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1977/10/07 第82回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第082回国会 本会議 第4号
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1977/10/07 第82回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第082回国会 本会議 第4号

#1
第082回国会 本会議 第4号
昭和五十二年十月七日(金曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第四号
  昭和五十二年十月七日
    午後二時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑  (前会の続)
 国立国会図書館の館長の任命承認の件
    午後二時四分開議
#2
○議長(保利茂君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)
#3
○議長(保利茂君) これより国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。浅井美幸君。
    〔浅井美幸君登壇〕
#4
○浅井美幸君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、内政、外交一般について、きわめて重点的な課題を取り上げ、福田総理に提案を交えて質問いたすものであります。
 一般質問に入る前に、日航機乗っ取り事件並びに日航機墜落事故について質問いたします。
 まず、日航機乗っ取り事件に対する政府のとった異例の措置については、われわれも断腸の思いをいたすものでありますが、百四十余名の人質の方々の生命の安全が守られたことはまことに喜ばしいことであります。しかし、政府はその法的責任を負わねばなりません。昭和五十年八月の日本赤軍のクアラルンプール事件のときも、政府は犯人の要求に屈して例外中の例外として超法規措置をとったことからも、事件発生と政府の措置が悪循環していることは明らかであります。したがって、問題は、クアラルンプール以来政府は公約した再発防止にいかなる努力を重ねてきたのか、この際、政府は具体的にその内容を明らかにしていただきたいのであります。
 同時に、今回の事件発生が、いままで批准された航空機に係る犯罪防止関係の条約及びこれを受けた国内法だけでは防止できないことをあらわしております。
 また、昨年二月の国際刑事警察機構主催の組織暴力犯罪に関するシンポジウムでは、このような犯罪を起こす組織グループ構成員についてのリストを発行し、加盟各国がその掌握と情報交換に努めることを決議されたと伝えられております。
 このような国際的な動きの中で、政府は、いまこそ事件再発防止のため具体的な対策を示し、国際協力をどの国よりも積極的に推進すべきでありますが、いかなる措置をとるのか、お答え願いたいのであります。
 また、今回クアラルンプールにおける日航機墜落事故で亡くなられた方々及びその遺族の方々に心から哀悼の意を表するものであります。
 目下その事故原因は調査中でありますが、本来、航空機の航行、離着陸の安全確保は、航空機それ自体の安全対策とともに総合的に追求されるべきであります。そこで、現状と今後の具体的な対策について政府の方針を明確にお答え願いたいのであります。
 さて、わが国が直面している国民的課題は、五年越しとさえなった深刻なる長期不況を一日も早く克服することにあり、同時に、高度成長が残した経済的社会的諸矛盾とひずみを解消しつつ、わが国経済を速やかに安定成長への軌道に乗せることであります。
 政府税制調査会は、去る四日、赤字財政を再建するため一般消費税導入を考えねばならないとして、中期税制答申をまとめたのでありますが、わが党は、このような消費税は窮迫している国民生活に決定的打撃を与え、企業倒産を促進し、不況の一層の深刻化を招くものであり、党の総力を挙げてこれに反対する決意であることを、まず総理に申し上げるものであります。(拍手)
 以下、消費税につき次の諸点について総理の見解を伺いたいと思います。
 まず第一点は、この新税は国民総支出の半分を占める個人消費の減少に一層拍車をかけ、最終需要の不振は不況促進の重大な起爆剤となること、第二点は、この新税は、言うまでもなく、消費者に転嫁され、消費者物価の暴騰につながること、第三点は、一般消費税は大衆の生活必需品に課税されるわけで、大衆負担の増大、さらに逆累進税となり、著しい不公平税制となること、第四点は、この新税が創設された場合、各企業は節税のために、たとえば外部との取引を内部化させるため下請企業の企業内部化が行われるなど、商取引秩序に重大な混乱が発生することにより中小企業に多大の損害を与えること。以上四点について明確に総理の見解を承りたいのであります。
 私が経済問題の冒頭にいきなり一般消費税問題を取り上げましたのは、いま申し上げたとおり、一般消費税そのものがきわめて反国民性の強い税制であるとともに、この新税にこそ政府の姿勢が強く象徴的にあらわれているからであります。
 すなわち、財政再建を考える場合、財政そのものの見通し、税収面における不公平税制の見直し、歳出面における冗費、すなわちむだの徹底的な見直しなどにつき、国民の理解できる措置がまず必要でありますが、それを小手先のごまかしとさえ非難されるやり方で、いきなり大衆への増税に結びつけてしまう発想にこそ問題があると申し上げたいのであります。(拍手)
 わが国は、いま外からは国際収支の大きい黒字を責められ、内にはマクロとミクロの乖離に象徴される業種、企業間景気差、その拡大の中で、不況・倒産、失業・求職難、稼動率の低迷、需給ギャップの定着等が五年越しとなり、先行きの不透明によって企業設備投資は冷え切ったままであり、一方、家計消費は可処分所得の伸びの低下と消費者物価高騰で低迷したままであります。
 このような現状に対し、福田内閣は旧態依然たる経済運営を踏襲するのみであり、あえて国民の側に立つ政策、制度の改革を避け、加えて、累積する国債残高からの財政再建策を増税によって賄おうとしているのであります。
 その政策の本質は、国際経済社会の歴史的な変革期に対処する政策を持ち合わせず、財政欠陥をまず金融機関からの借金、すなわち国債で賄い、次に国民のふところを当て込んで、増税で財政を賄おうとすることにはかなりません。
 しかも、財政による景気対策は単年度ごとに行われており、長期停滞の日本経済の先行きに自信と確信を持たせるものになっていないばかりか、その中身もびほう的な政策、すなわち単にほころびを縫い合わせるような間に合わせ的な政策に終始して、企業の経営見通しを混迷に陥れ、国民生活を不安に追い込むだけであります。このような政策を踏襲する限り、日本経済を救うすべもない破綻に追いやる危険性がますます濃厚になると言わねばなりません。
 したがって、この現状を打開する方途は、次の基本的方針に要約されると考えるものであります。
 第一は、日本経済の現状とここに立ち至った原因を明確に国民の前に明らかにして、理解を得ることに誠意ある努力をすること。
 第二は、これまでの高度経済成長のために積み上げてきた政策、制度を大胆に改革することであり、その主題としては、現在の経済的、社会的不公正を是正することであります。
 この二つは、いわばこれまでの時代の政策、制度の総洗い直しであります。この前提に立ってこれから何をどうするかを明らかにすることであり、そのため、新しい政策を積み上げる目的とその事前評価を国民の前に明らかにすることにほかなりません。
 第三には、以上を前提として、国民諸階層に支えられ、幅広い底辺に支えられた新しい経済を築くということであり、また、国民の公平な負担によって国民の足元からの経済復興と財政再建を図るということであります。
 わが党は、こうした基本方針に立って、現状打開の政策の中軸を、住宅、学校、幼稚園、保育所、子供の遊び場、小公園、病院、保健所、社会福祉関係諸施設、上下水道、河川改修、生活道路、交通機関等国民生活と最も密接な関係にある国、地方の公共事業を、思い切った生活関連公共投資に置くべきであると主張し、生活関連社会資本充実の中期計画大綱をすでに提案しております。
 それは、中期展望に立つ不況打開のための内需主導型経済への転換を示すとともに、国民福祉の充実と経済成長を一体化し、国際社会からの厳しい要請にもこたえ得るものであります。
 この計画事業の整合と財政投資効率を上げるためには、事業実施の順位が必要であり、まず用地費を要しない、または事業費に占める用地費が低率の事業を優先して実施する、そして国の国土利用計画、地方自治体の土地利用計画、都市計画事業、シビルミニマム計画等との組み合わせによって整合をさせることであります。また、財政投資の面からは、建設国債、地方債を通じ個人消化の分野を拡大すべきであります。
 さらに、この政策実現のためには、公共事業用地の確保と地価高騰の防止対策が不可欠であります。そのためには、国土利用計画法に基づく国、地方自治体の土地利用計画等、都市計画法に基づく都市計画事業、シビルミニマム計画による公共施設立地と組み合わせることを前提にして、事業用地を確保することです。
 その順序としては、まず国、公有地の利用を優先するものであります。さらに、この際、事業計画の該当地域に所在する法人所有の一定規模以上の未利用地については、公共投資の展望から見て必要と判断されるものについて、景気対策の意味をも含めて、次の条件によって国が買い上げることを検討する必要があると考えます。
 具体的に申し上げるならば、支払いは十年償還の土地国債、すなわち交付公債によるものとし、買い上げ価格は取得価格に年利分五・五%程度を加算した額、国土庁公示の標準地価、計画時点の地価、このうち最も低い額とし、買い上げについては現に当該土地購入の債務を持つ法人に配慮し、当該土地に対する債務を有する銀行への借入金返済については、当該交付公債を充当するようにすべきであります。また、国は当該買い上げ土地については一定率を個人持ち家の住宅用地とし、賃貸宅地として供給し、その賃貸収入は交付公債の償還に充てる等であります。
 以上のわれわれの提案に対して、総理の誠実かつ実直な所信を承りたいのであります。(拍手)
 さて、具体的な問題として、今年度当初予算に重点的に盛り込まれた公共事業が、年度の第一・四半期に前倒しで執行されたにもかかわらず、所期の景気効果が上がらず、そのため、今回この国会において審議する補正予算が組まれることになったのでありますが、これによって果たして内需を拡大し、国際収支の増勢を抑えて、実質六・七%の経済成長を達成することにつながるであろうか、とする疑問についてただしておきたいのであります。
 総理、かつて五十年度、五十一年度の両年度における政府見通しの経済成長率達成は、補正予算の財政支出の効果というより、第四・四半期における輸出の伸びによるものでございました。もし本年度も過去と同じ轍を踏むならば、その際の諸外国からの強い外圧は、わが国経済にますます悪影響を及ぼすことは明らかであります。
 そこで、国民が知りたいことは、よしんば六・七%成長が達成されたとしても、その結果、第一点、需給ギャップはどうなるのか、第二点、稼働率はどの程度上昇するのか、第三点、雇用問題、特に有効求人倍率はどう変化するのか、第四点、倒産の危機は遠のくのかどうか、それぞれの問題について総理の見通しを具体的にお答えいただきたいのであります。
 次に、政府の総合経済対策の柱となっている住宅対策でありますが、今回の追加で、住宅金融公庫個人住宅向け融資枠を十万戸ふやしております。しかし、実際に公庫の融資を得て自分の家を持てる人は、すでに土地を持っておる人か、もしくは住宅購入のために必要な頭金三百万から五百万円を調達できる人に限られている現状から、追加分の建設戸数は五万戸程度にとどまるであろうとさえ言われております。そこで、サラリーマンヘの住宅供給と住宅建設計画数を現実に結びつけるために、一般ローンの貸出金利にしても、公庫分と合わせて五%台をキープするよう利子補給すること、そして宅地、住宅供給と購入者の負担を軽減して住宅の需給を円滑にするために、税法上の措置をとる必要があると考えますが、これに対する見解を伺いたいのであります。(拍手)
 さて、政府の誇る総合経済対策に対する国民の不満は、生活設計や不時の準備のためにする定期性預貯金、これが公定歩合の大幅引き下げに伴い、二度の預貯金金利の引き下げで大幅な貯蓄目減り、すなわち犠牲を強いられていることであります。国際収支対策、企業経営の金利負担軽減からの公定歩合の引き下げは一応肯定されるとしても、国民大衆の預貯金金利が大幅に引き下げられることはとうてい納得できないのであります。
 したがって、この際、政府は、少なくとも既往のマル優扱いの定期性預貯金の継続に対しては、預金者を的確に把握して、従来金利を確保することを要求するものでありますが、率直にお答えいただきたいのであります。
 次に、総理は、卸売物価の落ちつきを根拠として、消費者物価も安定基調にあると述べ、消費者物価の本年度中の上昇を七%台に保つことを表明されたが、年度間平均八・四%の上昇が果たして安定と言えるかどうか。また、生活必需物資の価格安定策の推進を所信表明で述べておられますが、引き続きの円高の情勢にもかかわらず、一向安くならない輸入品に国民から強い不満があります。現実には何ら効果ある対策が加えられておりません。政府が推進を約束される対策と、その確信ある効果予測を明確にお答え願いたいのであります。
 さらに、消費者物価に最も影響力を持つ公共料金の値上げ問題についてでありますが、広く国民経済の視点に立って、その波及するところを十分に事前評価して判断すべきであり、一面的な考えと手法で引上げをすべきではないと強く主張するものであります。(拍手)
 国鉄財政は、昨年の五〇%に及ぶ値上げにより著しい乗客の国鉄離れをもたらし、膨大な赤字を計上し、政府の国鉄再建計画は、その初年度から破綻を来しております。したがって、本国会で運賃値上げ法案を審議する意味はまさに失われており、政府は、再建計画を抜本的に改め、国民に提示すべきであります。
 また、健康保険の国民負担の引き上げも同様であり、医療費の増大の中身について抜本的な改革を図らないまま、被保険者の負担で財政のつじつまを合わせることは納得できません。さきの臨時国会でわれわれが提案した保険制度の段階的統合策を初め、制度の抜本的改正について、その考えとするところをお答え願いたいのであります。
 さて、今日、構造不況産業の窮状はかつてない深刻な状態にあります。構造不況産業は、高度成長期に設備拡張を大胆に行い、今日では需要の極端な落ち込みを見せております。景気循環的要素はあるものの、多大な余剰設備を抱えている産業、発展途上国の追い上げで国際競争力が維持できなくなった産業、エネルギーコストの製品価格に占める大きさがきわめて大きく国際競争力を失っている産業、さらに、ますます円高基調のため深刻な打撃を受けている中小貿易産業等が挙げられます。それぞれの企業のみずからの生きるための努力は必要でありますが、約四百万人と言われる構造不況産業の勤労者の数から見ても、よほど積極的な対策を行わない限り、大量の離職者の発生を避けることはできません。これは、これからまさに深刻な社会問題となることは明らかであります。(拍手)
 この際、政府は、構造不況産業のそれぞれの特質を立て分け、当面の対策とその後の経過的対策の方途を明確に示すことこそ、景気回復の上からもきわめて重要でありますが、その具体的施策の方針を示されたいのであります。なかんずく、雇用安定対策は、今後の日本経済と労使問題の関係において最重要課題であると言わねばなりませんが、政府はいかなる具体策を用意しているのか示されたいのであります。
 構造不況産業の特定業種指定を初め、失業予防のための企業努力に対する国の助成措置を充実し、事業転換等雇用調整事業の指定期間延長と雇用調整給付金制度の弾力的運用、事業転換等雇用事業費の国の助成負担など、さらに基本的な問題として、残業時間の短縮、週休二日制の自主的努力促進による人減らしの防止と新規採用、離職者職業再訓練と企業に対する雇用促進助成等就職促進対策、構造不況業種に依存してきた特定地域に対する公共事業等による特別措置、また特定業種離職者の生活保障対策等について、今後いかなる施策を実施されるのか、その具体的な方針を明示されたいのであります。(拍手)
 なお、雇用対策法に基づいて昨年六月策定された第三次雇用対策基本計画の全面改定の必要が、今日、労働四団体からも強く要求されております。政府は改定の意思があるかどうか、あわせてお答えいただきたいのであります。(拍手)
 また、中小企業全般の対策にしても、今日の窮状に対処するためには、中小企業倒産関連防止保険の創設、下請代金支払遅延等防止法の改正とその運用強化が急務であると言われております。これについてどうお考えなのか、聞かせていただきたい。
