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1947/11/18 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 労働委員会 第21号
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1947/11/18 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 労働委員会 第21号

#1
第001回国会 労働委員会 第21号
  付託事件
○労働基準法の適用除外規定設定に関
 する陳情(第二百五十二号)
○失業手当法案(内閣提出、衆議院送
 付)
○失業保險法案(内閣提出、衆議院送
 付)
○企業再建整備その他に関する陳情
 (第三百四十三号)
○労働基準法四十條の特例に関する陳
 情(第三百四十四号)
○労働者教育充実に関する陳情(第四
 百四十五号)
○積雪寒冷越冬手当即時支給並びに越
 冬衣具特別配給に関する請願(第四
 百五号)
○税務職員の待遇改善に関する請願
 (第四百二十一号)
○別府市の勤務地手当地域給を特地に
 引上げることに関する陳情(第五百
 三十号)
○税務職員の待遇改善に関する陳情
 (第五百四十二号)
○税務職員の待遇改善に関する請願
 (第四百五十五号)
○雪害地手当支給に関する請願(第四
 百六十五号)
○税務職員の待遇改善に関する請願
 (第四百八十三号)
○各縣吏員の暫定加給國庫補助等に関
 する陳情(第五百六十三号)
○日傭労働者に対する特例制定に関す
 る請願(第五百十九号)
○京都府綴喜郡の地域給支給に関する
 請願(第五百二十三号)
  ―――――――――――――
昭和二十二年十一月十八日(火曜日)
   午後一時三十九分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○失業手当法案
○失業保險法案
  ―――――――――――――
#2
○委員長(原虎一君) それでは本委員会を開催をいたします。大藏省主計局第二部長河野通一氏の出席を求めてありますから、請求者の栗山委員からの質問を許します。河野第二部長は、主計局長の代りとして出席せられたので、局長は今日は支障があるため出られませんので、さよう御承知置き願います。では栗山委員。
#3
○栗山良夫君 私は失業保險法案、並びに失業手当法案に関しまして、一点だけお伺いをしたいと思うのであります。それは十五日付を以ちまして衆議院から失業保險法案並びに手当法案が正式に参議院に回付されたわけでありますが、これには相当大幅な修正がなされておるのであります。そうじてその中でいわゆる保險金、手当金に関する部面が問題になるわけでございますが、要するに原案の場合に予定をせられましたところの額と、今度修正になりましたところの額とによつて、國家が負担をしなければならない財源に、どの程度に差等が生じたかということを先ず伺いたいのであります。
 これはすでに追加予算案も提出いたされておりますのでございますので、若し相当な変化が來るということになれば、私どもとしてもその処置に対して、やはり所信を伺つておかなければならないと思うのであります。そうして今後失業者が相当に数を増すことも予定されておりますので、その両者を織り込みまして、果して現在の予定財源でこの法の運用が完璧を期し得られるかどうかという点を、もう一度改めて伺つておきたいのであります。そうしていろいろ予算も窮屈であるようでございまするが、その場合に若し不足を生じたときには、どういうような手段を以てこれを充当せられるか。その点も併せてお聽きをいたしたいと思います。以上三点お伺いいたします。
#4
○政府委員(河野通一君) お答えいたします。失業保險の特別会計に関しましては、御承知の通り、失業手当の関係といたしまして、約九億六千万円はかりの繰入れを一般会計からいたしておるわけであります。これは去る数日前に提出になりました特別会計予算補正第三号に載つておるわけでありますが、目下衆議院において御審議を頂いておるわけであります。この九億六千万円の根拠につきましては、後程御説明申上げたいと思いまするが、今般失業手当法、失業保險法が相当大幅の修正を受けることに相成つたように伺つておるのであります。この点につきましては、この修正がなされるようになりました経過に鑑みまして、労働省の御当局ともいろいろ事務的にお打合せをいたしたのでありますが、結論といたしましたは、この九億六千万の金額を、今直ちに予算的に変更をする必要がないという結論に到達いたしました。主として問題になりますのは、例の報酬につきまして、標準報酬と、実質報酬と申しますか、実質賃金と申しますか、そういう点につきまして、相当法案としては修正があつたわけでありまするが、この点につきまして、現実に計算上出て参りまする國庫の負担金額という点につきましては、今この際大きな変更はない、こういうふうに私どもは見込んでおります。尚この計算は大体すでに御説明があつたかと思いまするけれども、極くあらつぽく申上げますると、こういうふうに計算しております。被保險者の数を大体四百七十万人、失業率を約一割と見てあります。その失業者の中で、失業の手当を受ける対象になります者には、失業者の中で六ケ月の継続勤務でありますとか、その他のいろいろの條件があります。その條件を充す人は、恐らくその半分くらいであろうというふうに計算をいたしております。更に、そういうふうに計算いたしまして、失業手当を受ける対象になる人の中で、現実に失業手当を請求して参ります者は、約九割であろうというふうに計算をいたしますると、四百七十万人の被保險者に対して、大体毎月平均の失業手当受給者は二十一万一千五百人程度であろう、こういうふうな計算をいたしまして、この二十一万一千五百人が、大体現在の千八百円のベースで、手当支給基準が大体五五%というふうに一應計算をいたしまして、一人九百九十円、毎月支給を受ける、こういうふうに一應の計算をいたしまして、この九百九十円に、只今申上げました二十一万一千五百人をかけまして、更にこれが一ケ月の待期がありますので、十一月からこの法律が動きましても、実際に手当が支給されますのは十二月からということに相成りますので、本年度は四ケ月、この四ケ月を四倍いたしまして八億三千七百五十四万円というものが失業手当の支給を予定される金額である、こういうふうに計算をいたしたわけであります。尚この外に、今申上げました九億六千六百万円と八億八千万円との差額は、業務取扱並びにいろいろな事務費でありますとか、予備費でありますとか、そういうふうなものが入つておりますので、それを合計いたしまして九億六千六百万円、大約そういう数字を出したわけであります。
 次の御質問の、万一予算で、只今計上されておりますこの金額で足りなかつた場合、例えば失業が予想以上に沢山出たというような場合に、予算上の措置はどうするかという御質問でありますが、この点につきましては、この手当金の予算は、今申上げましたように、極めてラフな計算に基づいて一應の算出をいたしたわけであります。今後予想以上にこの手当金の支給を必要とするというような事態が生じました場合には、予計上の言葉で申しておりまする一種の補充費途的な考え方で、必要に應じて、或いは予備金でこれを支出いたしますとか、或いは更に次の機会におきまして追加予算の提出をいたしまして、皆さま方の御審議を頂いて、予算としてこれに追加して行くというようなことも考えておるわけであります。金がないから出さないということにはならんのでありまして、あくまで精密なる計算に基いて生じて参りました必要な金額については、何らかの方法によつて財政負担をいたすつもりでおります。
 尚特別会計法の方におきましては、一時的に、何と申しますか、急場の必要を生じました場合には、借入金ができるようになつております。この点も、万一の場合に備えましてそういう規定をおいたのでありますが、只今のところは、まだその借入金を使用いたすまでの必要は、この際としてはないと考えられますので、今度の予算には、借入金につきまして、別段の予算的措置をいたしておりません。おりませんがこの点は特別会計法にもはつきり借入金ができるようになつておりますので、必要に應じまして、この規定を予算上に動かして行くということも考慮しております。申し落しました点があるかも知れませんが、一應私の答弁を終ります。
#5
○栗山良夫君 私の質問の要点は、結局財源がなくなつて、この重要な手当並びに保險法案の運用に支障を生ずるようなことがあつてはならないというので、予め念のためにお伺いしたわけでありまして、大体了承いたしました。ただもう一点だけ確めておきたいのは、只会計算の基礎になつておるのが、千八百円であることこう仰しやつたのでありますが、過日労働大臣からお話がありましたのによりますと、本年八月末の内閣統計局の資材によれば、民間の鉱工業の労働者というものは、すでに千八百円ラインは拡張されまして、二千二百円にまで進んでおると、こういうことを言われたのであります。恐らくその後の私共が承知しておる情報によりましても、これよりは上廻つておると思います。企業整備その他によつて出て來る失業者も、多分にこういうような線まで上つておる者が多いのじやないかと考えておりますが、從つて今御説明頂きました千八百円をベースとして計算された額というものは、極めて内輪に過ぎるのではないかということが考えられるわけであります。只今の御説明で一應了承をいたしましたが、財源としては非常に苦しいということは、現在の予算の範囲内においては苦しいということが指摘されるのじやないかとこう考えられますので、財源の確立については、一層御努力を願いたいということを希望する次第であります。
#6
