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1976/03/02 第80回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第080回国会 予算委員会 第17号
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1976/03/02 第80回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第080回国会 予算委員会 第17号

#1
第080回国会 予算委員会 第17号
昭和五十二年三月二日(水曜日)
    午前十時一分開議
 出席委員
   委員長 坪川 信三君
   理事 大村 襄治君 理事 栗原 祐幸君
   理事 澁谷 直藏君 理事 田中 正巳君
   理事 細田 吉藏君 理事 安宅 常彦君
   理事 楢崎弥之助君 理事 近江巳記夫君
   理事 竹本 孫一君
      足立 篤郎君    伊東 正義君
      稻葉  修君   稻村佐近四郎君
      越智 通雄君    奥野 誠亮君
      金子 一平君    川崎 秀二君
      木野 晴夫君    笹山茂太郎君
      始関 伊平君    白浜 仁吉君
      瀬戸山三男君    根本龍太郎君
      藤井 勝志君    古井 喜實君
      松澤 雄三君    森山 欽司君
      阿部 昭吾君    石野 久男君
      上田 卓三君    上原 康助君
      大原  亨君    小林  進君
      兒玉 末男君    佐野 憲治君
      沢田  広君    藤田 高敏君
      武藤 山治君    湯山  勇君
      大橋 敏雄君    広沢 直樹君
      正木 良明君    大内 啓伍君
      吉田 之久君    和田 耕作君
      柴田 睦夫君    寺前  巖君
      大原 一三君    田川 誠一君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 福田  一君
        大 蔵 大 臣 坊  秀男君
        文 部 大 臣 海部 俊樹君
        厚 生 大 臣 渡辺美智雄君
        通商産業大臣  田中 龍夫君
        運 輸 大 臣 田村  元君
        自 治 大 臣
        国家公安委員会
        委員長
        北海道開発庁長
        官       小川 平二君
        国 務 大 臣
        (内閣官房長
        官)      園田  直君
        国 務 大 臣
        (総理府総務長
        官)
        (沖繩開発庁長
        官)      藤田 正明君
        国 務 大 臣
        (経済企画庁長
        官)      倉成  正君
 出席政府委員
        内閣法制局第四
        部長      別府 正夫君
        人事院総裁   藤井 貞夫君
        人事院事務総局
        任用局長    今村 久明君
        内閣総理大臣官
        房同和対策室長 今泉 昭雄君
        警察庁刑事局長 鈴木 貞敏君
        経済企画庁調整
        局長      宮崎  勇君
        経済企画庁物価
        局長      藤井 直樹君
        経済企画庁総合
        計画局長    喜多村治雄君
        法務政務次官  塩崎  潤君
        法務省民事局長 香川 保一君
        法務省刑事局長 安原 美穂君
        法務省人権擁護
        局長      村岡 二郎君
        法務省入国管理
        局長      吉田 長雄君
        大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君
        大蔵省主税局長 大倉 眞隆君
        大蔵省理財局次
        長       戸塚 岩夫君
        文部省初等中等
        教育局長    諸沢 正道君
        文部省大学局長 佐野文一郎君
        文部省管理局長 犬丸  直君
        厚生省公衆衛生
        局長      佐分利輝彦君
        厚生省医務局長 石丸 隆治君
        厚生省薬務局長 上村  一君
        厚生省社会局長 曾根田郁夫君
        厚生省児童家庭
        局長      石野 清治君
        厚生省保険局長 八木 哲夫君
        厚生省年金局長 木暮 保成君
        厚生省援護局長 出原 孝夫君
        社会保険庁年金
        保険部長    大和田 潔君
        中小企業庁長官 岸田 文武君
        運輸省鉄道監督
        局長      住田 正二君
        運輸省航空局長 高橋 寿夫君
        労働政務次官  越智 伊平君
        労働省労政局長 青木勇之助君
        労働省労働基準
        局長      桑原 敬一君
        労働省職業安定
        局長      北川 俊夫君
        労働省職業訓練
        局長      岩崎 隆造君
        自治省行政局長 山本  悟君
        自治省行政局選
        挙部長     佐藤 順一君
        自治省財政局長 首藤  堯君
        消防庁長官   林  忠雄君
 委員外の出席者
        予算委員会調査
        室長      三樹 秀夫君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月二日
 辞任         補欠選任
  阿部 昭吾君     湯山  勇君
  井上 普方君     上田 卓三君
  大出  俊君     兒玉 末男君
  多賀谷真稔君     大原  亨君
  武藤 山治君     沢田  広君
  浅井 美幸君     大橋 敏雄君
  矢野 絢也君     正木 良明君
  大内 啓伍君     吉田 之久君
  西田 八郎君     和田 耕作君
  田中美智子君     柴田 睦夫君
  寺前  巖君     松本 善明君
同日
 辞任         補欠選任
  上田 卓三君     井上 普方君
  大原  亨君     多賀谷真稔君
  兒玉 末男君     大出  俊君
  沢田  広君     武藤 山治君
  湯山  勇君     阿部 昭吾君
  大橋 敏雄君     浅井 美幸君
  正木 良明君     矢野 絢也君
  吉田 之久君     大内 啓伍君
  松本 善明君     寺前  巖君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 分科会設置に関する件
 昭和五十二年度一般会計予算
 昭和五十二年度特別会計予算
 昭和五十二年度政府関係機関予算
     ――――◇―――――
#2
○坪川委員長 これより会議を開きます。
 昭和五十二年度一般会計予算、昭和五十二年度特別会計予算及び昭和五十二年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、一般質疑を行
 います。
 大橋敏雄君。
#3
○大橋委員 私は、健康保険の問題と、それに関係の深い薬の問題、それから年金の問題を取り上げようと思っております。順次質問してまいります。
 今回提出されております政管健保の赤字解消のための健康保険改正案、これはもうすでに各方面から強烈な反対の声が上がっているわけでございますが、厚生大臣はそれを御承知かどうか、またその理由がどこにあるかを初めにお尋ねしたいと思います。
#4
○渡辺国務大臣 やむを得ないという人もあるし、ともかく賞与から初めて特別保険料を取るというのはまことにショックだという人もあるし、いろいろな御意見がございます。
#5
○大橋委員 ただボーナス等から保険料を取るからだめだという認識では、この問題は解決されないと思うのです。実は、健康保険の赤字問題は、その根本的な問題として、制度あるいは行政的な欠陥があるわけです。その根本的な改正に手をつけないで、赤字が出たから負担をしてくれ、こう言ってみても国民は納得できないわけです。
 実は私、初めて国会に参りましたのが今から十年前の昭和四十二年でしたが、初めにぶつかったのがやはり政管健保の赤字解消のための健保の臨時特例法というものでございました。そのときの所管大臣は、きょうの大蔵大臣坊先生です。お忘れでないと思いますが、あのときも大変な国民の反対がありまして、最初の国会では廃案となりました。そしていわゆる健保国会と言われた臨時国会において強行採決をなさった記憶があろうと思います。そのときに大臣は何とおっしゃったか。当時の坊厚生大臣は、必ずや抜本改正をやりますとおっしゃったわけですね。そして十年が経過をしたわけです。きょう問題にしている健保改正案というものは、十年前と同じ政管健保の赤字解消の財政対策なのですね。ここに問題があるのです、大臣。要するに、根本的な対策をやらないで、いわゆるざるで水をすくうような状態では、こういうボーナスから保険料を徴収するようなことには賛成できないというのが国民の偽らざる心境なのです。そのことをしっかりまず認識をしていただきたいわけです。
 特に、薬に問題が多過ぎると思います。まず初めにお尋ねしますが、総医療費に占める薬剤費は幾らで何%になっているのか。また先進諸国と比較してそれがどうなっているのか、何倍ぐらいになっているのか、そして医薬品の総生産額は現在どの程度なのか、ということを聞いてみたいと思います。
#6
○渡辺国務大臣 この原因はいろいろございまして、いろいろ制度上の問題ももちろんあります。それから薬剤が多過ぎるではないかという御議論ももちろんあります。しかしながら、内容の給付の改善というものも医療費が増大する大きな原因である、これも見逃すことはできない問題でございます。
 国民の医療費に対する薬剤費の割合やその他の問題については、事務当局から答えさせます。
#7
○八木政府委員 お答え申し上げます。
 第一点の、総医療費に占めます薬剤費の比率でございますけれども、最近の政管健保で見ました場合に、五十年の一番新しいところでは、三七・八%という比率でございます。
 それから、各国に比べまして国民医療費に対します薬剤費の割合がどうなっているかということでございますが、これは国によりまして非常に基準が違うわけでございます。日本の場合には、総医療費という場合には、外国などの場合には病院の建設費用でございますとか保険費用とか、いろいろ範囲が広うございますが、日本の場合にはそういうものが入っておらないということで、これは各国でいろいろ違いますので、その点まず総医療費の範囲が違う。それから薬剤費につきまして、諸外国の場合には、薬局で処方された調剤額ということで、院内で処方しました分は含まれておらないという前提で、したがいまして、総医療費の範囲は日本の場合には狭いし諸外国の場合には広い、それから薬剤費の場合には諸外国の場合が狭いという点を御了承いただきまして、一概には比較できないわけでございますけれども、申し上げたいと思います。
 これはやや古い数字でございますが、一九六七年の諸外国の例で申し上げますと、イギリスの場合が一二・五%、西ドイツが一三・五%、フランスが一九・六%、イタリアが二九・四%、スウェーデンが一五%という比率でございます。
#8
○上村政府委員 医薬品の生産金額についてお答え申し上げます。
 昭和五十年が一兆七千九百二十四億でございました。五十一年は一月から九月までの数字が出ておりますが、一月から九月までで一兆五千八百九十二億でございます。
#9
○大橋委員 大臣、いまお聞きのとおりでございまして、総医療費に占める薬剤費というのが約四割近くもあるわけですね。それから先進諸国との比較は、比較しにくいということではございますが、一般的には、わが国と先進諸国では二倍から三倍ほどの違いがある。また、医薬品の総生産額も一兆数千億ということでありまして、十年前に比べると約四倍程度の生産高になっているわけですね。病院に行った経験者はほとんどわかることですけれども、飲み切れないほどの薬を二種類、三種類とくれるわけでございますが、これが大変な問題になってきているわけでございます。
 そこで、最近一億総薬づけという全く常識語とも言われるほどになっている言葉があるわけでございますが、厚生大臣はこれをどう受けとめていらっしゃるか、御意見を伺いたいと思います。
#10
○渡辺国務大臣 薬が大変はんらんしているという話は聞いておりますが、いろいろな薬が出て、それによって多方面にわたって高度な治療が行われる、そういう面はいいだろうと思いますが、大橋さんの言わんとするところは、薬が乱用されているんじゃないかということだろうと思います。そういうような御批判が多数あることは承知をいたしております。
#11
○大橋委員 この問題のネックは、まず診療報酬が不適正である、安いということですね。それから薬価基準と薬の購入価格の差に利ざやがあるということです。これは制度の欠陥ですね。行政上の欠陥でもありますよ。これは政府の責任です。同時に、製薬会社は売らんかなのいわゆる大量生産、大量消費、これが営業マンに対する至上命令でもあるわけでございますが、つまり、こうした制度の欠陥と製薬会社の営業方針とが結びついて大変な問題が発生してきているわけでございます。特に、この問題がわが国の保険財政に大きくはね返ってきていることも事実であります。このことをよく御理解願わないと、本当の医療保険制度は指導できないということです。
 そこで、いま私が言ったことに対して、もし反論があればつけ加えてもらいたいし、そうであればそのとおりだとおっしゃっていただきたい。いまの私が原因だと思っている問題、そのことについて大臣の考えを聞かしてください。
#12
○渡辺国務大臣 実際の薬価と基準薬価との間には格差があるのではないか。私もそれはあるだろうと思っております。
#13
○大橋委員 この辺の認識と責任の問題で今後の医療のあり方が変わってくるわけでございまして、大事な問題だと思います。
 そこで、薬の添付問題が大変問題になってきたわけでございますが、この添付問題について、厚生省としてはどのような措置をとってこられたのか、お尋ねをいたします。
#14
○上村政府委員 医薬品の販売についての考え方でございますが、基本的には、薬というのは人の生命、健康に関係のある商品であるということと、それから医療保険の中に組み込まれておるので他の商品とは違ういろいろな規制があるというふうに私ども考えておりまして、このために、かねてから添付販売の禁止を初め、医薬品の販売の姿勢を適正化するように関係業界を指導してまいったのでございます。ことに添付につきましては、昭和四十五年十二月に中医協で決定されましたので、添付が行われている薬品を薬価基準から削除する等の必要な措置を講じてまいりましたし、四十七年、四十八年、あるいは四十九年、それぞれ製薬団体あてに、医薬品の販売を適正にするように指導してまいっておるところでございます。
#15
○大橋委員 この添付問題については、いまも話がありましたように、もうすでに昭和四十五年十二月十四日、中医協で、添付している医薬品については薬価基準から削除すべきであるとの決定がなされたわけですね。その前にも、厚生省としては昭和四十年ごろから次々とこれに関する通達を出していらっしゃるわけです。それこそ何回となく同じような通達が出ておりますが、では、果たしてその成果が上がったのかどうか、これまで報告があったのかどうか、お尋ねします。
#16
○上村政府委員 添付につきましては、一度その事例がございまして、その添付に係る医薬品につきまして、一定期間薬価基準から削除するという措置をとったのでございます。
#17
○大橋委員 大臣、お聞きになったとおりです。昭和四十年からこの問題の規制がなされ、通達が出ている。私、一々読み上げるのは時間がもったいないから省略しますが、昭和四十五年には中医協でもこのことをはっきり決定した。そして今日まで経過したわけですけれども、いま報告があったとおりに、添付問題で措置をしたのはたった一件だと言うのです。その一件は何かということを私の方から申し上げますと、これは厚生省の独自の調査で浮き上がってきた問題ではないのです。わが党の峯山参議院議員が参議院の決算委員会で昭和四十九年に取り上げた。それでやっと内容がわかりまして、この一件の措置がなされているわけです。本当にこうした薬務行政に対して真剣な動きがあるのかと聞きたくなるわけです。大臣、
 この点どう思われますか。
#18
○渡辺国務大臣 御承知のとおり、薬は自由販売、自由競争をやっておるわけであります。薬価基準の方は統制で一つの値段を決めておる。そこで、競争が行われるわけですが、値引きをして売る分は差し支えないわけです。値引きで安く売ったって差し支えない。ところが、いろいろな事情で値引きをやると薬価基準より低くなるということは統計に出てくるものですから、添付ということ、おまけをつけるということが行われておるということを聞いております。しかしそれについては、そのおまけはいかぬよ、売るときには値引きで売りなさい――値引きはやむを得ないのですから、自由販売、自由競争ですから。ところが、それはやらないで添付をやる。それには、何回も何回も注意をしておるのですが、やれ薬の見本だという添付もあるしいろいろなことで、実は頭を痛めておるというのが実情です。
#19
○大橋委員 大臣、添付ならば薬価基準は下がらない、だから添付が行われてきた。しかし、そういうことじゃよろしくないということで添付を規制した。値引きは幾らでもいいんだよ、これは理屈としてはわかりますよ。その値引きをした薬の価格が実際に掌握されているかどうかという問題なんですよ。要するに、値引きをした分をおのれのポケットにしまい込めば薬価基準には何ら関係ないわけですね。値引きしたのが実際に実勢価格としてあらわれる姿になっていればいいですよ。そういうことを調べるのがいわゆる医療用医薬品販売適正化委員会の仕事じゃないのですか。これは恐らく都道府県に設置されているはずです。
 私が言わんとするのは、せっかく設置されているそうした適正化委員会が作動していないのじゃないか。実は先般私は、一製薬会社の薬の販売に関しまして、リベート、値引き、添付など不明朗な事実行為をつかみましたものですから、厚生省の責任者の方に問題点を挙げましてその調査をするように言っておったわけでございますが、これは確認をしておきたいと思います。また同時に、私の通告後、厚生省としてはいかなる措置をとられたのか、その点まず確認しておきたいと思います。
#20
○上村政府委員 先週あらかじめ御指摘をいただきましてから、該当する会社につきまして二回事情を聴取したところでございます。現在のところ、御指摘になりました不適正な販売についての事実というのはつかんでおらないわけでございます。ただ今回、先週御指摘を受けましてから時間的な制約と、それから該当する会社が大阪にあるという事情もございまして、必ずしも十分に調査し切れたかどうかにつきましては、私どもの方でも十分調査したとまでは言い切れない状況でございます。ただ、御指摘されました中で、略語を使うことをお許しいただきたいと思いますが、たとえばCR作戦とかPTA作戦と言われるものに該当するようなことはあったというふうに聞いておるわけでございます。
#21
○大橋委員 私は事実をつかんでおります立場からこれからいろいろとお尋ねしていきますが、まず初めに、いかなる規模の製薬会社であったか御報告願いたいと思います。
#22
○上村政府委員 大阪に本社があります会社で、資本金は十四億四千万円、従業員が四百五十人、売上高が昭和五十一年に百四億だというふうに聞いております。
#23
○大橋委員 会社名は何と言うのですか。
#24
○上村政府委員 エッセクス日本株式会社という名前でございます。
#25
○大橋委員 非常に大ざっぱな報告でございますが、私が補足いたしますけれども、これはアメリカンシェリング・エッセクス日本株式会社、代表取締役はE・Y・デュア、本社はアメリカにあって、現在四十七カ国に支社があるということのようでございまして、高級医薬品製造販売でございます。わが国では昭和三十四年十月、資本金五十万円で有限会社という立場で社員十七人で創設されて、五十一年の今日では株式会社になり、十四億四千万円の増資、社員四百四十七名、大変な成長株の製薬会社であるわけです。
 そこで、先ほどCR作戦というものがあったという報告でありましたけれども、要するにこのエッセクス社が大量生産している薬をいかにして売りさばくか。いまも申し上げましたように、アメリカに本部を持つ多国籍企業のいわゆるミニロッキード版とも言われるような猛烈売り込み方法があるわけです。とにかく薬を売るためにまず医師をつかめ、規模の小さい医師よりも大きな病院をねらえ、特に官公立病院は効果的だということのようであります。すなわち、先ほど私が申し上げました現行医療制度、行政の欠陥、弱点と医師の心理的なものをねらい撃ちした巧妙な手口であるということのようでございます。
 私は具体的な証拠資料をもって問題点を明らかにしていきたいと思うわけでございますが、概要を先に御説明しておきますと、これは一営業マン、いわゆるプロパーと言われておりますけれども、一営業マンの行為ではないということです。会社そのものの営業方針となっているものでありまして、少なくとも私どもの調査ではこのエッセクス社の東日本地域、東京、神奈川、新潟、仙台、札幌などの営業所管内では一定した形式がとられていて、俗に言う会社ぐるみの販売方法であるということであります。しかも薬の販売につきましては、現行制度と行政の欠陥をついて、それを逆手にとって売り込み戦略をとろうというものであって、大変な問題であるわけです。いまから説明申し上げますので、ちょっと大臣に資料をあげたいと思います。
 このCR作戦ということでございますが、一審上のをめくってもらうと、「ゲンタシンサルファ・クリニカル・レポート」という英語が書いてあります。そのクリニカル・レポートの頭文字をとってCR作戦ということでございます。
 問題に入る前に聞きますけれども、このゲンタシンサルファとは何かということを聞きたいと思います。
#26
○上村政府委員 ゲンタシンにつきましては、ゲンタシンの注射液、ゲンタシンの軟こう、ゲンタシンのクリーム等があるわけでございますが、番大きなゲンタシンの注射液について申し上げますと、一般名を硫酸ゲンタマイシンという抗生物質でございまして、普通の抗生物質では効かない、そして命に直接危険な緑膿菌による敗血症でございますとか尿路感染症に対して特別に有効であるというふうに言われる医薬品でございます。
#27
○大橋委員 これは副作用はありますか。
#28
○上村政府委員 副作用ございます。
#29
○大橋委員 このCR作戦というのは、大臣、別名金縛り作戦とも言われているのです。いわゆるクリニカル・レポート、臨床調査票ということで、めくってもらうと、その一番上に「ゲンタシン臨床調査票」と日本語で書いてあります。この形式を利用しまして、医師あるいは病院に対するリベート、値引き、添付。医師を金縛りにして薬を大量に購入させようという誘惑戦術というものでございます。
 そのCR作戦の具体的な方法としましては、まず医師に現金を握らせようということなんです。しかし、国立病院だとか公立病院は問題を残さないようにという配慮がなされての考えなんです。そこで、このゲンタシンというのは副作用がありますが、この薬の副作用の臨床検査の形式をとろうというわけですね。これならば疑われないし、医師も受け取りやすいだろう。そして検査、いわゆる調査料として一枚に対して一万円の謝礼を出そう、これが事実上のリベートになっているということをいまから説明したいと思います。
 これは臨床検査調査票ですから、当然医師が書かねばならぬ性質のものですね。ところが、これは営業マンが勝手に書いているのです。そして医師に幾ら握らせようか、お金をあげようかというのは、この営業マンの判断に任せられているのです。そういうことで、これは同じ医師一人に対して月に十件ないし二十件はざら、つまり十万、二十万円というのが渡されているわけです。この会社は売り上げは年間百億円で、工作費はその二・九%が認められておるわけですから、約三億円がそういうお金に使われているということなんですね。大変な問題なんですが、よく見ていただきたいと思います。
 この一枚目、大臣見てくださいよ。「支払い申請書A」となっております。そしてその下の左側の方に「支払先」となっております。大臣の手元にある資料は名前は消してあります、いろいろ都合がありますので。ここに私の手元にあるのは、はっきりと某公立病院の名前が載っております。その下に「診療科」とありますね。そこに「内」としてあるでしょう。これは内科ということなんです。「代表氏名」というところに医者の名前が書き込んであるのです。大臣のところのは消してありますけれども、私の手元のはちゃんとそれがはっきりしております。その下に金額が示されております。一万円となっておりますね。それから「支払理由」というのが「CR研究費」となっているはずです。
 そして一枚めくっていただいて、先ほど申し上げました「臨床検査票」の一番右側の上の方に、コードナンバーというのが振ってあるはずです。番号は消してありますけれども、ここにコード番号が打たれまして、これと病院ないしは医師との関係がはっきりするように別に資料があるわけです。これは後で問題になります。
 問題は、医者に幾ら上げたいか、十万上げたければこれを十枚、二十万上げたければ二十枚、勝手にプロパーが書くわけです。筆跡を見てください。同じでしょう。上のものと下のこの臨床検査の内容も、素人が見たってわかるような筆跡です。しかも、もっとでたらめなのは、これは一枚一枚患者の名前が書かれるわけですけれども、何とか〇夫、本当にマルが書いてあるのです。大臣のそれにはありませんよ、消してありますから。「〇夫」とかあるいは「△夫」、実際にそういうのが使われている。私が持っているのはそれなんです。でたらめもいいところでございます。しかし、これがプロパーを通じて会社に報告がなされてお金が出ているわけです。つまり、会社ぐるみの営業方針であるということが、そのことからも御理解願えると思います。
 要するに、この臨床検査というのはゲンタシン売り込みの工作、便法にすぎないということなんですね。また、先ほど申し上げました工作費が売り上げの二・九%は認められているわけでございますが、それ以上もし効果ある売り込みをやる場合には、それは別途会計で落としてあげますよ、特別会計で工作費を出してあげますよということで別にマル特、マルG、マルPTA、こういうものがあるのですね。請求書があるのです。これは会社の特別会計でいま言った範囲を超す分については見てあげますよという、一つは税金対策でもあるのでしょうけれども、出ているわけです。このマル特というのは一般医のことをあらわして、マルGというのは内科の病院をあらわしているのだそうです。そして、PTAのPはパニマイシン、これは明治製薬の薬です。Tというのはトプラマイシン、塩野義製薬。それからAというのはアミカシン、これは萬有製薬から出されている薬。それに追いつけ追い越せという作戦なんですね。いずれにしても、お金は出すぞ、戦ってこい、こういうことであるわけですが、私は後の分についてはきょうは問題にいたしません。いずれまた委員会で取り上げたいと思いますけれども、いま言ったこういうやり方、これは許せるかどうか。それこそ人間の生命、健康に直結する薬の問題、それがこういう姿で売り込まれる、そして営業成績を上げようとしているこの姿、これは問題だと思います。
 ここで、あと法務大臣に、これは国公立病院の関係がかなり入っております関係上お尋ねしたいと思いますので、後でもう一度大臣にはお尋ねします。大臣の方から……。
#30
○渡辺国務大臣 新薬などを開発されますと、それの臨床実験をお願いをするという例はたくさんございます。そして報告をいろいろ手伝ってもらうということはございますが、いまあなたがおっしゃったように、医者が臨床実験の内容を書かないで外務員が勝手に書いたというお話なんですが、そういうことはちょっと常識で考えられない。常識で考えられないようなことが行われておるということだと、これは大変なことだと私は思います。
#31
○大橋委員 大変なことだと思われるだけで、何も手は打たれないのですか。
#32
○渡辺国務大臣 それはいま初めて聞いたことですから、(発言する者あり)ぼやっとしておると言えばぼやっとしておったのかもわかりませんけれども、極力早期に実態を調べて、適正な処置を法律に従ってきちっとやりますから……。
#33
○大橋委員 私はもうかなり前に報告をしているわけですから、恐らく調査はかなり進んでいると思います。
 私は事実に基づいてお話をしているわけです。ここにだれが幾らもらったかというのがずっとあるわけですよ。これはお見せできませんけれども、はっきりしているわけです。そして、この医師あるいは病院は、先ほど申し上げましたコードナンバーで明確に把握されておるわけです。そういう仕組みになっております。逆に言えば、このコードナンバーの扱いによって、部外者には何のことかさっぱりわからないような、真実を覆い隠すと言いますか、そういうものに使われているわけです。
 そこで法務大臣、後でおいでになったので全般的なことはおわかりにならぬと思いますけれども、要するに製薬会社の基本方針として、営業マン、プロパーを使って、医師にいわゆる謝礼という名目でリベートを上げているわけです。それが一人に月に十万、二十万、こういうことで臨床検査に名をかりた悪質なやり方であるわけですが、これがもし国公立病院だと医師は公務員という立場になりますが、このような形式での工作費の授受というものは、薬購入決定者という立場から買収容疑が出てこないものだろうか、これを心配するわけですけれども、いかがでしょう。
#34
○福田(一)国務大臣 お答えをいたします。
 いまのお話は実は私もただいま聞いたところでありますが、国公立の医師がいまあなたのおっしゃったようなことをしておるとすれば、これはわれわれとしては非常に問題である。事実をもっと承り、あるいは調べた上でなければはっきりしたことは言えませんが、そういう国公立の医師がそういうふうに製薬会社からリベートのような形で金をもらっておるということになったら、直ちにこれを犯罪として結びつけるべきかどうかということについて、事実の認識が必要でありますが、事実といたしますれば、われわれとしても重大な関心を持って取り調べをしなければなるまいかと考えております。
#35
○大橋委員 私は、いまこうして事実の証拠資料を手元にしてお話し申し上げているのでありますので、いま申し上げましたような姿での問題があれば、これはやはり贈収賄という姿になっていくのではないか。また、先ほども申し上げましたように、金銭の多い少ないは関係ないと思いますけれども、売り上げの二・九%がいわゆるプロパーの工作費と認められて動いているわけです。年間百億円の売り上げがあるのですから、その二・九%、約三億近いお金がこういう姿で流されている。冒頭に申し上げたのですけれども、薬を売ろうとすればまず医者をつかもうではないか、医者も、規模の小さい医者よりも大きな病院の医者をつかめ、そして、国公立病院の方が効果的であるぞというのがこの会社の営業方針のようでございます。大変なものだと思います。
 実は時間の関係もありますので、もう一つの問題に移ります。
 CR作戦第二というやつでございますが、これは工作費の名目での金縛り作戦なのです。大臣の手元に上げました二つ目の、もう一つの資料ですが、これは「申請書C」となっておりますね。その請求書はプロパーが会社の方に提出する要求書であるわけですが、ここに書かれております支払い先ですね、大臣の方は消してありますけれども、この支払い先というのがでたらめなんです。問屋の名前が書かれているのです。じゃ、本当に受け取った人はだれかというと、その上にチャンナンバーというのがありますね、一番上の方にチャンナンバーとありますけれども、大臣のは番号は消してありますよ、それが先ほどから言っておりますコードナンバーの番号が書かれるわけです。このコードナンバーの番号と医師、病院は、それこそ一目瞭然にわかるようになっているわけですね。そこで、もうここまで言えば、聡明な大臣は、これは何を意味しているかおわかりになると思うのですね。この支払い先がでたらめだと言ったわけですが、薬問屋の名前がほとんど書かれているわけです。われわれの調査で問い合わせしたら、全く存知しない、関知しないということです。そこで、番号だけ見ますとこれはわかりにくいわけでございまして、実はそれを記録しているものが、会社の方に一元的にこれが掌握されているわけです。これは見せるわけにはまいりませんが、これがその一部分なのです。全部番号が書かれまして、一覧表があるのです、これはどの会社、どの病院と。問題なのは、この中に国公立関係がたくさんあるわけです。いまのような姿でやられているというわけです。これはどう思われますか。
    〔委員長退席、栗原委員長代理着席〕
#36
○渡辺国務大臣 実態については、実は事務当局は事務当局で、新聞等にも出ましたし、あなたからの御注意等もあったので、ある程度の実態はつかんでおるようでございます。それについて政府委員から答弁をさせます。
#37
○上村政府委員 このゲンタシンは、新薬でございますから、承認後三年間副作用情報をとって、その副作用情報は私どもの方に参っておりますし、それから、最近、薬効の範囲を広げることについて治験例を収集したということがあるわけでございます。いまお話しになりました中で、最後にお話しになりましたのは交際費の関係でございますが、私ども調べました限りでは、この会社の五十一年の販売促進費は二・四%。二・九%と二・四%、若干食い違いがあると思います。それから、交際費の名目で問屋なりあるいは医師に支払われているということがあるわけでございますが、支出されました伝票を私どもも見ますと、医療機関のナンバーも問屋のナンバーも皆同じ七けたでございますので、事情を聞いた限りでは、問屋の名前を用いて医師に交際費を支払っているような事実はないと――ただ、ゲンタシンの臨床調査、クリニカルレポート、それを行う場合に、一枚につきおおむね一万円支払っているということは、私ども会社から聞いておりますし、それから開業医について市場調査をする場合に謝金として五千円程度払っておるということも聞いておるわけでございますが、聞きました限りでは、たとえばCRというものについて大体一人の医師に一遍に十枚も払ったというふうなことにつきましては、ないんじゃないかというふうに聞いておるわけでございます。
 それから、お話しになりましたPTAについては、私ども聞きました限りでは、これは御指摘になりました他社の製品についてプロパーに対する社内の特別訓練計画のことであると、この訓練で高度のディテール活動を行うので、リベートとこのPTAとは直接つながりがないというふうに聞いておるわけでございます。
 それから、マル特とかマルGというお話がございましたが、それは、マルGもマル特も、ともに五十一年の五月から十二月まで社内限りで使われたというふうに聞いておるわけでございますが、御指摘と食い違います点は、このマルGというのは病院の内科医に対してゲンタシンを新規に使用するための推進プランであると、それから、マル特というのは、ゲンタシンじゃございませんで、開業医に対してポララミンとかセレスタミンというものを新規に採用する推進プランであると、こういうふうに聞いておるわけでございます。
#38
