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1977/11/11 第82回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第082回国会 外務委員会 第6号
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1977/11/11 第82回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第082回国会 外務委員会 第6号

#1
第082回国会 外務委員会 第6号
昭和五十二年十一月十一日(金曜日)
    午前十時四十六分開議
 出席委員
   委員長 竹内 黎一君
   理事 有馬 元治君 理事 鯨岡 兵輔君
   理事 毛利 松平君 理事 山田 久就君
   理事 土井たか子君 理事 中川 嘉美君
   理事 渡辺  朗君
      大坪健一郎君    川崎 秀二君
      川田 正則君    三池  信君
      宮澤 喜一君    松本 七郎君
      寺前  巖君    伊藤 公介君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 鳩山威一郎君
 出席政府委員
        外務政務次官  奥田 敬和君
        外務省アジア局
        次長      枝村 純郎君
        外務省欧亜局長 宮澤  泰君
        外務省条約局長 大森 誠一君
        外務省条約局外
        務参事官    村田 良平君
        特許庁長官   熊谷 善二君
        特許庁審査第一
        部長      小林 慶基君
        海上保安庁次長 向井  清君
 委員外の出席者
        大蔵省国際金融
        局企画課長   橋本 貞夫君
        水産庁海洋漁業
        部長      松浦  昭君
        参  考  人
        (国際協力事業
        団総裁)    法眼 晋作君
        外務委員会調査
        室長      高杉 幹二君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月九日
 辞任         補欠選任
  寺前  巖君     松本 善明君
同月十日
 辞任         補欠選任
  松本 善明君     寺前  巖君
同月十一日
 辞任         補欠選任
  寺前  巖君     東中 光雄君
同日
 辞任         補欠選任
  東中 光雄君     寺前  巖君
同日
 理事渡部一郎君同日理事辞任につき、その補欠
 として中川嘉美君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の辞任及び補欠選任
 参考人出頭要求に関する件
 所得に対する租税に関する二重課税の回避のた
 めの日本国とチェッコスロヴァキア社会主義共
 和国との間の条約の締結について承認を求める
 の件(条約第三号)
 日本国の地先沖合における千九百七十七年の漁
 業に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共
 和国連邦政府との間の協定の締結について承認
 を求めるの件(条約第一号)(参議院送付)
 日本国と中華人民共和国との間の商標の保護に
 関する協定の締結について承認を求めるの件(
 条約第二号)(参議院送付)
     ――――◇―――――
#2
○竹内委員長 これより会議を開きます。
 この際、理事辞任についてお諮りいたします。
 理事渡部一郎君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○竹内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 次に、理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 これは先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○竹内委員長 御異議なしと認めます。
 それでは、委員長は中川嘉美君を理事に指名いたします。
     ――――◇―――――
#5
○竹内委員長 所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とチェッコスロヴァキア社会主義共和国との間の条約の締結について承誌を求めるの件、日本国の地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定の締結について承認を求めるの件、日本国と中華人民共和国との間の商標の保護に関する協定の締結について承認を求めるの件の三件を議題といたします。
 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 ただいま議題となっております三件のうち、日本国の地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定の締結について承認を求めるの件及び日本国と中華人民共和国との間の商標の保護に関する協定の締結について承認を求めるの件の審査のため、本日、国際協力事業団総裁法眼晋作君を参考人として出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○竹内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 なお、御意見の聴取は質疑応答の形で行いますので、さよう御了承願います。
    ―――――――――――――
#7
○竹内委員長 これより各件に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土井たか子君。
#8
○土井委員 それでは、まず日本国と中華人民共和国との間の商標の保護に関する協定の締結についてお尋ねをしたいと思います。
 中国の商標管理条例というのを見ますと、外国人が中国において商標登録の出願をするためには、その商標が本国ですでに登録されているということが必要であるということになっております。たとえば日本においてすでに出願されてはおりますけれども登録がまだであるというふうな場合ですね、出願はしているけれども未登録の商標を中国で出願することができるのかどうか、この点が少しひっかかってくると思いますので、まずこの点からお尋ねをしたいと思います。いかがでございますか。
#9
○熊谷政府委員 お答えいたします。
 御指摘のとおり、中国の商標管理条例の第十二条によりますと、外国企業が出願する場合にはその本国での登録がされているということが要件になっているわけでございますが、これは一方におきまして、本国の他人が同一の商標を出してだしぬけに出願をするといったことを防ぐという意味でメリットがあるわけでございますが、他方、本国に出願した商標が第三国人あるいは中国人に先に出願される、こういった心配もあるわけでございますので、わが方におきましては、この協定を締結するに際しまして、出願しておりますれば中国側におきましてもその出願を受けつけてもらうということを中国当局と確認をいたしておりまして、実際上の障害はないものと考えております。なお登録されますときには、やはり日本側の方の出願が登録された後でなければ先方は登録しない、こういうことになっております。
#10
○土井委員 そうすると、日本においては出願されてから登録まで一体どれくらい期間を要することに現状ではなっているか、それからまた中国の場合はその点がいかようであるかというのをお聞かせくださいますか。
#11
○熊谷政府委員 日本の場合には申請がありましてから二年半ないし三年程度でございます。中国の場合におきましては、私どもが五十一年に先方と話し合いをして調査をいたしました際の結果によりますと、半年ないし一年程度ということでございます。
#12
○土井委員 わが国がこのような二国間で工業所有権または商標保護協定を締結している国というのがほかにありますか、どうですか。工業所有権の場合とそれから商標保護協定の場合と、この二つの場合についてほかに締結している国があればひとつこの際お知らせいただきたいと思います。
#13
○熊谷政府委員 お答えいたします。
 商標保護に関しまして相互取り決めをやっておりますのは、いま先生の御指摘のように工業所有権という形でやっておりますものも含めまして御説明申し上げますと、パリ条約の加盟国との間におきましては、アメリカ、イギリス、アルゼンチン、ギリシャといった国は条約でいたしております。それからパリ条約に未加盟の国との間におきましては、インド、パキスタン、ペルー、エルサルバドルというところと条約を結んでおります。韓国との間におきましては、口上書で取り決めを結んでおります。以上でございます。
#14
○土井委員 そうしますと、商標に関する相互保護というのはどういうふうな形でわが国としては諸外国との間にいままで行ってきたということが言えるか、この点はどういうぐあいになっておりますか。
#15
○熊谷政府委員 最恵国待遇またはいわゆる内国民待遇という考え方で取り決めを結んでおります。
#16
