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1978/09/28 第85回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第085回国会 本会議 第3号
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1978/09/28 第85回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第085回国会 本会議 第3号

#1
第085回国会 本会議 第3号
昭和五十三年九月二十八日(木曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第三号
  昭和五十三年九月二十八日
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議員請暇の件
 国務大臣の演説に対する質疑
    午後一時四分開議
#2
○議長(保利茂君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 議員請暇の件
#3
○議長(保利茂君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。
 千葉千代世君から、海外旅行のため、十月七日から二十一日まで十五日間、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(保利茂君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
#5
○議長(保利茂君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。下平正一君。
    〔下平正一君登壇〕
#6
○下平正一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、先日の福田総理の所信表明に対して若干の質問をいたします。
 総理の演説をお聞きいたしましたが、世界はまさに転機に立っているとか、国際経済の課題は「協調と連帯」の精神であるとか、その大部分を一連の外遊報告のPRに費やしていますが、その割りには日本外交の新しい進路が浮かび上がってこないことは、どうしたことでしょうか。肝心の経済や生活の問題については駆け足で、「次第に明るさが広がりつつある」と、相変わらず楽観的な見通しを語り、円高、不況で苦しんでいる中小企業者に対しては、「影響が懸念される」とか、深刻な失業問題についてさえ、「雇用情勢にもいま一歩のもどかしさが感ぜられる」など、まるで他人事のように述べております。いつ、何を、どのようにするか、その具体的内容に乏しく、厳しい反省と現状打開の気魄が欠けており、むなしい感じを持った者は私だけではないと思います。(拍手)
 日ソ関係は一体どうなるだろう、不景気は脱出できるのか、赤字財政をどうするのだろう、有事立法って一体何だ、その内容をあなたから具体的に聞きたいと思っていた多くの国民にも失望を与えたと思います。
 私は、国民の切実な願いを受けて、党の見解を明らかにしながら、以下数点にわたって質問をいたしますので、誠意のある具体的な御答弁を福田総理にお願いいたしたいと思います。(拍手)
 日中平和友好条約の締結は、日中両国人民が長い間待ち望んでいたものであり、戦後、歴代保守党政府が中国敵視政策をとり続けていた時代から、一貫して両国の友好、国交正常化を叫び続け、その間、浅沼稻次郎元委員長の受難という犠牲を払ってまいりましたわが党としては、国民とともに心から歓迎し、祝福をするものでございます。(拍手)
 反覇権の条項を明らかにした平和条約は、いわゆる西側世界で初めてのことであり、この原則は今後世界の政治外交の重要な典例となるものだけに、日中両国の責任はきわめて重いと思います。
 言うまでもなく、覇権を求めず、許さずという態度は、平和憲法の精神に沿ったわが国の国是であり、日本外交の今後の基本となるものと信じます。
 福田総理、あなたの言う全方位外交には大きな一つの落とし穴がございます。日米安全保障体制を基軸とするというただし書きがついているからであります。
 日米安保体制はアメリカとの軍事同盟であります。軍事同盟は覇権反対の本旨にもとるものでございます。幸い園田外務大臣とケ小平副主席との会談で、すでに形骸化されたとはいえ、軍事同盟である中ソ友好同盟条約が近く中国の意思で廃棄されることが明らかになりました。
 そこで、私は改めて総理にお伺いをいたします。
 あなたは、憲法の精神に合致する覇権反対の条項を誠実に今後の日本外交の中に生かす決意であるとするならば、近い将来、中ソ友好同盟条約の見合いにおいて締結された冷戦時代の遺物である日米安保条約を解消して、毅然として非同盟中立の立場に立つべきであると思いますが、総理の所見を伺いたいと思います。(拍手)
 わが国の平和と安全に深いかかわりを持つものは、朝鮮半島の情勢でございます。朝鮮民族が自主的平和統一の悲願を達成して、緊張の要因を取り除くために最も大きな障害になっているのは、米軍の駐留、核の存在であります。
 分断国家、分断民族に対する最善の道は、干渉や介入ではなくて、あくまでもその民族の自決権を最大限に尊重すること、そのための国際環境をつくり上げることでなければならないと思います。しかるに政府は、アメリカと結んで韓国にてこ入れをし、日米韓の軍事一体化をますます強めていることははなはだ遺憾であります。分断国家の一方にくみしてその軍事的戦略に加担をするものが、何で分断国家の他方と友好を結べるでしょうか。これは、かつて中華人民共和国に対する日本政府の態度でもありました。その誤りを再び繰り返さないためにも、福田総理は、いまこそ朝鮮政策の転換を目指して勇断をふるうときではないでしょうか。(拍手)
 私は、総理が、パートナーシップに基づいて、カーター大統領に対して、韓国からすべての駐留米軍の撤退を勧告し、アメリカは韓国や台湾、否、アジアから手を引くべきことの要請をすべきだと思います。また、朴政権との関係を一時凍結し、朝鮮不介入の政策をとり、朝鮮民族の自主的平和統一の機運をつくり上げるべきだと考えますけれども、朝鮮問題に対する御所見を承りたい。
 北方領土の返還、この民族的課題を解決して日ソ平和条約を締結して、日ソ間の関係を真に安定した基礎の上に発展させることが、両国人民の利益にかなうばかりでなく、アジアの平和のためにも重要な課題であります。そのためには、ソ連との間に正しい相互理解に基づく、経済、文化、貿易など各分野で友好関係を増進することが大切であります。
 敵の敵は味方というような複雑な国際関係の中で、両国間に横たわる不信感を払拭するためには、単なる日ソ間の関係改善だけでは不可能だと私は思います。したがって、私はここに一つの提案をしたいと思います。
 それは、日本が米ソ両超大国の軍事戦略に絶対にくみしてはならないこと、二つ目には、中ソの対立の一方に巻き込まれてはならないということでございます。つまり、戦後の米ソ対立の冷戦構造の遺産を取り払いつつ、新たな米ソの軍事対立には巻き込まれることなく、アジアに一歩一歩、平和構造をつくり上げていくことだと思います。そのための条件をいかにつくり出すか、この使命こそが日本の一九八〇年代を展望したアジア外交の姿勢でなければならないと思います。(拍手)
 この際、進んでアジア太平洋地域に非核武装地帯を設置し、東南アジア諸国との互恵平等の経済協力を増進し、大小のアジア諸国が一致して米ソ両超大国から自立して、平和五原則に基く相互の関係を築き上げ、アジアに真の平和構造を確立することであります。この努力の積み重ねの中でこそ、初めて日ソ間の不信感やわだかまりはほぐれ、懸案の解決が可能になると信じます。福田総理の言う全方位外交とはかかる内容を持つものと思いまするが、総理の所信をしかと承りたいと思います。(拍手)
 あなたは、ボン首脳会議で、七%の成長、経常収支六十億ドルの黒字達成、開発途上国への政府援助を三年間で倍増する方針を明らかにしたようでありまするが、経常収支は半年をたたずして改定をせざるを得ませんでした。改定でも百三十五億ドルであります。あなたの見通しは、その実績から見て全く当てになりません。
 所信表明で、あなたは、景気は政府の経済見通しに沿って回復しており、明るさが広がりつつある、この補正予算で国内需要の振興を図り、輸出の減少を補って、景気の回復と雇用の改善を図り、実質七%の成長を達成する、こう申されましたが、今回の補正予算の規模とそれに盛られた内容では、七%の達成は、総理、不可能であります。依然として続出している倒産、百万人を超す完全失業者、この不況の現況を直視するならば、総理、どこに明るさが見出せますか。国民はだれもそう思っておりません。あなたの認識は、楽観論というよりも無責任であります。(拍手)
 補正予算に見られる純増は、政府固定資本が当初予算比六千億円の増加、財貨サービス経常購入は一千億円の減少、住宅投資への効果は六千億程度と思います。これで輸出減を充足することができますか。GNPを今年度わずかに〇・四%、来年度〇・六%ぐらい上げるくらいの、それほどの効果しかありません。
 しかも、補正予算の財源はどうですか。ほとんどが当初予算の枠組みの変更ではございませんか。純増は、前年度剰余金の千二百八十億円、税外収入の百七十億円、わずかに千四百五十億円にすぎません。これでパイが大きくなると思いますか。結局、今年度の経済成長は六%前後しか見込まれないのであります。
 総理、あなたが本気で七%の成長を望むならば、景気対策として一兆円減税がどうしても必要であります。(拍手)
 今年一月以降、国民の負担というものは著しくふえております。お酒を初め、国立学校の授業料、保険料、入院料、国鉄運賃、概算で一兆円ふえております。さらに、これから地下鉄、バス、私鉄運賃、この値上げも予想されますので、国民の負担はさらに大きくなります。
 一方、賃金はどうですか。円高で、ドル建ての国際比較では急上昇をいたしておりまするが、この名目比較でなしに、購買力の比較では、わが国の賃金は西ドイツよりもはるかに低い水準でございます。公共事業一本やりでは内需の拡大は限界に来ていることは、過去の経緯を見ても明らかであります。富の再配分を考慮する必要があります。一般物資の購買力を拡大させる意味からも、年収五百万円以下の勤労国民に対する一兆円の減税はこの際断行すべきであります。(拍手)
 なお、老齢福祉年金、障害年金、国民年金は余りにも低額です。世界第二位の経済大国にふさわしい福祉を国民は望んでおります。減税同様に、購買力を拡大させるという意味からも、大幅な増額を強く要望をいたします。
 一兆円減税については、全野党の足並みがそろいつつあります。あなたは、予算委員会において組み替え動議が可決されても減税をしないとあくまで言い張るつもりですか。責任をとって総辞職しますか、それとも、あなたが腹の中にあるここがチャンスとばかり解散、総選挙を行うつもりですか、どちらか、この際総理の態度を明確にしていただきたいと思います。(拍手)
 一九七一年から始まりました大量の国債発行は本年度でついに四十三兆三千億円、地方財政もまた三十五兆円の借り入れ累計を示しております。異常な歳出についていけず、安易に国債にもたれかかった自民党政府の無計画、無責任な政策の結果であります。この事態を放置しておくことは、財政の破綻、金融の混乱、インフレの要因の拡大に通ずることは疑う余地がありません。国家財政の健全化は当面の緊急課題でございます。
 この解決策の一つとして、政府の税制調査会は一般消費税の新設を答申をいたしましたが、この一般消費税が実施されればほとんどの商品に税金がかけられ、簡単に増税できることは確かであります。税率五%といたしましても約三兆円が徴税をされます。
 問題は、この負担をだれがするかというところに注目をしなければならないと思います。
 税率一%として収入区分による負担率を見てみますと、年収百九十五万円以下の第一分位の低所得階層は税の負担率が七・三%はね上がります。逆に、年収六百万円以上の高額所得者は三・九%しか上がりません。高額所得者に比べて低所得者は、実に二倍の税負担をさせられることになります。収入の少ない人ほど重い税負担となる、この逆進性の高い一般消費税は大衆収奪の最たるものでございます。(拍手)
 さらに、物価の上昇に火をつけることも明らかであります。ただでさえ大きい大企業と中小企業との不公平を拡大し、中小業者の営業を脅かすものであります。