○大橋委員 せっかくの調査でありながら、本当に的を外れた内容ばかりですね。先ほど申し上げましたように、一人に十枚、二十枚と出されておるとは思われませんし、また調査でも見つかりませんでしたと言うが、私の手元にその証拠書類がたくさんある。事実あるんですよ。それから、支払い先が薬問屋であって、それと実際の受取人が違うということもないようでございますというお話でございましたが、コードナンバーというものはここの資料にきちっと整理されているんです。これは部外の人にはわからないはずです。私の手元にはあるのです。そうしますと、このコードナンバーに示された事実の病院とか医者ですね、その人に支払われている帳簿記載になっているわけですよ。そして、この伝票にあらわれている問屋の名前は、その本人に聞けば、そういう事実は絶対ありませんと否定するんです。ですから、同じ調査をなさるのならば、本当にこういう事実を掌握する調査をしてほしい、やり方次第では幾らでもできるわけですから。ましてや、各地域に適正化委員会というものまであるわけですから、やる気になればできるわけなんです。要するに、製薬会社に対して何か遠慮をしているんじゃないか。よくないと思います。先ほど申し上げましたように、CR作戦の第二弾ですけれども、こういう姿での交際費というものは、また事実隠蔽を目途とした内容になっているわけですね。これは法務大臣、どう思われますか、こういうやり方は。
#39
○福田(一)国務大臣 先ほどお答えをいたしたのでございますが、それが事実であるといたしますれば、われわれとしては、やはり販売のやり方が何か賄賂性のものを用いてやっておるというような印象を受けるという意味で、重大な関心を持たなければならないと、こう考えておるのであります。詳しいことは、法律の関係その他もありますから、もしこれ以上必要であれば政府委員の方から答弁させます。
#40
○大橋委員 時間の関係もございますので、もう一つ問題を言わねばならぬと思います。
 金縛り第三弾ですが、添付値引きの事実があるということを申し上げたいと思います。
 これは、納入条件としましてきちっと決められているんですね。たとえばポララミンはどうだ、セレスタミンはどうなんだ、ゲンタシンあるいはGM点眼液はどうだということで、もう事細かく、たとえば三カ月間に十五万円購入してくれる者に対しては、あるいは三十万購入してくれる者に対しては、一〇%は値引きして、あるいは一〇%添付をして、あとはリベートとして自由に使ってよろしいというような取り決めがあるのですよ。その事実がこれまたあるわけです。私、たくさん持ってきているのは、だれにどれだけ添付をしたかという証拠品であるわけです。証拠書類であるわけです。実は、冒頭に中医協の、添付をしたものに対しては薬価基準から削除するということが決定されていると聞きましたけれども、これはいまも生きているのですね。
#41
○上村政府委員 中医協の決定はいまも生きております。
#42
○大橋委員 大臣にお尋ねしますが、こういう添付の事実があります。これが調査の結果明らかになった場合は薬価基準から削除しますか。
#43
○渡辺国務大臣 それは前にも削除をした実例がございますから、情状を見て削除すべきものは断固削除する。
#44
○大橋委員 私は、きょうは一製薬会社の問題を論じたいわけじゃなかったわけです。制度上あるいは行政上の欠陥、これは政府にも大いにあるわけですね。もうけ主義に走りがちな製薬会社の営業方針、これが結びつきまして薬に関する諸問題が続発しているわけです。そして保険財政に大きくはね返っておりますし、圧迫しております。そのしわ寄せが被保険者にくるということだ。今回提起されております健康保険改正案がまさにその典型的なものじゃないかと思うのです。つまり、やるべきことをやらないで、赤字が出た、さあ、国民の皆さん負担してくれと言っても、これは納得できないというわけです。今回、ボーナスからまで保険料を徴収しようとなさるわけでございますが、完全に抜本的な改正がなされた上で、そういうやむを得ない状態であれば国民も納得するでございましょうけれども、いま言ったように、ざるで水をすくうがごとき状況のままでは通らないということであります。
 また、厚生省に反省してもらいたいことは、通達だけでは実態の改善はできないぞということです。これに対してどう改めようとなさるのか。また、先ほど申し上げましたように、制度上の欠陥というのは、特に診療報酬が技術料を評価してない現在の立場にあるわけですから、この診療報酬の適正化について大臣はどのように考えておられるか。あるいは国公立病院の独立採算制というところからもこういう誘惑が起こってくるのだろうと思います。再検討の必要があると思うのですけれども、この点について大臣のお考えを聞いておきたいと思います。
#45
○渡辺国務大臣 診療報酬の問題は古くて新しい問題でございまして、いつも薬剤の問題と診療報酬の問題というのは別なようで絡まっておることも実際事実でございます。したがって、薬価基準の問題等につきましても、ときどき薬価基準の改定というのは行っておるわけでございますが、そのときもやはりバルクライン九〇というもので薬価基準の調査をやっているわけですから、実際の納入価格と薬価基準との間には当然食い違いのあるところはたくさんあるわけであります。したがって、そういうものの裏表で診療報酬が決められておるわけであります。ですから、診療報酬だけ取り上げて、ともかく安過ぎるから全然別にということになれば、当然薬価基準の問題も洗い直しということが出てくるのはあたりまえのことであります。でありますから、そういうことはよく専門家の意見を聞いて、一遍洗い直しをしなければならぬ、こういうことでやっております。
 それから、国立病院にそういうような誘惑が多いのではないかというお話でございますが、先ほども申し上げましたように、臨床実験の問題は、一般論で申し上げますというと、やはりいろんな機関に発売をするに当たっては臨床のいろんな実験データをもらわなければ大々的な販売はできない。どういうような副作用が出てくるのかわからないわけですが、したがって、お願いをする。お願いをする場合に、全部ただでお願いをしてもなかなかやってくれないというのも現実の姿でございます。でありますから、私は、臨床実験をお願いして、それに対して実費をお支払いするということ自体悪いと考えておりません。ただ問題は、国立というような公的機関でそういうことが許されていいのかどうかというところに問題がたくさんあろうかと存じます。しかしながら、国立にはりっぱな組織もあるし、りっぱな人もおりますから、そういう人にやはりお願いをして、組織的にどういうような薬の効果があるかということについて一切禁止をしてしまうということも、国民全体の医療問題からしていかがなものであるか、これは非常に実は実務上問題のあるところであります。
 しかしながら、先ほどあなたがおっしゃったように、実際は医者が臨床実験のデータを書かないで、でたらめなデータを外務員が書いたとすれば、これはお話にならない話なんですから、そこらのところは実態というもの、真実を一遍確かめてみなければ何とも申し上げられない。したがって、私の方で事務当局でも調べておりますが、調べて、それがうそを言われても、一人一人の医者に当たって聞いたわけではないし、その薬剤会社から聞いたのだ、それではその薬剤会社皆うそを言っておるのじゃないかという疑問の出るのも当然でございます。したがって、調査を促進するために、ないしょで結構ですから、あなたの持っておるそれをちょっとお借りをして早く真実に至りたい、こう思っておりますから、何分の御協力をお願い申し上げます。
#46
○大橋委員 法務大臣、お帰りになって結構です。
 きょう大蔵大臣来ていただいておりますが、大蔵大臣はあと、年金問題で必要でございますので、最後まで残っていてください。
 それでついでで申しわけないですけれども、厚生大臣、問題は、いま医療制度、医療保険制度、二つの制度があるわけでございますが、これが大変な欠陥があるわけですね。それを根本的に洗い直さねばならぬというのがいわゆる抜本改正ということなんですよ。先ほど申し上げたのですけれども、十年前、坊大蔵大臣が厚生大臣であったときに、強行採決をなさったその委員会で発言なさったときにも、必ずや抜本改正をいたしますと言って今日までできていないのです。今度福田内閣は連帯と調和をよく口になさるわけでございますが、連帯と調和も信頼感がない限りは芽生えてこないものだと思いますよ。幾ら口で抜本改正をやります、やりますと言っても、実行がなければ、それこそ口先だけですよ。渡辺厚生大臣は実行力のある方、そうして勇気のある方、いろいろと私は厚生大臣の力についていろいろな方から評価されたことを聞いておるのですが、口先だけではなくて、本当に抜本改正に着手するかどうか、それをお尋ねしたいと思います。
#47
○渡辺国務大臣 これも古くて新しい話でございまして、みんないろいろな改革案について総論賛成なんですが、各論になるというとなかなか意見がまとまらないということが多いわけです。したがって、私はやはりいまのままでいいというふうには思ってない。根本的にどの程度まで変えられるかはまたこれからの問題でございますが、極力矛盾、不合理、それから非能率、そういうものは直さなければならないし、不公正を是正していかなければならぬ。こういうことについて、特に国会においても各党のコンセンサスがとれるということになれば、断固これは私はやりたい、こう思っております。
#48
○大橋委員 いま確かに税制面では不公平税制の是正ということが最大の課題で動いておりますね。それと同じように、国会の方でこの抜本的な問題を各党が整えてくればやりますということですね。
#49
○渡辺国務大臣 ですから、いまのままでいいと私は思ってない、改めたいと思うところもないわけではありません。だから専門家の意見を聞いておるわけです。老人医療問題にいたしましても、年金の基本構想にいたしましても聞いておるわけです。
 そこで、各党からもいろいろこれから注文も出ることでしょうし、なかなか各党全部同じ意見が出るかどうか、これはわかりませんけれども、そこで共通なものが出れば、直すべき方向について自民党も含めて各党これでいこうということになれば、それば非常に結構なことですから、私は断固やります。第一、法律を通すには国会にかけなければならぬし、いま自民党でごり押しといっても正直なところこれはなかなかむずかしいのですよ。ですから、各党の意見がまとまれば断固やります、こういうことを言っておるわけです。
#50
○大橋委員 はなはだ勇気ある発言だと思いますが、医師会の方は大丈夫ですね。
#51
○渡辺国務大臣 それは医師会の問題も各党がまとまれば――多少医師会は医師会としていろいろ立場がございましょう。ございましょうが、本当に医師会に左右されないで各党がまとまれば、それはまとまったところでやりますよ。
#52
○大橋委員 なかなか希望の持てる発言だと思います。いまお年寄りの問題が出ましたけれども、若くて元気な時代は組合健保に入って、中高年、いわゆる罹病がちになって退職し、その後政管健保、国保に入っていく。これでは社会保障の理念からいっても、あるいは勤労者のライフサイクルの観点から見ましても、保険財政の上から見ましても不合理でありますね。ですから、やはりこれは断固システムそのものを変更させなければならない、またその時期が来ている、私もこう考えております。
 また、老人医療につきましては、単に医療の面だけではなくて、健康管理、予防、リハビリテーションまで含めて医療体制をつくるべきだと私は思うのでございますが、たとえば老人保険などがいろいろと考えられているということを聞きますけれども、これに対する大臣の見解を聞いておきたいと思います。
#53
○渡辺国務大臣 私はいまこうしようという一つの案は持っておりませんが、確かにいろいろ議論がございます。組合保険でずっと勤めてきたのだが、病気一つもならずに定年退職になってしまった、後は国保でめんどうを見てもらっておる、矛盾しているではないかという議論もあります。もっと組合保険でそれはつないでくれという意見もあるし、老人の問題は共通な問題だから別につくったらいいではないかという意見もございますし、いろいろな意見があるわけです。ですから、そういう意見等をどんどん出していただいて、そうして実行可能なところから――政治ですから、理想論ばかり言ってみたってそれはなかなかまとまりはつかない。ですから、皆さんが譲り合うところは譲り合って、実行可能なところで、それが国民医療に一番いいというところに達すれば、私はそういうふうにやっていきたい。したがって、老人医療の問題についてはこういうふうにやるのだという結論は私はいまのところ持っておりません。持っておりませんが、いまのままでいいというふうにも思っておりません。
#54
○大橋委員 いずれにいたしましても、渡辺厚生大臣は大変な意欲を持って抜本改正に着手していく、こう理解していいですね。
 それではちょっと立場は変わりますけれども、医療保険における患者負担率は現在どのようになっているかということをお尋ねしたいと思います。
#55
○八木政府委員 お答え申し上げます。
 政府管掌健康保険につきましては、本人について一部負担、家族については三割の自己負担額がございます。そのほか高額療養費等がございますので、そういう分を計算いたしますと、政府管掌健康保険で平均いたしまして一一・五%でございます。それから組合健康保険におきましては、本人、家族を平均しまして一〇・五%、日雇い健康保険におきまして五・八%、それから国民健康保険においては二六%でございますけれども、老人医療等の公費負担がございますので、国民健康保険の場合に、老人医療等の公費負担を除きますと、実質の負担率は一七・四%という数字でございます。
#56
○大橋委員 私が厚生省に問い合わせまして調べた内容では、患者負担が一三・四%であって、保険、公費による総給付費は八六・六%に当たる。要するに平均的にならすならばもうすでに八七%の給付が可能である。つまり本人も家族も格差をなくして、一律に九割程度の支給ができるというような現状になっているわけですね。工夫すれば本人、家族の格差をなくすことができる。先ほど申し上げましたように、抜本的な改善が行われた、それを前提としまして、私は軽症患者は多少の負担はあっても、重症あるいは低所得者、そういう人には負担を一切なくして安心して医療が受けられるような体制にしなければならぬ、効率的、重点的な制度に仕組みを再編せねばならぬ、このように考えているわけでございますが、健保の問題としてはこれで終わりたいと思いますので、最後に一言。
#57
○渡辺国務大臣 この前も社会党の小林議員から大体似たような御趣旨の非常に勇気ある発言がありまして、私も感激をいたしておるのです。今度は公明党から同じような御発言があって、私はこれはやはりだんだん大勢になっていくんじゃないかなと、そういうこうは真剣に考えていきたい、そう思っております。
#58
○大橋委員 時間の関係もございますので、年金問題に移らさせていただきます。
 急激かつ大規模の高齢化社会に突入したと言われるわけでございますが、このような変化に対しまして、政府としてはその準備、対応はほとんどなされていないというのが実情であろうと思います。高齢化社会というのは、単に年金制度を整備すればよいというものではございませんけれども、本日は年金について若干質問してみたいと思います。
 まず、国際的に見た場合、わが国の年金水準をどう思われているかということです。
#59
○渡辺国務大臣 去年の年金の財政再計算に当たりまして、水準としては大体北欧並みだと私は思っております。ただ、御承知のとおり、実際の給付の実態というものは、歴史が日本浅いですから、ともかくそれよりも劣っておることも事実です。しかし、いずれ二十五年厚生年金をかけた人は、九万円年金が実現しておるし、ことしは十万円年金が実現しそうだというようなことでございますので、歴史の問題とか負担の問題とかを考えると、大体年金水準はまあいいところにいっているのじゃないかなという気がするわけです。
#60
○大橋委員 なるほど計算すれば、計算の上で出てくる数字はヨーロッパ並みかもしれませんね。しかし、現在の老人に対してどのような老齢年金が支給されているかという実態論からいくと、そんなことは言いがたい心境になろうかと思います。
 事務当局に、現在老齢年金を受給している総数とその内容を報告してもらいたいと思います。
#61
○木暮政府委員 昭和五十一年三月末現在の数字でございますが、老齢年金受給者は八百八十二万五千人でございます。そのうち、老齢福祉年金を受給しております者は四百二十一万人で、四七・七%を占める次第でございます。なお、国民年金の五年年金受給者は百十三万六千人でございますし、また十年年金等経過的老齢年金を合わせまして、百五十九万五千人の人が受給をしておるわけでございます。先ほど申し上げました福祉年金の受給者を合わせますと七八・六%になる、こういう状況でございます。
#62
○大橋委員 大臣いまお聞き及びのとおりでございまして、老齢年金を受けている総数の約八割に近い七八・六%が現在の年金額で一万三千円から二万五百円の中にいらっしゃるのですよ。よろしいですね。いま現に受けているお年寄りの年金受給者、現に受けておる方ですよ、その八割が一万三千円から二万五百円、いわゆる二万円程度の低い額であるというのが実態なんです。これは御理解願えましたですね。
#63
○渡辺国務大臣 だから、先ほど申し上げましたように、やはり歴史があるんでございます。たとえば老齢福祉年金も、当時としては敬老的な意味で最初は始まったわけです。それがだんだん一万三千五百円、ことしは一万五千円、それで四百二十万人もいるではないか、もっと大幅に上げろ、これは私も上げたい、上げたいけれども、御承知のとおりこれは無拠出でやっておるわけですから、みんな国民の税金で国民が出し合ったものから差し上げておるという状態なので、千円上げるにしても六百億円かかる。二万円にしろという御意見もございます。そうすると、五年年金よりもふえてしまうではないかという議論もあります。五年年金も上げろ、じゃ十年年金はどうするんだ、これも上げろ、それじゃ二十年掛けたらどうするんだ、これももっと上げろ、じゃ恩給はどうするんだという話になると、仮に五千円上げるにしても数千億円、莫大な金が必要であってその金はじゃだれが出すのですか。国民が出すのか。結局は国民が出すのですが、税金で出すのか、直接保険費で出すのか、臨時的に赤字公債でも発行して出すのか、三つに一つしか方法ないということになりますと、どうしてもこれは財政上の問題を無視して議論をすることはできない。本当にそういうことで、この窮乏した財政の中でともかく七千七百億円の福祉年金を出したということは、これは福田内閣としても目玉商品だからやったことだし、坊大蔵大臣もよくそれは協力してくれたなと私は思っておるわけでございます。
#64
○大橋委員 いま福祉年金の話が出ましたのですが、これは無拠出だ、経過的措置だ、前はお恵み程度だったけれども、それでも大分変わったじゃないか、要するに、もっと上げたいけれども何といったって財源がないんだ、結論的にはこうおっしゃったんだろうと思います。私たちもそれはよく知っております。加入したくても加入ができなかった方なんだ、お年寄りなんですよ。そして、言うならばわが国の日本経済を、今日の発展をもたらした、それを支えてきた功労者的な方々でもあるわけですよ。それは理屈を言えば幾らでも言えるわけでございますが、実態的にじゃそのお年寄りに対してどうしていったらいいか、福祉年金はどうしたらいいかということは、もう二年前の昭和五十年の二月二十二日、やはり私はこの予算委員会で不公正是正の集中審議という立場で質問したときにも、当時の厚生大臣も、それから現在の総理、その当時の福田副総理は、もうはっきりと二万円程度のものは直ちに差し上げねばならぬというような意味のことをおっしゃっているのですよ。あなたは、もっと上げたいけれどもお金がないから上げられないのだ、こうおっしゃったのですけれども、現在で大体どのくらい上げたいという気持があるのですか。
#65
○渡辺国務大臣 いまの財政事情その他、ほかの年金とのバランスから言えば、まあ一万五千円が妥当なところかな、こう思っております。
#66
○大橋委員 社会保障制度審議会が、福祉年金もいわゆる生活保障的色彩を帯びる年金として支給すべきであるぞ、こういうことを言っていることは御承知ですね。あるいは国民年金審議会もそのような趣旨のことを言っていることも御存じですね。ちょっと確認をしておきます。
#67
○渡辺国務大臣 そのように承っております。
#68
○大橋委員 いま生活保護費が老人一人、七十歳以上の女の方でどのくらい出ていると思われますか。
#69
○渡辺国務大臣 事務当局から数字を説明させますが……。
#70
○大橋委員 時間の関係で私が申し上げますので、もし間違いがあったら訂正願いたいと思います。
 生活保護基準、五十一年度当たりで、老人一人世帯、七十歳、女、無職、これで四級地で三万一千七百九十六円になっているはずでございます。それから厚生省の厚生行政基本調査によりますと、老人世帯及び母子世帯生計費として、老人一人世帯で昭和四十九年で三万四千六百五十円という統計が出ております。こういうのから見てまいりまして、一万五千円が妥当ではないかという考えはいまの財政硬直の立場から見た場合の話でしょう。
#71
○渡辺国務大臣 それは無拠出年金を生活保護と比較すること自体がぼくはちょっと無理ではないかという気がするのですよ。御承知のとおり生活保護の場合は、財産もなくて身寄りもなくて、そして働こうとしても働けない、子供が多いとかいろいろな事項によって、そういうような方に差し上げる、みんなでひとついたわって助けていこうという制度でございますし、この老齢福祉年金の場合は、御承知のとおり財産には関係ないわけですよ。多くの財産を持っておろうが家族の所得が八百七十六万以下ならばみんな一律に差し上げておる。それから、だんなさんが中小企業の社長で八百万円所得があって財産が二億円あっても、奥様には差し上げようというのがいまの制度でございますから、それを一律にただ生活保護費と比べてそれは安過ぎるではないかという議論はいかがなものかと私は思っております。
#72
○大橋委員 もう時間がだんだん迫ってきましたから私の方から申し上げますと、昭和五十年二月二十二日の予算委員会では、当時の厚生大臣が、二万円というのはもう内閣の、総理の公約でもある、私もぜひ五十一年度から二万円にしたい、実施したいと、もうはっきり公約なさっているほどなんです。そういう立場からいけば、あなたの考え方も大分後退したということですね。また、その当時の厚生大臣も、公約はなさったけれども実際的には実現してないので、これも公約違反ではあるわけでございますが、いずれにいたしましても私は、このように財政が硬直化していく立場からは、一般会計からの福祉年金引き上げはこれはやはり困難だ、こう判断しまして、資金運用部資金からお金を借りてやればできるじゃないかという私の案をそのときに示したのです。そうしましたら、大変ありがたい案だとおほめの言葉もいただいたりしたわけでございますが、要するに、やり方は幾らでもあるから五十一年度から二万円にはするぞという会議録がここに実はございますが、時間の関係で読み上げることを省略いたします。こういう考え方についてそのとき私案として出したのですけれども、財政法上の問題があるのでとかいって明快な答えがそのときはなかったのです。ところが今日は、すでに財政法上の問題いわゆる財政法第四条の赤字公債云々という規制は実態的に外されたと思います。また、一兆円を資金運用部資金に求めている実際の動きがありますね。そういうことから、見返りがないものに対しては資金運用部資金から借りられないということも、もう反論できなくなった客観情勢になってしまったわけです。ですから、私は私の考えをそのまま必ず実行しなさいと言っているんじゃないのですけれども、こういう考えでいけば現実問題としてできるじゃないか、こう言っているわけです。
 そこで、私がもう一つここで申し上げておきたいことは、資金運用部資金の中に厚生年金の積立金があるわけですね。その厚生年金の積立金が大変な目減りをしているわけです。
    〔栗原委員長代理退席、委員長着席〕
私は、昭和四十八年から五十一年の四年間にまたがってどの程度目減りをしたか調べてみたわけでございますが、厚生大臣、四十八年から五十一年に厚生年金の積立金がどの程度目減りしたと考えられますか。
#73
○木暮政府委員 お答え申し上げます。
 年金積立金の目減りの問題でございますが、定義はいろいろあろうかと思いますけれども、仮に当時の物価上昇率と運用利回りの差だけが実質価値がなくなるというふうな計算をいたしますと、四十八年から五十一年にかけて約二兆円という数字が出てまいります。
#74
○大橋委員 これはおかしいですね。私が申し上げます厚生年金積立金、これは厚生省から取り寄せた数字でございますが、四十八年度末六兆六千七百億、これは端数は切り捨ててあります。四十九年度末が八兆一千九百億、五十年度末十兆一千四百億、五十一年度末、これは見込みですけれども、十二兆三千四百億、これは数字は間違いないでしょう。
#75
○木暮政府委員 そのとおりでございます。
#76
○大橋委員 これは経企庁で調べた物価上昇率でございますが、四十八年度一六・一%、四十九年度二一・八%、五十年度一〇・四%、五十一年度九・四%であります。これで目減りを計算してまいりますと、四年間の目減りが五兆六百億になります。五兆六百億ですよ。
 一例を挙げますと、昭和四十八年度末の六兆六千七百億円に掛けるところの一六・一%ですから、〇・一六一を掛ければ一兆七百億円という計算になりますね。
#77
○木暮政府委員 目減りの定義でございますが、いろいろあろうかと思いますけれども、私先ほど申し上げましたのは、四十八年で申し上げますと一六・一%の物価上昇があったわけでございます。しかしそのときに運用利回りが六・四%でございましたので、その差の九・七%が目減りした、こういうことで計算をいたしたわけでございます。そうしますと、先ほど申し上げましたように約二兆ということになるわけでございます。
#78
○大橋委員 年度末の厚生年金の積立金の額というものは、利子はちゃんと含まっているわけですよ。利子が含まった上での計算で出てきているわけじゃないですか。そうでしょう。それをそういう考えでごまかそうとなさっては困ります。四年間で五兆六百億も目減りしているのです。計算ではそうなるのです。厚生年金保険料がこの四年間に幾ら入ったかといいますと、八兆三千六百億円ですから、この五兆六百億円の目減りを引きますと、実質三兆三千億円しか保険料の収入がなかったということになるのです。要するに八兆三千六百億円保険料が入ったみたいに見えますけれども、その中の六〇・五%は目減りで消えてなくなったということになるのですよ。
 もう一つおもしろいことは、厚生年金給付費、四十八年度から五十一年度に給付された額が三兆三千九百億円です。これは間違いないでしょう、厚生省から出ている数字を足しただけなんですから。三兆三千九百億がその間に給付された額であって、目減りが五兆六百億、目減りの方が大きいのですよ。厚生大臣、私が、資金運用部資金を借りて老齢福祉年金を引き上げて、そして活用していきなさい、と言うのはここに論理があるのですよ。目減りでむざむざなくしていくよりも、実際の現在の価値でもってお年寄りに少しでも多くの額を支給して喜んでもらった方がいいんではないか、こう言っているわけです。
 大臣、私のいわゆる私案なるものをもう一回再検討なさって勇気を持って実施なさる考えはないか、お尋ねいたします。
#79
○渡辺国務大臣 私は、福祉年金の問題についてはバランスの問題がございます。それだけでは済みませんということを先ほどから言っておるので、老齢福祉年金をこういうふうな借り入れを持ってきて引き上げるということは実は考えておりません。
#80
○大橋委員 いま年金制度というものはすべてがもう行き詰まりを来そうとしているのです。国民年金しかり、それから国鉄の共済年金しかりですね。そして厚生年金、もう制度という制度はみんな大変な行き詰まりが来ているのです。だからこそ抜本的な改善を要求しているわけです。厚生省も、ちょうど選挙の真っ最中でございましたが、基礎年金、五十三年をめどにというのを発表なさいましたね。あなたじゃございません、前の厚生大臣ですけれども。基礎年金、五十三年をめどに、これは現在の年金制度の欠陥をこのまま見逃すわけにいかない、やはり制度の統合をやらなければならない、どんぶり勘定的な統合は無理だ、少なくとも基礎的に生活ができる年金にしていこうという。わが党はトータルプランの中で基本年金構想というものを打ち出しております。厚生省としてもその物の考え方はわれわれの考えと似通っておると思うのです。五十三年をめどに年金制度を抜本的に改善しますともう発表しているのですよ。その気はありますか。
#81
○渡辺国務大臣 その気はございます。ございますから、年金構想の基本問題の懇談会等をつくってやっておるわけでありまして、各給付間のばらつきとか、いろいろな条件の違いとか、いろいろございます。そこで、あなたの言ったような基礎年金構想的な考え方もあるし、いろいろございますから、それは五十三年をめどに有識者の意見を聞いて改定をしようということで目下作業をしておる。したがってその気はございます。
#82
○大橋委員 それではその抜本的改善の中で福祉年金の問題もともに改善されていくと理解しておっていいですか。
#83
○渡辺国務大臣 それは全部ひっくるめて検討するわけであります。
#84
○大橋委員 福祉年金の受給者といえども、これは一個のりっぱなお年寄りでございまして、当然生きる権利はあるわけですね。憲法で示す第二十五条の規定から見ていった場合、当然生活できる年金を受ける権利があると思いますが、その点はどうですか。
#85
○渡辺国務大臣 それは、福祉年金をいただく方も生きる権利があるのは当然だと私は思います。
#86
○大橋委員 私がいま言っているのは、生活ができる年金額を受ける権利がありますねと聞いたのです。
#87
○渡辺国務大臣 ですから、福祉年金の場合は、先ほど申し上げましたとおり、無拠出制でやっておるわけでございまして、生活保護と同じように待遇をしろと言われたら、条件は生活保護と同じにするのですかと、話がそうなってしまうのですから、それはいろいろやはり検討しなければなりません、こういうことです。ですから、福祉年金だけで生活するだけの年金を出しますかということになりますと、いろいろ条件その他も考えなければなりませんので、全部ひっくるめてそれは再検討いたします、こう言っているわけです。
#88
○大橋委員 最後に一言。五十年の二月二十二日のこの予算委員会で、少なくとも五十一年度から福祉年金の二万円を実施したいと当時の厚生大臣が発言をして、関係者の方々は大変感謝なさっておりましたが、それを裏切られ、一年裏切られ、二年目も裏切られた。いまは喜びが変じまして大変な怒りでございます。そのお年寄りの声が、あなたの耳にもあるいは胸にも伝わってくる日が来るだろうと私は思います。本当にもっと血の通った政治をとっていただきたい。これから先の厚生行政というものは、それこそ国の行政の中で最も重要な内容だと思いますので、一段と決意を深められてその指導に当たっていただきたいことを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
#89
○坪川委員長 これにて大橋君の質疑は終了いたしました。
 次に、田川誠一君。
#90
○田川委員 参議院の選挙が七月に行われますが、もうそろそろ準備が盛んに行われているようでございます。この参議院の選挙を前に控えて、私は政府に対していろいろ御注意を申し上げたいこともございます。
 大蔵大臣はいまいいですからどうぞ後で……。ちょっと休んでいてください。
 企業ぐるみ選挙という言葉がもう古くから使われておりますが、この企業ぐるみ選挙が非常に活発に行われたのは第一回参議院選挙、もうずいぶん前のことでございますが、この企業ぐるみ選挙が当初はずいぶん効果があった。私どもが調べてみますと、たとえば企業を代表する候補者、そういう方々が立候補するだけで相当の集票能力を示してきた。全国区の高位の当選者を見ましても、大企業の社長さん、あるいは大企業の労働組合わバックにして出た方々が、立候補しただけで相山大きな票を集めるようになってきた。そういう小業ぐるみ選挙が最近は姿を変えてきた。というのは、選挙民の意識、企業に従来する職員の政治的な意識が高まってきて、会社やあるいは組合の言うことを簡単に聞かなくなってきたという現象が最近あらわれてきているわけです。これは、いま申し上げましたように、政治的な意識が高まって、単に会社からあるいは組合からこの人をやれと言っても、企業の代表をやれ、組合の代表を応援しろ、こういう指令を出しても、だんだん聞かなくなってきたというのが最近の企業選挙の実態で
 はないかと思うのです。ですから、いま企業選挙はそれほど効果がなくなってきたと言ってもよろしいのではないかと思うのです。しかし、それとうらはらに、企業や組合から出る候補者を当選させようとするために、企業内、労働組合内における締めつけというものが逆に強くなってきている。そしてその結果は、政治信条の自由を侵すような事件もずいぶん出てきているわけです。
 私がきょうここで指摘をしたいことは、そうした政治信条の自由が侵害されるおそれが出るというような事件が出てきている、そういう問題もございますけれども、もう一つ違った現象があらわれてきているのは、企業や労働組合の締めつけがなかなかきかないので、人間を動員する。ものすごい人間を動員して、何とかして企業選挙の効果をあらわしたいというような現象もあらわれているのです。そういうような新しい企業ぐるみ選挙の実態を御紹介して、そして政府に対して、こういう状態をどういうふうに見ているか、またそういうような現象に対してどのように対応していくかということを少しお尋ねしていきたいと思うのです。いろいろ弊害が出てきている。福田総理は、政治に金がかからないようにしたい、選挙に金がかからないようにしたいとおっしゃっていますけれども、金とは別に、うらはらに、膨大な人件費が使われている。また、人件費ばかりではなく、いろいろな資材、ポスターだとか、そういうものが使われているわけです。ですから、金権選挙といっても、単にお金ばかりの問題じゃない、そういうことを指摘をしたいのでございます。
 そこで、本論に入る前に、自治省に一つ、二つお伺いしたいことは、政治資金を与える、寄付をする、この政治資金というのは、政治資金規正法に定義が出ておりますけれども、これはお金だけのことであるか、それとも金にかわる労務提供、そういうものも含めているのかどうか、これをまずお伺いをしたいのですが、これは少し法律の問題ですから、大臣が答弁できれば大臣でも結構ですし、事務当局でも結構でございます。
#91
○小川国務大臣 いま御質問の点につきまして、法律の解釈を申し上げますが、政治資金規正法の第四条三項に寄付について規定をしております。「金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付で、党費又は会費その他債務の履行としてされるもの以外のものをいう。」、こうなっておるわけで、ここに申しまする「財産上の利益」というのは、金銭、物品に限らず、また有体物、無体物のいかんは問わない、こういうことになっておるわけでございますので、労務につきましても寄付の対象となり得る、このように理解すべきものだと思います。
#92
○田川委員 労務の提供も政治資金とみなされるということですが、もうちょっと具体的に質問をいたしますと、たとえば企業が推薦をする、あるいは労働組合が推薦をする候補者並びにその候補予定者あるいはその政治団体、そういうものに対して、選挙の前に、選挙の準備のために企業側からあるいは労働組合側から何人かの人がお手伝いにいく、そうしてそのお手伝いをした人たちに対する給与は差し引かないで、天引きをしないで、そして会社にいると同じように給与をそのまま与えている。こういうことは企業やあるいは労働組合が労務提供をしているというふうにみなしてよろしゅうございますか。
#93
○佐藤(順)政府委員 労務が寄付の対象になり得るということはただいま大臣から御答弁を申し上げたとおりでございますが、しかし、労務と申しますのは純然たる労務を申すのでございまして、たとえば選挙運動員が行う選挙運動のように、本来自発的なそしてまた奉仕的な手弁当で行うような性質のものは公職選挙法上も報酬を支給してはならないという規定があるものでございますが、このようなものにつきましては、これは労務の提供には入らないわけでございます。また、受ける側からいたしまして、労務を提供する労務提供者と意思を通じていない労務提供、これらのものについては労務の提供を受ける側が承知するところとなりませんので、これは寄付には当たらないということはございますが、そのほかいろいろと実態によりまして判断をする必要があることはあるわけでございますけれども、一般論としては該当する、こういうふうに言えると思います。
#94
○田川委員 いま選挙中のことを選挙部長がおっしゃいましたが、選挙中に企業から何人かのあるいは何百人かの人が出ていった、そういう場合には労務提供にならないとおっしゃいました。自発的に無報酬で選挙に働くということですね。その場合に会社が給与を払っている。つまり私が質問したいのは、会社の就業中に何十人か何百人かの人が企業の推す候補者の運動をする、こういうことは、その給与についてはどう見ますか。