○土井委員 いまのお答えに直接関係をするわけでありますが、特許法の二十五条の一項一号及び二号の準用によって、外国人に対しては特別の協定ないしは取り決めがなくても相手国が認めさえすればわが国も相互主義に基づいて内国民待遇を与えている、こういうふうに理解していいわけですか。
#17
○熊谷政府委員 そのとおりでございます。
#18
○土井委員 そうすると、いま新たに協定を締結しようという相手国である中国の法制は、その点はどういうぐあいになっておりますか。
#19
○熊谷政府委員 中国におきましては、商標に関します保護はいわゆる内国民と外国人の間に差別がございます。これは内国人の場合には中国の商標管理条例の目的が品質の維持、向上というところにございまして、品質のいい物に商標を付すという規定になっておるわけでございます。その関係でたとえば登録の際の要件が相当厳しくなっておるわけでございますが、外国人の場合にはそういった要件は緩和されておるわけでございまして、したがいまして、内国民待遇ということにいたしますと、外国人にとってかえって不利になるわけでございます。外国人に従来与えられておる待遇を日中の場合にも日本に与えるという意味で、最恵国待遇の方がいわゆる内国民待遇よりは有利である、こういう判断で結んだわけでございます。
#20
○土井委員 日中間で具体的にこれまで商標登録をめぐりましてしばしばトラブルが発生したということを聞いてきておりますが、主としてどのような問題についてそれは起こったのであるか、それからそういう問題について実例が報告として届いておりましたら、ひとつその点もあわせてお聞かせをいただきたいと思います。
#21
○熊谷政府委員 協定がないために起きます不都合というのは、一つは類似商標の使用の問題がございます。それからもう一つはいわゆる先取り登録、こういった問題でございます。
 まず類似商標の使用の問題では、味の素につきまして、中国の糧油食品進出口公司が五十年から五十一年にかけましてシンガポールに化学調味料を味素と書いた、こういったブランドをつけまして輸出されたケースがございました。この問題は中国と日本との間に協定がございませんでした関係もあり、今日までまだ解決に至っておりませんが、このたび協定をお認めいただきますれば、恐らく味の素の方は中国側と正式に話し合いを行い、正式の出願もする、こういうことになるのではないかと考えております。
 それからもう一つ、いわゆる先取り登録の例でございますが、四十七年にA酒造会社が酒類あるいは薬剤につきまして五十一件の出願をいたしております。これはいわゆる中国において一般に使われている商標と同種のものでございますが、この問題につきましては、中国側の要請もありまして日本のある団体がこのA酒造と話し合いをいたしまして、五十年の三月にその出願を譲渡する、こういうことで話がまとまっております。それからもう一つはある薬品会社が、四十七年でございますが、これも中国のあるブランドを出願をいたしましたが、いわゆる中国から従来同種のものを輸入しておりました友好商社から本件につきましての異議申し立ての準備等もあり、相互で話し合いの結果、四十九年に名義変更を行って一応円満に片はついておるわけでございます。今後は、協定ができますれば正式の出願ということを通じまして正当な権利関係ができるもの、こういうふうに考えております。
#22
○土井委員 この協定が締結されますれば、いまあるいろいろな問題についても解決の見通しが立つという御答弁でありましたが、日中両国間の貿易の内容を見てまいりますと、国交が回復された一九七二年には往復十一億ドルであったのが、昨年の場合は三十億三千四百万ドルに達しておりまして、一応これは順調な伸びをしておるということが言えるわけです。
 しかし、ここで問題になってまいりますのは、日本からの輸出十六億六千三百万ドルに対しまして中国からの輸入というのは十三億七千百万ドルと、日本側の輸出が約三億ドル超過になっているわけなんですね。日中間の貿易関係というのを安定した形で発展させていくということを考えますと、両国間の輸出入というのが均衡のとれた数量で拡大していくということが最も望ましいということは、これは言うまでもないことでございまして、この輸出入のアンバランス是正のためにはどういうふうな対策が考えられなければならないのでしょうか。中国側というのが日本に対してそういう意味では一体何を要請しているというふうに御理解になっていらっしゃるのでしょうか、この点を少しお聞かせいただきたいと思います。いかがですか。
#23
○枝村政府委員 ただいま先生御指摘のとおり、日中貿易は大体においてわが国の出超ということになっております。しかし、この傾向も、七四年、七五年ごろには六億あるいは七億ドルというふうな日本の出超でありましたのが、七六年には三億ドル足らずというふうに、傾向としては私どもとしてもむしろ改善の方向にあるのじゃないかというふうに思っております。
 今後のことにつきましては、最近話題になっておりますとおり、たとえば日中間に長期貿易取り決めを結ぶというようなことで中国からの輸入を促進する、特に石油でありますとか石炭でありますとか、そういったエネルギー資源というものを重点に置きまして、長期的な貿易の発展を図っていくべきものというふうに考えております。
#24
○土井委員 これは少し今回のこの協定の問題がどのように推移していくかということとも関係があることでありますから、この節外務大臣にお尋ねをしたいと思うのですが、ソ連の革命六十周年に当たりまして、中国の議会と政府は、ソ連の議会と政府にあてて丁重な祝電を送っておられます。また、中国の外相は十一年ぶりに北京のソ連大使館のレセプションに出席をされております。各国駐在の中国大使もソ連側の祝賀行事に参加をしたということも伝えられております。指導者のかわった中国の今後の対ソ関係というのが変化していくのであろうとだれでもがこの問題を注目いたしております。外務大臣としてはこういういきさつについてどのように考えていらっしゃるか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
#25
○鳩山国務大臣 先般のソ連の革命六十周年の祝賀に対しまして、ただいまおっしゃいましたような中国側から儀礼が尽くされたということ、私ども承っております。また、先般符浩大使がポリャンスキー大使を訪問したというような記事を知っておるわけでありますが、これにつきましては、先般の国慶節にソ連側から中国側に対していろいろな祝賀があったというようなことに対するお返しであるというような説明もされたように聞いております。しかし、全般的に見まして今後のソ連と中国との関係につきましていまここで予断をすることは適当でないような気がいたしますけれども、しかし、聞くところによりますと、中国の政府としては大変丁重な祝意の表明があった、しかしまた一方、新華社等のベースではソ連に対する相変わらずの批判が行われておるというようなこともありまして、いまここで、政府で行われている部面とあるいは党という部面で行われていることとどのような分担になっているか存じませんけれども、しかし、いまそれだけで予断をするということは差し控えたいという気持ちでございます。
    〔委員長退席、山田(久)委員長代理着席〕
#26
○土井委員 それでは、ほかにも問題がありますけれども、日本国の地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定ともこれは重複する部面もまたございますので、このいわゆるソ日協定の質問をさせていただく中で再度関連質問を展開させていただきたいと思うのです。
 まず、今回政府が承認を求めておられるソ日漁業協定で、北方領土の問題というのは相打ちになったというふうに私どもは理解してよいのかどうか。また相打ちになったというふうにおっしゃるのならば、その根拠をひとつまずお示しいただきたいと思います。
#27
○鳩山国務大臣 ただいま北方領土問題につきまして相打ちになったかというお話がございます。端的に申し上げますと、北方領土の問題とまた北方領土周辺の海域の問題とあろうかと思います。
 領土問題につきましては、御承知のとおり双方の主張につきまして変更を及ぼさないという趣旨の条項がいわゆる日ソ漁業協定の第八条で設けられたことは、もうこれは御承知のとおりでございます。
 それでは海域の方はどうなんだ、こういうお話になりますと、日ソ協定の第一条におきまして海域の設定があり、また今度のソ日協定の第一条におきまして海域が決められておる。そしていわゆるソ日協定におきましては、漁業水域に対します暫定措置法の定める海域ということになっております。その漁業暫定措置法におきましては、制限なく日本の地先沖合いはすべて含まれる、こういうことになっておりますので、観念といたしまして水域につきましても双方が適用になる、このようになっておるわけであります。
 ただし、現実問題といたしまして、日ソ漁業協定におきまして海域が設定され、そこに日本は入漁をする、こういう形をとっておる。それはソ連が現実におきまして北方四島におきまして現実の施政を行っておる、これのはね返りの現象があるわけでありまして、今後日ソ漁業協定、ソ日漁業協定、これにつきまして、その水域につきましてはこれにつきましても相打ちという形をとっておるわけであります。しかし現実におきまして、日ソ協定におきまして、ソ連が施政を行っておるということのはね返りとして、そこには日本漁船が入漁をいたしておる、こういう形になっておるということでございます。
#28