 さらに、政府系融資機関の運用についても、企業の経営内容によっては、既往の債務に対する返済期間の延期と利下げを断行すべきでありますが、この点もあわせて御答弁いただきたいのであります。
 次に、本格的な二百海里時代を迎え、日本漁業は多くの問題に直面し、根本的な見直しと転換が迫られておりますが、日本漁業の将来について政府はいかなる展望、構想を持っておられるのか、承りたいのであります。
 また、当面している北洋漁業救済についても、その減船補償対策、漁業離職者特別措置についてこれを法制化して万全を期すべきでありますが、政府の決意のほどを伺いたいのであります。
 以上、私は、政府に景気対策と補正予算に関連する問題についてきわめて重点的に質問いたしました。そのいずれもが五十三年度予算の方向性を裏づける展望と密接な関係を持つものであります。
 しかし、伝えられるところ、五十三年度予算案は、財政再建策を最重点とし、財政危機の中で歳出のゼロからの見直しをしようということであります。これについては私は異論を唱えるものではありません。しかし、福祉、教育関係予算等の実質的削減が図られ、その一方で防衛予算の堅持増額が図られるようなことは断じて許せないと思うのであります。
 総理、歳出削減において国民に協力を訴える前に、まず手をつけるべき課題は、総理が国民に公約した行政改革を断行し、経費の節減をまずみずからが図り、簡素で機能的な行政を実現することであります。総理の明言にもかかわらず、いまや竜頭蛇尾に終わろうとしている行政改革で、一体政府は行政経費等の削減目標を何%に置いておられるのか、この際、明確に国民の前に示されたいのであります。
 これと関連して、自民党総裁としてのあなたにお聞きしておきたいことは、国会に行政改革特別委員会を設置することを提案いたしたいと思いますが、いかなる見解をお持ちであるか、お答えいただきたいのであります。(拍手)
 また、国民の納得する財政運営を可能とするためにも、福祉ビジョンを政府の責任において策定し、通常国会の審議の対象とすべきことを要求いたしますが、総理の見解を承っておきたいのであります。
 さらに、今後の日本経済にあっての省エネルギー対策とエネルギー需給対策についてでありますが、この体制の確立は、まさしく焦眉の急を要する重要な課題であります。
 われわれは、国会にエネルギー資源特別委員会を設置し、また国民の間でその世論を喚起し、問題解決の合意形成とそのプロセスを確立する必要を痛感するものであります。とりわけ特別委員会の設置について総理・総裁としてどのようにお考えなのか、その所信を明確にお答えいただきたいのであります。(拍手)
 次に、外交問題に質問を移したいと思います。
 総理、あなたは所信表明の中で、東南アジア諸国歴訪の意義と成果をマニラ宣言に集約して述べられました。しかし、総理、問題は、この宣言をいかに実行するかであります。これまでの政府発言とその実行の間にはきわめて大きな隔たりしか存在し得なかった。現に、これまで日本が行ったという経済協力は、日本企業の利潤追求にのみ終わり、援助の手も、民族の自由と民主的な繁栄の芽を摘むものと受け取られてきております。政府はこうした過去の教訓を十二分に踏まえ、名実ともに宣言を実行に移すべきことを要求するものであり、総理の決意を伺いたいのであります。
 さて、日中平和友好条約の締結については、日中国交回復満五年を迎えた今日、さきの総理の所信表明においてもなお条約締結の見通しは示されず、はなはだ遺憾な状態にあります。
 私は、過日、中国に赴き、中国の要人との会談もいたしてまいりました。中国側は、日本政府が共同声明の覇権条項をそのまま条約本文に入れる決断さえすれば一秒間で協定ができるとまで明確に言い切っております。
 福田総理、あなたも共同声明は誠実に尊重すると常々宣言してこられました。しかも、国民も支持しており、双方にとって満足のいく形と福田総理は言われておりますが、何が現在不足なのか、総理の明確な見解を求めるものであります。(拍手)
 総理、反覇権条項は、共同声明に明記された日本政府の厳たる公約であり、いまこそ日中平和友好条約の早期締結は歴史の流れと言うべきであり、ここにわれわれは総理の決断を強く促すものでありますが、総理の決意のほどを承りたいのであります。
 また、日ソ関係について、とりわけ日ソ、ソ日漁業長期協定交渉については、政府演説できわめて抽象的にしか触れておりません。同時に、日ソ平和条約交渉に取り組む福田内閣の姿勢は、ソ連の基本的姿勢である、領土問題は解決済みの壁に阻まれたままであると国民の目に映っております。どのようにその進展を図ろうとされるのか、これらについて政府の確信ある所信を明らかにされたいのであります。
 最後に、日韓関係については、日韓両国の真の友好と健全なる相互互恵の経済関係の発展を図らねばならないと考えるものであります。そのためにも金大中氏事件や政治献金事件を初めとする一連の疑惑は、是が非でも早期に一掃させねばなりません。
 しかし、この問題に対する政府の対応は、今日まで臭い物にふたのたとえに終始してきたのであります。この姿勢にこそ、日韓問題をわが国における一大政治問題と化してきた最大の原因があることを総理は自覚すべきであります。改めて日韓両国間の不明朗な疑惑を一掃することについての決意を伺いたいのであります。
 以上、私は、わが国が当面する諸問題の中から幾つかの重点事項について質問いたしましたが、総理の誠意と責任のある答弁を要求いたしまして、代表質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕
#5
○内閣総理大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。
 一昨年のクアラルンプール事件以後どういう努力をしたか、こういうことでございますが、出入国の管理規制の強化、それから国際不法活動防止のための国際協力の強化、ゲリラ組織等の解明調査、それから刑務所における関係収容者に関する情報の収集、管理体制の整備、それから在外公館における取り締まりの強化などを進めてきたわけでありますが、その対策の十分でないままにまた今回の事件となった、こういうのが実情でございます。
 問題は、本当に今回の事件を教訓といたしまして、再びこのような事件を起こさないということを必ずやってのけなければならぬ、このことにあると思うのです。
 政府は、あの事件が一応段落を告げたというその時点におきまして対策本部をつくりました。そうして一昨日、その初会合をやりまして、その席上で私は、これはもう鉄は熱いうちに打たなければならぬ、もうのど元を過ぎても熱さを忘れず、一カ月以内に、つまり今月中に結論を出して、てきぱきとこれを実行する、このように要請をいたしたわけでございますが、今度こそは徹底的な準備をいたしまして、その実を上げてまいりたい、かように考えております。
 また、墜落事故の対策についてのお尋ねでございました。とにかくあれだけ多数の死傷者を出しましたことは、まことに残念至極でございましたが、問題は、マレーシア政府と協力をいたしまして、あの原因調査を急ぐことである、こういうふうに考えます。またその原因調査の結果を踏まえまして、そのようなことが再び起こらないように、なおまた、さらにその他各般にわたりましてこのような墜落事故というようなことが発生しないような努力、工夫をする。政府は航空会社の監督官庁でございまするから、監督官庁としての立場におきまして全力を尽くすつもりでございます。
 次に、経済問題に触れられまして、まず一般消費税問題についての御所見でございました。確かに一般消費税を導入いたしますれば、それだけ個人消費が減退をする、そういう影響はあるでしょう。また消費者物価が暴騰しやしないかという御心配が述べられましたが、一方において購買力を減殺するのでありまするから、これが直ちに消費者物価の暴騰につながるというふうには私は思いませんけれども、とにかく消費者物価に与える影響問題というものもありましょうと考えます。
 また、大衆課税じゃないかという議論、これはいつも消費税については行われる議論であります。そういうようなことはありまするけれども、とにかくこれからのわが国の財政事情というものを考えてみますと、特例公債、これがまだ二、三年続きそうな傾向があるのです。しかも公債依存度が財政需要のとにかく三〇%になんなんとしておる。このような状態に、見当なしに進んでおったら、これは日本の社会の根底が覆されるのです。それを一体どうするかというと、道は、歳出をできるだけ抑える、こういう問題があるわけであります。これは当然であります。
 同時に、歳入面におきましても何らかの工夫が必要である。自然増収だけではとても片づきません。そとで、税制調査会においては苦心いたしまして、いろいろ検討をし、結論を出したのでございまするけれども、所得税の増税は、必要なことではあるけれども、どうもなかなかむずかしい状態じゃないか。さすれば、一般消費税という方法は有力なる手段として浮かび上がってくるのではないかというような見解を打ち出しておるわけなんであります。まだこの考え方も、一概に一般消費税ということでなくて、中小企業に対しましては特別の配慮をしなければならぬとか、いろいろ細かい工夫も加えての見解でございまするけれども、国家財政の今日の状態から見て、この一般消費税論というものは一つの考え方である、私はこういうふうな感じがいたします。しかし、税制調査会が申し上げておりまするとおり、これは、これをすぐ直ちに実行すべしというのではないのです。これは諸般の情勢を見まして、諸般の情勢というのは、私は、恐らく景気の情勢がありましょう、物価の情勢がありましょう、それからさらに財政事情というものもありましょう、それらを見てということであろうと思いまするけれども、それらの状態を見まして、政府が、その採用の時期、内容についてはその都度検討せられたい、こういうことでありますので、政府におきましても、これが実行の内容と時期につきましては慎重に検討し、慎重に配慮してまいりたい、このように考える次第でございます。
 また、浅井さんは、これからの財政の運営、そういうことを考えますと、何よりも考えなければならぬことは、これは不正平の税制、これを直せということであるということを力説されたわけであり、また同時に生活関連投資を拡大すべしということでもあります。不公平税制と言われる税制、これにつきましては、前の通常国会におけるいきさつもこれあり、五十三年度の段階におきましては、でき得る限りの検討をいたしましてこれが是正に努めたい、かように考えておる次第でございます。
 また、生活関連の社会投資を充実すべしという議論につきましては、これは私は全く同感で、浅井さんから言われるまでもありません。前々から私の方からも言っていることなんであります。今回の補正予算におきましても、住宅その他生活関連投資、これを中心にいたしておることは御承知のとおりでございます。
 また、一つの提案といたしまして、宅地を購入するに交付公債をもってすべし、こういうようなお話でありましたが、購入しようと思いますれば、交付公債を出すまでも実はないのです。これは、地方公共団体が土地利用計画法に基づきまして、強制購入をすることもできる道があるわけなのでありますが、ただ、この地方財政も非常にいま困窮な状態でありまして、それを購入する、たとえ交付公債にいたしましても購入をするという意欲が旺盛であるという状態ではありませんし、土地だけ購入いたしましても、またその上にいろいろ施設をしなければならぬ。それだけの財政の余裕があるという状態でもありませんので、なかなか土地利用計画法に基づくその条項の発動がないという状態でありますが、せっかくの御提案でありますので、よく考えてはみます。
 なおまた、浅井さんにおかれましては、六・七%成長が実現されました場合におきまして、一体需給ギャップはどうなんだ、稼働率は一体どうなんだ、有効求人倍率は一体どうなんだというようなお話でございますが、率直に申し上げまして、今日の経済情勢は全体としてはだんだんとかさ上げの状態にあるのです。ところが、企業間にギャップがありまして、さあ稼働率の非常に高い業種があるかと思うと大変低い業種もある、あるいは需給ギャップを上回っておるという逆ギャップのあるような状態の企業もあればギャップの大きなものもあるというので、この六・七%成長下におきまして、さてその需給ギャップがどうなる、稼働率がどうなるということは非常につかみにくいのです。これは御理解願えると思うのですが、それでもとにかく国会でいろいろ御質問があるかもしらぬから計算してみろというので、政府当局では計算はいたしております。そして試算も私のところに報告はされておるのでありますけれども、もう試算の程度でありまして、本会議のこの席上において御披露いたすのは適当でない、かように思いますので、この点は御勘弁をお願いしたい、かように存ずる次第でございます。
 また、民間の住宅ローンにつきまして、利子補給して公庫並みの利率にしたらどうだというようなお話がありますが、そういうことになれば公庫というものはもう必要がなくなってしまうのです。公庫が存在する理由のものは、自力では住宅を建てられない、何がしかの他からの資金援助を必要とする人にその資金を供給しよう、こういう制度でございます。したがいまして、自分が力があって住宅を建てようという、そういう人に金利が公庫並みの住宅ローンを供給するという必要はないのじゃないか、このように思うのであります。しかしながら、持ち家需要の非常に多いことにかんがみまして、しかも資金が足りないという方に対しましては、住宅公庫の融資を大幅に拡大をする、こういうことをいたしておるわけで、私はこの考え方は妥当な考え方である、かように考えておる次第でございます。
 また、宅地、住宅に対しまして税制上の優遇措置を講ずべし、こういうお話でございますが、これも同様の理由によりまして、なかなかむずかしい問題かと思うのであります。
 それから、少額預金者の貯金金利の問題でありますが、これは午前中参議院でもお尋ねがありまして申し上げたのでありますが、とにかく消費者物価が七%台だ、こういう現況におきまして貯金金利が五・二五%になる、これは私は本当に残念なことだ、こういうふうに思うのです。私も貯金者の立場を考えますると、非常に心痛を覚えるような状態でございます。
 しかし、いまわが日本社会において問題になっているのは何だ、こう言いますれば、景気、経済を安定させることなんだ、しかも企業の立ち直り、これを早く実現しなければならぬということにある。そういうことになりますると、企業は一体何で苦しんでいるか、こう言いますれば、私から言うまでもありません。過剰設備です、また過剰の雇用です。過剰の設備の背景には過剰金利という問題がある。設備をつくるために金を使った、その金利負担というものが重くのしかかっておるのであります。
 そのことを考えまするときに、やはり金利水準を下げて、そして金利負担を企業が幾らかでも免れるという状態をつくってやること、これで企業の苦労が全部解消するわけじゃありませんけれども、その苦労が幾らかでもなだらかになって、そしてそうでなければ解雇をしなければならぬという人を抱えていく余裕がそこで出てくるのです。
 私どもが考えておるのは、とにかく景気を安定させて雇用状態を改善しようというところにある。金融政策、いま低金利水準をとったというそのゆえんのものも、雇用を何とかしょうというところにあるのだ。そういうことを考えまするときに、金利負担を軽減するためには金融機関の貸出金利を下げなければならぬ。それには預金者の預金金利も下げなければならぬということになる。そこなんです、問題は。そのことは、私はいまの物価の状況から見まして、大変むずかしい要求を預金者に求めておるわけでございまするけれども、しかし、預金者といえども、失業者が出ました、経済界は不況であります、日本経済が不安であります、日本社会までが不安定でありますというのでは、困るでしょう、これは。(拍手)そういうことを考えて、預金者にもその負担を求める。まあ相寄り相助けて、みんなが一緒になってこの日本経済を安定させよう、こういう趣旨なんであります。(拍手)ぜひとも御理解のほどをお願い申し上げたいと思います。
 さて、そういたしました際に、社会保障対象者、そういうような人に何とかできないかという考え方、これは当然とらなければならぬと思うのです。ですから、社会保障対象者、そういう方に対しましては、特別的にこの一般の貯金金利を適用しないというようにいたしておることも、またつけ加えておきたいのであります。
 さてそこで、消費者物価はどうなるか。問題は、この消費者物価を早く貯金金利水準より下げるというところにあるわけなんです。しかし、これは賃金が上がります、あるいは石油の価格が上がってきます、そういう状態下において、物価をそう急に下げるわけにはまいりません。毎年毎年みんなして苦労をして、そしてじわじわと下げていくはかはないのでありまするけれども、国民全体の御協力のもとに消費者物価は逐次安定の基調にあると思うのでありまして、下半期におきましては、これはかなり鎮静した空気になってまいり、本年中におきましては、これは七%台ということが実現される。私はかたくそれを見通し、それを実現いたしたい、かように考えておるのであります。
