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1977/03/02 第84回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第084回国会 本会議 第10号
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1977/03/02 第84回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第084回国会 本会議 第10号

#1
第084回国会 本会議 第10号
昭和五十三年三月二日(木曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第九号
  昭和五十三年三月二日
    正午開議
 第一 特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法
    案(第八十二回国会、内閣提出)
 第二 沖繩振興開発金融公庫法の一部を改正す
    る法律案(内閣提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 永年在職の議員森山欽司君に対し、院議をもつ
  て功労を表彰することとし、表彰文は議長に
  一任するの件(議長発議)
 永年在職の故議員川崎秀二君に対し、院議をも
  つて功労を表彰することとし、表彰文は議長
  に一任するの件(議長発議)
 日程第一 特定空港周辺航空機騒音対策特別措
  置法案(第八十二回国会、内閣提出)
 日程第二 沖繩振興開発金融公庫法の一部を改
  正する法律案(内閣提出)
 特定不況産業安定臨時措置法案(内閣提出)の
  趣旨説明及び質疑
    午後零時十四分開議
#2
○議長(保利茂君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 永年在職議員の表彰の件
#3
○議長(保利茂君) お諮りいたします。
 本院議員として在職二十五年に達せられました森山欽司君に対し、先例により、院議をもってその功労を表彰いたしたいと存じます。表彰文は議長に一任せられたいと存じます。これに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(保利茂君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 表彰文を朗読いたします。
 議員森山欽司君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた
 よつて衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもつてこれを表彰する
    〔拍手〕
 この贈呈方は議長において取り計らいます。
    ―――――――――――――
#5
○議長(保利茂君) この際、森山欽司君から発言を求められております。これを許します。森山欽司君。
    〔森山欽司君登壇〕
#6
○森山欽司君 このたび、永年在職議員として院議をもって表彰の御決議をいただきましたことは、身に余る光栄であります。
 思えば、私たちの年代の者は太平洋戦争の犠牲となること最も大きく、あの戦争でたくさんの友人を失いました。命長らえた私は、若くして散った友人たちの分まで働かねばならない責務があると痛感いたしました。
 そして、あの惨たんたる敗戦の大混乱から祖国を再建しなければという一途な気持ち、いまから思いますと、青年の客気とも言うべきものに駆られて、あえて政治の世界に飛び込みました。以来、戦後、政治の幾変遷に遭遇し、また、私自身も山あり谷あり、紆余曲折を経て今日に至りました。
 在職二十五年の本日を迎え、感無量であります。これひとえに、先輩、同僚議員各位を初め、友人知己の御厚情、御鞭撻のたまものであります。
 また、この光栄と喜びは、栃木県選挙区の方々、特に無名の一青年であった私を育て、終始一貫支持し、苦楽をともにした同志多数の諸君とともに分かつべきものでありまして、心から感謝の意を表する次第であります。(拍手)
 私は、本年が自分の在職二十五年に近いことは漠然とは感じていましたが、それがこの三月であるということは、昨年の暮れ、民主党以来の先輩である川崎秀二先生に伺って、改めて承知をいたしました。
 私も川崎先生と同時に表彰を受けるはずであるということであり、特に、先生は、先代川崎克先生とともに、衆議院においては例の少ない親子二代の表彰であることをひそかな喜びとして、誇りとしておられました。
 また、先生は、関係資料を克明に調べられており、明治以来、代議士と名のつく者は累計一万四千六百八十七人、重複する者を除く実人員は五千百八十四人おり、そのうち永年在職議員の表彰を受ける者は、川崎先生で百七十人目、私が百七十一人目であるということでありました。
 そして、今日のことを大変待望され、すでに謝辞の草稿を初め、「憲政に光を掲げた人々」という記念出版まで準備しておられました。
 その今日を待てず、川崎先生は、去る二月二十二日、卒然として逝去されたのであります。
 先例によれば、日数が六日間不足ということでした。さぞ残念であられたろうと、その御心中をお察ししておりましたところ、本日、本院において特別の御配慮をいただけるということになりました。
 はからずも、私だけがこのような謝辞を申し上げる立場になりましたので、順序が先後してはなはだ恐縮であり、また僣越でありますが、御遺族のお気持ちを体して、あえてこの機会に、故川崎代議士にかわり、厚く御礼を申し上げます。(拍手)
 二十五年を目前に亡くなった川崎先生のことを思いましても、私は、健康にてこの日を迎え、元気に働くことができるありがたさをしみじみと感じます。そして、この内外ともに多事多難な時期に、この栄誉を与えられた者の使命の重大さを思うのであります。
 今後、一層精励して、国民の負託にこたえるため、最善の努力を尽くす所存であることを申し述べ、お礼の言葉といたします。ありがとうございました。(拍手)
     ――――◇―――――
#7
○議長(保利茂君) お諮りいたします。
 議員川崎秀二君は、去る二月二十二日逝去せられました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
 川崎秀二君は、本院議員としてすでに在職二十四年十一カ月に達しておられました。
 この際、議院運営委員会の決定に基づき、同君に対し、院議をもってその功労を表彰いたしたいと存じます。表彰文は議長に一任せられたいと存じます。これに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○議長(保利茂君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。(拍手)
 表彰文を朗読いたします。
 故議員川崎秀二君は衆議院議員に当選すること十一回在職二十四年十一月に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた
 よつて衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもつてこれを表彰する
    〔拍手〕
 この贈呈方は議長において取り計らいます。
     ――――◇―――――
 日程第一 特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法案(第八十二回国会、内閣提出)
#9
○議長(保利茂君) 日程第一、特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。運輸委員長増岡博之君。
    ―――――――――――――
 特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔増岡博之君登壇〕
#10
○増岡博之君 ただいま議題となりました特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法案につきまして、運輸委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案の主な内容は次のとおりであります。
 まず第一に、おおむね十年後において、その周辺の広範囲な地域にわたり、航空機の著しい騒音が及ぶこととなり、かつ、宅地化が進むと予想されるため、その周辺について航空機の騒音により生ずる障害を防止し、あわせて適正かつ合理的な土地利用を図る必要があると認められる空港を、政令で特定空港として指定し、この指定があったときは、特定空港の設置者は、おおむね十年後における航空機の著しい騒音が及ぶこととなる地域及びその騒音の程度等を示して、当該地域を管轄する都道府県知事に対し、航空機騒音対策基本方針を定めるべきことを要請しなければならないことといたしております。
 第二に、都道府県知事は、右の要請があったときは、航空機の著しい騒音が及ぶこととなる地域及びこれと一体的に土地利用を図るべき地域について、関係市町村長、関係住民等の意見を聞き、運輸大臣及び建設大臣の同意を得て、航空機騒音対策基本方針を定め、これに基づき、特定空港の周辺で都市計画区域内の地域において、都市計画に航空機騒音障害防止地区及び航空機騒音障害防止特別地区を定めることができることといたしております。
 第三に、航空機騒音障害防止地区内において住宅等を建築する場合には、防音構造としなければならないこととし、また、航空機騒音障害防止特別地区内においては、都道府県知事が許可した場合を除き、住宅等の建築をしてはならないことといたしております。
 第四に、このような航空機騒音障害防止特別地区内における住宅等の建築の禁止により通常生ずべき損失は、特定空港の設置者が補償しなければならないこととするとともに、土地の利用に著しい支障を来すこととなる場合は、当該土地の所有者の申し出により、当該土地を時価で買い入れるものといたしており、また、航空機騒音障害防止特別地区に現に所在している住宅等については、特定空港の設置者は、移転希望者に対し、移転補償及び土地の買い入れを行うことができることとしております。
