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1976/04/14 第80回国会 参議院 参議院会議録情報 第080回国会 外務委員会 第5号
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1976/04/14 第80回国会 参議院

参議院会議録情報 第080回国会 外務委員会 第5号

#1
第080回国会 外務委員会 第5号
昭和五十二年四月十四日(木曜日)
   午前十時十一分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月十四日
    辞任         補欠選任
     稲嶺 一郎君     初村滝一郎君
     木内 四郎君     高橋雄之助君
     田  英夫君     安永 英雄君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         寺本 広作君
    理 事
                大鷹 淑子君
                亀井 久興君
                戸叶  武君
    委 員
                伊藤 五郎君
                高橋雄之助君
                初村滝一郎君
                久保  亘君
                安永 英雄君
                塩出 啓典君
                立木  洋君
                田渕 哲也君
   国務大臣
       外 務 大 臣  鳩山威一郎君
   政府委員
       外務政務次官   奥田 敬和君
       外務省経済局次
       長        賀陽 治憲君
       外務省条約局外
       務参事官     村田 良平君
       労働大臣官房長  石井 甲二君
       労働省労働基準
       局安全衛生部長  山本 秀夫君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        服部比左治君
   説明員
       法務省民事局参
       事官       元木  伸君
       外務省経済協力
       局外務参事官   三宅 和助君
       外務省国際連合
       局外務参事官   村上 和夫君
       大蔵大臣官房審
       議官       渡辺 喜一君
       厚生省環境衛生
       局食品衛生課長  仲村 英一君
       農林省農林経済
       局国際協力課長  岩渕 道生君
       労働省労働基準
       局労災管理課長  増田 雅一君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○千九百七十二年の海上における衝突の予防のた
 めの国際規則に関する条約の締結について承認
 を求めるの件(内閣提出、衆議院送付)
○千九百七十一年七月二十四日にパリで改正され
 た万国著作権条約及び関係諸議定書の締結につ
 いて承認を求めるの件(内閣提出)
○子に対する扶養義務の準拠法に関する条約の締
 結について承認を求めるの件(内閣提出)
○税関における物品の評価に関する条約の改正の
 受諾について承認を求めるの件(内閣提出)
○がん原性物質及びがん原性因子による職業性障
 害の防止及び管理に関する条約(第百三十九
 号)の締結について承認を求めるの件(内閣提
 出)
○国際農業開発基金を設立する協定の締結につい
 て承認を求めるの件(内閣提出、衆議院送付)
○国際農業開発基金への加盟に伴う措置に関する
 法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(寺本広作君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 千九百七十二年の海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)を議題とし、政府から趣旨説明を聴取いたします。鳩山外務大臣。
#3
○国務大臣(鳩山威一郎君) ただいま議題となりました千九百七十二年の海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
 わが国は、海上における船舶交通の安全を図るため、明治二十五年に海上衝突予防法を制定し、これを何回か改正を加え今日まで実施してきましたが、この法律は、そもそも一八八九年ワシントンで開催された国際海事会議において作成された国際規則を参考として制定され、この国際規則のその後の改正を取り入れて改正されてきたものであります。
 近年に至り、船舶の大型化、レーダーの発達等に対応して、内容の新しい国際規則を作成すると同時に、この新しい国際規則を法的拘束力のあるものとすべきであるとの気運が生じ、一九七二年ロンドンにおいて政府間海事協議機関主催のもとに国際会議が開催され、わが国を含む四十六カ国が参加して審議を行った結果、同年十月二十日、千九百七十二年の海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約が作成されました。この条約が実施を義務づけている規則の内容は、レーダー装備船に対するレーダーの適切な使用、分離通航方式の採用等近年の海上における交通事情に対応した適切なものと考えられます。
 わが国がこの条約の締約国となることは、海上における船舶の衝突を予防し、船舶交通の円滑化及び安全確保を図る上で必要なことであるのみならず、海上交通規則の統一性に寄与するという点で、国際協調の見地からもきわめて望ましいと考えられます。また、この条約は、本年七月十五日に効力を生ずることとなっており、わが国としても早期に締約国となることが望ましいものであります。
 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
#4
○委員長(寺本広作君) 以上をもって説明は終わりました。本件の自後の審査は後日に譲ります。
    ―――――――――――――
#5
○委員長(寺本広作君) 次に、千九百七十一年七月二十四日にパリで改正された万国著作権条約及び関係諸議定書の締結について承認を求めるの件
 子に対する扶養義務の準拠法に関する条約の締結について承認を求めるの件
 税関における物品の評価に関する条約の改正の受諾について承認を求めるの件
 及び、がん原性物質及びがん原性因子による職業性障害の防止及び管理に関する条約(第百三十九号)の締結について承認を求めるの件(いずれも本院先議)
 以上四件を便宜一括して議題とし、質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
#6
○塩出啓典君 それでは最初に、子に対する扶養義務の準拠法に関する条約の締結について承認を求めるの件について二、三お尋ねをいたしたいと思います。
 この条約の発効は一九六二年一月一日で、すでに十五年を経過しておるわけであります。わが国は本年二月十日に署名をし、そしてこの案件が現在国会に出されておるわけでございますが、十五年間もこの条約に日本が参加をしようとしなかった理由は何であるのか、お伺いします。
#7
○政府委員(村田良平君) 先生御指摘のとおり、この条約は一九五六年に採択されております。ただ、当時はわが国の家庭裁判所におきまして、子の扶養に関する渉外的な事件というものは数が非常に少なかったわけでございます。したがいまして、直ちにこの条約を締結するという実際的な必要性は比較的乏しかったわけでございますが、その後、わが国の国民生活が非常に国際化をいたしまして、それに伴いまして扶養に関連いたします渉外的な事件も数が年々ふえてまいりました。したがいまして、最近のそのような趨勢にかんがみまして、この条約を締結する必要性が生じたというふうに考えた次第でございます。
#8
○塩出啓典君 そうしますと、わが国の裁判所で扱うこの種の事件、すなわち、子が親に扶養義務を請求する事件で国際的なもの、そういう範囲に限った場合、大体どの程度の件数があるのか、また相手国はどの国が多いのか。
#9
○説明員(元木伸君) お答えいたします。
 扶養義務に関する問題につきましては、家事審判法所定の審判及び調停ということであらわれてまいるわけでございますけれども、それにつきまして大体渉外的な審判あるいは調停事件の数と申しますと、昭和五十年で千七百五十七件でございます。参考までに申し上げますと、四十五年で千三百十一件、それから四十年で千八十件となっております。
 このうちで特に子の扶養に関係のあると思われます事件、たとえば離婚でございますけれども、そういう関係の事件を申し上げますと、昭和五十年で六百二件、昭和四十五年で四百八十三件、昭和四十年で三百七十六件と、こういうふうになっております。
 また、これの当事者の国籍でございますけれども、これは裁判所の事件でございますので、必ずしも新しい統計が入手できないわけでございますが、たとえば昭和四十七年の大阪家庭裁判所管内の渉外調停事件、これが二百十四件ございまして、そのうち、申し立て人が日本人で相手方が韓国人というのが三十五件ございます。それから申し立て人が韓国人で相手方が日本人というのが十九件でございます。双方とも韓国人が百五十件、双方とも米国人が一件、双方とも台湾人が三件、申し立て人が日本人で相手方が台湾人と申しますのが一件、申し立て人が日本人で相手方がギリシャ人が一件、申し立て人が日本人で相手方が中国人が一件、双方とも中国人が二件と、こういうふうになっております。
#10
○塩出啓典君 そうしますと、相手国はやはり韓国が多いわけでございますか。アメリカも多いんじゃないかとわれわれ思うわけですけれども、いまのお話では韓国が非常に多いようなんですが。
#11
○説明員(元木伸君) そうでございます。相手方は韓国が一番多うございます。
#12
○塩出啓典君 この条約を締結をしてどういうメリットが出てくるのか、これを御説明ください。
#13
○政府委員(村田良平君) この条約は、子に対する扶養義務に関しまして、国際私法のルールを子の常居所地ということを準拠法とするという各国共通のルールをつくろうという目的のものでございます。したがいまして、この条約を締結いたしますと、子供に対する扶養義務に関する事件がその法廷地によって、たとえば親の本国法が適用されたり子の常居所地の法律が適用されたりというふうな異なった基準といいますか、ばらついた基準で処理されるというような不合理がなくなるわけでございます。また、子の扶養の問題と申しますのは、その子供の人権という見地から見まして、その子供が現に住んでおります地域の社会的あるいは経済的な状態、それから社会保障その他の公的扶助制度を含めましてそういった社会経済的な背景とも非常に密接な関連を有するというふうに思われますので、子供の常居所地をその準拠法とするということが最も子のためになるのではないかというふうに判断する次第でございます。
#14
○塩出啓典君 ちょっとお尋ねいたしますが、これは非常に幼稚な質問かもしれませんが、いわゆる日本の裁判の場合は、たとえば相手方の所属する地域の裁判所に告訴すると、そういう原則があるんじゃないかと思うんでありますが、こういう国際的な事件の場合はどうなるのか。たとえば息子がいま日本におる、親はアメリカにいる、その親に対していろいろなことを請求する民事訴訟を起こす場合に、日本の裁判所へ出すことができるのか、その点はどうなんですか。
#15
○政府委員(村田良平君) ただいま先生御指摘のような例でございますと、子供が日本におりまして父親がアメリカにいるという場合に、その子供あるいは子供の母親も日本におることが多いかと思いますが、その子供がみずから、あるいはその母親等が代理人となりましてその父親に対して扶養の請求をするという訴えをわが国の家庭裁判所に起こすということになるわけでございます。そのときにわが国の家庭裁判所がいかなる法律を適用するかというのがまさにこの条約の定めているところでございまして、御設問のケースでございますと、その子は日本に現に住んでおるわけでございます。つまり常居所地が日本でございますので、日本の法律をわが国の家庭裁判所が適用いたしまして判決を下すという仕組みになるわけでございます。
#16
○塩出啓典君 そうしますと、日本国の裁判所が判決を下した場合、相手方は外国にいる場合、どうやって義務を判決どおり履行させることができるのか、その根拠はどこにあるのか、これをお伺いいたします。
#17
○説明員(元木伸君) これは大体先進国におきましての手続法の問題ということになるわけでございますけれども、先進国におきましては大体外国の判決を承認いたしまして、そして一定の執行手続のもとで執行できるということにいたしてあります。たとえばわが国におきましては民事訴訟法の二百条というのがございまして、外国の判決を原則として承認するということでございます。そうした上で五百十四条というので執行判決を得た上でわが国で執行するということになっております。先進国でも大体それと同じような規定がございまして、たとえばドイツ民訴法でございますと七百二十二条とか三百二十八条というのがございますし、オーストリア法では七百七十九条から八十二条までというようなことで、外国の判決が執行できると、こういうふうになっております。
#18
○塩出啓典君 いまさっきのお話では、非常に韓国に対するものが多いというお話でございますが、たとえば親が韓国にいる場合、子供あるいは子供の母親が日本の裁判所にその問題を持ち出すと、その場合は日本の法律に従って裁判が行われる。したがって、いわゆる慰謝料の額にしても日本における金額と韓国における金額では現段階においてはかなり差があるんではないかと思うわけでありますが、そういう点は確かに子供にとっては有利になるわけですけれども、しかし、その判決がそのとおり行われなきゃ何にもならないわけでありますが、韓国の場合はどうなるんでしょうか。
#19
○説明員(元木伸君) 韓国の場合、実ははっきりしたことはまだ入手しておりませんけれども、大体日本の民訴と同じような規定があるのではないかと想像いたしております。したがいまして、執行ができるということになるんじゃないかと思いますけれども、生活水準等の問題から考えまして事実上執行ができないという結果に終わるということはいろいろあるかと存じます。ただ、これは民事訴訟一般に言えることでございまして、あくまで個人財産がいわば担保の対象になるということになってまいりますと、どうしても判決は出ても執行できないという結果が出てくることは、これはいささかやむを得ないということになるかと存じます。
#20