 なお、さらに浅井さんから円高と消費者物価のお話がありましたが、確かに円高、これは物価に大きな影響を及ぼしてまいりました。わが国の貿易構造を見ますれば、八割までが第一次産品なんですよ。完成品、まあ消費者に直接関係のある完成品、これはわずかに二割なんです。ですから、まず八割を占めるところの第一次産品、これには決定的な影響があるわけでありまして、卸売物価は現に世界最低の水準まで落ちてきておるじゃありませんか。この卸売物価が下がってきたという影響は、時間を置いて必ず消費者物価の安定に響いてくる。同時に、私は、二割といえども、完成品の問題につきまして、これに目を閉じておるわけではございません。これはウイスキーだとか洋服だとか、そういうものにどういう影響をしているかということを事細かに調べまして、これが円為替が強くなったという影響に応じまして値下げが行われるように指導をいたしておるところでございます。
 さらに、国鉄につきまして、制度の抜本的改正という御所見でございますが、全くこの国鉄の問題は私も当惑をいたしておるわけでございますが、ともかくこれは幾ら考えたって、国鉄自体の改革をどういうふうにするかという問題、それから政府がいかなる援助をするかという問題、それから利用者がいかなる負担を負うかという、この三つ以外の解決の方途というものは私はないだろうと思うのです。とにかくその幾つかに手をつけよう、こういうことで、いま国鉄関係の二つの議案を御審議願っておるわけでありまするが、何とぞひとつ国鉄の窮状を御理解くださいまして、御審議のほどをお願い申し上げたいと思うのであります。
 それから、健康保険の料金の引き上げの問題につきましても、ただいま御審議を願っておるところでございますが、健康保険財政もまたこれが非常に財政的にむずかしい。この問題を解決する道、これも国鉄同様の問題ではございまするけれども、ある程度の利用者側の負担、これの低い引き上げを考えざるを得ない状態になってきておりますので、これまたひとつ御理解ある御協力を賜りたい、かように考えるのであります。
 さらに、構造不況業種についての対策についてのお話がございましたが、この構造不況業種、これは対策を急いでおります。問題は、一つ一つの業種について申し上げるという時間的余裕はございませんけれども、共通して申し上げられることは、業界でいま生産、価格調整、これをやっておるわけであります。たとえば繊維でありますとか塩化ビニールでありますとか、そういうところでやっております。また合繊、これにつきましては通産省で減産指導をやっておるわけであります。それから過剰設備対策、これが必要なんです。これにつきましては、平電炉でありますとか、あるいは繊維の一部でありますとか、そういうものにつきましてこれを進めておるわけでございますが、そういうことをやりますと金の問題が起こってくる。その金の問題につきましては、債務保証基金を設置するとか、あるいは中小企業事業団の設備共同廃棄事業融資制度を活用するとか、これは非常に手厚い制度でございまするけれども、そういう金融的な面におきまして、政府はこれに援助、協力をする。それから金融面においては、さらに政府系三機関で貸し出しましたその金融につきましても、その条件の緩和に協力をしてやるというようなこともやりまするし、また、そういうことをやりますると、よって起こってくる問題は雇用問題であります。雇用問題につきましては、今度発足いたしました雇用安定資金制度、これを大いに活用するということを考えておりますが、さらに雇用問題につきましてはきめ細かな周到な配慮をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
 なお、雇用対策につきましては、浅井さんからいろいろな御提案がありました。構造不況産業の業種指定、それから失業予防のための企業努力に対する国の助成の充実、事業転換等雇用調整事業指定期間の延長、雇用調整給付金制度の弾力的運用、事業転換等雇用事業費の国の助成負担、残業時間の短縮、週休二日制の促進、離職者転業再訓練、就職促進対策、公共事業の配分、特定業種離職者の生活保障対策、そういうような御提案があったわけでありますが、一々これの見解はここでは差し控えまするけれども、大方このような方向の施策を進めておる、こういうことを申し上げさせていただきます。
 なお、その前提といたしまして、それだけで事足りるのじゃないのです。もっと大事な前提がありますのは、やはり雇用機会をつくらなければいかぬ。それは今度の二兆円事業の追加、これなんかは相当大きな効果があろうと思うのです。また日本銀行の公定歩合の引き下げを中心とした金利水準の引き下げ、これも企業の雇用包容力を拡大するという意味において力があるところであろう、こういうふうに思いますが、とにかく総体の経済、これを安定させるという前提のもとに、ただいま御提案のありましたような諸施策を進めてまいりたい、かように考える次第でございます。
 さらに、昨年六月策定した第三次雇用対策基本計画を今回改定してはどうかというお話でございますが、やはり雇用問題というのはこれから大事になっていくのです。いま資源エネルギー不足が予見されるようなそういう事態でありますので、省資源、省エネルギー体制、つまり低成長体制の方が本当はいいんです。いいんだけれども、雇用問題を考えるときはそういうわけにいかない。これは高い方がいいんです。そういうことを考え、その両方の要請を充足させるためにはどうかということを考えますると、やはり六%成長、その見当で需給のバランスをとっていくという考え方をとるほかはないと思うのでありますが、いずれにしても雇用情勢の推移を見まして、雇用問題には慎重に対処してまいります。
 それから、中小企業対策につきましては、関連倒産多発の状況、また中小企業を取り巻く厳しい環境、そういうことを踏まえまして、きめ細かな中小企業対策をとっておるところでございまするけれども、そういう考え方のもとに、先ほどちょっとお触れがありましたが、連鎖倒産防止共済制度というようなもの、これは恐らく各党皆さんそのような趣旨のことをお考えになられておるのじゃあるまいかと思うのですが、これはひとつ政府におきましても前向きに検討してみたいと思っておるわけであります。ただ、これはその制度ができましても実施に準備がかかる。かかるものですから、つくるのなら、この国会でおつくりくださって、早く実施に移れるようにしたらどうだろうというような感じがいたします。
 それから、下請金の支払い促進につきましては、もう大体現行法を厳格に励行してまいりますれば対処し得る、かように考えております。
 それから、日本の漁業の将来の展望を示せというお話でございますが、私は、いま日本の漁業というものは非常に転換期で弱っておりまするけれども、先の先を考えればそう暗くないと思うのです。わが日本は、もうとにかく今度二百海里になれば、漁業水域につきましては、実効というか、使用し得る漁業水域ということになると、恐らくインドネシアに次いで大きな水域を持つことになるのじゃないかと思うのです。これを十分に活用するということを考えていきたいと思うのです。
 また、北洋漁業の救済対策、これの法制化の意見でありまするけれども、法制化を待たず、もうてきぱきと対策をとっております。またそれで十分とれる、このように考えておる次第でございます。
 なお、五十三年度の予算につきまして言及がありまして、福祉、教育予算などは減額するな、防衛予算は増額するなというようなお話ですが、これは五十三年度のことでありまするから、その予算を編成する際に十分検討してみたい、かように考えます。
 また、歳出を削減するということを言うが、その前に行政改革をというようなお話でございますが、そのとおりに考えております。行政改革は何か私が中途でやめたようなことをおっしゃいますが、そんなことはありゃしない。(発言する者あり)これは中央省庁の統廃合については別途検討するということを言っておるだけの話であって、これが何も行政機構改革の中核じゃないじゃないですか。あなた方がおっしゃっている行政改革だって、そういうことを言っておるわけじゃない。出先機関の整理をすべし、あるいは公社公団、ああいうものの統廃合を行うべし、いろいろなことを言っておりまするけれども、そういうことにつきましては、いささかも所信を変えておりませんから、誤解のないようにお願い申し上げます。(拍手)
 また、行政経費削減の目標はどのくらいかというようなお話でありますが、まだそこまで見当はつけておりません。
 また、福祉ビジョンと関連をいたしまして、次の通常国会においてこの問題を審議対象とすべしというようなお話でございますが、これはとにかく社会構造が非常に変わってきておる、資源、エネルギー制限下の時代である、人口が老齢化する、高学歴社会になってきておる、また都市化が進んでおる、そういうような時代でありまするから、これは社会問題を考える場合におきまして、非常に変化があります。この変化に対応いたしましてどういう福祉の向上を考えるかということは、一つの課題でございますが、できる限り長期展望ができるように努力はいたしますが、具体的に一つ一つを長期計画として決めることはなかなかむずかしい問題であります。
 また、国会にエネルギー資源特別委員会を設置すべし、このような御意見でございましたが、これは国会において御協議のほどをお願い申し上げます。
 マニラ宣言につきまして、これを忠実に実行せよというお話でありますが、もとより忠実に実行する考えでございます。私は外国に対して約束したことを破るようなことは絶対にいたしませんから、その辺は御信頼のほどをお願い申し上げる次第でございます。
 日中平和友好条約の締結につきましては、この間所信表明において申し上げたとおりであります。私はこの条約のことを片時も忘れてはおりません。しかし、共同宣言を条約という子々孫々までを拘束するという形に直すのですから、それはもう文章をどうするとかなんとか、いろいろ問題があるのですよ。これは一秒では片づきません。とにかくこの間、鳩山・黄華会談におきましても、早く締結をしましょうということで合意したわけでありまするから、そのように御理解をお願いいたします。
 さらに、何か日韓両国間に不明朗な話があるが徹底究明せよというお話でありまするが、これはそういう事実がありとすれば、政府においてももとより徹底的に究明いたしますが、国会におきましても政治の威信のために徹底究明をせられたい、お願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#6
○議長(保利茂君) 春日一幸君。
    〔春日一幸君登壇〕
#7
○春日一幸君 私は、民社党を代表し、わが国政が直面する特に重要な政治課題について、政府の対策、方針をただしたいと存じます。
 まず冒頭に、航空機ハイジャック事件について質問いたします。
 日本赤軍の凶悪ゲリラによるあの日航機乗っ取り事件が、刻々極限の危険に直面しながら、政府並びに日航を初め関係当路の努力と、あわせて各国の理解ある御協力によって人質にされた方々が全員無事解放せられ、私どももやっとの思いでひとまず安堵の胸をなでおろしました。
 総理は、先日本議場において、あの政府の措置を断腸の思いだと苦衷を述べられましたが、私どもとしても、法の秩序がかくも無残にじゅうりんされているのに、人質にされた方々の安全をこいねがうとき、政府のそれらの措置に対し正面切って責任を追及できがたかったことは、総理に劣らずまことに、まことに断腸の思いでありました。(拍手)
 顧みれば、一九七〇年の「よど号」事件、一九七四年のハーグ事件、一九七五年のクアラルンプール事件など、彼ら凶悪犯人たちは次々に同様の犯行を重ねておったのに、政府はこの間、これが防止対策についてほとんどなすところがなかったと言っても過言ではありません。わけても今回政府がとった措置は、彼らの行動力を強化し、今後の危険性をさらに大きく増大いたしました。政府の責任は重大であります。この際政府は真剣に反省して、かかる事件を未然に防止するため、まずわが国独自のものから必要にして十分な法律上、行政上の措置を断行し、続いて各国の協調を求むべきであると思うが、総理より責任ある御答弁を願いたい。(拍手)
 次は、政府の経済政策の基本について質問いたします。
 すでに論じ尽くされておるとおり、自民党政府の歴代にわたる高度成長政策は、現にわが国経済を極度の困難に陥れております。すなわち、インフレと不況の中で物価は持続的に上昇し、失業と倒産が続出しております。また環境汚染の激化は、国民の生活と健康を脅かし、特に重大なことは、貧富の格差が拡大されて、国民怨嗟の声は随所に高まっております。さらに資源の制約が表面化して、資源小国日本経済の前途はきわめて不安な状態に立ちました。
 このような深刻な被害をてこに、わが国経済は高度成長から安定成長へと政策の転換を余儀なく迫られ、かくて総理も組閣以来しばしば安定成長への転換を口にされてまいりましたが、その実績は、従来の自民党政治とほとんど異なるところはありません。
 ここに最も緊急処理を要する政策課題は、省資源に向かっての産業構造の転換、インフレの根源である土地価格の制圧、金融の社会的責任を明確にするための銀行法の改正、不公正税制の是正、それから研究開発投資による自主技術の開発などであって、これらの基本問題に大胆な施策を講ずることなくしては、すでに病膏肓に入ったわが国経済を安定成長に向かって定着させることはとうてい不可能であると考えるが、まず最初にこのことについて総理の御見解を伺っておきたいと存じます。
 次は、不況克服について質問いたします。
 福田総理の言によれば、わが国経済は昭和四十八年末の石油ショックによって全治三年の重症に陥ったというのでありますが、その全治三年説をとれば、その病状は昨五十一年度中にすでに回復していたはずであります。しかるに、今日なお大幅な需給ギャップは解消されず、稼働率は低下したままで、企業収益は悪化し、失業と倒産はますます高水準を記録し、かくて景気の先行きはいまなお確たる見通しが立っておりません。一方、国内景気の低迷は輸出ドライブに拍車をかけて、貿易黒字が多額に上って、これが不況に悩む各国の激しい非難を招いております。この上はもはや輸出に期待をかけることはできません。かくて繊維、合板、砂糖、平電炉、造船、アルミなどはいまやどろ沼不況の様相を呈しております。
 このような事態はひとり石油ショックの後遺症だけによるものではなく、それは大企業中心の野方図な資本主義の矛盾、また自民党政府のタイミングとテクニックを誤った政策上の失敗によるものであることをこの際自民党は真摯に反省なさる必要がありましょう。(拍手)
 坊蔵相は、先般IMF・世銀総会において、公共投資の追加や公定歩合の引き下げなどにより景気の回復を図って、本年度の実質成長率六・七%を必ず達成すると言明されましたが、ここにわが国経済がはらむ需給ギャップはおよそ十数兆円が見込まれておる現状において、果たしてこれで景気の着実な回復が達成できるでありましょうか。日本経済を健全な安定成長路線に乗せるためには、中期、長期の展望に立って、当面、住宅などの公共投資を中心に大幅な景気回復策をとるとともに、あわせて年金、医療、エネルギー、技術、中小企業、農林漁業、それに開発途上国への経済協力などを積極的に前進させて、まず国民の萎縮した気力を刷新、躍動させなければなりません。
 民社党は、そのためにかねがね経済安定・計画化基本法の制定、経済計画策定への国民参加、景気調整基金の設置など、経済計画の実効性確保の措置を熱心に提唱してまいりましたが、この主張は本日ますますその必要性を高めております。まことに、わが国経済をこのような異様事態から脱出させるためには、その対策を思い切って大きく飛躍させる必要があると思うが、政府の不況克服に対する基本構想とその具体策を改めて総理よりお示し願いたい。
 次は、中小企業の破産、倒産の防止、救済対策について質問いたします。
 企業の倒産はことしに入ってますます増大し、その件数は前年同期を上回り、すでに本年度は一万件を超えました。その多くは販売不振、売掛金の回収難など、明らかに不況型倒産であります。速やかに適確な救済策が実行されなければなりません。
 この見地に立って、わが党は、中小企業向け融資の拡充と金利の引き下げ、歩積み両建てなど拘束性預金の禁止、信用補完制度の拡充、官公需発注の拡大、下請取引の適正化、事業転換の助成などの措置を強力に推進することを強調してまいりました。また、特に中小企業倒産防止対策として、不渡り手形保証保険制度と、さらに中小企業基盤整備準備金制度を創設して、中小企業の不況抵抗力を強化することを提唱しております。政府におかれても、為替変動対策や倒産防止共済制度など二、三の構想があるやに聞きますが、いまや危殆に瀕しておるこれら中小企業に対する倒産防止とその救済はまさに焦眉の急務であると思うが、政府の対策は何々か、総理より明確にお示しを願いたい。
