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1977/05/31 第84回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第084回国会 法務委員会 第26号
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1977/05/31 第84回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第084回国会 法務委員会 第26号

#1
第084回国会 法務委員会 第26号
昭和五十三年五月三十一日(水曜日)
    午前十時十五分開議
 出席委員
   委員長 鴨田 宗一君
   理事 羽田野忠文君 理事 濱野 清吾君
   理事 保岡 興治君 理事 横山 利秋君
   理事 沖本 泰幸君
      上村千一郎君    田中伊三次君
      玉沢徳一郎君    中島  衛君
      西田  司君    飯田 忠雄君
      長谷雄幸久君    正森 成二君
      加地  和君    鳩山 邦夫君
      阿部 昭吾君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 瀬戸山三男君
 出席政府委員
        法務政務次官  青木 正久君
        法務大臣官房長 前田  宏君
        法務大臣官房司
        法法制調査部長 枇杷田泰助君
        法務省民事局長 香川 保一君
        法務省刑事局長 伊藤 榮樹君
        法務省保護局長 常井  善君
        法務省人権擁護
        局長      鬼塚賢太郎君
 委員外の出席者
        衆議院法制局長 大井 民雄君
        外務省経済協力
        局外務参事官  中村 泰三君
        大蔵省主計局主
        計官      岡崎  洋君
        大蔵省証券局企
        業財務課長   冨尾 一郎君
        労働省職業安定
        局業務指導課長 田淵 孝輔君
        最高裁判所事務
        総局刑事局長  岡垣  勲君
        法務委員会調査
        室長      清水 達雄君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 法務行政、検察行政及び人権擁護に関する件
     ――――◇―――――
#2
○鴨田委員長 これより会議を開きます。
 お諮りいたします。
 本日、最高裁判所岡垣刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○鴨田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
#4
○鴨田委員長 法務行政、検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横山利秋君。
#5
○横山委員 本委員会には、政府から刑法の一部を改正する法律案が提案されて今日にまで至っています。この刑法の一部を改正する法律案は、単純収賄、事前収賄の各罪の法定刑の長期を五年に引き上げ、受託収賄罪の法定刑の長期を七年に引き上げることを初め、五項目の法定刑の引き上げが提案されておるのであります。
 申すまでもなく、この件はロッキード事件に関連をいたしまして、政府の関係閣僚が相談をされまして、指摘をされたさまざまな問題あるいはそのほかのいろいろな点から提案をされたのでありますが、政府が提案をされて以来、全く政府並びに与党に本法案推進の熱意がないように見られてなりません。
 法務大臣にお伺いをいたしますが、この刑法の一部を改正する法律案については、これは政府として国会に提案をされたのでありますから、国会の通過を素朴、純粋に要望されておると承ってようしいのでしょうね。
#6
○瀬戸山国務大臣 御承知のとおりに、いわゆるロッキード事件等の経緯にかんがみまして、その当時贈収賄罪に関する刑法の強化、改正をする必要がある、こういう考えから、その後改正を提案しておるわけでございます。政府としては、もとよりできるだけ早く国会において審議、可決していただきたい、これに変わりはございません。
#7
○横山委員 それにもかかわりませず、累次の理事会あるいは政府の言動に、この法案を国会を通過させたいという熱意が片りんも見られない、そして知らぬ顔のはんべえを決め込んでおる。与党もまた、いかなる理事会におきましても、この刑法の一部を改正する法律案を審議してくれ、通過させてくれということが一言も出ていないのはどういうわけでありましょうか。
#8
○瀬戸山国務大臣 この案件にかかわらず、政府が国民から負託されておる行政の責任として必要であるという考えを持ちましたときには、各種の法律案等を提案申し上げるわけでございます。その上で国会あるいは各委員会等でどういうふうに進められるかということを、こちらからとやかく差し出がましいことを申し上げることは控えておるわけでございますが、提案いたしましたものは、賛否はありましょうけれども、御審議をいただいて、賛成の方が多ければぜひ成立をさせていただきたい。これはもうこの問題ばかりでございません。ただ、国会の審議の取り扱いについてくちばしを入れるわけではございませんが、希望としてどうしても緊急にやっていただくものと、それほどでないものがあるわけでございますから、そういう場合には、これはできるだけ早く成立を希望する、こういうことを申し上げることはたまたまあることでございます。
#9
○横山委員 緊急性がないものを国会へ提案なさった、こういうふうに理解してよろしいのですか。
#10
○瀬戸山国務大臣 緊急性の度合いはありますけれども、必要であるということで提案しておるのでありますから、審議、御可決ができるものならばできるだけ早く可決していただきたい、これに変わりはございません。
#11
○横山委員 昨年の三月、本法案が自民党法務部会で検討されました際に、この刑法改正案を手ぬるいと批判して法案の国会提出を認めなかった自民党法務部会を中心に、執行猶予中の公民権を停止をする公職選挙法の改正をつけ加えてこれは提出すべきであるとして、この新提案の動きの背景に三木前首相、稲葉前法相、松野前党総務会長がこの提案を支持し、この改正をあわせて実現をさせたいというがために自民党法務部会ではこの法案があいまいな状況になって、それが手かせ足かせになってこの法案の通過について、自由民主党並びに政府がきわめて消極的になっておるという報道がございました。それは事実でございますか。
#12
○瀬戸山国務大臣 いわゆるロッキード事件に関連いたしましては、刑法改正ばかりでなくて、こういう犯罪、こういう行為の防遏をするために対策を講ずる必要がある、こういうことで各方面の対策について検討したわけでございますが、法務省としては、その一環として、法務省担当の面でこれを提案しておるわけでございまして、その他にいろいろ議論があったと思いますけれども、その詳細は私は承知いたしておりません。
#13
○横山委員 それでは、会期があと十六日という段階でございます。私ども社会党はもちろんでございますが、この間、当法務委員会の野党が相談をいたしました。そして、確かにいま自民党の中の一部に昨年あった意見、すなわち執行猶予中といえども公民権を停止すべきであるという意見は反省に値するところであるが、当法務委員会に政府から提案された刑法の一部を改正する法律案はそれなりの意義があるから、野党としてはこぞってこの法案に賛成し本委員会を通過させたい、こういう意見にまとまったわけであります。法務大臣としてはこの点について、もちろんいまのお話、素朴に承れば通過させてもらいたいということでありますから御賛成くださるでしょうな。
#14
○瀬戸山国務大臣 賛成するもしないも、それが必要であるという考えから政府は提案いたしておるわけでございます。私は、与党といえどもこの案に不賛成だとは考えておりません。
#15
○横山委員 そこで、ここに与党の人が三人いらっしゃるわけで、どなたに御答弁をお伺いするわけにもまいりません。しかし、いらっしゃるそれぞれの前法務大臣及び理事諸公は、篤といまの問答をお聞きになっておると思うのであります。野党がそろって賛成をする、この国会を通過させたいと公式に表明をいたしました。法務大臣は、それに対して異議はないとお答えになりました。まさかと思うのでありますが、与党の中でこの国会でこの法案を通過をさせることに異議があるとするならば、法務大臣も自由民主党の幹部でございますから自由民主党を説得をなさる義務があると思うのでありますが、いかがですか。
#16
○瀬戸山国務大臣 私は一々お尋ねしておりませんが、与党にも検討してもらって、この法案に賛成してもらって提案しておるわけでございますから、不賛成だと全然思っておらないのです。
#17
○横山委員 それでは、当然賛成なさるはずだというお話は記録にとどめられましたから、私は委員長にお願いをしたいのでありますが、この刑法の一部を改正する法律案について、いまの法務大臣のお答え、私の野党の意見、それをひとつ次回の理事会で御相談を願って本法案の処理をいたしたいと思いますが、委員長御手配を願えますか。
#18
○鴨田委員長 委員長としては、数個の案件がある場合、それを審議するのにどちらが先かという権限を実は持っておりますので、もちろんいまの横山君と大臣の答弁とを勘案しまして、次の理事会で御相談いたします。わかりましたね。
#19
○横山委員 私はいままでの短い時間のやりとりが、ばかばかしいような質疑応答でありますが、一体なぜそれが行われるのか、初めてお聞きになった人々は不可思議に思われると思うのであります。政府が提案をして一国会で継続審議になって、二国会にわたって何らの質疑応答が与党からも行われず、私ども野党が政府提案を通そうと言っておるのに、陰湿な雰囲気があって、与党や政府の中には、まあ通してもらわぬでもいいよという顔がありありと見えるわけであります。政府が提案をしながらそういう雰囲気が見えるということについては、ある意味ではきわめて国会をばかにしておる、私はこういう感慨を持たざるを得ないのであります。
 そこで、それはそれとして、関連をして大臣にお伺いをいたしますが、この法案だけではロッキード問題の処理が十分ではないから、ひとつ執行猶予中といえども公民権の停止を図るべきであるという意見、この点については法務大臣としては・どうお考えでしょうか。
 少なくとも今日までのいろいろな判決の結果を見てみますと、収賄事件の裁判結果を見ますと大体において執行猶予というものがつくわけであります。昭和四十六年から五十年までの有罪総数二百十四件の中で執行猶予のついたものは二百五件、わずかに九件だけが執行猶予がついてない。したがって、一部の意見にありますように、こういうことをしたところでほとんど執行猶予がついてしまう、ついてしまえば公民権の停止は行われないのであるから堂々と選挙に出る。ロッキード事件の政治家のこの公民権の停止ということが、執行猶予がつけば何の関係もないではないか、極端に言えば公判中の田中角榮氏らの議員資格の喪失ということはあり得ないことになりはせぬか、判決があっても執行猶予がつけば堂々として立候補するということがあるのではないか、そういうことが目に見える。したがってこの際、執行猶予中といえども公民権の停止を図るべきではないかという意見は、私は当然のことではないかと思いますが、刑法の一部改正に伴ってあわせてこの法律――公職選挙法になると思うのでありますが、その改正を図るべきであるという意見について、法務大臣はどうお考えですか。
#20
○瀬戸山国務大臣 刑の執行猶予中の公民権をどうするかということは、いま横山さんからのお話のような意見もあると思います。ただ現行法はそうなっておらない。これは国民の参政権にかかわる重大な問題であるし、また選挙法といういわゆる土俵づくりの問題もありますから、これは各般の意見を総合して決定しなければ、そう簡単に、一学説、一考え方だけではなかなか合意が得られないのじゃないか、私は経験上さように考えております。でありますから、いま私が法務大臣の立場でどちらに賛成する、しないと言うことは差し控えておきたいと思います。
#21
○横山委員 しかし、言葉を返すようではございますが、刑法の一部を改正する法律案はロッキードの問題から生じた。いかにしてロッキードのようなことが今後再び起こり得ないようにするためには――起こった場合には、国民の批判にこたえてその処罰を厳正にするということは、これは天の声、地の声、人の声なんでありますから、したがって、刑法の一部を改正する法律案を法務大臣として審査をし、国会へ提出するに際してもろもろの効果的なことをお考えになる、この改正案がより効果があるような条件を整備する、具備するということは当然のことではないか。公民権の停止をつけ加えなければ、まさに画竜点睛を欠くのきらいがあるという意見は、私は当然のことだと思う。そのことについて自分の意見なしということは、あなたは無責任な答弁だ、私はそう思わざるを得ないのであります。重ねてあなたの所信のほどを伺いたい。
#22
○瀬戸山国務大臣 責任があるからあえて明確に申し上げないのであります。
 私は一般論として、たとえば公務員あるいはこれに準ずる者がその職務を汚したという贈収賄等のいわゆる汚職の事件、これはもう少し厳正に考える風習といいますか、風潮といいましょうか、そういうことがあってしかるべきだと考えております。
 さらにまた、選挙法に触れられましたから申し上げますが、やはり選挙というものについても、あるいは選挙違反、こういうものについてもう少し厳正に考える風潮がわが国の民主主義政治には必要ではないか、かように平素から考えておる一人でございます。
 それは何かというと、公務員は、申し上げるまでもないことでございますが、国民の信頼関係、負託を受けておるわけでありますから、それを厳に厳守するということが第一条件であろうと思います。そういう意味において、もう少し厳正に考える風潮というものが高まることを私は期待しておる。選挙はその前提であります。選挙は国政の基本に関係するものでありますから、そういう意味で私はいま申し上げたような考えを持っておる、これだけを申し上げておきます。
#23
○横山委員 あなたが抽象的に、選挙は厳正にやるべきである、自粛すべきであると言っても、子の具体的な裏づけの法体系を整えなければならぬということが、ロッキード事件であの当時真に国民の声となったわけであります。それをいま厳正にあるいは自粛をしという意味において、政府のとるべき措置として法改正の必要なことは法改正をするということとして刑法の一部改正が国会に提案された。提案をしながら、政府は通してくれのとうの字も言わない、与党は通してくれの顔も見せない。審議も行われずに、一国会、二国会をじんぜん日をむなしゅうして、今日、野党は通そうとしておるんだ、政府やあるいは与党がそれをいやな顔をしているような気がする、何事だと私は言っておるわけであります。そう言えば、あなたの方は、いや、通してほしいという言葉だけおっしゃるのでありますが、それならそれでもっと熱意がなくてはならず、それならそれで刑法の一部を改正する法律案とともに問題の公民権停止も当然考えられていいものだと思う。まさに抽象的な言葉で終始をしていらっしゃるのは、何といいますか、まあこじきのおかゆで湯ばかりという話がありますが、あなたは本当にそういう感じがするわけであります。法務大臣として信念を持って、それは皆さんどうお考えになるか知らぬけれども、私は当然公民権停止の措置を図るべきであるという御意見があるか、あるいは今日はまだ時期尚早だというのか、少なくともあなたの政治的な信念あるいは法務大臣としてあるべき意見というものは当然出てきていいと思うのであります。
 お答えがそれ以上に発展しなければいたし方がない、失望いたしますが、もうお答えはないですか。
#24
○瀬戸山国務大臣 一般的な私の考え方を申し上げましたが、選挙法に関することは法務大臣の所管でありませんから私は控えておるわけであります。政治家として何か言えということであれば、そういう御意見もあります。貴重な御意見であるという考えを持っておりますが、先ほど申し上げたように、選挙法は従来から各党ほとんど一致するような形でやっていただきたいというのが政府の立場でありまして、こちらで率先してとかくの意見を言うのは差し控えておる、かようなことであります。
#25
