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1976/04/21 第80回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第080回国会 災害対策特別委員会災害対策の基本問題に関する小委員会 第2号
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1976/04/21 第80回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第080回国会 災害対策特別委員会災害対策の基本問題に関する小委員会 第2号

#1
第080回国会 災害対策特別委員会災害対策の基本問題に関する小委員会 第2号
昭和五十二年四月二十一日(木曜日)
    午前十時九分開議
 出席小委員
   小委員長 今井  勇君
      志賀  節君    谷川 寛三君
      中村  直君    森   清君
      兒玉 末男君    柴田 健治君
      湯山  勇君    広沢 直樹君
      渡辺  朗君
 出席政府委員
        国土庁長官官房
        審議官     四柳  修君
 小委員外の出席者
        災害対策特別委
        員       稲垣 実男君
        国土庁長官官房
        防災企画課長  山本 重三君
        大蔵省銀行局保
        険部保険第二課
        長       萱場 英造君
        建設省河川局水
        政課長     吉沢 奎介君
        参  考  人
        (社団法人日本
        損害保険協会火
        災業務委員会主
        査)      日下部澄義君
        参  考  人
        (損害保険料率
        算定会理事火災
        新種料率部長) 井沢 龍暢君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 災害対策の基本問題に関する件(個人災害対
 策)
     ――――◇―――――
#2
○今井小委員長 これより災害対策の基本問題に関する小委員会を開会いたします。
 災害対策の基本問題に関する件について調査を進めます。
 本日は、個人災害対策に関する問題について御意見をお述べいただくために、参考人として、社団法人日本損害保険協会火災業務委員会主査日下部澄義君、損害保険料率算定会理事火災新種料率部長井沢龍暢君に御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 参考人の方々には、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。御承知のように、当小委員会は、個人災害対策として、災害により失った個人財産に対する救済措置について鋭意検討を重ねてまいりました。したがいまして、この機会に、損害保険の実態について参考人の方々から御意見を聴取いたしまして、調査の参考にいたしたいと思います。何とぞ率直な御意見をお述べいただきたく存じます。
 それでは、日下部参考人からお願いいたします。
#3
○日下部参考人 ただいま御指名賜りました日下部でございます。
 それでは、最初に私の方から、個人の居住用建物、家財に対します風水害保険並びに地震保険の現状につきまして、総論的な御説明をさせていただきたいと存じます。
 危険のあるところ保険ありという言葉がございますが、個人生活を取り巻くもろもろの危険に対しまして、私ども損害保険業界といたしましては、損害保険という商品を提供いたしますことによりまして、いささかでも国民生活の安定に寄与いたすよう努めている次第でございます。
 ところで、もろもろの危険と申しましても、その性質によりまして、保険制度に乗りやすいものとそうでないものとがあるわけでございます。風水害危険は後者に属するものと言えますが、その理由といたしましては、三点ほど指摘できるかと存じます。
 まず第一点は、わが国の場合、毎年のように何らかの形で風水害による被害が発生し、しかも被害発生地域に相当の偏りが見られることでございます。
 それから第二点は、一たん被害が発生いたしますと、その規模は広範にわたり、損害額も巨額に達しますことでございます。
 それから第三点は、私どもの用語で逆選択と申しますが、危険度の高い物件だけが保険に入ってくる可能性がきわめて高いこと。
