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1976/05/12 第80回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第080回国会 社会労働委員会 第18号
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1976/05/12 第80回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第080回国会 社会労働委員会 第18号

#1
第080回国会 社会労働委員会 第18号
昭和五十二年五月十二日(木曜日)
    午前十時二分開議
 出席委員
   委員長 橋本龍太郎君
   理事 斉藤滋与史君 理事 住  栄作君
   理事 戸井田三郎君 理事 中山 正暉君
   理事 枝村 要作君 理事 村山 富市君
   理事 大橋 敏雄君 理事 和田 耕作君
      相沢 英之君    井上  裕君
      伊東 正義君    石橋 一弥君
      大坪健一郎君    川田 正則君
      小坂徳三郎君    津島 雄二君
      戸沢 政方君    葉梨 信行君
      湯川  宏君    安島 友義君
      大原  亨君    金子 みつ君
      川本 敏美君    渋沢 利久君
      田口 一男君    草川 昭三君
     平石磨作太郎君    永末 英一君
      西田 八郎君    浦井  洋君
      田中美智子君    工藤  晃君
 出席国務大臣
        厚 生 大 臣 渡辺美智雄君
 出席政府委員
        厚生省公衆衛生
        局長      佐分利輝彦君
        厚生省医務局長 石丸 隆治君
        厚生省薬務局長 上村  一君
        厚生省児童家庭
        局長      石野 清治君
        厚生省保険局長 八木 哲夫君
        社会保険庁医療
        保険部長    岡田 達雄君
 委員外の出席者
        大蔵省主計局主
        計官      窪田  弘君
        社会労働委員会
        調査室長    河村 次郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月十二日
 辞任         補欠選任
  西田 八郎君     永末 英一君
同日
 辞任         補欠選任
  永末 英一君     西田 八郎君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 健康保険法及び船員保険法の一部を改正する法
 律案(内閣提出第三五号)
     ――――◇―――――
#2
○橋本委員長 これより会議を開きます。
 健康保険法及び船員保険法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。戸沢政方君。
#3
○戸沢委員 いよいよ注目の健康保険法の審議に入るに当たりまして、冒頭に質問をさせていただく機会を得ましたことを、私は非常に光栄に考えますと同時に、実は少しく残念な気がいたしておるのでございます。
 残念というのはどういうことかと申しますと、四十八年に健康保険法につきましてはかなり大幅な改正が行われまして、しばらく四、五年ぐらいは財政的にも安定するであろう、その間にじっくりと根本的な問題について検討して、抜本的な対策案を世に問うことができるであろうということを期待しておったのでありますけれども、その後石油ショック等による経済の変動はあったにせよ、昨年もことしも引き続いて一時を糊塗するような財政対策法案が提出されておるということにつきまして、私はいささか残念な気がいたしておるのでございます。
 今回の改正法案は、これが通らなければ年度末には借入金もできなくなるという緊急のもののようでありますから、どうしても通さなければならないものだと思いますけれども、しかし、名医というものは、応急手当てをするにつきましても、その病根をじっくりと究明して、これに対する根本的な治療方針を立てて、その前提でもって応急措置をするというのが医者のとるべき態度だと思います。したがいまして、私は、これから将来の日本の医療問題あるいは保険問題に関する若干の重要な問題につきまして、提案を含めつつ政府の御見解を伺いたいと思うのでございます。
 最初に、現在の日本の皆保険を中心にした医療制度のメリットとデメリットの問題でございますけれども、今日、日本の医療をめぐっていろいろ問題が山積しております。保険の赤字問題だけでなくて、救急医療の問題、老人医療の問題、薬の多量使用の問題、歯科医の問題、医者が足りない、看護婦が足りない、いろいろそういう問題はありますけれども、しかし、そういう問題を含みつつも日本の医療水準と申しますか、あるいは国民医療の普及度、そういったものの国際比較をしてみますと、先進国に比べて決して遜色のない、むしろ非常に高い水準にあるのではないかと私は考えます。
    〔委員長退席、住委員長代理着席〕
 時間の都合上、それを裏づける数字、資料は省略いたしますけれども、よく医療の国際水準等を比較する場合に引き合いに出されますバロメーターとしての平均寿命の問題あるいは乳幼児の死亡率、伝染病の発生率、そういったものを見ましても、日本の水準はもう世界の最文明国のランクに位置しているわけでありますし、それから財政面を見ましても、国民医療費と国民所得との関係を見ても、また国が医療に対して支出している予算、そういったものを見ましても、これはきわめて高い水準にあると思います。
 そういうことを考えますと、今日、医療に関するいろいろの問題はありますけれども、長いこと政府・自民党が国民皆保険を中心にしてやってまいりました医療制度は、大筋において成功をしているのじゃないか、その成果をあらわしているのじゃないかというふうに私は考えますが、医療の水準についてほぼこういう認識をして間違いないかどうか、厚生大臣の御見解を承りたいと思います。
#4
○渡辺国務大臣 いろいろ御議論があろうかと存じますが、私も、大筋から見て仰せのとおりである、そう信じております。
#5
○戸沢委員 初めに、そういうメリット面を見まして、次に、だんだんと批判をしてまいりたいと思いますが、政府・自民党は、こういう国民皆保険を金科玉条としましてこの普及徹底に全力を挙げてきたわけでありますけれども、これが次第に経済、社会の変動によって、国民皆保険を実施した当時と事情が非常に変わってきたと私は思うのでございます。
 その事情の変更の主なものは、第一に人口の老齢化、第二には国民の所得水準、生活水準が非常に向上したこと、現在では国民の約八割が中産階級化しているというところまで向上してきたというようなこと、それから三番目には健康に対する価値観の変化、そういった問題があると思います。
 そういう事情の変化によって、医療に対する需要と供給との間に大きなギャップ、食い違いが出てきた、これが今日の日本の医療を混乱、混迷させている最大の原因であると思うのでございます。国民の医療に対する需要はきわめて膨張してまいりました。それに対して供給面はどうかといいますと、医療資源にしても限りがある、また医療財源にしましても、低速成長時代に入りまして、国の財政においても保険料の負担においても今後大きな伸びが期待できない、こういうところから医療の需要と供給との間に、質的にも量的にも大きなギャップが出てきた、これが諸般の問題の根源であると思うのでございます。保険の赤字問題しかり、救急医療の問題しかり、老人医療の問題しかり、すべてここに最大の原因があると思うのでございます。
 国民医療の理想というものは、いつでもどこでも、すべての国民が最高の医療を受けられるというところにあることは申すまでもないと思いますが、私は、現在の医療保険を中心にした医療の体制をもってしては、最高の医療はおろか、最低の医療すらも保障することが危なくなるのじゃないかということを恐れるわけでございます。今日の医療体制、保険体制をもってしては、日進月歩の医学、薬学の進歩に対応することができないことを私は恐れます。こういう膨大化した医療需要に対して、限られた医療資源、医療財源を最も効率的に使うためには、その医療に対する考え方の発想の転換ということが必要ではないかと私は考えるのでございます。その発想の転換について一、二申し上げてみたいと思うのでございます。
 第一は、健康教育並びに予防医療行政、そういったことについての問題でございます。
 所得保障につきまして、生活自立の原則といいますか、自分の生活は自分で守るという気持ち、これがなければ、所得保障とか福祉というものは正しく発展しないと思いますが、同じように医療につきましても、自分の健康は自分で守る、自分の健康について自分で責任を持つということが第一に必要なことであり、こういう教育、啓蒙をする必要があると思うのでございますが、この健康についての自己責任について厚生省はどう考えているか、また今後の医療というのは、治療から予防へ、さらに予防から健康増進へと進まなければならないと思うのでありますけれども、そういう予防医療行政といったものについて大臣はどう今後対処していかれるおつもりか、その点をお聞きしたいと思います。
#6
○渡辺国務大臣 所得が高くなって丈夫な子供ができたかというと、必ずしもそうでない面がたくさん実はございます。一つの例でございますが、ずっと長い間歯の日本一みたいな学校があって、それが最近になったところが、虫歯がたくさん続発している。私の近くにあるのですが、どういうわけだろうか、これは原因がよくわからない。わからないけれども、所得、生活程度がずっと高くなったことにあることは間違いない。
 そういうようなものは一つの例でございますが、やはり何らか経済が楽になって人間の体が逆に弱ったというようなところがある。そこにはどういう原因があるのか、あるいは偏食が原因なのか、いろいろな問題がございましょう。
 これは一つの例でございますが、やはり病気になる前に正しい健康管理の知識というものがなければいけないことでございまして、そういう意味から言って、こういうような時代にもう一遍原点に返って、そうして健康という問題については、当然、できるだけ自分の体は自分で守るということをもう一遍見直してみてはどうなんだという戸沢議員の御提唱は、まことにもっともなことだと私は存じます。したがいまして、来年度はひとつその予防医療、健康教育、こういうようなものを大きな目玉の一つとして取り上げていってみたいと私は思っております。具体的手法については、それぞれの専門家の意見を聞いて実効のあるものにしていきたい、かように考えております。
 大筋において、私は全く同じような考えを持っておるわけでございます。
#7
○戸沢委員 公衆衛生局長にお伺いいたしますけれども、病名の分類統計を見ますと、比較的管理しやすい、予防しやすい病気というものがかなりあるわけですね。感冒とか高血圧とか、そういう生活指導によって予防し得るというものがかなり、三割ぐらいは占めていると思います。そういう病気を十分管理することによって病気を少なくするということが非常に効果があると思うのでありますけれども、そういう病気の予防に関する行政を、どんなことを考えておられるか。ことしは脳卒中の半減運動というようなことも目玉として力を入れているようですが、そういうものにつきまして簡単に御説明をいただきたいと思います。
#8
○佐分利政府委員 ただいま先生御指摘のとおりでございまして、たとえば脳卒中も四十八年をピークといたしまして、死亡は毎年四、五千人減るような時代になってまいりました。また胃がんや子宮がんも予防対策を進めておりますので、ここ十年間に激しく減少してきているわけでございます。したがって、私どもは、従来からもかなり力を入れておりましたが、ただいま大臣から御答弁ございましたように、明年度からはさらに一層力を入れて予防対策を推進したいと考えている次第でございますが、その中心になりますのは、ただいま先生からも御指摘がございました、脳卒中の半減対策、さらに胃がんとか子宮がん、こういったものもやはり半減対策というようなものを展開してはどうかと考えております。
 また、基本になりますのは健康増進でございますので、関係国家機関、関係民間団体の協力を得まして、都道府県、市町村の力を合わせて大いに健康教育の徹底から予防対策の充実を図ってまいりたいと考えております。
#9
○戸沢委員 脳卒中の死亡者だけでも、五十年度には十七万四千人もございます。ずっと日本の死因の第一位を占めているわけでございますから、こういうものを減らすということだけでも、さらに日本人の平均寿命は延びるわけでありますし、また十分可能なことであると思いますので、ひとつ大蔵省も、こういう健康教育とか予防行政につきまして、長い目で見た経済効果ということも考えて、大いに御協力いただきたいと思います。
 かつて厚生省の先人が、結核撲滅に対してチャレンジしたあの勇気と情熱をもってすれば、私は、脳卒中半減運動なんということは、実現きわめて易々たる問題ではないかと思います。この問題につきましては、特に厚生省の技官諸君の奮起をお願いいたしまして、次の問題に入ります。
 次は、医療保険の統廃合の問題、老人保険の問題に触れてみたいと思いますが、医療保険の抜本改正ということが論ぜられる場合には、現在多岐に分かれております医療保険制度の統廃合ということが、必ず問題になるわけでありますけれども、この問題につきましては、各政党あるいは各団体からいろいろの意見が出されております。昭和四十四年に自民党が発表いたしました国民医療対策大綱の中では、国民保険、これは地域保険、それから勤労者保険、これは職域保険、それから老齢保険という三本立ての考え方が打ち出されておりますが、これは現状から見まして、おおむね妥当な考え方だとは思いますけれども、それぞれの沿革を持った医療保険制度を一挙に統廃合するということは、なかなかむずかしいかもしれませんけれども、少なくともそういう方向を立てて、何よりも老齢医療保険、老人医療保険の創設、これを早急に実現していただきたいと私は思うのでございます。現在のように、年とってからそれを国保に入れて、国保の被保険者の負担においてその医療を見るという考え方は、老人と若い人の負担の公平を欠くものでありますし、社会的公正にも反すると私は考えます。
 この老人医療の医療保険の創設ということがもしむずかしければ、私は、とりあえず現在の国保制度の枠を借りて、国保の中に老人保険特別会計というようなものを設けて、ここに国庫、地方費負担のほか、各種被用者保険からも繰り入れを、拠出を行いまして、これでもって運営をするということも考えられるのではないかと思います。現在、国保の給付費の中で老人医療に支出しているものが二五%もございます。これを一つの特別会計として運営をすれば、一般の給付費の方は楽になる、あるいはその補助を下げることも可能ではないかと思います。
 それから、老人医療につきまして特に大切なことは、治療だけでなくて老人の健康管理とか疾病の予防事業、訪問看護、リハビリテーション、そういった保健福祉サービス、これを行うことが絶対に必要であると思いますが、これも、そういう老齢保険あるいは特別会計の設定によってこれを促進することができるのではないかというふうに私は考えますが、この医療保険の整理統合の問題、それから老人医療制度について大臣の将来のお考えをひとつお伺いしたいと思います。
#10
○渡辺国務大臣 医療問題は、今国会でも非常に議論をされておるところでございまして、特にその抜本的な改革を図るべきだという点について、与野党を問わずいろいろな意見が出ておるわけであります。私は、まだこれという案を固めたわけではございませんけれども、老人医療を別会計にしてはということは、御承知のとおり、自民党でも数年前からそういう議論がございます。一遍にそこまでいけるのか、あるいは組合保険等において退職医療というものを暫定的にやった方がいいのか、いろいろ一長一短あろうかと思いますが、いまのところは、先生御指摘のとおり、政府が補助金を出すことによってそこで調整しているというようなことであります。
 しかしながら、老人の健康管理あるいは家庭訪問とかリハビリとかというものまでまとめて、老人についてだけは特別なサービス部門まで入れた一つの医療体系をこしらえるということもりっぱな御意見だと私は思います。これらにつきましては、われわれの方でも、保険医療の問題についてそれぞれの専門家会議を持っておりますので、そういう中で有力なる意見として当然取り上げられるでございましょうし、われわれとしても、積極的にそれは検討して結論を出すようにしてまいりたい、こう考えております。
#11
○戸沢委員 現在、老人医療あるいは保健福祉サービスについて、各市町村ではいろいろ工夫をし苦心をしております。市町村によっては健康診断、健康相談、そういった各種の事業を、独自に対策を立てて実行しているところもございます。こういう老人に関する保健事業について、市町村の実態に応じて、モデル的でもいいと思いますけれども、大いにこれを奨励する意味で、これに対して何らかの助成策を考えるべきではないかというふうに考えますが、たとえば国民健康保険の調整交付金の中でこういうものを考えていくというようなことができないものかどうか、これをひとつ大臣でも保険局長でも結構ですから、お願いしたいと思います。
#12
○渡辺国務大臣 それも一つの問題点で、モデル的にどこかやらしてみるのも――まあ各町村に勝手なことをやられてしまっても、金があるからといって非常に手厚くやるのは結構ですが、財政事情が違うからといって給付が余りアンバランスになっても困るわけでございますので、そういうことのないような歯どめをかけてやるならば、一つの考え方として私は前向きにこれは検討していきたい、こう思っております。
#13
○戸沢委員 次に、一部負担の問題に入りたいと思いますけれども、今度の改正案の一部負担というのは、従来の考え方の延長と申しますか、従来実施しております初診料とか入院料の一部について、その単価が十年間も据え置きされておるというところで、これを手直ししようということでございますけれども、私は、この医療の一部負担につきましては、もっと積極的といいますか、その性格、本質について考えてみるべきものではないかと思います。
 先ほど申し上げましたとおり、医療需要というものは非常に増大をしておるわけでございます。これに対応しての医療資源あるいは医療財源というものに限度があるということになりますれば、その限りのある医療資源、医療財源を最高度に効率的に使うにはどうしたらいいかということ、これを考えますれば、私は当然、国民が望んでおる長期の疾病とか重度の疾病とかそういうものに対して、保険は重点的にこれを実施して、そのかわりに軽費疾病等についてはある程度の自己負担、いわゆる足切り補償的なものを考えるということは当然である、それ以外に考え方はないのではないかと私は思います。
 国民皆保険の使命とその実績は、私は高く評価すべきであると思いますけれども、現在の保険制度のままでもって国民需要に応ずることができないということは、先ほど申し上げたとおりでございまして、これをどういうふうに脱保険を考えていくかということ、これを根本的に考え直す必要があると思います。
 この一部負担の問題を考える場合に一番大事なことは、私は、本人と家族の給付率に差があるという問題であると思います。昔のように家族は本人の五割とかあるいは七割とか、こういう考え方はもうすでに古いと申しますか、社会的公正という点から見ても私は適当でないと思います。本人と家族の給付率はこれを同一にすべきである、方向としては私は家族も十割給付にすべきであると思います。
 こういう根本のところを考えていけば、この軽費の診療等について一部負担をする、受益者負担という考え方は、私は十分に国民のコンセンサスが得られるのではないかと思います。国民の生活水準も非常に上がったことでありますし、無料の医療が最高の価値でもないと私は思います。従来のような、ただ一部負担は被保険者の負担になるからというような反論も根拠が乏しくなるのではないかと思います。
 そのほか、一部負担につきましては、入院料の食事代をどうするかとか、あるいは薬剤費をどうするかというような問題もございますけれども、この一部負担につきましては、従来の考え方の延長ということでなくて、これを本質的に考え直す必要があるのではないかと私は思います。
 そして一部負担額が多額のために負担できないという低所得者階層につきましては、その負担の軽減あるいは補助金、そういったことを考えればいいと思うのでございまして、大臣、この一部負担の考え方、それから今後、一部負担を考えるとすればどんなものが考えられるか、ひとつお聞かせを願いたいと思います。
#14
○渡辺国務大臣 私が就任以来ずっと言ってきておることと、いまの考え方はおおむね同じだと私は思っております。保険というのは何のためにあるのだという原点に一遍返ってみたらいいのじゃないか。まあ全部低負担で、ともかく家族も全部九割給付を受けて、付添看護料も差額ベッドも全部なくしてしまう、理想的には私は一番いいことだと思うのですけれども、現実の問題からすると、なかなかそう簡単なものではない。当然、財源の問題を抜きにしては給付の問題は考えられないわけでございますが、財源の問題ということになると、個人で各組合が持つか、つまり被保険者が持つか国が持つかということに限定をされる。したがって、そういうような持ち方の問題、それから医療の内容等についてむだがあるかないかということの検討も、これは国民医療費が八兆とか九兆とかと言われる時代になっては、やはりその金の使い方について当然厳正なメスが入れられるのはあたりまえだと私は思います。それもやらなければならない。まあ、しかしながら、やはり重病になったときに、好きで重病になる人はないのですから、このときには貧富の差に関係なく公平な治療が受けられるということが、保険にとって一番重要なことであって、私もいろいろな人に聞いてみますと、ちょっとした病気やちょっとしたけがぐらいは自分で出してもいいですよ、そのかわり自分が病気になったときには本当に手厚く見てもらいたいとか、家族が長い間病床に伏すようなときには、高額医療費一部公費負担とはいっても、長期にわたって持つということは、なかなか容易なことではない、ですから、そういうところはもう少し手厚くしてもらえませんかという声が、実際は表に出るよりも本音論としては非常に多い。この前の予算委員会で小林進さんからも同じような趣旨の質問がありましたし、その後何人かの人からも似たような質問がありました。私は、いままでにない勇気のある質問であるという答弁をしてきました、予算委員会で。
 これは本当に新しい考え方として、検討する場合にはやはり一番先に検討されるべきものであるということでございますが、これは基本に関する問題でもございますので、医療問題懇談会等においては一番重要な事項の一つとして検討をしなければならぬ、私はそういう方向がいいのではないかと思っております。思っておりますが、しかし、事専門的な問題ですから、素人の私が思っておるからそのとおりやれということではなくて、一般の専門家の忌憚のない御意見を拝聴して、しかも衆参両院与野党接近というような状態の中ですから、自民党だけで決めてごり押しするというわけにもなかなかいかない。したがって、こういうようなことについては、やはり共通の、国民の素朴な気持ちというものを国会の場で練り上げていくことがいいのじゃないか、私は、そういう方向しかないのじゃないだろうか、こう思っておるわけです。
 一部負担の内容等については、局長から必要があれば説明をさせますが、その考えの一つが、傷病手当を六カ月のものを今度は一年半に延ばして、そうして障害年金とつないでいくというようなことを、いま言ったようなことが頭の中にあるからそういうふうなことを、部分的であるが今回の改正案の中にも盛り込んだわけでございます。
#15
○戸沢委員 各方面の十分な御協議とコンセンサスを得て実施することが必要であると思いますけれども、この医療保険制度についてのいろいろな改正の考え方、データ、こういったものはもう厚生省の保険局の倉庫にいっぱいあるわけです。足切り補償の案を持ってこいと言えば、はい、げたばき補償の案を持ってこいと言えば、はい、とあるわけで、これはやはり大臣の選択と決断の問題であると思いますけれども、ひとつこの問題、ただ従来の考え方の延長ということではなくて、根本的に御検討をお願いしたいと思うわけでございます。
 それから次は、ボーナスの問題を含めまして保険の収入対策について触れてみたいと思います。
 実は、今度の改正案でもってボーナスについて新しく特別保険料を徴収するという案でございますけれども、これは私が四十七年に保険局長をやっておりましたときにも、このボーナスに対する保険料徴収を出したわけでありまして、これは衆議院は通過いたしましたが、参議院でもって廃案になりました。非常に残念に思っておりますけれども、そのときも議論があったわけでありますが、このボーナスに保険料をかけるという考え方は、いわゆる総報酬制の考え方に通ずるのではないかという意見が出されました。現在労災とか失業保険では、総報酬に対して保険料をかけるというやり方をしているわけでありますが、大臣は、この総報酬制についてどんなお考えをお持ちか、ちょっとお聞かせ願えればと思います。
#16
○渡辺国務大臣 これも保険制度の根幹に触れる問題でございますから、直ちに総報酬制賛成というわけにはまいりません。まいりませんが、御承知のとおり欧米諸国等においては、ボーナスという日本のように年間に三カ月だ七カ月だというような国はございません。したがって、事実上総報酬みたいになっておるわけであります。日本では非常に景気のいい会社と悪い会社、また同じ会社の中でも景気のいいときと悪いときとボーナスで調整しているというのが現実の姿でございます。したがって今回は、そういう根幹に触れる問題としてでなく、臨時応急の策として、前にもやったこともあることであるし、現在の体系だけならば、ボーナスがうんと多いところは保険料は少なくても済むという形になっておるものですから、ボーナスの二%徴収という特別保険料というものを考えたわけでございますが、総報酬の問題にするにしても当然上限は考えていかなければならない。現在の所得税というものは、かなり高度の超過累進課税をやっておるわけでございまして、それと同じように無制限の総報酬ということになってくると、これまた、いろいろ根幹の問題として議論百出するところであろうか、こう考えております。したがって、総報酬問題は慎重に取り扱わなければならないということで、これは皆さんの意見を聞いてからでないと何とも私は申し上げることはできません。
#17
○戸沢委員 社会保障制度審議会等におきましても、審議の経過において総報酬制ということについても検討に値する問題ではないかというような発言もあったように聞いておりますので、これは、いま大臣が言われましたとおり、青天井にするというわけにもまいりませんでしょうし、それから年金制度との関係等もございますから、いろいろ問題はあると思いますけれども、私は、負担の公平という意味から、いまの日本の賃金の実態から見て、この総報酬制をとるということも一つの考え方ではないかと思います。これをひとつ十分に御検討を願いたいと思います。
 それで、いま大臣の御答弁の中にもございましたけれども、日本の賃金の実態は、本給とボーナスとかいろいろな諸手当、こういったものとの関係が非常に複雑になっておりまして、いろいろなボーナスや諸手当でもって調整をしているというようなところも多いわけでございます。
 保険局長、このボーナスについて保険料を徴収するということは、いまの日本の賃金の実態の本俸とボーナスの関係がどうなっているか、そういったデータに基づいてこれが一つの合理性があるというところから提案をされたものだと思いますが、資料がございましたら、本俸とボーナスとの関係、そういったものについて簡単に御説明を願いたいと思います。
#18
○八木政府委員 今回ボーナスも御提案しているわけでございますけれども、当面の財政対策ということになりますと、確かに、先生から御指摘ございましたように、労働保険等におきましてはボーナス等も入っているわけでございますし、さらにボーナスの支給の実態というものを見ました場合に、いまの給与の実態等から見ますと、一般的に言えますことは、所得の低い者に比較しまして所得の高い者ほど支給率も高くなっている、したがって、所得の低いところはボーナスの支給額も非常に低い、所得の高いところは非常に高いということから申しますと、特別保険料というのは、所得の高いところに大きくかかっていくということが言えようかと思います。
 具体的な例で申し上げますと、所得階層別に申しますと、これは五十年の調査でございますが、民間給与の実態調査で申しますと、百万円以下のところの月収に対します賞与の割合が一・九九カ月ということで約二カ月でございます。それから逐次、所得が上になるに従いましてボーナスの支給率も、賞与の支給率も高くなってくるということで、二百万円から二百五十万円という層に参りますと三・三八カ月分、それから三百万円から四百万円という層に参りますと三・八四カ月分、それから四百万円から五百万円ということになりますと四カ月分に近い数字というようなことで、五十年の数字から見ました場合におきましても、所得の高いほどボーナスの支給率も高いということでございます。
