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1976/05/19 第80回国会 参議院 参議院会議録情報 第080回国会 商工委員会 第10号
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1976/05/19 第80回国会 参議院

参議院会議録情報 第080回国会 商工委員会 第10号

#1
第080回国会 商工委員会 第10号
昭和五十二年五月十九日(木曜日)
   午前十時四十五分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月十八日
    辞任         補欠選任
     八木 一郎君     楠  正俊君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         加藤 武徳君
    理 事
                熊谷太三郎君
                福岡日出麿君
                竹田 現照君
                須藤 五郎君
    委 員
                青木 一男君
                植木 光教君
                小笠 公韶君
                剱木 亨弘君
                斎藤栄三郎君
                林田悠紀夫君
                阿具根 登君
                鈴木  力君
                対馬 孝且君
                森下 昭司君
                桑名 義治君
                向井 長年君
   衆議院議員
       商工委員長代理  武藤 嘉文君
   国務大臣
       通商産業大臣   田中 龍夫君
       国 務 大 臣
       (総理府総務長
       官)       藤田 正明君
   政府委員
       内閣審議官    大橋 宗夫君
       内閣法制局長官  真田 秀夫君
       内閣法制局第二
       部長       味村  治君
       総理府総務副長
       官        村田敬次郎君
       公正取引委員会
       委員長      澤田  悌君
       公正取引委員会
       事務局官房審議
       官        水口  昭君
       公正取引委員会
       事務局経済部長  吉野 秀雄君
       公正取引委員会
       事務局審査部長  野上 正人君
       法務省民事局長  香川 保一君
       通商産業大臣官
       房審議官     山口 和男君
       通商産業省産業
       政策局長     濃野  滋君
       中小企業庁長官  岸田 文武君
       中小企業庁指導
       部長       小松 国男君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        町田 正利君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○小売商業調整特別措置法の一部を改正する法律
 案(衆議院提出)
○中小企業の事業活動の機会の確保のための大企
 業者の事業活動の調整に関する法律案(内閣提
 出、衆議院送付)
○私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法
 律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院
 送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(加藤武徳君) ただいまから商工委員会を開会いたします。
 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(加藤武徳君) 御異議ないと認めます。
 なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(加藤武徳君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#5
○委員長(加藤武徳君) 小売商業調整特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 衆議院商工委員長代理理事武藤嘉文君から趣旨説明を聴取いたします。武藤君。
#6
○衆議院議員(武藤嘉文君) 先回、私ども委員会におきまして、小売商業調整特別措置法の一部改正案につきまして、衆議院で全会一致をもちまして採決をいたしました。
 引き続きまして、ぜひとも参議院におきましてもこれをスムースに採決願えるよう、提案を申し上げる次第でございます。
 これは、いまこの委員会に付託されておりますいわゆる中小企業の分野法案、中小企業の事業活動の機会の確保のための大企業者の事業活動の調整に関する法律案、この法律案におきまして、小売業が適用除外となっております。そこでどうしても、その適用除外となっております小売業関係につきましても、分野法と同じような形で整合性を持たせる必要があるということからこの改正案を考えた次第でございます。
 その内容でございますけれども、第一に、中小小売商及び大企業者の定義の規定をいたしております。これは、中小小売商、資本金一千万円以下、従業員五十人以下、これと、それ以外のものという形で定義を規定をいたしております。
 第二に、中小小売商団体からの申し出を受けまして、都道府県知事が、大規模小売店舗法の対象になっているもの以外でございますけれども、それ以外の大企業者の進出計画につきまして調査を行い、その結果を通知するといういわゆる事前調査の規定を設けております。
 第三に、中小小売商団体の調整の申し出を受けて、都道府県知事がその大企業者の進出計画に対しまして調整勧告をすることができることといたしておりまして、また、その進出が切迫している場合には一時停止勧告をすることもできるようにしております。そういたしまして、これらの勧告に大企業者が従わなかった場合にはその旨を公表するという規定も設けております。
 第四に、調整勧告を受けた大企業者が勧告に従わないで、その旨を公表されてもなお従わない場合、都道府県知事は調整命令を発動できることにいたしております。
 第五に、都道府県知事からの申し出を受けて、主務大臣がみずから勧告、命令などの調整措置をとることができるという規定も入れてございます。
 第六に、その都道府県知事の調整命令の違反に対する罰則の規定を設けております。
 以上が、新たに改正案といたしまして小売商業調整法の中に設けた規定でございます。何とぞ、御審議の上、御可決下さいますようお願いを申し上げます。
#7
○委員長(加藤武徳君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 質疑は後日に譲りたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○委員長(加藤武徳君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#9
○委員長(加藤武徳君) 次に、中小企業の事業活動の機会の確保のための大企業者の事業活動の調整に関する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#10
○須藤五郎君 大臣、私どもは分野調整法が幾つかの不十分さを持ちながらも、現行の措置に比較しまして明らかに前進しておることから、一日も早くこれを成立をさしたい、こういうふうに念願しておるわけでございます。しかも不十分と考えられる点も、通産省の運用次第によっては相当程度克服ができるのである。したがって、法運用に当たっての通産省の責任は非常に私は重要であり、大きいと思います。
 そこでまず最初に、この点についての大臣の決意を伺っておきたいと思うんです。
#11
○国務大臣(田中龍夫君) ただいま御指摘のように、分野調整法をつくりましたそれ自体が客観的な市場の変化、なかんずく、高度成長から安定成長へと切り変わってまいりました日本経済の構造変化に伴いまして、特に中小企業に対する圧力というものが加わってくるのではないかということを考えまする際に、日本経済といたしましての非常に重要な、大きな分野を占める中小企業、これをいかに守り、いかに育成していくかということが通産行政の根本でございます以上、この分野調整法に当たりましても、この中小企業を守っていくという、事業活動を確保するという前提のもとに本法案を御提案いたしておる次第でございまして、その意の存するところは十分に御理解をいただきたいと存じますと同時に、われわれも以上のような趣旨のもとにこの法の執行、運営に当たってまいりたいと、かように考えております。
#12
○須藤五郎君 ただいま運用に当たっての大臣の決意を伺ったわけでございますが、このこととも関連いたしまして、通産省あるいは中小企業庁が、大企業の中小企業分野への進出を一体どう見ているのか、若干の点についてお尋ねをいたしたいと思います。
 たとえば、五十一年度中小企業白書によりますと、大企業の進出動機につきまして、消費者利益の増進のためとするものが多いと分析されております。その根拠といたしまして、進出の動機が規模の利益の発揮、新製品、新技術の導入など製品の良質化、低廉化を可能にしているからだと、こういうふうにしております。ずいぶん私は大企業の進出動機が美化されていると思います。一体、規模の利益の発揮が必ず消費者利益の増進につながると言えますか、どうですか、大臣お答え下さい。
#13
○国務大臣(田中龍夫君) 消費者大衆の利益を守らなきゃならぬということは、これはもう大前提として当然でございまするが、それを行いまする際におきましていまの大企業あるいはまた中小企業、そういった企業体が存在するわけでございます。
 いまのお話のように、消費者利益のためには大企業がいいか中小企業がいいかというふうなことについての抽象的な論争というだけでは私は済まされない、やっぱりまたわれわれがねらっておりますことは、中小企業の活動の分野をば何とかして守っていかなきゃならぬというそういう意思のもとに、一方においては中小企業の経営あるいはまたその業態の、消費者に対するサービスの指導あるいは近代化、高度化ということをあわせて指導しながら行ってまいるわけでございまして、そういう点は、大企業なるがゆえに消費者大衆に対していいんだ、中小企業はいけないんだというようなことではございません。その間にやはり通産省としての経営指導の努力というものを加えなけりゃいかぬ、かように考えております。
#14
○須藤五郎君 規模の利益の追求の結果が消費者利益につながらない、単に企業の利益となり、むしろ消費者利益を阻害すらしてきたことは、独占禁止法の改正強化が急がれている今日、その状況を見ましても明らかだと私は思います。高度成長下で大資本・大企業は非常な利益を上げましたけれども、物価の値下がりにはそれが一致していない、通じていないということは大臣も認めざるを得ない点だと思いますが、こういうふうに通産省は非常に美化をしておりますけれども、私たちはそれをそのまま受け取ることができないわけなんです。五十年度公取白書でも、不公正取引事件としまして法的措置をとったものが、七件中三件までが市場占拠率の大きい事業者であったと、こういうふうに報告されております。一体、なぜ消費者利益につながるのか、具体的にその根拠を示していただきたいと思います。
#15
○政府委員(岸田文武君) 大企業の進出動機につきましては、ただいま五十一年版の中小企業白書を御引用いただきましたわけでございますが、その後、五十一年十月に再度新しい調査を行っておりますので、その結果をまず御被露させていただきたいと思います。大企業の進出動機で一番大きい理由を占めておりますのは、「事業の多角化により経営の安定を図るため」と答えておりますのが三六・五%ございます。それから第二番目に高い比率を占めておりますのが、「消費者などのニーズに応えやすい分野だから」という理由を挙げておりますのが二八%でございます。三番目に挙げておりますのが「規模の利益が期待される分野だから」という理由でございまして、これが二二・五%を占めておるわけでございます。ただ、いま申し上げました理由は、それぞれ大企業の側からどういう意識でやったかということについて、大企業なりの考え方を聴取したものでございまして、これをそのまま私どもが是認をする、あるいはオーソライズするという性格のものではないことは御理解を賜りたいと思うわけでございます。
 その中で、大企業の進出が「消費者などのニーズに応えやすい」という理由を挙げました背景を私どもなりに推察をしてみますと、大企業が新しい商品をひっ提げて中小企業分野へ出てくると、こういった場合には、いままで中小企業が提供しなかった商品の提供が可能になるという意味合いを込めておる場合もございましょうし、また従来の生産方式を改めまして、よりコストの安い商品を供給できる生産方式を採用いたしました場合には、安い商品の提供を可能にするという意味合いで「消費者などのニーズに応えやすい」と、こういったことをこのアンケート調査に答えて、大企業は念頭に置いて回答したのではないかと思われるわけでございます。ただ、こういった大企業の考え方がそのまま即消費者の利益に結果としてつながるかどうかという点につきましては、御指摘のようないろいろの問題のあることは私どもも幾多の事例で感じておるところでございます。
 さはさりながら、一般的に申しまして、新技術の導入あるいは新製品の進出、こういったこと自体を否定するわけにはまいりません。むしろやはりそういうものが経済の活動を活発にし、そして消費者の利益につながる基盤をなすということは、そのこと自体は否定できないわけでございまして、そういった基盤をいかにして現実の結果に結びつけていくかというところが問題なのではないかと思っておるところでございます。
#16
○須藤五郎君 それは、物事というものは二つの理屈がつくものですね。しかしあなたたちがやっていくのは、運用によってその本当の消費者の利益にどうしたらなるかというところを中心に追求していくのが、ぼくはこれが行政官の道だと思うんです。そういうことかされてないですね。だから、言葉では非常に美化されているけれども、結果的に見るとどっこいそうじゃないぞということをみんな感じるわけなんですね。大体中小企業を守る先頭に立つべき中小企業庁が、形ばかりのアンケートで大企業の進出動機を美化する、こうしたことが、今日の中小企業の不幸な実情を招いた一つの原因になっておると言わなきゃなりませんね。もし何らかの結論を得たいのなら、もっと徹底的に厳密な調査をすべきではありませんか。そういうこともしないで、単に大企業の方から上がってきたアンケートでそういうことを決めて発表するということも、私はおかしなことではないかと思うんです。どうですか。
#17
○政府委員(岸田文武君) 御意見の趣旨はよくわかりますが、中小企業白書におきましては、大企業の進出に伴う各種の問題を多角的にとらえまして、いろいろの立場からの見方を列挙し、その中から一つの答えを得ようということをねらいとしておるわけでございまして、単に進出動機だけではなくて、一体どういう分野へ出ていったのであろうか、あるいはその大規模の進出がどういう影響をもたらしたか等々についてもあわせて調査をし、また、その結果を発表しておるところでございます。これらの分析を踏まえました上で、五十一年度の白書におきましては、やはり大企業の進出については一定のルールが必要であるということを最後の結論として取りまとめておるところでございまして、その一定のルールによりまして中小企業の事業機会の適正な確保を図ることがやはり現実の問題として必要であろうというふうに判断をいたしておるところでございます。
#18
○須藤五郎君 そうすると、思わしい結果が実際はあらわれてない、それをどうしていくかということは今後の問題で、研究を重ねておるところだと、こういうことですか。それならばそうと、イエスと言ってくださったらいいです、理屈をつけないで。
#19
○政府委員(岸田文武君) 少し理屈を言わしていただきたいと思いますが、私は、やはりいまおっしゃいましたように、大企業の意図自身が結果として消費者の利益につながっておるかどうかという点は、現実の問題としてはいろいろ問題があるというふうに理解をいたしております。したがって、それがうまく実現できるようにするということをやはり通商産業政策としても考えていかなければならないという気持ちでおるわけでございます。そして、一方で新製品の進出あるいは新技術の導入というようなことがありました場合に、それが結果として消費者の利益につながります場合においても、やはりその間中小企業が、対応するいとまもなく倒れてしまうというようなことでは問題があるわけでございまして、そういう場合にはやはり一定のルールが必要である、こういうふうに理解するのが適当ではないかと思っておるところでございます。
  〔委員長退席、理事熊谷太三郎君着席〕
#20
○須藤五郎君 それでは次に、運用上の問題に関連して何点か伺ってまいりたいと思います。
 最初に、第七条、十一条の調整勧告及び命令に関してでございますが、この条項は衆議院での修正の過程でその他の必要な措置というのが削除されたのでございますが、このことによっていささかも法の運用が弱体化されるようなことがあってはならないと考えますが、この点についての見解を伺っておきたいと思います。
#21
○政府委員(岸田文武君) 事業分野の調整の問題の特質といたしましては、中小企業製品とそれから大企業製品のシェア争いということが基本にあるわけでございます。したがって、今回衆議院の改正によりまして大企業の進出の規模及び時期についての調整が可能になっておるということによりまして、問題は十分対応できるのではないかと一応思っておるところでございます。
 具体的に従来大企業の進出問題で各種の事例がございますが、それについてどういう調整の仕方をしたのか、幾つかの例を少し複習をさしていただきたいと思うわけでございますが、たとえばクリーニング業の場合には、直営出店の自粛であるとか、あるいは組合加入をさせるとか、あるいは価格の安定化を図るというような調整を実施をいたしました。それから、印刷業の場合には、直営出店の自粛をさせるという措置をとったわけでございます。また、かまぼこの事例におきましては、設備増設の自粛をし、あるいは生産品目の限定をし、さらにまた、業界との協調を図るというような措置を講じました。次に、段ボール・紙器の例でございますと、操業開始時期の延長を行い、また、生産量の調整を行い、さらにまた、業界との協調を図るようにというようなことを最後の解決案の内容といたしたわけでございます。
 これらのいま申し上げました事例のほとんどの部分につきましては、先ほど申し上げましたように進出の規模を縮小し、あるいは時期を繰り下げるというような形によってほぼ実効を挙げられ得るというふうに考えておりますし、中で、たとえば組合へ加入したらどうかとか、あるいは業界との協調を図ったらどうかと、こういったファクターにつきましては、この法律の運用とは別の行政指導の形で相補っていくことによって、実効のある調整か可能になるのではないかと思っておるところでございます。
#22
○須藤五郎君 次に、調整措置及び命令の内容でございます「規模の縮小」の解釈について伺っておきたいと思います。
 当然、この運用はケース。バイ・ケースで運用されることになるわけでございますが、そうすると場合によっては、規模の拡張をゼロに査定する場合もあると解釈できますし、また、そう解釈すべきだと思いますが、いかがでございますか。
#23
○政府委員(岸田文武君) 規模の縮小についてゼロまで含み得るかどうかという点は、私ども法律的にいろいろいま吟味をいたしておりますが、やはり法律的には多少難点があるという意見が強いようでございます。ただ、ゼロはなくてもゼロに非常に近いところまでに縮小をしてしまいますれば、結果としては大企業として進出のうまみというものが非常になくなってくるであろうということが期待されるわけでございます。ただ、現実にそういうことがやはり調整のたてまえ上必要であるというふうな情勢にあります場合には、規模の縮小というようなやり方よりは、むしろある程度の期間、実施を繰り延べるというようなことにいたしますれば、いまお話ございました規模をゼロにするというような効果が上げられ得ることになるわけでございまして、むしろそういうようなやり方に現実にはなっていくのではないかと予想しておるところでございます。
 なお、審議会の調整の話し合いの中で大企業自身が、これはもうそういうような事情であるならば自発的にやめましたというような答えをみずから出してきたという場合には、そもそも勧告が不要になってくると、こういう関係になるのではないかと思っておるところでございます。
#24
○須藤五郎君 この点は非常に厳しく守っていくべき点だと思いますね。これがいいかげんなところでやられるというと何ら効果もないという結果がまいりますので、ゼロということが法的に書きづらいというならば、いまあなたがおっしゃったようにゼロに近い点までと、こういうことでございますが、その点は明らかにはっきりして措置していかなければならない、こう私は思います。その点をよく考えていただきたいと思います。
 次に、具体的に大規模小売店舗法の運用をめぐって大阪で問題になっているケースについてお伺いいたしたいと思います。これは事実に即してお尋ねしますから。実はこれは分野法の運用にも密接に関連しておりますので、特に聞いておきたいわけでございます。
 まず最初に、事実関係だけ確認しておきます。大阪市都島区にダイエー京橋ショッパーズプラザというのがございます。ここは五十年四月に商調協の裁定で当初増設計画の七千八百七十六平方メートルが五七%カットされたわけです。また、同じく大阪市城東区にあるいずみや今福店は商調協裁定で当初計画面積の一万一千四百平方メートルを約五三%カットされました。この事実は通産省確認していらっしゃいますか。
#25
○政府委員(山口和男君) お答え申し上げます。
 先生から御指摘のございました京橋ショッパーズプラザの件でございますが、これは大規模小売店舗法六条二項によります増床の増加面積の届け出が昭和四十九年十二月二十四日にございました。その際の届け出の当初の希望面積は八千五十四平方メートルでございましたが、その後商調協におきまして審議検討されました結果、三千五百六十四平方メートルという規模に縮小をして、訂正が五十年の三月十七日に行われております。大体先生御指摘のとおりでございます。
 それから第二番目の、今福ショッピングセンターにつきましては、届け出者はいずみやでございますが、これは法第五条一項によります届け出が昭和四十九年十一月二十九日に行われまして、当初面積は一万三千九百九十三平方メートルでございましたが、これが商調協による検討の結果七千七百平方メートルに規模を縮小いたしまして、この訂正届けが昭和五十年二月四日に提出されております。
 以上でございます。
#26
○須藤五郎君 ところがですね、昨年末からダイエーといずみやが大阪通産局に対し売り場面積増設の動きがあります。現在ではダイエー京橋ショッパーズプラザが前回カットされた五七%をそのまま再申請、いずみや今福店の三千百三平方メートルの再申請をする動きを見せております。このことは当然掌握していらっしゃると思いますが、どうでございますか。
#27
○政府委員(山口和男君) 両店の増設申請の動きがあるということは聞いておりますが、まだ大店舗法に基づきます正式な届け出は提出されていない状態でございます。
#28
○須藤五郎君 それをあなたが掌握してないということは……
#29
○政府委員(山口和男君) 増設の動きがあることにつきましては承知いたしております。ただ、正式の法律に基づく届け出はいままでのところまだ提出されておりません。
#30
○須藤五郎君 大阪の通産局からもそういう報告は来てないということでしょうか、どうでしょうか。
#31
○政府委員(山口和男君) 二つの件につきまして、増設する計画があるというような情報につきましては、大阪通産局におきましても話を聞いておるという連絡を私どもも受けております。話自体は伺っております。
#32
○須藤五郎君 そうすると、大阪通産局に対してこういう申請がなされておるということは、これは事実ですね。
#33
○政府委員(山口和男君) 床面積をふやします場合には、正式に法律に基づきまして届け出をする手続が必要でございますが、その届け出自体がまだ行われていない。したがいまして現在の段階は、そういった話があるという状態でございます。
#34
○須藤五郎君 話があるということは、いずみやなりダイエーが単にひとり言を言ってるというんじゃなしに、やっぱり通産局当局に対してそういう話を口頭で探りを入れているということになるんじゃないですか、どうですか。
#35
○政府委員(山口和男君) 具体的に細かい点まで話が来ているわけではないと思いますが、そういった計画が一応ある、増設について考えておるということにつきましては、大阪通産局にも話を伺っております。
#36
○須藤五郎君 こういうことを、当地の中小企業の方々が耳にして心配しておるわけですね。私はこれは重大な問題だと思うんです。一たん届け出て、そしてそれをカットされた、それをまだ日もたたぬうちに、横着千万にもそれをもとどおり、同じ数を復活してもらいたい、増設してもらいたいというようなことを持ち出すこと自体、ずいぶん人を食ったやり方だと思うんですがね。これは非常に重大な問題だとこう私たちも思いますが、この問題に対しまして都島区小売市場連合会長は、こんなことを許すと、商調協裁定は一時逃れということになりかねない。むろんこの二年間で付近の商業環境が大きく変わったという事実はない、こう語っております。最初の申請からわずか二年足らずの間にカットされた分を再申請する、このようなことが認められると、大店法の趣旨は全く形骸化されて、実際上何回も申請を繰り返せば、大規模小売店の思いどおりの拡張が可能になると、こう思わざるを得ません。
 最初に、この問題で特に大臣にお聞きいたしたいのは、このようなことを平然と行うダイエー、いづみやなどの商道徳を一体どう大臣はお考えになりますか。またこれは明らかに事実上大店法の形骸化を図るものだと私は思いますが、大臣どうでございましょうか。
#37
○国務大臣(田中龍夫君) ただいまお答えをいたしましたように、正式の届け出というものがなされておらないわけでありまして、そういううわさがあるということだけでは――まああり得ないことだろうと思うんでありますが、しかしながらさような、つまり言うならば法を恐れずと申しますか、ということはすべきことではないとかように存じます。
#38
○須藤五郎君 私は現場も知っているわけなんです。それで、二年間で環境がそれほど変化していないということもよくわかる。増設を願い出るときは、いろいろな条件の変化があって、そしてやるということになっておるわけですね。それが何ら変化もなしにこういう横着なことがなされるということは、全く商調法を無視した私はやり方だと、こういうふうに思うんですね。そういうことを不問に付しておいては私はいけないと思いますので、こういうことに対しまして通産省として確たる態度をとられた方がよいと私は考えます。大店法上、増設、増床の届け出が可能なことは、いま申しましたようにそれは法で認められておる。しかし、それには特別の事情の変化が必要だと、こういうことです。特別の事情の変化もないのに、一度商調協裁定を受けた部分につきまして、減らされた部分につきまして、そのカット部分をそっくり増床申請するというのでは、全く私は商調協裁定というのは無意味になってしまう。この問題で多くの中小小売業者が立ち上がっておるのも私は当然だと思います。これは私は現地でよく聞いていることでございます。
 ところでこの問題で、四月七日、四月十八日と、二度にわたって中小業者の皆さん方が大阪通産局と交渉をしておるというのが事実でございます。この際大阪通産局側は、こうしたケースの取り扱いにつきまして本省と相談するという回答をしておるわけです。本省としてこれにどう対処するつもりなのか、その点を私はお聞きしておきたいと思います。
#39
○政府委員(山口和男君) 四月に大阪通産局の方で、増設計画があるという点につきましての陳情を受けた件につきましては、私どもも承知いたしております。ただ、先ほど来申し上げましたように、いまのところまだ具体的にどの程度の主として厳密にいまどれだけの増床をするんだという形での届け出はないわけでございまして、いずれそういった問題が出ました場合には、商調協で再度この二年間にどれだけの情勢の変化があったのかどうかと、あるいは増床が適当であるのかどうか、周辺の中小企業に対する影響はどうかといった点が検討されるわけでございまして、御指摘の点につきましては、十分その段階で検討してもらうということにしたいと考えております。
#40
○須藤五郎君 法律上再申請が可能なことは私もそれは否定していないわけでございます。しかし、商業環境の変化もないのに再申請をする、こういうことが繰り返されると、結局法律が形骸化していくということにつながっていくと思いますね。再申請については、やはり別の基準を決めて厳しくチェックすべきものと考えますが、どうでございましょうか。少なくともその趣旨は商調協に徹底すべきである。その意思は通産省におありでしょうか、どうでしょうか。この点を伺っておきたいと思います。
#41
○政府委員(山口和男君) 増床につきまして、特に商調協での審議につきまして特別の問題点を検討するようにということにつきましては、特にただいままでのところ法律その他において指摘されておりませんが、商調協で議論されます際には、経済情勢の変化が現実にどういうように起こっておるのか起こってないのか、そういったことが非常に重要な判断の要素になるわけでございますから、十分商調協の方にも、そういった点の判断を慎重に行うようにという指導をしたいと存じます。
#42
○須藤五郎君 この問題は大店法だけではございません。分野法の場合にも、規模の縮小をめぐって同様の事態が起こり得る可能性が大きいと考えます。つまり、一度縮小されましてもまた再申請をする、さらに再々申請をするということになりますと、これもまた形骸化される可能性が起こってくると思います。分野法の場合、これにどう対処をなさるおつもりでしょうか、伺っておきたいと思います。
#43
○政府委員(岸田文武君) いまのお話を伺っておりまして私自身も感じたことでございますが、この分野法ができまして実際に適用いたします場合に、たとえば調整勧告の内容といたしまして、やはりある程度の期間の観念を入れておくということが適当なのではないかという感じがいたします。具体的に申せば、今後何年間はこういう設備能力でいきなさいとか、あるいは繰り下げを、開始時期の繰り下げは今後何年間行いなさいということで、いま置かれた環境及びその際予想されるある程度の将来の見通しも頭に置いた上で、期間の観念を入れた勧告をするというようなやり方が、実際のやり方として適当なのではないかと思っておるところでございます。そういうやり方を行いますれば、その期間内において、これは特別の事態の急変が起これば別でございますが、そういうことのない限りは、当初勧告をいたしましたことがそのまま履行されるというのがいわば当然のルールになってまいろうかと思うわけでございます。
 そこでさらに話を進めまして、その期間が満了したときにどうするかという問題が次に出てくるかと思いますが、それはその際における客観情勢の変化等をもう一度考えまして、再度申し出をするかどうかということは、そのときの情勢によって判断をされるべきものではないかと思っておるところでございます。
#44
○須藤五郎君 話がちょっと前へ戻りますが、商調協で一たんカットされますね、何万平米というようなものの増を。その場合にカットされた分をもう一ぺんやってくる。それを全然認めないのか、それともその要求のあるパーセントを認めていくのか。そうなると、カットのたびにまたまた同じことを申請してその一部分が認められるということ、それを何回も何回も繰り返しているともとへ戻っちゃうわけですね、そういうことを私は憂えるわけなんですね。この分野法の方でも、その縮少する場合も、一たん縮小された、ところがもう一遍それを出す、そのときに政府が、かわいそうだからこれだけ認めてやろうということになる。それを何回も繰り返している間にまたふくれていくというような、そういう結果が来ないとも限らないわけですね。だから、そういうことに対する対処は通産局としてよほど慎重に、厳重に考えていかないと、何ら役に立たない法律になってしまうと、こういうことを私は申し上げたいわけなんですね。
 だから、先ほど私は例を大阪のダイエーとかいろいろ商店の名前まで挙げて出しましたが、大阪でなされておる申請に対して通産省は、あれだけ言ってくるんだから、かわいそうだからその何%かひとつ認めてやろうじゃないかという態度をとるのか、最初の方針どおりこれは全然認められないという態度をとるのか、そこを私は伺っておきたいと、こう思うんですね。もう一度そこの点をはっきりさしておいてください。
#45
○政府委員(山口和男君) ただいま先生が御指摘になりましたように、事実上削減された部分を回復するということが余りあからさまであるというのは確かに問題があるんだろうと思います。ただ、一度出発いたしました店舗が、さらにその後情勢の変化があるというような場合に増床するというようなケースも実際問題としては起こり得るかと思いますが、いずれにいたしましても、そういった場合に商調協でその是非というものを十分審議することになっておるわけでございまして、私どもその商調協での検討を十分慎重に行うようにという指導をしてまいりたいと思います。
#46
○須藤五郎君 一度大きな変化でもあればそこはともかく、当然環境に特別な変化もなく、しかも短期日の間に再び拡張があるような場合には別の基準を設けて厳正にチェックするべきであると、こう私は考えております。また審査する場合にも、特別に厳重な審査もしないと、なし崩しになってしまうおそれがあるということでございます。この点についてはどういうふうにお考えになりますか。一たん審査で打ち切ったものならば、それをずっとよほどのことがなければ再申請に応じない、そしてその方針を貫いていくという態度が一番好ましいことのように思うんですが、その点どういうふうに決意をしていらっしゃるか、もう一度伺っておきたいと思います。
#47
○政府委員(山口和男君) 大規模小売店舗法によりまして店舗の調整を行うという制度ができておるわけでございますが、これはあくまでも消費者利益の保護に配慮をしながら、この周辺の中小小売業の事業活動の適正な機会を確保していくということが目的でございまして、そういった観点から、店舗がさらに増設されるという場合におきましても、この周辺の人口規模の動き、あるいは中小小売業の近代化の見通し、中小企業の小売業に与える影響を十分審議、審査するということが要請されておるわけでございまして、特にそういった増設、増床の場合につきましては十分慎重な審議を行うということでまいりたいと考えます。
#48
○須藤五郎君 次に、商調法と大店法の兼ね合いについて伺っておきたいと思いますが、大規模小売店舗の中には大店法上の届け出と商調法上の許可の二つのチェックを受けなければならないケースがあると思います。現に商調法上の許可を受けない違法状態の大規模小売店もあります。この問題について、中小企業庁は通達を出す意向だとこういうふうに聞いておりますが、その内容をここで教えていただきたいと思います。
#49
○政府委員(岸田文武君) 御指摘の問題につきましては、都道府県知事に対しまして近く必要な指導を行う予定でございまして、いま部内の手続を進めております最中でございます。指導の内容といたしまして考えておりますことを、骨子のみでございますが御報告さしていただきますと、一つは、スーパー等であっても商調法による小売市場の要件に該当するものは許可を要するということを明らかにしていきたいという点が第一点でございます。この辺は従未必ずしも府県によって解釈が明確でなかったといううらみがございますので、その辺を明確にいたしたいという考え方でございます。
 それから第二点といたしましては、新規の出店に係るものにつきましては商調法を適正に運用するということを都道府県に対して通達をいたしたいと思っておるところでございます。