 こういったような点が、風水害保険の成立を非常に困難にしている要因となっているわけでございます。
 わが国におきまして、個人の居住用建物や家財を対象とした風水害保険制度につきましては、先ほど申し上げましたような風水害危険の特殊性のゆえに、長らく日の目を見ることができなかった次第でございますが、昭和三十四年九月の伊勢湾台風によりまして甚大な被害が発生いたしましたことを契機に、損害保険業界といたしましても、風水害危険に対し積極的に取り組む必要性を痛感するに至りました。
 そこで、当時検討中でございました住宅総合保険に、風水害の場合にも一定の条件で保険金をお支払いできるような内容を取り入れまして、昭和三十六年一月から全社一斉に発売いたした次第でございます。
 発売当初の住宅総合保険の風水害保険金の支払い条件は、建物の全壊または流失、いわゆる全損の場合にのみ適用され、お支払いする額も保険金額の三%というきわめて制限的な内容のものでございました。これは保険会社として未経験の分野に初めて立ち向かうといった事情もございましたが、居住用の建物という全国に散在する対象物件につきまして、一々その風水害危険度を測定して適正な保険料率を算定することはきわめて困難なことでございますので、全国画一の、しかも低水準の保険料率でお引き受けすることにいたしました関係で、やむを得ない措置ではなかったか、このように存じておる次第でございます。
 しかしながら、私ども損害保険業界といたしましても、その後も可能な限り支払い条件の改善に積極的に取り組んでまいりまして、数次にわたる改定を経まして今日の内容まで改善を見るに至った次第でございます。しかも、その間、保険料率水準につきましては、基本的に発売当時のまま据え置きとなっております。
 それでは、現在の住宅総合保険の風水害、これは厳密に申し上げますと、そのほかに雪害も含んでおるわけでございますが、その保険金支払い条件について簡単に御説明さしていただきますと、次のようになっております。
 すなわち、風水害によって建物または家財が三〇%以上の損害を受けたとき、保険金額に損害割合を乗じて得た額の三〇%を支払う。ただし、一回の事故について、建物については二百四十万円、家財については百五十万円を支払い限度とする。このようになっておるわけでございます。
 さらに、この場合に人身事故がありました場合は、事故に遭われた方が御契約者本人か御家族か、また死亡されたか重傷程度かというようなことによりまして、お支払いする保険金の額が異なりますが、たとえば御契約者本人が死亡されました場合は、保険金額の三〇%を傷害費用保険金としてお支払いすることになっております。なお、この保険金につきましても、一回の事故について御家族の分も合わせまして百五十万円という限度を設けております。
 以上申し上げましたように、風水害に対する保険制度といたしましては、住宅総合保険という新しい型の保険の中で、当初は全くの見舞い金のような形で発足いたしましたものが、今日では曲がりなりにも保険制度の形を整えるに至ったわけでございます。しかしながら、率直に申し上げまして、現在の保険内容が、損害保険制度の一環として、その社会的、経済的効用を十分に果たし得ておりますかどうかということになりますと、御契約者の立場からも、また私どもといたしましても、いまだしの感を否めないわけでございます。
 損害保険業界といたしましては、今後とも支払い条件の改善の余地はないものかという点につきまして検討を続けてまいる所存でございますが、改善の方向として考えられますのは、二つの方向があろうかと存ずるわけでございます。
 その一つは、保険金をお支払いできる条件をもう少し緩和できないかという点でございます。
 先ほども御説明申し上げましたとおり、現在の保険約款では、被災建物なり家財なりが三〇%以上の損害をこうむらないと保険金お支払いの対象とならないわけでございます。三〇%の損害割合と申しますと、私どもの過去の経験の積み重ねと学識経験者の御指導によりまして、平家建ての木造建物の場合で、床上五十センチ程度の浸水を一応の目安といたしておる次第でございます。したがいまして、同じ床上浸水と申しましても、微妙なところで保険金をお支払いできたりあるいはできなかったりすることが起こり得るわけでございまして、私どもといたしましても、この支払い基準につきましては、これまで、当初は全損、つまり一〇〇%からスタートいたしまして、その後五〇%以上の損害の場合、さらに三〇%以上の損害の場合と、逐次引き下げてまいりました次第ですが、なお改善の余地はないかどうか、現在検討いたしておるところでございます。
