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1976/02/04 第80回国会 参議院 参議院会議録情報 第080回国会 本会議 第3号
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1976/02/04 第80回国会 参議院

参議院会議録情報 第080回国会 本会議 第3号

#1
第080回国会 本会議 第3号
昭和五十二年二月四日(金曜日)
   午前十時三分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第三号
  昭和五十二年二月四日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、裁判官弾劾裁判所裁判員及び裁判官訴追委
  員辞任の件
 一、裁判官弾劾裁判所裁判員、裁判官訴追委
  員、九州地方開発審議会委員、北陸地方開発
  審議会委員、首都圏整備審議会委員、離島振
  興対策審議会委員及び鉄道建設審議会委員の
  選挙
 以下 議事日程のとおり
     ―――――・―――――
#3
○議長(河野謙三君) これより会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。
 小川半次君、町村金五君、吉武恵市君から裁判官弾劾裁判所裁判員を、加藤武徳君、宮崎正雄君から裁判官訴追委員を、それぞれ辞任いたしたいとの申し出がございました。
 いずれも許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。よって、いずれも許可することに決しました。
     ―――――・―――――
#5
○議長(河野謙三君) この際、
 裁判官弾劾裁判所裁判員三名、
 裁判官一訴追委員二名、
 九州地方開発審議会委員一名、
 北陸地方開発審議会委員二名、
 首都圏整備審議会委員、
 離島振興対策審議会委員、
 鉄道建設審議会委員各一名の選挙を行います。
#6
○井上吉夫君 各秘委員の選挙は、いずれもその手続を省略し、議長において指名することの動議を提出いたします。
#7
○久保亘君 私は、ただいまの井上君の動議に賛成いたします。
#8
○議長(河野謙三君) 井上君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#9
○議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。
 よって、議長は、裁判官弾劾裁判所裁判員に伊藤五郎君、青木一男君、山本茂一郎君を、
 裁判官訴追委員に安孫子藤吉君、秦野章君を、
 九州地方開発審議会委員に細川護熙君を、
 北陸地方開発審議会委員に吉田実君、志苫裕君を、
 首都圏整備審議会委員に森勝治君を、
 離島振興対策審議会委員に原文兵衛君を、
 鉄道建設審議会委員に加瀬完君を、それぞれ指名いたします。
     ―――――・―――――
#10
○議長(河野謙三君) 日程第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
 去る一月三十一日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。阿具根登君。
   〔阿具根登君登壇、拍手〕
#11
○阿具根登君 私は、日本社会党を代表いたしまして、福田総理並びに関係閣僚に対しまして質疑を行い、政治、経済、外交の問題点を明らかにしてまいりたいと思います。
 まず、今日の政治情勢に対する基本的認識について明らかにし、総理の政治姿勢について問いたいと思います。
 昨年十二月五日に行われた総選挙の結果は、野党の全得票数五二・五%に対し、自民党は四一・八%、しかも、議席数においても過半数に七名足りない二百四十九議席にとどまるという、与野党逆転の結果に終わったのであります。これは、ロッキード事件に見られる自民党の金権腐敗の政治、長期にわたる不況とインフレによる国民生活の深刻な状態、不公平な税制や社会福祉の貧困な実態に対する国民の怒りと不満が、賢明な選択となってあらわれたものと思います。ところが、自民党は、政権の保持を図るため、保守系無所属の当選者を急遽くらがえさせ、辛うじて過半数を確保したのであります。国民は無所属に投票したのであって、自民党を支持したものではないのであります。このようなやり方は、国民を愚弄し、議会制民主主義を破壊する何物でもないと言わざるを得ません。
 この結果は、十二月二十四日の首班指名投票において、過半数を超えることわずか一票の差という、まさに前代未聞の綱渡り的現実の中で福田内閣が実現したのであり、私は、ここに今日の政治の基本問題が象徴的に示されているものと思うのであります。つまり、国民は戦後三十年余にわたる自民党単独政権を批判して保革接近の政治選択をしたのであって、それが今日の国会における衆参両院を通じての保革伯仲の状況をつくり出しているのであります。
 総選挙の結果は、大きな歴史の流れの中であらわれた政治的な象徴でありまして、この意味では、自民党の役割りはすでに終わりつつあるものと断ぜざるを得ません。その自民党が、またしても従来の数の論理にもたれかかり、神聖な国民の審判を詐術をもって変更してまで、ここに単独内閣を成立させたのであります。
 その最高責任者である福田総理は、「協調と連帯」をスローガンに、先般の施政方針演説でも、「日本丸」という言葉を三回もお使いになりました。日本丸を沈没させないと叫んでおられます。総理が叫ぶほど日本丸が沈没しかけているのであるならば、その責任はだれにあるのか。もちろん私たちにもあります。しかし、佐藤内閣以来、常に経済のかじ取りを豪語されてきたのは福田総理です。あなたにその責任が一番大きくあると思います。
 さらに、お忘れのようですので私がつけ加えますと、沈没しかけているのは自民党ではございませんか。沈没しかけているのは福田丸ではございませんか。違いますか。総理のお考えをお聞きいたします。
 岸内閣では「三悪追放」、池田内閣の「寛容と忍耐」、佐藤内閣の「寛容と調和」等々、それぞれ皆りっぱなものでありますが、残念ながらどの内閣もみずから掲げたスローガンを実行したことはなく、したがって、国民から惜しまれて退陣した内閣は全くなかったのが偽りのない歴史であります。
 そこで、総理、あなたの申された施政方針における「協調と連帯」のくだりは、まことにもって抽象的であり、教科書の押しつけときめつけざるを得ません。国民はもっと具体的、身近な問題を望んでおるのであります。さしあたり、今国会の重要な政治課題と思われる事項について以下申し上げまして、御答弁をいただきます。
 第一に、国会運営のあり方についてであります。
 総理は、これまで自民党が行ってきた多数万能、一党独裁的国会運営を根本的に改め、国民の六〇%が支持しておる野党の意見を十分に聞き、昭和五十二年度予算案を初め、政府提出法案についても、こだわることなく、国民のために、よりよきものに修正していく態度に改めるべきであります。協調と連帯の責任を果たす意味からも、総理の明快な約束を求める次第であります。
 第二は、独禁法改正案の取り扱いです。
 これは、現代の経済構造の病弊、すなわち大企業の独占体制が経済の円滑なる運用を妨げ、独占価格によって物価をつり上げるのを規制するため、総理、あなたが副総理に在任中の三木内閣が提出したものであり、衆議院においては与野党一致で修正可決されたものが、財界の強い圧力に押され、本院でついに廃案になったという経過があるのであります。しかしながら、低成長経済への移行に伴って、大企業の反国民的行動は増加しております。公正取引委員会の報告では、企業集中度の高い業種ほど価格騰貴が著しいと指摘しておるのであります。したがって、私は、早急に五党修正に基づく改正案を再提出して、成立を図るべきだと考えます。聞くところによりますと、政府は、企業分割、原価公表などを含まない骨抜き改正案を提出しようとしておるようでありますが、総理は、五党修正に基づく改正案を今国会に提出する意思があるのかどうか、明確にしていただきます。
 第三は、総理の対話シリーズとその結末についてお伺いいたします。
 総理は就任後、対話シリーズと銘打ち、各界の人々と対話を重ねられ、これこそが連帯のあかしだとでも言いたい様子ですが、しかし、総理の話は全く中身が薄く、言質をとられまいとする警戒心が先立ち、ほとんど聞き役に回って、具体的な見解や問題解決の方策については何ら責任ある対話や答弁をせず、ただ話し合ったというポーズだけにウエートが置かれておると言われております。総理は、このシリーズで受けとめた各界各層の意見にどのようにこたえ、その結末をどうつけられたか、五十二年度予算案について詳しくお答えをいただきたいのであります。
 第四は、参議院議員の定数是正についてであります。
 さきの公職選挙法改正案の国会通過の際、参議院議員の定数是正を本年六月の参議院選挙に間に合うように実施するとの議長裁定が存在することは、総理も御承知のとおりであります。しかるに、自民党の党利党略優先の姿勢が障害となって、今日まで意見の一致を見ていないのがいまの状況であります。自民党の総裁でもある総理は、議長裁定の趣旨を尊重して、今国会で成立させるべきでありますが、いかがですか。
 政治姿勢の最後に、金権腐敗の政治が生んだロッキード疑獄に対する福田総理の政治責任と今後の方針についてお尋ねいたします。
 いま国民は、総選挙の結果が示すように、あの大胆不敵な構造汚職の徹底解明を強く望んでおるものであります。総理は、これまでも歴代自民党内閣に参画し、特に三木内閣では副総理として重要な役割りを担ったのであります。総理自身、金権腐敗に対する政治責任をどのように感じておられるのか、率直にお答え願いたい。
 さらに、明らかにしていただきたいのは、両院議長のあっせんにまで持ち込まれた徹底解明をどのようにして実行するのかという問題であります。事件の核心と言える児玉、小佐野ルートやPXLの問題が未解明のまま葬り去られようとしておりますが、みずから解党出直しを唱えられた総理の主張と余りにもかけ離れていることに国民は疑惑を抱いておるのであります。徹底究明のため、国会の証人喚問、資料の提出等、要求を妨害せず、全面的に協力する意思があるのかどうか、はっきりとした態度を示していただきたいのであります。
 また、これら政治腐敗の再発を防止するため、どのような積極的対策を政府は用意しておるのか明らかにすべきであります。この際、私は、政治の倫理性、道義性を高めるため、この種疑獄の再発防止の立法措置を講ずべきだと考えますが、総理の見解をお伺いいたします。政治資金のあり方、行政指導のあり方、政財官界の癒着に対する根本的見直し、これが再発防止の起点であります。防止策について詳細かつ具体的な今後の日程、手順及び内容を明らかにすることを求めるものであります。
 次に、福田内閣の経済運営についてお尋ねいたします。
 総理は、三十九年の佐藤内閣以来、田中、三木両内閣にわたり主要経済閣僚ないしは党の責任幹部として過ごしてこられたわけですから、この間の経済政策の立案、実行については、よいにつけ悪いにつけ全面的に責任があると国民は判断しております。総理も当然そう考えておられると思いますが、この点を再確認した上で質疑を進めたいと思います。
 まず初めに、過去の経済運営の中から二つの問題点を指摘したいのであります。総理は長いこと安定成長を唱え、この点で高度成長論者の池田総理と鋭く対立されました。そして、佐藤内閣のもとであなたが大蔵大臣としてその策定に重要な役割りを果たされた中期経済計画及び経済社会発展計画では、経済成長率をそれまでの一〇%台から八%台に落とすことにしておりましたが、実績数字は、池田内閣時代に匹敵するか、それを上回る一二、三%の成長となっております。次いで四十五年につくられた新経済社会発展計画では、逆に成長率見通しを一〇・六%に引き上げ、高目の成長経済をねらいましたが、実績の方は計画目標を相当下回る成長に終わったのであります。さらに、基本計画では九・四%成長見通しが、五十年度には二・六%という低成長の不況時代に落ち込んでおります。
 福田さんの安定成長の持論はこの十数年間実現していないばかりか、その端緒すらつかめていないというのが現実の姿ではないでしょうか。過去のあなたの主張と現実の乖離の原因をどうごらんになり、どう反省しておられるか、そして今後どのような方法で安定成長経済に持っていくのか、総理にはっきりとお伺いいたします。
 さらに、最近の経済運営について伺います。
 第一に、景気低迷の原因をただしたいのであります。
 三木内閣の経済総理と自負していた福田総理の口ぐせは、わが国が石油危機で受けた打撃から回復するには三年を要し、五十一年度はその仕上げの年とするということでありました。その五十一年のわが国経済の推移を四半期別国民所得統計で見ますと、期を追うに従って停滞の色を濃くし、いまや中だるみ、本だるみの危機等の経済論評が展開されています。企業倒産は毎月記録を書きかえ、完全失業者は百万人の大台を離れることができません。鉱工業生産の伸びの沈滞、意図せざる在庫品の増加等々、いずれの経済指標も暗いものばかりであります。経済総理として、全治三カ年の日本経済を治癒できなかったあなたの責任をどういうふうに考えておられるか。病気の治せない人が病院長になったのでは、患者にとっては、はなはだ不幸なことではないでしょうか。
 五十一年度経済が回復軌道を外れる危険のあることは、本年度予算審議を通じてわが党が厳しく指摘し、修正を求めた点であります。すなわち、公共事業中心の景気政策では不十分であり、所得減税を見送るべきではない、また、社会保険料、公共料金等の大幅引き上げを行うことは、高い物価上昇をもたらし、個人消費支出を伸び悩みにさせ、景気回復の足を引っ張ることになるとわが党は指摘し続けたのに、そうした的確かっ建設的な意見に対して、総理は悟として耳を傾けなかったではありませんか。