○横山委員 大変遺憾なことでありますが、いまの質問は二つに分けて、第一は、政府提案の刑法の一部改正を私ども野党としてそろって通過をさせる、賛成をするという意思表明をいたし、そして法務大臣から、通してもらいたいという意思表明があったということで、ひとつ委員長に先ほど言ったように善処をお願いすることにして、次の問題に移ります。
 「五月二十九日、東京証券取引所で株式売買取引を停止された住宅用アルミサッシの大手メーカー、不二サッシ工業と、その販売部門の不二サッシ販売は、同日、前三月期決算を急きょ発表したが、粉飾額はこれまでわかっただけでも、両社合わせて四百三十億円にも上った。これは山陽特殊製鋼の七十二億円を大きく上回って史上最高。東証は、きょう三十日から両社株式を監理ポストに割り当てるとともに、信用取引の停止を決めた。」とあります。史上空前の四百三十億の粉飾決算、私どもは先般長い時間をかけて、三国会にわたったと思うのでありますが、商法の一部改正を長期間審議をいたしました。この商法の改正を通じてわれわれが与野党ともに、本委員会で大蔵省あるいは法務省あるいは関係省を呼んで審議をいたしました時間は実に長時間にわたりました。両省はもちろんでございますが、関係省が、この商法の改正によって監査役の改正なり諸般の監査の強化なり、あらゆる手配をいたしたのでありますが、それにもかかわらず、空前の四百三十億という粉飾決算が行われておるということは、全く意外千万といいますか、一体何ということだろうかということを私どもは考えるわけであります。
 まず、この不二サッシ関係の粉飾決算はどういう経過、どういう原因であるか、政府の報告を受けたいと思います。
#26
○冨尾説明員 お答えいたします。
 不二サッシ工業株式会社と不二サッシ販売株式会社につきましては、過去の決算の内容に経理処理上非常に適切さを欠いたものがあるということでございまして、不二サッシ工業につきましては三百三十四億円、不二サッシ販売につきましては九十六億円を今五十三年三月期の決算におきまして過年度損益修正損という形で処理をするということを一昨日東京証券取引所の記者会見で発表いたしまして、その旨私どもの方へ報告を受けております。
 その内訳につきましては、会社側の説明によりますと、不二サッシ工業の方は、たな卸し資産の整理修正損ということで百六億円、受取勘定の整理修正損ということで八十一億円、不動産売買の契約解除損で五十八億円、固定資産整理修正損で四十六億円、その他四十三億円、合わせまして三百三十四億円になります。不二サッシ販売の方は、受取勘定の整理修正損五十億円、たな卸し資産の整理修正損で二十六億円、その他二十億円、合わせて九十六億円という報告でございました。
 なお、過年度損益修正損ということでございますので、これは一体いつの事業年度にこういうことがあったのかという意味での過年度へのさかのぼりでございますけれども、私どもの報告には、昭和四十九年九月期と、それから五十年三月期につきましては両社を合わせましてそれぞれ約三十億円、それから昭和五十一年三月期及び五十二年三月期につきましては、両社を合わせてそれぞれ約百億円という修正をするような中身の報告でございました。
 以上でございます。
#27
○横山委員 それでは、その会社の報告に対して大蔵省はどういう判断を示したのですか。ああそうですかということですか。
#28
○冨尾説明員 お答えいたします。
 このように、会社の説明によりますと、粉飾決算ととられてもやむを得ないというような程度の、きわめて多額の過年度損益修正損を計上するという事態に至りましたことはまことに遺憾でございます。私どもといたしましては、証券取引法二十六条に定められております立入検査権を行使いたしまして、できるだけ速やかに調査を開始いたしまして、事態の解明に努めたいと思います。事態が解明されました暁には、過年度に提出をしていただきました有価一証券報告書の訂正その他所要の措置を講じてまいりたいと思っております。
#29
○横山委員 四十九年から五十二年まで膨大な過年度の損益修正というものが、いまごろになって、間違っておりました、これを直しますということで一体済むものであるかどうか。もちろんあなたのおっしゃったように、粉飾決算をしたと言われてもやむを得ないようなというあいまいな言葉がございますけれども、この間の監査はどうなっておるか、その監査について大蔵省としてはどういう判断をしたのか、報告を受けたい。
#30
○冨尾説明員 お答えいたします。
 不二サッシ工業及び不二サッシ販売の毎年事業年度末に提出をいたします有価証券報告書、年次報告書でございますが、これにつきましては、第一次的に公認会計士の監査を受けまして、その監査証明をつけて大蔵省の方に提出され、これが一般に開示されるということになっております。私どもとしては、まず公認会計士にきちんとした監査をしてもらうということ、それを信用することをたてまえにしてそういうことをやってきておりますが、今回のように事件が起きますと、公認会計士の監査その他がやや不十分であったという点を反省しております。
#31
○横山委員 これらの監査証明の問題につきましては商法改正のときによく話が出たわけであります。何かと言えば大蔵省は、公認会計士の監査を信用すると言い、都合の悪いときには、あれは当てにならぬから監査証明については厳重に大蔵省で念査すると言い、使い分けをあなた方はときどきなさるわけです。一体最終責任はどうなるのですか。監査証明を公認会計士が出した場合に、それが最終責任であるか、監査証明をあなたの方が念査をして、ときどき摘発される、その摘発責任、監督責任というものが最終責任であるか、どちらだとお考えになりますか。
#32
○冨尾説明員 お答えいたします。
 証券取引法上の規定を申し上げますと、会社が提出いたします有価証券報告書につきましては、もしこれに虚偽の記載その他がございますと、会社と、これを監査した公認会計士が責任を負うということを明記してございます。もちろん私どももそういう公認会計士を監督する立場にあり、またディスクロージャー制度といいますか、そういうものを私どもが所掌しております以上、きちんとした形でディスクロージャーが行われなければならないという意味では、私どもも十分行政的には責任を感じておる次第でございます。
#33
○横山委員 株主なりあるいは債権者にとっては、公認会計士の監査報告があり、あるいは有価証券の報告書があって、それが大蔵省に届けられて、大蔵省がそれについて一年も二年も何も言わないということによって、株主も債権者も安心をしておる。あなた方は後になって、私の方にも責任がないとは言えないと言うのだけれども、国民が最終的に理解しますのは、監査証明はあるといえども、大蔵省が、ときどきそれを間違っておると言い、あるいは公認会計士の非違行為を摘発することがあるんだから、しなければ、あなたの方がそれを了承した、適格と認めたということになるじゃありませんか。それを、国民や債権者は、そういう大蔵省の処置のあり方について安心をしておるのですよ、最終的には。ですから、あなた方がこの史上空前の四百三十億の粉飾決算を見過ごした責任というものは、あながち会社及び公認会計士だけの責任ではありますまい。その点について、大蔵省内部の本件に対する公認会計士の監査証明なり有価証券報告書の念査は一体適切に行われたか否か、それをあなた方はさかのぼって調べましたか。
#34
○冨尾説明員 現在、私どもの大蔵省におきます有価証券報告書の審査は、繰り返すようでございますが、公認会計士が行いました監査が適切に行われているかどうかという点をチェックするわけでございますが、現在有価証券報告書を提出いたします会社は約二千八百社ございます。私どもとしては、現在これを本省十二名、地方の財務局を合わせまして約三十名の監査官で担当しているわけでございますが、いろいろ私どもとしてもできる限りの手を尽くしてチェックするように心がけておりますけれども、何せいま申し上げたような数でございますので、やや行き届かなかった面もあろうかと思っております。ただ、基本的に有価証券報告書なり、それからもう一つ、証券取引法に基づきまして、ディスクロージャーの一つの柱となっております有価証券届出書につきましては、いずれも私どもとして中身をチェックいたしますけれども、最終的に責任という問題になりますと、たとえば有価証券報告書につきましては、大蔵大臣の方がこれを届け出を受け付けまして効力が発生いたしましても、それをもって大蔵省が中身の点について間違いないという意味での認証をしたというものではない、あくまでも会社の責任、これを監査した公認会計士の責任でこの中身がつくられているのだということが基本であるというようなたてまえになっておりまして、基本的には私どもとしては、そういう公認会計士なり会社が出してまいります中身をチェックをして、そういう制度のもとで、つまり会社がつくったものを公認会計士が監査をする、そういう制度の中で真実のディスクロージャーが行われるように私どもは監視するというのが基本的なあり方だというふうにしていままでもやってまいったわけでございます。
#35
○横山委員 あなたは自分で話しておっても、自分でじくじたる思いがしませんか。あなたのおっしゃることは、公認会計士に責任がある、会社に責任がある、おれらの方はそれを念査するけれども、念査の結果についてはおれは責任がない、自分たちがここはおかしいと思ってやったときには権力をもってそれは間違いだと言うけれども、うっかりしておったときにはおれらの責任はない、ましてや本省十二名や財務局合わせて三十名ぐらいでできるものか、そういう言い方ではありませんか。もし人数が足らなければ――この種のようなこと、四百三十億も粉飾決算が行われておることが、会社が言わなかったならば見過ごされる問題ですね。そうだとしたならば、いまあなたのおっしゃるように二千八百社ある中で、広範に粉飾決算がいまなお今日行われているかもしれません。それが役所としては法的に何の責任もない。国民や債権者や株主が、大蔵省がチェックしなかったから、黙っておるからこれはいいと思っておる。そういう期待はしてもらっては困る、私どもには責任はありませんよ、こう言っておることではありませんか。それじゃ国民は突っ放されたようなものです。あなた方、十二名であろうと三十名であろうと、監査報告やあるいは有価証券の報告を審査し、念査し、チェックをする責任というものは一体どういうものなのか。そんなものならやってもらわぬでもいいではないかということすら疑問が生ずることですよ。
 もう一遍聞きますけれども、それで一体大蔵省としては、過去の会計処理で適切を欠いたと判断をして自発的に申し出たことについて、どういう処理をこれからするわけですか。いろいろな角度から報告してください。
#36
○冨尾説明員 お答えいたします。
 私の御説明に舌足らずの点がありましたことをおわびしますが、私どもとしてはこれから事実の解明に努めまして、徹底して真相を究明いたしまして、かつ原因を明らかにした上で処置をとりたいと思っております。
 一つは、証券取引法の規定に基づきまして、有価証券報告書の虚偽記載をいたしたということになりますと、これは検察庁の方へ有価証券報告書虚偽記載罪として告発をいたすということになろうかと思います。それからもう一つは、具体的に先ほど申し上げましたように、有価証券報告書、過去に出していただきましたものを訂正させる、きちんとした内容に改めさせるというのが第二番の点でございます。三番目には、これの監査証明をいたしました公認会計士に対しまして、公認会計士法に基づく懲戒処分を行うことになろうかと思います。
 以上、私どもとしても法に定められた措置を適切に実施いたしますとともに、今後私どもの審査体制につきましてさらに内容の充実を図るように努めてまいりたいと思います。
#37
○横山委員 民事局長に伺いますが、これによりますと、いまも御報告がありましたように「工業はたな卸し資産を“水増し評価”していた分が百六億円、主に販売との間に架空の売買を設定していた受取勘定が八十一億円、売れなかった遊休地を売ったようにみせかけた不動産売買の利益五十八億円など。また、販売では受取勘定五十億円、たな卸し資産二十六億円などとなっている。」とあります。このようなことでは、先般の商法の改正によって監査役を強化し、そして公認会計士の監査を充実をすることによっても改善がされ得ないのではないか。一体、先般の商法改正と本件の事案との関係はどう考えたらいいのであるか。また、この種の問題がなお潜在的にあるとするならば、一体商法上さらに検討すべき問題はないかどうか、それを承りたいと思います。
#38
○香川政府委員 先般の昭和四十九年の商法改正で、御指摘のとおり、監査制度の強化ということで監査役の権限強化あるいは公認会計士による監査の強制その他のいろいろの措置を講じたわけでございますけれども、遺憾ながら今回のような粉飾決算が生じた。やはり私どもといたしまして、商法でそういった監査制度の強化を図りましても、その制度を運用する人を得るかどうかということが根本的な問題であるということは、この前の商法改正の御審議の際にも申し上げたかと思いますが、どうもこういう粉飾決算をつぶさに考えてみますと、おしなべて申しますれば、ワンマン社長と申しますか、そういった会社にきわめて例が多いように思うのであります。
 そういうこともございまして、昭和四十九年の監査制度の強化のその後のいろいろの運用の実態等も考えまして、現在、法制審議会の商法部会におきまして、もう一度この監査制度について見直しをしよう、きめ細かいいろいろの面からの、ただいま申しましたワンマン社長のような場合でも、できるだけ監査が適切にできるようないろいろの仕組みをやはり考えなければならぬというふうに考えまして、実はいま商法部会でこの監査制度のさらにきめ細かい見直し作業をやっていただくことになっておるわけであります。
 細かなことでございますが、御検討願う問題としまして、監査役のさらに権限の強化を図りかい。これは結局、監査役による業務監査及び会計監査両方含めまして、何と申しましても監査役の情報収集の能力と申しますか、手段がなお不足しておるのではないかということが考えられるわけでありまして、そういう監査の適切な運用の前提となる情報収集能力を強化するために常勤の監査制度を法制化してはどうか。現在、御承知のとおり社外監査役が相当おるわけでございまして、これは外からの情報収集という面ではそれなりのメリットはございますけれども、何と申しましても内部における情報収集に欠けるうらみがございますので、常勤の内部監査役の法による設置の強制を考えてはどうかというふうなことが一つ。
 さらに、現在、商法上解釈といたしましては私どもはできると思うのでありますけれども、明文をもって会計監査人が会社の使用人に対していろいろ報告を求める権限を明らかにすること、あるいは監査役が複数おるわけでございますが、その場合にそれぞれの職務の分担を明確にいたしまして、それぞれ責任体制を強化するというふうな方向も一つの問題として考えておるわけであります。
 さらに御承知のとおり、現在は会計監査人は株主総会において選任されるわけでございますが、これについて、監査役の方からの介入という問題がないわけでございます。したがって、監査役と会計監査人とが共同していろいろの面からのチェックをするということも当然必要でございますので、株主総会が会計監査人を選任するに際しまして、監査役がその候補者の指名ができるというふうなことにいたしまして、会計監査人と監査役との共同責任体制を強化してはどうかというふうなことも考えられておるわけでございます。
 さらに、粉飾決算等がございました場合の監査役の責任を強化することによって間接的に監査役の適正な監査を保証しようという意味から、現在会計監査人につきましては、その職務を怠ったことによる損害賠償責任については挙証責任が転嫁されておるわけでございますが、これを監査役の損害賠償責任も同じような取り扱いにするということにしてはどうか。
 さらに、まあこれは当然のことかもしれませんが、何と申しましても粉飾決算の元凶は取締役にあるわけでございますから、したがって取締役に対する粉飾決算の罰則を強化するというふうなこと。
 さようなことのほかに、さらに、そういった虚偽の決算がされるおそれがあるというふうなときには、監査役自身に取締役会あるいは株主総会の招集権限を与えるというふうなことも一つ考えてみてはどうか。
 そういったもろもろの問題につきまして、現在、監査制度の強化という観点から商法部会で検討していただいているわけでございます。
#39