 ちなみに、月収等の標準報酬月額から考えまして、年間ボーナス等を基礎にしまして今回御提案申し上げております特別保険料がどの程度になるかという数字を申し上げますと、月収五万円のところで大体千円程度ということでございます。それから月収二十万円程度のところで七千六百八十円、月収三十万円のところで一万一千七百円、五十万円になりますと二万円、さらに百五十万のところだと八万七千円ということで、特別保険料におきましては、低所得者に比べまして高額所得者につきましては今回特に青天井でございますので、高額所得者に対しましては非常に大きな負担がかかる、そういう意味から、当面の財政対策を考えました場合に、やはり高所得者を中心に考えるべきではないかということから、特別保険料というものを御提案しているというような次第でございます。
#19
○戸沢委員 今度のボーナスに対して特別保険料をかけるという制度は、臨時的、暫定的な財政措置だとして出されておりますけれども、何かこういかにも悪いことでもしているようにおずおずとしながらこれを主張しているような感じがするのですけれども、そういうようにその保険料負担という点から見てもこれは公平の原則に合うのだ、その方が高額所得者に対して強く、低額所得者について薄くなるのだというような実態を、もっとPR、説明をする必要があるのじゃないかと私は思います。
 それから、国庫負担のあり方についてちょっとお伺いしたいと思うのですけれども、現在、医療保険については、国保を初めとして莫大な国庫負担が支出されているわけでありますけれども、そのやり方はほぼ給付費に対して一律に何十%といったような形式的なやり方でやっているように見受けられますけれども、これは制度の改正とあわせて考え直す必要があるのじゃないかという気がするのでございます。医療保険に対する国庫負担というのは、単にその赤字補てんという意味ではないのであって、医療保険において最も効率的にその制度の趣旨に沿ってこれも生かすべく支出されているものだと思いますので、そういう形式的な国庫負担のあり方でなくて、もっと実態に即したより効率的なやり方があるのじゃないかということを考える必要があると思います。すなわち、保険料負担の難易あるいは低所得層の医療費負担に対して国庫補助を見てやるといったような考え方、こういった発想もあるのじゃないかと思います。たとえば、給付費に対して補助するのでなくて、中小企業の保険料負担に対して国庫補助をしてあげるという考え方、こういう考え方もあるのじゃないかと思います。これについては今後いろいろ制度の方の改正も考えられるでございましょう。
 それからもう一つ、政府管掌保険と組合管掌保険につきまして、従来は組合健保は金持ちで政管健保は貧乏だというような、これは実態でもあったでしょうけれども、最近はその点がかなり変わってきておる、経済の変動によって組合健保も相当に苦しくなっているところが多いというふうに聞いておりますが、この組合健保の財政の最近の実態について政府委員から簡単に御説明をいただきたいと思います。
#20
○八木政府委員 先生御指摘のように、従来は、健康保険組合は、体質等から見まして、政管に比べて財政状況は非常にいいというのが一般的な考え方であったわけでございます。しかし、最近におきます所得の上昇、それに対します医療費の伸び等を考えました場合に、健康保険組合におきましても財政状況は非常に悪化しているというのが実情でございます。
 最近におきます健保組合の平均保険料率を見ました場合に、千分の七十六・二ということで、これは五十二年度の見込みでございますけれども、五十一年の四月が七十四でございますから、二ほど上がっておるというようなことでございまして、財政状況が苦しいために保険料率を上げざるを得ないという傾向がこれでもあらわれておると思います。
 さらに、政府管掌健康保険は現在料率が千分の七十八でございますけれども、その千分の七十八を超しております組合数は、五十一年の四百二十一組合から七百四組合ということで、四割近いところがすでに千分の七十八を超しているというような状況でございます。
 さらに、政府管掌健康保険の七十八に対しまして、現在健保組合は上限は九十までということで抑えられているわけでございますけれども、すでに千分の九十という料率に達しております組合につきましても、年年の五十八組合から九十七組合ということで、かなり健康保険組合の財政状況も悪化しているということが言えようかと思います。
#21
○戸沢委員 組合健保も最高料率に達しているところが九十七組合もあるという状況でございますし、今後、この制度改正と絡みまして、国庫補助のあり方について大蔵省はどういうふうに考えておられるか。ひとつ、この制度の改正と並んで国庫負担のあり方についても再検討するお気持ちがないかどうか、これをちょっとお聞きしたいと思います。
#22
○窪田説明員 五十二年度予算での医療関係の予算は、総額で二兆五千八百億円という非常な巨額に上っております。社会保障全体の四五・四%、半分近いウエートになっております。こんなに多額な予算を使いながら御批判を受けることばかり非常に多いわけで、もちろんこの負担のあり方については何か考え直さなければいけないという感じをかねて持っていたところでございます。
 先ほど来先生から、たとえば老人保険の問題に関連して、非常に重い病気については手厚い負担をする、しかし、それ以外については負担を減らしてもいいのじゃないかという御示唆もございましたが、そういった本当に必要なところに重点的に振り向けていくというふうな効率化は、今後も図っていかなければならないと思っております。
 すでに社会保障の中で四五%というウエート、しかも、厚生省の予算では年金とか福祉とか、いろいろやらなければならない面が多いわけでございますが、今後これ以上医療費の予算のウエートを上げていくことは不可能であると思っております。また、適当でもないのではないかというふうな感じを持っております。いろいろやりますと、ともかく負担する方は負担を取られて、軽くする方はできないということが従来多かったわけでございますが、そういうふうなことではどうも困るわけでございまして、先生の御指摘のような面も十分考慮に入れまして、今後国庫負担のあり方というものをもう一遍考え直してみたい、こう思います。
#23
○戸沢委員 共産党の皆さんにも医療費の値上げについてはこれをプッシュしておられる、それからまた、保険料の値上げについては反対をされておる、どうしてくれるのだということになるわけでありますけれども、その保険を運営していくためには、保険料という形で見るか、税金という形で見るかしかないわけでありまして、これは、もっと効率的な運営ということが必要であると思いますので、ひとつ御検討を願いたいと思います。
 ちょっと申し上げました、中小企業の保険料につきまして国庫補助をするという考え方、これは給付費に対して国庫補助をしても、経済効率は結果的には同じかもしれませんが、中小企業対策として、私は、非常に効果があるのじゃないかというふうにも考えておりますので、ひとつこんな問題も御検討を願いたいと思います。
 それから次に、診療報酬と薬価基準、薬の問題についてちょっと触れてみたいと思います。
 医療費につきましては、これは何かみんな医者のポケットに入ってしまうというふうに考えられがちですけれども、そうではありませんで、いま日本には、看護婦とか放射線技師とかいろいろの医療従事者というものが約百万人ほどおります。これらの人々は、一般のサラリーマンと同じようにベースアップもしなければならぬ、ボーナスも出さなければならぬというわけでありまして、正当な診療報酬の改定、これはどうしても必要なわけでございます。ただ、正しい診療報酬のあり方というものにつきましては、医師の技術を正当に評価したものでなければならぬという要請と、同時に、患者に対するサービスが十分に行き届いたものでなければならぬという二つのことが要請されるわけでございます。そういう意味で、本当に医師の技術料を正当に評価するには、どこでもってどういうものについて見たらいいかということ、これは非常にむずかしい問題であると思いますけれども、十分に専門家の御意見を、衆知を集めましてこれを正しく評価をする必要があると思います。
 たとえば医師の技術というものが最初に発揮される機会というのは初診のときでございます。初診のときに的確に病気を判断し、診断をして、それに対する正しい治療方針を決めるというところに医師の技術差というものがあらわれるわけでありまして、私は、初診料といったようなものは、もっと大幅に引き上げを考えてもいいのじゃないかというふうにも考えます。
 それからまた、入院料等につきましても、看護、給食あるいは寝具、そういったものに対するサービスが十分に行き届かなければならないわけでありまして、適当な入院料の引き上げということも必要であろうと思います。いま問題になっておりますベッドの差額微収あるいは付添看護の問題、これらも、そういった入院料が適正に評価されておらない、保証されておらないというところから出た一つの問題でございまして、こういう入院料あるいは初診料その他の技術評価について、これを的確に改定する必要があると思います。
 現在、日本の診療報酬を審議している機関は、御承知のとおり中医協でありますが、これがなかなか運営がスムーズにいきませんで、国会運営よりもむずかしいような状況でございます。国会運営もなかなか難航しますけれども、しかし、国会には一つのルールがございます。議運なり理事会でもって決まればそのとおり動く。ところが、この中医協にはルールも何もないものですから、大体年間審議されているときよりも休んでおるときの方が多いというような状態でございます。現在、歯科診療の問題が問題になっておりますが、歯科診療のトラブルは、大分激減したようでありますけれども、しかし、まだ根本的に解決されてはおりません。
 そこで、今後のあるべき診療報酬はどういうものとお考えになるか、また、現在の中医協はそういった正しい診療報酬の決定に十分機能を果たしているかどうか、こういったものについて大臣の御所見を伺えれば幸いでございます。
#24
○八木政府委員 診療報酬のあり方につきましては、従来からも国民の経済力というものを勘案しながら、医学、医術の進歩に応じまして技術料を、先生御指摘のようにいかに評価すべきか、さらに賃金、物価等の変動に即応しまして診療報酬というものを適正に考えるべきではないかということから、従来からも診療報酬の問題につきまして中医協で御論議いただいているわけでございます。
 今後の問題といたしまして、人口構造の老齢化、疾病構造の変化等、社会経済情勢の変化というものもあるわけでございますから、それに対応していかなければならないわけでございますし、さらに、先ほど御指摘がございましたように、差額ベッドあるいは付添看護等の問題もあるわけでございまして、保険外負担の問題等を考えます場合、やはり診療報酬の面におきましても適切な措置ということが必要であろうというようなことが考えられるわけでございます。いずれにいたしましても、中医協におきましては、関係者それぞれの代表が出ているわけでございますので、ここの御意見というものを十分承りながら、この問題の解決を図っていかなければならないというふうに考えておる次第でございます。
 先ほど御指摘がございましたように、中医協につきまして、各側の御意見の対立等もございまして、従来混乱したというようなこともございますけれども、最近におきましては、十分審議を尽くせるならば中医協におきまして十分審議をしていこうというような御意見も、昨年の中医協の開催の際に出ているわけでございまして、私ども、中医協の運営がスムーズに行われ、適切な御意見をいただきまして、診療報酬の問題等について対処してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
#25
○戸沢委員 次に、薬の問題でございますが、これもいま薬づけ医療などと言われまして、非常に論議がされております。薬害の問題あるいは薬の過剰使用の問題、いろいろ問題があると思いますが、私は、そういう面の弊害はもちろんこれを改善していかなければなりませんけれども、そういう一面的なデメリットの面だけを見ることによって、正しい薬の使用あるいは新薬の開発、こういったものの意欲が阻害されるということを非常に心配いたすわけでございます。戦後、化学療法の非常な進歩が日本の医療水準の向上に大いに役立ったことは申すまでもございません。しかし、いまのように薬に対して、諸悪の根源は薬にあるかのごとく集中攻撃がされている、こういった結果、本当に価値のある薬の開発というものが阻害されるということになりましたならば、だんだんと無害無効な薬ばかりが横行して、本当に医療の進展に役立つような価値のある新薬の開発というようなことの意欲が阻害されるということを、私は非常に恐れるのでございます。
 それで私は、現在の薬価基準のあり方、薬価の扱い方、これが本当に価値のある新薬の開発を保護するのに阻害になっているということを考えるのでございます。現在の薬価の決め方は、新薬も、あるいは薬局の方にあるような基礎的な薬剤も、また、いわゆるぞろぞろ製品と言われるような競争品につきましても、みんな同じ原則で、いわばみそもくそも一緒にしたようなやり方でもって扱っておるというところに一つ問題があるのではないかと思います。
 私は、この薬価基準の扱い、薬価の決め方につきましては、局方品と新薬品と競争品、この三つのカテゴリーに分けまして、局方品のような基礎的なものにつきましては、原則として原価主義をとる、それから新薬品につきましては、二年ないし三年の期間を限りまして、国際価格とかあるいは開発経費等を勘案して、原則として申請薬価主義をとる、それからまた、いわゆる競争品につきましては、これは徹底した薬価調査をやりまして市場価格制をとる、また場合によってはバルクラインを引き下げるということも考えられるでありましょう。こういった局方品、新薬品、競争品、これを一緒に扱わないで、それぞれの実態に応じた扱いをして、本当に価値のある、効果のある新薬の開発を助長していくということが必要ではないかというふうに思うのでありますけれども、この薬価基準の扱いにつきまして、薬務局長、ひとつ御意見をお伺いしたいと思います。
#26
○上村政府委員 御案内のように、現在の薬価基準価格というのは、市場で売り買いされる価格を中心に決めておるわけでございます。自由競争なり市場のメカニズムというものを最も効果的に生かすには、基本的にはそれでやるのが一番いいのではないかというふうに思うわけでございますが、新しく開発された医薬品のようなものにつきましては、いま御指摘になりましたように、開発努力等も当然考えなければならない問題であろうというふうに思うわけでございます。それから古くからございます局方品のようなものにつきましても、それが採算割れのために供給ができなくなることのないように考えていかなければならないというふうに思うわけでございます。
 それから、御質問の中で、薬につきましてみそもくそもというふうにお話しになったわけでございますが、私ども承認しました薬というのは、すべてみそであって、くそはないというふうに考えておるわけでございます。
#27
○戸沢委員 WHOなどで世界のいわゆる新薬等を毎年発表しているような資料によりましても、日本では新薬もできてはおりますけれども、本当に世界の人類の医学に貢献するといったような誇り得る新薬というのは余りないですね。
 それからまた、いま日本の薬の安全性、効果について再評価している薬事審議会のきょうの新聞の記事によりましても、いわゆる一般に出ている薬につきましては、いかがわしいものが非常に多いといったようなことも出ております。私は、そういういわゆるぞろぞろ製品といったようなものにつきましては、厳重にこれを規制していく必要があると思いますけれども、本当に正しい、価値のある新薬の開発のためには、大いに厚生省もこれを正しく伸ばすという方向でもってひとつ行政指導をしていただきたいと思います。
 渡辺大臣は、経済にも非常に明るいお方でございますけれども、エネルギー資源に乏しい日本の産業としましては、ファインケミカルの部門、特にこの製薬企業というものは、有望な、期待できる、保護すべき産業であると思いますので、取り締まりの面と同時に、正しい企業の発展というものにつきましてひとつ御努力をお願いしたいと思うわけでございます。
 最後に、時間も余りありませんので各論に入る時間も余りなくなりましたが、一、二の問題につきましてお伺いをしたいと思います。
 いま、医療保険制度のあり方を検討するために、健保問題等懇談会が設置されておるようでありますが、この懇談会の審議経過、また今後の見通し、そういったものについて簡単にお聞かせ願いたいと思います。
#28
○八木政府委員 社会保険審議会におきまして、今回の健保法の改正案につきまして御審議いただいたわけでございますけれども、いずれにいたしましても、当面の急迫した状況というものを乗り切るためには、当面の対策というものが必要であるわけでございますけれども、やはり四十八年改正以降におきます社会経済情勢の大きな変動というものを考えました場合に、先ほど先生からお話しがございましたように、従来の高度経済成長のように所得は伸びていかない、一方、医療費というものは、医学、医術の進歩もございますし、さらに人口構成の老齢化あるいは疾病構造の変化もあるというようなことから医療費は伸びていくというようなことを考えました場合に、これからの新しい社会情勢、経済情勢におきます給付のあり方、あるいはこれに伴います負担のあり方というものを、どういうふうに受けとめていくかというような基本問題があるわけでございます。
 さらに、従来から言われておりますような各制度間におきます給付の面なり、あるいは財政力の面なり、負担の面なり、いろいろな格差があるというようなことから、基本問題を取り込むべきではないかというようなことで、先般、社会保険審議会の健保問題等懇談会におきまして、これからの基本問題を取り込んでいくということで、これからの検討項目としてどういうものを取り込むかというようなことから、二十二項目ぐらいにわたると思いますけれども、項目を設定いたしまして、月二回のペースで、ことしの秋を目途に精力的にこの問題の審議を始めようということで、すでに前回項目を設定いたしまして、今後の運営方針も決めるということで、あすからまた本格的なこの問題の審議に入るというような段取りで現在進めておる次第でございます。
#29
○戸沢委員 政府も五十三年度にはその抜本的な考え方を出したいというふうに言っておられますので、ぜひこれも促進していただきたいと思います。今度の改正は本当の応急措置であって、これが通らなければ健保の運営がむずかしくなるというふうに私ども伺っておりますので、一生懸命がんばっているつもりですが、何か新聞なんかには、この国会での健保の成立はむずかしいのではないかというようなことが出ておりますけれども、本当にこの改正案が、応急措置が通らなかったならば年度末には医療費の支払いはどうなるのか、そういったことを少し具体的に数字的なものでもって御説明を願いたいと思います。
#30
○八木政府委員 私ども、政府管掌健康保険の財政状況から見ました場合に、五十一年度末におきまして千三百七十億、五十二年度末におきましては千六百億を超える赤字というものが見込まれるわけでございます。
    〔住委員長代理退席、委員長着席〕
医療保険は本来短期保険であるわけでございまして、この赤字問題に何とか対処していかないと、制度運営の面におきましても大きな問題が出てくるわけでございます。現在五十一年度の年度末は何とか資金運用部からの資金の借り入れということで乗り切ったわけでございますけれども、五十二年度末ということになりますと千六百億を超える赤字ということが考えられるわけでございまして、これは返さなければならない借金であるわけでございます。したがいまして、年度後半等になってまいりますと、資金繰り等の問題から見ましても、非常に大きな問題が出てくるということが考えられるわけでございます。
 一方、政府管掌健康保険だけではございませんで、先ほど御答弁申し上げましたように、健康保険組合につきましてもかなり財政状況が窮迫してきている、しかも、先ほど数字で申し上げましたように、すでに保険料率千分の九十以上を超えているという組合が九十七であるわけでございまして、こういうような組合におきましては、現実に支払い基金に対する支払いという問題もむずかしくなってくるということになってまいりますと、医療機関に対します支払い問題というふうな面からも非常に大きな問題が考えられる。さらに今後、基本的な問題の見直しということで、社会保険審議会の健保問題等懇談会でもいろいろ御検討いただいておるわけでございますけれども、これは、あくまでも今後の基本的な問題ということでございます。ただ、基本的な問題をやるにいたしましても、その前に当面の借金なり赤字というものを解決しておかなければならないわけでございますし、さらに、この問題の解決がおくれればおくれるほど将来に対します負担というものが大きくなってくるわけでございます。
 そういうような意味から申し上げましても、いま御提案申し上げております健康保険法の改正案につきましては、当面の急場をしのぐ緊急避難的な意味としましてもぜひとも必要であるということから、御理解、御協力を賜りたいということでございます。
#31
○戸沢委員 お話しのとおりだと思うのでありますけれども、いろいろ医療保険についての批判とか問題はあるにしても、これは休むわけにはいかないわけでありますから、何としてもこれは健保を運営していく上に必要な最小限の応急措置はやらなければならないと思います。
 もう一つ、特別保険料の徴収につきまして、審議会の意見なんかでも、これを保険料率の引き上げでもって対処できないのか、すべきじゃないかというような意見もあったようでありますが、これを料率の修正ということでなくて特別保険料でもって徴収ということにした理由をちょっと御説明願いたいと思います。
#32
○八木政府委員 医療保険でございますから、本来は保険料でこの問題を解決するというのが筋でございます。そういうような意味から、保険料を基礎に考えるべきではないかという御意見もあったわけでございますけれども、何といたしましても、当面の窮迫した財政状況を乗り切っていくためには、何らかの形で御負担いただかなければならない。しかし、千六百億を超えます赤字を解決するという際に、保険料でこの問題に対処するということになりますと、現在上限は千分の八十でございまして、残りの保険料は二しかないわけでございますので、とうていこの残りの千分の二の範囲内ではこの問題は解決できないわけでございます。しかも、満年度からこの問題が実施できるということではございませんので、ボーナス保険料に見合う分だけを一般の保険料で解決するということになりますと、千分の四から五ぐらい保険料の引き上げを行わなければならない。しかも一方では、先ほど申し上げましたように、ボーナスの支給実態から見ました場合に、低所得者ほどボーナスの支給率が低い。さらに先ほど大臣からもお話ございましたように、業種によりまして非常に景気のいいところはボーナスの支給率も高いというようなことから申しまして、当面の逼迫しました事態を何とか乗り切るためには、ある程度余裕のある層に御負担いただくというようなことから、本来の保険料ということではなしに、この際の問題としましては、ボーナスにお願いするということにしたわけでございます。
 保険料の問題になりますと、現在の千分の八十をどうするかというような基本的な問題にかかわるわけでございますので、私ども御提案申し上げておりますのは、当面の財政対策であるというようなことから、基本的な保険料率の今後のあり方という問題等につきましては、健等懇等でも御審議賜っているということでございますので、これからの基本的な問題にするということで、当面の緊急措置ということから、余裕のある層に何とか御負担をお願いするということでボーナス保険料というものを、暫定措置としてお願いしておるような次第でございます。
#33
○戸沢委員 特別保険料の問題につきましては、先ほど申し上げましたとおり、私が四十七年、保険局長のときに提案をいたしまして、残念ながら参議院でもって廃案になりました。あのとき通っておれば、今日のこの問題も少しは軽減されたと思うのでありますけれども、敗軍の将兵を語らずということで、特別保険料問題、ボーナス問題につきましては、また他日同僚委員から御質問をさせていただくことにいたします。
 それから、最後の質問として、今度の改正によって被保険者の負担増が非常に大幅なものになるというようなことが世に言われ、心配されておるのですが、これについての数字的な説明を簡単にお願いしたいと思います。
#34
○八木政府委員 今回の改定に伴います保険料そのほか一部負担等を含めましての被保険者一人当たりの額でございますけれども、一部負担金につきましては百二十四円、それから、これは直接法律改正はございませんが、高額療養費の自己負担限度額につきましては二十四円、それから特別保険料につきましては一カ月当たり四百九十二円、標準報酬改定につきましては五十九円ということでございます。
#35
○戸沢委員 健保が非常に危機に瀕しているという事情にもかかわらず、今度の改正案につきましては、どうしてもこれを通さなければもう動きがつかないのだという緊迫性が少し欠けているように思われます。政府は、ボーナスの問題にしても一部負担の問題にしても、何か遠慮がちに弁解しながらお願いしているような感じがするのでありますが、先ほど申し上げましたとおり、十分な論拠があるわけですから、大いにがんばっていただきたいと思います。
 きょうは時間の関係上触れることはできませんでしたが、そのほか医療問題には医学教育の問題あるいは供給体制の問題あるいは税制の問題、いろいろあるわけでございまして、医療の改革というのは、私は、こういういろいろな問題を総合したいわば総合医政というような見地から考えなければならない非常にむずかしい、また、大事な問題であると思います。また医療の問題は、そのほかにその国民の医療に対する物の考え方、生活慣習あるいはさらに精神的風土といったようなものもかかわってくるわけでありまして、いわば医療文化の問題でもあると思います。
 どうかひとつ、医療の改革を、こういう総合医政という見地からバランスのとれた、整合性のある、また、気宇壮大な抜本対策案を打ち出されんことをお願いいたしまして、私の質問を終わります。
#36
○橋本委員長 次に、川本敏美君。
#37
○川本委員 いよいよ国民の関心の的であります健康保険法等改正案の審議が始まりました。
 私は、この間社会党を代表して本会議でこの問題について質問をさせていただいた次第でありますが、そのときにも私は申し上げたわけですけれども、先ほど来の質疑応答の中でもございましたように、今般提案されている健康保険法等の一部改正案は、主としていわゆる千六百億を超えるといわれる政管健保の赤字対策として考えられたものである、傷病手当金の約百億円の期間延長を除くボーナス保険料といわれる特別保険料あるいは入院時、初診時一部負担等、すべて被保険者の負担によってこの政管健保の赤字を一挙に解消するという全く悪らつなものであるということで、私は、この改正案には絶対反対であるということを申し上げるとともに、その撤回を要求したわけです。
 さらに、現在の医療保険制度の中でいろいろ問題点はたくさんあろうと思うわけですが、先ほど来論議の対象になりました医療保険制度全般の財政問題等も含め、給付の内容も含めていろいろ問題があります。さらに救急医療とか、あるいは老人医療費とか、あるいは差額ベッドとか付添料等の保険外負担の問題等、問題は山積をいたしておるわけです。私は、それらの問題についても、四月十四日の本会議で若干触れましたので、もう重ねて申し上げることは省略をいたしたいと思うのです。
 そこでまず冒頭に、この間、十四日の本会議で大臣から答弁のありました問題の中で、私がどうしても納得できない部分があるので、その部分についてお聞きをいたしたいと思うのです。
 先日の本会議の質問に対する大臣の答弁の中で、大臣は、西ドイツ、フランス、スウェーデンの医療保険の中でのいわゆる負担の問題について若干触れられました。そこで、これは保険局長にお聞きしたいのですが、西ドイツ等では保険料率はどうなっておりますか。さらに、その使用者と被用者の負担区分はどうなのか、国庫負担があるのかないのか、また、医療給付の内容について、詳しくは結構ですけれども、御説明をいただきたい。あるいは被扶養者に対する給付についてもどうなっておるのか。西ドイツとフランスとスウェーデン、この三カ国について大臣は触れておられるわけですから、その三カ国の問題について、まずお答えをいただきたい。
#38
○八木政府委員 お答え申し上げます。