 第五に、国である特定空港の設置者が買い入れた土地を、地方公共団体が公園、広場等に利用するときは、無償で使用させることができることとするとともに、国は、地方公共団体が航空機騒音対策基本方針に適合し、かつ、航空機騒音による障害の防止に資する施設の整備を行うときは、その整備に要する経費の一部を補助することができることといたしております。
 本案は、第八十二回国会の昨年十月十四日に提出され、今国会に継続審査となったものでありまして、昨年十一月一日政府から提案理由の説明を聴取し、自来、建設委員会、公害対策並びに環境保全特別委員会と連合審査会を開き、また、参考人から意見を聴取する等、六回にわたって慎重に審査を重ね、今国会におきましても、二月二十八日質疑をいたしたのでありますが、その詳細は会議録に譲ることといたします。
 かくして、二月二十八日質疑を終了し、次いで、原案附則中の本法律案の法律番号に関する公布年がすでに経過していることに伴い、公布年を改める自由民主党、公明党・国民会議、民社党、新自由クラブの四党共同提案の修正案が提出され、その趣旨の説明を聴取し、日本社会党の渡辺芳男君、日本共産党・革新共同の小林政子君からそれぞれ反対の討論があった後、採決の結果、本案は多数をもって修正議決すべきものと議決した次第であります。
 なお、本案に対し、特定空港周辺の航空機騒音対策等のための関係住民を含む協議会の設置及び先住者の住宅の改築等による防音工事に係る経済的負担に対する助成について、五党共同提案に係る附帯決議が全会一致をもって付されました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#11
○議長(保利茂君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#12
○議長(保利茂君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。
     ――――◇―――――
 日程第二 沖繩振興開発金融公庫法の一部を改正する法律案(内閣提出)
#13
○議長(保利茂君) 日程第二、沖繩振興開発金融公庫法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。沖繩及び北方問題に関する特別委員長竹本孫一君。
    ―――――――――――――
 沖繩振興開発金融公庫法の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔竹本孫一君登壇〕
#14
○竹本孫一君 ただいま議題となりました沖繩振興開発金融公庫法の一部を改正する法律案につきまして、沖繩及び北方問題に関する特別委員会における審査の経過並びに結果について御報告申し上げます。
 本案は、沖繩における産業の振興開発に資するため、沖繩振興開発金融公庫の機能の拡充を図ろうとするものでありまして、その主なる内容は次のとおりであります。
 すなわち、第一には、本公庫に従来の融資機能のほか、新たに民間企業に対する出資機能及び債務保証機能を付与することであります。
 第二には、出資機能及び債務保証機能を付与することに伴い、公庫の経営の健全性を確保するため、出資及び債務保証をすることができる限度を設けることであります。
 第三には、出資及び債務保証に関する業務の方法を業務方法書に定めること、及び以上の改正に伴って、公庫の予算及び決算に関する法律についても所要の改正を行うことにしております。
 本案は、去る二月十六日本委員会に付託され、翌十七日稻村沖繩開発庁長官から提案理由の説明を聴取し、慎重に審査を進めてまいりましたところ、去る二月二十八日質疑を終了し、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
 なお、本案に対し、全会一致の附帯決議が付されました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#15
○議長(保利茂君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#16
○議長(保利茂君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 特定不況産業安定臨時措置法案(内閣提出)の趣旨説明
#17
○議長(保利茂君) 内閣提出、特定不況産業安定臨時措置法案について、趣旨の説明を求めます。通商産業大臣河本敏夫君。
    〔国務大臣河本敏夫君登壇〕
#18
○国務大臣(河本敏夫君) 特定不況産業安定臨時措置法案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 わが国経済の現状は、長期にわたる内需不振に加え、昨年後半以降の急激かつ大幅な円高により産業全体が深刻な打撃を受け、企業体力の低下と雇用不安の深刻化が危惧されております。
 とりわけ、原燃料価格の上昇、安定成長への移行に伴う需要の長期低迷等、構造的要因によって著しい過剰設備を抱えるに至っているいわゆる構造不況業種は、その不況が一層長期化し、かつ深刻化しております。
 このような事態を放置すれば、構造不況業種に属する企業の存続を困難にし、雇用不安を生じるなど重大な社会的、経済的混乱を引き起こすおそれがあります。
 こうした事態を回避するためには、一般的な景気拡大策あるいは従来から講じてまいりました短期の生産・価格調整等の対策のみでは不十分であります。構造不況業種につきましては、その不況事態を招いている共通かつ基本的な原因である過剰設備についてその処理を促進し、構造改善を進めることが現下の急務となっているのであります。
 本法案は、このような状況にかんがみ、構造不況業種について、その実態に即した基本計画を策定し、事業者の自主的な努力を前提としながら、過剰設備の処理の促進等のための措置を講ずることによって、構造不況業種の不況の克服と経営の安定を図ることを目的として立案されたものであります。
 次に、この法案の概要について御説明をいたします。
 第一は、本法による措置の対象となる業種の指定についてであります。
 本法においては、まず、対象候補業種を、平電炉業、アルミニウム製錬業、合成繊維製造業、船舶製造業及び著しい過剰設備に起因する長期の不況を過剰設備の処理等によって克服することが国民経済の健全な発展を図るため必要な業種として、関係審議会の意見を聞いて、この法律の施行の日から一年以内に政令で指定する業種に限定しております。次いで、これらの対象候補業種の中から大部分の事業者の申し出があったものを特定不況産業として政令で指定し、この法律による措置の対象とすることとしております。
 第二は、安定基本計画の作成についてであります。
 主務大臣は、特定不況産業ごとに、関係審議会の意見を聞いて、不況の克服と安定を図るための安定基本計画を作成することとしております。安定基本計画には、過剰設備の処理目標、設備の新増設の制限、事業転換等、不況の克服と安定を図るための基本的な事項を定めるものとしております。
 第三は、過剰設備の処理及び設備の新増設の制限についてであります。
 本法におきましては、安定基本計画に定める過剰設備の処理その他の措置については、事業者が自主的に行うよう努めることを要請しております。
 しかしながら、事業者の自主的な努力のみをもってしては安定基本計画が円滑に実施されない場合で特に必要と認められるときには、主務大臣は、関係審議会の意見を聞いて、過剰設備の処理及び設備の新増設の制限についての共同行為の実施を指示できるものとし、その指示に従った共同行為は独占禁止法の適用を除外することとしております。主務大臣がこの共同行為の実施を指示しようとするときは、公正取引委員会の同意を必要とすることとしており、また、公正取引委員会は、その共同行為の内容が一定の要件に適合しなくなったと認めるときは、主務大臣に指示の変更等を求めることができることとしております。
 さらに、本法におきましては、最近の厳しい雇用情勢にかんがみ、安定基本計画に従って実施される過剰設備の処理その他の措置に関し、事業者はその雇用する労働者の失業の予防その他雇用の安定に配慮すべきこととするとともに、国等は失業の予防その他雇用の安定等を図るため必要な措置を講ずるよう努めるべきこととしております。
 第四は、特定不況産業信用基金についてであります。
 特定不況産業信用基金は、本法に基づき、産業または金融に関し学識を有する者が発起人となり、大蔵大臣及び通商産業大臣の認可を受けて設立されるものであります。
 この基金は、特定不況産業における計画的な過剰設備の処理を促進するため、安定基本計画に従って実施される過剰設備の処理のため必要となる資金等の借り入れに係る債務を保証して、その資金等の融通を円滑にするものであり、その債務保証の原資は、日本開発銀行の出資及び民間の出資または出捐によるものとしております。
 以上が本法案の概要でありますが、本法は、構造不況業種の不況の克服と安定を図るため必要な期間を勘案し、昭和五十八年六月三十日までに廃止するものとしております。
 本法に基づくこれらの施策は、構造不況業種の不況の克服と安定に欠くべからざるものであり、構造不況業種をめぐる事態の重大性及びその対策の緊急性にかんがみまして、ぜひとも早急に本法案の制定を図ることが必要であると信ずる次第であります。
 以上が本法案の趣旨でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 特定不況産業安定臨時措置法案(内閣提出)の
  趣旨説明に対する質疑
#19
○議長(保利茂君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。後藤茂君。
    〔後藤茂君登壇〕
#20
○後藤茂君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案されました特定不況産業安定臨時措置法案について、総理並びに関係各大臣に質問をいたしたいと思います。
 総理は、かつて石油危機後のわが国経済を全治三年の重症と診断をいたしました。さらに、昨年は、梅雨空の向こうに青空が広がると言い、また、今国会の施政方針演説でも、七%経済成長の実現に全力を傾けることによって、日本経済の五年越しの長いトンネルも出口がはっきりすると述べております。
