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1976/06/08 第80回国会 参議院 参議院会議録情報 第080回国会 外務委員会 第19号
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1976/06/08 第80回国会 参議院

参議院会議録情報 第080回国会 外務委員会 第19号

#1
第080回国会 外務委員会 第19号
昭和五十二年六月八日(水曜日)
  午前十一時四十四分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 六月八日
    辞任         補欠選任
     羽生 三七君     竹田 四郎君
     川村 清一君     安永 英雄君
     小笠原貞子君     渡辺  武君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         寺本 広作君
    理 事
                大鷹 淑子君
                亀井 久興君
                秦野  章君
                小柳  勇君
    委 員
                岡田  広君
                長谷川 信君
                福井  勇君
                二木 謙吾君
                川村 清一君
                久保  亘君
                竹田 四郎君
                対馬 孝且君
                羽生 三七君
                安永 英雄君
                塩出 啓典君
                矢原 秀男君
                立木  洋君
                渡辺  武君
                田渕 哲也君
   国務大臣
       外 務 大 臣  鳩山威一郎君
       農 林 大 臣  鈴木 善幸君
   政府委員
       防衛庁防衛局長  伊藤 圭一君
       外務省アジア局
       長        中江 要介君
       外務省アジア局
       次長       大森 誠一君
       外務省欧亜局長  宮澤  泰君
       外務省条約局長  中島敏次郎君
       外務省条約局外
       務参事官     村田 良平君
       水産庁長官    岡安  誠君
       水産庁次長    佐々木輝夫君
       資源エネルギー
       庁次長      大永 勇作君
       資源エネルギー
       庁石油部長    古田 徳昌君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        服部比左治君
   説明員
       外務大臣官房外
       務参事官     井口 武夫君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○北西太平洋のソヴィエト社会主義共和国連邦の
 地先沖合における千九百七十七年の漁業に関す
 る日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦
 政府との間の協定の締結について承認を求める
 の件(内閣提出、衆議院送付)
○日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸
 棚の北部の境界画定に関する協定及び日本国と
 大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の南部
 の共同開発に関する協定の締結について承認を
 求めるの件(内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(寺本広作君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、小笠原貞子君が辞任され、その補欠として渡辺武君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(寺本広作君) 北西太平洋のソヴィエト社会主義共和国連邦の地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との問の協定の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)を議題といたします。
 これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
#4
○川村清一君 質疑に入る前に一言鈴木農林大臣に申し上げたいと思いますが、協定の内容につきましてはいろいろ問題がありますので、これにつきましては質疑を通していろいろ意見を申し上げますが、しかし、本協定を取り決められるまでに当たりまして三回も訪ソされ、そして九十日間にわたる長期間非常に御苦労されましたことにつきましては、心から敬意を表します。
 それで質疑に入りますが、まず最初にお伺いいたしたいことは、人類共通の財産である海洋の利用についてでありますが、これはもう今日、二百海里時代という新しい海洋法時代に入ったことをわれわれは厳格にこれを認めなければならない、こういうふうに思いますが、これは外務大臣でも農林大臣でも結構でございますが、これに対する御所見をひとつお伺いしたいと思います。
#5
○国務大臣(鳩山威一郎君) ただいま川村先生御指摘のように、二百海里時代が急速に訪れたという感がいたすわけでございます。
 第三次国連海洋法会議が始まりまして以来、二百海里の経済水域の問題、これが論議をされてまいったわけでございます。日本政府といたしましては、このようなことは国際的な取り決めができて、それから各国が実施をするということが至当であるというふうに考えてきたわけでございますけれども、このことがまだ実現しないうちに、それぞれ広い沿岸を持つ国が国内法でこれを実施するに至ったということは、私どもといたしましてはやはり問題があると思いますが、現実問題として、ただいま御指摘のように、各国、広い沿岸を持つ国が実施するに至ったということでございまして、わが国といたしましても急遽これに対処しなきゃならない、こういう時代になったということは御指摘のとおりでございます。
#6
○川村清一君 このような時代を迎えるに至った経過を考えてみたときに、わが日本としても相当反省しなければならない点があるんではないかと、こう私は率直に思うわけでありますが、二百海里時代というものが国連の海洋法会議で取り上げられるようなそういう原因をつくったのは一体だれか、日本にはそういう責任はなかったかどうか、こういうようなことについてどうお考えになられますか。
#7
○国務大臣(鈴木善幸君) わが国の今日までとってまいりました漁業政策は、率直に、沿岸から沖合い、沖合いから遠洋漁業へと、そういう一連の政策を進めてきたわけでございます。これは今日厳しい、冷厳な二百海里時代を迎えまして、また反省もし、再検討も迫られておるということでございます。
 ただ、この際御理解を賜りたいことは、沿岸の漁民、これをできるだけ日本列島周辺では操業の機会を与える。これに大企業その他の漁船が同じ海域で沿岸漁業と摩擦を起こすということは適当でない。また、わが国のたん白食糧の過半を水産たん白で賄っておるという国の要請、食糧事情等からいたしまして、大型漁船、大手の漁業というものは沿岸の漁業を圧迫しないように、それとの操業の場をできるだけ競合を避けるという意味でそういう政策をとってきたわけでございます。その間におきまして、沿岸国の沖合いにおいて過度の漁獲をしたり資源を荒らすような行き過ぎがあったという点は反省せざるを得ない点でございます。
 しかし私どもは、この二百海里時代というものを迎えまして、そういう過去の行き過ぎにつきましては十分反省もし、これに対応する新しいわが国の漁業体制、操業体制というものを確立をしなければならない、このように考えております。
#8
○川村清一君 私は、昭和四十年に本院の議員になったわけでありますが、今日まで十二年間、そのうち八年間は農林水産委員会に所属しております。
 この漁業の動向に関する年次報告、つまり漁業白書でありますが、これは昭和四十一年度のものでございますが、この昭和四十年度におきましては、四十年は海・内漁業における総生産量というものは六百九十万トン、三十九年は六百三十五万トン、これが昭和五十年、四十九年、もう十年間の間に一千万トンを超えているではありませんか。これはあなた方の国益観から言うと、あるいはまた高度経済成長の経済政策から言えば、まことに結構なことであるかもしれません。そしてその一千万トンになった総生産量の約四〇%から四五%、四百万トンから四百五十万トンというものは、これは遠洋漁業によって漁獲しておるのが現実の姿であります。そして日本は世界一の水産国になっておるわけであります。
 いま鈴木農林大臣がおっしゃいましたように、沿岸から沖合いへ、沖合いから遠洋へという、こういう政策の上に立って、外延的に日本の漁業というものを外へ外へと伸ばしていった。したがってこのように生産が伸びていった。
 ところが、この問題に対して世界各国はどういう評価をしておったか。特に開発途上国の国々はどのような評価をなされておったか。端的に言って、今日のこの二百海里問題というのは、これは一つは南北の問題である。いわゆる先進国とそれに対する開発途上国の資源に対する一つの戦いといいますか、開発途上国の資源ナショナリズムのあらわれがここに出てきたのであって、でありますから、一九七三年の第三次国連海洋法会議の第一会期において、アフリカのある国の代表はこういうようなことを言っているではありませんか。自国の沿岸をすっかり汚染してしまって、沿岸でとれる魚を食べられないほど沿岸を汚してしまって、そしてその国がわがアフリカの沿岸に来て魚を乱獲しているではないかと、こういう発言をしておる。暗に日本を指しているではありませんか。日本だけではない、ソ連もこの中に入っている、いわゆる世界の先進国が後進国の資源を乱獲した。このあらわれが今日のこの事態を迎える原因になったと私はそう判断している。これに対して政府の御見解をお聞きしたい。
#9
○国務大臣(鈴木善幸君) 私は川村さんが御指摘になりましたように、漁業資源だけでなしに、この海洋に対する二百海里の沿岸国の主権的権利を行使しようということは、一つの資源ナショナリズムのあらわれでもあると思います。私は先ほど来率直に、行き過ぎたこれら開発途上国の沿岸におけるわが国漁船の過度の漁獲、乱獲等につきましては、この際深刻に反省をしなければならないということを申し上げたわけでありますが、一面におきまして、ほかの海底の資源等と違いまして、水産資源というのはとらないからといってそれだけふえるものではない、やはり適正な漁獲をやる、また保存の措置を講ずる、こういうことで人類全体の食糧問題に貢献できるものだと、このように考えております。二百海里というなわ張りを張って、自分もとらない、人にもとらせない、そして魚は世代交代をしていくと、こういうようなことでは、私は人類共有の財産、貴重な食糧資源というものを本当に活用するゆえんではない、このように考えます。
 そういうようなことで、今後沿岸国との協調また技術協力その他を通じまして十分相協力をし、その理解の上に立って適正な漁獲量を上げて、再生産を十分確保するような措置を講じながら人類全体の食糧問題に貢献をしていくということが必要であろうかと、このように思うわけでございます。
#10
○川村清一君 農林大臣のおっしゃることを否定するものではないのです。その原則は国連の海洋法会議の中でも議論されておりますし、きのうの本会議における質問に対する御答弁の中にも、いまや実績主義ではなくて余剰原則というか余剰主義という立場に立って考えられるようになってきておるということは、いま大臣がおっしゃっていると同じことであって、これは海中の生物であっても生物ですから、これは利用しなければ、とらなければいつまでも生きているというものでなくて、やがてこれは死滅するのでありますから、その沿岸国が利用してなお余りあるものがあるならばよその国にこれを分かち与えるというこういう考え方、これは言うまでもなくいまの海洋法会議における単一草案の中にきちんと出ているわけでありますから、それは否定するものではないのです。
 しかし、これはひとつ考えていただきたい。われわれ社会党は、国連海洋法会議の一九七三年のそのときから、これはもう世界の大勢である、歴史はそういうふうに動いているのである、歯車はそっちの方に回っているのだ、もうこれを逆転させることはできない、いわゆる開発途上国の資源ナショナリズムのあらわれなんだから、だからこの当時におきましては日本はもちろんアメリカもソビエトも反対しておった。いわゆる先進国は皆反対しておった。しかしわれわれは、これは阻止することのできない流れであるから、ただ反対反対と言うのではなくて、むしろ日本が主導権を持ってこれをまとめる方向に努力すべきである、そしてそのまとめる中でこの日本の今日までの遠洋漁業の実績というものをできるだけ守っていかなければならない。これが沿岸国が勝手に一方的に二百海里の線を引いていったならば、もう海洋の秩序というものは全くなくなってしまってめちゃめちゃになる、その結果は日本の遠洋漁業そのものが壊滅状態になるのではないかということを恐れて、だから政府はまとめる方向に努力するとともに、日本の遠洋漁業の既得権を守るために強力ないわゆる水産外交というか漁業外交というか、この外交を進めるべきであるということを主張し、政府に進言してきたわけであります。一体日本の政府、特に外務省はどういう態度できましたか、やってきましたか、どうですか。
#11
○国務大臣(鳩山威一郎君) わが国の国連海洋法会議に臨みます態度というものは、当初は二百海里問題につきまして積極性を持っていなかった面もございます。しかし、わが国に対します開発途上国の批判というものもございますけれども、わが国が最も大きく依存しておりましたのは北洋漁業でございますし、またアメリカとの間、ソビエトとの間、このような大国との間で、この間におきましては従来から条約のもとに資源の保存という点も考えて漁業を実施してきた、こういう経過でございます。
 海洋法の秩序というものにつきまして、昨年からわが国といたしましても二百海里時代、こういった方向を認める方向に進んできたわけでございます。その間にはいろいろな変化があったわけでございますが、南北問題という点におきましていま御指摘ありましたけれども、また一方におきまして大国が広大な沿岸を持っておって、それが海洋資源も支配をするという点につきまして、また小国あるいは沿岸を持たない国、これらの国の批判というものも非常に強くあったわけであります。そういったことでわが国の二百海里に対する体制というものがいま御指摘のようにおくれたという点は率直に認めなければなりません。しかし、過去におきましてはいろいろな問題があったということもお認めいただきたいと思うのでございます。
#12
○川村清一君 それはわかるんですけれども、とにかく海洋法会議に対する対処の仕方もきわめて消極的であった。私なんかは農林水産委員会で農林大臣に海洋法会議に出る政府代表は大臣クラスの方、そういう大物を出すべきでないかということを申し上げておったが、そういったようなことについても一つも心配りがなかった、そうしてようやく賛成といいますか、その体制をまとめるように動き出したのは去年ぐらいからであって、それまではもう反対をしておった。
 ところが、一体日本政府は、アメリカやソビエト、日本とともに反対しておった国がどういう動き方をしておるかということをちっとも見ておらない。われわれは必ずアメリカ、ソ連はこれに乗ってくるだろうというふうに見ておった。特にアメリカであります。アメリカがやったら必ずソ連もやるんだから、まずアメリカを抑えなければならない。いわゆる世界の全部の国が合意する前にアメリカが一方的に漁業専管水域二百海里なんというものを決めるようなことになったら、これは必ずソ連もやるから大変なことになるということで、アメリカを抑えるようにということをずいぶん進言してきました。
 アメリカが一体何でやったか、反対しておったアメリカが何で一方的にこの二百海里を設定したか、その原因をつくったのはどこの国か、これは日本の国でしょう。いわゆるアメリカの水域に行って日本の船が余りにとりまくるものだからアラスカの漁民あたりから非常に苦情が出てきて、そうしてアラスカ州の国会議員が議員立法としてこの法案を出したわけですよ、御承知のように。そうしてアメリカの国会を通ってしまった。その時点でフォード大統領は拒否して署名しないであろうというような見方を外務省の方は持っておったんではないですか。日本のパートナーのアメリカが日本の反対を押し切ってやるなんということはないだろうといったような甘い見方をしておったんではないでしょうか。
 フォードだってこれは政治家ですから、大統領選挙のときにアラスカ州から出たその議員立法に反対するようなことであったら選挙に大きな影響があるから、これはもう署名してしまって、そこでアメリカは一九七七年三月一日から沿岸二百海里を漁業専管水域にするという法律を制定してしまったんです。アメリカがやったら必ずソ連がやる、これはわかり切ったことじゃないですか、対抗上。なぜかならば、ソ連は日本以上に世界の遠洋漁業国。わが国が総漁獲量の中の四〇%から四五形を遠洋に依存しておるが、ソ連は総漁獲量の六〇%から六五%を遠洋で漁業している世界一の遠洋漁業国です。そのソ連がアメリカから締め出され、カナダからも締め出され、ヨーロッパ、ECからも締め出され、ノルウェーからも締め出されるということになったら、当然ソ連は自国の水域の資源を守るという立場の政策をとることは当然ではないですか。日本だってその立場になったらそういうような意見が出てくると思うんです。
 ただ、アメリカの水域とソ連の水域の違うところは、アメリカの言っているのは、また後で質問しますが、日本のたとえばスケトウの漁獲にしましても、これは大手資本会社のいわゆる母船式の底びき船だ。ところがソ連の二百海里水域というものは、わが国の中小漁業の漁場である。しかも北洋漁業というのは決して、ソ連の二百海里の水域ではあるけれども、ソ連人が開拓した漁業ではないんです。全部日本の漁船が、特に北海道の漁業者が小さな船で、本当に血と汗を流して命がけで開発した漁業である。サケ・マス漁業に一つ例をとってみるというと、この十年間でサケ・マス漁業だけで死んだ漁師の方が百十五人いる。あの広い海のどこへ網を刺しても魚がいるというものではない、これは御存じのとおり。ツブ漁業一つとっても、エビ漁業をとっても、あるいはニシン、サケ・マスはもちろんのこと、スケトウにしても、どこへ行くというとそういう魚がいるか、どういう漁法でやればその資源をよくとれるか、これは全部北海道の漁民を主として日本の漁業者が本当に命がけで開拓した漁業なんです。そうして、この漁業というものは日本の国民経済の上に重大な影響を与えておる。特に北海道の経済さらに道民生活、日本国民全体の食糧の問題からいっても重大な問題であるから、したがってソ連がもしやるようなことになったらこれは大変なことになるので、アメリカを抑えるようにということをやってきたが、何も手を打ってない。ですから、ソ連も一九七七年三月一日からこれを実施するということを去年の十二月、最高会議幹部会において決定をして幹部会令として布告をしたではありませんか。それを受けてことしの二月、閣僚会議が決定をして全部具体的に線引きもやってしまった。そこでこっちの方は、日本の方はあわて出した。鈴木農林大臣は二月の末に訪ソされておるんです。その時点から日本政府があわて出して、そうして今日まで非常な心労をされて、国民は深刻な影響を受け、損害を受けておる、これが実態ではないですか。
 一体、外務省の日本大使館なんというのは何をやっているんですか。アメリカの動きがどうだとか、ソ連の動きがどうだとかという、そういう情報を何かとっているのかどうか。情報もわからなかったら先に手を打ったって手を打てないでしょう。だから外交がすべて後手後手、そうしてその場限りの外交をやって、もはやその事態が発生してからあわてふためいているというのが、これが実態ではないですか、どうですか。これは外務大臣と農林大臣から御見解をお聞きしたい。
#13
○国務大臣(鳩山威一郎君) 御指摘のように、二百海里をアメリカ並びにソ連が国内法で実施をした。アメリカの二百海里の立法の動きにつきましては、アメリカの国柄でありますから、日本としても十分にわかっておったわけでございます。国連海洋法の進展がなかなか結論が出ないということもあって、議員立法の動きに対しまして、大統領といたしましても拒否権の発動ができなかったと思います。そういう事態に対しまして、日本といたしましては、この海洋法会議の結論が出る前に単独で措置をされることにつきましては、日本としては極力説得に努力をしておったところでございます。しかし、事態は急転をして議員立法の成立を見て、特にただいま御指摘のようなアラスカの議員の熱心な方がおられまして、ついに法案が成立をしたというのが御指摘のとおりな経過でございます。
 外務省あるいは在外公館といたしましても、農林当局と連絡をとりながら努力をしたところでございますけれども、事実はいま御指摘のような経過になったということでございまして、いまここでいろいろ言いわけめいたことは申しても仕方がありませんけれども、努力を続けておりましたけれども、このような経過になったということでございます。
 わが国自身といたしまして、国会の御配慮によりまして、五月二日にわが国といたしましても、漁業水域に関する暫定措置法を急遽お認めをいただいたことにつきましては、厚く御礼を申し上げる次第でございますが、対処のおくれましたことにつきまして、これは大変残念なことであると言うほかないと思います。
#14
○国務大臣(鈴木善幸君) 川村先生御指摘のような経過をまさにとっておるわけでございます。水産庁としても、外務省並びに在外公館と連絡をとり、できるだけの情報の収集にも努めておったわけでございます。また、国会議員団の中でも海洋問題に関心を持たれる方が――私もそのメンバーの一人であったわけでありますが、海洋議員連盟というようなものをつくって、一昨年あたりからアメリカの同様の関心を持つ議会人の諸君と接触をとり、しばしば交流もいたしましてこの問題に取り組んできた。またそれらの諸君も、海洋法会議で会議がだんだん進んでおる段階において、世界の政治経済のリーダーであるアメリカが先んじてそれをやるということは適当でないと、こういうようなことで、それなりの努力を国内の国会等においてもやってくれておったわけでありますが、残念ながら選挙その他の諸情勢等もありまして、アメリカが大国としては先頭を切ったと、それにソ連が呼応したと、こういうような状況でございます。
 対ソ連の関係におきましても、一九七六年の十二月十日に幹部会令が発布されたわけでありまして、今年二月二十四日にそれを体して閣僚会議の決定がなされた。この間におきまして、水産庁からは松浦部長をモスクワに派遣をいたしまして、ソ連漁業省当局といろいろ接触をしておったわけであります。その結果、両国の大臣間の話し合いでこの二百海里問題を今後話し合う、それがまずスタートラインである、ぜひ両国の両大臣間で会談を持とうではないか、それなくしては今後の話し合いに入れない、こういうことがようやくソ側から正式の連絡がございまして、私が二月二十七日に第一回の訪ソをしたと、こういう経過に相なっております。
 農林省としても、そういうようなことでできるだけのソ側との接触等につきましても努力を重ねておったわけでありますが、結果的にこのような推移をたどったということにつきましては、外務大臣が申し上げましたように、まことに残念にたえないところでございます。
#15
○川村清一君 農林大臣にお尋ねしますが、政府が提案されました領海法並びに二百海里法につきましては、国民の利益を守るためにも何としても日ソ漁業協定を早く、しかも有利に締結をしてほしいということから、国会におきましては衆参両院ともまさに超党派的に協力して、そして政府の大体希望される時点に合わせてこの法律を制定したことは御存じのとおりであります。
 さて、われわれが二百海里法を決めて、このことによってソ連と日本とはいろいろ議論する共同の土俵ができるんだ、その共同の土俵の上で鈴木農林大臣と向こうのイシコフ漁業大臣とひとつ相撲をとって、ぜひ鈴木さんに勝ってもらいたい、こういう期待を持っておったんですが、どうも今度の暫定協定案を見ますというと、せっかくわれわれ努力したんですが、この二百海里法なり領海法というものは大して利用されなかったんではないか、大したメリットもなかったんではないか、率直に言ってそう感じとられるんですが、交渉の当事者である鈴木農林大臣の率直な御見解をぜひ承っておきたいと思います。
#16
○国務大臣(鈴木善幸君) 四月交渉の段階におきましては、わが方が新領海法を成立を見ていない、また漁業水域に関する暫定措置法も成立がない、こういうようなことで、いわば向こうの一方的な幹部会令なり閣僚会議決定というようなものを、いかにしてこれを表現その他の面でわが方の立場を損なわないように、特に領土問題について影響を与えないようにと、こういう受け身の形での交渉に終始せざるを得なかった、これは率直に申し上げてそういう状況であったわけでございます。
 しかし、五月二日に超党派の御支援、御協力によりまして海洋二法が成立をした。私はこれを携えまして再度五月三日に訪ソをし、五月五日からイシコフ大臣とこの海洋二法を背景にして交渉をやったわけでございます。
 私は今回の交渉の経過を見、また結果を見まして、この国会の超党派の御協力による海洋二法の成立というものは、非常なこれは交渉において大きな力を与えてくれたと、このように評価をいたしておりますし、また、皆さん方の御協力に心からなる感謝を申し上げておるところでございます。
 端的に具体的に申し上げましても、問題になりましたところの協定案文の第二条、すなわち、わが国の領海内でソ連漁船が操業する問題、この問題につきましては領海法の成立ということが決定的な役割りを持ったわけでございまして、三海里、十二海里の中でソ連が操業を続けてきたわけでありますけれども、この領海法、新領海法十二海里によりましてソ連もついにこの中における操業を断念せざるを得なかった。こういうことで、協定文第二文からも、今後両国政府の協議によって入り得る余地の明示的な第二文というものを設定したいということを執拗に言いましたけれども、これを拒否することができた。これはひとえに領海法のおかげでございます。私はこの点につきましても、法文の表現ぶり等からいってまだ余地があるのではないかと、ソ連がソ日協定に当たって十二海里の中の操業をもう一遍蒸し返してくるのではないかという御懸念があるようでございますけれども、この点につきましては、イシコフ大臣も完全にわが方の立場に理解を示し、明確に断念をいたしておりますから、ソ日協定におきましてもこのわが方の領海内における操業というものを蒸し返してくるようなことは絶対にない、また、わが方としては絶対にこれを受け入れないということを明確にしたわけでございます。これらの点は、海洋二法の成立が大きく今回の交渉に役立っておる、また大変な力になっておるということを、私は率直に交渉に当たった人間として申し上げ、また国会の超党派の御協力に感謝を申し上げる次第でございます。
#17
○川村清一君 いまの御答弁に対する意見は後ほど申し上げますが、実は私ことしの二月五日、社会党の代表質問を行ったんでありますが、その質問の中に領海法の問題を取り上げまして、そして領海十二海里と、それをどこへ線を引くかということ、そのときに、領海法に基づいて十二海里に基線を引くとなれば、当然北方領土あるいは竹島、尖閣列島、こういう外国との領土問題でいろいろ問題を起こしているこの島にどういうふうに線を引くかということがやはり当然起きてくる問題であるので、政府はどういう対処をするのかということをお尋ねしましたら、福田総理大臣は、これはもう日本の固有の領土であるから、この領土には十二海里の領海の線を引くんだと、こういう御答弁でありました。その後政府からいただいたこの領海の範囲という地図を見ますというと、やはり総理のおっしゃったように、北方領土いわゆる北方四島それから竹島、尖閣列島、ここには全部こう領海の線を引いてあるわけであります。
 そこで、こちらは西南の方は別として、北方領土四島についてお尋ねしたいんですが、確かに固有の領土である。であるとすれば、十二海里の領海の線が引かれるわけでありますが、一体北方領土の領海十二海里というものは、日本政府はこう地図の上に線引きましたが、これはソ連初め諸外国がこれを認めているのかどうか。日本の領海であるということをソ連初め諸外国が認めているのかどうか、この点外務大臣からひとつ御見解を承りたいと思います。
#18
○国務大臣(鳩山威一郎君) 北方領土につきましては、ソ連政府と日本政府との間に見解が一致しておらないのは御承知のとおりでございます。したがいまして、日本が領海を北方領土につきましても持つということにつきましては、ソ連政府はそれを認めるものでないということは当然想定されるところでございます。竹島につきましても……
#19
○川村清一君 竹島はいいです。竹島や尖閣列島はいま議論していませんから、それはいいですが……。
 そうしますと、線を引かれたこの領海というもの、これはわが方だけがわが領海だと言っているだけであって、相手のソ連は認めておらない。こういうように領海というものは簡単なものじゃないですね。領土、領海、領空といって、主権がそこに存在しているんです。
 そうすると、わが主権がここにあるということをソ連は認めていないということなんですが、わが方が一方的にこれはわが領土だと言っているのか。それから諸外国はどうだ。領海、領土これは一体的なものであって、アメリカやその他の国はこの領海を認めているのか認めていないのか。ソ連は認めていないことはわかったがほかの国はどうなんですか。外国から認められない領海、領土なんというものは一体この地球上に存在しているのかどうか、不敏にしてわかりませんので、そういう例があったらひとつ外務省のどなたでもいいから教えてくれませんか。
#20
○政府委員(中島敏次郎君) ソ連がわが北方四島周辺におけるところのわが国の領海に対してどういう立場をとるであろうかという想定につきましては、いま外務大臣のお答えになられましたとおりでございますが、たとえばアメリカに関しましては、これらの四島は御承知のようにわが国がサンフランシスコ平和条約の第二条(c)項によりまして放棄いたしましたところの千島列島には入っていないと、歴史的事情からいってもわが国の固有の領土であって、これはわが国の領土として返還されるべきものである、こういう立場にあるわけでございまして、その立場につきましてはサンフランシスコ平和条約の主要なる起草国として米国もそのとおりであるという見解をかねて表明いたしております。
 したがいまして、そのアメリカ側の立場からいけば、これら四島の周辺にありますところのわが国の領海は、当然わが国の領海であるということを認めるという立場にあるものというふうに考えます。
#21
○川村清一君 理屈はわかるんですけれども、私は国民の一人として感情的にどうしてもこれは納得できないわけです。
 政府は、固有の領土である。領海三海里ということになると、わずか五千四百メーター程度ですからまあまあということになりますが、十二海里ということになって、その十二海里がこれはわが方は領海だと思っている。一体この辺の漁師の人たちにどういうふうに説明するんですか、政府は。十二海里だと思って出漁して行くというと、これはソ連に領海侵犯だといって、みんな拿捕される、捕獲されてしまう。これはどう言って説明するんですか、この周辺の漁民の方々に。日本の領海なんだ、領海行ってつかまるなんたらおかしい話だ。外国につかまっちゃう。それでも領海だ領海だと言っている。その辺はどういうふうに説明しますか、国民の皆さんに。
#22
○政府委員(中島敏次郎君) この周辺の漁民の方々が従来これら四島の近辺に近づきまして領海侵犯その他のかどで向こう側に逮捕せられておるという事態があることは、先生御指摘のように遺憾ながら事実でございまして、わが方政府といたしましては、このような拿捕、ことにいわゆる領海侵犯と称するもののかどで拿捕されるという事態に対しましては、これを抗議し、またその返還を要求しているわけでございます。
 そこで問題は、今般の取り決めによってその事態が変わったのかどうかという点にあり得るんだろうと思います。ことに先生は十二海里になったこととの関連でどうなんだと、こういう御質問だと理解いたしますが、その点につきましては、従来わが国の領海は三海里であり、それが今般十二海里になったということにつきまして、いまの事態には直接の変化はもたらさないだろうというふうに考えております。わが国といたしましては、これら四島の周辺にはわが国の領海があるという立場でございますから、その立場に立って今後ともこの種の問題に対処していくということでございます。
 他方、これは全くわが政府として認めるものではございませんけれども、ソ連側はこれら四島がみずからの領土であるという立場に立ち、そしてその回りにみずからの領海があるという立場に立っているものと見られるわけでございまして、その事態、双方の領有権主張が重なっておって、したがってその周辺における領海がそれぞれみずからの領海であるという立場のぶつかり合いというものは今回の協定によっても依然として解消はしていない、変化はないと、むしろ実態の問題としては申し上げるほかない、だろうと思います。
 ただその場合に、そのことによってわが国がこれら四島の領有権主張、またその四島の周辺にありますところの領海に対する、領海がわが国の領海であるという立場を害されることがあってはならないということで、協定の第八条におけるところの留保を明確に行ったと、こういう形になっております。
#23
○川村清一君 いや、そのあなたのおっしゃる理屈はようわかるんです。ようわかるけれども、国民感情として、国民の一人として何としてもこれは納得できないから、漁民の方々にどう説明なされるのかということを私は聞いているんであって、いままでは領海三海里であった。ソ連の方は十二海里であった。そこで、固有の領土であるけれども、まあ実質的には行政権は向こうが持っているわけだから、したがって十二海里の中へ入るなよと、入るとつかまるから入るなよと言っていろいろと指導してきたんです。
 ところが、今度はこっちが十二海里になったんですから、三海里でなくてこっちも十二海里なんですからもっと行けるわけですよ。行ったらみんなつかまってしまうということでは、これはせっかく十二海里引いたってこの特殊地域というものはこれは全く別扱いみたいなんだ。だとすれば、そんな別扱いをするならばむしろ、領海法には特定海域というのがありますね、宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡が。これは、十二海里だけれどもそこのところだけ特定海域として三海里凍結というようなところがあるでしょう。このとおりやれというわけじゃないですよ。このような扱い、いわゆる十二海里であるけれどもこの北方四島についてはこの領海法が適用されないとかなんとかということを法律に明記しなければ、領海法という法律にあって、そうして法律を守っていてつかまってしまうといったようなことになったらこれはおかしな話じゃないですか。法律なんですよ、法律に規定されておってわが領海、そこへ行ってみんなつかまってしまう。これどういうふうに説明し、どうやって指導しますか。だとすれば、この法律の中においてこの地域は特定海域、いわゆる四島が返還されるまでは特定海域、まあどういう名称にするかそれはわかりませんが、そのような扱いをするように法律に明記した方が筋が通ってすっきりするんではないですか。これは国益に合うか合わないかという、そういう観点ではなくて、私は法理論からいってそれが筋じゃないかと思うんですが、いかがなものですか。
#24
○国務大臣(鳩山威一郎君) ただいま御指摘のございました、漁民の立場から申しまして、わが国の領海内でソ連の官憲に拿捕されるというようなことはまことに残念なことでございます。現実問題といたしまして、この点につきましては水産当局の方とよく連絡をいたしまして、適切な措置をとっていただきたいと思います。
 しかし、法律の段階でこの北方四島につきまして日本の固有の領土であるということを、法律の段階で固有の領土につきましてみずから領海というものを何らかの制限をするということにつきましては、やはりそれはそれなりでまた苦しい立場にもあるわけでございますので、その点は実際的な措置によりまして適切な解決と申しますか、漁民の方々に御迷惑が及ばないように適切な措置をとりたいと、このように思います。
#25
○川村清一君 漁民の方々に御迷惑をかけないようになんとおっしゃっていますが、一体戦後、今日まで、あの周辺の漁民の方々の拿捕された船の数がどのくらいあって、拿捕された人の数がどのくらいあるか、それは外務大臣御存じですか。それは莫大なものなんですよ、今日までのこの水域の中において。ですからそういうふうに、まあ漁民の方々に迷惑をかけないように努力しますなんということはおっしゃらない方がいいんであって、そんなことを言ったってできっこないんです、これは。ですから、それならばその水域の中で操業してもつかまらないような、安全操業をどう守るか、領土問題はもちろんですが、その領土問題を解決するのにもし時間がかかるとするならば、それまでの、それこそ暫定協定のようなものによって安全操業だけでも認められるような措置を私はとってもらいたいと思うわけです。
 そこで鈴木農林大臣にお尋ねしますが、鈴木農林大臣は水産の専門家でございますのでよく御存じだと思いますが、貝殻鳥のコンブ漁業ですね、あれを今回の協定ではもう全部ゼロにしてしまったということは、これは大変なことなんですが、あの経緯は十分御承知だと思うんですが、どうしてこういうことになったんですか。あそこの貝殻島でコンブをとっている漁業者というのは本当に零細漁民だけなんです。これは中小漁業なんかとは違う、もっともっと零細な、もうコンブだけで食べているような、そういう漁民なんです。これをゼロにしてしまっている。民間協定が破棄されちゃってゼロになっちゃった。大変なことなんですが、どうしてこんなことになったんですか。
#26
○国務大臣(鈴木善幸君) この点は川村さんにも御理解がいただけると思うのでありますが、ソ連側が、日本の領海が三海里であったと、三海里の外は公海であるということで、今日まで三海里の外で漁業をやってまいりました。しかし、そのことが日本の沿岸漁業者の漁業を制約をし、また漁網、漁具等に多大の被害をもたらした。でありますので、早く幅員を十二海里にすべきであるということで、政府においても国会においてもそのことでこの領海十二海里法というのが急速に御決定をいただいたという経緯にございます。
 これに対しまして、ソ連側はいままでサバ、イワシを中心にして、また底魚も若干ございますが、三海里と十二海里の間で多くの漁獲を上げてきたということ等から、もう執拗にこの中における操業を要求してきたわけでございます。しかしわが方としては、立法の趣旨、経緯等からいたしまして断じて十二海里の中では外国漁船の操業は認めない、こういう強い主張で押し返しまして、第二条においてソ側もこれを断念をする、ソ日協定においてもそういう線で十二海里の中では操業をしない、こういうことにようやくとにかく相手方を説得をしてそこに至ったわけでございます。
 そういう中におきまして、羅臼の漁民諸君の漁業であるとか、あるいは貝殻鳥のコンブの問題であるとか、これを交渉の段階において政府の立場で要求をする、こういうことになりますと、それではお互いにまた領海の中で操業をすることを政府間で協定しようではないか。こちらでは拒否する、向こうには入れてくれ、こういうことの交渉はなかなかこれは、全体の主張を生かす、全体の漁民をいままでの外国漁船の被害から守る、こういう観点から私はこの際の交渉としては適当でないと。ソ日協定及び基本協定が締結をやがてされる段取りに相なっておるわけでありますが、そういうことを踏まえながら、もともと貝殻島のコンブの漁の問題は、高碕先輩が大日本水産会の会長の当時、地元漁民の要請にこたえ、これと一緒になりましてかち得た民間協定としての操業体制でございます。私は、今後におきまして、やはり民間協定としてこの問題を処理してまいるように政府としても温かくこれを支援をしていきたい、このように考えております。観点は別であります。観点は、わが方の、とにかく北方四島はわが国固有の領土であるんだから別の角度があるではないか、こういう御主張は当然あります。しかし、残念ながら現にこの北方四島を占有をしその施政を行ったのはソ連側である、こういう厳しい現実もございます。どうしてもこれは具体的な話し合いで処理する以外にない、このように考えておるわけであります。
#27
○川村清一君 大臣も御認識いただいているように、貝殻島周辺のコンブ漁業というのは、民間協定ができる前までは、あの零細な漁業者がコンブとりに行くわけです。船のエンジンをかけたままコンブをとっている。そうすると、ソ連の巡視船がどっとあらわれてくると、もうクモの子を散らすように逃げるわけです。たまたま逃げおくれた船がつかまってしまうといったような大変な時代をずっと戦後続けてきたわけであります。そういうような経過の中で、いまお話のあったように、高碕達之助さん、大日本水産会会長がソ連と話し合って、そうして民間協定でもって自後十幾年間この漁民たちは安心して操業ができたわけです。ところが今度の協定で全然できなくなった。これは大変なことなんですね。
 そこで、大臣のいまの御答弁によれば、政府間協定はそういうようないきさつでだめにはなったけれども、何とか民間協定でやれるように努力したいというようなことをおっしゃって、私もまあまあと安心しましたが、さてそのめどがあるのかどうかという問題が一つあるわけです。そういう民間協定ができ得る、そういうめどがあるのかどうか、その点をひとつ確かめておかなければならないと思うわけであります。
 それから、貝殻島はどこにあるか御存じなんでしょうな。どうも大臣のお話を聞くと、よく御理解いただいてないような気がするので私は聞いたんですが、貝殻鳥というのは、納沙布岬に立って見ますというと、すぐ手が届くようなところにあるんですよ。とても領海三海里――三海里というと五千四百メーター。五千メーターなんかないんですよ。四キロ、四千メーター以内じゃないですか。そういうところにある島なんですよ。何でそれじゃここへ行ったらみんなつかまるのかというと、三海里なくても、これはわが方の十二海里法、あれにも書かれておりますが、要するに領海十二海里、領海十二海里重なるというと中間線をとるわけです。だから、貝殻島という全く人一人いない無人島なんですよ、だけれどもソ連はこれをわが領土という見解を持っているからここから十二海里引く、日本も納沙布岬から十二海里を引くと、四キロぐらいしかないんですから完全に重なるのは当然です。そういう地域は真ん中線、中間線を引くので、中間線を越えているから結局つかまっておったということなんで、三海里もなかったんだということをひとつぜひ御理解いただきたいと思う。そんな近いところ、見えるんです、すぐ。手を伸ばせば届くようなところなんですよ。ここへ本当に零細な漁民の方がコンブとりに行ってみんなつかまる。それで、胸を張って、北方領土はわが固有の領土だ領土だなんて総理大臣初め皆さん方おっしゃっていますが、そんなこと言ったって国民の皆さん承知できませんよ。本当に固有の領土だというんなら、具体的にせめてそのくらいできるようなことをしたらどうですか。口で言っているだけであって、実質的には何もないじゃないですか。それで、やった人は皆拿捕されてつかまっちゃう。船もろとも向こうの方に連行されていくというのがこれが、実態でしょう。
 それからもう一点、昨夜の福田総理大臣の御答弁を聞いて感じたことをお尋ねするんですが、これまた外務大臣それから農林大臣どちらでもよろしゅうございますからお答えいただきたいんです。本当は総理大臣にお尋ねしたいのですが、総理大臣はこの委員会には来られませんので聞く機会がありませんので。北方領土についてはソ連が管轄している現実は認めなければならないと言われた福田総理の発言は、今後のソ日協定取り決めに当たってこの現実を認めなければならないというその現実から言って、北方領土水域はわが国二百海里法の適用除外水域にすることもあり得ることを示唆した発言と私は受けとめたのでありますが、こういう考えが本当にあるんですか、ないんですか。いささかもないんですか。
#28
○国務大臣(鈴木善幸君) まず前段の御発言について私も申し上げるわけでありますが、いま川村さんがおっしゃったような気持ち、これは国民の全部が抱いておる気持ちだろうと思います。実際にモスクワにおいてソ側と交渉しております当事者として、全くそのような気持ちで、歯ぎしりをしはらわたが煮えくり返るような立場でこの交渉に当たった場面もたくさんございます。私はこの国民的な考え方というものを十分承知しておりますから、何とかわが方の立場を損なわないようにということで耐えがたきを耐えながらもがんばってきたということでございまして、国民の皆さんの御心情というものは私はよく承知しておるつもりでございます。
 なお、北方四島の問題に絡んでのソ日の協定の際の取り扱いの問題についてのお尋ねがございました。ここで申し上げるまでもなく、わが方の漁業水域に関する画定措置法、これは政令を待つまでもなく、わが国の領土の沿岸、沖合い十二海里の領海の外百八十八海里にこの漁業水域に関する暫定措置法が適用される。この法律では、はっきりこの水域内におけるところのわが方の漁業に関する管轄権というものが、実施されることに明定をされておるわけでございます。私はソ日協定に当たりましては、このわが方の画定措置法というもの、これが適用されておる海域というものをソ側が認めない限りは、私はソ日協定の交渉に入れない、協定は結ばれない。これが大前提でございます。これが基本的な問題である。政令によって線引きが決まるものではなしに、もうすでに暫定措置法によってわが方の管轄権の及ぶ漁業水域というものは決まっておる。これは国権の最高機関である国会で御決定になっておる。ちょうどソ連の幹部会令、それに相当する権威を持つものでございます。
 そこで、後は運用の問題になりますが、これは今後のソ側との交渉の際におきまして、わが方としてはわが方の立場を害さないという基本的な立場で取り組んでまいりたい、こう思っております。
 コンブの民間協定につきましては、先ほど申し上げましたように、これは民間協定として長く続けてき、また実績を持っておるわけでございますから、この協定、基本協定等が成立をしました時点におきまして、政府としても積極的にこの民間交渉を支援をして、今後においてこれができるように最善を尽くしたい。また、その間における関係漁民の救済措置につきましては、十分やってまいる考えでございます。
#29
○委員長(寺本広作君) 午後一時三十分まで休憩いたします。
   午後零時五十二分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時三十八分開会
#30
○委員長(寺本広作君) ただいまから外務委員会を再開いたします。
 午前に引き続き、北西太平洋のソヴィエト社会主義共和国連邦の地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)を議題とし質疑を続行いたします。質疑のある方は順次御発言を願います。
#31
○川村清一君 時間もなくなりますので少しはしょってお尋ねしたいと思うんでありますが、協定についてお尋ねします。
 問題点はすでに御了承のように第一条と第二条と第八条にあるわけでございまして、率直に言って、第一条におきましては、「ソヴィエト社会主義共和国連邦最高会議幹部会令」まではいいんですが、それに続いておる「第六条及びソヴィエト社会主義共和国連邦政府の決定に従って定められる」という、「第六条」から「定められる」という、ここの文章が一番問題なんですが、これをここに書かないで「最高会議幹部会令」ぐらいでこれをとどめることができなかったのか。これはもちろん御努力なさったことはわかるんですが、この「ソヴィエト社会主義共和国連邦政府の決定に従って」という言葉を入れたので完全にこれは線引きを認めたということになるわけでありまして、これさえなければここは問題点がないんですが、この点が一点。