○土井委員 いま外務大臣のおっしゃいました暫定措置法の問題は、協定の一条で「暫定措置法に従って定められる漁業水域」こうあるわけでございますが、この「従って定められ」た中に北方領土四島というのは含まれるというふうに理解しておいていいのですか。そうしてソビエト側はそのことに対しては了解をいたしておるのでございますか、いかがですか。もう一度その点をはっきりお答えいただきたい。
#29
○鳩山国務大臣 暫定措置法におきまして、北方四島につきまして除外をされておらない、こういうことで含まれるという解釈をとっておるわけでございます。
#30
○土井委員 ソ連側もそれに対しては了解をされているのですね。
#31
○宮澤政府委員 日本側といたしまして明文あるいは明確にその点の了解を求めるということはいたしておりませんが、わが国の暫定措置法の規定上当然の事実でございますので、日本側としてはソ連が当然それを認めたものと解しております。
#32
○土井委員 それは一方的にこちら側がソビエト側は了解されているというふうな理解をされているというふうに客観的にはなっているかもしれないわけですが、いずれにしろ、そういうふうな御答弁です。
 実は、御記憶にもまだ新しいはずでありますが、日ソ協定承認の際にわれわれ外務委員会は決議をいたしております。すなわちその「第二」の「二」というところで、「協定交渉にあたって、我が国の二百海里漁業水城法は北方水域に及ぶことを明確にすること。」となっているのですが、今回のこの協定の何条でそのことが明確になっておるわけでございましょうか。
#33
○鳩山国務大臣 その点は、第一条におきまして、暫定措置法の適用される水域、こういうことで明白にいたしたということでございます。
#34
○土井委員 ただしかし、そうはおっしゃいましても、北方領土について日ソ協定は、具体的な明示でソ連側の線引きというものに対してわが方が認めたという形になっておりますね。ソ日協定というのはもう言うまでもございません、まことに抽象的な線引きでございまして、それに対しての明示すらされていないわけでございます。政府が幾らそのような御答弁をされましても、第三国から見てこれは相打ちだということにはどうもなっていない気配がある。この点をとらえてソ連側が、日本側は北方領土で譲歩したのだというふうに宣伝をするようなことは絶対ないとこれは確認をできますか、どうですか。対外的にソビエト側が、日本側は北方領土でもう譲歩してしまったのだというふうに宣伝をすることは絶対ないということが言えるかどうかですよ。いかがです。
#35
○鳩山国務大臣 北方領土問題が日ソ間に横たわっております最大の未解決の問題であるということはもう毎回事あるごとにわが国として主張をいたしておることでありまして、先方もこの点はもうよく知っておるところでございます。したがいまして、ただいま申し上げましたとおり、第一条におきまして北方四島を含めます海域が指定をされておるということは先方も重々承知をいたしているところでございます。ただ、先方が日本のそのような主張を認めたということは先方としては言わないわけでありまして、先方の態度は、御承知のように、ことしのブレジネフ書記長の文書におきます回答等にも示されておるところでありまして、この問題につきましては未解決の領土問題を解決して平和条約を結ぶということがなければ解決しない問題であるということでございます。
#36
○土井委員 そういう原則論を私はお尋ねしているわけではないわけでありまして、日本側は北方領土についてはもうすでに譲歩してしまったというふうにソビエト側が対外的に宣伝するということ事実に反するわけでありますから、そういうことに対してはそうならないようなソビエト側に対しての対応が一つは日本としてはなければならないと思うわけであります。もちろんのこと、これは基本的にはソ日協定で線引きというものが明示されるべきである、このことは当委員会の決議にもはっきり出されているわけですから、そのことがこのソ日協定の中では明示されることが基本的には大事なんですね。しかし具体的にこれを申し上げますとそうなっていないわけですから、第三者から見たら、ははあ、日本という国はすでに領土問題に対しては譲歩してしまっているのだなと思われる気配が十分にあるわけですよ。そのことをソビエト側が対外的に日本側は譲歩してしまったという意味合いでの宣伝をしないような何らかの措置がなければならないと思うのです、こんな協定の中身では。そこをお尋ねしているのですが、いかがなんですか。
#37
○鳩山国務大臣 御趣旨はよくわかりました。
 この適用水域の問題につきまして、日ソ漁業交渉の際に三カ月にわたりまして折衝をしたわけでございまして、その折衝の経過から申しましても、領土問題を含みますこの問題につきまして両国政府の立場に影響がない、こういう第八条を決めましたときの経過、これから見ましても、先方も重々承知をいたしておりまして、漁業と領土問題は切り離す、そういう了解のもとに第八条が書かれたわけでありまして、その段階におきまして、この問題につきましてはいささかも日本の北方領土問題に対します見解、主張、これが影響を受けることはないんだということで、これは先方も重々承知でありますし、今回のソ日協定の第一条というようなことから、領土につきましての日本の主張が弱められるとかあるいはソ連がこの漁業条約をもとにして領土問題に言及をするということは絶対にないというふうに確信をいたしております。
#38
○土井委員 外務大臣の確信のほどはよしといたしますけれども、いま領土問題を切り離してとおっしゃいますから、特にそれにまた関係をするので大変問題になるであろう前文がございます。
 前文の言っている個所は、日ソ漁業暫定協定の諸規定を考慮し、この文言なんですが、そういう規定をなぜわざわざ挿入する必要があったのかということになってまいります。この条項についてはソビエト側は最後まで固執したということをわれわれは聞いておりますが、この条項の意味するところはそれじゃ一体何なのですか。日本側は北方四島を含むソビエト側の二百海里線引きというものを認めたことを強調したいためではないかということになっているわけでありますが、なぜこういうことになっているか、その点の御説明はいかがですか。外務大臣がいま御答弁になったのですから、外務大臣どうぞ。
#39
○鳩山国務大臣 ただいま御指摘の前文の文面は、御承知のように、日ソ漁業協定におきましては第二条という規定があったわけでございまして、日本がソ連の地先沖合いに入漁する、こういうことは、日本がソ連を日本の地先沖合いに入漁させるということとのバランスの上に立っておるんだ、こういう規定でございます。今回はその日ソ漁業協定との関連におきましてソ日漁業協定が取り結ばれておる、こういうことがお互いの理解でありまして、その趣旨がそこに述べられておる、このように御理解いただければよろしいと思うのであります。
    〔山田(久)委員長代理退席、委員長着席〕
#40
○土井委員 何となく非常に苦しい御答弁でございまして、学校の教科書の検定をパスせんがために、一生懸命にあれこれ考えて教科書を作成する努力と似たようにただいまの御答弁の努力がかいま見えるわけでありますが、これはごりごり押してお尋ねをしても恐らく同じような答弁以上のものはいただけないのではないかと私は思います。これはまだ法眼さんがお見えでございませんから、お見えになった上でお尋ねをすることとも相関連してまいりますから、後に少し質問を譲りたいと思いますが、先にまず、この協定に関係のある少し技術的な点について質問の歩を進めましょう。
 この協定は、暫定的に交換公文によってすでに実施しているわけでございますが、政府の権限の範囲で実施できない条項があると私は思います。どこでございますか。
#41
○大森政府委員 お答え申し上げます。
 ただいま御審議願っております協定におきまして、合意されるところの規定の内容は、事実上、いずれもわが国政府といたしまして、国内法上の権限の範囲内で実施できるものでございます。
 ただ、この協定の第六条三項後段につきましては、ソ連側が、拿捕された漁船及びその乗組員の釈放を希望して、担保として現金等を提供した場合、現行法令の運用により、遅滞なく釈放が行われることは確保し得るというふうに思われはいたしますものの、担保金等の提供による釈放の手続、担保金等の国庫帰属の態様等につきましては、制度の整備が必要とされるというふうに考えておるところでございまして、その意味において立法措置を要するもの、かように考えております。
#42
○土井委員 いま、立法措置を必要とするということをおっしゃいましたけれども、現に政府の権限の範囲内で実施できないとされているこの担保の問題も、実際上は徴収をされているわけでありますね。現に徴収をされていらっしゃるその法的根拠というのは、何に基づいていまやっていらっしゃるわけですか。
#43
○松浦説明員 お答えを申し上げます。
 ただいま条約局長からお話がございましたように、現行の法令のもとにおきまして、十分に実施し得る範囲内において現在の担保金の制度を運用しているわけでございますが、一番の問題の点は、担保金の納入を国庫ができるかどうかということでございまして、現在はそれを預かり金の形でもって運用しているということでございまして、その範囲内におきましては、われわれは合法的に現在担保金を取っているということでございます。
#44
○土井委員 ソ連のその二百海里内の取り締まりについてですが、この所管は一体どこがやっているのですか。それで、その取り締まり船は一体何隻くらい用意してやっているか。また、逆に、日本側の取り締まり船というのは現在何隻ございますか。その点はどうです。
