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1976/05/17 第80回国会 参議院 参議院会議録情報 第080回国会 運輸委員会 第8号
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1976/05/17 第80回国会 参議院

参議院会議録情報 第080回国会 運輸委員会 第8号

#1
第080回国会 運輸委員会 第8号
昭和五十二年五月十七日(火曜日)
   午前十時三十分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月十四日
    辞任         補欠選任
     中村 太郎君     戸塚 進也君
 五月十六日
    辞任         補欠選任
     戸塚 進也君     林  ゆう君
     鹿島 俊雄君     永野 嚴雄君
 五月十七日
    辞任         補欠選任
     青木 薪次君     羽生 三七君
     福井  勇君     中村 太郎君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         上林繁次郎君
    理 事
                岡本  悟君
                中村 太郎君
                瀬谷 英行君
                三木 忠雄君
    委 員
                木村 睦男君
                小林 国司君
                佐藤 信二君
                杉山善太郎君
                安武 洋子君
                和田 春生君
   政府委員
       運輸省海運局長  後藤 茂也君
       運輸省船員局長  横田不二夫君
       海上保安庁長官  薗村 泰彦君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        村上  登君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○海上衝突予防法案(内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(上林繁次郎君) ただいまから運輸委員会を開会いたします。
 委員の異動に伴い、理事一名が欠員となっておりますので、この際、その補欠選任を行います。
 理事の補欠選任につきましては、先例により、その指名を委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(上林繁次郎君) 御異議ないと認めます。
 それでは、理事に中村太郎君を指名いたします。
    ―――――――――――――
#4
○委員長(上林繁次郎君) 海上衝突予防法案を議題とし、質疑を行います。
 御質疑のある方は御発言願います。
#5
○岡本悟君 海上衝突予防法案につきまして、若干の質問をしたいと思います。
 最初に、この法案がいつ成立するかわかりませんけれども、どんなに遅く見ても来週中には本会議で成立すると思うんです。で、国際条約の発効が七月の十五日ですから、その発効の期日に合わせて本法の施行期日が決まるわけなんですが、そうすると、実施まで幾らもないわけですね。これは、準備その他は間に合うんですか、どうなんですか、ちょっとその点が心配なんですが。
#6
○政府委員(薗村泰彦君) ただいま御指摘のとおりでございまして、世界的に発効の時期が七月十五日を控えて非常に切迫をしております。そこで、私どもも実は、特に本年に入りましてから、新しい条約が行われたときにどうなるかということを周知徹底方を図るように、かなりパンフレットを用意をいたしましたり、それから、私どもの地方の部署を通じて関係者に講習会を開きましたりして、十分その新しい条約の徹底方を図ってございます。
 したがって私どもとしては、お願いいたしたいことは、この国内法をぜひ採決をしていただいて、その新しい国際条約と違わない国内法がはっきりでき上がるということで、国際条約に準拠をした、のっとった、そのままの国内法ができるということを周知すれば、具体的な内容はすでに、特にことしに入ってからかなり浸透するように、新しい条約が七月十五日から発効する場合の航法などについてはこういうことを注意しろということを事前に実は公報してございます。ただここで、国内法の制定を、改正案を御可決いただいたら、それが同じような内容の国内法であるということをさらに私どもは時間いっぱいその趣旨の徹底を図りたいということを現在考えておるところでございます。
#7
