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1976/04/07 第80回国会 参議院 参議院会議録情報 第080回国会 法務委員会 第5号
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1976/04/07 第80回国会 参議院

参議院会議録情報 第080回国会 法務委員会 第5号

#1
第080回国会 法務委員会 第5号
昭和五十二年四月七日(木曜日)
   午前十時九分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 三月二十五日
    辞任         補欠選任
     中村 太郎君     塩見 俊二君
     佐藤 信二君     町村 金五君
 四月一日
    辞任         補欠選任
     寺田 熊雄君     鶴園 哲夫君
 四月二月
    辞任         補欠選任
     鶴園 哲夫君     寺田 熊雄君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         田代富士男君
    理 事
                大島 友治君
                平井 卓志君
                寺田 熊雄君
                宮崎 正義君
    委 員
                高橋雄之助君
                佐々木静子君
                橋本  敦君
                下村  泰君
    発議者         佐々木静子君
   国務大臣
       法 務 大 臣  福田  一君
   政府委員
       法務大臣官房長  藤島  昭君
       法務省民事局長  香川 保一君
       法務省刑事局長  伊藤 榮樹君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局人事局長   勝見 嘉美君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        二見 次夫君
   説明員
       大蔵省証券局資
       本市場課長    小粥 正巳君
       通商産業省産業
       政策局産業資金
       課長       植田 守昭君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○証人等の被害についての給付に関する法律の一
 部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○民法の一部を改正する法律案(佐々木静子君外
 一名発議)
○社債発行限度暫定措置法案(内閣提出)
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 (裁判官の罷免に伴う司法行政上の問題等)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(田代富士男君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっておりますので、この際、理事の補欠選任を行いたいと存じます。
 理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(田代富士男君) 御異議ないと認めます。
 それでは、理事に寺田熊雄君を指名いたします。
    ―――――――――――――
#4
○委員長(田代富士男君) 証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。福田法務大臣。
#5
○国務大臣(福田一君) 証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 この法律案は、今国会に警察庁から提案されました、警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律の一部を改正する法律案において、傷病給付の新設により協力援助者に対する給付の充実が図られたこと等にかんがみ、証人等の被害についての給付制度においても、被害者に対する給付の充実を図ろうとするものであります。この法律案による改正点は、次の二点であります。
 第一は、傷病給付を新たに設けて給付の改善を図ろうとするものであります。現行法では、負傷等は治ったが、なお廃疾の状態にあると認められる者に対しては、その程度に応じ障害給付が支給されることとなっておりますが、長期間にわたり療養する者の中には、療養給付、休業給付の併給を受けているものの実質的に廃疾の状態にあると認められる者もあり、このうち廃疾の状態が重い者に対して療養給付とあわせ、現行制度による休業給付に代え傷病給付を支給することとするものであります。
 第二は、現行法では、国は、被害者が療養給付開始後三年を経過しても負傷または疾病が治らない場合、一時金としての打ち切り給付を支給することにより、療養給付、休業給付を打ち切ることができることとなっておりますが、この打ち切り給付を廃止し、被害者の負傷または疾病が全治するまで療養給付、休業給付を行うこととするものであります。
 以上が証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決下さいますようお願いいたします。
    ―――――――――――――
#6
○委員長(田代富士男君) 次に、民法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 発議者佐々木静子君から趣旨説明を聴取いたします。佐々木君。
#7
○佐々木静子君 民法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 わが国においては、戦後、個人の尊厳と男女の本質的平等をうたった新憲法のもと、民法もこれに応じて改正され、家の制度を廃止し、男女の不平等を取り除く努力がなされてきました。しかし、現行民法にはなお男女平等を阻害し、家の制度の残滓を思わせる規定が温存され、古い因習や観念と相まって婦人の地位向上の隘路の原因となっている点が多く見受けられるのであります。
 したがって、男女平等に反する家族法規の改正こそまず実現されなければならないと考えるものであります。以上の見地からこの法律案を提出するに至った次第であります。
 そこで、この法律案は、配偶者の相続順位を被相続人の兄弟姉妹の先順位とし、配偶者の相続分を引き上げることにより、妻の地位の実質的向上を図ろうとするものであります。
 この法律案の要点を申し上げますと、
 第一は、配偶者の相続順位に関する改正であります。
 現行法のもとでは、血族相続人として、第一に子とその代襲相続人、第二に直系尊属、第三に兄弟姉妹とその代襲相続人という順位があり、これら血族相続人と並んで配偶者は常に相続人となると定められていますが、最近は、被相続人と最も密接な家族共同生活をともにした生存配偶者の相続権に対する観念も改まり、生存配偶者は、相続上第一位の相続人として重視し、血族であるというだけで相続人となり得る親等の遠い非家族構成員に優先させることが新しい相続法の傾向に合致するものと考えられるに至っているのであります。
 そこで、被相続人の兄弟姉妹は、相続人である被相続人の配偶者、子及び直系尊属がない場合に相続人となることとし、配偶者の相続順位を被相続人の兄弟姉妹の先順位とすることといたしております。
 第二は、配偶者の相続分に関する改正であります。
 現行法のもとでは、妻の法定相続分は、子と共同相続する場合は三分の一、直系尊属と共同相続する場合は二分の一と定められているのでありますが、戦後相続法が改正された当時に比べ、現在は、家族構成が大きく変化しており、妻の相続分が子一人の相続分より少なくなるなど配偶者相続分について不合理な結果をもたらし、妻の地位の保護にも欠け、実質上の不平等を生ぜしめていると考えられるのであります。
 そこで、配偶者が被相続人の子または直系尊属と共同相続人となる場合における配偶者の相続分をそれぞれ二分の一または三分の二に引き上げることといたしております。
 以上が民法の一部を改正する法律案の趣旨であります。
 何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決されますようお願いいたします。
#8
○委員長(田代富士男君) 以上で両案の趣旨説明聴取は終わりました。
 両案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
    ―――――――――――――
#9
○委員長(田代富士男君) 社債発行限度暫定措置法案を議題といたします。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#10
○佐々木静子君 それでは、前回に引き続きまして、社債発行限度暫定措置法案について質問をさしていただきます。
 前回、時間の都合で留保させていただいておりました自己資本の充実についてまずお尋ねさしていただきます。この自己資本の充実という点について、「現行の二百九十七条の規定の趣旨を社債発行の枠を抑えることによって、社債によらないで新株を発行して自己資本を充実するというふうなことをねらっておるんだというふうな説もある」けれども「この社債の発行枠の問題と自己資本の充実の問題とはこれは違うことだと思うのであります。」というふうに前回法務省民事局長の御答弁でございますが、これはもう少し説明を加えていただきますとどのようなことになるのでしょうか。
#11
○政府委員(香川保一君) 商法の二百九十七条の規定の趣旨につきましてはいろいろの考え方があるわけでございますが、もちろん株式会社におきまして自己資本の充実ということは非常に重要なことであるわけであります。しかし、さような重要な最優先的に考えなきゃならないことを、社債を発行するために新株を発行させて、いわば間接的にと申しますか、自己資本の充実を図るというふうなことは二百九十七条の趣旨ではなかろう、主として考えられるのは社債権者保護のための規定でなければならぬというふうに考えるわけであります。社債を発行したいがためにやむを得ずと言っては言葉は悪うございますが新株を発行するというふうな迂遠なと申しまするか、あるいは間接的な方法で商法が自己資本の充実を考えておるというふうには考えるべきでないのではなかろうか、かように考えております。
#12
○佐々木静子君 その点について少し大蔵省に伺いたいのでございますけれども、大蔵省証券局年報昭和五十一年版で「わが国企業の資本構成の推移」というのを拝見さしていただきますと、昭和九年から十一年の資本金一億円以上の主要企業の平均が六一・五%という自己資本比率であったようでございますが、昭和四十九年で一四・三%となっているようでございますね。その点が、この年報によりますと、先進資本主義諸国の比率は、昭和四十八年で、アメリカ五二・一%、西ドイツ三一・一%、英国四九・五%というふうになっておるようでございますけれども、これは現在わが国の自己資本比率が非常に低いというように思うわけでございますが、その点、大蔵省とすると、今度の改正と関係してどのようにお考えでございますか。
#13
○説明員(小粥正巳君) お答え申し上げます。
 先生ただいま御指摘のように、わが国企業の現在の自己資本比率は非常に低うございます。わが国の戦前の数字、あるいは現在の諸外国との比較、いずれをとりましても大変低い姿であることは事実でございます。私ども、この点は、自己資本比率がこのような低い姿でよろしいとは決して思っておりません。ただ、これにつきましては、従来のいわゆる高度成長と申しますか、そういう経済構造のあり方がこういう形に反映している、そういうことでもあろうかと思います。
 そこで、いまお尋ねの今回の社債限度の拡大と自己資本比率の関係でございますが、この点は、先ほど法務省からもお答えがございましたように、私ども、この商法の規定は、社債限度を拡大するために増資をする、そういう増資促進効果があるのではないかということが言われておりますけれども、私ども考えますのに、増資というのは、あくまで、配当を考えますと、配当負担にたえるだけの企業の収益性の向上が伴わなければならないと思っております。したがいまして、たとえば現在のような経済の状況でございますと、企業がもし無理に増資をしようといたしますと、これは必ず配当負担の重荷によりまして企業の内部留保がむしろ社外に流出せざるを得ない、あるいは市場でそういう増資は迎えられない、こういうことになります。そういたしますと、企業は、今度は増資ができなければ資金調達は借入金に頼らざるを得ない。もしこの商法の規定で社債限度が動かないものといたしますと、銀行その他金融機関からの借入に頼ることになります。そういたしますと、たとえば社債は、同じく負債ではございますけれども、しばしば御説明がありましたように、長期、安定、しかも大量に資金を調達できる企業の資金調達手段としては、私どもは借入金よりも一般的に企業の財務内容改善に貢献するところが大きいと考えておりますので、やはり増資もそういう状況でできない、社債も限度がある、それでいよいよさなきだに借入金比率が高いわが国の企業の財務内容がさらに借入金過多に追い込まれるようなことではどうもぐあいが悪いのではないか。そういたしますと、この商法の規定は、自己資本充実の問題とは別に、やはり企業の資金調達の多様化という見地からも、長期安定資金である社債による調達の道を合理的な範囲で広げるということで非常に意味があろう。ただし、そのいわば見返りと申しますか、社債権者保護に欠けることのないような配慮が十分なされる限り、私どもはこういう方向が妥当であろうと、こういうふうに考えております。
#14
○佐々木静子君 いまの御説明でよくわかりますが、ちょっとこの五十一年の四月二十二日の読売新聞を拝見いたしますと、大蔵省の御見解として、社債枠拡大問題について、自己資本を充実することが先決であって、現行法を早急に改正する必要はないというふうな見解が出ているのですが、そのあたりといまの御答弁とちょっと変わってきていると思うのですが、それはどういうことでございますか。