 三番目には、既存の未許可市場、これは商調法による市場に該当するものであって、従来府県において必ずしも解釈が統一をされていなかったために許可が得られていない、こういうような形態のものでございますが、こういったものにつきましては、過去の経緯にかんがみまして新たに許可申請を出させまして、その地域の現在の小売商の状況等を総合的に勘案して、許可できるものはするということで、その辺の仕分けをするルールを用意をいたしたいと思っておるところでございます。やはり経過は経過といたしまして、一応未許可の状態になっておりますために、私どもはその際始末書の提出等を求めることにしてはどうかと思っておるところでございます。
#50
○須藤五郎君 いまおっしゃったように、ぜひそういう場合は厳正に運用していってもらいたいと、こういうふうに思います。
 最後にもう一点だけお聞きしておきたいと思いますが、衆議院でうちの方の安田議員も取り上げてましたが、大阪を中心に商調法の網をくぐり抜けるために区分所有という方法が広まっております。これを認めれば、商調法は実際上運用できなくなる。この点についても、通産省の見解を通達等で明らかにするということでございますが、どういう考えか聞かしていただきたいと思います。
#51
○政府委員(岸田文武君) 区分所有の問題につきましては、衆議院でお尋ねがございましたので、私どもなりの考え方をその席で御説明をさしていただきました。その際にも申し上げましたように、区分所有をしておるものについて、それはそれぞれごとに一つの市場と考えるべきであるか、あるいは建物全体として一つの市場と考えるべきであるか、これは法律解釈上もなお慎重な吟味を要する問題が残されておると思っておるところでございます。したがいまして、先ほど通達を用意するということを申し上げましたが、その中でこの区分所有の問題についてだけは追って通達をするという形で処理をいたしたいと思っておるところでございます。しかしながら、この問題も放置できる問題ではございません。なるべく早く答えを出しまして、各地で解釈上混乱が起こるというようなことのないように措置をいたしたいと思っておるところでございます。
#52
○須藤五郎君 この区分所有という言葉は私はごく最近聞いて、それは一体どういうことなんだと、内容がどうなんだと言って私は尋ねたんでございますが、私の理解が間違っておるといけないから、あなたたちがつかんでいる区分所有という言葉の内容ですね、実際どういうふうなことがやられておるのか、それをここでちょっと明らかにしておいていただきたいと思います。
#53
○政府委員(岸田文武君) 具体的なケースで申し上げますと、一つの建物の中に、四階なら四階のフロアがあると、それが各階ごとに別の法人によって所有をされ、そしてその個別の法人によって小売が営まれておる。こういった場合に、一体その建物全体として仮に十店舗以上あり、その中に生鮮食料品の店が含まれていれば、全体として一つの市場とみなすべきか。あるいはいまの例で申し上げますれば、各フロアごとに市場を構成する要件を満たしているかどうか、こういう判断をすべきであるか、ここが問題ではないかと思っておるところでございます。これは商調法の条文の解釈の問題でございまして、法制局ともいまいろいろ打ち合わせをいたしておるところでございますが、なおまだ結論を得るに至っておりませんのが実情でございます。
#54
○須藤五郎君 私の聞くところによりますと、四階建ての建物を持っておる人が、それが家賃をとらなくて、家賃のかわりに各フロアの売り上げの何%かをもらう。家賃をとれば、家主さんの一括したあれになるということで法に触れるというので、そこを逃れるために、家賃としてでなしに売り上げの何%かをとって、その点をごまかしておるというようなことを私はちょっと耳にしたんでございますが、そういうことも事実あるわけですか。そして、それは違法なんでしょうか。
#55
○政府委員(岸田文武君) いま御指摘ございました問題は、実は区分所有の問題とは別の、もう一つの問題であろうかと思うわけでございます。
 商調法の条文を見てみますと、小売市場とするために貸し付けまたは譲渡をすることを許可制にかけておるわけでございます。したがいまして、貸し付けないし譲渡という行為がないと許可制にかからないわけでございますが、いまお話にございましたようなやり方でございますと、まさに貸し付け、譲渡ではございませんので、許可が不要になるわけでございます。ただ、いまお話ございましたようなやり方は、実は従来ほかの商業形態でもいろいろ出ておるわけでございまして、それはやはり条文の解釈上から言いますと、商調法の許可制にかけることは無理があるだろうと思っておるところでございます。
#56
○須藤五郎君 すると、こういうことはどうにもならぬということでございましょうか。そのまま野放しにしておく以外に道はないということでございましょうか、どうでしょうか。法網をくぐっている感じがするわけですがね。
#57
○政府委員(岸田文武君) いまお話しのような形態、私どもよく消化仕入れとか委託販売とかいうような俗語で言っておるわけでございますが、
  〔理事熊谷太三郎君退席、委員長着席〕
これが実は法をくぐるような形で運用されますと、やはり問題があろうかと思います。したがいまして、いま申し上げました消化仕入れなり委託販売というやり方をやるときには、こういう要件を満たしておることが必要であるというようなルールづくりを考えていきたいと思っておるところでございまして、そのルールに従っておれば適当である、そのルールに違反しておればこれは脱法の疑いがある、こういうような新しいルールを、この際考えてみたいと思っておるところでございます。
#58
○須藤五郎君 今度通産省が出されるという見解ですね、通達、その中にもこういうことは盛り込まれるのですか。
#59
○政府委員(岸田文武君) 近く用意をいたしております通達の中には、いまの点も明らかにしたいと思っておるところでございます。
#60
○須藤五郎君 もう最後です。
 昨日、この商工委員会で分野法の質疑の参考人を呼びまして、四名の方々から御意見を伺ったんですが、その中で共通して出された問題は、審議会のメンバーの構成の問題が出されました。大臣も御存じだと思うんですが、政府関係の審議会がたくさんありまして、政府が任命された審議会があるわけですね。ところがそこの審議会の何か結論というものが、どうも国民の立場に立って見ますると、政府の御用団体のような感じがしていくわけですね。どの審議会でも大体そういう感触を私たちは持つんです。それできのう出された参考人の意見は、この審議会をもっと民主的に構成してもらいたい。そうして自分たち本当に体で中小企業の困難、生活困難、それを感じている人たちも審議会の中にメンバーとして加えてもらいたいのだ、ところがそういうことになってない。そのために審議会の結論がどうも自分たちとはぴったりしない結論が出るのだと、こういう意見が出された。私はせっかくつくられる審議会ならば、やはりその関係者に満足してもらえるように、関係者の意思を、やはりそこに反映できるような審議会にしてもらいたいと私も思うんですね。そのためにはやはり審議会の民主的構成という立場から、実際にそこのそういう仕事をしている人たち、苦労している人たちの意見を反映するために、そういう人たちを加えるべきだと私はそういうように思います。
 今日でもそれは一人や二人はおるかもわかりません。私は一々審議会のメンバー調査していませんからわかりませんが、しかし、それならばもっと強く反映するように構成をお考えになったらどうだろう、こういうふうに思いますが、大臣、これは大臣の御意見を伺っておかなきゃなりませんが、円滑にこの法案が成果を上げていくためにも、そういうことは私は必要だと、こういうように思いますが、大臣からのお答えを伺って私の質問を終わりにしたいと思っております。
#61
○国務大臣(田中龍夫君) 御指摘の点まことにごもっともでございます。特にこの中小企業は生き物でございまして、常に社会情勢の変化に応じていろいろと変わってまいります。そういうふうな生きた社会の声が十分に反映いたしますようなやはり委員の構成にしなきゃならぬ。審議会の今後の委員任命等につきましても十分に配意いたしたいと考えます。
#62
○向井長年君 まず通産大臣にお伺いしますが、今国会におきましても、もろもろの多くの法案が制定されておりますし、なおまた、今回この法案は各党一致の法案であり、幾らいい法案ができましてもあるいはまたそれが制定されましても、少なくともこの法の運用、解釈あるいは行政、こういうものが非常に重要になってくるわけなんです。そう考えますならばこの法律の制定された精神、言うならば立法趣旨と申しますか、これが那辺にあるかということを十分明確にしなきゃならぬと思う。こういう考え方から、私はこの分野法に対する基本的な問題として、まず二点ほど通産大臣にお伺いしたいと思います、いま私が申し上げたことはおそらく是認されることだと思いますから。
 そこでこの法律は、御承知のごとく現在までわが党初め各党が非常に要求をしてきた問題でございますが、ようやく実ろうといたしましております。で、政府案はわれわれの当初案に比べまして少し性格が現在のそれと比較するならばあいまいになってきておるのではないかという感じがいたします。それはどういうことかと申しますならば、この運用基本は中小企業の分野をできるだけ確保するというところに重点を置いておると私は思うんですよ。場合によれば紛争調停、これに重点を置くような感じが出てくるわけです。そこに私は、これからこの法が制定されて以後の問題として、通産いわゆる行政省としては考えなきゃならぬ。いま冒頭に申しましたように、中小企業の分野を確保するそのためのこの法律であると、こう解釈してよろしいですね。調整が主眼ではない、大企業との紛争が主眼であってはならないと、こういうことだと思いますが、いかがですか大臣。
#63
○国務大臣(田中龍夫君) お答えをいたします。
 向井先生の御主張のとおり、本法の名称も中小企業の事業活動を確保するということにありまして、立法趣旨といたしましてはその点でございます。ただ、その運用に当たりましてこれを活用する場合に、その手段としております点が調整を旨とするということでございます。
#64
○向井長年君 したがって、あくまでも中小企業の事業活動確保というところに主眼があるということで考えますが、それでよろしいですね。
 そこで第二番目は、しからば今後の産業政策でございますが、わが国の経済は今後、一方で独禁法改正が行われる、大企業特に独占的大企業の本来における成長が制約されること、あるいは他分野への進出を余儀なくされていく。ところが他方では分野法が成立すると大企業の進出はこれまでどおりはいかない、困難になるということが考えられます。通産省としては今後産業政策の基本をどのようなところに置いて行政を進めようとするのか、どういうように指導をしようとするのか、この点を伺いたい。
#65
○国務大臣(田中龍夫君) 独禁法によります大企業の問題でございまして、その考え方とこのわれわれのいま御審議をいただいております分野法の考え方の理念が、二律背反でないかというような御議論がとかくございますけれども、私どもはさようには必ずしも考えておりませんで、むしろ目的といたすところは日本経済の適正な繁栄、発展でありまして、同時に憲法に規定いたしておりまする自由といいましても、また企業活動といいましても、個人といわず法人といわずおのずから社会的な限界と制約のあることは当然でございます。そういうことを踏まえまして、大企業といえどもその分を越えた横暴な社会的な姿は許されない。同時にまた、弱者でありまする中小企業をいかにしてわれわれは通産行政として守っていくかということは、日本経済の特殊性にかんがみましてもこれは最も重要な経済政策でなけりゃならない。両々相まつところによりまして、私は本当の意味の日本経済の適正な繁栄、発展ができるものだと、かように考えておりまして、私どもは二律背反、矛盾とは考えない。そこに私は通産行政の妙味というものがあると思います。
#66
○向井長年君 まあ大体当然そうあらねばならぬと思いますが、しかし、しからば具体的に若干お聞きしますが、今回の場合にこの業種指定を行えない理由はどういうことであるか。これは少なくとも業種指定は行わなければならぬということをわれわれは考えておったんですが、これは行わない。すべての業種について適用されるとも解釈できるし、業種指定を行わなかった理由はやはり何かあるのかどうか、この点どうなんですか。
#67
○政府委員(岸田文武君) 御意見の点は中小企業政策審議会でも非常に議論の焦点になった点でございます。大企業の進出をチェックしようということのためには業種指定というやり方はある意味では直截簡明なやり方でございますが、しかし議論をしてみますと、やはりそれなりにむずかしい問題があるということが明らかになってまいりました。一つは競争政策上のいろいろ理念の問題がございますが、むしろ実際問題としてこれは業種指定がむずかしいという点が最大の問題点ではないかと思っておるところでございます。と申しますのも、分野を調整しなければならない背景は、大企業が進出することによって、中小企業が大きな打撃を受けるということが前提となるわけでございますが、その大企業が一体どういう業種に出てくるか、どういう出方をするかということがあらかじめ予見できませんので、そこで第一の問題にぶつかるわけでございます。
 それと同時に、そういう問題を避けようと思って少し幅広く指定をするというようなやり方ができないかという点も議論をいたしました。ただ、そういうやり方をやりますと、たとえば製造業の中で、中小企業の出荷比率が七割以上占めております業種を取り出してみましただけで全業種の六割以上を占めるというようなことが明らかになってまいりました。そうなりますと、製造業の六割を占める分野について一つ一つの事業活動をチェックをし、それでこれはいいとか、これは悪いとかいうようなことを言いますことは、事務処理上も不可能に近いことだけではなくて、やはりそれをやりますと、一種の統制経済のような形にもなりかねないという点が一番基本的にむずかしい問題なのではないかと思ったわけでございます。したがいまして、業種指定というやり方は避けながら、 なるべく問題を事前にキャッチすることによって、それに近い効果を上げていこうという方向で、この法案を取りまとめた次第でございます。
#68
○向井長年君 統制経済というようなかっこうにならざるを得ないということですが、そうじゃなくて、これはある程度法の精神をわきまえれば、やはり行政指導の中で明確になってくるのじゃないですか。したがって、その精神がぼけてくると、いま言うような形になってくるのじゃないか、こう私は思うのですよ。そういうことで業種指定してない法案でございますからこれはやむを得ませんが、しからば法律の第一条の、特に受注の拡大を含むのか含まないのか、この点どうなんですか。
#69
○政府委員(岸田文武君) この法律では大企業者の事業の開始または拡大をとらえておるわけでございます。受注自身がこの法律の対象になるかどうかという点は解釈上まだ問題があろうかと思いますが、おそらく受注の拡大をするということになりますと、その背景としてやはり事業能力の拡大ということが相伴うのが通例でございます。そのような事業能力の拡大のところが、中小企業に大きな影境を及ぼすという場合には、当然これは調整の対象になると理解してよろしいと思うわけでございます。
#70
○向井長年君 私はこの設備拡張とか、新たな進出とか、あるいは出荷の量とか、そういうものじゃなくて、たとえばいまわが国の各地方でも一番問題になっておるのが、先般来非常に不況下の中で、大企業の中小企業の分野への進出が非常に受注関係で多いわけです。たとえば過去において、これは業種から言うならば建設関係もそうでしょう、印刷関係等もありましょう、こういうところが過去においてはそういう額的に小さいところは進出しなかった。まあ何億という大きいところは大企業の分野としてやっておったが、二千万あるいは三千万あるいは五千万程度のこういう小規模的なこういう事業につきまして、特に建設の場合ね、まあこれは中小企業のそういう業界が入ってやっておったと思う。しかし最近におきましては、そういうところは皆大企業はどんどん進出して、そして自分たちがそれを政治力もすべて含めてとって、実際はだれにやらしておるかといえば、自分たちの系列の下請にやらしておる、こういう状態が現にあらわれておるんです。したがって、私は分野と言えばそういう問題をやはり明確にしなければ、この法律の意義はなくなるんじゃないか。印刷しかりであります。そういうものが他にもあるでしょう。特に大企業が、何億、何十億というところは皆まいりましたけれども、そういうわずか二千万や三千万あるいは五千万や八千万というところは今日まで見向きもしなかった。最近においてはそうじゃないです。すべてそういうところに全部大企業が進出して、そして力を持っている、資本力も持っている。したがってそれに対するやはり入札等で確保してしまう、この現状が、いま中小企業が破産、倒産していく大きな問題がここにあるんですよ。仕事がないから、金融じゃないんですね。そういう問題をやはり分野の中で、受注の拡大等について通産省はどう考えておられるか。
#71
○政府委員(岸田文武君) まず建設業は、この法律の対象になるかどうかという点でございますが、これは小売業を除く各業種について対象になるということでございますので、建設業も当然含まれるというふうに理解をいたしております。それから建設業の場合に、中小企業の受注を増大させたいという点につきましては、建設省の方でもいろいろ配慮をしていただいておりますし、特に官公需の受注機会の拡大という点につきましては、私どもいろいろ力添えをいたして、逐次この増強を図っておるというところでございます。
 一般的に申しまして、受注拡大それ自身がこの法律の対象になるかどうかという点については、先ほど解釈論として一応の説明を申し上げましたが、やはり実際問題として受注拡大をいたしますときには、人員を増強するとかあるいは支店を設置するとか、いろいろな事業能力の増強を伴うのが通例であろうというふうに考えておりまして、そういうような事業能力の増大に着目をして調整をするというようなやり方になるのではないかと思っておるところでございます。
#72
○向井長年君 そういう感覚がおかしいですよ。そんなことになってませんよ。いままでの規模で中小企業がですよ、二千万、五千万の仕事をやるんですよ。やる規模を持ち、能力を持っている、それがとられちまうということですよ。拡大なんか何もしてません。大企業だってそんなこと拡大をしないでも仕事をとっていけばいつでもできる。直営でできるかしらぬが、あるいは場合によれば、系列に下請さして頭割りをする、こういう状態が出ているんじゃないんですか。あなたたちそういう感覚から私たちは分野というものを確保しなければならない、官公需の問題もしかりでありましょう。民間においても、いまそれが各地域において一番困難な問題になっておるんじゃないか。設備の拡張とか、あるいはまたその他あらゆるこれに対する拡大とかいうんじゃなくて、現状の中でそれがあらわれている。これはやはり分野の確保の中から、何らかの形で中小企業に対して保護してやらなきゃいかぬのではないか、こういう感じを持っておりますが、受注関係も大きく言えばこれは入ると言われるから、そうなればどうこれに対処していくのか、この点ひとつ大臣からもお伺いしたい。
#73
○国務大臣(田中龍夫君) ただいま長官からもお話しいたしましたように、非常に客観情勢の変化に伴いまして、業態別にもいろいろな変化があらわれておる、これを業種としてとらえて固定することがいいか悪いかはわかりませんが、われわれが景気回復のためにとりました措置におきましても、少なくとも官公需につきましては三四%というシェアを中小企業にとらなきゃならぬ、こういうようなこと、これについては、特にわれわれといたしましてはいわゆる全国規模の大企業の進出等についてこれを抑制して、そうしてできるだけ特に建設業方面におきましては、地元、地元の中小建設業者に受注をするのだということを行政的に指示し、命令しておるような状態でございます。そうしてこれを、現実には大蔵大臣が本部長になりまして推進いたしつつありますけれども、さあそうならばいまの当面の建設業についてはそういうふうな特段の措置をとるが、今後も建設業としてそれを固定していいか悪いかという問題になりますと、また別途客観情勢のいろいろな変化に応じて、やはりしっかりとした資格を持った技術者を要する工事等々の施行ということもございまして、その場合にはやはりある程度まで基礎の技術水準の高い業態を考えなければならない。一例を建設業にとりましても、客観情勢がいろいろと変化いたしております。
 かような次第で、ただいま長官がお話しましたように、たくさんあります分野の中で業種を確保する、事業活動を確保するという本法の趣旨を、業態別に固定できないかということが、分野調整法の審議会でいろいろと御検討をいただいた暁においても、なおそれが明確に業種指定というものができなかった原因であろう、かように考えておるのでございまして、御趣旨のほどはよくわかっておりますが、業種指定に踏み切らなかった原因はさようなところにあると思います。
#74
○向井長年君 何はともあれ、私は従来そういう形でやっておられたのがどんどんと進出をしておるということであって、技術者が新しく要るとか、規模をまた拡大しなければならないという、中小企業はそういう問題ではないのです。現在の実情の中から、現在の人員あるいは現在の規模でやれ得るものをとられておる、大企業に。やはりこれは受注関係が入るとするならば紛争の種になるかどうかということも聞きたいのですが、こういう問題がやはり地方に起きておる。これは官公需だけじゃなくて民間においても起きておる。この問題をこういう中で整理しなければ本来のすべての――これは一つの例ですよ、建設は。印刷その他もあると思います。これは調べればそういうものが出てくるわけですが、そこらに大きなやはり主眼点を、私は冒頭に言った中小企業、そうして法の運用、解釈、そうして中小企業の事業分野の確保、こういう立場からこの法律ができた以上は、少なくともその旨をもって各省は当たらなければならないのじゃないかということをいまただしておるわけです。私はだからそういう趣旨を、大臣初め長官は十分認識して行政指導をやってもらわなければいかぬ、あるいは法の解釈をしてもらわなければいかぬ、こう思います。
 そこで中小企業の定義でございますが、現在一億円以下そうして三百人以下という形に定義になっておるのですが、これは昭和四十八年でございましたか、これが改正されてこうなった、定義がね。ところが実際問題としては再検討を若干しなければならないのじゃないですか、この問題。場合によればいま一億円で、この貨幣価値から考えて二億、三億というののいわゆる資本金も、これはもうはっきり言うならば中小企業の分野はたくさんありますよ。したがって、場合によれば中小企業というか、あるいは新しく中堅企業というか、こういう定義を決めてやはり当たらなければならぬじゃないか、こういう感じがいたしますが、その点どうでしょう。
#75
○政府委員(岸田文武君) 現在の中小企業の定義はいまお話しございましたように、昭和四十八年にその当時の実態を踏まえまして改定を行ったものでございます。その結果といたしまして、たとえば卸小売業でございますと、全体の九九・六%が中小企業の定義に該当する。また製造業の場合には、九九・四%が中小企業に該当するというような形になっておりまして、日本の事業所の中のほとんど全部と言っていいものが現行の中小企業の定義に該当することになっておるわけでございます。ただ、その後数年たっておるではないか、その間の情勢の変化をどう見るかという点でございますが、私どももその間の実情はやはり適宜フォローしておくということが必要であろうと思いますし、またそれが改定を要するという時期になりましたときには、その見直しが必要であろうと思っておりますものの、いまの段階におきまして特にこれを改正しなければ、現実に障害が起こるという問題もそれほど出てきていないようにいま中小企業庁自身としては感じておるところでございます。
 ただそうは申しましても、三百人を超え、しかもいわゆる大企業でない中間の層がやはりそれなりのむずかしい問題を抱えておるということは、現実に私どもも見聞きいたしておるところでございまして、いわゆる中堅企業をどうするかというような問題は、これから産業政策の中でも一つの新しい課題として考えていかなければならない問題を含んでおるというふうに感じておるところでございます。
#76
○向井長年君 だから今後、中堅企業と私が言いましたが、そういうものは長官も今後考え、検討しなきゃならぬということですが、これはまあ検討していただいていいと思います。しかし今回、この中小企業の定義から考えて少し外れる、たとえば一億一千万あるいは三百五十人とか、そういうささいな状態が出てくる企業もあると思いますよ。そういう問題はやっぱり運用によって弾力的に処理しなきゃならぬと思いますが、この点とうですか。
#77
○政府委員(岸田文武君) 三百人を若干超えた企業は、この法律の解釈からいたしまして、いわゆる大企業の中に含まれてまいるわけでございますが、現実問題として、その程度の企業が事業規模を拡張をしたことによって中小企業の大方が大きな打撃を受けるというようなことは、ほとんど予想しにくいのではないかと思っております。したがって、いまのような御指摘の問題、まさに運用の問題として解決できる問題がかなり含まれておるのではないかと感じておるところでございます。
#78
○向井長年君 そういう形で進めていただきたいと私は希望いたします。
 そこで次に、四条で自主的解決という問題ありますね。この自主的解決というのはこれは望ましいことでございますが、これは一種のやはり訓示規定的な問題である、こういうように感じます。したがって、少なくとも自主的解決をやらなくとも、直ちに調査請求をするということも可能だと思うんですよ。したがって、この点、前置き主義のようなかっこうをとらないということであろうと思いますが、その点いかがですか。
#79
○政府委員(岸田文武君) いま御指摘の点は、お話しのとおりと理解をいたしております。当事者が話し合いをし、それが決裂をし、どうにもならなくなって初めて動き出すというようなことは、必ずしもこの法律の要件ではないと理解をいたしております。
#80
○向井長年君 次に団体の規定ですね、新設団体の規定ですが、この団体の定義と申しますか、これは全国的な組織もありますね、あるいは地域的な組織もある、あるいは全国的な下部機関がある、こういうところはどこでもいいんでしょう、この点は。
#81
○政府委員(岸田文武君) 申し出適格団体の定義といたしましては、法律の中に同業者団体であること、それから中小企業者の構成員比率が三分の二以上であるというようなこと、これらの点が定められておりますが、そのほかに政令において要件を具体的に指し示すということになっております。その政令の中身といたしましては、一定規模以上の地区の広がりを要するというようなことを、その中身として考えてみてはどうかと思っておるところでございます。まああらゆる中小企業団体、どれでもいいのではないかというような点につきましては、事の性質から言いますと、やはり業種団体であるということが一つの要件でございまして、地域団体はこれには含まれていないのではないかと理解をいたしております。
#82
○向井長年君 どこでもいいということじゃなくて、中小企業団体には全国的な組織もあるし、あるいはそれに対する下部機関があるんですよね。支部と、県の支部というようなものがありますね。そういうところから出てもいいということ。あるいは地域のみにある業種団体ですね、そうでしょう、要するに全国的になくても、業種によっては地域のみにありますよね、そういうところもいいのではないかということを私はいま質問したんですが。
 この点とあわせて、特にこの調査申請に対しましては、相手側ですね、本省あるいは地方通産局とかあるいは県の窓口とか、こういうところがございますが一これもやはりそういう手続はそういう形でやられていいことになるんじゃないですか、あわせて。
#83
○政府委員(岸田文武君) まず団体の要件の方でございますが、これは地域別に組合ができておるというような場合には、その地域の組合も当事者適格を持っておると思うわけでございますが、しかし、それもある程度の地域の広がりを持っておるということが、やはりこの法律の前提になるのではないかと思っております。ある程度の地域の広がりといいますときに、私どもは一応部内で議論しております段階では、大体都道府県の範囲あるいはそれを越える広がりを持ったものというぐらいな運用でどうであろうかと思っておるところでございます。
 それからお申し出の窓口の問題でございますが、従来の例を見てみますと、やはりほとんが広域的な問題でございまして、中央で処理できるケースがほとんどであろうと思っておるわけでございますが、ただ御承知のとおり、通産局には中小企業調整官という特別のスタッフが配置をされております。これらは、問題を早くキャッチをし、早く解決をするために設けられたものでございまして、こういった通産局の窓口も利用可能であろうと理解をいたしております。
#84
○向井長年君 そういう調査の申し出があった場合に、調査されて団体へのいわゆる通知と申しますか、こういう問題はなかなか時間がたつんですね、従来から考えますと。まあこういう点についてやはり相当機敏にやらなければ紛争解決にならないので、そういう問題はどう考えておられるか。
 もう一つは、その調査の中で少しでも主務大臣というか、主務官庁のやはり判断が入ってくるのか、そのまま調査だけが報告されるのか、そういう問題はどうですか。
#85
○政府委員(岸田文武君) まあ事前調査を法文の中で取り入れました趣旨は、なるべく早く問題をキャッチをして、機敏な対応ができるようにという趣旨でございますので、この立法の趣旨からいたしまして、調査の申し出がありましたならばなるべく早く調査をし、その結果を知らしてやるということが肝要であろうと思います。ただ、これは案件の内容によりまして、一律に何日以内というようなことは恐らく不可能でございます。ただ運用の問題としましては、わかったものから教えてやるというようなやり方も可能ではないかと思っておるところでございます。
 それから調査の結果は、私どもとしてはやはり客観的事実をそのまま申し出団体に通知をしてやるということが、この立法の精神ではないかと思っております。
#86
○向井長年君 わかりました。
 そこで、第六条の中に「需要の減少をもたらす」という言葉がありますね、「需要の減少」。これは需要が絶対的な減少という問題と、本来は伸びる要素があるにもかかわらずほとんど伸びないという要素ね、これは減少というか、やっぱり減少という範疇に入ると思いますが、そういう問題をどう含めて考えられるんですか。そういう伸びるものが伸びなかったという問題ね、これは著しい減少じゃないんですが、この点どうです。
#87
○政府委員(岸田文武君) これは、法律の解釈としましては、「需要の減少」は絶対量が減るというふうに解釈するのが素直であろうと思っておるところでございます。伸びるべきものが思うように伸びにくいであろうというような点は、なかなかこれは現実の問題としましてはかなり予測の要素が入ってまいります。それを入れますとかえってまたいろいろ問題がこじれてしまうおそれがございますので、解釈としては絶対量の減少というふうに統一した方がよろしいのではないかと思っております。
#88
○向井長年君 それはね、大企業というか、大規模事業の進出によって、従来の実績があるんですよ。だから本来これは伸びなきゃならぬ、実績から言えばね。にもかかわらず、そういうものが進出したためにこれが伸びない、したがってわずかにとどまった、あるいはちょんちょんだった、こういう場合のことを言っておるんですよ。これはやっぱり一つの紛争の状態じゃないですか。大きな減少じゃなく、過去の実績から言えば減少ですね、そうでしょう。だから少し伸びたという、少しですよ、前よりも少し伸びておるが、従来の実績から言えばすうっと落ちているという場合がありますよ。そういう場合は入らぬのですか、紛争の。
#89
○政府委員(岸田文武君) 法律では需要の減少によって中小企業の経営が著しい打撃を受けるということが要件とされております。したがいまして、経営に著しい打撃を受けるというような形になるのは、やはり絶対量が減った場合が主体になるのではないかと思っておるところでございます。
 なおまたそれについては、おそれがある場合も含めて書いてございますので、ある程度の規模の拡張があるならば、やはりこれはおそれとしては相当減少するおそれがあるというふうに判断される場合もかなりあるのではないかと思っておるところでございます。
#90
○向井長年君 そういうように解釈されて、物を判断されることが私は正しいと思うんですね、本来実績から見てね。そういう形で今後の指導をいただきたいと思います。
 そこで、第七条で中小企業分野等調整審議会ですが、この審議会の意見と主務大臣の意見が場合によっては食い違う場合がある。そういう場合に審議会の意見には主務大臣は拘束されないのか拘束されるのか、これはどうなんですか。まあそういうことはあってはいけないと思うが、あり得る場合があると思います。
#91
○政府委員(岸田文武君) この審議会は主務大臣が意見を聞く形になっておりますので、法律上は拘束されるとは書いてございません。しかしながら、やはりこの審議会を設けました趣旨としましては、この審議会を通じて、影響を受ける中小企業の意見も十分聞き、また進出当事者の大企業の立場も一応踏まえ、さらに関係事業者、一般消費者の利益も配慮して、慎重に答えを出していただくということでございますので、やはり事実問題としては、その審議会の答えというものは相当の重みを持っておるものだというふうに理解をいたしますし、やはり通常の場合であれば、これは尊重されてしかるべきものではないかと思っておるところでございます。
#92
○向井長年君 次に、この勧告の内容についてでございますが、この「事業の開始または拡大」を中止せしめるような勧告ができるのかどうかということね。規模の縮小を勧告できるということは、極端な場合には一切の進出、拡大を中止せしめるということになってまいりますが、こういうことは可能かどうか。
#93
○政府委員(岸田文武君) 規模の縮小といいますときにゼロを含むかどうかという点は、法制局ともいろいろ議論をいたしておりますが、なかなかゼロまで含むということは解釈上むずかしい問題があるようでございます。しかしながら、ゼロにかなり近いところまで調整を行いますれば、大企業としては進出する妙味がなくなってしまうわけでございますし、また現実にそういうことが起こりました場合には、規模の縮小というようなやり方ではなくて、一定の期間進出の時期を繰り下げるというような形をとることによって、ほぼ同じ効果を上げ得るのではないかと思っておるところでございます。
 なおまた、審議会で両当事者がいろいろ話し合い――意見を聞いております際に、大企業が、中小企業がそれほど困るならもう自発的にやめましたというようなところまできました場合には、そもそも勧告の問題にならないで済むという場合もあり得るだろうと思っておるところでございます。
#94
○向井長年君 まだ時間、私はあるんですが、また質問内容もございますけれども、もう昼食時間も参っておりますから私はこれでやめますが、大臣、いま私が基本理念を申し上げ、そして逐条、若干疑問の点を申し上げ、質問したんです。それから見ましても、やっぱり解釈とかあるいは運用というところに相当かかってくるんです、この法案は。したがって私は冒頭申し上げた、やはり少なくとも中小企業の事業分野を確保するんだと、これが基本であって、そういう立場からこの運用をやらぬと、いま言うようにどちらに解釈していいやら、どうすべきであるという問題が、やっぱりこの法案が十分とは言えないんです。どうでもやれる解釈になってきます。そこをひとつ、やはりこの法の精神を、通産省なり中小企業庁等は十分腹に入れて運用をしてもらわなきゃならぬのじゃないかと思いますが、この点お聞きいたしまして質問終わります。
#95
○国務大臣(田中龍夫君) 本法の施行が、現実の問題といたしましては、現場におきますいろいろな紛争の調整、調停にかかってくると存じます。それだけに、千変万化いたします具体的なケースに当たりましては、御指摘のとおりに基本的な腹構えといいますか、立法精神というものが、一番私は御指摘のとおり重大だと存じます。
 ただいまお話のございましたように、また本法の名称にもありますように、中小企業の事業活動の分野というものを確保するということが法の精神であるという、以上のことを踏まえまして実際の処置をとってまいりたい、かように存じます。
#96
○委員長(加藤武徳君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、休憩いたします。
 午後一時二十五分に再開いたします。
   午後零時二十六分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時三十五分開会
#97
○委員長(加藤武徳君) ただいまから商工委員会を再開いたします。
 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は、順次御発言願います。
#98
