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1976/05/25 第80回国会 参議院 参議院会議録情報 第080回国会 商工委員会 第12号
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1976/05/25 第80回国会 参議院

参議院会議録情報 第080回国会 商工委員会 第12号

#1
第080回国会 商工委員会 第12号
昭和五十二年五月二十五日(水曜日)
   午前十時五十五分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月二十五日
    辞任         補欠選任
     楠  正俊君     岡本  悟君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         加藤 武徳君
    理 事
                熊谷太三郎君
                福岡日出麿君
                竹田 現照君
                須藤 五郎君
    委 員
                青木 一男君
                植木 光教君
                小笠 公韶君
                岡本  悟君
                剱木 亨弘君
                斎藤栄三郎君
                林田悠紀夫君
                吉武 恵市君
                阿具根 登君
                鈴木  力君
                対馬 孝且君
                森下 昭司君
                桑名 義治君
                向井 長年君
   国務大臣
       国 務 大 臣
       (総理府総務長
       官)       藤田 正明君
   政府委員
       内閣審議官    大橋 宗夫君
       内閣法制局第二
       部長       味村  治君
       公正取引委員会
       委員長      澤田  悌君
       公正取引委員会
       事務局官房審議
       官        水口  昭君
       公正取引委員会
       事務局経済部長  吉野 秀雄君
       公正取引委員会
       事務局取引部長  長谷川 古君
       公正取引委員会
       事務局審査部長  野上 正人君
       通商産業省産業
       政策局長     濃野  滋君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        町田 正利君
   参考人
       三井造船株式会
       社社長      山下  勇君
       ダイキン工業株
       式会社社長    山田  稔君
       中央学院大学教
       授        山本 勝市君
       北海道大学教授  実方 謙二君
       一橋大学教授   今井 賢一君
       全国消費者団体
       連絡会事務局長  大野 省治君
       キリンビール労
       働組合中央執行
       委員長      酒井  稔君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法
 律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院
 送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(加藤武徳君) ただいまから商工委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 本日、楠正俊君が委員を辞任され、その補欠として岡本悟君が委員に選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(加藤武徳君) 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案審査のため、本日、参考人として三井造船株式会社社長山下勇君、ダイキン工業株式会社社長山田稔君、中央学院大学教授山本勝市君、北海道大学教授実方謙二君、一橋大学教授今井賢一君、全国消費者団体連絡会事務局長大野省治君、キリンビール労働組合中央執行委員長酒井稔君の以上七名の方々の御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、皆様には御多忙のところ、本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
 本日、議題といたしておりますのは、御連絡を申し上げておりますように、いわゆる独占禁止法の改正案についてでございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を承りまして、今後の本委員会におきます審査の参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げ、ごあいさつとする次第でございます。
 なお、参考人の方々には、それぞれ十五分程度御意見を順次お述べ願い、その後、委員会からの質問にお答え願いたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、まず、山下参考人にお願いいたします。
#4
○参考人(山下勇君) 山下でございます。
 私は、経団連の産業政策委員会の委員長をしておりますので、経団連の産業政策委員会委員長としての立場から独禁法改正問題についての所見を申し上げたいと思います。
 すでに衆議院の商工委員会におきまして、改正案の各面にわたって産業界の代表の方々から意見が述べられ、私としては、その御意見に全面的に同意するものでございますが、本日は、四つの点にポイントをしぼりまして意見を申し上げたいと存じます。
 第一は、本来、独禁法は自由経済体制を維持、促進することを目的としているにもかかわらず、今回の改正案は、企業活動への統制を持ち込もうとする色彩が強いということでございます。第二は、現在の改正論議は産業の実態から全く遊離したものであり、長期不況のもとで呻吟しておりますわれわれから見ますと、まるで別世界での議論のような気がするということでございます。第三は、構造規制の問題点でございます。そして最後は、公正取引委員会のあり方の検討の必要性でありまして、独禁政策と産業政策が整合性を持って検討され、立案され、実施される制度的メカニズムが存在していないという問題でございます。
 そこで、まず第一の点でございますが、今回の改正論議が四十八年末の石油ショック前後に急速な高まりを見せたことは否定できないわけでありまして、そのため当時のいわゆる狂乱物価を背景にして、独禁政策に物価対策としての過大な期待がかけられ、また、当時盛んに行われておりました大企業批判に独禁法改正が安易に結びついて考えられることとなったわけであります。しかし、大きいことは悪いことだ、大企業の値上げは何とかして規制しなければならないという発想による改正は、独禁法本来の趣旨とは正反対の公正取引委員会による統制経済を志向することになりかねない。
 その典型的な例が価格の同調的引き上げに関する報告徴収の規定であります。改正案によりますと、トップを含む二つ以上の企業が三カ月以内に同様な値上げを行うと、公正取引委員会は値上げ理由の報告を求めることができるということになっておりますが、エネルギーコスト、原材料費、人件費など共通のコスト上昇要因があれば、同様な値上げが行われるのはきわめて自然なことでありまして、特に基礎資材のような製品差別化のない商品におきましては、安い物と高い物が市場で三カ月以上も併存して売られるというようなことは考えられないわけであります。買う方はできるだけ安く買おうとしておるのに、よそより高い品物を三カ月以上も相手に買わせていたとすれば、それこそ独占的な力が働いているわけであり、むしろこのような事態の方が独禁法上問題になるのではないか。
 そもそも市場において競争が行われていればいるほど価格の形成は個別企業の自由になるものでなくて、市場の動向によって価格は一斉に上下するものであり、これをあたかも人為的な価格操作とみなすような同調的値上げという用語を用いて、独禁法の適用対象に組み入れることはまことに理解に苦しむところであります。独禁法上何ら問題がないにもかかわらず、一々値上げ理由を公正取引委員会に報告しなければならないということは、結果において、公正取引委員会の監督のもとに価格を設定することであり、公正取引委員会の価格介入につながり、市場経済のよさを失わせるものであって納得できないわけであります。
 また、値上げ理由を説明するには原価等の企業秘密にかかわる資料まで提出せざるを得ないであろうと思われますが、率直に申し上げて企業秘密の維持に非常な不安を感じるわけであります。最近、新聞で報じられましたエポキシ樹脂業界についての企業秘密漏洩事件はわれわれとしても重大な関心を寄せており、すでに国会において本件につき質疑が行われたことでもありまして、国会で十分その真相を究明していただきたいと存じます。
 しかし、独禁法第三十九条で公正取引委員会の守秘義務が規定され、仮にそれに違反した者が罰せられたといたしましても、秘密を漏らされた企業にとってはそれで済む問題ではございません。価格の同調的引き上げに関する報告徴収の規定は、そもそも必要のない規定であり、また、いま申し上げた企業秘密の点からも不安を禁じ得ないわけで、ぜひ削除していただきたいと存じます。
 次に、第二に申し上げたいことでございますが、日本の産業が現在置かれている状態について十分御理解をいただいた上で、改正案を審議していただきたいということでございます。
 経団連では、ことしの三月、わが国の主要二十二産業の当面する問題点、対応策、今後の発展方向などを「減速経済下の日本産業の針路」として取りまとめましたが、現在、各企業はきわめて深刻な不況下にあえいでおり、危機的様相を呈しております産業も多く、この打開のためには産業構造の転換を積極的に図っていかなければならない状況にあります。
 たとえば繊維産業は、発展途上国の追い上げ等もあり、いわば業界の存亡をかけて構造改善を図っていかなければならない。国際競争力のある産業として息を吹き返した米国の繊維産業と比較をしてみますと、紡績及び織布の会社数は、それぞれ米国の五百社、千五百社に対し、日本は千四百社、五万八千社もあります。日本の繊維産業としては企業の整理統合を進め、効率的な生産・流通構造にすることが喫緊の課題となっております。平電炉業界が現在大幅な過剰能力を抱え、きわめて深刻な状況にあることは御承知のとおりであり、不況カルテルによる需給調整とともに過剰能力の処理が大きな問題となっております。また、化学肥料も、新たな肥料輸出国の台頭や肥料自給化の動きによってわが国からの肥料輸出が激減しており、この業界でも過剰能力の処理が大きな問題となっております。さらにアルミ製錬業界は、電力コストの上昇により現状では輸入品に対する競争力も失われており、その解決の道としては、一方で海外立地を促進するとともに、他方、国内においては垂直統合を図っていかなければならないというのがよく言われておることでございます。
 以上、幾つかの例を挙げましたが、こういう例はまだ他に幾つもあります。
  一方、国際競争力のある産業と見られております造船、鉄鋼、自動車、家電等については、わが国からの輸出について欧米諸国からの批判が高まっております。国際協調のもとに各国がお互いに繁栄していくためには、秩序ある輸出を実現していかなければならないわけでありますが、そのためにも輸出について業界内の協調が要請されております。
 いずれにいたしましても、今回の不況は単なる不況とは異なり、マクロ的な景気政策だけでは不十分であり、構造不況業種については業種別にもきめ細かい対策を立てていく必要があります。その際、わが国産業に伝統的な過当競争体質が大きな問題になっております。競争促進も重要でありますが、いま申し上げたように、水平的にも垂直的にも企業間の協力、提携を強化していくことこそ、いま最も強く求められているところであります。今回の改正案の方向は、このようなわが国産業の実情から見ると、率直に言ってうなずけないわけであります。株式保有の規制強化は、このような企業の再編合理化を妨げるものであっても促進する作用はないと思われます。また、不況カルテルの迅速な認可はもちろんのこと、構造改善のための業界の話し合いなどについても、この際、むしろ独禁法の適用を弾力的に考えるべき時期であると考えております。
 第三の問題は、構造規制でございます。
 創造的、革新的な企業活動が経済進歩の重要な原動力の一つであると思いますが、この点で最も優秀な成績をおさめ、自己のシェアを拡大し得た企業に営業譲渡が命じられる可能性があるというのは問題でございます。これら優秀企業はそれ以上のシェア拡大を恐れて、もはや努力をしなくなるでありましょうし、これは企業のみならず国民一般にとっても好ましくないことであります。したがって、われわれは構造規制の導入には基本的に反対であります。
 今回の改正案によりますと、弊害がなければ問題にされないということになっておりますが、独占的状態の定義に挙げられております各要件は、それだけでは国民経済上弊害ありとはとうてい断定できないと考えます。
 また、営業譲渡命令は、従業員等多くの関係者に深刻な影響を与えるものであります。そしてその実施に当たっては、たとえば商法との関係など多くのむずかしい問題があり、実際の発動は困難だと言われております。そのようなむずかしい問題についての判断を、公正取引委員会のみでできるのでありましょうか。違反行為の取り締まりとはおのずから異なる問題でありまして、構造規制は、産業政策として内閣の責任において行うべきであり、したがって少なくとも実施に当たっては主務大臣の同意を得ることを最低の要件とすべきであると考えます。
 このように重大な問題点が十分煮詰められないまま、なぜ急いでこのような規定を新設しなければならないのかが納得できません。大きいことは悪いことだという単純な考え方から政治的に取り扱われているような気がするわけであります。
 最後に、公正取引委員会のあり方の再検討の必要性を強調したいと思います。
 先ほどから繰り返し申し上げてまいりましたように、わが国経済が現在の危機を乗り越えていくためには、産業政策ないし一般経済政策と独禁政策がよく連絡をとり合って、整合的に展開されなければならない。しかるに、公正取引委員会は内閣から独立して職権を行使するようになっているため、内閣の行う経済政策との間に乖離が生じた場合、その調整を保障する制度的メカニズムが存在していないことが大きな問題であると考えます。また、大変失礼な言い方になるかもしれませんが、現在のように経済実態から全く遊離した改正論議が行われるようになってしまつだのも、産業政策や一般経済政策から独立して独禁政策を展開し得ることになっている、このような公正取引委員会のあり方にも重大な原因があるのではないでしょうか。
 さらに、公正取引委員会の審判のあり方についても、それが事実上一審としての資格を有しているにもかかわらず、公正取引委員会が審判と訴追の両機能を兼ねているという点に問題があります。
 独禁法が経済の基本ルールの一つとして定着するには、経済界のこのような公正取引委員会の行政組織上のあり方に対する疑念に対し、はっきりした回答を示す必要があり、独禁法改正を論ずるのであれば、実体規定とともに、当然、公正取引委員会のあり方も検討しなければならないと考えます。そうして初めて車の両輪のそろった改正論議ということが言えると思います。
 われわれは、独禁法の改正については、政府に審議会でも設け、関係者が集まり、何よりも経済実態の十分な分析を踏まえて、公正取引委員会のあり方を含め、何年もかけて徹底した分析を行うべきであり、それだけの値打ちと必要のある問題だと考えます。
 良識の府と言われる参議院の先生方の御理解と、党派を超えた公正な御判断をぜひ仰ぎたいと存じます。
#5
○委員長(加藤武徳君) ありがとうございました。
 次に、山田参考人にお願いたします。
#6
○参考人(山田稔君) ダイキン工業の社長の山田でございます。あわせて関西経済同友会の代表幹事を現在務めさしていただいております。
 私の会社といたしましては、今回の独禁法改正におきます当面の直接の利害関係というものはないのでございますけれども、企業経営に携わる者の一員といたしまして、せっかく機会を与えられましたので、今回の独禁法の改正に対しまして若干の意見を申し述べさしていただきたい、そういうように思っております。
 まず、独禁法改正についての今回の基本的な姿勢についてちょっと申し上げてみたいと思います。
 今回の独禁法の改正について考えますのに、私どもが従来独禁法に対しまして持っておりました基本的な理解というものを根本的にぐらつかせるような内容のものを含んでいるように思われてならないのであります。と申しますのは、この改正の底に流れる思想というものがいわゆる大企業に対する不信というものを前提にしているということでありまして、企業というものに対しましてとにかくがんじがらめに縛っておかないと、また監視しておかないと悪いことをするんだというような基本的な姿勢、そういうものに立脚しているというふうに考えられるわけであります。
 もともと今回の改正論議というものは、四十九年に起こりました石油ショック以降のいわゆる狂乱物価騒ぎのすべてが企業の便乗値上げによるものであるという、これは誤解を非常に多く含んでおると思いますが、そういうものに基づきます企業不信に端を発しておるものでありまして、その考え方が今回の改正案にも引き継がれていると私は思っております。残念ながら、石油ショックという異常事態に際しまして、確かに一部の企業活動というものは社会から批判を受けても仕方がないという面が存在したことを事実として認めざるを得ないのであります。
 しかしながら、大多数の企業というものは、当時一挙に四倍にもなりました石油価格の暴騰というものに耐え忍びまして、輸入原材料をもととするそういう材料の価格アップというものをストレートに価格には反映させなかったはずであります。また、その後に引き続いて起こりまして現在まで続いております長期的な不況のもとにおきましても、やはり失業問題というものが日本の社会に混乱を招くということを配慮いたしましていろいろな施策を講じてきて、また、そういう雇用問題というものが福祉の原点であるというような観点から、われわれ企業といたしましても、社会の期待にこたえるべく、相当企業が苦境に立っておる中におきましても、人員整理等というような安易な合理化の手段に訴えないで、歯を食いしばって今日までがんばってきておるというのが実情でございます。このような困難な状況のもとでも、なおかつ企業は日本の社会の中の重要な構成の一員として、いわゆる過去におきまして国民から受けました誤解を解くために、また社会との信頼関係を回復しなければならないというふうに懸命に努力いたしておるわけでございます。
 そのいま申しました信頼関係、特に相互信頼関係というようなものが、いわゆるやる気やバイタリティーを発揮するためにはいかに重要であるかということは、これは個人と個人の間の例に見ましても非常にはっきりすることであると、そういうふうに私は思うのであります。人間というものは、相手からやはり信頼されればその信頼にこたえたい、そういう努力をするものでありまして、また相手の信頼がなくなったときには逆に非常に不安を強めたり、疑心暗鬼に陥ってやる気をなくなすというのが一般でございます。政府や社会と企業との関係におきましても私は同様であると、そういうふうに思います。企業に対する社会からの信頼がありまして、そこで初めて企業ば自信を持って活力のある経済活動を行うことができるものでありますし、また、それがひいては国民生活の向上により貢献し得る存在になり得るというふうに考えるのであります。
 そもそも自由社会というものは、こういった相互の信頼関係をベースにして成り立っておるものと私は信じております。それにもかかわらず、今回の独禁法改正が、大企業に対する不信、言いかえれば大企業または企業というものはほっておけば何をするかもわからない、そういう考え方を基本にして進められているということは私ども企業人にとって全く理解に苦しむところであります。独禁法は、本来、企業間における自由で公正な競争を促進して企業の活力と創意を発揮せしめるための法律でありまして、自由経済体制を維持、発展させるための基本的なルールであるというふうに理解いたしております。その改正が自由社会のよって立つ基盤であるところの信頼関係というものを、企業不信という形でみずから否定するところから始まるというのは、私としては、独禁法それ自体の存在理由を否定するものになるのではないかというふうに考えるわけであります。
 もちろん、独禁法を時代の変化に応じましてこれを見直す、また現実に事実となってあらわれた弊害が現在の法の適用ではどうしても防止できない、そういうようなことになれば、その場合には改正が行われること、それまでを私は否定するものではございません。しかしそのような場合でも、法の改正によってもたらされます国民の利害得失について、たとえ多少時間がかかったといたしましても、広くいろんな角度から十分に検討した上で改正されるべきであります。その点から言えば、今回の改正は、そういう実害というものが明らかに起こっておるという状態でもありませんし、また時間に迫られて改正のもたらすデメリットという面についての検討が非常に不十分であるというふうに考えざるを得ないのであります。
 以上の観点から申しますと、今回の見直しは、現行独禁法がわが国の歴史的社会的風土により適合し得ることに焦点を合わせてさらに検討されるべきでありまして、特に重要なことは、今後予測されます減速経済の体制のもとにおきまして、かつてわが国の高度成長にあずかって力のあった企業のバイタリティーを維持し続けるために、日本企業の持つ特質を十分に認識した上で改正に対する検討が行われるべきであったと、そういうふうに思います。
 このような視点から、私は、今回の改正点のうち、特に企業分割と同調値上げを重点に、その具体的な意見といいますか、感想をちょっとつけ加えさしていただきたいと思います。
 構造基準についての疑問でありますけれども、今回の改正案における企業不信のあらわれは、企業分割、同調値上げ理由の報告という規定に見られる構造基準の設定において顕著であります。
 まず、企業分割規定について申し上げますと、形の上で大きなシェアを持ち寡占となった企業に対して、独占状態の上にあぐらをかいて競争することをやめる、そして安易に価格のつり上げを行うという、そういう不信感を前提とした規定であるように思われます。
 日本の企業が先進諸国の企業と違う特色のもう一つは、終身雇用制度のもとに経営者と従業員が団結しておるといいますか、そういうことで安易に人員整理はしないと、先ほど申し上げたようなことでありまして、言いかえれば運命共同体的であると、そういう強い労使の信頼関係というものに結ばれ、それをベースにして従業員の企業への帰属意識というものが非常に強いという点でありまして、一たん定められました経営目標に向かって総力を結集するに非常に向いておる体制になっておりますし、これが企業のバイタリティーの源泉である、そういうように思います。そういうふうに一体となってやってきてシェアが大きくなったと、それが云々されるということ、これは時間の関係で、いま山下さんがすでに述べられましたのと全く同意見でございます。これは大変企業にとっては不当なことである、そういうふうに考えざるを得ないわけであります。
 今回の構造規制におきましては、結局、企業みずからの意思によらないで、企業がいつ分割されるかわからないと、そういう不安を経営者にも従業員にも持たせるものでありまして、現にシェア基準に該当する企業の中には、もうシェアをいま以上どうして高めないようにしようかというような後ろ向きの努力をしておられるという企業がすでにあるというふうにも聞いておるわけでございます。そのような企業分割の不安及びそういう企業のもとで、より安くよりよい商品、サービスを社会に提供するということのための合理化とか研究開発ということが、十分に行われるとは私には考えられないわけでございます。
 また、他の日本企業の特質として挙げておかなければならないのは、日本の経営者がいわゆる目先の利潤確保よりは、将来に向かって企業の成長発展を志向する点が非常に強いという点でございます。このことがいわゆる過大とも思えるような設備投資、研究開発投資もあえてし、それがまた過去におきましては、わが国経済の高度成長をもたらした大きな要因となったという点にもひとつ御留意をお願いいたしたい、そういうふうに思います。
 また、この点に関しまして、日本の企業は非常に強い競争的な体質を持っておりまして、各企業は新規算入、関連業界進出ということを絶えず考えておるわけでございます。これは一概にほめられた現象ではございませんけれども、海外におきまして、外国企業に対してのみならず、日本の企業同士が過当競争を展開しまして、逆に日本はもう商品だけでなくて過当競争まで輸出しているという相手国からの非難をこうむるというようなことにまでなっておる。これは非常にその競争的であるということの典型的な例であろうと私は思います。
 なるほど、一応の弊害要件を伴ってはおりますけれども、今回の構造要件を主体とする企業分割規定を拝見いたしますと、以上述べましたような日本企業の特質についての十分な認識のもとに考えられたものであるというふうにはどうも思われない。いたずらに企業に不安感を与えて、その活力を喪失させる方向に誘導しかねない大きな危険性をはらんでおるものと考えまして、このような危険をあえて冒してまで果たしてこの条項を付加する必要があるかどうかということを考えますときに、私はこれに反対せざるを得ない、そういうふうに思うわけでございます。