#15
○説明員(小粥正巳君) ただいま御指摘の新聞記事でございますが、これは私どもといたしますと、部内でこの問題についていろいろ問題提起をしながら議論を闘わしたことは当然でございますけれども、大蔵省の最終的な見解といたしまして、ただいま先生お示しの新聞記事のような社債限度拡大に消極的ということはございません。ただ、その過程でいろいろな角度から検討したということは、これはもちろん事実でございます。ただ、私が先ほど少しくどかったわけでございますが御説明申し上げましたように、この規定が増資促進に役に立つのではないかという見解もございますので、その点特に現在のような経済状況下でいかがであろうかという点は慎重に吟味をいたしたつもりでございます。大蔵省といたしましては、最終的に一番大事な点は、社債権者保護とのバランス、これを最も慎重に取り扱うということで、現在こういう法案がまとまりました段階で、私どもとしてぜひこの法案の線で実現をしていただきたい、こういうふうに考えております。
#16
○佐々木静子君 長期資金の多様化というようなことからこれは必要なことだというお話はわかりましたが、そしていまお話しのあった社債権者の保護という点でございますけれども、この点について前回も法務省に対しましてお尋ねさしていただきまして、そうして必ずしもこれで完璧というわけではない、いろいろ不完全な点もあるという御答弁があったわけでございますけれども、特に社債を発行している企業に倒産はないというふうに考えられている場合が多いと思うのですが、実際問題として、社債を発行している安全だと思われておる企業で倒産が起こって社債権者の権利確保ということで問題が起こった例として、私ども、興人あるいは山陽特殊鋼の話などを聞くわけでございますが、たとえば興人の倒産の場合、どういうふうな問題が起こったか、そうしてどういうふうにして救済されたか、簡単にお述べいただきたいと思います。
#17
○説明員(小粥正巳君) お答え申し上げます。
 ただいま先生の御指摘の興人の例を含めまして私どもが聞いております範囲では、戦後公募で起債をされました社債につきましては、八件の社債の元利支払い不能に陥った例がございます。いまのお尋ねの興人の件、これは実は御存じのように、昭和五十年八月に会社が行き詰まりになりまして、会社更生法の適用申請をしております。元利支払い不能に陥ったわけでございますが、このときは担保の受託銀行がこれは三行ございまして、この担保の受託銀行が興人の出しております社債を額面価額で買い取る、こういう手当てをいたしました。その段階でいわば多数の社債権者が担保の受託会社三行に肩がわりをされたと、こういうことでございます。したがいまして、社債権者は買い取られた段階で全く元利払い不能となった社債を保有していることによる損害はこの点で救済されたということになります。その後社債権を肩がわりいたしました三受託銀行は会社興人に対しまして社債権者の立場に立つわけでございますが、この社債は他の一般社債と同様、担保が付せられておりまして、この担保権の実行の問題になるわけでございますが、これは現在更生計画を作成中でございまして、まだ更生計画が決定をされておりません。したがいまして、担保権の実行もまだでございます。まあこのような例は実は私どもが聞いております戦後の他の七例でございますか、ほとんど同じような形で担保の受託会社の社債権者からの買い取りという形で事実上救済をされております。しかし、これは、つけ加えさせていただきますと、法律上、契約上の義務ではございませんで、あえて申しますと、数多くの社債の中で、こういうディフォルトに陥った例というのはきわめてわずかでございます。きわめてわずかであればこそ、また受託銀行があえてこのような形で社債権者を結果的に保護するという形で行動しているわけでございます。これが現在までの起債界の実情であろうかと思います。
#18
○佐々木静子君 いまのお話で、たとえば例に出した興人などの場合が、受託銀行が肩がわりを、肩がわりといいますか、社債を買い取られたというわけでございますが、そうすると、今度のように社債の発行の枠が広がると、従来よりもそういうケースが多くなってくるのじゃないか。そういう点についての防止というか、対策は、これは大蔵省とするとどのように考えておられるわけですか。
#19
○説明員(小粥正巳君) 社債発行限度がこの法案が成立をいたしまして拡大されたといたしますと、従来よりは社債発行額がふえてまいる。したがいまして、先ほど例はきわめて少ないと申し上げましたが、しかし、御指摘のように、このような不幸な例があるいは限度が拡大されたのに伴いまして可能性としては少し多くなるかもしれません。ただ、一つは、現在の日本の起債市場のルールといたしまして受託銀行あるいは引き受け証券会社が自主的なルールをつくっておりまして、企業の財務内容、信用度、そういうものに問題のない会社に限って公募の社債を発行させるという、そういうルールが確立しておりますから、まず銘柄としては大変厳選された、ほとんどの場合危なげのない社債が出ているということ、これは一つの事実でございます。
 それからこのたびの法案につきまして、先ほど申し上げましたように、社債権者保護に欠けるところがあってはならない、これが最大の眼目でございますから、前にも御説明がございましたけれども、限度超過分はこれは一般社債については担保付でなければならない、これが法律上明記されております。先ほど申しましたように、従来も公募社債は慣行として担保付ではございましたが、これはあくまで慣行でございます。このたびは限度超過分については、法律上、担保をつけなければいけない、これが一つの要件でございます。
 それからもう一つは、いわゆるディスクロージャーでございますが、やはり社債権者に社債を発行する企業の財務内容をよりよく知らせる、いわば投資情報を提供いたしまして、社債権者と申しますか投資家の投資判断に誤りがないように情報を提供する、まあこういう制度をこれまま法律上手当てをするというわけでございますから、私どもは、ただいまの担保付の法定、ディスクロージャーの義務づけ、この二本の柱によりまして、限度拡大に伴う社債権者保護の手当てとしては現段階では十分ではなかろうか、こういうふうに考えております。
#20
○佐々木静子君 そうすると、いまのお話のように、担保付にすることと、ディスクロージャーの普及というか、そういうことである程度救済できる、心配要らないというお話でございますが、ただ、私ども心配しますのに、こういうふうに範囲が広がってくると、慣行上ではございますが、慣行として受託銀行が責任を持たなければ社債権者は保護されないし、といって、受託銀行が余り責任が過大になると、一般預金者の権利を侵害するのじゃないか。そこら辺のバランスをどのようにお考えでございますか。
#21
○説明員(小粥正巳君) お答え申し上げます。
 先ほど御説明しました慣行としてのこういう元利払い不能に陥った場合の受託銀行の買い取り措置、これは、先ほど申しましたように、決して義務づけられているわけではございませんから、今後どのようなことになりますか、これは非常に例が少なければこそここまでいわば受託銀行もみずから肩がわりをする、そういう負担にたえられたということかと思いますので、もしもこういう例が今後ふえることになりますと、先生がまさに御指摘されましたように、今度は銀行の資産内容が悪化するのではないか、ひいては預金者保護の問題にも触れてくるのではないか、確かにそういう点はございます。ただ、私ども、先ほど申しましたように、現在の公募債の起債のルールと申しますか慣行が会社の財務内容の質のよいものに限って発行をしていこうという、そういうルールが守られております限りは、このような不幸な例はきわめて例外的な少数にとどまるのではないかと期待をしております。
 それからもう一つは、担保付を義務づけることによりまして、社債権者は法律上はあくまで担保によっていわば社債権に裏づけがあるわけでございますから、最終的にもし発行会社に行き詰まりが生じましたならば、担保権の実行によって弁済を受けることはこれは可能でございます。ただ、多数の社債権者にとりまして、行き詰まった会社の担保権が適正に実行されまして最終的に配当を受けますまでには当然時間もかかります。また、その煩わしさになかなか大衆投資家ではたえられないというような問題もあるいはあろうかと思います。法律上は担保付ということでそこまでの保護に尽きるわけでございますが、社債市場の慣行で、受託銀行がみずからの負担に十分たえ得る限りは、このような慣行で社債権者保護を徹底させている。まあ行政当局と申しまして、これを今後も続けてほしいというところまで申すべきかどうか、これはちょっと問題ではございますが、もとに戻りましてそういう例が出ないような社債の選別、これが行われていくことがやはり何より大事ではなかろうか、こんなふうに考えております。
#22
○佐々木静子君 それでは、法務省に伺いますけれども、いまの受託会社について、商法上は募集の受託会社というふうになっておりますけれども、証券取引法制定後の社債募集形態の実情に合わないのではないかという意見も出ているようでございますね。三十八年の暮れの公社債引受協会が法務省の諮問にこたえて提出した「社債関係諸法の改正に関する意見」の中で、これを社債管理の受託会社と明確にすべきであるという意見を出しておられますし、また、学者の中にも、社債の受託会社という制度を確立して社債管理についての一層広範な権限を付与すべきだという説がありますけれども、その点は法務省はどのようにお考えでございますか。
#23
○政府委員(香川保一君) 先ほど来出ておりました受託会社というのは、これは商法の受託会社ではなくて、担保附社債信託法上の担保権の受託会社のことだと思うのであります。ただいま御質問の受託会社の問題は、まさにこの商法における社債発行をどのようにするかと、社債権者保護も考えながらよりよき資金調達の方法としての社債発行を容易にするという問題の一環として非常に重要な意味を持っておると思うのであります。この前の御質疑でも申し上げましたように、商法の二百九十七条の改廃の問題と絡みまして、仮にこれを撤廃するということにいたしますれば、当然この受託会社のあり方というものも密接不可分のものとしてお説のような方向で考えなければならぬということは私どもとして考えております。
#24
○佐々木静子君 この商法と、あるいは担保附社債信託法とか、あるいは証取法、あるいは社債登録法とかいうのがもう一つこう整理がされていないように思うわけですけれども、そのあたりは今後どのように調整なさるおつもりなのか、あるいは当分はこのままでいくのか、そのあたりの見通しを述べていただきたいと思います。
#25
○政府委員(香川保一君) ただいま法制審議会におきまして株式会社法の全面的な見直しをやっておるわけでございます。もちろんその一環といたしまして社債の問題も当然取り上げられるわけでございまして、私ども事務当局としましては、現在の担保附社債信託法による社債発行手続は、商法の一般規定よりもより複雑煩瑣になっておると申し上げては言い過ぎかもしれませんが、これはやはり昔の考え方は無担保で社債を出せる会社というのは資産内容がしっかりしておる会社だと、担保付の社債しか発行できない会社はどちらかというとまあ若干悪いと、そういうふうなことから担保付社債の場合には手続を厳格にしておるというふうに考えておるわけでございます。もちろん外債の問題もあったかと思いますけれども、しかし、これは必ずしも現在の実情から見ましてそのような区別をする必要はございませんので、商法改正の株式会社法改正の一環としまして事務当局としてはでき得べくんば社債法というふうな特別法をつくりまして、商法の社債に関する規定と現行の担保附社債信託法その他周辺のいろいろの関連規定をあわせた単行法を制定する方がいいのではないか、かようなふうに考えておりまして、その方向で法制審議会の御審議もお願いできたらというふうに考えております。
#26
○佐々木静子君 それでは、通産省にちょっと伺いたいのですが、前回、これは法務省の民事局長の御答弁にも出ておったのでございますが、中小企業投資育成会社法、これで社債が一億円以下の会社についても保障されているというお話でございましたけれども、この実情を見ますと、金融機関とか証券会社で構成されている起債会が、これは公募の社債ですけれども、発行会社の基準を定めて格づけを行っているから、公募の場合は現実に公募社債を発行しているのが二百六十五社というように伺っているわけですが、そうすると、この中小企業投資育成会社法の適用を受けるのが一億円以下、そしてこの起債会の方の基準といいますかランクづけでは公募の分は純資産がこの四月一日からは六十億以上じゃないといけないというふうに私は聞いているのですが、そのとおりでございますか。そうすると、一億円以上で六十億円に達さないいわゆる中堅企業ですね、そういうふうなものに対する社債によって受ける利益というものがどんなことで補われるのか、その点も簡単に御説明いただきたいと思うわけです。
#27
○説明員(植田守昭君) ただいま御指摘がございましたように、中小企業におきましては中小企業投資育成会社がございます。いずれにしましても、こういったいわゆる中小企業ないしは中堅企業の場合は、公募債でなくて私募債が多いというふうになろうかと思いますが、いわゆる中小、中堅企業につきましてはなかなか完全な事情把握は私どももできていない点があるわけでございますが、私ども聞いているところによりますと、たとえば法人企業統計等では、五十年度で一億円未満の企業でも二百億程度の社債は発行されているというふうに聞いております。あるいはまた、中堅企業につきましても完全な把握はなかなかできないのでございますが、ある程度の企業はやはり私募債を発行しているというふうに伺っているわけでございます。したがいまして、今回のような社債の発行限度が拡大いたしますれば、そういった規模の企業につきましても発行限度はやはり二倍になるという意味でメリットはいくであろうというふうに考えております。ただ、御指摘の起債の格づけ基準と申しますか、その辺の運用につきましては大蔵省の方でいろいろの方針もあろうかと思いますので、私どもそこにつきましては十分よくわかりませんが、中堅、中小につきましてはそういった形でのやはりメリットはそれなりにあるのではないかというふうに考えております。
