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1977/05/09 第84回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第084回国会 法務委員会 第22号
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1977/05/09 第84回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第084回国会 法務委員会 第22号

#1
第084回国会 法務委員会 第22号
昭和五十三年五月九日(火曜日)
    午前十時三十八分開議
 出席委員
   委員長 鴨田 宗一君
   理事 羽田野忠文君 理事 濱野 清吾君
   理事 保岡 興治君 理事 山崎武三郎君
   理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君
   理事 沖本 泰幸君 理事 高橋 高望君
      稻葉  修君    上村千一郎君
      鹿野 道彦君    田中伊三次君
      玉沢徳一郎君    二階堂 進君
      西田  司君    三池  信君
      渡辺美智雄君    西宮  弘君
      飯田 忠雄君    長谷雄幸久君
      正森 成二君    加地  和君
      鳩山 邦夫君    阿部 昭吾君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 瀬戸山三男君
 出席政府委員
        法務政務次官  青木 正久君
        法務大臣官房長 前田  宏君
        法務省刑事局長 伊藤 榮樹君
 委員外の出席者
        法務大臣官房参
        事官      藤永 幸治君
        最高裁判所事務
        総長      牧  圭次君
        最高裁判所事務
        総局総務局長  大西 勝也君
        最高裁判所事務
        総局刑事局長  岡垣  勲君
        法務委員会調査
        室長      清水 達雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月九日
 辞任         補欠選任
  小島 静馬君     西田  司君
  佐野 嘉吉君     鹿野 道彦君
    ―――――――――――――
五月八日
 刑事事件の公判の開廷についての暫定的特例を
 定める法律案反対に関する請願(工藤晃君(
 共)紹介)(第三九九〇号)
 同外一件(横山利秋君紹介)(第三九九〇号)
 同(島田琢郎君紹介)(第四〇五一号)
 同(塚田庄平君紹介)(第四〇五二号)
 同外一件(横山利秋君紹介)(第四〇五三号)
 同外一件(田邊誠君紹介)(第四〇九五号)
 同外一件(西宮弘君紹介)(第四〇九六号)
 同(馬場昇君紹介)(第四〇九七号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
五月一日
 刑事事件の公判の開廷についての暫定的特例を
 定める法律案反対に関する陳情書外一件(金沢
 市丸の内七の二金沢弁護士会長田中幹則外一
 名)(第二九三号)
は本委員会に参考送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 刑事事件の公判の開廷についての暫定的特例を
 定める法律案(内閣提出第五三号)
    ―――――――――――――
#2
○羽田野委員長代理 これより会議を開きます。
 本日、委員長所用のため出席がおくれますので、その指名により、私が委員長の職務を行います。
 お諮りいたします。
 本日、最高裁判所牧事務総長、大西総務局長及び岡垣刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○羽田野委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
#4
○羽田野委員長代理 内閣提出、刑事事件の公判の開廷についての暫定的特例を定める法律案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。稲葉誠一君。
#5
○稲葉(誠)委員 最初に、最高裁当局にお尋ねをいたします。
 五月二日の最高裁の岡原長官の発言というのは非常に重要な問題を提起した発言である、こういうふうに私どもは考えておるわけです。その内容については後で申し上げますが、そこで、五月四日に私が委員部の方に、最高裁長官にぜひ出席をしていただいて、そしていろいろこの発言の真意その他についてお話し願いたい、こういうことを申し上げておったわけであります。これば司法権のことでありますから、もちろん要求ということではございません。出席をしていただきたいという要請であるわけでございますが、きょう、なぜ岡原さんが当委員会に出席をされないのか、その理由について、事務総長がおいでですから、まず最初に事務総長にお伺いをいたしたい、かように存ずる次第です。
#6
○牧最高裁判所長官代理者 長官が出席されて説明するということは確かに国会法上にもございますけれども、長官は上告事件等裁判事務もあわせ携わっておられますので、長官の監督のもとに司法行政を預かっております事務総長が代理として出席して御説明申し上げておるのが従前の慣例でございます。今回の事件につきましても、事務総長が出席をして御説明申し上げるのが適当であろうということで、私か代理として今回出席して説明さしていただくことにいたした次第でございます。
#7
○稲葉(誠)委員 そうすると、あなたが出席をして代理として説明をする、こういうことについては最高裁長官と打ち合わせをされて、そして最高裁長官はきょうは出ない、そのかわりおまえ行けとも言わぬだろうけれども、事務総長行っていらっしゃいというのか、そういう話だったわけですか、最高裁長官と打ち合わせされたのですか、それは。
#8
○牧最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたとおり、長官は裁判事務も携わっておられますので、今回の事件に関連いたしましては、司法行政を預かっておる事務総長が行って説明するの爪適当であろうという御意見でありましたので、子の点については御相談申し上げております。
#9
○稲葉(誠)委員 そうすると、これは前に、何国会でしたか裁判所法の改正のときに、田中耕太郎さんが長官で、みずからの御意見で委員会に出底をされたことがございますね。そういうことからしても、これだけの発言をされて、その真意があるいは本人に言わせれば必ずしも伝わっていないのかもしれませんから、それを説明されるということは、場合によってはそういうこともあり得るわけですか。
#10
○牧最高裁判所長官代理者 確かに、裁判所法の一部改正について過去長官が御出席になって説明されたことはございます。ただ、そのときの問題はいわゆる最高裁判所の機構改革の問題でございまして、最高裁判所の機構自体をどうするかということの問題でございましたので、長官が御出席になって御意見を述べられたということのように伺っております。今回の分については、そのような直接の御意見ということは新聞その他で十分御承知いただけているかと思いますので、事務総長が行って説明するのが適当であろうという御意見でございます。
#11
○稲葉(誠)委員 そうすると、新聞その他で十分お知りだろうということは、新聞に岡原長官発言の要旨という一問一答のようなものが出ておりますが、これはこのとおり正確だ、こういうふうに承り、ここに岡原長官の真意がそのままに出ておる、こういうふうに理解をしてよろしいですか。
#12
○牧最高裁判所長官代理者 新聞の報道で、各紙で若干の相違はありますけれども、おおむね発言の要旨として述べられておるところは相違はないものと考えております。
#13
○稲葉(誠)委員 そうすると、これは最高裁長官としての発言と理解をしてもちろんよろしいわけですね。
#14
○牧最高裁判所長官代理者 そのように理解していただいて結構でございます。
#15
○稲葉(誠)委員 何かよくわからないのですが、行政官としての発言だとか司法行政に携わる最高裁の長としての発言だとかいうふうなことが一部言われておる。これは福田さんと中曽根さんとの会談の後で、中曽根さんが記者会見をして言われた言葉として伝えられておるので、あるいは正確ではないかもしれませんけれども、これはよくわからないのですが、どういう意味なんですか。
#16
○牧最高裁判所長官代理者 長官が発言されましたのは、いわゆる憲法週間におきまして長官談話を発表されまして、それの後記者団の質問に応じて、現下の司法の当面しておる問題というようなことについて所信を述べられたものでございます。したがいまして、これはいわゆる裁判官会議の議を経たものというようなことではございませんが、長官の岡原個人として述べられたわけではもちろんございませんで、長官という立場でお述べになった、したがいまして、それは司法行政を総括する立場としての長官の御発言というふうに伺っていただいたら結構かと思います。
#17
○稲葉(誠)委員 そうすると、その内容の中で、書いたものを読み上げたのはそれはそれとして、あれは平凡と言ってはおかしいけれども普通のことが書いてあるわけですね。それ以外の、新聞記者との会見の中で新聞記者の人から出たのは、いまここで審議をしておる、略して言いますといわゆる刑事事件の特例法、これに関しての質問が出た、それに対して岡原さんは答えている、こういうふうに了解をしてよろしいわけですか、もちろん一般的にそういうふうに了解をされておるようですが。
#18
○牧最高裁判所長官代理者 長官の談話は、いわゆる憲法記念日に当たりまして法の支配を強調された趣旨の談話を出されたわけでございます。その法の支配ということに関連するかと思いますが、現在当委員会で御審議いただいている法案の背景に異常な事態があるというような認識かという質問がございました。それで、現在の裁判の実情についてはそういうような異常な状態がある、そういうことはある程度改善してもらう必要があるということを述べられて、それで、ちょうど長官談話で強調された法の支配をその問題に関連して具体的に強調されたというふうに伺っております。
#19
○稲葉(誠)委員 法の支配はそれはそれとして、私の言うのは、刑事事件の特例法について、言われておるような異常事態があるかどうか、こういう質問であった、それに対して答えられた、こういうふうにもちろん理解していいわけですね。
 そうなってまいりますと、結局は、現在ここで審議をされておるこの法案、これはこの前本会議でも質問がありましたように、憲法違反であるという説もあるし、憲法違反の疑いがあるという説もあるし、憲法違反でないという説もあるし、いろいろな説があるわけですけれども、それについて、これははっきりは言葉ではあらわしてはいませんけれども、憲法違反ではもちろんないということを長官が答えられておる、こういうふうに理解してよろしいですか。
#20
○牧最高裁判所長官代理者 先ほども申し上げましたように、当委員会で御審議いただいている刑事事件の公判開廷特例法案というものは、現在の一部の裁判における異常事態に対処するためというふうに言われております。そういうような異常事態が実際の裁判にあるのかという御質問に対して、そういうような異常な事態があるということを述べられただけでございまして、直接的に法案が合憲であるか違憲であるかというようなことを述べられた趣旨ではございません。
#21
○稲葉(誠)委員 だけれども、この法案に関連して異常な事態があるかという質問に対して、異常な事態があるということを言っていることは、憲法違反の直接の問題は出なかったとしても、この法案が妥当であるということを物語っておるとしか理解できないのじゃないですか。この法案は憲法違反でないというふうに最高裁長官は言ったわけじゃないでしょうが、この法案の前提となっておる異常な事態があるかと聞かれたときに、異常な事態があると言うことば、この法案の必要性を最高裁長官が認められたのだ、こういうふうに理論的になってくるわけでしょう。
#22
○牧最高裁判所長官代理者 異常な事態があり、それについて改善を必要とするという長官の所信を述べられたわけでございまして、それがそのまま法案に結びついての発言ということではございません。
#23
○稲葉(誠)委員 それはおかしいのじゃないですか。新聞記者の人は法案について質問しているのでしょう。だから、法案についてのストレートな答えではないかもわからぬし、多少回っているかもわからぬけれども、法案について答えているわけじゃないのですか。一般的なことを聞かれて一般的なことを答えられているわけじゃないのじゃないですか。
#24
○牧最高裁判所長官代理者 記者団の異常な事態があるかという質問に対して、具体的にそういう異常な事態があるということで裁判所は困っている、法の支配を確立するためにはそういう点に何らか対策を講じてもらう必要があるということを述べられたということでございまして、積極的に法案について言及されたということはございません。その点は発言要旨をお読みいただければおわかりいただけるかと思います。
#25
○稲葉(誠)委員 積極的にこの法案についてこれを支持するとかなんとかという言葉は発言要旨を見ますとなるほど出てこないけれども、全体の流れの中からは、特例法の前提となっておる異常な事態があるかということについて、そういう異常な事態があるから困ったものだということのずっと引き続きですから、当然この法案を支持するという立場に立って発言をされておるとしか理解はできないのじゃないですか。私はそういうふうに理解しますよ。実際最高裁としては支持しているのでしょう。現実問題として最高裁の方が法務省よりこの法案に一生懸命になっているのじゃないですか。
#26
○牧最高裁判所長官代理者 何度もお答えいたしますけれども、裁判所の審理に際しての異常な事態があるということをお述べになって、それについての改善を強調されたということでございます。で、改善についてはいろいろの方策が考えられるであろう、そういうような点について関係諸機関にひとつよろしく御検討をいただきたいということになろうかと思います。したがいまして、直接的に法案について意見を述べられたということではございません。
#27
○稲葉(誠)委員 これは堂々めぐりをした議論をしてもしようがありませんから進めますけれども、現在の事態を改善したいということは最高裁から言わせれば、率直に言えばこの法案を通してほしいということなんでしょう。そこまでは言葉の上では出ていませんよ、出ていませんけれども、これはそういう意味を言っているのじゃないですか。そうでなければ、特例法について新聞記者の人から質問が出たならば、当然、この法案は現に国会にかかっていることなんであるから、異常な事態があるとかないとかそういうことも全部含めて、私としては、違憲立法審査権を持っておる最高裁判所の長官としては、そういうことについてはコメントできません、こう言うのが筋道ではないですか。なぜそういうふうに言わないで、ずるずると言うと言葉が悪いかもわからぬけれども、意識的に人っていったのか、なぜそういうことをコメントできませんと言って断らなかったのでしょうか。そこがおかしいじゃないですか。
#28
○牧最高裁判所長官代理者 裁判の実情にそういう異常な事態があるという場合には、司法行政を扱う最高裁判所の長官としてはそこにきわめて強い関心を持たざるを得ないことは当然であろうと存じます。そういう意味で、こういう状態がある、これは適正迅速な裁判を実現することを使命としている裁判所にとっては重大な問題である、そういうことについては関係機関において、いろいろ考えてほしいということをお述べになられたわけでございまして、こればきわめて当然のことであろうかと存じます。したがいまして、そこは事態についての、前提についての御議論はあったかもしれませんけれども、法案ということについては質問でも触れられておりませんし、長官も触れられておらないということだと思います。
#29
○稲葉(誠)委員 それはわかりましたよ。言葉の上では出てないのですよ。言葉の上では、法案についての質問は新聞記者の人から出ているけれども、この法案をどうこうしろということは最高裁長官は答えていないわけですけれども、これを全部読んでみれば結局この法案について言及をしておる。これはだれにでもそういうふうにとれるのではないでしょうか。あなたはそこに列席してなかったのでしょう。どうですか。
#30
○牧最高裁判所長官代理者 私は直接その場には居合わせてはおりません。
#31