○岡本悟君 それは大変結構なんですがね。やはり国会で成立するまでは、そういう事前、予備的な行動をいたしますと、国会の立法権を無視しているとかなんとか、そういう非難が起こりやすいことでありますので、私もそうであろうとは思ったけれども念のために聞いたわけなんですが、この国際条約はすでに一九七二年に採択されているわけなんですね。昨年西独が入りましたので、条約発効の体制が整ったということなんですね。
 それにしては、私はどうも政府の対応の仕方が遅いと思うんですが、何か特別の理由があったんですか。もう少し早く加入の準備をして、たとえば、あれは何とかという審議会でしたな、あの審議会の御意見を聞くにしましても、もっと早目にやって、そうして事前の準備を十分にやる。こういうことがとるべき当然の方策ではなかったかと思うんですけれども、非常に遅いんですね。ぎりぎりいっぱいになっておやりになるっていうのは何か理由があったんでしょうかね。
#8
○政府委員(薗村泰彦君) 御指摘のとおり、一九七二年にでき上がりました条約でございますんで、私どもできるだけ早く、世界の海運の中での日本の位置づけからしても、その条約の批准、それから国内法の制定を急ぐべきであったと思います。また、事実そのとおり、私どもも努力は、できるだけのことはしたつもりなんですが、やはり狭い海をめぐって、特に日本の沿岸につきましては、一方ではそれを生業としている漁業の関係もございますし、片一方ではそれを交通の場としている船舶関係もございますので、誤解のないように、新しい条約が特に狭い水道における航法関係などが、両者の利害関係がかなりふくそうするところはあるんですが、そういう点について誤解のないように、両方に十分わかってもらうということに時間をかけたつもりでございます。
 したがって、いまお話しございました海上安全船員教育審議会にかけますときは、最終段階でございましたので、かなりおくれて一回かけたということに形式的にはなっておりますけれども、それに先立つ一年数カ月について、海上保安庁の諮問機関として関係者に集まってもらって、特に漁業関係などは、中央だけではなくて地方からも集まってもらって、水産庁と私どもで両方連絡を十分とりながら理解を十分してもらう、誤解のないようにしてもらうということで時間をかけたということが本日まで遅くなったという点でございます。
#9
○岡本悟君 いや、むしろそういう点があればなおさらのこと、早くから準備をして、誤解とか、紛争とか、争いの起こらないようにやるべきなんですね。あなたがおっしゃるように一流の海運国なんですから、むしろ率先してこの条約の加盟を急ぐとか、あるいはそのための準備を十分やるとか、こういうことが当然なんですね。どうも対応の仕方が遅いと思うんですけれどもね。その点はこれから十分注意してもらいたいと思うんです。
 そこで、この海上衝突予防法案の内容は非常に技術的で、私ども率直に言って。船を操縦したことがありませんから、操船した経験がありませんからほとんどわかりません。これは後ほど、野党の先生方の中には専門家もおいでになりますので細かい御質問はあるかと思いますので、私は二点につきましてお伺いしたいのであります。
 第一点は、最近の海難事故、あるいは衝突事故ですね、こういったものを見ておりますと、たとえば昨年の七月二日、瀬戸内海の情島と言うんですかね、この近くの水道でカーフェリーの「ふたば」とパナマ船の「グレート・ビクトリー号」との衝突事故がございました。死者も出たり、行方不明が出たりした事故なんでございますが、カーフェリー「ふたば」は沈没しております。この「グレート・ビクトリー号」というのはパナマ船であります。恐らく便宜置籍船だと思うんですが、それで、この船長は何長偉という台湾人だと思うんですが、この台湾人の方が船長であります。
 で、台湾とか、そのほか発展途上国の船員が非常に最近私は多くなってきておると思うんですが、別に他国のことを非難するわけではありませんけれども、操船技術とか、そういうことの誤りに基づく事故がかなりございまして、船長初め船員の質の低下が相当事故にかかわりがあるんではないかというふうに私思えてならないんです。日本で考えますと、御承知のように、海技従事者というものは厳重な国家試験があって、それに受かって、なおかつ国家の免許を受けなければ海技従事者にはなれない。非常にむずかしいんですね。それによって、優秀な船員の素質を担保しておる。こういうことが非常に海難事故の防止につきましても重要なウエートを持っておると思うんです。
 ところが、いかなる能力を持った船員にそういう免状を、免許を与えるか。これは各国それぞれの主権に基づくやり方によって異なってくるわけでありますから、したがって、国際的にいいまして、率直に言ってその水準はまちまちではないかというふうに私思っているんですがね。だから、たとえば非常に腕の悪い船長が指揮する外国船が、日本のような非常に海上のふくそうしておる港なり、水域に入ってきますと、よほど経験がないと危ないなあという感じがしてなりません。で、この船員の質を担保するためのそれぞれの国におけるやり方というものは相当違っていると思うんですね。ある国では非常に簡単にとれる。ある国では自国の免許、免状を持っておれば、すぐに当該国の免許、免状も出してくれるというようなところもあるかと思うんですね。だから、国際的に見て、船員の質の確保というものは一体どういうふうに考えているのか。いまの国際的な動きを御説明願いたいと思うんですが。