○塩出啓典君 私が聞いている範囲では、ヘーグ国際私法会議で作成された条約の中で、子に対する扶養義務に関する裁判の承認及び執行に関する条約というものがあるやに聞いております。これはすでに発効をしておるわけでありますが、私はこの条約がいま問題になっているようなことに関するものではないかと思うわけでありますが、この条約の内容はどういうものなのか。それと、日本はいまだ加盟をしていないように聞いておるわけでありますが、なぜ加盟をしないのか。これは速やかに加盟をする必要があるんじゃないか。このいま提案されているものと、いま申し上げました子に対する扶養義務に関する裁判の承認及び執行に関する条約とは一つの対になっておるのではないかと、こういうような感じがするわけでありますが、その点はどうなんでしょうか。
#21
○説明員(元木伸君) お答えいたします。
 実は、一見いたしますと裁判の承認及び執行に関する条約と子の扶養義務に関する準拠法条約とはセットになっているのではないかというふうに考えられるわけでございますけれども、まず子の扶養義務に関する準拠法条約は、いわば裁判の内容と申しますか、実体法的な規定でございます。それに対しまして承認執行の条約は、これは手続的な条約であるということでございまして、手続と内容ということで分離して考えることが可能であるということがまず第一でございます。
 それから現在、承認執行条約でございますけれども、これはたとえば先ほども申し上げましたように、わが国では民訴法の二百条とか五百十四条、五百十五条で十分賄えるということが実情でございます。それから外国におきましても、これも先ほど申し上げましたように同様の規定がありまして、外国で執行できるということがございます。したがいまして、直ちにこれを批准いたさなくてもそれほど困らないというような状況があるわけでございます。
 それともう一つは、現在私どもの法務省の方で強制執行法の全面改正作業を行っておりまして、これが全部でき上がりますといままでの強制執行と全然違った体系のもとに強制執行が行われるということになりますので、むしろ、もし批准をして、それにつきまして国内法をつくるといたしますれば、それが成立いたしました後にやった方が非常に効果的なんじゃないかと、こういうふうに考えております。
#22
○塩出啓典君 よくわかりませんけれども、これは外務大臣にお願いをしておきたいわけでありますが、やはり非常にいろいろな問題が国際的な問題になってくる。われわれもそういう点で非常に国が違うと日本の考え方とはまた違うわけで、最近も国会において北方領土の問題とか竹島の問題、こういうことで国際司法裁判所に提起したらどうかという、それも向こうが応訴しなければそれは成り立たないと、こういう問題、あるいはまた、日本でいろいろ事件を起こしてもアメリカへ行ってしまえばもう日本のいろいろな検察庁の調査の及ばない。ロッキード事件のときにはああいう特別な司法共助をしてやったわけでありますが、そういう点で犯人引き渡し条約等も改正、あれはもうかなり長い間改正されていないわけで、改正するやのような動きもあるように聞いておるわけでありますが、いずれにしても非常に国際化を迎えてそういう国際間のいろんな法律関係の連係性を持たせるようにわが国としても努力すべきじゃないかと。先ほど申しました子に対する扶養義務に関する裁判の承認及び執行に関する条約等につきましても、ただ日本が困らないから入らないというのではなしに、世界が一つの法体系のもとに統一できるように、そういう方向にやはり努力をすべきではないかと、これは一般的な抽象的な質問でありますが、この質問の最後にお尋ねをしておきます。
#23
○国務大臣(鳩山威一郎君) ただいま塩出委員のおっしゃいましたこと、まことに私も同感でございます。国際問題が、大変わが国民といたしましても、非常に生活の分野におきまして国際問題が占める比重というのはふえつつあるわけでございますから、法律的な部面、私法関係におきましても国際的に共通なルールが確立されることが望ましいことは申すまでもないことでございますし、ただいま御指摘の執行面の関係する条約につきましてもこれら鋭意検討いたしまして、わが日本国民としての法律的な保護というものに、保護を厚くする方向で今後とも一層の努力をいたしたいと、こう思います。
#24
○塩出啓典君 これはちょっと関連してあれでございますが、いわゆる外国との犯人引き渡し条約というのは、いまアメリカとだけしかないように聞いておるわけでありますが、これを改正するというのは、大体そういう話し合いは外務省としては進んでおるのか、大体いつごろにこれが締結の方向にいくのか、このあたりの見通し等があればちょっと、これは関連しての質問でございますが。
#25
○政府委員(村田良平君) この条約は明治十九年に締結された非常に古い条約でございまして、最近の新しい国際犯罪の増加というふうな背景では十分でないということで、日米両国それぞれがこの条約を改定することが望ましいということに意見が一致いたしたわけでございます。
 そこで、本年の二月二十八日から三月四日まで、アメリカ側の代表団がわが国に参りまして、外務省において第一回の交渉を行ったわけでございます。その意見交換を踏まえまして両国が現在それぞれ内部でさらに検討を進めておるところでございます。第二回の交渉がいつごろかということはまだ決まっておりません。また、交渉をいつごろまでにまとめるかということについても、はっきりめどが立っておるわけではございませんけれども、重要な問題でございますので、できる限り速やかにこの交渉をまとめるように努力をいたしたいと思っておる次第でございます。
#26
○塩出啓典君 次に、がん原性物質及びがん原性因子による職業性障害の防止及び管理に関する条約の問題についてお尋ねいたします。
 この条約におけるがん原性物質、がん原性因子とはどういうものか、この条約ではどういうものが該当するということは決められていないわけであります。各加盟国の判断に任せられるようになっておるわけでありますが、私たちはこういうものは国際的に統一をすべきではないか。やはり人間は、アメリカ人も日本人もみんな同じですから、がんになる者はアメリカ人ががんになっても日本人ががんにならないなんということはないわけですから、こういうものは当然統一すべきものではないかとわれわれは考えるわけでありますが、その点はどうでしょうか。
#27
○説明員(村上和夫君) がんの原性物質とは、体内に摂取された場合にがんを誘発する作用を持った化学物質を申すわけでございます。すなわち、いろいろの症例の報告であるとか疫学の調査等の結果、人体に対してがんを誘発すると認められたような化学物質、及び研究用の動物に投与することによりまして、高頻度にがんを発生せしめると認められるような化学的な物質の総称をがんの原性物質というふうに解しております。
 また、がんの原性因子と申しますのは、同様にがんを誘発いたします作用を持つ電離放射線等の物理的な作用を申すわけでございます。
 なお、ちなみにわが国におきましては、たとえばベンジジン、ベーターナフチルアミン、塩化ビニール等の二十五の物質につきまして、労働安全衛生法に基づいた措置がとられておるわけでございます。
 それから、後段の御設問のがんの原性物質及びがんの原性因子の決定が各国別であるということについての御質問でございますが、これはがんの原性物質とがんの原性因子の問題につきましては、まだ十分に知られていない部分がたくさんございまして、職業がんに各国が対応する場合にも、一つは医学的に各国におきましていろいろの知識、それに対応する対処方針が進んでいるというような事情もございまして、むしろ弾力的に措置する方がいいということによりまして、この条約におきまして、いまの物質、因子について決定をしていないわけでございます。
#28
○塩出啓典君 わが国では、先ほどのお話では、二十五種類のものをがん原性物質として決めているとの御答弁でありますが、私たちはほかにもたくさんあるんじゃないかと。最近ではサッカリンなんかも問題になっておるわけでありまして、それを現在二十五種類のうち禁止しているのは五種類だけである、こういうお話でありますが、わが国ではいかなる方法によってこれを決めたのか、何を根拠に決められていくのか、そのシステムはどうなっているんでしょうか。
#29
○政府委員(山本秀夫君) お答えいたします。
 この禁止、許可、管理の決定でございますが、多くの疑われている物質が確かにあるわけです。その中からどのようなものをわれわれは法律的に規制するかということにつきまして、やはりいろいろな知見をもとといたしまして判断をしなければならない。
 そこで、昭和四十九年から労働省には職業がん専門家会議というのを設けておりまして、内外の情報、すなわち疫学調査の結果でありますとか、あるいは動物実験による結果というものを評価をいたしまして、その中からいま二十五種類がん原性のものとして取り上げているわけでございます。ただ、この専門家会議ではそこまで評価をしていただきまして、あとその結果をいただきまして、労働省の方でその物質の製造、取り扱いの方法であるとか、あるいは関係労働者がその場合に暴露するであろう状況というようなものも踏まえまして、政省令の改正を行うということで決定をしているのでございます。
 この場合に、やはり労働者の意見も十分徴する必要があるということでございますので、中央労働基準審議会というところに労公使三者構成で審議をしていただきまして、その意見によって決定をしているのでございます。
#30
○塩出啓典君 そうしますと、この二十五種類のうちに五種類が禁止となっておるわけでありますが、私がお聞きしている範囲では、いわゆる代替物質があるものが禁止であると。そうしますと、この二十五種類というものは、非常に毒性の強いもの五種類が禁止というのじゃなしに、代替物質があるのが禁止であって、この禁止、許可、管理というのはいわゆるがん誘発性の量の大小によって決められるものではなしに、別な代替物質があるかどうか、そういうような要件によって決められておると、こう判断していいわけですか。
#31
○政府委員(山本秀夫君) 大きく分けますと、やはり人に対して発がん性がはっきりしておるというのがまず第一条件でございます。それからその次に、人にはいまのところ症例はないけれども、人間の代謝機構その他から見まして間違いなく発がんをするというものが一つの群としてあるわけです。それから代替物がおっしゃるようにあるというようなことであれば、むろんこれは禁止して差し支えないというふうに考えてやっていくのでございます。
#32
○塩出啓典君 それでは、私は人間の健康に関する問題でございますので、危うきものは使わずと、こういう方針でいくべきではないかと。先ほどの御答弁でも、なかなかがん原性物質というようなものはシロかクロかというふうにはっきり出るものではない、非常に判断がむずかしい問題じゃないかと思うんであります。やはり考え方としては、ちょっと心配なものはできるだけこのがん原性物質に指定をして対処していくと、こういう方向でなければならないと思うわけでありますが、現在労働省はそういう方向でいっているんでしょうか。
    ―――――――――――――
#33
○委員長(寺本広作君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、田英夫君、稲嶺一郎君及び木内四郎君が委員を辞任され、その補欠として安永英雄君、初村滝一郎君及び高橋雄之助君がそれぞれ選任されました。
    ―――――――――――――
#34
○政府委員(山本秀夫君) 御指摘のような態度をわれわれはとっておりまして、わが国で規制しているのは二十五物質でございます。各国の規制状況を見ますというと、いろいろまた考え方が違いますので、一様に申せませんが、たとえば英国は十四種類を対象にしており、米国が十七種類というようなことで、われわれとしては予防を全うするという立場から、できるだけ追加をしていくというふうに考えて努力をしておるところでございます。
#35
○塩出啓典君 このがん原性物質であるかどうかという試験は動物実験などがあるそうで、非常に金がかかり時間のかかるように聞いておるわけでありますが、こういう検査をどのように行われているのか。計画的にそういう検査が行われているのか。また、今回このスクリーニングの一つとして変異原性試験というものをやるやに聞いておるわけでありますが、そのための設備というのはいまどうなっているのか、これをお尋ねします。
#36
○政府委員(山本秀夫君) 諸外国から非常におびただしい情報が次々と入ってまいります。それからそれ以外にも、国際機関の中でも特に権威があると言われているWHOの専門機関である国際がん研究機構というのがございますが、そこでこれは問題がある、あるいは研究した方がいいというアドバイスがあるものが幾つかございますが、それらをうまく計画的に評価をしつつあるわけでございます。
 そう言いましても、物質の数が多くどんどんふえてくるという趨勢でございますので、できるだけ計画的にはやっておるのでございますが、しばしばそれが、たとえば塩化ビニールが突然出てくるというようなことがございまして、計画どおりにいかないというのが悩みの種でございます。ただ、そう言いましてもいけませんので、われわれとしては国内の研究体制をそろえるということが必要だということで、今度の安全衛生法改正の中の一つといたしまして、変異原性試験というのを事業者につきまして義務づける、あるいは国みずからが行うということにしておるわけでございます。これである程度スクリーニングができまして、怪しい、あるいはその試験ではクロだというようなものにつきまして、私どもの方では化学物質につきましての長期の動物実験を行うような施設整備をいたしたいということで、いま計画中でございます。そこではいまの変異原性テストが恐らく毎年百程度はできるであろう。それから長期の動物実験をしてはっきり確かめるという物質数としては十ぐらいができるであろうというふうに考えておりまして、恐らくこのレベルの研究所としてはかなりの成果を上げるということを期待しておるわけでございます。
#37
○塩出啓典君 私たちこういう専門家ではございませんのでよくわかりませんが、たとえばサッカリンの問題にしても、昭和四十八年ですか、アメリカの情報でぱっと禁止になったり、今度またカナダの情報でいろいろ問題になっている。ともかく外国のどこそこでこういう研究があって、あるいはどこそこの政府が使用禁止にしたとかしないとか、そういうようなことに常に日本の国の方針というものがふらふらしている。やはりもうちょっと日本の国も日本独自である程度の研究もし、そしてむしろ世界に対してリーダーシップをとっていく、こうならなければいけないんではないか。いままで私たちの聞いている範囲では、添加物の問題にしてもこういうがんの原性物質の問題にしても、非常にわが国はそういう調査研究はおくれておる、こういうお話で、この状況についてはお尋ねしておるともう時間がかかりますので、これは質問いたしませんけれども、いまさっき申しましたように、何となく外国の情報によって絶えず日本の方針が支配されておるような、そういう気がするわけなんでありますが、そういう点はどうなんですか。これは、サッカリンは食べる方で、これとはちょっと違うわけですけれどもね。