 同調値上げについて申し上げますと、これは同調値上げの理由報告という規定でございますけれども、ここにも上位三社の集中度七〇%以上という構造基準というものが基本になっておるわけでございまして、形がそうなっているということだけで値上げ理由の報告を求めるということは、企業に対するやはり不信感のあらわれであると受け取らざるを得ないのでございます。
 私自体の会社におきましても、なるほど日本経済全体の消費量から見れば微々たるものでございますけれども、やはり鉄鋼は原価構成上非常に大きな原材料ということになっております。鉄の消費者という立場から私どもがいかなる購入の仕方をしているかと申しますと、同種の鉄鋼製品につきましては必ず複数の会社から購入いたしておりますわけでありまして、これが企業が物を購入する場合のごく普通の常識的な方法だろうと思います。
 また、購入は、商社または問屋を通じて買うというのも常識でありまして、その価格は極端な差はないにしても同一ではございません。その差は私どもが各社から購入するその量の違い、それから納期、支払い条件、そういうものによって当然違いますし、また、われわれの要求に対するメーカー側の技術サービス、また、クレーム等が起こりましたときに問屋が中心になりますアフターサービス、そういうようなものによっても違うわけであります。むしろ完全に同一の価格であるということはまれでございます。
 私の会社におきまして、石油ショック以後、何とか収益を上げようとして、私ども先頭に立って、従業員一丸となって努力しておるわけでございますけれども、やはり利はもとにありということでありまして、材料購入についても一銭でも安くという考え方でその担当者は単価交渉に当たっておるわけでございまして、値上げの額はもちろんでありますが、値上げの時期の延期など細かい点にまで努力をいたしております。決して一方的値上げ要求に対して、これをそのまま受け入れるというようなことは絶対にないわけであります。
 この規定について考えますと、価格が同調的に上がるという裏にはカルテル行為があるんではないかという疑いのもとに考えられておるのだというふうに思いますけれども、先ほど申しましたように、日本の企業は成長志向、競争的体質を持っておるわけでございまして、これは寡占企業といえども同様であろうと思います。現実に当社の場合、価格または取引条件に差があるものですから、少しでも有利なところからよけいに買ったり、各社からの購入の構成比率というものは毎年変わっておる、そういうことが実情でありまして、つまり価格は安い方に収斂せざるを得ないと私は考えております。
 私の会社では、住宅用や業務用、そういうような空調製品が非常に大きな部分を占めておりますんですけれども、われわれの業界は、鉄鋼製品に比べれば、それぞれ各社の製品に特徴が多少ございますけれども、それでもなおかつ同じ機能を持つものにつきましては、各社の価格はそれほどの差はございません。原材料の価格上昇などによってやむを得ざる値上げをいたします場合でも、競争上、値上げは同調的にならざるを得ないのであります。各社とも激しい競争をしておるだけに、他社よりも目立って高く売るということは全然できないのでありまして、このような現実的な経験から考えましても、品質に差のない商品が、時期も価格も大体同じような値上げにならざるを得ないということは私は常識的に理解できるわけでございます。
 大分時間も経過いたしましたので、以上のようなことがこの二つの問題に関する私の疑問でありまして、この点に関しましては、先ほど山下さんが言われましたように、さらにいわゆる業界の実情というものを詳しくお調べいただきまして御善処をお願いいたしたい、そういうふうに考えるわけでございます。
 以上をもって終わります。
#7
○委員長(加藤武徳君) ありがとうございました。
 次に、山本参考人にお願いいたします。
#8
○参考人(山本勝市君) 最大の欠点と考えます三つの点について申し述べたいと思います。
 第一は、今回の改正は新たに競争のルールをつくるのだと提案理由に説明されておりますけれども、それは重大な錯誤であります。この改正は、金融会社の持ち株制限を百分の十から百分の五に変えるという点だけがルールに関係するのであって、あとは全部公正取引委員会に経済秩序への介入権を与えようとしたもので、競争のルールの改正でも新設でもありません。これまで共通のルールにのみ拘束されてきた業者は、改正後は、公取の命令にも拘束されることになります。従来、ルールの支配によっておのずから生まれてきた自由の秩序は、改正後は、公取の意思によって破られ得ることとなります。このことは自由経済にとって致命的な変革でございますから、十分慎重に御検討を願わなければなりません。
 第二に、独占的状態を排除して競争を回復しようという企ては不可能な幻想にすぎないということであります。不可能な幻にすぎない。行為は、行いはルールで阻止することができますけれども、状態をルールで阻止することはできません。相撲のルールをどのように変えてもだれが勝つかという状態を規制できないのと同じことであります。いわゆる独占的状態は状態であって行為ではございませんから、ルールをもって阻止することはできません。そこで、今回の改正はルールをもってするのではなくて、公取の命令をもって排除させようとしておるわけでございますけれども、しかし、ルールを守ることによって生まれた欠陥の状態を命令で排除しようとすれば自由の秩序は必ず乱れます。
 一体、競争を回復するために独占的状態を命令で排除しようという今回の発想はどこから生まれたのかと考えますと、私は、競争と独占という概念の誤解から生まれたものだと考えるのであります。完全な競争と完全な独占という二つの概念を設定して、その中間に存在するいろいろな市場形態を多かれ少なかれ独占的要素を含む不完全競争として説明したことは近代経済理論の一つの功績であります。しかし、不幸にしてそこから、今日の経済はもはや競争に依存するよりも独占に依存する独占資本主義経済だという誤解が生まれました。そうしてさらに、私的の、私の独占を国家の独占へという社会主義の主張があらわれ、また一方では、権力で競争状態を回復しようとする企てが生まれました。今回の改正案はこの後の一つの例だと思います。
 私があえて不幸にしてと申しますのは、完全な競争というものは、組織された市場の最高形態と言われる株式市場においてさえも近似的にのみあらわれ得るものであって、頭の中で描くことはできましても、現実には存在し得ないものであります。もしその競争を目指して独占的要素を権力で排除しようとすれば、それこそ角をためようとして牛を殺す結果となるからであります。
 自由経済の反独占政策において意味のある競争の概念は、現在ある生産力の配分が消費者の決定によって導かれる経済秩序、そういう経済秩序を維持するという見地から出発したものでなければなりません。そうしてこの見地から出発するときに、競争の本質は、生産者たちが共通のルールのもとに消費者の愛顧――消費者の注文と言ってもいいと思います――消費者の愛顧を目指して堂々と勝負をするところに求めらるべきであります。そうしてこの勝負が続いておる限り、経済秩序は競争に依存しておるのであって独占に依存するものではないと考うべきであります。
 ところで、生産者が共通のルールで勝負をする以上、ある業者の市場の占拠率、シェアが大きくなるのはあたりまえであります。他の多くの業者がそれを好まないといたしましても、それは避け得ないことであります。しかも、市場シェアの大きいことは業者にとっては消費者の愛顧をかち得た証拠であり、また業者のバイタリティーの源泉でもありますから、正しい行為のルールを守って得た結果である限り非難される理由はありません。価格や利潤やコストについても同じことであって、ルールに従った勝負の結果である限り、正不正をもって、ジャスト・アンジャストをもって論ずべきではございません。そもそも正とか不正とかは人間の行為についてのみ言えることであって、行為の結果や状態について言うのはナンセンスだということを改正案の立案者たちは気づいておられるのかどうか疑問に思います。
 第三点は、カルテル禁止の原則をそのままにして、ただ罰則の強化によってカルテルを防ごうとする政策は弊害の方が大きいと私は信ずるのであります。わが国がカルテル列島などと言われる状態になった主なる理由は、罰金が軽過ぎたからとか課徴金制度がなかったからなどということではありません。カルテルの中にも競争制限を目的としないものもあり、競争制限を目的とした場合でも、共倒れを防ぐために、破滅的競争を免れるためにやむを得ず行った場合もあります。また、企業の数に比べて取り締まりに当たる公取の手が少なかったことや、立証がきわめて困難なことなどいろいろでございますけれども、何よりも、よかれあしかれ政府が支持すれば違法とされなかったことが最大の理由であったと思います。政府が支持すれば違法とされなかった、これが最大の理由であったと私は考えるのです。
 元来、私企業の競争は本能と言えるほど強いものであって、政府の助けなしに高利潤のために制限カルテルを結成することはきわめて困難なもので、業界の中に一つでも自分の力で拡大の望みがある事業があれば、自主的な制限カルテルの結成は不可能に近いものであります。昔から、どこの国でも、私企業の制限カルテルの結成に政府の援助を求めたことがその何よりの証拠であると考えます。競争制限のカルテルは、一般的には好ましくないことと言えますけれども、一概に悪いとは言えません。国際関係の上からでも政府が保護しなければならないものがあることは、最近の福田総理の約束から見てもわかるところであります。
 このような事情を踏まえて、自由主義の経済学者である、しかもその最高峰にあるハイエックやあるいは故レプケ教授などは、自由国家における反カルテル政策としては、政府がカルテルと闘うよりも政府がカルテルを保護しない方が有効であると言っております。そうして制限カルテル契約を違法として刑罰の対象とする原則をやめて、競争制限カルテル契約を契約自由の乱用と見る法理によって、これを私法上無効行為とする原則を提唱しておるのであります。そうして国家が特に保護すべきカルテルは例外として明文をもって規定すればよいと述べておるのであります。この原則が今回の改正作業の中で少しも顧みられなかったとすれば、私ははなはだ遺憾なことだと思うのであります。
 私は、わが自由経済に活力を与える最善の方法を率直に言えと言われれば、ハイエックやレプケの提唱する原則、つまり違法行為として刑罰の対象にするのではなくて、私法上――私の法律上、無効の行為と宣言するというこの原則を採用するとともに、独禁法を廃止して、公正取引委員会を解散することであると思います。これをやれば、私は日本経済に本当の活力を与えることができる、公明正大な秋空でゲームをやることができるのではないかと思うのであります。
 で、最後に一言、私は、この改正案がそのまま成立した場合にどういうふうに推移するかということについての私の予想と私の願いをつけさせていただきます。
 昭和四十九年の十二月二十六日の朝日新聞に、前の公取委員長高橋さんは、この改正案が成立して構造改革のこの法案ができた場合に、公正取引委員会としては、運用の上には慎重な上にも慎重に臨むと述べておられますが、私は澤田委員長も高橋さん以上に慎重な態度で運営に臨まれるものと想像いたします。しかし、もし日本経済に打撃を与えないで慎重の上にも慎重に運用に当たっておりますと、恐らく私は率直に言って野党の諸君やあるいは消費者団体から猛烈に非難されるであろうと思います。そうかといって、それらの声に動かされて公取委が行動を起こしますと、日本の自由経済は大変な打撃を受け、混乱に陥ります。恐らく今度の改正によって、提案理由に説明されておるように、公正にして自由なる競争を促進し、自由経済に新たなる活力を与えると、この説明を本当に信じて、この法案が通ればそうなると期待しておる人は恐らく幻滅を感じるでしょう。
 しかし、私は率直に申しますけれども、今回のこの改正案を強く支持してきた中で、私は、マルクス主義を主張してきた方々は、恐らく、この独禁法を施行した結果、競争が回復しない、いわゆる独占的状態も直らないというようなことになると、自由競争は必然に独占資本主義に進む、その独占資本主義は必然に社会主義に進むほかはないんだというマルクスの予言が的中したということを宣伝するだろうと思います。で、現在、こういうルールによって、法の支配によってのみ存在し得る自由の秩序を公取の意思によって支配できるというような、そういう案を強く支持しておるマルクス主義の方々は、これによって日本の自由経済が活力を得るものだと本気で考えておるとは想像できません。恐らくこれによって大企業に打撃を与えることができる、その結果日本経済は混乱に陥る、そうすると、その後に初めて、もはや自由競争秩序は回復できないんだから社会主義に進むほかに道はないという、そういうことを展望した上で強く主張しておるものと考えざるを得ないのであります。
 で、私は、高橋委員長が言われたように、法が成立した場合に運用の上には、慎重の上にも慎重に臨むというようなことではなくて、法そのものをつくる前に慎重の上にも慎重であってほしい。私は、どうして衆議院が満場一致でこういうものを通してきたか……
#9
○委員長(加藤武徳君) 山本参考人、時間が超過しました。
#10
○参考人(山本勝市君) まことに了解に苦しんでおる次第であります。
 以上、私の考えを申し上げました。どうか皆さんも参議院の良心にかんがみても、この法案をもっと慎重に御検討を願います。
#11
○委員長(加藤武徳君) ありがとうございました。
 次に、実方参考人にお願いいたします。
#12
○参考人(実方謙二君) 実方でございます。
 私は独占禁止法に興味を持ってかなり長い間勉強しておりますので、そのような立場から、研究者としての立場から、今回、国会に提出されております独禁法改正の政府案及び衆議院で可決されました修正案でございますか、それについて意見を述べさせていただきます。
 まず最初に、この今回の独禁法改正の動きの全体に対する感想ということでございますが、これはその内容についてはいささか疑問点も残っておるということをこれから申し上げますけれども、とにかくその強化の方向で政府の改正案が提出されておる、そしてさらにこれは参議院の独自の審議とはまた別個の問題ではございますが、衆議院で全会一致で成立しておるということは非常に画期的なことであると考えております。そして、これが実際に独占禁止政策の運用を強化するという内容をもってもし成立するということがあれば、それは非常に望ましいことである、こう考えております。
 で、この独占禁止法の改正に対しては、これまでの各参考人から、これは公取委による過剰介入を招くものであって自由経済体制の否定であるとか、公取委の権限行使の独立性に対して疑問があるというような考え方も述べられたわけでございますが、これは端的に申しまして、今度の改正のメリットというものは評価はするわけでありますが、それほど実際に過剰介入になるというほど実効性が強いというほどのものでもないわけで、むしろ私の方としてはその実効性が余りないということの方に疑問点を持っているわけですけれども、今回の改正はこれまでの独禁政策の運用の限界から見ました最低限度の改正ということと評価されるわけで、決して公取委による過剰介入を招くようなおそれのあるというものではないということであります。
 それから、経済に対する介入ということの意味でございますが、これは基本的な経済制度論になりますので、その専門家であります今井参考人等からも詳しくお話があるかとも思いますが、経済に対する介入は価格だとか生産量に対する直接介入と、それから競争条件を整備するための介入というのは全くこれは性質が違うものでありまして、競争条件を整備するというのは、端的に言いますれば、これは私的企業体制――私は自由企業体制という言葉を使いませんが、私的企業体制の前提条件を整備するためのものであって、これは決して企業活動の自由と矛盾するものではない、こう思っております。
 抽象的な議論になりますが、資本主義体制のもとにおいて私的企業の活動の自由というものが許されているのは、非常に抽象的な議論でございますが、それがその競争条件が整備され、そこではシステムとして競争によって私的企業の力の乱用が抑止されておる、そのために政府が直接的な介入をしなくてもよいという、そういうところに制度的な前提があるわけでありますから、したがって、このような競争条件を整備するための最低限度の介入というものは決して私的企業体制とは矛盾するものではないわけであります。むしろ独占禁止法の強化というのは、インフレとかその他いろいろな経済の行き詰まりに対処するための一つの方策として、先進諸国において、最近、独占禁止法の強化というのが着々と実現されているところでありまして、そのような流れを考えてみますれば、今回程度の独占禁止法の改正をさえ、自由経済に対する過剰介入であるというのはいささかアナクロニズム的な発想ではないか、こう考えるわけであります。
 そして、この独占禁止法の改正は突然出てきたという議論もございますし、実態を無視するということもございますが、私は一介の学者でございますから、経済の実態については大変疎いわけでございますが、この今回の独占禁止法の改正というのは、昭和四十年代の初頭以来の現行独禁法の運用強化という流れの延長線上にあるものでありまして、これは再販規制であるとかカルテルの規制というものについて、これはもう政府がいろいろ消費者物価対策等を検討なすったときに独占禁止政策の強化が必要であるということを必ずうたっておられるわけで、それと整合性を持って独占禁止法の強化、運用の強化というのがこれまで行われてきたわけでございます。それはもう申すまでもなく高橋前委員長のもとにおいても、その前のずっと歴代の委員長のもとにおいて進められており、申すまでもなく現澤田委員長のもとにおいても、たとえば流通支配に対する規制の強化でございますね、これ等が着々と実現されておる、こういうことであります。
 そして経済の実態等についても公取委は、その人員等から調査能力の限界がかなりあると存じますが、かなりの程度の実態調査というものを長年継続しておりまして、そしてそのような実態調査とか運用の経験の上に立って、それをさらに一歩進めるという意味を持ってこの独禁法改正が政府から提案されたものと了解しております。
 で、これはもう常識に属することでありますが、この独占禁止法を強化するということは、いま申しましたように、むしろ私的企業体制の前提条件を整備するということでありまして、むしろ資本主義の最後の良心ないし最後の安全弁、むしろ安全弁という機能を持っているわけであります。したがって、そういうことを御了解の上、今回も政府案として独禁法改正案が提案されたものと了解しておるわけであります。そのようなことでありまして、この内容が実効性ある強化の方向に向かう改正案ということであれば大変望ましい、改正案の実現が望ましいことだと基本的にはそういうぐあいに考えているわけであります。
 そして、この衆議院で修正された点でございますが、これは細かい技術的な点になりますし、再々論じられているところで細かい点は申しませんが、カルテルに対する排除措置について新しく七条二項というものを設けたという点のこれを削除して、あと三項等がありますが、それが繰り上がるようになるわけですけれども、この点については先ほど申しました政府改正案の疑問点の大きな一つを解消するものでありまして、少なくともこの衆議院で修正された七条二項の新設でございますね、政府案の七条二項でございますが、新七条二項、これを削除するということは最低限度必要なことであり、かつ有意義なことであると存じております。これについては質問等ございましたらまたお答えしますが、細かいことになりますので申しません。
 それから政府案につきましては、いわゆる独占的状態に対する排除措置についての審査活動の開始前の事前調整措置の問題と、それから審決取り消し訴訟における新証拠提出要件の緩和という問題がございますが、これについては、将来、公正取引委員会の活動を制約するおそれがかなり強い規定ではありますが、特に後の新証拠提出要件の緩和というのは、理論的に申しますと非常におかしい規定なんですけれども、実際の運用の面においてそれが手続の遅延ないし非常な積滞を招くかということは、今後の運用のいかんによっては必ずしもそうはならない、ならないという保証はありませんが、そこが将来に禍根を残すところでありますが、必ず積滞を招くということではありませんので、この点については多少評価は留保さしていただきたいと思うわけであります。
 で、いま申した、特に事前調整措置については、それがどのような意味を持っているか、それが公正取引委員会の活動を制約するものではないかというようなことを審議の過程で詳細にされて、そしてこれが公正取引委員会の主体的な活動を制約するものではないという点が立法者意思として明確にされて疑問点が氷解する、そしてそれが今後の運用に生かされるということであれば、なおかつ問題点を残しながら、これはこれとして、全体として企業分割制度の新設とか課徴金の新設という前進面もございますので、これ全体として見ますと、非常に実効性のあるとまでは申せませんけれども、独占禁止政策の前進となる改正案になると、こう思っておる次第であります。
 それから、技術的な点もいろいろ用意してまいりましたが、ここでは申しません。基本的な点は、公取委のあり方に対する考え方の違いということでありまして、いろいろ議論を拝聴しておりますと、どうしても公正取引委員会の活動に対する不信感というものが基本にはあるのではないか、そしてその根底には競争維持政策に対する違和感というものがあるのではないかと思います。そしてこの競争維持政策に対する違和感というものが根拠のないものであることはいままで申したとおりでありまして、公正取引委員会も権限行使の独立性が与えられるとは申せ、これまで私どもが再々にわたって批判してまいりました点は、公正取引委員会の活動が緩やかに過ぎると、そしてそれに対する国民のチェックが全くできないという点を、特に新日鐵合併事件等の際にわれわれは批判したわけでありまして、その公取委に対する不信感というのはいささか見当違いなものではないかと思います。
 そもそも、公正取引委員会の委員さんというのは、政府が議院の同意を得て任命される。そして基本的な人事権のところでそのようなコントロールが及んでおるわけでありまして、さらにその予算等についてもコントロールが及んでおるわけです。この予算の点につきましては、課徴金制度の新設が非常に事務処理能力の停滞、その限界との問題で処理件数の減少を招くという、こういうことも指摘されておりますが、この予算等の点についても、真に独占禁止政策前進の方向に向けての改正案をここで実現されるということであれば、予算措置についても十分な措置を講ぜられるということが必要であろう。
 したがって、このような予算及び人事の点で基本的にはコントロールがあるわけでございまして、この権限行使の独立性については、事柄の性質上、ときどきの状況によって変わるような政策に左右されない基本的な政策として運用し、そしてそれを法律に基づいて法律の適用という形で運用するという、これはまあ公正取引委員会の活動は行政活動ではありますが、それも準司法的機能という非常にほかとは違った機能を持っておるわけでありまして、そのようなことを考えれば、個別的具体的な内閣の指揮権が及ばなくても、いま申しましたような予算や人員の点で基本的なコントロールに服しておれば、行政の一体性の原則には反しないというのはこれまでの通念的見解であります。
 そして、結局、公正取引委員会も全体として見れば行政機関の一部ということで、したがってその行政機関の一部に対する不信感を根拠として議論を進められるということはかなりおかしなことではないかと思うわけでありまして、むしろ行政委員会という形で良識が結集されて、これは行政委員会制度の趣旨はそういうことでございますが、そして国民経済と申しますか、全国民の生活の向上に役立つような独占禁止政策の運用がそこでなされるということは制度的にもむしろ期待されているところであります。
 そろそろ時間が参ったようなので、技術的なことはいろいろございますが、基本的には先ほど申しました二点でございますね、事前調整制度、それからもう一つ、同調的値上げ制度がこれまでの一般的な調査権及び一般的な公表権について制限するものではないという点が、審議の過程でそういう疑問点が氷解されることを望みまして、最後に、これははなはだ僭越でございますが、今回衆議院で修正された点を含めまして、その審議の過程で疑問点が氷解するという条件つきで、今回の独禁法改正案の成立を強く希望するということを述べさしていただきます。
#13
○委員長(加藤武徳君) ありがとうございました。
 では、次に、今井参考人にお願いいたします。
#14
○参考人(今井賢一君) 一橋大学の今井でございます。
 私は、経済学者の観点から、今回参議院に送付されたこの改正案に基本的に賛成であるという立場から、三点、参考意見を申し述べたいと思います。
 まず第一は、現時点でなぜ独禁法を改正する必要があるのか、そういう点についてであります。いま参考人からいろいろ御意見がございましたように、こういう不況の中でなぜ改正する必要があるのか、あるいは狂乱物価のころの問題提起は終わったんではないかという意見があるんですが、私はそうではなくて、いまの時点においてこそ独禁法の改正というものは必要であると思います。
 その第一点は、要するに問題の本質は、われわれが取り組まなければならない問題というのは、スタグフレーションという点にあるということであります。つまり不況と好況とが同時に存在する、あるいは不況とインフレとが同時に存在するという問題を抱えていて、不幸にしてこの問題に対していま経済学の観点から有効な処方せんはございません。しかし、経済が抱えている問題はスタグフレーションでありますから、それに対してはどうやって対処するか、その点が基本的な問題なわけでありまして、その観点から私はぜひとも独禁法を強化していかなきゃならないというふうに考えています。