#45
○松浦説明員 先生のお尋ねの点は、まずソ側の取り締まりの状況であろうと思いますが、その点につきましては、現在ソ連邦といたしましては、ソ連邦国境警備隊及び漁業省の魚族資源保護機関がこれに当たっております。この漁業省の組織といたしましては、中央に漁業監督の総局がございまして、この地方監督局がその下にあるわけでございますが、これの公務員が向こう側の監視体制の中に入っております。その現有隻数は、われわれいまのところはつまびらかではございませんけれども、大体漁民等の話によりますと四十四隻程度ではないかというふうに考えます。
 これに対しまして私どもの方の監視の体制でございますが、現在、領海あるいは漁業水域の中におきます外国人の漁業に関する取り締まりは、主として海上における法律の遵守励行を主たる業務といたしております海上保安庁がこれに当たっておられますわけでございますけれども、水産庁といたしましても、わが国の漁船とのトラブル、これを防止するという立場、あるいはわが国の漁業水域内におきますところの外国船の秩序ある操業というものを確保いたしますために、現在、水産庁の監視船六隻、本年度内におきましてさらに二隻追加したいというふうに考えておりますが、この現有体制をもって取り締まりに当たっております。
 海上保安庁の方からは別途御答弁があると思います。
#46
○向井政府委員 お答え申し上げます。
 海上保安庁の取り締まり体制でございますが、海上保安庁全体で保有しております巡視船艇は三百十隻ございます。そのほか航空機三十五機を保有して、全般の業務を行っているわけでございますが、いわゆる二百海里水域と申します外洋上におきまして、行動の十分できますところの巡視船は計九十五隻、それから中型以上の飛行機は二十二機ということになっておりますので、これらが能力的には二百海里の取り締まりに当たっておるということでございます。これらの船艇、航空機につきまして、外国漁船の操業実態を十分勘案いたしまして、効率的な取り締まりを行うべく重点的に配備をいたしておりまして、一例を申し上げますと、最も取り締まりに力を入れております銚子沖以北から釧路沖までの、北方海域と申しておりますが、この海域におきましては、他の管区からの応援派遣も含めまして、常時七隻ないし九隻を張りつけて厳重な取り締まりを行っておる。それによりまして円滑な業務運営の確保をいたしておるというのが実情でございます。
#47
○土井委員 ところで、ソビエト側の罰金に対する基準というのがあるのでございましょうか。それとも、取締官の恣意的な、感情的なものでこの罰金の額が決められていくのかどうか、この点、大変気にかかるところであります。
 片や、わが国の場合は、罰金に対する基準というのがございますのでしょうか、どうでしょうか。この点いかがですか。
#48
○松浦説明員 ソ側の罰金の取り方でございますけれども、確かに先生おっしゃいますように、いろいろな事件を比較総合してみますると、何となくそこに整合性がないのじゃないかというような疑問が起こることは、私どももそういう感じがいたしておるわけでございます。ソ側の罰金につきましては、罰金の調書がとられておりますので、その調書をいろいろと分析してみますると、どうも二つの取り方があるという感じがいたします。
 一つは、一定の違反行為に対しまして一定額をかけてくるというケースと、さらに、これに加えまして、違法に採捕されたということを前提にいたしまして、その魚種につきまして一尾当たり幾らということで掛け算をいたしまして、いわば損害金というような形でもってかけてくるというケースもございます。この後者の損害金の方につきましては、わりあい、調書等も見ますると一定の基準があって、魚価等も計算して出しているという形でございますが、違反行為に対する罰金、定額的なものにつきましては、現在、罰金調書等もいろいろと調べまして内容を分析しておるわけでございますが、その中に必ずしも整合性がないというような事例もございます。しかし、私どもといたしましては、この罰金につきましては、できるだけわが方も納得できるような形で罰金の徴収が行われるということで、実は先般の九月、十月に行いました暫定協定の延長に関する交渉におきましても、イシコフ大臣にその点を私ども指摘をいたしましたし、また、向こう側の監督官に対しましても、どのような基準でかけているかということを問いただした次第でございます。ソ側としましては、はっきりした回答はいたしておりませんけれども、やはり違反の種類、程度というものが前提でございまして、特に監督官が、もちろん違反の事例、事件の内容というものが前提になりますけれども、違反船の総トン数であるとか、あるいはソ側の監督官に対する協力の態度とか、あるいは累犯かどうかといったようなことを基準にいたしまして、一定の幅をもちまして罰金をかけてきているということでございます。
 なお、この点につきましては、われわれも納得できるようなそういう罰金のかけ方をするようにということで、先方に今後とも申し入れをしていくというつもりでございます。
#49
○土井委員 日本側の罰金はどうですか。
#50
○松浦説明員 それでは、日本側の罰金につきまして水産庁の方からお答えいたします。
 日本側の罰金でございますが、わが国の漁業水域内において拿捕しましたソ連船舶につきまして、提供を求めます場合の担保金の額でございますが、これは違反者の出頭を確保するということで、刑事手続を進行させるということのためにまずかけるわけでございますけれども、この額につきましては、当然その違反者が出頭しない場合ということが想定できますので、その場合に、罰金等を科すことができないという場合には、いわば実質的に制裁の効果というものが確保されませんと、非常に俗な言葉でございますが、いわゆる逃げ得ということになってしまうということが考えられます。そこで、外国人の違反者が仮に裁判を受けるとすればこの程度までは科せられるだろうというような罰金額、あるいは没収相当額に見合うような金額までは担保金を定め得るように措置をするということで考えておる次第でございます。
 そこで、このような考え方を基礎にして罰金額を考えますと、具体的には、たとえば違反行為の類型あるいは初犯であるか累犯であるか、あるいは不法な漁獲物の量等を考慮の要素にいたしまして、主務大臣が基準を定めるということを規定しておるわけでございますけれども、これに従いまして違反行為の類型別の担保金の額というものを算出して、これでかけていくということで基準を考えておる次第でございます。
#51
○土井委員 御答弁を承っておると、まことに日本側はきめ細かく類型化をして、どのように罰金を科していくかということを種々考慮されているのに対して、ソビエト側がまことにずさんな罰金の徴収の仕方をいま現状としてはやられておるという感想を、いまの御答弁からでも私は持つわけでありますが、そのソビエト側に罰金をなぜ円で支払うのですか。ルーブルで支払うことが実際上できないのかどうかですね。そして、罰金をなぜ直接ソビエトの取締官に支払うのですか。たとえば民間団体のようなものをつくりまして、そこへ振り込ませるというふうなわけにはいかないんですかね。こういう種々の問題があると思うのですが、この点いかがでございますか。
#52
○松浦説明員 先生御指摘のように、ソ連の水域内でわが方の船舶が不幸にしてつかまりまして罰金を科せられた場合に、現在のところでは自衛手段として現金を所持いたしましてソ側に円で支払っているという事態があることは事実でございます。私どももこのような支払い方法というものが適当であるというふうに考えてはおらないわけでございますが、洋上において直ちに支払いを行いませんと、長時間ソ側に拘束されるといったようなこともございまして、本人はもちろん、家族の方々も御心配なさいますし、とにかく円で支払ってしまうというようなことが行われているということは残念でございます。私どもも実は、このような支払いの仕方というものが適当であるというふうには考えておりません。できるだけこういう方法を是正したいというふうに考えておりまして、何らかの保釈のための保証を現金ではない形でもって与えるということで処理をしてはどうかということで、実は先般九月から十月にかけまして、先ほど申し上げましたソ日、日ソの暫定協定の延長の討議をいたしました際にも、非公式ではございますが、ソ側にその点の打診を行っております。できるだけ速やかにこの話し合いもつけまして、現金で払うことがないような方法というものを見出していきたいというふうに考えておる次第でございます。
#53
○土井委員 その方法をいろいろあれこれ苦労して考えておられるのでございましょうけれども、なかなかこれは、操業されている漁民の方々の、現場でのやむにやまれぬ措置というのが現状においては優先するというかっこうに、どうしてもなっていっていると思うのですね。
 そこで、大蔵省とされてもきょうは御出席いただいておりますが、頭の痛い問題でおありになろうかと思います。これは厳密に言うと、外為法から考えたら外為法違反になることが現に行われているというかっこうなんですね。日本は法治国家ですから、そういう立場からすると、漁民の方々の現状はよく承知はできるんだけれども、しかしこれを放置をしておくわけにはいかない。どのようにこれを解決していくかということに対しては、やはり非常に悩んでいらっしゃるんじゃないかと私は思うのですが、大蔵省は大蔵省で非常に悩んでいらっしゃる、水産庁は水産庁なりに悩んでいらっしゃる、両省庁間のいろいろこの問題に対しての協議がおありになるに違いないと思うのです。参議院でも先日この問題が取り上げられまして、大蔵省としては何らかの措置をこれに対して講じなければならないというふうな御趣旨のほども披瀝をされているわけでありますから、参議院での御答弁をなすってその後、両省庁間で協議の上での進展が何らかあるのじゃないか、私はこう考えましてお伺いするのですが、どういうぐあいにその問題に対して理解をされ、現状はどういうことになっておりますか、ひとつお聞かせくださいませんか。
