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1978/10/20 第85回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第085回国会 法務委員会 第3号
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1978/10/20 第85回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第085回国会 法務委員会 第3号

#1
第085回国会 法務委員会 第3号
昭和五十三年十月二十日(金曜日)
    午前十時二十三分開議
 出席委員
   委員長 鴨田 宗一君
   理事 濱野 清吾君 理事 保岡 興治君
   理事 山崎武三郎君 理事 稲葉 誠一君
   理事 横山 利秋君 理事 沖本 泰幸君
   理事 高橋 高望君
      稻葉  修君    上村千一郎君
      鹿野 道彦君    篠田 弘作君
      玉生 孝久君    玉沢徳一郎君
      中島  衛君    二階堂 進君
      松永  光君    渡辺美智雄君
      西宮  弘君    武藤 山治君
      飯田 忠雄君    長谷雄幸久君
      正森 成二君    加地  和君
      鳩山 邦夫君    大柴 滋夫君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 瀬戸山三男君
 出席政府委員
        法務政務次官  青木 正久君
        法務大臣官房長 前田  宏君
        法務省民事局長 香川 保一君
        法務省刑事局長 伊藤 榮樹君
        法務省矯正局長 石原 一彦君
        法務省保護局長 稲田 克巳君
        法務省人権擁護
        局長      鬼塚賢太郎君
        法務省入国管理
        局長      吉田 長雄君
 委員外の出席者
        内閣総理大臣官
        房参事官    宮島 壮太君
        警察庁刑事局捜
        査第二課長   宮脇 磊介君
        警察庁刑事局保
        安部保安課長  佐野 国臣君
        警察庁警備局公
        安第三課長   福井 与明君
        経済企画庁国民
        生活局消費者行
        政第一課長   加藤 和夫君
        法務大臣官房参
        事官      藤永 幸治君
        法務省刑事局刑
        事課長     佐藤 道夫君
        大蔵省銀行局総
        務課長     岡崎  洋君
        大蔵省銀行局中
        小金融課長   吉居 時哉君
        厚生省公衆衛生
        局精神衛生課長 目黒 克己君
        厚生省児童家庭
        局母子衛生課長 福渡  靖君
        農林水産省畜産
        局競馬監督課長 三堀  健君
        通商産業省産業
        政策局商務・
        サービス産業室
        長       細川  恒君
        自治省行政局行
        政課長     中村 瑞夫君
        最高裁判所事務
        総局民事局長  西山 俊彦君
        法務委員会調査
        室長      清水 達雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
十月十九日
 辞任         補欠選任
  加地  和君     山口 敏雄君
同日
 辞任         補欠選任
  山口 敏夫君     加地  和君
同月二十日
 辞任         補欠選任
  木村 武雄君     中島  衛君
  田中伊三次君     玉沢徳一郎君
  原 健三郎君     玉生 孝久君
  前尾繁三郎君     松永  光君
  三池  信君     鹿野 道彦君
  阿部 昭吾君     大柴 滋夫君
同日
 辞任         補欠選任
  鹿野 道彦君     三池  信君
  玉生 孝久君     原 健三郎君
  玉沢徳一郎君     田中伊三次君
  中島  衛君     木村 武雄君
  松永  光君     前尾繁三郎君
  大柴 滋夫君     阿部 昭吾君
    ―――――――――――――
十月十七日
 刑事事件の公判の開廷についての暫定的特例を
 定める法律案反対に関する請願外三件(田邊誠
 君紹介)(第二八六六号)
 同(西宮弘君紹介)(第二八六七号)
 同(矢山有作君紹介)(第三一九七号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 閉会中審査に関する件
 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政に関する件
     ――――◇―――――
#2
○鴨田委員長 これより会議を開きます。
 この際、申し上げます。
 本委員会に付託になりました請願は七十六件であります。各請願の取り扱いにつきましては、先ほど理事会において協議をいたしましたが、いずれも採否の決定を保留することになりましたので、さよう御了承願います。
 なお、今国会、本委員会に参考送付されました陳情書は、お手元に配付してありますとおり、二件であります。念のため御報告いたします。
     ――――◇―――――
#3
○鴨田委員長 次に、閉会中審査に関する件についてお諮りいたします。
 第八十四回国会、内閣提出、刑事事件の公判の開廷についての暫定的特例を定める法律案につきましては、議長に対し、閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#4
○鴨田委員長 起立多数。よって、本案については閉会中審査の申し出をすることに決しました。
 次に
 第八十回国会内閣提出、刑法の一部を改正する法律案
 第八十回国会横山利秋君外六名提出、政治亡命者保護法案
 第八十回国会横山利秋君外五名提出、刑法の一部を改正する法律案
 第八十四回国会横山利秋君外五名提出、民法の一部を改正する法律案
 裁判所の司法行政に関する件
 法務行政及び検察行政に関する件
並びに
 国内治安及び人権擁護に関する件
以上、各案件につきまして、議長に対し、閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○鴨田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 次に、ただいま議長に対し申し出ることに決しました閉会中審査案件が付託になりました場合、本国会において設置いたしました証人及び証言等に関する小委員会につきましては、閉会中もなおこれを存置することとし、その小委員及び小委員長は従前どおりとし、小委員及び小委員長の辞任及びその補欠選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○鴨田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 次に、閉会中審査におきまして、委員会及び小委員会において、参考人の出席を求め、意見を聴取する必要が生じました場合には、参考人の出席を求めることとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○鴨田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 次に、閉会中の委員派遣に関する件についてお諮りいたします。
 閉会中審査案件が付託になり、委員派遣を行う必要が生じました場合には、議長に対し、委員派遣承認申請を行うこととし、その派遣地、期間、人選等については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○鴨田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
#9
○鴨田委員長 お諮りいたします。
 本日、最高裁判所西山民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○鴨田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
#11
○鴨田委員長 裁判所の司法行政、法務行政、検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
#12
○稲葉(誠)委員 刑事局長に最初にお尋ねをいたしますが、カール・コーチャン及びクラッターに対するいわゆる嘱託尋問調書の証拠調べ請求に関する決定というのがございます。そこで、これのフレーズでいくと二百三十四、ページでいくと五十七ページの裏から五十八ページにかけてでございますが「検察官吉永祐介作成名義の昭和五一年五月二二日付証人尋問請求書の記載によれば、」云々、こういうのがございます。その中に、贈賄の方は別として収賄関係で、トライスター「及び対潜しよう戒機P3Cの販売代理権を有する」云々ということと、それからまた、P3Cに関連して「あるいは日本国政府がP3Cを選定、購入するよう取り計ってもらいたい旨の請託を受け、これに関する謝礼の趣旨で供与されることを知りながら、昭和四七年一〇月ころから同四九年中ころまでの間数回にわたり多額の金員を収受した」このように被疑事実の中にあるわけでございますが、この被疑事実について、P3Cの関係がここへ入ってきたというのはどういうことからですか。
#13
○伊藤(榮)政府委員 コーチャン、クラッター氏らの証人尋問請求をいたします際の被疑事実の中に、トライスターの問題と並んでP3Cの問題が出ていることは御指摘のとおりでございます。
    〔委員長退席、山崎(武)委員長代理着席〕
どういう根拠に基づいてそういう被疑事実を構成したか、詳細を申し述べることは捜査上の問題がございますから適当ではないと思いますが、察するに、嘱託尋問の請求をいたしました当時は、例の司法取り決めによりまして米側から所要資料がわが検察当局に届いた後でございます。その取り寄せ資料の中に、御承知の児玉とロッキード社の間におきます秘密代理契約書、こういうものも入っておったと思われるのでございます。その秘密代理契約書の修正四号であったと思いますが、それにはP3Cの売り込みに関しての報酬契約も含まれておるわけでございます。さらに、取り寄せにかかる各般の証拠資料の中に、P3Cについてもロッキード社がわが国に対して売り込みを図ろうとしておったということは出ておったのではないかと思われるわけでございます。
 そういう状態をあわせ考えますと、ロッキード社からわが国に相当多額の金が流入しておる、流入しておるその金がロッキード社からわが国へ送られた背景として、トライスターのほかにP3Cをめぐる問題もある、こういう認識のもとに、収賄者は氏名不詳でございますけれども、その間に金が動いたのではないか、動いたとすれば二つの趣旨が一応想定できるのではないか、こういうことでそのような被疑事実になっておるものと思うのでございます。
#14
○稲葉(誠)委員 そこで、その被疑事実、これは私もよくわからないのですが、日本の刑訴法でいうと二百二十六条に該当するのじゃないか、こう思うわけですが、この証人尋問請求書には疎明資料というものをつけて嘱託をした、こういうことになっておるのですか。
#15
○伊藤(榮)政府委員 刑事訴訟法に基づく期日前の証人尋問請求でございますから、被疑事実を記載しますとともに、その被疑事実の存在を疎明するだけの資料を当該裁判官に提供しておる、こういうふうに思います。
#16
○稲葉(誠)委員 そうすると、その疎明資料というのはいまどこにあるのですか。
#17
○伊藤(榮)政府委員 当時使いました疎明資料は、検察庁にあるものもあれば、すでに裁判所へ提出されておるものもあろうと思います。
#18
○稲葉(誠)委員 検察庁にあるというのはおかしいですね。
    〔山崎(武)委員長代理退席、委員長着席〕
疎明資料は全部裁判所の方へつけて請求したのではないわけですか。それはしなかったものもあるわけですか。
#19
○伊藤(榮)政府委員 公判前の証人尋問の請求の場合の疎明資料は、裁判官がそれによって尋問相当と認めれば検察官に返しますので、そういう意味で申し上げたわけでございます。
#20
○稲葉(誠)委員 この決定を見ますと、「(右請求書添付の証人らに対する尋問事項中には、右政府高官らの具体的人名が掲げられている。)」こういうふうに括弧づけであるわけですね。これは一体何を意味しているのかというと、端的に言いますと、嘱託ですから尋問事項がたくさんあるわけですが、これはP3Cの関係とトライスターの関係に分けて尋問事項をつくっておるわけですか。あるいは一緒にしてつくって、そこに政府高官らの具体的人名が掲げられて、この人たちがどうこうしたのではないかという形で尋問事項ができているわけですか。
#21
○伊藤(榮)政府委員 当該裁判官に対して証人尋問の請求をしました際に、尋問事項次のとおりということで細かい尋問事項をつけるわけでございますが、その内容を一々私自身も報告を受けておりませんし、またその内容を一々明らかにすることは適当でないと思いますが、いずれにいたしましても、その尋問事項に従ってコーチャン、クラッター両氏の尋問が行われておりますので、いずれその両氏の嘱託証言が全部明らかになりますと明らかになるのではないかと思います。
#22
○稲葉(誠)委員 それはあなたの言うとおりで、まだ全部証拠調べが終わらない段階ですから、公判廷に全部が出ているわけではない段階で聞くわけですから、十分な答えができないことも考えられるわけです。ただ、これはなぜ裁判所が括弧づけで「(右請求書添付の証人らに対する尋問事項中には、右政府高官らの具体的人名が掲げられている。)」というふうに書いたのでしょうかね。
#23
○伊藤(榮)政府委員 それは、その決定をなさいました裁判官がお書きになったわけですからちょっと私が推測できませんが、あえて推測いたしますと、ただいま御指摘の部分と申しますのは、検察官による不起訴の宣明というものが公訴権の放棄に当たるのだ、公訴権の放棄というものは軽々に許されるべきものではない、きわめて重大な公益を達成するためにやむを得ずして放棄することが許される場合があるのだという前提をまずとりまして、当時、いわゆるロッキード事件の真相を解明することが国民的な一つの課題となっておった、そういう重要な問題を含んでおったということを言いまして、したがって、その公訴権の放棄というのが有効に行えるのだという論を運んでおるわけであります。その中に、国民的な課題であるという事柄の大きさをあらわす意味で、ただいまの被疑事実並びに括弧書きの部分をお書きになったのではないかというふうに想像いたします。
#24
○稲葉(誠)委員 尋問事項としては、政府高官らの具体的人名が掲げられている、いまここではその具体的人名を聞くわけではありませんが、それはP3Cとの関係においても当然政府高官との結びつきで尋問事項ができておる、こういうことですね。そうでなくては被疑事実との関連からいっておかしいですね。それはそういうわけでしょう。
#25
○伊藤(榮)政府委員 その点は、あと二十六日に証人尋問調書の朗読が終わるわけですが、それが終わりましてから御判断いただきたいと思います。
#26
○稲葉(誠)委員 それはそうだけれども……。だから二十六日に大体出てくるわけですね。それから十一月九日にも出てくると思うのですが、被疑事実に二つ挙がっていて、収の方の事項が二つで、そして「尋問事項中には、右政府高官らの具体的人名が掲げられている。」と書いてあるわけですから、その政府高官は、トライスターに関連する政府高官もそれからP3Cに関連する政府高官も同じ人であるかあるいは違う人であるかは別として、当然尋問事項中に出てこなければならないというのは常識ですわね。
#27
○伊藤(榮)政府委員 要するに、政府高官の具体的な名前が出ておったと仮定いたしますと、それらの人に金が行っておるかどうかということは当然尋問事項の中に入っておりましょう。それから金の趣旨はどういう趣旨かということが入っておると思います。しかし、その被疑事実にもございますように比較的茫漠たる被疑事実の構成になっておりまして、嘱託証人尋問をしてみないと趣旨がわからぬわけでございますから、どういうふうに尋問してもらえば真相が引き出せるかということを一生懸命工夫をこらして書いたんだろうと思いますが、その中身がただいま御指摘のようであるかどうかはちょっとお答えし得る限りでないと思います。
#28
○稲葉(誠)委員 しかし、私が言ったことでないと話がおかしくなってくるので、二十六日の調書の朗読を待ちたいというふうに思います。
 それから八十八ページの五百七の関連、「被告人小佐野の犯罪事実との関係」というのがありますね。そこで、八十八ページのところに「ロッキード社の我国におけるP−3C型機売込の状況及び右売込に関して小佐野がコーチャンと会談した状況(同調書第二、三、五巻)」というのがあるわけですね。それと、その次に「小佐野がコーチャンからP−3C型機売込について援助を要請された事実(同調書第五巻)」というのがあるわけですね。これはきのうの公判で大体朗読された部分ですか。
#29
○伊藤(榮)政府委員 きのうの夕方終わった部分なものですから、まだ正確な報告を得ておりませんが、いま確かめますと、それに関連する部分の相当大部分を読み上げたようでございます。
#30
○稲葉(誠)委員 これは書き方が「第二、三、五巻」とかという書き方をしておるものですからちょっとわかりにくいんで、立証のときに検察官が読んでいるのはそういう形で読んでないわけでしょう。ですから、これとは合わない点がありますから、それはそうなんですが、そこの最終のところに「しかも現段階において既に採用済みの他の証拠によっては、その立証の用を果たし得ないと認められるので、本件証言調書は、いずれも小佐野に関して、不可欠性の要件を充足しているものと言うことができる。」こういうふうにありますね。これはどういうふうに理解をしたらいいわけですか。
#31
○伊藤(榮)政府委員 これまでに小佐野被告人の関係では、いわゆる国内捜査によって得た証拠に基づく立証がずっと行われてきたわけですが、その国内捜査に基づく立証だけでは冒陳記載の事項の中で立証ができてない事項がある、そのことを言っておると思います。
#32
○稲葉(誠)委員 そうすると、このP3Cの関係について、検察庁としては、最初疑いを持って嘱託尋問をして、政府高官に対する関係においても当然収の関係があったと疑われるような認定をされておった。これはこれから見てわかるわけです。そして、その後一体その関係がどういうふうになったのか国民にはさっぱりわからぬわけです。
 そこで、政界に金銭が流れたとか流れないとかいろいろなことが言うわれていますけれども、そんなことをいま聞くのではなくて、小佐野について、P3Cの関係で検察庁としては一体どういう捜査をしたわけですか。
#33
○伊藤(榮)政府委員 小佐野についてどういう捜査をしたかというお尋ねですけれども、全体の捜査の流れというものを簡単に申し上げませんと御理解いただけないと思いますが、この事件と申しますのは、ロッキード社からわが国に流入した膨大な現金というものをめぐりまして、それがどういうふうに流れていったか、国内でどういうふうに流れたか、どういう趣旨でどういうところへ渡っておるか、こういうことを克明に追い求めたのが今回の捜査でございます。したがって、当初、先ほど御指摘のような被疑事実に基づいて捜査を開始しておりますけれども、結論的なことを申し上げますと、いわゆる職務に関して動いた金の中にはP3Cに関する趣旨を含むものが認められなかった、こういう結論になっておるわけでございます。
 小佐野に関しましては、偽証の問題でございますから、起訴状あるいは冒陳に書いてございますように、P3Cについて依頼を受けたというようなことも訴因の中にあるわけでございますから、依頼を受けたことがあるかないか、こういった点も十分捜査を遂げて、そして公訴を提起した、こういうことになっております。
#34
○稲葉(誠)委員 いまのあなたの言葉の中に、小佐野からの金の問題で、職務に関して流れた金は、調べたけれどもなかったという話がありましたよね。そうすると、小佐野からどういうふうに金が流れたか流れないかということに関して、調べたことは小佐野を調べた、これは間違いないわけですね。そうでなければ検察庁としての役目を果たしていないわけですから、それは調べたのですね。
#35
○伊藤(榮)政府委員 私の御説明が悪かったのか、ちょっと私の申し上げたとおりに御理解いただけなかったようですけれども、私が申し上げたのは、ロッキード社からわが国に入ってきた金の行方を克明に追い求めたということでございまして、小佐野から金が出て、それがどこへ行っているかということを追い求めたというふうにお答えしたつもりはないわけでございます。
#36
○稲葉(誠)委員 小佐野がロッキード社からどれだけの金を児玉と協力してもらったかとか、それから児玉、小佐野の関係で、P3Cに関連してどれだけの捜査を一体検察庁としてはやったわけですか。これがいま一番大きな問題になったところじゃないですか。
#37
○伊藤(榮)政府委員 児玉被告人の関係におきましては、P3Cの売り込み努力をするというその契約に基づくいわゆる手数料、謝礼等、報酬の収入というものが所得税法違反の所得の一部になっておりますし、それから小佐野につきましては、P3Cについて売り込みを依頼されたということが訴因の一つになっております。したがって、その訴因を構成したりあるいは児玉の所得を計算したりするのに必要不可欠の部分でございますので、検察当局としては所要の捜査を十分尽くしていると思います。それらのことについては逐次公判で明らかになるのではないか、こう思っております。
#38
○稲葉(誠)委員 そこで、これはいま小佐野の偽証でやっておるわけですね。それからP3Cの関係は追起訴ですか、後からあった、こう思うのですが、検察庁で小佐野の被疑事実というか、それをさらに調べて捜査の核心に迫ろうということで、小佐野自身を逮捕するということに関して協議というか相談というかあるいは関心を持ったというか、そういう事実があったと考えられるのですが、その点についてはどうなんでしょうか。それは捜査の秘密だから答えられないけれども、常識的に御推察を願いたい、こういう結論ですか、どういうことでしょう。
#39
○伊藤(榮)政府委員 捜査の秘密でお答えできませんので、しかるべく御推察をいただきたいと思います。
#40
○稲葉(誠)委員 しかるべき御推察というところに非常に問題が出て国民の間に疑惑が出るのです。
 ということは、特捜部の出身で、あるところの検事長をやめられた太った人、いますね。あの人と会って話をしたときに、検察庁は小佐野逮捕のチャンスを失した、自分ならば、小佐野を逮捕してそこから問題の発展、真相の究明ができたはずなんだ、こういうようなことを個人的に言われたことがあるのです。これは私だけではなく、別の人も聞いています。なぜこのP3Cの関係、P3Cだけじゃないですよ、トライスターの関係もですが、特にP3Cの関係に絡んで小佐野を逮捕するということを通じて真相に迫らなかったのか、国民はこういうことに非常に大きな疑惑を持っているのではないかと思うのです。だから、そこら辺のところは捜査の秘密だから御推察を願いますと言うので、ぼくはぼくなりに推察しますけれども、これはどうなんですか。
#41
○伊藤(榮)政府委員 捜査の過程でいろいろ議論がなされる場合もあるわけでございまして、その結果最善の道が選択されて捜査が進むわけでございますけれども、具体的なケースについてどうであったかということを申し上げることは適当ではございませんけれども、私なりに考えてみますに、御承知のような小佐野の病気というものが一つ大きな、あるいは最大の原因になったんじゃないか、そういう意味で当時捜査に従事しておった人の中にはいろいろな思いをした人もいたんじゃないか、かように思います。
#42
○稲葉(誠)委員 刑事局長はなかなか頭もいいし、答弁もなかなかうまいよ。本当だよ。いまの言っていること、よく話がわかる。非常にくやしがった人がいるわね。もうそれ以上言いませんけれども。
 病気になる前に逮捕ができたはずだ、こう言うのだな。これは、そう言う人もいるよ。そういうことも考えられるでしょう。そういう人もいるということは考えられるでしょう。
#43
○伊藤(榮)政府委員 ただいまそう言う人がいるとおっしゃいますから、いるんだろうと思います。
#44
○稲葉(誠)委員 これ以上の答弁は無理ですね。
 そこで問題は、別紙一から五までありますね。この五は六百十で証拠能力を認め得ないということになって排除されていますね。四は相対的な証拠能力。一から三まではあるわけですが、これがよくわからないのですよ。素人が見てもよくわからぬ。ぼくが見てもよくわからぬ。
 たとえば、別紙一の三十三というのを見てくれませんか。これは証拠能力が認められたものですね。これはだれに対する関係だったかな。上に「福田」「コーチャン」と書いてあるのですが、これはどういうことなんですか。よくわからないのです。たとえば「原供述者」とかあるでしょう。それから「供述者」とか「原供述」「証言調書」「備考」こう書いてあるのですが。これは証拠調べがまだ行われてないかもわかりませんから、これ以上詳しく説明を求めるのは無理かと思いますが、これはどういうことなんですか。
#45
○伊藤(榮)政府委員 いわゆる半谷決定といわれますものの別紙が第一から第五まで続いております。それで第五は、被告人児玉、同大刀川、同小佐野、すべての関係で証拠能力なしとして排除された部分で、別紙一は三人に対してすべて証拠能力ありとされたもので、二ないし四は、児玉に対してのみ証拠能力を認めたもの、大刀川に対してのみ証拠能力を認めたもの、小佐野に対してのみ証拠能力を認めたもの、こういう構成になっております。
 この別紙で排除したり採用したりした部分は、御承知の刑事訴訟法三百二十四条の再伝聞の証拠能力の規定を適用して振り分けておるわけでございます。したがって、ただいま御指摘の別紙一の三十三番というのは、三百一十四条の適用からいいますと、当該公判で被告人になっている者以外の供述の伝聞でございますから、刑訴法三百二十一条一項三号の要件がなければ証拠能力がないわけです。ところが、この福田氏というのは亡くなっておりまして公判廷で証言を求めることができないし、かつ犯罪の立証上不可欠であるという例の三百二十一条一項三号の要件がありますから、したがって三百二十四条によって再伝聞であっても証拠能力がある、こういうことにされたのではないかと思います。
#46
○稲葉(誠)委員 いや、そんなことを聞いているんじゃないですよ。あなたは、私が聞いているこがわかっていては逃げているのですよ。そうでしょう。条文の解釈を聞いてはいないです。条文の解釈はここに書いてあるから、そんなものはわかるよ。そうでなくて、これはどういうことなのかと聞いているのです。福田がどうしたというのですか。下の方に「彼(中曽根)」と書いてあるでしょう。これはどういう人ですか。
#47
○伊藤(榮)政府委員 この別紙第一の三十三に書いてあることはこのとおりでございまして、備考で、原供述の内容に出てくる「彼」というのは「中曽根」という人であるということが書いてございます。
#48
○稲葉(誠)委員 そうすると、ここの証拠調べは二十六日に行われるわけですか。
#49
○伊藤(榮)政府委員 多分そうなると思います。
#50
○稲葉(誠)委員 これはよくわからないのですが、福田太郎という人は死んじゃったわけですね。「原供述者」というのは何なのですか。福田太郎がコーチャンに言った言葉ですか。それをコーチャンがこういうふうに供述をしておる、その中に「彼」が出てくる、こういうことですね、これは。
#51
○伊藤(榮)政府委員 そのとおりでございます。
#52
○稲葉(誠)委員 それから別紙二の九、これはどういうことなんですか。
#53
○伊藤(榮)政府委員 別紙二の九は、「彼がその午前中、金曜日の午前中に」云々ということを児玉がコーチャンに話をした、その話の中に出てくる「彼」というのは「中曽根」という人であるということであろうと思います。
#54
○稲葉(誠)委員 別紙二の五、七、いま言った九、これは児玉がコーチャンに話したということですね。そうすると、児玉自身を調べたときに、この点に関連をして児玉を調べて、その調書はでき上がっておるわけですね。そうでなくちゃおかしいですね。
#55
○伊藤(榮)政府委員 恐らくといいますか、まず間違いなくこういった点について児玉に対して尋ねておると思います。
#56
○稲葉(誠)委員 さあそこで、児玉はコーチャンの言うとおりに答えている、だからこそコーチャンの証言調書は採用になった、こういうふうに、これもまた常識的に考えられるのではないですか。
#57
○伊藤(榮)政府委員 児玉は法廷におきまして被告人そのものでございますから、仮にその供述調書があったといたしまして、それは一等最後に取り調べになるわけでございますから、裁判所はそういうものは一切見ない段階でこの決定をしておりますので、ただいまのお尋ねの事実関係ではないと思います。
#58
○稲葉(誠)委員 だけれども、児玉の供述調書が任意性があるかないか、いろいろ後で議論も出てくるでしょう、病気のときだというのですから。その調書の中にこの点がきちんとあらわれてくるということは、これは常識的に考えて当然のことだ、こういうふうに思いますね。
 それから、別紙四の八、これは小佐野がコーチャンに話した言葉ですね。そうですね。この内容はどんなのですか。
#59
○伊藤(榮)政府委員 御指摘のように、これはこの決定で見る限り、小佐野がコーチャンに話したことをコーチャンが供述をしたという部分で、「中曽根氏が、もしその決定があったとすれば、それに関係したと思われる人達何人かに会ってみようと言った」ということを小佐野がコーチャンに言った、こういうことであろうと思います。
#60
○稲葉(誠)委員 その点についても当然ですけれども、小佐野にこの事実関係があるかないかということを確かめてはおりますね、検察庁としては。これはあたりまえの話ですね。
#61
○伊藤(榮)政府委員 確かめたかどうか、客観的事実を申し上げるわけにいきませんが、こういう資料があれば当然確かめておる、思います。
#62
○稲葉(誠)委員 しかし、その関係は小佐野の偽証とは直接関係がないということで、この小佐野の調書は法廷へは出ないのじゃないですか。小佐野の起訴事実との関係は、どういうふうになっているのですか。
#63
○伊藤(榮)政府委員 小佐野の偽証の内容がトライスター、P3Cの売り込みに一切関係したことがないという趣旨でございますから、いや、そうではない、関係したのだということを検察側は立証するわけですから、それに関連するということであれば、すべて証拠として提出を図るだろうと思います。
#64
○稲葉(誠)委員 そうすると、小佐野、児玉の供述、その調書を検察官が出す、いろいろな任意性の争いがあるかもしれませんが、採用される、とすると、いま私が申し上げた別紙一から四までの中で、中曾根氏が国会で証言をしておることと違うことが出てくるかもわからないということが当然言えるわけですね。
#65
○伊藤(榮)政府委員 何段もの前提を置いてのお尋ねでございますので、大変お答えしにくうございますが、理論上そういうことであろうと思います。
#66
○稲葉(誠)委員 ということは、理論上中曾根氏に偽証の疑いが出てくるかもわからないということが考えられないわけではないというふうになるという結論だな。三段論法か四段論法かしらないけれども、そういうふうになってくる。そうでしょう。そこら辺のところはごまかしてはだめですよ、それはあたりまえのことだもの。どっちの言っていることが本当かうそかわからないですよ。児玉が言っていることが本当か、小佐野の言っていることが本当か、中曾根の言っていることが本当かうそかわからないけれども、こういう可能性も出てくるということですね。別にそう深く考えなくたっていいですよ。常識的に考えればそういうことも考えられないわけではないということでしょう。
#67
○伊藤(榮)政府委員 先ほど来のお尋ねは種々前提がございまして、御指摘の別紙に書いてあることにぴったり照応するような話が児玉あるいは小佐野の調書に書いてあるということを前提に仰せになるわけですが、私どもといたしましては、調書があるかないか、そこにどういうことが書いてあるかということは現段階では申し上げられないという前提でございますから、ただいま御指摘の先生の論理の運びというものは一応理解できますけれども、最後の結論をお示しになってこうなるかどうかとおっしゃられても、はなはだお答えしにくいわけでございます。
#68
○稲葉(誠)委員 いまの話の中で、あなたは児玉や小佐野の調書があるかないかわからないような話だけれども、そんなのはだめだ。調書はあることはあるけれども、内容については言えないというならまだ話はわかるけれども。これはあなた、あたりまえの話だ。児玉や小佐野のこの部分に関する検察調書がなかったら、検察庁、何をやっていたかと言われるよ。こんなばかな話はありません。
 それはそれとして、別紙五の四の中曾根さんの六百十で排除になった部分、これがまたよくわからないのですが、この書き方が悪いね。これを見ると中曾根さんがコーチャンに話したように、上の方だけ見るととれるわけですね。そうでしょう。この書き方が悪いのじゃないかと僕は思うのだ。これはどういうわけで排除になったのか。法律上の根拠のことは聞きました。これは決定の最初に書いてあるから、そこでわかりました。
 そこで問題は、排除になったのと、採用になっておるたとえば一の三十三でしたか、これとは内容においてどう違うのですか。内容においてどう違うかというのは、片方は何か再伝聞の何とかかんとかいうのでしょう、だから、それじゃこれを具体的に原供述の中で、別紙五の中曾根さんのあれが六百十でどうして排除になったのか、条文じゃなくて事実関係の中から説明を願いたい、こう思うのです。
#69
○伊藤(榮)政府委員 条文でなくて事実関係の中でというお話でございますが、まさに刑事訴訟法の条文の適用上、法律的に採用できないから排除した、こういうことであると思います。
#70
○稲葉(誠)委員 それはあたりまえの話だ。それでなければおかしいのですが、そうじゃないので、僕の言うのは、これを見ると、中曾根さんがコーチャンに話したようにとれるのじゃないかと第一点は聞いているのですよ。そうとれませんか、この表を見ると。
#71
○伊藤(榮)政府委員 そういうように読めます。ただ「児玉、福田を介し」と書いてありますから、二人が何か伝言役でもしたのではないかというふうに読める記載でございます。
#72
○稲葉(誠)委員 僕もこれは書き方がちょっと悪いように思うのですよ。
 そうすると、児玉、福田を介してということは、この関係は証拠排除にはなっておるけれども、「田中氏に話をした」――田中というのはだれだろうな。田中というのはいっぱいいるからちょっとわからないですけれども、これに対して児玉、福田を介して政府決定を直すことを話したというのですから、この関係で児玉、福田を調べておる、調書もできておるということは間違いないですね。
#73
○伊藤(榮)政府委員 この部分が排除されておるのは、要するに、再伝聞じゃなくて再々伝聞だというようなことで排除したのだろうと思いますが、それにしましても、排除されましてもそういう資料がありますれば、児玉の取り調べの際にはその部分をぶつけて聞いておるのではないかと思いますが、福田氏につきましては、すでに福田氏の検察官調書というものは全部証拠として提出いたしまして、証拠調べが終わっておるわけですが、その中にはこれに該当する記載がございませんので、そこまで聞かないうちに亡くなられたのじゃなかろうかと思っております。
#74
○稲葉(誠)委員 それでは、いろいろありますけれども、参議院の方であなたを待っておられるというし、余り長く聞いても悪いですから、どうぞ。ただ、伊藤さん、小佐野がなぜ逮捕されなかったか、逮捕するばかりが能じゃありませんけれども、なぜ逮捕されなかったかということと、いま言ったP3Cの関係でなぜ捜査が発展しなかったかということに対して、国民は非常に大きな、素朴な疑惑を持っていますから、この点だけはよく考えておいていただきたい。今後いろいろとロッキードの委員会などで詳しくお尋ねすることになると思います。
 では、矯正局長にお尋ねしましよう。矯正局長は張り切っているし、しゃべりたくてしょうがないような感じで、何かうずうずしているようだから聞きますけれども、遠慮なく答えてください。
 最初に、死刑囚の人権問題に絡んでお尋ねするわけですが、平沢貞通、あの人の現在の状況はどういうふうになっておるのですか。この前聞こうと思ったら、あなたが山形の何かで行っておられて、自分から説明したいということだったものですから、あのときしなかったのですが、ちょっと説明をお願いいたします。
#75
○石原(一)政府委員 国会答弁につきましては、誠意をもって御答弁申し上げますが、事死刑の確定者に関しましては慎重に扱うべきことでございますので、御期待どおり多くのことをお答えできるかどうかはわかりませんので、あらかじめ御承知おき願います。
 お尋ねの死刑確定者平沢貞通でございますが、八十六歳の高齢でございまして、健康につきましては十分配意いたしております。現状におきましては、特に異常は認められません。また処遇の面におきましても特異な事例はございませんで、現在居室で絵画の自由制作などをさせておりまして、心情も安定しておるところでございます。
#76
○稲葉(誠)委員 そこでお尋ねいたしたいのは、監獄法の九条に、死刑囚は被告人に準ずる、こういうふうに書いてありますね。これはどういうところからこの規定ができてきたわけでしょうか。
#77
○石原(一)政府委員 まず、いわゆる被告人と死刑確定者との法的地位の差でございますが、御承知のように、刑事被告人はいまだ罪責が裁判所によって認定されておりません。しかしながら、死刑確定者につきましては、有罪の確定裁判がありまして、厳格に社会から隔離することが要請されているわけでございます。
 一方におきまして、刑の言い渡しが確定したとはいいながら、いわゆる通常の自由刑の受刑者のように社会復帰ということはあり得ません。したがいまして、刑事被告人、死刑確定者、受刑者と比べましたときに、死刑確定者につきましては特別の配慮を要することになろうかと思います。それを条文で書きます場合に、ただいまは刑事被告人に関する規定を準用するというところだけを御指摘なさいましたけれども、前段に「本法中別段ノ規定アルモノヲ除ク」という趣旨の文言があるかと思います。そういう関係で、死刑確定者について別段の面があればそれによる、それ以外については刑事被告人の規定を準用するということでございまして、これも適用ではなく準用でございます。
 実務的に申し上げますと、死刑になる事件につきましては、いわゆる未決時代が相当長いのでございまして、その間に、相当な大罪を犯した方々でございますので、死刑の求刑があるかないか、求刑後に判決もそのとおりになるかどうか、判決がありましても上訴してそれが覆るであろうかどうかという心情の不安定な点もございます。一方、事件の性質上審理も相当長引くのでございまして、拘置監に収容する、現在の言葉で言いますれば拘置所ないし拘置支所に収容しているのもその間の事情によるわけでございます。そういう観点から刑事被告人の規定を準用する場合が多い、こういう趣旨であろうと存じます。
#78
○稲葉(誠)委員 例外となる「別段ノ規定」を強調されましたね。それは七十五条のことでしょう。
#79
○石原(一)政府委員 九条にはいろいろ書いてございますけれども、そのほかの点については、御指摘のように七十五条という点以外には確たる格別の定めはございません。
#80
○稲葉(誠)委員 そこで、あなたの方の参事官だった朝倉さんが書いたコンメンタールがありますね。これを見ると、いろいろ言っていますけれども「死刑確定者に在監者中いわば最も高い法律的地位を認め、」ということが書いてあるのです。これはよくわからないのですが、ほかの被告人と比べて「最も高い法律的地位」というのはどういう点ですか。
#81
○石原(一)政府委員 該当部分を全部読みませんとわかりませんが、ただいまの御質問だけでは私もちょっと判断いたしかねます。
#82
○稲葉(誠)委員 ここに書いてある。朝倉さんが書いている。これを見てください。
#83
○石原(一)政府委員 なるほど、コンメンタールにそのような言葉がございますが、ほかを見てまいりますと、「高い法律的地位」を認めようとするその法律的地位が何だという説明はないようでございます。むしろ前段に「刑死を待つ者に対する立法者」の人情、いわば「法の涙」だというような点がございまして、通常の刑事被告人ないし受刑者とは違う意味合いを求める、それを「刑死を待つ者」であるという観点から「高い法律的地位」というふうに表現したのではないかと思われます。的確なことは、これをお書きになった方に聞いてみなければ私も判断いたしかねます。
#84
○稲葉(誠)委員 具体的にそこまで質問通告してなかったのであれかもわかりませんが、「最も商い法律的地位」を認めておるということは、弁護人とか親族とか友人と通信するために特別の便宜を与えるということを含んでおるのではないですか。これはよくわからないのですね。簡単過ぎるというか、なぜこういうことが出てきておるのか。前の方はいかにも恩恵的に与えたようなことを言っていて、そこになってくると「高い法律的地位」だということを言っておるので、よくわからないのですがね。この「高い法律的地位」の具体的内容はどうなんですか。
#85
○石原(一)政府委員 それはそこにも少し触れておりますが、処遇の方法につきまして特段の配慮を要するという点については「高い法律的地位」という点を考えての処遇であろうかと思います。
 先ほど御指摘の平沢貞通氏につきましても、絵画の自由制作を、大体一日一時間でございますが、させておりますし、なお冬季になりますればパネルヒーターを入れるというような特別な処遇をいたしております。また、その処遇に当たる刑務官も優秀な者を選び、特別な配慮をしつつ処遇するという処遇全般のことを考えまして、その点をそうした言葉で表現したのではないかと思う次第でございます。
#86
○稲葉(誠)委員 これは、これを前に渡してここのところを質問すると言っておけばもっとあれしたかもしれません。
 そこで、監獄法で刑事被告人に準ずる、こう書いてあるわけでしょう。準ずると書いてあるのは、いま私が言ったように親族、弁護人はもとより外部との交通は原則的に自由であるということが準ずるということの大きな中心問題でなければならない、こう思うのですが、これが何か矯正局長の通達で――三十七年の九月に再審請求をしていた藤本松夫さんという人がいらっしゃいます。これは私が参議院に当選してすぐのときに扱った、というよりか相談を受けた事件でよく知っておりますが、それに関してか矯正局長通達を出して、死刑囚の面会や文通に一定の線を引いたということが言われておるのですが、これはどういうような通達を出したわけですか、なぜそういうことをしたわけですか。
#87
○石原(一)政府委員 藤本氏の死刑執行につきまして稲葉委員が当時御質問されたことは、私も十分承知いたしております。その点とこれから申し上げます通達との間に関連があるという点につきましては、私どもの記録を検討いたしましたが、ございません。