 さらに、総理は、賃金水準の上昇と物価の上昇とを全く非論理的に短絡して結びつけ、勤労大衆の賃上げを二年間にわたって、世上言われる福田式所得政策というやり方で、財界と手を結んで抑えつけたことも、経済を縮小型の悪循環に落ち込ませた大きな原因であります。
 その上、総理は、当時経済企画庁長官として経済動向の認識に非常なずれがあり、景気停滞を渋々お認めになったのは十一月になってからであって、補正予算を含む景気対策を取り上げたのは、総選挙を意識しての選挙対策向けというスローモーぶりでありました。そのために、今日に至っても補正予算は未成立で、いたずらにかけ声ばかりという状況であり、ここに対策のはなはだしいおくれが露呈されております。かつて経済白書で、「認識と対策のずれは景気政策の効果を激減させる」という指摘をあなたはしておきながら、みずからそのとおりの過ちを犯されたと、こう言わざるを得ないと思います。今日の景気中だるみと先行き不安は、まさに当時の副総理としての福田さんの責任であり、その政策が当を得なかったことによる政策不況にほかならないと言わねばなりません。総理の見解をお伺いいたします。
 第二に、今後の景気浮揚策をただしたいのであります。
 総理は、就任直後の記者会見で、「来年は経済の年」と訴えられました。しかしながら、五十二年度予算に盛られた施策は総じて小出しであり、われわれが主張した一兆円所得減税は、物価調整減税と称してわずか三分の一の三千五百三十億円の規模で実施されるにすぎません。これでは、五十二年度に一〇%前後のベースアップが仮にあったとしても完全に増税になってしまい、超ミニ減税にすぎないのであります。これでは減税の名に値しないばかりか、増税の防止にすら不十分であり、これが景気浮揚の役割りを果たすとはどうしても考えられません。総理は、もともと物価調整減税は貯蓄に回って需要喚起の効果は少ないと言われますが、なるほどスズメの涙ほどの減税では、あるいはそうなりましょう。それというのも、もともと福祉政策が不十分であり、国民は老後の不安を持っているがゆえに、消費者物価上昇が預貯金金利を上回り、預貯金がみすみす目減りするという痛みと怒りをいやというほど感じているにもかかわらず、身を削ってせっせと貯蓄に励まざるを得ないという実情を総理は理解することができないのですか。わが党を初め、新自由クラブまで含めた全野党が一致して強く要求しておる一兆円減税をなぜ実施しようと努力されなかったのか、総輝及び大蔵大臣の答弁を求めます。
 さて、福田総理は、減税よりも公共投資の方が波及効果が大きいと主張され、景気浮揚の主力をこちらだけに置かれたようであります。公共事業費は五十二年度予算で四兆二千八百十億円計上され、五十一年度当初比二一・四%の伸びとなりました。これについて政府は、一般会計予算の増加率一七・四%を上回った資金配分をしたと宣伝しています。しかし、実は五十一年予算の伸び率二一・二%をわずか〇・二%上回ったにすぎないのでありまして、せいぜい本年度の横ばい程度の効果しか期待できないということは明瞭であります。
 さらに、需給のギャップが相当大きく、設備投資意欲が冷え切っている上に、日本経済の低成長経済体質への移行が避けられないと見られている時期だけに、政府が言うほど公共投資の波及効果が大きいかどうか、はなはだ疑問なしとしません。景気浮揚策の選択として公共投資のみを偏重する政策が果たして本当に景気政策として有効に機能すると明確に断言できるのかどうか、総理並びに大蔵大臣の御答弁をいただきたい。
 第三に、私は福祉切り捨ての政策を強く指摘いたします。
 四十八年度予算で自民党は、福祉重視に政策転換したいと宣言したはずですが、福田内閣はこれを守りますか。また、三木内閣は弱者救済と不公平是正を看板に掲げたはずですが、この政策を福田総理は継承を肯定されながら、五十二年度予算では全然逆のことをやっておられるのではありませんか。「福祉ばらまき」、「福祉の行き過ぎ」などの悪意に満ちた宣伝を繰り広げ、さらには老人医療無料化打ち切り等の世論操作をやり、ゼロよりましだ、存続は打ち切りよりもありがたい、こういったやり口で福祉予算の切り捨てをやったではありませんか。今日のこのインフレ下で老齢福祉年金はわずか一一・一%の伸びにすぎず、一般会計予算の伸び率一七・四%をはるかに下回っております。さらに、そのほかの福祉対策予算の伸び率もぜいぜい一〇%程度にとどまっており、福祉の後退は余りにも歴然としております。
 このように見てくると、福田さんの経済運営は、衆議院においてわが党の成田委員長が言うごとく、強きを助けて弱きをくじいておると言わざるを得ません。世間は、福田総理の誕生で、財界と自民党のよりが戻ったとか、財界と政界が蜜月に入ったとか報じており、国民の多くは、福田政権の発足でわが国の経済運営がいつか来た道に逆戻りしつつあるのではないかとり疑問を深めております。総理、大蔵大臣及び厚生大臣から御答弁願います。
 第四に、資源エネルギー政策についてお尋ねいたします。
 総理は資源有限時代に入ったことを強調されましたが、それにしては、政府の資源エネルギー政策には本来確たる基本方針がありません。そのため、かつては輸入原油に過度に依存して石炭産業を荒廃に追い込み、石油ショックであわてふためいて石炭見直しを唱えたのは、つい最近のことであります。そして、いま政府が示しておる長期需給計画の本質は、しゃにむに原子力発電への傾斜を強行しようとするものであります。わが党も、もとより原子力発電の必要性、重要性は十分に認識いたしているところでありますが、安全性が確保されないままで、住民の意思を無視して原子力発電所の立地を促進することは賛成するわけにはまいりません。政府は、いかにして安全性確保を前提とする開発を進めるのか、お伺いしたい。
 そして、私が特に指摘したいのは、政府の資源エネルギー政策に安全保障の考えが欠けておることであります。施政方針の中で総理も安全保障ということは言っておりますが、わが国はウラン鉱石も原油もほとんど海外からの供給に依存しておるのでありまして、いかに協調を旨とする立場に立つとしても、国際事情激変による供給削減ないし停止の可能性は常に想定しておかねばなりません。私は、ウラン鉱石及び原油の円滑な輸入に努力を傾けることは当然としても、それに加えて、この際、純粋の国産エネルギー源である水力及び石炭の積極的開発に踏み切るべきだと考えます。技術士、コスト上の困難を克服して開発すれば、水力発電は新たに二千万キロワットの供給が可能であると言われております。また、わが国の石炭の推定埋蔵量は八十六億二千八百万トンでありまして、その三分の一を使うとしても、年間四千八百万トンずつ出炭して二千万キロワットの発電を行っても、今後六十年は優に持続できるのであります。もちろん、技術上、資金上の困難は国の総力を挙げて克服すべきであります。
 原子力発電の規模については、六十年度に四千九百万キロワットというのが政府の目標でありますが、今日の状態でそれが達成できますか。すなわち、水力及び石炭火力の開発によってこれらの原子力発電の規模はほぼカバーすることができるのであります。官民合同の総合開発機構も、三十一日の発表によりますと、一九八〇年代以降エネルギーは危機になると言っております。このようなときに、エネルギー資源の確実な安全保障の基盤に立ってこそ長期エネルギー計画の樹立も可能になるものと考えます。
 また、食糧政策についても、詳細は申し述べませんが、政府のいまとっておる麦、大豆などの極端な海外依存政策が、国民の食生活の安全保障の見地から危険きわまりないことは申すまでもありません。つまるところ、エネルギー資源にしても、食糧にしても、度を過ぎた海外依存政策は、国民生活の最低線を保障するという観点から見て、はなはだ危険であります。このような政策を速やかに是正し、私の提起した安全保障政策をとるべきでありますが、総理、通産大臣、農林大臣の御答弁を求めます。
 次に、国債政策について伺いたい。
 四十年の不況の際に初めて国債の発行に踏み切り、景気回復のきっかけをつくったことは、それなりに評価ができるかと思います。しかし、その後好況にあっても国債に頼り、ついに今日の無節操な国債発行になったのです。四十年当時七千六十八億円であった国債残高は、五十二年度末には三十兆円を超え、四十三倍にも達することになります。しかも、国債は今後もふえ続け、政府の破綻した財政収支見通しでも、五十五年度には五十兆円余りの国債残高となります。この巨額な借金の金利と元本を、貯蓄目減りに泣く国民大衆は、次の世代にわたって払わされるのです。これは国民に大変な犠牲を強いるものであり、まさに悪政そのものではありませんか。総理の見解をお聞きいたします。
 次に、福田内閣の外交方針についてお伺いいたします。
 今日、わが国を取り巻く外交懸案は山積しています。国際的にも国内的にも早急な解決が迫られており、一歩間違えば、国益を損じ、世界の孤児にもなりかねません。いまや、政治、経済の全般にわたって地球は狭くなり、各国間の協調によって問題を事前に解決する姿勢がないと、摩擦と緊張を高める危険性を常にはらんでいます。この点から見ると、従来のわが国の外交はスローテンポであり、諸外国から、問題の解決を引き延ばしているとの批判及びアメリカの言うことを聞けば日本の言うことを聞かないでもわかるといった批判もしばしば耳にするのであります。まず、福田内閣は、こうした外交姿勢を改めていく考えがあるかどうか、総理の御答弁を求めます。
 次に、具体的な外交懸案についてお伺いします。
 第一は、日中平和条約の締結についてであります。
 田中内閣時代に比べると、三木内閣の二年間は日中平和友好条約の交渉がほとんどなされておりません。日中両国の新政府が発足を見た今日こそ、日中平和友好条約の締結交渉を大きく前進させる絶好の機会だと存じますが、総理及び外務大臣は交渉促進の決意をお持ちですか。
 日中両国の恒久平和と親善関係とを樹立するためには、去る四十七年の国交正常化の際の平和五原則などを織り込んだ共同声明を基盤とすべきことは当然であります。すでに河野参議院議長の訪中に際して、総理は、いわゆる宮澤四原則にはこだわらない旨伝言されたと報じられております。さらに、竹入公明党委員長の訪中に当たっては、共同声明を忠実に履行し、条約締結交渉を早急に進める旨の伝言を託されたと言われております。もしそうだとすれば、残るのは覇権条項の取り扱いだけであります。この条項の取り扱いがほとんど唯一の懸案となって交渉が行き詰まっていたわけですから、総理がすでに決断されておるとすれば、この問題はむつかしい問題ではないと考えます。ところが、竹入委員長に託したと言われる伝言をめぐって、外務省首脳がその内容を否定するがごとき発言をし、それが問題となるや、政府が急いで伝言肯定の統一見解を発表するなど、二転三転する事態が起こりました。
 このような事態について、私は、第一に、官僚が総理の発言を否定するということははなはだしく行政の筋を乱すものであり、第二に、政府内の不統一を暴露することによって中国に対してわが国の信を失わしめるものであり、第三に、公党の委員長に対してはなはだしい非礼を犯すものであると考えます。総理及び外務大臣の日中平和条約締結についての真意と決意とを明確に承りたいものであります。
 第二は、日ソ平和条約の交渉についてであります。
 昨年は、ミグ25事件という日ソ両国にとって不幸な突発事件があり、その機体処理を米軍関係者の参加を得て行うといった拙劣なやり方によって、両国の外交関係を悪化させたことは否めません。北方領土の返還要求を初め、北方水域での漁業の安全操業、シベリア開発等、どれ一つとってみても、懸案解決のためには日ソ間における友好関係樹立の基本姿勢が貫かれていることが必要不可欠な前提と言えましょう。政府は日ソ間の外交案件の処理にどのように取り組もうとしておるのか、お示しいただきたい。
 鳩山外相の厳父、故鳩山一郎首相が、かつて少数与党という厳しい情勢の中で、万難を排し、不自由な体にむちうって訪ソし、ついに日ソ共同宣言を締結されたことが、いまにして思い出されるのであります。戦後三十年余りを過ぎて、いまだに平和条約が締結されていない中国、ソ連との外交課題の解決に鳩山外相は政治生命をかけて努力する決意がおありになるかどうか、お伺いしたいのであります。
 第三は、韓国問題についてであります。
 米国のカーター政権は、従来の対韓政策を大きく転換して、在韓米軍の段階的削減を公約しておりますが、私は、朝鮮の自主独立、平和裏の統一のため撤退すべきであると信じております。しかし、外務省はいち早く反対の意思表示をしたと言われ、最近総理は、米韓の問題であると逃げておられましたが、去る三十一日、一日のモンデール米副大統領との会談経過並びに総理の考え方をお聞きします。
 また、モンデール副大統領に対しまして、新聞の報ずるところによりますと、青嵐会の中尾栄一座長より撤退反対の申し入れ書が出されたそうですが、署名は一人であっても、末尾に全員の名簿があることは全員を意味するものと思います。しかも、その中に現職大臣の名も入っていたとすれば、私は容易ならざるものと思います。
 まず第一に、本人は知らなくとも仮に名簿があったと、渡されたとするならば、その名簿に名前が入っておることは、受け取った方では、福田内閣の閣僚が二人も記載されておる以上、相当重視すると思います。第二は、外務省が総理と異なる意見を軽々しく発言すること、第三に、総理と違った考えを自民党内から行動に移したことは、総理の指導性と姿勢があいまいなためと言わざるを得ません。
 さらに、副大統領と会談の際、三月二十一日、二十二日に、アメリカにおいて大統領と会談することが約束されたと報じられました。参議院の予算審議をどう考えておられるのか、参議院軽視もはなはだしいと言わねばなりません。総理並びに外務大臣の真意をはっきりさせていただきたい。
 第四に、経済外交の方針について、外務大臣及び通産大臣に伺いたい。