#54
○橋本説明員 まず外国為替管理法の適用の件についてでございますが、外国為替管理法は、御指摘のように外国に向けた支払いは外貨でかつ外国為替公認銀行を通じて送金するというたてまえをとっておりますので、円貨で直接相手に手渡すという点は法令上想定していないわけでございます。しかしこういう事態でございますので、できるだけこれを弾力的に解釈できないかという点でわれわれ検討しておりますけれども、さらに法令の整備についてもあわせて検討しておるというところでございます。
 御質問のその後水産庁との協議の進展でございますけれども、水産庁の方から私どもに、事情御説明のいろいろ申し出もございまして、私どもも規定の弾力的解釈をその後詰めてまいりましたけれども、今後たびたび起こるケースでございますので、法令の整備もあわせて行っておるわけでございます。
 法令の整備につきましては、外為管理法全体の体系といたしまして、御指摘のように外国為替公認銀行を通ずる送金ということを前提にしておりますので、緊急やむを得ない制度としては別でございますが、一般的に円貨を相手に直接手渡すという行為を法令上体系づけることは大変むずかしゅうございます。したがいまして緊急やむを得ない措置としてはまた別途手当てをしつつあるけれども、理想的には何らかの形で銀行を通ずる送金の方を研究してもらえないだろうか、こういう点もあわせて話し合っておる状況でございます。
#55
○土井委員 ところで、こういう問題、日ソ間が友好関係にない限りは、日ソ間の漁業問題というのも今後いろいろなトラブルが起きることは予想にかたくないわけなんでありますが、外務大臣とされては、このような状況も踏んまえまして、近隣外交ということを特に重要視なすった立場でいろいろお取り扱いをお進めになるであろうと思います。最近外務大臣は友好を求めて近隣諸国と積極的に意見の交換を進めておられますけれども、特に一月上旬に訪ソをされる方針をお固めになっているということがニュースなどでも聞こえてまいっております。この日ソ外相定期協議開催のためという名目からいたしますと、外相協議の中で一体何が問題に当面なるであろう、これは当然だれしも関心の的になってまいります。そこで日中問題というのも議題となるのかどうか。当然私はなってしかるべきだと思いますし、最近の事情からいたしますと、それをおいてほかにないくらいに考えても過ぎていないと思うわけでありますが、いかがでございますか。
#56
○鳩山国務大臣 日ソの外相の定期協議が毎年行わるべきところが大変おくれておるわけでございまして、この定期協議はぜひとも来年早々に行わるべきであると考えておるわけでございますが、まだ日程等、先方との間にはっきりした了解ができておらないという段階でございます。議題等につきましても、これは当然のことながら定期協議の際に平和条約の問題が最大の問題でございます。そのほかにやはり国際情勢につきましていろいろな討議を行いたいと考えておるところでございます。またその他にもいろいろな細かい問題もございますし、これらにつきまして話し合いをいたしたい。国際的な問題としてはやはり日中間の問題、あるいはわが方から関心のありますのは中国とソ連との関係、これらにつきましても見解をただしたいというふうに考えております。
#57
○土井委員 いまの御答弁のとおりで、訪ソされた節やはり中国とソビエトとの関係というものをただされるという、その点は時期的に考えてもいまがいよいよその決断のときということになってきていると思うのですけれども、それなりに大変微妙な問題でもある。したがって、この席から大臣にいろいろ質問をいたしましても、お答えに関してもある点では限界があるということを私は承知の上でお尋ねをしたいと思うのです。
 これはいまおっしゃったとおりであって、日中、日ソという問題に対してやはり一つのけじめというものをはっきり持たないと、日中平和友好条約というものを速やかに締結すべきであって政府の決断はもうそのときが来ているというふうに考えましても、なかなか具体的に事情が整わないということだろうと私は思うのです。いまおっしゃいました中ソの問題について、御存じのとおり一九五〇年の中ソ同盟条約というのがございます。この一九五〇年の中ソ同盟条約というのは、これは現に有効であると思うわけでありますが、現時点でこの条約が事実果たしている役割りというのをどのように見ていらっしゃるか。この中身についてはもういろいろコメントする必要もないかと思いますから、ひとつ大臣の方からまずお答えをいただきたいと思うのです。
#58
○鳩山国務大臣 一九五〇年の中ソ友好同盟条約、これは有効期間が三十年ということで大変長期の条約であったわけでございます。まだ一九八〇年の四月まで有効である、こういう条約である。私どもの理解といたしまして、これは中国側の要人等の発言から従来行われておりますことは聞き知っておるところでございますが、これらの点につきましても名存実亡というような表現も使われておるということも聞き知っておるところでございます。しかしこの問題につきましてそれ以上のことは、これはこれから交渉の進展を図っていく上で、推測を交えて申し上げることはかえって支障を生ずるおそれがありますので、そういう理解でおるというふうに御承知をいただきたいと思います。
#59
○土井委員 また教科書のような御答弁なんですが、きょうは大変お忙しい中をわざわざ法眼国際協力事業団総裁に参考人として御出席をいただいたわけであります。ありがとうございました。
 それで最近法眼総裁がこの中ソ条約の中身について触れて問題にされて、言うまでもなく中ソ条約というのはそもそも対日敵視ということで問題にされていた条約そのものでございますから、日中平和友好条約が締結されればこの中ソ条約についてもそれなりの影響がある。
    〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕
つまり日中平和友好条約締結と同時に中ソ条約というものについてはそれ自身が意味を持たなくなるのではないかというふうな――これは私の誤解であれば誤解も正していただきたいと思いますが、意味の発言をなすったやにわれわれは聞いております。ひとつこの点についての法眼総裁の御意見というのを承りたいと思うのです。
#60
○法眼参考人 ただいまの御指摘のお話は、私は実は友人に頼まれまして一私人として放言をしたわけでございまして、またそういう放言をあちこちでやっておりますけれども、しかしこれは国際協力事業団の総裁としましてこういった公式の場で話をするのは全く権威のないものでございますので、したがいまして、ここでは、せっかく条約の御審議中と存じておりますので、私の権威のない私人としての立場を表明することは私は避けさせていただきたいと思います。
#61
○土井委員 ただかつて、そう言っては大変失礼でございますけれども、法眼総裁は外務事務次官をお務めになったというお立場におありになる。そして特にいま日中平和友好条約について、いろいろそれに関係のある問題がどのように整備されていくことが大切であるか、また好ましいかということが種々ここでの論議にもなっておりますので、また本日はソ日協定、あるいはもう一つ、先ほど私はここに参考人として法眼総裁が御到着になる以前に中国との間の商標に関する協定について質疑をさせていただきました。きょう問題になっている両協定は、日ソ間、それから申し上げるまでもなく日中間についてやはり大事な中身を持っている協定それぞれでございます。時あたかも日中平和友好条約に対していよいよ日本としてはこれの早期締結に向けて決断のときだと言われているわけでもございますから、ひとつそういう意味も含めて、きょうは、最近御発言をされてきた一連の経緯から考えて御意見を賜りたいということで御出席を求めたわけであります。
 そうしますと、事業団総裁ということはここにおいておいて、せっかくでございますから、私人としての御意見ということになってまいりますと、お聞かせくださいませんか。
#62
○法眼参考人 ただいまのお話は私がかつてそういう役職にあった立場に関するお話でございますけれども、これは過ぎ去ったことでございまして、現在は私はこの関係から申して全く私人でございます。したがいまして、私の見解は――私は何もうそを言うわけではございませんけれども、これは私が述べた機会の話であるとかあるいは座談会の記事であるとかいうものはあちこち載っておりまするし、いろいろおしゃべりをしておりますので、そういうものについて御承知を願って、公式の場で権威のない私人がお話をすることはひとつ御免をこうむりたいというのが私の願いでございます。
    〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕
#63
