのでしょう、そういう結論が出たというのだったら。その根拠になった資料、これを明らかにすべきじゃないかというふうに思うのですが、提出してもらえますか。
#142
○本田政府委員 一般的には、たとえばいろいろな疾病の診断基準なりというものにつきましては、幾つかの調査の資料というものに基づいて基準ができると思います。ところが、水俣病に関しましては、これはごらんいただきますように判断条件でございまして、基準ではございません。ということは、基準ができないということです。したがいまして、いろいろな症状があり、いろいろな症状の組み合わせということを、三県一市の審査会の先生方を中心と申し上げましたけれども、その方々が日常患者に接し、診察をし、治療に当たり、そういったさなかにおいて幾つかの経験を、また研究によっても積まれております。そういった英知を持ち寄りまして、二年間にわたって検討してでき上がったものでございますので、多分先生がおっしゃるように、何かのこういうパイロットテストがあって、これに基づいて盛り込んだという性格のものでございませんので、先生方のいままでの経験によりますところの知識の集約というふうにお解しいただきまして、そういう意味におきましては、どれを利用してこれをつくったかという資料はございません。
#143
○東中委員 検討会をやったら、いろいろな症例の報告もあるだろうし、それこそ千差万別といいますか、水俣病の特異な条件に従ってそういうそれぞれのデータを出し、検討した結果がこうなったんだというのでしょう。それなら、それはそういうデータ、資料があるはずでしょう。何もなしに文章にしたものが、何もなしに検討会で結論だけがぼこっと出てくるというようなものじゃないでしょう。だから、そういう資料というのは必ずあるはずですから、それを見れば――これは患者にとってみれば、まさに認定条件だというのですから、死活問題と言ってもいいような決定的な問題なんですね。それの根拠になった全資料を出せと言っているわけじゃないので、少なくともこういう結論が出てくるもとになった資料というのは当然なければおかしいじゃないですか。何かわからぬけれども、千差万別なので、だから適当に話してぽっと出てきた、そんなものじゃないはずです。資料あるでしょう。
#144
○本田政府委員 これは基準ではございません。一般的にいろいろな基準がございます。環境庁関係でも、環境基準等いろいろありますけれども、そういった基準ではないわけでございます。したがいまして、一つの調査なり経験をもって、これとこれとを比較して、どうしてこうなったのだという道を踏んでいないわけです。もちろん個々の先生方はいろいろな研究をなされております。そしてその研究の結果は、学会なりあるいは論文としてたくさん発表なさっているわけです。しからばそういう論文をもとにしてやったかということではなしに、そういう自分が研究し発表し、そしてこの人がこういう発表をしたのは第三者にもわかるわけです。そういったたくさんの症例を持った方々がお集まりになってやったわけでございます。一般的に言う、何か資料があってそれを積み上げてできたという基準じゃございませんので、この辺、よくまた御理解賜りたいと存じます。
#145
○東中委員 判断条件だということはわかっているのですよ、私はその前提でものを言っているのですから。しかし、ああいうふうにまとまるについては、とにかくヤマカンでやっているわけではないでしょう。二年間も検討会をやったんでしょう。そうすると、その中でいろいろな症例やら――症例というのは臨床例ですね、そういうようなものも報告されるだろうし、そういうことなしに二年間、一体どういう検討会をやっていたのですか。そのとき出された資料、根拠というものが何かの形でなければおかしいじゃないですか。たとえば会議録でもいいですよ。とにかく患者にとっては死活の問題だ。非常に重要な問題だ。それについて結論だけが出てきておるということになるわけですね。何の資料もなしにやっておるのですか、あなたはないと言うから。そんなばかなことはないでしょう。
#146
○本田政府委員 多分、先生がおっしゃる資料の意味は、たとえば高血圧の基準をつくりますのに、百六十以上は高血圧である、百六十以下は普通であるというような基準でありますれば、いろいろなところのいろいろなデータを見て、それを大局的に観察して、寄せ集めて、そうして基準になってでき上がっていくと思います。しかし、繰り返し申し上げておりますように、これは一人一人の学者が研究したこと、それから体験したことは個々の論文で発表されておるわけです。つまりは自分の知識として持っているわけでございます。そういった知識を持ち寄りましてまとめる。資料が全くなかったかというと、先生のおっしゃる資料は、そういう意味では、いままで発表された幾つかの学術論文というものが資料になっていると思います。しかし、それを要約したものなんです。この判断条件をごらんいただきますと、そういう意味で数字的なものは出ておりません。症候の組み合わせ、あるいは水俣病の症状を示す症状、それからそれらの組み合わせ、それから暴露歴とのかみ合わせ、そういったことであるわけであります。ただ、先生のおっしゃるような意味での資料はないわけでございます。