 まず、財源の保険料からお話がございましたが、西ドイツでございますけれども、保険料につきましては、平均して一一・二%ということで、これは労使折半が原則でございますので五・六%、五・六%という負担でございます。国庫補助につきましては、原則としてございません。医療給付の内容でございますけれども、これは日本と同じように現物給付でございます。それから、保険しておる内容につきましては、家族を含めまして費用の全額ということになっております。ただし、日本と異なりまして、薬剤についてと処方、治療について一部の負担がございます。
 それから、フランスでございますけれども、日本と同様に西ドイツ、フランスは社会保険方式をとっておるわけでございまして、フランスの場合は、保険料につきましては一七・九五%ということでございます。労使の負担区分でございますが、被保険者が四・五%、事業主が一三・四五%という負担でございます。国庫補助は原則としてございません。それから、保険給付でございますけれども、これは日本、西ドイツの現物給付と異なりまして償還制でございます。それから、保障しておる給付の内容は償還制でございまして、さらに七五%ということで全額ではございません。なお、入院につきましては、八〇%という給付内容になっております。
 それから、スウェーデンの場合は、社会保険方式と保険サービス方式と両方の組み合わせでございます。したがいまして、日本あるいは西ドイツのような社会保険方式とはやや異なります。保険料という形は一般の被用者については原則としてございませんで、事業主が支払い報酬の八%を支払っているという形でございます。ほとんどがそういうことで、入院外の分につきましては社会保険方式、入院部門につきましては保険サービスということでございますから、国が負担しているということでございます。それから、給付の内容でございますけれども、現物給付と償還制の組み合わせということでございまして、入院の場合には費用の全額を持つ、外来の場合には、公的医療機関の場合は十五クローネ、約千円の負担、私的医療機関の場合は、いずれも受診の都度でございますけれども二十クローネ、約千三百円の自己負担があるという状況でございます。被扶養者についても同様でございます。
#39
○川本委員 ただいま局長からお答えをいただいたところでありますけれども、ただいま答弁の中にありましたが、わが国においては、政管健保の場合、本人は一〇〇%だけれども、被扶養者に対しては七〇%、ところが、西ドイツとかフランスとかスウェーデン、これらの国においては、被扶養者は一〇〇%、被保険者と全く同じ扱いになっている。また、出産手当金等の制度を見ましても、西ドイツでは収入の一〇〇%で、それも産前六週間、産後八週間、フランスにおいても収入の九〇%で、産前六週間、産後八週間、わが国においては収入の六〇%で、産前産後六週間ずつ、こういうように、一つの例をとってみましても、給付の内容については大きな違いがあると思うのです。
 さらに、フランスは百七十九・五と大臣は言われました。ところが、その中身は、ただいまお話があったように、いわゆる被用者と言われます労働者の負担は四十五で、労働者を使用する雇用者、使用者の負担が百三十四・五になるわけです。わが国においては、保険の負担区分について、労使の負担区分を、現在五対五になっておるのを三対七にせよというような要求も根強いものがある。また、ところによってはすでに四対六の労使の負担区分でやっておる組合健保もあると思うのです。そういう中でスウェーデンは、制度の違いはありますけれども、被用者の負担というものがないわけです。これは税制との関係がある。もちろん、ソビエトとかイギリスとかいうところでも負担の内容は全然違うと思うのです。世界の国々の中で西ドイツ、フランス、スウェーデンを例にとられても、フランスは百七十九・五という負担をしておると大臣は言われましたけれども、その中身は、使用者負担が百三十四・五になっている。この百三十四・五という割合、これは四分の一対四分の三だと思うのです。労働者の負担が四分の一であって、使用者の負担が四分の三なのです。日本においての現在五対五のを、四分の一対四分の三というように果たしてできるのかどうか、そういう負担の制度が考えられるのかどうか。こういう想定もできないような諸外国の制度を引用して、いかにもわが国の保険負担が軽い、給付の内容も悪いことを言わずに、世界水準以上になっておるかのごとき印象を与えるような答弁をされたということについては、私は全く心外だと思っておるのです。
 そこで、大臣にもう一度御答弁をいただきたいと思うのですが、給付の内容も世界でばらばらである、労使の負担区分もばらばらである、そういう中において政府にとって都合のいい部分だけを抜き出して答弁されたということは言葉足らずだと私は思うわけです。だから、その点についてどう考えておられるのか、ひとつお答え願いたい。
#40
○渡辺国務大臣 ともかく限りある時間の中で、なるべく答弁は短くやってくれという御注文もございましてね、それはもちろん、言い尽くしておると私は思っておりません。思っておりませんが、日本の医療水準は世界一であるというようなことは私は言っておりません。大体世界の水準であるということを申し上げておる。その負担の割合は、確かに、私が前に言ったとおり、ここに羅列してあるものを申し上げた、これも事実でございます。負担と申しましても、それは被保険者だけでなくて、事業主の負担も負担の中に入るわけですから、事業主の負担としてはこうでございますよということを申し上げた。それから被保険者にしても、フランスよりは日本の方が安いんですよ。フランスは四・五でも日本の方は三・九ですから。医療給付を見ましても、フランスの方は七五%、本人の場合も七五%しか金を返してくれないわけですから、日本の場合はまるまるですから、総合的に見ても、そんなに落ちておるとは私は思わない、そういうふうな全体的な感じで申し上げたわけでございます。
 スウェーデンのように税金が非常に重い、十五万ぐらいの月給をとっている方でも、税金が三分の一近くかかるというような国でありますが、日本の場合は二百万円以下は標準家族ならかからないというようなことで、いろいろな点を総合的に考えて――給付内容の充実は実際もっと必要だと私は思っておるんですよ。しかし、そういうような負担の問題等においても日本は少ないし、それから各国を見ても国庫補助を出しているという国はないのです。そういう点から考えても、日本の医療の問題は整合性がなかったり、あるいはでこぼこがあったり、むだがあったりする点は、各論に入ればいろいろ改善すべき点はたくさんあると私は認めているのです。認めているが、全体からすれば、国民の税金負担、保険料負担、それから給付というものを考えて、そんなに落ちておるとは思っておりません。
 今回は、特に特別保険料の問題が云々されておるわけでございますが、これは、いままで国会でいろいろな案を出しましても、いつか戸井田さんがテレビで言っておりましたが、入る方はカットになってしまって、支出の方はプラスになってしまって、それでいきますから政府の計画に違いが出てくるということもあり得ると私は思うのです。特に思ったよりも経済が停滞をしていたという点から、月給も思ったほど上がらなかったというギャップが出たわけですが、その中でも景気のいい企業は景気がよかったのだし、ボーナスもたくさんもらっているところもあるので、臨時の措置だから、とにかくボーナスでいままで五カ月分も七カ月分ももらっているような人は、まるまる保険料の対象になっていないのだから、この際は一%、事業主一%で両方で見てもらえぬですかという話をしたわけなんです。
 ですから、ただ負担の率だけを取り上げて、いかにも日本は一番安いのだということを強調したようにとられたとすれば、それは時間が足りなかったということだと私は思うのです。そういうように御了解いただきたいと存じます。
#41
○川本委員 この間も私は本会議で申し上げたのですけれども、先ほど来戸沢さんの質疑を聞いておりまして、その中で財政対策の問題が非常に強調されておりました。四十八年の健保法等の改正のときに、それまでの累積赤字をたな上げして、そして弾力条項をつくったわけです。厚生保険特別会計の借入限度枠の問題について先ほど触れられましたが、あの審議の過程で政府側の答弁を見てみますと、たな上げをしてもらって弾力条項さえつくってもらえば、未来永劫赤字になることはないような言い方で、二年間という厚生保険特別会計の借入限度枠を決めておいても、将来にわたって心配がないがごとき説明を政府はしておると私は思うのです。
 その点において、それからわずか半年もたたない先にオイルショックが起こったのですから、今日まで政府としても全然そういうオイルショック等を予想していなかったという点においては、私は、あの当時の国会審議の中での議事録等から見ますと、やはり経済見通しが甘かったのではないかというふうに一つは思われるわけですけれども、あえて私は、今日そういう問題についてここで触れようという意図はないわけです。
 そこでこの間、五月一日に厚生省は五十年度の国民医療費について発表いたしておりますね。それは五十年の国民医療費の総額が六兆四千七百七十九億円である。国民一人当たりにしますと、これは五万七千八百七十一円という莫大な金額になるわけです。国民所得に占める割合も五・〇六%ということで、これは、もう西欧並みに近づいてきておるわけです。もちろん、この国民医療費の中には、先ほど来問題になっております差額ベッドとか付添料とかあるいは正常分娩の分娩費とか健康診断、予防接種あるいは売薬の買い薬、買い薬だけでも年間四千億円ぐらいに達するであろうと言われておるわけです。このような保険外負担というものが入っていないわけですから、こういうものも計算に入れるということになりますと、もう七兆円を超えるということは論を待たないわけです。厚生省は早くから厚生白書等の中でも触れられておるわけですが、五十一年の国民医療費は七兆七千三百億円前後だ、あるいは五十二年度は、現在の診療報酬を改定しないでそのままでいくとしても八兆五千億程度になる、こういうことがいままで言われておるわけです。
 こういう状態の中で、国民医療費というものは年々二〇%、一九%というような伸びが予想されており、この問題を、今後の医療保険制度との関係の中でどのように解決していくのか。先ほど来のお話の中にもありましたように、非常に重大な問題であり、これほど困難な問題はないと思います。しかし、これを政府も国会も、あるいは中医協や制度審議会、保険審議会等、関係の専門家も含めて衆知を集めて解決をしていかなければいかぬ時期が来ておるわけです。
 そこで、先般厚生大臣は、抜本改正の問題にも触れられて、五十三年度には抜本改正をやるから、それまでの間の当分の処置としていまの改正案を認めていただきたいということですけれども、私はこの間も、それはまず抜本改正の方が先ではないかということを申し上げておるわけです。抜本改正について、先ほど来いろいろ懇談会で論議がされ、問題点を二十一項目引っ張り出してこれから審議を始められるということなんですけれども、厚生大臣、ちょっと念のためにお聞きしたいのですが、五十三年には抜本改正をやれますか、もう一度念を押しておきたい。
#42
○渡辺国務大臣 ことしいっぱいぐらいのうちに抜本改正の案をつくりたい、こう思っておるわけです。何回に分けるか、一遍に出すか、いろいろ現実的な問題もありますから、どういうふうなスケジュールで、どれとどれを何年からやるというところまではまだ詰まっておりません。
#43
○川本委員 そこで、この間新聞を読んでおりますと、厚生大臣がどこかの場所で診療報酬の改定の問題について触れられて、中医協との関連もあるけれども、ことしの秋には診療報酬を改定したい、こういうようなことを言われたということが報道されておるわけです。診療報酬の改定について厚生省としては何月をめどに改定をしたいと考えておるのか。改定の主たる方針はどういうところに置かれており、上げ幅は大体どれくらいになるのか、こういうことについてお答えいただきたい。
#44
○渡辺国務大臣 具体的なことは一切考えておりません。ただ、例年の状態も見まして、診療報酬というのも物価や医療従事者の賃金が上がれば据え置きのままというわけにはなかなか現実の問題としていかないわけですが、だからといって、いまのところすぐやるということは考えておらない。おらないが、まあ涼しいころになれば、ともかく全然いまのままで据え置きっぱなしというわけにもいくまいという程度の話を申し上げたわけでございます。これは中医協との関係もございますので、そういう方々の御意見を踏まえて今後検討されるべき問題だ、したがって、上げ幅の問題とかなんとかは全然まだ考えておらないということであります。
#45
○川本委員 先ほど来の質疑の中でもございましたように、いわゆることしの春闘でも賃金は上がっておる。この診療報酬は単に医師に対する報酬だけではなしに、いわゆるパラメディカル・スタッフ、パラデンタル・スタッフ等の人件費も全部含まれているものですから、そういう人件費の値上がりあるいは物価の値上がり、こういうものに対応する部分については、やはり改定という形で見ていかなければいけないというのは私は当然だろうと思うわけです。そういう点について十分検討をしていかねばならぬ。
    〔委員長退席、中山(正)委員長代理着席〕
そういう意味において、やはり診療報酬の改定は、薬価基準の改定と切り離して考えることはできないと私は思うのです。
 そこで一九六七年、大分古い資料になりますけれども、いろいろなデータから推計して計算した国民医療費の中に占める薬剤費の割合について調べてみますと、一九六七年のデータでは、日本は大体四二・二%という数字が出ておる。スウェーデンは一五%、イタリアは二九・四%、フランスは一九・六%、西ドイツは一三・五%で、イギリスは一二・五%しか薬剤費率は占めていないというふうに出ておるわけです。最近、昭和五十年度、五十一年度のわが国における医療費の中に占める薬剤費率の割合は、もう少し下がっておるのじゃないかと思いますけれども、わかっておればお答えいただきたいと思います。
#46
○八木政府委員 薬剤費の割合でございますけれども、基本的に、先生御指摘ございましたように、各国の比率の数字がございますけれども、これは比率の取り方が日本と異なるわけでございます。その点は御了解いただきたいと思います。諸外国の場合には、総医療費の範囲という分母の方が、病院建設費でございますとか保険費用とかいろいろな非常に広いものまで含んでいるのが総医療費の範囲である、一方、薬剤費の額というのは、病院の院内で行われました調剤というものは入っておらない、したがって、非常に分子の方が小さい、分母が大きくて分子が小さいということから、日本と比べますと、諸外国の場合はどうしても低く出るという点はひとつ御了解いただきたいと思います。
 それから確かに、先ほど先生からもお話がございました一九六七年の資料でまいりますと、日本の場合には四二・二%でございますけれども、最近では三七、八%というところでございます。
#47
○川本委員 その計算の仕方については、あくまでもそういう形でデータから試算した計算ですから、若干違いはあるということは私も認めますけれども、しかしわが国において、いまの御説明によると三七、八%だという数字と、イギリスや西ドイツ等が一二、三%、一五%以下であるということとは、大きな開きが現実にはあると思うのです。また薬の生産量そのものを見ても、これは、やはり人口比率と勘案してみても大きな違いがやはりある。こういうことから、現在やかましく言われておる、いわゆる薬づけという問題が当然考えられなければいかぬ。日本のいまのいわゆる診療報酬の立て方というものは、売薬医療という言葉に象徴されるように、お医者さんが薬を売るというかっこうになっておって、たくさん薬を出せば出すほどお医者さんももうかるし、薬会社ももうかる、こういうシステムになっておる、このことが一つの今日の保険財政の赤字を生み出す根幹になっておるのではないか。この問題についてメスを入れない限り、保険財政を立て直すことはできない。三七、八%ということですけれども、大まかに丸めて仮に国民医療費の四〇%が薬代である、こう仮定しましたならば、六兆四千億、それの四〇%というものは二兆五千億を超えるわけですね。ですから、この一割を節約することができても二千五百億、二割節約できたらそれだけで五千億というものが保険財政の中で助かってくるわけです。
 だから、いわゆる薬価というものをどのように決めていくかということによって、売薬医療をなくし、薬づけをなくし、そして保険財政を立て直すことができる。一石二鳥という言葉があるけれども、これは一石三鳥にも一石四鳥にもなることですから、やはり私は、抜本改正の中ではもちろんですけれども、その前提として、ことしの秋ごろに行われようとする診療報酬の改定の中では、この問題は、まず当然考えられなければいけない問題ではなかろうかと思うわけですが、これについて政府はどのように考えておられますか。
#48
○渡辺国務大臣 御指摘のように、五十年度で七兆、五十一年度で八兆、五十二年度は九兆円にもなるかと、大まかな話ですけれども、そういうふうに国民医療費というものは大変な額です。それは日本じゅうの何百万農家がともかく一緒になって米の生産に従事をしても三兆円くらいでありますから、国民総生産の五%程度の医療費ということは、農業の総生産高と同じぐらいというようなことで、これが安易に取り扱われるということは、これからはあり得ない。まして国の財政も逼迫をしておるし、国民負担もこれ以上できないというような問題になってまいりますと、いろいろこの医療の中でむだがないかということは、一番先にこれは取り上げなければならない問題だと私は思います。当然のことだと思います。
 しかし、薬剤費で節約できたから、それがすぐに保険財政で役立つということにはどうもなってないらしいですね。中医協は支払い側と診療側とそれから公益委員と、三者集まって形成していますが、そこではかねてから、薬剤費の引き下げ部分は技術料にそっくり回せ、こういうようなことになって、既得権だからよこせ、どうもそうなっているらしい。ということになれば、仮にがばっと引き下げてみても、それは保険財政上何ら変わらない。そのとおりやるとすれば、名目が変わったというだけの話で、支払いにおいては何ら一つも変わらないということになる。それがいいかどうか、しかしそうなっているようです。
 いろいろむずかしい問題を含んでおるわけであって、この問題は同じような話が競馬でもありまして、競馬の益金の六%を馬主によこせという協定があって、文書が交換されておるのだが、競馬一兆円時代になると、六%も回した日には大変なことだということで、おととしから去年にかけて一騒ぎありました。それで実際は四・幾つか、そういうお約束を守ってなかったようです。三千億円ぐらいの時代のときに取り決めた問題、まあ、いろいろなそういう問題もありますが、しかし片方では、そういう取り決めもあるので、国全体の問題としていかにあるべきかということは、これは大所高所から考えていかなければならない問題であろうと、かように思っております。
#49
○川本委員 ことしの三月二十日に国民春闘共闘委員会、総評を初めとする労働組合が発表しておるのですけれども、五十一年の二月から十月までの間に北海道あるいは新潟、大阪、島根、福岡、長崎の六道府県で、在宅身体障害者二百二十四名、施設入所者三百三十四名、老人ホーム入所者百四十名、それから一般市民六千六百四十九名、その他医師会とか消防署、消防本部など八十一カ所を対象に面接して、現在の医療の問題についてアンケートをやっておるわけであります。その中で、家族を含めて、全体の方の中の六四・二%の人がその期間中にお医者さんにかかっておるということ、もちろん、先ほど言ったように、身体障害者とか施設入所者、老人ホームとか、そういう方が多いわけですから、六四・二%がその期間中にお医者さんにかかっておる。そして保険以外に月平均一人当たり大体二千円の医療費負担をしておるというのが全体の五九%を占めておる。ひどいところでは、先ほどの保険外負担との関係がありますけれども、北海道のケースでは、一カ月十二万四百八十円という保険外負担をしておるということが公表されておるわけです。
 そのアンケートの中で、もう少し具体的に言いますと、医療について不安を持っておるという内容について、どういうところに医療に対して不安を持っておるのかという質問に対して、お医者さんのくれる薬が多過ぎるということを答弁しておるのが二九・八%です。また、これで正しい治療方法なのかどうかという疑問を持っておる人が二五・九%、余りにも診察や治療の時間が短いというのが二三・二%。こんなにたくさんの人が現在の医療制度の問題について疑問を持っておるわけです。
 ちょっと古くなりますけれども、一九七一年の八月にNHKが社会工学研究所と共同で藤沢市で、やはり医療問題についてアンケートをして、面接をして調査した数字があるわけです。それによりますと、市民の中の四〇%、お医者さんの中で六〇%の人が、薬の乱用の責任は現在の医療制度にあるのだということを答えておるわけです。お医者さんの六〇%もそう思っておるわけです。さらに、薬の副作用が問題になっているが、これを改めるにはどうすればよいと思うかという問いに対しては、五五%の市民が薬の認可基準を厳しくすべきだ、こういう答えをしておるわけです。お医者さんでは三四%の人が、薬の利益に依存しなくても済むように制度を改正してもらいたいと答えておるわけです。これはNHKの七一年八月の藤沢市の調査ですが、お医者さんの中の三四%の方が、薬の利益に依存しなくても済むような制度に改正してもらいたい、こういう答弁をしておる。
 このことを見ても、現在の診療報酬制度のあり方あるいは薬価基準のあり方というものに、売薬医療を生み出し、薬づけ医療を生み出し、そして保険財政を赤字に陥れる、中には水増し請求まで出るというような状態になってきておる原因がある。このことを私たちは、やはり政府も議会も国民も、お互いにそれはもう同感だというコンセンサスを持たなければいかぬと思うのです。その点について大臣、同感だと思われますか、どうですか。
#50
○渡辺国務大臣 実感といたしますと、やはり素朴な国民の気持ちというものは、いまあなたが代表しておっしゃったことだと、私も国民の一人として、漠然とそういうふうな気持ちも持っておるのです。しかし、これは立証するとなると、なかなかむずかしい問題がございます。確かに、薬でもうけてということは私は適当ではない、こう思っております。しかし、全部のお医者さんが薬でもうけているかというと、そういうことはないんですよ。それは薬価基準と実勢価格と同じような薬を使ったら、医者は損する。なぜ損するか。しかられては困りますが、極端な例をわかりやすく言いますと、小人症のような珍しい病気で、注射一発打ったら一万円とか一万五千円とかという薬代がかかる。そういうようなものは、実勢価格と薬価基準とそんなに乖離してないわけです。医者には、こいつに手数料を千円なり千五百円なりを支払われますが、そういうようなものは、仮にそれでは一万一千円で請求するとしても、お医者さんの自分のふところに入るのは一万一千円のうち千円なり千五百円しかない。ところが所得としては、二八%掛けると三千円以上の所得が出て、薬価基準と同じぐらいの薬を使えば、実際はない所得があったように出て税金を取られるという問題も一つあるわけです。そういう構造的な問題が一つある。こういうようなことでございますから、二八%というもので所得を計算するという方式だけだと、薬価基準と同じ薬を使えば使うほど医者は損する。所得がないのに税金を取られるということも起きるわけですよ。むずかしい問題がいろいろある。
 したがって、それはどうして直したらいいかということになってまいりますと、われわれの方としては、要するに安い薬を売って、これだけの安い、六割とか七割ぐらいの実勢価格の薬で、それで医者が収入に充てておるということでなくて、それはもっと下げても、そのかわりその差額はお医者さんの技術料に振りかえてやるということも一つでしょう。それから、高い薬は高い薬の評価、つまり保険の請求をする場合の収載を銘柄別に決める、高いものは高い保険で払いますよ、安いものは安くしか払いませんよ、一律じゃありませんよというふうにして抑えていったらどうかということも、これはまじめに検討されているわけです。
 しかし、本当に高い薬を使わないのに使ったと言って申請されたとき、どうしてだれがチェックするのですかという問題もあるわけです。お医者さんは全部良心的だからそういうことはあり得ない、高い薬を使った場合は高い薬と書くし、安い薬を使った場合は安い薬と書くので、そんなことを疑っちゃいかぬという考え方もあるわけです。どれが実相であるかということについては、やってみないことにはわからない。試行錯誤もあるでしょう。ありましょうが、私は、まずお医者さんの善意に信頼をしてやってみるということも一つの方法かなと、こういうように思っておるわけでございます。
#51
○川本委員 先ほど大臣は、薬価基準を下げても保険財政には響かないのだ、それは中医協やいまままでの既得権で、薬価基準を下げただけは技術料に振りかえるといういままでの約束がある、こういうことです。しかし私は、これは響くと思う。なぜ響くかというと、今日の診療報酬の立て方が治療中心の制度になっておる、これを予防中心の診療報酬に変えていくことによって、薬価基準の基準を下げただけ、いわゆる予防的な健康管理の面の指導的な面の診療報酬の点数に振りかえていくことによって、いわゆる予防医療に切りかえていく、治療中心の医療制度から予防中心の医療制度に切りかえていくことによって、これは将来の問題として大きく保険財政ともかかわりあいを持ってくると私は思うわけです。そういう点において、やはりこれは英断をもってそういう措置を講ぜられなければいかぬ。
 特に、いま大臣言われましたけれども、局長にお聞きしますけれども、現在の薬価基準というものは、実費弁償がたてまえだと思うのですが、どういうふうにして決められておるのですか。
#52
○八木政府委員 現在の診療報酬体系の中におきましての薬価基準の基本的な考え方につきましては、先生おっしゃったような実費弁償という考え方でございますけれども、現実には薬価基準で決めております価格と、それから医療機関が購入します価格というものに大きな差があるということは、間違いないことでございます。そういう意味におきましても、現在の薬価基準というものを、できるだけ実勢価格に近づけるべきではないかというようなことから、毎年薬価調査をやりまして、その結果によりまして薬価基準の改定を行っております。
 現実問題としましては、先生御指摘のように、マージンがあるのは間違いない事実でございますので、それを少しでも少なくする、そのかわり従来の薬価のマージンというものをできるだけ技術料に振りかえていくというのが基本的な考え方になるわけでございます。
 そこで、先ほど大臣もお答え申し上げましたように、今度は従来のような薬価基準の収載方式を改めまして、銘柄別の薬価基準の収載方式ということによりまして、実勢価格とそれから薬価基準との差をできるだけ実態に近づけていくという努力を行わなければいけないのではないか、これは中医協の皆さん方のコンセンサスでもあるわけでございます。
#53
○川本委員 いまおっしゃるように、大体実費弁償ということを言いながら、実際はマージンがあるということを政府も認めておられる、これは中医協も認めておる。しかし、現在いわゆる製薬会社が売っております薬の値段というものは、国立病院が一番高い値段で買っておるのです、私の知っておる範囲では。国立病院は一番高い。これは正当な価格で買っておる。次は公立病院ですね、市町村立、県立病院がちょっと安い、あるいは同じところもある。ところが、私的医療機関というのは、そんな値段では買っておりません、現実には。もっと安く買っておる。
 なぜそうなるのかといいますと、国公立病院の場合は、リベートがお医者さんや薬局長にいくわけなんです。これは大体研究費とかそういう名目でいく。これは予算委員会で大橋委員も言っていましたけれども、いわゆる研究費とかいろいろな名目でいく。中にはゴルフの道具でいったり、ひどいのになると、自動車でいったりというリベートがある。だから、リベート分だけ国公立の病院は高く買っておるわけです。私的医療機関の場合は、そんなことはありませんから、もっと安い価格で買っておる。
 そこで、厚生省はどのように知っておられるか知りませんけれども、現在、医療機関に対する薬というのは、その薬の問屋さん等が医療機関へ行って直接セールスして買ってもらう制度ではないわけです。全部製薬会社のプロパーが直接医療機関の担当医師あるいは局長と話をして、そこで値段も決め、そして数量も決めて、そしてそれを今度は、卸問屋さんが配達をして集金をするだけなんです。そういうシステムにもう変わってきてしまっておるわけです。だから、製薬会社がもう値段も何も皆決めておるわけです。ですから、幾ら入礼をやっても表面だけで、実際は関係会社が寄って、ここの国立病院では何%はどこの会社、何%はどこ、パーセント、納入比率を決めるだけであって、薬の値段で競争はしない、そういうシステムになっておるということは、これはもう大臣も御承知だろうと思うのです。