#95
○佐藤(順)政府委員 給与につきましては企業内部の問題でございまして、政治資金規正法の問題ではないと存じます。先ほど申しましたとおり、いま特定の候補者のところに選挙運動のために人を動員するというお話がございましたが、そもそも選挙運動員が行う選挙運動というようなものにつきましては、これをいわゆる純然たる労務と考えておりませんので、労務の提供は寄付となり得るけれども、選挙運動員の行う選挙運動のようなものは本来無報酬である性質を持っておりますので、これは寄付にはみなされない、こういうふうに考えております。
#96
○田川委員 労働省来ていますか。――いま選挙部長が、選挙中における企業から立候補している人たちに対して給与を払っている、給与を差し引かない、この問題は労働組合法にも関連があると思うのです。労働組合法の第三条には不当労働行為というのがある。不当労働行為の中に、企業が労働組合に対して経理援助をすることを条件つきで禁止しております。いま私が例に挙げました問題について、労働法との関係はどうなりますか。
#97
○越智政府委員 ただいま先生の御指摘でございますが、企業が選挙運動に出た労働者に給与を払った、こういうことにつきまして、この限界というものが非常にむずかしいわけでございますが、一般的に労基法の三条、これによりますと……(「あなたならどうするかを聞いている」と呼ぶ者あり)それは直ちに組合へ援助したとは解釈がむずかしいと、こういうふうに判断をいたしております。
 なお詳しいことにつきましては政府委員から御答弁を申し上げますが、なかなか使用者側、労働組合側、これの意思が一本になっておる、言いかえますと、一人の方を双方の意思によってやったような場合、非常に限界がむずかしいと、こういうふうに解釈をしておりまして、それが直ちにこの不当労働行為につながるということには解釈できないと、かように判断をしております。
#98
○青木政府委員 お答え申し上げます。
 先生御指摘のとおり、労働組合法の第七条第三号におきましては、経理上の援助を不当労働行為として禁止いたしております。これは憲法二十八条に基づきまする団結権の行使、それに対して使用者側が経理上の援助を与えて介入していくということを禁止いたしておるわけでございます。
 なお、労働組合は、組合法一条にもございますように、勤務条件の維持、改善を主たる目的として結成されるものであります。したがいまして、労組法で保護の対象といたしておりますのは正当な労働組合活動でございます。
 なお、近年におきまする政治、経済、社会情勢の進展等に伴いまして、労働組合も付随的に政治活動を行うことは禁止されておりませんし、現実に行われておりますが、その面につきましては、労組法第七条に該当するかどうかという問題は、政治行為の幅も非常に広うございます。そういう面で、個々のケースがどうなるかは専門機関でありまする労働委員会がケースにおいて判断する、こういうかっこうに相なると思います。
#99
○田川委員 具体的な事実を示して申し上げた方がわかりやすいと思いますから、後ほど具体的な事実を紹介いたしますが、その前に選挙部長にもう一言伺いたいのですが、選挙運動中の企業から人を出す、これは労務提供にならない、こういうことをおっしゃいましたけれども、それでは、これは重大な問題だと思う。労務提供にはならないけれども、企業が選挙運動に対して金を出したということじゃないですか。これは考えようによっては買収になりはしませんか。いかがですか。
#100
○佐藤(順)政府委員 まず、前段の問題について誤解をお解き申し上げておきたいと思うのでございますが、選挙運動期間中に選挙運動員が動員されたというお話でございましたので、選挙運動員が行う選挙運動は純然たる労務の提供とはみなされない、こう申し上げたのでございまして、お願いいたします。
 それから、後段のお尋ねにつきましては、これは非常に事実認定のむずかしい問題があるのではないかと存じますので、にわかに御答弁いたしかねる次第でございます。
#101
○田川委員 後で私が全部具体的な事実と資料を示して申し上げます。
 それからもう一点、基本的なことをお伺いしたいのですけれども、企業内で特定の政治団体あるいは宗教団体の機関紙を配布をした、あるいは持っておった、そういうものを持っているために不当な差別を企業の中で受けるということは、政治信条の自由を侵害されるような疑いが濃厚ではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。これは法務省はまだ来てませんか。――これはいませんから、後で聞きましょう。
 そこで私は、これから以下具体的な例を示して政府に見解をただしたいと思うのですが、以下は私が数人の者に調査させまして、私自身も調査いたしました。具体的な事例を御紹介いたします。
 その企業は、東急電鉄、東急車輪、日産、富士急電鉄、鹿島建設、こういう会社が企業ぐるみで選挙をやったその実態でございます。私は、一党、特定の政党を指して申し上げているわけではございませんし、特定の候補者を指して申し上げているのではない。あくまで企業の問題として、また企業と労働組合との関係について申し上げたいのでございます。
 最初に東急の例、東急電鉄あるいはそれに連なる関連企業について申し上げたい。東急電鉄並びにその関連企業が、昨年の十二月の衆議院の総選挙に一体どれだけの人間を動員しているか。私どもの調べたところによりますと、最高時、一番最高のときに一日六百人動員しているわけです。そして、その中の多くは特別休暇の名義で実際に選挙運動あるいは選挙の準備の活動をしております。そして、特別休暇という名称を与えておりますけれども、調べてみますと、どうも後で年休をその分だけ差し引いたというようなことは見られません。また、給与はそのままであります。給与を差し引いたような形跡も見られない。さらに、四十七年の前回の衆議院の選挙におきましては、東急の場合は、ロッキード事件でいま裁判になっております佐藤孝行君のところに東急が二十数名の人を数カ月にわたって派遣をしております。これはもう会社の出張です。そういうような実態でございますが、実は、これに参加をした、東急グループが推す候補者に動員をかけられた方々から私はじかに聞いた話でございますが、どういうやり方をやっているかというと、動員された一般の社員は、一日大体八十軒から九十軒戸別訪問を命ぜられているわけです。それで、上級社員、たとえば部長とか重役になられる人たちは一日二軒か三軒ぐらい。そういうような、これは選挙前も選挙中も同じようなことが続けられているわけです。この中には、社命だからどうしてもやらなければならぬ、生活がかかっているからとにかくやらなければならぬということで、いやいややっている人もずいぶんあるわけです。なぜ下級社員が一日八十軒も九十軒も回らなければならぬか、選挙前も選挙中もやらなければならぬかといいますと、回った人の話を聞きますと、われわれ下級社員は、とにかく一軒一軒訪問するにも、二十分、三十分もいたらいろいろへまもやるようなことになるかもしれないということで、玄関先に入ってちょっあいさつをする程度ですぐ帰ってこなければならぬ、ですから、一日八十軒、九十軒というノルマを与えて、できるだけ一軒の家に長くいないようにさせるための戸別訪問だ、こういうことのようですね。これは回った人の話を聞いたわけです。そういうたくさんの人が社命によってこういうような運動を一生懸命やらされているわけです。
 また、日産自動車の場合を例にとって申し上げますと、日産自動車の場合は、県会議員の場合、これは立候補した人から聞いたのですが、県会議員の場合は、選挙中は一日大体三百人企業から動員をされる。組合から動員される。そうして、選挙の半年前ぐらいはもっとずっと少なくて、一日三十名から四十名、こういう人たちが実際に選挙の準備あるいは選挙運動あるいは組合活動、こういうことをやっていると私どもに言っております。
 富士急電鉄は選挙違反がずいぶん起きたようでございますが、富士急電鉄の場合は、選挙前は九つの町や村単位で大体十五名の社員の専従を置いて、大体一日二千人ぐらい動員しているというんですね。これは朝日新聞にも当時の山梨版に書かれております。
 そういうような人の動員というのは非常に莫大な量に上っているというのが最近の企業ぐるみ選挙の実態なんですね。これは人件費に直したらなかなか大変な人件費になるんですよ。こういう人件費が政治資金とみなされない。選挙の前は、これは明らかに政治資金と、いま政府がおっしゃったような解釈からすれば、これは政治資金とみなされるのではないでしょうか。自治大臣にお伺いしたい。
#102
○佐藤(順)政府委員 お答え申し上げます。
 提供されるものが純然たる労務の提供でございますと、それは寄付の対象になり得るということでございます。それに対して、選挙運動のような自発性、奉仕性を持って行われるような、本来報酬を支給することが禁止されているような性質のものは寄付の対象にならない、こういうことを申し上げた次第でございます。
#103
○田川委員 それでは選挙部長に伺いますけれども、選挙の前に後援会活動をやることは、一体どういうふうにあなた方は見られるのですか。
#104
○佐藤(順)政府委員 一般的に言いまして、政治活動に当たると思います。
#105
○田川委員 いま選挙部長は、後援会活動は政治活動になるということを言われました。その政治活動に対して、会社側が、企業が給与をそのままにしているということは一体どういうことになりますか。
#106
○佐藤(順)政府委員 お答えいたします。
 給与をそのままにしているということは、会社内部の問題でございます。それに対して、労務を提供するという、提供を受ける側と意思を通じまして提供をするということがあれば、その部分は寄付になると思います。
#107
○田川委員 そうすると、たとえば動員された人がポスターを張ったり、そういうのをすることは労務の提供になりますか。
#108
○佐藤(順)政府委員 お答え申し上げます。
 一般論としては該当する場合が多いと思いますが、ただこの場合も注意を要しますのは、たとえば選挙運動の場合をお考えいただきますと、選挙運動員、労務者ではない選挙運動員に当たる人がポスターを張るような行為をする場合もございますので、一体その行為をどちらと認定するかという問題はあろうかと存じます。
#109
○田川委員 自治大臣にお伺いいたしますけれども、先ほど私は、三つの会社の例を申し上げまして、選挙の前あるいは選挙中にこれだけの人を動員されたということを、動員された方々からお話をお伺いしたのですけれども、こういう事実があるということをあなたは信じますか、信じませんか。
#110
○小川国務大臣 いわゆる企業ぐるみの選挙の事態というものについて特別に研究はしたことがございませんが、相当多数の人を動員して選挙運動をやっておるのだろうというふうに理解をしております。いま数字や何かのお示しをこの場でいただいたわけですが、まあ、これは尊敬する田川先生のお言葉でございますから、あるいはそういうことがあったのであろうかと考えます。
#111
○田川委員 労働省おりますけれども、労働組合がいま私が申し上げたような人たちを動員して、そうして選挙の準備活動をやる、後援会活動をやる、後援会の名簿を集める、あるいはポスターを張る。そういうことは労働組合の活動ですか。どういうふうに見られますか。労働組合が指令を出して、指示をして組合員に政治活動をやらせる、こういうことは労働組合活動の一部分として見ていいかどうか。
#112
○青木政府委員 お答え申し上げます。
 先ほども申し上げましたように、労働組合活動、労組法の保護いたします労働組合活動というのは、勤務条件の維持改善を図ることを主たる目的とするものであります。したがいまして、先生いま御指摘の、そういう選挙活動が労働組合法の保護に値する行為であるかどうかということに相なりまするとこれは別でありますけれども、労働組合が付随的にそういう政治活動を行うことができるということは、すでに最高裁判所の判例においても認められておるところでございまして、それが保護を受け得る行為であるかどうか。これは先ほども申し上げましたように、個々のケースケースにおいて労働委員会なり裁判所が具体的事実に即して判断すべき問題である、こういうふうに考えます。
#113
○田川委員 逃げちゃ困りますね。いま私は具体的な事実を申し上げました。何百人、何千人という人が組合の指令で後援会活動、政治活動をやっている。これは労働組合の活動じゃないですか。これは労働委員会で判定すべき問題ですか。
#114
○青木政府委員 私がいま申し上げましたのは、労組法七条なり、そういう保護の対象となる行為であるかどうかは専門官が判断すべき行為であると申し上げました。いま先生の御指摘の選挙活動、それは組合が行っている活動ではございます。それは私も別に否定しておらないわけでございまして、組合が行っている活動である。ただ、その活動が労組法の保護の対象になるかどうかという点はまた別の問題でございまして、組合が行っておる活動であることを否定しておるわけでは毛頭ございません。
#115
○田川委員 選挙部長は、先ほど、そうした政治活動は企業内部の問題と言われましたね。これは政治活動でしょう。政治活動をやるのに企業が給与を差し引いてない。こういう勤務時間中に政治活動をやっていいのですか。その費用は政治資金とみなされると、あなたは最初おっしゃったでしょう。政治資金じゃないですか。
#116
○佐藤(順)政府委員 お答え申し上げます。
 後援会活動は一般的に言って政治活動であると考えます。政治活動に関する寄付でございますと、これは政治資金規正法の適用を受けて政治資金の寄付ということになります。ただ、会社内部で給与を払っているがどうかとおっしゃいましたので、給与を払っていること自体は会社内部の問題と、こう申し上げました。
 それに対して、その給与を払っている、その労務を提供するということを、寄付を受領する側と意思を通じてなされますと、これは政治資金規正法上の寄付になってまいります。こういう意味でございます。
#117
○田川委員 私は、ここに日産労働組合が組合活動として組合員に選挙中、俗な言葉で言えば個別訪問をやれ、票を集めてこい、後援会で集まった人たちの名簿をもとにして一つ一つ点検してきなさい、こういう一つの指令と申しますか、そういう計画書を持ってまいりました。これを見ますと、企業と組合とがお互いに相談をして、そして勤務中でも選挙活動あるいはいま選挙部長が言われた政治活動をやってらっしゃい。こういうものを私はここへ持ってまいりました。私がここでいま申しますのは、この書面を持ってまいりましたのは――いまお渡ししますが、委員長よろしゅうございますか。
#118
○坪川委員長 どうぞ。
#119
○田川委員 じゃ、お渡しいたしますが、ちょっと見ていただきたい。これは、日産自動車の労働組合が、横浜の子安工場で出した動員計画なんです。「職域J、動員計画」。そして、これは職場の、ある一つの職場です、職場の人たちの動員計画で名前が書いてあります。そして、職場の所属の番号も出ております。それから、この人たちが何軒回れという、「何票」という欄がございますが、何票回れというそういうノルマがある。そうして回らなければならぬ地域の問題も書いてある。地域が書いてあります。一つの小さな職場単位ですけれども、十数人ずつ十一月二十三日あるいは二十四日、二十五日、二十六日、それぞれ人の名前も書いてあります。そうして、その一番最後のところに、「職域J、動員者に対する連絡事項」、ここを注意していただきたい。この中に、明らかに労働組合の運動として、指令として出ていることは、全部これは組合がこういうような指令を出しているということがこの文書の中にうかがわれます。そして、一つ一つ読みませんけれども、その日の行動が終わった時点においてあるいは途中でも、必ず十七時三十分までにこれこれの電話番号のところへ電話をして、事故の有無を報告しろ、こういうようなことが書かれております。そしてまた、その日に活動した者は午後出勤してからおのおのの職場委員または三役に報告する。さらに重要なことは、勤務が終わって帰るときに、タイムカードを絶対押さないこと、括弧して、庶務で一括処理する。これは、会社側の庶務で全部欠勤しなかったように処理をするという意味ですね。そういうことが書かれております。朝、出勤時にもタイムカードは打刻しないこと、これも庶務で処理をする。それからもう一つ、注意事項として、活動に出る場合または入門する場合、必ず守衛では「本牧に行きます」または「本牧に行ってきます」というふうに言いなさい。二番目に、活動する場合、器材は一切持たないで、できる限り身分を明らかにするものは持たない。三番目に、連続して軒並みに二軒以上は絶対やらないこと。四番目に、周囲の状況をよく見て活動すること。こういう細々とした注意事項までこれは書かれている指令書なんだ。動員計画なんだ。これは、組合活動と言えませんか。こういうようなことを公然として日産労働組合はやっていらっしゃる。そして、これはいま申し上げたのは単なる一つの職場単位の十数名の単位、この単位がそれぞれ同じような形で選挙中も選挙前も活動しているような状況、まことにこれはおかしな状態と言わねばならない。労働省、一体これが組合活動でないと言えますか。
#120
○青木政府委員 お答え申し上げます。
 先ほど申し上げましたように、組合の行っておる活動であるということは、別に先ほどから否定申し上げておらないわけでございます。
 その具体的な、ただいま配付になりました資料、そういう活動を組合が行ったのであれば、組合が行った活動であるということはそのとおりでございます。
#121
○田川委員 これは先ほど私は三条と間違えましたけれども、これは七条のことですから、訂正しておいてください。
 これと労働組合法七条との関係どうですか。
#122
○青木政府委員 お答え申し上げます。
 組合法の七条三号は、労働組合活動に対しまして経理上の援助を与えることを支配介入として禁止いたしております。ただ、労組法が七条で保護しておりますのは、憲法二十八条に基づきまする勤務条件の維持改善という組合本来の活動に対する介入行為、これを排除して労働組合が本来の目的を達成するようにするという趣旨のものでございまして、一方労働組合が組合の活動といたしまして政治活動を行い得るということは、最高裁の判例も明らかに認めておるところであります。しかし、そういう組合が行う活動、それは文化活動もございましょう、それから社会運動的なもの本ございましょう、政治活動もございましょう、そういうものすべてに労組法七条の保護が与えられるかどうかという問題は、これは一律には言えないわけでございまして、同じ政治活動でありましても勤務条件の維持改善に非常に近い問題、最低賃金の問題とか、雇用保障の問題とか、そういう国会マターの問題でありましても、勤務条件の維持改善に非常に密着、接着した問題がございます。それと選挙というような基本的な選挙権というものの行使に関する、純粋と申しますか、政治活動もございまして、そういうものについてどこまで労組法七条の保護がされるのかという問題は、個々のケースに応じて判断すべき問題である、こういうふうに申し上げたわけでございます。
#123
○田川委員 あなたは簡単に答えていただけばいいです。
 それでは、これは労組法の第七条の不当労働行為に該当しないかどうか。該当しないのですか。該当しなければしないと言ってください。該当するかしないかだけでいいです。
#124
○青木政府委員 お答え申し上げます。
 不当労働行為につきましては、判断として、労働組合法で専門機関である労働委員会というものが設けられておりまして、具体的……
#125
○田川委員 いや、それは要らない。あなたは、該当しないかあるいは疑いがあるか、該当しなければしないと言ってください。
#126
○青木政府委員 該当するかしないかは専門機関の判断を待つよりほかないと、一般論としては先ほどお答え申し上げたとおりでございます。
#127
○田川委員 選挙部長にお伺いしますが、いま私がここで示した、これは一体選挙運動になるのか政治活動になるのか、どっちですか。
#128
○佐藤(順)政府委員 具体的に起こりました事件につきましてでございますが、事実の実態いかんによって判定されると思いますので、にわかにお答えいたしかねる次第でございます。
#129
○田川委員 選挙中に私の知り合いがこれに該当する人に面接をしまして、そして話を聞いたわけです。その人の、私が聞いたことをメモしたものがございますが、いまここで申し上げましたこの資料は、主として確認動員、つまり、企業ぐるみで集めた後援会の名簿が果たして本当に正しいかどうかという確認のための動員なんですね。そして、戸別にいろいろと確認をして歩くのです。これは一年間続いたというのですね。そして、連日五百人の人が確認動員をされた。そして、十二月末から総選挙公示後にかけて、日曜日は全員活動日、日勤、夜勤組が交互に数千人ずつ確認動員に回された。そして、労働組合の幹部は、戸別訪問といっても、候補者の名前を挙げて投票することを依頼すれば違反になるから、いま一生懸命がんばっています、こういうことを言って歩いているようです。これはどうですか。
#130
○佐藤(順)政府委員 お答え申し上げます。
 先ほど申し上げましたとおり、実態いかんによるわけでございますけれども、いまお話にありましたお言葉のとおりでございますと、後援会の会員の確認ということは政治活動の範囲ともとれますが、しかし、その間におきまして、特定の候補者のために投票を得、または得しめるために有利な行為という、つまり選挙運動と認定されるような行為がございますと選挙運動と相なるわけでございますが、すべては実態いかんによるわけでございます。
#131
○田川委員 つまり、選挙運動か政治活動かのいずれかだということですね。
#132
○佐藤(順)政府委員 そういうふうに言うことができると思います。
#133
○田川委員 これは選挙運動とすると、戸別訪問の疑いが非常に濃厚になってくるわけです。政治活動とみなせば、先ほど選挙部長が言われたように、政治資金の届け出をしているかどうか、こういうことになるのじゃないでしょうか。政治資金の問題になってくるのです。かつまた、政治活動とみなされれば、会社が給与をカットしてないのですから、その分だけ政治資金というものを寄付をすることになるわけです。政治資金を出すということになりますと、一つの企業が、一つの候補予定者の団体やらあるいは候補予定者に、あるいは候補者に政治資金を出す額というものは、最近の政治資金規正法によって制限をされているはずですけれども、これは百五十万円と見てよろしゅうございますか。
#134
○佐藤(順)政府委員 お答え申し上げます。
 それが政治資金の寄付であります場合には、政治資金規正法上は、政党、政治資金団体以外の政治団体、それから公職の候補者に対するものでございますと、一対一の関係におきましては年間百五十万円以内でございます。
#135
○田川委員 そういうふうになりますと、この日産だけでも大変な額になるわけですね。私がちょっと計算しただけでも、最高時六百人、給与を二十万平均といたしますと一億二千万円。県会議員の選挙だけでも、三十名五カ月間動員して三千万円、選挙中に二百名を動員して、一人当たり平均二十万円として四千万円、合計七千万円になる。県会議員の選挙だけでそのぐらいの給与を使っているわけですね。つまり、政治資金を供与をしている。こういう状態をこのまま一体見逃していていいのでしょうか、自治大臣。
#136
○小川国務大臣 先ほど来明らかに申し上げましたことは、労務の提供もまた寄付である。ただし、その労務は、いわゆる俗に言う労務者の行う労務、ポスターを張るとか下足番をやるとかいう種類の労務であって、いわゆる選挙運動そのものは寄付にはならないと、かような趣旨を選挙部長からお耳に入れたと存じます。したがって、会社の従業員多数の者が特定の候補者のためにいわゆる選挙運動をやることが、これが寄付になるかどうか、これは実はむずかしい問題だと存じまするし、この場で私が責任のある御答弁が、まことに恐縮ですが、申し上げかねる問題でございます。
#137
○田川委員 私は具体的事実を挙げているんで、それから、いまあなたに、すぐこれが政治資金規正法あるいは公職選挙法に違反するかどうかということは求めませんけれども、これは直ちに調査をしてください。それから、労働省も、労働組合法との関係、不当労働行為との関係、これは調査をしてもらうように要求をいたします。ここでこの議論をしても時間がたっばかりでございますから、自治大臣、それから労働政務次官、ひとつ、直ちに調査をしていただくことを要求しますが、いかがですか。
#138
○小川国務大臣 担当者を田川先生のもとへさしあたって参上させますので、篤とお話を承りました上、自治省として調査をする余地があり、必要があるという判断をいたしましたら、必要な調査をいたします。
#139
○田川委員 ちょっとよくわからないのですけれども、調査をする意思があるのかどうか。調査するかどうか。
#140
○小川国務大臣 何分この場で初めてお話を承ったわけでございますから、状況によりましてはもちろん必要な調査をする意思を持っておりますが、さしあたりまして先生からいま少し時間を拝借して詳細に承らしていただきたい、こう申し上げたわけでございます。
#141
○越智政府委員 この先生のお説が直ちに不当労働行為になるかならないかの問題については、非常に微妙なところがあると考えます。しかもこの不当労働行為は、どちらかの申し立てがないと労働省もちょっと調査しかねます。事情につきましては聞く程度は聞いてみますが、ここで直ちに調査をいたしますという明言はちょっとできない、かような解釈でございます。
#142
○田川委員 労働省の管轄の出先の労働基準監督署、署長に私会いました。労働基準監督署では、明らかに労働組合法の不当労働行為に該当する疑いが濃厚であるから、これは調査をする必要がある、こういうことを言っていますよ。あなたの方、そう簡単に調査できないなんていうことをいまおっしゃいましたけれども、出先の機関は調査する必要があるということを言っていますよ。調査する意思はないのですか。
#143
○越智政府委員 先生御承知のとおり、信条あるいは政治活動、選挙活動、これは使用者あるいは労働組合あるいは個人にいたしましても自由でございますから、そのことが、仮に労働組合が推薦をしたがいやだというのを無理にやった、こういうことでございましたら、これは労働基準法の違反になると思いますが、労組法の問題につきましては、それぞれの機関すなわち労働委員会等の判定を待たないと、直ちに私の方がそれが違反である、こういう断定はできない、こういう解釈でございます。
#144
○田川委員 それでは私は資料提供を要求します。そういう事実があるかどうか、国政調査権に基づいて、労働省がこの問題を調査して私どもに報告をしていただきたい、これを要求いたしますが、委員長。
#145
○坪川委員長 労働省当局に申し上げますが、現地とよく御連絡等されまして、調査されたその結果を、実態というものを御報告を願うということは、私は当然だと思いますので、さようお取り計らいのほどをお願いします。
#146
○越智政府委員 ただいま委員長の言われましたような調査はいたします。ただし、先ほど申し上げましたように、労組法の違反であるかどうかにつきましては機関の認定ということに御承知いただきたい、かように思います。
#147
○田川委員 機関の認定を得なければわからないような微妙な問題だから調査をしろと言っているのです。委員長が調査をしてほしいと言っているのですよ。それに対してはっきり答えてください。
#148
○越智政府委員 先刻申し上げましたとおり、その調査はいたします。
#149
○田川委員 私は先ほど東急電鉄それから富士急電鉄のことを申し上げましたが、私鉄というのは、これは公共性を非常に強く持っている企業ですね。きょうは来ておりませんけれども、私は運輸省に、公共性がいかに高いものであるか、そういう根拠をお示し願いたいということを申し上げておきました。それに対して運輸省は、私鉄は公共性が非常に高いものであるという例として、鉄道に対するいろいろな認可権、許可、認可の問題、あるいは新線を建設する場合にたとえば建設公団なりが肩がわりをして新線を建設する、そうして建設公団が建設をした後その私鉄に譲渡をして新線の建設を促進する、こういうようなことも公共性が非常に高い理由として運輸省は挙げられておりました。その公共性の非常に高い鉄道が政治活動あるいは選挙活動、こういうものをいま申し上げましたような露骨な形でやっていくことが、法律には違反しないけれども、道義的に見て、政治的に見て一体いかがなものであるか、この判断を自治大臣にお伺いしたい。
#150
○小川国務大臣 政治資金規正法におきまして、選挙に関すると否とを問わず寄付を禁止されておる企業は法律に列記してあるわけでございます。ただ、この趣旨を無制限に拡大をしていくというわけにもこれはまいりかねる問題ではなかろうかと存じます。まあ程度問題でございますから、いまそういうきわめて公共性の高い鉄道企業はどうかという御質疑でございますけれども、直ちにはちょっと御返事を申し上げかねる問題でございます。
#151
○田川委員 運輸省が私鉄企業というものは非常に公共性が高いものであるという一つの資料を私のところへ出してくれました。
 「一 鉄道事業は、一般公衆の用に供され、国民生活に不可欠な事業であるため、法令に基づき種種の行政庁の監督が行われているが、その主なものは次のとおりである。事業開始に当っての免許(地方鉄道法第十二条) 運賃、料金の認可(同第二十一条)営業の休廃止の許可(同第二十七条) 運送拒絶の禁止(鉄道営業法第六条) 労働関係調整法における公益事業としての取り扱い等」、こういう根拠を示されております。
 さらに一つの例として、「二 日本鉄道建設公団は、東京急行電鉄(株)のために同社の新玉川線の建設を行ってきたが、昭和五十二年度に同線を同社に譲渡する。同譲渡は二十五年元利均等償還の条件であるが、このため同代金に含まれるべき利子のうち、五%を超える分の半額について国が公団に対し利子補給を行うこととしている。イ 二子玉川園−渋谷九・六K ロ 総工事費五百億円(完成予定五十二年四月) ハ 利子補給金 昭和五十二年度予算案六億四千三百万円」、こういうものが計上されている。これが私鉄の公共性が非常に高いという一つの根拠を運輸省が私のところに示してくれたものです。
 そこで、政治資金規正法には一つの企業が政治資金を寄付する場合に、できない条件が幾つか書かれております。たとえば国が補助金をやる、あるいは補給金を出すとかいうようなものは政治資金規正法で禁止をしているわけですね。いま申し上げました日本鉄道建設公団が東急株式会社の玉川新線建設に当たって、この線を建設公団がやって、そしてこれを東京急行に譲渡をする、そして譲渡した後は利子補給を建設公団にやる、つまり東京急行に肩がわりをして鉄道建設公団に利子補給を行う、こういうことがもう決められているわけですが、これに対して事務当局、選挙部長に伺いたいのば、特定企業の政治資金の禁止条項にこれが該当するかどうか。
#152
○佐藤(順)政府委員 先ほど自治大臣からも答弁ございましたとおり、政治資金規正法におきましては、寄付の質的制限といたしまして、国から補助金その他を受けている会社、法人等についての規制がございますが、ただいまお話しの利子補給の関係でございますが、これは利子補給を直接受けている場合が政治資金規正法の対象になるわけでございまして、ただいまのお話は公団の方が利子補給を受けて事業を行っているわけでございますので間接的でございまして、この場合におきましては政治資金規正法の適用はございません。
 なお、念のために申し上げますと、公職選挙法百九十九条の第二項におきましては、会社その他の法人が融資を受けている場合に、この融資をしている元が利子補給を受けている場合には選挙に関しての寄付をしてはならないとありますが、これはただいまのお話の例にありますように、でき上がりましたものの譲渡を受けている場合、そこで関係が断ち切れている場合には、現在見ました限りでは適用はないのではないか、こういうふうに考えられます。
#153
○田川委員 私もこれが政治資金規正法の制限事項にかかるとは思っておりません。しかし選挙部長、これはもう少し検討してみていただきたいと思います。ちょっと問題があるような気がいたすわけで、御紹介をしたわけです。
 次に、時間もございませんから、いま各企業がこれだけ大ぜいの人を動員し、そして動員された人たちの給与もカットしないでそのままにしておるというのが現状であるということを申しましたが、これは大変なことだと思うのです。私はここで特に自治大臣、国家公安委員長としての小川さんに検討をしていただきたことば、こうした人件費というものが一体どうやって後を片づけられているか。これは企業が赤字でなく、決算で利益を得ている場合には経費としてこれはみんな差し引かれるわけですね。そうすると、それだけ国に納める税金というのは少なくなる。また、もしその企業が収支とんとんだとかあるいは赤字だという場合には、これは何らかの形で埋めていかなければならぬ。そうなりますと、結局選挙が終わった後その企業のために当選をされた方々がいろいろな動きをしなければならぬというような事態になってくる。つまり政治の腐敗につながってくるおそれも出てくる。また、そういうことが仮になくても、そういうような費用が会社がつくった製品の上に価格として上乗せされているということです。ですから、この問題は単に政治資金だけの問題でなくて、やはり政治の腐敗につながってくる問題ではないかということを私はここで指摘しておきたいのです。
 長くなりますから次に移りますが、冒頭申し上げました企業ぐるみの選挙が効果がなくなってきたために、企業があるいは労働組合が非常に締めつけをやるようになってきたということを申し上げました。その中で一、二具体的な例を申しますと、これは日産自動車の例ですけれども、日産自動車の追浜工場の管轄に起こった問題ですけれども、横須賀に森崎寮という日産自動車の寮がある。その寮の中で六月の上旬でありますか、日産自動車の工員のある人がその寮に友だちを訪ね、そしてその寮に一泊をした。日産の従業員ですからもちろん日産の自動車で――これは法務大臣によく聞いておいていただきたいのですが、自動車に乗って日産の従業員が日産の寮に行って、そして寮の友だちのところへ行って一晩泊まったのです。自動車を寮の構内に置いて、駐車して泊まったわけです。その次の朝、寮の管理をする人が車が寮のところに置きっ放しになっているから自動車をあけてみた。そうすると、トランクの中に、ある宗教団体の機関紙の購読領収書が十五、六枚置いてあった。寮の管理人がこれを見つけて、この寮の中にそのような宗教団体の機関紙を購読している者があるということでびっくりしまして、そして購読している領収書ですから名前が全部わかるわけです。その人たちを寮長かそれとも寮の管理人が呼んで、そうしてこういうようなものを読んでいたんではいかぬじゃないか、これをやめなさい、やめなければ会社としても考えなきゃならぬということを一人一人に言った。そうしてその中の一人は、かねてから自分はもう追浜の工場はいやだ、九州の方の日産の工場へ行きたいんだという人が一人いた。その人に向かっては、おまえがこの宗教の機関紙の購読をやめればおまえの好きなところへ転勤させる。その人は転勤したいもんですから、購読をやめて転勤をしたわけです。その人以外の購読者は、やめなければこの寮にいては困る、こういうことを言われた。これは思想、信条の自由を侵害する疑いが非常に強いんではないかと私は思うんですけれども、いかがでしょうか。法務大臣にこれはお伺いします。
#154
○福田(一)国務大臣 お答をします。
 ただいまの問題、具体的例でお示しになったようでありますけれども、もちろん、自由の尊重、人権の尊重ということは非常に大事なことでありますだけに、いまここでお話しになったことだけで、そのことば人権を認めなかったとか、あるいは信教の自由を認めなかったとお答えするにはいささかちゅうちょせざるを得ない。これは具体的な例でもって――いまおっしゃったのは、あなたは具体的におっしゃったつもりでしょうが、個々の問題としていたしませんというと、ちょっと私がここでお答えするのは軽率のそしりを免れないんじゃないかと思うわけでございます。
#155
○田川委員 時間がありませんから、いま法務大臣から、すぐこれは人権問題、思想、信条の自由に違反するとかどうとかということは言えないことは当然だと思います。ただ、この種の例が企業ぐるみ選挙には非常に多い。ですから、私は、この問題をひとついま例に挙げて紹介をしたわけです。