#28
○佐々木静子君 それでは、もう時間がございませんので最後に、いま民事局長から、今後の商法改正の展望として、社債法というようなものの構想も考えているというお話でございましたが、大体これが法文化されるのはいつごろの見通しであるか、また、今後の商法改正の展望について、大臣と局長から最後に御答弁をいただきたいと思います。
#29
○政府委員(香川保一君) 商法の株式会社法の先ほど申しました全面的な見通しといたしまして、主要なテーマが、現行の株式会社法の適用を受ける会社はピンからキリまであるわけでありまして、これを一律にいろいろ規制するというのは小さな会社にとっては煩にたえないという、実情に合わないという面もございますので、そういう意味で、大きい会社と小さい会社を分けてやはり規制すべきじゃないかという問題が一つ。それから総会屋等でいろいろ問題になります株主総会のあり方を全面的に見直さなければならない。それと同時に、会社の機関としての取締役会のあり方というものも大きな問題でございます。さような会社の機関をどのようにするかということ。それからそのほかに株式の問題があるわけでございまして、現行額面五十円の株式が大部分でございまして、そういうことで一体いいのかどうかというふうな問題。その他、先ほど申しました社債の問題等々あるわけでございます。これは緊急性の問題も絡みまして、現在法制審議会で株式の問題を先に取り上げられまして、大体の方向が実は昨日の商法部会においておおよそ固まってまいったわけでございます。そういった改正の方向なり内容につきましては、やはり問題が民間に非常に関係することでございますので、審議会の場においてある程度の、まあ甲案、乙案の別はあるといたしましても、考え方の方向が固まってまいりました段階でこれを一般に公表いたしまして、さらに各方面の御意見を承って固めていくというふうな作業の手順になるわけでございまして、株主総会あるいは取締役会等の会社の機関の問題、あるいは中小、大小の区別の問題等々、いずれもさような方法で審議を精力的に進めてまいるということで相当急ピッチで審議を現在続けていただいておるわけでございます。さような意味で、私どものお願いとしては、少なくとも四、五年には全部作業が終わるというふうな目途でお願いしたいということでお願いしておりまして、大体いまのテンポでは十分そのような期間で間に合うのではないかというふうに見通しております。
#30
○国務大臣(福田一君) ただいま民事局長から御説明を申し上げたようないろいろの問題について、法務省といたしましては、法制審議会等とも連絡をとりまして、精力的に作業を進めさしていただきたいと思っております。
#31
○宮崎正義君 公社債市場の民主化の点について、民事局長と大蔵省の方にお伺いします。
 日本証券業協会あるいは取引所及び証券局調べによりますと、公社債の取引状況は、店頭取引がほとんどで、取引所における取引は問題にならないと、このように言われておりますが、たとえてみれば、昭和五十一年度における店頭取引は九六・六%であり、取引所における取引はわずか三・四%であるというふうに言われていますが、これではこの法律案がディスクロージャー制度を規定しても市場における適正な流通価格というものは生じないのじゃないかということを心配するわけなんですが、この点についてどうですか。
#32
○説明員(小粥正巳君) お答え申し上げます。
 ただいまの御指摘でございますが、社債を含めまして有価証券の取引が上場されたものにつきましては証券取引所で取引が行われるものがもちろんございますけれども、しかし、いま先生御指摘の店頭での取引、これが事実上は非常に多いのが実情でございます。ただ、店頭取引につきましても、これはあくまでいわば公開されたこれも一つの市場でございまして、そこで需要供給が出会いまして価格が形成されていく、それが流通市場の実勢のむしろ主要な部分を占めているのが現実でございます。公社債の名柄は実は非常に数多うございますので、そのすべてを取引所に上場いたしましてすべての取引を取引所で行わせるということは、また事実上も不可能でございますし、私ども、証券行政の見地からも、店頭取引が現実にきわめて多いこと、その取引が適正に行われておれば、そこで形成される流通市場価格というものがこれはやはり実勢として指標の意味を十分持つものであろう、こんなふうに考えているわけでございます。ですから、いま御指摘の点は、たとえば今度の法案によりまして社債限度が拡大され、社債が従来よりさらに市場でのウエートを増す方向に行きます場合に、社債でございますからもちろん公募の話でございますけれども、転々流通する性格、これが実質的に裏打ちされていなければ社債の機能はその分だけ減殺されるわけでございまして、そういうような意味で、健全な流通市場の育成ということは私ども証券局の非常に大きな課題でございます。先生御指摘の点も踏まえまして、今後とも流通市場の健全な育成には十分に努力をしていくつもりでございますが、御指摘の点、現実には取引所取引と店頭取引といわば二本立てで流通市場が形成されているというふうに御理解いただければ幸いでございます。
#33
○宮崎正義君 大蔵大臣の諮問機関である証券取引審議会が公社債の株式市場の育成強化策を検討しているという段階だということですが、これとあわせまして、いまの価格形成等の問題で、この点がいまどのような形で進捗しているか、その内容について御説明を願いたいと思います。
#34
○説明員(小粥正巳君) ただいま御指摘の点でございますが、証券取引審議会、特に基本問題委員会という委員会を設けまして、現在精力的に学者の方々を中心に基本的な御検討をいただいている最中でございます。先生御指摘のような、これは公社債に限らず、株式も含めまして、広く証券市場全体のさらに一層の健全化、あるいは流通市場に限りましても、より円滑な流通が促進され、価格形成が適正に行われる、そういう意味での市場の育成につきまして審議会の検討ともあわせまして私ども日々努力をしているところでございます。公社債に限って申しましても、従来とかく発行市場と流通市場が乖離をしているというような批判がございましたけれども、最近は御案内のとおり、国債を含めまして流通市場も非常に活発になってきております。これは、やはり発行条件がそれだけ適正な方向に向かって調整をされてきたということでもございましょうし、また経済情勢にもよりますけれども、私ども、現在の方向は、流通市場が従来に比べて非常に活発になってきている、活発になればそこでの価格形成は一層健全なもの、適正なものに向かっていくと考えておりますので、実務的にはそういう方向を一層促進してまいりたい。それからまた、制度面その他基本的な問題につきましては、ただいま御指摘のように、証券取引審議会での基本的な御検討による御教示をさらにいただいて、これを指針としてまいりたい、そんなふうに考えております。
#35
○宮崎正義君 めどはどうですか。大体のめどは。
#36
○説明員(小粥正巳君) 大体のめどという御指摘でございますが、ただいまの基本問題委員会の審議は現在のところまだ基本的な勉強の段階でございまして、一つのめどといたしましては、秋ごろに何らか中間的な御報告がいただけるのではないかと考えておりますけれども、現在のところ、問題の指摘、問題提起、あるいは基本的な仕組みについての研究、ただいまのところはまだそんな段階でございますので、御了承いただきたいと存じます。
#37
○宮崎正義君 国債の流通市場のお話がちょっと出ましたですね。きょうの日経を見ますと、三月は大体六千億ぐらいの売買高になってきていると。まあ六千億弱でありますけれども、六千億近いものになっている。こうした状態を見ていきまして、いま御説明がありましたけれども、国債流通市場における流通問題について大分よくなっていると言いますが、これは一番おくれているのじゃないかと思いますがね。この記事を読んでみますと、「公社債の流通市場全体に占める割合も一割近くにまで高まり、」――これはこのままで一つの問題があると思いますが、いいならいい悪いなら悪いで問題があると思いますが、「電電債を抜き、金融債、地方債に次いで三番目のシェアを占めるにいたった。」と、このようなことが出ておりますが、この点について、国債と公社債の売買高といいますか、そういったものの考え方というか、見通しといいますか、そういうものについて詳細にお答えを願いたいと思います。
#38
○説明員(小粥正巳君) ただいまの御指摘でございますが、確かに、従来、公社債流通市場の中で、国債は、その残高が多いにもかかわらず、流通量が比較的少なかったことは事実でございます。それが、最近になりまして、ただいま御指摘のように、かなり流通市場で出回り始める、いわばそれだけ流動性が高まってきたということでございまして、私ども、これは、先ほど来申しております公社債市場育成の見地から、結構なことかと考えております。これは手元に正確な数字がただいまございませんけれども、たとえば三月、いま御指摘のように、国債の売買高が約六千億という一つの見通しがございますが、これは三月月中全体の公社債の流通高、売買高の中で七、八%を占めておろうかと思います。ちなみに、公社債の売買高は、昨年五十一年暦年を通じますと、約七十兆弱でございます。これは、最近数年来の傾向を見ますと、年々この売買高は相当なピッチで増加をしておりまして、その中でどのような種類の公社債がウエートが大きいかというこれも年々かなり変わっておりますが、金融債が一番多い、二番目が地方債でございますが、ただいま先生御指摘のように、最近国債の売買高がかなりふえてきた、これも事実でございます。私ども、先ほど来申し上げておりますように、いかに発行市場が整備され、適正な公社債の発行が行われましても、有価証券でございますから、投資家がいわば転々流通性に着目をして投資をするわけでございまして、市場における流動性が確保されることが債権者――債権者と申しますか、有価証券保有者、投資家の保護にもなりますし、また有価証券本来の機能でもございますから、そのような意味で発行市場と流通市場のいわば両市場が同じように健全に育っていかなければならない、こういうふうに考えております。そういう意味で、国債を含めまして最近流通市場が非常に活況を呈している、これは発行条件が適正な水準に調整をされているという背景もございますし、金融情勢にもよるわけでございますが、やはり市場関係者の努力がいわばそれだけの流通量を消化できる、そこまで育ってきたという証左であろうかとも思っております。この問題につきまして、国債の流通性、流動性問題といいますのは、これはまた大蔵省全体の問題でございまして、私ごときがここで余り云々すべきことではないかもしれませんが、証券局の立場といたしまして、ただいま御指摘のような国債を含めての流動性の高まり、これは歓迎すべき徴候である、今後もこういう方向は育てていくべきだろう、こういうふうに考えております。
#39
○宮崎正義君 いま一つまだ答弁が漏れている。公社債との関係の売買高の状況は今後どういうふうな見通しになっていくか。
#40
○説明員(小粥正巳君) 今後の見通しは、なかなか正直申しまして私も確かなお答えはいたしかねるわけでございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、ここ数年来の傾向を見ますと、流通市場での売買高は今後もこの傾向で相当なテンポ、増加していくということは恐らく見通せると思います。それからその中で従来比較的売買高が少なかったたとえば国債でございますが、最近の例に見られるように残高が非常に大きくなっておりまして、いわばおくればせながらそれに見合った形で流動性が高まってきた。発行市場における公社債のウエートを反映いたしまして、次第に残高の大きな種類の債券が流通市場でも非常に売買高がふえる、そういう形で流動性が高まる、こういう方向は今後とも続いていくものだろうと思いますし、それがまた流通市場全体の拡大、あるいは流通市場の育成という方向にプラスになること、これは間違いないことかと思います。
#41
○宮崎正義君 前回私が質問した中に、会社は商法の規定によって、これは二百九十六条以下でございますが、資本金等の事由にかかわらず、理論的には社債の発行は可能であると。しかし、これは理論だけの問題で、現実には公募社債を発行しているのは前回たしか二百六十五社とおっしゃいましたかね。――このようになっていく金融機関及び証券会社の構成する起債会というものがありますが、この起債会が公募社債の発行会社の基準を定めて格づけを行っている。この結果、格づけに該当しない企業は社債の公募はできないのであるということなんでありますが、私のいま言った会社の数、二百六十五だったですかね。私、前回質問したやつのあれが見えないんですよ。だから、もう一回この点を答えていただいて、先ほど佐々木委員も言っておりましたけれども、現在の最低基準のB格と純資産四十億というのが、四月一日から六十億になるんですね。それで、六十億以下の企業というものは公募債の発行は不可能であるというようになっておりますが、これらの企業において長期安定資金の必要性が十分考えられるのであって、これが発行できないというふうなこと、私はこの前もちょっと伺ったのですが、これに対するお考えをもう一度再確認をしたいのですがね。格づけ基準が今度は六十億ですね、そういうことになりますね。これらをあわせて、いま私の申し上げたことを、二百六十五社であったかどうか。
#42