○委員長(原虎一君) 他に大藏省に対して特に質問ございませんか。それでは河野部長に退場して貰つてよろしうございますか。それではどうも御苦労さまでございました。
 それでは続いて厚生省の保險局長に対して御質疑がありますから、姫井委員の発言を許します。
#7
○姫井伊介君 失業保險法案に関連いたしまして、今日大きな問題となつております社会保障のことでありますが將來はこうした保險制度並びに保護或いは医療等まで、廣い範囲に亘りまして、社会保障制度というものが、大きな構想の下に組み立てられなければならないのではないか。又すでにそういうことが考慮されて、当局においても研究されつつあり、又アメリカの方からも指導の手を延ばされておると聞き及ぶのでありますが、そういたしまするならば、そうした計画並びに実施につきましては、追加予算においては、そういうことはできないといたしましても、來年度の予算からでも、そういうことが計画的に実施されるように、年次を逐うてそういうような処置が講ぜられますこと、又そういう場合におきましては、聞きますところでは、その方式といたしまして、イギリス、アメリカ、ソ連、それらの中で、どういうふうなシステムが中心になるであろうか。その中に自然今日の内閣の持つておる性格というものがやはり現われて來るであろうということも予想されるのであります。そういう点を一つお伺いしたいのであります。
#8
○政府委員(宮崎太一君) 只今お尋ねの、社会保障制度の問題でございますが、御承知だと存じますが、仰せのごとく、厚生省の社会保險調査会におきまして、社会保障制度を実施する方がよろしいということで、数ケ月に亘りまして研究いたしました結果、一つの答申を厚生大臣に出されたのであります。それに基きまして、厚生省といたしましては、この社会保障制度をどうするかという点については相当研究をいたしております。併しながらこの社会保障制度は、一般國民を対象にいたしました大きな社会保險の制度と、それから生活保護法をそれに吸收した社会救済の制度とを包含いたしました、非常に大きな制度になりまして、社会保險制度調査会の答申案によりますると、その総経費が三千億を超えるということになるのであります。勿論その内部の計算等に当りましては、相当檢討を要します。それからこの社会保障の給付の内容等につきましても、相当な研究調査を逐げなければならんと存じますが、大体三千億を超える経費を要するということに相成つておりますので、これを直ちに実施するかどうかといいますると、我が國財政経済等の関係におきまして、甚だ愼重なる考慮を要することになるわけでございまして、又政府におきましてこれを御決定になるまでの段取りには至つておらないわけでございます。又今姫井委員の仰せになりましたように、アメリカの方面でもその道の権威者を呼びましてGHQで目下このことについて御檢討をなされておるようでございます。そういう状態にございまするので、明年度の予算ということにつきましては、私共といたしましてはこれだけの大きなる制度でございますので、今直ちにこれを明年の予算に載せるほどに行くかどうかということにつきまして、まだ確たる方針を立て得ない関係もありまして、この制度を調査研究する程度の予算をお願いしたいものであると思つておるわけでございまして、二十三年度からこれを実施するというまでの考えをまだ今のところ持つておりませんでございます。
 それからもう一つの社会保障制度の内容は、じやどういう工合にするかという点で、アメリカの制度に、イギリスの制度、ソ連の制度等の先進國の制度の中のどれを採用するかというお尋ねだと存ずるのでありますが、ソ連の制度につきまして私共としてははつきりしたことはまだ分りませんでございますけれども、御承知のようにソ連という國はああいう國柄の所でございますので、全部の労働者が國有の所に使われておるというような関係がありまして、すべて保險の形態を以てこれをやつておる。即ち社会保險の制度を以てこれを行なつておるわけでございます。それからイギリスの制度でありますが、イギリスの制度は社会保險の形態と、それからいわゆる社会扶助、ブーア・ローの発展した社会保護の形態と両方を含ました形におきまして、一つの社会保障なる観念を作り上げて社会保障制度を作つておるのでありまして、いわゆるバリッチの案でありまして、この制度によりますると、國民をいわゆる被傭君、いわゆるサラリーを貰つておる人達、それからそうでなしに独立に事業を経営しておる人達、それから主婦、無業者、少年少女、老齢者というような工合に分けまして、これに対して医療給付、医療と申しますのは治療の方でございますが、治療の給付をやるとか或いは葬祭の給付をやるとか、或いは老齢の年金を出す、それから不具癈疾になりました場合に傷害の手当を出す、失業の手当を出すとか、或いは轉職のために幾らかの経費を與えるとかいうようなことをこの制度によつて與えておるわけでございまして、この制度が我が國の今後の社会保障制度の最も大きな模範になるのじやないか、こういうように存じられます。それは大体社会保險制度調査会が答申いたしました案は、大体リバリッチの案を基礎にしていると考えられるのでございます。それからアメリカの制度でありますが、アメリカは失業保障制度が一つあります。それから老齢年金の制度があります、それから寡婦孤兒の保護の制度があります。これらが社会保障の制度でありまして、それに加えまするに、疾病、癈疾等の救済乃至保護の制度をこれに加えてやつておるわけであります。或いは公衆衞生のサービスだとか、或いは貧困なる母子に対しまして直接の医療の扶助をするとか、或いは不具の兒童に扶助をするとか、盲人の保護をするとか、それから癈失回復、復職のサービスをするとかいう文化的のものをいたしておりまして、根幹になりますものは失業保障老齡年金、寡婦孤兒の保護制度でございます。そうして我が國で既に二十年の歴史を持つておりまする健康保險の制度というものにつきましては、アメリカにはないのであります。そういう意味におきまして我が國の社会保險というものが、疾病保險から発足いたして來ておりますが、その点はアメリカの制度等は参考にならないのではないかとこういうように存じておるのでありまして、大体においてリパリツチのイギリス案が大体中心になるのではないか。それからソ連の方はいわゆる國有制度という制度が日本には全面的に採用されておりません関係で、参考にはならないのじやないかとこう思つております。
 それから近頃ニユージーランドの方と交渉いたしまして、ニユージーランドの社会保障制度等につきまして今資料を求めております。そのニージーランドの制度は、大体我々が今考えておるような制度にやや似ておるような感じがいたします。資料が十分整いましたならば、これも一つ大きな参考になると存じております。それからデンマークにもこの制度があります。デンマーくの方は日本の國民健康保險のような組織で、全体が行なつておるように聞いております。大体今後の参考といたしましては、今申上げたような工合に行きたいと存じます。
#9
○姫井伊介君 更に附け加えまして生命保險制度を社会保障制度に取込まれます御意思があるかないかということであります。これは業者との関係もありまするが、併し我が國將來のことを考えますると、生命保險制度によりまして、相当この歳入金融方面におきましても、回收資金を貸出せる途が開けるわけなのであります。そこまどお考えになりますかどうか、更にこの大きな制度を調査研究し、又具体案を立てるにつきましては、どういう組織をお持ちになりますか。或いは委員会制度、委員会制度とすればどういう範囲においてその委員を選んでお進めになりますか、それをお伺いいたします。
#10
○政府委員(宮崎太一君) 生命保險でございますが、この社会保障制度は大体憲法二十五條に規定してあります、國民の健康にして文化的な生活の最低限度を保障するという、あの憲法の條文の裏打ちとして考えられております。それから又この社会保障というものの性質上、やはり最低生活を保障すべきものではないかと、こういうように存じております。そこで國民生活をいたします上におきまして、最低生活をして満足すべきものではございませんで、最低生活はこの制度によつて保障するか、それ以上のより文化的の生活というものは、各人の努力によつていたすべきものである。こういうように存じます。その意味合いにおきまして、この最低生活保障以上の保險制度を求めることが、これが文化的の國民の当り前の姿じやないかというように存じますので、生命保險とか、或いは簡易保險とか、或いは郵便年金というような制度につきましては、より以上の発展は求めますけれども、これをこれに採り入れまして、これに吸收してその方を押えるという形を取らないというように考えておるわけでございます。もう一つ何でしたか。
#11
○姫井伊介君 計画、具体案の……。
#12
○政府委員(宮崎太一君) 只今の次の問題でございますが、この制度を実施するに当りまして、先程申上げましたように非常なる大きな國庫の支出、或いは國民の自由経済からこれを取り上げて保險経済に移すというような大きな問題がございますので、軽々にこれを実施するわけには行かないと存じます。それからもう一つは既存の健康保險の制度、國民健康保險の制度、或いは厚生年金保險の制度、その他鉄道、逓信等の官業共済組合の制度等がございます。それから進んでは官吏の恩給制度、公吏の恩給制度等がございますので、これらの制度と新たに作ります制度との結びつきをよくしなければならんのであります。そこでこれをやるという決心を政府がいたしましても、それに非常に理想的な案及び妥当な案を作りますためには、財界、政界、或いは労働者階級、或いは事業主階級等の権威の方々の御参集を願いまして、そうして大きなこれの調査機関を設けるということが必要であろうと思います。同時に又その調査専門の部局等も考えなければならんのではないかと存じております。それから又國民の方にいたしましては公聽会等も開きまして妥当にして円滑に遂行するような案を作る。こういう考を以ちましてこの制度の調査機関及びその調査に附属する事務機構等も考えまして、そこに先程申しました各界の権威者を網羅いたしまして、檢討を逐げたい、こういうふうな考えを私共持つております。まだこれが全体政府の案として決まつたわけではございませんが、私共事務当局としてはそういう考えを抱いておるわけでございます。