 政府は、五十一年度当初、景気浮揚策のウエートを輸出主導型から公共事業重視に転換いたしましたが、失敗したため一転して集中豪雨型の輸出傾向となり、たまたま世界不況とも重なったために、海外から厳しい批判を浴びるに至ったのは御承知のとおりであります。その中で、欧州共同体からの貿易不均衡是正要求は厳しく、造船、農産物輸出等は二月に使節団の来日が予定されており、さらに同時期にEC理事会が不均衡是正の実施状況の検討を行うことになっており、日本・EC貿易戦争が再び火を吹く危険が大きいと思われますが、政府の対策はどうなっておりますか。
 さらに、新発足の米国のカーター政権は、失業率の引き下げを公約に掲げ、労働組合の支持を取りつけたことが勝因の一つとも言われ、また、選挙基盤が函部であることなどもあって、対米輸出の制限と農産物の輸入増加をわが国に迫る可能性が強いと吉われておりますが、対米経済外交と貿易関係の見通しについて答弁を願います。
 外交問題の最後に、現在喫緊の課題であり、国益とも重大な関連のある領海十二海里問題及び漁業水域二百海里問題について、総理、外務大臣及び農林大臣に伺いたい。
 三木内閣以来の懸案であった領海問題について、政府は、去る一月二十六日、現行三海里を十二海里に拡大する方針を決定いたしました。私が問題とするのは、国際海峡については国連海洋法会議の決定を見るまで現状のまま凍結するという暫定条件であります。この決定は、津軽海峡などの国際海峡を核を積載した艦船が通過することを認めるものであって、世界唯一の原爆被災国であるわが国が堅持すべき非核三原則を空洞化するものにほかなりません。国際海峡は、細かく適用すればわが国には七十二カ所もあるといわれており、四面海をめぐらすわが国を核の脅威にさらすものと断じてはばかりません。しかも総理は、一月二十七日、国際海峡には実質上非核三原則が及ばなくなるのもやむを得ないという考えを示唆したと言われておるのであります。私は、総理から、改めて非核三原則の堅持と、これを外国艦船に厳守せしめる保障方法について、明確な意思表示を承りたいのであります。
 また、二百海里漁業専管水域につきましては、米国、ソ連等の宣言が相次ぎ、他方、国連海洋法会議は空中分解の危険がささやかれており、従来の国連海洋法会議の結論待ちの姿勢は許されないと存じますが、わが国はどうする方針なのか。また、専管水域の設定に伴いアメリカは入漁料の支払いを決めており、来る三月一日から徴収が始まることとなり、鈴木農相さえ、入漁料を払うために操業するようなものと言っておるほど法外な負担を強要しています。入漁料支払いの対米交渉の内容と今後の方針を伺います。
 次に、総理は、施政方針の中でわざわざ婦人の一項目を設けて、婦人の地位と福祉の向上のために国際婦人年世界会議の決定に沿って国内行動計画を作成したと宣伝されました。しかし、政府が発表した国内行動計画は、国連で決議した世界行動計画には対応しない、真に抽象的で低調きわまるものであり、婦人の十年を展望する意欲を全然認めることができません。多数の婦人議員を含む政府代表を国連婦人年世界会議に送ったわが国として恥ずべき内容であります。総理は、民間婦人団体がいち早く抗議集会を開いて非難していることを知っておられますか。
#12
○議長(河野謙三君) 阿具根君、時間が超過しております。簡単に願います。
#13
○阿具根登君(続) はい、わかりました。
 ここでは国内行動計画に対して不満足であることを表明しておくにとどめます。
 時間が参りましたので、最後に一言申し上げます。
 私は、三木内閣のときに、この壇上からヤマブキ内閣と叫びましたが、福田内閣につきましては、いまのような態度でいかれるならば、協調の「協」は変えて強弱の「強」にしなければならないようになるかと思います。福田内閣がポーズ内閣だと言われないように、福田内閣の気持ちが真に言われるとおりの協調内閣であることを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(福田赳夫君) 福田内閣が一票差の内閣であると、こういうことにつきましていろいろ御感想が述べられたわけでありますが、一票差といえども、私は憲法の規定に従いまして国会で指名を受けたわけであります。ただただその責任の重きを恐れて、国家、国民のためにお尽くし申したいと、その一念でございます。
 また、自民党が沈没しかかっておるじゃないかという御所感も述べられましたが、私は、先般の総選挙におきまして自由民主党に示された国民の審判は非常に厳しかった、これはいま阿具根さんの御指摘のように理解しております。しかし、この審判というものは、これは私は、自由社会を守るという自由民主党、その立場が批判されたという理解ではございません。自由社会を守る、この期待、これは国民の間に非常に大きいと思うのです。それにもかかわらず自由民主党の姿勢はどうか、その体質はどうか、それが問題にされたんだと、そういうふうに理解しております。そういう理解の上に立ちまして自由民主党を根本的に立て直したい、そして参議院選挙のときには、国民から、さあ自由民主党も反省したなと、生まれ変わったなという審判をいただけるようにいたしたいというふうに考えております。(拍手)
 私は、協調と連帯ということがこれからの国民の行動の基準でなければならない、こういうことを申し上げてきておるわけでございますが、これはもう地球上の森羅万象、生きとし生けるもの、やっぱりその間にいろいろ存在の違いはありますけれども調和がなきゃならぬ、これが相補い合いましてこの人間社会、地球社会というものができておるんだと。特に人間社会におきましては、これはもう人間みんな素質が違います。それをみんながみがかなきゃならぬことは当然です。そうして、そのみがいた成果を互いに分かち合う、補い合う、そして責任をとり合うと、これこそが私は社会の基本的な基準でなければならない、こういうふうに思うわけであります。そのことは、ひとり日本の社会ばかりじゃない、国際社会においてもそうだろうと、こういうふうに思うのです。同時に、日本の社会におきまして、国会の運営のあり方等もそうだろうと思う。自由民主党が多数だったと、そういうようなことで、自由民主党は多数の意見を、これをひたむきに押しつけるというような態度であってはならない。また同時に、野党の方でも、やはり与党の言うことを十分理解してくださって対応の構えをしてくださる、これも重要なことだろうと思います。そして与党野党相補い合い、相助け合って、そして国民の国会に対する信頼というものがそこに高揚されると、そういうふうに思いますので、国会の運営につきましても協調と連帯でやっていただきたいということをお願い申し上げます。
 独占禁止法につきましては、これはもう私はぜひ今国会で決着をつけたいと思うんです。しかし、決着をつけるためには国会全体の理解を得なければならない。野党の理解、これも大事でございまするけれども、与党の理解も得なきゃならぬ。私は、与野党の間でよく相談をしてもらって、そうして合意を得て、この国会ではぜひ決着をつけるようにいたしたいと、かように考えております。
 それから、私が就任後四十日になりますが、この間与野党の首脳あるいは各界の人々、こういう人と精力的に会談したです。それを何かポーズだけだと、こういうような御批判でございまするけれども、私はポーズをつくるためにそうやっているわけじゃないんです。私は、そういうことはこれはもう精力的に今後もやっていく。そして、その間に私が、これはまあ大事なことだということは、これはどしどし取り上げていきたい、こういうふうに考えておるわけでありまして、昭和五十二年度の福祉予算なんかをごらんになられますればこれはよく御理解がいただけることである、かように存ずる次第でございます。
 参議院の地方区を定数是正すべし、そうしてこれを六月の参議院選挙に適用すべしと、こういう御意見でございますが、私は、参議院の地方区ばかりじゃないんです、選挙制度全般にわたりまして、いまやこれを見直しをしなきゃならぬ時期に来ておる、こういうふうに存じます。しかし、選挙制度はこれは一党の問題じゃない、各党共通の関心事である、共通のいわば土俵である、そういうふうに考えますので、これはどうしても与野党で合意を得なければならない、そういうふうに考えておるのでありまして、その協議をぜひ進めたいというふうに考えておりますが、協議の調ったものから逐次実施するということにしたらいかがでしょうか、かように考えます。
 ロッキード事件につきましては、私は徹底究明ということを宣言をいたしておるわけであります。今後新たなる事態が出てくるということになりますれば、さらにその調査、追及を進めるという考えでございます。
 証人喚問につきましては、国会自身の御判断で決める問題でありますし、これは政府として容喙すべき問題じゃございませんけれども、希望を言わしていただきますれば、この公判の審理に悪影響がないようにしてもらいたい、そういうふうに考える次第でございます。
 それから国政調査におきまして資料要求、これがありますればできるだけ協力いたしまするけれども、捜査資料を公開するということは、公判審理との関係からこれはなかなか困難じゃないか、そういうふうに考えます。
 私は、ロッキード事件につきましては徴底解明がどうしても必要だ、しなけりゃならぬ、そういうふうに思いますが、しかし、より大事なことは、これは今後こういう事件が起きないというための対処をしなけりゃならぬ、こういうことだと思います。それはどういうことかと言いますれば、いま社会風潮、これはやっぱり金、金、金という社会風潮になっておるわけです。やっぱり私は、この金、物、また、それにうらはらをなすかのようなエゴ、こういう社会風潮を変えなけりゃならぬというふうに考えておるわけであります。と同時に、政治の姿勢、これも非常にその一環として大事ではないか、こういうふうに思うのです。私は、そういう意味におきまして、自由民主党が総選挙で批判されたようなあの党の姿勢、こういうものに対しまして本当に反省して出直しをしなけりゃならぬ、こういうふうに思うのです。そのことは、これはもう早急に実行いたしたい、かように考えております。同時に、それらと並行いたしまして、法的、行政的の予防措置、これも必要である。法的措置といたしましては、刑法の一部改正をいま検討中であります。収賄罪の法定刑の引き上げをいま検討いたしております。
 それから、これはちょっと時間のかかる問題でございますが、こういう事件が起こる、その根源には、政治に金がかかる、その根源は、これは選挙制度、そこにある。それから、選挙制度、それに関連して選挙資金の、政治資金のあり方、こういうことが問題にさるべきだと思うのです。これも与野党との間で十分相談をいたしてもらいたい、かように考えます。
 なお、犯罪捜査等についての条約等の整備、それから多国籍企業の行動の適正化、それから行政指導のあり方、許認可事項の整理等もやっていきたい、かように考えております。
 さらに、阿具根さんは経済問題に言及されまして、私が長い間経済の担当の立場にありながら、どうも適切な運営をしてこなかったんじゃないかという御批判でございます。確かに、私は昭和四十年から四十五年まで、その間ちょっと自由民主党の幹事長をいたしましたが、大蔵大臣、しかしその五年間、この日本経済はわりあいに私はよかったと思うのです。世界でもまあこれは奇跡というくらいに評価された、そういう時期でございます。その後、国際情勢が非常に変化してくる。ついには石油ショックというような事態になって混乱をいたしましたが、私はそう間違った運営はしてこなかったということを申し上げておきたいのであります。石油ショックが象徴をするように、いま資源有限時代になってきておるわけでありまして、いままでの経済というものは大体物価、国際収支、こういうものをにらんでやっていけばよかったんですが、これからさらにつけ加えて、資源というものが入ってきた。この資源もまた一つの重要なる問題として今後の政策運営に当たりたいと、かように考えております。
 それから、今日この時点の不況はこれは政策不況じゃないか、そういうような御指摘でございます。私は、いま日本の国の経済は、今日この時点におきましても、世界がこれだけ混乱している中ではよくいっている方だ、こういうふうに見ておるのであります。ただ、昨年一年をとってみますると、上半期に非常な急成長をした。これは世界景気がよくなったからです。昨年の一−三月のごときは実に一三%成長だった、この世界景気が沈滞をする、それにつれましていま停滞感が出てきておる、そういう状態だという認識でございますが、この停滞感をほうっておきますると、社会の活力、そういうものに関係し、また、就業状態を悪化させるというふうに考えますので、まあ、てこ入れを必要とする時期であるという判断でございます。
 そういう、てこ入れの手段として減税をこの際したらどうかというお話でございます。減税すれば金がかかる、その金、同じ金を使いまして減税をするのが果たして景気政策であるかということを考えますと、それは文句なしに私は公共事業の方が有効適切である、そういうふうに考えるのであります。景気刺激効果、これはもう多数の意見がそういうふうに一致しております。のみならず、いま私どもが問題といたしておりますのは、一人一人の納税者の家計が楽になるということ、そればかりじゃないんです。それじゃなくて、むしろ大きな重点を置いて考えなきゃならぬことは、職を失い、また職を失おうとしておる人に対しまして職場を与える、こういう問題がある。そういうことから考えますと、公共事業は的確な効果を持っておる、こういうふうに考えるわけでありまして、詳細につきましては大蔵大臣から答弁をいたします。