○土井委員 せっかく御出席をいただいたのにそういうことで、ここでの御意見をお聞かせいただくことが大変むずかしいようなただいまのお話でございますから、それはまたときを改めていずれかの機会に、あるいは公人としての立場、あるいは私人としての立場、いずれもあると思いますけれども、ぜひお聞かせをいただかなければならないと思うわけでありますが、しかしもう一たび、これはしつこいようでありますけれども、申し上げれば、国際協力事業団というのはやはり日中関係、日ソ関係に無縁な事業をなすっているわけではございません。したがってそういうことから言うと、いまの日中平和友好条約に対して成り行きがどうなるかということで、決して無関係なお仕事ではないわけであります。だからそういうことからすれば、一見識も二見識もおありになる総裁とされましては、いまもうすでに総裁自身が提示をされている中ソ条約に対して、日中平和友好条約が締結をされた暁にどうなるかというお考えはおありになると思うわけであります。だからそういう読みを持って一つはやはり国際協力事業というものに対しての推進をなすっているお立場もおありになると考えますので、それではその点からひとつお尋ねをしましょう。いかがですか。
#64
○法眼参考人 御指摘の点につきましてただ一点申し上げ得ることは、私どもは国際協力に関する技術協力をやっておりまするから、したがいまして、日本と先方の政府の間の約束ができますと、私どもは実施機関でございますから、その実施として技術協力はどことでもできるというわけでございます。これが私の立場からやや権威を持って申し上げ得ることでございます。
#65
○土井委員 いろいろお尋ねをしましても法眼総裁は、元次官と申し上げてもいまはそのお立場にない、総裁というお立場でと言うと、そういうことは職務からするといまのお答えの必要のないところだ、さらに私人ということになるとこの答えを出すことに適切な場所でない、こういうことで、いずれの立場から申しましても、このことに対してすでに口火を切られ、あちこちで発言をなすっている重要問題についての御意見をことさらここでは一言半句もお聞かせいただけない、こういうことになっているようであります。それはそれといたしましょう。法眼総裁という方はそういう方だということをひとつ認識をさせていただきまして、それならば外務大臣にお尋ねをいたします。
 法眼さんはもうすでに、この日中条約の締結と同時に中ソ条約の対日敵視条項というものが解決されるものと思うというふうな見解を披瀝をされているわけでありますが、法眼さんの見解は見解といたしましょう。外務大臣とされては、やはりこの日中平和友好条約が締結されたときに、中ソ条約にあるところの日本に対する敵視条項、これなどは大変ひっかかってくる問題になるだろうと思うのです。これとの関連性は一体どのように考えたらよいのか、どのように大臣としてはこの問題を理解されているか、ひとつお聞かせをくださいませんか。
#66
○鳩山国務大臣 その点につきまして法眼総裁もいま大変お口がかたかったわけでございますが、中国とソ連との間の同盟条約につきまして何らかの見解が明らかになる必要があろうというふうに私ども考えております。しかし、結果としてどのようなことになるかということにつきまして、これはこれからの交渉の微妙な段階でございますので、そういう問題意識は持っておるということで御了承を賜りたいと思います。
#67
○土井委員 申し上げるまでもなく、日中平和友好条約というものは速やかに締結すべきことというのがいわば国民の声であります。そしてまたその問題に対しての政府の決断の時期はもう来ているというふうに客観的にも考えられているわけでございますが、問題となりますのは、この日中条約を締結した場合にソビエトが一体これに対してどう対応してくるであろうかということが大変問題になることは言うまでもございません。日中と日ソというのを絡ませずに両国双方に対して積極的な友好関係を展開すべきだというのは、言うまでもなく日本の外交のABCなのでありますけれども、しかしながら日中と日ソというのは、われわれとしていかに別でございますと申しましても、中ソ対立が現実の問題としてある限りなかなか理屈どおりにはいかない、われわれの考えどおりにはいかないというところが外交上の大変むずかしい点であり、また非常に苦労される点であろうと思うのです。言うまでもないわけですけれども、これはもう、ひとつ素朴な尋ね方をまずしてみたいと思いますが、日中平和友好条約というものに対してソビエト側は当然反発をしてくるのではないかと思われるわけです。この問題を携えて外務大臣は訪ソされるわけですが、少なくともこの点で苦労して、このように打開していってはどうかということに対して、全部が全部ここでおっしゃることはむずかしいだろうと思いますが、あらましの分析についてのお考えをお聞かせいただきたいと思うのです。いかがですか。
#68
○鳩山国務大臣 日本と中国またソ連との関係につきまして、ただいまおっしゃいましたようにそれぞれ友好関係を積み重ねていく、こういうことに尽きると私は思います。そして現実問題といたしまして、私どもの外交努力といたしまして、あるいは漁業問題もその一つの大きな過程であった。日本とソ連との間の積み重ねということが一番必要である。これらにつきましてどのような形でならばいいかというような御議論もあろうかと思います。しかし私といたしまして、それよりも実際の友好関係ということが最終的に物事の解決になるというふうに考えておるところでございまして、そういう意味で日本とソ連との間の本当の友好関係を積み重ねていくということが必要である、またその方向で努力いたしたい、かように考えているところでございます。
#69
○土井委員 その方向の努力というのは少なくともなければならない努力だと思いますけれども、実際問題、この対応を誤ってまいりますと、対ソ、対中両関係に対して悪影響が出てくる可能性も出てくると思うのです。それで、日中条約を締結いたしますとソビエト側からの何らかの反発があるということを一応覚悟の上でかからなければならないというのは、だれしも考えるところであります。だから、外務大臣の御答弁の中でもそれなりの御苦労の内容があると思うわけでありますが、そうなった場合にどうなるかをいまここでお尋ねをいたしましても、外交上の問題もありますし、これは無理な質問になろうかと思います。しかし少なくとも言えることは、日中条約を締結するその決断をした限りにおいては、ソビエト側からこれに対していかなる反発がございましても、うろたえず、騒がず、あわてずに対応することがどうしても必要だと私は思うのです。このことに対しては、大臣としては大盤石の決意を持ってお臨みになるか、私としてはこれをはっきり確認しておきたいと思うのです。
 それと同時に、それに関係をいたしまして、いま日ソ間においても友好をさらに展開していきたいというお話でございますけれども、北方領土を素通りするようないわゆる善隣友好条約などは絶対に締結すべきでないというのはいままでの日本の外交上の鉄則であったし、この外務委員会においても再三再四外務大臣のお口を通じての御答弁であったわけでありますが、この節においても、日ソ間で起き上がるいろいろな問題がこれから出てくると思いますが、そういう問題に対しての解決の方法の一つのあり方として領土問題を素通りして、それでも仕方がないと言って結ぶような善隣友好条約などは絶対にあるべきはずはない、このことだけを確認したいと思うのですが、この二つのことについて外務大臣ひとつ御答弁をいただきたいと思います。いかがですか。
#70
○鳩山国務大臣 たびたび申し上げているところでありますけれども、日中の国交回復、これは御承知のように日中の共同声明が発せられましたときに、これはもう第三国に対するものではないのだというふうに路線が敷かれているわけでございまして、そういう趣旨で日本とソ連との間につきまして私どもは今回の共同声明それ自体がそのような趣旨に貫かれておるということで、今回の条約交渉がどうなるか、これは中身に入りまして申し上げる段階でございませんけれども、しかし大筋としてこれは第三国に対するものではない、こういう精神は当然貫かれるべきものであろうと考えておるところであります。したがいまして、ソ連との間の問題は私は日本とソ連との間の友好関係を深めるということで、中国との関係、これは全くないものであるということ、その点につきましてはソ連に対しまして、国交回復自体がそういう性格のものであるということを、従来から機会あるごとにたびたび、その点はソ連の理解も求めているところであります。そういう趣旨におきまして、いま御心配の点は私どもも感じてないのではないわけでありますけれども、そういう点につきましては私どもはソ連の理解は十分に得なければならない、かように考えておるのでございます。
#71
○土井委員 終わります。
#72
○竹内委員長 次に、中川嘉美君。
#73
○中川(嘉)委員 ソ日漁業暫定協定につきまして、時間の関係できょうはこの協定のみになるかと思いますが、まず日ソ協定の前文によると、一九七六年十二月十日のソ連邦最高会議幹部会令に規定されておりますとおり、その前文の中で、ソ連の「主権的権利を認め、」というふうになっております。ところが、ソ日協定前文を見ますと、一九七七年五月二日付、漁業水域暫定措置法に基づく漁業に関する日本の「管轄権を認め、」こういう表現になっているわけで、そこで、疑問に思うことは、このソ日漁業協定の前文においてもなぜ日本国の主権的権利を認めというふうな文言を使わないのか、なぜこのように表現の相違があるのか、この点についてお答えをいただきたいと思います。
#74