#13
○委員長(原虎一君) 保險局長に対する他に御質疑はございませんか。では保險局長の退場を願つてよろしゆうございますか。
 続いて失業保險法と、失業手当法の衆議院より送付されました印刷物、これの誤植が発見されましたので、芝田專門委員からその訂正を申上げます。先に保險法からやります。
#14
○專門調査員(芝田義彦君) 失業保險法案の第十七條、三頁でありますが、その細かい字で書いてあります修正の二行目、眞ん中から少し下の「その月及びその月前において」となつておりますが、それを「その月及びその以前において」と直します。「月」を「以」と直します。次に四頁の三行目の「工場労働者の平均給與額が、失業保險金額表の」というところのこの「、」を取ります。五行目の「上昇した比率に應じて、賃金等級」とあるところへ「前項の」を入れます。「前項の賃金等級」といたします。失業保險法案の訂正はそれだけであります。
 次に失業手当法案では、二項の第五條の二行目「その月及びその月前」とあるのを「その月及びその以前」と直します。「月前」は「以前」の間違であります。三頁の終りから四行目の「又はその賃金の額が十円(十円未満のものを含む。」の次に閉じ括孤が抜けております。これは「又はその賃金の額が十円(十円未満のものを含む。)」となります。それから七頁の第二十五條の條文の左側にある黒いぼつは要らないのであります。
#15
○委員長(原虎一君) 速記を止めて。
   午後二時十八分速記中止
  ―――――――――――――
   午後二時三十二分速記開始
#16
○委員長(原虎一君) それでは速記を始めて下さい。続いて両案に対する質問を続けたいと思います。発言の通告がありますので、穗告委員の発言を許します。
#17
○穗積眞六郎君 この失業保險法案、失業手当法案、すでに審議終了になるところでございます。この両案に対しまして、先日引揚同胞の特別委員会において、いろいろ疑義が出まして、政府委員からも御説明を頂いたのでございますが、その疑義の根本となりますのは、この法案は労働者が失業した場合、この生活の安定を図る措置としてこの失業保險法案ができたということになつておりますが、今日の失業という問題は敗戰によりまして、その範囲というものは非常に廣く、日本始まつて以來劃期的な失業状態に陥つているのはもう御承知の通りでございます。然るにこの失業法保險法案というものは通常の状態において、國内において就業しているものが失業した場合のみを対象として作られたものでございます。そうして失業手当法も殆どこれの附則的な法令として作られたような状態にあるのでございます。こういう劃期的な失業状況、殊に海外に行つてみましたもの、並びに長く海外において軍務に服しておりましたものが、七百万以上もありまして、これがもう一齊に失業して還つて参ります時に、ただ國内にあつて失業したものを対象とする失業保險法案というもののみを作られたのでは、失業に対する救済の体系法規上にも実際上にも、誠に整わないではないか。從つてそういうちんばな失業の法案を出された。片方においてはこれに対する対策というものをこの大事な時期、而もこの劃期的な時期に一つも顧みないで置かれるというのは非常に國の措置としても、日本再建という上からいつても、非常に当を失した措置ではないかということが非常に論ぜられたのでございます。
 それからもう一つ小さな問題といたしましては、今度は失業手当法案の中に、これは必ずしもこの失業保險法の附則的な存在でなくてもよかつたのではないか。せめて海外に行つておりました者が還つて來て、業務に就きますまでの、その期間においても、この法律の適用を受けるようにして頂くことが必要なのではないか。最少限度の場合におきましては、只今まだシベリヤ辺りにおります、そうして強制労働に服されておるというようなこと、この人が還つて來ましたような場合、最少限度においても、こういう場合だけでも、この法律の適用がして頂けるように改正ができんものかということが非常に問題になりまして、その結果といたしまして、この法案を改正して、そういう廣い範囲のものも入るようにして頂きたい。若しそれができないというのであるならば、失業に対するもつと根本的な、そうしてこういう時代に即するような立法を早く進めて頂きたい。その意味からいたしまして、失業法規体制をもつと拡充して、そうして完全なものに速急にするのが本当であるという附帶決議をつけて頂きたい。こういうことを向うの委員会で話し合つたのでございます。でその点につきましてこの法案の改正ができるものであるかどうか。又できないとしましても、早速に失業立法に対する体系を整えて、この劃期的な失業状態に対して普遍的な救済の途を講じて、そうして失業者の数を減すということが当面に必要ではないかということを伺い、そうしてこれは政府に対する國家がやつて貰い、こちらの委員会といたしましては立法体系を即刻に整えるようにという附帶決議をして頂きたい。こう思つておるのでございます。私の前段に伺つたことにつきまして、労働大臣のお考えを承りたいと存じます。
#18
○國務大臣(米窪滿亮君) お答えします。その点は、労働省の予算に関する分科会で、奥さんからお尋ねがあつたのでありますが、そのときも私からお答えしたと記憶いたしておりますが、大体我々としては、同胞愛から言えば戰爭の一番大きな犠牲者であるところの復員軍人及び一般引揚者も、失業状態である以上は、國家の力で救済したいと思うのでございまするが、これには大体二つの制約があるのでございます。その一つは失業保險、失業手当というものが、社会保障制度の上に立つておるならば、言い換えると、社会保障制度を実現するために、國の財政が許すという状態であるならば、これは私は被保險者或いは失業手当の給付を受ける者の資格を決めるのに、いろいろお手許にあるようなそういつた條件をつけたくないのであります。即ち過去一ケ年間において通算して六ケ月の雇用関係があつたというような條件をつけずに、ともかくも失業という現実の問題を掴まえて、そうして働く意思と体力があるに拘わらず、就職の機会がないというものを、すべて救済すべきであると、こういう社会保障制度的な観念に立つのが最も理想的であると思うのであります。ところが残念なことに、すでに御承知のように、私どもがA案、B案、C案というものを立てまして、一番狭い範囲のC案で行くということに大体起草委員会で意見が纒まり、又関係筋の方面においても、それで行くことに大体アブローバルを貰つておる今日でございまして、從つて我々はその中からいわゆる日雇労働者を除き、又官吏及び官業労働者を除いて、そうして立てた予算が失業手当並びに失業保險の事務費として僅かに十五億円、それすらも追加予算の関係筋との折衝において半額に減らされた。それでは到底我々は失業保險或いは失業手当というものを遂行することができないというので、私甚だおこがましい申し方ではありますが、必死の努力を以て、漸く十億円というものに復活ができたというのが、実際の状態でございます。こういうことと、それから一般引揚者はともかくも、復員軍人というものに対しては、関係筋の相当これに対する考え方がありまして、どうしても今穗積さんのお尋ねになつたような工合に、これをこの法律でカバーができないかということについては我々も非常に遺憾であると思いまするが、どうぞその点を一つ御了解を願いたいと思うのであります。勿論失業者となつて日本へ帰つて來た人に対しては、多少その名義上において不満の点があるでしようけれども、いわゆる生活保護法によつて、或る程度の政府の補助は受けられるのであります。この生活保護法を受ける資格としては、何らのそこに條件がないのであります。勿論これだけではいわゆる失業救済ということに合致するような具体的な措置はとれないのでございまするから、私としては、これはまだ閣議にも何も決まりませんが、私としては、これは別な何かの法的処置によつて、これらの人に対して何らかの救済方策をとりたい、勿論これについても、直ちに問題になるのは予算の問題でございますが、何とかこの財源を求めて、そうしてこれらの非常に氣の毒な、而も國民として感謝すべき人たちに対して、そういうことをとつて参りたい。こういう工合に考えております。從つてお尋ねの点については、この失業保險及び失業手当に関する限りにおいては、政府の考えとしては、如何ともなし得ない現状にある、こういうことを御了解を願いたいと思います。
#19
○穗積眞六郎君 御説明を承りますとただこれは自然の成り行きではございますが、これを國民として廣い根本的な考えから考えて見ましたときに、こちらにいてそうして失業した者と、それから今度の事変の結果直接の影響を被つて失業して帰つて参つた者、その間に一つも甲乙のあるべきはずは、私は断じてないと存じております。然るに國内におりました者については、こういうふうな法律によつて救済の途が與えられる。帰つて來た者は生活保護法によれるのだから、生活保護法によるということと、この失業保險なり失業手当なりの保護を受けるということは、これはどう考えましても、決して平等な取扱いと思えないのであります。この点につきまして、私は日本再建という上から行きましても、その取扱い方は決して公平であるとも正当であるとも思えないのでございます。よく引揚者に対しては生活保護法の途があるという御答弁があります。これはあるには違いありませんけれども、これを以てすべてを満足することができないのであります。これのみによつて引揚者の失業状態を救えるものでないということは、よく御承知のことと存ずるのでございます。從つて、只今大臣の御言葉もありましたが、これは何とかするなどというのでなく、必ずこの法案とは別に、そういう國家の運命に伴なつて失業いたしました者、それも決して少ない数ではないのでございますから、これに対しての失業の救済に関する法規というものをお立て下さいますように、この点を政府に対して要求いたしますと共に、この委員会におきましても、それに対して要求いたしますと共に、この委員会におきましてもそれに対して附帶決議かなにかの形式で、一つこの委員会の意思を決定して頂きたいと存ずる次第でございます。