#10
○政府委員(横田不二夫君) お答えいたします。
 ただいま先生からお話がございましたように、世界各国の海技資格制度と申しますものはそれぞれの国で決めている、これが実情でございまして、その間には国際的な基準というものがございませんために、国によっては非常に資格程度が低い、こういうところがあるように思われます。ただいま御指摘の便宜置籍国などの場合には、特にその海技資格制度のチェックするシステムが非常にレベルが低いということから、御指摘のような実例があると、かように考えられるわけでございます。
 ところで、世界の各国の海運国の動きは、大体国連の専門機関でございます政府間海事機構――IMCOと称せられておりますけれども、これを中心にして安全関係、あるいは海洋汚染防止関係等、海運関係の安全その他に関して動いておるわけでございますが、その動きの中で申し上げますと以上のようなことでございます。
 一九六七年、昭和四十二年でございますけれども、御承知のトリー・キャニオン号事件という、これはリベリアのタンカーがドーバー海峡で座礁をいたしまして、大量の流出油事故を起こしたために、沿岸各国が非常な被害をこうむった事件でございます。この事故を契機といたしまして欧州各国が、特に一たんこのような事故が起これば大変なことになる、こういうことから問題を提起いたしまして、IMCOにおいて早速その年の五月に特別理事会を催しまして、それによって法律の委員会をつくって、油汚染の責任の問題を検討するという片っ方で、乗組員の訓練と資格について国際的に基準化をする、こういうことを海上安全委員会で検討すべきことを決定したのでございます。
 それ以来、いろんな検討方針等について議論が行われまして、若干年月があきますが一九七一年――昭和四十六年の十月に海上安全委員会の中に訓練・当直基準小委員会、俗にSTWと申しておりますが、こういう略称せられる小委員会を設けまして、ここが専門的に海技従事者の資格基準、それから訓練・当直の基準というものについて関係各国を集めまして会議をやってまいりました。七二年の五月に第一回の小委員会を催しまして以来、国際会議としてはきわめて異例でございますけれども、毎年二回の小委員会を催しまして、昨年の十二月で九回目を終えたところでございます。またことしもあるわけでございますが、そういうふうなハイピッチで検討が行われてきております。
 要は、その中で申しますことは、国際的に、最低の資格基準を決めるということが一つ。それからもう一つは、そういう基準とともに当直に立つ人の、当直と申しますのは航海の当直と機関の当直、それに通信当直とございますが、それぞれの分野における当直に立つ人の訓練の基準、この二つを決めるということが要点でございまして、大体の案はでき上がってきたわけでございます。ところで、この案はことしの六月に開かれますIMCOとILOとの合同委員会、これにかけられて相談をされる、こういう形になっております。と申しますのは、先ほど申し上げましたトリー・キャニオン号事件が起きた後、この問題を取り扱おうとしたのはIMCOだけではございませんでして、ILOにおいては労働条件の面から、またOECDにおいては便宜置籍船の実態把握の面からそれぞれ討議が行われてきたわけでございます。特にこの便宜置籍船の事故の問題は、いわゆる船員の労災事故としては最大のものになりますので、したがって、労働条件の面から見てもILOとしてはかねてから無関心ではおれないと、こういうことで、IMCOとILOとの合同会議もあるわけでございまして、これがこの前からも開かれておりますけれども、この六月に一応の試案をもとに連絡会議が持たれる、また十一月にも同様に小委員会がございまして、来年の六月――五十三年の六月に条約の採択を予定する会議を行う、このような動きになっております。
 以上申し上げましたような、IMCOを中心といたします便宜置籍船を中心とする基準以下船の安全確保に関して、これを操船する乗組員の資格とその当直の仕方の基準を定めようと、こういうことでございます。しかしながら、これだけでもまだ、免状を国際化するというところまではいかないのでございますが、最低レベルを決めるというこの動きは評価してよろしいのではないか、かように考えておる次第でございます。
#11