 これらを結果として見ますと、その場その場を糊塗するための場当たり発言であったと言わざるを得ないし、本法律案もまさにそのたぐいではないかとの疑念を持たされるのであります。
 総理、本法律案は七%成長実現とは逆行するものではありませんか。望ましい構造転換の方向をかえってゆがめる危険性をはらんではいないでしょうか。福田総理の基本的な考えを、まず冒頭にお聞きしておきたいと思います。
 いま私たちの周囲は、不況打開の大合唱に取り囲まれております。その対策を急ぐことももちろんですが、この大合唱に心を奪われて、マクロの視点を忘れたならば、まさに角をためて牛を殺すことになります。
 ところが、政府の見通しや策定する計画は、最近の天気予報よりも当たりが悪いばかりか、マクロにとらえる座標軸が不確かなために、かえって混迷を深めているのが実態ではありませんか。
 昨年の産業構造審議会の報告書を見ますと、「多くの分野で、実態がどのように展開していくか予断を許さない。いわば不確実性に満ちた状況にある」と指摘しているのであります。
 しかも、内に高度成長政策の矛盾を吹き出させ、外に国際経済の激しい変化にさらされながら、自由経済の枠を崩さずに、産業構造の安定基本計画が立てられると総理は本気でお考えでしょうか、お伺いをしたいのであります。
 御承知のように、本法律案は、恒久施策と緊急施策が整理されないまま、せっかちに処理をされております。そのため、本法律案は基本的性格をあいまいにしてしまいました。
 総理、構造不況は決して偶発的なものではないでしょう。政府も企業も高度成長に踊り狂った結果の過剰蓄積であることは周知の事実であります。世界的不況はこの過剰蓄積を衝撃的に顕在化させました。内需の停滞と過剰資本圧力による輸出急増は、円高となって、この矛盾をより増幅させたのであります。
 とするならば、構造不況対策は、基本的には今日の経済体制、産業構造の転換にまで手をつけなければならない性格のものであります。もしそこまで踏み込めないならば、今日とるべき対策は、急激な摩擦を回避ないし緩和するための緊急避難立法でなければならないのではないでしょうか。総理は、この法律案でいずれの考えを貫こうとしているのか、お伺いをいたしたいと思います。
 私は、同様の質問を角度を変えて通産大臣にお尋ねをしたいと思います。
 大臣も御承知のように、戦後三十数年間、政府は産業政策の目標を掲げてまいりました。昭和二十年代の自立経済の達成、三十年代の重化学工業化、そして四十年代の産業構造の知識集約化等がそれであります。かくて、量の上では、欧米に追いつき追い越した経済大国が現実のものとなりました。
 さて、現在はどうか。福田総理の言葉をかりれば、わが日本丸は羅針盤のない航海を続け、次の政策目標すら定め得ないままさまよっているのではありませんか。このことは、経済人でもある通産大臣が最もよく御存じのところではないでしょうか。大臣はこの段階でどのような産業政策目標をお持ちか、ぜひお伺いをしておきたいのであります。
 私がこのことを繰り返しただしておきたいのは、本法で言う「国民経済の健全な発展に資する」産業構造とは一体いかなるものであるかを知りたいからです。本法律案を提出された以上、それは関係審議会に聞いてからだというものではありますまい。もし将来の産業構造について展望がないとすれば、行き当たりばったりで、かえって不安と混乱を招くだけであります。この法律にうっかり乗るわけにはいかないぞ、こういう警戒する見解が多くなってきている現実を通産大臣はどう理解されておられるのか、お聞きをしたいのであります。
 構造不況といっても、一律ではありません。一時不況業種と言われたセメントを初め小棒や合板も需給好転の兆しを見せ始めております。もちろん、過剰設備の実態は変わらないでしょう。しかし、目標の定かでない船に乗るよりは当面の市況に目を奪われるのが個々の企業の姿であります。本法律案はこのような動きにどういう役割りを果たすことができるのか、また、限界企業を温存し、健全な企業の活力を阻害するおそれがないかどうか、国民は注目をしているのであります。
 本来、不況産業対策といっても、企業の自己責任にかかわる問題です。不況対策に名をかりて、本法が企業や金融機関の責任をあいまいにしてはならないと思いますが、通産大臣の率直な見解をお聞きしたいと思います。
 次に、ここでぜひはっきりさせておきたい問題があります。それは国際経済とのかかわり合いであります。
 本法律案で言う安定基本計画の前提となる需給想定は、国内需要面のみで立てられるはずはありません。必ず国際経済動向が問題となります。また、需給想定は価格との関数を抜きにして考えられぬことも常識であります。とすれば、どの程度の対ドル為替相場水準を想定して安定計画を立てようとするのか、通産大臣の腹づもりを明らかにしてもらいたいのであります。
 さらに、輸入規制と併存させるのかどうか、海外諸国との相互依存、協力関係のもとにおける新たな国際貿易秩序が求められておりますが、これとどう関連させるのか、あわせてお聞きをしたいと思います。
 次に、私は、独禁政策と産業政策との関連について質問をしたいと思います。
 本法律案は、指示カルテルと債務保証によって過剰設備の処理を図ろうという内容になっております。しかも、企業間の合意が得られない場合、国が処理目標、方法、期間、場合によっては割り振り基準まで示して、事実上強制することになるわけであります。
 ところが、本法律案を見ますと、債務保証を別とすれば、産業構造審議会を活用をし、独禁法の不況カルテルの運用で対応できるのではないかと読めるのですが、通産大臣、行政の指導ではどうしてもだめだという理由をここに明らかにしていただきたいと思います。
 このことと関連して、公取委員長の見解をお聞きしたいと思います。
 最近は、欧米先進国でも共通の現象として独禁政策は強められる傾向にあります。わが国でも昨年、強化の法改正がなされたことは御承知のとおりであります。このことは、独占の弊害規制とともに競争市場秩序を回復させる中で、この転換期に対応する企業の活力を引き出そうとしたからであります。公正取引委員長、独禁法の不況カルテルによって設備廃棄をすることと、本法の指示カルテルによって設備廃棄することに公正取引委員会が同意することと、質的にどう違うのでありますか。国の産業政策の中で、その位置づけの相違をどう把握しているのか。なぜ別の法律が必要と考えるのか。カルテル政策の統一性と関連をいたしまして、公正取引委員長の明確なお答えをいただきたいと思います。
 最後に、私は雇用の問題についてお尋ねをいたします。
 本法律案が提案されました背景には、構造的不況という現実認識がありますが、この非常事態というのは、ひとり企業だけの問題ではなく、それ以上に、勤労者にとってはもっと深刻な非常事態であることを見過ごすことはできません。国民経済上の必要から企業に対して強力な行政施策が講ぜられるというならば、それと同等の比重をもって、勤労者に対しても雇用の安定の措置がとられて当然でありましょう。
 労働大臣、勤労者のことを考えない政治があってよろしいでしょうか。企業における政策と労働における政策は対等でなければならないのであります。このことは国が各種政策を樹立する原点でありますし、この基本的な原点に立たないでどうして国民経済と国民生活の安定について将来の展望が望めるでありましょうか。本法律案のように、企業に対する行政施策によって合法的に職が奪われることもやむを得ない、あとは離職者対策臨時措置法を受けざらとする、と言うに至っては、雇用の安定施策はないに等しいと言わざるを得ないのであります。(拍手)
 労働大臣、不況産業対策の最重要課題は雇用の安定です。第一条目的にこのことを明記せずして、何で労働大臣の責任が果たされるでありましょうか。指示カルテルでも同様です。雇用の安定は、単なる消極的要件にされているではありませんか。
 本法律案の雇用安定等に関する規定でも、事業者は「配慮しなければならない。」とか、国及び都道府県は「努めるものとする。」とかと、法律的には実質的効果の薄い訓示規定であります。もっと強い義務規定にするべきであると思いますが、労働大臣、いかがでございましょうか。
 また、関係審議会に労働者代表を加えることによって、政府と企業と勤労者、換言すれば、国民的な合意のもとに安定基本計画の策定、指示を行うべきだと思いますが、労働大臣の積極的なお考えをお聞きしたいのであります。
 私は、先ほど来、特に雇用の安定を強調してまいりましたが、完全雇用をここで言おうとしているのではありません。不況対策を産業政策として進めながら、雇用は市場原理に任せるというその姿勢が許せないのであります。(拍手)
 そこで、重ねて労働大臣にお聞きします。雇用の新たな創出、再雇用についての政府の責任を果たすために、積極的な施策を講ずる意思がおありかどうか、労働大臣の率直な見解を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕
#21
○内閣総理大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。
 まず、今回の政府提案はどうも時局が要求しているものでなくて、むしろそれに逆行するような性格のものじゃないか、こういうような御意見を交えての御質問でございますが、私は、今日、どういうことが経済政策として要請されておるかということを考える場合におきまして、正しく今日の経済状態というものを分析してみなければいかぬと思うのです。
 私は、一般的に言いますと、わが国はいま設備過剰の企業、これが非常に多いという状態である。それに対しましては需要を創出するという考え方をとらなければならぬ。そこで、五十三年度予算におきましても御審議をお願いいたしておりますが、政府が中心になって需要を創出する、これ以外に道はない、このような考え方を一般的にとっておるわけであります。