#38
○政府委員(山本秀夫君) 御指摘のような、外国の情報のみに頼って判断をするということについては多少問題の点があります。そこで、われわれも先ほど申したような施設を整備をいたしまして、わが国みずからがそのテストをしっかりやって、それに基づいて判断をするということを労働省は考えておるわけでございます。
#39
○塩出啓典君 じゃ、これから徐々にやっていこうと、そういうことですね。
#40
○政府委員(山本秀夫君) さようでございます。
#41
○塩出啓典君 率直にいままでの非を認めていただきましたので、今後の成果を待つとして、この問題についてはこれ以上質問をいたすのはやめたいと思います。
 それから厚生省の方に、ちょっとここで関連をいたしまして、サッカリンの問題ですね、これは大体厚生省としてはどう考えているのか。いま申しましたように発がん性があるとしてかなり揺れ動いてきたわけでありますが、最近カナダの情報からサッカリンを使用を禁止すべきだという声も非常に強いわけでありますが、厚生省はどういう見解を持っておるのか。また、その根拠についてこの際お尋ねしておきます。
#42
○説明員(仲村英一君) お答えいたします。
 ただいまお話にもございましたように、諸外国の実験データというのは非常に早く情報として流れてまいりますし、アメリカ、カナダではサッカリンに関しましては三月九日、アメリカのFDAが禁止の規制をするという動きを発表いたしましたところでございますが、私どもといたしましても、カナダ、アメリカがこういう規制をとるに至った経過、あるいは規制の具体的内容、さらには実験データ等を入手いたしまして詳細に検討する必要があるという態度でおるわけでございまして、外務省を通じまして、現在アメリカ、カナダ両国から所要のデータを取り寄せるように照会しておるところでございます。
 現在私どもがサッカリンについて添加物の自主規制を行っております根拠は、私どもの国立の衛生試験所の実験データに基づいて、安全であるという観点から、国際的な数量まで規制を加えておるというふうなのが現状でございます。
#43
○塩出啓典君 私たちは先ほど申しましたように危うきものは使わないと、こういう方針でいくべきだと思います。それは現実にはサッカリンを使わなくなると困る業界もあるわけで、そういうような業界の圧力もあると思うんでありますが、その点厚生省はそういうものに振り回されないで、やっぱり一番大事な国民の健康を守る立場で処理していただきたい。これは労働省のこの場合も同じではないかと思うわけでありますが、この点を労働省、厚生省に強く要望しておきたいと思います。
 それから最後に、がん原性物質の中で、いわゆる管理――禁止の場合はこれはいいわけですけれども、禁止になっても、禁止になる前にそういうところで作業をしていた人もいると思うのですね。さらには許可や管理された、そういう状況の中で作業をする人もいると思うわけであります。そういう方が、やはり長年追跡をして、そういうデータの積み重ねが一つの長い期間にわたってがん原性物質であるかどうかを判断していくデータにもなるし、また、そういう方は特に用心をしていかなければならないんではないかと思うわけでありますが、こういうがん原性物質を扱う職場で働いている労働者の管理あるいは健康の追跡、こういうものはちゃんとできておるんでしょうか。
#44
○政府委員(山本秀夫君) 現に職場におられる方につきまして、あるいはまた新規採用される方につきましてはまず健康診断をやります。それから定期的にもまた厳重な特別な項目についての健康診断が励行されておるわけであります。それから、そのがん原物質の取り扱い、製造現場からほかの現場に移ったというような方につきましても健康診断をずっと続けてやるようにということに義務づけております。その実施状態は比較的良好であります。
 それから、その事業所を退職してしまったというような方につきましては、一定の条件はございますが、国から健康管理手帳というようなものを交付をいたしまして、無料で健康診断をして差し上げるというシステムはできております。まあ条約にもこの趣のことは載っておりますが、わが国ではかなり制度が充実しておるというふうに自負しております。
#45
○塩出啓典君 最後に、やはりできるだけわれわれは代替物質を早く開発をして、そういう危ないものはもう使わなくて済むようにしていかなくちゃいけないと思うのでありますが、こういう代替物質の研究等はどうなっておるのか。これを最後にお伺いいたします。
#46
○政府委員(山本秀夫君) 世の中にたくさんの類似物質というのがあるわけであります。しかしながら、そのものずばりという代替物質がなかなかあるわけではありません。研究は促進しなければならぬことは事実でございますが、しかし、危ないものは、禁止されるような種類のものは、やはりどうしても代替物質を開発しなきゃならぬというようなことで、われわれの方では強くそれぞれの向き向きの業界に対して指導をしておるわけでございます。業界はそれ自身の問題でございますので、かなりわれわれの趣旨をよく理解していただきまして、研究をそれぞれ進めておるということでございます。
#47
○立木洋君 ILO百三十九号を批准するについて、国内法としての要件を満たしたということで批准するという点については、これはきわめて結構なんですけれども、いまお話があったように、これから徐々にというふうなことが、こういう公式の場でも部長さんから公然と言われるぐらい、国内的な実情、いわゆる労働者のそういう健康管理、つまり職業がん防止という面から見て、実情上、実際上はいろいろ問題があるのではないかというふうなことを感じるわけです。その点で、労働省として職業がんの防止に関する基本的な態度ということを、まず最初にお伺いしておきたいと思います。
#48
○政府委員(山本秀夫君) 労働省としましては、職業がんは最も重要な職業性疾病であるという認識をしておりまして、がん原性物質が先ほど申し上げましたとおり、世界的にも非常に早めに手を打つという先手行政を展開をしておるところでございます。ただ、いまサッカリンでもお話がございましたように、研究領域につきましていささか立ちおくれておる分野がございますから、これにつきましては十分な整備をし、研究費も十分に取れるだけ差し上げることによりまして研究を推進し、それに基づいてよりきめの細かい対策を実施をしたいということでございます。なお、すでに規制をしておりますものにつきましての事業場の監督につきましても、最重点といたしましてエネルギッシュな監督指導を実施しておるというところでございます。
#49
○立木洋君 お話で、先手行政というふうにおっしゃったんですが、職業がんの問題に関しては過去において六価クロムそれから塩ビモノマー、これで事実上死者、病人が出てから、非常にそれが大きな問題になってからいわゆる対策が立てられるというふうな、過去にはそういう苦い問題もあったと思うんですが、こういう問題を再び起こさないためにどういうふうなこの問題からの教訓を引き出し、対策を立てられたのか、その点についてお伺いしておきます。
#50
○政府委員(山本秀夫君) まず、各国情報を速やかに入手するというシステムづくりが必要であるということでその予算の充実を図りました。それからその次に、その情報に基づいてこれを評価するシステムの充実が必要であるということで、先ほど申し上げました職業がん対策専門家会議というものをできるだけ頻回に開きまして、情報を先生方に御検討をいただくということにしておりますし、それから研究領域におきましても、情報に基づいてそれが本当かどうかということの確認行為をやはりしていただく必要があるということで、産業医学総合研究所というのが労働省の付属機関でございますが、そこの研究費も充実するということにしております。
 なお、動物実験と実際に人間に起こるであろう、起こるということが確実ながんということの間にはかなりの開きがございます。したがって、動物実験で出たからといって直ちにそれが人間のがんになるんだということにはなりませんが、しかし、動物実験でかなりの頻度に発生するような種類の化学物質につきましては、人間にもかなりの害があるであろうという想定のもとに、やはり規制をすべきかどうかということをわれわれは行政的に判断し、要するものは規制をしてまいるということにしておるわけでございます。
#51
○立木洋君 いまおっしゃったことはそれぞれそれなりに必要なことだと思うんですが、労働省としてはこの職業がんの問題についての研究がどこで行われているのか、それについての予算はどれぐらいになっておるのか、それをちょっと述べていただきたい。
#52
○政府委員(山本秀夫君) がんの研究は非常に各方面の国立大学あるいは国立試験研究機関において盛んに行われているところでございますが、職業がんにつきましての研究というのは本当にごく最近始められたというわけでございまして、非常に関係する方々の数は少ないという現状でございます。しかしながら、職業がんといいましても、職業性に暴露をされて起こってくるというものでありまして、がんが起こってしまった後からのものはそれは普通のがんと何ら変わりはないということでございますので、診断であるとかあるいは治療であるとかいうような領域は、これはほかの研究所あるいは施設で行われたものがそのまま使える。しかし、この労働者暴露とその起こったがんというものとの関連につきましての研究が実は疫学的調査その他大事なわけでございます。そういった領域についての研究を進めなきゃならぬということで、先ほど申し上げました労働省の産業医学総合研究所におきましては疫学調査部というのをことし発足させまして、たとえば鉄鋼業のある職場におきますところの肺がんの発生状態の疫学的研究であるとか、それからある種の化学物質の生体に与える発がん性というものの研究を大いに推進しようということで予算を請求いたしましたところ、御理解いただきましてかなりの額の予算をいただきました。申し上げますと、およそ五億四千万円程度をちょうだいをすることとなっております。
#53
○立木洋君 いま言われた産業医学総合研究所で五億四千万円というのは、これは全部職業がんに関する研究の費用ですか。
#54
○政府委員(山本秀夫君) 失礼しました。いまのは研究という領域での全体の費用でございます。その中で産業医学総合研究所でみずからお使いになれる金額というのは約三千五百万円ということでございます。
#55
○立木洋君 労働省の労働衛生研究所でやっている職業がんの実験的研究や職業がんの疫学的研究の予算はどうなっていますか。
#56
○政府委員(山本秀夫君) ただいま申し上げました金額がその産業医学総合研究所みずからがお使いになる金額でございます。
#57
○立木洋君 含まれているわけですね。
#58
○政府委員(山本秀夫君) はい。
#59
○立木洋君 これは私は非常に少ないと思うんですがね、この予算は。文部省の方にお尋ねしまして、この化学研究費の補助金の配分について、これは五十一年度ですけれども、これを見せていただきますと、がんの特別研究についての予算の合計が十二億八千九百十万円ですよ。労働省ではこれは産業医学総合研究所全体で五億四千万円。そのうち職業がんについては三千五百万円。一方ではがんの特別研究については十二億余り、職業がんについては三千五百万。これは大変な私は開きがあると思うんです。職業がんの過去の失敗例というのは、さっき六価クロムの問題等々私は述べたんですけれども、これはまさに研究費がきわめて少ないということが研究者の中、専門家の中でも言われていることです。先ほどいみじくも徐々にと言われたことがここにも、私は予算の中にも出ているんじゃないかと思うんですけれども、こういう問題についてはやはり本当にこういう職業がん、これは労働者の最も重要な健康上の問題としてこれを防止するためにやらなきゃならない。文部省で出されているあれというのは、結局主に病理学や治療のための研究です。それを防止するという観点から言うならば、病気が起こってからどうするかではなくて、起こる前にどうするか、特に労働者の場合にはその点が私はきわめて重要だと思うんですが、この点についてはどういうふうにお考えですか。
#60
○政府委員(山本秀夫君) 御指摘のように、防止するという観点からすれば、化学物質をはっきり決定し規制し監督しということでございます。この決定する際にやはり研究が必要である。研究費はどんどんできるだけとってその方面に研究をお願いするということは基本方針としてとってまいりたいと思っております。
#61
○立木洋君 ですからこの面、事実上費用の問題、予算の問題からも私は十分に検討して、そういう前に申しました六価クロムや塩ビモノマーみたいに、実際に死者が出て病人が出て、さあ大変だということになってからどうするかではなくて、やはり事前にそういう問題が起こらないように、これは研究の体制ということも労働省としてはきわめて重視してやっていただきたいということを特に要求したいわけですが、その点はよろしいですか。
#62
○政府委員(山本秀夫君) 重視をして充実に努めてまいるということでございます。
#63
○立木洋君 ですから、徐々になどとおっしゃらないで、ひとつ全力を尽くしてやるんだという決意を持っておいてもらわないと、大臣にもよく言っておいていただきたいと思います。
#64
○政府委員(山本秀夫君) 急速に充実してまいる予定でございます。
#65
○立木洋君 どうもくるくる答弁が変わるようじゃ余り信用できないということになりますから。
 この第四条に、いわゆる加盟国としてはがん原性物質等に関して労働者に危険をもたらす、これについての「措置に関する利用可能なすべての情報が提供されるように措置をとる。」ということが第四条で規定されておりますが、国内法ではこれはどういうふうになっておるのか、簡単で結構ですが、述べていただきたいと思います。
#66
○政府委員(山本秀夫君) 国内法は、労働安全衛生法が次のように規定をしております。
 労働者を雇い入れたとき及びこのがん原性物質を取り扱うというような作業に人をつけようとする際、その物質につきましての有害性あるいは取り扱い方法などにつきまして、事業者が当該労働者に教育を行うということを義務づけておりまして、その際に、がん原性のこともちゃんと言うということになっております。
 それから、そのほかにクロム酸塩だとか塩化ビニール、こういうがん原性のあるものが市販されて流通をするわけでありますが、四十八種類につきましては一定量以上それらが含まれている場合には、製造、輸入、流通に関連する人たちは、これを入れた容器に化学物質の名称であるとか、あるいは成分、人体に及ぼす作用及び取り扱い上の注意事項等を表示することを義務づけております。それがない場合には譲渡、提供を禁止しておるところでございます。これによりまして、また労働者は有害性について知ることができるというふうになっております。