○宮澤政府委員 ただいまおっしゃいましたように、日ソ漁業暫定協定のもとになりましたソ連邦の最高会議幹部会令、これに「主権的権利」という言葉が使ってあるわけでございまして、「魚類及び他の生物資源に対し、その探索、開発及び保存のため主権的権利を行使する。」これをもとにいたしまして結びました日ソ暫定協定でございますので、日本側がそれを認めたという意味でその言葉をそのまま使ったわけでございます。それから、東京で結びました通常ソ日と言われております協定におきましては、この協定のもとになっておりますのが漁業水域に関する暫定措置法でございまして、この二条に「漁業に関する管轄権」という言葉が使われておりますので、同じくそれをそのもとになっております法律の表現としてそのまま採用をして取り決めにしたということでございます。したがいまして、この「主権的権利」と申しますも「管轄権」と申しますも、いずれもその漁業資源に関する保存、管理等の権利を違った表現で取り入れたものでございまして、それぞれの国の法体系の差異から生じたものでございまして、ただいまおっしゃいましたように、領土権云々というようなことには関係のないものと御了解いただきたいと思います。
#75
○中川(嘉)委員 しかし、どう見ましても「主権的権利」、国家主権にかかわる表現と比べますと、単なる、日本の「管轄権」と言うのとでは、表現の上で私は少なくとも大きな開きがあるように感じるわけで、なぜこのような表現の違いが出てきたかという点に実はいま疑問を持つわけです。しかしながらこのソ連の幹部会令、七七年二月二十四日の大臣会議決定によって北方四島を海図上明示してその適用水域としているわけですけれども、日本の暫定措置法はどうもその点の明確性を欠いているように思うわけです。この点に関して政府はどう考えられるかお答えをいただきたいと思います。
#76
○宮澤政府委員 これはやはり法律の立て方の相違でございまして、ただいまおっしゃいましたように、ソ連邦の大臣会議決定は仰せのとおり線引きをいたしておるわけでございますが、これに対しまして日本の暫定法は、水域でないところを外す、むしろそうでないところを外す、そうでないところは明文で規定しないで当然のこととして規定する、そういう立て方の違いでございますので、この点につきましても日本側は当然日本に属します領土の周辺には漁業水域を設定したわけでございます。
#77
○中川(嘉)委員 法律の立て方が違うということがどうも前提のようですけれども、そういうことで果たして北方領土に関するわが国の主張が貫かれたかどうかということになるわけで、日ソあるいはソ日それぞれの協定が対等のものであるならば文言も同じ文言を使うのが当然ではないか、このように思いますけれども、政府はそうしなかったのか、そのような努力をすら払わなかったのかというような疑問を感ぜざるを得ないわけですが、この点はいかがですか。
#78
○大森政府委員 いまお尋ねの点でございますが、先ほど欧亜局長より答えましたように、ソ連の水域における規制というものについてはソ連の幹部会令に基づく措置ということでございまして、その幹部会令が「主権的権利」という表現を用いていることにかんがみまして、いわゆる日ソ協定においてはその表現を踏襲したわけでございます。
 他方、ただいま御審議いただいておりますソ日協定におきましては、わが国の漁業水域に関する暫定措置法というものを基礎としての規制をわが国が行うということでございまして、この暫定措置法におきましては「漁業に関する管轄権」という言葉を第二条で使っているわけでございます。このように双方の法制の立て方の違いからその表現の違いが出てきたということにすぎないわけでございまして、漁業水域に関しまして「主権的権利」という言葉を使う場合も、また「漁業に関する管轄権」という言葉を使います場合にも、いずれにおきましても二百海里漁業水域におきまして沿岸国が漁業資源の保存、管理を確保するに必要な限度で行使する権限を包括的にとらえているというふうに考えておるところでございまして、日ソ、ソ日の国内法体制の違いから表現が違ってきているということにすぎないのでありまして、規制の実態そのものにつきまして差はない、かように理解しているわけでございます。
#79
○中川(嘉)委員 たとえばソ日協定の前文によりますと日ソ漁業暫定協定の諸規定を考慮してという文言が入っていますけれども、これはまずどういう理由で書き入れられたのかという問題、この文言によって、少なくともソ連側の優先性というものを日本が認めたものと解釈されてはならないと思いますけれども、この点はそれではいかがでしょうか。
#80
○大森政府委員 お答え申し上げます。
 本件協定の前文にあります日ソ協定の諸規定を考慮し、という文言でございますが、この点につきましては、第一には、この協定のそれぞれの規定の作成に当たりましてはいわゆる日ソ協定の規定を考慮したということをまず明らかにしたわけでございます。その結果大部分の規定が日ソ協定と同様の取り扱いの規定ぶりとなっているわけでございます。
 第二には、本件協定はいわゆる日ソ協定第二条の要件を満たしたものとして締結されるということを明らかにしているわけでございます。この点につきましては、先ほど大臣が申されましたように、わが国がソ連の地先沖合いで漁業を認められるということは、ソ連の漁業がわが国の地先沖合いで同様に認められるということを前提とするものであるという協定二条の要件をこの協定によって満たすものであるという趣旨が、前文のこの「考慮し」というところでございます。
 第三点といたしましては、いわゆる日ソ協定の締結によりましてわが国の漁獲が確保されたということをわが方としては考慮いたしまして、ソ連の漁獲をわが国の地先沖合いで保障するためにこの協定を結ぶという、これらの趣旨を含めた意味合いで日ソ協定の「諸規定を考慮し」という規定となったわけでございまして、この表現によりましてわが国が不利な地位に置かれるとかいうことはないわけでございます。
#81
○中川(嘉)委員 私は、ソ連側の強い要請によって日ソ漁業暫定協定の「諸規定を考慮し」、こういう文言が入れられたとするならば、やはりこのソ日協定そのものがすでにソ連側の優先性を認める結果になるのではないかと言いたいわけであります。政府はそれでもなお対等と受けとめるのかどうか、この点もう一度お答えをいただきたいと思います。
#82
○宮澤政府委員 御承知のように、日ソ間の二つの暫定協定は、モスクワにおきまして最初に取り決められまして、その協定の中で、俗な表現で申しますれば、君たちにとらせるから今度はわれわれにも日本でとらせてもらいたい、こういうことを向こうが申しましたので、それは結構だ、こういう同意をいたしまして日ソ協定ができたわけでございまして、その同意を受けていわゆる日ソ協定に二条の規定が入ったわけでございまして、そしてその規定に基づいてこのソ日協定ができた、こういうことを明らかにすることが大きな目的の一つでございましたし、もう一つは、同じようなことを相互にし合うわけでございますので、それを見合ってほぼ類似の協定をつくった、そういう意味も含めてございます。したがいまして、この二つの協定はあくまでも対等の立場で結ばれたものと私どもは考えております。
#83
○中川(嘉)委員 わが国政府はこの日ソ協定審議の際に、第八条、そして暫定措置法とによって北方四島に対するわが国の主張は貫かれているという答弁をしばしば繰り返されたわけですけれども、現にこの水域で裁判管轄権を行使しているのはソ連であるということ、そしてソ連政府発行の許可証なしには日本漁船の操業は認められないのが実情であるということですが、この点について政府はどう説明されますか、お答えをいただきたいと思います。
#84
○宮澤政府委員 この二つの協定は、いずれも日ソ双方が相手国の水域で魚をとり合ういわゆる純粋に漁業のための取り決めでございまして、領土権の確定等を目的としたものでございません。したがいまして、日本側がソ連の線引きを認めましたのは、ソ連が現実に行使している漁業の管轄権の限界としてこれを認めたものでございまして、現実にソ連が管轄権を行使しているということを認めたものでございますので、したがいまして裁判につきましても、それを漁業に関して認めたということでございまして、領土権に関するものとは直接の関係はないわけでございます。
#85
○中川(嘉)委員 政府の言うこの北方四島に対するわが国の主張が貫かれているというよりも、貫かれていないからこそこういった日本漁船のいろいろな問題が起きてくる。政府はそれでもわが国の主張が貫かれていると答弁されるかどうか、絶対にいま御答弁いただいたとおり間違いがないかどうか、もう一度確認をしておいていただきたいと思います。
#86
○宮澤政府委員 領土権の主張につきましては、少なくともこの漁業の取り決めによって私どもは何ら影響を受けていないと確信をいたしております。
#87
○中川(嘉)委員 次に、漁獲割り当ての点についても若干お聞きしておきたいと思います。
 日ソ協定によって日本側が四五%もの削減を受けたのに対して、ソ日協定によってソ連側が削減を受けるのは三二%程度、割り当て率を見る限りにおいては日本は譲り過ぎではないかとも言われておるわけですが、この点について政府はどう考えておられるか、割り当て率についての答弁をいただきたいと思います。
#88
○松浦説明員 お答えをいたします。