○青木一男君 私は、法律案についての質問に入る前に、最近の新聞紙上に伝えられた企業秘密漏洩事件について、公正取引委員会の委員長に緊急質問をいたします。
 従来、独禁法の施行に当たって業界の人々の憂慮したのは、公正取引委員会の調査権に基づいて提出した企業の秘密が、外部に漏洩しないかという点であった。従来はカルテルの嫌疑の場合の調査等が主なものであったけれども、今回の改正案によると、営業の一部譲渡に関連し、あるいは価格の同調的引き上げに関する報告の徴収に関連し、公正取引委員会の強制調査権は著しく強化され、原価その他の企業秘密が果たして保持されるかどうかについて一段と憂慮の念を深くしていたようであります。
 このときに当たり、一昨日来の新聞紙は、公正取引委員会の秘密漏洩事件を大きく報道するに至った。私は、公正取引委員会の権限の強大さにかんがみ、もしこれが事実とすれば大変なことであると感じました。
 昨年九月、公正取引委員会がエポキシ樹脂業者八社をやみカルテルの疑いで調査したとき、各社は生産能力、生産数量、出荷量、販売条件、原料購入費、原料購入価格、販売先等企業の秘密に属するものを含め多数の資料を提出した。ところが本年三月、日本包装出版株式会社から「エポキシ樹脂需給の徹底分析と流通実態調査」と題する本が出版、発売された。その内容を見ると、重要項目の計数は各社が公正取引委員会へ提出した秘密計数とすべて一致することが各社の調査で明らかになったというのであります。原価その他の企業秘密は企業の生命線であるから、内部から漏れるということはまずあり得ない。万一あっても、何かきわめて特別の事故に基づく一社だけの問題であって、八社が全部そろって同じ時期に秘密を盗まれるということは考えられないことであると思うが、委員長の御見解を伺いたいと思います。八社の資料をそろえて持っているのは公正取引委員会だけであります。委員会に漏洩があれば、八社の資料一括してということもあり得るわけであります。八社から公正取引委員会だけに提出した資料の計数と本の計数とが一致しており、新聞の報ずるように数カ所の誤った報告計数までそのまま本に採用されているとなると、世間が公正取引委員会から漏洩したのではないかとの疑いを持つのは当然であると思いますが、委員長の御見解を伺いたいと思います。
 ただ私の疑問としたのは、この本は二カ月前に発売されており、各社はそのときに自社の大事な秘密の漏洩したことを知って憤慨したことと思うのに、どうして今日まで表面化しなかったかという点でありました。委員長も各社から抗議が来ていない旨を語られておるようであります。この点について、昨日の新聞によれば、各社は後のたたりが恐しいから公正取引委員会に抗議しなかったということである。企業大事の一心から自重したことと思うから、私は企業当局の勇気のない態度を責める気持ちはありません。かように国家機関の行動に不正があると思っても沈黙させられるということは、法治国家としてあるべき姿ではない。私は、これは公正取引委員会の権限の行使において、著しく国民を恐怖させておることを示すものではないかと思いますが、それが好ましい現象かどうか、委員長の感想を伺いたいと思います。
 いまや、公正取引委員会に対する不信の声は非常に高まっております。公正取引委員会の権限を強化する法案を審議しているわれわれとしては、速やかに責任の所在を明らかにしていただきたいと思います。公正取引委員会の委員長も調査されておると思うから、その結果について御報告を願い、特に私がいまお尋ねした数点についてお答えをいただきたいと思います。
#99
○政府委員(澤田悌君) ただいまの事件につきましての御質問は、第一に公正取引委員会の守秘義務の重要性についての御指摘、まことにそのとおりと存ずるのでありまして、今回のような疑いを持たれたそのことだけでも、まことに遺憾なことと申さざるを得ない次第でございます。
 事件につきましては御承知のとおりでありますが、昨年九月にエポキシ樹脂カルテル事件の調査をいたしまして、十一月に審決をいたしましたのでございます。その際に徴求いたしました資料が公正取引委員会から漏れたのではないか、それが御指摘の書物に掲載されておるのではないか、こういう疑いの事件でございます。その疑いの指摘の中に、八社のそれぞれの資料が載っておる。あるいは内容についても、どうも公正取引委員会から出たのではないかというふうに思われるものがある。あるいは、いままで何も言わなかったのは公正取引委員会を恐れはばかったのではないかというようなことも言われておるようでありますが、これは一つのものから発したいろんな疑いでございますので、公正取引委員会といたしましては、まず真相の究明をどうしてもいたさなければならないと存じまして、早速調査に取りかかっておる次第でございまして、信じられないことではありますけれども、これはどうしても明らかにしなければいけないと私存じまして、事務局内に調査委員会を設けまして、事実関係の究明に当たっておるところでございます。
 まず、関係部課の職員につきまして逐次事情聴取を行っておるところでございます。一人一人事情聴取をいたしております。審査部、監査室等にわたっておるわけでございます。
 それから先ほど御指摘もございましたように、内容の問題がございますけれども、職員についての調査と並行いたしまして、問題の出版物の内容と公正取引委員会手持ち資料の照合を逐次厳密に行っておるところでございます。
 調査の結論はまだ出ていないのでありますが、現段階では公正取引委員会から資料が漏れたという事実はまだつかんでいない次第でございますが、本件は御指摘のように、どうしても真相を明らかにしなければならない重大問題でございますので、厳重調査を続行いたしておりますが、万一かかる事実があった場合には重大な規律違反でございますので、厳重な処分をいたしますとともに、責任の所在を明確にいたしたいと考えておる次第でございます。
#100
○斎藤栄三郎君 いまの問題に関連してちょっとお伺いしますか、澤田委員長はその本をごらんになったことがありますか。
#101
○政府委員(澤田悌君) 内部を詳細に見せませんが、現物を委員会としても手に入れました、見ております。
#102
○斎藤栄三郎君 これがその現物で、一万九千円のものです。この中の八十三ページに、「主要メーカーの販売額推移」というのがあります。この中に問題の大日本インキ化学の数字が載っておりますが、会社の言うことのとおりなんであります。どうもこういうような数字が出るというのは公取以外出るところはないであろうと私も思います。私もジャーナリスト出身でありますから、ニュース源は言わないのがジャーナリズムの常識でありますから、どこからこれが出たかなんというのは死んだって言わしないと思います。後はしたがって、どこからこれが入ったかということは、公取委の委員長としての責任で、いつ、何月何日までにそれをお調べになってこの委員会に明らかにしてくださるかをお伺いしたいと思います。
#103
○政府委員(澤田悌君) ただいま詳細に資料を突き合わせ中でございます。何月何日とただいま申し上げるのはむずかしいのでございますが、できるだけ早く結論を出したいと存じております。
#104
○斎藤栄三郎君 できるだけ早くでは困るのでありまして、この委員会もタイムリミットがありますから、独禁法の審議をするのに、こんな大きなエラーがたびたび起こることは期待しちゃいけませんが、万が一こういうことがたびたび起こったら大変なことなんです。そこでやはり、大体の目安としてはいつぐらいまでに結論を出すということをおっしゃっていただかないと、審議できないと思いますが。
#105
○政府委員(澤田悌君) その進捗状況等をいま詳細にまだ存じませんのであれですが、数日は御猶予願わなければならないように感じておりますが。
#106
○斎藤栄三郎君 きょうはこの出版元に私直接電話をいたしました。公取から何か問い合わせがあるかと聞いたら、何もないということです。まあ順序としては、それは内部から調べるのも一つの手ですけれども、出版元がどういう順序で原稿を手に入れたかというようなこともお調べになって、なるたけ早くやらぬとわからなくなっちゃうんじゃないかと思いますね。いまの委員長のお言葉ではちょっと私は納得できないので、なるたけ早くなるべく早くと言うんでは官庁の答弁なんで、これは、この会期は五月二十八日までしかないのです。その間に独禁法を通すか通さないかということを決めるに当たって、その会期が終わる前までに一体報告いただけますか、どうですか。いや、審議が終わるまでに訂正しておきます、審議が終わるまでに。
#107
○政府委員(澤田悌君) 手を尽くしてそのようにいたしたいと存じます。
#108
○斎藤栄三郎君 じゃあ二十八日までに出ると了承いたします。(「二十八日じゃ困るよ。」と呼ぶ者あり)もちろんそうです。しかし、二十八日に出されたのじゃもう困るんですから、こちらで考慮する、研究する時間がなきゃなりませんので、二十八日はもうタイムリミットですから、それまでにお出しいただきたいと思います。
#109
○政府委員(澤田悌君) わかりました。
#110
○斎藤栄三郎君 じゃ、入ってよろしゅうございますか。
 澤田委員長、私は昭和二十二年に出ました橋本龍伍さんの書いた「独占禁止法と我が國民経済」という本を持っております。委員長、これをごらんになったことかおありでしょうか。
#111
○政府委員(澤田悌君) その本のありますことは知っておりますが、詳細に読んではおりません。
#112
○斎藤栄三郎君 この橋本龍伍さんという方は後に閣僚になられた方でありますが、このころはこの案の立案者であられます。この人の序文にこう書いてあるのです。大変おもしろい。この法律は昭和二十二年三月三十日「明治憲法下における最後の帝国議会において、貴族院最後の日に、最後の議案として成立した。」と書いてある。橋本さんから直接私は聞いたのでありますが、衆議院では六時間しか審議しなかった。貴族院では二時間半しか審議しないで通しちゃったと言っております。非常にお粗末だったということだと思います。いまもう著者は亡くなっておるわけですから、この本を頼りにして議論する以外にないんですけれども、独禁法というのは昔は労働組合にまで適用範囲が及んでおりました。だんだん独禁法緩和の方向に向かっていったのであります。
 たとえば一つ実例で申し上げます。私は、その緩和する方向が悪いというんじゃございません。ただ、この本の中にも書いてあるのですけれども、昔の独禁法、アメリカのシャーマン法は労働組合にまで適用されたし、ボイコットに対してまで適用されて損害賠償を命じられておる。だんだんだんだんそういう労働組合なんかは適用除外にしてまいりました。アメリカの歴史を調べてみるとおもしろいことが二つあるんです。一つはだんだん緩和の歴史であるということ。もう一つは一九二九年のときには不況を乗り切るために独禁法の適用をストップしたのです。いまこの時期に、こんなに日本が未曾有の深刻な不況のときに、この法律の改正案を出した意図はどこにあるかということをお伺いしたいのであります。
#113
○政府委員(澤田悌君) 独占禁止法は、御承知のように昭和二十八年ごろまでは御指摘のような緩和の歴史であったと存じます。それ以後一遍も実質的改正はないのであります。日本経済の非常な大きい変化ということを踏まえまして、寡占化の傾向の重要性等を考まして、この際公正かつ自由な競争を一層促進して、日本経済を発展させるというためには、独占禁止法の改正が必要であるという長期的観点から、私は独占禁止法の改正が提出されたものと理解をいたしておりますのでございます。
 不況等のときの運用に関しましては、これはまた違った見方もあろうかと存じますが、今回の改正の趣旨はそうした長期的な観点であると存じておる次第でございます。
#114
○斎藤栄三郎君 では委員長は、現在の日本経済には独占もしくは寡占の弊害があらわれているとお考えですか。
#115
○政府委員(澤田悌君) ただいま申しましたように、非常な経済の変化が起こりつつある時代でございますが、そこには潜在的な弊害、ただいまの独占あるいは寡占につきまして潜在的な弊害あるいは将来、弊害の起こる可能性というものは私は否定できないと存じておる次第でありまして、その予防的な意味、あるいは抑止的な意味においても、その面における改正は必要であると考えておる次第でございます。
#116
○斎藤栄三郎君 潜在的もしくは顕在的な弊害があるならひとつ私に、私は不幸寡聞にしてわかりませんので、具体的にお示しいただきたいと思います。
#117
○政府委員(澤田悌君) 潜在的、長期的と申したわけでありますが、独占、寡占の企業形態におきましては、とかくそういう弊害を起こしやすいということが常に指摘されるわけでございます。現在、それが直ちに、たとえば今度の改正法案によりますような独占的状態の弊害が現在起こっておると申すのではないのでありまして、あのかつて私も折々申しましたように、いわゆる業種指定、九業種というようなのが上げられておりますけれども、あれは現在弊害が起こって、すぐ営業譲渡等の措置が必要であるというのではございません。その可能性がある状態を、仮に暫定的に一つの基準に当てはめてみればこういう企業というわけでございますので、現実に起こっておるならこれは重大問題でございますので、そういう意味で申したわけではございません。
#118
○斎藤栄三郎君 どうも現実には起きていないとおっしゃいますですね。
#119
○政府委員(澤田悌君) 現実にあの条件をすべて満たしておるというような企業は、まずないと申して差し支えないと存じます。
#120
○斎藤栄三郎君 そうすると今度の改正は予防措置だとこうおっしゃるわけですか。
#121
○政府委員(澤田悌君) そう申して差し支えないと存じますか、これによりまして企業のビヘービアが弊害を起こさない方にまいるということであれば、それが私は最もいい状態ではないかと考える次第でございます。
#122
○斎藤栄三郎君 いま適用に値するような企業はないと断言するなら、何もこの際無用の摩擦を起こす必要はないんじゃないかと私は考える。この列挙された九つの業種は、非常な企業のイメージダウンだといってこぼしています。私はこの法律が必要だとおっしゃるならよくわかるんですけど、要らないんだと、将来起こるかもわからぬからというんだったら、こんな不景気のときにやることかいいかどうか。まず時期の問題について私は非常に疑問を持っているんですけれども、私はこんな不景気のときにこの法律が通ったら、まず企業のやることの第一は、設備投資を手控えるであろうと考えます。いま五〇%ないし七五%の数字までいけば、一応法律のたてまえから言えば取り上げられるんです。もちろん具体的な弊害がなければ取り上げないとお答えになるでしょうけれども、こういう数字をはっきりと法律の上に明示すれば企業家は危ないなと、さわらぬ神にたたりなしということで、設備投資を手控えるだろうと思います。だからこそ一九二九年のときに、ルーズベルト大統領はその設備投資を、奨励しなきゃ景気がよくなりませんから、一応シャーマン法をたな上げしたわけです。私はこの不景気のときにこういうことをやることが、本当にいいのかどうかということに非常な疑問を持つんですが、わかるように教えていただきたいと思います。
#123
○政府委員(澤田悌君) 企業が自由で公正な競争をし、企業努力を重ねて大きくなりますこと、それは少しも私は差し支えないと考えております。そういう非常に大きいシェアを占め、強い力を持つと弊害を起こすおそれがあるということでございます。法律に規定してある弊害を起こさなければ、むしろ場合によっては寡占のメリットがあるかもしれないわけでございまして、それについて少しも企業意欲を阻害するというような気持ちにならないでよろしいわけでございますので、そこを十分かみ分けていただきますというと、この趣旨が御理解いただけるのではないかというふうに存ずる次第でございます。
#124
○国務大臣(藤田正明君) ただいまの議論聞いておりますと、こういう不況なときに特に選んで独占禁止法の強化案を政府はなぜ出したのかと、こういう御質問であろうかと思います。
 ただ、独占禁止法の経緯なり歴史を考えてみますときに、先ほどおっしゃいましたように二十二年にでき上がりました。そして二十八年にこれの改正がございまして、その後二十四年間というものは何ら改正しないでここまで参った次第です。世界の経済情勢も大きく変わっておりますし、日本の経済ももちろん大きくその取り巻く環境は変わっております。昭和四十年代の後半に入りまして、まずドルショックがあり、それから石油ショックがあり、狂乱物価というふうな不幸な状態になってきました。その間の高度経済成長時代に、企業に対する不信感というふうなものが国民の間に徐々に高まってきたことは事実であります。そして、狂乱物価を頂点といたしまして、企業不信というもの、特に大企業に対する不信、こういうものが国民の間に、充満とは言いませんけれども、非常に濃密に出てきたこともこれまた確かであります。そういうことを考えてみますときに、好況あるいは不況、そういうことにとらわれず、また政治的な動向にもとらわれず経済の新しい原則がここにつくり直されなければならない時期にきたと、かように考えた次第でございます。
 最初に四十九年の九月に公取試案というものが発表されまして、五十年の六月に五党合意案というものが一応衆議院を通過したことも御承知のとおりと思います。そして、今回こういう改正案がまた衆議院を通過して本院に来ておりますけれども、この際、ただいま公取委員長が申されましたように、企業としての、特に大企業の一つの目安をつくり行儀を正しくしてもらう、現在独占弊害の姿が特に国民に大きく映っておるわけでございますから、企業においてはそういう意味で、実際上の弊害はないにしても、行儀を正しくしてもらう、今後ともそういう意味でその目安をつくっておく必要がある、かように考えまして、政府としては提案をした次第でございます。
#125
○斎藤栄三郎君 長官のお言葉の中に、景気のいかんにかかわらずとおっしゃいますけれども、経済政策というものは与えられた客観情勢を見て立案すべきものであって、景気がどう動いていようと構わないから立案をするんだというのでは経済政策にならぬと思う。独禁法というこの非常に重大な経済憲法をつくるに当たって、景気がどうであろうといいんだ、長期の見通しのもとに大企業のビヘービアを正すためにつくるというのでは、私は立法論としては非常に乱暴な議論じゃないかと思うんです。私はその御説明では、せっかく尊敬する長官のお言葉ですけれども、納得できませんね。やはり不景気のときには、この不景気をどうしたら打開できるかということを優先的に考えるべきであって、景気がよかろうが悪かろうが、多年の懸案だから出すんだなんて、そんなことでは私は納得できないと思うのです。
#126
○国務大臣(藤田正明君) 私は景気、不景気のそういうものに影響を及ぼされない長期的な視野によってこの法案は出されるべきである、斎藤先生からいま繰り返して御注意をいただきましたけれども、私はそのとおりに考えております。
 それから、先ほど、こういう不景気なときにこのような法案が出てくることによって、逆に設備投資意欲を減退さしていくではないかと。ですから、景気をますます刺激しなくなるではないか、こうおっしゃいましたけれども、私はそれはさほどのことではない、こういうことを出すことによって、逆に自由なる競争が刺激をされ、公正に自由なる競争が行われることによって景気を盛り立てていくと、かように解釈をするものであります。
#127
○斎藤栄三郎君 いまの日本の、ここに挙げられた九業種を見ますると、大きくなった原因は三つに分類できると思います。
 一つはスケールメリットで、たとえばビールのごとく持っている工場が全部スケールメリットの規模で動いているから、最小の経費で最大の効果が上がっている。もう一つは非常な技術革新だと思います。たとえば時計のごとく、この電子水晶時計ができましてから一年間無事故であるというようなことから非常に売れました。さらに今月の末から出される予定の太陽熱利用電子水晶時計は三年間巻く必要はない。このような技術革新のおかげでスイスの時計に勝ち、同時に日本の電子部品メーカーもどんどん新規参入をいたしまして、激しい競争を繰り返しているわけであります。いま、私は、企業がでかくなったのは決して不当なる取引制限をしたり、あるいは政府に取り込んで政商として伸びたとは考えられない。第一はスケールメリットのいい例がビールだろうと思います。それから第二は、いま言った技術革新のおかげだと思います。もう一つは、これは何くそ先進国に追いつかなければならぬという必死の努力だったろうと思います。そのいい例が写真フィルムだろうと思います。昔から日本ではフィルムの製造は不可能だとされておりました。それが大体の学界の定説であったわけであります。ところが、日本の先駆者が壁を厚くしたり、工場内の温度調節をやって、今日においては堂々として世界に伍し得るだけのものをつくることができた。この不堯不屈の精神というものを私たちは尊重しなければだめだと思います。
 もしも仮にこういう法案がこのまま通ったといたしますと、スケールメリットをやっている企業は、これはいま委員長は分割しないとおっしゃっていますから深く追及することはどうかと思いますけれども、仮にこの法律が適用されてビール会社を分割したとする、あるいはウイスキー会社を分割したとする、一体スケールメリットはどうなるか、どうお考えでしょう、その点は。
#128
○国務大臣(藤田正明君) この法案によってスケールメリットとか技術革新を何ら阻害するものではないと思います。いままで大きくなった――名前を出したくありませんけれども、すでに名前が出ましたから、キリンビールのごとき、確かにスケールメリットなり、ブランドでこれは売れていっていると思います。ただこのキリンビールは弊害要件に値するかというと、これは弊害を流しておるわけではございません。ですから、大きいことが悪いことだと言っているわけではないのでありまして、スケールメリットによってよい安い品物を国民に供給するということは、これは歓迎すべき、評価すべきことであって、決して悪いことではない。ただ大きいがゆえに悪いことをする力もあるわけでございますから、そういう意味ではこういう法律がやはり抑止策として必要であると思います。
 それから、二番目の技術革新にいたしましても、この技術革新によって競争を厳しくやっていくこと、それによってより安い、いい品物が国民に供給される、あるいは国際競争において勝っていくということでございますから、これはますますそれを刺激することが必要であって、何らこの法案でもってそれらを阻害しようというふうに考えておるものではございません。
 それからまた、先進諸国に対して競い合うということも当然のことでございまして、今後とも大いに先進諸国の技術と競い合っていただくということを奨励することであって、この法案が阻害する要因にはならないというふうに考えております。
#129
○斎藤栄三郎君 通り一遍の御説明としてはそれで満点だろうと思います。しかし、私はそれでは納得できないのは、たとえば「サントリー」が原酒をイギリスから入れる。それを国内でいわゆる貯蔵して醸造にかかっている。そのときにモルトをどう処置するかということが大変大事なことなんです。これをブレンド、それを調合する人をブレンダー、これは社長しか知らない。これを仮に分割してどちらに持っていくかということは大問題でしょうが、分割されたらそれは企業はやはり発展はとまっちゃいますよ。それから、ビールだって同様だと思うので、工場がキリンビール方々にございます。どこの工場をどう分割するかということは、これは全く仮定の例ですから真実に迫る力がないかもわかりませんが、分割を仮にいたした場合には、私はスケールメリットの効果は発揮できないだろうと思うのですね。
 ですから、どうもいまの長官の御説明で、この法律は決してスケールメリットの効果を減殺するものでもないし、さらにまた技術革新を阻害するものでもないとおっしゃっていますけれども、どうも私はそう考えられないのですね。だから分割しないということをいま言っておいて、この法律が通っちゃったら弊害が、こういうのがあると言って分割ざれるんじゃないかということを経済界も心配しているし、ぼくは何も事業関係はないんですけれども、仮にもしもそういうことになったら日本の対外競争力というものは非常に減っちゃうだろうと思うんです。この法律によると、貿易の面、これはまあ考慮して、対外競争力の減殺されないようにするということをうたってありますけれども、分割されたら、恐らく私はもう対外競争力というものは非常にダウンしてしまうんではないかと懸念をいたします。
#130
○国務大臣(藤田正明君) 私は決算委員会に呼ばれておりますので、ちょっと行ってまいりますが、この答弁だけさしていただきます。
 分割を前提にしてのお話でございますが、分割されるときには弊害要件がございます。構造要件も二つございます。この三つの、構造がまず二つ、弊害が一つございます。三号要件と申しますこの三つの要件が満たされたときには、これは分割、一部営業譲渡ということになるわけでございまして、そうなれば話は別なんです、これは。それは、それだけ国民に害毒を流しておる、安くなるはずのものが高い値段で売られておる、著しい利益を相当期間得ておる、そういうふうなことでございますから、分割されたときにはこれもう話は別なんです。ですから、分割にならざるようにその競争要件を整えていく。ですから、分割ということは本当に最後の手段でございますから、もう分割になったときには弊害が相当期間あらわれておるということでございます。ですから、分割にならざるようにこの法律をもって一つの指針を示し、そしてそのガイドラインと申してはおかしいんですが、そういう行儀を正しくしてもらう、こういうことでございますから、分割を前提として国際競争力が落ちるとか、あるいはその会社が健全性を失うとか、こういうことは言われても御答弁のいたしようがないと思います。
 これでちょっと三十分ほど抜けさしていただきますので……。
#131
○斎藤栄三郎君 結構ですよ。
 全く見解が違います。この法律が分割ができるようにちゃんとつくってあるんですから、この法律が通ったときに分割されるであろうという心配をするのは当然のことであって、分割されないということで議論しろというんじゃ、これはもう言論の自由は全くないんですよ、それは。分割できるような規定になっているんですから、弊害を列挙するのは公取の委員長の責任でこれ列挙するでしょうが、これはまた後で触れますけれども、分割できるような法律になっておいてしないんだと、分割を前提としている議論だから答弁できないなんというのは実に不届きだと思いますね。そんなばかなことで国会がいいんでしょうか。
#132
○政府委員(大橋宗夫君) 委員長……。
#133
○斎藤栄三郎君 いやちょっと待ってください。もうあなたとは山中委員会でいやというほど話をしているんですから、ここでいま聞きたいのはたまにしかお目きかかれない、久々の拝顔の栄に浴する澤田委員長にお伺いいたします。
#134
○政府委員(澤田悌君) この法律は、一定の要件を備えました場合に、構造的要件を備えた企業が、また法律に定める弊害を伴ったときにどうするかという法律でございまして、そこでその弊害を除去し、競争を回復するに足る措置がとられますれば、これはもう営業譲渡とか、その独占的状態にあるということではなくなるわけでございますから、このいわゆる構造規制というような措置はとられないことになるわけでございます。したがいまして、先ほど長官申しましたのも、そういう順序があるのだという意味だったと私は理解するわけでございます。そうして、弊害がどうしても除去されないと、そして、ほかに競争を回復する手段もないと、それが世間もそう納得した場合に、初めて私は営業譲渡というような最後の手段が発動されるものだと考えます。そういう性質のものではないかと思う次第でございます。
#135
○斎藤栄三郎君 委員長、そうするとこれはやっぱり弊害を列挙し、企業のビヘービアが直らない場合には分割するんでしょう。
#136
○政府委員(澤田悌君) この法案第八条の四を、これはもう御存じですから読むのは失礼ですけれども、「ただし、当該措置により、」云々ということでいろんな条件がついております。これがまた非常な重要な手続になるわけでございます。ただいま申しましたように、ほかの手段で競争条件が回復できないと、それなら営業譲渡に直ちにいくかといいますと、ここにございますような考慮すべき条件、それから手続上経なければならない条件、これがたくさんございまして、それを全部みんな国民が納得するプロセスを経なければ、私はこういうラジカルないわゆる分割というようなのはむずかしい、かように考えるわけでございます。
#137
○斎藤栄三郎君 しかし、委員長のおっしゃるように、そこに書いてある条件やって、それでもどうしてもかなわなきゃ分割するんでしょう。そこだけ言ってください、するのかしないのか。
#138
○政府委員(澤田悌君) ただいま申しましたようなほかの手段もない、それからあらゆる手続を経た、そして考慮すべきあらゆる条件も納得されたということであれば、分割が実現するかもしれない、できることでございます。
#139
○斎藤栄三郎君 ちょうどかつての国家総動員法と同じようなものですよ、そうなると。国家総動員法が制定されるころ私は新聞記者をやっておりました。国会の答弁を傍聴しておりました。委員長のいまのお答えと同じようなことを思い出します。決して自由を拘束するものじゃないと、いろいろと美辞麗句を並べて御説明になって通しました。しかし、その後私たちはすっかりやられてしまった。
 この法律も澤田さんのような人格円満、識見豊かな方が委員長をやっている分には心配ないんであります。しかしあなたにも任期があることだし、また政党政治のもとでいつどういう運命がくるかわからない。そういうときに、この法律が一人歩きをし出して、分割できるような規定になっているんですから、そのときに分割されたって、もう企業はそのときはどうにもならなくなっちゃう。私たちが太平洋戦争で国土を半分失い、工業生産力八割を失ってここまで伸びてこられたのは、全く激しいこの国民の自由競争のおかげである。いま委員長にお伺いしたいのは、自由競争あると思いますか、ないと思いますか、いまの日本の経済で。
#140
○政府委員(澤田悌君) 私は相当程度の自由競争が存在すると考えております。
#141
○斎藤栄三郎君 私は、もう非常な自由競争だと思っております。決してお役所の窓から考えておるほどのほほんとして生きている経済界じゃないだろうと思う。
 一つの例を写真フィルムで申しますと、アメリカのコダックと日本のフィルム業界とは、もう食うか食われるかの闘いをやっているわけです。そのコダックがいま日本では二二%のシェアを占めている。これとどうやって闘っていくかということがもうフィルム業界全般の血のにじみ出るような努力だろうと思うんですね。かなりの自由競争なんておっしゃる澤田さんの認識ではぼくは不満ですよ。非常な努力をしている。恐らくこのシェアが三〇%ぐらいまでコダック高めてきたら、日本でフィルムの製造やるでしょうね。そして、まず日本のフィルム業界を徹底的に打倒しておいてから、今度は向こうのフィルムの値段を高くする。それはもうアメリカ資本の常套手段です。
 大正十二年に改進社ができた。そこでつくった自動車が脱兎のごとく走るからダットサンと名づけた。そのときにアメリカの自動車資本は猛烈なダンピングをやって、その改進社をつぶしてしまったのです。また、松方幸次郎氏がソ連から石油を入れて日ソ石油というものをつくった。これに対してアメリカのメジャーも猛烈なダンピングをやって、その日ソ石油をつぶしてしまいました。まずこちらをつぶすまでは猛烈なダンピングをやって、つぶし終わったら高い値段で売るというのがアメリカ資本のやり方ですよ。そのことを知っている財界人は血みどろな努力をしているんで、激しい自由競争だと思います。かなりの自由競争どころの騒ぎじゃない。この自由競争を回復するのがこの法律のねらいだとおっしゃるけれども、私はいまむしろ過当競争に悩んでいるんだと診断をいたしますが、御意見いかがなものでしょうか。
#142
○政府委員(澤田悌君) 競争の度合いのはかり方、非常にむずかしゅうございますけれども、私は相当な自由競争が行われておると申したのは、部分的には過当なものもございましょう、あるいは部分的には寡占状態で競争が制限されているものもありましょう。しかし全体として見ると、やはり日本は自由な国、相当の自由競争の行われている国と感じておるわけでありまして、ただいま御指摘の写真フィルム業界の問題にいたしましても、私はかなり競争されておると思うんです。特に海外からの脅威に対しては御指摘のとおり努力しておるに違いないのであります。そういう場合につきましてはこの法案も十分考慮をいたしておりまして、国際競争上問題があるときにはとうてい営業譲渡というような措置は考えられない規定になっておるわけでございまして、競争という点につきましては、私、大体そのように考えておる次第でございます。
#143
○斎藤栄三郎君 次にお尋ねいたしたいんですが、昭和五十年のときの改正案に、当時は十一の業種が話題に上っておったと考えますが、現在は九つだけが例示されております。そのときの十一、いまそれがないのはブルドーザー、それから複写機、この二つが落ちておりますが、この間のいきさつはいかがなもんでしょうか。
#144
○政府委員(水口昭君) お答えいたします。先生御指摘のように、昭和五十年六月に衆議院商工委員会に資料を提出いたしました。その資料では、市場占拠率が一社二分の一、または三社四分の三を超えるもの、出荷額が五百億円を超える事業分野といたしまして、先生十一とおっしゃいましたが、実は十業種、十でございます。十業種を挙げて、そういった資料を提出いたしました。今回は御案内のように九つでございます。何が落ちたかと申しますと、これはボイラー製造業でございます。公正取引委員会では二年に一回ずつ集中度調査というものをいたしましてその結果を発表いたしておりますが、おととし、五十年に商工委員会に提出いたしました際には四十七年分の調査をもとにして十業種を選んだわけでございます。今回出しましたのは四十九年分と、調査いたしました年度が新しくなっているもんですから、したがってボイラーが落ちたと。ボイラーが落ちましたのは、今回の調査では市場占拠率要件を欠く、こういうことになったわけでございます。
#145
○斎藤栄三郎君 物価の問題については通産大臣がお見えになってからお伺いいたしますので、これは後に回します。
 いかがでしょうか、法律によると五百億以上で一社五〇%、二社七五%、これが第一、それから第二は弊害を挙げる、こういうことになっております。そのときに、利益率とかというような項目がここにちゃんと明示されておりますけれども、どの程度の利益を上げていたら弊害かというと、衆議院の議論を聞いておりますると、平均利潤より五〇%ぐらいということを承っておりますが、そのように理解していいんでしょうか。
#146
○政府委員(水口昭君) いま先生がおっしゃいました答弁は、衆議院で私がいたしましたのでちょっと説明をさせていただきますが、独占的状態の定義が今回の改正法の二条七項にいろいろ書いてございますが、その三号でもっていまおっしゃいました利益率、そういったことが規定してあるわけでございます。そこでその中に、標準的な「利益率を著しく超える」と、やや抽象的な表現もございます。それで、これはほぼどういったことを考えておるのか、こういう御質問があったわけでございます。そこでまずお断りしておきたいのは、こういうものを判断いたします場合には、短期間で判断するのではなしに、この三号の柱書きにも書いてございますように「相当の期間」をもとにいたしまして、かなり長期にわたって物を考えるということが前提にあるわけでございます。それから「著しく超える」利益とは一体何だということでございますが、これはやはり公正取引委員会におきましてこういう自体が起こった場合にケース・バイ・ケースで考えるというのが基本でございますが、それにしても一応の目安は何だと、こういうことでございますので、一応の目安といたしましては、利益率で申しますとここに書いてございます「政令で定める業種における標準的な」利益率――「政令で定める業種」というのをわれわれ少し広く解しておりまして、たとえば製造業といったようなそういう広い範囲で考えておりまして、それに比べまして、まあ一応のめどを示せば、目安を示せば五〇%以上利益を上げておる、これは一応のめどでございます、こういう答弁をいたしたわけでございます。
#147
○斎藤栄三郎君 そうすると、各社との比較をなさるについては経理基準というものを統一しないと正確な比較はできないだろうと思う。たとえば一つの原料を蔵から出す場合に、どういう方法をとるかによってずいぶん違うと思うんですね。先入れ先出し法によるのか、それぞれの経理が皆違う方法でやっているわけです。それを一つの統一経理基準をおつくりになるんでしょうか、どうでしょうか。
#148