#147
○東中委員 学術論文に発表されているようなものでまとめるのだったら、検討会なんか要りはせぬじゃないですか。あちこちにすでに発表されておるものをまとめただけだったら、何も要らぬでしょう。二年にわたって検討した、検討会を持った、そこで、交換された、発表されたものだけしか言うてないというわけじゃないでしょう。そういう点について根拠を明らかにすべきだ。そうでないと、患者にとっては非常に死活にかかわる問題であるだけに、根拠がはっきりしないからいわば天下りですかな。患者の立場に立って、被害者の立場に立って進めていくのが環境行政であるならば、当然そういうふうにすべきだということを申し上げておきます。時間が来ておりますので、それを一つ強く要請して、今後検討していただきたい。
 質問を終わります。
#148
○久保委員長 次に、工藤晃君。
#149
○工藤(晃)委員(新自) 本日は、「水俣病の認定に係る業務の促進について」という昭和五十三年七月三日の環境庁事務次官通知に関連して質疑をさせていただきます。
 まず第一番目に、話を進める上から、再三にわたって各委員の質問に対して答えておられる点について改めてお答えをちょうだいしていかなければなりませんので、その点についでお聞きするわけでございますが、この昭和五十三年七月三日の新次官通知と、それから四十六年以降、大石長官の国会答弁を含めまして、出されております幾つかの通知とは全くその趣旨において変わりはないのだ、こういう御見解を述べておられたように承っておりますが、その点について改めてお聞きをいたしますので、簡単にお答えをいただきたいと思います。
#150
○本田政府委員 四十六年の事務次官通知によりまして明らかにいたしました水俣病の範囲、これは認定要件等も含むわけでございますが、そういったものと、それから去年の判断条件を踏まえました現在の一番新しい次官通知に示しておりますものにおきましては、その間におけるいろいろな機会にいろいろな見解を明らかにしてきておりますが、それを整理いたしまして、さらには明確化したということでございまして、四十六年の通知と現在の通知は変わっておりません。
#151
○工藤(晃)委員(新自) より明確化したということで、内容においては変わってない、こういうお答えをちょうだいいたしました。
 次に、昭和五十二年七月に「後天性水俣病の判断条件について」、こういう資料が私の手元にございますが、判断の条件として出されたものでございますが、これもやはりいまのお答えの中に含まれている問題でございましょうか、そうでないのか、お答をいただきたいと思います。
#152
○本田政府委員 「後天性水俣病の判断条件について」という去年七月一日付の通知だと存じますが、これにつきましては、先ほどお答え申し上げました中での、むしろ明確化したというところに当たるかと存じます。したがいまして、四十六年の通知と今回の事務次官通知は、これを盛り込んでおりまして変わっておりません。
#153
○工藤(晃)委員(新自) それでは、次にお伺いいたしますが、四十六年八月七日の環境庁事務次官通知の中に「水俣病の認定の要件」というのがございます。これと「後天性水俣病の判断条件」、これはどこがどのように違うのか、御説明を願います。あるいは全く同じなのか、そこのところをお答えいただきたいと思います。
#154
○本田政府委員 四十六年事務次官通知の記の第1、(1)から(2)、(3)、(4)というところにつきまして、中には「胎児性または先天性水俣病」という項がございますけれども、医学的用語の整理を去年の通知ではいたしましたことと、それからあとは、水俣病と判断するに当たりましての条件をその後の医学的進展をとらえまして整理した、明確化したということの違いがございますけれども、精神においては全く変わりはございません。
#155
○工藤(晃)委員(新自) お答えが大変抽象的で、私は理解しにくいのですが、精神は同じだけれども明確化し、新しい医学の進歩に伴って条件を整理しました、こういうお言葉でございますが、私が一番知りたいのは、どこがどのように医学的な進歩に伴って違ったかという点を御指摘願いたい、これが私の質問でございます。
#156