 そこで法務省は、人権擁護については、一般的な普及として毎年十二月に人権週間を設けたり、あるいは五月には憲法週間、あるいは十月には法の日、そういうような運動もやっていらっしゃいますけれども、個別啓発というものをもう少し労働組合に対しても企業に対してもやっていく必要があるんじゃないでしょうか。個別指導、個別啓発ですか、これは現に法務省でやっているんでしょう。これは事務当局に私は聞きました。一般的な啓発と個別啓発と二つやっているということを事務当局も言っておられましたけれども、個別啓発というものをもう少し普及をしていく必要があるような気がいたします。
 これは何も日産自動車ばかりでなく、東急でも、あるいはあなたも実際に体験しておられるでしょう。鹿島建設が福井県で相当やっていらっしゃる。これは委員長の選挙区でもある。これはもう企業の内部で、生活の問題ですから、いやいややらなければならぬという人が非常に多いんですね。そうしてそういう人たちがいま良心に目覚めて、こんなことじゃいかぬということを言い始めてきている。私がここでこういう具体的事実を申し上げたのも、みんな内部の告発なんですよ。それだけ目覚めてきたんです。しかし、まだまだ言い切れない人たちがずいぶんあるんです。
 これは選挙や政治活動とはちょっと違いますけれども、九月のこの委員会で共産党の正森委員がここでちょっと問題に取り上げた事件がやはり日産自動車の内部にある。これはある政党に属している青年従業員ですけれども、工場の中で政党に属しているだけで暴力をふるわれ、職場八分を受けている。そうしてこれは一回や二回じゃない、連日いろいろな差別をされて、ずいぶんひどい目に遭っている人もあるんですね。
 その人は横浜地方裁判所にこれを訴えて、仮処分の請求をしたんです。そうして裁判所でもこれを調べたんでしょう、仮処分の申請が認められて、以後暴力行為やあるいは脅迫やあるいは名誉に関するようなばり雑言をしないようにという、そういうような裁判所の決定がされているんですね。正森委員がここで取り上げた直後、日産労働組合の幹部の人が「革新」という労働組合の機関誌の中に、正森委員が指摘したことは全くのデマである、こういうことを文書で書いていらっしゃいますけれども、デマじゃないんです。裁判所が仮処分の申請を認めているんですよ。そして会社は、それに異議を申し立てない。仮処分の申請が出て、決定が出たのがもう去年の八月です。八月から今日まで、会社側はこれを認めない。もしそういう事実がないとすれば、会社は異議申し立てをして、そうして本裁判でこれを争っていくでしょう。それをやっていない。
 こういう明らかに出た事実、こういうものはごくまれなことですけれども、ちょっとでも言えば会社で首を切られるかもしれない、待遇も悪くなるかもしれない、どこかへ飛ばされるかもしれない。つまり企業と労働組合が癒着しているときには、企業も労働組合も社員や組合員の生殺与奪権を握っているわけですよ。ですから、うっかり物を言えない。そういう人たちがたくさんあるということをよく認識をして、政治、信条の自由、人権の尊重――あなたはロッキードの問題で、政治家の人権というものを非常に重視していらっしゃるんですから、一般の方々の人権というものをもっともっと尊重していけるように啓発をやっていく必要があるんじゃないでしょうか。いかがですか。
#156
○福田(一)国務大臣 御案内のようにこの人権を尊重する、そうして人権を擁護するということは、これは法治国家といいますか、自由主義の国においては最も重要な課題であると思います。そして法務省には、御案内のように人権擁護局というのが置かれておるのもこの趣旨であると存ずるのでありまして、したがって法務省としては、一般的な立場においても人権擁護の運動をいたしておりますし、ただいま御指摘のあったように個々の問題についてもこれを行っておることは事実でありますが、田川さんはもっとこの面を徹底してやったらどうか、個別の問題ももっと広くやるようにしてはどうかという御趣旨でありますが、法務省といたしましては、人権擁護ということが大事な問題でありますから、今後といたしましても御指摘のような面を十分に配慮いたしまして、運動を進めてまいりたいと思います。
#157
○田川委員 時間がなくなりました。ですから、あと残った問題については次の質問の機会に申し上げて、留保をいたしておきます。
 というのは、この問題は選挙の利害誘導、たとえば企業が仕事をやるから企業の推薦する候補者に対してひとつ支持をしろ、こういうようなことも非常に多いのですね。これは鹿島建設なんかもそういうような方法でいろいろとやっておる疑いがある。また東急、日産も同じようなことをやっている。とにかく仕事を奪われちゃ大変だからということで大企業の指令のままに動かざるを得丸い。こういう例がずいぶんあるのです。一つの例を申しますと、東急建設、東急車輌あるいは東名電鉄の不動産部、そういうようなところが関係のある下請の会社にやっているわけです。川崎の似る党の市会議員が東急建設の下請をやっている。その党の公認候補がいながらやはり東急建設の言うことを聞いてやらなきゃならぬというような例も出てきているわけです。これは非常に多い。おわかりでしょう。そういう利害誘導にかかるような問題がこれからもどんどん出てくると思うのです。
 そういう意味で、私はその問題はきょうは触れませんけれども、きょうは警察当局も来ておられるし、警察当局もそういうことをもっと重視をして、選挙が金だけの面でなくて、人件費の面、それに絡む政治資金の面、あるいは利害誘導の面、こういうものの行き過ぎというものを政府がもっともっと重視をしていっていただきたい、このことを申し上げまして、私のきょうの質問を終わりたいと思います。
#158
○坪川委員長 これにて田川君の質疑は終了いたしました。
 午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後一時三分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十七分開議
#159
○細田委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。
 湯山勇君。
#160
○湯山委員 私は、同和対策につきまして関係大臣にお尋ねをいたしたいと思います。
 質問に当たりまして最初に一言申し上げたいことは、私がする質問は、本来ならば故人となられた八木一男氏がするはずでございます。私は、八木一男氏の意を体して質問をするという気持ちでいたしますので、御答弁もまたそのような御配慮でいただきたいと思います。
 と申しますのは、同和問題を取り上げたのは昭和三十三年でございました。たまたま八木一男氏は衆議院で取り上げますし、偶然私も参議院でこの問題を取り上げまして、自来約二十カ年が経過いたしております。その間、同対審の設置あるいはその答申、さらに同和対策事業特別措置法の制定、こう進んでまいりまして、この措置法が制定されたのが昭和四十四年、これは御存じのとおり十カ年で効力を失うということになっておりまして、昭和五十三年末には効力を失います。そこで、いま五十二年度の予算の審議中でございますけれども、予算編成から見ますともうあと一回しかございません。したがって、そういうことを前提にしてお尋ねいたしたいわけですが、当初同和対策事業は、長期計画とこの措置法を二本の柱として推進していくんだということでスタートをいたしました。さて、もうあと一回しか予算編成が行われない、こういう段階におきまして、果たして十カ年という期限の中で長期計画が完全に実施される可能性があるかどうか、このことについて進捗状態とあわせて総務長官から御答弁を願いたいと思います。
#161
○藤田国務大臣 先生のおっしゃいましたように、あと五十二年度と五十三年度の二カ年を残すのみでございまして、八カ年をすでに経過いたしております。
    〔細田委員長代理退席、委員長着席〕
十カ年計画のうちでどの程度の進捗率があるか、そうしてまたあと二年間で果たして全部ができるのか、こういう御質問であろうかと思います。ただ進捗率ということになりますと、数字的にはとらえられないものが相当ございます。人権の擁護活動だとか雇用促進だとか産業振興というふうなものは、数字的にはその効果を端的にとらえることはなかなかむずかしいかと思います。ただ、昭和五十年に調査をいたしました結果は、相当な要望が残されておることも事実でございます。あとまだ五十二年、五十三年とございますので、全力を挙げてこの十カ年計画を達成すべく努めることはもちろんでございますが、どこかの時点でもう一度、積み残し、そうしてまたいままでの経過、効果、こういうものをとらえまして再考をしなければならぬか、このようには考えております。
#162
○湯山委員 当初十カ年という設定をしましたのにはいろいろ理由がございました。その一つは、わが国の憲法ではそのような差別はないはずだ、憲法にないものを法律にするということはたてまえとしてもおかしいではないか、あるいは国際的にもそういうことが批判の対象になるというような御意見等もありましたが、十カ年にするというのは、いつまでもだらだらこういう事業をやっていくべきではない、とにかく十カ年間で完全にいまのような差別をなくしていくという意気込みで時限立法になったわけでございます。ただいま総務長官非常に良心的に、なおたくさんの残っている事業もある、積み残しもできるかもしれない、ある段階で再検討が必要だということでございましたが、それはそうだと思うのです。
 さて、その大きな原因はどこにあったかということでございますが、今日、十カ年たってなお完全実施が可能かどうかということについて明確にできないというその原因がどこにあったか。これについてはどういうにお考えになっておられるか。私はこのことについて自治大臣にお尋ねしたいと思います。
 それは五十二年度の予算編成に当たりまして、自治省の財政局長から大蔵省の主計局長あるいは各省の官房長に対しまして次のような要請が出ております。それは五十二年度予算編成に際して、あと二年しがないが、国の予算措置は不十分であるし、それに伴って地方の財政負担も非常に重い。したがって、五十二年度の予算については国費を増加するようにしっかりひとつがんばってもらいたいという要請が出ております。そうすると、自治省の財政当局、つまり同和対策事業を直接進めておる地方自治体からは、もっと国がしっかり持ってくれなければできない、地方は大変過重負担になっているということを訴えておるわけですが、こういうことが一つの大きな阻害要因になっているということについて自治大臣はお認めになっておられるかどうか、まずお伺いいたしたいと思うわけです。
#163
○小川国務大臣 大変恐縮でございますが、御質問の末尾の点が、ちょっと聞き取りかねましたので……。
#164
○湯山委員 自治大臣も財政局長と同じようにお考えになっておられるかどうか。
#165
○小川国務大臣 通達の趣旨はまさにあのとおりでなければならない、さように考えております。
#166
○湯山委員 そこで、これは事務当局でも結構でございますけれども、決算の終わった最近の年度で、国の費用がどれだけで、地方の財政負担、持ち出しといいますか、あるいはそういう形のもの、これがどうなっているか、その実情をおわかりでしたら、ひとつお述べいただきたいと思います。
#167
○首藤政府委員 お答え申し上げます。
 私どもの方で地方債関係の許可をいたしておりますので、その方面から集計をいたしました資料でございますけれども、昭和五十年度におきます地方団体の同和対策事業の規模は、地方債対象等を含めまして約千八百三十億、こういうことに相なっております。この中で国費が六百九十億、地方費が千百四十億、こういうのが五十年度の状況でございます。
#168
○湯山委員 いまの中で、自治体が当然持たなければならない部分と、それから超過負担の形で持っているものと、それがあるのじゃないでしょうか。もしそれがあれば、ひとつその区分もお示し願いたいと思います。
#169
○首藤政府委員 ただいま申し上げました数字の中で、完全に国庫補助負担事業というかっこうで出てまいっておりますものが同和対策事業で五百十五億と、住宅関係で五百二十九億、合わせて千四十億ぐらいになりましょうか、でございまして、残りが地方単独事業あるいは継ぎ足し事業、こういうかっこうに相なっております。
    〔委員長退席、細田委員長代理着席〕
#170
○湯山委員 そういう、いまのでいけば百億ばかりになりますか、その持ち出しというものの原因はどこから来ているか。これはおわかりでしょうか。
#171
○首藤政府委員 最近、同和関係の対策事業の事業費の拡大、これは各団体とも非常に努力をしておるところでございますが、通達で各省にお願いをいたしましたように、補助対象事業をできるだけ拡大をしていただきたい、それから補助基準をできるだけ引き上げていっていただきたい、こういうことをお願いいたしておりますが、これがやはり完全とは申しがたい点がございましょうし、そのほか地方団体の継ぎ足し単独事業等があるゆえであろうと考えております。
#172
○湯山委員 本来ならば、長期計画というものは、いま総務長官言われましたように、数字が入っておりません。したがって、一体どれだけかという判定は非常にむずかしいのでございますけれども、とにかくこれを実施していく過程において、いまのように自治体の持ち出しというものが相当多くなってきている。本来、措置法の趣旨から言えば、また措置法の趣旨が完全に実施されておれば、地方の持ち出しというものはないはずなんです。つまり三分の二が国負担であって、残り三分の一の八割というものは起債で見られる。その起債については償還を国が責任を持ってやっていくということですから、その残は交付税あるいは特交等で見られますから、ほとんど地方の持ち出しというものはないはずなんですが、そういう持ち出しが出てくる。それにはいま具体的にお挙げになったように、これはやはり同和対策事業というものは全事業を補助対象にすべきだ、これが一つ。それから、十条の起債を認める事業というものは非常に限られております。発足当初は四事業、これが昭和四十六年に五つふえまして、それから四十七年に四つ、こういうふうにふえてきておりまして、なお起債対象になっていない事業も相当数あるということが一つ。それから、いまおっしゃったように単価がやはり違っております。恐らく建築なんかは国の営繕単価で見ておりますから、それではできないという問題。それから土地につきましても、たとえば、本来この法のとおりいけば三分の二の補助があるべきですけれども、これも隣保館とか集会所は二分の一、それから同和地区向けの保育所はこれがないというように、保育所がなくて済ますわけにいかないし、隣保館もつくらなければならないという状態の中で、補助対象になっていない。すると、つくるためには地方で持ち出しをしなければならないということになっておりますので、これらが大きな阻害要因になってきている。
 こういうことなので、そこで大蔵大臣にお尋ねいたしたいわけです。大蔵大臣はこれらの問題については大変理解を持っておられると承っておりますので、一体こういうことをほうっておくということは、これはよくないことだということは申すまでもございません。今日の状態で、総務長官言われたように、これではなかなか終わらない。そこで一体どうするかということについても大蔵省のお考えを聞きたいし、またこれらの阻害しておる要素についてもどうするかということについて、大蔵大臣のお考えを承りたいと思います。
#173
○坊国務大臣 お答え申し上げます。
 同和事業と申しますのは、申すまでもなく国民の基本的人権にかかわる問題でございまして、私どもといたしましては最もこれを重大視していかなければならない問題であるということは痛感いたしております。
 そこで、超過負担がなかなか避けられないというのは一体どうだ、こういうことでございますが、毎年予算編成に当たりまして、何しろ補助基準だとかいろいろなものについて整備改善をしてまいっておりますけれども、これは同和事業だけではなくて、いろいろな補助事業について超過負担が絶えないと言って方々からおしかりをお受けいたしておりますが、これはでき得る限りさようなことのないように私ども今日まで努めてまいったのですが、補助事業についてはどうしてもそういう残りができてくる。これは今後も大いに注意をいたしまして、さようなことのないように、補助ということについて改善整備をしていかなければならない、かように考えております。
 それから建物の土地についての補助が行われていないではないか、こういうお話でございますが、それにつきまして一言申し上げとうございますが、地方公共団体の取得する土地のうちで、保育所、学校等の建物の敷地については、土地取得そのものが事業目的とは考えられませんで、かつ、地方公共団体の永久資産となるものである等の理由から、その用地の取得費については原則として国庫補助の対象にはしておりません。しかしながら同和対策については、五十三年、計画期間内に必要な事業の円滑な実施を確保する必要性が高いこと等を考慮しまして、関係各省とも協議した結果、同和対策事業に固有の事業である、プロパーの事業である、同和対策事業の推進にとって特に緊要な施設である等の要件を具備しておる隣保館とか、あるいは共同作業所等の施設に係る用地の取得費について、特に臨時、例外の措置として国庫補助の対象としたところでございます。御存じのとおりだと思います。なお、用地に係る補助率については、用地費補助が臨時、例外的なものであることなどを考慮して、政令によって二分の一を適用していることでありまして、当面これを変えるというふうには考えておりません。
 以上であります。
#174
○湯山委員 わかりました。
 大蔵大臣、一言申し上げますが、そういう臨時、特例という点から言えば、この法律全体が臨時、特例なんです。その点から言えば、いまの土地だけが臨時、特例じゃなくて、全体がそうですから、そこでいまのようにちょっぴり出すようなことをしないで、それから保育所等についてもやはり臨時、特例ですから、その趣旨を体してぜひひとつ実現するように御尽力願いたいと思いますが、いかがでしょう。御検討願いたいと思います。
#175
○坊国務大臣 検討いたします。
#176
○湯山委員 時間の関係もありますので、次に、物的に、物の面でいまのように進んでいないというだけじゃなくて、実際は、精神的な差別の面もなお非常に憂慮すべき状態にあります。それは、同和問題の特設人権相談というのが行われております。昭和四十七年には、そこで出てきた件数、人権侵害の事件が取り上げられたのが三万一千ございました。最近の状況はいかがでしょうか。これは法務省……。
#177
○塩崎政府委員 お答え申し上げます。
 四十七年度につきましては湯山委員の御指摘のとおりでございますが、最近判明いたしました五十年におきましては五万三百二十三と大変増加いたしております。
#178
○湯山委員 これは、関係大臣、いまのような状態です。いいですか。この同和問題の特設人権相談が三万から、四十八、四十九、五十、三年間に二万件もふえている。これはほうっておけない問題だと思います。処理されたのがこの中で何件ありますか。
#179
○村岡政府委員 措置された件数のお尋ねでございますが、同和に関する人権侵犯事件の件数は、受理件数で申しますと、四十八年が三十八件、四十九年が三十五件、五十年が九十九件、五十一年が二百二十六件となっております。五十年から非常にふえておりますのは、御案内かと存じますが、「部落地名総鑑」等の悪質図書頒布の事件がございまして、この事件が購入者一社ごとに一件ということで立てておりますので、こういう非常に著しい増加を示しております。
 なお、先ほどお尋ねのありました四十七年度三万一千六百八件、それから政務次官からお答えいたしました五十年度五万三百二十三件という数字は、正確に申しますと、同和問題に対処する目的で同和地区を有する市町村において開設した特設人権相談所で取り扱った相談件数でございまして、これは全部がもちろん同和に関する事項を問題にしたものではございません。中には戸籍、登記あるいは親族間の争い、そういった一般の民事問題に関する相談も含んだ数字でごございますので、その点を御了承を得たいと思います。
    〔細田委員長代理退席、委員長着席〕
#180
○湯山委員 いまのような状態で処理された件数というのは非常に少ない。たまたま地名総鑑の問題が出ましたが、この地名総鑑については、後刻上田委員から関連質問がございますが、そういう状態で、結婚とか就職、それから職場の関係、友人関係、学校の場までやはりそういう問題がある。
 そこで、当然人権相談に対する、人権擁護に対する職員の増加、増員という問題が起こります。これは、来年度法務省は十八名増を要求したのに、大蔵省、これは二名に切ったということですが、間違いございませんか。
#181
○塩崎政府委員 ただいま御質問のように、私どもは人権相談事案が大変多いものでございますから、法務省といたしましては人権担当の職員の増加に大変力を置いてまいりました。たとえば四十七年から五十二年までの五年間におきまして十六人の増加を認めていただいたわけでございます。来年、五十二年度は十八名の増員要求に対しまして、増加が三名でございますが、御承知の総定員法の計画的な減員が一名ございますので、純増はおっしゃったように二名となっております。
 御承知のように定員の増加は、予算の増額以上に総定員の関係もありましてむずかしい問題でございます。しかし私どもは、いま御指摘のような御趣旨を体しまして、十分に行政管理庁あるいは大蔵省に御理解を賜って、努力してまいりたい、こんなふうに考えております。
#182
○湯山委員 大蔵大臣、これいまのように全国で百九十八名ぐらいしかない。それではとても、特設相談だけでもいまのように五万件を超えておる。けさほども人権の問題大分言っておられましたが、これは百九十八名じゃとてもできる問題じゃございません。どうでしょうか。ひとつもうとにかくこれだけ事業もおくれておるし、人権問題もたくさん出ておるというときですが、思い切って定員増、むずかしいのはわかりますけれども、二名なんてことじゃなくて、もっとしっかり増員するということをお考えいただかなければならぬと思うのですが、いかがでしょう。
#183
○坊国務大臣 具体的な人員につきましては、ただいま塩崎政務次官がお答え申し上げたとおりでございますが、いまの状況は大変むずかしいときでございまして、各省、各部局につきまして人員をまことに厳しく抑えておるときでございます。けれども、とにかく非常に重大なるものにつきましては、今後各省庁とも相談をいたしてまいりたいと思いますが、原則といたしましては、大変厳しい事情にあるということはひとつ御了解を願いたいと思います。
#184
○湯山委員 大蔵大臣の善処を強く要望いたします。
 と申しますのは、ただ同和地区の特設人権相談所だけじゃなくて、人権を守っていかなければならない当面の責任のある法務省とか裁判所、そういうところでも人権侵害あるいは差別的な発言が行われております。これは国会の委員会の答弁においても、法務省の政府委員は部落差別の問題を人種差別と間違えて答弁をしたりしています。これはもう同対審をごらんになりますと、同和問題の認識、本質というところで「ただ、世人の偏見を打破するためにはっきり断言しておかなければならないのは同和地区の住民は異人種でも異民族でもなく、疑いもなく日本民族、日本国民である、ということである。」と最初のページに書いてある。これが法務省の政府委員によって全く人種問題だというようにとらえられておる。
 それから、高知の地検におきまして検事がある問題で助役を調べるときに、町長派かそうでないか。反町長派かと言うべきものを、おまえは同和の方かという言葉でやっております。つまり、人権を守らなければならない法務省あるいは検事、そういうところでなおかつこういう差別的な発言、意識が存在しておる。こういうことを考えますと、これは国会でも、参議院でもありましたし、決してこれいいかげんな問題じゃありません。
 そこで、人権擁護のための職員というようなものはもっともっとふやさなければならない。これについては前の法務大臣は、それではひとつ勉強さしますというので、法務省は幹部の職員を集めてレクチュアをやっています。高知で検事正に聞きましたところ、検事正は何かパンフを送ってきただけだ、こういうことなんです。これは最高裁も検察も、法務当局だけじゃなくて、政府全体大いにこれ認識し直す必要があるということを痛感しますが、総務長官いかがですか。
#185
○藤田国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、政府にそういうふうな間違いがあれば、これは重大問題である、かように思っております。憲法第十四条にのっとりましてそういうものは一切なくするのが目的でございますから、そのように政府一体となって努力をするつもりでございます。
#186
○湯山委員 法務省におかれても、自分の管轄は法務省の内部だけだということじゃなくて、関係のあるいまの検察、それから、いまの何かロッキードの方は人権を守るというのですけれども、それよりももっと最高裁、それから全体にわたってもっとその問題についての認識をさせるという必要があると思うのですが、その努力を一層なさるかどうか。
#187
○塩崎政府委員 湯山委員御指摘のように、昨年そのような発言があったことも事実でございますし、大変遺憾なことでございました。二回にわたりまして法務省といたしましては研修もいたしました。ただいま高知県にパンフレットが来ただけというようなお話がございましたが、私はそうとは思わないわけでございます。人権問題を最も基本的な仕事と考えております法務省でございますので、法務省全般にわたりましてこの問題の重要性について認識を得させるつもりでございます。
#188
○湯山委員 そこで、まだまだこの問題の解決のためには困難が山積しております。たとえば、一体措置法に基づく事業はこれでいいかどうか。長期計画はこれでいいかどうか。措置法や長期計画については再検討の必要がある。これは総務長官もちょっとおっしゃいましたが、人権もいまだ守られていない、人権擁護も前進していないということも明らかになっております。そうなってくると、もっと本気でやらなければならないのですが、たまたまこのことについて同和対策協議会は、現同和事業を進めていくためには、「現在の同和対策事業特別措置法及び同和対策長期計画の積極的運用、予算措置を講ずることによって対処し得るという意見もあるが、同和問題を根本的に解決するためには、同法の改正についてすみやかに検討を行なう等積極的な措置を講ずるとともに、長期計画についても適切な補正を行なうべきである。」、つまり、もう一遍、法律もただ単に期間の延長じゃなくて中身もしっかり検討する、長期計画も検討せよというのが、これは総理大臣、各省関係大臣に出ております。これは総務長官御存じでしょうか。
#189
○藤田国務大臣 存じ上げております。
#190
○湯山委員 四十八年の七月に出ておるのですけれども、今日まで放置されたのは一体どういうことなんでしょう。私はこれはやはり政府全体の責任であると言わざるを得ません。と申しますのは、この意見書を出した同対協には皆さんの各省の事務次官が委員として入っています。専門委員と学識経験者十名、政府機関から総理府の副長官を初め関係各省の事務次官全部入っています。その人たちが意見書を出したのが今日まで守られていないというのはこれは怠慢と言わざるを得たい。何回も意見書を出していますが、一年に十回足らずあるようです。月一回足らずあるようですが、一体事務次官は出席しておりますか、総務信官。
#191
○藤田国務大臣 協議会の方は月一同程度催しております。昨年は七回催したと思いますが、いま湯山先生御指摘のように、事務次官が行政側として代表者になって出るわけでございます。やはり十名でございますが、御指摘のとおり、ほとんど代理が出席いたしておる、かような状況でございます。ただし、帰りましてその連絡は非常に密なるものがある。と申し上げますのは、協議会におきましていろいろと問題が出されたものが直ちに解決をされてきておるという事実がございます。二、三、例を申し上げますと…
#192
○湯山委員 時間がないようですから結構です。
 担当官は一生懸命やっておられるし、それから先ほど来御答弁のように、各大臣も重要だということで、他の予算に比べて伸びのいいこと、これも知っております。しかし、基本になるものは長期計画がどう進んでおるか、措置法が適正にできておるかどうか。事務次官が全部出てやっておれば、先ほどのような自治省の財政局長が通達を出したりしなくていいはずです。それが行われていない。しかもこれは法律によって設置された委員会で、総理の任命による委員です。その事務次官が一人も出ていない。これはまさに今日こういう状態になっておる一番の原因を端的に示したものだ、こう言わざるを得ません。これにつきましては、政府全体、総理大臣を含めての重大な責任である、私はこのように考えます。したがって、今後の運営においては、少なくとも御出席の大臣は事務次官を出してください。そして、そこでしっかり協議をして、この意見書にあるように、予算措置や運用じゃなくて、この措置法を根本的にもう一遍検討する、長期計画も検討する、このことについてぜひ全力を挙げて取り組んでいただきたいと思いますが、各大臣のこれに対する御所見を伺いたいと思います。ひとつ総務長官から……。
#193
○藤田国務大臣 先ほど申し上げましたように、近い時点において見直さざるを得ない、こういうことは事実でございますし、そしてまた、事務次官が出席いたしておりませんということに対しましては、申しわけないことであると思います。ここに各大臣がおられますが、御出席のない大臣にもいまの湯山先生の御意思をよく伝えて、今後は事務次官が出席するようにいたします。
#194
○小川国務大臣 御趣旨に沿うように努力いたします。
#195
○坊国務大臣 次官が出席するということになっておるそうでございますから、できるだけ次官を……(湯山委員「特に大蔵省は出してください」と呼ぶ)それで万一出られないというようなときには、次官にかわるべき本当の責任者がかわって出させていただきます。
#196
○塩崎政府委員 人権を最も重要な仕事と考えております法務省でございますので、御趣旨に沿って努力したいと思います。
#197
○湯山委員 では、上田委員から関連がありますから……。
#198
○坪川委員長 関連質疑を許します。上田卓三君。
#199
○上田委員 私は、部落差別をなくするために五十年間闘いを続けてまいりました部落解放同盟の中央執行委員であり、大阪府連の委員長をいたしております。私は、部落解放の父、松本治一郎先輩や八木一男先輩の遺志と遺業を引き継ぎ、差別と迫害の中からやっと国会に参った者でございます。以後よろしくお見知りおき願いたいと思うわけであります。
 さて、湯山先生の質問に関連いたしまして、二、三、部落問題につきまして御質問を申し上げたいと思います。
 まず、基本的な認識の問題でございますが、二月三日衆議院本会議において、わが党の久保三郎議員の、同和対策事業特別措置法が制定され八年を経過し、残る二年で部落問題は完全に解決するのかという質問に対しまして、福田総理は、同和問題はいずれにしても重要な問題で、基本的人権にかかわるものであり、これを重視し、今後とも同和問題解決に積極的な努力を払うと答弁がなされました。このことにつきましてお聞きしたいわけでありますが、同和対策審議会答申では「同和問題は人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり、日本国憲法によって保障された基本的人権にかかわる課題である。」と述べられております。部落差別の現存が憲法違反につながり、同和問題の解決が焦眉の急であるという観点から特別措置法が制定され、あと二年を残すのみとなったわけであります。総理の発言はこうした事情に対する理解を示すものとして受けとめていいのかどうか、御質問申し上げます。
#200
○藤田国務大臣 総理の発言は、同和問題が憲法十四条に保障された基本的人権にかかわる問題であるという深い認識の上に立って、十カ年の計画もこれあり、これがいますでに八年間済んでおりますけれども、あと二カ年で積み残しの問題が解決できるかどうかという懸念をお持ちになりながらのお答えであったと思います。
#201
○上田委員 部落差別が人権尊重をうたった憲法の理念に反するという立場で特別措置法ができたのですね。
#202
○藤田国務大臣 さように思います。
#203
○上田委員 それでは、地名総鑑の問題につきまして質問したいと思います。いわゆる部落地名総鑑について御質問申し上げます。
 周知のように、この差別事件は一昨年十一月十五日に発覚したものであります。政府は事件発覚後、総理府長官、労働大臣談話や各事務次官通達を出し、形の上では一応企業に対する指導、住民に対する啓発の徹底を約束いたしました。しかしながら、部落解放同盟の追及の中で「部落地名総鑑」以外にも二種類、すなわち昨年一月に発覚した「全国特殊部落リスト」、さらに昨年十一月に発覚した「部落リスト」がつくられ、販売されており、購入企業も何と百十三社に至っております。こうした差別事件の続発は基本的人権のじゅうりんそのものであり、同対審答申と特別措置法に対する挑戦であります。特にこの差別事件は、部落問題の根本である就職の機会均等を奪うところにその悪質な本質があります。経済的恐慌の中で部落産業は次々と倒産に追い込まれ、部落の失業率は非常に高く、部落大衆の仕事保障が最も必要である現在、こうした差別事件はまさに犯罪的なものであると言わざるを得ません。
 昨年五月、第一、第二の地名総鑑を糾弾した際に、第三のリストがあるのではないかというわれわれの質問に対し、大阪法務局人権擁護部長は、これ以外に出回っているリストはありませんと断言をいたしておるわけであります。ところが、実際には何と二月以降調査しており、この時期にはひそかに回収をしていたという事実が明らかになっておるわけであります。このように差別企業を隠蔽し、それと結託した前歴を持つ法務行政だけに、再度確認しておきますが、すでに発覚している三種類以外にもうあとはないのかどうか、御質問を申し上げたいと思うわけであります。特に総理府長官、責任を持って御答弁を願いたい。
#204
○村岡政府委員 ただいま御質問の点についてお答えいたします。
 最初に発覚いたしましたのが「部落地名総鑑」でございます。それから第二番目に発覚いたしましたのが「全国特殊部落リスト」、これは労政問題研究所というところが発行しておりますので私どもは労政リストと呼んでおりますが、それが二番目でございます。三番目に発覚いたしましたのが、同じく「全国特殊部落リスト」、これは労働問題研究所、ちょっと名前が似ておりますが、労働問題研究所というところが発行したものでございます。
 この三つはいま委員のおっしゃったとおりでございますが、このほかに同じ労政問題研究所が発行したものがございます。これは全国的なリストではございませんで、大阪府下の地区の名前をリストアップしたものでございます。現在のところではそのほかには探知しておりません。
#205
○上田委員 いまの答弁は非常に不満であります。なぜならば、第一、第二、第三、そして第四番目として大阪版の地名総鑑が明らかになっておると言われておるわけでありますが、私の手元には第五番目の地名総鑑が――ここにあるのであります。これは一体どういうことですか。私が言いたいのは、われわれが追及して初めて次々と、第二、第三と地名総鑑が出ているという点であります。これは一体どういうことなんですか。法務局はないのですか。法務省はないのですか。部落解放同盟がこのことを追及しなければ世の中に明らかにされないというこの現状についてはっきりとお答えをいただきたいと思います。
#206
○村岡政府委員 先ほど第四のリストにつきまして労政問題研究所の発行と申しましたが、これは労働問題研究所の間違いでございまして、大変失礼いたしました。訂正いたします。
 私どもとしては極力この種の事件は人権侵犯事件として調査し、適切に対処するために努力しておるところでございますけれども、その努力の結果労働問題研究所のリストも法務局で探知して調査をほぼ終えたところでございます。しかし、まだほかにも類似の出版があるという情報はないではございません。ただ、調査してその事実を探知するには至っていないということを申し上げたのでございまして、そういうことがございましたらぜひ法務局で取り上げて対処いたしたいと思いますので、情報をお寄せいただきたいと思います。
#207
○上田委員 非常にけしからぬと思います。
 次に申し上げたい問題は、これらの差別図書は昭和四十年と四十二年の総理府の実態調査と何ら変わりません。政府機関の同和地区の調査の結果がもとになってこれらの悪質な部落地名総鑑が出されておると言わざるを得ない、このように思うわけであります。