○政府委員(水口昭君) この二条の七項の三号のイ、ここで利益率のことか書いてあるわけでございますか、先ほど申しましたように「政令で定める業種」という言葉がありまして、これはたとえば製造業といったような広い範囲で考える。それからもう一つは、この中で「政令で定める種類の利益率」という言葉が出てまいるわけでございますか、これは法律が通りました後で総理府の方にお願いをして政令をつくるわけでございますが、われわれ一応いま相談しておりますのは、この「政令で定める種類の利益率」といたしましては、自己資本経常利益率といったようなものを中心に考えておりまして、それだけで不十分の場合には、さらに他の利益率も若干補足的に使うことにしたいと、大体具体的なやり方としてはかようなことを現段階では考えておるわけでございます。
#149
○斎藤栄三郎君 いまおっしゃった自己資本利益率だけだと私は非常に不十分だと思いますね。やはり売上高利益率とか総資本利益率をあわせてお持ちにならないと正確な比較ができないんじゃないかと懸念をいたします。私かお尋ね申し上げたのは、要するに各社が皆経理のやり方違っているわけで、それを統一しなければなかなか正確なる、企業に納得できるような御説明ができないんじゃないだろうかと思うんです。しかしそれは非常にむずかしいことで、昭和十八年に陸軍と海軍が経理基準をつくろうとして非常に努力したことがあるんです。私もそのときにちょっとばかり参画したんですけれども、なかなかそれは利潤統制につながるのでむずかしいことなんですね。いま私はそれをやれと言うんじゃありませんけれども、本当に分割される企業に納得してもらうためには、そこまで、統一経理基準をつくってやらなければ、相手は納得しないだろうと思うんです。いかがでしょうか。
#150
○政府委員(水口昭君) 先ほど委員長からお答えいたしましたように、この独占的状態の規定は、近い将来直ちにこれを適用しようというふうなことは全く考えておりません。そこで、と申しましても、こういう規定が規定されました以上は、これは公正取引委員会の中の経済部が所管することになるわけでございますが、したがってこの利益率の点につきましても一応調べておく必要がある。どういう調べ方をするかということでございますが、それは通常の状態におきましては、各社を呼んで調べるとかそういうことをするわけではございませんで、有価証券報告書であるとか、あるいはいろいろ経済統計の資料がございます。そういうものを中心にいろいろおおよそのことを把握しておく。で、事が何か起こった場合によりよく、詳しく調べる、こういうことを考えておりますので、先生がただいまおっしゃったようなことは、何か事が起こってもう少し掘り下げた調査を特定の会社についてしなきゃならぬと、こういうときに必要が起こるのかと思いますが、そのときには、御指摘のようにいろいろ技術的にむずかしい問題はあろうと思いますが、工夫をこらしてやってまいりたいと、かように考えております。
#151
○斎藤栄三郎君 先ほど委員長の御答弁で、企業は分割――いろんな条件は前についてますけれども、分割する道は開けているわけです。しかしいまはやらないんだ、やるときにはもっと正確なる経理基準をつくって、それに基づいて利潤比較をやるというぐあいに理解してよろしゅうございますね。
#152
○政府委員(澤田悌君) あらかじめ一定の基準なり何なりをつくっておくという問題として取り上げるよりは、ある企業について問題が起こったときに掘り下げて、ただいま審議官が申しましたように、そこで十分その時点で手を尽くした利潤率なり何なりを計算するということが妥当なのではないか、かように考えます。
#153
○斎藤栄三郎君 五割以上超過した場合に、それを弊害と見るかどうかということで非常に私は議論は分かれるところだと思うんです。確かにいまの日本では五割以上なら大変な超過利潤と考えると思うんです。しかし、これを国際的に見た場合――どうもコダックばかりやり玉に上げるようで、決してコダックに恨み、怨恨あるわけじゃありませんけれども、どうも日本の富士写真フィルムとコダックの利益率を調べると、コダックは十四倍の利益を出していますね、富士写真フイルムさんの。それを度外視して富士写真フイルムもうけている、五割以上だというんで弊害として挙げられたんじゃ、これは私は国際競争力はなくなっちゃうだろうし、そこでお願いしたいことは、その利潤率を比較する場合には必ず国際的な視野をもって同業の外国の企業との比較も考慮するということを入れるべきじゃないかと思います。いかがでしょうか。
#154
○政府委員(澤田悌君) 先ほども申しました八条の四の規定は、国際競争力の維持が困難になるようなことであっては困るという規定でございます。したがいまして、利益率の比較等におきましても、これが国際競争力上どういう影響を及ぼすかということは十分考慮に入れなければならない問題と考えるわけでございます。
#155
○斎藤栄三郎君 よくわかりました。
 その弊害というのは普通物価が、むずかしい言葉で言うと下方硬直性とかいろいろ言いますけど、わかりやすく言えば物価が上がって困るんだ、それを弊害と私たちは普通理解しております。ところが、この九業種、いわゆる独占もしくは寡占と言われる九業種を調べてみますると、むしろ安定してるんですね。これは私だけの調査ではなしに通産省の調査もありますが、私は私独自で調べました。これはきわめて簡単なことですからお聞きいただきたいと思います。
 昭和四十五年から昭和五十年までの間に消費者物価指数は七二%上がっています。ところが、いわゆる九業種の中で一番上がり方の少ないのは腕時計で、わずか六%しか上がっていません。それからサントリーのウイスキーが一三%、次が麒麟麦酒で二九%、富士写真フイルムがカラーフィルムで二〇%、味の素が三九%、一番上がったのは日本楽器で六九%。一番上がった日本楽器でも消費者物価指数七二%に比べればまだ低い。これは私がいま実際に統計をとったものです。通産省が、われわれがこの独禁法の立案作業に従事しているころに非常におもしろい統計をお出しになりました。これは読売新聞に載りましたから、もう皆様方のお目にとどまっているわけでありますが、三社シェアが九〇%以上の品目、ビール、写真フイルム、乗用車は四四%の値上がりであって少ない。ところが、三社のシェアが二〇%から三〇%と寡占の度合いの低い品目、たとえば水産かん詰め、ビスケットなど三十一品目は九二%も上がっている。この通産省の統計でもまた私の調べでも、寡占業種必ずしも高物価という結論を出すことはできないんでありまして、むしろ物価安定に非常な貢献をしている。
 その原因はどこにあるかと言うと、こういう寡占業種というのは、規模がでかいからスケールメリットで大量生産の利益もありますし、また技術、研究に非常な金を注ぎますから、常に技術革新によってよい物を安く供給することもできる。いろいろとそういうメリットがあるわけです。したがって物価がどの程度上がったときに弊害とするか。むしろ物価の点からは私は弊害は出てないだろうと思いますが、その点いかがでしょうか。
#156
○政府委員(澤田悌君) 御指摘の生産集中度と物価の関係、あるいは景気の変動と物価の関係、いろんな見方がありますし、むずかしい点でもございますが、寡占業種の、あるいは大企業の製品の価格が常に非常に高いという現実では現在ございません。高いものもございます、先ほど御指摘のように。しかし、基礎資材のようなものは騰貴率が低いということもございます。ただ私どもの方かつて指摘いたしましたのは、寡占の度合いが進むと下方硬直的になるという傾向、これは一般に指摘されておるのでございますが、そういう傾向は指摘せざるを得なかったのでございますけれども、しかし著しく上がっておるというものでない例も御指摘のように多々ございます。したがいまして、そういうことが、先ほども申しましたような九業種で、市場シェア等の条件はあるけれども、その製品価格が上がっておるかと言うと必ずしもそうじゃない。したがって弊害の問題にはぶち当たらない。こういう点が独占的状態を備えているとは言えないと申したのは、そういうことも入っておるわけでございまして、御理解を願いたいと存じます。
#157
○斎藤栄三郎君 そうすると、弊害としては利益率の問題、それから物価の問題、これはだれでも納得できますが、だから新規参入ができるかできないかということが大きな項目になる。新規参入ができるかできないかというのは業種によって非常にまちまちだし、また事情が違っていて、たとえばピアノなんというのは非常な高度の技術を要します。しかも完成するまで一年半かかる。だから、資本利益率が非常に低いから、こんなばかなところへ入るなんというのはまず考えられない。しかし国際競争は激しさを加えて、最近では中国や台湾からまでピアノがどんどん入ってきている。こういうようなわけで、新規参入の考え方も、国内だけではなしに国際的にこれを考えることが必要ではないかと考えます。いかがなものでしょうか。
#158
○政府委員(澤田悌君) 御指摘のように、新規参入の難易の問題、判定の問題は非常にむずかしゅうございます。一応新規参入が困難であるという事情としてはどんなことが考えられるかということを考えてみますと、参入に要する資金が巨額でなければとてもいけないという問題、あるいはきわめて高度の技術を必要とする、ただいまも御指摘がございましたが。あるいは流通機構の系列化が非常に進んで歯が立たないというような問題。それから製品の差別化が高度に進んでおる、それぞれ特徴のある製品をつくっておるという問題もある。それにいま御指摘の国際的な問題もあろうかと存じます。したがいまして、そういう国際的な問題も含めて新規参入の難易ということについては慎重に考えなければなりません。それについては、それぞれの方面の資料なり御意見なり、あるいは主務官庁の見解なり、こういうものをよく参考にして、検討しなければならないものというふうに考えておる次第でございます。
#159
○斎藤栄三郎君 大体五百億以上で五〇%、七五%で一応規模の方を図って、後弊害があった場合に今度は通産大臣なり農林大臣、所管大臣の御意見を聞くと、こういうことですね。もしもそのときに通産大臣なり農林大臣がノーと言ったときにはどうなりましょうか。それでも委員長はおやりになりますか。
#160
○政府委員(澤田悌君) それはケース・バイ・ケースで考えざるを得ないと思いますけれども、私の方がどういう感覚で意見を求めたかという問題とも関連するわけでございますが、いろんな角度を変えて、十分さらに突っ込んだ意見の交換をするということが必要であろうかと思います。
#161
○斎藤栄三郎君 その公取の委員は合議制でおやりになっているわけですが、その分割の指令をお出しになるときには委員各自全員一致でおやりになるのですか、それとも多数決でおやりになるのでしょうか、それとも委員長の独断でおやりになりますか。
#162
○政府委員(澤田悌君) 三人以上の多数決で決定することに相なります。
#163
○斎藤栄三郎君 それは公取の内部のことですから、その点御意見でよく了承できました。
 そこで私は、弊害があるかないかということは、公取がよくお調べ下さるからいいんですけれどもね。ああいう条文の書き方ではなしに、国民経済上明らかに弊害の生じた場合、とこうお書きになりませんと、どうも法文が不明瞭じゃないだろうかというような気がいたしますが、その点いかがでしょうか。
#164
○政府委員(澤田悌君) 法文のことでございますので、大橋審議官から。
#165
○政府委員(大橋宗夫君) ただいま弊害についておっしゃいました点は、感覚といたしましては当然国民経済において弊害があるということでございますが、国民経済に対する弊害といいますか、そういうことだと思いますけれども、あらわれてまいりますのは、やはり弊害の判定というものをどこでとらえるかということになりますと、やはり一つの事業分野といいますかマーケットといいますか、そういう分野にその徴候をとらえていくという考え方でこの条文はつくってあるわけでございまして、したがいまして一つの事業分野において三号の要件のような弊害がある、そういたしますとあそこに書いてある弊害の書き方というのはかなり厳しい弊害の要件でございますので、価格についてああいうような需給、あるいはコストの変動というものとかけ離れたような高い価格が設定されておるというような事態は、やはり需要家に対する弊害を、悪影響を通しまして国民経済においても弊害がある状態ではなかろうか、こういうふうに考えて条文をつくっておるわけでございます。
#166
○斎藤栄三郎君 大橋審議官の仰せでよくわかりましたが、「市場における弊害」という表現ですね、国民経済とどう違いましょうかね。私は国民経済の方が範囲が広いし、それから大衆にこの独禁法を親しませるのに役立つだろうと思いますが。
#167
○政府委員(大橋宗夫君) 「市場における弊害」といいますのは、弊害の起きている場所といいますか、あるいは弊害を判定する場所という場所をあらわした概念でございまして、弊害がどこに対して起こっているかということはそこでは書いてないわけでございます。弊害がどこに対して起こっているかと言えば、それは公共の福祉に対して起こっている弊害、国民経済に対して起こっている弊害ということになるわけでございますけれども、もう少し技術的な意味であの条文を考えたと、こういうことでございます。
#168
○斎藤栄三郎君 この五百億の算出の根拠を教えていただきたいんです。と言うのは、それは一応の目安であろうと思います。腰だめだろうと思います。学問的に五百億でなきゃならぬ根拠はなかなか理解しにくいので、私は、五百億以下のものだってずいぶん独占もしくは寡占の状態のものが多いと思うんです。そういうものについては目こぼしをしている。たまたま五百億以上だからというんで厳格にこれを適用するのかと、いかがなものでしょうか。
#169
○政府委員(大橋宗夫君) 五百億円という数字そのものについて、それは確かに四百億円、三百億円、いろいろ決め方あろうかと思いますけれども、余り小さな業種につきましては、少なくとも一つの優秀な企業が非常に大きなシェアを持っていて、しかもまだ発達後日の浅い産業でありますと、かなりの利益を上げるということも予想されます。こういうような優秀な中小企業に対しましてまで企業分割というような形での経営の指針を示すことは、まだ必要ではないというような考え方で線を引いたわけでございます。五百億円という線につきましては、西ドイツの例でありますとか、いろいろな各国の例を参考にしたわけでございますけれども、これについて理諭的にどうしても五百億円でなければいけないという、そういうものは、これはじりじりと詰めてまいりますと、それはございません。
#170
○斎藤栄三郎君 でしたら、やはりその五百億をやめちゃいましてね、市場において著しい弊害があったときとしておいた方がむしろにらみが効くんじゃないでしょうか。五百億というのは全く科学的根拠がないんで、ただ余り小さいものを苦しめてもしょうがないとおっしゃるが、実は私がいま持っている資料によりますと五百億以下で、二百億ぐらいですけれども市場占拠率はえらいもので九割ぐらい占めている。これを取り扱おうとする業者は、そのメーカーに向かって三拝九拝し、彼らの言うとおりしなければどうにもならない。だから、五百億という線を引くことが適当かどうかということについて、私は非常な疑問を持つのでありますがいかがなものでしょうか、もう一回お願いいたします。
#171
○政府委員(大橋宗夫君) これは考え方でございますけれども、事業者に対する弊害を通して国民経済に対して弊害を及ぼすという感覚からいたしますと、やはりその一つの事業分野というものは国民経済にとってある程度のウエートを占めているというものでなければならないかと存じます。また、ただいまの御指摘のようなケースにつきましては、もしケースについて非常によく調べてみなければわからないとは存じますけれども、場合によりましては私的独占でありますとか、不公正取引でありますとか、独占禁止法のほかの条文での規制というものは、これはあるわけでございます。
#172
○斎藤栄三郎君 その国民経済に及ぼす重要度から論ずるならば、今回取り上げられている九業種の中で、写真フイルム、腕時計、ビール、ピアノなどは国民経済上そう決定的に重大な影響を及ぼすものではないと思います。おわかりでしょうか、フィルム、腕時計、ビール、ピアノ、こういうものは国民経済上なくちゃならぬものだと言えないと思う。それは、外貨獲得のためには非常に大きな貢献をしていますし、われわれ時計がなきゃ困りますし、ビール飲んだ方が気持ちいいし、ピアノは教育上大事なものです。孔子が言ったように、礼楽をもってもととなすんですから、楽は大いに大事だということは認めますけれども、いまあなたの、大橋審議官のおっしゃった重要度から言えば、私は国民経済上から見ればこれはそう重要だと思えない。むしろ重要なことから言えば鉄鋼、自動車、電気機械などの方が非常に重要ではないでしょうか。ところが、今度の九つの中には、いま申し上げた鉄綱、自動車、電機は入っていない。そうすると、この九つの選び方に非常な疑問を持つわけでありますが、その点いかがでしょう。
#173
○政府委員(水口昭君) 九つの選び方でございますが、これは先ほど申しました公取がやっております集中度調査、そういったような調査結果等をもとにいたしまして、現在わかる資料の範囲内におきまして、独占的状態の中のいわゆる形式的な要件。国内供給額が五億円以上、それから、シェアの方が一社五〇%、二社七五%超。それに該当するものが何があるか、これを非常に機械的に選んだというだけのものでございまして、先生おっしゃるような重要度とかそういったことは加味しておりませんので、たとえば鉄はその二つの要件に合致しない、したがって載っていない、こういうことでございます。
#174
○斎藤栄三郎君 そうすると、大体これで分割の問題の質問一応これで終えて、次に同調的値上げでありますが、いまの経済機構では大体同調的になるのは避けがたいんじゃないかと思うのです。たとえば、よく新聞が例に取り上げられますが、新聞巻き取り紙はメーカーから買って、新聞労連の賃金は各新聞社は皆同じように上がって、そしてインク代も同じということになれば、これはどうしたって同じような値段になってしまう。鉄だって同様だと思う。もう一つは、たとえばキリンビールをひとつまた例に出させていただくと、キリンビールは値上げをしても問屋さんはすぐ金払いません。ほかのビール会社が値上げをするまでは払わない。だから、各社値上げすることが決まったときに初めて麒麟にも払うんだから、やっぱりこれ同調的になっちゃうんですね。商売の商慣習上そうなっている場合もあるし、原材料の面から見て同調的にならざるを得ない場合が多いと思う。その同調的値上げをした場合には報告を求めるというんですが、どうでしょうか、同調というのは私はいまの経済情勢では避けがたい現象だと思いますが、いかがでしょう。
#175
○政府委員(澤田悌君) いろいろ議論のあるところではございますけれども、私どもが実際の状況を観察いたしますと、同調的値上げは一般的に当然であるというふうには考えないのでございます。たとえば、素材産業におきましても、企業によって原料の購入先あるいは購入量が違う、あるいは合理化の度合いとか生産技術、販売組織、経営効率、あるいは経営者の能力に至るまで考えますとそこに相当の差がある。必ずしも値上げの額または率が同一になければならないという必然性はないように考えられる次第でございまして、したがいまして、それぞれの企業の状況に応じて自由に価格が決められるということが望ましいのではないかと考える次第でございます。
#176
○斎藤栄三郎君 企業が相談をして上げるなら明らかに不届きですが、経済の慣習上もしくは制度上どうしてもそうなっているんですね。たとえば新聞なんかいままで公取はどういう処置しておりましたか。新聞社が値上げしている場合に、同調的値上だとしてこれを処理しましたか。
#177
○政府委員(野上正人君) お答えいたします。
 新聞につきましてはカルテルの疑いがあるということで調査した場合がございます。
#178
○斎藤栄三郎君 調査してどうなりましたか。
#179
○政府委員(野上正人君) 調査した結果、証拠は挙がりませんのでこれを違反と認めるという段階には至りませんでした。
#180
○斎藤栄三郎君 いまの答弁私にはよく理解できなかったんですが。
#181
○政府委員(野上正人君) 審査いたしまして、審査の結果カルテル行為ありと、三条に違反するという証拠が得られなかったということで審査を打ち切りました。
#182
○斎藤栄三郎君 新聞社は大体しかし二、三カ月の間にみなこう上げていますね。大体二、三カ月の間にほとんど同じような値段になる。きっと大衆はあれは同調的値上げだと思うに違いない。しかし新聞社は強いから、公取は遠慮しているんだとこう見ております。いかがです。
#183
○政府委員(野上正人君) 過去の例から見ますと大体同一時期に上げております。それでわれわれとしましても、これにつきましては予備的に審査を行う場合もございますし、場合によっては立入検査もやっております。
#184
○斎藤栄三郎君 だが同調的値上げではない。
#185
○政府委員(野上正人君) いや、三条に違反する証拠がなかったということでございます。
#186
○斎藤栄三郎君 ぼくは頭が悪いから理解しにくいんだが、同じ時期に上げていて、それは同調的値上げでない、第三条に当たらない。
#187
○政府委員(野上正人君) 三条とそれから同調的値上げとは異なりまして、三条は共同して対価を決定して維持するという不当な取引制限を私は言っているわけでございます。同調的値上げであるということは、改正案で同調的値上げを問題にしているわけでございます。
#188
○斎藤栄三郎君 私がいま論議しているのは同調的値上げなんで、新聞社の値上げはあれは同調的値上げかどうかということを聞いているんですが。
#189
○政府委員(野上正人君) 新聞社の値上げは一応、まあ今後の問題もございますけれども、同調的値上げに該当するものではないかと思います。
#190
○斎藤栄三郎君 そうすると法の前にはすべて平等ですから新聞社の値上げも同調的値上げとして報告を求めますか。
#191
○政府委員(澤田悌君) 同調的値上げに関する規定によりまして報告を求める企業は、一定の要件を備えたものでございます。これをどうするかは法律が通りましてからその一定の条件に、以後どういうふうにしてその企業を選定するか、これは今後の問題でございます。
#192
○斎藤栄三郎君 委員長、できればその内容をいまお漏らしいただくと非常に幸せだと思うんです。実はこれは報告を求めるというのは大変なことで、いま私が簡単に一つの例だけ申しますと、ある上場会社が一カ月に出す定期的報告というのは十五件あります、営業関係で。そのほかに臨時に報告を求められるものが大体同数あります。冗談じゃない、毎日一つずつ役所に報告を出しているんです。民間企業というのは経済活動をやるのが目的なのに役所に対する報告出すために存在していることになる、私はなるたけそういうような煩瑣なことはやめた方がいいんじゃないかと思うんです。で、役所が違うたびごとにごめんどうですかと口では言うけれども、内心では当然のような態度で報告を求める。それじゃいけないんであってなるたけ報告や何かで手数をわずらわさないようにすることがこの際大事ではないかと考えますが、いかがでしょうか。
#193
○政府委員(澤田悌君) 趣旨としてはごもっともでございます。したがいまして、法案に定めておりますような条件に該当しなければ報告を求めることはないわけでございますが、ただいま私どもが報告の徴収について具体的にどのようなことを考えておるかということを申し上げますと、これは価格の同調的引き上げというものを形式的な基準――法に定めております形式的な基準で制定されるのでございまして、相互の意思疎通があるというようないわゆるカルテルの疑いを前提としたものではございません。
#194
○斎藤栄三郎君 カルテルの疑いが……。
#195
○政府委員(澤田悌君) 疑いがあるから報告をとるというのではございません。法に定める形式的な基準によって判定して、報告を求める、こういうことでございます。また形式的に第十八条の二の要件に該当するからといいましても、値上げの理由が客観的に明白な場合にまで、値上げ理由の報告を求めるという必要はないものと考えております。
 それからもう一つ、値上げ理由の報告といたしましては、そのケースに応じまして値上げの理由を説明するに足りる資料を提出していただくということになるわけでありますが、現在のところ、こういうことについては大体次のような報告を求めることになろうかと考えておるわけでありまして、一つは価格引き上げの状況でございます。建て値その他標準的な価格によりまする引き上げ前の価格、それから引き上げた価格、それから平均的な引き上げ率などでございます。
 それから価格引き上げの理由でございますが、その理由の説明と必要な参考資料でございます。参考資料といたしましては、たとえばその理由が費用の上昇にあるときはその費用の額の推移、それから原材料費の上昇の場合には、主要な原材料の種類別の購入価格の推移、それから労務費の上昇の場合には従業員一人当たりの賃金の額の推移等が必要となろうかと存じておりまして、大体報告をいただく場合には、その程度のものを考えておる次第でございます。
#196
○斎藤栄三郎君 これは報告を求めるだけであって、これをもとに戻せということは今度の改正にはないわけですね。ただ報告を求めた、それだけでも御満足で、ああこれで結構ですとおっしゃるんでしょうか。何かその後手を打つんでしょうか。
#197
○政府委員(水口昭君) 先生御承知のように、公正取引委員会は毎年いわゆる年次報告というものを出してございますが、そこへ掲載をいたします。
#198
○斎藤栄三郎君 そうすると報告を求める、それを年次報告に出す。申しわけないのですが、年次報告私いただいているけれどほとんど読まないんであります。これは不勉強で申しわけないと思いますけれども、それだけでいいものでしょうか。
#199
○政府委員(水口昭君) 年次報告に同調的値上げに関して報告を求める場合に、記載して国会に提出しなさいということは法律に書いてあるわけでございます。それでわれわれとしてはその年次報告におきまして国民にわかる程度に、報告の内容を記載したいということを一つ考えております。
 それからもう一つはいわゆる独禁法四十三条の普通の公表でございますが、これは同調的値上げに関して報告を求めたものをすべて公表するということではございませんが、どうしても必要があるものは四十三条の公表もあわせて行うと、かように考えております。
#200
○斎藤栄三郎君 大体同調的値上げについてはそのくらいにして、その次にカルテルでありますが、私は、日本のカルテルというのはもうけるためにやる場合より、もう生きるか死ぬかの瀬戸際に立って、生き延びるためのカルテルの方が非常に強いんじゃないかと考えます。その場合にやはり課徴金を取ろうと。もちろん私はカルテル賛成しているんじゃないですよ。だけれども、カルテルについてどういうお考えを持っていらっしゃるのか、委員長の御意見を承りたいと思います。
#201
○政府委員(澤田悌君) 御存じのように、現行独禁法はカルテルにつきましては原則は禁止のたてまえでございます。それでやむを得ない場合には認可をするということになっておるわけでございます。それでそういう場合は、ただいま御指摘のように業界が――これは法律にもいろいろ条件がございますが、その条件を満たすというような場合には、業界が非常に困難に逢着したという場合でありまして、そういう場合には法の条項に照らして認可をいたすわけでございますが、もう一つ、これは非常に業界が苦しいという防衛のためもありますが、同時にまた、共同行為によりまして安易に利益を確保するというような場合もあろうかと思いますが、認可を受けないカルテルがございます。これが私どもまことに遺憾に思うわけでございまして、そういう本当に困った場合には、ですから遠慮なく相談していただきたいということを申しておるのもそういうことでございまして、認可なしにカルテルを結んで、それを摘発を受けて課徴金の問題にぶつかるというようなことのないことを、切に望んでおる次第でございます。
#202
○斎藤栄三郎君 この課徴金がもしも延滞した場合には年一四・五%の延滞金を取ることになっていますが、この数字の根拠はどういうことでしょう。
#203
○政府委員(大橋宗夫君) これは国の公的な債権につきまして一般に延滞金の利率が一四・六あるいは一四・五ということになっておりますので、これに従ったわけでございます。
#204
○斎藤栄三郎君 生死の関頭をさまよっているような中小企業がカルテルをやった場合に、いま委員長のおっしゃったように、率直に言って来てくれとこう言うが、言わないで仮にやったとすると、その場合に課徴金も納められない、延滞金も納められないというようなケースも考えられると思いますが、その場合はどうなりましょうか。
#205
○政府委員(大橋宗夫君) これは強制徴収をすることに相なります。
#206
○斎藤栄三郎君 非常に形式的な御答弁で、どうですか、カルテルをやって、それはもうかった場合のときのことだけお考えになっているんで、もうからない場合だってありますよ、カルテルで。カルテルが全部がもうかるということはどこにもないんであって、カルテルやってもうからない場合だって相当多い。そのときに、いま大橋審議官の御意見では強制徴収なさると言うが、取るような物がない場合だって多いと思うんです。そこで、そういうことは、もうかることを想定してつくった法律ですから、もうからぬときのことは考えてないとおっしゃるかもわかりませんが、どうですか、もうからない場合もあるんですが、いかがでしょう。
#207
○政府委員(大橋宗夫君) これはカルテルによる価格で販売いたしました商品が、その企業にとっての原価を割れているという形でもうからない場合、これは確かにあろうかと思います。しかし一般的に、カルテルを結んだということは、カルテルを結ばないときに比べて価格が上昇すると、そういう形での利益はあるわけでございますから、競争価格に比べてカルテル価格がどうなったかということになりますと、やはりそこにはそれなりの利益は発生しているということは言えるのではないだろうかと、こういうふうに考えております。
#208
○斎藤栄三郎君 それは大橋さん、現実の経済をもっとよくごらんいただくことが望ましいと思うんで、いまの紡績業界なんかカルテルやったってなかなか、ちゃんと認めていただいてやったって非常につらい経営をしているのであって、私はあなたのお話ではちょっと納得できませんけれどもね。カルテルやれば必ずもうかるんだという前提でこの法律はできているように感じますが、現実にはカルテルやってももうからないのがいまの姿だと思いますよ。
#209
○政府委員(澤田悌君) ただいま中小企業に関してのカルテルの問題のように伺います。大変重要な問題でございますが、御承知のように中小企業については、中小企業団体組織法あるいは中小企業等協同組合法によりまして、力の弱い者が共同して競争力を持つ、そういう組織を認めておりまして、それがカルテル行為をしてもこれは適用除外になっておるわけでございます。でございますから、願わくば、そういう苦境に立たれた場合にはこういう法律を活用して、その法のもとにひとつ緊急避難をしていただきたい。それなしにいわゆるやみカルテルということになりますと、ただいま御指摘のような非常にむずかしい問題が起こってまいるわけでございまして、そういうことのないようにということを切にわれわれは望む次第でございます。
#210
○斎藤栄三郎君 ドイツのヒットラーの時代にはカルテルを奨励して、カルテルで経済を運用しようというやり方だった。で、ヒットラー没落後はカルテルを禁止してやっている。まあ時代により、その経済政策が変わるのは当然だと思います。日本でも戦前は大いに中小企業者に組合をつくらして、それで組合の力で乗り切れと。一本の矢は折れやすいが三本なら折れないというわけで、イソップ物語の例をとるまでもないことでありますけれども、とにかく団結してやっていけということだった。一番望ましいのは、委員長のおっしゃるとおりに御当局の許可を得てやることですが、なかなか許可が得られない。それをもっと運用を緩和するということはたびたび新聞で存じておりますが、どの程度緩和しているのか、お伺いしたいと思います。
#211
○政府委員(澤田悌君) 緩和すると申しますと若干語弊がございますのですが、私どもは法の定めるいわゆる積極要件、消極要件に該当いたします場合には厳正に審査の上、最近は敏速に認可をいたしておる次第でございまして、ただ、業界なり経済界が非常に困難なときには、私どもの方に持ち込まれる事案も深刻でございますから、それに応じて弾力的な姿が見えるかもわかりません。私どもは法の命ずるところに従って厳正迅速に対処いたしております。ただ、いま申しましたような状況ですから、長期化した不況下におきましては、最近いろんな大きいカルテルが次々と認可されているような状況でございます。
#212
○斎藤栄三郎君 ずいぶん古くからカルテルがあって、もう休眠状態になっているのもあろうかと思いますけれども、ずいぶん長くて二十年以上続いているのもあるそうですが、その実態はいかがですか。
#213
○政府委員(澤田悌君) ただいま部長の方からお答え申し上げます。
#214
○政府委員(吉野秀雄君) お答えいたします。
 十年を超えて二十年近く、不況カルテルと申しますか調整事業を実施しておる業界は、主として中小企業団体法に基づく中小企業の組合でございます。たとえば一例でございますが、マッチの業界、あるいは――しかしほとんど大部分は繊維関係の中小企業の組合がほとんどを占めておる状態でございます。
#215
○斎藤栄三郎君 いかがでしょうか、そういう古色蒼然たるものまで一緒にこの際考えないで、そういうものはもっと通産省の構造改善事業か何かにお譲りしちゃって、この法律では、もって緊急避難的なものだけを取り上げるようにしたらどうかと考えますが、いかがなものでしょうか。
#216
○政府委員(澤田悌君) ただいま申し上げましたのは、先ほど私が挙げました中小企業に関する法律に基づきまするカルテルでございまして、これはそれぞれの主務省が中心になりまして、私どもの方へは協議をしてまいるという形のものでございます。最近目立って認可されました大きいカルテルは、独占禁止法そのものに基づくものでございまして、御趣旨はそのとおりごもっともだと存じます。
#217
○斎藤栄三郎君 次に、持ち株制限の問題に移りたいと思いますが、金融機関は今度五%、保険は一〇%、これは従来どおり。相当かなりの金額が今後十年の間に手放されるわけです。それを証券界に悪影響を及ぼさないようにというんで十年という長期を御設定なさったと思いますが、私が一番問題なのは、持っている株で市場性がない、売れないものをどう処置するかということですが、いかがでしょうか。この点を御説明いただきたい。
#218
○政府委員(澤田悌君) 上場されておるような株式は、これは処分しやすいと存じますが、御指摘のような非上場の株式、特に中小企業の株式等はなかなか処分かできない場合があろうかと思います。それで今回の法案におきましては十年間の経過措置を認めておりますし、新しい増資の株につきましては、二年間の適用除外を認めておるわけでございまして、規制の影響がそう急速にあらわれないような配慮をいたしておるわけでございまして、中小企業の株式が処分されて、その面で大きい摩擦を起こすようなことはなかろうと考えておるわけでございます。
#219
○斎藤栄三郎君 なかろうと考えるとおっしゃいますけれども、売れないものをどう処分するかとお伺いしておるんです。
#220
○政府委員(澤田悌君) 総量規制でございますので、売れないものをどうしても売らなければならないという問題ではございません。その持ち株の中で十年間に、そのうちに自分の資産もふえてまいりますから、持ち株の限度が上がってまいることもありますし、その兼ね合いにおきまして、あんばいをしてもらえば問題はなかろうかと思うわけでございます。
#221
○斎藤栄三郎君 金融機関でも保険会社でも、好きこのんで証券市場で買い集める場合もありますけれども、それよりむしろ頼まれて、金融機関が持ってくれりゃ信用がつくということでお持ちになっている場合がかなり多い。特に中小企業の株なんかはそうなんですね。いま委員長のおっしゃるのは、総量規制だから売れるやつから売っていきゃいいんで、売れないやつは売らなくていいんだと、こういうことなんですか、そうすると、金融機関の資産内容はえらく悪くなっちゃうんで、市場性のないやつばかりわんさと抱え込んじゃうという結果になりませんか。
#222
○政府委員(澤田悌君) 金融機関の場合は少し性格が違うかと思いますが、十年間、私どもの願いますのは、十年間におきましてその持ち株の限度も上がりますし、そこの調査をしていけば、そういう困った事態はまず起こらないのではないかというふうに考える次第でございます。
#223
○斎藤栄三郎君 どうも非常に観念的な御説明で、ぼくにはぴんとこない。もっとじゃ具体的に申しますと、たとえば安宅産業の株を金融機関が持っている。これ、売ろうったっていま売れませんね。それで大抵金融機関が持っている株の中には、それに類したようなものがかなりある。資産内容が非常に悪化しているというのがいまの問題なんです。そういうとき、委員長の立場はこれは法律つくりゃいいんですけれども、これを適用される金融機関の立場から見ると困っちゃうだろうと思うんですよ。売れないものがいっぱいあるんですよ。全部が証券市場で売買した株ならある程度損すりゃ売れるかもわかりませんが、非上場の株で市場性の全くないものについては非常に困っていると思います。いかがでしょう、くどいようですが。
