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1977/05/09 第84回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第084回国会 本会議 第29号
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1977/05/09 第84回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第084回国会 本会議 第29号

#1
第084回国会 本会議 第29号
昭和五十三年五月九日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第二十六号
  昭和五十三年五月九日
    午後一時開議
 第一 大規模地震対策特別措置法案(内閣提
    出)
 第二 行政管理庁設置法の一部を改正する法律
    案(内閣提出)
 第三 地方自治法第百五十六条第六項の規定に
    基づき、北海道管区行政監察局の分室の
    設置に関し承認を求めるの件
 第四 逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律
    案(内閣提出)
 第五 新東京国際空港の安全確保に関する緊急
    措置法案(足立篤郎君外十一名提出)
 第六 特定機械情報産業振興臨時措置法案(内
    閣提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 日程第一 大規模地震対策特別措置法案(内閣
  提出)
 日程第二 行政管理庁設置法の一部を改正する
  法律案(内閣提出)
 日程第三 地方自治法第百五十六条第六項の規
  定に基づき、北海道管区行政監察局の分室の
  設置に関し承認を求めるの件
 日程第四 逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する
  法律案(内閣提出)
 日程第五 新東京国際空港の安全確保に関する
  緊急措置法案(足立篤郎君外十一名提出)
 日程第六 特定機械情報産業振興臨時措置法案
  (内閣提出)
 昭和五十二年分所得税の特別減税のための臨時
  措置法案(大蔵委員長提出)
 社会保険労務士法の一部を改正する法律案(社
  会労働委員長提出)
 福田内閣総理大臣の訪米報告及び質疑
    午後一時四分開議
#2
○議長(保利茂君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 日程第一 大規模地震対策特別措置法案(内閣提出)
#3
○議長(保利茂君) 日程第一、大規模地震対策特別措置法案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。災害対策特別委員長川崎寛治君。
    ―――――――――――――
 大規模地震対策特別措置法案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔川崎寛治君登壇〕
#4
○川崎寛治君 ただいま議題となりました大規模地震対策特別措置法案につきまして、災害対策特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、大規模な地震による災害から国民の生命、身体及び財産を保護するため、地震災害の発生の防止または軽減を図るための対策に関し特別な措置を講じようとするもので、その主な内容は次のとおりであります。
 第一に、内閣総理大臣は、大規模な地震が発生するおそれがあり、地震防災対策を強化する必要がある地域を、中央防災会議に諮問し、関係都道府県知事の意見を聞いた上で、地震防災対策強化地域として指定することといたしております。この強化地域の指定があった場合、国は、計画的に地震観測体制の充実強化を図るとともに、国、地方公共団体等は、中央防災会議が策定する地震防災基本計画に即して地震防災強化計画を、また、不特定多数の人が出入りする施設その他地震防災上重要な施設の管理者等は、地震防災応急計画を作成しなければならないこととしております。
 第二に、内閣総理大臣は、気象庁長官から強化地域において大規模な地震が発生するおそれがある旨の報告を受けた場合において、緊急の必要があると認めるときは、閣議にかけて警戒宣言を発するとともに、関係機関、都道府県知事等に対して地震防災応急対策を講ずべき旨を通知することとしております。この宣言によりまして防災関係機関は、一斉にあらかじめ定められた計画に従って地震防災応急対策を講ずることとしております。
 第三に、警戒宣言を発した場合、内閣総理大臣は、地震災害警戒本部を設置するものとし、その本部長に当たることといたしております。本部長は地震防災強化計画に基づく国の対策の実施のため、関係地方公共団体の長等に対し必要な調整、指示ができるものとするとともに、必要があると認めるときは、防衛庁長官に対し、自衛隊の派遣を要請することができることとしております。また、関係地方公共団体におきましても地震災害警戒本部を設置し、地震防災応急対策等の実施とその連絡調整等を行うこととしております。さらに地震防災応急計画を定めた管理者等に対しましては、地震防災応急対策の実施を義務づけることとしております。
 以上のほか、地震防災応急対策を円滑に実施するために必要な措置、平素における地震防災訓練の実施、一般住民の協力、地震防災強化計画に基づく事業に対する財政援助等に関し、所要の規定を設けることとしております。
 なお、この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。
 本案は、去る四月六日本委員会に付託され、十三日機内国土庁長官から提案理由の説明を聴取した後、参考人から意見を聴取するなど、慎重に審査を行いました。
 なお、審査の過程で自衛隊の地震防災派遣については賛否両論があり、特に支援行動に関しては、訓令等の整備を図るとともに、防災業務計画等においてその範囲を明確にし、地域防災計画との整合性を保つべきである旨の意見がありましたことを申し添えておきます。
 かくて、四月二十五日質疑を終了し、次いで二十八日討論を行い、採決した結果、多数をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
 なお、本案に対し、全会一致をもって附帯決議が付されました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#5
○議長(保利茂君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#6
○議長(保利茂君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第二 行政管理庁設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第三 地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、北海道管区行政監察局の分室の設置に関し承認を求めるの件
#7
○議長(保利茂君) 日程第二、行政管理庁設置法の一部を改正する法律案、日程第三、地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、北海道管区行政監察局の分室の設置に関し承認を求めるの件、右両件を一括して議題といたします。
 委員長の報告を求めます。内閣委員長始関伊平君。
    ―――――――――――――
 行政管理庁設置法の一部を改正する法律案及び同報告書
 地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、北海道管区行政監察局の分室の設置に関し承認を求めるの件及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔始関伊平君登壇〕
#8
○始関伊平君 ただいま議題となりました両案件につきまして、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、両案件の要旨を申し上げます。
 行政管理庁設置法の一部を改正する法律案は、昨年末に政府の決定した行政改革計画に基づき、行政機構の簡素合理化を図るため、行政管理庁の地方支分部局である函館行政監察局、旭川行政監察局及び釧路行政監察局を廃止するとともに、北海道管区行政監察局に行政相談部を設置しようとするものであります。
 地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、北海道管区行政監察局の分室の設置に関し承認を求めるの件は、行政管理庁設置法の一部を改正する法律案により、行政管理庁の地方支分部局である函館、旭川及び釧路の三地方行政監察局を廃止することとしているのでありますが、これに伴い、行政相談等の事務を現地において処理するため、北海道管区行政監察局の分室を函館市、旭川市及び釧路市にそれぞれ設置することについて、国会の承認を求めようとするものであります。
 両案件は、いずれも二月十三日本委員会に付託され、二月二十一日荒舩国務大臣から提案理由の説明を聴取し、四月二十七日より両案件を一括して質疑に入り、慎重に審査を行いましたが、その詳細につきましては会議録により御承知願いたいと存じます。
 かくて、四月二十八日質疑を終了し、採決いたしましたところ、行政管理庁設置法の一部を改正する法律案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと決し、地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、北海道管区行政監察局の分室の設置に関し承認を求めるの件は多数をもって承認すべきものと決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○議長(保利茂君) これより採決に入ります。
 まず、日程第二につき採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#10
○議長(保利茂君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
 次に、日程第三につき採決いたします。
 本件を委員長報告のとおり承認するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#11
○議長(保利茂君) 起立多数。よって、本件は委員長報告のとおり承認するに決しました。
     ――――◇―――――
 日程第四 逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律案(内閣提出)
#12
○議長(保利茂君) 日程第四、逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。法務委員会理事羽田野忠文君。
    ―――――――――――――
 逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔羽田野忠文君登壇〕
#13
○羽田野忠文君 ただいま議題となりました法律案について、法務委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、日本国とアメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約の締結に伴い、犯罪人の引き渡しに関する国内手続について所要の整備を行うとともに、犯罪人の引き渡しに関する国際的協力を一層推進するための措置を講じようとするものであり、その主な内容は次のとおりであります。
 第一は、逃亡犯罪人が日本国民である場合等のほか、逃亡犯罪人を引き渡すかどうかについて日本国の裁量に任せる旨の引渡し条約の定めがある場合、法務大臣が外務大臣と協議して、当該定めに該当し、かつ、逃亡犯罪人を引き渡すことが相当でないと認めるときは、当該犯罪人を引き渡さないことができるものとし、
 第二は、引渡し条約に基づかないで犯罪人を仮に拘禁することの請求があったとき、当該請求をした外国から日本国が行う同種の請求に応ずべき旨の保証がなされた場合に限り、一定の場合を除き、これに応ずることができるものとし、
 第三は、外国から外交機関を経由して当該外国の官憲が他の外国から引き渡しを受けた者を日本国内を通過して護送することの承認の請求があったときは、一定の場合を除き、法務大臣が外務大臣と協議して、これを承認することができるものとする。等であります。
 委員会におきましては、四月二十五日提案理由の説明を聴取した後、慎重に審査を行い、同月二十八日質疑を終了し、直ちに採決を行ったところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 なお、本案に対し、附帯決議が付されましたが、その詳細は会議録に譲ります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#14
○議長(保利茂君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#15
○議長(保利茂君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第五 新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法案(足立篤郎君外十一名提出)
#16
○議長(保利茂君) 日程第五、新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。運輸委員長増岡博之君。
    ―――――――――――――
 新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔増岡博之君登壇〕
#17
○増岡博之君 ただいま議題となりました新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法案につきまして、運輸委員会における審査の経過及び結果について御報告申し上げます。
 まず、本案の内容について御説明申し上げます。
 第一に、この法律は、新東京国際空港及びその周辺において暴力主義的破壊活動が行われている最近の異常な事態にかんがみ、当分の間、暴力主義的破壊活動の用に供される工作物の使用の禁止等の措置を定め、もって新東京国際空港及びその機能に関連する施設の設置及び管理の安全の確保を図るとともに、航空の安全に資することを目的といたしております。
 第二に、暴力主義的破壊活動等、暴力主義的破壊活動者及び規制区域についての定義を規定し、規制区域は空港内及び外側三千メートルの範囲の区域並びに航空保安施設または空港機能を確保するために必要な施設のうち政令で定めるものから三千メートルの範囲内の一定区域といたしております。
 第三に、規制区域内に所在する工作物が暴力主義的破壊活動者の集合場所として、爆発物、火炎びん等の製造または保管の場所として、または航空機の航行を妨害するために用いられ、または用いられるおそれがあるときには、運輸大臣はその工作物の所有者、管理者または占有者に対して、期限を付して当該工作物をこれらの用に供することを禁止することを命ずることができることといたしております。
 さらに、この禁止命令に違反してこれらの用に供されているときは、当該工作物について封鎖その他その用に供させないために必要な措置を講ずることができ、また、諸般の状況から判断して、暴力主義的破壊活動等にかかわるおそれが著しいと認められ、かつ、他の手段によっては禁止命令の履行を確保することができないと認められるときであり、さらに本法の目的を達成するため特に必要があると認められるときに限り、当該工作物を除去することができることといたしております。
 第四に、これらの命令または措置に関し、立ち入り、質問、土地の使用等、現場にある者の退去、物件を除去した場合の保管等に関する規定を定めております。
 第五に、国は、封鎖、除去、土地の使用等の措置を講じたことにより損失を受けた者に対し、通常生ずべき損失を補償することといたしております。
 第六に、運輸大臣は、規制区域内において暴力主義的破壊活動者の所持し、または使用する物件を、一定の要件が備わっている場合に限り、一時保管することができることといたしております。
 第七に、この法律に基づく運輸大臣の措置の一部は、これを新東京国際空港公団に行わせることができることとし、また、関係行政機関は、この法律の実施について運輸大臣に協力しなければならないことといたしております。
 本案は、自由民主党、公明党・国民会議、民社党及び新自由クラブの四派共同提案により四月二十七日本院に提出され、翌二十八日本委員会に付託となり、同日、四派を代表して足立篤郎君から提案理由の説明を聴取した後、質疑を行い、採決の結果、多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 なお、本案について内閣の意見を聴取いたしましたところ、福永運輸大臣から、政府としてはこれに応ずることといたしたいとの意見が述べられました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#18
○議長(保利茂君) 討論の通告があります。順次これを許します。佐野進君。
    〔佐野進君登壇〕
#19
○佐野進君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法案に対し、反対の討論を行わんとするものであります。(拍手)
 わが党は、空港問題の発生以来十二年余、人権と生活権擁護の立場から、政府及び公団の処置に対し猛省を促してきましたが、政府は何ら省みることなく今日の事態を招いたのであります。
 さらに、われわれは、さきに本院における決議に賛成し、政府に対し、過激派集団の破壊活動には断固たる処置をとるとともに、地元住民の理解と協力を得るよう、積極的な行動を強く求めてまいりました。
 特に、現下の困難な状態を打開するため、政府のとるべき道は、五月二十日の開港にこだわらず、アクセス、空域、騒音、燃料輸送問題等未解決課題に積極的に取り組むとともに、第二期工事を凍結し、関係農民と誠意をもって話し合い、解決に当たるべしとの立場を明らかにし、再三にわたり政府に申し入れてまいりました。
 しかるに政府は、この事態を招いた責任を感ぜず、いささか冷静さを欠き、ますます混乱を招く方向に動き、感情的とさえ思われる姿勢を持ち、本院決議のうち暴力集団に対する対策のみを急ぎ、地元住民の理解と協力を得る熱意を欠き、その努力を怠り、せっかく芽生えつつある地元住民との話し合いによる解決の芽を摘み取るかのごとき治安立法の成立にのみ奔走しております。
 今回の提案は、開かれかかった農民の心をかたく閉ざし、問題解決への道を遠くしたと言わざるを得ません。(拍手)
 以下、私は、この法案の持つ危険性とその手続上の不備について指摘をいたします。
 まず第一に、この法案の持つ危険性は、憲法に違反するおそれが十分あるということであります。
 憲法第二十九条の財産権の保障、第三十一条適正手続の保障が侵され、また、第二十一条、第三十五条を侵害するとともに、第三十八条を否定し、刑事法、民事法等現行法体系を大きくはみ出しております。
 このことは、今後、現行の法秩序体系を破壊する危険な治安立法を生み出し、空港だけでなく、発電所などあらゆる公共物に対する反対運動から守るという名目の悪法への道を開く危険性を持つと言わざるを得ません。(拍手)
 その第二は、この法律の実施権限が運輸大臣に集中し過ぎることであります。
 各省庁、特に警察庁は、その指揮下において諸行動が強制されることとなり、しかも、行政権が司法権、特に裁判所の権限を大きく乗り越え、裁判所がその本来の役割りを果たすことがほとんど必要でないとさえ判断されるほど、運輸大臣及びその職員が強大な権力を行使する重大な内容を持つものであります。
 このことは、憲法の三権分立の制度の根本を否定することにもなりかねないのであり、行政権による現行の法秩序体系を破壊する危険な治安立法と言わなければなりません。(拍手)
 その第三は、新法の目的が、団結小屋の撤去に見せかけ、実体は、空港だけでなく、関連航空保安施設の周囲三キロ内を規制区域とし、たとえば燃料輸送機関、パイプライン、鉄道等から三キロの区域にある建築物や工作物の使用禁止、封鎖または除去ができることになっており、これらの地域については、運輸大臣が一方的に一種の治安地域、治外法権のような地域を設定し、その範囲の中の人たちの私権を制限するということであります。
 しかも、その制限は、通常の収用手続を経ないで政府が行政執行できるというのでありまするから、住民の反対も大きくなり、大きな混乱が予想されるのであります。