○横山委員 前回商法改正によりまして、十億円以上の会社は強制的に監査を受けることになりました。ところが、その後で異常な事態が生じました。それは、大蔵省は篤と御存じだと思うのでありますが、公認会計士また監査法人が、肉に群がるオオカミのように過当競争してお客様の被監査会社の争奪戦を演じたわけであります。あのとき、監査法人あるいは個人の公認会計士のそれぞれ所を得せしめて、ひとつ過当競争を避けるようにという附帯決議がついておったわけでありますが、何のことはない、全く私どもの気持ちを無視いたしまして、空前の争奪戦が行われました。そして、必然的に過当競争の会社に拝んですがって、公認会計士として委嘱をしてもらいたいというのであらゆる政治工作がなされたことは大蔵省も篤と御存じのとおりだと思うのであります。そしてそのあげくが、会社側は経団連を中心にいたしまして統一戦線をしいて、報酬額については低きに設定し、監査日数についてもなるべく少なく設定し、会社の言い分によれば、大蔵省の監査、公認会計士の監査、税理士の監査、日銀の監査等、全く監査監査でやりきれないからというようなことも引用いたしまして、結局買い手市場というような結果になりまして、まことに見苦しい結果になりました。中盤におきまして、大蔵省が余りのことに見かねて多少の手助けをしたようでありますけれども、ああいう結果を考えてみましても、今回の不二サッシの事例を考えてみますと、いま民事局長がおっしゃったような点もあるけれども、もう一つ忘れてならぬのは、被監査会社と公認会計士との関係を基本的に律することだと私は思うのであります。いま、公認会計士の資格を持っております者の過半数は、公認会計士の仕事をしないで税務の仕事をしている。仕事がないからまさに買い手市場というような結果になって、必然的に会社の言うことを聞かざるを得ない、そういう結果になっておると思うのであります。したがって私は、少し理論的過ぎる、理想的過ぎるという批判を自分も言いながら思うのでありますけれども、やはり報酬のあり方について大蔵省が決める、被監査会社と公認会計士の両方の折衝に任せないで大蔵省が報酬額は決める、監査日数は大蔵省が決める、また、一番理想的なものは、監査報酬については日本公認会計士協会なり、それと別人格のような公認会計士推薦機関をつくって、そこから派遣をする、五年かたったら一遍全部交代させるというような抜本的なことを考えなければ、今日の公認会計士制度はまさに被監査会社の思うままになっていくのではないかという根本的な問題をぬぐい切れない、そう思いますが、いかがですか。
#40
○冨尾説明員 お答えいたします。
 現在公認会計士は約五千五百人おりまして、証券取引法上の被監査会社は約二千八百社ということでございまして、ほかに商法監査の対象会社が千社程度あるかと思います。それにいたしましても、おっしゃるように、いわば会社にとりましては買い手市場といいますか、公認会計士の会社に対する発言がとかく鈍りがちではないかという御批判は、私どもも十分反省をしていろいろ考えてきているところでございます。私どもとしては具体的な方策としては、これは公認会計士の方もひとつ自分自身の力をつけて会社に物が言えるような体制をつくらなければいかぬという意味から、従来から組織的監査ということを推進してまいっておりまして、このためには具体的には監査法人というものをしっかりつくるとか、単独の監査を避けて共同で監査をするという体制をつくるようにいろいろ考えてきたところでございます。そういう監査法人の方の力をつけるというところで、部分的といいますか、必ずしも十分な会社に対するあれではないのでございましょうけれども、監査法人の分野ではそういう方向で何とか会社に対して、少なくとも言いたいことは言えるという体制に持ってまいるように指導してまいりたいというふうに考えております。
#41
○横山委員 きわめて不満足な答弁でありますから法務大臣に伺いたいのであります。
 私が法務大臣の会社を調べる。まあ悪いところを剔決する役目だ、ある意味では公認会計士は。そのあなたから、おれの悪いところを剔決してもらうのだからお礼をこれだけ出す、こういう仕掛けなんです。そこに根本的な私は制度としての矛盾があると思う。だから、あなたの会社は横山公認会計士が調べるのですよ、それは社会にかわって、国にかわって調べるのですよ、だからあなたは第三者の機関に対して報酬を払いなさい、こういうのならいいのですけれども、私が報酬は百万円にしろと言う、あなたは五十万円にまけろと言う、五十万円にまけてくれなければおれはよその公認会計士に頼むわい、こういうことになる。まあ五十万円でもいいですわ、そういうことになりますと、どうしたって、あなたに雇われている、金をもらっておるという立場の相違というものは対等では絶対ない。したがって、それは冨尾さんの言うように、公認会計士が自主的な能力あるいは社会的な地位の向上を図ることもさることながら、最も基本的な問題で粉飾決算を常にせざるを得ないような温床というものがそこにある、そこを断たなければだめではないかと言っておるのであります。香川さんの御意見をも含めて法務大臣としての所信を一遍お伺いしたいと思います。
#42
○瀬戸山国務大臣 横山さんも御承知のとおりに、従来からわが国の会社の監査役というのは、こう言ったら言葉が過ぎるかもしれませんけれども、飾り物みたいなかっこうになっているのではないか、こういうことで監査役についても商法等の改正をしばしば行ってまいりました。また、戦後の制度として、そういうものではいけないので、ちょうど事件について弁護士さんがおられるように公認会計士制度というものができたわけです。しかし、それもまだ日が浅い。といっても最近では大分日がたちましたけれども、なかなか満足の状態ではない、こういうことでこれもしばしば改正をしてきた。私も詳細は知りませんが、たまたま公認会計士などの話を聞いておりますと、どうしても会社と癒着しておるような感じの公認会計士が多い、こういう話も承っております。いま横山さんが言われたような間柄になる。これは人間の社会でありますからそういうことがどうしても起こる可能性が多い。そこにせっかくの公認会計士制度あるいは監査の制度というものがなかなか期待どおりいかないという問題点があると思います。大蔵省からもお話がありました、また民事局長からもお話がありましたが、まさに実態に応じて真に監査が適正に行われるように、こういうことを考えなければならない時期に来ておると私も考えますから、法務省は法務省なりに検討したい、かように考えております。
#43
○横山委員 いま各省の御意見を承りましたけれども、いずれにしても空前の四百三十億という粉飾決算が――商法の改正をして、もちろんあの改正がすべてではないと思います。思いますが、当委員会としてはあれだけ議論に議論を尽くしてやって、そうしてとにかく一つの軌道がそこで敷かれた。敷かれた後でいつまでたっても粉飾決算が後を絶たないし、こうした不二サッシのような衝撃的な粉飾決算があらわれるということは私は全く遺憾千万なことだと思います。われわれ法務委員は何をやっておったのか、あれだけ政府がどうせよ、各関係団体がそれでは困る、あれでは困ると言うことを調整をして、苦労に苦労を重ねて、念には念を入れて附帯決議を十分つけてやっておいて、何たることだという感じが私どもつくづくするわけであります。ですから、今度の不二サッシの粉飾決算の処置については厳正に、ひとつとことんまで処理を十分してもらいたいし、この経験の中からわれわれが何を読み取るべきかという点についても、私ども十分承知をしたい。したがって、大蔵省を中心にして法務省、警察庁、ひとつ適宜本法務委員会にその経過、結果並びに善後処理、今後の考えるべき点を御報告を願いたいと思うのですが、これは皆さん御同意願えますな。三人とも返事してもらわぬでもいいですが、法務大臣則よろしゅうございますか。
#44
○瀬戸山国務大臣 不二サッシの事件は私もまことに遺憾至極だと思っております。でありますから、これは当面大蔵省が実態を調査されることになっておりますが、その調査に応じて、仮に商法その他の法律に触れるということになれば当然にこれは検察庁も調査に入ると思います。そういう実態を明らかにして、改善すべき法制等の問題があれば当然に改善をしなければならないし、そういうことは、御要求があれば当委員会にも実態を報告することにいたしたいと思います。
#45
○横山委員 きのうは弁護人抜き裁判で長時間法務省や最高裁の方からもいろいろな御説明がございました。きょうは、それに関連はいたしますけれども、特に私の地元の名古屋でも桑名簡裁で起こった事件を中心にして、裁判官のありようについてひとつ伺いたいと思うのであります。
 「三重県の桑名簡裁が、刑事訴訟法で弁護人をつけなければならないと定められている事件を弁護人なしで開廷、審理し即日、有罪の判決を言い渡してしまった。気づいた時は後の祭り、やむなく検察官が名古屋高裁に控訴、求刑通りの一審判決を破棄するよう求めた。控訴審判決は二十九日午前十時から同高裁刑事二部で言い渡されるが、原判決の破棄は確実。いわゆる“弁護人抜き裁判法案”が論議を呼んでいる折だけに、「判決宣告までにどうして一審の裁判官、書記官、立ち会い検事の三者ともミスに気づかなかったのか」と司法関係者は苦り切った表情。」これは新聞の切り抜きでございますが、最高裁は御報告を受けておみえになりますか。
#46
○岡垣最高裁判所長官代理者 報告を受けております。
#47
○横山委員 そのつもりでいろいろな資料を集めてみますと、まことに裁判官のミスが多いですね。
 「ワイセツ文書事件簡裁の裁判ミスに「罰金だけは有効」 最高裁ちぐはぐ判決」五十三年二月二十三日の事件です。
 それから、東京新聞が集約をいたしましたものを見ますとずいぶんたくさんありますね。
 「ことし二月、下着ドロの男に対し米子簡裁が懲役一年、執行猶予三年の判決を下したが、この男、さる四十九年に道交法違反で禁固十月の刑になっていた。刑法には五年以内に禁固刑を受けた者は猶予できないとの規定があり、広島高裁は原判決を破棄、改めて実刑判決を言い渡した。」
 「四十四年、東京簡裁で交通事故の女子大生に罰金三万五千円の略式命令。求刑は一万五千円で、重すぎると検察側が正式裁判要求。改めて一万二千円を言い渡した裁判官、「私の間違いでした」。」
 「大阪地裁で昨年四月、暴力行為、監禁などで六人に罰金十万−四万円を言い渡したが、この罰金規定は四十七年に引き上げられたもの。犯行時の四十二年は二万五千円以下だと検察官が控訴。」
 「東京地裁八王子支部で四十四年四月、とばくの被告に懲役六月を言い渡したが、判決文の認定理由のくだりには同八月と書かれていた。東京高裁が破棄、差し戻した。」
 「四十二年六月、岡山地裁で判決の脱税事件。時効になっている三十二年度分も含め罰金を言い渡した。広島高裁も気づかず、最高裁でようやく発見、やり直しを。」
 「県議の選挙違反事件で三十四年三月、秋田簡裁が無罪にしたのを、同年九月、仙台高裁が書面のみで有罪に逆転判決。しかし、無罪を有罪にするには事実審理が必要。最高裁がやり直しを命じた。」
 「札幌地裁が四十二年、被告に一部罪状で有罪、他の部分では無罪の判決を言い渡した。有罪部分はそのまま刑が確定し、無罪の部分は検察官控訴。ところが札幌高裁は控訴されていない部分についても併合した懲役刑を下した。最高裁は憲法違反と破棄、差し戻した。」
 「四十七年、大分地裁の汚職事件判決で、裁判長は「懲戒四月」と宣告したが判決草稿には「懲役三月」。退廷後、ただした検察、弁護両者に「あっ、読み違えた。草稿どおりです」。」
 「昨年一月、大阪簡裁での判決。盗みの被告は「懲役四月」と聞いたが、留置場で正式文書を見ると「懲役一年四月」。声が小さくて法廷の全員がはっきり聞こえておらず、大阪高裁は「宣告は不明りょう」とやり直しを命じた。」
 「東京高裁刑事八部で四十六年十一月、裁判長は神妙に起立した殺人犯を前に「あのー、判決言い渡しを延期したいが……」。理由を聞かれてもじもじと「実は判決文を入れたカバンを自宅に置き忘れたもので……」。判決は二日後に延ばされた。」
 これは岡垣さん、全部事実でございますか。
#48
○岡垣最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘になりましたいろいろの事件については、実は私どもそれが全部事実かどうか確かめておりません。
#49
○横山委員 確かめておりませんもないものですね。五月三十日にこんなに麗々しく全国に出て、そして先ほどの桑名簡裁は事実だとおっしゃるのだけれども、これだけ麗々しく出て、きょう私が弁護人抜き裁判のことで質問をするというのに事実を確かめてないということは、どうも本当らしい、事実らしいという感触を受けるわけなんですが、あなたのような慎重な人が、先ほど雑談しておったのですが、きのうの答弁でも五分でいいものを十五分も一二十分も答弁なさる人が、この種の問題について事実を確かめないということはあり得ないと私は思うのですがね。これは私のいやみですかね。少なくともこういうことが新聞で報道されて衝撃を社会に与えていますね。このことについて、それではどうお考えになりますか。
#50
○岡垣最高裁判所長官代理者 裁判官ももちろん人間でありますから誤ることはございますけれども、しかしそれを言ってはいけないわけでありまして、やはり裁判官、足りないところがあるな、それは大いに今後自粛して考えなければならぬ、これはお互いに考えなければならぬというふうに自粛の気持ちを持つのが一般だと思いますし、私どももそうだと思います。
#51
○横山委員 それでは話にならぬと思うのであります。私は弁護士でもございませんし専門家でもございませんが、これらのことを考えてみまして、これは素人の質問でございますが、たとえば桑名の問題にしましても、一審の裁判官なり書記官なり立会検事が、これは後ですぐ、しまった、弁護士を呼んでおかなければいけなかった、これは無効になった、こういうふうに気がつくはずですね。気がついたと私は思うのです。善意に解釈したいと思うのです。ところが、おれが間違っておったからといっておれが訂正するわけにいかぬで、済まぬけれども検事さん、ひとつおまえさん間違っておると言ってくれぬかと言わなければならぬシステムらしいですな。このたくさんある例で、裁判官が自分の失策を自分で、これは判決の間違いでしたと言う方法はないですか。自分で是正する方法はないのですか。
#52
○岡垣最高裁判所長官代理者 裁判の中には決定というのもありまして、これは抗告の場合にそれをやった裁判所の方で訂正するということはございますけれども、判決となりますと、これは法廷で口で一度宣言いたしますと、宣言したところが判決になるわけで、訂正の方法はもう上訴以外にはございません。
#53
○横山委員 ところが、この四十七年の大分地裁の判決では「裁判長は「懲役四月」と宣告したが判決草稿には「懲役三月」。退廷後、ただした検察、弁護両者に「あっ、読み違えた。草稿どおりです」。」と言っているわけですね。そんなことが許されるのですか。
#54
○岡垣最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたとおりに、間違った場合にはそれは上訴して直すべきでありまして、公判廷以外のところで、言うなればこそこそ直すということはいけないことであります。ただ、その事実があったかどうかということは、実は先ほど申し上げたとおりに私は確かめておりませんから、それをあったがというふうには申し上げられませんけれども、しかし仮定の問題として、もしあったらいけないと思います。
#55
○伊藤(榮)政府委員 ただいま御指摘の案件は、裁判官から、検事、控訴してくださいということで控訴で是正したケースだと記憶しております。
#56
○横山委員 つまり伊藤さんの話は――ここでは「「懲役四月」と宣告したが判決草稿には「懲役三月」。退廷後、ただした検察、弁護両者に「あっ、読み違えた。草稿どおりです」。」と言ったんですけれども、いまの御両所の御意見では、懲役四月が確定して、上告して三月になった、こういう意味ですか。
#57
○伊藤(榮)政府委員 そのとおりの記憶でございます。
#58
○横山委員 そこで私は、これは弁護士でも専門家でもないからという前提で言っているのですが、本当に裁判官が自分で間違えたというときに、裁判官が判決を言い渡した後で高裁なり最高裁に、自分の過ちを認めて自分から訂正を要望するということはできないのですか。こういうシステムはあり得ないのですか。なぜあり得ないのですか。
#59
○伊藤(榮)政府委員 訴訟法上のたてまえから判決は公判廷で口頭で宣告するわけでございます。したがって、紙に書いた判決文あるいはその草稿というものではなくて、口頭で言い渡したその主文がすなわち法律的に意味のある唯一のものであるわけでございます。私も長年検察官をやってきたわけでございますが、私自身はそういう経験はありませんが、私の同僚、後輩等が、公判廷で裁判官がたとえば四を三と読み間違えたりして、しまったと口を押さえたけれども間に合わない、それでやむなく検察官が控訴して是正したという例をちらほら聞いておるわけでございます。それほど厳しいものが判決の宣告である。これは公判廷で被告人に対して裁判長が口頭で言って聞かせる、ここにやはり裁判の意味があるのじゃないか。ですから検察官に対しましても、私どもとしては、とにかく体じゅうを耳にするくらいのつもりで宣告はきちんと聞けというふうに言っておるわけであります。