#224
○政府委員(大橋宗夫君) これは制度の考え方でございますけれども、やはり十年間の余裕期間をつくる。あるいはその間に増資が行われてまいります際には、その増資の際のいろいろな話し合いというようなことを通じまして、株式の数は減らないけれども、比率としては五%以下になっていくというような形で吸収されていくケースが多いのではないかというふうに考えております。
#225
○斎藤栄三郎君 幾ら議論をしても見解の相違で終わるかもわかりませんから、このくらいにいたしますが、実際は私は、金融機関の資産内容がこれは悪くなるんじゃないかということを非常に懸念いたします。この制度のよい面としては、個人株主がかなりふえる傾向は期待していいだろうと思います。ですから全部いい面だけを強調するわけでもないし、悪い面だけを強調するわけではありませんけれども、じゃこの五%になさった根拠は何でしょうか。
#226
○政府委員(大橋宗夫君) これは昭和二十八年に五%から一〇%に増加したわけでございますけれども、現在一〇%という枠で金融機関が株式を持っておる状況などを拝見いたしますと、やはり金融機関として、ほかの融資の面と総合しての支配力になるわけですけれども、株というものを一つの支えとして、やはり企業に対して金融機関の支配か強くなってきているという状況がございますので、制限をもとに戻すといいますか、昭和二十八年以前の状況に戻すという考え方にしておるわけでございます。
#227
○斎藤栄三郎君 次に、この第四十三条の発表をなさる場合に、原価まで公表なさるように衆議院では言っておられますが、その点間違いありませんか。四十三条関係の公表……。
#228
○政府委員(水口昭君) 四十三条は「事業者の秘密を除いて、」と書いてございますから、原価は明らかに秘密だと思いますから、これは公表はいたしません。そういうふうに衆議院では答えております。
#229
○斎藤栄三郎君 それは当然だろうと思いますね。原価まで公表されたら企業経営は成り立たなくなりますものね。同業のライバルに材料を提供するようなもので、外国企業を喜ばせるだけでありますから、それはそれで結構です。
 それから四十条の強制調査権、これは衆議院では発動しないと言っておられますが、そのとおり信じていいんですか。澤田委員長、いかがでしょうか。
#230
○政府委員(水口昭君) 先生の御質問の趣旨が、同調的値上げに関して発動しないと、そういうことでございましょうか。――とすれば、今回御承知のように、十八条の二の規定が新たに設けられました。したがって、たとえば衆議院でもよく御質問があったわけですが、十八条の二では、三カ月以内に値上げをしたと、こう書いてございます。それじゃ、たとえば三カ月と五日たって値上げした場合に、今度は四十条でやるのかと、こういうような御質問もあったわけでございますが、それはやりません。やはり十八条の二という規定が新たにできたわけでございますから、同調的値上げは、十八条の二で処理するのが妥当である、こういう御答弁をしたわけでございます。
#231
○斎藤栄三郎君 十八条の二というのは絶対必要なものでしょうか、公取にとって。
#232
○政府委員(水口昭君) 先生も御承知のように、たとえば鉄鋼でございますとか、いわゆるその同調的値上げの調査というものは、たびたび公取が行ってきたところでございます。これは従来は任意調査という形で行いました。で、われわれの方では、これはやはり任意調査で行うのが最も妥当である。しかし、どうしても相手会社の協力が得られない場合には、四十条を発動することも可能であると、こういうようなことを申しておったわけでございますが、そういったいきさつでございますから、やはり公正取引委員会といたしましては、十八条の二のようなはっきりした規定が設けられて、同調的値上げの調査ができるということが好ましいというふうに考えております。
#233
○斎藤栄三郎君 この前の五党共同修正案のときにカットされた規定ですね、これ。それが今度いつの間にか入ってしまった。私も山中委員会の末席を汚しておりまして、議論をずっと拝聴しておりましたが、そのときに十分論議尽くされたとは思わないのですね。要らないという意見が非常に強かった。だがいつの間にか入った。私は十八条の二というものは、この前の五党共同修正案で、野党の先生方も御同意を得て削除したものですが、これがなぜこの際突如としてあらわれたのか、非常に疑問に思っているんです。いかがでしょう。
#234
○国務大臣(藤田正明君) この前の五党合意案におきましてこれが削除されたのは、四十条の強制調査権を制限するものである、こういうふうな解釈がございまして、これが削除されたと聞いております。今回入りましたのは、別に章を起こしまして、十八条の二として立っておるわけでございますが、この法文の中に、独占的状態に対する措置と一定商品の分野においては五百億以上を売り上げる企業という大きなものに対する一つの措置がございます。それからまた、中小と言いますと語弊があるかもしれませんが、中小に対してはカルテルに対する課徴金という厳しい処置がございます。そうしますと、何か真ん中がぽっとあいているというふうなことでもございまして、三百億以上の売り上げのトップを含む会社が七〇%のシェアを占めたとき、同調的、三カ月以内に同一または近似の額の引き上げをした場合、こういうことになりまして、法体系におきましてもそこで整うということでありますとともに、四十条を何ら制限するものではないということを別の項を起こして証明をした、こういうことで入れたわけでございます。
#235
○斎藤栄三郎君 仮にその十八条の二を削除しちゃった場合に、四十条だけでは公取の運営はできませんか。
#236
○政府委員(水口昭君) 先ほどお答え申し上げましたように、独占的状態に関する規制というものは現在の独禁法には書いてございません。そこでどういうふうに調査をするかということでございますが、現在は先ほど申しましたように、たとえば鉄鋼等については任意調査という形でやっております。四十条は罰則で担保された規定でございますから、われわれとしては軽々にこれを発動するということは慎まなければならない、慎重にやるべきである、こういうふうに考えております。四十条でもって同調的値上げの調査がそれではできないかとおっしゃれば、それはできると思いますが、やはり任意調査という穏やかな形でやることが好ましいというふうに考えて、現在はそのように行っています。
#237
○斎藤栄三郎君 委員長、いまの御答弁を承っていますと、なくてもやれるということですね。
#238
○政府委員(澤田悌君) 十八条の二の規定ができますれば、先ほども申しましたように一定の要件が整えば報告を求め得る、こういうことでございまして、そこの点におきまして現行法と趣を異にいたします。私は手続の上において、あるいはやり方の上において簡明な行き方になると考えるわけでございます。
#239
○斎藤栄三郎君 大橋さんにちょっとお伺いしますが、あなたが終始御苦労なさったのでその御苦労に対して敬意を表しますが、この十八条の二が入ったいきさつはだれがどこで言ったんでしょうね、あの委員会で余り問題にならなかったように思いますが。
#240
○政府委員(大橋宗夫君) 自由民主党の中でのいきさつ等については御勘弁をお願いいたしたいと存じます。
#241
○斎藤栄三郎君 では私の方から暴露いたします。山中委員会で独禁法にずいぶん白熱的な討論が行われました。私は自民党の委員会としてはまれに見る熱心な委員会だと敬服しております。しかしそのときの空気は、多くは今日の法案のようなものではなかったはずです。ところが全員の了解も何も得られないで、いつの間にかこういう形の法案になってきている。これじゃ何のために委員会をつくって、われわれが乏しい知恵を出しているのかわからないんじゃないでしょうか。自民党内のことは言えないというあなたのお立場は、それは当然だと思いますから、あなたをこれ以上追及はいたしませんけれども、どうもこの法案については、われわれの知らないどこかで、いつの間にか取引が行われているような気がしてならない。ちっともガラス張りではないということだと思います。いかがでしょう。総務長官いかがですか。
#242
○国務大臣(藤田正明君) 二月二日から百数時間を超える大変熱心な御討議を自民党の内部でやっていただいたことは感謝いたしておる次第でございます。その上で、政府・与党の関係でございますので、自民党の独禁法の改正案はこうであるということを大平幹事長の方から政府を代表いたしまして私がいただきました。そのときはこういうふうに十八条の二というものはちゃんと入っておりました。
 経緯を申し上げますと、それまでにしばしば総理が予算委員会その他で御答弁申し上げておりますように各党の、与野党の御賛成を得て今国会で独禁法の問題は決着をつけたい、かように申しておりましたので、与野党の御賛成を得られるぎりぎりの線というものを自民党においても御考慮いただいて、政府の方にお渡し願ったものと、こういうふうに解釈をいたしております。
#243
○斎藤栄三郎君 これまた総務長官の御答弁としては当然の御答弁と思いますが、どうも私はくつの上からかゆいところをかいているような気がするので、私が言いたいのは、山中委員会では十八条というのはこういう形では問題になっていなかった。もっと率直に言うならば、要らないという意見の方が強かったのです。第一、この前の五党共同修正案のときにカットされたんですから、そこでその線でいけばいいじゃないかと、野党の先生方も納得している線だから、これでいけばいいじゃないかという議論が強かったのに、出てきたのはちゃんと入っているわけですよ。だから、だれがどこで入れたかということが聞きたかったのですが、きょうはこの席ではお答えが得られないというならこれはもうやむを得ないことですけれども、私は十八条の二というものは屋上屋を架するような気がするし、いままで委員長の御答弁でも、任意調査をやっていかれるのだし、私はなるたけそういう方が望ましいのじゃないかと思って、四十条があるのだから、十八条の二は要らないんじゃないだろうかという、私なりの考え方を持っているわけであります。
 以上で保有の問題、調査の問題を終えて、実は通産大臣がお戻りになってから企業分割でまだ残っておる点をお伺いしようと思いましたが、なかなかお忙しいようでございますから、ここでちょっとほかに飛びますけれども、体系的でなくて質問が大変散漫で恐縮ですけれども。
 今度の改正以外のことですけれども、私は独禁法に除外されている項目を再検討してみる必要があるのじゃないだろうかということをかねがね感じておったのであります。それは航空運賃なんかはこれは独禁法の適用除外なんでしょう。まずそれを確かめてからにします。
#244
○政府委員(吉野秀雄君) 航空業につきましては、航空法の第百十一条で独禁法の適用除外規定を設けております。
#245
○斎藤栄三郎君 航空会社が非常に御努力していることは十分認めますが、いま二つの会社の私は社員優待のことをちょっと調べてみましたが、このままでいいものでしょうか。
 ある日本の航空会社は、入社した時点で社員に一年間に六十点を支給するわけです。点数六十点を与える。これは一等親まで使える。で、東京−大阪間はこれ五点と計算する。そうすると六十点いただいてありますから、東京−大阪間は十二回使えるわけです。航空会社だから飛行機の切符出すのは当然だと言うかもわかりませんが、私は違うと思うのです。私は日本経済新聞に十余年職をはんでおりましたが、新聞ただじゃありませんよ。日経の記者でもちゃんと新聞料金は払った。航空会社だからといって六十点もらう。これ女房も子供も親もいいんですからね。現に私の知っている息子さんが、大学を出て日航に入った。そのおかげで、この恩典によって海外旅行もちゃんとしておる。非常な親孝行だと言って親は喜んでおります。国際線の場合は四年以上勤続した場合に二十八点、国際線の場合ですよ、付加するわけです。そして翌年まで繰り越しを認める。これがある一社――これは日航さんの場合です。もう一つは全日空の場合を言うと、一年以上の勤続年数、社員一人について一年間に三十点点数を与える。これは二等親まで使える。で、東京−大阪は二点と計算をいたします。だから三十点を二で割りますと十五回大阪まで行けると、こういうことです。
 私は自分の企業努力によってそういうことをやるのは結構だと思いますけれども、どうでしょう、一方どんどん航空運賃を上げていく。しかも非常にこれ、高い運賃だ、国鉄より安いなんて自慢している人もありますけれども、非常に今日の物価水準から見たら高い運賃を取っておいて、しかも自分のところの従業員に対してはこういう優遇措置を講じている。これはいま澤田さんに聞いても無理な話で、これ、適用除外なんですから、あなたがいいとも悪いとも言えないでしょうけれども、こういう一つの例を第一に申し上げたい。
 第二は、産業界が一カ月に千五百社もつぶれている。年間一万八千社つぶれ、負債総額二兆円もつぶれているときに、金融機関はあぐらをかいている。これもまた金利は適用除外である。間違いないでしょうね、どうですか、吉野さん。
#246
○政府委員(吉野秀雄君) 金利につきましては、現在臨時金利調整法がございまして、最高限度が大蔵大臣の告示で定められております。金融機関としてはその告示の限度内において自主的に金利を決定するわけでございますが、現在は日本銀行が一応ガイドラインを示して、一応各金融機関はそれに従っておるようでございます。
#247
○斎藤栄三郎君 適用除外かどうかということだけ答えていただければいいです。
#248
○政府委員(吉野秀雄君) 適用除外にはなっておりません。
#249
○斎藤栄三郎君 おりません。
#250
○政府委員(吉野秀雄君) はい。
#251
○斎藤栄三郎君 じゃ、公取の委員長は金利について発言することはできますか。
#252
○政府委員(吉野秀雄君) もし各金融機関が金利について協定を結んでおる場合には、明らかに独禁法の違反になります。
#253
○斎藤栄三郎君 それは大変おもしろいことを承りました。じゃ、ぜひひとつやっていただきたいですね。いまの金融機関が非常な利益を得ている。私は金融機関が暴利をむさぼっているとは言いませんけれども、産業界がどんどんつぶれているときに、金融機関があぐらをかいていていいんだろうか。公定歩合が一%下がっても本当に恩恵を受けるのは大企業だけであって、中小企業にはちっとも恩恵はいってない。何となれば、公定歩合が下がって日銀の貸出金利が下がれば、大銀行はすぐ下げますけれども、信用金庫、信用組合、相互銀行なんか下げはしません。だから金融問題については全く聖域であって、公取のメスが一つも入ってない。しかしいまのお言葉だと適用除外じゃないんだと言うなら、勇気を出してひとつ金融にメスを入れていただきたいと思います。いかがです。
#254
○政府委員(澤田悌君) ただいま部長から申し上げましたのは預金金利でございます。臨時金利調整法によりまして大蔵大臣の告示で最高限度が決められます。その限度を、その線で皆預金金利が統一されておりますれば、これは臨時金利調整法によっての適用除外と申してもいいのでありますが、現在のあり方は先ほど申しましたように、その限度の範囲内で日本銀行のガイドラインに従っておるということでありますから、これは一つの、日本銀行を行政指導と言ってはおかしいのでありますけれども、日本銀行の指導による統一的な金利が預金に行われておるということであります。これについてはですから問題があったわけでございます。臨時金利調整法そのもので決められた金利じゃなくて、その範囲内において日本銀行の指導によって決められておる。でございますから、その当時大蔵省から照会がございました。公取委員会に対してこういう移行について、ガイドライン方式に移行することについての照会があったわけでございます。それで公正取引委員会といたしましては、金利自由化へのワンステップである、いままで一本に大蔵大臣の告示で決められたものがその範囲内で動き得る、そういう自由化への第一歩であるということで、一応これを了承して現在に至っておるという経緯がございます。したがいまして、これが適用除外ではないのでありますから……
#255
○斎藤栄三郎君 適用除外。
#256
○政府委員(澤田悌君) ではないのでありますから、大蔵大臣の告示で決めた線に決まっているのじゃなくて、その範囲内で、日本銀行の指導によっておるということでございますから、これは適用除外の線ではないのでありますから、一応はしかし金利自由化への方向であるということで運用上了承いたしておるのでありますけれども、これがこのまま継続いたしますというと再検討に値する問題であると申さざるを得ないのでございます。それから貸し出しの方は、これは期間一年未満の短期貸出金利につきましては、臨時金利調整法に基づく大蔵大臣告示によりまして最高限度額が定められて、その枠内で各金融機関が貸出金利を決定しておる、それから一年以上の長期の金利につきましてはこれは各金融機関が個々に一定しておって、臨時金利調整法に基づく最高限度の規制というのはございません。
 でございますから、いま問題としてもし今後検討を要するとすれば、預金の金利の決定の問題、これをいまのガイドライン方式ということでよろしいかどうかという問題があろうかと思う次第でございます。
#257
○斎藤栄三郎君 澤田さん、それは検討に値するとおっしゃいましたが、検討しますか、しませんか。
#258
○政府委員(澤田悌君) 金利に対しまする競争原理の適用と申しますか、これはなかなか問題が複雑でございます。先生御承知のとおり、政策に用いられる金利水準というものがございます。それでまた預金者保護というふうな見地もございまして、そういう関連もありますので、一般の商品と同一に論ずることができるかどうか、これはやはり考慮に加えなければならないと存じますので、そういう広い見地から今後検討すべきものではないかと考えておる次第でございます。
#259
○斎藤栄三郎君 大変懇切丁寧なものですが、私、頭が悪いから結論だけを聞きたがる傾向がある。検討に値するとおっしゃったんですが、検討しますか、しませんかと聞いているのです。
#260
○政府委員(澤田悌君) ただいま申しましたような広い条件、広い見地から検討したいと考えております。
#261
○斎藤栄三郎君 ぜひひとつ、検討してくださることを要望いたします。
 どうも独禁法というのは通産省所管のところだけやっていて、大蔵省所管の方はもう避けて通っているような傾向がある。それからもう一つは、民間の方ばかりをやり玉に上げておって、政府の息のかかった、政府が出資しているような企業についてはタッチしないという傾向がある。いまの日航及び全日空の問題についての所見をお伺いしたい。
#262
○政府委員(澤田悌君) まあ航空会社等は公益事業でございますので、御指摘のように適用除外になっております。けれども、特別な保護にも浴しているわけでございますから、先ほど御指摘のような社会常識上問題であるようなことにつきましては、それぞれの主務官庁の監督によって是正さるべきものではないかと考えるわけでございます。
#263
○斎藤栄三郎君 そうすると、これは聞きおく程度であって、それは運輸省がやるべきことであって公取は関知できないと、こういうことですか。
#264
○政府委員(澤田悌君) さように考えます。
#265
○斎藤栄三郎君 そうですね。――私はそこで公取の限界というのはよくわかりました。要するに行政指導もしくは主務官庁のごきげんさえうまくとっておけば何しても勝手だ、そういうコネクションのないところだけがこっぴどくやられる法律だと、こう理解しますが、いかがでしょうか。
#266
○政府委員(澤田悌君) いいえ、そういうことではございませんので、航空会社とかあるいは鉄道事業でありますとか、それぞれの特別法によりまして、それぞれの主務官庁の特別監督を受けておるという意味におきまして申し上げたような次第でございます。
#267
○斎藤栄三郎君 そうすると、残るのは通産省系統だけだと、こういうことですね、はっきり言いますとね、どうですか。だからさっきも言ったように、通産省関係の業種だけがいま取り上げられている、そうなると何も公取をつくらなくたっていいじゃないか、通産大臣に権限を任せればいいじゃないかという議論が生じてくるわけなんです。私は公取無用論じゃありません。私は公取は必要だと思いますけれども、あんまり強い権限を持つことについては非常に疑問を持つという立場で質問している。その強い権限というのは要するに通産省関係にだけ適用されておって、私はいまの飛行機の点数制によって、入社して一年の方にまで六十点の点数を与えるなんていうのは、どう考えたって社会常識上これは過保護ですよ。しかし、それを聞いておいても、ああそんなのがあったのかという程度で、聞きおく程度であって何もできないというんだったら、これは限界というのははっきりわかったということをいま申し上げている。
#268
○政府委員(大橋宗夫君) ただいまの航空事業につきまして、これは会社がその従業員に対してどういう給与を払っているかと、給与との関連でございますので、これは公正取引委員会が対象にいたしますような事業者として対外的な事業にかかわるものではございませんので、これは公正取引委員長の言われることはやむを得ないのではなかろうかというふうに考えます。
#269
○斎藤栄三郎君 いや大橋さんね、それは救いの舟を出さなくたっていいんで、ぼくはそんなことわかっているからね。要するに除外、例外になっているやつを、免除されているやつをもう一回洗い直したらどうかと言ってんですよ。それで目に余るようなものは、もう一回これは各官庁の間で話し合いをしてやらなきゃ社会正義は成り立ちませんよ、それは。
#270
○政府委員(澤田悌君) 独占禁止法の適用除外の法律、それからそれを受けておる事業、これは御指摘のようにたくさんございます。ですから、これを独占禁止法の理念の立場から洗い直す、あるいは各官庁に見直していただくということは私必要であろうかと存じます。と同時に、先ほど通産省所管の事業だけがというような御指摘もございましたが、私はこれは、そういう特殊な公益事業等じゃなくて、通産省の所管の事業というのは栄誉ある自由企業である、むしろ誇るべき自由企業の集団が通産行政のもとにあるというふうに考えるべきではなかろうかと思う次第でございます。
#271
○斎藤栄三郎君 通産大臣もまだお見えになりませんし、時間がだんだん迫ってまいりますから、営業の譲渡で、いままでに質問し残したところをお尋ねして、お教えを得たいと思います。
 公取が弊害もあると認め、スケールの点でも適用されると考える、そこで企業の分割を命じた場合に、だれも譲り受ける人がいなかったらどうでしょうか。そういうことが十分考えられると思うんです。いかかでしょう。
#272
○政府委員(大橋宗夫君) これは既存の事業者に譲り受けをしなければいけないというような審決でありますと、これはもう現におるわけでございますから、そういうこともあり得るかと思います。そういういろいろな、そのときの情勢によりましては、新しい会社を審決を受けます会社につくらせまして、その会社に譲り渡す、そして株式という形に営業を取りかえまして徐々に処分していくというようなことも、事情によりましてはできるわけでございますが、しかし、基本的には譲り受け人がいなければ、その審決が実行できないことがあるということはおっしゃるとおりでございます。
#273
○斎藤栄三郎君 よくわかりました。審決出しても実行できないことがあるんですね。私は、将来分割を命令しても、引受人が出ない場合がかなり出るだろうと思いますよ。非常に利潤率が低いところへ多額の金を投資することはいやだという人も出るでしょうし、なかなかそれはむずかしいだろうと思います。
 それから第二に、分割をして、たとえば株が暴落した、この場合、だれがその損失をかぶるんでしょうか。私の読み違いかどうか存じませんが、衆議院の速記録を拝見すると、分割しても株は下がらないだろうというような答弁があったかと記憶しますが、私は分割すればそれだけで、そのニュースが伝わっただけでその株はかなり下がると思います。そして株主が会社に買い戻してくれ、引き取ってくれとこう言った場合に、引き取らざるを得ないでしょう。だれが一体その損失を負担するのかということです。
#274
○政府委員(大橋宗夫君) これは営業の一部譲渡といいますか、八条の四という規定ができますことによりまして、事業者の営業活動についての一つの制限がつけ加わるということでございますが、これは法律的に申しますと、所有権の内容がこういう形で決められたというようなものではないかと理解しております。したがいまして、その規定の適用というものが正当な適用でございますと、仮にそのことによりまして株価が若干下がるというような事態が起きましても、これはその負担をするのは株主であるというふうに申さざるを得ないかと存じます。
#275
○斎藤栄三郎君 では、大橋さんね、たとえばある会社がいま時価五百円だと、早耳筋がいよいよ分割されそうだということを聞いて、五百円のときに会社に買い戻してくれと、こうやる、会社は五百円で買い戻した。ところが数週間後それが新聞発表になったときにはこれは大暴落しちゃって、二百五十円になっちゃった、会社はそれだけ損失を負担するわけですか。今度はほかの株主に売ろうたって、五百円じゃ売れませんよ、二百五十円にしか売れやしない。その場合どうでしょう。
#276
○政府委員(大橋宗夫君) これは商法の、会社の株主の株式の買い取り請求権の発生いたします時期というものと関連するわけでございますけれども、これは取締役会が一つの譲渡に関する具体案を決定いたしまして、それを株主総会にかけるという場合の問題でございます。そして、まあこれにつきましては商法の専門は法務省でございますが、法務省の方から御説明された方が適切だと存じますけれども、その具体案の内容によって、株価が下がるという場合についてのみその公正な価格というものは適用されるのではないかというふうに考えます。
#277
○斎藤栄三郎君 委員長ね、分割して株が上がるとお考えになりますか、下がると考えますか。企業の分割が決まったときに、上がると思いますか、下がると思いますか。
#278
○政府委員(澤田悌君) これはケースによって何とも言えないわけでございますけれども、分割によってという、その時点の問題か、あるいは、はるか以前に問題が起こるのか、株価などについてですね、その辺もまた非常にむずかしい問題でございまして、しかもその競争回復の手段としては、いわゆる営業譲渡だけではございませんから、いろんな前の検討の段階におきましてどういう影響を受けるかということもありますし、一概に分割によって上がるか下がるかということを、抽象的に申し上げることはなかなかむずかしいと存じます。
#279
○斎藤栄三郎君 まあお立場そうおっしゃるんでしょうが、だれに聞いたって、分割されて株が上がるなんて答える人はいません。それは頭の回転が逆の人だけだと思う。たとえば麒麟麦酒というあの八十三年の歴史があって、そうしてこれが仮に分割されるということになると、その「キリン」というのれんをどっちが持っていくんです。どちらの会社が持っていくかによって、持っていく方はそれは余り打撃受けないでしょうが、「キリン」は上げたから、今度は「鳳凰」だというのか「サル」というのかしりませんけれども、そんな新しい銘柄やったって、これは八十三年の蓄積があるからいま高いんであって、これを分割して株が上がると考える人はない、私は下がると考えるのが常識だと思う。どの程度下がるかは、いまのような不況のときにやれば大暴落するだろうし、好況のときにやればその暴落の程度は低いと、こう考えるべきでしょうが、上がるか下がるかわからぬなんていう回答じゃ私は答えにならないと思いますね、私は下がるという前提でお話をしてるわけだから。その場合に、もちろん分割内容によって違うとおっしゃるけれども、買い取り請求権で買ってもらった、五百円で買ったものが今度は売るとき二百五十円にしか売れなかったとき、だれが責任をとるかということを聞いてるんです。
#280
○政府委員(大橋宗夫君) これは責任をとるといいますか、仮に五百円が公正な価格だということで会社が買い取ったといたしますと、それが後に二百五十円になりましても、この損失を受けるのはだれかということになりますと、それは会社でございます。
#281
○斎藤栄三郎君 会社がそれをしょうわけですね。
#282
○政府委員(大橋宗夫君) これは、もともと公正な価格が五百円だという判断をしたことの結果ということにもなりますけれども、そういうことになります。
#283
○斎藤栄三郎君 その公正なる価格とは、じゃ、だれが決めるんです。やっぱり証券市場における売買価格ですね、過去の一カ月ぐらいの売買価格をもって公正と見るんでしょうが、それを買い取り請求権で買ったと、それで二百五十円の損失を会社は負担したということになる、そこまでまあわかりました。そこで、じゃあそんなものをじゃんじゃん買ってたら会社大変ですよ、これは。分割されるということになったら、会社にどんどん私は買い取り請求権で買い取ってくれって言うだろうと。で、会社は自社株は持てませんからだれかに売らなきゃならないんだが、幸い買ってくれる人が見つかればいいが、買い取りが見つからなかったときどう処置しましょうか。
#284
○政府委員(大橋宗夫君) 買い取り請求権といいますのは、株主総会の特別決議が議決されまして、それに反対の意思を表明した株主でございますから、まあおのずと、もちろん大きな会社でありますから、限界があるといっても巨額の金にはなりますけれども、限界はあるわけでございます。買い取り請求権は、やはり会社としては責任を持って実行しなければならない、こういうことに相なります。
#285
○斎藤栄三郎君 さっきの、のれんの問題はどう評価なさるんでしょう、分割される会社ののれんの評価の問題です。
#286
○政府委員(大橋宗夫君) これは八条の四の第二項に公正取引委員会が配慮しなければいけないという場合に、「事業活動の円滑な遂行」ということに特に関連すると思いますが、その場合の配慮事項の中に「特許権、商標権その他の無体財産権の内容及び技術上の特質」というのがございます。こういうものに基づいて配慮しなければならないわけでございますが、商標権につきましては、まず商標権を――仮に営業の一部を譲渡して新しい会社をつくらせたというようなケースを想定いたしてみますと、商標権をどちらの会社にも使わせないということは、これは商標権の没収というようなことと同じになりますので、できないというふうに理解しております。また、その二つの会社が非常に誤認されるような同じような商標を使うということも、これもできないというふうに理解しておりますので、仮にビール産業というか、もう具体的にそういうような産業を想定いたしまして、商標が非常にウエートの大きい産業について考えますと、これは新しい会社に新しい商標で、しかも小さな事業規模で会社を始めさせるということは、やはりその新しくできる会社にとっての事業活動の円滑な遂行ということは期待できないというふうに考えざるを得ないと存じます。
#287
○斎藤栄三郎君 大橋さんね、そうすると、じゃあキリンビールの場合、いまのあなたのお言葉でよくわかったのは、どちらにも使わせないということはできない。類似のものを使うのもぐあいが悪い。新しい会社ができて、そこまでわかったんだが、その古い会社がキリンという名前を使うんですか、新しい会社が使うんですか。
#288
○政府委員(大橋宗夫君) これはそのときの話の内容によるわけでございましょうけれども、通常は古い会社がもともとの商標を使う、新しい会社は別の商標を使って事業がうまくやっていけるんであれば、そういう措置ができるということでございますが、事業の円滑な遂行がそういう場合に図れるかどうかという点については疑問なしといたしません。
#289
○斎藤栄三郎君 いまのお言葉の中にあったように、疑問なしとせずですから、大いに疑問があるわけですね。そのキリンという商標で皆飲んでいるわけですから、それがもとの会社に残っておって、新しい会社が全く新しい名前でやったんじゃあそれは売れませんよ。その場合に、企業の引き受け手は出てきません。それから、仮に株主を募集したって応募する人はない。そういうことになると最初に言ったように、引き受け手がないから分割はできないと、こういうことになっちゃいます。それでも仕方がないんですね。
#290
○政府委員(大橋宗夫君) 八条の四というのは、営業の一部譲渡のみを措置の対象としているものではございませんけれども、ただいまのような配慮をいたしました結果、事業の円滑な遂行ができないというような理解に達しましたならば、営業の一部譲渡という形での競争回復手段はこの場合に不適当だという判断が行われる、こういうケースも十分に考えられるわけでございまして、その場合にはほかの手段、何らかのその事業分野に即しました競争を回復するためのほかの手段を工夫していかなければならないという場合も十分に考えられるわけでございます。
#291
○斎藤栄三郎君 では、そのほかの手段を教えてください。
#292
○政府委員(大橋宗夫君) これはそれぞれの事業分野についてのことでございますから一概に申せませんが、ただいまの場合でございますと、仮にほかの会社へまず工場を売るというような形、これは営業というよりはむしろ工場だと思いますが、そういう処理によりましてシェアの変更が起こるということはあり得ると思います。また、それは具体的にいま特別の会社が話題になっているので非常に申し上げにくいわけでございますけれども、そういう具体的なケースを離れまして、仮、に一つの産業で、流通機構について特別に閉鎖的な流通機構があるというような場合がございますと、それはその流通機構についての閉鎖的な、あるいは拘束的な条件というものを変えていく、改善していくということも競争回復の有力な手段になる場合もあろうかと存じます。
#293
○政府委員(水口昭君) 公正取引委員会の側からただいまの問題若干申し上げたいと思いますが、先生御指摘のように、この独占的状態に対する措置、これを実際に実行に移すということは非常にむずかしい面が多々あると思います。そこで公正取引委員会といたしましては、もちろんこの措置をとることは、先ほどからたびたび申しておりますとおり最後の最後の手段である、なるべくほかの措置をとる、どうしてもほかの措置をとることができない場合に、最後にこの措置をとることもあり得ると、こういうことでございます。
 それで、そのとる場合には結局審判でもっていろいろ会社側と議論をするわけでございますけれども、公正取引委員会の方から細かいところまで、こうしてああしなさいというふうなことを命令することは適当でなかろう、できれば会社の意見をよく聞いて、同意審決という形で円満な解決をしたい、これが一番よろしいかと思います。場合によってどうしても同意が得られない、正式審決という場合においても、公取が命令するのはごく大まかな大筋であって、具体的な実施計画は会社側から出していただきたい、基本的にはそういうふうな感じを持っております。
#294
○斎藤栄三郎君 よくわかりました。じゃあ、たとえば一つの工場を同業者に売りなさいとか、たとえば麒麟を今度は分割すると仮定してサッポロに売りなさいと。その場合に、働いている従業員諸君は、長いこと敵対関係の意識を持っているわけです。それが公取のお言葉だからといって、喜んで今度向こうへ行って忠勤を励む気持ちになれるだろうか、私は麒麟だから働くのであって、サッポロには行きませんと、こういうことは考えられると思う。その場合に、従業員だって異動命令出せるのですか、おまえ行きたまえ、どうでしょうか。
#295
○政府委員(大橋宗夫君) これは、公正取引委員会が命令をいたしますのは、あくまで事業者に対してでございます。事業者とその従業員との関係につきましては、それぞれの会社の中での労働協約というようなもので関係が決まっているわけでございまして、手続一切はその労働協約でありますとか、労働関係の決まりに基づいて行われるわけでございます。
#296
○斎藤栄三郎君 まあ、いまの労働協約――こんな企業の分割なんていうのは初めて起きた問題ですから、まさか独禁法を適用され、分割された場合にはどうなるかということは労働協約の中に織り込んでないだろうと思うのですよ。さも経営者の責任だと逃げちゃうのはどうもいかにもお役所らしい答弁だと思うので、私はやはりその点はもっと温かみを持って考えてあげなきゃいけないのじゃないか。それは大きな枠で弊害があるから分割するのだよと、あとはおまえたち経営者がやれと、それはお役所としてはそう言うでしょうけれども、労働者の方はおれはいやなんだ、サッポロへ行くのはいやなんだと。サッポロだけじゃありませんよ、ほかの会社の場合でも、いままでライバル関係のところに行って急に忠勤を励めなんて言われたってできやしませんよ。その労務問題をどう考えるかという質問に対しては、明確なる解答は得られなかったと思いますが、これでよろしいですね。
#297