 その四は、この法律に該当し、もしくは関連する区域が広範にわたり、対象人数も多数に及ぶにもかかわらず、人権及び財産権に対する配慮がほとんどなされず、不当に圧迫されていることであります。
 しかも、運輸省の職員は、規制区域内の建造物に勝手に立ち入ったり、除去処分をしたりすることができ、これに抵抗すると、六カ月以下の処罰をされるのであります。
 しかも、憲法第三十八条には、「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」と規定してあるのに、運輸省の係官に答弁しないとき、あるいは虚偽の答弁をしたときは、五万円以下の罰金を課する等、黙秘権をも否定する悪法と断ぜざるを得ません。(拍手)
 その第五は、本法案の政治的乱用の危険性についてであります。
 この法律は、「暴力主義的破壊活動者」とは、三十六項の罪状による「暴力主義的破壊活動等を行い、又は行うおそれがあると認められる者をいう。」と規定してあります。だれかが暴力主義的破壊活動を行うおそれがあると認定するだけで暴力主義的破壊活動者となるのであります。このことは、空港建設に反対する意思を持つ農民や住民は、将来、暴力主義的破壊活動者と認定されることになるおそれが十分あるのであります。政府に反対するすべての人たちにも拡大適用されないとはだれもが断言できない歴史的経験があるわれわれは、きわめて危険な法律と言わなければなりません。(拍手)
 その第六は、法案提案の手続の不備と内容のずさんさであります。
 すでに述べたように、この法案は、わが国法体系に照らすと、異質な内容を含み、憲法違反のおそれが非常に濃いのであります。しかるに、四月二十八日の運輸委員会に議員立法として突如提案され、提案理由書は配付されたが、法案も配付されず、質疑者もわずか二人で三時間というきわめて短い時間で、一方的に質疑を打ち切り、可決したと称していることであります。
 このような問題の多い、行政府に対する権限行使の拡大などを含む重要法案は、政府が責任を持って提案すべきであるにもかかわらずこれを回避したことは、政府の統治者能力喪失か謀略と判断されます。
 これに対してわが党は、この法案よりもまず現地住民の協力を得ることを主張し、審議に参加、現地調査、参考人の招致、連合審査などの提案を行い、質問に入りましたが、われわれの提案を無視し、一方的に採決を強行したことは、議会制民主主義を守る上からも残念でなりません。このことは将来に一大汚点を残したことになります。
 以上、六点にわたり、法案の内容とその手続上の不備につき、わが党の見解を明らかにしたのでありますが、私どもは、いま強行せんとする五月二十日の開港日を前に、国民が何を願い、世界の人々が何を求めているかを考えてみる必要があると思うのであります。
 それは、血で血を洗う紛争の激化ではなく、何が起こるかもわからない不安の中で空港を利用するのではなく、平穏で、安全な空港の開港であろうと思います。その国民や世界の人々の期待にこたえることは、政府の当然果さなければならない責務であると思います。そのためにこそ、政府は、洋の東西を問わず、古今の歴史に明らかに示されているように、権力や法律、警察力だけに頼って開港を強行するのではなく、良識ある人たちによって理解され、支持される中で開港されるよう、熱意と誠意とを持って対処することを強く求めるものであります。
 私は、成田空港問題は、強権だけによる解決はあり得ないことを再び強調し、憲法違反の疑いある本法案によって、角をため牛を殺すの戒めを忘れてはならないことを付言し、法案の撤回を求め、反対討論を終わります。(拍手)
#20
○議長(保利茂君) 小林政子君。
    〔小林政子君登壇〕
#21
○小林政子君 私は、日本共産党・革新共同を代表して、自民、公明、民社、新自由クラブ四党共同提案による新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法案に、反対の討論を行うものであります。(拍手)
 まず第一の問題は、政府・自民党が、にせ左翼暴力集団の盲動と破壊活動に対し、新しい法律でしか対処できないということを口実に、現行法に基づく徹底的な取り締まりを回避し、彼らを泳がせる政策をとり続けてきたことであります。(拍手)
 さきの管制塔破壊事件後の緊急質問の際、総理みずから、彼ら暴力集団に寛容であり過ぎたと認めざるを得なかったように、政府が現行法上可能なあらゆる対策を十分とってこなかったため、ついに管制塔破壊という暴挙さえ許す結果となったことは今日きわめて明白であります。(拍手)
 ところが、暴力集団が空港公団用地内に建てた不法建築物を破壊活動の拠点としていることに対して、公団が不動産侵奪罪で告訴し、四年以上も経過しているにもかかわらず、警察が何らの具体的措置もとらず、依然としてこれを放置し続けているのは一体どういうことでしょうか。しかも、現行法による差し押さえの動きが伝えられるや、暴力集団が作戦上この不法建築物の一部撤去を行って、証拠隠滅を図っていることさえ黙って見逃しているのであります。(拍手)
 一方、現行法の徹底した活用によって、暴力集団の暴力的犯罪活動の拠点にさせない措置は、警職法等による規制によって十分できるし、捜索、差し押さえによって可能な場合さえあります。それにもかかわらず、現行法上可能な措置をとらず、新立法の必要性だけを強調して、徹底した取り締まりを引き延ばしてきた政府の態度は断じて容認できません。(拍手)
 第二に指摘しなければならないのは、新しい法律をつくらなければ、暴力集団の使用する拠点の建物に必要な措置がとれないと言いながら、政府も提案者も、建物の具体的な状況を何一つ明らかにしていないことであります。
 本法案が、限定された地域の限定された建物などに対する法的措置を行うものである以上、その対象とする建物の具体的形状、使用状況、捜査、取り締まり状況等を明らかにするのは当然であり、それは、新立法の必要の有無を明らかにし、また審議をするための最低限の前提であります。ところが、再三再四にわたるわが党の要求にもかかわらず、必要な資料も提出せず、まともな説明も行わないまま法案を作成し、その上、運輸委員会では、具体的な状況説明を求めた私の質問に対して、わからない、答えられないなどと無責任な答弁をしているのであります。これでどうして新立法の必要性を具体的に示し得るものでありましょうか。このように、法案作成とその審議の基本的な前提さえ保障しない政府、提案者の態度はまことに無責任きわまりないものであり、断じて容認できません。(拍手)
 第三の問題は、本法案そのものがきわめてあいまいな、矛盾を持つ非常立法的なものであることであります。
 本法案は、成田空港の規制区域内にある建物が暴力主義的破壊活動のために使われ、あるいはそのおそれがあるときは使用禁止、封鎖、除去できるというものであり、その決定の権限を運輸大臣に与えることをその柱にしています。しかし、この法案は、マスコミが、わが国の法体系に照らすとかなり異質の内容を含んでおり、疑問点が少なくないと指摘しているように、行政庁の一方的な認定だけで、何の手続もないまま強力な措置がとれるようにしている点で、重大な問題をはらんでいるものです。しかも、その認定の方法は、建物の現実の使用状況だけではなく、使用の予測があればいいというものであり、その基準さえ明確でありません。この点について、法案提出を決定した自民党の会議で田村前運輸大臣も、「運輸大臣がおそれがあると認定すれば建物を除去できるというような内容は、広義の治安立法であり、憲法違反の疑いがある」と発言しているのであります。その上、この措置に当たって、暴力集団に補償という形で事実上の新しい資金援助を与えるという、まことに奇妙な規定を盛り込んでいるのであります。
 いま最も重要なことは、このようなあいまいな矛盾のある新たな法律をつくることではなく、現行法の全面的な活用によって暴力集団の破壊活動を徹底的に取り締まることであり、彼らの破壊活動を放置し、泳がせてきた政府・自民党が、その姿勢を根本的に転換することであります。(拍手、発言する者あり)
 第四に、非常立法的性格の強い本法案を、まともな審議も行わず強行採決した暴挙は、断じて許されないものであります。
 この種の法案に対して、国民がその内容を十分判断し得るように、必要な資料を提出し、徹底した審議を尽くすことは、議会制民主主義の当然の要求であります。(拍手)ところが、法案が配付された当日の四月二十八日に、わずか二名、三時間の質疑のみで、しかも討論の機会も許さずに強行採決するに至っては、言語道断であります。わが党などが要求した連合審査、現地調査、参考人意見聴取は一切拒否されたのであります。
 成田空港問題がすでに国際的注目を浴びているとき、成田空港にかかわる新立法について、国会みずからが必要な審議も尽くさず、民主的ルールを真っ向から破壊して強行することは、わが国会の立法府としての権威と識見を国際的に問われる結果となるのであります。(拍手)
 わが党は、一貫して、彼ら暴力集団が社会の進歩と変革に全く無縁の、破壊と混乱のみを目的とするきわめて悪質な集団であることを指摘し、その根絶のために全力を挙げてきました。
 私は、政府がこれまでとり続けてきた寛容な態度を直ちに改め、現行法上の厳重な全面的な活用を行って、彼ら暴力集団の根絶を図ることを強く要求し、反対の討論を終わります。(拍手)
#22
○議長(保利茂君) これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
#23
○議長(保利茂君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#24
○議長(保利茂君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。(拍手)
     ――――◇―――――
 日程第六 特定機械情報産業振興臨時措置法案(内閣提出)
#25
○議長(保利茂君) 日程第六、特定機械情報産業振興臨時措置法案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。商工委員長野呂恭一君。
    ―――――――――――――
 特定機械情報産業振興臨時措置法案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔野呂恭一君登壇〕
#26
○野呂恭一君 ただいま議題となりました特定機械情報産業振興臨時措置法案につきまして、商工委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 わが国の機械情報産業は、経済の発展の大きな原動力として、比較的順調に伸びてまいりましたが、近年、不況に伴う産業設備投資の鈍化、資源・エネルギー上の制約、技術導入の困難等の情勢変化が激しく、これに対応して、技術水準の向上、企業体質の強化、発展途上国の追い上げに対処するための品質、性能の向上、安全・環境問題や省資源、省エネルギー等の社会的要請にこたえるための機器・システムの開発、ソフトウエア開発の促進等、広範多岐の課題を抱えております。
 これらの問題に関しまして、昨年十一月、産業構造審議会から、今後の機械情報産業政策のあり方についての中間答申が行われております。
 本案は、この中間答申の趣旨に沿って、旧特定電子工業及び特定機械工業振興臨時措置法にかわり、特定機械情報産業の生産技術の向上、生産の合理化等を計画的に推進することを目的として提案されたものであります。
 本案の主な内容は、
 第一に、特定機械情報産業として、試験研究、工業化または合理化を特に促進する必要のある電子機器及び危害防止、環境保全、資源利用の合理化または機械工業の基盤の強化に資するため、試験研究、工業化または合理化を特に促進する必要のある機械で政令で定めるものの製造業並びにソフトウエア業を取り上げ、これらを本案の対象として振興を図ることとしております。
 第二は、主務大臣は、特定機械情報産業について、相互の関連に留意しつつ、高度化計画を策定することであります。
 第三は、主務大臣は、電子・機械の製造業者に対し、規格の制限等に係る共同行為の実施を指示することができるものとし、この共同行為については独占禁止法の適用を除外すること、また、特に必要がある場合には、規格の制限の実施を命令することができることであります。
 第四は、主務大臣は、電子・機械の製造業者またはソフトウエア業者が、高度化計画に従って実施している事業共同化等に重大な悪影響を及ぼすような大規模な事業の開始または拡大をしようとする者に対し、その時期の変更等を勧告することができることであります。
 第五は、政府は、高度化計画に定める所要の資金について、その確保に努めるとともに、普及を促進する必要のある高度な複合機械について税制上の措置を講ずるよう努めること等であります。
 なお、本案は、七年間の限時法となっております。
 本案は、去る四月四日当委員会に付託され、同月二十一日河本通商産業大臣から提案理由の説明を聴取した後、参考人の意見を聞くなど、審査を重ね、同月二十八日に至り質疑を終了し、続いて採決を行いましたところ、本案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
 なお、本案に対し、機械情報産業における研究開発の推進、情報産業に関する基本政策の策定その他についての附帯決議が付されましたことを申し添えます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
#27
○議長(保利茂君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#28
○議長(保利茂君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
#29
○加藤紘一君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 すなわち、大蔵委員長提出、昭和五十二年分所得税の特別減税のための臨時措置法案は、委員会の審査を省略して、この際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
#30
○議長(保利茂君) 加藤紘一君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#31
○議長(保利茂君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
    ―――――――――――――
 昭和五十二年分所得税の特別減税のための臨時措置法案(大蔵委員長提出)
#32
○議長(保利茂君) 昭和五十二年分所得税の特別減税のための臨時措置法案を議題といたします。委員長の趣旨弁明を許します。大蔵委員長大村襄治君。
    ―――――――――――――
 昭和五十二年分所得税の特別減税のための臨時措置法案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔大村襄治君登壇〕
#33
○大村襄治君 ただいま議題となりました昭和五十二年分所得税の特別減税のための臨時措置法案につきまして、提案の趣旨及びその概要を御説明申し上げます。
 この法律案は、今九日、大蔵委員会において全会一致をもって起草、提出いたしたものであります。
 本案は、最近における社会経済情勢に顧み、中小所得者の所得税負担を軽減する等のため、おおむね次のように昭和五十二年分の所得税について特別減税を行おうとするものであります。
 まず第一に、特別減税の対象となりますのは、昭和五十二年分の所得税であります。ただし、利子配当所得の源泉分離課税に係る税額、割引債の償還差益の源泉分離課税に係る税額、附帯税等を含めないこととしております。
 第二に、特別減税額は、本人六千円、控除対象配偶者または扶養親族一人につき三千円を加算しますが、昭和五十二年分所得税額を限度とすることといたしております。
 第三に、特別減税の方法でありますが、給与所得者については、転職した者、退職した者等特殊な者を除いて、原則として本年六月または七月に勤務先から還付することとしております。その他の者、すなわち確定申告をした者等については、本人の請求により税務署から還付することとしております。
 なお、昭和五十三年六月二日以後に、昭和五十二年分所得税について確定申告書の提出、更正または決定などが行われる場合には、特別減税額を控除して税額を算出することとしております。
 第四に、特別減税を受けることができる者が死亡したときは、相続人が還付請求し得ることとしております。
 なお、本案による国税の減収額は、昭和五十三年度において約三千億円と見積もられるのでありますが、大蔵委員会におきましては、本案の提出を決定するに際しまして内閣の意見を求めましたところ、現下の財政事情から見てにわかに賛成いたしかねるところであるが、院議として決定される以上やむを得ない旨の意見が開陳されました。
 以上がこの法律案の提案の趣旨とその概要でありますが、本案施行のためには、膨大な事務量と経費のほか、民間の源泉徴収義務者を初め関係各方面の御協力が必要とされるのであります。
 何とぞ、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#34
○議長(保利茂君) 採決いたします。
 本案を可決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#35
○議長(保利茂君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
     ――――◇―――――
#36
○加藤紘一君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 すなわち、社会労働委員長提出、社会保険労務士法の一部を改正する法律案は、委員会の審査を省略して、この際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
#37
○議長(保利茂君) 加藤紘一君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#38
○議長(保利茂君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
    ―――――――――――――
 社会保険労務士法の一部を改正する法律案(社会労働委員長提出)
#39
○議長(保利茂君) 社会保険労務士法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の趣旨弁明を許します。社会労働委員長木野晴夫君。
    ―――――――――――――
 社会保険労務士法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔木野晴夫君登壇〕
#40
○木野晴夫君 ただいま議題となりました社会保険労務士法の一部を改正する法律案につきまして、趣旨弁明を申し上げます。
 社会保険労務士法が制定されてから十年を迎え、現在、社会保険労務士免許取得者は約五万九千名に達し、うち開業者は一万五千余名に及んでおります。
 これらの社会保険労務士は、企業の内外において、関係行政機関との密接な連携のもとに、主として中小企業を中心に増大する労働及び社会保険関係事務の処理等に従事しておりますが、その果たす役割りについての社会的評価は逐年高まりつつあります。
 特に、最近の産業、社会事情の変化と労働社会保険諸法令の整備充実に伴い、社会保険労務士に対する社会の要請は、量的にも質的にも著しく拡大してきております。
 本案は、このような情勢に即応するため、社会保険労務士制度の一層の充実と発展とを図ろうとするもので、本日の社会労働委員会においてこれを成案とし、全会一致をもって社会労働委員会提出の法律案とすることに決した次第であります。
 次に、その内容の概要を御説明申し上げます。
 第一は、社会保険労務士の行う事務の範囲の拡大についてでありまして、事業主等が行政機関等に提出する書類について、その提出手続の代行業務を加えたことであります。
 第二は、社会保険労務士の団体を法定化することでありまして、社会保険労務士の資質の向上等を図るため、都道府県ごとに一個の社会保険労務士会を、全国に一個の全国社会保険労務士会連合会を設立することができることとしたことであります。
 第三は、これらの団体の行政機関への協力でありまして、行政機関は、広報、調査等について、社会保険労務士会または全国社会保険労務士会連合会に協力を求めることができることといたしております。
 第四は、社会保険労務士の試験の科目に、国民年金法及び通算年金通則法を加えたことであります。
 なお、この法律は、昭和五十三年九月一日から施行することといたしております。
 以上が本案の趣旨及びその内容であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#41
○議長(保利茂君) 採決いたします。
 本案を可決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#42
