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1949/02/13 第7回国会 参議院 参議院会議録情報 第007回国会 外務委員会 第2号
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1949/02/13 第7回国会 参議院

参議院会議録情報 第007回国会 外務委員会 第2号

#1
第007回国会 外務委員会 第2号
昭和二十五年二月十三日(月曜日)
   午前十時四十五分開会
  ―――――――――――――
  委員の異動
本十三日委員西園寺公一君辞任につ
き、その補欠として星野芳樹君を議長
において指名した。
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○証人喚問に関する件
○外交問題に関する件
  ―――――――――――――
#2
○委員長(野田俊作君) 只今から外務委員会を開会いたします。
 お諮りいたすことがございます。山陰並びに九州地方における不法入出国問題の実情調査の本委員会に対する報告は、先般の懇談会における報告を以てこれに代えたいと思いますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(野田俊作君) 御異議ないものと認めます。
  ―――――――――――――
#4
○委員長(野田俊作君) 次に来る十五日清水董三君に本委員会に御出頭を求めて、中共問題に関しての説明を聞くことにいたしたいが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○委員長(野田俊作君) 異議ないと認めます。ではちよつと速記を止めて。
   〔速記中止〕
#6
○委員長(野田俊作君) 速記を始めて下さい。本日の議題、即ち海外移住組合法の廃止に関する法律案の審議に先立つて、外交全般に亘つて外務大臣に質疑の通告があります。我が参議院の外務委員会は常に外交問題に対して深甚なる注意と研究をいたしております。又この問題の取扱いについては内外の情勢を達観し、極めて愼重の態度を以て臨んでおります。本日講和問題を初め、重要なる外交諸問題について政府の所見を質すことは、最も適当なる時機と考えて、ここに外務大臣の出席を求め、論議せんとするものであります。外務大臣におかせられても我々のこの態度を諒とせられて、率直に意見の開陳あらんことを望みます。質疑は通告順に従つて発言を許します。質疑の通告は五名であります。質疑は答弁を含めて大体一人二十分程度に願いたいと思います。伊東隆治君。
#7
○伊東隆治君 当面の外交問題といたしましては、全面講和まで講和を待つべきか、又は講和を希望する国々と早く講和を結ぶべきであるか。即ち全面講和で行くべきか又は分離講和で行くべきかの問題、又安全保障の問題といたしましては、種々の形式による保障の形があります。特に最近は軍事基地を特定の国に貸すことに関する問題が最も国民の注意を惹き、又国会の論議の対象となつているのでございますが、私はこの二点につきましては、外の委員等におきまして種々質問があると存じますので、最後に場合によりましては総理の御所見を伺うことにいたしまして、私がここに御所見をお伺いいたしたい点は二点でございます。第一点並びに第二点共にこれは條約の内容を成す問題でありますが、如何なる形式によつて條約が結ばれるか、又安全保障の点等についてはどういうことにしようかということは暫く措き、ここに條約が結ばれました際に、その條約の内容として最も重要な点は第一に領土に関する問題、第二には産業水準に関する問題、この二つの問題が最も重要な問題であると思うのでございます。然るに世間におきましては、余りに全面講和だ、單独講和だ、分離講和だ、こういうような殆んど大部分は客観情勢によらなければならん問題に論議が集中されまして、大事な領土の問題、又産業水準、我々の生活程度を規準する講和條約の問題については、両院共に論議を見ないのは私誠に遺憾とするところであります。客観情勢の如何によつて多く決定せらるる問題について如何に総理に喰つてかかつて見たところで、総理の答弁の概要で大体窺えるようなことでありまして、この問題について余り追究することは私個人として興味を持たないというよりは、暫く時期を待ちたいと思うから申上げません。この領土の問題、條約の内容を成す領土の問題につきましては、我々国民の意思を率直簡明に表明して連合国側の御判断にお任せすることは最も重要なことだと私思うのでございます。領土の問題に関しまして、南千島の問題、南西諸島の問題二つの問題がございます。千島の問題に関しましては特に衆議院におきまして緊急質問がございまして、これに対して総理の御答弁がありました。私はここにこれを繰返すことはいたさないのであります。南西諸島の問題、特に奄美大島の帰属の問題、又奄美大島とやや切離し得ない沖繩の問題、これは我が八千万同胞のひとしく最も注意を向けている問題であるのでございます。カイロ宣言におきましては、いわゆる日本の盗んだ地域、即ちストールン・テリトリーをライト・オーナーに、正当なる所有者に返すということの決定を見ていること御案内の通りでございますが、我がこの奄美大島、又琉球、沖繩、千島、これらの島は日本と共に生れて参つた島である、いずれの時代においても、いずれのものからもこれを盗んだことは絶対にない、日本と共に生れた島であるということも論議を待たないのであります。その島が北緯三十度以南が今や特別行政地区となつておりまして、米軍の特別管轄区になつておるのでありますが、これは時期が参りますならば当然返して頂けるものだと私共は信じております。この点に関しまして、総理の御観察又は御所見を伺いたいのでございます。これらの諸島のものは今や特別行政地区にありまして、本土との交通関係は遮断せられて非常に不便なる日常生活を送つて、日々の品物には全く困り拔いておるのでありまして、ここに密貿易の若干行われることも止むを得ないような状態であるのでありますし、それらのものの密なる交易が行われておると同時に又人の密航出入があるのであります。こういうような状況にいつまでも置いて置きますことは、これは実に一つの罪悪である。台湾や朝鮮等の新附の土地に対しては、茶碗やその他日用品を正当なる貿易の下にこれを送つておるのでありますが、日本と共に生れたこれらの島々の人々に対しては全く正式の貿易が許されていないので、非常に日々の品物に困つておる、この点からいたしましても、私はこの領土の問題に関連いたしまして、先ず領土を連合軍が日本に返して下さる日の一日も早からんことを希望すると同時に、又これらの地域のそういう物の交易、又人の自由なる出入を一日も早くして頂きたい、領土権の帰属の問題につきましては講和條約の締結のときまでこれを待つのが大体常識的に思われるのでありますが、これらの土地の人と物との自由なる行き来をできるようにするのには、これは講和條約を待たずにできることであるのであります。この前総理の御答弁の中に、これらの地域との間には特別の事由がある場合には行き来ができるのだという御答弁でありました。その通りでありまして、コンパッシヨネートな、即ち一身上止むを得ない同情すべきことがある場合にはこれらの地域との行き来はできるのでありますけれども、実際問題としては余りに手続が煩雑であるために、殆んど行き来をしたものは数名に過ぎない、大体八通の書類をフルアツプするだけでも人々には非常に困難な次第でありまして、非常に不便を感じておるのであります。従つて一つこういうコンパツショネートなる理由のみによらず、もう少し自由を與え、段々と全く自由に交易、交通の一つできるようにいたしたいと希望をいたしておるのであります。政府はこの点に関してどういうような御努力をなさつておられるか、又特にこの点に関する総理の一つの御所見、御抱負をお伺いいたしたい、かように存ずる次第であります。