○政府委員(水口昭君) 労働組合の問題につきまして、公正取引委員会の方から若干申し上げさせていただきたいと思いますが、先ほど申し上げたように、独占的状態に対する措置は非常にむずかしい。で、資産ならその資産をだれに譲渡するか、引き受け手があるか、商標権をどうするか、そういったむずかしい問題もございますが、何よりもむずかしいのは、いま先生御指摘の労働組合と申しますか、働く人たちの意向はどうであるかということであろうと思います。
 それで法律的にはただいま総理府からお答え申し上げたとおりだと思います。また現在のこの改正されました独禁法によりましても、法律的にはたとえば公聴会で労働組合の代表が意見を述べるとか、あるいは審判の段階で参考人として意見を述べるとかいろいろございますが、そういう法律を離れても、労働組合にとって非常に重要なことでございますから、公正取引委員会の方にいろいろ意見の具申があろうかと思います。やはり働く人たちの意向を無視して、こういうふうな営業譲渡を実行しようということはとてもできないと思いますので、その辺は十分尊重してまいりたい、こういうふうに考えます。
#298
○斎藤栄三郎君 その配慮するということはちゃんと法文に書いてあるわけですから、お言葉のとおりでしょうと思いますが、具体的に労働組合がいやだと言ったときには、たとえばおれは分割はいやだよと組合が言った場合には分割しませんね。
#299
○政府委員(大橋宗夫君) 言葉は悪うございますが、法律的にはそれは組合が反対しても同意を必要とすると書いてございませんから、分割を命ぜられた会社の取締役はその営業譲渡をするための努力をするという義務を負うわけでございます。しかし実際問題としては、組合が分割反対という場合には、これを押し切って分割するということは非常にむずかしかろうと思いますので、具体的措置を決めます場合にはやはりその辺を十分勘案して、何が一番妥当な措置であるかということを決めることが一番必要ではなかろうかというふうに考えております。
#300
○斎藤栄三郎君 どうでしょうか、従業員と経営者との間は日本の場合は企業内組合で、非常にそういうお家の一大事のときにはよく話し合いをする。したがって、組合が分割に賛成するということはまず私は考えられないだろうと思います。そうするとこれは分割の規定というのは実行できない規定だと私は思います。そう考えて不自然でしょうか。
#301
○政府委員(澤田悌君) どうしても従業員ないし労働組合との話し合いができない、合意ができないということでありまするというと、実際問題としてはおっしゃるとおり実行困難であろうと思います。ちょっとそこで中ぶらりんな形になりかねない。そこで、先ほども審議官からも申しておりますように、またほかの手段がないかということに、会社の経営者、責任者は問題をもう一度戻していろいろ競争回復なり弊害の除去なりについての工夫をする、こういうことになろうかと考えるわけでございます。
#302
○斎藤栄三郎君 そこで幸い労働組合も納得した、分割に納得した、よし協力しましょう、こう言ったとする。それでこれは商法の特別決議に従って、三分の二以上の株主の賛成を必要とする。もしも株主がノーと言った場合には公取のせっかくの御決定だが、これは実行できないと考えてよろしゅうございますね。
#303
○政府委員(大橋宗夫君) 審決を実行いたしますために、営業の重要な一部の譲渡というものが必要であり、取締役がそう判断しまして、株主総会にかけたという場合には、株主総会の決議が得られない場合には、商法上の手続としてその一部譲渡ができないということに相なります。
#304
○斎藤栄三郎君 そこでせっかくこれだけもんで独禁法通したのに、これじゃどうもだめじゃないかということで、商法の改正などということを考えませんか、皆さんは。
#305
○政府委員(大橋宗夫君) これは先生、先ほどからずっと御指摘のように、譲り受け人の問題でございますとか労働組合の問題でありますとか、さらに工場が担保を組成しております場合には、債権者の問題でありますとかいろいろ取締役が営業の一部譲渡ということを実行するためにやらなきゃいけない措置というものはたくさんあるわけでございまして、商法の特別決議の手続だけを免除したからといって、直ちに審決が非常に容易に実行できるようになるとか、国の権力を背景にして実行できるようになるというようなものではございませんので、そういうような点も考えまして商法に特別の規定を設けることは余り適当でない。さらに申しますと、現行法にございます第七条あるいは第十七条の二にございます営業の一部譲渡につきましても、そういうわざわざ商法の特別規定というものは設けておりません。そういうようなことを考え合わせまして、現在のところ商法に特別の規定を設ける必要はないというふうに考えております。
#306
○斎藤栄三郎君 たとえば特別決議で賛成を得られなかった、その場合に公取はもう一回考え直して、内容を少し変えて再度出すということはあり得るでしょうね。
#307
○政府委員(大橋宗夫君) もちろん特別決議を得るための議案というものは、審決を実行するための唯一の方法ではないわけでございますから、まず第一にはやはり取締役対株主総会の関係での交渉といいますか、議案の出し直しというような形のものが研究されるべきものだとは存じます。しかし、どうしても株主総会の手続がとれない、審決についてこういう変更があればとれるというような事情がありますれば、独占禁止法には第六十六条の第二項に審決の変更の手続の規定がございまして、こういうものによりまして公正取引委員会は実現可能な審決に変えていくということも、事情によりましてはそういうことをなさるということになると思います。規定としてはそういうふうになっております。
#308
○斎藤栄三郎君 取締役の責任の限度と申しますか、どこまでやったら取締役は責任でしょうか。公取からはやれとおっしゃる、株主総会ではノーと言われる。じゃあ取締役はどこまでやったらよろしいんでしょうか。
#309
○政府委員(大橋宗夫君) これはどこまでということはなかなかむずかしいんでございますけれども、一般的に非常に誠実な努力をしているという限りにおきまして刑事罰を科せられない、そういう意味の免責を受けることになるわけでございます。
#310
○斎藤栄三郎君 どうも私は頭が悪いせいかよく理解できませんが、ずいぶん努力しているのだけれども、二百四十五条の特別決議の了承得られないのだ、もう私はだめだからといって取締役やめますと、こう言ってやめることはできますか。
#311
○政府委員(大橋宗夫君) それは会社と取締役の関係で、辞任が認められればできると思いますが、しかしやめなきゃいけないようなところまで追い込む、刑事罰の規定で追い込んでいくということはあり得ないんじゃなかろうかと思います。
#312
○斎藤栄三郎君 通産大臣に御臨席いただきましたから、通産大臣にお伺いいたしますが、いかがでしょうか。最初通産省はこの案に反対だということを漏れ承っておりましたが、衆議院を通る段階では非常に緊密なる密月旅行をすると、こう言っておりますが、真意はどの辺におありでしょうか。
#313
○国務大臣(田中龍夫君) 公正取引委員会なるものは政府の機関ではございまするが、内閣とは独立の権限を持っておりますことは御承知のとおりでありまして、同時にまた、経済の政策につきまして重要な見識をお持ちであるわけでありまして、国家の機関であります公正取引委員会も、また政府の通産省におきましても、ともに思いますことは日本経済の躍進であり、国民経済の発展興隆でございます。
 さような意味から申しまして、おまえは性善説か性悪説かと言われれば妙な表現でございまするが、国家のためによかれと思っております公取委員会さんも、通産省も同じ思いでございますので、さような次第で政府が決定をいたしました案件に対しましては、政府部内におきましての主張すべき意見は十分に主張いたしておりまするが、政府決定に対しましては、本件の成立に対しましてともに国家的見地に立って大いに推進に努めておる次第でございます。
#314
○斎藤栄三郎君 大変おみごとな御答弁で真意が把握できませんが、独禁法の改正を心から歓迎しておられるわけですね。
#315
○国務大臣(田中龍夫君) 御案内のとおり、国家経済、国民生活の発展向上、世界経済における日本の重要な使命、これにつきましては申すまでもなく、公取委員会においても十分に御了承の上でのことでありまして、さような点から、国際経済におきまする重要性も、国内経済の産業政策につきましても、われわれと同じ思いであるという信念の上に立って御協力を申し上げております。
#316
○斎藤栄三郎君 大分私の考えていたのとは違うんで、通産省はきっとこれに対しては、かなりもっと批判的な御意見だろうと思ったところが、全面的に一致しているとおっしゃる。それはそれで結構です。それ以上お伺いしてもどうにもなりますまい。
 私は、いま大臣がいらっしゃる前に澤田委員長から懇篤な御回答いただきましたが、いままで得た結論は、いまの九業種は物価引き上げの張本人にはなってない、むしろ、そういう独占・寡占の業種は値段が下がっているんだと。だから物価の面から見て弊害の現象は出てないということを承っておる。そして独占・寡占の企業をいま分割する気持ちは全くないんだと、こう言っている。私は全くないのなら何もこの法律つくる必要はないんじゃないかと言ったところか、いや、将来の長期にわたる展望のもとにビヘービアを、お行儀をよくするためにつくるのだという、まるで修身の教科書みたいな独禁法の改正だという印象を私は持ったんです。大臣はこういう、全く実行しない法律をつくることに貴重な時間をかけて、このお忙しい中を審議に時間をかけていらっしゃるんですが、それで何も疑問に思いませんか、適用しない法律をつくるのに。いざ通っても分割はできないんですよ。労働組合か反対すればできない、株主総会で特別決議が得られなけりゃできない。こういうようなできもしない法律をつくることに貴重な時間かけておりますが、むなしく感じませんか。
#317
○国務大臣(田中龍夫君) 寡占の問題でございまするか、寡占であるから悪いんだ、弊害があるんだということは私はないと存じております。これはわれわれの統計におきましても明確に出ておるところでございます。公取委員会の方でいろいろとお考えになっておりますることは、弊害があるからということでありまして、弊害がなければその必要はないことは当然でございます。さような意味におきまして、大体法制というものは、弊害が出たときにこれが万全の措置をあらかじめ用意しておくというのが大体立法の趣旨でございますので、弊害があった場合に、国家のために権限を御発動になるという規定をお考えになりましても、それは弊害かなければそれでよろしいはずでございますから、私の方といたしましては、それに対しまして同意をいたしております。
#318
○斎藤栄三郎君 通産省がお出しになりましたこの印刷物を拝見いたしますと、これは四月の十二日発行になりました「世界の企業の経営分析」、その中で、日本の企業の自己資本が非常に少ないということを強調しておられます。日本が、これは一九七四年で二一・四%の自己資本、アメリカが五一・三%、カナダが四六・八、イギリスが四五・四。私は今日一番大事なことは、企業の自己資本の蓄積にもっと官民ともに力を注がなけりゃいけないんだと思うんです。企業の分割なんかを論議する前に、どうやったらこの企業の自己資本の蓄積ができるかということを、この会合でわれわれが討論しているぐらいに熱心に討論することじゃないだろうか。それが余り討論の対象にならないで、使いもしない法律のために貴重な時間を使っているのは、何か本末転倒じゃないかというような気がするのであります。使わないことが一番いいのかもわかりません。しかしながら、私はもっと大事なことが今日の通産省所管である。それは自己資本の充実だ、こう考えますが、いかがでしょう。
#319
○国務大臣(田中龍夫君) 御指摘の点は全く同感でございまして、今日八五%以上に借入金があるというような資本構成は、構造的に言いまして非常な欠陥がございます。私も就任前から総理に対しましてもこの問題をたびたび意見具申もいたしております。ことに対外経済協力をやっておりますと、ブラジルその他ヨーロッパ方面では企業健全化法という法律をつくりまして、少なくとも自己資本は六〇%以上でなければいかぬというようなことは、世界の一つの趨勢といいますか、非常に経済資本構造に対しまする大きな問題でございます。この点につきましては、いまの寡占の公取の御意見とは全く別な意味でございまするが、自己資本の増強によりまして、安定した経済構造にしなければならぬということは強く強く主張いたしておる次第でございます。
#320
○斎藤栄三郎君 具体的に何か手を考えておられますか。
#321
○国務大臣(田中龍夫君) 就任いたして後も、その問題につきましては数回総理ともお話を申し上げた機会がございます。しかしながら、なかなか簡単な問題ではございませんので、また通産行政といたしましては、この企業の健全化ということは、企業体質を強靱にし、国際競争力を増すという上から申しましてもぜひ必要であると、かように考え、また部内におきましても作業を命じておるような次第でございます。
#322
○斎藤栄三郎君 その具体的な法というのはお教え願えますか。
#323
○国務大臣(田中龍夫君) まだ、ここで斎藤先生に申し上げるようなところまで行っておりませんけれども、現実の問題といたしましては、余りにも借入金が資本構成の上に多いということが、いかに脆弱な体質であるかということにつきましては痛感いたしておりますので、その点につきましては、今後ともに勉強をいたす所存でございます。
#324
○斎藤栄三郎君 最近各国の独禁法の一つの傾向があると思うのです。西ドイツは政府が価格の介入をいたします。たとえば、電気かみそりのある会社が、八%値上げしたのに対して介入をしております。さらにまた、石油会社がガソリンの引き上げをしたときもそれを介入して撤回さしております。これはドイツは価格介入の方式をとっておる。アメリカの方は市場を競争状態に置くということでやっておるわけで、たとえばIBM、それからAT&T――米国電話電信会社の例に見られるようなものです。この二つのやり方を見ていると非常に対照的なんですが、日本の場合は一体どちらに重点を置かれるか。価格介入はしないのでしょうね。どうですか、この辺、通産大臣。価格介入はしますか、しませんか。
#325
○国務大臣(田中龍夫君) 御案内のとおりに、今日までの通産行政といたしましては、価格に対しまする介入は強く避けてまいっておりますことは御承知のとおりでございます。
#326
○斎藤栄三郎君 結論に入りたいと思いますが、この衆議院の附帯決議がついております。この中でもうすでに実行されたものとしては、この附帯決議の中の五番目に、「ガイドラインを作成し公表」せよということが要求されていますが、これは私はガイドラインは、きのういただきまして拝見いたしました。この中で、課徴金で取った金は消費者にこれを還元するように考えろというようなことが附帯決議の中にあるのでありますが、大変適切な表現だと思いますけれども、具体的にどういうぐあいにこれを実行するだろうかと、そういうことが私のいまお伺いしたいところです。どうぞお願いいたします。
#327
○政府委員(大橋宗夫君) 課徴金を消費者に返すと言いましても、実際にその一つの具体的なカルテルにつきまして、具体的にその物をカルテルの値段で買った消費者というものを探し出して返すというような形になりますと、これは損害賠償請求の問題とも絡みましてなかなかむずかしい問題があろうかと思いますが、そこのそういうような趣旨も含めまして、現在具体的な方法をこれから検討するというようなことでございます。
#328
○斎藤栄三郎君 最後に澤田委員長にお教えいただきたいことがありますが、この独禁法第十九条に基づいて特殊指定をやる。具体的に申しますと、優越的地位の乱用ということで、ピアノの業界などがいま問題があるようですが、この真相といいましょうか、お調べになったことはどういうことですか。
#329
○政府委員(澤田悌君) 担当の方からお答えを申し上げます。
#330
○政府委員(野上正人君) お答えをいたします。
 日本楽器の問題につきましては、昨年以来審査を続けまして、昨年の六月四日に十九条違反、「不公正な取引方法」を用いておるということで勧告をいたしました。これにつきまして日本楽器の方が勧告に応諾しないということで、五十一年の六月三十日に審判開始決定をいたしまして、現在審判で審理しております。
#331
○斎藤栄三郎君 いま、審判中なら、こちらから意見を言うことはやめますけれども、私が言いたいのは、公取がやっぱりもっと国民に愛される役所にならないといけないんじゃないだろうか。もうとにかく公取というと――一番きらいなのが税務署、その次公取、それから警察と、こういう順序です。これじゃいけないんであって、やっぱり皆さん方が一生懸命、心血注いで努力しているにかかわらず、国民の受け取る公取のイメージというものは非常に悪い。どこに一体原因があるかということをいろいろ考えてみると、どうも民間企業から見ると少し実情を知らないんじゃないだろうか。それなのに口を出すから、問題がこんがらがるんだという考え方が多いようです。もちろん私は、賢明なる皆さん方がやっていて、そんな知らないでやっているとは思いませんけれども、もっともっと本当に、公取はお忙しいであろうけれども、経済の実態を勉強なさって、その実態に即したやり方をしないといけないと思う。
 なぜそういうことを申し上げるかというと、私がまだ選挙で出てくる前のことですけれども、再販問題なんかで、業者が幾ら公取に会いにいっても会わない。それで思ったとおりに再販の縮小をやる。私は、よく民間の意見を聞いて、そうして話し合いをして、どうしてもこうせざるを得ないんだということを相手が納得してやるならいいけれども、会いにいっても会わない、これでは公取というものが閉ざされた役所になっちゃうと思うんです。もっと民間の意見を率直に聞いて、もっと謙虚にならなきゃ、私はこういうむずかしい法律の運用はうまくいかないだろうということを懸念いたします。いかがでしょうか。
#332
○政府委員(澤田悌君) 御指摘の点、御注意の点、またおしかりの点、重々反省をいたす次第でございますが、私ども現在おっしゃいましたように、愛される公取と申しますとちょっと何でございますが、私どもが勉強いたすためにも、また独禁法なり独禁政策を国民の皆さんに御理解をいただくためにも、開かれた公正取引委員会として、各方面、各界と積極的に接触をしてまいりたいと存じておるのでございまして、ひとついたずらに恐ろしい役所であるというイメージを払拭していただいて、先ほどもカルテルのところで申しましたが、遠慮なく私どもにおいでいただきたいと考えておりますので、御理解を願いたいと存じます。
 その方向で今後も懸命の努力をしてまいりたいと存じております。
#333
○斎藤栄三郎君 そこでまあ、国民の協力を求めてうまく独禁法の運用をしていただきたいというのが要望で、決して私はあなたを怒るような偉い男じゃありませんから、いまのお言葉の中の、おしかりを受けたとおっしゃったが、それはもう取り消していただきたい。私は、公取が本当に国民の信頼を得て、うまく運用しなければ、画竜点睛を欠くだろうということを懸念するんです。
 公取に対する通報は昭和四十六年には百八十六件、四十七年が三百三十一件、四十八年が九百五十件、四十九年が千百二十七件と、比較的にこの通報件数がふえている。これは大変喜ぶべき傾向だと思いますが、その後の五十年、五十一年、これがどういうぐあいに伸びているかをお知らせいただきたいと思います。
#334
○政府委員(澤田悌君) 御指摘のように、独禁政策の遂行には一般の方々の御協力が欠くことできないのでございまして、一般からの積極的な情報提供を期待しておるのでありますが、お尋ねの報告と申しますか、申告件数は五十年度に九百十八件、五十一年度には千三十七件に増加いたしております。こういう申告によりまして、これで直ちにそれが端緒になるというものではございませんけれども、必要によっては捕捉調査等をいたしまして問題の是正に努めておる次第でございます。
#335
○斎藤栄三郎君 きょうの私の質問に対して、丁重なお答えをいただいたことを感謝いたします。その中で私は、こう理解いたしましたが、間違いないでしょうか。
 この法律が通っても企業の分割はやらないんだ、これが第一。第二は、やろうとしても組合が了解をしなければできないんだ。商法二百四十五条の特別決議が得られなければできないんだ。それから十八条二項というものが、あれば公取にとっては非常に都合がいいが、五十年の五党共同修正案のときに削除されたものだから、今度削除されてもやむを得ないと私は考えますが、いかがでしょうか。
#336
○国務大臣(藤田正明君) この法律が通っても、絶対に企業分割はできないんだということは申し上げておりません。非常に困難な事情が幾多あるということはよくわかります。いまの商法との整合性の問題もございますし、従業員との問題もございますし、いろいろむずかしい問題があるとは思いますが、しかし、分割ができないんだということは申し上げてはおりません。
 それから十八条の二項につきましては、立案者といたしましては必要な事項であると、かように考えております。
#337
○斎藤栄三郎君 大橋審議官のさっきのお言葉では、労働組合の協力が得られない場合、もしくは二百四十五条の特別決議が得られない場合にはできないと、こう言っておられましたが、その点総務長官と意見が違いますか、同じですか。
#338
○国務大臣(藤田正明君) 六十六条の二項によって審決の変更はあり得るということでございます。ですから、できないんだということではないんでありまして、審決の変更はあり得るということを、大橋審議官は答弁をしたものと私は理解いたしております。
#339
○斎藤栄三郎君 法律的にはそうなんだが、しかし労働組合の協力が得られない場合には、もしくは特別決議が得られない場合、審決の内容を変更すると、変更してまた分割するんですか。
#340
○国務大臣(藤田正明君) その辺は具体的な事例によっていろいろケース・バイ・ケースによって変わってくると思います。ただ先生が、この法律が通っても分割はもうないんだと、こう言われますと、それはそうではないということを申し上げる以外にないわけでありまして、そういうケースもあり得るということであります。
#341
○斎藤栄三郎君 だから総務長官、私はあなたがお立ちになる前に、分割もあり得るという前提のもとに話をした。そしたらあなたはそのとき、分割はあり得ないんだと言うて、そんな勝手なことには答えられないとおっしゃった。
#342
○国務大臣(藤田正明君) 分割を前提としたお話は、それは前提としてのお話であるということを申し上げたわけでありまして、分割がないんだということは申し上げておりません。ただ、分割は非常に困難な幾多の事情があるということはもう御承知のとおりでございます。
#343
○斎藤栄三郎君 どうも、言葉のあやで私はよくわかりませんが、先ほどから三時間を通じて論議したことは、前半では分割はあり得ないんだと言っておられて、いまになってみたら、最後になってもう一回念を押してみたら、いや分割はあり得るんだということなんで、私はこの法文全部読んだ印象では、分割するための法律だと思います。ただ余りにも反対が強いしショックが大きいから、一応通すまでは分割しないという前提で話をしている。通し終わったらこれは分割できる法律だと思っております。それは歯どめがしてあるからなかなかそう簡単には実行できないでしょう。だけどもこれは分割できる法律だと私は理解しております。だけど先ほどからの三時間にわたる論議では、しないんだ、しないんだとおっしゃるから、しないんだろうと確かめたら、いやするんだと、こう言うから、どっちが本当かわからないという私はいま気持ちです。
#344
○政府委員(澤田悌君) 法律論は大橋審議官の方にお願いします。
 私が申しましたのは、実際問題といたしましてまず分割されるような例はあるまい。これは、あそこにある条件を当面満たすような企業はないと、そういう意味において、例外規定を含めましてそういう意味において、まずこの法律が通っても分割されるような企業は当分出てこまいと、こういう意味の実際問題を申し上げたのが私の話でございました。
#345
○政府委員(大橋宗夫君) 法律の問題といたしましては、譲り受け人があるかないか、それから労働組合が反対した場合どうなるか、商法の規定による特別決議が得られなかった場合どうなるかという個々の御質問でございましたので、その都度、得られなければ実現しない場合があるということを申し上げてきたわけでございますけれども、制度全体の考え方といたしましては、やはりそういうことの起きないように審判手続の中で、問題点を洗いざらい出してくる、そしてその問題点を、関係者の納得の得られるような形での審決を導き出すという努力を、公正取引委員会もあるいは会社側も知恵を出しまして工夫して解決していくという手続が前段階としてあるわけでございますから、その上での審決については、やはり会社の中心的な存在であります取締役の、誠実な努力によりまして実現していくものだろうということが、通常の場合の前提になっているわけでございます。個々の場合につきましての個別の問題といたしましては、先生御指摘のように実現しない場合もあるということはあるわけでございますけれども、制度全体としては、そういうことのないように運営されていくべきものだというふうに考えてあるわけでございます。
#346
○斎藤栄三郎君 大変いろいろと教えていただきましてありがとうございました。厚くお礼申し上げます。
 最後に、いま総務長官は、十八条の二は立案者としては要るんだと、こういうことです。ところが今度の質疑を通じて、先ほど長官御不在のときに私が質問したところでは、あればいいんだけど、こういう御意見でした。私は、あれば結構なんだというなら、なくたってやっていけると、こう了解した。その根本は、昭和五十年の五党共同修正案のときになくなったもんなんですから。それがどういういきさつか知りませんがいつの間にか入ったんです。私は役所の権限が余り強いということについてはよほど慎重でなければいけないと思うんであって、十八条の二は私は削除するのが適切だと考えます。いま質疑応答を通じて私の得た結論は、十八条の二はカットした方がいいと考えます。
 結論に移ります。どうも大変いろいろと暴言を弄したことを深くおわびをいたします。いろいろとお教えいただきましてありがとうございました。
 ドイツで競争制限防止法という法律を議会に提出いたしましたのが一九五二年、それが通過成立して法律として施行されましたのが一九五七年七月でございますから、ちょうど五年半かかっておるわけです。経済に対する制限を加えるには、そのくらい慎重にやるものです。ところが日本の場合、それは確かに田中内閣、三木内閣、福田内閣と三代にわたっての懸案だったけれども、残念ながらわれわれ自民党の内部にいて見ておりますると、総理大臣の意向一つでどうにでもなる。そうして五年半審議したドイツに比べて、余りにも日本のこの独禁法の審議については駆け足であったと考えます。私たち参議院にいただいてからだって、十分時間があるとは言えないと思うんです。私は非常に不満です。この法律について、こんな短い期間で審議していいんだろうか。私は山中委員会のときにも、参考人を呼ぶべきだ、そうして民間の意見をもっと聞くべきだと言ったけれど一も、それはとうとう実行しなかった。人の意見を全然聞かないでおいて、こういう重要な法案をつくるなんというのは不見識であり、失礼だと思うんです。人の意見を聞いたって自分の意見を変える必要はないんです。やっぱり人の意見は率直に聞いて、そうして立案の参考にするくらいの謙虚さがなければいけないんじゃないんだろうか。そういう意味から見ると、この短い期間の間に参議院でこれをぜひ通さなきゃならぬものか、それとも修正できるものかということについて、いま非常に迷っているわけです。回答は要りません。それがきょうの三時間を通じての私の結論です。
 どうもありがとうございました。
#347
○青木一男君 きょうは総理大臣が御出席ありませんので、法制局長官にお尋ねする事項が多いんでありますが、近いところへおいでいただいて……。それから法律問題でありまして、イエスかノーを伺えばいい問題がありますから、こういう場合はなるべく簡単にお答えいただいて、理由等伺う場合はまた改めてお尋ねしますから。時間の制限がありますのでそのつもりでお答えいただきたいと思います。
 私は、一昨年の通常国会の参議院の予算委員会と本会議で、独占禁止法の規定と運用は憲法に違反するものではないかという点に立脚して質問をしました。今回政府の提案した改正案は当時の案と若干違ってますけれども、私の指摘した憲法違反の点は少しも改まっておりません。私は、立法も行政も憲法に準拠するものでなければならないという見地から、以下、若干政府に質問いたします。
 「行政権は、内閣に属する。」(憲法第六十五条)、「内閣総理大臣は、」「行政各部を指揮監督する。」(第七十二条)、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」(第六十六条) 、という憲法の規定は国家統治上の行政についての根本原則を定めた規定であり、法律をもってこの原則を変更することは許されないものと考えるが、政府の見解を伺います。
#348
○政府委員(真田秀夫君) ただいま先生が御指摘になりました憲法の各規定、これはいまの憲法がよって立つ民主的政治のあり方の基本でございまして、軽々にその特例を設けることは許されないものだと存じますが、絶対にその例外といいますか、特例を設けることが許されないというものでもないというふうに考える次第でございます。
#349
○青木一男君 例外的でも憲法の原則を、憲法の統治の基本原則を、法律で変えていいというお考えですか。改めてもう一度伺います。
#350
○政府委員(真田秀夫君) たとえば冒頭に御引用になりました第六十五条、「行政権は、内閣に属する。」と書いてございまして、この点につきまして、従来から政府といたしましては、憲法の六十五条及び先ほどの指揮監督権、つまり七十二条の規定の趣旨から見て、内閣から完全に独立した行政機関は、憲法自身が認めるものは別として、違憲の疑いか存するところであるというふうには申しております。そういう趣旨のお答えは何回かやっておりますが、私、その後いろいろつぶさに検討いたしました結果を申し上げますと、いわゆる行政権といわれる範疇に属するものであっても、内閣に属してないというものも現に現行法で散見されるわけでございまして、たとえば、弁護士会が弁護士の登録を受けます。この弁護士の登録をしなければ、弁護士という職業につくことができない。まあ、いわば医師の免許を厚生大臣が行っているのと大体性格は同じようなものだろうと思うんですが、これは明らかに行政権なんです。行政権であればこそ弁護士登録の拒否に対しましては、行政不服審査法なりあるいは行政事件訴訟法が適用されて、裁判所の救済を受けるということにはなりますが、しかし、もとの処分である行政権と思われる弁護士の資格の登録、これは内閣には属しておらないんです。これはやはり一つの例外だろうと思うんです。この例外は、しかし軽々につくったものではなくて、やはり弁護士さんという職業の職責が、行政府といいますか、官庁の指揮監督のもとに入るということと相入れないという面が強いというような、いわば合理的な理由があって、そういう例外をつくったものだろうと存じます。
#351
○青木一男君 いまの点はまた後ほど触れてお尋ねします。
 私は一昨年の予算委員会で、憲法に国の統治機関として規定しているのは天皇、国会、内閣、裁判所、会計検査院、地方公共団体である。そうしてその中核をなすものは国会、内閣、裁判所であり、三権分立の方式が採用されておる、そこで、これらの憲法に規定した機関のほかに、統治権を最高権威として行使する機関は存在するはずがないと思うがどうかと質問した。これに対して当時の法制局長官は、政府としては憲法では第六十五条、第七十二条の規定の趣旨にかんがみ、会計検査院等憲法上明文の根拠のあるものは別として、それ以外に内閣から完全に独立した行政機関を設けることは、憲法違反の疑いがあると考えると答弁された。現内閣のこの点の見解を伺いたい。
 すなわち憲法に規定されたもののほかに、内閣から完全に独立した行政機関を設けることは、憲法で許されるかどうかについての見解を伺います。
#352
○政府委員(真田秀夫君) その点がまさしく先ほど私がお答えした事項でございまして、従来、政府の見解といたしましては、ただいまお読みになったとおり、つまり先ほど私が申し上げたとおりのことを言っておったわけでございますが、ございますが、その後つぶさに私が検討いたしましたところ、いまの弁護士会の登録などというのは一体憲法上どう思ったらいいのかなという疑問を抱き始めまして、やはりそれはつらつら考えてみれば、やはり合理的な理由があれば、若干の例外をつくるということは憲法の許すところであろうと。先ほどは弁護士会の例を申しましたけれども、そのほかにもたとえば商法五十八条によって、裁判所が会社の解散を命ずる、これは行政権なんです。あるいは民法の財団法人なり、社団法人いわゆる公益法人の清算事務を監督するという事務、これも行政権なんですが、これも裁判所がやっております。
 これなども六十五条等に照らし合わせてみまして、一体どう理解したらいいのかなということで、私いろいろ考えまして、やはり合理的な理由があれば、あるいはまあ沿革上の理由ということもあるかもしれません。しかし、とにかくごくまれにはこの憲法の例外を法律でつくっている、それは憲法が認めているんであるというふうに、どうも言わざるを得ないんだろうという結論に達しているわけでございます。
#353
○青木一男君 公正取引委員会の担当しておる独禁法の施行運用は、憲法上の行政権に属するものと思うが、政府の見解を伺いたい。
#354
○政府委員(真田秀夫君) 独禁法によって公正取引委員会が執行していらっしゃる事務は、これはまさしく行政権の作用でございます。
#355
○青木一男君 憲法第七十二条に規定する内閣の指揮監督権の意義について政府の見解を伺いたい。
 学者の説によっても、私の役人時代の体験から考えても、憲法に規定する内閣の指揮監督というのは、下級行政機関の職務上の行為についての観念であると思う。前内閣の法制局長官も、憲法第七十二条の内閣総理大臣の指揮監督というのは、上級の行政機関が下級の行政機関に対して一定の行政上の行為をなし、またはなさざるべきことを命ずるものであると答弁されました。現内閣は、この私や吉國長官の見解をお認めになるかどうか、伺いたい。
#356
○政府委員(真田秀夫君) 私も同意見でございます。
#357
○青木一男君 公正取引委員会の澤田委員長にお尋ねいたします。
 公正取引委員会は、職権の行使について内閣の指揮監督を受けておられるかどうか、その根拠とともに伺いたい。
#358
○政府委員(澤田悌君) 公正取引委員会は、内閣総理大臣の所轄に属しているもので、これは独占禁止法二十七条の規定にあります。そして委員長、委員の任命や予算等につきましては、内閣総理大臣のコントロールを受けるのでありますが、その職権の行使につきましては、独占禁止法二十八条の規定で明らかなように、内閣の指揮監督を受けないということになっておるわけでございます。
#359
○青木一男君 政府は、ただいまの公正取引委員会の委員長の答弁を是認されますかどうか、伺います。
#360
○政府委員(真田秀夫君) 澤田委員長がお答えになりましたのは、法律的に全く正しいお答えでございまして、人事あるいは予算面については内閣の所轄のもとにございますが、独禁法に基づく個々具体的な職務行為については、内閣総理大臣あるいは内閣の指揮監督権は及びません。
#361
○青木一男君 憲法上の指揮監督というのは、行政庁の職務上の行為についての観念であることは、政府も先ほどお認めになりました。また公正取引委員会は、職権の行使について内閣の指揮監督を受けてない。その根拠は、独禁法第二十八条になるという公取委員長の答弁を政府もお認めになった。それならば、内閣の公正取引委員会に対する指揮監督権は皆無――ゼロということになると思うが、政府の見解を伺いたい。公正取引委員会の職権の行使について、内閣の指揮監督がないとすると、行政権は内閣に属する、内閣総理大臣は行政各部を指揮監督するという憲法の規定と真正面に抵触すると思うがどうか、また独禁法第二十八条という法律をもって憲法の規定を実質的に変更したことになると思うが、政府の見解を伺いたい。
#362