 二つ目といたしましては、お支払いする保険金の額をもう少しふやすことはできないかという点でございます。
 この点につきましても逐次改善を図ってまいりましたわけでございますが、現在のところでも三〇%の縮小支払いとお支払い額の頭打ち制度があるわけでございます。これは冒頭御説明申し上げましたように、風水害危険の特殊性を考えますと、保険会社の立場から申しまして、どうしてもある程度の制限を設けざるを得なくなるわけでございますが、この点につきましても何とか改善の余地はないものか検討いたしたいと存じております。
 以上申し上げました二つの方向のいずれか、あるいは両方とも実現できればそれにこしたことはないわけでございますが、いずれにいたしましても、保険料率との兼ね合いもございますので、慎重に検討いたしまして、できる限り早い時期に結論を出したい、このように考えておる次第でございます。
 しかしながら、住宅総合保険という枠組みの中で検討いたします限りでは、おのずからある程度の制限的な内容とならざるを得ないことにつきましては、御賢察賜りたい、このように存ずる次第でございます。
 さらに、一歩進めまして、本格的な風水害保険制度をということになりますと、どういたしましても対象物件ごとに個々の風水害危険度に応じた保険料率を適用することにせざるを得ませんし、また初めに申し上げましたようないわゆる逆選択のことも慎重に考慮に入れる必要が出てまいるかと存じます。
 そのほかにも種々な困難は予想されますが、損害保険業界といたしましても、私どもの英知と総力を結集いたしまして、住宅総合保険の内容に飽き足らない御契約者のために、より十分な補償内容を何とか御提供申し上げることができないものかどうか、その可能性につきましては検討してまいりたいと考えておる次第でございます。ただ、この点につきましては、何分にも問題が大きゅうございますので、若干検討に時間を要することになることを御理解賜りたいと存ずるわけでございます。
 なお、ただいままで御説明申し上げましたのは、住宅総合保険にしぼってお話しさせていただいたのでございますが、店舗向けの店舗総合保険や満期返戻金つきの長期総合保険におきましても、住宅総合保険と同様の内容の風水害に対する補償制度を盛り込んでおりますことを申し添えておきたいと存じます。
 それでは次に、地震保険制度の現状につきまして、簡単に御説明させていただきます。
 地震災害は、一瞬のうちに壊滅的な被害をもたらし、その上に、わが国の場合は、地震に起因いたします火災の発生が特に被害を大きくいたします関係で、風水害よりはるかに恐ろしい災害であるわけでございます。したがいまして、地震災害に備えるための保険制度ということになりますと、風水害保険よりも一層その成立を困難にいたします事情がございますために、わが国に損害保険制度が導入されました当初からの懸案課題ではございましたが、長らく実現を見なかったわけでございます。
 ところが、不幸にして、昭和三十九年六月に、新潟県を中心にマグニチュード七・七という大地震が発生いたしまして、大きな被害をもたらしたわけでございます。この新潟地震が契機になりまして、官民協力のもとに地震保険制度を早急に創設すべしとの機運が急速に盛り上がりまして、昭和四十一年六月から現在の地震保険制度が発足いたしましたことは御高承のとおりでございます。
 地震保険につきましても、創設当初と比べますと、現在では徐々にではございますが、改善が施されておりますが、その基本的な枠組みは変わっていないわけでございまして、その特徴としては、次の五点を挙げることができるかと思います。
 第一点は、居住用の建物または生活用動産のみが対象となっておりますことでございます。
 それから第二点は、地震等に起因いたしますところの火災、損壊、埋没または流失によりまして、全損、これは物理的な意味だけではございませんで、経済的な全損も含むわけでございますが、このような全損の場合に限り保険金を支払うことになっておるわけでございます。
 第三は、民営の特定の損害保険契約とあわせて御契約いただき、地震保険単独で御契約いただく形になっておりませんことでございます。
 それから第四点は、保険金額は、あわせて御契約いただきます損害保険契約の保険金額の三〇%と決められております。ただし、その金額は、建物の場合で二百四十万円、生活用動産の場合で百五十万円が限度となっております。
 それから最後に、第五点といたしまして、政府との間に特別の再保険契約があることでございます。すなわち、損害額の一定限度までは損害保険業界が負担いたしますが、その限度を超える部分につきましては、政府との間の再保険契約により国が負担いたします。なお、いかなる場合でも、保険金の総支払い額は、一回の地震につきまして八千億円を超えないことになっております。