 そこで、薬会社が医療機関に納めるときの定価を普通C価というわけです。私、現在、製薬会社のC価表を手元に全部持っておるわけです。そこで、薬価基準との関係について、私、時間がありませんでしたので、ちょっと簡単に調べてみたわけですけれども、製薬会社のC価、いわゆる国公立の病院に納める値段で、東洋ファルマーの十ミリの塩化リゾチーム錠というのがあります。これは消炎酵素製剤ですけれども、五千錠入りで二万三千円なんですね。一錠当たりの単価は四円六十銭。ところが薬価基準では、これは二十四円になっておる。その比率は大体五倍を超えておると思うのです。よく似たのは幾らでもありますが、東洋ファルマーのは特にこういう三倍以上になっておるのが多いわけです。ミタロンカプセル六千カプセル入りが二万三千四百円。一カプセルが三円九十銭ですけれども、薬価基準では十四円になっておる。これは三・八倍ぐらいですね。あるいは台糖ファイザーのシンナロイド、〇・五ミリで千五百綻入りですが、これは血圧降下剤ですけれども、これが六千円。一錠四円ですね。これが薬価基準では十九円三十銭になっておるわけです。田辺製薬のグルタイド錠、百ミリのものですけれども、千二百綻入りが三万一千二百円。一綻当たりが二十六円ぐらいですね。これが薬価基準では五十六円三十銭。これはグルタチオン製剤で還元型のものです。日本ケミファが出しておるゲランテールカプセルというのがありますが、これは二百五十ミリの百カプセル入りだと思うのですけれども一万円。そうすると一カプセル百円ですけれども、これの薬価基準は二百八円。田辺製薬で注射用のグルタイドというのが出ておりまして、二百ミリで二百アンプル入りだと思いますが、これが三万円ですから、一アンプルが百五十円。これが薬価基準では三百五十円。そうすると、これも三・三倍ぐらいになるわけです。
 私、この質問に備えて、おとといの晩徹夜をしましたので、実はもう少し調べたかったのですが、時間がなかったので、この程度しか調べられなかったのですが、調べれば切りがないほど、まだまだたくさんの問題があると思うのですが、いま言っただけでも二倍、三倍、五倍、このようなことが行われておるわけです。ですから、これを実費弁償をたてまえにしたら  この注射薬、これは一部の会社だけれども、銘柄、名前は違ってきても、同じ用途に使う薬効を持った製品が各社から出ておるわけです。だから、名前は違っても使用方法も使用量も同じ、値段も同じというのが各製薬会社から出されているわけですから、いま小野薬品とか田辺製薬とか三共とか言いましたけれども、これはその中の一つの例を言っておるわけで、これは小野薬品にしかない、田辺にしかないというような薬はごくわずかです。だから、各社から出ておる、それもみな同じような価格で出ておる。これはC価と言って、いわゆる医療機関に納める価格なんです。
 そこで、こういうものがわかっておりながら高い薬価基準をなぜ設定するのか。これが売薬医療の、先ほど諸悪の根源という言葉を大臣使われましたけれども、私は、やはりそういう点から見ると――戸沢さんが使ったのですか、諸悪の根源は、お医者さんにあるというのではなしに、すべてこの薬価基準というものにある。昔から薬九層倍と言いますから、三倍ぐらいだったら、五倍ぐらいだったら、そう高くないのだろうという認識なのかもしれませんけれども、そういうことは許さるべきではない。先ほど言ったように、お医者さんの方々の六〇%までが思っておるように、売薬医療、薬づけ医療になるその諸悪の根源は、今日の医療制度にあると言っても過言でないというのは、この一つを見ても明らかだと思うのです。
 そこで、この薬価基準について、いま私の言ったことは間違っておると思われますか、どうですか。大体正確だろうと思われますか。正確だと思えば、どのようにしたらいいと思われるか、ひとつ御答弁をいただきたい。
#54
○渡辺国務大臣 これは数字的なことで、正確であるか間違っておるかは私はわかりませんが、応々にしてそういうのはたくさんございます。二百九十円もする薬価基準のものが、実際は三十五円で取引されておるとかいう例がございます。しかし、これにも問題がございまして、いままでのようなやり方ですと、C価表で薬価基準が決まっておるのでない。お医者さんが実際に買う薬の中でも、バルクライン九〇という方式をとっておって、小袋で小さく買った人、一本で高く買った人、安く買った人、高く買った人を探して歩いて九十番目に高く買った値段をもって薬価基準にするという方式がございますから、実勢価格とは食い違いが出てくる。
 それで一つは、あなたのおっしゃった中で、これは非常に大事な大きな問題があるのです。それは、いままでの考え方は、まとめて買えば安くなる、分けて買えば高くなるというのが常識なんですね。ところが、病院が高く買っておって、民間の自分でやっている人の方が安く買っておるということが現実だとすれば、考え方を変えなきゃならぬ。実際問題として私はそう思う。ですから、あなたの指摘は、私は実証的に知りませんけれども、大きな問題提起であることは確かでございます。
 したがって、そういうような問題等を含めて、ひとつ勇気のある本音の議論というものが、たてまえでなく本音の議論、実態に即したこういう議論が国会で行われるということは非常に有意義である。私は敬意を表します。
#55
○川本委員 ちょっと参考までにお聞きしたいのですが、国立がんセンターでガミベタールという薬を使っておられると思うのですが、これの購入価格は何ぼで買うていますか、わかりませんか。
#56
○上村政府委員 国立がんセンターのガミベタール錠の五十一年度の平均購入価格というのは、一錠十四円七十二銭だと聞いております。
#57
○川本委員 それは一錠ずつ買うておるということはまさかないと思いますけれども、何千錠入りで買うておりますか。
#58
○上村政府委員 購入数量は二万六千錠というふうになっておるわけでございます。これは二百五十ミリグラムのものでございます。
#59
○川本委員 これは小野薬品から出ておる薬ですけれども、三千錠入りでC価で二万七千六百円なんですよ。二万七千六百円ということになると、一錠当たり九円二十銭です。小野薬品で九円二十銭のC価をつけておるものを、国立がんセンターで一錠十四円で買うておる。
 この一つの例を見ても、国公立病院がいかに高い薬を買うておるかということは明らかだと私は思う。そしてその薬価基準が今日十八円四十銭です。これは十四円を基礎にして考えるから、十八円四十銭という薬価基準が出てくるわけです。九円二十銭という原価から考えれば、こんな十八円四十銭というような薬価基準は出てこないと私は思うわけです。
 このような例はたくさんあると思うのです。ですから私、できれば厚生省にお願いして、次の委員会までにひとつ国立病院での購入価格をお調べいただきたいと思うのです。台糖ファイザーのシンナロイド、小野薬品のどれでいきましょうか、いま言ったガミベタールでいきましょうか、田辺製薬のグルタイド錠あるいは注射用のグルタイド二〇〇アンプル入り、日本ケミファのデランテールカプセル、東洋ファルマーの塩化リゾチーム錠、こういうものを一体何ぼで購入しておるか。私は、薬価基準とC価との違いのかなり大きいものだけをちょっと申し上げたのですけれども、同じ用途に使われる薬で製薬会社が違ってもいいですから、一応国立病院の購入価格、最近三カ月、五十二年一月から五十二年三月ぐらいまでのものを一遍資料としていただきたいと思うのですが、どうでしょう。
#60
○上村政府委員 昨日お話がございましたので、国立がんセンターなり国立医療センターについて当たってみたわけでございますが、この二つの病院につきましては、いま御指摘になったような医薬品は、さっき申し上げましたガミベタール錠を除きましては購入しておらないという状況でございます。
 それで、先ほど来C価表と、それから非常に大量包装の単価で薬価基準価格との差異を指摘しておられるわけでございますけれども、薬価基準に収載されます医薬品というのは、開業医を含めまして一番小さな包装単位から薬価というものを決めていくというルールを立てておりますので、大量包装の一錠当たりの単価というものと薬価基準の一錠当たり単価というものを一概に比較いたしますのは、その価格で買える医療機関というのは限られるわけでございますから、必ずしも私は妥当でないのではないかというふうに思うわけでございます。
#61
○川本委員 私は、薬価基準が現在の薬業界における実勢価格と非常に違うということ、それが実費弁償をたてまえとしておる健康保険制度の中で大きく財政危機を招来し、薬づけ医療を招く原因になっておると思うから先ほど来申し上げておるわけです。この点について大臣、先ほど敬意を表していただいたのですけれども、ひとつ大臣も勇気を持ってこの問題に対処していただきたいと思うわけです。
 そこで私、申し上げたように、薬価基準を下げて技術料に振りかえる、あるいはこれをもっと予防的な指導部分の方に振り向けていくことはどうだろうと思うわけです。
 私の友人で小児科のお医者さんをしておられる方が奈良市に住んでおられるわけですけれども、ともかく注射はしない、薬はやらぬというので、昔は、子供には好かれるのだけれども親にはきらわれて、あのお医者さん頼りない、注射も打ってくれへん、薬もくれへんというので、余りはやらなかった。ところが、大腿四頭筋短縮症等が問題になり出してから今度はよくはやり出したわけです。やはりあのお医者さんが正しいんやということになって、だんだんとはやり出した。ところが、このお医者さんは、注射はしない、薬はやらぬですから、もちろん収入は少ないわけです。しかし、たとえて言うと、小さな赤ちゃんを抱えて母親が飛んできても、診察したらこれが知恵熱だったというのだったら、これは知恵熱ですからということで、食事の仕方とか乳の飲ませ方とかさえ指導すれば、もうそれだけでいいわけです。ですから、本当のお医者さんとして指導するわけですが、ところが、そこでその患者を見てお母さんに指導をしても診察料だけしか入らぬわけです。そうでしょう。
 そういうところに今日の診療報酬の立て方の間違いがあると私は思うわけです。だから、そういう指導的な診療に対して技術料をもっと高く評価するということの方が大切だと思うのですけれども、その点についてどうでしょう。
#62
○渡辺国務大臣 全く私も同感でございます。薬価基準を切り下げても技術料に回せば、保険財政上余りメリットがないというようなことを、私ちょっと言ったように記憶しますが、それはちょっと間違っております。それによってむだな薬が使われなくなるということになれば、その面は明らかに寄与するわけですし、将来の健康上の問題を考えても、やはり薬は最小限度、必要にして十分なだけでいいのです。そういうのがあるべき姿だと思うし、私も、実はあなたが言ったのと同じようなケースのお医者さんを知っているのです、私の友人で。そういうことで、本当にまじめでよくやっている人がいるということも間違いない。それも私は認めたい。そういう人が社会から信頼されてやっていけるようにすることも、やはり政治の大きな務めだろうと私は思います。
#63
○川本委員 特に私が診療報酬制度の中で不合理に思いますのは、国公立の病院と言うたら、これは語弊があるかもわからぬけれども、国公立の病院の場合、もちろん償還はせねばいけませんし、起債は返さねばいかぬから問題はありますけれども、建物とか器械とかそういうものは国などがつくるわけですね。特に税金も払う必要がないわけです。民間のお医者さんや歯医者さんや医療機関等においては、建物も自分で建てて、医療器具も自分で買うて、償還をして、そして税金は取られるわけですね。人に対する人件費も払う。ところが、診療報酬ということになると、全く同列なのです。ですから国公立は、税金を払うことは要らぬから診療報酬はちょっと安くて、民間はやはり生活があるので利益も得なければいかぬし、税金も払わねばいかぬからということで、本当は私は現実には差があってあたりまえだと思うわけです。それが全然差が設けられていない。これもやはり今日のいろいろな問題を生み出す根源になっておると思うのですが、この点については、それでいいと思いますか、どうでしょう。
#64
○渡辺国務大臣 先ほどちょっと答弁漏れがございましたが、薬剤費を切り下げた分を予防の方へ回せというような御趣旨であったかと思いますが、これは一遍にそういうことができるかどうか、非常にむずかしい問題も含んでおります。ただ、予防医学をもっと充実しなければいかぬという点は同感でございまして、病気になる前に、そいつをあらかじめ防ぐために、政府が金も出したり研究もしたりすることは、これは大きく前進をさせたい、かように思います。
 それから、国公立の病院と民間の病院と同じ診療報酬というのはおかしいのではないか、見方によってはそういう見方もあると私は思いますが、ただ、国公立の病院では、不採算部門をかなり積極的にやってもらうように政府でも行政指導をしているわけです。国公立の場合は、政府の指導で、ある程度不採算部門も応じてくれておるという現実もあるので、国公立の方の診療報酬は低くて、民間の方は税金や償却分だけ高くするという考えまで、あなたの御意見はもっともなところが多いのですが、その点についてはちょっと足踏みをさせてもらいたい、かように思っております。
#65
○川本委員 いま大臣に御答弁いただいた面については、もう一度十分前向きで検討してもらいたいと思うのです。
 現在、基準看護病院で、二・五人の患者に対して一人というのは、特二と言のかどうかわかりませんが、そういう場合の看護料は一日大体二千六百六十円の診療報酬になっておる。ところが、看護婦一人の実際の稼働日数一日当たりの賃金は、大体六千円から七千円になる。
    〔中山(正)委員長代理退席、委員長着席〕
そうすると、病院なんかでも、いわゆる看護婦さんをできるだけふやさないとか准看護婦を使うとか補助看護婦を使うというような形で、診療報酬で請求しても赤字の出ないようにしようとするのは、もう常識だと思うわけです。
 そういう意味において、いわゆるパラメディカル・スタッフ、パラデンタル・スタッフと言われる医療従事者の賃金も上げなければいかぬ、あるいは生活も賃金が上がるにつれて引き上げていかにゃいかぬということを考えますと、現在の診療報酬の中で、レントゲンの診断料とか理学療法料とか、先ほど言った衛生検査料とか入院料、給食料――給食料は現在一日千八十円ですか、ところが、やはり給食婦や栄養士、いろいろな人の人件費も上がりますし、そういうことを考えますと、そういうものはどうしても大幅に引き上げなければ、現在の医療供給体制というものをさらに充実強化していくことに連ならないと思うわけですが、そういう点についてお聞きしたいと思う。これが一つ。
 それからいま、一般の医療、歯科医療、両方について技術料を一律に二〇%上げてくれ、特に日本医師会は、五十一年四月の診療報酬改定は四十九年までの分を上げてもらったので、五十年と五十一年の分はまだだから、今度は二年分上げてもらうのだということを主張しておると思うのですけれども、そういう問題も含めて、現在、厚生省は、今度の秋の診療報酬の引き上げの中でどのように対処しようとしておるのか。
 先ほども申し上げたけれども、乳幼児の診療に特別加算とか、そういうことは、やはり必要だと私は思うわけです。現在、老人加算とか障害者加算、乳幼児療養指導料、訪問看護料、冷暖房料、外来看護料、請求事務手数料、文書料、こういうようなものを、診療報酬の中で新設する必要があるのではないかという意見も各方面から出されておる。歯科の場合も、指導料というのを、週一回の算定に変えてもらいたいとか、初診時口腔環境指導料、いわゆるオーラルハイジーンと言うそうですが、こういうものも新設してもらいたい、あるいは補綴の診断料の点数の問題、障害者や乳幼児の加算の問題等が出されておる、こういうような問題も予防医療に連なる部分があると私は思うわけです。
 こういう点について、診療報酬改定のときには前向きで善処して考えなければいかぬと思うのですが、どう考えておられますか。
#66
○八木政府委員 昨年の診療報酬の改定は、医科については五十一年四月、歯科については五十一年八月でございますが、ただ、先生からお話がございましたけれども、昨年の引き上げにつきましては、五十一年の二月分までの実績の数字は見込んでおるわけでございます。したがいまして、それ以降におきます人件費なり物件費の動向、あるいは国民所得の伸び等を考慮しまして、しかるべき時期におきまして診療報酬の改定というものを考えなければならないわけでございます。
 ただいま診療報酬改定の中身について、いろいろ具体的な御指摘がございました。確かに、いろいろな方面からいろいろな御指摘はいただいております。中医協でこの問題を議論する際には、診療側の代表の方も当然出ておられるわけでございますし、さらに、いま御指摘になりました問題点の中には、前回の診療報酬改定の際に中医協で議論された問題も多々あるわけでございまして、そういう問題も含めまして、今後の中医協の審議の中で、いろいろな御意見があると思いますから御意見を十分承りまして、この問題を解決していきたいと考えておる次第でございます。
#67
○川本委員 先ほど私は、春闘共闘や総評のアンケートの中でいわゆる保険外負担の問題について若干触れましたけれども、この間私、これは非常に具体的な例ですが、衆議院の自動車に乗せてもらったのです。そうしたら運転手の方が、川本さん、この間本会議で、健康保険の問題で質問しておられましたなと言うのです。そうですと言ったら、一遍お会いしたらぜひ聞いてもらいたいと思っておったのだということで、自動車の中でお聞きしたのですが、その方のお父さんが、現在長期の療養で入院しておられるらしい。ところが、家庭的な関係で家族の付添ができないので付添婦を雇ってある。その付添婦を雇ったところが、一日六千円の付添料で、夜中に一回起こすと千円の加算を取られるそうです。そういう約束になっておる。年寄りで、それも中風系統の病気だから、一晩に平均して二回ぐらい起こすそうなのです。そうすると、一カ月に大体二十五万円の付添料を払わなければいけません。私の月給は一カ月十五万円ほどです。ところが、もう六カ月間続いて二十五万円払ってきています。付添婦の要らぬ病院へ入れたいと思うのだけれども、どうしても見当たらない。そういう病院はどこかにありませんか、こういう相談を現実に受けたわけです。これはもう現実に困っておられる方の話です。
 差額ベッドとか付添料等保険外負担の問題はいろいろ言われますけれども、たとえて言えば、盲腸で手術したとかいって二週間ぐらい入院するということであれば、仮に付添婦を雇っても、それは大したことはない。しかし一カ月以上、それが半年にも一年にも及ぶということになると、家族が健康で一生懸命働いておっても、最後にはその付添料だけで生活に破綻を来すということになる、そういう実情にあるわけです。
 そういう実情を考えたときに、長期の療養者で付添を必要とする者については、やはり保険とか公費で見ていくという原則を打ち立てなければ「保険あって医療なし」と言われることになる。お金がなければ入院もできない。おば捨て山じゃないけれども、一日も早く死んでくれぬだろうかと、心情として子供が親の一日も早く死ぬのを祈るような結果になってくる。そういうことを私たちは放置すべきではないと思うわけです。その点について大臣、どう思われますか。
#68
○八木政府委員 保険外負担の問題、御指摘の付添看護の問題でございますけれども、先生御指摘のように、病気になった場合に、せっかく医療保険制度がありながら非常に莫大な負担をするということになると、何のための医療保険制度かということになるわけでございまして、私どもとしましては、保険外負担というものは、必要なものについては保険で見ていくというのが基本的な考え方であろうと思っておるわけでございます。
 そういう意味から、看護の問題につきましても、現在、基準看護病院におきましては、付添は必要としないということで、特に基準看護病院につきましては、それだけの加算を見ておるわけでございます。しかし、基準看護病院の指定を受けていない病院につきましては、付添が必要であるということもあるわけでございまして、その場合には、看護料を保険で支払うということになっておるわけでございます。その場合の看護料につきまして、実際に付添看護を頼みました場合の料金と保険で支払います料金との差をできるだけなくするということから、昨年もかなりの改定を行ったわけでございますが、つい先般この付添看護料金の改定も行ったということで、私どもとしましては、付添の問題につきましては、保険外の負担がないような方向で今後とも努力してまいりたいと考えておる次第でございます。
#69
○川本委員 基準看護病院では付添婦は要らないのだというたてまえになっておるわけですね。しかし現実には、重度の患者、重症の患者の場合には、やはり付添婦をつけなければ回り切れないという状態だと思うのです。基準看護病院であっても、医師が付添を必要と認めた場合には、それは患者や家族の負担にさせないように、いま言ったような深刻な例もあるわけですから、そういうものについて強く善処されるよう要求しておきたいと思うわけであります。
 最後に私は、一つお聞きしておきたいのですが、日雇健康保険の問題です。この問題については、早くからいろいろ論議をされております。加入者がだんだん減ってきて、現在四十一万人ぐらいになっておると思うのですが、累積赤字が二千五百億を超えるということで非常に大きな問題になっておる。
 先般来の保険審議会等の審議の経過等を見てみても、日雇健保が赤字だから、これをもうなくしてしまおうというような政府の意図もどこかに見られるように私は思うわけです。しかし現実に、いまわが国のいろいろな保険制度の中で一番大切なのは、私は、日雇健康保険の制度だと思っておるわけです。これは、いわゆる生活保護を受けるそのすぐ上のボーダーライン層である日雇いの人たちの医療保障をどのようにしてやっていくのかという問題で、重大な問題である。この層に対する医療保険をなくするということは、日本の保険制度の崩壊にも連なるほど、大きな堤がアリの穴から切れるようなもので、この層を見放したら生活保護でやっていかなければしようがないということになるだけだと私は思うわけです。
 そこで、いろいろな論議の中で、日雇健保を国民健保と一緒にして、二カ月で二十八日以上働いた人だけ本人負担を一〇〇%にしたらとか、傷病手当金等を出したらとかいうような意見も一部にあるやに聞きますけれども、そういうことは方向を誤るものであって、断じていけない。これは必ず被用者保険の中に統合して、その大きな財政のプールの中で日雇健保の財政をカバーするような形を考えることが、全国民的な観点に立った場合正しい。私は、これはそういう信念を持っておるわけですが、その点について、ひとつ厚生省の御意見をお聞きしておきたいと思います。
#70
○八木政府委員 日雇健康保険制度につきましては、低所得者が多いということから、従来からも三五%という高率の国庫補助が行われておるわけでございます。しかし、現実の財政状況は非常に窮迫してまいっておりまして、昭和五十一年の単年度の赤字額が二百二億、累積赤字額が二千九百四億円ということで、財政的に非常に大きな問題になっておるわけでございます。一方、日雇健康保険制度につきまして、被保険者のサイドにおきましても、受給要件等のいろいろな改善の要求が出ておるわけでございます。このような窮迫した情勢の中で、日雇健康保険のこういう給付改善の要望等にどうこたえていくか、この制度をどういうふうに健全に運営していくか、一つの大きな問題であることは間違いないわけでございます。
 そこで、この問題につきましても、私ども、基本的に研究すべきではないかということから、医療保険制度全般の基本問題の見直しという作業も進んでいるわけでございますけれども、同じように社会保険審議会の中にも、昨年日雇労働者健康保険小委員会というものを設置いたしまして、現在関係者の方々で御論議をいただいておるという状況でございまして、政府管掌健康保険と並びまして日雇健康保険の問題につきましても、真剣に検討していかなければならないと考えておる次第でございます。
#71
○川本委員 その他、老人医療の問題、救急医療の問題、保険財政の問題あるいは将来の抜本改正に向けての問題等、質問申し上げたいことがまだたくさんあるわけですけれども、きょうはもう与えられた時間が来てしまいましたので、私は、あとの質問を留保して、きょうの質問は一応終わりたいと思います。
#72
○橋本委員長 この際、午後一時三十分まで休憩いたします。
    午後零時四十分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十四分開議
#73
○橋本委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 休憩前の質疑を続行いたします。草川昭三君。
#74
○草川委員 草川であります。
 私は、今度の健康保険法の一部改正案の審議に当たりまして、国民の皆さん方が医療に対して非常に深刻な不安感を抱いており、かつまた、ぬぐいがたいところの不信を持っておるということを、まず冒頭に申し上げておきたいというように思うわけであります。
 すなわち、本案は、国民が現在本当に苦しんでおるところの差額ベッドの問題だとか、付添看護料の負担の問題、救急医療のたらい回し事件等、あるいはまた国民の総薬づけとでも言うべき薬の乱用、あるいはまた医療過誤、こういうような国民の命と健康を守ることとは逆行しておるような現状を放置しておいて、医療に対する基本的な展望がないまま、財政対策だけで今度の改正案が出てくる、結局国民に負担だけを強いるという改悪になってくるわけでございまして、私どもは、この点のまず抜本的な、基本的な将来の展望というものがない限り、本案に賛成するわけにはいかぬのではないか、こう思うわけであります。
 ちなみに、過日のNHKのテレビ討論会で私どもの坂口議員が、抜本対策こそが必要である、だから五十三年に、少なくとも抜本対策というものを実施するということがあるならば、青写真なりとも、ひとつこの際国民の前に提示をするという前提でこの問題というものが審議に入っていくということでなければならないと言ったのに対して、たまたまそのときに大臣が、非常にむずかしい問題だから、直ちにというわけにはいけないというような御発言があったと思うのでありますけれども、それでは納得できないと思うのです。
 そこで私は、きょうはひとつ、この今日の健保財政を圧迫しておる要因の一つであるところの薬の問題にしぼって質問をしていきたい、こういうふうに思います。
 まず第一に、薬の副作用、薬害が非常に大きな社会問題になっておりますけれども、厚生省は、いわゆる副作用情報というものについて、どのようにつかんでおみえになるか、お伺いしたいと思います。
#75
○上村政府委員 御案内のように、昭和三十六年にサリドマイドによって奇形児が生まれるということが指摘されましてから、世界各国で薬品の安全対策というものに力点が注がれるようになったわけでございます。わが国におきましても、医薬品の副作用情報を、できるだけ網を広げて集めるということをしておるわけでございますが、個別的に申し上げますと、一つは、十年前の四十二年の三月から副作用モニター制度というものを発足させまして、現在、国立病院等四百六十二の施設をそのモニター病院に指定いたしまして副作用の情報を集めております。それから企業に対しましては、特に新しく承認いたしました薬、いわゆる新薬に対しまして、売り出しましてから三年間は必ず副作用報告を出すという義務を課しておるわけでございますし、それから新薬以外の薬につきましても、いままで知られなかった、あるいは重い副作用がある場合には報告をさせることにしておるわけでございます。そのほかに内外の文献を渉猟いたしまして、そういった内外の文献から、財団法人である日本医薬情報センターというものがあるわけでございますが、そこからそういった情報を集める。それから海外の情報では、WHOを通じまして幅広く集めておるわけでございますが、特に五年前の昭和四十七年の四月からは、WHOの国際医薬品モニタリング制度というものに参加いたしまして、情報を早目に集めるというふうに努力しておるわけでございます。
 そういうふうにして集まりました副作用の情報というのは、すべて中央薬事審議会の副作用調査会などで検討いたしまして、その意見に基づきまして、ケースによりましては製造販売の停止、あるいはケースによりましては使用上の注意を改めさせるといった行政措置を講じておるところでございます。
#76
○草川委員 たまたま事前に、私どもが厚生省の方にいまの実態の把握について御質問をしましたら、医薬品副作用モニター報告の概要を、五十年四月から五十一年三月、この一年間の分を私どもいただいたわけでございますが、三百三十六件になっておる、こういう報告であります。
 たまたま大阪では、御存じのとおり大阪府の衛生部薬務課で、これも四十八年から調査をしておるのがありますけれども、これは大体一年で六百件前後上がってきておるわけです。医療機関から一年の間で六百四件。医薬品に関するものが五百六十六、化粧品等三十八、多少幅が広いと思うのですけれども。だから、大阪一県で六百何件出ておるのにもかかわらず、厚生省が全国的に調査したのが、これはダブった調査ではないと聞いておるわけでございますが、三百三十六件。私は、率からいっても、厚生省がつかんでおる副作用情報というのは非常に弱いと思うのです。その程度の対策では、事然の防止策が十分樹立をされていないのではないか、このことをまず第一に指摘を申し上げておきたいというように思います。