 ところが、わが国の企業の中には、そういう一般的な需要創出効果だけでは対処し切れない産業がある。これが先ほど通産大臣から構造不況業種として御説明申し上げた業種でございます。これに対しても、一般的需要創出対策と同時に対策をとらなければならぬ。この対策は、構造不況業種の実態が設備過剰というものに本質があるということに着目するときに、今日、現在の法体系のもとでは対処し切れない、そこで、今日新しい提案を申し上げておる、こういうようなことでございますが、この考え方以外に、私は今日のこのもやもやとした日本の経済の現状というものを打開する方途はない、そう確信いたします。何とぞ御理解を願いたいのであります。
 同時に、安定基本計画という産業構造の基本にかかわる施策と当面の不況克服という緊急避難的施策とが未整理のままにこの法案の背景に混在しておるのではないか、そのような御疑念でございますが、そのようなことはございません。ただいま申したように、わが国の経済の状態、実態というものは、一般的に申して企業の中に設備過剰のものが多い。また同時に、企業の中の多くのものが構造的不況要因というものを抱えておる。この両面に対して対策を講じなければならぬ、そういうふうに考えておるのでありまして、したがいまして、一般的な対策としてとっておるところのこの需要創出の政策、これは政府が中心になっておりますが、やがてこれが民間に波及いたしまして、そして国全体としての需要の盛り上がりをもたらすであろう。私はそういうことを考えまするときに、いまとっております五十三年度予算を中心とする施策、これこそは緊急避難というか臨時的な施策でございます。今日御提案申し上げておりまするところの施策、これは恒久的というか、企業の中の、そういう長きにわたって立ち上がりが不可能であろうという企業に対しまして、再生のためのチャンスを与えようという施策でありまして、これこそ恒久的なものである、さように考えております。(拍手)
    〔国務大臣河本敏夫君登壇〕
#22
○国務大臣(河本敏夫君) まず、構造不況業種対策を進める場合に、円レートはどの辺に考えるべきかという御質問でございますが、この為替レートの問題は、御案内のように、わが国経済全体の動き、特に国際収支の動き、さらに米国の経済の動向、幾つかの要因が影響するわけでございまして、現時点で幾らの水準を想定しておるかということを具体的な数字を挙げて言うことは不可能でございます。しかしながら、昨年の年末に通産省が全産業及び中小企業について調査をいたしましたところ、昨年秋の急激な円レートの上昇によりまして、ほとんど全部の産業、中小企業が致命的な打撃を受けておるということを考えますと、実力以上の評価になっておるのではないか、このようにも考えられます。しかしながら、いずれにいたしましても、現時点では具体的な数字を挙げることは不可能でございます。
 それから、産業構造の転換との関係はどうかというお話でございますが、御案内のように、オイルショックまではわが国産業はそれぞれの分野でバランスがとれておったわけでありますが、オイルショックによりまして非常な大変動を受けまして、ある業種は設備が過剰になり、ある業種は不足をする、またある業種は適当な水準を維持するということで、各業種に対して非常に大きな影響を与えたのであります。そこで、産業構造審議会に今後の産業構造はいかにあるべきかということについて諮問をいたしました。昭和五十年に答申をいただいたわけでございますが、世の中が刻んに変わっておりますので、毎年、ローリングプランとして適当な手直しをしていただいております。でありますから、オイルショック以降の産業構造はいかにあるべきかということは、もちろん基本的には考えなければなりませんが、今回の法律は、オイルショックによりまして非常に大きな打撃を受けまして、一部の産業に大きな過剰設備が生じてまいりましたので、これをとりあえず処理しないことにはその業界全体が共倒れになってしまう、こういうことを憂慮いたしまして、特に法律によって再建のチャンスというものをつくっていきたい、こういうことを目的といたしておるのでございます。
 しかしながら、幾ら不況であるとは言いながら、自力でその業種が、その業界が立ち直るということが一番望ましいわけであります。自力で業界が立ち上がるということを期待しておりますが、どうしても自力ではやっていけない、やはり何らかの政府の援助が必要である、こういう業種に対しましては、大部分の業者の申し出によりまして、幾つかの条件をつけまして、それを審議会に諮って構造不況業種に指定することができるとなっております。そして、構造不況業種に指定されました業種が申し出をいたしますと、それに対しまして関係審議会の意見を聞きまして安定基本計画というものをつくることになっておりますが、これもやはり業界が自主的な努力でその安定基本計画の路線に沿って問題を解決していただくということが望ましいわけでございます。
 しかしながら、どうしてもその安定基本計画の路線が業界自身ではやっていけない、こういう場合には、万やむを得ず指示カルテルをつくることにいたしております。もちろん、指示カルテルをつくりましても、途中で情勢が変わることもございます。そういう場合には、当然臨機応変に対処することになっておるのでございます。
 以上が本法律案の大要でございますが、そのうち特に御質問をいただきました点についてお答えをしたわけでございます。(拍手)
    〔国務大臣藤井勝志君登壇〕
#23
○国務大臣(藤井勝志君) 労働者の生活の安定と福祉の向上ということは、これはもう労働省並びに労働大臣に課せられた使命の大前提であることは申し上げるまでもございません。そういった認識の上に立ちまして、失業の予防、再就職の促進、こういった職業訓練、職業転換、こういったものを踏まえまして、すでに雇用安定資金制度並びに先般成立を見ました特定不況業種離職者臨時措置法、こういったことを活用いたしましてすでに具体的に対策が進んでおりますことは、皆さん方御案内のとおりであります。
 特に、このたびの法案から予想される離職者の特殊性ということを考えまして、特定不況業種離職者臨時措置法を積極的に活用いたしまして、そして、四十歳以上の離職者に対しては、雇用保険の給付を九十日延長するということ、あるいは職業訓練待期手当、職業訓練手当、こういったことを配慮いたしておるわけでございますけれども、同時に、このようなことから、離職した方々を雇い入れる事業主に対してもこれが助成措置を行うことにいたしておるわけでございます。
 また、公共事業に吸収をするということも、これも法に定められた失業者吸収率制度を活用いたしまして、積極的に手配しなければならない、このように考えるわけでございます。
 何と申しましても、今度の、ただいま上程されました法案というのは、不況から脱出をしてそして経営の安定を図るという法案でございます。それに対して労働省としては、すでに準備をされて発足をいたしております雇用保険制度、雇用保険法の活用、あるいは先ほど申しましたような離職者法を活用いたしまして、これに対応する具体的な施策が進んでおるわけでございますから、大いにこういった点を強力に推進しなければならぬ。
 特にまた、ただいま法案に出ております第十条において、雇用の安定のためには国並びに都道府県が責任を持つということを明記しておるわけでございますから、先ほどからのいろんな御心配に対しては十二分にわれわれは構えをいたしておる、このように御理解いただきたいと思うのでございます。
 それから、本法案の運用に当たりましては、労働省としては、何といっても雇用の安定、労働条件の問題に直結いたすであろう問題でございますから、これが事前の協議ということについては、通産大臣はもちろんでありますが、事業官庁と事前に十二分に協議をする、こういった手配もいたしております。
 同時に、これらの施策を推進するに当たって審議会が設けられております。この関係審議会には労働組合の意向が十二分に反映されるように、審議会の構成、運営についても十分に配慮し、労働組合の代表の方々もこれに参加していただく、このように相なっておるわけでございます。
 そして、これは基本的な雇用対策の前提でございますけれども、われわれといたしましては、何とかして実質経済成長率七%、これをひとつなし遂げて、そして雇用の拡大を図っていく、こういつたことを背景に持って、具体的には先ほど申しましたような雇用安定資金制度あるいは特定離職者臨時措置法、こういった法律によって万全を期していきたい、このように考える次第でございます。(拍手)
    〔政府委員橋口收君登壇〕
#24
○政府委員(橋口收君) 御質問の中にもございましたように、昨年わが国において初めて独占禁止法の強化、改正が行われたのでございますし、またわが国と同様の経済体制を持つ先進諸国におきましても、近年ほとんど例外なく独占禁止政策の強化を行っている現状にかんがみまして、特定不況産業における不況の克服と経営の安定を図るに当たりましても、独占禁止法の精神は尊重されるべきものと考えます。
 現行の独占禁止法には不況カルテルという制度が用意されておりまして、法第二十四条の三に該当する要件が満たされます場合には、過剰設備の処理を共同行為によって行うことは可能であると考えております。本法案におきましては、過剰設備の処理は事業者及び業界の自主的努力によって行うことを基本としており、指示カルテルはこれらの自主的努力のみによってはその実効が上がらない場合に限り、独占禁止政策と十分調整を図った上で行われることになっておりますので、本法案によって独占禁止法の精神が損なわれることはないものと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#25
○議長(保利茂君) 鍛冶清君。
    〔鍛冶清君登壇〕
#26
○鍛冶清君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました特定不況産業安定臨時措置法案について、総理並びに関係各大臣に質問を申し上げます。明快なる御答弁をお願いいたします。
 長い長い、そして深刻な不況が続く中で、特に構造不況産業に属する企業、そこで働く労働者の皆さん、そして下請事業の方々が想像を絶する苦難の道を歩まざるを得なくなっていることは周知の事実であります。そこに温かな血の通った手を差し伸べることは、何人も争うことのできない切実な政治的課題であります。しかし、この課題の解決に当たっては、民主的な経済秩序の原則に従って、企業の自助努力を前提に、中小企業と労働者の皆さんに温かな配慮をし、構造改善を進めなければならぬことは当然のことでありましょう。しかも、繊維産業に典型的に見られますように、これまでの政府の構造改善対策は失敗の歴史であったと言っても過言ではありません。この事実についての厳しい反省を前提とする施策でなくてはなりません。こうした立場から見れば、本法律案に示された政府の構造産業対策には多くの疑問を持たざるを得ないのであります。