 次に産業水準の問題でありますが、條約の内容として最も大事なことの一つは、この産業水準をどの程度に連合軍によつて決めて頂くかという点であります。ポツダム宣言におきましては、日本人を奴隷にはしないのだというような点と、又日本の経済の自立のためには貿易も許せば、又産業も、経済の自立できる程度には許すのだ、こういうことを決めております。大体産業水準に関しまする大きな決めは、このポツダム宣言によるわけでございますが、極東委員会におきましては、大体その筋に従いまして昭和五年と九年との五年間の平均水準に持つて行くという決定がありますことは御案内の通りでありますが、昭和五年と九年との平均水準と申しますと、当時は人口五千五百万、我々はこの五年間において生活の不自由というものは殆んど感じなかつた。若しこの程度に日本を許すという極東委員会の決めがその通りに又講和條約の内容において決められることといたしますならば、今日の我が国の産業水準、又は生活水準というものを考えますと、遥かに昭和五年と九年の平均水準よりも低い。私はこれは八千五百万の今日人口を有しておりまする日本といたしましては、産業水準を殆んど今日においては制限せざる程度に緩くして頂かんことには、その五年間の平均水準にすら達しない。将来なかなか達するには遠いと思うのであります。当時鉄はすでに四百万トンの年産額がありました。然るにこれは外電の報ずるところでありますけれども、日本にはステイール・インゴツトについては三百五十万トン予定しておるという報道もあるのであります。ドイツに対しましては、ステイール・インゴツトは、最初八百万トンの制限がありましたが、その後国民の熱烈なる希望がありましたために、連合国はこれを一千二百万トンにとにかく増した。鉄はすべての産業の基本であります、バツクボーンでありまして、鉄の生産額によつてすべての産業水準はそれに右へならえするわけでもありますので、私は少くともこの鉄の生産額を三百五十万トン、スティールイン・ゴットを三百五十万トンというがごときことは、これは到底昭和五年と九年の間の平均水準に我が国の生活水準を持つて行くことが不可能であると思われますので、特にこの鉄の生産額は最小限度五百万トン、スティール・インゴツトは五百万トン程度この人口に許して頂かんことには、我が国の産業水準は五年間の平均水準に達しないと固く信じますので、こういう面におきまする講和條約の準備、又こういう点に関しまする総理の大体の御所見等をこの機会に伺つて置きますことは、又連合国に対しましても、我が国民の希望するところが奈辺にあるかを示すゆえんにもなるかと思いますので、すべての石炭とか又その他の細かい数字を挙げて総理にくどくどしく申上げる気はないのでありますが、この生産水準をどういう程度にすべきであるか、又して貰いたいのであるかということに関して、総理の御所見をこの機会にお伺いして置くことは決して無駄ではないと信じますので、この点に関しまして忌憚なき総理の御所見をお伺いいたして置きたいと存ずる次第であります。時間も制限されておりますので、極く大雑把なことを申しましたが、右二点に関しまして、総理の御所見を拝聴いたしたいと思うのであります。
#8
○国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。領土の問題は御承知の通りアトランティク・チャーターには、戰争の結果領土権の獲得というようなことは問題外に置くと明らかに規定しておるのであります。その後戰争が長引いたというようなこともあるのでありましようし、又戰争の惨害が段々ひどくなつて来て、そのために成るべく早く戰いを終了せしめるためには、連合国の兵力なり武力なりを余計にする、増加せしめるというようないろいろな必要からヤルタという條約ができたのであろうと思います。併し、このヤルタ條約と、アトランティツク・チャーターは明らかに矛盾するのであつて、連合国の趣意はアトランティツク・チヤーターにあるのであろうと思います。にも拘わらずその後の戰争その他のためにヤルタ協定という悲しむべき協定ができたのでありますが、この協定に対しては御承知の通りすでに議論があります。それから連合国の間にもすでに議論がある。日本国といたしては、例えば盗んだというような文学は甚だ不当な文字であることは明らかであり、将来これはいずれかの日に訂正し得る機会があると思いますが、これは講和の後であることは御承知の通りであります。そこで今度は奄美大島の問題になりますが、奄美大島の問題は第一次吉田内閣のとき、千何年になりますか、覚えておりませんが、とにかく、一九四六年と思いますが、四六年か七年の初めに、その以前から問題があつたのでありますが、その他もう一つ、根室の先に何とかいう二つの島があるというような……。いろいろなそういう住んでおる住民から言つて見、或いは本土の方から従来交通があり、或いは日本の領土として住民も日本人、我我と同じ、住民から言つて見ても歴史から考えて見ても、どうしても日本国に当然属すべき島が交通を途絶えた。この問題について非常に住民の通信、又本土の方も不便を感じておるので、問題として取上げて交渉を続けておつたのであります。併しその間に吉田内閣が倒れたものでありますからして、その後の交渉状況については承知いたさないのでありますが、ただ当時私の記憶では、第一次吉田内閣の末期の時の記憶では一応話が付いたように記憶いたしております。どう話が付いたかということはしつかり今記憶がありませんが、調べてお答えしますが、私の記憶では一応交通は、つまり正当な理由があればとか何とかいう理由があれば、今お話のような理由であつたかも知れませんが、一応交通は認めるということになつて、そうして安心した記憶があります。今のお話によると、コンパツシヨネートの理由があればというので、外務省の調べもそうでありました。が、それにも拘わらず交通が不便である……であろうと私も想像いたします。この点も尚交渉を続けますが、一つの障害になつていることは管轄が違うということであると思います。管轄が違うというのは、これは海軍に所属しておるので、GHQの直接支配をしておるといいますか、問題を取扱つておらない、マツカーサー外の管轄にあるか何かにあるので、現在のところではアメリカの海軍が管轄しておるのであります。そのために交渉が円満に、交渉が早く進まないということもありましようし、併しこの点は尚取調べて、そうして成るべく交通が自由になるように、私はこれはそんなにむずかしい話ではないのではないかと思います。アメリカの海軍も十分事情は了承しておるように聞いておりますから、そうむずかしい話じやなくて、或いは事情がよく分かれば話が付くのではないかと思いますが、尚その点は交渉を続けます。