○岡本悟君 よくわかりましたが、来年の六月にはこの条約を採択するというところまで持っていきたいということなんで、大変私は結構だと思うんです。しかし、それにいたしましても、いまお話がありましたように、最低基準をつくるというようなことで、実質的にこの質の向上は急速に図れるものでもない、そう期待すべきものではないと思うんですね。ですから、ここ当分は質の向上が実際あらわれてくるまでは、依然としてこの日本の周辺においては非常に技量未熟な船員によって操られる船が出入りするという心配が消えないわけですよ。そこで私は、先般海上交通安全法が国会で審議された際にも痛感したんですが、どうしても緊急避難行為的に考えてみても、とりあえずは強制水先区を拡大していくといいますか、ふやしていくという方法によって、船の安全な運航を確保するという手しか残されていないように思うんですね。
 もちろん、日本の船で日本人が操船しておる場合には、しょっちゅう出入りして事情がよくわかっておりますから、比較的その心配は少ないと思うんでございますけれども、たまたま入ってくる外国船が、余り事情を知らない外国人によって操船されている場合には、非常にその危険性は大きいというふうに私は見ておるんです。そこで、どうしても強制水先区をふやして、そうして水先人によって安全な運航を確保するということが一番いいやり方ではないかと思うんですが、強制水先区は、先般海上交通安全法が審議されました際にやはり出まして、それで東京湾水域全体がほとんど強制水先区としてカバーされまして、これが昨年の六月ですか、何か実施されたようでありますけれども、さらに私はこれを拡大して、たとえば瀬戸内海水域全般に強制水先区を拡大すべきである、こういうふうに思うんですが、この強制水先区をふやす、あるいは拡大するということにつきまして一体現状はどうなっておりますか、ちょっとお話し願いたいと思うんです。
#12
○政府委員(横田不二夫君) お答えいたします。
 ただいま先生が御指摘のとおり、日本の沿岸の非常にむずかしい水路において、かつ過密な状況でございますし、またそのために、いろいろと日本の内水について、海上交通安全法、その他港則法等、複雑な法規もございます。したがいまして、こういうものにすべて通暁するということは日本人船長でもなかなかむずかしいところでございますので、外国人船長が乗る外国船の場合には、水先人をとって嚮導をさせるということが一つの方法であり、非常に効果があると思われます。特に水先人を乗せた場合についてのいろいろと評価が言われておりますけれども、日本海難防止協会の研究では、港の場合には水先人を乗せれば事故が五分の一、それから狭水道の場合には七分の一、大体おしなべて六分の一くらいに事故率が下がる、こういう研究もあるわけでございますので、そういう意味で、現在強制になっていないところでも、海上交通の安全を確保する面から、海上保安庁において任意水先区であっても水先人を乗せるように御指導をいただいているわけでございます。
 ところで、確かに水先人を乗せること、これを強制した方がよろしいわけでございまして、その点につきましては従来、特に混雑しております港としまして、たとえば横浜とか神戸とか関門とか、その他の枢要の各港について強制水先が設けられてきたわけでございますけれども、四十七、八年ごろから非常に便宜置籍船と申しますか、そういう船がふえてまいり、かつその事故がふえてきたということ、それから特に四十五年ごろでございますけれども、浦賀水道で大きなリベリア船コリントス号の事故があったということ等も踏まえまして、前々から海上安全船員教育審議会においては強制水先の拡充について御審議をいただいていたところでございますが、最近では四十九年の秋十一月に、例の第十雄洋丸の悲惨な事故が起こりまして、それから急速に、先ほど先生が御指摘の東京湾全域を浦賀水道を含めて強制にすべきではないか、こういうことで、にわかに五十年の国会で水先法の御改正をいただきまして、強制が東京湾について施行されたわけでございます。
 その際の、東京湾の強制についての中間答申におきましては、東京湾だけでなくてその他の過密水域、たとえば大阪湾を含む瀬戸内海水域、それから伊勢湾水域、それから特定重要港湾等の水域について、逐次強制制度を推し広めていくべきであるというふうな内容になっておりまして、そういうことを前提にいたしまして、中間答申が出ました後も、強制区の拡充について鋭意御審議を願っているところでございます。
 ただいまは、対象といたしまして、やはり何といいましても瀬戸内海水域が一番問題で、海上交通安全法の面でも特に東京湾に次いで重視せられておるところでもございますので、再々事故も多いということもございます。そのほかに、潮流その他非常に複雑な自然環境条件にございますので、ここからやるべきではないかというまず第一の御方針でございまして、先般も瀬戸内海の燧灘から東部の海域を視察されました。それから、近く来島海峡から西部の海域の現地視察もやることになっておりますので、その上で、この広大な瀬戸内海のどこから着手していくか、まず優先順序を決めて強制区の設定をやっていこうと、こういうことで非常にハイピッチで審議が進んでおります。
 私どもの考え方、それから関係の審議会としての海上安全船員教育審議会におけるお考えはそのようなことでございまして、瀬戸内海を終わればその次はどこになりましょうか、あるいは伊勢湾であろうかとも思われますけれども、そのように強制区はやはり拡充していくことが望ましいと、先生御指摘のとおりの所見、立場に立ってやっている次第でございます。