 ところで、全国の世帯のうち、一体どのくらいの世帯がこの地震保険に加入しているかと申し上げますと、全国平均で約一五%といったところでございまして、まだまだ普及率という点では低い実情でございます。
 この地震保険制度が創設されました当初は、住宅総合保険と店舗総合保険とに自動的に付帯してお引き受けする以外に、地震保険をお引き受けする道はなかったわけでございますが、昭和五十年の四月からは、住宅火災保険や団地保険にも御希望により任意に付帯してお引き受けできるようにいたしまして、より地震保険を利用しやすくいたした次第でございます。
 しかし、いまなお、火災保険の御契約者の中には、火災保険を契約していれば、地震によって火災になった場合でも、火災保険で保険金が支払われると誤解していられる向きもいらっしゃるのではないかと実は危惧しているわけでございます。そこで、損害保険業界といたしましては、今後、火災保険を御契約いただく際には、特にこの点にポイントを置いて御説明いたしまして、誤解が生じることがないよう配慮いたしますとともに、地震保険の利用につきまして積極的にPRしていきたい、このように考えている次第でございます。
 さらに、地震保険が任意付帯となっております住宅火災保険や団地保険を御契約される場合には、地震保険を御契約されるかどうかの意思確認をさせていただきまして、特に地震保険は希望されない旨のお申し出がありました際には、その旨確認印をちょうだいいたしまして、後日トラブルが起きることがないよう留意いたしてまいりたい、このように考えておりまして、来る七月からそのような運営を実施いたす予定でございます。
 以上、個人災害の中でも最も大きい風水害と地震災害に関しまして、現在のところでの保険制度の概要を御説明させていただきました。
#4
○今井小委員長 次に、井沢参考人にお願いいたします。
#5
○井沢参考人 御指名にあずかりました井沢でございます。
 ただいま日下部参考人が、個人財産につきましての損害保険のうち、主として住宅総合保険につきまして、現状並びに将来の話をされたわけでございますが、私は保険から見ました場合の風水害の技術的問題点並びに地震危険に関しましての同様の技術的問題点について説明をさせていただきます。
 まず、風水害危険の特殊性とその保険設計のむずかしさについて説明をさせていただきます。
 先ほど日下部参考人が御説明になりましたように、風水害は毎年多くの事故によりまして大きい被害が発生しているばかりでなく、時としましてきわめて広範にわたります巨額の被害が起きること、また、これらの被害がいつ、どこで起きるかにつきましては、御承知のように、日本は雨季、乾季の季節性がきわめてはっきりいたしておりますこと、また長期予報、台風情報などの気象予報が最近目覚ましく精度といいますか、的中率を向上させておりますこととあわせまして、どういうときに風水害危険が大きいかを知ることができますし、また居住地の地理的環境、その中でも地盤の高低、また住んでおります建物の構造、階数とか老朽、傷み方の状態から、どういうところの物件と申しますか、建物が風水害危険が大きいかを知ることが容易にできるわけでございます。
 これらの事情は、損害保険が根拠といたしております保険事故発生の偶然性をきわめて乏しくするだけではなく、また風水害保険の危険値を算定いたします場合に、大数の法則に乗りにくくなりました。そのかわりに、風水害危険を構成いたしております危険要因の間の因果関係と申しますか、たとえば河川はんらんによります水害危険を例にとってみますと、ある建物が流失または浸水するようなはんらんは、一体何年に一回というような割りで起こるのだろうか、また水につかりますような場合には、その建物が一体どの深さほどつかるのだろうか、また水が引くまでに何日ぐらいつかっているだろうかというようなことを、雨と申しましても大雨もありますし、それほど量の多くない雨もございますから、これらを雨量別に、その建物を取り巻きます地理的環境に基づきまして、雨が降りまして後どのように流れ出るか、もしくは水がたまるかなどということから推定いたします。これと、その建物が推定された深さで水が引くまでつかっているときには、その建物、これは当然中に入れております動産類を含めまして、損害割合がどの程度になるだろうかということと、先ほど申し上げました、一体何年に一回そういうような浸水、はんらんが起きるだろうかということとを総合いたしまして危険値を求めるというような方法に頼らざるを得ない面が多くなるのでございます。このように偶然性が乏しく、また大数の法則に乗りにくいということが、損害保険から見ました場合の風水害危険の特殊性でございまして、これがまた風水害危険を保険に設計と申しますか、仕組みます場合のむずかしさの原因の一つにもなっているわけでございます。