 それから領土全体の問題については、これは無論国民としては非常な関心を持つのみならず、一体申すと、連合国の政策としても領土の併合ということは考えておらなかつたことでありますから、公正且つ妥当の決定に落着くであろうかと思いますが、併し当局者としてこうしたい、ああしたいということは、まだ領土問題が具体化しておらないところでもありますし、講和問題も具体的になつておりませんから、意見を差控えますが、併し国民としては自由に希望なり意見なりを述べられるがいい、述べられて一向差支えない問題であり、又述ぶべきであると思います。連合国も日本に好意ある以上は、国民の声は十分注意を持つて耳を傾けるであろうと私は信じて疑いません。
 それから産業水準の方でありますが、これも終戰後の気分と、その後段段交通が盛んになり、若しくは日本に対する敵国関係感情も薄らぐと共に水準が段々自然に上昇する、必ずしも昭和何年ということを固執しないようになろうと思いますが、これは日本の一つは態度にもよると思います。現に私は講和は日々にあるんだと申すのでありますが、連合国といたしましても、日本の生活水準が進んで来て世界の繁栄を助くるというような状態になるということは望むべきことでありましようし、日本の生活水準を下げて、日本が市場としても貧弱な市場になつて、そして世界の貿易を助けない、妨害をする、或いは更に一層進んで世界の貿易の水準を下げるというようなことにすることは希望しない話であります。ただ従来の敵国関係感情というものは、これは自然大なる戰争をなし、そして幾多の損害があり、人が死んで互いに死傷があつた今日においては、その死傷を受けた家族の気持から言つて見ても、終戰直後においては日本に対する感情は甚だしく悪かつた。その空気の中に極東委員会なりその他が嚴重な條件を押付ける。これはあり得るのでありますが、その後時が経つに従つて、日本国の国民の生活も又上つて行くに従つて、この国を世界の国際団体の一員として迎えるがいいという気持にもなりましようし、又迎えることが世界の貿易の上から言つて見てもいいという確信が付けば、水準は自然緩和され、上昇する。又現に賠償その他の問題にしても、終戰直後の気分と今日とでは余程違つて非常に緩和されておることは御承知の通りであります。條約は條約として、実際の問題としては軍需工場をこれを平和産業に振り向けて、そしてこれを使用させようという実際の解決ができつつあることも御承知の通りでありますが、従つて生活水準、産業水準についても時が経つに従つて感情が緩やかになつて来る。敵国関係感情も緩やかになつて来る。又戰争のために死傷をした家族の感情も段段緩やかになつて来る。更に日本を国際団体に迎えまして、そして国際貿易の一環として日本を参加せしむるということが利益であるというような考えと共に自然緩和されるということも想像できるのであります。又現に緩和されつつありますから、そこで従来の規定なり決定なり、或いは又取決めというものは時と共に緩和する、又緩和させるように我々は努めるべきだと思いますが、仕合せに緩和されておる事実がありますから、たとえ或るときに水準が下つても、この水準はドイツと同じように、段々向上させられるということは私は信じて疑わないのである。ただ一つここに問題になるのは、鋼鉄のごときは、日本の製鉄業は戰争以後技術その他において、或いは又生産費その他において非常に節約といいますか、技術が下り、又機械が古くなつて行くというようなために、いろいろな制約を受けて、戰前と同じ程度まで今日は進んでいないのみならず、輸入その他の條件も言つて見て、例えばスターリング・エーリアからは鉱石を取り、或いは又その鉱石を取るために持つて来る船が外国船であるとか、いろいろな條件のために、今日の製鉄事業の現状から言つて見ていろいろな制約を受けております。仮に水準を高く評価されても、今日の製鉄能力から言つて見て、大いに懸念すべきものではないか。従つてこの製鉄事業が合理化され、もつと世界の物価水準まで高まつて行くと言われるまで技術が進み、生産費が下つて行かないというと、仮に許された製鉄量が高まつても現実にそれだけ生産能力が進まないということもある。ドイツのごときは自分の国に鉱石がある。自分に近い所に鉱石があつて、非常に有利な條件に置かれておりますけれども、日本の條件は更に複雑であり、更に中国における鉱石の搬出等も内乱その他のために日本に持つて来るのにいろいろな困難がありますから、仮に水準が高められても、製鉄問題については可なりいろいろな問題が生じております。又御承知の通り日本の製鉄工場の分配等についても決つていないという状態でありまして、これは先ず日本の製鉄におけるいろいろな不利な條件を除くことを考えるべきであろうかと思つて、その点については、頻りに、努力いたしております。
 以上、お答えをいたします。
#9
○委員長(野田俊作君) 金子洋文君。
#10
○金子洋文君 講和問題につきましては、臨時国会から引続いて論議が交されておりますが、当委員会がこれまでこの問題を取上げなかつた理由は、国の興廃と運命に係わる重大な問題でありますから、政争の具に供してはならないし、又スタンドプレイを演じて自分を固持するようなことがあつてはならないと考えまして、委員長を始め各委員が暗黙のうちに自重した結果であろうと思います。そういう点からこれまでの論議を検討しますと、我々素人から考えても未熟なものや軽率なものがあつたようであります。首相の答弁の中にも、あとで取消すような不手際なこともあつて、遺憾の点が多々あつたと思います。特にこれらの論議を通じて、私が最も遺憾に思つたことは、講和を議していながら平和のことがいつか無視されたり、その所在が不明となつたりしまして、平和に対する国民の信念に動揺を與え、再び日本が戰争に捲込まれるのではないかという不安と危惧の念を與えたように感ぜられるのであります。講和問題は、閉ざされている道を世界に開いてその和を求め、相互の信頼を深めて共存共栄を図ることにありますが、戰争を放棄した日本にとつては、平和を死守することが講和條約を締結する基本條件であろうと思います。この観点に立ちまして三、四の質問をいたしたいと思います。
 第一は首相は今回の施政演説におきまして、我が憲法において嚴正に宣告せる戰争軍備放棄の趣旨に徹し、平和を愛好する世界の輿論を背景に、飽くまで世界の平和と文明と繁栄とに貢献せんとする国民の決意それ自身が我が国の安全保障の中核をなすものだ、かように言つておるのでありますが、安全保障やその他の論議が進むにつれてこれらの趣旨が不明となり、單なる外交辞令ではないかという疑念すら生じたのであります。そこで改めてお尋ねしたいのは、首相自身において如何なる場合においても平和を死守する決意ありや否やということでありますが、これはひとり国民のみならず世界の耳目が期待する御答弁と思いますので、力強い御解明を得たいと思います。これが第一点。
#11
○国務大臣(吉田茂君) これは私は答弁の必要のない程明瞭な問題であると思います。又私のみならず、国民がその決意に徹底することが講和を促進するゆえんであり、従つて又国民の利益を増進するゆえんである。これは單に私の決意のみならず国民が国を挙げてこの決意に邁進して貰いたいと思います。
#12