#13
○岡本悟君 御同意をいただきましたので、その方向でどんどん準備を進めてもらいたいと思うんですが、段階的に、瀬戸内海をまずやってその次に伊勢湾をやるとか、そういうふうなことでなしに、やはり危険度が相当高いというふうな認識で一致しておるんでありますから、一斉にやるということをお考えになってもいいと思うんですね。そのことをもう一回検討してもらいたいと思うんですが。
 そこで私は、この場合に心配するのは、国際的にこの強制水先区を拡充することが一体どういうふうに反応を呼び起こすであろうか。つまり日本は、主権の発動として勝手にどんどんどんどん強制水先区を拡充する。したがって、これは船主には経費負担増になるわけですね。でありますので、そういう経済的な負担増を求めさせられる結果になる強制水先区の増設ということはどうもおもしろくない、日本は非常に勝手気ままなことをしているというふうにとられるかもしれませんし、いわんやこの通商航海条約とかあるいは海運協定では相互主義で、お互いに内国民待遇を与えるということになっておりますから、外国船だけに差別的なやり方をとるということもどうかと思われますが、その点はどういうふうに判断されておりますか。
#14
○政府委員(横田不二夫君) まず第一点、先生御指摘の段階的、逐次に、たとえば瀬戸内海からまず手をつけて、それからその他の水域に及ぼすんじゃなくて、できるだけ並行的に重要なところをやっていくべきではないかという御指摘に対しまして、私どもとしましてはごもっともと思いますので、そのように国会の御意見を審議会に伝えて、審議の促進について御検討をいただくことにいたしたいと思うんでございます。
 次に、強制区を広げていくことによって外国がどのように受け取るであろうかということでございますけれども、私としましては、世界の国々によってそれぞれのお国柄があり、またそれぞれの国の水路事情あるいは交通事情があるわけでございまして、したがって、安全確保という面から強制区を拡充していくということについては格別意見を出すいわれはないと、かように考えるわけでございます。しかしながら、強制水先にいたします場合、その他の場合でも同じでございますけれども、通商航海条約等によって御指摘のように内国民待遇がございますので、外国船だけを強制にすると、こういうことは相ならぬわけでございまして、やはり内外船ひとしく、また外国船も便宜置籍であるとないとを問わずひとしく強制にしなければならない、かように考えるわけでございます。
 あるいは、日本人船長については、水先法の規定によって航海実歴の認定という制度があり、それによって強制免除がされる場合があるではないかと、こういう御指摘を含めていらっしゃるんではないかと思うんでございますけれども、この日本の水先法にございます強制免除の制度と申しますのは、一言で言えば、日本の水域について、日本人船長であるから持っている一身専属的な技能というものに着目してこういう制度が設けられているわけでございます。
 若干詳しく言えば、まず第一点は、日本の水先人と同様の水路その他についての知識を持っているということ、それから経験を持っているということなどが大事なことでございまして、そのためには、形式的に言えば日本の海技免状を取得しているということが一つの証拠であり、それからもう一つは、日本人であって日本語を話し、いかなる場合にも対応できるということ、並びに日本の沿岸水路における自然環境の条件ばかりでなくて、そこで行われている漁業その他のいろんな海上における操業の状況、それから風俗、慣習、こういうものを知っておりませんとにわかのときに対応できない。こういうことから、日本人の船長だけに一定の条件を前提にしましてそういう強制免除の航海実歴認定制度があると思います。まあこの点につきましては諸外国から一度もクレームを受けたというほどのことはございません。そういうことからいたしまして、強制制度を実施する場合に外国船あるいは外国との間に差別等のことで問題があるとは思っておらない次第でございます。
#15
○岡本悟君 それからもう一つ、強制水先区をふやす場合に心配になりますのは、水先人の自給と申しますか、果たして水先人がどんどんふやせるだろうか、こういう心配もあるわけなんです。言うまでもなく水先人は、法律によってある一定の資格が必要ですし、また運輸大臣の免許をもらわなければなりませんので、その点から、急速に拡充する場合に一体間に合うだろうかどうだろうかという心配があるわけなんですが、その点はどうなんでしょうか。
#16