 そういう点で、第四番までと言われたわけでありますが、いま政府が、法務省が握っておるすべての資料を提示願いたい。まず、発行社名であります。発行部数、印刷所名、販売、配布部数と価格であります。五番目には、チラシの配布先と部数であります。それから購入者名であります。回収状況、未回収部分の回収見通し、資料の入手先、これが肝心でありますが、これらについて書類でもって一切の資料を私のもとに届けてもらいたい。どうですか。答えてください。
#208
○村岡政府委員 委員会から提出の御要求がありますればそれに応ずる所存でございます。
#209
○上田委員 委員長、どうですか、責任を持って提出していただけますか。
#210
○坪川委員長 上田君の質問に対しましての見解を御答弁願います。
#211
○塩崎政府委員 ただいま上田委員の御要求の資料につきましては、政府委員は委員会で提出の御要求がございますれば提出いたしますということで答弁したわけでございます。中に非常に複雑多岐にわたるものもございますし、膨大なものもございますので、これらについて政府委員から理事会にでも御説明をさせていただいて、その結果御判断願って委員会として御要求願えれば大変幸せでございます。
#212
○坪川委員長 ただいまの件につきましては、追って理事会でまた協議いたします。
#213
○上田委員 なぜ出せないんですか。
#214
○坪川委員長 いや、理事会で協議をいたしまして……。
#215
○上田委員 私は、議員として発言しているんですよ。納得できないですよ。
#216
○坪川委員長 いま理事会で話し合いがそうなりましたから、御了承願います。
#217
○上田委員 出すという前提でですね。それならお任せしましよう。出し方の問題でしょう、になっているのは。出すということが前提でしょう。どうですか。
#218
○塩崎政府委員 ただいま申し上げましたように、大筋としては出す方向で、内容について理事会で御検討願いたいと思います。
#219
○上田委員 こうした悪質な差別の続発を防止できないのは、政府の人権擁護行政の貧困と、たとえば狭山差別裁判や、あるいは部落問題を人種差別と大変けしからぬ発言をした安原刑事局長の差別発言など、これは後ほど私は問題にしたいと思っておりますが、これらのことに示される法務省の姿勢そのものにあるわけであります。
 政府は、差別企業に対する啓発と研修の強化によってこうした差別事件の再発防止を図ると言うが、それだけでできますかどうか。企業がこうした指導に応じない場合は一体どうするのか、篤とお尋ねをしたいわけであります。
#220
○越智政府委員 地名総鑑等のきわめて悪質な冊子が発行され、多数の企業が購入した事件が発生したことは、まことに遺憾なことであると存じます。地名総鑑の購入企業に対しましては、労働省といたしましては、関係各省庁と共同して指導啓発を行うほか、独自に採用、選考の実情を各企業ごとに点検するなど、きめ細かい指導をしているところでございます。今後とも、採用、選考等のあり方については指導を一層強化し、就職の機会均等の確保に努めてまいる所存でございます。
#221
○上田委員 法務省、どうですか。
#222
○塩崎政府委員 ただいま労働政務次官が申されましたように、企業に対しまして指導を強化することによって適切な措置を講じたい、こういうふうに考えます。
#223
○上田委員 そういう強力な指導という形で問題は解決しないから、私は質問しているんです。
 たとえば、昨年の八月七日付で、法務省人権擁護局長と東京法務局人権擁護部長に対して、株式会社富士リサーチの社長であり、玉岡総合調査研究所所長である玉岡俊雄なる人物から、このような悪質なる抗議文書が提出されておるわけでありますが、このことについて法務当局は知っておりますか。どのような指導をしたのか、聞きたいと思うわけであります。
#224
○村岡政府委員 いまお示しのような文書が参ったことは事実でございます。ただ興信所につきましては、いやしくも部落差別を助長するような行為のないように、重ねて要請を繰り返しているところでございます。
#225
○上田委員 この文書は、法務省なり各省庁が、いわゆる事務次官で各企業に対して差別を戒めたことに対する挑戦状であります。たとえば、これにはまず、部落に部落と言って何が悪い、こういう開き直りであります。二番目には、こちらは、依頼者から依頼があればそれに応じるまでで、これは営業の自由である。三番目、しかも部落問題などつまらぬ問題である。四番目、それを政府も特別措置などつくっていること自体が問題である。五番目、法務省通達は不当にしてナンセンスなものである、といったものであります。
 特別措置法が制定されてすでに八年。しかも地名総鑑差別をなくそうと出された通達に対し、差別調査の実施を高言し、開き直るこうした悪質興信所に対して、いかなる処置を講ずべきであるか。営業停止処分を含むところの厳重な処置を強く要求するわけでありますが、そのことについてお答えを願いたいと思います。
#226
○塩崎政府委員 現在の法制のもとで興信所等について規制をすることがなかなかむずかしいのでございますが、法的規制の問題まで含めまして、この問題については、人権擁護の見地からただいま内閣を中心としまして各省間で慎重に検討を続けておるところでございます。
#227
○上田委員 部落差別を営利追求の手段にするという、このような悪質な差別事件をなくするためには、こうした図書の発行者と購入企業の双方に対する効果的な法的規制が絶対に必要であります。これまで差別図書の大半は、個人のプライバシーの調査を目的とする私立探偵、人事興信所など、一部悪徳業者が引き起こしたものが多いのであります。こうした調査は、本来人権侵害のおそれが高いと思われますが、管轄官庁はどこで興信所、信用調査機関の認許可などしておるのか、こういう問題でございます。
 今日すでに、国民の命や健康、安全、危険防止にかかわるさまざまなる職業には、認許可制度をとっております。たとえば、自動車で傷害を起こしてはならぬということで免許証というものがあります。お医者さんには医師の免許がございます。あるいは弁護士さんにおいてもそうです。興信所も人の弱みにつけ込んで、いつ何どきそれが刃物になるやもしれない非常に人権侵害にかかわる問題であるわけでありますから、これを野放しにするんじゃなしに、はっきりと許可を与えて、たとえばアメリカにおいては探偵法という法律があって、ちゃんと規制しておるわけであります。そういう興信所の業界では、何とかひとつ認許可制度にしてもらいたいというような、そういう人人もあるということでありますから、ひとつ前向きで検討を願いたいと思うわけであります。法務省なり通産大臣の御回答をいただきたいと思います。
#228
○塩崎政府委員 御指摘のとおり、営業自由のもとで許可、認可あるいは資格を与えることは、法律の根拠を要するところでございまして、それは大変研究を要する問題でございます。しかし、おっしゃるように差別となるような結果が生じますれば、それを排除する形での種々の問題を考えてみる。これはどこの所管になりますか、警察庁か何かだというような話もございますが、これらの問題を含めまして、いま各省との間に慎重な検討が続けられておりますことを御報告申し上げさせていただきたいと思います。
#229
○上田委員 ガードマンなんかもそういうような形でできておるわけでありますし、業界の方も強く要望しておるということでありますから、前向きで検討していただきたい、こういうように思います。
 そこで、ひとつ通産大臣にお聞きしたいのですが、この地名総鑑を買うている企業はけしからぬということで御指導いただいておるわけでありますが、肝心かなめの政府機関でもあるところの商工中金がこれを買っておるということですが、これは一体どういうわけですか。
#230
○田中国務大臣 お答えをいたします。
 この地名総鑑なるものを商工中金が買っておる、なかんずく政府関係の三金融機関の一つである商工中金が買ったということで、ただいまの御質問があったと存じます。
 御案内のとおり、私も八木先生と御一緒に戦後ずっと同和問題で、党は違いますけれども、御一緒に手を取り合ってまいったものでございます。かような差別の問題につきまして、私の関係のところでかようなことがございましたことにつきましては、早速十二分に注意もいたしたいと存じます。
#231
○上田委員 もう時間もございませんので、あと一点だけ。
 たとえば、この事件に対して大阪などでは関係部長が集まりまして、対策本部なるものを設けて対処しておるわけでありますが、政府においてもそのような意思があるのかどうか、その必要性を認めるのか、この一点をお聞きして終わりたいと思います。
#232
○藤田国務大臣 先ほど湯山先生からの質問もございましたが、対策協議会の幹事会においてこの問題を十分取り上げて今後検討いたしてまいりたい、かように考えます。
#233
○坪川委員長 これにて湯山君の質疑は終了いたしました。
 次に、兒玉末男君。
#234
○兒玉委員 私は、五十二年度の予算に関連する運輸行政全般について質問を行いたいと存じます。経済企画庁はお見えでしょうか。
#235
○坪川委員長 経企庁は三時に入ります。
#236
○兒玉委員 それではまず、大蔵大臣がお見えでございますので、お伺いしたいと存じます。
 御承知のとおり、五十二年度の予算編成の一つの問題点として、国鉄再建をめぐる問題が大きな焦点となっておるわけでございます。それで、現在の大幅な赤字を解消する手段としての運賃改定が現在まで大変困難であった、こういうことで国鉄運賃法の改正に関して、特に運賃制度の改善に当たり、いわゆる法定制を緩和する、これは財政法三条並びに憲法八十四条との関連から考えましてもきわめて重大な意義を持つわけでございますが、この法定制緩和の法律の提案に当たっても、特に大蔵省内においてはかなりの論議がなされたと聞いておるわけです。この関連について、まず大蔵大臣の見解を承りたいと存じます。
#237
○坊国務大臣 お答え申します。
 国鉄運賃の変更に当たりまして法定を緩和したということが法律に重大なる抵触をするんじゃないか、こういう御質問のように思いますが、憲法の八十四条は租税についていわゆる租税法定主義を定めておりますが、国鉄運賃は形式的に見まして租税に該当はいたさないことはもちろん、実際的に租税とは性質を異にいたしておりますので、憲法八十四条の規定は適用されない、かように考えます。
 ところで財政法第三条は、国の独占に属する事業、そういったような事業の料金については法律に基づいて定めなければならないということになっておりますが、これは必ずしもこれらの事業料金の具体的な額をすべて法律自体で直接決めることまで要求するものではないと解釈しております。いかなる基づき方にするかということについては、独占の程度、その他総合的に勘案して判断されるべきものと考えられますが、今回の国鉄運賃法案は、今日の国鉄の独占の程度その他を考慮いたしまして、一定の要件の枠内で運賃の変更ができるように法律で定めることとするものでありまして、財政法第三条の要請に反するものではないと考えております。
#238
○兒玉委員 法制上の問題の論点は、一応後日提案されましてから論議することにしますが、少なくとも、この国有鉄道運賃法が制定されましたのは昭和二十三年七月七日の法律第百十二号でございます。いまからすでに二十九年間の長い歴史を持ち、しかも今日まで運賃改定については常に国会の議決をやってきた歴史的な歴然たる事実があるわけでございます。いまの大蔵大臣の答弁によりますと、いかにも便宜主義的な感を深くし、しかも租税に相応するとは考えられない、さらには専売的な要素もない、こういうふうな見解でございますけれども、少なくとも国鉄運賃が国民生活に与える影響、あるいは今日の交通機関を利用しているところの旅客の数、こういう点から考えましても、他の旅客の輸送機関に比較すると、その比重はきわめて高いと見なければならない。私はこういうふうに判断をし、しかも今回の法定制緩和の目的が、ともすれば国会の審議を待てばなかなか運賃の改定が、過去三回の再建計画から見てうまくいかない。どうしてもここでいわゆる大臣の認可制度に切りかえる。このことからいって運賃制度の自由化というきわめて、いままでないところの大変な改正だ。私はこういうふうに理解をせざるを得ない。そういう点等から考えますならば、この取り扱いについては相当慎重な配慮が必要である。
 これから大臣にお伺いしますが、特にエネルギー資源問題はきわめて重要な政治課題であり、総理も所信表明で言われたとおりに、今後このエネルギー資源問題は、特に石油問題を中心に一九八〇年代においては重大な転機を迎える。そうしますと、いままでのように、ハイヤー、タクシーあるいはバス等の一般的な輸送機関だけではとうてい律し切れない。そうなれば当然、貨物も含めて大量輸送である地方バスなりあるいは国鉄の輸送に依存する度合いが必ずさらに高まってくる。そうしますならば、大臣が答弁されましたように、いわゆる独占的な体制はいまは少ないにしても、これから近い将来にその体制というものはまた再び復元する客観的な情勢があると思うのですが、これらのことについてはどういうような御理解をされますか、お伺いしたいと存じます。
#239
○坊国務大臣 お答え申します。
 仰せのごとく、将来国鉄の独占度が再び高くなったような場合には、そのときにおきまして国鉄の独占がどの程度に高まっているか、事業の公共性の度合いはどういうふうになっておるか等、具体的な国鉄の事業の状態を総合的に勘案いたしまして判断しなければならぬ問題だと思っております。
#240
○兒玉委員 大臣にお伺いしますけれども、現在の交通関係のいわゆる予算の関係なり国の資金の投資を見ておりますと、航空部門、港湾、道路あるいは鉄道、こういうように多岐にわたっているわけです。でありまして、総体的な今日の輸送情勢に対応するためにはいろいろな問題があるわけでございますが、要するに総合的な交通体系を確立する。都会地においては大変な混雑、過疎地域においては地方交通の企業が大変な苦況に陥っています。そういう点からも国の財政投資、いわゆる資金の総体的な投資計画を根本的に変えていく必要があるのではないかということが第一点。
 第二点は、今回の法定制緩和によって、ともすれば利用者にその負担の比重がかかる。後で運輸大臣にも質問しますけれども、現在の状態では、大臣御承知のとおり、本年一九%、そして五十三年、五十四年と、大臣の言われるように法定制緩和の制度が実現しますと、毎年少なくとも二〇%から二五%程度の運賃値上げを待たなければならない。このことが国民生活に与える影響はきわめて重大である。国として、大蔵省として国鉄の財政対策にもう少し思い切った措置をとることによってできる限り利用者の負担度を低くする。そういう意味において、私は、この法定制緩和の提起は時期尚早じゃないかと判断しますが、大蔵大臣としては、このような総合的な交通体系の問題を含めてどのような見解をお持ちか、お伺いしたいのであります。
#241
○坊国務大臣 お答え申します。
 近来、資源問題、環境問題等経済社会情勢の変化が生じておりまして、交通サービスのあり方について検討を深める必要がありますが、このような観点から昭和五十年代前期経済計画を初めとして各種交通施設に関する年次計画が策定されておるところでございまして、財政当局といたしましては、このような計画に基づいて資金の効率的な配分に留意しつつ、道路、港湾、空港等に対する財政措置をきめ細かく講じてまいりたい、かように考えております。
#242
○兒玉委員 再度大蔵大臣にお伺いしますが、御承知のように、日本と同じような国鉄の経営形態にある西ドイツ、フランスあるいはイギリス、こういう国が、四十九年までの統計で、六年間に大体どの程度国鉄に助成しておるかという数字を簡単に申し上げますと、西ドイツが職員の数は四十万六千で、総収入の三四%、三兆一千億、フランスが三八%の二兆四千億、イギリスが一七%の五千九百億、これは四十九年まで過去六年間の国からの助成です。日本の場合はわずかに九・三%の九千百億。大体同じような職員数の西ドイツの場合に比較するならば、まさに四分の一の低額にある。このことも今日国鉄が赤字経営を余儀なくされた一つの要因だ。幸い五十二年度は一四・七%の四千五百億というかなり思い切った助成策がとられているわけでございますが、大臣としては、今後このような状態をより一層助成金の拡大の方向に持っていかれる御意思があるのかないのか、この点をお伺いしたいと思います。
#243
○坊国務大臣 今後、国鉄の経営は、いま何とかしてこれを健全化していこうということで努力をし、かつまた、これらの措置につきましては御審議を願うことになっておりまして、私どもはそれに期待をいたしておりますけれども、何にいたしましても国鉄は今日の日本の交通の大幹線であるということを考えますと、この国鉄に対しましてはやはり今後とも大いに力を入れていかなければならない、これはもう当然のことだと考えております。
#244
○兒玉委員 大蔵大臣に最後に一つ要望として申し上げたいことは、巷間、国鉄は非常に人が多過ぎる、たとえば今度の貨物の合理化でも、約五百のヤードを減らせと言っておるわけです。しかし、大臣もお答えになったように、少なくとも大量輸送時代のエネルギー資源との関連から再びそういうふうになった場合、また今度はヤードを拡張しなければいかぬという問題が出てくる。あるいは汐留なり梅田のヤード等は、これを売れという話まで出るくらいでございます。これは長期展望に立つならば慎重な配慮をすべきであろうと私は思います。
 同時に、さっき申し上げましたドイツなりフランスなりイギリスなり、このような国々における国鉄労働者と日本の国鉄労働者の一人当たりの生産性、一人で何人の人間を運び、何トンの貨物を運ぶかといういわゆる人トンキロの生産性でも、日本の場合はイギリス、フランスあるいは西ドイツ等の三倍ないし四倍の生産性を持っておるわけでございまして、合理化合理化ということだけで、すでに昭和二十三年から昭和五十一年までに十七万六千名定員が減っておるわけです。このことについて、今後大臣としてはひとつ十分な御配慮をいただきまして国鉄の再建対策に取り組んでいただきたいということを要望として申し上げ、次に法制局の方にお伺いしたいと思います。
 この前、運輸委員会でも若干の御質問を申し上げたわけでございますが、大蔵大臣の御答弁では、法定主義を緩和することは、憲法八十四条との関連あるいは財政法との関係でも別に差し支えない、こういう御見解でございます。少なくとも運賃が、国鉄運賃法の制定以来今日まで二十九年近い国会における審議を通じて決定されたいきさつ、並びに、確かに法律の文句は、賃率等の改定はやる必要がないという解釈はできますけれども、これは憲法八十四条の精神から考えてもこの解釈の仕方をまず変える必要はないのかどうか。それから、財政法第三条の規定から国鉄運賃関係は全面的に削除しなければ、この法定制緩和あるいは運賃、料金決定の自由化は法的に拘束は受けないのかどうか。同時に、新聞報道なり、あるいはいま政府の考えている緩和の限界はせいぜい二〇%程度、すなわち、一定基準という言葉が使われておるわけでございますが、一定基準とは、それ以上は一体どうするのか、ここに問題が存するわけでございますが、この三点について法制局の御見解を承りたいと思います。
#245
○別府政府委員 お答えいたします。
 まず憲法第八十四条との関係でございますが、憲法第八十四条は、御存じのとおり、租税については「法律又は法律の定める條件」によらなければならないという旨、いわゆる租税法定主義を定めておるわけでございまして、なお、財政法第三条は、租税以外の独占事業の料金についても「法律又は国会の議決に基いて定めなければならない。」ということにいたしておるわけでございます。
 そこで、財政法第三条が形式的にも実質的にも租税に該当しない独占事業の料金についていま申し上げたように定めているのは、憲法第八十四条の精神にのっとって立法政策として定めたものというふうに政府では考えておりますので、これらの料金について憲法第八十四条が直接適用はされないという考え方、これは特に解釈を変えたわけではございませんで、前々からそういうふうに考えておるということでございます。
 次に、財政法第三条で、先ほど申し上げましたように、独占事業の料金は「法律又は国会の議決に基いて定めなければならない。」と言っている意味でございますが、これはあらゆる場合に法律によりまたは国会の議決により具体的な料金額まで決めなければならないということを言っているわけではないというふうに解しておるわけでございます。したがって、先ほど大蔵大臣からの答弁もございましたように、独占の程度あるいは公共性の度合いというようなことを考えまして、それぞれ具体的な事業料金のいわば内容に従いまして、法律で定める必要があるか、あるいは一定の要件を法律で定めましてそれに従って具体的な金額は法律によらずに定めるという決定方式をとるかという選択の余地があり、そういうことをすること自身が財政法第三条の趣旨にもとるというわけではないというふうに考えております。
 なお、第三番目の運賃法改正につきましての御質問は、実は運賃法改正、提出はいたしましたが、まだ委員会の付託にはなっていないようでございますので、一応われわれが審査したところで申し上げますと、運賃法改正の中に書いてございます限度を超えるような引き上げをする場合には、今度考えております特別の要件に該当しないということで、法律の内容にわたりますが、運輸大臣の認可というような方式ではできないというふうなことになるかと存じます。
#246
○兒玉委員 再度法制局にお伺いします。
 大蔵大臣も答弁されましたが、今日の国鉄運賃の占める国民生活への影響、あるいは今日の交通体系全体の中において国鉄の運賃、料金、特に運賃の占める比重というものを、法制局としては、まあこれは政治の問題でございますから若干問題があろうかと存じますが、どの程度の比重を占めた場合が、独占といいますか、そういう解釈をとっておられるのか。もちろん専売等の場合、これは専売事業として国の事業でございますからもう簡単明瞭でございますが、国鉄の場合は、何といいましてもその占める比重はかなり高いと思うわけでありますが、やはりややこれに類似しあるいはこれとほぼ同格的な体系を持つものじゃないかと私は思うわけですが、この辺の見解をひとつ法制局から最後に承りたい。
#247
○別府政府委員 お答えいたします。
 ただいま御質問のございました、独占の程度の度合いあるいは公共性の度合いというようなものが、どの程度になればどのようないわば法定主義の緩和ができるかというような御質問は、実はすぐれて立法政策的な問題かと存じますので、その実体的な判断は担当省庁である運輸省がまずされるということになるかと思いますが、運輸省が今回の改正が適当であると判断をいたしまして、当方で審査をした際には、運輸省の説明を当方としては一応妥当であると考えまして、今度のような改正を政府として提出したというふうに考えております。
#248
○兒玉委員 最終的には運輸省と協議をして決める、こういうように理解してよろしゅうございますか。
#249
○別府政府委員 お答え申し上げます。
 ただいま申し上げましたように、法制局は各省から出してまいります法律案を審査するという立場でございますので、実体的な判断は運輸省の判断を尊重するということになるわけでございます。協議という言葉はできるだけ私の方としては避けて考えたいというふうに存じます。
#250
○兒玉委員 運輸大臣にお伺いします。
 国鉄再建の問題が大変重大な政治課題であり、歴代大臣も大変苦慮された問題でございますが、今回どうしても運賃制度の改正を通してもし改定が行われますならば、昨年五〇%引き上げ、今年二年続きで、まあ総理大臣のいわゆる裁断で二〇%以下の一九%に抑えることになったわけでございますが、この本質的な問題は、再建という重大な目標というものが、この法定制の緩和によって安易な利用者負担への傾斜、こういう批判をどうしても免れない。さらに、大臣の認可でございますから、この改定が次々に野放しの状態になる、いわゆる運賃改定自由化の方向に進みますならば、惰性的にこの傾向が強くなるという危険性を含むと思うのです。特に所管大臣として、この法定制緩和と、今後の再建策はこの緩和政策だけで可能とお思いなのかどうか、第一点お伺いしたいと思います。
#251
○田村国務大臣 まず結論から申しますと、運賃というものを無制限にどんどん上げるということは不可能でございます。物価との関連、それから他の交通機関との関連、これからいって野放しにすることは不可能でございます。これは相当厳しい枠づけになると思います。
 そこで、安易な運賃値上げだけで国鉄の再建ができるのかという御質問でございますが、率直に言って、運賃値上げだけで国鉄の再建はできません。私はそう思います。
 そこで、従来国鉄当局が非常に悩んでおりました問題が幾つかありますが、大きな問題として二点ありました。その一つは、適時適切の運賃値上げができないという悩みでございました。それでよけいに累積赤字を大きくしたということがあります、そういうことを申す。それからいま一点は、当事者能力に欠ける面が非常に強うございますから、関連事業収入というものを求めるべくしてもどうしても求めることができない。いろいろなたががはめられておる。あれだけ膨大な土地を持っておっても、その利用すら自由にできないような状態である。こういうことでございましたので、そこで、財政法三条の許容する範囲内において運賃法定制を緩和する、適時適切に運賃値上げができるようにして差し上げましょう。もちろん先ほど申し上げたように相当厳しいたがははめられますけれども、そういうふうにする。それから投資範囲の拡大をできるように国会へお願いしましよう。このようにして差し上げるから、国鉄は思いを新たにして経営努力をなさい。
 率直なことを言って、何といっても国鉄の再建というものは国鉄の労使の心構えの問題が一番だと私は思うのです。でありますから、そういう思いを新たにして、そしていま言ったような基本的な要件を踏まえて、五十二年度中にいろいろな赤字要因を洗い出して、そしてそれに対してこのように適応する、このように対処する、このようにして国鉄をよくするんだ、こういうようなひとつ具体案をつくりなさい。もちろん政府としても可能な限りの助成をすることはやぶさかでない。しかしながら、何といっても国鉄自体の問題で、親方日の丸でのんびりしておってもらっては困る。こういうことでございまして、五十二年度中に具体案をつくる、そういうものを総合しまして国鉄の再建に資することにしたい、こういうわけでございます。
#252
○兒玉委員 再建の問題、いずれにしてもこれは避けて通ることのできない問題であります。それで、私は先ほども大蔵大臣に申し上げましたが、西欧先進国の国からの助成のパーセント、金額等を具体的に比較する場合に、いままでが大変国からの助成が少ないということが明白であります。また労使間の問題、もちろんそれも必要でしょう。しかしながら、現在の国鉄の職員数と一年間の輸送量から比較した場合でも、西ドイツ、フランス、イギリス等の平均三倍、四倍の生産性を持っている。だから、必ず政府の提案は首切り、合理化ということが一つの裏づけとしてなされることはきわめて遺憾だ。十分御認識を改めていただきたい。同時に、現在の運賃、料金の体系というものが非常に不合理であります。たとえば新幹線等の場合でも、当然付帯的な地位にある料金が運賃よりも高いという形態があります。同時にまた、バスあるいは航空機、あるいは航路、こういうふうなそれぞれの企業における運賃体系がばらばらであるために、たとえば鉄道が上げたらこの次は飛行機を上げる、今度はバスを上げる。そういうことで、各種運賃、料金の値上げがイタチごっこ的に行われることは、それで一番迷惑を受けるのは利用する国民大衆であります。でありますから、やはり交通における総合的な運賃体系の整備ということが第一の問題。それから、それぞれの各種の交通機関は、過疎地域におけるバス等は確かに大変な問題でしょう。それらの点について、やはり国からの助成を一定の基準を設けて行い、総体的な経営のバランスがとれる、こういうような体系を十分考えるべきではないのか。それからまた、国鉄の場合は、運賃、料金の負担、もちろんこれは運賃法によって原価を償うことがその基本になくてはいけないとなっておりますけれども、たとえば新幹線の場合、あるいは地方ローカル線、経営当初から赤字路線としてわかっている分まで一律に負担させることは合理的でない。そういう点から、特に今後経費の負担区分というものを明確にすること、同時に、公共負担ということを国の責任において行うべきではないのか、こういう根本的な問題の解決がなければ、再建問題というものは不可能に近いと思うわけでございますが、これらの点について運輸大臣の見解を伺いたい。
    〔委員長退席、大村委員長代理着席〕
#253
○田村国務大臣 負担区分の問題につきましては、これは端的に言いますと、交通機関といえども利用者負担の大原則の上に立たなければなりません。しかしながら、その負担をすべて利用者負担にすることがいいかどうか。当然受けられるサービスに対する代償としての利用者負担、これは当然のことだと思いますが、それは基礎施設をも含めて言えることだと思いますけれども、公共性というものが非常に強く出てくるというような、本来利用者負担をさせるには過重過ぎるというような面につきましては、これは当然政府の助成等で賄わなければなりません。
 そこで総合運賃体系というものについていまちょっと御意見があったわけでありますが、いずれにいたしましても、航空運賃にしろ私鉄運賃にしろ、国鉄の運賃を上げたからということで運賃値上げをするということは私は避けるべきだと思う。断じてやってはいけない。同時に、そのような便乗値上げを求めさせてもならないと思うのです。この点は姿勢をただしていくべきだと存じます。
 総合運賃体系というものを、当初私も何とかしてつくれないものかといろいろ検討してみたのでありますが、国鉄の状態がこのようなアブノーマルな状態であるというときに、総合運賃体系をつくって、ややともすれば、国鉄の運賃を基本に体系をつくればこれは大変なことになりますから、まず国鉄の姿をノーマルな姿に戻すということが何よりも必要であろうか、このように考える次第でございます。
 それから西ドイツやフランス等の引例があったわけでございますが、担当者としてみれば、ああいう助成の大きなことはうらやましい限りでございますけれども、ただ問題は、基本的な違いがございます。というのは、ヨーロッパは可住面積が非常に広い。日本の場合は可住面積が狭い。そこで、当然のこととして、ヨーロッパの場合は国鉄は貨物中心になっておる。シェアが貨物に非常に偏っておる。そして旅客ということについては非常に薄くなっておる。日本の場合は、狭い可住面積、しかも都市というものが限られた地域に集中されておる。都市間交通、そういう点からいっても、旅客が非常な勢いでおるわけで、貨物の場合非常に弱くなっておる。旅客が全交通機関の中に占めるシニアは三〇%、貨物は一三%というような状態でございます。でございますから、幾らが一体助成として妥当なのかということを外国と比較しようと思っても、基本的な計算の基礎が全然違うものですから何とも言えないというようなことがございますが、いずれにしても、政府の助成は可能な限り厚くすべきだというふうに考えております。
#254
○兒玉委員 時間の関係で少しはしょっていきますが、次に航空行政についてお伺いしたいと思います。
 一月の十三日、日本時間で十四日の未明でございます。アンカレジにおける空港で大変な事故が起きているわけでございますが、少なくとも世界一流の日本航空がこのような全く不名誉な事故を起こしたことは、何といいましても真剣に考えてみなければいけない課題であります。しかも、これが結果的に、大変なアルコールを摂取しておって、酔っぱらい運航による墜落事故ということがアメリカの事故委員会でも明確に指摘をされ、解剖の結果でもそのことが明らかになっておる。この問題は、単にアンカレジ事故として処理すべきものでなくして、今日の日本航空における、いわゆる世界をまたにかけて走る一流の日航が、このような事故の因果関係というものをどういうように処理をしているのか。さらにまた、昭和四十七年にはボンベイ、それからモスクワ、サンフランシスコと相次いで日航の墜落事故あるいは不当なる事故が起きております。また、今回のアンカレジ事故についても、新聞の報道等を見る限りでは、社長である最高責任者の朝田氏は、アンカレジ事故については現場にも行っていないというふうに載っているわけですが、一体、このような重大事故について、運輸省としてはどういうふうな指導をされておるのか。同時にまた、幸いこれが牛を積んでいる飛行機でありましたからいいようなものの、それでも五名ですかの操縦士あるいは添乗員が即死している。こういうようなことで、やはりこれはその本質を徹底的に究明し、今後の安全対策には万全の措置をとるべきだと思うわけであります。これに対して現在もちろん的確な措置をとっていると思うわけでございますが、日航側に対してはどういうような御指示をされているのか、お伺いしたいと思います。
#255
○田村国務大臣 アンカレジの事件、まことに残念であります。徹底して、徹底的にこの原因を究明しなければなりません。いまアメリカの運輸安全委員会というのが調査中でございます。事故原因がまだ明らかにされておりませんけれども、しかし機長の遺体から多量のアルコールが検出されたとか、あるいは目撃者の証言によって、機長がずいぶん飲んでおったとか、いろいろなことが言われておるわけであります。これに対して、運輸省としても厳しい態度で対処をいたしておるところでございます。一月の二十一日でございましたか、日本航空、それからそれ以外に定期航空会社五社に対して、各社が航空機乗組員の服務に関して厳正な規律をもって対処するよう厳命をいたしました。それから一月二十九日には、定期航空六社に対して、航空機乗組員の相互チェックを行うこと、運航管理者の職務権限を確立し、乗組員の心身状態のチェックを励行させること、飲酒乗務の防止を客観的にチェックする方法を検討の上実施に移すこと等の措置を講ずるよう指示いたしました。あるいは新聞等で御存じかもしれませんが、私は、タクシーでも飲酒運転のチェック、厳しくやられてたくさんの人が摘発されておる、飛行機は特に何百人という人命を預かる、そういうことであるから相当厳しいチェックしろということを言い渡しました。それに対して操縦士の諸君から若干の抵抗も示されておるようでありますが、命に関する問題でございますから、これは厳しく今後もやっていきたいと考えております。まあどのようにチェックするかということは、それなりのまた知恵も出ようかと思いますから機会もあろうかと思います。それから外国の航空会社に対しましても同じような趣旨の通達を厳しくいたしておきました。
 いずれにしましても、一番恐ろしいのは心の緩みでございます。それは操縦士のみならず、整備士の面においても、心の緩み、これが一挙に何百人の人命を失わせしめるということになるわけでございますから、こういうことについても厳しく今後とも、それも一遍言ったからもういいんだというんじゃなく、何回でも、あれは大丈夫だろうなと言うぐらいの念の入れ方をしていきたい、このように考えておるわけでございます。
#256
○兒玉委員 さっき大臣答弁がありましたが、私の知り得た資料でも、まだ日航にはアメリカのIASCOとの関係において百十九名のパイロットが雇用されている、こういうことであります。しかも、この関係について後でちょっと触れますが、やはり外人のパイロットの場合、この当日の新聞、朝日、毎日、読売、全部の記事を見てみましても、かなり泥酔しておって、そうしてそれを僚友の副操縦士が、これは日本人ですけれども、知っておっても、この新聞で解釈する限り、あるいはこのパイロットを乗せたタクシーの運転手の見解によっても、やはり機長に遠慮をして言いたいことも言えないのではないか、こういうようなこともこの対話の中に載っているわけですね。これはやはり私は重大な問題として一端をあらわしておるんじゃないか。ということは、やはり現在の日航における総体的な人事管理体制、業務管理体制というものが厳正を欠いている。しかも、大臣も言われましたが、とにかく十二時間どころじゃない、二十四時間前から酒を飲むのをやめろと言われたような厳しい言葉が載っていましたが、そういうようなことが言われている上に、その後一体、それでは具体的に日航に対して監督官庁である運輸省の方はどのような指示をしているのか。
 また、この新聞記事に載っているように、運転手がせっかく善意の通報をしたにもかかわらず、これが途中でうまく行っていない。そういうこともその辺における事情を物語る。少なくとも一時間半前でございますから、隣に乗っておった副操縦士の二人が、当然、空港に着いて搭乗員室に行ったならば至急連絡をとるだけの勇気があってしかるべきだ。その辺のところがないがしろにされたところに私は大変問題があるように思うわけですが、それらの関連はどういうふうに把握をされているのか、改めてお聞きしたいと思う。
#257