 次に、労働不安の解消について質問いたします。
 長引く不況の影響を受けて、完全失業者数は毎月百万人台を超え、しかも、それは中高年齢者にとどまらず、昨今は若年労働者の失業者が増加の傾向にあることはまことに憂慮にたえません。これは景気の先行きが不安なため、多くの企業が新規採用を手控えておるからであります。なおまた、企業が抱える過剰雇用は百三十万人ないし二百万人と言われ、これに対し、最近、金融機関の間で、業況悪化の企業に対しては人員整理をその融資継続の条件にする例がふえております。
 かくては、これら潜在的失業者は早晩失業の表面にあらわれてくるものと見なければなりません。これら整理によって離職した労働者の再就職先をどうするか。現に大多数の企業は、ときに生産の増加があっても、それを残業の延長で賄い、いずれも雇用の抑制に努めている現状に照らし、これからの求人開拓ははなはだしく困難な状況にあります。かくて、この労働不安は次第に人心の荒廃をもたらし、このままに推移すれば、ときにこれが社会不安の火元になりかねません。
 これら悪化する雇用情勢に対処して、政府は当然所要の政策を考慮されていることとは思うが、さらに加えて構造不況などの特定産業離職者対策特例法を制定するとともに、この際、人員整理については企業に対し、社会連帯の立場から適切なる抑制措置を講じ、あわせて雇用保険制度の拡充強化、公共職業訓練校の新設、週休二日制の促進、六十歳定年制の実施など、積極的な施策を緊急に総合的に実施する必要があると考えるが、総理より、その対策、方針を承りたい。
 次は、行政改革について質問いたします。
 今日、行政機構は屋上屋を重ね、いつしか肥大してマンモス化し、行政経費は膨張を重ね、ために国の財政は戦時中にまさる多額の赤字公債の発行を余儀なくしております。したがって、行政機構の整理改革はすでに議論の段階をはるかに越えて、いまはただひたすらにその実行が待たれております。この行政改革は、行政の簡素化、効率化、民主化を徹底し、もって行政経費の大幅節減に実効を確保するものでなければなりません。
 この見地に立ち、わが党はさきに行政改革緊急三カ年計画案を策定し、しばしば政府にその実現を強く迫ってまいりました。政府もさきに行政改革大綱案を決定し、ひとまずその方針を示されはいたしましたが、官僚、党側の反対が根強くて、その後これは一種の政治スローガンのごとくに見られ、またもや竜頭蛇尾に終わるのではないかと危惧されております。
 先般、さるテレビの政治放談はこの問題を取り上げて、いまや日本の行政機構は高級官僚と下部官僚の二つの日の丸組織で構成されていると指摘し、このように執権者と官公労との枠でそのなわ張りが占められている限り、双方に犠牲者を出す行政整理など現体制のもとでは実行できるわけがないと痛憤しておりました。(拍手)総理の実感はいかがでありますか。
 もしも行政改革がそのような組織で妨げられているとするならばなおさらのこと、総理は政治生命をかけて、われら議員は当落を意に介せず、これを荒療治するために、いまこそ身を挺してこれに取り組むべきであると思うが、この際、総理の決意並びにそのプログラムをお示し願いたい。(拍手)
 なお、これを推進するため、国会に行政改革特別委員会を設置する必要があると思うが、自民党総裁としての御見解をあわせてお聞きしておきたいと思います。
 次は、エネルギー問題、石油対策について質問いたします。
 現代社会はエネルギーによって支えられておりますが、わが国は一次エネルギーの七四%を石油に依存し、かつその石油の九九%を輸入で賄っております。したがって、石油の安定供給をこの先ともに確保できるかどうかは、わが国経済の死活を決する根本問題であります。
 ここに石油の産出寿命は今後三十数年と測定され、かくて一九八五年ごろにはその需給は世界的に逼迫してくるものと見られ、すでにエネルギー危機は眼前に迫っております。しかも、石油の産出量とその価格は、産油国の国家主権として決定されるもので、他国の容喙は許さないというまことに冷厳な資源ナショナリズムによって統御されております。したがって、輸入総量の八〇%を依存する中東産油国の動向に対しては、わが国は特に深甚なる注意をこらして対応せなければなりません。
 この見地から、わが党は、このほど中東調査団を現地に派遣し、サウジアラビア、イラン、イラク、エジプト各国首脳と隔意なき会談を行ってまいりました。ここにその会談の内容を要約すれば、それは次のとおりであります。
 すなわち、産油国はやがて到来する石油資源の枯渇するときに備え、石油の代価によって工業技術を導入し、それまでに国内経済の開発をあとう限り推進すること、これを石油政策の根本に据えております。
 かくて、石油の代価は金銭ではなくテクノロジーであるとし、このゆえに他国の必要のために有限の国家資源を急いで空にしていく意思はないと断言し、したがって石油価格は技術輸出国の物価上昇と代替エネルギーのコストに見合って設定していく方針であると言明しておりました。
 このような産油国の動向を踏まえ、わが国の石油需給の今後を考えますとき、石油の価格はこれからも年々上昇して、一九八五年ごろにはその累積価格は一バレル二十五ドル程度と、実に現在価格の倍額になりましょう。
 かくて、その時点におけるわが国の石油消費量は、経済成長率を平均六%と見ても、現在の消費量三億キロリッターは年々増加して、その時点では四億三千万キロリッターに増大することになり、その代価は、その年度において年間実に七百億ドルに計算されましょう。わが国経済は、一九八五年の時点で、およそそのような巨大な支払い能力を保有できているでありましょうか。
 さらに重視すべきことは、石油と中東和平との不可分の関係についてであります。すなわち、アラブ諸国はあの中東戦争が平和的に解決されることを強く希求し、一九六七年の国連安保決議二四二号の実現を強く要求しておりました。そのためには、当面アメリカを中心とする西側諸国が国連、憲章に基づき、パレスチナ人の権利確保のために、イスラエルに向かって毅然たる態度で和平の説得に当たるべきであるとし、特に日本に対しては、米国と連携して、西側陣営にあって強力に立ち働いてほしいと特段の期待を寄せておりました。
 したがって、日本に対する石油の安定供給とその供給増加は、今後におけるわが国の技術協力と中東和平に対する努力のいかんにかかるものと受けとめるべきでありましょう。このゆえに、中東産油国に対するわが国の外交政策は、最も速やかに、最大のスケールで、最善を尽くすべきであると思うが、これら産油国に対する経済、技術協力と中東和平に対する政府の態度、方針並びに省資源、代替エネルギーの開発計画を含めて、今後の石油政策について、この際、総理より明確なる御答弁を願いたい。
 次に、原子力の平和利用について伺います。
 政府は、これまで核燃料サイクルの確立こそがわが国原子力平和利用の基本であると力説してまいりました。しかし、いまやその一角が米国の再処理規制要求によって崩れようとしております。
 昭和五十年、核拡散防止条約批准のとき、時の宮澤外務大臣は、わが国の原子力平和利用に対するすべての権利は確保されると言明され、したがって、核防条約四条一項は、原子力を平和に利用するあらゆる権利は締約国が有する奪い得ない権利としてこれを保障しているものと理解されておりました。しかるに米国は、非核三原則を内外に宣言し、核防条約を批准しているわが国に対して、その平和利用を制約しようとしております。
 去る九月の東京における日米核燃料交渉において、わが国の行う核処理について、プルトニウムの単体抽出、単体貯蔵方式による二年間の暫定操業が合意されたことは、一見わが国の要求が通ったかに見えますが、事実は必ずしもそうではございません。そのことは、九月中旬に行ったわが党の訪米使節団と米当局者との会談において、ナイ国務次官代理は、あの合意はあくまでも暫定措置であると言明し、すなわち、あの合意において日本側が、第一に、これまで考えてきた再処理は急いで行わないこと、第二に、民間の再処理施設を建設する行動はとらないことを約束したが、これはきわめて重要なポイントであると指摘していることがその証左であります。
 このように、米国の態度は明らかにわが国のエネルギー面での生存を脅かすものであり、かたがた米国こそ核の平和利用を定めている核防条約に違反するものと申さなければなりません。
 このような状況を踏まえ、たとえば二年間の暫定操業期限が到来した時点において日米間にその後の合意が得られなかった場合をも考慮して、政府はわが国の原子力平和利用を今後どのようにして推進する考えか。さらにまた、このような方針に立つ米国は、来るべきワシントンでのINFCEP会議において、純粋プルトニウムに結びつかない再処理を世界各国に要求することを明らかにしております。この方式は、これまで政府が考えてきた再処理方式とは異なるものでありますが、同会議の大勢がこの方式に帰結するならば、政府はこの米国が要求する新方式に賛同するか否か、この際、以上の諸点について政府の見解並びに今後の核サイクルに対する態度、方針を明らかにいたされたい。
 次は、朝鮮問題について質問いたします。
 朝鮮半島の平和は日本の平和に直結し、それがそのままアジアの平和に連動することは国際的常識であり、軍事専門家間の定説であります。ここに朝鮮半島の現状は、南北間の相互不信が激しい中で、今般在韓米地上軍の撤退方針が決定されたことにより、北鮮からの軍事的脅威の増大を警戒して、韓国の危機意識は一段と高まっております。
 このほど、下田で開かれた第四回日米関係民間会議で、米下院の外交委員ソラーズ氏は、朝鮮戦争再発の危険性は低くないと論じ、その理由として、北鮮の心底にあるものは朝鮮半島の統一であり、かつその道は戦争以外にはないというものだと述べております。また、韓国朴大統領は、先般私が訪韓の折、その見解を次のごとくに述べておりました。すなわち、韓半島の戦争再発を抑止するには、北鮮、中、ソの北方三角グループと、韓国、日、米の南方三角グループの力が常に均衡を保っておることが必要である。そこで、この北方三角グループは、時々の状況で変化があっても、究極的にはその団結はかたい。これに対し、米国は選挙のたびごとに新政策を打ち出してくるし、日本の一部論客たちは日韓離反に奔走し、いわば百家争鳴のままに南の団結は弱体である。かかる情勢下にあって、在韓米地上軍の撤退がどのように行われるかは、東北アジアにとってそれはまさに戦争と平和を分かつ正念場になるものだと、このように情勢を分析しておりました。これら米、韓指導者の情勢判断に対するわが国政府の見解はいかがでありますか。
 なお、一九六九年十一月の佐藤・ニクソン共同声明第四項に示された「韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要である」との見解は、その後一九七五年八月の三木・フォード共同声明で再確認され、さらに、本年三月の福田・カーター共同声明では、この趣旨が再々確認された上、加えて、米大統領は、在韓米地上軍の撤退に関しては、米国は韓国とまた日本とも協議の後に、朝鮮半島の平和を損なわぬ仕方でこれを進めていくと述べております。
 これらの経緯にかんがみ、在韓米地上軍の撤退については、当然米国政府は日本政府に対し相当の協議を行ったものと思量するが、この際、その経緯とてんまつをつまびらかに御説明願いたい。
 なお、この在韓米地上軍の撤退は、日米共同声明による極東地域の安定にどのような影響をもたらすことになるか、またそれに対するわが国の対応策はどのようなものか。
 以上の諸点について、総理より明確なる御答弁を願いたいのであります。(拍手)
 いずれにしても朝鮮半島の情勢は、このようにして端倪すべからざるものがあります。したがって、わが国は、この朝鮮半島の問題を切実に受けとめて、当面、南北間の緊張緩和のため、あとう限りの外交努力を尽くさなければなりません。すなわち、わが国が、米、中、ソに働きかけて、韓国と北朝鮮の国連への同時加盟、日、米、中、ソによる韓国、北朝鮮のクロス承認、南北不可侵条約の締結、さらには日、米、中、ソを含む朝鮮半島の新たな安全保障機構の確立など、これが実現を図るとともに、これと並行して、わが国は、韓国との友好関係に万全の配慮を加えつつ、北朝鮮との接触、交流を促進し、もって南北対話の環境づくりのために誠実に努力すべきであると考えるが、これに対する政府の見解はいかがでありますか。(拍手)総理よりあわせて御答弁願いたい。
 次は、日中友好、日ソ友好について質問いたします。
 海外資源に依存する貿易立国たるわが国は、特に広く各国との共存共栄を図らなければならないが、そのためには、その相互依存関係をより公正なもの、より安定したものにしていく不断の努力が必要であります。
 ここに日中関係は、昭和四十七年九月の日中国交回復を契機として大きく前進し、その後各種の実務協定も締結され、貿易も拡大し、いまはただ平和友好条約の締結が残されておるだけであります。この上は、あの問題の覇権条項について、わが国としては、それが特定の第三国を指摘するものではなく、一般原則を示すものであることの認識を明らかにして、速やかに平和友好条約の締結を行うべきであると考えるが、これが今日なお渋滞しておる理由は何でありますか、総理より明確に御答弁を願いたい。
 次に、日ソ関係については、歯舞色丹は本来北海道の一部であることは歴史的事実であり、国後、択捉は一八五五年の日露下田条約で確認されておるとおり、だれが何と言おうとも明らかにわが国固有の領土であり、したがって、これら北方領土の返還を求めることは当然のことであります。(拍手)
 すべからく政府は、正面切ってこの返還交渉をソ連に提起し、これら北方領土の返還を受けた上で速やかに日ソ平和条約を締結すべきでありますが、政府のこれまでの努力にはほとんど見るものがなくて、現に、今回国連総会に臨んでの鳩山・グロムイコ会談においても、この肝心の問題がほとんど避けて通られております。このようなことでは、日ソ平和条約締結の懸案は一歩も前進いたしません。総理の御決意はいかがでありますか4
 以上、日中、日ソ間の平和条約締結に関する政府の方針について、この際総理より改めて御答弁を願いたい。(拍手)
 最後に、福田内閣の政治姿勢について質問いたします。
 ここにわが政局は、昨年十二月の総選挙、続いての参議院選挙に示されたとおり、国民の心はすでに自民党を離れて、与野党伯仲という画期的な段階を迎えております。かくて福田内閣は辛うじて一票差の内閣として誕生いたしましたが、それは暮色蒼然として、自民党政権のたそがれのさまをそのままに映し出しております。
 すなわち、福田内閣の足跡を顧みるに、それは旧態依然として事ごとに派閥均衡政治に終始し、内政、外交のどれを見てもまだ見るべき成果はありません。
 激動の七〇年代は早くも余すところ二年となり、わが国政は内外ともにかつてない幾多の試練に直面しております。ここにわれら国民がこれらの試練に耐え、諸困難を克服して前進するためには、まず政府が国政の進路に国民をして勇躍決起させるに足るビジョンを掲げ、それに向かって民族のバイタリティーを結集しなければなりません。
 総理もかねて傾倒されているフランス大統領ジスカールデスタン氏は、その近著の中で、現代政治家の矜持として「われわれは常に重くのしかかるしきたりと、常に哀しきものである保守主義を排し、ここに新しい大道を切り開くべき歴史的チャンスに際会している」と述べております。これぞ本日、政府並びに国会に課せられておる歴史的使命であります。
 すなわち、この際、政治のうっせきと行政の渋滞を速やかに一掃しなければならないが、総理にその確信がないとするならば、いっそ衆議院を解散して、今後の選択を国民にゆだぬべきであると思うが、総理の御所信はどのようなものか。
 これをお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕
#8
○内閣総理大臣(福田赳夫君) 春日委員長から、まずハイジャック事件に触れまして、私が断腸の思いである、こう申し上げましたのに、それを批判できないのがまた断腸の思いである、こういうふうに仰せられましたが、そのお言葉を聞く私の気持ちもまた断腸の思いであります。私は、問題は断腸の思いだけで済ましておくわけにはいかない。これは何といたしましても再びこういう事件が起きないこと、これに対して万全の構えをとることである、かように考えます。そしてその施策は内外にわたるわけでございますが、特に海外にわたる面、これはそう簡単にはまいらない面が多いのであります。しかし、国内でできる面につきましてはてきぱきとやっていきたい。しばしば申し上げておりまするように、一昨日、対策本部の初会合をやりました。私は今月中に結論を出すということを要請いたしたわけでありまして、そのとおりにいたし、本当に今度こそは鉄は熱いうちに打てという姿勢で取り組んでまいりたい、かように考えております。