○政府委員(横田不二夫君) ただいま全国の水先区に水先人は四百三十人おるわけでございます。この水先人の員数を適正な員数に確保するということにつきまして、これは当然見直しを毎年やっていかなければならない、かように考えております。そういう点から、年度末に当該年度の業務量を精査いたしまして、それと現在の水先人との関係で労働過重、あるいはサービス低下という形になってないかどうか、そういう見直しをやっております。ことしの三月にもそのような見直しをやりまして、本年度四百三十人に対して五十人から六十人の増員をするということが海上安全船員教育審議会の水先部会で決まっておるわけでございます。
 これは強制を除いた、一般の任意水先区の業務確保のためにこの程度のことをやっておるわけでございますが、強制をやるとなりますと、強制区になるとなりますと、東京湾の例で申しますと、東京湾区水先区の業務をやりますのは主として横須賀の水先区の水先人でございますが、これが従前四十三人であったものをほぼ倍の七十三人にしたわけでございます。このときの経験から申し上げますと、その水先区にいる通常の水先人が平生の業務を執行しなけりゃなりません。片っ方で、水先人の免許を取る過程において水先修業生という段階がございますので、この修業生のめんどうも見なきゃならない。実践において指導をしなければならない。そういうことを考えあわせますと、大体年度間に養成可能な修業生の割合というものは、水先人の員数の半分くらいが妥当であろうかと、かように思うわけでございます。年度間と私申しましたが、一回に養成する水先修業生の数は、当該水先区の水先人の員数の半分ぐらいが妥当かと、かように思うわけであります。
 片っ方、水先人が水先人の免許を受けて正式に水先人の業務を始めるのに大体手続上六カ月近く、五カ月から六カ月かかる。この中にはもちろん水先修業生としての現地での修業期間も入っているわけでございますが、この点もあわせて考えますと、年間に養成し得る新しい水先修業生の数というものは、当該水先区の水先人の数とほぼ同じ員数のところが一つの限界である、こういう制限はあるわけでございます。しかしながら、そのような制限はあるにいたしましても、その限度までは努力ができるということを逆に申し上げているわけでございまして、その他に格別の支障はないと思うわけでございます。
#17
○岡本悟君 だから結論は、自給については心配はないと、こういうことなんですね。
#18
○政府委員(横田不二夫君) 自給と申しますより、必要とされる水先人の養成については格別の心配はない。ただ、いま申し上げた限度でも時間がかかるということを申し上げておるわけでございます。
#19
○岡本悟君 私は詳しくは知りませんのですけれども、アメリカのカーター大統領が、アメリカの東岸の港に出入りする外国船、特にタンカーにつきまして厳重な規制をするという声明をしたとかしないとか、そういう話を聞いたわけなんですよ。これは、御承知のようにアメリカは、タンカーの事故による海上の汚染に非常に神経質でありまして、アメリカの海運局はかねてから、アメリカに出入りするタンカーは二重底でなければいかぬという規制を準備いたしまして、もうすでに実施しておるのかどうか知りませんけれども、そういう話をかなり前からやっておったことは私も承知しておりますが、今回は、大統領は特に船員の質について、ある程度の水準以上の質を持った船員が操船する場合でなければタンカーの出入を認めない。こういうふうなことを声明したというふうに聞いておりますが、この点はどうなんですか。それから、もしそれがそうであるとすれば、その後の実施状況ですね、こういったことはどうなっておりますか。御存じであればお教え願いたいと思います。
#20
○政府委員(横田不二夫君) ただいま御指摘の、米国大統領カーター氏のお話しといいますのは、米国の連邦議会におきまして、ことしの三月十七日に出された声明と申しましょうか、そういうものではないかと思います。これは米国水域内及び近海で起こった昨年来の一連の油タンカー事故が非常な海上汚染問題を引き起こしたということにかんがみまして、米国としては、いま御指摘になったような点も含めていろんな措置をするということを言っているものでございます。
 こういうことを言われた目的は三つあると言っておりますが、一つは、タンカー事故及びすべての船舶からの通常運航による排出に起因する油汚染を減少するということが第一点。第二は、油の流出が実際にあった場合に、この流出した油を迅速かつ効果的に処置する能力を改善する。それから、油汚染被害の犠牲者に対して十分な補償をする。主として流出油事故の防止と対策という形になっております。その中で、先ほど御指摘の乗り組み船員の質の問題につきましては、こういうふうな油汚染事故の防止につながる海難を未然に防ぐために船員の資格基準と訓練について言及したものである、こういうふうに思われるわけでございます。
 その中では一つは、外国の船が事故を起こしたのは、たまたまリベリア船等であったと思いますけれども、外国の船ばかりでなくて、米国船員の免許及び資格基準についてもこれを引き上げるために直ちに措置をしろということでこれは運輸長官にした。それからまた、船員の資格に関する国際基準について、主要な国際会議における基準に準じてこれを守らせるということ、それが国際的な基準を励行するために米国は、米国の港に入港するすべての船舶の船員に対して、一九七八年以降において規制を課することになるかもしれない。こういうふうな考え方を示しているわけでございます。