 それから第二条ですが、「伝統的操業を継続する権利を維持する」と、「伝統的操業を継続する」というこの言葉、これは農林大臣は領海十二海里は認めさせ、絶対この中には入れないという強い御発言をなさっておりますが、「伝統的操業」とうことになれば、参議院農林水産委員会においてしょっちゅう問題になっております、そして、先般も私鈴木農林大臣と議論いたしましたが、ソ連が昭和四十年以降わが近海にあらわれて無暴操業をやってまいりまして、ここ三、四年前から急激にそれがふえてきたわけであります。ですからわれわれは、一昨年あたりからはやがてこういう協定ができるだろうと、二百海里時代を迎えて。そのときにソ連はやっぱりわが沿岸に実績をつくっておくと、この協定をつくるときに有利になるように実績をつくっておくためにこういう無暴操業をやっておると、こういうふうに判断しておった。
 「伝統的操業」ということになると、ソ連がいまでわが近海において操業しておったそれを認めるということ、向こうの方はこれは日本政府は認めておると、こう判断しておるんではないかと思うわけでありまして、それが事実であるとするならばこれは重大な問題なので、ここのところが非常にひっかかるわけでありますから、これを明確にひとつ説明していただきたいことと、第八条におきまして、「いずれの政府の立場又は見解を害するものとみなしてはならない。」と。そこで、わが日本政府も立場、見解をこれは損なわないわけでありまして、ですから、福田総理も鈴木農林大臣も、いささかも北方領土に対するわが国の主張は損なわれない、こういうふうに言っていらっしゃるわけですが、同じようにソ連の方は、領土問題は解決済みだということを今日まで繰り返し繰り返し言っているわけでありますから、向こうの方の言い分、立場、これはこの協定によって客観的にやっぱり認められておるわけでありまして、こっちの言い分は損なわれておらないが向こうの言い分も損なわれておらないと、こう解釈します。
 そうしますと、一条なんかとの関連においてこれを判断すると、非常にわが方は不利になっておるんではないかというような心配を持つわけでありますが、この一条と二条と八条の私がいま提起した問題について明確なひとつ御答弁をいただきたいと思います。
#32
○国務大臣(鈴木善幸君) まず、交渉の当事者として私から申し上げて、条約文の問題につきましては外務当局から説明を願うことにいたします。
 まず、第一条の規定でございますが、当初、三月三日にイシコフ大臣と私とが交渉の結果合意いたしましたのは、ソ連邦の沖合いに接続する北西太平洋の海域で、かつ、幹部会令の適用を受ける海域、これを対象の適用海域とすると、まあこういうことで合意したわけでございます。私は、四月交渉におきましてから、一遍両者の間で、責任者同士で合意されたこの表現をそのまま第一条に表示すべきだと、こういうことを強くわが方として要求し続けてきたわけでございます。
 しかるところ、ソ連の政府全体として検討した結果であろうかと思うのでありますが、ソ連の提示いたしましたところの草案というものはただいまの表現に相なっておるわけでございます。この論争、この折衝が、背景に北方四島の領土の問題が絡んでおりますだけに最大の争点になったわけでございます。
 そこで、いろいろイシコフ大臣と話し合いをいたしました結果、これは純然たる漁業問題としての取り決めである。したがって、この適用の海域を表示する線も純然たる漁業上の幹部会令の適用を受ける海域である、こういうことで基本的な考え方は一致いたしたわけでございます。しかし、これが領土絡みの問題として扱われては困るというようなことから、第八条におきまして、本条約のいかなる規定も、国連海洋法会議で検討されておる諸問題についても、相互の関係の諸問題についても、いずれの政府の立場及び見解を害するものとみなしてはならない、この条文、これを置くことによりましてようやく長い間のこの一条絡みの論争、交渉に決着をつけたわけでございます。
 そもそもこの幹部会令の適用を受けるところの海域、これを認めなければ今回の日ソの漁業交渉には入れない、ちょうどアメリカの二百海里の保存管理法というあの線引きを認めなければわが国の漁船はアメリカの二百海里専管水域内において一隻も操業ができない、これと同様でございます。と同時に、今後交渉され、締結をされるであろうソ日協定におきましても、午前中に申し上げましたように、わが方の漁業水域に関する暫定措置法、これによってすでに定められておる海域、これを認めなければソ日協定は締結をされない、こういう関係に相なるわけでございます。
 私は、そういうような観点から、一条の表現は二月二十四日のソ連の閣僚会議決定と実体的に同じものではありますけれども、これを漁業に関するところの純然たる適用水域を表示するラインである、こういうことを認め、それに領土の問題が絡み、かつ、今後の平和条約交渉にいささかの支障を与えたりわが方の立場を害してはならないということで、第八条の問題をあのように規定することによってこの問題を処理したと、こういう経過に相なっておる次第でございます。
 第二条の問題についてでありますが、伝統的実績、この表現が、あるいは三海里の外でソ連漁船が操業をやってきたというようなことから、今後もこの第二条の表現が、ソ日協定等においてわが国の十二海里領海内での、三海里と十二海里の間の操業を再びソ連が持ち出してくるのではないかと、こういう御懸念がこの「伝統的操業」の「権利を維持する」、こういう表現によって条文上どうも不安がある、こういう御指摘でございます。しかしこの点につきましては、確かにソ連はこのことを執拗に要求をしてまいりましたけれども、五月二日の領海法の成立によりまして、わが方としては絶対にこれは承認することができない。そこでいままでの三海里及び十二海里の中において操業したところの漁獲量というものはこれを実績として認めて、十二海里の外百八十八海里の漁業水域内におけるクォータを算定するところの基礎数字の中にこれを加算して実績として認めてやろうと、こういうことでるる説明をし、また、そのためにイワシ等の漁獲量が思うようにいかない場合においては、これはわが方の関心を持つところの魚種と評価を適正にしてバーター等もやろうと、こういうことでソ側を説得をいたしまして、わが方の十二海里領海内の操業はソ側が断念をしたと、こういう経緯に相なっております。
 なお、その間の事情を御説明申し上げるためにつけ加えるわけでございますが、ソ側は、こういう第二文をぜひ置きたいということを強く主張しておったところでございます。第二文を、削除された部分を読んでみます。「この原則に基づき両締約国は、この協定の発効前に行われていたソ連邦及び日本国の領海の若干の水域における伝統的操業の実施問題を検討する。」、こういう第二文を設けることを主張してきたわけでございます。「ソ連邦及び日本国の領海の若干の水域における伝統的操業の実施問題を検討する。」、こういう第二文でございます。私は、わが方の領海法というのは、いかなる外国船といえどもこの中では操業させないと、こういう立法の趣旨になっておる。また、領海を三海里から十二海里に拡張するに至った経緯その他からいって、これは断じて外国漁船の操業というものはこの中では認められないということを申し上げ、そういう中において「検討する。」ということ、これは両国が合意しなければ領海内操業ということは実施されないことはわかっております。しかし「検討」というこの第三文を設けることによって将来に問題を残すということ、また領海法立法の精神、趣旨、経緯等にかんがみましてこれは国会の御意思に沿わないものである、こう考えましてこの第二文の削除を要求をし、これにソ側も同意をしたと、こういう経緯もございます。したがいまして、午前中にお答えを申し上げましたように、ソ日協定におきましても領海内操業についてソ側が蒸し返してくるということは断じてない。これはソ旧協定において実証して国民の皆さんに御安心を願うつもりでございます。
 第八条の問題は一条の問題を申し上げた際に申し上げたとおりでございまして、この点は一番大事な点でございます。
 そこで私は、私と御一緒を願ったところの、ここにおいでになる宮澤欧亜局長それから外務省の斎藤条約課長あるいは重光大使等々の条約の専門家にも御検討願うと同時に、さらに慎重を期して本国政府に請訓をいたしました。条約局長、法制局長官等々の法律専門家を中心に政府であらゆる角度から御検討願った結果、これによって漁業問題と領土問題をはっきりと区別をして、純然たる漁業問題としての協定である、わが方の戦後未解決の問題という北方四島に関するところの今後の領土交渉、平和条約交渉にはいささかもわが方の立場を害するものでない、こういうことを確認をいたしましてこの協定を締結するに至ったと、こういう経過でございます。
#33
○川村清一君 領土問題につきましては私の後に久保委員が主に質疑することになっておりますので、領土問題についてはこれ以上入ってまいりませんが、先ほど私が申し上げましたことは、第一条にどうしても気になるのが「最高会議幹部会令」、ここまではいいんです。その後の「第六条及びソヴィエト社会主義共和国連邦政府の決定に従って」というのが、これは、最高会議幹部会令というのは昨年十二月、その第六条を受けてこの政府決定、いわゆる閣僚決定というのがことしの二月と、こういう二つのものがここに書かれているわけです。だから、昨年十二月の最高会議幹部会令となれば、もちろんその第六条にあるわけですけれども、具体的にはないわけですよ。ですから、この最高会議幹部会令の最初の方に書いてある「第3回国連海洋法会議において作成されつつある国際条約の締結を待たずに自国沿岸において二〇〇カイリまでの経済水域または漁業専管水域を設定していることを指摘する。」という、ここに「二〇〇カイリ」という言葉が出ておりますけれども、そしてその具体的な線引き等は第六条にゆだねてあるわけですが、その第六条を受けて閣僚会議が決定したその決定は、明らかにもう全部具体的にどこに線を引くかということを皆書いてあるので、こうなると領土問題に絡まってくるんで、恐らく衆議院などにおいてもこの問題がいろいろ議論されたんではないかと思うものですから私はお尋ねしておるわけです。何とかここのところを削ることができなかったのかどうかと。ずいぶん御苦労されたんでしょうけれども、ここが載ったのはどうもやっぱり向こうに一方的に線を引かれてしまったというふうに受け取らざるを得ないんで、これらの問題については後でまた久保委員から質問あると思いますが、この点を一点、もう一回お話しいただくことと、それからもう一点は第二条の御見解、第八条の御見解はよくわかりました。そこで第二条についてここで確認しておきたいんです。
 絶対にこの領海十二海里、いわゆるいままでの三海里の外の後にある十二海里ですね、十二海里までのいままでソ連が操業しておったところ、ここには一切入れないということ、これが一点。それからもう一つは、四月二十七日の参議院農林水産委員会におきまして私がいろいろ質問いたしまして、鈴木農林大臣と確認した事項があるわけであります。というのは、領海外であってもわが国の法令によって日本の資源を保護するために日本の船も操業させない、いわゆる底びき網の禁止区域、それからオッタートロールの禁止区域、ここには絶対外国の漁船は入れないということを確認されておるのだから、これもきょうまたここでひとつ確認していただきたい、これ再確認したい。この二つについて御答弁をいただきたい。
#34
○国務大臣(鈴木善幸君) 最初にソ側から提示されましたテキストには、第一条の表現は、一九七七年二月二十四日ソ連閣僚会議の決定によって定められたと、こういう表現に相なっておったわけでございます。実体的には幹部会令第六条と政府の諸決定によって定められたと、これは同じであります。内容は同じでございますが、わが方としては、ソ日協定におきましては、漁業水域に関する断定措置法及び政令その他の省令によって定められた海域と、こういう表現に大体なると思いますので、そういうパラレルな表現というようなことでこのような表現になった、経過はそういうことであるということを御了承をいただきたいと思います。
 なお、そこで閣僚会議決定というのが、川村さん御指摘のように、領土絡みの線であるということに相なっては、これは今後の平和条約交渉、領土交渉にわが方の立場を損ねるということを懸念をいたしまして、これは純然たる漁業のソ連側の海域を規制したものであって、その他の相互の間の諸問題についても両国政府の立場及び見解を損ねるものと解してはならない、こういうことで、一条と八条を私ども一体として考えましてこの問題がようやく妥結に至った、こういうことでございます。
 なお、第二条の領海内操業は、先ほども申し上げましたように、ソ日協定におきまして、ソ連はこの問題を蒸し返してくるとは思いませんが、わが方としてはソ日協定において領海内操業を認めないということを実証する、明らかにする。これによって国民の皆さんの御心配をはっきりと解消をしたい、このように考えております。
 なお、この漁業水域内における規制の問題でございますが、十二海里の外にも御指摘のように資源保護上のいろいろの禁漁区あるいは漁業権の設定いろいろございます。この問題につきましては政府の諸規定、政令、漁業法その他によって定められておる秩序はこれを絶対に外国漁船に侵されないように十分協定の中で確保するということをはっきり申し上げておきたいと思います。
#35
○川村清一君 それを再確認しておきます。
 次にお尋ねしたいことは、この協定はこれで一応取り決め決定いたしまして、これによってソ連二百海里水域においてわが国の漁業操業がなされるわけでありますが、続いて今度、ソ連がわが国の二百海里内において操業するという問題が出てくる。これはソ日協定が引き続きその取り決めの交渉が行われると思うのでありますが、いつごろからこの交渉が始まるのか、それからこの交渉に臨む基本的姿勢はどうか。大体大臣の考えいままで聞いてわかりましたが、さらにきちっと述べていただきたいことと、それから日ソ暫定協定にありますように、ソ連がわが二百海里内において操業する場合の操業の区域だとか、あるいはまた魚種別の漁獲量であるとか、そういうものもその協定の中に同じように含まれるのかどうか、そういう問題が協定の中に明記されるのかどうか、これについてお尋ねします。
#36
○国務大臣(鈴木善幸君) ソ日協定の交渉は、大体イシコフ大臣と打ち合わせをしてまいりましたのは、六月の上旬に日本側の草案をソ側に提示してもらいたい、それを検討した上で代表団を東京に送って交渉を開始しようということに相なっておりまして、大体いまのところ国会が終わりまして、政府でも早速草案についてのお打ち合わせを外務省等とするわけでございますが、十日から十五日ぐらいの間に草案を決めて、これをソ側に提示をいたすことになろうかと考えております。そして二十日前後からソ連の代表団を迎えて東京において交渉に入る、こういう段取りを考えておるわけでございます。
 ソ日協定に対する基本的なわが方の方針は先ほども申し上げたところでありますが、海洋二法を前提といたしまして、特に漁業に関するところの水域に関する暫定措置法、これはすでに北方四島を含んだところの線引きというものがこの暫定措置法で明記されておるわけでございますから、ソ側に対してこの暫定措置法を認めるという前提のもとにソ日協定を結ぶ、その交渉をやるということが一番の基本的な方針でございます。
 それから、この漁業水域内におけるソ連漁船の操業に対する規制、これは日ソ協定なりあるいは日米協定なりと大体同じ内容のものになろうかとこう思うわけでございます。許可証の発給、あるいは入漁料の問題、あるいはその取り締まり、あるいは違反の際における裁判管轄権の問題、こういう包括的ないろいろの規定がこの中に明記される、つまりわが国の漁業水域内におきますところの漁業に関するわが国の主権的権利というものが明記されることになる、これが第二の点でございます。
 第三の点は、操業の海域でありますとか条件、手続というものがそこに明示されることになるわけでありまして、先ほどの川村さんの御質問にお答えしたとおり、わが国の資源保護上の観点に立っての禁漁区その他を十分確保してまいるように決めたい、こう思います。
 それから漁獲量の問題があるわけでございます。この漁獲量の問題につきましてちょっと触れておきたいと思うわけでございますが、ソ連から、午前中にも申し上げましたように、伝統的なわが国の漁獲実績の要求ということよりも余剰分与の原則というものが強く働いた結果、百七十万トンの実績に対して百万トンないし百七万トン程度の通年の漁獲割り当てになるのではないかというようなことで、また魚種の組成その他を見ておりましても、この余剰原則というものが厳しく働いておることをわれわれは感じとっておるわけでございます。わが方もソ連漁船に対してそのような同様の厳しい態度をとるべきだ、これは私はその御意見はよくわかるところでございますが、こういう厳しいソ連側からのクォータの割り当てにいたしましても、とにかく百万トン台である、ソ連の実績その他を勘案しても三十万トンから四十万トン程度であろう。さらにこれを余剰原則ということになれば、わが国の漁船の能力をもってすれば、余剰の出ないほど漁獲能力はあるわけでございます。しかし、やはり日ソの漁業関係というのは相互依存の関係にございますので、それらを勘案をしながら慎重にこれは取り決めていきたい。あんまり過酷な漁獲量の削減というようなことになりますと、わが国の水域内に入ってくるソ連側として経営上採算がとれない、魅力がない、もうそういうことであればひとつソ日協定は取りやめにしようということになりますと、せっかく結んだ日ソの暫定協定は今年限りの御承知のように暫定取り決めでございます。長期協定ではございません。そういうような関係もございまして、ソ側がもうお互いに入り合うことはやめて自分の畑だけをひとつ耕すことにしようではないか、こういうことになりますと、これは私は両国の関係からいっても、相互依存の関係からいってもそういう事態に相なってはいかぬのではないか、特に北海道の漁民等の立場を考えますと、やはり日ソ両国というものは今後もお互いに相補完をして、相互の利益を考えながらやっていくという、もっと高い観点で冷静にこれは判断すべきだ、このように考えております。慎重にその点は考慮していきたいと、こう思っております。
#37
○川村清一君 慎重にはまことに結構でございまして、大臣のいまおっしゃったことに反論する気持ちはないわけであります。全くそのとおりだと思います。
 いささか具体的にお尋ねしますが、ソ連がわが近海において欲しい魚種は、イワシ、サバが主体であるというふうに聞いておるわけであります。したがいまして、今日までのソ連のわが沿岸における漁業の状態というものは、大体北海道、それから岩手県、宮城県、茨城県、千葉県あたりへ来てサバをとるとかあるいはサンマをとるとかイワシをとっておるわけでありますが、伊豆の銭州島あたりにまでサパ漁で来たこともありますね。しかしそれから南は余り知らないのですが、わが二百海里水域においてソ連の操業を認める、しかもそれはイワシなんか欲しいのだということになれば、イワシは暖流系の魚でございますので、相当南の方にまで行くわけでありますが、そうするとソ連のソ日協定の中で認める操業区域というものは、いま静岡県あたりまで来ているのがさらに南下して行くのかと、九州の辺まで行くのかと、そうすると今日までは主に北海道、東北あたりが被害を受けておりましたが、今度はずっと西の方へ行きますというと、西の方にもいろいろな影響を及ぼすのでないかと、向こうは、西の方は北海道の漁業の実態とまたいささか違う漁労といいますか、いろいろな漁業のやり方がいささか違うものもありますから、そうすると西の方の人たちはソ連の無謀操業によって被害を受けたといったような体験がないわけですから、北海道あたりはもう十年来それを受けていますから、それに対処していろいろなことをやってみましたが、今度は四国へ行ったり九州へ行ったりしてそういうことをやってちょっと問題を起こしますと、今度向こうの方の人たちは初めてですから大変なトラブルを起こすのではないかということも危惧されるので、その辺はどういうふうに考えられておるのかということをまず一点お聞きしたいわけであります。
 それから、いま大臣のお話でわかりましたが、実績主義でなくて余剰原則でやるのだと、余剰原則ということになれば、日本にはもう余るものなんかないはずなんで、余剰原則でいったらソ連にとらせる資源なんていうものは一かけらもないと私は思っているのですよ。だけれども、それじゃこっちの方はとらせろ、お前の方には何もやらぬということは、これは常識としてもできないことですから、これはいままで三十万トンか四十万トンとっておったとするならば、それ近くのものはやはりやらなければならないとは思いますけれども、しかし余剰原則ということを強くいわれるならば、そんならば一体日本の国に余るものがどのくらいあるのか、水産庁長官でもいいですが、一体日本の二百海里の中にどういう資源がどのくらいあるのか、いわゆる国民の需要に応じてとれるだけの資源があるのかないのか、こういうものを科学的にしっかり調査したデータのようなものがあるのですか。そういうデータに基づいてソ連に二十万トンやる、三十万トンやるというなら話がわかりますが、ただ余剰原則という原則の上に立って、そうして三十万トンやる四十万トンやるといったって、そんなもの余っているのかどうかわからぬでしょう。水産庁は本当に調査したデータがあってそういうようなことをおっしゃっているのかどうか、そこが疑問なんですが、その点ひとつ明確にしていただきたい。
#38
○政府委員(岡安誠君) 第一点は、ソ日協定におきましてソ連の漁船に対してどういうところで操業を認めるつもりかという御質問でございますけれども、第二の御質問とも関係いたしますけれども、私どもも先般成立をさせていただきました漁業水域法におきまして、やはり余剰原則といいますか、それらを基礎としてやるということと、同時に、やはり外国船に操業を認める場合には、外国船が現在わが国の二百海里内でどういう形で漁労をしているかという実情、これも十分勘案をしろということがすでに法律に書かれているわけでございます。
 第一点の御質問にお答えいたしますけれども、私どもはいままでのソ連船の操業の実情というものを基礎として考えたいというふうに思っております。おっしゃるとおり、従来から伊豆半島より以西にはほとんど行っておりませんし、日本海の方にもほとんど実績はないわけでございまして、従来の実績を基礎として私どもは操業を認めるという考え方で対処をいたしたいというふうに思っております。
 それから二番目の、しからば余剰原則ということになれば、いまのわが国の二百海里の内でどういうように科学的な根拠を持った資源状態その他を把握しているかというお話でございますが、これはもう先生十分御承知でございますけれども、残念ながらなかなかここでこういうような調査によりましてこれだけの生産力がある、これだけの資源があるというようなことを直ちにはお示しできないわけでございますけれども、やはり私ども、この法律にもそういうことは義務づけられておりますけれども、科学的根拠を持ってわが国の二百海里内の水産資源の動向等をできるだけ把握いたしまして、それらを基礎といたしまして外国に対しまして操業を認めクォータを設定をするということをしなければならないわけでございます。いまいろいろ既存のデータ等につきまして整理をいたしておりますので、これらにつきましてはできるだけの努力をいたしまして、そういうような根拠の上に立った外国に対するクォータの設定ということをいたしたいというふうに思っております。
#39
○川村清一君 長官の声が低くてよく聞き取れなかったんですが、以西操業は認めないとおっしゃったんですか。実績がないから以西における操業は認めないと、こうおっしゃったんですか。
#40
○政府委員(岡安誠君) 繰り返しますけれども、従来は伊豆半島の先、以西にはその実績がほとんどございませんし、日本海の方についても実績がないわけでございますので、そういうような実績のないところじゃなくて、従来のソ連船の操業の実績を基礎として私どもは今後ソ連船に与える操業区域等は考えたいということを申し上げたわけでございます。
#41
○川村清一君 そこはそれでわかりました。
 そこで、今度の日ソ協定におきまして漁獲量が六月から十二月まで四十五万五千トン、そしてこれもまた魚種別に漁獲量を決められておりますが、この点がまことに私は不満なんです。しかし、先ほどの大臣の御答弁によれば、これを通年に伸ばせば百万トンから百七万トンとおっしゃった。従来百七十万トンの実績があるわけですね、北方水域三十万トンを入れての話ですが。すると、この百七十万トンが百万トン並びに百七万トンになったというのは、ちょっと私は、何を根拠にしてそういうことになるのか。六月から十二月まで四十五万五千トン。そうすると、一月から五月までの間に大体五十万トン以上が間違いなく割り当てられるのかどうか。しかしこれは、暫定協定は十二月で終わっちゃうわけですね。そうすると、いまの四十五万五千トンというものは十二月で終わっちゃうわけですね。そうすると、大臣がおっしゃった百万トンから百七万トンというのは今度は本協定へ入ってくる。そうでしょう。それが実績が確保されるのかどうか。私は、素人考えでは百七十万トンは百万削られて七十万トンぐらいしかないのじゃないのか、これは大変なことだというふうに考えておるんですが、その点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
 それから、何としてもこれは仕方ないことですが、いままで漁業交渉、いわゆる日ソ漁業条約に基づく漁業交渉というものは、相当長期にやりましても何で議論しておったかと言うと漁獲量あるいは操業区域です、漁業区域、これで議論しておったんです。ところが、ことしは二月から九十日やっておったけれども、いま問題になっておる北方領土の線引きで終始議論しておって肝心の――こっちが肝心でないことはないんですが、漁民にとっては一番肝心の漁獲量だとか操業区域の議論というのは何もない。こっちが決まった後二日ぐらいにばあんと決まってしまった。そうして四十五万五千トン、スケトウは十万トン。スケトウというのは、御承知のように日本の近海を入れれば二百七十万トンの漁獲があるわけです。それでソ連二百海里からだって六十万トンや七十万トンとってきてるんでしょう。それをわずか十万トン。釧路の港は年間八十万トンから九十万トンの水揚げがあって、その水揚げのうちの約六十万トンというものはこれはスケトウですよ。そのスケトウを今度はすり身にするところの工場、中小企業が百五十企業ぐらいある。そこで働く労働者が五千人以上いるわけですよ。そこへスケトウが一体十万トンや二十万トン来たって、これは話にも何もならない。全部その工場はつぶれてしまうし、釧路の経済を支えておる漁業がだめになれば本当に火の消えたような町、炭鉱が閉山したような、こういうかっこうにも、これは少しオーバーですけれども、ならざるを得ないようなかっこうになっていますね。そういう漁獲量の話し合いというのは何もないわけですね。いままで漁業交渉の中において、サケ・マスだとかカニだとか、そういうものの議論というのが本当に長期間にわたってなされておったわけでしょう。そして最終的には政治的な話し合いでもって決定されておったが、ことしはどういうことなんですか。まことに漁獲量、それから操業区域の決定に対しては不満なんですが、これについての御見解をひとつ、また交渉の過程もあるでしょうから御説明願いたいと思う。
#42
○政府委員(岡安誠君) まず漁獲量につきまして、暫定協定におきましては六−十二で四十五万五千トンということになったわけでございます。これを年間にすると先ほど大臣が百万トンから百七万トンぐらいというふうにお答えいたしたわけでございますが、確かに六−十二だけ約束をしたわけでございますので、これを年間に引き直すということはなかなか、これから交渉しなければ来年の通年の漁獲量はわからないということはおっしゃるとおりでございます。それに三月につきましては、実績を加算をするということで合計七十万トンでございますけれども、たとえばスケトウをとりましても、スケトウにつきましては、大体年間ソ連の二百海里内で五十年実績で九十七万トンぐらいとっております。ところが、六−十二では二十六万トンぐらいでございます。その二十六万トンの実績に対して今回は十万トンということになっているわけでございます。ほかの魚種につきましても、六−十二と一−五とはいろいろ、漁期が違いますから、それぞれ新しく折衝しなければ決まらないわけでございますが、百万トンから百七万トンというふうに申し上げましたのは、六−十二の昭和五十年の実績が、いろいろな魚を込みにいたしますと大体七十一万トン程度の実績がございます。それに対しまして四十五万五千トンというのは大体六四%から六三%ぐらいの比率になりますので、仮にこれを年間の百七十万トンに掛けますとこれが百万トンから百七万トン程度になるということを仮に申し上げたわけでございます。おっしゃるとおり、これは基本協定におきまして来年度の通年の漁獲量の折衝をすることによって初めて決まってくる数字であるということは御承知のとおりでございます。
 それから、漁獲交渉につきまして最後の二日ぐらいではなかろうかというお話、確かに日数では二日でございましたけれども、私どもこの交渉は夜もほとんど寝ないで交渉をいたしまして、最終的には大臣の御出馬もいただきまして、重要な点につきましては両大臣間の交渉もしていただいたということで、実質的には粘り強く海域の拡張、それから魚ごとの漁獲量の変更等につきましては、私どものできるだけの希望を向こうに、相手方に努力させるということをやったわけでございます。従来の交渉に比べて非常に短いということをおっしゃいましたけれども、確かに従来の交渉は相当長い期間やりましたけれども、主として時間をかけましたのはいわば資源論争でございました。資源が現状はどうであるか、過去においてどうであったか、現状がどうであるか、将来がどうであるかということを非常に時間をかけてやりまして、その結果、おっしゃるとおり休漁区域、禁止区域並びに漁獲量等を最終的に決めるということでございます。ところが、今回の交渉は、先ほど大臣からもお話ございますとおり、なかなかソ連側が余剰原則というものを盾にしておりますので、資源論争というものは私どもずいぶんいたしましたけれども、ほとんど受け付けないで、いわばソ連としてはこれだけしか日本側に与えられないというような点だけの交渉になったわけでございます。したがって、単に期間を比べれば非常に短いようでございますけれども、私どもは、こういう厳しい情勢のもとにおきましてはできるだけの交渉をしたつもりでございますし、現状におきましてできるだけの漁獲量並びに規制についての私どもの言い分を主張し、ある程度認められたというふうに考えているわけでございます。
#43
○川村清一君 昨日の本会議における鈴木農林大臣の御答弁をちょっとお伺いした問題についてお聞きするんですが、アメリカの二百海里水域においては母船式底びきやっておりますが、この母船式底びきでやっておるクォータを、今度はソ連二百海里でずっと減ってしまいまして、北転船などはもう本当に壊滅的な打撃を受けておるわけでありますが、これに対しましてアメリカ側の水域に入っているこれは日魯とか、日水だとか、大洋だとか、極洋、宝平なんという資本会社が母船を持っていって、それで独航船を何十隻というか、これは聞いてみないとわかりませんが、やっているんですが、これの漁獲量を、こっちのソ連二百海里の方で減った北転船などにクォータを分けてやるといったような話がありましたようですが、そういうお考えを持っていらっしゃるのですか、あったらもう少し具体的にそれをお話していただけませんか。
#44
○国務大臣(鈴木善幸君) 従来のスケトウを中心とした底びき網漁業、これの操業の実態というのは、北西太平洋の北海道に近い海域におきましては沖底びき網漁業、これは中小漁船でございます。それから北転船、カムチャツカの西側、東側を中心としたこの海域、こういう近いところを、そして従来から開発されておった安定したところの漁場に沖底及び北転船等の中小漁船を操業させる。それからアメリカの漁業水域、これは遠方の漁場であり、またスケトウなんかにつきましても船上で処理をする方が、鮮度その他の面からその方が効率的であるというようなことを勘案をしまして、この大型トロール船と北転船及び沖底等の中小漁船との競合摩擦を避けるために、大型トロール船等はアメリカ海域で操業さしたと。なお、北転船の北西太平洋における漁期が一応終わった後の裏作的な補完の立場でアメリカ海域の漁獲量を若干割り当てをしておったと、これでわりあいに各業態が、漁船が紛争を起こしたり競合したりしないことになっておったわけですが、漁業秩序は確保されておったと、ところが今回日ソ交渉におきまして、北西太平洋の沖底及び北転船の漁獲量が大幅に削減を見たと、私はそういう際におきましても、中小漁船である沖底等についてはできるだけこの近間の漁場の操業を優先をさせる、こういう考えでございます。と同時に、アメリカの海域に対しましても、裏作的な考え方からこの漁獲量の配分を再検討いたしまして、北転船等の割り当てもふやすべく、いまその調整作業を進めておると、こういう状況にございまます。と同時に、私はこのアメリカ海域で操業しておりますところの大型トロールが、これが新しい沿岸国二百海里以外の未開発漁場等を開発をして、そういう方面にこれを漁場転換をさせることができればなお余裕が出てくるわけでございます。北転船等に割り当てる量が相当余裕が出てくるということでございますので、そういう大型トロール等につきましては、未開発漁場の開発等も国のひとつ財政的な投資もいたしまして、そして開発をして、これらの北転船と大型トロール等の調整、漁獲量の適正配分ということを総合的にひとつ図っていきたい、こう思っております。
#45
○川村清一君 いまの大臣の考えはすこぶるりっぱな考えでもう歓迎しますんで、ぜひそれをやっていただきたい。そのことによって沖合い底びきのUターン現象もないし、北転船も相当救われるわけです。
 そこで、もうそこまでいったんなら、もう一歩突き進んで考えて勇断をふるってやってもらいたいことがあるわけです。それは今度の協定に基づいてソ連二百海里水域におけるサケ・マスとニシンはこれはもう全滅しましたね、認めないということになりましたんで。そこで、母船式のサケ・マスなんていうのはもうやめたらどうか、もう基地独航なんか、結局二百海里以内は入れないんなら、中部千島は四十八度以南のあれになりますからね、ですからやめたらどうか。それからいまのアメリカ水域のも、これは母船でやった方がもちろん鮮度がいいですから、母船でもってすり身をつくるわけですから、冷凍すり身なんかも非常に鮮度のいいものができることはこれは言うまでもないことでありますが、今度のこのソ連の規制によって全く出られなくなったこういう北転船であるとかトロールのようなものを救うためににも、ひとつ北転船なんかみんなこれ基地独航なんですから、独航船はこれは使えばいいんであって、母船はもう必要ないんでないかと思うのですが、一歩進んでそこまでひとつ踏み込んで、いますぐやるというわけじゃないですが、そのくらいの決意をもってこれからの新しい漁業の仕組みをつくる、漁業の構造をつくるというような考えはございませんか。私どもはぜひそれをやってもらいたいと思っている。
#46
○国務大臣(鈴木善幸君) 今回、ニシンはソ側も全面禁漁にいたしました。ソ連側が幾らかでもニシンをとるということであれば、わが方も実績があるわけでございますから、この要求を最後までやるつもりでございましたが、ソ連自体もニシンの資源が危機的状況にあるというようなことで、全面禁漁ということでございましたので、私どももニシン関係業者には本当にお気の毒でございましたけれども、涙をのんでニシンは禁漁せざるを得ない、こういうことに相なったわけであります。十分な救済措置を講じたいと考えております。
 サケ・マスにつきましては、公海上で六万二千トンということに相なったわけであります。これは大体いままでの実績に比べまして二〇%程度の漁獲量の削減に相なります。そこで、この漁獲量の割り当てに見合った操業体制をどうするかということでございますが、そこで、母船は御承知のように十母船出ておったわけであります。今回この四割を減船することにいたしたわけでございます。独航船等は平均いたしまして二三%の削減ということで、母船の削減率は倍に近い四〇%の削減をした、こういうことでございます。私は、将来の問題は別といたしまして、中小漁船をできるだけ働く場を与え、大手漁業に対する犠牲はひとつこの際がまんをしてもらうというような方向で対処していくようにしておるわけでございます。
#47
○川村清一君 今日までは日ソ漁業条約があったわけです。漁業条約に基づいて漁業交渉をなされてきたわけですが、今度はソ連が漁業条約を廃棄通告をしてまいりましたんで、これは条約の規定に基づいて一年たつとこれは廃棄されるわけですから、日ソ漁業条約というものは存在しないということになります。ところが、条約に基づいてサケ・マスであるとかカニであるとかといったような魚種については漁獲量等、あるいは漁獲水域につきまして話し合いで決めておりましたが、条約がなくなってもサケ・マスにつきましては今後ともやはり話し合いで、交渉で決めていくのかどうか、その辺がちょっとわからないんですが、条約がなくなって、ことしなんかそうですね、五万七千トンが六万二千トンにふえた。しかし、この六万二千トンというものはソ連の二百海里水域に入ってとるわけじゃないんでしょ、そうですね。ところが、ソ連の二百海里水域に入って漁獲する魚でない六万二千トンというものを、これを何でソ連と話し合いをしなければならないのかということになれば、いま国連海洋法会議あたりに出ておるところの遡河性魚種については、その魚の母川、いわゆる母なる川を持っている国がこれを管轄する、そういう思想なのか。そういう思想であるとすれば、今後ともサケ・マスについてはソ連またはアメリカと話をしなければならないということになるのか、これはどうなんですか。
#48
○国務大臣(鈴木善幸君) これは川村先生おっしゃるとおりでございます。日米の漁業協定におきましてもこの問題が大きな問題になったわけでありますが、結局母川国主義、遡河性の魚種については二百海里の外といえどもその母川国が管轄権を持つという主張であります。ソ連の場合におきましても同様であります。カナダも同様であります。また、わが国の漁業水域に関する暫定措置法、この中でも遡河性魚種につきましては同様の母川国主義を打ち出しておると、こういうことでございます。
 そこで、北西太平洋のこの二百海里外におけるところのサケ・マスの問題は、日米の間では政府間でひとつ別途協議をしようということにいたしております。ソ連との間の基本協定ができました段階におきまして、同様に日ソの間で公海上のサケ・ヤスの漁獲について両国政府間で協議をすると、そういうルールを確立をしたい、このように考えております。
 いずれにしてもアメリカ系、カナダ系、ソ連系、日本系の洲河性のサケ・マスがあの北西太平洋の海域で混獲されるような形でとれるわけでございますから、関係国の協議によって、この資源保存を考えながら、有効利用を考えながら政府間で協議をしていくと、こういうことになろうかと思っております。
#49
○川村清一君 魚種別海域別漁獲割り当て量というこの表をいただいたわけでありますが、これを見ますと、マダラが日本海で三百トン割り当たっているわけです。それでこの隻数何隻あるのかちょっと調べてみましたら、底びき、トロール、はえなわ、こういうもので四十二隻あるというようなことが出ておるんですが、この四十二隻で間違いがないか。四十二隻で間違いないとすれば、三百トンの漁獲ですから一隻当たり八トン弱程度、こんな漁獲ではとても経営成り立たないでしょう。これは三百トンというマダラは何隻の船を割り当てと、隻数が書いてないからわからないのですが、こんなことじゃ経営できない。そうすると減船か休漁した方がましだと、経営者そう思いますね。これはどういうことですか。
#50
○政府委員(岡安誠君) 日本海におきまして、いま御指摘のマダラにつきまして隻数は確かに三十トン未満が三十四隻、それから五十トンから百トンが六隻、合計四十隻というふうになっております。確かにこの三百トンというすべてのクォータについては多過ぎるようでございますが、要するにソ連の二百海里内に入りましてマダラを三百トンとれる船の数が四十ということでございまして、この船は当然わが国の二百海里内でも操業もいたしますし、またほかの種類の魚もとるということでございますけれども、ともかくソ連の二百海里内の、日本海のこの第七の海区に入ってマダラをとる場合には四十隻の船しか入れないし、その合計は三百トンであるということになっているわけであります。
#51
○川村清一君 ですからお尋ねしているんで、三百トンの漁獲量が許された、それを漁獲する船が四十隻許可されたとして、四十隻で三百トンとったらこれは算術計算でも八トンにも満たないんで、長官の話によればそれは二百海里に入っての量であって、日本の近海でもとれるんだからそれは大丈夫なんだといったようなお話でしたが、もしも日本の近海でとれるならば、わざわざソ連の二百海里に入っていく必要もないわけであって、そんな遠くへ行って費用もたくさんかかるし危険度も高いわけでありますから、それで小さな船ならなお危険が多いわけですから、そんな遠くの海へ行かなくてもわが近海でとるわけですよ。それが、ソ連の二百海里に入っていって四十隻で三百トン割り当てというのはどういうことなんですか。普通これは経営者なら経営採算とれないと言ってやめると思うのですが、その辺はお考えになりませんか。
#52
○政府委員(岡安誠君) いま聞きましたら、大体具体的には日本海と書いてありますけれども、利尻、礼文という非常にわが国の二百海里と近いところの海域でこのマダラの操業を予定するそうでございます。全般的に非常にクォータが少なかったということ、それによりまして多少隻数との関係で問題のところもございますが、私どもはやはりこれぐらいはぜひ確保しておかないと、わが国の二百海里の操業と合わせて操業する場合に非常に困るというところから、これらのクォータ並びに隻数を確保いたしたわけでございます。
#53
○川村清一君 決して責めているわけではないんであって、どうも日本海水域において、まだ三百トンというのはもう一つあるのですよ、ホッケが三百トン。それからカレイが五百トン。こんな三百トンや五百トンを決めるのに日ソ漁業交渉やってそして決めてきた。決めてきたのがわずか三百トンというのは子供みたいな――そう言っちゃ酷ですが。まあしかし、全部で四十五万五千トンですからこれもやむを得ぬと思うのですが、私はこれやっぱり漁民からいろいろ聞いて御質問申し上げているものですから、きちっと答えていただかなければ、私は漁民の方へ行ってそれを報告する義務がありますから。
 もう一点お聞きしますが、これも日本海です、日本海エビ、これ千二百トン割り当てです、それで周年操業。ただ、エビという甲殻類の魚の生態は、これ脱皮するんですね、脱皮すると北上するんですよ、そういう習性を持っているんです。ここへ設定された漁区、この漁区ではせいぜい二カ月しか操業できないというのです。これは脱皮して北上してしまって、その漁区にはいなくなるわけですよ。ですから、千二百トン割り当てがあっても千二百トンの漁獲は全く不可能であるとこう言っているのです。ですから、この場合とても操業の採算がとれないから、したがって休漁あるいは減船した方がいいんだと。ただし、ここではっきりしておきたいことは、いままで減船、休漁ずいぶんあります、ことしは。しかしこの減船というのは、あるいは休漁というのは、本協定ができるまでの休漁なのか、これは永久に減船または休漁をさせられてしまうのか、永久に休漁ということになれば減船ですね。それから、本協定ができるときにこういうのは生きてくるのかどうか。ですから、エビでは採算不能であるけれども、本協定でいけるならばこれはやれるわけですからやりますと、マダラ等も同じことなんですが。ですから減船、休漁というのは本協定までのことなのか、これがずっと先もうだめなのか、この辺はどういうことなんですか。
#54
○国務大臣(鈴木善幸君) いろいろ漁民諸君に直接御接触になっておる先生方、そういう窮状を訴えられて本当に漁民の立場に立っていろいろ御心配をなさっておられると思います。
 ただ、先ほど来申し上げておりますように、この二百海里時代というのは実績尊重よりも余剰配分の原則というものが非常に強く働いてきておる。なお、将来に向かっていよいよ厳しくなるであろうと、こういうことで漁民諸君もよくこの厳しさというものを御理解を願いたいと考えております。したがって、今回の暫定協定、今年末までのクォータというものが基本協定の際においてわれわれも最大限の努力をいたしますけれども、これが多くの漁民諸君がもし甘い期待を寄せておるといたしますならば大変なことになろうかと、こう思うわけでございます。そういうようなことで、私は今後、ただ一日延ばしに先の見込みの余り期待できないものについて休漁等をやっていくというようなことになりますと、これは関係漁民の生活不安というものもいつまでもこれは続く、安定をしない、こういうことに相なりますので、私は基本協定の際には操業海域の問題とクォータの問題についてさらに一段の努力はいたしますけれども、大幅な増枠というようなことは余り期待できないというようなことを前提に踏まえまして、適正規模の操業体制というものをこの際組まなければならない、それに対する救済の措置、または補償的な救済の措置は政府としてできるだけのことをやってまいる考えでございます。
#55
○川村清一君 時間が終わりましたので、あと一問で、質問を終わらせていただきますが、二、三固めてお尋ねしますので、お答えをいただきたいと思います。
 まず第一点は、減船あるいは休漁、これによって受けた経営者、船主の損害、それからそれに乗り込んでおる乗組員の生活保障の問題、それからその漁獲物を原料としていろいろ水産加工をやっております水産加工業者に対する救済措置、こういったような問題がたくさんあるわけでありますが、こういう問題の対策につきましては、昨日の本会議においてどの議員からも質問があり、福田総理並びに鈴木農林大臣がお答えになっておりましたが、より具体的に、より速やかに、しかもそれは補償なのか融資なのか、それを明確にして、いままでは融資措置をなされてきましたが、融資というのはお金を貸すのであって返さなければならない、ところがもう減船はされたと、これからはずっと操業できない、船は持っておると、この船をつくるためには莫大な金を借りておる、借金しておると、それも返さなければならない。それは組合の転貸資金であると、返さなければ組合がつぶれてしまう、こういうものもたくさんあるわけです。ですから、釧路の組合であるとかあるいはニシン漁業の基地の古平の組合なんかは下手すると組合がつぶれるということで組合長さんも青くなっているわけでありますが、こういったような問題、今日までは国際規制が厳しくなってきて毎年毎年国際漁業、遠洋漁業というものは減ってきていますよ。しかし、その補償というものは共補償で、残る人たちでもってこれは補償しておった、そういう補償の仕方はもう限度にきておるのであって、とてもこれは共補償という残る業者によって補償するなんということはこれは不可能であります。したがって、政府がこれを補償するという形をとらなければどうにもならない事態にきておる、そう私は判断しておりますので、こういうようなものをもっと具体的に進めてもらいたい、この点をひとつ明らかにしていただきたいことが一点。
 それからもう一つは、この日ソの漁業協定、それからソ日の漁業協定、これは政府間協定です。続いて前にもお話しになりましたが日韓の政府間協定、漁業協定を早くやってもらわなければ困るんであります。今日現在なお韓国の漁船は北海道、日本海からオホーツク海あたりにおって、やっぱり無謀操業を続けて多くの損害を沿岸の漁民に与えておる。それで単に網切られたりするような被害だけでなくて、危くてしようがないからもう休漁しておる、これによって受ける損害というものは莫大なもんなんです。これは私が言うまでもなく、政府の方でも的確につかんでいらっしゃると思いますから、一日も早くその日韓政府間協定を結んでもらいたいという、そうしてその結ぶ場合に日ソの、あるいはソ日の協定と同じかっこうのものになるのかどうか、この辺もひとつ明らかにしていただきたいわけであります。
 それからもう一点は、もうすっかりこの二百海里問題の陰に隠れてしまっていま問題にも出ないんでありますが、これは大変なんですよ。いままでソ連の漁船の無謀操業によって受けておる損害というものは莫大なもんです。それを処理するために日ソ漁業操業協定に基づいて損害賠償請求処理委員会というものができております。東京委員会とモスクワ委員会があって、そこで処理することになっておるが、一体一件でも処理されたのかどうか、もうこの二百海里の陰に隠れてしまっていままで損害を受けた漁民の方はもうこれは泣き寝入りになってしまうのか、これは一体損害補償をしてもらえるのかどうか、それと同じように韓国もそうです、韓国から受けた損害も莫大であります。これらの問題の損害補償はどうなっているのか、この点を明らかにしていただきたいわけであります。