 なお、がん原性物質を製造、取り扱う作業場におきましては、この物質の名称、人体に及ぼす作用及び取り扱い上の注意事項というのを職場に表示することをまた義務づけておるところでございます。
#67
○立木洋君 いま言われた問題について、ここ数年間いろいろそれらの関係事業場を検査監督するということを行った場合に、それについての違反した件数というのは最近どうなっておりますか。
#68
○政府委員(山本秀夫君) 監督指導の結果につきましてお答えいたします。
 昭和五十年のものしかございませんが、監督実施事業場は、これはがんだけではございませんが、ほかの有害物たくさんございますので、それらを含めまして十六万件ほど事業場を監督し、その中で特別教育をやらないという違反が三千四百ほどございます。それから、表示につきましての違反というものも百十五件ほど発見されております。
#69
○立木洋君 労働省の方からいただいたあれによりますと、昭和四十八年は十九万八千六十三件監督を実施した。それについて教育、つまり五十九条に違反したのは八百九十九件、六十六条の健康診断に関しての違反が一万八千六百五十二件。四十九年では十八万九百三十六件監督した中で、教育の面で違反が二千三百八十四件、六十六条健康診断の違反で一万八千四百二十二件。五十年では十六万五千四百八十三件監督実施して、表示違反が百十五件、それから教育違反が三千四百六十八件、六十六条健康診断に関するものが一万九千百二十件。この三年間のデータを見ると、だんだん違反の件数が多くなっておるというふうになっているんですが、この点の実態についてはどういうふうに考えておられますか。
#70
○政府委員(山本秀夫君) 安全衛生教育というのは、労働安全衛生法は昭和四十七年にできましたが、非常に重要であるということで、それまで余り取り上げられていなかったんですが、四十八年過ぎましてから非常に周知も図られたということで、特段に監督の重点として取り上げ始めたのであります。そこで次第にこういった数がふえつつあるということでございます。しかし、こういった違反がまだまだたくさんあるということにつきましては好ましくない事態でございますので、これは引き続き監督の重点項目として取り上げまして、実施の促進を図るというふうな方針でおるのでございます。
#71
○立木洋君 いま言われた点、どうしてこういうふうに件数がふえているかという点です。ですから結局、たとえば中小企業なんかの場合にいろいろ表示するにしても、健康診断等々の問題についても、教育するにしても、なかなか中小企業としては十分にやれないというふうな問題なんかも私はあると思うんです。これはやはり国としてそういうものがきちんと監督されなければならないし、また、職業がんだと言っても町のお医者さんに、失礼かもしれませんけれども、ちょっと見ただけでは職業上から起こったがんというふうにはなかなかわかりにくいという実態なんかもあると思うんですが、こういうふうな問題点なんかもよく対策を立てておかないと、やはり実際上にはしり抜けで、事実上は違反というのがどこでも起こってしまうということになると思うのですが、この点なんかの対策についてはどうですか。
#72
○政府委員(山本秀夫君) 教育は先ほど申したような手段で講じておるわけでありますが、特に健康診断、あるいはまた、教育の実際の実施というようなことになりますと、中小零細企業はなかなかむずかしいという点もあるわけです。
 そこで、われわれの方では監督官が行ったときに催促はするわけでありますが、具体的にはやはり教育をしようと思っても適当な講師陣がいないというようなことも一つあろうと思います。そこで、安全衛生コンサルタントというような制度が安全衛生法でできておりますから、そういった方々を紹介するというようなことも考え、また、健康診断も特別な健康診断が必要で、特に特別というのはどこかと言えば、やはり職場での暴露の関係を知っている先生方、そういった知恵のある先生方が必要であります。それは安全衛生法でも産業医というシステムが一つございますけれども、いまの労働衛生コンサルタントの中にも保健系のコンサルタントというようなものがございまして、そういった方々につきましては労働大臣がテストをした上で登録しておるわけでございますから、かなり知識をお持ちの方もある、そういった方々に、特に医師の方には健康診断をお願いするということに指導しておるわけであります。
#73
○立木洋君 監督体制の問題についてちょっとお尋ねしたいのですが、第一線で従事している監督官というのは日本でどれくらいいるのですか。
#74
○政府委員(山本秀夫君) 細かい数字はよくわかりませんが、現在監督官の総数が三千五十人ほどであったかと思います。その中で、私どもも監督官というふうなことになっておりまするので、現実に第一線監督署におられる監督官の数は二千人余りというふうにいま推定いたしております。
#75
○立木洋君 じゃ、監督対象の事業所というのは、全国でどれぐらいありますか。
#76
○政府委員(山本秀夫君) 全適用事業場数が約二百八十万件と見ております。しかしその中で、特にいまこういった有害危険な職場を重点として監督指導しておりますが、その数は、先生お持ちの資料の十六万何がしというものの何掛けかということであると私は理解しております。
 もう一度追加をいたします。この十六万五千の約八割程度がやはり危険有害業務の場所であるということであります。
#77
○立木洋君 重点的に特に監督を必要とするということについてはよくわかるんですが、しかし、事実上監督対象の事業所というのは二百八十万、三百万近くある。実際に重点的に監督するところでないところでも、事実上起こる可能性というのは全く皆無ではないわけであって、それで第一線で作業している人、監督官というのが二千人、そしたら一人で見る事業所の件数というのは千何百件となるわけですね、二百八十万全体を対象にすれば。あるいは十六万を対象にしてもこれは膨大な数になると思うんですよ。監督官の方のお話を聞きますと、実際に行って、手袋をはめるぐらいで、マスクするぐらいで、入っていって実際にそれを十分に点検する、まあ何といいますか、監督官御自身がおっしゃるんですが、その専門的な知識というのはなかなかむずかしいと。ちょっとやそっと本読んだだけでなかなかわからない。またそれを検査する器械すら十分にない。さあ検査に行ったといっても、その事業所で、東大出かなんか、工学科出の偉い人がおって、ぺらぺらぺらっとしゃべれば、大体それで報告書を書いてしまう。実際の監督官としての機能を果たしているのかどうなのかという疑問まで監督官の方なんかから出されているわけですね。実際にそれだけ膨大な事業所を監督しなければならない、それに監督官の人数が少ない、またそれについての器械もほとんど十分にない、そういう状態の中で、本当に先ほど言われた、速やかに云々なんということを言われても、やはり私は徐々にと言う方がどうも本音ではないかというふうに思うんですが、こういう問題点というのは私はきわめて重大だと思うんですよ。これは予算の問題とも関連しておりますけれども、この点についてはどのようにお考えになっておりますか。
#78
○政府委員(山本秀夫君) やはり監督官も自信を持っていただくということが大事なことでございますので、一昨年から非常に労働衛生あるいはこの職業病対策、こういったことにつきまして、中央研修及び地方で行われます研修の充実を期しております。特にことしからそれは充実されてまいると思います。
 それからその次に、器械装備がないということは確かに一つあります。そこで、これもまたおととしあたりから非常に重視をいたしまして、できるだけ各監督署に至るまで、必要な機器の整備を図るということを計画的にやってきております。
 それから、人数が足らぬということは御指摘のとおりでありますが、毎年、この定員削減の時代ではございますが、非常にそれぞれの方々に御理解をいただきまして、少なくも監督官を減らすということのないように努力をして、漸次その数がふえてきつつあるということでございます。
#79
○立木洋君 この点では、先ほど言った予算の問題、これはもう大臣にも言っていただきたいし、それから監督官の大幅増員ですね、それから事実上労働者のいわゆる職業がんに関する問題、これの防止の対策が十分にできるように、これはILO百三十九号を事実上批准して、しかし実態としてはほとんど役に立っていないということであるならば、これは国会でこれを批准しても実際には意味ないということにも等しくなってしまうわけですから、事実上それが保護できる体制というのが私はきわめて重要だというふうに思いますので、その点は特に強く要望しておきたいと思うんです。
 それで一点、現在私ちょっと秩父のあれで、埼玉におるのですが、昭和電工がかつて六価クロムを使用しておった時期が二十三年ごろまであるんですけれども、ここで労災で認定されている人は四十五名いるわけです。ところが、この工場で働いておった労働者で六価クの患者がほかにもいるというふうなことが問題になってきたわけですよ。しかし、これらの人たちというのは、労災法が施行前に退社しておるということから、なかなか認定が受けられないという点があって、その点いろいろ聞いてみますと、鼻中隔せん孔患者が二十名、嗅覚脱失患者が十六名、嗅覚減退患者が二十二名、症状が重複した人もいますけれども、こういう人々が事実上認定を受けていない。またすでに死亡した人もいるというふうな状態が先日秩父の事情でわかったわけですが、こういう問題については何らかの方法でやはり救済すべきではないだろうかというふうに思うんですね。ですからこの点について、法の前には平等であるという観点も十分お考えいただいて、労働省としても追跡調査をやっていただきたいし、会社としても追跡調査をやるように指導して、この問題についての何らかの救済の処置を検討していただきたいということをお願いしたいんですが、この点いかがでしょうか。
#80
○政府委員(山本秀夫君) 所管の労災管理課長が見えていますので、説明をさしていただきます。
#81
○説明員(増田雅一君) ただいまの労災保険法施行前のクロム中毒患者の補償につきましては、結論から申し上げますと、現行労災保険法のたてまえでは補償が不可能だと思います。と申しますのは、労災保険法は御承知のように昭和二十二年にできた法律でございますが、その前身というべきものは労働者災害扶助責任保険法でございまして、その労働者災害扶助責任保険法は、このような工場労働者あるいは鉱山における労働者という方々のそういう災害補償を引き継いでおりませんで、その方は健康保険法で引き継ぐというふうな形になっておるわけでございます。したがいまして、そういうような戦前の工場におけるクロム患者の補償というものは、現行労災保険法では法律のたてまえ上できないというふうな形になっております。
 そこでなお、先生の御指摘のような何らかの措置ができないかという点につきましては、これも新しい立法でもするほかないかと思いますけれども、その立法も、財源の問題とかあるいはほかの同種のこういうような業務上の災害者ばかりでなくて、たとえば空襲で亡くなった方とか、けがをされた方とかというふうな方々との均衡問題とかいうふうなことからいきまして、非常に困難ではないかというふうに考えるわけでございます。
#82
○立木洋君 法律のたてまえから言えばいまおっしゃったようなことになるわけですが、実際上この法が発効される以前、仮にそれが一日違いか二日違いか知りませんけれども、事実上その前に退社したと、わずかの期間しか違わない、一方ではその後にそういう病状が発覚して退社したということになれば事実上それが受けられる、わずか数カ月前だからなかなかそれが受けられない。患者さんを見ますと、鼻中隔せん孔患者なんというのは、事実上鼻の中に穴があいちゃって、毎回掃除をしないとだめだ。同じような病状で悩んでおりながら、一方では保護が受けられて一方では数カ月違いで保護が全然受けられない、こういうことを見ていますと、やっぱりそういう問題に関しては何らかの対策を検討していただきたいというふうに考えるのは、私は無理ではないだろうと思うんですよ。法的に言えばいまおっしゃったようなことになるけれども、その点についてはいろいろ便法等々も、もう少し患者さんの身になってひとつ考えていただきたいし、労働省としてもそういう追跡調査や、現場の工場なんかも追跡調査をやって、実際上それを救済する措置がないかどうかということは、いま問題を提起したわけですから、直ちにどうこうというふうに、いま返事をするといえばそれだけの返事しか私はできないだろうと思うんですけれども、その点についてはもっと検討をいただきたいと、よく患者さんの立場に立って御検討いただきたいと思うんですけれども、その点はもう検討する余地がないのかどうなのか、その点だけちょっとお伺いします。
#83
○説明員(増田雅一君) 戦前のクロム中毒患者の方でも、現に療養中の方でございましたならば、私どもその療養の費用を見るような特別援護措置という措置を保険施設という形で、いまの労災保険法のたてまえでは労働福祉事業といういわばサービスの形でやっております。しかし、先生お尋ねのこの秩父の昭電の工場のクロム中毒患者につきましては、いわば病気が治ってしまった後の障害補償の問題だけというふうに私ども承知しておるわけでございますが、そういう方々につきましては、残念ながら先ほど申しましたように救済の方法がございませんし、また、私どもといたしましてもちょっと検討の余地がないのではなかろうかというふうに考えるわけでございます。
#84
○立木洋君 これはもう病気が治ったという状態でない人たちもいるわけですから、その点はもっと調査していただきたいと思うんですよ。そして、御検討いただければ私はありがたいと思うんですけれども、その点は私たちが調べた内容もありますし、労働省の方としても追跡調査をしていただいて、そういう救済の措置があるかどうかという点も御検討願いたいということを重ねて要望して、この点についての質問は終わります。
 それで、税関における物品の評価に関する条約の改正の問題ですが、この点については、税関における価額の定義を統一するというふうなこと、あるいは貿易の自由化をより促進する上での内容として合理的な側面があるというふうに一般的には見られる内容のものだと思うんですが、しかし、いまの貿易全体の状況から見て、現在の貿易というのはどうあらなければならないのかという基本的な問題は私は考える必要がある状況に今日きているんではないかと思うんです。国際的な経済状態を見ましても、通貨の問題にしましても、資源エネルギーの問題にしましても、重大な問題がありますし、特に貿易の問題は、海外の資源に依存する度合いが五〇%にも上るという日本としては、貿易問題については真剣に考える必要があるだろうというふうに思うんですね。