○金子洋文君 只今の御答弁に対して敬意を表します。飽くまで平和を守る御決意を以て行政の部面に当つて頂きたいと思います。
 次にお尋ねしたいのは、完全講和か單独講和かの問題でありますが、これはもうすでにしばしば繰返されておることでありますので、重複を避けまして、平和を守るというこの観点からお尋ねいたしますが、單独講和はいわば不具的な講和でありますから、講和をしない国とは戰争状態が続くことは言うまでもありません。
――――――――――――――――
平和を守るということから考えると、完全講和の方が遥かに利益に思いますが、この点政府はどう考えておられるかという一点と、これまでの首相の御答弁を聞いていますと、完全講和は始めからできないものとして殆ど單独講和のお考えに傾斜しているように思いますが、米ソの見解が事ごとに反しておる現状ではそういうお考えも御無理はないと思います。それはそれとして完全講和に対する熱意と努力が甚だ不足しておる結果、完全講和を欲している国民の世論と逆行する嫌いがあるように思います。この点政府は如何なる方法で努力を続けておるのか、何もしないで茫然と拱手傍観しておるのか。以上の二点について御答弁願いたいと思います。
#13
○国務大臣(吉田茂君) 全面講和がいいか、單独講和がいいか。單独講和の字が当らんと思いますが、こういうことを私は問題にすること自身がおかしいと思います。どこの国においても、オーストラリアにしてもドイツにしても、今日そんなことを問題に取上げている国は一つもない。日本だけにそういうことがあることはおかしい話であると思います。全面講和がいいのは自明の理であつて、全面講和がいいのが当り前であります。故に私の施政の演説の中にも、講和は全面講和であることを希望する。併しながらこれは客観情勢によるのである。一人角力をとつておるか、或いは又一人演説をやつておるのならこれは如何ようにも言えるのでありますが、相手のあることであります、講和は……。相手と共に講和するのであつて、例えばこの日本と講和をしなくともいという国に是非とも講和して呉れと迫るわけにも行かず、又その国にはその国おのずから事情があつて、例えば中共のごとき国は安定しない状態にある。これを捕まえて来て是非ともやれといつてもこれはできない相談であります。故に客観情勢によるのである。私としても、日本国の何びとと雖も成るべく多数の国と平和状態に入りたい。戰争状態は終止したい。戰争を嫌う人であるならば……好む人は別であるが、戰争を嫌う人であるならば戰争状態は早く終止したい。従つて全面講和と共に、再び世界のいずれの国とも交通ができるということは何びとも希望するところであるから、全面講和の可否ということを問題にすること自身おかしい話だと思います。が、これは相手のあることでありますから、これを強いるわけには行かない。故に一国との間に戰争状態を終止したい。戰争をおしまいにしてそうして平和関係に入る。その国がますます多くなることと希望して止まないのであります。その国が絶対多数になり、そうして全面講和になれば日本国として一層仕合せでありますから、これは政府は勿論のことであり、国民何びとも全面講和を欲せざる者はない筈であります。ただ客観情勢によるものでありますから、相手国がもつと戰争状態におりたいと言えば、これは如何とも今日の日本としてしようがないというだけであつて、何びとも全面講和は欲するところであることはこれは自明の理であると思います。
#14
○金子洋文君 次に時間がありませんから、安全保障と自衛権についてお尋ねいたしますが、世界の平和に貢献して各国相互の信頼を得ることが安全保障の中核であると、こうおつしやる首相のお考え方には敢て不賛成はございませんが、こういう精神的な考え方だけでは国民が平和に対して疑念を抱くことも止むを得ないのではないかと考えます。
  ―――――――――――――
率直に申上げますと。アメリカの占領軍の目的と性格は、始めは日本国内の治安にあつたと思いますが、今日では外敵の攻撃に備える軍備と軍隊に変つておると思います。従つて軍備のない、又裸の日本としては好むと好まざるとに拘わらず実質上の安全保障はアメリカ軍隊に頼むより仕方がないという声を聞くのでありますが、その点政府はどういうお考えであるか、お尋ねしたいのであります。又自衛権に対しましては武力を持たないことを賢明とする首相の考え方に対しましては、一応の賛意を表しますが、廃刀令の引例は、周囲に武装した国々が控えておるのでありますからどうも当嵌まらないのではないかと思います。自衛権とは自分の力で自分を守ることだろうと思うのでありますが、ソ連や中共が攻めて来たときのことを考えるとナンセンスのように思います。そういうことは仮定であるから答えることはできないというのがいつものお答えのようでありますが、平和に対する国民の決意に動揺と不安と與えていると思いますので、勇気をお出しになつて、一つ明快なる御答弁を願いたいと思います。
#15
○国務大臣(吉田茂君) 私の答えは甚だ明快と確信いたすのでありますが、明快でないとお考えになるお方に対して、明快なりや否やということを議論をしても果てしのないことであります。併し私は私の議論は明快であると考えるのは、過日も申した通り、軍備を持つておつた、然らばその国が安全であるか。曾て我々は強大な軍備があつたにも拘わらず日本の外交或いは日本の国策に対する列国の疑念が盛んであり、遂に戰争まで立入つた。これは外国に行かれた、往来された方は、特に徳川さんのごときは御承知だろうと思いますが、私は戰前の外国に始終おつて、そうして言われることは、日本という国は怪しからん国だ。これは現に私が出食わした例でありますが、一九三四年であります。ボストンに参つたところが、ハーバード大学のローウエル……ちよつと名前は忘れましたが、総長が私に、日本国政府は実に怪しからん国だ。政府の声明が当てにならない。嘘八百であるということを言つて、対面した最初からして食つてかかられて、私も少々怒声を発して議論をしたようなわけで、日本に対する当時の惡感というものは非常なものでありました。ニューヨークで確か或る新聞……とにかくミセス・リードという人で、その人はヘラルドトリビューンの社長で惡感情を持つておる人でありますが、この人にコロネル・ハウスが私に会え、大変日本に対する誤解もあるからして会うがいいというので、私はコロネル・ハウスの紹介でわざわざ会いに行つたのでありますが、この人もハーバード大学総長と同じような考えで、日本は怪しからん国だ。現に自分はデパートを持つておるけれども、日本の商品は一品も取扱わないと言つて、その然るゆえんを言われたのでありますが、これには誤解もあります。ありますが、とにかく日本政府は当時戰争するということは一度も言つていやしないのであります。満州問題と雖もこれは止むを得ずここに至つたのであり、満州を取るために取つたのだというようなことは一度も国際連盟その他において弁明いたしておりませんが、事実満州国は日本がこれを取り、そしてここに傀儡政権を作つたという確信を殊にアメリカ国民が持つておつたものでありますから、私が参つてもハーバード大学の総長のごときは誠に立派な人でありますが、その人も我々に対して非常な激越な言葉を以て論じかけられたという程、日本の政府は平和主義を標榜しておつて決して領土獲得主義を標榜しておつたわけではありませんけれども、外国から見るというと、日本の政府は嘘ばかりつく、日本の政府の声明は当てにならん、平和主義のごときは当てにならんと言つて攻撃を受ける程、日本政府に対してアメリカ国民は殆ど上下を通じてであろうと思いますけれども、不信用で、日本の軍備というものは領土獲得のため、東洋の平和を撹乱するために持つておるんだという考え方からして、痛烈な攻撃を受けたのであります。