 そこで最後に外務大臣に、あなたは近く訪ソされるそうでありますが、とにもかくにも北方領土問題が解決して平和条約が締結されない限りこの問題は根本的に解決されないわけですから、その平和条約を締結するためのいわゆる具体的な方策というものをどういう手を打ってどうしていくかといったような、そういう一つのめどというものがいまあるのかないのか。口でだけ言っているのか。何も方法も何もないのだけれども口でだけそう言っているのか、何か考えがあるのか、そこら辺も明らかにしていただきたいということを申し上げまして、相当長時間な質問でございましたが、私の質問を終らせていただきます。よろしくお願いします。
#56
○国務大臣(鈴木善幸君) 今回の厳しい日ソ交渉、その結果クォータ等も非常に不満な漁獲量に終ったわけでございます。したがいまして、それに伴うところの減船、休漁、また関連企業の操業の短縮、これからの再建整備、いろいろの問題を抱えております。さらにまた、漁船乗組員を初め関連企業の従事者等々の雇用の問題、職業転換の問題、こういうような今回の事態によって起こってまいりました救済並びに補償的な政府の措置につきましては、今月中に閣議でもって基本方針を決定をいたしまして、それに基づいて漁業の実態、そういうものを十分勘案をしながら、できるだけ早くこれを措置してまいる考えでございます。
 なお、川村さん御指摘のように、漁業経営の実態というのは、漁具、燃料等の値上がり等もこれあり、相当経営が苦しい状況下にこういう事態に相なったわけでございますから、その経営の実態等を十分勘案をしながら、政府としてもできるだけの救済の措置を講じてまいる考えでございます。
 なお、韓国との間にはいままで民間の操業協定というものがあったわけでございますが、諸般の状況を見ておりますと、これは民間団体の交渉にゆだねておけないような状況に相なっております。したがいまして、早急に政府間の協定として、この問題をはっきりと責任ある当局の取り決めとして実効ある協定をしたいと、このように考えております。
 なお、ソ日協定、日韓の政府間協定の場におきまして、いままでの沿岸漁民に対するこれら漁船の被害の補償の問題、これもその機会において根本的な解決を見るように最善を尽くしてまいる所存でございます。
#57
○国務大臣(鳩山威一郎君) 損害補償の関係のことは政府委員から御答弁申し上げますが、日ソ間の最大の懸案でございます領土問題を解決をして平和条約を結ぶということが、これは政府の不動の大方針でございますが、その際は国会の御決議等、四島返還ということが大方針になっております。この問題はなまやさしい問題でないということは重々知っておるわけでございます。そして平和条約交渉のためには、やはり各党の御意見も十分承った上で訪ソいたすべきものと私自身は心得ておりますが、問題が問題でございますだけに、この問題につきましては腰を据えて取り組まなければならない問題であるということも重々考えておるところでございます。そして何よりも痛切に感じますことは、日ソ間の交流関係と申しますか、これがやはり積み重ねられて、友好関係が非常に緊密化をしていくという過程におきまして私は解決されるべき問題であるというふうに思います。日ソ間にはシベリア開発等に伴います問題もございます。先般、パトリチェフ貿易大臣も来日をされたわけでありますが、やはり日ソ間の全体の交流関係を深めていくということがなければ、幾ら領土関係だけを交渉してみたところで私は解決すべき問題ではないように思うわけでございます。したがいまして、これからは日ソ関係の国交をどうするかという基本問題に取り組んで、そしていかに友好関係を深めるかと、こういう問題とともに取り組むべき問題であるというふうにいま考えておるところでございますが、先ほども申しましたとおり、やはり日本国民コンセンサスというものがどうしても大きな問題となるものと思いまして、各党間の御意見も十分伺いたいと思っております。
#58
○政府委員(宮澤泰君) ソ連漁船によります損害の賠償に関する件につきまして、私からお答え申し上げます。
 ソ連漁船によります損害の賠償等につきましては、昭和五十年の十月に発効いたしましたソ連との日ソ漁業操業協定、これに基づきまして、東京とモスクワに委員会が設けられまして、ここで日本側の損害賠償請求を審査いたしましてモスクワに送ると、そういう手はずが整ったわけでございますが、当初、発足後の機構の整備、それから取り扱いのふなれ、これは委員会側におきましてもそうでございますが、申請者側におきましても幾つかの件が重複して出ましたり、損害の状況が必ずしも明瞭でなかったりいたしまして、それをもとに戻して、再提出をしていただいたりいたしましたことがございまして、ただいま御指摘のとおり、大変に遅延渋滞をいたしたのは事実でございます。本年の二月現在でございますが、申請書の受理件数は七百十二件、損害請求額総額五億六千万円ほどに上っております。このうち、現在二件がモスクワの委員会に送付されて審査中でございますが、これは第十八高漁丸と第十八幸丸、いずれも北海道の船でございます。――失礼いたしました。ただいま水産庁長官の方から訂正がございまして、その後また一件追加になりまして、三件モスクワに入ったそうでございます。東京委員会での審査中の案件は十一件と承知しております。
 申請受理件数につきまして、モスクワにいっております件数がわずか三件であること、それから損害賠償が五億数千万円に上っておりますが、まだ何らはかばかしい結果が出ておりませんこと、大変遺憾に思いますが、今後鋭意督促いたしまして、少なくとも何らかの成果が少しずつ出るようにいたしたいと考えております。
#59
○秦野章君 最初に、いま議題になっているこの漁業協定の署名者はイシコフ漁業大臣ですね、相手は。国柄も違うし、私もよくわからないんだけれども、イシコフ漁業大臣というのは、領土問題等についても権限があるのかどうか、その点をまず最初に伺っておきたい。
#60
○政府委員(宮澤泰君) これはソ連邦の漁業大臣でございますので、いわゆる外交交渉を行う権限はないものと解しております。
#61
○秦野章君 外交交渉を行う権限がないということは……。
#62
○政府委員(宮澤泰君) 失礼いたしました。本来の権限は漁業大臣でございますが、これに署名いたしましたのは、全権委任状をもらって署名をいたしました。
#63
○秦野章君 そうすると、領土問題についてもはっきりした権限があると、こういう解釈ですか。
#64
○政府委員(宮澤泰君) 本来の主管ではございません。
#65
○秦野章君 本来の主管でないのは、やっぱり漁業大臣だから、魚の方だろうと思うんですよ。そのために私もちょっと一応聞いておかなきゃいかぬと思うんだけれども、鈴木農林大臣は向こうへおいでになっていろいろ折衝されたときに、領土の問題というものが全然関係なかったというわけじゃなくて、領土に絡んだということで非常に御苦心なさったわけですな。ところが、私はこっちのことはどうでもいい、相手側、私よく国柄、まあ大臣の権限とかそういうのはわからぬから、領土の問題についても外交折衝なり権限があるということでない人と幾ら談判したってしょうがないじゃないか。そこはどうなっているのかということを聞いているんだ。
#66
○政府委員(中島敏次郎君) ただいま先生のおっしゃられた領土の問題についての交渉につきまして権限があるのかないのか……、いずれにせよ明確なことは、この協定に関する限り、この協定が持つところの意味合いに関する限りにおきまして、イシコフ漁業大臣はソ連邦政府を代表して交渉し署名する権限が与えられているということは明確でございまして、その証拠には、この協定には以上の証拠として、「下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの協定に署名した。」ということになっておりまして、イシコフ漁業大臣自身みずからの権限を、これに署名する権限を与えられたということを書面にて明らかにいたしまして、そしてこの協定に署名したということでございますから、この協定が意味するところそれが何であろうとも、それをソ連政府のために決着をつける権限はイシコフ大臣は持っておられると、こういうことになろうと思います。
#67
○秦野章君 権限が委任されてあることは当然だと思うんですよね。問題はその権限の中に、魚のほかに、漁業のほかに領土に関する折衝といったようなそういう性格のものを交渉する権限があると、こう解釈していいわけですね、再確認。
#68
○政府委員(中島敏次郎君) 私の説明が十分に御理解いただけなかったかと存じますが、本来の漁業大臣の権限は漁業に関するものでございます。そこで、この協定も漁業に関する協定でございます。問題は、漁業に関する協定であるけれども、その漁業水域が双方の領有権主張の重なり合う部分に関して引かれた漁業水域について交渉せざるを得なかったということで、漁業の問題が領土に関するインプリケーションと申しますか、何らかのかかわり合いがあり得るのではないかという問題が生じたので、まさにわが農林大臣が御交渉になられたのは、領土の問題を漁業の問題から切り離して処理をするということで処理をされたわけです。したがいまして、そのとおり切り離されたということを第八条に明記することも含めてこの協定ができ上がり、その協定にイシコフ大臣はソ連邦政府の名において署名する権限を与えられたと、こういう関係になっております。
#69
○秦野章君 この八条で、「相互の関係における諸問題について」という言葉を入れることについて大変お骨折りをなさったということも聞いているわけですけれども、このことは、まさに領土問題があるからこの問題を入れたわけでしょう、そういうわけですね。そのことをイシコフ漁業大臣が署名しているわけだ。だから漁業大臣というのが専管には違いないけれども、領土の問題についてわれわれの方の解釈、政府の解釈は領土の問題について、これ領土問題含んでいると言っているんだから、そういう権限が本来あるのかどうかということはきわめて重大な問題なんだ。この点は農林大臣にも伺いたいんだけれども、これは確認されているんですか。向こうの政府代表のそういった権限を確認しなくても、あるいはソ連の外交慣例といいますか、あるいは国際的な外交慣例といいますか、あるいは政府のために署名するというその解釈ですね、この文理解釈からいくと当然には出てこないんですよね。そこで私はちょっと念のために、これは大前提になるもんだから伺っているわけですよ。
#70
○国務大臣(鈴木善幸君) 交渉の相手方でございますので、交渉の間を通じて私は受けとめておるわけでございますが、一条の適用海域の問題、これがどうしても戦後未解決の問題という北方四島の問題に絡んでくる問題でございます。
 そこで、一条問題、八条問題につきましては、イシコフ漁業大臣は絶えずソ連の外務省その他首脳部と逐一私との会談の経過を報告をし、協議をしておったようでございます。私からいろいろの提案をいたしました際において、この問題は自分だけで、自分の一存で決めるわけにはいかないという場面もしばしばございました。したがいまして、この協定の結果につきましては、イシコフ大臣は、それぞれの責任ある立場の方々と十分協議の上でソ連政府としての統一的な意見としてこういう結論に合意したと、こういうように私受けとめております。
#71
○秦野章君 イシコフ漁業相が、事実上、実際上いろいろ後ろのもっと実力のある人と連絡をとるとか話し合いをするとか、それは当然わかるんですけれども、文書になって署名された、つまり署名文書という外交文書というものについて、きわめて初歩的な質問かもしれませんけれども、そういう権限が公式として、つまりいろいろ相談されて談判されるのは当然だと思うのですよ。だけれども、こういった政府の解釈によれば、八条の解釈には領土問題というものを切り離したと。切り離したということは、領土に関して権限がなければ切り離せないわけですな。そういうことが明確にはやっぱり署名者がイシコフ漁業大臣なら、公式論としてはあるいは言えないのじゃないかなという疑問があるものだから、それでちょっとお尋ねしているのですが、農林大臣がいろいろ向こうの様子を見とって、ちょっと引っ込んで相談したり出てきたりする、それはよくわかるんですよ。確かにそうでしょう。それは必ずしも領土に限らず、漁業協定そのものについてもかなり重大な問題でしょうから、そういうことはわかりますよ。とにかく、しかし何を相談しているかわからぬですからね、中身は。だから、私はオフィシャルにイシコフ漁業相というものは魚以外の問題についても権限があるのかということについて、政府は自信を持ってそういう権限はイシコフさんにはあるんだと、こう言えるのかどうかと、こういうことを聞いているわけですよ。
#72
○政府委員(中島敏次郎君) もう一度御説明させていただきますが、領土問題を本来主管する大臣でないことは間違いないだろうと思います、漁業の大臣でございますから。
 ところで問題は、先生の御質問は、この協定に.定められていること、この協定に書かれていること、それが何であろうと、それをソ連政府を代表して取り決める権限がこの署名者にあるかどうかという点がポイントになるだろうと思います。その限りにおいて、先ほど私が申し上げましたように、イシコフ大臣は、ソ連邦の政府から正当に委任を受けて、ソ連邦政府のために署名をするということを明確ならしめ、みずから内部的にその権限を取得しているということを明らかにして署名しているわけでございますから、その点についての一点の疑いもないというふうに考えます。
#73
○秦野章君 内部的にというのはどういうことですか。
#74
○政府委員(中島敏次郎君) 内部的にと私が申しましたのは、ソ連邦政府の中でこの協定に署名する権限をみずからが与えられて、そして署名したと、そういうことを申し上げたわけでございます。
#75
○秦野章君 問いをもって答えにしているようなものだけれども、権限を与えられたのは間違いないが、その権限の中身を聞いているのだ、権限の中身をさっきから。それははっきり言えるのじゃないのか、政府は。どうなんだ。
#76
○政府委員(中島敏次郎君) それはまさにこの協定に定められておることすべてをソ連政府のために取り決める権利、一般的に申し上げれば、いわゆる全権ということになる。
#77
○秦野章君 じゃ、魚だけじゃないんだ。領土についてもちゃんといわゆる権限を委任されているものだと、こう認めるのが普通だし、またそういう外交慣例だし、そういうものなんだと。あるいはそのことは確認してあるんだとか、そういう答弁をしなきゃ、どうなんだ。そうじゃないんならしょうがない。
#78
○政府委員(中島敏次郎君) 領土であろうと何であろうと、この協定に関する限りのあらゆる権限を与えられておるということでございます。
#79
○秦野章君 この協定について、いわゆる相打ち論みたいな記事が、新聞記事なんかもよく出たわけですね。それでいわゆる相打ちという、これは非常に俗語なんだけれども、しかしながら、ある意味においてこの協定の精神というか、この協定の内容というものを表現をしている意味で使われたと思うのですが、相打ち的な協定であるとするならば、来るべきソ日協定の中で、この暫定協定にある一条のようなものがやっぱり入ってくるということになるのでしょうか。
#80
○国務大臣(鈴木善幸君) この問題につきましては、五月二日に領海法並びに漁業水域に関する暫定措置法の国会で御決定をいただきました後、第一回の会談の際に、わが方でも海洋二法が成立をした。日ソ交渉の協定のすぐ後には、六月にはもうソ日協定も交渉を行わなければならない。そこで、ソ側がこれに同意するのであれば、双務協定的な一体をなしたひとつ協定にしてもよろしい。わが方はその用意がある。それから双務協定ということが、暫定取り決めでございますから、適当でないということであれば、日ソ協定の交渉とソ日協定の交渉を同時並行的に協議をしようではないか。これもわが方としては用意がある。こういうことを申し上げたわけでございます。
 これに対してイシコフ漁業大臣は、ソ側としては、まだソ日協定、もとより双務協定については何らの準備がない。政府間において何らその問題について協議をしていない。そういうことであるから、いままでの日ソ協定交渉、この延長線上で、一条問題、二条問題が残されておって、あとは大部分話がまとまっておることであるから、その方法でひとつ詰めていきたい。できるだけ早くひとつやろうではないか。こういうような経過が一つございました。したがいまして、日ソ協定とソ日協定の間には時間的なそこに時差が出てきたわけでございます。
 そういうようなことで、今後ソ日協定をいたします場合におきましては、わが方の漁業水域に関する暫定措置法、それから領海法、これをソ側が認めるということ、これが大前提でございます。これを認めない限りにおいてはソ日協定の交渉はできない、締結はできない。わが方としてはこういうはっきりした方針で臨む考えでございます。したがって第一条におきましても、適用水域というものは明確にすると、こういう考えでございます。
#81
○秦野章君 衆議院の審議の経過等を、私は直接傍聴したわけではないが、新聞その他で見て、今後の問題ではあるのですけれども、いわゆる相打ち的な相互の均衡というものをいかにとるかということは、大変むずかしいような感じを受けておるわけでございますけれども、十二海里領海法と二百海里水域法を日本はとにかく発足させたわけですね。これが断じてむだにならない、やっぱりこれがあったがためにこれだけの成果があったのだという、そういう展望でソ日協定、あるいはまたその後に続く長期の協定が実るであろうというふうに農林大臣は自信を持っておられますか。
#82
○国務大臣(鈴木善幸君) 今回の日ソ協定におきましても、このわが方の海洋二法というものを国会で御決定をいただきましたことが、大きく交渉においてわが方としてこれを活用もし、またそれをバックにしてこの協定ができたということが第一点。したがいまして、ソ日協定及び基本協定におきましては、この海洋二法というものが大前提になる。これを十分生かして国会の御趣旨に沿うように最善を尽くすという考えでございます。
#83
○秦野章君 私は決して言葉じりの意味で申し上げるのじゃないのですけれども、さっきもちょっと質問出ていましたが、交渉に当たっての向こうの態度から大臣が御判断になったのだと思いますけれども、実績主義と余剰原則ということですね。このことは、私ども承ったときに、「ハハー、なるほどそうなのか」ということはわかるのだけれども、この実績主義ということは明らかに客観的にデータとして出るわけですね。ところが余剰原則というのは、原則とは言いながら、海の資源でございますから、しかも余剰が幾らあるとかないとかという問題がきわめて主観的な、つまり今度の場合だったらソ連の判断にゆだねられちゃうのだろう。実績主義は原則的なある程度客観的な評価はできるけれども、余剰原則というようなものが一体原則などということで言えるのであろうかどうかということで、余りこれを強調することは日本にとっても交渉上も得がないのじゃないか。余剰とは何かということになってきたら、客観性とその基準の置きどころに非常にあいまいさが残るから余り得策ではないという感じを最近受けるようになったのですけれども、大臣どうお考えですか。
#84
○国務大臣(鈴木善幸君) その点は私も秦野先生と同じような考えを持っております。
 ただ、いまの海洋法会議における沿岸国の主張というものが、まさに余剰原則の主張が非常に強いということ、今回の日ソ交渉におきましても、その点を強く私ども感じたということを申し上げたわけでございますが、私はこの伝統的な操業実績というものは、やはりわが国としてはできるだけこれを今後においても強く堅持し、主張していきたい、こう考えております。
 そこで、御参考になろうかと思うのでありますが、ソ側の第二条のテキストに、「相互利益の均衡の原則に立って与えられる」、こういう「相互利益の均衡の原則」というふうに「均衡」という字句があったわけでございます。私はこの「均衡」という文字は、どうも等量主義というようなニュアンスがここから出てくるということは、わが方としては得策でもございませんし、またいままでのわが方が北西太平洋で持っておるところの伝統的実績、これは徳川末期以来百年に及ぶ、そして日本漁民が開拓をした漁場であるということ、この重みがまるで違う。昭和三十年あたりから始まって四十六、七年ころから本格的な船団を日本に送ってきての操業実績というものとは比較にならない重みがある。こういうような実態も踏まえまして、「相互利益の均衡」という文字はどうも等量主義のニュアンスが出てくる。今後ソ連とECの交渉においても、ECはソ連海域で六万トンしかとっていない、ソ連は六十万トンとっているというようなことで、こういうことはお互いに遠洋漁業国として「均衡の原則」などということを二大遠洋国がここで協定の中でうたうことは賢明なことではないというようなことも主張いたしまして、とうとうこの「均衡」という字句を外したわけでございます。そういうようなことで、私は今後におきましてもこの実績をできるだけ確保するという立場で交渉していきたい、こう考えております。
 しかし、国連海洋法会議であらわれております沿岸国の主張、議論というものは、やはり沿岸国がとって余りがあればこれを実績国に余剰を配分してやるという考え方が非常に底流として強く働いておる。これもわれわれは今後二百海里時代に対応する場合に十分腹に据えてかからにゃいかぬと、こういうことを申しげておる次第でございます。
#85
○秦野章君 要するに、私の考えと同じだとおっしゃるのなら私も余り異議がないですけれども、要するに余剰原則は、ソビエトならソビエトがこれしか与えられませんよという話ですね、これしかありませんよという。これは原則というようなことではないんじゃないか。ただそういう言い方、沿岸国の言い方にすぎないと思うんですよ。それはそれで結構ですけれども。
 次に、伊豆七島だとか房総付近の十二海里、今度の領海法施行でいままでのソ連の漁船の収獲が減るし、十二海里以内には入れないと、こういうような御方針、これは大変結構なんですけれども、これはあの地域、南関東のあの地域のソ連の操業というものは、いわゆる条文に言うところの「伝統的操業」とは言えないでしょうね。伝統的操業の権利だといってソ連が主張はできない歴史の浅いものだと。あの程度のもので伝統的な操業の継続権利があるというふうには言えないと私ども思うんですけれども、この点いかがですか。
#86
○国務大臣(鈴木善幸君) いま御指摘のように、あの伊豆七島周辺の海域でのこの操業の歴史的な、また実際の操業実績等から言っても非常に底の浅い、きわめて近年のものでございます。そういうことでございますが、表現としては国連の海洋法会議の単一草案等でそういう操業実績のあるものにつきましては伝統的実績という表現を使っておるというようなこと等で、その伝統的実績の厚み、深さ、その重みというものを区別をいたしませんで、包括的に使っておるということでございますが、実際の今度はクォータを与えたり操業の水域を設定いたします場合には、ソ日協定の際には十分そういう点は勘案をしながらやってまいる考えでございます。
#87
○秦野章君 海洋法の単一草案の中で、あの程度のものも伝統的操業と解釈される可能性があるという根拠、これは外務省、ちょっと説明してくれませんか。
#88
○政府委員(中島敏次郎君) 海洋法の草案は、これはいまさら先生に御説明するまでもなく、海洋秩序に関する一般的規則を定めたものでございまして、実態的にソ連の漁船がわが近海で操業しているのが、いま御議論の出ておりますところの伝統的な操業というふうに表現すべきか否かというような点についてのルールを示しているというふうには解し得ないだろう、そのようなルールは具体的には出てこないだろうというふうに考えます。ただ、いま農林大臣がおっしゃられたように、常習的に操業を行っている国の経済的な困難をなるべく避けるように入漁を認めなきゃいけないとか、そういう一般的な規則は海洋法の草案にも出ておる次第でございます。
#89
○秦野章君 農林大臣、いま海洋法の単一草案の、海洋法の成功どこまでできるか、あの単一草案がそのまま通るなどということはなかなかむずかしい問題だと思うんですね。ということも頭に置きながら、なおかつ日本の国益の上から見て、あの伊豆七島の近年における漁業を、あれを伝統的ソ連の操業を継続する権利だと認めることだけはちょっと無理ではないかと、私はどう考えてもそう思うんですよ。
 ほかの全然別の要素でついでに伺いますけれども、たとえば十二海里内でもって操業は絶対させないと。絶対という言葉もいつか出ていましたけれども、しかしべらぼうに金を払って、べらぼうにそれに対価のある別のところの魚をどさっとくれるというようなことになればまた入れてもいいというようなことを含んでの話なのか。いかなる場合にも絶対に十二海里内は入れない、こういうことなのか。その辺はどうですか。
#90
○国務大臣(鈴木善幸君) これはわが国が領海の幅員を三海里から十二海里にできるだけ早くやるべきだと、こういう御承知のような経過等もございます。立法に当たっての国会の御意思というものもそこにあったと思います。したがいまして、十二海里の中の操業はいずれのいかなる外国の漁船といえども操業は認めない、この方針は堅持してまいるという考えでございます。
#91
○秦野章君 重ねて、要するに伝統的な操業、漁業というものは、海洋法でも、どうも単一草案でもそう根拠もないようですし、したがって、いまのあの南関東というか、伊豆七島周辺のああいうところの十二海里周辺のあの操業というものはやっぱり伝統的操業にはちょっと無理だという解釈で政府は臨まれるわけですな、そういう前提で。ぜひひとつその点は要望としてもお願いをしておきたいと思います。それでよろしいですね。
#92
○国務大臣(鈴木善幸君) 十分実態は把握しておりますので、そういう方向で対処していきたいと思います。
#93
○秦野章君 漁業の、これは水産庁でも大臣でもいいんだけれども、結局これは漁業だけじゃなくて、日本の産業全体がいわば産業構造を変えていかなきゃならぬという、そういう時期に当面したということは数年前から政府は口を開けばそういうことを言うわけですね。これは資源の問題もあるし、公害問題からいろいろあって、産業構造を変えていくということはあらゆる分野であると思うんだけれども、この漁業についてもそういう角度からやっぱりこれを見ていかなきゃならぬ問題があるだろうと思うのですよね。それは内容的には非常にむずかしい問題ではあったとしても、成り行きではできないんで、産業構造の改変などというものを自由競争原理の中の成り行きに任していってもできないことはないけれども、それは余りにも犠牲が多いし、ロスが多いし、悲劇も多い、こういうことになると思うんですね。あるいはまた弱肉強食といったようなことにもなるわけですから、そこでどうしてもこれは政府の誘導が要るだろう、適切な誘導が要るだろうというふうに思うんです。
 それは一般論なんですけれども、漁業について私は、これは大臣も国会でしばしば答弁されておりますけれども、沿岸漁業あるいは若干深いところの海でも、いわば沿岸漁業について相当巨大なナショナルプロジェクトを組んでいくといったような方向にいかないと、これはもう思い切った要するにかなりの巨大投資にもなるでしょうし、あるいはまた巨大科学、科学技術の動員にもなると思うんですね。調査から始まってそういった事業を開拓していくという――資源について石油開発とか原子力発電とかありますけれども、漁業についても、日本はとにかく動物たん白半分は魚だというんですから、このレベルを落とすわけにいかぬでしょうから、食糧問題として相当スケールの大きなナショナルプロジェクトを組んでいくという覚悟と、またこれを実際やらなきゃならぬだろう。そしてまた、これが国民の説得力を持つような方向に持っていかなきゃならぬだろう。これは当然のことのようだけれども、この発想はちょうどアメリカが、大げさなことを言えば月に人間をロケットで送ったような、言うならば本当の新しいナショナルプロジェクトとして発想をスタートさせる。いままでの経験者だけじゃなくて、そういうような政府はやっぱり時期に今度来たんだと、ちょっと遅かったかもしれぬ。遠洋でもって一生懸命やっておったから、少しおくれをとったかもしらぬが、そのくらいの発想でひとつ、これは総理等、日本政府の非常に大きな私は問題だと思うんですよ。
#94
○国務大臣(鈴木善幸君) いま秦野さんが御指摘になったとおりでございまして、全く私も同意見でございます。いままで沿岸漁業を守っていく、沿岸漁業者を守っていくということで、大きな漁船等はできるだけその摩擦を防ぐというようなことで沖合いから遠洋へと、こういう政策をとってまいりましたが、こういう環境の中におきましては、これはそれらの遠洋漁船等をUターンをさせるということは私は絶対に避けなければならない問題だとは考えております。これらは、未開発の二百海里の外の漁場等を調査し開発をする、その政策を一方においてとりながら、いま御指摘の日本列島周辺の十二海里、二百海里内の水産資源の維持培養、この面の施策をあらゆる角度からひとつ検討して、効果のある施策を国の政策として打ち出していきたい、こう考えております。
 五十一年度予算におきまして、二千億七カ年計画で沿岸漁場開発整備事業というものを公共事業として実施する、こういう政策を打ち出したわけでございますが、こういう二百海里時代が現実に到来をしてまいりますと、なおさらこの政策をさらに拡大し強化をしてやっていかなければならない。しかもそれは、ただコンクリートブロックを海へ放り込んでつきいそをする、漁礁をつくるというようなものではなしに、生物学的にも海洋学的にも、あるいは資源学的にも、さらにまた海洋工学の面からも、あらゆる知能をひとつ動員をして、そういう研究チームをつくって、効果のある本当に成果を上げるような事業として国のプロジェクトとして推進をしなければならないというようなことで、すでに私モスクワから帰りまして、農林省の首脳部を集めまして、そういう研究チームをつくって来年度予算からそれを具体化していくようにということで指示をし、いま取り組んでおる、こういうことでございます。全く同感でございます。
#95
○秦野章君 大変結構なんですけれども、役所の、私も役所におりましたから、仕事の進め方というものを見てみますと、やっぱり思い切ったナショナルプロジェクトとして新しい構想で調査と研究をさせるんだということになった場合に、普通のいままでの仕事をやっている者に勉強しろ、いままで専門家がおるからそれをちょっと集めて懇談会をやろうという程度ではなかなか出てこないんですよ。ですから、やっぱりかなりのスケールのナショナルプロジェクトとしての要点を決めて、そしてこういうことをやっていくんだ、そのための条件はこういうものだ。減税もあるし増税もあるだろうし、いろいろ財政問題もあるでしょう。融資もいろいろあるでしょうけれども、そういうようなまず輪郭を、言うならば一つのそういった開発憲法を起草されて、そしてその中に予算も組まれる、予算要求もしていくという、そういうような手順というか、そういうスケールでひとつおやり願ったらどうかと、これは私希望するんですけれども……。
#96
○国務大臣(鈴木善幸君) 大変貴重な御意見を拝聴いたしましたが、十分御意見等を踏まえましてそういう方向で努力をいたしたい、こう考えております。
#97
○秦野章君 北方領土の問題についてちょっと関連して伺いたいと思うのですけれども、北方四つの島はわが国固有の領土だということでずっと日本は主張してきたわけですけれども――立木さん、わたしの方を見ておるが、共産党は大変講和条約を破棄する――講和条約を破棄した国は歴史的にもないのだろうと思うし、まあ共産党は近ごろ現実的になったと思ったらばかげて威勢のいいことを言い始めてびっくりしているけれども、領土問題というものを、なるべく各党合意を得た上で当たっていくということは領土問題なんかではぜひ必要だと思うのですよ。これはわれわれの仲間の問題で、また羽生先生のような権威もいらっしゃるから大いに相談していかなければいかぬと思うのですけれども、その前に、わが国固有の領土であるという北方領土問題に関してソ連の言い分がだんだん変わってきているという事実があるわけですね。これをちょっと経過を説明してくれませんか。
#98
○政府委員(宮澤泰君) 一九五六年に日ソ共同宣言が結ばれました当時、日本側は歯舞群島及び色丹島のほかに、国後、択捉の返還を要求したわけでございます。ソ連側は、この歯舞、色丹は平和条約が締結された後に引き渡す、国後、択捉については継続折衝をする、こういうような形で一応合意をして共同宣言を行ったわけでございます。
 それで日本側はその共同宣言、その際には、やはり松本・グロムイコ書簡というのがございまして、松本全権とグロムイコ外務大臣との間に交わされました書簡で、領土問題を含む平和条約の締結の交渉を共同宣言、国交回復の後に行うと、こういうことで合意をしたわけでございます。
 その後一九六〇年に至りまして、いわゆるグロムイコ書簡というのが寄せられまして、日本に外国軍隊が駐留している限り、これは安保条約との関係でございますが、日本の国土に外国軍隊が駐留している限り歯舞、色丹の返還もできない、こういうような付帯条件のようなものを一方的につけてまいりましたが、これは共同宣言という国際的な合意に基づいた了解を一方的にくつがえすものであるということで、日本側がこれを反発いたしまして、これはだれが見ましてもそういう一方的な申し入れで国際合意を変更するわけにまいりませんので、いわゆるグロムイコ覚書の主張は国際的にも通らないものと考えております。
 その後、一九七三年に田中総理大臣が訪ソされましたときに、領土問題について話されまして、両国は終戦以来戦後未解決の問題を解決して平和条約を結ぶと、こういう合意ができまして、これが共同声明になったわけでございますが、この共同声明を行いますときに、両首脳、当時の田中総理大臣とブレジネフ書記長でございますが、この共同声明をつくりますときの会話におきまして、未解決の問題というのは北方四島を含むんだと、こういう了解ができたわけでございます。ただ、ソ連側はその領土の主張、日本側の領土権の主張に関しまして、そのときどきに応じまして多少の変化がソ連側の態度にうかがわれました。たとえばグロムイコ書簡、覚書におきましては、外国軍隊がいる限りは返さぬという付帯条件をつけましたりいたしましたが、それから田中・ブレジネフ共同声明の後に至りましても、次第に領土問題はすでに解決済みであるとか、人為的にこしらえられた問題であるとかいうようになりまして、それからコミュニストという雑誌に出ました論文とか、ソ連要人の演説とかにおきまして、未解決の問題はないというようなことを言うような機会がときにあらわれております。これに対しましては、日本側はそれぞれの、そのときどきのしかるべき筋からこれを反発し、また抗議をいたしておりますが、ソ連の領土問題に対する態度はそのようでございます。
 それで、このソ連が領土問題は解決済みと言っております根拠は、戦前、戦争中及び戦争終結に際して行われた一連の国際取り決めによってすでに解決済みであるということを申しておりまして、それ以上に余りはっきりした根拠は示しておりませんが、その中で挙げておりますのは、主としてヤルタ協定でございますが、ソ連側の理屈によりますと、そのヤルタ協定からさらにカイロ宣言、ポツダム宣言と、こういうものにその効力が乗り移っていって、そのポツダム宣言を受諾した日本は平和条約によって千島を放棄した云々と、こういう論理を立てまして、結局日本は千島を放棄したものであり、国後、択捉も、これもはっきりと申しておりませんけれども、千島を放棄したんだという論理でいっておりますので、こういう点でソ連側が解決済みと、あるいは未解決の領土は存在しないと、こういう論理を立てているものと思われます。
#99
○秦野章君 細かくやるともっと、たとえば千島の範囲だとか、昔の明治八年ごろからのいろんな条約その他の話になってくるから、それは時間がありませんからいいですけれども、昨年の秋の宮澤さんだったかな、グロムイコが、国連総会の会議のときに領土問題は解決済みだと向こうが言ったことがあるんですね。それから、直接領土問題じゃないけれども、例の墓参の問題なんかでも明らかにソ連が後退しているわけですね。そういったわが方は同じだと言っている、ところが相手国は発言が後退をしている。私はずっとこうやってみると、やっぱり後退していると思うんですよ。ソ連の態度は後退しているんではないかということを去年の秋に私は当時の外務大臣に聞いたら後退してないと、こう小坂外務大臣言っていましたけれども、少なくとも言葉で見る限り大変一九五六年の正常化以後後退しているということは、少なくとも向こう側が後退している。向こう側は向こう側の理由あるでしょう。あるでしょうが、われわれから見れば後退していると言わざるを得ない、それはお認めになるでしょうな。
#100
○政府委員(宮澤泰君) そのときどきに応じまして表現に差はございますが、ただいま秦野委員おっしゃいましたように、後退の徴候は最近見せております。
#101
○秦野章君 日中問題、あるいはミグの問題、いろいろ複雑な国際関係の中でいろんな言葉に変化があるということはわかるけれども、言葉をとらえる限り、後退しているという徴候があるというあなたのおっしゃるようなことがあるわけですよ。こっちは同じだけれども向こうが後退しているというと、向こうとこっちの距離は近くなったか遠くなったかと言ったらむしろ遠くなったんですね、解決の方向に向かっては、と、こう客観的に言わざるを得ない。向こうは向こうの立場の理由があるでしょう。あることはあるだろうが、こっちはこっちでちゃんとあるんだと、両方立場があって言い分がある、その距離が縮まったのか遠くなったのかということを手のひらに乗っけて客観的に見たら、私は近くなったんじゃなくて遠くなったと。だから領土問題というものは、今度の漁業問題についてお互いの立場は変えないとか、いろいろ触れていますよ。触れていますけれども、この領土問題については客観的に見れば距離が遠くなったと見る方が自然なんだ、あたりまえなんだ。だから実にこの領土問題というものは日本の政治にとって外交にとって苦悩に満ちた問題であることは間違いない、私はそういうふうに考えているんです。そう簡単にいけるものじゃない。
 そこで、もうこれ答弁してもらってもしようがないので、最後に時間がありませんからあれですけれども、この領土問題というものはそういうふうにあんまり、漁業の問題に関連してもそうですけれども、うまくいったうまくいったみたいな感じがちょっとしているんだけれども、領土問題というものが絡んで、その領土問題が下手をすると向こうの後退的徴候、いまおっしゃったような後退的徴候に結びつけられるような方向に行く可能性だってないとは言えないと、その意味においては実に今度の漁業協定、あるいは漁業協定に関連する領土問題というものはまことにこれは苦悩に満ちたものであるということが私は本当の姿だろうと思うんです。そのことを率直に国民に言った方がいいんですよ。それは魚でも残念だったと、もっと欲しかったと、しかし領土問題の問題については実にわれわれとしては苦しい立場なんだということを政府としてはもっと率直に――あした私は福田さんにも聞くつもりだけれども、そこらの問題がちょっと距離が、感覚的に私は感じがするんであります。
 そこへもってきて、ソ連でむずかしいから今度はじゃ日中友好へ行こうかと、日中平和条約だと、日中友好というのは、これは恐らく歴史の流れで当然でしょうけれども、そういう短絡的なと言うか、言うならば迂回戦略のない対ソ交渉で幾らやったってこれはとてもじゃないけれどもむずかしいと思うんだ。迂回戦略というのはちょっと言葉が悪いかもしらぬが、もっと広範な外交戦略というものを立てる、そのことは日本とソ連との相互依存度を高めることでしょう。文化交流もいいけれども経済交流もいい、しかしこっちも厄介になるが向こうも厄介になるんだみたいな範囲の拡大をある程度広げていくというようなことですよね。しかし、それはまた非常に国益の問題を考えてむずかしいけれども、そこでシベリア開発なんかの問題が出てきましたけれども、私はシベリア開発の問題も結構かもしらぬけれども、一番日本の外交で弱いのは、私は選挙で出てきたときに一番最初これ外務委員会で言ったことがあるんだけれども、ソ連の衛星国であるところの東ヨーロッパ、この東ヨーロッパから日本へは大臣とか総理とか大統領が何ぼでも来るんだが、日本は全然、ほとんど行かないんだ。これはやっぱり衛星国なんかというものに対してそういう外交戦略を日本が持っていかなければ、直接ソ連と領土よこせよこせと言ったってとてもじゃないけれどもうまいこといくわけはないんだ。私は戦略的に外交をもっと多面的に広げていくという、そしてそういう広い意味における相互依存度を高める、お互い利益になる、お互いに結構だという、そういう広い範囲で、対ソ連だけじゃなく、そういうふうなことも一つの手だ。
 そのほかいろいろあると思いますけれども、そういうことで、もう時間も余りないから言うんだけれども、これは外務大臣、東欧外交について、日本は大変やっぱりりっぱな大使を送っているんだろうと思うけれども、少なくとも政治的な交流、人事交流なんかから見るとはるかに日本はないがしろにしているんですよ。この実際の数字があったら欧亜局長説明してください。
#102
○政府委員(宮澤泰君) ちょっと私うっかりしていましたが、東欧諸国を訪問された要人……
#103
○秦野章君 政治的な行き来みたいな。
#104
○政府委員(宮澤泰君) これはただいま御指摘のように、必ずしもたくさんございません。いわゆる東欧社会主義諸国、ポーランド、チェコ、ハンガリー、東独、ルーマニア、ブルガリー、そのほかにユーゴもちょっとこれは様子が違いますが含めまして、いままで御訪問になりました方は、三木外務大臣、河野議長、齋藤厚生大臣、中曽根通産大臣、植木総務長官、岸元総理大臣、大平外務大臣、これは一回の御旅行で三カ所をお訪ねになりましたり二カ所をお訪ねになりましたりしたことがございますが、ただいま申し上げましたのは主として七一年から今日に至るまでの日本の要人のこれら共産圏諸国の訪問でございます。数は件数にいたしまして十件に満たない数でございます。
#105
○秦野章君 向こうからは。
#106
○政府委員(宮澤泰君) 向こうから参りましたのは、ポーランドが外務大臣と副首相が参りました。チェコが議会の議長と外務大臣が参りました。ハンガリーが外務大臣と国内商業大臣、外国貿易大臣、それから副首相が参りました。東独からは文化大臣、第一副首相、議会議長、電気工業大臣。ルーマニアからはチャウシェスク大統領。ブルガリアからはチェンドフ外務次官、国会議長、外務大臣。ユーゴスラビアからは大統領、国民議会議長、大蔵大臣。これがやはり七一年から今日まででございます。
#107
○秦野章君 それで外務大臣、これは象徴的な一つの例なんだけれども、これは経済問題や文化交流、その他いろいろあるわけですけれども、経済交流もある程度進んできつつあるけれども、やっぱりこの東ヨーロッパ諸国というものはもっと日本が目を開いた方がいいと思うんですよ。それに向こうから大統領だ、総理だ、副総理だといって来るような、国が小さいからといってやっぱりそういう角度で比較をすべきではない。だからこっちももう少し積極的に努力をすることが必要ではないかということを私はかねがね思っているわけです。そしてソ連との交流の問題については、これは民間でいま日本は旅行者を含めて一万五千ぐらい一年間に行くでしょう。向こうからは五千ぐらいしか来ぬけれども、こういうものは交流した方がいいことはいいんですよね。そのことが、たとえばソ連という国はきらいだという人が日本じゃ多いんだ、現実には。アンケートに出ている。ところが、札幌オリンピックのときになるとそれがちょっとよくなる、あるいは日航がモスクワに乗り入れたときといったら、これはやっぱりそういう感情がちょっとよくなる、そういうことがやっぱりちゃんと出ているのですよね。だから、私は感情的に対ソ問題をやったってしようがないと思う。やっぱりあらゆる角度から、多角的な広範な、シベリア開発もその一つかもしれませんけれども、そういう方向に積極的に努力をするということも一つの方法なんだということを思うんですよ。特に東ヨーロッパの場合にそう感じますので、もう時間もきましたから、この点について答弁をもらって質問を終わります。
#108
○国務大臣(鳩山威一郎君) ただいま秦野委員から貴重な御意見がございました。交流をコメコン諸国と言われている諸国にももっともっと深める必要があるということ、まさに仰せのとおりでございます。私もポーランドから副首相がお見えになりましたときお目にかかりましたし、またフィンランドからは外務大臣が見えました、フィンランドはコメコン諸国じゃございませんけれども。東欧諸国にもぜひこの交流を深めたくて、私自身といたしましてもぜひ伺いたいと思っております。しかし実際問題として、もう六カ月になりますけれどもなかなか暇がございませんで、また外務大臣も頻繁にどうも交代いたすものですから、なかなか行かれないというのが現実でございます。しかし、必ず機会を見て交流を深めたいと思っております。
 先ほど、ソ連との領土問題、まことにこれは非常にむずかしい問題であるということを申されましたが、まさに御指摘のとおりでございまして、これらにつきましてはあらゆる努力を重ねてこそ成果が上がるものというふうに思って、今後これは本当に腹を据えて、国交を深めていくという方向に努力をしなければならないというのはお説のとおりでございまして、今後努力をさせていただきます。
#109
○久保亘君 最初に、漁業水域に関する暫定措置法が施行をされます場合に、この暫定措置法の適用を受ける相手国が協定なしにわが国の二百海里水域内で操業ができなくなるのはいつからですか。
#110
○政府委員(岡安誠君) 漁業水域法の施行は法律の公布後二カ月以内ということになっておりますので、現在七月の一日までにはこれを施行いたしたいと思っております。したがって、これが施行されました以降におきましては、この法律に別段の定めがない限り、国際約束その他の措置により的確に実施されると認められるというような条件がなければ、われわれは当該外国人に対しまして許可を与えることができないということになるわけでございます。
#111
○久保亘君 ソ連の漁船がこの二百海里の水域で、ソ日協定が締結されない場合には七月一日から操業は不可能になるということで理解してよろしいのですか。
#112
○政府委員(岡安誠君) 何も特別の措置をしない限りと申し上げたわけでございまして、何も特別な措置をしなければおっしゃるとおりのことになるわけでございます。
#113
○久保亘君 農林大臣、先ほどからの答弁で、ソ日協定の大前提として暫定措置法による線引きを明確にしなければ協定の交渉に入れない、こう言われておりますが、このことは漁業水域に関する暫定措置法では、北方四島に関係する部分についても明確な線引きを行い、第三条による水域適用除外は行わない、こういうことだと理解してよろしゅうございますか。
#114
○国務大臣(鈴木善幸君) 漁業水域に関する暫定措置法では、すでに北方四島を含んだ、その沖合いを含んだところの水域がこの暫定措置法によって明定されておるわけでございます。したがいまして、いずれかの国と漁業協定を締結いたします場合には、その暫定措置法で定められておる海域というものを認めない限りにおいては、交渉にも入りませんし協定も結べないということを申し上げた次第であります。
#115
○久保亘君 もしそれではソビエトの側が、ソビエトの主張する北方四島に関する領有権との絡みでそのような前提は受け入れがたい、こういうことになります場合には、ソ日協定に関する交渉は七月施行になります暫定措置法の規制を受けるようになりましても締結できない、こういうことになります場合、わが国の二百海里漁業水域におけるソ連漁船の操業についてはどのような措置をおとりになるお考えですか。
#116
○国務大臣(鈴木善幸君) 私はイシコフ漁業大臣に、五月三日に国会で御承認が得られ、即日公布されましたこの暫定措置法と十二海里領海法、これができたことを五月の五日の日の第一回の会談で通告をいたしました。なお、暫定措置法並びに領海法につきましては、これをよく勉強してきていただかないとソ日協定等の交渉ができませんから、交渉団の中の外務省の条約課長、その他法律専門家で向こう側のスタッフに対して説明会も実はしておるわけでございます。
 また、そういうことを十分承知の上で、六月にはソ日協定の交渉をやろうではないかと、こういうことで合意をいたしておるわけでございまして、私は暫定措置法や日本の領海法というものを認めないという立場で今回の交渉に向こうが臨んでくるというぐあいには考えておりません。
#117
○久保亘君 仮にソ日交渉が長引いたり、締結が非常にむずかしい状態になった場合には、わが国の漁業専管水域におけるソ連漁船の操業については何らかの措置をおとりになるつもりでしょうか。