○政府委員(真田秀夫君) 憲法七十二条に定めております指揮監督権というものは、これはやはり内閣が行政府を全部統括して、そして国会に対して責任を負うという、そういう民主的な政治機構の基本をなす原則でございます。したがいまして、原則としては、内閣に属するすべての行政権の行使について内閣総理大臣は指揮監督権を持っておる、これは原則でございますが、しかしこれに対しましても、またいろいろ問題がございまして、一口に行政権の行使と申しましてもその態様は千差万別、非常に複雑でございまして、物によっては、つまり事柄の性質上、指揮監督権が及ばないというものもあるわけなんですね。たとえば人の資格を試験をするとか、あるいは物の検定をする、検査をするというような行政事務、これは幾ら、いかに内閣総理大臣が上級官庁であって、憲法七十二条があるからといって、試験担当官に対してこれは合格にしろとか、不合格にしろというような、そういう内容の指揮監督ができるわけはない。そういう事柄の性質上、指揮監督の及ばないという分野の行政事務があることは確かなんです。それから、そのほかにまた、事柄の、事務の性質自体というんじゃなくて別の理由、言うなれば、たとえば政治的な中立性が非常に強く要求される、非常に――もちろん行政事務はすべて公正に行われなければならないわけですけれども、特に政治的な中立性が強く要請される分野につきましては、内閣総理大臣の指揮監督権を薄めるということも、事柄の性質によっては合理性を認められるものがある。つまり、指揮監督と一口に言いましても、濃淡はあってもいいんだというふうに考えるわけでございます。
#363
○青木一男君 内閣の公正取引委員会に対する指揮監督権がゼロであるとすると、公正取引委員会は完全に独立の行政機関となると思う。指揮監督権がゼロであるということが完全に独立の行政機関ということになるわけなんです。先ほど政府は、会計検査院等憲法上明文の根拠がある場合は別として、それ以外に内閣から完全に独立した行政機関を設けることは、憲法違反の疑いがあるという吉國前長官の説を是認された。それならば政府は、公正取引委員会は違憲であるということを認めたことになると思うがどうですか、伺います。
#364
○政府委員(真田秀夫君) 内閣から完全に独立した行政機関は、会計検査院など憲法自身が認めるものは別として、違憲の疑いが存するところであるという前法制局長官の答弁があったことは私是認いたしました。その点についても、先ほど私が申しましたように、例外はあるということを御説明しましたわけですが、それはそれといたしまして、公正取引委員会について申し上げますと、これは内閣から完全に独立した行政機関とは思っていないんです、われわれは。それは予算面を通じ、人事面を通じて統制を、コントロールをしておるという面がございますので、先ほど来おっしゃっておりましたような、完全に独立した行政機関を、法律が憲法を侵して設けているではないかという御意見には、直ちに賛同するわけにはまいらない。
#365
○青木一男君 それは、指揮監督権があるという御意見ですが、どういう指揮監督権だか、お伺いします。
#366
○政府委員(真田秀夫君) それは予算の統制、あるいは人事権、罷免権などをもってであります。
#367
○青木一男君 それは学者も指摘のとおり、もし予算の編成権とか人事権について発言権があることが指揮監督権であるならば、最高裁判所長官以下全部の裁判官はやはり内閣の指揮監督下の機関ということになるわけです。それでよろしいんですか。
#368
○政府委員(真田秀夫君) 裁判所を引き合いにお出しになっての御質問でございますけれども、まず予算について申しますと、なるほど裁判所の予算も内閣が編成いたしまして国会に提出するという点では同じでございますけれども、しかし、公正取引委員会の場合は、もう完全に内閣がその公正取引委員会の経費を計上いたしまして予算を組む。ところが裁判所の場合には、これは例の二重予算という制度もございますし、あるいはまた裁判所予備金という制度もございますので、かなり趣が違っております。
 それから任命権の方につきましても、裁判所を引き合いに出しての御質問がございましたが、裁判官の場合には、なるほどそれは内閣が任命はいたします。任命はいたしますが、最高裁判所の裁判官を除けばあとは、つまり下級裁判所の裁判官は、最高裁判所が示した名簿に従って任命するという制約がございます。また、この罷免の方につきましても、裁判官と公正取引委員会の委員長及び委員とはわけが違うんでございまして、裁判官の場合には、行政機関が裁判官の罷免を行うことはこれは絶対できない、しかし公正取引委員会の委員長及び委員の場合には、これは任命権者である内閣総理大臣に罷免権があるという違いはございますので、直ちに、公正取引委員会が内閣の所轄に属すると言えるんならば、最高裁判所以下裁判所も行政機関の内閣の所轄に属することになるんではないかという御議論は、そのままいただくわけにはまいらない。
#369
○青木一男君 私は、任命権や予算編成権の手続の違いなんてことはもう枝葉末節な問題である、それはね。それよりも、先ほどあなたは、憲法上の指揮監督権というのは下級行政機関の職務上の行為についての観念であるという、学者や私や吉國長官の説を是認したじゃありませんか。私はこれは常識だと思う。指揮監督っていやあ、下級行政機関の職務上の行為についての観念であるということは、これはもう常識だ。それを先ほど是認されたでしょう。それなら、その下級行政機関の職務上の行為について指揮監督権がなければ、監督権はゼロということに私はなると思うんだが、もう一遍その点をお答えいただきたい。
#370
○政府委員(真田秀夫君) それは指揮監督権という言葉の一般的な意味内容として私受け取ってお答えしたわけでございまして、公正取引委員会とか国家公安委員会とか、そういったいわゆる行政委員会に対する内閣のやり方といいますか、関与の仕方、それの内容については濃淡があってもしかるべきものであるという意味で申し上げたわけでございます。
#371
○青木一男君 どうも長官の言うことは、前と後で違って、私も理解できない。まあしかし時間がないから、前に進みます。
 憲法第六十六条は、内閣は、行政権の行使について、国会に対し責任を負うことを規定している。独禁法の施行は行政権であるから、憲法上内閣が責任を負わなければならない。政府は公正取引委員会の職権の行使について国会に対し責任を負うかどうかを伺います。
#372
○政府委員(真田秀夫君) ただいまの御質問の点は非常に微妙な問題でございまして、過去の答弁を調べてみましても、やや浮動している点がございますけれども、私は、権限がないところには責任はない、法律上の責任は。政治的な責任は別でございますが、法律上の責任は、権限のないところに責任だけが伴っていくというようなことはあり得ないというふうに考えます。
#373
○青木一男君 内閣が、行政権の行使について国会に対し責任を負うという規定は、内閣は行政各部を指揮監督するという規定と表裏をなす関係でありますから、ただいま長官の答えられたように、内閣の指揮監督権の及ばない公正取引委員会の行政権の行使については、国会に対し責任を負わないという答弁は理解できます。この点は、前内閣はとうとう答弁をなさらなかった点であります。しかし、そうなると、内閣は、行政権の行使について国会に対し責任を負うという憲法の第六十六条の規定は例外を認めておりません。それで、やっぱり公取委員会の職権行使の範囲においては、憲法第六十六条に抵触するものと思うが、その点はいかがですか。
#374
○委員長(加藤武徳君) ちょっと速記をとめてください。
  〔速記中止〕
#375
○委員長(加藤武徳君) 速記を起こしてください。
#376
○政府委員(真田秀夫君) 六十六条三項「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」、この条文は、ただいま青木先生御自身がおっしゃいましたように、七十二条の指揮監督権とうらはらをなすというものであるというわけでございますので、七十二条の方の指揮監督権それ自身について、合理的な理由があれば濃淡があってしかるべしだということが言える以上、その濃淡の淡の部分については、それに見合った程度の責任しか負えないし、それから、公正取引委員会の職務のごとく、独立して行うということが合理性があって認められるということであれば、それに見合う責任は国会に対しては負えない、こういう結果になるわけでございますので、決して六十六条三項違反とは考えておらないわけでございます。
#377
○青木一男君 いまの御説明は、憲法にはよらずして例外を勝手につくっていいという前提ですから、これは後からまたお尋ねします。
 憲法がすべての行政権を内閣に独占させ、その行政権の行使について内閣が国会に対して責任を負うと規定しているのは、立法、司法以外のすべての国政を、国民を代表する国会のコントロールのもとに置くという民主主義の根幹をなす国家統治の原則を定めた規定であるから、国会のコントロールから逸脱した行政部門の存在が許されるはずはないと思うが、憲法の精神についてお尋ねします。
#378
○政府委員(真田秀夫君) 憲法六十五条で「行政権は、内閣に属する。」とありますのは、これは冒頭に申し上げましたように、日本国憲法、つまり民主的日本国憲法の民主的な政治機構のあり方の基本を決めたものでございまして、もう少し具体的に申しますと、これは憲法の前文で、およそ国政は国民の厳粛な信託によるものである、そして国民の代表である国会議員をもって組織する国会が政府をコントロールする、その政府をコントロールする仕方としまして、衆議院の信任とか議院内閣制とか、いろいろむずかしくございますけれども、ここの六十六条三項の内閣が国会に対して責任を負うというのは、まさしくそのことのあらわれでございますので、いまおっしゃいましたような原則が、憲法の定めている民主的な政治機構の大もとである、大綱である、これは間違いないことでございます。
#379
○青木一男君 公正取引委員会の権限は、広範にしてきわめて強大である。今回の改正によって、公正取引委員会は寡占状態にある企業に対し営業の一部譲渡その他の措置を命ずることができることとなり、その権限はますます強大となる。公正取引委員会の委員も神様ではない。委員会が内外情勢の判断を誤まり、独禁法上の処分が行き過ぎて、著しく国益を害するような事件を起こした場合、その責任追及の道があるのかどうか。委員会が国会に対し責任を負うという規定は憲法にも法律にもない。行政権の行使については、内閣が一括して責任を負う憲法上のたてまえであるから、そういう規定がないのは当然である。しかし、これについては内閣も責任を負わないのであります。要するに、公正取引委員会の独禁法運用上の失政については、国会のコントロールが及ばず、責任追及の道がないのであるが、憲法のたてまえ上かような事態の許されるはずがない。かような結果を招く独禁法第二十八条は違憲の法律と考えるが、政府の見解を伺いたい。
 要するに、権限のみ強大であって、何人の指揮監督をも受けず、何人に対しても責任を負わない切り捨て御免式の行政機関の存在を憲法が認めるはずがない。公正取引委員会の職務上の失政のあった場合の責任について、政府の見解を伺いたい。
#380
○政府委員(真田秀夫君) それは結局、先ほど申しましたつまり事務の性質上、非常に政治的な中立性が強く要求されるという仕事に該当するかどうかという判断のいかんに帰する事柄だろうと思うわけなんです。たとえば国家公安委員会、これはやはり職権は独立して行っているわけなんで、国家公安委員会の所掌事務につきましては内閣は指揮監督ができない。したがって、また先ほどの六十六条三項に戻りますが、国会に対して責任を負うわけにもいかない。つまり、それと大体同じような論理構成になるわけでございまして、公正取引委員会が独禁法の運用をなさるという仕事、その仕事の性質上、非常にやはり政治的な配慮が入っては困るという要請を、非常に重く見るか軽く見るかということだろうと思うんですが、政府は従来からそれは大変重く見ておる、したがって中立性を重く見ることの結果、職権を独立して行って、内閣の個別的な指揮監督権を、特に法律で排除をしている、断ち切っている、しかし、これは憲法の許容するところであろうというふうに解釈している次第でございます。
#381
○青木一男君 いまの御説明は、二つの点で非常な問題を間違えておる。先ほど御説明の公取委員会の独立性の根拠について、政治上の公正、中立ということを言われたが、私は枝葉末節のことだから触れておりませんが、公正の行政を要するのは、独禁法の施行だけじゃありません。税法その他すべての行政について公正でなくてはなりません。また、政府の手では中立公正の行政ができないなんという理論をやったら内閣は成立しません、それでは。それは立憲内閣制度の本質に反する説明だ。しかし、そんなことは枝葉末節だから私は持ち上げなかったのだが、それよりも、そういう中立公正の行政は独立でいいということは法律で決めたのでしょう、法律で。それじゃ法律で憲法を改定ということじゃありませんか。この点についてもう一度御説明をいただきたい。
#382
○政府委員(真田秀夫君) およそ行政は、公正中立に行わなければならないということは、これはもうほんとに申し上げるまでもないことでありますし、憲法で見れば憲法十五条あたりにそのことがうかがわれるわけでございますけれども、しかし、一口に行政と申しましても非常に幅が広いし、複雑であり、千差万別であって、特に公正中立であることが強く要請される部分というものはあるわけなんでございまして、国家公安委員会、警察、――警察行政などはその典型だろうと思うわけであります。そこで、いまの独禁行政が政治性の影響を排除する必要が、特に強く望まれるという評価をわれわれはしているわけなんでございまして、そういう評価をしたからといって、じゃ憲法違反ができるのかというふうな御議論でございますけれども、私たちはそうじゃなくて、そういう政治性を強く排除しなければならない行政分野については、憲法自身が、七十二条なり六十六条三項の例外をみずから許しておる。法律が憲法を犯したのじゃなくて、憲法自身がそのことを許容していると、こういうふうに御理解願いたいと思うわけであります。
#383
○青木一男君 憲法七十二条に例外を認めたというのは、その根拠を伺いたい。
#384
○政府委員(真田秀夫君) その根拠とおっしゃいますけれども、その例外があるという解釈をすることが妥当であるかどうか、つまり七十二条あるいは六十六条三項の文言をよく読むと、そうすると先ほど来るる申し上げておりますような、合理的な理由がある場合には、それは七十二条なり六十六条三項に、まあ表現はよくありませんが、穴があいているといいますか、例外が書いてあるというふうにこの条文の真意を読み取ると、そういう解釈をするという意味でございまして、それがいわゆるおっしゃいました根拠といえばそれが根拠に当たるわけでございます。
#385
○青木一男君 それでは、理由があれば法律で憲法を変えてもいいということになりますね、理由があれば。そういうことをお認めですか。
#386
○政府委員(真田秀夫君) そうじゃございませんで、理由があれば法律が憲法を変えてもいいというのじゃなくて、憲法自身が、理由があれば法律に例外規定を書いてもよろしいということを許容しておるというふうに御理解願いたい。
#387
○青木一男君 それはあなたの想像であって、憲法にそういうことは書いてないじゃありませんか。まあそれは余りお話すると問題が長くなりますし、時間がたつから進みます。
 先ほど公正取引委員会の違憲を弁護する材料として、弁護士登録の話をお用いになった。これは大分話が違った話なんですけれども、それからまた国家公安委員会の話も持ち出した。前の吉國長官も同じような議論をされておりました。しかしいまの議論は、学校の試験のときに学生Aがカンニングを見つけられて先生からしかられたとき、Bもやっていますと抗弁したような論法にすぎません。Bもやっているということによって、Aの行為が正当化されるものではないのであります。公正取引委員会の独立性の憲法違反でないということは、他の例などに関係なく、独禁法それ自体で説明をすることが必要であると思うが、政府の見解を伺いたい。
#388
○政府委員(真田秀夫君) Aが、試験の際にカンニングが見つかったときに、Bもやっているんではないかという論法とは少し違うわけなんです。A自身がカンニングをやっているというんじゃなくて、AもBもカンニングじゃないというわけなんです。(笑声)
#389
○青木一男君 私の例はAが本当にカンニングをやったときの例を私は使っている。私の例を否定したら問題にならない。この問題はまた後で触れます。
 すべての法律制度は憲法に合致するように解釈運用すべきであり、もしそれができない場合は、憲法が優位に立つからその法律制度を改めるべきものと思うが、政府の見解を伺いたい。
#390
○政府委員(真田秀夫君) その点に関する限りは私も全く同じでございます。法律は憲法に適合して制定され、解釈され、運用されなければなりません。問題は、その憲法の解釈の問題でございますので、その点だけ留保しておきます。
#391
○青木一男君 いま私が述べたように、理論的には公正取引委員会の合憲か違憲かを論ずるに当たっては、他の行政機関に触れる必要はないのでありますが、参考のため他の行政機関の性格を分析し、憲法との関係で公正取引委員会と同一視することのできない点を明らかにしようと思います。そのため質問いたします。
 つまり、Aは、Bもカンニングをしていると抗弁したけれども、Bはカンニングをしていなかった、こういう点を明らかにしたいと思います。法律の規定に基づき、または行政の運用上独立して職権を行っている機関は、たとえば公害等調整委員会のような準司法機関にせよ、司法試験管理委員会のような国家試験実施機関にせよ、航空事故調査委員会のような専門技術の調査機関にせよ、これらの機関の関与する行政全体について所管大臣が決定しており、当該大臣の所管事務の成績を最も有効に発揮するため、所管事務の一部について独立機関を設けているのである。これに反し、独禁法の施行については所管大臣が存在せず、広範にして強力な独禁法の施行運用については、公正取引委員会が唯一最高の行政機関である、この両者の差異は重大であるが、この差異をお認めになるかどうかを伺います。
#392
○政府委員(真田秀夫君) 公正取引委員会とほかの類似の独立委員会とはそれぞれ所掌事務が違いますので、全くその独立性を与える理由が同じであるというわけではないという点では、おっしゃるとおりでございますが、結局はいろいろ独立性を与える理由といたしまして、公害等調整委員会なりあるいは航空機事故調査委員会なりまあいろいろあると思いますが、その独立性を与える理由として、公正取引委員会の場合には政治的な影響を極力排除する、そういう必要が非常に強いんだという理由で独立性を与えておる。だからほかの委員会、AだBだとおっしゃいましたけれども、全部が同じ理由ではない、公正取引委員会の場合には、繰り返しになりますが、まさしく政治的な影響を強く排除する、その点では国家公安委員会あたりにやや近い性格のものだろうと思います。
#393
○青木一男君 その問題の行政について所管大臣があるかどうか、所管大臣のないという一体行政が、これは憲法上問題なんだ、その点が、ほかの委員会等は全部所管大臣が決まって、この大臣の行政の一部を合理的に行うために、ごく一部について独立権を与えておる、これは性質が違うのでなく、本質的に所管大臣があるかないかということは大変な違いと思うが、その点を改めて、その違いについてお伺いします。
#394
○政府委員(真田秀夫君) またA、Bの話になって恐縮なんですけれども、国家公安委員会、これはやはり職権は独立して行っているものだと、これも通説なんですが、国家公安委員会は公正取引委員会と同じように内閣総理大臣の所轄のもとに置かれております。ただ補足して申しますと、国家公安委員会の場合には委員長に国務大臣が入っているという違いはございます。その違いはございますが、国家公安委員会の場合でも、国家公安委員会の長である国務大臣は実は表決権がない、可否同数のときの採決権しか持っていらっしゃいませんので、国家公安委員会の委員長に国務大臣がお入りになっているということは、その先ほど来おっしゃっている所管大臣の有無という点ではそれほど問題にならないというわけでございます。
#395
○青木一男君 国家公安委員会の例をお引きになりますが、それはやや類似点があるが、それは国家公安委員会以外に改正を要する問題がもう一つあるかどうかという問題にすぎない、国家公安委員会があるから、もう公取委員会も大きな顔をしておっていいという理由にならない、国家公安委員会のほかにもう一つ直す機関があるかどうかという問題にすぎない、国家公安委員会は、国務大臣の委員長によって行政との連絡はとっておりますよ。また非常事態の場合は、警察権は内閣総理大臣に帰するんです。これは全く同じに考えるのは大間違い、同じとしても、憲法上もう一つ直す機関があるかどうかという理由にすぎない。先ほど言ったとおり、ほかにあるからということでもって正当性を主張されるのは、これは非常などうも法律専門家の議論じゃないと私は思います。
 もう一つの違いについてお尋ねします。公害等調査委員会以下の独立性を認められた各機関は、個々の案件処理については独立であるけれども、内閣の一般的指揮監督権には服するのである。たとえば国税不服審判所も国税庁官の基本通達に従うという一般的指揮を受けております。また所管大臣は、独立性を認められた各機関が、誤りなく所期の任務を果たすことを監視する権限と責任を有するのであって、各機関の義務違反等のあった場合には、法律の範囲内において人事権を発動して監督権を行使し、またこれによって国会に対する内閣の責任を果たすことかできるのである。これに反し公正取引委員会については、その職権の行使について内閣の指揮監督も受けず、所管大臣も存在しないのであるから、一般的指揮権を発動する余地がない。また公正取引委員会の職権の行使上失政があった場合にも、独禁法第三十一条によって身分を保障されており、人事権の発動による監督も行うことができず、それによって国会に対する責任も果たすことができない。かように公害等調整委員会以下の独立機関の独立性は、憲法との調和のもとに運用されておる、しかるに現行独禁法下の公正取引委員会の独立性は、憲法第六十五条、第六十六条、第七十二条と調和を図ることは不可能である。
 政府はこの両者の差異を認めるかどうか、もし憲法と法律とが両立しないならば、法律の方を改めるべきだと思うが、この点について改めて政府の見解を伺いたい。
#396
○政府委員(真田秀夫君) ただいま青木先生公害等調整委員会のことを御引用になりまして、何か上級機関の一般的訓令に服するというようにおっしゃいましたかのごとくに受け取りましたけれども、そういうことは法律上はあり得ないはずだと思いますが、いかがなものでございましょうか、私の方から聞くのも変な話なんですが。これはやはり職権は独立して行うという規定が法律に書いてございまして、したがいまして一般的通達に拘束されるということはないんだろうと思います。ただ国税不服審判所のことも御引用になりましたが、これは独立の外局、委員会ではございませんで、これは付属機関でございますのでわけが違う。
 それから最後に、法律をもって憲法を変更してよろしいかということをおっしゃいましたが、これはもう先ほど来申しますように、憲法自身の方が、憲法がみずからそういう例外を認めているのだという憲法上の解釈をもとにしてわれわれは解釈して、そういう解釈のもとに御説明を申し上げておるのでありまして、決して法律が憲法を変更するというような大それたことをしているというつもりは毛頭ございません。
#397
○青木一男君 準司法機関には、法律によって独立性を認めたものと法律によらざるものの二通りあります。国税不服審判所は法律によらざる独立機関であります、それは裁判を行っているから。しかし国税不服審判所が国税庁長官の通達に反した決定をしようと思う場合は、こういうことをしなくちゃいかぬという規定があります。これはすなわち一般的指揮権に服する証拠であります。私が申し上げたのはそういう意味であります。
 法制局長官に対する質問は一応これで終わり、また後から出てきますから。あとは内閣から御答弁をいただきたいと思います。
#398
○委員長(加藤武徳君) ちょっと速記をとめてください。
  〔速記中止〕
#399
○委員長(加藤武徳君) 速記を起こしてください。
#400
○青木一男君 現行独禁法は行為規制を原則としておる。たとえば企業が競争を制限することになるような合併や株式の取得を規制しておる。今回の改正案によると、企業の市場占拠率が一定の程度に高くなると、営業の一部譲渡を命ずるというような状態規制または構造規制に進んでいる。外国の独禁法で、かような状態規制または構造規制を行っている例があるかどうか。あるならば、例を示していただきたい。
#401
○政府委員(水口昭君) お答え申し上げます。
 外国の事例といたしましては、イギリスの法律にいわゆる企業分割、これに類した規定がございます。ただ、イギリスの法律の場合には議会の同意を必要とする、かような規定になっておるようでございます。それからアメリカの場合は、御承知のようにシャーマン法で、非常に簡単な規定でございますが、実際の運用といたしましては、裁判所の判決その他で実際にいわゆる企業分割を命じたような事例も若干あるようでございます。
#402
○青木一男君 通産大臣に対する質問はおいでのときに延ばしますので、産業政策局長にお尋ねします。
 先ごろ通産省は、日銀の卸売物価指数に採用されておる二百六十品目を対象として、寡占の進行と物価との関係で調査されたようである。それによると、昭和四十五年の物価を一〇〇とした五十一年末の値上がり程度は、上位三社のシェア二〇%ないし三〇%の品目の値上がりは九二・四%と最も高いのに、シェア八〇%ないし九〇%の品目の値上がりは三八・一%と著しく低いことが明らかになっておる。かような寡占の程度の低い品目が値上がりが高いのに、寡占の程度の高いものは値上がりが低いというのはどういう理由か、御説明をいただきたい。
#403
○政府委員(濃野滋君) お答え申し上げます。
 ただいま先生の御指摘の日銀の卸売物価、これを集中度によりまして八段階、八つのグループに分けまして、昭和四十五年を一〇〇といたしました数字を、私ども内部資料としてつくりました。対象品目は二百六十三品目でございます。この動きを見てみますと、総体的に見まして、いわば集中度の高い品目の動きが価格の上昇が低いと、ただいま御指摘のような数字が出ております。これは一体何であろうかということでございますが、私ども非常に詳細な分折はやっておりませんが、この期間、四十五年から一九七六年でございますから、五十一年までのこの動きを見てみますと、この間には石油ショックという非常に大きな経済変動を与える条件がございましたが、寡占度の高い品目が総じて低いということは、一つは石油ショックの前の好況期、それから石油ショックの間のいわば狂乱物価と言われました時期に、寡占度の低い競争品目、これの上昇が非常に高かった。それに比較いたしまして、寡占度の高い、これは基礎資材等が中心になっておりますが、これがいわば政府の行政指導と申しますか、物価対策への協力等もございまして、上がらなかったというようなことが一番大きな原因ではなかったかというふうに私どもは考えておるわけでございます。
#404
○青木一男君 寡占度の進んでいる企業というものは大体において大資本であり、設備投資も十分でき、新しい設備機械も備えて技術を十分活用しておる。そして大量生産の利益を発揮できた、そういう種目の産業であるから、いまのような現象があらわれたということも考えられるかどうか、伺いたい。
#405
○政府委員(濃野滋君) ただいま先生御指摘の点も、当然一番根っこにあるのではないかと私ども思っておりますが、その点の詳細な分析とか私ども実は進めておりません。ただ、いま先生の御指摘の点は、私ども若干古くなりますが、昭和四十七年に、いわば高度成長期、昭和三十五年から四十年の初めにわたりましての卸売物価の動きを同様な意味で――ただ分類は若干いまのとは違っておりますが、やったケースがございますが、その中では、まさにいま先生御指摘のような高度成長期の中で、いわば規模の利益というものの拡大、確保に努めた、あるいは技術開発というようなものがあらわれまして、寡占度の高い商品の卸売物価の、当時は卸売物価が全体的に見まして横ばいないしは低下の傾向にございましたが、その中でも、全体の平均よりは非常に低く下がっておるという数字が出ておりました。これがいま先生御指摘のようないわばメリットがあらわれている数字ではないかと、かように考えております。
#406
○青木一男君 さらに産業政策局長にお尋ねします。
 このような現象は昭和五十一年末の特異現象か、それとも従来そういう傾向が続いておったのか、また将来も同じような傾向をたどる見込みがあるのか、あるいは違ったことになるのか、それを伺いたい。
#407
○政府委員(濃野滋君) ただいま御説明いたしましたように、五十一年末の傾向ではございませんで、私ども高度成長期の昭和三十五年のころからの動きを見てみますと、全体的に見ますと、ただいま指摘をいたしましたような傾向が出ております。
 さて、これからこういう傾向が続くかどうかという問題でございますが、それは日本の産業のいわゆる集中度、あるいは寡占的産業が今後どういうビヘービアで動いていくかということと非常に結んでくると思いますが、私ども現段階では、先ほどから御議論ございますように、いわば集中度の高い産業がいわゆる経済の面にいろんな弊害を与えていると私ども思っておりません。また、日本を取り巻く環境は大変厳しゅうございまして、特に国際的な競争、国内面でもいわば競争条件、要件と申しますか、これが非常に強いいわば体質を持っておりますから、私ども今後もそういうことで、いわゆる寡占の弊害によりまして企業活力が失われ、価格の何と申しますか、協調的な引き上げとかというような悪い傾向が出てくるとは、私ども現段階では考えておりません。
#408
○青木一男君 政府に伺います。
 弊害がなければ独占状態ではない。弊害として第一に挙げられておるのは価格の著しい上昇である。物価の安定はいつの時代でも財政経済政策の根幹である。通産省の調査によれば、寡占度の高い産業は物価の沈静に貢献してきておる。これからも貢献を続けるであろうとの見通しである。しかるに、その産業を選んで悪者扱いとし、規制の対象とした理由を伺いたい。
#409
○政府委員(大橋宗夫君) 独占的状態に対します規定は一定の事業分野の一つのシェアを基準としておる、シェアを基準の一つとしておるのは事実でございますけれども、これをもって直ちにそういう産業が悪いというような決めつけ方をしているわけではございませんで、新規参入が困難でありますとかあるいは価格の設定、利益の享受につきまして今後起こるかもしれないような弊害が起こった場合に、そういう場合にしかも最後の手段として、公正取引委員会の命令をという形の規定でございまして、寡占産業全体について、悪いというようなことを言っているわけではございません。
 ちょっと寡占と物価の関係についてはひとつつけ加えさしていただきたいんでございますが、通産省の資料を拝見いたしまして、あの際のいろいろの御説明によりましても、寡占度が高いから値上がりが低いんだというふうには分析はせられないんではなかろうかというふうには考えております。
#410
○青木一男君 公正取引委員会の委員長にお伺いします。
 営業の一部譲渡の命令というような国の産業政策に重大な関係を持つ公取委員会の職権行為は、内閣の指揮監督下、または主務大臣の同意のもとに行うべきだと私は考えますが、改正案では主務大臣への通知と協議という手続をすることとなっておる。いずれにしても、これは政府の産業政策との調整を図って国策上の矛盾を避ける趣旨であると思うが、委員長のお考えを伺いたい。
 また、政府との協議において検討すべき問題は広範にわたり、判断のむずかしい点が非常に多いと思う。独占的状態の有無だけについてみても、価格の上昇の程度、それが寡占状態を原因とするかどうか、営業一部譲渡を命ずれば、果たして物価が下がるのかどうか、さらに寡占企業の経理が妥当かどうか、営業の一部譲渡をした後の企業の営業はどうなるか、対外競争力はどう影響受けるか等の問題の結論は、機構、人員の整備した政府部局の総合判断がきわめて大事な資料となるべきである。このために協議という規定ができておると思う。したがって、委員長としては主務大臣の意見聴取、協議に当たっては、単に形式だけでなく、謙虚に十分意見を尊重するという態度でなくてはならないと思うが、この点の委員長のお考えを伺いたい。
#411
○政府委員(澤田悌君) 独占的状態に対します措置、これは企業にとってなかなか重要な措置でございます。したがいまして、御指摘のように法案におきましては、その手続はきわめて慎重に定められておる次第でございます。競争を回復させ、市場における弊害を除去するということが基本でございますので、そのやり方におきましても、慎重でなければならないことはもちろんでございます。したがいまして、手続としては、最終的には審決という形で措置を命ずることになりますが、制度上これは同意審決、企業側の納得のいく方法を発見して、同意審決というような形で図ることが最も望ましいのではないか。そこまでいかないで、弊害の除去なり競争の回復なりがほかの手段で図られますならば、これはもちろん望むところでございますけれども、そういうふうに考えるのでございます。
 さらに御指摘の、主務大臣への通知、これは今度新しい法案に盛り込まれました手続の一つでございます。所管の大臣が、それぞれの管轄に属する企業については、事情もあるいは行政上の意見もいろいろあるわけでございます。主務大臣への通知と協議はこれによる主務大臣の意見等十分尊重するということは申すまでもないのであります。私ども、それによって公正取引委員会の決定なりが過ちなきを期したい、謙虚な気持ちで考えていくべきであろうと思っておる次第でございます。
#412
○青木一男君 私はいまの委員長の御答弁に満足します。ぜひそのとおり実行していただきたい。
 政府に伺いますが、自由競争は独禁法の基本原理である。自由競争の目的は何であるか、製造業について言うならば、よい品物を安く供給させるのがねらいであると思うが、政府の見解を伺いたい。
#413
○政府委員(大橋宗夫君) 自由競争の目的は、いま先生のおっしゃいましたとおりでございますが、そういうことによりまして、市場で価格が決まってくるということが最大のねらいだということになるわけでございます。企業者が自由な競争によりまして、なるべく安くよい品物を供給する、そういうことによりまして需要を開拓していく、この努力の積み重ねによりまして自由な市場におきまして価格が決まってくるということが自由競争のねらいではなかろうかと思います。
#414
○青木一男君 さらに政府に伺います。
 よい品物を安く供給するということは独禁法上の善であります。この善を積んだものが競争に勝ち、シェアの高まるのは自由競争の当然の結果であり、独禁法の当初から予想したところでなくてはならないと思う。しかるにシェアが一定の程度に上ると、善が悪の容疑者に一変し、規制を受けるのは何ゆえか。独禁法上の自由競争にも限界があるという意味かどうかを伺いたい。
#415
○政府委員(大橋宗夫君) これは自由競争に限界があるということではございませんで、自由競争のメリットでありますよい品を安くという供給を続けていただきたい、そういう趣旨の規定になっているわけでございます。特に独占的状態の定義の第三号には価格についてコストあるいはコストの変動、需給の変動に応じた価格の設定をしていただく、そういうことを期待した弊害規定を置いておるわけでございます。
#416
○青木一男君 自由競争には限界かないということであるならば、今度の法案のようにシェアの高さをもって規制の基準としたのは私は間違いであると思う。
 次にお伺いします。さらに政府にお伺いします。特許権を利用した企業は、シェアが一〇〇%となっても独禁法の適用を除外されておる。他の追随できないような優秀な技術によって、よき物を安く供給し、シェアか高まった場合も同様に考うべきではないか。むしろ特許法の保護を受けずに、自由競争下にその地位を築いたとすれば一層偉なりであって、独禁法上も尊重すべきであり、規制など思いもよらないと思うが、こういうものがどうして除外されておらないのか、伺いたい。
#417
○政府委員(大橋宗夫君) ただいまのような先生の御指摘のケースが、仮にやはり一〇〇%シェアを持つようになっている場合には、恐らく何らかの形の特許権というものの作用が働いておる、何らかの形で特許権というものが働いておるのではないかというふうに考えます。
#418
○青木一男君 いや、私は特許権がなしで同じような成績を上げておるものを例に挙げたんです。それならば、特許法の精神から同じに扱うべきじゃないかと言ったんです。その点はどうですか。
#419
○政府委員(大橋宗夫君) そういう場合には法律の規定では適用除外にはしておりません。そのしておらない考え方でございますが、やはりそういうような形で一〇〇%のシェアを確保した場合でありましても、法律的な権限に基づいたものでございませんので、ほかのものと一様に扱わせていただく。ただし、そういうよい品物を安く供給しているという企業につきましては、独占的状態の規定が適用になるということはないわけでございますから、そういう点におきまして、いま先生の御指摘のような優良な企業が分割の対象になるということはあり得ないことだと存じます。
#420
○青木一男君 これはひとつ、公正取引委員会の委員長にお伺いします。