当時日本の軍備は相当な軍備であつたと思います。海軍力においてもその他においても以て国を守るに足るだけの軍備を持つており、又守るに足るだけの軍備を持つという当時の政府の方針で作つたんで、海陸軍の拡張をいたし、又国を守る、敢て他国を攻撃するという目的ではないということをしばしば当時軍当局も声明をいたしたのでありますけれども、相手方から見ると、日本の軍備は單に国を守るためではないのだ、自衛のためのみではないのだ、東洋の平和を侵すためであると確信せられておつて、そして政府が平和外交を主張しておるにも拘わらず、これに対して甚だ信用せられなかつたというような状態にあつた。私共の経験から考えて見て、国を守るのが單に軍備だけであるか。それは軍備だけでは決して国を守れないものであります。列国が世界を通じて日本は平和を乱さんとする平和の敵であり、危険な国であると考えられれば、むしろ戰争にまで至つて今日のような状態になるのであつて、いわゆる国信なくんば立たずで、信なかつたのであります。日本の国は平和の敵なりと考えられておつたような軍備を持つておれば、たとえ軍備が強大であつても国を守るに足りない。私は武力なくして国を守り得ると確信するのでありますが、その確信はどうかというと、世界の日本の政策に対する信用ということであつて、日本の国民が軍備を放棄して飽くまでも平和主義に終始するという確信を世界に與えるのでなければ、たとえ強大な軍備を持つておつても、世界を相手にしてからに戰うというようなことはできないことであるのみならず、内からも崩壊すると思います。故に私は軍備を放棄したということは日本のために非常に結構なことであり、又これによつて従来政治においていろいろな不安がありましたが、この不安も除かれた。それであとは外国の信用でありますが、これはどうも今申したように相手のあることであつて、相手がどうも打つてかかるのに、何もこれに対して対抗ができないからといつても、武力だけ、腕ずくだけでは……頭の働きでも国は守れるのでありますから、これは世界の日本に対する信頼を以て日本の楯にするという覚悟を決めて、そうして世界を友達にする、これに対して不当な進撃を、防備のない国を侵すというごときはこれは世界の輿論が許さんと思います。又この防備のないということは、その点から申すと強味であるとも考えられるのでありますから、私は軍備を放棄することに徹して、世界の輿論を背景として日本の将来は開拓して行く、これが日本を守る最もいい賢明な政策と確信して疑わないのであります。
#16
○金子洋文君 最後にお尋ねしたいのは、第三と関係ある軍事基地の問題でありますが、これもいつかの御答弁では、仮定には答えられないという一点張りでお逃げになつたことですが、その苦衷の程は重々察しておりますが、このことが最も国民全般の平和の気勢に動揺を與え、そうして前途に暗影を投げかけておる問題だと思われる。特に衆議院における野坂參三氏の質問に対し首相の答弁が簡單で不十分であつたために、疑惑を深めておることもあるし、すでに内地ででき上つておる軍事基地が講和後どうなるかという問題もありますし、更に最近においては新聞紙上で横須賀の租借が問題となつたので、東京都民は今にも帝都の空に原子爆彈や水素爆彈が落下する幻想に怯えて、いよいよ平和を信ずることができないような心理に追込れている。そこでこの問題が非常に重要なのであります。社会党はこれを仮定の問題としないで、日本の自主性を重んじて明確に軍事基地租借に反対の意見を持ち出しておるのでありますが、これは戰争を放棄した日本としては私は当然のことであつて、基地の租借ということは仮に消極的にしろ戰争に介入することであつて、嚴粛なる憲法に背反するのではないかと考える。恐らく詳しいことは勿論御答弁できないと思いますが、ただ基地租借は日本の憲法に背反するや否やということについては御答弁の義務があるように考えますので、明確なお答えをお願いしたいと思います。
#17
○国務大臣(吉田茂君) 明確なる御答弁をいたいます。今日占領下の日本において占領軍が軍事上の必要から施設をする、これは日本国としては拒めない條約上の義務を持つておるのでありますから、占領軍がその軍事上の必要か、何らかの必要によつて例えば軍事基地を設ける、或いは飛行機の基地を設けるということは、これは占領軍が占領の目的のために必要なりと考える施設については我々はこれを止めることができないのみならず、これを承認する義務があるのであります。故に問題は日本が独立を回復して、そして講和條約ができて、そして完全な自治主権国として軍事基地を許すか許さんかに問題があり、今日のとこれでは問題がないから、それは仮定の問題なりと言つて敢えて逃げるわけではありませんが、事実を事実なりとして答弁いたしておるわけであります。
#18
○金子洋文君 総理大臣の今の答弁はピントが外れておるのですが……。憲法の観点から見て、軍事基地は日本の憲法に背反するのじやないかということをお尋ねしておるのですが。
#19
○国務大臣(吉田茂君) これは憲法から考えて見ても、現在軍事基地を設けられても、これに対して我々は抗議するゆえんはない。将来は将来のことで、御答えはできません。
#20
○委員長(野田俊作君) よろしうございますか。
#21
○金子洋文君 よろしうございます。
#22
○委員長(野田俊作君) 伊達源一郎君。
#23
○伊達源一郎君 私の質問は極めて簡單なことであります。講和問題等は皆さんがもうすでに沢山お尋ねになつたし、私にはもうそういうことに與えられた時間はないと思いますから、具体的な比較的小さい問題を一つ総理大臣に承つて置きたいのであります。それは阿波丸に関する問題であります。昨年の四月六日に、我々の外務委員会で阿波丸に関するすべての賠償要求権を放棄するという決議をしまして、これはこの委員会でした最も美わしい決議であることを思いまして、私共その後関係方面の人々と会つても誠にこの問題については気持のいい話ができたのであります。あの決議をしました後で、半月余り後で日本とアメリカとの間に協定ができておるのでありますが、その発表せられましたところによりますと、あの阿波丸撃沈のため、あの災難で死にました人及び損害を受けた船主には、日本政府が適当な見舞その他の補償をして立派に片付けるということも書いてあります。然るにその後のそのことが甚だ捗らずにおりまして、アメリカの人達もあのことはどうした、日本の政府が立派に片付けると言いながら片付けていない、我々は日本国民のあの阿波丸に対するすべての権利を放棄したときの立派なことを感ずるけれども、その後の処置は甚だ腑に落ちないということをよく申しますが、私は政府があの船の賠償、日本の船舶のことは非常に重要な問題となつておりますのみならず、あの問題は日本がアメリカに立派な感謝の念を現わしたことであるのに、その後の取扱い方が甚だ面白くないということが問題になつておるように思います。日米間の気持の問題においても非常に大事な問題であるが、あの船の補償等に関しまして政府はどういうふうなお考えを持つておられるか、殊に外務大臣としての吉田さんに、この問題に対する私は明快なるというよりも御親切なお考え方を聞きたいと思います。