○議長(保利茂君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
     ――――◇―――――
 福田内閣総理大臣の訪米報告
#43
○議長(保利茂君) 内閣総理大臣から、訪米報告のため、発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣福田赳夫君。
    〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕
#44
○内閣総理大臣(福田赳夫君) 訪米報告を行います。
 さて、私は、カーター大統領との会談のため、四月三十日から五月七日まで米国を訪問いたしました。
 この訪問中、私は、カーター大統領との会談を行ったほか、ワシントンでは、米国議会の指導者や経済閣僚とも懇談をいたしました。また別途、園田外務大臣・バンス国務長官、それから牛場対外経済担当大臣・ストラウス大使間の個別会談も行われた次第でございます。さらにニューヨークでは、私は、米財界人と懇談し、また、日本協会、外交政策協会共催の午さん会に出席いたしまして、日米関係の現状及び将来について演説を行いました。
 これらを通じまして、今回の訪米は、日米友好協力関係の一層の増進に寄与するものと確信をいたします。
 私の今回の米国訪問は、日米両国が今日の世界に占める地位及び日米関係の重要性に照らして、両国首脳が少なくとも年一回程度は直接会談し、話し合うという機会を持ち、現下の世界の重要な問題について意見を交換し、協議を行うことが望ましいとの基本的考え方に基づいて行われたものであり、差し迫った日米間の案件ないし個別問題の処理のために交渉を行う、そういう性格のものではない、このことを申し上げます。いわば日米間の間断のない対話、その重要な一環であり、今回で十五回目となった日米首脳者間の定期協議的性格を持ったものとも申すことができるのであります。
 カーター大統領と私とは、五月三日ホワイトハウスにおきまして約三時間余にわたり、率直かつ実りの多い意見の交換を行ったのであります。会談は、なかんずくアジアの問題と世界経済情勢を中心として行われ、特に、これら二つの分野における日米両国の役割りと協力のあり方について、じっくりと話し合ったのであります。
 アジアに関する話し合いにおきましては、私はカーター大統領に対しまして、特に世界の平和と安定との関連におけるアジアの重要性を強調し、アジアの安定確保のための米国の理解と協力を求めた次第であります。
 これに対しカーター大統領は、米国のアジア・太平洋地域における立場は不変であり、米国はこの地域に引き続き政治的、軍事的、経済的なプレゼンスを維持する決意を表明いたしております。
 私は、昨年夏の東南アジア諸国歴訪を中心とするアジアに対するわが国の積極的外交施策について説明するとともに、これとも関連をいたしまして、わが国としては、経済協力を中心としてこれら地域の安定と繁栄に寄与する方針であり、開発途上国に対する政府援助を三年間に倍増するとの意向であることを明らかにいたした次第であります。また、日米両国それぞれの中国、ソ連との関係及び朝鮮半島の問題についても話し合いをいたしました。
 現下の世界経済情勢につきましては、世界経済が容易ならざる困難な状態にあり、その安定と拡大のためには、特に日米欧を中心とする諸国の協調的努力が不可欠であることにつき、私とカーター大統領との間で意見の一致を見た次第であります。そして、その目的のため、日米両国がそれぞれまた協力をして努力を続けることを確認をいたした次第であります。
 わが国といたしましては、本年度実質経済成長率七%を目指して、内需拡大を中心とする景気刺激的経済運営を行うことにより、世界経済の安定と拡大に寄与する方針であり、特に、現下の最大の問題である過剰な経常収支黒字の削減のため、長期的かつ短期的両面で所要の措置を講じつつあることを説明いたしました。
 同時に、わが国のかかる努力を成功させるためにも、また、広く世界経済の安定にも、基軸通貨であるドルの安定が不可欠であることを特に強調いたしてまいりました。これに対しカーター大統領は、米国としてはドルの信認を維持する決意であり、そのためインフレの防止、エネルギー対策の推進、輸出振興策等の強化に努力するとの方針を明らかにいたしております。
 また、私とカーター大統領は、保護主義を防遏し、自由貿易体制を強化するために、多角的貿易交渉を早期かつ成功裏に妥結させることが肝要であるとのことにつきまして意見の一致を見、この目的実現のため、日米両国ともに、さらに積極的な役割りを尽くすべきことを確認をいたした次第であります。
 さらに、世界経済の当面する諸問題に有効に対処するため、主要先進国が協調した行動をとる必要があるとの見地から、七月のボンにおける主要国首脳会議の成功が不可欠であり、これを成功させるため、日米両国が協力して努力することも確認をいたした次第であります。
 また、新エネルギーの開発が二十一世紀に向かう人類のビジョンとしてきわめて重要であることにかんがみ、私は、今回の会談において、新エネルギー開発のための日米協力の必要性を強調し、特に日米共同してこの問題に具体的に取り組むことを提唱いたしております。
 私の今回の米国訪問は、日米双方が、世界のための役割りをいかに推進していくかという問題について、両国首脳の間で親しくひざを交えて話し合ったことに重要な意義があったと思うのであります。(拍手)
 今日の相互依存の世界におきまして、国際的な協調と連帯の必要性はますます強まっており、同時に、わが国の国際的地位の向上に伴いまして、わが国に対する国際社会の期待もまた急速に高まってきておるのであります。このような国際環境の中で、国内に見るべき資源を持たないわが国といたしまして、自国の生存と発展を確保する道は、進んで世界の平和と繁栄のために協力すること以外にはないと確信するのであります。私は、この認識に立ちまして、今後ともわが国の果たすべき世界のための役割りの推進のため、積極的に取り組んでまいる所存であります。
 以上、報告を終わります。(拍手)
     ――――◇―――――
 福田内閣総理大臣の訪米報告に対する質疑
#45
○議長(保利茂君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。鯨岡兵輔君。
    〔鯨岡兵輔君登壇〕
#46
○鯨岡兵輔君 福田総理大臣初め、このたび訪米御一行の皆様の御労苦に対し、私は心から御慰労を申し上げたいと思います。(拍手)
 日米関係を外交の基軸として、あらゆる国と親善を結ぶ全方位外交の方針をとってきた歴代政府の考え方をそのまま継承した福田内閣の外交方針を私は理解いたします。
 日米関係がわが国外交の基軸であればこそ、言わねばならないことは言わねばならないとして、たとえば、アメリカは三百億ドルの赤字を抱えていたのでは世界に大きなことは言えないし、基軸通貨としてのドルの安定にもっと責任を持って対処してもらわねばならないとの福田総理の大統領に対する御発言を私は評価いたします。(拍手)なぜならば、深い関係にあればこそ、なおさら歯にきぬを着せないで、言うべきことを言い、相手に十分考えてもらうことの必要と価値を私は痛感するからであります。
 ただいま御報告を承って、私は、これから、自由民主党を代表して若干の質問をいたしますが、同じ理由で、歯にきぬを着せず、単に自民党を代表してというよりも、むしろ、長く混迷する経済に不安を感じている国民を代表して、きわめて率直にお尋ねしたいと思いますので、失礼の点は前もって御容赦願いたいと思います。(拍手)
 政界には、人のやったことをことさらひねくれて解釈する悪い癖があるように私には思えてなりません。これは決して上品なことではありませんが、その声が大きくかつ反復すれば国民は惑います。その国民の誤解を解くために、私は、二、三の点についてお尋ねいたします。
 すなわち、その第一点は、会談の時期についてであります。
 カーター大統領の都合を大幅に退けて、あえてこの時期を選んだのは、福田総理の強い希望を通した結果であって、福田総理の胸中にあるものは、会談の内容や成果よりも、むしろ大きく政権の帰趨に関するものであるとの考えについてであります。このくらいひねくれた考え、これほどの誤解を私は知りません。
 戦後三十年、いまやわが国は、国民の涙ぐましい努力の結果、世界の政治と経済に大きな影響を与えるほどの力を保持するに至った、一見平和な経済大国であります。この大国日本が、混迷の度を加える世界の政治と経済のために、アメリカと協力して何をしなければならないか、それがこのたびの首脳会談のテーマであったはずであります。このように崇高にして意義深い会談の時期を、政権絡みの国内政情によるものではないかとは、誤解も誤解、国を過つ重大な誤解であるか、あるいは夫子みずからためにするためのものであると総理はお思いになりませんか。この点について、私は、御本人の口から、明確に国民に真実を披瀝していただきたく思います。
 誤解はさらに第二、第三と続きます。あるいは時間が短かったとか、共同声明がなかったとかがこれであります。
 総理、私は思います。どこの国とも仲よくしながらも、ことさらアメリカと事を構えるようなことがあったのでは、日本の外交は根底から崩れます。しかも、日本は、前述したように、世界の政治と経済、特に経済に大きな影響力を持つに至りました。アジアの繁栄の中に日本の繁栄の道を求め、アジアの平和の中に日本の平和の道を求めなければならない日本は、このアジアの地域に歴史的に大きな影響力を持つアメリカと常に諸般にわたって理解を深め、協力し合わなければなりません。そしてそれは、両国のあらゆる機構の中で、実務上きわめて効果的に、毎日行われているに違いないと私は思います。
 そのような間柄にある日米両国の首脳会談であれば、私はもっと気軽に行われてしかるべきと思うのであります。時間が長かったから重く、時間が短かったから軽いと、その用いられた時間の長短をもってその内容まで評価するのは、少し単純に過ぎるのではないでしょうか。ただ単純であるというにとどまりません。彼が三時間と言い、われは三時間半と言うがごときことがまじめに論ぜられるとしたら、まことに枝葉末節、取るに足らざることだと言わなければなりません。(拍手)
 また、会談のたびに共同声明を出さなければならないものでもありますまい。出すもよし、出さぬもよし、出さなければならないとかたくなに考えるほど、そんなよそよそしい間柄ではないし、また、そうであってはならないと思うのであります。
 しかし、総理、口さがない人たちの誤解は誤解を呼んで、軽くあしらわれたのではないかなどと言われたり、思われては、わが国のためには言うまでもなく、アメリカのためにも、さらには日米将来の協調のためにも、大きな害毒を流す結果となることを私は恐れます。
 総理、この点どうお考えになりますか、お示しいただきたく、お願いいたします。
 私は、参考のために、去年の共同声明を読み返してみました。去年の会談は、三月二十一日と二十二日の二日間にわたって行われました。そして発表された共同声明は、日米共通の課題から、世界の政治と経済についてまで十項目にわたり、かなり詳細をきわめております。
 このたびの会談の後行われた総理の記者会見などよくよく承って、もし共同声明を作成したとしたら、去年のそれよりもかなり味の薄いものになったのではないかと私は考えます。(拍手)どうしてだろうと思います。私にはそれがわかりません。
 去年の共同声明では、第一項から四項にわたり、国際社会に対して日米両国が何をしたらよいのかを論じ、進んで科学、医学、教育、文化に論及し、経済に及んでは景気の回復、インフレの防止、貿易の均衡について意見の一致を見、いわゆる東京ラウンドについて共通の結論に達しております。さらに南北問題に話を進め、エネルギー問題を論じ、ロンドン会議についての期待について合意いたしております。
 去年の共同声明の第五項では、アジア問題を論じ、日米安保条約がこの問題に大きく貢献していることを確認し合い、両国の変わらざる決意を表明し合っておるのであります。またASEANの連合を高く評価し合い、朝鮮半島に論を進めては、南北の対話の促進についてまで話し合っておるのであります。
 第六項では核軍縮について論じ、七項では国連に言及し、大統領が、日本は安保理事会の常任理事国になるべきであるとの米国の意向を表明すれば、福田総理大臣は、大統領のこの発言に謝意を表しておられるのであります。
 八項で原子力の平和利用や核の不拡散について合意し、九項に進んで両国の貿易、漁業、航空に意見の一致を見、去年の共同声明の最終の項では、福田総理が、カーター大統領夫妻の訪日について日本政府からの招待を伝達すれば、大統領は、これに感謝し、日米双方の都合のよい時期に訪日することの楽しみを表明いたしておるのであります。
 ことしの会談をより実りあるものにするために、去年のそれと対比して、去年の会談とことしの会談の間にどのような相違があると総理はお考えでございましょうか。(拍手)この会談に当たっての彼のねらいとわれのねらいとの間に差異はなかったのかどうか。去年の合意に基づいて何が守られ、何が守られなかったとお考えでしょうか。合意に基づいて進展したものは何で、進展しなかったものは何だとお考えでしょうか。この点きわめて重要と思いますので、わかりやすく御説明願いたいと思います。(拍手)
 このたびの会談の主要なるテーマは、総理の言によれば、世界のための日米の役割りということであります。ドルは、世界の基軸通貨であるのに、最近きわめて不安定であります。日本が国際的責任を果たさんとする経済的努力は、ドル不安によってしばしば大幅に減殺されている現状を指摘して、このことに対する一層の努力を要請した福田総理の発言は適切なものであったと、何人もこれを評価いたしますが、これに対して、具体的なアメリカの対策と熱意を聞くことのできなかったのは、残念でなりませんし、日本の不安は、なお残ったのであります。(拍手)
 そこで、日本の役割りは何でしょうか。総理は、米国議会の指導的立場の方々との懇談の際に、私は、第一回の日米首脳会談に首席随員として訪米したが、そのときの目的は、わが国が米国から三億ドルの金を借りることであった、今日、わが日本は、大幅な黒字を抱えているが、これは歴史の皮肉であり、感にたえないとあいさつされたそうでありますが、この言葉を先方はどう聞いたであろうかと、私は、そのことに興味を覚えます。そこにこそ、日本の国内事情を超えた、世界経済のための日本の役割りがあるのだとアメリカは思わなかったか否か。
 それにしても、会談の詳細を承って感ずることは、アメリカが世界のための自分の役割りと感じているのは、かなり先を見通した世界の政治と経済にあるのではないかと私は思います。そしてそれは、エネルギー問題の将来を見通してのことと十分関係があるように思えてなりません。さらに、同様のことをソ連も憂慮して、これまたかなりの見通しを立てて、このごろ対策に乗り出しているのではないかということと深く関連するように思えてならないのであります。
 アメリカが国内的に油の節約を中心とした幾つかの法律を準備したり、外交的にサウジアラビアやイランときわめて積極的に関係を持ったり、ソ連がそれに対抗するがごとく、シリアやイラクやリビアなどアフリカにまで手を伸ばして関係を求めたりしていることと、いまアメリカが考えるアメリカ自身の世界のための役割りとは深く関係しているのではないでしょうか。ここにアメリカの対ソ政策の基本があり、ここにアメリカの対中政策があり、ここにアメリカの積極的中東政策があると考えたら思い過ごしでしょうか。それは世界のためというより先に、よりアメリカのためであると私は思います。日本もまた、世界のためのというより、同時に将来を見通した、より日本のための方策を考える必要はないか、いやむしろその方が先なのではないかと私は考えます。(拍手)
 このたびの日米両首脳の会談の唯一のテーマであった世界のための日米の役割りについて、どんなことが具体的に決定したか、国民にわかりやすく総理、お示しいただきたいのであります。
 総理、戦後三十年、世界はいま羅針盤を失った船のように、この先どこへ進むのか、乗組員は不安と危惧の状態に陥っているようなものだと私は思います。日本も例外ではありません。それどころか、領土が狭く、人口が多く、資源は乏しく、それでいて短い期間に驚くべき発展を遂げただけに、その状態はいよいよ深刻だとさえ申せます。
 軍事大国に失敗した日本は、廃墟の中から立ち上がって経済大国の道をひた走りに走って、もうこれ以上大きくなることは自分にも他人にも害を及ぼすというほどに大きくなったのであります。すなわち、目標を失いました。進むことも退くこともできない不安と危機の原因がそこにあることをわれわれは知らねばなりません。
 しかも困ったことに、この対策のために、従来の物差しでははかることのできない、新しいわけのわからない事態になっているのではないでしょうか。不確実性の時代と言われるゆえんであります。わが国の進むべき目標は何か。福田総理がよく好んで使われる比喩をもってするなら、日本丸にせよ、福田丸にせよ、それがどこに向かって進んでいるのか、国民にはわからないのであります。(拍手)だから不安なのであります。まず、それを示すことが政治の最高責任者である総理大臣の御使命ではないかと私は考えますが、いかがでございましょうか。(拍手)それが決まらなければ、外交もまたできないと私は心配します。
 日中平和友好条約についてアメリカの支持を取りつけたと新聞は報じていますが、それがなければ、隣国との条約さえも結べないのかと国民をして思わしめたら、独立国としてまことに遺憾に存じますし、外国からも軽侮を招きます。(拍手)朝鮮半島の平和と統一のために、それなくしては、みずからの平和も保ち得ない日本のできることは何か。それは、この問題でアメリカと話し合う前に、日本みずからが覚悟しなければならないことではないでしょうか。(拍手)
 ことしの予算で、われわれは、長く続く不況を短期間で克服するために、財政に力を置かざるを得ませんでしたが、そのようなケインズ流の考え方は、もう本当は役に立たなくなったのだと言われております。しからば、新しい経済の指導原理は何か。
#47
○議長(保利茂君) 鯨岡君、お約束の時間が過ぎております。
#48
○鯨岡兵輔君(続) 同じ悩みに悩んでいるはずのカーター大統領との間に、そのような点で話し合われたことがあったのかなかったのか。もしあったとすれば、最後にその点についてお話しいただきたいと願って、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕
#49
○内閣総理大臣(福田赳夫君) 五月に私が訪米の時期を選んだ、これはいろいろ誤解をする人がある、何か福田が国内政治体制を福田のために利用するために五月を選んだのだなんという誤解があるから、よく解明しておけというお話は、これは適切なお話だった、こういうふうに思います。
 私は、とにかく日米という国は、これは特別の関係の国だ、わが国の外交の基本というものは、何といってもこれは日米ということを基軸といたしまして、そうして世界じゅうの国と仲よくする、そこにあるのです。その日米の首脳が少なくとも年に一回ぐらいは会談をいたしまして世界のことを論じ合うということ、これは必要なことなんです、欠くべからざることなんです。さあその時期をどうするかということになりますと、ちょうどたまたま先進国首脳会談が七月に開かれる、その前の意見調整といういい時期が五月なんです。しかも、私は、国会の議事を尊重いたします。そういう立場から、国会になるべく迷惑を及ぼさない時期がいいんだ、そういうようなことで、いわゆる五月連休の時期を選んだわけなんであります。
 そういうようなことで、私は、外遊をいたしまして、それを私の政治的な立場の強化に使おうなんて、そんなけちな男じゃございませんから、はっきりと御了知願いたいのであります。(拍手)
 それから、会談の時間が短かったというようなことについて、何かアメリカが日本を軽く扱ったなんというような見方をする人があるとの話でありますが、それは、自民党にはそんな人は一人もおらぬはずであります。(拍手)しかし、首脳がわが国を来訪する、一回で済むこともありまするし、二回で済むこともありますが、大体一回の会談というのは一時間あるいは一時間半ですよ。二回やったって三時間になるというようなことはまれでございます。今回、アメリカの大統領が、イスラエルの首相が来て会談をする、そして私が到着すると、すれ違いにイスラエルの首相が帰国をする、そういう草々の間に三時間半近くも会談をするというのですから、これは決してそんな短い会談じゃありません。アメリカはそもそも、これはもうアジアの最も安定した政治勢力、経済勢力は日本国であるという透徹した認識を持っておりますので、そのような軽く日本の国を見るというようなことは全然ありませんから、その辺は国民の各位も篤と御認識のほどをお願いを申し上げたいのであります。(拍手)