 その意味は、要約して申し上げますと、要するにいま不況であるからいろいろな対策が必要であるということは事実であります、しかし、同時にインフレの心配も抱えている、それに対してどうやって対処していくか。インフレの懸念があるからこそ不況対策も中途半端になり、ケインズ流の政策も十分できないわけであります。したがって、この不況を打開していくためにもどうしてもインフレというものに対して、あるいは寡占的な価格の上昇というものに対して何がしかの手を打っておかなければならないわけでありまして、そういう点で不況であるから独禁政策の手綱を緩めていいとか、あるいは不況であるから独禁政策を緩和しろということは全くおかしなロジックなわけでありまして、どうも私お伺いした限りでは、その問題のポイントがやっぱりずれていると思います。つまり、現実の日本経済の抱えている問題はそういう問題を解決しなきゃならないわけでありまして、そういう観点から私はやはり独禁法を現時点で改正すべきだと思います。
 それから第二は、寡占の弊害は現にあるかどうか、あるいはそれに対して、寡占の弊害がいま不況であんまりあらわれてないのになぜ改正するんだという意見があるわけでありますが、私はそうは思っておりません。しかしこれは省略いたしますが、仮にその点を認めるにしても、やがて寡占の弊害があらわれてくることはもう目に見えていると思います。
 つまり、高度成長の過程で、日本の企業の多くは非常に設備投資をし、安い価格で物を売って、そして代替製品の市場にも食い込んで高度成長をやってきたわけでありまして、その過程では、ある意味で基礎的な資材の価格も安定し、それほど高くならないというのは、企業の利潤を追求していく過程での有効な戦略であったわけであります。しかし、それが低成長に移る、それからいろいろな点で秩序が固定化してくるということになれば、やはり企業の中で価格を上げていく志向があらわれてくるのはこれは論理必然的でありまして、そういうことに対処するためにも、いまの時点で独禁法を強化するという方向で考えなければならないわけであります。
 そしてそれに関連いたしますが、この点が先ほどスタグフレーションということに関連して申し上げて基本的に重要な点なんですが、要するに、日本のインフレ率を決めているものは何であるかということになれば、それは寡占的なマーケットでの賃金の決定であり、それに応じた価格の決定であると考えなければならないわけであります。つまり、たとえば今回の春闘におきましても、鉄鋼業で賃金のベースアップの率が決まり、そしてそれに応じてある程度価格を引き上げようとされているわけでありますが、あれだけ物が余っているにもかかわらず、なぜ賃金が上がり、なぜそれで価格が上げられるのか。そのことが私どもが言っている寡占の持っている恣意的裁量権というものでありまして、そういうものに基づいて日本経済のインフレの基本的な率が決まっていくわけであります。
 したがいまして、それがスタグフレーションの持っている問題点でありまして、企業がいいとか悪いとか、大企業がいいことをするとか悪いことをするという問題ではないんです。そういう大企業の行動というのは経済の全体を動かし得るような力を持っているわけでありますから、それに対して、それが日本経済のインフレ体質を加速し、それが国民生活を破壊するというようなおそれのないようにあらかじめ手段を講じておく、あるいはそれに対して可能なあらゆる手段を考えるということは、これは行政の責任でありますから、そういう観点から言っても、私は、現時点で、そういう寡占的な産業に対して競争的圧力を残すということをあくまでも強調したいと思うわけであります。それが現時点でなぜ独禁法の改正が必要であると私が考えるかという理由であります。
 大きな論点の第二に、内容に入りたいわけでありますが、私ども経済学者の立場から、すでに数年前から、現行独禁法では対処できない産業組織上の問題があるということを指摘し、また提言も述べてまいりました。
 それは第一に、カルテルに対して有効な規制の手段がない。第二に、高度寡占的な状態が生じても、それに対しては何ら現行独禁法では手段がない。それから第三に、企業間の株式保有ということがかなり行われ、それが企業集団というような日本的な問題をもたらしているにもかかわらず、それに対して有効な手段がない。そういう三点を指摘し、そしてそれに対処するために独禁法を改正する方向について一つの提案をしたこともあります。
 そういう観点からいたしますと、今回の参議院に送付されてまいりました改正案の内容はこの三点にそれなりに対処しているわけでありまして、私はそういう方向で、カルテルの課徴金、それから独占状態に対する規制、それから企業間の株式保有制限というものに対する主としてその三点から改正案の内容を評価したいと思います。それで第一と第三の点につきましては余り議論もないようでありますから、主として論争の焦点でありましたいわゆる企業分割、つまり営業の一部譲渡の問題について多少意見を申し上げてみたいと思います。
 この点について、企業分割というようなものは構造規制をやり出したんだと、そして全く新しい何か産業政策に立ち入るようなことをやり出したんだという意見があるんですが、私はこれは多少誤解ではないかと思います。つまり、私どもも構造規制ということを市場構造を重視するという立場から不用意に使った面もあるのでありますが、ここで考えられているような独占的状態に対する規制ということは現行法でもやられているわけであります。
 それは御承知のように第十条に企業間の株式保有制限の規定があるわけでありますが、それには株式を取得しもしくは株式を所有していることが競争を実質的に制限することとなる場合にはそれが排除されるという規定になっておるわけですが、そのことはつまり株式を取得するだけではなくて、現に所有していることが競争制限をもたらしているならば、それはやはり現行独禁法でも排除されるわけです。同じく役員兼任についても同様であります。したがって、今回の独占的状態規制というのが、全くいままでやっていなかったことに何か新しいことをつけ加えたわけではありませんで、現行独禁法の延長線上で考えられてきている案なわけでありまして、私は、そのことは多少往々にして誤解があると思いますので、この際、その点をコメントをしておきたいわけであります。要するに、ポイントは、独占的要素を市場から除去していくということであって、構造とか行為とかいうことに余りこだわるのは意味がない。つまり行為の累積が構造になっていくわけでありますから、その点について何かこう異質のものというふうに考えるのは私は行き過ぎではないかと思います。
 それから、それでは企業分割は弊害規制なんだというふうに公取が言ったりあるいはそういう答弁が行われ、そういうふうに新聞紙上でも伝えられているのはなぜか、そういうのはどういう意味なんだという御意見があると思います。
 私は、これもやはり理にかなったことでありまして、要するに、ある市場で独占的状態が出てきた、ひとり占めに近いような状態が出てきた場合に、それに対処する方法は三つしかないわけでありまして、第一に、それを国営企業にするとかあるいは公益事業にして政府が価格を規制する。第二に、企業分割を命ずる。第三に、企業の自主的な抑制にまつ。この三つしかないわけでありますから、その第三の自主的抑制が望ましいというのはこれは企業のマネージメントの立場として当然であります。そして今回の改正の案でも、そのことによって現実に弊害が生じなければ、営業の一部譲渡、つまり今回の第八条の四は適用されないわけでありますから、それは実質的に弊害規制になっているということ、つまり、独占的要素を排除し、そしてそれをできれば弊害規制にとどめておきたいということになっておりますので、論理は一貫しております。そしてこの規定を加えることで現行の独禁法は首尾一貫し得るわけであります。
 以上が第二の点でありまして、最後に、第三点として、改正内容の評価について申し上げてみたいと思います。
 要するに、せっかく改正しても分割の規定は抜かずの宝刀であり、課徴金は大した効果がなくという種類の、いわば余り効果を期待できないんではないかという議論もあるようでありますが、私はやはりかなりのことを期待し得るというふうに思います。
 たとえば、第一に、カルテルに対する課徴金について見ますと、もちろんこの算定方法について経済学者の観点から注文もありますが、細かな点は除きますが、しかし、課徴金を導入するということは、いままでカルテルは要するにやればやっただけ得であって、そして公取から注意を受ければ、申しわけありませんでした、これからは気をつけますと言えば済んだ状態にいまあるわけですが、それに対して課徴金を取るということは、それなりにカルテルというものが企業の立場からも損なことだと、国民経済的にももちろん望ましくないことであるということを徹底していく上で有効な手段であるというふうに思います。
 第二に、いわゆる営業の一部譲渡についても、これについても今回の改正案にあるただし書きについてもいろいろ経済学者の観点から問題があります。たとえば経理の不健全性とか、あるいは国際競争力の維持というような余り概念のはっきりしないただし書きがついているということは問題でありますが、しかし、この規定が置かれることによって、いわゆる暗黙の協調によって少数の企業間で実質上のカルテルが行われているにもかかわらず、それに対して何らの規制の手段が用意されていない、そういう手つかずの状態が現状の独禁法にあるということを直すだけで、私は法の適用の不公正さあるいは独禁法の構えというものが変わるわけであります。つまり、あらゆるカルテルに対して対処していく、そして暗黙の協調的ないままで見えざるカルテルであったものに対しても、もしそれが弊害が生じているならばやはり対処するという構えをつくったわけでありまして、そのことの有効性はかなり大きいと思います。現実に、たとえば第四章の独占予防規定をこれから適用していく際にも、分割ということを導入しておきながら合併をどんどん認めるということはおかしなことになるわけでありますから、それに対してやはりいままでより厳しく考えていかなければならないということになるわけで、その効果はそれなりに考え得るというふうに思います。
 それから第三に、株式保有制限についても同様でありまして、株式の総額を規制するだけで有効なのかどうかということは大いに議論があり、私どももそれで十分とは思いませんし、いろいろこれも注文もあります。しかしながら、やはり総額規制を導入することによって企業間の株式保有の個別的、直接的な規制ということ、つまり現行の十条の適用というものがやはり厳しくなるということが期待し得るわけです。
 そして議論のポイントは、独占というものに対しては予防的に、つまり独占ないし寡占による支配の累積的な過程が始まる以前に、その前に規制をしなければ意味がないわけでありまして、でき上がってからでは何ともならない面が多いわけです。そういう意味からいたしますと、これまでの独禁法の運用で独占の予防的規制という観点が余りにもないがしろにされ過ぎてきたように思います。そういう意味で、今回の改正はそのことの重要性を確認するという意味もあって、私は日本の独禁政策の一歩の前進であるというふうに考えたいと思います。
 時間もありませんので以上で終わりますが、要するに、スタグフレーションという問題に取り組んでいく上で、やはり独禁法の今回の改正はそれなりに努力の跡が認められるのであって、もちろん注文はありますが、この方向で改正案が実現していく。そして日本経済が非常に発展してきたわけでありますが、要するにその成果が国民全体のものになっていないというところに問題があるわけでありまして、そういう方向へこの改正は橋頭堡になるということを願って、今回の国会でこの改正案が実現することを心から期待して、私の論述を終わりたいと思います。
 それから、先ほど委員長から御紹介がありましたのですが、私はきょう教授会と評議会がありまして、ちょっと議題の性質上どうしても出席しなければなりませんので、残念ながら午後の討論に参加できないので、このまま帰らさしていただきたいと思いますが、失礼の段お許しいただきたいと思います。
#15
○委員長(加藤武徳君) ありがとうございました。
 では、次に、大野参考人にお願いいたします。
#16
○参考人(大野省治君) 全国消費者団体連絡会事務局長の大野でございます。
 これまで消費者団体は、独占禁示法の強化、改正を求めて粘り強く長年にわたって運動に取り組んできたわけでございます。それぞれの消費者団体がありますが、その共通した立場を代表いたしまして意見を述べさしていただきたいと思います。
 消費者団体は教千に上ると言われておりますけれども、全国的な規模、中央団体といいますか、そういった団体――主婦連や生活協同組合あるいは団地の自治会だとかそういったもの二十団体で全国消団連を構成し、また、地域婦人会あるいは青年団協議会など消費者六団体というものがまた構成されているわけです。その二つの組織が一緒になって独占禁止法強化改正運動月間、こういったものを何回か繰り返してやってまいりました。そしてその中でいろいろと議論をし、これまでの運動とのかかわり合いで独禁法の問題点を検討し意見をまとめるという作業もしてまいりました。そのような統一見解に基づいて、大体、三つに分けていまから意見を述べたいと思うわけです。
 その第一は、今回衆議院にて修正議決された独禁法の一部改正案でございます。それについての要点をまず最初に述べたいと思います。二番目は、わが国の消費者団体、外国と違って日本の消費者運動というものが戦後どういう形で独禁法の強化改正を求めるようになったのか、運動を顧みながら独禁法の改正問題に関連して経験を述べてみたいと思います。三番目は、やはり法の運用といった点で重要な公正取引委員会並びにその事務局の機能の強化という問題について述べたいと思います。
 まず第一点です。消費者団体がことし四月の時点で集まって、政府の第三次改正案について検討いたしました。そこで検討いたしました結果、政府の第三次改正案につきましては、どうしてもやはり四つばかりの削除を求めなければならない。せっかくの努力が各方面からなされたわけですけれども、どうも画竜点睛を欠くといいますか、四つほど削除してもらわなければ困る、こういうふうに意見がまとまりました。その一つは不当な取引制限に対する排除措置についてでございましたが、これは衆議院において幸い削除されました。ただ、残念ながら三点がまだ残っておる。
 その三点について言いますと、独占状態に関して公正取引委員会の調査開始に際し、主務大臣への通知、こういうようなことがあるわけです。主務大臣は意見をまた述べることができる、こういうふうになっておりますが、主務大臣への通知という内容の問題では、やはり公正取引委員会が単にいまから調査を始めますよと言うだけの信号を送るというだけではなく、なぜなのか、なぜ調査をするのかという理由までもたとえば通産大臣は求めるであろうし、ますますそういったところから公正取引委員会の主体性を後退させる、こういうことになるおそれがある、こういうふうに思います。
 あと、価格の同調的引き上げに関する報告徴収の事項についても、現行法の規定をもっとやればいいものを、こういったことで逆に現行法規の活用を制限するというおそれもあるというふうに感じたわけでございます。
 もう一つの点は、審決取り消し訴訟の際の新証拠申し出要件の緩和ということです。「重大な過失」というふうな形で表現されておりますが、これは裁判を長引かせるというようなことで弊害が生ずるんじゃないか。こういうふうに、私たちは灯油裁判をいまやっておりますけれども、そういうふうなところから切実に危機感を感ずるわけでございます。せっかくの改正でありますけれども、消費者が以上の点を指摘いたしまして玉石混淆ではないかと、こういうふうに申しておるのもそこに根拠があるわけです。
 私は、以上の三つの点を、ここの参議院で追加した形で修正していただけるならば、つまり削除していただけるならば、これは非常にありがたいと、こう思います。そういった意味で、こういう最大の努力を参議院でやっていただく、こういうことの条件を付して、やはりこれまでの独禁法の強化の改正を求める国民の声にこたえるという意味で、条件つき的な賛成の意思を消費者団体としては表明をしたいと思います。
 なお、修正ができなかったらどうなのかと、こういうふうなことですが、そのときにはやはり今後の運動の中で弊害が出てきたら直ちに修正の改正といいますか、改正という運動を起こさなければならないんじゃないかと考えております。
 なお、実方先生などの先生方の御発言の中でいろいろと御主張がありましたが、われわれとしても、この独占禁止法の強化改正、こういう方向あるいは運用の強化という方向については同意見でございます。
 第二点について申し述べてみたいと思います。
 先般、政府当局の方から、消費者団体はどうしてこんなに独禁法、独禁法と言って熱心に食い下がってくるんでしょうねと、こういうふうに言っておられましたが、各消費者団体の歴史をたどってみますと、それがわかると思います。最初から独禁法について詳しく理解しておったというわけではありません。暮らしと物価の課題に取り組む過程で次第に熱心になってきたということが事実でございます。法律上の欠点というものを体で知った、そして強化すべき点はここだということをまた体で感じ取ってきたということが経過にあるからでございます。
 さかのぼると、昭和三十年ごろには再販売価格維持契約制度の行き過ぎ、こういったものの押しつけがありまして、消費者団体の中では問題になっております。生協に対する再販業界のいやがらせなんかについて反発が起こり、それがきっかけとなって独禁法の学習が広がった、そういう事実があります。そして昭和三十二年十二月の独禁法の骨抜き改正、緩和改正の動きがあったときには、反対運動にそれが発展していったという経過があります。また、昭和三十四年のある業界の一斉値上げに反対し、値上げ協定事件を公取に持ち込んで追及するということがありました。確実な証拠があったにもかかわらず、公正取引委員会の不問処分決定というものがありました。つまり公取が背信的な不作為行為をして消費者運動に大打撃を与えたという事例があるわけです。その当時は、やはり公取委員会の事務局のまじめな職員たちも力を落としたと、これじゃどうしようもないなと、日本の独占禁止政策は行く末恐ろしいと、こういうようなことを言っておられたこともあります。近年では、七年前のカラーテレビの二重価格表示と、それからやみ再販問題を追及した運動がございます。また、化粧品の再販売価格維持契約制度の指定商品取り消しを求めるような運動があります。
 ごく最近の運動の例では、石油パニック時のカルテルを追及するということで、独禁法二十五条、二十六条と、それから民法の七百九条に基づいて消費者が奪われた損害の補償を求めて請求する灯油裁判というものにいま取り組んでおるわけです。なお、この二十五条、二十六条につきましても、われわれが実際に当たってみますと、非常に活用しにくい条文になっているということがわかったわけでございます。
 つまり消費者が真剣に暮らしの問題を取り上げようとしますと、物価の仕組み、流通の問題、企業の体質の問題に直面するから、必然的に独占の問題だとか公正取引委員会の問題に関心が向かうわけだと、こう言うことができます。アメリカでは、独占禁止法の強化を求める力となったのは中小企業者や農民であったというふうに聞いておりますけれども、日本の場合には、消費者団体が先頭になっていったという点は、また日本の社会風上、経済の構造の違いなどを示す注目すべきことかも一しれません。
 第三点について申し述べてみたいと思います。
 これは簡単に申しますと、独禁法の運用というものは、準司法機関としての公正取引委員会の裁量、判断に任されているわけです。この点は非常に大きな特徴でもあります。それだけに長所をやはり伸ばしていくようにしていかなければならないと思います。また、それを支える事務局も強くしておかなければ、事件が起こっても仕事ができないということになろうかと思います。法の運用や適用判断、それから指導を含めて委員会に大きな幅を持たせた形での権限が付与されているわけです。逆に言いますと、その幅に何といいますか、後ろ向きの方で幅を利用されると消費者は困るわけですね、その点やはり欠点もまたあるわけです。これまでの独禁政策の活用を見ますと、どうも後ろ向き、何も動かないということのケースが多過ぎたんではないか。先ほどから参考人の方々の中にはいろいろと独禁法の弊害みたいなことを言っておられましたけれども、むしろ動かなかったことの弊害が相当あったんではないか、こういうふうに感ずるわけです。
 以上、簡単ではございますが、消費者団体が切実に独占禁止法強化改正を求めてきた見地から、今回の改正案審議に当たって、参議院商工委員会の先生方の一層の審議によって先ほど申しました三点の削除がもしできるならばと、こういうふうに願望を申し述べまして、独占禁止法の強化改正、経済の民主主義を守り、そして消費者の利益を守るための法律に本当になっていきますようにお願いしたいと思います。これが消費者団体を代表しての意見でございます。
#17
○委員長(加藤武徳君) ありがとうございました。
 それでは、最後に、酒井参考人にお願いいたします。
#18
○参考人(酒井稔君) 私はキリンビール労働組合の委員長の酒井でございます。
 本日、参議院の商工委員会の独禁法審議に際しまして参考人として招聘をいただき、意見陳述の機会を与えてくださったことに対しまして感謝するものであります。ただいままで参考人の方々から賛否両論いろいろ御意見が述べられましたけれども、私として労働組合の立場から御意見を申し述べたいというふうに考えます。
 陳述に先立ちまして、キリンビール労働組合の概要につきまして簡単に御説明を申し上げます。
 キリンビール労働組合は昭和二十一年に結成されました。ことしで三十一年目を迎えております。現在、麒麟麦酒株式会社には、全国にビール、清涼飲料工場十三カ所、本社、総合研究所、製びん工場及び十四の支店がございます。その各事業場に組合の支部が置かれております。当組合は麒麟麦酒で働く全労働者で構成された純中立の単一の組織でございます。現在の組合員数は約七千五百名でございます。私ども労働組合は主要な取り組み事項として、労働条件の維持向上、組合員及びその家族の福利厚生、共済、生産性の向上に対する協力などを掲げまして、その実現に真剣に取り組んでまいりました。また、ここ数年来、労働組合の社会的役割りの重要性が高まる中で、労使協議制の充実を図るために組合内部に経営対策部を設置しまして、いろいろな機会をとらえて、会社の経営方針全般に対して組合の立場から積極的に発言をして企業行動に十分目を向けるなど、運動の幅も広げてきております。私たちはビール業界で働く者として、そして社会の一員として何をなすべきかについては十分自覚しておるつもりでございます。すなわち、私たちは品質のよいビールを安く安定的に消費者の方々にお届けすることがキリンビール労働組合に課せられた大きな社会的責任の一つであり、重大な使命であると考えております。
 独禁法改正案について、以下、キリンビール労働組合の意見を申し上げます。
 私たちキリンビール労働組合としても、企業は公正かつ自由な競争を行い、良質で廉価な製品を消費者に供給することにより消費者の利益の向上を図り、ひいては国民経済の発展に貢献すべきであるとする独禁法の精神については、十分理解しているつもりでございます。しかし、今回の独禁法改正案に盛られている企業分割規定については、実際に額に汗流して日夜働いている者の実感として多大な不安と疑義を抱かざるを得ません。マスコミなどの場において麒麟麦酒株式会社があたかも企業分割の最大の対象であるかのように扱われております。このような論議は全くビール産業の実態を無視したものであり、私たち労働者のまじめな努力を踏みにじるものと言わざるを得ません。ビール産業の実態を正しく認識し、労働者の努力を正当に評価していただけるならば麒麟麦酒の分割などは絶対にあり得ないと思いますけれども、法律というもののひとり歩きの危険性がよく指摘されていますので、私たちも少なからず不安を感じざるを得ません。
 次に、働く者の実感として、企業分割規定に対して抱いている大きな疑問点についてこれから述べたいと思います。
 第一に、労働者の努力を無視していると考えます。私は昭和三十年にキリン社に入社をいたしました。横浜工場を振り出しに、東京工場、高崎工場等の新設に携わりました。二十三年間、製造部門で働いてまいりました。当時、キリン社のシェアは約三七%でございました。そのころビール工場は四工場でありましたが、昭和三十年以降、ビールの需要の拡大に伴いましてキリン社は積極的に設備投資を進めてきました。このことは消費者のニーズにこたえるための企業努力の積み重ねであり、そのことが企業の社会的責任であったわけでございます。私たちの労働組合としても、健全な国民飲料であるビールを消費者の方々に十分味わっていただくこと、だれからも好まれるキリンビールをつくり続けることに社会的な意義を感じ働きがいとしてきました。このように今日のキリン社を築いたのは、経営者の努力もさることながら、私たち従業員の努力と協力があったからこそであります。
 私たちは、ビールの繁忙期である夏場には夏休みもとらず、連日の残業や休日出勤、さらには二交代、三交代勤務でビールをつくり、品質のよい新鮮なビールを消費者の家庭にお届けするよう日夜身を粉にして働いてまいりました。この間、工場新設、設備の更新などがありましたが、組合として、良質で廉価なキリンビールの安定供給の重要性を認識し、生産性向上については協力できるものはすべて協力してまいりました。そしていま国会では企業分割規定が論議の対象になっておりますが、果たして今日まで私たちが行ってきたことは悪いことだったんでしょうか。