 総理、現在の国民の生活の実情、中小企業の実態を無視し、また、今日大きく盛り上がってきている国民的な反対にも耳をかさず、一般消費税の導入を強行するのですか、見解を承りたい。(拍手)
 本来、財政健全化の道は中、長期的経済の展望と財政計画を明らかにして、その効率と合理性、公平と公正が保たれるものでなければなりません。いま国民は、政治や経済のあり方に対して、乏しきを憂えず、等しからざることに憤りを持っているのであります。(拍手)公平、公正を忘れた効率は格差を拡大し、弱い者いじめになることは明らかであります。
 こうした観点から、一般消費税を考える以前にあなたがやらなければならない税制改革がたくさんあるはずであります。円高差益でもうけている企業に会社臨時利得税を復活し、徴税を強化することです。たび重なる税調の答申を無視して依然存続している医師優遇税制は直ちに廃止すべきです。(拍手)利子配当分離課税の改善、あるいはこの際、企業課税の強化を行うべきであります。
 国税庁の法人企業の実態調べを見ると、利益処分における社内留保は五十一年度で四兆五千億円であります。全利益の三三%を占めております。支払い配当一兆七千億円の二倍以上にもなっております。社内留保は、御承知のとおり利益金だけではありません。各種引当金、準備金等もあります。現在二十兆円に達しております。これらのうちで大法人は担税力があります。したがいまして、社内留保全にも適当な課税をこの際強化すべきであります。さらに、富と所得の著しい格差を是正するために、富裕税、土地増価税の創設など、現在の不公平な税制の根本的改革が、あなたがやるべき何より優先すべき改革であります。(拍手)
 財政健全化のためには、今後の予算編成に当たりまして、一般会計のGNPに対する割合をどの程度にするかということが一つのかぎだと思います。三十年代から四十六年まで、その割合は一一%であります。その後急上昇し、本年度予算では一七%でございます。名目成長率よりもはるかに高い率であります。
 財政規模のあるべき姿をどの程度に描くのか、明年度及びその後の中期的推移をどのようにとらえるのか、財政の見通しと方策を、この際総理の口から明らかにしていただきたいと思います。(拍手)
 次に、円高差益についてお伺いいたします。
 円高は物価を引き下げる作用をするはずであります。政府の当初見込みによる六・八%の物価上昇率は、円高によって訂正をすれば、単純計算ではございますけれども一・三%になるはずであります。現実がそれに近づかないのは円高差益が消費者価格に反映されていないからであります。
 社会党は、七月、電力、ガス為替差益の額を計算して発表いたしました。
 福田総理、あなたは差益を消費者に還元することに反対をしておりましたが、ついに世論に押されて電力、ガス料金を割り引く方針に転換をいたしました。しかし、還元額は差益の七〇%であり、ほとんどが企業に渡り、家庭用には六百六十六億円、一世帯当たり平均千六百二十円にすぎないのであります。差益を還元したから減税はしないなどと言える額では絶対ないのであります。(拍手)しかも、電力会社の一方的な計算で処理されたものであります。差益還元のポイントは、今日の法律や制度では差益の実態をつかむことが不可能であるという点にあります。
 この際、政府は、権威ある公認会計士を含めた、法的強制力を持つ第三者機関を設置して、すべての輸入物資、また国際航空運賃、国際電話料金などについて調査し、その結果を公表し、国民の疑惑にこたえるとともに、差益を国民に還元すべきだと思います。あなたの決めた還元対策の中身を具体的にお伺いいたしたいと思います。(拍手)
 次に雇用問題ですが、中小企業の倒産の続出、三年以上に及ぶ百万人を超える完全失業者の存在、このことは不況、雇用対策を緊急な政治課題にしています。特に不況業種を抱え、失業の多発している地域の地域ぐるみの不況の深刻さは想像を超えるものがあります。
 このような雇用情勢に対して、総理は「いま一歩のもどかしさ」を感ずる、こういう状態ではないのです。きわめて切実であります。重大な社会問題になっているのであります。
 政府は、この際、失業者多発地域における離職者救済のための給付期間の延長など給付改善のための緊急措置、保険給付期間を過ぎてなお失業中の中高年齢者に対する失業手当制度の創設など、積極的な措置をとるべきであります。
 同時に、失業者の対策だけでなしに、進んで、失業者が出ないように、雇用の確保拡大のために、政治の責任において能動的な政策をとるべきだと思います。
 交付金の交付による自治体での雇用創出、週休二日制、時間短縮、このようなことで、積極的に雇用の機会を拡大するための措置を思い切って、総理、踏み出すべきであります。私は、特に総理のこの雇用情勢に対する認識とその対策をきめ細かくお伺いいたしたいと思います。次に、前国会では延長について合意しながら、延長幅については今国会で決定することになっていた同和対策事業特別措置法についてお伺いいたします。
 各党協議を踏まえて決断するという総理の国会答弁にもかかわらず、いまだに決着していないことは、はなはだ遺憾であります。少なくとも五年の延長は、全野党はもちろん、自由民主党の皆さん方の大部分も賛成をして、国会議員の大多数の意見であります。また、九百三十五もの地方議会も五年の延長を決議しております。さらに稻村総務長官は、過ぐる国会で、五年延長に関して、太く短いものであってはならず、すそ野を広く、きめ細かいものでなければならないと答え、相当期間の延長を約束しているのであります。
 問題は総理の決断にかかっております。この際、総裁としての指導力を発揮し、政府の責任において今国会で決着をつけるよう強く要望するとともに、あなたの決断をお伺いいたしたいと思います。(拍手)
 最後に、福田総理、あなたの政治姿勢についてお伺いをいたします。
 本年一月の施政方針で総理は、国の防衛は国家存立の基本であり、政治の果たすべき最大の責務であることを強調しました。さらに金丸防衛庁長官は、国会答弁で従来の政府の見解を覆して、攻撃的兵器システムの導入へと根本的な転換の方向づけを打ち出しました。この転換は、栗栖統幕議長が主張した、戦争の歴史は、いかなる戦争でも攻撃のみが勝利を獲得し得ることを示している、防衛手段のみをもってしては、わが行動圏外から威力を発揮する攻撃行動には対処し得ない、この軍事思想が背景になっております。
 この栗栖議長が解任された翌々日、福田総理は国防会議議員懇談会で、有事立法の研究を急ぎ、民間防衛についても研究するよう指示したと新聞は報じております。
 一方、自由民主党総裁候補の一人であり、元防衛庁長官の中曽根氏は、報道によると、八月二十二日、自民党党員研修会で講演をし、ソ連は極東海域に四十隻の原子力潜水艦を配備している、これらが日本列島を取り囲んで輸送船をぱちんぱちんとやってしまえばお手上げだということになると述べております。奇襲の対象を、仮想敵国をソ連と想定している様子であります。
 さらにいわゆる有事立法の中身にも論及し、防衛出動の際の病院、診療所などの管理、土地家屋もしくは輸送を業とする者に対し保管を命じ、または収用することができるよう政令を整備すべきだと述べ、まさに戦時を想定し、統制と抑圧を法制化しようと考えているようであります。(拍手)
 ところが、同じ総裁候補である大平幹事長は、同じ研修会で、われわれは三十余年間、四つの島が緊張なく安全を保障することに成功した、それは防衛力とか安保だけの問題ではなく、それ以上に、あるいはそれと同等にわれわれが秩序正しい民主政治をやっている民族である、活力ある経済運営をして世界に貢献している民族である、日本と事を起こすことはメリットがないということが大方の世界の国々の認識であったことが国を守り得たのだと演説をいたしております。
 福田総理の今日までの言動から見て、政府の防衛力の増強、有事立法整備の企図は、真に国民の生命と財産、その生存を守るものではなくて、外国の侵略、奇襲の危険を口実にして、現体制を守るものであると断ぜざるを得ません。
 国を守るということは、国民の生活を守るということでございます。米を除いて穀物の大半を輸入に頼っていることで、本当に国民の生活が守れますか。減反に血道を上げるよりも、日本人の食べるものはできるだけ日本人の手でつくるように、日本農業を再建し、自給体制を確立することこそ本当に国を守る道ではございませんか。(拍手)
 福田総理、防衛体制の整備という、たった七文字の所信表明で国民をごまかすことは許されません。冷戦時代と異なり、国際情勢は大きく変化しております。奇襲を考えるような対立緊張はなく、緩和の方向を示していると思いますが、あなたはこの国際情勢の変化をどうとらえているのか、どう認識しているのか、どこかの国が攻めてくるとでも思っているのか、この情勢の認識をまずお伺いいたしたいと思います。
 また、二人の最高幹部の認識のうち、あなたはいずれの道を選ぶのですか。日本丸の船長として、その方向を明らかにしてもらいたいと思います。(拍手)
 総理の政治姿勢は、オールド保守、旧憲法体制への逆コースを進んでいるとしか思えないのであります。
 元号法制化は、天皇の一元一世主義であり、象徴天皇となった新憲法の主権在民の精神からは出てこないのであります。天皇元首化の道に通ずるこの思想は、天皇を核とした民族的統合を図るねらいがひそんでおり、ファシズムの思潮が働いていると思うのであります。教育勅語礼賛、雄渾な気風の人づくり論、元号法制化論、靖国神社の国家護持などの発想は、有事立法の発想にも通ずる姿勢と断ぜざるを得ません。国民は、あなたの有事立法を頂点とする右傾化の思想と行動に、不安と危険を感じております。
 この際、あなたは、かかる危険きわまりない有事立法の研究をさらにお続けになるのですか。速やかに研究を中止するよう勧告いたします。また、今日までの研究結果を国会に提出して、国民の不安に答えるべきだと思います。
 この問題に対する総理の率直な見解を最後にお伺いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕
#7
○内閣総理大臣(福田赳夫君) お答えを申し上げます。
 私が全方位平和外交と言うならば、まず日米安保条約を廃棄すべきではあるまいか、このようなお話でございます。
 御了承のとおり、わが国は今日世界の経済大国と言われる国にまでなってきたわけであります。古今東西の歴史を見ますれば、経済大国は必ず軍事大国になった。ところが、わが国は、この歴史を覆しまして、経済大国にはなりましたけれども軍事大国にはならないという選択をし、決意をいたしておるわけであります。そういうためには、強大な軍事力を持たないわが国は、わが国の安全を守る、その点には一体何をすべきかといいますれば、世界のいずれの国とも友好親善の関係を持たなければならぬ。しかし、現実の世界情勢の中で、わが国の安全を保つためにわが国の力だけではそれができないという目前の問題があるわけであります。そういう中でわが国が、わが国と政治信条を同じくするアメリカと日米安全保障条約を締結し、わが国の守りとする、これは私は当然だろう、こういうふうに思うわけであります。(拍手)
 しかし、私が申し上げておるとおり、さあ日米安全保障条約を締結したからといって全方位外交にもとるものじゃありません。日米安全保障条約を締結いたしました私ども日本は、アメリカとの間に特に緊密な関係を持たなければなりませんけれども、だからといって、ほかの国を敵視するというような、そういう考え方はいささかも持っておらぬ、これが全方位平和外交であるということをはっきり申し上げたいのであります。
 日米安全保障条約の廃棄論、まことに私は非現実的な意見である、このようにお答えをせざるを得ないのであります。
 また、さて、しからば中ソはいま対立状態にある。わが日本はその中に巻き込まれてはいかぬぞ、こういう御所見でございますが、私もそのとおりに考えております。
 先般、日中平和友好条約を締結いたしました。時間がかかりました。時間がかかりましたのは、ただいま下平さんが御指摘になりましたが、この日中平和友好条約を締結した結果、アメリカだとかあるいはソビエト、そういう国々との友好関係を害してはならないという配意からであったわけでありますが、幸いにいたしまして、御承知のとおりわが国は、いわゆる中国の主張するところの覇権条項、これを条約本文に受け入れることにいたしましたものの、しかしながら、この条約は全体といたしまして両国のそれぞれの外交政策に影響を及ぼす問題ではないということをはっきりさせておるではありませんか。私どもの苦心のほどをお察し願いたいのであります。(拍手)