 共同声明につきましていろいろ御所見が述べられましたが、去年は確かに初めての日米首脳会談ですから共同声明を出しましたよ。しかし、ことしは二回目である。大体、気軽に各国の首脳が首脳同士会談いたしまして、その後で共同声明を出すというようなこと、これは何か特別の交渉案件があったとか、そういうようなときなんです。今度、私は先ほど申し上げたじゃありませんか、日米間に特別な交渉案件なんというのはないのです。世界を論じた。もしここで日米が共同声明を出すということになれば、そんな内容の薄い共同声明じゃございません。これは相当重要な内容を持った共同声明になったであろう、このように思うのであります。去年の三月の日米会談と違う点は、日米間の特殊問題、これをそう多く議論をしない。ほとんどこれは東西関係あるいは南北問題、二十世紀の残されたこの二十二年間を論ずる、さらにはその先の二十一世紀を論ずる、こういうようなことで、まことに内容の豊富で、そうして実りあるものであったというふうに御理解を願いたいのであります。(拍手)
 それから、私は、きょうも自由民主党の両院議員総会でごあいさつをしたのです。二十一年前、岸首相、これは初めての首脳会談でありました。そのとき私は、岸首相にお供をいたしましてアメリカへ参りましたが、そのとき私の役割りは、三億ドルアメリカから借りることだったのだ。幸いに、アメリカは非常な好意を示してくれまして、その三億ドルを借りることができた。その三億ドルがなければ、非常に不況だったけれども景気対策ができない、また、外貨保有高が十億ドルを割って、もう数カ月後には本当に底をつくという寸前の段階であったわけなのです。そのとき三億ドルの借款、これはわずかな額ではございますけれども大変な意味を持っておったのです。
 その話をいま引用されて、私がそういう感慨の話をアメリカの財界人等にした、それに対してアメリカはどんな感じを持ったであろうかという御質問でございますが、鯨岡さん、それはひとつアメリカへ行って聞いてもらいたいのです。
 しかし、私が想像するのに、アメリカ人は恐らく、日本という国にあのとき協力しておいてよかった、まあとにかくアメリカはいろいろな国に経済上の協力をしたけれども、その効果が日本におけるほど強烈に発揮された国はない、強くなった日本は世界のために尽くしてもらいたいな、これがアメリカ人のそのときの感想であった、これは私の推測ですから、そのように御了承を願います。
 それから、今回、私がアメリカの経済政策について、特にドルの安定につきまして発言した、その発言はよかったという評価をいただいたわけであります。私は本当にそう思うのです。アメリカのドルというもの、これが弱くなったら、世界は本当に混乱します。これは経済的な混乱どころじゃありません。政治的な大混乱につながっていく。ですから、アメリカのドルというものにはどうしても強くなってもらわなければならぬと思うのです。また、わが国の立場、つまり黒字黒字と言う、私はその黒字減らしにずいぶん熱心に努力をいまいたしております。おりますが、幾ら努力いたしましても――そしてことしは恐らく鉄鋼輸出をとらえてみましてもあるいは自動車の輸出をとらえてみましても、数量的にはかなり輸出は減るのです。しかしアメリカがインフレになって、そしてアメリカはドルに換算したら、数量は減ったけれどもそのドルに換算した輸出額は多くなったというのじゃ、これは黒字問題というものは解決いたしません。わが日本も努力はいたしますけれども、アメリカがインフレの克服について努力をしてもらいませんと、この黒字の問題というもの、これは解決をしないのです。この点は私は、大統領にもあるいは経済閣僚にも、あるいは上下両院の議員に対しましても、財界人に対しましても、これは強く指摘いたし、大方の御理解を得た、かように考えている次第でございます。(拍手)
 それから、世界のことばかり福田は言っているようだが、日本のことを先に考えろ、こう言うが、これは鯨岡さん、ちょっと、認識が少しどうかと思います。やはり日本のことはそれは考えなければなりませんよ。なりませんけれども、日本の国のことを考えるときに、世界じゅうが本当に平和で、そして繁栄する状態でなければ、この資源のない小さい島国に生きる日本人というものは、これは生きる道はございません。私は、ここまで来たわが日本です。この日本というもの、これは世界の平和、世界の繁栄のために努力をする、その中で生きていくという姿勢でなければ相ならぬ、このようにかたく信ずる次第でございます。(拍手)
 それからさらに、日本丸の前途を明らかにせよということを言っておりますが、これは施政方針演説でもあんなにはっきりと言っておるじゃありませんか。わが国は世界で初めて、力はあるけれどもその力を軍備には使わない、これはもう平和大国の道を行くのだということをはっきりと申し上げておるのです。
 それからまた、同時に、いまも申し上げたところでございますけれども、小さい日本の島国根性ではもう日本は生きていけないのだ、世界に責任を持つ、その中で日本は生きていくという姿勢でなければならぬ、こういうことをはっきりと申し上げておるわけであります。これは誤解のないようにひとつ御理解のほどをお願いを申し上げまして、お答えといたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#50
○議長(保利茂君) 武藤山治君。
    〔武藤山治君登壇〕
#51
○武藤山治君 私は、日本社会党を代表して、日米首脳会議をめぐるアジアの平和と通貨、通商問題を重点にして、政府の姿勢と方針について、総理初め関係大臣にただしたいと存じます。(拍手)
 福田首相は、世界の政治を語る会談だと意気込んで訪米をしたが、結果は、これまで日米外交ルートで繰り返し強調されたものの再確認で、二番せんじにすぎなかった。世界経済の不均等発展をどう解消するか、産油国、開発途上国と工業先進国の協調問題をどう処理するか、スタグフレーションと言われる現代資本主義経済の行き詰まり打開策、軍縮による人類の生存と開発問題、IMFの再建か新たな通貨制度の創造か、平和共存を確固としたものにするかなどなど、世界政治や経済の大問題が横たわっております。これらの問題について、高度な哲学、世界観を少しは論じてほしかったと思うのは、私一人ではないと思うのであります。(拍手)
 アメリカの軍事力のアジアにおける強化と、日本の軍事力の肩がわりをカーターに訴えたのはなぜか。日本は、米ソ両超大国の核の中に入ってはならない、軍事力の極に編入されてはいけないのであります。日本民族の生存と繁栄は、平和共存の橋になることによって保障されるものなのであります。
 頂上会談で大事なことは、たとえば南北朝鮮の自主的統一のための環境づくりをどう進めるかの方法論、米国のアジア政策の変化が日本の立場に及ぼす影響はどういうものかといった中期的視野に立った話し合いなのであります。朝鮮半島の緊張緩和、自主的統一に向けて日本政府は何をすべきなのか、政府の基本方針を明らかにせられたい。
 福田・カーター会談にはそれらの視点が欠如し、成果はなかったと思います。
 アメリカの上院議員ロング財政委員長は、日本が防衛力を持てる憲法に変える努力をすべきだ、変えられることを期待していると内政干渉的発言をしたと報道されたが、重大な問題であります。総理はこれをどう受けとめたか。
 さらに、軍縮について大統領と語らなかったのはまことに残念だ。国連軍縮会議に多くの国で大統領や首相が出席するのに、福田首相はなぜ出席しないのか。世界に向かって、核兵器はもちろん、軍備縮小、やがて全廃を二十一世紀に実現しようと提唱すべきではないのか、首相の平和憲法に対する無理解と不熱意の結果が国連軍縮会議への欠席となったのか、真意を聞きたいのであります。
 次に、円高ドル安をめぐるアメリカの責任についてであります。
 アメリカの流動性収支を見ると、一九七七年十月末で対外ドル債務残高は千七百八十九億ドルと急増し、ユーロダラーの二千数百億ドルを加えると四千億ドルを超える巨額となりました。かかるドル散超のときにアメリカの貿易赤字が増大し、経常収支が二百億ドルも赤字を記録すれば、ドル価が下落し、他方、貿易黒字の増加する円とマルクが上昇する動きを見せれば、海外のドル保有者が減価の予想されるドルを売り、これを強い通貨にかえようとして外為市場に殺到するのは至極当然のことであります。円高は昨年二二%を超え、本年二月後半以降、さらに円高ドル安は高進しました。アメリカがドル防衛に無関心の結果であります。
 固定相場制と、ドルと金交換性が行われていたころには、流動性収支の赤字は結局アメリカの金準備への圧力をつくり出すことを意味しました。だから、当時のアメリカは流動性収支を重視し、そのコントロールを政策の目標としておりました。ところが、最近は経常収支についてだけ特別の関心と態度を示していると思います。それは、国際競争下におけるアメリカ産業の利害の指標として経常収支を取り上げているのではないかと思われるのであります。
 このようなドル防衛策の無関心、無策が保護主義を生み、日本に対する輸入制限、ペナルティーの強要となってあらわれてくるのではないのか。これらの点についてカーター大統領に認識を改めるよう迫ったようだが、反応は果たしてどうであったのか。アメリカの国際収支の慢性的赤字問題と真っ正面に取り組まない限り、首脳会談を何回開いても、来る七月ボンでまた首脳会議を行っても、国際通貨体制の安定はあり得ないと思うのであります。福田首相はこの点をどう認識しているのか。ボンでの首脳会議で、日本は一九七九年、八〇年に実質成長七・五%の成長を期待されそうでありますが、この道はインフレへの道程を意味するのでありますが、首相はこれをどう考えておるか。
 さらに、ドル安の進行によって、OPEC諸国は、ストック及びフローの両面にわたるドル安の減価、原油価格の相対的下落を是正または防止する措置を採用するかもしれないことであります。SDRが通貨バスケットを採用するかはかり知れないが、原油代金をドル以外のもので要求することも考えられるのであって、この動きは、アメリカのドル防衛政策を早める逆効果はあるだろうが、日本政府としてこの産油国のドル離れ傾向を支持すべきか、政府の見解を承りたいのであります。
 次に、経常収支の政府の公約実現についてであります。多言不実行の福田首相、経済の強い福田と自負した首相だが、権威は地に落ち、世論調査では二〇%の支持に凋落したと新聞は報じております。
 それもそのはず、五十二年度の経常収支七億ドルの赤字で景気を上昇させるとロンドン首脳会議で発言をしたが、結果は、大番狂いの百四十一億三千万ドルの黒字、外貨準備は一年間で百二十二億一千万ドルも増加し、三月末準備高は二百九十二億一千万ドルに達した。一方、アメリカの対日貿易赤字は年間九十八億ドルとなったのであります。
 ここに、厳しい通貨、通商戦争が起こり、保護貿易主義の台頭、日本品の輸入規制、ペナルティーの発動、防衛分担論、アジア諸国への援助拡大論、農業品輸入拡大要請などなど、日本に対する風当たりが強くなっているのであります。日本国内は、産業間格差の拡大、構造不況業種の累増、完全失業者はついに百四十万人を突破という事態を招いているのであります。
 本年度は六十億ドルの黒字に圧縮すると約束をしたが、これが空手形となった場合の国際的圧力は一層激しいものとなるでありましょう。輸出を前年度並みに抑えたとしても、八十億ドルの輸入増を図らなければ目標は達せられず、輸出を極度に圧縮すれば国内の実質七%の成長が不可能となる。福田内閣の命運がかかっている最大の難題であります。
 しかるに、総理は、日米首脳会談後の記者会見で、「六十億ドルという数字は経済企画庁が一応の試算として出した数字であり、首脳会談では数字に言及しなかった」と説明しているが、経常収支黒字六十億ドルは単なる試算なのか。閣議で決定した経済見通しの数字が、いとも簡単に試算として片づけられると思っているのか。二枚舌のそしりは免れないと思うのであります。このような認識と態度では、またまた国際的不信を招き、非難を浴びるに違いないと思うのであります。アメリカのインフレの責任に転嫁し、六十億ドルの閣議決定の経済見通しはどう理解すればよいのか。夢か幻か、明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
 政府は、五十三年度に緊急輸入を四十億ドル実現すると言明しているが、本心なのか。昨年、首相は、三十億ドルの緊急輸入を願望として表明をしたが、三月末までにその三分の一、わずか十億ドルしか実現しなかったではないか。総理の有言不実行は、国の威信を傷つけ、国際社会で名誉ある地位を築くことに反するのであります。
 国際収支の改善目標が達成されず、七%の実質成長率も不可能とわかった段階で、総理は潔く責任をとり辞任をすべきだと思うが、総理の見解はいかがでありますか。(拍手)
 次に、円高ドル安と国内政策についてであります。
 一兆ドル経済となったわが国は、アメリカの二分の一の総生産額となり、輸出は前年度八百四十六億ドル、輸入は七百十六億ドルに達しました。この貿易額の七五%以上がドル建てで取引されている現状では、為替相場の変動が与える影響は甚大なものがあります。国内経済の撹乱要因となり、業種間の格差拡大による不公正は、一層ゆがんだ経済を現出させることになりました。政府の対応は後手後手となり、将来展望がなく、国民の不安は増幅するばかりであります。
 政府は、三月十一日と四月二十一日に国際収支対策及び円高対策を閣僚会議で決定をしたが、おざなりのものであり、中期的展望もなく、貿易構造の変革、産業構造の転換についての青写真すら示さない場当たり主義に陥っていると思うのであります。
 個別に具体的に七点を伺います。
 一、緊急輸入外貨貸付制度は三・七五%の金利で優遇をするが、全額にしてどのくらい外貨減らしが見込めるのか。
 二、外貨貸しでリースによるドル減らしは、目下タイ航空に二機予定をされているようだが、どの程度総額でリースの額が見込めるのか。
 三、備蓄による輸入増はどのくらいになる予想か。ニッケル、クロームなどは可能かもしれないが、ウランはどこの国から買い付けてくるのか。輸入業者や企業のリスクが大きいと予想されれば備蓄は思ったほど多額には達しないと思うが、政府の見通しいかん。
 四、老朽船の解撤事業を新たに推進すると決めているが、いつからどの程度の規模で、国の資金はどのくらい支出するのか。
 五、政府開発援助を五十一年度の倍増を目指し、三十億ドルを目指すようだが、どこの国にどんなプロジェクト援助をするのか。グラントエレメント八六%を目指し、無償援助の拡大をすると決めたが、実行できるのか。また、汚職や政治取引の行われない保証を確立する必要があるが、心配はないか。
 六、円高に伴う物価対策で、電力及びガス会社に対しては料金据え置きという企業寄り指導は、国民の疑惑を生んでいる。料金に還元をすべきだ。また、この際、電力、ガス会社からの政治献金を一切禁止すべきであります。輸入たばこ、国際電話料、航空運賃などが引き下げられる程度では、円高メリットを国民に還元したことにはなりません。石油製品、小麦粉、飼料などなど、すべての商品について勇断をもって価格引き下げを断行させるべきであります。政府の行政指導の見通しを聞きたい。
 第七番目に、社会主義諸国と積極的に貿易取り決めを拡大し、貿易構造の転換を図るべきであるが、所見、いかがでありますか。
 最後に、実質七%の経済成長の行方に関連して伺います。
 鉱工業生産は、昨年十一月から本年三月まで連続上昇を記録し、特に三月は一・六%の伸びとなり、これを年率に換算すると一二%の成長率になります。在庫減、出荷増も見られ、このまま推移すれば七%成長が達成されるかもしれません。しかし、これらの生産の伸びは、円高ドル安を見越しての輸出増加と公共事業費の追加、年度末集中がその要因であり、いつまでこの水準が続くか疑問であります。
 特に、春闘におけるベア率が六%以下で、政府経済見通しの所得増より三%も低い水準であり、約二兆七千億円もの減となりました。そのため、個人消費見込み一一・九%の伸びは実現しないと思います。また、米国及びECの管理貿易的傾向が強まり、輸出も鈍化するだろうと思う。政府の見解は一体どんなものであるか。
 首相は、七%が達成せられないことが判明すれば、追加需要のための補正予算を考慮すると言明したが、いつごろの時点で判断して補正の可否を決めるのか、その考えを明らかにせられたい。
 IMFの専務理事は、景気拡大策は減税が好ましいと明言しているのでありますが、福田内閣は、列島改造論の焼き直しで、新幹線鉄道、本四架橋、高速道路などの工事促進に力点が傾斜しております。補正予算を編成する段階でまた同じ道を進むのか、それとも、庶民が切望する福祉、減税、生活環境整備にすべてをかけるのか、首相の基本方針を明らかにせられたい。
 なお、補正提出前に野党の意見を十分取り入れるべきであると思うが、首相の考えを聞きたい。
 福田内閣の一年半を振り返り、目ぼしい成果があっただろうか。ない。得点なしで最終の九回が近づいた感がするのであります。せめて日中平和条約を締結し、後世の史家が、福田内閣の存在意義を歴史にとどめてくれるよう、大きい意義ある仕事をなし遂げたらいかがでしょうか。首相の決意と方針をただしたい。有言不実行の汚名を返上するチャンスでもあります。
 福田総理の勇断と実行を強く求めて、降壇するものであります。(拍手)
    〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕
#52
○内閣総理大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。
 今度の日米会談は、これは去年の三月の会談の再確認にすぎないじゃないかと、こういうようなお話でございますが、これは、再確認だも大変な意味があるのです。しかし、再確認にとどまらない。先ほどからるる申し上げましたとおり、私どもは、幅広い各種の問題に触れて話し合いをいたしたわけです。武藤さんは、哲学のない話し合いだなんておっしゃいまするけれども、私もほかの国の首脳がお互いに話し合いをするのをずっと注意深く見ておるのです。しかし、私とカーター大統領との間の話くらい恐らく哲学的な幅の広い話はない、私はこのように思うくらいでございます。論ずるところは先ほども申し上げましたとおりです。東西問題の話し合いだ、南北問題の話し合いだ、残された二十二年この今世紀の話にとどまらず、二十一世紀までこれを論ずるというのですから、私は、武藤さんに改めて、私どもの会談がきわめてこれは広範であり、また意義の深いものであったという認識を新たにせられんことを求めます。
 それからまた、武藤さんは、どうも哲学的な話というかそれもないが、具体的な話もまたないじゃないかというお話であり、特にアジア問題について触れられたわけでございますけれども、アジア問題につきましては、これは私は昨年の八月、ASEAN諸国、ビルマ等回ってきた。その際にも十分申し上げたわけでありますが、私どもはこのアジアに住む日本といたしまして、ASEANの国々またビルマあるいはオーストラリア、ニュージーランド、これらの国々とどうしても特別な関係があるのですから、特別の関係を結ばなければならぬ、このように考え、そのための施策を進めつつあることは、大方の人が御承知でございます。
 さらに、問題は大陸なんだ、大陸方面だ。大陸方面の中で、一番わが国と近いのは朝鮮半島である。朝鮮半島についての政府の所見、これはしばしば申し上げておるとおりでございまして、終局的には、これは南北が平和的に統一されることである。しかし、それまでには時間がかかる。そのかかる間におきましては、これは南北の均衡という問題が非常に大事になってくる。しかし、均衡の中でも、将来の平和的統一を目指して、そうして南北の話し合いということが行われることが好ましい。その環境づくりに努力をする。こういうふうに、きわめて明快に、論理的に申し上げていることを思い出していただきたいのであります。
 また、日中問題につきましてもお話がございましたけれども、これもしばしば申し上げておりまするとおり、双方が満足し得る状態においてなるべく早くこれを締結したい、そうしてそのタイミング、環境も熟してきた。ところが、不幸なあの尖閣列島の問題が起きて、いまここで停滞をいたしております。この状態をどうやって打開するか、いま苦慮をいたしておるという最中でございます。
 さらに、アメリカ上院のロング議員が、日本は、軍備拡大のために憲法改正をすべきであるというような発言をしたということについて、何かお尋ねがありましたけれども、私たちに対しまして、そのような発言はいたしておりません。私は、聞いておりませんでございます。お答えは省略をいたしておきます。
 それから、ドル安の問題につきまして私が見解を披瀝した、それに対するカーター大統領の反応はどうであったかということでありますが、私は、ドルの安定ということは世界の平和のために、世界の政治混乱を回避するために、本当にこれは必要である、こういうふうに思うのでありまして、私の見解を十分に大統領に申し上げたわけでありますが、大統領も私の見解はよくわかってくれたと思います。
 その理解の上に立ちまして、大統領はインフレの阻止、そのための具体的対策、それからさらに、その背景となっておるドル安の問題、また、それの背景となっておるところの石油の輸入過剰の問題、これらの問題について逐次有効な手を打ってまいる、このようなことでございますので、大いにこれを御期待を申し上げたい、かように考える次第でございます。
 また、そういうような中で、ドル安の反面といたしまして円高という問題が起こってくる。これがわが日本に好ましからざる影響も与えておるということは、大統領はよく承知しておりました。そして、これからは円ドルの問題につきましては、日本銀行、アメリカの連邦準備銀行または日本の大蔵省、アメリカの財務省間におきまして、毎日毎日電話をとらせるということを約束をいたしております。