 ところで、日本の労働組合の単位は企業内の労働組合であります。戦後三十数年たったいまもこのことは変わりありませんし、今後も変わらないと私は確信しております。キリン社に勤める者にとって会社の発展は勤労意欲の充実、雇用の保障、生活の安定につながるものであります。それに協力することは当然のことと私は考えます。今日まで労使が営々と築き上げました会社を仮にも分割するというようなことがあったとすれば、これまでの労働者のひたむきな努力の無視としか言いようがありません。このことは公正取引委員会の提出資料にある九業種で働く労働者はもちろんのこと、その他の労働組合の方々も同感、賛同されることでありましょう。
 第二に、労働契約上の問題について述べます。職業選択の自由との関連でございますが、われわれはみずからの人生と生活を託して企業を選択し麒麟麦酒という会社に入社いたしました。それがある日突然にわれわれの自由意思を無視し別会社に移らなければならない、そういったことがあってもよいのでしょうか。われわれはキリン社と労働契約をしているのに、一方的に他の企業に転籍を迫られることに問題があると思います。
 第三に、労働条件変更の不安と労働組合に与える影響について述べます。
 まず、雇用の保障についてですが、企業分割は雇用の安定について何ら保障していないと言えます。企業分割に伴い二つないし三つに分割されるとすれば、それぞれの企業の経営が成り立たなくなった場合にわれわれの働く場が奪われることになるわけですけれども、その後の雇用についてだれが、どこが責任を持ってくれるのでしょうか。その点重大な問題だと私は思います。
 二つ目は、分割後の労働条件――賃金、福利厚生、労働時間など、全般にわたって変化が生じることが予測されます。分割されたそれぞれの企業からスケールメリットが失われ、労働生産性が低下することによって私たちの賃金、厚生等あらゆる面で労働条件が低下するおそれがあります。現在の労働条件が低下しないという保証はどこにもありません。
 三つ目は、これからの日本は老齢化社会を迎えようとしております。老後の保障については労働組合としても最大の関心を持ち、年金や退職金の充実に取り組んでまいりました。現在、会社と協定し積み立てている年金や退職金などが分割後の会社に引き継がれる保証はどうなっているのでしょう。老後の保障がなくなることについて大きな不安を抱かざるを得ません。
 四つ目は、労働組合の組織力の低下についてであります。労働者の団結する権利及び団体交渉、その他団体行動する権利は憲法で保障されているわけですけれども、団結権や団体交渉権などの実効を裏づけるものとして組合の組織力があります。組織力といった場合、その団結を背景にした組合員数が物を言うことは周知の事実であります。日本の労働組合が企業別労働組合であるという現状からして、労働組合の分断につながり、組合員数が減れば減るほど組織力の低下は明白であり、組織力を第一とする労働組合にとって大幅な戦力の低下を招くことになります。これは憲法で保障された勤労者の団結権に大きな影響を与えると思います。
 第四に、働く者の心情の無視について述べます。これまで同じかまの飯を食ってきた組合員として、そして従業員仲間として、突然、競争会社の人間になるようなことは心情的に耐えがたいことであります。長年勤めてきた会社を離れることは肉親との別離とも同様に骨身を割かれるに等しいものであります。その背景には、諸外国と異なり、わが国の労働市場が非流動的であります、簡単に企業間を行ったり来たりできない実情があります。企業と従業員の関係は、一たん一つの会社に入れば、定年まで勤め上げるという終身雇用制度が前提となっていることは御承知のとおりであります。これまでも述べていますように、勤勉に努力した結果が企業分割、組合の分割につながるということになりますと、日本国民のよき伝統である勤勉さに悪影響を及ぼすことになると思います。
 最後に、ただいま審議されている独禁法改正案第八条の四では、公正取引委員会は、企業分割の措置を命ずるに当たって「当該事業者に雇用されている者の生活の安定について配慮しなければならない。」と規定されていますが、どのような配慮がなされるのか不明確であると思います。また、衆議院では「独占的状態の排除に際しては、関連する労働組合の意見を十分尊重すること。」という附帯決議がつけられていますが、私たち労働組合としては、当該企業の労働組合の意見を求め、同意を得るという明文が本文中に掲げられていないことは、労働組合の存在を無視したものであり、遺憾に思っております。
 以上、限られた時間の中で言い尽くせない面もございますけれども、キリンビール労働組合の組合員とその家族、関連会社の従業員とその家族、数万人の職場なり生活を絶対に守らなくてはならない労働組合の使命は委員長であります私の双肩にかかっているわけです。組合員とその家族に与える影響の大きい企業分割規定を導入することに対しましては、不安が大き過ぎ、これまで述べてきました理由によりまして、キリンビール労働組合としては反対せざるを得ません。
 何とぞ、これまでの陳述を御理解の上、慎重なる御審議をお願いする次第であります。以上です。
#19
○委員長(加藤武徳君) ありがとうございました。
 以上で七名の参考人の意見の開陳は終了いたします。
 参考人に対する質疑につきましては午後の委員会で行うこととして、休憩いたします。
   午後零時五十四分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時五十一分開会
#20
○委員長(加藤武徳君) ただいまから商工委員会を再会いたします。
 議事に入るに先立ちまして、一言お願いを申し上げます。
 各質疑者の持ち時間が二十分でございますので、各参考人におかれましては簡潔にお答えくださいますようにお願いいたします。
 休憩前に引き続き、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#21
○斎藤栄三郎君 自民党の斎藤栄三郎であります。参考人の方々に厚くお礼を申し上げます。
 午前中に、大変参考になる意見をお教えいただきまして大変ありがとうございました。
 これから大野さんにちょっとお教えいただきたいと思いますが、独占禁止法と物価との関係で、大野さんは、独禁法を改正すれば物価は下がるとお思いでしょうか。通産省の調査並びに私自身が調べた九業界の価格の動きを見ておりますると、むしろ非常に安定をしておるのでありまして、これを仮に九業種を分割した場合には、必ずそこに物価は上がるであろうと私は懸念をいたしますが、その点、大野さんいかがでしょうか。
#22
○参考人(大野省治君) お答えいたします。
 私は、独占禁止法を強化し、また運用を強化すれば、大企業の物価がストレートに下がるというふうな形で考えているわけではございません。それはやはり、いろいろな条件があって価格形成が行われておりますので、直接引き下がる、引き下げ効果を持つというふうには解釈はできないのではないかと思います。ただ、これまで下方硬直といいますか、あるいは協定によって、あるいは暗黙の了解によって高い水準の価格が行われているということについての、一つの前提が崩されれば下げやすくなってくる、下がりやすくなってくる、こういう条件が生まれてくるのではないか。われわれはやはり、そういう条件をつくってもらうことが必要だと考えるわけでございます。
 以上でございます。
#23
○斎藤栄三郎君 酒井さんにちょっとお教えいただきたいんですが、麒麟麦酒を仮に分割した場合に、キリンビールは上がりましょうか、下がりましょうか。
#24
○参考人(酒井稔君) 価格でございますか。
#25
○斎藤栄三郎君 はい。
#26
○参考人(酒井稔君) 私ども考えておりますのは、分割された後は、必ずコストアップにつながるだろうというふうにとらえております。それはビール自体、装置産業でございますので、いろいろな面でコストの上昇につながっていくということが言えると思います。
#27
○斎藤栄三郎君 ありがとうございました。
 私も酒井さんと同じような見解を持っております。いま九社の場合で言うと、非常にスケールメリットで価格が安定しているし、非常な技術革新をやって価格が安定しているのであって、これをもしも分割すれば、かえって私は上がってしまうだろうということを懸念しております。酒井さんの御意見に敬意を表します。
 次に、酒井さん、さっきあなたがおっしゃったことは非常に私は胸を打たれたので、労働者の努力が水泡に帰する、全く同感であります。私は、十九日にここで三時間にわたって、政府並びに公取の当局者にいろいろと御質問を申し上げました。そのときの結論は、この法律が仮に通りましても、三つの場合には分割できないということです。
 第一は、商法二百四十五条で、御承知の財産の一部譲渡でありますから特別決議が必要だが、これはなかなか株主が、たとえば麒麟麦酒の株主が、ああ分割して結構なんという、賛成するとは考えられない、二百四十五条の、三分の二以上の賛成が得られなければできない。
 第二は、労働組合の立場を尊重し、組合が反対する場合には分割はできない。
 第三は、引受人がない場合は分割ができない、こういう結論でございました。
 そこでお伺いしたいのは、酒井さん、仮に分割の指令が出た場合に、労働組合ではどうでしょうか、分割に賛成なさるものでしょうか。
#28
○参考人(酒井稔君) 先ほどるる述べましたように、どういう形で分割ということがなされるのか、その前段で弊害のチェック等も必要だろうと思いますけれども、仮に分割をなされるというようなことを考えた場合に、心情的にやはり労働組合としては、それには耐えがたいという考えを持っております。
 一つには、先ほども述べましたように、一個の人間としては五体満足がいいわけですけれども、手足をもぎられるということになりますと、それは耐えがたいということでございます。
 以上でございます。
#29
○斎藤栄三郎君 またどうも酒井さんにばかりお尋ねして恐縮ですが、九社の名前の中に御社の名前が入っている。ああいうものが発表されることによって、当局が正式に発表したんじゃありませんが、ああいうことが巷間に伝わることによって、従業員諸君の間にはどういう影響があったでしょうか。非常にイメージダウンだと言って私は嘆いているんじゃないだろうかと考えますが、いかがなものでしょうか。
#30
○参考人(酒井稔君) 一つの資料として、特に寡占的なといいますか、そういう形の中で九業種の名前が挙げられていると思いますけれども、少なからず、正直に申し上げまして私どもとしては不安を抱きました。
#31
○斎藤栄三郎君 酒井さん、もう一つ、キリンビールを注文いたしてもすぐ入らないということを間々聞くのであります。それは恐らく会社が、いまシェアが麒麟麦酒は六三%でありますが、余り大きくなると分割のやり玉に上がるということを懸念して、ビールの方は余り伸ばさないで、ほかの清涼飲料水をお伸ばしになっていらっしゃるんじゃないかと拝察いたしますが、その辺はいかがでしょう。
#32
○参考人(酒井稔君) 細部にわたる詳しい経営の方針なり、そういうものは現在つかんでおりませんけれども、ビールの計画生産なり計画販売というものは、高度な経営判断によるものであるというように解釈しております。私ども年初に当たりましては、労使協議会という一つの制度がございますが、その中で、年間の製造計画なり販売計画なりは話し合っておりますけれども、その辺、レモンといいますか、清涼飲料と抱き合わせるというようなことは存じておりません。
#33
○斎藤栄三郎君 よく聞こえませんでしたが、レモン……
#34
○参考人(酒井稔君) レモンとビールを一緒にして販売しておる、ビールの方を抑えて。そういうようなことは事実聞いておりません。
#35
○斎藤栄三郎君 おりません。
#36
○参考人(酒井稔君) はい。
#37
○斎藤栄三郎君 酒井さんどうもありがとうございました。
 山本勝市先生にお伺いしますが、どうも仮に独禁法が原案のまま通った場合に、私は、五年、十年先の日本経済というものは大分ソ連の経済に似てきちゃうんじゃないだろうか。価格ははっきりと国家意思によって決められてしまう、そうして利潤の統制も行われるということを非常に懸念するので、私は、価格介入と利潤統制は絶対行うべきものじゃないという考え方を持っておりますが、その点いかがお考えでしょう。
#38
○参考人(山本勝市君) 先ほど私が申しましたように、私は見通しとして、もしこのまま通った場合に、実際にはなかなか、経済界が非常な打撃を受けるものですから、澤田委員長は慎重で手がつけられないんじゃないか。そうしますと、野党とか消費者団体から猛烈に突き上げられる、それから主務官庁と公取との間の意見の対立、これが恐らくマスコミをにぎわすことだろう。こういうふうな事態になってきて、それで結局つくってみても、経済が混乱しただけで何も効果がないということになった結果が、やっぱり社会主義より手がないんじゃないかという議論が必ず起こってくるのは、昭和二十八年の二月にこの問題で安定本部で、社会党の小林進君が党を代表して討論をやった趣旨というのはこういうことでした。
 自分たちは社会主義をねらっておるんだ、資本主義は必然に、自由競争の結果独占段階に入って、それはその次に必然的に社会主義に進むべきものなんだ、これをアメリカが、この独禁法をつくって、逆に独占段階を自由競争に返そうという考えだけれども、自分たちはそういう意味で、根本的にこの独禁法そのものに反対なんだ、こういう討論をやった。正直だと思いますが、こういう議論が必ず起こって、独禁法を通したけれども、結局混乱しただけで何もできぬじゃないかと。
 だから、これはもう社会主義――私的独占というものは自由経済に返れぬのであって、公の独占、つまり社会主義に前進するのが必然だという議論が必ず出てくる。そのことを一部のマルキストがちゃんと展望した上で今回の案を強力に主張しておるんだと、私はそう考えざるを得ないんですね。反体制であって、しかも自由経済のマグナカルタをやって、自由経済を確立するんだということのために力を尽くすわけがないです。そういうことを見通しておるんだと私は思っておるんです。混乱するだけだと思います。
#39
○斎藤栄三郎君 ことしは、ちょうどソ連の革命が行われて六十年になるわけです。この六十年間のソ連経済をこう展望してみると、完全に価格は統制され、そうして消費生活は非常にいま低いですよ、われわれ先進資本主義国家に比べてみれば。いま日本がこれだけ豊かな国になっているときに、価格統制をやったり利潤統制をやって生産活動に統制を加えることについては、私は非常に慎重でなきゃだめだという立場をとっております。そこでいま山本先生の御意見を拝聴したわけであります。どうでしょうか先生、先生は学位論文がソ連の計画経済論をおやりになったわけですが、ソ連の今日の経済は理想の状態になっているんでしょうか。
#40
○参考人(山本勝市君) もちろん、社会主義マルクスの立場から、最初は自由競争市場経済というものがガンだ、これをつぶさなきゃいかぬというてつぶしてみたんですけれども、つぶしてみたところが、経済が混乱になってコストの計算もできない。それで御承知の、レーニンの新政策でまたこの資本主義の手法を取り入れて、そうしてともかくも五カ年計画を立つ一つの数字の基礎ができた。それからやってみていくと、社会主義をやっていけば生産が上がらないし、それで進んだり返ったり進んだり返ったりして、結局御承知のリーベルマン方式というものを入れて、資本主義の利潤をもう一遍持ち込もうというので持ち込んでみたけれども、肝心の利潤計算の基礎になるマーケットプライスというものが成立しないものですから、それで二カ年でやめてしまった。これがソ連の現状であって、もし日本も、これまでは公取というのは、いまの独禁法第二条以下にある競争のルールが守られておるかどうかを監督する仕事だったんです。
 だから、ルールを守って自然に出てくる秩序を尊重しておったんですけれども、今度はそのルールをつくるんじゃなしに、ルールをやめて公取の任意裁量ですね、もちろんいろいろ通知したり相談したりしますけれども、結局ルールによる支配じゃなくて、公取の裁量で組織をつくろう、こういうことになって、もし実行したとしたら、私はもうソ連のようになるほかはないと思います。
 先ほど申しましたとおり、実際は実行できないで、混乱しただけで、その結果がどうかと。一方ではやっぱり社会主義マルクスの予言が当たったんだという議論が出てきて、大混乱を当分続けるんじゃないか、これは実際の見通しとしては私はそう思っております。やったらソ連式になってしまいますね。それではルールづくりじゃないんだと私は強調しましたが、ほかの参考人も、いや、競争の条件をつくるんだと言いますけれども、自由社会の競争の条件というものは、みんなに共通に適用するルールなんです。そのルールは、先ほど言ったとおり、百分の十を百分の五にしぼっただけがルールに関係しておるんであって、あとは全部これまでとは全然違って、公取に経済秩序を意識的につくる一つの権限を与えよう、それに必要ないろんな条件を決めようというのが今度の改正なんで、そこのところに根本的な間違いがあると思いますよ。
#41
○斎藤栄三郎君 最後に、北海道大学の実方先生にちょっとお教えいただきたいと思いますが、先生はいまの日本に自由競争があるとお考えでしょうか、いかがでしょうか。
#42
○参考人(実方謙二君) 一般的にお聞きになられるとあれですが、ある部分もあり、自由競争が実際上制限されている部分もかなり多い、こういうぐあいに考えております。自由競争が活発に行われている産業分野もあれば、実際上本来果たすべき機能を果たしていないと思われるような分野もかなりある、こういうことでございます。
#43
○斎藤栄三郎君 じゃ先生、どういう分野が自由競争が制限されておりましょうか。
#44
○参考人(実方謙二君) 具体的には、私は経済学の専門ではございませんのであれでございますが、それは公取の管理価格調査等でいろいろ例に挙げられましたですね。自由競争と申しましても意味がいろいろございまして、たとえば合成洗剤等では、三年ばかり前ですか、再販の指定商品から外されたわけでございます。そこで自由競争が全くないというわけではありませんけれども、その自由競争が価格競争という形をとらないで、たとえば商品のイメージづくりの競争とかそういう形になっている。そういう意味で、いわゆる近代経済学の常識でありますが、本来の意味での品質と価格による競争というのがある程度制限されている状態が出ている。そのほかいろいろございますが、余り具体例を挙げますと差し支えございますので……。
#45
○斎藤栄三郎君 はい、わかりました。私は先生、こう思います。いまの日本の経済界の実態は激しい自由競争が行われている。むしろ過当競争だと思います。外国からどんどん自由に物が入るわけで、資本の自由化、貿易の自由化が行われている今日では、自由競争が過度に過ぎていると思う、たとえばセイコー社が時計を決めるときだって、スイスの時計を意識しなければ値段は決められません。富士写真フイルムが価格を決定するんだって、コダックとの競争を意識しなければならない。先ほど先生がお挙げになった洗剤でも同様でございます。したがって、自由競争が行われていないからこの法律をつくれという議論では、ちょっと私は納得しかねるのでお伺いをしたわけでございます。
 私の質問はこれで終わります。どうもありがとうございました。
#46
○対馬孝且君 どうも参考人の皆様、大変先ほど来貴重な御意見をお伺いしておりまして、実方先生に一、二の問題でちょっとお伺いしてみたいと思います。
 今回の改正の柱は、企業分割ということに非常に最大の関心が寄っております。そこで、きのうも政府側に対しまして質問いたしておりますが、今回のつまり企業分割、営業一部譲渡の場合、主管の通商産業大臣との間に協議をする。また、今度の提案では、調査を進める段階で通知をし、主務大臣の意見を聞かなければならない、特に独占の有無について主務大臣の意見を聞く、こうなっているわけですね。そこで、いま申し上げたように、財界や自民党の一部ではいまかなりこういったものに対する構造規制に強い反発が出ている。
 そこで、いま申し上げたような実態から見ましても、かなり構造基準、弊害基準などについてはある程度の歯どめが非常に多くかかっているわけです。そういう意味では、実際にはこれを発動する場合の実効性については非常に乏しい、こういう感を深くするわけであります。そこでこれを抜く、あるいは抜けないという構造規制については、抑止力的な意義が私はあると思うんですよ。そこでわが国の経済状態、経済体制から見て、今回の改正案なるものは、つまり構造規制のあり方についてどのように評価をされているかということが一つ。それから二つ目は、先進国との立法制度においての比較、アメリカ、西ドイツ、イギリス、一通り私も構造規制を検討してみましたが、これらとの構造規制との比較においてどのようにお考えになっているか、これが一点でございます。
 それから第二の問題は、たとえば営業一部譲渡がされた場合、株主総会において特別決議が否決をされたと。きのうも私は質問いたしておりますが、否決をされた場合については、政府と公取委員会は、否決されてもそのまま実行効力は残っているんだ、したがって、役員会としては特別決議が得られるように最善の努力をすべきである、こういう答弁がございました。それを怠った場合に一体どうするのか、ここがやっぱりポイントでありまして、これについてはきのう総務長官並びに公取委員長は、当然刑事的責任を問われる、こういう見解を政府側としては明快にされました。したがいまして、参考人にお伺いしたいことは、実方さんにお伺いしたいことは、公取の分割命令と商法との関係においてどういう御見解をお持ちになっているか、これをお教えをいただきたい、こういうとりあえず二つをお伺いしたいと思います。
#47
○参考人(実方謙二君) お答えいたします。企業分割の実効性の点でありますが、これは企業分割という制度は、斎藤先生からも御教授願ったように、個別的な価格や生産量に対する介入をしないようにするために競争的な条件をつくっておく、こういう趣旨で競争条件をつくるために必要な最終的な制度でありまして、これはいわば理念的な意義が非常に大きいわけですが、実際にそれが必要かどうか。そして実際分割した場合に、分割した部分が独立の競争単位として有効に働くかどうか。分割の有効性とか必要性の判断というところが非常にむずかしいところでありまして、これはこの制度の持っている宿命なんですけれども、かなりむずかしいということは確かでございます。しかし、だからといって全くその意義がないということではないわけで、実際に行った例も、自由主義経済の母国と言われるアメリカでもそれほど数は多くありませんが、あるわけでございます。
 そして、抑止力の点ですが、企業分割制度をつくると利潤統制、まあそこら辺のところはよく御趣旨が、こちらが誤解しているかもしれませんけれども、利潤統制、価格統制につながるおそれがあるというようなお考えもあるようにも思います。ここで弊害規制と言っておりますのは、弊害があること自体をつかまえて、それを是正しろという形で考えるのではなくて、ただ一定の市場構造がどのような害悪をもたらしているかということを判断する資料として、弊害があるかどうかということを一つの材料にする、こういうことであります。
 したがって、だからいまちょっと便乗して悪いことをやったから、それをつかまえて大企業をやっつける、こういう趣旨ではなくて、もう長期間弊害がある、それはなぜその弊害がそこに定着しているかと分析してみると、それはやはり、その構造を変えなければそういう弊害が除去できないだろう、こういう論理になりますね。だから直接統制とはつながらない、しかし実際、反射的効果といいますか、そういう判断の資料として弊害要件を使うということのいわば反射的な効果として、実際上企業が自制をするようになる、それも実際上の効果としては望ましいことであって、いわばソフトな形での自制を求めるということですから、それは望ましいことではないかと思うわけです。
 それから、先進国との評価でありますが、これは先ほど申しましたように、企業分割をいろいろな形、いろいろな法技術を使いまして、実際上、日本の現在提案されていますような企業分割と同じようなことをやっている例もございます。それからイギリスの場合は、まだ実例はございませんが、これは弊害規制とはっきり連動させてありますが、その企業分割という命令もこれは出せるようになっております。
 それから構造規制一般につきましては、西ドイツ等もこれまでなかった合併規制等を新しくつくるとか、それから同調的値上げ等に対する規制を強化するとかそういう、常識ですから皆さん御存じのとおりと思いますが、漸次先進国と言われるところでも、構造規制の方に向かいつつあるというのが世界の趨勢であろうかと思われます。
 それから第二の、株主総会の特別決議がなかった場合の問題点でございますが、これは公法上の命令とそれの実行行為としての私法上の行為との関係ということで、これは基本的には巷間伝えられております、いろいろ新聞等に載りました法務省見解というのがあるということでございますが、新聞で読んだ範囲でしか存じ上げておりません、基本的には。
 それからもう一つは、先回でございますか、一昨年になりますか、国会等でそのことが論議になりましたときに、その当時の政府見解というのが出されましたのですが、基本的には、公取委の命令を受けた場合にそれを実行するのは私法上の行為としてそれを実行する、そして、その私法上の行為としての要件を満たさなければいけないということは、これは当然のことです。現在でも、株式譲渡命令等が十条違反等についてございますが、これは結局譲り受け人を探してまいりまして、そしてこの譲り受け人に譲渡した場合であれば、有害な会社支配等を生じないということを審決の執行の点で確認した上で、公取委が株式譲渡をやることを命じている、こういうことであります。
 したがって、たとえば現行法でも、株式の処分を公取委が命じた場合に、それを実行するのは会社が買ってくれる人を探してきて、この人に売るんだったらば、いろいろ株式の分散度等を見れば競争制限にならないということでやっているわけで、だから譲り受け人が見つからない、譲り受け人の協力がなければいけないから、第三者の協力が必要な排除措置はもう意味がないんだということはこれは言えないわけで、現在でもそういうことであります。したがって、その場合は第三者との間に株式譲渡契約という私法上の行為をしてやるわけですから、それは基本的にはそういうことです。