○稲葉(誠)委員 そこにいたのは秘書課長兼広報課長でしょう。後からあなたは報告を聞かれたわけですがね。だからそうなってくると、岡原長官の真意をわれわれとしてはさらにお聞きをしたいという気持ちになってくるわけです。あなたは出席しているわけじゃないし、出席したのは岡原さんなんだから、岡原さんの言っているのは、刑事事件の特例法についての質問に対する大前提での答えの中から、だんだん最後の方は一般論のような形になってきているけれども、全体としては特例法のことを意味して、それをサポートしてくれとは言わぬけれども、そういう意味にだれが見てもとれるような発言である、こういうふうになってぐると私は思うのです。なぜそこで、現在国会で審議中の法案についての質問が出たときに、前に言ったように、そういうことについては国会に対する干渉というか立法権に対する干渉でもあり、違憲立法審査権を持つ最高裁の長官としてはそういうことは答えられませんと言わなかったのですか。そんなことをあなたに聞いたってあなたはあれじゃないからしょうがないが、やはり岡原さんに来ていただかなければわからないでしょう。岡原さんの気持ちがはっきりわからぬから、話があっちこっちいってしまって何か締まりのない話になってしまうんだよ、あなたを相手にしていても。
#32
○牧最高裁判所長官代理者 何度も繰り返すようでございますけれども、長官談話として法の支配を強調されました、その後の記者団の質問の際に、現下の司法の重要な問題となっておる裁判の異常な事態というものが取り上げられた、それに対して司法行政を総括する長官として所信を述べられた。結局、裁判の異常な事態について何らか改善をしてもらわなければ、裁判としては法の支配の確立ということもできないのではないだろうか、そういうことを述べられたことでありまして、司法行政を掌理する者としての立場から言って、重大な関心を持っていることに対して述べられることは、きわめて当然のことではないかというふうに考えておるわけでございます。
#33
○稲葉(誠)委員 二つの問題がありますね。いまあなたは異常な事態ということを言うけれども、その前に刑事事件特例法についての記者の質問だということをあなたはまた意識的に省いてしまっている。それから、いろいろな重大な改善策ということの中に、いま提出されている本法も入っているのでしょう、あなた方はそう考えているのでしょう、どうなんですか。
#34
○牧最高裁判所長官代理者 それはいろいろな方策が考えられると思います。そこで、内閣並びに法務省で御提案になっている現在の法案ということも、内閣として考えられた一つの方策ということになろうかと思います。しかし、長官として述べられたところについては、その点とは直接の関係はないわけでございます。
#35
○稲葉(誠)委員 直接の関係はないようなふりをしているというか、そういうふうなかっこうではあるけれども、直接関係していることを実際は言っているのでしょう。議論はいつまでたっても同じことですから進めますけれども、だから結局、大変失礼だけれども、あなたと議論をやっていてもだめなんですよ。やはり、丁重にこちらも礼を失しないようにいたしますから、岡原さんに来ていただいて、その間の真意というものをお述べになっていただかないと、どうにも話が進まぬということになるわけですね。
 そうすると、このときに岡原さんの言われたことは、結局、係属中の具体的事件についても言われていますね。司法行政か何か知りませんけれども、将来最高裁に上がってくるかもわからないような具体的な事件を二つ言っていますね。それについて長官として言及することは一体正しいことでしょうか、どうなんですか。そんなことは、司法権の独立のたてまえから言っても、言うべき筋合いのものではないのじゃないですか。これはどういうふうにお考えですか。
#36
○牧最高裁判所長官代理者 一部の事件におきまして、法廷で被告人がルールを無視した行動に及んでいるということは、裁判所としては裁判の運営の点できわめてゆゆしい問題である、そういう重要な問題であるので、それについての所見を求められて、それはやはり法支配の確立の上からは好ましくないというふうに考えるということを述べられたわけで、これは司法行政を総括する者としての立場からいって、きわめて当然のことではないかというふうに考えておるわけでございます。
#37
○稲葉(誠)委員 二つの事件の話をされたということは、裁判所としては二つの事件で非常に困っている。だから、一番最初の前に戻って、刑事事件特例法についての質問が出て、それがそこへまた帰結されてくるのじゃないですか。だから、この法案というものをサポートするという意味がそこに当然含まれているのじゃないですか、それでなければ、こういう二つの事例を挙げる理由というものはないのじゃないですか。現に進行中の裁判について最高裁の長官がかれこれ言うべき筋合いのものではないのじゃないですか。
#38
○牧最高裁判所長官代理者 異常な訴訟の状態に対しての解決ということを図るために、裁判官もそれぞれ努力いたしております。あるいは法曹三者の協議ということもございましょう。その他法改正というようなことも考えられるでございましょう。そういうような何らかの措置をとることによってこういうような異常な状態を解消するということが、現下の司法にとっては重要な問題であるということを述べられたわけでございまして、直接すぐ法案に結びつくということではございません。背景の事実ということになろうかと思います。
#39
○稲葉(誠)委員 だから私は直接結びつくとは言っていないのですよ。それはやはり最高裁長官は考えていますよ、あの人は頭がシャープな人だから。小学校五年から中学に入って、中学四年から高等学校に入った人だから。私もあの人にずいぶん怒られたことがあるから、そのぐらい知っていますよ。非常にシャープな人だ。だから十分知っていて、直接結びつくようなことは言っていませんよ。しかし、全体を読んでみればこの法案のことについて言っているとしかとれないのは、これはあたりまえの話なんで、これは見解の相違かもわかりません。だから、直接御本人に出てきていただいて、むしろ御本人の口から、そうじゃないならそうじゃないという真意を説明していただかないと、私どもはこの法案について最高裁長官がサポートして立法府に介入した発言をしているのだ、こういうふうにとらざるを得ない、こういうふうになってくるわけですよ。ここら辺のところは、あなたとしてもおわかり願えるのじゃないですか。
#40
○牧最高裁判所長官代理者 今度の発言の問題については、十分長官の御真意も伺っておりまして、その上で御説明申し上げているので、先ほど申し上げた私の御説明は、長官の御説明でもございます。
#41
○稲葉(誠)委員 そうすると、日弁連についてこんなことも言っているわけですか。問題のあった弁護士の懲戒問題について結論を出さないままうやむやにしている、それからほんの数人だが弁護士はばっさりやればいい、こういうような言葉も言っているのですか。はなはだ品のない言葉ですけれども、そういうふうな意味のことも言っているのですか。
#42
○牧最高裁判所長官代理者 弁護士会の懲戒手続が必ずしも十分に運営されていない、あるいは機能していないというような趣旨について述べられたことはあるように伺っております。
#43
○稲葉(誠)委員 あるように伺っているのじゃなくて、あるのじゃないですか。何であるようにとかなんとかいうふうに言葉をひん曲げて使うのですか。これは日弁連の自律権の問題であって、そういうことは最高裁がかれこれ言うべき筋合いのものではないのじゃないですか。しかも、懲戒の問題について結論を出さないままうやむやにして、いる、そんなことはないのじゃないですか。これは後でまた別のときに質問がありますけれども、ちゃんと結論を出しているのじゃないですか。むしろ裁判所側が、いろいろ告発したってちっとも立証しないというか証拠を出さないから、懲戒問題は棄却みたいになっておるということで、うやむやにしておるということはないのじゃないですか。
#44
○牧最高裁判所長官代理者 懲戒委員会の手続が必ずしも十分に機能しておるようには思われないということを述べられたということは先ほど申し上げたとおりでございます。これは、裁判というものが裁判所だけではなくて、検察官あるいは弁護士というものの、訴訟関係人の協力を得て初めて十全に運営されるわけでございますから、その訴訟関係人の一つである弁護士の団体である弁護士会の現状が必ずしも懲戒その他の手続の面で十全に機能していないのではないかという危惧を持たれた場合に、それについて危惧の念を表明されたということは、これはきわめてあたりまえのことではないかというふうに考えておるわけでございます。
#45
○稲葉(誠)委員 この発言は、懲戒問題が十分にいっていない、そういうことではないでしょう、言葉じりをとらえるかもしれませんけれども。だから私は最初に、新聞紙上に出ておること、岡原長官発言の要旨というのは間違いがないかということを聞いているわけですよ。間違いだというならそれはまた別ですけれども、間違いないと言うから、私はこれを前提に進めているので、そんなことじゃないのじゃないですか。結論を出さないままうやむやにしている――うやむやにしている事例が一体どこにあるのですか。――ちょっと待ってください、あなたに聞いているのじゃないのですから。これはまた後でゆっくり聞きますよ。
 それから、何とかの弁護士はばっさりやればいい。ばっさりやればいいというのはどういう意味なのか。そんな品のない言葉を最高裁長官は便ったのですか。
#46
○牧最高裁判所長官代理者 懲戒手続が裁判所の所長から申し立てられた事件が、昭和四十五、六年ごろでございますか、数件あるわけでございます。それらの分でまだ未処理のものというものは若干残っておるように考えております。そういう点について、それは結論がまだ出ないということでは困るのではないか、ある程度そういう手続は進めてもらう必要があるのじゃないかということを述べられたというふうに考えておるわけでございます。
#47
○稲葉(誠)委員 それは、あなたが考えているので、出てきた言葉はそういう言葉じゃないわけですよ。だけれども、言葉じりをつかまえるのはよしましょう。
 そこで、きょうも理事の方が集まっていろいろこの問題についてお話をしたわけですが、あの新聞発表以後の論調など見てみましても、少なくとも最高裁長官の発言としては、時期的に見ても、現在法案がここにかかっておる段階においても、ああいう発言は軽率であった、こういう意見が多いわけですね。これは多いのは事実なんですからね。だから、あなた方の方でも、この最高裁長官の発言は時期的にふさわしくないというか、あるいは軽率である、こういうふうに考えられておるのですか。あるいは、その点について最高裁長官に聞いたら、いや、おれの言うことは間違ってない、間違ってないのだからどこへでも出かけていく、こういうふうに言っておられるのか、どうなんですか。
#48
○牧最高裁判所長官代理者 前提が、先ほども申し上げましたように若干御理解が違うのじゃないかと思いますが、異常な事態があるということについて、司法行政を掌理する立場にある長官が関心を持ち、それについて所信を表明されるということは、きわめて当然なことではないかというように考えておりますので、特にその点について御意見を申し上げるというような立場ではございません。
#49
○稲葉(誠)委員 これは議論をしていくと、やはり岡原さんにおいでを願って真意を聞かないとよくわからぬのですよ。ということは、なぜわからないかというと、あなたの言うのは、異常な事態、異常な事態と盛んに言われるわけですね。そのもう一つ前の前提があるわけですよ。刑事事件の暫定的な特例法で言っている異常な事態についてどう思うかということの質問で、それに対する答えなんですよ。これは認めるのでしょう、前に戻りますけれども。これをあなたは後の答えの中ではみんな省いちゃうんですよ。意識的に省いちゃっているわけです。そういう質問に対するその前提としての異常な事態がある、異常な事態についてはこうこう改善しなくちゃいけない、こうこう改善しなくちゃいけない中にこの暫定的特例法も当然含まれているというふうに理解できる、こういうことに一連の流れは当然なってくるんじゃないですか。私はそういうふうに理解しますよ。それが普通の理解の仕方じゃありませんか。
#50
○牧最高裁判所長官代理者 背景について述べられたわけでございまして、異常な事態があるということば、そのとおり現実にあるので、そういう状態は困る、そういうことについては何らかの対策を講じて、措置を講じてこれを正常化しなければ、裁判所の運営というものは十全に機能しないということを述べられたわけでございます。
 質問の中には、当委員会で現在御審議中の法案の名前ももちろん出ておるわけでございますけれども、長官としては、そういうことについてではなくて、それの背景となっている裁判の異常事態というものについて一般の理解並びにそれについての対策ということを要望された、こういうふうに考えていただきたいと思います。
#51
○稲葉(誠)委員 何回聞いても同じことです。私の後に横山さんが関連質問されるということですから……。
 そこで、いまあなたが言われたように、刑事事件特例法の話が出たというのでしょう、これは。出て、その背景となっておることについて長官が話をしたというのですから、これは問わず語りにこの特例法に対する最高裁長官としての態度を明らかにした、しかも、それの態度はサポートだ、これを支持するという態度だ。いろいろな改善ということの中に入っている。しかも、これは憲法違反である、ないということについていま重要な争いをして、国民が重大な関心を持っておる法案である。そういう法案について違憲立法審査権を持つ最高裁長官が発言をしているということは、それは違憲ではないという意味の発言に内容的にはなってきているわけですよね。だから、そのことから理解しても、当然いまわれわれが審議している法案に対して最高裁当局が見解を示しておる、それは当然、介入というか何というか、そういうものにとれる、こういうふうに私は理解するんですし、それがまた一般的な理解の方法ではないか、こういうふうに思うのですよ。
 それに対して、どうして素直に、そういう意味もあったんだ、こういうふうにおっしゃれないのですか。それを言うと、また後がまずくなるということなんですか。そこなんだよ、問題は。いわば同じ答えをして、同じ質問をしているのはぼくもいやなんだよ。いやなんだけれども、あなたはいつもその前提を抜きにしちゃって、異常な事態の話ばかりするんだよ。異常な事態というのは、この特例法の前提となっておる異常な事態の問題でしょうが。そういう質問なんだから、特例法についての答えである、こう理解するのはあたりまえの話じゃないですか。
 最終的にお答えを願いたいと思います。
#52
○牧最高裁判所長官代理者 先ほど来異常な事態と申し上げておりますのは、一部の事件におきまして、被告人、弁護人が辞任、退廷、そういうことを繰り返すというような異常な事態、そのために裁判が遅延させられているという事態を述べられたわけでございます。そういう事態は現実に存在するわけで、それらについて長官が司法行政上の立場から所信を表明するということは、当然その職責の範囲内に入るというふうに私らの方は考えます。
#53
○稲葉(誠)委員 いまあなたが言われたことは、紛れもなくあなた方が――私どもはそれは憲法違反だというふうに、方法論というかあれで考えますけれども、この刑事事件の公判の開廷についての暫定的特例を定める法律案の中で趣旨説明がある事柄じゃないですか。それはそうでしょう。これは認めるでしょう。どうなんですか。
#54
○牧最高裁判所長官代理者 この法案が国会に提出されるようになった背景にそういう事実があるということの説明があったことは、私どもも承知いたしております。
#55
○稲葉(誠)委員 そんなことを聞いているんじゃなくて、背景だけでなくて、いまあなたの言われたような辞任して裁判がおくれているとか、退廷命令をあれされたとか、それを直さなければいけないという意味で、それは私はこのやり方は間違っていると思いますけれども、そういう意味でこの法案が出ているんじゃないですか、あなた方の立場から言えば。そうでしょう。そんなことあたりまえじゃないですか。
#56
○牧最高裁判所長官代理者 この法案の提案の理由は、そういうことに対処するためということは御説のとおりだと思います。
 ただ、長官が述べられたのは、その法案に直接言及された趣旨ではございません。
#57
○稲葉(誠)委員 だから、法案に直接言及したかどうか、同じ議論をしても始まりませんけれども、いま私が聞いたことをずっとめぐってくれば、この法案のことについて、直接的かどうか別として――直接的と言っていいんじゃないですか、初めの質問はこの特例法に対する質問なんですから、それに対する答えなんですから、直接的と言ってもいいと思う。あるいは直接的でなければ間接的であると言っても構いませんけれども、この法案についてそれを答えているというふうなことじゃないですか。(「見解の相違だ」と呼ぶ者あり)それが見解の相違だといういま自民党の理事の方から意見があります。見解の相違だというなら、あなたはそこにおられた方じゃないのですから、直接その言葉を述べられた長官においでを願って、そしてその真意を十分確かめることがかえって司法の権威を高めるためにも必要であろう、私はこういうふうに思うことになってくるんですよね。それはそうですね。
#58