 この点は、先ほど私が申し上げましたIMCOにおける訓練・当直基準の小委員会で検討されております国際的な船員の資格基準、当直基準に関するものとリンクしているわけでございまして、これが来年でき上がるということであれば、これはカーター大統領のお考えとも一致するわけでございますし、そういうふうになることが期待されるわけでございます。
#21
○岡本悟君 もう時間があと十分ばかりですから、いまの強制水先区の問題はこれだけにしまして、もう一問は、わが国の国益に重大な関係のありますマラッカ海峡の航行規制についての問題を取り上げてみたいと思います。
  〔委員長退席、理事瀬谷英行君着席〕
 これもすでに新聞紙上で詳細に報道されておりますように、五十年一月六日の祥和丸事故によりまして非常なショックを受けた沿岸三国が、特に大型タンカーの事故によって沿岸国が受ける被害を何とか防ぎたいということでしばしば協議を重ねまして、そしてことしの二月でございますか、一応結論を出して三国間の合意に達したものですから調印をして、そして合意文書の発表をしたようでありますが、それによりますと、規制は十二項目になっておるようでありますが、その柱は何といっても大型船舶の航行を何とかして防ぐということで、そのやり方としてUKC――アンダー・キール・クリアランスですか、これを三・五メートル以上を保つこと。それからもう一つは、特に危険な水域では分離通航とする。この二つが骨子になっておるようでありますけれども、これに関する第一の質問は、二月二十四日に三国間で合意に達してもう三月もたとうとしておるわけですね。
 これは今後どういうふうに実施されるのか、たとえば新聞紙上の伝えるところによりますと、IMCOにこの合意を持ち出しまして、一応IMCOでオーソライズしてもらって、そして各国間にその規制をアプライする。こういうことになるのか、これは合意文書を見ますとあくまで勧告でありますから、強制権はないがごとくにも思えるんですが、一体今後の段取りについてどういうふうに見ておられますか、その点をお伺いしたい。
#22
○政府委員(後藤茂也君) 御指摘の、二月にマニラで行われました三国の外相の共同宣言というものは、ただいまお話がございましたような内容でございますけれども、この宣言をやりました後の三国がこの後どういうふうにこの宣言の内容を実施に移していくのか、たとえばその時間的な予定表であるとか、その手続であるとか、あるいはきわめて抽象的な宣言の内容でございますけれども、その細目の確定であるとか、そういったようなことにつきましては、その後もいろいろと三国と折衝いたしておりますけれども、ただいまの段階では、以下これから御説明申し上げるようなことだけがはっきりしておりまして、それ以外の点がはっきりしておりません。
 第一に、この三国の共同宣言は、その中でもございましたけれども、二月以前に三国の高級官吏が集まって、その具体的な内容について相談をした中身を三国の外相が認めるというそういう手続を踏んだものでございますが、その共同宣言の後で、さらにまた三国のいわば専門家会議というものを招集して、さらに細目を煮詰めるような手続を踏むであろうということが予想されておるわけでございますが、今日ただいままで数カ月を経過しておりますけれども、三国の専門家、高級官吏が再び集まってこの問題の細目について相談をしたということはわれわれは承知しておりませんが、恐らくは近々そういったような会議がさらに三国の中で開かれるものと思われます。
 第二に、この三国の共同宣言を実施に移すについて、たとえば利用国である日本その他の国の意見をどのように聞いてくれるのかくれないのかというようなこと、それから、先ほど来お話が出ておりますIMCOとの関係をその三国がどのように考えておるかということについても、この三国の共同宣言は若干その点はあいまいでございますし、またわが日本の人たちが個々に三国の政府の人たちに確かめた場合のその返答も、三国それぞれ若干ニュアンスが違った点がございます。
 ただ、いまもお話しございましたように、この四月の末に三国が共同して、二月のマニラ宣言の内容をIMCOに公式に通報したという事実がございます。したがいまして、恐らくこれから先は単なる憶測であり、希望にすぎませんけれども、この三国はこの共同宣言の中身をこれから実施に移すにつきまして、IMCOとの間で何がしかの関係を保つ意思があるということはきわめて明確でございます。
 われわれといたしましては、従来この種の国際交通のふくそうしておるところに何らかのシーレーンを設けるとか、そういった種類の規制をするにつきましては、IMCOが多数の国の代表者の専門家を集めて、
  〔理事瀬谷英行君退席、委員長着席〕