#24
○国務大臣(吉田茂君) お尋ねのこの阿波丸事件の善後の救済といいますか、賠償放棄の結果として、個人或いは船会社等に対する賠償なり、補償なり、救済なりの事務は外務省において着々調査を進めております。併しながら何分事件が起つた後日が経つておりますし、そうして人数も多いことであります。それから又船価、船の評価等についても議論があるので、なかなかまとまりかねる点があるために決定はいたしておりませんが、併し事務そのものは進捗しております。そのいつ頃事務が終了するか。成るべく早く終了させようと思つておりますが、決してうつちやつておるのではないことを御承知を願いたいと思います。
#25
○委員長(野田俊作君) それじや徳川頼頼貞君。
#26
○徳川頼貞君 同僚諸君から各面からいろいろ御質問がありましたが、時間も大分立ちましたので、私からは簡單に一、二の質問をさして頂きたいと存じます。講和問題或いは又安全保障問題等に関しましては、いろいろの制約がありまして、政府としては責任ある御答弁をなさる資格のないことは、これは重々承知しておりまするけれども、一、二の点について外務大臣にお尋ねしたいと思います。
 その一つは、現在のような極めて複雑せる国際情勢下におきまして、全面講和を望むことは誰しもが望むところでありまするけれども、併しそれは極めて困難なことではないかと思うのであります。そうかと申してこのままに何年も占領政策が続いておるならば、我々が一日も早く世界平和のために貢献しようということが延びることは誠に苦痛であります。一日も早く平和来訪を私共は祈つておるのであります。殊に最近のごとく、ソ連が原子爆彈を所有しておることも明白になりました。又中国が完全にソ連圏域内に加入した現状におきましては、全面講和或いは又單独講和ということを叫ぶときではなくして、むしろ一日も早く我々は講和を急いで貰いたいというのが多くの国民の声であると信ずるのであります。このような輿論に対して国会が応えて、国民の意思を表示することに吝かでないと思うのでありますが、かくのごとき場合におきまして、それが諸外国に対する影響について、外務大臣の忌憚のない御意見を伺えれば仕合せと存じます。
 第二点は、我が国はドイツ或は韓国とは違いまして、大体においてアメリカの單独占領と考えても差支えないのではないかと思うのであります。若しそうであるとするならば、先ずアメリカと單独講和を締結し、次いで第二次的に、或いは第三次的に他の諸国と講和を締結するという方法も一応は考えられるのじやないかと考えます。ヴェルサイユ條約の場合におきましても、アメリカと中国との間におきまして、
   〔委員長退席、理事伊東隆治君委員長席に著く〕
二年か三年か遅れて單独條約が締結せられたように覚えております。このような議論が活溌になつて参りましたならば、自然アメリカの有力紙の論潮も又このラインに進んで来るのではないかと思うのであります。この点について外務大臣の御意見を伺いたいと思います。
#27
○国務大臣(吉田茂君) 講和会議の方式というような点についてのお尋ねでありますが、これは御承知の通りいわゆる客観情勢に支配せられるものであつて、連合国がどういうふうな形式を取るのか、今日日本の立場としてこういう方式にして貰いたいとか、ああいう方式に是非して貰いたいという希望を述べる地位にないことは御承知の通りであります。その方式が或いは四ヶ国の外相会議においてもいろいろ議論されておるようでありますが、これは連合国の間の協議で決まることであり、その決つた決定がどういう影響を及ぼすかということは、今日においては予想できないところでありますけれども、併し日本が仮に或る国と平和関係に入つた、例えばアメリカと講和関係に入つた。そのためにアメリカもその利益を得る。又アメリカ国民も満足する、日本国民も満足して、そうして更に多数の国との間に講和を結ぶ階梯になるということになりますか、或いは階梯にならんという議論もありましようけれども、普通常識から考えて見ますと、誰も戰争は希望しない行為である。平和関係に入つて交通が自由になり、そうして通商ができる、その他の関係が生じて行く。無論利益があるから関係が増進するでありましようから、そういう利益のある関係が現実ここに生じたという場合には、他に政治上の理由がない限りは、常識から考えて見て日本と講和関係に入ろう、戰争状態を終止させようという気持になるのが当り前ではないかと、こう私は思いますので、それで仮に数カ国の、或いは一国であつても平和関係に入ろうと思う国があつて、我々に平和関係に入ろうという相談があれば、これは我々としては受入れるべきでありましようが、併し又連合国の間の條約関係とかその他話合がありましようから、單に日本国とその国との間の関係だけで決まるのではなくて、連合国の間の話合において決まることであろうと思います。併し事実としては一国と雖も交通が自由になるということになれば、日本国民はそれだけ利益を受けるわけであり、又相手国も利益を受けたとすれば、多数の国も、これを見倣う国が余計になつて来るということはあり得るのじやないかと思いますが、何分今日のところは列国の間との関係であつて、少くとも連合国の間の政治上の関係その他がありましようから、我我としては希望したしてもそれが直ちに具現するかどうかということは、国際情勢によるより外仕方がないと申すほかお答えをするような何も方法もないと思います。それから伊達君に私の答弁を申し残しましたからして、今附加えますが、すでに予算に組んで、来年度の予算のうちに組入れて予算措置も講じております。やがて国会において具体的に個人との間の、損害を受けた犠牲者との間の話合のついたことは、予算等について当局者からして御説明申すことと思います。すでに予算措置は講じておるそうです。
#28
○徳川頼貞君 外務大臣に今二点について伺いましたことに対しての、第二点につきまして御返答を伺いたいと思います。
#29
○国務大臣(吉田茂君) 二点は何ですか。
#30
○徳川頼貞君 日本のアメリカとの……
#31
○国務大臣(吉田茂君) アメリカとの関係ですね。これは又アメリカの国策にもよりますことでもありましようから、私は仮にアメリカが好意ある考えを持つて、そして日本との講和関係に入る、これは私は單独にアメリカがそういう態度には出られないだろうと思いますけれども、アメリカに限らず、日本国だけから考えて見ますると、一国であろうが二国であろうが、講和関係に入ろう、戰争状態をおしまいにしたいという国があれば、日本だけの考えから申せばそれに承諾すべきではないかと思います。併しこれは今申すように、連合国間の関係もありましようから、條約その他の関係がありましようから、そう簡單に参らないと思いますが、日本国としては仮に一国と雖も平和関係に入りたいという国があれば、これに対して拒絶する理由はないと思います。
#32
○理事(伊東隆治君) 星野芳樹君。
#33
○星野芳樹君 私は、今日吉田首相が金子委員の質問に答えて、日本が飽くまで軍隊を持たず、武装を持たずして守つていけるという確信を披瀝されたことは甚だ欣快に堪えないのでありますが、ところがですね、