 春日委員長から不況問題につきましていろいろ御所見があり、私がどういうふうに今回の状態をとらえておるかというお話がありましたが、結局、今日の情勢というものは、ひとり日本だけの状況ではないのです、世界じゅうが混乱しておる。その中ではわが日本なんかはいい方なのです。世界各国がそう認めておるというような状態なのであります。つまり、世界が世界始まって以来の資源エネルギー有限時代を迎えておる、その中での世界情勢の混乱である、わが国の経済社会もその世界の流れの中の一つの流れである、このようにとらえるのが私は妥当である、こういうふうに考えておるのであります。
 そういう認識のもとに、わが国の経済をどうやって安定させるか。やはり私は、可能な限りわが国の経済全体のスケールをかさ上げする必要がある、こういうふうに考えまして、年初来六・七%成長、世界第一のこの高い成長水準を掲げましてそのための施策をとってきたのですが、ちょっとこの目標が怪しそうだという傾向がありましたので、この間総合政策を追加するというふうにいたしたのですが、この結果、六・七%前後の成長、これは私は実現できる、こういうふうに思います。しかし、それだけで事は足りないのです。この世界情勢の変化を受けましてわが国の企業、企業ばかりじゃない、国民の各分野というものが非常に大きな影響を受けておる。その客観情勢の変化に各界、各分野がこの対応、姿勢の転換をしなければならない。これが私は、いま日本の経済が、日本の社会が当面しておる問題点のかなめである、このようにとらえておりまして、一方において六・七%成長政策を進める、それと並行いたしまして構造不況業種対策、またこの四年続きの不況の中で非常に疲弊した中小企業対策、これらを進めていく、これが大事なことであろう。そこで非常に社会的にも政治的にも大きな問題であるところの雇用問題も解決の糸口が開かれてくるんだ、このような基本認識で経済問題には取り組んでおるというのが実情でございます。
 そういう中で、いま委員長は、この中小企業問題にどういうふうに対処をするかという御質問であり、また御提言も中にありましたが、これはやはり企業でありまするがゆえに、金融ということが大事な問題になってくるわけであります。金融と言えば、中小企業のことでありまするから、どうしたって政府関係のいわゆる三機関の問題になる。その融資枠の拡大をいたしますとか、あるいは融資の条件を緩めるとか、あるいは既融資の返済の猶予をいたしますとか、そういうようなことを考えざるを得ないと思うのです。また、倒産企業がある。その影響を受けまして、まじめにやっておるところの企業が不幸にしてはからざる損害を受けるということがあってはならぬ、こういうように考えまして、倒産関連保証特例措置、これなんかの制度の機動的運用をやるとかいたしてまいりましたが、今回さらに緊急の対策といたしまして、為替変動対策緊急融資制度、これを創設いたしました。また倒産対策緊急融資制度、これの適用を延長いたしました。また既往の借入金の金利をさらに引き下げる、そういうような措置を講じておるわけでございますが、今後とも金融、中小企業の直面する諸問題につきましては、事細かに手厚く対処いたしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
 特にまた雇用問題につきまして、総合的に対策を遂行せよというお話でありますが、先ほど申し上げましたように、雇用問題のかなめは何といいましても景気の着実な回復であります。それからさらには貸出金利の引き下げという問題があります。貸出金利の引き下げというのは、雇用問題に関しまして相当の影響力を持つと私は思うのです。この貸出金利の引き下げなかりせばもう解雇しなければならない、そういう勤労者を抱え得る力を与えるというこの効果は非常に大きいと思うのですが、そういうこと。それから、この一日から実施になりますが、雇用安定資金制度、これも大きな物を言うであろう。また職業訓練を機動的に実施する。そういう行政措置も盛んにやっておるわけでありますが、構造不況業種につきましては、雇用安定資金一制度を特に重点的に活用するとともに、何とかして構造不況業種の構造改革が円滑に行われるように、関係閣僚におきまして知恵をしぼっておるという現況でございます。
 また、週休二日制の促進、また定年制の問題に触れられましたが、企業にそのような呼びかけをいたしておるわけであります。これは強制するわけにはまいりませんが、企業がその実情に応じてこれを受けてくださるように呼びかけはいたしておるような次第でございます。
 行政改革の問題に触れられましたが、私はこの問題は非常に重要な問題というふうに考えております。これは春日委員長に劣らず真剣に考えておるということをはっきり申し上げたいのであります。時代というか、世界の情勢が非常に変わってきておる。それから高度成長という時代はすでにわが国においても終わっちゃった。低い、安定成長時代というものを迎えようとしておる。そこへもっていってさらに民間では、この世界の情勢の変化に対しましてもう血のにじむような努力が始められておる。そういう際に、国民の支持によってでき上がっておる、国民の共同の出資によってでき上がっておるとも申すべき政府、地方公共団体が高度成長体制のかっこうでいいのかどうか、いままでのような世界環境の中と同じような姿勢でいいのかどうかというと、それは私は許されない、こういうふうに思うのです。私は、むしろ率先して政府、地方公共団体が新しい環境への対応、これに取り組むべき立場にある、こういうふうに思うのであります。そういう立場から、私は、行政改革ということを大いに推進をいたしてまいりたい、かように考えておるわけでありまして、その方向につきましては、九月の初めに政府からこれを発表しておりますので、ここでは改めて申し上げませんけれども、皆さんがおっしゃるのは、中央機構の統廃合、これだけの話じゃないかと思うのです。あとのことはみんなあの要綱に書いてある。中央機構の統廃合につきましては、これは非常に重要な問題でありまするので、なお別途慎重に検討いたして結論を得たい、かように考えておる次第でございます。
 いまテレビ放談会のことを引かれまして、いまや日本の行政機構は高級官僚と下級官僚の二つの日の丸組織で構成されておるという一説が述べられましたが、そのような見方をする人もあるのかもしれません。しかし、その見方、日本の行政、政治の機構の見方がどうであろうと、行政改革だけは私はやってのけまするから、何とぞ御協力のほどをぜひお願いを申し上げたいと思うのであります。(拍手)
 また、国会に行政改革特別委員会を設置する必要があるが所見いかん、こういうお話でありまするが、これができますればまことに結構なことじゃないかと思います。しかし、これは国会のことでありまするから、国会において御論議のほどをお願い申し上げたいと思うのであります。
 なお、春日委員長は石油の将来に触れられましたが、私も石油の将来につきましては非常に憂いを持っておるのであります。石油の寿命が三十年だ四十年だと言われます。しかしその前に、これは世界の大方の見方があと十年です。十年たつとその供給が減ってくるという傾向がすでにあらわれるであろう、こういうふうに言われております。資源に、特に石油に乏しいわが国とすると、そのことに深く思いをいたさざるを得ないわけであります。いま私がエネルギー問題というものを強調しておる、それはそういう見方に基づくわけであります。まあ省エネルギー、これはもとよりいまやらなければなりませんけれども、石油代替エネルギーの開発、これも非常に大事なことになってきておる。しかし、さればといって、石油時代が十年で終わるというわけじゃない。石油の供給が少なくなるにいたしましても、石油時代というものはまだ続くのであります。石油の順調な供給ということに思いをいたさなければならぬということは、春日委員長の御指摘のとおりであります。そういうことを考えまするときに、中東問題、これにわが国として外交政策上重大なる関心を持つべきことは当然のことであります。
 春日委員長が先般中東を訪問せられたということ、またいろいろの要路の人と話し合われて重要なヒントを得られたということにつきましては、私はお聞きもし、また敬意も表しておるところでございまするけれども、中東問題につきましては、わが国自体といたしまして、御指摘のとおり、これは本当に真剣に取り組んでいかなければならぬ。その真剣に取り組む方針というのは、やはり安保理の決議二四二号の全面的実施、またパレスチナ人の民族自決権を含むところの国連憲章に基づく正当な権利の承認と尊重、この二点にあると思うのであります。この二点につきまして、いま国際連合等におきましていろいろな論議が行われております。おりますが、わが国もこれに積極的に賛成し、積極的にこれを支持するということでなければならぬ、こういうふうに思いますが、まあしかし、そういう政治的基本姿勢の上に立ちまして、中東諸国、特に産油諸国との関係の強化、これには本当に真剣に努力をしなければならない。いろいろの手順、段取り、そういうものも考えてはおりまするけれども、特に御指摘の技術協力、この点につきましては、わが国もそのできる力がある立場にありますので、最大の努力をしてみたい、このように考えておる次第でございます。
 核燃料につきましてのお尋ねでございますが、これは中期的さらに長期的に見ました場合に、核燃料、これはわが国のエネルギーの主体をなすとまで考えながらこの問題には取り組むべきであるというふうに考えておるのでありますが、そういう考え方に立ちまして先般の日米核燃料再処理交渉にも当たったわけでございます。この結果は、私どもといたしましては、まずまず満足すべき結果であったというふうに考えておる次第でございます。二年間の暫定措置である、これはINFCEPの期間が二年とされておりますので、それを考慮いたしまして二年というようなことになっておりまするけれども、しかし私どもといたしましては、このINFCEPの交渉の過程におきましていろいろの案が検討されるということ、これは御指摘のとおりであろうと思うのです。
 しかしながら、いかなる案が検討されるにいたしましても、わが国の持っておる核燃料の平和的利用、これを妨げるようなことがあっては相ならぬというかたい決意をもってこの問題には取り組んでいきたい、かようにいま考えておる次第でございます。
 さらに、下田会議でソラーズ米下院議員などが韓国問題に対する見解を述べられたが、どういうふうに思うかというようなお話でございます。韓国はわが国の隣国である。韓国のみならず朝鮮半島、わが国に最も近いところの地域でございます。この朝鮮半島における平和というものは、わが国の平和に非常に関係があるわけであります。しかし、不幸にして韓国は、いま南北二つの国に分かれておるわけでございますが、そういう状態下におきまして一つの民族が二つの国に分かれる、この分かれておる状態ということは、民族的に私は非常に不幸なことだと思うのです。私は、この南北両国が、平和的な話し合いによっていつの日にか統一をされるということが期待されなければならないところである、こういうふうに思うのでありまして、春日委員長が力説されましたが、そういう決着がいつの日にかできるような、その環境づくりにつきまして関係諸国は努力をすべきものであるというように存じ、わが国といたしましても、その努力をいたしたいというふうに存じておる次第でございます。
 しかしながら、そういう統一の実現ができるというその前に、南北でこの均衡が破れるという、特に軍事的均衡が破れるというような状態になり、この半島に混乱が起きるというようなことになりますると、これは朝鮮半島の問題ばかりじゃない、これはアジア全域にも重大な影響がありますので、この南北の均衡が破れない状態にしばらくこの半島を置くということ、これは非常に心すべきところではなかろうか、私はこういうふうに思うわけであります。
 春日委員長は、アメリカと日本との間に米地上軍の撤退問題について何か話し合いがあったはずだがその経過はどうかという話でありますが、私どもは米政府から、米地上軍を漸進的に撤退させるという計画のあることを聞きました。それに対してわが国は、その撤退の結果、南北のバランス、均衡が破れることがないように十分な配意をしないと、これは朝鮮半島の平和、ひいてはアジアの平和に影響のあることであるから、そのようなことを心してやってもらいたいということを要請したという事実のあることを申し上げておきます。
 次に、日中平和友好条約早期締結の問題でございますが、これは基本的には私が所信表明で申し上げたとおりのことでございます。私はこの問題があるということを片時も忘れておりません。おりませんけれども、これは共同声明を永久不変の条約に直すことでありまするから、これは一秒間で片づくというようなそんなものではありません。何か渋滞をしておるというようなお話でございまするけれども、この締結問題は渋滞はしておりません。静かに進んでおるのだ、こういうふうに御理解のほどをお願い申し上げます。
 それから、北方領土の返還を受けまして早く日ソ条約を締結せよ、こういうお話でございますが、所信表明にこれも申し述べたとおりでありますので、お答えはそのとおりと御了承願うこととして省略させていただきます。
 最後に、私の政治姿勢についてのお尋ねがございました。民心は自民党を離れたというような話がありますが、そんなことじゃありませんよ。これはとにかく五つという多数の野党が出てきた、そういう状態下において、なお自由民主党がわずかといえども過半数であるというような状態は、これは国民の支持は自由民主党にある、大いに国民は自由民主党に期待をいたしておる、そういうふうに私は考えるのであります。(拍手)その期待に背いては相ならぬ、こういう決意を持って私はこの政局に立ち臨んでまいるということを申し上げてお答えといたします。(拍手)
 いま春日委員長に対する答弁中、私が韓国が二つに分かれているとの発言をいたしたようでありますが、それは、朝鮮半島が二つに分かれているとの意味でありましたので、御訂正いたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○議長(保利茂君) 田中美智子君。
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔田中美智子君登壇〕
#10
○田中美智子君 私は、日本共産党。革新共同を代表して、総理及び関係大臣に質問いたします。
 裕一郎ちゃんはやけどの痛みでもがき苦しみながら「水をちょうだい、ジュ−スを」と叫び続け、そして静かになりました。口元を動かし「ばいばい」これが最後の言葉でした。この三歳のお兄ちゃんの後を追うように一歳の弟も息を引き取りました。全身を真っ白い包帯で包まれ、「ぽっぽっぽ」と、かすかなうわ言で「ハトぽっぽ」の歌を口にしながら……。
 総理、もうおわかりだと思いますが、横浜市内の米軍機墜落事件の幼い犠牲者の話です。同時に重傷を受けた母親は、いまだに子供たちの死を知らされていません。「子供たちはみんな元気でいるよ」という夫の励ましの中で、いま必死に生きようと闘っているのです。「二人の子供を返してくれ、逃げたパイロットを殴りつけてやりたい」という若い父親の血の出るような叫びを、総理、あなたはどう受けとめておいででしょうか。
 今回の空母ミッドウェー艦載機ファントムの起こした事件は、一見平和に見えるこの日本の空が米軍に占領されているという現実をまざまざと見せつけました。つまり、日米安保条約によって米軍が日本の国土に百二十八に上る基地を保持し、常に戦争の訓練をしていることです。
 今回の事故で、その原因や米軍飛行士の脱出時期が妥当であったかどうかさえ日本の政府には究明する権限はなく、米軍の一方的な調査と判断にゆだねられています。また損害賠償問題でも、明白にアメリカ側の責任であるにもかかわらず、日本は二五%を負担させられるという屈辱的な仕組みになっています。
 さらに許せないことは、海上自衛隊は事故の発生を早くから知っていて、無傷であった米軍パイロットの救出には救難のヘリコプターを出して万全を期していながら、瀕死の日本人犠牲者の救出には全く手をかさなかったということです。この事実を総理は日本国民にどう釈明するのですか。はっきりと御答弁ください。(拍手)
 あなたは、あのハイジャック事件で人命尊重という言葉を盛んに使われましたが、米軍機墜落事件の場合は、日本人の人命尊重は一体どこへ行ってしまったのでしょう。
 総理、今回の事故の原因を日本政府の責任で徹底的に追及し、その結果を国民に公表することを求めます。これまでの米軍機事故のすべては、やみからやみへ葬り去られているからです。原因が判明するまで住宅地域上空の飛行を即時中止するよう米軍に申し入れるべきです。(拍手)また犠牲者及び被害者に対して速やかに十分な補償措置を講ずることは言うまでもありません。総理の答弁を要求します。(拍手)
 まさに今回の事故は、日本がアメリカに従属している屈辱的な姿をあらわしたものと言えましょう。日米安保条約を廃棄し、事故を起こした厚木基地を初め、すべての米軍基地を撤去することこそ、このような惨事を二度と起こさないための何よりの保障です。