#20
○山田節男君 今の穗積委員の御質問並びに労働大臣の御回答、私は諒とするものでありますが、勿論今回審議されております失業保險法案、殊に失業手当法案というものは、これは只今大臣からの御説明のような事情の下に、又財政上の事情と、一般産業に現在從事しておる者を被保險者の対象とした、この点は十分我々として了承するのであります。尚只今大臣からのお言葉で、生活保護法により途がある、併し海外から復員し或いは引揚げた、そういう人々に対してはなにか特別の法でも設くべきじやないかということを個人としてお考えになつておるということを承つて、私共は非常に感謝するのでありますが、一体、失業保險というものは今回日本では最初行われることでありまして、而もこういう経済危機、財政難の下においてスタートされるのでありまして、この出発点の失業保險法、それから失業手当法というものはこれは非常に不完全極まるものであります。併しながら先程大臣が申されたような諸般の客観情勢の下に行うとすれば、これが最善である。勿論これは大臣のお言葉の通りであると思います。併しながら今日五百万を超える海外の引揚、復員者の生活情勢を見ますると、これがすべて生活困窮をしておる者は生活保護法に十把一からげに救済される、こういう途しか開かれておりません。併しながらこの引揚者の実際の更生問題というものを考えますると、必ずしも失業者だけでなくて海外での腕を……いろいろな技能を持ち、経驗、知識を持つておる者が多いのでありまするから、こういう者の、いわゆる失業者救済の遂におきましても、一般の産業の整備の結果、企業整備の結果、離職せざるを得んという者とは、相当質が違います。そういう点からいたしまして、私は生活保護法があるじやないかと言われますけれども生活保護法は、これは救護法のやはり色が残つておる。軍人救護法などと一体になりまして……、昨年改正になりましたけれども、生活保護法は飽くまで救貧法の性質を持つておるのであります。勿論今日の生活保護法によつて生活扶助を受けましても公民権の資格を喪失することはない。ありませんけれども、これは飽くまでこの生活保護法によつて救済を受けるということは、いわゆる極貧者としてのこれは極印を打たれるということについて、これは実に不名誉極まるものであります。これは本当のどん尻に來た場合にのみ、これは救いの手を求めるべきであつて、これは飽くまで伸ばすべきでない。そういうようなことからいたしまして、これは先程大臣からもちよつとお言葉がありましたけれども、今回ここで審議されておりまする失業保險、これは他の健康保險とか、或いは災害扶助法その他いろいめなものを纒めて一つ是非社会保障的なものに立脚せなければ、これはいけないんじやないか。殊に憲法におきまして國民はすべて最低限度の健康にして文化的な生活を保障されておることになつております。從いましてこの失業保險、或いは失業手当法に、只今穗積委員の申されたことが盛られない、この事情は十分了承できるのでありまして、これはこれとして、法律化して頂いて、聞くところによりますと、労働者におかれましては、この社会保障の調査委員会がある。その具体的な報告書もできたように伺つておるのでありますが、大臣におきまして、先程穗積委員の申されたことに対しまして、この失業保險が第一歩としてできるだけ早く社会保障法的な失業保險というものを、実施の運びにして頂くような御意向があるかどうかということを、一つお伺いしたいのであります。
 それから尚先程も申上げましたように、どうしても生活保護法によるの外は、帰還者並びに復員者の救済の途は外にない、これは他の方面からの制約もあつて、どうしてもやられんということになりましても、我々としては、これは制定ができない場合には、現在この七百万に近い復員者或いは海外引揚者の実情を見、又その失業したり或は無産者になつておるその原因から追究しまして、あくまでこれは國家的の責任であるということからいたしまして、私は是非この社会保障案の早急実施ということの外にはないと思うのでありますが、この点に関しましての大臣の御意見なり或いはお見込があれば伺いたいと思います。
#21
○國務大臣(米窪滿亮君) 山田さんの御指摘の社会保障案というものは、実にこれは厚生省が社会保障制度調査会というものに委嘱をして、そこで案を練つて貰つたのが、過日の新聞に発表されておるので、詳細のことは労働大臣として知りませんが、これは今山田さんのいわれたような御趣旨から、政府があらゆる即ち國家としてその生活を保障するという点から、あらゆるそういつたこれに該当する者を救済しようという案であります。経費としても約二千億に上るというものでございます。これは、その数字の点においては或いは私が間違つておるか知りませんが、非常な厖大なる額になるということで、一つの理想案として、將來日本の國力がこれらをカバーできるときになつて参らんというと、なかなか近い將來では困難ではないか、勿論我々その理想に対しては全然同感で、一日も早くそういうことのできるような國力を我々は回復したい、こういう工合に考えておる次第でございます。ただそういう理想が実現するまでの間、到底帰還者、復員者が持つておれないことは、これはいうまでもないのでありまして、取り敢えずの方法としては、甚だ不備でしようけれども、まあ生活保護法と更に誰しも失業救済というようなことよりも、失業したくない、つまり職を得たいということが一番の願望でございまして、私としてはそういうことを考慮して、極く僅かでしようが、そういつた方法でこの引揚者に対する救済の方法を考慮しておるのでございます。更に法的処置としては、先程も穗積委員にお答えしたように、我我としては、この保險法を離れて、別な立場から、別な法的処置によつて何とかこれらの人たちを救済したい、こういう工合に考えております。問題としてはあまりにも失業予定数が多いのであります。我々としては今日統計が十分でないので、飽くまで推定の上に立つよりか方法ないですが、いわゆる登録失業者が、昨年度において二百七十万人、登録されていない失業者と認められるいわゆる潜在失業者と称する者が約五百万人ぐらいあるんじやないか、合計八百万人ぐらいはあるんじやないか、こういうところに更に引揚者が、まあ正確な数は知りませんが、相当帰つて來たということになると、これを日本の今日の僅か十億ぐらいの費用では、到底これを救済できないという現実の苦しい立場にあるということを、一つ御了察願いたいと思うのであります。而も更にアンチ・トラスト法であるとか、経済力集中排除法であるとか、或いは企業整備が行われるとか、こういつた失業者が盛んに出て來るいろいろな原因が、我々としては必至であると思われる。ところがなかなか各方面に手が廻り兼ねておる現状であります。併しこれらの失業者の中、特に引揚者は不幸にしてこの法律からはいわゆる資格者としては洩れましたですが、なんとかこれに対しては、優先的に考えたいということを考えておる次第であります。
#22
○松井道夫君 この際労働大臣にお尋ねしたいと存じます。失業手当法、並びに保險法とも関連いたしておりますので、かねてお尋ねしたいと存じておつた次第でございます。この失業手当法乃至失業保險法で、將來発生いたしまする失業者が、相当の保護を受けるということは、極めて適切なことでございまして、満腔の敬意を表する次第でありまするが、只今の山田委員の御質問にもありました引揚者、それから今のこの両法の適用を受ける失業者、並びに働く意思、能力あり、而も生活保護法の保護を受けなければならんといつたような、それ以外の潜在的の失業者、これらの者に対して、適当な処遇を與えませんと、それらの者が企業に寄食し、農村に寄生いたしまして、今のインフレというものを促進して参るのであります。それでこれらのものの解決方法といたしまして、先ず第一に取上げなければならん一つの方法、これは労働法の一部として私は考えなければならないものと存じておるのでありまするが、完全就職事業法といつたような性質の法律を作りまして、この法律によりまして、公共事業を大いに興しまして、例えば造林でありまするとか、産業道路建設でありまするとか、或いは港湾の修理、荷役或いは炭鉱、その他の基礎産業の労働者、そういつた事業を興しまして、而もその事業は何らかの形で生産に寄與するといつた事業を選びまして、それらに吸收するということが、第一に考えなければならんことでないかと存ずるのであります。然るに今度の追加予算を拜見いたしますると、公共事業費が相当程度削減されたように私拜見したのでございまするが、この点についてどういうお考えを持つておるのであるか、インフレは、これは日本の再建ができるかできないかの試金石でございまして、これを防止するということは、勿論現下の最大の問題の一つでございます。それにつきまして、私は前々から潜在失業者の把握というものができておらないということを当局から伺いまして、非常に心もとなく思つておつたのであります。こういう人たちこそインフレを促進せしめる原動力となつておる。これを把握する方法といたしまして、どういう方法をお考えになつておるか、この点をお尋ねしたいのであります。又これらの労働者を、その先程申しました公共事業に吸收いたすという点におきまして、何らかの強制的の手段、強制が言葉が過ぎまするならば例えば時間労働制というようなものを作りまして、この公共事業に吸收して行くということが大切なのではないかと私存じておるのであります。尤も國家の財政上の関係から、或いは資材その他の関係から、そういう公共事業は現実において困難なんであるというような御意見があり、又そのようなことを他の委員会でありまするか、労働大臣が言われておつたというようなことをちよつと聞いたことがございますのでありまするが、併しながらそれは私は御熱意が足りないのではないかと愚考いたすのであります。なんとなれば憲法の第二十七條に、「すべて國民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」ということが規定せられておりまして、この労働の権利を有するということは、これは働く能力あり、意思ある者に適当な職場を與えるということが規定されたものであると私信じておるのであります。これが憲法違反であるというくらいな強い信念を持たれまして、強く主張されまするならば、或る程度のことができるのではないかと思う。さような点についてお尋ねしたいと思います。