   〔理事伊東隆治君退席、委員長著席〕
 曾て去年でありますか、衆議院の外務委員会で以て西村條約局長がこの戰争放棄のことに関して、戰争放棄と言つても、火急止むを得ざる場合に実力を以てこれを排除することを否定したものではないと考える、こういう言葉を言つているのであります。これはですね、要するに日本が講和会議で独立国となつた、そこをどこかの国が侵略して来る、そうすると警察隊などを動員して、そして民衆に竹槍などを持たせて、実力で排除する、こういう思想だと思うのです。それも止むを得ないという思想だと思うのですが、これは実にこの国民に対して非常な悲惨を招く結果になり、この実例としては、終戰直後満州で以て通化に引揚げて来た引揚民が数万おつたところが、不心得なものがあつて、日本刀で斬込みをするということを計画した。そのため非常に居留民が残虐な目を受けたという事実がありますが、又それに徹するまでもなく、こういう結果が起つたら実に悲惨な結果になることは明らかであります。それから、それじやその悲惨な結果になるからそれじや系統的に軍備を準備しなきやいけないじやないかという軍備再現の思想を誘発するものであるので、この考え方は首相の飽くまでも日本が武装なき国家として立つて行けるという確信と全く背馳するものであると思うのですが、この点をはつきり首相から言明して頂きたいと思うのであります。そしてこの考え方はいわゆる共産党の暴力革命という思想と裏表の感があります。共産党の下の方の人達は、結局日本が帝国主義に圧迫されて、それで自分達は平和を望むけれども、これは権力で圧迫されて来たら、それは刄には刄を向ける外はない、こういう考え方があるので、これと全く裏表であつて、一方攻めて来る方を違う方に考えているんでしようが、結局竹槍戰争を考えているという点、而も国民一般の中にこういう暴力思想が拂拭し切れないというときに、政府でこういう言葉を出したということは、これは非常な誤解を招くので、これを取消さなければならないと思うのでうすが、この点に対する吉田首相の見解を一つ伺いたい。
 それから吉田首相自身も自衛権の問題について、今日の金子委員に対するお答えから察すると、はつきり自衛権ということを言われたのですが、今日のお答えからすると、はつきり自衛権というのは、暴力、武力を使うものでない意味だと解しますが、今回の施政演説に対する質問の答えに、自衛権を行使しなければならない理由自体においても、自衛権でありましても、如何なる状態において日本が自衛権を発動するか、武装を余儀なくされたか、形による自衛権が発動するというようなことを言つておりまして、甚だ意味が不明瞭でありますが、これは要するに、自分達は非武装国家として行きたい、併し自衛権を発動せしめられた事情によつては、どういう発動をするかも分からないという答えであります。これも又いわゆる共産党の平和革命論と甚だ似てるので、これも平和革命で以て飽くまで達成するというのでなく、現在は平和革命であるが、情勢の変転によつては革命方式はいろいろ変る、こういうことを言うと、平和革命で飽くまで達成する自信でなく、事情によつちや暴力革命も考えるという考え、この平和的に守るという自衛権は、首相の言葉は、これと全く裏表のような感がするので、この点をはつきり暴力でないもので、武力でないもので自衛するという立場をはつきりすべきであり、それから独立以後の侵略を受けた場合、それに対する対処する方法、これがはつきりしてないので、国民には未だに暴力思想が残つておる、それは先きの問題と言われるかも知れないが、現在国民の間に、暴力思想が残つておるということは現実の現在の問題で、これを解決しなければならん、これに対しては、独立以後の武力侵略を受けた場合、我々の対抗する手段は、侵略者に対しては非暴力、非協力というはつきりした組織的な非暴力、非協力、これをはつきり展開するということをはつきりすべきではないかと思うのですが、この点について首相の見解を伺います。
#34
○国務大臣(吉田茂君) これは私は繰返えして各委員会、その他で述べておりますが、日本は軍備を放棄した、即ち武力によらざる自衛権は持つておる、これは明らかな話であります。然らばどういう自衛権であるか内容を示せというのが第二の質問で、いつも受けるのでありますが、これはあなたのお考えが少し違うと思いますが、私の説明は、その場合における自衛権というものは、自衛権の発動を必要としたその事情の存在に対応する自衛権であるから、先ず前提に自衛権を発動しなければならなくなつたという事情に対して日本の自衛権の内容が足るのであり、先ず如何なる状態においてからに自衛権の発動を必要としたか、その形態によるべき話で、その前提の決らない間は、結論として自衛権はこういうふうにしてから発動するのだということを言えないということはしばしば申しておるのであります。
 それから西村條約局長が説明したかも知れませんが、こういう場合には竹槍でやるか、鉄砲でやるかという仮定の問題はお答えができない、これは始終申す通りであります。
#35
○星野芳樹君 どうも首相の答弁は不満でありますが、このことを幾ら討議しても水かけ論になるので、首相のこういう問題を考える前提となつている現在の世界の歴史段階の把握について伺いたいと思うのであります。曾て首相は、帆足計君が日本を永世中立にすべしという輿論が相当あるが、これに対する首相の意見はどうかと質問したときに、吉田首相は確をベルギーも永世中立国であつたが、あれも侵略されたと言われましたが、これを伺うと、どうも吉田首相は、一九一四年の時代と一九五〇年の現在との大きな歴史的な変化というものを余り認識されていないのではないかという疑いが生ずるのであります。この一九一四年と一九五〇年の間には、御承知のように原子力というものが展開されて来た。これによつて非常な大きな歴史的変化がありはしないか、つまり今まで一九一四年の時分には飛行機があり、タンクがあり、戰争も相当悲惨ではあつたが、併し戰争が起つても人類の大半が死滅するというような、人類が生きるか死ぬかというような状態ではなかつた。ところが最近はこうした原子力というものが発達して、水素原子爆彈まで出て、これが戰争に使われた場合には全く人類の存亡がかかつて来ている。こういう事態になつている。それが故に武力を持つたものもそうなかなか発動はしかねる状態になつている。而も全世界の民衆は何とかして平和を守ろうという意思が非常に強くなつている。その点は曾ての平和々々という声はこれは空念仏であつたが、現在ではこれは非常に強くなつている。この一点が一つ、それからもう一つ、原子力の結果として原子力工業が始まると、これは非常な厖大な工業組織が要るわけです。従つてこれに対して産業形体も変つて来る。従つてアメリカも現在のようないわゆる資本主義体制というのが相当変化して来るだろう。ソ連の方もいわゆる強権政体というのも変化されざるを得ない。こういう世界情勢があるという、それからもう一つ世界の見方について常識的に米ソ両圏というふうに分けて見れば、むしろ具体的には曾ての弱小民族というものの興起過程にあるのではないか。つまり中国はソ連の衛星になつたという考えをするものもあるが、むしろこれは自主性を持ちつつある。印度はアメリカ圏だというが、併しこれも独立性を非常に発揮し出した。こういうような世界動向を御覧になつているかどうか、そこにまあ我々は日本が飽くまで永世中立を叫んで行くということの実現性の世界史的背景を見るわけなんですが、これは結論は今日論じても水掛論ですが、そういう世界の動きを見ていられるかどうかということをもう一つ伺いたい。