 私がそのことをお尋ねいたしますのは、もしこのソ日協定の締結が困難になったためにこの法律の施行によってわが国の水域におけるソ連漁船の操業ができないと、こういうことになりました場合には、日ソ漁業協定の第二条に基づいてわが国の漁船もまたソビエトの二百海里水域における操業が困難になるのではないか、こう考えられますのでその点をお尋ねしているわけです。
#118
○国務大臣(鈴木善幸君) 交渉はお互いに協定を結ぶという意思があって交渉が行われる、しかし若干の問題について双方の意見が最終的に煮詰まらない、合意に達しない、もう少し時間が必要である、こういうような場合があり得るわけでございますが、そういう場合につきましては、わが方が日ソ漁業協定の締結交渉をいたしました際に、三月十五日から三月三十一日までに交渉が妥結をしなかったために係船のやむなきに至ったという事情がございますが、その前、御承知のようにソ連の幹部会令の適用というのは、あの二百海里海域の中に三月一日から実施されておったわけでございます。その間、ソ連側は三月三日の私とイシコフ大臣との合意に基づきまして、一カ月問、この交渉がなされておる三月三十一日までの間は従前どおり操業をさしてやろうということで三月中の操業を認められた経緯がございます。そういうような事情もございますので、六月の二十日前後から仮に交渉が始まって六月中に最終結論が出なかったと、七月に交渉が延びたと、こういう場合に、前の三月中の操業を認められたというような事情も勘案をいたしまして、その点は私どもも弾力的に対処をしなければならないと、このように考えておるわけでございます。
 それから第二点の御質問の趣旨は、どうしてもソ日協定が締結されない、決裂をしてどうにもならぬという場合においては、現在御審議を願っておる日ソ協定、これは一体どうなるのかと、こういう問題が一つございます。この点につきましては、わが方としてはあくまでソ日協定を締結をし、そしてソ連の漁船の実績も認めてわが国の沖合いの漁業水域内での操業を認めようという、そういう前向きで、相互主義で臨んでおる。ただ、いろいろの問題で意見が合わなかったということでございますから、これはわが方がソ日協定を締結するのを拒否したという意味ではございません。意味ではございませんから、直ちにこの協定の第二条によってリンクされておって、こっちがだめならソ日協定もだめになると、そういうぐあいに私は考えてはおりません。少なくとも今年中の暫定取り決めでございますから今年中は有効である、このように考えておる次第でございます。
#119
○久保亘君 そうすると、日ソ協定の第二条の相互主義というのは、うらはらの関係にありますソ日協定が仮に締結できなくても、そのことによって日ソ協定の二条の問題によってわが国の漁船や漁民が損害をこうむるようなことはない、このことについては、それじゃ農林大臣は確たる自信を持ってそういうふうにお答えになりますか。
#120
○国務大臣(鈴木善幸君) この点はただいまも御答弁申し上げましたように、日本側は、この第二条の精神を踏まえてソ連漁船をわが国の漁業水域内で操業させましょう、それを受け入れるという前向きの姿勢でソ日協定に臨むわけでございます。そういうことで若干の問題で意見が対立をして締結ができなかった、延び延びになったという場合と、わが方が入れてはもらう協定はできたけれども、入れる方の協定は拒否すると、わが方から。そういう場合とはまるで性格が違うと、こういうぐあいに私は解釈をしておるわけでございます。しかし、これらの問題はソ連側の判断というものもこれは強く働くことでございますので、私はいま申し上げたわが方の考え方、こういう考え方で取り組んでまいると。
#121
○久保亘君 先般、ブレジネフ書記長が報道機関の記者に対して回答を寄せられているものの中に、日本側の領土問題未解決というのは一方的で不正確だということ、それを読み返せば領土問題で未解決なものはない、こういうソビエトの最高首脳の考え方が示されていると思う。鳩山外務大臣は、このことに対して本会議においてブレジネフ書記長の発言こそ一方的だ、われわれから見れば。こういうことを言われております。しかし、今度の日ソ協定の第八条は、このソビエト側の主張に対してもこの協定は何ら害さないという書き方になっているわけでしょう。日本側の主張もそれは主張としておやりになって、この協定がそのことに対して何ら拘束を及ぼさない。しかし、ソビエト側はソビエト側の見解や主張は、それはそれでソビエト側の見解や主張として尊重されるんですということになっておるわけです。そういうことになれば、一方的な主張ということで切り捨てて済む問題ではないのじゃないか。
 そういう考え方に立ちますと、日ソ協定が、どんなに強弁をされましても、これはこの協定の表題並びに前文、一条、こういうものを通して流れておりますものは「ソヴィエト社会主義共和国連邦沿岸に接続する海域」となっておるんです、この協定の意味する海域というのは。そういうことで言いますと、明らかにこの協定の中には、ソビエト側は北方四島はソビエトの領土であるという立場に立ってこの協定を貫いておる。それはソビエトの主張である、われわれは、これは魚の問題であって、領土の問題は絡んでいないと考えたのであるという、これは日本側の、それこそ向こうに言わせれば、一方的な主張となりはしないかという心配を私はするわけです。
 その場合に、ソ日協定の中で今度は北方四島に日本の領土としての線引きをこの前提として認めるということになれば、これは東京交渉は非常に冒頭からむずかしい問題に遭遇することは想像にかたくない。それだからこそ衆議院の審議などにおいても、十四条による適用除外が考えられたらとか、いろいろ微妙な発言が出てきているわけでしょう。だから、この問題をそう簡単に、ソ日交渉は、これはわが国が暫定措置法で決めたのであるから、当然にソ連側がこれを了解していかなければ交渉が進むわけないんだからこれは了解されるのである、こういう日本側だけの考え方で進めるのかどうか。私はそのことに対して日本政府が一切譲歩しないという立場をとれば、ソ日交渉も日ソ交渉と同じようにかなり難航が予想されると思うんですが、そういうことは全くいま政府としてはお考えになりませんか。
#122
○国務大臣(鳩山威一郎君) ソ日交渉の見通し等につきましては、鈴木農林大臣からお答え申し上げた方がよろしいと思いますが、その前段のブレジネフ書記長との会談内容が報道されました件につきまして一言だけ申し述べさしていただきますが、この会談は、恐らく今回の日ソ漁業交渉とは全く関係のない会談内容であったと思っております。そして、一方的でかつ不正確であると、このような記載がございます。この点につきましては、日本の領土権の主張というものが従来から根拠のないものであるという発言をソ連側はしておられます。そういう意味で、やはりその延長線にある発言であるというふうに私どもは解しておりますが、特に一九七三年の田中・ブレジネフ会談、これにつきましてこの国会でもいろいろ御質問があったわけでございます。私どもとして、未解決の問題を解決して平和条約を結ぶと、こういった点につきまして、その中には領土問題が当然に入っているというふうに私どもは解しております。その点につきまして、領土問題というものが根拠のないものであると先方は言っておりますし、解決済みという表現も使っておられます。そういう意味で、田中・ブレジネフ会談で領土問題が未解決の問題である、これは私どもは含まれていると解釈しておりますが、その点につきまして、この領土問題が含まれているということは公に文書になったものはないのでございます。それはたびたび御説明申し上げました。そのような会談が行われたということを私どもは申し上げておりますが、その会談につきましては合意議事録なるものはございません。
 そういう意味で、私どもが田中・ブレジネフ会談で完全にこの領土問題が未解決であるのである、そしてこの領土問題を解決して平和条約を結ぶということをブレジネフ書記長が約束をしたと、こう言われることは一方的で不正確だというように私どもは解しておりまして、平和条約を結ぶ際に領土問題を解決してということは、私どもは一九五六年以来の経過、これをもって私どもは日本側の主張は正しいものと確信をいたしておりますけれども、先方はそれを必ず日本側のように解しておらないということも従来からの態度でございますので、そういう意味で一方的かつ不正確という表現がとられたものというふうに解しておるところでございまして、今回の漁業に関する問題とは何ら関係のない発言であるというふうに考えておるところでございます。
#123
○国務大臣(鈴木善幸君) ソ日協定交渉の見通しにつきまして私から申し上げるわけでありますが、この日ソ漁業協定の交渉におきまして、あれだけの長期にわたる交渉、困難な交渉が延々として続いたということは、まさにその背景に戦後未解決の問題としての北方四島の問題が存在したからでございます。この件につきましては、もうさんざん議論をやりまして、最終的にこれは領土の問題とかそういう問題にかかわりなく、ひとつ純然たる漁業の協定として締結をしようということでイシコフ大臣と合意をして、そして第八条をああいうような規定を設けまして、そしてようやく妥結に至ったということで、双方の立場、主張、そういうものは十分イシコフ大臣も私も、それぞれの言い分、立場というものは十分理解し合っておるところでございます。
 したがって、ソ日協定におきまして同様の議論を蒸し返すというようなことは、私はないものと実は考えておるわけでございます。これは初めから避けて通ってああいう結論になったのではなしに、さんざんやってやってその結果通って避けたと、とにかく純然たる漁業問題としてやろうと、領土問題等両国の主張、立場というものを害するものではない、こういう規定によってこの協定が最終的に決着を見たと、こういう経緯でございますので、ソ日協定につきましては、私はソ側もわが方の暫定措置法及び領海法というものを前提にして、それを認める前提の上に交渉が進められる、このように考えておるところでございます。
#124
○久保亘君 それでは、先ほども御質問がありましたが、ソ日協定はその第一条あるいは前文に、日本国政府の決定に従って定められるこの日本国沿岸に接続する海域ということが明文化される、こういうことで理解をしておけばよろしいでしょうか。
#125
○国務大臣(鈴木善幸君) 私は、日ソ協定におきまして幹部会令第六条とソ連政府の諸決定に従って定められた海域と、こうございますが、それと見合うものは、わが方の暫定措置法と政令及び省令等の規定によって定められた海域と、こういうのがパラレルな表現でございまして、具体的な表現はこれから政府内で詰めるわけでございますけれども、第一条の適用海域というものはそういう姿のものにならざるを得ない、またなすべきだと、このように考えております。
#126
○久保亘君 その点はよくわかりました。そうなりました場合には、これはいわゆる政府がしばしば言われてまいりました線引きの相打ちというやつですね。線引きの相打ちというやつは、相打ちになったら一方が死んだということでは困るのであります。相打ちという以上は引き分けでなければならない。引き分けであるということは、二つの協定が違った根拠に基づいて線引きを決めるわけでありますから、それでその場合に、両国が全く対等な協定を結ぶということになれば、権利義務においても対等でなければならぬ。北方四島周辺における日本の漁船が、ここで裁判管轄権も、それから入漁料も許可証も全部ソビエト側にその主権的権利が認められるということになれば、逆にソビエトの漁船に対しては、それらのものが日本側に主権的権利が認められなければならないということになりますでしょう。もし、日本側がそこを十四条による規制適用除外水域にすれば、ソビエトの側もそこを規制適用除外水域にしなければ対等にならないわけでしょう。現実にそれが可能かどうかは別にして、両国が対等な協定を結ぶということになれば、私がいま申し上げたようなことでなければいわゆる対等ということにならない、そういうふうに思いますが、いかがですか。
#127
○国務大臣(鈴木善幸君) 久保さんの御主張は非常によくわかるわけでございます。対等の立場、そのような協定をぜひつくりたい、このように考えております。
 ただ違うことは、現にソ連邦が北方四島を占有し施政を行っておる、わが方は施政が及んでいないというのが現、実の姿でございます。そういう違いはございますけれども、私は久保さんの考えのとおり、これは日本国民全体の願望でもあろうと思うんでありまして、そういう方向で私どもは全力を尽くすつもりでございます。しかし、いま申し上げたような、現実の状況というものがあるわけでございまして、これは交渉の段階において具体的に詰めていかなければならない問題であると、こう考えております。
#128
○久保亘君 お考えはよく理解はできます。
 そうしますと、ソ日協定の締結に当たって日本側の譲歩できない基本線というのは、一つは、先ほどこの暫定措置法に基づく線引きを明示するということを言われました。これは絶対に譲れない線の一つだろうと思うんですね。そうすると、それ以外いま農林大臣が日本政府を代表して交渉に当たられるとすれば、譲れない基本線というのは大体どういうことになりましょうか。
#129
○国務大臣(鈴木善幸君) これはこれから交渉に臨む立場にあるわけでございますから、これから行う外交の交渉の中身等につきましてここで申し上げる段階ではない、適当ではない、こう思うわけでございます。しかし、先ほど来申し上げるように、この協定締結のためには、あくまでわが方の漁業水域に関する暫定措置法、これは北方四島を含む線引きが現にもう法律によってなされておる、国会がそういうぐあいにお決めになっておる、また領海十二海里法、この中にはソ連、外国漁船は操業を認めない、これが大原則であると、これを踏まえてソ日協定の交渉に臨もうと、これだけははっきり申し上げておく次第であります。
#130
○久保亘君 これからその交渉に当たられる問題でありますから、私もソ日交渉についてはそれ以上は申し上げませんが、いまいろいろ農林大臣が述べられましたことを私どもも注目しながら今後を見てまいりたいと思うんでありますが、今度のこの日ソ交渉についてその衝に責任者として当たられた農林大臣は、この交渉、百日交渉を通じて、成果といいますかその評価といいますか、あるいは交渉をめぐっての反省あるいは所感というものを、この協定そのものではなくて、外交交渉の問題としていろいろお持ちになっているんじゃないかと思うんであります。その点についてひとつ所見をお聞かせいただきたいと思います。
 これは、その交渉を今度は外務大臣としてその任に当たられた外務大臣からもお聞きしたいと思います。
#131
○国務大臣(鈴木善幸君) 私が直接交渉に当たった当事者でございますので、その評価をどういうぐあいに自分でしているかということは、大変申し上げかねる問題でございまして、皆さんに、国民の皆さんに評価をしていただく以外にないと、このように存じております。
 ただし、領土絡みのこの交渉が、最終的にとにかく両国政府が大局的な立場で純然たる漁業問題としてこれを締結をすると、それを第八条によって明確にしたと、したがって今後の平和条約の交渉、領土交渉には何らの影響、わが方の立場を害するものでないと、こういうことに相なりました点につきましては、私は苦労したかいがあったというぐあいに信じております。
 なお、漁民諸君が大きく期待をしておりましたところの漁獲量の問題、これは残念ながら私としても非常に不満であり、そのために関係漁民、関連企業の皆さんに大きな苦痛と犠牲を余儀なくさせる結果に相なるわけでありまして、この点はまことに残念であり申しわけがないと、このように存じております。しかし、これは厳しい沿岸国の二百海里時代における強い厳しい態度であるということも身をもって私体験をしたわけでございます。
 それからもう一つは、これは大きな国民的な成果だと思うのでありますが、この交渉を通じまして、外交問題で戦後こんなに国論が一つにまとまって、最後までこの問題について御支援を賜った、また超党派の御支援、御鞭撻もいただいたと、漁民諸君が耐えがたきを耐えて最後まで歯を食いしばってその結束を乱さずにこの長期の交渉に耐えたと、こういう点は今後の外交を進める上に大きな有益なことであったと、成果であったと、このように私は感じておる次第でございます。
#132
○国務大臣(鳩山威一郎君) 今回の漁業交渉はまことに苦難に満ちた交渉でございました。これはソ連が二百海里の最高会議幹部会令を出したときから、これは大変な交渉をしなければならないということは当然予想されたことでございました。今回の交渉に当たりまして、これは鈴木農林大臣に本当に御苦労をおかけして、私は東京に残っておりまして、そういった関係で大変申しわけなく思っておったわけであります。しかし、この交渉につきましては、農林省と外務省は本当に一体になりまして努力をいたしたのでございまして、責任は全く私どもにもあるわけでございますし、ただいま鈴木農林大臣から御発言がございましたが、私からは特に鈴木農林大臣の御苦労に心から感謝を申し上げる心でいっぱいでございます。
 特に申し上げたいことは、先ほどいろいろな御発言がありましたように、日ソ関係のこの外交関係というものは、まことにむずかしい面があるわけでございます。そして、昨年には天から降ってわいたような不幸な事件があったりいたしました。その後でございまして、そういったことで、この日ソの外交関係を修復するといいますか、そういった必要が非常にあったわけでございますが、今回の漁業交渉を通じまして、日ソ関係の友好関係の増進には大変なプラスであったと思います。なかなか交渉自体は非常に苦難に満ちたものでございましたが、その苦難を乗り越えられましてこのような解決を図ることができましたこと、それ自体が私は日ソの外交上特筆すべきことであると思います。
 なお、今後ソ日協定という、これもまた大変むずかしい交渉になろうかと思いますが、その過程を通じまして、日ソの間の関係がプラスになるような方向で解決されることを心から期待をいたしているところでございまして、また国会の超党派で御声援、御激励賜りましたことを改めて御礼を申し上げる次第でございます。
#133
○久保亘君 私も大変、今度の日ソ交渉について農林大臣を初め御苦労をいただいたことについては、それを多としなければならぬと考えております。
 いま言われましたその御所感でありますけれども、たとえばこういうような見方もあるんでありますが、こういうこともお感じになったんでございましょうか。
 園田内閣官房長官が、この交渉が妥結いたしました直後に、新聞社の座談会で、「今度の漁業交渉の成果は、第一に日本国民がソ連という国をよく認識したこと、第二に大砲や軍艦を持った国との交渉がどういうものか、平和と繁栄に徹した国にとってどうあるべきかもっと考えなければならない、ということがわかったことだと思う。」、こういう感想を述べられております。これは内閣官房長官として御出席になって述べられた漁業交渉の成果だそうでありますが、この点については、モスクワに長期に滞在されました農林大臣もやっぱり同じような御所感をお持ちでございましょうか。
#134
○国務大臣(鈴木善幸君) まあ人それぞれ受けとめ方が違うわけでございまして、園田官房長官のそういう受けとめ方を、私自身は先ほど申し上げたように、この日ソの漁業関係、これは一九五六年に日ソ漁業条約が締結をされ、それが日ソの平和友好の宣言になり、日ソの国交が回復をした。その後においても日ソ間におきましては、二十一年にわたりまして毎年漁業交渉が行われた。このことは日ソ友好のかけ橋になっておる、いわゆる漁業問題というのは日ソ間では非常に大事な、これは外交問題としても大きな役割りを果たしておる、そのことがとにかく厳しい二百海里のこの状況の中で再構築の第一歩が生まれたと。私は、ソ日協定もこれを締結をし、さらに長期の枠組みも決める日ソ基本漁業協定というものが今年中に成立をする、締結がされるということを、私は日ソの善隣友好関係の発展のためにこれは大事なことだと、その役割りは大きいと、こういうぐあいに痛切に感じておるところでございます。
#135
○久保亘君 同じくモスクワに行かれて交渉に当たられた大臣のお二人の所感がずいぶん違うようでありますが、これは御所感でありますから、私もそれ以上申し上げません。
  〔委員長退席、理事秦野竜君着席〕
 もう一つ外務大臣にお尋ねいたしますが、この「「百日交渉」の教訓」に基づいてというので、元外務大臣の宮澤さんやそれから園田官房長官は、この際日ソ平和条約の問題は、ひとつソ連側から何か言ってくるまで待って慎重にやった方がいい、こういう御意見になっておられるようなんです。
 たとえば宮澤元外務大臣は、「政府の考えは知らないが、これだけ摩擦のあった後、ソ連がこれをどう評価し、どう反省するかをみていた方がいい。平和条約締結問題についても、私とグロムイコ外相とが昨年、一昨年とやったが、今年は鳩山外相がやる番だ。日ソ合同委も延び延びになっているが、ソ連が早く東京で開こうと言い出すかどうか。これだけ日本人を怒らせたことをどう考えているのか。領土交渉を早くしろという声もあるが、領土は流れてなくなってしまうものでない。ソ連側の出方をじっくりみるべきだ。」、園田官房長官が、「私も賛成だ。領土を含む平和条約問題は、じっくり検討する必要がある。相手の出方をじっとみていて、まじめに対応すればよい。」、相手が出てきたときに検討すればよい、こういう御意見のようでありますがね。
 外務大臣は、この官房長官やあなたの前任であります外務大臣がお考えになっているような、こういう考え方で今後領土問題を含む日ソの平和条約交渉をお考えになりますんでしょうか。
#136
○国務大臣(鳩山威一郎君) 私は、鈴木農林大臣が長い間御苦労してソ連との間の交渉をおまとめになったのがこの協定でございます。この結果が国民を怒らすとか、そのようなことが、私は、途中ではいろいろな経過があったと思います。しかし、ここで話がまとまって協定ができて、いま御審議をいただいておるわけでございます。したがいまして、私は、これから日ソ関係を、友好善隣関係を増進をさすためにこれは全力を尽さなければならない、このように考えているところでございまして、ただいまの御指摘のような考え方では私は外務大臣は務まらないと、このように思うところでございます。
#137
○久保亘君 そうすると、やっぱり外務大臣としては、日ソ平和条約の推進のために、今度の日ソ交渉を通じてわれわれが感じてきた日ソ交渉の摩擦の原因になるものについて、その摩擦の原因を積極的に取り除き、克服していくために、こちら側からかなり積極的な努力を進めていかなければならぬ、こういう立場で日ソ平和条約の推進についてお取り組みになると考えればよろしいのですか。
#138
○国務大臣(鳩山威一郎君) いま久保委員のおっしゃったとおりの方向で努力をいたしたいと思っております。
#139
○久保亘君 次に私は、今度の日ソ交渉について大変御苦労をいただいたんですから、こういうことをあんまり質問をするのはぐあいが悪いかなとも思ったりしましたんですが、やっぱり今度の交渉を通じて日本政府の側に外交交渉上のまずさというのはなかったのか、こういう点については、この際、よくやったとか御苦労でしたとかいう言葉の中に、そういう考え方の中に埋没して見失ってしまってはいけない問題もあるんじゃないか、こういう気持ちを持ちます。たとえば、先ほど日ソ協定とソ日協定を並行交渉にしたらどうか、双務協定にしたらどうかとかいうようなことをソ連側に提案したんだと農林大臣言われました。なぜソビエト側がそれに乗らないのか、これは二百海里法の適用が時間差があり過ぎるんです。ソビエト側が二百海里法を施行したのは三月一日、わが国は七月一日です。この交渉をやっている間、日本の漁船はソビエトの水域から締め出されたけれども、ソビエトの漁船はその間日本には国内法がないんですから悠々と日本の近海で漁業をやっておれたわけであります。だから、そういう並行審議とか双務協定をやる必要はソビエト側にはなかった、こちらの側がハンディを負って王手をかけられた形で日ソ協定に取り組まなければならなかったというそういう弱点があったのではないか。その弱点は、二百海里時代に対応していく日本政府の取り組みの甘さというか見通しの暗さに原因があるのではないか。だから、それらの点についてはやっぱり今度の日ソ交渉を振り返って、日本の外務省を中心にしてこの二百海里時代に対する対応の仕方については非常に深い反省があってしかるべきではないか、私はこういうことを思うんです。
 それからもう一つは、政府部内の不統一と見られるようなことがこの交渉の過程の中においてあらわれた。領土問題を非常に強調される発言が出てみたり、切り離し論がもう政府の考え方だということで決まったんだというような意味の発言が出てみたり、そういうことがこういう重要な外交交渉に当たってわが国の側にとって必ずしもプラスに作用しなかったのではないか。だから、そういう意味において外交交渉の判断や取り組み方あるいは外交交渉の技術的な問題についても日本政府の側には今度の交渉で反省や教訓をきちんと整理をしておかなければ今後の交渉に当たって問題があるんじゃないか、私はこういうことを思うんですが、こういう点については私がいま申し上げましたような指摘は誤りでしょうか。
#140
○国務大臣(鈴木善幸君) 決して誤っておるということではないと思います。まあ領海法にしてもあるいは暫定措置法にしても、もっと早くこれができておりまして、そしてソ側が二百海里宣言をした、三月一日からそれを実施に移したという場合に、わが方も直ちに実施に移す、こういうことでありますればもっと交渉は確かにやりやすかったと、私もそう思うわけでございます。わが方から先に二百海里法を実施するということはどうかと思いますが、少なくとも向こうが実施に移したならばわが方も間髪を入れずそれに対処する、これぐらいの準備ができていなかったということは御指摘のとおりわが方としては本当に反省をさせられておるところでございます。
 なお、まあ率直に申し上げて、ああいう国柄でございますからどういうことを考えておるのか、どういう一体出方をするのかということはこれはまあ世界でも一番読めないむずかしい国ではないでしょうか。そこへまいりますと日本はもうきわめてオープンでございますから、言論報道機関も自由にああではないか、こうではないかということも書きますし、また国会におきましても縦横の御論議もある、こういうようなことで大分そこは違います。なかなか実際の交渉に当たりましては、そういう点が国柄が違い立場が違うとなかなかむずかしいものだなということはしみじみ私も感じた次第でございます。
#141
○国務大臣(鳩山威一郎君) 今回の交渉を通じまして反省すべき点が多々あるであろう、このようなお話で、私どもも当然反省すべき点は反省をいたさなければならない、こう率直に考えております。ただいま鈴木農林大臣がおっしゃいましたとおり、私も本当に身をもってそのように感じておる次第でございます。これは一つは私は日本の外交というものが国民世論のバックがあって動いておる、こういうことでそれはまた一つの力であったと思います。また、交渉に当たられました鈴木農林大臣とされましては、なかなかむずかしい要素になったという点もおありになったろうと思います。これはお互いの国柄の違いでございますからいたし方ないと思いますが、今後反省すべき点は反省して、とにかく残りましたソ日協定を本当にこれを多くの国民の皆様方の御期待に沿えるような方向でぜひとも解決をいたしたい、こう思っておるところでございます。
#142
○久保亘君 これ以上申し上げませんが、いまのようなことを私が思いますのは、たとえば農林事務次官がこういう発言をされております。「四十九年の国連海洋法会議の成りゆきから、世界的な二百カイリ実施が早晩来ると思っていた。ただ米国の二百カイリが実施され、ソ連も同一歩調をとるとは考えていたが、実感としてはソ連はもう少し待つと思い一年早かった感じだ。また、二百カイリの漁業水域では、領土問題にいろいろと結びつくという予想はあった。しかし、対ソ関係で、ここまで難しくなるとは思っていなかった。いわゆる玉虫色のやり方で解決されると期待していたが、そうではなくなった。」、こういうことを、これは農林事務次官の発言で新聞紙上に書かれたものを私がいま読んだわけです。これは率直にやっぱり日本政府側の今度の日ソ交渉に当たっての弱点を言われているのではないかという感じがいたします。これは私はある意味では非常に正直な発言だと思います。しかし、正直な発言が政府の重要な責任ある立場にある人から出るということについて私どもはこれは大変問題だと思うわけであります。だから、今度の日ソ交渉についてはやはり外交交渉上の問題としては相当深刻な反省もまた求められているというのが実際だと思いますから、その点についてもひとつ、いまお二人の大臣からそれぞれお聞きいたしましたので、ひとつ今後の外交交渉について日ソ交渉の反省と教訓をきちんとしていただくようにお願いをしておきます。
 それから最後に、私はこの領土の問題について今度の日ソ交渉、この協定がもう本当に領土問題とはかかわりなく、いささかも害することなく締結されたのかどうかという点については、基本的な認識をきちんとしておかなければならぬと思うんです。それはあなた方がいささかも害されることなくというのは、今後ソビエトに対して日本固有の領土であるということをわれわれが主張することができなくなるような、その協定の拘束を受けることはありませんでしたと、こういう意味なんでしょうか。そういう意味で害されることなくというならば幾らかわからぬでもないんでありますが、今度のこの協定が、実際に日本の領土であると日本政府が言っているものについて、現実的にそこの領有権についていささかも害されることなく協定が結ばれたというふうにはどうしても考えられないのであります。
 魚と領土の切り離しということを言われますけれども、一体排他的な経済水域、いま海洋法会議で検討されております排他的経済水域というのは、排他的経済水域がひとり歩きして存在することが可能なのであるか。これは必ず接続すべき領海がなければならぬはずであります。排他的経済水域と言うのには、必ず、領海を越えてその領海に接続する二百海里までの水域ということになるはずであります。領海のない経済水域というのはないでしょう。そうすると、領海というのは領土がなければないのであります。だから、魚に関してでも、ここに主権的権利を日本政府がソビエトに対して認める水域がこの協定の中で決められるということは、この排他的経済水域は必ずその延長線上に領海を持ちその根拠として領土があるのであります。そういう理解に立たなければ排他的経済水城は生まれてこないんじゃありませんか、どうでしょうか。
#143
○政府委員(中島敏次郎君) ただいまの先生の御指摘の点につきましては、一般論として申し上げれば、通常の場合には、漁業水域、今度の場合には漁業水域でございますが、漁業水域が設定される根っこには領土があり領海があるという御指摘だろうと思いますが、一般論として、通常の場合にはそのとおりであろうというふうに考えます。
#144
○久保亘君 それじゃ、一般論でない漁業水域というのは何でしょうか。
#145
○政府委員(中島敏次郎君) 私が一般論と申しましたのは、確かに先生の御指摘のように、たとえば現在の海洋法で討議しておりますところの非公式単一草案の第四十四条、先生もいま御引用になられたと思いますが、これなどは、たとえば「沿岸国は、自国の領海をこえかつ領海に接続する排他的経済水域といわれる水域において、次の権利、」云々を持つと、こういう形になっておりまして、当然ここで想定しておりますのは、通常のの主権国家がみずからの領海を越えた水域において経済水域を持つ、こういう意味であろうと思いまして、この限りでいま、一般論としては経済水域のもとには領土に対する主権があるということを申し上げたわけでございますけれども、それでは私は、現実にいま例があるかどうかの点は別といたしまして、逆に言いまして、経済水域なり漁業水域があると、そこのもとにある領土――領土と申しますか、その経済水域を設定したオーソリティーと申しますか、権原を持つ者が必ず主権国家でなければならないかという点になれば、理論的には必ずしもそうではないということもあるだろうと。
 たとえば、これも具体的に例があるわけではございませんけれども、信託統治権者がみずからの信託統治地域の周りに二百海里の漁業水域を設けるということも考えられなくはないであろう、したがいまして、主権国家が経済水域なり漁業水域をその沿岸に設定するということは当然であるけれども、経済水域なり漁業水域が設定されてあれば、そのもとにある領土にあるのは主権国家であるという逆のことには必ずしもならないであろうというふうな意味を含めまして、一般論としてということを申し上げたわけでございます。
#146
○久保亘君 そうしますと、いま北方四島というのは、わが国はソビエトに対して信託統治を求めているわけでもない。そして、総理大臣も言われているように、これはわが国固有の領土であるということを言明されておるわけでしょう。そしてわが国の国内法は、これを固有の領土であるということによって経済水域の線引きを行っておるわけであります。そういうことになってまいりますと、一体日本から見た場合には、北方四島というのは国際法上これは国際的には不当に他国によって占有されているという解釈に立たれておるのでしょうか。
#147
○政府委員(中島敏次郎君) ただいまの点は、わが国といたしましては、北方領土、北方の四島につきましては、これらはわが国の固有の領土であるという立場でございまして、ソ連側がそこに占拠しておりますのは、法律的根拠なくしてそれを占有しておるという意味において不法な占拠であるというふうに考えている次第でございます。
#148
○久保亘君 そうすると、外務大臣、実力による不法な占拠を現実として結ばれたこの協定は、わが国にとっては遺憾ながらこれは不平等で不当な協定であるが漁業に関する現実処理上やむを得ない、こういう理解にお立ちになるわけでしょうか。
#149
○国務大臣(鳩山威一郎君) 北方四島の地位というものは、これは世界にもこのような例はほとんどないような地位である。それは、戦後もう三十一年もたっておる、その間に二十一年前に一応の平和回復は行われましたけれども一番大事な領土問題を決定するところの平和条約が結ばれていないというところに起因をしておるわけでございまして、したがいまして法的に国際的にまだソ連と日本との間に定まっておらないというところにすべての根源があるわけでございます。そして、ソ連自体はソ連自体といたしまして、ヤルタ協定以来の経過から、ソ連の領有ということを主張をいたしておるわけでございまして、このような経過をたどっておりますので、ただいま仰せのありましたような状態で漁業につきましていまの線引きを一応認めたと、こういうことであります。したがいまして、これを本当に解決をするためにはどうしても平和条約というものを取り結ばなければ真の解決はないんだ、こういうふうに思うわけで、そのためにあらゆる努力を外交当局としてはしなければならない、そういった義務を感ずるわけでございます。平和条約ができないということで、いろんな説明をして、そのために日本の主張、固有の領土であるという主張をいささかも傷つけまいとして主張をいたしておる、そこにほかには例のないような事態が生じておるわけでございまして、そういう意味で、平和条約を結ぶ、領土問題を解決するために支障になるようなことは絶対にないようにということで鈴木大臣が御苦労をいただいたわけでございます。そして、漁業問題につきましてとにかく今回のような解決を図ったということ、これは私は、日ソ関係の上から見まして、領土問題に何らの悪い影響がなければ漁業の面の協力というものは進めていくことが私は国益上必要なことである。ここで漁業関係の日ソ間の協力というものが一切壊れてしまった場合のことを考えますと、今回の協定はこれはやむを得ざる協定であるというふうに考えておるのでございまして、はなはだすっきりしたお答えではないと思いますけれども、そのように率直に申し上げたいと思います。
#150
○久保亘君 結局そうすると、私は一人の国民として今度の交渉の経過並びにその協定の内容をいろいろ説明をされるのをお聞きいたしまして、また趣旨説明を聞きながら、北方四島の領土問題に関するわが国の立場はいささかも害されることのないことが協定上確保されたと、こういう説明を聞きますと、これをすっと読んだだけでは、北方四島の領有権が非常に確保されたという強い印象を受けるわけです。
 しかし実際には、この言われております表現というのは、今後日本政府が北方四島をわが国の固有の領土であるということを主張していく権利が、今度の交渉の中では傷つけられなかったということであって、ソビエトがこの四島に対して、これは正当にソビエトの領土であると主張していることをここで後退をさせたという意味では全くない、そういうことになりますね。
#151
○国務大臣(鳩山威一郎君) そのとおりに私どもは考えております。
#152
○久保亘君 そういたしますと、やっぱりこの協定は、いまの政府の見解によれば日本にとっては本質的に不平等なものであり、ソビエトの実力によるわが国の領土支配の現実を、今度の漁業交渉を通じては認めざるを得なかった、支配されている現実を認めざるを得なかった。しかしそのことについては、日本から言えば国際的には正当でない、こういう立場のものと理解してこの協定をわれわれは受けとめればよろしいのですか。
#153
○政府委員(中島敏次郎君) 基本的には先生のおっしゃられておられることだろうと思います。
 私の言葉をもって説明させていただければ、ともあれ北方四島は、わが国はこれを認めるものではありませんけれども、遺憾ながらソ連が現実にあそこを押さえておるという現実があるわけでございます。その四島の周辺に対してソ連側が現実に漁業の規制を行っておると、こういう現実があるわけでございます。そこで四島に対する領有権主張というものは、双方が主張をしておりまして、その主張が重なり合っておると、その解決はあくまでも平和条約の締結交渉の中で行われる問題であって、そこで解決されるべき問題であると、こういうことでございます。
 そこで問題は、ここに今回発生した漁業問題について、この漁業問題を通じてこの領土問題をどちらかの側にとって有利なように解決しようとすれば、これはいわば領土問題そのものの解決になるわけでございます。
 ところで、領土問題はこれは平和条約の締結交渉の中で行われるべきものでありますし、また行うことになっているものでございます。したがいまして、漁業問題の交渉を通じて領土問題はそのままそっくり平和条約の締結交渉の中で双方の立場が害されない形で、そのままそっくり向こう側で行われるという形になれば、これは漁業が漁業の問題として片づけられたということになるわけでございます。ただ、ソ連側が現実に漁業の規制を行っておるということを前提にしてできました協定でありますから、そのことによってわが国の領有権主張が崩されたということになってはいかぬということで、第八条を設けて、わが国の立場が害されていないということを明確にしたという形になっているわけでございます。
#154
○久保亘君 この八条が、協定全体を領土問題に対して相打ちにしたというよりも、北方四島の領有権に関する両国の主張を八条において相打ちさしていると、こういうことにはなりませんですかね。ブレジネフ発言に対する鳩山外務大臣の見解というのも、ちょうど八条の中における相打ちと、こういうような形で理解されていくんじゃありませんでしょうか。
#155
○政府委員(中島敏次郎君) 相打ちとおっしゃられることの意味が必ずしも明確でございませんし、また、そのような言葉を使いますと八条のつくり出しております効果が誤解されるというようなことがあり得るんではないかと思いますが、いずれにしろ第八条そのもので書いてありますとおりに、いずれの政府の立場も害されていないということが確認されたということでございます。
#156
○久保亘君 これから先は少し押し問答になりましょうから、それでいいんです。ただ私は、いまあなた方の答弁を聞いてよくわかりました。結局、この領土問題について今度の日ソ交渉が日本の領土に関する立場をいささかも害しなかったというのは、日本政府が北方四島はわが国固有の領土であるという主張をすることを、この協定が根拠を失わせることにはならなかったと、こういう意味ですね。そういう意味でこの協定自身は、しかし、ソビエトの国際的に見れば不法な占有によって起こっているその現状認識の上にここに水域を設定させた協定になっている、こういうことだろうと思うんですね。その現状の理解はわかりました。
 それじゃもう余り時間がなくなりましたので、少しそのほかのことでお尋ねをしておきますが、北転船の現状について、水産庁はどういうふうにとらえておられますか。北転船は減船になったものあるいは操業を停止したものは全部これは係留されたまま、そのままの状態になっているんでしょうか。
#157
○政府委員(岡安誠君) 北転船につきましては、先生御承知のとおり、現在はシーズンは普通であるならばソ連の二百海里の水域で操業をいたしておるわけでございます。ところが、四月一日以降出漁を停止いたしておったわけでございますが、ただいたずらに出漁停止するのも問題がございますので、現在はアメリカ水域、アメリカの二百海里水域に金船出漁いたしまして、操業をいたしております。問題は、今後のシーズンにおきましては、すでに御承知のとおりソビエトの二百海里丙でスケトウ全体では十万トンでございますが、スケトウの操業をする水域におきましては一万トン足らず、約七、八千トンが北転船の操業による漁獲可能量ということになるわけでございまして、隻数も約十五隻ということになっております。
 そこで、私どもといたしましては、現在のアメリカ水域におきます操業、これは恐らくクォータをすべてとり切るのは七月いっぱいぐらいになろうかというふうに思います。そこで八月以降につきましては、ソ連二百海里水域で出漁可能な船を除きましては、今後の、来年以降の操業の見込み等を検討いたしまして、残余の船につきましては減船ということで業界と御相談に入りたいというふうに思っているわけでございます。
#158
○久保亘君 北転船で北洋に操業できなくなったものが、いまアメリカの二百海里水域と言われましたけれども、日本の近海あるいは沿岸において操業をせざるを得なくなっているやむを得ざる状態もあるということはございませんか。
  〔理事秦野章君退席、委員長着席〕
#159
○政府委員(岡安誠君) 北転船は御承知のように主といたしまして外国の二百海里、いわばソ連の二百海里、それからアメリカの二百海里等を中心にいたしまして従来操業をいたしておったわけでございます。先ほど大臣からもお話しいたしましたとおり、表裏というような関係でソ連の二百海里以内で操業すると同時に、あるシーズンにつきましてはアメリカの二百海里に移動をするというような形が従来からの操業の形態でございます。わが国の二百海里以内、いわば沿岸で北転船は操業をしないというのはもういまの通例でございます。
 そこで私どもは、今後の北転船のあり方といたしましては、まずアメリカで確保されておりますクォータで同年どれだけの操業ができるかというようなことを確定をする、さらにソ連の二百海里内の水域におきまして周年どれだけ操業ができるであろうかというような見当をつける。その他北転船につきましては私ども諸外国の二百海里以外の新しい漁場について、資源の開発、調査その他の就労ができるかどうかというような検討もいたしたい。さらには、日本の二百海里内外の地域におきまして資源調査等のために北転船の使用ができるかどうかというような検討をいたしまして、それらによって想定される隻数以外のものにつきましては残念ながらこれは減船というようなことにならざるを得ないと考えておりまして、現在業界と御相談をいたしておるということで、北転船がわが国の沿岸の方に入り込んで操業をするというふうなことを実は考えておらないわけでございます。
#160
○久保亘君 いや、考えておらないということじゃなくてね、現実には沖合いに北転船がもうやむなく操業をする、そういうことで従来の沖合い漁業から沿岸漁業へずうっとしわ寄せをしてくると、こういうような状況が現実にないのか。その辺は水産庁はないとお考えになっていますか。
#161
○政府委員(岡安誠君) まあ発生的には沿岸から沖合いへ、沖合いから遠洋へということで、やはり沿岸、沖合いの操業を調整する意味におきまして遠洋の方に出ていったわけでございますが、これらが遠洋の漁場が狭められた、クォータが小さくなったということによりましていわゆるUターン現象は可能であるかということになりますと、これは現状といたしまして、沿岸、沖合いの方も現状では相当満杯でございますので、遠洋の漁場の制約を受けた船が沖合いへ、また沿岸へ戻るということは、私どもといたしましてはそういうようなことをさせるというようなことを考えてはおらないわけでございます。
#162
○久保亘君 いや、水産庁の方針はわかりますが、しかしそういう北転船の減船をやってただ操業をできないようにしてあるだけではやっぱりこれは問題が起きてくるわけです。だから、そういう問題について政府が抜本的な対策を講じない限り今度は外交上の問題で起こったことが漁民同士の争いに転化されていくというようなことではこれは問題だと思うんです。だから、そういう点について政府は適切な指導と対策がなければならぬと思うんですが、ただそういうようなことはあり得ないことだということでは済まないんじゃないか。そのことをお聞きしておるわけです。
#163
○政府委員(岡安誠君) それは先ほどお答えしたと思いますけれども、百五十四隻の北転船につきましては現在表裏というふうなかっこうでもって操業をいたしておりますけれども、まずアメリカ水域におきまして周年どれだけ操業ができるかというふうな検討をいたすと、それからソ連水域におきましてどれだけ周年操業ができるかというように、現状で同年操業が可能な船をまず決めたいというふうに考えます。
 それ以外につきましては、新しい漁場を求めまして外国の二百海里以外の漁場等に新しく開拓して進出できるかどうか、そういうような検討もいたしたいと思っておりますし、また、わが国の二百海里内外の漁場につきましての資源調査のための船として使用できるかどうかというような検討をいたしまして、ある程度の船の確保はいたさなければならないと思いますけれども、それ以外につきましては、沖合い、沿岸の方へ戻すということではなくて、残念ながらこれは減船をしていただくというふうなことで業界と御相談をいたすというつもりでございます、ということを申し上げたわけでございます。
#164
○久保亘君 これで終わりますが、北転船をかつて政府の責任者が、エンジンを取りかえて二百海里水域の監視船に転用できるのではないかと発言されたことがあります。そういうことも可能なんですか。
#165
○政府委員(岡安誠君) 実は北転船の活用の一つの方法といたしまして、領海または二百海里漁業水域の監視のために使えないかという御意見がございました。保安庁等ともいろいろ相談いたしておりますけれども、これを保安庁の船と同じような機能等を持たせるようなかっこうでの転用は、これはむずかしいというふうに思います。それは能力の点のみならず乗組員の資格等の問題もございます。
 そこで私ども現在検討いたしておりますのは、保安庁の船による監視の補助的な機能を果たす、そういうような船としてこの北転船の一部が活用できないかどうか、これは検討いたしてみたいというふうに思っておるわけでございます。
#166
○塩出啓典君 まず最初に、この委員会でも問題になりました漁業水域に関する暫定措置法の問題でありますが、先ほどの御答弁では七月一日から施行すると、したがって、いわゆるそれに伴う政令あるいはまた第十四条でいうところの適用除外の水域、そういうものはもうできておるのかどうか、どういう内容のものであるのか、これをちょっと御説明いただきたいと思います。
#167
○政府委員(岡安誠君) 漁業水域に関する暫定措置法につきましては、おっしゃるとおり、私ども現在七月一日施行を目指しまして準備をいたしております。政令につきましては現在準備中でございまして、来週中にはこれを施行いたしたいというふうに考えて現在準備を進めております。
 内容につきましては、先般この法律の御審議の際に御提出いたしました政令規定見込み事項、これを中心にいたしまして現在検討をいたしておるということでございます。
#168
○塩出啓典君 そうしますと、当然いまの見込みでは、いわゆる北方四島を適用除外をするようなことはあり得ないと、そのように判断をしていいわけですか。第十四条の適用除外水域にいわゆる北方四島周辺を含むということはあり得ないと、これははっきりしていることなのか、あるいはまだ決まっていないことなんですか。
#169
○政府委員(岡安誠君) これは農林大臣から衆議院での御審議の際にお答えしたわけでございますけれども、法律的には十四条の運用によってそうすることが可能ではございますが、それはきわめて高度の政治的な判断を要する問題であるというふうにお答えをいたしておるわけでございまして、現在事務的にはそういうところまで検討いたしておるわけではございません。