○牧最高裁判所長官代理者 事実の経過につきましては、各紙の報道に記載されているところがおおむね間違いないところだと考えます。そして、それをお読みいただければ、いままで私が御説明したように、長官の真意は、法の支配を確立するための必要を強調されたということが十分おわかりいただけることだろうと思います。
 質問の前提として、当委員会に係属している法案の基礎とされているような異常な事態があるかという御質問があったので、そういう異常な事態はあるということを述べられたので、これについてお読みいただければ、先ほど私が御説明申し上げたような真意であるということは十分おわかりいただけることかと思います。その点についての評価というものは若干先生とは違うのかもしれませんけれども、素直にその発言要旨をごらんいただければ、私が先ほど来申し上げております長官の真意ということが十分おわかりいただけるのではないかと思います。
#59
○稲葉(誠)委員 ではこの問題についての私の最終質問にいたします。後横山さんがちょっとやられるそうですから。
 いまあなたは、素直にこれを読めば自分の言っているのが正しいというふうに、長官の真意がわかると言いましたね。ぼくは素直に読むとそうはとれないんですね。素直に読めば、だれが見ても、特例法についての質問が出て、それについての背景の説明があり、いろいろなことに言及をされているのですから、特例法について言及しておる、こういうふうに読むのが素直なことなんだ。直接それに言及している。あるいは直接でないとするならば間接的にも言及している。これは立法府に対する介入ではないか、干渉ではないか。特に違憲の問題で大きな争いになっているときに、中立であるべき最高裁がそういう問題に対して発言をなすべき筋合いのものではない、こういうふうに私は考えるんですね。それに対してあなたはどういうふうに考えるかを最終的に答弁を願い、またいままでの質問を聞いておられて、法務大臣、あなたとしてはどういうふうに理解をされ、どういうふうにお考えになられるのでしょうか。それをお二人からお答え願って、横山さんが関連があるそうですから……。
#60
○牧最高裁判所長官代理者 この委員会に係属いたしております法案が一つの問題の前提であることは間違いないと思います。そういう趣旨で新聞記者諸君も聞かれたのだと思います。ただ質問された趣旨は、先ほども申し上げましたように、そういう異常な事態があるという認識かという質問でございますので、その点について長官が率直に所見を述べられたものであって、法律案に直接言及されたものではない。したがって、これは司法行政を扱う者としての長官の立場から述べられたとしても、当然許されてしかるべき事柄ではないかというふうに考えております。
#61
○瀬戸山国務大臣 私もその場におったわけではないのですが、新聞記事にいろいろありました。そこで、私が全部見ておるかどうかははっきりいたしませんが、その質疑応答の内容をやや詳しく書いてあるのは、私の見たところでは五月五日の朝日新聞の朝刊がやや詳しく書いてあるようでございましたから、私はそれを念入りに見ておるわけでございます。
 最高裁長官がどういう気持ちでこういう発言をされたかということは、いま申し上げましたように全然人間が違うわけですから、それを申し上げるわけにはまいらない。いま稲葉さんと最高裁事務総長とのこれに関連する質疑応答を加えて私なりにこれを見ますると、こう言っちゃなんですけれども、稲葉さんの質問の御趣旨は、現在ここに審議中のいわゆる特例法、これを何か司法の任にある最高裁長官が支持するとか支持しないとか、国会の審議に、これは言葉が過ぎるかもしれませんが、何か干渉がましい意見を言ったのじゃないかという趣旨のような御発言じゃないかと私はここで想像しながら承っておりました。いまの質疑応答を加えてこの新聞の記事をそのまま前提にして私なりに考えますと、どうもそうではないような気がいたします。と申しますのは、稲葉さんも持っておられるかもしれませんが、書いてあるとおりに申し上げますと、新聞記者会見での記者の質問の第一は「いわゆる”弁護人抜き裁判”法案が国会に出されているが、現今の刑事裁判で法案を必要とするような異常事態があると認識しているか。」という質問になっておりました。でありますから、しばしばここでも、いまもお話がありましたように、私どもがこの法案を提案いたしておるのは、特に過激派に関係のある裁判について、いままで述べておりますように異常な事態といいますか、裁判の進行にどうも不適当な事態が起こっておる、このままでは裁判の正常な運行ができない、これは国民的立場に立って不適当である、現在の刑事訴訟法の規定から言うとこれ以上どうにもにっちもさっちもいかない、こういう状態を何とか改善を図らなければならない、こういう意味で提案をいたしておりますから、そういう異常事態があるのかという質問をしておられると思います。それに対して最高裁長官が答えられておることでこの新聞に書いてあるところは「あるに決まっているじゃないですか。なければあんな法案は出っこない。」こういうふうに書いてあります。でありますから、いま事務総長からいろいろ言われましたけれども、そういう事態は適当でないから、何かこれを改善する方策を司法行政の最高責任者として常日ごろ考えられておると思うのです。でありますから、こういう異常事態があるからこういう法律案が出てきたのだ、こういうことを言っておられるのであって、これを支持するとか支持しないとか、憲法に違反する疑いがあるという議論もありますけれども、これは憲法に違反するかしないか、そういうたてまえでこの質疑応答をしておられると私は見ない。そういう事態があるから、一つの解決方法としてそういう法案が出てくることになっておるのだ、こういうことを言っておられる、私はさように解しております。
#62
○羽田野委員長代理 この際、関連質疑の申し出がありますので、これを許します。横山利秋君。
#63
○横山委員 いま稲葉委員と事務総長並びに法務大臣の質疑応答を聞いておりまして、私はこの答えにきわめて遺憾な点を感じます。それはここにいらっしゃる恐らくすべての人が感じていられるのじゃないかと思うのであります。要するに岡原長官の発言は、法曹界はもちろん、国民の中に非常な衝撃を与えた。それで新聞もテレビも、あらゆる国民がそれを見て、聞いて感じたことは、岡原長官というのはどういう人だろうという感じなんです。社説もたくさん出ておりますが、一つ御紹介いたしますと「弁護人抜き裁判法案について言葉を選ばぬ発言をしたことは、それがたとえ岡原長官の個人的信念を吐露したもので、その考え方に共感するものがあるとしても、いちじるしく不穏当なものであった。その他これに関連する談話の内容も品位を欠き、最高裁長官の発言とも思えない。」という書き出しで、結語として「長官は、無用の発言によって、憲法にからむいくつもの問題を引き起こした。はっきりいって、それは岡原氏の人間性の問題であり、だから最高裁長官としての適格性の問題になってしまうのだ。」この感覚をわれわれは素直にとらえなければいかぬと思います。いまの答弁を聞きますと、大変失礼だが、三百代言的答弁であります。はっきり私はそう申し上げる。国民がどう感じたか。もしそれが真意でなかったら、誤解であったら、最高裁としては率直に、これは説明が悪かったとか、まずかったとか、自分が腹に思っておることであっても言うべきことではなかったとか、そういうことが素直に出てこなければならぬのですよ。
 私どももお互いに公職にあります。最高裁長官と言えば、内閣総理大臣よりももっと品位の高い人だと世間の人は思っている、職だと思っている。したがって、李下に冠を整えず、瓜田にくつを入れざるの品位があって当然だとみんなは思っておる。それか今回の発言は――ここに「ホンネとタテマエのけんか」だという見出しがある。長官の談話が問題にならずに、後のやりとりが問題になっている。どちらが一体本音か。談話はたてまえで、本音は長官の発言だ、だれでもそう思っておる。その本音が、あろうことかあるまいことか重大な疑惑を巻き起こしている。それを先ほどからの答弁で聞いておりますと、何とかして言い逃れをしようとしている。よくない態度だと私は思う。
 以下、若干の質問をいたします。
 先ほど司法行政に携わる者の発言として行われたものだ、こうおっしゃいましたね。それは慎重な言葉を使っておられるのですけれども、司法行政を預かっておる者の発言ならいい、反語は何ですか。裁判官なら、判事としての発言なら不適当だ、そういうことでございますか。
#64
○牧最高裁判所長官代理者 最高裁判所の長官は、司法行政を預かるものと裁判官として裁判事務を行うものと両方の立場があるわけでございます。したがいまして、その立場は常に区別して考えておかなければいけないということで、ただ司法行政を総括する者としての長官の立場としてお述べになった。裁判ということであれば、裁判官会議を経るなり、あるいはいわゆる小法廷、大法廷などの評議において意見が述べられて、判決、決定が述べられるわけでございまして、先日の憲法記念日における発言は、いわゆる司法行政を総括する者としての長官の立場から述べられたもの、中身におきましてもいわゆる司法行政上の内容であるというふうに理解すべきものであります。
#65
○横山委員 私の質問に答えていませんが、裁判官として、判事としての談話ならばこれは不適当だとお考えになっているのですね。
#66
○牧最高裁判所長官代理者 裁判官としてはいわゆる判決、決定、そういうものにおいてのみしか自分の意見というものを外部に発表できないわけでございます。したがいまして、長官がいろいろ記者会見に応じて、記者団の質問に対して所信を述べられるということは、裁判官としての立場ではもちろんございませんで、司法行政としての立場ということであるということを申し上げただけでございます。
#67
○横山委員 わかりました。そういたしますと、問わず語りにとにかく裁判官としてであれば不適当である、判事としてああいうことを言ったとしたならば不適当であるということをおっしゃったと理解をいたします。
 今度は、司法行政の立場としてならば当然なことだ、全然間違いないとお考えになっているのですか。最高裁長官というものの職、品位、あるべき姿、そういうことについて率直にお答えを願いたいと思います。当然のことだとおっしゃるのか、それとも国民をこれだけ疑惑の中へ押し込んで、違憲の疑惑を巻き起こしたことについて、当然のことだ、間違いないことを言ったと本当にあなたは長官からお聞きになっているのですか。これは重要な質問です。
#68
○牧最高裁判所長官代理者 司法行政を総括する者といたしましては、裁判が十全に運営されていくように配慮すべきこと、そのために常に関心をお持ちになることは当然であろうと存じます。そして、現在の司法行政という立場から裁判の運営をながめてみますと、一部の裁判事件におきましては、被告人、弁護人というような者が法廷でルールを無視して不当な行動に及び、そのために裁判が遅延するというような事情があるわけでございます。そういたしますと、適正迅速の裁判の実現ということを使命としている裁判所としては、それについて重大な関心を持たざるを得ない、それに対しての対策を講じていかなければならないということになると思います。したがいまして、それらについての懸念を所信という形で表明されたことは当然のことだというふうに考えております。
#69
○横山委員 これはあなたが自分の意見として当然だというお考えであるのか。長官から、おれは当然のことを言った、こういうことに疑惑を持つマスコミも国民もけしからぬ――けしからぬという言い方が適当でなければ、おれは当然のことを言った、ああいう社説や、ああいう解説や、ああいう集会や、そういうことを言うておる者が間違いであるというふうに長官はあなたにおっしゃったのですか。この今回の発言が社会に衝撃を与えたことについて何らの反省も長官はお持ちでないとあなたは聞いていらっしゃるのですか。
#70
○牧最高裁判所長官代理者 先ほど私が述べましたことは、長官にも十分お話しして、長官の真意として私が伺っているところを述べたところでございまして、長官も同様に考えておられます。
#71
○横山委員 いま法務大臣が引用された記者会見なのでありますが、法務大臣に聞いてもらいたいと思うのであります。物は読みようだということも言えるかもしれません。しかし、この記者会見の「いわゆる”弁護人抜き裁判”法案が国会に出されているが、現今の刑事裁判で法案を必要とするような異常事態があると認識しているか。」以下の質問ですね。全部この弁護人抜き裁判の問題点を記者は質問し、その問題点全部長官が答えているわけです。いわく「あるに決まっているじゃないですか。なければあんな法案は出っこない。」法曹三者で十分協議すべきてはないか。――やっても何にもならぬ。いわく「日弁連などは、法案は刑事被告人の弁護を受ける権利を侵す、と主張しているが。」それについても「逆手にとられるといつまでも裁判が進展しない。」「日弁連は内部自治の強化を検討しているが。」これについても答えています。「紛糾については裁判所側にも一因があるのではないか。」あるいはまた二つの顔論等特例法の問題点を全部言及して、その問題について全部否定をしているわけですね、つまり問題点はないと。これらの問題点を最高裁長官が全部否定をしておるということは、三歳の童子といえども弁護人抜き裁判法案に岡原長官が賛成をしておるということはわかるじゃありませんか。子供でもわかる論理じゃありませんか。それを弁護人抜き裁判の法案に賛成をしているとは言っていないと白々しく言い切るつもりですか。天を恐れず、神を恐れず、国民の声を恐れないというのはまさにそのことですよ。この質疑応答を一貫して流れるものは、弁護人抜き裁判法案に賛成をしておる岡原長官の所見であると、なぜあなたは理解ができないのですか。なぜ岡原長官はそれを肯定しないのですか。どうですか。
#72
○牧最高裁判所長官代理者 現在の司法において問題になっている点の御質問がございましたので、それについての長官の所信を率直に述べられたわけでございまして、その発言要旨をそのとおりお読みいただいても、この法案についての賛否とか是非というようなものについて、長官は直接発言されていないことは明らかではないかと考えております。
#73
○横山委員 それを三百代言的な答弁というのですよ。私のこの質疑応答をだれが聞いたって、この文章を読んだ人ならすべて、岡原長官が法案に賛成をしておると考えるのは当然なことじゃありませんか。下級裁判所の諸君がこの質疑応答を聞いて、長官が法案の是非について何にも答えていないというふうに思うとあなたは本当に考えているのですか。もしあなたが本当にそう考えておるとするならば、私は事務総長の人間性をまた疑わざるを得ないのです。こういうやりとりが岡原長官にわかっていると私は思っているわけであります。それにもかかわらず、いま、自分が言ったことについて責任をとるのを恐れて、あなたにこういうふうに答弁しろ、私はこういうふうに答弁しますというふうに言ってこの場を逃げようとしても、国民の中には、それじゃますます。岡原さんという人はどういう人だろう、あれだけ言っておきながら自分の言ったことについて責任をとらないじゃないかということになることを私は心配をする。それは岡原さん個人を心配をするのじゃなくて、最高裁判所長官としての職を心配をする、国民からの信頼性が失われる、そう私は思うのです。
 法務大臣、あなたは先ほどこの質疑応答を盾にして弁護をされたのであります。その弁護は私は適当ではなかったと思うのです。むしろあなたは、最高裁長官の言われたことについて私が言及するのは避けた方がいいというふうに私はおっしゃるかと思ったのです。ところがそうはおっしゃらなくて、もう大手を振ってそれを弁護されるということについて、大変私は残念に思います。一つの社説を御披露いたしましょう。「それにしても、こうした軽率な言動が、どうしてやすやすと出てくるのか、その背景をも、この際、じっくりと見つめたい。「最高裁が、政府と密着している実態がよくわかった」といった反面教師的な効果を認めることもできよう。最高裁の裁判官は内閣が任命し、長官は内閣が指名する。国会の承認はいらないし、国民審査も形式化している。最高裁裁判官の任命権の行使を通じて、行政府は司法を思うままにコントロールする傾向が強まっている。そうした司法府と行政府の同質化した姿勢が、最高裁長官としてのけじめを失わしめた、という批判は、的外れとはいえまい。」まさに頂門の一針だと私は思います。
 あなたはこの問題について自分の意見をおっしゃっている。本来ならばあなたは、読んだけれどもこの際は差し控えたいというふうに言うべきであったと私は思います。それにもかかわらず、この新聞の質疑応答を長々と引用をされる、私はりっぱな態度だとは思いません。重ねて本件についての意見を聞きたいと思います。
#74
○瀬戸山国務大臣 大変むずかしい質問をされておるのであります。
 どう考えるかと言われたから、この新聞の記事と、また最高裁の事務総長のいまの質疑応答を含めて、私なりに見るとこう考えますということを申し上げたのであって、稲葉さんから、どうだと言われるから私はお答えしたわけでございます。
#75
○横山委員 非常に遺憾なことだと思います。