○説明員(小粥正巳君) ただいま先生御指摘のように、五十一年九月末現在の公募債、これは普通社債でございますが、公募普通社債の発行会社数は二百六十五社でございます。御指摘のとおりでございます。続きまして、公募債発行会社につきまして、ただいまお示しのような民間の起債関係者が一つの自主ルールを設けまして、この基準に適合する会社の公募社債をいわば引き受けると。したがって、その基準に適合しておりませんと、市場関係者としては公募債として引き受けかねると、こういういわば自主的なルールと申しますか慣行があることは事実でございます。ただいま六十億というお話がございましたが、これは純資産額でございまして、引受証券会社、受託銀行を中心に構成されております起債関係者は、公募の社債を引き受けますには、これは先ほど来お話に出ておりますように不特定多数の広い層から投資家を集めるということでございますから、その発行企業が信用度が高いものでなければいけない。それから社債の転々流通性を十分確保いたしますために、やはり起債単位がある程度以上まとまった大きなものでなければいけない。そういう見地から、一つは投資家保護という問題それから健全な市場を育成していくという問題、そしてただいまの公募の社債でありますために、企業が信用度あるいは知名度がある程度以上高いもの、そして起債単位も大きいもの、そういう基準でこれを銘柄を厳選するというのが現在起債会の慣行でございます。先ほど御指摘の六十億円と申しますのは、そのルールの中の一つと聞いておりますが、会社のこれは資本金ではございませんが、純資産額が六十億円以上のもので、しかも質的な基準、まあいろいろな財務比率を使っているようでございますけれども、一定の質的な基準を満たす財務内容のよろしい企業について公募債を認めていこうと、こういうのが現状でございます。そのようなルールがございますために、社債を公募で発行いたしております企業数が、先ほど御指摘のように、三百社に満たないという、規模の結果として大きな会社に限られているということ、これは事実でございます。ただ、これはやはり公募社債であります限り、先ほど来るる申し上げておりましたような公募社債としての転々流通性、あるいは市場での信用度、投資家保護、そういう見地からこのような申し合わせによる選定と申しますか、このようなことが行われるのはある程度当然ではないかと、こういうふうに考えております。
 ただ問題は、公募社債が発行できない企業、このような起債関係者の申し合わせ基準に満たないために公募では社債を発行できない企業はどうするのかと、こういう御指摘でございますが、これは確かに公募債は発行できないということなんでございますけれども、先ほど通産省の方からお話もございましたように、私募債という形で、不特定多数ではございませんけれども、ある程度限られた数の関係者に向かって社債を持ってもらう、そういう形で私募債の発行はこれはかなり行われております。たとえば先ほど資本金が一億円未満の会社でも、合計いたしますと、二百億円を超える社債が発行されているという数字もございますように、私募債は、これはやはりこの法律も適用されますし、企業にとりまして社債という長期安定資金による調達の道はそれなりに開かれているということでございますので、あくまで公募としての適格性という見地からこういう市場関係者による選定が行われているということは、私ども行政の立場からはこれに介入はいたしておりませんけれども、市場の性格からこのような結果になるのはあるいはやむを得ないかという感じは持っております。
#43
○宮崎正義君 外人の投資状況と外債発行の許可状況について御説明を願いたいと思います。
#44
○説明員(小粥正巳君) 外債の発行状況でございますが、外債につきましては、ちょうど石油ショック問題がございましたときに一時外債の発行が事実上行われていない時期がございましたが、最近また外債がかなり活発に起債をされておりまして、たとえば五十一年度では、現在までのところ十五億一千六百万ドル六十五件の外債発行が行われております。その内容は、普通社債四十三件九億八千九百万ドル、転換社債二十二件五億二千五百万ドル、こういう内容でございます。これは国内市場だけではございませんで、海外市場でもわが国の企業が資金を調達できる。そういう資金調達の道が国内市場に限らず国外市場にも開かれているということで、現在内外の市場で資金調達が行われている。これは転換社債を含んでおりますけれども、外債につきましてもやはり今回の暫定措置法による限度拡大の恩恵は均てんされるわけでございます。
#45
○宮崎正義君 投資家……。
#46
○説明員(小粥正巳君) 外人投資の現状でございますが、これはまことに申しわけございませんが、ただいまちょっと手元に十分の材料を用意しておりませんけれども、外人投資、すなわち海外の投資家が日本国内で発行されます株式あるいは公社債につきまして、これは若干の制限はございますけれども、最近かなりその制限が緩和されまして、外人も相当活発にわが国に対して投資を行ってきております。これはわが国の現在の国際収支状況等から見ましても特に問題がないところでございますし、ただいま数字で直ちに御説明する用意がなくて申しわけございませんけれども、先ほど申しましたわが国企業が外国で外債発行による資金を調達する、それとちょうど見返りに非居住者である外人投資家がわが国の公社債あるいは株式を取得するという形で外人投資が活発に行われる。ちょうど内外の資金調達、投資が交錯をしつつ全体の投資額が非常に増加を示しているというのが昨今の一般的な状況でございます。
#47
○宮崎正義君 また資料を出してください。最近のがありますか、手元に。
#48
○説明員(小粥正巳君) ただいまとりあえず手元の資料で申し上げますと、株式につきましては、これは外人の投資でございますが、たとえば昭和五十年の数字でございますと、外人の株式取得は二十億六千万ドル、一方、処分をいたしました金額が十四億七千万ドル、差し引きまして約五億九千万ドルの純増、これが株式の数字でございます。
 それから公社債につきましては、同じく五十年の数字で申し上げますと、外人投資家の取得しました公社債は二十四億四千万ドル、処分いたしましたものが十五億一千万ドル、差し引きまして九億二千四百万ドルの純増、このような数字になっております。
#49
○宮崎正義君 それはまた後で資料をいただければと思いますが、よろしくお願いします。
 時間が参りましたので質問をやめなければならぬ。いまの外債の問題でもう少し詳しく担保の問題等でどうあるべきかというようなことも質問をする予定でございましたのですが、時間がありませんので、最後にこの社債発行限度暫定措置法案の根本問題としては、自己資本率の低い現状というものは統計等にもあらわれておりますので、こういうままの現状で放置していいかどうかという問題が一点と、また、自己資本の充実をどのように図ろうとするのか、これが第二点と、これを学説上で言いますと、自己資本が大体七〇%で他人資本が大体三〇%が理想的だという、こういう面から考えて、この法案を出されました暫定措置というその暫定というものから見合わせながら御答弁を願いたいと思います。
#50
○政府委員(香川保一君) 自己資本の充実、つまり増資新株発行による資金調達ということを最重点に考えなきゃならぬわけでございますが、これはすぐれて経済問題でございますが、商法の面からも、先ほど申しましたように、株式会社法の全面見直しの作業の中でいかようにすれば法律的にと申しますか商法の面からの自己資本調達が容易になるかということは十分検討されることになっております。私どもといたしましては、できるだけ個人株主と申しますか、個人が新株を応募するという形態が一番望ましいわけでございまして、さような面からの法律的な調整と申しますか、それを容易にするような措置を十分考えなきゃならぬというふうに考えておるわけでございますが、それとあわせまして、何と申しましても問題になりますのは、銀行からの借り入れがその比重が余りにも大き過ぎるということをできるだけ早急に是正しなきゃならないという点にあるわけでございます。そのような観点から申しますと、準自己資本と言われておる社債の発行もあわせて活発にできるようにしなきゃならぬということを配慮しなければならない、かような新株発行と社債発行の両面から自己資本の充実を図っていくというふうな方向で改正を検討してまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
#51
○宮崎正義君 学説上で私申し上げましたのは間違いありませんか。大体、学説に対するお考えはどんなものですか。その御答弁をお願いして、終わります。
#52
○政府委員(香川保一君) どのような比率になっておれば一番いいかという点、これはまあ学説というほどのものは私ども余り承知いたしておりませんけれども、いろいろの人によって見方が違ってくると思いますけれども、しかし、理想的と申しますか、やはり銀行からの借入金というふうなものはいわば短期の運転資金の調達という形でされる、長期の設備資金というふうなものは増資あるいは社債発行でされるというふうなことが望ましいということは言えるわけでございまして、これは、各会社のいろいろの種別によりまして、運転資金を非常に多く要する会社もあれば、設備資金を多く要する会社もあるというふうなことも言えようかと思いますので、一律に自己資本が何%でなきゃならぬというふうな意味の学説的なものというのは事実非常に困難なことじゃないだろうかというふうに思うのでありまして、一律には申し上げられないのじゃないかというふうに考えます。
#53
○橋本敦君 私は、まず、この法案が出されるに至りました背景なり経過について事実を確認さしていただきたいと思うのですが、五十年の六月に法務省の民事局参事官室が調査をなさいまして会社法に関する意見照会をやられたと思うのですが、この時期にこの意見照会をおやりになった趣旨と目的はどこにあったのでしょうか、まず、この点をお話し願いたいと思います。
#54
○政府委員(香川保一君) 先般、監査制度の改正で商法の一部改正法案が審議されましたときに、衆参両院のそれぞれ法務委員会におきまして、監査制度以外の株式会社の株主総会とかあるいはその他の機関等々につきまして問題があるじゃないかというふうなことから、株式会社法のいわば全面的な改正を検討すべきであるという附帯決議が出されたわけでございまして、その附帯決議の趣旨に沿いまして法制度審議会でさような問題の審議をお願いすると、そういうときのまあ資料的な意味におきまして関係方面から意見をちょうだいするということで意見照会をした次第でございます。
#55
○橋本敦君 その意見照会の結果は、商法改正全般にわたっての各種の意見が出されたと、こういうことになるだろうと思うのですが、その中で、特にこの法案に関係をします社債発行限度額の枠の拡大ということについて特に緊急の要望ということで出されたのはどういう方面からでしたか。
#56
○政府委員(香川保一君) 経団連を初めとしまして、商工会議所、あるいは化学工業協会等々のそういう団体から非常に強い要望が出されたわけでございます。
#57
○橋本敦君 等々からというその点を私は実は正確に知りたいのですが、正確におっしゃっていただけますか。特に緊急要望としてこの照会に出している諸団体、経済界ですね。
#58
○政府委員(香川保一君) 意見照会の際に要望が強かった方面を申し上げますと、経済団体連合会、証券三団体、それから大学の幾つかはございますが、それから電気事業連合会、日本貿易会、東京商工会議所、それから民営鉄道協会、さようなところでございます。
#59
○橋本敦君 それに続きまして、それは六月ですが、九月になりますと、日経新聞の報道によりますと、日本機械連合会、自動車工業会、造船工業会、それから日本電機工業会、日本電子機器工業会ですか、これが連名で法務省、通産省等にも限度枠拡大の緊急要望をしたという新聞報道がなされておりますが、法務省もこれは御承知でございますか。
#60
○政府委員(香川保一君) 先ほど申しましたのは意見照会に対する一般的な回答として参りました要望でございますが、その後、お説のとおり、五十年の秋ごろから五十一年初めにかけまして別途御要望が法務省に出されております。それを申し上げますと、日本鉄鋼連盟、日本民営鉄道協会、日本自動車工業会、日本造船工業会、日本電機工業会、日本電子機械工業会、日本機械工業連合会、それから日本化学工業協会、かような方面から要望書が出されております。
#61
○橋本敦君 それじゃ、先ほどのお話ですと、現に公募社債を発行しているのが二百六十五社ですかあるというお話でございましたが、この二百六十五社の内訳で、いま言った要望がなされた各工業界別に言いますと、現に発行している二百六十五社のうちでどの産業部門が一番多いですか。
#62
○政府委員(香川保一君) 五十一年の九月末の時点での数字でございますが、化学工業、鉄鋼関係、機械工業、それから陸運業、さようなところが社債を限度枠近くまで発行しているという状況でございます。
#63
○橋本敦君 この公募社債を発行している会社というのが、日本のいまの全体の企業なり上場会社の中でどれくらいの数、パーセンテージを占めるだろうかという点もひとつ明確にしておきたいのですが、まず第一に、日本にはたくさんの企業があるわけですが、これはまあ把握の仕方が大変でしょうが、全企業数をとらえてみますと何%ぐらいになるか、あるいは上場会社だけをとらえてみますと何%ぐらいになるか、それは統計的にいかがですか。
#64
○説明員(小粥正巳君) 全国法人数でございますが、法人企業統計によりますと、これは、株式会社形態のもの、あるいはそれ以外の法人も含んでおりますが、五十年度末の数字で百二十万八千社でございます。
 それからもう一つお尋ねの上場会社数でございますが、全国証券取引所の上場会社数、これは一番最近二月末の数字でございますが、重複分を除きますと千七百十七社でございます。
#65
○橋本敦君 パーセンテージはすぐ出ますか。
#66
○説明員(小粥正巳君) 先ほど申し上げました五十一年九月末の公募普通社債発行会社数は二百六十五でございますから、先ほど申しました全国法人数百二十万余の対比では〇・〇二%という数字でございますし、上場会社数千七百十七社との対比では一五・四%になろうかと思います。
#67
○橋本敦君 そこで、全体としてわが国の産業構造全体から見てもこの法案が出されてきた背景というのが主要な工業界の要望であるし、それから同時に、企業全体として見ても非常に限られた部分から強い要望があったという一つの実態がどうしても出てくるわけですね。そこで、その内容について検討していく必要があるのですが、先ほどの御答弁でも、純資産額が四十億であったものがことしからは六十億以上に起債会の方では指導していくという話がありました。六十億以上ということになりますと、これまたかなりの巨大な会社ということになる。
 そこで、お伺いをしたいのは、現在二百六十五社が公募社債を発行しているということですが、二百六十五社のうちで最低の純資本額の会社は何億ぐらいか、平均して何億ぐらいの純資本額にいまなっているか、その点はいかがですか。
#68