#170
○塩出啓典君 そこで農林大臣にお尋ねをいたしますが、先ほど同僚議員の質問に対しまして、いわゆる漁業水域に関する暫定措置法それから領海法、これが成立をしたときにソ連政府にも説明をされたと、こういうお話であったわけであります。私は、そのときに農林大臣としてはただこういう法律の内容だけを説明したのか。いままでの国会の御答弁では、この法律によって適用除外がなければその北方四島にも二百海里の線引きが当然されておるように私たちも政府の見解を承っておるわけでありますが、そういう内容もソ連政府に話をしたのか。それは単なる口頭であるのか文書であるのか。このあたり、ソ連がどういう認識をしどういう反応をしたかということはわれわれも非常に関心があるわけでありますが、その点どういう説明をされたのかをお伺いしたいと思います。
#171
○国務大臣(鈴木善幸君) 五月の五日の第一回の会談におきまして、五月二日に国会で御決定いただきましたわが国の新しい領海法、漁業水域に関する暫定措置法、これが決定をいたしましたと。このことは三月交渉においても、わが方も近く二百海里法を制定する方針であるということを三月交渉の際に合意文書の中で明らかにしておったわけでございます。それに基づいて、こういうことで全会一致で五月の二日に成立をしたと。そこで、ついてはもう七月の一日からこれが実施されるということであるから、ソ側が同意されるのであれば双務協定的なものをつくる用意もある。また、日ソ協定の交渉とソ日協定の交渉、これを同時並行的にやる用意もあると、こういうことを申し上げたわけでございます。
 これに対してイシコフさんは、ソ連政府としてはまだソ日協定、あるいは双務協定等というような新しい提案があったけれども、政府全体としてソ日協定に対する方針、態度というものをまだ決めていない。ついては、このいままでやってきた交渉の中で大部分もう固まってきておる。残されておるのは第一条と第二条、この問題であるから、日本側としても船を係船させておるというような御事情もあろうから早くやろうではないか。いままでの延長線上の交渉としてこれをやろうと、こういうことでございました。
 なお、日本の領海法なりあるいは暫定措置法というものは、これからソ日協定の方針を政府として決めるに当たって参考になることであるから、ぜひそのことは自分の方の法律専門家に説明をしておいてもらいたいということで、これはわが方の斎藤条約課長やその他の専門家の諸君から向こうの専門家の諸君に説明をさしたと、こういう経過でございます。
#172
○塩出啓典君 まあいま私が聞きましたのは、たとえばこの法案そのものをロシア語に訳して伝えても、これはソ連側も何にも文句は言わないと思うんですね。私は先ほど農林大臣の御答弁で、これからのソ日協定においてはこの暫定措置法あるいは領海法を前提に進めるわけで、それは当然ソ連側も了解をしておるというようなお話だったものですから。けれども、もしきのうの本会議における答弁のように、この漁業水域に関する暫定措置法における漁業水域というものは、いわゆる北方四島にも現段階は線が引かれているんだと、適用除外のない限りはね。そういうことを説明をしたのかどうか。またそれは文書でやったのか、どういう形でやったのかということを私はお聞きしたいわけです。その点、わからなければわからなくて結構です。
#173
○国務大臣(鈴木善幸君) いまの両法案の説明会をやった際に、向こうからどういう質問が出、どういう説明をしておりますか、これは交渉とは別個の問題でございますから、私承知をいたしておりません。
#174
○塩出啓典君 そうしますと農林大臣、私は、もしわが国の二百海里の漁業水域の線引きが北方四鳥を囲んで引かれるとするならば、私はそれをやすやすとソ連が認めてくれるようであれば、それはそれにこしたことはないんでありますが、現実は非常に厳しいんではないか。これは幾らこの委員会で楽観的なことを述べても、それはやがて現実の姿になってあらわれてくるわけですから、そういう意味でわが国がこの暫定措置法によって北方四鳥に二百海里の線を引くということについてはソ連側からもかなり抗議があるんじゃないか、異論があるに違いない、ソ連政府としては認めがたいに違いない、私はそういう感じがするんですけれども、今回直接交渉に当たられた農林大臣やあるいは宮澤局長等、この問題は出なかったにしても、やっぱりソ連との交渉の中からなかなかこれはむずかしいんじゃないかと、そういう感じがするんじゃないかと思うんですが、その点はどうなんでしょうか。
#175
○国務大臣(鈴木善幸君) 先ほど来明確に申し上げておりますように、わが方の断定措置法、領海法、これをソ連側が認めるという前提でなければ協定は結べないわけでございますし、交渉にも入れないと、こういう性格のものでございます。わが方もアメリカとの間におきましても管理保存法の適用を受ける海域というものを認めなければ日米漁業協定交渉も入れなかった。ソ連との場合もそういうことでございます。それが北方四島絡みの水域の設定ということで、八条問題ということでそれを明らかにしたわけでございますが、そういう性質のものでございますから、ソ側としてもソ日協定交渉をやろうといって六月においでになるという限りにおきましては、この海洋二法が前提になる、こういうことであるわけでございます。その間におきまして、いま塩出さんがおっしゃったように、向こうが現に北方四島を占有し施政を行っているという立場から、どういう一体出方をしてくるか。これは現実に交渉に入ってみなければ向こうの考えというものがわかりません。したがって、予断を持ってここで申し上げるわけにはまいりませんが、わが方としては特に問題の今後の平和交渉なりあるいは領土交渉等にいささかの支障のないように、これだけは絶対に踏まえてやってまいりたい、こう考えております。
#176
○塩出啓典君 だから、農林大臣がおっしゃるのには、わが国が原則的に一般論としてのこの暫定措置法あるいはまた領海法、そういうものは当然認めなければ、これはソ日協定は結べないことは当然だと思うんでありますが、私がいま特にお聞きしたのは、いわゆる北方四島の分はどうなるかというこの問題については、言うなればソ連と交渉してみなければわからないということは、わが国が二百海里を北方四島周辺にもいま引いておるということはまだソ連には伝わっていないと、そういうことですね。それが伝わっておれば、それを説明したのであるならば、私はそのときにいろいろ向こうの反応とかそういうものはどうだったのかということをお聞きしたかったわけです。
#177
○国務大臣(鈴木善幸君) それは先ほど申し上げましたように、海洋二法の法案も向こうにすでにロシア語に翻訳したものを渡し、説明もしておるわけでございますから、漁業水域暫定法によってすでに北方四島を抱え込んだ線引きがなされておるということは、向こうは十分承知なはずでございます。
#178
○塩出啓典君 わかりました。承知だけれども、それを認めるかどうかについては今後の漁業交渉に待つ、このように理解をしていいわけですね。
 そこで先ほども質問のあった点、やや重複するかと思いますが、いま議題となっております日ソ漁業交渉によりまして、北方周辺には、いわゆるソ連側の裁判権とかあるいは取り締まり拿捕権、そういうものを認めておる、そこに日本側の同じような線を認めるということは、これはまあ現実的にはやっぱり不可能である。それは当然だと私は思うんですけれども、その点はどのように考えておりますか。
#179
○国務大臣(鈴木善幸君) それはソ日協定の交渉に当たりまして、ソ連側がどういう主張をし、どういう出方をしてまいりますか、それを見なければわからぬわけでございますが、とにかく私は今回の交渉に当たりまして、北方四島沖合いの海域について、実際上の適用海域としての線引きはなされております。ソ連側は線引きをしておるわけでございますが、北海道の零細漁民、三十トン未満の漁船等につきましては、許可証の発行手続の問題にいたしましても、あるいは漁獲量の割り当てをいたします場合におきましても、個々の漁船ということでなしに、漁業組合単位でクォータの割り当てを受けるとか、いろいろ実情に即したような取り扱いを向こう側に要求をいたしまして、ある程度の了解も得ておるわけでございます。そういうようなことで、私は運用の面におきましても、十分北海道の中小の零細漁民等にとりましては特別な扱い、納得できるような扱いをさせるように向こうによくお話し合いをしておったところでございます。
#180
○塩出啓典君 私は、どうも衆議院の本会議の総理の御答弁あるいはきのうの参議院本会議における御答弁等を通して、政府としてこの漁業水域に関する暫定措置法による線引きに、やっぱり北方四島の周辺には穴というか適用除外というか、そういうものを引かざるを得ない、そういう政府の見解のように私は理解をしておるわけでありますが、その点はどうなんでしょうか。
#181
○国務大臣(鈴木善幸君) ソ側の考え方、ソ側がどういうことを主張してくるか、まだわかっておりません。そこでわが方としても、これに対するところの政府としての方針というものを実はまだ固めていないわけでございます。いずれ総理を中心に外務大臣等関係閣僚の間で十分御相談をいたしまして、あらゆるソ側の出方に対応できる場面等も想定をしながら、わが方としての立場を損なわないように対処してまいりたいと、こう考えております。いまのところまだ方針を決めていないと、したがいまして、総理の本会議等における御答弁、これもすでに政府としての方針を固めておっての御答弁を申し上げたのではなしに、いまのソ側が現実に北方四島を占有し施政を行っておるというようなこの残念な現状認識からいたしまして、もしそういうことがあった場合というような仮定の上に立っての御発言だと、こう思いますけれども、これは何といっても領海法及び暫定措置法の法律の枠内で政府は取り組まなければならぬわけでございまして、国会の御意思というものはもうあの法律によって決まっておると、あの土俵を踏み外した交渉というようなものは、これは政府に許されないわけでございますから、十分この海洋二法というものを厳格にひとつ考えまして対処してまいりたい、こう思っております。
#182
○塩出啓典君 それでは、もう一つ何か聞かなくちゃいけなかったんだが――ちょっと後また思い出したら質問いたしたいと思います。
 次に、わが国政府がソ連との今回の漁業交渉の過程で、いわゆるソ連邦最高会議幹部会令の表現はいいが、閣僚会議の決定の表現は北方領土に影響をもたらすものでのむことはできない、こういうような意見があったやに聞いておるわけでありますが、これはわが国政府としての正式な見解であったのかどうか。
#183
○国務大臣(鈴木善幸君) 御承知のように、二月の二十八日から三月の四日までの第一回の訪ソに当たりましてイシコフ大臣との間に協議を遂げ、そして合意されました事項が三つございます。その合意書の中で一番重要な部分は、この適用海域の問題につきましてソ連邦沿岸に接続する北西太平洋の海域でかつ幹部会令の適用を受ける海域と、こういうことで合意したわけでございます。これは両国の責任者同士で合意した問題でございますから、私は協定ではない合意書簡ではありますけれども、これを大事にしていきたいということを国会でも御答弁を申し上げてあったわけでございます。
 私は、したがいまして、三月交渉が中断をし、四月交渉で再度訪ソをいたしまして具体的に一条問題の交渉をやった場合におきまして、ソ連側にこの点を強く要求したわけでございます。いやしくも責任者同士が一カ月前に合意したあの適用海域の表現、これをそのままひとつ第一条の適用海域の表現に用いようではないか、こういうことでやったわけでございます。
 しかし、その際においてはイシコフさんは、ソ連政府として政府全体で協議をした結果、最終的にソ連側としてはこういうことでいきたいと言ってきたのが、一九七六年二月二十四日閣僚会議決定によって定められた海域と、こういう草案を提起してきたわけでございます。その間いろいろ交渉を、折衝を重ねました結果、向こうもイシコフ・鈴木合意事項というようなこと等もありました経過も踏まえまして、イシコフ私案というものを出してきたわけでございます。そのイシコフ私案というのがいまの成立をしました協定書の第一条に相なっておるわけでございます。
 これは今後ソ日協定等においても、漁業水域に関する暫定措置法と政令及び省令によって定められた海域とか、そういう表現とパラレルになると、こういう性質のものだと、このように御理解を願いたいと思います。
#184
○塩出啓典君 農林大臣、もうちょっと、御親切な御答弁はよくわかるのですけれども、時間も限られておりますので、どうぞ簡潔にひとつお願いします。
 だから私は、いわゆる幹部会令はいいが閣僚会議の決定はよくないと、こういうことが政府の見解であったのかどうか、政府の方針であったのかどうかということをお尋ねしておるのですが。
#185
○国務大臣(鳩山威一郎君) ただいま御指摘のありましたことは、二月二十四日に大臣会議決定が出まして、翌日二十五日に官房長官名をもちまして、ソ連政府のいわゆる線引きと称しておるものでございますが、これには北方四島につきましての線引きが含まれておりますので、日本政府としてはこれは承服できないという官房長官談話を出した経緯がございます。したがいまして政府全体といたしましても、この線引きというものは日本政府が直ちにそれを承認をするということは、これはまた北方の領土問題につきまして日本が非常に事実上譲歩したと、こういうことがすぐ関連いたしますので、そのままでは認めがたいということを申し述べた経緯がございます。したがいまして今回の交渉に当たりまして、第二回の鈴木大臣の訪ソの際に、鈴木大臣第一回の訪ソの際にお約束になりました幹部会令――幹部会令でありますと具体的なそういった問題が記述されておりませんので、その範囲は北方につきまして線引きがあるということは必ずしもはっきりしてないわけでございますので、もうすでにその際に、二月二十四日の大臣会議決定が出ました後で鈴木農林大臣が訪ソされまして、幹部会令の表現でまとめようというお話し合いもされておりました。そういったこともありまして、大臣会議決定というものを協定の第一条に引くということは日本政府としては大変承認いたしかねるという意見でございました。
#186
○塩出啓典君 だから、それが政府の方針であったわけですが、しかし考えてみれば、この暫定措置法でいけと、ソ連側で見れば――政令はだめだといっても具体的な問題は政令ですから、だから私はそういう政府の方針から見れば、今回の前文並びに第一条にはソ連邦最高会議幹部会令第六条並びにソ連邦政府決定と、これが閣僚会議決定を指すと聞いておるわけですから、そうすると政府の方針に比べれば後退じゃないかと、こういう意見もあるわけだけれども、もともと幹部会令でいくということ自体がナンセンスであって、幹部会令の方針とソ連政府決定というもの、いわゆる閣僚会議決定というものは同じもの、一体のものであると、こう理解していいわけでしょう。別のものであるとするならば、政府の方針に対して後退というか、わが国の要望が伝わらなかったではないかと、こういうことになると思うんです。この点はどうなんですか。
#187
○国務大臣(鈴木善幸君) この幹部会令、ソ連邦沿岸に接続する北西太平洋の海域でかつ幹部会令の適用を受ける海域と、最初こういう合意をしたわけであります。ソ連邦沿岸に接続する北西太平洋の海域、まあこれにつきましては、ソ連邦は北方四島は自分の領土だと、こう認識するかもしれませんが、わが方はそうは認識しないということで、ソ連邦沿岸に接続する北西太平洋の海域、ここも玉虫色であったわけでございます。それから、かつ幹部会令の適用を受ける海域、私は幹部会令も当時見ておったわけでございますが、第一条に適用水域のことをうたっております。第二条、第三条等の規制の措置は第一条で定められた海域と、こういうぐあいに表現しておると、そういうことだと私は幹部会令を読みまして、幹部会令にもきわめて漠然たる海域の指定になっておると、こういうぐあいに理解をしておったわけでございますが、われわれの認識とまた別に、幹部会令第六条等というのが出てきたわけでございます。まあそういう点で、いろいろ交渉の過程におきまして、その後わが方の政府との間の見解なり、読み方なり、そういう点にいろいろの食い違いがあったことも事実でございます。
#188
○塩出啓典君 そこでわが国は、いままで基本的な立場は、北方四島というものはソ連の領有ということは認めていないわけです。したがってソ連政府が十二海里の領海を引こうが、それはソ連が勝手に引いておるわけで、それに対してはわれわれは特にいままでは認めてはいなかった。
 ところが、今回のこの日ソ漁業協定によれば、いわゆるこの二百海里という経済水域を認めたと、これはソ連が勝手に宣言をしてそれをわれわれがそんなの認めないというんではなしに、実際に双方のこういう協定の形で認めたということは、これは領土問題においてソ連の立場を一歩認めたことになるんではないか。もちろん第八条で先ほどからお話のあるような文章がございますけれども、しかしそれはそれとして。したがって、いわゆる漁業水域に関する暫定措置法のわが国の政令というものをソ連が認めてこそ後退をしなかったと言えるわけであって、現段階においてはやはり一歩弱いんではないか。こういう点はどうなんですか、私はそう思いますが。
#189
○国務大臣(鈴木善幸君) これは交渉の経過をお話ししないとその辺のことがよくわからないので、御理解を願えないんだろうと思うのでありますが、一条問題、二条問題、そして八条問題、この八条問題が合意するまで、これぎりぎりのところまでいったわけでございます。そういうことで、私が一条の適用海域の問題を認めましたのは、八条問題で話がついた時点で、一条、二条、八条、これセットにして初めて話がついたと、こういうことでございます。いきなり一条問題をもう認めておいて、そうしてずっと交渉やったという経過ではございません。それはいま塩出さんも御心配のように、北方四島を抱え込んだ線に実際上なっているわけでございます。そうすると、これは領土問題に差しさわりがあってはいけない、今後の領土交渉なり平和条約交渉なりに支障があってはいけないということで、私は八条問題で、この協定は純然たる漁業問題であって今後の両国関係、相互関係の諸問題についても両国政府の立場及び見解を害するものではないと、こういうことで合意をした、純然たる漁業問題としてのこれはラインであると、こういうことが合意されて、セットで初めて一条問題についてもわが方もそれではこれをのみましょうと、こうなった経過に相なっておるわけでございます。でありますから、一条問題で御指摘のような御心配、この点は八条問題によって十分にそれを処理するように、これはもう私だけの判断ではなしに、大事な一番肝心なところでございますので、本国政府にも請訓をいたしまして、条約局長初め法制局長官等専門家が集まって、総理の判断も仰いで、これなら絶対大丈夫ということでセットされたと、こういう経緯になっております。
#190
○塩出啓典君 だから、日本の領土の主張は貫けたということよりも、後退はしなかったと、前進はしてないと思うんですね、そのように理解いたします。私たちも条約はわが国の国益にかなうように読んでいかなくちゃなりませんし、けちをつけるつもりはさらさらないわけでありますが……。
 それともう一つ、さっき質問するのを思い出しました。
 この政令でございますが、暫定措置法の政令は、ソ日交渉の結果を待って出すのか、それとは関係なしにまず出すのか、その点はどうなんでしょうか。
#191
○国務大臣(鈴木善幸君) 政府としてはできるだけ早くこれを決めたいということでございますので、できるだけ国会が終わりまして早い機会に、事務当局間で十分詰めております報告を聞きまして、総理を中心に政府全体として結論を出すように努力したいと、こう考えております。
#192
○塩出啓典君 それから、ソ日協定が国会承認の必要のない協定であるやに聞いておるわけでありますが、大体私たちの感覚では、日ソ漁業協定とソ日漁業協定とは非常に双務的な問題ですから、それが一方が国会の承認事項であり、こちらが国会承認事項にならないというのは、どういう点に問題があるのでしょうか。
#193
○国務大臣(鳩山威一郎君) この今度のいわゆるソ日協定が日ソ協定のうらはらの協定であるという意味から、常識的に国会の御審議を受くべきものであるという御意見は、よく私どもも理解しておるところでございます。ただ条約が、いかなる条約を国会の御審議を得るものであるかというのは、いろいろずっと過去の例があるものでございますので、ソ日協定がいかなる内容のものになるかということによりまして、その内容によりまして、行政府に御委任をいただいておる権限の範囲内で処理できるものであるかどうかということをよく検討いたしまして、これはまだ態度を決めてあるわけではないのでございます。国会の御審議は尊重をいたすべきことは当然でございますし、政治的に重要な意義のあるものはおかけをいたすべきであるというふうに考えていることは変わりございません。内容がまだ全く確定いたしておりませんものでございますから、必ずおかけいたしますというところまでいまの段階で言い切れないということでございます。
#194
○塩出啓典君 次に、第二条の「日本国の地先沖合における伝統的操業を継続する権利を維持する」という問題でありますが、これはソ連がこれからのソ日漁業交渉において、いわゆる日本の十二海里内における操業を、漁獲を要求してこないと断言していいのか、そういうような危険性はやはりまだ残っているのかどうか、その点はどうなんでしょうか。
#195
○国務大臣(鈴木善幸君) ソ連は明確に断念をいたしておりまして、ソ日協定におきましては、この問題を蒸し返してくるということはないと確信をいたします。私は、ソ日協定で十二海里の領海内ではソ連漁船のみならず外国漁船は操業をさせない、特にソ日協定ではソ連漁船は操業ができないということを明確にこれを国民の皆さんにお示しをして、御安心を願える、こう思っております。
#196
○塩出啓典君 それから、漁獲量の決定の問題でありますが、今回はいわゆる昨年度の実績に比べて三六%減と、このようにいろいろ報道されておるようでありますが、これはどういう数字なんでしょうか。どういうのを分母にし、どういうのを分子にした数字なのかですね。
#197
○政府委員(岡安誠君) 三六%減の数字は、昭和五十年におきますわが国の漁船がソ連の二百海里内におきまして六月から十二月までの間に漁獲いたしました実績が七十一万三千トンでございます。それを今回ソ連と合意いたしました今年の六月から十二月までの四十五万五千トンで割りますと六三・八%ということになるわけでございます。
#198
○塩出啓典君 そうしますと、昨年一年間の全体の漁獲量とことしの一年、もちろん六月以降は予定ですけれども、それは確かに空白期間があったわけですね。あるいはその前の従来どおりの漁獲もあるわけでありますが、そういう点を計算すれば何%減になりますか。
#199
○政府委員(岡安誠君) 実はそういう計算を、少なくとも昨年の方は実績が明らかでございませんのでやってございませんし、また、五十年一年間で通してみるということも当然考えられますが、実はそれをやっておりません。と申しますのは、余り意味がないと言っちゃ語弊がございますけれども、一月から三月までは私ども何の制約受けないでやっていたわけでございます。四月、五月が休んでおりますから、それをどう想定するかという擬制をしなければならないということもございまして、いろんな数字をつくることは可能でございますけれども、一応計算はいたしておらないということでございます。
#200
○塩出啓典君 いわゆるソ連の二百海里内におけるわが国漁船の漁獲量の割り当ての決定、これはこの協定を見る限りは、かなりソ連政府が一方的に決めることができるようになっておるわけであります。きのうの本会議でも御答弁がありましたけれども、いまは実績主義よりもいわゆる余剰主義であると、こういう時代に入ってきておるんだと、こういうようなお話でありますが、これは結局ソ連政府としては一つの原則と申しますか、私たちもやはり生物資源の保護という立場から、余りたくさんとり過ぎて、とれる魚がだんだん小さくなっていくと、こういうような状態は、これは乱獲と言わざるを得ないわけでありますし、当然科学的な根拠に基づいた実績というものでなければならないし、その方がわが国の国益にも合うんではないか。たしかアメリカとの漁業協定の実績、いわゆる漁獲高というものは、かなりそういう科学的なデータに基づいてなされるようになっておるわけでありますが、この日ソ漁業協定の場合はどうなっているのか。この協定だけ見る限りにおいては、ちょっと日本の立場は弱いんではないか、こういう気がするわけです。その点はどうでしょう。
#201
○政府委員(岡安誠君) まず、ソ連の基本的な立場から申し上げないとよくわからないと思いますけれども、ソ連の基本的な立場は昨年十二月十日に出ました幹部会令、これに基本的な立場は述べてございまして、ソ連としましては、やはり生物資源の保存等について第一義的に考えまして、それにつきましては科学的データその他に基づきましていろいろ措置をする。しかし、外国の漁船に操業を許す場合には、やはり余剰原則というものでいくんであるということが幹部会令に書いてございます。また、これと同じ立場がアメリカの場合にもやはり書いてございまして、アメリカの保存管理法におきましてもそういうことが書いてございます。
 そこで私どもは、アメリカなりソ連と交渉する場合には、アメリカにつきましては漁業保存管理法、ソ連につきましては幹部会令、それを一応認めるという立場でなければ交渉ができないという状態でございますので、アメリカの場合におきましても形式的には、実際はいろいろ相談をいたし、協議をいたしましたけれども、形式的にはアメリカ政府が決定をする漁獲量、これを受けざるを得ないというかっこうになっております。
 ソ連の場合におきましても、実際短い時間でございましたけれども、精力的にネゴをいたしました。しかしこの協定の条文上は、これはソ連政府が決めて書簡として日本政府に渡し、これは日本政府が返還をするという形で決まっております。
 ただこの原則は、いわば各国共通であるのみならず、わが国の漁業水域に関する暫定措置法におきましても、農林大臣が、これはもちろん相手国と相談するんではなくて、私どもが外国漁船に対しまして最高限度を決めて許可をするというたてまえになっております。これはやはり現在の二百海里時代、余剰原則が貫いております二百海里時代におきましては、沿岸国の立場といいますか、これはやはりみずから限度を決めて、余剰の範囲内において相手国に与えるということは認めざるを得ないというふうに考えております。
#202
○塩出啓典君 私も不勉強で、余剰原則といまおっしゃいましたね、これ、幹部会令にはそういうのはどこに、何条にあるんでしょうか。私は幹部会令に余剰原則という言葉はないと思うんですが、どこを指して、どういう内容を余剰原則と言われているのかですね。
#203
○政府委員(岡安誠君) 幹部会令こうずっとございまして、外国漁船に操業を許すようなことが書いてあります。幹部会令の四条に、「もし何らかの操業対象魚種の資源の総許容漁獲量が、ソヴィエトによる漁業操業の作業能力を超えている場合、魚類及び他の生物資源の毎年度許容漁獲量の内で外国の漁船が捕獲できる部分。」を決めると、これで外国に対して操業を許すということになっているわけでございまして、これがいわゆる余剰原則と、それがこの幹部会令の精神であるというふうに私どもは考えておるわけでございます。
#204
○塩出啓典君 そうしますと、いわゆる第二条に「相互利益の原則」というものもあるわけですね。まあ相対する国がある場合に、日本の二百海里内あるいはソ連の二百海里内、こういうのを見た場合に、いままでは実際はソ連の海域で日本がとっておる方がはるかに多かったわけですね。この余剰の、原則から見た場合に、余剰分がどれだけあるかということは必ずしも両方一致しないと思うんですね。そういう場合に、余剰原則と相互利益の原則というものはどう違うのか、またどちらが優先するのかですね。
#205
○国務大臣(鈴木善幸君) 実は第二条を最終的に決めます場合に、「相互利益の原則に立って与えられる。」と、こう書いて最終的に決まったわけでございますが、ソ連の草案には、「相互利益の均衡の原則に立って与えられる」と、こういうぐあいにあったわけでございます。私はどうも、この「均衡」という字句が等量主義というようなニュアンスが多分にあるように感じまして、これはどうも適当でないと。日ソの関係見ましても、わが方はいままで百七十万トン近いものを漁獲しておる、ソ連漁船はわが方の沖合い海域においてせいぜい三十万トンないし四十万トン程度。そういう際において「相互利益の均衡の原則」、どうもこれが等量主義――ぼくは大分これはイシコフさんに、この「均衡」という文字はどういう意味なんだということをさんざんただしたわけでございます。それに対して、量的な問題も考慮しておるし、あるいは質的と申しますか、価値の面の考慮もあるとか、いろんな説明をしておりましたけれども、こういうことはお互いに遠洋漁業国として適当ではないではないか。あなたの方もECといま交渉されておる。ECがソ連の海域でとっておるのは六万トン程度、あなたの方がECの海域でとっておるのは六十万トン、こういうような交渉が難航しているという中で、日ソ両国間の協定で均衡という原則を明示するということは適当でない、こういうような議論なんかもやりまして、とうとう「相互利益の原則」で折り合ったと、こういう経過になっております。
    ―――――――――――――
#206
○委員長(寺本広作君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、羽生三七君及び川村清一君が委員を辞任され、その補欠として竹田四郎君及び安永英雄君がそれぞれ選任されました。
    ―――――――――――――
#207
○塩出啓典君 そうしますと、最初は「均衡の原則」が「相互利益の原則」に変わったわけですね。それは、ソ連の海でとる量と日本の海でソ連がとる量とを同じようにしなければならないというニュアンスを薄めるためにですね。これはソ連語も変わったわけなんですか。いわゆる向こうのソ連語の原文ももちろん変わってそういう方向の意味になったということなんでしょうか。
#208
○政府委員(宮澤泰君) ロシア語のテキストもそのように変わりましたです。
#209
○塩出啓典君 まあロシア語はよくわかりませんので信頼をいたします。
 そこでこの「相互利益の原則」というものは、これはこの協定の条文の中に載っているわけですね。けれども、余剰原則というものは全くこの中には出てきてないわけでありますが、これは幹部会令では確かにあるわけです。これはソ連政府の国内法であって、まあしかし、やはり私が心配するのは、日本に対する割り当てがもう単なる政治的な配慮で、余剰の原則からいえばかなりこれだけあるのに、ほかの原則で少なくされるんじゃないかと、こういうことを心配するわけですけれども、その点は農林大臣はどう考えていますか。
#210
○国務大臣(鈴木善幸君) この点は、イシコフ大臣もるる私に説明をしておった点でありますが、自分の国もアメリカ、カナダ、ノルウェー、EC、アイスランド等々から大幅な漁獲量の削減を強いられておると、その削減された量は六百万トン近いものがあると。そこで、この海域で最終的にそういうことになると多数のソ連漁船が操業不能になってくると、その操業の場所の配置がえ、漁場の転換ということに非常に頭を悩ましておると。したがって、今後それらの漁船を北西太平洋の水域に回すということになれば余剰などというものは出てこないと、全部とれるだけの漁獲能力を実は持っているんだと。しかしながら、日本の今日まで長い間の実績、特に零細漁民諸君等のことを考えた場合において、わが方としてはそういうことを考慮しながら日本側に対する漁獲量を決定をしたと、こういう説明をしておるわけでございます。
 でありますから、先ほども秦野先生からいろいろ御指摘がありましたが、余剰の原則というのが一体中身はどうなんだということにつきましては、明確なことではございませんけれども、二百海里時代のそれぞれの資源保存管理法にしても、ソ連の今度の幹部会令にしても、いずれも自分の国でとって、そして余裕があった場合にはこれを外国の漁船に漁獲を認める、こういう立場に立っておると、こういうことが言えると思います。
#211
○塩出啓典君 それから、この暫定協定は十二月三十一日までが期限でありますが、それまでに本協定が締結されませんと、また無協定状態になって日本の漁船が出漁できなくなると、こういうような状態になると、わが国としてはやはり本協定というものを粘り強くやっていけなくなってくるんじゃないかと。そういう点でぜひとも本協定は速やかにやっていくべきである、このように考えておるわけでありますが、大体本協定はどういう内容のものになるのか、またその見通し等はどうなのか、年内早期締結の自信はあるのか、その点はどうでしょうか。
#212
○国務大臣(鈴木善幸君) この点につきましてはイシコフ大臣とも話し合いをしてまいりました。
 まず、今年中の暫定取り決めとしてソ日協定をすぐ始めようということで、六月の中旬までにわが方のソ日協定に対する草案を向こうに示す、それを検討した上でおおむね二十日前後に東京においてソ白協定の交渉を始めよう、そしてそのソ日協定の交渉をやりながら基本協定の大綱と申しますか、大筋についても話し合いをしようと、そして今年度中の日ソ協定、ソ日協定の暫定協定の期限が切れないうちに基本協定が締結されるように運ぼうと、こういう基本的な了解をイシコフさんとの間につけてきておるわけでございます。でありますので、ソ日協定をまずつくる、そして日ソ協定、ソ日協定、この両協定を踏まえて十月ころにはぜひ基本協定を締結をし、十一月ころまでに国会の御承認を得るようにしたい、そういう心組みで取り組んでいきたいと思っております。
#213
○塩出啓典君 それでは最後に、今回の漁業交渉を通していわゆる北方領土問題、これが大きな国民の関心を呼んできたわけでありますが、まあこれは常々言われていますように、もう戦後すでに三十数年を経過いたしまして、この北方四鳥にも何千人かのソ連人が住んで、まあ中には国後、択捉等が自分のふるさとである、こういうソ連人もだんだんふえてくると思うんですね。しかも、もう三十年間領有していけば、やはり人の物でも借りて三十年もたっておればもう時効の原則もあるわけですし、まあそういう点から、本当に長引けば長引くほどこの北方領土の返還というものは非常に困難になってくる、このことは私は否めない事実だと思うんですね。そういう点で今日までわが国の政府なり政治家の努力が十分であったか、そういう点は反省すべき点もいろいろあるかもしれませんが、そういうことは言っても始まらないわけで、大事なことはこれからじゃないかと思うんですね。そういう意味で私はこの北方四鳥の返還問題については本当に真剣に取り組んでいかなくちゃいけない、私も一昨年でございますか、外務委員として外務委員会で北方四鳥の視察に参りまして、あの納沙布岬とか羅臼とか根室とかそういうところへ参って、いろいろ漁業関係者の今日までの苦難の歴史とかそういうものをいろいろ承って、本当にこの北方四島に対する一つの執念と申しますか、そういうものをはだ身で感じました。やっぱりそういうものは現地へ行ってみないとなかなかわからないものだと思うんですね。そういう意味で、その視察から帰って当委員会でもいろいろ論議があり、各委員からも、また現地からも外務大臣にぜひ来いと、そういう要望があって、それを委員長から外務大臣に伝えて、当時の宮澤外務大臣も現地へも行かれたわけでありますが、私はそういう意味で北方領土の問題の解決のためには、やはり外務大臣として北方四島の視察をやるべきじゃないか、そしてソ連に行かないと、ソ連に行ってもこっちの日本の国内にも行かないで行ったんでは、私はその執念というものが伝わってこないんじゃないかと思うんですが、そういう点の外務大臣の見解を承りたい。
 それともう一点は、やはりこれから北方問題にどう取り組んでいくか、ただ、いままでと同じように事を繰り返していったんでは結局は私は解決はしないと思うんですね。そこに一つの発想の転換が必要ではないか。これは私にこうしろという具体的な提案があるわけではありませんが、やはりもっともっとソ連の国民性を研究するなり、やはり日本の国内にもソ連にもっともっといろいろ詳しい人もいると思うんですね。そういうような人を選んで一つのプロジェクトチームをつくるなり、やはり外交においては、敵を知りおのれを知る者は百戦して危うからずという孫子の兵法にもあるように、ソ連をよく研究していくことも私は本当に必要じゃないかと思うんです。そういうことも含めて、外務大臣としては北方領土返還にどういうことを考えて熱意を燃やしていかれるのか。外務大臣はすぐかわっちゃうわけなんですが、願わくは鳩山外務大臣のときに一つの軌道と申しますか、まあ鳩山さんの外務大臣のときに返るとか、そういう簡単なものじゃないと思いますが、一つのレールというか、一歩一歩積み上げているんだなというそういうものがないと、何となくいつまでも平行線あるいはだんだん遠ざかっていくと、こういうことでは非常に残念だと思うんですね。私はもっと、アメリカ、イギリスのあのヤルタ協定に参加した国々の協力を求めるとか、こういうようなこともやっぱり一つの方法じゃないかと思うんでありますが、そういうことも含めて北方領土返還にどう取り組んでいかれるのか、この二点について承っておきたいと思います。
#214
○国務大臣(鳩山威一郎君) ただいま塩出委員のおっしゃいましたことまことにそのとおりと思います。戦後三十一年、それから共同宣言ができましてからもう二十一年を経過いたしたわけでございまして、したがいまして、いまおっしゃいましたような北方四島に住みつく、居住するソ連の方々がふえていくということにつきまして御指摘のような心配があるわけでございます。したがいまして、私自身といたしましてこの二百海里法というものがしかれたということ、これは戦後におきまして大きな転換の時期に遭遇しているわけでございます。したがいまして、国民世論の間でもこの領土問題が当然大きくまた取り上げられた時期に遭遇するわけでございますから、この機会をとらえまして、ぜひともソ連との間に領土問題の解決のために一歩でも二歩でも前進をいたしたいというのが偽らざる気持ちでございます。
 もとより大変困難な道である。戦後三十一年間解決できなかったということは、いかにこれがむずかしい問題であるかということを物語っているわけでございますから、ただいまお示しになりましたようなあらゆる手段、方法を研究いたしまして努力をいたしたいと思います。また、現地の方々の御意見等も十分承る機会があれば、ぜひとも承りたいと思っておるところでございまして、また、この問題につきましてはやはり国民的なバックがぜひとも必要であると思います。そういう意味で、今回の漁業交渉につきましては長い間かかりました。しかし、この努力は決してむだではなかったと思うわけでございます。これからの交渉につきましては、国民の広い世論とともに、また各政党の御意見も十分に承りまして立ち向かいたい、腰を据えて取り組みたいと、このように考えておるところでございます。
#215
○塩出啓典君 最後に、外務大臣、やっぱりあなたもやがて訪ソもし、また領土問題等も話し合っていくことになると思うんですけれども、私は、ソ連に行く前にやっぱり北方四島の視察に北海道へぜひ行ってもらいたい。私たちも行ってきた経験からそう思うわけですから。もちろんああいうところへ行けば外務大臣として何か責任があるというように、そういう狭く考える必要はないと思うんですよ、これは長い将来にわたる問題ですから。だからぜひ近い将来ソ連等に行くその前にやはり現地を視察をしたいと、こういうことはひとつ明言してもらいたい。
#216
○国務大臣(鳩山威一郎君) 現地を拝見できれば、ぜひとも伺いたいと思っております。これもなるべく早い機会に実現いたしたいと思います。
#217
○矢原秀男君 今度の日ソ問題については、農林大臣、本当に御苦労さんでございました。国民も、非常によくやったというような感触もございます。しかし、日ソ問題と言えば北方四島の領土問題、そうして日本の将来の食糧問題を解決するかどうかというこの漁業問題というものに非常に関連をしておりますので、大国のソ連の無理押しに非常に日本が犠牲を払った、こういうふうな国民の方々の大半の声があるということはこれは私はもう当然だ、こういうふうに感じておるわけでございます。
 そこで第一点は、反省の意味でこの点をまず尋ねたいわけでございますが、経済水域の二百海里というものは、昨年ごろは漁業専管水域という形で世界の趨勢というこういう話題が出ておったわけでございます。こういう問題について、外務省はどういう対応をすべきであるかという、そういう所作があったのか。あわせて農林省としても、漁業問題に対して米ソの動きがどうなるんだ、そういうことでその対応というものが昨年はどういう形で検討されておったのか、まず両省の姿勢をお伺いしたいと思うんです。
#218
○国務大臣(鳩山威一郎君) 二百海里問題につきまして、昨年はアメリカが実施をしたということで、外務省は農林省と一緒になって対米につきまして折衝を重ねておったわけでございます。そして、わが国自体がこれをどうしたらいいかということにつきましては、両省との間でいろいろな意見の交換はいたしておったわけでございますけれども、これからの対策というものは、国連海洋法会議等の結論を待ってから日本としては対処をすべきであるという従来の方針に沿った考え方でおったわけでございます。そのために大変対処がおくれたではないかという御指摘はこれは甘んじて受けなければならないと思いますが、対米折衝におきましても、アメリカのような大国が国際的な話し合いがつく前に単独で施行することは大変承服しがたいという態度でアメリカに対しても臨んでおったこともございまして、日本としては、国際的な話し合いがついて、それは先ほど農林次官の発言等もありましたけれども、もう一年くらい先ではないかというようなことを考えておったのは事実でございまして、そのためにおくれたということがあればそのとおりでございます。
#219
○国務大臣(鈴木善幸君) ただいま外務大臣から申し上げたとおりでございまして、私も実際に、今回日ソ交渉に当たりまして、わが方も、ソ連に先立って二百海里の適用をやるというわけにはまいりませんけれども、ソ連が幹部会令の適用海域を設定をしたという場合には、直ちに日本もそれに対応できるような漁業水域に関する画定措置法等が用意されておれば、もっと交渉は相互の関係においてうまく進められたのではないかというような点等を現実に体験をいたしまして、深く反省をいたしておるところでございます。
#220
○矢原秀男君 両大臣には昨年はまだ就任されておられませんでしたので非常に申しわけないわけですけれども、私は二月にアメリカに行く前に、外務省に、今後は経済水域の二百海里の問題が課題となるからというのでレクチュアを受けました。二百海里は絶対日本は反対ですと、そういう形でアメリカに行ってハビブさんとか、とにかくホワイトハウスの高官すべてと会わしていただきましたときに、情勢が違うから、私はとにかくアメリカの場合も日本の実績、そうしてお魚を食べる日本民族という立場、そういうことで日米安保とかそういうものの軍事に力を入れるのでなしに、日本の経済を考えてほしいと、そういうふうにして滞在の十日間近く一生懸命やりました。そうして二月の十日に当時の大統領がニューハンプシャーで初めて記者会見をしましたときに、新聞記者から二百海里の問題はどうするんだと、世界じゅうのどの国が反対をしてもアメリカは経済水域二百海里は必ず断固としてやりますと、私もびっくりして、帰るなり当時の安倍農林大臣に決算委員会で、アメリカの大統領初めそういう考え方はこうなんだと、農林省としても積極的にやってほしいと、そういうふうにしていち早く私は訴えたわけです。当然アメリカがこういうふうな問題をやればそれはソ連に対応する問題であることは明らかになっているわけです。そういうときに、外務省も農林省も昨年の二月ごろにはまだ平然として、そういう大国の諸問題に対して対応ができてない。日ソの問題がここで出てきている。後の大臣やいろんな関係者の方が苦労される。苦労されるだけではなしに、日本の国民の方々がみんな苦い思いをして、いま外交が力と力になっておりますけれども、力と力以外に解決する問題、それを日本が見出していかなくちゃいけないのに、常に後追いの情勢になっている。
 私はこういう問題を考えましたときに、当時は三木総理のとき、福田さんは副総理です。三木さんも福田さんも責任があります。あなた方は大臣になっておられませんけれども、本当に世界が動いて動いて動き回って、どうにもならなくなってから平気で動いている。まずこのことは、いま大臣の方も反省という点がございましたが、私は両大臣でなしに、あの当時の日本の政府、国民の皆さんの前に反省をしていかなくては、こういう後追いの日本外交ではいけない。日本の将来の食糧問題考えても、こんな立場で農林省がいいのかという問題が出るわけです。このことは、私は国民の立場からあれだけ何回も言っているのに、こういうように対応がおくれて残念でいたし方ございませんけれども、過ぎたことはどうしようもございませんが、今後全力を挙げていただきたいと思います。
 では第二点目でございますが、農林大臣、第六条の交渉のときに問題点になった点はどこでございましたでしょうか。時間ございませんので、第六条と第七条。
#221
○国務大臣(鈴木善幸君) 第六条、第七条、ともにこれはソ連邦がこの海域に対しまして漁業上の主権的権利を行使すると申しますか、漁業規制という管轄権を行使をする場合におきまして、この海域で操業いたします日本漁船並びにその国民がそれに対して違反の起こらないように、政府は、この協定の各規制の条項を遵守するように責任を負うということを定めておるところでございます。
#222
○矢原秀男君 私もこの第六条、七条読んでおりまして涙が出るような思いであったわけでございますが、漁獲の量が制限をされた、そういう漁船に従事する人、関連業者、こういう形を見て、まず第一線の漁船の場合に、「これらの規定又は規則に従わない日本国の国民及び漁船は、ソヴィエト社会主義共和国連邦の法律に従い責任を負う。」と、こういうようになっておりますね。まあこれだけを見れば取り締まりの権利及び裁判権というものの形が第七条まで続いてくるわけですけれども、もう一歩深く入ってくれば、日本人は人間として取り扱ってもらっているのかという問題が出てくるんですね。そういう点で、私、現地に行ってないわけですから大臣にただしたいと思いますけれども、これは、一口に言えば第六条はソ連の国内規則に従わないわが国の国民及び漁船はソ連の法律によって処罰をされると、こういうことなんですね。その点、大臣どうなんですか。
#223
○国務大臣(鈴木善幸君) これは二百海里法の規定で普遍的なものでございます。アメリカの保存管理法におきましても同様の規定があり、外国の国民並びに漁船は、その海域で許可を受けて操業いたします場合にはこういう規制を受ける、またそういう責任を負わされる。同様にソ連においてもそのように規定がなされております。また、わが方の漁業水域法におきましても同様の措置をとってまいることに相なっておるわけでございます。
#224
○矢原秀男君 昨年の十二月十日付のソ連最高会議幹部会の命令によって、違反者には罰金刑を科することとし、行政規則で科する罰金刑は一万ルーブル、約四百万円、これ間違いないですか。
#225
○政府委員(岡安誠君) 幹部会令にそのように記載されているわけでございます。
#226
○矢原秀男君 まあ海でお魚をとっていく、そういうふうな形の規則の中で一万ルーブル、約四百万円というものが軽いのか重たいのか、いま大臣が言われたように、日本の二百海里内、そうして領海十二海里の中では当然やらせないと思うでしょうけれども、十二海里から二百海里の間、そういうふうな中で、日本の場合はソ連と同じように条件がそろえば四百万円の罰金刑に科するのかどうか、そういう点どうですか。
#227
○政府委員(岡安誠君) ソ連船がわが国の漁業水域内で操業をするという場合には、わが国の漁業水域法に従って操業しなきゃならないわけでございますが、それに違反すれば漁業水域法の十七条によりまして一千万円以下の罰金ということになっております。
#228
○矢原秀男君 じゃ、その違反という場合には、一千万円というのは日本も相手方にそういうふうに対応するわけなんですか。
#229
○政府委員(岡安誠君) そのとおりでございます。
#230
○矢原秀男君 ソ連の方では、その他の重大な結果を招来したか、あるいは違反が何度も繰り返されたときは、その違反者は裁判責任に問われて、裁判所によって科する罰金刑は十万ルーブル、約四千万円としておりますけれども、これは間違いないですか。
#231
○政府委員(岡安誠君) そのとおりでございます。
#232
○矢原秀男君 では、日本の場合も同じ条件のときには四千万円なんですか。
#233