 一九三〇年当時、不況に対処するということから、いわゆる各国で自国の産業を保護する、高い関税、あるいは為替制度、あるいは輸出入の制限制度等々が実施された。しかし戦後の状態を見ますと、主要貿易国の中で、そうではなくて貿易の自由化を促進するということになって、ガットが一九四八年、関連するこれらの条約が一九五〇年に効力を発して、いまは貿易の自由化の促進ということでずっとやられてきているわけですけれども、いままでのこの自由あるいは多角的、無差別的な国際貿易のルールとしての現在の自由貿易体制ということをもう一遍考え直してみなければならない時期にきているんではないかということを非常に強く感じるし、国際的にもそういう問題がいろいろ議論されていると思うんですが、この点についての大臣のお考えをまず最初にお聞きしたいんです。
#85
○国務大臣(鳩山威一郎君) 最近の貿易の問題といたしまして、特にわが国の立場から対EC問題、あるいはアメリカに対してもそうでございますが、いろんな個別的な問題が出てきておる。これら個別的な問題を通じましてやはり国際的なルールというものをもう一度見直さなければならないというような必要も出てきておるというように思います。この点につきましては、わが国の根本的な立場といたしまして自由貿易体制を維持したいという考え方を貫いておりますが、それとともに、個別問題につきまして何らかの解決を図らなければならない、そういう事態がきていると思います。
 そこで、これらの点につきまして、ガットの精神と申しますか、東京で行われましたガットの総会におきまして決められました東京ラウンドの多角的な交渉、これを何らかの結論を導き出したい、現在はその生みの苦しみの過程にある状況であるというふうに思っております。特に、オイルショック後の世界各国が国際収支問題に非常に大変な問題を生じてきたものでございますので、片方におきまして国際収支の均衡回復を各国は考えなければならない、そういう事態に追い込まれておりますし、その中で自由貿易体制を制度として守っていくということ、そのために個別的ないわゆる非関税障壁と言われるような問題、あるいは開発途上国との貿易問題をどういうふうにして途上国の利益を守っていかなければならないか、これらの問題を含めましてこれからあるべき姿を探求するべき時期に来ておるというふうに考えているところでございます。
#86
○立木洋君 いまジュネーブでいわゆる東京ラウンドが進められておりますけれども、この中では、この問題に関連しての議論というのはどういうふうな議論があるんでしょうか。
#87
○政府委員(賀陽治憲君) 東京ラウンドのことは、これは大臣からただいま御説明がございましたように、三年半前の東京の閣僚会議でガットの交渉が始まったわけでございます。
 ただいまの現況は、総じまして一番重要な関税分野における関税の引き下げ方式につきまして、日本、EC、アメリカ等が提案を出しておるわけでございます。
 それから非関税の面におきましては、非関税障壁の面におきましては、これはケネディ・ラウンドと異なりまして、今回の東京ラウンドの特色の一つでございますけれども、したがいまして、かなりむずかしい分野であるということは言えるわけでございますが、各国から主要な非関税障壁の例を提出せしめまして、いかにこれを総合的に解決していくかということのいわば前哨戦をやっておるという状況でございます。
 それからもう一つ重要な問題は、セーフガードの問題でございまして、セーフガードにつきましては現行ガットの第十九条の規定があることは御高承のとおりでございますけれども、これをさらに発動の国から申しますると、より効果的にたやすくセーフガードを発動できる方法はないものかという考え方と、これを乱用せられますとやはり自由貿易に対する抵触になるという考え方が、依然として必ずしも十分にその考え方の調整が行われてないということでございます。それから低開発国に対してセーフガードの適用を免除するとか、そういう新しい要素もございます。そういった点でこれも進んでおりますけれども、まだ最終結論を得るに至っていないわけでございます。
 その他、農業の問題、これはいわばケネディ・ラウンドがこれに取り組んで容易に解決し得なかった問題でございまして、その困難性は依然現在のラウンドでも継続しておるわけでございますが、これについてもかなり意欲的な検討が行われておる。それから熱帯産品につきましても、これは今次交渉の優先分野ということが検討されておりまして、これはある意味で従来から成果の上がっておりまする一つの例でございまして、すでに二回にわたりまして日本を含めました先進国がオファーをしております。これは原則として一方的なオファーでございまして、相手国からの対価を求めないという原則のもとの措置でございます。
 そういったようなことで、交渉は現在進行中ということと言えると思います。
#88
○立木洋君 先ほど大臣がお話されましたけれども、日本の政府としては貿易の自由体制ということの維持を図りたいと、個々の問題については、南北なんかの問題でいろいろの意見については、個々的にはそれに対応できるような処置をしていきたいというお話ですけれども、しかし現在の貿易のルール、自由、無差別というふうな状態で事実上先進国と開発途上国というのは同列に扱っているわけですね。特別の措置の問題が問題になってきておりますけれども、しかし、実際には自由、無差別の経済ルールというのをこのまま進めていくと、やはり開発途上国との経済格差というのは事実解消される見通しというのはほぼないのではないだろうか。そういう点ではルール全体について開発途上国では公正な貿易というルールの新しい確立自体を求めてきておるというふうな声もあるやに聞いているわけですけれども、その点はいかがでしょうか。
#89
○国務大臣(鳩山威一郎君) 開発途上国との関係の問題でございますけれども、ガットの場でも東京ラウンドにおきましても、開発途上国に対する対策が非常な比重を占めてきておるのが最近の状況でございまして、ガットの場で南北問題が取り上げられておると、こう言っても過言でないくらいであろうと思います。
 いま熱帯産品のことに触れられましたが、これらにつきましては日本政府としても積極的に対処しておりますが、開発途上国に対しますいわゆる特恵的な取り扱いにつきましても議論が進むものと思います。いずれにしましても、自由な貿易体制とともに、やはり各国としては自己の存立を図るためにいろんな緊急措置を必要とする事態が起こってまいりますので、そういった場合のやはりルールというものをもう一度はっきりいたしませんと、これが一般的な風潮になって自由貿易体制自体が壊れていくというような、そのことがまた世界経済の停滞といいますか、後退をもたらす危険があるということを留意しなきゃならないと、こう思っておるところでございます。
#90
○立木洋君 東京ラウンドでの参加国、九十五カ国ですか、このうちの大体三分の二が開発途上国だというふうに言われて、いま大臣言われたように南北問題というのが非常に大きな中心的な議論になっているような様子だと。前回の第四回ナイロビ会議でコレア事務局長が述べて、非常に先進諸国と開発途上国との経済格差をなくそうということでもともと発足したUNCTADの会議が、実際にはそれよりも今日の期限までを見てみると、事実上経済格差は縮小するどころかますます広がっている。これは貿易の体制から言っても、実際上開発途上国というのは一次産品に依存して、この十年間の輸出価格の上昇率を見ても、先進国の工業製品の輸出価格の上昇率にほとんど及ばないきわめて低い上昇率になっている。それで交易の条件自身も開発途上国ではきわめて弱いというふうな問題点が基礎になって、そういう自由、無差別の貿易というルール形態ではなくて、いわゆる公正な貿易という要求が開発途上国からも出てきておると思うんですね。
 大体、戦後こういう今日の貿易の体制が確立したというのは、ガットの問題にしてもそうですけれども、大体アメリカがきわめて強大な経済力を持っておったという状態のもとでつくられ、それによって今日まで施行してきたという状態ですから、この問題に関しては、私は、開発途上国の問題点というのをもっと真剣に考えて、いわゆる貿易立国としての日本の今後の貿易のあり方ということも、深刻な事態にきて問題をどうするかではなくて、やっぱりいまの時点から日本としては先取り的な政策を打ち出すぐらいのお考えを持っていただいた方が私はいいんだろうと思うんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
#91
○国務大臣(鳩山威一郎君) 南北問題は現在国際社会におきます大きな問題でございますし、これはひとえに、ガットあるいは関税の問題のみならず、開発途上国には何よりもやはり投資が行われていくことが必要でございます。あらゆる部面で開発が促進されなければ所得の格差というものは縮まらないわけでありますので、そういった部面から、農業の部面におきましても、この国会にお願いをしているような開発の基金をつくるというような問題、工業面におきましても、その開発が進むことによりまして発展途上国の所得水準というのは上がっていくと思います。そういった面を通じまして、あらゆる面で国際的に取り上げていかなければならないし、恐らく五月に予定されます主要国の首脳会議におきましても、この南北の問題は大きな問題として取り上げられるだろうというふうに考えて、これから積極的な努力を続けたいと、こう思っております。
#92
○立木洋君 この問題というのは、いまの貿易ルールによっていろいろな厳しい事態が生まれておるのは、南北間だけではなくて、先ほど大臣言われましたように先進国間でも問題になってきている。日米間の貿易にしてもそうですし、あるいはアメリカとECとの農産物の貿易の問題についてもそうですし、アメリカ自身が実際にはテレビが入ってきてそれを何とかしてくれと。ところがこれは十九条で見てみると無差別になっているから、ほかの国のテレビまで一挙に制限するようなことになるから、選択制にすべきではないかというようなことがアメリカの中でも起こってきているというふうなことになってきておりますし、これは農産物の貿易の問題についても、ECとアメリカとの間ではいろいろな長年の問題点が存在しておる。ですからこの問題の解決というのは、いわゆる南北間の問題がきわめて重要であると同時に、今度先進国の首脳会議ですか、ここでもやはり先進国間でも現在の貿易のルールのあり方自身が問題になるだろうと思うんですね。
 それで、そういうことも含めてぜひお考えいただきたいということなんですけれども、先ほど南北の問題はきわめて重視してこれに積極的に対応し解決していくような努力をしたいと、これは総理も国会の冒頭の所信表明でおっしゃったし、それから大臣自身もそういう趣旨のことは繰り返し何回かお話しになっておる。だけど前回、四月三日に終了した国連貿易開発会議において、日本政府の態度に開発途上国の厳しい非難が集中したということが報道されておりますけれども、あれは一体どういうことなのかということをちょっとお尋ねしたい。
#93
○国務大臣(鳩山威一郎君) 専門的なことは政府委員からお答えさしていただきたいと思いますが、日本が従来から、特に発展途上国に対します経済協力あるいは援助の面で立ちおくれをとっているというような目で見られていることは確かでありますし、この面につきましては今後格段の努力をいたさなければならないと、こう思っております。先般のUNCTADの会議におきまして、共通基金の設立につきまして打ち合わせの会議が持たれたわけでございますけれども、会議の最終段階におきまして成案が得られなかった。特にEC関係とアメリカとの思想統一ができなかったということが事実であろうと思います。現在アメリカにおきましては、カーター新政権のもとになりまして、特に南北問題につきまして真剣に取り組んでいるところでございまして、共通基金の設立ということにつきましてそこまでまだ結論が出ていないというのが真実のところであろうと思います。日本としても、まだ検討が済んでおらなかったものですからはっきりした態度を示せなかったのは遺憾でございますけれども、おおむね、この問題は恐らく先進国首脳会議等の場におきましてまた議論されるものでございますので、この間のUNCTADの会議では態度の表明が、鮮明な態度が打ち出せなかったということでございます。
#94
○説明員(村上和夫君) ただいまのジュネーブのUNCTADの共通基金の交渉会議で日本に対して非難が集中したということでございますが、私自身現場におりまして感じたところでは、日本に対して非難が集中したというようなことは全く事実無根でございます。あそこで、政府機関でない一種の私的な新聞報道の機関がございまして、それに対して西欧諸国の、たとえば米国であるとかいう国が非難された事実はございますが、日本自身がその新聞に非難の対象として載ったことは一度もございません。
 それから、UNCTADの会議そのものが先進国と開発途上国あるいは東欧圏のグループ制の交渉会議でございますので、個々の国を一つ一つ出しましてそれを非難するとか攻撃するとかいうようなことは通常行われないわけでございます。グループに対していろいろの不満とか攻撃とかあるいは要求を出すということはたくさんございまして、これは西欧先進国のBグループに対しても、あるいは東欧圏のDグループに対しても開発途上国からたくさん出たわけでございます。
#95
○立木洋君 まあ、日本の報道では大体の新聞が大体全部そういうふうに書いてあるんですね。これはもう村上さんもごらんになっただろうと思うんですけれども、帰ってきてからかどうか知りませんけれども。だけれども、Bグループの中でもそういう問題に関しては最終的にはもちろん意見が一致しなかったということになっていますけれども、この共通基金の問題に関しては。しかし、報道によれば、アメリカのスポークスマンは頭から共通基金に反対しないというふうに述べて、さらに交渉に積極的に対処したいというふうに述べたと、またECも首脳会議のコミュニケでは共通基金を置くべきであるとの方針を打ち出したと、あるいはノルウェーのように、もうすでに早くから二千五百万ドルの出資を約束した国もある。大臣先ほど言われたように、日本の代表団としてはまだ十分に検討していないので、それに対する対応ができないで、基金の機能につきさらに詳細な解明をする用意を表明しただけであったというふうな、きわめておくれた事態がそういうふうな事態をつくり出しておるんではないか。この問題に関しては前回、三木さんが総理の時代でしたか、UNCTADの会議が開かれて、共通基金全般についてはこれなかなかむずかしい問題がある。しかし、個々の問題に関してはケース・バイ・ケースで積極的にそれに対応していきたいというふうな趣旨で、ところがあのときは、ココアの基金でしたか、すずですか、お金をまだ出さないというふうなことで、態度を表明されるかどうかで問題になっておった時期だったと思うんですけれども、あのときでも一応この問題が重要だから個々のケースについては積極的に対応していきたいという事態がありながら、しかし今日の会議でもまだ詳細に検討する用意を表明しただけで何ら態度が表明されていないということになりますと、積極的にこの問題には解決するために努力をするんだという所信表明が繰り返しなされておっても現実には進んでいない。これはやはり、そういうほかの国々からはきわめて日本というのは消極的に映るということに結果的にはならざるを得ないんじゃないかと思うんですが、この点はどうなんでしょうか。