○田村国務大臣 外人機長の件につきましては、事故の起こった夜、私は直ちに日航社長を呼びまして、外人機長の実態を聞きまして、だめだ、できるだけ早く日本人機長に切りかえるようにということを非常に厳しく申しました。実は、朝田社長が私のところへ来て、私がいろいろと難詰をいたしましたのが、某紙によりますと、秘書官室まで私の怒る声が聞こえたと書いてありましたが、それほど厳しく申しました。新聞でも、私も読んだわけでありますが、聞いてみますと、どうもあの外人機長というのに日本人の副操縦士なんかがいろいろな面で遠慮もするらしい。外人機長がわがままな面もあるのでしょうか、私もしっかりわかりませんが。でありますから、もう日本もれっきとした世界の先進国なんでありますから、外人部隊を今後も雇っていく必要はないのでありまして、堂々と日本人機長に切りかえて、日本人によって日本の飛行機を操縦することにしなければならないと思います。第一、日本人の方がりっぱですよ。私はそう信じているんです。そういうことであります。
 それからあともう一つ何でしたかな、後で言われたの。
#258
○兒玉委員 タクシーの運転手が通報したけれども……
#259
○田村国務大臣 あれはタクシーの運転手が通報した先が、ちょっと私、名前は資料を持っていないのでわかりませんが、日本航空へ出入りをしている会社に何か通報したのだそうですね。そこから日本航空のアンカレジの出張所というのか支店というのか、それに通報がなかったというので、日本航空はそれを掌握できなかったということのようですが、もしなんでございましたら航空局長からもう少し詳しく御報告をさせます。
#260
○高橋(寿)政府委員 ただいまの点は大臣がお話ししたとおりでございまして、タクシーの運転手がこれは大変だということですぐに自分のタクシー会社の配車係に電話をした。配車係の人が日本航空の地上作業を請け負っている会社に連絡をしたわけでございますが、大変残念ながら、時間的な関係とかその間の受け渡しに時間がかかったということがありまして、その地上作業を請け負っている会社から日本航空のアンカレジの支店の方に通報が入らないうちに飛行機が飛んでしまったということで、大変不幸なことでございましたけれども、しかし、副操縦士も一緒に乗っかっていたわけでございますから、副操縦士が、もしもタクシーのドライバーの言うことが本当であるならば、副操縦士としては当然チェックをすべきであったのじゃないかと思います。この方も死んでおりますからわかりませんけれども、そういったことで、先ほど大臣がお話し申し上げましたように、やはりパイロット相互間の相互チェックということは大事じゃないか。お互いの友情というよりも安全の方が大事なわけでございますから、それをまずやらせなければいけない。
 それから、多少敷衍申し上げますと、やはり何と申しますか、日本の社会では、航空機のパイロット、特に機長というものに対する、希小価値だもんですから非常な社会的な地位が高いということ、これはそれ自身結構なんでありますけれども、機長の人たちが、これは日本人も外人も同じだと思いますけれども、特権意識とは申しませんけれども、何かそういうふうな感じが社内でもあるようであります。したがいまして、地上において機長と最終的に出発直前の打ち合わせをするいわゆる運航管理者、ディスパッチャーと言っていますが、これが機長といろいろ接触をする場合にも、従来はとかく機長に対して気象の状況とかそういった情報を提供する係に成り下がっていて、機長なりその他のパイロットの心身の状況などを厳しくチェックする気構えがなかったのではないかということを憂えたわけであります。そこで、先ごろ出しました通達では、運航管理者というものは、航空機の安全に対しては機長と同水準の責任を有すべきであるということをはっきり会社の規程に明記すべきであるということを申し上げまして、二重三重のチェックをするという体制をしいたわけでございます。そして社内的には、機長は決して特権階級ではない、飛行機を運航する場合に、機長さんは飛行機の操縦の最高責任者である、整備管理者は整備の最高責任者である、運航管理者は機長に対して別の面からチェックする最高責任者であるということで、相互がそれぞれのイコールパートナーとなって責任を分担すべきものであって、だれが偉いとか若僧だとかということじゃないということを、はっきり会社として訓練、指導するように強く指導したわけでございます。
#261
○兒玉委員 経企長官お見えになっていますので、運輸省関係、あともう一つだけ質問します。
 総合的に、私はいろいろな情報等も得ていますが、大臣、やはりこの際私は、日航の四十七年の事故以来――国鉄の場合は人身事故の場合多くの総裁が責任をとってやめております。日航の場合も例外であってはいけない。やはり国の出資機関でもありますし、もう少し人事管理――社長以下、この事故にかんがみて、私は総反省すべきだと思う。そういう点からも今後の、人事がすべてその機構の中心であります。人であります。どのような規定をつくっても、そのような管理体制、日航全体がこの事故を転機にして真剣な反省体制に入らなければ、百の説法もへ一つという言葉がありますが、そのことをひとつ十分理解されまして、今後の人事面の刷新に対しても、特に主管大臣として厳重な姿勢で臨んでいただきたいということを最後に申し上げ、なおそのほかにたくさんの問題がございますが、時間の関係がございますので、運輸省関係はこれで省略し、次に経企長官にお聞きします。
 今度の経済政策の中で、特に政府は、四十九年が一四・二%、五十年度が八・八%、五十一年度が八・六%、これは現在までの消費者物価の指数の計数であります。五十二年度は大体八・八%に規定しているようでございます。物価の総体的な所管である経企長官として、現在予定されているのが、交通関係だけでも、九月の国鉄運賃の値上げがあります、そのほか地下鉄、バス、それから都営バス、タクシー、航空機あるいは石油、原油関係等の関税、そしてすでに一月二十日に貸し切りバス、東京、神奈川、栃木、山梨、関東ブロックのバス百六十社、これが大体平均一九・四%、大阪陸運局関係では近畿ブロックの六府県、平均二二・四%、さらに東海、北陸、羽越、中国、四国合計二十六都府県でもこのような値上げがすでに予定をされ、さらに北海道、東北の青森、岩手、宮城、福島の四県並びに九州七県も申請の状況にあります。御承知のようにバス関係は大臣の認可事項でありますから、この申請どおりあるいはこれに近い数字で値上げがはっきり予想されるわけでございますが、経済企画庁としましては、このような点から物価への影響ということを真剣に考えていく場合にどのような対策を講じようとされているのか。経企庁の試算では、これらの値上げがもたらす寄与率は二%以下と、こういうような点を出しておられるようでございますが、残念ながら国鉄以外の点については具体的な寄与率の指数が提供されてないようでございますが、経企長官としては、ひとつ物価対策上できるだけ抑制の方向に向かうべきだと思うのでございますが、どのような見解をお持ちか、お伺いしたいと思います。
#262
○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。
 五十一年度は、御承知のとおり国鉄、電電料金、それから電気、ガスという公共料金の非常に大口がたくさんあったわけでございまして、この物価への影響というのが二%強。旧指数で申しますと、大体今日まで二・四%程度の影響、寄与度が出ているわけでございます。五十二年度のものでございますけれども、五十二年度で予算の関連としていま出ておりますのは、国鉄が九月から一九%上げるものと、それから電電の積み残しの分ということでございまして、これを合わせますと約〇・六%程度ということでございます。ただいまお挙げになりましたもろもろの、タクシーとかその他地下鉄であるとか、いろいろそういうものは、これからいろいろ事情を伺いまして、適正な経営のもとでどのような運賃を認めるべきかということを運輸省と御相談しながら決めていく段階でございまして、個々についての積み上げ計算はいまのところいたしておりません。ただ、達観して申しますと、五十一年よりは五十二年の公共料金の方が寄与率は少ない。全体として二%程度におさめたい。特に、電力とかガスとかいう大口が一応一巡しておりますので、小さいと申すと恐縮でありますけれども、全体に及ぼす影響の非常に大きなものは五十二年の方が五十一年より少ないと考えておるわけでございまして、これで何とか物価を七%台におさめたいという努力をいたしておるところでございます。
#263
○兒玉委員 長官に再度お伺いしますが、いまわれわれが非常に懸念し、国民の重大な関心事は、さっき申し上げたように、すでに申請をしてある東京、関東、関西ですね、それから当然これに右へならえするであろう他の地域の関係を含める場合に、やはり今日の経企庁の言っている五十一年度の八・六%に押さえ込むことは、新聞なり経済誌等の判断でも恐らく不可能であろうと、こういうふうな予測からも、さらに五十二年度の展望から見た場合におきましても、経企庁としては所管省との間に相当根回しをして、これが与える影響あるいは経営内容等に対する積極的な指導をやっていかなければ、長官の言っておられる二%以下に寄与率を抑えることはどのように見ても不可能に近いと、こういう私なりの判断をするわけでありますが、その辺の関係について再度長官の確固たる見解をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
#264
○倉成国務大臣 公共料金の問題は、オイルショックのときにかなりきつく抑えた、このツケが今日に来ていると申しても過言ではないわけでございまして、国鉄の場合は五十一、五十二年度両年にわたってこの経営の合理化を図ると言っておりましたのが、これも非常に影響が大きいということで少し先に再建計画が延びていったというような状況でございます。したがいまして、五十一年でかなりこのツケを払ったわけでございまして、五十二年にもまだ相当積み残しが残っておるわけでありますけれども、これはひとつ関係所管省とも十分連絡をとりながら合理的な経営を進めていただいて、その上で公共料金がいかにあるべきかということを十分検討してまいりたいと思うわけでございます。ただ、公共料金も余り抑え過ぎますとサービスがうまくいかない。そしてまた後年度において大きなツケがやってくる。ちょうどツケで買い物をするようなものでございますから、その辺のところの兼ね合いを国民生活や物価の動向を見ながらうまく公共料金の適正化を図っていくということが、これからの政策の課題ではなかろうかと思うわけでありまして、御指摘の点、まことにごもっともでございますので、全力を傾けて、物価が安定してまいりますように、公共料金が引き金にならないように努力いたしてまいりたいと思います。
#265
○兒玉委員 さっき一緒に言うのを忘れましたが、現在石油業界が一キロ当たり二千円の値上げ問題、これはC重油の関税引き上げ等もありまして深刻な課題でありますが、これまたこの波及というものはきわめて物価に重大な影響を持つわけでございまして、所管は通産省でございましょうが、特に物価の番人である経企庁長官としてこの石油の値上げの問題について最後に御答弁願って終わりたいと思います。
#266
○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。
 昨年の暮れにOPECの値上げがございまして、これは一〇%の分と五%の分とございまして、平均しますと七%から八%くらいの値上げになるのじゃなかろうかと思うわけであります。これが消費者物価に〇・一程度の影響を及ぼしてくるというふうに考えておるわけでございますけれども、同時に出光興産が石油の値上げの発表をいたしまして、いまいろいろ交渉を各業界としているところではないかと思うわけでありまして、われわれはこれに重大な関心を持っているわけでございます。御案内のとおり、ことしに入りまして為替が円高で推移しておるわけでございまして、きょうの寄りつきも二百八十二円四十銭ぐらいの為替相場でありますから、そういう円高を背景としたものも考慮に入れながら、石油の値上げというものを十分注意深く見守っていく必要があるのではないか。特に灯油が需要期でございますから、灯油についてはこの需要期におきましては値上がりのないようにという指導を通産省の方でいたしておるようでございまして、経済企画庁としても灯油の価格の安定について十分監視をしてまいりたいと思っておる次第でございます。
#267
○兒玉委員 どうもありがとうございました。
#268
○大村委員長代理 関連質疑を許します。大原亨君。
#269
○大原(亨)委員 きょうは労働大臣が病気だそうですか、質問に入る最初に企画庁長官にお伺いしますが、いままで何回も議論があったと思うのですが、いま経済は中だるみだ、こういうふうに言っておるわけですが、しかし、これは本格的な不況ではないか。中だるみではなしに本だるみではないか、こういう議論があるし、主張があるわけですが、それについては経済企画庁長官はどういう見解ですか。
#270
○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。
 景気が五十一年の初めから輸出の好調に支えられまして急角度に上昇してまいりまして、その後夏ごろから輸出が停滞する、それから個人消費も伸び悩む、財政支出も国鉄や電電の影響もあり、地方財政の関係もありまして、これが少し伸び悩んだということもありまして、非常に伸びが鈍化している。最近に至りまして非常に足踏み状態にあるということは、私どもそのような認識を持っておるわけでございます。しかし、これが本格的な不況であるとか落ち込んでおるとかいう認識は実はいたしてないわけでございまして、五十一年度の経済成長も、当初の予定しました五・七%程度の成長は達成できる。もちろん前半が高いものですから、後半のカーブというのが非常に緩やかなものであるという感じでございます。
 それからもう一つは、いまのお話の背景には、恐らく業種別の企業間に非常に格差がありまして、鉄鋼であるとかあるいは砂糖であるとか平電炉であるとか造船であるとか繊維であるとか、そういうものは非常に不況感を持っておるわけでございますから、そういう面から見ますと、そういう感じが出てくるかもしれませんけれども、経済全体といいますと、決して落ち込んでいるという状況ではございません。
#271
○大原(亨)委員 それは一昨年以来、昨年の春ごろもそうですか、福田前副総理、現在の総理大臣もずっと言ってきましたけれども、当たったことはないわけです。当たらなかったわけです。そこで、この二つの相反するような政府統計が出ておるわけですが、一つは、経済企画庁の消費者予測動向調査によりますと、五十一年六月以降八月まであるいは十一月前後、これは六月から八月にかけては五・一%の実質増、こういうふうなのが出ております。それから総理府の勤労者世帯の生計費調査によりますと、実質消費支出は昨年の十月以外は全部落ち込んでおるわけです。これは一体どういうことなんですか。
#272
○倉成国務大臣 お答えしたいと思います。
 家計調査のお話でしょうか。家計調査のお話であれば、全世帯における消費支出は昨年以来ずっと落ち込んでいるという数字ではございません。勤労者の統計の可処分所得についてはそういう傾向があることは御指摘のとおりでございます。全体の消費支出、勤労者一般世帯も含めた全体の消費支出と、それから勤労者に焦点を合わせました支出と若干違うのじゃないかと思います。
#273
○大原(亨)委員 いずれにしても、個人消費支出をどういうふうに引き上げていくかということがこれからの景気対策や政治の課題です。生活から見てもそうです。少なくとも去年のように、賃金の実質上昇八・八%余り、それから消費者物価は九・四%平均。それから公共料金は上がるし、新価格体系といって独占価格、寡占価格をどんどん上げた。所得税減税も問題ですが、やらなかった。福祉は切り詰めた。こういうことですっかり冷え込んでおるのだと思いますね。私は景気対策としましては、やはり減税は一つの突破口です。カンフル注射みたいなものです。アメリカでは二カ年間をまたにかけてやっておりますが、しかし、日本では調整減税だけをやったのであります。しかし、本当はこの生活の安定ということがなければ購買力は安定してこないわけです。ですから、減税と社会保障の問題は絡めて考える。たとえば、今度の野党案のように、所得税を納めないそういう人々に対しましては、福祉年金やその他を一万五千円積み上げていく、こういうふうな考え方で処理をすることは、私は、比較的低い所得階層の購買力ですから、非常に景気の上には即効的な効果がある、こういうふうに考えるわけです。その野党の考え方については、これは大蔵大臣に聞きましょうか。大蔵大臣はどうお考えですか。よろしいですか。
#274
○倉成国務大臣 減税が消費刺激になるかどうかという点は、そういう御質問であれば、これは消費刺激に当然なるというお答えを申さなければなりません。すなわち、減税によって可処分所得がふえて、それが消費支出につながるという意味においてはイエスという答えが出てくるわけでございます。ただ、御承知のとおり、大原先生が御専門と思いますが、昭和四十年を境にしまして、大体必需的な支出というのが一巡しまして、随意的支出が非常に多くなってまいりました。したがって、いまの消費支出というのは非常に気まぐれと申しますか、非常に不確定の要素があるわけでございまして、減税がすぐ消費支出につながるかどうかということについては、これは何とも申すことができない。消費性向も低いことでございます。そういう点がございます。
#275
○大原(亨)委員 私が質問したのは、一兆円減税の中で所得税を納めていない階層に対しまして福祉年金その他に一万五千円積み上げていく、そして特別交付金で出していく、生活保護にも出していく、こういうふうにずっと考えていくという考え方は、これは景気の上においては即効的な効果がある、こういうふうに私どもは考えるけれども、これについてどうか、こう言うたわけですよ。一般減税もそうですけれども、特にこれは野党案はいいんではないか、その点について国務大臣として、あるいは大蔵大臣は予算を総括しているのだがどう思うか、こういうことを言ったわけですよ。簡単でいいから、ノーかイエスかでよろしい。
#276
○坊国務大臣 どうもお聞き漏らししまして相済みません。
 大原さんおっしゃるように、所得税を納めていない階級に、一万五千円なら一万五千円あるいは特定の金を交付するということが非常に景気刺激になるのじゃないか、こういうお話でございますが、無論私は、そういったような措置をとるということは景気刺激に何ら効果もないというようなことは考えておりません。
 ただし、いま同じようなお金でもって景気刺激をするならば、これは公共事業でやるかあるいは個々の人たちにお金を渡すか、どっちかが効果が大きいに決まっておるのですが、私どもの見解といたしましては、やはりそういうお金があれば、福田総理常に言うふうに、これは公共事業に持っていくということが効果が大きいものと、かように考えております。
#277
○大原(亨)委員 後で厚生大臣の見解を聞きますが、一時間の中ですから……。
 けさ大橋君やその他から非常に細かな質問があったわけです。この国会の大きな課題はやはり一兆円減税あるいは独占禁止法の改正案と並んで健保の改正案だと思うのです。私は、命とか健康にかかわる問題で国民が安心できる体制をとるということは、やはりいまの政治に対する信頼だけでなしに、景気の上においても非常に大きな影響がある、国民生活安定、いまの医療は国民から見ると非常に問題が多くて、これは言うなれば国民不在である、このままで高負担を押しつけるならば、これは高負担低福祉である、こういう考え方を私は基本的に持つわけです。
 そこで質問をいたしたいのは、今度の健康保険の改正案は、いままでずっとやってきたけれども、ひどいものであると私は思っておるが、緊急避難、臨時措置である、こういうことを政府は繰り返して主張しているわけですが、それは一体どういう意味なんですか。
#278
○渡辺国務大臣 御承知のとおり、政府管掌の健康保険は千三百五億円からの赤字が累積して、さらにこのままでは千六百億円の金不足になる、そういうようなことで、ともかく支払いがつかないということになると、これは国民、政府管掌保険の保険証を持った人が医者に行っても支払いがつかない保険証では、これはいい顔してくれないことになりますから、これは大変なことなんです。したがって、私の方としては、この際は、やはりその財源を確保をして、とりあえず五十一年度中に支払いのあるものは支払いをつけていかなければならぬし、年度が変わっても支払いつかないものは支払いつけられる方法を講じなければならぬ、そういうようなものを全部考えて、そうしてともかく一挙に二%をボーナスに課税することについてはいろいろ議論がございます。ございますが、いろいろ検討した結果、あのような法案を提出することにしたわけであります。
    〔大村委員長代理退席、委員長着席〕
#279
○大原(亨)委員 臨時措置である、緊急非難であるという質問に対しましてお答えですけれども、現在の赤字の状況では支払いができないような状況になる、それは一歩突っ込んでお答えいただきたいのですが、どういうことなんですか。簡単に……。
#280
○渡辺国務大臣 借入金をするにいたしましても、この前の健保法の改正で資金運用部から金を借りるといっても、支払いの見通しのない金は借りられない仕組みになっておるわけですから、やはりちゃんと支払いの見通しをつけるようにしなければ、金が借りられなければ支払いつかなくなるわけですから、だからそういうふうにしたわけなんです。
#281
○大原(亨)委員 この議論は、これは今回の予算とも関係ある、国庫補助との関係もある、それから健康保険法の改正を審議する際における国会における基本的な問題でもある、こういうことでちょっと質問をいたしたいと思うのです。
 つまり、いまの大臣の答弁は厚生保険特別会計法の十八条ノ八の三項、四十八年に改正をしたときの条文のことであるというふうに思うわけです。政府委員でもよろしい、その条文の趣旨はどういう趣旨であるか、簡単にひとつ答弁してもらいたい。
#282
○渡辺国務大臣 御承知のとおり、その改正をするときには三千億円から赤字が累積してにっちもさっちもいかなくなった、したがって赤字のたな上げを行う、二度と再びこういう問題が起きないようにしようということで、そういうように改正されたように私は記憶をいたしております。
#283
○大原(亨)委員 これは本年度末、三月の政府管掌健康保険の累積赤字が千三百七十六億円、この年度末にそれだけの赤字があるわけですが、四月以降この累積赤字を埋めて借り入れをしようと思うと、政府はどういう措置をすればよろしいのか。
#284
○渡辺国務大臣 借り入れをしたものが返済をできるという計画が立てられれば借り入れができる、こういうことでありますから、その計画がなければ借り入れができないということでございます。だから返済できるような仕組みをこしらえていかなければならぬということです。
#285
○大原(亨)委員 そのために健康保険の改正案を提案をした、こういうことですか。
#286
○渡辺国務大臣 それも大きな一つの理由でございます。いずれにいたしましても、健康保険がうまく運営できなければ困るわけですから、支払いがつかないようなことは。一方においては医療の高度化にも応じていかなければならぬ、それから長年要望のあった傷病手当の問題についても給付の改善もあわせて図っていきたいというようなことなど、いろいろ考えた結果、改正案を出したわけでございます。
#287
○大原(亨)委員 いまこの予算案は衆議院を三月を過ぎて通ることは確実ですね、中旬以降。――大蔵大臣、あなた寝ておってはいかぬですよ。それで間違いないのだ。そうすると、参議院は少なくとも一カ月ありますね。法律案は、健康保険の改正案が審議に入るのは四月以降でしょう。そうすると、年度を越えておるのですね。国会で議決になるかならぬか、いろいろなことはこれは国会でやることだ。そういたしますと、事実上政府管掌健康保険の財政を扱っている支払基金に金が入っていかないというようなことがある、あなたの答弁しているのはそういう意味か。それだったら大変ですよ。政府は原案を出しておけばいいのか、政府は原案を出せばこれで責任が足りて借り入れができるのか、この点についての見解をひとつ聞きたい。
#288
○渡辺国務大臣 私の方は原案を出せばいいということではなくして、出した以上は誠心誠意御理解を得て通過をさせたい、こういうことでやっておるわけでございます。
#289
○大原(亨)委員 時間的にもそういうことは不可能ではないですか。不可能でしょう。国会が否決をするか、修正するか継続審議にするか、これは国会の審議を通じてでしょう。四月をずっと越えますよ、五月を越えますよ。それでもなおかつ累積赤字について出さないということがあるのか。
#290
○渡辺国務大臣 国会の場合はそういうようなこともあろうかと存じますが、私どもとしては国会の意思を左右することはできないわけですから、われわれとしてはできるだけ、誠心誠意やれるだけのことはやるということであります。
#291
○大原(亨)委員 それでは政府は、健康保険の改正案、赤字対策を出しておけば、これはちゃんと責任を果たしたということで厚生大臣は借り入れができるというふうに解釈するのが、この厚生保険特別会計法の第十八条ノ八の第三項の解釈というふうに理解をしてよろしいか。
#292
○渡辺国務大臣 私は法律的なことは詳しくわかりませんから、法律の解釈は事務当局から説明をさせますが、ともかく法案を出してそれを通すように一生懸命いまやっているわけですから、われわれは通らないと思っておらないのです。
#293
○八木政府委員 先生御指摘のは、厚生保険特別会計法の基本的な考え方だろうと思いますけれども、御指摘のように従来は健康保険の場合には、ある意味では預金部資金から借入金を借りるということにつきまして特段の制限はなかったわけでございますけれども、本来の健保財政の健全化を図るということから、当時赤字をたな上げするとか、あるいは定率の国庫負担連動規定をつけるというような、国庫補助の面におきましてもかなりのてこ入れが行われたという結果、四十八年の改正によりまして、厚生保険特会法の規定の改正が行われまして、ただいま御指摘ございましたように、二年収支で考えるというような考え方から、第三項の御趣旨につきまして御指摘ございましたように、一年以内に償還をなし得ることが明らかなる場合には借入金をなすことを得ということで、借入金の制限規定が入っているわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、一年以内で償還できるという必要な対策を考える必要があるというようなことから、健康保険法の改正も、大臣からお話し申し上げましたような趣旨で今回御提案申し上げている次第でございます。したがいまして、借り入れの問題につきましては、これは大蔵省が主管でございますけれども、私どもはそういう考え方で対策を立てているわけでございます。
#294
○大原(亨)委員 それでは大蔵大臣、あなたは厚生大臣をやっておられたからよくわかるでしょう。いまのような答弁です。しかし、予算の審議と法案の審議とを見るならば、これは時間的に、年度内にこの法律案についての提案はしたけれども、審議については見通しをつけることはできない。非常に問題が多い。社会保障制度審議会も全面的にたな上げのような答申をした、全会一致であった。いまのそういう厚生省の解釈で三月末が済んで四月にずっと行って進んでまいったときに、借り入れについての支障はない、こういうふうに理解をしてよろしいか。
#295
○坊国務大臣 国会の審議について、私は何ともこれは申し上げる人間ではございませんけれども、厚生大臣が言われましたように、ぜひともこの法律案は国会で審議を進めていただきまして、そして成立をさせていただくということをお願いを申すほかございません。
#296
○大原(亨)委員 時間的に、予算の審議と法案の審議を見たならば、できないでしょう。時間的に不可能でしょう。そんなことを言って国会の審議を拘束するのですか。大蔵大臣、いかがです。
#297
○坊国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、国会審議につきましては、これは何とも私どもは容喙するものではございませんけれども、ぜひ国会にお願いを申し上げまして、この法律を通していただきたい、これをお願いするよりほかにございません。
#298
○大原(亨)委員 いまの答弁は、これは国会においてこの法律案を十分審議する、こういうことについて、この十八条ノ八の第三項の運営においては、実際上、政府管掌健康保険の会計を運営する上においては支障はない、こういうふうに私は理解をしておきます。これは当然のことです。
 中に入って議論はいたしませんが、問題は医療の供給面、つまり俗に言う抜本改正、保険制度、医療供給制度の抜本改正の保証がないのに、臨時特例と称してボーナスからも特別保険料を取る、こういうことなんです。これが問題の一番大きな議論になる点です。二%取るということになりますと、一人が四千四百円の負担増になるわけです。これは言うなれば増税なんですね。保険税なんですから増税なんです。そして政府は今日まで、坊さんが厚生大臣当時から、抜本改正について収支の均衡がとれるようなものを考えるということを言いながら、ずっとやってこなかった。そこで今度は特別保険料と称する、ボーナスからも保険料を取るという制度を設けてきた。そしてこの特別会計法の枠がある、こういうことです。私は、ボーナスから保険料を取るというのは、社会保険審議会の答申にもありますように、これは筋違いである、こういう議論です。私は、この法律の原案については、この法律案は撤回してやり直すというぐらいなつもりで医療保険の全体の問題を取り扱わなければ、来年度にかけての医療改革はできないのではないか、こういう見解を持つわけです。厚生大臣、いかがですか。
#299
○渡辺国務大臣 社会保険審議会等においてもいろいろそのような御議論は出ました。中には特別会計法を改正したらいいじゃないかというような御議論もありました。それぞれ御意見のあるところでございます。しかしながら、私どもとしては、やはり朝令暮改に特別会計法を、四十八年に直したのをまたここで直すということの方がもっともっとむずかしいと実は思っておるわけであります。そこで、保険料をボーナスから取るということの是非についても議論がございますが、ともかく日本の保険料というのは、欧米諸国と比べて決して健保の保険税が高いわけではありません。しかし、これはどうしても内容が高度化していって給付がふえればだれかが負担をしなければならないという問題がございます。仕組みを変えろということも一つでございますが、しかしだれかが負担がふえるということも事実であります。そこでそうなってまいりますと、やはりボーナスだけはいままで課税はしてなかったわけでございまして、ボーナスがたくさん入って本俸の方が少ないというところは保険税が少なくて済んだということも言えるわけであります。いろいろ考えてみたのでございますが、まあボーナスから暫定措置としてとりあえず事業主の方が一%、こういうようなことで御負担をいただいて、この際されいにして、どうせ抜本改正をやるならば、残したままで抜本改正やったらいいじゃないかという御議論はあるのですよ。あるのですが、そこが見解の違いで、抜本改正をどうせやるならば、一遍ここできれいにして、きれいな受けざらの中でひとつ一緒に、抜本までいくかどうかわかりませんけれども、ともかくいままでのあり方ではまずいということはみんなわかっておるわけですから、厚生省でもいろいろな審議会とか懇談会とかたくさんつくってやっておるのはそれでございますので、あわせてその中で検討してまいりたい、こう思っております。
#300
○大原(亨)委員 これはこれ以上の議論はしませんが、つまり現在の年金にいたしましても健康保険にいたしましても、標準報酬制というのを設けまして、本俸に対しまして保険料を掛けるという仕組みです。これはボーナスに対してやるということになると総報酬制になるわけです。四年間ずっと累積いたしました赤字をボーナスで一遍に取るというふうなそういう仕組みですね、そういう仕組みが全く行き当たりばったりである、大きな方針の転換である。こういう抜本的な改正案について、安易に赤字対策と称してやっておいて国民の負担を増加しながら、政府がやるべきことについてはやらない、こういうことはおかしいではないかという議論がこれは圧倒的な国民の議論です。ですから、その点についてはちゃんと筋道を立てて、国会におきましても十分慎重審議をこれはいたすつもりです。ですからこの点は、私は、大蔵大臣とあなたの答弁の中から、この私どもの審議の中において、この保険財政の問題はこの特別会計法の規定にかかわらず支障はないものと国会では理解をして進めていく、こういうふうに考えたいと思います。これは当然だと思います。この点についてひとつ見解があれば申し述べてもらいたい、厚生大臣。――答弁がないというのはどういう意味か。これは私の見解に同調された、私はこういうふうに理解をいたします。いかがいたします。よろしいですね、厚生大臣。
#301
○渡辺国務大臣 私どもといたしましては、やはり誠心誠意、法律に従って法案を出してこれを通過をさしていただきたいということでやっておりますので、一日も早く、できることならば年度内に予算の通過をぜひともお願いしたい、こう思っておるわけでございます。
#302
○大原(亨)委員 それは希望だけは一応聞いておきまして質問を進めます。これは時間的にも内容的にも当然のことです。そこで抜本改正の問題を含めまして徹底的に議論をいたしまして、そうして真に国民医療を確立する、そういう観点でこれからの国会審議を進めていく、こういうふうに理解をいたしたいと考えております。
 医療問題の一つは、たくさんあるんですが、これは大橋君もかなり具体的な問題でやられたわけです。私もここに資料を持っているのですけれども、その問題については議論を出しませんけれども、問題点は明確にしておく必要がある。つまり国民の総医療費は五十一年度が七兆八千億円、莫大なものです。これは国際水準なんですけれども、外国でも皆日本のような問題を抱えておるのですが、日本は一番ひどいわけです。その中の問題点は、やはり七兆八千億円の総医療費の中で薬剤や注射代が、年によって違いますが、四割内外を占めておるという点ですね。そうしてその中に、自治体病院その他が最近提言をいたしておりますが、その中にやはり四〇%程度薬価基準と実勢価格との間において開きがあるという点です。これをずっと詰めてみましたならば、七、八千億円の金が出てくるわけです。国民の立場、患者の立場でこれをどう使うかということを、医師や歯科医師や薬剤師の技術や責任を尊重する、医療を前進させる、そういう観点でどう処理するかということが大きな課題ですから、いまの医療は高負担の低福祉になっておる、こういう議論はそこにあるわけですから、その問題をきちっと処理いたしまして、そしてこの財政問題を議論しなければならぬ。その国民的なコンセンサスを得る方法は、いま社会保険審議会、三者構成の審議会で小委員会を設けてやっておるようでありますが、そこだけでなしに、私の提案ですが、やはり直接利害団体を越えたようなところで、たとえばイギリスの王室委員会、そういうところで、一歩間隔をおいたところでこの抜本的な改正案について議論をして、一つだけを出しますと利害が相反しまして一斉に反対の声が起きてまいりますから、全体的に問題を処理するという、そういうやり方について根本的な考え方をしなければならぬ。大蔵大臣、これは非常にむずかしいことだ。むずかしいことではあるけれども、これをやらなければならぬと私は思う。たとえば国会の審議の中で、三人委員会とか七人委員会というふうなものを相互に選出をいたしまして、そこで整合性の案を出す、こういうふうなことを考えなければいかぬ、頭の切りかえをしていかなければならぬ、こういうふうに私は思いますが、これについて大蔵大臣の見解を求めます。
#303
○坊国務大臣 御指摘のように日本の医療制度と申しますか、ことに保険医療というものは、全く長い間今日まで抜本改正ということができておりません。そういうようなことから考えまして、とにもかくにも現在の医療制度、ことに保険医療というものについては一日も早く抜本改正をやらなければならない、私はかように考えております。そのやる方法等につきましては、これは私もいまは財政当局でございますけれども、厚生省その他関係の各省と御相談に応じてやってまいりたい、かように考えております。
#304
○大原(亨)委員 私は、この医療の問題を議論するのに、党派とか単に圧力団体とかという背景だけの議論では、もう今日まで、あなたが十年前に抜本改正を約束して何もできなかったでしょう。だんだんと矛盾拡大しているんだから、その発想の転換をしなければならぬ。与野党伯仲下の国会がイニシアをとってそういうことをやる、与党もそれに対応する、政府もそれに対応して協力する、こういうことをやらなければならぬと私は思うんです。私の見解についてどう思いますか、厚生大臣。