 それで、この通達を出すに至った点を御説明申し上げますと、先ほど刑事被告人の規定を準用するというふうに稲葉委員もおっしゃられて、まさにそのとおりでございますが、しからば面会、通信等の外部交通に関する刑事被告人の規定はどうなっているかという点を見ますと、監獄法の四十五条一項及び四十六条一項でございますが、監獄の長の絶対的な全般的な裁量になっているのでございます。したがいまして、許可、不許可をするという点の裁量が全部監獄の長、現在でいきますれば拘置所ないし拘置支所の長の権限になります。そうなりますと、勢い各拘置所ないし拘置支所におきましての取り扱いが区々に分かれることになりますので、従前からその点は問題でございましたところから、死刑確定者につきましては、先ほど申し上げましたように刑事被告人ともまた受刑者とも法的地位を異にするという点を十分に言いまして、それから社会から身柄を厳格に隔離して確保しなければならない、あるいは刑政上当然の問題といたしまして心情の安定に注意しなければいけないという前提を立てまして、その後で、本人の身柄の確保を阻害するような場合あるいは本人の心情の安定を害するおそれのある場合あるいは施設の管理運営上支障を生ずる場合、こういう場合にいわゆる面会の禁止あるいは面会中の中止、信書についての削除、抹消についての基準を示したということであります。簡単に申し上げますれば、裁量によってやれるという現行法のたてまえに対しまして、裁量の逸脱のないように矯正局長通達をもちましてその範囲を明確にしたというものでございます。
#88
○稲葉(誠)委員 それはいつ出したものですか。
#89
○石原(一)政府委員 昭和三十八年の三月と記録にございます。
#90
○稲葉(誠)委員 それは藤本さんの事件だけではなく、ほかの事件についてもいろいろ救援活動が盛んになってきたので、それをチェックするというかそういうふうなことを考えて結局出たものではないのですか。そういうことは文面上はあらわれてないし、文面上は、三の「その他施設の管理運営上支障を生ずる場合」というところに多くあるのですけれども、そういうことではないのですか。
#91
○石原(一)政府委員 さような点ではございません。救援活動者というお言葉がございましたが、現に救援活動をされている方も相当数面会あるいは信書の接受が行われております。当時の通達等の起案の経緯についてはつまびらかにいたしませんが、その間の状況等を見ますと、たとえば裁判官に対しての脅迫的言辞のある文書が出た、あるいは外部の方々、特に被害者の方々に対しての、決して好ましい影響を与えるものでないような信書が出たという事実はございまして、そういう手紙等を受けた者から、矯正当局に対して是正方を求められた事実がございます。そういう点が背景となりましてこの通達が発せられたのではないかと思われるわけでございます。
#92
○稲葉(誠)委員 この「記者の目」というのに、飯部という毎日新聞の記者の方が「鉄格子に阻まれる死刑囚の人権」というのを書いているわけでございます。この中にあります富山という人が、七月二十三日豊島公会堂で開かれた「冤罪告発、民権人権確立大集会」にあてたアピール、これが非常に消されて、何が書いてあるかよく読めないようになっておるわけです。これは何か教育課長の段階は通ったのだけれども、上層部で抹消に手間取った、こういうことらしいのですが、その間の事実関係は一体どういうことなんでしょうか。
#93
○石原(一)政府委員 御指摘の記者は私のところにも参りまして、御指摘のような質問がございました。その前提として申し上げますが、ただいまお読み上げになりました「冤罪告発、民権人権確立大集会」というのはことしの集会の名前ではないのでございまして、昨年のものでございました。昨年のことか本年のことか、どうも記事が正確を欠きましたのでよくわかりませんが、どうもことしのことであるらしいということで、東京拘置所に調査をさせたのでございますが、その結果、教育課長の段階ではいいと思ったが、上層部に行って削られたというような事実はございません。問題となる信書につきましては上層部に上げて、教育課長も入って審査するということでございまして、その過程において不適当なところを抹消した。
 なお、消されて文面がさっぱりわからないというお言葉でございますが、消された部分はわかるように消したのでは消した効果がございませんので、わからないのは当然なのでございますが、一部でございまして、その下の方に、こういうようなことと推測されるというようなことが書いてございますので、消した部分はきわめて必要最小限度であろうと存じます。
#94
○稲葉(誠)委員 そこで、「富山が拘置所の医官に、病気を訴えたのに対し「お前は仮病だ」と決めつけられた経過を書いているところ、と思われる。」こういうふうに記事にあるわけですけれども、消されてしまって原文がありませんからわかりませんが、そのように推測されるのですが、そういうことなのでしょうか。
#95
○石原(一)政府委員 まず前提として、仮病云々という点を拘置所の医官が言ったという事実はございません。それに対して医官がそういうことを言ったという点を書かれた部分があるとすれば、これは刑務所の医療体制に対する事実に反する記載でございますので、いわゆる管理運営上支障があるということで抹消せざるを得ないのでございます。
#96
○稲葉(誠)委員 そこで、これはあなたとの談話が載っているのですが、ちょっとぼくはわからないところがあるのです。最後のところですが「無実を訴える死刑囚には、一般社会との交通手段が出来るだけ保障されるべきだと思うが。」という問いに対して「それはあくまで裁判で決まること。」というふうにあなたが答えたようになっているのですが、これはよくわからないのですが、どういうわけですか。
#97
○石原(一)政府委員 御指摘の私と記者との会談は、相当長い時間でございました。前提として申し上げますが、この記事の最後の方に、死刑確定者赤堀氏と会ったという点が載っておりますが、誤解があるといけませんので申し上げますが、取材のための死刑確定者との御面会につきましては、これは御遠慮申し上げております。御当人はそのことを知っておりまして、このときも記者であるという身分を秘しまして、赤堀さんと共に闘う会の会員であるということで面会されているのでございます。そういうようなことで、いわゆる救援組織の方々の御意見等を十分聞いて私のところに参りましたので、そのしからざるゆえん等を私としてはるる御説明申し上げたつもりでございます。
 しかしながら、この記事全体をごらんいただければわかりますように、私の説明をした部分はきわめて少ないのでございまして、この項が出ましたのは、一番上に書いてございますように、私はそうした救う会という善意の方々の運動を否定するものではない、しかし裁判の結果を覆そうとするのであるならば、これは裁判によって決まることではないか、われわれ矯正側としては、民間の方が無実だと言われて、だから無実だということで処遇するわけにはいかぬであろうということを申しましたところが、それは法廷ではなくて、社会に訴える手段が最小限度確保されなければならないんだということを向こう側でるる説明されました。そこで、そうした話し合いを前提としていたしまして、私は、裁判によってそれは決まることであろう、裁判にプレッシャーをかけるような運動であってはならないのではないか、むしろ死刑の事件につきましては、古いことでもあり、また証拠が散逸している場合もあるので、民間の方々から証拠の散逸したもので当時の記憶を出してもらうとかという点での運動ならともかく、裁判所でやるべきことを民衆の方々でやるというのはいかがなものかという点を申し上げたのでありまして、その点の前提がなくなりまして、問いと答えと仰せのように一致いたしておりませんけれども、私は無実を訴えるという点について、無実であるとするならばそれは裁判で決まることなんだということを申し上げたのでございます。私の一番最後に書いてあるところの前段がそういう趣旨の説明がきわめて簡潔にされ過ぎまして、御理解を得ないような記事になったものと推察いたします。
#98
○稲葉(誠)委員 だけど、死刑囚の人が中に入っていて再審を請求しておる、こういう場合には、その人といろいろなふうに会って聞いて事実関係をさらに明らかにし、新たな証拠を発見しなければ無実の者を救うことができないのはあたりまえの話であって、そこら辺のところをそうかたくなに考える必要はないのではないかと思うわけです。何も裁判にプレッシャーをかけるというようなことではないわけです。
 それから、いま言ったことの中で、死刑囚と新聞社の人が面会するのは矯正局としては困るというので断っているのですか。それはおかしいんじゃないですか。
#99
○石原(一)政府委員 矯正におきましても、人権の尊重については十分配慮をいたしているところでございまして、本人が特に希望する場合は別として、ただ取材のために会いたいというときには、これは心情の安定その他を害する関係があるのではないかということを申し上げて、できるだけ御遠慮を願っているというのが事実でございます。
#100
○稲葉(誠)委員 だけど、死刑者が無実を訴え再審を主張しておるときに、新聞社の人が行って会ってその声を広めるということは当然の仕事であって、それを妨げるということはおかしいのじゃないですか。そのこと自身は決してあれではないし、いいことじゃないのですか。
#101
○石原(一)政府委員 裁判所におきまして証拠を提出し、前の判決についての是正を求めるというのは弁護士の職務であろうかと思います。それを法廷に出ることのない形で、証拠の収集というようなことでなされるとすれば、これは日本の司法機関を認めているという趣旨にも反することになりはしないかというふうに思うのでありまして、心情的に訴えるということでありますが、さようなことにはならないのではないか。仮に、たとえば新聞記者が何らかの証拠をそういうことでおとりになって、この点をわれわれが聞こうとすれば、恐らく報道の自由、取材源の秘匿という壁にぶつからざるを得ないのでございまして、そういう点をも全般的に彼此考量いたしますれば、一概に、会ってそれを記事にするということであれば世間に与える影響も大きいことでございますので、できるだけ御遠慮願っているというのが実情でございます。
 なお、前提といたしまして――この記事をごらんになっての御質問でございますから、この中で、親族と弁護人しか富山死刑確定者に会わせていないという点がございますが、これは事実に反します。現に親族、弁護人以外の方にも相当数面会及び信書の発受はなされているところでございます。
#102
○稲葉(誠)委員 いま監獄法部会が開かれておるわけで、これは来年の秋ごろ終わるような話もちょっと聞きましたが、これは立法政策の問題でいろいろあるようですが、死刑囚についていまは被告人に準ずるということですが、これをやめて既決囚扱いを明確にするという構想を法務省当局は持っておるとか示しておるとかということが言われておるのですが、この点についてはどうなんですか。
#103
○石原(一)政府委員 ただいま御指摘のような御意見を一部の方々から承るのでございますが、それは事実に反します。先ほど申し上げましたように死刑確定者というのはやはり未決の被告人あるいは受刑者と異なるところがあるのでございまして、それに応じた処遇をするということでございます。具体的に申し上げますのは、ただいまちょうど小委員会で議論をいたしているところでございますので差し控えさしていただきますが、身柄の確保、あるいは心情の安定、それから宗教的教戒等につきましては、これまでの実績にかんがみまして、受刑者とも未決の被告人とも違う形をとらざるを得ないであろうということで、小委員会側が現在つくられつつあるところでございます。
#104
○稲葉(誠)委員 入管局長にお尋ねをするわけですが、これは大臣も聞いていていただきたいと思います。最後に大臣の所見を承りますから。
 いま崔正雄という人、チェ・チョンウンというのかな、この退去強制事件があって、この人はいま大村に収容をされておるわけですね。その事実の経過を最初に局長の方から簡略に申してくれませんか。
#105
○吉田政府委員 崔正雄は、昭和二十三年十月二十三日山口県で生まれ、愛知県立豊田西高校と、ずっと日本の学校、最後は明治大学政治経済学部を卒業しているのですが、昭和四十七年三月二日に、不正入手した他人名義の日本旅券により羽田より不法出国して、同四十九年九月十六日横浜港に不法入国した。それから、四十九年十一月十二日羽田からまた不法出国して、五十年十二月二十三日に羽田に不法入国、同五十一年一月十九日、羽田から不法出国、五十二年九月十三日、羽田に不法入国しております。
 本人は、最後の昭和五十二年九月十三日の不法入国により退去強制手続の結果、五十三年三月三十一日、異議の申し出は理由がない旨の法務大臣の裁決がなされ、五十三年四月十日、名古屋入国管理事務所主任審査官から退去強制令状を発付され、現在大村収容所に収容中であります。
#106
○稲葉(誠)委員 これについて名古屋の地方裁判所で却下になって、名古屋の高等裁判所で抗告が認められましたね。なぜ抗告が認められたのか。最後の名古屋の高等裁判所の五十三年七月十五日の決定があるでしょう、これを中心としてひとつ説明してください。
#107
○吉田政府委員 本人は、五十三年七月八日、裁決及び退去強制令状発付処分取消請求訴訟を提起いたしまして、あわせて退去強制令状の執行停止も申し立てをしたのであります。執行停止申し立てについては、同年七月十四日、名古屋地方裁判所で本人の申し立てを却下する旨の決定がなされたのでありますが、本人が同日即時抗告した結果、七月十五日、名古屋高等裁判所で送還停止の決定がされたのであります。
#108
○稲葉(誠)委員 大臣も聞いていただきたいのですが、こういうことは非常に異例なことなんですね、異例中の異例なんですよ。名古屋の地裁で却下したものを即時抗告して、すぐ次の日に、判決確定まで退令を、送還部分を停止しているわけですね。だから、名古屋の高等裁判所でなぜこの決定を変更して、送還部分に限って本案判決の確定に至るまで退令を停止したか、ここがこの事件のポイントになっておるわけですよ。だから、そこのところを聞いているわけです。
#109
○吉田政府委員 いまその裁判の資料を持っておりませんので、ちょっと……
#110
○稲葉(誠)委員 それは通告したはずだがな。では、ぼくのところにあるから、こっちのやつを読みましょう。
 裁判所が、こういうことは珍しいのですが、その理由にこういうことを書いてありますね。「当裁判所の判断」というところがあるわけですが、1、2とあって、3のところに「相手方は」、相手方というのは国の方ですね、
 相手方は本件申立は「本案について理由がないとみえるとき」に該当する旨主張する。しかしながら前認定の抗告人の身上、生活関係に加うるに、本件資料によれば、抗告人の二〇数年にわたる本邦及び後記留学中における生活態度は良好であり社会的信用も得ているうえ、本件令書発付の機縁となった旅券法違反、出入国管理令違反を犯すに至った経緯をみても抗告人の海外渡航の目的は海外における勉学にあったのであり、抗告人が渡航した昭和四七年当時において抗告人のように昭和二十七年法律第一二六号により本邦に在留を認められ、朝鮮籍を有する者に対し、右のような留学目的の海外渡航が認められた事例はなく、抗告人が三回にわたって本邦に不法入国をしたといってもそれは抗告人がすでに交付を受けていた外国人登録証明書の切替交付を受けるためであったなど、右違反を敢行するについてなお抗告人に宥恕すべき事情もあったこと、昭和五一年度だけをみても、相当数の不法入国朝鮮人に対して出入国管理令五〇条に基づく在留特別許可が与えられていることなどが一応認められ、以上の事実に照らすと本件令書発付処分を違法とする抗告人の主張がそれ自体明らかに失当とはいえないのは勿論、右処分の適否の判断において右処分が違法とされる余地が全く存しないというわけではないから、本案についての理由の有無は今後の審理にまつべきものと解するのが相当である。
 してみれば相手方のこの点の主張は理由がない。
 4、なお、本件送還の停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあると断ずる資料は存在しない。
ということで、これを認めておって、あなたの方で大村に送ったけれども、いま送還停止になっている。こういう状況です。
 それで問題は、ここにもありますように、この人は一二六号の在留資格を持っている人です。これはまず間違いがないわけでしょう。争いがない。それから、四十七年当時においては朝鮮籍を持っている者は留学目的の海外渡航が認められていなかった。この点については、どうですか。
#111
○吉田政府委員 最初不法出国をいたしましたときは、まだ留学の制度がなかったということでございます。
#112
○稲葉(誠)委員 そこで、本件については、この高等裁判所の決定にもあるように、非常に向こうへ行って勉強している。これはイギリスですが、態度も良好であって、社会的信用も得ておる、こういうようないろいろな経過から見て、その後の状況についてあなたの方で調べておられますか。たとえば、スイスでスイスの女の方と結婚をする約束ができて結婚をして、そしてスイスの方へ行きたいということで、本年の十月十六日にスイスの入国許可が与えられておる、こういう事実はどうですか。
#113
○吉田政府委員 本人がスイスの女性と結婚をしてスイスへ行きたいという希望を持って、スイス大使館に対し査証の発給を申請しているということは聞いております。
#114
○稲葉(誠)委員 そうすると、朝鮮籍というのは、あなたの方では朝鮮も韓国もこれは国籍ではない、符号だという解釈をずっととっているわけでしょう、統一見解は。朝鮮籍の海外渡航の自由というのはいつごろからどういうふうに認められてきているわけですか。
#115
○吉田政府委員 海外渡航というのは再入国許可申請のことでございますが、これは最初、昭和四十年から人道ケースを認めておりまして、それがだんだん範囲を拡大していって、四十七年から局長証明書を出して再入国許可書を与えて出すという制度を採用しております。
#116
○稲葉(誠)委員 いまの局長証明のことなんですが、局長証明というものの性質ですか、それは、台湾の場合には自由にたくさん発行しているのに朝鮮の場合にはそれが非常に少ないのではないんですか。それはどういうところから来ているわけですか。
#117
○吉田政府委員 多い少ないということはなんでございますが、相当多数出していると私は了解しております。
#118
○稲葉(誠)委員 そんな答弁はだめよ。ちゃんと数字があるでしょう。そんなものがないわけないよ。
#119
○吉田政府委員 昭和四十年から五十三年九月まで、在日朝鮮人に対して、計五千八十三件許可を出しております。
#120
○稲葉(誠)委員 台湾関係は。――それじゃ、後でいいですよ。
 そこで、この人は五日間仮放免になったのですか。それはどういう関係ですか。
#121
○吉田政府委員 スイスの女性と結婚手続をするために、スイス大使館に出頭しなければ結婚手続ができませんので、そういう関係で五日間仮放免をして、スイス大使館に本人が出頭しておる、こういうことでございます。
#122
○稲葉(誠)委員 いろいろお聞きしたいこともあるのですが、まず、この場合は一二六であるということ。一二六というのは在留資格ですね。それと、イギリスへ行って勉強をしたいという純粋な目的であるということですね。この人は日本で生まれたのでしょう。日本に生まれてずっと日本に住んでいて、そしてイギリスへ行って勉強したらいいということを大学の先生に言われて行ったわけですね。それでスイスの人と結婚をするということになって、事実結婚をして、それで仮放免までもらってその手続をとって、そして強制送還の停止になっておる。それでスイスの方の入国許可が、いま言ったように十月十六日に与えられておるということですよ。これは調べてみればすぐわかりますから、私の方の調査ではそういうふうになっておるのですね。そうすると、日本に生まれて、一二六の資格を持って、そしてこの人はずっと日本の高等学校から大学まで行って、一生懸命勉強したいということで大学の先生の推薦もあってイギリスへ行ってまた勉強して、留学中の生活態度も非常によいということで、そしていま言ったように外国人登録の関係で日本に帰ってきた、こういうような状況なわけですね。それでお父さんは亡くなって、母親も六十七ですか、そういうことで、スイスの人と結婚をして、スイスへ行きたいということで入国許可もおりておる、概略こういう事案ですわね。
 これはきわめて人道的な事案であって、これに対して退令を出すなんということは非常に過酷な処分である。過酷な処分であるということはもう名古屋の高等裁判所で認めておるわけですからね。これに対して十分な配慮をして温かい手続をとってやりたい。法務省としてもそういうふうにやってもらいたいと思うのですが、この点に対して法務大臣としてはどういうふうな見解を持っておるかということをお聞きしたい。
#123
○吉田政府委員 本件につきましては、どういう円満な解決をするかというようなことも、すでに弁護士と内々いろいろ相談をして、大体方針はお互いにわかっているわけでございますので、これ以上具体的なことをこの場で言及することはちょっと差し控えたいと思っております。御了承願います。
#124
○稲葉(誠)委員 それでは、ほかにもいずれまたお聞きしたいことはありますけれども、この程度にして、次に法務省の民事局長、その前に最高裁の民事局長の方が先ですかね。いわゆるサラ金問題に関連して、この前私ども視察に行ったときに、大分の裁判所の所長さんからいろいろ聞いたわけです。大分は非常に多くてあれだということを言って、職員がそろばん片手にはじいてやっておるということを聞いたのですが、私がもらった資料だと、ことしの七月にサラ金の調停申し立てが千九百七十六件ある、こういうことですね。約二千件というと年に二万四、五千件あるということで、それは、調停が全部で五万件ぐらいのようですから、大体半分近くがサラ金調停に関連する調停だ、こういうふうにお聞きをしてよろしいでしょうか。最高裁の方から簡単に説明を願えればと思います。
#125
○西山最高裁判所長官代理者 サラ金事件につきまして継続的に調査をしていることがないものですから、正確なお答えは申し上げにくいわけですが、本年の七月に全国の簡易裁判所における事件数を調査いたしましたところでは、本年七月の一カ月間に受理されたサラ金調停事件数は、先ほど先生の御指摘になりましたような千九百七十六件でありまして、同期に受理された民事調停事件、これは五千五百六件となっておりまして、それの割合は三五・九%を占めております。なお、七月の係属件数でありますが、係属件数は、民事の調停の全事件が二万一千三百十九件となっておりまして、それに対してサラ金調停事件が五千九百三十件で、二七・八%を占めているという結果が出ております。したがいまして、全体の係属数はもとより、毎月毎月の新受件数も、五〇%まではいってないのではないかというふうに考えております。
#126
○稲葉(誠)委員 そこで、これは法務省にお聞きしたいのですが、利息制限法との関連なんですが、まずお聞きをしたいのは、利息制限法で最高裁で二つの判決が出ましたね、三十九年十一月十八日と四十三年十一月十三日。後の方は大法廷で、前の方は差し戻しですね。いずれにしても二つの判例が出たわけですね。これによると、利息制限法の一条二項、任意に支払ったものは請求できないという規定がありますね、これはもう死文になったのじゃないですか。それとの関係はどうなんですか。
#127
○香川政府委員 最高裁の判決の趣旨は、利息制限法の制限利率を超過して支払った利息は元本に充当される、そういうふうに充当されてまいりまして元本がゼロになると、その後に支払ったものは返還請求ができる、こういう御趣旨でございますが、そういうことになりますと、いまのお説のように、一条二項の任意に支払ったものの返還は請求できないという規定との関係がどうなるかというのは、確かに法律解釈としては若干の疑問があろうかと思うのであります。ただ、一条二項は、支払ったものの返還は請求できないと言っているだけでございまして、そこから先どうなるかということは言っていない。特に、二条に超過利息を天引きした場合の効果が書いてあるわけでありますが、利息を天引きいたしました場合には、その分は元本に充当されて、そして元本が少なくなったもとで計算した利息の支払いというふうな効果を持つふうにも規定しておるわけでありまして、そういうことを根拠にしたかどうかは定かでございませんけれども、いま申しました一条二項の返還請求はできないけれどもそれはどうなるのかということと二条とをあわせ考えて、最高裁が先ほど申しましたような御趣旨の判決をしておるのではないか、かように考えるわけでありまして、ちなみに、利息制限法改正当時、つまり、現行の利息制限法は全文改正でございますが、その当時の考え方として、確かに現在の最高裁の判例のような解釈をとっておった向きもあるようでございまして、そういうことから、私としても自信はございませんが、考え得るところでは、一条二項の規定の返還請求ができないということのその先はどうなるかということと天引き利息の効果の関係、このあたりから考えますと最高裁のような解釈も出てくるのではなかろうかというふうに考えております。
#128
○稲葉(誠)委員 最高裁のような解釈と言ったって、最高裁の大法廷の判決は、これは確定判決ですよ。だから、それに拘束されるんじゃないですか。何だかあなたの言うことがはっきりしないな。ぼくもよくわからない。非常にむずかしくて、読んでみたけれども、わからないですね。後で研究しましょう。
 そこで、もう一つの問題は、第一条で「元本が十万円未満の場合年二割 元本が十万円以上百万円未満の場合年一割八分 元本が百万円以上の場合年一割五分」これはあなた、まず第一におかしいのは、十万とか百万とか百万以上で切っていることが、昭和二十九年当時はこれでよかったかもしれぬけれども、いまはもう実におかしいね。デノミでもやったのなら別かもしれぬけれども、非常におかしいですね。この二割、一割八分、一割五分というのは、どこから出てきたのですか。その当時は高金利の時代じゃなかったんですか。だから、これも下げなければいけないのじゃないか。上の方の金額も直さなければいけない、下の利率も直さなければいけない、こういうことになるんじゃないですか。
#129
○香川政府委員 当時の立法趣旨でございますが、どうも、いま申しましたように元本を三段階にしており、利息を一割五分、一割八分、二割というふうにしておるのは、実態調査の結果によるようでございます。簡単に申し上げますと、臨時金利調整法のもとでの一般の銀行の金利、それから相互銀行、信用金庫、質屋、貸金業者というふうなものにつきましてのその当時の金利を調査いたしまして、そして十万円未満はいわゆる庶民金融、それから十万円から百万円まではいわば中小企業に対する金融、百万以上は大企業というふうなことを考えて三段階にしたようでございますし、そして、それぞれの金利は、当時の実態から申しまして、大体いま申しました三段階でのそれぞれの金融機関の金利の実態よりも若干上回るところで利率を決めた、こういうふうな立法趣旨のようでございます。
#130
○稲葉(誠)委員 立法趣旨を聞いているんじゃないんです。上の方の金額と下の方の利率をいまの状態に合うように変える必要があるのじゃないかということを聞いているのです。低金利の時代でしょう。このような十万とか百万とか、いまはやっているのじゃないでしょう。だから、その基本の金額、利率を全部変える必要があるのじゃないですか、こう聞いているわけです。
#131
○香川政府委員 基本の金額十万あるいは十万から百万まで、百万以上という三段階につきましてはいろいろ見方があろうかと思いますけれども、その区分けの現行法の仕方が金額的にそれでいいかどうかは問題はあると思います。しかし一般的に言われますことは、金利を考える場合に、元本が少なくても多くてもかかる手数等、費用等は一緒である、そういたしますと、元本の少ない方ほど割り高、コスト高になるというふうなことから、金利はおのずから高くならざるを得ない、こういうふうな考え方が一方にあるようでございます。現在の金融事情から申しまして、これは金利の、面と元本の区分けの両方から考えなければならぬと思いますけれども、確かに十万円未満、十万円から百万円まで、百万円以上という三段階は、実態には相当合わない、再検討しなければならない問題だというふうに考えております。
#132
○稲葉(誠)委員 いや、金利の方はどうなのです。これは大蔵省と相談して当然改めるべきじゃないのですか。年二割というのは高いのじゃないですか。法定利息は年五分でしょう。どうしてこういう数字が出てくるのですか。
#133
○香川政府委員 現在の利息、金利の実態でございますけれども、正規のと申しますか、一般の金融機関を対象といたしますと、いまの制限利率で、それ以上は無効だという線はそのままでもいいかもしれないと思うのでありますけれども、いわゆる町の金融機関、貸金業者等の、実態から申しますと、しかもさらに最高裁判例のような解釈をとるといたしますと、率直に申し上げまして、一体現行の金利で十分営業ができるかどうかということは、私はむしろ疑問に思っておるわけでありまして、この現行の利率以上が民事上全く無効になるということを貫くといたしますれば、むしろ金利は、町の金融機関に関する限りは、若干上げないと営業が成り立たないというふうな現状ではなかろうかというふうに認識いたしております。
#134
○稲葉(誠)委員 もう一つの問題は第四条の問題ですね。第四条で「賠償額予定の制限」があるわけですね。「金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は、その賠償額の元本に対する割合が第一条第一項に規定する率の二倍をこえるときは、その超過部分につき無効とする。」こういうわけですね。この「二倍」というのはどこから出てきたのかよくわかりませんが、それが一つ。
 それからもう一つの問題は、これを悪用して、非常に弁済期を短くして十日間くらいにするでしょう、そしてそれを過ぎれば二倍にするということになれば、脱法行為というか、そういうふうな悪質なことが幾らでもできるわけですね。だから、これは六カ月間なら六カ月間を超えるものに限るのだという形にするとかなんとかしないと、利息制限法は有名無実になって、違約金ばかりで実際には倍額が取れるという形にどんどんなっていっちゃうのじゃないですか。日弁連からもそういう建議みたいなものが出ているでしょう。出ていますよ。
#135
○香川政府委員 お説の点は、直接損害賠償、違約金の関係を考慮したかどうか条文には定かじゃありませんけれども、外国の立法例でもそういった手法を用いているところもあるようであります。確かに悪用しようと思えばできることでございますので、そういったいわば脱法的な行為を防遇する意味で、そういった立法も十分検討に値いたしますけれども、いろいろの実態を当時調べまして、そして大体違約金というものが、損害賠償領というものが約定利率の二倍になっておるというふうなことで、現行法ができておるわけであります。
    〔委員長退席、濱野委員長代理着席〕
したがって、悪用の実態が非常にあるということになりますれば、思い切って一定期間は損害賠償の率によらないというふうなことも考えざるを得ないというふうに存じます。
#136
○稲葉(誠)委員 そこで、さっき簡易裁判所に調定の申し立てが出てくるということをお話ししました。それからその処理結果などについても資料をいただいたわけですが、わからないのは、利息制限法と、出資ですか、預かり金の法律がありますね、日歩三十銭のが。片方は刑事上の問題、片方は民事上の問題だというかもわかりませんが、そこで、あの最高裁の判例を受けて、その調停がどんどんふえてくる、こういうことになったときには一体どういう結果が生まれるわけですか。ということは、結局、その出資の法律で幾ら日歩三十銭とかなんとか決めたところで、それは刑事罰の関係であって、実際には利息制限法によって返還できるのだ、こういうことになってくると、その出資の預かりの法律というものは有名無実というか、実効がないものになってきてしまうわけではないのですか。さらに端的に言えば、この調停がどんどん申し立てられることによってそういう業者というのはどういうふうになっちゃうのですか。
#137
○香川政府委員 御質問の御趣旨は、出資の法律で一定の利率以上は罰則をかけるということになっておるけれども、その受け取った、いわば罰則のかかる利息も、最高裁の判決に基づけば返還してしまうということになる。返還するなら後に残らないのだから、罰則をかけるのはおかしいじゃないか、こういう御趣旨だといたしますと、これはまさに……(稲葉(誠)委員「そうじやない」と呼ぶ)そうじゃないのですか。
#138
○稲葉(誠)委員 どんどん利息制限法に基づいて調停が出てくるでしょう。そうすると、実際の出資のあれで決めたところで、率直に言えばそういう業者というものはみんなつぶれちゃうのじゃないの。
#139
○香川政府委員 それは出資の法律の方での罰則はすべて調停に出てくることを予想しているわけではないわけでありまして、そういう契約をすることを暴利行為として罰しようとするものでございますから、したがって、そういったケースの場合に調停が出てきて話し合いがつくということになりましても、罰則は罰則としての意味があるのじゃありませんでしょうか。
#140
○稲葉(誠)委員 罰則は刑事事件のことだから、それはそれでいいのだ。これはあなたの方は言いにくいかもしれないけれども、この全然別個の二つの法律が、昭和二十九年に一緒にできたのですよ。片方は法務委員会にかかって、片方は大蔵委員会にかかったわけだ。ただ連絡も何もとれないでばらばらに両方が出ちゃっていますから、その間のあれがないわけですよ。だから、いま言ったように、この調停によって最高裁の判例を受けて払ったものでも返還できるということになれば、サラ金からどんどん高い金利で借りて、調停にどんどん申し立てて、利息制限法のあれで計算してくれ、それでやっていったらどういう結果になるだろう、それはどうなんですか。
#141
○香川政府委員 ちょっと御質問の趣旨が、私不敏にして理解できないのですけれども、つまり、利息制限法でどんどん返還されるということになると、一方で出資の法律で取り締まられておる業者の営業が成り立たない、そういうことになるだろう、こういうことでございますか。−だから、そこが先ほど申しましたように、罰則の線は別といたしまして、民事上無効にする線というのは、やはりそれなりの需要に対応しての供給の問題でございますから、やはり営業が成り立つような線を考えなければいかぬというふうな問題があると思うのであります。したがって、民事上無効にする線というのは、私の認識では現行法の制限利率では少し低きに失するのではないかというふうな感触を持っておるというふうに先ほど申し上げたわけでございます。
#142
○稲葉(誠)委員 私はそういう業者の味方をしているのでも何でもないのです。そういうのじゃないのですが、そうすると、あなたの立場としては、それを近づけるために利息制限法の利率を高めたいという考え方ですか。これは法務省全体の考え方ですか。低金利の時代にそいつはおかしいな。そういう考え方をとっているのですか。そういう考え方で大蔵省と交渉しているのですか。
#143
○香川政府委員 法務省としてそういう考えをとっておるということではございませんので、先ほどお尋ねの稲葉委員の御質問は、現行の利率は低金利時代には少し高過ぎるのじゃないか、民事上無効にする線はもう少し下げるべきじゃないかというふうな御質問だったと思うのでありますが、そういうふうにいたしますと、これ認識の相違かもしれませんけれども、最高裁の判例を前提にする限り、つまり超過部分は一切利益としては残らない、そういうことを前提にして、またそうされるであろうということを期待いたしました場合に、町の金融機関が、今日百万円で年一割五分という利率が果たして営業が成り立つ制限利率として通用するだろうかという疑問を持っておるということを申し上げたわけでございます。
#144
○稲葉(誠)委員 いろいろ議論のあるところですね。最高裁の判決の読み方にもあると思うのですが、法務大臣、後から質問があるかとも思いますが、サラ金業者の取り締まりというのか何というのか知りませんけれども、それ全体に対して、どこが主管でどういうふうにやるとか、そういうふうなことは一体どういうふうになっているのですか。よくわからないのです。法務省にやれというし、大蔵省でやれというし、あなたは非常に熱心だということをお聞きしていますけれども。
#145
○瀬戸山国務大臣 先ほど利息制限法それからいわゆる出資法との関係等お話がありましたが、率直に申し上げて、理論的に非常に矛盾を感ずるのです。これは昭和二十九年に同時にできた法律でございますが、確かに一体そういう金利体系あるいは金利の出てくる貸借の金額の区別というものが、そういうふうなものでいいかどうかもあわせて検討する段階に来ておるのじゃないか、これは私の個人的な見解です。まだそういうことを結論を出しておるわけではありませんが、それと出資法との関係、いまおっしゃったような確かに矛盾がある、私も最初からそう考えておりますけれども、それをどう現実に合うようにするかということは、大きな検討課題だと思っております。
 それから、サラ金の問題でございますが、これはちょっとよけいなことを申し上げて恐縮でありますが、私はサラ金の問題というのは、簡単に世間でいろいろ議論されておりますけれども、これはもう、こういう言葉を使うと非常に誤解されるおそれがありますけれども、ざっくばらんに言って、借りなければいいのです。借りなければいい。それから、借りるならそれを払うという決意がなければいけない。しかし、社会の中で借りなければならない事情がある。でありますから、貸す方もそういう事業がなければならない。そこで、借りなければならない事情がある、一般金融機関からなかなかそういう金は簡単には貸してもらえない、でありますから、いわゆる町の金融と言われるものが現実の社会事情として出てきておる。一方の方はいろいろな借りる原因があるようでありますけれども、それは別にして、手軽といいますか、簡単に比較的少金額を借りられる、これが社会生活の中で必要である、でありますから、一面においてはそれを貸す事業がまたできてくる。これは法律以前の問題であります。しかもその際、借りなければいいというわけにはいかないのだ、どうしても借りなければならぬ場合がある。それにつけ込んで高金利を課するという、いろいろな仕組みで高金利になるような仕組みをしておる。別なことでございますが、他の金融機関も最近は比較的簡単に貸してやるという制度を拡充する、これも非常に結構なことでございますが、そういう経済面と両面を考えなければいけないと思いますけれども、そこで、貸す仕組みについて、貸りる方に非常に後で不都合な事態が起こる場合がある、また非常に高金利になってかさんできたのを、取り立てがまた違法といいますか、非常に社会生活上好ましくない事態が起こる、こういういろいろな面があるわけでありますから、そこら辺を仕分けをして、さっき申し上げましたように、借りる必要があるし、また貸してもらう機関がなければならない、こういう事情を勘案して、これが両立といいますか、社会事情に応じて、しかも今日起こっております。または今日問題となっておりますような事態が起こらないような制度はどうあるべきか、こういう観点からいま検討しておるわけです。なかなか実態がわからないということでありますから、長い時間をかけて、各省庁それぞれに独自に、法務省――検察庁でございますが、あるいは警察庁あるいは大蔵省、こういう機関でそれぞれの立場で実際の姿というものをずっと調査検討してきている。今日、世間でもいろいろ出ておりますが、その実態を見て、これに応ずるように、このままでは確かにいけませんから、何らかの立法措置をしなければならない、こういう準備をいま進めておるところでございます。
 ところで、所管省はどこか、これがまたなかなか……。私どもとしては、率直に申し上げて、出資法と言われておる貸金業の規制に関する法律を見ますと、大蔵省が実態調査をしたり、あるいは報告を求めたりするという規定もありますから、また、概括的に言って金融でありますから、これは大蔵省が主管すべきものだと思いますけれども、そう簡単にもいかないところがある。関係しているのは、主として大蔵省、法務省、警察庁、こういうところが主管といいますか関係省庁、ほかにもありますけれども、主たるものはさようになっている。ここでどうしても煮詰めて、このままにしておいてはいかぬから対策を講じよう。実はけさの閣議でもあなたと同じような議論をしてきたわけでございます。次の通常国会にはどうしてもその対策を法案として出すべきである、そうしなければ社会の問題を解決することはできないじゃないか、こういうことで、そういう方針を閣議でけさ了解を受けております。でありますから、各方面の意見を吸収しながら、どうしてもいま私が簡単に分析いたしました事態を正常に戻す、かように考えておりますが、その際、また重ねて申し上げますけれども、いまお話のあった金利の問題、あるいはまた利息制限法の問題、もう少し明確にすべきである。そうしないと、判例が出たからこうだ、その判例の解釈もこうだ、なるほど制限はしてあるけれども、貸した金は裁判、調停に出ると御破算になる、そういうことでは、貸金業の必要性があるのに貸金業ができない、こういう事態にもなるわけでございますから、そういうことも含めて検討を進めなければならない、かように考えております。
#146
○稲葉(誠)委員 終わります。
#147
○濱野委員長代理 横山君。
#148
○横山委員 最初に、いわゆる試験管ベビー並びに人工受精の問題について意見をお伺いしたいと思います。
    〔濱野委員長代理退席、委員長着席〕
 すでに同僚諸君も御存じのとおり、最近におきます体外受精児は、世界で初めて英国で七月二十五日に生まれました。このことが全世界に衝撃を与えて、改めて体外受精という問題が、医学のみならず、道徳あるいは社会生活、われわれの立場で言いますと民法上の問題、家庭生活、相続税の問題に私どもとしては大変大きな衝撃を覚えたのであります。
 日本ではまだ体外受精は実現しておりませんけれども、しかしながら、人工受精はすでに慶応病院を初めといたしましてきわめて広範に行われている。その広範に行われていることは、家庭が秘密にし、医者が秘密にしておるわけでありますから、われわれの耳に入ってはこないのでありますが、医師並びにその他の資料を読みますと、きわめて広範に日本社会においても行われておるということが判明をしてまいりました。
 そこで、まず第一に、私がこの問題を提起いたしたい原則的な立場を申し上げますと、一体生命の意味をどう考えるか、生命の尊厳というものをどう考えるか。生命科学が現代人の生命観をゆがめ、人間は生物であって、たとえば悪いのですが、細菌も人間も同じである、医学の発展、科学の発展というもので細菌と同様に人間も扱われていくという可能性をここでわれわれは考えざるを得ないのであります。
 もちろん、この体外受精が発表されますや、ごうごうたる論争が世界じゅうに沸き上がっています。体外受精あるいは人工受精ともに、必要に迫られて、どうしても子供が欲しいというところが出発点であるといたしましても、反対論はおおむね次のようであります。
 動物実験で一〇〇%安全性が確保されるまでは中止をせよ。これはもう限界中止説でありまして、根本的に反対の説ももちろんあります。その限界的な反対の中には、操作の途中で卵子に傷がついて異常児が出はしないか。それから、第三者に金を出して生ませるということがあり得るのではないか。試験管の段階で男女いずれか決まった場合に、それを水に流す、殺すということになるのかどうかわかりませんが、とにかく水に流してしまう可能性があるのではないか。専制君主が、ヒトラーのような生体実験をした人間がもう一度あらわれた場合には、人口増加にこれを悪用するのではないか。親と子のきずなというものがこれによって崩壊していくのではないか。これは原子物理学が世界に登場したときと同じような、生命科学の登場が原子物理学の発展と同じような発展をするおそれがあるのではないか。こういうのが反対の意見であります。
 しかし、それにもかかわらず、私が先ほど披露いたしましたように、慶応大学では毎年一万人の女性ないしは男性が不妊患者として相談を受けておるそうであります。人工受精を受けておる母親女性は数百例になるというのでありますが、これは数年前の例でありますから、今日きわめて多くの女性が人工受精を受けておると見られるわけであります。
 これはもちろん、冒頭に言いましたように、医学の非常な発展ではあるけれども、しかし、医学を担当する皆さんが医学だけで考えているとはよもや思わないけれども、その倫理観、あるいは私の言う民法上の問題、家庭生活、相続その他に関するさまざまな発展性というものを一体考えているのであろうかどうか。結論的に後で申しますが、このような潜在的な驚くべき発展の陰に、一体われわれ法務委員はおくれておるのではないか、対処する立場がおくれておるのではないかということを痛感をいたした次第であります。