 右のような他の追随できない優秀な技術によってシェアの高まった会社の、たとえば工場の一部を譲渡したとして、譲り受けた会社は、必ずしも同じような優秀品を安く供給するとは限らない。結局、単に優秀会社の活力を減殺する結果になるかもしれないと思うが、そういう場合はどうするのか、伺いたい。
#421
○政府委員(澤田悌君) 結局、具体的な場合には八条の四の規定全体をどのように解釈するか、どのように適用するかということに帰するのではないかと存じます。いまのような例がどういう場合に当たるかわかりませんが、たとえば「事業活動の円滑な遂行」というような一字をとってみましても、譲り受けた方、それから譲り渡した方がともにそういう障害が起こるというようなことであれば、そのやり方についていろいろ検討をしなければ、単純にそういう命令を出すというようなことはむずかしいと考える次第でございまして、これはケース・バイ・ケースによってよほどそういう点は真剣に考えて、効率の上がる、しかもいい品を安く供給できて、消費に満足を与えられるというような方向において検討すべきものと存ずる次第でございます。
#422
○青木一男君 政府にお伺いします。
 通産省当局の見解によれば、寡占状態にあるような大企業が、物価の鎮静に貢献する役割りは今後も続くだろうということである。また、政府も公取委員長も、この改正案はさしあたり適用するケースのないことをしばしば言明しておられる。そうすると今度の改正は、必要に基づくものでなく、世間で批判するようにイデオロギーに基づく立法であるとの印象が深いのである。法律というものは必要に応じて制定すべきものである。政府の見解を伺いたい。それとも、物価の引き上げ以外に弊害があるならばそれを示していただきたい。利益金が多かったならば税務署が処理すればよく、公正取引委員会が干渉する必要はないと思うが、その点も見解を伺いたい。
#423
○政府委員(大橋宗夫君) 今後、いわゆる寡占企業が物価に対して貢献をしていくという通産省のお見込みでございますが、これは、政府全体としてもそういうことになっていくように期待はしております。したがいまして、独占的状態の規定が適用になるような状態、こういうことは政府として期待しておるわけではございませんけれども、やはりこれからの、これまでの経済環境の変化その他にかんがみまして、この際寡占企業といいますか、まあ大きな企業に対する今後の経営活動の一つのルールというものをつくって、これを国民の理解のもとに運営していくということが必要な時期になっているという判断でございます。現実に弊害が起こっているから、したがって、そのために用いる規制手段としてこの条文を考えているわけではございませんで、主なねらいは、弊害の発生を予防するというところにあるわけでございます。
#424
○青木一男君 政府にお尋ねします。
 どこの国でも、国民に職を与えることは最大の課題であり、それには経済の成長が前提であります。諸外国の、ことに欧州諸国の独禁法の制度と運用は、その国の経済の発展を損わずして弊害を除去することに眼目を置いておる。したがって、企業分割など産業力を弱める措置は、英国のように、制度があっても実行はされておらないのであります。わが国もその宿命的産業構造から、大は悪なりとの考え方はとるべきではなく、常に経済の成長、対外競争力のことを第一義に考えなければならないと思うが、政府の見解を伺いたい。
 したがって、寡占企業に物価の引き上げが行われたとしても、一挙に企業分割という産業構造の規制に入らずに、弊害を除去するための規制措置を講ずるというのがとるべき手段ではないかと思う。それならば企業者も納得するでしょう。政府はどうしてそういう立法方式をとらなかったか、伺いたい。
#425
○政府委員(大橋宗夫君) これは寡占の弊害といいますのは、独占的状態の規定にありますように、価格に典型的にあらわれるという考え方をとっているわけでございますが、この場合に、弊害を規制するという考え方になりますと、どうしても価格に対する公的なコントロールというものをやっていかなければいけないということになるわけでございます。したがいまして、弊害の規制ということは価格介入を広げていくということになるわけでございまして、やはり、自由経済を本旨といたしますわが国経済にとりましては、価格介入という形の規制の方式はいかがなものだろうかというふうに考えるわけでございます。しかしながら、寡占の場合に弊害が生ずるというような場合がありますれば、これはやはり弊害自体も問題でございますし、その弊害を起こしている企業の力というものに対しても、やはり目が向けられていかなければならないということになるわけでございます。
 今回の規制のねらいは、最終的な規制の法律的な形式といたしましては、営業の一部譲渡等を含みます構造的な規制を設けるものでございますけれども、その主なねらいは、弊害条件を定めますことによりまして、企業がみずからの手で価格決定について弊害の起きないようにしていく、そういう点に力が置かれておるわけでございまして、同じねらいの弊害か起きないようにするというねらいでございますが、これを政府の手によってではなくて、企業みずからの力で、そういう形で直していくというところにねらいがあるわけでございまして、ねらいは、先生の御指摘のところと実際のねらいとしては同じような効果があるものというふうに考えるわけでございます。
#426
○青木一男君 私の言うのは、そういう弊害が起きた場合は、まず物価騰貴を是正させるというその立法を考えて、そのできない場合に企業分割というようなことを考えたらどうか。物価の統制というか、抑えるということはしばしば行われている、容易ではないがしばしば実例がある。だから、その弊害をまず抑えることを立法手段で講じて、それを、言うことを聞かないとか、効果がない場合に企業分割をさせるというのが順序ではないか。先ほども公取委員長は、弊害の除去がまず第一だということを何度も言われておる。私は、立法の上でもなぜそういう順序をとらなかったかということを伺っているのです。それは何か理由がありますか。
#427
○政府委員(大橋宗夫君) これは自由経済に対する考え方の問題になるわけでございますが、やはり自由経済にとって何が一番大事かということになりますと、価格が市場で決まるというのが自由経済の本質でございます。こういう点につきましては、寡占企業の価格構造に対して政府が介入するというのは、やはり自由経済にとって一番避けなければいけない政策手段ではないかというふうに考えるわけでございまして、独占禁止法のねらいというものも、自由競争を促進して、市場で価格が決まるようにしていくというところにあるわけでございますから、そういう方向で政策といいますか、立案したわけでございます。
#428
○青木一男君 私は、自由経済の原則から、物価に干渉しないということよりも、企業分割なんということをやる方が何倍これは自由主義経済に反しているか、これは問題にならぬほど違うですよ、それは。自由主義経済に反するから物価の統制ができないなんという考えがあるんなら、今度の企業分割なんということを考えることはないと思うんです。私はその点は非常にいまの説明は満足しません。いずれまた他の機会にこの点のことは伺いたいと思います。
 通産大臣かおいでになったから、ひとつ二点ばかり伺いたいと思います。
 資源に乏しいわが国で、一億の国民がいかにして職を得、生活していくかということは最大の政治課題であります。今日、わが国の全就業者中第一次産業就業者は一三%にすぎず、他は第二次、第三次の産業の就業者である。すなわち、外国から原料を輸入し、技術を加えて製品として再輸出し、一部を国内で消費するとともに、輸出代金によって原料、食糧、燃料の輸入を賄っているのがわが国の産業構造の基本であり、結局わが国は工業立国、貿易立国にあらざれば、国民に職を与え、生活を確保することはできない国柄である。この点は大臣もお認めでありましょう。工業立国、貿易立国で成功するには、よい品物を安く売る国際競争に勝たねばならない。今日わが国が貿易競争で優位に立っているのは、大資本の力によって新しいすぐれた工場、機械を整備し、優秀な技術を取り入れ、経営を合理化し、よい品物を安く生産できたからである。外国に負けないよい品物を安く供給することは、国内の消費者の利益にも合致する。かような優秀品をつくる企業のシェアの高まるのは当然であるのに、シェアがある程度高まると悪の要素を持つとして規制を加えようとするのは、業者の企業意欲を挫折させ、国策の方向を誤まる危険があると思うが、産業貿易の責任者としての御見解を伺いたい。
#429
○国務大臣(田中龍夫君) お答えを申し上げます。
 ただいま青木先生の御主張のように、わが国は無資源工業大国でございまして、あるのは米だけでございます。あとは原料、燃料、材料、食糧に至るまですべて海外に依存いたしておるのでありまして、貿易立国ということがこれが国是でございます。なおまた、対外貿易におきましても、構造的に分析いたしますれば、約七〇%程度の物が中小企業その他がこの輸出の生産に当たっておるということも御承知のとおりでありまして、いまやわが国は、大企業と言わず中小企業と言わず、国を挙げて国家のために、民族のために、海外貿易にいそしんでおるような次第でございます。
 なおまた、大規模であるから悪であるというような考え方は、われわれは全く持っておらないことを改めて申し上げておきます。
#430
○青木一男君 さらに通産大臣にお尋ねします。
 今日は貿易と資本の自由化の時代である。シェア何%と言っても、国内業者だけに頭を置いて考えるのは誤りではないか。強大なる外国企業は常に競争者として虎視たんたんとしている。国内企業の競争力が弱まれば外国企業の侵略を受けることは必至である。わが国は今日、黒字国として経済大国のように扱われておるけれども、国内に資源がなく、一たび生産条件、輸出条件が悪化し、対外競争力を失えば、直ちに崩壊する脆弱な基盤に立つ産業構造である。この基盤を守る産業政策の重要性は、独禁政策に劣るものではありません。企業分割によって産業の基盤を弱め、対外競争力を失うような措置は絶対に防止せなければならぬと思いますが、大臣の御見解を伺いたい。
#431
○国務大臣(田中龍夫君) 御指摘のとおりでございまして、今日わが国経済が、特にアメリカ、西独、日本三カ国が世界経済を背負っておる、景気を三国によってリードしておるというほどにまで発展いたしておる次第でございまして、国際経済の重要性はいまさら申し上げるまでもございません。同時にまた、その競争力に対しまして、私どもはあくまでも企業の体質を強化して、そうしてこれが健全化に努めますと同時に、さらに一層その企業に活力を与えるということが、これが国策である次第でございます。
#432
○青木一男君 総務長官にお尋ねいたします。
 シェアの高いために規制の対象となっている企業の経営者は、今回の立法をもって死刑の宣告にも等しい扱い方であると憤慨しております。彼らとしては、厳しい国際競争下において思い切った設備投資を行い、新技術を開発し、外国品に劣らないよい品物を安く供給することに成功をしたのである。自由競争の目的は、よい品物を安く供給することにあり、これは一般消費者の利益にも合致しておるから、彼らとしては独禁法上の優等生をもって任じてきたのである。また、輸出増進、輸入防遏にも貢献し、実業功労者として国家から表彰を受けておる。今回の立法によって、国家の功労者が一転して悪の容疑者扱いを受けるのは心外であると称しております。私は彼らの心境は理解できると思う。これでは企業者は、自由かつ公正な競争という指針を失い、企業努力を萎縮させるおそれがある。またシェアを低下させるため供給を減じ、競争制限的行為に追いやることは独禁政策上の矛盾であると思うが、政府の見解を伺いたい。
#433
○国務大臣(藤田正明君) 競争力をますます強めていただこうというのが、この独禁法の改正の趣旨でございまして、国際的な競争力を失うということをおっしゃいましたけれども、もしも万一経理が不健全になり、国際的な競争力を失うおそれがあるような場合は、これはもちろん一部営業譲渡というふうなことはできないことといたしておりますし、いまおっしゃいましたような、従来まで日本が世界の工業国、経済国と言われるようになってきたことは、もちろん一億国民のたまものではございますが、その先頭に立った大企業の方々の功績に負うことは大なるものがあるというふうにわれわれも感じております。ですから、功労者であることはもう間違いのないことでございまして、今後とも大いに第一線で、企業の拡大、そして世界の競争場裏で御活躍を願いたいわけでございます。
 ただ、この独禁法の改正強化がそれを阻むものである、あるいは死刑に等しいと言われることに対しましては、いささか理解に苦しむというふうに思います。
#434
○青木一男君 いままで自他ともに功労者をもって任じておった連中が、この法律で一度に悪の容疑者扱いをされるのが心外であるという心境です、問題は。これは総務長官も実業人だから、よくおわかりでしょう。
 次に、法務省の民事局長にお尋ねします。
 甲が乙に対し、A土地を幾らで売るという売買の予約をした。予約の期日が来ても甲が約束を実行しないので訴訟となった場合、裁判所は、予約どおりの本契約を結べという判決を下すのではなく、損害があった場合、その賠償を命ずるにすぎないと思うが、裁判のやり方はそのとおりであるかどうか伺いたい。
 またその理由は、国家機関が自由意思を要件とする契約の締結を命ずるのが法律観念として矛盾し、実行できないからであると思うが、御見解を伺いたい。
#435
○政府委員(香川保一君) 最初の御質問ちょっとよくわからなかったのですが、たとえば売買予約をいたしまして、その予約する以上は、定の時期なりあるいは要件が整った場合に本契約をするということを、当事者は所期してそういう契約をするわけでございますから、したがってそういった一定の時期が到来し、あるいは条件が整いましたときに相手が本契約の締結に応じないというときには、裁判所に出訴いたしまして、判決でもって本契約の意思表示を命ずるということは当然できょうかと思うのであります。
 後者の場合に、行政命令でもって私人間の契約締結等の法律関係を強制することはどうかということでございますが、これは合理的な理由のある限り、さようなことはいけないとは言えないわけでございまして、およそできないことだというふうには解せられないように考えます。
#436
○青木一男君 裁判所は本契約締結の命令を出しますか。私は聞いたことがないのだが、その点を確かめておきたい、はっきり。
#437
○政府委員(香川保一君) 先ほど申しましたようなケースの場合には、本契約、つまり訴訟で被告に対して判決でもって意思表示を命ずる裁判をするわけであります。その判決が確定いたしますと、意思表示があったということになるわけでございますから、そこに本契約が締結されたという法律関係が生まれるわけでございます。
#438
○青木一男君 それを強制することかできますか。
#439
○政府委員(香川保一君) 強制というよりは、かような意思表示を命ずる判決につきましては、民事訴訟法の七百三十六条でございますが、判決か確定したときに意思表示があったものとみなすという規定を設けておりまして、したがいまして、被告に対してこれこれの意思表示をなすべしという判決がされ、それが確定いたしますと、あたかも任意にさような意思表示をしたのと同じ法律効果が生ずると、こういうことに相なるわけでございます。
#440
○青木一男君 内閣法制局長官にお尋ねします。
 食糧管理法第三条によって、生産した米穀を政府に売り渡すことを命じた規定があります。同法第三条第二項は、「前項ノ場合ニ於ケル政府ノ買入ノ価格ハ政令ノ定ムル所ニ依リ生産費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ米穀ノ再生産ヲ確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」と規定し、生産者に損失を与えない趣旨を明らかにしております。シェアが高いために営業の一部譲渡を命ぜられるような企業主は、技術の改良進歩と経営の合理化という企業努力によって、よい品物を安く生産し、国内消費者に利益を与えるとともに、輸出増進、輸入防遏に貢献し、実業功労者として国家から表彰された人が多い。シェアの増加してきた過程において、何らの違法も悪事も行っていない。善が一夜にして悪に変わるはずはない。したがって、営業の一部譲渡命令には処罰的意味も、損害を与える趣旨も包含するはずがなく、相当の代償を得させる趣旨と解するが、政府の見解を伺いたい。
#441
○政府委員(真田秀夫君) 食糧管理法による強制買い上げの規定を御引用になりましたけれども、これはその制定当時の食糧不足時代に、国民の主食を確保するために制定された統制法規でございまして、その買い上げ対価についての規定は、これは一種のいまの憲法で言えば二十九条の三項に当たって、正当な補償のもとに、公共のために用いるという強制収用に性質上は該当するわけでございます。で、対価の決め方は、そういう意味で実は強制収用の補償であったわけなんですが、最近多少、立法の運用のといいますか、考え方がどうも農家の生活保障のような気味を持っておりますけれども、本来的にはいま申しましたような統制法規でございます。
 それからただいま議題になっております独禁法の改正は、これはいまの自由競争を確保するというための手段として、営業の一部譲渡命令ということがあり得るということでございまして、ちょっと性質が違うものでございますので、比較のしようがないという感じがいたします。
#442
○青木一男君 いや、私がお尋ねしたのは、米を売れとか、あるいは工場を売れという命令は同じですが、いずれも損害を与える趣旨はないのじゃないかというのが私の質問の趣旨なんです、どちらも。その点はどうですか。
#443
○政府委員(真田秀夫君) それはおっしゃるとおり、処罰するとか、生産者に対して何か制裁を加えるとか、そういう趣旨が入っているものでは毛頭ございません。
#444
○青木一男君 引き続いて法制局長官に伺います。
 憲法は財産権を侵してはならないと規定しておる。私有財産も公共のために用いることを認めてはおるけれども、正当なる補償を条件にしておる。この憲法の精神から見れば、個人たる相手方に営業の一部譲渡をする場合、正当な代償を得せしめる趣旨であることは間違いがない。営業の一部譲渡命令は、企業を処罰し、損害を与える趣旨を含んでいないし、憲法の精神から言っても、譲渡に対し正当の代償を得させる趣旨であることは明白であるにかかわらず、食糧管理法のように譲渡について明白な規定のないのは何ゆえか、伺いたい。私は、営業の一部譲渡命令は自由意思による契約の締結を命じたものであるから、相手方との交渉において正当な代償を求めることができるから規定がないものと解するが、政府の見解を伺いたい。それは政府どちらでも結構です。
#445
○政府委員(大橋宗夫君) 先生御指摘のとおりでございます。
#446
○青木一男君 公正取引委員会の委員長に伺います。
 営業の一部譲渡は、両当事者間が合意の上に進めても容易でないことは実例の示すところであります。企業は、経営者と従業員と資本とが一体となった有機体であり、歴史の産物であるから、その分割の容易でないことは当然である。いわんや譲渡する側が本来欲しない場合、円滑にいくはずはない。国権の強制力によって企業分割を実行した実例は、占領下に過度経済力集中排除法を適用して財閥を解体したのが唯一のものであります。財閥解体のときは絶対権者である占領軍の方針が示され、かつ、法律上特殊会社経理委員会に対し異例の強大権限が与えられたから企業分割ができたのである。公正取引委員会の委員長は、一片の譲渡命令によって目的を達する自信があるかどうか、先ほど来いろいろのむずかしい点があることはお述べになりましたが、私はこの実現の可能性について、委員長の御確信のほどを伺っておきたい。
#447
○政府委員(澤田悌君) 御指摘のように、営業の一部譲渡命令を、審決によって解散命令をいたした場合に、この審決に従いまするいろんな手続がなかなか大変でございます。御指摘のとおりでございます。譲渡先の選定でございますとか、その譲渡条件の折衝、債権の債務関係の整理、さらには重要な一部の譲渡の場合には、最も問題となります株主総会の手続等、この命令を実行するための所要の措置は数多いのでございます。したがいまして、命令の実行が速やかに行われるとは限らないと存じております。したがいまして、極力営業の譲渡命令等にいかないで、弊害を排除し、あるいは競争条件を回復するという前段の措置がとられて、問題が解決することが望ましいと先ほども申し上げた次第でございますが、ほかに最後の手段として営業譲渡を命ずる場合におきましても、無理のない方法を極力工夫いたしまして、できれば、合意の上での同意審決によって事が運べるというように工夫をするのが、最も妥当な道ではないかと考える次第でございます。
#448
○青木一男君 政府にお伺いします。
 営業の一部譲渡の範囲は法律上は不明である。しかし、第八条の四は、その供給する商品の「供給に要する費用の著しい上昇をもたらす程度に事業の規模が縮小し、経理が不健全」となる場合は適用しない旨を規定しておる。経理が不健全とは赤字ということを意味するかどうか、伺いたい。優良会社が一挙に黒字すれすれまでは事業を縮小させることができるという行為であるかどうか、伺いたい。
 程度は別として、営業の一部譲渡命令は、先ほどは損害を与えるかどうかわからぬ、株が上がるか下がるかわからぬという御説明がありましたが、それは常識ではなく、営業の一部譲渡があった場合には営業を縮小させ、収益力を弱め、信用を害し、株価を低落させ、企業に損害を与えることは必至であります。そうなると、憲法に規定した財産権不可侵の原則に違反するおそれも出てくると思うが、政府の見解を伺いたい。それともこの損害は公用徴収の補償と同じように譲渡の相手方に払わせればよいという意味か、あるいはそんな大損害が予想されるならば、取締役は譲渡命令を断わればよいという意味か、この点について立法の趣旨を伺いたいと思います。
#449
○政府委員(大橋宗夫君) 二つの御質問だったと思います。
 一つは、「経理が不健全になり、」ということの意味でございますが、これはこの規定の趣旨、このただし書きが置いてございます趣旨は、こういう措置によりまして残りました企業、あるいは新しい企業がこの措置によってできたとしますと、できた企業.または既存の企業が買い取った場合におきましても、そういう新しい構造になりました場合のそれぞれの企業が、それぞれの立場で十分な競争力を持っているということが前提でございますので、「経理が不健全になり、」というのは、たとえば損益につきましては赤字になるということを必ずしも意味しているわけではございません。やはり正常な利潤を上げ得る状態、それを割りました場合には不健全ということになろうかと思います。さらにこれは、いまのは損益の問題ばかり問題でございますが、資産、負債の面につきましても経理が不健全になるというような形は十分あり得るわけでございまして、先ほど斎藤先生御指摘の、自己資本が非常に低いような企業しかできないというような場合も経理が不健全になるということの一例になろうかと存じます。
 それから第二に、株価が下落した場合の責任の問題でございますが、ただいま申し上げましたように、この規定の趣旨というものは、営業の一部譲渡をした企業につきましても、その正常な競争というものの能力が残るという形でございますので、独占的状態の定義の中に、標準的利益率に比べて著しく高い利益を上げている、その高い部分につきまして、これがその株価の下落の原因になるということはあり得るかと存じますけれども、その後の正常な事業の運営ということを予想した株価に落ちついてくるわけでございますから、このこと自体は、この八条の四の規定が予想しているような株価に落ちつくということになるわけでございまして、そこに新しい責任が起こるというふうには考えていないわけでございます。
#450
○青木一男君 経理不健全という言葉は、普通経済学上赤字のことを言うのですよ、経理不健全ということは。もし企業分割したら、もうある程度は、もし経理が少しでも悪くなれば不健全ということなら、もう企業分割したらみんな不健全なんです。経理不健全ということは普通の学問上から言えば、赤字のことを言うんです。私はまあその点は重ねて言いませんが、どうもこの立法趣旨はそこまでいっちゃいかぬが、それに近いところまではいいと、こういうふうにとらざるを得ません。まあこれは解釈の違いでありますから、これ以上は論議をしません。
 次に、法務省の民事局長にお尋ねします。
 公正取引委員会の営業一部譲渡命令は、商法上の株式会社の株主の議決権を拘束するものでないことは当然と思うが、その点を改めてお伺いします。
#451
○政府委員(香川保一君) 法律的には拘束いたしません。
#452
○青木一男君 さらに局長にお尋ねします。
 会社の取締役は善良なる管理者として会社の利益を擁護し、会社のために忠実にその職務を遂行する民法上、商法上の責任を負っておる。公正取引委員会の営業の一部譲渡の命令は、取締役のこの法律上の責任を免除するものではないと思うけれども、見解を伺いたい。
#453
○政府委員(香川保一君) 譲渡命令の関係で、問題は二つあろうかと思いますが、譲渡命令が公正取引委員会から発せられました場合に、それが違法であるというふうなときに、当然取締役の忠実義務の履行といたしましては、その取り消し訴訟を提起するというふうなことが、裁判所に出訴しまして、譲渡命令が違法であるということで出訴するというふうなことは、やはりやるべきだと思うんでありますが、それをやらないで、出訴期間を徒過いたしまして譲渡命令が確定したということになりますと、やはりそれによって会社に損害が生じますれば、取締役はその忠実義務違反ということで損害賠償の責任は免れないだろうと思います。
 それから確定いたしました場合に、それが適法であり、やはり取締役としては、当然会社がその譲渡命令に拘束されるわけでございますから、譲渡命令に従った履行をしなきゃならないわけでありまして、その限りにおきまして譲渡命令に従っての履行でございますから、この面では忠実義務が云々ということはもう問題になる余地はない。その譲渡命令が実現するように努力するということは会社に課せられた義務でございますから、したがってむしろその命令が円滑に実施できるように、実現できるようにするのがむしろ取締役の義務ということに相なろうかと思います。
#454
○青木一男君 いまの後の方がよくわかりませんでしたが、私の言うのは法律論を聞いているんです。私は、取締役としては忠実義務の範囲においてできるだけ命令を実現することに努力するのは当然だと思うんです。しかし法律論としては、譲渡命令があれば、どんな過酷な条件でも、どんな損害があっても従わなくちゃいけないものとは思いませんが、その点を伺っているんです。
#455
○政府委員(香川保一君) それはだから、前段で申し上げましたように、譲渡命令自身が違法な場合には、忠実義務の履行として取締役は当然裁判所に提訴いたしまして、そして争うという道をとるべきだと、かように申し上げたわけでございます。
#456
○青木一男君 ああそうですか。私は裁判所に訴え出なくたって法律上の、民法上、商法上の義務があるんだから、その義務と調和する範囲において言うことを聞けばいいんじゃないか、どうして裁判所まで行かなければそれが決まらないんですか、その点をもう一度伺いたい。
#457
○政府委員(香川保一君) ちょっと御質問の趣旨、私、あるいは理解できないのかもしれませんが、譲渡命令が出ました場合に、それをいわば履行できる限りで修正してと申しますか、その範囲内で履行するということは、譲渡命令が確定した以上はこれは許されないことだろうと思うんであります。だから、やはり譲渡命令自身に従いかねると申しますか、違法であって取り消されるべきものだということであれば、やはり裁判で争うという道を選ぶべきであって、この程度までなら履行できるからということで、いわば譲渡命令を修正するような形での履行ということは法律的には考えられないことだろうというふうに思うんであります。
#458
○青木一男君 私はいまの局長の言われたこの公取委員長の命令が、委員会の命令が取締役の民法上、商法上の責任を左右するものとは私はどうしても思えない。いずれまた改めてその問題はお尋ねするつもりです。
 さらに民事局長にお尋ねします。商法第二百四十五条は、特別決議に反対した株主は会社に対し自分の株式を「決議ナカリセバ其ノ有スベカリシ公正ナル価格ヲ以テ買取ルベキ旨ヲ請求スルコト」ができると規定している。「決議ナカリセバ」ということはどういう意味か。営業一部譲渡なかりせばということに当たると思うけれども、その意味を説明していただきたい。
#459
○政府委員(香川保一君) 公正取引委員会の譲渡命令が出て、そしてただいま御指摘の商法の二百四十五条の特別決議がなされた、そういう場合に即して申し上げますればお説のとおりでございます。
#460
○青木一男君 公正取引委員会の委員長にお尋ねします。
 世間には、営業一部譲渡命令の法律上の弱点を補うために、委員会が会社の内部調査等でいやがらせを行ったり、あるいは委員会命令に従わないのは悪であるというような宣伝を行って、取締役の決定や株主総会の決議に対し圧迫を加えるのではないかというようなことを懸念する声があります。私はこういうことは権力の乱用であって、法治国家では許さるべきではないと思うが、委員長のお考えを伺っておきたいと思います。
#461
○政府委員(澤田悌君) 先ほどもちょっと申し上げましたように、命令の実行がなかなか円滑にいかないという場合もいろいろ予想されるわけでございますが、当事者が審決の内容を実現するために真剣な努力をいたしておりますれば、その努力を見守って、進行することを見守っていくのは当然であると思います。その過程におきまして、法に定めること以外の手段を持って圧迫を加えるとか、いやがらせをするというようなことは断じてあってはならないものと考えております。
#462
○青木一男君 政府にお尋ねします。
 学者の中には私の違憲論に対し、三十年前の違憲論の蒸し返しであると評する者があります。
 三十年前と言えば、独禁法制定当時、昭和二十二年三月のこととなります。論者は、法制定当時違憲論も議論し尽くされ片がついているのに、いまになって蒸し返すのはおかしいと言うのであります。当時占領軍は、政府の反対を押し切って法案の即時制定を命じ、法案の内容の審議に入るを許さなかった。結局独禁法は、先ほど斎藤さんの言われたとおり昭和二十二年三月二十八日衆議院本会議に上程され、二十九日委員会で審議し、三十一日本会議で議決しておる。本会議、委員会を通じて審議時間は六時間にすぎない。衆議院を通過した日に貴族院は委員会と本会議の審議を終わり、その日に法案が成立した。貴族院の審議時間は二時間半にすぎなかった。かような超特急の審議であるから、複雑にして難解な法文を理解することも容易でなく、いわんや憲法との関係など問題とする状況になかったことと思うが、政府の見るところを伺いたい。
#463
○政府委員(真田秀夫君) 現在の独禁法が二十二年に制定されました当時のいきさつ等は、あるいは先生がおっしゃるとおりであったかもしれませんが、国会――現実には帝国議会でございますけれども、その帝国議会における審議が短かったから、その独禁法の中身が憲法違反であるとか、そういうことにはもちろんならないので帝国議会における御審議の経過について、私たちの方でそれは短過ぎたじゃないかとか、そういうことを言うべき実は立場ではないことも御了解いただけると思います。
 それから三十年前の違憲論の蒸し返しであると言う人がいるというお話でございますが、それは三十年前の話であろうと五十年前の話であろうと、現在でもなお先生が違憲の点があるとお信じになって御主張になっているというお立場に対しましては、むしろ敬意を表しこそすれ、蒸し返しだからおかしいとか、そういうような気持ちは毛頭持っておりません。
#464
○青木一男君 私がお尋ねしたのは、当時の議会の審議の実情を伺ったんです。二時間や六時間でできたのが、違憲論の問題まで入るはずがないということを、ただ伺っただけであります。
 さらに政府にお伺いします。戦争によって多くの都市が焼け野原となり、産業は壊滅し、独禁法の必要など考えられなかったときに、占領軍はどうしてこの立法を強要したのか、その理由を伺いたい。占領軍が日本の管理について発表した文書の中に、「降伏後における米国の初期の対日政策」がある。その中に「日本国に関する米国の究極の目的にして初期における政策の基調は日本国が再び米国の脅威となり、又は世界の平和と安全の脅威とならないことを確実にすることである」と記してあります。すなわち、米国や世界の脅威となるような強国日本の再現を阻止し、軍事的に政治的に、経済的に、思想的に日本を弱体化し、これを制度化することが占領軍初期の対日政策のねらいであったことは明らかである。
 独禁法は、公正取引委員会という行政委員会を設けて政府の行政権の分散、弱体化を図るとともに、産業の強大化を制度的に抑制するという経済弱体化の一手段であったと考えるが、政府の見るところを伺いたい。
#465
○政府委員(大橋宗夫君) 当時の占領政策と独禁法の関係については、ちょっと私ども、十分にこうだという判断をできるような検討いたしておりません。
#466
○青木一男君 第二次大戦後、東西両陣営は対立の様相が濃くなり、ことに昭和二十四年、シナ大陸が中共の支配に帰し、二十五年朝鮮戦争が起こるに至って、アメリカは日本をアジアの安定勢力として期待し、弱化政策から強化政策に一変したのである。昭和二十六年五月、占領軍司令官は日本政府に対し、総司令部からの司令実施のため公布された諸法令に再検討を加え、必要と思われる修正を加える権限を与えると発表した。
 これに応じて第三次吉田内閣は、占領中に制定した諸法令を再検討するため、政令諮問委員会を設けた。諮問委員会は二十六年八月、答申を政府に提出したが、その中で、行政委員会制度は、行政機構民主化の一環として重要な意味を持ったことは否定し得ないが、もともとアメリカにおけると異なり、わが国の社会経済の実際が必ずしもこれを要求するものでなく、組織としていたずらに膨大化し、能動的に行政目的を追求する事務については責任の明確化を欠き、能率的な事務処理の目的を達しがたいから、原則としてこれを廃止すること。ただし、公正中立な立場において、慎重な判断を必要とする受動的事務を主とするものについてはこれを整理、簡素化して存続するものとすると答申した。政府は政令諮問委員会の答申に基づき、行政機構改革案を立案し国会に提出した。その基準として、各種行政委員会は、審判的機能を主とするものを除きこれを廃止し、その事務を関係各省に分属せしめると決定した。
 国会で審議の結果、二十三行政委員会のうち過半が廃止された。公正取引委員会が廃止を免れたのは、受動的事務または審判的機能を主とするものに該当すると認められたためと見るほかはない。審判的機能を準司法と解し、存続の理由としたものにほかならない。独禁法中に「審判」「審決」という語が使用されておることが誤解の基となったのであるが、独禁法はその機能の本質において準司法でないことは政府においても異存のないことでありましょう。
 政令諮問委員会は、三カ月の間に多数の法令を調査したのであるが、研究不十分の点があったのはやむを得ないと思う。戦後、憲法学界の泰斗と仰がれた宮澤俊義博士すらも、その著書で独立権限を持つ行政委員会は憲法違反であるとの説を唱えつつも、公正取引委員会は準司法機関であるからその独立制は違憲でないと述べられておる。宮澤博士さえも法の本質を見誤られておったのであります。政令諮問委員会の試験をパスしたことが、公正取引委員会の立場を強くし、国民の間に違憲の感覚を麻痺させたことは疑いないと思いますが一試験官の採点にエラーがあったのであるから、政府はおくれたりといえども、この違憲か合憲かの根本について徹底した検討を加える必要があるとお考えになるか。その点について、政府の見解を伺いたい。これは総務長官にひとつ……。
#467
○国務大臣(藤田正明君) 先生の違憲論につきましてはしばしばお伺いをいたしておるところでございます。確かに、先生を初めとしまして、この行政機構の中にこういう機関があるということに対して、違憲論を唱える方もたくさんおられることも承知いたしておりますが、しかし現在の政府の見解といたしましては合憲であると、こういう考えのもとに今回もこの法律の改正強化をいたしておるわけでございまして、論が二つに分かれておることは承知いたしておりますけれども、政府のたてまえといたしましては、これを合憲と、こういう考えで現在法律の改正をお願いしておる次第でございます。
#468
○青木一男君 いまの件は、機会を改めて総理に御意見を伺うことにして、私の質問をこれで終わります。
#469
○委員長(加藤武徳君) 本案に対する本日の質疑は、この程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後六時五十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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