○政府委員(岡安誠君) これは実は漁業水域法の案をつくる場合いろいろ問題になった点でございます。おっしゃるとおり諸外国のこの二百海里系統の罰金は相当高い。たとえば一般的にはソビエトの場合にも一万ルーブルでございますが、特定要件の場合には十万ルーブルまで罰金刑を科することができるということになっておる。そこで、わが国の漁業水域法でこの罰金刑をどうするかということを検討いたしたわけでございますが、御承知のとおり、わが国の法体系、それを維持するための刑罰体系等を検討した場合に、罰金刑はそう高い罰金が現在はないわけでございます。そこでいろいろ検討いたしまして、国内法上最も高い罰金刑を科し得るとするならばどのくらいであるかということを法務省と相談いたしまして、現在におきましてはやはり一千万円というのが国内法のほかとのバランス等を考えての最高の額であるということになりましたので、いわば現在におきましては一千万円の罰金刑というふうにならざるを得なかったわけでございます。これは現在の法律のバランスにおきます最高でございますが、これにつきましては、おっしゃるとおり諸外国との相互主義という点におきましては問題はございます。ただし現状ではこれが最高でございますので、今後は法務省とも相談いたしまして、法制審議会とも相談をいたしまして、わが国の罰金刑の体系を変えるということによって、この漁業水域法の罰金刑の額も諸外国とつり合いがとれるようなところまで上げてまいりたいというように思っております。
#234
○矢原秀男君 ソ連は四千万円と言ってうちは一千万、だから上げるのではなしに、ソ連にこういう過酷なことをしたら困るではないかと、お互いが話し合いをすればいいんだから。そういう話はされたのかどうかということなんです。
#235
○政府委員(岡安誠君) これまあすでに国内法といいますか、幹部会令というものがすでに制定された後に私どもソ連に参りましていろいろ交渉いたしたわけでございますので、これを修正するような話は実はいたしておりません。ただ言われますことは、わが国の一千万円というものが諸外国に比較してむしろ安いというのが相場のようでございますので、私どもといたしましてはむしろ均衡をとるという立場だけから考えれば、この一千万円の方を修正をするということの方が適当であろうというふうに考えております。
#236
○矢原秀男君 第七条の後半には、その上にまた「漁船及びその乗組員は、適当な担保又はその他の保証が提供された後に」という条文があるんですね。そういうふうになった上で、またソ連では裁判所は違反した漁船、漁具、機具、不法に捕獲したすべてのものを没収すると。まあ言うなればソ連絶対優先の中で、本当に農林大臣にはこういう中で、最初からお話がありましたけれども、ソ連というなかなかつかみにくい国の中で御苦労されたと思います。思うけれども、私はこういう漁業者の人々が過酷な刑を受ける、そういうことは今後やはり日本の政府としてもある程度は言いたいことは堂々と言って、そうして漁船に従事する人々の人権というのか、これはもっともっと力を入れていかなくてはいけないと思います。その点について、農林大臣にこの点についての最後の答弁をお願いしたいと思います。
#237
○国務大臣(鈴木善幸君) 矢原先生のおっしゃる気持ちは私もよく理解ができますし、私も同感に存じます。ただこのソ連の幹部会令、それから出てまいります政府の諸規制というのは、日本漁船だけに適用されるのでなしに、ソ連がECなりノルウェーなりその他の国々とやりますところの漁業協定には全部同様のことが盛り込まれるわけでございまして、日本だけに特別過酷にするということでなしに、これは幹部会令、国内法でも決めて、そして諸外国との漁業協定においてはこういう規制と厳しい条件を付すると、こういうたてまえになっておるわけでございますので、そういう事情もひとつ御勘案、御理解を願いたいと、こう思うわけでございます。
#238
○矢原秀男君 ひとつ日本人の人々のいろんな事故等もございますでしょうが、その人たちの立場に立って政府も動いていただきたいと思います。
 最後の一問、私の方で、時間がございませんので言いっ放しになりますので、後で答えていただきたいと思うんです。
 協定第四条に基づくいろいろの漁獲の割り当ての問題でございますけれども、水産加工関係者その他の関連産業関係者、魚箱をつくる人、漁船、魚の網等の製造修理業、生鮮魚介の卸売業、運送等、こういうふうな生活を守るために緊急対策というものについてのいろんな質問があり、答弁等もあったわけでございます。
 そこで、時間がございませんから、簡単に二点の問題だけを質問いたしますが、一つは、宮城県の塩釜市の陳情でございますけれども、五月から六月分のつなぎ資金がほしいという要望もあるわけです。
 その一つは減船に伴う補償についてでございますが、その一といたしまして、船員の給与については補償がないわけです。そういうふうなことで、何とか生活ができるような補償制度が明確にできないものかどうか。
 第二点目は、減船補償については経営者等にはあるわけでございます。そういう人たちも含めてでございますけれども、免税についての、税の特例をしてほしいという声。
 第三番目には融資についてでございますが、一次加工業のうち、すり身業者は対象になっておりますけれども、かまぼこ業者は除外にされております。これも融資制度の対象にしてほしいということでございます。塩釜ではすり身、かまぼこ、これは一貫作業の業者というものが非常に多いわけでございます。そういうふうに要望が出ておりますが、これは決して塩釜だけではなしに、日本全国の関連の人々の大きな声にもつながると思うので、この点について答えていただきたいと思います。
 もう一つは、日ソ暫定協定に伴って北海道とか北陸だけではなしに、実は近畿関係の日本海の漁業も影響を受けていることを知っていただきたいと思うわけです。私が住んでおります兵庫県においても、日本海の沿岸においては、ソ連の二百海里内での操業及び漁獲を行っているのはイカ漁があります。特に香住漁業組合というのがあるわけでございますが、年間約七十億円の水揚げが、いろんな種類もありますけれども、あるわけでございます。このうちの七〇%がソ連の二百海里内での漁獲であります。今回の協定に伴っては、イカの漁獲のうち、漁業者の人たちには減漁とかいろんなものがあると思うんですけれども、幸いには、農林大臣承認のイカつり漁船が百九十九隻、知事承認の船が十隻、計二百九隻で操業しております。幸い今回は減船の措置はなかったようでありますけれども、これらもことしから、また今後大きな問題となりますので、政府としてはこういうふうな形に対しての見通し及び見解をどういうふうに持っていらっしゃるのかお伺いしたいと思います。
 時間がございませんので以上質問します。
#239
○国務大臣(鈴木善幸君) 香住は日本海における有力な漁港でございます。いまイカつり漁船の問題が具体的に出たわけでございますが、今回の漁獲量の割り当ての中で、イカ、サンマあるいはツブというようなものは従来の実績にほとんど近いクォータが与えられております。
 なお、操業海域につきましても、当初ソ連の提示されました案というものは非常に厳しいものがございましたけれども、これも海域を、交渉の結果日本海で大幅に広げることが実現をいたしました。そういうようなこともありまして、イカつり漁業に対する影響というものはほかの業種よりも非常に軽微に終わったということが幸いだと、こう考えております。
 なお、今後におきましてもこういう漁獲量、操業の体制が確保できるように、基本協定等の際におきましても最善を尽くしてまいりたい、こう思っております。
 前段の、今回の漁獲量の削減に伴いまして減船のやむなきに至るもの、また、そのための乗組員の転職、その他の雇用問題、それに対する政府の救済措置、さらに関連企業の問題も相当の影響を受けております。それらの影響の度合い等を勘案をいたしまして、長期低利の融資、その他の措置を十分考えるようにいたしたい、こう考えておりますが、できるだけ今月中に閣議でもってその基本方針を定めまして、その救済措置ができるだけ早く実施に移されるようにしてまいる方針でございます。
#240
○対馬孝且君 きのうの本会議におきまして私から農林大臣、総理並びに外務大臣に対しまして協定をめぐる本質的な問題につきましてお答えを願いました。しかし、その問題に関してまだ明快な掘り下げられた回答、解明がされておりませんので、その点にひとつ時間もありませんのでしぼって申し上げたい、こう思います。
 まず第一の問題でありますが、第八条の問題をめぐりまして先ほど来お答えがございました。私は本会議で申し上げましたように、ソ連側が交渉の過程において領土問題にからんで「その他の」の四字を非常に固執をした。必要以上に固執をした。「その他の」の四字をソ連側が固執をした最大の理由は、つまり領土問題ということを意識をしたために「その他の」の四字に非常に固執をされた、こういう経過があるわけでありますが、この理由につきまして、どこにその点の問題点がどう理解されているのか。「その他の」ということは領土を指しているのか。それが災いをしてどうしても固執をしたのかという、客観的にはそうとられるわけなんでありますが、これをどのように受けとめているかということをまず第一点、ひとつお伺いしたいのであります。
#241
○国務大臣(鈴木善幸君) この八条問題は最後の、まとまるか、妥結か決裂かということをかけて最後にこの問題をソ連側に提案をしたわけでございますが、その最終段階で、これはひとつ純然たる漁業問題として処理しなければ、両国のいろんな戦後未解決の問題等という背景があるということで、最終的にイシコフさんとの間で合意をいたしまして、この八条の問題でようやくわれわれは迷路を脱することができたと言って手を握って、これでいこうということに合意をしたわけでございます。
 その際に、その基本的な考え方に基づいて法律専門家にひとつおろして成文化を願おうではないかということになったわけでありますが、この法律専門家の折衝におきまして、A案とB案ができたわけでございます。ところがその夕方になりましてイシコフ大臣から、自分の方としてはB案が好ましいという連絡がございました。私は、日本側としては二つの案が上がってきたが、A案がいいと考えておるという話をいたしましたわけでありますが、B案でそれじゃひとつ日本政府の方にも諮ってみようということにしたわけでございます。
 しかるところ、日本政府の確認も得まして、翌日イシコフさんに、その案でわが方も受諾をすると、したがって一条、二条の問題、八条の問題でこれがすべて解決をしたなと、全体としてひとつこれで確認、妥結ということを期待して私参ったわけでありますが、しかるところ、それに対して新たな八条に対する提案がございました。これはわが方としては絶対に受諾できないものであり、いわゆる幻の修正案という形で新聞でも報道されたような経過がございます。
 私はその案を検討した結果、翌日イシコフ大臣に会って、自分と二人の間であれだけの意見の一致を見て、それを法律専門家で検討させてA案とB案が出た。そしてあなたの方はB案がぜひ望ましいというからB案で東京の承認を得た。しかるに突然ああいうような修正案をまた持ち出してくるというようなことは、これはわが方としては絶対に承服できないし、そういうやり方についてはわれわれとしてはソ連の態度に対する国民の不信感というものを増幅するだけだということを強く求めましたところが、いや、あの修正案はひとつ撤回をいたします、A案にいたしましょう。日本側がこの方がよろしいというA案に今度は出てきたわけでございます。その際に「その他の」の字句を削ったらどうだろうか。これは専門家の検討の際においてA案、B案ができる段階において、「その他」を入れるか入れないかということでいろいろ議論があった問題なそうでございますが、これを「その他」という字句を削ることが全体としての法文の体系からいってどうだろうかと。私は法律の専門家でございませんので即答を避けまして帰ってまいりまして、斎藤条的課長やその他の専門家の諸君、ここにおられる宮澤局長等にも御検討を願い、さらに大事をとって東京に請訓を仰ぎまして、条約局長及び法制局長官等があらゆる角度から検討をした結果、「その他」の字句を取っても全然この八条のうたわんとする趣旨は、目的には差しさわりがないと、こういう結論に達しまして、これで八条問題がセットされたと、こういう経緯に相なっております。
 なお、法文上の問題につきましては条約局長の方からお願いをしたいと思います。
#242
○対馬孝且君 農林大臣が大変御苦労なさったことについてはきのうも本会議で申し上げておりますから申し上げませんが、私は、そのとおり、大臣がお答えになったとおり理解したとしましても、この種の例で、昭和四十八年、田中・ブレジネフ共同声明、これができ上がったときにやはり領土問題の解釈をめぐって重大な論争が闘わされております。この際も、国民の疑惑を晴らすためにおいて、つまり口頭でありますが、議事録として実はとどめて残っているわけであります。この点もしそのとおり、いま農林大臣がお答えになったような理解をしたとするならば、何らかこれは会議録なり議事録にやっぱりとどめておく必要があるのではないか、これは領土問題でありますから。この点がいかなる会議録なり議事録に残っておるのかどうか、この点は明らかにしてほしいと考えます。
#243
○政府委員(中島敏次郎君) ただいまの先生の御質問は「その他の」という言葉の有無についての御質問だと理解いたしますが、この「その他の」という表現が落ちました経緯につきましてはいま農林大臣からよく御説明がありましたとおりでございまして、私ども専門家といたしましても、本来、農林大臣からもお話しにちょっとございましたように、「その他の」という言葉がある方がいいのかない方がいいのか、専門的な立場から検討をいたしました。なまじっか「その他の」というような表現がありますと、何に対して「その他の」だ、というようなよけいな問題も出てくる。むしろそれがなくて、「相互の関係における諸問題」という方が簡明直截でよろしいという考え方をむしろ持っておったわけでございます。たまたまソ連側からもそれを取ろうという話がありましてこれが落ちたということでございまして、この点については何ら特別に深い意味はないということを断言できると思います。したがいまして、この間の経緯につきまして別に合意議事録なくしては明快さを欠くというような事情も全くございませんので、何らそういうものをつくっておらないと、こういうことでございます。
#244
○対馬孝且君 それであるとすれば、私はやっぱりそこで具体的にそれじゃお伺いをしなきゃならないわけでありますが、率直に言って北海道の漁民団体が、私はこの間三十一日から北見、紋別と釧路の現地へ行ってまいりました。
 そこでお伺いするんでありますが、やはりこの四字の削除を固執したという点を裏づけられる印象として漁民側が受け取っておりますのは、先ほども出ましたが、つまりこの漁業水域暫定法案を通すときにはお互いに、ソビエトの一方的な主張に対してこの際わが国の主張というものをはっきりさせようではないか。それは言葉ではっきりさせるというのではなくて、二百海里法という時代を迎えてのつまりこれに対する対案としてこちらが望むものは一体何であるかということで政府はいろいろ検討した結果、この際二百海里法案というものを国内法を制定をして相打ちをすべきである。これがわれわれ野党としましても全く同感をしてこの法律をあの日曜を返上してまで五月二日にわれわれも参加をして仕上げた、いま国民はそう思っておるわけです。ところが、相打ちになったと思ったところが、現実の北海道の漁民の実態は、率直に本会議で私申し上げましたように、あの貝殻島のコンブにおいては直ちにこれは操業停止と、それから羅臼における三海里西以降の漁民のこれまた漁業も停止と、こうなってまいりますと、結果的には二百海里という漁業水域法というものを相打ちにさせるために与野党挙げて国民の国論としてソビエトに向かったにかかわらず、いまになってみると結果的にはかえって悪くなったんじゃないかと、現状維持というよりもかえって後退したではないかというのが率直に言って漁民の感情ですよ。これは決して鈴木農林大臣悪いと私は言っているんじゃない、現地動向、漁民の感情、現実に北海道の私現地へ行ってきたんだから。ところが、きのうも私は本会議質問で申し上げているのでありますが、率直に現在より悪くなったじゃないかと、むしろ国会は一体何のために法律を、漁業水域法をつくったんだと、こういう感じをぬぐい去っていないんですよ、私は率直にいま申し上げたいことは。
 それで、私はこのことに固執をしているわけでありますが、私はそうであるとするならば、少なくとも先ほど、これからのソ日交渉において、農林大臣のおっしゃるとおりだと思うんです。絶対十二海里の領海の中には外国船は入れない、これについてまあ確信、私は信じます、そのとおり対処してもらいたいと思います。ただそこで、また疑問が出ますのは、つまりこの高度な政治判断によって、これからが問題でありますけれども、これ衆議院でお答えになっておりますから、間違いであれば御指摘願っていいんでありますが、わが党の土井さんの質問にお答え願っておるのでありますが、これによると、高度の政治判断で、きのうもちょっと私の本会議質問に対して総理がかなりニュアンスのあるというか、むしろ後退的な印象を持った答弁を、福田総理に再質問できないもんですからしなかったんでありますが、時間がありませんからできなかったんでありますが、どうもそこらあたりが、適用除外ということは客観的に言うならば現在領海法の朝鮮、韓国に対する取り扱いと私は同じだと思うんです、適用除外ということは。もっと端的に言うなら、現状の体制の海域だということなんです、適用除外ということは、北洋地域については。
 ところが、そういうふうになるはずのものが、先ほど言ったように、現実にはコンブ漁は停止される、羅臼の漁民の操業は停止をされるということになったんでは、これはもう実感として、これは農林大臣、外務大臣にもお伺いするのでありますが、ここらあたりがきちっと適用除外とは韓国取り扱いと同じでありますと、したがって今日までの、まあ既得権という言葉をあえて使わせてもらうんでありますが、つまり漁民の既得権は従来の実績、従来の既得権の状態を絶対侵すことはありません、そういう基本で、これからのソ日交渉については絶対に皆さん方に御迷惑、漁民に被害をかけることはないと、こういう理解をしていいのかどうかということを、時間もありませんから、私はその点をぜひきょうのこの委員会で聞いてくれと、こう言ってきのうも実は三十人ほど来ているわけですよ。これをひとつ、漁民の声としては私はきょうは両大臣にひとつお伺いしたいと思うのです。
#245
○国務大臣(鈴木善幸君) 根室周辺の漁民諸君の問題につきましては、コンブの貝殻島における採取の問題を除きまして、その他の刺し網、底刺し網あるいはタコつぼ漁業等につきましては、これは大体従来の実績をソ側に認めさすことができました。したがって、根室地区の漁民諸君にはいままでどおりのおおむね操業が可能であると、このように考えております。ただ、貝殻島のコンブの採取の問題は、るるお話を申し上げましたように、十二海里のわが方の領海内にソ連漁船を絶対に入れない、外国船は入れない、これを強く主張し、とうとうソ側もこれを理解をして今後領海内操業は要求をしないと、こういうことになりまして、第二文も削除をいたしまして決着を見たと、こういう経緯でございますもんですから、このコンブの採取は、これは今回政府間の交渉でこれを強く要求をするとまた日本の十二海里内の操業云々に関連をしてまいりますので、これは前から高碕さんのお骨折りで、地元漁民の要望をひっ提げていろいろ御苦労なさった結果できた民間協定としての歴史、伝統、実績を持っておりますから、今後この問題は民間の交渉にゆだねて、政府はこれをバックアップをして実現するように努力してまいりたいと、こういうことにいたしておるわけでございます。
 また第二の重要な問題は、漁業水域に関するところのわが方の暫定措置法、これで北方四島を含んだところのすでに線引きが法律で国会でお決めいただいておるということで、これを前提としてソ日協定の交渉が行われるわけでございます。私どもは、これをあくまで国会の御趣旨を体して最善の努力をいたしたい、こう思っております。
 ただ、先ほどお触れになりましたように、北方四島は現にソ連が占有をし施政を行っておる、わが方は残念ながら施政が及んでいない、こういう現実の冷厳な問題もございます。この問題につきましては、政府としてはわが方の漁業水域暫定法の趣旨を体しましてあくまで折衝をするつもりでございますが、まだこれに対するところの具体的なソ日交渉の草案というものを固めてはおりません。おりませんが、交渉に当たりましてはそういう立場で交渉を進めてまいりたいと、こう思っております。
#246
○国務大臣(鳩山威一郎君) 具体的な漁業の問題につきましては鈴木農林大臣からお答え申し上げたとおりでございます。私どもの方といたしまして、現地の方々がこの漁業の問題以外にやはり固有の領土であるということから非常な御関心をいただいておるわけでございます。そして、その現地の方々の御心配、領土が後退したのではないかというような御心配が強くあるのは事実だろうと思います。これらにつきましては、八条によりまして経緯のあったことでございますけれども、この領土の主張、これはわが方といたしましては固有の領土であるということをあくまでも貫き通し、その点につきましてはわれわれの立場は害されない、このような観点に立ちまして、またいずれ領土問題を含みます交渉に真剣に体当たりをいたしたい、このように考えております。
#247
○対馬孝且君 この貝殻島の問題は民間ルールを復活をさせるという、農林大臣の努力をするというお答えですからそれはそれなりに了といたします。ただ問題は、いま現地の漁民が心配しているのは次のことなんですよ、私言いたいことは。結局つまり、どう言ったって、むしろ現在の段階であればまだ、羅臼の段階では三海里多少越境してもいままである程度大目に、国後の手前まで行ったって魚とってきたわけだ。これは公式非公式を問わずとってきておるわけです。漁ができておるわけですよ。ところが、今度の協定がはっきりしたために、むしろ、裁判管轄権の問題、許可証の問題、料金の問題、こういうものがかえって明快になったためにむしろソ連側の方が極度に警戒態勢とかそういうものが非常に最近強化されてきている。そういうことを非常にはだで感じているわけですよ。だから結果的には、どう言おうと、いま漁民が心配していることは、安全操業の問題や、領土の問題はもちろんこれはもう絶対譲ることはできない問題である。しかし、安全操業の面でむしろこの協定によって後退をしたという感じを持っているわけですよ。この点をひとつ私はソ日交渉の段階で、それを後退をしたんではないということをはっきりさせることは、何と言っても先ほど農林大臣からお答え願っているように、この二百海里漁業水域暫定措置法をきちっと日本側としては絶対に一歩も譲れない、そういう姿勢を言葉ではなくてソ連側に対して認めさせなければ、言葉でどう言おうと、私は漁民はこれはやっぱり理解をしないと思うのです。だから、その意味で私はぜひともその姿勢をひとつとってもらうというお答えですから、それは了としますが、その点をひとつきちっと基本に据えてこれからの交渉、ソ日交渉と長期交渉に当たってもらいたいと、むしろ安全操業という視点をひとつ基本にしてもらいたい。この点いかがでしょうか。
#248
○国務大臣(鈴木善幸君) これはソ日協定あるいは基本協定とは別の角度、つまり北方四島はわが国固有の領土である、今後、領土問題は未解決の問題であるという前提の上に立っての北方四島周辺の安全操業の問題、こういう角度でこれは交渉しなければならない問題だと、こう思います。この二百海里の漁業水域に関する法律、あるいは幹部会令の適用を受ける海域ということになりますと、許可証も必要でございますし、いろんな規制があるわけでございます。こういう面と、もう一面、いまの北方四島は戦後未解決の問題であるということ、わが方の固有の領土であるという歴史的なこと、これを踏まえて北方四島の安全操業という別の角度での交渉、こういう問題がひとつ残されておると思います。
 したがいまして、ソ日協定あるいは基本協定、こういう問題を処理すると同時に、北方四島周辺の安全操業の問題と、こういう問題で今後政府、外務省と一体になりましてこの問題は交渉しなければならない、こう考えております。
#249
○対馬孝且君 そういう安全操業の問題がいま沿岸漁民の最大の課題であるということをひとつ基本にし、それが領土に、やっぱり主権を守ることにつながるという立場で受けとめておりますので、この点ひとつそういう基本姿勢で臨んでもらいたいと、こう思います。
 そこで、もう一つ解明しておきたいんでありますが、これは今回の交渉の中で、漁獲割り当ての問題にも関連するんでありますが、ソビエト人というのはスケトウ、イカは食べないというわけですね。これは飼料にしている。そこで日本のイワシ、サバが欲しいんだと、こういう問題がいま重大な問題になっているわけです。
 そこで交渉の過程で、鈴木農林大臣の方から、この際ひとつスケトウとイワシ、サバとの関係では、つまりバーターという話が第一次交渉の段階で、第二次段階で出されたかどうかは別にして、出されたことがある。そういうことがソビエト側は逆手にとって、これは漁民の言い方ですよ、漁民の判断としては逆手にとられて、鈴木農林大臣は善意で言ったんだろうけれども、あのソビエトは逆手にとって、スケトウは要らないのにかかわらず、絶対数量の十万トンという枠で抑えられた。これはソ日交渉の段階でスケトウ十万トンベースで抑えたというのは、これからのソ日交渉でイワシ、サバをどうしてもソビエトは確保しなければならない、恐らく日本はスケトウのことを持ち出すだろう、そういう問題のときにつまり洋上交換という話もちらちらうわさをされていると。こういうことで、一つは漁獲割り当てについてソビエト側が逆手にとったという問題と、これからのソ日交渉の段階ですが、イワシ、サバとスケトウの段階のつまりバーター交換もしくは洋上交換ということがあるのかないのか。ちらちら話を聞くとそういうことがあるということが流れてきている。これは北海道漁民としては絶対やめてもらいたいというのが率直な漁民の声なんです。そういう意味でお伺いするんでありますが、そういうことがソ日交渉のこれからの俎上に上ってくるのかどうか。あるいは、政府としてはそういうことはさらさら考えてないという物の考え方で進むのかどうか、これをちょっとお伺いしたいと思います
#250
○国務大臣(鈴木善幸君) この問題はわが国の沿岸の領海三海里を十二海里に拡大をした。そして、ソ連漁船は十二海里の中の領海内での操業は絶対に認めない、こうするわけでございますが、そうすると、イワシにつきましてはソ連が非常に関心を持っておる。過去の実績から言うと、三海里、十二海里の中でおおむね八〇%を揚げておる。十二海里の外で二〇%程度と、こういうことになっております。そこで、十二海里の外にしか操業を認めない、領海外にこれを追い出した場合におきましてイワシが大部分とれなくなる、こういう問題が出てくるわけであります。そうすると、日本の沿岸にソ連漁船が入ってくるメリットと申しますか、そういう魅力が全然なくなってくる。そうすると、今度は日本の漁船をソ連の海域に迎え入れるということにつきましても、相互に入り合って相互補完をすると、欲しい魚もとれるんだということでないと、これは相互の利益にならないということで、そういうことであるならば自分の畑だけをお互いに耕しましょうやと。こうなりますと、これは日本にとっては大変な問題であります。北海道の漁民諸君にとっては特に大変だ。そういうようなことで、十二海里の中では操業をさせないかわりに、イワシが欲しいのであれば日本の漁民のとったイワシと、わが方が関心を持っておるところのソ側がとった魚種とバーターでやってもよろしいし、貿易の形でやってもよろしい、こういう提案をしておったわけでございます。そこで私は、スケトウダラというようなことを明示してやったものではございません。わが方の関心のある魚種と、こういうことになって、いろいろ話し合いがきておるわけでありますが、しかるところ、今回釧路あるいは稚内等においてスケトウダラの漁獲が少なくなってきた。そうなった場合に、イワシと交換するものはスケトウダラにしてほしいという要望が自然に関連企業、加工業者等から出てきております。今後これらは具体的に窓口を一本にいたしまして交渉をやることにいたしておりますが、その窓口は、大体イワシが沿岸の漁民によってとられることでございますので、全漁連とかあるいは北海道漁連とかいうような沿岸の漁業団体を中心に一本の窓口をつくって、そうして向こう側も一本でございますから、バータ一等の仕事もやらしたらいいんではないかと、こう考えております。
 なお、そのイワシと交換するスケトウを洋上で引き取るのではないか、そうしてこれを母船で、船内のすり身の加工をやるあるいは頭や何はミールにするとか、そういうような扱いをするのではないか、こういう危惧があるようでございます。私は絶対に大手のそういう船を使ってやる考えは毛頭持っておりません。やはり釧路なり稚内なり、そういうもので加工業者も立っておるわけでございますから、これらの人たちに鮮魚の形で供給をする、加工業者に仕事を与えるようにする、そういう仕組みを考えておるわけでございまして、洋上でもって船上処理をするというようなやり方は全然考えていないということをはっきり申し上げておきます。
#251
○対馬孝且君 いま農林大臣からございまして、その点は非常に明快なようでありますから、洋上交換はない、これは第一点確認してよろしゅうございますね。
 そうしますと、いま申し上げましたように、漁民が心配しているのは、つまり洋上交換ということになって十二海里にソ連船がなだれ込まれてきたら困る、そういう心配をしているわけです。幸い農林大臣からそれはあり得ない、そういうことはとらないと。やる場合も、あくまでも漁連なりあるいは団体を窓口にして、つまりバーターをやる場合でも窓口を一元化をする、こういう方向でありますから、全く私も同じ考え方でございます。ぜひその方向をひとつとっていただきたい、これを一つ強く要望しておきます。
 そこで、ただ心配しているというのは、つまりソ連船がまた入ってくるのか、その理由をもって十二海里に入れようとするのか、こういった心配が先になっているものですから、漁民はそう言っているわけでありますから、いま大臣がお答えになっているように、ソ日交渉のこれからの段階で線引きだけきちっとしていただければ、これはソ連船の入ってくることは抑えられるわけですから、この点だけはひとつきちっとやってもらいたい、こう思います。
 そこで時間も参りましたので、ひとつだけ大臣にお願いしたいのでありますが、きのうも私総理大臣に申し上げまして、この北海道の血の叫びをぜひひとつ総理大臣、納沙布岬に立ってほしい、こういうことを訴えました。しかし総理大臣は、いまはこういう状況でもあるので時期的な情勢を見てというお答えがございましたが、とりあえずいま北海道漁民からの要望が一つありますのは、鈴木農林大臣にぜひ釧路沿岸、釧路でも結構なんでありますが、これからのソ日交渉なり、基本交渉に臨むに際して、短時間でよろしゅうございますと、これからの二百海里にあるべき漁民の声というものを、大臣はベテランでありますから聞かなくてもおわかりだと思うのでありますが、漁民感情として、これからぜひ本協定に際してはこれだけはひとつ聞いてほしい、また見てほしい、こういう訴えがございますので、これからのソ日交渉なり基本交渉に臨む場合に、短時日でも結構ですから現地へひとつ出向いていただけないか、このことを要望申し上げます。
 それから、先ほど来同僚の議員からもございましたが、外務大臣ができるだけ訪ソ前に現地を視察をされるということもお答えになっておりますので、ひとつ漁民の要請でございますので、農林大臣のお答えをお願いしたいと思います。
#252
○国務大臣(鈴木善幸君) 今回の日ソ漁業協定、これに伴う減船その他関連企業のこうむる損失、犠牲というものは相当深刻であるということも私痛切に受けとめております。したがいまして、できるだけ早い機会に現地にも参りまして、交渉の経過等も御理解願うと同時に、また現地の生の声をひとつお聞きをして今後の対策に万全を期したい、こう考えております。
#253
○国務大臣(鳩山威一郎君) 現地の視察につきましては、現地からも熱心な御要請がございますので、訪ソするということになりますと、その前にはぜひとも現地に伺いたいと思います。
#254
○対馬孝且君 終わります。
#255
○立木洋君 領土問題についてお尋ねしたいと思いますが、領土の問題というのは民族の主権にかかわる基本的な問題でありますし、政府としては全力を挙げてそれを解決しなければならない責任があるというふうに考えるわけです。もちろん、大臣も御承知のように、ソ連に行って話し合ったからといって領土問題簡単に解決するものではなくて、やはりこれまでの歴史的な経過を正しく踏まえなければならない。同時に、返還を求める場合どういう理論構成で日本の主張を述べるのか、本当に相手に納得させ理解させる、それだけの理論的な構成を持っていないと相手を理解させ納得させることもできない。同時にまた、適切な時期をとらえて外交交渉を正しく巧みに行うということ等々が私は必要だろうと思いますが、そういう点についてはどのようにお考えでしょうか。
#256
○国務大臣(鳩山威一郎君) 立木さんのおっしゃるとおりだろうと思います。そのためにはやはり周到な準備も必要でございますし、また国内のコンセンサスと申しますか、世論というものをしっかりつかんだ上で不退転の決意で臨みたいと思います。
#257
○立木洋君 歴史的な事実を正しく踏まえるという点で二、三お尋ねしたいんですが、宮澤さんにお答えいただいて結構だと思うんですけれども、いままで日本政府が公式に署名をしたいわわゆる千島列島など、領土問題に関する千島列島や歯舞、色丹等々に関する外国と日本政府が代表して署名した文書というのは五一年九月のサンフランシスコ条約、それから五六年十月の鳩山元首相が行われた日ソ共同宣言、七三年の十月に行った田中元首相の日ソ共同宣言という三つだと思いますが、そのほかにありますか。最後はちょっと領土問題に直接ではありませんけれども。
#258
○政府委員(宮澤泰君) 古く帝政時代に日本政府と……
#259
○立木洋君 いや、戦後。
#260
○政府委員(宮澤泰君) 戦後でございますか。戦後はただいまおっしゃった三つと思います。
#261
○立木洋君 最初に、その一九五一年に行われたサンフランシスコ条約の問題になっています二条(c)項ですね。ここでは御承知のように、これはもう文章を読み上げる時間があれですから読みませんが、いわゆる千島列島の権利権原を放棄するというあの条項ですね。あの条項をいまの時点で政府がお考えになって、ああいう二条(c)項を盛り込んだ内容がいまになって考えてみて当然だったというふうにお考えになるのか。あるいは、あの当時としてはやむを得なかったものだというふうに考えられるのか、いまになってみるとあれはやっぱり多少まずかったというふうにお考えなのか、いまの政府の立場でどのように判断されるのか、大臣にお答えいただきたいと思います。
#262
○国務大臣(鳩山威一郎君) サンフランシスコ条約につきましては、やはりその前提として終戦時から引き続きましたソ連――ソ連と申しますか、ソ連軍と言ったらいいのかしれませんが、事実行為が先行してあったということがあったのであろうと思います。そして、占領下にずうっとあって、この占領がサンフランシスコ講和条約によって除かれるわけでございますから、その占領下にあった日本政府の実情というものがあったのであろうというふうに私は率直に考えております。
#263
○立木洋君 いや、その当時の事情をお尋ねしたんではなくて、いま政府の立場であのことをどう御判断なさるかということです。事情は知ってるんですよ、大臣に言われなくても。いまの政府の立場での御判断で、あれは当然のことだったというふうにお考えになっているのか、やむを得ないというのか。
#264
○国務大臣(鳩山威一郎君) サンフランシスコ条約の条文自身が適切であったかどうかと、こういうお尋ねであるのかどうかわかりませんが、占領下にあった日本政府であるということは、やはり条約の解釈の面におきましても考うべきことじゃないかと。当時の条約を結んだということ自体につきましては、二条(c)項自体につきまして、これは日本としてこれを拒否をするということによってはサンフランシスコ条約は成り立たなかったものというふうにいまでも考えざるを得ないであろうと思うのです。
#265
○立木洋君 やむを得なかったということですか、やむを得なかった。
#266
○国務大臣(鳩山威一郎君) さように考えます。
#267
○立木洋君 じゃあ議論は後でいたしますが、次に一九五六年の十月に行われた日ソ共同宣言、あれをいまの時点に立って考えてみて、あの歯舞、色丹を日ソ平和条約を結んで返還をするという合意に達したことをいまの時点になってどういうふうに御判断になるか。
#268
○国務大臣(鳩山威一郎君) 歯舞、色丹二島が共同宣言の九項に書かれておるということ、これ自体は私の理解をいたしておるところによれば、領土問題はこのほかにあるという前提のもとであるというふうに理解をいたしておるわけで、その証明といたしましては松本・グロムイコ書簡ということであったと、もしそのときに四鳥ということであれば、私は平和条約が結べたものと思うのでございます。したがいまして、平和条約によらず共同宣言という形で平和回復をいたしたということは、領土問題がまだ未解決のまま残るという事態であったからやむを得なかったことというふうに思うのでございます。
#269
○立木洋君 じゃああの当時の鳩山一郎首相がやられた共同宣言は、いまの政府としては不満であったというふうに解釈していいんですか。
#270
○国務大臣(鳩山威一郎君) 当時二島は返還をするという話までいったと、しかし、四鳥の返還ということを日本側は絶対に必要であるというふうに考えたわけでありまして、これは日本の世論であったということで、したがって平和条約が結べなかったということは大変残念であったというふうに思います。
#271
○立木洋君 じゃあ不満であったと――残念であったと不満であったと余り変わらぬのですけれども、それはそのように理解しておきます。
 それで、やはり日ソ間で領土問題で本格的な交渉をやられたのは一九五六年、四回にわたって交渉やりましたですね。あの当時の交渉で出した日本政府側の論点、大体五つほどあったと思うんですが、これは全部私は述べません、時間がありませんから。あの当時の論点から、いまの日本の政府は返還を求める理論的な構成の上で何らかの発展があったのかどうなのか、発展があったらどういう点、返還を求める理論的な内容に発展があったのか、その点、大臣にお尋ねしたい。
#272
○政府委員(宮澤泰君) 当時から、いわゆる北方四島は日本として当然復帰を要求すべきものである、その当然の権利を有しており、しかもソ連はそれに居座っている法的な根拠はないと、この二つの考えからその返還請求を要求しているわけでございますから、その点は変わりないわけでございます。
#273
○立木洋君 いや大臣、いま領土返還という問題、重要な問題ですし、大臣もいろいろお忙しいと思うけれども、これは徹底的にやっぱり研究しないといかぬ。日本政府がどういうふうなことを主張したらソ連がどういう反論をしたのか、それを本当に理論的にも相手に納得させるだけのわれわれが理論的な内容を持たないとだめなんですよ、これは。外交というのは、もう鈴木農林大臣も何回か外交交渉やられてそういうことは十分におわかりだろうと思うんですが。ですから、そういう点から考えてみて、いま言われたのでは、一九五六年本格的な交渉をした。あの当時と変わりがないというんでしょう。あの当時と同じことを主張していったらこれは全く解決しませんよ、あのときからさらに研究して論点を深めていかないと。ソ連側の主張をどうして具体的に反論して相手に納得させるかという理論構成の発展がなければ、領土問題今後何百年たとうとあの当時と変わりません。あれからもう二十年余りたっているんですよ、一つも日本政府が発展さしていなかったら何ら解決できないじゃないですか。それはまさに政府の二十年間にわたる怠慢だと言われても仕方がないじゃないですか、どうですか、大臣お答え願いたい。
#274
○国務大臣(鳩山威一郎君) 二十一年たったわけでございます。その間に進展を見なかった、未解決であるということ、これを先方に了承させることもきわめて困難な情勢にあるわけでございます。私は、この二百海里時代というものが到来をしたというのが、これは一つの大きな歴史的な変わり目であると、この変わり目に際しまして、日本としてこれがまた現実問題として大変な漁業関係の方々にもきわめて大きな影響を生ずるような、そういう時代の変わり目にいま日本はあるわけでございますから、この機会をとらえまして、いままで二十一年間進展をしなかったこの問題につきまして、やはりもう一度腰を据えて取り組んで、粘り強い交渉をこれから真剣に行うということが必要であるというふうに思うのでございます。
#275
○立木洋君 まあ二十年間そういうことを繰り返してきて、現実には解決していないんですね。私はそこがやはり問題だと思うんですよ。ですから先ほど言いました、もともとをただせば一九五一年九月に放棄したんですよ、二条(c)項で。やはりこの問題を政府はいまの時点で、あの当時の事情からしてやむを得ないことだったと言われたんです。いまの事情に立って、あの当時のもう一回この二条(c)項を何とかすることができないかということは、私はもっと真剣に考えるべきじゃないかと思うんですよ。これが妨げのネックになっている、これがソ連側の主張の最大の根拠の一つにされているわけです。ですからこの問題についてはもっと真剣に考えるべきじゃないでしょうか、その点はどうでしょうか。
#276
○国務大臣(鳩山威一郎君) 共産党におかれて、この二条(c)項、これを何といいますか、廃棄すべしという御議論承っておりますし、それに対しまして昨日も総理から御答弁がございました。日本の立場といたしまして、平和条約、サンフランシスコ条約の主体的な部分を占めます領土に関する事項につきまして、日本政府が今日の段階でこれを拒否をするということはできないことではないかと思います。私どもで、このサンフランシスコ条約の二条(c)項がありながら――この「千島列島」という表現、これにつきまして、これはいろいろ御議論のあるところでございます、いまここで繰り返しませんけれども。それに対しまして当時の吉田全権もソ連側の主張に対しまして反駁をいたしておりますし、いわゆる国後、択捉二島、南千島と言われておりますけれども、この二島につきましては、古い沿革から大変違った面があるということを主体としての四島返還という議論でございます。その理論をいま変えるということは考えておらないのであります。
#277
○立木洋君 私が言うのは、それは二条(c)項の廃棄を通告せよと私たち共産党は主張している。ところが少なくとも政府としても、共産党が言う、だれが言ったとしても、その問題が廃棄が本当にできるのかどうなのか、そういうことが可能なのかどうなのか、どうすれば可能なのか、全くできないのか、それを検討したことがないんですかあるんですか。やってみて、検討した結果、何としてもそれはだめだという結論になったのか、検討しないで、共産党はいいことを言うけれども、いやそういうのはだめなんだというふうなことになったのか、大臣いかがですか。
#278
○国務大臣(鳩山威一郎君) 先ほども申し上げましたとおり、サンフランシスコ条約これ自体につきましては、これにつきましていまさらこれを重要な部分につきまして変更するということは不可能であるというふうに思っております。
#279
○立木洋君 これは不可能じゃないんですよ。もう時間がないから私は先に言いますけれども、これはもっと研究していただきたい。いまこういうものを破棄通告することが可能であるという国際的な法理論も検討されて、多くの国々の中で問題になってきているんですよ。この点を私は政府は真剣にやっぱり考えるべきだと思うんです。そうして本当に領土の返還を求めるなら、熱意は理論的な裏づけがないと本当の熱意としてそれは実現しないわけですから、これは幾ら北方領土返還、北方領土返還と百遍言ったって実現できない。ですから私はその問題を真剣に検討することを強く要求したいと思うんです。
 それからもう一点、ヤルタ協定とカイロ宣言といわゆるポツダム宣言ですね、これは私は矛盾しているだろうと思うんですが、いかがでしょうか、領土の問題に対して。
#280
○国務大臣(鳩山威一郎君) ヤルタ協定自体は、これは確かに領土の何といいますか、引き渡しを決めているという点につきまして、カイロ宣言、ポツダム宣言、領土の不拡大ということと矛盾をした内容であるという点につきましては私どもも同様に考えます。
#281
○立木洋君 そして、日本に対してヤルタ協定というのはどれほどの拘束力があるんですか。あるいはポツダム宣言、カイロ宣言とはどういう違いがあるんですか、拘束力の内容について。
#282
○政府委員(宮澤泰君) 日本が降伏に当たりまして受諾いたしましたのはポツダム宣言でございまして、ポツダム宣言にはカイロ宣言の条項を遵守すべくと書いてございますが、ヤルタ協定は何らの関係がございませんので、したがって、日本とも全く関係がないものと解しております。
#283
○立木洋君 ヤルタ協定について拘束力があるのは米英ソですか、拘束力ありますよね。しかし、ポツダム宣言、カイロ宣言の内容を見ても、連合国によって決めるというふうに書いてありますね。連合国というのは、ヤルタ協定の拘束力を受けているのは米英ソなわけでしょう。そうしたら連合国によって領土を決めるということになると、一定の間接的な関係はあるんですか、ないんですか。
#284
○政府委員(中島敏次郎君) ヤルタ協定は、いまのおっしゃられました英米ソ主要連合国の間の戦争遂行に関するそれら諸国間のいわば私的な了解というふうに理解すべきものだと考えております。いずれにせよ、そのような性質の取り決め、了解によって領土の得喪が行われることはあり得ない、これは平和条約によって決定されるべきものである、こういう理解でございます。
#285
○立木洋君 そんなことではソ連を納得させる論理展開できないですよ。この問題についたってソ連側が主張している内容の一つですよ。私は何もソ連にかわっていま主張したわけではない、その問題点を私は聞いてみた。しかし、いま条約局長がそういうような言い方では、これは問題解決の一つも足がかりにはならぬですよ。一遍にソ連から反論されてしまいますよ。それ以上私はこの問題申しませんけれども、私はそういう意味ではやっぱり論点がどこにあるのか、もっと日本側として研究すべきだと思うんですよ。そして、何も政府部内だけではなくして、主権の問題解決するというのは民族的な課題ですから、もっといろいろな人に積極的に意見を聞き、何も北方領土、北方領土、四島一括返還ということに固執するのではなく、本当にどうしたら解決できるかということをもっと政府が真剣に考えるべきだと思うんですよ。北方領土、四島返還というのはもう二十年前に破産しているんですよ。そんなこと何回繰り返したって、今後何百年たったって、領土問題解決しないですよ。これは私が断言するのではなくて、もういままでの二十年間の歴史が示している。
 私はそこでもう一点質問をいたしたいのは、北千島の問題に関して、北千島は歴史的に日本が武力で奪い取った領土ではない、歴史的に言うならばこれは日本の領土であるということだというふうに思いますが、日本政府としてはどういうふうにお考えでしょうか。
#286
○政府委員(宮澤泰君) ただいま北千島とおっしゃいましたが、私ども千島列島と解しまして、千島列島は日本が帝政ロシアから合法的に譲られたものと考えております。
#287
○立木洋君 一々名称に丁寧にこだわって説明されておられますけれども、北千島ですよ、私たちに言わせれば。これは日本の国民だれが考えても北千島ですよ、あの十八諸島というのは。日本側が南千島は放棄した千島ではないというから、北千島を千島だ千島だと言わなければならない、そういう論理構成になっている。そのことに私は根本的に問題があるというふうに書いたいわけですが、それならばそういう法的な根拠を離れて、北千島、あれは日本の領土だったと、これはポツダム宣言の内容から見るならば、あれは武力で取った土地ではない、これは当然外国に引き渡さなければならない領土ではないはずです。当然日本側が返還を求めていい領土だというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
#288
○政府委員(宮澤泰君) 領土不拡大の原則ないし日本が暴力、どん欲等で取った土地という意味では、千島列島はこれに属さないものと考えております。
#289
○立木洋君 いや、解釈だけじゃないんですよ。ですからやっぱり大臣にお尋ねしないといけない。だから、それを日本側が返還を求める、領土として北千島を。何ら私は不当ではないと思うんですけれども、大臣はどうお考えですか。