 そこで、まず厚生省にお伺いをいたします。私は医学的なことはよくわかりませんから、これは書物で、この体外受精というものはこういう問題なんだというふうに聞いたことを、見たことを、もう一度確認をいたしますが、次の点で間違っておることがあったら指摘をしてほしいのであります。
 体外受精は、正常の受精では卵子の近くに到達する精子は二億匹のうちの数百匹にしかならない、その中から一匹だけが受精をする。だから、正常の受精の場合には、強い精子が卵子にゴールインをするのだ。試験管の中では、それとは別に弱い精子でも卵子に近づいて受精することができる、これが第一点であります。
 第二点は、卵子を取り出す際に、卵子の回収率を高めるために排卵促進剤を使うことが多い。無理に卵子をしぼり出す結果、やはり弱い卵子が受精する可能性がある。これが第二点であります。
 第三番目に、培養液のつくり方にはさまざまある。東邦大学では、栄養を与える基本培養液に、ばい菌の汚染を防ぐためにストレプトマイシンを入れる。生体内に近づけるため性腺刺激ホルモンや人間の血清を加えたりしている。これが三つ目であります。
 そこで、まず厚生省に、いま言った三点に間違いがあるかどうか、医学的な立場からお答えを願いたい。
#149
○福渡説明員 お答えをいたします。
 御指摘のありましたまず第一点でございますが、おっしゃるように、正常の受精の場合には多数の精子の中でごく少数のもの、最終的には一匹だけということになりますので、一般的には強いものが残る、このように言われております。それから試験管内ではそういう条件がなくなりますので、そういう危険性はあるというふうに言われております。というのは、弱い精子も受精をする危険性があるということでございます。
 それから二番目でございますが、卵子の採取については排卵剤を使用するために、十分成熟した卵子だけではなくて、未熟な状態で排出されたものまで出てくる可能性があるということも言われております。
 それから三番目の、培養液の件でございますが、培養液の一番のポイントは栄養補給ということになりますので、この栄養を補給するためのどのような物質を入れるかということにつきましては、まだ研究段階でございますけれども、わが国ではまだ確たる定説がないようでございます。いま委員が御指摘になりましたような物質等も入れて、まだ研究段階だと、このように申し上げた方がいいかと思います。
#150
○横山委員 もう一つ厚生省に伺いますが、私が指摘したように慶応大学あるいは東邦大学を初め、わが国における人工受精の実態について、数及びその他人工受精の実態がおわかりだったら説明をしてもらいたい。
#151
○福渡説明員 人工受精がどこで行われているかということについては、先ほど委員のお話の中にもありましたように、慶応大学あるいは東邦大学を初め、非常に広く行われております。ただ、実数それから医療機関等についての正確な把握はいまのところ行政としてはいたしておりません。ただ、人工受精にも二種類ございまして、一つは夫婦間、配偶者間の人工受精、これは非常に多くの医療機関で行われておりますが、非配偶者間の人工受精につきましてはごく限られた少数の医療機関で行われているというように聞いております。
#152
○横山委員 慶応大学の人工受精の原則は次のことだと言われています。第一に、人工受精は不妊夫婦の治療であって独身婦人には行わない。第二番目に、夫と妻双方が治療実施を強く希望し、医師に書面による治療承諾書を提出している。第三番目に、子種の提供者を厳選し、これは医学的見地から、かつその氏名は夫婦に知らせない、提供者の指定は認めない。第四番目に、治療に関する記録等は医師の秘密に属し、治療の実施も夫婦、医師以外の第三者には秘密にする。こういう原則で慶応大学では行われているそうであります。厚生省はこの人工受精についての何らかの制限、指示、通達を出していますか。
#153
○福渡説明員 いまのところはそのような通達は出しておりません。
#154
○横山委員 私は、単にわれわれの法務の世界ばかりではなくて、政府が、この試験管ベビーやあるいは潜在的にきわめて日本の国内に多くなっておる人工受精のあり方について、何らかの指導なり措置をすべきだと思うのであります。その理由は、これからいろいろなことから提起をいたします。
 そこで法務省に伺いましょう。たくさんの質問がありますから、民事局長、簡潔にお答えを願いたいと思います。
 いま厚生省からお話しのように、夫婦間で人工受精を行うAIH、それから第三者から子種、精子をもらうAID、この二つの方式があるのでありますが、AIH、夫婦間の人工受精によらなければ子を持てない夫に妻は離婚請求の要因となり得るか、いかがでしょうか。
#155
○香川政府委員 それだけの理由では離婚請求にはならないと思います。
#156
○横山委員 AID、つまり第三者から子種をもらう、精子を第三者からもらう、この慶応病院によれば相手は言わない云々ということを前提にやられますが、この夫と第三者の子種をミックスする場合があるのだそうであります。つまり、自分の夫の精子でありたい、だから第三者からもらった精子と夫の精子をかきまぜて膣の中へ入れる、その場合の問題なのでありますが、そのことは厚生省、あり得ることは御承知でございますね。
#157
○福渡説明員 承知しております。
#158
○横山委員 それが現実にあるという立場なのであります。問題は血液型であります。
 わが国の民法及び親子法は、血縁ということをきわめて重視をしておる立場にある。このミックスした場合と第三者の精子を注入した場合、二つの場合があるわけですが、この生まれた子供が血液型をもって、裁判でもそうでありますが、親子の確認をするという場合が非常に多い。この場合に、血液型からいって、血縁という現在の日本の民法の立場から言うと一体どういうことになると思いますか。
#159
○香川政府委員 いずれにいたしましても、現行の民法七百七十二条では、婚姻中に出生した子供はその夫婦の子供ということに推定いたしておるわけでありまして、この推定規定があることから、それを覆す、つまり自分の子供でないと言う場合には、その子供が出生したことを知った日から一年以内に否認の訴えを提起しなければならないということになっておるわけでありまして、したがって否認の訴えを一年以内に提起いたしまして、ただいまおっしゃったような血液型によってその父と子供の間に親子関係がないということが明確になりますれば、親子関係は不存在ということになるわけでございますし、一年以内に訴えを提起しないでそのままになりますと、もう否認の訴えはもはや提起できませんので、客観的には親子関係はなくても法律的には親子関係があるということで法律関係は動くわけでございます。
#160
○横山委員 その七百七十二条ですが、一年以内は、あれはおれの子ではないという否認権を夫が持っている、ところが、慶応病院の場合には本人が妻と相談して治療承諾書を提出しておる、提出しておきながら、さて一年以内に、どうもあれはおれの子ではない、どういう事情かいろいろ考えられるのですけれども、その提供者の名前が何かの形でわかった場合、それは妻が姦淫をした、姦通をした、法律用語はありませんけれども、それの隠蔽策だ、隠蔽策で自分に承諾書を出さしたんだという場合があり得るだろうし、あるいはミックスをするはずだったものが、ミックスが全然なかった、約束違反だということで、承諾書を出していながら父たることを拒否をしたという場合、これは一体承諾書の提出によって父たる身分権の放棄が本当に現行法でできるのでしょうか。
#161
○香川政府委員 この人工受精の場合に、その夫がそのことを承諾しておるということの効果としまして、これはごく一部の学説でございますけれども、もはや否認の訴えは提起できないんだ、こういう説もございますけれども、これはごく一部でありまして、一般的にまだ民法学の立場から、お尋ねのようないろいろのケースについてどうなるかというふうな学説ももちろん判例もございませんが、一部、そういう承諾によって否認の訴えが提起できなくなる、そういう効果があるんだ。その説に従いますと、承諾している以上は、いまお示しのようないろいろな事情があったとしても、否認の訴えは提起できないというお考えだろうと思うのでありますけれども、しかし、果たしてその承諾ということが、親子の身分関係を客観的な事実と違う形に確定させる効果を持たせるほど重要な意味があるかというふうに考えますと、必ずしも否認の訴えが提起できない効果を認めるということは若干問題があるのではないかというふうに考えております。
#162
○横山委員 もし父たることの否認権を行使をすることによって、人工受精をしても父でないということが明白になる。そうすると子供は妻のみの子供であって、妻にすべての法律的な責任がかかるということを言うことになると思うのであります。この人工受精はそういう可能性をはらんでおる、なしとは言えないという可能性について、現行法は妻にきわめて不利な条件がそこに生ずるという欠陥があると思うのであります。
 今度は、夫が一年以内に死んじゃった場合に、親族利益代表人が人事訴訟手続法ですか、それによって否認権の行使をすることができますね。これはまた新たな角度だと思うのでありますが、夫が承諾しておっても、親族利益代表人が相続権を目指して一年以内に否認権をかわって行使をするということがあり得るとなりますと、これまた新しい問題が生ずると思うのであります。だから、夫が相続人をつくる目的で、女房と相談して、子供がない、何とかうちの相続をする人間をつくらなければならぬ、もらい子はいやだ、何とかおまえ人工受精をしてもらえ、第三者のものでもいいということでAIDをやったといたしましても、なかなかそれは現行法、今日の民法やいま言いましたさまざまな問題でいきますと、目的を達しないときがあるのではないかと思いますが、いかがですか。
#163
○香川政府委員 人工受精の是非はともかくといたしまして、そういう事象が多くなってくるとなりますと、やはり民法としてもそれにマッチしたような改正を検討せざるを得ないと思いますけれども、今日の民法七百七十二条の、この否認の訴えを一年内に制限しておりますのは、決して客観的に親子関係でないものを無理やりに親子関係に押しつけてしまうというふうな、そういったこととは異なりまして、いまおっしゃったいろいろの例の中で、客観的に親子関係がないものについて、夫婦間、婚姻中に生まれた子供であるから父親は父親なんだということに押しつけるのは一歩後退するとしても、しかし、いろいろの事情で夫の子供でない子供が婚姻中に出生したという場合に、できればいろいろの善意の配慮のもとにそういうものを、ごまかすと言っては語弊がございますけれども、事実はともあれ、嫡出子として法律的に処遇するということの方が、世の中が円滑に行くためにはその方が知恵がある、こういうふうな配慮があるわけでございまして、したがって、いろいろのケースが出てまいりますと、果たしていま申しましたような否認の訴えを一年に制限しておる、あるいはまた父親のみならず、一定の場合にその親族等が相続をめぐって否認の訴えを提起できるようなそういった関係を含めまして、やはり果たして現行の民法で対応できるかどうかということは今後とも検討する必要があろうというふうに思います。
#164
○横山委員 私は、法律論をやっているのですが、あなたは逃げ腰になって、まあその方が常識的で知恵があるだろうから、そこでうまくまとめてもらいたいもんだという、こういう論旨を出していらっしゃるのはよくないと思う。法務委員として民法のありよう、さまざまの出てくる可能性というものについてまともな議論をしているのでありますから、そのまともな議論をしてもらわなければならぬ。いまの質疑応答の中で、精子を膣の中へ注入されて子供を産む母親はある程度犠牲者と言うことができる。父親は否認権というものがあって、承諾書を出しておきながら、一年以内に否認権の存在を認めるそういう父権というものが強く働く。ところが、生まれてくる子供はどうでしょうか。子供が大きくなって親に似ていないということがあり得る。AIDだ、第三者の精子を注入されておれは大きくなった子だとわかる、血液型でおれはおとっつあんが違うということがわかる、そういう子供が父子関係を否定することがあり得ないだろうかということが論理的にまた生ずると私は思うのです。しかし、嫡出子の否認は父に許されて、子供にそういう権利は何ら認められていない。そういう嫡出子の否定権というものが、この人工受精の場合あるいはまた体外受精の場合に、一体否定されていいものであろうかどうか、この点についてどう思いますか。
#165
○香川政府委員 否認の訴えの形では、子供の方からの訴え提起は認めておりませんけれども、親子関係不存在の訴え、これは確認の判決の上でございますが、そういったものを認める説もあるわけでございます。ただしかし、これは人工受精とは関係なしに、立法論としては、子供の側からもそういった訴えを認めるべきだというふうな議論もあるやに聞いておりますが、その辺のところもあわせてやはり検討しなければならぬというふうに存じます。
#166
○横山委員 少なくとも七百七十二条が父性、父の父権的色彩が非常に強いのに対して、この問題の中から子供の権利というものが、七百七十二条の全面的自由な父の行使に対して考えらるべき点が生じた、こう思います。
 その次は提供者の問題であります。
 ザーメンを提供する男性というものは、この慶応大学の例によれば全く秘密になって、記録は医師の秘密に属し、治療の実施も夫婦、医師以外の第三者には秘密にするということになっておる。恐らくそうであろうと思う。しかし、何らかの形でそれが漏れる場合があるのではないかということを考えるのですが、生まれた子供に対する責任は、一体ザーメンの提供者に対して本当にないものであろうかどうか。私が最初、血縁関係というものが今日の日本の親子関係、親族関係の基礎になっておると言うその血縁関係からいいますと、ザーメンの提供者と生まれた子供の血縁関係というものは、それは全く関係ないんだということで言えるだろうか、いまの法律体系からいって。その点はどう思いますか。
#167
○香川政府委員 現行民法は、確かに血縁ということを基本にしておることは間違いございませんけれども、先ほど申し上げました七百七十二条の推定規定というのは、そういったものが基本ではあるけれども、やはり一年以内にその訴えを提起しなければ、法律的にその親子関係をそのまま認めるという、私はそういう意味ではいろいろの場合を考えての知恵のある立法じゃないかと思うのでありますが、ただ、血縁関係というものを非常に重視する立場で考えますと、その提供者の実際の父親というその者の権利をやはり何らかの形で認めなくちゃならぬかどうかという問題は確かにあると思うのであります。しかし、それを法律的に是認することによって、もしも人工受精という現象が広まってまいりました場合に、果たして妥当かどうかということはなかなかむずかしい問題ではなかろうかというふうに思うのであります。
#168
○横山委員 次は、提供者と医師の責任であります。
 これは厚生省に伺うのですけれども、先ほど三点にわたって科学的な点について大体そのとおりだというお話を聞きました。私どものような医学に素人な者ですから、この三点が万心配はないということであるのかどうなのか、その点はわかりません。しかし、常識的に考えまして、試験管では弱い精子でも卵子に近づいて受精をする、それから排卵促進剤を使うことが多い、無理に卵子をしぼり出す結果ということになり、弱い卵子が受精する可能性もある、培養液のつくり方には定説がない等々の話を聞きますと、まさか、先年ありました売血、ニコヨンの諸君までが血を売りに行って、大変な騒ぎになったということは万あるまいと思いますが、かなり大学や人工受精をしておるところは、あなた方は知らぬということなんでありますから、違法ではないのでありますから、潜在的な人工受精がいろいろなところで行われておる、それはすべて秘密に行われておる、こう考えますと、それによって精子の検査、保存あるいは医師の過失事故、そういうものがないとは言えないと思うのであります。それが初めからしまいまでやみからやみに行われるのでありますから、仮にそういうことが起こりましても問題の提起がなかなかない。何かのときにこの問題提起があり得ると思うのであります。こういう医師や提供者について一体どうお考えになりますか。
#169
○福渡説明員 先ほど委員の御指摘がありましたように、この人工受精というものは不妊症の治療の一環として行われるという理解を私どもはしております。したがいまして、現在日本で行われております人工受精というのはすべて体内における受精というものを前提としておりまして、まだ体外受精というものは行われておりません。
 先ほど御指摘がありました三点の問題点というのは体外受精の場合の問題点ということで、わが国では研究段階でございますが、体内受精を行ういわゆる人工受精、AIDの方法の場合は、精子については採取ということが行われますけれども、卵子については自然排卵を前提としております。そういうようなことで、AIDについての技術的な面については一応現在の医学でも確立をされているというように理解をいたしますが、なお社会的な制約等いろいろございますので、誓約書をとるとかそういうようなことが前提になった上での治療というように理解をしておりますので、一般的な医師の責任ということになりますと、医師法あるいは現行の医療法による医師の責任が当然そこには存在するというように考えております。
 技術的な面で申し上げるなら、AIDは一応実用段階には入っておりますが、その制約が非常に多いということで、ごく限られた特定の医療機関でしかいま行われていないというのが実情だと思います。
#170
○横山委員 大臣には後で総括的に聞きますから、ひとつよく聞いておってください。
 今度は夫の同意のない場合の問題。双方が治療承諾書を出しておるわけでありますが、夫の同意がない場合、医者は果たしてやらないか。これは法律的に何もそういうことはないんでしょう、夫の同意がなくたって妻がやってくれと言えば。妻はその必要に応じて夫に秘密に、夫に本当にあなたの子供が生まれたのよという立場でやる場合、一体これは姦通になるでしょうか。まさか姦通にはならぬと思うのですが。姦通していないのですから姦通じゃないと思うのだけれども、配偶者間の忠実義務違反で不貞行為ということになって、夫は離婚の請求要因になり得るでしょうか、どうでしょうか。
#171
○福渡説明員 現在の人工受精は、夫婦の同意がなければ行わないということを……(横山委員「法律で決まってないでしょう」と呼ぶ)法律では決まっておりませんが、医療機関あるいは学会等でそういう申し合わせをしておりまして、そういうケースに限って行うというように聞いております。
#172
○香川政府委員 いろいろの考え方がございましょうけれども、私は個人的には離婚請求の原因になるというふうに考えます。
#173
○鴨田委員長 午後一時三十分再開することとし、この際、暫時休憩いたします。
    午後一時四分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十四分開議
#174
○鴨田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。横山君。
#175
○横山委員 厚生省、お急ぎだそうでありますから、一つ二つだけ御質問して、お帰り願うことにいたしましょう。
 今日まで人工受精についてどうも厚生省は余り資料もなくタッチもせず、指導もしていられないようでありますが、これは少し御研究を願っておかないと、私どもが法務省に尋ねておりますことも必ずしも実態に即さないといううらみがあるようでありますから、人工受精の現状、その手術例等についても御検討を願いたいと思います。
 今日までそういう状況ですから、おわかりになってはいないと思うのですが、人工受精についての欠陥なり失敗例なり、配慮しなければならないとか、そういう点でお気づきのことはありますか。
#176
○福渡説明員 先ほどのときにも申し上げましたけれども、現在体内受精の面については技術的にもある程度開発がされ、確実にされつつあるということでございますが、体外受精についてはわが国ではまだ研究段階であって、学界でも統一された見解が示されておりません。そういうことで、学界の場での研究は今後も進められると思いますが、学界の方である程度そういうものが煮詰まりました段階で、私どもの方は学界の方の意見も聞きながらこれに対応してまいりたい。(横山委員「いまのところは体内受精の場合を聞いているのです」と呼ぶ)体内受精の場合につきましては、医学的な技術面では、受精から妊娠につなぐときの問題はほとんど解決されていると聞いております。ただ先ほどから御指摘がありますように、医療を行う場合にその家族の方の問題を十分に理解して進めなければならないというようなことで、治療行為としてのいろいろな配慮するべき点、これについては学界でも十分に煮詰めてこれに対応していこうというようにしておられますので、いまのところは体内受精につきましても、学界の方のそういう見解が本当にコンクリートされる、それを受けて私どもの方が対応してまいりたいと思っております。医学的な面での配慮という点については学界で大体もう煮詰まっておるように聞いておりますので、そういう面で私どもの方がこれに対して考慮しなければならないという点はいまのところはないというふうに考えております。
#177
○横山委員 厚生省に警告をしておきたいと思うものが二つあります。
 一つは、今日日本に行われております体内受精、AIHでもAIDでもそうでありますが、それがきわめて秘密裏に行われており、第三者には秘密を漏らさないということなんですから、これが仮に手術の失敗があったり異常児が出たりしても、それは外に漏れない仕掛けになっておるわけであります。だから、それが報告がないから体内受精がうまくいっておるというふうには私どもは必ずしも考えないのであります。
 それから、先ほどからるる私と民事局長との質疑応答をお聞きになったと思うのですが、婚姻を通してのみ生殖を公認するのがいまの日本の社会であります。それを根底から覆そうとしておると言っては少し過言でありますけれども、私どもとしては、医学の進歩、自然科学の進歩でこの社会の諸制度は一体どうなっていくのかという問題を、根本問題として提起しておるわけです。ですから、医学の上からは間違いがない、仮にそうだと言えても、日本社会は婚姻を通してのみ生殖を公認する社会、まあ一応そういうふうに原則を踏まえておる、血縁といい、民法の示すところといい、そういうことなのでありますから、そのことを医学の世界から崩していく結果になるということについて、厚生省は医学の立場だから間違いはない、問題はない、発展を阻止する必要はないと必ずしも言えないと思うのであります。
 それから第二番目は、いま指摘いたしましたように、生まれてくる子供の出生、養育、福祉、相続、そういう問題について現行法は予想していなかったので、それに対する対応能力を必ずしも持っていないと私は思うのであります。そういう倫理の世界と、生まれてくる子供の問題を医学の世界だけでとらえてはならないと思うのでありますから、厚生省は、体内受精にいたしましてもあるいは試験管ベビー問題にいたしましても、医学の世界だけでとらえることなしに、法務省を初め関係各省庁等の意見を聞いて検討を進めてもらいたいと思いますが、いかがですか。
#178
○福渡説明員 私どもは医学技術を基盤にいたしまして行政を進めていくようにしておりますが、技術的に問題がないからというだけでは、おっしゃるように素直にそれに取り組むということもできない面が多々あると思います。こういう点については、一番目の問題、二番目の問題、両方含めまして、関係省庁とも十分協議をしながら対応してまいりたい、このように思います。
#179
○横山委員 ホストマザーというものがあります。他人の卵子を自分の子宮に定着させる、自分の卵子と夫の精子で他人に産んでもらう。
    〔委員長退席、保岡委員長代理着席〕
いままで議論をいたしましたのは、少なくとも産みたいと思っておるお母さんが、夫が無能力者だから、他人の精子を自分の子宮に注入してもらって人工受精をするということなんですが、今度は別に、自分の卵子と夫の精子を第三者の女性に入れて、そして産んでもらうという可能性が試験管ベビーの発展過程にはある。またそういうあっせんをする。病院があっせんするのかどこがあっせんするのか、そういう可能性がこれから生じてくると思うのであります。このホストマザー、夫婦が相談して、自分のところではとても子供を育てる、産む段階ではない、共働きをしておるか、あるいはその他のいろいろな事情があって人に産んでもらうという場合の問題でありますが、これは大変架空な論議のようではありますが、しかし、マスコミがかなり取り上げた問題であります。その場合に、産んだ女が母親なのか、卵子を供給した女性が母親なのか、民法上は一体どちらですか。
#180
○香川政府委員 恐らく民法はそういうことは予定いたしておりませんので明文的には解決できない。解釈にゆだねることになろうかと思いますけれども、これは二説ございまして、卵子を提供した女性の子供だという説、それから分娩した女性の子供だという二説あるわけであります。いずれが正しいかということになるのですけれども、私は、ちょっとそこのところは、どちらが正しいか、ここで断定的に申し上げる能力がございませんが、しかし、民法で申し上げますと、母親と子供との母子関係というのは、分娩ということ、その事実に基づいて認定されておるわけであります。したがいまして、仮におっしゃるような事例があって、したがって、その子供の卵子は分娩した女性の卵子でないという客観的な事実のもとにおきましても、民法上は、一応分娩という事実によって、分娩した女性の子供だという扱いがされるわけであります。そのときに、いや本当の法律上の母子関係も卵子を提供した女性と子供との間にあるのだという説をとった場合にこれを覆すことになってくるわけでございますが、これはまさに推定規定の問題ではないわけでございまして、どちらの説をとるかということで事が決着つくわけであります。今日そういうことを論じた学説もまだございませんので、私どもとして、いずれの説が正しいか、今後そういう事態が生ずるとすれば、立法的に解決するかあるいは解釈によって解決するか、そこの決断を迫られることになるだろうというふうに考えております。
#181
○横山委員 あなたほどの学者でもわからぬ。それは両説あって自分も判断がつきかねるということなんですが、借り腹というか、夫婦で頼んで、あなた産んでくれないかということで、それじゃ産んであげましょうと、そんなことは実際問題あるのかどうかわかりませんが、あらゆる仮説について私は今後の体内受精や試験管ベビーの発展があり得ると思うものですから、そういうことまで発展をしていきますと、一方では、子供を産んでもらいたいといって頼んだ、主導権を持った、それを受諾した、つまり契約をしたということになれば、頼んだ方、つまり卵子を提供した方が母親ではないかという考え方、それから、それはそうであっても、自分が腹を痛めて産んだ子だというような争いというものは、必ずあり得ることだと思うのであります。
 先ほど休憩になりましたら、大臣が私にちょっと雑言を言っておられましたが、大臣はこういう話は初めてのようでありますから、そんなものは世の中にそうありゃせぬだろうと思ったら大間違いなんですよ。私どもお互いの周辺でも、子供のない家庭というのは必ずしも少なくない。結婚した夫婦の一割が子供がない、こういうことが日本の統計上出ておると言われております。アメリカではAID、体内受精で生まれた子供は十五万人と言われておる。日本ではまあ多くの例でありませんけれども、AIDで成功したから第二子、第三子もAIDで体内受精を希望するというのが大学の例にあるそうであります。そうだといたしますと、この体内受精の問題は決して看過することができない。それが潜在的に広がっており、そして潜在的に私どもの民法の規定する今日社会というものを少しずつ切り崩しておるということが感じられるわけであります。したがいまして、法務省は、試験管ベビーなりあるいは体内受精について決して検討を怠ってはならぬと思うのであります。
 そこで、大臣にまず第一にお伺いをいたしたいと思います。
 試験管ベビーは体内受精とは若干性格が異なるとは思います。異なる点は、やはり試験管ベビーというものがはるかに医学の驚くべき発展をして、そこから生ずる可能性、いろいろな意味の可能性を飛躍的に広くしたという意味があり、体内受精の問題は、私が指摘したような不安とかあるいは家庭の問題とか民法上の問題はあるにしても、いまの日本社会の中ではやや定着をしておる問題だという違いはあります。しかし、そのいずれも共通をいたしますのは、今日の婚姻、同居、同棲を通じて生殖をしていくという日本の風俗的な、常識的な家庭から一歩踏み出したものである。したがって、それだからこそ生命の尊厳というものを一体どう考えるのか、命というものは何なのか、命というものは、細菌と同じように培養し、つくり出して、それが発展していいものかどうかという根底的な問題と、それから、私が指摘いたしますような、それの禁止が仮にできないとしても、このまま放置されていいであろうか、このまま厚生省が、私どもは余り勉強しておりません、調整も指導も何もいたしておりませんというようなことでいいだろうか。また同時に、法務の世界では民法がそれによって崩されていく、そういう過程についてどう対処すればいいのか、さまざまな問題を提起しておるものと思いますが、法務大臣はどうお考えですか。
#182
○瀬戸山国務大臣 横山さんがいろんなことを深く研究されて敬意を表しておりますが、私ども試験管ベビーというのは試験管の中で受精をして、何かガラスびんの中で人間が大きくなっていくのかと思っておったら、そうでなかったということをこの間イギリスの例で知ったわけでございますが、慶応大学等の話もあり、そういうこともうわさでは聞いておりました。でありますから、そういう事態に対して法制的にどうあるべきかということは、私は率直に言ってまだ早いと思っております。
 このごろ科学であるとか技術であるとか非常に進歩しておりますが、いま生命論に触れられましたけれども、人間に限らず宇宙の中の生命というのは、これは全く宇宙のほんの一部にすぎない。その中で人間が一番進んだようなかっこうでいろいろなことをやっておりますが、いま科学であるとかあるいは技術であるとかとやっておりますのは、宇宙生成あるいは生命の発生、こういうものをどうなっておるんだということを解明する中で、いまのようなことが起こってきておると思います。まだまだ生命を人間みずからがつくるという段階に至っておらないようでありますが、そういう研究をすることは私は必ずしも人類のためにならないとは言いませんけれども、人間を含めて生命体というものは、いまも申し上げましたようにこれはまさに宇宙の大自然の原理の中で動いておる、こういうことに私は考えております。でありますから、これを率直に言って人間の浅知恵で解明することは結構でありますが、大自然の原理に従ってはぐくみ育てられておる生命体、特に人類の中で、化学反応とか分折とか、そういうことだけで進めていって一体人類の幸せになるであろうかということで、私は非常に疑問を持っておる。第一に今日公害というのは全部それから来ておる弊害であります。私から言うとサル知恵であります。
 それから、そういう分析あるいは総合の中で人類が最も非常な危険にさらされておるというのは、いわゆる原子爆弾、水素爆弾、そういうことを深く、哲学的にと大げさなことは言いませんけれども、そこまで考えて、この科学技術の研究開発の結果が人類にどういう事態を及ぼすかということを考えることが、私は本来の意味の科学であり技術であるという見解を持っておりますが、まだまだそこまで行っておらない。そこに今日の混乱が来ておる。いま試験管ベビー等のお話がありましたが、それも何かその道をいま進みつつあるんじゃないかという懸念を私は持っておる。でありますから、もしそういうことが人間社会に非常に裨益することである、人類の発展に――人類の発展というのは私は物質だけではないと思いますから、たとえばいま親子関係のお話等ありましたけれども、やはり愛情に基づく人類の発展ということが大自然の道であると私は考えております。試験管だけで分析して、こっちの卵とこっちの卵とくっつければ人間ができるのだ、それは科学的には考えられます。そういう構成になっておるようでありますが、二人で相談して、どこかの畑に持っていって種をまいてもらって、あなたのところで産んで育ててください、こういう世の中はどんなに索漠たる世の中になるだろうか。いま権利関係というお話がありましたが、それはそういうことがまさに人間社会で非常に好都合である、その方がいいんだという人類の間の合意があれば、そういう事態になれば、これを何らか交通整理する民法なりいろいろなことを研究しなければならぬと思いますが、私はむしろそういうことに進むことを人類自体がまず反省することが必要じゃないか、そういうことを考えておるのが現状でございまして、そういう際にどういう法体系をつくるかというところまでは、率直に言ってまだ考え及ばない、また考えようとは思わない、こういうことでございます。
#183
○横山委員 お説は私も同感なんであります。お説は同感なんだが、また大臣が御心配されておるように、社会はそういうふうに動いておる。試験管ベビーがロンドンで成功すればインドでもやってみる。そのうち日本の医学者がおれもひとつやってみよう、ロンドンやインドの成功例を一生懸命入手する。自分で研究してみる。研究してみれば、何かの機会にそれをやってみよう。しかも、それは父母がどうしても子供が欲しいという理由をもってやってみるという可能性は決してなしとしないのであります。私が問題提起しているのは、なるほど大臣と同じ意見だから、それならば法律をもってそういう医学の進歩を阻止しようというものではないけれども、人間の尊厳という意味において、それはならぬということを関所を設けなければ、これは自然の流れとして、好むと好まざるとにかかわらずそういうふうにいくと思う。しかのみならず、体内受精の方は医学としては定着しておると厚生省は言っておる。そして、自分の方は安心して大学に任しておると言わんばかりの雰囲気であります。私が、体内受精というものは秘密裏に行われるものであるから、どういう欠陥があり、どういう家庭問題が起こっておるかわからないよと警告しておるのですが、医学的立場から言えば安心できるという点できょうは帰っていきました。したがって、好むと好まざるとにかかわらず体内受精のやり方は進行しておって、これからも発展する可能性がある、それをどうするかという問題は、決して試験管ベビーと同一に論じられない、そしてさまざまな角度で問題を提起しましたように、日本の家族社会、婚姻を通じて生殖を公認する社会、そういうものをだんだん基礎を掘り崩していっておる、潜在的な要因はすでにわが国の社会にまかれておる、これがこれから何かの機会にさまざまな民法上の問題を提起することはまさに必然の問題である、そう私は言っておるわけであります。その点について民事局長の最後的な御意見を伺って、次の問題に移りたいと思います。
#184
○香川政府委員 私、そういう人工受精がいいかどうかここで申し上げる筋合いでもありませんけれども、そういう事象が横山委員お説のように相当数出てきたといたしましても、先ほど申しました民法七百七十二条の婚姻中の子供はその夫婦の子供であるという推定規定の知恵と申しますか、いろいろの事象を考えて、もちろんそのときには恐らく立法者は試験管ベビーのようなことは考えてなかったと思いますけれども、同様の関係というのはいろいろあるわけでございまして、そういうものも含めてああいった推定規定を設けておって、しかも一年間しかその否認の訴えを認めないという、そういった知恵と申しますか、そういうことはやはり民法の基本的な考え方としては大事にしていかなければならぬのじゃないか。
 さらにまた、先ほど申されました他人の腹を借りる場合にも、やはり分娩というふうなこと、つまり自分の腹を痛めて子供が育っていくという、そういうことも民法的には大事にすべきことではないか。単にその卵子がだれのものであるかというふうな生物学的なことを民法が是認するのはどうかというふうな疑念を持っておるわけでありまして、ただいろいろのそういった事象が多くなってまいりました場合に、その辺の全体としての調和と申しますか、そういったことを考えながら、やはり調和の中でもどうしてもこれだけは特別の立法によって何とかしなければならぬという事象も私は出てくるだろうと思うのであります。決してそういう時期が早く到来することは好まないわけではございますけれども、やはり検討はしておかなければならぬというふうには考えております。
#185
○横山委員 それでは時間の関係上、体内受精並びに試験管ベビーについてはこれで質問を終わりまして、次はサラ金の問題に移りたいと思います。
 もう本臨時国会におきましても、本会議を含めて各委員会におきましてサラ金の問題が取り上げられましたことは、私は積年これを主張してまいりました者として大変結構なことである。しかし、しばしば申しましたように、この問題についての政府の対応が余りにも緩慢であるために今日的な社会の混乱が起こっておる。カラスが鳴かぬ日はあってもサラ金の記事が新聞に載らないことはない。ところが、カラスがこのごろ余りおりませんものですからこのたとえが余りうまくいかないのですけれども、しかしいずれにしても政府が怠慢である。しかも、今日の状況をもっていたしましても六省庁の意見がそろっていないということが、いまや公然たる事実となってまいりました。そしてどっちかと言えば、それは向こうの省でやってもらいたい、それはこっちの省でやってもらいたい、おれの方は所管ではない、そうしてその問題の解決がいつかな小田原評定のように遷延されておるということは、私は全く遺憾千万だと思います。
 きょう具体的な問題について私は必ずしも提起はいたしませんけれども、しかし、いずれにしても緊急の問題であり、政府が、本会議で総理大臣から大蔵大臣に至りますまでが、次の国会において何らかの法案を提出したいと言ったのでありますが、それに伴う行政各省の意見がいまだもってまとまらない。大変私は残念至極というよりも憤りを覚えざるを得ないのであります。もちろんただ責任のかずけ合いということではなくして、意見が違うということも確かにあると思います。どこで意見が違うのか、そういう意見の違いを踏まえながら各省の共通点をぜひ探してもらいたい、私はそういう角度で質問をいたしたいと思います。
 まず、警察庁はこの間調査の結果を発表されました。この調査をずっと見ましていろいろ考えられることでありますが、要するにこの調査をした結果からいって、警察庁は許可制がいいと思うのか登録制がいいと思うのか、あるいは現状でいいと思うのか。
 それから第二番目に、暴力団の問題を非常に強く取り上げられているような気がいたします。かねてから暴力団とサラ金業との癒着は指摘をされておったわけでありますが、これほど多くの暴力団が参加しておるということはかなり衝撃を与えたことだと思うのであります。その暴力団の問題も含めて、警察庁としての実態調査の結果の希望点を言ってもらいたい。
#186
○佐野説明員 お答え申し上げます。
 実は私ども、サラ金の被害という面で、先般家出の関係ないしは自殺の関係に焦点を合わせまして調査したわけでございますが、しかし被害といいますと――もっとほかにもいろいろなアプローチの仕方はあろうかと思います。金額の問題とか金利の問題とか、そういう実態の問題もあろうかと思いますが、ちょっと専門的な素養もございませんものですから、日常警察的に取り扱っておる範囲で、特にいま言いました自殺の問題と家出の関係、そんなものからアプローチしてみました。
 その結果といいますか、皆様には公表申し上げてないのですが、いろいろな事例もあわせてとりまして、その事例などから申し上げますと、たとえば自殺しました、家出しました、ところがそれがどの程度の借金をしておって、どの程度の金利で契約しておったとか、そういった具体的な資料なり契約書というふうなものが残されておらないという場面がございましたので、そんな点から推察いたしますと、何らかの形で書面をお互いに交付するというふうなことにしておいていただければ後のフォローが非常にやりやすいのじゃないかという点は痛感してございます。
 それから、先ほどお尋ねの許可か登録かという問題になりますと、若干これは法律を書くときの整理の仕方の問題かなという気はいたします。もちろん、より徹底するという観点からすれば、それは許可の方がより深く人的な事由その他に対しての審査ができようかと思いますが、現在登録制という制度をとっておりましても、登録を受理しないというやり方もございますので、その点は純粋に警察的な面で取り締まりだけを徹底するという観点からすれば、それは許可の方がよろしいかと思いますが、しかし登録というふうな形であっても十分機能は果たし得るのじゃないかという感じはいたしております。
 それから、暴力団の経歴者が相当あるのじゃないかという問題、この問題につきましても、いまの登録なり許可というふうな形で、相手にそういった権能を与える際に人的な欠格事由というふうなものを十分審査できるような体系なり仕組みにしておけば、その問題もある程度はねつけることができる、あるいは開業後そういった内容がわかれば、それを排除するための行政処分あるいは行政監督、そういったものを相当明確に規定するということによって排除できるというふうな一応の考え方を持っております。
#187
○横山委員 自治省に伺いますが、私が考えますに、六省庁で比較的法律改正の義務を持っておりますのは他省庁であって、自治省ではない。しかしながら、自治省が一番この問題に日常接近をしておる府県を抱えておる。その日常接近をしておる実態というものを私もよく承知をしておるわけでありますが、県でも市でも、私どもは法律的に何の権限もございません、ただ指導をしてくれというわけで指導しておるだけです。予算もありません、人員も一人か二人です。こう言っております。今回仮に法律を改正いたしますと、その法律の実行責任を負うのは案外、自治省、府県だと思うのです。実際問題として、大蔵省は財務局、警察も、これが質屋みたいなことになれば、警察所管となれば別でありますが、そう希望を警察庁もしてないようでありますし、また各方面もそうは言っていないと思うのです。結局そうすると、自治省が、法律改正をいたしますと全面的な実施責任を事実上負わなければならぬ。現にまた、いま実際その世話もし、各県の庶民金融業協会と接触し、アウトサイダーにも接触しておるのは自治省だと思うのであります。そういう点ではあなたのところの意見というものはもっと明確にされなければならない。結局あなたのところでやらなければならぬのだから、あなたのところの意見というもの、実行責任というもの、実行性の担保というもの、そういうものが一番強力に浮き彫りにされなければならないわけだ。私は、長年この問題を扱っている人間といたしまして、法律はどんなに厳しくもできると思っております。法律はどんなに厳しくもできるけれども、この法律が厳しければ厳しいほど、実行性がない架空の問題に堕してしまう。そしていたずらに役所の責任を追及する。何やっているんだということにもなる。そういうことを考えますと、自治省が実行性を担保するためにはどうあればいいかという問題について意見を伺いたいと思う。
#188
○中村説明員 お答えを申し上げます。
 ただいま、法律上の形式的な体系はどうであるにしろ、現実にこの事務を処理をしておるのは都道府県であり、したがって今後法律の改正が行われるような場合には、都道府県の責任が一層ふえてくるのは必然であって、そういう関係から地方団体の指導あるいは財政面等を扱っておるという意味もあろうかと思いますけれども、そういった意味で自治省の責任が重いのではないかというお尋ねでございますが、私どもといたしましては、現在の貸金業の関係の法律体系が、主務大臣から都道府県知事に機関委任をされておるというかっこうになっておりまして、その基本的な体系が、新しい法律改正を仮に行うといたしました場合にどのようになるのか、あるいはその内容がどうなのかといったことによりまして、今後の都道府県の負うべき責任なり処理すべき事務なり、それに関連いたしましての自治省の責任、立場といったものが変わってまいろうかと思いますけれども、具体的な問題といたしまして、たとえば新しい法律改正に伴いまして、これに対応するだけの体制を整備する、その人員なり経費なり、どのようにするのかといったような点につきまして、私どもの方が実質上関与をするということは当然あり得ることというふうに考えております。