 たまたま冒頭に御指摘の桑名の簡裁の事件も、軽微な事件だという頭がありましたものですから、検察庁の方におきましても初任の副検事を立ち合わせまして、彼が裁判官もろとも見過ごしまして、判決を聞いて帰ってまいりまして、当時勤務しておりました四日市支部の支部長に本日こういう判決がありましたというふうに報告した途端に、支部長に気づかれまして大雷を落とされてすぐに所要の手続をとって控訴した、こういう状況でございまして、私どもとして、公判に立会します検察官にも今後とも十分注意をするようになお
 一層指示徹底を図りたいと思っております。
#60
○横山委員 私の答えになっておらぬですよ。裁判官が間違えたということが明白である、三万五千円の略式命令、求刑は一万五千円でおかしいと言うたら、裁判官が私の間違いでしたと退廷後すぐに言ったというのです。そういう裁判官が間違えたとみずから本当にわかっているものをどうして人に上告させるか。私は専門家じゃありません、素人です。けれども裁判官が間違えたと言うなら、自分が処理するシステムがあっていいではないかと言っているのです。そういう制度がなければそういう制度をつくったらどうかと言っているのです。これは、伊藤さんじゃなくて最高裁に聞いているのです。あなたは裁判官の親玉じゃないんだから。
#61
○岡垣最高裁判所長官代理者 どういう制度をとるかということは、これはもちろん立法政策はいろいろ考えられるところであります。ですから、それはもう有権的にお答えになるのは法務省の方だと存じます。ただ、いまの制度でも、たとえば決定の場合には、再度の考案と申しまして、こういうことで不服だと言ってきますと、不服の申し立て書はやった裁判所を通っていきますので、それを通っていくときに見て、ああこれは自分が間違っていたと思えば直せる制度があるわけでございます。したがって事柄の軽重ということで、判決となればそうはいかぬぞというのがいまの考え方だと思います。
 じゃ、一体刑事局長というものと岡垣個人というものはあるのかというふうな問題になると困りますので、刑事局長ということではなくて、裁判官であった私の希望的な感じとして申し上げてよろしければ申し上げますが、いかがでございますか。(横山委員「どうぞ」と呼ぶ)
 私はこう思います。判決というのは、裁判官にとってみれば、清水の舞台から飛びおりるといいますか、もうそれで自分のかけというか、それは終わったわけでありまして、言うならば、一度死んだわけです。それをまた思い直してみて、いやこれは、ということを認めるということは、場合によっては妥当な場合があると存じます。訴訟経済の点から、手間もかけず、関係人の皆さんがそれで満足されるという場合があると思いますが、しかし制度全般として見た場合には、やはり裁判官は、法廷に臨む場合ももちろんそうでありますが、審理の結果判決を言い渡したときには、これでおれの全部だというところがなくちゃいかぬと思いますので、そういう制度にはすべきでないというふうに私は考えております。
#62
○横山委員 清水の舞台から飛びおりるつもりで判決しろというのなら、これは一体、みんな清水の舞台から飛びおりておるのですか。こんなでたらめな間違いだらけをやっている裁判官がおるというのは、今度の金曜日また弁護士抜き裁判で、裁判官がりっぱで弁護士が悪いなんて言いなさんなよ、あなた。しかも、言った以上はどんな間違いがあってもおれに責任はないという顔をしろと言わんばかりですね。文句があったらよそへ言ってくれ、おれは間違っておったけれどももうしょうがない、おれはもうこれで顔を洗ってさよならだ、清水の舞台から飛びおりたからおれは死んじゃった、そんな無責任なことをやったら、国民はどうなりますか。こんな間違いをどんどんやっておる裁判官がおるのに、裁判所は公正で間違いはありませんと、もう二度と再び言いなさんな。
 それなら聞きますけれども、行政とは違うのだけれども、税務署だって、期間を過ぎても、これは間違っておったと思えば、税務署長の裁量権で税の更正ができるようになっております。私は素朴にそう思うのですよ。裁判官だって神様じゃないんだから間違ったんだろう、間違ったら自分で、これは間違えましたと言って高裁へ訂正をお願いするシステムが何でないのか。これは素朴な話です。それなら、それがあかんと言うなら、こういう裁判官はどういう措置をするのですか。こういうことをやっておった裁判官は、どういう措置をしているのですか。司法行政上どうしているのですか。
#63
○岡垣最高裁判所長官代理者 きわめて明確なミス、本当にケアレスミステークといいますか、つまり法律上いろいろ解釈の余地がありましたりいろいろ見解の相違がありましたりする場合はもちろん問題になりませんが、法律上だれが考えても明らかなケアレスミステークであるというふうなことを犯しました場合は、これは従来の例で申しますと、やはり何らかの形の懲戒と申しますか、が行われていると思います。たとえば、執行猶予をつけられないのにつけたというふうな場合に行われた事例を私聞いております。ただ、今回の場合にどういうふうになりますか、これは私の直接の所管でございませんので、恐らくそういう新聞を見たりしておりますし、事件の報告が来ておりますから、人事局の方で検討すると思いますが、明確なことは具体的には申し上げられません。一般的にはそういうことでございます。
#64
○横山委員 それでは岡垣さん、私の引用したのをあなたはそらとぼけて調べておらぬというのですから、それでは改めて調べてください。五月三十日の東京新聞の「もうやっちゃった“弁護人抜き”裁判」の事例は一体どういう事例であったか、これは新聞がインチキを書いておるのか、それとも真実を書いておるのか、書いておって、それについて最高裁としてはその該当裁判官にどういう措置をしたのか、事件はどうなったのか、それをひとつ文書で提出してください。
 次は、もう一つ刑法の問題に触れたいと思うのです。
 刑法二百条をここで議論をして、まさに私はこの刑法二百条を議論することすでに数度に及んでいます。このことについて、ついこの間、在宅投票復活立法放置は違憲なりという判決が札幌高裁で出ましたことは御存じのとおりであります。この札幌高裁の判決文を読んでみますと、国会の立法義務ということについてずいぶん長文の判決理由にしておるわけであります。大臣はこの判決文の国会に関する点をお読みになりましたか。
#65
○瀬戸山国務大臣 ちょっと目を通しましたが、詳細には見ておりません。
#66
○横山委員 要するに、この国会のありようについて、私に言わせれば、遠慮しいしい判決理由としておるわけでありますが、国会の責任を免れがたいという点を強く指摘している、こう感じられるわけであります。国会がなすべきことを国民が要求しておるのに、なすべきことをしない、そのことは国会に責任がある、立法府として責任があるということが端的に言い得られるのではないかと私は思うのです。その点、この刑法二百条の問題につきまして、もうこれで何回も言うておるわけでありますから、もう耳にたこのできるほど私どもの主張は法務大臣はおわかりだと思うのですが、私は改めて記録にも載せたいものですから、この際私どもの主張というものを明白にしたいと思うのです。
  最高裁判所大法廷は、昭和四十八年四月四日、刑法第二百条尊属殺の規定は違憲であるとの判断を示した。これは、最高裁判所が法律について違憲の判決をした最初のものである。
 最高裁判所は、訂正申し立て期間の経過とともに、確定した違憲判決について、最高裁判所裁判事務処理規則第十四条の規定に基づき、その要旨を官報に公告するとともに、国会及び内閣に裁判書の正本を送付し、国会は同年四月十六日これを受領した。
 最高裁判所が最高裁判所事務処理規則に基づき裁判書の正本を国会及び内閣に送付するのは、立法及び行政上の処置を必要とするからである。民主主義的統治機構である権力分立制の原則からは当然のことである。
 しかるに、本改正案は、この最高裁判所の違憲判決に対する改正は行われていない。果たしてこれでよいのか問題である。違憲判決がなされてから五年間も経過して、しかも政府が刑法の一部改正案を提起しながらこれを放置することは重大な問題である。これは、行政府の司法による違憲審査に対する軽視であり、無視にほかならない。そのことは、司法の違憲審査の拘束力を薄める結果となっている。違憲判断の理由について、いかなる問題があっても、その結論を尊重しない限り、三権分立の制度は生かされない。
 行政府や国会が国家の最高法規である憲法の規定をみずから無視することは、その国家の将来を考えるとき、慄然たる思いがする。
 昭和五十年四月三十日薬事法の違憲判決については、昭和五十年五月一日裁判書の正本を受領後、同年六月十三日改正、公布されている。
 立法は国会が行うものであって政府の責任ではないのかもしれないが、しかし、これは問題である。
 この違憲判決の処理については、判決後、野党三党から、それぞれ刑法の改正案が提出(第七十一回国会)されたにもかかわらず、これが議決されなかったからである。これを放置することは、三権分立の前提となる司法の独立性への不安となると同時に、憲法の尊重擁護義務にも反する結果となる。
 なお、第八十回国会では、社会党、公明党国民会議、民社党、共産党・革新共同及び無党派クラブから、共同で刑法第二百条等刑法中の尊属に対する罪に関する規定を削除しようとする刑法の一部を改正する法律案が提出され、参議院においては、自由民主党から、刑法第二百条尊属殺の刑の下限を四年以上の懲役に改正しようとする刑法の一部を改正する法律案が提出されたが、今日まで成立するに至っていない。
 尊属殺違憲判決について政府のとった処置
 昭和四十八年八月五日最高検察庁は、同年同月四日付、次長検事から検事長及び地検検事正に対し、最高裁大法廷において、尊属殺人罪を定めた刑法第二百条は、法のもとの平等を保障する憲法第十四条第一項に違反して無効である旨の判決があったこと、各庁に対応する裁判所に係属中の尊属殺人、同未遂、同予備被告事件につき、罪名及び罰条の変更手続をとること、また、求刑に当たっても、必要に応じ、十分配慮を加えられたいこと等を要旨とする「尊属殺人等被告事件の公判遂行等について」と題する通達を発し、法律を誠実に執行する任務を負担する政府としての最高裁大法廷の違憲判断を尊重する態度を明らかにし、尊属殺人罪については、普通殺人罪の規定である刑法第百九十九条が適用されて今日に至っている。
 このことは、憲法尊重擁護の義務を負う政府としては当然のことである。
 しかし、法律の誠実な執行者としての政府は、前記のごとく適切な措置をとりながら、内閣法に基づき国会に法律案の提出権を持つ内閣としては、最高裁判所から最高裁事務処理規則第十四条によって違憲判決の裁判書の正本の送付を受けたときは、直ちにこれに基づく法改年案を国会に提出する義務があるのではないか、最高裁規則が内閣に裁判書の正本を送付すべきことを規定したのも、法律執行に関する処置とともに、立法上の処置をも求めているものと解される。なるほど国会は唯一の立法機関ではあるが、現在までの法律制定の過程を見るとき、その感を強くするものである。
 しかるに、政府は、違憲判決後の昭和四十八年五月十八日の閣議で重罰規定削除の改正案を決定しながら、自民党の了承を前提として、国会に政府提案をする旨の閣議決定であったため、自民党の了承を得られず、今日まで提案するに至っていない。これが質疑応答抜きで今日までの事実を整理をしたわけであります。
 そこで、私は、結論として、違憲だと言われてなおかつ五年間放置することについて、これは与党であろうと野党であろうと、立法府としての責任を私は痛感をしておるわけであります。これを痛感しなければおかしいと、私は、私ども法務委員の立場として思っておるわけであります。違憲だと明白に言われて、その内容が二百条全部が違憲なのか、二百条が重過ぎるから違憲なのか、議論もあるであろう、しかし、いずれにしても違憲だと言われておる。違憲だと言われたから、政府は通達を出してそれを死文化した。だから二百条は空文になっている。そして、いまそういう通達だけが生きておる。検察行政の中で生きておる。検察行政がやったことがこのままずっと放置されていったならば、どういう資格があるのか、どういう権限でそういうものを――法律にもちゃんと二百条は生きておるにかかわらず、検察陣がそれを無効なりとみずから宣言をしてとった措置というものが未来永劫に生きていくとするならば、それは越権行為ではないかという観点も生まれてくると私は思うのであります。しかし、いまのその是非論はいつかは問題になるとしても、いまわれわれがどうしてもやらなければならぬのは、国会の立法行為、これが不作意であろうとも、立法行為について違憲という判決骨子になった今度の札幌高裁の判決を含めて見て、いまわれわれとしては、刑法二百条について決断をしなければならぬときではないか。私は、二百条削除案、そして死体遺棄罪も、そのほか傷害罪も、尊属に関する問題は全部、これはわれわれの野党共同提案のようにしろと言っておるのですけれども、そのほかにも案がないではないということはわかるが、いずれにしても、これはもう決断をしなければならぬのではないか、私は心からそう考える。まさに、その意味においては法務大臣の責任は実に重大ではないか。あなたが大臣になられてから何回これを言っているかしれない。それは、ほっておけばほっておけることであろうけれども、それは政治的にもう猶予を許さぬ問題だ。これは大臣がやろうと思えば、ひざ詰め談判で自民党と話をして結論を得ることができるはずです。何にもおやりにならぬとは私は大変遺憾だと思う。ひとつ所信のほどを聞きたいと思う。
#67
○瀬戸山国務大臣 刑法二百条に関する違憲判決、その後の経過は、いま指摘されて、おおむねそのとおりであります。最高裁判所が、ある法律が憲法に反しておる、こういう判決を下しましたときには、いわゆる立法府、唯一の立法機関である国会、それから法律を執行運営しておる行政府、政府に対して連絡をする。それはそういう法律を改める必要があるという趣旨のものであると受け取っております。
 いま経過でお話しのような事態になっておりますことは、担当の法務大臣として恐縮に感じ、非常に責任を感じております。いまお話しのように、その直後、政府としてはこれに応ずる改正案を準備いたしましたが、なかなか意見が一致せず、最終決定に至っておらない……(横山委員「説明はいいですよ。あなたの決断を聞きたいのです」と呼ぶ)そういうことでございまして、責任を感じておるゆえんを申し上げておるわけでございます。(横山委員「感じておるばかりじゃだめですよ」と呼ぶ)
 ちょうど私はそれから四代目の法務大臣であります。それほど簡単でないということを御理解願っておきたいのでありますが、強い責任を感じておりますから、できるだけ早く結論を得て、この最高裁の判決に応じたい、かように考えております。
#68
○横山委員 もうそのことを、あなたの代になってからも、私は二回も三回も聞いているのですよ。また、これで責任を感じておる、しばらく待ってくれじゃ済みませんぜ。だから私は、延々と経過も述べて物を言っているわけです。また同じことで私は引き下がりませんよ。もし、この法務委員会で処理ができないというなら、これは院の責任です。衆議院の。国会の責任ですから、私は法務委員会が任務を全うし得ない、法務委員会のいろいろな事情から言って任務を全うし得ないならば、院の責任ですから、私は、議院運営委員会なり衆議院議長なり、あるいはしかるべきときに直接手段に訴えようと思うのです。けれども、あなたが本当にその直接の責任者だから、何はともあれ、政府が刑法二百条に関して国会に意思表明をすべきである、それをいつまでたっても同じことを言っているというのは無責任もはなはだしい。だから、きょうは逃がしません。あなたが、もうしばらく待ってくれとか、そんなようなことを言っておるようなことでは私は納得できませんから、少なくともあなたがどうするかということをはっきりしてもらいたい。あなたが何ともできぬというなら、私は次の手段を考えますよ。私は少なくとも、法務大臣として待ってくれと言っているから、あなたの在任中からずっと待ってきた。けれども、同じことを言われるなら、もうこれで決裂と私は言いますよ。どうなさるのか、刑法二百条問題について明白な、法務大臣としての具体的な考え方を明らかにしてもらわなければ困ります。
#69