 以下、構造不況産業についての基本的な考え方、本法律案が構造改善対策として有効であるかどうか、また、立法の意図に反し、不公平の拡大をもたらす危険性があるのではないかなどの矛盾を指摘しつつ、具体的に数点にわたってお尋ねをいたしたいと思います。
 まず第一に、本法律案に関連して、政府の構造不況産業対策の基本的な態度をお尋ねをいたします。
 本法律案の発想は、特定不況業種を指定し、政府の策定する安定基本計画に基づき、過剰設備の廃棄などを通じて構造改善を実施するというものであります。
 しかし、構造不況の現状とその原因は、生産拡大一辺倒の高度経済成長政策のもとで見逃されてきた産業構造の変革のおくれが、石油危機後の長期不況、円高などによって構造不況をさらに深刻化させたものであり、それは、政府の高度経済成長政策のひずみがもたらしたものと言わなければなりません。さらに、政府の一時的、短期的なその場しのぎのカルテル政策が構造改善をおくらせてきたものと言えるのであります。
 私は、構造不況産業対策は、わが国経済の基本的な体質や全体構造の変革の中で位置づけられるべきであると思うのであります。また、その手法も統制的なものであってはならず、企業の自助努力を基本に労働者、中小企業、消費者の皆さん利益を害することのないものでなければならないと考えるものであります。
 しかるに、本法案は、かかる要請を満たすものではなく、対象業種も政令で指定できることとし、統制的色彩を持っていると言わざるを得ません。
 構造不況対策についての基本的態度並びに経済構造全体の変革との関連性をどうお考えになっているのか、また、特定不況業種の政令指定はもっと限定すべきであると考えるものでありますが、これらの諸点について御答弁をいただきたいのであります。
 質問の第二は、本法律案の有効性についてであります。
 本法律案によりますと、主務大臣は特定不況産業と指定された製造業に対し、安定基本計画を策定することになっております。
 しかし、安定基本計画の前提となる需給見通しの立案はきわめて困難というほかはありません。むしろ、これまでの政府の産業構造のビジョンなどに示された需給見通しがことごとく大幅に狂い、この需給見通しの狂いが過剰設備投資をもたらし、構造不況業種へと転落した業種すら存在するのであります。私は、誤りのない需給見通しを立てることは不可能ではないかとさえ考えているものでありますが、政府の見解を伺っておきたいのであります。
 安定基本計画の基礎である需給見通しを政府が誤りなく策定することが困難であるとの立場に立ってみますと、この安定基本計画に基づく指示カルテルがいかに矛盾多きものかが明らかになってくるのであります。
 私は、構造不況のように市場が欠落した領域に一定の前提のもとに行われる行政介入を全く否定するものではありません。しかし、誤りなきを期することのできない安定基一本計画に基づいて、企業にとって基本生命ともいうべき設備の廃棄等を指示カルテルによって行うとすれば、行政の介入が誤れる統制となり、統制が統制を呼ぶという事態に陥る危険性も少なくないと思うのであります。
 したがって、私は、安定基本計画はガイドラインと位置づけ、本法律案の指示カルテルは勧告に改めるべきであると考えるのでありますが、これらについて、政府の見解を承りたいのであります。
 第三は、本法律案がもたらすであろう不公平の拡大の懸念についてお伺いをいたします。
 言うまでもなく、過剰設備の廃棄等が、そこで働く労働者や関連中小企業へしわ寄せをするようなことは断じて避けなければなりません。しかし、そのおそれは十分あります。
 まず、本法律案と雇用問題との関連についてでありますが、過剰設備の廃棄あるいは格納休止は、遊休設備が対象であるとは言いながら、そこには人員整理がつきまとうことは避けられません。しかし、本法律案は、そこで働く労働者の意見を述べる機会を与えられておりません。安定基本計画の策定に当たっては当然当該業種の労働者の意見を聞くべきであり、また雇用の安定措置については、その具体策を法律で明記すべきが筋であると思うのでありますが、これについての通産大臣、労働大臣の見解をお伺いをいたします。
 次に、関連中小企業との関係についてお伺いをいたします。
 本法律案は製造業を対象としておりますが、製造業の設備廃棄、格納休止は、下請企業はもとより、卸売、小売業にも影響を及ぼすであろうことは想像にかたくありません。この場合、これらの関連企業は経営の危機に陥るだけではなく、最悪のケースは倒産という事態に追い込まれるかもしれません。
 また、それらの関連中小企業が、やみカルテルによって防衛しようとすれば、改正独占禁止法によって課徴金を取られることにもなるでありましょう。大企業である構造不況企業は、独占禁止法の適用除外を受けた指示カルテルで保護され、中小販売業者のカルテルは課徴金を取られるという事態がもし起こるようなことになりますと、まことに不公平ここにきわまれりと言わざるを得ないのであります。(拍手)したがって、安定基本計画の策定に当たっては、当該業界、関連中小企業の意見も聞くことが必要であると思うのであります。
 さらに、本法律案によって既存の中小企業施策の発動を義務づけるべきであると思うのであります。
 以上の諸点について、通産大臣の見解を承りたいのであります。
 なお、設備廃棄に伴う債務保証については、雇用安定、下請中小企業対策に必要な資金も含めるべきだと考えますが、あわせて見解を承りたいのであります。
 さらに、構造不況産業と言われる業界にあっては、地域経済とのつながりが特に強い傾向にあることから、地方自治体の意見も安定基本計画作成に当たって十分取り入れるべきだと考えますが、この点についても見解を承りたいのであります。
 以上、具体的にその内容についてお尋ねをしてまいりましたが、これまで申し述べてきました観点に立ちますときに、本法律案は、ぜひとも修正すべきであると思うのでありますが、その御意思があるかどうか、お伺いをしたいのであります。
 最後に、構造不況対策も、景気回復を実現してこそその有効性が確保されるものであります。この景気回復について総理の決意と所信をお伺いして、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
    〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕
#27
○内閣総理大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。
 今回の政府提案につきまして、そもそもこの構造不況対策は高付加価値化、省エネルギー化という今後のわが国の産業構造の全体的変革の中で進められるべきである、このような御所見でありますが、この点は私は全くそのとおりに存ずる次第でございます。
 いま、わが国は、全体といたしまして時代の流れに一つ一つが対応しなければならぬという立場にあるわけでありまして、その流れの中で、この構造不況対策問題、これもそういうような考え方で解決せられなければならぬ、その点は、私は全く鍛冶さんの御見解と一緒でございます。今回の政府で御提案申し上げておる法案、これはそういう考え方に基づいてやっておるわけでありまして、立案自体がそうなっておりまするし、今後これを運営、執行する場合におきましても、そのような考え方で、長期のわが国経済、またわが国企業が置かれておるその流れの中でこの問題を解決する、このような考え方をとっておるわけであります。
 したがいまして、この御提案は、まだ本日御説明申し上げたばかりでございますが、この法案以外の考え方というものが一体あり得るかというふうに考えるのです。
 いま、この法律案を修正する考えがあるかというようなお尋ねでございますが、私は、そのような考え方はありません。もう一刻も早く御審議の上成立させていただきたい、このように考える次第でございます。
 また、こういう施策を進めるに当たりましては、経済全体の今後の状態というものにつきまして確固たる展望を持たなければいかぬだろう、また示さなければいかぬだろう、こういう御所見でございますが、これは私は全くそのとおりに考えておるわけであります。
 今後、当分の間、わが国は平均いたしますと実質七%成長というところを目指そうと思うのです。しかし、五十三年度、五十四年度、五十五年度、この辺は、平均水準よりはかなり高目のことを考えなければならぬ。
 そこで、五十三年度におきましては、御承知のような五十三年度予算を中心といたしまして七%成長、それから五十四年度におきましては、七%まではいきませんけれども、六%台、七%に近いその辺を目指してやっていきたい。その辺からだんだんと安定成長路線にならした成長政策、しかし全体として当分の間を展望いたしますと、実質六%前後の成長を実現いたしたい、このように考えておる次第でございます。(拍手)
    〔国務大臣河本敏夫君登壇〕
#28
○国務大臣(河本敏夫君) 産業構造との関連いかん、こういうお話でございますが、御案内のように、一九七三年のオイルショックは世界経済に大変大きな影響を与えましたが、わが国の経済もこれで大影響を受けております。画期的な変化をこのオイルショックによって生じたわけでございます。そこで、一部の業種は大幅に過剰となり、一部の業種は不足する、そういう変化になりましたが、この設備過剰の業種に対しましては、これまでもいろいろ手を打ってまいりましたけれども、一進一退、なかなか前進をしない。そこで、今回法律をつくりまして、法律によってある程度援助をしていきたい、こういう判断に立ったわけでございます。
 そこで、具体的な御質問といたしまして、四業種以外、もう全部初めから指定したらどうか、こういうお話でございますが、やはり経済は刻々に動いておりまするし、指定をしてもらいたいという申し出は一年間にやればいいわけでありますから、むしろ、そのうちにそれぞれの業界で大部分の意思も方向が明らかになると思うのです。その業界の大部分の意思の方向が明らかになった時点一において、その業界から自発的な申し出を受けて、要件に適合しておるかどうかということを政府が審議会の意見を聞いて判断する方がよかろう、こういうことで、四業種以外は、私が先ほど申し上げましたような指定方法になっておるわけでございます。