 それから、経常収支六十億ドルの問題に触れられまして、これは一体試算なのかどうかというようなお話でございますが、これは試算というような性質のものじゃなくて、経済運営の指針というふうに御理解を願いたいのであります。これはしかし、日本の政府で幾ら経常収支の黒の数字を出してみましても、輸出する値段がほかの国のインフレによって動いてくるのでありますから、これで六十億ドルと一応経済運営の指針として書いてありまするけれども、これをもって海外に約束する、こういうような性格のものではないということをはっきりひとつ御理解を願いたいのであります。
 それからさらに、カーター大統領との会談で、主要国首脳会談の打ち合わせをしたらしいが、その内容はどうかというお話でございます。結局、インフレのない経済成長、こういうことを各国が目指す、また保護貿易体制に対して断じて闘う、そのためにMTN、これは日本も大いに関係があるわけでありますが、つまり東京ラウンド交渉を成功させるというような合意、それからエネルギー問題について両国とも大いに協力しよう、これは当面のINFCEというような問題についてであります。しかし、長期的に石油にかわる代替エネルギーの開発を日米協力しようじゃないかという私の提案に対しまして、大統領は賛意を表しておりますので、これから具体化されるというふうに思います。
 また、その他、国際通貨の問題、長期資本の移動の問題、それらの問題の話し合いをいたしましたが、これらの詳細は省略をいたしておきます。
 それから、さらに国内の経済に触れられまして、七%成長、これは、私が実現されなかった場合にはどうするんだというお話でございますが、これはもう何とかして七%成長を実現いたしたいと思うのです。これが怪しくなる、そういうようなことがありますれば、その時点におきまして、どういう対策をとったら適当であるかということを判断いたしまして対処をいたしたい、このように考える次第でございます。
 また、経済政策運営において、近ごろは新幹線だ、あるいは本四架橋だというので、また経済政策が逆戻りしつつあるということについての御懸念でございますが、そういうことは考えておりません。逆戻りするというようなことは考えておりません。しかし、新幹線とても必要なんです。これは、とにかく日本列島を均衡ある姿においてひとつ開発していこうということになれば、新幹線を敷設することも必要なことなんです。四国だって橋でつないで差し上げなければならぬ、これも必要なことなんであります。必要なことはやってのけますけれども、考え方の基本といたしまして、高度成長という路線に復元をする、そういうことはないということを申し上げておきます。
 最後に、福田よ、勇断と実行力を示せ、こういう御激励に対しまして謝意を表しまして、お答えといたします。
    〔国務大臣村山達雄君登壇〕
#53
○国務大臣(村山達雄君) 私に対する御質問は、外貨貸し制度の活用によってどれぐらいの輸入増が見込めるかという問題と、それから、ウィッチフェーンが減税をやっておるんだが、日本ではどうか、この二つだろうと思います。
 外貨貸し制度の問題は、武藤さん御案内のように、為替リスクをなくしまして、できるだけ低い金利で、通常の輸入ではない、積み増しの輸入をいま求めておるわけでございます。大分内談もありますし、現在進みつつあるものがございまして、現在のところ大体六億ドル強のものが話が進んでおります。したがいまして、これは今後民間がどのようにいろいろな知恵を出して乗ってくるかということによりますけれども、相当の金額が期待できるのではないだろうか、このように思っておるところでございます。
 第二番目の、専務理事のウィッチフェーンが減税を勧めたというような話なんでございますが、これは正確に申しますとこういうことでございまして、現在コストプッシュの進んでいる国において景気対策を進める場合には、公共投資の問題は一応別にして、減税がいいのか、あるいは福祉がいいのかという選択の問題として考えると、どうも減税の方がより効果的に思われる、こういう一応の見解を出しているのでございます。ですから、コストプッシュのある国でございますから、日本はいま最もない国でございますから、わが国のことを言っているわけではないのでございます。そのように御理解願いたいと思います。
 わが国の減税の問題につきましては、しばしば申し上げましたように、現在立たされた日本の経済環境で、同じ財源を使ってやるのであれば、やはりわれわれが当初予算でお示ししているようなものが最もベストの案であろう、かように思っておるところでございまして、減税の問題については考えていないということを申し上げておきたいと思います。
 以上であります。(拍手)
#54
○議長(保利茂君) 内閣総理大臣から、答弁を補足したいとのことであります。これを許します。内閣総理大臣福田赳夫君。
    〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕
#55
○内閣総理大臣(福田赳夫君) 国連の軍縮特別総会が行われるのですが、それに対してどういう態度をとるのか、また、私がそれに出席するのかということについてお尋ねがありまして、私が答弁漏れとなりましたが、申し上げるまでもありませんけれども、軍縮につきましては、わが国は本当に特殊な立場にあるわけであります。持たんとすれば核武装までできるいまや経済力もあり、あるいは技術能力も持っておるわが日本であります。その日本があえて軍事大国たる道を選ばない。ですから、ほかの国の人が軍縮をしようしようと言うのと違いまして、わが国がそういう主張をすることは非常に説得力がある。その立場から、この国連総会におきましては、わが国の平和国家としての姿勢を踏まえまして、諸外国に対しましてこの軍縮を進めるための強力なる発言をしてまいりたい、かように考えております。
 この総会に私が出席するかどうかにつきましては、これはいまなお検討中であります。私が出席いたさない場合には、園田外務大臣をしてかわって出席いたさせます。(拍手)
    〔国務大臣河本敏夫君登壇〕
#56
○国務大臣(河本敏夫君) 貿易問題についての御質問でございますが、すなわち、社会主義国との貿易量を増加することによって貿易構造の転換をすべきである、こういう御質問でございますが、わが国の場合、社会主義国との貿易拡大によりまして、それだけで貿易構造の転換をするということは大変むずかしいと思います。やはり産業構造全体の転換が必要だと考えておりまして、ことしは産業構造審議会にお願いをいたしまして、産業構造転換のローリングプランを答申をしていただくことにいま準備をしているところでございます。
 第二は、備蓄問題でございますが、緊急輸入に関連をいたしまして資源エネルギーの備蓄計画を進めておりますが、一つは、エネルギーに関しまして、ウランの備蓄と石油の備蓄を進めております。それから第二は、非鉄金属、希少金属などの備蓄を進めております。それから第三は、基礎物資として鉄鋼用のペレット、こういうものの備蓄を進めることにいたしておりますが、あるものはすでに具体化しておりますけれども、一部のものはなおこれから、先般決まりました外貨貸しという枠組みの中で具体化をしていくべく準備をしておるところでございます。
 それから第三の御質問は、電力、ガス料金を円高差益に関連して引き下げよ、こういうお話でございますが、現在の電力、ガス料金は昭和五十一年に決めたものでございまして、五十一年、五十二年と現行料金が続いております。円高差益も相当ありますけれども、一方におきまして経費の負担も相当増加をしております。資本費、人件費、物件費、それから石炭などの燃料費、こういうものも相当上昇をしておりますので、円高差益の還元の方法といたしましては、原則といたしましてこれから約二年間、昭和五十三年、五十四年と二年間現行料金を据え置く、こういう形で実質上の円高差益を指導したいと考えております。
 なお、電力会社からの政治献金は、現在中止されておると承知をいたしております。(拍手)
    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
#57
○国務大臣(宮澤喜一君) 重複を避けまして、残りました問題について申し上げます。
 緊急輸入四十億ドルということを言っておるが、これはいつまでのことを考えておるかというお尋ねで、今年度中に少なくとも四十億ドルと考えております。
 その大きな内訳はどうなっているかということでございまして、ただいままでのところを大まかに申し上げますと、第一は、先般百人に近い経済人が輸入ミッションでアメリカに参りました。その成約がほぼ十九億ドルと思われますが、かなりのものが本来予定されていなかった輸入であるというふうに推定してよろしいかと思います。
 それから第二は、輸銀の外貨貸しの問題でございますが、先ほど大蔵大臣の言われましたように、先月の中旬現在までで、融資承諾済みのもの及び具体的に商談の済んでおりますものが六億ドル余りでございますが、さらに検討の対象になっておりますものが十億ドル余りございます。
 それから第三に、政府機関といたしまして準備が整いましたら石油備蓄をいたしたいと考えておるわけでございますが、これが四億数千万ドルでございます。
 第四に、輸銀の外貨貸しを新たに長期の制度を設けたわけでございます。十年間六%という制度でございますが、かなりこれは、今後十年間六%というのは、金利としてはいい金利ではないかと私は考えておりますけれども、これはまだ受け付けを開始いたしておりませんので、金額につきましては申し上げることができません。かなりの利用を考えていいのではないかと期待をいたしております。
 それから、リースにつきまして、航空機のリースというのはどうなっておるかというお尋ねでございました。
 ただいまリース会社が二、三、商談をやっておるようでございますけれども、いまのところまだ見通しがはっきりいたしておりません。いずれにいたしましても、できましても、二、三億ドル程度、五十三年度としてはその程度じゃないかと考えております。
 それからもう一点は、解撤船のお尋ねでございました。
 これは、造船工業会から運輸大臣にやらしてほしいという申し出がございまして、運輸大臣におかれて、現在の造船業あるいは造船関係の請負等の現状から、そういうことであれば便宜を計らうべきであろうという御判断で、この点は、したがいまして、必要があればそのような古い船を外国から輸入するという考えでおりますが、業界で具体的な準備を整えておるようでございます。まだ実現をいたしておりません。
 それから七%成長につきましてのお尋ねでございました。
 おっしゃいましたように、生産、出荷ともこの五カ月間連続上昇の数字が出ております。消費につきまして、実は昨年終わりにかなり消費が沈滞しておりまして、心配をしておりましたが、十二月に多少回復し、一月、二月とかなりはっきりした足取りで回復をしておりまして、統計がそこまでしか実はわかっておりません。これは全国世帯の数字でございますが、まあまあ消費の方もただいまのところは思ったよりは順調だという感じを持っておりますが、これがどれだけ本格化いたしますか、なおもう少し見ておりませんとはっきりいたしません。けれども、大体申し上げました昭和五十二年度、ベースになりました五十二年度に五%以上の成長をしたということは、一−三月の数字があと一月ほどいたしませんとわかりませんが、ほぼ間違いないと思っておりまして、五十三年度の七%というのは、私はただいま、まあ順調な軌道に乗っておるという判断をいたしております。(拍手)
    ―――――――――――――
#58
○議長(保利茂君) 坂口力君。
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔坂口力君登壇〕
#59
○坂口力君 ただいま福田総理から発言のありました日米首脳会談の報告に対しまして、私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、総理並びに関係大臣に質問をしたいと思います。
 総理は、出発前、日米間の問題を話し合うのではなく、世界の中の日米の役割りを話し合うのだと大きく構えておみえになりましたが、話し合う内容が多いはずなのに、会談が時間的に短かったことやその内容の乏しさと比較しましたとき、具体的な成果の少なかったことを残念に思わざるを得ないのであります。
 いたずらに世界の中の日米協力、分担あるいは協調といった言葉だけが目立ち、今日の国際政治、国際経済の中で、日米の果たすべき役割りや協力の中身は何かを明確に位置づけることが忘れられているのであります。
 また、米国の果たすべき役割りについて、日本は何を主張し、何が約束されたのか、明確に浮かび上がってこないのであります。たとえば円高問題に対する議論の中で、総理はいままでから、ドル安にこそ最大の原因があると主張されてきました。それならば、今回の会談でドル安に対する米国のとるべき態度をもっとはっきりと迫り、日本も七%成長、経常黒字六十億ドルを具体的に約束している以上、米国にも具体的な政策決定を求めて、はっきりとした答えを出させてほしかったと思うのであります。
 いたずらに形式的な協調ムードを演出して見せるより、激しい議論の応酬の中から世界の中で果たすべき日米の役割りを一つでも明らかにすることを国民は期待しており、それが真の友好国の姿であるはずだとあえて申し上げたいのであります。(拍手)
 そこで、まず福田総理に、現在の日米経済関係の中で、ドル価値の維持、日本の黒字減らしなどで意見が一致し、七月のボンで行われる先進国首脳会談に向けて日米間の基本的な調整が進んでいるというのであれば、その内容を具体的に示していただきたいのであります。
 福田総理が訪米前、世界の中の日米会談を主張していましたのとはうらはらに、米国は今回の総理の訪米を二国間次元でとらえ、今後のわが国の出方を注意深く見守る態度を貫いていることは周知の事実であります。
 そこで、さらに数点一総理並びに関係大臣の所信を伺っておきたいと思います。
 第一は、先ほども若干の議論がありましたが、今回の訪米でも公約されました七%成長と経常黒字六十億ドルの達成見通しについてであります。
 五十二年度においては、内外に公約した成長率、経常収支がともに大きく崩れ、世界の批判を一身に集めたやさきであり、五十三年度は断じてこの轍を踏めないのが日本の立場であります。
 総理は、日本経済の状態を、かつて全治三年と診断されたことがありますが、三年はおろか五年を経てもまだ回復できず、福田総理の処方せんの間違いから、急性不況病を慢性不況病にしつつある責任はまことに重大であると言えます。内需拡大のために大幅所得減税をすべきだという私たちの主張を含めて、どのように実現を果たすのか、補正予算の問題も加えて、実現への路線を示されたいのであります。
 第二には、東京ラウンド交渉についてであります。
 米国は、今回の訪米に当たって、一月の牛場・ストラウス共同声明における第六項、すなわち関税水準の同等化が貿易均衡化に不可欠だとして、日本の追加譲歩を改めて求めたと言われています。この東京ラウンド交渉は、先進国首脳会談においても重要課題であり、ECからもわが国のオファーに対し追加譲歩を求められているのでありますが、東京ラウンド交渉におけるわが国の譲歩をさらに用意しているのか、伺っておきたいと思います。
 第三は、わが国の経済協力についてであります。
 総理は、南北問題における日本の役割りを痛感、五年で倍増するとしてきた政府開発援助を三年で倍増する決意を固めたとしています。私はこのことを評価するにやぶさかでありません。しかし、その実現のためには、本年度から実効ある措置をとるべきであり、補正予算によって財政的措置をとるつもりかどうか、また、来年度以降、経済協力を拡大するため、海外経済協力基本法の制定、中期計画の立案を検討する用意があるかどうかもあわせて伺いたいのであります。
 第四は、日米貿易の不均衡の是正についてであります。
 御承知のとおり、現在の日米貿易は、わが国の十億ドルの出超になっているのが実情でありますが、一部では、日米貿易調整のために、輸出調整措置も必要ではないかという意見も強いのでありますが、わが国の対米輸出規制についてお伺いをいたします。もし輸出規制を考えているというのであれば、日米貿易不均衡是正への具体策を示してもらいたいのであります。
 さて、論議を外交に移しますが、今回の首脳会談で、カーター大統領が、アジアに対する関心とプレゼンスの維持を表明したことは、きわめて重要であると福田総理は強調しおります。総理は、米国のいわゆるアジア離れが、アジアの平和と安定にとってマイナスとなると判断しているのならば、その根拠を示すべきであります。米国のアジア離れを心配する前に、わが国がアジアの平和と安定のために何をなすべきかをまず示すことが先決ではないかと私は思うのであります。こうしたアジア政策を確固として持たず、単に米国のプレゼンスを求めることは、結局アジアでの米国の軍事的、経済的な肩がわりを余儀なくされることにならざるを得ないと言わなければなりません。
 ロング米財政委員長は、福田総理との懇談後、日本が米国からの輸入をふやし、防衛負担を増加させる目的で、防衛予算をふやすこと並びに防衛力の持てない日本国憲法が変えられることを期待していると述べていることは、まさにこのことを裏づけるものと言わなければなりません。
 総理は、このロング発言をどう認識しているのか、明確にしていただきたいのであります。
 わが国の防衛予算の今後のあり方についても、この際、総理の見解を求めておきたいと思います。
 また、円高ドル安を背景として、地位協定を実質的に改悪して、米軍駐留費の日本負担を大幅に拡大することを米側が求めてきているのでありますが、この点に対する政府の所信を明らかにしていただきたいと思います。
 朝鮮半島問題は、わが国にとってきわめて重要な問題であります。
 すでに米国では、チトー・ユーゴ大統領、チャウシェスク・ルーマニア大統領の訪米を機として、三者会談あるいは四者会談方式など、新しい朝鮮半島の平和的解決の方途を模索しております。
 福田総理は、首脳会談後の記者会見で、南北対話のための環境づくりにできるだけの努力をしたいと考えていると述べておりますが、そのできるだけの努力の中身は何かを明確にせずして、ただ在韓米軍の撤退に慎重を求めるだけの現状追認外交は、朝鮮問題での政策とは言えないのであります。政府の朝鮮半島に対する具体的な方途を示していただきたい。また、朝鮮民主主義人民共和国を承認する考えはないのか。いかなる条件が満たされれば承認するのかも明らかにしていただきたいのであります。
 最後に、日中平和友好条約の締結についてでありますが、早期締結を言うだけで、結果的に与党内の調整さえもつけることができず今日に至っていることはきわめて遺憾であり、福田総理の決断と指導力のなさを証明している何物でもありません。
 総理は、訪米後、同条約について早急に決着をつけたいと述べておりますが、いまや決断を態度で示すときでありますだけに、あいまいな答弁を許すことができません。具体的な日程も含めて、男らしい決然たる答弁を要求いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕
#60
○内閣総理大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。
 首脳会談の成果が中身がないんじゃないかというようなことについての御所見でございますが、これはきわめて充実した会談であり、この会談の対象となったテーマの幅の広さ、そういうようなことにつきましては先ほどるる申し上げたとおりでありまして、これは誤解であろうと思うわけであります。
 また、今日の日米経済関係の認識、これはドル価値の維持、また一方、日本の黒字減らし、こういうことだろうということで日米間で意見が一致したが、一体具体的にどういうふうな手段をとるのか、こういうお尋ねでございますが、その基本的な認識に対する御理解は、そのとおりでございます。