○瀬戸山国務大臣 横山さん御承知のとおり、議院内閣制度になっておりますから、政府が与党の了解を得て出すという習慣になっております。でありますから、その点でまだ話が詰まっておらぬということでございますので、責任を感じておらないわけではございません。できるだけ速やかに理解を求めて提案をしたい、かように考えております。国会は国会で法律案を通過させられることにこっちは異存はございません。
#70
○横山委員 最高裁判所が政府と国会両方手紙を出すということは、議院内閣制でございますから、しかも国会における法案というものはほとんど政府が提出されるものであって、議員が提案するということは少ないことなんです。原則として政府が提案をなさることなんです。したがって、第一義的に、違憲の判決を受けた刑法二百条については政府が提案なさるべきことです。それをまたいまのお話のように、自民党と相談するからしばらく待ってくれ、責任は感ずる、そんなことでは困ります。できないならできないともう言ってください。当分見込みがない、与党と話してもむだだ、見込みがないなら見込みないと言ってください、私は次の手段をとりますから。
#71
○瀬戸山国務大臣 見込みがないとは申し上げません。見込みをつけて提案したい、かようなことでございます。
#72
○横山委員 見込みをつけてと言うなら、いいかげんにまたのんべんだらりと待たされるのはいやですから、私は、あなたの見込みをつけてやるというふうに、そんな責任をかぶせるつもりはないのですけれども、それなら少なくとも決裂は大体いつですか。見込みをつけて私に最終的返事をされるのは、今国会中に与党との話はできませんでしたと言っていただけますか、それとも与党と話がつきましたと言ってくださるか。いつまでものんべんだらりと待たされるのはもういやだから、私ばあえてくどく言っているのです。今国会中に処置をつけていただけますか。
#73
○瀬戸山国務大臣 今国会中には正直、間に合わないと思います。次の通常国会までにはぜひ結論をつけたい、かように考えております。
#74
○横山委員 私の言っているのは、法案を提出するかせぬかということではないのです。切りをつけてもらいたい。今国会中に与党と話し合って、それで与党が了解したから次の国会へ出すことにする、それならそれでいいのです。けれども、今国会中に与党と話がつくかつかぬかはわからぬ。のんべんだらりと次の国会へいったらまた同じことということでは困る。この国会中に、話はどうなったかというめどをつけてもらいたい。それがだめでしたならだめでしたで、私はそれでさようならだ。何遍もここであなたとやり合うのはいやだから、それで、あなたは、もうできませんでしたならできませんでしたでよろしいから、今国会中に与党と話をして結論をつけてくださいとお願いしているのです。
#75
○瀬戸山国務大臣 提案は今国会中には無理だと率直に申し上げます。しかし、どういう扱いをするかということは今国会中に詰めてみたいと思います。
#76
○横山委員 それではそういうことでひとつ、もう私も側面的に方法を考えますから、ぜひお願いをしたいと思います。
 時間がなくなってまいりましたが、これは、もうすでにいろいろな角度でお答えになっておりますから、一言でよろしいのです。日中条約が非常に進展をするかのごとく見えます。それで、またぞろ日中条約の成立を待って恩赦をするとかあるいは大赦、特赦かというような話があり、そしてそれについて法務大臣が、いや福田総理大臣が各委員会でお答えになっています。国会はこれでもうあと残り少のうなりましたから、次の国会までにそういうことの決断をなさることがあり得るかもしれません、恩赦問題について、今国会中、あちらこちらでお話しになったのですけれども、総合的にこの問題についてのあなたの所信を表明してもらいたい。
#77
○瀬戸山国務大臣 日中条約は政府としてはぜひ成立をさせたいということで、御承知のように目下努力を続けておるところでございます。日中条約ができたから恩赦をするという考えは現在持っておりません。
#78
○横山委員 それでは本件については、各委員会でお答えになっておりますから、最終的にわが法務委員会でそういうふうにお答えになったと理解をいたします。
 最後に、時間がなくなりましたけれども、安楽死について少し法務省の考え方を伺いたいと思います。私が、アメリカのカレンという女性の問題やあるいは森鴎外の高瀬舟というお芝居、小説を含めて安楽死問題を取り上げましてからすでにこれで三、四回目になるわけであります。承れば、法務省もこの自然死法第一次要綱案を御入手になっておるのではないかと思われるわけでありますが、安楽死問題につきましては、本年年次総会が行われ、昨年でありましたか、国際会議も行われました。そしていま私の手元にいわゆる自然死法第一次要綱案があり、それに対するいろいろな意見が出ています。申すまでもないことでありますが、名古屋の成田裁判官が、六条件を付しまして、消極的ではありますが安楽死を認めた判決を出しておりますことはきわめて歴史的な判決だと、この関係の人たちは認めておるわけであります。これは法務省にも厚生省にもあるいは文部省にも、いろいろなところに関係がありまして、単に法務省の殺人か殺人でないかということだけではこれは判断すべきではないことだと私は思っておるわけであります。要するに医学的、哲学的、宗教的、いろいろな角度からこの安楽死問題については十分議論がされていって、国民の中で感情的に考えたり、あるいはまた偏見を持ってこの問題を考える限りにおいてはだめだと思うのでありますが、そういう常識といいますか、高い角度で考えられていくことが必要だと思うのであります。アメリカでは八州で安楽死法が成立をいたしました。フランスでも死ぬ権利の法律案が提案をされています。いま各国の安楽死に関する諸情勢をお話しする時間がございませんが、少なくとも各国でこの安楽死に関する議会活動あるいは討論活動、そういうものが行われておるわけであります。
 法務大臣はこの一次要綱案をまだごらんになっておりませんか、どうですか。――それでは、ごらんになった伊藤局長からまずひとつ皮切りに話を伺いましょう。
#79
○伊藤(榮)政府委員 安楽死の問題は最近わが国においても非常に活発な御論議の対象になってまいりました。ただいま御指摘のように、アメリカにおきましては例のカレン事件を中心に論議が高まっておりますし、あるいはヨーロッパにおいても特定の国で議論がなされておるやに承知いたしております。私どもの守備範囲と密接にかかわる問題でございまして、深い関心を払っておるわけでございます。しかしながら、ただいま御指摘になりましたように、この安楽死の問題につきましては、ひとり殺人罪になるかどうかあるいは嘱託殺人罪を構成するかどうかという問題以前の問題として、人間の生命の尊厳性というもの、これに関連して死を欲する人はみずから命を絶つことが許されるかどうかというような、いわば哲学的な、人生観的な問題を深く蔵しておるわけでございます。したがいまして、私どもの立場といたしましては、今後各界での御論議の深まり行く中で、国民的なコンセンサスは那辺にあるかということを慎重に見守りながら検討をしてまいりたいと思っておる次第でございます。
 ただいま御指摘になりました太田氏を中心といたしましておつくりになりました第一次要綱案は拝見いたしました。そのもの自体にも、いろいろこれに参画された方々、個人個人の御意見が付記されておるようでございまして、まことにいろいろな意味での問題点があるように私どもも思っております。細かい点につきますといろいろな問題はあろうと思いますが、やはり一番大事なことは、先ほど申しましたように、命の尊厳性、それに対して、人は自分の命をみずから処理できるかどうか、そういった点についての物の考え方の統一ということを見守っていく必要があるのではないか、かように考えておる次第でございます。
#80
○横山委員 われわれがここで学問的、宗教的、哲学的、医学的に安楽死を議論しておればいいというようなことでも事態はないのであります。いまこの社会の中で、嘱託殺人になるかどうかは別といたしまして、事実上安楽死に類する事件が起こっておるわけであります。
 枚方市の田島さんの事件は、昭和五十二年七月六日に発生をいたしまして、五十二年の十一月三十日に判決。吹田市の井上さんの事件は昭和五十二年十月十三日、判決は昭和五十三年三月三十日。田島さんの事件は、奥さんががんで、もう明白に死が迫っておる、苦しむ、それで御主人が奥さんを殺した、たしかそういう事件であります。昨年名古屋で発生いたしました事件は、お父さんが息子を殺した事件であります。そういう事件はこの社会の中にかなり多いものと私どもは判断している。
 そのときどきに、成田判決が一つの例証になると思うのでありますが、ある意味では、情状酌量ということで、わりあいに軽い判決がされておるのが通常ではありますが、しかしながら、そういう具体的に安楽死に類するような問題がこの社会に出ておるわけでありますから、いまここで、時間もございませんが、一体哲学的に、宗教的に、医学的にどういう条件ならどうかということを客観的に議論するばかりでなくて、現実的にわれわれはそれを検討する必要にもう迫られておるのではないか。安楽死、嘱託殺人、そういうような現象が現にあるとするならば、われわれ法務の世界においても現実的に検討をすべきではないか、そう思っておるのでありますが、いかがでございましょうか。
 私は、これは拙速をたっとぶわけではありません。何回も申しますように、何かこの間、去年でございましたか、身障者の人が、この安楽死活動について非常に誤解を持ちまして、非常な攻撃を加えたという話がありますから、よけいに私は慎重の上にも慎重にということでありますが、少たくとも現実にそういう事態が社会現象として多くあるわけでありますから、法務省を中心として厚生省なりあるいは文部省なりそういうところで、ごく軽い、緩やかな形であろうとも、この種の問題について討議をすることをお始めになったらどうかと思うのでありますが、いかがでございますか。
#81
○伊藤(榮)政府委員 現在の法律上の考え方といたしましては、先ほど来御指摘の名古屋高裁の判決で示しております六条件、これがことごとく満たされておる場合には、わが現行法の解釈としても、違法性を阻却をするということで救えるのではないかという考え方があるわけでございますが、将来の問題としては、その六条件の中のどれかが欠けたような場合に、なお救ってあげることが相当な場合があるのではないか、こういう点を詰めていく必要があろうと思うわけでございます。
 特に、最後までどうも残るのじゃないかというような感じがしておりますのは、個人個人がみずからの手で処置をしていいかどうか、これが非常に問題でございまして、やはりそこに医師の介在というものが最後まで残る要件の一つではなかろうかという感じがしておるわけでございます。そこで、この問題を検討いたします場合には、やはりただいま御指摘になりましたような関係省庁のほかに、実際に生命を扱って医療行為をなさいます医師の方々、こういった方々のお考えも十分伺う必要があろうと思います。
 それはともかくといたしまして、ただいまおっしゃいますように、諸外国で次第にそういう声が高まってきており、わが国でも論議が高まりつつある今日でございます。私どもとしましても、この問題はなるべく近い機会に検討を開始すべき問題の一つであろうと思っております。したがいまして、御指摘のございましたように、まずもって緩やかな形でも何でも、関係者が集まってフリートーキングを始めるというようなところから研究を始めてみたい、かように思っておる次第でございます。
#82
○横山委員 ぜひそういうふうに要望をいたしたいと思います。きょうは時間があればその内容に少し入りたかったわけでありますが、予定の時間が過ぎましたので、私の質問を終わります。
#83
○鴨田委員長 飯田君。
#84
○飯田委員 本日は、四つの問題点について御質問を申し上げたい予定でございましたが、時間の関係で二つだけにいたしたいと思います。
 その第一の問題は、国際協力事業従事者の帰国後の生活保障について、こういう論題でございます。これにつきまして外務省、労働省、大蔵省、法務省の人権擁護局にお尋ねをいたすわけでございます。
 それから第二の問題は、弁護士法に書かれておる制度がありますが、弁護士法の憲法違反の疑いのある制度について、こういう論題で、法制局長それから法務大臣、法務省にお尋ねをいたします。
 それから、第三の問題は、裁判所の事件数の増加状況と裁判官の数の不均衡について、そういう問題について、これは最高裁、法務省、大蔵省にお尋ねをいたしますが、きょうはこれはやりません。その次のときにやります。
 それから第四番目の問題は、航空機ハイジャックの持つ政治的性格について、こういう問題でございます。この論題につきましても、きょうは時間がないからできませんので、この次の一般質問の時間にやらしていただきます。御了承をお願いいたします。
 それから、最初に、私は審議方法につきましてちょっと委員長にお尋ねをいたしたいと思うものであります。それは、最近のサンデー毎日の記事に「見当違いの弁護人抜き裁判法案」という題で、松岡英夫というお方が書いておられます。この方は、弁護士抜き裁判法案に反対の立場から書いておられますので、ここに書いてある数字等につきましては決して弁護士会に不利益な数字が書いてあるとは思われないのですが、そこにこういう記事があります。「日本弁護士連合会はもちろのこの法案に大反対だが、ただ問題は、一万一千の会員弁護士の四割にあたる四千数百人が、法案支持か、態度保留かであることだ。」こうあります。この数字は非常に重大だと思います。一万一千人の弁護士のうちの四割の四千数百人が賛成だ、六千人が反対だ、こういうわけです。そこで、裁判官と検察官の数がどれだけおられるか知りませんが、そういう人たちが一応賛成の側であるということでこの数を寄せてみますと、大体賛否伯仲するのではないか。法曹界をまさに真っ二つに割っての問題である。しかも、場合によったら賛成の方が多いではないかと思われるような重大な法案であります。
 この法案につきまして、私は昨日の審議のやり方について大変疑問に思うものであります。といいますのは、各党一巡はよろしいが、一巡で一人一時間、しかも各党一人だけ代表でやれ、こういうようなことで審議方法が決まりました。私は理事ではありませんから、理事会において発言する権限がありません。したがって、委員として委員会で発言します。こうした方法をおとりになったのはどういう理由でこんなことになったのか、委員長の御見解を承ります。これは私は委員として聞きます。わが党の理事がどういう発言をなさったか知りませんが、そういう理事のお決めになったことに対して私は不審に思うておるわけです。
#85
○鴨田委員長 実は、この法案は現在質問中でありますので、各党で本当のエキスだけを質問してもらいたい。一応質問してもらって、次に第二段階の質問に移って結構じゃないか。そうでありませんと、一党だけばかり質問しておりますと、小さなと言うとぐあいが悪いですけれども、数が少ない政党に所属する人は質問ができなくなってしまう。だから、一応エキスだけは質問してもらった方がいいのじゃないか、それから後は第二段に移ろうじゃないか、こういう考え方でやったのでありまして、この点ひとつ、理事会でもそういうふうに決定したので御了承願います。おわかりですか。
#86
○飯田委員 いまのお話はわかりましたが、わが党はこの法案については非常に重大視しまして、慎重審議であります。これは党の方針であります。理事の一存で決めるべき問題ではないと考えておりますので、そういう点におきまして、そういう点もなぜわが党がこの問題について慎重審議なのか、それはまさに法曹界を真っ二つに割るような重大な法案であるから、これについて軽率な審議は困る。あらゆる問題点を出して、これは反対すべきか賛成すべきか資料によってやるべきだ、このように考えておるからそういう態度をとっておるわけでござまいす。その点を御了承願いたいと思います。
#87
○鴨田委員長 つけ加えますと、飯田委員が言われましたとおり、私のところにもこれは早く通してくれという弁護士の方の御意見も強くありますので、いま言うとおり慎重にやるべきと思っておりますから、各党一巡した後、またさらに続けてやりたいというのが私の本旨です。おわかりですか。
#88
○飯田委員 はい。
 それからもう一つ、私は念を押したいのですが、この問題につきまして慎重審議を私どもが主張しておりますのは、この最後を強行採決に持っていかないで、とにかく少なくともみんな採決しようじゃないかという気になって採決をして、そこで反対なら反対、賛成なら賛成という態度を示してもらうのが国民に対する義務であると私は考えます。そういう採決の仕方についても私はここで申し上げておきたいと思うものであります。この問題はこれで終わります。