 それから、安定基本計画はガイドラインにとどめるべきではないか、あるいは勧告にとどめよ、こういうお話でございますが、ある意味では実際この安定基本計画というものはガイドラインだと私は思います。そして勧告だと思うのです。このガイドラインである安定基本計画、その勧告を自力でやれない、業界が勧告を自力でやれない、こういう場合に限って初めて指示カルテルによって設備の廃棄をしていこう、こういう考え方でございますから、指示カルテルによって設備の廃棄をするのは最後の最後でございまして、やはり業界の自主的な努力によってすべての問題が解決することを私どもは強く期待をしておるわけでございます。
 それから、中小企業の意見を聞くべきである、また労働界の意見を聞くべきである、こういうお話でございますが、これはいろいろな作業を進めます過程におきまして、審議会に労働界の代表に入っていただきまして十分意見を述べていただくつもりでございます。また、安定基本計画をつくる過程におきましても、やはり中小企業や下請の方々も審議会に代表に入っていただきまして、その方々の御意見も十分聞くようにしたいと考えております。
    〔国務大臣藤井勝志君登壇〕
#29
○国務大臣(藤井勝志君) 関係労働者の雇用安定等に関する具体的な措置につきましては、すでに特定不況業種離職者臨時措置法に基づきまして、事業主に対して再就職援助計画を出させる、こういうことに相なっているわけでございます。
 また、安定基本計画の策定につきましては、ただいま通産大臣がお答えになったとおりでありまして、やはり何といってもその関係する労働者、労働組合というものの理解と協力なくしては都合よくいくはずはございません。したがって、関係労働組合の意向が十二分に反映するように、関係審議会の構成メンバー、運営についても十二分に配慮されておるわけでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#30
○議長(保利茂君) 宮田早苗君。
    〔宮田早苗君登壇〕
#31
○宮田早苗君 私は、民社党を代表して、本院に提案されました特定不況産業安定臨時措置法案につき、幾つかの問題点を指摘し、政府の明快なる答弁をお願いする次第であります。
    〔議長退席、副議長着席〕
 去る四十八年、四十九年のオイルショック以来の不況は、最近政府が公にしている在庫調整完了見通しゃ、マクロでの経済指標の好転とはうらはらに、史上最悪の事態であります。
 ちなみに、私は、会社更生、和議、会社整理等、裁判所が扱う経済事件を調査してみましたが、過去の不況に比べ四十九年以来の不況がいかに深刻であるか、驚くべき数字に遭遇したのであります。
 すなわち、四十九年度に、前年度の四十件台から会社更生事件は一挙に百四十件に達し、以後、今年度まで百二十件台で推移をしております。一方、和議事件は、四十九年度に前年度の七十九件から倍増しており、五十一年度には三百二十件に上っているのであります。戦後の大不況時の経済事件の山がいずれも二年で終結しているのと比べ、今回の不況が超長期にわたり、再建に時間がかかっていることがうかがえるのであります。
 このような数字を挙げるまでもなく、私ども民社党は、構造不況業種対策として、昨年の特定不況業種離職者法案審議の際、離職者対策と並行して、構造不況業種の構造改善対策法を立法化すべきことを提唱したのであります。しかし、政府の対応は相も変わらぬツー・レート、後手後手で、業界の立ち直りに水を差し、必要以上の雇用不安を招来しているのであります。
 本法策定段階での通産省と公正取引委員会のあつれきにつきましては報道されているところでありますが、今日まで事態を放置してきた政府の責任を、まず総理にただしたいのであります。
 次に、私がここで問題にしたいのは、産業政策における行政と企業の関係であります。
 政府は、従来資本主義経済下の自由競争原理を前提にして、数字の上で需給ギャップがはっきりしている、一例をとれば、平電炉業界の構造不況の原因は、業界みずからが設備増設に走った結果だといったような責任逃れの発言を繰り返してまいったのであります。しかし、事実がそうでないことは歴然としております。政府の経済全般の見通しや業種ごとの需要予測があり、場合によっては所管官庁が設備投資を促す行政指導が行われ、今日のような需給ギャップが生じたという点では、行政にその責任があることは明確であります。もちろん、企業経営者が行政にもたれかかる経営責任の放棄ともとれる姿勢、これは厳に慎まなければなりません。
 この安定法案は、特定不況産業を指定すると、主務大臣が安定基本計画を定めることになっているのでありますが、それだけに主務大臣、政府の責任はまことに重大であります。従前のように、事が生じた場合、企業責任と行政の責任をあいまいにしたままでは処理できなくなっておるのでありますが、通産大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。
 質問の第三点は、構造改善事業の推進に当たって、業種団体に所属していないアウトサイダーの扱いをどうするかであります。
 法案の策定の過程で、通産当局と公正取引委員会の意見が分かれたのもこの点だったのでございます。対象として考えられる業界の労使の間から、設備廃棄をしても、片方でアウトサイダーが設備投資をしたのでは需給ギャップは永遠に解決しない、アウトサイダー企業の能力増につながる設備の新増設について本法の効果を懸念する声が強いことにかんがみ、何らかの規制措置が必要ではないかと考えられるのでありますが、通産大臣、いかがでございましょう。
 本法律案は、五年間の時限立法でございます。不況産業の指定は、施行後初年度に限定するというのでございますが、法律で指定される業種の中期展望はどうなっておるのでありましょう。平電炉、アルミ等については、産業構造審議会の各専門機関による業界のあり方が示されているのですが、不況産業指定から設備廃棄に至るものの、五年後の各産業のあるべき姿をどう位置づけしょうとしているのか、通産省の考え方をお示しいただきたいのであります。
 あわせて、この際、私は労働大臣にお尋ねしておきたいと思います。
 業種指定の対象となる業界では、今日までにすでに相当数の労働者が犠牲になっているわけでありますが、設備廃棄が柱となっている本法が施行された暁には、当然雇用調整が始まると見なくてはなりません。法案では雇用の安定について規定していますが、抽象的な表現にとどまっていると言わざるを得ません。離職者法が三年、本法が五年の時限立法であること等を踏まえて、産業構造の変化に今後の労働行政をどう進めるかについてお尋ねする次第であります。
 最後に、私は、安定基本計画の最も重要な柱であります信用基金制度についてお伺いをする次第であります。
 端的に申しまして、今日の不況の実態からいって、百億円の基金で産業界の救済、構造改善は不可能であります。そこで、政府は、財政投融資の弾力条項を使って、必要に応じ随時増額することを約束すべきだと思うが、どうですか。
 このたびの永大産業の倒産での金融機関の撤退に見られますように、市中金融機関が企業の生殺与奪権を握っているのが実態であります。まして、新法を制定してまで構造改善をしなければならないような内容の悪い企業の設備廃棄に対して、基金の十倍もの融資が期待できるか、はなはだ疑問であります。そこで、政府は、企業の必要資金の三分の一程度を開発銀行等政府系金融機関が、残りを民間金融機関が負うような制度にしたらいかがでしょうか。政府の責任に沿って推進する構造改善にふさわしい融資体系の確立こそ、本法の趣旨に沿うものでなかろうかと確信する次第であります。
 以上をもちまして質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕
#32
○内閣総理大臣(福田赳夫君) お答えを申し上げます。
 まず、今回の立法は、必要につきましては御理解を願っておるようでありまして、その提案がむしろ遅きに失しておるのではないかというような御批判でございますが、先ほど申し上げましたように、いまの経済事態に対処する、一つは国全体としての需要を拡大いたしまして、経済全体のかさ上げをする、こういう考え方、それからもう一つは、いわゆる構造不況業種に対しまして、個別的な構造不況対策を講ずる、この二本立てでいくほかはないのだろう、このように考えております。
 そういう意味から言いますと、御指摘のように、今回の御提案、これは私どもは遅きに失したというような感じもしないではございません。しかし、このような厳しい措置をお願いをする、そういうことにつきましては、ある程度環境が成熟するということがまた大事であるというふうに考えるのでありまして、私は、このような御提案を申し上げ、そうしてこれが受け入れられるところの環境が熟した、このように考えまして、今回御提案を申し上げておる次第でございます。
 次に、構造不況業種対策は、産業構造政策の観点から中長期的ビジョンを示しつつ行わないと、真の意味での解決にならないのじゃないか、このような御指摘でございますが、これは、私は全くそのように考えております。今回の特定不況産業の安定基本計画を作成するその過程におきまして、十分その点が実現できるように配慮する、そのような考えでございます。(拍手)
    〔国務大臣河本敏夫君登壇〕
#33
○国務大臣(河本敏夫君) 総理の答弁と重複しないようにお答えをいたします。
 まず、最初の問題はアウトサイダーの問題でございますが、今回の法律案の中で、この問題は一番大きな問題であったと思います。アウトサイダー規制をすべし、こういう強い意見もずいぶんございました。しかしながら、それは少し行き過ぎではないか、こういう二つの意見がございまして、一カ月半ばかりこの問題を中心にいろいろ意見を闘わせてまいったわけでございますが、最終的には、総合的に判断をいたしまして、今回の法律はアウトサイダー規制はやらない、こういうことに決定をしたわけでございます。