 したがいまして、私どもといたしましても、そういった観点から、この法律改正あるいは法律改正を含みます制度改善がどのように行われるにしろ、都道府県の立場なり意見というものが十分重視される必要がある、そういう観点に立ちましてこれまでいろいろと都道府県の感触もうかがってまいったわけでございますが、現在の段階におきまして、まだ具体的に政府の方の内容、方針が明らかにされておりませんので、都道府県自身といたしましても具体的に見解を確かにするというところまではいたしかねておる状況でございますが、やはりこれだけの問題でございますので、国、地方を挙げましてこの問題に対処するということになるならば、都道府県といたしましても応分の役割りは果たさざるを得ないという、その気持ちにはなっていただいておるものというふうに考えております。
 したがいまして、私どもといたしましても、そのような都道府県の立場を前提にいたしまして、今後具体的な内容を詰めるに当たりまして、できるだけ都道府県の意見が反映され、また都道府県に過重な負担がかからないような形での適切な案が整えられることを希望いたしておるわけでございますし、そういうことで努力をいたしてまいりたいというふうに存じております。
 なお、具体的な内容がはっきりいたしませんので、いまこの場で余り具体的なことを自治省の意見として申し上げるまでに至らないと思っておりますが、制度を改めます以上、十分実効のあるものであることが必要であると思いますが、しかし現実の貸金業にかかわりますいろいろな実態なり、あるいは先生御指摘もございましたような都道府県の現在の体制からいたしますと、ことに現在のような行財政の事情もございますので、果たして都道府県の力だけでどれだけ十分な対応措置がとれるのか、その辺のところは、実際問題として相当困難な問題を含んでおるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
 そういう意味合いから参りまして、やはり現実の状況というものも相当程度勘案をいたしながら、現実にできるだけ実効が上がるように、一面都道府県に過重な負担がかからないような形での内容案にまとめられたいものというふうに考えておるわけでございます。
#189
○横山委員 私の申し上げていることとちょっと角度が違うわけでありますが、私は、あなたが私の言うこともよくわかってのお答えだと思うのですけれども、他省がどんなことを言おうと、おれの方で実行せんならぬ、だから政府がお決めになることじゃなく、おれの方がこういう案だから、こういう案でやらしてもらいたい、それでなければ責任が持てない、こういう立場でないとだめですよと言っているんですよ。他省が言ってくれたものに多少のけちをつけて、こうしてもらいたい、ああしてもらいたいではだめですよ。あなたの方が実態には一番詳しいのだから、またその実行性を担保しなければならないのだから、その意味では、こうしてもらいたいという案をあなたの方自身が出さなければだめですよ、こう言っているんですから、その点をひとつ十分に踏まえてもらいたい。
 それから、その次は金利の問題なのです。大蔵省と主として法務省の間に意見が違うようであります。私はこう思うのです。先ほど、午前中に法務大臣がちょっと触れられたのでありますが、貸す方があるから借りる方があるのではなくて、借りる方があるから貸す方がある、両面あるというわけですが、いずれにしても、金利というものは今日の日本の資本主義社会における原則というものは、需要と供給の関係を抜きにして考えられない、これは一般論でありますけれども、そう思うのです。ですから一定の金利を決めるということが――出資法のような上限を決める、上限を決めて、その上限を外したものは監獄行きだというならそれはわかる。けれども、少なくとも実質上の標準金利あるいは何とかして下げていきたいという流動性金利、そういうものを決めるに当たっては、これはよほど実行性のあることを考えなければならぬ。その意味では、私は、出資法が大蔵省で、利息制限法が法務省の所管ということが実態に合っていないのじゃないかという気がするわけです。利息制限法では三段階ありますけれども、それを超えたものはみんな元金に繰り入れよう、だから簡易裁判所へ行けばいいんですよと、先ほど稲葉委員と民事局長のやりとりを聞いておりますと。そう言うあなたもじくじたる思いがしているような気がするわけです。だから利息制限法というものを実際に運用させるということは、法務省ではできないことだと私は思うんですね。利息制限法の趣旨を貫徹をさせるということになりますと、単に元金に繰り入れればいいという問題じゃない。あらゆる施策を総合してそこへ追い込むというような行政指導あるいは競争金利――労働金庫もやれ、相互銀行もやれ、信用組合もやれ、外国資本もどんどん入ってこい、つぶれるやつがおったってしょうがない、ずうっとそこへ追い込むというような総合的施策がなければ、利息制限法というものは有名無実だ。仮にその利息制限法をサラ金だけ少し上げるにしたところで、一体どのぐらいに上げるのだ、そんなことは法務省でお決めになれますか。少なくとも大蔵省なら金利の実勢というものあるいは行政指導というものもできると思うんですがね。そういう点で、金利の規制のありようというものについて、これは刑罰の問題だから、出資法なら法務省で担当すべきだ、利息制限法なら大蔵省で担当すべきだ、そういう実態論的感覚を持っておるわけでありますが、その点、私の考え方を含めて、金利についてどうしたらいいか、両省のお考えを聞きたい。
#190
○香川政府委員 現在利息制限法が法務省の所管になっておりますのは、これは戦前から、明治からのいきさつだけでございまして、お説のとおり私も、法務省として適正なといいますか、きょう午前中の質疑での言葉を使いますれば、貸金業者について考えれば営業の成り立つような金利はどういうものであるべきかというふうなこと、これも周辺の問題、いろいろ総合的に考えて結論を出すべき問題だろうと思うのであります。そういう意味から申しますと、率直に申し上げまして、利息制限法はなかなか私どもの手に負えない法律だというふうに考えております。
#191
○吉居説明員 現在貸金業の金利規制に関する法規は、先生御承知のとおり利息制限法と出資取締法があるわけでございまして、利息制限法の方はいわば民事上の無効の規定を決めているものでございます。そしてまた出資取締法の方は、いわば刑法上の観点から金利の最高限が決めてあるということでございます。利息制限法は法務省の所管の法律でありますし、それから出資取締法の金利に関する部分は、いわば金融政策という観点からでき上がっているというよりも、むしろ社会秩序あるいは公秩序というところから最高限をどうするかというところで決まっている金利でございまして、この部分は主として法務省の方で御所管いただいているところでございます。
 いずれにしましても、いま先生の御指摘のように、利息制限法を大蔵省の所管にしたらどうか、あるいは大蔵省で運用したらどうか、こういうような御質問のようでございますけれども、利息制限法は、単に金融機関だけではなくて一般市民間も含めた一般的な法規であると了解しております。したがいまして、金融機関サイドからのスタンスとは私ちょっと違うような気がいたしますので、私どもの方でこの法律を所管するのがいいかどうか、その点はちょっと疑問に思っております。
 なお、先生御指摘のように、サラ金も含めまして金利というものは一般論としては確かに資金の需給で決まってくるものでしょうけれども、いわゆる正規の金融機関における資金の需給というところで決まりますような金利とは若干違いまして、まさに必要やむを得ず個人が駆け込んでいって、しかも余りよく金利のこともわからない、そういう人たちとの間の金利でございます。したがいまして、言うならば本当の資金の実勢で決まるものなのか、あるいはその他の要因で決まるものなのか、なかなかむずかしい問題が実はあると思うのです。今般、大蔵省におきまして、関係各省の御協力も得まして貸金業者の実態調査を行ったわけでございます。その中でも金利の点についてアンケートを行っておりますけれども、まだまだ利息制限法をかなり超えた高いところに金利の実情があるようでございます。そういう点から考えますと、果たして資金の需給で決まるということから割り切れるようなものなのかどうか、その辺も私どもとしては若干疑問を持っている点でございます。
#192
○横山委員 出資法は刑罰に値するから法務省所管だ、利息制限法は金融だから大蔵省所管だと私は必ずしも簡単に言っているわけじゃないのであります。あなたも場違いの法務委員会へ出てこられて、いきなりこういう質問をぶつけられて弾力的な答弁ができないかもしれませんけれども。私も、あなたの言うようにこのサラ金の金利というものが純粋に一般の金利体系の中の需要と供給で決まるものではないということは百も承知をしておる。あなたは御存じだと思うのですが、それにもかかわらずあなたはまだ高い金利があると言っておるのですが、それはあります。けれども、ここ二、三年の内容を見ますと、少なくとも二、三年前は二十八銭です。出資法に全く膚接した二十八銭がサラ金の通常金利である。しかし、いまお調べになってもおわかりになるように、二十八銭のところもないではないけれども、実勢金利は大体二十五銭から二十銭内外に進んでおる。所によっては十三銭のところもある。十一銭のところも生じてきておる。ということは、一つは社会世論の反撃もある、それからサラ金内部における競争というものが自然に生じてきたという点もある、サラ金外部の労働金庫なり信用組合、信用金庫なり相互銀行が形だけであっても進出してきたという傾向もある、つまり、それが総合的に実勢金利を低くずっと持ち込んできておるということは、少なくとも争いの言えない事実だと思う。そして、いまサラ金業界は戦国時代に入っておると私は言っておるわけです。つぶれるものはつぶれる、私はそう見ています。そういう状況のもとでありますから、それが法律をもって行われたのでなくして、少なくとも政治力や行政力が相まってそこまで落ち込んできた。そしてまた、借りる方も警戒心を持つようになった。安い金利のところへ行くようになった。私のところは安いと宣伝するようになった。そういう動向というものはあなたも否定し去るわけではないでしょう。その動向はどこへ目標の焦点を合わせたらいいのか。現行法で言えば利息制限法であることは言うまでもありません、真ん中にないのですから。ただ、私がいま言おうとしておるのは、金利というものは二、三年にわたって非常に流動的に下がりつつある、下げさせつつある圧力というものが官民、マスコミを通じてずっと来ておるという流動的な情勢にある、それをもっと拍車をかけるのは一体どこだ、どこが役所として拍車を一番かけられるのか、それは大蔵省ではないのか、そういうことをあなたに言いたいわけであります。どうしてもっと実効性のある努力に動かないのか。なるほど利息制限法の運用はやはり一般の通常の金利体系の中に組み入れられないかもしれぬけれども、いまこのサラ金の中で一番問題になるのは高金利と取り立ての暴力ですね。二つに照準を合わせるとするならば、あなたの方は高金利に照準を合わせたところに責任を感じなければいかぬのではないか、その具体的なことが御説明できないようではいかぬではないか。私の言うのは、流動的に下がりつつある、下げさせなければならぬ、その下げさせる方策はいろいろあるではないか、そういうことを言っておるのですが、もう一遍答弁をしてください。
#193
○吉居説明員 ただいま先生からお話がありましたように、大蔵省といたしましてはこれまでのところ、たとえば去る九月には大蔵省から各都道府県知事あるいは全国庶民金融業協会に対しまして種々の公益性についての指導をお願いするようにしておるわけでございますが、また同時に、最近の消費者金融に対するいろいろな要請にこたえまして、大蔵省の監督しております正規の金融機関に対して大蔵省からそのような工夫をするようにかねてから要請しておりましたけれども、これまたその要請にこたえまして、最近金融機関におきましては簡易簡便に貸せるような新しいいわば応急ローンというようなものの開発も進んでいるところでございます。あるいはまた、先生御承知のように海外の資本による貸金業者というものも進出しております。そういうふうな種々の方策を通じまして、大蔵省としては大蔵省の手の届くところにおきまして、いわば消費者ローンというものに対してこれまで力を入れてきているわけです。そういうものがかなりいろいろ影響もして、いま御指摘のようにサラ金あるいは貸金業における金利の引き下げということにも若干力があずかっている面もあろうかと思います。
 ただ、貸金業者の金利をどうするかということにつきましては、私どもとしまして、先ほどから申しております理由によりまして、単純に資金の需給ということで通常の金融機関に対するのと同じような扱いができるのかどうか、このところは十分検討をしなければならない問題だと思っているわけでありますし、また、現在の利息制限法を前提にして私どもとしましてはさらにその遵守を徹底させるという指導をしているわけですけれども、それが果たして直ちにいまの利息制限法の枠内において、いまの貸金業者の自主性がないということから考えますと、その辺のところもいろいろむずかしい問題があろうか、こう思います。そういう意味で、いま申し上げたいことは、大蔵省としては大蔵省の枠内においては種々努力しておるということでお話し申し上げたいと思います。
#194
○横山委員 大蔵省に申し上げますが、とにかく総理大臣がうんと言って、大蔵大臣がまた本会議で答えて、そしていまあなたの消極的な御意見とは違って、政治の舞台ではもはや次の通常国会に提出しなければならぬのですよ。あなたの言っているようなことを言うと、総理大臣や大蔵大臣の答弁は一体何なんだということになりますよ。本件はここ数年来のことで、大蔵大臣が五十一年の春の予算委員会で私の質問に答えて、五十一年じゅうに法案か何かつくりますと言ったのがそもそもの始まりですよ。その中で大蔵省がそんなものはおれのところの所管ではないかのごとき態度で終始して、少しも積極性がなかったのが今日を招いている根本原因だと私は言いたいのです。あなたもここへ何回も出られているし、私とも懇談したことがあるけれども、本当にそんなことでは次の国会が思いやられると思いますよ。これはいまそれぞれ各省も御意見がおありになると思うのですけれども、どうしたって大蔵省が腹を据えて、ひとつまず試案を、自治省にはそう言ったのですけれども、試案を出して急速に作業を開始しなければ、いまのあなたの、現行法でもやれるところがあるじゃないかというようなことを言っておったのでは世間に笑われますよ。
 時間がございませんので、最後に希望意見だけ、本件について申し上げたいと思うのです。
 私の経験によりますと、少なくともいろいろな意見が出ておるけれども、法改正して規制を強めよ、行政規制を強めよという意見が圧倒的なんだと思うのです。しかし同時に、多くの人にいまでは知られているように、行政規制というもののほかに自主規制の方法というものが現行法の主軸になっておる。警察庁だって、あるいは大蔵省だってどこの省だって、調査をしようとしたら現在の全金連なり協会の手をかりる、あるいは業者の監督を指導するために現在の協会の手をかりなければ、実際問題としてはできないということは身にしみてお感じになっておると思うのであります。どんな法律をつくりましょうとも、この運用の実効性が上がるためには、今日の法律の基盤になっております全金連なり協会を足らざるところがあれば叱咤激励して、間違った点があればそれを矯正させて、そして自主規制と行政規制とが相またなければ法律の実効性は上がらないということは私のかねての持論でございますから、その点をひとつ十分、各省御協議なさるときには、この法律改正の一つの根幹だと考えていただいて、速やかに法律改正の準備をしていただきたいと思います。
 時間がございませんから、サラ金についてはこれで終わりますから関係者お帰りください。
 次に、時間が大変少なくなって恐縮ですが、少し委員長に御了承願いまして、金の問題について触れたいと思います。
 四月から金が自由化されました。それにによって金の輸入は毎月五トン前後で推移し、ほとんど変動はなかったが、昨年暮れから急にふえだして、ことし一月以降の通関ベースの輸入量は、二月、三月を除いて毎月十トン以上を記録し、ことし上期だけでも前年同期を七〇%も上回る六十四・二トン、金額では前年同期比二倍の六百二十七億円に達した、こう報道されているのです。このうち個人が資産の対象としてどれだけ保有したのかはっきりした統計はございませんが、工業用の金の需要というものは年々そう変わるものではございませんから、少なくとも個人買いがきわめてふえてきたということが立証されるわけだと思います。
 それにつきまして、最近多くのマスコミ並びに週刊誌等で金の市場における取引が課題となってまいりまして、サラ金と並んで、ネズミ講と並んで、金の取引による――金相場のブラックマーケットと言われておるわけでありますが、それによる被害が続出してまいりました。
 そこで、時間の関係上整理して申し上げますと、本件については、昨年の国会の委員会でも取り上げられたわけでありますが、通産省はこの金の取引市場、これは商品取引所法に該当しない、こういうことで、若干の調査はいたしましたものの放置をされておるというふうに私は伺いました。しかしながら、新聞紙上でもしばしば散見されますように、金による被害、それは各所に累積をしてきたような気がいたすわけであります。なぜ一体それが生じてきたのか。まず個人の買いが非常にふえてきたので、金を買えばもうかるという潜在的要因があり、取引市場の関係者が個人に向かって、家庭の主婦その他に向かって、金を買えばもうかるという誘発的行為を行って、それによって実は大変な損害を受けたというのが全国的に随所に出ておるのであります。
 そこで、まず警察にお伺いをいたしますが、警察庁として、金に関する問題が取り締まりの対象になった点はございましょうか。
#195
○佐野説明員 金の取引の実態なり詳細につきましては、私どもの方も実は十分掌握してございません。ただ、金取引をめぐりまして詐欺的な事案がまつわるというふうな場面もあろうかと思います。すでに北海道のある団体が市場形成して、そこでの取引をやるということで勧誘を行い、結果的には詐欺罪ということで現在公判中という事件が一件ございます。その他には、現在全国的に見てみますと、数県で若干詐欺罪の内偵なり捜査というふうなことをやっているやに聞いております。
#196
○横山委員 被害者の訴えを聞きますと、取引方法に問題がある。すなわち相場新聞が少ない、市場の相場表を送ってこない、実際に期日に金を持ってこない、認証書類が不十分である、キャンセルが明白にされない、必ずもうかると断定的な言い方をする、そして一年売買を行いがちである、こういう訴えが寄せられておるわけであります。私が調べましたところ、金の輸入量、金の国内における供給量と、市場七、八カ所で行っております取引の総量とに格段の差がある。仮に一つの市場で取引をしたのを月五トンくらい、こういうふうに推定をしておるわけでありますが、そうだとしたならば十二カ月で約七十トン、七ないし八の取引市場で総計いたしますと数百トンの金の売買が行われておる。ところが輸入数量は五十二年でもわずか六十トン、五十一年で七十五トン。そうだといたしますと、その違いというのは一体何だろう。取引所法においては八条の一に「何人も、先物取引をする商品市場に類似する施設を開設してはならない。」となっておる。通産省の言い分は、調べに行った、来てもらったけれども、約款を見ればそういう先物取引をしていない、こう言うのだからどうしようもないと言う。警察庁に上がってくるならば商品取引所法違反ということが上がってくるだろうけれども、まだそこまで警察庁も断定をしていないようだ、そうだとすれば私の方には限界がある、こういう言い分のようであります。この言い分だけにああそうですかと言っておりますと、これはとてもじゃないけれども金の被害はこれから続出する。私が先般夏に海外を旅行いたしましたが、海外旅行の中で店屋へ行きますと金の需要が非常に多い。しかも日本人が多いということを散見をいたしました。したがって、金の被害の今後の傾向というものはふえる。これからますますふえていく可能性がある。ブラックマーケットと週刊誌なり新聞が名づけておるのでありますが、果たして一体ブラックマーケットという言葉が適当であるかどうか、私は疑問を持つわけであります。つまり、憲法による職業として現物取引をしておるということであるならば、何もブラックというわけではない。現物取引か先物取引か、商品取引所法に違反しているのかいないのかは、実態を見なければ、実態を知らなければならないということは当然のことであります。しかも、金の需要がこれからどんどんふえてくるならば、金の取引が公正な立場において被害者のないような方法で行わなければならないのではないか。私の調査したところによりますと、いろいろな事例を挙げてもいいのですけれども、金の取引市場で働いておる仲買なりあるいはまたセールスは、商品取引所で脱落をした人たちが非常に多いのであります。何かいわくつきの人間を雇って、そして商品取引所で追われた、脱落をした人が、その商品取引所でうまい汁を吸った経験に基づいて、金はもうかりますよ、これから自由市場ですよ、四月からどんなに買ったっていいのですよ、どんなに持ってきたっていいのですよというやり方によって、現物取引でなくて実際は先物取引が行われている。その十倍になんなんとする数字の違いというのは、その取引の総量と供給の年間総量と比べるならば、これは当然それが行われていると言って過言ではないのではないか、そう考えるわけであります。通産省は本問題について非常に消極的であります。そしてこの間の説明は、当業者の意見――先般の委員会の記録にも出ておるのでありますが「関連業界のかかる合意が得られた上でその会員となり得る当業者のしかるべき筋から新規上場の要請があった場合には、その上場適格性を検討した上で、十分上場可能性についての判断をいたしたい、」これは去年の速記録であります。それを読んでいる。私に言わせたならば、こういう当業者がいま現在何かの方法で金の取引で利益を上げておる、うまい汁を吸っておる。そういう当業者が商品取引所へ上場することに原則として賛成するはずがないではないか、賛成するはずがない人間の言っていることを真に受けて、そちらからやってくれと言ったらやりましょう、そういうのは遁辞もはなはだしいではないか、もし本当に上場の必要性があるかどうかを検討するならば、これは警察庁から、法務省から、エネルギー庁から、大蔵省から、金に関係いたします役所の意見を全部、一遍調整して吸い上げたらどうだ、当業者ばかりでなくて、これらに関する学識経験者なりいろいろな人たちの意見を吸い上げて、それで判断するならいいけれども、当業者だけで、ああそうか、おまえらがいかぬというならそれなら上場せぬわいというのは、まことに通産省の姿勢が疑われる、こう思うのですが、いかがですか。
#197
○細川説明員 商品取引所法に基づきます商品取引と問題の金取引との関係でございますが、商品取引所法におきましては、先物取引といたしまして次のような明確な条件を付しておるわけでございます。第一に、将来の一定時期に売買の目的物となっている商品及びその対価を現に授受するように制約される取引、第二は、現に当該商品の転売または買い戻しができ、そのときは差金の授受によって決済することができる、こういう取引であるわけであります。したがいまして、商品取引所法に基づきます先物取引とはきわめて限定的な規定になっておることは、先生御承知のとおりでございます。当方が現在把握をしておるところによりますと、問題の金取引は差金決済を行わないというようなことを明文としてうたっておる場合が多いわけでございまして、われわれといたしましては、商品取引所法に言う先物取引というふうに断ずることはきわめてむずかしいというふうに考えておるわけでございます。
 続きまして、上場の問題についてどうかという御質問であったかと思いますが、商品取引所法は「商品の価格の形成及び売買その他の取引を公正にするとともに、商品の生産及び流通を円滑に」することを目的とするということを掲げておるわけでありますが、したがいまして、実際に当該商品の生産及び流通に携わる者、いわゆる当業者とでも言いましょうか、その判断が十分に尊重されるべきであるとわれわれは考えておるわけでございます。先生先ほどおっしゃいましたように、精錬業界あるいは商社、貴金属地金商といいますような三者から構成されます金問題研究会、これがしばらくの間検討いたしました結果は、尚早であるということでありますが、引き続き検討するということにもなっておりますので、その中におきまして学識経験者の意見を十分に聞くということがあればと期待をいたしておるわけでございます。
#198
○横山委員 時間がございませんから、警告だけしておきます。そういう消極的な態度で――上場することが適当であるか否かについては、私の意見のようにもっと広範に関係省庁あるいは民間の多くの人の意見を聞くべきだということが一つ。それから仮に上場しなくても、それならいま金の民間市場における被害は警察に任しておくということのようだ。そんな無責任なことはいけませんよ。警察の問題でなくて、行政指導の中で、金の被害者が現に存在をするのだから、存在するところにだれが一体どこの役所へ駆け込み訴えをしたらいいのかということになりますと、あなた方はみな警察に行けということらしい。通産省でも知らぬ、経済企画庁でも知らぬ、消費者保護をやってくれるセクションがどこにもない。そしてただ一人や二人を救済したのでは意味がない。私が言ったような温床がそこにあるのだから、その温床をされいにする。そして被害のないようにするためにどうあればいいかということがもっと積極的、前進的に考えられなければだめなんです。そういう苦言を呈しておきます。
 委員長にお願いをしておきたいと思うのですが、先ほど与野党で相談いたしまして、きょうは非常に時間が少なくて、私もちょっと超過して恐縮でございましたが、休会中に一回、先ほど委員長に委員会を開いていただくようにということをお願いしておきましたから、よろしくお願いいたします。
#199
○保岡委員長代理 また理事間で相談をして取り計らいたいと思います。
 沖本泰幸君。
#200
○沖本委員 私は、持ち時間いっぱいに犯罪被害者補償制度について御質問をしていきたいと思います。話はいろいろ前後するかわかりませんが、まとめて要領よくお答えいただきたいと思います。
 まず警察庁の方にお伺いしますが、最近暴力団の抗争事件が多くなりまして、ひどいのは浴場の中へ拳銃を撃ち込んで殺すとか、あるいは一般通行人の多い商店街の中で白昼堂々と殺人事件が起こってくる、こういうふうなことで一般市民を巻き添えにするようなところまでエスカレートしていると言っていいのかどうかという点にありますが、そのために治安当局としても取り締まりあるいは解明、いろいろな点に力を注いでいらっしゃるわけですけれども、そういう点に関しまして一番大事なことは、国民の治安なり生命財産を守るために一般国民は銃砲刀剣等は所持してはならない、こういうことになり、それにかわって国が責任を持って国民の生命財産を守る、こういう立場をとっておるわけであります。最近国民の中からしばしば批判が出ておるわけですけれども、暴力団の周辺を警察が取り巻いて保護に当たっておるということで、むしろ何か国民より暴力団の方が大切だというふうに見受けられるような状態が醸し出されてくる、そして国民が巻き添えを食うような危険性を多く伴ってきているというふうな内容がしばしば出ておるわけですけれども、こういうことに対して国民自体は自分を守るすべもないわけですから、こういうことでは検察当局なりあるいは警察に対して非常な不信状態というものが醸し出されてくるわけですけれども、こういう点について当局側ではどういう対策なりをお考えになっておるか、またこれから行おうとしていらっしゃるか。現在の暴力団のこういう実態というものの解明の仕方等、あるいは現在こういう拳銃等の凶器類が一体ふえておるのかふえていないのか、暴力団はどの程度こういうものを持つように至ったのかどうか、そういう点についても言及していただきたい、こう考えるわけです。お願いいたします。
#201
○宮脇説明員 昭和五十年の七月二十六日に、大阪の豊中市のジュテームというスナックで、山口組の者が松田組の者に三名殺され、一名重傷を負ったという事件が起きまして、以来今日までいわゆる大阪戦争は第三期に入った、そういうふうに言われておるわけでございます。すなわち、ジュテームの事件、五十年の七月。次は五十一年の十月の三日の大日本正義団吉田会長殺し。白昼電気商店街で、日曜日でございましたが、市民の中で発砲事件がありまして、吉田会長が殺された。今度はその報復行動として、ことしの七月十一日に大日本正義団の鳴海清なる者が山口組の田岡組長を狙撃した、そういう事件が発生し、さらにそういう中で、山口組からの報復行動がこれまで何件か続いておったということでございまして、このいわゆる大阪戦争と言われるものだけでも二十回くらいにわたる双方からのかち込みと申しますか、抗争、発砲を伴う抗争などがあったわけでございます。これによりまして一般市民にもけが人が出たりもいたしておるわけでございまして、御指摘のように、市民の中に、このような法を無視して秩序を破壊する暴力団に対する怒りの声が高まっておる、警察に対しても断固取り締まれという声が多数寄せられているところでございます。
 そこで、私どもといたしましては、この種事犯を防止するために、今回、この七月十一日の事件をめぐる大阪戦争に限って言いますれば、早速とった手といたしましては、一つは、七月の十一日事件発生、そして翌々日被疑者が鳴海であることがわかりまして、それから直ちに二カ月間にわたる拳銃捜査集中月間をいたしまして、五千八十余回に及ぶ先制ガサと申しますか先制的な捜索、差し押さえを関係の組に打ったわけでございます。拳銃の発見丁数は二百丁足らずではございましたけれども、かなり先制的な抑止効果があった。
 それからもう一つは、ただいま先生ちょっとお触れになりましたけれども、いわゆる張りつけ警戒というものでございまして、関連の組事務所あるいは組長の居宅に警察官を張りつけまして、そこで――これは誤解のないようにしていただきたいと思うのでございますけれども、この張りつけ警戒と申しますのは、ごらんいただければわかるわけでございますが、大変厳重な職務質問を行っております。出入りする暴力団に対しまして、ホールドアップをさせまして職務質問をして、どこの組のだれべえであるかということをチェックいたします。これによりまして遠くの友誼団体が来ておるとかいうことが判明しますと、これは暴力団情勢が非常に動いておるということが情報的に非常に価値高くわかるわけでございます。また、連中は外車に乗っておりますけれども、そのシートをはずして、トランクはもちろんでございまするが、検索を行って、拳銃などの発見に努めるということで、これは暴力団が動きをしようというのを抑止する効果が大変ございますので、私ども暴力団を守ってやるなんという気持ちは毛頭ないわけでございますが、これもさような意味で大変抑止効果が上がっておる。
 ちなみに数字を申し上げますと、本年は暴力団の対立抗争事件によります死者が十三名これまで出ております。昨年は六名でございましたので、昨年に比べますと倍以上ということになるわけでございますが、一昨年は同期で二十一名、一昨々年の五十年には、同じく同期で二十名ということでございまして、二十、二十一、六、十三というふうになっております。これだけ、田岡山口組の組長が射殺されそうになったということに対する報復行動を含めまして、おととし、さきおととしに比べて半分ぐらいだからいいと申し上げているわけではございませんけれども、かなり抑止効果があるというふうに考えております。
 しかしながら、なおかつ、間欠的にではございまするけれども、山口組からの報復行動が行われておるというようなことで、これを断ち切り、なおかつ、この際一気に山口組を追い込んでいくというようなことから、今月の十一日より当分の間山口組を中心とします集中取り締まりを行うことといたしまして、この十七日にも大阪で関係府県の二十六府県の刑事部長会議を催しましたが、平素のほぼ二倍程度の体制を組みまして、この際暴力団を壊滅に導いていこうということで努力をいたしておるわけでございます。
 それから、御指摘のございました拳銃でございまするけれども、昨年一年間で千三百五丁、警察としては発見、押収をいたしております。大変多い数でございまして、この拳銃の発見、押収につきましては、先生方の御努力にもよりまして国内でつくりますモデルガンなどからの改造拳銃、この数はだんだん減ってきておる、規制効果がかなり上がってきておるというふうに存じますが、残念ながら水際作戦と申しますか外国から入ってくる威力の強い真正拳銃につきましては、そのパーセンテージがむしろ上がってくるというような状況にございまして、現在中央レベルにおきましても、この種の問題を含めまして関係官庁にもいろいろ御協力をいただいて幅広い施策を講じておるわけでございますが、私ども警察といたしましては、何とかこの種事案を抑え込む、さらにその根源となっております暴力団を壊滅させる。暴力団の存在する限りはこの種の発砲事件などは必ず起きますので、暴力団そのものを壊滅させる努力をいたしたい。そして、そのためには、警察といたしましてもっともっと強力な取り締まりを行ってまいることはもとよりでございますが、それと同時に、ことしの警察白書でも指摘をしておるところでございますが、社会のごく一部ではございますが、暴力団を必要悪と見ましたり、あるいは暴力団、やくざ社会を容認するような風潮がございましたり、あるいは、そこまで積極的にまいりませんでもいろいろと不法なサービスに対する需要があったり、いろいろ暴力団にとって住みよい社会の場があるということは、これは暴力団壊滅に警察が幾ら取り締まりを行いましても、そういう場がある限りは壊滅はしがたいということから、社会からの孤立化作戦ということで、警察力による直接制圧とあわせて二本柱としてこれを推進しているというようなことでございます。
#202
○沖本委員 きょう私がお尋ねしているのは、暴力団関係だけではないわけで、その一部ということになるわけです。ヘリコプターをつくって飛ばすことがばれた西成に私は住んでいるわけで、ぎょっとしたわけですけれども、こういうことがあること自体が社会に大きな不安を与えますし、また、防弾チョッキを着、ヘルメットも鉄製のヘルメットをかぶって、盾をつくって道路を車で遮断して、こういうこと自体が社会的には異様なんですね。善良な市民が自由に通行できるところを遮断されて異様な形の社会情勢ができ上がっているということ自体、社会不安をつくりあげていくということになるわけです。見ておってもいつまで続くんだろうということにもなりますし、また、そういうことに治安当局の人員を削り取られて、そのほかに十分国内のいろんな問題に使える人たちを、手をとられてしまうということ自体もやはり一つの社会不安であるという点も考えられるわけです。
 そういうことですから、いま課長さんのお話ですと、受け入れるような社会も一部にはあるんだというお答えもありますけれども、やはり市民や国民が協力しやすいような、また協力ができるような内容にも持っていっていただいて、そして一日も早くこういう不安を除いていただくということが大事な問題だと思うわけです。こういう点について法務当局の方はどういうふうな姿勢でお臨みになっていらっしゃるか、ついでにお伺いしておきたいと思います。
#203
○佐藤説明員 お答え申し上げます。
 ただいま暴力団の実態につきましては警察庁当局から御披露のあったとおりでありまして、検察当局といたしましても容易ならぬ問題であるという深い認識を持ちましてこの種事犯の捜査処理に対応しておるところでありますけれども、要は暴力団員に対して厳正な科刑をいかにして実現するかということに尽きるものであろうかと考えておりまして、その面の対策を十分に関係当局等とも打ち合わせ、連絡の上対応してまいりたいということでございます。
#204
○沖本委員 このほかに、やっぱり犯罪被害者補償の制度をつくる端緒になったいわゆる三菱重工の爆破事件、大きな事件があったわけですけれども、その後も過激派の動きというものはおさまっているのかふえているのか、またこれから事件がエキサイトして起こってくるのかわからないことになるわけで、ハイジャックもいまのところはおさまっておるけれども、ハイジャックの心配もいろいろあるということになるわけで、最近とみに大きい社会不安というものがあるわけですね。そうすると、平和国家という基盤というものがいろんな形の中で不安を醸し出してきて、平和でない世の中というものが出てくると、日本の国というものは余り平和なところじゃないのだというふうな印象が出てくると思うわけですけれども、そういう点について最近の過激派の動きなり過激派に対する取り締まりなり、そういうものについて何か資料をお持ちでございましたら御発表願いたいと思います。
#205
○福井説明員 極左暴力集団のまず組織実態でございますが、三万五千という数字でここ数年、四十九年以来横ばいでございます。組織的にはこの傾向が今後も続くと見ております。しかしながら、行動面では、爆弾とか火炎びんを使いましてテロ、ゲリラを敢行するなり、あるいは内ゲバ、日本赤軍の関係者を含めての国内外における動向について警戒を要する、こういうふうに見ております。
 一般の方が被害にかかる可能性の最も大きい爆弾事件について少し触れさせていただきます。
 四十四年以来爆弾事件は百九十九件発生しておりますが、そのうち百九件が実際に破裂した事件でございますけれども、その中には五件の死亡者の出た事件が含まれております。
 最初のものが四十六年の十二月十八日の警視庁警務部長宅の爆破事件でございますが、御家族一名即死、当時十三歳の少年が全身に重傷を負う、こういう事案でございます。
 次が、四十九年の八月三十日の、委員御指摘の、ちょうど昼休みどきでございますが、零時四十五分ごろに千代田区丸の内二丁目の三菱重工前でペールかんに塩素酸塩系の爆薬を詰めた大型爆弾を爆発させた事件でございますが、八人が死亡して三百八十人が負傷しておりますけれども、負傷者の中の一人、中野区の白鷺に住んでおられる六十九歳の方は頭と右の胸部に負傷をされて、いまだに自宅療養中でございます。もう一人勤務の傍ら通院加療中の被害者がございます。
 次に起こりましたのが、五十年の九月四日の深夜でございますけれども、横須賀の不入斗の緑荘アパートの一〇二号室で手製の消火器爆弾を操作中に過って爆発させたという事件でございますが、犯人ら三人と爆発現場の真上に就寝中の主婦一人と幼女一人、五人が死亡して、重傷者四人を含む八人の負傷者が出ておりますが、幸いこの八人の方は現在では治療は終わっておるというふうに聞いております。
 それからその次が、同じ年の九月十五日に都内北区赤羽の自衛隊の補給処裏の路上で犯人らが乗っておった車の中で鉄パイプ爆弾が爆発した事案でございますが、犯人のうち一名が死亡、一名が重傷という事案でございます。
 その次が、五十一年三月二日のちょうど朝の出勤時でございますが、九時二分に札幌市中央区北三条西六丁目道庁の本庁ビルの一階のロビーで時限式の消化器爆弾が爆発しまして、二人が死亡、九十五人が負傷という事案でございます。この負傷者のうち、当時道庁の農務部に勤めておった方が、両鼓膜が破裂という負傷でずっと自宅療養で治らないままことしの三月末で退職されて、いまだに自宅療養中というふうに聞いております。そのほかにも勤務の傍ら四人の方が通院加療中、右足を切断をしたり、大腿骨折とか鼓膜の損傷といった事案でございますが、それから治療は終わったけれども、右前腕を切断をしたりあるいは難聴といったかなり著しい後遺症が残っている方が十人を超える方がおられる、こういうことを把握しております。
 それから内ゲバでございますが、これはことし二十六件発生しておりますし、去年年間四十一件発生しておりますが、幸いことしと去年じゅうの間には一般の方が巻き込まれて負傷したという事案は発生しておりません。しかし、これも四十九年の二月には、琉球大学で受講中の学生が、相手がねらっておった対象と誤認をされて鉄パイプで襲撃をされて死亡するという事案が起こっておりますけれども、そのほかにも、活動家の友人と一緒におって巻き添えを食ったとか、逃げる学生らに突き飛ばされて負傷したといった事案が二、三年前までは年間数件とか二、三十件ございました。
 以上でございます。
#206
○沖本委員 細かく御説明があって、私たちの記憶の中にあるものをほとんどおっしゃったわけですけれども、さらに過激派の内ゲバ等はこれからもしばしばあるし、いつどこで何が起こるかわからぬというふうなこと自体、国民に社会不安を起こすもとになるわけです。昨日は昨日で辛裕子さん殺しの犯人がつかまったということになるわけですけれども、社会不安の情勢の中から類似事件的なものを誘発していくようなものも考えなければならない。こういうことになりますと、こういうことに対する治安当局の態勢なり態度なりというようなものも十分見直していただかないと後手後手に回ってしまうということにもなっていくのじゃないかと思うわけでございます。
 さらに、いわれなき犯罪ということになりますから、責任無能力者による犯罪は、これは未然に防がなければならないわけですけれども、こういう人たちによって起こってくる問題というものは大変なものを抱え込んでくるということになるわけです。いろんな問題を過去から追っていくと、ずいぶんだくさんの人たちが殺されっ放し、やられっ放しで現在を迎えておるということになってくるわけで、世間を驚かす大きな事件が起こったので被害者の方も救わなければならない、こういうことになるわけですけれども、同時にこういうことも言えるわけです。事件を起こして、本人に精神的な十分な能力がないということから、罪に余り問われないというのがたくさんあるわけですね。
 法務省の総合研究所の資料報告、実態調査でいくと、損害について補償してもらったかどうかという点については、傷害事件で三六・四%、死亡事件で二九・三%が約束ができている。
    〔保岡委員長代理退席、稲葉(誠)委員長代理着席〕約束ができていない傷害事件、死亡事件というのは、傷害事件が五九・七%、死亡事件が六一・八%。損害補償受領の約束ができていないものが六割を占めている、こういうことになるわけです。ですから、損害賠償金の点について、加害者またはその遺族等から損害賠償の受領約束ができていて受領したものが、傷害事件で八九・三%、死亡事件で九一・七%となっているが、損害賠償の約束が全体の約四割なので、結果的には全体の三割しかできていない、こういうことになってくるわけです。
 損害賠償受領金額を見てみても、満足できたものではないわけで、三十万円以下のものが五六%、死亡事件では五十万円を超えるものが六三・七%、百万円以下のものが六六・七%。ですから、交通事故なんかの損害賠償金から見ると、はるかに低いということが言えるわけでございます。
 そういうことで、同じように言えることは、能力のないという点では精神障害者の犯罪ということも十分考えられるわけです。昭和五十一年における成人の刑法犯の検挙人員のうち、精神障害者またはその疑いがあると認められた者の数は、検挙の人員総数が二十四万三千七百三十二人中二千百八十三人で、全体の〇・九%を占めている。また、法務省の資料で見ると、昭和四十六年から五十一年までの六年間に全国の地方(区)検察庁で処理された事件及びそれに対応する裁判所で判決があった事件で、心神喪失により不起訴もしくは無罪となり、または心神耗弱により刑の減刑を受けた者は二千九百四十八人。
    〔稲葉(誠)委員長代理退席、保岡委員長代理着席〕
罪名別では殺人が最も多く、放火、傷害、暴行の順番になっておるわけです。ここで、心神喪失あるいは心神耗弱によって不起訴、無罪、減刑を受けた二千九百四十八人の中で、大事なことは再犯者は千二百四十九人という数になるわけです。罪名を分けてみると、窃盗をトップに傷害、放火、殺人、強姦、強制わいせつ等を繰り返しておるということになるわけです。