○説明員(小粥正巳君) ただいまのお尋ねでございますが、従来起債会の申し合わせでは、純資産額四十億円以上というのが五十一年度までの申し合わせでございまして、ただいま御指摘のように、この四月から純資産額六十億円以上をめどにしております。ただ、一つの経過措置といたしまして、両二年間につきましては従来純資産額六十億円未満で社債を発行していた会社については引き続き起債を認めるというそのような取り扱いがされる予定と聞いております。
 なお、現実に二百六十五社のうちでどのような資本金あるいは純資産額の分布になっておりますか、これはただいま直ちに手元に資料がございませんが、これは改めて資料は調査の上整えさしていただきます。
#69
○橋本敦君 それでは、いまの私の質問した点について、資料に基づいて提出をしていただくということで結構ですから、後にお願いします。
 そこで、もう一つ、これは通産省にも関係するのですが聞きたいのは、現在石油ショック以来非常な不況構造が深刻化して企業倒産その他中小企業では大変厳しいわけですが、こういった社債枠の拡大を緊急に要望しているいま香川民事局長からお話のあった各工業部門、これはこの不況の中で有価証券報告書等によって見る限りかなりの営業利益を上げている部門が多いのではないか、不況の中でもですね。そういうふうに私は見ておりますが、そこらあたり大蔵省なり通産省はどうごらんになっておられますか。
#70
○説明員(植田守昭君) ただいま直ちに資料をもってお答えする用意をしておりませんが、石油ショック以降いろいろと原材料費その他が上がりまして、一方、価格面では必ずしもまだ回復していないというところも一部にあるようでございまして、そういった意味では、一部業種は除きまして、まだかなり企業業績が回復していないというところもあろうかと思います。ただ、業種的にいろいろとばらつきが非常にございますので、たとえば一部では輸出等が非常に旺盛に出ているというふうな業種はかなり収益状況もいいかと思いますし、それからまた基礎産業部門などで設備投資がいま比較的冷えておりますので、そういった点では稼働率も余りよくないというところは相対的に悪いというふうなことで、一概には言えないと思いますが、いろいろとばらつきがあるというのが実情だろうと思います。
#71
○橋本敦君 その点が非常に問題なんですね。たとえばこの提案理由説明でも、「各企業について財務内容の改善とともに景気の浮揚及び雇用の安定を図るために、企業の設備投資の活発化が強く要請されている」というところでこの法案の提案趣旨説明にも書かれているわけですね。かねがね不況段階に入りまして、現総理福田さんは、経企庁長官のときに、私も耳に残っておりますけれども、この不況を打開するためには、何としても遊休資本、遊休設備の稼働率を高めなくちゃならないと、こういうことをしきりに強調されておったわけですね。これでは新しく「設備投資の活発化が強く要請されている」ということでこの法案が提案されているわけですが、わが国の安定経済成長政策と政府がおっしゃるその経済政策の一つの転換期において、いま設備投資の活発化を強く要請するということにそぐう法案を出すことがわが国の経済政策としてどうなのかという観点についての検討がこの提案趣旨説明では全然なされていない。そこらについて、法務省はこれは経済の専門家でありませんので、通産もしくは大蔵に聞く以外手がないのですが、その遊休設備資本の稼働率を高めるということをかねて政府が言ってきたことと今度新たに設備投資の活発化が要請されているということとの関係で私は矛盾があるように思いますが、その点についてはどうお考えですか。
#72
○説明員(植田守昭君) 御指摘のように、現在ただいまの状況は、これもまた業種によっていろいろばらつきがありますが、非常に設備投資が旺盛なところとそうでないところと分かれておりますが、総じて言いますと、かつてよりも冷え切っているという状況だろうと思います。ただ、いまの状況は少しある意味では悲観的に企業家の心理も非常に冷え切っているということで、いわゆる過去におけるような高度成長期のようなああいった爆発的なといいますか、そういう設備投資というのは今後の安定成長経済におきましては恐らく今後は様相は変わってくるだろうというふうに思っておりますが、ただ、それにもかかわりませず、やはり設備投資というものは産業の活力と申しますか、そういったものを維持するという意味でも必要性は相変わらずあると思いますし、そういう意味での適正な設備投資といいますか、そういうものは今後も要請されるだろうというふうに思うわけでございまして、それから当面の問題といたしましては、おっしゃいますとおり、いま設備投資は全般的にはかなり冷えている、一部のところを除きましてはかなり冷えているという状況だろうと思いますが、これにつきましては、ただいま御審議いただいておりますたとえば予算の成立等々を含めまして、景気浮揚策の効果も次第に出てまいりますれば、現在の状況よりはやはり回復の方向へ向かうのではないかというふうに考えております。
#73
○橋本敦君 ですから、いまの答弁を伺っても、産業界全体として特に大企業を中心としてどんどん設備投資を活発化しなきゃならぬという総体的な経済事情があるということにならないんですよ。ばらつきがありますね。しかも、適正な設備投資でなきゃ今度は企業にとって過大負担になりますから、これはまた経営安定という点からも大変阻害要因になってくる。だから、そういう意味ではこの法案が出された背景として特別の緊急要望を出した工業部門もあるけれども、わが国の産業界全体としていまこの法案がどうしても必要だという背景事情がすかっと私はいまの答弁によっても説明されたとは思いませんよ。特に伺いたいのですが、この不況の中でも特に経常利益をずっと上げてきている業種として、たとえば自動車工業界、これなどはずっと利益を上げてきている。それから電気工業部門、これなども上げてきている。これは私はそう思いますが、それは間違いありませんね、いかがですか。
#74
○説明員(植田守昭君) 自動車関係あるいは電気関係は、特に輸出等の需要に支えられまして設備投資も活発でございますし、そういう状況にあると思います。
#75
○橋本敦君 ですから、いまあなたがばらつきがあるというふうにおっしゃったのは、まさにそのとおり正直にそうおっしゃったし、私もそう思うのですが、そういうばらつきがある中でこの不況段階でも設備投資が活発であり、経常利益がどんどん上がっている企業を中心にしてこの社債発行の限度枠の拡大ということが一つは出てきている。だから、そういう意味では、私は、この法案というのは、一つは大企業の要求が背景であり、その大企業の中でも不況に強い業種を中心とする要求ということであり、わが国の法人全体から見ればわずか〇・〇二%程度の背景事情を持った法案だという意味で、そういう意味で私はいま急いでこの法案をやらねばならないという、そこのところが特殊の不況に強い大企業産業の利益擁護ということが客観的に出てくると思うのですね。
 そこで、これに関してもう一つお伺いしたいのは、前回の審議でも問題になりましたが、この社債発行が非常にコスト安であるということが言われているわけですが、そのコスト安というのは、実際に増資と比べてどれくらいコスト安になるということなのか、その点についてもう少し明確に御説明いただきたいと思います。
#76
○説明員(小粥正巳君) ただいまの増資の場合と社債の場合とで一体資金調達コストがどのようになるかと、こういうお尋ねでございますが、たとえば、現在社債で期限十年AA格債の発行者利回り、いわば発行企業が負担いたしますコストは九・五九九%でございます。これに対しまして、増資の場合の資金コストは、これは計算方法にはあるいはいろいろ考え方もあろうかと思いますが、たとえば、額面割り当て増資を考えまして、額面に対します配当率が一般的な一つの安定配当率のめどであります一〇%、こういうふうにいたしますと、これは御案内のように、増資の場合には課税関係がございますので、一応計算をいたしますと、コスト的には一八・六%と、こういう計算ができるわけでございます。したがいまして、社債と増資の場合の企業の負担を仮にコスト比較ということで考えました場合には、ただいま申し上げましたように、増資の場合が社債の場合に比べまして相当に高いコスト負担を、まあこれは配当をもちろんコストと考えての話でございますが、負担をすると、こういうことになろうかと思います。
#77
○橋本敦君 四十八年暮れから始まった例の石油ショック、それから過剰流動資本の過大性が問題になって、大蔵省が大口金融に対する一定の制約的指導をいたしましたね。こういうことで大企業が銀行から大口金融を受けるという条件が非常に厳しくなってきたということがこの社債枠の拡大ということに企業要求が向いていくという背景の一つになっていると私は見ておるのですが、それは間違いありませんか。
#78
○説明員(小粥正巳君) ただいまの大口融資規制の問題は担当者が参っておりますけれども、起債意欲との関連で申しますと、確かに先生御指摘のように大口融資規制による従来に比べましての対銀行借り入れの難易度が少し変わってくる。それによりまして、企業は、従来に比べて銀行借入金以外の資金調達の道を多様化をしていこうという、こういう何と申しますか、誘因になっていることは事実かと思います。まだ期間もやっと二年ばかり経過したところでございますから、直ちに数字にその結果があらわれているとは思いませんけれども、御指摘のように企業が社債あるいはその他の資金調達に向かう誘因になっていると、これは否めない事実であろうかと思います。
#79
○橋本敦君 したがって、そういう一面では大蔵省の大口金融規制という大蔵省の指導から、今度は特定の大企業がその面での規制を受けて新たな誘因として社債枠の限度発行ということでもっぱら要求している。しかも、増資よりもうんとコストが安いということで、やっぱりコストが安い、そして大蔵省のその指導からはみ出した部分を社債で満たそうとする要求、しかも、これが不況の中でも強い産業業種を中心にしていまごく少数の企業から強く要求されていると、こういう背景だということは大体はっきりしてくるわけですね。こういうことを受けて、結論的に言えば、当分の間ということで商法全面改正を待たずにやるというのは、まさにこういう企業の利益にだけ奉任するということで、商法構造全体の検討をまずやる必要があるのではないか、こういうことに私はなると思うのですが、その点については次回に質問を留保しまして、社債枠についての質問はこれで時間がまいりましたので終わります。
#80
○委員長(田代富士男君) 本案に対する質疑は、本日はこの程度といたします。
    ―――――――――――――
#81
○委員長(田代富士男君) 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#82
○佐々木静子君 それでは、私から、最高裁判所に対しまして、昨日の裁判官会議で、本日の新聞報道によりますと、鬼頭判事補事件に関する監督責任者に対する処分が決まったというふうに報ぜられておりますが、そのとおりでございますか、どのような処分が最高裁で決められたのか、お述べいただきたいと思います。
#83
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) いわゆる鬼頭判事補問題につきまして、監督者責任を昨日いたしたわけでございます。その内容につきまして申し上げますと、最高裁判所事務総長寺田治郎、大阪高等裁判所長官宮川種一郎、京都地方裁判所長山内敏彦、以上三名に対しましては最高裁判所厳重書面注意、名古屋地方裁判所長・元東京地方裁判所八王子支部長安藤覚、東京高等裁判所判事・元東京地方裁判所八王子支部長鰍沢健三、東京地方裁判所八王子支部長吉沢潤三、以上三名に対しまして最高裁判所書面注意、最高裁判所事務総局事務次長矢口洪一、同じく人事局長私勝見に対しましては最高裁判所事務総長厳重書面注意、以上でございます。
#84
○佐々木静子君 これは非常に広範な方々に対する処分で、特に最高裁直接の下級裁の監督責任者だけではなしに、最高裁の御関係者にも処分がなされたと、こういう先例はあるのかどうか、それからこれはどういうことからそういう処分になったのか、これを述べていただきたいと思います。
#85
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 過去におきまして、最高裁判所の長官から口頭注意ないし書面注意というケースがございましたが、最高裁判所から厳重書面注意という例は初めてでございます。
#86
○佐々木静子君 まあ人事局長もその対象のお一人で非常にお尋ねしにくいのでございますけれども、これは最高裁という立場でお答えいただきますと、最高裁のどういうことでどういう考え方からこういう処分をとられたか、その趣旨といいますか、おわかりでしたら述べていただきたい。
#87
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) いわゆる鬼頭判事補問題につきましては、すでに御承知のとおりでございます。その結果といたしまして、昨日の最高裁判所発表にもございますように、全国の裁判官全体に対する姿勢について国民の疑惑を招いたわけでございまして、ひいては裁判所全体に対する威信を失墜したということでございまして、裁判所にとりましては非常に重大な事件だというふうに受けとめまして、この際、最高裁判所の名において、事務総局の者も含めまして、昨日、けさほど報道されたような、私先ほど申し上げましたような処分ということに相なったというふうに考えております。
#88
○佐々木静子君 この法律上の根拠というものは、どういうことになるのでございますか、裁判所法の八十条によるものですか。
#89
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 仰せのとおりでございます。
#90
○佐々木静子君 そうすると、最高裁が「下級裁判所及びその職員を監督する」と、そういう立場の裏返しということでこういう処分をされた。つまり、最高裁も総ざんげされるというその形のあらわれという御趣旨に承ったのでございますが、実際問題として、これは最高裁とすると前例のない思い切った処分ということだと思いますが、これでもうこうした問題は二度と絶対に起こらないとか、あるいはこうした問題が完全に防げるとか、そういうふうな点についてはどのようにお考えになりますか。