 そして商法二百四十五条だったですか、これは商法上の通説といたしまして、各営業譲渡の効力要件と、こうなっておりますから、これがなければ営業譲渡というものは私法上の行為として成立しない、これは当然のことであります。しかしこの効力要件とされている趣旨は、本来は、たまたま私は商法の勉強をしておりますのであれですが、取締役会の恣意から、取締役が勝手なことをして、会社の重要な一部分を処分したら一部解散に準じますから、そういうことを防ぐために特別決議という慎重な決議手続を要しているということであります。
 そこで問題は、基本的には、営業の譲渡等が命ぜられた場合には、営業譲渡するか否かの点については、会社にとっては選択の自由というのはもはやないわけです。具体的にどういう方法をとってそれを実現するかという点については、その株主の利益を害しないような方法で実行する、それも公正取引委員会に一定の措置が命ぜられたという範囲内で、最大限度株主に不利にならないような方法を考える義務があるという、こういう趣旨ですから。
 そういうことでありまして、もし株主総会が否決した場合どうなるかということですが、そうすると、命令の実行は私法上の行為としてやる。もっともこれ、私法上の行為、受命者の私法上の行為を待たないで、たとえば裁判所が解散命令、判決等をして、それ自体が司法上の効果を生ずるいわゆる形成力がある場合でございますけれども、そこまで強い効果を認めている例は少ないわけですから、そこまでやる必要はないと思いますが、結局、私法上の行為が行われなかった場合には、いまの現行法の体系では罰則によって、いわゆる間接強制によって、罰則担保によって、九十条の一項二号ですか、担保するよりしようがない。結局その場合、故意、過失の認定というところが問題になるわけで、いま申しましたような条件の中で取締役会が最大限度の努力をしていないということになれば、それは罰則が適用されてしかるべきだと思います。もっとも、これは故意、過失の認定にかかわる問題でありまして、これは公取委の裁量でやるということじゃなくて、こうかつであれば検察官も起訴できる道がございますし、それから裁判官が判断する。
 それからもう一つ、株主総会はそういう意味で、否決の自由というのはかなり限定されておりますから、これはちょっとあれですが、株主総会自体は法人格も何もございませんし、単なる会社の内部機関にすぎませんから、それ自体が刑罰の対象になるということはありませんが、現在の商法でも取締役会の場合は、取締役会に出席して、たとえばタコ配当をした場合に異議を申し立てなかった取締役は連帯責任を負わされるという規定もございますから、株主があからさまに公取委の命令を無視するという趣旨で、合理的な案が提案されているにもかかわらず、それを無視する趣旨で否決したということであれば、機関の構成員である株主も場合によっては故意、過失を問われるという場合もあると思います。
#48
○対馬孝且君 時間がありませんので、できるだけひとつ要点でお答え願いたいと思います。
 それでは、時間もありませんから……。先ほど実方参考人の方から、今回の改正案は、私的企業の競争的条件を整備するための資本主義経済の最後の安全弁であると主張されておりましたがという一つのあれがありました。そこで、私は全く同感なんでありますが、今回の改正案の中に、先ほど申しましたように、主務大臣との間の企業分割の協議、あるいは先ほどもちょっと出ましたが、新証拠提出要件の緩和、こういう問題が改正案で出ておるわけであります。したがって、本来公正取引委員会が準司法的な独立機関であることはもちろんでありますが、公取の独立性が侵される危険性はないか。また、このことにおいて侵されるという心配が非常にあるわけであります。現実に侵される結果になるんではないかということをきのうも質問をいたしてまいりましたが、この点の考え方を、ございましたらお教えを願いたい。これが一つ。
 それから、酒井参考人、時間がありませんので……。先ほど来、企業分割の問題についてお伺いいたしておりましたが、これはいまも参考人からもございましたが、大きいことは悪いことだということを何もわれわれは言ってるんじゃないんです。それから、いま先ほど来、一般的に言われているのは、弊害的な行為がなければこれは分割をするなんて言っているわけじゃないんです。先ほど来私が挙げたように二つも三つも歯どめがかかっているわけですから、最後的な、反社会的な企業に対する最後の断と、私はこう思っておるわけです。
 そうしますと、国民的な弊害あるいは国民的な消費者に対する弊害、あるいは経済の公正な秩序のルールというものの弊害が除かれた場合に、これは企業分割はおかしいんだ、だめなんだ、こういうことなんでしょうか。私は、少なくとも国民的利益、国民的な弊害、公正な経済秩序が維持されないという弊害があるとするならば、これは労働組合といえども、その反社会的な行動に一緒になって参加をするということが一体客観的に許されるのだろうかどうだろうか、こういう点についてちょっとお伺いしておきます。
#49
○参考人(実方謙二君) じゃ簡単にお答えします。
 企業分割、いわゆる企業分割制度とそれから審査開始前の事前調整制度でございますが、これは論理的には通知とそれから意見開陳ということでございますから、必ず制約されるということではありませんけれども、実際上審査開始というのが、まだ心証が完全に固まっていない段階でそういう調整が行われますと、その運用の仕方によっては公取委の権限行使が実際上牽制されるおそれがかなり強い、こういうことであります。したがって、そういう運用はなさるおつもりはないということを政府諸関係機関で明らかにしていただきたいと、こう思うわけです。
 それから、新証拠提出要件については、これはかなり訴訟法上のむずかしい問題になりますので細かいことは申しませんが、何かトラの威をかるようですけれども、民事訴訟法の権威であらせられます、亡くなりましたが、兼子一先生が書かれました論文でも、結局証拠を、行政手続といいますか、準司法手続である公正取引委員会の前に集中して、そしてそれを基礎としての事実認定が合理的であるかどうかを判断する、こういうシステムはまたおかしいところはない、合理的であるといいますか、そういう評価をなすっておるわけです。
 したがって新証拠提出というのは、例外的に当事者に不能を強いないという趣旨で、過失もなく、最大限度注意して証拠を集めたにもかかわらず発見できなかったという場合に限るというのが原則でございます。したがって、理論的には重要な改悪と申しますか、そうなるわけですけれども、今度は実務上から申しますと、これはその証拠の提出を認めまして差し戻すということになれば、それが事実認定、その合理的経験則から見て事実認定に影響を与えるという場合でなければ、その差し戻しの必要ということもないというぐあいに考えますので……。
 それから、軽過失と重過失の認定というのは程度問題でありまして、実際上裁判官の裁量に任せられておるわけです。だから、すぐさま非常に大きな手続の遅延が起こるということは、こっちの方は断定できないわけですけれども、裁判官の運用次第によってはかなり将来に問題が残るのではないか。そして実際上問題が起これば、直ちにその点のまた今度は改正を求めなければいけない、こう考えております。
#50
○参考人(酒井稔君) 企業分割については、労働組合としては、基本的な立場から反対だというようなことを先ほど述べました。ただいま御指摘のように、社会的に国民すべてがそれは悪いことだということで、そういう事実があった場合に、それでもエゴを押し通して労働組合は反対しようとは思っておりません。ただその場合でも、最終的に労働組合の同意を求めるような一つの線は引いていただきたいということでございます。
#51
○対馬孝且君 終わります、時間がありませんから。
#52
○向井長年君 酒井参考人に一点お聞きしますが、いまもお話ありましたが、先ほど労働者の意思を無視して本案を通されることは非常に不満であるという意見を述べられ、非常に生活上不安を感じる、こう言っておられます。なお、組合の立場あるいは心情を含めて先ほど意見陳述があったこと、これは私たちよくわかります組合的な立場から考えておられることは。
 ところが、あなたたちは、陳述にありましたように、生産性にも取り組む、あるいはまた社会的責任も痛感し、そして労働者の言うならば労働条件の改善、維持、こういう形で今日まで進んでこられた。この点は私たちも同感でございますが、しからば、この本法に対して、最低限これだけはやはり何とか組合の立場から考えてもらいたいということがあるのではないか。これはどういうことであるか。この点、特に八条の中で、従業員の生活を十分配慮しという言葉がございます。こういう文言があるわけでありますが、これでは物足らぬということですか。したがって、この点について組合の、この法案をわれわれが議了するためには、酒井参考人は最低限こういうことだけは何とか配慮してもらいたいという意見があれば、ひとつお聞きしたいと思います。
#53
○参考人(酒井稔君) 衆議院の方で御配慮いただきまして、附帯決議ですか、ということがなされまして、その六の中に、労働組合の意見を聞くということを盛り込んでいただきました。しかし、できますれば、企業分割を盛り込むということでございますれば、私どもとしては最低労働組合の同意を得るといいますか、そういったことを本文中に明記していただきたいというように考えるわけでございます。
#54
○向井長年君 その同意を得るというところまでいかなきゃならぬのか、従業員あるいは組合の意見を尊重しという言葉でいいか、そういう点どうでしょう。同意というならば、これは条件にはっきりなってきますね。そこら、あなたたちいろいろと実情があると思いますが、万全は同意を得たいということでしょうけれども、やはり働く労働者、そうしてまじめに皆さん方が企業に取り組んでいる。先ほどもお話がありましたように、ただこれは、企業分割は弊害という問題ですね、社会的弊害、まず弊害という問題があった場合のことであって、すべて五百億以上とか、シェアの拡大とか、これだけではないはずなんですね。したがって、そういう場合にいまお話がありましたように、あくまでも従業員の意見を尊重するとか従業員の意見を聞くと、こういう形でこの問題をとらえていいのか、あるいは、完全に条件として同意が必要であると、こう言うのがいいのか、その点についてどう考えられますか。
#55
○参考人(酒井稔君) 先ほど申し上げましたことに御努力いただきたいということが基本でございますが、私どもとしては労働条件の維持といいますか、雇用の保証といいますか、さらにはその弊害が生じて、企業の分割以外にもう除去する方法がないということであれば、まあ仕方がないんじゃないかというように考えます。
#56
○桑名義治君 実方参考人にお伺いをいたしたいんですが、独禁政策と産業政策の調整という問題がここで大きくクローズアップされてきたわけでございますが、退席されました今井参考人は、独禁政策を日本経済政策の重要な指導原理として位置づけることがあらゆる仕事の出発点だと、こういう意味の意見を吐かれているわけでございます。
 そこで、実方参考人にお聞きをしたいのは、独禁政策と産業政策との調整、あるいはまた、独禁政策の位置づけについてどのようにお考えになっていらっしゃるか、この一点ですね。
 三点ございますが、全部まとめてお伺いいたしたいと思います。
 あとは、現行法第七条は、違反行為に対するいわゆる排除措置を規定をしておるわけでございますが、本規定の解決についてはいろいろと意見が分かれているわけでございます。これは昨日の委員会でも、私、公取の意見を聞いたわけでございますが、公取の意見としては、価格の再交渉命令まではできるが、価格の引き下げ命令はできない、端的に言いますとこういった解釈に立っているわけでございます。現行法第七条は、学説的にはどのように解釈をされているのか。また、価格の原状回復命令は価格の引き下げ命令までできると解釈されるのかどうか。実方参考人はまたどういうふうにこの第七条をお考えになっていらっしゃるのか、これが第二点です。
 それから、第三点でございますが、同調的値上げに対する報告の徴収を規定した十八条の二の新設、また、衆議院で削除されました七条の二項については、それぞれ現行四十条及び七条の権限を制約するものであるという、そういう意見が経済学者や法学者の中には多いようでございますけれども、たとえば十八条の二の規定の新設が現行四十条を制限するのであるとする法的根拠はどこにあるのか、これをお伺いをしておきたいと思います。
#57
○参考人(実方謙二君) では、時間も余りございませんので簡単に申しますが、独禁政策と産業政策との調整ないし位置づけということでございますが、産業政策ということの内容がよくわかりませんので、これまで伝統的に使われましたのは、各所管官庁による個別産業に対する助成、育成、まあ行政指導を中心としたいろんな助成、育成措置だと考えております。
 しかし、やはり非常に理念的になりますが、独禁政策というものが横の基本原理としてある、そして、むしろ産業政策は、独禁政策の手法によっては達成できない競争条件の維持というものを独禁政策を補完するという形で、独禁政策を前提として、独禁政策に整合するような形で産業政策が行われるということがまず基本として考えられるべきではないか。産業政策を独禁政策と対立するものとしてとらえて、そして産業政策に合わせるために独禁政策の緩和を図るというのは多少筋違いではないか、こう考えるわけで、もっとも、具体的に競争条件をどうやって維持するかというのはいろいろむずかしい問題がございますから、産業政策によって補完されなきゃいけない問題もあるわけで、たとえば関税の引き下げとか外国資本の輸入、国外競争の導入措置とか、いろいろございますから、産業政策の助けを待つ場合も多いわけですが、独禁政策が基本になり、産業政策がそれを前提として調整をしていく、こういうことを簡単に言えば考えるべきではないかと思うんです。
 それから、七条による行為の排除でございますが、端的に申しまして、価格引き下げ命令というのが現行法でできるかどうかというのは、これはもう学説は――その引き下げ命令もいろいろございまして、価格をとにかく変えろという命令と、それから協定前の値段まで下げろという意味での引き下げ命令、一定の値段まで下げろという引き下げ命令ですね、これの二つあります。そして、その後の方までできるという学説もかなり有力ではありますが、通説としましてはそれはできないだろうということです。そして現在の公取委の、まあこれは公取のお考えがあったと思いますが、運用を見ておりますと、価格再交渉――取引先ごとに再交渉するというのが一番進んだ命令ということになるわけであります。
 しかし、私の考えによりますと、これは一定限度ある価格を決めてこれを守れ、そこまで下げろという命令は、これは価格統制につながりますからできませんが、カルテル協定によって値段を上げた、そして協定の破棄を命じられた、そしてこれは経済条件がいろいろございますが、協定による拘束力がなくなれば自由競争が復活すると、論理的にそう言えるわけです。そういう条件のもとではある程度価格がフレキシブルになって下がる、まあ上がる場合もあるかもしれません、下がるというのが常識から考えてあたりまえであろう。こういう場合になおかつそれを下げないということは、口先だけで協定を破棄したといって、もう全くその命令を無視したということにもなりかねないわけです。したがって、協定破棄を実行であらわすといいますか、誠実に協定を破棄するということになれば、それが価格改定という現実の結果にはね返らなければ、協定破棄命令を遵守したことにはならないと、こう考えております。したがって、そこら辺はまた認定の問題がありますけれども、そういうルートから考えますと、実際上価格改定効果というものを、その価格協定破棄命令の執行を厳正にするという方向からいっても、価格改定という実際の効果を上げることも可能ではないか、こういうぐあいに考えております。
 それから最後の、十八条の二の新設、七条の二項の新設が後退になるということですが、いま申しました、たとえば価格再交渉命令とか、それから端的に申しますと取引先に協定の破棄の旨を通知するとか、それから協定破棄後たとえば六カ月間販売価格を報告させるとか、そういう命令をこれまで公取委は命じておりますけれども、これは考え方によっては、これは言い方によっては、行為の排除に付随する措置であるから当然七条に含まれる、こういう考え方ができるわけですが、逆に言えば、もっと狭く解釈しますと、それは影響排除命令に含まれるんだ、そして七条の二項を新設しますと、影響排除のための措置というのは公取が決定するのではなくて、事業者が決定してそれを届け出ろということを命じるにすぎないと、そして、その内容の当否については公取委は干渉できないという七条の――改正案でございますよ、七条の二項はそういう解釈になりかねないわけです。したがって、七条の二項というのは、これはいろいろ考え方はあると思いますけども、私の考えでは実益はもうほとんどなくて、そして後退的な解釈を招くおそれが非常に強い。したがって、これは必要のない規定であるから削除して、そういう後退のおそれを除いたものである、こういう議論でございます。
 それから、十八条の二の新設の点でございますが、これは四十条の解釈については、いろいろ政府とか公正取引委員会等の現在の解釈等も審議の過程でなされていることと思いますけれども、十八条の二による同調的価格についての調査権限というのは、考え方によっては四十条でも可能である、こういうことであります。したがって、この調査権限は、四十条は出頭を求めたり、資料の提出を求めたりすることができるわけですが、十八条の二の方は報告を求める報告徴求権だけにとどまっておりますから、現行法で解釈論上可能であることを縮小した形で、そこで新たに規定するということは四十条の解釈を狭めるおそれがある、こういうことであります。
 しかし、これはそういう解釈の可能性があるということでありますから、十八条の二の新設の立法趣旨は四十条の解釈を狭めることではない。四十条の解釈についてはいろいろあると思いますけれども、どの解釈をとるにせよ、ここではそれを立法趣旨としては確定しないで、四十条の解釈についてはこの改正案の審議に当たっては一切触れない。十八条の二はその調査の個別的必要性というものを問題としないで、当該要件に該当すれば、そして、なおかつその同調的な価格引き上げが客観的に見て当然の経済条件の結果ではないと考えられるような場合については、四十条発動の場合の要件である個別的な必要性の判断というものを要しないでできるという、そういう趣旨に十八条の二を解すれば、四十条についての後退的解釈の危険性はなくなる、こういうことでございます。
#58
○須藤五郎君 第一の質問は、消費者の立場から、幅広く国民的に独禁法改正の運動を進めておられる大野さんに御意見をお聞きしたいと思います。
 今回の独禁法改正は、狂乱物価や大企業の反国民的な行為によって直接被害を受けた消費者、国民が要求したものであります。これは、制定以来一貫して骨抜きにされてきた独禁法を、初めて強化の方向で改正する原動力となっているものでございます。消費者は学者、研究者の協力を得ながら独禁法強化の運動を進め、独禁法が国民的な議論の対象とされ、関心も大きく広がったと思います。大野さんは、独禁法改正の原点とも言うべきものを述べられたんでございますが、独禁法改正を逆手にとって産業界、大企業の意思が取り入れられ、現行独禁法を後退させる面も少くないと思っております。独禁法について国民の関心も高まり、認識も深まり、国民は独禁法の運用に当たる公正取引委員会を厳しい目をもって見守っているわけでございますが、公正取引委員会の強化やそのあり方について、大野さんの御意見をまずお聞かせいただきたいと思います。
#59
○参考人(大野省治君) 先生御指摘のように、確かに国民が求めておるのは、大企業の横暴なやり方について所要の規制をする民主的なルールをつくってほしい、こういうところであったと思います。やはり、何でも自由であればいいと、こういうふうなことは、カルテルを結ぶことも自由だとか、あるいは独占、寡占、流通支配を行っていくというふうなことも自由であるということでは、これは国民の生活を脅かす自由も認めるということにもなりかねないので、ぜひここは流通の秩序を民主的にやってほしい、こういう秩序づくりをしてくれという意味での独禁法強化改正の声であった、これは先生いま御指摘の、狂乱物価の時点での国民の憤りというものがここにあらわれたんだというふうに言ってよろしいかと思います。
 また、公正取引委員会の機能についてでございますが、独占禁止法の運用というものが、何々しなければならないとかそういうような規定というよりは、むしろ何々することができるという形で、裁量を公正取引委員会に任せるとか、そういうふうになっておりますので、その公正取引委員会の委員になる方、委員長になる方の政治姿勢あるいは経済を見る目というものが非常に大切だということです。もし、独占の横暴を野放しにしても、自由にしておけば何とかなるんだという考えの方が公取に座られたら、これは大変なことになるわけです。そういった意味で、ぜひ国会が公正取引委員会の委員の任命に先立って、あるいは後で承認を与えるときに、同意を与えるときに、どういう姿勢で公取委員になろうとしているのか、そういったところを尋ねていただくとか、そういうことをやっていただければ、そういう先例をつくっていただくならば、形式的なことで国会の同意が与えられるということでなくて、非常に有意義なものになっていくんじゃなかろうか、こういうふうに思うわけです。
 もう一点は、やはり公取の委員は何人かおられますが、やはりその中に一人ぐらいは、公取委の中で育った生え抜きの人が委員に選ばれるということが非常に大切なんじゃないかと思います。たとえば、先般有賀美智子先生が委員になっておられたことがありました。これはもと職員であったわけですね。私たち消費者団体も非常にこれを歓迎しました。こういうのをやはり継続してもらいたい。いまの事態を見ますと、委員は割り当て制度といいますか、あるときは大蔵省から、あるときは通産省からとか、そういうふうな形で見えていることがありまして、そういう暗黙の割り当てみたいなことはやめてもらえばと思います。
 それから、何といっても実務を支える事務局の機能を、いまの三百何十人とかいうふうなことよりは、千人ぐらいの規模にするというのが本当は必要なんではないだろうかと思います。何といっても実行しないというふうなことがあるわけですから、たとえば不問処分というものが行われた場合、これをチェックする機能がないわけです。検察庁だったら、検事がサボった場合に検察審査会というものがあります。そこでその不起訴処分がどうであるかということが国民的な目でチェックできるわけです。それが公取についてはそういう場合、全然ない。
 それから、独禁法違反行為について、公取は専属告発権を持っております。言うならば、そこを通さなければ刑事事件にならないということはもう御承知のとおりです。専属告発権を持っておる公取のこれまでの実績を見ますと、あの石油の事件のときの一件だけですね。これは、国民の声が盛り上がったから初めて公取がやったことなんですね。もしあれが、国民の声が盛り上がらなかったらやれなかったろうと思います。それほど公取の機能というものは非常に消極化してきておる。これを積極化させるための措置をやはりきちんとする必要がある、そのように思います。検察審査会に準ずるような措置を今後研究してみたらどうかと思います。そのようなことを感じております。
#60
○須藤五郎君 もう一つ大野さんにお聞きしたいんですが、カルテルにしましても同調的値上げにしても、直接被害を受けるのは消費者であり、国民なんだと思います。カルテル違反事件などは審判に何年もかかり、その間に引き上げられた価格はあたりまえということになってしまうのでございます。これが現状で、消費者の権利は全く無視されてしまっておると思います。もちろん独禁法だけで消費者の権利は守られるものではありませんが、消費者権利を守り、独禁法を国民の立場から厳正に実行するための制度の拡充、消費者権利を保障するシステムが必要だと思います。この点につきまして、大野さんの御意見を伺っておきたいと思います。
#61
○参考人(大野省治君) カルテルのやり得、そういったことはやはり許すべきではない、こういうふうに思います。社会のモラルといった点から考えてみても、そういう言うならば犯罪行為ですから、これを放置するということは許されないと思います。一般消費者、非常にまじめな人たちが被害をこうむるわけですね。多数の人が、一件については少額かもしれませんが、トータルとしては相当の被害を受けるわけです。だから、こういったものは社会的な場で価格の原状回復を求めるということが、そういう権限が公取に与えられなければならないと思うわけです。そういった意味で、原状回復命令、あるいは不当な取引制限その他に対する排除措置というようなことがありますが、これは現在の法律を、もっと前向きに解釈するという方向で運用をされることが大切なんではないかと思います。もしそれができないとするならば、本当に明確にそれができるようにしてほしいと思います。
 今後の運用においても、いろいろと注文がついて足を引くようなことが起こって、公取も動きにくくなるということは予測されるわけです。やはり、そういう事例に直面して、前向きの解釈ができるようにしていくことが必要かと思っております。そういうふうな措置が行われるならば、やはり独禁法は国民の利益を守る法律だということをみんなが実感するものと思います。何も立法のときだけが独禁政策じゃなくて、運用の面でどういう効果を国民生活にもたらしてくれるのか、そこが問題だろうと思います。
#62
○須藤五郎君 実方先生に一点だけ御意見を伺っておきたいと思います。