 それから、来年度の予算は、これは福祉切り捨て予算じゃないかというような御所感でございますが、これはとんでもない誤解でございます。今度の予算は、これは国債費、地方交付税交付金、こういうような関係で、総体で一七・四%の増加になっておるんです。しかし、地方交付税交付金、それから国債費の伸びも大きい。その二つを除いて、特殊な二つを除いて考えますと、一三・六%の伸びなんです。だから一般の予算は一三%の伸びであるとお考えなすっていいんです。その中で、とにかくこの福祉予算は一七・七%の伸びを示しておる。こういうことでございますので、国債費、地方財政関係費を除いた伸びは一三・六%なんです。一三・六%。そういう伸びの小さい、低い中で、福祉予算は一七・七%の伸びである。こういうことの一事を見ましても、いかに福祉対策に重点を指向したかということが御理解いただけるんじゃあるまいか、そういうふうに思います。
 それから、阿具根さんからエネルギー政策につきまして御注意がありましたが、これは私は、このエネルギー政策は非常にいま大事になってきておると思うのです。北海道なんかはことし電力制限をやらなきゃならぬかなと、こういうところまで来ております。二、三年たちますると、関西でも、あるいは名古屋地区でもそういう問題が起こってきそうである。私どもは、エネルギー政策、これは見直しをしなきゃならぬというふうに考えておるのです。特に阿具根さんが指摘されました原子力発電、この安全性、これはもう本当に気をつけなきゃなりませんけれども、また現に政府は安全委員会を新設するというような考えではありまするけれども、しかし、いままで考えておりまする四千九百万キロワット、この目標、これはとてもそこまでいきそうもないんです。そういうようなことを考えまするときに、その補充を一体どうするか、そういう問題もあるわけでありまして、これはぜひとも、まあ水力、石炭という御指摘もありまするけれども、国内のエネルギー開発、これに重点をもっともっと向けていかなけりゃなりませんと同時に、他の新しい資源開発につきましても、エネルギー開発につきましても考えていかなけりゃならぬ時期に来ておる。いずれにいたしましても、資源エネルギー政策は見直しをいたします。
 それから、食糧につきまして、海外依存度が強過ぎるという御指摘でございまするけれども、私は施政方針演説でも申し上げましたが、私用身もそのとおりに考えております。これから陸上の食糧ばかりじゃありません。海洋食糧につきましても問題が起こってきた。そういう事態を踏まえまして、わが国は食糧自給ということにつきまして、さらにさらに重点を置いた施策を進めなきゃならぬし、進めたいと、かように考えております。
 それから、国債の問題でございますが、私は、確かに御指摘のように、昭和四十年国債の発行に踏み切ったわけでございます。しかし、あのときは私は建設公債が原則だと、で、ずっとそういう原則でやってきたんです。それから同時に、建設公債といえども市中で消化されなきゃならぬ、これも非常に大事な原則としてやってきたわけでございますが、何せ世界じゅうがいま混乱をしておるあの石油ショックであります。わが国はあの石油ショックの打撃を最も強く受けざるを得ない立場の先進諸国の中の一国でございましたが、しかし、幸いにして立ち直りが大体できつつある、こういうような状況でございます。ところが、そのしわ寄せというものが財政に行っちゃった、後遺症がこれから財政の面で大きく残っていくわけなんであります。その後遺症に対してどういうふうに対処するか、これはもう非常に深刻な問題になってきておるわけであります。特例公債は、これは何としても五十五年、つまり五十年代前期中にはこれを解消したいというふうに考えておりまするけれども、ともかくそれまでの間、多量の公債が発行され、その発行された公債が消化されなければならぬ。もうとにかく一般会計における公債依存度が二九・七彩に及ぶ、世界でもそういう国はまれでございます。そういう中での物価と国際収支を守りながら財政運営をするということは容易ならざることでございまするけれども、とにかくインフレにしては日本社会が覆滅をするわけでありますので、そういうことは断じてしないというかたい決意のもとに公債政策を運用してまいりたい、かように考えておるわけであります。
 なおまた、外交問題に触れられまして、わが国はどうも追随外交だ、特に対米追随外交だというようなお話でございますが、私どものいま世界における立場というものは、そんな追随というような、そういう姿勢をとる必要はありません。もっともっと、おっしゃるとおり積極的な自主的な外交が展開できる立場にあるわけであります。いま世界じゅうで三極という言葉があるわけであります。これは日本、アメリカ、ヨーロッパだと、こういうふうなことまで言われ、あるいは三国ということまで言われるのです。これは日、米、独であります。これが世界のいまの政治経済に対しまして非常に大きな責任を持っておる時代だということが強く世界において認識をされておるわけであります。さらばこそ、わが国に対しまして、世界首脳会談というものがありますれば、これはまあその参加の要請があるということにもなるわけでございまするけれども、とにかくわが国はそういう中において、経済において大きな責任を持つ立場にもありますると同時に、世界の平和につきましても、これは私は本当にわが国は独自の大きな立場を持っておると思うのです。つまり、核の洗礼を初めて受けた、非核武装ということを宣言をいたしておる。しかしわが国は、皆さん、まあこれだけの経済力を持っておるので、持たんとすればこれは強大な核兵力さえ持てるんです。あるいは強大な地上兵力、通常兵力も持てるわけであります。その持たんとすれば持ち得る立場にあるところのわが日本が、核を持たず、攻撃的な軍備はしないと、こういう立場をとっておる。これはこれからの世界の平和、政治、この問題を進める上において非常に大きな働きをなすと思うのでありまして、この立場を私は大きく進めてまいりたいと、かように考えております。
 日中平和友好条約につきましては、私は衆議院でも申し上げましたが、まあ日中間とすると、これはいま両国の関係は非常に順調に進んでおると、こういう理解でございます。そしてわが国の日中問題に立ち臨む立場、これは日中共同声明を厳粛に遵守するということに尽きると。それから当面する平和友好条約につきましては、これは両国の満足し縛る状態を早くつくり上げこれを締結をする、こういう姿勢、これは一貫してこれからもとり続けてまいりたいと、こういうふうに考えておるのでありまして、二元外交というか、いろいろ御批判がありましたが、一時私と竹入公明党委員長との間の会談の理解につきまして政府部内でいろいろ行き違いがあったという印象でございましたが、これは言葉の上の違いでございまして、これは、私が申し上げましたただいまの対中問題、日中平和友好条約についての基本的の考え方につきましていささかの違いはございません。
 それから日ソ間につきましていかに対処するかと、こういうお話でございますが、日ソ問題も、私は日中問題と並んで重要な問題だと、こういうふうに認識をいたしております。日ソ間には不幸なミグ25というような問題がありましたけれども、しかし、日ソ間というものは、経済の領域におきましても、あるいは文化の面におきましても、あるいは人的交流の面におきましても、広大な協力の背景というものを持っておるわけでありまして、私は、それらの問題を一つ一つ積み重ねてまいりまして、終局的には北方領土問題の解決をしていかなきゃならぬ、これを踏まえまして日ソ平和条約が締結できるように、最大の、また不撓の努力をしてまいりたいと、かように考えております。
 在韓米軍の削減問題につきましてお話がありましたが、これは繰り返して申し上げておるのです。米韓軍事問題は、これは米韓間の問題である、基本的にはそうであるというふうに考えております。しかし同時に、朝鮮半島の問題、これはわが国も重大な関心を持っておるわけであります。わが国といたしましては、あのいまの状態、これが爆発しないでおるのは何だと言えば、あの均衡を支えるところの国際的な枠組みがあるからだ、この枠組みが崩れないようにぜひひとつやってもらいたいと、かように考えておるわけであります。
 それから、青嵐会といいますか、この問題についてのアメリカ・モンデール副大統領に対する申し入れということについて言及されましたが、私も調べてみました。しかし、これは中尾代議士が個人としてそういう所見をモンデールに書簡をもって申し入れたと、こういうことでございます。その手紙を私読んでみましたが、これはみんな「ウイ」じゃありません、「アイ」、「アイ」と書いてあるのです。中尾個人の見解だということでございますが、そういうふうに御理解を願います。
 なお、この書簡に何か現職の大臣が署名をしておる、その名前が連なっておるというようなお話でございましたが、そういうことがあればそれは大事なことでありますので、これはよく調べてみましたが、さような事実は絶対ありませんから、これも誤解のないようにお願いをしたいのであります。
 それから、日米首脳会談が三月二十一、二十二日に開かれるということをわが国が承諾をした、これは国会軽視じゃないかというようなお話でございますが、私は国会を軽視するようなことは考えておりません。もうとにかく一票差の内閣であり、国会を特に重視しなけりゃならぬ立場の私が国会を軽視するなど、そういうはずがございません。しかし、モンデール副大統領を通じてカーター大統領から三月の二十一日、二日に会談をいたしたいという招請があったわけであります。それに対しまして、国会の都合これを許せば、国会の了解が得られればこれをお受けしたいという返事をいたしておるわけでありまして、都合がついたらぜひひとつ御協力を願いたい。お願いを申し上げます。
 領海十二海里の問題につきましては、これはもう漁民のことを考えると、これを放置するわけにいかない。近く国内法を出しましてこの問題に決着をつけたい、かように考えておりますが、ただ、国際海峡につきましては、いま世界海洋法会議におきましてこれを特例を設けようという動きが進んでおるわけであります。また、わが国といたしましては、マラッカ海峡、これを日本はどういうふうに考えなけりゃならぬかという問題もあるんです。そういうことを考えまするときに、国益を踏まえますると、そう簡単な結論は出ません。やっぱり、私は、海洋法会議の成り行きを見守る、それまでの間は国際海峡につきましては現状を凍結するということが妥当であると、かように考えております。
 なお、いずれの場合におきましても、非核三原則につきましてはこれを堅持してまいる考えでありますので、この点は御安心を願いたい、かように考えております。
 なお、アメリカの二百海里水域の入漁料の問題につきましての御言及がありましたが、いまこれは精力的にその入漁料が低減されるように交渉をいたし、なお、モンデール副大統領に対しましても私から、みずからこれを申し入れております。
 国際婦人年から出てきておる日本の婦人問題についての国内行動計画についてお触れになられましたが、これは何か誤解があるのじゃないかと思うのです。わが国の国内行動計画というものは、国連の宣言の趣旨に沿いまして、また、世界行動計画と一致するというような形で作成されておるわけでありまして、私といたしましては、この国内行動計画を極力実施に移すように努力してまいりたい、かように考えております。
 最後に、私が協調と連帯ということを言っておるが、協調の「協」は強いという「強」じゃないかというようなお話もありましたが、私は、いたずらにポーズをつくる、そんなような立場はとりません。私は言ったことは必ず実行します。有言実行の姿勢をもってこの政界に立ち臨んでまいりたいという決意でございますので、御理解のほどをお願い申し上げます。(拍手)
   〔国務大臣坊秀男君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(坊秀男君) 私に対する阿具根さんの御質問の趣は、五十二年度予算に盛られた施策は景気対策としては不十分ではないか、なぜ一兆の減税をしないのかと、それから福祉の切り捨てじゃないかというようなことでございまして、それにつきましては、総理大臣がきわめて明快に御答弁をなさっていらっしゃいます。私は、お求めでございまするから、できるだけ重複を避けまして御答弁を申し上げます。
 五十二年度予算は、経済運営の最大の課題は、景気の回復と国民生活の安定を一層確実なものとしてインフレを回避しつつ持続的成長を達成していくことでございます。このため、五十二年度予算の編成に当たっては、財政体質の改善を図り、かつ、景気の着実な回復等に資するよう適度な予算規模を確保するとともに、内容においても、特に需要創出効果の大きい公共事業費に重点を置いて所要の伸びを確保してまいったところでございます。
 また、社会保障、文教等の分野においても、国民福祉の充実等に真に緊要な経費に重点的な財源の配分を図り、各般の施策の充実に努めることとしたところでございます。政府といたしましては、この五十二年度予算が五十一年度補正予算と相まって、一部に見られる先行き不安感を払拭し、景気回復をさらに力強く、また確実なものにするものであると考えております。
 さらに、景気回復のためには大幅な減税はとるべきでなく、公共事業支出に重点を置くべきであると判断いたしましたが、その理由は、一つは、公共事業支出は減税に比べて需要創出の効果が大きいことでございます。二つは、公共事業支出の方が減税に比べまして財政政策手段としては伸縮性と弾力性が高いからであります。第三は、わが国の税負担は主要諸外国のそれに比べましてかなり低い水準にあり、今後福祉その他の公共サービスの確保を図るためにも税負担の増加が避けられないと見られる状況のもとで、たとえ景気回復のためとはいえ、この際大幅減税を行うことは将来における問題の解決を一層困難にするということがわかるからでございます。
 さらに、福祉問題につきましては、これは総理大臣から詳しく御答弁がありましたから、私は差し控えさせていただきます。(拍手)
   〔国務大臣田中龍夫君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(田中龍夫君) お答えをいたします。