#290
○国務大臣(鳩山威一郎君) たびたび同しことを繰り返すことになりますけれども、サンフランシスコ条約というものがなければ、立木さんのおっしゃるような論理構成になると思います。
#291
○立木洋君 だから、サンフランシスコ条約二条(c)項というのは、やむなくあの当時の事情で結ばざるを得なかったと言われたんでしょう。あれが非常によかったから結んだんだと日本政府はいま考えているわけじゃないんでしょう。ましてや北千島というのは、日本の歴史的に領土であると、日本の歴史的な領土だと。そしてあれは武力で取ったものでもないし、ちゃんと交換条約で平和の形で日本の領土になったと。これはあの領土不拡大の原則に照らすならば、当然に将来日本の領土に返るべきところなんですよ。それをいわゆる将来のいろいろな道筋を経ながら解決しなければならない過程があるでしょうが、しかし、これはもう将来とも返還を求めない領土だということを断定されるというのはいかがなものでしょうか。
#292
○政府委員(宮澤泰君) 日本が法治国として、また、国際信義を重んずる国家として、いま国際社会に名誉ある地位を占めております以上、責任を持って国民の選出した政府が署名した条約の条項を廃棄する、あるいはその内容の変更を求めるということは考えておりません。
#293
○立木洋君 大臣、もうずっとお答えください、解釈だけをお聞きしたんじゃ、私時間がもうありませんから。
 それじゃ次の問題で、この間の本会議で福田総理が答弁なさいましたけれども、いわゆる領土問題の返還については段階をとらないと、つまり四島一括返還だという趣旨のことを言われた。もしか二島だけとすると後に不安が残るという答弁をなされたと私は記憶しておりますが、二島だけ返還してもらうと後に不安が残るというのは、どういう理論的な根拠からそういうふうな説明になったのでしょうか、お答えいただきたいと思います。
#294
○国務大臣(鳩山威一郎君) それは、かつて一九五六年のときとやはり同じ論理に立っておられると思います。そして国内世論がその当時と今日とやはり変わっておらないということが私は総理のお考えであろうと思います。したがいまして、理論ということよりもやはり国内世論ということではないかと思うのでございます。
#295
○立木洋君 いや、そうではないと思うんですがね。つまり、二島返還をしてもらうと後領土問題を解決するという上で困難になるというか、不安であると、大臣はたしか不安であるという言葉を使われたと思うんです。不安になるから、だから段階的なやり方はとらないのだという言い方をしたんですよ。だから、二島返還してもらうと後の領土問題を解決するのに不安になるというのはなぜかということなんです。
#296
○国務大臣(鳩山威一郎君) それはやはり一括返還が望ましいということでありますし、また国後、択捉二島、特に国後島はもう本当に目の先にある島でございますから、したがいまして、不安という表現は率直な表現だったと思います。しかし、やはり国民世論ということがありまして、そして残りの方はこれは非常にむずかしいと、こういうふうな判断にならざるを得ないのではないかと、こういう非常に常識的な、非常に率直なお気持ちというふうに思います。
#297
○立木洋君 もうこれは仕方がない、また私あした総理に聞きます。大臣の答弁は答弁になってないと思うんですよ。全くそういう態度で領土問題返還要求したって全然返ってきませんよ。
 最後にもう一点だけお尋ねしますが、昭和三十二年の四月、衆議院の外務委員会で当時の井上外務政務次官が、歯舞、色丹に関してアメリカから軍事基地にしたいという要求があっても、これはわが国として応諾する考えはないというふうに答弁していますが、いまでも政府の見解は変わりませんか。
#298
○国務大臣(鳩山威一郎君) その点につきまして、私一存でお答え申し上げていいかどうかわかりませんけれども、現在私ども常識的に考えまして、北方四島が返還の場合にこれを軍事基地化するという必要はないというふうに思います。
#299
○立木洋君 私、きょうお尋ねしまして、大変言うなれば失望しました。政府がそのような考え方で、領土返還問題は今後何年間やっても解決できない。私が一番最初に申し上げましたように、領土問題というのは民族の主権にかかわる基本問題ですし、政府が本腰入れてやらなければならない。そのためには理論的にももっと研究をし、どうしたら本当に外交交渉の上で国際的な正義と道理の立場を貫きながら、領土返還を実現させることができるかということを私はもっと直剣に考えていただく、そのためにはいろいろな人の意見も聞きながら、一括四島領土返還ということだけにはこだわらない、どうしたら本当に全千島の返還を求めることができるか。北千島だって、あれは返してもらうことができれば返してもらいたいという気持ちがあるかのように私は話を聞きました。問題は、二条(c)項の問題がかかってくる。そうすると、それらの問題全体を含めてどうやって解決していくかということを、私はもっと政府が本腰入れて研究すべきだ。
 時間がありませんから、私はもうこれで終わりますけれども、今後とも引き続いてこれらの問題について政府に対して質問をしていきたいと思います。
#300
○委員長(寺本広作君) 本件に対する本日の質疑はこの程度といたします。
 午後九時まで休憩いたします。
   午後八時十三分休憩
     ―――――・―――――
   午後九時一分開会
#301
○委員長(寺本広作君) ただいまから外務委員会を再開いたします。
 日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の北部の境界画定に関する協定及び日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の南部の共同開発に関する協定の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)を議題とし、質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
#302
○渡辺武君 前回、立木委員の質問に対して政府の方の答弁は、この共同開発水域がわが国の二百海里水域に入るんだということでありました。
 ところで、この二百海里水域、現在わが国では漁業水域ということになっておりますけれども、海洋法会議などの動向を見れば、これはやがて沿岸国の排他的経済水域として設定されるというのが大体国際的な動向だというふうに見て差し支えないと思いますけれども、その点どうでしょうか。
#303
○政府委員(村田良平君) 距岸二百海里におきまして経済水域を設けるということ自体については、すでに国際的にコンセンサスがあると言っていいかと思います。したがって、今後はその内容についての議論が海洋法会議で行われるということでございます。
#304
○渡辺武君 二百海里水域が沿岸国の排他的な経済水域として設定される、それが大体コンセンサスを受けている、わが国の政府もそれには一応賛成しているということでありますと、その際、たとえば公害防止とか海洋汚染などの海洋環境の保全、それから魚類など生物資源の保存、利用、こういうものも沿岸国の主権的な権利になるというふうな方向が国際的な動向ではないかというふうに思いますが、どうですか。
#305
○政府委員(村田良平君) いま御指摘の二分野のうちで、まず漁業に関しましては、単一草案におきましても、第四十四条の1項(a)におきまして「生物又は非生物のいずれであるかに拘らず、海底、その下及び上部水域の天然資源の探査、開発、保存及び管理のための主権的権利」という言葉が使ってございますので、先生御指摘のようなことであろうと思います。
 それから、汚染の防止に関しましては、主権的権利とかあるいは排他的権利という言葉は使っておりませんで、同じく四十四条の1項の(d)というところに規定がございますが、ここには「汚染の規制と除去を含む海洋環境の保護に関する管轄権」という言葉を使ってございますので、今後の議論の進展によりますけれども、魚類等に対する管轄権とそれから海洋汚染に関する管轄権というものは若干異なった考え方がとられておるというふうに、現在の海洋法の審議の段階では思われるわけでございます。
#306
○渡辺武君 いずれ論議の過程でもう少し正確な表現にはなるだろうというふうには思いますけれども、排他的経済水域として二百海里水域が設定された場合に、こういうものが沿岸国の主権的な権利もしくは管轄権というものに属することになることはこれはほぼ確実だと見て差し支えないと思うんですが、大体これが国際的な合意に達するのはそう遠い将来のことではないと思いますがどうですか。
#307
○政府委員(村田良平君) これは現在行われております海洋法会議全体の見通しの問題でございますので、非常にこうなるであろうということを推測するのは困難でございますが、現在すでに始まっております第六回の会期におきましては、主としていわゆる深海海底開発に関する第一委員会関係の討議が中心に行われておるわけでございまして、いまなお先進工業国側と開発途上国側の対立が相当顕著でございます。したがいまして、現在の第六会期におきまして、この深海海底の問題が相当論議が煮詰まるかどうかというところは余断を許さないわけでございます。そうだといたしますと、従来第二委員会等で行われております他の海洋問題に関する議論というものも、一応この深海海底の開発あるいは今後議論されますでありましょうところの紛争解決方式といったようなものと全体がパッケージとして成り立つということを目標に議論が行われておりますので、いつごろまでにまとまるかということの予測は困難でございます。
#308
○渡辺武君 正確な予測は困難であろうということでしょうけれども、もうすでに改訂単一交渉草案というものができて、そしてその中で相当詳細に問題が提起されているということでありますから、現在の国際的な潮流から見ましても、そう遠い遠い先のことだというふうにはとうてい考えられないと思うんですね。
 ところが、この日韓大陸だな協定、これは五十年の間の協定になっているわけです、半世紀近い期間を設定しているわけですよ。いまのような国際的な潮流ということを踏んまえて考えてみれば、私は今後五十年先に至るまでわが国を拘束するこの協定についても、当然いま申しました海洋環境保全、それからまた魚類など生物資源の保存、利用、こういう点についてはいまの国際的な潮流を踏んまえて、わが国の排他的経済水域、そこに対する当然のわが国の権利、これをこの協定の中に盛り込むべきであったと思いますが、この点どうですか。
#309
○政府委員(村田良平君) この協定が交渉されました時点におきましては、まだ二百海里の排他的経済水域という話は全然出ておらないということはございませんでしたけれども、まだ正式に第三回の海洋法会議も始まっておらなかった。その予備的な話し合いの段階ということでございましたので、特にその点に関する手当てというものはなされておらないことは事実でございます。しかしながら、この大陸だなという問題と経済水域という問題は、ともに海洋法会議で取り上げられまして、現在まで二つの独立した別個の制度ということで扱われておりまして、その間を調整するということがなされないままに今日に至っておるわけでございます。
 先ほど御指摘の海洋汚染の問題を例にとりますと、先ほど申し上げましたように、第四十四条に沿岸国が経済水域ということで管轄権を行使するということが単一草案に規定されておるわけでございますけれども、これは排他的とかあるいは主権的権利という言葉は現在の段階で使われておらないわけでございまして、他方大陸だなに関しましては、やはり大陸だなに関する規定のところにこの海洋汚染と関係のある規定がございまして、たとえば大陸たなの上の人工島であるとかあるいは設備等に関する改訂単一草案の第六十八条は、経済水域内のそれらに関する四十八条を準用しているというふうなこと、あるいは同草案の第六十七条に、パイプラインに関しては大陸だなの沿岸国の権利というものを規定しておるわけでございまして、結局経済水域と大陸だなというものの沿岸国が、仮に仮定の話として異なるというふうなケースがありましたような場合には、関係国間で話し合いをして、その法令の適用関係等の矛盾を調整するということにならざるを得ないのではないかというふうに判断されるわけでございます。
#310
○渡辺武君 この排他的経済水域の問題で政府を詰めていきますと、詰まってくると必ず大陸だなの問題を出してくる。これがいままでの政府答弁のパターンだったと思うんですね。かつては国際司法裁判所にまで提訴しようとしておった日本政府の大陸だなについての主張、これをいま事実上いま放棄している。当時韓国側が主張していた大陸だな自然延長論、あるいはまた沖繩海溝があるからこれは大陸だなとして主張するのは国際的にも認められるかどうかわからぬというような、そういう主張をこの国会の答弁で繰り返すようになってしまっている。どこの国の外務省だろうか、疑いを抱くような状態ですよ、これは。しかし大陸だな条約、現行の条約でも、この条項に言う天然資源とは、海底及びその下の鉱物その他の非生物資源並びに定着種族に属する生物というふうにちゃんと規定されているわけですね。そして、国際海洋法条約の改訂単一交渉草案の中の大陸だなについての資源の規定についてもやはり同じような規定を踏襲しているという点があるわけですね。
 ところが、同じ国際海洋法条約の改訂単一交渉草案、ここでの排他的経済水域のところでは、特にいま申しましたように海洋環境の保全に関する管轄権、それから排他的経済水域における人工島、設備及び構築物、それから生物資源の保存、生物資源の利用というような点が非常に明確に述べられているんですね。まさに海洋保全の問題だとか、それからまた海底に、何といいますか、カニや何かのように依拠しなければ生存できないようなもの、これとは別にその上を泳いでいる魚その他の資源の保存や利用ということになってくると、これは大陸だな条約の範囲の問題でなくて、まさに排他的経済水域に関するそれぞれの沿岸国の主権的な権利に属する問題だというふうに見て差し支えないんじゃないかと思うんですね。その点どうですか。
#311
○政府委員(村田良平君) まさに現在海洋法会議で議論されております排他的経済水域というものの性格は先生御指摘のとおりのものであろうと思います。しかしながら、先ほども申し上げましたように、海洋法会議におきましては、当初から経済水域制度というものと大陸だな制度というものが一貫して別個の制度というふうに扱われて今日に至っておるわけでございまして、確かにその間両者の関係が必ずしも明確でないということが現実の問題としてあるのは事実でございますけれども、しかしながら、特にある国の大陸だなが自然の延長によりまして他国の経済水域の下に及ぶというふうな場合に、両国間でその経済水域あるいは大陸だな制度の優先関係というものの議論が出るかと思いますけれども、こういった問題に関してこれを優先関係を解決するというふうな規定も現在のところ置かれておらないし、また今後も置かれるという見込みは少ないわけでございます。したがいまして、いずれにしても関係国間の話し合いによって問題の解決を図るということになりまして、大陸だなの境界画定の問題及び経済水域の境界画定の問題がその利害関係国によって議論されるということになるのではないかというふうに思われるわけでございます。
 先ほど来、わが国の主権的権利を譲ったのではないかという御指摘がございますけれども、今回のこの大陸だな協定はあくまで問題の実際的解決というものを図ったわけでございまして、大陸だなに関するわが国の主権的権利というものは、協定第二十八条においてもわが国の立場が留保されておるわけでございます。したがいまして、その点はこういった留保ということで将来海洋法会議がまとまりました際には、当然経済水域に関してまた日韓双方の間で境界画定の話し合いというものが行われることになるというふうに考えられるわけでございます。
#312
○渡辺武君 境界画定の話をしているんじゃないんですよ。これは大臣に伺いたいんですが、いま申しましたように、近い将来排他的経済水域の設定ということが恐らく国際的な合意を見るだろうと、それは五十年先なんという先でないことは明らかだと思うんですね。そうでしょう。
 ところが、まさにその排他的経済水域の設定に伴って、海洋汚染防止など海洋関係の保全についての沿岸国のいわば管轄権、それからまた生物資源の保存、利用、これについての主権的権利の行使、これ明確にもうすでに単一交渉草案にうたわれているわけです。恐らくこれは国際的な合意に達するだろうと見て私は差し支えないと思う。ですから、いまの共同開発区域がまさに近い将来わが国の排他的経済水域として設定されるべき範囲内にすっぽり入っている。だとすれば、仮にこういう協定を結ぶ場合でも、海洋汚染について、生物資源の利用と保存についてわが国の権利を明確に盛り込むべきだったんじゃないでしょうか。三年前だからそんなことは知らなかったんだというふうには言うことできませんよ、いままさにこの協定を審議しているわけですから。どうですか、この点。
#313
○国務大臣(鳩山威一郎君) ただいま仰せになりました海洋法会議の結論というのも私どもは近く出ることをむしろ期待をいたしております。そしてそれが出た場合に、経済水域等の問題も国際的なルールとして確立すること、これは日本としてもその方が望ましいと思っております。ただ、海洋法会議でいろいろな新しい制度ができる、その場合に備えましてこの二十八条という条文ではこの共同開発、これは大陸だなの主権的な権利を決めてあるわけでは決してないのでございまして、この大陸だな共同開発にしたその誘因といたしましては、大陸だなの両方の管轄権を両方とも主張したということが誘因でございますけれども、決めておりますことは、その地域におきまして共同開発をしようという、そういうことだけでございます。したがいまして、主権的な権利、これがどのようなものが国際的にできてくるか、さしずめ漁業関係につきましてはこの地域は海域からいま外しておりますけれども、仮に韓国が二百海里を施行したような場合には日本としても施行することになると思います。そういういろんな場合にもこの二十八条によりまして日本の主権的な権利、この問題をこの協定で決して決めているものではないということで留保をしてあるわけでございまして、政府といたしましても、主権的な権利につきましては漁業水域になるかもしれませんし、あるいは経済水域というものが先になるかもしれない。それぞれの場合におきまして、日本として海洋汚染でありますとか、その上の生物資源その他の問題につきまして日本といたしまして主権的権利を当然主張をしてまいる、こういう考えでございまして、それにつきまして具体的に明示はしてありませんけれども、主権的な権利の問題につきましてはこの二十八条で留保をしてあると、こういうふうに考えております。
#314
○渡辺武君 それじゃ伺いますけれども、この協定の十九条ですね。韓国側が操業管理者である区域ですね。これは韓国の国内法が適用されることになっているんじゃないですか。どうですか。
#315
○政府委員(村田良平君) この協定に別段の定めのない問題に関し、かつその天然資源の探査、開発に関する問題については御指摘のとおりでございます。
#316
○渡辺武君 韓国の国内法が適用されるということになりますと、その国内法には韓国の公害防止関係の法律だとか、あるいはまた海洋汚染防止関係の法律、まあもしつくられた場合ですよ、いまないそうですから。あるいはまた漁業資源の保存や利用というような法律がもし仮にあれば、そういうような法律も韓国のものが適用されるというふうに読めますけれども、この点どうですか。
#317
○政府委員(村田良平君) いま御指摘の、たとえば海洋汚染の防止等に関しましてはこれは明らかに天然資源の開発、探査または採掘に関連する事項でございますので、この協定の十九条の規定に従いまして韓国の法令が当該小区域においては適用されます。
#318
○渡辺武君 魚等の生物資源の保存、利用についてはどうですか。
#319
○政府委員(村田良平君) 生物資源の保存、利用は、その天然資源の探査または採掘に関する事項というものには該当しないと思われますので、これは韓国の法令は適用されないと思います。
#320
○渡辺武君 いま大臣、この二百海里の排他的経済水域がもし設定された場合に、当然わが国に属すべき権利、主権的権利あるいは管轄権、これの行使は断然考慮するという趣旨のことをおっしゃったと思いますが、そう理解してよろしゅうございますか。
#321
○国務大臣(鳩山威一郎君) わが国といたしまして当然主張すべきであるというふうに思います。ただ、この問題は先ほど政府委員から御答弁申し上げましたように、地下資源の問題になりますと大陸だなの問題が出てくる。大陸だなと経済水域の問題が、これが大陸だなの論理と経済水城としての論理が食い違う場面が出てまいるということは考えられまして、その大陸だなとしての論理を韓国側は依然として主張をすることも考えられるわけであります。
 具体的にこの場合の石油の資源の開発ということになりますと、韓国側とすでにここで協定を結んでございますので、石油資源の開発については共同開発ということを実施しておるということで、これが排他的経済水域ができたからといってそれの効果には影響はない。しかし一般的な主権的な権利という問題には第二十八条で留保をしてあると、こういうふうに考えております。
#322
○渡辺武君 これは外務大臣としては私は、失礼だけれどもあんまりのんきな答弁だと思いますよ。
 近い将来二百海里水域がわが国の排他的経済水域として設定される動向にあるんです。これはもう避けられないと言っていいことだと思う。わが国もまたそれが利益だと言っている。そうだとすれば、現在の共同開発水域についてはわが国の主権的な権利もしくは管轄権、これが全面的に行使される、当然の措置としてそういうことになると思うんですね。特に私いま問題にしておりますのは海洋汚染の問題、つまり海洋環境の保全の問題、漁業資源の保存と利用の問題、これを伺いたいと思っているんですが、先ほどの御答弁ですと、漁業資源の保存と利用についてはこの協定の第九条、これは適用されないのだと。つまり日本の国内法があればこれが適用される、日本の主権が行使されるのだという趣旨のことを申しましたけれども、しかし海洋汚染、公害、つまり海洋環境の保全については当然日本の管轄権が将来生まれてくるのにもかかわらず、これを十九条で放棄して韓国の国内法が適用されるということになっている。まさに日本の主権がその点において韓国側に売り渡されていると言って差し支えないような状態、そうでしょう。もし経済水域が設定された場合、当然これは日本に属すべき管轄権の範囲内にある領域ですから、わが国の国内法が適用されるべきだということを私は主張すべきだと思う。その点どう思いますか。
#323
○国務大臣(鳩山威一郎君) 先ほどの答弁と、また繰り返すようになりますけれども、この海底資源と申しますか、石油資源の開発につきまして共同開発をしようと、こういうことでございます。その論理は、お互いに両国ともに大陸だなとしての双方の管轄権を主張しておると、こういうことでございます。したがいまして、この共同開発につきまして、それぞれどの国の法律を適用するかということにつきましてお互いに公平になるように、それぞれの国の法律を適用すると、こういう解決を図っておるわけでございます。
 しかし、それなるがゆえに一般的にこの地域につきましての日本が主権を放棄したわけではないということをいま申し上げているわけでございまして、両者が、両者と言いますか、韓国と日本との主張が相対立する問題があるわけでございます。その部面につきましては、両者の開発に関する限り、それぞれ適用の法制をそれぞれ区分をしたということでございます。しかし、区域全般についての主権的な権利を放棄したわけではない、こういうふうに申し上げているわけであります。
#324
○渡辺武君 大臣、開発のことをいま伺っているんじゃないんです。この共同開発なるものが、失礼ですけれども、どれほどばかばかしいものか、日本の主権をどれほど事実上放棄しているものかということは、前回立木委員が詳しく明らかにしました。
 私がきょう問題にしておりますのは、これは海洋汚染あるいは公害、これらを防ぐ海洋環境の保全の問題と、漁業資源の保存、利用の問題を伺っている。特に先ほどの答弁では、この十九条によって韓国の国内法が海洋保全の問題については適用されると、こういうことをおっしゃった。将来もし排他的経済水域が設定された場合に、当然日本の管轄権の範囲に属すべき地域に韓国の国内法が適用されてくる、この協定が成立すれば。ですから、日本の外務大臣としては、将来排他的経済水域が設定された場合に、少なくとも、最小限と言っていいですわ、海洋関係の保全の問題について日本の管轄権を主張なさるのか、こういうことを伺っている。
 ついでに申しますけれども、四月の二十六日の衆議院の外務委員会・農林水産委員会の連合審査の席で外務大臣はこういう答弁をしておられる。「海洋法会議の結論が、二百海里は経済水域として設定をすべきだ、してよろしい、こういうことになりますれば、当然のことながらわが国としても積極的な対策を講じていくべきであろう、このように考えております。」、こう答弁しておられる。「積極的な対策」、これを仮にわが国の権利の問題として考えてみれば、まさに十九条によって韓国の国内法が適用されているこの地域において、わが国の海洋環境保全についての管轄権を当然適用すべきだということを主張なさるのか、また、その立場に基づいてこの協定は改めるようにするおつもりがあるのか、この点を伺っているんです。
#325
○政府委員(中江要介君) いま先生御指摘のように、二百海里の経済水域というものが海洋法会議の結果として国際法としての意味をはっきり持つようになりましたならば、これは先ほど来大臣もおっしゃっておりますように、日本もその新しい海洋法秩序のもとで二百海里の経済水域としての法的性格に沿って十分な権利の主張をする、そのためにいま御引用になりました御答弁のように積極的な措置をとる、これは日本の国の利益を守るために当然のことでございます。
 ただ問題は、二百海里の経済水域の制度が海洋法会議の結果として新しい国際法として登場いたしましても、そのことによって大陸だなというもう一つの海洋法の制度が否定されることにならない、それは引き続き残るというところにむずかしさがありまして、この点は、先ほど別の政府委員が言いましたように、そういうふうに残っている大陸だなという国際法上の制度と、新たに登場する二百海里という経済水域の制度との調整がまだとられていないし、いまの海洋法会議の趨勢から見てとられる見込みがないということでございますので、そのときにどうするかということは、やはり経済水域の主張と大陸だなの主張との調整をその衝突する関係国の間で話し合いによって決めるほかはない。
 そうなりますと、大陸だなの制度のもとで主張する天然資源の開発、御引用になりました第十九条の「天然資源の探査又は採掘」と、この天然資源はこの協定の定義のところにございますように、石油資源、天然ガス資源を含むと、「及びこれに付随して産出されるその他の地下の鉱物をいう。」というこの「天然資源の探査又は採掘」という部分が大陸だな制度のもとで主張されるという形になりますと、その上部水域に対する管轄権と、その下にもぐってまいっております天然資源の探査、採掘に関する権利とが上と下とで重複する、重複するといいますか、食い違ってくる。その点をどう解決するかという問題は海洋法会議の結果を持ちましても出てこないということを先ほど来申しておると、こういうふうに御理解いただきたいわけでございます。
#326
○渡辺武君 どうしてそう論点をそらすんですかね。私が申し上げているのは海洋環境の保全の問題を特に取り上げて言ってるんです。大陸だな条約では海洋環境の保全についての沿岸国の権利というようなことは、これは言ってないんですね。まさに排他的経済水域の設定に伴って沿岸国の管轄権というものが非常に明確にうたわれている。大陸だなの問題じゃないんです。私は開発のことはきょうは余り触れたくない。むしろ海洋汚染の防止の問題、海洋環境の保全の問題、漁業資源の保全と利用の問題、これについて伺いたいと思っている。まさにその海洋環境の保全ですね。これについては韓国の国内法が適用されるんだということをおっしゃっている。だとするならば、将来排他的経済水域が設定されて、この海洋保全の管轄権がわが国に当然属することになるわけだから、したがってこの第十九条で放棄しているその権限を復活させることを交渉するのか、この協定を改めるべきだと思うがどうかということを伺っている。
#327
○政府委員(中江要介君) その点は冒頭に別の政府委員が説明しましたように、二百海里の経済水域というものは、趨勢としては国際的に認められる趨勢にあるけれども、いまの海洋法会議の審議から見まして、その具体的な内容というものはまだ決まっていない。それがどういうふうに決まるかはわかりませんけれども、決まりました暁には、それに基づいて日本が主張するところは十分主張すると、これが先ほどの大臣の連合審査会における御答弁の趣旨であるわけですが、そのときにこの協定が邪魔にならないかという点は、これも大臣が御指摘になりましたように二十八条によって、この協定によって共同開発区域に関する全部または一部に対する主権的権利の問題を決定していないということでありますので、新たな国際法のもとで、主権的権利の主張が国際法のもとで主張できるものが出てまいりましたらこれは日本として主張するということで、それは妨げない。したがって、その態様いかんということを見るまではどういうふうになるかはわからないけれども、基本的な態度としてはそういう問題はいま申し上げましたような認識でこの協定がつくられていると、こういうことでございます。
#328
○渡辺武君 端的に言ってくださいよ。海洋汚染については、海洋環境の保全についてはどうするのか。
#329
○政府委員(中江要介君) これはまず海洋汚染の問題については、この協定ではこの協定に基づいて防止の手続がとられております。この措置が新たに登場します経済水域に対する沿岸国の主権的権利の内容の中にどこまで織り込まれてくるかによっては、それに基づいて修正をする部分が出てまいりますれば修正は必要でしょうし、それに合致しておりますればそのままでいいだろうと、こういうふうに考えられるわけでございます。
#330
○渡辺武君 じゃあ次に入ります。
 この韓国の国内法が適用される地域、これはこの共同開発地域の中の大体何%ぐらいになる見込みですか。
#331
○政府委員(中江要介君) その御質問の何%というのは、その面積の何%という意味でございますれば、この操業管理者として指定されるケースがどの小区域において指定されるかによっておのずから違ってくるべきものだと、こういうふうに思います。
#332
○渡辺武君 大体共同開発方式でやるわけでしょう。大体費用も折半だと。とれた石油も大体折半だと。本当のところは、日本に半分まるまる来るのじゃなくて、日本もメジャー関係と共同開発の方向ですから、そこの半分がまた折半されて四分の一程度になるのじゃないかというふうに言われているわけですけれども、いずれにしても折半方式でいくということになりますと、この共同開発区域全体についても韓国の開発権者が、これが操業管理者になる地域、つまり韓国の国内法が適用される水域というのは、ほぼ共同開発区域の半分近くになるというふうに見てよろしゅうございますか。
#333
○政府委員(村田良平君) その点に関しましては、この協定に附属しております合意議事録の第六項というところに規定がございまして、「両政府は、操業管理者の指定が可能な限り衡平なものとなるように行われることを確保するよう努力する。」ということになっておりますので、衡平というのは必ずしも五〇、五〇という意味ではございませんけれども、バランスのとれた割合ということを目指して両国が話し合うということになると思います。
#334
○渡辺武君 平らに言えば、この共同開発区域、大体九州の面積の二倍ぐらいだというふうに私は見ているわけですが、九州の面積くらいの海面、これに韓国の国内法が適用される、こういうことになりますと、海洋汚染の防止あるいは漁業資源の保全、利用という点で私は日本の国民に対して非常に大きな問題になる、こう考えざるを得ません。いまこの協定で韓国の国内法の適用される地域の海洋関係の保全や生物資源の保存、利用、これは一体どういうふうに行われているのか。
#335
○政府委員(大森誠一君) この協定におきましては、海洋の汚染の防止及び除去に関する交換公文によりまして、海洋汚染の防止については一定の基準が定められるということになっているわけでございます。韓国におきましては、公害防止の基本的な法規や公害防止のための法規がございますが、わが国の海洋汚染防止法に該当するような法規はないと承知いたしております。しかしながら、韓国側も海洋汚染の防止に関する先進諸国の先例に従って、海洋法体系全体の整備見直しの一環といたしまして立法措置を検討中であると聞いているわけでございます。いずれにいたしましても、この協定の汚染防止に関する交換公文に定められた基準に合致しないような事態があります場合には、協定第五条の事業契約をわが方としては認可しないという方針で臨む所存でございます。
#336
○渡辺武君 その生物資源の保存、利用、これについては日本の主権的行使が行われるのだということをおっしゃいましたけれども、この点についてはこのこの協定ではどうなっていますか、どう保障されておりますか。
#337
○政府委員(中江要介君) この協定では、二百海里の経済水域についてはまだ国際法が確立しておりませんので、それに基づく権利というものはもちろん入っておりません。したがいまして、十二海里までの漁業水域、日韓漁業協定に基づきます十二海里までの漁業水域、漁業水域の設定されておりませんところでは三海里の領海、そこから先は公海、つまり公海漁業、さらには日韓漁業協定に基づきます共同規制区域に属する部分につきましては、日韓漁業協定に基づく共同規制水域としての規制、そういうものが当然行われるわけでございまして、そのこととこの大陸だなの資源開発ということとは直接関係がなくて、むしろいま先生がおっしゃいましたように、大陸だなの開発に伴う漁業に対する何らかの公害があるならばそれは防止しなければならない。あらゆる手段を講じてなおかつ不幸にして汚染が発生した場合、被害が生じました場合には、その補償をどうするかということの手当ては別途設けられてあると、こういう関係でございます。
#338
○渡辺武君 まずこの公害防止や海洋汚染の防止、つまり海洋環境の保全の問題について伺いたいと思うんですが、先ほどの御答弁では、韓国の方も国内法を整備するということが交換公文で決められているし急速に整備するだろうと、それをやるまでは開発権者の認可をやらないんだという趣旨のことをおっしゃいましたけれども、この協定の第四条を見てみますと、協定の効力発生後三カ月以内に認可をすると、こういうことになっておりますね。この協定が批准をされた、そして効力が発生するようになって三カ月以内に開発権者の認可をやると。それまでに韓国の国内法が整備されるんですか。そういう見通しありますか。どうでしょうか。
#339
○政府委員(中江要介君) これは先ほども説明がありましたように、どういう国内法によって、あるいはどういう手段でこの協定の義務を履行するかというのは、当然のことでございますけれども、それぞれ締約国の最も適当とする手段によるわけでございまして、全く同じ国内法を持っておる必要はないわけでございます。したがいまして、この協定で、あるいはものによりましては交換公文で非常に細かい規制の基準を設けておるものにつきましては、その基準に沿ったような協定の履行を国内法の整備によって行うか、あるいは開発契約というものによって行うか、それとも協定そのものを淵源としてその義務を行うか、これはそのそれぞれの締約国の主権に属する問題で、日本側としてこの協定に即して言いますならば、相手国である韓国がこの協定の義務を履行しているかどうかということを監視していく。またその手段としては、先ほどもお話がありましたように、事業契約の認可、承認という第五条の規定がございまして、その事業契約の中に盛られていること、この中には漁業上の利益との調整だとか、あるいは先ほど来話が出ております操業管理者の指定だとか、そういったものがこれは義務的に入らなければならない、そういったものを十分に審査した上で不適当と思うものは日本はこれを否認するという道があるわけでございます。
 したがいまして、相手の国の国内法がどれだけ整備されているかということは立ち入って議論するということはしない。むしろ協定の義務を相手が守るような形の開発権者、つまり開発契約に基づく開発権者であるか、またその開発権者とわが方の開発権者との間で締結された事業契約がこの協定の趣旨に沿っているかどうかというところで審査していく、こういうことを申し上げているわけでございます。
#340
○渡辺武君 一体どっちが本当ですか。あなたの前の方の答弁では、韓国の国内法、これは急速に整備されるでしょうと、もし整備されなければ認可の申請があっても認可しないんだという趣旨のことを答弁した。あなたは国内法が整備されていなくても、この協定の趣旨に合致すれば認可するのだと、どっちが本当ですか。
#341
○政府委員(中江要介君) 先ほどの先生の御質問が韓国の国内法はどうなっておるかという御質問でしたので、韓国の国内法はこういう状況ですという説明があったわけでございまして、じゃ、韓国がこの協定上の汚染防止の義務、たとえば汚染防止の義務を履行する上において、その国内法の整備がされているかどうかという問題とこの協定の義務違反との関係はどうかという側面から私がお答え申し上げた、そういうつもりでおります。
#342
○渡辺武君 どっちが本当ですか。
#343
○政府委員(中江要介君) したがいまして、御質問に対するお答えとしてはどちらも本当であると、こう思っております。
#344
○渡辺武君 全くいいかげんな答弁です。そんなことで一体あの水域の海洋汚染を防ぐことができるのか、疑問に思うのはこれは当然ですよ。
 質問次に移しますけれども、仮に韓国の公害防止関係の法律が整備されたと、海洋汚染防止法もできたと仮にして、あるいはまた、この開発権者相互の間の協定でこの大陸だな協定の趣旨に合致したようなことがうたわれていたと仮にしても、一体それを施行することを保障する機構といいますか、措置といいますか、これがあるかないのか、この点が非常に重要だと私は思うんです。法律ができましてもその法を施行するための政府の努力あるいは機構、こういうようなものがなければ空文に等しいんですよ。その点はどういうふうにしますか。
#345
○政府委員(大森誠一君) ただいま先生が質問の中で触れられました機構という意味について、私必ずしも正確に理解いたしていないかもしれませんけれども、いまの御質問に関連して申し上げれば、この協定の第三十条におきまして「両締約国は、この協定を実施するため、すべての必要な国内的措置をとる。」ということが規定されているわけでございます。また他方、先ほど私が申し上げました海洋の汚染の防止及び除去に関する交換公文の取り決め措置につきましては、この交換公文の第六の部分におきまして、「この取極は、協定の効力発生の日の後六箇月を経過したとき又は両政府間で合意するこれよりも早い日から、適用される。」というふうに規定されているところでございまして、韓国側はこの交換公文に合致する基準の何らかの措置をとるということは義務づけられているわけでございます。
 なお、この協定の実施運用の問題に関しまして問題があると認められましたときには、この協定の第三十四条及び第二十五条に定められております日韓共同委員会においてこれを取り上げ、両国で協議する道があるわけでございます。
#346
○渡辺武君 海洋法会議で二百海里の排他的経済水域が設定されれば、当然海洋環境の保全というのは日本の正当な管轄権に属する問題になってくる、それはもう日ならずしてそういうことになることは明らかだと思う。そのことをあなた方は承知していながら、いまの御答弁を聞いていると、韓国の国内法が適用される水域、ほぼ九州と同じくらいの面積の水域ですな。これについて一体公害防止、日本の領域内でやられているほどにやられる保障があるのだろうかと、きわめて大きな疑問を抱かざるを得ない。
 伺いますけれども、たとえば日本の場合、この協定の何といいますか、国内法である特別措置法、これで鉱山保安法が適用されると、今度の水域ですね、ということになっておりますけれども、この鉱山保安法によれば、鉱務監督官というのが現場にいて、相当の権限を持って立入調査なりあるいはまた質問なりをやって、特に保安上非常に急迫の危険が起こったというような場合には、操業の停止だとか、あるいは改善命令を出すという権限を与えられているわけです。この現場の監督官のこの権限というのが非常に重要だということは、この間のサンタバーバラのあの石油流出事故、あれの経験を私ある文書で読んでみましたけれども、現場の監督官に与えられている権限が十分でなかったと、したがって応急の処置をとることができなかったんだと、これがあの事故の一つの大きな原因になっているという趣旨のことが書かれておった。それほど重要なことだと思う。韓国の場合、なるほど法律はでき、あるいはまた業者間の協定でやりますよとうたっていても、いま言ったような権限を持った監督官なり体制がきちっとしていなければ、一体本当に実施されるのかどうか疑わしいい。その辺の保障どうなっていますか。
#347
○政府委員(中江要介君) 私どもといたしましては、日本と韓国の間は、御承知の一九六五年の日韓基本関係条約というものによってお互いに主権国同士として認め合い、そして内政不干渉、主権尊重、紛争の平和的解決といったような原則に基づいて両国間を律するという、そういう正常な二国間の関係に入っていると、こういう前提でこの協定を結んでおりますので、協定を結びます以上、相手国がその協定を守らないのではなかろうかというような疑いの目を持って協定を結ぶということはいたさないわけでございまして、やはり、主権国としてのその地位を尊重し合って結んだ協定であって初めて有効な適用とそれに基づく資源の開発ができると、そういう確信のもとに結んでおるわけでございますので、相手の、この場合は韓国の側で守るだけの能力があるだろうかとか、あるいはそれを信じられるであろうかというようなことについては私どもは特に意見を持たない、こういうことでございます。
#348
○渡辺武君 全くのんきなもんだなあと思いますね。間もなく海洋法会議で、何回も言います、近い将来日本の排他的経済水域として設定することのできるそういう地域ですよ。その地域では海洋汚染防止等々の日本の管轄権というのは正当に認められるわけですよ。その地域の日本の権利をこの協定で放棄しているわけですね。韓国の国内法が適用される、そういう地域というものを設定しているわけですよ。そうしておいて相互の主権の尊重などと言えますか。ばかばかしい話ですよ。しかも、私ここにある新聞の「日本と韓国」という特集記事を持ってきましたけれど、詳しく読んでいる暇ありませんけれども、いま韓国は工業地域などで公害がどんどん激しくなっている。しかも、こういうことを言っているというんですね。「政府の保健社会部金公害課長すら「企業を実際に指導しようとすると、商工部の合意がとれなくて手をつけることのできないことがある。もっとも最近になって「合意」は「協議」に改められ、商工部の拒否があっても異議を申し込めるようになったが……」と政府の経済優先姿勢を持てあましている様子だ。」と。「韓国にくわしい現地のある日本人は「いまは潜行しているが、このまま進めば、将来は必ず公害が国をゆるがす大問題になる」と分析した。言論が封じられ、住民運動が許されないこの国では、チェックする力が存在しないままに公害は化け物のように進行するに違いない、というのだ。」、こういう記事が出ている。まだほかにも、私は、韓国の政府というものがどういう政府で、その政府のもとで、法律があっても公害が野放し同然になっているという幾つかの証拠を挙げることはできます。
 特に、大臣御存じかと思いますけれども、アメリカの国会では、この大陸だな共同開発をめぐってアメリカのガルフが朴大統領に三百万ドルの賄賂を贈ったということまで暴露されている。韓国政府がこの共同開発に参加するメジャー、これに対して厳しい公害規制をやるなどということはとうてい私は考えられない。それが常識だと思う。そういう政府を相手にして、日本の主権をみずから放棄するに等しいこういう協定を結ぶ、言語道断だと私は言わなきゃならぬと思う。この点についてどう思われますか。
#349
○国務大臣(鳩山威一郎君) ただいま御指摘の事実は私ども関知しておらないところでございます。
 公害につきまして、先ほど来政府委員から御説明申し上げておりますように、公害の防止義務、これらにつきましては詳細に現在の段階におきまして、国際的に見ても正しい標準の防止義務をこの協定によって課しておる。そしてこの実施につきましては両国政府がこれを確保するということを約束をしておるわけでございます。実際の公害防止につきまして、これはまあこれから先の話でございますが、問題が起こるようなことがあれば、これはまた委員会で、公害が激化しては大変でございますから、それにつきましては政府といたしましても最善の措置を講じなきゃならないと、このように考えております。いま御指摘のようなことが、実際問題としてこれ心配しないでいいような最善の措置を、これは関係省庁も連絡し合い、また韓国政府ともよく連絡をし合いながらこれらの問題に対処をしてまいりたいというふうに思っております。
#350
○渡辺武君 海上保安庁が、これ衆議院のたしか連合審査のときだと思いますけれども、仮に北海油田で起こったようなああいう油の流出事故が起こった場合どうするのかと、韓国の国内法の適用される水域でそういうものが認められた場合にどうするかという趣旨の質問に答えて、それを発見したら外務省を通じて韓国政府に通告する、そうして措置をとってもらうんだと、こういうことを言っているんです。適当な措置をとりましょうなんと言ったって、そういうような状態でどうして日本の海洋環境を保全することができるのか、だれもが疑問に思いますよ。非常な不安を感ずると思う。
 水産庁に伺いますけれども、この開発地域、これはアジ、サバの産卵場だと、そしてまた有力な漁場だというふうに言われております。そこに、その地域の半分が日本の主権が及ばない、韓国の国内法が適用される、韓国の主権が及ぶ地域になっている。そういう状態で、特にあそこは黒潮の分岐点だと言われている。もし大規模な油の流出事故などが起こった場合に、その影響はどのような範囲に及ぶと考えていらっしゃるのか、これを伺いたい。
#351
○政府委員(佐々木輝夫君) ただいまのような事故が起きないように、もちろん万全の措置を日韓共同してそれぞれの責任で講じていただくことは当然でございますけれども、仮にそういった事故が起きました場合には、起きました場所あるいはその時期等によって影響の程度というものはかなり違ってくると思いますけれども、黒潮のやはり対馬暖流等に乗りまして長崎県の沖合いあるいは対馬の方まで影響が及ばないとも限りませんので、そういった影響ができるだけ未然に防止できるように、万一事故が起きましたときには、開発事業者の責任で適切な拡散防止のための措置をとるのはもちろんのこと、そういった状況を即座に沿岸漁業者等にも伝えて、沿岸の漁業者自身もまたオイルフェンス等でそういった事故防止に努める体制をやはり整備しておく必要があるというふうに考えております。影響程度、範囲につきましては、流出量その他によりましてかなり状況によってまちまちだと思いますので、一概には申し上げられませんけれども、私どもも必ずしもそういった事故が起き得ないものでもないということで万全の措置をとる必要があると考えております。
#352
○渡辺武君 いまの御答弁でもわかると思いますけれども、大臣よく聞いておいていただきたいと思うんですがね。もし仮に油の流出事故などが起これば、その最大の被害を受けるのは日本の二百海里の水域内なんですよ。韓国の方には私は余り影響がないと思う。多少は影響があるかもわかりませんがね。最大の被害者、これはわが国の特に漁民だと、沿岸漁民は大きな打撃を受けるだろうと思いますね。水産庁はいまの御答弁のようなおそれがある。そうしてまた、ただに油の流出だけではなくして、掘削工事そのものに伴って起こる微粒子による海の汚染だとか、あるいはまた油の輸送、これに伴う海洋の油による汚染だとか、あるいは構築物ですね、この周りにはどうも魚が集りやすい。ところが、その近くへ行って漁をやることができないというような問題もあろうかと思う。等々の問題も含めて、この共同開発がもし仮に行われて事故などが起こった場合にどういう影響があるのかという調査、事前調査、これはおやりになったんでしょうか。また、もしやってないとすれば、今後やるおつもりがあるんでしょうか。
#353