#91
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 私も含めまして先ほど申し上げましたような処分を受けたからといって、それだけで事が済むものではないと考えます。私どもも含めまして、いわば監督者の立場にある者、先輩、同僚、それぞれ自粛自戒してこのようなことがないようにすべきだというふうに考えている所存でございます。
 なお、立ちましたついでに申し上げさしていただきますと、最高裁判所の裁判官会議におきましても、やはり最高裁判所自体で責任を感ずべきであるという御趣旨で昨日の最高裁判所発表ということになりまして、最高裁判所裁判官一同がその責任を痛感していただいて、将来このようなことのないように努めたいということで最高裁判所発表文になりましたことをつけ加えさしていただきたいと存じます。
#92
○佐々木静子君 そうすると、実は全国の千四百名余りの弁護士の方々から公開質問状が最高裁に出ていると思うのでございますけれども、その中で特に三点要望されている。貴裁判所は今回の事件の本質を鬼頭判事補の個人的な奇行、性格にとらえているのですかどうかという点ですね、その点はどのように御判断なすったわけですか。
#93
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) このたびの鬼頭判事補の問題につきましては、いろいろなことが報道され、かつ私どもの調査の対象となったわけでございます。事務総長からも申し上げてあるところでございますが、職務外の行為というものが多かったわけでございますが、この種の行為が裁判所のいわゆる体質から生じたものであるかどうかということにつきまして、私どもは、もしそういうことがあるとすれば、それこそ大いに反省いたしまして、先ほど申し上げましたように、同僚、先輩、後輩、裁判官一同各自自粛自戒していかなければならないというふうに考えておりまして、ただいまの御指摘の裁判所の体質から生じたかどうかということにつきましては、私は必ずしも明確にお答えできないわけでございますが、もし仮にそういうことがあるということになるとすれば、十分考えなければならないし、その対策も考えなければならないというふうに考えておる次第でございます。
#94
○佐々木静子君 この新聞報道によりますと、上司の監督責任が問われた鬼頭元判事補の行動は、テープ持ち込みと無断海外旅行というふうになっておるようでございますが、このテープ持ち込みの件についても監督責任が問われたことについてのいま御答弁も含まれていると思うのでございますけれども、さらに、名古屋地裁での不法退廷問題とか、あるいは名鉄バスむち打ち障害補償要求事件とか、日本航空の手荷物チェック補償要求事件、あるいは大阪地検捜査介入事件とか、あるいは網走刑務所の身分帳閲覧謄写事件、いまの五点、この点についてはどういうことになっているのでございましょうか。
#95
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 結論的に申し上げますと、ただいま御指摘の事実につきましては、監督者責任を問わなかったわけでございます。
 順次申し上げたいと存じますが、いわゆる法廷から飛び出した行為ということにつきましては、当時の所長はすでに退官されております。高等裁判所長官まで監督責任を負うべきかどうかはさておきまして、高裁長官も退官されております。
 それからいわゆる名鉄バスの事故の関係におきましては、この時点におきます地裁の所長はすでに亡くなられております。それからこの点も高裁長官まで監督責任を負うべきかどうかはさておきまして、高裁長官も亡くなられております。
 次に、羽田のいわゆる羽田事件といいますか、羽田空港でのトラブルの件でございますが、これは当時新聞で報道された事実でございますが、報道された事実、私どもで調査した事実等を総合いたしまして、果たして裁判官として妥当な行為であったかどうかについては確かに問題があるかと存じますが、当時におきましても、いわゆる監督責任を問うまでもない行為ではないかということで何らの措置をしなかったというふうに考えます。このたびの監督者責任を考えました際に、この事実も省いたわけでございます。
 次に、大阪地検の問題でございますが、大阪地検の問題が報道された時点におきまして私どもの調査が進行中であったわけでございますが、鬼頭元判事補からいわゆる資料開示の請求がありまして、私どもの方で、それはできないと、拒絶するということを言いましたところ、その後鬼頭判事補は大阪地検の問題についても一切言うわけにいかぬということで、彼自身の供述、弁解というものを結局得ずじまいであったわけでございまして、結論といたしまして、私どもといたしましては、いわゆる大阪地検の事件介入事件につきましては真実を解明できなかったということになろうかと存じます。
 次に、網走刑務所の問題でございます。すでに報道されておりますように、この問題は入手したこと、それからそれを流したかどうかということ、二つに分かれるかと存じます。鬼頭元判事補から網走で入手した資料が流れているのかどうか、この点につきましては、私ども結局解明できずじまいであったということでございます。なお、入手の事情につきましては、当初から私どもの前で述べていること、それと、その後訴追委員会の席上で当時網走刑務所で録取した録音というものが新聞で報道されたわけでありますが、そのこともあわせ考えさしていただきまして、鬼頭元判事補の資料入手の行為について監督責任を問うまでもないという考えでこのたびの対象事実から省かさせていただいた次第でございます。
#96
○佐々木静子君 これは裁判所が責任を国民に対して痛感されて、特にいままで処分の対象になったことのない事務総長とか、あるいは高裁長官とか、あるいは局長とか、いわゆる高位の立場にある方々がいろいろとこういう処分を受けられたということは、最高裁の総ざんげの姿勢をあらわされたものだと思うのですけれども、また、逆に考えてみるならば、裁判所法の八十条で最高裁が「下級裁判所及びその職員を監督する」と。これで監督権限を非常に強化するのではないか、そしてまた、下級裁判所においてもその監督権者が個々の裁判官に対する締めつけというものが非常に強くなり、かつまた、下級裁判所に対する最高裁当局の締めつけというものが勢い強化されるのではないかということが一面非常に心配されるわけですけれども、その点については最高裁はどういうふうに考えておられるのですか。
#97
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 御承知のとおり、裁判官に対する監督という問題につきましては、従来具体的な形で検討されたことはまずなかろうかと存じます。それは、裁判官の職務の独立ということに淵源しているものというふうに私は考えます。申し上げるまでもございませんが、それぞれの監督者の立場で各裁判官に対する締めつけとか、ましてや職務上の独立した職務に対する介入という形で監督ということをするというようなことは毛頭考えておりません。もうすでに御承知のとおりでございますけれども、われわれの出勤の状況、あるいは休暇のとり方等につきましても、従来はいわば自主的に行われてきておりましたが、現在の時点におきまして、そういう形で行うことはやはり妥当ではないということで、高裁長官の申し合わせということで将来けじめをつけようというような形をとらしていただいておるわけでございますが、そのようなことにあらわれておりますように、私どもの方から締めつけという形でそのようなことを行うつもりはございません。十分裁判官全体の自粛自戒をまつように私どももいろいろ考えさせていただくということに、そのように考えておる次第でございます。
#98
○佐々木静子君 これは鬼頭判事補という人によってまあ氷山の一角があらわされたいまの司法行政のあり方そのものに問題があるという意見が非常に多く伝えられておるわけでございますけれども、いわゆる左に向いての締めつけが強くて、その反動として右寄りといいますか、右的な思想を持っている人たちを温存さした、放任したという最高裁の姿勢というものが当委員会においても鬼頭問題をめぐって何度も論議されたわけでございますが、実は今度の新任の裁判官の採用につきましてもやはりそういうふうな傾向が顕著に出ているのではないか。実は、昨日も、司法の独立と民主主義を守る会、関係諸団体、あるいはそれに関連する諸政党の集まりがあったわけでございますけれども、やはりそういう事柄について、この鬼頭問題を契機として必ずしも最高裁の姿勢が民主化されたというふうには受け取れない面があるというふうな議論が多かったのです。まあたまたま私もきのうことしの新任の裁判官の採用を拒否されたという方にお会いしたわけですが、その方も、修習地が京都で、しかも教官は鬼頭判事補であったと。そして、研修所の方ではまた女性差別発言でいま問題になっている教官であったと。考えてみると非常な不運なめぐり合わせで、しかも裁判官の任官を拒否されたという話も伺ったわけでございますけれども、そのあたり、少なくとも鬼頭判事補を教官にして、これは修習生の方から教官を選べないわけですから、鬼頭判事補のもとで指導を受けた修習生、そしてまた、女性差別発言で問題になっている教官のところで勉強をして、これも自分が選んだわけではないわけですけれども、そして採用拒否になっている。こうした問題が、どうも、外部の国民の目から見ると、これはいろいろな原因があって御採用にならなかったのだと思うのですけれども、何かそこにひっかかるものを感ずるわけなんですね。そうした国民が何かすっきりしないものをそういう話の中に持つ、鬼頭判事補が修習生の指導に当たっておったと、そういうことについて、そのもとで修習を余儀なくされて巣立っていく法曹に対して、最高裁はどのような責任を感じておられるのか、ちょっとその点もお述べいただきたいと思うわけです。
#99
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 御指摘のとおり、京都地方裁判所は修習生の実務のための配属庁になっております。その際に、一線の裁判官にそれぞれの部についてもらいまして、その部の裁判官からいろいろ指導を受けるということに相なっているわけでございまして、その点は申し上げるまでもございませんが、特に京都の地裁におきまして鬼頭元判事補の部ないし彼の事件だけから外す積極的な理由がなかったので鬼頭元判事補についたというふうなことに相なろうかと存じます。私どもといたしましては、実務修習につきましては、司法研修所それから現地の裁判所にお任せ申し上げているところでございますが、ただいま御指摘の不採用になった修習生が鬼頭判事補の指導を受けたと、あるいは研修所の教官が女性差別発言で問題になっている教官だとの御指摘でございますが、たまたまその不採用になった方が鬼頭元判事補のもとにいわば配属され、かつ研修所の教官が佐々木委員御指摘のような教官であったからということにつきましては、その因果関係といいますかにつきましては私ども的確に承知しておりませんけれども、そのようなことはあってはならないことでございますし、そこにいわば因果関係というものは私どもないものというふうに考えております。
 なお、立ちましたついでに申し上げたいと存じますが、本年度の判事補採用は、現在まだ内定の段階でございますが、すでに新聞でも承知かと存じますが、三人不採用になっております。
#100
○佐々木静子君 それでは、もう時間がございませんから、最後に、繰り返すようでございますが、この鬼頭問題を単なるたまたま起こった突発的な、裁判所にとっても思いがけぬ不幸な事件ということで処理してしまわれるのではなしに、今後この問題を契機として司法行政のあり方を根本的に御検討いただくということを特に要望いたしまして、私の質問は終わりたいと思います。
#101
○橋本敦君 最高裁が、この鬼頭問題に関して、事務総長を初めとして、裁判所内部の最高首脳部を含めた行政監督上の処分をしたということ、このことは最高裁として本当に鬼頭問題についての責任を国会、国民並びに社会に明らかにしたことになるのかどうかという点について私は一つの重大な疑問を持ちます。その第一の疑問は、鬼頭史郎の行動について、そしてまたその事実と背景について、最高裁は調査委員会を設けて調査したわけですが、完全にこれは解明をされたとはとうてい言えない状況にある。まず、この点について、人事局長は、完全に解明されていない事実は率直にお認めになりますか。
#102
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) そうおっしゃられたとおりだと思います。特に、先ほども具体的に申し上げました網走刑務所の宮本資料問題につきまして、その資料が鬼頭元判事補から流れたものか、あるいは流したものかということ等につきまして、御指摘のとおりであろうと考えます。
#103
○橋本敦君 その網走問題についてはまた聞きますけれども、たとえば調査が十分であるかどうかについて一点伺いますが、先ほども問題になった昭和四十五年三月六日、これは名鉄バスでむち打ち症になったという補償要求をして、五十二万円の示談金を鬼頭史郎が名鉄バスから受けたという事件ですね。これは昭和四十五年です。問題なのは、乗っていた人はだれもむち打ちというようなことはないのですが、彼だけだったという点、これが一つ問題ではありますが、特にこの五十二万円の内訳の中に、同判事補の一カ月分の休業補償が入っている、こういうことが弁護士会の調査でも明らかであります。最高裁は御存じと思いますが、最高裁は彼に対して一カ月分休職を命じ、そして無給として処置した事実がありますか。私はこういう事実はないはずだと思います。この点はいかがですか。
#104
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) それは御指摘のような事実はございません。
#105
○橋本敦君 そういたしますと、彼は休業補償名目でまさに一カ月分の給与相当額を詐欺的に取ったというようなきわめて悪質な行為である。この点について最高裁の調査はどうなっておりますか。
#106