 そこで、私は、アメリカ側に対しましては日本は最大の努力をしておるのだ、輸出、輸入両面が黒字減らしには関係してくるわけでございまするけれども、輸出につきましては一番大きなのは何だと言いますれば、これは鉄鋼輸出ですよ。これはアメリカでトリガー制度というのができた。その関係で、恐らくことしは去年に比べて一割ないし二割、数量において減るのではないかと私は思うのです。また、次は自動車輸出、これは大きなものですが、これはアメリカ市民は日本の自動車を出してくれ、出してくれとせがむくらいの状態でありまするけれども、しかし、あえてわが日本政府といたしましては、行政指導をもちまして、昨年の輸出台数以上にはふやさぬ、こういうことをやろう、こういうふうにいたしておるのです。また、船はどうだというと、これはわが国の輸出の大宗でございまするけれども、いま造船不況、そういうようなことで注文の方がないくらいな状態でございまするから、したがって、船舶輸出は激減をいたします。テレビはどうだ、こう言いますると、昨年アメリカとの間にも話ができたのでございまするけれども、一昨年大変伸びた、それの大体三割ぐらいは量では減るのです。そこへさらに円高という問題が起こっておる。輸出環境がわが国としては悪くなっておるわけでありますから、量においてはかなり減るところまでいくかどうか、とにかくその辺にはおさまると私は思うのです。しかし、これを、さあ輸出の金額として評価する場合におきましてはどうなるかというと、これは、アメリカその他世界じゅうのインフレが一体どうなるかということで決まってしまうのです。幾ら台数を減らしましても、売る自動車、テレビの価格が高くなるということになりますれば、ドルの輸出額というのは高くなってしまうのですから。そこで、私はずいぶん皆さんに言ってきたのです。国会に対しましても、財界人に対しましても、政府はもとより皆さんに対しまして、アメリカのインフレというものがおさまりませんと、わが国の対米輸出というもの、これは黒字がそう画期的な改善というわけにはまいりませんよ、ぜひインフレを抑制してもらいたいということを要請いたしまして、この点は十分理解された、私はこのように考えておる次第でございます。
 それからさらに、六十億ドルの約束をしたのかというようなことをおっしゃいますが、いま申し上げたとおり、六十億ドルというのは経済運営の指標としてわが国として持っておるわけでありまして、外国に約束するという筋合いのものではございませんし、また六十億ドル自体が、外国のインフレが一体どうなるか、こういうことによりまして大きく揺れ動く性格のものである、このように御理解を願いたいのであります。
 それから、アメリカは、そういうような認識に立ちまして、今度はインフレの抑制に努力する、またインフレの根源であるドル安、この問題につきましても最大の関心を持ちましょう。そのための石油の輸入、これにつきましてはいろいろな工夫をこらすということを申しておるわけでありまするが、要するに、日米の間の最大の問題点は何かというと、これはアメリカのインフレをどうするか、その背景としての国際収支の赤字をどうするか、日本側におきましては黒字を減らすという問題が大きな問題であり、その問題が相互に相関連をいたしておるということは、深く認識されたと思うのであります。
 それから、先進国首脳会談に向けての日米間の基本的な調整はどうなったかというお話でございますが、これは先ほどお答え申し上げたとおりでございます。
 それから、アジア問題につきまして、日本のアジア政策なしにアメリカのプレゼンスを求めるというようなことは本末転倒じゃないか、あるいは日本がアメリカの役割りの肩がわりをするということになるのじゃないかというようなお尋ねでございまするけれども、これは私は、アジア政策――きわめて明快に申し上げておるのですよ。マニラで私が昨年の八月に演説した。あれは福田三原則と言われているのです。それで、アメリカの国会議員との会談におきましても、この福田三原則は、こう言って、上下両院ともそういう発言があるくらいアメリカにおいても理解をされておるわけでありますが、あの三原則の上に立ってわが国はアジアの安定に奉仕をする、こういう決意でございますので、決して日本でアジア政策がなくて、アメリカだけ頼むというような姿勢ではないということを篤と御理解を願いたいのであります。
 また、ロング上院財政委員長の御発言につきましてお尋ねがありましたが、そんなことは私には何の話もありませんから、何かのお聞き違いかと思いますから、その辺はひとつ誤解のないように御理解を願いたいと思います。
 今後のわが国の防衛予算のあり方をお尋ねでございまするけれども、これはしばしば申し上げておるとおりであります。わが国は軍事大国にはならぬ、しかしながら、外国からの侵略、それに対しましてはこれをはね返す、そのための十分な力を持たなければならぬ、そして、それの予算的な裏づけのめどといたしましては、他の国費との均衡、これを勘案して適切な程度に決めるが、当分の間はGNPの一%程度を目標とする、こういうことでございます。
 それから、アメリカ政府から、米軍の駐留費の負担を大幅に拡大せい、こういうような要請があったんではあるまいか、そのようなお話でございまするけれども、その話は全然ございませんということをはっきり申し上げます。しかし、円・ドルの関係がこのように大きく変化してきた、アメリカの実質的な負担というものはずいぶん今度は大きくなるわけであります。そういう関係を見るときに、アメリカはそんなことは言いませんけれども、わが国としては、安保条約、地位協定、それらの範囲内においてできることはして差し上げなければならぬ立場にある、そのように考えております。
 朝鮮半島の問題につきましてお尋ねがありましたが、朝鮮民主主義人民共和国を承認するかどうかというお話でございますが、これは中ソも韓国を承認しておらない、そういうバランスを考えまするときに、わが日本が朝鮮民主主義人民共和国を承認するということは考えられない問題ではあるまいかと思います。朝鮮半島の問題についてその他の問題は、先ほどお答え申し上げたとおりであります。
 それから、日中平和友好条約の締結に決意を示せ、こういうお話でございますが、それは私はもう決意を持っておるのですよ、現に。ただ、これは日中双方が満足し得る状態でなければなりませんから、その辺は篤と誤解のないように御理解を願いたいのであります。日中平和友好条約は交渉再開、そういう環境が熟してきておったのです。そこへ尖閣列島の問題というあの不幸な事件が起き、そして私どもも戸惑っておるというような状態でございまするけれども、しかし、基本的に日中双方が満足し得る状態においてこの条約を締結するという基本方針はいささかも変えておりませんです。いままで北京駐在の公使、また中国外交部のアジア次長というような人がいろいろ話し合っておりますが、それよりもさらに一歩進めまして、もっと上級の会談をひとつやって、この問題の処理を進めたい、このように考えております。(拍手)
    〔国務大臣村山達雄君登壇〕
#61
○国務大臣(村山達雄君) 私に対する質問は、七%あるいは黒字の大幅縮小のためにやっぱり減税の必要があるんじゃないかということでございます。
 しばしば繰り返しておりますように、今度は内需拡大のための公共事業の大幅の拡大、それから最低の金利、市場開放政策あるいは特定不況業種に対する措置、こういったものを実施しているところでございまして、これからの成果が期待されるところでございます。また、円高によります内外のメリットもこれから期待されるところでございますので、われわれはこの政策を着実に実行することによりまして、所期の目的は達し得るものと考えておりますので、減税は考えておりません。
 それから、ODAの三カ年の倍増の予算の裏づけ、特に今年度の予算で大丈夫かというお話でございますが、今年度御承知のように六千数百億つけさせていただいたのでございますが、今後大幅にふやしていくことの必要性は当然でございますけれども、今年度の予算を改定しなくてもこの目的を達成し得るもの、かように考えておるところでございます。(拍手)
    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
#62
○国務大臣(宮澤喜一君) 七%成長につきましては、先ほども申し上げましたのでございますが、生産、出荷ともここのところ五カ月連続して上昇いたしております。消費の方もただいまのところ比較的いい数字が出てまいっておりますので、まず七%程度成長の軌道に乗っておるという判断をいたしております。
 それから海外経済協力でございますが、これは先般経済対策閣僚会議で、三年間倍増というようなことを議論いたしました際に、今年度の補正というようなことは議論をいたしておりません。ただ、従来、外務省を中心に援助機関が、商談の始まりましてから実際に金を払いますまで、手元の予算を見まして、かなりゆっくりゆっくり時間をとってやっておりましたわけですが、そういうことはもう心配せずに、なるべくパイプに入ったものは早く処理をしようではないか、こういうことで各閣僚意見が一致をいたしておりますということを申し上げておきます。(拍手)
    ―――――――――――――
#63
○副議長(三宅正一君) 大内啓伍君。
    〔大内啓伍君登壇〕
#64
○大内啓伍君 私は、民社党を代表して、このたびの日米首脳会談並びに最近の新たな円高不況に対する政府の施策について質問をいたします。
 質問の第一は、日米首脳会談の成果についてであります。
 日米両国の首脳並びに閣僚による率直な意見の交換は、日米間の相互理解を深める上で有益であったことを評価するにやぶさかではありません。特に日米間の経済的摩擦が激化している中で、政府、議会並びに米国世論に対して、日本の立場を説明したことは、重要な意味があったと存じます。しかし、そのことをもって、今回の日米会談が成功であったとするわけにはまいりません。
 総理は、今回の会談の眼目は、世界のための日米の役割りを具体的に話し合うことにあると強調されてきましたけれども、カーター大統領との会談では、これまでの政策の再確認が行われただけで、内容的には全く新味の乏しいものでございました。特に、国際経済問題を討議の主題に据えながら、今日の世界の不況の最大の課題である発展途上国の購買力を引き上げるための措置等、国際的ニューディール政策とも言うべき課題について具体的な話し合いが前進しなかったことは、きわめて遺憾であります。
 総理がニューヨークで演説されたように、多国間貿易交渉や七月の先進国首脳会議の成功は、日米協力が前提になると言う以上、世界不況打開のための大規模な経済協力の実施について日米が具体的合意を確立することが、総理の言う世界のための日米の役割りではなかったのでしょうか。総理の所見をまず伺いたいと存じます。
 しかも、今回の会談を通じて、わが国の七%成長の達成を初め、黒字減らし対策、防衛力強化等について厳しい注文がつけられ、特に、関税引き下げオファーの見直し、農産物輸入の拡大、電算機等の輸入増大などについて、日本として今後再検討せざるを得ない立場に追い込まれたことは明らかであります。政府は、この米国側の要求にこたえるために、七月の先進国首脳会議に向けて、それらの諸点について再検討する方針なのかどうか、その具体的方針を明らかにしていただきたいと存じます。
 なお、福田総理が、一連の会談の中で、米国のドル防衛を強く指摘したことは、当を得たことではありましたが、これに対する米国側の新しい努力は必ずしも約束されませんでした。今後日本としては、米国から経済成長や経常収支について注文がつけられる以上、経済の相互関係からいきましても、米国のドル防衛努力並びに円レートの維持について、米国側の明確な保証を要求すべきであります。
 特に、ドル防衛については今後とも、インフレの抑止に対する強力な措置、石油消費規制の断行、温存している国内エネルギー資源の開発、さらには、本年夏から本格化するであろう石油備蓄のテンポを緩めることの四点を米国にはっきり要求すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
 さらに、この際、日米会談で論議の対象になった経済以外の問題について若干伺います。
 まず、日中条約問題について、カーター大統領は条約締結の成功を祈ると述べられたそうでありますが、日中条約締結に対する米国の見方並びに姿勢を具体的に御説明いただきたいと存じます。特に、福田総理は尖閣列島の問題についてその経緯を説明されたようでありますが、これに対する米国の見解はどのようなものであったのか。また、今後の米中関係の正常化の見通しについて福田総理はどんな理解を持たれたのか、あわせてお伺いをしたいと存じます。
 次に、朝鮮半島の平和の問題について、米国はすでにチトー・チャウシェスク提案の具体化を打診したけれども成功しなかったとの説明が行われたようでありますが、具体的にどのような状況なのか、また防衛力や防衛分担強化に対する米議会筋の要求に対して、日本として今後これにどう対処するつもりなのか、総理の御所見をお伺いしたいと存じます。
 質問の第二は、今後の日米関係の焦点である緊急輸入と経常収支問題についてであります。
 昨年一月からことしの四月三日に至る円高は、額にして七十三円、率にして三一%にも達しました。一年三カ月の間に三割を超える円高が起きて、どうして日本の輸出産業が成り立ちましょうや。確かに、今回の円高の背景には、ドル安を中心とする国際通貨体制の動揺が大きく影響しております。しかし、そのゆえにこそ、当然予想された今日の円高事態を終始傍観し続けた政府の対外経済調整の失敗は、まことに重大であります。
 顧みれば、昭和四十五年から四十七年にかけて日米繊維戦争が発生した当時、くしくも、ここにおられる福田総理は外務大臣、宮澤経企庁長官は通産大臣、そして牛場経済協力相は駐米大使でございました。ちなみに、当時の対米貿易収支黒字は四十億ドルであります。この苦い教訓を経験された総理を初め関係閣僚が、それから数年後、昭和五十一年の対米貿易収支黒字が五十五億ドルを超し、次いで昨年、昭和五十二年が八十億ドルにも達する状況の中で、これを是正するための有効な手を打たなかったことが、今日の円高を招来した根本の原因になったことを、福田総理は厳粛に反省すべきでございます。(拍手)
 政府は、昨年の九月になってようやく事態の重大性に気づき、円高対策に着手されましたが、対策は後手後手となり、五十二年度中に実施された緊急輸入は、やっと十億ドルにしかすぎません。この結果、本年の新たな円高の招来が起こりました。この事態にあわてた政府は、三月十一日緊急輸入四項目、三月二十五日には景気浮揚七項目、さらに四月二十一日には国際収支対策を急遽取りまとめられました。まさにどろなわ式、余りにも場当たりであります。
 問題は、これらによって緊急輸入がどのくらい実現するか、また経常収支はどうなるかということであります。私どもの予想では、政府の対策はいずれも作文の域を出ず、その実効がきわめて怪しいということであります。たとえば、それらの諸対策の目玉である外貨貸し制度の拡大を行うことによって、十億ドルに達する濃縮ウラン代金の前払いを行おうとしておりますが、それらは基本的な貿易不均衡の是正策ではなく、一時的な黒字移しではございませんか。航空機の輸入も決して簡単ではありません。ましてや、航空機のリース構想に至っては、政府部内の意見が対立し、それが前進する条件は整っておりません。またタンカー備蓄にいたしましても、船を泊めるところも定まらないありさまではありませんか。こうして見てくると、政府の緊急輸入対策はまさに穴だらけであります。そのことは先ほど宮澤経企庁長官も事実上認められました。一体政府は、五十三年度どの程度の緊急輸入を実現したいと考えているのか。また、それによって経常収支六十億ドルは達成できるのか、できないのか。確信ある政府の見解を明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 同時に、この際、三百億ドル近い膨大な外貨準備を活用するために、第二外為会計制度の創設を図る方針があるかどうか、あわせて明らかにしていただきたいと存じます。
 質問の第三は、円高差益の国民、消費者に対する還元問題であります。
 円高がこの一年余にわたって三割以上に達しているのに、国民生活には何のメリットも生まれてこない、これが国民の偽らざる実感であります。昭和五十二年度中の円高差益は、石油業界を初め電力、ガス等で、総額九千億円にも達し、五十三年度はこれが総計一兆数千億にも達すると想定されております。こうした中で、昨年度実施された円高差益の還元は、若干の輸入製品と石油関係について、わずかばかりの値下げが行われたにすぎません。政府は、去る四月二十一日、全く遅まきながら円高差益の還元策として、輸入たばこの値下げなど九項目の対策を明らかにしましたが、具体策はまだ確立されておりません。
 最近の日本長期信用銀行の調査では、もし牛肉、小麦など農産物の輸入を緩めれば、国民の生活費は二割ほど安くなると発表しております。また、森永日銀総裁は、三月二十九日の記者会見で、円高のメリットはもっと生かすべきで、思い切って公共料金を値下げするところがあってもよいと指摘しております。さらに四月二十六日、参議院物特委におきましては、「円高の国民生活への還元はまだ不十分である」との異例の決議まで行われております。西独の国民はマルク高の利益を享受している中で、日本の国民は円高の被害だけをこうむるといった不合理を、福田総理はどう考えているのでしょうか。(拍手)日本と西独との国情の差を強調することによって、福田内閣の政治の貧困をカムフラージュすることはできません。
 福田総理は、森永日銀総裁が提起した公共料金の値下げによる円高差益の還元を実行する意思をお持ちでしょうか。また、宮澤経企庁長官は、四月二十六日、参議院物特委の答弁で、安い牛肉の輸入をふやすための政策構想フォーラムの提言は検討に値すると述べておりますが、それはその場限りの答弁でしょうか。安い牛肉や農産物を国民に供給するために、今後どのような具体策を講ずるのか。さらに輸入製品の値下げについては、今後具体的に何を、いつまでに、どの程度値下げをする方針なのか、それぞれ関係大臣の御答弁をいただきたいと存じます。質問の第四は、今後の円高対策として、次の三つの提言について政府の見解を承りたいと存じます。
 その一つは、今後の黒字の増大を抑え、かつ相場変動による被害から輸出業者を救済するために、この際、輸出の円建てを思い切って拡大する措置を積極的に指導すべきではありませんか。
 その二つは、今日のフロート制を根本的に再検討し、固定相場制プラス適当な調整という為替体制に移行することを検討し始めてはいかがでしょうか。
 その三つは、膨大な過剰ドルを活用して、米国等主要国の主要会社の株の買い入れ、並びに外貨建て公債の買い入れを大規模に行うことを考えるべきではありますまいか。
 以上の三点について、福田総理並びに大蔵大臣の所見を承りたいと存じます。
 最後に、補正予算を中心とする今後の景気対策について伺います。
 福田総理は、今回の日米首脳会談を通じて七%の成長実現を米国に重ねて約束されましたが、経済の実体はそれほどなまやさしい状況にはありません。個人消費は相変わらず低迷し、設備投資も、電力を除けばマイナス一・九%という状況にあります。経済の実勢は、七%どころか四%台の速度で進んでいるというのが今日の実勢ではありませんか。したがって、この際、個人消費の拡大を中心とする第二弾の景気対策、すなわち大型補正予算の編成は急務の課題だと存じます。
 この点に関し、河本通産大臣は、四月二十一日の記者会見で、九月ごろに補正予算を編成すれば、黒字減らしの実効が失われる、今国会を延長しても補正予算をできるだけ早く編成すべきだと述べておられますが、福田総理のお考えはいかがでありましょうか。
 すでに、わが党は、佐々木委員長の提案として、できるだけ速やかに二兆円規模の補正予算を編成し、特に大幅減税、年金等の社会保障と住宅対策の強化、対外経済協力の拡大をその柱とするよう提案しておりますが、この補正予算編成並びにその提案時期に対する総理並びに大蔵大臣の所見を承りたいと存じます。
 以上、私は、広範な分野にわたって政府の所見をただしてまいりましたが、私どもは、福田内閣が、今日の国民の最大の課題である不況の克服に対して、今後いかなる努力を傾注するかを慎重に見守り、その実行いかんによっては、福田内閣の政治責任を厳しく追及しなければならないと考えております。
 福田総理におかれては、いやしくも、伝えられるような、みずからの延命のために国政をないがしろにするようなことのないよう、ここに厳しく要望し、私の質問を終わる次第でございます。ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕
#65
○内閣総理大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。
 私が諸政策を運営する、それが私の政治生命の延長であるかのようなとり方をされておる最後の発言でございましたが、そんなようなけちな考え方は私はしておりませんから、そのようなことは全部忘れていただきたい、最初にお願い申しておきます。
 そこで、日米首脳会談でございますが、いま大内さんから、これからの世界を考えますと、国際的ニューディール政策、そういうようなものが必要になってくるんじゃないか、そういうことを提言しつつ、そんなような話が日米間で出たかというお話でございますが、それは私のつとに考えていることなんです。これから先々の世界を展望しますと、どうしても世界が協力をいたしまして、世界的規模の大きな事業を興しませんと、経済の前進というものが世界的に実現されない。そういうようなことから、私は、カーター大統領に対しましても、まさにこういう言葉を使ったんです。世界的ニューディール、グローバルニューディール、これをひとつ考えようじゃないか、こういう話をしたくらいでございまして、この辺につきましては、私は大内さんと所見を同じゅうするものであります。