 国民の中には、岡原長官の発言が重大な違憲の疑いがある、そして訴追委員会の中へもうすでに訴追請求が提出をされました。私も訴追委員であります。従来とも訴追委員会の中で、まあ訴追屋ともおぼしき人がおって、何でもいいから裁判官を訴追してやろうという人がないでもありません。けれども、本件は国民注視の中に訴追委員会が不日開かれることになろうと思うのであります。法務大臣も先般まで訴追委員長をやっておられました。私も現在訴追委員であります。最高裁長官がかくも国民注視の中で訴追委員会に付議されるということは、不名誉きわまることだと思うのであります。できるならば、いまの事務総長の答弁のようなことでますます国民に疑惑と憤激を買うような答弁でなくして、岡原長官が率先して、みずからの出処進退を含めて、みずからこの問題について結論を求めてくるということをされることを私は心から願いたいのであります。私どもは立法府でございますから司法府のことについて一つの限界がございます。それならば司法府は司法府で、みずから引き起こした問題についてみずから率直に責任をとるべきだ。それには国会へ出てきて話をすることも必要であろう、それにはまた改めて談話を出して国民の疑惑を解くことも必要であろう、それにはまたみずからが決断をすることも必要であろう。ともあれ司法府としてのこの国民にこたえる判断を求めたいと思いますが、事務総長は私の言葉を岡原長官に伝えてくれますか。
#76
○牧最高裁判所長官代理者 当委員会における御審議の模様は十分お伝えするつもりでございます。
#77
○正森委員 ただいまの同僚委員の質問に、関連で質問させていただきます。
 最高裁はこれまで、一月一日に年頭の辞を長官が発表しております。あるいは五月三日の憲法記念日の前日ぐらいには、憲法記念日を迎えるに当たってということで歴代長官が所信を発表しておりますが、それらは長官がかわるごとに所信は変わるのですか、それとも従前発表された所信というのは生きておりますか。
#78
○牧最高裁判所長官代理者 年頭の辞あるいは憲法記念日における長官の談話というものは、長官が司法行政を総括する者としての所信をそれぞれお述べになられたことでございます。人がかわればそれのニュアンスは違おうかと存じますけれども、法の支配を強調しておられることについては変わりはないものというふうに伺っております。
#79
○正森委員 そうすると、私はここに昭和四十六年の五月一日に石田最高裁長官が、憲法記念日を迎えるに当たってというのでので発表された談話を持っております。この中にはこう言っておるのです。「わたくしども裁判官は、おのれをむなしうして謙虚に誠心誠意、その期待に添うよう日夜心を砕いているのであります。そして、どこまでも至公至平、不偏不党、政治の渦中にはいらぬよう、深えんに臨む思いをもって、あらゆる問題に対処しておるのであります。」
    〔羽田野委員長代理退席、山崎(武)委員長代理着席〕
こう言っております。また年頭の辞を見ますと、昭和四十五年一月一日の同じ石田最高裁長官の年頭の辞では、中略いたしますが「どのような圧力にも屈することなく、あくまで中立、公正にその使命を遂行しなければならない。裁判のこの公正は単に公正であるというばかりでなく国民がこれを信じて疑わないものであることが必要である。そのためには、われわれ裁判所に職を奉ずる者は、均しく、それこそ薄氷を踏むような思いを以て、私生活のはしに至るまで一切の行動を慎しみ、いかなる点においても世の疑惑を招くことのないよう心がけねばならないのである。」こういうぐあいに言っておられます。
 ところが、今回の五月二日の岡原長官の発言は、読売新聞あるいは朝日新聞、毎日新聞、すべての新聞が、これは最高裁長官の資質を疑わしめるものである、立法に対する干渉である、違憲立法審査権を実質上空文にするものである等々の批判を行っております。国会においても野党のすべてば、訴追請求をする必要があるとか、あるいはそう踏み切らない政党も、軽率のそしりを免れない、こう言っております。そうしますと、いま事務総長が言いましたように、年頭の言葉だとかあるいは憲法記念日に当たっての言明が生きておるなら、裁判の公正は単に公正であるということばかりではなく、国民がこれを信じて疑わないものであることが必要である、こういうぐあいになっておるのに、いま審議中の法案についてあらかじめ意見を発表するというようなことは、公正さを疑われることの最たるものではありませんか。それについてはどう思います。
#80
○牧最高裁判所長官代理者 先ほどから申し上げておりますように、現在審議中の法案について直接言及されたわけではなくて、それの前提となる、あるいは背景となっている裁判の異常事態というようなものについて、そういう言動があるという認識かという記者団の質問に対して、そのような点については同じような認識を持っておる、現在、一部の事件については被告人、弁護人がルールを無視して辞任、退廷等の行為を行って、そのために裁判が遅延しているという事情にある、そういうことについては司法の運営を扱うものの長官としてもきわめて深甚の関心を払わざるを得ないというところで、その所信を述べられたというふうに考えております。
#81
○正森委員 事務総長はいま、各紙が岡原長官の発言の要旨として伝えておるところはおおむね事実である、こう言われましたね。そのとおりですか。
#82
○牧最高裁判所長官代理者 そのように理解いたしております。
#83
○正森委員 それではここに東京新聞がありますが、岡原発言の一問一答が出ております。その中にはこう書いてあるのです。「いわゆる弁護人扱き裁判法案の前提には弁護士のルール無視があるといわれるが、長官の認識はどうか。」という問いに対して長官は「あるに決まっているじゃないですか。なければあんな法案は出っこない。」司法は一定のルールに従って行われており、それを無視すると軌道を外れる。「軌道を外れた裁判を軌道に戻すためにあの法案はやむを得ない」こう書いてあるじゃないですか。あの法案はやむを得ないとはっきり法案に言及しているじゃないですか。あるいは朝日新聞によればこうなっております。「いわゆる弁護人抜き裁判法案が国会に出されているが、現今の刑事裁判で法案を必要とするような異常事態があると認識しているか。」いいですか。事務総長が言うているように、一般に刑事裁判に現在異常事態があるかなんて聞いているのじゃないのです。法案を必要とするような異常事態があると認識しているか、こう聞いたのに対して、「あるに決まっているじゃないですか。」こう言うているのです。ですから、健全な日本語の常識からすれば、法案を必要とする、こう答えたのと同じことなんです。法案を必要とする異常事態があるんだ、あるに決まっているじゃないか、こう言うているじゃないですか。ですから別の新聞には、あの法案はやむを得ない、こういうぐあいに載っているんです。また、同じ新聞には「今の日弁連の空気では、懲戒問題の後始末の仕方などをみると、とうてい話にならないというのが実際ではないか。弁護人が出てこなけりゃ始まらない、それでいいのか、ということだ。」「一部の事件だとしても、何のためだか知らぬが、弁護人不在の形で公判を延ばすのは、国民感情として納得がいかないのではないか。」こういうぐあいに言っているのです。
 ですから、こういうのを総合すれば明白に法案について弁護人抜き裁判はやむを得ないということを言っていることになる。だからこそ、たくさんの新聞記者がいたけれども、そういうように受け取って、ああいうふうに報道されているのです。そうだとすれば、昭和四十五年あるいは四十六年当時に石田最高裁長官が言った深えんに臨むような気持ちで私生活の端々に至るまで気をつけなければいけない、裁判官たる者は公正であるだけでなしに、公正さを疑われるようなことをしたらいかぬのだ、こう言うていることから見れば、真っ向からそれに反するじゃないですか。だからこそわれわれは心配しているのです。何も立法に干渉したというだけじゃない。立法に干渉するような司法は必ず立法からも反撃を受けるのです。あたりまえのことです。そういうことをやっていいのかと聞いているのです。
#84
○牧最高裁判所長官代理者 憲法記念日における長官の発言は、立法府に介入しようとしたというようなものではございませんで、先ほど来申し上げておりますように、異常な事態についての認識を問われて、そういうような異常な事態があるという認識を答えられた、それに基づいて法案が出たものであろうという意見を述べられただけのことでございます。
#85
○正森委員 あなた、裁判官たる者はもっと事実を正確に反映した正直な答えをしなければいけませんよ。あなたは終始、異常事態があるかどうかなんて言うているけれども、質問はそうじやないのです。
    〔山崎(武)委員長代理退席、羽田野委員長代理着席〕
現今の刑事裁判で法案を必要とするような異常事態があると認識しているか、これに対して、あるに決まっているじゃないですか、こう言っているのです。
 私はいまあなたの答弁の態度を見ておりましたが、後ろの方から課長が速記録か何か知らぬけれども持って御注進に及んだようであります。もしそういう答え方をするなら、その速記録を当委員会に誤解がないように出されることを私は要望いたします。委員長、お計らいください。こういう新聞記事の切り抜きでいろいろ言うよりも、速記録があるなら、それをちゃんと出しなさい。
#86
○牧最高裁判所長官代理者 速記録というようなお話でございますが、そういうものではございません。先ほど正森先生が引用されました石田長官の年頭の辞、それから憲法記念日を迎えるに当たっての談話、その分の写しをいま手元にしただけのことでございます。
#87
○正森委員 私は関連質問で時間が一定の範囲内でございますから結論に移りたいと思います。
 少なくとも事務総長は、長官の意思いかんにかかわらず、あの発管が国会で現在進行中の弁護人抜き裁判と通称言われておる法案について最高裁が賛成の立場である、そういうようにとられているということは認めますか。
#88
○牧最高裁判所長官代理者 長官の発言については先ほど来申し上げておるわけでございますが、これについていろいろな評価をされるということは、これはやむを得ないことだろうと思います。
#89
○正森委員 やむを得ないことだとお答えになりましたから、新聞が判断し評価したことは大きな誤った評価ではないと受け取っておられるようであります。
 そうすると、われわれはこれから野党の審議の中で、本法案が憲法三十七条三項に違反するかどうか、あるいは法の適正手続に違反するのではな
 いかという問題について当然議論になるわけです。最高裁判所の長官が司法行政の長であると言われましたけれども、同じ人物が同時に大法廷の長であり、裁判に関与されるということは自明の理であります。そうすると、われわれがそういう裁判所に具体的事件を通じてこの法案が憲法に反するかどうか持っていっても、あらかじめ違憲立法審査権を持っておる最高裁判所の長は合憲であると考えているということを天下に公示したことになります。普通ならこういう裁判官は忌避されるか、あるいは回避するのが当然であります。そういう事態を引き起こすような重大発言であるということは認めますか。
#90
○牧最高裁判所長官代理者 先ほど、そういう評価もあろうかと思いますということを申し上げましたけれども、事実については先ほど来申し上げているとおりでございまして、これについての評価ということは各人いろいろの受け取り方があろうかと存じます。
 ところで、現在問題になっておりますいわゆる特例法案につきまして所見を述べられたわけではなくて、その前提の事実について述べられた、それも、しかも司法行政の立場として下級裁の審理の実情を憂えられて述べられたというだけのことでございまして、これは、そういうものが裁判事件として最高裁判所に係属してきたときの裁判の内容に影響を与えるようなものではございません。
#91
○正森委員 私はそういう発言というのは非常に事態の重大性を認識しない発言であると思います。
 私は最後に聞きますが、そうすると、石田裁判官の、裁判官は公正であるだけでなしに、国民にそのことについて疑惑を持たれるようなこともしたらいかぬという発言との関係ではどう考えているのですか。
#92
○牧最高裁判所長官代理者 石田長官が述べられたのは、裁判官の心構えとしてそのとおりであるというふうに考えております。そして今回の分については、いわゆる現下の裁判の実情についての所信でございますので、それと先ほどお述べになりました公正の問題とは直接関係がないというふうに考えております。
#93
○正森委員 今回の岡原発言は、前提として述べただけでなしに、法案を必要とする異常事態があると思うのかということについて述べているわけですから、これは法案を必要とするという判断をしたものにほかならず、だからこそ東京新聞は同じ要旨のところで、あの法案はやむを得ないというように発言されたというように広く報道しているわけであります。ですから私は、世の中のこういう評価を招いた発言というのは著しく不穏当であり、最高裁長官としての資質を疑わしめるものであるということを申し上げて、時間ですから私の質問を終わらせていただきます。
#94
○加地委員 重複しておる質問はできるだけ避けたいと思いますが、岡原発言の中で連合赤軍の事件というものを引き合いに出しておられました。あのような事件が起きたときには、世論というのは早く処罰してしまえという空気があったけれども、裁判になってみるとにつちもさっちもいかなくなっておる、このような発言があったと思います。
 そこで、事件によっていろいろだと思うのでございますけれども、少なくとも最高裁の方では、あの連合赤軍事件というのは現在の司法制度の中では一審だけであと何年かかるのか、二審で何年かかるのか、あるいは三審で何年かかるのか、どのような見通しを持っておられるのでございましょうか。
#95
○岡垣最高裁判所長官代理者 連合赤軍事件という具体的な事件の関係でございますので、私からお答え申し上げます。
 あの事件の進行状況は、現在第一審におきましてもまだいつ終結するか見通しがつかない状況でございます。したがいまして、それ以後の問題についてはもとより全く見通しがつかないわけでございます。
#96
○加地委員 私は余り責任感のあるお答えではなかろうと思います。やはり司法行政に携わっておられる方として、あとどの程度の開廷数が必要であるか、あるいは証拠によって立証すべきことがどの程度あるかという見通しというのが立つのじゃなかろうかと思うのですね。そしてまた、最高裁長官ともあろう人が連合赤軍というものを引き合いに出される以上は、この法案が通ればどの程度短くなるのか、ならないのかという見きわめも持っておられるのではなかろうかと思うのですが、その点はどうでしょうか。
#97
○岡垣最高裁判所長官代理者 いま問題になっております法案が通りました場合に、では個々の事件についてどのように動くのかということをいまあらかじめ申し上げることはどなたも至難なことだと存じます。と申しますのは、訴訟事件の個々の事件というものは生きたものでありまして、そのときそのときの当事者の行為、当事者の主張、それから事実の進展、そういったものによって発展していくものでございますので、いま問題になっている法案が通りますれば、いまその前提事実として述べられていたいろいろな不合理な、法を無視したような状況がなくなるということによる促進があることは間違いないことでございますけれども、その結果、個々の事件が一体どれだけたてばどうなるのかという効果のほどを測定することは至難なことと存じます。
#98
○加地委員 それでは、将来のことについてではなしに、過ぎ去ったことについてお尋ねいたしますけれども、連合赤軍事件についてすでに何年か裁判が続いております。これが異常におくれた期間というのは年月にしてどのくらいのものでしょうか。私が聞いておりますのでは、この程度の立証すべき事項がたくさんある事件にしてはむしろ進んでおる方だというようにも聞くのです。また国民感情との間に、まだ続いているのか、まだ入り口のところかというギャップがあると思うのです。それのすべてが弁護士会なり弁護人を悪い者だ、魔女だというように決めつけてくる乱暴さがあることを私は痛切に感じざるを得ないわけですけれども、その点どうでございましょうか。
#99
○岡垣最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 連合赤軍事件は四十七年の三月から七月に起訴になった事件でございます。これの第一回の公判期日の指定が四十八年一月二十三日ということになっておりますが、ここで大体半年の期間があるわけでございます。この半年の期間というのは、事件の大きさ、その他準備のことを考えれば当然のことであろうと思いますので、これが長いか短いかということは一概に言えないことだと存じます。しかし、その後五十年の三月十三日に事件の証拠調べに入ったわけでございまして、したがいまして、四十八年の一月二十三日から五十年の三月十三日、これは約二年ちょっとたっておるわけでございますけれども、第一回の期日が入ってから、公訴事実があるかないかを調べるまでに二年余を経るということは、これはやはり異常な事態ではないかというふうに評価されると考えるわけでございます。