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) この名鉄バス事件につきましては、いわゆる示談が成立したわけでございますが、示談金は約五十万弱でございます。その内訳は、治療費、入院費、これが二十万余、それから入院雑費として三万六千余、それから慰謝料等として二十五万というふうな調査に相なっておりまして、ただいま御指摘のような休業補償という名目はないと思います。
#107
○橋本敦君 それは、その示談書それ自体から正確な資料に基づいての答弁ですか。名鉄バスから事情を聞かれましたか。
#108
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) ただいま申し上げましたのは、当時の地裁の調査をした者が名鉄バスから聞いたことに基づくものでございます。
#109
○橋本敦君 その点も私は正確だとは思わないのですが、そういたしますと、最高裁は当時地裁からそういう報告は受けて、少なくとも昭和四十五年三月六日の事件発生後こういう事件があったということは、これは最高裁は知っていたわけですね。
#110
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 当時、その旨を名古屋の高裁の事務局長から報告がございました。
#111
○橋本敦君 そのときに、裁判所としては、この示談解決ということに持っていく鬼頭判事補の諸行動、たとえば自分が泊まっているナゴヤキャッスルホテルに事故当日からすぐ二日間泊まり込み、名古屋に自宅がありますよ、そこに帰っていない。それから聖霊病院に通院をした。その翌日には特等室に今度はその病院に入院をして十九日間在院した。まあ言ってみれば、大げさな奇怪な行動があった。そして五十万弱の補償金を取った。これは相当だと最高裁は考えていましたか、彼のとった行動と解決は。
#112
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 当時最高裁としてどう考えたかということでございますが、このたびの事件の調査に当たりまして、改めて名鉄バスその他関係者に当たりまして確認したわけでございますが、この行為について裁判官として妥当でない行為であったというふうに考えます。
#113
○橋本敦君 そうなんですよ。全く妥当でないんですよ、この一つをとってみてもね。そうしますと、四十五年に、いまから七年前ですが、彼がこういう妥当でない行為をとったということが一つあった。ところが、この問題については、報告までさせながら何ら処置をしなかった。
 その次に、四十七年の十二月十八日の日本航空でのボディチェックを拒否して大問題を起こして、そうして裁判官だということで彼はいばり散らして役員を呼びつける。こういうことの問題でも、これは私は裁判官として妥当な行為とは思われませんが、この事件が起こった四十七年十二月、この直後あたりに報告は裁判所になされておりますか。
#114
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) この点につきましては、新聞で報道されまして、鬼頭判事補のいわば意見その他につきまして調査をいたしております。
#115
○橋本敦君 調査した結果、彼のとった行動は裁判官として妥当だととうてい思われないと私は思いますが、そう判断されたことは間違いないでしょう。
#116
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 羽田空港のケースにつきましてこれをどういうふうに評価するかという問題につきましては、いろいろな意見があろうかと存じますが、私どもの当時得ております資料を見ましても、まず空港側ないし日航側の態度といいますか応接――いや、その前に、まずボデーチェック自体が果たしてどうであったかということはやはり一つの問題であろうかと存じますが、あるいはその後の具体的な応接態度に裁判官としての行動としては慎重な配慮を欠いておったのではないかというようにも考えられます。
#117
○橋本敦君 だから、これも妥当でないんですよ。当然ですよ、日航に私ども国会議員が乗る場合でもボデーチェックを受けますよ。裁判官だから人権侵害だ、こんなことを言うのは非常識きわまりますよ。これも四十七年に起こっている。最高裁判所は報告を受けてそれも承知だ。
 そしてまた、四十九年になりますと、先ほども議論に出ましたが、彼は八王子からわざわざ大阪地方検察庁へ出かけて、わが党の神崎敏雄氏が告訴をした自由新報に対する名誉棄損告訴事件について、彼は地検に行って介入をしている。この事実についても調査をされたと思いますが、これは鬼頭氏がものを言わなかったということで事案の真相がきわめられなかったと人事局長はおっしゃいましたが、しかし、これについては検察庁あるいは法務省から事実関係の連絡と報告は最高裁にあったはずだと私は思いますよ。その点はいかがですか、連絡はあったでしょう。
#118
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 周辺の事情につきましては、私どもなりに調査をいたしました。
#119
○橋本敦君 わかりました。その調査の結果、彼が、担当検察官に対して、この自由新報が書いた記事の資料は信用できる公安情報だからこれは正確なんだと、名誉棄損罪は成立しないんだ、こういうのを起訴すれば共産党が喜ぶだけだと、こういうように担当検事に申し向けたという事実は間違いありませんか。周辺調査で明らかになっていますか。
#120
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) そこまで私どもとしては解明できておりません。
#121
○橋本敦君 この話を直接に受けた担当検察官から事情を伺えばそれは明らかになることですから、それは事情を伺いましたか。
#122
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 直接には伺っておりません。
#123
○橋本敦君 間接に文書その他で報告を受けて事情を知っていると、こういう意味ですか。
#124
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 仰せのとおりでございます。
#125
○橋本敦君 それでは、鬼頭は担当検察官にどういうものの言い方をしたのか、私がいま指摘したとおりでないとすれば、どういうものの言い方をしたのか、概要をおっしゃってください。
#126
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 具体的にどういう会話があったかについては、解明できておりません。
#127
○橋本敦君 解明不十分に過ぎませんか。現職の裁判官が自分の勤務地からはるか離れて、そしてこのような名誉棄損罪の捜査に介入行為をするということは、これは訴追委員会は時効その他の関係で不訴追になったけれども、裁判官のあり方としては断じて許されないことですよ。これが共産党の神崎敏雄氏が名誉棄損で告訴をしているということだから、わざわざ彼は出ていったんです。全国にたくさんある告訴事件について彼が介入したという事実はないですよ。これですよ、問題は。まさにここに彼の反動的背景なり思想の問題がある。これを、いま局長がおっしゃったように、不十分な調査のままで終わらして最高裁はよろしいですか。担当検察官に当時どういう話があったかお伺いすればすぐにでもわかることではありませんか。なぜこれをやらないんです、最高裁は。
#128
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) この問題につきましては、ただいま御指摘のような御批判があることは十分承知しております。先ほどから申し上げておりますように、本人のいわば弁解、意見を聞く機会をとうとう得ずじまいでございましたので、御指摘のとおり、いわば周辺の事実調査につき不十分であったという御批判は甘んじて受けさしていただきますが、また、結果的には不十分ではないかという御指摘でもございますが、私どもなりにこの事件につきましては結局解明できずじまいということに相なったわけでございます。
#129
○橋本敦君 いま、調査が不十分なことは認められましたが、調査をする積極的熱意がないとしか私は思えませんよ。これはやれるんですから。現に鬼頭が行った事実は間違いない。これは間違いないでしょう、局長。これは認定されているでしょう。
#130
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 現実に大阪地検に行ったかどうかにつきまして、まず、当時の八王子支部に問い合わせましたが、この件については八王子支部の資料としては出かけたことをいわば証明する資料はございませんでした。
#131
○橋本敦君 周辺事情から……
#132
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) その辺の周辺事情は、先ほどから御指摘のとおり、大阪地検側の情報といいますか調査でありますと、本人が参ったという大体新聞報道どおりの事情であるというふうには伺っておりました。
#133
○橋本敦君 ですから、鬼頭が大阪地検に出かけた事実は裁判所もこれは否定できないんですよ。このことをなぜ不十分な調査のまま終わらせるか。鬼頭がとやかく言って最高裁の調査に応じない。ならば、なおさら担当検察官に人事局長は調査員を派遣するなり、あるいはあなた自身が出向かれるなり、調査を遂げるべき性質のものですよ。いま、あなたは、批判は甘んじて受けるとおっしゃったが、そういう甘んじて受ける姿勢がまさに鬼頭の行動を甘やかしているのじゃないですか。これが事実とすれば、現職裁判官が検察官の捜査にしかも反共を目的として介入するなんということは断じて許されませんよ。これはまさに分限を逸脱した行為どころか、明々白々の政治的介入行為ですよ。私は改めてこの問題について今後二度と裁判所内部でこういうことが起こらないというそのことを、処分という形で示すのではなくて、このことを徹底的に調査することによって示してもらいたい。このことについて調査をやるということを最高裁は約束すべきだと思いますが、どうですか。
#134
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) この事件に関する報道は、的確な記憶でございませんが、大分あとになって報道された事実でございます。先ほど申し上げましたように、私どもとしてはできるだけのことをやるということで調査を続けたわけでございますが、その後訴追の申し立てをいたしました。それからほかの方々からこの件に関する訴追の申し立てがございまして、訴追委員会の方にいわば事実調査が実質的に移った。一方、鬼頭元判事補に対する事情聴取も、先ほど申し上げましたような事情からどうしても本人から聞くことができなかったというような事情がございます。それから新聞報道によりますと、この事件については不起訴になり、また検察審査会に対する申し立てもあるように聞いております。そのようなことがございまして現在に至っているわけでございます。
#135
○橋本敦君 再調査はおやりにならないということですか、局長。私の質問はそういうことです。やればやれるんですよ。
#136
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 現在、私どもといたしましては、この事件は遺憾ながら不解明のままで調査は打ち切らしていただくつもりでおります。
#137
○橋本敦君 けしからぬですよ。訴追委員会が訴追しなかったのは、訴追委員会側の理由がある。それはそれでよろしいです。最高裁として調査委員会をわざわざ設けながら、そしてまた罷免の訴追までしておきながら、この点について批判を甘んじて受けるというようなことを言いながら、十分な調査を遂げず、また調査をしないという姿勢は、本当に私は最高裁自身が鬼頭問題について国民の前に深く反省を示した姿勢とはとうてい受け取れませんよ。鬼頭をかばっていることになるんですから、客観的に。最も重大な監督責任を負う裁判所がこのような形で客観的に鬼頭をかばうような姿勢を示しながら、一方で事務総長以下の表向きの処分をしたって、私どもは納得できませんよ。
 さらに、網走の身分帳の閲覧問題について言うならば、先ほど人事局長は鬼頭の行動に対して微妙な表現をお使いになりましたね。もう少し正確に言ってもらいたいのですが、これはなぜ鬼頭に責任がない、こう判断されたのですか。法務省の録音テープ、訴追委員会で録音テープも出たような事情も云々ということをおっしゃって微妙な言い回しをなさったように私は伺ったのですけれども、裁判所がこの問題について鬼頭に責任がないと、したがって監督責任もないと、こう考えられた理由をもう少し明確におっしゃってください。
#138
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 資料入手のいきさつにつきましては、すでに当委員会にも御報告申し上げたと存じますが、私どもの調査ではすでに申し上げたとおりでございます。当時法務省側の調査と大分食い違っておりまして、真実が那辺にあるのかどうかということについては十分解明できずにおったわけでございますが、その後、先ほど私から申し上げました訴追委員会において鬼頭元判事補がテープを聞かせたというような報道がございまして、その新聞報道を見まして、私どもの前で述べたことと総合いたしまして、その入手経路については監督者責任を問うまでもない事案であるというふうに考えた次第でございます。
#139
○橋本敦君 そこのところを具体的に言ってほしいというんです、最高裁の見解を。つまり、こういうことですか。鬼頭史郎が身分帳という極秘の文書を閲覧したについては、刑務所長もしくは大きく言えば法務省側の了解、承諾を得てやっているというように裁判所は考えると、こういうことですね。だから、したがって、鬼頭史郎には問題はないと、こう考えたと、こういうことですか。
#140
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) きょうこの段階できのうのいわゆる処分問題について申し上げますことは、監督者の責任を問うまでに至らない事案であったというふうに御理解いただきたいと存じます。
#141