 風水害保険の仕組み、それをまたうまく維持、管理をしていくそのむずかしさのもう一つの原因は、河川災害が原因でありましょうとも海岸またはダムに起きた災害が原因でありましょうとも、一たび災害が起きますと、復旧、復興までに相当の期間を要するわけでございます。その間は危険要因が、もう先生方よく御存じのように、きわめて劣化、悪化しておりまして、したがって当然その罹災地域一帯の風水害危険は、その災害が発生する以前の危険に比べまして、発生以後の復旧に至ります間の危険は数段高い危険を示すというようなことになりますし、さらに悪いことには、災害の規模が大きいほど一般に復旧、復興に要します期間が長くかかりまして、またその間の危険悪化も地理的に広範囲に及ぶというような事情が絡んでくるわけでございます。
 次に、水害危険値の算定法と申しますか、計算法について御説明申し上げます。
 ある建物の水害危険を算定いたしますには、まずその建物の水害頻度、言いかえますと、少し理屈っぽくなって恐縮でございますが、その建物が浸水する深さ別の頻度を知らなければならない。この水害頻度は単なる大雨や高潮の頻度ではなくて、その建物を浸水させる内水はんらんや洪水はんらんを起こすような大雨の頻度とかまたは高潮の頻度ということでございます。このためには、聞くところによりますと、北の方の融雪洪水地域では融雪量を知るための日照量の調査研究は当然のこととして、さらには融雪期の降雨量調査まで必要だと言われております。
 次に、その建物が浸水しました場合に、その浸水によりましてその建物に生じます損害額を浸水の深さ別に知る必要がございます。それには建物の構造、高さ、階数、中に収容されております家財、動産類、それらが建物の中に一体二階に置かれているのか下に置かれているのかというような置かれております位置とか、その積み上げ方とかというようなことが絡んでまいりまして、その建物が水につかりますときに、一体半分がつかるのか四分の一がつかるのかといいますような、水につかる場合の罹災範囲と称しておりますが、罹災範囲を知ること。次に、その建物、動産類を水浸しにいたしますその水の質の違い、海水か淡水か汚水かというような水の質の違いと、また浸水いたしております期間の長短、さらにはその浸水の中に土石とか流木とかいうものがまじっているかどうか、また、その水位とか流速とか、いわゆる水勢の強弱などが絡み合いまして、水につかりました建物、家財類を傷めます損傷度というものを知る必要があるのでございます。
 以上申し上げました浸水の頻度、それから罹災範囲、損傷度というようなことがわかりますと、その建物の水害危険度、その建物並びにそれに収容されております動産類の価額に対しまして、一年間当たり平均して水害損害額が幾らになるかというようなことが算定されることになるわけでございます。そういたしますと、水害の危険値と申しますのは、その建物の価額に対します一年間当たりの平均水害損害額の割合という形であらわすことができるわけでございます。
 次に、この考え方を推し広げますと、任意の地域全体の平均水害危険値を算定することができるわけでございまして、先ほど申し上げましたある一つの建物についての例を広げまして、当該地域内の建物、家財の総価額に対しまして、当該地域に一カ年平均一体いかほどの水害によります損害額が発生するかというものを求めまして、その比率をとりますと、その比率が地域平均の水害の危険値ということになるわけでございます。
 この地域平均水害危険値という比率をあらわします数値の分母を一つの集団、一危険集団と見立てますと、分子はその危険集団一カ年当たりの平均水害危険額をあらわしますから、それらの比率である平均水害危険値は、その危険集団の水害危険値をあらわすということになるわけでございます。
 ところで、危険集団を構成します個々の建物の危険値相互の間には危険差があるわけでございまして、それらの危険差が大きいときには、先ほど説明申し上げましたように、水害危険は契約者側の危険を察知するということが容易でございますから、強制的に保険をしない限りは、想定されました危険集団に加入する建物、家財類は、想定危険集団の水害危険値よりも高い危険値を持つものに偏る傾向が強く出るわけでございます。