 五十三年四月十一日で公判が第百二十回になるわけでございますけれども、これが現在のところ大体午後半日で月二日ということになっておりますから、正味は月一日ということでございます。しかも現在いろいろの一証拠調べが行われていることは事実でございますけれども、本当に核心となりますような部分についてはまだ証拠調べにも入っていないわけでございまして、こういうことを考えますと、もう少し期日を入れて、もう少し証拠調べを進めるべきではないかということはどなたもお考えになることだと思いますけれども、いま申し上げたぐらいしかできない。
 なぜかということになりますと、基本的には、一番最初事件を進めるに当たって、裁判所の期日の指定を不服とされて出廷を拒否された。そうすると、弁護人が出てこられなければ裁判ができない。いつまでもほうっておくよりはということで、弁護人側の御主張と折り合いがっく限度でしか期日が入れてないことに基づくものというふうに私どもは思わざるを得ないわけでございます。
 それでは裁判所の期日の決め方が最初のが悪かったのかということになるわけでございますけれども、これは、その当時申請された検察官側からの証拠の状態、それから予想される審理の期間、そういうことを考えまして、これくらいはということで決めた期間というものは必ずしも無理なものとは存じませんし、また、裁判所自体は、これでもし合理的な申し出があれば変更いたしましょうということも何度か弁護人の方に申し上げてあるわけでございますけれども、とにかく月一回以外は受けられない、あるいは裁判所がまず期日全部取り消すことが前提であるということで、どうしようもなくて期日を取り消してまとまるところで入れた、こういう状況になっておるわけでございます。
 以上、ごく概要だけ御説明をいたしました。
#100
○加地委員 もう一点だけ。
 事務総長にお尋ねしたいのでございますけれども、審議中の法案についてそれが憲法に反するかどうかという問題も絡んでくるときに、最高裁長官のある程度の言論の自由、評論の自由はあるとしても、その影響するところの重大さから考えて、何かの合理的な制限というものを設ける必要はないのでしょうか。常に大きな問題になってしまい、そしてやはり裁判所は政府と一緒かなと疑われることがあっても、これは三権分立の理想とするたてまえからいって非常に不幸なことだとも思うのです。一つの重大な問題でございますから、私は何か内部において、いろいろな内規というかルールというか、いわゆる心構えというか、現に審査中の法案についての発言については何らかの歯どめが要るのではないかと思うのですが、どうでございましょう。
#101
○牧最高裁判所長官代理者 一般的に申し上げますと、現在国会で審議中の法案について積極的に意見を表明するということは、三権分立のたてまえからして差し控えるべき事柄ではないかというふうに考えております。ただ、先ほども各委員の方からの御質問にもお答えいたしましたように、今回の長官の発言は、いわゆる国会で審議中の特例法案に直接言及されてのことではございませんで、その基礎となる、背景となる事実について所見を求められたのについて答えられたものというふうに考えておりますので、お示しのような危惧の念は必要ないのではないかというふうに考えております。
#102
○稲葉(誠)委員 では、大臣にお尋ねをするわけですが、大臣はこの前も、自主憲法ということについて自分は賛成だという意味のことを当委員会でも言われたように私は記憶をしておる。いまその議事録を探したのですが、まだできていないようですが、日本の憲法を自主憲法にするというかそういうふうなことについて、大臣自身はどういうふうにお考えでございましょうか。
#103
○瀬戸山国務大臣 私は、憲法というものは国民が検討して、国の運営の基本法としてはかくあるべきであるという深い認識のもとにあるのが正しいと思っております。この前も申し上げましたが、いまの日本国憲法はまさに占領直後、昭和二十一年でございますから敗戦直後、占領軍の管轄下の中でできた憲法でございます。でありますから、なるほど表面上の手続は帝国憲法の改正ということで進められておりますが、しかし、その当時の実情を私なりに見ますると、国会においても世間においても、自由な言論はできなかった時代でございますから、その内容がよしあしというよりも、やはりできれば国民がちゃんと納得をして、自主的に独立国の憲法として定めるのが好ましい、こういう考えはいまも持っております。
#104
○稲葉(誠)委員 そうすると、あなたの言う自主憲法というものは、具体的な内容はどういうものなんでしょうか。それがはっきりしないわけですね。
#105
○瀬戸山国務大臣 私は内容のことを言っておるのじゃございません。内容をよく検討しておりません。いまの憲法は平和主義あるいは民主主義、自由主義、人権主義、これが基本であろうと思います。こういう大原則は自主憲法といえども守っていかなければならない、そういうことでございますが、いろいろ議論されておりますから、国民の大多数がこういう憲法で日本の国を運んでいこう、こういう自発的な憲法であることが好ましいということでございます。そうでございませんと、これは私の考えでございますが、たとえば過般の憲法記念日においても、憲法擁護とかいろいろな立場で各種の会合が行われておる、しかも、それは内容においては必ずしも同じ気持ちではないように――これは私の想像でございますか、そういうことは一つの独立国としては悲しいことではないかと私は思う。でありますから、憲法について天と地ほど全然違うような解釈をしてお互いに始終争っておる、こういうことはきわめて不幸なことだと思います。でありますから、もし意見が違うならもう少しディスカッションして、やはり国民の総意で決まるところは決めて、そして日本国憲法というものを国民の自主性によってつくる、これが好ましいことである、かように考えておるわけでございます。
#106
○稲葉(誠)委員 国民の自主性によってつくるということでございますが、自主憲法を制定するということは、結局現在の憲法を改正するということと結びつくことになるのではないですか。いまあなたは三つの柱の点は変えないと言うけれども、じゃどこを変えるのかよくわからぬが、いずれにしても自主憲法をつくるということは、憲法改正ということと結局は内容的には同じことになるのではないですか。
#107
○瀬戸山国務大臣 私は、正直に言ってどこをどう変えなければいかぬという検討をいましておりませんが、先ほど申し上げましたように、同じ条文でもいろいろ解釈されて、それが常にと言うと語弊があるかもしれませんが、争いが起こっておる。憲法というものは国の基本法、国民の基本法でございますから、もちろん法律は解釈によっていろいろ運用がありますけれども、始終憲法の解釈が争われておる、全然違った見解が相対立する、こういうことは私は好ましいことではないと思う。もしそういうところがありますれば、やはり改めるところは改めて、皆が納得するような憲法にする、これが好ましいということでございます。
#108
○稲葉(誠)委員 違った見解が争われておるというところは、現在の憲法の中では主にどこを言われておるわけですか。
#109
○瀬戸山国務大臣 一つ一つつまびらかにしておりませんが、世界の一々調べたわけではありませんけれども、日本くらい憲法論議が盛んなところはないように思います。それほど基本法というものを国民の間で違った頭で見るということは、私は適当じゃないような気がするのです。それは、法文の解釈はいろいろ違うこともありますけれども、基本的にいろいろ意見が違っておるような印象を私は受けておる。それでは国家の運営というものは適当じゃないのじゃないか、かような認識を申し上げておるわけでございます。
#110
○稲葉(誠)委員 だから、基本的に違っておるというふうにいまあなたが言われたのは、憲法の中でどこを言うのですかとぼくは聞いておるのです。これは特に第九条を指して言われておるわけでしょう。そうじゃないのですか。
#111
○瀬戸山国務大臣 第九条も一つだと思いますが、正直なところ私は一々検討しておりませんが、常に一番争われておるところは第九条だと思います。これも、現行の憲法がいいのかどうか、あるいは自衛権というものをもう少し明確にするのがいいのかどうか、こういう点をもう少し国民の間でディスカッションをして、何が将来に向かっていいかということを国民的に決めるということは私は好ましいことであると思います。
#112
○稲葉(誠)委員 それはもう国民的に決まっているのではないのですか。決まってないのですか、どうなんですか。あなた方の内部でそれは決まってないのじゃないですか。そうじゃないですか。
#113
○瀬戸山国務大臣 それは見解の相違でしょうけれども、私は、まだ決まっておらないような気がしております。率直に申し上げて、自衛隊などいわゆる国防の備えは要らないという議論もあります。強力な意見がある。国防は要るんだ。一国の基本的な問題がそういうふうに分かれておるということは、私は不幸なことだと思う。国防が要るなら、どのくらいの国防が必要なのか、こういうことがもう少し国民の間で合意ができれば幸せである、かように考えております。
#114
○稲葉(誠)委員 結論的にといいますか、そうすると、いまたとえば成田の問題がありますね。ああいうふうな問題も現在の憲法のあり方といいますか、そういうこととどこか関連をなしておるというふうにお考えになられるのでしょうか。意味がおわかりでしょうか。結局、権利ばかりを主張している、そういうことで義務ということをあれしておる日本国憲法だからああいうふうな事態も起きるのだ、こういうふうな理解の仕方なんでしょうか。そこはどうなんでしょうか。
#115
○瀬戸山国務大臣 これも私の率直な感触といいますか、認識といいますか、でありますが、日本国憲法は多くの人権を御承知のとおり定めております。その人権というものに、権利の裏には義務があるというふうに私は常に考えております。憲法自体もそういうことを規定しておると私は思いますが、必ずしもそういう憲法、たとえば十二条等が前提になって権利を主張されておるかどうかということは疑わしいところがある。そういう点もやはりもう少し明確にしておけば非常に幸せじゃないか、かように考えております。
 成田の問題について言われましたが、どういうことかわかりませんけれども、成田の空港の問題でいま立法作業を進めておられるようでありますが、これももちろん現在の憲法と合致するようなものでなければならない、これは当然だと思っております。
#116
○稲葉(誠)委員 あなたが自主憲法制定国民会議というふうなものに、列席はしなかったのでしょうけれども、祝電を打たれたとかいう話が伝わっておるわけですが、これはあなたの御意思でやられたのか、秘書官が勝手にやったのか、それはどっちなんでしょうか。
#117
○瀬戸山国務大臣 そのことについて私も新聞で見て知ったのでございまして、そういうことがあったのかなというくらいのことでございます。稲葉さんもそうじゃないかと思いますが、各方面からいろいろな集会の案内状が来ることがございます。そういう場合に、御盛会を祈りますというような祝電を打つのがおおむねやっておることでございますが、この場合は私は後で知ったわけで、新聞を見てそういう祝電を打ってあったかということでございまして、事実を申し上げますと、私の会館の事務所で、御盛会を祈りますというような祝電を打っておったということが後でわかったことでございます。
#118
○稲葉(誠)委員 それはそれとして、自主憲法制定国民会議というのですか、岸さんがやっておられるのですか、植竹さんが会長なのか何だかあれですが、ああいうふうな動きについては、大臣としてはもちろん御賛成なんでしょうね。自主憲法というものをつくりたいという御意見なんですから、賛成なんでしょうね。
#119
○瀬戸山国務大臣 私は、自主憲法制定国民会議というものに出たことはありませんけれども、自由民主党は自主憲法制定を一つの理想としておりますから、私もこれには賛成をいたしております。
#120
○稲葉(誠)委員 理想としているというのじゃなくて、党の綱領としているのでしょう。何かこのごろ、党の綱領から外したようにも見えるのですけれども、人の党のことですからよくわかりません。あるいは間違っているのかもしれませんけれども、自主憲法を制定するというのが党の理想だとすれば、具体的にいまの憲法のどこを改正したいのかということが当然前提となって考えられるべきで、ただ、自主憲法を制定したい制定したいという考え方では、これはちょっと子供の勉強みたいなもので、よくわからないのですが、当然そこら辺のところが研究されていてしかるべきだし、法務大臣としてもそこら辺のところの一家言というか、あなた政治家として勇気のある方だとお聞きしているのですけれども、お聞きしているだけじゃなくて、そう思っています。だから遠慮なく言われた方がいいのじゃないですか。こういう憲法はこうだ、たとえばこの憲法は欠陥憲法だとか、昔どなたか言われたのがありましたけれども、あなたもそういうようにお考えになるのでしょうか。どういうように考えて、どこをどういうふうに直したいとお考えになるのですか。
#121
○瀬戸山国務大臣 自主憲法が国民の総意によってできれば幸せである、好ましいと考えておりますし、また、自由民主党はそれを理想としております。理想としておりますということは、そう簡単にいますぐできるという状況でないということを申し上げておるわけでございます。さればといって、内容がどこがどうだということを、率直に言って私は余り研究しておらない。研究しておる人もあるようでございますが、先ほど申し上げたように、私が自主憲法を好ましいと言うのは、たとえば現在の憲法をそのままにしても、もうちょっとみずからの憲法という認識のもとに皆さんが、ああいう占領下のものとしてでなしに、みずからつくった憲法という意識のもとにやった方がよろしい、こういうことを申し上げておるわけでございます。
#122
○稲葉(誠)委員 じゃ、そのためにはどういうふうにしたらいいというふうにお考えなんでしょうか。
#123
○瀬戸山国務大臣 国民の大多数がそういう気持ちにならなければそう簡単にできるとは思いません。そういう運動を先ほど言った何とか国民会議というのですか、やっておられるのじゃないかと思います。私は行ったことがありませんからよくわかりません。
#124
○稲葉(誠)委員 じゃ、あなたがあれしたのじゃなくて、秘書官がやったということですから、これ以上追及いたしません。
 あなたが、自主憲法をつくりたい、つくりたいと言うその内容が不明確だというのはどうもよく理解できにくいですね。実際は、こういうふうに考えているのだけれども、それをいま言うと非常にまずいということならそれはまた別だ、こういうふうに思うのです。いずれにいたしましても、もう少し勇気のある発言があるかと思って期待していたのですけれども、何か盛んにガードをかたくして、なかなかしゃべらないですね。もっとフランクにしゃべったらいいじゃないかとぼくは思うのですが、しゃべらないものをしゃべらすわけにいかないからしようがないですね。
#125
○瀬戸山国務大臣 ことさらに発言を控えておるわけじゃないのですよ。自由民主党も自主憲法の制定を願っておりますけれども、しからばどういう憲法にするかということをまだ決めておるわけじゃありません、私の認識では。でありますから、そういう機運をつくって、国民の皆さんが、われわれの憲法は自分の力でつくりたい、自分の手でつくりたい、こういう機運が出ることを望んでおる、こういうことでございます。
#126
○稲葉(誠)委員 望んでおるのはわかったのですけれども、望んでおるから、あなたとしてはどうしたいというのですか。別に何もしたくないということですか。
#127
○瀬戸山国務大臣 とてもじゃないが、多忙で憲法を云々する、準備をするという段階ではございません。
#128
○羽田野委員長代理 午後四時三十分再開することとし、この際、暫時休憩いたします。
    午後零時三十分休憩
     ――――◇―――――
    午後五時二十二分開議
#129
○鴨田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。稲葉誠一君。
#130
○稲葉(誠)委員 この法案について、法制審議会での審議の模様についてまずお伺いをいたしたいというふうに思います。
 何か刑事法部会で二日、それから法制審の総会で二日審議があったというようなことをこの前言われておりましたけれども、もう少し具体的に、時間の関係等含めてお話し願いたいと思います。
#131
○伊藤(榮)政府委員 本法案の関係の法制審議会の開催状況でございますが、昭和五十二年十一月二十八日に法制審議会総会が開かれまして、ここで当時は刑事訴訟法の一部改正法案要綱という形で諮問が行われまして、即日各委員から活発な御意見の開陳がございまして、刑事訴訟手続という技術的な面も含んでおる法案要綱であるから、専門部会である刑事法部会においてあらかじめ詳細検討すべきである、こういう委員の皆さん方の御意見によりまして刑事法部会におろされることになりまして、刑事法部会におきましては昨年十二月十五日及び十九日の二日間にわたりまして議論をお願いいたしました。出席の刑事法部会委員が全員それぞれ御発言になりまして、二日目の最後に、一応の議論が出尽くしたということで、刑事法部会として諮問案についてはこれを採択することに決定するのが相当である、こういう御判断がございました。これを受けまして、本年二月十三日、第二回目の法制審議会総会にこれが報告されまして、ここでもほとんどの委員の方々から活発な御意見の開陳がありまして、その結果、諮問案は相当である、こういう御答申があった、こういういきさつになっております。