 同時に、この報告の中で抗生物質によるところの副作用情報が非常に多い。たまたま大阪の例だけを取り上げますと、百六十六件で三二%に及ぶわけであります。
 厚生省の場合、全国的な統計ではどうなっておるか、お聞きしたいと思います。
#77
○上村政府委員 まず、大阪府が集めております副作用情報の数と、私どもがモニター病院を通じて集めておる数との違いでございますが、まず、モニター病院を通じて集めております副作用情報というのは、いままで知られなかった副作用、それから非常に重い副作用、そういったものを集めておるわけでございます。大阪の方が集めておられます副作用といいますのは、すでに知られて、使用上の注意に載っておるような副作用につきましても集めておられるわけでございますから、そういったあらかじめ知られておるような副作用について集めておるか集めておらないかの違い、両方照合いたしますと、その点がよくわかったわけでございます。
 それから、厚生省が収集いたしました副作用情報の薬効別の内訳でございますが、すべての副作用情報を網羅した薬効別の内訳というのを集計してみますことは、ちょっとできませんので、いま御指摘になりましたようなモニター病院を通じて上がってまいりましたものを申し上げますと、この制度を発足させました昭和四十二年からことしの三月までで三千百四十一件あるわけでございますが、やはりその中で抗生物質製剤が一番多うございまして、三〇・二%でございます。それに次ぎますのが中枢神経用剤、それが一四%、こういうふうな数字になっておりまして、抗生物質製剤が多いという点につきましては、大阪の場合もモニター病院の場合も大体同じであるというふうに考えます。
    〔委員長退席、中山(正)委員長代理着席〕
#78
○草川委員 いま抗生物質が、大体いまの全国的な統計からいっても、それから大阪の例を取り上げても同じだというところは、これは重要な問題だと思うのです。
 でございますから、その点についてさらにしぼって私、質問していきますが、いま単なるモニター病院だけではなくて、今後厚生省は医薬学界等の全体的な学界の協力も得て、副作用情報についてはこれから収集をお願いしたいし、また解析、分析をお願いしたいと思うのです。
 日本化学療法学会というのがあるわけでございますが、これは実は私、大変権威のある機関だと思うのですけれども、どのような機関か、お聞きしたいと思います。
#79
○上村政府委員 お話しになりましたように、化学療法に携わっておられます専門家の集まりの学会でございまして、御指摘になりましたように、権威のある方々のお集まりであるというふうに理解しておるわけでございます。
#80
○草川委員 権威のある方々のお集まりの学会であるわけですが、たまたま昨年の六月でございますが、総会で帝京大学の藤井教授と言われる先生が、会長でございましょうか、抗生物質の過剰使用の実態について講演をなすってみえられるわけです。
 実は、事前のレクチュアでも、これはちょっと私ども申し上げておりますから、一言で結構ですから、藤井教授の内容についての感想をお聞きしたいと思います。
#81
○上村政府委員 論文にございます藤井教授の抗生物質の使用量というのは、国家検定の合格量から集められたものであると思います。実際の使用量は、それよりも幾分少ないと思いますけれども、傾向としてはほぼ同じではないか、こういうふうに言って差し支えないのじゃないかと思います。
#82
○草川委員 余り読んでおみえにならぬような感じでございますけれども、結局、藤井教授はその中で、鼻かぜとは言いませんけれども、非常に軽い感染症にまで抗生物質が大変使われておる、このことはいいかもわかりません。かつてのようにペニシリンが非常に高価なもので、チャーチル首相がそれを取り上げて治ったという例もあるわけでございますが、いま非常に幅広く使われるということは、一面ではいいかもわかりませんけれども、過剰投与がなお続くのではないだろうか、耐性菌が当然繁殖をしてくるわけでございますから、ほとんどこれから抗生物質が効かなくなる時代がくるのではないだろうかというのが論文の趣旨であるわけです。
 抗生物質によるところの耐性菌が繁殖をすることによって、将来いろいろな病気について効かなくなるだろうという警告は、これは実は重要な問題だと思うのですが、この点について大臣の見解を求めたいと思います。
#83
○上村政府委員 薬の種類によりまして、菌に作用する薬、抗生物質はその一つの例でございますが、こういう薬は、その薬の作用の対象になる菌に耐性菌というものを生み出すという宿命がどうしてもあるわけでございます。また、別の見方をしますと、そういった菌に働かない薬、体そのものに働く薬というのは、逆に体の方に耐性ができますので、大量に飲まないと効かなくなる。睡眠剤なんかがその例があるわけでございます。したがいまして、抗生物質というのは耐性菌を生み出すという宿命は避けられないわけでございます。
 同時に、薬の耐性というのは、菌が親から子へ、子から孫へと伝わっていく過程においても、あるいは耐性菌になった菌がそうでない菌と接触する過程においても広がっていく傾向があるものでございますから、抗生物質を適正に使いましてもどうしても引き起こされる。使用される量がふえるに従いまして増加する傾向は避けられないわけでございます。
 そこで、これに対する対策をどうするかということになるわけでございますが、耐性菌がいかにして生ずるかというメカニズムはなかなかむずかしいようでございます。私も、その辺の専門家ではないのでよくわからないわけでございますけれども、しかし、その研究の過程の中で、ある抗生物質が働きかける細菌の側からある種の酵素を出して、その酵素が薬というものを不活化する、効かないようにしてしまうというふうなことが出てまいりますので、今度は薬の側でそういった酵素を防ぐような構造のものができてくる。そうなりますと、従来の耐性菌にも有効になる。したがって、耐性菌との闘いというのは、勝って負けて、勝って負けてというふうな繰り返しになるわけでございます。
 そういった意味から、その薬の使用の注意の場合は当然必要でございますけれども、同時に、そういった耐性菌は避けられないものでございますので、耐性菌を生じた場合には、さらにそれを克服する薬というものを開発していかなければならない、こういうふうに思うわけでございます。
#84
○草川委員 そういうことでございますから、非常にこれはエスカレートしていくわけです。エスカレートしますから、耐性菌がさらに強くなっていくから、最後には効かなくなるような状況というのが出るのではないだろうかということがいま心配されておるわけです。だから、その抗生物質に対する耐性菌の把握というものがどうなのかという問題を指摘したいと思うのです。
 特に、きょうの新聞によりますと、サルファ剤はもう九〇%だめだという報告がなされているわけです。でございますから、薬事審の中でも、効き目ががた落ちだ、だから、また新しい薬も出るわけでございますけれども、一体どこまでこの問題が発展をしていくのかということがあるわけでございます。ペニシリンの効き目というものが天下無双だと言われた時代がありますけれども、ブドウ球菌に対する十分な効果というものは、いまでは八五%はもうだめだと言われておるわけです。そうじゃないですか。そういうような数字は近いのですか。あるいはまた、ストマイでも結構ですけれども、ストマイでも耐性菌が非常に強くなって、サルファ剤と大体同じような状況になるのではないだろうか、こう言われておりますが、その点はどうですか。簡単でいいです。
#85
○上村政府委員 いま御指摘になりましたように、昨日の審議会でサルファ剤について、このサルファ剤というのは、抗生物質が出る以前は細菌感染症に対するきわめて意義の大きい、役割りの大きい薬だったと思いますが、しかし、避けがたい耐性菌というのが出てまいりましたし、同時に、新しい抗生物質が出てきましたので、そういったものは効能範囲というものをうんと狭めて差し支えないではないか、むしろ狭めるべきであるというふうな判断があったわけでございます。
 それで、いまお話しになりましたようにペニシリン、このペニシリンは抗生物質で最初に開発されたものでございますが、その最初に開発された抗生物質というのは、私ども、医薬品の再評価の過程で、最初にもうすでにこれは有用性がないということを言ったのは、そういった耐性菌の出現なりショックという副作用があったからでございます。したがいまして現在、かって活躍しましたペニシリンなりストレプトマイシンなり、あるいはクロラムフェニコールなりテトラサイクリンというものは、どうしても耐性菌がたくさん出ておりますので、新しい抗生物質、たとえばセファロスポリン系の抗生物質に変わってくる、こういうような、何と申しますか、対策を繰り返しておるということになるわけでございます。
#86
○草川委員 いま局長の方からそういうようなお話があったわけでございますけれども、いずれにしても、日本は基準が少し甘いと私は思うのです。私ども、海外に旅行した人あるいは海外の出張員の話を聞きますと、外国では抗生物質はなかなか打ってくれぬと言うのです。たとえばアメリカでは、クロマイについては非常に副作用が多いというので、薬事委員会が重いサルモネラ菌中毒症に限って使用するということを認めておるようです。ところが日本においては、私どもの資料によりますと、毎年大体三百万人ぐらいに投薬をされておるわけです。ところが、チフス菌の患者というのは年間四百人ぐらいしかいないのですよ。だから、それ以外の方々にも非常に多量に投薬をされているわけです。
 そこで最初に戻りますが、日本化学療法学会、非常に権威のある先生方のお集まりだということを厚生省は認めておるわけですが、藤井教授の話によりますと、抗生物質というのは最近では経口剤で非常に伸びておるというのですよ。たとえばクロラムフェニコールでもテトラサイクリンでも、マクロライド系でもそうですけれども、十年前の三倍ないし四倍に上っておる。しかも、これは非常にむずかしい数字でございますが、先ほど局長がおっしゃられたのでその言葉をとるのですけれども、国家検定の件数から逆算をして推計をしてみる。そうしますと、五十年の場合、年間クロラムフェニコールというのは百九十トン、テトラサイクリンだけでも百八十トン、マクロライド系の薬剤でも百七十五トン、ペニシリン系の薬剤でも百四十五トン、セファロス系で六十トン、合わせて七百五十トンというのが一年間に抗生物質で使われるわけです。国民は約一億一千万、一人当たり七グラムですよ。おじいちゃんから赤ん坊まで含めて、一年間で七グラムにわたるところの抗生物質を投与されておるわけですから、飲む人は二倍なり三倍になるわけです。
 こういうように、国民一人当たりの抗生物質の使用量がアメリカの二・五倍だというのですよ。OECDのヨーロッパ系五カ国に比べても、これは使用金額でなければ数字が出ないのでありますけれども、日本の方が多いというのです。だから、抗生物質がなぜ多いかということを厚生省はどうつかまれておるのですか。本当にそういうような患者が多いから抗生物質が使われておると思われるのかどうか、質問したいと思います。
#87
○上村政府委員 非常にむずかしい御質問であるわけでございますが、抗生物質の生産状況を見てまいりますと、これは金額表示でございますけれども、医薬品総生産額全体の傾向に比べまして高い伸び率を示しておることは事実でございます。ただ、中を見てまいりますと、数量で見ますと――数量というのは全部を網羅したわけじゃございませんで、私どもが統計的に調べ上げたものの数量でございますけれども、注射剤や軟こう、シロップ剤は増加しておりますけれども、錠剤なりカプセル剤というのは横ばいの傾向でございます。それから、その販売価格が各剤系とも高くなってきている。これは、従来使われていた薬が舞台から消えて、それから新しい薬ができたという事情によるものでございます。
 そこで、御指摘の抗生物質製剤はなぜこんなにたくさん伸びているのかという御質問でございますが、これはむしろ医薬品ということで、特に抗生物質というのは病院なり診療所で投薬されることの多い薬でございます。したがいまして、病院や診療所で相当量の需要があるから生産が伸びてきているというふうに言わざるを得ないのではないか、生産面から見ますとそう思うわけでございます。
#88
○草川委員 いまの答弁は非常におかしいと思うのですよ。それはトータルとしてはふえておる、しかも経口剤としてふえておるというわけですよ。
    〔中山(正)委員長代理退席、委員長着席〕
それは逆に、病院なら注射剤がふえるということはあり得ますよ。ところが一般的には経口剤がふえている。いま局長は横ばいだと言われますけれども、その数字について一回具体的に、次の機会でいいですから出してください。そしてそれが正確なものであるかどうか、その上に立ってまた私は議論をいたしていきたい、こういうように思います。
 そこで、いまの耐性菌の変化ということ、しかも抗生物質が非常にふえておるからこうなったということになるわけでございますが、厚生省の方は余り明確な抗生物質がふえたという理由はおっしゃりません。しかし、私は、ここに実は経済性の論理というものが医療の中にあるからふえるのではないだろうかというように話を移していきたいと思うのです。
 本来のそういうような患者が非常にふえておる、本来抗生物質を投与しなければいけない患者というのが非常にふえておる、だから抗生物質が日本に限って非常にふえておるというなら、そういう御答弁ならわかるのですよ。しかし、そういう患者は一向にふえてないわけですよ、外国に比べて特段抗生物質を投与しなければいけない患者のトータルというのは。にもかかわらず、それに対する薬だけがふえておるというところが、この根本的な問題を含んでおるのではないだろうか。医療に対する経済性の論理というものを優先させる、人命のとうとさということを忘れておるというところに、私は今日の健保の赤字につながるような問題があるのではないだろうかと思うわけであります。
 ここで私は、今度はひとつ薬の価格という問題に移っていきたいというように思います。
 午前中もいろいろとお話が出ておるわけでございますけれども、薬に差額があるということは、実勢価格と薬価基準との間に差があるということは、もう厚生省もずいぶん御存じになっておられますし、発表されておるわけでございますけれども、この中における抗生物質についての実勢価格といわゆる薬価基準との価格の差は非常に大きいのではないか。もちろんその他の例もあるでしょう。しかし、全体の量で把握をするならば、この抗生物質というものの実勢価格と薬価基準とに差が多過ぎる、こういうところは少し問題点ではないだろうか。これは私、国民の一人としての一つの意見ですから、間違っておるなら間違っておるということを数字でひとつ示していただきたいと思うわけであります。
 そこで、そういうようなことからいくわけでございますけれども、厚生省としては、いろいろと薬価問題が表面化をしておるわけでございますが、ひとついままでと違った決意でこれから対処されると思うのですけれども、この薬価問題について具体的にどういうような立場から新たに取り組まれるのか、お聞きしたい、こういうように思います。
#89
○上村政府委員 さっき御説明申し上げました中で、錠剤、カプセル剤の生産量の推移につきましては後日提出するようにいたします。
 それから、薬価基準価格と実勢価格との乖離の現状というものは御指摘のとおりあるわけでございます。ただ、これは薬価基準の制度の上でやむを得ない点が多々あると思います。御案内のように、同じ銘柄の薬でありましても取引条件によって市場価格が違うわけでございますし、それからこういった価格帯から九〇%バルクラインの方式で薬価が算定される。したがって、それ以下の薬というものがいろいろあるわけでございます。それから、従来は統一限定方式でございましたので、同じ成分の薬につきまして銘柄の相互の間で先発と後発、それから開発品とぞろぞろといったところでいろいろな価格の差がある。それから薬価基準が決められたものの時点と現在とのタイムラグ等々ございまして、実勢価格との乖離がある程度発生するということはやむを得ない点があると思うわけでございますけれども、余り大きな乖離というのは、先ほど来も御指摘になっておりますようにいろいろな弊害がある。
 そこで私どもとしましては従来から、業界に、これはメーカーなり卸が入るわけでございますが、販売姿勢を適正にするようにというふうに強く指導しておりますし、それから薬価調査、加えまして厚生省が行います、経時変動調査と言っておりますが、そういったものを厳正に行って、市場価格を的確に薬価基準価格に反映させるようにしてまいりたい。ことに、午前中もお話しございましたけれども、次回の薬価基準の全面改正からは銘柄別の薬価収載方式を採用いたしまして、銘柄間の格差というものが実際の薬価基準に反映されるように、つまり乖離を縮小するように努めてまいりたいというように考えておるわけでございます。
#90
○草川委員 銘柄別の問題についてはまた後ほど少し触れていきたいと思います。
 薬価基準については、使用薬剤の購入価格は別に厚生大臣が定めるということが健保法の規定するところにあるわけでございますけれども、ここで言うところの購入価格というものは、一体だれがどこでどういうような形で決めるのですか、薬価基準についての購入価格というのは。
#91
○八木政府委員 薬価基準につきましては、購入価格の実態にできるだけマッチするというようなことから、実勢価格に近いようなものを持ってくるというのが基本的なあり方でございます。したがいまして、毎年一回薬価調査を行う。そして薬価調査の結果というものを基礎にいたしまして薬価基準の改定を行うということでございます。これは厚生省で決めるわけでございます。
#92
○草川委員 四十八年の九月、参議院の社会労働委員会で厚生省は、いま問題になっておりますように値引きが平常行われておるならばその取引は薬価に反映するはずだ、一年に一回ずつ調査をしておるのだから、こういう答弁をしてみえるわけです。しかし、後ほど申し上げますけれども、現実には実勢価格との差というのは非常にひどい。一体、なぜ値引きというものの実態が薬価に反映をしないのかということについて反省をしてみえるわけですか。あるいはまた、銘柄別になればそういうような差というものは反映するとお考えになっておられるのですか。
#93
○八木政府委員 御指摘のように、薬価基準とそれから実際に医療機関が購入します購入価格、これが、現実には医療機関も多種多様あるわけでございますし、購入価格も非常に違っているというようなことから、先ほど来御質問に出ておりますように、薬価基準と実勢価格との差というものがあるというのは十分認識しているわけでございます。しかし、あるべき方向から見ましてできるだけこれを近づけることが必要であるというようなことで、従来の薬価調査の方法あるいは薬価基準の登載方式というのを今回改めるということで、銘柄別の調査ということによりまして従来から大きく前進するのではないかというようなことから、中医協の御了解も得まして、今回、銘柄別の調査、収載ということに踏み切って、現在作業が進められているという段階でございます。
#94
○草川委員 では後で説明をお伺いしたいのですが、実際、銘柄別になって何%ぐらい下がると予測をされてみえるのですか。たとえば過去の例だと、四十五年の八月に、品目の推移を見ていきますとマイナス三%ですよね。これは厚生省の資料ですからいいです。四十七年のときがマイナス三・九%基準が下がる。四十九年の場合はマイナス三・四%、五十年の場合はわずか一・一%より下がっていないわけです。非常に下がり方が狭いのです。今回考えられる銘柄別だと何%下がるとお考えですか。
#95
○八木政府委員 現在作業中でございますので、その数字というのはまだ公表できる段階ではございませんけれども、確かに、先生から御指摘がございましたように、最近の一番新しい薬価基準の改正の時点におきましては、五十年一月は一・一%、その前は三%台ということでございますが、銘柄別調査、銘柄別薬価基準収載ということによりまして従来以上に実態に近づくのではないかというような考え方から今回の調査が行われておるわけでございまして、私どもとしましても、まだ公表できる段階ではございませんけれども、恐らく三%とか一%という数字を上回るであろうというふうに考えております。
#96
○草川委員 多少上がるけれどもそんなに大きな期待がない、こういうお話ですね。私はそういうような過去の経歴からいっても、価格の調査方法に非常に問題がある。だからそこに力点を置いて質問をするわけでございますが、その前に、午前中は社会党の方から国立病院の話が出ましたが、つい最近、自治体病院がいろいろと調査をして、医療政策の転換についての提言をことしの二月の二十五日にやっていますね。ここの中では、薬価基準は二〇%下げろということを堂々と言っておみえになるわけです。これは簡単にでたらめな数字で言っておみえになるわけではなくて、具体的な資料を出して、そういう上に立って二〇%引きの提案をなすってみえる。ところが、いまの厚生省のお話だと、銘柄別にするからいろいろと差の問題は直るとおっしゃっておられますけれども、数字は出ておりませんけれどもそんなものは期待できぬ、こういう感じでございます。
 いまの自治体病院の数字を見てまいりますと、たとえばたくさんの、これは二十幾つかの品目がございますけれども、これは何なら大臣にお見せしてもいいのですが、塩野義のケフレックスというのが、これも抗生物質でございますけれども、薬価基準二百九十四円、最低値段五十円ですね。自治体病院で購入しておる。自治体病院の平均が百九十一円、平均で六五%です。それで、全国の自治体病院の薬価情報、いろいろな情報が流れておりますけれども、その情報だと百五十円ですね。百五十円で買いなさいということだと思うのです。ダイレクトメールの関東メディカルを見たって百七十円です。これが実態ではないだろうか。非常に数が多いわけでございますけれども、これは日本の主な抗生物質のあれですから、大臣に資料をお渡しします。委員長にも御参考までに――委員長から差し上げなければいかぬと思いますけれども……。
 これを見られても、約二十にわたるところの品目の自治体病院の購入価格が出ておりますけれども、平均して五六だとか七〇だとか五一だとか、高いところで八二なんというのもあるわけでございますけれども、私は、こういう実態があるわけでございますから、よほど厚生省は本気になって薬価の具体的な価格を調査するということを基本的に変えないと問題があるのではないだろうか、こう思うわけであります。しかも、これも後ほど申し上げますけれども、銘柄別に、品目ごとに値引きをするという方法もありますし、それから総トータルで値引きをするという方法もあるわけでありますし、かつて厚生省が言っておりました、禁止をしておる現品添付というものだってやはり現実にはあるわけですよ。そういうようなものが実際は薬価基準には反映していないんですよね。
 でございますから、午前中に、大臣が一部負担の問題について発言をしたことについては非常に勇気のある発言だというふうなことをおっしゃられました。あるいはまた聞きようによっては、薬の差益というもの、たとえば少数の山間僻地のお医者さんでも基準以下で買っておるとするならば問題があると言われるような意味での発言があったと思うのです。しかし私は、お医者さんに利益がいっておるからけしからぬというような形でこの健保問題の赤字がすりかえられないようにしてもらわぬといかぬと思うのです。根本的には、日本の全体の医薬業界を含め、厚生省も含めて、薬という問題について、これはわれわれとしても国民の薬好きということをある程度反省しなければいかぬと私は思うのですけれども、いわゆるあるべき方向というものは基本的に考えませんと、だれが悪いとかだれがいいとかという言い方でいくと、これは本当の解決にならぬと思うのです。私は、お医者さんは公共性があると思うのです。夜中に二回も三回も、二時や三時に、子供の救急患者等があって起きられる。これは大変なことだと思うのです。それが二八%というような言い方で言われておるわけでございますけれども、もっと根本的にお医者さんの公共性ということも考えながら、医業の差益というものについては、抜本的に、それをお医者さん側にも取っていただくようなことに合意をしなければいかぬわけですね。
 それには、薬価の基本的な情報というものが非常に惰性に応じておるのではないだろうか、この惰性に応じる薬価調査のあり方についてお伺いをしたいわけでございますけれども、これは午前中にも多少出ておるわけでございますが、銘柄別になると収載品目が約五千品目ほどふえると言われております。五千品目もふえて、実際問題としてバルクラインが引けるかどうか。これは現在までの調査でどの程度のパーセントでバルクラインが引けておるか、お答え願いたいと思うのです。
#97
○八木政府委員 現在作業中でございますので数値をお示しする段階ではございませんけれども、前回の改正時点におきましても、調査対象の販売総金額に対しまして約八〇%以上の品目についてのバルクが引けておるというようなことでございますので、今回は銘柄別ということでございまして、これ以上の比率で引けるのではないかというふうに考えております。
#98
○草川委員 きょうはちょっと時間がないので触れられないと思いますけれども、数字は非常に古いのですが、薬価調査の実際上は、全体の約七分の一に当たる千七十品目しかバルクラインを引くにたえなかったということが、昭和四十四年の七月の日本医師会雑誌の「薬価調査に関する打合会の経過とこれに対する日本医師会の見解」、この中に出ておるのですよ。ちょっと古いのですけれども、実際はわずか七分の一ですよ。いまのお話だと八〇%だ。えらい食い違いがあると思うのですけれども、この点はいかがですか。
#99
○八木政府委員 私が申し上げましたのは販売金額の総額に対しての品目ということでございますので、昭和五十年の薬価基準改正におきましては八一%でございます。ただし、調査対象品目数については約二〇%ということでございます。
 それから、先ほどちょっと御説明不足で、補足さしていただきたいと思いますけれども、今回の調査におきましては、従来は取引件数五十件以上ということでございましたが、三十件に落としておりますので、バルクの引けるというのがそういう意味からもふえているのじゃないかというふうに思うわけでございます。
#100
○草川委員 いまおっしゃられた二〇%の方が重要だと思うのですよ。だから全体の実勢というものの把握が薬価に反映していないわけです。いないと断定することは問題かもわかりませんけれども、とにかくそういうことなんです。そこらあたり、最初のスタートが間違っておるわけですから、そのスタートをどのように改善するかということをぜひ当局は考えていただきたいと思うのです。
 それで調査方法でございますけれども、現実の今回の銘柄別の調査でございますけれども、自計調査と他計調査があるわけです。実質的には、メーカー系列の卸問屋の方々に自主的に記入をしていただくというのが主だと思うのです。それに対して厚生省側が、ある程度点検の意味でいわゆる他計調査というのをやられておるのではないかと思うのですが、そういうことについてちょっと私はレクチュアで質問したら、そうではないとおっしゃられました。厚生省は厚生省独自の調査で、必ずしも点検をするという意味じゃないというわけです。だから、主たる調査というのは結局卸問屋さんが自主的に価格を記入するということなんですが、それは信憑性があるのかないのか、お聞きしたいと思うのです。これは大臣から答えてください。
#101
○上村政府委員 ただいま御指摘になりましたように、薬価調査そのものは自計方式、その対象になりました販売業者なり医療機関――病院、診療所でございますが、そこに書いてもらうという方式をとっておるわけでございます。これは、対象になります販売業者が四千を超えますし、対象になります病院、診療所が千三百近い、そういう量が多い上に、調査内容が専門にわたりますので自計方式でやっております。そこで実施に当たりましては、この調査の対象になります病院や診療所あるいは卸業者に対しまして、調査の目的なり趣旨は十分説明して協力を得ておるつもりでございます。もちろん、自計調査と他計調査を比べました場合に、信憑性の面でより他計調査の方がまさるという点が残りますのは、これはやむを得ないと思っております。
 そこで、いまも御質問の中にございましたけれども、同じ取引というのを、販売面、つまり卸のサイドと、それから購入面、買っている病院、診療所のサイド、両方から調査をいたしまして相互に突き合わせをするというのが一つ。これが点検ということになるのじゃないかと思います。それから、薬価調査の時期とは別の時期に、厚生省の職員によりまして経時変動――時間が経過して価格が変動するという意味でございますが、経時変動調査を行いましてそれを補完するというふうにいたしておりますので、全体として見ました場合に、薬価の算定というのは適正に行われているというふうに考えておるわけでございます。
#102