○本田政府委員 四十六年の通知で申します「第1水俣病の認定の要件」の中の(1)につきましては、去年の判断条件の記の一に相当いたします。先ほど申し上げましたように、若干の医学的用語、それから新しい症状というものも一部加わってはおりますけれども、これは全く別な症候が加わったということじゃなしに、たとえば、かつては言語障害と言っていた言葉を構音障害というふうに変えてみたり、そういうことはございますが、まず同じだと解していただいて結構でございます。四十六年通知の(2)のところでございますが、これは去年の判断条件の記の2、それから3に当たります。四十六年通知の(3)のところは、去年の判断条件の記の2に当たります。(4)のところも同様に、判断条件の2に当たります。
 以上でございます。
#157
○工藤(晃)委員(新自) 私がお聞きしているのは、医学の進歩に伴ってどこが変わったかということで、言葉の表現が変わったということは医学の進歩とは関係ないと思います。いままで水俣病というふうに一応の判定というか認定の基準にしておりましたところが医学の進歩に伴って変わったと言うならば、どこが変わったかということをお聞きしているので、どことどこがどのように当てはまるということを私は聞いておるのじゃないのです。その点、もう一遍簡単にお答え願います。
#158
○本田政府委員 端的に申し上げますと、四十六年の通知ではいろいろな症状を列記しておりました。この中から、幾つかの組み合わせがある場合、組み合わせとは書いてございませんが、列記してございます。それを去年の判断条件ではいろいろな組み合わせを例示いたしまして、たとえば知覚障害と運動障害がある場合、それから知覚障害と運動障害は疑いであるけれども、たとえば求心性視野狭窄がある場合、つまり組み合わせを導入したという違いがございます。
#159
○工藤(晃)委員(新自) それが今度は認定の場合にどのように変わってまいりますか。その組み合わせが変わったことによって、患者を認定する条件の中でそれがどのように変化をするものですか。
#160
○本田政府委員 水俣病そのものが有機水銀によって起こるであろうと思われるたくさんの症候の組み合わせであるということにおいては以前と変わりません。したがいまして、四十六年の通知においても、先ほど申し上げましたように組み合わせということは書いてございませんけれども、一部の症候がある場合にという言葉で表現されておりますが、それを今回の通知では明確化した、こういうことでございます。変わりはございません。
#161
○工藤(晃)委員(新自) それでは、あなたのお言葉から受ける考え方とすれば、医学的に進歩したとか、あるいはまた学問的な立場からこれをより明確化したということではなく、何かほかの目的あるいは言葉の整理ということで明確化したというふうにとってよろしいのですか。
#162
○本田政府委員 四十六年の通知のときは症候を幾つか列記してございます。その中で当然、水俣病でございますから組み合わせによって起こり、かつは症候だけじゃなしに暴露歴というものをかみ合わせて四十六年以降やっているわけでございます。今回の判断条件というものは、その中で全部ではございませんが明らかになった部門がございます。あるいは知覚障害と運動障害があればという、その要約できるものを盛り込んだということです。根底におきましては、それ以外のものも判断していただかなければいけないわけでございますが、わりとその後の医学の進展を踏まえて、はっきり組み合わせがあるものについて取り出して列記している、そういうところが違う、精神においては同じでございます。
#163
○工藤(晃)委員(新自) どうも組み合わせだけが変わったので、医学の進歩がそれだけ対応して変えたというふうには結論としては私は受け取れません。
 この論議をしておりますと時間がなくなってしまいますので、ただ私がお聞きしたかったのは、そういう医学の進歩ということ、あるいは昨日の馬場さんの質問の中でも、高度な知識と豊富な経験という、こういう医学的な条件を持った先生によってというふうな、いろいろな医学的な立場に立ってということを皆さん大変強調される。しかしながら、それじゃどこがどのように医学的に変わったかというと、それを医学的に納得のできる説明はなさっていない、ここのところだけ指摘しておきます。
 次にお伺いいたしますけれども、この四十六年の次官通知には、最初の方で、「本法は、公害に係る健康被害の迅速な救済を目的としている」、こういうふうに書かれております。それから、その後の新しい次官通知によっては「被害者の迅速かつ公正な保護を図るため、」、こういうような表現になっておりますが、「公正な保護」というのと「迅速な救済を目的」というこの言葉との違いはあるのですか、ないのですか。
#164