 それから、信用基金の問題、百億、結局その保証の枠はその十倍、千億ということでございますが、最初はそういう案で進めておったのでありますが、いまいろいろ御指摘がございましたようなこともありますので、その枠は決めないことにいたしました。そして必要に応じまして、大蔵大臣と通産大臣の認可によりまして増額することになっております。でありますから、この問題は一応解決したわけでございます。
 なお、構造改善事業の枠といたしましては、中小企業関係は別枠が十分ございます。これは全然別の枠としてやっていくつもりでございます。(拍手)
    〔国務大臣藤井勝志君登壇〕
#34
○国務大臣(藤井勝志君) 離職者臨時措置法の期限が二年でございまして、今度の不況産業安定措置法案は五年である、したがってその期限が切れた後どのような雇用対策を進めるのかというお尋ねと承るわけでございまして、御承知のごとく、不況業種離職者特別措置は、議員立法として成立したわけでございまして、あの期間二年後どのような経済情勢になるか、あるいは雇用情勢になるかというその時点で状況を判断して、関係者並びに関係機関が検討すべき問題である、このように考えておるわけでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#35
○副議長(三宅正一君) 大成正雄君。
    〔大成正雄君登壇〕
#36
○大成正雄君 私は、新自由クラブを代表して、ただいま提案されました特定不況産業安定臨時措置法案について、その問題点の一部に触れながら若干の質疑をいたしたいと存じます。
 去る一月二十五日、わが党の河野代表は、国務大臣の演説に対する質疑において、本法案の立法に関して、企業の活力と創意を尊重した健全な活力ある自由主義経済を志向する私たち新自由クラブの経済政策の基本に触れるものとして、この問題に重大な関心を持たざるを得ないとし、これが統制への第一歩につながるおそれはないか、また改正独禁法の形骸化につながることはないかと指摘したところであります。
 その後、通産省の当初の案が発表されるや、関係業界はもとより、経済団体や経済学者の中から同様の意見が強く主張されるところとなり、特に公正取引委員会は、指示カルテルを初め、アウトサイダー規制、合併の独禁法除外など、統制色の強い手法によって不況業種の構造改善を進めようとする通産当局の論理は、自由競争条件の維持を期する立場から産業政策の独走を目指すものとして強く抵抗し、ここに提案された政府案は、合併や営業譲渡の独禁法適用除外、アウトサイダー規制の削除、指示カルテルの歯どめの設定等、当初の姿勢を後退させた形での提案となっており、わが党の主張が理にかなったものであり、これを認めた形での本法の内容に対して、これを評価するにやぶさかではありません。
 しかしながら、本法実施の一層の効果を期待し、また、現実に即した不況の克服と構造改善を進めるため、以下、幾つかの問題点を指摘しつつ、政府の所信をただしたいと存じます。
 まず、総理に承りたいと存じますが、本法は五年間の時限立法であり、今後五年間にわが国産業の構造不況要因を克服して安定的基盤を確保するためには、五十四年度の経済成長率七%が完全に達成されることはもとより、特定不況業種の安定基本計画がそごなく達成される経済環境が重要な前提条件であると考えるが、今後五年間の中期的経済展望と指標について、総理の責任ある御答弁を承りたいと存じます。
 次に、本法の実施に当たって、関連指定業種の過剰設備の廃棄や合併譲渡等の共同行為によって、たとえば一律的な設備廃棄が、最も最新の優秀設備までスクラップするといったことによって、わが国産業の活力や国際競争力を喪失してしまうような結果となってはならないと危惧するところでありますが、わが国産業の構造改革のあるべき姿とその基本方針について、総理の所信を承りたいと存じます。
 さらに、私はこの際、特定不況産業の定義について総理の認識をただしたいと存じます。
 さきに成立した特定不況業種離職者臨時措置法においても同様でありますが、特定不況業種とは、内外の経済事情の著しい変化により、その製品または役務の供給能力が過剰となり、かつ、その状態が長期にわたり継続することが見込まれる業種と解釈してしかるべきものと思いますが、わが国の産業の一部にかかる不況要因を内蔵するに至った原因の究明とその責任の所在の追及は、不況要因を排除するためきわめて重要な問題点であると言わざるを得ません。
 すなわち、構造不況というよりは政策不況といった方が正しい認識ではないかと思われる業種がある。つまり、政府の過去と現在の対応の誤りや不決断が不況要因の重要な部分を占めている業種があるということであります。たとえば、本法に掲げる平電炉、合繊もその例外ではありません。平電炉産業の今日の過剰設備は、物不足経済当時の通産省の設備増強誘導政策と、これに油を注いだ商社、金融機関の結果がもたらしたものであり、見通しの誤りであったと言わなければなりません。また、合繊業界の不況は、世界的な生産過剰や需要の減退も大きな理由でありますが、原料ナフサ価格が国際相場に比べて七、八千円も割り高のまま政府の石油製品価格政策を今日まで放置してきた、すなわち、石油業法の適切な運用が行われなかったことが今日の重大な不況要因となっている事実であります。
 本法適用以前の問題として、政策の貧困と不決断が問われなければならないと思いますが、総理の所信を承りたいと存じます。
 次に、通産大臣に承りたいと存じます。
 その第一は、本法に定めるアルミ製錬業の不況対策についてであります。
 アルミ製錬業の不況要因は、石油価格の高騰による電気料金の高コストにあることは周知のところでありますが、わが国アルミ製錬業全体の財務の不健全さは目に余るものがあります。昭和五十一年度の決算数字において、借入金残高は六千十三億、負債総額八千百二十九億であり、金利負担は実に三百八十五億余となっております。また、期末の未処分損失は四百八十五億にも及んでいます。また、国内需要、年百五十万トンに対して、設備能力は百六十四万トン。これに加えて、安い輸入地金が四十万トン以上入ってきております。すなわち、五十万トンからの設備が遊んでいるという状態であります。
 政府は、このようなアルミ産業の構造改善対策として、設備能力の二四%、三十九万トンの設備凍結を行うとともに、タリフクォータ制を実施して、現行税率九%と五・五%との差額三・五%の関税見合い分を構造改善に使っていく構想であります。それによって昭和五十八年に国際競争力を回復しようとの計画でありますが、輸入枠内の関税率をゼロとしての計算で、五年後の赤字を三十四億程度に持っていこうとしているのでありますが、五・五%の関税率では、五年間で構造改善することはとうてい不可能であります。
 さらに問題なのは、二次関税分九%のコストでも、輸入地金の方が安い現状からすれば、サッシや大手家電メーカーが、みずからのリスクで輸入地金を商社に手当てをして圧延メーカーに委託生産する動きが活発となれば、この構造改善対策は根本から崩れてしまうことが考えられます。したがって、アルミ製錬産業の実効ある不況対策としては、膨大な借入金利負担の軽減策、タリフクォータ制度の再検討がなされなければならないと思いますが、通産大臣の所信を承りたいと存じます。
 次に、本法のねらいとするあめとむちのあめの部分に当たる第十三条以下の信用基金についてでありますが、日本開発銀行八十億、民間出資二十億、合わせて百億の資本金で千億規模の債務保証が行われようとしております。平電炉、アルミ、合繊、船舶以外にも、関連業者の三分の二の申し出によって業種指定の道は開かれておりますので、その他の業種として肥料、段ボール、毛紡、綿紡、合板、砂糖等の構造改善対策ももくろまれておりますので、果たして五年間千億程度の債務保証で足りるのかどうかという疑問があります。開銀出資二十億の増分を見込んでもとても足りないのではないかと思われますが、この一千億程度の規模を算定した積算の根拠をお示し願いたいと存じます。
 また、商社や金融機関は不況産業に対しては、不良債権として目いっぱい貸し出しをしており、これ以上のファイナンスは困難ですが、保証限度額を超えた設備廃棄資金の増枠は困難と思いますが、いかなる行政指導を行い、またその実績が期待できるかどうか、さらに、貸出金利の負担軽減についていかなる方針であるか承りたいと存じます。
 次に、運輸大臣に造船不況対策について承りたいと存じます。
 奈落の底の海運不況などといった経済誌の見出しに表徴されるごとく、世界一の造船王国日本の造船業界の不況は惨たんたる状況でございます。五十二年度の受注量約六百万トン、手持ち工事量も七百万トン程度。建造能力二千万トンに対してこれでは、との夏ごろから火が消えたゴーストタウン化することが憂慮されます。しかし、大手造船会社はおかに上がって各種機械やプラント輸出にある程度転換の余地もありますが、中小造船の運命は暗たんたるものがあります。四百三十億の負債を抱えて倒産した今治市の波止浜造船、神戸市の新山本造船等、関連業界の連鎖倒産にも波及して、容易ならざる状態であります。
 かかる造船危機に対して、いま政府が推進しようとしておる景気対策はほとんど無力であり、個別対策として思い切った救済策がとられなければならないと思います。
 時間の制約がありますので各論は省略しますが、いますぐなすべき不況対策は需要の創出、すなわち、仕事をつくってやる工夫と努力と決断であろうと思います。
 LNG船の建造、海上石油備蓄基地の建設、海洋開発プロジェクトの着手、海上浮体空港の建設等は、大手対策としては有効であります。また、中小造船対策としては、海上保安庁、防衛庁、水産庁等の中小船舶の繰り上げ発注、近海航路の船舶のスクラップ・アンド・ビルド等、政府がその気になって決断をし、手当てをすれば、ある程度の不況対策としての効果は期待できると思います。ほかの不況産業とは異質の不況対策がなければ、現実的な不況対策とはならないと思います。
 運輸大臣は、いま何から手をつけ、何をなさんとしているのか、本法の適用をいかに具体化しようとしているのか、御説明を願いたいと存じます。
 次に、労働大臣に承りたいと存じます。
 本法第十条は、特定不況産業に属する事業者の、関係労働者の失業の予防、その他雇用の安定に配慮しなければならないものとするとの訓示規定が定められております。
 対策の実際は、昨年末議員立法で成立した特定不況業種離職者臨時措置法によって対応すべきものと判断するが、まず第一に、本法の適用実施現況を承りたいと存じます。