#96
○政府委員(賀陽治憲君) ただいま先生から非常に鋭い御指摘があったんでございますけれども、共通基金に関して申し上げれば、恐らく一次産品の大輸入国としての日本という立場につきましては何人も否定できないという点がございますので、恐らく共通基金に対する対応ぶりについては、開発途上国の間にも日本のやや特殊な立場というものの理解はある程度あるものと思います。
 それから、米国が日本より先に進んでおるのではないかという御指摘があったわけでございますが、私が村上参事官等から承知しておる限りにおきましては、そういうことはございませんで、アメリカは総論的な前向きの姿勢を打ち出していることは事実でございますけれども、個別分野においてはまだ何ら結論を得ていないというのが実情のように聞いております。
#97
○立木洋君 私は、いまアメリカの方が進んでおるんではないかという評価をアメリカの態度に下したわけではありません。アメリカはこう言っておるということを報道で述べただけですから。もちろんアメリカと日本の場合には貿易条件が違いますし、それぞれの産業のあり方も違いますから、これはそれなりの対応というのがあり得るというようなことを私は否定しているつもりでは毛頭ないわけで、しかし、いまの状態の中で国際的な貿易のあり方全体をやっぱりもっと、先ほど大臣が一番最初におっしゃったように、真剣に考えてみないといけない時期に私は来ていると思うんです。このことを、まあ時間がきわめて短いものですから内容的には具体的な例を差しはさんで述べるわけにはいかなかったわけですけれども、この問題については、さらに再び、何だ日本はどうしているんだというふうな、いわゆる国際的な消極的な対応と見られないような、積極的な対応を日本としてもやはりやるべきだということをこの問題に関しては特に最後に要望しておきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
#98
○国務大臣(鳩山威一郎君) この南北問題、特に一次産品の問題につきましては、総理も施政方針演説で触れられましたし、私も所信の表明で一次産品問題に取り組むという姿勢は明らかにしておるところでございます。それとともに、共通基金の問題になりますと方法論にいきなり入ってしまいますので、これに対する対処の仕方、個別の一次産品の、これは最近の経済の変動に際しまして一次産品価格が非常に変動をして、一次産品産出国が非常に経済的な危機に陥るというような問題を回避するためにいかなる措置をとるべきか、これは真剣に検討しなければならない。それに対する資金的な枠組みをどうするかということにつきまして、これは具体的な方法論に入りますので、この点はやはり真剣に検討をして、つくります以上は日本の国益にも沿うようなものでありたいと、こう思いますので、なお検討を続けさしていただきたいと思います。
#99
○立木洋君 これでこの質問は終わりですが、一昨日行いました万国著作権条約の問題でちょっと最後にお尋ねしておきたいんですが、私が質問した内容については、おおむねの点については村田さんや村上さんにお聞きいただけたと思うんですが、実際上万国著作権条約が実際に施行される、これはいいわけですけれども、しかし、国内的にはいろいろなまだ解決しなければならない問題点が多々あるというふうな点を私は前回述べたわけです。ですから外務省としては、いわゆる条約としては批准したからもうこれで終わりだということではなくて、積極的に文化庁等との連絡もとりながら、国際的な非難を受けることがないように、条約の完全な実施が行われるように、外務省としても当然責任ある立場をとっていただきたいということなんですけれども、その点についての大臣のお話を……。
#100
○国務大臣(鳩山威一郎君) 御指摘はまことにそのとおりでございます。何分専門的な問題でございますので、やはり文部省、文化庁の方にいろいろお願いをしなきゃならない事項が多いと思いますが、外務省といたしましても、条約の責任官庁といたしまして、今後の運用につきましても文部省とよく連絡をとりながら適正な条約の施行に努力をいたしたいと、こう思います。
#101
○立木洋君 それからもう一点。
 この間村上さんから御説明いただいたんですけれども、いわゆるローマ条約ですね、実演家の問題やレコードの問題、レコードの件に関しては文化庁の方でこれは積極的に批准してほしいと、外務省の方としても文化庁とよく相談をして検討したいというお話だったんですけれども、これはレコードの問題だけじゃなくて、実演家の方の問題も含めて、この問題について外務省としてどういうふうにお考えになっているかということを最後にお尋ねしておきたいと思います。
#102
○国務大臣(鳩山威一郎君) 私も、最近レコードにつきましてはいろんな措置が、レコードにつきましては前向きに条約を批准する方向でいろいろ努力が進んでおりますが、その他実演家あるいは放送関係の問題につきましてこれから検討いたしまして、文部省とも十分連絡をとりながら努力をさしていただきたいと思います。
#103
○委員長(寺本広作君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 四件の採決は本日後刻行うことといたします。
 午前の審査はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午後零時二分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時三分開会
#104
○委員長(寺本広作君) ただいまから外務委員会を再開いたします。
 まず、国際農業開発基金を設立する協定の締結について承認を求めるの件
 及び、国際農業開発基金への加盟に伴う措置に関する法律案(いずれも衆議院送付)
 以上二件を便宜一括して議題といたします。
 これより両件の質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
#105
○戸叶武君 一九七〇年代は激動変革の時代だということをかねがね予想しておりましたが、やはりニクソン・ショックなりあるいはドルショックよりも大きなショックは、一九七三年末の石油ショックが最大のショックであったと思うのであります。この衝撃を受けて一番苦難の道を歩いたのは、石油産出国でない発展途上国の飢餓状態を打開するために必要な外資というものが得られないでどん底に陥ったときだと思います。そのときに、一九七四年十一月にローマで開催された世界食糧会議というものは、この石油ショックの傷、発展途上国の惨めさ、それをどうやって救わなければならないかという一点から問題の転換がなされ、特に発展途上国として苦難の道を歩んできたが、石油の開発によって非常な富をつくり上げた石油産出国も、この石油の出ない国々に対して何とかしてやはり助力をするようにしなければならない、そういう考え方が芽ばえてきましたときに、いままで石油とかエネルギー資源とか食糧を戦略物資というふうに規定づけて、一九七〇年代の初頭から外交の裏づけとしての、力としての資源として用いようとしていたキッシンジャーさんあたりも、この時代の困難を打開するためには、やはりこの際国際農業開発資金のようなものを設けて、そうしてこれを救わなければならないというところに大きな外交転換をしたと思うのであります。
 そういう意味において、この国際農業開発基金を設立する協定の締結にまで至った三回を経ての関心国会合での起草作業、それが一九七六年六月国際農業開発基金を設立するための国際会議において採択されたということは非常な意義があると思うんです。
 ところが、そういうプロセスを経てきたにしても、いまこれをわれわれが積極的に支持していかなければならない立場にありますが、あるがままの現実はどうなっているのか。一番最初にこの問題を持ち出した石油産出国のこの問題の取り組みはその後においてどうなっているか、また、アメリカ、西ドイツ、日本というような国が積極的に資金を出そうというところまできているが、それはそれとして、この飢餓に悩んでいる、貧困に苦悩している発展途上国が、みずからの自覚によって、他国の援助を得ながらも自分たちの運命を打開していこうという積極的な意図がどこかの国々において具体的にあらわれているかどうか、そういうことをまず第一に外務省の方から承りたいと思います。外務大臣できるならば御答弁を願います。
#106
○国務大臣(鳩山威一郎君) ただいま戸叶先生のおっしゃいましたとおりの経過でこの国際農業開発基金の設立の協定が採択されたわけで、私どもといたしましても産油国と先進国、また油を産出しない発展途上国、この三者の協力によりましてこのような協定ができましたことを高く評価するものでございます。わが国といたしましてもこの趣旨には賛成をいたしておるわけでございますが、その後の動きにつきましては政府委員からお答え申し上げますけれども、各国ともこの機関の設立につきましては熱心に協力をいたしておるというように聞いております。
 なお、政府委員から補足をさしていただきます。
#107
○説明員(村上和夫君) ただいま大臣の方からお話しのあったとおりでございますが、さらに若干詳細に御説明さしていただきますと、当初、一九七四年にキッシンジャーが呼びかけまして、世界食糧会議というローマで会議が開かれまして、その場で産油国、主としてサウジアラビア、アルジェリア、ベネズエラ、イランといった国がイニシアチブをとりましてこの国際農業開発基金ができ上がっていったわけでございますが、当初は、産油国が一九七三年の秋以来石油の関係で外貨を蓄積して、それを何とかして開発問題に充ててほしいという先進国側の非常に強い希望がございまして、いろいろの折衝の結果、産油国全体で四億三千五百五十万ドルを現在国際農業開発基金に拠出誓約をしているわけでございます。全体の規模が、十億米ドルを若干上回る程度でございますので、ほぼ産油国だけで半分近い分を負担するという意味で、非常に産油国も熱心にこの問題を考えているというふうに判断していいかと考えている次第でございます。
#108
○戸叶武君 産油国で一番資金を多く拠出しているところはどこですか。
#109
○説明員(村上和夫君) イランでございまして、一億二千四百七十五万ドル、その次がサウジアラビアの一億五百五十万ドルでございます。
#110
○戸叶武君 その他の産油国はどういう態度を示しておりますか。
#111
○説明員(村上和夫君) 先ほど申し上げましたように、サウジアラビア、イラン、アルジェリア、ベネズエラというのが非常に積極的に一九七四年の食糧会議以降イニシアチブをとってきたわけでございますが、現在産油国だけでいまから申し上げます国、つまり相当数の国がこれに拠出誓約をしているわけでございます。すなわち、アルジェリア、ガボン、インドネシア、イラン、イラク、クウェート、リビア、ナイジェリア、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、ベネズエラというとおりでございます。
#112
○戸叶武君 いまの御説明を聞いて、石油産出国が積極的にやはり資金を拠出しているということは非常に喜ばしいことだと思うのであります。それに対応しながらアメリカ、日本、西ドイツというものが積極的に資金の拠出をやっていますが、その額は三国おのおのいかほどで、その他の国々、先進国といわれている国々はどういう態度を示しておりますか。
#113
○説明員(村上和夫君) 一九七五年の第七回特別総会におきまして、キッシンジャーがアメリカの拠出分として二億ドルを誓約したわけでございますが、これが一番大きな西欧側の拠出でございまして、その次に日本と西独が同じく五千五百万米ドルという誓約をしているわけでございます。その他の国もほぼ先進国はすべて誓約を終えているわけでございますが、その具体的な数につきましては、米国ドルでなくて若干自国の通貨もございますので、ここで具体的に数字を申し上げるのは煩雑になるかと思いますので、省略さしていただきたいと思います。
#114
○戸叶武君 そこで、石油産出国のグループ、それから先進国のグループ、そういうものがそういうふうな積極的姿勢を示しておりますが、恩恵にあずかるべき石油を産出しない発展途上国は、この石油産出国なり先進国の協力に対してどのような受けとめ方をしておられるでしょうか。
#115
○説明員(村上和夫君) 食糧問題は、開発途上国にとりまして何と申しましても一番直接的な関心事でございまして、その意味でこのような国際農業開発基金ができ上がりますことについては、開発途上国はすべて例外なくこれを評価しているわけでございます。
#116
○戸叶武君 抽象的でなくもっと具体的な形において、発展途上国において具体的にみずからの力で先進国なり石油産出国の協力に対して、こういう姿勢でそれを受けとめようというような事例があったならば二、三承りたいと思います。
#117
○政府委員(村田良平君) この協定自体につきましては、まだこの協定に基づきます資金の供与というものが行われておらないわけでございますので、この国際農業開発基金自体に対する非産油開発途上国がどのような態度で臨むかということはわかりませんけれども、従来の交渉等の経緯にかんがみますと、これらの国々が非常にこの基金に期待をしておるということは明らかでございます。今週現在でこの協定を批准した国がすでに四カ国あるわけでございますが、これはパキスタン、スリランカ、インド、フィリピンの四カ国でございます。これらはそれぞれ産油国でない開発途上国でございまして、かつ、国内にいろんな食糧問題を抱えて、食糧の増産に従来から特に努力をしておる国々でございます。こういった国々が非常に速やかに批准の手続をとったということは、この協定に対するこういった諸国の期待感を示しておるものと思われます。
#118