 さて、あなたは、自衛隊を増強するため、来年度防衛費を約二兆円も投じようとしています。特に問題なのは、それがアメリカの要請に唯々諾々と従って行われようとしていることです。七月末来日したブラウン国防長官が福田首相と三原防衛庁長官に要請した中に、P3C導入及び日本人基地従業員の労務費の分担拡大が入っています。ロッッキード社と児玉誉士夫の疑惑が晴れないP3Cの導入は、このアメリカの要請に応じたものではないかということをあなたは否定できますか。三原長官が訪米した際、労務費の日本分担についてどのような話し合いがあったのか、真相を明らかにしていただきたい。
 この問題が大切なのは、たとえばP3C一機に使う百億円のお金があれば、国民があれほど望んでいる保育所なら土地つきで百カ所、四十五機分五千億円もあれば、老齢福祉年金を直ちに一方八千円に、遺族年金を八割給付にすることなどはたやすいことだからです。(拍手)また生活保護でも、お年寄り一人で見ると、一級地と四級地とでは約八千円も差がついているように、こうした級地格差の是正や、生活扶助で男女間に三千円も差をつけている、この明白な憲法違反の女性差別をすぐに改善することができるからです。アメリカの言いなりに防衛費は拡大するが、福祉を守り、拡充するという考えはあなたにはないのですか。見解を求めます。(拍手)
 福田さん、あなたは、参議院選挙中、この選挙が終われば景気はよくなると公言していましたが、あれから三カ月過ぎたいまも、さっぱり景気はよくなっていません。あの石油危機のときも、あなたは日本経済を全治三年の重症と診断しましたが、それが四年たったいま、全く誤っていたことについては何ら反省していません。それどころか、総理の所信表明では総合経済対策なるものを打ち上げ、新聞広告では「夜明けまであと一息」などと、あたかも国民が今日の不況から抜け出せるかのような幻想を与えようとしています。閻魔大王に舌を抜かれますよと国民は思っているに違いありません。
 あなたは、景気対策の一つと称して、公定歩合を九月には四・二五%と戦後最低の水準に下げました。この結果、ある新聞の試算によれば、三井物産の二百二十四億円を初め、東証一部上場の八百二十社では五十二年度中に五千六百億円という膨大な金利が軽減されます。この大企業のいながらにして転がり込む収益は、零細な預貯金の著しい目減りという国民の犠牲と引きかえに生み出されるのです。
 郵便貯金の金利は四カ月のうちに二回の引き下げで戦後最低となり、一年ものの定額貯金で見れば、物価上昇九%と金利との差はますます広がり、苦労してためた百万円の貯金が年に四万円以上も消えていくのです。このところ新聞の投書欄に連日のように国民の怒りが載っています。「低金利預金するバカしないバカ」という川柳に始まり「貯金するバカになっても低福祉の中では貯金するしかない」というやり場のないうっぷんがあらわれています。こうして国民はやむなく財布のひもを締めるので、消費はますます停滞し、つくったものが売れなくなり、民間設備投資も萎縮するという悪循環が繰り返され、日本経済をますますどろ沼に陥れていきます。総理、庶民の声に耳を傾け、預貯金の金利を直ちにもとの水準に戻すことを強く要求いたします。(拍手)
 あなたは今国会で健康保険法や国鉄運賃法の改悪を強行しようとしています。しかし、安易な公共料金値上げ政策がどんな結果を生むかは、国鉄が客離れでかえって赤字をふやしているのを見てもよくわかります。これらの値上げ法案を撤回して、まず健保財政と国鉄経営の再建策を国会で十分に討議すべきです。少なくともそれまでは料金を据え置くよう提案いたします。
 同時に、大蔵省は、来年度からはがき、電報、酒、たばこなどの公共料金の値上げを検討していますが、これが国民の生活を破壊することは明白です。
 さらに重大な問題は、現在、酒、たばこ、宝石などにかけられている税金を、トイレットペーパーや下着に至るまですべての商品やサービスに広げようという一般消費税が計画されていることです。仮に税率一〇%とすれば、四人家族で月一万円の支出増。これでは家計の火の車は消しようもありません。政政の赤字公債乱発のツケを国民に回そうとする許すべからざる暴挙です。一方、大資産家には株の配当年四百四十万円まで無税であったり、大企業への特権的減税は二兆円をはるかに超えていると言われています。このような不公平な税制を適正に直すことこそまず手をつけるべきです。それともあくまでもこの不公正税制を放置したまま一般消費税を導入しようとするのですか。総理の見解を求めます。(拍手)
 次に、中小零細企業の経営の深刻さは大企業の比ではありません。ところが、今回の補正予算での対策は、若干の金融措置にとどまり、中小企業に将来の展望を与えるものとはなっていません。特に重要なのは、製造業の六割を占める下請業者の問題です。たとえば、トヨタ自動車は二千百億円という史上空前の経常利益を上げました。この膨大な利益の陰にどれぼど多くの下請業者の涙が流されたことでしょう。トヨタの徹底した生産合理化方式は、下請企業に、きょうじゅう、あすじゅうにと所定の部品を納めるよう厳重に指示する。だから、トヨタには余分な部品在庫はなく、したがって倉庫もなければ在庫資金が寝ることもない。ところが、下請は三次、四次、五次と下へいくほど厳しく、指定どおり納品できなければ契約を解除される。見込み生産を余儀なくされ、それが狂えば損害はすべて負わされる。工賃が据え置かれ、下げられても、それでも下請は仕事をもらうためにこの過酷な要求に耐えているのです。しかも見逃せないことは、このトヨタ方式がいま産業界に広がりつつあり、広範な下請業者が犠牲にさらされようとしています。このような下請いじめを放置していては、日本経済は混乱するばかりです。
 あなたは中小企業に手厚い対策をとると言われましたが、このような優越的な地位を利用したあくどいやり方に対してどう対処するのか、所信を伺いたい。(拍手)
 総理は、需要を拡大すれば生産がふえ、雇用がふえると言っていますが、大企業は生産を拡大しても人をふやしてはいません。こうしたやり方を見逃している限り、雇用対策をあれこれ打ち上げても何ら有効な解決策は見出せません。
 そこで、次の三点についてお聞きします。
 失業を減らし雇用をふやすためには、労働白書でも指摘しているように、労働時間の短縮を図ること。
 最近、銀行が企業に、人員を減らさなければ融資はしないと、人減らしの圧力をかけていることが報道されています。直ちにこの実態を調査し、こういう雇用不安を助長するような銀行の横暴に厳しい措置をとること。
 また、中高年雇用促進法の雇用率六%を義務化し、実効あるものにすること。
 以上、お答えください。
 次に、日本赤軍と称する暴力集団による日航機ハイジャック事件について質問いたします。
 総理、あなたは、なぜこのような事件が後を絶たず、どうしようもない立場に追い込まれたのか、考えてみたことがありますか。
 一九六九年、中曽根元幹事長は、三派系学生の暴力行為について「彼らの暴走が市民層を自民党支持につなげる役割りを果たしている」と言い、七〇年の「よど号」ハイジャック事件のときも、当時の川島警備局長は国会質問に答えて「赤軍派の中にも現実に協力をしてもらっている者はたくさんございます」と言っています。今日でも凄惨な殺し合いが内ゲバで起きるたびに、彼らは殺人予告をしたり新聞記者会見までしてその戦果なるものを公表しているのに、これら犯人が取り調べさえも受けていないのはなぜですか。今回のような事件が起きたのは、歴代自民党政府が、共産党や民青対策のために、革マル、中核派などの暴力学生集団を党利党略的に甘やかし、利用してきたいわゆる泳がせ政策の積み重ねの結果であると言えます。赤軍の起こした大きな国際的暴力事件は、これで七回目にもなっています。政府はこうした奇怪な政策を直ちにやめるべきです。
 今回の事件で、アルジェリア政府との交渉に当たり、政府は当初から犯人を逮捕し、処罰するという決意に欠けていたのではないかと国民は深い疑惑を持っています。アルジェリア政府との交渉経過、犯人引き渡し拒否に至るまでの真相を国民に詳細に知らせていただきたい。
 さらに、犯罪者集団の根絶のため関係国と協力して、日本政府は凶悪集団を世界に輸出しているという非難を受けぬよう万全の対策をとっていただきたい。
 さて最後に、世の親たちにとって、子供たちの自殺ほど暗いニュースはありません。
 筑波大学の稲村博助教授は、「十代の自殺は社会情勢のバロメーターだ。社会変動の前ぶれを早い時期から鋭敏にとらえる。だから近ごろの傾向は見過ごせない。何かの警鐘と受けとめるべきだ」と発言しています。
 子供の健全な成長にとって、学校、家庭、行政、三位一体の取り組みが必要です。ところが総理、あなたは最近のテレビで「家庭教育に問題がある」と言われましたが、自民党政府の文教行政には責任がないとでも言うのでしょうか。
 二年置きにしか実施されていない文部省の中学、高校生の自殺実態調査では、急増する子供の自殺に適切な対応はとれません。警察庁だけに頼らず、文部省の責任で総合的に調査し、緊急に対策をとるべきだと思います。
 子供が学業を苦にして自殺をする現象は、日本だけの特徴だと言われています。その原因である受験地獄をなくさねばなりません。せっかく入学した高校の帽子を恥ずかしくてかぶりたくないという子供たちがいることをあなたは御存じですか。どの高校へ入っても、誇りを持って学習することができるよう全国知事会が要求しているように、公立高校を増設し、私立高校への助成を大幅にふやし、学校間格差をなくす努力をすべきだと思います。(拍手)
 すべての子供に行き届いた先生の目が注げるようにすることも必要です。
 また、すぐれた芸術作品は子供たちの精神的な糧となり、このような作品に接して自殺を思いとどまったという話も少なくありません。演劇や映画、音楽など、子供たちのために自主的な活動を行っている文化団体に適切な公的援助を拡充すべきです。
 子供が失敗や挫折に負けない強い心を持ち、健やかに成長していくために、政府がしてはいけないことは何か、政府は何をしなければならぬのか、行政でできることは何でもやるという強い姿勢を示していただきたい。
 最後になりますが、日韓癒着、金大中問題についてでありますが、元KCIA部長金炯旭氏が日本の国会で証言してもよいという意見を表明しました。日本共産党・革新共同は、真相究明のため同氏を予算委員会に証人として喚問する考えであります。総理は、自民党総裁としてこれに賛成かどうか。また、国会で証人喚問が決定されたとき、政府としてその安全を保障するかどうか、明確に答弁を求めます。(拍手)
 以上、私は国民の声を代表して緊急問題について質問いたしましたが、総理並びに関係閣僚の誠意ある答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕
#11
○内閣総理大臣(福田赳夫君) まず、米軍機墜落事件でございますが、この米軍機墜落事故につきまして、政府の責任で事故の原因を究明し、原因が判明するまで厚木基地を使用させないようにせられたい、こういう御意見を交えての質問でありますが、これは政府の方で事故原因調査はやります。やりますが、まだその原因の解明もできていない今日、いま直ちに米側に対し厚木基地からの飛行訓練をやめろという、そういう要請はいたしかねます。しかし、人命尊重、それについて米軍が注意しなければならぬこと、これはアメリカ政府の方から、またアメリカ大統領の方から私に対して言ってまいっております。
 また、海上自衛隊の初動措置が余り活発でなかったのじゃないか、そういうようなお話でございますが、これは海上自衛隊の部隊は事故の発生を知った後、直ちにできるだけの措置をとった、こういうふうに報告をされておるわけであります。
 また、被害者補償の問題につきましては、政府としては早急に、かつできる限りの損害賠償を講じるようにいたします。またとりあえず賠償金の内払いをいたす考えでございます。
 それから、P3Cの導入はアメリカの要請か、こういうような御質問でございますが、これは決してアメリカから言われてするということではございません。わが国の安全を考えなければならぬ。その上におきまして対潜哨戒機、どれが一番性能がいいのか、またどれが人命に安全であるのかと、諸般の状態を検討いたしまして、わが防衛庁におきましてはP3Cが最も妥当であるという結論に到達しておるということでありまして、まだこれは国防会議で決定はされておらないのですが、防衛庁の方ではそのような結論を出しておるという報告を受けておる次第でございます。
 次に、老齢福祉年金の増額、遺族年金の増額、生活保護費の増額、男女差別の撤廃等のお話がありましたが、これは一つ一つ、ぽつりぽつりという解決はできないのです。これは年金それから社会保障、こういう問題全体として新しい環境下においてどうするかということを考えてみなければならぬ、そういう中の一環として検討いたしますが、その際に、これはやはり財政問題、特に年金なんかになりますと巨額の金が要る問題でありますので、年金財政の問題がある。このことも踏まえながら御検討のほどをお願い申し上げたいものだと存じます。
 それから、預貯金金利をもとに戻せというお話でございますが、これは先ほどもるる申し上げたところでございます。御理解願ったと思うのでございまするけれども、物価がとにかく七%台だ、そういう際に、貯金の方を五・二五%にお下げ願う、こういうこと、これは本当に私も思い悩んだところでございます。けれども、いまわが国の大問題は何だと言えば、やはりみんな景気がよくなって、そうしてみんなが職場についてという状態が出現することにある。そのためには、やはり一つ一つの企業に力をつけなければならぬ。その一つ一つの企業が過剰人員、過剰設備、過剰金利、そういうことで悩んでおる。その一つの悩みを解決してやろう、こういう必要に迫られておるそのときに、貯金をしておる人、その貯金をしておる人の利息がしばらく低くなるのだということ。これは日本人全体が連帯の中で生きていくのだ、そういう中で御理解が願えるのじゃないかなと存じまして、そのような措置をとったわけであります。しかし、そういう中におきましても社会保障対象者、その人たちの預金金利につきましては、これは特例措置をとるということにいたしたのでありまして、ひとつ何とぞ御理解のほどをお願い申し上げたいのであります。
 それから、健康保険料の引き上げは取りやめよ、国鉄運賃の値上げは停止せよというお話でございます。これは国鉄財政の現状から見てどうしても運賃問題を解決しなければならぬ、そういうことでお願いをいたしておるわけでございますが、健康保険料の引き上げにつきましても同様なんです。この健康保険料なんかにつきましては、本当にこれを何とか処置してもらわぬと、やがて国鉄のように非常にむずかしい状態になる。まあ財政のことは構わない、後は、ということであれば、これは何でも言うこともできましょう。しかし、それによって本当に安定した健康保険は実行されません。やはり健康保険、これをちゃんとやってということになれば、健康保険財政のこともお考え願わなければならない、かように考える次第でございます。
 それから公共料金の問題に触れられました。公共料金問題は、電電、国鉄、これが一番大きな問題でありますが、電電の関係は済みました。郵政も済みました。引き上げが済んだわけでございます。そしてあと――国鉄の五〇%引き上げというようなあの時期は過ぎたわけなんです。ですから、公共料金を改定しなければならぬ大山は過ぎたのですが、ただ一つ非常に大きな公共料金問題として残るのが国鉄なんです。大山は過ぎた。五〇%引き上げというようなことを再びということは、これはなかなか私はむずかしいと思うのです。しかし、ある程度の引き上げをしませんと、国鉄の運営に支障が出てくる、こういうこともまた事実でございます。しかし、そういうことを考えますと、公共料金全体として大山は越えた。いままでの消費者物価がかなり上がった中では、公共料金はかなり影響しておるのです。その影響度はだんだんだんだんと低くなっていくという事態になりますが、そういう中で、とにかく消費者物価、これがだんだんと低くなる、そのような影響を公共料金には持っていただきたい、こういうふうな心構えでやっていきたいと思います。
 また、一般消費税の導入につきましては、これは先ほどもるる申し上げましたので、重ねて申し上げません。
 それから、トヨタの生産合理化方式についての御所見が述べられましたが、これは公正取引委員会でいま会社に対しまして指導を行っておるそうでございます。政府におきましても、下請事業者の利益を損なうという形で親企業の強化が行われるということのないように指導してまいりたい、こういうふうに思います。
 それから、時間を短縮して雇用の拡大をやれ、こういうようなお話でございますが、これはその一つ一つの企業の実態の問題じゃあるまいか、こういうふうに思うのであります。
 とにかく企業も一般国民も、雇用問題が非常に大事な問題であるということになりますれば、そういう意識になりますれば、こういう問題もそういう方向で解決されるし、また賃金問題にもこれは非常に大きな影響があろうか、こういうふうに思うのです。お互いに乏しきを分け合いましょうという、そういう考え方が雇用問題を本当に有効に解決していくのではあるまいか、そのように思います。