#132
○稲葉(誠)委員 私の聞いているのは、それはそのとおりなんですが、何時から何時ごろまでやったかということを聞いているわけなんですね。それと、この法案だけについてやったのかどうか。
#133
○伊藤(榮)政府委員 諮問がございまして御審議を願いましたのはこの法案関係についてでございまして、開始時刻は総会、部会いずれも午後一時三十分、終了いたしましたのは、日によって終了時刻が異なっておりますから定かでございませんが、五時ないし六時半ごろに及んだ、こういうふうに記憶しております。
#134
○稲葉(誠)委員 全体正味で、この法案について法制審では何時間ぐらい論議が行われたわけですか。
#135
○伊藤(榮)政府委員 計算上、十五時間と二十時間の間ぐらいになるかと思います。
#136
○稲葉(誠)委員 これだけの重要な法案がその程度のことで審議が行われたということは非常に意外だ、こう思うのです。
 そこで、法制審議会に出した資料とそれからこの法律案関係資料ですね、出したものと違いませんか。
#137
○伊藤(榮)政府委員 法制審議会の刑事法部会に提出しました資料は、もう少し細かいものが入っておったと思います。総会に出しましたのと同程度のものを整理してお出ししておりますのが、ただいまごらんのものでございます。
 なお、総会二回、部会二回は短過ぎはしないかという御指摘もありましたけれども、それぞれ御専門の方でございまして、問題点はあらかじめそれぞれに研究の上で出てきておられまして、特に総会、部会いずれもほとんど全員の委員の方が賛否の意見等を明らかにされて御発言になっておるわけでございますが、私の記憶から申しまして、全体の御発言の四分の三くらいの部分は日本弁護士連合会推薦の委員の方々がお述べになったわけでございまして、特に総会、部会を通じまして、日本弁護士連合会推薦の委員の方々の意見を十分に聞こうという態度で各委員が臨んでおられたようにお見受けいたしました。
 なお、これまで当省としてはいろいろな法案を過去に法制審議会にかけておるわけでございますが、不動産侵奪罪、暴力行為処罰法の改正、それから身のしろ金誘拐、業務上過失の罰則の問題、公害罪法の新設の問題、これらいずれも総会二回、部会二回で御審議を願っておるわけでございまして、それらに比べまして今回の案件は、条文の数におきましても当時一カ条でございまして、問題点は十分各委員御把握になっておりましたので、相当慎重に審議が行われた、こういうふうに思っております。
#138
○稲葉(誠)委員 私の聞いているのは、法制審議会に出した資料と、法務省から今度法律案関係資料と出ていますね、これとの内容が違うのじゃないですか、こう聞いているのです。
#139
○伊藤(榮)政府委員 お手元の法律案関係資料の参考資料の一の「事例一覧表」これにつきまして「不出頭・退廷・辞任・解任の事例一覧表」こういたしておりますが、法制審議会に出しましたのは、不出頭、退廷の一覧表と辞任、解任の一覧表、こういうふうに分けておりました。これを、ごらんになりやすいという意味におきましてまとめてお出しをさせていただいております。
#140
○稲葉(誠)委員 そのとおりですね。最初の一の方が十四、二の方の辞任または解任の事例が八つ、これをまた神戸なら神戸の地裁に全部まとめちゃったものだから非常に数が合わなくなってきておるというふうにもとれるのですが、その中で例を出しましたよね。十四件で事例としては三十九事例出したわけですね。その事例について、そのような事態に至った経緯あるいは原因について一体法制審議会で触れたのですか、触れないのですか。
#141
○伊藤(榮)政府委員 最初に、事務当局ということで私どもの方から主要なものについての経緯の御説明をいたしました。これに対しまして、日弁連の推薦委員の方々から、それらの事例について日弁連側における調査の結果と言われるものを印刷物としてお持ち込みになりまして、委員にお配りになりました。したがいまして、それに基づいて日弁連推薦委員の一部の方がお述べになりましたので、これに対しましては私ども必要な範囲において誤りがあれば訂正させていただくという程度のことをいたしております。
#142
○稲葉(誠)委員 それはどの程度やられたわけなんですか。そのことについて紙は配ったけれども、何か実質的にはほとんどやられなかったのではないですか。そういうことじゃありませんか。
#143
○伊藤(榮)政府委員 お名前は失念いたしておりますが、日弁連推薦委員のお一人の方が、具体的事案についてある程度詳細にお述べになりました。したがいまして、それに対しまして私の方でも、必要最小限度の言葉数でもってその点の正確でないということを御指摘申し上げておったわけでございます。
#144
○稲葉(誠)委員 どうもそこら辺のところは私の調べたところと違うようなんですが、内容についてはほとんど触れてないということのようですね。私の方ではそう思っています。
 それから、過激派だけでなくて一般事件についての資料というのは、同じように弁護人が不出頭、退廷、辞任、解任、こういうようなものについて一体出したのですか、出さなかったのですか。
#145
○伊藤(榮)政府委員 過激派事件以外の一般事件についての弁護人の退廷、辞任、解任、不出頭といった関係の資料は、私どもからはお出ししませんでした。これに対しまして、日弁連の方でおつくりになりました資料の中に一般事件もお挙げになりまして、たとえば臓物罪の事件であるとかそういう事件をお挙げになりまして、弁護人の退廷の事例等があるというような御指摘がありました。これに対しまして、私どもとしては、日弁連の方でお挙げになりましたその事例は被告人と弁護人とが意思相通じて行ったものではない、被告人の意思と弁護人の意思とが一緒になってやったものではない、だから私どもの法案の資料としては適切でない、そういうふうに御説明を申し上げておるわけで、事実そのとおりでございます。
#146
○稲葉(誠)委員 そこで、これは資料として要求したいと思うのですが、いまあなたの言われたとおりだとは思いますが、法制審議会の審議の議事録、これは名前は出さずにA、B、Cでいいと思いますが、それを資料として御提出を願いたい。ということは、これは過去においてたしか刑法の二百十一条の改正のときに、それはA、B、CであったかX、Y、Zだったか忘れましたが、そういう形で出しておりますので、それをぜひ資料として提出を願いたい。その上でそれに基づいて審議を進めてまいりたい、かように存じます。
#147
○伊藤(榮)政府委員 法制審議会の議事と申しますのは、各界各層を代表されます方々が御自分の見識と意見に基づいて御自由に御発言いただくというたてまえでございまして、その議事録というものは公開しないたてまえになっておるわけでございます。ただ、御承知と思いますが、刑法の全面改正等の過程におきましては、法制審議会における審議の概要というものをある程度取りまとめて外部に発表したりなどいたしておるわけでございます。そういう意味で、どうしても法制審議会の議事の概要がわからないと困る、こう仰せになりますれば、その仰せになります趣旨に沿いまして議事の概要を取りまとめて御提出を申し上げてもよろしいかと思います。
#148
○稲葉(誠)委員 議事の概要でなくて、たしか刑法二百十一条のときに出したのがありますよ、ぼくはもらった覚えがあるのだから。だから、それと同じようなものを出してください。
#149
○伊藤(榮)政府委員 私、刑法二百十一条の改正に関与した者の一人でございますが、私はちょっとお出ししたような記憶がいまはありませんので、もし、帰りましておっしゃいますようなものがお出ししてあるとすれば、考えさせていただきます。
#150
○稲葉(誠)委員 ではそれはそんなに詳しくなくても、仮に出してなければ――ぼくはもらった記憶があるのです。大体あのとき、三年を五年にするときの議論がいろいろあって、それをだれがどういうふうにあれしたかということはよく出ているのですが、それはそれとして、いま言ったようにもし出したことがないとするならば、これは委員部で調べればわかると思うのですが、いまあなたの方で言われた程度のものでいいから出してほしい、こういうように思います。
#151
○伊藤(榮)政府委員 御趣旨に沿って検討いたします。
#152
○稲葉(誠)委員 そこで、ここに赤い紙で「必要的弁護事件における弁護人の正当な理由のない不出頭・退廷・辞任・解任の事例一覧表 −過激派の被告事件関係−」という資料がありますね。一から十三まであるわけですが、これはこの法案の提案理由の説明なりあるいは法律案要綱なり法律案なりのどことこれが関連してくるわけですか。どういう意味で参考資料なんですか。
#153
○伊藤(榮)政府委員 提案の理由にもございますように、弁護人が被告人と意思を同じくしまして不出頭、退廷、辞任、解任といったようないわゆる法廷闘争戦術をとった事例ということで掲げてあるわけでございます。
#154
○稲葉(誠)委員 それでは、第一の神戸地裁の件がございますね。このときの弁護人はだれなんですか。
#155
○伊藤(榮)政府委員 もちろん弁護士の名前はわかっておりますけれども、当該弁護士さんの名誉に関しますことでもございますので、固有名詞は御勘弁いただきたいと思います。
#156
○稲葉(誠)委員 どうして名誉に関するのですか。これは懲戒を受けたのですか。
#157
○伊藤(榮)政府委員 被告人と意思を同じくして不適当ないわゆる法廷闘争戦術をおとりになったということを私は述べておるわけでございまして、そういうことをした方であるということをここで固有名詞を挙げて申し上げますことは名誉を傷つけるおそれがある、こう思うわけでございます。
#158
○稲葉(誠)委員 それではこれは一体弁護人の正当な理由のない不出頭であるかどうかということの認定が一方的になっちゃうじゃないですか。どこからこういう資料を集めてきたのですか。
#159
○伊藤(榮)政府委員 ここに掲げました事件は、いずれも法務省あてに各検察庁から報告のありましたものにつきまして、当該報告の内容、さらには不十分な部分については実際の当事者に当たりまして作成をしておるわけでございます。私ども、法廷できわめて異常な事態があるということになりますと、それぞれの検察庁の長から法務大臣あてに報告がございます。これに基づいて選別をしておるわけでございます。
#160
○稲葉(誠)委員 そうすると、あなた方の資料によればこれはみんな弁護人が正当な理由なく不出頭したり何かしたということであって、あなた方に言わせればみんな弁護人の方が悪いということでしょう。その例を十三挙げているわけでしょう。その認定は一体どうやってしたのかとなれば、あなた方の方で一方的に認定したことになって、これに対する反論は何もできないじゃないですか。
#161
○伊藤(榮)政府委員 私どもは固有名詞を申し上げていないのでございますが、日本弁護士連合会におきましてはそのすべての事件を御承知でございまして、先ほど申し上げましたように、一部反論をまじえました弁護士会の調査に基づく事実関係というものを法制審議会へお出しになっておるわけです。したがいまして、固有名詞を申し上げませんでも、その事件名と起訴月日等から日弁連等においては十分御存じだと思います。なお、それは日弁連の方々の話でございますから、当委員会においてもう少し詳細な事実関係をということでございますれば、もう少し詳しく御説明申し上げても結構でございます。
#162
○稲葉(誠)委員 だから私の方は、あなた方のつかんでおる事実がどういう事実であるかということを詳細に知りたいわけです。この赤い紙のこれが、みんな弁護士の責任においてこういうことが行われた、したがってこの法案が必要だという議論にあなた方の方はなってきているわけでしょう。だから、この赤い紙の一から十三までは、これは弁護士が一〇〇%悪いのじゃない、あるいは何十%か悪いのじゃないとかなんとかという議論になってくれば、問題はこの法案というものの適格性というか適性というか、そういうものが失われてくるわけです。だから、当然あなた方が参考例として挙げておるものの事実関係というものを調べなければならぬ。調べることについて、あなた方の一方的な調べでは問題の解決にはならぬ。だから、これは場合によっては私の方で弁護人がだれかわかりませんから調べて、それから弁護人だけではあれだということになれば、裁判官を参考人に呼ぶわけにいかぬから、そのときの立ち合いの検事――立ち合いの検事から恐らく報告か行っているのでしょう。あるいは立ち会いの検事から報告が行っているのではなくて、最高裁の方からこの報告をあなたの方でとったのかもしれぬ、最高裁と非常に緊密な連絡をとっているようだから。むしろこの法案は最高裁の方がアクチブな関係に立っているわけですからね。だから、この事実関係がどういうものであって一体どっちに責任があるのかということを明らかにしなければ、この法案というものの審議はできないのですよ。それをやれというのはこれは無理ですよ。私は良心的に、一つ一つ事実関係を明らかにしていって、一つ一つ反論をし、一つ一つその事実を証拠によって明らかにしていかなければいかぬ、裁判じゃないけれども、それをしていかなければいかぬと思いますよ、この事件については。
 それじゃ、とにかく法制審に出した資料の中で、あなた方が出した資料でなくて、日弁連から出た資料も一緒にあるわけですね。それも一緒にくっつけて出してくれませんか。
#163
○伊藤(榮)政府委員 事実関係については、お尋ねがあれば詳細御報告申し上げることはやぶさかでございません。私どもが十三件そこに挙げておりますのは、この法案が成立いたしました場合にこの法案の適用対象となると考えられるもの、それは裏を返して言いますと、この法案がそういうことをしてもらっては困るという立場で見ておる、そういうものが並べてあるわけでございます。
 それからなお、いまおっしゃいました日弁連のお出しになりました資料と申しますのは、法制審議会へお出しいただいたわけではなくて、法制審議会に出席しておられました委員の方々に日弁連推薦委員の方がお配りになりましたものでございますので、これは日弁連の方からお取り寄せいただけたらと思います。
#164
○稲葉(誠)委員 じゃ、その資料は日、弁連の方から取り寄せて、一つ一つ事実についてこれをきわめていきたいというふうに私は思うのです。これは責任だと思うのですよ。それでなければこの法案というものの審議をしたことにならない、私はこういうふうに思うわけです。
 そこで、きょう本当は弁護人とそれから立ち会いの検事の名前――あなたに報告を出した検事があるでしょう。だから、弁護人の方の言い分だけ聞いておったのではあなたの方だって満足しないから、今度は立ち会った検事も一緒に参考人として呼んでもらって、一つの事件について両方の言い分を聞いたらいいと思っているのですよ。そうでなければこの事実関係、真相は明らかにならぬもの。あなたが代理だと言ったって、あなたは間接的に報告を受けているだけの話なんだから、直接のあれを聞いた方がいいと思っている。私はそういう考え方で、そこでいま弁護人の名前をずっと聞こうと思ったら、あなたの方で個人の名誉に関することだから言えないと言うから、じゃ、こっちの方で調べましょう、こういうわけですね。それでなければこれは審議できませんよ。あたりまえの話じゃないですか。無理だと思いますか。
#165
○伊藤(榮)政府委員 この委員会へ、ただいま御指摘のお話を突き詰めていきますと当該裁判所を構成しました裁判官全員、それから当該弁護人、それから検察官、これをお呼びになりまして、その訴訟指揮の実態、あるいはこれに対する被告人の暴れぐあい、あるいは弁護人のこれに同調してたとえば法廷の中で看守を足げりにした状況とか、詳細お調べいただければいいのでございますけれども、生の具体的な事件がすべて関連しておりますので、私は法案の立案当局者の一人といたしまして責任を持って公正な調査をしたつもりでございます。これに対する反論と申しますのは、日弁連において相当なスタッフをお使いになりまして調べ上げられました資料があるわけでございます。その資料と、その資料に基づいてお尋ねいただきました場合における私どものお答えを冷静にお聞きいただけば、十分御判断がいただけるのじゃないか、かように思っております。
#166
○稲葉(誠)委員 だれも裁判長を呼べなんて言っていませんよ。この訴訟指揮について裁判長を立法府が呼べるべき理由がないでしょう、そんなこと法律的に見て。ぼくは被告人を呼べとも何とも言っていないですよ。当該弁護人と、弁護人だけでは一方片手落ちになると考えるなら検事も呼んだ方がいいじゃないか、こう言っているだけの話で、裁判官を呼べと言っていませんよ。そんなことを言ったらこっちが笑われてしまうもの。そんなことをぼくば言っていませんからね。そんなこと、あたりまえの話ですよ。