#23
○國務大臣(米窪滿亮君) 失業労働統計が甚だ不備であることは仰せの通りであります。いわゆる潜在失業者の数を把握する方法というものが非常にむつかしいのでありまして、その方法としては、大体國勢調査、これが今まで四年に一遍、最近は少し多くなつたのですが、その時にですね、失業者であるかどうかということを、大体職業のない者を失業者とまあ見るのでありますが、それが頻繁にその統計が、そういう調査が行われれば、統計がそこへできるのですが、なかなかその人口調査或いは國勢調査というものは、そうたびたび行れない。それから全部の失業している人が、全國五百何十ケ所にある職業安定所に就職の申込をして呉れれば、これが一番はつきり分りますが、なかなかしない。日本のこの社会状態が、欧米と違つておるのでありまして、欧米では、やはり職業安定所というものを利用して、そこへ行つて発録しないと、職業が得られない。ところが日本では、そういうものを経なくても、自分らの縁故を辿り、或いは友人関係等で以て就職できるという途が相当ある。或いは帰農するという手もあるし、いろいろなそういつた國情が違うので、日本では、そういつた失業統計を正確に把握する方法がないのでありますが、今度労働省ができまして、そうして御承知の通り、労働統計調査局というものができて、主としてこの局が全力を盡して、そういつた、勿論失業ばかりでありませんが、労働に関する一切の統計を取つて参ることになりましたから、いわゆるかすに時を持つてすれば、私は將來相当信頼するに足る統計が出て來るのではないか。從來は総理廳の統計局の資料が唯一のものであつたので、又その他各省にも若干の統計調査をする課があつたのでありますが、これらのものにおいては、労働問題とか、賃金問題のみに專念するような機構になつていなかつたために、皆さんを御満足せしめるような統計が得られなかつたことは、誠に残念に思つております。將來はそういうことが段々と改善されて行くだろうと思います。
 それから第二の御質問は、いわゆる就職の点でございます、これは或る程度まで強制的にやつたならばという御意見でありましたが、問題はいわゆる産業予備軍といいますか。いわゆる余剰労働人口というのですか、そういうものを狩り出すということになつて、そういう人たちに職業を與える対象の職業があるかということになるのではないか、こういう工合に考えております。公共事業ということは一應考えられておりますが、実は昨年の予算において九十五億円というものを計上して、そうして主として災害復旧であるとか、或いは農地の開発であるとか、道見の改修であるとか、港湾の修築であるとか、或いは山林の方面の労働とか、そういうことを計上したのですが、当時に予算に組んだ人件費なり物件費なりの單價が、殆ど半年くらいの間に五割増くらいに上つて行くので、今回の追加予算にも相当我々としては、失業対策の面から見たところの経費を要求したのでございますが、これが單價増に追われまして、そうして五十二億という追加予算の面に編成された公共事業が、殆ど大部分はその單價増に追われておるような状態になつておるのでございまして、これによつて労働者をどの程度に吸收し得るかは非常に心細い状態になつておる。その上に、我我としては簡易公共事業というものに対して相当の額を請求したのですが、これは殆ど全滅になつたような状態でございます。こういう工合で、それともう一つは資材がないということで、予算は取れても資材の面から公共事業がやれない。そういう資材がなくてやり得るいわゆる簡易公共事業というものは、さつき申上げたような予算措置で、非常な大削減というよりも、むしろ全滅したというような状態で、失業対策の事業を委されておる労働省としては誠に残念な次第でございます。併しアメリカから御承知の通り五万ドルのクレジツトのレボルビングファンドが貸し與えられまして、これによつて相当の輸出産業を與すことができるだろうと考えております。この方面にも若干の失業者が救済できる。速記を止めて……。
#24
○委員長(原虎一君) 速記を止めて。
#25
○委員長(原虎一君) 速記を生かして……。
#26
○國務大臣(米窪滿亮君) そういうわけで、あらゆる方法で私としては就職の機会を増大しようとして今苦心をしておるようなわけでございます。誠に今日はすべての方面が資金において資材において行詰つておる今日でございまして、失業対策の面からのみ労働省の言い分が閣議で通らない実情にあるということを、一つ御了承願いたいと思います。但し憲法第二十七條は申上げるまでもなく、当然憲法でそういうことを決めた以上はこれは國家の責任でございますから、この点は甚だ不肖ですけれども、私としては政府部内において絶えずこの点についてはやかましく言つておるようなわけでございます。労働省ができてまだ三ケ月程度に過ぎませんで、皆さんに御満足を受けるような攻績を挙げることはできませんが、私としてはいわゆる労働省はサービス省であるという信念に変りはございません。今後もその意味において奮闘するつもりでございます。
#27
○松井道夫君 只今御懇切なる答弁を頂きまして、又労働大臣の御努力については從來から敬意を表しておる次第なのでございすからその点申上げて置きます。それから私の質問が錯雑いたしましたので、ちよつと伺いたい点が抜けておりましたので、補充をして頂きたいと思いますが、質問の形はこういう工合に持つて行きたいと存じます。
 今の憲法二十七條に載つておりまする憲法附属の法典をといたしまして、將來完全就職公共事業法といつたものを制定いたしまして、法律の根拠で系統的に憲法第二十七條の趣旨を活かすというような御意思はないかどうかという点が一点。それから今の潜在失業者その他の失業者並びに、先程申落しましたが、生活保護法の適用を受けておる人々が、生活保護法による保護が現在のインフレ状態に対して十分でないために、そういう人たちが、或いは闇ブローカーというような形によつて企業に着手し、農村に潜在いたしまして、インフレというものを促進する重大きな因子になつておる。私はそれを考えておるのでありまするが、その点について労働大臣の御見解を拝聽したいと思います。
#28
○國務大臣(米窪滿亮君) 御提案の完全就職公共事業法、これは仮りの名前でしようが、そういつた……法律内容はまだお伺いしませんが、恐らくこれは完全雇用、フルエンブロイメントという理想を実現するということが狙いだろうと思いますが、若しそういう内容を持つておるものとするならば、今日の日本の経済状態から見て、なかなかこれは政府として議会へ上程する自信を持つことができないという、率直に申上げてできない状態になつておる。政府がそれを出す以上は、経済が戰前に戻り……生産力が戰前の三分の一に落ちておる今日の生産状態が戰前に戻つて來て、そうして基礎産業中の更に基礎産業である石炭、鉄等が少くとも戰前の状態に戻つて來るということが、少しでも見通しがつくというときでないというと、なかなかこういつた完全雇用を目標とした法律案を出すことは困難じやないか。むしろ今のところでは幾多の法律ができて、それによつて失業者が続出する危險性をどうやつて防止して、労務の配置轉換、或いは企業の改善、或いは資材その他の科学的な方面から見た整備、そういつたことによつて高能率で生産を昂めて行つて、そうしてそれによつて失業者を吸收しよう、こういつた消極的な形における失業対策こそ緊急なときでございまするから、日本のいわゆる生産力が戰前の程度にまで回復をするという見通しがつかないというと、甚だ困難ではないかと考えるのでございます。もう一つのお尋ね、甚だ失礼ですが忘れたのですが……。
#29
○松井道夫君 このインフレを促進いたしますところの……。
#30
○國務大臣(米窪滿亮君) 分りました。勿論お説の通り日本に就職の、いわゆる政府公認の職業安定所が唯一の就職を紹介する、職業を紹介する機関である、こういつた理念に立つて、そこを利用してお互いが職業を求め又職業を與えるという原則が確立されて行かずに、さつきもちよつと触れましたのですが、そういう所へ行くよりも、むしろ闇ブローカーの手先になるとか或いは帰農するとか、或いはその他の政府が持つておる登録に漏れておるような状態があるということが一種のインフレ促進の原因になるということがこれ御説同感であります。それで我々としては、労働省としましては、こういうことはインフレを促進するばかりでなく、社会不安を惹起する所以であるというので、私就任以來いわゆる生産の復興運動、一名基準生産を超えたものに対する政府の報奬ということで能率を上げる、そうして生産増強を高めるという運動と、もう一つは政府がやつておる闇撲滅、いい言葉で言えば流通秩序の確立、あの運動に対して労働者を中心として民間側もこれに協力して貰いたいという二つの運動を提唱しておるのでありまして、大体これについては、僅かながら予算を大藏省から取ることができまして、これは補正第九号として皆さんに御審議を願うことになるだろうと思いますが、大体約五百万円ぐらいの、僅かですが、そのぐらいの予算が取られたのでございます。これによつて、この二つの運動を展開して行く先ず指導目標ができたのでございます。生産増強の方の運動については、経済復興会議が中心となりまして、そうして中央、地方の復興会議が主として政府の政策を実現するために協力する、大体予定は六千の工場に影響を及ぼす、目下こういう見込でございます。これがものになれば、大体御心配のような所が或る点までは解消するのではないか、こういう工合に考えておる次第であります。