 朝鮮半島の問題につきましては私も大変関心を持っておるわけであります。一つの民族が南北に分かれて相争っておるというようなことになりますれば、これはもう民族の不幸だ、隣国といたしましてこれを座視することはできません。そういう考え方のもとに、私は南北が平和的に統一される、それを念願し、それができるような環境づくりに努力をいたしておるわけであります。日中平和友好条約ができた、これなんかも一つの私は朝鮮半島の平和に対する大きな前進である、このように考えておるわけであります。(拍手)
 下平さんは、米軍の撤退を迫れでありますとか、あるいは韓国との関係を一時凍結せよ、そういうようなことをおっしゃいまするけれども、理想は私はそういうふうに考えておるのです。理想というか、南北の平和的統一、これは理想だとは考えておるものの、現実の問題として南北はまだそういう状態にはない。本当にそういう南北の平和統一ができる、その時点までの間は南北に争いが起こってはこれは困る。そういうことを考えますると、南北のつり合い、均衡、これは非常に重大な問題である、さようなことを考えまするときに、南北の均衡、これを損なうおそれのある米軍撤退問題、このような問題につきましては、米国といたしましても慎重に対処されたい、こういうふうに思いまするし、また、韓国との間は――とにかくわが国は、世界じゅうどこを見たって、ごらんなさい、韓国ほど近い国はないのですよ、地理的に。その韓国との間を一時断絶せよ、こういうような考え方は私はとりません。
 さらに、経済問題に触れられまして、七%成長はできないんじゃないか、このような御見解でございまするが、これは見解の相違というものでありまして、今回皆さんが政府の補正予算案に御賛同願うということになり、それとあわせまして、政府がさきに決定いたしました総合的な政策を実行いたしますれば七%程度の成長、これは、私は実現できる、このように確信をいたしておるわけであります。
 下平さんは、七%成長というためにはどうしても一兆円減税を実現せい、こういうお話でございますが、これは、いま国の財政を皆さんごらんください。それは、世界の中で財政の状態というものは非常に深刻なんです。一兆円の減税をさらにやるということになればどこに財源を求めるか、当面、とにかくこれはもう公債の増発というほかないじゃありませんか。いま、とにかくわが国は、本年度の当初予算におきまして実質三七%を公債に依存するという非常に厳しい、深刻な財政運営をしておるのであります。しかも、その公債も、なかなかこれは消化が容易じゃない、非常に困難な状態です。公債消化の前途につきましても、私どもは必ずしも楽観をしておらぬ、このような状態でありまするけれども、その中で、一兆円減税といったら、これは国民には耳ざわりがいいですよ。私だって、財政の問題がなければ一兆円減税しますよ。しかしながら、本当に真剣に国の前途を考え、そして財政が破綻をいたしまして国がインフレになるというようなことがないようにということを考えますれば、この際は、一兆円減税というような考え方に同調することは、私はできないのです。(拍手)下平さんは、野党の足並みがそろって一兆円減税中心で組み替え動議を出すのだという勇ましいお話でございますが、私は、その組み替え動議が出ないように、皆さんに対しまして、説得に、説得に、説得、御理解を求めるための努力を続けてまいりたい、このように考える次第でございます。
 なおまた、下平さんは一般消費税の問題に触れられました。確かに一般消費税問題は政府の税制調査会、その特別部会の試案として税制調査会に報告をされております。まだ政府には報告されておるという段階ではございません。
 この消費税というものは、消費税でありますれば、逆進性の問題でありますとか、大衆課税の問題でありますとか、いろいろ問題があること、これは私も百も承知しております。しかし、そういう点に配慮をし、税制調査会の特別部会におきましてはこの逆進性が非常に強く打ち出される食料品、こういう問題は除外しましょう、あるいは小さい企業、零細企業、そういうものに対しましては手続が繁雑である、そういう方々の関係するものにつきましては課税対象から除外をいたしましょう、そういうような配意を行った上での中間報告と聞いておるのでありまして、私は、これから、先ほど申し上げましたように、国の前途を考えますると、財政が非常に困難な状態である。国民にはこれは余り歓迎されないことではありましょうが、何とかこの財源をふやすための工夫をしなければならぬ、そういうやさきにさような形の一般消費税という中間答申が出てきた。私は、この答申に対しまして、まだ何も意見を述べておるわけじゃございません。大蔵大臣もまたそうです。でありまするけれども、私はこの考え方自体には大変魅力を感じているのです。そのことだけははっきり申し上げますけれども、しかしこの一般消費税は与えるところの影響も相当多岐広範であります。そういうことを考えまするときに、これを採用するかしないかという点、また採用する場合にいつこれを採用し、実施するかという点につきましては、慎重の上にも慎重を期してまいりたい、このように考えておるのであります。なお、下平さんは、税制に関しまして、会社臨時利得税を創設せよというようなお話であります。いまこの不況のときにありまして、また臨時利得税の創設、こういうようなものが一体可能であるかどうか、こういう問題もあります。
 また、富裕税を創設せよというようなお話もあります。これは私の頭にもあるのです。あるのだけれども、さあ富裕税の財産をどういうふうに評価するかというようなことになりますと、これは口で言うほど簡単な問題じゃない。私どもも今後の検討課題にいたしてまいりたい、こういうふうに考えております。
 また、利子配当課税にも触れられましたけれども、これはいずれはこれを廃止するという方向で考えております。おりまするが、これもさあ利子配当課税は廃止するというような制度になった場合に、これが等しく公平に徴収できるというようなことになりますれば、これはいい。ところが、これをそういうふうな形でやりませんと、また逆の不公正が出てくるというような問題もあるのであります。そういう点をどういうふうにするかということについて、ただいま鋭意検討いたしておる次第でございます。
 また、医師優遇税制を廃止せよというお話でございます。この問題につきましては、わが自由民主党におきまして議員立法の準備をいたしておるわけでありまして、いまのこの医師優遇税制と言われる特別措置につきましては、本年度限りのものにするということだけははっきり申し上げさせていただきます。
 なお、経済につきましても、長期展望をつくれというお話でございますが、いまそれは作成中でございます。
 それと並行いたしまして、財政の見通しにつきましても見当をつけろ、こういうお話でございますが、これもさあ何カ年程度のことが見通しができますか。とにかく長期的な展望を持ちまして五十四年度予算の御審議をいたしてもらいたい、このように考えておりますが、その際に、GNPに対しまして財政の規模が幾らになるか、これは私は一つの一定した基準はないと思うのです。つまり、いま今日のように、さあ不景気だ、大いに公共事業その他の諸施設をやらなければならぬ、そういうときには金はうんと要ります。しかし景気がいい、そういうような際におきましては、そういう特別の措置は要りません。そのようなことをいろいろ考えますと、GNPの何%になるかということは、そういう考え方でなくて、そのときどきの国の置かれている社会情勢等に対しまして弾力的に対処する、そういうことでよかろうかと思うのであります。
 また、円高差益の還元につきまして、第三者機関を設けて、そして差益を監視せよ、こういうお話でございますが、第三者機関を置きまして、そして差益を精査するということになれば、これは物価統制ということになってくるわけであります。物価統制になったら、この世の中は動きませんよ。戦時全体体制という中で初めてそういうようなことが可能であるのでありまして、私は、第三者機関を設けまして円高差益の還元問題の資料を作成するという考え方には反対でございます。そのかわり、円高差益の還元につきましては、国民の希望、そういうものを踏まえまして、電力、ガス料金の割引、これをやりますとかあるいは輸入牛肉差益の還元をいたしますとか、さようなことをいま考え、かつ実施中でございます。
 なお、お話しの国際航空運賃の問題につきましても、これは国際航空協定、これがありますので、日本だけの判断ではまいりませんけれども、国際協定の中で各国の理解が得られるように鋭意努力をいたしてまいりたい、このように考えております。
 円高還元問題は考え方を整理していただきたいのでございますが、わが国の輸入する商品、これは約八割までが原材料なんです。原材料は大変安く買えることになったわけでありまして、したがって、その反響で、世界のどこにもそういうことはない現象でありますが、わが国におきましては卸売物価が昨年に比べて三%近く下がってきておるのです。私は、かなり還元の実が上げられておる、このように思うわけでありますが、問題は、輸入される物の残り二割の消費者物価です。これにつきましては、差益が還元されるように、企画庁その他の関係官庁が精力的にその監視を続けておりますが、政府の関与する料金、価格等につきましては、ただいま申し上げたような措置を講じたい、このように考えております。
 さらに、同和対策事業特別措置法を五年間延長せよというようなお話でございますが、この問題につきましては、いまお話もありましたけれども、所管大臣におきましてもきわめて積極的に取り組んできておるのであります。私といたしましても、その重要性にかんがみ一層対策の充実を図ってまいりたい、このように考えておりますが、御指摘の焦点である延長問題につきましては、各党間の協議の結果を尊重して決断をいたす所存であるという旨を申し述べてきておるわけでありますが、この考え方には変わりはございません。この問題につきましての各党間の速やかな合意の成立を期待します。その合意を尊重いたしまして所要の措置を講ずる、このように御理解を願いたいのであります。
 いま、私がことしの正月の施政方針演説で防衛問題に言及したということにつきまして、私の政治姿勢がおかしいというようなお話でございますが、一体わが国――国の安全、これは下平さん御指摘のように、国の安全ということはまず社会が安定しなければならぬ、これはもとよりでございまするけれども、世界じゅうの国が本当に、本当に間違いなく聖人君子の国である、もう人の国は侵さないというような世界情勢でありますればこれは何をか言わん、しかし現実の世界情勢はいつどこで何が起こるかわからぬというその現実をとらえるときに、自分の国が侵されたときに、自分の力ではね返す、それくらいの気力のある国民でなければならぬし、またそれだけの備えをしておかなければならぬだろうと思う。(拍手)
 下平さんは、有事立法という問題に触れられましたが、自衛隊というものがいまあるのですよ、ただいま申し上げたような趣旨で。その自衛隊は何のためにあるのだということになりますれば、これは有事のためにあるのですよ。(拍手)その有事のための体制がもし不備であったらこれは大変なことになるのでありまするから、有事の際に備えて自衛隊が常に有事にはいかにあるべきかを検討する、これは自衛隊の義務であり、また国家の責任であります。このことをはっきり申し上げます。(拍手)
 また、さらに下平さんは元号法制化の問題に触れられましたが、私は、元号というものはこれはもう存続させることが当然であるというふうにも考えておるのであります。
 さて、その存続の手続、その手順、段取り、これをどうするか。元号というのは国の大変大事な問題でありますので、これはみんなの合意のもとに急速に、一挙に解決されるということが私は好ましいと考えておりまして、各党、各界、また国民の動き、こういうものを見守って、もう元号というものの存続については私は一点の疑念は持ちませんけれども、手続、手順、段取りにつきましてはなお検討してまいりたい。また、仮に立法するという際におきましては、これは、今国会に提案をする、このことをも含めまして検討しておるということを申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#8
○議長(保利茂君) 金子岩三君。
    〔金子岩三君登壇〕
#9
○金子岩三君 私は、自由民主党を代表し、福田内閣の当面の施政につき若干の質問を行いたいと思います。
 まず第一にお伺いいたしたいことは、経済問題についてであります。