 なお、日米首脳会談を踏まえまして、先進国首脳会談に向けて、わが国がすでに関税の引き下げ構想なんかを明らかにしておる、それを再検討するようなことになるのかというような御質問でございまするけれども、いまMTN、つまり東京ラウンド交渉が行われておるわけであります。これはお互いの国がお互いの国の案を出し合って、そしてこれを批判し合っておるという段階でありまして、やりとりという問題が起こってきます。当然、わが国におきましても、やったりとったり、こういう関係が出てくることかと思いますが、国益を踏まえながら、そのやりとりにつきましては上手にやっていきたい、かように考えておる次第でございます。
 それから、円レートについてはっきりした、安定のための明確な保証をとったかというお話ですが、これはちょっと無理な注文でございます。為替レートというものは、これを決めるところの背景、条件というものがあるわけであります。その背景、条件を無視いたしまして為替レートを政府が決める、こういうわけにはまいりません。しかしながら、その背景につきましては、これを、為替が安定するような方向に持っていかなければならぬ。日米間について申し上げますれば、アメリカがあの膨大な赤字、これを是正する、また、インフレを抑制するところの政策をとるということがかなめになり、わが日本におきましては、黒字を大いに縮減をするということがかなめになってくるということでありまするが、それをどういうふうにしてお互いにやり合うかということにつきましては、先ほどるる申し上げたとおりであります。
 また、円高の利益を国民に還元しないと言って大きな声を出されたのでありまするけれども、円高の利益というものは、これはもうすでにかなり大きく還元されているのです。わが国の卸売物価が昨年に比べて今日とにかくマイナスの一・八%になっておる。これはまさに円高の利益というものが大きく響いておる。消費者物価にいたしましても、一年間の年間上昇率が四・五%という低い水準まで来ておる。これもまた円高の影響を受けました卸売物価、これが大きく作用いたしておるわけでありまして、決して、円高の利益がどこかへすっ飛んじゃった、こういうことではございません。今後とも、円高の国民経済への還元につきましては努力をしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
 それからさらに外交問題、日中条約問題についての米国の見方、姿勢、それから特に尖閣列島についてのアメリカの意見というようなお話でございましたが、日中平和友好条約交渉のこれまでの経過につきましては大統領によく話しました。ただ、いま尖閣列島問題というのが障害になって、ちょっと私、戸惑っておるのですという話もつけ加えましたが、したがいまして、尖閣列島問題についてアメリカが意見を述べるという機会はありませんでしたが、先ほど申し上げましたように、日中平和友好条約につきましては、その成功を祈るというような言葉があったことを重ねて申し上げておきます。
 それから、朝鮮半島に関するチトーやチャウシェスクなんかのいろいろな動きにつきましては、私から聞いてみたのですが、韓国抜きの朝鮮問題の処理ということは、アメリカといたしましては考えられないことである、そのようなことは絶対にいたしませんということを明確に申しておるということを申し上げておきます。
 また、朝鮮半島の平和をどういうふうに進めるかということについてのお尋ねでございますが、これは先ほど私の基本的な考え方を申し上げたので、それは重複しては申し上げませんけれども、それをどういうふうに具体化していくかということは、いろいろ問題が起きたその際に、先ほどから申し上げておる基本姿勢によって処理するのだというように御理解を願いたいのであります。
 また、最後になりますが、私がアメリカで七%成長を約束した、こういう話でありますが、国内の成長、これをよその国に約束する、そのような不見識なことは私はいたしません。ただ私は、日本の経済運営の指針とし、考え方として七%成長を考えておる、これははっきり申しております。しかし、人に約束をして、約束したからそれに従ってやるのだというような、そういう不見識な福田赳夫ではございませんということをはっきり御理解を願いたいのであります。
 また、大型補正を早急にやったらどうだというようなお話がありますが、私は大内さんと違って、経済は七%成長軌道でまずまず今日、順調に動いておる、こういうふうに見ておるわけであります。いま追加的な手段を必要とするというふうには見ておりませんけれども、しかし、経済のことでありまするから、先々どういうことが起こってくるかもしれない。また、異変が起こってくるというときにおきましては、その時点におきまして何が一番有効適切であるかという政策を選択いたしまして、そして追加的措置を講ずる、さような考えである、かように御理解を願います。(拍手)
    〔国務大臣村山達雄君登壇〕
#66
○国務大臣(村山達雄君) お答え申し上げます。
 まず、第二外為構想の話でございますが、言うところのものは、恐らくいまの外貨を出資ないし拠出して、そして必要な財政需要に充てろということだろうと思いますが、これは何分二カ月の短期の外為で、しかも日銀引き受けでやっているわけでございますので、財政法上きわめて困難な問題がございまして、なかなか困難であると思います。
 それから、輸出について円建て化を促進したらどうか。望ましいところでございますけれども、これは国際的な商取引の関係でございます。いま全体として買い手市場であり、しかも円高の傾向にございますので、なかなかそのことはむずかしいであろうと思います。
 それから、フロート制の再検討、つまり固定制ないしそれに準ずるようなものはいかがか、こういうことでございますが、ごらんのように、これは成長率なりインフレ率なりあるいは国際収支というものの均衡がないとその条件が整わないわけでございまして、機能いたしませんのでございます。したがいまして、しばらくの間はやはりフロート制でやらざるを得ないだろう、こう思っておるわけでございます。
 それから、過剰ドルの活用策といたしまして金を買ったらどうか、株式はどうか、外貨建ての公債はどうかというような話でございます。
 IMFの第二次改正におきまして金は廃貨の方に向かいました。日本のような国が政府ベースで金を買うという問題は、きわめて微妙な問題でございます。また、株式を買うかどうかという問題でございますが、これは流通性、安全性、収益性、こういったものを考えていかねばなりません。したがいまして、株式はやはり安全性の見地から非常に問題が多いと思います。それから、TBに限らず広く外貨建ての債券を買ったらどうか。実は物件がないのでございます。ほとんどTBに限定されている現状であるということを御理解願いたいと思います。
 以上でございます。(拍手)
    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
#67
○国務大臣(宮澤喜一君) 緊急輸入の四十億ドルというようなことが架空ではないかというようなお尋ねでございましたけれども、先ほども申し上げましたように、ただいま輸銀で検討中のものを含めましての二十億ドル、あるいは先般の輸入ミッションの成果、それから石油備蓄、さらに考えられます輸銀の長期外貨貸しというようなことで、これは年度内の四十億ドル程度は私は期待ができるというふうに考えておるわけでございます。
 その中で、石油備蓄については泊地もなかなか決まっていないのではないかというお話でございましたが、御承知のように石油開発公団が備蓄の主体になりますように所要の手続の改正を行っておりまして、泊地につきましてもかなり具体的に検討が進んでおるように、エネルギー庁長官から私としては聞いております。
 それから、円高の還元につきまして、牛肉につきましては、結局、課徴金がふえましたならば、それは何か消費者の利益にもなるようにしてほしいということ、その点は農林大臣もよく心得て行政をやっておられますが、小麦につきましては、このような米の減反をやっておるときでもございますし、何とか米の消費もふやしたいという農林大臣のお考えから、この際、価格を据え置きたいということを言われましたわけで、私としては、その点はやむを得ないのではないかと考えまして、同意をいたしたようなことでございました。
 それから、あと、七%につきましては、総理からお答えがございましたので、省略いたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#68
○副議長(三宅正一君) 松本善明君。
    〔松本善明君登壇〕
#69
○松本善明君 私は、日本共産党・革新共同を代表して、総理の訪米報告に質問をいたします。
 いま、総理の訪米が、政局転換に対する派利派略に基づくものではないかなどと広く取りざたされており、本日、この会議でも問題になりました。一体、日米首脳会談は、果たして国民生活の安定、日本の安全と平和への国民的要求に合致するものであったでありましょうか。
 とりわけ、平和の問題に関しては、国連軍縮特別総会が今月後半に迫っている現在、本来ならば、当然、唯一の被爆国として、何よりもまず、衆参両院で全会一致で決議した核兵器の全面禁止協定の締結について、強く米側に要求すべきことでありました。ところが、総理は、この問題について一言も発言しませんでした。これは一体なぜでありますか。
 これとは全く対照的に総理がカーター大統領に述べたことは、米国のアジア離れに対する危惧の強調でありました。これは、アメリカのベトナム侵略の失敗を全く反省せず、非同盟中立、民族自決の世界の大勢にも、国民の平和の要求にも全く反するものであります。
 この点で重大なことは、安倍官房長官が一昨日のNHKテレビで、アメリカ側が今回の首脳会談でアジア離れを否定したのと引きかえに、日本側にはASEAN諸国への経済協力並びに自主防衛努力の責任が生じたと、はっきり述べたことであります。
 これは、総理が成果として自賛している米軍の存在の保証が、成果どころか、反国民的な負担の増大と取引されたものであったことを政府みずから告白したということであります。
 総理は、この官房長官の見解を確認するのかどうか、はっきり答弁をしていただきたいと思います。(拍手)
 経済面での負担については、韓国やASEAN諸国などを主たる相手とする政府開発援助を五年間に倍増する従来の方針を、三年間に倍増することに改めました。これは、結局、アメリカの戦略に呼応して、政情不安定な反共諸国家への経済的てこ入れを強めるものではありませんか。明確な答弁を求めるものであります。
 経済的負担の増大はこれだけではありません。総理、あなたは、ニューヨークでの演説で、わが国は、種々なる困難にもかかわらず、その三分の一を国債に依存するような大型の超積極予算を組んだと述べ、さらに、わが国の実質成長率七%という目標は、先進国の中でも一段と高いものでありますと強調いたしました。これは国債依存型予算を通じて内需拡大を図り、七%成長を実現するということを一月の共同声明に続いて再び公約したと、当然アメリカ側に受け取られるものであります。
 また、アメリカ上院議員との懇談会で、七%成長が不可能になったらどうするかとの問いに答えて、あなたは、さらに内需拡大の追加措置を考え、七%達成に全力を挙げると答えたと伝えられております。
 いま政府が公定歩合三・五%という史上最低の金利政策をとっていることから見ますと、総理の言う追加措置とは、赤字国債増発による補正予算を示唆したものと言わざるを得ません。
 いま景気回復のため補正予算が必要だとするならば、その財源は軍事費など不要不急経費の削減、不公正税制の是正に求め、もちろん国債増発によるべきではありません。これ以上国債の増発を重ねるならば、わが国経済を財政破綻と国民生活破壊の道に落とし込むことは火を見るよりも明らかであります。
 総理、あなたは追加措置として何を考えているのでありますか。国債依存度をさらに高める補正予算を組むことをアメリカ側に約束してきたのではありませんか。明確な答弁を求めるものであります。(拍手)
 アメリカのドル安対策について見るならば、一月の共同声明でアメリカのしたただ一つの具体的約束、すなわち国際収支の赤字減らし策として、石油輸入の削減のために、九十日以内にエネルギー計画を立法化する問題は、もはや百二十日になろうとするのに、実現はおろか、そのめども立っていないではありませんか。
 総理、あなたは出発前の記者会見で、通貨不安の最大の根源は米国の国際収支の大赤字だと述べました。アメリカの約束違反についてその責任を追及したのかどうか。追及したのであれば、アメリカ側の回答はどうだったのか。総理は、カーター大統領がドル防衛の一般的方針の中で、エネルギー対策の推進を述べたことを先ほど報告いたしましたが、問題はきわめて具体的なことでありますから、具体的にお答えいただきたいと思います。
 アメリカのドル安を本当に解決しようとするならば、世界じゅうにたれ流した過剰ドルをアメリカの責任で吸収することこそが必要であります。断固としてこの要求をしたのかどうか、それに対してアメリカがどのようにしてこれを実現すると答えたのか、これも具体的で明確な答弁を求めるものであります。(拍手)
 経済問題の最後に、会談の成果を総理がどう評価しているのかを質問いたします。
 牛場対外経済担当大臣は、新聞インタビューで、米国側はこれまで、日本側の円高ドル安による苦悩ぶりを理解しておらず、米国側に理解をさせることが懸案だったが、この目的を果たせただけでも成果があったと述べております。
 今日の首脳会談の課題は、日本側の努力を説明するだけではなく、日本側からアメリカ側がなすべきことを明らかにし、その実行を約束させることにあったはずであります。にもかかわらず、日本の実情を理解させたことを成果と言わざるを得ないということは、誇れる成果はこの程度のものだったということではありませんか。経済面でこれ以外の成果があるとすれば、ここではっきりさせていただきたいものであります。
 次に、日米安保条約に基づく日米協力問題について質問いたします。
 総理は、ニューヨークでの演説で、日米安保条約は、ひとりわが国の平和と安全を保障するという一方通行的な役割りにとどまらず、いまや日米両国間の全面的な提携関係を象徴するものだと述べました。これはブレジンスキー・アメリカ大統領補佐官が、日米同盟関係は太平洋地域の均衡の中心的要素になっていると述べたのと対応するもので、事実上、前から問題になっておりました日米安保条約の双務化の方向への変質を意味するのではありませんか。総理、一体日米安保条約に基づく全面的な提携関係とは、いかなる提携関係への拡大を意図したものでありますか。すでに、四月に、核装備のアメリカ空母ミッドウェーを、わが国海上自衛隊の艦艇が護衛する日米共同訓練が行われたという重大な事実もありますので、この問題での日米間の話し合いの内容を包み隠さず明らかにすることを要求いたします。
 この問題と密接に関連しく軍事費の拡大と米軍駐留経費の分担の問題があります。
 今回、一連の会談で、アメリカ側から、日本の防衛負担が少な過ぎるとの表明があったということでありますが、総理は、そうした不当な内政干渉的な要求に対して、きっぱり拒否をしたのでありましょうか。明確な答弁を求めます。
 この点で、米軍駐留経費の分担大幅増大の問題の扱いもきわめて重大であります。これが議題とならなかったのは、政治問題になることを避けて、日本側がいわば自主的に、実務的に処理するためなのではありませんか。それとも、アメリカ側が要求を引っ込めたのでありますか。重要な問題でありますので、疑問の余地のないよう、正確な答弁を求めるものであります。
 次いで、この問題に関係をして、憲法問題を質問いたします。
 さきに述べましたように、日米安保条約を双務的なものに変質させる方向を推し進めるならば、米軍との共同軍事行動の拡大は避けられないことになり、いままで政府も、憲法上認められないと言ってきた集団自衛権の行使を認め、軍事協力を拡大するという方向に行かざるを得ません。
 その意味では、ロング上院財政委員長が総理との懇談会後の記者会見で、改憲を要求する重大な発言を行ったのも決して偶然とは言えません。また、国内でも、今国会になって政府が自衛力の限界は相対的であるとして、核兵器の保有も憲法違反ではないという答弁を強調し、憲法の戦力不保持の規定を事実上有名無実のものといたしました。
 さらに、自民党中曽根総務会長は、交戦権を持てるよう改憲せよと主張したと伝えられております。安保条約を双務的なものに変質させることと、憲法改悪は重大な関係にあります。中曽根総務会長の見解についての賛否とあわせて、この問題についての総理の見解をお聞きしたいものであります。
 また、この際、憲法初め、法律を厳格に守るべき立場にある瀬戸山法務大臣と中川農林大臣が、改憲を主張する自主憲法制定会議の集会に祝電を贈ったことについて質問いたします。
 改憲を主張する集会に出席し、責任を問われた稻葉元法務大臣の例もありますが、福田内閣は改憲の方針をとっているのかどうか。もしとっていないならば、この二人の閣僚の行動はきわめて重大であります。これら閣僚、中でも法務大臣の責任をどう考えるのか、答弁を求めるものであります。
 最後に、会談でカーター大統領は、日中平和友好条約締結の成功を祈ると述べ、総理は、外務大臣に北京での会談再開の準備を指示したとのことであります。これは、アメリカの意向でわが国の重要懸案を左右する自民党政府の自主性のない政治的体質を如実に示したものでありますが、お聞きしたいのは、先般の尖閣列島の中国側による領海侵犯行為を、政府としては覇権行為と考えているのかどうかということであります。
 わが党は、尖閣列島が明白に日本領土であると考えるものであり、同時に、この問題の最終決着を条約締結の前提とは考えておりませんが、日中平和友好条約の残された問題が覇権反対問題の解釈と定式化にあるとすれば、中国側自身によって侵されたあのような覇権行為に対する両国政府の見解と態度はきわめて重大だと言わざるを得ません。福田総理の率直な見解を求めて、私の質問を終わるものであります。(拍手)
    〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕
#70
○内閣総理大臣(福田赳夫君) お答えいたします。
 国連総会を前にしまして、核問題につきましては特別の立場にあるわが国といたしまして、核兵器の全面禁止協定の締結をカーター大統領に対して要求すべきではなかったかというお話でございますが、これは政治は空想では動かない、現実的なものでなければならない、そう思います。余り実現性もない理想を掲げましても、国際政治に裨益するところはないのです。そこで私どもといたしましては、終局的には核兵器の廃絶を目標とはいたしておりまするけれども、現実的な問題として、それを言って国際社会でそれが通るとお考えでしょうか。そうじゃない。現実的に一つ一つ積み上げていかなければならぬ。そういう立場から、わが国といたしましては、包括的核実験禁止条約の制定を進めてまいりたい、このように考える次第でございます。
 それから次に、米国のアジア離れが進展するにつれましてわが国の方で経済協力を拡大する、これはアメリカの責任をわが日本が肩がわりするというようなことになるのではないかという御質問でございます。また、官房長官が何かそれに似たことを言っておるが、それでいいかというお話でございますが、わが国はわが国といたしまして、しばしば申し上げておりますとおり、アジアに対しましては確固たる方針を持っておるわけであります。この方針を推し進めていく、それにはどうしても経済協力ということが、軍事力を持たないわが国とすると中心にならざるを得ないのです。しかし、アジアの安定ということを考えると、経済だけで安定というわけにはまいりません。これは軍事力がどうしても必要なんです。その軍事力をアメリカに期待するということは当然のことである、私はこのように思うのでありまして、どうも松本さんのお話をずっと聞いてみると、アメリカ恐怖症といいますか、嫌悪症といいますか、そういうような考え方から、いまのような素直とも受けとめがたいような御発言になるのではあるまいか、そのように思うのであります。
 またさらに、私が、政府といたしまして、いままで対外経済協力は五年で倍増だと言ってきたのを、今度は三年倍増というふうに改める方針を決めたわけなんです。それも何かアメリカから押しつけられて、アメリカの肩がわりをするというような御意見でございましたが、本当に私はそのような考え方じゃないのです。軍備を持たないわが国といたしまして、世界に何をもって奉仕するかというと、経済協力あるいは世界のビッグプロジェクトにわが国が勇敢に参加していく、そういうこと以外に道はないじゃありませんか。そんなことをしり込みしておれば、これは平和ただ乗り論と言って世界じゅうから袋だたきになる、そのように考えるわけであります。
 また、私がアメリカの国会において、議員の質問に対し、七%達成に全力を尽くすと言った、質問に答えたのですが、それが何かアメリカに約束をしたなんていう、けしからぬというようなお話でございまするが、これは私の国内における経済運営の基本方針です。七%成長を何とかして達成いたしたい、そういう気持ちであることを友邦国の議員に申し上げる、これは何の差し支えがあるか、こういうふうに思うのであります。
 また、牛場・ストラウス共同声明で、米側は九十日以内にエネルギー計画の立法化を行うというふうに約束したにもかかわらず実現されていない、これも見解が私はちょっとおかしいのじゃないかと思うのです。つまり、共同声明に書いてありますけれども、あれは約束じゃないのです。国会に関係することをアメリカの政府といえども約束ができますか。そういうことを考えておるという意思を表示しておるのであります。