 それから、銀行の態度につきましても御批判がありました。まあ銀行は債権者としていろいろなことを言うことがあると思いまするが、健全な企業、健全な経営をして、ちゃんと担保もしっかりしておる、そういう企業に対しまして、人を減らせなんというようなことを言う立場には銀行はないと私は思うのです。ただ、もう担保力もなくなっちゃった、銀行にも迷惑をかけそうだ、さあ先行きがどうなんだと、不安な企業に対しまして、感想といたしまして、これは人が多過ぎるのじゃないかなんというようなことが間々あるようでございまするが、そういう問題も常識的、妥当的に行われるように政府といたしましては指導をいたしたい。とにかく異常な事態以外の場合におきまして、なるべく企業は雇用水準の維持に協力をするというたてまえがとれるように金融機関も協力するようにいたしたい、かように考えます。
 それから、中高年者の雇用促進の問題、これはいま六%を基準といたしましての指導をやっておりますが、これを法定せい、こういうお話でございますが、まだ法定まではどうかと思います。この基準の励行ということでやっていくのが妥当じゃないか、さように考えます。
 それから、今度のハイジャックが自民党のいわば泳がせ政策に起因をしておるのじゃないかというような御指摘がありましたが、政府はさようなことは一切考えたことはございません。これははっきり申し上げます。政府は逆に、このようなことが再び起こっては困る、こういうことで、本当に精魂を尽くすという形で努力をいたしておるのです。いやしくも、これは自民党がそそのかした、自民党が泳がした、その結果でこんなことになったのだというような、そういう御発言に対しましては、私は厳重に抗議をいたします。(拍手)
 また、アルジェリアの犯人引き渡し問題でございますが、これはアルジェリアにあの日航機が向かうということが判明いたしましたのが到着の数時間前なんです。その数時間の間にアルジェリア政府と着陸さしてくれるかくれないかの交渉をしなければならぬ、そういう状態になったわけでございますが、現地の大使から政府に対しまして、どうしたらいいかと言うから、これは臨機応変の措置をとれ、こういうふうに指令をしたわけであります。その結果、アルジェリア政府の要請に応じまして、犯人の引き渡しは求めない、こういうことにしてしまった、そういうことになってしまったわけであります。これはやむを得ない措置であった、こういうふうに思いますが、なお、その取り戻しができるかどうか、これはなお考えてみます。
 それから、金炯旭氏の国会喚問、これに賛成するかとのお話でございますが、これは国会において御相談を願います。
 また、来た場合に、日本政府はその安全を保障するかというようなお話でございますが、来るということになりますれば、わが日本政府といたしましては、その安全のためにできる限りの配慮をいたします。
 以上で終わりであります。(拍手)
    〔国務大臣三原朝雄君登壇〕
#12
○国務大臣(三原朝雄君) まず、お答えを申し上げます前に、今回の厚木の事故に対しまして、亡くなられた方々に対しまして心から哀悼の意を表しますとともに、被害者の方々にこれまた衷心からお見舞いを申し上げる次第でございます。
 そこで、いま田中議員からのお尋ねでございまするが、大半は総理からお答えをいただきました。その中で二、三補足する点と漏れております点を私からお答えをいたしたいと思います。
 まず、事故調査について米軍脱出の行為等が全く調査できないではないかということでございますが、先ほど総理が申されました徹底した事故調査の一端として、この点につきましても十分適当であったかどうかというような点につきましては調査をいたす所存でおるわけでございます。
 なお、海上自衛隊の処置についてどうだというお尋ねでございますが、総理から申されました、万全を期して処置をしたという報告を受けておりまするけれども、なお私どもといたしましては、そうした点検をいたしておるところでございます。
 次には、P3C対潜哨戒機並びに予算等について、アメリカの要請を得て私どもがそうした処置をしておるというような断定的なお言葉がございましたけれども、絶対にそういうことはございません。国防の基本方針なり防衛計画大綱に基づいて私どもはそうした防衛力の整備なり予算の編成等に当たっておるわけでございます。
 次に申し上げますが、私が今回渡米をしたその目的あるいはその中身、また労務問題等について約束をしたのではないかというお尋ねがございました。
 今回の私の訪米は、御承知のように、去る五十年、当時の国防長官でございましたシュレジンジャーとわが方の坂田長官との間において、防衛の責任者同士が定期的にひとつ、特に何ということではないが、やはり中心は日本の防衛の基調でございまする安全保障条約の円滑な運営を中心にして率直な意見の交換をしようではないか、そういうことを取り決められてまいったのでございます。五十年はシュレジンジャーが参りましたので、昨年、坂田長官がおいでになるところでございましたが、御承知のように、そうしたことが許されなかった。そこで、本年、私がブラウン国防長官からの招待で参ったのでございます。そういうような定期的な相互的な会談であるわけでございます。
 したがって、中身といたしましては、いま申し上げまするように、今回の中身は、極東の軍事情勢あるいはアメリカのアジア政策、日本の防衛政策等についてフランクな立場で意見の交換をしたということでございます。
 次に、労務問題でございまするが、これは安保条約の地位協定に関することでございます。私の方から、できることもあればできないこともあるのだ、現在、合同委員会において鋭意検討をいたしておりまするので、その結果を待ってひとつ対処いたしたいということを申し上げて、アメリカのブラウン国防長官もこれを了承いたしておるのでございます。決してそうしたことを確約するというようなことは何一つございません。
 以上でございます。(拍手)
    〔国務大臣海部俊樹君登壇〕
#13
○国務大臣(海部俊樹君) お答え申し上げます。
 文部省といたしましても、子供の自殺についてはこの数年来全国的な調査を重ねておりますが、直接の原因につきましてはいろいろございまして、家庭の事情とか異性問題とか学業不振とかございます。しかし、親の側からも、親にも子のことがわかっていないと言われる談話がよく出ておるように、これは直接の引き金でありまして、私どもはそういったいろいろな原因の起こるもっと大きな深い問題が何かということを見きわめなければならないと考えております。
 最近の投書の中で、生命の尊厳をいつどこで学ぶかという教師の立場からの御意見や、あるいは話しかけてほしい、孤独にしないでほしいという十代の高校生からの投書を読みますときに、私はやはり強く生き抜く態度の育成というものが大切ではなかろうか。
 このためには家庭の御協力もぜひ必要なことでございまして、過度の甘やかしというものは依存心のみを強くし、子供のためにならない。当面する事態を悩み、工夫し、考え、結果としてそれらのことを克服していくという経験を積むことによって、ささいなことに挫折をしない強い人間の育成が図られるのではなかろうか、こう考えますし、また、学校におきましても、生きることのとうとさ、人生には多様な選択があるのだということをしっかりと教えると同時に、教師と子供の接触の中から、問題行動の早期発見をするように心がけることが大切だと考えます。
 いずれにしても、いかなる事態に当面しても、命を大切にし、挫折しない、たくましい精神を身につけるように指導を徹底してまいりたいと考えております。
 第二点の高校増設、私学助成の問題につきましては、教育の機会均等を尊重する立場から、すでに緊急財政措置や助成の大幅増額に踏み出しておるところではありますが、一層の努力を重ねてまいります。
 最後に、すぐれた芸術に触れることは、子供の情操を高め、豊かな心を養うという、人間形成にとって非常に大切なことであることは私も同感であります。
 文部省といたしましては、芸術劇場や青少年劇場を地方巡回させたり、あるいは民間団体の行う芸術文化事業への補助等を通じて、文化的な環境の向上、それらの施策を今日まで行ってまいりましたが、さらに一層充実をしていきたいと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#14
○副議長(三宅正一君) 河野洋平君。
    〔河野洋平君登壇〕
#15
○河野洋平君 私は、新自由クラブを代表し、福田総理に対し、国政の当面する諸問題について、その所信を問いたいと思います。
 今日のわが国は、複雑かつ流動的な国際環境のもとで、いかに国際的政治責任を遂行していくかという問題と、経済を中心とする国内政治上の諸問題の解決という、二つの重要な課題に直面しております。私たちにいま必要なものは、国際社会の中における日本の位置を正しく把握し、その上に立って内政上の諸問題を解決していかなければならないという時代認識であると考えます。
 あなたは、今国会に、これで勝負だと言われた補正予算を提出されました。しかし、思い出してみてください。あなたは八月の臨時国会で、各党が今日の経済状況から見れば補正予算を組むべきではないかと迫ったのに対し、八月末の経済短期観測を見てから考えると、補正予算の編成について国会の場においては明言を避けました。しかし、その直後、ジャカルタで記者団に補正予算の編成を示唆されたのであります。あなたは、国民各位との幅広い接触と対話の中で合意を見つけて前進したいと所信表明で述べられました。そのためにも、国会での質疑に対して、あなたがもっと真摯な態度で国民に向かって率直に答えられるよう、まず望んでおきます。
 福田さん、あなたはことし一月、アメリカのモンデール副大統領が訪日した際、あるいは三月のカーター大統領との会談の際、さらに五月の先進国首脳会議の際、それぞれ今年度六・七%経済実質成長の達成と七億ドルの経常収支の赤字を公約されました。ところが、さきのIMF総会の際にアメリカの新聞は、「涼しい顔の日本」と非難し、ウィッテフェーン専務理事は、黒字国の拡大策は世界貿易を成長させるのに十分ではなかった、内需喚起の失敗は正されなければならないと、国際経済に対する日本の努力不足を非難しています。世界の中の日本というあなたの再三の主張と異なるこの国際的批判に、あなたは積極的にこたえなければならないと思います。この際、特に国際収支に関するあなたの約束をどの程度達成できるか、その見通しと実現のための具体的方策をお答え願いたいと思います。
 あなたは、わが国外交の基軸である日米関係について、所信表明の中で「成熟した関係」と言われました。ところが、私が最近会ったアメリカ政府の要人は、鋭い口調で、日本はこれまで世界の指導者としての役割りを演じてきていないが、いまや真に指導的で建設的な役割りを演ずるべきときに来ている、日本は指導者にふさわしいことをいままでやってきていないと指摘をして、日本の国際的責任の遂行を求めておりました。実にアメリカの期待は、エゴに固まった日本ではなくて、ともに国際社会に貢献しようということであって、それは単に日米二国間の問題だけではなく、世界的な次元でとらえられ始めている、そう私は感じます。その期待にこたえられないのであれば、日米関係そのものも、単なる仲のよい隣同士でしかないということになってしまうと思います。
 たとえば、五年前、鳴り物入りでカナダその他の国を押さえて誘致したわが国で唯一の国際機関である国連大学は、現在すでに世界的飢餓の問題、人間と社会の開発の問題、天然資源利用と管理などの問題の研究に取り組んでいます。ところが、わが国はこの国際機関に、アメリカを初めとして他国の出資金が順調に集まらないことを理由に、誘致時の条件であった一億ドルの拠出も、昨年までは毎年二千万ドルずつ拠出していたものを、ことしは半分の一千万ドルに縮小してしまったのであります。他国の経済状況が悪いいまこそ、われわれは約束を果たすために積極的に取り組むべきだと考えます。
 あるいはまた、世界銀行がこのほど発表したところによると、開発途上国への世銀融資の原資となる出資額を見ても、日本はわずか七百万ドルで、アメリカの十八億ドル、西ドイツの十四億ドルに比べものになりません。開発途上国への援助は、これまで絶えず日本の貢献が求められながら、わが国はいまだに世界の期待に十分こたえようとしていないのであります。この点についてあなたの所信を伺いたいと存じます。
 さきの東南アジア訪問の際、あなたはマニラでアジア政策を発表されました。そこには、日本が軍事大国とはならない、つまり力の政治はとらない、そして心と心の触れ合いを重視する、ASEAN諸国と体制の違うインドシナ諸国との間の相互理解に基づく関係も改善するといったようなことが述べられています。体制の違い、思想の違い、民族の違いを乗り越えて、アジアの平和と安全を確保するためでき得る限りの努力を払うという基本的考え方には、私たちも賛成であります。
 しかし、こうした考え方に立脚すれば、当然、日中平和友好条約の締結にももっと積極的な努力がなされなければならないと思います。日中平和友好条約は、あなたのマニラ宣言の考え方の延長線上にあると思うからです。それにもかかわらず、共同声明以来この五年間、日中間は、両国国民の強い意思で友好的に進んできたものであって、政府は常に受け身一方ではなかったでしょうか。この九カ月間、あなたは一体どのような努力をなさったのか。アメリカにおける両国外相会議以外にいかなる努力をなさったか、御答弁を願いたいと思います。
 条約締結の焦点は、もはや覇権主義反対を本文の中に盛り込むかどうかの一点にしぼられていると思います。覇権反対はわが国の憲法の精神と合致したものであって、(発言する者多し)覇権主義反対はわが国の憲法の精神と合致したものであって、両国首脳の間で署名された共同声明に盛り込まれていることを考えてみても、福田さん、あなたはいまや唯一の障害である自民党内にある反対論を早急に説得してしかるべきではないでしょうか。(拍手)
 私はここで、他党からもすでに提案のあった日中平和友好条約締結促進決議案について賛成の意思を表明したいと思います。自民党総裁でもあるあなたの御所見を伺いたいと思います。
 福田さん、あなたはマニラで、近い国との友好こそ平和と安定の基礎であると言われました。しかし、福田さんがそのとおり考えているとすれば、朝鮮半島問題についてのあなたの態度はきわめて不可解であります。朝鮮半島の真の平和を目指すのであれば、私たちはもはや韓国との間だけを重視した政策は転換の時期に来ていると指摘したいのであります。外相演説にもあったように、いまや南北双方の存在を無視して北東アジアの安定を語ることはできないと思います。日本には、朝鮮民族の間に再び不幸な争いを招かぬような環境づくりを進めるべき義務と責任があると思います。
 体制の違いを乗り越えて、日本国内にある日韓癒着の疑惑を積極的に解消する努力をするとともに、過去の行きがかりと冷戦的発想を脱して、あなたは、両国の平和的話し合いに、やがては朝鮮民族による平和と統一のために日本に何ができるかを真剣に考え、行動すべきではありませんか。所信をお伺いしたいと思います。
 福田さん、私は、あなたが次の経済政策に取りかかる前に、何よりもまず最初に、本年度当初のあなたの言明どおり今日の経済状況が推移していない理由を明らかにすべきかと思います。そしてあなたは国民に対して見通しの誤りを認めるところから始めるべきではありませんか。
 あなたは、ことし五月の先進国首脳会議の後で、あと三、四カ月もすれば景気はぱっとよくなると自信満々に言いましたけれども、現状は、いまあなたが現に補正予算案を提案していることでも明らかではありませんか。どこに誤算があったのか、まず単刀直入にお伺いをいたします。
 いまの経済状況は深刻であります。いわゆる構造不況業種を中心に民間企業の活力は一向に回復せず、民間信用調査機関の調査では、八月の倒産件数は千五百三十八件、負債総額は対前年同月比九〇%増という恐るべき数字を示しています。雇用情勢も、八月の完全失業者数は百六万人に達し、大学新卒者の採用も、大手企業の三〇%がゼロというではありませんか。企業収益の激減は、やがて一層雇用情勢を深刻にさせ、ビッグビジネスでさえ人員削減を検討し始めているということをあなたは御存じでしょうか。
 私たちは今年度予算の審議に当たり、この程度の経済政策で不況の脱出は不可能だと警鐘を鳴らしました。しかし、あなたは、旧来の大蔵省的発想から抜け出せず、財政の均衡を過度に重視する余りに、大胆な政策がとれなかったではありませんか。
 福田さん、あなたは今日の経済状況を不況とお考えになりますか。それとも高度成長から安定成長に移行する過渡的な痛みだとお考えになっているのでしょうか。あなたの基本的な認識を伺いたいと思います。
 こうした経済状況の中で一番重要なのは、やはり雇用の問題だと思います。中でも雇用情勢の深刻化でまず波をかぶるのは中高年齢の人たちです。近づく高齢化社会を考えても、少なくとも老齢年金の受給時期に見合う定年制の延長にあなたはもっと積極的に指導的役割りを果たすつもりはありませんか。豊かな経験と元気な体力を持ちながら、不安に駆られて不得手な職場につかざるを得ない状態を解消するために、再就職に必要な質的、量的な職業訓練を進めるための施設、制度の充実が図られねばなりません。