 第一点のエネルギーの問題でございまするが、御所見のとおり、わが国におきまするエネルギーの問題は最大の難関でございまして、特に石油等に依存度の強いエネルギーの問題につきましては、これが安定供給をいかに確保するかということが大きな問題と相なっております。もちろん、供給地を分散をいたしますることとか、あるいはまた、日本の国内並びに周辺の開発をいたしますこととか、かような問題につきまして鋭意努力をいたしまするが、御指摘のごとくに、純粋な国産エネルギーであります水力発電あるいはまた石炭の開発等につきまして、われわれはさらに一層これに努力をいたさなくては相ならぬことは当然でございます。水力の問題につきましては、御案内のとおりに、昭和六十年度までに一般水力は約六百万キロワットを増加いたしまして、約二千八百万キロワットにいたします。同時にまた、揚水式の分も一千万キロワットを目標にさらに開発を続けまして、全体千四百万キロワットにいたしたい、かように存じておりまするが、さらにまた、石炭につきましては、保安の確保でありますとか、鉱害の防止を前提といたしまして、現在の生産規模でありまする二千万トン程度は今後ともに堅持してまいりたい。また、御指摘の地熱でありますとか、あるいはその他代替のエネルギー源も極力サンシャイン計画等々で開発してかからなくては相なりません。
 さらに、御指摘の原子力の問題でございまするが、まさに安全の問題が最も重要でございまして、この安全性に対しまする国民の信頼と、さらに再処理その他のことにつきましての対策をいたしてまいります。今日は約十三基、七百四十万キロでございまするが、国民全般の御理解と御協力をいただきまして、さらに鋭意増加いたさなくてはなりませんが、昨年の七月に、俗に申しまする有澤答申と申しますか、原子力行政懇談会の意見が出てまいりまして、政府といたしましては、これをまさに実行に移したいということで科学技術庁と本省との間に協議を遂げまして、原子力の安全委員会の設置と、それから原子力安全規制の行政の一貫化、これを貫きまして安全行政の体制を強化いたす所存でございます。
 次は、貿易の問題につきまする御指摘でございまするが、特にEC方面あるいはまた対米関係におきましていろいろと問題の起こっておりますことは御承知のとおりでありますが、特定の地域なり、特定の銘柄なりにつきまする不均衡の問題は、これはあくまでも業界それ自身の民間の折衝によりまして円満裏に解決いたしたいと存じまするが、何と申しましても、貿易の問題は世界的な規模において論じられなきゃならない問題でございまして、特にわが国の景気回復の促進に伴いまする輸入の増加によりまして、拡大均衡の方向におきましてこれを解決いたさなくては相ならぬ、かように存じております。相手国との十分な対話を通じまして相互の理解を深めてまいるべく鋭意努力を続けておる次第でございます。
 以上、お答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(鈴木善幸君) 食糧政策の基本につきましては総理からお話を申し上げたとおりでございますが、私は、その方針に沿いまして、自給力を高める、そのための日本農業の体質の強化あるいは基盤整備等の施策を進め、また、農業の担い手である農林漁業者の確保や後継者の育成、そういう問題に全力を尽くしたいと、このように考えております。
 次に、二百海里時代を迎えて、これにどう対応するかと、こういう御質問でございましたが、この二百海里時代につきましては、何といってもわが国の今日までの実績を確保する、これに全力を尽くしたいと考えるのでございまして、漁業外交を活発に展開をし、二国間の交渉あるいは多国間の交渉等につきましても万全を期したいと考えております。また、日本列島周辺の沿岸の漁場の開発整備を図りまして、できるだけ資源をふやし、また栽培漁業等を育成をいたしまして、国民のたん白食糧の過半を占めております漁獲物の増産、確保を期してまいりたい、このように考えておるところでございます。
 次に、対米の入漁料の問題についての御質問がございましたが、石油ショック以来、日本の漁業経営は非常に経営が困難に相なっております。その上に入漁料を過重なものを取られるということになりますと、経営が成り立たぬことに相なるわけでございまして、この適正な入漁料の設定ということにつきまして、いま日米間でせっかく話し合いを続けておるところでございます。(拍手)
   〔国務大臣鳩山威一郎君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(鳩山威一郎君) 阿具根先生のお尋ねにお答え申し上げます。
 第一点はいわゆる二元外交と言われた点でございます。この点は総理大臣から御答弁がございました。もとより今日の世界の政治におきましては、もう大きな問題につきましては首脳自身がその衝に当たると、こういう時代でございます。そういった時代でありますから、私自身総理大臣の御指示を受けて粉骨砕身いたす覚悟でございますが、もとよりこの総理の御意思に従いまして私は行動をいたしておる所存であります。今後ともその所存でありますが、竹入委員長が訪中されますときに、新聞紙上でいろいろ御承知のような批判を受けたのであります。私どもは、もとよりそのようなことで外務省がブレーキをかけるというような気持ちは一つもなかったのであります。それはただ単に事務の連絡不十分な点がありまして、表現に若干の差があったためにあのような事態を生じましたことを、私といたしまして、この席をかりまして深くおわびを申し上げる次第であります。今後ともそのようなことのないようにいたします。
 次に、日ソ問題、政治生命をかけて取り組めと、こういうお話でございます。謹んで拝聴いたした次第でございます。復交以来すでに二十年を経過いたしまして、漁業問題その他につきましては漸次積み重ねて進展をしておるわけでありますけれども、肝心の領土問題がこの二十年間におきまして解決を得なかったということは、まことに残念でございます。この問題につきましては忍耐強く取り組む覚悟でございます。もとより命がけで取り組む覚悟でございまして、私自身訪ソいたして努力をいたす所存でございます。
 貿易問題につきまして、通産大臣のお答えもありましたが、特にECとの間におきましては大変むずかしい状態になっております。こういうことが起こらないように早月に解決を図るべきであるという御趣旨は、まことにそのとおりでございます。現在のところ、相当部分の問題は個別問題として解決してまいりました。しかし、残された問題もあります。これらにつきまして鋭意努力をして、早目に解決をするように努力をしてまいりたいのでございます。
 十二海里問題、また総理訪米の点につきましては、総理大臣からお答えがございました。そのとおりでございますので、私からは省略させていただきます。(拍手)
#19
○議長(河野謙三君) 答弁の補足があります。福田内閣総理大臣。
   〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(福田赳夫君) まあ、答弁漏れということになりますか、阿具根さんから、国会運営の場で野党の方から修正案が出た場合に、これを受け入れる用意があるかと、こういうようなお尋ねでございます。
 基本的な考え方につきましては先ほど申し上げたとおりでございますが、私は、政府がこういう提案をしたから、提案というメンツにかけまして、メンツ上の立場からそれにこだわると、こういうような態度はとりません、これは。与野党と話し合って、国会審議の場におきまして、これが日本のために、日本の国民のためにいいという結論が出ますれば、これはもうその方向に野党も賛成してもらわなけりゃならぬし、与党も従わなけりゃならぬと、そういうふうに考えます。しかし、ただいまのところで、いま大きな問題として、野党各党から一兆円減税構想が打ち出されておるんです。これは私は、るる申し上げておりまするとおり、高度成長時代のように、二兆円、一兆円、まあ大幅な減税をする、それができると、こういうような時代でなくなってきた。そのなくなってきたという時代認識をこれは踏まえなけりゃならぬと、こういうふうに思うわけであります。まして、いま言われるところのこの一兆円減税というものは、これは一兆円減税をして、それによって消費を刺激して、そうして経済回復に効果あらしめたいと、こういうような御趣旨のようでございまするけれども、いまわが国が当面している非常に大きな問題は、これは先ほども申し上げましたけれども、石油ショックの後遺症、まあ全治三カ年で、大方経済状態は先進諸国並み、あるいはそれ以上の状態になってきましたけれども、しかし、そのしわ寄せ、後遺症というものは財政に行っているんです。この財政、これは数年間相当大幅な赤字公債を出さなきゃならぬ。その赤字は一体どうやって消化されるのか。消化されなければこれは大変なことになるのです。日本社会が崩壊というようなことまでいくかもしらぬような状態になるのです。財政インフレ、それをさせないためには、どうしてもこの発行した公債が消化されなきゃならぬ。消化ということは何だというと、この公債を国民から買っていただけるということなんです。あるいは直接ということもありましょう、あるいは銀行に預金をする、そういうようなことを通じて買っていただくということでございましょうが、いずれにしても、国民がその生計費の中から何がしかを公債に投資をするということでない以上、この公債は消化されないんです。そういうときに、まあいま不況だ、不況だから、さあ景気を刺激しなきゃならぬ、刺激するためには皆さんにお金を使ってもらうんだ、こういう態度をとることは、これはもう非常に矛盾した考え方になってくるんじゃないかと、こういうふうに思うのです。やっぱりこの景気ということを考えれば、これはまあ減税するにしても金が要るんです。その同じ金を使ってどういうふうに景気刺激効果があるか、また雇用増大効果があるかといえば、これは公共事業ですよ。いまわが日本じゃ、水道にいたしましても、あるいは下水道にいたしましても、住宅にいたしましても、あるいは道路のすみずみまでの状態を見ましても、非常におくれている。このおくれておる状態を見るときに、いまこそいい時期なんです。社会資本のおくれを解消する。私は、この際こそ公共事業を行って、そうして一方においては社会資本のおくれを取り戻し、他方においては景気政策に貢献するという態度をとるべきである、こういうふうに思うんです。この減税問題につきましては、ただいまのところ、私はかたくこれを修正すべからざるものであるという見解であることを申し添えます。(拍手)
    ―――――――――――――
#21
○議長(河野謙三君) 徳永正利君。
   〔徳永正利君登壇、拍手〕
#22
○徳永正利君 私は、自由民主党を代表して、福田総理の施政方針演説に対して、若干の意見を交えつつ質問を行いたいと存じます。
 きょうは、国民を代表する立場であることを踏まえながら、福田新総理が、流動変転する世界政局に際して、いわゆる日本丸をどのようにかじを取り、国民にいかなる目標を示していかれようとするのか、篤とそのお考えを伺いたいと思います。
 第一に、福田内閣の政治姿勢、第二に、日本国の外交、安全保障、第三に、経済問題、第四に、行財政改革、第五に、その他一般の問題と、この五つに分けてお伺いいたしたいと思いますが、まず政治姿勢についてであります。
 福田総理と言えば、いまから五年前に、日本国が近い将来この福田を必要とするときは必ずやってくる、こういう名言を吐かれたことは余りにも有名であります。
   〔議長退席、副議長着席〕
 そして、いままさにそのときが来たのであります。しかしながら、現在、国民はなぜ、いま福田総理を必要としたのか、その意味を必ずしも明確にしていないのではないでしょうか。
 総理は施政方針演説において、資源有限時代の認識に立って、国の将来を憂い、人類始まって以来の変化のときの到来を警告しておられます。石油危機はその象徴的な出来事であると理解を求め、高度成長の期待に別れを告げ、成長の質こそ大切な旨を説かれ、そして無限の欲望と有限の資源の相反する根本的課題の解決に対して、人間の生き方、現代文明のあり方を問い、物とエゴとに訣別すべきことを訴えられ、運命共同体の中での協調と連帯が国際社会においても共通する旨の政治哲学を改めて強調されました。
 私はお聞きいたしまして、さすが福田総理ならではのお言葉と感銘を深くいたした次第であります。しかしながら、このお言葉もロッキード問題という妖怪がなお徘回しつつある今日の状況においては、その力強さが相殺され、天はなぜいま福田総理を必要としたのか、総理はまた、このように受けとめているという国民への答えには説得を欠くと思います。限られた施政方針演説でありますから、冗長を省かれたとは思いますが、国民の共感を得るにはいま少し具体的説明をお願いいたしたいと思います。
 総理は、施政方針演説の中で、「一人一人の人間が、その生まれながらの才能を伸ばしに伸ばす、その伸ばした才能を互いに分かち合い、補い合う、その仕組みとしての社会と国家、その社会と国家がよくなるその中で一人一人の人間は完成されていくのだ」ということを強調されております。
 資源有限時代における個人の生き方について、総理はその方向を示されたわけでありますが、しからば、その個人及び国民がすべてを託している日本丸の針路はいかなる方向に向かっているのか、すべての国民が知りたいところだと思います。
 総理は、さらに施政方針演説の中で、「私は資源有限時代の認識に立ち、協調と連帯の基本理念に立って、世界の中での日本丸の運営に当たり、その枠組みの中で、当面する問題の処理に当たってまいりたい」とも述べられております。
 すなわち、資源有限時代という大きな枠組みを設定されてのお話として、これは当然の帰結と思います。しかしながら、国民から見ますと、そうした枠組みの中で生きていく場合、日本丸の針路、つまり、明日の日本国の姿はどのようなものになるのか、いかなる日本国が築かれるのか、その辺が最も知りたいところと思いますので、お伺いいたしたいと思います。