 次に、第一の、国際協力事業従事者の帰国後の生活保障についてという問題であります。
 最近、私のところへ私の友人から手紙が参りました。内容を重要なところだけ読んでみますが、それにはこういうことが書いてあります。
  昨年三月に長年海外での技術協力と親善に寄
 与したということで、外務大臣より表彰状と銀
 盃をいただき、今回、又このように取り上げら
 れ、光栄ではありますが、満六十歳を越えてか
 ら帰国した専門家に対する配慮がないため、今
 後もこの方面で働くことを願っている私にとっ
 て全く厳しい環境です。
  帰国以来、生活保障制度で六カ月間保障され
 ているだけです。私は幸い昨年三月から六カ
 月、単発の派遣でスリランカへ再度行き一時を
 しのぎましたが、九月下旬帰国しましてから
 は、今度は短期派遣のため保障制度も適用され
 ず、全く無収入で次の機会を待っているわけで
 す。技術援助で国外へ行く希望ですので国内で
 の就職にも踏み切れませんが、しかし、いつま
 でもこんなにしているわけにはいきません。
  私のように帰国して困っている専門家の中
 で、私達農業関係のものが国際農業協力専門家
 会という任意団体をつくって待遇改善の話をし
 ていますが、経済的には全く無力です。最近、
 派遣期間厚生年金に加入するようにする、派遣
 後の一時退職金を支給などの要望書を国際協力
 事業団総裁あて提出したところです。
  国際協力は人なりといわれてから久しくなり
 ます。私が八年前に国際協力の仕事に従事した
 時に比べると、派遣期間の待遇はよくなり、又
 派遣終了後も、六十歳以前の人には特別嘱託の
 わくもふえて改善されましたが、六十歳以上の
 派遣専門家終了後については全く不十分です。
 個人的な差もありますが、私の場合は停年を前
 にしてこの道に入り、現在、まだ教育中の子供
 が残っていますので困惑せざるを得ません。あとずっと続いておりますが、こういうような手紙をいただいております。
 従来、国際協力事業に参加された従事者というのは、これは恐らく国の政策に準じておやりになったのではないか、こう考えるのでございますが、この点について明確でありませんので御質問を申し上げます。
 まず、外務省のお方に御質問申し上げますが、国際協力事業団というのがあると聞いております。これはどういう法律上の性格を持つものでありますか、お尋ねいたします。
#89
○中村説明員 お尋ねの国際協力事業団は、政府が行います経済、技術協力のうち、技術協力をもっぱら取り扱う事業団でございまして、その主なる任務は、開発途土地域の諸国の経済、開発に対する技術の協力、あるいは青年協力隊の派遣、あるいは移住業務、それから海外での投融資業務、こういうものを主たる業務といたしております。
#90
○飯田委員 それでは、次にお尋ねしますが、国際協力事業につきましては、これは国の仕事としておやりになっているのでしょうか、それとも民間の人が勝手にやっておられることでしょうか、お尋ねします。
#91
○中村説明員 国の仕事の一環としてやっております。
#92
○飯田委員 国際協力事業の所管官庁はいずれの官庁でございますか。
#93
○中村説明員 国際協力事業団の監督官庁は外務省でございます。ただし、事業団の行っておる業務が多岐にわたりますので、大蔵省、農林省、通産省その他関係各省がこれに関係いたしております。
#94
○飯田委員 国際協力事業に関しまして事業団というのがありますが、これはわが国の法人でありますか、それとも世界的などこかの法人でありますか。
#95
○中村説明員 わが国の法律によりまして、国際協力事業団法、これは昭和四十九年に設立された事業団でございます。
#96
○飯田委員 国際協力事業に従事する人たちは、具体的にはどこの機関がどのように募集をして、どういう約束でどういう国に派遣をいたしておるのでありますか、お尋ねします。
#97
○中村説明員 開発途上国からの専門家派遣の要請を在外公館が受けまして、それを外務省が国際協力事業団に移牒いたします。国際協力事業団はそれぞれの専門家、たとえば農業分野の専門家でございますれば農林省と協議いたしまして、農林省から適当な専門家の人選を得て海外に派遣する、こういう仕組みになっております。
#98
○飯田委員 この機関で雇用をされました雇用者、海外に派遣する人ですね、こういう者についてめんどうを見る機関、どういうふうにめんどうを見ておるのか、それもまためんどうを見るに当たってどこまで責任を負うておられるのか、こういう点はいかがでしょうか。
#99
○中村説明員 専門家を派遣するに当たりましては、日本政府とそれから受け入れ国政府との間で一つの契約書のようなものをつくりまして、途上国の側の要望に従い、派遣の期間は何年にするとか、あるいは派遣の期間の住宅の提供であるとか、あるいは特権免除関係、そういうものを政府間で取り決めまして、それに基づいて専門家が派遣されるという仕組みになっておりまして、専門家と国際協力事業団との関係は委託関係というふうになっております。
#100
○飯田委員 委託関係ですが、実はお尋ねいたしたいのは、こういう国際協力事業に従事しておられる方のいろいろ老後の保障だとかあるいは病気の保障だとかございましょう。普通の人ですと厚生年金に加入しておりますね。ところが、こうした国際協力事業に従事しておる人たち、こういう人たちは、外国へ行っていますから厚生年金に加入することができないわけです。帰ってきましてからわずかの時間ですからこれもまたできない。したがいまして、こういう人たちに対する年金、また福利施設、こういうものがほとんどないといったような状態だと聞いておりますが、いかがですか。
#101
○中村説明員 専門家が海外に派遣されております期間中は、在外の手当であるとかその他のもろもろの手当、それから日本におきましては国内の所属先に対する補てんあるいは積立金というような制度がございます。
 それから、専門家が派遣任期を終えまして帰国してきた場合、その専門家の所属先がある場合にはすんなりと所属先に復帰できるわけでございますけれども、所属先がない場合の専門家に対しましては、海外での派遣期間が五年以上の場合には二百十日間、それから五年以下の場合には百八十日を限度といたしまして生活保障金というものを支給いたしております。生活保障金は最高日当五千七百円から最低二千三百円、こういうふうな七段階に分かれております。現在はこの生活保障金の支給のみでございますが、専門家が帰国してまた近い将来途上国で勤務するということが予想されます場合には、先ほどの手紙にもございましたような特別嘱託制度というものがございまして、一年間事業団との委嘱によりまして特別嘱託としてリテインしておくという制度がございます。その他の制度につきましてはいまのところ特にございません。
#102
○飯田委員 ただいま保障制度があるとおっしゃいましたが、なるほど保障制度はあるようです。六カ月間の保障ですね。しかし、帰ってきまして、六カ月後はもう何もつかない。どうして生活していいかわからない。就職しようとしても、その次にまた海外に派遣される要員ですから、雇う方も余り雇わない、行く方も気が進まないということになりますね。そういう状態にある人たちについて、こうした雇用関係、いまおっしゃったような雇用関係、これは一体労働問題として問題にならぬのかどうか、私は非常に疑問に思うのです。
 そこで私は、これは労働省にお尋ねいたしますが、こういうような事態、こういう協力事業に従事した人たちの雇用関係、こういうものについて現行法で救済する方法はあるかないか。もしないならば、こういう状態でいいのかどうか。立法する必要があるならばどういう立法が必要と考えられるかという問題についてお尋ねをいたします。
#103
○田淵説明員 お答えします。
 労働省としましては、一般的に公共職業安定所におきまして求職者という形で職を求めておいでいただきましたら、一般的な職業紹介について十分お世話できると思いますが、こういう方々について特別に従来配慮するということは特にいたしておりませんが、いろいろ問題があるということでございましたら、外務省が中心になっていただきましていろいろ検討していただければ、労働省も応分の御協力をさせていただけると思っております。
#104
○飯田委員 それでは、この問題につきまして私は一種の人権問題だと考えるわけです。こういう大変な不完全な制度にしておいて、実際に国のために働きに外国に行って尽くしてきた人が、帰ってきて生活にも困るといったような状態をつくり出すということは、これは人権保障の点から問題があるのではないかと思われるわけであります。こういう問題について法務省の人権擁護局関係の方はどういうふうにお考えになっておるかをお尋ねいたします。
#105
○鬼塚政府委員 御指摘のようなことがございまして、そういうような国際協力にかかわられた方々が帰国された後、適切な保障がなくて生活困難に陥っているということが事実でありますとすれば、やはりそれはおっしゃるとおり人権擁護上問題のあることで、遺憾なことではないかと考えております。
#106
○飯田委員 それでは次に大蔵省にお尋ねいたします。
 こういう国際協力事業に従事する人たちの問題につきまして、あるいは国際協力事業団だとかあるいはそのほかの団体につきまして、大蔵省では話を聞かれたことがありますかどうか、お尋ねいたします。
#107
○岡崎説明員 私は外務、通産を担当している主計官でございますので、主として国際協力事業団の仕事につきましていろいろお話を承っているわけでございますが、事業団の仕事はただいま外務省の方からもお話がありましたような状態で行われておるということは十分承知しております。
#108
○飯田委員 この国際協力事業団につきまして何らかの予算的な措置がなされておりますか。いかがでしょう。
#109
○岡崎説明員 先ほど外務省の方からお話がありましたとおり、国際協力事業団の帰ってこられました方についてのいろいろその後の生活保障の制度、現行の制度、これにつきましては国の予算としてすべてを裏づけてやっておるわけでございます。
#110
○飯田委員 大蔵省で予算措置をしておられるということであります。そうしますと、結局、現在生活保障の面で非常に困っておる人がおるということは、実は予算の請求を各省がしなかったのではないかという一つの疑問があります。それから、各省から予算請求をしたけれども大蔵省でこういうものは削ってしまったという疑いもあります。この問題は、圧力団体としてきわめて小さい、しかも国の政策に従事した人たちに対する関係でありますので私は重視するわけですが、一体これは本当に十分な予算が組まれておるのかどうかという点について私どもは疑問に思いますので、どういうわけで現状のようなことになったのか、現在幾らの予算を組んでおられるのか、こういう問題についてお尋ねいたします。
#111
○中村説明員 予算措置といたしましては、国際協力事業団の交付金のうち専門家等福利厚生事業費ということで、昭和五十三年度予算で七千八百万円を予定しております。今年度の国際協力事業団事業費の伸びが一七%ということに対しまして、この専門家の福利厚生施設のための改善は、五十二年度と比較して二五%伸びておりまして、私たちといたしましては、予算の中で最大限の努力をしたというふうに考えております。
#112
○飯田委員 六十歳以上の方、つまり国際事業に協力して帰ってきた人が六十歳より若い場合には生活保障とかいろいろのことがあるようです。ところが、六十歳を超えた人、海外で働いてきて六十になって帰ってきた人についてはほとんどないということが言われておりますが、そういう人たちに対する予算措置はどのようになっておりますか、お尋ねします。
#113
○中村説明員 先ほど申しました生活保障金あるいは特別嘱託制度等につきましては、年齢的な制限はないというふうに私は承知いたしております。
#114
○飯田委員 これは見解の相違かどうか、この手紙で書いてきたお方の場合に、実際にそういうひどい目に遭っておられるわけなんですが、この方によりますと、六十歳以上の派遣専門家の場合は、終了して帰ってきてもその保障はきわめてわずかだ、ことに短期で帰ってきた場合にはもちろん何もないが、六十歳を超えて就職にも困っておるような者に対して厚生年金もない。そのほかいろいろの年金についても、それはもう六十を超えてどうにもしようがないという状況だ。国家公務員の場合は共済組合があります。この人たちは明らかに国のために働いているのですから、そういう点では国家公務員と同じじゃないか。そういう人が帰ってきた。国家公務員で行った人はいいですよ、帰ってきて親元がありますから。ところが、そういう国家公務員でもない、会社にも勤めてない人がおられますね。こういう人たちがおられますが、こういう人たちについては何らの年をとってからの保障制度を決めていないということは、大変問題であろうと思います。
 そこで、こういうものについて、今後もどのような予算措置をし、どういうふうにして救済されるかという点につきまして、外務省及び大蔵省の御意見を伺います。
#115
○中村説明員 御質問にお答えする前に、技術協力についての私たちの基本的な考え方を御説明させていただきたいと思いますが、技術協力というものは、わが国で行っております経済協力の分野の中でも非常に質のいい協力の形態である。単に技術の移転だけではなくて、人と人との交流を通じまして、いわゆる心と心との触れ合いといいますか、相互の理解を深めるという意味において、国際協力の分野でも最も質のいい協力の形態である。したがいまして、私たちといたしましては、今後ともこの技術協力を大いに伸ばしていきたいというふうに考えております。
 その中での一つの分野としての専門家派遣という問題があるわけでございますが、専門家を派遣するに当たりましては、やっぱり人材の確保ということがまず第一の問題であり、人材を確保するに当たりましては、専門家を派遣している期間その待遇等において十分なめんどうを見ると同時に、帰国された後も後顧の憂えなく専門家として海外で仕事していただくような措置を講じなければならないというふうに私たちは考えております。そういう意味で、私たちとしては専門家の福利厚生のためにはできるだけの努力を払っておりまして、たとえば特別嘱託制度というようなものも、ごく最近できました制度でございますし、今後私たちとしてはこの専門家の派遣期間及び派遣後の待遇改善のために、なお一層の努力を払ってまいりたいというふうに考えております。
 専門家が帰国された後の生活の面での現在の制度では十分でないという御指摘、問題点については、私たちも十分に承知しておりまして、今後とも専門家の待遇改善、単に単価アップのみならずいろいろな制度の面での改善にも大いに努力をしてまいりたいというふうに考えております。
 具体的にどういう予算措置を講ずるか、これは現在外務省が関係省庁と協議中でございまして、具体的な数字等、あるいはどういう面で何をするかというふうなことをいまここで申し上げる段階にはまだございませんけれども、私たちとしては、そういう問題点があるということは十分承知しておりますし、今後とも専門家の帰国後の待遇、特に生活面での保障という面につきましては十分な努力を払ってまいりたいというふうに考えております。
#116
○飯田委員 大変外務省の方の御説明、了解いたしました。どうかひとつこうした人たちのために協力をしてやっていただきたいと思います。
 そこで、法務大臣にも私は陳情いたしたいのですが、せっかくの私の友人の願いですから、閣議においてこういう問題を提起されて、国策に従っておる者が泣きを見ないような御処置をしていただきたいと思います。いかがでございましょうか。
#117
○瀬戸山国務大臣 実態は外務省等でわかっておりますから、外務大臣ともよく相談したいと思います。
#118
○飯田委員 それでは、第一の問題はこれで終わりまして、第二の問題、これは憲法問題について御質問申し上げます。
 私は、いろいろの法律につきまして検討いたしますと、相当権威のある法律でも憲法違反の疑いのあるところが非常に多いわけです。私は弁護士法を最近見てみました。これは議員立法であるということでありますので、私はこの議員立法の弁護士法につきまして、憲法違反の疑いがある点を少し指摘してみたいと思うものであります。
 まず、日本弁護士連合会は、弁護士法の第八条によりますと、弁護士名簿を備えて弁護士の登録事務を行うことになっております。また、弁護士会は、弁護士の指導、連絡、監督に関する事務を行うことを目的とする法人である、日本弁護士連合会も同様の事務を行うことを目的とする法人である、こういう旨の規定が弁護士法三十一条、四十五条にございます。