 カルテル規制につきましては、今回、課徴金制度が設けられましたが、七条二項が削除された今日でも、カルテル排除措置はきわめて狭く解釈されておると思います。私は、カルテルの予防、また協定成立後でも、実行される前に排除措置が必要だと思います。公正取引委員会も、違反行為の認定だけで大変苦労をされているようでございますが、累犯事件が増大いたしまして悪質化している事態を見ると、より一層の法の活用が求められていると思います。先生は、緊急停止命令の活用の可能性、未遂罪等について御研究されておられますので、この点について御意見をお聞かせいただきたいと思います。
#63
○参考人(実方謙二君) ただいまのいわゆる事前の排除措置もしくは緊急停止命令でありますが、不当取引制限の成立要件は、協定等の行為と、それが市場における競争実績の制限をする、この二つの要件があるということなんですけれども、私の考えでは、協定が成立し、たとえばこの八月一日に値上げするという協定をいましまして、八月一日に至る前に公取が発見して、それをある程度認定したという場合に、八月一日に至る前の段階で協定の実施を禁止するという、こういう命令は当然出せることだと思います。そして通常の事態であればそれが実施されるに至り、そうして競争制限をもたらすものである、そういう行為が行われていればその段階で違反行為は成立するのだ、こういうぐあいに私は考えております。
 したがって、これは結局、市場における価格が適正に決定される、そして、それがカルテルによって引き上げられることがないように事前に予防するということが一番重要でありまして、その市場価格が適正であるということは、すべての消費者に利益をもたらすわけですから、そういう消費者の利益を守るという意味で予防措置を強化するということは、大変重要なことだと思います。
 そして、実際にも公正取引委員会の御見解は、これは公正取引委員会の方からあると思いますが、私どもが実際の運用例を分析した結果出てきた私たちの推測といいますか、理論ということですが、実際に値上げを行わなくても取引先との交渉とか、それから部内でたとえば下部機関にその値上げの準備をしろとか、こういうことを行った場合には、それはもうすでに実行行為がある、実行に着手している、刑法的な意味でも。したがって、そこでも違法行為は成立している、少なくとも実行の着手はある、こういうことでございます。
 それから、緊急停止命令の点につきましても、この事業における値上げ以前に勧告ということは可能だと思いますし、勧告を応諾すれば問題はないわけですけれども、勧告の応諾を拒否した場合には、それが実際に実行されますと、市場における競争の制限をもたらす、それを妨ぐという意味で、緊急停止命令の発動というものを私は理論的には可能であると思います。緊急制度要件等にいろいろ細かい議論ございますが、そこら辺は時間もございませんので、省略させていただきます。
#64
○委員長(加藤武徳君) 他に御発言もなければ、参考人の方々に対する質疑はこれにて終了いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#65
○委員長(加藤武徳君) 御異議ないと認めます。
 一言ごあいさつを申し上げます。
 参考人の方々には、午前、午後にわたりまして御多忙中のところ長時間御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。また、貴重な御意見を賜りましたことを重ねて厚く御礼を申し上げます。きわめて簡単ではございますが、委員一同を代表いたしまして御礼の言葉といたします。
 ありがとうございました。
 速記をとめて。
  〔午後二時五十八分速記中止〕
  〔午後三時十分速記開始〕
#66
○委員長(加藤武徳君) 速記を始めてください。
 本案の質疑に入りますが、質疑に入るに先立ちまして澤田公正取引委員長から発言を求められておりますので、これを許します。澤田公正取引委員長。
#67
○政府委員(澤田悌君) 他日、当委員会におきまして、新聞に伝えられました公正取引委員会が徴求した資料の漏洩事件というものについての調査を進め、報告せよということでございますので、御報告を申し上げたいと存じます。
 今回の問題は、公正取引委員会にとってきわめて重大なことでございますので、事務局に調査委員会を設けまして、事実関係の究明に努めたのでございます。
 まず、資料の照合でございます。
 エポキシ樹脂のカルテル事件に関係した会社等から提出された資料と、問題の出版物の照合を行ったのでございます。提出資料は二種類ございまして、第一の資料は、審査官が違反事件の調査を行うために提出を命じたものでございます。これは審決を受けた八社を含む十八社から、昭和五十一年十月四日ないし八日までの間に提出されたものでございます。
 報告内容は、会社概要、エポキシ樹脂の生産能力、生産販売数量及び金額、販売価格、原料購入価格、代理店名、得意先の数等でございます。
 第二の資料は、審決を執行するために審判官室が提出を求めたものであります。審決を受けた八社から、昭和五十二年一月二十日ないし二十六日までの間に提出されたものでございます。その内容は得意先のリストでございます。
 そこで、それらの資料と問題の出版物の照合の結果でありますが、これらは互いに、項目の並べ方や表のつくり方がかなり異なっておりますが、これをしさいに照合いたしてみますと、第一に、同じ数字や似通った数字が記載されております。他方では数字が異なっている例も相当数あること。それから第二には、得意先リストも同一の会社名等が記載されておりますが、一方に記載されていて他方には記載をされていない不一致の例も少なくなかった等が認められたのでございます。
 そこで、これをどう解釈するかでありますが、一つは、一般に業界の情報通は、多くのルートを通じて業界に関する種々のデータを入手しておるのでありますが、これらを総合いたしますと、かなり正確な資料を提供することができると言われております。問題の出版物を発行いたしました日本包装出版株式会社は、約十年にわたりまして化学工業の分野で市場調査資料を発行しており、問題の出版物はその百三十八冊目であるとされております。
 これらの調査資料の内容を見ると、いずれも各社別生産能力、販売数量、販売価格、代理店名、需要家名等の全部または一部が掲載されておりまして、同出版社がかなりの調査能力と蓄積されたデータを持っておるというふうに考えられます。したがいまして、販売数量、価格等の数字が、公正取引委員会に提出された資料と相当程度一致することは十分あり得ることと思われ、一概に公取資料が漏れたと断定しがたいものがあるのでございます。
 また、得意先リストが漏れたと言われておりますが、一般にメーカーは互いに他社の顧客を奪い合っておるので、得意先の取引関係についてはかなりの情報を持っているのが通常であり、加えて、本業界の場合はメーカーが共通の特約店を持っており、かつメーカーの数も少ないので、この種の情報が比較的入手しやすいと言われております。したがいまして、公正取引委員会に提出された資料を利用しなくとも、結果的に同じような得意先リストを作成することも可能であると考えられ、直ちに公正取引委員会から資料が漏れたと断定することはむずかしいのでございます。
 次に、関係者からの事情聴取でございます。
 真相究明のために、事務局のうち提出資料に関係のある部課の職員を中心に事情聴取を行ったのでございます。エポキシ樹脂カルテル事件は審査部第二審査が担当いたしました。勧告を行った後、審判官室で審決の執行を行ったわけであります。また、事件記録は審査部の監査室で保管いたしております。したがいまして、事情聴取は第二審査、審判官室、監査室の職員を中心に行ったわけでございます。事情聴取は各社提出資料の取り扱い、保管状況等についてしさいに調査したものでありますが、いずれも委員会訓令による文書取扱規程に基づいておおむね適正に行われており、外部に漏れたと疑われるような事実は把握できなかったのでございます。
 次に、出版社の事情聴取でございます。
 問題の出版社、問題の出版物を発行した出版社の秦代表者及び望月編集長からも事情聴取を行いましたが、秦代表者は、この種の事業を十数年にわたって行っているので、この間に培った関係事業会社の職員との人間関係を通じて多くの情報源を有しており、業界の実態を精密に把握することについては自信を持っていると述べるとともに、今回の調査資料の作成に当たって、公正取引委員会関係者から資料を入手したことは絶対にない旨を強調しており、これまでの調査の結果では、公正取引委員会としてこの言を否定する根拠を見出せなかったのであります。
 以上説明申し上げましたような各種の調査を行った結果は、問題の資料が公正取引委員会から外部へ漏れていないという立証がむずかしいとともに、漏れたと断定することはできなかった次第でございます。
 以上が現在までの自力による調査の結果でありますが、しかしながら、仮に今後新しい事実が明らかになり、公取の職員が守秘義務に違反したというような事実が判明した場合には、関係者の厳重な処分を行う決意であることは申すまでもないところであります。
 また、独占禁止法改正法案が成立いたしますと、公正取引委員会はさらに重要な職務を遂行することと相なりまするので、職員の内部規律を一層厳正にするため、監察機能の強化を含めて諸般の措置を講じていく所存でございます。
 以上、御報告を申し上げます。
#68
○委員長(加藤武徳君) それでは、これより本案に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#69
○小笠公韶君 これまでの審議によりまして、独禁法改正案に対する種々の点が解明されましてまことに幸いでありますが、私は、これまでの審議の中でどうも納得できないというか、腑に落ちないような点につき、若干についてお伺いをいたしたいと思うのであります。
 その第一点は、本独占禁止法改正の緊急性の問題であります。
 いろいろと昨日も御答弁があったようでありまするが、今日のこの提案理由の中にあります、情勢の変化に適応してルールを確立し云々と書いてありますが、「情勢の変化」をどうつかまえていくか。私が申し上げるまでもなく、本改正案は、四十九年のあの異常事態、いわゆる狂乱物価を背景とする異常事態のときに発想せられたものであります。その後、今日の経済状況になっておることは私が申し上げるまでもありません。昨日総務長官は、過去のそういうことはあるにしても、独占禁止政策の大勢論としてこれを考えた、こういう御答弁があったようでありますが、独占禁止法が昭和二十八年に改正されて今日まで相当の年月がたっており、経済情勢の変化に適応してルールづくりをやろう、こういうお話がありますが、二十八年以来大改正がないとしても、その期間の長い短いは問題でありません。実態的に経済情勢がどう変わって、それに適応する独占禁止政策というものをつくっていかなきゃならぬか、その具体的な経済の変化を明確にしなければならぬと思うのであります。改正から今日まで古いといえば、銀行法をとっても、銀行法は明治の立法であります。そのまま今日に至っておることは御承知のとおりであります。
 私はもう一つの問題として、今日のような沈滞した経済の中において、今後の日本経済が、世界経済の波動、また国内における経済の停滞、こういうようなものから、企業の集中度を中心とする大勢はどう動いていくんだろうか、こういう問題に一つの展望を与えつつ、先ほど申し上げました過去の変化と両方において独占禁止政策の改変というものを考えていかなければならぬと思うのであります。ところが、先ほど申し上げましたように、いろいろ御説明があるが、狂乱物価以後に起こりました異常な空気の中に発想された亡霊がまだつきまとっているんではないか、こういう感じを禁じ得ないのであります。
 そういう意味において、まず第一に、過去のいわゆる二十八年の改正から今日に至るまで、特に経済諸情勢の変化の中で、産業界を中心とする変化の中で、独占禁止政策を変えなきゃならぬような様相はどういうふうに出ているか、どうつかんでおるか、それからまた、将来それをどういうふうに展開すると予定しているかを伺いたい。
#70
○国務大臣(藤田正明君) 二十八年から五十二年まで二十四年間という期間の長さということは大して問題ではない、かようにおっしゃいますけれども、経済は常に動いておりますし、その間の二十四年間というものの間、世界の情勢、日本の経済情勢というものも大きく変動してくることは事実でございます。その間におきまして、企業の集中度といいますか、そういうものは徐々に高まってまいりますとともに、特に四十年代の後半に至りましたときに、ドルショックから起こりました世界的な経済の目まぐるしい動きがございました。そして、おっしゃいましたような四十八年の暮れの石油ショック、狂乱物価と、こういうことになってきて、四十九年の九月に公正取引委員会が改正骨子案なるものを出したわけでございます。
 ただこの際に、石油ショック、資源制約の時代に新しく入ってきて、日本が再び高度経済成長というふうな時代は迎えられない、安定経済成長、減速経済成長であらねばならぬということはもうすでに御承知のとおりでございますし、その間におきましても、日本がやはり貿易立国であらねばならぬ。資源弱小国でございますので、どうしても外国から多くの資源を輸入いたさざるを得ない。それに見合うだけのまた輸出もいたさざるを得ない。また、国内には非常にすぐれた工業力、科学力、また人材があるわけでございますので、やはりそういうふうな貿易立国であらねばならぬことはこれは一貫しております。しかし、そういうふうな経済の情勢の中で、活力のある経済活動、産業活動、競争、そういうものがどうしても必要でございます。このたびの法案の改正強化によりまして、活力ある自由競争をますます生み出していこう、こういう考えが日本の貿易立国を助ける大きなゆえんであろう、かように思います。
 それとともに、もう一つは、四十九年の狂乱物価の時代に特に頂点に達したのでありますけれども、大企業は悪であるという、企業罪悪説というふうなものが長年の間徐々に積み重なりながら、四十九年の狂乱物価時代には頂点に達したかと思います。そういう意味におきましても、大企業にいろいろと害悪といいますか、そういうふうな弊害が生ずるおそれもこれあるわけでございますから、より自由主義経済を基幹とするこの中におきまして、そういうふうな弊害を今後抑止していく、禁じていくということはこの自由経済を守っていくゆえんである、かような考えもこれあるわけでございます。これらをあわせまして、毎年のように改正強化案が出されてきたわけでございますけれども、本年は、このたびの国会におきましては、与野党が合意できるような線で政府は非常に苦心をいたしまして、また、自民党内部でも山中調査会で苦心をせられまして、そういう線で法案を提出さしていただいたわけでございます。
#71
○小笠公韶君 現象的に経済の動きを見ますと、ここ十数年間における大きな変化の出ていることはお話のとおりでございます。だが、その経済の変化に伴って独占禁止政策を変えなきゃならぬほどの具体的な変化というものが考えられるかということです、私が聞いたところは。それから、いま御答弁の中にありました、自由主義社会の中に適正なルールをつくって自由主義経済に活力を与えると言っているけれども、活力とは何でありますか。
#72
○国務大臣(藤田正明君) 公正なる競争ということでございます。
#73
○小笠公韶君 公正な競争の結果活力が出るんで、活力というものと公正競争とは同じものではありません。その点は明らかに手段と結果であります。私はそういう意味において、活力ある自由主義経済を確立しようと言いながら、活力とは何ぞやということについては非常に理解がしにくいのであります。それは特に今回の法案の中で、いわゆる独占的状態の排除だとか、いろいろなことがございますが、そういうようないろいろの手段を講じたことによって活力が生ずるんだという保証は何にも因果関係がないと私は思う。こういう排除措置によって自由主義経済の中における活力が生ずるんだという因果関係はどう説明せられますか。
#74
○国務大臣(藤田正明君) 逆に申し上げますと、独占的状態というものがこの自由経済の中にはびこることによって、その活力というものが衰退するのか、盛り上がっていくのかということにもなろうかと思います。独占的状態ということは、その中に弊害を含んでおるわけでございますから、この弊害を除去することによって国民経済に利益をもたらす、こういう大きな名分のもとに、そしてその企業が競争を行うことによって活力をもたらしてくる、こういうことと理解しております。
#75
○小笠公韶君 どうも活力の御説明にはなりかねるんではないかと思います。
 通常、非常に常識的に考える場合に、この企業経営者が経営マインドに励み、技術の高進、あるいは設備の刷新、あるいは市場の開拓、いろいろないわゆる努力をすることによって経済活動がいんしんをもたらす、こういう状態を称して経済界に活力ありということであります。したがいまして、私はこの今回の改正の排除措置が、そういうふうな情勢を招来するきっかけになり得るかどうかという点に、いろいろの御説明を伺ってぴんとこないというのが私の心境であります。
 それでは、私はもう一つぜひお伺いいたしたいと思うのは、忌憚なく率直に提案理由というものを拝見しておりますと、簡単な要約でありますから、私は条文見てませんから、その点あしからずひとつ。こういうことが考え方のアンダーカレントとして、経営者の経営意欲というものを尊重するという観念が感じられないことであります。形式論理的なつじつまは合っているかもしれませんが、経営者の経営マインドを振起し、経営者の人格を尊重し、思い切りやれよと、こういうふうな意欲が――ただ弊害を起こしたり、やり過ぎちゃいかぬと、これは当然でありますが、フェアな競争のもとに経営マインドを振起させる誘因となるべき事項が見つからないんであります。そこはどう考えておりますか。
#76
○国務大臣(藤田正明君) 私は、たびたび答弁の間で申し上げておりますように、大きくなることが通常の営業活動、あるいは経営の活動におきまして、それでシェアを拡大していくことが悪いことではない。ただし、この法律の根本には、「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。」と、こう書いてございます。これに合致する方向においてそのシェアを拡大し、そして経営マインドを大いに発揮されることは何ら差し支えないわけでございまして、われわれがここで申し上げているのは、そういうことによって弊害がもたらされることは困ると、そうでなければシェアの拡大されることは大いに結構ではないか、こういうことはたびたび申し上げておる次第でございます。
#77
○小笠公韶君 その点は全くそのとおりなんです。ただ法案全体から受ける印象として、経営者が一生懸命やってみようという意欲をかき立てる要素がほとんどないということであります。私は、そこに本案に対してやはり先ほど申し上げましたような石油ショック後の異常状態の亡霊のときに発想された陰影が残っておる、こういうふうに実は思うのであります。私は、そういう意味で、いわゆるいま総務長官もお話がございましたが、四十九年から五十年にかけまして企業悪、特に大企業悪というような観念が一部出てまいりましたが、私は、その観念は当然払拭すべきものであり、いわゆる企業、特に大企業は監視、監督のもとに置くんだというふうな気持ちが少しでもあると、企業経営者の意欲というものはそがれるのであります。ここに自由主義経済の本当のメカニズムの中心があるのであります。
 自由主義経済を運営するものは物的、あるいは技術的な問題もありましょうが、いわゆる人間の問題をどう引っ張っていくか、弊害を醸さずに引っ張っていく、こういうところになければならぬと思うのであります。たとえば、今日の景気沈滞に対する政策は、政府におかれましては昨年来いろいろやっておられます。しかるに、民間設備投資意欲は一向に盛り上がりません。国民の消費傾向もそれほどさして上がってまいっておらぬことが、今日の景気を沈滞せしめている基本であります。それは何か、経営者が将来に対する自信と展望を欠いているからであります。私は、そういう意味においてこの案を感じました、率直に。私のひがみかもしれませんが、そういう感じを受けておるのであります。特に自由主義経済を守ることが国民経済の発展に直結するんだという立場をとるときに、この問題を強く私は考えざるを得ないと思うのであります。
 それから、第二点として私はお伺いいたしたいことは、今度の改正法案で独占的な企業、あるいは寡占的な企業というような問題についてでありますが、寡占企業というものの評価というものをどうとっていくかということであります。寡占企業にはメリットもありデメリットもありましょう。その悪い面だけが強調をされて、メリットの方がいわゆる声が小さくなっておるという感じを禁じ得ないのであります。特に最近の技術の発展、企業経営におけるスケールメリットの追求、こういうような経営人の基本から考えますときに、業種、業態によりましょうが、寡占への傾向は当然来るのです。特に基礎産業部門なんかにおいては来がちであります。そういう意味において、寡占体制におきまする寡占企業の評価の問題についてぜひひとつお考え願いたい。特に価格との関連におきまして、昨日御説明が公取の委員長からあったんですが、いわゆる寡占企業の価格が過去においてその他の部門ものに比べて上昇率は低い。下方硬直性がしかしあるのだと言う。下方硬直性とは何です。私はそこに非常な、いわゆる寡占に対する評価が一方に偏しておるんではないか、こういう感じを禁じ得ません。
 また、同時に一つの問題として、寡占企業対策というものが独占禁止法一本でこれを処理しようというところに、もしそうだとすれば無理がある。寡占企業対策というものは、一つの技術的に、あるいは経営の規模の面から見て当然にその方向に向かうような業種、業態においては、別の角度から寡占対策を講ずることによって国民経済の向上に寄与さすべきである。本案におきましては、寡占体制のデメリットだけを強く押さえておるきらいがあるんではないか、こう思うものであります。その点どうでございますか。
#78
○国務大臣(藤田正明君) 寡占体制のデメリットだけをこの法案において押さえておると言われますけれども、この法案は独占禁止政策を行う法案でございますから、その寡占対策について、そういう弊害が生じた場合のことに対する対策をここに盛り込まれておる法案でございますので――ただ、私たちの立法府としての考え方から申し上げますと、寡占というものは必ずしも悪いものではない。いままでこの日本のような大きな工業国と言われ、経済大国と言われたこういうときに、大企業が先頭に立ってここまでこの工業国にのし上がってきた、これに対するたしか大きなメリットがわれわれ全国民に及ぼしていることもこれは確かでございます。ですから、寡占企業に対して、そのような評価も一方いたすとともに、寡占であるがために、それだけ大きな力を持っているがゆえに、また大きな、市場に対しても、国民に対しても影響も及ぼす。その影響が悪い方に向かったときは大変であるというのがこの法案でございますから、それを何とかいたしたいということでございますので、寡占に対して決して偏った感覚を持ってこの立法をいたしたわけではないということを申し上げておきたいと思います。
#79
○小笠公韶君 それでは、寡占体制に対する議論が多いんですが、通産当局は寡占対策に対してどうお考えですか。
#80
○政府委員(濃野滋君) いわゆる寡占問題、あるいは経済の中におきます集中度の強化と申しますか、この問題は、私ども産業所管官庁といたしましても大変興味と申しますか、重点を置いておる問題の一つでございまして、実は昨年以来この新しい減速経済下におきます産業政策には幾つかの問題がございますが、その中の一つとして私どもぜひ取り組んでいかなければならない問題だと思っております。
 それで、寡占問題はただいま総務長官の御答弁にもございましたように、寡占の弊害というものが私ども現実の経済の面に出ておるとは、私どもただいままでの分析なり考え方の中にはございませんけれども、もしそこに将来、減速経済下でいわゆる言われる寡占の弊害が出ましたときには、その寡占の弊害除去の競争促進政策の一つとして、今回のこの独禁法の改正で考えられておりますような独占的状態の排除ということは一つの方向であると私ども考えておりますが、私どもといたしましては、いわゆる寡占企業につきまして、それ以外に寡占の持っておりますメリットを伸ばしていくということ、それからデメリットにつきましても、たとえば新規参入の促進、対抗企業の育成、あるいは技術開発の促進と、それぞれの事業分野と申しますか、業種、業態によりまして、一体その事業、業種が抱えておる問題、それの国民経済的な意義は何かというようなことにつきまして業種別の対策、業種別の分析というものを進めていきたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
#81
○小笠公韶君 総務長官の先ほどの答弁に関連して定義だけ伺っておきたいと思うんですが、それはいわゆる独占的状態、あるいは寡占的状態におっても、社会的な悪と言うと語弊がありますが、弊害をもたらさなければいいんじゃないか、しからば社会的な弊害、市場の弊害というようなことはどういう意味であれ、何によってこれを判断していくのか、どういう基準によって判断をしていくのか、非常にテクニカルな問題であります。ちょっとお答えをいただきたい。
#82
○政府委員(大橋宗夫君) 市場におきます弊害というものはいろいろな考え方があろうかと思いますが、現在御提案いたしております独占禁止法の第二条の七項では、三号におきます要件、つまり価格の設定についての問題、利益の享受についての問題、この二つを中心的なものとしてとらえているわけでございます。
#83
○小笠公韶君 私は、独占禁止政策を遂行していく上におきまして、公正取引委員会の職務の独立性というものが保証されておることは御承知のとおりでありますが、公正取引委員会の職務権限の範囲、限界というものは明確かつ客観的にすべきものだと考えておる一人であります。