#31
○穗積眞六郎君 先程労働大臣のお言葉に……ちよつとこれは速記をお止めになつて頂きたい。
#32
○委員長(原虎一君) 速記中止。
#33
○委員長(原虎一君) 速記開始。
#34
○穗積眞六郎君 失業対策の一方法として、國立授産場というものがあるようでありますが、非常に結構なことだと存じますが、これを強化して頂くということを引揚者その他の関係においても非常に熱望しておるのでございますが、これについて労働省としてはどういうふうにお考えになつておりますか、ちよつと聞かして頂きたいと存じます。
#35
○國務大臣(米窪滿亮君) 第一の点については、そういう場合に御希望の通りに十分考慮して処置したいと思います。
 第二の点については、私授産場の現状及びその内容について存じませんから、局長から説明いたさせます。
#36
○委員長(原虎一君) 授産場の問題では穗積委員の御質問でありますが、職業安定法のときに大分質疑應答がなされておりますし、委員長報告にも希望條件をつけて置きましたから、政府から要点の答弁を願いたいと思います。
#37
○政府委員(上山顯君) 國立の授産場というお尋ねでございましたが、穗積委員の御趣旨は恐らく政府が施設について補助をいたしておりますところの、私共の方で大共同作業施設と申しております、それでないかと思います。それで大共同作業施設といたしましては、昭和二十一年度のいわゆる公共事業から始まつたものでございまして、二十一年度といたしましては、全國に百ケ所、一ケ所について三十五万円の補助をいたすということになつておつたのでございます。本年度といたしましては、それが九十ケ所ということになりまして、早下進んでおるようなわけでございます。これは関係の方々には非常に期待をされておりまして、実はこの補助申請も非常に沢山参つておるというようなことでございまして、引揚者の團体等にも相当利用されておるわけでございます。從いまして私達事務当局といたしましては、來年度におきましても、こういう仕事を更に一層拡充してやりたいと思つておりますが、國全体の予算の関係がございますので、ここで來年度必ずこの程度できるということは申上げるわけには行かないわけでございますが、私達といたしましても、極力この方面の仕事が進むように努力いたしたいと思います。
#38
○川上嘉市君 労働大臣にちよつと自分のお考えとして申述べたいと思いますが、先程産業復興会議の御話がございまして、これに力を盡して大いにやろうというようなお話でございまして誠に結構でありますが、これは私は本会議でもちよつと申述べておいたのでありますが、若しこの復興会議というこのに、そこに食糧の生産者、これを入れない限りは、幾らやつても駄目だからということを申上げておいたのですが、実は経営者と勤労者、これだけの組合の連中等の会議になりますと、結局はお互いにこつちにもう少し余計寄こせというふうな議論が落ちになつてしまつて、本当の復興ということはむつかしいように私は考えております。これは今まで從來ずつとやつて見て、どこでやつたのを聞きましても、最後はそこに來て、お互いに警戒し合つて、自分の所に余計取りたい、或いは出せない、こういう順序を取るのが落ちであつて、本当の産業復興に力が入らない。それで結局どれだけ食えるかというような問題でありまして、食えないからもつと寄こせ、寄こせばもつと働く、こういつて見たところで、結局食えないという問題にぶつ突かるために、どうしてもその結論に達しないというのが今までの状態であるように思つております。そこで農山漁村のつまり生産者、食糧の生産者というものをそこに一枚加えて、そうしてこれでは樂にやつて行けない、すべての物價の本或いは生活費の本というのは、食糧であるから……これをもう少し自重して貰うというような相談を持ちかけて、これが一緒になつて組んだときに初めて日本の再建ができるように私は考えております。それで願わくば、若し本当に効果あらしめたいならば、ここに持つて行つて何かの方法をお考えになつて、食糧の生産者というものをその中に入れて頂きたい。これは日産協の雑誌の巻頭言として来月分の中に書いておりますから、それを又お暇なときに御覧を願いたいと思いますが、是非それを希望いたします。
#39
○國務大臣(米窪滿亮君) 御意見のところを経済復興会議に通じて、成るべくそういう御趣旨の実現するように取計らつて行きたいと思います。
#40
○委員長(原虎一君) ちよつと速記を止めて。
#41
○委員長(原虎一君) それでは速記を始めて。
 質問をこれで打切りたいと思います。他に御発言はございませんか。御発言もないようでありますから、両案に対する御質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか。
#42
○委員長(原虎一君) 御異議ないと認めます。
 それではこれより討論に入りたいと思います。ついては両案を一括してよろしうございましようか。
#43
○委員長(原虎一君) 御異議ないと認めまして、両案を一括して討論の議題といたします。
 御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを頂きたいと存じます。
#44
○栗山良夫君 私は失業保險法案並びに失業手当法案それぞれの原案に対しまして賛成をいたしたいと思うのであります。ただすでに予備審査或いは本審査の過程におきまして各委員から極めて熱心なる御研究の御発表があり、又政府側からも眞摯な説明、闡明がなされまして、本法案に関する限り聊かの疑問の余地も残つていないと私は確信をいたすものでありますけれども、更に二、三の点につきまして意見を申述べたい、こう思うものであります。
 その一つは、先程山田委員並びに姫井委員から社会保障制度の問題について言及をいたされました。今度の失業保險並びに手当法案によりますれば、勤労の意思能力を持つておりまする者で、而もその職場を失つた人たちに適用され、その人たちを救済するのが目的でありまするけれども、併しこの意思能力を持つておる人と申しましてもその救い得る範意は極めて僅少なわけであります。例えて申しまするならば、先程から皆さん方で御指摘に相成りましたように、完全な失業者でありましても、日雇或いは官業労働或いはその他の約二百万に及ぶところの失業者は、この保險法案の枠外に放置されることに相成つておるのであります。更に先程穗積委員から御提案になりましたところの海外引揚者、数百万に及ぶところの海外引揚者の勤労の意思能力を持つておる人たちに対すめ処置の問題、或いは働く力が欠けておりまするところの老齢、不具者、或いは病弱者、こういうような人々、更には子女を擁しまして働くにも働き得ないような立場にある未亡人の人々、こういう人々を考えて見ますときに、この一片の失業保險、手当法案において満足せらるべきものでないことは、すでに山田委員、姫井委員、穗積委員から縷々指摘された通りでありまして、先程厚生省の保險局長は、廣汎な社会保障制度の或る答申案を厚生大臣に提出した。併しこれを運用するためには三千億の國家資金を要する、到底急速の実現は期せられないというようなお話がありまして、早急には実現困難のようなお話がございましたが、国家窮乏のときではございまするけれども、やはり道義昂揚のためにも是非とも廣汎な社会保障制度を一日も早く確立して頂きたい、こういうことを改めて希望をいたしたいのであります。
 次にこの失業保險、手当法案はすでに明らかになつておりまするように、一年の間におきまして支給される金額は、保險法で百八十日、手当法で百二十日でございまして、本当に失業者を救い得るのには誠に薄いと思うのであります。本当のその場つなぎ法案であるとすら言わざるを得ないような立場にある。特に今後労働市場が縮小せられまして、失業者の群が多くなればなる程、その感を深くして、再就職という問題が極めて困難になることを予測せられるので、危惧の念更に深まるのであります。松井委員が先程この問題に言及せられまして、完全雇用の問題、更には公共事業の設定の問題についても言及をされましたが、この失業保險法案こそは、失業者を救済するところの一つの網ができたわけでありまするけれども、この網によつて失業者を沢山に包容するというのが目的ではなく、一人でも失業者の数を減らしてそうしてその失業者に対しては極めて手厚く補償して行くというのが本旨でなければならないのであります。どうしても現在國内におけるところの労働市場を経済的な再建の中に拡張いたしまして、そうして完全雇用の途を講じなければならないのであります。失業保險の本当の目的は、結局過日通過いたしましたところの職業安定法案の裏付けになるものでございまして、安定法こそ優先すべきもので、これによりまして國民をすべて職場に配置する、この本筋の目的に向つて労働省並びに政府の関係各省は全幅的な努力をせられるべきものであると、こういう工合に考えるのであります。