○上村政府委員 四十六年の場合に引用しておりますのは、当然のことでございますけれども、旧法でございます公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法、したがいまして、その救済を図るためにということになるわけでございます。それで、五十三年七月の事務次官通知は、引用してございますように、公害健康被害補償法を引っ張っておる。公害健康被害補償法の方は、「迅速かつ公正な保護を図る」ということが法律の目的に書いてあるわけでございます。したがって、それぞれ引用した法律の目的を引っ張ってきたということでございまして、四十六年のときに使いました公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法というものを発展させたものがこの現行の公害健康被害補償法でございますから、そこに全然同じであるということは言えないのじゃないかというふうに思うわけでございます。
#165
○工藤(晃)委員(新自) そうすると、違うところはどこが違いますか、簡単にお答え願います。
#166
○上村政府委員 まず、引用しました旧法と新法の給付の内容が違うわけでございます。
 それから、法律の考え方が違うわけでございます。
#167
○工藤(晃)委員(新自) それではお伺いいたしますが、新次官通知の中の「蓋然性」という言葉がいままで大変問題になってきたわけでございますけれども、この「蓋然性」というところとその下の「後天性水俣病の判断について」という中に、「この判断条件にのつとり、」という言葉がございますが、「今後は、この判断条件にのつとり、検討の対象とすべき申請者の全症候について水俣病の範囲に含まれるかどうかを総合的に検討し、判断するものである」。そうすると、問題は、医学的に水俣病であるかどうかということを判断する、いわゆる判断条件という意味で当然このことが書かれていると思いますが、この判断条件というものと蓋然性というものはどのように関係を持つのか、ひとつそこのところをお聞かせいただければありがたいと思います。
#168
○本田政府委員 去年の七月に出しました判断条件は、これはいろいろな症候、それから先ほど申しましたように、水俣病の病状というものをより明確化した通知でございます。
 それに「のっとり」といった言葉は、このときの通知は参考通知、参考にされたいという通知でございました。その後の一年間の経緯を踏まえまして――これが非常に現在の審査会において審査によく合うということから、そういう意味での一年の経緯でございます。それを踏まえて、「のっとり」ということで事務次官通知に、つまり格上げしたわけでございます。
 そこで、蓋然性との関係という御質問でございますけれども、端的に申し上げますならば、蓋然性の中身、意味そのものが判断条件だとお解しいただいて結構でございます。
#169
○工藤(晃)委員(新自) そうすると、この蓋然性という意味はどういう意味ですか。
#170
○本田政府委員 蓋然性という意味そのものは、物の確からしさだと存じます。したがいまして、ここで言いますところの蓋然性というものは、医学的に見て水俣病であるかどうかの確からしさ、こういうふうにお解しいただいて結構だと存じます。
#171
○工藤(晃)委員(新自) 水俣病という病気が、いろんな質疑の中で、大変判断にむずかしいという要件をたくさん持っておる、逆に言えば、不確定要素が大部分の病気に対して診断をしなければならぬという、こういうことでございます。
 逆に言ってお聞きしたいのですが、水俣病の定義というか、判断条件というのはある意味においては定義に近いものだろうというふうに思うのですけれども、そういうものが今後ともに水俣病患者の固定的症状であって、あるいは変化はしないのか、あるいはまた、いままでこういうものの条件の中にはまっていなくても、将来別な形で、水俣病のいわゆる有機水銀の原因によって起きてくる症状が変化して出てくるものか、そういう点についての研究はどのようになっているのか、現状を簡単にお答え願いたいと思います。
#172
○本田政府委員 熊本大学、それから新潟大学、鹿児島大学を中心にいろいろな研究会がございます。また、研究会に対する研究費も私どもで計上させていただいておりますけれども、去年示しました判断条件がまとまりましたのは、先ほど申し上げましたように、過去二年にわたる、そういった先生方に寄り集まっていただきまして水俣病認定検討会というのをつくっていただきまして要約いただいた結果でございます。従来の知見を取りまとめたと言って過言でないと存じます。
 したがいまして、将来もしそういうことがございますならば、コンセンサスが得られるような組み合わせ等が出てまいりますならば、それをまた見直す、そのための研究費も計上いたしております。
#173
○工藤(晃)委員(新自) ということは、要するに水俣病の定義というのは変わっていくということの前提に立っていると思う。そうしますと、そのときそのときの判断条件に準拠して水俣病であるとか、あるいはそうでないというふうに認定を受けたこの認定結果についても、あるいは将来、認定されなかった人が水俣病であるということもあり得るわけですね。