 そこで、精神異常者というものの犯罪も、やはりこの犯罪被害者補償制度の中からいろいろ考えてみなければならぬということになってきますので、警察と厚生省の両方にお聞きしたいわけですけれども、精神異常者で病院に入る、入る手続は、周囲の人たちなり家族の生命等に危険を及ぼすような場合は周辺の人の申告なり家族の申告によって入院するという経過をたどって病院に入るわけですけれども、そこで復帰可能な人は一たん家へ帰される、それからまたおかしくなると病院へ入っていくということの繰り返し、その繰り返しの中で事件を起こして全然関係のない人たちに被害を及ぼしているということが、新聞等を読むと多く見受けられるわけです。最近は精神病院というものが充実してきておるのか、そういう精神病患者の、重症者は別にしまして、軽症の人たちの出入りとかあるいは犯罪にかかわるような問題の人たちの関係とか、そういうものについての現在の状況なり把握なり、そういうものについてどういうふうな状況になっているか御説明願いたいと思うのです。
#207
○目黒説明員 お答えいたします。
 現在の時点では精神病床を有する精神病院は全国に千四百七十六施設ございます。入院患者が二十九万五千五百十四名、そのうちいま委員御指摘の精神衛生法による強制的な措置入院の患者が五万七千八百四十六人いるわけでございます。犯罪性のある精神障害者については、精神衛生法に基づく強制的な措置入院ということで医療、保護を行っておるわけでございます。しかしながら、精神病院の中におきましては特に犯罪性の精神障害者だけを特別に扱うということではなく、一般に精神衛生法に基づく措置入院の対象として取り扱っているわけでございます。したがいまして、その医療、保護は、病院長の専門的な判断に基づきまして、他の精神衛生法に基づきます措置患者と同じように病状の程度に応じて行われているものであります。したがいまして、犯罪性の精神障害者に対して、犯罪の程度とかあるいは種類によって特に治療の方法あるいは処遇の方法を変えるというふうなことは行っていないわけでございます。
 なおまた、退院いたしました後は、他の精神障害者と同じく保健所あるいは各県にございます精神衛生センター等におきまして訪問指導等を行っております。いわゆる社会復帰の促進を行っているわけでございます。
#208
○沖本委員 そこで、私たちは新聞の記事からしか知る機会は少ないわけですけれども、大体病院から帰ってきた人が突然周囲の人を殺したり、あるいはこの間尼崎では自分の子供を手足を縛って池へほうり込む、こういうことであるとか、あるいは家の中にある刃物を持って周囲の人を切りつけてしまう、後でお読みいたしますけれども、あるいは会社から残業をやって帰ってくる人を家から持ち出した銃を乱射して何人も殺してしまうとか、それからもう一つは、警笛を鳴らしたために、それが頭へきていきなり殺したというふうに、アル中とか麻薬とか覚せい剤とか、こういうものの弊害によって事件を起こしているということがあるわけです。そこで、こういうケースについては厚生省の方ではどういうふうなとらえ方をしていらっしゃるか。
 まず第一に、これは警察の方になると思うので、後でお答えいただければいいわけですけれども、いわゆる銃砲刀剣類は、たとえば猟銃はいわゆる必要な手続さえ踏めば、要件さえ整えれば自由に所持することはできるわけです。そうすると、ふだん精神状態のよかった状態で銃を所持しておる、その人が精神異常者になったということによって、また治って帰ってきて何かの拍子に突発的に発作が起こって撃つ、こういうことになると、善良な市民の皆さんは、自分の周囲に絶えず危険を抱え込んでいるということになるわけですから、こういうものも何かの形で十分チェックして、そういうことが起こらないように未然に防いでいかなければならないということが必要だということになるわけですけれども、その点についてまず厚生省の方からお答えいただきたいと思います。
#209
○目黒説明員 ただいまの件につきましては、私どもの方では特段のことをいたしておりません。常識的に申しますと、家族のある者については主治医がそのような危険なことのないようにするというふうな十分な指導は退院時には当然いたしておりますけれども、制度上格別のことはいたしておりません。
#210
○沖本委員 じゃ、警察の方……。
#211
○佐野説明員 精神障害者に関するわが方の取り組みと申しますか関係の仕方でございますが、一つには、精神衛生法第二十四条に基づく通報というものがございます。と申しますのは、例の自傷他害の疑いのある者につきまして警察官が日常発見した場合には、これをしかるべき機関に通報するという形になっておりますので、この連絡を密にいたしております。ちなみに数字を申し上げてみますと、昭和五十二年中の通報者の数は四千七百九十八名発見いたして、関係の向きに御連絡申し上げております。
 それから、あとこの種の者に対する警察のかかわり方でございますが、一つには自動車などの運転免許を与える際、あるいは銃砲の許可あるいはそれの更新をやる、そういった許認可の段階で法律上その欠格事由を一応整備いたしてございます。したがいまして、銃砲の場合で申し上げますと、医師の診断書、そういったものも一応添付させることにはしてございます。ただ医師の判断もなかなか微妙な問題があろうかと思いますので、従来の例で言いまして、疑いがありというふうな診断書はもちろん出てきていない。あるいはそういったものを持って許可申請には参ってきておりませんものですから、銃砲許可の上では窓口の段階で不許可にしたというものはございません。ただ、持っている間にいろいろ異常な現象その他がございまして許可を取り消すというふうな場面はございます。たとえば、精神病の疑いがありというふうなことで銃砲の許可を取り消している例では昭和五十二年中は六件ございます。その前の昭和五十一年では四件というふうな数字がございます。
 それから、さらにこういった者に対処する方策でございますが、一般的には覚せい剤の施用者、これが心身耗弱とか精神異常というふうな面に非常につながってまいりますので、警察といたしましては、覚せい剤の取り締まりの徹底という問題、あるいはそのためには最近は交通取り締まりの際におきましても覚せい剤担当者と一緒になって交通取り締まりに当たるというふうな着意も府県では行われておるようでございます。
 そんな対策が現在行われておりますが、いずれにいたしましても、最終的にはわが方から発見し、通報された、先ほど申しました五千人とか、そういった数字の人たちが、何がしかの医療機関なり適切な医療といいますか、そういった機会が与えられれば、この問題に関しては所期の目的が十分達せられるのではないかというふうなことを期待しております。
#212
○沖本委員 いま伺っていると、何か厚生省なり警察なり、あるいは出先機関との、あるいは国民一般とのつながりが切れているみたいなことで、それぞれ独自の立場で仕事に携わっているというふうに考えられるわけです。たとえて言うなら麻薬患者あるいは覚せい剤、そういうものが最近増加しているかどうかという点も一つ伺いたいのですけれども、同時にそういう問題についての厚生省と警察当局との十分な話し合い、あるいは現状なり将来に向かって未然に防いでいく、なくしていく、あるいは数を減らしていくために何らかの努力が払われているかどうかという点はどうなんでしょうか。
#213
○目黒説明員 先生御指摘のこの問題の対策につきましては、いろいろ困難な問題、人権等の問題がございまして非常にむずかしいのでございますが、当然、警察庁を初め関係省庁と十分にこの対策を連絡、協議等いたしてまいりたいと考えております。
#214
○沖本委員 これは後からつけ足しみたいなお答えのように聞こえたのですけれども、麻薬とか覚せい剤とかそういうものが最近の暴力団の資金源になっておる、そういうものを新聞紙上で見ることがふえているんじゃないだろうか。そういうふうな暴力団の悪によって国民全体がだんだん毒されていて、そういうことによってこういういわれなき事件が起こってくる下地をつくっていくんじゃないかという心配があるのですね。それもやはり社会不安であるということも言えるわけですし、先ほど精神衛生課長さんがお述べになったとおり、人権の問題なり社会の問題なりいろいろな問題で非常につかみにくい、徹底しにくい問題は当然あるとは思いますけれども、一つ一つその芽をつんでいく、そういうことの積み重ねや、じみなことをずっと繰り返していくこと以外に未然の防ぎ方はあり得ないわけです。
 ですから、頂点は暴力団の拳銃なり凶器なりそういうものであり、あるいはまた精神異常者からそういう事件が起こってこないかどうかという点であり、またメンツということから自分の家の中にそういう患者がいても社会に知らせないとかいう問題等ありますが、これから先に対して、お互いに社会をよくしていくために一般国民自体が社会生活上の協力をし合っていく、そしてよりよい社会をつくっていくために協力を求めていくという事柄に向かって、政府機関なり治安当局がそれぞれ孤立するようなことのないところへ道を進めていただく、それをより多くPRしていただく、またいろいろな実態を国民に知らせていただき協力しやすいような場をつくり上げていただく以外に国民は協力のしようもないわけで、新聞に出てきた事件にまゆをひそめて恐れおののいて身を縮めるということであってはならないと思うわけであります。そういう点を十分お考えいただきたいと思うのです。
 それで、あとは法案の方にかかっていきたいと思うのですが、まず大臣に聞いていただきたいのです。「犯罪による被害者補償制度を促進する会」というのがありまして、一番最初の会長さんは市瀬朝一さんとおっしゃるのですが、当委員会へ出てこの法律について被害者の立場からいろいろ御意見をお述べになったこともあるわけです。その方が亡くなられて、奥さんがその志を継いで運動を引き続きずっとやっておられるわけですけれども、その会がまとめた一つの本があるわけです。この本を少し読んでみたいと思います。「“あと二年生かして”」という題です。
  初老の一人の男が、病室のベッドの上で、見えぬ眼を瞠(みひら)き主治医の顔を凝視しつつ、必死に訴え、主治医の腕を握りしめた。
  「先生、もう二年間だけ生きさせて下さい。二年だけで結構ですから。まだ私は死ねんのです……」
  主治医は職業柄、患者の生への願望や期待の言葉は臨終の前に何度も聞いてきたが、この男の叫びには、単に生の延長を奪取する気迫のみならず、“何か”に責めたてられてでもいる“執念の炎”が、音をたてて燃えているものを感じとった。家人を通じて「二年間のわけ」を知った主治医が、全霊込め施療の限りを尽したが、病はついに癒えず、男は六十六歳の生涯を閉じた。枕元には、瞑目した眦を伝って一筋の涙が、糸をひいたように白く流れていた。それは志半ばにして倒れた、死んでも死にきれない“無念の涙”のようであった。
  市瀬朝一さん〈犯罪による被害者補償制度を促進する会会長〉は、十一年前、通り魔少年に最愛の息子を刺殺されるという悲運に見舞われ、以来十年余、いわゆる“いわれなき犯罪被害者”に国は救済の道を開き、補償の制度化を確立せよ、と訴え続けてきた人である。
  その戦いは文字通り「一人立つ」実践から開始され、全国の同様の苦しみや泣き寝入りのままあえいでいる被害者・遺族を一軒一軒訪ね、激励し連帯を呼びかける“糾合行脚”の連続であった。
  「しっかりした組織にせねば、国は相手にしてくれん」――これが生れてこの方、鉄工職人を仕事で使う以外に、他人と目的を持って徒党を組む政治行動などと全く無縁であった市瀬会長が、国という“怪物”を相手にして初めて痛切に思い知らされた、冷厳にして、したたかな実感と叩き声だった。
  だが“怪物”はとてつもなく大きすぎた。手をたずさえあって進むべき同志は、全国にわたり予想外に多かったが、そのほとんどが一家の働き手を失い、妻を奪われ、我が子を亡くした悲惨な家庭ばかりであった。被害状況はそれぞれ違っていても、事件以来、経済的困窮に陥ったり、社会参加をかたくなに拒む“閉ざされた生活”を送るのみで、市瀬会長の提唱に呼応し、運動の担い手としてお互いの心を固く結び合うには、相当の時間を必要とする極めて困難な戦いであった。
  市瀬会長は、北は北海道、東北、南は九州、四国にいたるまで、被害者やその遺族家庭を訪問し、自己の悲惨な体験を語り、被害者補償の立法化が必要だと説き、そして同じ境遇の者同士スクラムを組もうと訴えたのだが、その説得行脚中、時に“売名行為”とか“よけいなお世話”などという非難、中傷を何度となく浴びせられたりした。
  その度に「何故、理解してくれないのだろう。自分のしていることはいけないことなのか」そんな自問自答を繰り返しながら、最後には「何故、俺はこんなことに汗を流し、かかわっていかねばならないのか……」という絶望と挫折に陥りかけた。
  だが、そんな時、絶えず市瀬会長の耳元で失いかけた闘魂と執念とを呼び覚ましたのは、子息が臨終の際に言い残した「親父、くやしい、仇を討ってくれ!」という悲愴にして凄絶な遺言であった。
  「負けてはならない、息子の遺志を果すまでは」という決意が蘇えった。そして仇を討つとは、ただ犯人への復讐を遂げるだけでなく、こんな犯罪を生み出す社会そのものを改革するため、同遇の人たちと連繋して、国を動かすことであると結論づけたのは、誰でもない、自分自身ではなかったのかと、運動を始めた初心に帰り、くじけそうになるたびに、初一念貫徹への奮起を新たにし、熾烈な戦いに再スタートしたのである。
  このための費用は、すべて自分の財産を処分して資金に充てた。
  こうした曲折の末、ついに四十二年六月、『殺人犯罪の撲滅を推進する遺族会』を結成、会員百二十名にこぎつけた。その後、同会による殺人犯罪の撲滅と被害者補償を要請する国会請願のため、署名運動が活発に展開され、翌年十二月には、その署名が二万八千九百人に上り、初めて国会請願を果した。
  会活動としては会員相互の激励、意見交換などが行なわれたが、被害状況、補償要求内容の相違などから被害者遺族が、単純に連帯して団結することは最初から困難であった。しかし、会活動が次第にマスコミの取材意欲をそそり、遂に四十九年の過激派による三菱重工爆破事件など一連の企業爆破事件の発生により、無差別テロの犠牲者に国が補償する方法はないものかとの論議が、にわかに世論として高まってから、同会の存在もようやく多くの人に知られるところとなった。
  やがて国会でも野党各党がこの問題を取り上げ、時の法相が「犯罪による被害者に国の補償がないのは文明国の恥である」との見解を発表してから、早急な立法化の検討を約させる趨勢となった。
  この間、市瀬会長も、参考人として意見を陳述、声を限りに実現の必要性を訴えた。
  そして五十二年一月十九日、法務省の予算折衝で、立法化のための調査費四百十五万五千円(法務省関係三百二十六万円、警察庁関係八十九万五千円)が復活計上された。だが、この三日前、市瀬会長はこの”ささやかな朗報”を知ることなく、ついに不帰の人となった。
  たった一人から始めた、ほんの小さな市民運動が、ようやく大きな世論に支えられて実を結ぼうとしている時、そして市民運動が民衆参加の姿で国を動かし、新しい法律を作るに至らしめるという”前代未聞”の、いわば民主主義の原点ともいえる人間の誠意ある行動の結果が成就しょうとしている時、この運動の草創であるリーダーは無限の遺恨をそのままにして逝ってしまった。
  市瀬会長が「二年間だけ生きさせてくれ」と叫んだのも、実は極めて近い将来に、立法化のメドがようやくにしてつくと期待し、その施行の日を心から待ち望んだからに他ならなかったのである。
  志半ばにして倒れた会長の遺志は、残された者へ引継がれ、人権尊重の欠落部分を補うという崇高な目的は、何が何でも実現させねばならない、というのが遺された同志の烈々たる闘魂である。
こういうふうなことで、あとずっと続いておるわけですが、あとは省略させていただきます。
 この間、この人たちの会があったわけですけれども、これは九日でございます。そのときに被害の訴えをなさった方の内容も少し申し上げておきたいと思います。
 大阪府の中村京一さんという方です。
  私は四年前、当時二十六歳であった妻を十八歳の少年に刺し殺されました。場所は鳥取です。今は当時二歳であった子供のために大阪の方に住んでいます。なんの罪もない妻がどんな思いで死んでいったかと思うとあまりにもあわれで、私は気が狂ったように犯人を憎み復しゅうの気持ちでいっぱいでした。
  犯人は少年鑑別所を出たり、入ったりで、保護監察のときにこのような罪を犯したのです。その結果は刑務所行きですが、そしてまたでてくるのです。
あとは飛ばします。
  私たちには罪はないのです。私は再婚する気にはなれません。思い起こせば当時、二歳の子供を取り合いするほどの親バカでした。その子供も今は姉夫婦の世話になっております。というのも、亡き妻の通夜のとき、夜中に子供の泣き声で私が、子供のオシメを取り替えていたのを、義兄がそっと見ていたのです。そのとき「私が面倒をみる」といってくれたからです。私は子供と別れるのは辛いが、今なら、子供が小さいので姉夫婦を両親と思うことができると思い、姉夫婦に託しました。
ということで、この方もこういう経過をたどりながらいろいろ訴えておられるわけです。
 それから、もう一人大阪の上月永子さんという中学生の女の子ですが、
  昭和四十八年、残業を終えて帰ってきた父が、家の前で、知らない男の人に猟銃で射たれ、殺されたのです。
ということです。この子が最後におっしゃっていることは、
  私は、私の家庭をメチャクチャにした犯人が殺してやりたいほど憎いし、そしてそんな人に猟銃をうつことを許した国も許すことができない。これからは、理由なき殺人をなくして、みんなが不安なく暮らせる日が一日も早くくることを期待したいと思います。
こういう点です。
 それからもう一人中山正美さん、千葉県です。この方は、自分の娘さんが看護婦で、中学を終えてから自分から進んで看護婦の勉強に入ったわけですが、当直室で何者かに看護婦さん二人が殺された、そのうちの一人です。
  その後、私の妻は精神的衝撃から立ち直れず、自殺未遂やいろいろ問題を起こし、やむを得ず離婚に至ったのです。
  残された幼い子供の世話と仕事の両立に身も心も疲れながら、一生懸命に頑張っております。
こういうことなんです。
 それで最後にお伺いしたいわけですけれども、大臣にお伺いしますが、大臣はこの点につきまして、八月十一日の当委員会で、次の通常国会に法案を出す、刑事局長も、五十五年一月一日から実施したい、こういうふうにお答えになっていらっしゃるわけですけれども、結局は来年度に対する概算要求は全然なく、警察庁と両方に約三百万円ずつの調査費がつくということで終わったということになり、その間の事情を新聞紙上で伺いますと、この制度について全国すみずみにある警察を窓口にした方が利用者は便利と警察庁から強い意欲が出た、それに対し、法務省は、犯罪捜査の一線にある警察が取り扱うと補償制度があるため完全な捜査をしないという関連づけで誤解されやすい、利用者はきわめて限定されるため、地方検察庁が窓口でもそう不便はない、こういうことで、結局両方の意見がまとまらなかったということで三百万円ずつの調査費で、事業費という要求はなかったということなんですが、まず私不思議に思いますことは、お互いに所管争い、新聞では所管争いで見送りになったという見出しがついております。また、昨日の参議院の法務委員会では、大臣は、五十四年度の概算要求に間に合わなかったが、簡単にはいかなかったとおっしゃって、やはり法案は次期通常国会に提出する、予算措置は後から講じるという変則的な形で制度拡充に取り組むということだということです。伊藤刑事局長は、施行の日から適用日をずらすといったことを検討している、こういうことになるわけですけれども、まず窓口でお互いが、うちの窓口の方がいいのだ、こういうお話し合いがあるという点も私たちは奇異に感じるわけですけれども、一番最初に申し上げましたとおり、国民一人一人は自分を守るすべがないわけですから、すべて国の責務で国民の生命財産を守らなければならないし、治安を守っていかなければならないという国に重大な責任があるわけです。
 そういう点から考えてみましても、よりよき制度をつくって一日も早く国民を安心させていき、被害者を救済していくという点については、政府部内で一致したものになっていかなければならない、私はそう考えるわけです。と同時に、しばしば伺うことですけれども、初めてこういうことで巨額な予算が法務省に必要であるという点から、簡単に言えば、いままで法務省あるいは裁判所は予算を使うところだけであって、ほかのことで財源を生み出す省ではない。いままで一定のものだけ使っておったところへ、こういう制度を設けてぽかっとたくさんの金が要るということになる点自体が、法務省としては破天荒なことであって、大蔵省の方がなかなかそのことに対してかぶりを振ってくれない。何かのことでほかに制度をつくって財源を生み出してくるようなことであればというようなことが大蔵省の言い分であるとかというようなことをちらちら伺うわけなのです。そのこと自体またおかしいのであって、財政が逼迫しておるとか、国に予算が少ないとか、いろいろな理由はあるにしても、こういう窮迫した事態の中の国民を救わなければならない、こういう被害によって苦しんでおる被害者を救済せねばならないということは一様に大事なことであって、何をおいてもやっていかなければならないし、やっていただかなければならない、こういうことになるわけです。この点についてもう少しざっくばらんに、法務大臣の例のざっくばらん型の思い切ったお話を私たちは伺いたいわけです。概算がつかない法案というのは、次の通常国会へ出たときにどういうようになるのか、私たちにも想像がつきませんので、その辺についても御説明いただきたいと思います。
#215
○瀬戸山国務大臣 犯罪のない社会、また犯罪によって苦しめられることのない社会をつくりたい、これはだれしも望むところでありまして、そのためにこそ諸般の法律を制定しておるわけでございますが、現実の問題としてはなかなかそうはいかない。したがって、いまおっしゃるように犯罪のために非常に苦しむ方がいらっしゃる、しかも何の関係もない犯罪者の犯罪によって非常な苦しみをしておる、こういうことに対しては、第一義的には人に害を与えた者は損害を賠償する責任があるわけでございますけれども、これまた実際問題としては、こう言ってはなんですけれども、えてして犯罪を犯すような人にはそれだけの能力がない。でありますから、しばしば言われるように非常な苦しみを受けるかっこうになっておる。これを見逃すわけにはいかない、こういうことでございます。
 社会連帯というものはそういうものを見逃さないところにある、こういうことで検討を進めておるわけでございますが、それかといって、全部の犯罪被害者にそういう道が開けるかというと、これはやはり負担は全国民が負担するわけでありますから、なかなかそう簡単でもない。そういうことで、これは数年前からの議論でありますけれども、よくわかるわけでございますが、犯罪によって害を受けられた人の実態がどうなっておるかということをまず知るといいますか、つかむことが前提である。これは立法をしあるいは政策を立てる場合には、実態をつかんでそれに対応するだけのものをしなければならないわけでございますから、それを今日までやってきておるわけでございます。検察庁あるいは警察庁がお互いに協力しながらそれをやってきておる。そしてその次は、国家財政にも限度がありますし、国民の負担も無限ではありませんから、それではどの程度の被害者を対象とすべきか、またそういう補償の額をどの程度にすべきか、いろいろ問題があるわけでございまして、ようやくそういうものの検討がおおよそ終わった。率直に言って私は、五十四年度の概算要求に間に合うようにそういう立法の骨組みをしたい、こういうことで事務当局を督励して、事務当局も警察庁と協力しながら一生懸命やってきたわけでございますが、いま申し上げましたような事情で、残念ながら五十四年度の概算要求には間に合わない。しかし、立法だけは何とか通常国会にしなければならない、こういうことでいま準備を進めております。予算の関係は施行期日等によって調節をしなければならない、こういう考えでございます。
 そこで、いま法務省が云々あるいは警察庁が云々、それは全然そうでないのでありまして、さてそれでは実施機関をどうするか。公明党さんの御案では、別にそういう補償の審査委員会みたいなものを各省につくってということでもありますけれども、これは一つの理想でありますが、国民負担を減らすようにいろいろ行政の改革あるいは整理をしなければならないという段階に、また一つの機構をつくってよけいな負担をするということも考え物である、既設の機構で何とかやる方法はないか、そういうことを考えて、検察庁であるとかあるいは警察であるとか、犯罪の捜査あるいは処罰に関する行政事務を預かっておるところでこれまた被害者の補償をするということもできぬわけではありませんけれども、感じとして、何か犯罪捜査に利用されておるのではないか、こういう疑念があってもこれは適当でない、そんないろいろなことを検討しておるというのが実情であります。そこで、これはどうしても各地域といいますか、地方自治体の御協力を得なければなりませんから、自治省とも相談をしておおよそ詰めばできておる。細かい点については必要があれば事務当局から御説明させますが、そういう段階で、結論といたしましては、これは完全なものであり理想のものではありませんけれども、通常国会では御審議いただくようにいたしたい、これが現状であるということを御理解いただきたい。
#216
○沖本委員 申し合わせの時間がもう過ぎておるのですけれども、最後の詰めがどうしても必要なので、お許しをいただきたいと思います。
 それで、いま大臣がおっしゃったのは、五十四年度に法案は一応出す、それを審議しておいて、予算の方は来年度の終わりに概算要求をやって、次の年から実施に入っていくような考え方の理解でいいわけなのでしょうか。またそういうことができるかできないか。
    〔保岡委員長代理退席、委員長着席〕
#217
○瀬戸山国務大臣 まだそこまでの最終案ではありませんが、考え方として、遺憾ながら五十四年度の予算に盛り込むことができませんでしたので、しかし、それかといって、また来年度の法律を考えてその次の通常国会というそういう悠長に考えておりませんので、法律だけは何とかできさせておいて、その法律の施行期日を予算との兼ね合いで検討する、そしてどの程度これをさかのぼるかということがまた問題でありますが、幾らかさかのぼって支給を開始する、支給対象をさかのぼるようにしたらどうかという考え方でいま検討しておる、こういうことでございます。
#218
○沖本委員 意向は概略わかるのはわかったですけれども、それは大臣の方の法務省だけのお考えであって、政府部内、大蔵省なり何なりというところの下話なりで、いざ来年からそういうことでいくかというふうな大体の話し合いの詰めはできておるということで、いま大臣のおっしゃっていることは、来年そういうことになっていくのだと私たち一般に信じておっていいのかという点が一点。
 それからもう一つは、さかのぼってという点に触れられたわけですけれども、先ほど私いろいろお読みしました点についての御感想も聞いておきたかったわけですが、その御感想と、それからその人たちが会をやったときの第一番のスローガンは、二十年さかのぼってもらいたいということを要求していらっしゃるわけなんです。というのは、大体法律というものはできてから向こうに走っていくというのが根本になるわけで、この段階になって、さかのぼるということがいろいろ考えられておるわけですけれども、この運動を主に進められてきた人たちとか、ずっといらっしゃる人たちは相当長い間苦しんできているということになりますから、結局その人たちの運動が実る、あるいは長い間の苦労というものが実を結んでいくという点については、やはり二十年さかのぼるということが一番の大きな主眼になって、それでなければ報われない。だから、すべての国民は法のもとに平等であるという平等の考え方からもやはりそういう人たちが日の目を見るというところで考えていただきたい。金がずいぶんかかるということになって、ほかのところにも波及していく心配もあるという御意見も伺うわけですけれども、このことは別なんだということがやはりお考えになっていただきたい点なんです。そういう点を十分あわせて考えていただきたい。
 それから、大臣がいまちょっとお触れになった、簡単に言えば、とりあえずこの辺からスタートしてみていろいろ考えてみたいということなんですけれども、大体法律というものは、決まってでき上がってしまうとそこからちっとも動かないという癖があるのですね。ですから、とりあえずそう言わずにちらっと出しておこうじゃないか、それからいろいろ相談して、次々いいところへ持っていこうということもないことはないのですけれども、ずっと長い間待ち望んでいらっしゃる人たちの立場というようなことを考えると、将来に向かっての、過去にさかのぼった十分の配慮というものがわかるようにしてあげないと無理だ、気の毒だという点も出てきますので、そういう点をあわせてお答えいただきたいと思います。
    〔委員長退席、山崎(武)委員長代理着席〕
#219
○藤永説明員 本制度の作業の進捗状況あるいは特に沖本委員御指摘の遡及適用の問題について、事務当局から御説明申し上げます。
 まず、この制度の積極的要件、すなわちいかなる場合に補償するかということ、あるいは消極的要件、被害者に落ち度があった場合には補償しないとかあるいは減額するというような要件の検討、あるいは補償の種類などについては、どれをとってもきわめて困難な問題ではございましたが、すでに検討はほぼ終了しております。先ほど沖本委員御指摘の精神障害者、責任無能力者の犯罪の被害者についても補償するという結論を出しております。
 ただ、本制度の一日も早い実現を図るためにより現実的で重要な問題といたしまして、大臣も指摘いたしましたように、補償の実施機関をどうするかということ、これは現在の国家財政の逼迫あるいは行政簡素化の要請のもとで他の補償制度との関連があることは沖本委員も御指摘のとおりで、どの程度の財政的支出ができるのかという補償の金額の問題とあわせまして、既存の組織を実施機関として利用する方法がないかどうか、もしある場合にはその場合の問題点というのが現在検討に残された問題でございまして、現在関係省庁、特に本制度に関心を持っております警察庁との折衝も含めまして検討を続け、五十五年度実施を目標に本当の意味での最終的な詰めに入った段階でございます。沖本委員御指摘の、一部新聞に警察庁と法務省の所管争いのために本制度の立案作業がおくれているというような記事が掲載されましたが、これは全くの誤報でございまして、そのような事実はございません。警察庁と法務省相互に協力して一日も早く本制度実現のために努力を続けておるというのが真相でございます。
 なお、次に遡及適用の問題でございますが、私も生前の市瀬さん、この制度促進会の会長であらせられた市瀬さんとも法務省でお会いしておりますし、またその大会にも個人の資格で出席いたし、被害者の悲惨な生々しい状況を直接聞いてまいりました。この制度促進のために御活躍になっておられる方々のお気持ちは非常によくわかるわけでございます。したがいまして、遡及適用の問題についてもこれを全く認めないというふうに決定したわけではございませんで、現在重要な問題であるという認識は持って最終的な詰めに入っております。
 ただ、わが国で最も早くこの制度の立法化を考えられました公明党案におきまして、二十年前に行われた犯罪行為にもさかのぼるという点でございますが、これらについても現在検討はしておりますが、まず本制度が、私どもの考えでは、国の不法行為による損害賠償に根拠を求めるものでは必ずしもないこと、二十年も遡及いたしますと、要件の認定が困難なケースが出てくるばかりでなく救済の現実の必要性も一律にあるかどうかという疑問がないわけではないこと、あるいは他の各種の補償制度あるいは外国立法例などを検討いたしますと遡及適用を認めたものはないということ、財政上の負担が非常に大きくなりまして、過去の被害者の救済に急の余り、現在及び将来の被害者の救済が不十分になるおそれがあるというような問題点もございますが、二十年という長期にわたる遡及適用は問題があるとは思いますが、さらにこのような問題点を踏まえた上で検討して最終的な結論を出したい、このように考えます。
#220
○沖本委員 これをさっきお読みして、大臣お聞きになっていたのですが、締めくくりに、やはりこの人たちに大臣の感想を述べておいてやるということも大事だと思いますので……。
#221
○瀬戸山国務大臣 私は市瀬さんという方にも他の方と会っておるわけで――あなたと一緒でしたかね。いま読まれたとおり切々たる気持ちは十分私にも迫るものがある。崇高な考え方でやっておられたということをよくわかっておるわけでございます。
#222
○沖本委員 これはまだ実現まで私も質問をいろいろやっていきたいと思いますので、とりあえずきょうはこれで終わりたいと思います。ありがとうございました。
#223
○山崎(武)委員長代理 西宮君。
#224
○西宮委員 私は、死刑確定者の処遇の問題ということを中心にしてお尋ねをいたしたいと思うのであります。
 まず第一に、矯正局長にお尋ねをいたしますが、先ほどこの問題について同僚稲葉委員との問答の中で、マスコミ関係者を受刑者と接見させるということはできるだけ断っている、こういうことでありましたが、それは一体どういう理由なのか。先ほど局長が説明しておられるのも私は聞いておったのでありますが、例の三十八年に出された通達の趣旨に沿ってでありましょうが、そのマスコミの関係者が受刑者に接触をするということは、社会一般に不安の念を抱かせる、あるいはまた本人の心情を害するおそれがあるということが理由であったように思いますけれども、そんな心配は全くないのじゃないか。もし刑務所なり拘置所の中に暴露されると困るというような実態があれば、それは確かに矯正側としては困るでしょう。しかし、もしそういうことがないのならば、私はマスコミが接触するということが社会一般に不安の念を与えるというようなことはない、むしろ矯正行政に対する世間の理解を得るということの一つの手段にもなるだろうし、私はそのことがかえって望ましいと思う。特に局長などはよく御承知のように、刑務官の諸君はずいぶん自分の職業に対してひけ目を感じながらこの仕事をやっておるわけですよ。そういう人たちに対して社会の理解を得させるというためにも、むしろマスコミ等を積極的に活用して社会にPRすることの方がより大事だと私は思うのです。しかし、同時にまたそれはそういうことがマスコミで報道されるということによって、受刑者の側から言えば、その報道を通じて、おまえのところに何か冤罪の証拠を発見したというような人たちがあらわれないとも限らない。そしてその誤判の救済、もし誤判であるならば、その救済に大きく役に立つというようなことがあって、両方から見て私は少しも不都合はないというふうに考えるのですが、ただ、ここでお答えはいただきません。なぜならば時間がないので、そういう問題で時間をつぶしては大変もったいないので、後日また改めてそのことについてぜひ局長の見解も伺いたいと考えますので、きょうはお答えはしないでください。ただ、次の二点だけお尋ねをしたいと思います。
 いわゆるマスコミ関係者が受刑者と接見することは好ましくないというのは、死刑囚に限るのかどうかという点。第二点は、その通達はいつお出しになった何という通達であるのか。その二点だけ答えていただきたいと思います。
#225
○石原(一)政府委員 問題は、一般的に報道機関の方々が……(西宮委員「時間がありませんから質問の点だけお答えください」と呼ぶ)私に答弁しなくてもいいということで、非常に答弁の仕方に困るのでございますが……。
#226
○西宮委員 だから、この次に私はお尋ねしますよ。だから、私の聞いていた、それは死刑囚に限るのかということと、その通達はいつお出しになったのか、その二点だけとりあえず答えてください。
#227
○石原(一)政府委員 一般的な問題と特定な方々に会うということの二つの問題がございまして、特定の方々に対する取材を目的としての面接等につきましては内容等によるのでございますが、ただ取材をするということであれば御遠慮願いたいという点につきましては、被収容者全般について同様でございます。受刑者というお話でございますが、未決の点についても同様でございまして、これは被収容者の人権を守る観点からでございます。
 なお、新聞関係者、報道関係者を会わせないという通達は別にございません。先ほどお読み上げになりました通達の中に合致するものがあればそれで御遠慮願うということであります。主たるものは心情の安定でございまして、本人が会いたくないという場合が相当数あるということだけをお答え申し上げておきます。
#228
○西宮委員 ありがとうございました。それでは、私がきょうお尋ねをしたいと思って用意をしておりました問題についてお尋ねをいたします。
 いま死刑確定者で無罪を叫んで訴え続けておるのが八人おることは、大臣もよく御承知のとおりでございます。こういう人たちは、申すまでもなく、その死刑の執行をされるという恐怖に寝ても覚めてもおののいているという人たちでありまして、われわれは日曜祭日以外は毎朝午前十時過ぎないと安心できないのだということを述懐しているのは、これはいろいろな死刑囚の手記等では至るところに述べられていることであります。
 ちょっと簡単に数字だけ関係局長にお尋ねいたしますが、執行の実績はどのくらいあるのでしょうか。死刑を執行した実績、これは昭和五十年の参議院の議事録を見ますと、昭和二十二年から四十九年までで五百十三人、二十五年間でありますが、それから最近の五年間で五十七名、こういう数字がありますが、その後の状況は、概数でも結構ですが……。
#229
○藤永説明員 死刑執行者の数でございますが、昭和五十年に十七名、五十一年に十二名、五十二年に四名となっております。
#230
○西宮委員 それを伺うと、余り傾向としてどういうふうになっているかということもちょっとわかりませんが、一番最後の点が四名というのは、従来の昭和二十二年から数えてまいりますと平均数はずっと多くなるので、それに比べると四名というのは非常に少ないので、そういう意味で、漸次減少しているということが言えるのではないかと思います。
 そこで、大臣に伺いますが、これは稻葉大臣が昭和五十年の二月二十五日に答弁された速記録であります。もちろんそのとおりに読みます。「死刑が確定いたしましても、法務大臣としては刑の執行命令権者としての立場から、十分これを精査し、慎重に執行の是非を決定すべきことはもとよりであり、特に本人から、再審の請求や恩赦の出願があった場合においては、その結論が出るまでの間、執行を差し控えることも必要であると考えておるわけです。」以上の答弁ですけれども、この点に関する限り、恐らく現大臣も全く同じ心境ではないかというふうに私は想像いたしますが、本当に執行におののいておる。「死囚わが心耳に靴音せまり来ていのちの燈火ゆらぐ朝なり」これは例の牟礼事件の佐藤誠の歌でありますが、こういう気持ちで毎日毎日薄氷を踏む思いで暮らしておるというような人たちに対して、この稻葉大臣の答弁は非常な希望を与えたと思うのですが、その点について、大臣も全く同じ心境だということだろうと思いますけれども、一言だけ聞かしていただきたい。
#231
○瀬戸山国務大臣 死刑囚の心情というものは、死刑の判決を受けた者でなければ想像はできないと私は思います。これは人間というもの、生命あるものはそういうときには極限の心境にあると思いますが、死刑執行については、先ほどお読みになりました稻葉元法務大臣の言葉どおりであります。歴代の法務大臣が同じような心境といいますか、立場、取り扱いをやっておる、こういうことでございます。
#232
○西宮委員 先ほど申し上げたように該当者が八名おるわけでありますけれども、これは大臣なども十分御承知のところだと思いますけれども、その八名の人たちはいずれも長く獄中生活をしているわけですね。そして共通していることは、事件発生後相当な期間たって逮捕されたという人が多いわけであります。極端なのは二年以上過ぎて事件が発見をされたというようなことで、とにかく相当日数がたってから、有名な帝銀事件の平沢さんなども七カ月余りたって逮捕されておる。だから、この八人の人全部に共通していることは、逮捕が相当時間がたってから後に行われたということですね。ですから、それの結果として、いわゆる見込み捜査あるいは別件逮捕というようなことでいずれも問題にされてきたわけであります。
 そういう点はまた別の機会に譲りますけれども、これがどうしても誤判を招く大きな要因になるわけですね。今度茨城県の日立に起こった事件で非常にスピーディーに犯人の検挙ができたということは、実は報道を聞いて私もほっとした一人でありますが、恐らく市民のみんなが同じ気持ちだろうと思います。ああいう非常に無慈悲な犯罪に対して非常に不安を感じておった人たちも、早くその犯人が逮捕された、したがって、恐らく指紋その他犯人を特定するという点については何ら不安のない、動かし得ない物的証拠が得られたのではないかと思います。私はそういう点を考えると、今度の問題の解決は市民を安心させるに非常に役立ったと思うのでありますが、さっき申し上げたように、冤罪を叫んでいる八人の死刑囚というのはいずれも相当期間たって逮捕されたというところにそもそもの問題があるという問題だけを指摘いたしておきます。
 それから、いま大臣も言われました死刑の判決を受けた人の気持ちはわれわれにはわからない――私も全くそのとおりだと思います。たとえば刑務所に入って死刑囚と同じような生活をしてみたところで、本当の深刻な気持ちはしょせん私どもにはわからない、体験できない、これはまさにそのとおりだと思うのですね。私はそういう中にあって、死刑囚と絶えず接触をしている看守の皆さんの中にそういう囚人の心理なりあるいは実態なりを理解する人が往々にしてあるのではないかというふうに思います。
 この間、富山常喜さんという人が刑務所から送ったアピールというのを見ますと、その中にも刑務所の刑務官に対して感謝の言葉を述べておる一節がございます。批判をしているのですよ。批判はしておりますけれども、みんなそういう人ばかりであるというふうには決して言っていないのだ。そう「云い張る心算は毛頭なく、限られた枠内でのこととは云いながら、誠意を以てことを計ってくれた幾人かの存在を表明することにも決して吝ではありません」こういうことを申しております。さっき申し上げた牟礼事件の佐藤誠の歌に「再審の請求せしやといたわりの言葉にこもる看守の愛情」。あなたは再審の手続はしたのかといって聞かれた、その一言にこもっている看守の愛情が身にしみたという歌でありまして、私はそういう人ができるだけたくさんふえてもらいたいということをこいねがうわけでございます。そういう意味で私は大変興味深い記事を一つ発見したのであります。
 この前の委員会で私は、最近起こった布川事件のことを取り上げました。その中で、毎日被告人を護送しておる看守に、もうおまえはきょうは無罪放免なんだから荷物をまとめて持ってこいと言われて荷物を片づけて持っていった、ところがあにはからんや死刑の判決だったというので非常に驚いたということをこの前指摘いたしましたけれども、私が最近発見した記事というのは、東京拘置所の総務部長をしておる人、ただしこれは昭和四十年の雑誌であります。有田繁雄という人でありますが、この人の書いている中に「判決は被告側に不利であろうとは予測していたものの、阿藤被告に対する死刑の宣告をきいたとき、一瞬たとえようのない暗い気持にとらわれたものだった。」こういう一言があるわけであります。これは恐らく、被告人と絶えず接触をしておる間に、この人はもう絶対に無罪だ、そういう確信が持てたんだと思うのですね。したがって、死刑の判決を聞いたときに一瞬たとえようもない非常に暗い気持ちにとらわれたと言っておるのでありますが、果たせるかな、数年後にはこの阿藤被告は完全に無罪になったわけであります。したがって、私は先刻は布川事件について同じことを申し上げましたけれども、そういう日常接触をしておる人、本当にまじめな親切な気持ちで接触をしておる人のそういう気持ちが、実態を見抜くというのに実に大きな役に立つのではないかというふうに考えるわけでございます。
 そこで、先ほど申し上げた富山常喜という人でありますが、この人について若干お尋ねをいたします。