 そういう意味において、公正取引委員会は独占禁止法を中心とする業務が中心である。すなわち公正自由なる競争を促進していく、これに反するものを取り締まっていく、こういうことが主たる任務であります。したがいまして、カルテルの取り締まり、あるいは不公正競争の取り締まり、あるいは私的独占の禁止というような三つぐらいを中心とした職務に限られるのではないかと実は考えるのであります。そこに初めて他の産業官庁との間に一つの筋が引ける、線が引けるのであります。この公正取引委員会の職務権限の限界を客観的かつ明確にするということはぜひやっていただきたいのでありますが、今回の改正案によってその点は不明確になるおそれがあるんではないか、先ほどちょっと参考人の方にだれかが独占禁止政策と産業政策との関係をどう見るかと伺っておったが、いわゆる産業政策と独占禁止政策との境界線というか、入り組み合ったところというか、そこらを明確にしなければ、企業経営者の立場からいうと非常に迷惑である。そういう意味からも私は公取の、いわゆる職務権限の独立に伴う範囲と限界というのを明確にしてほしいと思うのであります。私がいま申し上げましたような三つの事項、これに限るのだということで差し支えございませんか。
#84
○政府委員(大橋宗夫君) 公正取引委員会の権限は言うまでもございませんが、独占禁止法の運用に当たるということがその権限でございます。独占禁止法の内容につきましては、それは時代の要請によりまして拡大を必要とするという場合もあろうかと思いますが、その拡大を必要とされるといたしますと、その拡大された後の独占禁止法の運用というものが公正取引委員会の権限になるので、必ずしも先生いま御指摘になりました三つの禁止規定を中心、あるいはそれに限定されるというものではないのではないかと考えております。
#85
○小笠公韶君 その点は今度のいわゆる企業の分割、あるいは同調的値上げ等々の条文の運用いかんによりましては、公正取引委員会における自由裁量の余地が非常に多い。この自由裁量の余地が多いということは行政の混淆を来すもとであります。これまで行政指導なんと言って、わからぬことで産業官庁が非常にやってきた。いつも問題を起こしておる。そういう問題をはらんでおると見なければならない。私はそういう意味において行政官庁、特に産業官庁と公正取引委員会との関係が第三者、いわゆる取り締まりを受ける企業経営者の側から見ても非常にはっきりするのだというような形にしてほしいものだと。たとえば条文の中には標準的という言葉を使っている。標準的管理費、標準的販売費というような。標準的とは何でありますか。これは上位の二、三のものをとっていくのか、平均でとるのか、あるいは下から数えてバルクラインでとっていくのか、標準の意味は幾つもある。その場その場において標準のとり方にはいろいろあるのであります。これが公取の自由裁量によってあるときは上位のものをとり、あるときはバルクラインでとっていく。あるときは平均値でとっていくというようなことになると大変なのであります。企業経営者といたしましては、すでに取り締まられる対象が明確である。内容が明確それに即応して企業の振興を図っていくという姿勢であるべきである。これが一生懸命にやったあとでは、いつひっかかるかわからぬというのでは困るから、その点を特に申し上げている。
 特に私は今度の改正の中で最もわからないものは字句でありますが、「一定の事業分野」の範囲の問題。昨日の答弁を伺っておりますと、これはいわゆるガイドラインをつくるんだと言う。ガイドラインとは何ですか。この範囲によって分割の対象になったり分割の対象から外れたりする。事業経営者が、これは分割の対象になるのか、排除の対象になるのかならぬのか、やられるまではわからぬという体制に置かれておる。こういうような事業分野の範囲を、しかも行政機関の中で話し合いで決める、ガイドラインで決めていくというやり方は絶対不親切であります。私は、これはあくまでも政令によって決めるべきものである。そして、対象になる業種というものはいつもこの範囲であるということを明示することによって、国民に落ちついて仕事をやらせることができる。それこそ活力ある日本経済界を招来するのであります。この点は事業分野の範囲の決め方、またこれまでの答弁の中にあるガイドラインというような形で、そういう言葉じゃわかりません。まるで所得政策のガイドラインみたいなような言葉を使って、ガイドラインというような言葉では絶対にわからない、迷惑至極であります。これを明らかに政令、あるいは省令というような法規処分にしてほしいと思うのですが、いかがですか。
#86
○政府委員(水口昭君) 先ほど来先生からいろいろのお話がございました。公取の立場から若干説明をさしていただきたいと思います。
 まず先生は、独禁法というものは三つのものを中心にすべきである、こういうふうにおっしゃいました。私もそのように思います。
 独禁法は、第一条にもございますように、「私的独占」、「不当な取引制限」、「不公正な取引方法」、この三つが基本になっていることは申すまでもありません。しかし、現行法でも第四章の規定がございまして、四章は、「株式の保有、役員の兼任、合併及び営業の譲受」、こういったようなことに関する規定がございます。したがって、独禁法第一条の「目的」にも、「事業支配力の過度の集中を防止」するというふうなことが書いてございます。今度の独占的状態に対する措置、あるいは同調的値上げ、これも一種の寡占対策でございまして、そういう意味から先生がお挙げになった三つのものが基本の柱になることは確かでございますが、それだけに限られるべきものではないというふうにわれわれとしては考えております。
 それから、ただいまのどうもガイドラインのお話でございますが、おっしゃるように独占禁止法、御案内のようにアメリカの法律にならったものでございますから、いままでの独禁法の規定というものは、一般的にいって非常に抽象的と申しますか、簡単に書いてございます。そこで、実際の運用に当たってはいろいろわかりにくい面もある。そこで、一般の国民の便宜のために、公正取引委員会といたしましては運用基準とか、あるいは認定基準とか、そういったものをつくりまして、これがまあ一種のガイドラインでございますが、現在までもそういう運用をしておる例もございます。
 そこで、今回の改正に当たりましては、特に独占的状態に関する措置といったものは、社会経済に非常に重要な影響がございますから、従来の独禁法の書き方に比べますれば非常に詳しく書いてあるといいますか、いろんな要件を具体的に列挙してあるわけでございます。しかし先生御指摘のように、中にはたとえば、この「一定の事業分野」、これはこの条文を幾ら読んでみても、正直言いましてなかなかわかりにくい面がございます。それで関係者の方から、こういう場合には「一定の事業分野」に該当するのかどうか、いろいろ心配をなさる向きもあるわけでございます。それで、国会におきましても、そういうことであるから公正取引委員会の方が早急にガイドラインを作成すべきである、衆議院の附帯決議にもそのようなことが書かれてございます。そこで、われわれといたしましては、国会の御指示によりまして、ガイドラインにつきまして公正取引委員会の、これは事務局の試案でございますが提出をしてございます。で、もちろんこれはまだ単なる試案でございまして、法律が通りましたら関係者とよく御相談をして、その上で正式のものにしたいと、こういうふうに考えておる次第でございます。
#87
○小笠公韶君 ガイドラインの性格はどういう性格ですか。
#88
○政府委員(水口昭君) 今回のガイドラインを正式に決定いたします場合にどういう形式のものにするかということは、実はまだ決定しておりませんが、現在、先ほど説明いたしましたように、いろいろのガイドラインの先輩といいますか、運用基準とか認定基準とかいったものがあるわけでございます。それはどういうものかと申しますと、一つは、公正取引委員会が委員会の決定として決定をいたしましてこれを外部に公表しておるもの、したがって、運用に当たってはその基準に従ってやっておるというのが一種類ございます。
 それからもう一つは、公正取引委員会の了承を得まして、事務局長通達という形で流しておるもの、この二種類に分かれます。
#89
○小笠公韶君 ガイドラインの問題、性格は私はこれも非常に大事だと思う、事実。この法運用の前提条件ですから。したがいまして、いま公正取引委員会の委員会決定として公表するという手はいいと思いますが、最小限いいと思うが、事務局長通達あたりはいつでも修正できます、行政官なら。いつでも変わるという人では困るんであります。一定期間安定、かついわゆる簡明であるという要件が必要であります。
 だんだん時間がなくなりましたから、私はその次に一つ伺いたいのは、昨日来、あるいは本日も御議論になっておったようだが、価格の同調的値上げの場合の現状の報告、十八条の二でありますが、この点につきましては、四十条の強制調査権との関係においていろいろ問題があることはすでに論ぜられたとおりであります。ただ私が一つ伺いたいのは、この報告を徴収するに当たってどういう形にして、どういうふうに定めるか、その基準というものを一応定めなければ報告書は取れないと思う。報告提出の基準、形式、内容、それらについてはどうお考えになっておられるかということであります。
#90
○政府委員(澤田悌君) ただいまの御質問、大事な点でございますので申し上げたいと存じます。
 「価格の同調的引上げ」に関しまする報告の徴収は、具体的には大体次のように考えておるわけでございます。
 一つは、「価格の同調的引上げ」は形式的な基準によりまして判定されるものでございまして、相互の意思疎通があるような疑いを前提にしたものではないということがまず考えられるわけでございます。
 それから第二に、また形式的に第十八条の二の要件に該当するからといって、値上げの理由が客観的に明白な場合にまで値上げ理由の報告を求める必要はないものと考えておるわけでございます。
 第三に、値上げの理由の報告としては、ケースに応じて値上げの理由を説明するに足りる資料の提出を求めることとなるのでありますが、現在のところ、おおむね次のような事項についての報告を求めることとなろうと考えております。
 一つは、価格引き上げの状況でございますが、建て値その他標準的な価格による引き上げ前の価格、それから引き上げた価格、平均的な引き上げ率等でございます。
 それから第二には、価格引き上げの理由でございますが、理由の説明及び参考資料――参考資料といたしましては、たとえばその理由が費用の上昇にあるときはその費用の額の推移、原材料費の上昇の場合には、主要な原材料の種類別の購入価格の推移、それから労務費の上昇の場合には、従業員一人当たりの賃金の額の推移等が必要となろうと、ただいまのところかように考えておる次第でございます。
#91
○小笠公韶君 同調的値上げの理由の報告に関連して伺いたいのは、今度の改正案におきましては、これを国会に報告するとか、国会に報告する場合に具体的にどういう形でどの程度の詳細さというか、詳しさを要求するのか。私はこの点は出し方によると国政調査権の発動と相まって意外なところに問題を生じないとも限らぬと思うのであります。したがいまして、この報告の形式、内容というものをはっきりしていないと、これは国政調査権の対象として次から次へ掘り下げていくことは可能であります。そこで、いままでいやがっておる原価公表まで追い込むことは簡単であります。そういう危険性を含んだ報告、国会への報告であります。国会がもしやればです。ということでありますが、したがって、報告の形式、内容というものは実に重大だ。この点がもしうまくいかないとすれば、日本の経済界は萎縮するほかありませんよ。この点どうお考えですか。
#92
○政府委員(水口昭君) 独禁法四十四条の規定によります国会への報告でございますが、どの程度詳しく書くかと、これはなかなか一律には申し上げにくいと思いますが、いずれにしても国民の皆様によくわかる程度に掲載せざるを得ない。しかし、企業秘密にわたるようなことは、これは四十三条の規定によりまして公表してはならないということははっきり明記されておりますので、そのようなものは除いて掲載をしたいと考えております。
#93
○小笠公韶君 これは非常に具体的にはむずかしい問題です。しかも問題を引き起こす引き金であります。そういう点において十分御配慮を願いたい、こう思うのでありますが、私はもう時間が来たようでありますから、最後に一言申し上げておきたいのは、先ほど来申し上げましたように、独占禁止政策の運用につきましては非常に多岐にわたり、また議論もいろいろ多岐にわたると思うんです。したがいまして、この独占禁止政策、あるいは具体的には独占禁止法と言っていいかもしれませんが、運用の基本について審議、調査するような機関を政府に設けるお考えはありませんか。公正取引委員会は決められた、いわゆる独占禁止法の運用のみやる第一線部隊として働く。したがって、基本に関する問題について審議するところはいま一つもないのであります。そういう意味においてこういう提案を申し上げたい。そうすることによって、先ほど来いろいろ御議論がある産業政策と独占禁止政策との混淆、お互いの綱の引っ張り合いというような問題、解釈の強弱、広狭というような問題を私は避けられるんではないか、こう思うんですが、総務長官いかがですか。
#94
○国務大臣(藤田正明君) 公正取引委員会の独立性、自主性というものは、これは十分に認めていかなきゃならぬことだと思います。ですから、この法律に基づいた運用自身に政府が口をはさむという余地はないと思います。ただ、立法の趣旨を超えたような公正取引委員会の活動がありたる場合には、これは一応の立法の趣旨の範囲を超えておるわけですから、これは政府としても注意するということはできると思いますし、また監視もできると思います。ただし、この立法の趣旨の内部における公正取引委員会はあくまでも自主的な権限を持って運用されることでありますから、これに対しては介入の余地はないものだと思います。
#95
○小笠公韶君 藤田総務長官、ちょっと勘違いをしておる。
 私は独占禁止法の運用自体は公取の専門に任せる、独占禁止政策に対して、大所高所から基本を考える委員会というものはたくさんあるんだから一つぐらいつくってはどうか、こういう政治論であります。
#96
○国務大臣(藤田正明君) 確かにおっしゃいますように、産業政策というものが縦糸とするならば、横糸がいまのような競争政策であり、そしてまた環境政策である。これらがうまく調整、整合いたしませんと、庁や規制面だけが強くなってくれば産業界は萎縮していく、またその横糸の方が弱くなりますれば弊害がたれ流されていく、こういうふうなことにも相なりますので、この辺の調整のぐあいをよく政府としては見ていかなきゃならぬということは御発言のとおりでございます。それを見ていくための委員会を新しく設置したらどうか、あるいはそういうふうな何らかの機関を設けたらどうかという御提案かと思いますけれども、これは検討をさしていただきます。
#97
○小笠公韶君 じゃ結構です。
#98
○岡本悟君 私の質問申し上げたいことは、いま小笠先生が御質問されまして、これはむずかしいことになったと、重複してしまいますので。なるべくそれを避けるように若干の質問をしたいと思います。
 最初に総理府にお伺いしたいんですが、独禁法によるところの政策の遂行、いわゆる独禁政策というものは価格対策とは別、要するに公正にして自由な競争を確保する、それによる適正な市場価格が形成されることを結果的には期待するけれども、直接の価格介入であるとかそういう価格政策ではない、こういうふうに観念し、したがって、価格政策というものはいわゆる通産省あるいは経済企画庁、そういう産業政策を担当する行政庁の担当分野である、こういう考え方もあると思うのですけれどもね。しかし、けさ、たまたま参考人の御意見を拝聴しておりましたら、全国消費者団体連絡会ですかの代表が出ておられまして、やはり価格の面から独禁法の改正を非常に関心深くとらえておられる。それからもう一人学者の方でありましたか、やはりいまの不況とインフレが混在するスタグフレーション、これに対応する強力な政策として、今回の法律の改正は私はきわめて期待をしておるというようなことを言っておられました。こういう点がどうなんでしょうかね。
 つまり私が言いたいのは、価格介入という政策をとる場合には、たとえば四十八年のオイルショックに発しましたあの狂乱物価に対応して国民生活安定緊急措置法であるとか、あるいは石油需給適正化法であるとか、あるいは買占め売惜しみ防止法ですか、そういった一連の立法をやったわけなんでありますけれども、そこまで公取は介入しないのだ。しかし実際は、特に国民一般消費者の関心というのは価格の面からきているわけですね、その点はどういうふうに考えたらいいのですか。
#99
○政府委員(大橋宗夫君) 先生御指摘のとおり、独占禁止法の基本的な考え方というものは、公正かつ自由な競争を促進する、こういうことによりまして事業者に創意を発揮させるというところにあるわけでございますから、価格決定そのものについても事業者の決定に待つというのが独占禁止法の基本的な考え方だろうと思います。したがいまして、独占禁止法の法律的な規制手段の中からは、公権力による価格介入につながるようなものは厳しく避けていかなければならないというふうに考える次第でございます。しかしながら、現実に競争制限の効果というものが、競争制限をしながらその事業者同士が話し合って価格を決定するという場合には、とかく自由競争の結果決まる価格よりも、高いところに決まるのではなかろうか、そういう経済的な効果というものはあるわけでございまして、公正かつ自由な競争を徹底するということは、そういうような競争を徹底することによりまして、間接的に経済的には価格が下がっていくという効果はあるわけでございます。
 どちらを重視するかという問題はいろいろあろうかと思いますけれども、私どもは、少なくとも物価を重視する方の御意見の中には価格の原状回復命令でありますとか、価格引き下げ命令でありますとか、そういう価格に公取が直接介入すべきだという御意見もありますけれども、そういうものは政府の考えているところではございません。第七条の五党修正案のようなものにつきましても、政府がこの際、前回の修正案が不適当であると判断いたしましたのは、やはりそのような考え方によるものでございます。
#100
○岡本悟君 この問題は、非常に私は大きいと思うんですね。いま御指摘のように、独占的状態の弊害要件の中にも、やはり価格の問題が出てくるわけなんですね。それから、いま御指摘あったかと思いますけれども、同調的価格の引き上げ、こういったような考え方、あるいはこれは以前公取の原案にあったんですけれども、価格の原状回復命令であるとか、原価の公表であるとか、だから私はこの考え方をしっかりしておきませんと、公正取引委員会が運用に当たられるわけでありますから、その考え方の基本にこれをしっかりつかんでおかぬと、運用面に非常に私はゆがんだ行き方が出てくるんじゃないかということを非常に心配しているんです、実は。
 つまり、国民一般の関心はそういうことは考えておりませんから、むしろ価格の面から見ていますから、公正取引委員会の活動とか、あるいは独占禁止法の運用というものを。ですから、とかく世論の方は、その方へうわっと向かって、公取は何をしているんだと、こういうふうなことになるわけですね、なりがちなんです。学者の中でも、けさほどはスタグフレーション対策としての意義を非常に強調しておられた方がおりました。でありますので、よほどそこのところをはっきりつかんで、公取の役割りの限界というものを産業政策との整合性においてつかんでおかれませんと、とんでもない私は行き過ぎが出てくるんではないか、こう思うんでございますがね。公取委員長の、最高責任者でございますので御見解を承りたいと思います。
#101
○政府委員(澤田悌君) 独占禁止法の基本理念と価格政策の関係は、先ほど大橋審議官から申し上げたとおりでございます。独禁行政は、現在でも神経質なぐらい、直接の価格介入というのは避けておるのでございまして、今改正法案でもいろいろ問題になりました第七条に関しましても、あれが原状回復命令というようなものとの関連でいろいろ御議論のあったところでございますが、私どもはその違法行為の排除命令、その効果を全からしめるための付随的な措置の限界を価格の再交渉命令というところにとどめて、それを守っておるようなわけでございまして、カルテル価格でない新しい価格の交渉をして、市場の原理に従って価格をお決めくださいと、そこまでというようなふうに考えておりますのも、そういった趣旨からでございます。
 御指摘のように、狂乱物価のときは何か独占禁止法の運用によって直ちに物価が下がるというような一般的な期待、少し行き過ぎた期待がありまして、私どもも少し困った点もあるのでございますが、だんだん落ちついてまいりましたらそういう感覚はだんだん鎮静してまいりまして、基本的に価格というのは市場において自由に決められるものである、そういう自由に決められる基盤をつくるのが独占禁止法である、こういう理解が深まってきたのではないかと思います。
 先ほど参考人の方がスタグフレーションと価格の関係について触れられて、私、直接聞いておりませんのでわかりませんけれども、これは恐らく、不況とそれからインフレとが混在している状況において国の経済政策を浸透させるためには、そこにやはり自由競争という基盤が必要だと、それが経済政策の浸透を容易にし、それによって価格が自然に動くと、こういうような趣旨ではなかろうかと実は推測するのでございます。そういうことであれば必ずしも的を外れているのではないと考えますが、いずれにいたしましても独禁法の理念、あるいは独禁政策の行き方と価格との関係は、先ほど大橋審議官が申したのと全く同一でございます。その心構えで運用をしてまいりたいと考えております。
#102
○岡本悟君 通産省の見解はどうですか、この点についての。
#103
○政府委員(濃野滋君) ただいまの大橋審議官及び公取委員長からお話のございましたのと基本的に同じでございます。私どもも通産省の行政を進めていきます上で緊急事態、特殊な事態に価格についての直接的な介入、万やむを得ない介入はいたすといたしましても、原則的には市場における公正な価格形成というもので経済が運営されていく、それが最もまた有効な道であると、こういうふうに考えておるわけでございます。
#104
○岡本悟君 法制局の第二部長お見えになっておりますか。――今度の改正案でいわゆる企業分割、構造規制が入ってまいりましたね。そこで、この現行法の第一条でこれはカバーできるんでしょうかね。この改正はないんですけれども、これカバーできましょうか。
#105
○政府委員(味村治君) 現在の独占禁止法第一条には、この目的といたしまして、「この法律は」、途中を飛ばしますが、「事業支配力の過度の集中を防止して」云々と、こう書いてございます。このたび設けられました分割の規定、俗に分割といっているわけでございますが、独占的状態がある場合におきます営業の一部の譲渡等の規定は、この事業支配力の過度の集中を防止するということを目的とするものでございますので、現在の独占禁止法の一条の目的の枠内であると考えて特に一条の改正はいたしておりません。
#106
○岡本悟君 そうですかね、私も余り専門的な知識は持っておりませんので詳しく申し上げることもできませんけれども、これはたとえば持ち株の制限、あるいは禁止、あるいは合併、そういったことを指しているんじゃないでしょうかね。いわゆる行為規制はないんじゃないですか、これは。
#107
○政府委員(味村治君) 持ち株制限でございますとか、あるいは役員の兼任禁止でございますとか、そういったのがこの事業支配力の過度の集中を防止するということに入っていることも先生のおっしゃるとおりでございます。
 沿革的に申し上げますと、昭和二十二年に独占禁止法が制定されましたときに、不当な事業能力の格差というのを是正する措置というのがございました。これもまあ事業支配力の過度の集中を防止するということを目的としておったわけでございますが、それが削られたといういきさつになっております。削られた際にも、ほかにいま申し上げましたように、持ち株制限でございますとか、役員の兼任禁止とかいう規定がございましたので、やはりこの目的はそのまま削除されないで生きておったわけでございますが、このたびの分割の規定を入れるにつきましても、この目的の範囲内で読めるということで特段の手当てをしなかったといういきさつでございます。
#108
○岡本悟君 専門家にそう言われてみるとそうかなという気がいたしますので、これ以上追及しません。私はちょっと無理があるというふうに考えております。
 そこで、この新しい改正独占禁止法の運用が非常に重要になってくるわけなんですね。先ほど小笠大先輩委員もおっしゃいましたけれども、この新しい改正法案ぐらい抽象的な基準がむやみやたらに出てくる法律案というのはちょっとないですね。やっぱり国民の権利義務にかかわりのある規制の法律事項がたくさん入っているんですから、もっと明確に、具体的でなきゃいかぬわけですね。たとえば、先ほど御指摘ありました一定の事業分野、これはシェアの算定のときに基準になることは申し上げるまでもありませんけれども、このとり方、つまり、手っ取り早く言いますと、分母をどういう範囲にとるかによってたちまち変わってくるわけですね。
 だから、その点は私は、小笠委員はガイドラインなんというものはどういう性格かわからぬとおっしゃいますけれども、私は、政令、省令でなくてもいいから、やはりガイドラインを一日も早く明確におつくりになって、企業・事業者に示して、ははあ、この程度ならいいんだなと、この程度を超えるとまずいのかなという一応の目標を与えてやりませんと、この独占禁止法改正案の声を聞いただけで、もう非常に企業家の活動に悪い影響を与えておりますね、確かに。萎縮をしておる。企業に活力を与えるということになっておりますけれども、活力を与えるどころじゃない。萎縮して、中には企業の活力を圧殺するという言葉を使っている人もおる。押し殺すと、そういうこともありますので、やはり私は親切なやり方としては、できるだけ早くこのガイドラインを、一定の事業分野だけじゃございません、あっちこっちたくさんありますから、これは独占的状態の構造要件、あるいは弊害要件につきましても、抽象的なものが非常に多い。でありますから、できるだけ早くおつくりをいただきたいと思うんですが、公取委員長は、アメリカの司法省が合併規制に関しましてガイドラインを一九六八年に発表しておりますが、御存じでございましょうか、失礼でございますが……。