#174
○本田政府委員 定義が変わるということではございません。この定義は有機水銀を経口摂取することによって起こる神経性の疾患であるということを定義といたしますならば、それを明確化するためのいろいろな学問は進むと存じます。たとえばその一つが先ほど申し上げました組み合わせ法の問題だと存じます。そういう意味でございますので、定義が変わるというのはちょっと誤解を招くかもしれませんので、訂正させていただきます。
#175
○工藤(晃)委員(新自) そのたびそのたびの判断条件というものに準拠して診断がなされていくという前提であれば、当然これが法律で言う憲法にも等しいわけでございますから、そういう意味において、それが変わっていくのかいかないのかということ、あるいは水俣病患者の症状というものが年を経るに従って変化をしていくものなのかどうかということについての見解を私は問うたわけでございまして、時間がございませんが、そういう意味においてはこれは固定されたものではない、すなわち判断条件というのは医学の進歩に伴って変わっていくんだということになりますと、その時点において水俣病という病名をつけられた人とつけられない人の差という中に、やはり将来においてはそういう判断の結果的に誤りであるという部分を認めなければいけないということが起きてまいります。そういうことに対して、疑わしきは救済をしていかなければならぬという法の精神からいきまして、この判断条件そのものがそういうものの条件を逆に範囲を狭め、また水俣病患者の救済でなく逆に足切りであるというふうな形に結果的になっていく場合もあるということをお認めになりますか。
#176
○本田政府委員 結論的にはそういうことはございません。と申しますのは、繰り返し申し上げておりますように、水俣病をより明確化するための条件の整備でございます。そういうふうには進んでいくと存じます。したがいまして、御心配いただいているようなことはございません。
#177
○工藤(晃)委員(新自) 私は、その明確化したときには水俣病という診断をされ、明確化されてないときには水俣病でありながらそうでないという認定をされるという危険があるのじゃないかということを指摘しているわけです。だから、そういう意味においては、あなたのお答えは私の問いに対して答えられたものとは思えない。
 時間がございませんのでそのくらいにしておきますが、要するにこれは何のためにやるかというと、患者救済という目的、または被害者の迅速な保護をするんだという目的で立てられている法律でございますから、逆に言って、いまのように大変因果関係が認定しにくい、また判断しにくい。私も医師でございますが、病名をつけるときに必ずしもすべて明らかに診断をつけた上で治療するわけじゃない。何なりの疑いという病名がつく場合が非常に多い。しかしながら、この水俣病においては、水俣病の疑いとしては処理ができない。だから水俣病であるかそうでないかという二つに一つの選択を医師がしなければならぬ。そこに大変むずかしい問題があると私は思うのです。その人の命にかかわる重大な問題をそれに全部しょわせてしまうことになります。また、人が人を裁くことでございますから、法の精神を踏みにじる結果も起きるということも考えられる。そういう意味においては、この昭和四十七年三月十日の大石国務大臣の御見解は大変当を得ていると思うのです。「私が疑わしきものは救済せよという指示を出したのでございますが、これは一人でも公害病患者が見落とされることがないように、全部が正しく救われるようにいたしたいという気持ちから出したのでございます。」こういうことを述べられている。そうしますと、こういうたてまえからいきますと、この判断条件というものを強要する場合には、逆にこれが足切りにつながっていく、こういうことにもなりかねないという心配を私は大変するわけでございます。
 いままでるる述べてこられたように、高度な知識と豊富な経験を持った人しか水俣病の診断には関与しにくい、こういうふうなことでございます。それに対して、何はさてあれ診断というのは医師対患者の一対一の中から生まれてくるものですから、そこへ持ってきて、こういう判断条件を出して、これにのっとって診断しなさいと言うことは、ある意味においては大変神を冒涜する、おこがましいことになりかねないという心配を私はするのです。それが医師の正しい、いわば神に近い気持ちで診断をしようということに何らかのブレーキになってはかえってマイナスをつくるのではないか。また、そういう高度な知識を持った医師が診断をするのに、ここに書いてあるような「後天性水俣病の判断条件」なんて、こんなものは素人だってわかるようなことです。これで診断できるのなら、高度な医学も高度な知識も要らないですよ。その人たちの方が専門家なんですから、そういう意味において、こういうものをもってそれで救済、救済ということをおっしゃっていること自体が、私は医学を大変冒涜しているのではないかという感じがするわけです。そういう意味において、皆さんが主張されることにも、何か私にとっては大変納得できない、こういう気持ちをもって質問を申し上げているわけです。これを申し上げて、時間がございませんので、最後の一つを私はお聞きいたします。