 次にこの保險法案、手当法案が実施の曉に、果して成功するや否やということについては、山田委員から過日相当突つ込んでの御質疑がございましたが、この最も重点になりまするところは、やはり保險金の財源の問題であろうと思うのであります。先程主計局の第二部長の説明によりますると、九億六千万円の予算を以ちまして本年度は何とかやつて行かれる、こういうようなお話がございました。併し失業者の出る数というものは我かに予想を許さないのでありまして、今後相当に沢山出るような傾向を持つておるのでございますから、十二分の措置を取られることが必要でありまして、特に私はこの際労働大臣は先程もつと廣汎な失業保險の制度を作りたかつたのであるけれども、國家財政の限度というものがあるので、この辺に落ちついた、こういうことをいわれましたが、併しすでに追加予算の審議のときにも各委員から殆ど口を一にして指摘されました点は、いわゆる日本の財政の確立は、今のような大衆課税に重点を置いておるのでは、もう進歩の途はないのである、いわゆる新興大口所得者に対して徹底的な課税をしなければならない、こういうことが指摘されておりました。政府の答弁はその必要性を認めながらいつもその所得の捕捉が困難であるというので、実現の雰囲氣が出て來ていないのでありますけれども、私はただ捕捉ができないというような今までの考え方をそのまま今後も延長するのでありませんで、今こそ具体的に、いかにしたならば新興大口所得者に対して徹底的な課税ができるか、こういうことを政府が緊急に立案せられるべきものであると私は考えるのであります。我々もその捕捉し難いところのいわゆる所得に対して捕捉し得るような方法についても、試案を持ち合せておるのであります。考えれば必ず不可能なことではないと考えます。そうしてそういうところから國家財政の立直しを是非ともやつて頂きたい、これは強く政府に要望したいところであります。
 更にこの法案の取扱いのことについて、運用の面でございますが、二、三申上げて置きたいのであります。それはこの法案の民主的な而も敏速な運営を希望したいという一語に盡きるわけでありますから、特にこの保險の処理に当られるところの現場の係官の人々は、その計画が保險の受給資格者の資格の認定とか、或いは実際に保險金を支給するところの業務、こういう非常に重要な、而もどちらかと申しますと権力化し易いところの國家行政をおやりになるわけであります。一歩を誤りますると從來の官憲の誤つた方便的な行政措置が繰返されることが非常に危惧せられるのでありまして、この点は現場の係官をして最も民主的に、而も失業の苦悩に追われておる人々に親しまれるような公僕としての態度を以て接せられるように指導教育をし、実績を挙げられんことを希望したいのであります。
 その次に失業保險委員会或いは失業保險審査委員会というようなものができまして、この運営の民主的な努力をされるわけでございますが、今度の法案を見ましても、二十一條、二十二條二十四條には、この委員会の活動の重要性が明記せられておるのであります。重要な事項につきましての意見を労働大臣に申述べるというようなことが書かれておりまして、非常に重要な役目を持つておるのでありまして、この委員をお選びになるときには、十分に人を得られまして、そうしてこの法案が目途しておりますような方向に十二分の活動のでき得るような委員会、実質的な内容を持つ委員会たらしめて頂きたいということを特にお願をするのであります。ややもいたしまするとこのような委員会は、日本人は從來の古い考え方からいたしまして、運用が上手だとは申し得られないのであります。そうしてややもいたしますると、飾りもののような恰好に陷り易いのでありますが、今後は委員会こそあらゆるごういつた行政機構の中心になつて進み得るようなところまで引上げて行くために、十分に人を得るように努力をして頂きたい、そうして得ましたところの人を十二分に機能を発揮させ得るように措置をして頂きたいと考えるのであります。
 次に失業保險の審査官でございますが、これの詳細は法律で以て決められることに相成つておりまするが、この審査官の持つておられるところの役割というものは、これは一つの職権の審査でございまして、これも若し一歩誤りまするならば、從來の刑事的な、或いは特高的な動き方がないともいえないのでありまして、圧迫的な行動、或いは一方に偏するような措置、こういうものがとられましては、甚だ國民として心外でございますので、この点も十分に審査官の人選その他については注意をして頂きまして、本当の國民の公僕として、國民が信頼して相談し得るところの人を得るように御努力を切望して止まないのであります。
 最後にすでにこの法案は十月一日に施行せられるというようなことが流布せられまして、國内におけるところの失業者の人々は一日千秋の思いでその施行を持つておられることと思うのであります。やつと審議も終り、いよいよ十一月一日から施行されることに相成ると思うのでございまするが、すでに現地においては準備万端、いつでも施行でき得るように措置せられておるとも聞いております。願わくばこの年末を控えまして重要な時期でありまするので、緊急に失業者の人々に生活補給金として失業手当金が渡されまするように、誠に労働行政の確立においては、いろいろな問題が山積しておりまして、現地の係官もおいそがしいところでありまするけれども、十二分に失業者救済の実を挙げて頂くというような意味で、十一月一日の施行を確実にお守り願えるように希望いたす次第であります。極めて雜駁で而も簡單でございましたが、以上意見を申述べて、賛成の言葉としたいと思います。
#45
○委員長(原虎一君) 御発言ございませんか。
#46
○紅露みつ君 賛否を先に申上げます。第一に本両案はかねて勤労大衆の要望するところであり、第二に企業体におきましても、勤労者が離職の際、最底生活の保障が得られるという安全感により、日常生産に專念でき、延いては勤労意慾の昂揚ともなるという観点から、更に第三には國家公共の立場からこれを見ましても、我が國が文化國家として世界的水準に到達する第一段階として、或いは又再建途上にある我が國現下の客観情勢から見ましても当然実施さるべきものでありまして、本案は勤労大衆、企業体、更に國家公共、いずれの立場から勘案いたしましても必要であり、有益であると認め、一應速かにこれが確立されんことを希望し、賛成いたす者でございます。結論は以上の通りでございますが、この際是非希望を申述べて置きたいと存じます。
 只今栗山委員からお述べになられたのと同じように考えられる点でございまして、本案では第十八條の保險金給付の期間を一ケ年という短期間に制限しておりますが、これは現情勢から見まして一旦失業いたしました者が僅か一ケ年ぐらいで再び就職し得ますや否や、頗る疑問に思われるのでございます。又二十條の給付日数を一ケ年を通じて百八十日間というきつい制限をいたされておるのでございますが、全部支給されましても生活が困難な現在におきまして、この程度のものでは必ずしも失業者の生活を保障し得るものではないと考えられます。一方企業者側から見ましても、災害保險、更生年金というように、各種勤労出費の……労務出費と申しますか、労務出費の多い現状のままでは新設のこの保險料は相当の負担であり、容易なものではないと存じます。これを生産費に加算いたしますれば、勢い物價昂騰ということにもなりまするし、かたがた國家財政の面から見ましても、幾多の問題があると存じます。更に予算におきましても、行政整理、企業整備によりまして多数の失業者が見越されまするときに、このような僅少な予算を以ていたしまして、十分な公務の遂行ができまするかどうか、不安なきを得ないと思うのでございます。又今日取り上げられましたところの復員者及び引揚者をも本案の対象とせよという要望もありまするが、誠に無理からんことだと存じます。これらの点につきましては、労働大臣その他政府委員の方からそれぞれ御説明があつたのでありますが、尚我々は必ずもそれによつて満足する者ではございません。そこでこれも各委員の方々からたびたび熱心な御意見の発表があつたのでございまするが、將來いろいろ理想的な綜合的社会保障的な制度の確立を期待し、そうして強く希望いたしまして、本案の通過に賛成する者でございます。速記をちよつと止めて頂きたいと思います。
#47
○委員長(原虎一君) 速記中止。
#48
○委員長(原虎一君) 速記始めて。
#49
○姫井伊介君 この二つの法案につきましては賛成いたします。ただ私も二三希望を申述ベ、又自分の考えを附け加えて置きたいと思います。それは社会保障制度が確立されるまでは、生活保護と失業保險との性格を混同して考えたくないということなのであります。はつきり別にして置かなければ、この法案を活かして行く上につきましていろいろな護解と不満が生ずると思うのであります。次には保險料の問題でありますが、この費用に対する國庫の負担は三分の一となつております。が、將來は、この額は國の責任と又國民の助け合いという点からいたしまして、もう少し増額さるべきものだ。少くとも二分の一は國家が負担すべきであつて、その他の二分の一を被保險者と被保險者と雇う者が二分すべき建前のものである。これはいつか質問のときに堀委員もこの生産費の問題などについて確か御質問があつたと思つておりますが、私はその上に、今申しましたような失業といつたような現象は事業主並びに被保險者自身の責任ではない。どうしてもこれは社会的に國家的に考えて行かなければならんから、今のような方法に改めて行く必要があるであろうということを思う者であります。又この法案の性質は処理上非常に消極的なものでありまして、その本質からいうならば、むしろ対象者が少くなるように、予算額も少くなるようにして行かなければならない。ここにさつき栗山委員の言われました職業安定機関の運営と表裏いたすので、職業安定処理におきましてどんどん職に就くようにして行かなければならん。そういう関係からいたしまして、私は現在の予算を少額とは思わない。併し実際に当りまして、必要ならばこれは増額しなければならん。と同時に、いわゆる濫給に陷つてはならないということと同時に、必要な程度の額はやはり補償していかなければならん。これ又栗山委員の言われましたように、この処理が、常に労働大臣が労働省はサービス省であると言われましたように、その精神によりまして官僚的だとか、恩惠的だとか、救済的だとかいうことじやない。実際止むを得ざる一時の処理といたしましてこれが運営されるのでありまするからして、今申しましたように濫給を禁ずると共に、或る程度の必要な額は支出するようにして行かなければならないとかように思うのであります。以上によりまして私は本両案に賛成をいたします。