 そこで、想定危険集団の危険値と実際の危険集団の危険値との乖離は、その危険集団そのものの存続を危うくするようなことにもつながってくるわけでございます。したがいまして、危険集団をその平均危険値によってうまく運営をしようといたしますには、集団を構成する物件相互間の危険差がきわめて少ない均質の集団構成を図るか、あるいは危険差という不公平性が目立たないように保険設計をして料率の平等性を保つかのいずれかによらなければならないということになってまいるわけでございます。先ほど日下部参考人が住宅総合保険の現状に関しまして御説明されたのは、全国を一つの危険集団とみなして、その危険値によって運営をしていこうとする実例と言うことができるわけでございます。したがいまして、危険をどういうような条件で引き受けるか、また保険金をどういうふうにふやしていくかというような改善を図ります場合には、ただいま申し上げましたような平等性と公平性の均衡をどのように保っていくかということがやはり条件としてついて回るということになるわけでございます。
 また一方、日下部参考人が今後の検討の方向として御説明されました、いわば総合保険の枠外で引き受ける方式といいますか、それを研究したいというようなお話がございましたが、それは物件個々についての危険負担の公平を第一とする、先ほど申し上げました水害危険値算定法に頼らなければならないという例になるわけでございます。
 いずれにいたしましても、保険設計の原則といたしましては、この公平性と平等性のほかに、大災害時の損害を調査をいたしまして支払い保険金を決めます査定の迅速化を図るために、いわゆる小さい損害をこれは不担保にするというようなやり方をどういうふうに決めるか、さらには巨大な損害に対して、危険値にそれをどのように取り込むか、また、それをどういうふうにして準備金としてためておくかなどのむずかしい問題がございますが、保険設定の原則は、その保険の主旨はどういう主旨か、また、どういうものを保険の対象にするのか、どういう危険をどういう形で引き受けるのか、また、どういう損害に対して保険金を支払うのかというような保険の要綱をまず決めなければなりません。それが決まりますと、それに従いまして、危険値と事業に要します付加率を求めまして料率を算定するということになるのでございます。
 なおまた、保険制度に乗りにくい風水害を保険に仕組んで、これを着実に運営していきますためには、事あるごとに、先ほど申し上げました料率と実績との乖離、それを検証いたしますことを丹念に行いまして、危険の実態の把握に努めるという保険実施後の心構えも大切かと存じておる次第でございます。
 次に、地震危険につきまして、地震保険の技術的問題点について説明を申し上げますが、保険制度に乗せるための地震危険のむずかしさという問題は、ただいま申し上げました風水害保険の場合と全く同じでございまして、時間もだんだん迫ってまいりますので、そのうちの主な二つを挙げることにさしていただきます。
 一つは、隣の中国ですでに相当の実績を積んでおりますように、いわゆる地震予知が進んでまいりますと、人命の安全はそれなりに非常に大きく一段と確保されることになります。まことに結構なことでございますが、それに反しまして財物の損害発生の偶然性はまたきわめて薄らいでまいるわけでございますから、損害保険としての根拠が根底から揺るがされることになる危険があるわけでございます。
 次には、わが国の地震災害の恐ろしさは、いまだにそれがいわゆる二次災害、言いかえますと建物が倒壊したり津波のために流失したりする一次災害よりも、地震が同時に多くの火事を起こしまして、その火事がお互いに重なり合って拡大してまいりまして、一体それがどこまで燃え続けるだろうかということ、これの予想が、御存じのような都市の急激な膨張と生活水準の向上でございますか、多様化とが絡みまして、きわめてむずかしいという問題があるわけでございます。
 以上、代表的な自然災害を保険制度に乗せます上での問題点について説明を申し上げた次第でございますが、私どもといたしましても、ただむずかしいと言っておるばかりでなく、今後ともこれらのむずかしい問題点と取り組みまして、少しでも解きほぐしていきたいと考えております。
 以上で私の説明を終わらしていただきますが、御清聴ありがとうございました。
#6
○今井小委員長 以上をもちまして参考人からの意見聴取は終わりました。
 これより懇談に入りますので、暫時休憩いたします。
    午前十時四十四分休憩
     ――――◇―――――
    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕
ソース: 国立国会図書館
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