 さらに、政治姿勢に関連して伺います。
 総理は、今年は経済の年だと言われます。確かに、日本の内外には経済問題が山積していることは事実です。特に昨年は経済政策が全くお留守になっていたことは私も認めます。いわゆる不況からの脱出が思うようにならず、日本の各界の人人はこの不況の重圧との闘いに苦しみ抜いております。しかし、総理の輝かしい政治経歴を見る限り、経済政策について総理は神様であります。たとえば、最近では四十七、八年の石油ショック、また、遠い例では四十年の不況のときの総理の水際立った采配ぶり、その判断の的確さ及びその実績は、ひとしく国民の記憶に焼きついております。なるほど、当面の時局に占める経済問題の比重の大きさを否定するものではありません。しかし、国民は福田総理に何を求め、いかなる政治を期待し渇望しているのでしょうか。
 昨年一年間は、ロッキード事件をめぐり、国民は激しく自民党のあり方を批判いたしました。総選挙の結果は、国民の自民党に対するおしかりとして、私どもは謙虚に反省し、責任を回避してはなりません。福田総理は、この点をいち早く指摘され、自民党の抜本的出直し改革の必要を提唱されてきております。戦後三十年間にわたる政治を担当いたしました自民党の出直しと改革は、日本のためにもぜひ必要であることは論をまたないと思います。と同時に、自民党の出直しだけで事が完了するというものではないと思います。日本全体の改革は、総理の言われる資源有限時代に何よりも求められていることではないでしょうか。さきに申し述べましたように、今日、福田総理に求められているものは、経済総理としてのあなたではなく、紛れもなく一国の宰相としての政治的識見が求められていると思うのであります。
 私たちは、明治維新以来、西欧先進国に追いつけ追い越せの目標のもとに一心に坂を駆け上ってまいりました。そして百年、いまや世界の三極と言われる国家的地位を築き上げたのであります。これからいかなる方向に進むのか。現在、混迷の時代と言われるのは、国家目標について必ずしも国民的合意が形成されていないからだと思います。民主主義下、そして価値観の多様化していく社会において、なかなか国民的合意を得ていくということはむずかしいかと思いますが、ここにこそ近代国家の政治の課題があると思います。いわんや、自由世界を支えていこうという日本の指導者として心砕くべき点は、これ以外にないと私は考えるのでありますが、総理のお考えを承りたいと思います。
 第二の問題は、外交、安全保障の点であります。
 初めに、私が常々感じている二つのことを問題として提起したいと思います。
 その一つは、なぜ日本の外交は常に受け身の対応姿勢であり、国際情勢の変化に対する跡追いに終始しているかという点であります。(「追従だ」と呼ぶ者あり)必ずしも追従という意味ではございません。その原因の根本的なものとして、軍事力を持たない日本の外交の宿命がここにあらわれているとの受け取り方であります。この受け取り方は、外交専門家の中にも存在すると聞くのであります。しかしながら、国際政治の場において、いかに軍事力と外交との結びつきが深くとも、わが国は憲法において戦力不保持を世界に宣言して、外交の新たな道に挑戦したはずであります。もはや後戻りはできません。いまや国際社会において、これほどの経済大国の地位をかち得たのでありますから、持つべきは経済大国としての自信であり、自負であり、指導性であり、責任感であると思います。そして、自己の軍事的負担の軽さを卑下したり、ただ乗り論に後ろめたさを感ずるのではなく、積極的に、経済協力はもちろんのこと、今後、憲法の許す範囲で自衛隊の国連活動への参加、協力の方途を探るなど、国際社会への貢献の道を考えていくことこそが、日本外交の指導性を確立していくかぎではないかと思いますが、総理のお考えをお聞かせいただきたいと存じます。
 もう一点は、安全保障に関してであります。わが国の悲劇は安全保障に関して国民的合意が形成されていないことだと言われ出して、すでに相当の年月がたっています。しかしながら、今回の総選挙の野党各党の選挙公約を見ましても、従来のような硬直的な姿勢は見られません。それというのも、安保条約が結ばれた二十年代、安保反対が叫ばれた昭和三十年代と比べてみて、現在わが国をめぐる極東の情勢は全く変わっております。米国の極東政策についてもしかりであります。それ以上に、国内においては、戦後三十年、世代も変わり、いまでは冷静に国の安全保障問題を討論し得る社会的基盤が芽生えつつあるのではないでしょうか。
 総理、いまこそ総理みずから野党に手を差し伸べられ、日本の安全保障構想についての国民的合意形成に向かってその指導性を発揮なさるべきときではありませんか。その協調と連帯の姿勢を、まず国の安全という政治の基本問題において野党に示すべきではありませんでしょうか。そのためにも、民社党などが提唱しております安全保障に関する常任委員会を今国会において設置すべきものだと私は思います。また、総理は、今年初めての国防会議の席上、従来のような形式的な会議に終わらせないで、国の安全保障について十分な論議の場としたいとも御発言になったと聞いております。まことに同感であります。
 米国は、カーター新政権の発足で、在韓米軍の撤兵問題などが政治上の大きな問題となっているとき、在韓米軍の撤兵問題は韓国と米国との両国間の問題で日本は口をはさむ余地はないと、公式的な発言だけで避けて通れるものでしょうか。単に在韓米軍の問題だけにとどまらず、最近の極東情勢全般とわが国をめぐる安全保障について、国防会議を開いて、政府の見解を取りまとめる場とするお考えはないのでしょうか。
 また、国防会議は防衛予算の事後了承にとどまっている感がないでもありません。自衛隊におけるシビリアンコントロールというのは、予算の実質上の決定権を大蔵省に任せることではないと思います。防衛予算の決定は、予算編成前に国防会議を開いて、その大枠と基本的方針を決め、後の事務処理を防衛庁、大蔵省に任せるのが筋道だと私は思います。総理のお考えと御意見を伺いたいのであります。
 では次に、現下の外交課題について順次伺ってまいります。
 まずその第一は、新しい海洋法秩序に対する対応の問題であります。
 領海十二海里とともに、漁業専管水域も二百海里という名の海の囲い込みが全世界に波及するであろうことはすでに時間の問題であり、漁獲の減少はもはや決定的であります。ここで私が申し上げたいことは、さきにも申しましたように、世界第一の水産業、さらには世界第一の造船業、世界第二位の海運業を築き上げた海洋民族日本、経済の貿易立国で生きていかなければならぬ日本としては、その国益は何かという観点から、新しい海洋秩序形成に対し、先見性のある外交を展開していただきたいということであります。
 その二は、昨年来問題となっている日本貿易の米国並びにECにおける摩擦の問題であります。私考えますに、この問題は決して簡単な問題ではありません。考えるべき広範な、しかも根深い問題を内包していると思います。
 二、三の点気づいたことを申し上げますと、その一つは、日本においては官民相ともに、国際感覚というか、国際的視野という点で、まだまだ不足していることであろうと思うのであります。世界の中の日本でないと生きていけないということは、頭ではわかっていても、いまだ身についていない。近年これだけ日本人が海外に出かけていくようになっても、まだ一人一人が外国の社会に生きていく自信、現地に溶け込んでいく生活態度がありません。そのことが、ひいては相互理解、相互協調の不足となります。いまでも英国では、日本の商社が政府から補助金をもらって販売活動をしているかのごとき誤った理解をしているとすら聞くのであります。これでは摩擦が生ずるのは当然であります。国際間の摩擦発生は、お互い同士の理解不足が大きな原因となる場合が多いと思います。ECなどの対日不信感の根源にこうした理解の欠如が介在していないかどうか、十分に検討を加える必要があろうかと思います。欧州各国が日本はけしからぬと反発したとき、政府は外交ルートによって理解を求めたわけでありますが、それ以外にも適切な手段方法がなかったのか、この際十分に反省してみる必要があると思います。
 そのような国際感覚でありますから、日本の政策決定、政治の場において外交の占める比重が小さいのも、またやむを得ません。予算編成で歳出規模削減となれば真っ先に経済協力予算が削られ、開発途上国に対する政府の開発援助費が先進国中最低という結果が生まれるわけであります。田中通産大臣がいかにがんばっても、結果はこういうことに相なるのであります。
 日本の立場から申せば、この資源皆無で、莫大な原材料、食糧を輸入し、それを加工して、その付加価値で生きていかねばならぬ工業大国である以上、二国間の貿易均衡を維持することはそれこそ至難で、多国間均衡を図り得るかどうかの問題でしょうけれども、カーター新政権ではありませんが、世界経済の牽引車の役割りを米国、西独とともに、世界の三極の一つとして背負わされているのが紛れもない日本経済の実情であります。しかも、それが実力であると思うのであります。
 先進国首脳会議の第三回目の会合が近く開催されると伝えられる今日、エネルギー問題をも含めて、篤と世界経済との調整を、総理みずから外相と一体となって図っていただきたいと思います。
 また、日中及び日ソ両国間の懸案事項は、総理、外務大臣の演説にあるように、日中平和友好条約の締結と北方領土の四島一括返還に尽きると思います。施政方針演説に示されたように、情熱を傾けて、舌足らずで誤解を招かないように最善を尽くされることを心から念じる次第であります。先ほどの阿具根君に対する総理の御答弁の中で、最善しかも不撓の決意でこれに臨むということを申されたのでございますが、この点を十分お考えの上、進めていただきたいと存じます。
 次に、第三番目の経済、財政問題であります。
 現在、景気の状況は、経済企画庁などは、持ち直しの気配などと言っておりますが、その判断とはうらはらに、ただならぬ空気と受け取られているのが民間各界の見方のようであります。いま求められているものは、政治の安定であり、わかりやすい見取り図であります。
 総理は、この前の副総理時代、石油ショックに当たって、これからの日本経済は、資源有限時代を迎え、なだらかな成長路線であり、成長の幅は先進国並みとし、その成長の成果を国民の生活関連施設重点に振り向けるべきであり、物価と国際収支の動向に絶えず留意しつつ、国民生活全体としては、乏しきを憂えず、等しからざるを憂えるとの方向を目指したい、物価は少なくとも預貯金の金利以下に持っていきたい旨述べられました。今回の施政方針演説で、総理は、五十二年度の予算において成長率を六・七%と、先進工業国中最も高い水準に置き、しかも消費者物価を七%台になるよう最善を尽くすと言っておられます。国際関係を配慮したごとき印象を受けました。この基本的方向は私も了解しておりますが、総理の口から、もう少し肉付けをして、日本経済の現状をどういうふうに診断し、どう処方ぜんを書いていかれるかを、もう少し明らかにしていただきたいと思います。
 次には、国債発行残高三十兆円を超えようとする国の財政についてであります。
 総理が昭和四十年、大蔵大臣になられたとき、財政が経済の動きに受け身であってはならないとして、それまでの財政均衡主義を放てきして、初めて公債政策を導入されました。総理の言われるように、財政はあくまでも経済の侍女であって、われわれの目標は経済の安定成長であり、財政均衡がすべてではないでしょう。しかし、今日ほど財政収支が悪くなり、赤字が累積してまいりますと、国鉄財政でなくとも国民は心配になります。この際、このような事態でも福田政権による日本の財政的土台骨はびくともしない、インフレをもたらすことはありませんと、自信のほどを国民の前にこの席から示していただきたいと思うのであります。
 次に、ここで現下の減税問題にぜひとも触れておきたいと思います。
 新年度予算編成に際して、野党各党は、景気対策の観点から、いわゆる一兆円減税を強く主張しております。私も、減税の国民生活を明るくするというその政治的効果、あるいは景気政策としての消費刺激効果はわからぬではありません。しかし、問題は、今日のこの財政状況において国債増発をあえてしても減税という消費奨励政策をとるべきかどうかの点であり、私は、その政策判断についてノーと答えざるを得ないのであります。政府はこの辺の事情を賢察され、四千三百二十億円の所得税、住民税の物価調整減税という断を下されましたことは、なかなかの賢明の選択であったと思うのであります。聞くところによれば、わが国の所得税の負担水準は海外先進国に比べてすでに低位であり、課税最低限度額も他国を上回る水準とのことでありまして、この点、政府は、一層国民各位に対し、わかりやすく理解と協力を求めるべきだと思うのであります。
 第四番目に、行財政改革について伺います。
 日本があの石油ショックからよく立ち直れたのは、民間企業があらゆる知恵をしぼって冗費の節減、経費の合理化に努めたからだというのが今日の一般的評価であります。しかるに、政府はどうでしょう。先ほど申し上げましたように、今日の財政赤字が生まれたのは石油ショックによる税収減であります。民間企業にこれだけの合理化努力を強いておいて、政府は安閑としていられるのでしょうか。私はこの問題を、二年前、三木総理にもお尋ねいたしましたが、結局、何ほどの実効を上げることも果たされませんでした。日本ほど声高に財政硬直化が叫ばれながら、お役所の機構が問題とならない奇怪な国はありません。私はこの際、この風潮に対して警鐘を鳴らしたい。