 まず第一に、この人にとっては接見交通が実際にはシャットアウトされているという点であります。先ほど局長は、単に弁護士や親族だけではなしに、一般の人たちにも自由に、自由にといってもそれは原則的な制限はありましょう、それはあるけれども、とにかく一般の人たちにも十分面接をさせておるのだ、こういうお答えが同僚議員に対してありましたけれども、私は実はこういう問題について質問をしたいと考えておりましたので、私の力でできる範囲の調査はしてまいりました。それによりますと、そのいわゆる弁護士、親族ならざる者というのは、彼の旧友であり、かつ、ある宗教に大変熱心な平沼勇という人だけであります。たとえば、この富山氏から出した年賀状さえも届かない、ただ一通国会の職員の手元に届いておるということを、私はその国会の職員から聞きました。その程度で、彼が死刑が確定したのはおととしの四月一日でありますが、それから一カ月後の五月六日に、私の友人の林勝巳君というのが面会を求めて参りましたけれども、これも許されなかった。それ以来、状態はいま申し上げたとおりでございます。したがって文通もきわめて不自由だ。あるいは、昨年の初めには、水戸の弁護士会に出した書類も届いておらないということがその後の調査によってわかった、こういうことでございまして、私は、こういう状態に押し込まれると、犯人が孤立感から絶望に陥るおそれがあるということを非常に懸念するわけであります。
 そこで、細かいこともお尋ねいたしますから、いま即刻お答えができなければ後で調査の上お答えをしていただきたいと思うのでありますが、つまり、彼が死刑が確定してから今日まで面会を求めてきたのはだれとだれだ、そのうち許可されたのはだれとだれだというようなことは当然記録がありましょうから、ぜひそういう点をお答えを願いたいと思います。それから、差し入れもきわめて不自由で、弁護士名義のものだけが辛うじて許されている。それも一時とめられたことがあるのでありますが、まあそれだけはいま許されておるようであります。こういう状況でありますから、これはいずれも具体的な事実の調査でありますから、御調査の上にお答えをいただきたいと思います。
 そこで、私がここで伺いたいのは、例の三十八年の通達ですね、三カ条ありますけれども、そのどこに一体触れるんだろうか。第一は、社会一般に不安の念を抱かせる心配、第二は、本人の心情の安定を害する心配、第三は、施設の管理運営上支障を来す場合、こういう三点が指摘をされているわけですけれども、その三点のどういう点が問題になるのか。
 受刑者を解放するというようなことであれば、社会一般に大変な大問題になる、社会に不安を与えることは当然でありますが、そういうことではない。あるいは本人の心情ということでありますが、先ほども、マスコミの面接に関連して、本人の心情、それが一番最大の問題だということを言われましたけれども、私は素人でありますから間違っているかもしれませんけれども、私の理解では、むしろ自分たちをよく理解してくれる人が自分の周辺にいるんだと、そういうことを本人が知るということの方がどんなに受刑者の心がなごむか。私はその方がはるかに大きいと思うのですね。全部シャットアウトしてますます孤立状態に陥れていくということよりは、おれの気持ちをわかっている人も世の中には一人二人いるんだ、何人かいるんだ、そういうことを知ってもらう方がはるかに彼の心情を安定させるために役に立つ。無論、だれか特殊な人が来て、何か犯人のやったことを大いに追及して、おまえはもうここで死ね、そしておれたちの恨みを晴らせというようなそんな人でも来てあれしたら、ずいぶんその心情が動揺するだろうと思いますけれども、そうではなしに、本当に彼のことを知っている人、そういう人が来てくれたら、一人でも二人でもそういう人が来てくれることが役に立つのではないかというふうに私は考えるわけです。それは、この富山氏も自殺防止房等に入れられたりしていますけれども、私は、そういう自殺防止房などに入れるよりは、いま申し上げたように、本当に彼を理解する人と接見交通をできるだけ自由にするということの方がはるかに役に立つというふうに思うのですが、私の考えが間違っているならば、教えていただきたいと思います。
#233
○石原(一)政府委員 冒頭、死刑確定者の処遇に当たっております刑務官の御苦労につきまして、きわめて御慰労のあるお言葉をいただきまして非常に感謝申し上げます。
 なお、接見等につきましての分についての資料は検討いたしますが、特定の人のお名前を出すことはひとつ御勘弁願いたいと思います。
 なお、心情の関係でございますが、冒頭、西宮委員が申されたとおり、四六時中死刑確定者と接遇いたしております刑務官の判断というものをわれわれとしても尊重せざるを得ません。なるほど本人の無罪のために力になるというふうに外部の方が思われましても、接遇に当たっている段階におきましては必ずしもそうでない場合がございます。具体的な富山氏のことを申し上げるのは差し控えるのでございますが、たとえば、稲葉委員の御指摘になった記事の中に、送ったものが、カンパしたものが返ってきたという点がございますが、これは実は、本人が救援組織と連絡をとりたくないということがございまして、その点を申し上げますことは、善意の救援組織の方にも申しわけないということで、必要がないという理由のもとに拘置所において御返戻申し上げたという点がございます。
 死刑確定者の処遇に当たる刑務官の苦労につきまして、なかなか私ども矯正の責任にある者もわからないのでございますが、一点だけ例を挙げて御説明申し上げたいと思います。私自身、死刑確定者が拘置されております拘置所ないし拘置支所に参りまして、必要があれば声をかけるということをやっております。しかしながら、所長ないし処遇担当職員が、きょうは心が乱れているからやめてくれと言うときには私は御遠慮申し上げます。たとえば心を落ちつけて写経をしておられる方がおられます。その私の行ったときに、その写経を出して、局長さん、このように自分は写経をいたしました、これでもう三本目ですということを言われましたときに、私としては答えるすべがないのであります。将来、受刑者であって出る人がおりますれば、君、早く写経をして、その仏教なら仏教、キリスト教ならキリスト教――キリスト教には写経はございませんが、それを見て、早く出るようにしなさいということが言えます。しかしながら、死刑確定者に対しては、その死刑確定者の言った言葉に対して私は答えるすべがございません。それでまあ、実によくできているなというふうに言うのでありますが、その際、処遇担当職員が、現在未完の写経をやっているのでこの者は落ちついている、しかしながら、もう少しで写経が終わるというときにはわれわれは注意するのだ、一遍終わって、もう一巻目を書いたときに、途中でもって死刑執行命令が来るのではないか、もう一本書き出して、それが完成できるのであろうかという心の乱れがあるということを言うのであります。したがって、そういうときに御面会においでになりましても、処遇担当職員といたしましては、そのときの面会はお断り申し上げるという点がございます。さらにまた、救援組織その他、どなたでもいいのでございますが、われわれとしては、その言ってこられた方がその人であるという確認は非常にむずかしいのであります。なるほど無罪を御主張されるという点もわれわれわかっておりますが、判決によって死刑の確定がありまして、それが多くの場合は大罪でございます。したがいまして、被害者のいわゆる報復感情といいますか、そういうものも強いと思われる。そういう者に合わせてはなりません。したがいまして、こういう者だと言ってまいりましたときに、その人が果たしてその人間であるかどうかということを確定できませんうちはお会いさせるわけにはまいらないのであります。そういう場合には御面会を遠慮していただくこともあり得るということでございます。
#234
○西宮委員 いまの点について、私もいろいろ感ずることがあるものですからお尋ねをしたいのでありますが、いま、大臣が五時に参議院に行かれるという通知が参りましたので、質問の順序が逆になってしまったり、私自身は大変困るのであります。だけれども、大臣にぜひお尋ねをしておきたいと思います。
 これは、いまの死刑確定者で、それに対する特赦、恩赦の問題なのですが、具体的に申しますと、論議をされておりました昭和四十五年の速記録でありますが、これは例の帝銀事件の平沢貞通氏に関連して当時の畑委員が質問したのに対して、塩野政府委員がこのとおりにお答えをしております。「特赦の出願をした、ところが、審査の結果どうも特赦の理由まではない、減刑程度なら考え得るというようなケースがかりにありました場合に、出願が特赦だからこれは却下だというふうな取り扱いはいたしません。審査会としては、十分そこらあたりは考慮いたしまして、適切な処置をとるように努力をいたしておるわけでございます。」こういう答弁がありまして、それに対して法務大臣、当時は小林さんでありますが、小林大臣は「これはお考えを十分にしんしゃくをいたしまして、」つまり、畑委員の主張を十分にしんしゃくをいたしまして「何といたしましても、更生審査会は独立機関でありますが、その事務的の準備は保護局で下調べその他をやる、」「そのほうに関しては私も十分督励をいたしまして、推進をしてまいりたい、かように考えております。」こう答えておられる。一々指摘をいたしませんけれども、実はこれに類するような答弁をずいぶん国会の中で論議をされてまいりました。社会党、公明党、私の目に触れたところではそういう数名の人の質問があり、大臣も何回か代が変わってお答えになっておりますが、みんな大同小異であります。にもかかわらず、いま朗読をしたのは昭和四十五年でありますが、できるだけ急いでやりたい、十分督励をいたしまして推進をしてまいりますというようなことを言われながら、今日なおかっこれが解決をしておらないということでございますので、もし大臣直接でよろしければ大臣からお答えいただきたいし、よろしゅうございますか。
#235
○瀬戸山国務大臣 御承知だと思いまするが、そういう恩赦の扱いは法務大臣が直接やるわけじゃございませんし、中央更生審査会で審議をして、その審議の結果を法務大臣に進達する。そこで法務大臣が恩赦をするかしないかを決定するわけでございまして、いままでのところ全然そういうことは出てきておらないのですが、保護局長からでも説明させたらいいと思います。
#236
○西宮委員 局長からも御説明いただきますけれども、それは申請は出ているのですよ。申請は出ているけれども、まだ結論は出てない。まず審査会が審査をするというのは当然でありますから、大臣の手元に行くのはもちろんそれが済んでから、結論が出てからということになります。
 ただ大臣としては、小林大臣も言っておりますように、やるのは更生審査会だけれどもその準備をするのは保護局だ、だから極力それを督励するということを言っておるので、そのことをやってもらいたいということが私のお願いです。そして質問は、前の塩野政府委員がお答えになったこの点も大前提、大原則にして進めてもらう、つまり仮に特赦で出願しておっても減刑が適当だというならば、減刑に振りかえるというようなことでやってもらう、こういう点についてお答えいただきたい。
#237
○稲田政府委員 特赦の出願がございまして中央更生保護審査会におきまして慎重に審査をいたしました結果、減刑が相当じゃないかというふうな場合におきましては、まず本人の意思を確認いたしまして、それでも差し支えない、結構だというふうな場合には、減刑につきまして意見を出すというふうに考えでおられるようでございます。しかし、現在の時点におきましては、いままでそのような取り扱いをされた事例はないそうでございます。
#238
○西宮委員 大臣の時間がなくなりますからお尋ねをいたしますが、大臣、いまさっき私が申し上げた無罪を訴えている八名というのは、平沢氏の三十年を筆頭にして二十九年、二十八年、二十六年、二十四年、二十二年、十七年、十五年。十五年というのは一番新しい富山常喜氏です。そういう長い間拘束されている人、しかしこれ全体をと言っても無理でしょうけれども、問題を非常に明確にするために平沢貞通氏に限ってもいいと思うのですが、彼はすでに三十年、一万日を超えている。よわいすでに八十七歳になんなんとしているわけですね。八十七歳になれば、われわれの世界では米寿の祝いをするわけですね。それは目の前に迫っているわけです。そういう人をあえて拘禁をしているということにどれだけの意義があるのだろうかということなんですが、大臣、いかがですか。それはもちろん法律に決まっているからやるのだということならばそれまでだけれども、そうではなしに、こういう人を刑務所に閉じ込めておくということにどれだけのいわば社会的意義といいますか、そういうものがあるのだろう。つまり刑を科するという問題は、これは一般予防の問題あるいは被害者の応報感情を静めるとでもいいますか、そういう問題、あるいは凶悪な犯人ならば社会から隔離をして一般の市民を保護するというような問題等があろうと思う。大体刑を科するという目的はこのぐらいしかないのじゃないかと思う。そのときに、八十七歳の老人をつなぎとめておくということにどれだけの意義があるのだろうかということに私は市民の一人として非常な疑問を感ずるのですが、大臣はいかがですか。
#239
○瀬戸山国務大臣 刑を科するということは、おおよそいま西宮さんがおっしゃったような意義があると思います。
 余談でありますが、先ほども犯罪被害者補償法のお話がありましたが、縁もゆかりもないのに殺されて、自分が行ってでもそれを殺したいという気持ちが人間にはまた逆にあるわけでございます。死刑の問題については存廃の問題いろいろ議論がありますけれども、そういう人間の感情というものもまた一つの社会安定の基礎にあるということもあるわけでございます。わが国ではまだ死刑の刑が残っておる。
 平沢の問題については、御承知でありますが、次々に再審請求が出てきておる。万々が一ということもないとは限りませんから、先ほど出たと思いますけれども、やはり命を絶つということは慎重の上にも慎重、こういうことで今日まで延び延びになっておるというのが実情でありまして、八十六歳を超した、こういう状況のようでありますから、まさに率直に言ってこういうことでいいのかという感じがあることは間違いありません。
#240
○西宮委員 被害者の犯罪に対する報復感情ですね。これも現にあることですから、それを無視するわけにいかない。しかし、仮にそのことを計算に入れてみても、いま平沢貞通氏に対して、あれを何とかして八つ裂きにしてやろう、そうでなくてはとても私の感情がおさまらないというような人は恐らくもういないのじゃないかと思うのです。そう考えてみると、これは全く理由がない。したがって、さっき申し上げたように、せめて減軽をして無期にして、無期にすればしゃばに出るという機会も早く到来しましょうから、何かそういうことで救ってあげていただきたいということを私は痛切に訴える。これは大臣にお願い申し上げると言ってもよろしいのでありますが、私はそういう心境でございます。
 特に最近は一般的に死刑に対する考え方が変わってまいりました。たとえば今度の新しい刑法の改正草案では、死刑の判決は特に慎重を期さなければならぬということが第一条にうたわれておりますし、あるいは死刑に当たる罪を大分減らしたという点もありますし、それから採択にはならなかったけれども、死刑の執行については延期の制度を設ける、第八章の二に、七十一条の二に一項目を加えて、死刑執行の言い渡しのところで、死刑執行延期の、これは五年という年限になっていますが、五年だけは執行をしないということを宣言する、こういう制度が真剣に論議をされて、結局手続がなかなか繁雑だということで採択にはならなかうたようでありますが、そういう議論もなされておる。あるいは死刑の判決だけは裁判官が全員賛成をしなければすべきではないということを制度化しようというような意見とか、そういうことがこの中に述べられておるわけですが、そういう情勢の中で、死刑そのものがもう一遍見直されなければならぬというそのときに、いまのような平沢貞通氏のごとき、果たして死刑を執行する必要があるのかどうか、あるいはさらに、もしそれがないとするならば、刑務所にとどめておくという必要があるのかないのかということに私は非常に疑問を感ずるわけです。
 なお、そういう死刑執行延期の制度を法律化しようということで、そういう意見が法制審議会の間で検討されているわけですけれども、そういう理論的な問題でなくて、私は非常に聞くべき意見だと考えましたのは、先ほどお読みをいたしました有田繁雄さんという、昭和四十年当時は東京拘置所の総務部長でありますが、この人は、そんなに長い人に死刑を執行したってそれはもう何の意味もない、やるならば一年か二年ぐらいの間だ、そしてそれを過ぎて、たとえば心神耗弱者になるとかそういうときには死刑の執行ができないという規定があるのだけれども、そういう状態が過ぎても、仮にもとに戻っても、健康体に返っても、そのころまでにはもう長い年月が過ぎてしまう、したがって、そういうときに死刑の執行をしても意味がない、そういう人がまたいたずらに刑務所の中におってもこれまた意味がない、こういうことから、いわゆる学者が言うところの死刑執行延期の制度をつくり、あるいはまた、さもなければもう第一、そういう長い人は恩赦の制度で減刑して出してしまうべきだ、彼はこういうことを大胆に主張しているわけです。これは私はさっきも申し上げた、日常そういう受刑者と接触をしてそういうことを非常にはだ身にこたえていろいろ感じているという人の意見としてさっき二、三紹介をいたしましたが、私はこの問題もまさに聞くべき意見だというふうに痛切に感じます。
 したがって、大臣、お答えしにくいかもしれませんけれども、特にいまの平沢貞通氏のごときは、死刑を前提にして刑務所につないでおくというようなことにはもう全く社会的な意義を失ってしまったというふうに私は考えるので、ぜひ先刻お答えのあったような方法で彼をとにかくしゃばに出して、少なくともやがて来るところの米寿の祝いはしゃばで祝いをやらせるようにしてもらいたいというようなことを私は痛切に感ずるのです。もしお答えいただけるならばお答えをいただきますが、お答えしにくいというのならば、私の気持ちをぜひ察していただきたいということをお願いしておきたいと思います。
#241
○瀬戸山国務大臣 そういう拘置所の総務部長あるいはあなたが引用された御意見等もあり得るわけでございます。ただ、この平沢事件に恩赦の問題としてちょっと矛盾を感ずるところがありますのは、一、二審、三審、有罪の判決が確定いたしまして、それからもう数回――いまそれを記憶しておりませんけれども、数回再審の請求があった、そしてそれが棄却されておる。そしてなおまだいま再審の請求がある。これはその犯罪を争っておるわけです。無罪を主張しておる。ここに、無罪を主張しながら恩赦――無罪なら恩赦の問題は起こりません。理屈を言うようでありますけれども、そういう論理の矛盾もある。こういう点もあることはひとつ御理解願っておきたいと思います。
#242
○西宮委員 私もその点は承知をいたしております。しかし、現実に再審と恩赦とを並べて出しているというような人はたくさんあるので、私はその再審の請求をしているということだけが決定的な妨げになるというふうには考えておりません。ぜひさっきのお答えのとおり進行していただきたいと思います。
 さてそれでは、前後してしまいましたけれども、先ほどの富山氏に関連をした問題についてもう少しお尋ねをしたいと思います。
 彼の場合は病気で、特にたとえば歯が悪いとか胃が悪いとか、いろいろ訴えているのですね。そういう点は、法務省としては現地で十分万全を期しているんだというお答えしかここでは返ってこないと思いますけれども、実態はそうではないようでありますから、ぜひ十分徹底的に事実を究明してもらいたいと思います。
 けさほど稲葉委員も取り上げておりましたが、再審の門を開け民衆集会というのが七月の二十三日に開催されまして、本人がそこにあてて送ろうとしたアピール、しかし、それがどういう理由か時間が空費をされて、アピールとしてその時刻に間に合わなかったということでありますが、もしそれが拘置所の方で作為的におくらしたというようなことであれば、私は非常に不思議千万なんです。そのアピールは大変長い文章ではありますけれども、私読んでみて、問題になるような、つまり非常な激越な態度で何か世の中を騒がせようというようなところはどこにも、一カ所もないと思うのです。さっきも朗読したように、むしろ大変感謝をしているというようなこともありますし、あるいは医療の問題については「専門の知識によって私心をまじえず的確に導き出して対応するのは、医の道を選んだ科学者たるものの最低の良心であり、患者に対する隔てなき愛情と共に遵守されなければならない最低のモラルではないかと存ぜられる次第です。」「せめて医療関係の職員だけには、」「患者対医者としての科学者の良心を堅持して欲しいと希ってやまない次第です。」こういうことで、けさも指摘されておりましたが、真っ黒に線を引いちゃって読めなくなっているというのは、恐らくそういう医療の手当て等について何か不十分な点があるというようなことを指摘したことを、それが世間に暴露されては大変だというので拘置所としては消してしまったのだろうと思いますが、そういうことならば本当に拘置所のやり方は常識を外れているというふうに私は考えるのです。それは、ときに批判されたり非難されたり、そういうこともあるかもしれないけれども、そういうことも拘置所内部のこと――これは確かにいまの医療の手当てが不十分だということを言っているだろうということは前後を読んでみると十分想像がつくのですけれども、そういうことを言われただけでこれを全部消してしまうということは、まことにこっけい千万だと私は考えるのですが、どうですか。医療の面等でいま資料がなければ、後で報告していただいて結構です。
#243
○石原(一)政府委員 富山死刑確定者の文章について抹消部分のあることは事実でございます。それをここで申し上げますことは抹消した意味がなくなるわけでございまして、内容を詳しく言わずに御納得いただくのはむずかしいのでございますが、抽象的に申し上げますと、東京拘置所の具体的な医療処置に関しまして著しく事実を歪曲した記載がございましたので、その部分を抹消したものであります。それがいわゆるアピール集会等によりまして余り刑務所、拘置所のことを御存じない方に触れますことは、いわれなき不信の念を東京拘置所に生ずることに相なりますので、これを抹消させていただいたということでございます。
 なお、日付の点につきまして、十九日付のものがただいまの検閲のために二日かかりました。これは相当長い文章でございまして、字も細かくて読みにくい点があったことは、西宮委員もその他の部分をごらんになればおわかりになるだろうと思います。その意味で、二十一日に発送いたしまして二十三日に着くと思っていたのでございますが、それがおくれたということで、拘置所側が、本日稲葉委員が御指摘になった新聞記事のように故意におくらせるためにやったということは全然ございません。
#244
○西宮委員 時間がなくなりましたので大体終わりにしなければなりませんけれども、いまの医療の問題とかあるいは接見の問題とかは、宮城拘置所にいる赤堀政夫君なども全く同様なんであります。彼は、医療の点でいうと、痔が悪い、リューマチであるというようなことです。痔は三回手術をしているのですけれども、その手術をしただけではなかなか治らないというので、絶えず患部に脱脂綿のようなものを当てて非常に難儀をしているわけです。
 それから、接見の点でありますけれども、いままで行われてきたのが、この問の地震でへいが壊れてしまったので、それで大変制約をされるということになったのですが、へいも応急のへいではあるけれどもだんだんもとに戻ってきたので、そういう状態になれば、ぜひ接見なども従来行われておりましたと同じような扱いをしてもらいたいということをお願いしたいと思います。
 それからもう一つ、彼は弱いですし、仙台の寒さは特に厳しいので、寒くなりましたらぜひパネルヒーターを彼の場合も入れてもらいたいということを特にお願いしておきたいと思います。
    〔山崎(武)委員長代理退席、保岡委員長代理着席〕
 もう私の持ち時間を過ぎたし、ことに質問の順序を途中で変えたりしたために、私もお尋ねしたかったことが幾つか漏れてしまったのでありますが、先ほどちょっと指摘をされましたカンパを送ったのに対してそれを断って返送してきた点であります。これは福岡拘置所でありますが「謹啓初秋の候ますますご清栄のことと存じます。さて、免田君あての貴方の本年九月十一日付のお手紙(現金書留)の件についてでございますが、死刑の確定している収容者に対しては、親族のほかは原則として法律上等の重要な用務の処理のために必要と認められる者に許されることになっておりますので御了承下さい。」そこで誠に恐縮ですが、同封の金はお返しをいたしますという手紙なんですが、私は、いわゆる死刑確定者に対してはむしろ原則は自由にさせればいい、ことに書留でカンパを送ってきたなんというのを、そんなものまで返してやるということは全く意味がないと思う。さっきお話のありました昭和三十八年の通達のどれに照らしてみても何の意味もない。むしろそういう親切な人があるんだなということを本人に知らせることによって彼の精神を安定させるということに十分役立つと思う。それらが制度的に見てもあるいは実際上の扱いとして見ても、われわれの常識と全く逆になっているということを指摘しないわけにまいりません。ぜひそういう点も検討していただきたい。またお尋ねする機会があると思いますから、そのときそういう点についてもぜひお答えいただきたいと思います。
 大臣は本当に人情の機微を理解した方ですからお尋ねをするのですが、たとえば佐藤誠という人は、これまた二十八年ですか入っているわけですね。そして終始一貫自分は無罪だということを歌に託して主張しているわけですね。今日まででも「幻の死因」、「ダンテ神曲地獄篇」、「ダンテ神曲煉獄篇」、「ダンテ神曲天国篇」、「白きいのち」、「自由か死か」、「処刑地」、「神の沈黙」というような歌集をすでに八冊も出しているわけですね。私全部を読んだわけじゃありませんけれども、全く切々と訴えるものがあるわけです。平沢氏などにしても無罪だと言って、もしそれがうそならば、そんなに長い間、明けても暮れても自分の良心をだまし続けるということが人間にはできるんだろうかという非常に素朴な疑問を持つわけです。これは法律論じゃ全くありません。たとえば先ほどの平沢氏にしてももう余命幾ばくもないと思うんですね。この間は、彼みずからがもう終わりが近いんじゃないかということで遺言めいたことを接見に行った人に語ったので大分大きく新聞に、特に地元の新聞などはずいぶん大きく報道したわけですが、そういう人が最後まで自分の良心を欺き続けるというようなことが可能なのかどうかということを感ずるのですけれども、もしこれもお答えが困難ならばお答えいただかなくても結構ですが、もしお答えいただけるなら一言お答えをいただいて終わりにいたします。
#245
○瀬戸山国務大臣 いまお話の佐藤君からたまに私なんかにも印刷したはがきが来ることがございます。ただ、犯罪の真実は本人あるいは裁判によって明らかにするよりほかに方法がないのでございます。西宮さんが切々たるお話をされることはわからないわけじゃありませんけれども、法務省法務大臣としてそれをどうするということにはならない、そこにむずかしさがあるということだけを申し上げておきます。
#246
○保岡委員長代理 長谷雄幸久君。
#247
○長谷雄委員 初めに、八十四国会の際、本年四月二十六日のこの法務委員会で私は公図の問題を取り上げました。公図は不動産登記法十七条に言う地図に当たらない、公図は現状と必ずしも一致をしていない、しかし、そのことを知らない一般国民は公図を真実だと考え紛争になっておる、この法十七条の地図を完備するよう努力する一方、現在登記所に備えている公図を信頼しないようPRをする、このように民事局長は御答弁をなさったわけでございます。その後、これに対してどのような措置をなさっておりますか。
#248
○香川政府委員 ただいま仰せの御指摘もございましたので、昨年から不動産登記事務取扱手続準則という通達を制定しておるわけでございますが、それを改正いたしまして十七条の地図の指定の制度を設けることといたしました。したがって、その指定されたものでなければ登記法上言う地図ではないということを明らかにしました。そのかわり、それにつきましては一般の公開制度をそのまま適用する、写しの交付、閲覧に供する、こういうことにいたした次第でございます。
 それから、登記所におきましてそのことを掲示いたしまして、これこれの地区についてこういう地図を十七条の地図に指定した、これが本来の登記法で言う地図だということを掲示するようにいたしております。
#249
○長谷雄委員 公図につきましては、いわゆる地図を含めたものは現在日本全国で三百九十一万枚あると伺っておりますが、そのような程度でしょうか。
#250
○香川政府委員 お説のような枚数でございますが、これは一枚と申しましても畳五十敷ぐらいのものもございますので、大体そのぐらいの見当だろうと思います。
#251
○長谷雄委員 そのうち法十七条の地図に当たるものは八万枚程度である、そしてその供給源はほとんど国土調査法による地籍図である、そして法務省の登記所作製にかかるものは千三百枚程度である、そのほか換地確定図のうちの一部について法十七条地図として扱っている現状である、このように伺っておりますが、大体そのような程度でよろしゅうございましょうか。
#252
○香川政府委員 そのとおりでございます。
#253
○長谷雄委員 そうしますと、残りの三百八十万枚以上のものがいわゆる法十七条に言う地図に当たちないものとして現在ある、こういうことになろうと思うのですが、そのために、これから申し上げる土地の境界あるいは土地所有権そのものをめぐってきわめて深刻な事件が後を絶ってない状況であると思う次第です。こうした事件の根源は地図の不備にあると言っても決して過言ではないと思います。この問題を解決するために法務省としてはどのような取り組みをなさる御決意か伺いたいと思います。
#254
○香川政府委員 昭和二十五年に土地台帳、家屋台帳が登記所に移管になりまして、初めて登記所が土地建物の現況を把握する登録制度を所管することになったわけでございます。そのときに、税務署から送られてまいりましたのがいまお言葉の公図でございます。この公図はそれなりに十分機能はあるのでございますけれども、必ずしも現況とは一致していない面も多々あるわけでございます。何分土地台帳は地租を徴収するための課税台帳、そういう機能に照らして公図が設けられておった経緯もございますので、不動産登記法が所期しておるような正確な図面とは言いがたい面もある。そこで、昭和三十五年に不動産登記法の改正を行いまして、その中にただいま御指摘の第十七条という規定で、登記所は土地の現況を明確にした地図を備えなければならぬという規定を設けまして、その規定を根拠にいたしまして地図づくりに取り組もうという姿勢だけを明らかにしたわけでございます。しかし、何分にも全国の登記してある土地につきまして再調査をし、測量し、正確な地図をつくるというのは金も膨大にかかりますし、人手もとうてい登記所の職員だけではいかんともしがたいわけでございまして、片や御承知のとおり昭和三十年代から一般の登記事件が激増いたしまして、それを処理するだけでも精いっぱいということでございましたので、登記所みずからの手で地図づくりをするという意図は十分あるのでございますけれども、何せ金の面と人手の面でとうていできないような現況にあるのはまことに申しわけない限りでございます。
 そこで、一方国土調査法が制定されまして、国の補助のもとに市町村等におきまして地籍調査をするということでございますので、この事業をできるだけ拡大していただいて、不動産登記法が所期しておるような正確な規格に合った図面を地籍図として作製していただくことをお願い申し上げました。さような関係から、実は他力本願的なことでございますけれども、ただいま御指摘の国土調査法による地籍図が登記所に送付される、これが十七条の地図として備えるにはふさわしいもの、こういうことになっておるわけでございます。
 しかし、いつまでも他力本願というわけにもまいりませんので、七、八年前から登記所みずからそういう地図づくりができる実力を備えるという意味で、毎年一定地域を指定いたしまして予算措置をして、いわばモデル的に地図づくりを実施しておるという状況でございます。このモデル作業を積み重ねていきまして、将来にわたっていかようにして、またどれだけの金が必要か、その辺のところを積み重ねまして地図づくりの基本的な対策を立てたい、かように考えておるわけでございます。
#255
○長谷雄委員 いま民事局長から前向きな御答弁がございました。
 大臣にお伺いしたいのですが、これはきわめて重要な問題であると思いますので、それについて法務省挙げて、大臣みずから陣頭に立ってこの公図づくりに積極的に取り組んでいただかなければ、この問題の抜本的な解決にはならないと考えます。特に、先ほど申し上げたように土地問題をめぐっての紛争のほとんどといっていいくらいその原因は公図にある、こう考えますので、これが完備されるために相当思い切った決意で臨まないと実現不可能ではないかと思っておりますので、大臣の所見を伺いたいと思います。
#256
○瀬戸山国務大臣 おっしゃるように不動産に関する命と言っていいくらいの重要な地図であります。いきさつは先ほど局長からお話ししたとおりでありますが、何しろ膨大なもので、経費、人員等の関係もありますから、まだまだ意のごとくなっておりませんのは申しわけないという一語に尽きますけれども、局長が申し上げましたようにわれわれも全力を挙げてこの整備を急ぎたい、かように考えております。
#257
○長谷雄委員 不動産登記というのは、不動産の状況とその権利関係を登記簿に記載すること、またはそのような記載そのものである、そして不動産の位置、面積等の状況の登記を事実の登記、こう呼んで、それは不動産登記法に言う不動産の表示に関する登記に当たる。そしてまた不動産の権利関係の登記を権利の登記、このように呼んで、それは同法に言う不動産に関する権利の設定、保存、移転、変更、処分の制限もしくは消滅の登記に当たる、このように理解をされておるところであります。
 ところで、事実の登記、すなわち不動産の表示に関する登記は、権利の対象を明確にするものであるところから権利の登記をする前提として不可欠であります。それだけに、不動産の表示に関する登記は正確であることが望まれるわけであります。不動産登記事務において表示に関する登記は登記簿の表題部に、そして権利の登記は甲区欄、乙区欄にそれぞれ記入されているのが実情であります。
 ところで、お伺いしたいのは、この表題部には不動産の形状として、土地の場合ですと不動産登記法七十八条によって所在、地番、地目、地積等のほか、所有者の登記も含むことになっております。これは建物について言いますと、同法九十一条に規定されておりますが、表示登記に所有者登記を含めている理由はどこにあるのか、甲区欄の所有者との関係はどうなるのかという点をお伺いしたいのであります。
#258
○香川政府委員 いま御指摘の権利に関する登記というのは、まさに民法百七十七条で言う物権変動を第三者に対抗するための登記であるわけであります。表示に関する登記は不動産の物理的な状況を明確にするということで、これは対抗要件とは関係がないわけでございます。
 そこで、表題部におきまして当該土地建物の所有者を記載している理由でございますが、これはもちろん権利の登記ではないわけでありまして、表示の登記の一登記事項ということに性格づけがなると思いますが、かような所有者を記載しておりますのは、第一には、所有権保存の登記、これは初めてなされる権利の登記でありますが、その所有権保存登記の申請適格者を表題部において明らかにしておく、つまり表題部に所有者として記載されている者が原則的にその不動産の所有権保存の登記の申請ができる、こういうことでございます。
 第二には、市町村税になっております固定資産税の納税義務者を明確にするという副次的な機能でございます。御承知のとおり、土地台帳、家屋台帳法が登記所に移管になりまして、国税であることをやめて地方税として固定資産税ができたわけでございます。そのときに、固定資産税を徴収するためには納税義務者を確定しなければならぬわけでございますが、市町村の仕事といたしまして、個々の不動産について登記と離れて納税義務者を把握することは制度的にも不合理な面がございますし、また実際問題として認定がきわめて困難である、そういうふうな事情から納税義務者を形式確定する、つまり登記簿の表題部に記載しておる所有者または所有権に関する登記の所有権の登記名義人、こういうことに地方税法ではなっておるわけでございます。そういうことから、所有権保存の登記がされていない、表示の登記だけがされている不動産についての固定資産税の納税義務者を公簿上確定しておくという意味で所有者を記載する、これが第二の機能でございます。
#259
○長谷雄委員 御答弁の中で、やはり第一の理由が一番大事な理由であることがはっきりしますが、この所有権保存登記の申請適格者を判断するために必要であるとおっしゃられたのですが、そうだとすれば、表題部を起こす際に真正な所有者であることを明確にしなければならないと思うのですね。つまり、表題部に記載された所有者の名前が、今度所有権保存登記する場合に同一人であるという場合はまず問題なく登記が受理されると思うのですけれども、それが違う場合、つまり、違うというのは表題部に記載された所有者名義が実はそうでなかった場合に、保存登記を申請する人が、私が真実の権利者であるということを証明するのは非常にむずかしい。ということは、当初にさかのぼって表題部に記載されるべき所有者の名前が正当でなかった場合もあり得ると思うのですね。そうしますと、表題部を起こす際に、真実に従った登記をする必要がある、こう考えるのですね。
 そこで、表題部に所有者登記をする際に、どのような調査をして、いかなる判断のもとに所有者であることを確認をした上で表題部に登記することになっているのか、これをお尋ねしたいのです。
#260
○香川政府委員 これは法律的に申し上げますと、土地あるいは建物の表示の登記を申請いたします場合に、つまり申請人がみずから所有者である場合にはその所有権を証する書面を必要な添付書類ということにしておるわけであります。しかし、所有権を証する書面というのはわかったようでなかなか、どういうものが具体的にあるかということになりますと相当むずかしいわけでございますが、実務で用いられていますのは、たとえば建物でございますれば建築許可証とか、あるいは地主からその土地を借りている場合には賃借人証明証とかいうふうなものがあるわけでございます。土地の場合には全く未登記の土地というのはそうあるわけではございませんので、余りこの問題は実務的には出てまいらないのでございますけれども、よくある例は、公有水面埋立法による埋立地の場合でございます。これは都道府県知事の許可の証明がございますので、まあ間違いはないということなのでございますが、それ以外の脱落地についての土地の表示の登記の場合に、所有権を証する書面というのがこれはなかなか実務的には問題が非常にあるわけでございまして、結局過去帳のような、そういった相当昔にさかのぼらなければ所有権の証明ができないということで実務的にはむずかしい問題があると思いますが、しかし、およそ不動産登記法のたてまえは、そういった所有権を証する書面を提出していただく理由は、これは登記官の所有権確認の判断の資料にするというにすぎないわけでありまして、したがって登記官は、そういう書面があった場合に、その書面によって的確にこの人の所有だということを判断できればともかくといたしまして、そうでない限りは、やはりいろいろの方法で調査して所有権をみずからの責任で確認しなければならぬということに相なるわけなのであります。
 しかし、ある不動産についてだれが真実の所有者であるかということを確認するということは、これは極端な言い方をいたしますれば、神わざ的なことなのでございまして、裁判所といえども、当事者間でしかそういうことは認定できないわけでございます。したがって、運用上は非常にむずかしい問題があることではございますけれども、お説のようにその判断については慎重に間違いのないようにしなければならぬということは言うまでもないことでございます。
#261
○長谷雄委員 もちろん私も不可能を強いるわけのものではないのでございますから、しかしそうは言っても、先ほどの御答弁にもありましたように、所有権保存登記の真正適格者を判断するとなると、やはり所有者の登記についてはもっと厳密なあるいは厳正な調査、判断というものが必要ではないか、こう考えて質問をした次第であります。
 これからは、主として土地についてお尋ねをします。
 まず、新たに土地について表示登記を起こすことが間々あるわけですが、どういう場合が考えられますか。
#262
○香川政府委員 先ほど申しました、公有水面埋立法によりまして公有水面が埋め立てられた、これは竣功認可によって法律的にそこに新しく土地ができた、こういうことになるわけでございまして、これが大部分でございます。そのほかは、いわゆる脱落地と申しますか、土地台帳法時代から、つまり土地台帳にも登載されないまま存在してきた土地でございますが、そういう土地が間々あるようでございまして、そういうものが表示の登記の対象になるということかと思います。
#263
○長谷雄委員 登記の実務で使われているかどうかは余りわかりませんが、無籍地という言葉があるようですが、無籍地というものはどういうものを指すのですか。
#264
○香川政府委員 これは使う方によっていろいろ広狭あるようでございますが、御承知のとおり、土地台帳法は地租を徴収する課税台帳であったことから、国有地つまり公有地につきましては登録がなかったわけでございます。したがって、そういう公有地は土地台帳に登録されていないことから地番がついてない、つまり無籍地である。それから、いま申しました、民有地であるけれども何かの理由で登録されてなかった、これも地番がついてないわけでありまして、そういうものを含めて無籍地という場合と、それから国有地等は別にいたしまして、民有地で登録されていなかったものを無籍地というふうに言う場合と二通りあるようでございますが、まあどちらでも別にさして問題はないと思います。
#265
○長谷雄委員 表示登記の申請があった場合に、登記所はどう対応するのか。つまり不動産登記法五十条によりますと、実地調査が規定されております。この実地調査についてどういう調査をされるのか、御説明をされたいと思います。
#266
○香川政府委員 法律上のたてまえを申し上げますと、不動産の表示の登記の申請がございまして、登記法では申請書の記載事項とか添付書類というのが決められておるわけでございます。あるいはまた不動産登記法施行細則で測量図とかあるいは建物の平面図とか、そういった法定されておる添付書類ないし図面があるわけでございます。そういうものを審査いたしまして、申請書の記載が適法であり、適法な添付書類が整っておるということになりました場合には、通常はそのままで登記をするわけでございますけれども、いま御指摘の不動産の表示に関する登記は、その事実関係が果たしてそうであるかどうかということは、必ずしも書面審査だけではわからぬ場合がむしろ多かろうと思うのであります。たとえば増築の登記の申請があったという場合でも、増築されたかどうかということがやはり実地調査をしなければ必ずしも明らかでない場合もあるわけであります。そういうときに、官公署の証明書によってそういうことが書面上確認できれば、現在の実務の扱いでは、そのまま実地調査を省略してやっておりますけれども、なかなかそういった証明書が的確なものとしてはない場合が多い。そういうときに備えまして不動産登記法は、登記官が、申請内容について問題がある場合には必ず実地調査をしろというふうに規定しておるわけであります。そして、その実地調査の結果と申請内容が異なる場合には、その申請を却下するということになっておるわけであります。
 これが法律上のたてまえなんでございますけれども、私どもといたしまして、できるだけ登記法の所期するところに従いましてこの実地調査を励行すべきだというふうに指導はしておりますけれども、率直に申し上げまして、現在の登記所の人員をもってしてこの膨大な登記の事務量を処理するには、実地調査の励行ということはきわめて困難であるという事情にあることは、申しわけないわけなんですが、現状であります。