#305
○渡辺国務大臣 私はやはり根本的に洗い直しをする、改正をしなければならぬ、こう思っております。そこでこれはやはり法律の必要な問題が多いわけでございますから、与野党伯仲で一方的にどうこうということでなくて、本当に皆さんからいい意見を出してもらって、それでともかく国会の中で何となくそういうふうなムードができて、やればやれると私は思うんですよ。このままでは本当に行き詰まりになると私も思うんです。いつまで厚生大臣やっているのかわかりませんけれども、本当にそれはにっちもさっちもいかなくなるのではないか。しかも九兆円、推定でございますが、恐らく五十二年度は九兆円前後の国民医療費になるんじゃないか、こう予測されるわけです。したがって米の総生産高が三兆円ということから比べれば、これは大変な話なんですよ。だからそこにむだがあってもいけないし、それから合理的に解決しなければいかぬ。当然国民の税金で、たとえば九兆円ぐらいのものの中で、二兆五千億円ぐらいは五十二年度予算で国が助成をしようということですからこれは大変な金額です。やはり本当にこれは超党派で、公平な専門的な意見を大いにひとつ出していただいて、われわれもそれには従っていきたい、こう思っております。
#306
○大原(亨)委員 厚生大臣は突然厚生大臣になられたのでようわからぬけれども、大所高所から答弁するとすれば、いまの答弁はややまともな答弁である。そういうことですから、健康保険の改正について赤字を出してどうこうするというような小さな議論じゃない、この議論は。この法律案は何ですか。全く事務的な責任逃れの法律案である。そういう点で、これからの国民的なコンセンサスを得る医療改革のために、いままでの提案の経過にこだわらないで慎重に審議をするということで国会もイニシアチブを発揮する必要がある、私はこういうふうに思います。
 この問題に関係して、時間も限られておるわけですが、年金に入る前に一つ。私はずっと議論してまいりましたが、戦争犠牲者の中で原爆被爆者の援護法の問題を簡単に議論したいと思うのです。
 原爆被爆者の医療法と特別措置法という二つの法律があるのですが、国家補償と社会保障の中間的なものであるという答弁を政府はしてきました。国家補償的なものであるという点はどういう点ですか。それは政府委員でよろしい。
#307
○佐分利政府委員 たとえば原爆医療法でございますと、四十九年の十月から特別手帳と一般手帳の一本化をいたしました。また特別措置法の方は、健康管理手当に年齢制限がございましたが、これを完全に撤廃いたしました。また五十年の十月からは、爆心地から二キロ以内の直接被爆者については、たとえ健康に障害がなくても保健手当を差し上げるようにいたしました。そのほか、毎年所得制限をかなり緩和してまいって、明年度は九五%の方々が手当を支給されるということにもなってまいりましたし、また各種手当の額も毎年できるだけ引き上げているところでございます。したがって、三十二年に医療法を上程したとき、あるいは四十三年に特別措置法を上程いたしましたときは、純粋な社会保障制度であるという説明をいたしましたが、現在の原爆二法はすでに社会保障法と国家補償法の中間的な制度になってきていると考えております。
#308
○大原(亨)委員 終戦のときの録音放送、あれをとってみましても、内閣の告示をとってみましてもそうですけれども、その中で――歴史的には原水爆時代に入ったということの宣言ですけれども、つまり、アメリカのそういう非人道的な兵器に対する大きな憤りを込めて戦争を終結しているわけです。被爆者は、言うなれば戦争終結、平和の担保になっているわけです、歴史的には。だから特別権力関係論といって、軍人、軍属、準軍属については特別権力関係があるという議論、これを乗り越えるべし、こういう議論、非戦闘員、戦闘員の差もないではないか、こういう議論。これは当時の文献を見ればずっとわかるのであって、国民義勇兵機構などというのを当時六月に出しておるけれども、これは全部義勇兵役の義務を課しておるのです。法律がどう施行されたかという細かな議論は別にいたします。ですから、戦争犠牲者については、事人命と健康については国が補償するという観点で、被爆後三十三周年ですけれども考え直していくべきではないか。
 たとえば、当時被爆をいたしました胎児で小頭症というのが三十数名おります。これは放射能の影響で小頭症は知能指数が下がっていまだに一人前の仕事や生活ができない、こういうことに対しましては、今回初めて予算上の措置をいたしました。しかし、現行法では対策の枠というものがあってやろうと思ってもできない。戦後三十三年ですけれども、そういう戦争犠牲者については、私は国家補償の精神によって少なくとも最小限度の制度的な補償を確立すべきであると考えるけれどもいかがですか。
#309
○佐分利政府委員 戦争被害者につきましては、ただいま先生からお話がございましたように、いろいろな議論があると思うのでございますけれども、たとえば戦争被害者の援護法のバイブルとされております西ドイツの援護法を見ましても、一部に所得制限が入る等、決して国家補償法にはなっていないわけでございます。そういう関係から、先ほど御答弁いたしましたように、現在の二法はすでに社会保障法と国家補償法の中間的な制度に成長しているわけでございますから、この制度の内容の改善、充実を図っていけば皆さんの御期待に沿えるものと考えております。
#310
○大原(亨)委員 たとえば放射能の影響で当時胎児であった被爆者が、いま小頭症で知能がおくれている、これに対して今回措置をとっていますね。これは今回いかなる措置をとったか、その法的な根拠は何か言ってください。
#311
○佐分利政府委員 現在、原爆小頭症患者は二十二名いらしゃいますけれども、はっきり申し上げますと知能の発達がおくれている方々でございますから、そういった方々の生活能力だとか社会活動能力、就業能力、こういったものを改善、向上させるために、原爆小頭症患者生活指導費というものを今回予算案に計上させていただいたわけでございます。この制度も、原爆放射線の影響に着目した制度でございまして、またこの制度は手当ではございませんで生活指導費でございますので、予算措置で計上させていただいているわけでございます。
#312
○大原(亨)委員 今日までいろいろな制度の継ぎ足しをやってきたわけです。ずっと継ぎ足してまいりましてこれはかなり矛盾を抱えております。西ドイツの例を引きましたけれども、西ドイツの例は、日本と違うところは戦闘員と非戦闘員の差をつけてない。戦争援護法は戦闘員と非戦闘員の差をつけてないわけです。若干の所得制限条件はついているけれどもない。こういう面においてはきわめて公平なものです。ですから、そういう点において所得制限についても漸次改善をされてきたわけです。九割程度の対象者をやってきたわけですから、もう一歩これを進めて、総合的な援護立法をつくっていくことがいまのこの歴史的な段階において――日本は唯一の被爆国と言っているわけですから、再びこの原爆戦争を起こさない。カーターやブレジネフも、それぞれ軍縮についての新しい提案をしているわけです。ですから新しい時代に対処して、日本がそういう平和外交の面においてもイニシアチブをとる、こういう裏づけといたしまして被爆者援護法について、これは坊厚生大臣もいままでずっと議論してこられたことですが、質的に一歩前進させる、こういうことについて私どもはこれから議論を重ねてまいりますけれども、この点を十分留意をして政策を前進させてもらいたい、こう考えます。倉成経済企画庁長官うなずいておられますが、長崎の方ですからよく理解している。渡辺厚生大臣、私が申し上げたことについて、具体的な問題はともかくとして、ひとつ国務大臣としての所見をお聞きしておきます。
#313
○渡辺国務大臣 大原議員のおっしゃることも一つのりっぱな考え方だと存じます。しかし、厚生省の佐分利局長の言っていることも現実的な考え方ではないか。いまの段階においてどちらにするかと言われましても、なかなかこれは国務大臣として判定いたしかねますが、私はやはり佐分利局長の言っているように、それは現行制度を充実させることが現実的ではないかと考えております。
#314
○大原(亨)委員 あなたは漠然たるアバウトの答弁をいたしましたが、しかし、私はこの問題は議論にとどめておきますが、この問題はひとつ前向きに処理をしなければならぬ、こういうように思います。
 大蔵大臣の考えを聞いてもいいのですが、これは時間がありましたら後で聞くことにいたしましよう。
 医師の課税問題が議論になるのです。病院等の勤務医師については関係ないことなのですが、これは非常に大きな問題です。この問題は研究手当ということで、医師や歯科医師や薬剤師等が、たとえば過失責任について最近の裁判は非常に大きな責任を背負わせておるわけですから、日進月歩の医学について知識を持たないと、薬害その他が日本は世界一なのですから、そういう面においてやはり研究手当等でこの問題を処理することが一つ大切ではないか、こういうふうに私は思いますが、厚生大臣、私は一回だけ答弁を聞いておきます。
#315
○渡辺国務大臣 一つの考え方と思いますが、だれがだれに研究手当を――国家がですか。よくわかりませんな。
#316
○大原(亨)委員 これは私が問題提起しておるのですが、病院や国公立、公的医療機関に勤務している人は使用主が研究手当を払うわけです。そういたしますと、研究手当については実際上の研究手当ですから、税法上の、これはいまいろいろな議論があるけれども、そういう措置がとれるわけですから、勤務医師の技術を評価したことになります。薬と技術を分けてまいります。そうすると、必要な薬を最小限度使うということで、日本は世界一の薬禍問題があるところですが、これを防ぐことができるではないかという議論です。その考え方を診療所においても広めていくならば、税法上の特例との関係で総合的に処理はできないか、こういう発想の転換をしながら、やはり転換期における公平な政治をやっていく、こういうことが、技術と責任を尊重しながらいまの荒廃した医療を救うという問題になるのではないか。医学教育の問題もありますが、この問題も一つの処理の仕方ではないか、こう私は思うのですが、いかがです。
#317
○渡辺国務大臣 意味がよくわかりました。結局、いまの一般開業医の方は特別措置で御利益がある、そうすると勤務医の方は御利益が何もない、税金を全部取られてしまう、ですから勤務医の方に何か研究手当を出せ、こういうことですね。私は、それはなかなかむずかしいことではないだろうかと存じます。
#318
○大原(亨)委員 あなたとは議論してもだめなんだ。それだけじゃないのです。つまり、勤務医についてば研究手当を出す。それから開業医については、診療所等については、それに見合った所得の保障を、たとえば税法上のことになるかもしれない。そういうことで、きちっと職務活動にマッチするような制度をつくるべきではないか、七二%の条項について抽象的な、観念的な議論をしないで、そういう議論をしてはどうか、私はこういう問題提起をしたわけですよ。大蔵大臣、あなたは厚生大臣をしておられたから、ひとつ見解を聞きます。
#319
○坊国務大臣 お答え申します。
 いまの大原さんの御質問は、医者には勤務医とそれから開業医と両方ある。勤務医の中には、これは申し上げるまでもございませんけれども、国の病院と、それからその他の病院に勤めておる勤務医がございます。その勤務医に対して、研究費というものを、いずれも国なりあるいは使う方なりが給与のほかに出すということによりまして、これをひとつ税の対象から外すというお話でございますけれどもね、それをやりますと、現金において研究費を勤務医に渡すということになりますれば、これはやはり税法のたてまえ上、その人に帰属する所得になりますから、これを税の対象から外すということは、厚生大臣が言われたようになかなかむずかしいことであり、かつまた、それをやりますと、いろいろな勤務の状態におきまして、これは研究費で出すとか、あるいはその他の適当なるもので、これは非常に大事な経費でございますけれども、それを個人に給与のほかに出すということになりますと、これはまた税法上大変な問題を生じてくるということになりまするので、これは厚生大臣が言われたようになかなかむずかしいことになる。
 開業医の場合、特に開業をしておる主体ですね、あるいはお医者さんそのものが開業しておることもありましょうし、あるいは法人の場合もありましょうし、そういったような場合に、研究費というものを出していきますと、その研究費はその病院の経費になる。そうすると、病院の経費になるものはこれはやはり、あるいは院長さん一その病院でございますから、病院の経費として、普通ならばこれは青色申告をしておりますか、あるいはその他の方法をとっておりますか、要するに経費ということになるわけなんです。そういうようなことを考えてみますと、特に研究費というものが出るから、開業の病院でこれだけは別に経費から外して税の対象外にする、これまた税の関係から申しますと容易ならざることでございまして、なかなかこれは困難でございます。
#320
○大原(亨)委員 いま医師の過失責任、こういうものが非常に議論になっているわけです。そういう点からいいましても、やはり日進月歩の医学に対して、研究ができる体制をつくるということが大きな職務です。ですから、それを個人に帰属しないで、制度的にそれを保障していく方法はないか、こういうことの提案をいたしましたが、これ以上議論はいたしません。
 そこで私は思うのですが、これからの低成長下の政治の中で、福祉の見直し論というのがあるわけですが、福祉の切り捨て論というのもあります。いままでの日本の福祉は欠陥があるという面においては、総洗いしなければならぬ。しかしながら、福祉の切り捨てという議論、これはいけないのではないか、間違っておる、こういうことを指摘をするわけです。
 その一つとして言われているのは、児童手当の問題です。これは財源との関係で、私は財界の意見で言われていると思うのです。その意見で自由民主党の一部の諸君が言われていると思うのです。日本の児童手当は五千円に最近くぎづけになったままになっているわけです。これはどれだけ出すかということは別ですよ、別ですけれども、世界で、六十六カ国の中で四、五カ国しか第三子以降にやっているというところはないわけです。日本は第三子ですから、第一子、第二子はほっておくわけです。そこで、第二子から第一子に逐次拡大をするということになると、世界じゅうのほとんどの国がやっているように児童手当が社会保障として位置づけられる、定着できる、こういうことになるわけです。それを第三子にとどめておる。十八歳でしぼって、十五歳以下の三人目の子がいなければならぬということですから、非常に短期間にだだっと産まなければならぬような仕組みになっておる。それで、第三子からということになっているから、これは家族計画との関係がどうだということの議論が出ておって、邪魔者扱いになっておるわけですが、しかし、これは洋の東西を問わず先進国では定着した制度ですから、これをどう改善していくかということで、児童手当の制度というものは改善をしていく必要があるのではないか。基本的に切り捨てなのか、改善するのであるか、こういう問題について御答弁をいただきたいと思います。
#321
○渡辺国務大臣 実はこの児童手当の問題について増額要求をすべきかどうか、私も最終的に悩んだところなんですよ。児童手当という性格が私にはよくわからない。要するに三子、四子と出して、どんどんたくさんやって、生めよふやせよということなのか、それともまた、本当に困るから児童手当は長男から全部出してやれというのか。それならまず国が一番先に、児童手当じゃなく扶養家族手当の額をふやしたらいいじゃないか。そこらのところの思想がどうも混乱をしておる。したがって、これについては少し検討しようということで、実は私は余り強い増額要求には消極的であった。それは私に責任がございます。
#322
○大原(亨)委員 やや厚生省の意図が明らかになったのですが、これは第一子、第二子というふうに第一子からやっておるのが国際的に先進国では普通なんですね。第三子からやっているから問題になっているわけです。つまり、児童の養育については社会的に考えていくということなんです。税金の制度を通じて再分配をしていくという考え方、児童を社会的に考えていくという考え方ですよ。たとえば保育所でも幼稚園でもいま非常に金がかさむわけでしょう。大学に行くほど要るわけです。幼児教育も大きな問題になっているわけですが、そういう子供の問題は経済変動の中で社会的に考えていく、こういうことです。あなたの議論――あなたと議論をしておったら時間が足らぬですよ。
 だから、そういう点でこの問題については重要な大きな問題がある。特にこの問題については、これをつくりました当時の経緯を見ますと、政府は小さく生んで大きく育てるということを言ったのです。こういうことを言っておりながら、実際には厄介者扱いしたもので、第三子にとどまっておる。こういう制限つきのものでしたから今日中途半端なものになっておる、こういうことです。ほとんどが第一子、第二子で、子供二人が標準でありますけれども、だから子供を社会的にどう考えるか、教育をどう考えるか、養育をどう考えるか、全部は養育を社会的に考えないでも、一部はどう考えるか。所得の再配分としての社会保障の中で児童手当をどう考えるかということなんです。ですから、この問題については、時間が参りましたから一々あなたと議論しませんが、社会労働委員会で引き続き議論いたしますが、これは簡単に考えるべき問題ではない。こういう点について問題を指摘をして、この点についての厚生大臣の見解があればお聞きをいたします。なければ聞きません。厚生大臣、これは厄介者みたいにやっ
 ておるけれども、どうです。
#323
○渡辺国務大臣 私が言うのは、小さく生んで大きく育てるならば、生めよふやせよならば、三子、四子、五子、六番目になったらもっとたくさん出すというようなことだったら、それは一つの政策ではないかと私は思うのですよ。一人、二人はあたりまえなんだから、三人、四人も産みたがらないんだから、十人目になったら一万円も出すとか、極端なことを言えばですよ。これは一つの政策であろう。しかし、小さく生んで大きく育てるなら、長男、次男は出すけれども、三番目以下は出さないよ、これも一つの政策であろう。しかし、そういうことを税金でやるのなら、その前に、雇っておる国なら国が扶養家族に対して、扶養家族手当を三千円だの四千円だの言わないでもっと多く出したらいいじゃないか。それから所得制限の問題もあるのです。ボーダーラインを救うというならば、所得が四百五十万とか何百万でなくてもっと低い人だけに出すというのなら、社会保障の意味があるだろう。そこらのところが思想的によく統一されていないのじゃないか。私は当時から国会議員をやっておるわけですから、その当時から私はそういう考えを持っておって、そこで、そこらの思想の統一がされるまでこれはもう少し研究したらどうだ。したがって、大原さんの言う御意見もりっぱな御意見ですから、あわせて
 一緒に検討して決着をつけたいと思っております。
#324
○大原(亨)委員 もう時間が来ましたから……。小さく生んで大きく育てるという当時の議論は、初めの出発は小さいけれども、児童手当の制度は第二子、第一子まで持っていって、そしてきちっとしたものにしていくという考え方なんです。あなたの言うようなことじゃないのですよ。ですからこの問題は、中途半端にしておくからだめだ、企業における家族手当も残っておるし、これもあるし、中途半端でこれはいけないということになっておるんだから、これを二子や一子まで前進をさせていきながら制度全体を整備していくということが必要じゃないかという点を問題点として私は指摘をしておきます。
 一応これで終わるわけですが、私が質問したい点はたくさんあるわけですが、いまのスタグフレーションに対応できないような年金や児童手当を含んだ所得保障の政策というものを改革をしないで放置しておいて、厄介者扱いをすることはいけない。そういう福祉切り捨ての政策は、これからの安定成長を進めていくという政策の中において、生活を基礎として日本の経済を組み立てていくという考え方に反する。そういう点を私は指摘をいたしまして、私の質問を終わります。
#325
○坪川委員長 これにて兒玉君、大原君の質疑は終了いたしました。
 次に、和田耕作君。
#326
○和田(耕)委員 私はきょうは三つの問題を御質問いたしたいと思っております。
 第一は、いまの経済状態、非常に矛盾だらけで、しかも長期に不況が続いていく、物価は非常に上がり基調が続くというような状態下で、日本の経済をうまく運営する場合の政、労、使の関係をどのように考えたらいいだろうかという問題が第一点でございます。第二点は、日本の医療制度にしましても、りっぱなお医者さんをつくることが一番中心であるのに、さまざまの問題、特に医科系大学の裏口入学という問題がこの十年ますます出てくる。こういう問題についての政府の御見解をお聞きするのが第二点。そして第三点は、高度経済成長下で日本の社会保障制度、福祉政策はかなりびっこの形であっても拡充をされてきた。ここで安定経済に移行するという段階でございますけれども、さまざまの問題がここにあるわけです。この問題を解決するためにひとつ発想を新たにした形で、ヨーロッパの最高水準まで日本の社会保障の水準を持っていくという、伸びていく状態のもとでいまのさまざまの矛盾を解決することができるじゃないかというような問題。この三点についてこれから逐次御質問をしてみたいと思います。
 まず、いま大原委員の質問もありましたので、関係することで、そのように頭のぐあいがなっておりますから、第三番の問題から御質問を始めてみたいと思います。
 これは最初に、ちょうど官房長官もお見えになっているし、坊大蔵大臣、お二人にお聞きしたいのですけれども、いまの日本で国民の合意ということになると数少ない状態でございます。大事な問題になればなるほど国論が分かれて何ともならないような状態がある。防衛政策がそうですし、教育の政策がそうだし、そしてまた労使その他いろいろな問題についてもそうでございますけれども、ただ一つ国民の合意というものが成立している問題がある。これは、何とかして社会福祉政策、社会保障政策を増強していこうという点になりますと、自民党から共産党に至るまでほとんど一致した状態にある。これは総選挙の各党の政策を見れば明らかなことでございます。
 いま私、ここで総選挙における自民党の社会福祉の問題についての政策を読み上げてみたいと思いますけれども、初めのさわりのところだけを読みます。「五十年代に国民のすべてが生涯を通じ、充実安定した暮らしのもとに生きがいある創造的活動ができる社会の実現を目指し、生涯福祉計画(ライフサイクル計画)を推進する」、第二が、「自分の努力だけでは暮らしが困難なすべての人びとにに国民生活の基礎的基準(ナショナル・ミニマム)を保障する社会保障体系の確立を目指し、当面各種公的年金制度の充実、保健医療体制の総合的、効率的整備、社会福祉サービスの充実合理化を図る。老人医療無料制度は維持する」、
    〔委員長退席、澁谷委員長代理着席〕
まだこれにはたくさんの項目が載っておるのでございますけれども、この項目から見ますと、たとえば予算編成のところで大蔵省で問題にした老人医療を制限するとか、あるいは今度の健保の改正を出すとかいうような感じはなかなか出てこないと思うのですけれども、いまでも福田内閣としてこのような政策の基本を推進していかれようと考えておられるのかどうか、これをひとつ官房長官と大蔵大臣からお伺いしたい。
#327
○坊国務大臣 お答え申し上げます。
 御指摘の社会福祉といいますか、これは人間にとっては何よりも大事なことだと私は思います。つまり、端的に生命とか身体とかというようなものに関連してくることでございまして、これは無限の願望を持っておる。たとえば年齢が七十平均になったらこれでいいというものじゃないのですね。七十になれば七十五を期待し、八十を期待する。体がこれでおれは健康だ、こう言いましても。これは多々ますます弁ずる、決してそれでいいというものではございません。全く天井のないものでございまして、無限の願望を人間は持っているということは間違いない。その無限の願望を達成していくというのは、やはり福祉政策だとかあるいは医療の政策だとか、こういったようなものだと思います。そうすると、無限の願望を達成していくためには、やはりそれに対応した無限の手段、方法と申しますか、これが人生において発達してくるのは当然のことだと私は思います。だから医学、医術なんというものはソクラテスの昔から今日まで――ソクラテスでしたかな、ヒポクラテスか、そういうようなことで今日まで発展をしてまいっておりますけれども、なお人間はそれに満足しない。そこで、何と申しましてもそういったような人間の無限の願望に対して奉仕するものはやはり人間である。その人間に対しては、これは個人じゃありませんから、報酬が要求されてもそれは当然のことだと思います。報酬とは何ぞやと申しますと、これは個人ならばふところからお金を出す。保険制度というようなことになっておりますから、そこでいまや皆保険です。保険からお金を出す。あるいはそれの足りず前は国が税金でもって出す。そうすると、その願望を達成するために出す手段、方法というものは、これは何としても有限のものでなければならない。個人のふところだって税金だって有限である。そういうようなことをいかに解決していくかということが今日人生に与えられたる非常に大事な政治であり、福祉であり、保険の制度であるというふうに私は考えておりますが、これを大いにひとつ真剣になって考えていくべき事態が生じておると考えます。
#328
○和田(耕)委員 私がいま読み上げましたのは、最初に「五十年代に」という言葉があるのですね。五十年代といいますとあと六、七年あるということですが、この五十年代にかなり高い水準の社会福祉制度をやろうとしている。公明党も社会福祉の問題につきまして中期計画というかなり組織的なまとまったものを出しておられる。民社党の方も今後五カ年計画という形で少なくともヨーロッパの最高水準まで持っていこうという案を出してきている。社会党、共産党にしましても、そういう年度計画はないとしても、内容的にはこれらの三者以上に高い社会保障制度のレベルアップを要求している。つまり、国民の合意の少ないところで、この問題だけは合意ができているということですね。そこで、どうだろうか、ひとっここのあたりで各党が協力をし理解し合ってナショナルプランをつくってヨーロッパの水準まで持っていこうじゃないか、こういうことができないだろうか、これを政府がイニシアチブをとる時期じゃないだろうか、そういうことをこれから質問をしていきたいと思うわけなんですよ。
 たとえば日本のGNPは、もういまから六、七年前から西欧の最高水準西ドイツを抜いておりますね。一九六九年から西ドイツのレベルを超したGNPを持っている日本です。西独よりも倍以上も人口が多いのですから、一人頭の水準から言いましても大体どっこいどっこいのところまでいま来ているのです。イギリスやフランスよりまあ少し上目のところまで来ているのです。つまり、GNPなり国民の生活の一般的な水準ということになると、もうヨーロッパの水準に来ている。GNPに至ってはほとんど倍ぐらいの高さを持っているということ。言葉をかえて言えば、現在はヨーロッパのどの国よりも豊かであるはずの日本です。この日本が、後から申し上げますけれども、どうしてまだヨーロッパの最高水準までほど遠い状態にあるのかという問題を、各党がいま申し上げたとおりの態度を持っておるのですから、ひとつ真剣に議論をし合って、ナショナルプランをつくって、五年ぐらいでヨーロッパ水準まで持っていこうというような案がどうしてできないだろうか、こういうことを私は思うわけですよ。また、このような議論が出るときに一番出てくるのは防衛費の問題です。防衛費でも、きょう私具体的に調べてみると驚くべきものですね。日本の防衛費は、国防費のGNPに対する比率から申しますと、日本が〇・九%、これに対して西ドイツは三・七%、フランスは三・九%、イギリスは四・九%、そしてスウェーデンでは三・四%。大体ヨーロッパの高度社会福祉の国々は防衛費を日本の約四倍使っている、アメリカ、ソ連に至っては論外な形になるわけですけれども。つまり、これは日本よりもGNPの低い国、一人当たりの生活のレベルも大体似通っている国です。しかし防衛費を四分の一しか出していない日本が、どうしてヨーロッパの水準よりも低いところにとどまっておるのか。これはいままで急速に発展してきているわけですから、そういう時間がなかったとかいろいろな問題がありますけれども、もうこの段階ではこのような問題を見詰める時期じゃないのか、こういうふうに私は思うのです。厚生大臣いかがでしょう。
#329
○渡辺国務大臣 日本の社会保障の水準が低いというお話でございますが、私は中身を分けて見るとそう低いと思っていないのですよ。たとえば年金にいたしましても、それは九万円年金が水準的に実現をしておる。ただ実際もらっている人は少ないじゃないか。それは年数の問題でございますから、これは時間がたって十年、十五年たてば全部ヨーロッパ並みの水準がもらえるということになっているわけです。
 それから医療費の問題にしても、各国の医療費の社会保険の給付というものは、国民所得に対する割合を見ると、大体日本もアメリカ、ヨーロッパ並みになっています。ですから、私はもちろんさらにもっと充実しなければならないと思っております。しかし、日本がこれだけ短期間にやれたというのは、高度経済成長ということで、自然増収、自然増収ということで、国費をかなりつぎ込んできているということだと私は思います。たとえばヨーロッパの方で、国民所得に対する租税負担、それから社会保険料の負担の割合を見ると、アメリカで四二%とか、ドイツで四八とか、それからフランスで四九とかというときに、日本は二三%ということですからそれは非常に負担が低いわけです。これだけの非常に低い負担で、社会保険費だけを見ても、これは国民所得に対して六%ですから、これもヨーロッパの半分です。
 そういうことを考えると、これは負担と給付の問題でございますから、私は日本の場合はなかなかよくやっておると思っておるのです。もっと充実するためには、それじゃ負担をヨーロッパ並みにふやすかという問題がございまして、国民のコンセンサスを得なければなかなかむずかしい問題でございます。したがって、そういうことを含めて制度上のいろいろな不均衡とか、矛盾のあるところもたくさんあります。したがって、それらは厚生省としても、ことしの秋ごろまでにいろいろな専門家の意見を聞いて、洗い直して結論を出してまいりたい、こう思っておるわけでございます。
#330
○和田(耕)委員 いま日本の医療水準や社会保障の水準は、大体ヨーロッパ並みのところへ来ている、そういう御意見ですね。そういう厚生大臣の御意見があったのですけれども、大臣、これは内容をもっと細かに見る必要があるのじゃないかと思うのですね。いまおっしゃるのは、たとえば年金の問題を一つ言っておられると思うのですけれども、確かに昨年改正された年金の水準で見ますと、大体年金の支払いの水準も成熟してくる。いまから十数年たつといまのヨーロッパ並みのところに来るということは事実です。しかしその十数年の間はどうなっていますか。たとえば現在の七十歳以上の老齢福祉年金、こういうことはヨーロッパにありますか。こういうふうな問題を解決することが必要なんです。いまの年金の制度、これから十数年、それ以上たった状態から比較すれば、ヨーロッパの、あるいはドイツの水準と同じようなところへ来るとしても、この十数年の間はどうなるのです。たとえば、ドイツに差額ベッドというようなものがありますか、あるいは付添看護婦というものがありますか、あるいは僻地医療という問題がありますか。そういう問題一つ考えてみれば、ヨーロッパの最高水準といまの日本の水準とは非常に違っています。そういう問題を、一つ一つ目標を立てて五年くらいで解決したらどうなんだということを私は申し上げておるわけです。いかがでしょう。
#331
○渡辺国務大臣 確かにいま例を挙げられたような点については日本が劣っておるところがございます。ございますけれども、これらについてはやはり再検討しようとわれわれも思っておる。しかしヨーロッパの方は負担も日本の倍以上あるわけです。だから日本もヨーロッパ並みというなら、給付もヨーロッパ並みだが負担もヨーロッパ並みです、こういう話になってこないと、これはなかなか話がかみ合わない。ところで、それは国民の合意を得るのには皆さんの御理解を得なければならぬわけですから、一緒になって検討いたしましょう、こういう考えでございます。
#332
○和田(耕)委員 いま私が申し上げる点は、確かにドイツの場合は、日本のいまの社会保障、つまり年金の問題だけを考えましても、負担は約三倍くらい高い。西ドイツは高いのです。日本だってこれで西ドイツ並みの、たとえば八万四、五千円の年金を払うということになれば、いまの負担ではとてもやっていけない、これはよくわかるのです。そういうことを含めて、とにかくもう日本も先進国であるし、ヨーロッパのどこの国に比べても劣らない経済力を持っている。そして人間の素質もある。こういうふうなことがあるから、そういうふうな問題をぜひとも目標にして今後の施策をやっていったらどうだろうか、こういうことを御提案申し上げておるわけです。いかがでしょう。
#333
○渡辺国務大臣 私は当然にその考え方で検討したいと思っております。
#334
○和田(耕)委員 これは官房長官、いまよく保革伯仲という言葉がありますけれども、この状態は少なくとも三年ないし五年続くと思います。あるいは逆転するかもわかりませんけれども、こういうむずかしい状態が続くと私は思います。こういうときの福田内閣の基本的な姿勢の中には、ぜひ考えていただきたいことは、国内政策で国民がだれもほしい問題についてはナショナルプランをつくって、そして各党の合意のもとで、これだけはこういう目標まで前進させていこうという大きな案をぜひとも設定してもらいたい。そうすれば国内のいろいろな大事な、国民の関心の深い問題について基本的な合意ができるわけですから、後のいろいろな問題については政治がしやすくなる。これは自民党の政治が長続きするという意味ではなくて、この不安定な政治の状態のもとで、国民の一番関心のある重要な施策については余り動揺するような状態があってほしくない。たとえば、多少景気が悪いからといって福祉の後退になる、いいからといってまた少しだけ伸びていく、こんなことはやめにして、そしてどの党も伸ばそうとしているのですから、ひとつそういうふうなナショナルプランを、政府がイニシアチブをとってぜひとも考えてほしいと思うのです。これはお金のかかることですけれども、大蔵大臣あるいは官房長官、気持ちだけで結構です。いかがでしょう。
    〔澁谷委員長代理退席、委員長着席〕
#335
○園田国務大臣 年々福祉制度の年次計画については野党の各位から強く要望されているところでありますが、なかなかいろいろ困難な問題があって今日まで来たわけであります。
 そこで、福祉制度の現状については厚生大臣から答弁したとおりでありますが、やはり日本の福祉制度には相当無理がございます。それは戦後から始まりましたので、ヨーロッパの方は追加して逐次いったわけでございますが、日本の方は出発時の施設、制度、期間、こういうものから始めましたので非常な無理がある。しかもそこへ人口の老齢化、社会環境の変化、安定経済への移行という問題が出てきておるわけであります。そこで年金にしましても、いままでの要素のほかに、福祉制度ばかりではなくて、当然安定経済に移行するとなれば産業構造の改革を考えなければならぬでありましょう。そうすると、ここで労使の合意による合理化、その合理化した場合の職業訓練、再職業戦線につくまでの間の保護という意味で年金の問題も見直さなければならぬ。こうなってきますと、御指摘のとおりこれは保革伯仲ということは別にして、この状態で安定経済、国家財政は相当苦しい、こういうところで満足すべき福祉制度、しかし困難ではあるが必要度はますます高まってきた、こういうところでありますから、御指摘のとおり国民の合意によるそのような年次計画をつくる必要があると思います。せっかく厚生大臣の方では各種審議会あるいは調査会等に検討願っているところでありますが、政府としては心を新たにして、いまの御指摘のような線で方向を見定めてやらなければならぬと思っておるわけであります。
#336