 ソ連の漁船に対しまして、あるいはその他の外国の漁船に対しましてわが国の水域内における漁獲量を割り当てます場合には、漁業水域に関する暫定措置法に基づきまして、はっきりとした一つの割り当てにつきましての基準があるわけでございます。その基準と申しますのは、漁業水域におけるところの科学的な根拠を有する水産資源の動向及びわが国漁業者の漁獲の実情を基礎としまして、漁業水域における外国人による漁獲の実情、外国周辺水域におけるわが国漁業の状況等を総合的に考慮して行うということが規定されておるわけでございます。これにのっとりまして、私どもはソ日の協定に基づく交渉におきましても、漁獲の割り当て量を決定するに当たりまして、魚種別の資源の動向、あるいはわが国の漁船がその水域でとっておる漁獲量、あるいはわが国の漁業と競合する状態といったようなことを十分に勘案いたしたわけでございます。したがいまして、わが国の二百海里の水域内で比較的資源の状態がよくないスケソウダラといったものにつきましてはかなり割り当て量を少なくするということをいたしましたし、また一方、わが国の漁業との競合もわりあい少ないし、また資源状態も比較的良好であると考えられますところのイワシ等の浮き魚類について、これをある程度まで実績に近い線で認めるといったような立場で決めたわけでございまして、その中の一つの勘案の事情といたしまして、ただいま先生のおっしゃられました日ソの協定におきますところのわが国に対するソ連の漁獲割り当て量、これも勘案いたしたわけでございます。総合的に考えまして、私ちょっと数字が理解できなかったわけでございますけれども、わが国の実績に対しましてソ側から割り当てられた数量は六四%であるというふうに考えております。これに対しまして、ほぼそれと等しいパーセンテージでございますところの三十三万五千トン、これは五八%でございますが、それをソ側に割り当てることによって交渉を妥結したという経緯でございます。したがいまして、私どもといたしましてはこの法律の基準というものを十分に遵守し、かつ総合的に見まして決してソ側に対してのみ甘い割り当てを行ったというふうには考えておらない次第でございます。
#89
○中川(嘉)委員 この割り当てですけれども、今後日ソ両国で同率の割り当てを獲得することができないものかどうか。相互主義の立場から考えればむしろ当然ではないかと思います。いま魚種別の問題等々いろいろと御説明があったわけですけれども、こういった割り当てについて両国間で同率を目指すことができないかどうか、この点はいかがですか。
#90
○松浦説明員 率というのも二つの基礎になるというふうには考えるわけでございますが、それに加えまして、私どもはやはり魚種の内容、魚種の価値といったようなことも十分に考えていかなければならぬというふうに考えますので、総合的に判断しまして双方が妥当な線で決められている、双方納得いく線であることを確保するということが必要であるというふうに考えている次第でございます。率は一つの要素であるというふうに考える次第でございます。
#91
○中川(嘉)委員 さらに、この北方四島周辺水域を共同管理水域とすることについて、国民は当然なことと受けとめているわけですけれども、こういったことが実際にできるかどうか、政府はむしろそのための努力をすべきではないか、このように考えますけれども、この点がどうか。
 また、相互の二百海里水域内を科学調査をすることによって、それに基づいて漁獲量を割り当てるような、こういった方式はとれないものかどうか、この点はいかがでしょう。
#92
○松浦説明員 お答えをいたします。
 日本の漁船が操業しております水域及びソ側の漁船の操業いたしております水域、いわゆる北西太平洋水域でございますが、この水域につきましては、やはり日ソ双方が利用し合っている水域でございますから、できる限りその資源状態の評価あるいは調査等につきまして、双方が協力し合っていくということは正しい思想であるというふうに考えるわけでございます。
 ただ、漁獲割り当ての決定に当たりまして、当然科学的な調査の基礎に立ちました割り当てが行われるということが必要であるわけでございますが、二百海里時代におきますところの漁獲割り当てというものは、その思想として、やはり基本には、科学的な資源の状態というものを前提にした許容漁獲量というものを前提にいたすわけでございますけれども、一方におきまして、各国の漁船の漁獲の能力といったようなことも勘案いたさなければならぬということでございます。さような状態から申しまして、これも一つの大きな要素として、資源の状態をしっかり把握し、双方で話し合っていくということが必要であるというふうに考えるわけでございます。
 そこで、今回のソ日の漁業交渉におきましても、先ほども御答弁申し上げましたように、一つの勘案の要素といたしまして、資源状態が良好でないスケソウダラ等の資源と、資源状態のよいイワシの資源というものにつきまして、ある程度までそれを考慮の要素に入れまして決定いたした次第でございますし、また、ソ日協定の前に行われました日ソ協定の漁獲割り当てにおきましても、やはりスケソウダラの資源がかなりよくないという状態もございまして、さような点から、大幅にスケソウの漁獲割り当て量が減っているというようなこともございます。さような経緯も考えますと、従来までの交渉におきましても、やはり資源状態というのが一つの大きな考慮の要素になったということが言えるわけでございます。今後の交渉におきましても、やはりさような各魚種の資源というものを前提にした魚獲割り当て量の公正な決定ということは十分に留意をしていくべきだというふうに考えている次第でございます。
#93
○中川(嘉)委員 日ソ両国は、世界の二大遠洋漁業国であって、日ソ漁業長期協定交渉は、いわば二百海里時代の世界の海洋秩序のあり方にも重要な影響を及ぼすものである、こういうふうに思いますが、十一月十日から第二次交渉に入ると伝えられてきたところの、この交渉に臨む日本の基本的な態度について明確にしていただきたいと思います。
#94
○松浦説明員 今回行われました、一九七八年以降の日ソの漁業の関係をどうするかということにつきましては、九月の二十九日から十月の二十日まで、モスコーにおきまして日ソ双方の専門家が話し合いを行いました。その結果、先生御案内のように、日ソ、ソ日の両暫定協定を一年間延長しよう、そしてまたそれから先の問題につきましても、将来話し合っていくべき協議条項を入れて延長しようということにつきまして、一応両国間の専門家の間におきまして合意を見たところでございます。
 これをもとにいたしまして、来る十一月の二十一日からになると思いますが、モスコーにおきましてさらにこの具体的な内容を検討するということに相なると思います。すなわち、一つは、この両暫定協定の延長に伴いまして明年のクォータ等、つまりわが方及びソ側の漁船の各水域における操業の条件を決める交渉をいたすということに相なります。また同時に、協力協定と言っておりますが、二百海里外のサケ・マスの問題、あるいは日ソの従来までやってまいりました委員会をどういうふうにするかという問題、それに双方の国の漁業の協力の問題を内容といたしました協定をつくろうという話し合いをいたしておるところでございます。
 わが方の態度といたしましては、当然漁獲量につきましては従来の実績をできるだけ確保するということで臨みたいと考えておりますし、またわが国の二百海里内につきましても、これからわれわれの二百海里というものを非常に大切にしなければならぬという時代が来ておるわけでございますから、この資源の動向等も十分考え、またわが国の沿岸漁民との競合の問題ということにつきましても十分に留意をいたしまして、クォータ等の交渉を終えたいと考えておる次第でございます。
 また、協力協定の問題につきましても、できるだけ日ソ双方が漁業の面で協力をし合いまして、北西太平洋の水域におきまして双方の漁業がさらに発展するように考えてまいりたいと考えておる次第でございます。
#95
○中川(嘉)委員 伝えられるところによりますと、第一次交渉で、日本側が期待した成果の半分も上げることができなかったように言われておりますが、時間の関係で、最後に外務大臣に伺いたいと思います。
 第二次交渉については、漁獲割り当て量とかあるいは二百海里外のサケ・マスの取り扱いを決める交渉になるというふうに思いますが、当然これは長期に難航することが予想されるわけで、この際一時的な無協定状態が生じたとしても、政府はソ連との善隣友好を傷つけないように配慮しながらも、粘り強い交渉を続けることを国民が期待をしていると思いますが、このことに対する大臣のお考えを最後に御答弁をいただきたいと思います。
#96
○鳩山国務大臣 漁獲量の問題につきましては、前回、一九七七年の漁獲量の決定の際に時間切れに近いような情勢であったということもございますし、そういった意味で、今回の漁獲量の決定につきましては、漁民の立場も考えて十分な粘り強い交渉をいたすべきもの、かように考えております。
 なおまた、サケ・マス等につきましては、漁期は春過ぎになるわけでありますけれども、これにつきましても、しかし粘り強い交渉をしてもらいたい、かような決心でおるわけでございます。
#97
○中川(嘉)委員 私が申したように、一時的な無協定状態が生じてもという表現を私はしましたけれども、そのぐらいのかたい決意をもって当たられることを強く要望いたしまして、時間が来てしまいましたので、一応きょうのところはこの程度にして、質問を終わりたいと思います。
#98
○竹内委員長 この際、暫時休憩いたします。
    午後零時二十九分休憩
     ――――◇―――――
    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕
ソース: 国立国会図書館
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