 まあしかし、私は、大統領に対しまして、エネルギー法案が早く成立する、そしてエネルギー政策が動き出すことを期待するということを申し上げましたし、国会に参りましては、国会議員の各位に陳情を申し上げます、早くエネルギー法案を通してください、こう言って帰ったということを申し添えておきます。
 それから、過剰ドルの吸収策を要求したか、こういうようなお話でございますが、これは、国際収支を正常化してもらいたい、これが最も有力なる過剰ドルの吸収策でありまして、そのことは強く要請をいたしておる次第でございます。
 それから、牛場大臣が、ドル安の苦悩を理解させたのが成果だ、こういうふうに語っておるが、成果はその程度かというお話でございまするが、それも一つの成果でございまするけれども、成果の数々は、先ほど来るる申し上げたとおりでございます。
 それから、安保条約がどうも日米双方で軍事協力化の道を進んでおるということについての危惧を示されましたが、そういう関係にはございません。この安保条約は、第二条というのがあるのは御承知のとおりであります。これは軍事以外の経済、文化、各面において日米は緊密に協力し合おうということになっておるので、その安保条約第二条のその方面が近来とみに前進、強化されておるということを申し上げます。
 それから、防衛予算の増加要求があったというようなお話ですが、このことは先ほど申し上げましたが、全然そんなことはありませんから、そのように御理解を願いたいのであります。
 それから、憲法改正論が自民党の中でいろいろ言われておるが、どのような考え方かといいますと、憲法は、そもそもその憲法におきまして、その憲法を改正する手続まで決めているのです。その憲法につきまして、どこをどういうふうにしたらよかろうかという議論が議員の間で行われる、これは当然過ぎるほど当然である、そのように考える次第でございます。(拍手)ただ、憲法を改正するにいたしましても、はっきり申し上げておるのです。その憲法の平和主義、人権尊重主義、国際協調主義、これは変えることはできない。しかし、憲法で悪いところがあればこれを改正する、その論議をする、これは憲法が認めておることである、このように考える次第でございます。瀬戸山法相、中川農相、何かどこかへ電報を打ったというようなお話がありますけれども、何人といえども、この憲法についてどういうふうにするかということについての自由は、これはもう保障されておるわけであります。論議をするのは一向支障はない。ただ、政府といたしましては、現行憲法につきましては、これはどこまでも厳粛に守り抜いていくということは、はっきり申し上げさせていただきたいのであります。
 それから、中国の尖閣列島領海侵犯問題につきまして、覇権行為かどうかというようなお話でございますが、ある国の特定の行為が覇権行為であるかどうか、これは軽々に判断すべき問題ではありませんし、また軽々に判断することもできません。(拍手)
    ―――――――――――――
#71
○副議長(三宅正一君) 大原一三君。
    〔大原一三君登壇〕
#72
○大原一三君 私は、新自由クラブを代表して、総理の日米首脳会談の報告並びにそれに関連する諸問題のうち、特に経済問題について総理並びに関係大臣の所見を伺います。
 質問に先立ち、今回の首脳会談についての私の率直な印象を述べさせていただきます。
 私は、日米の首脳が常時密接な話し合いの機会を持つことは、きわめて有意義なことであると思います。自由主義社会の両経済大国が意思の疎通を欠くことは、無用の摩擦と混乱を引き起こし、世界経済の発展にとって好ましからざる影響をもたらすからであります。しかし、このところ、さきの日米貿易交渉によって一応の鎖静化を見たものの、両国の関係は必ずしも満足すべき状況にあったとは申せません。いろいろの分野における摩擦の要因が、十分な意思疎通を行わないまま、ときに誤解や極端な認識不足に基づくものがあったことも、率直に認めないわけにはまいりません。
 われわれは、両国首脳が、もっと胸襟を開き、形式にとらわれず、言うべきことを言う十分な機会を持つことが必要であると思います。それだけに、今回の首脳会談に寄せる国民の期待も大きかったと思うのであります。しかし、日本に対する国際的責任分担の要請の高まりの中で、日本から申し入れた首脳会談の性格を考えるとき、その内容並びに成果は、率直に見て、乏しいものであったと言わざるを得ません。
 いま各国がその解決に苦心惨たんしている国際通貨問題は素通りし、さらに、国民が最も知りたがっている日本の防衛分担についての米国の真意は不明のままであり、米国内の保護貿易主義の台頭について、カーター大統領の基本政策も聞かれず、さらにEC諸国の対米批判の高まりの中で、米国の基本的政策路線も明らかにされておりません。また、日本農業にとって致命的な農産物輸入問題についても、意識的に問題を回避しております。
 われわれは、一年ぶりの両首脳会談であるだけに、いたずらに問題を回避することなく、もっと精力的に、両国にわだかまる諸問題について、単に閣僚レベルの話し合いに任せるだけでなく、両首脳の腹を割った意見の開陳を期待しておったのであります。
 今次会談に際し、米国側が約束したアジア重視政策、さらには米国のインフレ対策、石油輸入抑制策は、いずれもきわめて抽象的で要領を得ず、一方わが方から提示した七%成長、政府開発援助の三年間倍増及び核融合共同研究のための拠出などきわめて具体的であり、そのこと自体は賛成でありますが、十分な論議のないまま、やや場当たり的に提示された感じを受けるが、いかがなものでございましょうか。
 以上のような見地に立って、以下若干の問題について総理の所見をお伺いいたします。
 第一は、国際通貨政策についてであります。現在の国際経済の不安定要因は、基軸通貨たるドル価値の不安定に負うところが甚大であります。そのドル価値の不安定がアメリカの国内政策に起因するところが大きいこともまた事実であります。そもそも一国の国内通貨が国際通貨として通用することに問題があるのであって、昭和四十六年八月、ニクソン大統領が突如金兌換を一方的に停止したことによって、その矛盾は一挙に顕在化し、旧IMF体制は崩壊しました。自来、アメリカは、ほかの国と違って、単にドルという名のペーパーマネーによって、石油を初め海外から財貨サービスを無制限に購入できる唯一例外の国になり、いわば歯どめなきドル流出にレールが敷かれたことに相なります。西独のシュミット首相は、三月の米独通貨合意後も米国批判を緩めず、最近は、主要準備通貨であるドルを不安定な状態にさらす米国の政策は余りにも無責任であると厳しく批判し、米国が真にドルの安定を望んでいるのかどうかについて、強い疑問を投げかけています。
 ドルの交換性回復への模索もなされず、その貧しい代案であるSDRへの転換も進まぬいま、第一に求められるべきは、基軸通貨国としての米国のドル威信回復のための経済運営の節度であります。第二には、共同フロート制への復帰への努力であると思うのでありますが、この点についての総理の構想と実践プランを明確にお示し願いたい。
 それに関連して、私はやや角度を変えてお伺いいたしますが、一国基軸通貨に対して複数基軸通貨の構想を提案してみたいと思います。つまり、現在、国際的に強い通貨、すなわち、マルク、スイスフラン、それに円等、複数の通貨制度への漸進的移行は考えられないか。つまり、現在の世界的ドル離れ傾向に応じて、これらの国がみずからの通貨を漸次自由化し、国際的流動性を高めることによって、現在の一国基軸通貨の欠陥を補い、同時に、アメリカ一国の責任を相互に分担する方法が考えられないか。それがためには、最近とみにドル批判を強めている産油国との協調体制が必要であり、かくて、国際通貨が安定すれば、石油ショックの再来も未然に防止できると思われます。右の提案について、総理並びに大蔵大臣の所見をお伺いいたします。
 第三に、政府開発援助の三年間倍増については異論はありませんが、ただ、わが国のこれまでの援助方式はやや場当たり的であり、今後は単に量の問題だけでなく、質的な転換を図る必要があります。つまり、これまでの、いずれかというと資源あさり的民間主導型の援助から、政府主導型の開発援助に重点を移行し、政府、民間合わせて、真にその国の必要に見合った総合的援助体系の編成が必要であります。特に民生安定に必要な政府開発援助、すなわち食糧、医療、すなわちメディカル、住宅、道路、通信といった生活基盤重視型の技術的、物的援助が特に発展途上国にとって必要であります。南北ギャップの解決はまさに日本が置かれた歴史的、地理的条件からして大きな国際的義務でさえあります。
 総理は、国際協力にかかわる基本法を制定し、旧来の援助方式を根本的に見直すとともに、真に南北平和に寄与する国際協力の推進を中外に宣明し、あわせて累積ドルの思い切った活用を図られる御意思はないかどうか、お伺いいたします。
 なお、蓄積ドルの活用方法として、外貨貸し制度、外貨預託制度の弾力的運用も必要でありますが、それに加えて、次のような方法によって外貨の活用を図ることが考えられないか、総理並びに大蔵大臣のお考えをお伺いいたします。
 つまり、外貨の過剰流入による過剰流動性を吸収するため、一般会計とは別に特別会計を設け、そこにおいて中長期の国債を発行する。それによって得られた円資金見合いの外貨を、アンタイドで発展途上国に援助を行うという仕組みであります。この方法によれば、外貨の流入によるインフレマネーの吸収という景気調整機能と、蓄積ドルの活用という一石二鳥の効果が得られるはずであります。これはいわゆる第二外為特別会計とは違いますので、慎重にお答え願います。
 第四に、総理が訪米される直前、メキシコ市で開かれたIMF暫定委員会において、ウイッテフェーン専務理事は、いわゆる「協調成長の一般戦略」と題する名の新提案を行い、七九−八〇年における日本の実質成長率を七・五%に高める必要があるとしておりますが、当然、この点は、七月に予定される先進国首脳会議でもきわめて重要な議題となるものと考えられますが、それについて現在総理はどのように考えておられるかお尋ねいたします。
 第五に、総理は、為替管理政策について、過般の予算委員会において、思い切った自由化を行い、これまでの原則禁止例外自由から、原則自由例外抑制に転換するとの御発言をなされ、現行外為法の全面改正を提案されたが、一体いつごろまでをめどにその抜本的改正を行われるつもりか、お伺いいたします。
 第六に、当面問題になっております多国間貿易交渉、すなわち、ガット東京ラウンドについて、総理は日米間の調整を五月中に終えるとされておりますが、わが国がすでに提示した二千六百品目の引き下げ案に対し、米国は約五百品目、ECも約三百品目について追加引き下げ要求をしております。それぞれのオファー原案は、引き下げ後加重平均値で日本六%台、米国三%台、EC五%台となって、日本がなお一番高くなっており、調整は難航すると思われます。総理は、一体どの程度の水準にまでこれを引き下げるおつもりか、そのめどをお示し願いたい。
 次に、総理は、上下両院約六十名との懇談の際、日米貿易不均衡が議題となったということでありますが、特に、わが国農業の構造的非生産性について無知な人々の農産物輸入枠拡大の強い要請があったと聞いております。この問題は、今後とも引き続き日米両国間にくすぶり続けると思いますので、この際、総理の今後における基本的考え方を確かめておきたいと思います。
 以上、私は、経済問題に焦点をしぼって質問申し上げましたが、最後に、アメリカのドル離れとともに、アジア離れについて一言触れさせていただきます。
 アメリカのアジア離れは、ニクソン時代のポストベトナム以後顕著になり、カーター時代に入って、その選挙公約である在韓地上軍の撤退並びにさきの国防白書におけるヨーロッパ重視政策の展開等、一貫してその傾向を強めております。この会談によるアジア重視のコミットメントにかかわらず、この傾向は一貫して続くと考えられるのでありますが、特に、総理は、防衛面でのわが国の分担についてどのように考えられるか、最後に所信を質問いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕
#73
○内閣総理大臣(福田赳夫君) まず第一に、国際通貨政策に関しまして、国際経済の不安定の責任のほとんどはアメリカである、アメリカの責任をどの程度追及したかという趣旨の御質問でございますが、まさに私は、いま世界経済の不安定の中で、アメリカの責任は非常に大きいと思うのです。今日、世界経済が不安定のその根源は、これはアメリカというわけにはいかない。これは私は、石油ショック、あれが根源をなしておる、こういうふうに思いますが、今日この時点でこれを一体どういうふうに対処するかというところになりますると、アメリカの責任が非常に大きい。この点は、私はカーター大統領に対しましても強調いたしておるわけでありまして、また、カーター大統領もこれをよく理解してくれた、このように考えます。
 また、海外経済協力の強化問題、これを三年間で倍増という意見を述べられたことは評価する、しかし、内容、これが問題だという御所見、私は、まさにそのとおりに考えます。
 内容につきましても、これを同じような気持ちをもちまして改善をすべきであると、このように考え、逐次その改善の内容等につきまして明らかにしてまいりたい、このように考えるのであります。
 それからさらに、海外援助強化を約束し、日中条約に米国のお墨つきを求め、アジア離れをやめるよう希望する、全く外交の自主性がないではないかというような御趣旨の質問でありまするが、これは、友邦国につきましては、自分の国はこういう考え方をやっておる、意見がないか、ありますか、というようなことを聞くのは、これは私は、自分の国、日本の国の考え方を正しいものにしていくという上におきましても必要である、そのように考え、友邦諸国につきましては広くわが国の考え方を聞いておるわけでありまして、しかし、最終的の結論は、これはわが国自体が、だれに拘束されることもなく決めるのでありまして、それが私は真の自主性というものであろうかと、こういうふうに考える次第でございます。
 それから、日米貿易不均衡の問題につきまして、日本の責任であるかのような印象が強いが、アメリカの責任についてどの程度指摘したのか、このような御質問でございますが、これはもう、もちろん日本も、日米貿易不均衡につきましては責任があるわけです。一昨年下半期に集中的にアメリカへ主商品が進出した、あの仕方について非常に私は問題があったといま反省をして、あれを繰り返してはならぬというふうに考えておりますが、しかし同時にアメリカは、わが国は物価政策がうまくいって物価が鎮静してきた、ところがアメリカの方は逆に物価が鎮静というより、インフレ化の傾向を示す、そういうすれ違いがありまして、非常に大きなわが国の貿易黒字となったということを考えますと、アメリカにもまた責任があるわけでありまして、日米相協力してこの黒字問題の処理をしなければならない、このように考えております。
 またさらに、七・五%成長、これはIMFで言われたというが、これについて所見はどうかというお話でございますが、私どもは七%成長で精いっぱいでございます。七・五%、これを考える余裕はない、このように考えております。一それから為替管理についてどういう所見かというお話でございますが、これはいまお話がありましたように、原則禁止例外自由、こういうことになっておりますが、これをひっくり返しまして、原則自由例外禁止、こういうふうにするわけでありますが、次の通常国会に提案をいたすという目標をもちまして準備を進めておる次第でございます。
 それから、アメリカの国会におきまして、農作物の輸入拡大についての要請が議員からあったという話だが、どういうふうに答えたか、こういうことでございますが、確かに一人の議員からそういう話があったのです。それに対しまして、私は、いま農村人口はだんだんだんだんと減りまして、いま全人口構成の中で農家人口というのは一一%まで減ってきちゃったんだ、しかし、わずか一一%になった農民であるけれども、健全な日本社会を支えるその影響力といたしましては絶大なものがあるんだ、これ以上私は農村人口を減らしたくない、また、農村、農民を守らなければならぬという立場にあるんだ、健全な日本社会構成のそういう重要な役割りを担っておる農村の維持というもの、これについては、わが日本政府は重大な関心を持っておるんだ、この点を篤と理解してもらいたいというお話を申し上げ、御理解を得た、このように考えております。(拍手)
 また、アジア離れ傾向に関係いたしまして、日本の要請に対してアメリカは軍事面でいかなる対日要請をしてきたか、こういうようなことでありますが、軍事面では何らの要請はしておりません。わが国は、自主防衛、専守防衛、この考え方に従って、わが国に侵略するものがあれば、これをはねのける、この体制は粘り強く進めますけれども、憲法のらちを超えての体制はいたしません。そういう考え方は持ちません。その件はアメリカといえどもよく理解をいたしておるところでございます。(拍手)
    〔国務大臣村山達雄君登壇〕
#74
○国務大臣(村山達雄君) お答え申し上げます。
 私に対する質問は、いまの通貨不安はドルの不安から来ておる、よって、強い通貨で複数化、基軸通貨を複数化したらどうか、こういうお話でございます。
 もとよりドルの不安を直さなければならぬことは当然でございます。しかし、基軸通貨である要件というものは、単に強いということだけではないことは御承知のとおりでございまして、広く国際取引に使われるものでなければなりませんし、その通貨をもとにします資本市場がやはりその背景になければならぬわけでございます。したがいまして、さしずめ何より必要なことは、ドル通貨の安定であると思います。
 複数化という問題につきましては、これは一つの構想ではございますけれども、しかし、実際的の見地で考えますと、もし複数の四つ五つのものをつくったときには、当然インフレ率、いろいろな違いによりまして為替投機を惹起するおそれがあることを、同時にわれわれは考えていかなければならぬと思います。
 それから、石油代金の通貨についても複数化したらどうか、これは貿易当事国が選択する問題でございます。われわれの理解しておるところでは、やはりドル通貨を強くいたしまして、ドル決済を現在産油国は望んでいる現状ではないか、かように考えておるところでございます。
 それから、いま経常収支の黒字で過剰流動性が発生しているから、特別会計で吸収して、あわせてそれでODAを推進したらどうかということでございます。御承知のように、確かにいま過剰流動性が非常に出ておりますが、日銀の通貨政策によりまして問題はないのでございます。M2は一一%ぐらいでございますから、むしろ過小という声さえあるのでございます。特別会計をつくるかどうか、したがって、特別会計をつくることとそのことは何の論理的関係もございません。むしろ、特別会計をつくって公債を発行するというようなことになりますと、現在でも建設国債のほかに赤字国債がある、いろいろありまして、かえってやはり国債の増発を招くおそれなしとしない。
 それからまた、ODAの推進の問題につきましては、さっき申し上げましたように、予算措置で十分やり得ると考えております。(拍手)
    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
#75
○国務大臣(宮澤喜一君) IMFの七・五%ということでございますけれども、これは専務理事のノートという形で配られましたものだそうでありまして、閣僚間でも別に議論をしたものではないそうでございます。これを持って帰りましたので、事務当局に検討させておりますけれども、いわゆる項目別の積み上げのようなことも何もしてございませんで、余り手間をかけた作業ではないようでございます。一つの希望図のようなものとして出したのではないか、その程度のものとして私、受け取っております。
#76
○副議長(三宅正一君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#77
○副議長(三宅正一君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後五時三分散会
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 出席国務大臣
        内閣総理大臣  福田 赳夫君
        法 務 大 臣 瀬戸山三男君
        大 蔵 大 臣 村山 達雄君
        通商産業大臣  河本 敏夫君
        運 輸 大 臣 福永 健司君
        労 働 大 臣 藤井 勝志君
        国 務 大 臣 荒舩清十郎君
        国 務 大 臣 櫻内 義雄君
        国 務 大 臣 宮澤 喜一君
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ソース: 国立国会図書館
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