○草川委員 薬価の調査が適正に行われていないという答弁をいま局長は実質的に言ってみえるのですよ。そうでしょう。点検をするということは、実際に点検をされてみえぬわけでしょう。いわゆるメーカーから上がってくる、問屋から上がってくる調査について、その一枚一枚について、厚生省がデータで、自分が歩いてチェックしていく、そういうことをやってみえぬわけですよ。だから信憑性という問題については非常に問題がある。だからこそ現実に価格と実勢価格というのは差があるのですよ。
 この調査の方法ですけれども、これは法的なあれは別にありませんね。法的な権限というのですか、違反をしたときはどうだとか、あるいは記入しなかった場合の罰則規定とか、そういうものはありませんね、協力義務というものについては。
#103
○上村政府委員 お話しのとおりでございまして、最初は医療機関の購入価格を中心に調べておったわけでございますが、その後、卸サイド、売る方のサイドから調べよう。そして、売る方のサイドと買う方のサイド、両方調べようということでございますが、いずれも法律に根拠のない、調査客体に協力をお願いしてそれで調べておる調査でございます。
#104
○草川委員 だから、いまお話を聞けば聞くほど問題があるわけです。
 そこで、調査期間というのは何カ月ですか。一年間の間で調査をするときの調査対象の月間は。
#105
○上村政府委員 一カ月でございます。
#106
○草川委員 一カ月とおっしゃられましたけれども、三十日間における、一日から三十日の暦の間の薬についての価格を調査しておるのですか。
#107
○上村政府委員 たとえば昨年は四月に薬品調査をしたわけでございます。年に一度薬価調査を四月にするようにというのが中医協の建議でもあるわけでございますが、四月に調査をいたしますのは、四月に取引されました薬価基準収載薬品について、取引の量と価格というのを昨年の場合には五月に調べたということでございます。
#108
○草川委員 具体的なことをお答えにならぬわけですけれども、実際は調べている範囲は一週間でしょう。一週間分の価格を調べて、それを八倍にしておるわけでしょう。それを称して一カ月分と言われておるのじゃないですか。お答えください。
#109
○上村政府委員 それは、昨年の薬価調査につきまして薬務局長名で各県知事にお願いいたしましたときに言ったわけでございますが、そういうものもあるわけでございます。と申しますのは、薬価調査の販売サイドの調査を行うに当たりましては、事前に全販売業者を対象にいたしまして予備調査を実施して、病院や診療所へ納入している実績があるかどうか、それから販売量を調べる。それから、その調査結果に基づきまして、一カ月間の取り扱い品目数の多い販売業者については、その調査の事務の負担が過大になるのを防ぐために調査期間と調査品目を限定して実施しておるわけでございまして、いま御指摘になりましたのは千品目以上薬を取り扱っておる販売業者、これはアトランダムに八つに分けまして、各グループごとに、その月を一週から四週までに分けましたそのどれかの一週間に、内用薬を中心とするグループ、それから注射薬、外用薬を中心とする品目、それを調査する。したがってこの場合の抽出率は八分の一になるわけでございます。それから五百品目から千品目未満の医薬品を取り扱います販売業者というのは、これは四つに分けましてやるわけでございますので、それで抽出率が四分の一になる。それから五百品目未満の医薬品を取り扱う販売業者につきましては、一カ月間全品目について調査をする。こういうふうなやり方をしておるわけでございます。これは結局は、大量に取引をしております販売業者につきましては、一カ月べたに調査をするということは事実上不可能に近いと考えたからでございます。
#110
○草川委員 事実上不可能だというようなお答えがあったと思うのです。私も、実際に非常に多品目ですし大量ですから、どういうような調査がいいかというようなことについては、具体的な提言をただいまのところはあれでございますけれども、しかし、一年間、三百六十五日の間にわずか一週間ですよ。しかも、その一週間の対象という月は現実には予告してあるわけでしょう。不意に行って調べたわけではないのですよ。予告をしておいて、一週間分のデータを出しなさい。しかも、今日はコンピューターになっているわけですから、いろいろとこうですよと言ってインプットする、予告をするわけですよ。そうしてコンピューターに入れて予告をしておいたデータがアウトプットされて出てくるわけですよ。そんな予告をしておいて、調べますよ、調べますよと言っておけば、卸にしたっていまの卸は大体はメーカー系列でしょう。メーカーだって厚生省の退職者の人がずいぶん入っているわけですから……。これはいやみな話ですから別にしておいてあれですけれども、本当の調査というスタートが間違っておるということを私は言いたいのですよ。やるならやるで、一週間ではなくて、少なくとも三カ月やってくださいよ。三カ月連続調査をしたら実勢価格は、コンピューターだから出る、ごまかしはきかぬわけですよ。そんな幾ら予告をしたって、三カ月なり四カ月連続調査をしたら本当の売り値は出ますよ。幾ら赤伝票を切って後でマイナスの値引きをするということをやったって、いまのコンピューターという機械ならばごまかしがききません。それは一週間なら幾らでもやれるのですよ。それを三カ月に変える気はないかどうか、お聞きをしたい。
#111
○上村政府委員 ある期限の間である一月を選びます場合には、中医協では四月と言われたわけでございますが、一番平均的な取引量のある月、たとえて申しますと十二月というのは必ずしも妥当な月であるかどうか疑問でございますし、一月のように年の初めの方が休んでおるような月というのは避けて、通常想定されます取引の多い四月というのを選んでおるわけでございます。そして、一カ月やるのも並み大抵じゃございませんので、千品目を扱うものにつきましてはこれを一週間分ということにせざるを得ないような状況でございます。先ほども御指摘になりましたように、これは卸売業者あるいは病院、診療所の協力を得てやっております調査の関係上、その業務の大きな支障になるようなことを強いてまで調査を実施するというのは、非常にむずかしいのではないかというふうに思うわけでございます。
#112
○草川委員 ますます厚生省の答弁、頼りなくなってくるわけですよ、いまの話を聞いておると。基本的な解決にならぬでしょう。話を聞けば聞くほど、調べるのは量が多くて大変だ、大変だということを言っておるわけですよ。大変なるがゆえに、資料は正確な数字を出さないと抜本的な改正なんかできぬじゃないですか、そんなようないまの答弁だったら。大臣、一遍答弁してくださいよ。
#113
○渡辺国務大臣 私は素人でよくわからないのですが、わからないのだけれども、それはあなたの言うように、実勢価格とかなり乖離があるということは常識的に言われておる、薬価調査をしてみたら数%しか開きがない、納得はいかないよね、これはどうしたって。どういうところに原因があるのだという質問が当然あってあたりまえだと思うのですよ、やはりそうなりますと。
 いま局長の言っているのは、うそを言っているのではないのです。これは本当のことを言っているのですよ。いままではそうだった。ともかくわずかな薬務局の人数で、ある一定の時期に何千種類という薬の値段を調べなければならぬということになると、いろいろ問題点があるのですよ、人の問題もあるだろうし。それから、あらかじめ予告して、その日やる、やると言っておけば伝票をぴしゃっとそろえるのはあたりまえじゃないか、これももっともな話だと思う。だから、要するに経時調査というものをやって、後から追っかけてみると下がってしまっている。
    〔委員長退席、住委員長代理着席〕
だからそこを修正する。やっているわけですよ。だから、そういうような問題点については、限りある人手の中だけれども、予告制がいいのかどうか私も疑問なので、皆さんの御指摘を謙虚に聞いて、人手の話もあるのだが、できる限り私は正確なものがつかめるようにやらしたい、そう思っております。
#114
○草川委員 大臣、非常に申しわけないのですが、大臣は非常に第三者的な御発言ですけれども、私が先ほど言ったように価格を決定するのは大臣なんですよ。人ごとのようなことを言ってもらっておっては困る。どうなんですか、それははっきりしてもらわなければ困る。
#115
○渡辺国務大臣 人ごとでなくて、ともかく私は価格を形式的に決めるかもしらぬけれども、私が一々全部調査するわけではないわけですから、実態が全部わかっているわけでもない。私は正直な話をしているわけです。だけれども、あなたの言うことはもっともな点が多いから、そういうように直すように、限りある人の中だけれども努力いたします。人ごとじゃないのです。
#116
○草川委員 それはそれでいいですけれども、いま明らかになったような実態で過去の薬価が決まっておるということは、実際は調査して決まっていないのですよ。だれかのメーキングですよ。相場を見て、そしてメーキングして七千品目か八千品目になる価格が決まっておるというわけですよ。だから、そこに厚生省の当局としての反省というものがない限り、私は今後の本当の解決というのはないのではないだろうか、こう思うわけです。そういう反省を実際当局はしておみえになるのか。いまおっしゃられたように、限られた人数だからできぬならできぬでいいと思うのですよ。だったらどうあるべきか。大臣が決められるのですよ、この価格というものは。そして経済性という問題も中に入ってくるわけですから、膨大な国の予算にも影響してくるわけですよ。私は簡単なものではないと思うのです。基本的な反省というものは必要だと思うのです。これは要望として申し上げておきたいと思うのです。
 そこで、これは非常に問題があることでございますけれども、調査票の取引の量と価格ということで、実はバルクラインオンライン方法という問題について私はきょうは主として三十分ぐらいやるつもりだったのです。しかしもう時間がなくなってしまったので、価格についてのオンライン方法、あるいはテレスコープ方式というものに話を移していきたかったわけでございますがそれに入れませんので、ひとつ薬価調査の調査月の取引の量と価格について、たとえば決済の条件や取引の条件、手形の期間だとか支払い期間、それからいままでの調査の中でもサンプル調査、サンプルを添付するという――添付という言葉にはならぬと思うのだけれども、とれなんかは薬価に実際は反映をしておったのかどうか、少しお聞きをしたい、こういうように思います。
#117
○上村政府委員 薬価調査に私どもは真剣に取り組んでおるわけでございますが、その薬価調査の対象となります品目というものは、価格が決まり、その価格で受け取るということを前提に売ったもの、それが対象になるわけでございますから、初めから代金を受け取らないサンプルというものは薬価調査の対象にしておらないわけでございます。
#118
○草川委員 そうしますと、その納めた後の値引きは薬価調査に反映するのですか。
#119
○上村政府委員 大病院の中には、いわゆる総価値引きというやり方で購入価格を決定する場合があるというふうに聞いておるわけでありますが、その場合でも、卸売業者では、一括値引きであっても単品ごとの価格というものを積み上げて全体の値引き額を決定する場合が多いわけでございますので、その場合にはその単品ごとの価格というものを調査票に書き入れるということはできるのじゃないか。
 それから、医薬品の価格のタイプとしましては、ほかの商品と同じでございまして、取引数量なり決済方法、そういった条件でいろいろ分かれておるわけでございます。したがって、長期の手形で決済されるような場合は当然金利も価格形成に影響を与えるというふうに考えられますので、そういった価格は薬価調査票に書かれるということになると考えております。
#120
○草川委員 総価値引きの問題について先ほどお渡ししました全国自治体病院協議会の値引きの実態表の中で、「薬品購入の値引の方法」として、とにかくトータルで値引きをする場合と単品ごとの値引きをする場合の構成の比率がありますけれども、総価値引きと単品値引きの併用が二三・八%、それから単品ごとの値引きが七一%、そういう数のところがとにかく後で値引きされるというか、そういうものも含まれておるわけです。
 これは時間がないので最後の詰めができませんけれども、いま厚生省から薬の価格の決定についていろいろなお話がございましたが、私どもが納得のいく、満足をする答えというのは実際引き出せませんでした。大臣は本会議の中でも、銘柄別収載に移行すればこの問題は解決するじゃないかとか、あるいはきょうの午前中にもそういうようなことをおっしゃられましたけれども、少なくとも現在の体制である限りはそんなに大きな期待は私はできないと思うのです。もちろん値引きをしたからといって健保財政に関係がないのだ、技術料に振りかわるのだという前提がございますけれども、決してそうではない。そうではなくて、一体何が正しいかということで、お互い医療機関の方にも納得していただく、公共性の上に立って国民の命を預かっていただく、あるいはまた厚生行政は厚生行政としてわれわれ国民に理解できる措置をとってもらうというようなことになっていかないと、本質的な解決にはならぬと私は思う。これは今度の国会だって結論は出ないと私は思うのですよ。どうなるか知りませんけれども。
 そういう意味で、最後にこの価格決定の問題等を含めて大臣の見解を承って、終わりたいと思います。
#121
○渡辺国務大臣 大変いい質問をいただきまして勉強になりました。今後とも、何も委員会の席だけでなくたっていいのですから、あなたの知っていることも教えていただいて、正しいものは正しく調査ができるようにしてまいりたい、かように考えております。
#122
○草川委員 以上で終わります。
#123
○住委員長代理 次に、永末英一君。
#124
○永末委員 私は、歯科の問題についてお伺いをいたしたいと思います。
 一昨年、いわゆる差額問題が非常に問題になりましたときに、歯科医師に対しまして苦情が続出をいたしました。これは現在どういう程度になっておりますか、まずお伺いいたします。
#125
○八木政府委員 歯科差額の問題につきましては、社会的にも大きな批判を受ける問題になったわけでございまして、そういう意味からも、私どもは各県に対します指導なりあるいは歯科医師会に対する協力、自粛措置というものを要請したわけでございますけれども、最近は苦情相談件数というのは一ころに比べましてぐっと減ってまいっておりまして、やや鎮静化したのではないかというふうに思われるわけでございます。数字の面で申し上げますと、五十年三月におきます苦情相談件数というのは八百二十三件でございます。それが一年後の五十一年の三月は九十七件、それから最近の一番新しい数字の五十二年の三月では五十七件ということで、五十年の三月の八百二十三件ということで社会的にもかなり大きな問題があり苦情が殺到した時点から比較いたしますと、鎮静化してきたのではないかということは言えようかと思います。
#126
○永末委員 先ほど、最初のころと比べるとやや鎮静したというのですが、ややというのは、八百二十三から一年たって九十七、もう一年たちまして五十七件となった。ややですか、非常にですか、どっちですか。
#127
○八木政府委員 五十年の三月に比べますと、おっしゃるとおり非常に減少しているわけでございます。ただ、五十一年の一月から五十二年のこの辺の動きで申しますと、五十一年は六十件とか九十件とかという数字がございましたので、最近でまいりますと、そういう意味から申しましてやや鎮静したということ、確かに二年前に比べますと非常に変わってきているということは言えようかと思います。
#128
○永末委員 この差額問題に関しまして、全国の歯科治療を受けている人々からいろいろな批判が当初出ました。それが苦情ということになって出ておるわけでございますけれども、その件数はいま御報告がございましたように素直に、八百二十三からその五%程度になっておるわけですから、それは非常にということだと私は思いますが、それは厚生省の指導よろしきを得ただけであるのか、歯科医師側のみずからの反省等々自覚による点が多いのか、どっちですか。
#129
○八木政府委員 減少してきました理由として、いろいろな理由があると思います。一概にどういうことで減少したということは言い切れないと思います。あれだけ社会的な関心も高まった事態でございますので、そういう意味からも国民の歯科医療に対する関心というのが非常に高まってきた。かつて問題になりましたように、不当な料金というものはなかなか国民の側も納得しないし、歯医者さんの方も納得しないというような問題もあろうと思います。あるいは役所の指導もありました。それから歯科医師会におきましても目安料金を設定するというようなことで自粛措置をとったということ。さらに国民経済も高度成長のころと大きく変わってきた。いろいろな要因があろうかと思いますけれども、それらの要因というものが総合的に出てまいりまして、先ほど申し上げましたように、かつてのような大幅な苦情というものはなくなってきたということは言えようかと思います。
#130
○永末委員 歯科医師登録をしておる医師の数、約三万八千だと思いますが、その数と比較しますと、なお苦情の対象になっているのは五十件余りというのは、全体的な歯科医師と患者との関係においては苦情の問題はきわめて鎮静化いたしておると見られませんか、いかがですか。
#131
○八木政府委員 先ほども申し上げましたように、社会的に大きな問題になった時点におきます私どもの調査では八百件、それが十分の一以下になっておるわけでございますから、そういう意味におきましては苦情件数というのは大幅に減少しているわけでございまして、そういう意味から申しますと、歯医者さんと患者さんとのトラブルあるいは人間関係というものは、前のような事態とは大きく変わっているということは言えようかと思います。
#132
○永末委員 この差額問題に関する歯科診療を受けておる人々のいわば世論を背景に、厚生省は中医協とともにこれらいわゆる差額問題の解決に当たるわけでございますが、昨年三月二十三日の中医協は答申書を時の厚生大臣に出しております。ただし、この中医協には歯科医師会の代表は出席していないという段階でございますが、そこでいわゆる差額徴収に関する通達は廃止をするのだということ、そしていわゆる歯科の差額徴収というのは歯科材料費のみに限ることというような諸点を決められたわけでございまして、現在どうなっておるのですか。
#133
○八木政府委員 当時、特に四十七、八年ぐらいが一番中心だったと思いますけれども、歯科差額の問題が大きな問題になったわけでございまして、社会的にも非常に反響が大きかったというようなことから、四十九年におきまして、当時齋藤厚生大臣のときでございますけれども、歯科差額のあり方ということにつきまして中医協に諮問申し上げた。その後、中医協が中断したというような事情もございましたが、昨年の三月におきまして歯科差額の問題につきましての中医協の答申が出されたわけでございます。先生お話しのように、昨年の三月二十三日の中医協の答申、これは材料差額というものを基本と考えるべきであるというような基本線の答申でございますが、その答申の際には、御指摘のように歯科関係の委員の方は御欠席のままで中医協の答申が行われたわけでございます。
 そこで私どもといたしましては、中医協の答申、歯科医師会の代表の方お二人は御欠席ではございましたけれども、少なくとも中医協の答申が出たわけでございまして、行政当局としましては中医協の答申を尊重するという方向で、いかにこれを行政の上に消化するかということが大きな問題であったわけでございます。ただ、現実問題といたしまして歯科医師の代表の方のお二人がおられない状態におきます答申であった、さらに、現実に歯科問題を直接第一線で取り扱われますのは歯医者さんであるわけでございますから、歯科医師会の協力というものもどうしても必要であるわけでございまして、現実に行政の面、実施の面になってまいりました場合に混乱が起きるということを避けるというような意味から、歯科医師会との話し合いも行われたわけでございまして、そういうような経過を踏まえまして、中医協の答申をまず尊重する。したがって、過去の差額問題につきまして大きな混乱の基礎になりました従来の通知というものを廃止するとともに、新たに、歯科医療の本来のあるべき姿としましては、中医協の方向を基本の方向とするという考え方の通達を出したわけでございます。
 ただ、それを完全に実施いたしますためには必要な条件の整備が要るのではないかというようなことから、条件整備を待って初めて完全に実施できる。しからばその条件整備をどうするかというようなことで、昨年の八月に中医協を再開いたしたわけでございます。この時点におきましては歯科医師会の代表の方も再び参加いただきまして、ここで今後の必要な条件整備をどうするかということで、非常に精力的に中医協におきます審議が行われたということでございます。
 昨年の八月から十一月にかけましての中医協の審議におきまして、各側からのいろいろな意見が出たわけでございますけれども、最終的な各側の意見の調整というものがまとまらないというような段階で今日に至っているということでございまして、国民の歯科医療の正常化を図りますことは最も重要なことでございますので、私ども、できるだけこの意見の調整というものが図られ、歯科医療の正常化というものが確保されていかなければならないのではないかということで、せっかく努力をいたしているという次第でございます。
#134
○永末委員 いまお話がございましたが、保険局長名の昨年七月二十七日の都道府県知事あての通知が出ておりますが、その中にちょうどいまあなたの言葉の「所要の諸条件の整備」を待って「歯科材料費の差額に限る差額徴収の実施」と、こういう言葉がございますが、厚生省で考えておるその所要の諸条件というのは何ですか。
#135
○八木政府委員 当時、中医協の御答申というのは、直ちに材料差額を実施すべきであるというような御議論があったわけでございます。私どもはいろいろ中医協の御答申はいただいたわけでございますけれども、少なくとも過去十年以上にもわたりまして差額徴収というような考え方で行われたということで、一挙にこれを廃止するということになりますとやはり混乱があるというようなことから、必要な諸条件の整備、これは中医協におきます各側のコンセンサスを得まして、御納得のできたところでこの問題を実施すべきではないか。必要な諸条件の整備の基本的な問題としましては、いまは皆保険でございます。したがいまして、必要な医療というものは保険の中で取り組んでいくというのが基本的なたてまえであるわけでございます。そういうような際に従来差額というようなことで、一部保険で取り組み、一部は差額というような形で行われていたというような問題もあるわけでございますし、さらに、歯科医療の中では保険の中で取り組んでおらない問題もあるというようなことで、そういうような問題をどういうふうに保険の中で取り組んでいくかというような問題もあります。さらに、歯科医師会からのお話もございましたような技術料の評価ということもあるわけでございまして、歯科医療の健全な経営が成り立ち、しかも、国民皆保険のもとにおきまして、いかにして必要な歯科医療というものを保険の中で取り組んでいくかという、この辺につきましてのできるだけの御議論をいただき、意見の一致を見た上で実施いたしたいということから、材料差額方式の答申が出ました後におきまして直ちの実施というのはいろいろな意味で御議論があるのじゃないかということから、必要な条件整備につきましての関係者の間の御議論を煮詰めていただいて、これの解決を待って完全実施をいたしたいという考え方でございます。
#136
○永末委員 いまあなたのお話がございましたように、その必要な諸条件というのは、歯科診療の実態の中に、一部保険で賄い、一部差額という形で賄っているものや、あるいは全く保険にかかわらない診療を行っているものや、あるいはまた全体として歯科の技術料に関する問題、さらにまたそれを含めながら歯科診療というものが経営として健全にやれるかどうか、これらについての意見が中医協ではまだまとまっていない、こういうことですか。
#137
○八木政府委員 中医協におきまして関係者の間からいろいろな御意見が出たわけでございます。しかし、その御意見を現実に行政の上で実現するということになりますと何らかの措置ということが必要なわけでございますけれども、その措置につきまして関係者の間でいろいろな御意見が出たわけでございます。かなり近寄った、歩み寄った点もあるわけでございますけれども、最終的な御意見の一致というまでには至らなかったというような状況でございます。
#138
○永末委員 私はひとつ技術料に関する点で見解を伺っておきたいと思いますが、過去二十年間にわたる国民総生産と一般診療費の比率並びに国民総生産と歯科診療費の比率、これの推移を見ますと、一般診療におきましては、その率は昭和三十年で二・三四%、十年たちまして昭和四十年三・〇七%、昭和五十年三・九五%、言うならばだんだんとその比率は上がっているわけです。ところが歯科診療に関しましては、昭和三十年が〇・三五%、昭和四十年が〇・三五%、昭和五十年が〇・三七%、全く横ばいで推移をしておる。一般診療におきましても歯科診療におきましても、二十年という月日の間にはいろいろな新しい技術が導入されているわけでございます。そしてまた、医科にしろ歯科にしろ、当初の点数の設定で技術というものが十分に組み入れられていないというので、医科側も歯科側も技術の適正な点数化ということを要求してまいったことは当然のことであり、周知の事実であります。にもかかわらずいまのように、一般診療におきましてはその比率が緩やかではございますけれども上がり、歯科診療におきましては全く横ばいであるということ、その数値から判断をいたしますと、一般診療におけるほどには歯科診療における技術の評価は上がっていない、こういう結論が出ると思いますが、いかがですか。
#139
○八木政府委員 診療報酬につきましては、医科、歯科を通じましてやはり国民経済力というものを勘案するというようなことから、国民経済が伸びてまいりますれば、それに伴いまして診療報酬の改定は行われるべき方向であるということは間違いないわけでございます。ただ、ちょっと三十年代からの古い数字は手元に持っておりませんけれども、ここ三年間におきます医科、歯科の伸び率を見てまいりますと、GNPの伸び率が四十八年度は対前年度で一二二%に対しまして、医科の医療費は一一六・七%、歯科医療費は一一〇・九%、四十九年度におきましては国民総生産の伸び率が一一七・九%に対しまして、医科は一三五・八%、それから歯科医療費については一三九・六%、五十年度におきましてはGNPが一〇九・七%に対しまして、医科が一二〇・八%、歯科が一一六・七%というようなことで、医科と歯科、いろいろな事情がございまして、疾病構造の変化とか給付率の改善とか、いろいろ影響が違う面もありますけれども、ここ三年、四十八年度から五十年度のGNPの伸びと比較しました場合に、医科、歯科、特に歯科の方が劣っているということではないというふうに思います。
#140
○永末委員 それは、四十八年の年と四十九年の年は、世界におきましてもGNPが問題になった年でしょう。確かに四十七年度と四十九年度の間で四十八年度は落ち込んでいるわけですね。だからそういう近視眼的な統計をとらないで、もっと大きな流れで統計をとって判断を願いたい。
    〔住委員長代理退席、斉藤(滋)委員長代
    理着席〕
 もう一つ申し上げますならば、一般診療におきましてはいろいろなシステマチックな診療方法がとられておる。したがって、患者を扱う頻度というものがきわめて合理的に高まるような仕掛けになっておるわけですね。歯科の方はどちらかといいますと歯科医師の筋肉労働によってやっておる部面があるので、その頻度が高まらない、こういう基本的な性格の差があろうかと私は思います。そのことで、いまのようにGNP対比になりますと歯科の方は横ばいにならざるを得ない。十年以上前は違いますよ。しかしここ十年の間はそういう変化が行われているのではなかろうか。そういう意味では、頻度というものを考えました場合に、一般診療に従事する医師と歯科診療に従事する歯科医師との社会的な存在としての評価、これが技術料に転化してくるべきではないか、こう私は思います。そういうお考えはございませんか。
#141
○八木政府委員 技術料をいかに評価するかということでございますけれども、私どもも、医科、歯科を通じまして技術料をできるだけ評価するというような方向で、前回の改正時点以降におきます人件費なり物件費なり国民経済の成長ということを考慮いたしまして、診療報酬の引き上げ、改定ということを行っているわけでございます。先生御指摘のような問題点もあろうかとも思いますが、昨年の診療報酬の改定におきましてはそういうような面もございまして、医科につきましては九・〇%の引き上げでございますが、歯科の場合には、たまたま中医協の二人の委員が出席されなかったというような事情もございましたが、医科が九・〇%に対しまして歯科につきましては九・六%の改定が行われたというような状況でございます。
#142