そこで検討した上で採択をするという手続を取りました上で実施に移すという、ほかの海峡で行われているような手続がこの海峡についても行われることが非常に望ましいというふうに思っておりますし、その過程におきまして、この海峡を非常にたくさん利用しており、また、輸入しているエネルギーの八六%までがこの海峡を通っているという日本国の立場からいたしますならば、この規制の実際のこれから決まるであろう細かい点につきましては、私どもの立場からする専門的な意見というものが取り入れられてくれることを強く望んでいるわけでございまして、ただいま御説明申し上げましたように、これから先どのように発展するかは必ずしも明確ではございませんけれども、私どもが希望している線というものがいろんな形で考慮される可能性があるというふうに私どもは期待をしております。
#23
○岡本悟君 もう時間がありませんから、この問題もっと詳しく取り上げてみたいと思ったんですが、そこでいま御指摘のように、大体この沿岸三国というのはそう巨大なタンカーを持っておるわけでもありませんし、実際そこをしょっちゅう通過している経験者を持っているわけでもないわけですね。その三国からいいかげんに決められて押しつけられるんでは大変なことになるという心配もございます。
 いま合意文書にあらわれておる十二項目を見ますところでは、そう大してこれは影響はないなあというような感じもするんですが、しかし、たとえば分離通航のやり方をどういうふうにするか、こういうやり方も非常に心配ですし、実際そこに運航を重ねて、経験の豊かな利用国の意見も十分聞いてもらいたいと思うんですね。ですから、そういう点を抜かりなくやってもらいたいと思うんです。もう大体満足な海図ができ上がっているのかどうか、それすら心配なんですけれども、それはそれとして、ひとつ十分利用国の意見が反映されるようにやってもらいたいと思います。
 そこで、最後に一点、海上保安庁長官にお聞きしたいのは、従来マラッカ海峡につきましては、すでに周知のように日本国としては非常に関係がありますので、民間の機構を通じてこの航行援助施設の整備であるとか、あるいはいま申し上げましたより詳細な正確な海図の作成であるとか、そういうことについてずいぶん援助してきたと思うんですね。そのごくかいつまんでエッセンスだけお話しいただけませんか。
#24
○政府委員(薗村泰彦君) いま先生からお話がございましたとおり、大事なところですから日本はできるだけのことはやってきたと思います。それで、こちらから援助するルートとしては、いまお話がございました民間のマラッカ海峡協議会と、それから国際協力事業団、この二ルートを通じてでございますし、人的には、おこがましいんですけれども水路関係、航路標識関係は海上保安庁からもかなり出して現地でやらせております。
 たとえば海図につきましては、五十年まで数回の調査を重ねて、一応その海図の資料を集めましたけれどもなお心配な点がございます。ごく最近、実は数日前に帰ってまいりましたが、関係三国と日本とが共同でやるということで共通の海図を作成するということで、これは大体五十三年いっぱいで大事な部分をやるということがまたさらに相談ができましたし、それから潮流と潮汐については、五十四年にかかってさらに調査をするというようなことをやっておりますが、いずれにいたしましても従来からの方法によって、また人的にもそういう協力を惜しまずに、日本のための大事なところの国際協力、技術援助の実績を上げていきたいと今後とも考えております。
#25
○岡本悟君 最後に、冒頭長官がお触れになりました漁業との関係ですが、今回の衝突予防法の改正では、漁業との関係においては変化はないというふうに私は理解をしておりますが、この理解に誤りはないかどうか。
 それから、さきに制定されました海上交通安全法と、この海上衝突予防法との整合性は十分できているのかどうか。その二点だけお伺いして質問を終わります。
#26
○政府委員(薗村泰彦君) いま先生から御指摘ございました点は、恐らく狭い海峡における、狭い水道における漁業と一般船舶との通航関係だと思いますが、これは一言にして申し上げますと、現行の二十六条に書いてあるところと全く新しい条約も変わっていないということを私どもは国際的にも確認をし、国内的にもよく納得をさせた上でこの国内法を用意しておる点でございます。
#27
○岡本悟君 海上交通安全法との整合性。
#28
○政府委員(薗村泰彦君) 海上交通安全法との関係につきましては、海上交通安全法はこの海上衝突予防法の特別法として今後とも生きていくということを御説明申し上げたいと思います。
#29
○委員長(上林繁次郎君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午前十一時二十八分散会
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ソース: 国立国会図書館
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