 ことに、つい先日他界されました水田三喜男先輩が、昭和四十五年、当時自民党の政調会長として質問に立たれ、行政改革の推進について時の佐藤総理に質問しておられる言葉を、追悼の意を含めて紹介させていただきます。すなわち、「国民の福祉を増大させ、正しい民主政治を定着させるためのいま一つの要件は、言うまでもなく、行政の運営が適正であり、効率的であることであります。公務員や公共企業体の職員が、国民への奉仕者としてその責務を果たすためには、最小限の定員で最大限の能率を発揮し、国民の利益に役立たなければなりません。現状は、はたしてその要請にこたえているでありましょうか。」と、二、三の具体的な例を挙げて行政の合理化、能率化を迫っておられます。そのとき挙げられた問題も、今日何ら解決を見ておりません。
 米国では、カーター政権の発足に当たって、カーター大統領は、官庁の公用車による高級官僚の送迎を廃止したと聞いております。これをまねるわけではありませんけれども、新しい政権が発足した際、諸政一新を国民に示すのは、洋の東西を問わず、いずれの国でも常道であろうと思います。中小企業は不況風で倒産、失業の苦しみと闘っている国民がいる今日、役人だけが過大な生活の庇護の中に浸っていて、国民は政府の行政を信用するでしょうか。先憂後楽は、政治家はもちろんのこと、行政に参加する中央及び地方公務員の心がけでなければならないと思います。
 福田内閣の大官房長官たる園田さんは、幸い長年自由民主党の行財政改革特別委員会の委員長を主宰されてこられました。福田総理、ぜひこの面に目をつけられ、お声がかりでひとつ決断、実行されるようお願い申し上げる次第であります。
 その点に関連して、ぜひ提案しておきたいのですが、ひととき検討されました国民総背番号制度を行政合理化のために導入してはいかがでしょう。その際の懸念として指摘されているプライバシーの保護については、その面はその面として十分別途法制的な予防措置をあわせ考えれば足ることではないかと思うのであります。
 最後に、日ごろ政府に質問したいと思っております諸点をまとめましてお伺いいたします。
 その一つは、元号についてであります。一昨年、予算委員会で三木前総理に対しこの点のお考えを伺いましたところ、そのとき、元号というものは国民の中に定着してきているので、置くという前提に立って検討したい、ただ法律で制度的なものにするか、慣習として考えるか、研究させていただきたいとの答弁をいただきました。その後、政府は公式制度連絡調査会議等の検討の結果、内閣告示方式による元号の存続という基本線を得ておられるようでありまするけれども、この問題は、やはり元号法とでもいうべき法律をつくって、天皇御即位の場合の新しい元号は国会で定めるか、内閣が政令または告示で定めるかという、その決め方の手続をまず整備することが必要だと思うのであります。今日、元号というものを国民的な慣習として追認する以上、やはり国会において承認さるべきだと思うのであります。
 その二は、海外在留邦人の選挙権行使についてであります。
 昨年四月、衆議院議員の定数不均衡に関して最高裁判決が出るなどして、民主主義社会における選挙権の行使の重要性が強調されていますが、それ以前の問題として、この海外在留邦人の問題が見逃され、基本的人権に基づいた選挙権の行使ができぬことはまことに遺憾なことだと思います。米国、英国、西ドイツ、フランスを初め、先進各国においては、すでに海外選挙区制度とか、あるいは在外不在者投票制度等設けて在外選挙を実施しております。日本においては、現在、政府の命令あるいは社命等を含め、海外に在留する邦人数はすでに四十万人に達し、さらに海外渡航邦人数を加えて考えれば五十万人を超すと考えられるにかかわらず、この人たちに対し選挙権行使の道が閉ざされております。さきに申しましたように、ますます世界の中の日本として生きていかねばならぬ今日、かかる制度の確立を検討し、可能な範囲からでも早急に実施の方途を講ぜられることをお願いいたしたいのであります。
 その三は、栄典についてであります。
 戦後、春秋年二回の生存者叙勲はいまや国民の中に定着し、なじみ深いものになりつつあります。しかし、遺憾ながら、叙勲者が余りにも公務員退職者に偏りがちであります。昭和三十九年以来生存者叙勲を受けた者は延べ七万人を数えるに至っておりますが、その大半は元公務員等であり、民間人、特に婦人は非常に少ないのであります。たとえば、長い間何ら求むることなく、社会奉仕を天命と心得て黙々と献身的に生涯をかけて努力しておられる人や、生命の危険をも顧みず世のため人のために働いている人たちこそ、国民の心に触れるものがあります。まさに最晦の栄典に値するものと思います。国民大衆の心に灯をともし、福祉社会に活力を与える意味からも、こうした多くの人々に第一級の栄誉を贈られるよう、叙勲基準、実施要項等の御検討をお願いいたしたいと存じます。
 次に、その四は、政府刊行物たるいわゆる白書類に関してであります。政府白書は、いまでは三十数種を超す盛況のようであります。これらを手にして感じますことは、余りにも横文字、すなわち外国語が多用され過ぎていることであります。日本語で十分意味の通ずるにかかわらず、わざわざ外国語が使われていることは、ささいなことかもしれませんけれども、日本語を大切にする、日本語を愛する意味からも、この点は、総理、何かの機会にひとつ一度ぜひ厳重注意を喚起しておいていただきたいと思います。
 最後に、私は総理にお尋ねいたします。
 顧みますと、悪夢のようなあの敗戦の混乱の中から、われわれは生き抜くために懸命の努力をしてきたことは事実であります。いろいろな困難、危機を克服して、今日、敗戦当時想像もしなかった経済的発展を遂げてまいりました。しかし、静かにとどまって足元を見詰めたとき、何か置き忘れた、何かを失ったことのむなしさを感ずるのであります。その何かとは、長い日本の歴史と伝統に培われた美しい日本の心であります。福祉国家を誇った古代ローマにしても、古代ギリシャの没落過程も、魂の分裂がその根本だと言われております。総理は、エゴは許さないと言われました。まさにそのとおりであります。しかし、今日道徳の荒廃は認めざるを得ません。日本人の魂は病みつつあると思います。「先亡の霊安からずして家門の繁栄なく、護国の英霊安からずして国家の発展なし」と言った先哲の言葉を、いまこそ真剣にかみしめてみたいと思います。
 自民党は過去五回にわたり靖国神社法案を国会に提出しましたが、口の目を見ずに終わりました。洋の東西を問わず、政治体制のいかんにかかわらず、国家の危急存亡に際して国のために倒れた人々を永遠に顕彰していることは、いまさら私が申し上げるまでもないことであります。さればこそ、一国の元首が外国を訪問したとき、まず最初に、その国を守り、その国のために倒れた人々に敬意を表するのは国際的な儀礼となっています。礼とは心であり、儀とは形であります。しかるに、外国元首を日本にお迎えしたとき、そうした行事は行われません。不思議に思わないのは日本人だけで、外国の人々は、何と不思議な国であると思うに違いありません。憲法は守らなければなりません。憲法の許す範囲において靖国神社を国でお守りする。国のために亡くなった英霊を公に祭るというようなことは、当然政府の手によって真剣に検討され、実施されるべき性質のものだと思いますが、いかがでしょう。それと同時に、国のために亡くなった遺族、あるいは国のために傷ついた人々には、国は誠意を尽くしてこたえなければならないと思います。
 一例を挙げれば、さきの戦争での戦死者の遺族に国が与えた補償は、終戦以来今日まで三十年間に、わずかに三百十万円にも満たない現状であります。しかも、この金額を受けた人々は全戦死者の九〇%以上の遺族であります。これらの人々が終戦後から今日までどういう精神的、経済的生活をしてきたかは言いますまい。人間の幸、不幸は年金の多少によってはかれるものでないことは承知しておりますが、それにしても余りにも少額だと思います。
 先亡の霊も、護国の英霊も安からず、犠牲者もまた帰らざる人々を思い、ひそかに天を仰いで慟哭する現状を政治は見過ごしてはならないと思います。総理の御所見を承って、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(福田赳夫君) いまお話しのように、いままでの戦後の日本は復興と発展を順調になし得てきた。しかし、これからの世界情勢を考えますと、なかなか容易でなくなってきておると思うのです。確かに私は、世界政治の局面におきましては、デタントヘの努力、これは最高度にいま進められていると思うのです。しかし、資源有限時代ということを考えますと、資源をめぐってのいろんな出来事、これが石油ショックに象徴されるように、また今日の海洋の動きに見られるように、いろんな事態が起きてくると思う。そういうことを考えまするときに、私は、世界の前途というものは、これはいままでのような安定した状態じゃない、かなりほうっておきますると波乱重畳の事態になるだろうと、こういうふうに思います。この世界情勢というものに対しまして、これは世界の国々が相協力して、そうあらしめてはならぬという努力をしなけりゃならぬ。
 第二次世界大戦争は、申し上げるまでもございませんけれども、経済混乱から起こってきておる。いまあの当時の状態と、ほうっておくと似たような状態にだんだんと入っていくんじゃないか。もちろん、私は核兵器が開発されているという今日において、武力大戦争、第三次大戦争が起こるということは考えませんが、しかし、それだけに、経済戦争的国際情勢というものが展望されてならないんです。そういうことにさしてはならぬというために、わが日本国が努力をしなけりゃならぬ、そういう努力の成果の中で日本国の、日本丸の安全航海ということを期待しなけりゃならぬだろうと、私は、そういう意味から主要国首脳会談というものを強く提唱しておるわけでありますが、どうしてもその会談等におきましては、そういう認識のもとに重大な成果あらしめたいと、こういうふうに考えておるわけであります。
 そういう国際情勢の中で、わが国自体とするとどういう行き方をするかということになりますると、やっぱり私は、まあ高い成長政策はとれないと、こういうふうに思います。同時に、国民一人一人の対応、これはもう国におきましても、あるいは企業におきましても、家庭におきましても、そういう世界情勢の中への対応の転換というものがなければならぬだろうと、こういうふうに思いますが、それはひとり経済の面ばかりじゃない、物の面ばかりじゃありません。これは、われわれの心の持ち方、そういう面におきましても大きな転換を必要とする。私が、協調と連帯ということが行動原理でなければならない世の中に、好むと好まざるとにかかわらず、なってきたと強調しておるのは、そのためでございます。
 翻って、わが国の状態を見ますと、私は、どうも高度成長時代、あの経済の発展とうらはらをなすかのように、物、物、物、金、金、金と、エゴと、この風潮が余りにも定着し過ぎておるのではあるまいか、そういうふうに思います。そういう社会風潮への反省、社会風潮の転換というものもまた非常に大事になってくるのではあるまいかと、こういうふうに思うのでございます。私は施政方針でも申し上げたんです。人間は一人で生きるわけにいかぬ、そのみがいた力を互いに分かち合う、補い合う、そうして責任を分かち合う、そういう形でこの国、社会というものが伸びていくんだということ、そしてその中で人間形成が行われていくんだということを申し上げたんですが、私は、そう考えまするときに、一体人生何が一番とうといことであるかと言いますると、やはり自分の立場をよくしたと、自分が金持ちになった、自分が栄誉ある地位を得たと、そんなことよりは、そのみがいた力をもって社会公共のためにいかに大きく貢献したかという、その貢献度というものがその人の人生の価値を決めるんじゃないか、そう思えてならないんです。その考え方は、これは私は、世界社会の中でも、わが日本国として同じじゃないか。日本国は一体世界のためにどういうふうな貢献をしたか、世界の平和、世界の繁栄、そのためにわが日本国がいかばかりの貢献をしたかということが、私は、日本国の世界における地位を決めるんじゃないか、価値を決めるんじゃないか、そういうふうに思うのです。そういうふうなことを考えまするときに、まあとにかくわが日本はここまで来たんです。そのここまで来た力を踏まえまして、その考え方をもってこれから振る舞ってまいりますれば、私は、本当にわが日本が世界の中における貴重な日本国として高い評価を受け得るような日本国になり得るであろうと、そういうふうに思うのです。そういう展望のもとに私は福田政治を進めていきたいと、かようにお答えをいたしたいのであります。
 そういう考え方に立ちますると、いま具体的に御指摘のように、当面対外経済協力、これなんかはいま非常に貧弱な状態です。GNP比ということがよく問題にされまするけれども、わが国の政府開発援助は、五十一年度は恐らくわずかに〇・二二ぐらいのところへとまるんじゃないかと思うんです。国際水準は一体どうなっているか。先進諸国におきましては〇・三四までいっている。わが日本はこれだけの経済国であり、また工業大国だと言われながら〇・二二、これはもう国際社会に対して顔向けができません。私は、なるべく速やかにこれを国際水準にまで持っていきたいということを考えまして、さしあたり五十二年度予算では〇・二八まで持っていったんですが、その後におきましても精力的にこの問題は進めてまいりたいと思っています。
 また、ECその他において非常に批判を受けているというお話でありますが、これは確かに私はそういう傾向があると思うのです。わが国自体としても気をつけなければならぬ事態が多々あると思いまするが、同時に、日米間というものは戦後非常に理解が進んだです。しかし、ヨーロッパになりますると、ヨーロッパに対する日本の理解、これはかなりあると思うのですけれども、ヨーロッパ側の日本に対する理解というもの、日本という国はどういう仕組みになっている、どういう国柄だ、日本人というのはどういう人だといようなことにつきまして、非常に私は理解が進んでおらぬと思うんです。いろいろ国際社会において摩擦が起こる、その原因は、大きな国益と国益とのぶつかり合いという問題もありまするけれども、しかし、そうじゃなくて、お互いにお互いの立場、お互いの国のあり方というものについての知識というか、理解が少ない、そういうようないわゆるコミュニケーシヨン・ギャップから来る場合が非常に私は多いと思うんです。ECでいま問題とされておる徳永さんが指摘されたことなんかは、まさにそういう点から来るという問題も多いようでありまするので、わが国はもう基本的に、文化の面において、人事の面において、また社会構造というようなものの理解というような面において、これは格段な努力をしなきゃならぬと、こういうふうに存じ、その方向を強力に推し進める所存でございます。