○永末委員 少し細目にわたりますが、わが国におきます点数の設定と外国におきます点数の設定とに、いかにも大きな段落がございますので、この辺に対する見解を明らかにしておきたいと思います。
 歯科治療の中で細かい技術を要しますのは歯内療法でございますが、その中で根管充填一根につきまして、日本の保険点数による料金は四百二十円であります。ところが、同じものにつきましてスウェーデンでは四千八百二十円、これは七六年四月の改定によるものでございますけれども、そんなに変わるものか。日本人だってスウェーデン人だって同じことじゃないかと思うのですが、十分の一以内の点数をなおわれわれが持っておる理由というのはどういうことなんでしょうか。
#143
○八木政府委員 診療報酬の点数の中の技術料の見方、これは個々の点数表を諸外国と比較しました場合に、歯科だけではございませんで、医科につきましても同じような御議論があろうかと思います。いずれにいたしましても、個々の点数表の技術料という点の問題、具体的に一つだけ取り上げますとあるいはいろいろな問題点があろうかとも思いますけれども、やはりそれぞれその国におきます医療制度なりあるいは国民経済力なりあるいは所得なり、いろいろな背景というものがあろうかと思います。そういうような中で全体としましての診療報酬の体系ということが成り立っているわけでございます。もちろん、診療報酬のいまの体系がベストであるということではないわけでございまして、いろいろな問題点があるのは間違いないわけでございます。ただ、たまたまある特定の行為につきましての点数評価ということになりますと御指摘のような差というものはあろうかと思いますけれども、全体の点数表なりあるいは国民経済なりあるいは医療制度なり、そういう面も御判断いただきたいというふうに思うわけでございます。
#144
○永末委員 これは哲学の問題ですが、確かに診療報酬体系というものはありますよ。しかしながら、その体系は一つ一つの個々別々の与えられている点数から組み合わされているものである。そして、一つ一つの問題が合理的でなければ、いかにも全体が合理的にできているように見えてもそれはおかしいのですよ。砂上の楼閣みたいなものだ。
 いまの問題を取り上げましたのは、たとえばあなたが散髪をしに行きますと、安いところで二千円取られますな。五十分ぐらいかかるでしょうね。五十分かかるといたしますと、一分間の料金はこれで四十円ということになりますね。ところがこの根管充填一根の平均所要時間、これは中医協の専門委員会でお調べになった所要時間でございますが、大分古いですけれども、昭和三十二年ですが、そのときのお調べでは大体二十分かかる。そうしますと一分間の保険料金は二十一円である。歯の中の非常に細かいところの処理、衛生的にもこれはすぐに感染根管になって痛くなりますよ。そういう技術を要するものと、われわれの外皮の一部分である散髪をやるものとを比べた場合に、根管充填の方がその半分であるというのはどこかに欠陥があるのではないでしょうかな。
#145
○八木政府委員 診療報酬点数のあり方につきましていろいろ御議論のあることは間違いないわけでございます。ただ、少なくとも診療報酬点数の中に全体の体系の面のバランスということもあろうかと思いますけれども、個々の診療報酬の引き上げの際にもちろん歯科医師会の御意見というものも伺っておるわけでございまして、どこに重点を置くかということから、それぞれの項目で見ました場合にアンバランスがあるということも事実だろうと思います。そういうようなアンバランスがあるという際には、次の診療報酬の改定の際に是正するというようなこともあろうかと思います。ただ、いずれにいたしましても、最近におきましては、政府が診療報酬の改定というものを諮問するわけでございますが、従来におきましては、中医協におきまして関係者の合意の上におきまして診療報酬の改定というのが行われておったわけでございます。いろいろそれは御不満等もあろうかとも思いますけれども、少なくとも、過去におきます中医協の御議論の際にも歯科医師会の代表の方が御出席の上で、御了解された上で、そういうような診療報酬の改定が行われたということも御了解いただきたいと思うわけでございます。
#146
○永末委員 もう一つ例を挙げます。鋳造冠。鋳造冠の保険点数は、金パラ、スタディ・モデル、歯冠形成、圧排印象、暫間被覆冠等々を合計いたしますと七千四百十円になる。ところで、この原材料、枝工料とメタル代を加えたもの、それに中間消耗材、麻酔薬等をいまの一応の時価で計算をいたしますと六千四百七十九円。すなわち、枝工料が外注になりました場合には点数で入るものが七千四百十円、それから払わなければならぬ原料費が六千四百七十九円、差額が九百三十一円。これがそれならば保険点数に含まれた鋳造冠をつくるための技術料か、こういう粗々した計算が成り立つのですが、そんなことですか。
#147
○八木政府委員 技術料の評価につきましていろいろな御意見なりお考え、あるいは御批判等もあろうかとも思いますけれども、やはり現在の社会保険診療報酬の体系の中のバランスということもある程度考えた上で現在の点数表というものが設定されているわけでございまして、御指摘の技術料が低いじゃないかという問題につきましては、基本的に従来からある問題でございますけれども、やはり国民経済力というものの中でどこまで技術料を評価していくかということが、診療報酬の中におきます技術料の評価のあり方であろうと思うわけでございます。
#148
○永末委員 いまあなたが言われました国民経済の中というのが国家財政の都合ということであっては、いわゆる国民の医療が荒廃するわけで、これは歯科も医科も同じことですね。そこに一つの問題点がある。
 たとえば、いま金パラで取り上げましたが、これを金を使ったといたしまして、金は保険と関係ございませんが、一つの鋳造冠をつくりますのに三千円ほどかかるといたしますと、大体一万四百十円ほどかかる。現在の国立大学で似たようなことをやりましたら大体約二万三千二百円見当、それ以上かかると思いますが、大体そんなところで値段が、慣行値段でございますけれども、行われている。先ほど挙げましたスウェーデンでは約三万九千円になっておる。こういうところは、その国民経済の都合というよりも、日本の歯科医師もスウェーデンの歯科医師も社会的評価は同一でなければならぬし、日本の経済力はスウェーデンの経済力と比べて劣っているわけでも何でもない、こういうことであるならば、まさに差額問題の発生するのは保険で決められた点数、それに内包している技術料が安いというところに原因があるのではないかと結論せざるを得ないわけであります。どうお考えになりますか。
#149
○八木政府委員 先ほど来お答え申し上げておりますように、個々の技術料の点数というものを比較しました場合にいろいろな御議論があろうかと思います。それから、国民の経済力を考えるということでございますけれども、医科、歯科とも、お医者さんなり歯医者さんの医業の健全な経営が成り立つということが診療報酬点数のあるべき姿であることはもちろんであるわけでございます。そういうような意味におきましても、従来から診療報酬の改定の際に、いろいろな関係方面につきまして、御意見あろうかと思いますけれども、中医協の場におきまして御審議いただき、しかもその後の人件費なり物件費なり、経済の要素なり変動というものに即応し、その中で技術料をどういうふうにさらに評価していくかということで御議論が行われているわけでございまして、いずれにしましても、中医協の場におきまして歯科の関係の委員の方に、従来から歯科診療報酬の点数表につきましては歯科医師会の御意見というものも十分伺っているわけでございます。今後とも、できるだけ技術料の評価ということについては、努力していかなければならない問題であることは間違いないわけでございます。
#150
○永末委員 あなたの方がはなはだ政治的な答弁をしておられますが、私は当委員会で、現在行われておる診療の実態だけはやはり明らかにしておきたいと思いますので、もう一つ例を挙げておきます。
 歯科診療の中で一番多く行われておるものが欠損補綴と歯冠修復であろうかと思います。これが、歯科診療行為別に点数を分けた場合、それはどの程度の部分を占めているか、百分率でどういう計算になっておりますか、厚生省は。
#151
○八木政府委員 欠損補綴等につきましては約四〇%程度というふうに考えております。
#152
○永末委員 欠損補綴と歯冠修復とを加えますと五割以上になりますね。
#153
○八木政府委員 ちょっと正確な数字は手元に持っておりませんが、御指摘のように欠損補綴と歯冠修復を加えました場合には五割前後ではないかというふうに考えております。
#154
○永末委員 そうしますと、歯科診療の保険診療の場合に、この欠損補綴と歯冠修復というのが歯科医師が従事している歯科診療行為の中の半分を占めておる。これは合理的な点数設定がないと困りますね。やはりそういう結論になる。そこで、一床八歯遊離端義歯、専門語でございますが、要するに両方に四本ずつ欠けておるというやつを保険でやりますと、これはいろいろございますけれども、人工歯、レジンであると計算をいたしまして、それに金パラ鋳造バーをかけ、金パラの鋳造鉤をかける、そういうことをやりますと大体それが一万六千九十円かかる。ところがこれの原価は、先ほど申しましたように技工に出したりメタル代を払ったり、それから中間消耗材を払いますと一万七千六百七十九円。この原価表でいきますと逆に保険の点数だけではこの原価が賄えない。千五百八十九円マイナスになるということが出てくる。それは、いまあなたは歯科医師の代表も出席して決めたのだと言うけれども、金パラの鋳造バーやあるいは金パラの鋳造鉤を新しい点数にしました場合に、なかなか意見が合わないで、言うならば実勢価格よりも低い価格を想定して点数が決められた、こういうことになりますと、これをつくらされる方はつらいですな。どう思われますか。
#155
○八木政府委員 歯科材料につきましては、現在の実勢価格にできるだけ即応するというようなことから、歯科材料の価格基準というものを実勢価格に合わして決めているわけでございます。さらに、御指摘のように歯科技工等につきましては現実には委託技工というようなことが行われておりますので、委託技工料が上がってくるというようなこともあろうかと思います。そういう面におきまして、やはり人件費の増なり物件費の増という面を考えまして、診療報酬の改定の際にはその後におきます情勢の変動というものを見ているわけでございます。もちろん歯科医師会の皆さん方から見ますと必ずしも技術料の評価は十分でないという点はあろうかと思いますけれども、少なくとも、いままでの中医協の審議におきまして、医科、歯科、同じような考え方におきまして、技術料の評価なりあるいは診療報酬の改定というものを見込んでいるということでございます。
#156
○永末委員 医科、歯科、同じように扱うのは当然でございますが、補綴というのは非常に変わった仕事、診療行為なんですね。さて、その補綴をすべて保険でやっている国がございますか。
#157
○八木政府委員 国によっていろいろでございますけれども、補綴部分を保険から除外しているという国もかなりあるというふうに聞いております。
#158
○永末委員 私は逆に聞いているのであって、保険だけで補綴を全部やっておる、そういう国がございますか。
#159
○八木政府委員 日本の場合にも全部が保険で見ていないというようなことから申しまして、従来からも差額診療というものがあったわけでございますし、保険給付外というものがあったわけでございます。補綴の場合には特殊な材料を使うというようなこともあるわけでございますので、おそらくすべての補綴を、いかなる材料を使ってもすべて保険で見るということはどこの国もやっていないのではないかと思います。
#160
○永末委員 大臣、いまのところをちょっと覚えておいてくださいね。これは重要なところなのでございます。
 さて、昨年参議院の社労委員会で、わが党の柄谷議員がこの差額徴収に関連する問題だという観点から再診料の問題を取り上げて、保険局長はそのときに「御指摘のような問題点について、今後研究問題にしたい。」と答えられている。一年たっておりますが、どんな研究をしたですか。
#161
○八木政府委員 診療報酬の問題につきましては中医協の御意見も伺わなければならないわけでございますが、再診料につきましては、現在も歯科の場合には再診料の制度があるわけでございますけれども、歯科の場合に、やはり個々の先生方の御判断によりまして患者さんが見えます回数というものも違うというようなことで、一律に再診料という形でこの問題は解決できないのではないかというようなことから、当時再診料の問題の御議論がございましたけれども、現在まだ踏み切れないというような段階でございます。もちろん現在の再診料はありますけれども、それ以上に再診料につきましてさらに考え方を変えるという段階ではまだないということでございます。
#162
○永末委員 厚生大臣、そのときにあなたの前の厚生大臣はこういう問題の取り上げ方をこの再診料問題でしておるわけです。言葉をひとつ引用いたしますと、「総医療費の中に占める歯科のシェアの微減」――この言葉はちょっとようわからぬのですが、「微減に対するリカバリーとして、今後、診療報酬改定について考えたい。」つまり、歯科診療だけでなくて、総医療費の中における歯科診療部分のシェアの問題の中に再診料問題、すなわち、医科の方には再診料が取り上げられ、それが動いておる、歯科の方も一応あることになっておりますがほとんどこれは動いていない、こういう形に取り上げられておる。そういうことが、総医療費という角度になった場合にいわば医科と歯科とが違った形、歯科から言えば不公平な取り扱いを受けておる、そういう観点からも考えなければならない問題だ、こういう考え方を前田中厚生大臣はしておられるわけであって、渡辺厚生大臣はどうお考えですかな。
#163
○渡辺国務大臣 この歯科の診療報酬の問題は、差額問題と絡んで実はなかなか複雑な問題であります。差額徴収ということが出るのには、出ただけの歴史もあり、理由もあり、差額がよけい取られたためにシェアが少なくなったのかどうか、ここらのところも全然因果関係がないとも言えない点もあるかもしらぬ。ところが最近に至って、差額を取り過ぎたせいでしょうね、あっちこっちで大変な非難が出てきたということも事実。その結果が材料費に限るというような筋論ということに、振り出しに戻ったということだと私は思います。そこで、この再診料の問題等も含めまして、私は当面医療費をどういうふうに改定するということをまだ決めておりませんが、これは中医協等との相談で、国民も納得する妥当な方向を定めていきたい、こういうように思っております。
#164
○永末委員 いま厚生大臣からお答えがございましたが、大臣にひとつお考えを最終的に締めとして承っておきたいのは、保険局長からお話がございましたが、技術料というのは単に小手先の技術ではなくて、材料というものが歯科診療の多くの部分を含むのでございますから、その技術料というのは、やはり歯科医師が歯科経営を健全にやれるような部分というものが技術にこり固まっているわけですな。そういうようなバックグラウンドを配慮して技術料は考えられるべきだ。この見解に賛成ですか、反対ですか。
#165
○渡辺国務大臣 当然、皆保険でやるということになれば本来は全部保険の中でやっていかなければならぬということですから、その保険の中の大宗を占めるものはそれは技術料であるはずでございます。したがって、診療報酬というものはいろいろなバックグラウンドを含んでそれは決められなければならない、こういうように思っております。
#166
○永末委員 先ほど厚生大臣の話の中にも、差額が発生してきた事態についての御見解が披瀝をされました。われわれ外野から見ておりますと、差額がここ十年ほど続いたために、言うならば保険診療の点数について真剣な検討が加えられずに来たのではないかと思われる節がある。しかしそれが、いまや差額というのは材料費だ、こういうことになりますと、それならそう決めてしまっていままでやってきた慣行的なやり方を打ち切れるかどうかというと、先ほど保険局長が申しましたように、補綴を全部、材料にいろいろの種類があるのでありますから、保険でやっている国はない、こうなります。やはりそこに何ほどかの自由診療部分と絡まった形のものは残らざるを得ない。したがって、これから中医協で差額問題の最終的な解決に当たられるのでございますが、順序としては、そういう自由診療的な部分、いわば供給量が不足であって、すぐに保険点数に入れて保険に組み入れれば困難を来すというようなものから手をつけるべきじゃなくて、手をつけられるものから手をつけていくということ、そういう順序の判定が私は必要だと思いますが、いかがでしょう。
#167
○渡辺国務大臣 それはできるものからやる。全部一遍にできないのですから、できるものからやるというのが私は順序だと思っております。
#168
○永末委員 もう一つ、いよいよ歯科の新しい技術料の算定に当たっては、歯科医師の持っておる技術と技工士の持っておる技術とがあるわけですね。しかし、歯科医師と技工士の場合に、外注すればそれはそのままコストとしてくるものでありますが、現に私どもの日本の社会では自由経済でございますから、点数が固定された場合に、歯科医師と技工士との間で決まるべき技工料というものは一義的に規定できない関係にある。したがって、全体のものが点数で固定した場合に中がふわふわしておるとむずかしいわけですね。新しい技術料が算定される場合の技工料のあり方についてひとつ御見解を承っておきたい。
#169
○八木政府委員 昨年の秋におきます中医協の歯科問題の正常化、条件整備の御議論の際にも、歯科技工料金のあり方というものが非常に大きな議論になったわけでございます。確かに現在の点数表は、歯科医師が御自分でやられる場合と、技工士に委託されるという場合もあるわけでございます。しかも、技工料金というものは各地区によりましていろいろな態様があるわけでございますけれども、やはり歯科技工士の技工料というものもある程度明確化すべきではないかというような御議論が大勢を占めておるわけでございまして、今後の方向としまして、歯科委託技工料をどうするか、しかもはっきり出すべきではないかという問題について、十分研究していかなければならない問題であるというふうに思っております。
#170
○永末委員 技工料の問題について、いままでいわば日陰みたいな扱いなんですね、言葉は悪うございますが。いま保険局長が言われたように、歯科診療、保険診療の問題として技工料の問題を取り上げて、そして明確にしていくことが歯科診療の合理化と申しますか、新しい時代の歯科診療、保険診療に必要なことだと思いますが、最後に大臣の御見解を承っておきたいと思います。
#171
○渡辺国務大臣 十分に検討してまいりたいと存じます。
#172
○永末委員 質問を終わります。
#173
○斉藤(滋)委員長代理 次に、田中美智子君。
#174
○田中(美)委員 差額ベッドの問題が世論の批判を受けてからもう大分になりますけれども、現在、大まかに言いまして差額ベッドはふえていく傾向にあるか、それとも減っていく傾向にあるか、簡単にお願いいたします。
#175
○八木政府委員 私どもといたしまして、差額ベッドについて一つの指導的な考え方というのを出しまして実際に指導しているわけでございます。医療機関の御協力を得なければなかなか実施できないという問題もあろうかと思いますけれども、差額ベッドにつきましては、やはり社会的なニードがある以上差額ベッドを全廃するというわけにはいかない、ある程度の差額ベッドというものは必要である。しかし、差額ベッドがあるということで、差額ベッドを希望しない方まで差額ベッドの負担をしなければ入院できないということがあっては、医療保険制度として十分目的を達することができないということから、差額ベッドにつきましては一定の、大部屋はだめです、それから一定の施設がなければだめですというような基準を設け、さらに国立病院につきましては一〇%、それから一般病院につきましては二〇%というような指導基準を出しまして各県を指導しているわけでございますけれども、最近の数字でまいりますと若干ずつ改善の傾向は進んでいるのではないか。いろいろ御批判もございまして、一挙にはなかなか解決できない点もあるわけでございますけれども、四十九年六月一日現在におきます差額ベッドの比率は、病床数に対します差額病床の比率で見てまいりますと一九・二%でございます。それから五十年七月一日現在では一八・三%、それから昨年の七月一日現在では一八%ということで、遅々としておるというおしかりはいただくかもしれませんけれども、少なくとも改善の方向には向かっているということが言えるのじゃないかと思います。
#176
○田中(美)委員 いま、多少とも改善の方向に向かっていると言われましたけれども、全国を平均すればどうのこうのということは言えるかもわかりませんが、大都市、特に東京都内の私立の医大の付属病院などでは差額ベッドが非常に激増している、こういう状態を御存じでしょうか。
#177
○八木政府委員 御指摘のように、全体の数字といたしましては一九%から一八%になっておりますけれども、私どもの調査しました分類によりますと、国立、公立等、その他の公的医療機関、医療法人、その他の法人ということで、御指摘ございました私立大学等につきましてはその他の法人の中に入っておるわけでございます。その他の法人につきましての比率から申しますと、四十九年が二六・四%、五十年が二八・七%ということで、むしろ五十年では上がったわけでございますけれども、最近は二七・八%ということでやや下がってはおりますが、差額ベッドの中で一番比率が高いのはその他の法人グループ、その中で一番大きいのは私立大学の付属病院等であると理解しております。
#178
○田中(美)委員 結局、有名な私立大学の付属病院というものがその他の法人の中にはかのものと一緒になっていますので、数字としては多少少なく出る。しかし、これは決して減る傾向にないし、去年五月の東京医労連の調査によりますと、慶応病院が九〇%差額ベッドです。それから東京女子医大病院が九七%差額ベッド。慶応は差額ベッド一日千円から五万円です。東京女子医大病院が一日五百円から三万円。順天堂病院が九七%、三千円から四万円。それから日大の板橋病院が七二・五%、一番低いところでも七十何%という数字であって、いま保険局長のお答えによりますと、ほとんどないようなところも全部ひっくるめましてそうした数字を出していらっしゃいますけれども、現状としては、非常に多くの病床を持った、また信頼を持たれている大きな病院が九〇%以上を超えているという現状です。これはよく御存じのことだと思うわけです。
 それから健保連の調査によりましても、入院患者を調べますと、室料、差額ベッド料を払ったと答えた患者が五一%もいる。患者の立場からいけば五一%の患者が払っているわけです。厚生省は三人以上は取らないと言っているにもかかわらず、そのうち五四%も取っている。こういう数字が出ております。ということは、差額ベッドが少しずつ改善されている、こう言っていますが、実際には、患者の立場から見れば改善されていないということが言えると思うのです。小さな病院も大きな病院も一緒にして何%といって、数字としては非常にインチキです。そういうインチキを言っていては現状に合致しないと私は思うのです。
 それからもう一つお聞きさします。付添料の現状ですが、基準看護をとっているところでも付き添いがどんどんふえている。時間がありませんのでこれは略していきますが、約二〇%の入院患者が付き添いをつけている。基準看護で、原則として付き添いは要らないところが付き添いをつけている、こういうことが医労協の調査でも出ております。大体付添料が一日五千円、一カ月十五万円、こういうことが保険外のお金として患者が負担をしているという事実は十分に御存じのことだというふうに思うわけです。
 それでは大臣、ちょっとお聞きしますが、生命保険会社が医療保険をやっているというのは御存じですか。こういうパンフレットがいっぱい出ています。「がん保険」だとかなんとか、こういうものが出ています。これは御存じですか。
#179
○渡辺国務大臣 聞いております。
#180
○田中(美)委員 聞いているだけで、どの程度御存じかわかりませんが、いま日本に生命保険会社が二十三社あります。ここが付加保険として、特約保険という形で生命保険にくっつけているわけですね。こういう形でやられておりますし、これが今度は単独の保険としてこの七月をめどに各社がやろうとしている、こういう現状までを大臣は御存じですか。
#181
○八木政府委員 生命保険の問題につきましては大蔵省なり郵政省の問題でございますけれども、関係官庁と緊密な連絡をとって実態の把握に努めております。先生御指摘のように、特約型の保険につきましては、現在、簡易保険、生命保険、合わせまして二十一社でやっております。それから単独型のものにつきましては現在六社でやっているということを承知いたしております。
#182
○田中(美)委員 これを見てみますと、たとえば「がんの悲劇とたたかう」とか「大きな心配がひとつ消えます−がん保険」、こういうふうな形で、日本の生命保険会社、またアメリカンファミリーなどという外資系の生命保険会社というものがこういうことをやっているわけです。
 例を一つとりますと、年齢によって保険料が違うわけですけれども、大臣の年齢、五十三歳でやってみますと、五十三歳でかかろうと思いますと一口月額千七百円、こうしますと、がんで入院したとき三十何万何がしのお金が出るとか、一日五千円ずつ出るとか、いろいろとあるわけです。実際には千七百円では少ししか給付がないので、これを二口、三口と掛けておけばたくさんもらえる。そういうことになりますと、五十三歳で年間二万四千円ですから、入れる人はいいわけです。これはいまがんに限っているわけですけれども、七月をめどにということは、がんだけではなくて、ほかの病気も全部、付加でなくて独立させた保険として発足していこうということが出てきているわけです。
 こういうものができるというのは、先ほど差額ベッドはニードがある、こういうふうに局長お答えになりました。ニードはいろいろな面があるのでしょうけれども、大きなニードとしてこういうものが出てくるということは、差額ベッドや付添料その他保険外の負担というものがふえてくる、これをどうしようかということで、結局いまの健康保険の制度では国民の期待にこたえられないのではないかという、不信感というものがあるわけです。ですからその欠陥をほかのことで何とかやろうということが、こういう生命保険会社が医療保険をやっていくという形になっているのじゃないかというふうに思うわけです。
 こういう制度がいいとか悪いとかを私はきょう言っているわけではなくて、健康保険制度のこういう欠陥というものをある程度補っていこう、こういう形でこういうものがつくられていくということは、入れない人はどうするのか。これの掛金が払えないで入れない人というのは医療がどんどん遠くなっていくわけです、保険外のものを出さなければだめだということで。保険でこれだけの治療ができますよといっても、いろいろ手術をするのは自分の家ではやれませんから入院する。入院すると差額ベッドが払えない、付き添いが払えない、ということは、当然受けられるべき医療も受けられないという人がたくさん出てくるのではないかというふうに思います。そういう意味で、こういう医療の保険制度というもの、これがどんどん栄えていくということを大臣はどうお考えになりますか。
#183
○渡辺国務大臣 二つ問題があると思います。一つは、保険制度では十分でないという点につけ込まれている、と言うのは語弊があるかもしれぬが、そういう点に便乗しているということがあると私は思うのです。ですから、もっと保険の内容を充実しなければならぬ、こういうように思っております。
 それからもう一つは、人間の欲望がございますから、病院に入ったときぐらいは個室で少しでもいい部屋に入りたいと思う人もあるでしょう。そういうことになれば、大部屋ではいやだ、自分だけはともかく静養のつもりで、一年に何回も病気になることはないのだからという気持ちもあるでしょう。国の保険で電話やふろまでついたものが差額を取らないでできればいいけれども、現実にはなかなかこれはできない。ですから、そういうところに入りたいというのを先ほど局長がニードがあるという表現をしたのでしょうが、そういう限りにおいて任意保険があって悪いということは言えない。二つある、こう思っています。
#184
○田中(美)委員 大臣がいまおっしゃったようにおふろもつき、電話もつき、まるでホテルのような部屋、これが果たして医療に必要かどうかということは問題ですけれども、それを希望する人があるならば、資本主義ですから、ニードがあるというのならば大臣のおっしゃったようなことになるのだと思うのです。
 それで、同じ問題ですけれども次のことに入ります。豊島区の池袋に癌研究会、癌研究所、附属病院というのが同じ敷地内にあります。これは厚生省が昭和八年に認可した公益法人です。この癌研究会は中山捨三さんという方が事務局長をしていられるわけです。