 この五十三年七月三日の新通達の4の「処分にあたつて留意すべき事項について」の(2)の一番最後のところに「所要の処分を行う」、要するに「行政庁に対する不服申立のみちをとざすがごときことのないよう所要の処分を行う」ということは、結局、認定できない場合には切り捨てるという意味に解釈をされますが、そうでございますか。
#178
○本田政府委員 これは(2)のところを初めから、ずっと関連がございますので、ぜひお読みいただきたいと思います。
 いまの御質問に対しまして、どうするのかということは、これは棄却でございます。
#179
○工藤(晃)委員(新自) 結局、先ほどから私も議論してまいりましたように、認定することが大変困難なものをとにかく白か黒かをはっきりさせなければならぬということでございますから、最初にそこには無理がある。その認定すること自体に無理がある。正しい認定を一〇〇%できるものではないということをるる申し上げたわけです。
 そうすると、対象になる方々の中にも水俣病でありなからそれをわれわれか察知できない――私はいまほど医学の進歩のおくれを悲しみながら物を言っていることはないのです。ということは、医学がもっと進歩していれば、あるいはその時点において認定されたかもしれない。にもかかわらず、そのときの条件ではされなかった。しかしながら、その材料がないからこれは却下だという、こういう法のたてまえに対して、私ははなはだ納得できないものを持っているわけです。
 こういう意味において、これは却下ということではなく、これはあくまでも議論ではなく、そういう方々に対して、どのような方法でもいいですが、ただ冷たいという印象を与えるのじゃなくて、環境行政の精神というか姿勢として、こういう方々に対して何か弔ってあげる、そういう第三の道を考えてあげる必要はないのか。あるいはまた、そういう環境行政の姿勢を示していただけたら大変ありがたいという気持ちで申し上げるのだが、そういうことに対して積極的に検討される意思はありませんか。
#180
○上村政府委員 五十一年十二月の判決にもございますように、認定または棄却の処分をする義務を環境庁あるいは都道府県知事は負わされておるわけでございます。したがいまして、処分としては認定と棄却しかない、これはおわかりのとおりだと思うのです。
 そこで、何らかの措置が講ぜられないかという御指摘でございます。これは非常にむずかしゅうございます。と申しますのは、その何らかの措置をするのは一体だれになるのかということになるわけでございます。たとえば、それはチッソかということになりますと、チッソは四十八年七月の補償協定で、熊本県知事なら熊本県知事が認定をした人に補償する。補償の中に葬祭料等も入っておるわけでございます。したがって、認定されない人に補償するというわけにはいかぬというふうに言うことになるだろうと思うのです。一方、国なり都道府県かということになりますと、国なり都道府県については、そういったいろいろな病気で亡くなった方にどういう措置をするかというのは一般的な社会福祉の中で考えざるを得なくなる。ある人に特定の措置をするということはなかなかむずかしい。さらにまた、現行の公害健康被害補償法は認定された方に葬祭料を払うという仕組みになっておりますから、認定されない人にどういう措置を広げるかということになりますと、現行の公害健康被害補償法のよって立つ基盤というのが非常に複雑になってまいります。
 そういうふうな事情がございまして、お話の趣旨はわからぬでもございませんけれども、非常に困難な問題であるというふうに考えます。
#181
○工藤(晃)委員(新自) わからぬじゃなくて、環境行政というのはやはりそういうことに対して、疑わしきは救済していくのだということを抱えているのですよ。大石長官もおっしゃっているように、一人もそういうこぼれがないようにしてやりたい。しかしながら、現実としては、こぼれていくことは可能性として十分考えられる。そういう場合に、そういうことに対して第三の道を、やはりそういうことがあったとしても、なおかつそういう方に対する救済をどう考えるかというのが国の責任じゃないのですか。そこのところだけはっきりお答えを願って、私の質問を終わります。
#182