 そこで、お尋ねをいたします。これはまことに法制局長には申しわけないけれども、議員立法でありますのでお尋ねする相手がおりませんので、法制局長に、おいでになったら御答弁をお願いしたいのでありますが、まず、日本弁護士連合会及び弁護士会の行うものとされておる、いま申し上げました法定事項の性質、すなわち、弁護士名簿を備え、弁護士の登録事務を行うというその仕事の法律上の性質は、実質上行政事務と解されるものであると思われるのでありますが、この点についてどのような御見解でありますか、お尋ねいたします。
#119
○大井法制局長 お答え申し上げます。
 御指摘のとおり、実質上は行政事務であると理解しております。
#120
○飯田委員 憲法の第六十五条によりますと「行政権は、内閣に属する。」とあります。弁護士会の行う事務は内閣の行政権のもとに置かれると解するのが妥当ではないか、このように思います。内閣の行政権は「内閣の統轄の下に、明確な範囲の所掌事務と権限を有する行政機関」これは国家行政組織法の第二条の文言でありますが、によって分掌されております。その分掌を決めておるのが各省設置法でございますが、この各省設置法の中に日本弁護士連合会及び弁護士会の行う行政事務についての監督を決めておる規定はございますか、ございませんか、お尋ねいたします。
#121
○大井法制局長 国家行政組織法上弁護士会等に関する監督規定はございません。
#122
○飯田委員 行政事務というものは国の事務でございまして、もしこれを私人に委託する場合は法令によって委託がなされなければならない。これは当然のことでございますが、この日本弁護士連合会及び弁護士会が行う登録事務というものが行政である、そういうことでありますならば、当然内閣の監督下に置かれるのが国の憲法的体制からは妥当であると思われます。いまの御答弁ではどの行政機関の監督にも属していない、こういう御答弁でございました。
 そこで、そういうことはわが国の憲法に書いてある三権分立の制度を破壊するものでないか、つまり弁護士権というものは三権の外にある権利として考えられておるのかどうか。当時の立法に当たられたお方の御意見をお聞きしたいのですが、かわって法制局長の御意見をお尋ねいたします。
#123
○大井法制局長 お答え申し上げます。
 御指摘のような弁護士に関する法律制度の検討につきましては、実は憲法上から一義的にいかにあるべきかということを断ずることはなかなかにむずかしい問題ではなかろうかと考えておるところでございます。と申しますのは、憲法の上からいいますと基本的人権との関連におきまして弁護士に関する規定がございます。また御指摘のように行政権は内閣に属するという憲法六十五条の規定もございます。さらにまた七十七条によりますれば、最高裁判所が弁護士に関する事項についての規則制定権を認められておるというような次第でございまして、憲法上は、弁護士会、日本弁護士連合会あるいは弁護士の職務というものに関しましてどのような法制度を立てるかということにつきましては、これらの憲法上の規定を総合的に判断しまして結論を導き出すのが必要ではなかろうかと考えられるからでございます。
 御指摘のとおり、いまのような六十五条を柱にされまして、行政事務である以上内閣に属するべきではないかという御意見も確かに御意見としてあろうかと思うのでございますが、一方また別な意見も出ようかと思いますので、その辺の判断につきましては慎重に検討されてしかるべきものであろうと考えておる次第でございます。
#124
○飯田委員 私が御質問申し上げておりますのは、登録事務を弁護士会にやらしてはいかぬということじゃないのです。登録事務を弁護士会にやっていただくということは一向に差し支えない。しかしやっていただくからといってそのことが内閣の行政権の範囲からはみ出てしまうということであっては憲法に違反するのではないか、このようにお尋ねしておるわけです。もし、この憲法に決めておる行政権は内閣に属するという規定をはみ出てしまって、内閣の監督を全然受けない行政事務というものがあるとすると、それはどういう憲法上の根拠に基づくのか、お尋ねをいたしたいわけであります。
#125
○大井法制局長 お答え申し上げます。
 登録事務が行政事務である結果としまして、本来憲法六十五条によりまして行政事務が内閣に属するということで、この内閣のもとに置かれ、国会を通じて国民のコントロールに服するという考え方が一つあるということを申し上げたわけであります。しかし、また他方、弁護士制度に関して国の監督がいかにあるべきかという観点から申し上げますならば、裁判官、検察官と並びまして司法作用の重大な一翼を担う弁護士の使命と職責にかんがみますならば、国家機関の監督はその職務の独立性を確保する意味において極力排除したい、したがって、内閣の監督のもとに服さないという考え方もまた一つあろうかと思うのでございます。そのいずれをとるかという点につきましては、これはまさに立法政策上の判断の問題でございまして、考え方としまして、そのいずれをとるか、あるいはそれ以外の考え方をどのように構成するかといった問題は挙げて立法上の問題と感ずるのでございまして、その限りにおいて憲法上違憲の問題は起こらないと思うわけでございます。
#126
○飯田委員 私は大変不思議な御議論を承ったものです。司法権の、裁判をやるという裁判そのもの、弁護をするという弁護活動そのもの、こういうものはもちろん政府の監督を受けないでやったって構いませんよ。しかしこれは弁護士を登録するという登録事務なんです。これは弁護業務じゃありません。また裁判所だって、裁判所のいろいろの人事問題あるいは定員問題、こういうものは全部最高裁がおやりになるわけじゃないので、政府の方で決めることなんです。そういう司法行政に関する分野は、特に裁判上必要である、裁判を行うために必要であると思われるものについてだけ最高裁の監督下に置いておるのでありまして、それ以外の司法行政というものは内閣に属するのであって、それからはみ出るものではないわけです。そういう意味におきまして、弁護士の問題も、弁護そのものについて私は申し上げておるのじゃない。弁護活動じゃなくて弁護士会の事務についての問題であります。こういうものが内閣の監督下に服さない、そういう規定を設けるということは、一体憲法上どの規定に基づいてそういう規定を設けられたのかと、こうお尋ねしておるわけです。いかがですか。
#127
○大井法制局長 なかなかむずかしい問題だろうと思われるのでございまするが、私は弁護士の使命、職責から顧みまして、弁護士は国の監督を排除するというのが現行法の考え方だろうと思います。しかし国の監督を排除したからといって自由放任にするというわけにはまいりません。したがって、登録でありますとか懲戒でありますとかいうのを、現行制度は弁護士自身のいわば自治主義に任せ、日本弁護士連合会及び弁護士会という団体を通じまして自律的に統制監督に服するというシステムをとった。その限りにおいては、お話しのように、本来行政事務であるべき登録にいたしましてもその他の事務にいたしましても、六十五条のいわば特例をなしておる。しからばその根拠は何かとおっしゃられますならば、立法府がみずからそのような選択をされて意思決定をされ、法律をもってそのような公の権能を日本弁護士連合会及び弁護士会に与えたものと理解しております。
#128
○飯田委員 私はこれは大変重大な発言だと思います。憲法に書いてない、憲法に基づかないことを立法機関ができるということは大変な問題だと私は思います。私は前に出入国管理令について質問したことがあります。出入国管理令は政令であります。政令を国会が法律としての効力を認めるということを決めた、それで法律になったということにされておりますが、これは全く憲法には根拠のないことです。いま法制局長がおっしゃったことも全く憲法の根拠がない。私がお尋ねしているのは、こういう弁護士法の規定を置くに当たって憲法上の根拠は一体何かということをお尋ねしておるのであって、私は恐らく憲法にはこの問題について規定がないと思います。あったらひとつお教え願いたいのです。
#129
○大井法制局長 お話のように、日本弁護士連合会及び弁護士会が行います登録等の事務が本来行政事務であるるということはたびたび申し上げておるとおりであると思います。
 そこで、憲法六十五条が行政事務、行政権がすべて内閣に属しておらなければならないというところまで要請しておるかどうか。もちろん原則的には行政権は内閣に属することは当然でございますが、先ほど申し上げました弁護士法制定の立案者が考えたであろうと推測ざれる特別な理由があり、しかもそれが合理的な理由であると認識されますならば、行政事務であっても特別な団体に公の権能として行わせることもあながち不可能ではないというのが憲法論であろうかと考えておる次第でございます。
#130
○飯田委員 私は、法律ができて、その運用の問題としてやるということならばそれでいいと思いますが、要はこういう法律をつくることが憲法に根拠がないのではないかということをお尋ねしたのであります。これ以上この問題を議論しても進みませんので、これは内閣の意見を将来聞こうと思いますので、留保いたします。内閣法制局長官に御答弁をいただこうと思っておりますので、留保いたします。
 次の問題に入ります。弁護士法四十九条によりますと、最高裁判所の権限として日本弁護士連合会にその行う事務の報告要求権を規定しております。つまり、弁護士会が行う行政事務ついて最高裁判所に報告をすることになっておる、最高裁判所は報告要求をする権利がある、こういう規定が弁護士法の四十九条にあります。これは三権分立の憲法規定に違反すると私は考えますが、いかがでございましょう。
#131
○大井法制局長 御承知のとおり、憲法七十七条によりますれば、最高裁判所は弁護士に関する事項につきましても規則を制定する権能を持っておるわけでございます。もとより弁護士が司法作用に深い関連を有する職務を持つ者である以上、その規則制定権も所管事項とされているものと考えられますが、御指摘の弁護士法四十九条は、最高裁判所が憲法上持ちまする弁護士に関する事項等についての規則制定権の運用の万全を期するために、規則の制定あるいは改廃等のための必要上、日本弁護士連合会に対して所要の報告を求めているというのが四十九条の趣旨であろうかと思われますので、その点に関して憲法上の問題はないというふうに解釈しております。
#132
○飯田委員 憲法におきまして最高裁判所の規則制定権というもの、これは裁判を行うために必要な規則のはずであります。それ以外の、裁判を行うための直接必要なものでない規則について最高裁判所が制定することは憲法違反であります。立法府の権限を侵すものです。憲法が認めておるのはきわめて限られた裁判を直接行うために必要なもの、たとえば法廷で裁判をやるときの規則がいろいろ要ります。そういうような規則を決めるとかいったようなものであって、それ以外のものについては最高裁は立法権はない。もしあるとするならば、それは立法府の持つ権限を侵害するものだと私は考えます。そこで、最高裁が弁護士のことについて規則を設けることができるというその規定は、内容が限られてこなければならぬと思います。弁護士の弁護権の行使方法についての規定、そういうものに限られると解釈するのが憲法の定めから言って正しいのでありまして、こういう点について弁護士法の四十九条は再考を要する、最高裁判所が弁護士会から報告をさせるといったような規定そのものは問題であると私は考えます。この点について法制局長も、実は憲法違反だなどという言葉はおっしゃりにくいと思いますので、これ以上追及いたしません。これも将来に残して、もっと第三者の意見を聞くなり学者の意見を聞くなりいたしたいと思います。私は元来刑法と刑事訴訟法を大学で教えて飯を食ってきた人間で、私の刑法観、刑事訴訟法観に反するような規定がありますと黙っておれない性質であります。それでお尋ねするわけで、御無礼でありますが、御勘弁願いたいと思います。
 後でまた政府の方の御意見も聞きますが、一応次に移ります。
 弁護士法の四十九条の二というのがあります。これによりますと、日本弁護士連合会のした処分については、行政不服審査法による不服申し立てを禁止することを決めております。こうした規定を一体なぜ設けたのか、私はまことに不思議に思うわけです。日本弁護士連合会が登録事務を行う、弁護士になりたいから登録をしたいと言って申し込む、それに対して弁護士会が拒否をした場合、行政上の不服の問題でありますので、行政不服審査法によって当然不服申し立てができなければならぬはずなんです。それを禁止するような規定を設けておるということは、どういう理由に基づいてこういう規定が設けられたというのでございましょうか、お尋ねいたします。
#133
○大井法制局長 これは行政不服審査法なる行政不服上の審査制度が統一的にできましたときに、現行の弁護士法との関係について整理をされた規定だと承知しております。もちろん弁護士法自体におきましても、登録等の事務が行政の事務であります以上、救済の方途としましては行政不服審査法、さらには行政事件訴訟法によってその救済の道が開かれておりますことは、弁護士法自体の他の明文に明らかなところでございます。
 問題は、四十九条の二で日本弁護士連合会という機関が行いました処分についての不服審査を認めない、これはなぜかということだろうと思うのでございますが、この点につきましては、日本弁護士連合会が弁護士の登録等に関する事務のいわば最終上級機関でございます。したがって、これにさらに不服審査を申し立てる必要を認めないものとして特に規定されたものと考えております。
#134
○飯田委員 この問題は議論をしても解決がつきませんので、次に移ります。
 弁護士法によりますと、弁護士の資格を有する者、これは四条、五条に決めてありますが、資格を有する者に対して日本弁護士連合会に備える弁護士名簿への登録を弁護士となるための要件としております。また入会しようとする弁護士会を経て、登録請求をすることをも要件といたしております。
 そこでお尋ねいたしますが、日本弁護士連合会及び弁護士会という法人は、国家機関であるのか私の機関であるのか、お尋ねいたします。
#135
○大井法制局長 国家機関というものではございません。同時にまた私の団体でもございません。法理上は公法上の法人と観念しております。
#136
○飯田委員 その次にお尋ねいたします。日本弁護士連合会及び弁護士会の行う事務は実質上行政事務でありますが、この公法上の法人に対して国からそうした行政事務を委託するという法律上の規定はございますかどうか、法的根拠をお尋ねいたします。
#137
○大井法制局長 その点に関しましては、私どもは委託とか委任とかという法理よりは、国にかわって法律をもって特別に公の権能を与えたものであるというふうに理解しております。
#138
○飯田委員 先ほども申しましたが、憲法には「行政権は、内閣に属する。」とあります。行政はすべて内閣が責任を負うものであります。そうしますと、日本弁護士会に対して行政事務をしてもらう以上は、国から委託する委託の手続がなされなければならないはずであります。法律上も。そういう規定がないのに勝手にやるというわけにはまいりません。たとえ弁護士会においてそういう規定を設けましても、少なくとも行政機関の内閣のどこかとの間につながりがある規定がなければならないのでありますが、そういう規定が全く設けてありません。こうした法律をつくった一体根拠になる憲法の――これは私、憲法問題を聞いているのですからね、憲法の根拠があるのか、こういうことをお尋ねしているわけです。いかがですか。
#139
○大井法制局長 憲法論を申し上げますと、先ほど冒頭に私は申し上げた次第でございますが、先生がおっしゃいますような根拠という形でのお話でございますれば、憲法全体の趣旨ということからしか言いようがないであろうかと考える次第でございます。
#140
○飯田委員 それでは次に質問いたしますが、弁護士の資格を有する者に対して弁護士会への強制加入を弁護士法では決めております。これは弁護士会へ加入しなければ弁護士をやらせないというのであります。弁護士の資格を有する者に対してそういう職業を制限してしまうということはこの弁護士法だけじゃありませんか。資格があるんですよ。裁判官の資格がある、裁判官に採用をされた、そういう者に対して何か裁判所の組合があって、そこへ入らなければやらせないといったような、そんなことはほかのところにはない。これを、ここに関してだけは強制加入を職業の要件としておりますが、こうしたことは憲法が保障する職業選択の自由、これは二十二条です。及び思想及び良心の自由、十九条です。これを侵害するおそれがあると思いますが、いかがですか。
#141