 したがって、土地家屋調査士の制度もございますし、土地家屋調査士は、御承知のとおり国民にかわって不動産の表示に関する登記手続を代行する国の公認した機関であるわけであります。したがって、その土地家屋調査士が代理人としてそういった申請をする場合には、当然本人は実地調査をしてそれに基づいて所要の図面を作製するたてまえになっておるわけでありますから、その土地家屋調査士の正確な図面がついておる、あるいは現認の確認書がついておる場合には、実地調査を省略してもいいというふうな扱いも一つ考えられるわけなんでございますけれども、また実務ではそういったことをやったときもあるのですが、これもいろいろな事件が出てまいりますと必ずしも一概にそうも言えない状況にございまして、したがって、何としても実地調査の能力と体制を整備する必要があることはもう明らかなんでございます。ただ、遺憾ながら今日十分その能力、体制が整っていないということは否定できないと思うのでありますけれども、できるだけ増員あるいはほかの事務の簡素化、機械化を図りながら、そういった方面に人手が割けるように鋭意努力してまいりたいと申し上げるほかないわけでございます。
#267
○長谷雄委員 そこで、不勅産登記法五十条についてでありますけれども、この条文の一項には「必要アルトキハ」「表示ニ関スル事項ヲ調査スルコトヲ得」とこうあるのですけれども、この条文を素直に読みますと、調査というものが任意的であるように規定されているのですが、そう理解してよろしいですか。
#268
○香川政府委員 これはむしろ権限規定でございまして、調査権限を与えたという規定でございまして、調査するかしないかは自由だというふうな趣旨ではございません。
#269
○長谷雄委員 そうしますと、先ほどの御答弁にもありましたように、この表示登記に関して書面審査では判明できない場合の方がむしろ多い、こうおっしゃられたのですね。特に土地の場合ですと、建物と違ってその表示登記をするという例はきわめてまれな場合である。そうしますと、土地に関する表示登記については、先ほども申し上げたように、すべての権利の登記の前提となる重要なものであることを考えますと、調査はすべて必要的なもので、しかも権限であるということについて、その権限を行使するかどうかを任意に任せるということではなくて、必要的にこの調査を行う、このように解釈をし、またこのように運営をすべきではないか、こう考えるのですが、いかがですか。
#270
○香川政府委員 おっしゃるとおりでございまして、土地の表示の登記でも、さっき申しました公有水面埋立法の埋立地は、的確な知事の証明書がございますので心配ないのですけれども、民有の脱落地について土地の表示の登記というものが出てまいりました場合には、これは登記法のさっき御指摘の条文の「必要アルトキ」ということに必ず該当すべきものだ、したがって実地調査を励行すべきものだというふうに考えております。
#271
○長谷雄委員 こうした実地調査の徹底と表示登記に関する登記強制主義、これを考え合わせますと、表示登記について登記官はいわば実質的審査権を持っていると考えていいのではないか、いかがでしょうか。
#272
○香川政府委員 そのとおりでございます。
#273
○長谷雄委員 そうしますと、表示登記に関する限り登記官の審査権は実質的審査権である、こういうことになるわけですが、実地調査を確実にやり、しかも登記官の持つ実質的審査権とによって表示登記には過誤はないはずだと思うのですけれども、現実には必ずしもそうではない、その点はお認めになるでしょうか。
#274
○香川政府委員 申しわけございませんが、認めざるを得ません。
#275
○長谷雄委員 不動産の実態と、特に土地のことでございますが、表示登記との間のそごが生じている原因については、どういうところにあると考えられますか。
#276
○香川政府委員 率直に申し上げますと、一般的に申し上げますれば、不動産を持っている人が申請される場合に、通常はうその登記を申請するということはまずないわけでありまして、その点は性善説と申しましょうか、ないのでございますけれども、ただ、いろいろの意図のもとに虚偽の登記の申請がある、その際に実地調査が励行されておれば虚偽が発見できたかもしれないという事例があるわけでございまして、そういう意図で虚偽の登記がされるわけでございますから、そのところだけで済まないで、いろいろそれにまつわる紛争が出てくる、こういうふうなことなんでございます。
    〔保岡委員長代理退席、委員長着席〕
したがって、一般的には、現在の登記簿に登載されておる不動産の表示に関する登記事項は、それ自体は間違いはそうないと思います。しかし、現況を常に的確に追っておるかということになりますと、これは遺憾ながら、きのう増築されたものがきょうはっきりと増築の登記がされておるというふうなわけにはいかぬという意味で、そごしておるということはこれは認めざるを得ないと思いますけれども、この虚偽的な申請を防遇する意味での実地調査の励行ということが、非常に最近は必要性を感じておるという状況でございます。
#277
○長谷雄委員 先ほど不動産登記法五十条のことをちょっと申し上げました。この条文を受けて不動産登記事務取扱手続準則というのがございますが、これは局長通達ですね。この局長通達の準則の八十八条を見ますと「不動産の表示に関する登記の申請があった場合には、原則として実地調査を行うものとする。ただし、」「相当と認められる場合には、」「実地調査を省略しても差し支えない。」こういう条文がございます。私はここにも一つの原因があるように思います。
 先ほど、五十条の解釈については私なりの意見を申し上げましたけれども、相当と認められる場合には省略してもよいということではなくて、いかなる場合でも実地調査は必ず行うべきだ、権限であり、当然義務である、このように前提的には理解をした上で、この準則もそのようなたてまえでできるべきではなかったかと思うのです。その意味でこの準則について私はやや疑問を持っておるのですが、いかがでしょうか。
#278
○香川政府委員 そういった準則の文言になっておりますところが、まことに内幕を暴露していることにもなるのでございますが、しかし、すべての表示に関する登記について実地調査を必ずしなければならぬというわけでもないと思うのであります。たとえば、農地につきまして地目の変更があったというふうな場合に、農業委員会の証明書がついておるというふうなことでありますれば、これは農業委員会がそういう虚偽の証明書を出すというのが通常だということになれば、もう全然話に相ならぬわけでございますけれども、そういった場合にまで一々調査をしなければならぬかどうかも運用上の問題として問題があるわけでありまして、一般的に言えば、実地調査を励行するということが原則で、むしろそういうただし書きがない方があるいはすっきりしているといえばすっきりしているわけでございますけれども、しかし、現在もしも全国の登記所におきまして、表示に関する登記が出てきたときに必ず実地調査をするということにいたしました場合には、恐らくはほかの急ぐ権利に関する登記とか、あるいは登記簿の謄抄本の交付申請というふうなものに対応する事務処理はきわめて遅延せざるを得ない、滞貨が生ずるだろうと思うのであります。したがって、そこのところは、現在の登記所の勢力でもってどのように均衡のとれた事務処理をするか、これはきわめてみみっちい話を申し上げておるわけでありますけれども、やはり全体として国民に迷惑をかけないような形で何とか処理をしてまいるということになりますと、常に実地調査をしなければならぬというふうに、局長としてはそういう通達を出すだけの元気がないわけでございまして、したがって、やはりそこは現場におけるそれぞれの処理体制の実情、あるいはその実地調査の対象となるべき表示に関する登記事件の内容に応じて取捨選択をするという運用をせざるを得ない。こういうことで、はなはだ歯切れが憩うございますけれども、お読みいただいたような通達になっておる次第でございます。
#279
○長谷雄委員 局長の苦しいお立場は十分理解できますけれども、私は発想はむしろ逆ではないかと思うのです。といいますのは、表示に関する登記というのは権利に関する登記の前提であり、あらゆる権利変動の根底的なものである、こうしますと、やはりこの土台をしっかりしておかないで、その後の権利変動について、これはたくさんあるからそちらに追われてということになると、その権利変動もいわば砂上の楼閣みたいなものになるのではないか。その意味では、やはり表示の登記に対してもう少し力を入れる、これに対して人員とか予算とかいう問題があればこれはまた別に配慮をする、これが私はあるべき法務行政の基本的な姿勢ではないか、こんなぐあいに思って質問したわけでございますので、先ほど申し上げた準則八十八条のこの規定それ自体についても考え直していただきたい、私はこのことを要望しておきます。
 次に、表示登記に記載する登記原因でありますけれども、土地の場合に一般的にどういう登記原因になるのか、また、特に登記原因を不詳ということをする場合があるようですが、それはどういう場合なんでしょうか。
#280
○香川政府委員 登記原因が不詳というのは、先ほども御指摘のあった脱落地について土地の表示の登記の申請をする場合、その土地がいつどういう理由で生まれたかということはわからぬわけでありまして、そういうときにやむを得ませんので、わからぬということを書いてくださいということにしておるわけでございます。そのほかの例としましては余り不詳と書く例はないと思います。建物の表示に関する登記についてはこれはまずないと思います。建築しなければ生まれてこないわけでございますから。土地の表示の登記についてそういう事例が間々あるということだろうと思います。
#281
○長谷雄委員 この不詳という登記原因についてでありますけれども、不詳を登記原因として記載することを終局的に決定をするのは、登記所のどなたの判断によるものですか。
#282
○香川政府委員 いわゆる不動産登記法上の登記官でございます。
#283
○長谷雄委員 申請により登記謄本の交付をするに際して、表題部の中の一部分だけを特に抹消して登記所が申請者に交付するという例はあるかどうか、お尋ねをしたいのです。
#284
○香川政府委員 謄本の交付の場合にそういう事例はないと思います。その登記簿に登載されている事項を一部消して謄本を交付するということは、法律的にも許されないのじゃないかと存じます。
#285
○長谷雄委員 表題部の右肩の登記簿枚数表示欄のところに抹消している例がありますけれども、その理由はどういうわけでそういうことがされるのか、伺いたいのです。
#286
○香川政府委員 いまお示しいただきましたこれでございますが、これはどういうわけでここが消えているのか私もよくわかりませんが、恐らくこれは、謄本を作成する際に、ここへ謄写することを妨げるものが何かあったとかなんとかいうことじゃないかと思うのです。実はこれは枚数欄の記載でございまして、この登記簿が何枚から成っておるかということをここへ記載というか、その該当の数字の上に判を押すことになっているわけですが、これは本来の登記事項ではないわけでございまして、これが消えているというか、ないからといって謄本でなくなるわけではないのでございますけれども、具体的にこれがどういうわけでこうなったか、ちょっと承知いたしかねます。
#287
○長谷雄委員 こういうのが事実あったのでお尋ねをしたわけでありますが、次に進みます。
 土地の表示登記について二重登記の例が見受けられることがございます。たとえば、甲という土地についてはAという表示登記とBという表示登記、このA、Bともに町名、地番、所有者が全然違う場合がございます。私も知っておりますが、こういう例は登記所でも認知しているのがございましょうか。
#288
○香川政府委員 承知いたしております。
#289
○長谷雄委員 これは実は他人事ではないのでございまして、局長も御自分のおうちをお持ちでございましょうが、御自分のお住まいの土地がいつの間にか全然違う番地で違う人に表示登記され、そしてまた違う人に所有権が保存登記され、移転されているという事態が発生しないとも限らない、こういうことを申し上げるわけで、この二重登記があることによって非常に真実の権利者が迷惑を受ける、こういう例はあるわけでございます。
 すでに御承知と思いますけれども、神戸地方法務局管内で起きて、現在まで未解決になっている事件がございます。この事件の内容について概略どのように掌握されておるか、説明をされたいと思います。
#290
○香川政府委員 神戸地方法務局管内での御指摘のような事件は、いわゆる甲陽園事件と言われているものだろうと思います。
 これは概略申し上げますと、一番の一という地番のついている広大な土地がございまして、これは昔から有名な住宅地でございますが、それが一部分筆をしながら売却していった。そういう段階におきまして、昭和八年ごろでございますか、その土地を含めて、いわゆる耕地整理法による土地区画整理事業が行われることになって始まったのでありますけれども、結局その途中でどうなったのか、始末をつけないまま組合が解散してしまったというふうなことで、その土地の一部を含めまして現況はすっかり区画も変わったけれども、それが当時の土地台帳、したがって登記簿にも反映されてないまま戦後になった。一部その辺の土地が開発が進みましたので、道路もでき、区画もできてまいりましたことから、地元の町におきましてその辺に小字をつける関係から図面を作製されまして、その一番の一の土地、これは幾つかに分筆はすでにされておるのでございますが、合計十二枚の図面ができたやに聞いております。その十二枚の図面は、もちろんその中に含まれておる分筆された土地は地番がついておるわけでありますけれども、元番になっておる一番の一の分筆後の残っておる部分は、これはもちろん幾つかに区切られたわけでございますけれども、それはもとの一部に一番の一という地番だけが付されて、あとの部分については全く地番が付されないまま地図ができてきた。その町のつくられた地図が登記所に提出されて、これがいわゆる字限図というやつでございますが、それが登記所に存在しておった。そういう段階におきまして、地図上見ても地番がついていない。したがって、通常考えますれば、先ほども申しましたように、地番のついていない地がいわゆる無籍地とか脱落地と言われるものでございますが、その部分についてだろうと思うのでありますけれども、これは脱落地だということで、ある所有者と称する者から土地の表示の登記の申請がなされた、こういうことでその土地の表示の登記がされたわけでございます。ところが、一番の一の方の土地は、そのまま昔から登記されておるわけでございますので、もしもその後でされた脱落地と称する部分の表示の登記が、同じ地域のものだろうと思うのでありますけれども、結局二重登記になっておる、こういうことで、所有権をめぐっていろいろ紛争が生じて、訴訟にもなっておるというふうに考えておるわけであります。
 この場合に、私どもとして非常に反省いたしておりますのは、さっき申しました地元の町で地図を作製されたその字限図が提出されたときに、地番がない部分があるわけでございます。これは本来は一番の一の一部でなければならぬわけであります。そういう字界、字を設けたときに一筆の土地が二つ以上の字にまたがるということになりました場合には、分筆をしてそれぞれ地番をつけなければならぬというふうに法律上はなっておったわけでございます。それが町の方も理解が足りなかった点もございましょうけれども、それを受け取った登記所の方でそのときにそのことに気づけば、当然分筆の申請を促すなりあるいは職権で分筆の登記をすべきものであったわけであります。それがちょうど昭和二十八年でございますが、昭和二十八年と申しますと、土地台帳が登記所に移管になりましたのが昭和二十五年、しかも農地解放の関係の登記で登記所があっぷあっぷしている時代でございまして、当時を考えますと、登記官の過誤ということで必ずしもそうきつく責められない事情はあったというものの、きわめて今日的に考えますれば、初歩的な誤りを犯したということにならざるを得ないだろうと思うのであります。その地図がそういうふうな形であったために、その後に表示の登記が出てまいりましたときに、地図上その地番がないことから無籍地だなというふうに考えるのは、これは無理からぬ面もあるわけでございますけれども、先ほど申しましたように、土地の脱落地というふうなものはきわめてわずかなものでありますし、あの地域にそういった脱落地が多数あるというふうなことは、ちょっと常識としては欠ける点があるわけでございます。したがって、登記官はその辺のところも気づいて実地調査をしたようでございます。しかし、これはどういうことかわかりませんけれども、隣地の所有者に会って聞いたりいろいろ調査をした結果、皆何々株式会社の土地だというふうに返事が返ってきたというふうなこともございまして、表示の登記をやってしまった。それが実はどうも経緯を考えますと、いまここでうそだとかどうという断定は私はいたしかねますけれども、どうも一番の一の残地とダブった部分の表示の登記ではなかろうかというふうに考えられるわけでありまして、まことに申しわけない結果になっておるわけでございます。そういう事件でございます。
#291
○長谷雄委員 いま局長の御答弁の中にもありましたように、本件は一等地でありまして本来無籍地であるようなはずがない、こう考えて慎重に審査をしていればこうした事態は恐らく避けられたのではなかったか、こう思います。この事件については関係者も相当多数いることでございますので、円満解決できるように要望しておきたいと思うのですが、この事件解決のために法務省としてはどのような対処をされる所存か、お伺いしたいと思います。
#292
○香川政府委員 ただいま申しましたような経緯をさらにつぶさに再検討いたしまして、果たして二重登記なりや否やということを的確にひとつ最終判断をまずするということ、それから、これはさっき申しました十二枚の地図のうちの一部について表示の登記がされておるわけでございますから、残りの地図について同じような、いわば地図上は脱落地に見えるような、つまり地番の入ってない土地があるわけでございますから、この部分については分筆をして地番をはっきりさした上で誤解のないようにするということ、これも考えなければならぬことだと思いますし、二重登記だということに相なりますれば、法律的には一番の一の土地と一部ずつダブっているということになるわけでございます。したがって、その両者閥でいずれの所有権が真正であるかということの判断がつくまで自後の登記は一切受け付けない、ストップするというふうなことにして、迷惑する人の拡大を妨ぐというふうなことも考えざるを得ない。いま実態調査を早急にさしておるところでございまして、その結果を待って、何らかの形でこれ以上被害が拡大することを防ぐとともに、後始末をどうすればいいかということを早急に検討してみたい、そういうふうに考えております。
#293
○長谷雄委員 こうした事件は関係者にとってきわめて不幸な事件であることは言うまでもありません。こうした事件は日本全国でどのくらいだと掌握をしておられますか。いわゆる地図混乱地域と普通言われておりますけれども、どのくらいでございましょうか。そのうち特に緊急に解決を要する地域というものはどのくらい見込んでおりましょうか。
#294
○香川政府委員 地図混乱地域と私どもが考えざるを得ないと思っておりますのは全国で五百五十カ所、面積にいたしまして千平方キロメートルぐらいではなかろうかというふうに考えております。
 この混乱を解消するという解決策でございますけれども、混乱と申しましても、これにはいろいろの原因が重なり合って……
#295
○長谷雄委員 そうではなくて、そのうちで緊急に解決を要する地域はどのくらいだといま法務省はつかんでおられるか。
#296
○香川政府委員 緊急に解決を要すると申しますれば、どれもこれも皆緊急に解決しなければならぬのでありますけれども、西宮の地区に相当広大な別の混乱地域がございまして、これは全く混乱し切っているものですから登記が全くできないような状況にある。これは取引上相当不便を来しておるわけでございますので、緊急に解決しなければならぬ。それから神奈川県下に一カ所そういうふうなところがあるわけでございまして、これは程度の差と申しましても、どれもこれも考えてみますれば関係者全部が迷惑を受けておるわけでございますから、私どもとしては緊急に何とかしなければならぬというふうに、思いだけは焦っておるのでございますけれども、なかなかむずかしい問題でございます。
#297
○長谷雄委員 こうした地図混乱地域における私人間の紛争事件は相当数があるようでございます。そのうち訴訟事件になったものについて私は最高裁判所から資料をいただきましたが、それによりますと、土地登記訴訟事件として新しく受けた事件の数、第一審だけでありますけれども、昭和五十一年ですと地裁で五千五百二十八件、簡裁で二千四百七十六件、合計八千四件、そのうち、土地所有権訴訟事件として新しく受けた事件、第一審事件でありますが、これについては地裁が千二百七十四件、簡裁千七十七件、合計二千三百五十一件、さらにそのうち土地境界訴訟事件として受けたものとしては、地裁で二百四十三件、簡裁で四百十一件、合計六百五十四件。大体ここ五、六年の間の統計資料を見ますとほぼこういった数字であるように見られます。そこで、この種の事件を絶滅をし、抜本的解決をしなければ登記制度に対する国民の信頼はなくなる、こう思うのであります。そこで、こうした事態に対して法務省も相当に決意を固めていただかなければならない、こう思います。
 ところで、先ほど来局長の答弁の中にも、予算の問題あるいは人員の問題、こうした問題を指摘されておられました。私もその法務省の実情も理解ができますが、当面地図混乱地域の解消のためにかなりの予算を必要とするのではないか、私はこう思っておりますが、この解消のためにどの程度の予算をお考えでございましょうか、あるいは単年度にどのくらいの予算規模でこの解消のために御努力をなさるおつもりなのか、お伺いしたいと思います。
#298
○香川政府委員 先ほど申し上げました五百五十カ所の混乱地域というのはいろいろの原因でそういうふうになってきておるわけでございまして、遺憾ながらその原因なりあるいは実態というものをまだ的確に把握できていない部分もあるわけでございます。そういうことから、そういった原因、実態というものを的確に把握して、それぞれの実態に応じましてその解決策の手法を考えなければならぬわけでございます。
 そういう意味から、この五百五十カ所につきまして来年度から三カ年間で実態調査をいたしまして、年額約五千万ぐらいの経費が必要だろうと思うのでありますが、その経費の予算要求を来年度においていたしておるところでございます。
#299
○長谷雄委員 それから、実地調査を励行するための体制についてでありますが、この体制の不備は先ほど来局長も指摘されておられました。私が聞いた範囲では、現在法務省の出先機関で出張所が千三十二、これはことしの四月一日現在だそうでございますが、そのうちの約四〇%が一人庁もしくは二人庁である、こういう実情を伺っております。これでは実地調査を励行せよといっても不可能に近いことだと思います。その意味ではやはり事件が相当数多いという最近の傾向にも加えて、この人員の増加ということ、あるいはもっと現地調査に行くためにたとえば自動車の配置をするとか、そうした機動力、物的、人的整備というものは相当に必要であろうと思いますが、それに対してはどういうお考えでおられるかお伺いしたいと思います。
#300
○香川政府委員 いま御指摘のきわめて小規模の分散機構でございまして、一人庁、二人庁というふうな登記所があるわけでございます。これは現在の事務量あるいは全体としての人員の不足の面からそういった一人庁というふうな余り好ましくない規模の出張所も設けざるを得ないということでございますので、一方そういった小規模の出張所の統廃合を推進しておることは御承知のとおりと思います。
 それはそれといたしまして、表示に関する登記の充実ということから、一つは登記所の現在の職員のその方面の能力開発をしなければならないということから、測量学校に半年委託学生として入れる、これは毎年大体三十名ぐらい、私ども来年度はもっと大幅に要求いたしておるわけでありますが、そういった人の訓練の問題、それから、物的なものとして実地測量者を各登記所に配置いたしまして、できるだけ機動性を持たせるというふうなこと等々いろいろ考えておるわけでございますけれども、まだ必ずしも十分な対策ではない。いろいろさらに工夫しなければならぬというふうに考えておるわけでございます。
#301
○長谷雄委員 まだ質問をしたいことがございますが、時間も迫っておりますので、最後にこの点をお尋ねをしておきたいと思います。
 住居表示の制度がとられてから今日、土地建物の登記簿上の地番と住居表示上の地番とが必ずしも一致していない、そういう状況になっております。両者は一致していることが登記をする国民の側にとっては大変便利である、こういうことがはっきり言えると思います。たとえば一丁目一番地一号居住の人が登記簿謄本の交付を申請する場合に、この地番で登記所に申請をしたのでは謄本がもらえない。この番地の物件では出てこないということで、登記簿上の地番を申請人の責任で確認をした上で申請をしなくてはならない。大変これは利用する国民の側にとって不都合、手間もかかることである。こういうことで、この両制度の一致というものは好ましい制度であると考えるのですが、現在こういう不一致を見ているような制度になったいきさつ、それから、将来の展望としてできるだけ一致させる方向にする、たとえば地番の枝番号はともかくとして、町名と起数の地番だけは一致させてはどうか、こう考えるのですが、局長の御見解いかがですか。
#302
○香川政府委員 お説のとおりでございますが、この住居表示の関係は、それぞれの各戸の住居に付された番号でございますので、地番とは全然関係がない。この各戸に付された番号というのは、人を訪ねていった場合に探しやすいという観点から付せられるものでございますので、それぞれの町の形状に応じて区画を適宜設定されて、そしてその区画で通し番号をつけるというふうな形になっておるわけであります。
 片や登記所における地番というのは、これは起番区域というのが昔からもう決まっておりまして、その起番区域ごとに一番から起番して地番をつける、そしてその地域に建った建物につきましては、地番に枝番をつけて家屋番号を決める、こういうふうなことになっておるわけであります。したがって、起番区域と申しますか、それと戸番制度、住居表示の戸番のいわば起番区域的なものとが完全に一致しておらぬわけでございまして、むしろ小刻みになっておるわけであります。したがって、これを一緒にするというためには、どちらかがその起番区域を片方と同一にしなければならぬという問題があるわけでございます。しかし、余り大きな住居表示の関係での区域を設定いたしますと、これは訪ねていってもなかなかわからぬということで、目的がなくなってしまうわけでございまして、さればといって、それでは起番区域を戸番の方の区画に縮小して合わせるということになりますと、全部地番からその上の建物の家屋番号をつけかえなければならぬというふうな問題になってくるわけであります。これはなかなか大変な事業でございまして、容易にそうつけられないということになるわけでございます。しかし、そういうふうに食い違っておるために迷惑をかける面も十分想像できますので、登記所におきましてはその地番と家屋番号、それと戸番との関連のいわば対照表をそれぞれ窓口に備えまして、必要な方には見ていただくというふうなことで、辛うじてその不便の解消に努めておるわけでございまして、根本的にいろいろ問題があろうかと思いますが、それはそれといたしまして、先ほど申しましたような、どちらかが区画を合わせることにすればこれはおっしゃるとおりのことができるのでございますけれども、その前提がなかなかむずかしい問題があるということを御承知願いたいと思います。
#303
○長谷雄委員 終わります。
#304
○鴨田委員長 飯田君。
#305
○飯田委員 私は、いわゆるサラ金問題について質問をいたしたいと思いますが、本日は民事局長お忙しいと聞きましたので、先に民事局長の御所管の分についてお尋ねをいたしたいと思います。本会議におきまして、わが党の正木委員の質問に対しまして民事局長から懇切な御教示をいただいたわけでございますが、その督促手続によるところの支払い命令の申し立てにつきまして、二、三疑問の点を御質問申し上げたいと思います。
 まず、申し立てをする場合に請求の理由がなければならないわけなんでございますが、その請求の理由、それはどういう方法で証明したらいいのかという問題でございます。領収書でも何かあればそれはいいと思いますが、領収書も何もない場合に、第三者の口頭によるところの証言でよろしいかどうか、こういう点はいかがでございます。
#306
○香川政府委員 これは純法律的に申し上げますと、その支払い命令の申し立て書に、かくかく次第でこれだけ余分に支払っておる、したがってその分の返還を求めるということが書いてございますればそれでいいわけなんでございます。しかし、これは誤解のないように申し上げますけれども、支払い命令の申し立てばそれでよくて、そういう段階で支払い命令が出るわけなんですけれども、相手が異議を言われると、これは訴訟に移行するわけであります。したがって、支払い命令の申し立ての際にはそういう受取証なんかなくたっていいんだというふうに申し上げますと一般の方は誤解されては困るので、異議が出ると今度訴訟になりますから、だからやはり支払いをされる際には、そういった受取証、証明手段をちゃんと整えておくという必要があることは言うまでもないわけでありますが、支払い命令限りでは申しますと、そういう疎明は必要ない。その申し立て書に法律的に正しい、間違いのないように論理的に記載がされておればそれでいいわけでございます。
#307
○飯田委員 そうでございましょうが、申し立て却下の問題がございますので、申し立て却下する場合には、請求の理由がないことが明らかであれば申し立て却下する、こうなっています。そうしますと、請求の理由がないことが明らかでないということを何か言わないと都合が悪いのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
#308
○香川政府委員 申し立て却下の場合と申しますのは、書面で書いてあること、それから口頭で申し立てされた場合の内容がもともと法律的に整序されてない、そういうふうなことでは返還請求はできない、形式的にそうわかる場合に却下するということでございまして、法律的にそれが、中身は別といたしまして、書いてあるその請求の理由、口頭により申し立てた理由が法律的には正しい、整序されておるということでございますれば、申し立てに対して命令が出るわけでございます。
#309
○飯田委員 これは別の問題ですが、現在領収書の発行が義務づけされていないために大変迷惑をしておる人が多いわけですが、将来こういうサラ金についての立法をなさる場合に、そのようなことを規定の中に入れていただくことが大切ではないかと思います。そこでそのことを御注文申し上げるわけですが、特に最近の状況を見てみますと、数人のサラ金利用者が互いにほかの人の連帯保証人になるというやり方を業者が一方的に要求をしておるわけです。つまり主婦の人が借りにいきますと、近所の人も呼んできなさいというわけで呼んできまして、お互いに保証人にならせまして金を貸す、そして三月たちますとそういう人たちは返せませんので、保証債務をおっつけるわけです。したがいまして、五万円借りたものが三月目には十九万五千円ぐらいになってしまう、こういう状況が現実に存在するわけなんです。
 私、実は大阪の被害者の方から相談を受けまして、いろいろの方法を実は指示してあげたのです。民事局長に教えていただいた方法とかあるいは破産の問題だとかいろいろやったんですけれども、全部だめなんです。どこかでだめになるようになっているのですね。そこで弁護士さんを紹介してあげましたところが、弁護士さんが、これはどうにもしようがないから夜逃げをしなさい、それしか手がありませんと言われたというて私のところへ泣き込んできたというわけですが、こういうふうにどうにもならないような状態をつくり出すいまの業者のやり方について規制をする必要があるのではないか。たとえば、支払い能力のない者が行った保証は無効にするという法律はできないものかどうかということでございますが、ことに小口の金融業についていかがでございましょうか。
#310
○香川政府委員 保証というのは、保証人になるべき人と一番利害関係のある債権者との契約によるわけでございまして、したがって支払い能力がない人でも、債権者の方でその人が保証人になってくれるならばいいということであれば、これをしも無効というふうにきめつけるような立法というのはいかがなものかと思いますけれども、しかし、いまおっしゃっている御趣旨は、サラ金の場合の脱法的な一つの手段としてのそういうことだといたしますれば、そういう脱法行為を民事上も封ずるようなことは、それは立法として考えなければならぬことかもしれないというふうに存じます。
#311
○飯田委員 民事局長ありがとうございました。
 次に庶民小口金融、いわゆるサラ金業でございますが、これに関する立法の進捗状況につきまして、大蔵省並びに法務大臣にその大要を御説明願います。
#312
○吉居説明員 サラ金を含みます貸金業の規制に関する問題につきましては、現在、各省庁の間でもって連絡協議の場を持ちまして検討中でございますので、私どもの方からそれを申し上げるのが適当かどうかという点はありますけれども、現在はその連絡協議の場を持ちましてから十二回余り議論をしておりまして、ごく最近では、各省庁から立法措置を含む規制のあり方という点につきましての意見を出し合いまして、いまその点について検討しておる、こういう状況でございます。
#313
○瀬戸山国務大臣 先ほども他の委員にお答えしたわけでございますが、私どもとしてはできるだけ早く、いわゆる貸金業あるいはサラ金と言われておる弊害等を見まして、刑罰で処分するところはもちろん処分しておりますが、それだけでは済まない現状でありますから、一日も早く社会に害を及ぼさないように、しかも、いまの社会の事情からいいますとこういう金融もまた必要である、こういう状況でありますから、弊害が起こらないように、金融が正常化するように立法措置等でこういうものを処置したい、こういうことをずっと、先ほどお話しの各省庁で協議を進めております。しかし、何しろ十七万近くと言われておるこういう業界の実態が種々さまざまでありまして、なかなかつかめないということであります。その実態の調査に、警察は警察の取り締まりにあらわれた事件について問題点を研究している、それから検察庁は検察庁で刑事事件として出てきたものについてその実態、態様を分析する、また大蔵省はこういう種類の金融業界についてその実相を調査する、こういうことに相当手間がかかっております。そこでおおよそ実態がつかめましたので、いかにあるべきかということを目下研究を進めております。次の通常国会にはぜひこういう措置についての法律を制定すべきである、こういう考え方で次の通常国会にはぜひ御審議をいただきたい、こう考えておりますが、実は世間からも皆さんからも、遅々として進まないじゃないかという御意見等もありまして、けさの閣議におきましても、従来から閣議でいろいろ問題点を指摘しておりますが、臨時国会ももうあしたで終わりでありますから、この国会は終わりになりますので臨時国会中の最後の閣議でありますから、特に私から関係省庁の各大臣にも注文を出しまして、総理からも次の通常国会にぜひ措置ができるように各省庁やってもらいたい、直接のかかわりのある大蔵大臣、また自治大臣・公安委員長もそういうことで協議をして進めよう、こういうことになっておるということを御理解願いたいと思います。
#314
○飯田委員 最近の新聞だとか週刊誌が非常にセンセーショナルな書き方で政界と業界との癒着問題を取り上げてきております。これは人の名誉に関しますのでここでは読みませんけれども、非常にたくさんの例があるわけであります。このサラ金業界と政界との結びつきにつきまして、今年の七月五日の参議院決算委員会で取り上げられて質問がなされておりますし、また、たとえば六月十五日の朝日新聞、七月五日の読売新聞のような新聞にも大きく出されております。また週刊誌、たとえば週刊ポスト七月二十一日号、それから週刊現代七月六日号、こういうもので報道をしております。そこで、こういう記事がしばしば載りますと、これによって、そのことが真実であるかうそであるかということは一切関係なしに、国民の間に政治家に対する不信の念が広がっていくことは事実でございます。こうしたマスコミの行き方そのものがいいか悪いか、これは私はここでは論じませんが、とにかくそういうことがあるというこの事実から見まして、こういう報道並びに指摘されたことをどういうふうに政府ではお考えになっており、またこの問題について調査を進められておりますか。お伺いをいたします。
#315
○瀬戸山国務大臣 まあ新聞記事はたまに私も見ますけれども、その週刊誌というのは実は宛ておりません。どういうことかわかりませんけれども、サラ金といいますか、そういう庶民金融と政治家が癒着しておる、癒着という言葉がよく使われますけれども、私はよくわかりませんが、そういう問題について政府がとやこうしておるということはございません。
#316
○飯田委員 たとえば五十三年七月六日の週刊現代では、これは大変人の名誉に関するような書き方で書かれておると思いますが「サラ金から金をもらったと名指された塚本三郎、横山利秋氏らの弁明」こういう題で細かく書いてあります。これは弁明内容というものが大きく書かれないで名前が出されておりますので、これは国民から非常に誤解を招きやすい書き方だと思いますけれども、しかし、こういうことが事実として存在するとするとまた問題であろうと考えるわけでございます。
 そこで私は、全金連といういわゆるその業者の団体ですが、その業者の団体が予算に法制対策費とか顧問料を計上しておるということが週刊誌には書いてございます。そしてその支出を、結局こういう政治家にやったと言わんばかりの記事が書いてあるのです。証拠はないのです。本当にやったのかやらなかったのか証拠はありませんが、書き方から見ると疑いを持たれるような書き方がしてあるわけなんですが、こういう予算の組み方それから支出をしたという記事というものが真実であるとすると、これは贈賄を立証する証拠資料となるのではないかと思われるわけです。そこで、こうした記事をごらんになって捜査当局はこれを捜査をする気になられて捜査をされたのか、あるいは無視されて捜査はされてないのか、どのようでございますか。
#317
○伊藤(榮)政府委員 御指摘のようなものはもちろん検察当局においてはよく読んでおると思います。ただ、それに基づいてどうしたかというふうなお尋ねを受けましても、ちょっと事柄の性質上お答えいたしかねることを御理解をいただきたいと思います。
#318
○飯田委員 これは顧問料を取っておいでにならない方は、顧問でありましてもそれがそのままでは犯罪になると私は考えませんが、顧問が顧問料をお取りになってる場合に問題が生ずるのではないかと思いますのは、国会議員は公務員でございまして法案を審議し採決する権限を持っておりますから、そういう公務員に対して顧問料を払った、あんたが顧問料を受け取ったということになりますと、その法案がその業界に関する法案である場合に、公務員がその職務に関し賄賂を収受したということに解されるおそれがありますが、もしそのように解されるとすると、金額は小さいけれどもこれはロッキード事件と同じような性質を持つのではないかと思われるわけであります。これにつきまして、法務当局または警察当局の御見解はいかがでありますか。
#319
○伊藤(榮)政府委員 贈収賄罪が成立いたしますためには、申し上げるまでもなく当該公務員の職務に関してその対価として、典型的な場合は金銭の授受が行われるということが必要なわけでございまして、一般的にたまたま顧問料をもらっておられた方が、当該顧問料をもらっておる先の業界と関係のある法案の審議なりあるいはこれに関連いたします国政調査なりの際に何らかの行動をおとりになったといたしましても、その顧問料にその行為についての報酬としての趣旨があらかじめ込められていなかったとすれば贈収賄罪は成立しないわけでございまして、ただいまのお尋ねはさらにそれを一歩越えまして道義的な問題についてもお触れになったような気がいたしますが、その問題については私どものお答えする限りではございません。
#320
○飯田委員 主観的には犯罪を構成しない、よく調べてみたら故意も過失もなかったということがあるかもしれません。しかし客観的に見ました場合に、故意、過失がなくても、あらわれておる事実が犯罪構成事実であるように見える場合に、やはり世間の人は疑いを持つのではないか。つまりそのような場合には犯罪は構成しないかもしれないけれども、やはり昔、昔と言っては悪いですが、ロッキード事件につきまして国会において使われました灰色高官という言葉がございます。この言葉が適用になるようなことになりはしないかと私はおそれるわけでございますが、この点についてはいかがでしょう。
#321
○伊藤(榮)政府委員 ロッキード事件の灰色高官と俗に言われておられる方々と申しますのは、まさにトライスターの売り込みに関して金銭を受領された、しかしながらたまたま職務権限がなかったとかあるいは時効が完成しておったということで訴追されなかったわけでございまして、それと、当該顧問料なら顧問料にたとえば業法の成立を阻止してくれとか推進してくれという趣旨が込もっていない場合とは、同一には論じがたいものがあると思います。
#322
○飯田委員 私は、この問題は誤解を受けるといけないのでできるだけ慎重に発言をしたいと思っておりますが、たとえば業界の会合に呼ばれてそこで会食をいたしまして、その会食をした席上でいろいろなこと、たとえばサラ金業の法律をつくることについてそれとなく依頼を受けた場合、この出席された方々は主観的にはそんなことは知らぬというふうに考えておいでになったとしても、外から見ますときにはやはりそこには請託収賄があるのではないかという疑いが持たれそうであるような気がするわけです。これは金額が小さいから、金額の小さいものは謙抑主義の犯罪論からいけば犯罪と見ない、そういうことはございます。ございますが、そういう政治的な問題ということになりますと、そうした犯罪構成の問題のほかに政治家が疑われる。実は別に犯罪を犯していないのだけれども、犯罪を犯したように思われて疑われるということが存在するのではないか、こう私は考えておるわけです。ことに法令の立案、審議、採決権を有する国会議員、これがその御意図はどういう御意図であろうと業界から顧問料をお受け取りになったりあるいは会食をなさった事実がある場合に、その国会議員が当該法案の審議に当たって採決をなさる場合に業界に有利な方向で採決をなさったということになりますと、やはりそこに請託収賄の疑いが生ずるのではないか。会食いたしましても業界に不利な方向で動かれる分には請託収賄ということはあり得ないと私は思いますが、もし有利な方向でなさった場合に起こるのではないかという心配があるのでございます。この点についてはいかがでございましょう。
#323
○伊藤(榮)政府委員 贈収賄の成立という問題との関連で申し上げますれば、会食というものが果たして社交上の儀礼の範囲にとどまるものであるのか、それから出たものであるのかというような問題もあると思いますし、また顧問料の問題にいたしましても、先ほど来申し上げておりますように、職務に関する報酬という性格というものがそう簡単に認定できるものではございません。ただ、御指摘が世間一般の人がどう思うかというお尋ねであるとすれば私のお答えし得る限りではないのでございますが、たとえば捜査当局がどう考えるかというお尋ねに置きかえて考えますと、捜査当局はそう軽々に何でも贈収賄の嫌疑をかけて調べるということではなく、やはり慎重に事態を把握をして、しさいに検討分析を加えた結果、初めて嫌疑らしいものを持つわけでございまして、一般の方とはそういう意味では多少違うかもしれません。一般の方の受け取り方については、むしろ私どもこう狭い分野に閉じこもっております者よりも、先生の方がよくおわかりじゃないかと思います。
#324