○上村政府委員 御質問にございましたように、医学というものは進歩してまいるわけでございますから、いま正しいと思ったことでも後の時代になれば正しくない場合もあるでしょうし、いま正しくないと思ったことでも後の時代になれば正しいときもあると思いますけれども、現在の判断というのは現代の医学の水準において判断するべき筋合いのものだろうと思うわけでございますから、現代の医学の水準において判断されたものについては現代の措置に従って処置をするほかないのじゃないかというふうに思います。
#183
○工藤(晃)委員(新自) 最後に言います。とにかく未熟な医学の、その結果だけを尊重するという考え方は、私は改めてもらいたい。
 私は、きょう何も結論を出すことはできませんでしたけれども、しかし、水俣病認定についてどういうところに問題があるかという一端は明るみに出したと思いますので、どうか今後ともにこういう問題については十分討議をさしていただきたい、こう思います。
 終わります。
     ――――◇―――――
#184
○久保委員長 この際、馬場昇君外二名提出の水俣病問題総合調査法案及び坂田道太君外九名提出の水俣病の認定業務の促進に関する臨時措置法案を議題とし、順次提案理由の説明を聴取いたします。馬場昇君。
    ―――――――――――――
 水俣病問題総合調査法案
 水俣病の認定業務の促進に関する臨時措置法案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
#185
○馬場(昇)議員 私は、提案者を代表いたしまして、水俣病問題総合調査法案につきまして、その提案理由及び主要な内容について、御説明申し上げます。
 水俣病は、世界最大の水汚染公害であり、その被害は、原爆被害に匹敵する人類の経験した最も悲惨な被害であると言われています。
 水俣病問題について、その広さ、深さを正しく総合的に把握し、その対策を樹立することは、被害者に対する救済対策の完全を期するだけでなく、人類の未来に対する今日の行政の責務であります。
 今日までの水俣病問題に対する行政の対応は、不十分であったばかりでなく、不作為があったといっても言い過ぎではないのであります。また、行政の想像力の追いつかない事態があったため、有効な手を打つことができなかった点も多くあるのであります。
 そのため、水俣病の事実判明後二十年を経過した今日において、言語に絶する水俣病の医学的病像さえもいまなお未解明であり、被害の全体像及びそれが及ぼした影響等について実態が明らかではありません。水俣病問題は、いまだ混迷の状態にあるのであります。
 水俣病の前に水俣病はなかったのであり、水俣病の後に水俣病があってはならないのであります。
 水俣病問題は、総合的な実態把握なしには完全な対策は樹立されません。水俣病問題解決の遅滞をなくし、不作為を解消し、住民の健康が守られ、環境が改善され、豊かな社会生活が営まれるための、完全な水俣病対策が樹立できるための基礎となる総合調査を行うことがこの法律案を提案する理由であります。
 次に、この法律案の主要な内容について御説明申し上げます。
 第一に、この法律の目的は、水俣病の健康被害、漁業被害及び環境破壊等の医学的生物学的調査はもちろんのことでありますが、さらに、水俣病が及ぼした社会学的、経済学的、政治学的、教育学的等の各分野への影響とその実態を総合的に調査を行い、その全体像を明らかにしようとするものであります。
 第二に、調査の目的を達成するために、政府は総合調査計画を定めることとしていますが、水俣病問題は住民、特に被害者の心に立った調査及び対策でなければなりませんので、総理大臣は、住民、特に被害者代表を含む水俣病問題総合調査審議会の意見を聞かなければならないこととし、住民の意見が十分反映された総合調査計画としなければならないこととしています。
 第三に、調査実施は関係県が行うことにしていますが、関係県知事は、国の総合調査計画に基づき、実施計画を策定することにしています。実施計画を定めるに当たっては、国が調査計画策定に当たって行った精神で行うことは当然ですが、住民の意向を反映させるために、特に、調査に当たっては関係住民に説明し、理解を得るようにしています。
 第四に、調査のため、工場、事業場等に立入検査ができるようにしています。
 第五に、総理大臣は、毎年、知事の報告に基づく実施状況を国会に報告し、国民の理解を求めるとともに、批判を受けなければならないこととしています。
 第六に、調査に要する経費は全額国の負担としています。
 第七に、水俣病問題総合調査審議会委員は、被害者を中心とする住民代表、関係自治体代表及び学識経験者の三者構成に関係行政機関の職員を加えて構成することとしています。委員の選任は民主的に行うことは当然であります。