 それから最後にこの新らしい中国についてのことですが、今日も中国は安定していませんからということを言われましたが、日本と中国とは明治維新以来外交関係をずつとやつておりましたが、その明治維新以来日本が外交関係をやつていた時代と現在の範囲程統一されたときと、現在くらい安定した時代があつたがどうか、現在中国を完全に安定したとは私は言いませんが、中国は曾ていろいろな段祺瑞政権とか、外交交渉を持つていた。これを一国と認めた。併しその時分には現在よりももつと内乱もあり、それから範囲も狭く、ということから見て、これは首相が頻りに安定していないという考え方が間違つているのじやないか。現在も毛澤東が二ヶ月近く国をあけている。国をあけているということは甚だ安心ができる状態なんで、スターリンなどは一日も国をあけたことはないので、その意味から言えばソ連よりも安定していると言えるかも知れません。そういう点を安定してはいないというような考え方は、これは物の見方が間違つてはいないか、この点について伺いたいと思います。
#36
○国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。私の見方が間違つておるかおらないかはこれは議論になりますから、私の見方が間違つておるとお考えになるのは御自由でございます。又これに対して答弁をいたしておつたところが時間を取るばかりでありますから、結論はつきにくいと思います。
 又中国が安定しているかどうかということは中国の方であつて、私が中国に代つてここで答弁をする責任もない。又私としては安定の状態ではないと思います。
 又永世中立の問題についても、これは私の申したのは永世中立という條約で、ベルギーのごときは永世中立の條約によつて保障されたんであるが、併しながら侵撃を受けたじやないか、であるからそれのみを以て日本の局外中立が一番いい日本の安全保障じやないかという御議論に対しては、必ずしもそうであるとは我々は承服ができないと言つているのであつて、結論を付けているわけではないのであります。
#37
○星野芳樹君 只今の首相の答弁は焦点がぼけている。私は結論を聞いているのではなくて、原子力の発展によつて大きな変化があることをどの辺に認められるか、これを要点として伺つているのです。
#38
○国務大臣(吉田茂君) 私としては抽象論についてとういう原子爆彈の効力等には政府としてはお答えできませんからして、お答えいたしません。
#39
○星野芳樹君 効力を聞いているのではなくして、それが世界の政治とか経済に影響する動向がどうだということ、これは政治をなさる方は世界の動向、胎動を掴んでその行方を見なければ、これは政治家とは言えない。その影響、例えばですね、前に蒸気汽罐とかそういうものが生まれて産業革命が起り、従つてこうした封建制度が破れて資本主義制度ができたという歴史もある。ところがそういうことを予言した人々も予測できなかつたエネルギー源が展開されて来ているということ、これについてどういうように、どうした世界的な影響があるか、これを何ら御答弁できないようじや、これは一国の外務を担当されるのに甚だ国民として信用が置けないと思いますが、この点を伺います。
#40
○国務大臣(吉田茂君) 私に対する国民の信頼が、私の持つ知識が浅くて信頼ができないと言われればそれまでであります。併しながらこういうことには外務大臣としてお答えはいたしません。
#41
○委員長(野田俊作君) それではもう一人大畠君から極く簡單なお尋ねだそうですから、これを許したいと思います。
#42
○大畠農夫雄君 ポツダム宣言の効力について見解をお尋ねしたいと思います。ポツダム宣言の中に戰争終了という言葉があるのでありますけれども、戰争終結という言葉、その終結ということは講和会議が締結されたことによつて戰争が終結するのか、それとも戰争遂行の能力が破碎されたというときを以て戰争が終結すると言うのか、あのポツダム宣言の中にあります戰争終結というその言葉についての御見解をお伺いしたい。それから次に、常に外務大臣として、講和條約はポツダム宣言に基いてなされるものであるから、日本としては何ら方法がないというような御見解をとられているようでありますけれども、ポツダム宣言が必らず講和條約そのものを全部規律するものであるかどうか、拘束するものであるかどうか、その点を一つお尋ねしたい。更にポツダム宣言九條によりますと、武装解除後におきましては、連合軍といたしましては、武装解除をしたところの日本の軍隊は直ちに返還させなければならんという義務がある。こう書いてあるのでありますから、それに基いて日本といたしましては、中共並びにソヴェト・ロシアに向つて返還の要求をする権利があると思うのです。その御見解をお尋ねしたい。
#43
○国務大臣(吉田茂君) 日本の降伏條約はポツダム宣言を履行する、承諾するというのを内容としてできたのでありますからして、日本としてはポツダム宣言の内容を嚴守する義務があることは勿論であります。又今のポツダム宣言には日本の捕虜を返還するということが書いてありますからして、我々はこの返還を要求するのが当然でありますが、併しながら直接に、我々は今のところ外交を停止されておりますから、司令部を通してのみ関係国にこれを要求する、現にその手続をとつております。又ポツダム宣言に言う戰争終結とは平和の恢復を含む戰争の終了を意味すると思います。私の解するところでは、つまり降伏條約ができて、そうして日本が戰闘を終了して、そうして今占領状態に入つている。平和條約ができたとき即ち日本としては戰争を終了したものと、こう考えるべきだろうと思います。
#44
○大畠農夫雄君 もう一点簡單に……ポツダム宣言によりますると、私はポツダム宣言を日本が無條件に受諾したということにつきまして、ポツダム宣言そのものを内容とする日本と連合国間の契約だと、いわゆる條約だというふうに考えておるんですが、首相はどういう御見解を持つておられますか。
#45
○国務大臣(吉田茂君) これは契約ではなくて、日本はポツダム宣言を受諾するという受諾の義務を持つておるものであると私は了解いたします。
#46
○委員長(野田俊作君) 本日はこれで散会いたします。
   午後零時二十一分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     野田 俊作君
   理事
           徳川 頼貞君
           伊東 隆治君
   委員
           金子 洋文君
           大畠農夫雄君
           伊達源一郎君
           星野 芳樹君
  国務大臣
   内閣総理大臣
   外 務 大 臣 吉田  茂君
  政府委員
   外務政務次官  川村 松助君
ソース: 国立国会図書館
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