○和田(耕)委員 先ほど厚生大臣のおっしゃられた点、日本の年金制度が制度としてはかなり進んでいるということは、これは事実ですね。医療制度にしましてもトータルの金の支出等から見ますと、これはヨーロッパの最高水準まで行っているという説も成り立つほど相当物によっては進んでいるのです。しかし、内容はいかにもびっこだし、内容がいかにも羊頭狗肉みたいなところがあるというのが一つの特徴なんですね。だからそういう問題を一つ一つ取り上げて、たとえばここで私が考えますのは、心身障害者の施設はいまだに非常に不足しています。そして私、この前ある人から保育所に入れたいということで、杉並のある社会施設に話をしますと、千人も待っていると言う。こういうふうな制度も不足しています。寝たきり老人の施設もそうです。先ほど申し上げたように差額ベットだとかいろいろな問題もそうです。こういう野党が盛んに問題にしている問題を一つ一つ取り上げまして、五カ年のうちに何とかこれは解決しようじゃないかというような案をひとつ政府の主導でおつくりになったらどうだろうか。私ども、そういう納得できるものができれば賛成しますよ。
 大体ヨーロッパ水準と言えば決まっているのです、全体のスケールが。だから、野党としてもいろいろ議論があるし、お金の負担をどうするかということになるとますます大きな議論がある。あるいは大企業から金を取るという議論もあるだろう。ありましても、この問題は、大蔵大臣、ひとつ特別税の構想をお立てになったらどうだろうかと私は思うのです。社会保障制度の根本の考え方というのは、もともと所得の再編成の考え方が基本にあるわけです。したがって目標がはっきりしてきますと、たとえば心身障害者の施設を五年間にこうしよう、あるいは寝たきり老人の施設をこうしよう、差額ベットをなくするためにこうしょうという目標をはっきりさせた上で、そして目的税を徴収する、目的税を取る。それは取り方はいろいろあります。しかし、そういう発想というものができないものか。私ははっきりした目標があれば、いまの税体系の外でその特別税を考えてもいいじゃないか。
 たとえば、いま保険制度は保険制度で経常経費がかかります。これはそのままでいいのです。いま私が申し上げた、これから拡充しなければならない問題、これを実現するための特別税というものを各党の合意でひとつつくり上げてみたらどうだろうか、そういうような感じがするのですけれども、これは即答のできる問題じゃありません。検討するに値するということであれば、大蔵大臣、ひとつお答えをいただきたい。
#337
○坊国務大臣 いま和田さんの最初の御提案、まあひとつ国の一番大事なことについては国民的コンセンサスを得るためにみんなで御相談しようじゃないか、こういうお話ですが、私はそれは大事なことだと思います。そこで、考えてみますと、国会というものはしかくあるべきものだ。国会でいろいろな議論をし合う、これも大事なことなんです。これも、議論し合うということは大事なことではありますけれども、本当に腹を打ち割って、是は是、非は非ということで相談をしていくということも、私は国会の中にそういうものがあっていいと思う。そういうことから考えてみますと、いまの国会機構というもの、これの運営なり、動かしていく行き方というものであって、別個の何かをつくるということではない。国会をどう活用していくか。いままで政権争奪だとかそういうことを、それももちろん私は政党というのはあって結構なものだと思いますけれども、だけれども、そういう面に、議論もやるし、それから腹を打ち割って相談するしというふうに国会を活用していかれるというふうにひとつお考えを、これは一大蔵大臣の申し上げることではないと思いますけれども、僭越なことを申し上げますれば、そういうことであろうか、かように考えます。
 それからもう一つ、いま具体的な問題として、社会福祉のためにひとつ目的税をつくったらどうか、こういうお話でございます。これはまた実際の方法論、具体論になってまいりまするから、これをやるためには、一体税制体系の中で目的税というものをつくっていくということが、これは利の頭が古いのかもしれません、しかく簡単に目的税をつくりますと、後でしまったなというようなこともあります。そこで、目的税をつくるということについて一つの研究せねばならないという問題がございます。私の頭は古いかもしれませんけれども。
 それからもう一つ、いまの日本の税を考えてみますと、特別に社会福祉のために何か金持ちの方から税をひとつ取って、所得再配分のために、下の方から余り高く取るわけにはこれはいくまいと思います。それをやりますと、御承知のとおり、日本の今日の租税体系は、よその各国に比べまして、上の方に上がるカーブが大分大きいのです。そういうこともありまして、ただ、いまぱあっとした増税をやって、そうしてそれでもって社会福祉の目的税をつくるということになると、しかし、いやしくも社会福祉のための目的税ということになりますと、所得再配分の関係から言えば、高額所得者がやはり相当の負担をするということに持っていかないと、私は筋は立たないと思うのです。むしろ低額所得者は、これはやはりそういう負担を、軽いというか、ないというか、というようなことも考えられまして、この方法論というものは、これは相当の私は研究を要する問題だ、かように考えます。
#338
○和田(耕)委員 これはおっしゃるとおり非常にむずかしい問題ではありますけれども、その気になって与野党が協力する形でつくるようになれば、お互いの猜疑心みたいなものがなくなるから、私はできぬことではないと思うのです。社会保障制度というのはもともとそういうものです。所得の再分配の基本的な考え方に立っているものですから、やはり富裕的な人から金をよけい取って、そうしてそういうものをやる。しかもこれは問題がはっきりしているわけです。年金制度をやるなり、するためにこの税を取るというのじゃないのです。年金制度、いろいろな制度はそのままとして、いままでの費用体系のところでいいのです。いま挙げた五つ、六つのどうしても解決しなければならない問題を解決するためにそういう考え方を持っていこうということで、臨時的な意味を持ってくるわけですから、ぜひともひとつ御検討を賜りたいと思います。
 続きまして次の問題に移りたいと思います。
 倉成経済企画庁長官に御質問申し上げますけれども、先ほど大原君も述べておりましたが、一体いまの日本の経済の状態を名前をつければどういうあれになるのか、スタグフレーションという言葉になるのか、あるいは長期的な不況ということになるのか、あるいは中だるみというのはきわめて常識的な言葉ですけれども、いまの日本の経済はどういう言葉で表現すれば一番この状態をあらわすことができるでしょう。
#339
○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。
 いまの経済の姿を一口で言えと言われるとなかなかむずかしいわけでございますけれども、景気が回復過程にあるけれどもいま足踏み状況にあるとでも申したらいいのではないかと思います。
#340
○和田(耕)委員 昨年の予算で七兆三千億という国債を出した。三分の一は国債。今年度の予算も八兆五千億というこれまた三分の一は国債に依存している予算。しかもなおかつ経済が上向くという確信が持てない。政府も恐らく持てないのじゃないかと思うし、たくさんの見方もそういう見方をしている。中途半端だという主張もあるし、去年のいまごろは、約四月、五月ごろは、当時の福田副総理と私も何回か物価委員会その他でやりとりをしたことがあるのですけれども確信を持っておられました。去年の暮れには日本の経済は花が開く、稼働率にしては九〇%を超していくだろう、こう言っておられた。ところが八月、九月、先ほどお話があったとおり全くおかしくなってしまった。しかも今度は補正予算も組んで、もうまさにそれが実行されるような段階でもなおかつ三月、四月で上向いていくという見通しがつかない。一昨日の経済企画庁の発表によっても、すべての景気の指標は停滞している、はっきり上向きの状態を示していない、物によっては下向き、物によっては多少上向くという状態になっている。つまりこういう状態はスタグフレーションというふうな本格的な展開というふうに見られると思うのですが、いかがでしょう。
#341
○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。
 スタグフレーションという言葉は、私の記憶では、一九七〇年の六月にイギリスの保守党が労働党を破って政権についたときに、当時の大蔵大臣のイアン・マクラウド氏がイギリスの経済を称して言った言葉だと思います。したがって、この当時のイギリスは失業者が非常に多くて、しかも景気がばかばかしくないということで、近代の経済理論でいきますと総需要を抑えてそして不景気になれば失業者ができて物価も下がる、しかし不景気にはなるけれども物価は上がっている現象を一般的にスタグフレーションと言っているのではないかと思うわけでありますけれども、日本の場合には、四十九年のゼロ成長の時代から御案内のとおりことしは非常に緩やかでありますが、五・七%の成長。需要項目は輸出が思ったよりも非常に大きかったということもございますけれども、五・七%の成長を五十一年度は達成できる。物価も高いとは申しましても一けた台に入ってくるという状況でございますから、スタグフレーションという言葉の定義でもございますけれども、スタグフレーションとは私ども考えていないわけでございます。しかし、そういうことにならないように、あらゆる部門についてひとつ警戒をしながら経済の運営をやっていかなければならない、そう考えておる次第でございます。
#342
○和田(耕)委員 ごもっともな御見解だと思いますけれども、しかし経済成長を五・七%維持できるといいましても、膨大な赤字国債を出すとか公共事業をやるとか、いろいろな政策を集中して辛くもこの状態を達成できるという状態だし、しかも去年の後半の状態は前半と全く違う状態があるわけで、少なくともこれは不況の長期化、しかも非常に矛盾に満ちた不況の長期化というふうに言えると思うのですが、そういう意味でよろしゅうございますか。
#343
○倉成国務大臣 お答えしたいと思います。
 いまお話しの点は恐らくいまの景気の現況が業種別、地域別、また業種の中でも企業間格差が非常にある。したがって、そういう業種が、ある意味においては循環的な景気停滞ではなくして構造的なものを含んでおるわけでありまして、そういう業種についてのみ考えてまいりますと、今日の状態から脱却するには相当な努力が要る、大変困難な状況であると申さなければならないと思うわけであります。しかし、経済全体を達観して見てまいりますと、決して景気が落ち込んで冷え込んでしまって、そして全く景気失速の状況ということは考えていないわけでございます。輸出の好調ということもございますけれども、個人消費あるいは設備投資というようなものも去年と比べると高い水準にあるということを御運解いただきたいと思います。
#344
○和田(耕)委員 この景気がいろいろな政府の努力で、いろいろと国民の協力で、景気を一応時間がかかっても回復していくということであれば今後格別の施策は必要ではないと思うのですけれども、私どもはなかなかそうは思えない。ちょっと政府が手を緩めるとまた落ち込むというような、つまりデフレ、インフレの谷間といったような状態が基本的に底流にあるのじゃないか、そういう社会に入っておるのじゃないかというふうな感じを持つので、これから申し上げることを申し上げたいと思うのです。
 つまり自由経済の場合は好況と不況がはっきりします。不況になれば価格は下がるし労働者の賃金は下がるし失業は出てくる、好況になれば逆にずっと伸びてくるという状態ですけれども、もうそういう状態ではこの十数年間ないわけですね。つまりいまのスタグフレーション的な――的ということにいたしましょう、的な経済状態をつくり出す要素は私は三つあると思うのです。一つは、経営者の側における寡占状況だと思うのです。きょうも公取の方に来てもらって聞いてみますと、全国的ないろいろな影響を持つ産業の調べによると約半分が、上位三社が六〇%以上のシェアを持っておるという数字があるように、全国的な一つの経済の組織から見れば、もう日本の経済は一つの寡占的な経済だということができる。寡占ということになれば不景気になっても値段はある程度まで底支えをして下がらさないという状態が出てくる。これが一つですね。これは長年続いてきています。もう一方、労働組合というのが強力になっております。だから不景気になって賃金が下がるはずだけれども、下がらないだけでなくてこれを上げていこうというのが労働組合の力です。これも長年続いてきております。不景気になろうとすると政府が公共事業をやって、そして景気をある程度まで落ち込まさないような形で支えて景気を持続させておる、これは政府の財政政策です。この三つがいままでは三つともプラスの役割りをずっと持ってきたわけですよ。
 ところがこういうふうな状態になると、いまのスタグフレーション的な一つの化け物のような経済を生み出してしまった、その一番の原因はその三つの要素だと私は思うのです。そういうことになりますと、この三つがけんかをしたのじゃ、このお化けのような怪物を暴れさすだけのことです。三つは直接の自分たちの立場を持ちながら協力しなければ、何とも対策が打てない、私はそう思いますね。そういうふうなことで、つまり協力して怪物を大体抑えつけておるのが西ドイツ、三つがけんかして破滅の状態にあるのがイタリー、こういうふうな状態だと私は思うのですけれども、こういう問題について、企画庁長官、いかがでしょう。
#345
○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。
 ドイツの例をお引きになりましたけれども、ドイツは非常に物価が安定しているということは、第一次大戦及び第二次大戦に非常なインフレの苦しみを味わったドイツ国民が、とにかくインフレ克服ということを最大の命題としまして、国民すべて、労働組合、企業、全部がこれに協力をし、われわれから考えると相当無理な施策ではないかということにも協力の体制にあるということは御指摘のとおりでございます。
 日本の場合、ただいま御指摘になりました寡占的な企業、寡占企業がこれから先だんだん操業率が低い段階で価格で勝負をしよう、価格を押し上げようという誘惑にかられる、そういう行動にかられる可能性があるということは、私もそう考えます。したがいまして、寡占価格というものについて十分注意をして見守っていかなければならないと思うわけでありますが、現在までのところの寡占価格がどうであるか、この弊害がどうであるかという評価につきましては、私どもは現在そのようなものがはっきり出ているという認識はいたしておりません。この点は、公取その他と十分これから研究をしていかなければならないと思っております。
 それから、生産性が伸びていかない段階において、やはり賃金が生産性を上回ってまいりますと、これは賃金コストとしてコストにはね返ってくるわけでございますから、これからの低成長時代の、高度成長が望めない時代においては、そういう賃金面のコストというものが物価上昇の要因になるということも、やはりこれから考えていかなければならないことの一つではなかろうかと思うわけでございます。
 三番目の政府の施策についてということは、御指摘のとおりでございまして、やはりわれわれが的確に景気の現状を把握して、そしてこの景気の現状に対して機敏に、弾力的に行動するということが大切なことでございまして、これまでも政府は十分そういうことを考えてまいりましたけれども、しかし振り返ってみますと、もう少しこういうことを考えたらよかったじゃないかというような面はあるのではないかと思います。
#346
○和田(耕)委員 いまの経営者、つまり寡占状態になった経営者と、非常に強力な影響力を持っておる労働組合と、そして政府の政策というものが、立場は違いますから今後もいろいろ対立はするのでしょうけれども、大事な点では話が通ずるというようなことを政府としては意識的に考えていかないと、非常にむずかしい局面になってくる。つまり、いまも申し上げたとおり、西ドイツの場合は非常にうまくいっていて、この怪物のようなスタグフレーション的な状態にうまく対処している。それからイタリーの場合は、三者が三者三様でけんかしているから破滅の状態になっているということを申し上げておるわけですけれども、たとえば長官、寡占企業が自分の製品の値段を引き上げるという場合に、これをほっておきますと、労働組合が企業別組合で、労働組合がこれに協力するという形のものがどんどん出てくる可能性がある。そうなりますと、これはちょっと政府が何ぼがんばっても始末に負えないことになる。ことに国民のいろんな消費層との対立関係も出てくるという問題もすぐ出てくるわけですね。そうなると、政府が出張っていって、そしてそれを、そういうことはぐあいが悪いじゃないかというようなことでいろんなことの話をするということもあるでしょうね。あるいは外国の場合に、日本の輸出がどんどんとヨーロッパに伸びていく、アメリカに伸びていく、アメリカの労働組合は日本の製品をとどめるための先頭に立って、ヨーロッパの労働組合は日本に敵対する。外交的な問題でもそういう問題が出てくる。これをぜひとも国内の問題としても、その問題について、単なるたとえば労働大臣の諮問機関的なものではなくて、もっと日本の経済、あるいは政治と言ってもいいかもわからない、全体のものをうまく回転さすための一つの機関として、そういうものをひとつ考えてみる必要があるんじゃないか。しかし、これはなかなかむずかしいと思います。やり過ぎると所得政策的な形で一方的に労働組合を抑えつけるようなことにもなりかねないこともありますので、むずかしいと思いますので、そういう問題意識を持って、これをどのように組み立てたらいいかということを、そのことを考える一つの審議機関を経済企画庁なりあるいは内閣の総理大臣の何なりの形で持ったらどうだろうかと私は思うのですけれども、いかがでしょう。これはどなたからでも結構です。
#347
○園田国務大臣 後で労働大臣からも詳しく御答弁があると思いますが、全く御指摘のとおりだと存じます。ヨーロッパの国々で社会契約が必ずしも成功しなかった、西ドイツで社会合同が成功したというのは、いま和田委員がおっしゃったことだと思います。特に日本では、資源のない国であります。こういう時代でありますから、政、労、使が協調するというのではなくて、一つになって政治に参加するというか、経済に参加するということを考えなければならぬ。そこで、労働省の方では、審議会、調査会等に労働者の方々も参加を願っておりまするが、そういうことではなくて、産労懇というのがありまして、福田総理は副総理の時代からこれに八回も、そのたびごとに出席をいたしております。一月二十六日もまた労働大臣と一緒に出席をいたしました。宮田提案が出たわけでありますが、これも、いま和田委員のおっしゃった一つの出発点になり得るような気がいたします。せっかく労働大臣の方ではこれに基づいて検討しているようでございますから、いまの御指摘の点を十分考えながらやっていきたいと考えております。
#348
○和田(耕)委員 私、先ほど社会保障制度をヨーロッパ最高水準まで持っていこう、そのためのナショナルプランをつくろうじゃないかということを申し上げたのですけれども、たとえば、この問題を政府が主導してやる必要があると私が思うのは、政府はそこまで国民に体を寄せてこなければいけないわけですよ。政府は三者の上にあって、おれが政治しているんだなんという、そういうかっこうではこういう大事業はできはしないのです。やはりこういう社会保障制度をヨーロッパ水準まで持っていこうという、日本の勤労者、労働者のためになるような、これは先ほど厚生省管轄の問題だけを述べたのですけれども、それだけじゃないのです。これは労働省にもあるし、他の産業官庁にもたくさんあるのです。そういうものを含めて、いまの弱い立場の人たち、非常な矛盾に苦しんでいる人たちをそういう方向に持っていこう、そのために政府はこうしてやっているのだという、そういう姿勢なしには、いまの経営者の問題も、労働組合の問題も、お互いに信頼し合わないわけです。そういう意味からも、政府はそういう施策が必要だと私は思うのです。
 また、ドイツの場合でも、去年に、例の共同決定法という全産業に及ぼす、二千人以上の産業に及ぼすあれを決定した。あれは経営者の方だって非常に強い抵抗があった。労働組合の側だって強い抵抗があった。両方とも納得してない。納得してないけれども、その中で、しかもそれをつくらなければならないということであれはできた。そういう問題ばかりじゃないですか、いまの日本の経済の状態は。そのためには、政府がそういうふうな気持ちになってもらわなければならない。つまり、国民、勤労者のためになることを政府が主導してやっていく、そういうことになれば、野党だって協力していくにやぶさかではない。そういうふうな意味の発想の転換というものが必要なわけです。そういうことの一つの地ならしとしても、いまの政、労、使の何らかの新しい関係を政府が、自民党の政治がどうのこうの、そんなのはけちなことですから、そういうことはやめて、もうそういう問題を考えていかなければならないのではないかと私は思うのです。ぜひともひとつこれは総理にもお話し願いまして、いまの政、労、使の問題について、あるいは社会保障の水準をヨーロッパ並みにする問題について、あるいは労働者の経営参加あるいは経営協議の問題でもそうです、もっと法的な措置が私は必要だと思う。そういうような問題を含めて、ぜひともそういう問題についての新しい感覚でひとつ対処していただきたいと思います。
 また、先ほどの、大蔵大臣、いまも申し上げたとおりの社会保障水準を上げるための特別税の問題もぜひともひとつ御検討いただきたいと思います。
 それで、ひとつこれは個別的な問題で厚生大臣にお伺いしたいのですけれども、いまスモン病等で薬害の問題が出ておりますね。これに対して政府とそして薬のメーカーの責任分担、どういうふうに責任を持ったらいいかという問題が出ておるわけですけれども、いまだに政府はその態度を明らかにしていないようですが、これはどのようにお考えになっているでしょう。
#349
○渡辺国務大臣 これは非常に重大な問題でございます。したがいまして、政府としては目下鋭意検討中でございます。いましばらく時間をおかし願いたいと思います。
#350
○和田(耕)委員 この問題は今後もいろいろと出てくる可能性を持っている問題だと思いますけれども、渡辺厚生大臣、これは仮に実態は政府が二割か三割の責任しかないとしても、やはり五割くらいは持つつもりでないとこういう問題は解決できませんよ。そういうふうな意味で、政府の責任を強く痛感をしながら、裁判所の意向も大体そういう意向が出ておるようですけれども、ぜひともそういう方向でひとつ御処理をいただきたいと思います。これはどうしてもいろんな利害関係のあれするところですから、政府が三割のところなら、じゃ五割は政府が持とうというかっこうでないと、なかなかこういう問題は解決できないと思いますから、せひともひとつそういう方向で御検討を賜りたいと思います。いかがでしょう。
#351
○渡辺国務大臣 実は、和解勧告の問題について目下検討しておるわけでありまして、あれだけを見ても、だれが幾ら持つのか、だれがどの程度の責任があるのかということはよくまだわかってないわけです。
#352
○和田(耕)委員 その問題については、これはもう厚生省も今年かかってひとつ検討なさるような仕組みもあるようですから、ぜひともこれを早くひとつ問題を確かめて――確かめるといっても、なかなかいままで、こういう問題については十年もそれ以上もかかる問題ですけれども、早く方向を確かめて、決まらない場合は仮の施策でもって、困っている人たちがいつまでも困らないような処置をひとつしていただきたいと思います。
 それからもう一つ、医薬分業というのが長年あって、これはやはりどうしても早くやらなければいかぬじゃないかと私は思うのです。坊大蔵大臣が十年前に厚生大臣のときに、この問題を私はちょうどこの場で御質問したことがあるのですけれども、やるやると言って、いろいろ抜本改正と同じようにいつまでたってもできない問題ですけれども、厚生大臣、この問題についての今後の見通しをひとつお聞かせいただきたい。
#353
○渡辺国務大臣 御承知のとおり、医薬分業の問題につきましては、四十九年の十月に診療報酬の改定をいたしました。そのときに処方せんの書き賃、百円から五倍に引き上げて五百円というようなことにいたしまして、その結果、当時と比べて現在は三・二倍医薬分業がふえたのはふえたんです。ふえたんでございますが、日本には長い習慣があって、お薬はお医者様からもらうという患者の心理もなかなか強く働いておりますし、その方が便利だということもあります。また、実際医薬分業と言っておりながら、日本全国で一斉に始めるように薬剤業界の方、これもそれだけの受けざらというものは言うべくしてなかなかそうはうまくいってない。長野県の上田市は、人口十万でございますが、薬局数が三十九あって、医療機関が百十八ございます。ございますが、これは病院、医師会と薬剤師会の話が非常にうまくついておりまして、大体三〇%ぐらいが出ておるんですよ。したがって月に二万五千枚ぐらいのあれが出ておる。したがって、これはやはり政府の指導もさることながら、やはり医師会と薬剤師会とがうまく話し合いをしていくということが大切である。したがって、政府としてもそれらの講習会、薬剤師会の方で受けざらの方の講習会、患者の便宜も図らなければならぬ、そういうようなこともあわして実は指導はいたしております。
#354
○和田(耕)委員 この問題は、私は日本のりっぱなお医者さんをつくるという意味から言っても、非常に大事なことだと思いますので、ぜひともひとつ精力的に大臣としての御指導をお願い申しておきます。
 最後に、いまもりっぱなお医者さんをつくるということが大事だということを申し上げたのですけれども、私はこれは長年その立場で主張してきておるのです。この医療制度、いろいろな問題点がありますけれども、何ぼ医療の制度がよくなっても、医者がだめになるともう意味がないです。だから、りっぱな医者をつくるにはどうしたらいいかという立場でこの医療制度の問題も見直してみる必要があると、私は長年そう思っておるんです。そういう立場でいまの医薬分業の問題もやかましく主張するわけでございますけれども、これから申し上げます医系の大学の裏口入学の問題これは私は何としても早く直してもらわなければならない問題だと思うのです。
 文部大臣、私がこの問題を最初に衆議院の本会議で取り上げましたのは昭和四十八年の三月でした。当時田中さんが総理で、そして文部大臣は先ほどまでおられました奈良の奥野さん、その方が文部大臣で、そして文部省の担当の局長さんにも長い時間をかけてこの問題を申し上げたことがあるんです。そのときに、私は今度資料をもらってびっくりしているんですけれども、昭和四十六年に初めて文部省としてその調査をしたのです。そして四十六年に調べたその資料を私いただいたときには、十八学部で入学者が二千百三十七人、そのうちで寄付をして入った人が千三百九十三人。つまりこれは私立大学ですけれども、入学者の六五%がお金を出して大学へ入った人です。私立大学の六五%。ところが、最近文部省からの御報告をいただきますと、入学者数が三千二百六十二人、大分ふえています。そして寄付をした人が二千四百二十人、その比率は約七〇%です。とにかくこの四年間に、文部省としてもこういうことのないように十分指導をするということを総理大臣も文部大臣も確約しておるのです。しておるにもかかわらず、この四年間にその数はこんなにふえている。しかもその額は、その当時はたしかあれは何ぼでしたかな、総額が四十六年には八十三億五千二百万円というのが、去年では四百三億円、つまり激増しているんですね。人の数がふえるよりもお金の数が激増している。ちまたで言うことを聞くと五千万とかそれ以上という話さえ私は聞いている。つまり、こういうふうな問題を文部大臣としてどのようにお考えになっておられるのか、まずお聞きしたいのです。
#355
○海部国務大臣 御指摘の問題に関しましては、私は、教育の機会均等という立場とか、あるいは入試選抜の制度が世の疑惑を受けないという角度から見ても、入学時に多額の寄付金を条件として強制することは明らかに間違っておる、こう考えております。ただいま先生御指摘の数字は、私も手元にいま取り寄せました数字と全く同じでありまして、こういうようなことが強制的に行われるようなことはよくないという自粛の通達を、四十九年以来文部省は重ねていたしてきたと聞いておりますが、最近起こりましたあのような出来事等を顧みますと、自粛の通達が必ずしもすみずみまで行き渡っておらないのではなかろうかという点について率直に反省をしなければならぬ、私はそう受けとめております。
#356
○和田(耕)委員 その当時、もう私立大学はふやさない、国立あるいは公立の大学だけにしたいというようなことを文部大臣もおっしゃっておりました。私立大学も自分がもうけるために上げているわけではない、実際金がかかるからこういう形で金をとっていると思いますけれども、そのためには国庫補助もふやしていきたいということも申しておりましたけれども、そしてまた実際国庫補助も相当ふやしておりますね。にもかかわらず、減らないだけでなくてふえていくというのはどういうわけでしょう。
#357
○海部国務大臣 お答えにならぬかもしれませんけれども、私は、実はこういつたものは減るのがあたりまえだと思うのです。助成がどんどんふえるわけでありますし、そして今年度でも、先生御承知のように、私学振興助成法の精神に基づいて、この財政事情の中で五十二年度予算では千六百五億円処置をいたしましたし、また五十一年度における実績の中でも、配分をいたしますときに、法文系の学生一人当たりに換算する率は五・六万円、それが医学系には百万円を超える割で傾斜配分もされる。またその助成だけじゃなくて、私学振興財団からの融資であるとかいろいろきめの細かい施策をやっておりますので、自粛の通達と相まって、これほど国も力を入れてやっていくのでありますから、徹底してほしい、われわれはそう願うのでありますが、事実としてこういうふうに数がふえてきておることは、正直言ってまことに残念なことであります。しかし、方針といたしましては、文部省は、医学に関しましては国立の医科大学を設置して、やはり医学教育には非常に多額の施設費や運営費が要るという実情もございますので、とりあえず全国の無医大県を解消するという計画を立てまして、年々その設置の数を進めてまいりまして、今年度はとりあえず三校の創設準備を促進したり、あるいは沖繩に創設準備を加えたりして、全国に無医大県をなくして、国立の医科大学を設置して、少しでもこういう状況を緩和していきたいという政策を推し進めておるところでございます。
#358
○和田(耕)委員 私立大学の医学部の運営の問題について政府が露骨に干渉するということは、他のいろいろな弊害も出てくると思いますけれども、事はお医者さんの養成でございまして、大体、日本の全体のお医者さんが毎年出るのが、国立が三千六百八十人、公立が六百二十人、合わせて四千三百人、これに対して私立の入学者が三千二百六十人、この中の七〇%が裏口だということになると、二千四百二十人が裏口ですから――裏口かどうか知らぬが、とにかく寄付を出している人ですから、全体の約四割にはならないけれども三割以上の毎年出るお医者さんが、このような形で教育されている。お金を出した者は、よけい出した者になればなるほど、ろくなことやってないのですよ。これは落第もさせないのですから。やはり国家試験は、大体春の国家試験は九〇%あるいはそれ以上の合格率でしょう、いまでも。そういうふうな状態では――人間の命を預かる人にこういうふうなルーズなことをさしてはいけない。これは絶対に、もっと緊張した形で、文部大臣、ひとつそれこそ蛮勇でも何でもいいんです、これは厚生大臣もそういう点ではお元気な方ですから……。厚生大臣、本当に困るでしょう、こういうお医者さんがたくさん出てくると。ぜひともこれはお二人で解決していただきたいと思います。そうでないと、お医者さんに対する信頼なんというものは、もうますますおかしくなります。そういうことになると、それは国民自身が悲しいことですから、ぜひともひとつこの問題は思い切って効果のある手を使ってもらいたいと思います。
 私は、あのときに、文部大臣も、総理大臣も、局長さんも、かなり思い切ってやろうと言って、だんだん減っておると思ったところが、このごろ、新聞を見ると、こういう数字だし、よく調べてみると四年前に比べてふえているのです。これは何ともならないことです。額なんかも、四年前の八十三億から四百三億でしょう。こういうふえ方をしているのです、寄付金が。ということは、ろくなことになりませんから、ひとつぜひともこの問題は、もっともっと注意を払って、効果のあるような御指導をしていただきたいと思います。もし変なことをやるやつは、とめたらいいじゃないですか、言うことを聞かなければ。そういう問題は、ぜひともひとつお願いをいたしたいと思います。
#359
○海部国務大臣 御指摘のとおりの精神でやってまいりますし、特に最近社会問題ともなりました悲しむべき事実等もございましたので、文部省といたしましては、当該学校のみならず協会と再三出会いまして、本当にこれが機会となって――すでに手おくれかもしれぬけれども、しかし、いまからでもまた改善していくことが望ましいわけでありますから、厳重に関心を持って取り組んでいきたいと思います。
#360
○和田(耕)委員 もうこれで終わりますけれども、ぜひともこういう問題は、いろいろむずかしい問題が日本の医療制度の中には山積しているわけですけれども、これを今度の健保の改正のような形――これはやる必要があると思うのですけれども、これは大変な理解のいただけないことの一つだと思いますね。つまり、いまある状態で負担を強めていく形で解決しよう、これは何ぼいいことやろうとしてもできません。やはり、先ほど言ったように、西欧並みに持っていくのだという広く広がっていく状態を提示しながら、こういうむずかしい問題を解決していくという考えでないと、なかなか解決できないと思います。
 そういうことでございますので、いまのお医者さんの問題もそうだと思います。ぜひとも、ナショナルプランとして、日本の医療制度を含めた社会保障制度全体をヨーロッパ並みに持っていくのだ、そのためにはこういう問題をこういうふうに解決していくのだというような形で、それこそ発想の転換をしながらこの問題に対処していただきたいと思いますし、そしてまた、大蔵大臣もこういう金は惜しんじゃいけませんね、これは本当に惜しんじゃいけないと思いますよ。やはりはっきり正しい目的を設定しますと、国民は特別税の形ででも納得すると思います。必ずそうだと思います。ぜひともそういう形でやっていっていただきたいと思います。これは福田内閣のためだ。福田内閣がりっぱな、転換期のいい政治をやっていただくことを願いながら、そういうふうな御意見を申し上げました。ありがとうございました。
#361
○坪川委員長 これにて和田君の質疑は終了いたしました。
#362
○坪川委員長 この際、分科会の件についてお諮りいたします。
 理事会の協議に基づき、昭和五十二年度総予算審査のため、五個の分科会を設置することとし、分科会の区分は
 第一分科会は、皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、総理府(ただし経済企画庁及び国土庁を除く)及び法務省所管並びに他の分科会の所管以外の事項
 第二分科会は、外務省、大蔵省及び文部省所管
 第三分科会は、厚生省、労働省及び自治省所管
 第四分科会は、経済企画庁、農林省及び通商産業省所管
 第五分科会は、国土庁、運輸省、郵政省及び建設省所管
以上のとおりにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#363
○坪川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 次に、分科会の分科員の配置及び主査の選任、また、委員の異動に伴う分科員の補欠選任並びに主査の辞任及び補欠選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#364
○坪川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 次に、お諮りいたします。分科会審査の際、最高裁判所当局から出席発言の要求がありました場合は、これを承認することとし、その取り扱いは、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#365
○坪川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 次回は、明三日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後六時二分散会
ソース: 国立国会図書館
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