 現在はまさに経済の福田内閣が内外にその真価を問われるときであります。
 一昨年十二月福田内閣発足以来の経済政策の実績は決して少なくありません。国民の最大の関心事である物価は安定の一途をたどりつつ、いまや自由世界第一の物価安定国となり、また、わが国経済と国民生活を支える輸出貿易は驚異的に伸び、経済成長率も先進国中最高の実績を上げています。
 しかしながら、一面においては、失業者はなお百十万人以上の高水準で推移しており、業種間の好不況のばらつきは著しく、福田内閣の国際的公約である経常国際収支の黒字減らしも思うようには進んでいないのであります。
 先般経済企画庁が発表した本年六月までの国民所得統計速報によりますと、実質経済成長率は年率換算で四・五%であります。このように成長率が鈍化したのは異常円高による輸出の急激な減少によるものと分析していますが、円はその後も急騰しており、輸出がさらに激減することは九月の月例経済報告を見ても明らかであります。
 それに加えて下半期は公共投資の息切れが顕著であり、現状のままでは今後の景気の先行きは決して楽観を許しません。政府が九月二日に決定された総合経済対策は、この経済情勢に対応するものとして一応評価するものでありますが、私はこれだけで安心できるとは思いませんが、総理、いかがでしょうか。
 経済成長に直接的効果をもたらすものは、言うまでもなく公共投資を中心とする財政面からの内需の拡大であります。先般の総合経済対策と今回提出された補正予算案によれば、公共投資追加の事業規模は二兆五千億円となっていますが、一般会計の補正は四千六百億円にとどめ、その財源の四割は既定予算の振りかえによって捻出し、建設公債の増発を極力抑えているのであります。
 将来、財政を危うくしないためには赤字公債の発行は極力抑制しなければなりませんが、欧米先進国に比べて立ちおくれている社会資本の整備のための建設公債の発行は、国民経済の発展、国民生活の向上の基盤を拡充強化するものであり、不健全財政に結びつくものではありません。むしろこれによってわが国経済が拡大発展し、国民生活が充実向上され、国、地方の財政基盤を拡大することにもなります。
 私は、今後、経済の動向いかんによってはさらに適切な措置を講じ、長期経済を見通し、経済の安定成長を期すべきであると思いますが、総理の御所見をお伺いいたします。
 経済問題の第二は、円高対策についてであります。
 最近の円高傾向は、毎月平均二十億ドルを超す貿易収支の大幅黒字、特に対米収支の不均衡とわが国の黒字減らし対策の進まないことに根本の原因があることは言うまでもありません。しかし、現在の一ドル百九十円前後という異常な円高と為替相場の乱高下は明らかに円の実勢と遊離したものであり、内外投機筋の思惑取引によるものであることは疑いの余地はありません。
 私は、このような円の急騰と為替相場の激動は、わが国の輸出の激減と関連企業の崩壊を招くだけでなく、基軸国際通貨であるドルの不安に拍車をかけ、ひいては国際経済の混乱にも発展することをおそれるのであります。政府は、円の適正水準への安定と国際通貨秩序の維持のため、さらに積極的に努力すべきであると思います。
 すなわち、国内的には内需の拡大による輸出の抑制と輸入の増進、長期資本輸出の拡大等に一層積極的な努力を傾けるとともに、思惑による市場撹乱に対しては、中途半端な対策でなく、一定の方針と目標のもとに、適時適切な対策を講ずることが必要であります。
 円高問題でいま一つの重要課題は、差益の消費者への還元であります。
 さきの政府の総合経済対策では、電気、ガス料金の差益還元その他いろいろの措置を述べていますが、国民はこれだけで納得するとは思われません。
 私は、まず政府またはその外郭機関がみずから輸入する物資の差益を率先して、惜しみなく、しかも国民にわかりやすく還元することが、民間に差益還元を指導する政府のとるべき態度だと思います。(拍手)
 総合経済対策では、大きな差益を上げている輸入小麦については何ら触れていませんが、これは食生活に密着するだけに国民は納得できないことであります。輸入牛肉、飼料についても、円高差益の一部を他の財源に回すような小細工はとるべきでなく、余すところなく国民に還元するよう努力すべきであると信じます。(拍手)
 そのほか、国民生活に欠くことのできない石油製品、内外航空運賃等についても、個々の業者の自主的措置に任せず、行政指導によって統一的に差益を還元させることが公正な措置ではないでしょうか。(拍手)その他の輸入物資についても、正確な情報の提供、監視体制の整備等で値下げを促進するのが政府の責務と存じます。
 以上、円高問題について総理の御答弁をお願いいたします。
 質問の第二は、税制についてであります。
 政府が今回の補正予算において、野党各党が要求する一兆円の所得減税を取り上げなかったことは、わが国財政の現状及び将来の展望からして当然のことであります。
 しかし、今後の税制をどうするかということは、国民は深い関心を寄せているのであります。私は、今後急速に進む高齢化社会において、必然的に急増する社会福祉関係費等の財源を確保するためには、国民に応分の負担を求めなければならないと思います。それには、国民が十分納得する合理的で公正な長期税制案を用意しなければなりません。
 政府の税制調査会は、さきに一般消費税の試案を発表しましたが、これは、国民大衆の生活と広範な関連業者の利害に密接に関連し、また、景気や物価の動向にも大きく影響するだけに、国民の関心も最も深いのであります。税制調査会の試案では、食料品、社会保険医療、学校教育、社会福祉事業等を非課税とし、また、農林水産及び小規模事業者を納税義務者から除外する等、所得の低い層の負担軽減にできる限りの配慮をしているようですが、一般消費税は所得の低い者ほど負担率の高くなる逆進性の大衆課税であると言われているだけに、国民の理解を得るためにはよほどの努力が必要と思われます。
 それには、政府は、まず福田総理の公約である行政改革を断行し、中央、地方を通じ肥満化した財政の健全化を図り、公社、公団、財団、基金等の外郭の抜本的な整理を行うとともに、不公正税制の是正を図る等、国民の納得のいく行財政改革を強力に推進すべきであります。(拍手)
 しかる後に、十分時間をかけ、広く深く論議を尽くし、弾力性ある態度で臨むことが肝要と信じますが、総理、いかがでしょうか。
 特に、三十年ないし五十年の歴史的背景を持つヨーロッパ諸国における付加価値税を、一般消費税という名目で性急にわが国に導入しようとする態度は、きわめて危険な試みではないかと思います。(拍手)仮に消費税を創設するとしても、まず単純明快な方法で、正直者がばかをみないような公正な徴税が可能になるよう、さらに検討すべきであると信じますが、以上、税制問題に関し、総理の御答弁をお願いいたします。(拍手)
 第三は、外交問題についてであります。
 多年の懸案であった日中平和友好条約が、今回、お互いに満足できる内容で妥結し、無事調印を見たことは、単に日中両国の親善友好と相互の協力繁栄のためだけでなく、アジアの安定、世界の平和のためにも画期的な意義をもたらすものであり、福田内閣の決断に対し、深く敬意を表するものであります。同時に、多年難航していた条約の締結が妥結した背景には、強い国民世論の支持があったからであり、この機会に心から感謝の意を表したいと存じます。
 私は、この条約の締結を機に、日中間の経済、技術、文化等の交流を画期的に拡充することがわが国の責務であると信じますが、すでに、河本通産大臣の訪中によって、日中間の長期貿易の飛躍的拡大が約束されたことは、まことに喜びにたえません。さらに交流拡大について具体的な話し合いを進めるべきだと思います。総理はどのような構想をお持ちであるのか、お伺いいたします。
 外交問題でいま一つお伺いいたしたいことは、日ソ関係についてであります。
 福田総理の全方位平和外交の信念にもかかわらず、日中平和友好条約の締結は反射的にソ連の対日感情を悪化させ、わが国に対してさまざまな形で抗議や非難を重ねているのであります。「覇権条項には歯どめがあり、特定の第三国を意識したものではない。日ソ親善友好の基本方針は何ら変わらない」とのわが国の説明に対し、ソ連政府は「事実をもってそのことを示せ」と開き直っているのであります。このことは、ソ連側のかねて主張する日ソ善隣協力条約の交渉に応じろということを意味するものと思われます。北方領土問題は解決済みとする前提に立ったこのような条約の交渉に、わが国が応じられないことは言うまでもありません。
 福田内閣は、今後、日ソ関係の改善に最善を尽くすと言われていますが、日ソ関係を悪化させているのはソ連側の一方的態度であり、わが国には何らの責任もないのであります。今後、誠意を尽くしてソ連側の一方的誤解を解くことはもとより必要でありますが、日ソ関係の改善を急ぐの余り、わが国が卑屈になったり恫喝に屈したりしてはなりません。拙速を避け、毅然たる態度で、粘り強く臨むことが肝要であります。
 なお、わが国外交の基本は、白米関係を基軸とし、平和主義、国際協調主義の原則に立った国連外交中心であるべきと思います。
 さらに、最近国際的に二百海里の宣言実施が進められ、わが国水産界がじわじわと圧迫を受けつつあります。この現状に対し、政府はこれが対策をどう講ぜられるのか、以上、外交問題とともに福田総理の御見解を承りたいのであります。(拍手)
 次にお伺いいたしたいことは、日米農産物交渉についてであります。
 伝えられるところによりますと、政府はわが国として譲り得る最大限の妥協案を用意して折衝したにもかかわらず、アメリカ側は中間選挙を目前に控えている政治情勢もあってか、わが国としてはきわめて困難な牛肉、オレンジの自由化の日程を確約するよう要求したことが交渉中断の最大の原因と思われます。もしそうだとすると、アメリカ側がわが国農業の置かれている苦しい特殊環境を理解しないものであり、はなはだ遺憾と言わざるを得ません。
 国内農業は、国民食糧の安定供給と国の総合的安全保障のため、保護育成しなければならないことは言うまでもありません。これは世界各国共通の政策でもあります。この国内農業を自由化によって衰退の道に追いやることはとうてい許されないのであります。
 もともと、わが国はアメリカ農産物の最大の輸入国であり、農産物だけの対米貿易収支は年五十億ドル以上という大きな輸入超過となっています。その反面において、わが国は米の生産過剰を来し、本年度は百七十万トン、すなわち三十九万ヘクタール分の生産調整を余儀なくされ、米作農民を泣かせているのであります。わが国はこれだけの犠牲を払ってアメリカ小麦を大量に輸入しているのであります。
 最近の対米貿易収支全体では毎月十億ドル前後という大きな黒字を出しており、これが日米経済関係悪化の要因となっていますが、それは鉱工業製品の輸出超過によるものであります。この貿易不均衡の是正は、わが国が内需を拡大し、アメリカの鉱工業製品の輸入をふやすとともに、対米輸出の一部を内需に振り向けるのが本筋であります。牛肉やオレンジの輸入枠をふやしてみても、その額は知れたものであり、毎月十億ドルという巨額な貿易収支の不均衡是正にはほとんど意味がありません。私は、このことをさらに強くアメリカ側に説得し、いつまでも牛肉やオレンジにこだわるような態度に反省を求めるべきであると思います。(拍手)
 また、日米農産物交渉は、日米経済関係の改善という大局的見地から決着を急がなければなりませんが、その犠牲を、経営難に苦しむ畜産農家や柑橘農家だけにしわ寄せしてはなりません。もし、日米農産物交渉の結果によってこれらの農家に損害を与えるようなことがあれば、国は何らかの形においてそれを補償しなければならないと思います。
 政府は、今後どのような態度で日米農産物交渉の打開を図るつもりか、また、これによって受ける関係農家の損害に対しどのような補償を行う考えか、総理の御答弁をお願いいたします。
 次に、成田空港に関する問題についてであります。
 空港がこの五月に開港されたことはまことに喜ばしいことであり、福田内閣が国際的な約束を果たされたこの御努力を多とするものであります。しかし、その環境は未完成であり、一日も早く完全な機能の発揮ができることを願うものであります。
 現在、必要最大のものは空港と都心を結ぶ輸送の迅速化であり、そのため高速道路等の整備を進めていますが、これとあわせて日本航空で現在計画されている常電導吸引式磁気浮揚方式による旅客の輸送について、政府は積極的に支援され、これが完成を早め、空港機能の充実を図ることが肝要かと存じます。この点に関し、あわせて総理の御答弁をお願いいたします。