○政府委員(佐々木輝夫君) 油の流出等によります事故につきましては、必ずしもこの区域だけの問題ではございませんで、日本の周辺の大陸だなの上でかなりのそういった資源探査なり開発が行われておりますし、またタンカー等の事故によりまして従来からもそういった事故が瀬戸内海その他でもしばしば起きておりますので、私どもといたしましては、この海域について特別の特定の調査はやっておりませんが、一般的に海況条件、あるいは資源の状態につきましては日本の周辺の漁場全体につきまして都道府県の試験場、国の研究所等が協力して従来から調査を実施しております。
 先ほど申し上げましたように、こういった事故がどこでいつ起きるか予測できないことが多いわけでございますから、こういった事態に対応できるように、そういう危険のあるところに日ごろから漁業協同組合等に被害の防止のためのいろいろなオイルフェンスその他の施設等も整備をさせまして、万一の事故に備えているというのが現状でございます。
#354
○渡辺武君 まだ質問残っていますが、これで終わります。
#355
○田渕哲也君 私は、まず政府のエネルギー政策について質問をしたいと思います。
 カーター大統領がエネルギーの新しい計画を出しました。これはきわめてシビアなもので、その根底には一九八〇年代のエネルギー危機というものが予想される、こういうことも言われておるわけですけれども、よく一九八O年代のエネルギー危機説というものが言われますけれども、まずその根拠というのは一体何かということをお尋ねしたいと思います。
#356
○政府委員(大永勇作君) 一九八〇年代の危機説と申しますのは、主として石油の需給に関するものでございます。
 将来のエネルギー源といたしましては、太陽熱でございますとかあるいは高速増殖炉、さらには核融合といった新しいエネルギー源があるわけでございますが、一九八〇年代におきましては、やはりエネルギー源としては石油が中心にならざるを得ないわけでございますが、その場合、御承知のようにこれから一九七〇年代にかけましては、石油につきまして、たとえば北海の油田でございますとか、あるいはアラスカのノーススロープの油田等がこれから出てまいりますので、一九七〇年代については比較的石油の需給は安定的に推移するであろうと言われておりますが、一九八〇年代に入りますと、これは見方によっていろいろな見方がございますが、油の年々の新規の埋蔵量の発見としては大体百五十億バレルぐらいではないかと言われておるわけでございますが、それに対しまして需要の方につきましては、一九八〇年の初期におきまして二百億バレルを超えるわけでございますので、仮に一九八〇年代を通しまして石油の需要が四%程度伸びたといたしますと、埋蔵量を食いつぶしていくわけでございます。現在、可採年数といたしましては大体三十年分の石油がございますが、この可採年数がだんだん減ってまいりまして、一九八〇年代の後半には技術的にもそれ以上減らせないという十五年ぐらいの可採年数に落ちるであろう。そういたしますと、それから後は物理的な意味からいたしましても石油の生産が減らざるを得ない。そういうことからいたしまして、一九八O年代の後半には石油の生産量の絶対値それ自身が減ってくる可能性があるということで、石油の危機であるというふうに言われておるわけでございます。
#357
○田渕哲也君 昭和五十年に、政府は「総合エネルギー政策の基本方向」というものを出されております。そして、この中に長期エネルギー需給の計画が書いてあるわけですけれども、最近エネルギー総合計画の見直しということが言われております。このエネルギー総合計画の見直しが必要になった理由は何か、この点についてお伺いしたいと思います。
#358
○政府委員(大永勇作君) このエネルギーの需給につきましては、需要の方につきましても、四十八年のオイルショックによりまして若干のスローダウンがございますので、その辺の見直しも必要なわけでございますが、主として見直しを要するようになりましたのは、一昨年エネルギー見通しをいたしましたときの代替エネルギーでございます原子力あるいはLNG等についての見通しが当時の見通しにはどうも達しそうにないというところが中心になって見直しを迫られてまいったわけでございます。
#359
○田渕哲也君 石油の需給というものがだんだん逼迫してくる、これがエネルギー危機の根拠だとしますと、長期エネルギー政策の中で大事なのは石油の依存度というものをどのように下げていくことが可能か。それからもう一つは、エネルギーの自給率をどのように上げていくか、この二点がきわめて重大だろうと思うんです。
 五十年にできたエネルギー需給の計画では、昭和六十年度の自給率は何%になっておりますか。また石油依存度は何%になっておりますか。さらに、これを見直すとするならば、大体どのようにこれを改定するのか、この点お答えいただきたいと思います。
#360
○政府委員(大永勇作君) まず、石油の依存度でございますが、昭和五十年度の実績でございますけれども、約七三%を石油に依存しておるわけでございます。一昨年の見通しにおきましては六十年度の石油の見通しを六三%に落とすという見通しであったわけでございますが、先ほど御説明申し上げましたように、原子力でございますとかLNGの見通しにつきまして、やはり一昨年見込んだほどの伸びがどうもむずかしいというふうな状態でございますので、このエネルギーの需要の見直しにつきましては、実は昨日総合エネルギー調査会の需給部会におきまして暫定的な見通しを出しておるわけでございますが、そこでは、いろんな政策努力をいたしましてもやはり昭和六十年度の石油の依存率は六五・五%程度にならざるを得ないのではないかということでございます。
 それから自給率につきましては、準国産エネルギーといたしましての原子力を含める場合と含めない場合で数字が違ってまいるわけでございますけれども、この原子力を含めました数字で、つまり水力、それから国内の石油・天然ガス、それに地熱、国内の石炭、それから原子力、これだけを合計いたしましたものの昭和五十年におきます比率はわずかに一二%でございます。これを一昨年の見通しにおきましては一七・六%程度に高めようということであったわけでございますが、先ほど申し上げましたような原子力の見通しが当初見込んだほどいかないということもありまして、先ほど申し上げました暫定の見通しにおきましては一五・八%ということで、現在よりは上回りますが、一昨年の見通しよりは下回らざるを得ないというふうなのが実態であろうかと存じます。
#361
○田渕哲也君 五十年のときの見通しでは省エネルギー率というのが昭和六十年度では九・四%に見ております。その後もアメリカのエネルギー計画でもさらにこの省エネルギーを進めるという方向は出されておりますけれども、政府の方でもこの省エネルギー促進ということにさらに力を入れられるということも聞いております。その場合、この省エネルギー率というのはどうなりますか、変化があるのかないのか。
#362
○政府委員(大永勇作君) 一昨年御指摘のように省エネルギー率としましては昭和六十年度九・四%を見込んだわけでございますが、六十年度の見通しにつきましては、現在程度のエネルギー対策のもとにおきましては節約率は五・五%にとどまるであろう。しかしながら今後、先ほど申し上げましたように、強力な各般のエネルギー節約措置をとることによりまして、見通しといたしましては一〇・八%程度に省エネルギーを高めたいというふうに考えておる次第でございます。
#363
○田渕哲也君 次に、石油の備蓄計画についてお伺いしたいと思いますが、現在石油の備蓄状況はどうなっておるか、さらに将来の計画はどうなのか、この点についてお伺いします。
#364
○政府委員(古田徳昌君) 緊急時におきます石油の安定供給確保のために石油備蓄の増強が非常に重要な施策であるということで、政府としましても昭和五十四年度末に九十日備蓄を達成するということを目標としまして、現在いわゆる九十日石油備蓄増強計画を実施しているところでございます。この計画に従いますと、ことしの三月、つまり五十一年度末の目標値は七十五日分を保有するということであったわけでございますが、ごく最近時点で見ますと、四月末の実績が七十八・四日分ということになっておりまして、私ども揚げました目標値を現時点では上回った姿になっております。この五十四年度末までの九十日備蓄達成のためにはかなり大規模の資金が必要になってくるわけでございまして、必要なタンク建設容量としましては約二千四百万キロリッターでございまして、それに必要な土地としましては約三百五十万坪程度ということで、このための用地費、施設費、あるいは中に貯蔵いたします原油の代金といったふうなものを合わせますと一兆円を超える金額になるような次第でございます。
 このような多額の資金を要する施策でございますために、政府といたしましても備蓄増強達成のために、たとえば備蓄原油購入資金に対しましての利子補給を実施する。あるいは、二社以上の石油会社が備蓄基地を建設します場合のいわゆる共同備蓄会社への出資を大幅に改善していくというふうな形で、種々の施策を講じているところでございます。
#365
○田渕哲也君 それでは、次に海洋法会議の関係の質問をしたいと思いますが、この委員会でもよく問題になっておりますけれども、国連海洋法会議の単一草案の中に排他的経済水域の条項があります。同じく大陸だなの条項があるわけで、海底資源の開発についてはこの両者が競合しておると、こういう関係にあるわけです。これが簡単に統一されないし、また、近い将来それが統一される見込みもない、このような答弁がされておりますけれども、しかし、私は海洋法条約というようなかっこうでこういうものを決める場合には、矛盾した規定を決めておくのはおかしいような気がするわけです。何らかの形でこの見解を統一する必要がある。そういう作業が海洋法会議でされなくてはならないと思うんですね。その場合、一体わが国はどういう態度をとるのか、この点についてお伺いをしたいと思います。
#366
○政府委員(村田良平君) たしかに御指摘のように、現在のところでは両方の制度がいわば並行的に存在しておりまして、同一のたとえば海底地域が経済水域の海底であるとともに大陸だなであるというふうなことになっておりまして、しかもそれぞれの別個の条項が置かれておるということは、形としては必ずしもすっきりしない、好ましくない形であるというふうに思われます。したがいまして、これがなるべく調整される、統一されるということが望ましいと思うわけでございますが、従来から累次答弁で申し上げておりますように、この両方の制度が別個の制度として議論されておるわけでございます。しかもこれを統一しようという動きもなかなか出ておらないということでございまして、恐らくその理由は発生史的に見まして、大陸だな制度というのはすでに三十年間の歴史を持っておるわけでございまして、いわばその過去の歴史に基づきましていろんな大陸だなの制度を各国がとっておるわけでございます。したがって、そういう既得権と申しますか、従来すでに行っておった制度自体はもういじられたくないというふうな考えを持っている国が大陸だな制度はそれ自体として持つべきだということを言っておると、他方、経済水域の方はいわば漁業に関する水域が発展的に広がってきたわけでございまして、その沿革的な背景が違うものでございますから、なかなかこれと大陸だなが一緒にならないということでございます。
 で、わが方といたしましては、もちろん、この両制度はなるべく調整されることが望ましいと思いますので、今後そのような議論が行われる場合にはそういった方向で努力はいたしたいと思いますけれども、ただ、具体的に世界の海洋の状態はいろいろでございますので、国際的に、特にこの境界画定等の問題に対しまして自動的に適用されるというふうなルールができ上がるとはなかなか考えられないわけでございます。したがいまして、この大陸だな及び経済水域の関係の調整にいろいろ努力をいたしましても、依然として問題が残ったままで海洋法会議がまとまるのではなかろうかという判断を持っておる次第でございます。
#367
○田渕哲也君 海洋法会議の情勢なり見通しについてはいまお述べになったわけでありますけれども、ただ日本の国として、海洋法会議では各国がそれぞれ主張するわけですから、情勢をお聞きしておるのではなくて、日本はどういう主張をしてこの矛盾したものを統一しようとするのか、この点についてお伺いしたわけです。
#368
○政府委員(村田良平君) 現在までのところでは、実は各会期それぞれ大陸だなは大陸だな、経済水域は経済水域ということで議論がされておりまして、これからは総合的な条文の調整等の議論にも入ってくる段階であろうかと思います。すでに非公式な場におきましては、わが代表団からこの両制度が矛盾があると申しますか、競合しておるのは不自然ではないかということは指摘はしておるわけでございますけれども、会議そのものがいま先生御指摘の問題を討議するという段階には至っておらないわけでございます。討議する段階になりましたら、先ほど申し上げましたように、できるだけこの両制度間の矛盾がなくなるように努力するというのは当然のことであろうと思います。
#369
○田渕哲也君 両制度の矛盾をなくするために努力するということはよくわかるわけです。その努力の方向についてどういう考えを持つか、たとえば二百海里の排他的経済水域というものを推していくのか、あるいは大陸だな条項の方を強く推すのか、どちらかしかないと思うんですね。この点の日本の態度をお伺いしておるわけですけれども。
#370
○説明員(井口武夫君) 現在、第六回の会期が行われておりますが、わが国の立場といたしましては、原則としては二百海里の距岸で経済水域のこの海底と大陸だなとが一致するんだという考え方で対処しているわけでございますけれども、しかし、見通しはこの時点においても実はいろいろ各国の動きがございますが、やはり自然の延長が有力であるということでございまして、特に相対している国の間の境界線の画定に関しましては中間線で主張するという立場で、日本はそういう国と一緒にいろいろ打ち合わせておりますけれども、やはり衝平の原則ということで、中間線ではないような形の境界の画定というものの方が現在数においてかなり有利であるというのが現状でございます。
#371
○田渕哲也君 そうすると、日本はやっぱり排他的経済水域二百海里説を強く主張しておると、したがって競合する場合には中間線論を主張しておると、こういうことでいいわけですね。
#372
○説明員(井口武夫君) そのとおりでございます。
#373
○田渕哲也君 それから単一草案の第七十条にレベニューシェアリングという条項があるわけです。これは沿岸国が二百海里を越える部分の大陸だなの非生物資源の開発については全面的な権利を有しない、その収入の何%かを国際機関に支払わなくてはならない、こういう条項があるわけですね。ところが今回の日韓大陸だな協定の共同開発区域には、韓国から見ればこの地域に該当する部分が南の方にあります。私はこれはちょっと疑問に思うわけです。両方とも二百海里内にあるならば、双方の立場が全く競合するからいろいろな意見があって共同開発ということも納得いくわけですけれども、この部分は韓国が全面的な権利のないところではないか。ところが日本から見れば二百海里の中に入っておる。したがって、こういうところまで共同開発の区域に入れる必要があったのかどうか、こういう点はいかがでしょうか。
#374
○政府委員(村田良平君) 確かに御指摘のように七十条にはそのような規定があるわけでございますが、したがって理論的に言いますと、その共同開発区域全部が韓国の大陸だなになるというふうな場合には、このレベニューシェアリングの条項が適用されるのではないかという御疑問もあるいは出るかと思うわけでございますけれども、しかしながら、当初この協定を交渉いたしました際におきましては、そもそもこの大陸だな区域が一つの大陸だなであるかあるいは沖繩海溝によって区切られておる大陸だなであるかということに関しまして日韓両国の認識が基本的に異なっておったという事情から、法律的な論争が決着をつかないままついに現実的な解決方法ということでこのような措置をいたしたわけでございまして、その当時におきましては、この二百海里以遠のレベニューシェアリングという話は国際的にも出ておらなかったわけでございます。依然としてわが国は海洋法会議におきましては大陸だなの外縁は二百海里をもって限られるべきであるという主張を現在なお維持しておるわけでございます。今後このレベニューシェアリングあるいは二百海里を越える大陸だなという主張がますます強くなっておるというのが大勢ではございますけれども、しかしながら、従来のわが国の態度はそのようなものでございました。
 いずれにいたしましても、この韓国の側からいきまして二百海里以遠の大陸だなというのは、恐らく共同開発区域に予定されております部分の四分の一ぐらいに面積としてはなるかと思いますけれども、この区域に関しまして、あるいはその共同開発区域全体に関してわが国は主権的権利というものを留保しておるわけでございますので、この七十条にいうレベニューシェアリングが適用されるというふうなことは考えられないところでございます。
#375
○田渕哲也君 わが国の場合はもちろんこれは適用されません。ただ、もしこの単一草案が条約として有効になった場合には韓国側には適用されるわけですね。だから韓国側はその石油の取り分の中から幾らか拠出しなくてはならない、こういうことになる理屈ではないかと思いますが、いかがですか。
#376
○政府委員(村田良平君) その点に関しましては、もし、そういうことになるということは非常にわが国にとって好ましくない状況でございますけれども、別途、そもそも大陸だなの基本に関します単一草案の六十四条におきまして、コンチネンタルマージンの外縁までの距離が領海の幅員を測定する基線から二百海里ない場合は二百海里までは大陸だなと見なすというふうな規定もあるわけでございまして、いずれにしてもそこが二百海里以遠であるからレベニューシェアリングの対象になるということにはならないというふうに考えられるわけでございます。つまり公海に出て二百海里以遠というものをそもそも想定いたしましてこのレベニューシェアリングの話は従来行われておるわけでございまして、確かに海洋法会議がまだいろんな細部詰まっておりませんので、御指摘のような御疑問も当然お持ちになるかと思いますけれども、そもそもレベニューシェアリング論が出ましたのは、深海海底の方に向かって二百海里を越しておると、それは深海海底が人類共通の財産であるから、したがって大陸だなを開発する場合には、その上がりの一定部分は国際社会、特に開発途上国のために献金しろという思想で出てきた話でございますので、この東シナ海のような海域に対してはこのレベニューシェアリングの問題はないというふうに考えて差し支えないと思います。
#377
○田渕哲也君 もしこのレベニューシェアリングが共同開発区域の南の方に適用されても、わが国には好ましくも好ましくないこともないので、関係ないわけであって、韓国からすれば自分のところに全面的な権利はないということになるわけです。だから、韓国側がそこからの収入を得た場合には、その何分の一かを出さなければならないということになるのではないかということをお伺いしておるわけです。
#378
○政府委員(村田良平君) 私が申し上げましたのは、韓国がその部分に関してレベニューシェアリングをしなければならないというふうな状況というのは、この大陸だな全域が韓国のものと国際的に認められるという事態でございますので、わが国にとって好ましくない事態であると、こういうことを申し上げた次第でございます。
#379
○田渕哲也君 わかりました。
 次に、中国との問題ですけれども、いままで私なんかの質問に対しましても、政府はこの大陸だな協定を進めても日中関係に悪影響はないと、こういう趣旨の説明をされてきたわけです。ところが先日も、五月二十七日に中国側に説明したところが、非常に手厳しい抗議を中国はしておる。したがって、本当に日中関係に悪影響はないのだろうか。この点はいかがですか。
#380
○政府委員(中江要介君) 先生のおっしゃいます悪影響ということの意味が、日本の説明にもかかわらず、中国側が、中国側の立場によれば、日本の主張はあるいは説明は理解できないと強い反発を示しておることが、それを悪影響と言われればそれはいい影響ではないことはもちろんでございますけれども、私どもが申しておりますのは、一つは、中国の主権的権利を害していると中国は言うけれども、われわれは中国の主権的権利を害しないように細心の注意を払ってこの協定を結んでいるんだと、そういう意味で中国の権利に悪影響を及ぼしていないということが一つと、日中関係に悪影響を及ぼさないかという点につきましては、これは国と国との関係でございますので、何でもかんでも意見が一致するということばかりではございません。意見の一致がないときには、それを話し合いによって平和的に解決するという道を選ぶと、これはその両国間に悪影響がある問題ではなくて、通常の話し合いによる紛争の解決という道につながる、そういう方途をとっておりますし、中国側といたしましても、いまのところは話し合いに応じてきておりませんけれども、私どもとしてはしんぼう強く中国側の理解を求め、また中国がその用意ができましたならば話し合いをしようということも言っておりますし、さらに重要なことは、中国が言っております主張の中で中国の原則として唱えている部分、つまり本件大陸だなにつきましては、関係諸国が、全関係者が合意の上で境界を画定するのが筋であると、その点は私どもも全く同じ考えを持っておる。したがって、全く日本と中国が基本的に考えが違うのではなくて、そういう原則として合意されている部分を実行に移すような国際的な雰囲気が熟しているかどうかという点につきましては、この点も日本は熟していないと言いますし、中国も熟しているとは認めないと、こう言っておるわけでございまして、そこまでもこれは一致しておる。
 じゃあその次に、次善の策として資源の開発を急いでやらなければならないから、手のつけられるところからつけるという日本の立場と、それは全関係者が話し合いをして境界を画定するまで、つまりそういう時期が来るまで手をつけてはならぬという中国の立場と、そこで初めて意見の違いがきていると。この部分は日本の事情についてなお説明していけば、大臣も再三申されておりますように、このことのために日中関係が基本的に悪影響を受けるということはないと思うし、またその努力はしていくんだと、こういうことでございます。
#381
○田渕哲也君 中国からこの問題について話し合い、申し出があった場合には話し合いに応ずるということを政府は言われております。もしこの日韓の共同開発区域について話し合いに応ずるとすると、それはどういうポイントについて話し合いをするわけですか。
#382
○政府委員(中江要介君) 日本政府が中国側に申しております話し合いといいますのは、この大陸だなのうち、これは一つの大陸だなですが、大陸だなのうち日中間で境界を画定しなければならない部分がずっと西南の方に伸びているわけですので、日本の立場からいたしますと、日中間で話し合いをするということは、とりもなおさずその部分について境界画定をする。しかし、その部分の境界画定ということは当然不可避的に韓中中間線というものを前提にしないと話ができませんので、韓中中間線にも触れることとなろう。その韓中中間線に触れて、もし中国が韓国と話し合いをしてくださればこれはもうこれにこしたことはないんですけれども、その部分について日韓間でこれが韓中中間線であろうと精密に測定しました境界が、中国の考えております韓中中間線ともし違いましたならば、これは日中間でやはり話をしなければいけませんし、その結果については韓国とまた話し合いをしなければいけない、これは当然の理屈であろうと、こう思っているわけでございます。
#383
○田渕哲也君 ということは、線引きの問題だけだというふうに解釈していいわけですか。たとえば、線引きの問題以外に、中国もあの地域についてはどうしても権利があるんだという主張をしてきて、共同開発に参加させろと言った場合、そういうことには応ずる余地はあるのかないのか、この点はいかがですか。
#384
○政府委員(中江要介君) 理屈の問題といたしましていま御質問のような主張を中国がするということは排除されませんけれども、国際法上の大陸だなの制度として議論をいたしますときには、その中国の主張には根拠がないのが現行の国際法上の大陸だな制度である、これが私どもの立場でありますので、中国がそれと違った主張をいたしましたならば、その主張の違いについて十分議論しなければならない、こういうふうに思います。
#385
○田渕哲也君 そうすると、われわれが考えておる中国との話し合いのポイントは線引きの問題、これは韓国側はどうですか、韓中間の線引きについては韓国も中国と話し合う姿勢は持っておるのですか。
#386
○政府委員(中江要介君) これは韓国が最初に単独開発をいたしますために国内法を制定しましたときに、機を逸せず中国がそれに対する反対の声明を出しました。その声明の中で、中国と相談もしないで勝手に韓国がこの韓中間にまたがる大陸だなの開発に着手するのは許せないと、こういうことを言いまして、そのすぐ翌日に韓国の外交部は声明を出しまして、中華人民共和国政府と――これは一九七三年三月十五日のことでございますが、十五日に中国外交部スポークスマンが声明を出しまして、三月十六日に韓国外務部が声明を出しております。念のために読みますと、こういうふうになっております。「黄海及び東シナ海における海底資源の開発に関し三月十五日に中華人民共和国当局が行った声明について」、中華人民共和国という正式の国名を韓国政府が使ったのはこれが初めてでございますが、「中華人民共和国当局が行った声明について、大韓民国政府は、探査及び採掘計画が実施乃至意図されている区域は、国際法に基づき大韓民国の管轄内であることを確認するものである。大韓民国政府は、さらに、両国間の大陸棚区域の境界画定問題について中華人民共和国当局と話合いを開始する用意があることを表明する。」と、はっきりと中華人民共和国当局と話しをするということを公式に声明いたしました。にもかかわらず、これに対して中国側の反応がないままに推移しているというのが現実でございます。
#387
○田渕哲也君 将来さらにその共同開発区域より南東部の開発をするようになった場合、これは中国との関係が出てくるわけです。その場合は、わが国が中国と話し合いをする場合は、やはりその中間線論というものはあくまで主張するのかどうか。
#388
○政府委員(中江要介君) これは日韓間であの大陸だなは一つの大陸だなであるという主張をいまでも法律的な主張としては取り下げておりませんので、当然その南部につきましても日中間に横たわる一つの大陸だなであるという立場で臨みます。そういたしますと、通常の場合は、こういう場合は中間線で境界を画定するのは国際の慣行であるということで臨むことになるわけでございます。
#389
○田渕哲也君 ところが、日中間の大陸だなも地形的には大体似たようになっているわけですね。そうすると中国は、やはり韓国との間で共同開発でやったんだから共同開発でやれという主張をしてくることは考えられるわけです。その場合は同じような共同開発方式にならざるを得ないのではないかと思いますが、いかがですか。
#390
○政府委員(中江要介君) これは理論闘争の成り行きが日韓の場合と同じように推移いたしまして、双方が実際的解決をすることが利益であるという判断のもとで考えられる一つの構想としては、この共同開発構想というのはそれだけの意味があると、こういうふうに私どもは思います。
#391
○田渕哲也君 次に、北朝鮮との関係ですけれども、北朝鮮も依然として抗議をしておるわけでありますけれども、将来、朝鮮半島が統一されて現在の国の形態が変わった場合にこの協定はどうなるものか、この点はいかがですか。
#392
○政府委員(中江要介君) 国際法の一般原則に従いますと、統一された新しい国家が統一前のそれぞれの国家が国際法上負っておりました権利義務はそのまま継承するというのが通例でございます。それ以外の継承の仕方というものは、これはその統一のされ方いかんによっていろいろのバリエーションはあると思いますけれども、通常は、統一されました新国家は統一前の国家が国際法上負っていた権利義務は継承するということになりましょうから、この協定に即して申し上げますと、この協定はもっぱら南部の、朝鮮半島の南部に存在する大陸だなについてのみ協定しておりますので、北の部分には関係がございませんので、この統一されましたであろう国家は、南部につきましてはこの協定を継承するという道が開かれていると、こういうふうに私どもは考えております。
#393
○田渕哲也君 統一の形によっては継承されない場合もあると、それはたとえばどういう形の場合ですか。
#394
○政府委員(中江要介君) これは北が――これは具体的な例でこういうことを申し上げるのは非常に差しさわりがあると思いますので、一般論として申し上げますと、A、Bという二つの国がございまして、そのAの国はBの国を全く存在として認めない、認めないままでたとえば併呑する、あるいは征服する、そういうような場合に、Aといたしましては、Bはそもそも国際法上の主体ではなかったのであるからBの結んだものを継承する筋合いではないと、こういう主張をするということは理論的にはあろうかと、こういうふうに思います。
#395
○田渕哲也君 次に、石油開発公団は来ておられますか――これも本会議もしくは委員会で取り上げられた問題ですけれども、石油開発公団は韓国側の開発権者には融資をしない、こういうことが確認をされております。これについてもう一度確認をしておきたいんですが、これは法的にはどれによるものか。石油開発公団法の第一条にありますね。それから第十九条、それから附帯決議、この三つがそれに関連した問題だと思いますけれども、政府の答弁の根拠というのはどれを根拠にしておるのか、この点をお伺いしたいと思います。
#396
○政府委員(古田徳昌君) 韓国側の開発権者に対しましての投融資の問題でございましたら、それにつきましては、石油開発公団法二十条の業務方法書によりまして、この業務方法書は通産大臣の認可を受けることになっておりますが、その業務方法書によりまして投融資の対象は本邦法人、あるいはたとえば鉱業権取得のために本邦法人が外国にみずからの子会社を持ちます場合にはその外国法人というふうな形になっております。そういう関係上、韓国におきましてのこの地域におきます開発権者に対しての投融資につきましては、考えていないわけでございます。
 それから第二に政府機関、これは第十九条の第二号で外国の政府機関またはこれに準ずる法人に対しましての投融資というふうな問題が一つあるわけでございますが、これにつきましても、この業務は産油国がみずからナショナルリザーブとして保有しております鉱区をみずからの国営石油会社が探鉱開発する際に日本から石油開発公団が投融資をする。ただし、これは公団法第一条との関係で、つまりわが国に対します石油の安定供給の確保というふうな目的が掲げられておりますので、それとの関係で日本への原油供給を見返りにするということが条件となっているわけでございます。したがいまして、現在の韓国の情勢、つまりまだ全く産油国としての状態にはないわけでございますけれども、この韓国に対しまして、たとえこのような政府機関ないしそれに準ずる機関ができましたといたしましても、わが国の石油開発公団がその投融資の対象とすることはないというわけでございます。
#397
○田渕哲也君 これは、第一条の趣旨はあくまで産油国であるということが条件ですね。たとえば産油国でなくて石油は輸入しておるけれども、ここからとれた石油の一部を日本に輸出するという、そういうかっこうの場合は該当しないと見ていいわけですか。
#398
○政府委員(古田徳昌君) 目的にありますように、あくまで「石油開発公団は、石油及び可燃性天然ガスの探鉱等に必要な資金」の貸し出しということになっておりまして、その探鉱等に必要な資金の貸し出しに結びついた形での原油供給を見返りにするということで考えているわけでございます。
#399
○田渕哲也君 石油開発公団の融資条件というのは、現在は必要な費用の七〇%、それから金利は六・七五%以上ということがいわれております。ところが、大陸だな石油開発協会からもっと条件をよくしろという要望が出ておる。比率を八〇%に上げて金利は六%に下げろという要望が出されておりますけれども、これについて応ずる意向があるのかないのか、この点をお伺いしたいと思います。
#400
○政府委員(古田徳昌君) 現在の石油開発公団の投融資の条件は、先生御指摘のとおり、わが国周辺海域におきましては、必要な探鉱資金額の七〇%を限度、それから貸し出しの場合の金利は御指摘のとおり六・七五%でございます。この投融資の比率につきましては、海外におきます探鉱活動に対しましては原則として五〇%頭打ちということにしております。
 関係の業界等からこの助成の比率を高めてもらいたいというふうな要望があることは私どもも承知しておりますが、現在のところ、この条件緩和につきましては具体的な日程には上がっておりません。
#401
○田渕哲也君 現在の公団の投融資額は、三十八社に投融資をしておる、そして二社に債務保証がある。投融資額の残高が五十一年度末で二千九百四十億円、債務保証が同じく二千二百三十億円、このように聞いておるわけです。問題は、このうち回収可能見込みのものはどれぐらいあるのか、また、回収不能見込みのものがどれぐらいあるのか、この点をお伺いしたいと思います。
#402
○政府委員(古田徳昌君) 投融資残高等につきましては先生御指摘のとおりでございますが、本年の二月末現在で、投融資あるいは債務保証の対象企業の状況を御説明いたしますと、投融資対象会社が三十八社、それから債務保証のみ行っている会社が三社ということで、全体四十社という形になっております。このうち石油開発に成功しまして生産中ないしは生産準備中のものが十社になっております。それから、石油あるいは天然ガスを発見しまして、その生産の可能性につきまして検討中のものが五社でございます。それから、現在なお探鉱中でございまして、成否につきましての結論が出てない、探鉱中の企業というのが十八社ございます。それから、残りが七社になるわけでございますが、この七社は探鉱に失敗いたしまして鉱区を返還したもので、現時点では具体的な探鉱計画がないという形になっておるわけでございます。
#403
○田渕哲也君 そうすると、七社に投融資をしたもの、あるいは債務保証したものは回収の見込みがない、こういうことになるわけですね。その額はどれぐらいになりますか。
#404
○政府委員(古田徳昌君) ただいま述べました七社につきましては、債務保証は行っておりません。探鉱資金の投融資のみでございますが、その残高は約百三十六億円になっております。
#405
○田渕哲也君 次に、開発権者に対する租鉱料、日本で言えば鉱産税ですか、これに非常に大きな差があるわけです。韓国側は租鉱料が一二・五%、ロイアルティーですね。そのほか署名賞与金とか生産ボーナスというものを取る。日本の場合は鉱産税一%ということになっておりますけれども、これだけですか、開発権者から取るというのは。法人税は別にしまして。
#406
○政府委員(古田徳昌君) わが国におきます大陸だな石油開発に課せられます税金について申し述べますと、法人税を別にいたしますと、鉱産税、これは鉱物価格の一%を標準として決められております。そのほかに鉱区税がございます。これは試掘鉱区百アールごとに百二十円、採掘鉱区は百アールごとに二百四十円というふうな形になっております。
#407
○田渕哲也君 その鉱区税というのは大体どれぐらいになるんですか、収入に換算した場合。
#408
○政府委員(古田徳昌君) 鉱区税は、当然のことながら鉱区の広さによって非常に変動するわけでございますけれど、この共同開発区域につきまして、鉱区税について若干の調整は行われておりますが、一応の試算をしてみますと、全区域で探査権の場合に一億六千四百万円という数字がございます。
#409
○田渕哲也君 参考人の意見を聞きましても、韓国側の一二・五%のロイアルティーにしても、これは一九五〇年代の水準だということなんです。現在はそこの鉱区を持っておる国の権利というものをもっと高く取ると。ところが、それに比べて日本の場合はきわめてこれは低いわけですね。だから、これが石油が出なかった場合は仕方がないでしょうけれども、出た場合は企業側が非常に大きな利益を受けるんじゃないか。しかもそれが、メジャーとか外国の企業が参加しておる場合に、日本の利益がこれで守れるのかどうか。しかも先ほどの石油開発公団のように、公共的な資金というものが多額に投資されるわけですね。この点ちょっと疑問に思うわけですけれども、どうなんですか。
#410
○政府委員(古田徳昌君) 先生御指摘のとおり、韓国につきましては最近の産油国の課しております税率等を参考にして決められているわけでございますが、わが国の場合には、従来から他の鉱産物と同じ形で法人税、鉱区税、鉱産税等の課税を行われておりまして、結果的にその間に非常な差があるということは事実でございます。ただ、わが国周辺の大陸だながいわば国民全体の資産であり財産であるということで、その利益は当然国民全体に還元されるべきであるという考え方があるわけでございますから、これにつきましては今後の探鉱開発の進展状況、その兼ね合いとの関係で検討をされるべき性格の問題ではないかというふうに考えております。
#411
○田渕哲也君 ということは、たまたまその探鉱が成功して、どんどん出てくるような場合にはこれを上げることもあり得るということですか。
#412
○政府委員(古田徳昌君) そういうことも含めて、今後の検討課題というふうに私どもとしては承知しているわけでございます。
#413
○田渕哲也君 北海油田の場合は、生産開始とともに、イギリスにしてもノルウェーにしても国営会社あるいは公社を設立してやっておるわけです。わが国においても開発権者として特定企業やメジャーに任すのではなくて公社公団というものでやるべきではないか、こういう質問が衆議院でなされて、通産大臣は、これは十分傾聴に値するから検討したいと、こういう答弁をされておるわけです。しかし、もうすでに開発権者が予定されておるわけですね。大臣は十分検討したいと言われておりますけれども、今後具体的にどう取り組んでいくのか、この点はいかがですか。
#414
○政府委員(古田徳昌君) イギリスの石油公社、それからノルウェーの国策石油会社は、それぞれ北海の石油開発事業に対しまして五一%あるいは五〇%という形で事業参加をする機関でございますが、これも北海におきます探鉱開発が成功いたしまして、ある生産水準になり、今後の見込みにつきましても非常に有望であるという段階になって、それぞれの国におきます石油政策の再検討の結果出てきた機関でございます。現在わが国につきましては石油開発公団が民間企業の活力及び資金力を最大限に利用しつつ探鉱開発を促進するという形になっておりますが、石油開発公団が、たとえば投資によりまして助成しました場合には、当然それに対しましては探鉱開発が成功した段階で株式配当等によって利益が公団に還元されるというふうな形になっておりますし、さらに生産された原油、天然ガスはわが国に持ち込まれることというふうになっておりますので、政策的な意図というのは現在の石油開発公団の機能を通じても十分具体化されているのではないかというふうに考えております。
 ただ、御指摘のような考え方はあることは私どもも十分承知しておりますし、先般通産大臣がその点についての検討ということで御答弁もなさっておりますが、これにつきましても、わが国周辺海域での探鉱開発の結果非常に有望な油田が発見され、産油量が膨大になっていくというふうなことになりましたら、その辺の進展状況ともにらみ合わせながら検討していくべき課題ではないかというふうに考えておるわけでございます。
#415
○田渕哲也君 それから、共同事業の契約のひな形というものをこの間いただいたわけです。特に通産省としてこの共同事業の契約についてチェックする個所、それをお伺いしたいと思います。特にこの条件がなければ認めないという個所。
#416
○政府委員(古田徳昌君) 共同事業契約につきましては、第一に私どもとしてチェックいたします点は、発見されました原油の全量をわが国に持ち込むという点でございます。これにつきまして契約の中に明示させる、あるいは別途の書面をつくらせるというふうな形で強い行政指導をしているわけでございます。
#417
○田渕哲也君 それが唯一の条件ですか、認める場合。
#418
○政府委員(古田徳昌君) その他につきましては相互にリスクを負担し、生産物をそれに応じて引き取るわけでございまして、その割合につきましても当然のことながら私どもとしてはチェックするわけでございます。
 それから、操業管理者の指定あるいは漁業との調整等についての十分な配慮が行われているかどうかというふうな点につきましても、必要な場合にはその契約内容を検討いたしまして行政指導することにいたしております。
#419
○田渕哲也君 たとえば、石油の価格の問題などはどうなりますか。たまたまここの開発した石油が非常にコストが高くついた場合に、全額日本へ持ち込んでもそうすると高い石油を日本が買い取り義務があるというようなことになるとこれはまずいと思うんですが、この点はいかがですか。
#420
○政府委員(古田徳昌君) 油田が発見されました場合には、その発見されました油田のたとえば海岸からの距離とかあるいは海の深さとかあるいは油田の埋蔵量、大きさというふうなことを勘案しながら、その時点におきます石油製品価格あるいは原油の価格といったふうなものとの関係で、いわゆる経済的なフィージビリティースタディーを行うわけでございます。その結果、採算性ありということで初めて開発に踏み切るわけでございまして、したがいまして開発に踏み切った油田について考えますと、割り高のものが国内に持ち込まれるというふうなことはないというふうに私どもは考えております。
#421
○田渕哲也君 時間がなくなりましたので、最後に防衛庁にお伺いをしたいと思います。
 この共同開発地域に石油採取の施設ができた場合に、この施設の防衛についてどう考えるのか、まずこの点をお伺いしたいと思います。
#422
○政府委員(伊藤圭一君) いま先生がおっしゃいましたその施設の防衛ということでございますが、平時におきましてはこれは海上保安庁が警戒に当たり実際の運用をなさることだと思います。いま先生がおっしゃいます意味は、この地域で紛争が起きたというようなことだと思いますが、まあ自衛権を発動するということは理論的には可能だと思っております。日本のその施設が攻撃を受けた場合、ただこの攻撃というのが組織的な暴力的な攻撃が繰り返されて、これを自衛する必要があると政府が判断したときに限るわけでございますが、それは可能だというふうに考えておりますが、先生も御承知のように、自衛権の発動に当たりましては政府は従来から三つの原則を挙げております。それは急迫不正の侵害であるという一つの判断、その次に他にその紛争を解決する手段がない場合、しかもその場合に最小限度の自衛力を発動するというような原則がございますので、先ほど申し上げましたように組織的な暴力的な計画的な侵略というものが繰り返されまして、それを自衛権の侵害と判断したときにはそういうこともあり得るというふうに判断いたしております。
#423
○田渕哲也君 日米安保条約はそういう場合に適用されるかどうか、この点はいかがですか。
#424
○政府委員(伊藤圭一君) これは外務省からお答えいただくのがよいのかと思いますけれども、私どもといたしましては、いわゆる領海ではございませんので、いわゆる領海の中で起きたものに対しましては安保条約の五条の発動があるわけでございますけれども、ここにおきましては自動的にその五条が発動されるというふうには考えていないわけでございます。
#425
○田渕哲也君 これは確かに領域外ですから、日米安保条約の適用の範囲外ということになろうかと思います。そうすると、これはやはりあくまでも自主防衛ということになるわけですね。
#426
○政府委員(伊藤圭一君) ここで起きました紛争につきましては、考えられるのは自衛権の発動でございます。しかし、わが領域に非常に近いところでございますから、その侵略というものが日本の領域に及んでくるという可能性はある地域ではないかというふうに考えております。
#427
○田渕哲也君 終わります。
#428
○矢原秀男君 日韓大陸だな関係二協定はあと数十分をもって、自然承認のやむなきに至っております。したがって、この際意見を交えながら政府並びに寺本委員長、さらには委員各位の再思三考を願いたいと思うものでございます。
 すなわち、本協定は余りにも多くの問題を抱えており、わが党は本来その承認には反対であります。しかしながら、憲法第六十一条の規定により、賛否のいかんにかかわらず、自然承認をされる以上は、各会派の賛否を明らかにし、かつまた、問題点について要望決議を付して議決をすることが、国民の信託を受け、しかも良識の府としての権威を期待される本院としての当然のあり方であると考えております。各会派の御賛同を得るべく努力をしてまいったのであります。特に寺本委員長初め責任政党である与党委員各位の賛成が得られず、自然承認に至ったことは、参議院の自主性と良識を失ったものとしてまことに遺憾と言わなければなりません。
 大臣に訴えたい。ただいまは与えられた最後の機会でありますので、わが党が議決に際し各会派の御賛同を得たいと用意した決議事項を明らかにして、以下鳩山大臣の所見を伺いたい。
 一つは、日韓両国間の種々の疑惑については十分に解明し、正常な日韓友好関係の樹立に努めること。
 第二点は、両協定が中華人民共和国及び朝鮮民主主義人民共和国の反対を押し切って署名されたいきさつにかんがみ、これら二国との友好関係の改善に最大の努力をすること。
 第三点は、第三次海洋法会議において検討されている海洋法がわが国の国益に合致する内容となるように努めること。
 第四点は、関係国内法が成立しないうちは協定の批准手続はとらないこと。
 第五点は、共同開発区域の開発に当たっては環境汚染、関係漁民に十分配慮をすること。
 第六点は、膨大な資金を要すると言われる開発権者、に対する石油開発公団等の投融資は厳正に行われること。
 以上、鳩山外務大臣の答弁を求めて、質問を終わります。
#429
○国務大臣(鳩山威一郎君) ただいまの御質問というよりも御意見につきまして、私の考えていることを申し述べさせていただきます。
 第一の、日韓間におきます予算委員会あるいは他の機会に御指摘のありました種々の問題につきまして、いろいろ御指摘をいただいております。今後の日韓関係につきまして、いやしくも世間の指弾を受けることのないように、正しい日韓の外交関係、経済関係も含めまして築いていくべきことは当然のことでございまして、この点につきまして、私どもといたしましても、政府といたしましてもでき得る限りの努力をいたすべきものと考えます。
 第二点、中華人民共和国、朝鮮民主主義人民共和国の承認なくしてこの協定を実施をする、共同開発を行う、この点につきまして、私どもといたしまして、この共同開発が御指摘のありました両国との友好関係を損なわないように極力努力をいたします。また、今後とも両国関係の友好関係の増進につきまして努力をいたしたい所存でございます。
 第三に、第三次海洋法会議におきましてわが国の国益が守られますように最善の努力をいたします。
 第四、関係の国内法が成立をするまで批准をしないようにという仰せでございます。私どもも、関係国内法が成立することが本件開発のために必要な要件であると考えて、国内法の成立に努力をいたし、また速やかな成立を期待をいたすところでございます。
 第五に、環境汚染につきまして関係漁民の方々に迷惑を及ぼすようなことがあっては相ならないということにつきまして、全く同じ考え方でございます。最大の努力をいたす所存でございます。
 最後の、開発資金につきまして石油開発公団の融資を厳正に行うべしということにつきましては、これまた当然の御指摘でございまして、厳正に行う所存でございます。
 以上でございます。
#430
○委員長(寺本広作君) 委員長から申し上げます。
 本案が衆議院から送付されまして、間もなく三十日の審議期間が経過しようとしております。この三十日間に、本委員会におきましてはすでに三十数時間にわたる審議を行っております。衆議院で六国会にわたり審議されてなお論及されなかった問題が、本委員会においてはたくさん掘り起こされたと思います。
 本案に関し外務委員会として結論に達しないことははなはだ遺憾でございます。まだ委員の皆さんの本案を審議したいという意欲はきわめて盛んなものがございます。しかしながら、間もなく時間が経過するのでありますから、これにて審議をやめまして、散会いたします。
   午後十一時九分散会
ソース: 国立国会図書館
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