○橋本敦君 大変言葉を濁らせておっしゃるのですが、もう処分もあなた方自分でやっておられる事件だし、調査はこれで終わるという調査委員会を解散された事件だから、ざっくばらんにおっしゃってくださいよ。裁判所側の考えは、鬼頭が身分帳を閲覧したのは、いいですか、これは職権乱用だとかあるいは職務上の違反行為だとかいうようなことではなくて、法務省あるいは刑務所側の了解を得てやっている行為だと、いいですね、了解を得てやっている行為だと、こういう意味で、鬼頭の言い分はそういう言い分だし、裁判所もそう思うと、そう判断すると、これが基礎になって監督上の処分の必要もないと、こういうことでしょう。
#142
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 申し加えさしていただきたいと存じますが、この網走の件につきましては、いわゆる準起訴手続もあることでございまして、私どもといたしましては、現在、先ほど申し上げました監督責任を問うまでには至らない事案であるというふうに重ねて申し上げたいと存じます。
#143
○橋本敦君 何遍聞いても肝心なところの答弁を局長は避けて通られますね。
 それじゃ、こう聞きますが、よろしいですか、彼が網走へ行ったのは、これは職務上の出張という行動ではないことは事実。たまたま裁判所の出張ということで出かけてそのついでに出かけた。彼は、自分がかねがね、かねがねですね、治安立法問題について研究をしているので、その研究に資するためにこの書類を閲覧したかったのだという、そういう動機と目的を彼は言っておる、これは間違いありませんか。彼が閲覧した動機と目的をどう言っているかです。
#144
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 私どもの調査に対しましては、戦前の治安維持法の研究のため宮本顕治氏の記録を見せてほしいという趣旨であったと思います。
#145
○橋本敦君 そこで、戦前の治安維持法の研究のためと彼は言ったというんです。裁判所にお伺いしますよ、いいですか、裁判官という身分であれば、戦前の治安維持法の研究ということで、刑務所が門外不出、見せてはならない極秘文書、これでも見るということは通常できますか。
#146
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) この種の資料につきまして法務省側がどのような扱いをしているかは的確に承知しておりませんが、簡単に見れる資料ではないというふうに調査の過程で知ることができたわけでございます。
#147
○橋本敦君 簡単に見れる資料どころか、絶対に見れない資料です。学者が戦前の治安維持法を研究するからといって絶対に見せませんよ。松川事件で御存じのように民事賠償訴訟で裁判所が提出命令を出しても、刑務所側は出さなかった。これは人事局長御存じのとおりですよね。それぐらいの書類ですよ。それを鬼頭氏が裁判官という身分にあって、そして戦前の治安維持法の研究をするんだと、こういうことでこれがやすやすと刑務所側の了解を得られたということも摩訶不思議ですけれども、彼が一体そういうことを言ってこの身分帳を閲覧したというその行為は裁判官の私的研修なり研究なりということで相当と思われますか。裁判官はみずから研修し学習をし教養を高める、それ自体裁判官として大事なことですね。そういうみずからの裁判官の研修ということの一つとして、本来見てはならない、見せてはならないものまでわざわざ北海道へ行って見に行く。これは裁判官の自己研修のあり方として、普通の裁判官がだれ一人やっていないことですよ、こんなことは。相当だと思われますか。
#148
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 見てはならない、見せてはならない資料かどうかにつきましては、先ほど申し上げたとおりでございますが、まあ議論になりますけれども、見せてはならないものを一方の当事者がいわばみずから解除して見せたというようなケースであったとすればいかがかと存じますが、いずれにいたしましても、御指摘のとおり、このような方面の研究というものにつきまして研究している裁判官がほかにいるかどうかにつきましては承知しておりませんが、いわば非常に例外的な研究であるとすれば例外的な研究だと思います。
 ただ、この行為が裁判官として妥当であったかどうかというお尋ねでございますと、ある意味では的確にそこまで私ども結論を出すだけの事情が解明されていないというふうに申し上げざるを得ないと思います。その点につきましては、先ほど申し上げましたように、私どもの調査ではある程度筋道の立った簡単な供述だけでございまして、あとは当時の応対した刑務所側の職員がどういうふうに受け答えをしたかということにかかっているわけでございます。そのようなことで、またおしかりを受けるかもしれませんが、私どもといたしましては、現在のところ、これが妥当であったかどうかということについては、ひとつ結論は遠慮さしていただきたいと思います。
#149
○橋本敦君 人事局長、当時稻葉法務大臣がそこにおられて、あなたも並んでおられて、この問題が質問されたときに、稻葉法務大臣も法務省側も、これは閲覧を許可するような性質の文書でないことをたびたび言われていますよ。あなたもお聞きになっているでしょう。いまになってそういう答弁されるということは、責任回避の一つの姿勢としてしか私は思えませんよ。
 しかも、鬼頭史郎彼が戦前の治安維持法問題の研究をやっておった、そういう研究をずっと続けておったという状況は裁判所は知っていましたか。さらに、彼はこの研究をもとにして司法研修所あるいは裁判所部内の研究発表を文書でやったことがありますか。一回もないでしょう。
#150
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) その種のいわゆる研究をしておったかどうかについてはわかりません。
 なお、司法研修所におけるいわゆる司法研究その他について研究を命じたことはございません。
#151
○橋本敦君 裁判所は彼がこういう研究をやっていたことも知らないんですよ。つまり、彼は、戦前の治安維持法の研究だということを口実にして、実際は研究なんかしていないんですよ。研究発表もしていない。口実にして資料を見に行った、こう見るのが事案の真相に近づく道ですよ。最高裁はこの点を全く調査の観点をそういうところに置かないで、まさに責任回避していますよ。さらに、彼が身分帳を写しとったその診断書の一部が、春日民社党委員長が東京新聞に提供したあの文書と、そして刑務所側が鬼頭史郎に送った文書とは、これは同一物であると法務省側が断定をしたという事実、これは局長も御存じですね。
#152
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 承知しております。
#153
○橋本敦君 そうだとすれば、松本明重に資料が流れた問題、あるいは民社党春日委員長所持の資料、これは鬼頭氏のところへまず行ったということと全く同一の書類ですから、これは一体どういう経路でそう流れたか、徹底的に究明する必要がありますよ。たとえば、あなた方は、鬼頭の罷免訴追でも、あのテープを読売新聞に持ち込んだという事実を重視して訴追請求をしましたね。今度の処分でも、テープ問題を理由にして監督責任をみずから問いましたね。そうでしょう。それと同じことですよ。入手した秘密の資料を、いいですか、これを彼が松本明重氏に渡す、あるいは春日委員長に渡るようにし、持っていくということをやったとすれば、まさに読売新聞社にテープを持ち込んだ行為事実そのものと全く同一性質じゃありませんか。なぜ徹底的にこちらを調べないのですか。テープだけを問題にしてこちらを調べない理由は何もありませんよ。その点をはっきりしてください。
#154
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 大変失礼でございますが、ただいまの御質問の中に、もし流したとすればということでございました。確かに、流したとすれば、これこそ重大な問題だと思います。私は、これも何回も申し上げたとおりでございますが、当初からよそにいわゆる流す意図で網走刑務所に参りまして入手して、そしてかつ流したとすれば、一連の行動を総括して考えれば、それこそ裁判官としてあるまじき行為であるというふうに考えます。しかし、私どもの調査の能力は遺憾ながらそこまで解明できなかったというのが私どもの見解でございまして、現にいわゆるにせ電話で起訴されておりますが、果たして、検察庁で網走事件についても立件したというふうに聞いておりますが、その検察庁の捜査の過程でどの程度解明されているのかどうかにつきましても、私もちろん存じませんが、かつ現在準起訴手続がこの流した事実まで含まれているかどうか、これも私はよく承知しておりませんけれども、準起訴手続であるいは解明される事案ではなかろうかというふうに考えます。
 重ねて申し上げますが、流した事実、流れた事実については、むしろその後半部分といいますか、その方こそ重要な問題であるというふうに私どもは考えまして、私どもなりにできるだけの調査をいたしたのでありますけれども、結局解明できなかったというふうに申し上げざるを得ないわけでございます。
#155
○橋本敦君 つまり、重要性は認識をするけれども、調査能力に限界があって解明できなかったというお話ですね、結局のところね。その解明できなかったということで、それじゃ責任が果たされるか。現に裁判所の職員どころか判事補である鬼頭氏がやった行動に関する調査で最高裁が調査委員会まで設けながら解明できなかったというのは、これは私は能力の限界というよりも、本当に調査が適正にやられたかどうかということにかかわる重大な問題だと思いますよ。最高裁がどの程度どういう人に会って調査をされたか、私は一々ここで詳しくお伺いするつもりはありません。するつもりはありませんが、客観的に同一文書だと法務省自身が断定し、裁判所もそれを承知している。それじゃ、流れたと推定するということは合理的な推定ですよ。そういう流れたという合理的推定について、一体どれだけ真剣に最高裁が調査をされたのか、私は重大な疑問があると思う。たとえば鬼頭史郎氏がこの問題についてどう言っていますか。自分は流さなかったと、こう言って否定をしている。あなたはそういう答弁もなさいました。
 じゃ、なぜ同じものがあそこに行ったと彼は説明していますか。
#156
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 朝日新聞であの例の書類の筆跡云々という問題が出ましたのは大分前でありますが、その後御指摘のような事情が新聞で報道されましたことは大分後の時点だったと思います。その時点におきましてはいわゆる資料開示問題で私どもの具体的な調査には応じないという鬼頭元判事補の態度であったわけでございまして、その後、いわば鬼頭元判事補から直接聞くすべはなかったと言わざるを得ないと思います。その意味で、結局その点につきましては解明できずじまいであったわけでございますが、なお、その同一資料があるところに流れていると、このいわば推定力といいますか、これをどう考えるかというお話でございましたけれども、まさにそうであるからこそ、果たして鬼頭元判事補から流れたものかどうか、さらに慎重に検討すべき問題だというふうに現在では思っております。
#157
○橋本敦君 現在そのとおり思っておられるとおり重大な問題なんですよ。鬼頭が調査に応じなかったからということで鬼頭の言い分さえ聞き得ていないという調査は、私はこれは調査の名に値しないと思いますよ。現在その問題はやっぱり重大だと局長もいま答弁されたとおりだとすれば、これについても継続的に調査をする調査委員会は解散したけれども引き続き可能な限り調査をするという姿勢で最高裁は臨むべきじゃありませんか。いかがですか。
#158
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) この点につきましては、先ほども申し上げましたように、準起訴手続としてどの程度の事実が含まれておりますかどうか、私は必ずしも全面的には承知していないのでございますが、現在の私どもの能力をもってしては、この資料の流れた問題につきましては一応打ち切らせていただきたいというふうに考えております。
#159
○橋本敦君 これもまたけしからぬですよ。重大だという認識をいまも持っていると言いながら、諸般の状況によっては重大な関心を持って調査を継続するというなら話はわかるが、これでもう打ち切りだと。まさに、今度の事務総長ら八人に対する処分は、鬼頭を国会が弾劾裁判所で罷免した、そして一方、検察庁は起訴をした、そしてまた、その他の手続もある、最高裁はこれで鬼頭問題は全部首が切られて終わりだと、あとは自分たちの監督責任ということで名目的処分をして、そして調査は全部打ち切らせてもらいます、これで終わりだと。これで、一体、局長ね、この大問題、司法の信頼、威信をはなはだしく傷つけたこの鬼頭問題、これに対する最高裁の姿勢としてそれで果たしてよろしいのですか。私はそうは思いませんよ。私は、この点について、最高裁の現在のあり方について厳しい批判的意見を申し上げる。青法協加入の裁判官志望者が拒否されたという問題も新聞に出た。鬼頭問題に関連をして、最高裁は左に辛く右に甘いそういう司法行政体質を持っていたのじゃないか、それがこの鬼頭を生み出したのではないかと根本問題が問われようとしているときに、調査不十分のまま終わらせ、徹底的な調査を今後やるという意欲もなく、これで責任をとったと果たして言えますか。この点について、私は、事務総長に直接にお越し願ってこの問題についてはさらに究明しなければ、司法行政に対する問題として重大な問題が残りますから、きょうは質問はこれで終わりますが、質問は留保して、いずれ事務総長にお越し願って、改めて最高裁のあり方を問います。
 以上で終わります。
#160
○委員長(田代富士男君) 本日の調査はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時五十分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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