 第二に、特定不況産業安定臨時措置法案では、当該業種ごとの安定基本計画に定めるところに従って雇用対策を配慮するとされているが、一方、離職者臨時措置法では、特定不況業種の区分ごとに職業紹介計画の作成、あるいは再就職援助計画の作成、認定等が義務づけられています。この二つの法神の整合性と労働省サイドに立っての安定基本計画に対する基本的な方針を明示願いたいのであります。
 特に離職者臨時措置法には、失業を予防するための解雇規制、罰則規定もなく、事業主の努力義務が規定されているにすぎないことからして、一方の安定基本計画の内容いかんでは、発生失業者は路頭に迷うような結果も予測されると心配されるが、労働大臣はいかに対処しようとしているのか、その方針を承りたいのであります。
 最後に、本法は五年、離職者臨時措置法は二年の時限立法となっていますが、完全な不況対策の雇用安定上、そごを来すことはないかどうかを承って、質問を終わりたいと存じます。(拍手)
    〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕
#37
○内閣総理大臣(福田赳夫君) 今回の政府提案が、その目的が達成されるためには、来年度日本経済は七%の経済成長が絶対必要な条件と考えるがどうか、このようなお尋ねでございますが、先ほど申し上げておりまするように、いま日本の経済の現況というものを顧みまするときに、どうしても対策は二本立てでなければならぬ、つまり、一般的に経済のかさ上げをする、それからもう一つは、構造不況業種対策をやっていく、これ以外にまた道はないんじゃないかと申し上げてきたわけでございまするけれども、この三つの行き方は車の両輪でありまして、このかさ上げ対策、これが実現されなければ、不況業種対策をやろうといいましても、私はこれが目的を達することはできないと思います。また、構造不況業種対策だけをやってこれがうまくいったといたしましても、日本経済の内包するところの困難というものは解決できない。車の両輪として両方が健全に動いていくべきである、このように考えておるわけであります。
 いま大成さんから、五十三年度の成長問題、これだけについてお尋ねがありましたけれども、この考え方は五十三年度だけの問題でもない。また、先々においても同じでありまして、構造不況についての今回の法提案は、これは五年間の臨時立法でございますが、五年間を展望いたしましても、また経済の底上げ、これが健全に進まなければならぬ、そのように考えまして、ただいま、私ども政府といたしましては、平均いたしまして実質六%成長ということを申し上げておるわけであります。その初年度であるところの五十三年度、これが実質七%だ、このように考えておる次第でございます。
 それから、これからこのような政策をとった場合に日本経済が統制化していくのか、そのような御懸念を示しながら、どのような経済社会を考えているかというお話でございますが、これは申し上げるまでもありません。自由、公正なる経済社会であります。つまり自由競争、そしてそれが公正に行われる。つまり、経済諸施策と独禁政策、これが調和をとって行われるようにということを念願いたしておるわけでありまして、今回の立案に当たりましても、その点につきましては、通産当局、また公取当局、この両当局において十分意見の練り合わせをいたしまして、意見のそごがないようにいたしてある次第でございます。
 また、今後この法を執行する、その際におきましても、この両当局の間の関係というものは緊密にいたしてまいりたい、このように考える次第でございます。
 それから、構造不況業種対策を進めるに当たりましては、個々の構造不況業種につきまして、構造不況業とレッテルを打たれるような状態になったその原因究明が大事じゃないかという御指摘でございます。もちろんそのとおりに考えておりまして、そういうことになりました原因等も十分解析いたしまして、構造不況業それぞれみんな違った態様を持っておるわけでありますが、その態様に応じまして適切な対策をとるべきである、このように考えております。(拍手)
    〔国務大臣河本敏夫君登壇〕
#38
○国務大臣(河本敏夫君) 構造不況業種で過剰設備がどれくらいあるかということでありますが、これはひどいところは五割、六割の過剰設備があるように思います。少ないところでも一五%あるいは二〇%、こういう数字ではないかと思いますが、ただいまのところ平電炉業界は大体一五%ないし二〇%程度の過剰設備の廃棄、そういう方向に進むと思います。
 それから、合繊の問題に関連をいたしまして、ナフサの価格の問題についてお述べになりましたが、ナフサの価格は国際的に見まして現在非常に高い水準にございます。それが関連業界の経営を圧迫しておるわけでございますが、今回とりあえず第一段階の値下げ交渉が両業界で一応成立をいたしております。しかし、これでは不十分でございますので、さらに抜本的にこの価格の問題を解決するようにこれから工夫していかなければならぬという大きな課題が残っております。
 それから、アルミ業界の問題についてお述べになりましたが、アルミ業界は現在百六十万トンの能力がございますが、そのうち約四分の一、四十万トンをここ数年間凍結をするつもりでございます。これは、数年後には設備の不足が当然予想されますので、この新鋭設備を廃棄するということは国民経済上も好ましくないということから、凍結という方向で処理をしたいと考えております。
 いまお述べになりましたことは、それではやり方が不十分ではないかということでございますが、当初考えておりました対策とは若干後退をいたしておりますが、しかしながら各業界に対してそれぞれ満足をしていただけるような対策を打ち出すということはとても不可能でございます。不十分な点は業界の自主的な努力、工夫によって補っていただきたい、このように考えております。
 それから、債務保証千億では不足するではないかというお話でございますが、これは先ほども述べましたように、確かにそれは非常に大きな課題でございますので、大蔵大臣と通産大臣は必要に応じてこの増額を認可する、そういう仕組みに最終的にすることに決定をいたしました。
 それからなお、関係の金融機関あるいは関係の事業者も、この構造改善事業にはある程度の責任を持っていただこう、このように考えております。(拍手)
    〔国務大臣福永健司君登壇〕
#39
○国務大臣(福永健司君) わが国造船業は現在深刻な不況に直面しており、特に五十三年度以降についてはいまだ工事量の確保が十分でなく、また最近の円高傾向も加わって、受注環境はさらに悪化しております。このため、過剰設備の処理、構造改善を含む造船業の安定について、本法律案による施策を含め、できる限り早急に結論を得て、造船業の長期的安定化を図ってまいりたいと存じます。
 特に、当面の仕事量確保のためには、造船業の持っている技術力を最大限に活用して、各方面にわたる需要の拡大に努めることといたしたいと存じます。(拍手)
    〔国務大臣藤井勝志君登壇〕
#40
○国務大臣(藤井勝志君) この法案によりまして出る失業者に対しましては、すでに成立を見ました特定不況業種離職者臨時措置法を活用いたしまして、先ほどもお答えを申し上げたように、雇用保険の給付日数を九十日延期する。そして、職業訓練に当たりましては待期手当、訓練手当をやっていく、そしてできるだけ再就職の道を選んでいかなければならぬ、このように考えるわけでございまして、特に私は、この不況の状況が、よく言われますように構造不況、こういった経済情勢でございますから、職業訓練と雇用の安定ということが、表裏一体といいますか、一体的な配慮でなされなければならぬ。いずれ当該委員会にお諮りすべく準備しております職業訓練法の改正も、そのような考え方に立っておるわけでございます。
 それから、特に失業多発地帯においては、地域指定をいたしまして、そして法に定められた失業者吸収率制度を大いに活用して、緊急避難的ではありますけれども失業者の救済に当たる、生活の安定に当たる、こういうふうに考えておるわけでございます。
 もう一つ、私はここに御理解いただきたいと思いますことは、中高年齢者に対して新しく雇い入れる場合は、事業主に対して、中小企業の場合には支払う賃金の三分の二、大企業は二分の一を助成するということを新たに創設をするわけでございまして、こういうことによって、民間の活力を生かして大いに雇用の拡大を図っていこう、そのように万全を期していきたいというふうに考えているわけでございます。
 それから、先ほどもお答えいたしましたが、安定基本計画、これは、当然事前協議を労働省、労働大臣は受けまして、事業主管大臣と密接な連絡をとって、労働者の雇用の安定、労働条件の問題について十二分に協議をすることになっております。
 それから、この法律案が特定不況業種臨時措置法と時間的に三年間のずれがありますが、この問題については、先ほどお答えしたとおりでありまして、議員立法の関係から、その時点が参りましたら、関係者、関係機関で御協議願い、検討すべき問題だと思うわけでございます。(拍手)
#41
○副議長(三宅正一君) これにて質疑は終了いたしました。
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#42
○副議長(三宅正一君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後二時十三分散会
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 出席国務大臣
        内閣総理大臣  福田 赳夫君
        通商産業大臣  河本 敏夫君
        運 輸 大 臣 福永 健司君
        労 働 大 臣 藤井 勝志君
       国 務 大 臣 稻村左近四郎君
 出席政府委員
        公正取引委員会
        委員長     橋口  收君
        通商産業大臣官
        房審議官    山口 和男君
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ソース: 国立国会図書館
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