 最後にお伺いいたしたいことは、いわゆる有事立法とわが国の防衛制度についてであります。
 福田総理が、栗栖前統幕議長の超法規行動発言と統幕議長辞任をきっかけとして、防衛当局にいわゆる有事立法検討の促進方を指示されましたが、これが政界や言論界等に新たな議論を呼び、国論が分かれているようであります。
 わが国の防衛制度は、戦争放棄や基本的人権の保障、あるいは文民統制といった憲法上の制約と、非核三原則等基本国策の制約の枠内の制度でなければならないことは申すまでもありません。これらの制約を前提としながらも、国土の防衛と国民の安全保障という最高度の国の責任を果たすためには、憲法上、国策上の制約の許す限度内で、できるだけ防衛の制度、体制を整えることが、国家として当然のことであります。(拍手)
 ところが、現行のわが国の防衛制度は、その中心をなす自衛隊が、昭和二十九年、日米安保条約の発効に伴い、警察予備隊の後身であった保安隊等を改編して発足したものであります。その後二十数年を経て、四次に及ぶ防衛力整備計画などにより、自衛隊は現在の姿にまで成長したわけであります。しかしながら、なお検討を要する問題点の少なくないことは、自衛隊発足当時から、関係方面や専門家の一部から指摘されていたところであります。
 たとえば、栗栖発言で指摘された外敵の奇襲攻撃等の場合において自衛隊がどう対処できるのか、また、外敵攻撃地域の住民の安全を守るための医療施設等の管理や物資の保管、収用等について手続上の規定がなく、さらに屡国民の安全を守るための欠くことのできない民間防衛の制度が全然ないこと等の問題点であります。
 なお、国土防衛上重要な国防機密保護の一般的制度がないことも、多くの識者が問題としているところであります。
 福田総理が、現行防衛制度の不備を補うため、いわゆる有事立法の検討促進方を指示したのは当然のことであります。(拍手)
 ただ、これまでの各方面の論議を通じて感じられることは、政府にも、各政党にも、言論界にも、有事立法とは何を意味するのかという概念がはっきりしておらず、中には、これが憲法に挑戦するものであるとか、戦争中の国家総動員法に通ずるものであるとか、あるいは軍事ファシズムに引きずり込むものであるなどの逆宣伝に努めている向きもあります。独断的議論がかみ合わないまま空転していることは、まことに遺憾であります。関係当局の国会における答弁やマスコミによる断片的な意見を通じて見ても、国民は理解に苦しんでいます。私は、このように議論が混乱していては、国民に無用の誤解を与えることをおそれるものであります。
 防衛庁は、このたび、防衛庁が研究を進めている有事法制上についての見解を発表しましたが、私は、単に一防衛庁の見解ではなく、国民に責任を持つ内閣としての有事法制の概念と、現行防衛制度の問題点を明確にし、議論を土俵の上に乗せ、この問題に対する国民の理解を求めるべきであると思います。
 以上、防衛制度と有事法制の問題につき総理より御答弁をお願いして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕
#10
○内閣総理大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。
 まず、景気問題でございますが、経済を見る場合に、私は三つの非常に重大な要素があると思っておるのです。その第一は物価でございます。第二は国際収支であります。第三は経済活動、雇用問題そういう問題である、このように見ておりますが、いまわが国の経済は、第一に申し上げました物価、これは先進諸国の中でも一番安定しているというところまで来ておるわけであります。物価問題はまずまずの成果を上げておる、このように見ております。
 それから、第二の国際収支の問題でありますが、これはよ過ぎて実は国際社会からいろいろ問題を言われておる、このような状態でございますが、過ぎたるは及ばざるがごとし、私はその是正に努力をいたしておるところでございます。
 それから、第三の景気的側面でございます。本年度初めに私どもは、本年度の経済は七%成長だ、これを目指して発足をいたしたわけでありますが、その後の動きを見ておりますと、日本経済の国内的側面はかなり順調だというふうに見ております。つまり、国民消費は着実に伸びておる、在庫調整も順調に進んでおる、また、住宅投資も活発である。それから特に政府投資、これは、ことしの膨大な予算、その実施過程でございますので、これも非常に大きく伸びつつあるわけでありまして、総じまして、国内的側面は大変順調だ。
 ところが、対外的側面、つまり輸出に問題が出てきておるわけであります。とにかく黒字問題は国際社会においてこれが是正を強く求められておる。わが国は、経済では大きな責任のある立場にある国といたしまして、この国際社会における期待にはこたえていかなければならぬ、そういうような立場でございまするので、ある種の品目につきましては、昨年を超えて数量的にこれを輸出するというようなことはあってはならないというような行政指導もいたしました。同時に、円高がかなりの影響を持ってきております。
 そういうようなことで、輸出は今日もすでにかなり鈍化の勢いを示しておりまするけれども、この上さらに鈍化する傾向にある、このように見ておりますが、さて、この輸出の数量的鈍化にもかかわらず、ドルの手取りは、これはまだまだ増加の傾向を示しておるのであります。そういうことで、輸出の量的鈍化にもかかわらず、国際収支の黒字過剰を解消するというこの問題はまだいろいろむずかしい問題を抱えておりますが、それはそれといたしまして、とにかく輸出の数量的鈍化ということは、それだけ円の手取りが減るということである。わが国の経済をそれだけ足を引っ張ることである。つまり、これがデフレ要因であることは、これは間違いないのであります。
 いまわれわれが当面しておる問題は景気の問題であり、雇用の問題である。そういうことを考えまするときに、これからの日本経済、これをいまほうっておきますると、ただいま申し上げました対外的側面、つまり輸出の鈍化、これがデフレ要因として全体の日本の経済の停滞を招くおそれがある、そのように考えまして、いま国会に補正予算案をお願いいたしましたが、その他の措置とあわせまして、この輸出の鈍化によるところのデフレ効果、これを何とか補って、年初に展望いたしました七%成長といいますか、とにかく国際社会の中でも最も高いこの成長水準を実現いたしたい、このように考えておるのでありまするけれども、金子さんは、なおこれから先を展望するといろいろ問題があるから油断をするな、このようなお話でございまするけれども、とにかくいま国際通貨が非常に不安定な状態である、いろんな波乱があると思うのです。でありますので、そういう中で何とかしてただいま申し上げましたような展望が実現されるように、全力を尽くしてまいりたい。情勢が刻々と変化するでありましょう。その情勢の変化に対しましては臨機、機動的に対処してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
 いま申し上げましたように、国際社会の中でいろいろ問題があります。七月のボンの会議におきましても、いま申し上げました失業の問題、インフレの問題、あるいは経済活動の問題それらの一連の問題が討議される。また、通商摩擦、その中から保護貿易主義の勢いというものが噴き出してきやしないかという憂えがある。これを阻止しなければならぬという、そういう通商をめぐる問題。それから資源エネルギーをめぐる問題。つまり、核エネルギーの平和的利用、これが拡散しないようにという配慮をしながら平和的利用を進めなければならぬという問題。そういう問題、それから南北の問題、これが論議されたわけであります。これは昨年も同じ議題が論議された。しかし、ことしは新しくつけ加えられたる課題があったのですが、これが国際通貨問題であります。
 いま、ドルの下落を中心といたしまして、国際通貨が非常に不安定な状態にありますものですから、国際経済が安定しない大きな原因をなしておるわけでございますが、このためには、いまお話もありましたけれども、何としても世界の基軸通貨であるところのドルが安定するということが絶対必要である、このように考えておるのでありまして、アメリカに対しましては、つとにアメリカのそのようなための努力を要請し続けてきておるのであり、またボンの首脳会議におきましても私はこのことを強調いたしてきておるわけでありますが、最近になりまして、とにかくアメリカもドルの価値安定のために幾つかの施策を打ち出しております。私は、これを歓迎はいたすものの、アメリカがみずからの通貨の価値、しかし、同時に世界の基軸通貨であるところのドルの価値安定のためにもっともっと努力を続けるよう要請をいたしてまいる所存でございます。
 次に、いろいろの品目にわたりまして円高差益還元の問題がありました。
 まずお触れになりました小麦につきましては、これは非常に機微な関係があるのです。それは米価とのつり合いの問題であります。いま何としても米が過剰である、その米価を高くするわけにはいかないし、またパンが大いに値下がりになって、そして米の需要が減殺されるということになってもいかぬし、その辺に非常にデリケートな問題があるとともに、国際相場の動きという問題があるのでありまして、そういう諸問題がありまするが、御趣旨の点はよくわかっておりますので、引き続いてこの問題は検討してまいりたいと考えております。
 牛肉につきましては、先ほど下平さんにお答え申し上げましたが、牛肉の安売りを行う、そういう値下げルートの新設をやるというようなことで、円高消費者還元を考えておるわけでございます。
 また、配合飼料をどうするんだというお話でございましたけれども、トウモロコシなどの輸入原料価格が低下したのでありまするから、配合飼料メーカーに値下げをしてもらうことは当然であります。このための指導をいたしておりますし、また、事実、その結果配合飼料の価格は五十二年九月以降三回にわたって行われました。ただいま全体といたしますと二四%下げというところまできておるわけであります。
 石油製品につきましては、これも円高の問題がありまするので、行政的に価格値下げのための誘導をいたしておる次第でございまするけれども、かなりの値下げが行われておるということは御承知のとおりであります。
 航空運賃につきましては先ほど申し上げたとおりであります。
 なお、その他いろいろありますけれども、円高が消費者に還元されるような努力、これは企画庁を中心といたしまして、監視体制等を充実いたしまして誤りなきを期してまいりたい、このように考えております。
 一般消費税、これは慎重に、また単純明快な方式でやれ、こういう御指摘でございますが、これは先ほどお答え申し上げたとおりで、そのとおりに考えておるのであると同時に、政府といたしましては、まだ案を決めたわけでもなし、ましてそれをいつ、いかなる段階で実行するということを決めておるわけでもなし、これから慎重に検討してまいるということを明快に申し上げたいのであります。
 なお、金子さんは、一般消費税、これを採用する以前に行政改革を大いにやれ、また中央、地方の財政整理をやれというお話でありますが、これは当然のことであります。行政整理につきましては、昨年暮れにも方針を決めましたけれども、はでなことは余りやりませんけれども、じみちに強くこれを推し進めておるところであり、中央、地方の財政につきましても同様の考え方でやってまいりたい、このように考えておる次第でございます。
 なお、日中条約ができた以上、経済、技術、文化等にわたりまして、事実上の交流を活発にせいというお話でありますが、これはそのように心得ておりまして、すでにまた、その方向の動きが始まっておるということを申し上げさせていただきます。
 また、日ソの関係につきましては、拙速を避け、わが方の立場を踏んまえて毅然として臨めというような御趣旨の御発言でございまするけれども、そのような考え方をいたしております。
 率直に申し上げまして、日中平和友好条約の締結に対しまして、ソビエト連邦におきまして不快感を示しておることは事実でございます。しかし、私どもは、先ほども申し上げましたとおり、いずれの国とも平和友好のつき合いをしていきたいと思っておるのです。日中間で平和友好条約ができた、これは日中間のことです。それによって他の国に何ら害する関係を持つということはいささかも考えてはおりません。日中は日中、日ソは日ソ、そういうたてまえをもちまして、親善友好の関係を進めてまいりたい、さように考えておる次第であります。