#50
○山田節男君 私はこの失業保險並びに手当法案に対する賛成の立場から所見と希望を述べたいと思います。すでにこの両法案に対する批判、要望に対しましては栗山、紅露、姫井の三委員からお述べになりましたので、それに重複しない範囲において申上げたいと思います。
 一体この極めて社会保險の点において後れておつた日本が、敗戰後における、而も経済危機のこのインフレーションの時代におきまして、こういつたような社会保險法の実施の極めて実際上困難なとこにおいて、これが行われるということにつきましては、一面におきましては社会保險の一環としての我が國最初の失業保險法が実施されるということについては、非常に喜びますと同時に、この現下我々が直面しておりまするインフレーション、経済危機、こういう下におきまするこの失業保險法案の運営については、今我々が予想する以上の困難、並びに被保險者に対しまする受益というものに対しまして非常な危險と、それから不安が含まれておるということはこれは重々我我意識しなければならんと思います。殊にこの失業保險法案であります。僅が六十條に足らない法案におきまして極めて簡單に規定されておるのでありまして、その各條に亙りまして從來各員の御審議を仰いだのでありまするけれども、少くとも國際的見地からこの失業保險の常識的な観念から言いますると、極めて不備極まるものであります。而もこれが、失業者の受益と國家の財政、それから事業主の負担、こういう点から考えてみまして、非常に私はこの点について不安を感ずるのであります。尚又この五十五ケ條の中には前に我々が審議しました職業安定法案、これとマッチさせる、釣合わせるために修正しなくてはならん箇所も数ケ所でございます。けれどもこれはすでに今日ここに至りまして、私は主張するということは毛頭いたしません。ただこの保險法の実施、先程栗山委員からも申されておりましたけれども、この法の運営、それから並びにこの監督でありまするが、この失業保險の審査官、これは各國とも失業保險の運用におきまして最も重視するところであります。本法に決められたように労働大臣が失業保險の檢査官というようなものを任命するということは、これは異例に属するものであります。英國におきましてはこれは勅令で任命する。なぜかと申しますると、先程栗山委員が申されましたように、こと保險の運営に当りまして、被保險者の利益の擁護、それから保險経理の監督、この上において会計檢査院の監督官と同じ職掌を持つわけ、そういう最も重要でありまするところのものが、本法に規定されておるところでは、非常に私は危惧を感ずるのであります。併しながら先程栗山委員が言われた、注意を喚起された諸点を、政府は極力これに対して最善を盡して、栗山委員の指摘された過ちに陷らないことを、十分注意して頂くということを、私は前提としてこれに承認するものであります。
 それから罰則の問題でありまするが、これは私はこの修正意見を本委員会でも申上げ、又この点につきましては他の方面にも意見を具申いたしましたのでありますが、六ケ月という体刑ということは、これは余り酷に過ぎる。これは常識から言えば三ケ月であります。こういう点におきましても、本法案の、殊に失業保險法案の一方においては非常に寛大である。むしろルーズである。併しながらこういう方面においてはむしろ酷に失するというよりは極めて均衡を失した案が盛られておるということは、これは將來において速かな最も近い將來において、これは改正しなくてはならん。こういうように私は考えておるのであります。これから尚又先程來、穗積委員、姫井委員その他の委員からも御指摘になりましたが、この失業保險案は今日産業に、或いは就労とておる者、而もその中で過去一ケ年間において六ケ月以上保險金を積立てた者という者が、本法案により利益に浴するのでありまして、その他の者は浴せない。そういうこの現在としましては敗戰の後としまして、多数の復員者並びに帰還者が來、又企業整備によりまして、このカテゴリーに入らない失業者が非常に多くなるということは、これは火をみるより明らかな事実でありまして、この事実を我我が予見しまするときには、この本法案でカバーし得ない他の失業分をこれをどうするか、これにつきましては先程各委員からも御意見の開陳がありましたが、要は社会保障的ないわゆる憲法二十五條で保障しましたところの、最低限度の文化的、或いは健康的な生活権というものを、國家の保障を実現して頂くべく、社会保障の理念に基く失業保險、その他の社会保險の実施を我々としては要望するものであります。併しながらこの敗戰後に、殊に目下或いは近き將來大きな問題となりますところの海外引揚者、それから復員者、特殊な條件の下におきまする失業者の救済に対しましては、この社会保障法の理念に基く失業保險の実施の速やかならんことを希望するのでありますけれども、それは今日直ちにこれを実施するということは不可能でございましようからいたしまして、この特殊な日本の失業問題の解決の一策としまして、單なる救貧法である生活保護法の対象としてこれをみなさないで、又取扱はないで、別途にこの失業保險に準じまして、法的措置を急に講すべき必要が非常にあると存じます。そういう意味におきまして、私はこの失業保險法案並びに失業手当法案が本委員会の採決を受けるにつきましては、只今最後に申上げました私の意見を一つ附帶決議として、御採決願いたい、こういうふうに存ずるのであります。
 言葉が足りませんので、或いは十分御理解が行かなかつたかとも存じまするが、要するに失業保險並びに失業手当というものは、これは勤労者人口の一部に適用されるものでありまして、勤労者の大部分というものはこれに浴し得ない。そういう立場から先程申上げましたように、社会保障的な失業保險その他の社会保險の実施を要望いたしまするが、この実現も直ぐというわけに行かない。でそこにおきまして、海外引揚者並びに復員者の特殊な失業者に対しまする法的な救済対策を講ずるということを、私は熱望いたしまして、皆さまにお訴え申上げて、是非附帶決議にこの條項を謳つて頂くようにお願い申上げる次第であります。
#51
○委員長(原虎一君) ちよつと速記を止めて。
#52
○委員長(原虎一君) 速記を始めて下さい。他に御発言ございませんですか。
#53
○松井道夫君 私はこの法案に賛成する者であります。ただ先程労働大臣に質問いたしましたが、將來憲法第二十七條の附属法典といたしまして、完全就職事業法というものを実現いたすために、委員会は勿論、政府当局においても努力すべきものであるということをこの際述べて置く次第であります。
#54
○委員長(原虎一君) 他にございませんか……。御発言ございませんようでありますから、御意見ももう盡きたようであります。討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。
#55
○委員長(原虎一君) 御異議ないものと認めます。それではこれより採決に入ります。失業保險法案、失業手当法案の両案を一括して議題に供します。両案を原案即ち衆議院送付案通り可決することに賛成の方の御起立を願います。
#56
○委員長(原虎一君) 全会一致でございます。よつて失業保險法案、失業手当法案は、原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 尚本会議における委員長の口頭報告の内容は、本院規則第四條によつて、予め多数意見者の承認を経なければならんことになつておりますが、これは委員長において、本法案の内容、本委員会における質疑應答の要旨、討論の要旨及び表決の結果を報告することとして御承認を願うことに御異議ございませんか。
#57
○委員長(原虎一君) 御異議ないと認めます。
 それから本院規則第七十二條によりまして、委員長の議院に提出する報告書に、多数意見者の署名を付することになつておりますから、両案を可とされた方は、それぞれの用紙に順次御署名をお願いいたします。
#58
○委員長(原虎一君) 御署名漏れはございませんですか……。御署名漏れないものと認めます。
 それでは本日はこれで閉会いたしたいと思います。
   午後四時二十四分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     原  虎一君
   理事
           堀  末治君
           栗山 良夫君
   委員
           赤松 常子君
           山田 節男君
           荒井 八郎君
           植竹 春彦君
           紅露 みつ君
           奧 むめを君
           川上 嘉市君
           竹下 豐次君
           早川 愼一君
           姫井 伊介君
           藤井 丙午君
           穗積眞六郎君
           松井 道夫君
           中野 重治君
  國務大臣
   労 働 大 臣 米窪 滿亮君
  政府委員
   労働事務官
   (職業安定局
   長)      上山  顯君
   厚生事務官
   (保險局長)  宮崎 太一君
   大藏事務官
   (主計局第二部
   長)      河野 通一君
   專門調査委員  芝田 義彦君
ソース: 国立国会図書館
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