○大井法制局長 いま御指摘の点は、まさしく憲法上重大な問題であろうかと思います。実は弁護士法制定当時におきまして、基本的には弁護士の完全自治によって統制をしていくという理念をとった際にこの問題も論議されたというふうに私は間接に聞いておるわけでございます。いずれにしましても、憲法論としましては御指摘のような職業選択の自由等との絡みにおきましてどのように理解すべきであるかという点でございますが、結論を申し上げますと、公共の福祉の観点からして、現行のような弁護士法が完全な自治原則をとるということを前提にいたしますならば憲法上是認されざるを得ないものであろうかと考えます。と申しますのは、先ほど来御指摘のように、現行法は弁護士の監督につきまして何ら国家機関からの監督を受けておりません。そのまま仮に放任するとしたならば、弁護士の職務の適正化という公共の福祉はとうてい維持できないわけでございます。そこで弁護士会さらには日本弁護士連合会という公法人を設立しまして、これが直接に会員である弁護士の監督統制に当たって、弁護士業務の適正化という公共の福祉の要請にこたえていくという構造をとっておるわけでございまして、したがってその限りにおいては、公共の福祉の要請からしまして、弁護士全員が、弁護士となるためにはその会に強制的に入会しなければその自主統制が完遂されないということになるわけでございまして、以上のような次第で、憲法上の公共の福祉からいたしまする職業選択の自由の制約もやむを得ないものであるというふうに理解しておる次第でございます。
#142
○飯田委員 憲法に根拠のない法律をつくって、そのために弁護士の監督ができないから強制加入をやらせるんだ、こういうのは筋が相当違っておると私は思うのです。本来当然行政権は内閣に属するのですから、内閣がその行政事務については責任を持たねばならぬと私は思います。ところが、その責任を負うべき内閣に責任を負わせないような法律を国会がつくった。これは議員立法でありますが、どうも私は当時の議員さんの中に弁護士さんが相当おられるので、自分の利益を図ってこういう規定をつくられたんじゃないかという気がするのですが、そして憲法などは無視しちゃって、とにかく弁護士の利益さえ図ればいいんだということでこの弁護士法をつくられたような気がしてしようがないのですが、当時のいきさつはどうなっておりますか。
#143
○大井法制局長 私自身が直接立案事務にタッチしておりません関係上、文献等当たってなおひとつ検討したいと思いますが、少なくとも先生御指摘のようなおそれはなかったもの、つまり法務委員会自体で小委員会を設けて鋭意御検討になったように聞いております。
#144
○飯田委員 私は、この弁護士の強制加入という問題については思想と良心の自由を奪うものだと思うのです。弁護士会の人たちと自分の思想がどうも合わぬ場合に、もし自分の思想に忠実ならんとすれば自分のつこうとする弁護士をやめなければならぬ、また、自分の良心に反する弁護活動をするのはいやだと思っても、弁護士会に入っておって弁護士会の方でいろいろ制約されればそれをしなければならぬ、こういうことになると思想及び良心の自由を著しく侵害する、この強制加入は。同時に職業選択の自由を奪うものでありますが、この点について私は違憲のおそれのある規定だと考えるわけです。
 私の憲法論が間違いだということであれば、また間違いだという理由を私はお聞きしなければならぬのですが、私は一度これは政府のお方にも聞いてみたいと思うわけです。先ほどの「行政権は、内閣に属する。」そしてまた、したがって当然内閣が弁護士会の行う行政事務についての監督をすべきだというのが今日の憲法体制上必要であると思いますが、そういうことが実は私は憲法に沿うものだと思いますが、そうでないという御意見がいままでございました。これにつきまして、法律をつくった側でない法務省の御意見をひとつ承ることができたらありがたいと思いますが、法務省のお方でこういう問題を研究なさっている人がおられましたら意見を聞かしてください。
#145
○鴨田委員長 その前に法務大臣から答弁があります。
#146
○瀬戸山国務大臣 いま弁護士法をめぐって飯田さんからいろいろ御意見がありました。まあ飯田さんのお考えのように直ちに憲法違反であるかどうか、率直に申し上げて、いま簡単に判断をする能力を持っておりませんが、いずれにいたしましても、弁護士法は昭和二十四年成立いたしております。いわゆる議員立法で成立をいたしておる。私はちょっとこの歴史を、十分でありませんけれども、簡単に調べてみました。
 御承知のように、敗戦後憲法その他諸制度一新をするということで各般の法制等の改革がなされておる。その際に、裁判所法それから検察庁法それから弁護士法の改正が昭和二十一年に問題になった。そして検察庁法、裁判所法は昭和二十二年三月に国会で成立をしておる。これは現在のものでございます。ところが、弁護士法に対しては、昭和二十一年九月に当時の司法省に弁護士法改正準備委員会というのができて、そこでいろいろ検討されたのでありますけれども、内容について各方面の議論がいろいろあって、なかなかまとまらない。その間に、いま申し上げましたように裁判所法、検察庁法は翌年の昭和二十二年三月に成立をいたしておる。そこで、その当時の弁護士会といいますか、弁護士の皆さん方が、とてもこれでは間に合わない、議員立法に頼もうじゃないかということで非常な運動といいますか、努力をされたようでありまして、それが昭和二十四年三月でありますけれども、衆議院の法務委員会で取り上げられております。ところが、いま御指摘になりましたような問題点がGHQ、いわゆる占領軍からその当時指摘されております。第一の問題は何かというと、いまの弁護士法でございますが、それに対して、この規定の内容は憲法七十七条との関連で適当でないじゃないかという指摘でございます。もう一つは、弁護士会に強制加入の問題で、これは職業選択の自由に関する憲法違反であるという指摘をGHQから受けております。非常などさくさの間に、二十四年三月二十八日でございますが、衆議院法務委員会で取り上げられて、それが最終的には同年の五月二十七日に成立いたしておりますが、一遍衆議院を通過して参議院でまた修正され、それがまた衆議院に返って、草々の間に衆議院の議決どおりに成立した、こういういきさつになっておる法律でございます。
 そこで、強制加入の問題についてはこういうことが言われております。長々申し上げませんが、日本の弁護士の歴史を見ると、いつまでであったか私も記憶がはっきりしておりませんけれども、前の弁護士法が制定されるまでは、いわゆる三百代言ということで、資格が明確でない町の法律家が担当しておって社会にいろいろな弊害を流しておるということで、旧弁護士法ができた。ところが、まだまだそういう弊害が今日残っておる、昔の三百代言みたいな弊害を社会に及ぼしておる、であるからわが国においてはどうしても強制加入にして、弁護士の資質を向上させ、統制をとらなければいけないのだという説明が加えられて、そういう事情ならやむを得ぬということでGHQも了解をしたという経過になっておるようであります。
 こういう経過で草々の間にできて、いま三十年たっておりますが、これは憲法違反であるとかなんとかいうことは別問題として、重要な職責に関する法律でありますから、率直に申し上げて、もう一遍つぶさに検討してみる必要がある時期に来ておる。
 それからもう一つ、先ほど行政事務の問題でいろいろ触れられました。こういう点を考えましても、理屈を言うようで恐縮でありますが、わが国の政治はいわゆる国民主権となっている。そして立法、司法、行政に分かれておる。これはいずれも国民監視の中で、国民の監督のもとに立法、司法、行政が行われておる。国会は選挙という国民の監督を受ける。行政もやはり国会という国民の代表者の監視を受ける。全部国民に責任を負うという姿になっておる。裁判もしかりであります。裁判も最高裁判所は御承知のとおり国民審査に付せられ、その他の裁判官は内閣の責任で任命して内閣が責任を負う。すべて国民の主権に発して、国民の監督の組織になっておる。そして弁護士はいま全く自主独立の法律になっておる。ところが特に刑事裁判においては、よく弁護士の皆さすも言われますが、裁判は裁判所、検察それから弁護士の三本の柱によって成っておる。こういうことになっておりますが、この弁護士関係については国民の監督、監視は一つも及ばないたてまえになっておる。ここに問題がある。私は率直にこういう歴史を考え、法制を考えてみると、いまやもう再検討といいますか、憲法との関係あるいは国民主権との関係、こういう点をもう少しつぶさに検討してみる時期に来ておる、こういうことだと思います。
#147
○飯田委員 時間が来ましたので、最後に一つだけお尋ねします。
 これは弁護士法五十八条の問題ですが、弁護士の非行の懲戒権はその弁護士の所属弁護士会の権限としております。この制度は私人が私人を罰することを認めるものではないか、また憲法が禁止しておる特別裁判所の設置を実質上認めると同じではないか、あるいは司法権を裁判所に専属させた憲法七十六条の規定に違反するのではないか、こういう疑問があるのでございます。
 なぜかといいますと、弁護士法五十七条は「懲戒の種類」として、二年以内の業務の停止、退会命令、除名を掲げております。ここで問題なのは退会命令、除名の実質でございます。弁護士会は今日強制加入を法律でもって決めておる、こういう状況において退会命令とか除名ということは弁護士をやめさせるということであります。つまり飯を食うていく道を断たせることであります。明らかにこれは刑罰であり追放であります。追放という刑罰がありますが、明らかに追放に該当いたします。一番重いのが追放であって、軽い方で二年以内の業務停止、このようになっております。こうした処分は弁護士の職業的活動を私人の処分によって不能ならしめるものでありまして、行刑権及び裁判権の侵害である疑いがあるわけであります。このような懲戒は一私人たる法人が、たとえそれが公法人でありましょうとも、行う限度を超えるものではないか、そういう考え方が成り立つのではないかと思うのでございますが、こうした懲戒について、憲法違反ではないかと思われるような懲戒規定をつくることはやめて、懲戒手続法という法律を決めて、国家機関によってそうした刑罰に属するような懲戒は行うのが正しいのではないかと思われるのでありますが、この点について法制局長及び法務省の御見解を承りたいのであります。
#148
○大井法制局長 直ちに現行制度が憲法上少なくとも違憲であるかどうかという点に関しましては、私は先ほど来現行法の解釈という立場で申し上げておるわけでございますが、弁護士会及び日本弁護士連合会が完全な自治統制のもとに構成されておるという限りにおきましては、懲戒まで自主的に処分ができるような公の権能を法律が与えておるわけでございますが、この点は完全自治を遂行すために異例ではございます。他には例を見ないのでございますが、そういった立法の趣旨そのものから言って、直ちにこの団体に懲戒権を与えたからといって憲法上問題であるとは考えないのでございます。やはり一つの行政処分として法律が公の権能によって、先ほど来の趣旨によって与えたものだと解釈しておるわけでございますが、御意見は御意見として、これは私の立場からとやかく申し上げるわけにもまいりませんが、十分拝承いたしまして検討させていただきたいと思います。
#149
○飯田委員 法務省の意見を聞く前にちょっと申します。
 私は、ここで懲戒権――法律にはなるほど懲戒権と書いてあるけれども、この懲戒権の実質は司法権ではないかということをお聞きしているのです。といいますのは、とにかく懲戒の種類として挙げておりまするものは、明らかにこれは追放であります。追放という刑罰もあるのですが、これは一種の刑罰なんです。刑罰を決めておいて、名前だけそれを懲戒としておるからそれは刑罰ではない、そういう考え方は形式論だと私は思います。問題は、処罰される弁護士の身になって考えなければいかぬと思うのです。処罰される弁護士になれば、とにかく飯を食うていくことができなくなる。追放されてしまう。追放された者はもちろん検察官にも裁判官にもなれません。これは明らかに法曹界からの追放でありますので、こういう重い刑罰を――明らかにこれは刑罰なんですね、こういう刑罰を科する規定を懲戒権という勝手な名前をつけて、そしてこれは合憲だと言うのは筋が通らないのではないか。そしてまた、こうした懲戒を行うに当たりましていろいろ審査がございましょうが、これは刑罰に値するものを科することについての審査ですから一種の裁判なんですね。そうしますと、弁護士会というのは特別裁判所だ、こういうふうに言わざるを得ないことになるのです。そうしたことは憲法が禁止しておるではないか、特別裁判所の設置は禁止しておる。それから、もし刑罰に当たるようなそういう内容のことを国民に科する場合は、それは司法権によって行うべき問題であります。司法権は裁判所に専属させておるわけですから、そうした裁判を弁護士会に属させる結果になる規定は憲法違反ではないか、このように申し上げておるのです。
#150
○枇杷田政府委員 ただいまの点につきましては、なるほど除名とか退会処分とかというものが公法上、本人にとって不利益な処分を与える点では非常に重要な効果を持つものであることは御指摘のとおりだと思います。しかし、これは私どもは刑罰とまでは考えておらないわけでありまして、あくまでも行政処分である。公務員におきましても、懲戒処分としての免職ということもございますし、なおほかの業法におきましても、それぞれ登録の取り消しといったようないわば弁護士会の除名に当たるような処分の規定はあるわけでございます。したがいまして、この弁護士会のなします除名は、行政処分としての行為であるというふうに理解をいたしております。なお、御承知のとおり、そのような処分について本人が不服である場合には、最終的には東京高等裁判所において、行政訴訟の形で争うことができることになっておるわけであります。
 先生御指摘の理由とは違いますけれども、しかし現在の弁護士会におきます懲戒の手続がそれでいいかどうかということになりますと、むしろ弁護士会の自治能力、自律機能というものを非常に高く評価してできました現在の弁護士法の考え方が、果たして現実に機能しているかどうかという面において問題がある。そういう面から弁護士会における懲戒手続を検討する必要があるのではなかろうかというふうに問題をとらえておるわけであります。
#151
○飯田委員 では最後に結論をつけます。
 私はきょうの御答弁を承っておりまして、どうもこれは事務的な、現行法の枠内で何とかして憲法違反と言われるのを避けようという御答弁だというふうに受け取れるのです。ここで立法府として論ずる場合は、憲法に違反する疑いがあれば違反する疑いがあるということをはっきり指摘して、そのところを直していくのが立法府なんだ。それを直すというたてまえからでなくて、何とかしてごまかそう、これは憲法違反ではないというふうにしてしまおうということでは、立法府の議論としては私は成り立たぬと思うのです。これは行政府の理論であります。行政府で立法府でつくった法律を実行する上において、何とかしてうまくやっていこうという上の解釈論ならばそれでいいかもしれません。しかし、私がここで論じておるのはそういう問題ではありません。
 きょう、弁護士法の憲法違反の疑いのある制度について御質問申し上げました。これは御答弁を承りましたが、私は一つも疑念を解消するものではありません。ますます疑いを増すというものであります。この問題については私は憲法論として論じておるので、いまの日本弁護士会そのものをどうこうという具体的なことを言っているのではないのです。あくまでも、弁護士法という法律がどうも憲法の立場から粗雑につくられておるということを感ぜざるを得ませんので、こうした質問をいたしたわけであります。どうかひとつこういう点につきまして虚心に検討していただきまして、憲法に違反するような法律、少なくとも憲法違反の疑いを受けるような法律が存在することがないように御処置をいただきたいと思います。この問題は法務省の所管であると思いますので、私は法務大臣に特にお願いをしておく次第であります。
#152
○瀬戸山国務大臣 先ほども申し上げましたようにいろいろ疑義がある点が指摘されて、われわれから見てもさような感じをいたしております。でありますから、成立後三十年たちました今日、やはり再検討をしてみる必要がある、かように考えますから検討を進めたいと思います。
#153
○飯田委員 時間が参りましたのでやめます。
#154
○鴨田委員長 次回は、明後六月二日金曜日午前十時理事会、十時十分委員会を開会することにし、本日は、これにて散会いたします。
    午後一時二十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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