 二百海里宣言実施以来、日本の水産界も非常に大きな変貌であるが、いかに対処するか、このような御質問でございまするけれども、御指摘のように、非常に大きな影響がある二百海里時代でございます。政府といたしましては、多獲性魚の消費拡大、利用加工の開発、それから国際協力を含む漁業外交の推進、また、遠洋漁業の新展開による新資源、新漁場の開発、そういうようなことも特に推し進めてまいりまするけれども、しかし、私は、一番大事なことは、二百海里時代と言うけれども、わが国もまた、二百海里にわが国の漁業水域は広がったのです。わが国の場合は――まあソビエトもずいぶん広がったわけですが、ソビエトが広がったその大部分の地域が北氷洋でしょう。あるいはオーストラリアも大きく広がったけれども、あれは相当部分が南氷洋でしょう。私どもの日本列島、この二百海里というものは、いずれも魚族に対しまして非常に適した水域でございますので、この二百海里を有効に開発しますれば、私は、新しい意味においてまた日本の漁業問題というものは大きく展開していくであろう、このように考えますので、そのような認識のもとに二百海里時代に対処してまいりたい、このように考えております。
 それから、日米農産物交渉を一体どうするというお話でございまするが、日米間のMTN交渉、これは大体大筋は固まってきておるわけであります。ただ農業問題、二、三の品目につきまして双方に隔たりがあるということで、まだ最終的な決着には至っておりません。
 しかし、私も日本の農村の現状というものはよく承知しております。その日本の農村の現状を踏まえまして、そしてアメリカ当局の理解も十分得て、そして妥当なところでその決着を見なければならぬ、このように考えておりますが、(「補償をどうする」と呼ぶ者あり)補償というお話もありましたが、補償問題が出てくるような、そういう決着にはしたくないのです。
 いずれにいたしましても、日本の農家が非常に大きな打撃をこうむるというようなことでなくこの問題を解決してまいりたい、このように考えておる次第でございます。(拍手)
 さらに金子さんは、磁気浮揚方式、つまりHSSTとも言われまするし、リニアモーターとも言われますが、非常に快速な交通機関でありますが、この交通機関の開発を急げというようなお話でございますが、これは私も全く同感でありまして、政府におきましても、この交通機関の開発につきましては積極的な協力をいたしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。(拍手)
 最後に、有事立法問題、これにつきまして、国民の間にまだ理解が届かない、よく申し上げておいた方がよかろうじゃないかということでございますが、これは私は有事立法と言っておるのじゃないのです。これは有事体制と言っているのです。自衛隊がある以上――自衛隊を認めませんという方でありますれば、これは何をか言わん。しかし、いやしくも自衛隊が必要である、自衛隊の存在を認めるならば、一体自衛隊は何のために必要なのかと言えば有事のために必要なんですから、その有事の際にどういうふうに対処すべきかという体制が整っておらぬということになりますれば、これは本当に自衛隊の責任であり、政府の責任に帰すべき問題であります。私は、国民は自衛隊というものは存続すべきものであるという理解を圧倒的多数の人が持っておると思うし、また、そういうことになりますれば、有事の際に何もまだ準備というものが十分でないというならば、ぜひこれを検討してもらいたいというのが国民の大方の心であろう、私はこのように考えるのであります。(拍手)
 もちろん、奇襲攻撃なんというような場合が、仮に頭の中で考えると、なしとしませんでしょう。しかし、奇襲というような問題は、今日、科学技術、情報、そういうものが非常に進歩しておる、私どもの通常の常識では奇襲というようなものは考えられませんし、また、そんなことが行われないように努力するのが日本の全方位平和外交なんです。考えられない奇襲ではございまするけれども、観念的にはそういうものも考えられる。そういう万々一の場合にどうするかということにつきましてもよく検討しておくということが、自衛隊の責任であり、また政府の責任である、私はこのように考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#11
○議長(保利茂君) 板川正吾君。
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔板川正吾君登壇〕
#12
○板川正吾君 私は、日本社会党を代表いたしまして、福田総理の所信表明に関し、主として内政、経済問題について、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 質問の第一は、福田内閣の政治姿勢についてであります。
 総理が年頭の施政方針で、国防は国政の基本であり、政府の果たすべき最大の責務という発言をして以来、わが国の政治風潮は急速に軍国主義的な高まりを見せてまいりました。今年度の防衛白書等では半ば公然とソ連を仮想敵国とし、その極東軍の脅威を説き、奇襲攻撃の不安を訴え、有事立法の必要性を強調しておるのであります。
 最近、相次ぐ自衛隊幹部の憲法無視の発言を、わが意を得たりと鼓舞するがごとき福田総理の一連の言動は、昭和初期の経済恐慌を戦争によって打開した満州事変の前夜を思わしめるものがあるのであります。(拍手)
 福田総理、あなたの軍国主義を高揚するかのような言動は、経済政策の失敗の責任を有事立法でかわそうとする意図なのかどうか。それとも、本気で軍国主義への回帰を図り、有事立法によって憲法改正への道を開こうとするのか、この際、総理の真意を国民の前に明らかにされたいのであります。(拍手)
 質問の第二は、わが国の安全保障に関する基本認識について、経済面から総理の見解をただしたいと思います。
 今日、日本国民の生活水準は戦前の約三倍と言われております。この間、人口が七割も増加しておりますから、経済規模は五倍になったと言えましょう。戦争で無資源国となったわが国が、今日このような生活水準を維持できるのはなぜか、それは次の要件が満たされているからであります。
 すなわち、わが国経済は、毎年六億トンに及ぶ資源・エネルギー、食糧を海外から輸入をし、七千万トン余の工業製品を輸出をし、七百億ドルの貿易収入を得ることによって維持されており、工業資源とエネルギーの九割以上、食糧はカロリー計算で五割以上を海外に依存する構造になっているのであります。しかも、輸入物資の六億トンを海上輸送するためには、わが国の外航船舶三千百万トンをもってしても、その四四%しか輸送の確保ができないのであります。国土が狭く、資源が乏しく、人口の多いわが国は、貿易によって生存を図る以外に生きる道はありません。
 しかるに、有事立法等に見られる福田内閣の危険な姿勢は、わが国の経済存立の基本的要件を全く無視するかのごときものであります。もし仮に戦争という事態を招くならば、いかなる軍事力をもってしましても、わが国の膨大な輸出入物資の海上輸送を確保することは不可能であると言わなければなりません。
 資源が乏しく、貿易依存度の極度に高い特質を有するわが国の安全保障は、何にも増して世界の平和と繁栄が前提であり、いずれの国をも敵視をせず、すべての国と平和中立外交を進めることによってのみ平和が保たれるのであります。有事立法をめぐる福田総理の軍国主義的姿勢は、まことに危険な道につながるものと言わなければなりません。(拍手)総理の明快な御答弁を求めます。
 第三に、私は、福田内閣の経済見通しの誤りと、その責任について、総理の見解を伺います。
 今日、消費支出、設備投資等が依然として停滞をし、雇用不安が続き、不況が長期化しているのは、福田内閣の経済政策の失敗と、その見通しのたび重なる誤りに原因があると思うのであります。
 言うまでもなく、政府の経済見通しは、国が国民に対して経済活動の指標を示すものであり、多少の誤差は許されるといたしましても、はなはだしい誤りは国の信用を失墜するものであります。
 福田内閣は、五十二年度の当初予算では経済成長率六・七%、経常収支の赤字七億ドルという見通しが、二度の補正予算を組んだにかかわらず、五・五%の成長率にとどまり、経常収支も赤字どころか、百四十億ドルも黒字となったことは御承知のとおりであります。
 五十三年度予算についても、成長率七%、経常収支の黒字六十億ドルの見通しが、最近のGNPの実績によって推定すれば四・五%の成長見込みであり、黒字はすでに百四十億ドルを超えるものと見込まれています。
 このような福田内閣のたび重なる経済見通しの誤りについては、内外から手厳しい批判が起こるのは当然であります。
 福田総理は、それらの批判に対して、口を開けば、日本の物価は世界じゅうで最も安定している、これは福田内閣の経済政策の成果ではないかと自慢をしております。確かに、わが国の物価は戦後かつてない値下がりを示しております。しかし、総理、今日の物価の値下がりは、福田内閣の経済政策が成功したものによるものではありません。逆に、あなたの経済見通しが誤り、経済運営が失敗したために、不況が深刻化し、急激な円高を招いた結果でありまして、いわばけがの功名と言うべきであって、自慢すべきものではないのであります。(拍手)
 私は、昨年来の経済見通しのたび重なる誤りと、それをもたらした経済運営の失敗について、総理はいかなる反省をされているのか、心境のほどを承りたいと存じます。
 第四に、私は、雇用政策について労働大臣に伺います。
 今日、長期不況のもとで、雇用の情勢は依然として明るさが見られません。本年度の上半期の完全失業者数は平均百二十九万人であります。前年同期に比較しますと十四万人も増加しているのであります。とりわけ繊維産業や非鉄金属を初めとする構造不況業種の減量経営は、当該労働者にとって甚大な雇用不安を与えております。
 また、政府が景気対策の柱とした公共事業の拡大によっても、関連業種の臨時雇用を増大させるにとどまり、勤労国民の切実な要求である雇用の安定に対してさしたる効果を上げておりません。
 一方、政府は、昨年度予算で一千億円近い雇用安定事業費を計上いたしましたが、その運用実績は、種類と給付条件の複雑さや政策のPR不足が原因で、雇用改善事業の予算の消化率はわずかに一六%にとどまるという、まさに有名無実、実効のない雇用対策となっているのであります。今年度はそのようなことのないように、早急に改善策を講ずべきであると思います。
 雇用を安定し、失業から生ずる生活の不安の防止は、今日政治が最優先して取り組むべき課題であります。
 以下、私は、三点について具体的に政府の見解を伺いたいと存じます。
 まず第一に、当面の応急措置として雇用保険法を改め、地域延長など適用範囲を拡大する措置を講じ、全体として、少なくとも九十日の適用期間の延長を図るべきであります。そして、現在なお不足している技能労働部門の大規模な職業訓練制度を拡充し、その間の生活を保障する措置を講ずべきであります。
 第二に、他の先進諸国に比べて立ちおくれのはなはだしい福祉や教育、公共サービス部門での雇用を積極的に拡大すべきであります。わが党は、すでに、二十万人の雇用創出計画を主張いたしておりますが、この分野の拡大は、まさに社会が要求する福祉優先の柱であり、国民の要求に適切にこたえるものであると存じます。
 第三に、今日の雇用問題は産業構造の転換と関連し、中期的展望に立って対処する必要があります。その観点から、今後、国民の要求にこたえる産業分野、すなわち、都市再開発、生活環境整備を組み合わせた住宅建設、新エネルギー開発、資源再利用、福祉や文化活動に関連する第三次産業、情報システムや高度の機械産業等の分野について積極的な対策を講じ、産業構造の転換を進めながら雇用の拡大を図るべきであります。
 今日、高度成長時代に確立された経済優先の雇用政策を抜本的に見直し、雇用を優先した経済政策に転換をして、以上申し上げた諸施策を中心に総合的、体系的に雇用対策を講ずべきであると思いますが、政府の見解をお伺いいたします。(拍手)
 第五に、私は、今回の補正予算の実態を明らかにし、総理並びに大蔵大臣に伺います。
 政府は、当初予算のままでは、成長率七%の達成は困難であることを認め、今回の補正予算により、新たに事業規模二兆五千億円余の公共投資を追加し、内外に約束した七%成長を達成したいとしております。しかし、補正予算の実態をよく吟味いたしますと、一般会計からの新たな追加支出はわずか千四百五十億円であり、景気刺激効果のない国債整理基金特別会計への繰り入れ分六百四十億円を差し引けば、実質の追加支出は八百十億円にすぎず、あとは当初予算に組み込まれていた金額を振りかえて大型予算に見せかけているにすぎないのであります。