#109
○政府委員(澤田悌君) いや、ただいま正確には覚えておりませんが、そういうのがあることは存じております。
#110
○岡本悟君 これは、「このガイドラインの目的は、実業界、法曹界その他の関係者に、クレイトン法第七条に基づいて会社の取得および合併を訴追するか否かを判断するにあたって司法省が現在採用している基準を知らせることである」、こうありまして、実に細かいガイドラインをつくっておりますね。それで、その目的の一番最後の項のところへ御丁寧にも「このガイドラインを司法省が企図された特定の合併や取得案件に関して、その規制の態度を明らかにする独禁法相談業務に代わるものと考えてはならない。」ということまでつけている。相談業務に応ずるというわけじゃありませんよ。こっちの方が違反しておりますかどうか――そうじゃなくて、やはり端的に、司法省はこういう考え方で合併等を規制する方針なんだということをあらかじめ知らしているわけなんですね。非常に細かいやり方をしています。ぼくは、非常にこれは民主的な親切なやり方だと思いますし、いわゆる活力をそぐとかく結果になるやもしれぬと恐れられております今回の改正法案の実施あるいは運用については、この点を特に公取委員長ひとつ力を入れてやっていただきたいと思うんですが。それで、先ほど小笠委員の御質問に対して、できるだけ早い機会に関係者の意見を聞いてというふうにおっしゃいましたが、この関係者というのはどういうふうにお考えになっているんでしょうか。
#111
○政府委員(水口昭君) 関係者はかなり広く考えております。たとえばその専門知識を有する方、学識経験者でございますね、場合によってはその業界の方が入るかもしれません。それから、また場合によっては所轄官庁と申しますか、そういった広い意味での関係者を考えております。いずれにいたしましても、現在の段階の試案というのは、われわれ事務局がつくった暫定的なものでございまして、非常に技術的な知識も要する、商品学の知識等も要するというものでございますから、広く知識を集めて、なるべくみんなの納得のいく案をつくってこれを正式のものとしたい、こういう考えでございます。
#112
○岡本悟君 そうすると、おおむね期間としてはどのくらいかかりましょうか。
#113
○政府委員(水口昭君) できるだけ速やかにと考えております。で、いずれにいたしましても、この法律が成立いたしました場合に、施行になる前に若干期間があると思います。施行になるまでにはどうしても間に合わせなくちゃならぬ、こういう気持ちでおります。
#114
○岡本悟君 特に私は公取委員長にお願いしておきたいのは、独占的なこの状態で、構造要件でいま申し上げましたように一定の事業分野、こういったようなものが非常に恣意的に決められるんじゃないかという心配がございますね。非常にまちまちなんですね。たとえばオルガンとピアノはどうなるのか。同一の事業分野、一定の事業分野はつまり、一定の商品であるのかどうか。あるいは類似の商品の中でも入るのか。あるいはバターとチーズと粉乳は、これは一定の商品であるのか。これはもう確かに製造施設というものは同じものでつくれるんじゃないかと思いますけれども、その効用は全然違うんですな、これは。粉乳というのは子供が飲むんですね、赤ん坊が。バターというのは大体おやじが使う。あるいは子供が、大きくなった子供が使うでしょうが。
 それから、まあいろいろ、つまり私が言いたいのは、私も商品についての専門的知識はありませんが、当然お考えになっておりますように、事業分野の範囲というものを、あるいは類似商品の範囲というものを、恣意的にあっちへやったりこっちへやったり、これもついでに入れとけとか、ああ、これはのけとけということをやられたんじゃたまったものじゃないと思うんですね、これ。だから、これはぜひとも、私はこの法律の施行前に、実施前にそれを明らかにするというふうに審議官がいまおっしゃいましたから非常に期待しておりますけれども、また関係者の意見を十分聞いてとおっしゃって、学識経験者、業界も意見を聞いてやると、これは当然関係行政官庁も入るだろうと思いますね。だから、時には公取の狭い、そう言っちゃ失礼ですけれども、知識等に閉じこもらないでオープンにされて、そうして国民のだれが見てもまあまあそんなものだろうと、こういうふうなものにしてもらいたいと思います。
 そこで、私はいまの一定の事業分野だけでなしに、たとえばこの構造要件の中に市場の占拠率等と並んで、新規参入が著しく困難である、こういうことが入っておりますね、委員長。新規参入が著しく困難であるというふうな抽象的な基準を設けられたのは、Aの人はこれは簡単だよと言う人がおるかもしれぬし、Bの人はそれはとてもむずかしいぞと、これいろいろまちまちだと思うんですね、実際問題として。こういったものに客観的な判断の基準を持ち出すことば、大変私は至難中の至難だというような感じがします。
 それから、この価格の問題でも、いわゆる独占的な価格、価格の硬直性といいますか、あるいは独占的利益の見方、こういうものを挙げていくと切りがない。それから措置の要件としては、重大な悪影響がない、企業分割を命ずる場合に。その企業の規模とか、経理とか、国際競争力とか、こういうものが挙がっているんですけれども、どういうふうな場合にそれは重大な悪影響があるのかないのかを判断するのか、とんとわからぬのですね、これ。これが驚くなかれ全部公取の自由裁量に任されておる、こういうことになるわけですね、独立機関でありますから。その辺はどうなんですか。
#115
○政府委員(大橋宗夫君) ただいまの公取の自由裁量という点につきましては、これは後で司法審査に服するわけでございますから、裁判所の認める解釈というものが、公正取引委員会が判断される際にも頭にあるわけでございますから、そういう意味で、自由裁量ということではございませんので、その点だけちょっと申し上げさしていただきます。
#116
○政府委員(水口昭君) 先ほど小笠先生にも御答弁申し上げましたが、そもそも現行の独禁法というものが、これは独禁法の性格のしからしむるところかもしれませんが、経済の動きに密着した法律でございますので、そのために各委員、経済または法律に詳しい方がおられて総合的に判断されると、こういう仕組みになっておりますので、現行の独禁法をお読みいただきましても、法律を読んだだけではかなり抽象的で簡単でございまして、どう判断するか、なかなかむずかしい面がたくさんあるわけでございます。
 そこで、いま先生御指摘の「独占的状態」に関する部分でございますが、われわれは特に国会の審議等を通じましても、「一定の事業分野」というが一体何か、具体的に示せという御要望が非常に多いものでございますから、これにつきましては先ほど申しましたように、早急にガイドラインをつくるという方向で進んでおりますが、ただいま先生が御指摘になった幾つかの定義の中の抽象的な規定、たとえば利潤をどう考えるかとか、新規参入が困難とは何かとかいろいろあるわけでございますが、これを直ちにガイドラインをつくるということはなかなかむずかしゅうございますので、そこはちょっと無理ではないか――いずれ検討はしなくちゃいかぬが、ともかく早急に一定の事業分野のガイドラインをつくろう、その他のことはいろいろ、たとえば利潤率の点にいたしましても、国会の御審議等を通じて一応のめどのようなことをるる御説明いたしておりますので、そういうのを参考にしていただきたいというのがわれわれの率直な気持ちでございます。
#117
○岡本悟君 いま審議官はそうおっしゃったんですが、たとえば現行法第二条で、「不公正な取引方法とは」というのがありますね、第七項。続いてずっと、「左の各号の一に該当する行為であって」「公正取引委員会が指定するものをいう」。それで、公正取引委員会が不公正な取引方法について委員会の告示で出しているわけです。ところが、これは何のことはない、法律をそのまま告示の中に引き移しているようなかっこうになっています。だから、いまでも非常に自由裁量的なものが多くて、的なものですよ、的なものが多くて、そして、それをいろいろな方法で補っているんだとおっしゃるんだけれども、まことに要領を得ないような補い方もあるわけなんです。一つも親切な補い方になっていない。そのことを特に私は申し上げておきます。
 それからそのほか、先ほどガイドラインをつくっていただきたいというのは、措置の要件の場合の規模、経理、国際競争力とか、あるいは競争を回復するに足りると認められる他の措置が講ぜられないこと、これはどういうふうに見るのかとか、いろんなことがありますがね。
 それから措置を命ずる際のいわゆる配慮事項がありますね。この配慮事項が、これまた委員長大変なんですよね。この配慮事項、簡単にありますけれども、これ一つとってみても、たとえばけさ、やはり参考人の御意見を聞いておりましたんですが、キリンビールの労働組合の委員長が出ておられまして、労働組合を分断してわれわれの労働条件が果たして維持されるのかどうか、重大な生活にかかわりのある問題を、簡単に公取の命令でやられたんではたまったもんではない。これはやはり八条の四に、「当該事業者に雇用されている者の生活の安定について配慮しなければならない。」という配慮条項があるけれども、これはすべからく労働組合の同意がなければならぬと、同意を求めなければならぬというふうにしてもらいたいという御要請もあったんです。しかし、これはそこまでいくのかどうかですね、配慮するということは。
 これも配慮条項について、「事業活動の円滑な遂行」、それから「雇用されている者の生活の安定」とあって、そして一から要するに八までずっと配慮するに当たってのいろんな検討すべき事項が挙がっているわけなんですが、これもたとえば「資産及び収支その他の経理の状況」、「役員及び従業員の状況」とか、「事業設備の状況」と、きわめて抽象的でどういうふうに――その前に聞いておきますが、これは大橋審議官、この配慮条項、たとえば従業員の関係について、これはどうも企業分割するのはまずいといった場合には、当然やれないことになりますね。その点はどうですか。
#118
○政府委員(大橋宗夫君) これは第八条の四の第二項の規定でございますが、ここに、「公正取引委員会は、前項の措置を命ずるに当たっては、次の各号に掲げる事項に基づき、」何々について「配慮しなければならない。」と、こういう規定でございます。それで、主としてこの「命ずるに当たっては」というときの問題でございますが、前項の措置そのものが、「営業の一部の譲渡その他当該商品又は役務について競争を回復させるために必要な措置を命ずることができる。」ということになっておりまして、一つの措置ということではないわけでございます。この主として配慮の目的は、措置の選択について、あるいは一つの措置を選んだ場合でも、具体的な内容の選択ということについてこの配慮事項が働いてくるというものと考えております。
#119
○岡本悟君 いや、私は端的にこの八条の四で、公取は、「前項の措置を命ずるに当たっては、」「当該事業者に雇用されている者の生活の安定について配慮しなければならない。」とある。で、項目としても「役員及び従業員の状況」ということがありますね。ですから、この点を配慮した場合には、前項の措置のうち営業の一部譲渡を命ずるということはできなくなると、こういうことでありますかということを端的に聞いている。
#120
○政府委員(大橋宗夫君) 配慮した結論がそうであればそのとおりでございます。
#121
○岡本悟君 そういうふうに、そこのところもきわめて抽象的でして、われわれはどういうふうになった場合に配慮して、これは排除措置の実施について、たとえば企業分割はできないというふうに判断されるのか、全くこれは公取の一方的な見解で決まっちゃうんだという感じがするわけなんですね。もちろん調査する場合には事前に主務大臣に通知するとか、あるいは審決前には主務大臣と協議するとかいうのがありますけれども、大体おれの方では、公取としてはこの従業員の点は大丈夫だとか、あるいは事業設備の状況から見てこれは分割しても大丈夫だとか、こんなことが簡単に判断されてはたまらぬと思うんですけれどもね。法の運用基準なんというもの、あるいは解釈基準なんというものをやっぱりおつくりになる意思はあるんでしょうね。
#122
○政府委員(水口昭君) 遠い将来のことはともかくといたしまして、法律が成立しまして直ちにつくるガイドラインとしては、先ほど申し上げましたような、試案として現在委員会に提出してございますあの程度のガイドラインの作成をまず急ぐと、その他のものはその後で検討すると、こういう姿勢でございます。
#123
○岡本悟君 私がしつこく聞きますのは、この新しい法律ができるときには、もうどういうこれは解釈基準で運用されるのか、その一点に関係者の、国民一般の疑問が集中するわけですね。そうして、自分でいろんなことを想像してみて、当事者の解釈からはそういうことは全然頭にないにもかかわらず、とんでもないことを考えて心配する、ひいては活力をそぐ、あるいは従業員に対しても、非常に生活上の不安を与える、こういうことになるわけでありますので、こういう運用基準とか、そういう解釈基準、まあガイドラインをおつくりになって、早く明確な運用に当たる当局の意図をはっきりさして、明確にして、一般の人に安心をさせませんと、非常に混乱すると思うんですね。そこのところは非常に私は大事だと思うんですけれども、どうでしょう。
#124
○政府委員(澤田悌君) ごもっともだと存じます。
 それで、先ほど審議官からもお答え申しましたように、この八条の四、それから第二条につきまして、どういう形式的要件を備えたら、まず弊害の問題は別にいたしまして、独占的状態に該当する形式要件にかかるものは何かという基準、これが先ほどからガイドラインと申しておりますが、こういう五百億円とか、シェアが一社で二分の一とか、こういうものは一定の取引分野をこういうふうに考えればこうなりますよという、これがまず急がなければならない問題でございます。
 それから、この八条の四に出ておりますいろんな配慮条項その他、これは先ほどの弊害の問題を含めまして具体的な問題が起こったときにどういう裁き方をするかという問題でございますから、この法律ができましたらこの配慮条項、その他につきましても、一般的な基準がもしできればそれを急ぐことはもちろんでありますけれども、おおむねは一つ一つの具体的な事項について決めて、万人の納得する形で判定を下していくと、こういうことがまた一方大事ではなかろうか、こういう具体的な配慮条項でございますから、一般基準をつくるということが果たしてどこまでできるか、あるいはどこまで必要かという問題もあろうかと存じます。それですから、一般的な基準ができればそれをまず示しておく、しかし、具体的に一つ一つの事項について判断をしていく、その判断の公正妥当なものを求めていくと、こういう順序になろうかというふうに考えておりまして、御趣旨は非常にごもっともでございまして、ですから、できるガイドラインは逐次急いでつくるが、と同時に公正な、厳正な、具体的な判断を誤らないように運用して進めてまいると、こういうことではなかろうかと感じておるわけでございます。
#125
○岡本悟君 もう時間も余りありませんから、やはり小笠委員も、それから私たちの同僚の斎藤委員、それから青木委員もお尋ねになったようでありますけれども、私、どうも速記録見ても納得がいかないのは、例のこの営業の一部譲渡を命じた場合に、その命令の性格といいますか、現行商法との整合性の問題なんですけれども、私は率直に言って政府側の見解は、どうもこの整合性が図られていないとか、あるいは立法政策上の配慮は別にして、しり抜けと言われるほどのことでもないとか、いろいろ言われておるんですけれども、むしろ整合性は図られていないとはっきりなぜ明言できないのか。しかし、株主総会といえども会社の機関で、まあ会社の重要な決定事項を担う総会でありますから、取締役が企業の営業の一部譲渡を提案すれば、それは合理的に行動して、いわゆる常識の線におさまるということが期待できるとか、したがって、しり抜けにはならないとか、いろいろな牽強付会的な説明があるんですけれども、率直に、むしろその整合性は図られていない、しかしこうだというふうな私は答弁が欲しいんですね。どうもごまかしたような答弁があるように思うんですが、法制局の部長さんどうですか、あなたは法務省出身だそうだから。
#126
○政府委員(味村治君) ただいま先生のおっしゃった問題は、いろいろな考え方ができようと思うんでございます。ただいま提案されております政府案につきましては、これは何回も法務省の民事局長からも答弁がございましたとおり、この営業の一部の譲渡を命ぜられた、その営業の一部の譲渡が重要な一部であるというときには、商法二百四十五条の特別決議が必要である、そして、その特別決議を求める株主総会においてその議案が否決されますというと、これは営業の一部譲渡が不可能になるわけでございますから、またさらに取締役は新たな株主の納得のいくような条件で営業譲渡の契約を結びまして、また株主総会の決議を求めなければならないと、こういうことに相なっているわけでございます。
 その点で、この公正取引委員会からそういう命令が出たのに、株主総会の特別決議を必要とするということは整合性に欠けるではないかという御質問だと存ずるわけでございますが、これは公正取引委員会がどのような命令をなさるかということはこれからの問題でございますが、少なくとも八条の四では、営業の一部の譲渡、その他競争を回復させるために必要な措置を命ずることができるわけでございまして、公正取引委員会といたしましては、営業の一部を譲渡することによりまして競争状態が回復できればそれでよろしいわけでございます。
 ところが、株主の側から見ますと、営業の一部の譲渡は公正取引委員会から命ぜられるんだからやむを得ないといたしましても、それが一体何人に対して譲渡され、どんな値段で譲渡されるかということは、これは株主にとりますと非常な重大問題ということになるわけでございます。その際に、じゃその公正取引委員会に相手方とか値段まで決められるかというと、これは事実上も恐らく不可能でございましょうし、法律的にも現在の、ただいま提案いたしております政府案では不可能、できないということになろうかと思いますが、そういうように株主の保護というものと、それから公正取引委員会によりますこういう措置、これの調和点ということを考えますと、やはり商法二百四十五条の特別決議が必要なんだということが、まあこれはいろいろなお考えがあると思いますが、やはり適当なのだというふうに私どもは判断をいたしておるわけでございまして、二百四十五条の特別決議は要らないということになりますと、これはまた株主を保護するための何らかの措置を講じないと、端的に二百四十五条をそのまま適用しないというわけにはまいらないと思うわけでございまして、株主の保護という見地と、それからまた独占的状態に対する措置というところの調和点と申しますか、そういうところから現在のような提案をしているわけでございまして、必ずしも整合性がないというふうには思っていない次第でございます。
#127
○岡本悟君 どうもそういう答弁されるので私は気に入らぬのですけれどもね。必ずしも整合性がない……。そうではなくて、整合性は図られていないと、そのことについては合理性があると確信しているのだと、つまり商法体系から見てこれは軽々に手はつけられない、商法全体を見直すときに、一体株主の保護というのはどういうふうにやるべきなのか、他の法令との関係でですね。そういう大きな見地から見る必要があるので、ただ独占禁止法との関係の整合性を問題にされて持ち出すということは軽率に過ぎるというふうに考えておるんだぐらいの答弁をしてもらうと私も納得するんですがね。どうも奥歯に物がはさまったような答弁ですな。何遍聞いてもわからない。どうですか。
#128
○政府委員(味村治君) 委員長。
#129
○岡本悟君 まあいいです、いいです。まあそれ以上ないでしょうから。
 それでは、もう時間がありませんから、最後にやはり同調的価格の引き上げの問題が私も気になるんでして、これは御承知のように、大橋審議官にお伺いしたいんだけれども、これは第一次案で四十条の二で政府案の中に入っておりましたね。場所は違うわけですよ、現在の改正法案とは。それが国会でいろいろ審議されたあげく、全会一致の修正でこれが削除された。削除されて今回またこれが出てきたわけですね。そして今度はどうやら野党の皆さん方の方にも何か御異論がないやに漏れ承っておりますけれども、一体あのときのいきさつというものはどうであったんですか。私の知る限りでは、四十条の二に新しく価格の同調的引き上げに関して報告を求めるということをことさら書く必要がないんです。それは現行四十条の公取の調査権の中に含まれているんだから、それるあえて加えるということは、逆に四十条の調査権の範囲を制限することになる、こういう議論が速記録を見るとあったように思うんですね。これはどうなんですかね、いきさつは。
#130
○政府委員(大橋宗夫君) これは、一昨年第一次政府案で提案いたしました際には、四十条の二という条文を新たに起こしまして、現在御提案申し上げております十八条の二と同様の規定を置いたわけでございます。これは場所が、四十条といいますのは「公取の組織及び権限」という節にございまして、まあその権限、しかも四十条というのが一般的な調査権、その次に置いたという形になりまして、何か特別の調査権というものをこのために認めて、四十条の一般調査権を制限するのではないかというような議論があったことは御承知のとおりでございます。必ずしも政府の立場としてその議論に承服するわけではございませんけれども、国会の御判断といたしまして、これは四十条の権限を削るんだというような御判断、あるいはその他の御判断もあったようでございますけれども、そういうことで全会一致で削除されたわけでございます。
 しかしながら、翻って考えてみますと、課徴金というようなカルテルに対する規制を厳しくすると。そういたしますと、カルテルをやらなければああいう形の引き上げのできない業界に対しては厳しい措置をとる。しかしながら、カルテルをやらないで、まあほかの業界であればカルテルをやったと同じような効果の価格の引き上げができるようなそういう業界について、何らかの関心というものはやはり国民の間に深いわけでございまして、独占禁止法をカルテルについて強化する、あるいは独占的状態についても強化した規定を置くという場合に、その合間の高度寡占の状況について、独占禁止法から何らの関心を示さないということはちょっといかがだろうかということでございまして、これは一昨年の経緯にかんがみまして、四十条の二という形ではなかなかむずかしいということでございますので、独占禁止法の関心を示すという意味におきまして新たに章を起こしまして、それで条文の位置も十八条の二というような工夫をいたしまして、誤解のないような形で復活してまいったと、こういう次第でございます。
#131
○岡本悟君 委員長の見解を承っておきたいんですが、この同調的価格の引き上げというやつは、どうも私どもきわめて常識的に考えてみますと、たとえば鉄鋼、原材料の輸入価格、これを輸入して鉄に仕上げるわけですけれども、技術も大体似たようなものですし、もう製造過程も似たようなものだし、出てくるものは大体品質も同じだし、したがって値段も同じになるという傾向は、きわめて現在では自然の成り行きというふうに見られているわけですよね。いわゆる何となく一物一価というようなことになっちゃう。ほとんどの原材料を外国に頼っておるわが国の経済界におきましては、そのことは非常に普遍的な現象みたいになっているというふうに私はとっているんですよね。つまり何といいますか、意識的に同調的な価格になるんではなくて、好むと好まざるとにかかわらず似たような物ができるわけですから、似たような値段になる。しかも競争が激しいから、仮に値段に少しでも差異があれば、これはたちまちシェアの大変動を起こすわけですね。だから、何となく同調的値上げになってくるという傾向があることをお認めになりますかどうか。そういう傾向であるという、一般的に。
#132
○政府委員(澤田悌君) 一般的に申しまして、たとえば素材産業等に、同種の商品のコスト構造がある程度同質化するという傾向を全面的に否定するわけではございません。そういう傾向があるということも考えられますけれども、しかし、各企業ごとにこれを見てみますと、やはり私どもの立場から申しますれば、原料の購入先とか購入価格、あるいは生産規模、合理化の程度、さらには経営者の能力というようなものを総合的に考えまして、コスト構造の同質化と価格の同調現象が直接的に結びつくというふうには考えられないのでございまして、これはよくそこはかみ分けてまいらなければならないのではないか。また幾つかの例を見ましても、寡占業種のいわゆる同調的値上げというものが、各企業のコストが同程度に上がったという結果に基づくと認められない場合がむしろ多いのではなかろうか。そういうところをやはり十分考えて、同程度にコストが上昇したと一概には言えないんだということを考えていく必要があるのではなかろうか。物事の考え方としても、同じなんだから同調的に上げてもどこが悪いのかという、まあそう申しては語弊がございますが、姿勢と申しますか、その辺を謙虚にお考えいただくと物事がスムーズにいくのではないかというような感じがいたしますので、よけいなことをつけ加えて恐縮でございましたが、感じを申し上げた次第でございます。
#133
○岡本悟君 委員長、終わります。
#134
○委員長(加藤武徳君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時五十九分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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