 じゃ、私の方で、あなたの方で出さないのですから、資料を出さないというか名前や何かを教えないしするから、日弁連の調査による資料を何らかの形で出して、一つ一つ事実について確認をしていく、こういう方向をとらざるを得ないというか、とってまいりたいというふうに思いますが、これはきょうは無理ですから、また別の機会にやりたい、こういうふうに思うわけです。
 それからこの中で、この前もちょっと話が出ましたように、一体何でもかんでもこれはみんな弁護士が悪かったのですか。全部弁護士と被告人が悪かったということをあなたの方では言っているんですか。
#167
○伊藤(榮)政府委員 裁判官も人間でありますし、立ち会っておる検察官も人間であります。したがいまして、常に一〇〇%間違いがないというわけにはいかないと思います。しかしながら、私どもが資料に挙げておりますその十三件のケースというものは、裁判所が悪かったというわけにはいかない事案ばかりで、妙な言葉ですが、弁護士さんがよくなかったという事例を集めておるわけでございます。
#168
○稲葉(誠)委員 それはあなた、法廷ではこういう事件の検事というのは楽なのよ。ただ黙って裁判官と弁護人とのやりとりを聞いていればいいんだものね。当初のうちはそうでしょう。あなたも公安事件をやったことがあると思うけれども、それは立証段階に入れば検事も忙しいけれども、大体において検事は、最初の間はただあそこに座っていればいいんですよ。そうじゃないですか、どうなんです。
#169
○伊藤(榮)政府委員 大変申しわけありませんが、私は、過去ずっと汚職と会社犯罪専門検事でございましたので、公安事件の公判に立ち会ったことがございませんので、経験がありませんので、御勘弁いただきます。
#170
○稲葉(誠)委員 それは、検事が忙しくなるのは初めじゃないと思うのです。途中から忙しくなるんだと思いますがね。
 たとえば、例の百回指定の問題がありましたね。百回指定の問題で、東京高裁の刑事七部で、忌避の申し立てがあって、簡易却下があって、即時抗告したんでしたね。それで、あれは高裁の刑事七部だと思いましたが、決定していますね。その決定は確かに弁護人の方の忌避の申し立てを却下していますね。だけれども、その中に一体どういうことが書いてありますか。
#171
○伊藤(榮)政府委員 恐らく、お尋ねになっておりますことは、この高裁の即時抗告棄却決定の決定書の中に、日弁連の方々が鬼の首を取ったようにおっしゃっている、そこのところを言え、こういうことではないかと思うのですが……
#172
○稲葉(誠)委員 いや、そんなことじゃない。鬼の首を取ったかどうかは別として、日弁連の人が言っているだけでは、これはお互いにこういうのはもうみんな自分の都合のいいところばかりとるんですよ、ざっくばらんな話。だから、全部を説明してもらって、全部を資料として提出してもらいたい、こう思うのです。一部分だけ、そこのところだけとってやったんじゃ、それは不公平だから、その点は私は公平にやりますよ。公平に、しかも慎重にやりますから、だから全部説明してください。
#173
○伊藤(榮)政府委員 決定の全文は、御要望があればお出ししてもよろしいのですが、干ての要旨をきわめて公平に申し上げますと、連合赤軍事件の裁判における期日の指定をめぐりまして、弁護人が被告人と一緒になりまして、期日の指定になかなか応じない、こういうような状況がずっと続きました後に、弁護人が第一審の東京地裁の裁判官に対して忌避の申し立てをした。これに対して当該裁判所が簡易却下をした。これに対して即時抗告をしたというのがいま御指摘のケースでございまして、昭和四十八年一月三十一日に決定が高裁で出ております。その要旨は「本件審理には少なくとも一〇〇回開廷を越える相当長時間を要するものと予想することも無理からぬことと思われる」と、まずしまして、かような事件の審理に当たっては、
  裁判所及び当事者が一体となって格段の努力をすることが特に要請されることは言を俟たないところであり、その方策として通常の事件とは異なる程度の集中審理形式をとることも止むをえないところであり、裁判所の方針として右形式を採用する以上、弁護人としては弁護活動の方法に創意工夫をこらし、右方針に出来うる限りの協力を惜しむべきでないことも当然である。
としました上で、いわゆる百回指定問題につきまして、この百回一括指定したことは「いささか妥当性を疑わせる点が窺われないではない。」といたしました上、
 本件裁判官等の措置が「被告人及び弁護人等の防禦権、弁護権あるいは弁護人の職業人としての生活権」を著しく侵害し、かつ刑事訴訟の目的の達成を不可能にすると断ずるに足りない。
といたしまして、また、
  弁護人等の終始強く主張して譲らない月一回開廷の方法によれば、本件審理に異常な長期間を要し、訴訟遅延を結果することは、これを予想するに難くなく、迅速な裁判は望むべくもないのみか、所論主張のように、右方法によらなければ弁護人等のいかなる努力にもかかわらず被告人、弁護人の権利が守られず、刑事訴訟の目的を達せられないとは到底考えられない。
また、
 本件裁判官等は、迅速な裁判を実現すべく誠意を以て努力を重ねたが、弁護人等の主張があまりにも強硬であるため止むをえずと考えて本件公判期日指定等の措置に出たことが認められる
結論として、論旨はすべて理由がないということで、即時抗告を却下いたしております。
#174
○稲葉(誠)委員 それはちっとも公平じゃないじゃないですか。あなたの都合のいいところしか読んでいないじゃないですか。そういうことじゃだめですよ。だから、ぼくは自分のを持っているけれども、それは都合のいいところだけを読まないで公平に読んでくれと言ったのです。あなたの都合のいいところだけしか読んでいないんだ。
 それじゃ、こっちもこっちで都合のいいところを読んでみましょうか。長いけれども、こういうふうになっているんですよ。
 かかる事件にあっては、裁判長は、両当事者の意見、希望を十分に聴取したうえその同意をえて公判期日を指定するのが通常であり、かつ望ましいところであると考えられるが、弁護人等の職業活動の現実に対する配慮を欠く憾みのある昭和五〇年までの弁護人等の差支日の申出要求をなし、申出のないことなどを理由に前記裁判長が早々に本件公判期日の指定をしたのは、いまひとつ当事者との話合の努力に欠けるところがあったといえるのではないか、弁護人等の本件以外の事件の受任状況などの弁護士活動の現実を重視する立場からは、本件の弁護活動を十分になしうるためには各公判期日の間隔が短きに失すると考えられ、この点再考の余地はないか、訴訟の各段階(冒頭手続、検察官の立証、被告人、弁護人の反証、終局手続等)に応じ、審理の実情をふまえた、より的確な見とおしの下に公判期日の集中的指定をするなど、より妥当な方法が採りうるのではないか、更に
云々と、いろいろ、仲間が死んだり何かしておりますが、それが書いてありますが、
  その方策は実務としてば仲々困難な措置ではあるけれども、いささか妥当性を疑わせる点が窺われないではない。
こういうふうに言っているわけですね。こういうところがあるでしょう。これは、日弁連が鬼の首を取ったと言ってあれしているところだとあなたはおっしゃるのだけれども、このことを見ると、それは、なるほど却下はしているけれども、百回指定というのは無理なところもあるのだ、弁護人の実情というものも考えてないのだということを、より具体的、適切な方法もあったのじゃないか、こういうことをこの決定の中で言っているんですよ。だから、これは全部が全部、この場合だって弁護士が悪いということを高裁の決定は言っているのじゃないじゃないですか。原審裁判所にも配慮が欠けるうらみがあった、こういうふうにはっきり言っているのじゃないですか。ぼくはぼくの都合のいいところを読んだかもわからぬけれども、あなたはあなたの都合のいいところばかり読んでいるんだ。だからほくは全部公平にちゃんとやってくれと言うのに、やらないんだもの、だめだよ、それは。
#175
○伊藤(榮)政府委員 それでは、その後を読ましていただきます。
 しかしながら、本件裁判官等が指定した個々の期日における理由ある場合の変更についての考慮をしていたことが窺われることをも併せ考えると、右の本件裁判官等の措置が「被告人及び弁護人等の防禦権、弁護権あるいは弁護人の職業人としての生活権」を著しく侵害し、かつ刑事訴訟の目的の達成を不可能にすると断ずるに足りない。しかるに、弁護人等の終始強く主張して譲らない月一回開廷の方法によれば、本件審理に異常な長期間を要し、訴訟遅廷を結果することは、これを予想するに難くなく、迅速な裁判は望むべくもないのみか、所論主張のように、右方法によらなければ弁護人等のいかなる努力にもかかわらず被告人、弁護人の権利が守られず、刑事訴訟の目的を達せられないとは到底考えられないところであり(訴訟遅延により却って真実発見が困難になることさえあるとも考えられる)、また十分な変更の理由も添えない右公判期日の一括変更請求の方法も少くとも甚だ妥当を欠くものといわねばならない。
以下、こういう調子で続いておるようでございます。
#176
○稲葉(誠)委員 だから問題というのは、みんな自分の都合のいいところだけ引っ張るものですよ。だれだって、これは人間の習性だからね。だから、あなたの方はあなたの都合のいいところだけを全体の中から引っ張ってくる、こっちはこっちでまたこっちの都合のいいところを引っ張ってくる傾向というものはあるわけだから、全部を公平に読んでくれとぼくは言ったわけです。
 そうすると、いまのことの中では、一〇〇%原審の訴訟指揮が正当だったとは必ずしも言ってないですよ。遠慮がちに言っているけれども、その訴訟指揮については問題がある、いろいろな配慮に欠けるうらみがある、こういうふうなことも言って、結論としては却下しているのですよ、ぼくが言ったとおりだから。普通の場合に忌避なんか通るわけないですから。だからそれはそういう結論ですけれども……。
 今後はこの一つ一つについて聞いていきたい、こういうふうに思うのですけれども、きょうあなたの方で弁護人の名前や何か全部言ってくれる、こういうふうに思っておったものですから、そこまでの準備はしてこなかったものですから、これは別の機会に譲りたい、こういうふうに思います。
 そこで、私が質問をしたいことはこういうことです。この前の十八日の本会議の質問、これで答弁の中でいろんな問題がある。それについてはあなたの方でももう大体気づかれておって、大分反論を用意しておられるということもぼくも聞いたわけですね。だからこれから私の言うことについてはあなたの方では恐らく反論を用意しておると思う。きのうも徹夜したらしいから、これは一生懸命やったのでしょう。徹夜しなかった。(「自信を持ってやっておる」と呼ぶ者あり)自信を持ってやってないらしいぞ、それは。
 そうすると、この法案の提案の話が出たというのはいつですか。
#177
○伊藤(榮)政府委員 こういった方策をとらなければならぬという話が出てきましたのが昨年十月の上旬でございます。これは例のダッカ日航機ハイジャック事件を契機としまして、いわゆるハイジャック等非人道的暴力行為の防圧のためにあらゆる施策を考えるべきである、こういう政府の基本的な方針から、その一環として昨年十月上旬から検討を開始して、そして先ほど申し上げましたような経緯で法制審議会に諮問が行われ、答申がなされ、答申後に立法形式につきまして政府、法務省の責任におきましてごらんのような暫定的特例という形にいたしまして御提案申し上げた、こういう経緯でございます。
#178
○稲葉(誠)委員 その提案の話というのは、五十二年の十一月八日に何かハイジャック対策の暴力何とか本部というのができましたね。そこで具体的に出てきたのではないのですか。
#179
○伊藤(榮)政府委員 昨年十一月八日に政府のハイジャック等非人道的暴力防止対策本部において防止対策の要綱を定めて発表したわけですが、それまでの間にそれぞれ関係省庁等におきまして議論を詰めまして、その結論といいますか実現可能な結論を見出したものを要綱につくってあるわけでございます。したがいまして、実際の作業はそれより前でございます。
#180
○稲葉(誠)委員 そうすると、その作業は一々外部に発表しておったのですか。
#181
○伊藤(榮)政府委員 公式に発表するということは必ずしもやっておらなかったと思いますが、たとえば日本弁護士連合会とか最高裁判所事務当局、こういうものには逐一御連絡をしながらやっておったものでございます。
#182
○稲葉(誠)委員 その作業というのは、五十二年の十一月八日以降の作業を連絡したというのじゃないのですか。前のを連絡したというのですか。どういうふうに連絡したのですか。
#183
○伊藤(榮)政府委員 ただいまのお尋ねに端的にお答え申し上げれば、十一月八日の以前に御連絡を相当いたしております。まず最高裁判所事務当局に対しまして、それから日本弁護士連合会に対しまして、十月中旬から下旬にかけまして数回にわたって御連絡を申し上げております。日弁連の関係で申しますと、日弁連の当時の事務総長に私のところへお越しをいただきまして、そこで二つのことを提案いたしております。そのうちの一つは、最近の過激派事件におきます異常な事態に対処しないでほっておく場合には、法をじゅうりんされて被害者になっておる当面の殺傷の被害者はもちろん、国民の大部分、これに対する法秩序尊重の気持ちを大いに揺るがせるおそれがある、したがいまして、この異常な状況は何としてもこれに適当な方法で対処しなければならない、そのアプローチとして二つの方法があると考えておる、その一はさらに二つに分かれますが、日本弁護士連合会を頂点とする弁護士会が法廷のルールを破って被告人と同調して法廷闘争戦術として非常なルール無視の行動をされるような場合に適正迅速な懲戒処分を行っていただくことが一つ、それからもう一つは、ただいま御提案いたしておりますような、万やむを得ない場合には、被告人がいわゆる弁護人の弁護を受ける権利を放棄したとみなされる場合に一定の限度で弁護人不在廷のままで手続を進めるという方法をとることが一つ、この二つは、理論的には正確ではございませんが、立法政策としては、あるいは対処策としては二者択一と考えておるというふうに申しました。それから、もう一つのアプローチの仕方といたしましては、国選弁護人の推薦が、従来過激派事件についてはきわめてうまくいってない、これについて日弁連及び弁護士会として抜本的に改善策をおとりいただくことが可能かどうか、もしそれがむずかしければ、アメリカ等にございます公設弁護人というようなものを考えるということも一つの方法である、私どもとしては、いま過激派事件を中心といたします最近の異常な事態に対処するためにこの二つのアプローチについて急いで検討しておるところである、これについて日弁連の事務局長であるあなたに御連絡を申し上げるわけであるから、その事柄についての意見を聞かしてほしいと申したわけでございます。
 その次の機会に日弁連事務総長が来られましたときにお答えがございまして、まず二番目の方、すなわち国選弁護の推薦の円滑化か公設弁護人制度の新設か、こういうアプローチの問題につきましては、日弁連としてもなお努力する余地があると思う、ただしその努力の裏づけとして、裁判所において過激派事件の弁護人には相当額の報酬をはずむというような方策も考えてもらいたいということでございました。それから第一の点につきましては、懲戒処分の問題については、なかなか困難な問題があって、自信を持って懲戒処分の適正迅速化をお約束するという状況にはない、こういう御返事でございました。
 そこで、私といたしましては、第三回目においでいただきましたときに、国選弁護の方は日弁連が努力をされるとおっしゃいますし、またその事務総長のお話を受けまして、私、最高裁事務当局と連絡、打ち合わせいたしましたところ、最高裁当局としても国選弁護の報酬の問題については大いに努力すると言っておられましたから、国選弁護人の選任の問題は、なお日弁連の御努力を見守ることにいたしたい、裁判所当局にもその御努力方を要請いたしましょう、しかし、第一のアプローチの方の懲戒処分の問題あるいは必要最小限度における弁護人不出廷のままの審理の問題については、日弁連の方からのただいまのお答えによっても解決のめどがないように思われる、そこで私どもとしては、ただいま御提案申し上げているような形の刑訴法の一部改正を今後立案することになります。こういうふうに申し上げておったわけでございます。
 それからしばらく後に、十一月八日がやってまいりまして、政府の対策本部で、対策の一つとして、刑事訴訟の迅速化のための刑訴法の一部改正という問題が最終的に取り上げられたわけでございます。その翌日十一月九日に、早くも日本弁護士連合会は会長名をもって、断固この法案に反対をするという声明を出された、こういう経緯になっておるわけでございます。
 なお最高裁判所事務当局との連絡につきましては、ただいまお答えしたところにもちょっと出てきておりますけれども、日弁連と同様に十月いっぱい緊密なといいますか、しげしげと連絡をとって御意見を伺ったりいたしておる次第でございます。
#184
○稲葉(誠)委員 いまのあなたと会った人、これは私も知っていますよ。あなたとのプライベートな関係もぼくは知っている。いろいろ細かい点も知っていますけれども、それはここで申し上げるわけにはいかぬと思いますので言いません。