○戸叶武君 食糧問題で、相当古い文明を持っていながら非常に苦しんできた国は、インドと中国とソ連及びアラビア諸国だと思いますが、私は、昭和二十七年に四カ月間ほどやはりインド各地を歩いて、インドに内在している諸問題を検討したことがありますが、今度のガンジーさんの失脚の原因も、インドとして取り組まなければならないのは、人口の増大をどうやって防止するかという家族計画の実施と、もう一つは、やはり食糧の危機を打開することにあったと思います。しかし、ネールさんの家庭にあってイギリス的な、西欧的な教養は深く身につけたが、インドの現実の混沌の中に政治を打開するのにはいかに困難であるかという悲劇的な終末に終わったのを見てもわかるように、インドにおいてあのとおりなので、やはりアフリカ諸国等におけるいろんなトラブルの原因にもこの食糧の問題が大きく根差しているんだと思いますが、私が行ったときには、やはりボンベイの郊外でチャンドラ・ボースの残党の人たちが、日本の農業というものを水田耕作の例をモデルにして、インドでボンベイの実験を百人ほどの家族でやって、やはり五倍ないし七倍の収穫を得るという具体的な事例をつくっており、ボンベイ州やマドラス州ではこれをすでにそのときから取り上げておりますが、やはり資金面だけでなく技術協力というものを当然加味して、金をやるというだけじゃなく、心と技術を与えて、そこの住民みずからの力でこの難問題を解決するという方向づけが大切なんだと思います。たとえば、かつて東大教授であった水の問題の権威の安芸皎一さんや、あるいは国際技術協力会議をやっている生沼君なんかともここ数年そういう問題を検討してきておりますが、石油産出国においても結局水の問題が重要で、それはチグリス・ユーフラテスのあれほどの文化、バビロンの文化をも壊滅せしめたものは、結局牧畜民族が収奪農業、牧畜と言ってもいいようなことの農業を営んで、草木を枯らしてしまい、水資源を涵養せずに、そうしてあの砂漠地帯にさらに砂漠地域を拡大するような、あるいは海水の浸入を誘発するような事態を生んだという認識の上に立って、いま産油国の諸国から招かれていろいろな試みをやっているようです。やはり私たちは、この基金の問題に取り組むと同時に、この基金によってどうやってこれを生かしてプラスにするかということを外務省並びに農林省あたりは真剣に模索してきているんで、このことができなくとも、その前にどういう模索と実験がなされてきたか。そういういろんな、インドに那須博士が大使になったときの試みもありますけれども、これも私は近代化にはそれほど善意のわりあいに役立たなかった点を見ておるのでありますが、最近における行き方はずいぶん違うと思いますし、外務省あたりでも、農林省の方でも、民間と結んで、たとえばポーランドにおいて、あるいはブルガリアにおいて、あるいは地中海沿岸諸国においていろいろな試みがなされているようですが、その事例があったら二、三。インドネシアにおいては、ミツゴロといいましたか、三井かなんかがやった、あれもトウモロコシつくった、これはおれらの食べ物であって、飼料にして日本に持っていっちゃ困るという問題を起こしたような悲劇もあったようですが、そういう二、三の、現地の人たちとの協力と模索によってどういう芽が吹き出ているか、そういう点を少し、今後ベトナムの問題やなんかは急速を要すると思うんですが、持ち合わせていたらお聞きしたいと思います。これは外務省だけではなくて農林省にも。
#119
○説明員(三宅和助君) 御案内のとおり、すでに技術協力につきましては従来から農業分野を重視しておりまして、平均、これはなかなか分野によって違いますが、二〇%から二五%ぐらい全体の技術協力の中で農業が占めております。特に具体的な例と申しましては、たとえばインドネシアのランポン、これはスマトラでございますが、ここに専門家を数年間派遣しております。そこでパイロットファームをつくりまして農民にいろんな指導をしております。また、そこでモデルファームをつくりまして、農民に肥料の使い方とか、どうやったら生産力を上げられるかというようなことを毎年教えておりまして、実際の効果といたしまして、たとえばモデルファームで言いますと、米の場合すでに三割ぐらいのアップの実績を示しておりますし、農業所得の面では倍ないしは倍以上の所得を現に上げつつあるということで、そういうような具体的な例を通じまして、農民が、確かにこの種のことをやれば生産力が上がるんだ、したがってそうやろうという意欲を最近増すように努力しております。
 それからもう一つ、たとえばインドネシアのボゴールの農業研究所でございますが、ここで、どういう病害虫を除去するのが一番いいか、またその方法はどうかというような研究を進めておりまして、これにも長期の専門家四名を派遣して実際の方法をインドネシア人に教えているというような具体的な例一、二をお挙げしましたが、非常に技術協力の分野におきましても、また無償の分野におきましても、農業を重視してやっております。
#120
○戸叶武君 農業において一番重要なのは、中国においても禹の実験のように、やはり治山治水だと思います。戦争の荒廃の後において、ベトナム等においても、治山治水のよろしきを得るならば、農業生産の復活というものは目に見えて顕著なものがあると思います。国破れて山河ありと言うけれども、日本においても、戦争後において、あれほど破壊されたのにもかかわらず、青年たちが戦場から農村に帰ってそうして農村の立て直しをやり、やみ屋に化けた人もありますけれども、いずれにしても食糧の窮屈さというのを打開するのに努めたと思います。
 いま問題になっているのは、農業問題においても、これは農林省の人たちと本当に外務省の人たちも話し合ってもらいたいんですけれども、ネコの目の変わるように政策を変化していくことでなくて、主要農畜産物の価格の安定と流通機構が合理化されていればおのずから農畜産物というものは健全な発達をしていくんです。ところが、日本みたいに、なるたけ安上がり農業、工場の方へ金は回す。ドイツのエアハルトの失敗と日本の池田さん以後における高度経済成長の基本的な失敗は、哲学がないことでした。アデナウアーがやはりエアハルトを批評して、文明史観と哲学を持たない政治というものはやがて行き詰まるということを予言したように、全体のバランスをとっていくというのは、今日の資本主義経済の基盤の中においては、政策の中に価格の安定と流通機構の合理化されてスムーズに運ばれる方式がとられなければならないんで、そういう点を日本のいま国策においては、セクト的な官僚主義でなくって、もう少し国の政策の基本に立ち入って物を考えないと、年じゅうネコの目のように政策を変えても効果が上がらなくなるんじゃないか。日本におけるいろいろな実験というものが直ちに日本方式で外国へ移されても困るんですが、そういう意味において、日本においてはいろいろな実験をやり、いまでは、農村に行ってもびっくりするほど、田植えまでもう機械でやっていると。農村のまじめな奥さんたちでも、昔と先生違いますよ、いまは楽ですよ、問題は青年がここへとどまらないことですよというふうに言ってますが、東南アジア諸国やアフリカ等の発展途上国においても、その点が、やはりどうしても近代化を急ぐ余り重化学工業に背伸びをしようとする傾向が強いし、日本がタイにやったあの製油工場に対する投資なんかも全く日本資本主義の典型的な失敗であって、そしてタイの民心を失ってしまった。インドネシアにおいてもそういう傾向がある。そういう意味においてこの国際農業開発基金、これはだれでも反対じゃない、これには積極的に大蔵省あたりでも拠出する覚悟を定めてきたので国策が決まったと思います。しかしそれだけでない、これを生かしてやるためにどういうふうな方向づけをやっていくかということを一応外務大臣と農林省の方から承りたいと思います。
#121
○国務大臣(鳩山威一郎君) ただいま戸叶先生のお話よく拝聴いたしました。
 この基金ができまして、これはいままでの発展途上国に対します農業の部面に対する投資をそれだけ拡大をするという意味で大変有意義であると思いますが、わが国といたしまして従来から農業開発に対しまして協力を惜しまないでやってまいった所存でございます。わが国といたしましても、二国間の協力によりますところの援助、農業投資につきまして今後とも、もっともっと拡大させる方向で努力をいたしたい、そのように考えております。
 特に農業の部面におきましては、先ほど来お話のありました技術的な協力、技術面におきます指導が大変有意義であるということから、今後とも日本といたしましては格段の努力をいたすべきである、このように考えております。本年の予算におきましても、このような技術協力あるいは無償の援助というものをふやしていただいておりますので、これらを活用して農業面に対する施策を高めてまいりたいと、こう思う次第でございます。
#122
○説明員(岩渕道生君) いま先生からいろいろとお話ございましたが、きわめてごもっともな御意見だと私ども思っております。
 基本的には、農業開発というのは農民自身の意欲をどうやってかき立てるか、あるいは相手国政府がどのようにそれを、技術協力なり資金をうまく活用してもらうかということが基本にあろうかと思います。
 しかし、現実はなかなかそうはまいりませんで、資金的、技術的にも蓄積がございません。これをどうやってインパクトを与えるかということでございますが、技術協力も一つはそういう観点から考えて、少しでもお役に立ちたいと思っておるわけでございますけれども、実際具体的なやり方を、たとえばインドネシアなどの例をとりながら申し上げますと、まず何しろ、やればやれるんだということを見せるためにデモンストレーション・ファームをつくるということをやっております。そこでも、できるだけ現地の農業に合ったものでなきゃいけない。したがいまして、たとえばインドネシアの西部ジャワのチヘアという地区でございますが、やっておりますのは、決して日本のいま持っております農業機械化あるいは一番技術の先端の、仮に園芸というようなものを持っていっているわけではございません。むしろ日本の農業で言えば大正、昭和期に近いような人力、畜力農業を中心としたようなそういう増産の仕方。それから品種につきましても、現地の改良品種を政府と一緒になって普及すると。また共同苗代、これはもう日本など常識になっておりますけれども、それを普及する。あるいは正条植え、若い苗を浅く植えることによって活着と分けつをよくさせるというような、いわば基礎的な実行しやすい技術を向こうの方に見ていただくというようなことを心がけておるわけでございます。
 結果につきましては、たとえばこのチヘアの場合ですと、六年間で約倍増の反収が上がりまして、もみでございますけれども、デモ・ファームの一部では六トンというものを十分とっております。そういうことで新しい技術、この地区にとってみては新しい技術のたとえば新品種の導入、肥料、農薬の使用などが根づいたというふうに私ども思っております。
 さらには、先生先ほど御指摘がございましたが、流通問題というようなことが大きく現地でも問題になります。そのためには、やはり農民の組織である農協というものを考えなくちゃいけないわけでありますけれども、まだそこまでいっておりません。それで私どもは小型精米機というようなものを持ってまいりまして、日本で申しますと大型の、きわめて大きな精米機でやっておりますけれども、こういうものじゃなくて小型の精米機を中核にしてそれを共同利用する。かつ、それの経理内容を公表する、だれかが疑惑を持つことのないように皆公表するということをやってみましたところが非常に信頼ができまして、農協といった感じの、まだそこまでいっておりませんけれども、組織もようやくでき上がりつつあるということでございます。
 さらには、インドネシア政府はこのプロジェクトの成功を見まして、全国にこういうやり方をやろうということで、同じような展示圃揚をつくり、そしてここのプロジェクトをやった指導の要領あるいは栽培技術を採用して普及をいたしております。さらには、資金の面を結びつけるというようなことで、周辺の農民を通じましてクレジットを供与しているというようなことで、私ども一つの大きな有意義な事例ではないか、また、そういうふうに利用していただけば非常にありがたいと、こういうふうに思っております。
 あと、インドの例なども用意してございますけれども、時間がございませんので省略させていただきたいと思います。
#123
○戸叶武君 いま具体的な御提言がありましたように、日本の近代化発達の中における農業における進歩の面を、中国並びにアメリカにおいては相当詳細に研究しておるのでありまして、中国の権威ある革命家の人が、中国の革命における国家統一において一番大きな効果というものは、国の責任において品種改良というものが十分できるということと、中国は膨大な国であるが、南北にそれぞれ地域によって異なった作物ができるが、それを国が統一されると、軍閥等が蟠踞していて流通を阻害した面が排除されて、そうして物がスムーズに交換されていくから、そこに中国の統一というものによって近代国家への発展の大きな足がかりをつくると言っていまして、その人のデータによると、日本が日清戦争の時分から第一次世界戦争のころまで、品種改良だけで米は主として三倍もの収穫を得ている。やはり日本における品種改良の実績というものを中国では学ばなければならぬということを率直に言っておりました。
 また最近において、私は一九六〇年に安保闘争のさなかに団長で北京を訪れましたが、そのときにもあの大躍進の中にいろいろな矛盾が含まれているので、あからさまに私は指摘したんですが、あの製鉄関係の土炮なんかは、ああいうやり方では成果はおさめられない、むだが多い。それから農村におけるデモンストレーションとしての人海作戦というものは、朝鮮問題に南下したときの人海作戦のようなまねごとではだめなんじゃないか。もっと新たな発想が生まれなけりゃならないんじゃないかと言って問題を指摘しておきましたが、その後、中国においてもずいぶん変化の跡が見られております。私は、いま農林省の方から発言がありましたように、やはり後進的な地域の人たちを指導する場合には、センターを設けて、しかも モデル農場なり何なり具体的事実を示して、それによって、それから習得してもらうようなきっかけをつくることが大切なんじゃないか。やはり、いままでのような売らんかな式の商業主義的なやり方でなくて、そういう手心を加えた一つの施策がなければだめなんじゃないか。特に私は、いま海外経済協力の総裁をやっている法眼君がもっと若いときにロサンゼルスの総領事をやっていた時分、ちょうど私は二回ほどアメリカから招かれてカリフォルニア州の農業、米の生産並びに蔬菜類、果樹類の栽培、及びニューディール以後におけるアメリカ農業の転換、インディアナ、ミシガン、イリノイというようなところの農場を持っているところの大学にいろいろなデータ探しに行ったことがありますが、アメリカ農業で画期的な転換はニューディール以後で、日本の水稲は水の中に入って米を植えるなんていう非常なプリミティブな農業をやっているといって軽視していたのが、そうじゃない。水を砂漠へ入れても緑地ができる。やはり水と土壌、太陽光線の受けとめ方、そういうものの中に、日本の特に肥料におけるバクテリアの研究、日本の納豆菌、豆腐、そういうものまで研究して、アメリカではどうしてそういうものを探したかというと、日本の諸大学から来るレポートをやはり検討して、それを直ちに実験に移し、カナダの農民にまで呼びかけて、土地を持っている人たちが幾らずつかの金を出して、そうして大学と連携して農業の進歩を図るという方式をやってきたんです。
 ところが日本の、私も宇都宮大学の、農業関係が主として発達した大学の政治学の先生もやっておりましたが、日本の学問は生きてないです。これはやはり、みずから農場を持ち、そして生産に従事しているところの農民と語り合って、そこで研究し実験したものを実行し、そうしてその結果を報告するというような、アメリカの北部の諸大学とカナダの農民たちでやっているような一つのトレーニングを行わなけりゃだめだと思うです。日本の本当に悲劇は、教育の場の荒廃と政治の場の荒廃で、政治はずうずうしいやつがはったりをもって、そして米をつくれ、減反だ――まるで何を言っているかわからないようなことがある。そういうふうに暴走しているならばそれが政治家だとおのずから錯覚して、その被害は田中さんの被害よりも私は今日の政治の被害が農業に及ぼす影響というのは非常に大きいと思うんです。