 なお、それに関連いたしまして、いまや日本は、追随外交というか、そういう姿勢ではいかぬ、大いに積極的な外交を展開すべしと、こういうことでございまするが、先ほど申し上げましたように、これからの世界というものは、私は、もう軍事紛争といいますか、世界規模の大紛争というものは、なかなかこれは起こりにくいことになってきておると思うのです。そうすると、やっぱり経済が物を言う。この経済の面から見れば、わが日本はとにかく世界第二の工業力を持つようになってきているんです。その立場というものは非常に貴重な立場である。その立場を踏まえまして、私どもは積極的に世界に向かって、その繁栄と平和のために発言し得るという立場にあると思いますので、お話のような積極的な姿勢で立ち臨んでまいりたい、かように考えておるのであります。
 また、当面する国の安全保障の問題につきましては常任委員会を今国会に設置すべきである、こういうようなお話でございますが、これは国会の問題ではありまするけれども、自由民主党総裁としての私は、まことにごもっともなお話だと思うのです。ぜひひとつ、これを今国会においてもでき得るように御協力を願いたい。お願いを申し上げます。
 また、国防会議のあり方につきまして、これは国の安全に関する諸問題を討議する場ともすべきではないか、こういうお話でありまするが、私は、この国防会議におきまして、国防会議が法律によって決められた事項を審議する、その背景論議というものがあってしかるべきだと、こういうふうに思うのです。お話のような線でこの会議の運営に当たってまいりたいと考えております。それから、国防会議が、防衛予算の編成の前にその大枠と基本的方針を決めて、事務的処理だけを防衛庁、大蔵省の間でやるべきであるという御所見でございますが、私はこのお気持ちはよくわかります。そういうふうな気持ちでやっていかなけりゃならぬと、こういうふうに考えますが、大蔵大臣の予算編成権との調整の問題もありますので、その辺も考えなけりゃなりませんけれども、お気持ちを体して今後運営をしてまいりたいと、かように考えます。
 それから、海洋法に対応する外交をどういうふうに展開するかというお尋ねでございますが、これはもちろん、四面海に囲まれたわが日本、これは海洋の自由を主張するほかありません。そういうようなことから、漁業資源、または海底の資源の確保、また、それから自由なる海運、貿易、その円滑な運用ができるようにということを踏まえましてこの海洋法会議に立ち臨むということになることは、これは当然のことでございます。ただ、海洋の自由とは申しますが、二百海里時代は現実化してきた。この二百海里時代の現実化したその動向に対しましては賢明に対処しなければなりませんけれども、いずれにいたしましても、早く私どもの主張するような線で海洋法会議が妥結になることを期待し、その妥結を推進してまいりたいと、かように考えております。
 それから、エネルギー、食糧の問題に触れられましたが、このエネルギー問題、非常に深刻な問題です。また、これから先々食糧問題もそういう時期を迎えるかもしれません。そういうことを踏まえながら、エネルギー、食糧等の施策を進めてまいりたい、かように考えております。
 それから、日中、日ソの問題でありまするが、日中平和友好条約につきましては、しばしば申し上げておりまするとおり、できるだけ早期に締結を図ろう、こういうことにおきましては、これは両国の意見が一致しているのです。両国の満足し得る状態、それができましたならばこれが締結をいたすという考え方でございます。北方領土の問題、これはわが国民の多年の悲願である。この実現というものは、なかなか一挙にはまいらないというのが現実ではございまするけれども、そういう環境づくりに向かって一つ一つ手を打ち、そうして、終局的にはそれを実現をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
 さらに、経済の問題につきまして、今日の経済情勢をどういうふうに認識しておるかというお話でありますが、私は、今日のわが国の経済につきましては、いろいろのことを言う人がありまするけれども、これは総体的に見ましてよくいっていると思うのです。これは世界でそういうふうに評価しております。とにかく、いま世界の情勢は、南の国々が非常な混乱の状態だ。ことに、国際収支の面におきまして行き詰まりというような状態である国が多いんです。そういう中において、北側の国はどうかというと、北側の中でもそういい国は少ない。わずかにわが日本とドイツとアメリカ、この三カ国が、まあまあ、あの石油ショックから脱出、まあ大体了したというような状態でありまして、私は、長い目から見ましたわが国の経済情勢は決して悪い状態ではない、こういうふうに考えております。ただ、これからの環境の変化に対応いたしまして、その転換をどうしていくか。これは賢明に対処しなければならぬ問題でありまするが、その対処さえ間違えなければ、今後の日本の経済、社会、これはまあそう動揺することはなかろう、こういうふうに考えております。
 しかし、当面この時点、この瞬間の問題と、こういうことになりますれば、昨年の経済の動きというものは、これは政府は五・六%成長と、こう言っておったのです。大体そのとおりが実現されると思うのです。ただ、上半年にこれは急成長をしちゃって、その後ちょっと停滞しておるものですから、いま経済、社会に不況感がみなぎってくる、また就業状態が悪化するというような傾向が出てきておるというのが現状であります。私は、この状態で日本経済が失速するというふうな感じは持っておりませんけれども、この状態を続けていきますと、就業状態がなお悪くなる、また社会全体の活力ということにも影響しかねない、そういう認識のもとに、てこ入れを必要とするというふうに考えまして、五十一年度補正予算のお願いをする、また五十二年度予算におきましても、これは公共事業費を大幅に増額いたしまして、速やかなる景気てこ入れを実現をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
 一方、物価の方でありますが、物価につきましては、傾向としてこれは安定化の基調にあることは私は間違いないと思うのです。ちょっと天候の異変の関係から厳しい状態になってきておりまするけれども、三月時点の年度間上昇率八%程度と、こういうふうに言ってまいりましたが、何とかしてこの八%程度を実現したいと、こういうふうに思っておる次第でございます。また、来年につきましては、さらに安定の基調を進めまして、まあ七彩台の上昇にとどめたい。これとても、しかし高い水準です。私は決してその状態で満足しているというわけじゃないのです。ただ、今日は石油ショック以来のいろんな事情がありまして、ことに公共料金、これを改定しなければならぬという時期にいま差しかかっておる。それなんかの影響もありまして、七%台というような程度にとどめなければならぬわけでございまするけれども、なるべく早く預金金利水準以下までこれを静めてまいりたいと、こういうふうに考えております。
 それから、公債発行につきまして御警告があったわけでございます。私も公債は、適度に発行されておるという限りにおきましては、財政調整の非常に有効な手段だというふうに考えておりまするけれども、今日のように多額の公債が発行されるということが続くということになりますると、これはゆゆしい事態になってくると、こういうふうに思うのであります。でありまするので、なるべく早く、少なくとも赤字公債と言われる特例法による公債、これはなくするということを基本的な考え方として公債政策を進めてまいる。同時に、それまでの間というものは多額の公債が発行されるのです。でありまするから、その発行された公債が完全に消化されなければならない。これが消化されないということになりますれば、日本銀行が札を印刷してばらまくということになるわけでありまするが、そういうことになったら、これはもう大変なことになりますので、完全消化、これを旨としてやっていきたい。私がしつこく大幅減税、一兆円減税なんかに反対しておるのも、その辺からも来ておるわけであります。
 また同時に、いま徳永さんがいみじくも指摘されましたが、わが国におきましては課税最低限が非常にこれから聞くなるのです。今日でも世界一でございまするけれども、今度税法が成立すると、政府が提出いたしまする所得税法案が成立するということになりますると、実に二百一万五千円の課税最低限になるのです。イギリスではどうかというと、八十四万円です。西独でも百十三万円です。アメリカはかなり高いですが、それでも百七十八万円。わが国はとにかく二百一万円になろうとする。それをさらに追いかけて減税というのもどうだろうかと、これはちょっと所感だけをつけ加えさせていただきます。
 それから、行政改革をせいというお話ですが、これは私は最も大事な問題だと思います。これからの日本経済、日本社会の動きを考えてみますと、環境が非常に変わってくる。もう国も地方公共団体も、企業も家庭も、みんな対応の構えをしなければならぬというときに、やっぱり政府が率先垂範というか、率先してその構えを変えなければならぬと、こういうふうに思うのです。私はこの点を決して忘れておるわけじゃありません。この点を本当に大事な問題だとかみしめておりますが、何せ今度国会に臨むに当たりまして、昨年のとにかく十二月二十四日に成立した政府でありますので、さあその考え――意はあるんです。その意はあるけれども、まだ実を固めるわけにはまいらぬというのが現状でございます。しかし、その意を持っておりますので、この意は大いに進めたい。そうして、この夏ごろまでには大方の改革案を策定いたしまして、そして来年の予算におきましてはそれを実現をいたしたいし、予算にかかわりのないものにつきましてはそれ以前においてもこれを実行いたしたい、かように考えておる次第でございます。
 国民総背番号制度の問題につきましては、これはやっぱりいろいろ意見もありまして、まだコンセンサスという段階まで来ておらないように思うのです。世界の大勢はそういう方向に動いておりますことも踏まえまして、早くコンセンサスが得られますればそこで結論を出したいと、こういうふうに考えておるというのが実情でございます。
 元号法をつくれ、こういうようなお話でございますが、これは私は、考え方としては、制度としての元号、つまり元号制度はこれを存続せしむべきであるという考えでございます。また、国民の多くの方々がそう考えておるようでございます。しかし、その存続の場合に、お話のように法律でやるか、告示でやるか、あるいは他の方法でやるか、こういう点につきましては、もう少し世論の動き等も見て最終的な結論を得たいと、さように考えておる次第でございます。
 海外在留邦人五十万人の選挙権行使の問題でございまするが、この点につきましては、なお、非常にこれはむずかしい、重要であるけれども手続的に非常にむずかしい問題で、鋭意検討してみたいと存じます。
 それから、叙勲の基準等につきまして検討すべしというお話でございますが、ごもっともな話であります。私は同じような考え方から、国民栄誉制度というようなことが別に考えられないかということも申したことがありまするが、それは、私がそう申し上げましたのは、何かいまのこの賞勲制度で国民の感情として救われない部面というものがあるんじゃないかという感じがしてならなかったからでございまするけれども、なお検討いたしてみたいと思います。
 また、政府の白書において外国語が多用化されている、多く用いられ過ぎておるという御指摘でございますが、これは注意してまいります。
 また、靖国神社を国で守り、英霊を公に祭るということは当然政府によって実施されなければならないことではあるまいかという、御意見を交えての御所見でございますが、私はこの問題に重大な関心を持っております。もう国民どなたも、靖国神社にわれわれのいわゆる貴重な生命をささげた方々が眠っておられるんだということにつきまして、一点の曇った考え方はないと私は思うんです。それにもかかわらず、徳永さんの御指摘のような状態になっておる。これは要するに、憲法問題がまつわるんでありますが、速やかにこの問題につきましては、憲法等の問題もありまするけれども、同時に、世論の動向をひとつ把握いたしまして対処してまいりたいと、かように考えております。
 また、国のために亡くなりました方々の遺族の人や、また傷ついた人々、これらの方々に対する国民としての志を示すということ、これはもう当然のことである。政府におきましては、累次、毎年毎年というくらい、この考え方を進めてきておるのでありまするが、昭和五十二年度の予算におきましても、精いっぱいの配慮をいたしておるわけでありますが、今後とも、この点につきましては、徳永さんのおっしゃるような線において対処してまいるということをはっきり申し上げさしていただきます。(拍手)
#24
○副議長(前田佳都男君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#25
○副議長(前田佳都男君) 御異議ないと認めます。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後零時四十分散会
ソース: 国立国会図書館
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