 それとともに大切なことは、すでに私どもが立党当初から指摘してきたように、望むならば三世代が一緒に住めるような住宅の供給を急ぐべきだと考えます。中高年齢者が家族と力を合わせて生活の拠点を確保していることが、自分に適した職業を選択する余裕につながることになると考えるからです。
 今回の総合経済対策の中の十万戸についても、望むなら三世代力を合わせてつくり、住む住宅、たとえば二代にわたって返済する親子ローンの創設など、特別の配慮をするおつもりはありませんか。すでに行われている大家族用住宅への特別融資も、現行の五十万円から三倍の百五十万円程度に引き上げるべきではないかと考えますが、あなたの御所見はいかがでしょうか。
 私たちは新自由クラブは、立党以来、教育問題の重要性を指摘してまいりました。大学入試の改善、教育制度改革についての私たちの提案は、教育論議の活発化に役割りを果たしたと自負しております。
 昨日の質疑の中に、社会的要請にこたえた教育という政府答弁がありました。私どもは、むしろ教育が社会をつくる、そう考えたいのです。教育が社会をつくる。そのために固定的な教育制度は積極的に改められるべきだ、そう主張しているのであります。
 今日、高等教育の量的拡大も社会の要請であります。しかし、一方では教育の質的向上を要請する声も大きいのです。こうした二つの要請を受けとめるために、大学改革など思い切った教育制度の改革が必要であると思いますが、あなたの御所見はいかがでしょうか。
 昨今、大学新設に絡む疑惑、堕落した一部教育者の実態の露呈など、不祥事が続発しています。こうしたことがハイジャック事件に象徴されるような若者の独断と暴走をつくり出す一つの要因となっているのではないでしょうか。カリキュラムの手直しで事足れりとしたり、補助金をてこに大学行政を行うといった小手先の問題ではなくて、教育、とりわけ学校制度についての根本的な見直しを行うべきだと思いますが、いかがでしょうか。
 福田さん、私はこれまでいろいろと申し述べてまいりましたが、国民がいま本当に望んでいるのは、行政の改革であり、そして国会の改革だと私は思います。私たち新自由クラブは、かねてから国会の改革を訴えてまいりました。それはふえ続ける議員定数の削減、審議の合理化は国民の声だと信じたからであります。(拍手)私たちは、みずからの姿勢を正すと同時に、行政府に対して行政の改革を要求したいと思います。
 私たちがあなたの所信表明に何一つ迫力や説得力を感じとれないのは、まず政府が率先垂範、みずから行政改革に着手した実績を持って発言をしていないからであります。みずからの行政改革を断行することなくして国民に増税を求める資格はないという意見がちまたにあふれています。
 あなたは、中小企業の今日の変化への対応の努力は血のにじむようなものであり、いかに深刻なものであるかを承知していると所信表明で述べています。そう言いながらも、あなたは、行政改革についてはわれわれから言えばいささか的外れの、長年にわたって言い続けられたことだけを列記した要綱を決定したにとどまりました。当初のあなたの発言から後退に後退を続け、次官会議で批判されるなど、ついに何一つ今日まで具体化を見ずに来たことに、国民は大きな失望を味わっているのです。
 昨日の答弁を重ねて確認いたしますが、来年度予算に行政改革の成果が具体的に数字であらわれると、ここではっきりお約束を願いたいと思います。われわれ新自由クラブは、時代の要請である行政改革にあなたが真剣に取り組む決意であるのなら、われわれもまた誠意を持って協力を惜しむものではありません。(拍手)
 総理の決断を促して、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕
#16
○内閣総理大臣(福田赳夫君) お答えをいたします。
 河野さんが現下の世界情勢、それをながめて、経済の混乱というもの、これを克服することが大変な問題である、そのような認識を持たれておることに対しましては、私も全く同感なんです。そういう中において、日本は一体どういう責任を果たしておるのか、こういう御質問でございますが、わが日本は、とにかくアメリカに次いで工業生産におきましては世界第二の日本国である。その日本国が、この世界経済の混乱の中で重要な役割りをとってもらいたいというのは、これはもう国際社会全体の期待である、こういうふうに考えておるわけであります。
 そういう問題をどういうふうに処理するかというので、ロンドンにおける先進国首脳会談が開かれた。そういう中で私どもは、みんなそれぞれ持っておる国内の経済計画を見せ合って、これを実行しようじゃないかという約束に似た儀式をしたわけでございまするけれども、さて、その首脳会談で示し、出し合ったその諸計画が各国においてどういう状態になっておるか、こういうことを見てみますると、これはまずアメリカ、私はアメリカがそのときの状態と一番近く動いておると思うのです。つまり経済、景気状態。カーター大統領は、私のところは六%だというふうにおっしゃる。大体六%の線を動いておるのです。ただ、アメリカがそのときと非常に違ってきておりますのは、国際収支が大変悪化してきておるという点であります。これは重大な変化であると思う。それからドイツはどうかといいますと、そのとき五%成長ということを言ったのです。ところが、その後、会議が済んだ直後にこれを修正しまして、四・五%成長だと言う。今日は一体どうだというと、その四%成長もまたむずかしい、そういう状態になってきておるのであります。ドイツは、その他の国際収支の点あるいは物価の点、これは当時披露されたような傾向で動いておるわけであります。
 さて、そういう中でわが日本はどうだといいますると、物価はまず、当時私がその席で申し上げた方向で着実に鎮静化の方向で動いております。それから経済成長の方はどうか。六・七%ということを言ったのでありますが、ほうっておきましたら五・九%ぐらいだ。まあとにかくそれでも高い水準でございますけれども、しかし、私は、それでは六・七%には届かないということを考えまして、今度、総合対策をとるということにいたしたわけでありますから、これは国際社会にわが日本が表明したその路線と違わないところへ来るのです。
 問題は、わが日本とすると、国際収支の問題がある。国際収支は計算上七億ドルぐらいの赤字になるだろうというようなことでありましたが、それが今日、とにかくことしは六十五億ドルぐらいの黒字になりそうだ、こういうような状態になってきておる。この点につきまして、率直に申し上げまして、国際社会におきましては非常に不満であります。この不満に対しましては、われわれはこたえなければならない。
 そこで、そのこたえる道は何だ、こう申し上げますると、やはり内需を振興することであると思うのです。がゆえに、私は六・七%成長、これにこだわるわけなんです。内需をそれによって振興し、そして輸入をふやす、そういう形において経常収支を減らす、こういうこと。ただ、これを数字的に見まして、ことし中にもう目に見えるようにというふうな数字上の変化はなかなかむずかしいと思うのですが、上半期に比べまして下半期、十月から来年の三月の時点、この時点におきましては上半期に比べましてかなりの変化が出てくる、このように考えておりまするし、そのために必要な具体的な諸施策を進めようといたしておるわけでありまして、近くそういうことが皆さんにもおわかりになるような状態になるであろう、かように考えております。
 それから、さらに世界政治の問題に触れまして、河野さんからは、アメリカに行ったとき日本は世界的な政治的役割りを尽くしておらぬ、こういう批判を受けたというお話でございますが、私もそういう話はしばしばアメリカの要人から耳にしております。もっと世界政治で物を言ったらどうだ、こう言う。私はそういう態勢をわが日本としてはとるべきだと思うのです。
 一番わが日本が世界に向かって言うべき問題は、私はこの平和という問題であると思う。特に核の廃絶の問題です。核の廃絶まで一挙にいけと言ったら、これは理想論だ、空論だというふうになるだろうと思いますが、まず、とにかく私は、核の廃絶、その第一段階として、わが日本といたしましては、これは核の包括的実験停止、これぐらいから始めて、そしてこの運動を強力に推し進め、そして世界の支持を得るような状態まで持っていく、こういう第一段階を経て、一歩一歩核廃絶への努力をすべき立場にある。これなんか私はわが日本として世界に対して主張すべき非常に大きな問題であると思うのです。
 もう一つは、わが日本が軍備を持たない、そして平和、平和と言っている、これはただ乗り論だというふうに言われますが、それに対しましては、わが日本は開発途上国に対して協力をする、これを強化していく。それからもう一つ、私はやはりこれから人類的立場で考えまして、新しいエネルギーの開発ということが非常に大きな問題になってくると思うのです。この問題にわが日本が積極的に貢献するということも、またただ乗り論に対するところの回答になるであろう、こういうふうに思いますが、とにかくわが日本は、もうわが日本だけ一人で生きていくわけにいかないのですから、世界に貢献しながら、世界社会の一員として生きていくということを深く考えながら、その日その日の政治のかじ取りをしていかなければならぬ立場にある、かように考える次第でございます。
 それから、いま河野さんから中国問題がちっとも前進しないじゃないか、こう言う。確かにそういう一面もありまするけれども、あの共同声明ができてから日中関係というものは非常に順調に動いておるじゃありませんか。また実務協定のごときもほとんど全部締結をされ、あの共同声明にない実務協定まで締結されるという状態で平和友好条約が残っておる、こういうことだけなのです。
 平和友好条約、私が何もしないからだというようなことをおっしゃいますが、とにかくあの共同声明ができてからちょうど五年ですよ、いま。その五年の間、私は九カ月ですよ。たった九カ月なんだ。しかし、その九カ月の間におきましても、私はこの平和友好条約というものがまだ残っておるのだということは片時も忘れたことはないのです、皆さん。進んでいない、進んでいないと言うけれども、これは静かに進んでいるのですよ。これはそのように御承知願いたいと思います。
 なお、朝鮮民主主義人民共和国との関係を正常化すべし、さような御所見でございまするけれども、いま朝鮮半島の状態というものは非常に不規則なんですね。韓国というものがある。北には朝鮮民主主義人民共和国というものがある。そしてその韓国は、ソビエトロシアもまた中国も承認しておらないじゃありませんか。そういう状態のもとにおいて、わが日本だけが北の方は承認だというようなことになる、これはなかなかむずかしい問題だと思うのです。しかし、私の基本的な考え方は、平和的に南北が統一を実現することである、そのように考えておるのであります。その環境づくりに向かいまして、私は私なりに努力をしたいと思うし、また努力もいたしておるということをはっきり申し上げます。
 それから、今度は経済の問題に戻りまして、今日の状態を不況と見るのか、過渡的の現象と見るのか、転換期の現象と見るのかというお尋ねでありますが、私は、今日の経済状態は世界の転換、その中での日本社会、日本経済の転換、その苦悶の瞬間である、このようにとらえておるのであります。
 誤算があったのじゃないかと言うが、誤算があると言えば構造不況問題、この問題に手のつけ方があるいは遅かったかもしらぬ、このように私は考えておりまして、しかし、いまからでも遅くはありませんと思いまして、構造不況対策をいま一生懸命進めておるという最中であります。
 構造不況対策、それからまた中小企業、これも非常に疲弊しておりますので、この対策もいろいろ講じなければなりませんけれども、早く日本経済を安定した軌道に乗っけるように最善を尽くしてまいりたいということを申し上げます。
 それから、金利の引き下げの問題につきましてもちょっとお触れになりましたが、この問題につきましては、先ほどお答え申し上げましたので、省略をさせていただきます。
 それから、雇用問題につきまして、特に中高年齢層の職業訓練を進めるため施設、制度の充実を図れ、こういう御所見でありますが、いまそういう方向で大いに努力をいたしておるところであります。
 また、住宅政策につきましても、大住宅主義、そういう方針をとれ、こういうお話でございますが、一挙に大世帯をというところまでは、なかなか公団住宅、公営住宅といたしますといきかねますが、気持ちは全く河野さんと一緒でございます。そういう方向で進めてまいりたい、かように考える次第でございます。
 またさらに、大学制度の見直しを初め、教育制度全般の改革、検討に着手せられたい、このような御要請でございますが、いまこの教育問題をながめてみまして、決して私は満足すべき状態ではない。教育制度といえば、何十年に一回の大きな変革でございまするから、事は慎重でなければなりません。けれども、今日の状態は、この問題を真剣に考えなければならぬ時期にいま来たのだということだけは確かだ、こういうふうに思うのであります。これは政府だけで独走というよりは、皆さんの御意見を大いに承り、そうして国民的総意を結集してやらなければならぬというくらいな大きな問題であると思うのであります。しかし、当面といたしまして、さあきょう入学制度をどうするかとか、いろいろの問題がありますが、それらの問題はそれらの問題といたしまして、一つ一つ忠実に処理いたしたい、かように考えておる次第でございます。
 それから、さらに行政改革についてお触れになられましたが、これはしばしば申し上げておるんですが、世の中がこれだけ変わってきて、政府だけがのほほんと高度成長姿勢でおるわけにこれはいかないのです。そういうことを踏まえまして、私は何とか行政改革を推し進めたい、こう申しておりますので、また自由民主党の幹部から皆さんにもいろいろ御意見も承っていただいておることと思いまするけれども、ぜひひとつこの行政改革という問題につきましては、各党、各派ひとつ御協力を願いたいのです。政府におきましても、成案をいま鋭意作成中でございます。そしてでき得れば皆さんの御協力を得まして、もう一部でも来るべき通常国会には御審議を願うように持っていきたいのであります。河野さんが述べられましたお考えと、私は気持ちにおいて一緒でございます。
 ただ、数字で次の通常国会でどうなるか示せというお話でありますが、数字でこの問題を示すことはこれはできません。できることは法律案をもって示すことである、かように御理解を願います。(拍手)
#17
○副議長(三宅正一君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
 国立国会図書館長の任命に関する件
#18
○副議長(三宅正一君) お諮りいたします。
 国立国会図書館の館長に岸田實君を両議院の議長において任命いたしたいと存じます。岸田實君の任命を承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#19
○副議長(三宅正一君) 御異議なしと認めます。よって、承認するに決しました。
     ――――◇―――――
#20
○副議長(三宅正一君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後五時三十二分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  福田 赳夫君
        法 務 大 臣 瀬戸山三男君
        外 務 大 臣 鳩山威一郎君
        大 蔵 大 臣 坊  秀男君
        文 部 大 臣 海部 俊樹君
        厚 生 大 臣 渡辺美智雄君
        農 林 大 臣 鈴木 善幸君
        通商産業大臣  田中 龍夫君
        運 輸 大 臣 田村  元君
       郵 政 大 臣 小宮山重四郎君
        労 働 大 臣 石田 博英君
        建 設 大 臣 長谷川四郎君
        自 治 大 臣 小川 平二君
        国 務 大 臣 石原慎太郎君
        国 務 大 臣 宇野 宗佑君
        国 務 大 臣 倉成  正君
        国 務 大 臣 園田  直君
        国 務 大 臣 田澤 吉郎君
        国 務 大 臣 西村 英一君
        国 務 大 臣 藤田 正明君
        国 務 大 臣 三原 朝雄君
 出席政府委員
        内閣官房副長官 塩川清十郎君
        内閣法制局長官 真田 秀雄君
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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