 すなわち、政府は、一般会計からわずか八百十億円しか追加支出をしないで、あとは地方財政におんぶし、また、来年度の個人住宅資金を当てにして二兆五千億円余の公共投資を追加しようとしておるのであります。まさにこれは粉飾予算の最たるものと言わなければなりません。(拍手)
 しかも、二兆五千億円余の事業規模中、地方公共団体の追加事業はすべて借金に依存し、その額は五千九百三十億円余であり、そのうち地方公共団体が自前で借り入れする金額は二千七百億円で、その額は、政府の追加支出をする八百十億円の三倍余に相当するのであります。火の車の地方財政の実情や先発工事の消化能力等を考慮すれば、追加工事の効果に期待をかけることはできません。また、来年度以降にわたる個人住宅の資金六千八百四十億円も、最近、不況の長期化に伴い、公共住宅資金に対する応募状況の悪化などから推して年度内消化が困難であることも明白であります。すでに民間経済予測機関は、この程度の補正規模では六%成長もむずかしいと予測しておるのであります。
 一体、政府は、この補正予算で本当に内外に約束をした七%成長が可能と信じておるのか、それとも、七%の達成目標を放棄して内外の批判を甘受するか、または、第二次補正予算を組むのか、そのいずれをとるのか、総理の見解を承りたいと存じます。
 第六に、私は、一般消費税と不公平税制の是正について、総理並びに大蔵大臣の見解を伺います。
 現在、世論の関心を集めている一般消費税については、税制調査会の提言が公表されておりますが、政府としてはまだ何らの見解を示しておりません。この際、政府としてこれをどう扱おうとするのか、改めて総理の見解をお伺いいたしたいと存じます。
 わが党は、赤字国債の依存から脱却をし、財政の健全化を図ることについて、かねてからその必要性を指摘してきたところでありますが、一般消費税を導入し、国民大衆の負担によって赤字財政を解消しようという方針には反対であります。
 言うまでもなく、税は、本来、公平の原則にのっとり、所得と能力に応じて負担し、生活費には課税せずという原則によって徴収さるべきものであります。
 一般消費税は、逆進性を持つ大衆課税であり、生活費非課税の原則にも反し、とうていその公平の原則に合致するものではありません。
 一般消費税導入に見られる税調の論理は、徴税技術のみに拘泥し、税の本質を見失っていると言わざるを得ないのであります。
 また、政府は、しばしばわが国の税負担率が諸外国に比較して低いことを挙げておりますが、諸外国の場合は、高い社会保障水準によって再分配されておりまして、政府が言うようにわが国の実質税負担率が低いわけではありません。
 私は、わが国の税制において何よりもまず必要なことは、不公平税制を根本的に是正することであり、これを放置して一般消費税を導入するなど論外のさたであると思います。
 不公平税制の代表的な事例としては、法人税と所得税の課税方法の差別による不公正があります。
 御承知のように、わが国の税体系は、企業の法人税、勤労者の所得税、その他の諸税から成り立っています。しかも、法人税と所得税は、税収の双壁として、税額がほぼ同水準でバランスがとられてきたのであります。たとえば、好況時の昭和四十九年度の法人税は五兆七千億円、所得税は五兆五千億円でありました。しかるに、不況となった五十一年度は、法人税が四兆六千億円と激減したのに反し、所得税は逆に六兆四千億円と増税されたのであります。
 理由は、法人税は、利益が上がれば課税され、なければ課税ざれない仕組みであり、不況になれば自動的に減税されるにかかわらず、勤労者の所得税は、名目所得が上がれば、家計が赤字であっても累進課税によって自動的に増税されるのであります。これは、地方税の事業税と住民税についても同様であります。まことに不公正きわまりない税制であります。
 その他、医師優遇税及び配当利子の分離課税等、不公平税制の事例は枚挙にいとまがありませんが、その指摘は他の機会に譲ります。
 総理、もし一般消費税の導入が強行されたならば、物価は上昇し、不況がさらに深刻となり、雇用事情は悪化し、国民生活や中小企業にはかり知れない打撃を与えることは必至であります。
 政府は、この際、一般消費税の導入を断念し、現行税制の持つ不公平税制を、かねて社会党が主張しているように、抜本的な改革をして、財政の健全化を図るべきであると思うが、総理の所信を伺いたいのであります。(拍手)
 第七に、私は、エネルギー政策について総理並びに通産大臣の所見をただしたいと存じます。
 申すまでもなく、わが国は全エネルギーの九割を海外に依存する構造になっており、エネルギーの確保は、まさにわが国存立の基礎であると言っても過言ではありません。とりわけ、石油危機以降、エネルギーをめぐる国際情勢が一段と不安定さを増しつつある今日、長期的展望に立った総合エネルギー政策をもってエネルギーの安定確保を図ることは、政府として最も重要な政策課題であります。
 しかるに、現在、わが国には政府が正式に定めた総合エネルギー政策はないのであります。昨年八月、総合エネルギー調査会の中間答申による長期エネルギー需給見通しが発表されていますが、これは閣議決定されたものでもなく、これをもって政府の責任ある総合エネルギー政策とは言いがたいのであります。
 この際、政府は、国として総合エネルギー政策の位置づけを明確にして、長期的、総合的、計画的にエネルギー政策を推進するため、エネルギー基本法を制定することが必要であると思うのであります。
 そして、工業技術院が主体となって開発をしているサンシャイン計画やムーンライト計画に法律的裏づけを行い、長期的視点から省エネルギー政策、石油代替エネルギーの開発、新エネルギーの研究開発、エネルギーの安定確保及び財源対策等の諸政策を、整合性、実効性をもって推進すべきであると思うのでありますが、政府の見解を伺います。
 エネルギー資源の乏しいわが国として、当面エネルギー政策の最重点に置くべきものは、新エネルギー開発と省エネルギー開発技術の促進であります。
 わが国の新エネルギー開発技術は、理論的には世界の水準に達していると言われていますが、従来、開発資金の投入が少ないために、実証面での立ちおくれが見られているのであります。五十三年度のエネルギー開発の予算を見ますと、原子力関係には千七百五十億円を投入しながら、サンシャイン計画等の新エネルギー関係には百億円にも足らない金額であります。しかも、原子力発電には、安全性の問題、使用済み核燃料の再処理、プルトニウム管理、廃棄物の処理等、多くの未解決な問題があり、今日、いまだに国民的合意を得ておりません。
 今日、原子力発電に過大に依存することは、将来のエネルギー供給上からも問題が残されておるのであります。
 したがって、新エネルギーの技術開発には思い切った国家資金を投入して、国産のエネルギーである地熱発電、原発二十基分に相当する残存水力の発電、太陽熱、水素エネルギー、波力発電等の開発を進めるべきであります。
 また、政府は、新エネルギー開発と省エネルギーを促進するために、関係企業や利用者に対して、奨励金、税制、金融等の助成を行い、積極的にエネルギー政策を進めるべきであります。
 特に、近年、実用化が進んでおる太陽熱利用の冷暖房給湯システム等を政府関係庁舎に率先採用し、民間にもその普及を奨励すべきであります。
 さらに、石油政策では、中国原油の長期大量の輸入契約の動き、サウジアラビアとの経済協力による長期輸入契約等に見られるように、政府間契約による原油輸入の拡大が予想されていますが、わが国では、石油市場がメジャーによって支配されており、メジャーを通さない原油の国内引き取り体制が全く不十分であります。
 政府は、これらの原油の国内優先引き取り体制を整備するために必要な立法措置を講ずる用意があるかどうか、政府の見解を承りたいと思います。(拍手)
 最後に、私は、中小企業、下請企業の問題について、総理並びに通産大臣の見解を伺いたいと存じます。
 今日、中小企業、下請企業は、長期的不況と急激な円高により、きわめて困難な経営状況に立ち至っております。
 言うまでもなく、中小企業は、わが国経済に重要な役割りを果たしており、今後においても、大企業によっては充足し得ない多様な国民のニーズにこたえる役割り等が期待されているのでありまして、今日の中小企業の苦境に対し適切な政策措置を講ずることは、社会的にも経済的にも重要な課題であります。
 すでに、急激な円高に苦しむ輸出関連中小企業に対しては、緊急融資制度、信用保証の特例等の措置が講じられておりますが、今後の円高の推移、これに伴う輸出構造の変化等に対応し、その内容の充実、新たな施策の実施等、抜かりのない政策手段を講ずることが必要であります。
 また、下請企業については、最近、親企業による下請代金の支払い遅延、下請単価の一方的な切り下げ、必要以上の発注減が目立ち、中には円高協力金などと称して下請企業に負担を強いる事例さえあらわれているのであります。
 もちろん、これらの多くは、下請代金支払遅延等防止法、あるいは独占禁止法に違反するものでありますが、その監視、取り締まりについては、下請取引の実情を直視し、公正取引委員会の人員の強化、あるいは中小企業庁に任せるだけでなく、政府として、都道府県に協力を求めて、下請取引の適正化を図り、下請企業の保護に万全を期すべきであります。
 さらにまた、いわゆる特定不況地域の下請企業の苦境はまことに深刻な実情にあるのでありまして、現在、政府の準備している対策法案が中途半端なものにならないよう強く要望するものであります。
 以上、所信表明に対する私の質問を申し上げましたが、総理及び関係大臣の誠意ある答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕
#13
○内閣総理大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。
 経済見通しが昨年もことしも誤った、こういう御指摘であり、おとがめでございますが、確かに私は経済の対外的側面といいますか、為替相場、つまり国際通貨の不安状態がかくも厳しいものになろうという予測を昨年しなかったのです。その点は率直に申し上げまして私の不明の至りである、このように申し上げて支障はないわけであります。しかし、板川さんが、そういう見通しの間違いがあったから日本の経済がこんなことになったんだ、こういうふうにお話しになりますが、こんなふうというような受け取りは私はいたしておりませんし、また板川さんは、経済がこんなふうになった、それから逃れるために有事立法というようなことで国民の目をそっちへ転じさせようとしておるのだ、このような御見解を示されましたが、私は、ただいま申し上げましたような国際通貨不安に対する見通しの違い、そういう点はありますけれども、大局といたしますと私のこの経済運営には過ちはない、このように考えておるわけであります。
 昨年のことを振り返ってみましても、私ども日本とよく並べられるドイツはどうであったか、ドイツもまたマルク高で大変な影響を受けたわけでございまするけれども、あのドイツにおきましては五%成長ということが予定されておりましたものが二・四%で終わったじゃありませんか。わが日本は一体どうだといいますれば、いまもお話がありましたけれども、六・七%成長がとにかく五・五%の成長だ、世界第一の成長を示しておるわけなのであります。そういうようなことをお考えくださいますれば、私が経済の失敗を有事立法だ何だ、そういうようなことに転嫁しようとしておるという、そういう見方は、私は、いかがであろうか、このように思うわけでございます。
 ただし、板川さんのお話の中で、日本の安全というものは、自衛隊の増強、それだけで考えてはいけないのだ、食糧の問題、その他エネルギーの問題、いろんな角度から総合的に考えなければならぬ問題である、そのためには世界各国と平和友好の関係を結ばなければならぬ、そういう御所論につきましては、私は全く同感でありまして、さればこそ、私は、全方位平和外交を展開しておる、また同時に、食糧の問題につきましても、あるいはエネルギーの問題につきましても、その他、国土の防災、そういう諸問題につきましても鋭意取り組んでおるということは、よく御承知のとおりでございます。