 それだけに私は、農林省や外務省がもっとしっかりして、国際的な視野の上に立って日本のいままで蓄積されたところの経験なり技術をほかの国に生かすということを考えてもらわなくちゃならないんで、私はやはり、いまブルガリアのソフィアにも、そこのホテルオータニとの結びつきによって、五十億以上も金を出してホテルがつくられますが、ああいういろいろなホテルの概念も、いままでのようなホテルの概念じゃなくて、そこがホテルであり、結婚式場にも利用される、技術を習うところにもされる、日本の本当に文化センターになって大使館をバックアップしていくような、変な観念的イデオロギーやスパイ的と思われるような情報のキャッチよりも、そういう形によって民心を得ていくということが一番必要なんじゃないか。日本の外交の大きな質的転換はそういうところに出てくるんじゃないかと思って、こういう問題を、産油国がみずからの富を独占するのじゃなくて、もっと気の毒な人たちのために金を出そう、先進国にも働きかけてこれを見習わせたこの善意の行為ですが、この善意の行為の中に本当に魂を入れることができるのは、百年足らずの間に先進国の仲間入りをすることができた日本人の持っている、これが日本民族のエネルギーの源泉である、それを私は諸国に与えていくのが日本の農業技術者の役割りであり、また外務省というのにも、いままでのような鹿鳴館時代からの流れをくんできたようなとにかく外交でなく、もっと泥臭い、一つのその国々の人々の心をかち取るような外交をこれをきっかけにして展開しないと、仏つくって魂入れずになるのじゃないかと思うので、このことに対してはひとつ外務大臣並びに、金を生かして使うことをもっと積極的に考えないと外務省がいじけた構想しか出ないから、少し大蔵省あたりはどしどしいいことにはこの機会を範として金を出すように、貧乏臭い萎縮した外交の中からは何も生まれない。もう戦争と暴力革命の時代は去ったんです。もっと生きたところに金を使って、戦争を経なければ収穫が得られないような妄念を払って一つの積極的な外交を展開してもらいたいと思うので、ひとつ外務大臣並びに金の方を年じゅう出し渋る傾向がある大蔵省の方から話を承りたいと思います。
#124
○国務大臣(鳩山威一郎君) 石油危機を契機といたしまして、石油資源、あらゆる資源の問題が非常にクローズアップされまして、また、食糧の危機的な状態を招来したということから食糧問題、特に主要食糧の増産のために努力をしなければならない、こういった世界的な問題としてとらえられてまいったわけでございまして、ただいま御指摘のありましたように、非常に人口増加率の高い地帯におきましてまた食糧が欠乏してくる、こういう事態でありますので、日本の農業というものは古来から非常に集約的な農業である。したがいまして、人口が非常に多い地帯におきます農業にはこの日本の農業が一番適しているのだと、アメリカ式の農業、小人数で大量な生産を上げるような農業よりも、むしろこの日本式な農業が必要であるというようなことが言われ出しておると思います。
 先般、ワシントンで世銀の総裁にお目にかかりましたときも、日本の農業というものがいまこれから非常に見直されなければならないというようなこともおっしゃっておりました。そういうときでありますから、米作中心の日本の耕作技術というものが、これはやはりひとり日本のみならず、世界の食糧不足に悩む国々に対しましてもこの技術援助の手を差し伸べていくということは、これは大変必要なことであり重要な仕事である。今後ますます技術協力の面で格段の努力をいたすべきだと思いまして、その方向に努力をさしていただきたいと、こう思います。
#125
○説明員(渡辺喜一君) 私は実は財政関係の担当でございませんので、先生の御要望にお答えするあるいは立場にないのかもしれません。逆に、先生と同様に農業を初めとする経済協力に対してもっと金をどんどん出せと要求をするような立場におるわけでございます。ただ、大蔵省全般といたしましても当然出すべきところには金は出すと。出す以上は、それが生きて有効に使われるような出し方をしたいということは当然のことでございます。今回の国際経済協力基金につきましても、いろいろ過程におきましては、本当に出した金が有効に生きるように使われるような機関であるかないかというふうなことは慎重に検討をいたしてまいったわけでございますが、国際間のコンセンサスができて、いよいよ設立ということが決まった以上は、積極的にこれに参加をするということで予算に応じたわけでございます。
 なお、この国際農業開発基金以外におきましても、特に農業関係の経済協力につきましてはいろいろな面で特別の配慮をいたしておるわけでございます。
 特にこの際申し上げたいと思いますのは、東南アジアを中心といたします賠償とか準賠償というふうな無償の経済協力がことしをもって終わるわけでございます。そういう意味で無償経済協力、特に東南アジアその他の地域に対します無償経済協力につきましては、この際新たな観点から今後どういうふうに進めていくかということを考えなければならない転換期に来ておるということでございまして、その転換期をとらえまして、今年度から新たに食糧増産援助という無償協力を始めることにいたしたわけでございます。これは金額で六十億円計上いたしておりますが、主として肥料とか農薬その他農機具等の食糧増産に直接役立つような、そういう物資を無償で供与し、それとわが国の技術協力、あるいはアジア開銀その他国際機関の援助、そういうものをうまく組み合わせて、それで先ほど来大臣以下申し上げてきましたような、その地域地域にあったやり方、そういう農業を育てていくのに役立てたいと、こういうことを考えたわけでございます。初年度でございますので、まだ金額はさほどの金額ではございませんが、これを新たな芽として今後育てていきたい、こういうふうに考えたわけでございます。
 なお、農業関係を含めまして技術者の派遣であるとか研修員の受け入れであるとか、その他もろもろの細かい予算項目についても今年度はかなりの配慮をいたしておるというふうに聞いておるわけでございます。
#126
○戸叶武君 日本の東南アジアにおける賠償といいますか、そういうようなことがことしで終わって、そして新たな観点から転換しなければならないというときに来たと言いますが、外交が、私たちは核拡散防止条約批准に踏み込んだ段階から、日本の保守党も革新政党と称するものも、もっと外交面において政党政派を乗り越えて一つの国策を持たないと、やはりこれは日本の国が私たちは危ないと思って、やるならば徹底的に、戦争はしないという平和憲法の精神を体して、そうして刀や鉄砲や原爆なんかでこけおどかしをしないで、各地の人たちと接触して、そのプラスになるような面を積み重ねなければならないというふうに踏み切ったんで、その意味においては私は画期的なあれが日本外交における一つの転換の指針になったと思うんです。問題は、方向づけだけを行ってその裏づけがなけりゃ、日本人は要領がよくて人の顔を見ては調子のいいことを言っている民族だからというふうにないがしろにされますけれども、私は本当は、たとえばソ連とポーランドの国境線においてでも、むずかしい領土問題の解決はなくても、草は生えているんです、穀物は実るんです。そういう地帯でも、もう少し平和的な農業技術者が入って、そうして穀物をつくるなり牧畜をやるなり飼料をつくるなり、そういうことをやっていく方が、変な民族的な緊張感をもってとがった関係をつくっていくのよりも、そのグリーンベルトが平和のベルトになっていくんじゃないか。ソビエトロシアにも、もっとソビエトロシアが腰抜かすような提案を日本はやったらいいんです。人におどかされてばっかりいて受け身の外交じゃなくて、やはり場合によったらあの樺太や千島以北は日本で買いましょうというぐらいな大きな腹を決めて、それから中国との関係は非常に緊張しているようだが、中国に行ってもいまのままじゃ簡単には話が通じないようだけれども、ソ連側のあの防備の壁を、万里の長城に等しいようなものを黒竜江の沿岸に築くことよりも、あそこへ日本人を入れて、技術者を入れて、ソ連の人でも働かざる者は食うなというスローガンだったが、このごろ官僚が多くなってしまったけれども、こういう土地で武装するんじゃなくて、やはり花を咲かせたり食べ物をつくらせたりするグリーンベルトの地帯を日本に任せてくれ、国連もこれに協力してくれ。第一にソ連と日本でそのモデルをつくってみようじゃないかぐらいのことを言えば、なかなか頑冥不霊なソ連であっても、一度はやはり耳を傾けてくるような場合があると思うんです。そういうことを少し、ないから何もできないと大蔵省ばかり頼っていないで、素面素手で相手をほれさせるような手を考えなけりゃ、なけりゃないなりのやはり創意というものが躍動しなけりゃ、日本のような資源のない国においてはやはりほかに手がないと思うんです。
 どうぞそういう意味において、積極的に食い込んで、変なけちな考えを持っていたら、もうレーニンなんというのは偉いやつで、スパイを使うんなら二重スパイを使え。やっぱり向こうの本当な情報はこっちの情報も流してやらなけりゃいい情報は持ってこない、これだけの雄大な考え方を持っているから、スパイだなんてつまらぬ三下を追い回さないで、そうして雄大な一つの変革を企図したんですけれども、どうぞ、鳩山さんはかえってくされ因縁がないだけに思い切ったことを――おとなしい人が大胆なことをやり出すと何をしでかすかわからないから、いままで余りおとなし過ぎたんだから、突拍子もないひとつ外交転換をやってもらいたい。
 そうして、きょうもニューギニアの、十年目に、ある大使と懇意だから呼ばれて行ったんですが、日光の東照宮の馬が二十五年で老いぼれちゃったから今度は白馬を贈ってくれるという、白馬というのは大体アラビアあたりからイギリスへ行って、イギリスから植民地のニュージーランドですか、ニュージーランドあたりへ送られたんでしょうが、中国だって洛陽のそばの白馬寺なんというのは、あの西域からシルクロードをたどって仏典があそこへ運ばれたんで、もういろいろなところから変なかっこうでとにかくいろいろなものが流れ込むんだから、これは馬とはうまいことを考えたなと思って私も感心したんですけれども、やはり政治はチャーチルが言ったようにドラマなんだから、おもしろくなければ観客ははずまないんだから、いまのような変な権謀術策に明け暮れているアメリカ人でもソ連人でもびっくりするようなやはり一つの外交をやってもらいたい。
 ついでに、調子に乗ってしゃべりますけれども、外務省なり国会なりがオーケストラぐらいを持って、昔の中世紀のちっぽけな国の王様よりは少しかっこうつけて、一緒に、開院式なんか決まり切ったような文句を朗読しないで、オーケストラでもやって、みんなして感心しているようなやはり恍惚境をつくらなくちゃならない。外交の中にも、どうぞそういう意味において、この問題に関連して便乗して物を言うんですが、ひとつ質的な外交転換をやってください。そうすればきっと、もう農林省も大蔵省も金出したくてしようがなかったようですから、今度は面白い外交だ、どんどん出そうということになるから、ひとつこれをきっかけに、これを足がかりにして前進していただかれんことを期待する次第であります。
#127
○委員長(寺本広作君) 何かお答えがありますか。
#128
○戸叶武君 何か手ごたえがあったら……。鳩山さん。
#129
○国務大臣(鳩山威一郎君) ただいま戸叶先生から貴重な御意見を伺いまして、ありがとうございました。これからの外交に臨む姿勢におきまして、戸叶先生の御趣旨をよく体しまして努力をさしていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
#130
○委員長(寺本広作君) 両件に対する質疑は本日はこの程度といたします。
    ―――――――――――――
#131
○委員長(寺本広作君) 次に、千九百七十一年七月二十四日にパリで改正された万国著作権条約及び関係諸議定書の締結について承認を求めるの件
 子に対する扶養義務の準拠法に関する条約の締結について承認を求めるの件
 税関における物品の評価に関する条約の改正の受諾について承認を求めるの件
 及び、がん原性物質及びがん原性因子による職業性障害の防止及び管理に関する条約(第百三十九号)の締結について承認を求めるの件(いずれも本院先議)
 以上四件を便宜一括して議題とし、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 まず、千九百七十一年七月二十四日にパリで改正された万国著作権条約及び関係諸議定書の締結について承認を求めるの件を問題に供します。
 本件に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#132
○委員長(寺本広作君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 次に、子に対する扶養義務の準拠法に関する条約の締結について承認を求めるの件を問題に供します。
 本件に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#133
○委員長(寺本広作君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 次に、税関における物品の評価に関する条約の改正の受諾について承認を求めるの件を問題に供します。
 本件に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#134
○委員長(寺本広作君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。
 次に、がん原性物質及びがん原性因子による職業性障害の防止及び管理に関する条約(第百三十九号)の締結について承認を求めるの件を問題に供します。
 本件に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#135
○委員長(寺本広作君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 なお、四件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#136
○委員長(寺本広作君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時五分散会
ソース: 国立国会図書館
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