○飯田委員 実はこれは言うまいと思いましたが、「週刊ポスト」という雑誌に報告され書かれておることは、これをこのまま読みます場合には国民は当然疑惑を持つような書き方がなされております。そこで、こういう疑惑を持つような書き方をした「週刊ポスト」という週刊誌が一体悪いのか、あるいはこういうことを書かれた場合に、書かれるような材料を現出しておるのが悪いのか、これは非常に問題であろうと思います。よく週刊誌は名誉を考えないで何でも書くという非難をなさる方がございますけれども、しかし、やはり火のないところには煙は立たぬと言いますので、週刊誌がまるまる悪いとは言えないのではないかと私は思うのです。
 そこで、こうした疑いを国民から持たれるようなことを週刊誌に書かれるような情勢はやはりなくしておくことが必要ではないかと私は考えておるわけなんです。これは主観の相違だと言われればそれまででしょうけれども、法務大臣にひとつお尋ねをいたしまするが、法務大臣は法務省に対する人事権をお持ちでございます。法務大臣はもちろん顧問料も取っておいでにならないということを私は信じておりまして、収賄にはならないと考えております。しかし、この参議院の決算委員会においての質問の中にはやはり名前を挙げられておりますし、それからこの週刊誌もやはり大きな字で書いておるわけです。ここに写真まで載せて「瀬戸山法相ら大物政治家と“サラ金”の癒着は許せない」こういうことを書いて宣伝されておる。これは大変なことだと思うのです。いやしくも一国の法務大臣がこのように悪罵を浴びせられるということは大変なことだと思うのです。こういうようなことになりますと普通の人はどう考えるかといいますと、法務大臣は顧問をやっておいでだから、したがって法務省の局長さんはみんな法務大臣の意に反することは恐らくなさらないであろう、法務省の局長さんの自由な意思決定に対して法務大臣の地位というものが非常に大きな影響を与えておる、これは間違いないのだ、このように想像をいたすわけでございます。したがいまして、法務大臣が実際には一文もお金を取っておいでにならない、どんなにきれいだといたしましても、その顧問をおやりになっておるということだけで世の中の疑いを増すのでございますから、法務大臣におなりになる前に顧問におなりになったことは差し支えないと思いますが、法務大臣におなりになってからもなお顧問をお続けになっておるということについてはいかがかと思われるわけであります。法務省の人事に影響があるのではないか、だから法務省の局長さんはこのサラ金問題について弱気になっているんではないか、こういう疑いを持たれるわけでございます。この点につきまして法務大臣の御意見をお聞かせ願いたいと思います。
#325
○瀬戸山国務大臣 御注意ありがとうございますが、その週刊誌は私は見ておりませんけれども、正直なことを言いますと、その雑誌に書いてあるように、何か全金運というのですか、庶民金融連合会というのですか、それの顧問には私は実はなっておらないのです。しかし、それをいまどうだこうだと言う気持ちもありません。宮崎県のいわゆる自主規制法に基づく協会がありますが、それから相談を受けて、自主規制でわれわれ正常な金融をしなければならぬということで協会をつくっておるんだ、顧問として御指導願いたいとか、軽い意味で、結構でしょう、こう言ってあるんですが、全国のそういうものがあるということは私は最近知ったのでございますが、それは別といたしまして、私がたまたまそういう立場にあるからということで、いわゆるサラ金の正常化といいますか立法化といいますか、これについて法務省の局長その他担当の公務員が気にするということは全然ございませんから、それはどうかひとつ信頼をしてもらいたい。私もそういうことで顧問をしておるわけじゃありません。何とか正したい、社会の中に必要とされておるこの金融業をもっと社会の需要に応じて正常にする、こういうために私は顧問になっておるという自覚を持って、自信を持っておりますから、それは法務省の局長以下全部そういうことは理解しておると思います。法務省の仕事というのは、申し上げるまでもないことでありますが、社会秩序を維持し正義を守るというのが最高の職務でありまして、局長その他全部そういう意味で専門家中の専門家がここに集まっておるわけでございまして、そういうことに左右されて云々と、しり込みをするということは全然ございませんから、あってはならないことで、そういうことは全然ありませんから、御心配要らないようにお願いします。
#326
○飯田委員 法務大臣の人事権というものによって局長さんが影響されることはない、私もそのように信じます。ただ問題は、実際においてそういうことが起こらないといたしましても、世間の見る目があるんじゃないかと私は思うのです。李下に冠を正さずということもございますので、この問題につきましては慎重な御処置をおとり願いたい、こう私は考えるわけでございます。
 今日までいろいろ立法の状況を見ておりますと、ある一つの法律ができるとなりますと、それに対して賛成、反対の両派がありまして、国会議員に対してもずいぶん圧力がかかってまいります。これはいろいろの法律、これは請願で来たりあるいは陳情で来たり、そういうことが今日起こっております。国会議員はそうした請願、陳情の圧力団体の圧力にどうしても心をひさがれるような思いになることがしばしばあるわけでございます。このサラ金問題につきましても、そうした圧力団体的に行動されておる者がないとは言われません。国会議員を顧問にいたしまして有利な立法をつくり出そうという、そういう方法がとられておるのではないかと思われる。そういうことを報ずる記事が新聞とか週刊誌にしばしば載るということ自体、私は問題点がそこに残されておるからであろうと思うわけでございます。もちろん、マスコミは無責任に何でも書くというふうにお考えになる方もおられますが、必ずしもそう言うてこの場合逃げてしまっていいものであるかどうかは私は問題であろうと思うわけであります。今日の段階ではもはやこのマスコミの記事そのものは率直に受けとめて、これに対応する措置が必要ではないかと思います。さもなければ、これは国民の政治に対する不信というものが相当深いものになっていくと私は憂えるものでございます。
 そこで、私は法務大臣にお願いをいたすわけでございますが、政府として、もし全金連その他のサラ金業界の顧問となっておられる国会議員があるといたしまするならば、このような人に対して、やはり顧問として顧問料を受け取って法案審議に当たるということは収賄の疑いを受ける心配があるのだから顧問を辞任するように、こういう助言をいたしてくださるわけにはまいりますまいか、私はこういう点についてお願いをするわけでありますが、いかがでしょう。
#327
○瀬戸山国務大臣 どのくらいの顧問料を要求しておるのか私は全然知りません。いませっかくの御注意でありますけれども、その顧問に就任しておられる方々がどういう方々であるかは十分知りませんけれども、これは政治家でありますから、私からとやこう申し上げることはしないつもりでございます。
#328
○飯田委員 普通の状態のときに、あるところの顧問になりまして顧問料をいただくということは、それは許されるかもしれません。許されるでしょう。しかし現実にサラ金の立法をしようとしておる段階において、そのサラ金業者の意を迎える法案をつくろうとするということは、私はいかがなものかと考えるわけであります。恐らく顧問になっておいでになりましてもサラ金業界の利益になる法律をおつくりになることはあるまいと私は考えるわけでありますが、それならば、たとえば今日のサラ金問題におきまして一番問題になりますのが、業者の規制の問題だけではございません。業者の規制の問題のほかに利息制限法の問題がございます。この二つは別個のものです。ところが、これまで各党あるいは各機関において、私的にあるいは公的におつくりになったサラ金業に関する法案を見ますというと、すべてこれは貸金業法案となっております。貸金業法案といいますのは業者規制の法律でございまして、それもそれなりに有用ではございましょうが、しかし金利問題はほとんど見逃されておる現状でございます。金利問題についてサラ金業の法律をつくるに当たりまして、もし利息制限法を無視したような金利を盛り込んだ法案をつくりますならば、これは大変問題になろうと思います。利息制限法というものは何がゆえに設けられたかということが問題になるからです。
 そこで、多くの貸金業法案は利息制限の問題については目をつぶっております。こういう状態で業者規制の法律をつくったといたしましても庶民の嘆きは恐らく救われない、私はこのように考えるわけでございます。立案の立場がすべて業者の立場、業者保護の視点に置かれておるのが今日までのサラ金規制の態度でございます。何とかしてサラ金業を生かしておこう、こういう考え方からすべてが発しておりますために、利息を余り安くしてはいかぬとかいったようなことが常に問題になるわけです。しかしながら、今日私どもが考えなければならぬ問題は、利息制限法というものが一体どういう目的でつくられたかという問題でございます。私は、この法律がつくられた当時の理由も今日の理由も変わりはないと思います。特に今日低金利の時代において、利息制限法のあの制限さえ私は高いと考えております。これは庶民にとって非常に大きな負担であることには間違いないのです。そういう点から考えますと、今日の大蔵省でお考えになっておる業者規制の法律、これではサラ金に苦しんでおる人たちの苦しみを救う手段としては不十分であります。もちろん業者を規制する法律として大蔵省でおつくりになる、同時に利息制限法はあくまでも厳守すべきだ、利息制限法を無視するような方向で、あるいは利息制限法を空文化するような方向で法律はつくるべきではない、このように私は考えるわけでございますが、この問題につきまして大蔵省及び法務大臣の御見解をお伺いいたします。
#329
○吉居説明員 利息制限法は私どもの所管ではございませんので、そのこと自体について申し上げる立場にはございませんけれども、いまの先生のお話の現在の利息制限法、これは三段階に分かれておりまして、十万円以下の場合には二〇%、これを超えるものは民事上無効、こういう規定になっているわけでございます。これまでも私ども大蔵省としてなし得ることといたしまして、自主規制法に基づく各県に設けられております協会に対しまして、その協会の定款金利をでき得る限り利息制限法の枠内にとどまるように引き下げるようにという指導はしてきているところでございますけれども、先般私どもの方で各県知事に依頼し、各県の知事が行いました実態調査の結果によりますと、現在の貸金業者の金利は利息制限法をかなり上回っておる、こういう実態でございます。そこで、いま直ちに先生が御指摘のように、現行利息制限法の枠内でなければ営業は認めないということにいたしますと、ほとんどのものが現段階においては営業がむずかしくなってくる、こういう問題も実はありましょうし、あるいは他のいろんな金利の制限あるいは規定との関係によりまして、いわば地にもぐってしまうということにもなりかねませんし、あるいはいわゆる庶民の金融需要というものとの関係でどうか。いろいろ実は問題もあるものでございますから、いま直ちに貸金業者の金利は利息制限法の金利内であるべきだ、こういうことにつきましては、いま申し上げました諸点を十分考えて慎重に検討すべき問題ではないか、こういうふうに思っております。
#330
○飯田委員 前には質屋法というのがございまして、質屋が相当はやったことがございますが、質屋とこのサラ金業と比べますとどこが違うかといいますと、質屋の場合は有限責任でございます。しかしサラ金の場合は実質上は無限責任、どこまで利息が伸びていくか、元金が伸びていくかわからないものでございます。十万円を借りまして十年たちますと一億円を超すのであります。こういうような無限責任的な責任を負わされるような組織のサラ金と質屋というものは性質が違うのでございます。質屋は、なるほど利息制限法よりも高い利子でございます。しかし無限責任ではないから、有限責任だから、質物を流せばいいから庶民はそれで救われるわけなんです。だからサラ金におきましても質屋営業のように、最後の死まで追い詰めるようなことのないような歯どめがあれば私はいいと思いますよ。しかし今日のサラ金の問題は、どこにもそうした歯どめがないじゃありませんか。ことにわずか十万円とか五万円借りる人たち、この人たちに特に高利をもって報いる、これはおかしいことじゃないかと思います。大金持ちに対しては安い金利で幾らでも銀行が貸してくれる、ところがその日が暮らせないような者に対してはきわめて高いものでしか貸さないような今日の経済組織、これが私は問題であろうと思います。
 そこで、なるほどサラ金業が成り立たなくなればサラ金業者はお困りでしょう。お困りでしょうが、それよりもなおお多くの庶民が泣いておるという事実、借りる方が悪いとおっしゃるけれども、借りる方が悪いということは私は言えないと思います。今日、賭博罪をなぜ罰するかということをお考え願いたい。賭博罪を罰しますのは、射幸心をあおるから罰するわけでしょう。つまり、少ないお金でもってたくさんのお金をもうけさせる一つの手段として人間の心をむしばむからであろうと思いますが、サラ金の場合も同じく、いかにも安く貸すようなふりをして実はアリ地獄に追い込む、そういう組織の金貸し業であるわけです。そういうものを許しておくこと自体が公序良俗に反するのではないかと私どもは考えるわけであります。サラ金業者は、業者が成り立たなければ転業を考え、生きる道を与えるのが政治であろうと思います。そういうことをしないで、庶民に責任を負わせるような指導の仕方は、政治と言えるかどうかわからないものだと私は考えるわけであります。
 そこで、この問題はそのくらいにしますが、もう一つお聞きしたいことがあります。
 今日、サラ金業者の資金回収の違法な、非道な行為がございまするけれども、これを取り締まる現行の刑事法では、現行犯でなければ立証が困難だというふうに思われますが、この点につきましてはそうでないかどうか、御意見をお聞かせ願いたいと思います。警察庁のお方の御見解をお願いいたします。
#331
○佐野説明員 現行犯であれば現場の措置としてはしやすいということはございますが、現行犯でなくても警察の捜査能力をすれば十分な対処はできます。
 問題は、前提として罰則規定にかかるか、かからないかという問題、あるいはその罰則規定の構成要件とか内容が捜査なり事実発見のための容易な構成要件になっているか、そんなところが問題になろうかと思います。
#332
○飯田委員 現実には被害者が警察に届けました場合に、多くの場合、証拠を収集することが困難であるということ、もう一つは民事不介入だということで余り助けていただけないということの訴えを受けるわけであります。これはもっともだと思いますが、民事不介入の枠内にある警察力で、現在の法律で取り締まれというてもそれは無理だということも私はよく存じております。しかしながら、こうした状態から何とかして脱出して、弱い立場にある庶民を暴力的取り立て行為から救出するためには何らかの方法を講じなければならぬのですが、これにつきましていかなる方法があるとお考えでしょうか。警察庁及び法務省の御見解を承ります。
#333
○佐野説明員 私どもといたしましては、処罰法にのっとりまして処罰するという観点もさることながら、むしろそれ以前の段階で被害予防というふうな観点もあわせ考えるべきではないかという気がいたしております。したがいまして、現行法の枠の中でもいわゆるサラ金一一〇番というふうな制度を県の方に勧奨し、そういったものを設置させる、あるいは相談事というものを従来よりも現在の社会情勢にかんがみてより一歩前進させる。もちろん、民事不介入というたてまえのもとではございますが、そういった意味で被害防止ないしは予防という観点からも、さらに一歩進めていきたいと考えております。
 さらに、罰則の整備の問題になりますと、やはりサラ金をめぐるいろいろな事態なり事象の全体的な掌握というふうな問題あるいは実態把握という問題をなおさらに詰めてみないと、いま即断できるような場面ではなかろう、かように考えております。もちろん、多少なりとも罰則の必要性があるのではないかという感じはいたしておりますが、現段階ではあくまで感覚的な問題にすぎないということをつけ加えておきます。
#334
○飯田委員 法務省の御見解ございますか。
#335
○伊藤(榮)政府委員 暴力的な取り立てにつきましては、民事不介入という原則があるにいたしましても、やはり程度を超えたものは脅迫罪とか暴力行為取締法、こういうもので現に取り締まっておるわけでございまして、そういうものは今後とも十分活用して取り締まっていかなければならぬと思います。
 なお、お触れになりませんでしたけれども、過酷な取り立てが行われる前提をまず摘み取ってしまうということが非常に大事だと思います。その意味で、悪質業者を規制してシャットアウトするというようなこと、それから被害者が一体自分は幾ら元利が残っておるのかわからないままおどかされることのないように、営業上のいろいろな領収証書の発付義務でございますとか、その他の営業上の規制措置をきちんとしていくということがまず第一に行われなければならぬと考えております。
#336
○飯田委員 サラ金問題の解決は、庶民大衆の側に立つ考え方からは、何といいましても利息制限法を維持する以外にないと私は考えるわけであります。利息制限法という法律を無視してもいいという考え方が今日起こっておりますのは、結局、利息制限法には罰則がなくて出資法にだけ罰則があるという、このところから来た現象であろうと思います。
 そこで、出資法の問題は行政規制の問題として考えていただいて、庶民が金を借りたときに高利を支払わせられるという問題を解決するためには、やはり利息制限法に罰則をつける、どんなに軽い罰則でもいいから罰則をつけることが必要であろうと思います。罰則がつけば、罰金でも構いませんが、それで警察は民事不介入の拘束から離れることができるわけでであります。遠慮なく取り締まりができるはずであります。そういう手段を警察に与えていかれるということの必要性は今日大きいと思いますが、この点につきまして、警察庁及び法務大臣の御見解を承りたいと思います。
#337
○佐野説明員 金利を下げれば処罰あるいは警察が取り締まる対象がふえるという意味では確かに意味がございます。ただ問題は、そこまでふやす必要性の問題になりますと、金融情勢なりその他社会情勢全般を踏まえてみないといかがかという気がいたします。したがって、私どもの立場といたしましては、利息制限法なりを所管いたしおります役所なり行政官庁の御意向といったものが那辺にあるのかというふうな問題からその問題については検討してまいりたいと考えております。
#338
○伊藤(榮)政府委員 御指摘のように利息制限法の金利まで出資法の金利を近づける、無限に近づけてついに一致せしめるということは理想であろうと思います。しかしながら、翻って考えてみますと、市中金融機関が一般の庶民に無担保で簡単にお金を貸してくれるような状況には必ずしもないのじゃないかと思います。そうしますと、すべてのサラ金業者が全部店じまいをするようなことになるであろうと思われる措置を一挙に仮にとったといたしますと、給料日まであと三日間、わずかな金を借りたいという人が借りる先が全然なくなります。そうなれば、結局もぐりの業者が出てくるに違いありません。そういうようなことを考えますと、この出資法に定める金利、たとえば私どものいまの考えでは、サラ金業者の規制に関する法律の中で別個にもう少し安い金利を定めまして、次第次第に、いわゆる軟着陸的に最終の理想であります利息制限法の利率まで下げていく、そういう措置をとるべきではないかと考えております。
#339
○飯田委員 本日、まだいろいろの点をお尋ねしようと思いましたが、時間が来ておりますのでこのくらいの点でやめようと思いますが、このサラ金の問題は、私、きょう法務大臣からいろいろお話を承りましたが、法務大臣の御認識なさっておるよりはもっと深刻なものがあり、また世の中の人の批判はもっと深刻な大きな批判があるのではないかと実は感じておるわけでございます。そこで、業者規制の問題、利息制限法の問題あるいはサラ金の高利禁止の問題につきましてさらに御検討を願いまして、いまのサラ金によって苦しめられておる人たちを救済できるような方法、これを見出していただきたいと思います。私はサラ金業者を全部つぶせとは申しません。少なくとも高利を禁止しろということを申し上げたいのです。サラ金業者はどんどん発展なさって結構です。しかしその高利、無限責任的に追求される高利、これをなくする方法を考えていただきたい、このように思うわけでございます。法務大臣、いかがでございましょうか、こういう点につきまして御見解を承りたいと思います。
#340
○瀬戸山国務大臣 きのうでしたかおとといになりますか、いわゆるネズミ講の問題は法律で禁止いたしました。これは禁止することが適当である、私もさように判断しておりますが、国会でそういう判断をされた。問題は、政策を立てあるいは立法をするときに、その社会の実情にどう合うかということを考えてやるべきものだと私も思っております。先ほども刑事局長からちょっと触れましたけれども、社会生活上、急の間に合う――金額にいろいろありますけれども、五万、十万あるいは百万、五百万というのもたまにあるようでありますが、そういうものを手っ取り早く無担保で借りられる、そういう必要が社会にある。でありますから、こういうサラ金と言われますか庶民金融が発達して、現在は十六万とか十七万とか言われておる、こういう社会の実態。一面において人様の金を預かってそれをまた融資をしていこうといういわゆる一般の金融機関、それは担保等がなければ、人様の金を預かっておるわけでございますから、それほど危険負担をして簡単に貸せないという事情がある。しかし、これもできるだけ多くの人が安易に利用できるような制度といいますか方法をだんだん広げていかなければならない。また、社会情勢がそれにマッチするというか適合する状態にないから、こういうまた別の一つの金融機関ができておる、この実態をわれわれ無視するわけにいかないというところがあるわけでございます。
 先ほど、二〇%、一八%、一五%という三段階に分けた利息制限法がありますが、これでやって、しからばそういう社会情勢、需要に応ずる金融業が成り立つか成り立たないか。これを禁止してしまうというなら非常に簡単でございますけれども、それじゃ社会の実態に合わない。また別な意味において、多くの人々がそういう金を借りて手だてをするということができなくて非常に困る、こういう情勢をつくることは、一面において社会に混乱といいますか、別の意味の悲惨な状態が出るおそれがある。こういうことも政策を立案するときには考慮しなければならない。そこの兼ね合いでありますから、いま非常に問題になっているのは、まず金利が高い。一〇九%といえば、とてもじゃないが今日そういうことは許さるべきものじゃないと私は考えております。それと、貸し方、借り方がきわめてずさんである。借りる方も注意してもらわなければならぬ。しかし、借りる方は非常に事情に追われておるからやむを得ず借りるということもありましょう。でありますから、金利はこうなるという計算も明らかにして、あるいは領収書もちゃんと出す。後で、どうしてこんなになったかわからぬような金額になって苦しむというようなことのないようにあらゆる仕組みをして、社会の需要に応ずる金融機関がある程度あるという状況をつくり上げなければならない、これを私どもは考えておる。社会の実態に合ったものはどうすべきかということを考えておるのでありまして、ただ一概に、率直に申し上げますが、利息制限法に近づけば理想でありますけれども、それではまた一面社会の需要に応じ得るか。そういうものが成り立たないことになりますよ、だれも好んでやらぬでしょうから。成り立ちながら、世間にも裨益しながら、しかも弊害のない方法はどうなるか、こういうことを考えなければ、ただ一刀両断にはなかなかいかない。そこを御理解願わないとこの問題の解決ができないのじゃないか、かように考えて、そういうたてまえで各省庁と相談をしておるというのが現状でございます。
#341
○飯田委員 終わります。
#342
○鴨田委員長 正森君。
#343
○正森委員 私はまず最初に、中央競馬会が行っている場外馬券売り場の問題について聞かせていただきます。
 大阪市の西区というところに江戸堀というところがありますが、そこに場外馬券売り場をこしらえようということで中央競馬会がいろいろやっておられるようであります。ところが、ここは非常に閑静な地域でございますから、地域で二万近い人が署名をして、教育環境が悪くなるということで監督官庁である農水省の競馬監督課などへ陳情しております。また、地域の幼稚園、小学校、中学校長、PTA会長という人々も陳情しておりますが、なかなかやめようとしないのです。中央競馬会は最近、これは環境上問題があるということで断念する方に踏み切ったやに聞いておりますが、実際上なかなかそれが行われない。どこに問題があるのか、監督課長、お答え願います。
#344
○三堀説明員 最近競馬人口と申しますか競馬ファンの数が相当にふえてまいりまして、これに伴いまして競馬場並びに場外馬券売り場の混雑を緩和する、あるいはノミ行為の防止なり排除を図っていく、こういうような観点から場外馬券売り場の整備充実を図っていく必要が出てまいりまして、日本中央競馬会におきましてそのための整備計画を進めておるところでございます。
 ただいま先生から御指摘の土佐堀の場外馬券売り場につきましては、昭和四十九年度から当競馬会が、施設の建設を計画しております当事者との間で協議をいたしまして建設計画を進めることになったわけでございますけれども、その後五十一年ごろから地元の住民の方々の間で反対運動が起こってまいりまして、このため地元との調整が整っておらないというようなことで計画が進んでいない状況にあると承知しております。
 地元の方からは私ども農水省の方に対しましても、反対同盟をつくっておられる方々やPTAの方々がおいでになりまして、静ひつな環境が損なわれることあるいは交通公害が心配されるというようなこと、さらには近くに小中学校等がございまして、子弟の方々の教育上好ましくないというような理由から設置に反対であるという趣旨の陳情がございましたので、中央競馬会に対しましては、この陳情の趣旨を伝えますとともに、その趣旨を踏まえて慎重に対処してまいるように指導しておるところでございます。
 なお、場外設備を設置いたします場合には、競馬法施行令第二条第二項に基づきまして、農林水産大臣の承認を要するわけでございますけれども、本件につきましては、設置の承認申請はなされておりません。
#345
○正森委員 私の聞いているところでは、承認をする場合には地元住民の大部分の同意があるということが前提であると聞いてあります。ところが、本件については中央競馬会が出先の不二建設という実際に工事を行うところに十億円のお金を貸し付けているのですね。これは私の聞きますところでは十年間無利子であるということで、中央競馬会が、地元の住民が一致して反対しているから、これはもう設置しないという方向に心を固めているのに、十億円無利子で借りられるということがあるために、ずるずると不二建設が、もうやめたというようにしないでくれということのために、問題の解決が長引いていると聞いております。もしそういうことであればこれは非常によろしくないので、農水省としては中央競馬会を通じて不二建設にも言うべきことを言うて、こういう問題には地元住民の不安をなくすために決着をつけるべきであるというように思いますが、いかがですか。
#346
○三堀説明員 先生から御指摘もございましたので、御趣旨も踏まえまして、できるだけ早い機会に、この土佐堀の問題が結論を見出しますように適切な指導をしてまいりたいと存じます。
#347
○正森委員 それでは、次の問題に移らしていただきたいと思います。
 最近、暴力団を取り締まらなければならないということが言われておりますが、事もあろうに、大阪に清水谷高等学校というのがありますが、この高校生が山口組などのあの醜悪な暴力団抗争に慎慨をいたしまして、ここに、ある新聞の一面に載りました記事がございますが、学園祭の中で暴力団の醜悪さを暴露するということで、クラス全員が出演して二十分の暴力団暴露の映画をつくったわけです。また弁護士等に暴力団の実態、資金源というようなことをいろいろ聞きまして、私の伝え聞くところでは、ここにおいでの宮脇捜査二課長の御研究にもあやかったということでございますが、そういうのをパネルで出そうとした。ところが、それに対して暴力団が、これはそういうことをやるならおまえたちひどい目に遭わしてやるということで脅迫をしたという事件がございました。その後の調査では、これは暴力団が実際に行ったのではなしに、暴力団をかたったとも言われておるのですが、そういういきさつにつきまして、警察庁から、もしその後の経過がわかっておりましたら、学園をこういうことでおどかすなどということはとんでもないことですから、簡単に経過を御説明願いたいと思います。
#348
○宮脇説明員 ただいまお話がございましたように、高校の文化祭で暴力追放のキャンペーンを実施していることを知りましたあるガードマンでごいますが、大阪市東区に所在する東京パトロール警備という会社でございますが、そこのガードマンの安田正夫という二十六歳の男がこれを知りまして、高校生が暴力団のことをやっていいのか、ハジキを撃っても聞こえぬところへ連れていこうかなどと腎追いたしまして、喫茶店に連れていきまして五万円持ってこいと金を要求、被害者が金がないと申しますと、二万円でよいから十月二日にオリーブに――オリーブという喫茶店でございますけれども、持ってこい、学生の身分証明書を取り上げたというような事実によりまして、大阪府警におきましては、この男を恐喝及び恐喝未遂として逮捕をいたし、取り調べをいたしました。
 この件につきましては、前後いたしましたが、学校側の校長先生からの被害申告に基づきまして行ったものでございます。現在までのところ、この被疑者と暴力団との関係につきましては把握いたしておりませんけれども、暴力団と偽りましてこの被疑者の意図する結果をある程度見たことは、いかに暴力団の市民に対する威力が大きいかということを思い知らされる事件でありまして、警察としての暴力団壊滅への一層の努力を促される思いであるわけでございます。
#349
○正森委員 いま概要を御説明いただきましたが、このまじめな高校生の文化祭が、暴力団の名前をかたっておどかされて、このまじめな研究が文化祭でできなくなったという事実があるわけですね。
 そこで、法務大臣に伺いますが、いま警察庁から一定の御説明がございましたが、法秩序維持を図らなければならない法務大臣としてどうお考えになりますか、またどういうぐあいにこういうことを根絶しようと思っておられますか、所信だけで結構ですからお述べください。
#350
○瀬戸山国務大臣 いかなる場合でも暴力によって自己の主張を通したりあるいは他人に圧力をかけることは断じて認められないことでございます。当然に警察あるいは検察庁は全力を挙げてそういうものを防遏する、こういうたてまえでございます。
#351
○正森委員 こういうように暴力団というのが、名前をかたっただけで市民を非常に恐怖させるということがございますが、最近大阪の大和銀行というとにもかくにも都市銀行に、わずか一千株の株を二十株ずつ五十人に名義書きかえをしてくれ、こういうような事件が発生して、大阪府警に相談があったというように聞いておりますが、それについて承知しているところがあればお答えください。
#352
○宮脇説明員 御指摘の件につきましては、株の分割行為が犯罪に該当するかどうかも含めまして現在調査中でございますので、この場で詳細にお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。
#353
○正森委員 それでは私から伺いますが、この大和銀行に対して千株を二十株ずつ名義書きかえをしてくれと言ってまいった者は、その自分たちの住所というのを五十人が全員ある特定の会社にしておるように思いますが、その会社はどういう会社ですか。
#354
○宮脇説明員 その点については承知をいたしておりません。
#355
○正森委員 それでは私から申しますが、大阪市南区横堀七の三十一にある東洋リザーブという会社に住所があるということになっております。そしてその筆頭で株の書きかえを請求したのは広末久雄という人物でありますが、これは東洋リザーブの親会社である日本リザーブの顧問をしております。ところが、その以下に四十九名名前を連ねておりますが、その中には多数の暴力団と思われる人物がいるはずであります。私はその氏名一覧を警察庁にあらかじめ差し上げておきました。名前を一々申し上げてくれとは申しませんが、その中に暴力団に関与すると思われる者が何人ぐらいおりましたか。
#356
○宮脇説明員 個々の名前等につきましては控えさせていただきますが、暴力団関係者と見られる名義も十人内外認められるところでございました。
#357
○正森委員 この名義書きかえを請求された銀行は、これは九月末に書きかえを請求されたようでありますが、十二月に株主総会がある。二十株ずつ名義書きかえをして、しかも請求人の中に十名前後も暴力団がおるということになれば、株主総会に出てきて何か言われるのではないかというように非常に恐怖いたしまして警察へ届けたというように申しているわけであります。
 そこで、警察に伺いたいと思いますが、大和銀行が、なぜこういうように二十株ずつの名義書きかえをされるような羽目になったのかということをある程度承知しておられますか。
#358
○宮脇説明員 その辺の事情については、私といたしましては承知をいたしておりません。
#359
○正森委員 それでは資料を配ってください。
 警察にその点を含めて調査しておくようにというように言ったわけでありますが、調査していないようでありますから、私が知り得たことについて私から若干申し上げます。
 それで、日本リザーブ関連企業というのがあります。これは五十年三月創業と書いてありますが、正確には登記は四月であります。この日本リザーブというのは、代表取締役が久保重蔵という人物であります。ここに商業登記をとってまいりましたが、資本金が四千万円の会社であります。仕事の内容は繊維製品の製造販売等というようになっております。それで、同じように差し上げました「手形割引枠」という一覧表がございますが、この会社は五十年の春に会社を設立いたしましてから、たえば協和銀行、三和銀行、住友銀行というような一流の都市銀行に対して割引枠を設定することを求めました。これらの銀行は、大部分本店からの指示で割引枠をつくったようであります。それはどういう理由かといいますと、この久保重蔵という人物は、部落解放同盟の尼崎市戸ノ内支部が発行しております機関紙である解放新報社の「解放新報」という新聞がありますが、それの編集人をしておるわけであります。そこで、ふだんからこれらの新聞に広告をとるとか、あるいは狭山差別裁判についてとか、同対審の精神についてということで銀行に話をしたりして面識があるわけであります。そういう関係で、本店から直接言って手形の割引等の銀行枠を設定してもらったということになっておるわけであります。それだけなら問題がございませんけれども、その後二、三年の間に営業が必ずしも思わしくなくなってまいりまして、別紙のところにある、東洋リザーブというところはまだ生きておるようでございますが、それ以下のホンダ緑化以下の幾つかの子会社は成績が次々に悪くなって、大部分が不渡り手形を出すようになりました。ところがその不渡り手形に日本リザーブが裏書きをして、そして銀行に割り引いてもらっているという関係になりましたので、最終的には落としきれないわけであります。そこで、そういう場合に、これらの銀行に対して過振りというのがあるのだそうですね。つまり、自分が落とせない場合に銀行に肩がわりしてもらう。こういうことを次々と続け、そして過振りが長くなると困りますので、銀行の貸付枠を拡大して、そしてこちらへ振りかえていくということをやりましたために、昨年の後半から膨大な数になり、ここに挙げておりますように、約二十ぐらいの銀行で八月中旬現在で四十二億七千二百万円というようになり、ほかに正規でない過振りと称するものが五億円ぐらい生じるということになってきたわけであります。
 私は、こういう点について、大蔵省銀行局にこの資料を差し上げて、各銀行に対してそういう事実があるのかどうか、あるとすればどういう原因でこういうことが生じたのかということを調査するように申しておきましたが、その後調査されましたか。その現状について御報告ください。
#360
○岡崎説明員 先般、先生からお話がありましたので、そのデータ等に基づきまして、現在銀行からヒヤリングを行っておるところでございまして、その詳細については、いまの時点で申し上げるような状態にございません。
 それから、事柄の内容といたしまして、個々の金融機関の個別の取引にわたる話でございますので、その性格上、明確になった場合でも先生に申し上げられるような性格であるかどうかということにつきましては、ひとつ御理解賜りたいと存じております。
#361
○正森委員 それでは一般的に聞きたいと思いますけれども、過振りと称するのは通常はまれに行われることで、実際上は紳士協定のような形で約定があって、その範囲内でまれに行われている。しかし、その場合にはすぐ現金を入れて元へ戻すということが通常であって、過振りが次々に続いて五億円にもなる、そしてそれを現金で返済するのでなしに、手形融資の枠を拡大することによって解決するとか、あるいは自分の手形を入れることによって一時を糊塗するというようなことは、銀行の手形割引とかそういう関係では通常考えられないことだと承知しておりますが、いかがですか。
#362
○岡崎説明員 一般的に銀行が小切手等を呈示されました場合に、当座版金にそれを落とす金額がなければその手形等は支払いを拒絶するというのが通例でございます。ただ、個々の取引の従来の経緯あるいは債務者の資力等によりまして、あるいはその小切手が、すぐに入金見込みがあるというような場合には、それは過振りといたして一時的に処理するということは間々ある例ではございます。
#363
○正森委員 銀行局も、まれにはあるけれども継続的にこういう大量の過振りがあるというようなことは不正常であるということをお認めになったというように思います。
 お手元の資料にもございますように、協和銀行に至っては七億八千八百万円、三和銀行心斎橋支店は三億一千百五十一万円、住友銀行心斎橋は二億六千万円、住友信託本店は二億七千二百八十万円、太陽神戸銀行大阪は四億四千八百万円、大和銀行船場支店は一億七千百万円、第一勧銀は二億七百万円というように続いてまいりまして、ほかに富十銀行、三井銀行、三菱銀行、東海銀行、親和銀行というようになって、総計が締めて四十二億七千二百万円、ほかに過振り五億というようになっておるのですね。なぜこういうことになったのだろうか。しかもこれは、私が調査しましたら、いずれも銀行に対して当座預金も何もないのですね。担保をとっておるかと言ったら、担保はとってないと言うのです。これは明らかに異常な融資ではないかというように思われるのですね。
 私が、なぜこういうことが行われるのかということを聞きましたら、第一には、本人は同盟員ではないようですが、部落解放同盟のいろいろの関係があって、本店からの指図で手形枠をこしらえたからだというのが第一点であります。第二点は、それだけではないだろうと言いますと、ある政党の有力幹部であるある国会議員から、過振りを認めてやってくれ、手形の枠を広げてやってくれというような御連絡の電話がございましたということで、そこでこういう不正常な状態を続けておるということを言っている銀行があるのです。私は、そういうことがあるとすれば、これは非常に遺憾なことであるというように思わざるを得ません。そして、そういうぐあいにいろいろ手だてを講じてもなお言うことを聞かない、たとえば大和銀行などは、これはできないというように断りますと、いま捜査二課長が答えたように、わずか千株の株を五十人に二十株ずつ分割しろ、こういって、その中に暴力団が十名余りもおるということで、株主総会を開けばどんなことになるかわからないぞということを暗ににおわすような状況をとる。これは私は非常に問題のあることである、こう思います。
 いま、わが国の中小企業というのは少しでもお金がほしいと思っているのですけれども、その中小企業が都市銀行、市中銀行からお金を借りるときには担保を出さなければなりません。過振りなんかめったに認めてくれません、それをまた枠にすりかえて、自分が一文も出さなくてもいいようにしてくれなんということは、これはまず考えられないことであります。ところが、ある特定の団体の関係の会社であったら、ある有力な国会議員が電話をしたり口をきいたから、名義書きかえで暴力団の名前を使うたからということでそれが許されるということになれば、これは正常な金融秩序ではないというように言わざるを得ません。
 そこで、私は法務省の刑事局長に伺いたいと思いますが、一般論、抽象論として聞きます。具体的な事件としては伺いませんが、一般的に銀行等が、非常な不良債権である、貸し付けである、これ以上貸し出しをすれば銀行が回収不能になるかもしれないということが相当程度に予見されている場合に、あえて放漫な貸し出しを続けるというようになった場合には、商法四百八十六条に言う「取締役、」「自己若ハ第三者ヲ利シ又ハ会社ヲ害センコトヲ図りテ其ノ任務ニ背キ会社ニ財産上ノ損害ヲ加ヘタルトキ」こういうのに、つまり特別背任罪に該当し得る場合もあるのではありませんか。これは一般論であります。
#364
○伊藤(榮)政府委員 一般論としては、そのとおりでございます。
#365
○正森委員 これは具体的にその会社について言っているわけでありませんけれども、一般的には特別背任罪になり得るものであるということは刑事局長もお認めになりました。これは商法としては非常に重くて「七年以下ノ懲役又ハ五十万円以下ノ罰金ニ処ス」こういう犯罪であります。
 いま私が説明しましたようなことがもし事実であるとすれば、これらの一流の都市銀行の取締役が、自分のところに預金をしてくれた一般預金者の不利益において、会社の不利益において、不良貸し付け、不正貸し付けと思われるものを手形割引、商手割引という名前で行っておるということになるわけですね。私が調べたところでは、すでに倒れてしまった子会社振り出しの手形を裏書きをして、そして割り引いてもらっている。
 大蔵省に聞きますが、私がすでに数日前に調査してほしいと言いました。大蔵省からの中間報告によると、鋭意各銀行の重役あるいは総務課の諸君を呼んできて聞いておるようであります。ある程度事情聴取も進んでおると思いますが、もし私が指摘したような事実がある程度認められるということであれば、一般の預金者保護のために、あるいは会社に不当な損害を与えないために、銀行局から関係銀行に対して、こういう問題のある手形割引あるいは融資ということはやめるようにという指導を当然強力にすべきであると思いますが、調査の結果もしそういう事実が出てくれば、そういう指導をしていただけますか。また、その事実について私のところに報告をしてくれますか。
#366
○岡崎説明員 先ほども申し上げましたように、現在ヒヤリングを進めておるところでございますので、どのような実態であるかということはまだ判断はつけておりません。ただ、もし先生がおっしゃるような銀行経営上問題があるというような点がございますれば、銀行の健全経営という見地から適切な指導をいたしたい、かように考えております。
#367
○正森委員 私は、ぜひともそういう指導をしていただきたいというように思います。そして、私はある党の有力幹部であるある国会議員と言いましたが、その議員が、私が最近調査しましたところでも、たとえば住友銀行には十日前に、こういうような非常に経営状態が悪いということがわかっておるのに過振りを認めてやれ、枠を広げてやれといって電話しているという事実もわかっているのです。こういうことをなさるについては、日本リザーブという会社と何らかのきわめて深い関係があるのではないかというように疑われても仕方がないのですね。私は、国会議員としてはえりを正さなければならないという点を指摘して、私の質問をきょうは一応終わらせていただきたいと思います。
#368
○鴨田委員長 これにて散会いたします。
    午後七時四十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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