 第七に、この法律は五年間の時限立法でありますが、十分な調査が終わらない場合は、法改正で延長が議論されるのは当然であります。
 以上が本案の提案理由及び主要な内容であります。何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
#186
○久保委員長 次に、福島譲二君。
#187
○福島議員 ただいま議題となりました水俣病の認定業務の促進に関する臨時措置法案につきまして、その提案の理由及び内容を御説明申し上げます。
 御承知のように水俣病は、わが国において他に類例を見ないほど大きい水質汚濁による公害であり、水俣病患者の迅速かつ公正な保護を図ることは、今日当面している最大の環境問題の一つであると言えるのであります。
 水俣病被害者の救済のためには、水俣病の認定業務を促進することが一日もゆるがせにできない重要な課題であります。しかしながら、熊本県における認定業務の状況を見ますと、昨年十月以来の検診審査体制の充実等により認定事務は格段の進捗を見せているとはいえ、いまなお未処分の認定申請者が本年八月末現在なお四千九百件を超えている状況にあります。
 特に旧公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法、いわゆる旧救済法に基づき昭和四十九年八月までに行われた認定申請については、すでに四年以上を経過しているにもかかわらず、答申保留や未審査という形で約一千六百件がなお未処分のまま残されております。
 そこで、熊本県等におけるこれら旧救済法による申請者については、環境庁長官がみずから認定に関する処分を行うことができることとする道を臨時に設けることにより、申請滞留者の解消を図り、もって水俣病認定業務の一層の促進を図ることが必要であると考えます。
 このため、今回この法律案を提出した次第であります。
 以下、法律案の内容を御説明申し上げます。
 第一に、認定に関する処分を行う機関の特例でございます。旧公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法により水俣病に係る認定の申請をしていた者でいまだ認定に関する処分を受けていないものは、県知事等に公害被害者認定審査会の意見がすでに示されている場合を除き、環境庁長官に対して、当該水俣病が当該指定地域に係る水質の汚濁の影響によるものである旨の認定を申請できるものとしております。この申請をすることができる期間は、旧救済法による認定の申請の日の属する区分期間に応じて政令で定める日から五年としております。
 第二に、臨時水俣病認定審査会についてでございます。いま述べました環境庁長官に対する申請に基づき認定に関する処分を行うに当たっては、環境庁長官は臨時水俣病認定審査会の意見を聞くこととしております。この審査会は、環境庁に付属機関として置かれ、医学に関する学識経験者十人以内の委員で構成されることとしております。
 以上のほか、この法律に基づく認定の効力その他所要の事項について規定しております。
 最後に、この法律の施行期日でございますが、公布の日から起算して三カ月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。
 以上がこの法律案の提案の理由及び内容であります。
 何とぞ、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
 なお、この際、補足して御説明申し上げますが、従来、国と熊本県との間においては、水俣病の認定業務の実施に当たっては必ずしも十全な意思の疎通が図られていたとは言いがたいところがありました。
 そのため、熊本県知事及び熊本県議会は、国においても水俣病認定業務の責任の一端を担う立法措置を強く要望しているところであり、これにこたえたものが、今回わが党が提案いたしました水俣病の認定業務の促進に関する臨時措置法であります。
 このような経緯に顧みますと同時に、水俣病認定患者の補償を円滑に実施するためのチッソに対する金融支援措置としての熊本県債を熊本県議会において議決するためには、ぜひとも今国会において本法案を成立させることが必要であると考えられますし、熊本県知事も、それが県債発行の前提条件として強く要望しているのであります。
 何とぞ、このような諸事情を御勘案の上、速やかに今国会において可決成立させるようお願い申し上げます。
#188
○久保委員長 以上で両案の提案理由の説明は終わりました。
 この際、暫時休憩いたします。
    午後三時四十三分休憩
     ――――◇―――――
    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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