 なお、ことしの経済、ことしの予算でございますが、ことしの経済が、見通しといたしますと七%成長ということになっておる、それが今度の補正で一体実現できるのだろうかというお話でございますが、確かにほうっておきますると、あの為替相場、円高の影響等によりまして、七%実質成長が実現ができません。そこで、今回、皆さんにもお願いいたしまして補正予算を成立させていただかなければならぬし、その他いろんな立法もお願いしていかなければならぬと考えておるわけでございまするけれども、とにかく七%成長、これは国民も期待しておる、国際社会も期待をしておる、これを実現をいたしたい、また実現をいたすという決意でございます。
 また、円高ということになりますると、やはり一番影響を受けるのは中小企業であり、特に輸出に関係をいたしておる中小企業。このためには、これは、かねていろんな施策を講じておるわけでございまして、五十三年の二月、円高対策法も制定されておることは、御承知のとおりでありまするけれども、最近の円高の一層の進行に対処するため、従前の対策をさらに拡充強化する。そのため、中小企業為替変動対策緊急融資の拡充、延長、また産地中小企業が行う市場転換等の緊急事業に対する補助制度の創設など、今度、立法やあるいは補正予算等において御審議を煩わすことにいたしておりますので、何とぞ御協力のほどをお願い申し上げます。
 自余の問題につきましては、所管大臣からお答えを申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣村山達雄君登壇〕
#14
○国務大臣(村山達雄君) 板川議員にお答えいたします。
 一つは、今度の補正予算の増加枠が千四百五十億程度にとどまった、しかも国債整理基金特別会計への繰り入れ分の二分の一を引くと八百十億だ、だから二兆五千億という景気刺激効果から見ると、それは粉飾予算ではないか、こういうお話でございます。これは、全然違うということはもう御承知のとおりでございまして、二兆五千億というものは、もうしばしばお示ししているように、一般会計でどれぐらい持つか、財投でどれぐらい持つか、それから民間資金でどれぐらい持つかということの中身を示してあるわけでございまして、これで推定いただきたいと思うわけでございます。一般会計の方で持ちます分が、四千六百億でございます。そのほかに、不況対策その他がございますので、追加予算といたしましては七千百五十億になります。
 それから、財源の話は、どうして出すのか、こういうお話は、また別の問題でございます。財源は、大ざっぱに申し上げますと、千四百五十億はもう先生御指摘のとおりでございますので、申し上げません。それから公共事業予備費、これはそのために取ってあったもので、従来成長量にカウントされておりません。したがって、それを入れております。九百六十億という、三千億の所得税減税に伴う交付税の本来減額すべきところ、それを減額しないで使わしていただきます。ただし、その分は財投の方から特別会計の方に回しますといいますか、これもちょうど使える分でございます。その他、実は為替レートが上がった関係で、いろいろな調達費、外国からの調達に係る所要資金が減ることになりました。実質は減らぬのです。ですから、実質の方はちっとも関係ない話で、そういう資金が浮きましたので、そういうものを充てているわけでございまして、そのことでもって粉飾予算というのは全く当たらないということを御理解いただきたいと思います。(拍手)
 それから第二番目に、消費税の問題については、もう先ほど総理が明快にお答えになりましたので、申し上げません。
 ただ一言だけ申し上げておきますと、税の問題は、それ自体の逆進性とか、それの持つ機能もありますけれども、どこの国でも税体系全体としてどうなるのか、あるいは歳出の関係で一体どうなるかということをぜひ御検討願いたいと思っておるのでございます。
 それから第三番目に、いままで大体法人税収というものと個人の所得税収が同じであったのだが、法人税収が大分少なくなって個人の税収がよけいになっているのは、あれは個人の方は赤字に課税しておるからふえてきたのだ、こういうふうなお話でございますが、これは全然違う話でございまして、御案内のように、法人の方の収益力が衰えてきたからそうなるわけでございます。人件費あるいは金融費用あるいは原材料費が上がって収益が減っているから少なくなっているわけでございます。個人の方には赤字に課税しているわけではございません。あくまでも所得税でもって、世界最高の課税最低限のもとに、それを引いた残りに課税しておるのでございます。ただ、その可処分所得を超えてよけい使うということは間々あることでございまして、これは家計費の赤字でございまして、所得の赤字とは無関係の話でございます。
 以上、ごく簡単でございましたが、終わります。(拍手)
    〔国務大臣河本敏夫君登壇〕
#15
○国務大臣(河本敏夫君) 私に対する御質問の第一は、総合エネルギー政策を権威あるものとして早く立案せよ、こういうお話でございますが、ただいま国民各層の御参集を願いまして、幅広く長期的視野に立ちまして、総合エネルギー政策を検討中でございます。
 来月中には、多分案がまとまるものと考えておりますが、これを背景といたしまして、実効性ある、かつ整合性のある総合エネルギー政策というものを決定したいと考えております。
 なお、現在は、昨年の八月に総合エネルギー調査会から中間答申をいただいておりますが、これは閣議決定はいたしておりませんけれども、総合エネルギー対策推進閣僚会議で報告、承認をいたしまして、この線に沿って現在はエネルギー政策が進められておるところでございます。
 それから、エネルギー政策の第二点は、新エネルギーの開発計画にもっと力を入れるべきである、こういうお話がございました。現在新エネルギーの開発計画は、これをサンシャイン計画と呼んでおりまして、その内容は、地熱エネルギー、石炭の液化、石炭のガス化、それから太陽エネルギー、水素エネルギー等の開発が中心になっております。いまのお話は、これらの新エネルギーの開発のほか、水力発電等にも大きく力を入れるべきではないか、こういうお話でございます。この御意見には全く賛成でございまして、その方向に進めたいと存じます。
 それから第三の問題は、省エネルギー政策も強力に進めるべきである、こういうお話でございますが、現在、省エネルギー政策として幾つかの対策を進めておりますが、これはムーンライト計画と呼んでおります。さらにこれは強力に進めていく所存でございます。
 次に、今後中国、サウジ等から石油がどんどん入ってくることになりますが、このGG原油あるいはDD原油等の輸入を整合性を持って円滑に進めるべきである、こういう趣旨のお話でございます。御意見ごもっともでございまして、その方向に進めていく所存でございます。
 なお、立法措置についての御意見がございましたが、現在政府として考えております立法措置は、省エネルギー政策につきましてとりあえず立法措置をお願いしたいと考えております。
 次に中小企業関係についてのお話がございましたが、緊急の円高対策と不況地域対策につきましては、先ほど総理から御答弁がございましたので省略をいたしますが、下請対策につきましては、これは最近不況と円高等のために下請に相当しわが寄り始めておりますので、去る九月二十日に通産省と公取から連名で、親企業並びに親企業団体等に対しまして、不法なしわ寄せが寄らないようにという注意を喚起いたしました。なお、これを実効あらしめるために、今後府県の協力等も強く求めてまいる所存でございます。(拍手)
    〔国務大臣藤井勝志君登壇〕
#16
○国務大臣(藤井勝志君) 板川議員にお答えをいたします。
 雇用安定資金制度につきましては、昨年の秋、制度が発足をいたしまして、その後、この制度の趣旨の徹底あるいはまた運用についていろいろ努力してまいったわけでございますけれども、その後、景気の浮揚が思わしくいかず、雇用失業情勢はきわめて深刻な状態が続いて今日に参っていること、御案内のとおりであります。したがって、この十月の一日に業種等の指定基準の改定あるいはまた支給要件の緩和という、こういった内容を含みますところの制度の大幅改正を考えておるわけでございまして、御期待の線に十分沿い得るものと考えるわけでございます。
 それから、雇用保険法を改正して地域延長給付の創設を考えたらどうかという御提言でございまして、これは、構造不況業種がある地域が、非常に集中的にその地帯の経済活動が沈下し、雇用情勢が非常に厳しく、離職者が多発するという、こういう状態が心配されますので、このような地域に対しては地域ぐるみで指定をする、こういった考え方を踏まえた法案を現在準備いたしておりまして、近々御審議願う予定を考えておりますので、御趣旨の線を十分踏まえて努力をいたしたい、このように考えるわけでございます。
 それから、福祉部門等へ雇用の拡大を図ったらどうかという、こういった御提言でございまして、確かに、そういう面において、福祉であるとかあるいは教育であるとか、あるいは医療保健、公共サービス、こういった面に対して、わが方は、やはり欧米先進国と比較しておくれておるわけでございます。こういったおくれた部面に対してひとつ設備を充実し、人手もそちらにふやしていくということはまさに一石二鳥である、このように考えるわけでありまして、大いに今後努力しなければならない。
 同時に、やはりわれわれが今日経済大国になり得た背景を考えますと、技術革新というものが、これが企業化されて、そして雇用の場を広げたという、このこともわれわれは忘れてはならない。
 こういった考え方と両方踏まえまして、やはり産業構造の基調をいま申しましたような方向へ前進さすことによって雇用の拡大を図りたい、このように考えるわけでございます。
 最後に御指摘がございました、従来の雇用政策はやはり経済政策に追従しておるではないか、もっともっと雇用を重視した経済政策を展開すべきであるという、こういったお考えでございますが、私は、やはり企業があって雇用の場がある、これは車の両輪だと考えております。したがって、大いにこれからは、御指摘のごとく、高度成長経済のもとにおけるような経済政策をやればおのずから雇用問題は解決するという、こういった経済政策に追従した雇用政策では、これは事の用に立たない、間に合わない、やはり雇用安定を十分配慮した経済政策を展開する、こういったことで努力をいたしたい、このように考えるわけでございます。(拍手)
     ――――◇―――――
#17
○加藤紘一君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明二十九日午後二時より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されんことを望みます。
#18
○副議長(三宅正一君) 加藤紘一君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#19
○副議長(三宅正一君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時三十五分散会
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 出席国務大臣
        内閣総理大臣  福田 赳夫君
        法 務 大 臣 瀬戸山三男君
        外 務 大 臣 園田  直君
        大 蔵 大 臣 村山 達雄君
        文 部 大 臣 砂田 重民君
        厚 生 大 臣 小沢 辰男君
        農林水産大臣  中川 一郎君
        通商産業大臣  河本 敏夫君
        運 輸 大 臣 福永 健司君
        郵 政 大 臣 服部 安司君
        労 働 大 臣 藤井 勝志君
        建 設 大 臣 櫻内 義雄君
        自 治 大 臣 加藤 武徳君
        国 務 大 臣 安倍晋太郎君
        国 務 大 臣 荒舩清十郎君
       国 務 大 臣 稻村左近四郎君
        国 務 大 臣 牛場 信彦君
        国 務 大 臣 金丸  信君
        国 務 大 臣 熊谷太三郎君
        国 務 大 臣 宮澤 喜一君
        国 務 大 臣 山田 久就君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 真田 秀夫君
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ソース: 国立国会図書館
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