 そこで、この議事録にある大臣の私の質問に対する答弁の中で、まず第一に言っていることは、「過激派裁判に近来異常はないじゃないかというお話でございますが、大変な異常があって、昭和四十七年の例の浅間山荘事件などというものは、十回以上も先ほど申し上げたような事態で裁判が行われておらない。開廷しても裁判が進まないのでございます。最近ようやく落ちついておることは事実でございますが、これはこういう提案の話が出てきてからおとなしくなっておるというだけのことでございます。」こう言っているのですね。ここのところの「提案の話」というのは、いつのことを言うのですか。
#185
○伊藤(榮)政府委員 大臣の本会議の御答弁は、私も政府委員席におりまして承っておりましたが、本会議という荘厳な場所でございますので――私どもは非常に荘厳だと思ったわけですが、要点を簡潔にお述べになっておったように思います。
 現在、連合赤軍事件あるいは連続企業爆破事件を中心といたします過激派の事件が平静に推移しておるやに見えるわけでございます。その理由は、大臣の御答弁を補足しますと、二つあります。一つは、弁護人の圧力に屈しまして、裁判所が弁護人の要望する間隔でしか公判期日を入れてないということが一つでございます。それからもう一つ、これは私どもには証明する手段がございませんけれども、先ほど申しましたように私どもが日弁連に御連絡を申し上げ、日弁連会長が反対声明をお出しになりましたころから、特に今年に入りましてから過激派裁判は比較的平穏でございます。こういった状況から、私といたしましても、この法案というものを念頭に置かれて平静に推移しておる面が相当大きいというふうに思っております。また逆に申し上げれば、この法案がもし廃案等になればまたそういう事態がぶり返す、こういうふうな見方をいたしております。
#186
○稲葉(誠)委員 しかし、答弁は大臣がいきなり口頭でしゃべったわけじゃないでしょう。事務当局で前の日か何かにメモをちゃんとつくって、それを大臣が読んだのですから。それはそうですよ、あそこで何もなしでしゃべれる人はなかなかいない。それは大臣、そうでしょう。
#187
○瀬戸山国務大臣 御承知のように本会議の質疑応答でございますから、事細かに申し上げるのが適当でない状況でございます。でありますから、おおよそのことは頭に入れておりますが、私はメモによって答えたわけじゃなくて、私の見ておるところをお答えした、こういうことでございます。
#188
○稲葉(誠)委員 私もそこまで見てなかったから気がつきませんでしたけれども、それはあなた、前の晩に事務当局が答弁資料をつくったに決まり切っていることじゃないのですか。こういう提案の話が出てきてからおとなしくなっていると言うのだけれども、そういう提案の話が出たのが、たとえば五十二年の十一月八日だとすると、その前に連合赤軍の事件とか企業爆破の事件ですか、その他の事件は一体どういう進行状態をしていたのですか。もうすでに証人調べに入っているのじゃないですか。
#189
○伊藤(榮)政府委員 私は当日大臣の後ろの政府委員席におりましたので、大臣が何を持って壇上へおいでになったかよく見ておりますが、私どもが用意をいたしましたペーパーは一切お持ちになりませんで、御自分で二、三行メモされましたものをお持ちになりましてお述べになったようでございまして、大変感服いたしたわけでございます。
 なお、昨年十二月、ちょうど法制審議会の答申が出るまでには、実は調べてみますと、過激派事件で弁護人の退廷事例が二例ばかりあるようでございまして、ことしに入ってからばったりない、こういうのが実態の状況でございます。
#190
○稲葉(誠)委員 私が聞いているのは、そのころ、連合赤軍なりそれから企業爆破事件で一体公判はどういうふうに進行していたのですか、そのころすでに証拠調べが始まっていたんではないですかと聞いているのです。
#191
○伊藤(榮)政府委員 連合赤軍事件及び連続企業爆破事件におきましてはいろいろ紆余曲折がありまして、結局弁護人が不出頭、退廷戦術をとる、あるいは連続企業爆破事件におきましては、公判期日の前日に辞任戦術に出るというような経過をたどりまして、裁判所としては弁護士会に対して国選弁護人の推薦を何回もやられたのでございますが、これに対して弁護士会からの推薦は全くない、こういう状態で万策尽き果てて、辞任前の弁護人、連合赤軍におきましては辞任がありませんから、いわゆる弁護人と裁判所が結局話し合って、弁護人側の言うだけの期日を入れることにして進行を始めた、これが連合赤軍におきましては昭和五十一年の初めごろから、それから連続企業爆破事件におきましては昨年の十月ごろからという状況でございます。したがって、一カ月に二回、それも事件によりましては半日ずつ二回という非常にゆっくりしたテンポで現在公判が進んでおるということでございます。これが平穏に進んでおるというふうに言えば言えるわけでございますけれども、被害者あるいは一般国民の立場から、いつになったら結審するかめどのつかないようなスローテンポで公判が進んでおるということにつきましては、やはり非常に問題を感ずる向きが多いのじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。
#192
○稲葉(誠)委員 私の聞いていることと関係ないことを答えているのじゃないですか。意識的に関係ないことを答えているな。どうも役人というのは悪い癖があるな。そういう人がまた出世するんだよね、役人というのは。あなただって将来検事総長になるのでしょうが。検事総長になることは間違いないぞ。
 私の聞いているのは、五十二年十一月八日の本部の発表のころ、連合赤軍事件なり何なりはどういうふうな状況であったか、すでに証拠調べに入っていたのじゃないですかということですよ。ここにあなたの方から出した資料があるでしょうが。私が読んでもいいけれども、めんどうくさいからあなたの方に読ませようと思っているだけの話なのです。書いてあるじゃないですか。
#193
○伊藤(榮)政府委員 先ほども申し上げましたように、連合赤軍事件につきましては、昭和五十一年の早々から証拠調べが始まっております。連続企業爆破事件につきましては、日弁連その他と折衝いたしております昨年十月二十一日から証拠調べが始まっておる、こういうことでございます。
#194
○稲葉(誠)委員 連合赤軍事件はいつですって。五十年三月十三日から証拠調べに入っているのじゃないですか。そう書いてあるじゃないですか、あなたの方の資料に。これは違うのですか。
#195
○伊藤(榮)政府委員 冒頭陳述を行ったわけですから、証拠調べに入ったと言えば入るわけですが、一回だけそういう手続が行われて、その後、被告人の不出頭とか、いろいろな問題がまたあって、いよいよ証拠調べが始まったと言われますのは五十一年の冒頭からである。正確には五十年十二月十一日と、この資料ではなっておりますが、手続的な関係を除いて本格的な証拠調べが始まったのは五十一年の一月からであるわけでございます。
#196
○稲葉(誠)委員 この資料には「五十年三月十三日、証拠調べに入る」とあって、証拠調べの内容は書いてありませんから、証人調べという意味なのか書証の調べという意味なのか、ちょっとはっきりしませんけれども。公判期日五十四回、それから七十回のは五十年十二月十一日じゃないですか。この資料に基づいて私は聞いているわけです。これは、証拠調べを書証の調べとか証人調べとかに分類してないからちょっとはっきりしないのです。
#197
○伊藤(榮)政府委員 私どもの資料が、ただいま御指摘のように検証とか書証とか、あるいは証人調べというものを分けておりませんので若干不正確にお聞き取りいただいたのではないかと思いまして、その点、申しわけなく思いますが、広い意味の証拠調べは、第五十四回の昭和五十年三月十三日に一回行われ、七十回、昭和五十年十二月十一日から行われておる、こういうことでございます。
#198
○稲葉(誠)委員 そうすると、連合赤軍事件の場合は、提案の話が出てからおとなしくなったのじゃないでしょう。出る前からおとなしくなっていたのでしょう。
#199
○伊藤(榮)政府委員 おとなしくなったと申しますか、話がついて、ゆっくりしたテンポで証拠調べが行われるようになった、こういうことでございます。
#200
○稲葉(誠)委員 ゆっくりしたテンポかどうかということは聞いてないのだけれども、あなたの方もそれは言いたいことだろうからね。言論の自由だから、あなたの方の言論を抑圧するつもりはな
 いから、言いたいことを幾らでも言いなさいよ、構わないから、遠慮することないから。
 それはそうですか、少なくとも連合赤軍事件については「こういう提案の話が出てきてからおとなしくなっておるというだけのことでございます。」というのは、事実は違うのじゃないですか。これは、私は答弁を聞いていて気がついたのですよ。これはおかしいなと思っていたのだけれども、あのときには知らぬ顔をしていたのです。
#201
○伊藤(榮)政府委員 個々具体的な事件を一つ一つとっていきますと、必ずしも一〇〇%正確な御答弁であったとは思いません。ただ、あの御答弁は全体の雰囲気をよく伝えておられたのではないか、こういうふうに思っております。
#202
○稲葉(誠)委員 いや、そんな答弁ないよ。
 大臣、あなたはメモを自分で書いて答弁したらしいのですね。私もちょっと記憶にないですけれども、それは質問の内容をずっと細かく通告していたわけじゃないから、あるいはそうかもしれませんがね。「こういう提案の話が出てきてからおとなしくなっておるというだけのことでございます。」というのは、何のことをあなたは言ったのですか。
#203
○瀬戸山国務大臣 先ほど申し上げましたように、細かく長く御答弁申し上げることば適当でないような雰囲気でございましたから大筋を申し上げたわけでございます。最近の状況はどうかということを刑事局長等にその前に尋ねまして、この話が出てからだんだん正常に戻っておるという報告を受けておりましたから、その大筋を申し上げたわけでございます。
#204
○稲葉(誠)委員 それは違うよ。こういう提案の話が出てからおとなしくなったのじゃない。その前から、どういう理由かは別として、あなたの方言い分と弁護人側の言い分とは違うかもわからぬけれども、おとなしくなっている。おとなしいという程度がどの程度か知らぬけれども、とにかくおとなしくなって普通にやっているわけですよ。
 それでは連続企業爆破事件はどうでした。この提案の話が出た当時どういうふうになっていたのですか。
#205
○伊藤(榮)政府委員 連続企業爆破事件につきましては、お手元の資料にございますように、昭和五十二年十月十四日の第二十六回公判、ここまではもめにもめておったわけでございます。最後の第二十六回公判というのは、当該被告人が二人奪い去られましたそのことについての弁護人、被告人からの釈明がしつこくありまして、この釈明に
 一日を費やしておるわけでございます。そして、その次の二十七回、昨年十月二十一日から一カ月に二回の期日で証拠調べに入った、こういうことでございまして、まあ話が出て後であることは間違いありませんが、話が出たことと十月二十一日から証拠調べに入ったこととに因果関係があるかどうかを私どもは証明することができないということは先ほど申し上げたとおりでございます。
 ただ、本年に入ってから顕著なことは、過激派の事件におきまして、弁護人が、たとえばこの次の公判には主尋問何時間、反対尋問何時間という打ち合わせをいたしますと、それをぴちっと守るようになっておる、こういうふうに承知をいたしております。
#206
○稲葉(誠)委員 それもまた違うのじゃないの。よく資料を見てくださいよ。二十三回公判「七月二十九日、被告人五名(一名を除く)意見陳述証拠調べに入る」と書いてあるじゃないですか。だから連続企業爆破の方は証拠調べに入っているのじゃないですか。五十二年七月二十九日から入っているのだから、この法案の提案の話などが出るずっと前からちゃんと普通にいっているのじゃないですか。
#207
○伊藤(榮)政府委員 ごらんいただきますように、昭和五十二年七月二十九日は、被告人の意見陳述が長々とありまして、やっと一部証拠調べに入った。その後でダッカ・ハイジャック事件が起きてまた公判が空転するということで、二十七回、昭和五十二年十月二十一日から本格的な証拠調べが行われておるわけでございます。
#208
○稲葉(誠)委員 出すのならもう少ししっかりとした資料を出してくださいよ。ただ証拠調べといったって、これではわからぬですよ。これは、だれが見たって、五十二年の七月二十九日に「証拠調べに入る」と書いてあるんだもの。書いてあるということは、これはもう提案の話が出るずっと前から進んでいるということを意味しているわけじゃないですか、あなた方の資料で。きょうは時間が来たからいいですけれどもね。あなた方の一つ一つの事件に対する調べが、何というか、非常に足りないんですよ。
 いま余り聞いちゃうとあれだから後の楽しみにしておきますけれども、よく研究しておいてくださいよ。あなたが大臣に話したというのと違うじゃないの。大臣は、本会議で、善意だったろうけれども、何かわかったようなわからぬようなことを言っているが、いま言うと、一つ一つはあれかもわからぬけれども全体の雰囲気としては間違いないとか言っているけれども、そうじゃない。重要な事件はこの法案が出る前からちゃんと普通に進んでおったということじゃないですか。
#209
○伊藤(榮)政府委員 お手元に差し上げております資料は、この見開き、半紙一枚大にまとめてございます。証拠調べの内容も全部把握しておりますけれども、それを全部書きましたのでは大変お見にくいものになるのでございますので、そういうふうにしてございます。具体的事件につきましてお尋ねがあれば、私から、資料がございますから、一回一回、どういう証拠調べをして、どこでどういう紛議が生じてストップしたか、というようなことを当然お答えできるわけでございます。
 なお、大臣の本会議の御答弁につきましては、私も、大臣に対して連続企業爆破事件はこうこう、何月何日に証拠調べでこういうことをやっておりますというふうに、事細かく御説明申し上げればよかったのでございますけれども、それだけの時間的な余裕もございませんでしたので、私はかいつまんで、要するに裁判所が降参しておるのが一つと、それから、この法案の問題が出てきてから静かになっておるところを見ると、この法案が出たということの効果がもう一つと、この二つでございましょうというふうに御説明を申し上げておったわけでございます。したがいまして、大臣に対する補佐が足らなかったということをおとがめいただくのならば、私がこれを全部甘んじてお受けしたいと思います。
#210
○稲葉(誠)委員 余り潔いことを言わない方がいいぞ。後で困っちゃうぞ。
 まだあるよ。よく研究してごらんなさいよ。あなたの方で研究しているでしょう、この本会議での答弁の事実との違いの点について。おどかすわけじゃないけれども、まだありますよ。日にちはあるから、ゆっくり研究しなさいよ。これは、また間違えるとだめよ、これ。いまは一つの例を挙げたけれども、だめだよ本当に。きょうは一時間という約束ですからこれだけにしておきましょう。いま一つ一つ聞かなければならぬところでありましたから、これはやはり一つ一つ、立証と言うとおかしいけれども、やっていかないといけませんね。どっちにどういう非があるのかということ、これはお互い言い分があると思うんですよ。そして確かめていく必要がある。
 それからこれは、藤永参事官来ていますけれども、アメリカ法との関係で非常に大きな問題が出てきているわけですね、これはきょうは聞きませんでしたけれども。藤永参事官と古賀弁護士との間の、アメリカ法の解釈をめぐっての、判例や何かをめぐっての論争があるんですね。これは雑誌の宣伝をするわけにいかぬから雑誌の名前は言わぬけれども、十七、八日ごろこれが出ますから、またそれを見まして――それだけではちょっと足りないと思うのです。これはやはりアメリカの立法例との関係、判例との関係、こういうふうなことを確かめていかなければならないから。だから、藤永さんの挙げている判例の中には、一審で通ったけれども上級審で破棄された判例も入っているわけだ。入っているでしょう。それから州の判例もある。いろいろなのがあるんだよね。そういうのは今度ゆっくり聞くから、よく研究しておいてくださいよ。これはそこまでじっくりやらないといけないですよ。本当にじっくり楽しみ、じゃない、これは真剣にやりますからね。普通の法案のときは楽しんでやるけれども、この法案は楽しんでやらないですよ。この法案は真剣にやります。
 きょうはこれで終わります。次回にまた引き続いてやります。
#211
○鴨田委員長 次回は、明十日水曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後六時三十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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