 それでもう一つここにありますが、こういういろいろなものを出しているのですけれども、アメリカンファミリーという生命保険会社がある。この会社の代理店に株式会社シー・シー・アールというのがあるわけですが、この社長さんがこの癌研究会の事務局長の中山捨三さん、同じ人間になっている。大臣、よく聞いていてください。
 そして、ここの附属病院は差額ベッドが六〇%です。一日二千五百円から二万円のベッドがある。これは一度調べてほしいと思うのですけれども、六人部屋でも二千五百円取っている。これは厚生省の基準とずいぶん違いますね。六人部屋でも一人二千五百円ずつ取っている、こういう病院があります。
 この附属病院には渉外課というところがあるのです。ここがあちこちの寄付などもらっているのです。笹川良一さんとか、そういうふうなところから寄付をもらう仕事を主にやっているのだそうです。そこの次長さんが今度はシー・シー・アールの重役を兼ねているのです。この人脈を見ると非常におもしろいのです。一人の人間が両方兼任しているのです。シー・シー・アールの重役ですね。こういう状態があるわけです。そうして、がん保険などの一万円の契約を取ってきますと、そのうち四千円がマージンとして入るわけです。これを癌研に寄付するのだという形になっている。同じ人間がやっているわけです。ですから、悪く言えばここの癌研がシー・シー・アールの商売をやっている。代理店をやっていると言ってもいいようなものです。同じ人間がやっているわけです。私の調査によりますとそういうことなんです。
 それで、こういう状態というのは、差額ベッドがなくなっていきますとそういううまみがなくなるわけです。結局これをこのままにしておくということは、差額ヘッドをなくしていく方向――いま局長が言われたように少しずつだけれども改善していると言うが、実際にはそうではなくて、結果的に差額ベッドを改善していく方向の足を引っ張っているのじゃないか。
    〔斉藤(滋)委員長代理退席、委員長着席〕
そうして、意地悪な見方をしますと、付き添いとか保険外負担、こうしたものを肯定して、むしろ差額ベッドをふやしていく方向に、こういう現状を見ますとなるのではないか。こういう形で、結局差額ベッドだとか付添婦の費用だとかいうものが社会的な市民権を実際に得ていくというふうになっていきますと、皆保険をたてまえにした日本の健康保険制度をますます破壊していく方向に行くのではないか。これは一つの事例です。こういう状態にいまなってきている。これは、アメリカンファミリー社とそれから癌研究所、附属病院の結びつきというものを事例として出しているわけです。こんなふうにいくのでは、差額ベッドをいま少しずつでも改善させていく方向に向くなどということは表向きの言葉にしかすぎないのではないかという疑問を持つわけですけれども、これをどうお考えになるでしょう。
#185
○八木政府委員 私どもといたしましては、先生おっしゃるように皆保険でございます。必要な医療につきましては公的な医療保険でカバーするというのがあるべき姿でございます。そういうような意味からも、差額ベッドの問題につきましては、先ほど御説明申し上げましたように指導通達を出しまして、さらに再三の会議等におきましてもできるだけこの方向で指導するように要請しているということでございます。御指摘の事例等もございましたけれども、私どもとしましてはあくまで公的な制度、公的な医療保険の充実ということによって問題を解決すべきではないかというふうに考えております。
#186
○田中(美)委員 そんな一般的なこと、一片の通達を出したら直るのかというと、そうではないわけです。
 それでいまのお答えですけれども、この癌研究所、研究会、附属病院というのは厚生省の認可を受けているところですね。
 それでちょっとお尋ねしますが、厚生省に在職して、昭和四十六年の一月から四十七年の六月に保険担当審議官をしていた江間時彦さんという人がいたわけです。この方はいまどこに行っていらっしゃいますか。
#187
○八木政府委員 アメリカンファミリーに行っておられるのではないかと思います。
#188
○田中(美)委員 御存じのとおりで、アメリカンファミリーの副社長をしております。この江間さんという人は、こういう民間の医療保険をいま六十万口獲得した、こう豪語していらっしゃる。そして新聞の情報によりますと、こうした民間の医療保険流行の発端をつくった、こう言っています。
 大臣、このように厚生省に勤めていた人、それも保険担当審議官が、厚生省にいたのじゃ給料が少ないというのでこっちへ行ったのかどうか知りませんが、こういう人が民間の医療保険で、国民皆保険と言われる保険をむしろ崩していくと言うべきか、それとも、崩していくというよりも、医療が荒廃しているからそれを民間で補おうというのはおかしいわけですけれども、こういうことをやっている。そうしますとこの江間さんという方は、きのうまでは、差額ベッドをなくす努力をするという、八木さんがおっしゃるようなことを言っていた、それがきょうからは、差額ベッドや付添婦というものの市民権を社会的にとる、こういう運動の流行の発端をつくるという形で六十万口獲得した、こう自慢しているわけです。これはまさに日本の医療の荒廃の矛盾が、人脈においても金脈においても、いろいろな制度の上においても端的にあらわれた事例だと思いますけれども、厚生大臣、どう思われますか、こういう江間さんのような事例を。
#189
○渡辺国務大臣 これはなかなかむずかしい。やめてからまで厚生大臣の監督は及ばないので、何とも、個人の批評は差し控えたいと思っております。
#190
○八木政府委員 先ほどお話ございました江間審議官は、保険局にいたことがございますけれども、最後は環境庁の自然保護局長でございます。
#191
○田中(美)委員 江間さんが、いまの資本主義社会の中でその方が金もうけにもなるし、仕事としておもしろいということでそちらを選んだことを私はとやかく言いません、これはプライベートの問題ですから。しかし、日本の医療がもう手のつけられないところへ来ているのだということを、厚生省の保険担当の審議官をしていたからこそ一番よく知っているわけです。日本の医療がここまで荒廃しているのだ、病気になったら金がかかって治療ができないのだ、そういうことをよくよく御存じだからこういうことをやっていらっしゃるのだ。ということは、厚生省自身が、日本の医療ではもはや国民が安心して医療を受けられないのだということを知っている、日本の医療の荒廃がここまで来ていることを知っているのだということを私は言いたいと思うのです。別に江間さんが悪いと言っているわけではありません。
 そういうことで、私としては、何としてもこうした日本の医療の荒廃を抜本的に改善する努力――努力というより、抜本的に改善する決断というものがいま厚生省に迫られているときだ、こういうふうに思います。大臣の御決意をお聞きしたいと思います。
#192
○渡辺国務大臣 医療の問題はいろいろな矛盾もございます。私も抜本的に改正したい。あなたと同じであります。一つは、むだをなくすこと。一つは、医療内容を充実するためにはお金がかかるわけですから、お金をかけるということになれば、国が出すか、保険料をもっと上げてもらうか、二つしかないわけですから、私は、これは負担も出していただく、そのかわり内容についても、ともかく重病や長期の療養を要するときに、長い間付き添う看護婦とか長い間差額ベッドを払うというようなことでは困るわけなので、少しでもそういうものがなくなる方向で努力をしていきたい、こう思っております。
#193
○田中(美)委員 ちょっといま聞き捨てならないお言葉があったのですけれども、負担してもらうというのはだれに負担してもらうのですか。
#194
○渡辺国務大臣 それは当然国に負担してもらうが、国ということは国民、その次は被保険者、これは制度上そういうことですから、どちらか以外にはないわけですから、それによって内容の充実も図る。保険料を上げるな、内容だけ充実しろと言われてもこれはなかなかできない。したがって、内容の中でむだなところがあったり何かすればまず一緒になってそれをなくす。その次に、それだけじゃ足らぬという場合には、これは直接被保険者からいただくか、それとも国民全体からいただくかの方法をとる以外にないだろう、こう思っております。
#195
○田中(美)委員 何しろあなたが国、国と言いますと、私たちは政府だと思っちゃうんですね。(渡辺国務大臣「違うんです」と呼ぶ)だからあなたと私とでは、同じ国というのでも、ふっと感じ方が違うわけですね。あなたは国というと、国民が出せと、こう言う。私から見れば政府がもっと出せ、こういうことですよ。
 むだを省くというのは、これはむだよりもむしろ、寄生虫のように健康保険にいろいろなことで寄生しているもの、これを吸い取っているもの、きょうはそのことに触れませんが、それからまた当然出さなければならない労働者を使っている人たち、こうしたものを総合的に改善しない限りは、あなたのように、ただ、困れば国民、だれが赤字にしたということも十分に計算しないで国民といっても、幾ら国民から取ったって、いまのような付添料や差額ベッドというものを厚生省の言う一〇%と二〇%に抑え込むなんということはできませんよね。そういう意味で、私は、抜本的、総合的な改善をしない限りは日本の医療は荒廃の一途をたどっていく、そしてお金のある者だけは医療が受けられるけれども、そうでない者は保険料だけ取られて、実際にはほとんど医療の恩恵は受けられないという状態がますますひどくなってくるというふうに思いますので、抜本的改善を要求して次の質問に移ります。
 次に、これは三月十七日の朝日新聞に出ていたわけですけれども、「お産 二十万円時代」という題で出ておりました。これによりますと、これは国立公衆衛生院の社会保障室長の前田信雄さんという人が百四十四人の主婦から回収したもので調査をしたわけですが、お産には十五万円から十九万円かかるという人が四〇%で一番多いということが出ています。特に私立の大学の付属病院では二十二万二千十四円平均だ、こういうふうに出ております。私の知人がお産で十日前に退院したわけですが、そのとき一週間入院しまして十八万九千円かかっています。こういう状態で、分娩費がいまつかみ金で十万円ということでは……。子供を産むということは私的なものだけではないはずです。こういう意味で、この現金給付を実勢に見合ったものに引き上げてほしいというのが一つの要求です。これは多くの人たちから出ておりますので大臣十分御存じだと思いますけれども、まずこの現金給付を実勢に合ったものに引き上げるということと、それから、いまのように急速に物価が上がっていくときには、これに対して物価スライドをしてほしいというふうに思うわけですけれども、この物価スライドの点ではどうでしょうか。
#196
○八木政府委員 分娩給付につきましては、昨年の健康保険法の改正におきまして六万円から十万円ということで、かなり思い切った、七割近い引き上げを行ったわけでございます。現実に出産費用につきましては、それぞれの地域なりあるいは施設なりによって非常に差があるということから、標準的な費用ということで国立病院等の費用を基礎にいたしまして、ここで昨年六万から十万ということでかなりの引き上げを行ったわけでございます。そこで本年度におきましては、その後の情勢等を考えました場合に、国立病院等につきましては、若干の差はありますけれども、それほど大きな変動はないというようなことから今回は見送ったわけでございます。さらに健康保険財政の状況ということも当然考えなければならぬわけでございまして、昨年相当の引き上げをやったということから今回は見送ったわけであります。
 それから、物価スライドということでございますけれども、医療保険におきましては単に給付だけではございませんで、負担の面につきましても、一部負担等につきましては過去何年来据え置きになっておるということでございますから、そういうような問題等も当然考えていかなければならぬ問題であるというふうに思っております。
#197
○田中(美)委員 やはり現状に即してやらなければだめですよ。国立病院の一番安いところに合わせていますが、国立病院だって十万円でなんかできませんよ。あなたそんなことを言いますけれども、去年幾ら上げたとかなんとか言っても、前が低いからちょっと直せばそのパーセンテージが多くなったというだけのことであって、現状では二十万円以下ではほとんどできないんですよ。それはお産の費用に伴ったいろいろなものがありますからね、それを全部出せとは言いません。しかし、せめて一週間入院して退院するまでの間の実質かかったお金というところまで上げるべきだし、またスライドは当然すべきだと思うのです。そうしませんと、後になって上げたんじゃ前に子供を産んだ人は間に合わないわけですよ。やはりスライドしていかなければならないわけです。大臣、このスライドの点はどうでしょうか。
#198
○八木政府委員 スライドの問題は、先ほども申し上げましたように、医療保険制度におきましてはすべての問題について社会情勢、経済情勢の変動に対応して考えるべきであるわけでございます。したがいまして、分娩だけではなしに、逆に一部負担等においても過去何年来据え置きになっているわけでございますから、そういう面もスライドということを考えていかなければならないというふうに思うわけでございます。
#199
○田中(美)委員 それじゃそのようにやってくれますね。幅広く、物価が上がっていけばどんどん上げていくということでございますか。
#200
○八木政府委員 標準報酬の考え方なりあるいは現金給付等につきましても、基本的には社会情勢、経済情勢の変動に伴いまして考えていくというのが基本的な方向でございますから、分娩費等につきましても、たまたま本年は引き上げがございませんけれども、昨年かなりの引き上げがあったということでございます。一方、一部負担につきましては十年間も据え置きになっているということでございますから、この点も十分御考慮いただきたいと思うわけでございます。
#201
○田中(美)委員 あなたは子供をもう生まなくなったのでそういうことを平気で言われるのでしょうけれども、(笑声)若い方たちというのは非常に大変なんですよ。
 次の質問をいたしますけれども、これは何年でしたか、昭和四十一年ですか、六百八十八号通達というのを出していますね。ここにあります。これによりますと、母子保健法ですが、ア、イ、ウと書いて、妊娠七カ月までは四週間に一回とか、八カ月から九カ月までは二週間に一回とか、健康診断をしなさいということが出ているわけです。これは妊娠したのがいつかということを見つけた時期によりますから必ず何回となりませんけれども、まあ多く見積もりますと、産後一回を入れまして十四回の健診をしなさいということがおたくの方の通達で出ているわけです。その中で、いま二回だけ母子手帳についていますね。二回だけ健診がただでできるというふうになっているわけですけれども、いま健診は、大体三千円以下というのは非常に少ないですね。四千五百円くらいが多いところです。そうしますと、妊娠してから出産するまで、健診料を一回四千五百円としますと、十四回として、二回はただでできますので十二回として計算すると五万四千円です。それにお産の費用、さっき言いましたつい十日前にかかった人の事例で十八万九千円です。これを足しますと二十四万三千円。これは往復のタクシー代だとかやれ何だとか、そういうものは全然入ってないですよね。タクシー代などを入れますと約三十万というものが一人の赤ん坊を産むのにどうしても要るわけです。そうしますと、五十二年三月、ことしの三月の毎勤統計、労働省の出した統計の平均賃金というのが十五万六千九百三円です。これは高額所得者も入っていますので、三十歳くらいの人からすれば十五万はとても入らない。そうすると十万そこそこの賃金で、一人の赤ちゃんを産むのに、着物とかその他着る物は別ですが、最低のお金で大体三十万近くかかるということは大変な負担だというふうに思うのです。
 そこで私がお願いしたいと思いますことは、妊産婦の死亡率が日本の国は非常に多いということを大臣は御存じだと思います。これは出生十万に対しまして日本では四十・六人が死亡している。スウェーデンなどでは七・一人しか死にませんので、日本は約六倍ということです。その死亡率の中にはこれは出産時の死亡もあるわけです。妊娠中毒症で死ぬ、これは母親の方ですよ、中毒症で死ぬということは出産のときじゃないのですが、これは十万に対して十三・四人死んでいます。スウェーデンでは一・八人。ずっと外国との比例で日本は全部トップですからね。ということは、スウェーデンの十倍の婦人が日本では妊娠中毒症で死んでいるということなんです。妊産婦死亡世界最高という――世界と言いますとそちらがまた文句を言われますので、WHOの統計の中で言われている世界最高、この汚名をそそぐというためには、やはり妊産婦の健康診断を全部十四回、二回はただですから、あと残された約十回から十二回というものを全額国で見るのが当然だ。こうしなければ妊産婦の死亡率は減らないと私は思いますが、大臣、いかがでしょう。
#202
○石野政府委員 妊娠時の受診の回数でございますが、おっしゃるように、私の方はできれば十二回やることが望ましいということは申し上げております。ただ、それを全部公費でやるかどうかということになりますと、これはやはりいろいろな考え方がございまして、特に妊娠の前期、後期というのは非常に危険性があるわけでございます。そこに重点的にやるべきだという御意見もございますし、そういうことで私どもの方は一応前期、後期を一回ずつやっておるわけでございます。これをさらに、前期、後期を重点的にもう一回、二回ふやせという御意見もございますが、これは診療担当者側の御了解を得ませんと実際上なかなかできないという問題もございます。それから診療の単価の問題も実はいろいろ残っておりまして、こういう問題を解決しませんと、幾ら何回やれといっても実際にはなかなかむずかしい問題がございますので、現在の段階で、さらに毎月について公費負担をやるというようなお約束は、私どもとしては現在のところできないということでございます。
#203
○田中(美)委員 いま診療側の方の意見も聞かなければと言っていますけれども、これは産婦人科医からの大きな要求ですよね。いま、産科をやめちゃって婦人科ばかりやる医者というのが出てきているわけですから、これは大きな要求です。これは婦人科医の強い要望にもなっております。いまおっしゃったように――ちょっと、どっちを向いているんですか。私が物を言っているときだけはちゃんと聞いてください。もっとちゃんと人の言うことを聞いていてください、次の準備ばかりがたがたやらないで――この健康診断というものを、抜本的改善をするまでは何もできないと言うが、抜本的改善というのは四十二年ぐらいから声が出ているのですから、十年間言い続けているのですから、やはりこれは母体保護の観点からしても早急にやっていただきたい。日本が経済大国でありながら妊産婦の死亡率が高いということは、これは何としても厚生省の大きな責任です。私は怠慢だと思いますので、これを強く要求して次の質問に移ります。
 これは救急夜間の診料所の問題ですけれども、これに対して国が補助金を出す、整備費の補助を出すということになったことは非常にいいことだと思います。しかし、これは公設であるということを条件にしているわけですね。それで五十二年度のその要綱というものはまだできていませんね。七十カ所つくると言っていることがまだできていませんね。約三億近いお金。この要網を早くつくって、この要綱の中に、完全なる公設というのでなくても、公設的な意味合いの大きいものをこの補助対象にしてほしいということなんです。
 たとえば名古屋市では四十八年の二月ごろから、名古屋市には行政区が十六ありますが、この十六区に一つずついま休日急病診療所という形でつくっていっているわけです。これは非常に市民から喜ばれています。現在できているところで、北区、中村区、港区、南区というところで大体六〇%から六七%、市が補助金を出している。医師会と相談して市がやっているわけですね。半分以上出している。その上に土地は全部名古屋市の土地を無償で与えている。ということは、土地を幾らに見積もるかということは別問題ですけれども、土地のお金まで入れれば八〇%ぐらいというものは市という公的なものが補助している。あと医師会がほんのちょっとやっているということです。現在建設中が昭和、熱田、中川とやっていますし、千種区がいま計画中です。こういうふうにして間もなく十六区を全部やろうとしているわけですから、これに対して国の補助の対象にしていただきたいというふうに思うわけですけれども、要綱の中で対象にしていただきたい。いかがですか。
#204
○石丸政府委員 休日夜間急患センターは、初期救急医療の大きな柱としてわれわれも非常に力を入れておるところでございまして、この問題につきましては地方公共団体が計画的に行うということをわれわれ前提に考えたわけでございます。しかし、それぞれの地域の実情に応じていろいろな形があろうかと思うわけでございます。
 休日夜間急患センターに対します助成については二つの面があろうかと思うわけでございまして、一つは、ただいま先生御指摘の設立に要する費用でございます。あとは、運営に要する費用の赤字がどうしても生ずるわけでございますので、その運営に要する費用の助成、この二つに分けて考えたいと考えておるところでございまして、設立に要する費用につきましてはやはり公設ということを前提に従来からも考えておりますし、非常にむずかしい問題があろうかと思います。ただ、運営費につきましては、いろいろな形態がございますし、特に市からの委託を受けたり、あるいは市の計画の中において医師会が実施をするというふうな事例もございますと思いますので、そういった点につきましては前向きに検討させていただきたいと思っております。
#205
○田中(美)委員 いまのところ運営費の方の赤字も市が持つというふうに言っていますので、こうしますとますます地方財政というのは大変です。これは名古屋市の例を挙げただけで、あちこちの市がやっていることです。設立について土地も提供し、全部で八〇%近い補助金を出している。これが公的ではないというのはちょっと画一的な考え方だと思いますので、設立の面でも前向きに検討していただきたいと思います。大臣、答えてください。あなたが一番の大将でしょう。
#206
○石丸政府委員 ただいま建設の方についても御質問があったわけでございますが、やはりその実態はいろいろな形があろうかと思いますので、さらによく調査いたしまして、できるだけそういったいろいろな形において救急医療が完成するように努力いたしたいと考えております。
#207
○田中(美)委員 大臣、もう一度答えてください。
#208
○渡辺国務大臣 ただいま医務局長が答弁したとおりでございます。
#209
○田中(美)委員 終わります。
#210
○橋本委員長 ちょっと速記をとめて。
    〔速記中止〕
#211
○橋本委員長 速記を起こして。
 次に、工藤晃君。
#212
○工藤(晃)委員(新自) 私は質問いたします場合にいつも最後になってしまいまして、大変お疲れのところ申しわけないのですけれども、あと四十分、真剣におつき合いいただきたい、こう思います。
 私もけさから皆さん方の質疑を真剣に聞かせていただきまして、いまここに私立っておりますけれども、頭は痛くなるやら肩はこるやら、真剣に聞けば聞くほど大変むずかしい、あるいはまた頭が痛くなるような、肩がこるような問題ばかりでございます。
 特に私の場合には、昭和二十七年に医者になりまして、五十にいまなりますが、去年暮れまで実際の現場の医師として医療を担当いたしました。そういう意味から申しましたら、私がここに立ちますことはある意味において人生の落後でございます。それはなぜかというと、もし私自身が医者を続けられたならば、あるいはまたいまの医療というものがもし私に医者としての生きがいを与えてくれるものであれば、恐らく私は政治への志向はなかったと思うのです。そういう意味において、ある意味においては現場の医師としての生きがいを私がなくしたがゆえにここに発言の場に立ったという、人生の転換を迎えたのではないかというふうにも考えるわけでございます。しかし、いまの現場の医師としての中でどうにもならない問題、あるいは人生の生きがいをそこに見出し得ないで、何とか解決する方法はないかと悩み続けた問題が、けさからいろいろな問題提起という形で行われてまいっていると私は思うわけでございます。そして私自身がここに立ちまして、何かいい改善方法はないか、あるいはまた、私がこの場に立てばこうも言おう、ああも言おうといろいろ考えておりましたけれども、しかし、一たんこの場に立って、では何かいい妙案はおまえないのかということを自問自答いたしましても、大変むずかしいということを痛切に感じているわけでございます。
 そういう中で、問題を分類する、あるいはまたその原点の問題を的確に把握する、あるいは、討論というのはやはり条件を一定にしておいて、これはいい、これは悪いという判断をしないと、条件を一定にしないで物事の論議を展開いたしますといろいろな問題が錯綜いたしまして、国民の側から見た場合に、医療問題というのは一体何をやっているんだ、さっぱりわれわれにはわからない、わからないけれども腹の立つことばかりが目の前にあらわれてくるという形が起きてまいろうと思います。たとえば、けさからいろいろ言われております各論的な問題、薬づけの問題、あるいは三時間待って三分の診療、あるいは入院時の自己負担金の問題、あるいはまた付添看護料の問題、なかなか入院できない、あるいは医療費が高い、いろいろなことが不平不満としては出てまいりますけれども、要は人命が尊重されないということであろうかと思うのですね、一言で要約すれば。健康保険というものは、少なくとも人命を尊重していこう、国が人の命を守っていこうという立場に立ってつくられたものでなくてはならないと私は認識するわけでございます。にもかかわらず、現在の現象は一体どういうことかというと、それが果たして認められるような社会情勢になっておるかどうかということが大変大きな疑問点としてクローズアップされるわけでございます。そこで、その問題の解決を一体どこからひもといていけばいいのかということは、実は大変頭の痛い問題であります。
 その前に、まず、健康保険制度というものがどういう時代的背景で生まれてきたのかということからやはり私はひもといて考えていくべきではなかろうかというようなことも思いますので、ひとつ私の質問にお答えいただきたいのですが、健康保険法というのは大正末期から昭和初期にかけてつくられたもの、だというように認識しております。そのときの健康保険法というのは、どういう目的のために、あるいはどういう時代背景でつくられたものか、ひとつお答えいただきたいと思うのです。
#213
○八木政府委員 医療保険制度ができましてから先生御指摘のようにちょうど五十年経過したわけでございます。確かに、国民の健康をいかにして確保していくかという、国民の健康確保ということから申しまして医療保障なり、あるいはさらに国民の所得ということで所得保障なりの問題ということは、社会保障、社会保険をどういう形で国が考えていくかという問題であるわけでございますけれども、日本の場合に、明治、大正ということで日本の近代化が進み、さらに日本の産業なり経済が伸びていったという際に、やはり労働者の福祉、国民の福祉というようなことから、まず被用者保険の形で健康保険制度ができ、さらに地域住民の健康を守るという意味で国民健康保険制度というものができてきたわけでございまして、諸外国の場合もそうでございますけれども、近代国家というものの形が整っていくに伴いまして、社会保障、社会保険制度というものも進んでいくものであろうというふうに思います。
#214
○工藤(晃)委員(新自) いまのお話でございますけれども、やはりつくられた時点においては近代国家とか社会保障という精神が、逆に言えばその中に入っていなかったのじゃないか。それよりもむしろ、労働力の補給というような立場から保険制度というものが立案されてきたというふうに私は聞いておりますけれども、いまの日本の国民の求めているニードというのは、そういう目的でつくられた保険制度の中に当てはまってこない部分がたくさんふえてき過ぎたのじゃないか。
    〔委員長退席、斉藤(滋)委員長代理着席〕
あるいはまた国としての物の考え方も、単なる労働力の補給あるいは富国強兵、そういうふうな時代的背景ではない別の考え方、近代国家としての社会保障のあり方というようなものを含めて現在は討論されていかなければいけないし、またそういう制度になっていかなければいけない。またその間の医学の進歩というのは、これは想像を絶するほど変わってきた、あるいは進歩してきた。そういうものに、一たんつくられた制度というものが果たして対応しているかどうか、そこら辺が私は大変大きな問題点だろうと思うのです。
 あえてそういうことを申し上げたのも、一つのものを論じるときに、それがどういう時代背景をもって誕生してきたか、あるいはそれがどういうように改善されてきたか、あるいは改善されないでそのまま来ておるのかどうか、そこら辺のところを認識することからひもといていかなければいけないと思うからです。そういう意味でただいま申し上げたわけでございまして、私は、現在ひとり歩きいたしましてから五十年の歴史を持つ健康保険制度そのものの中に、大きな内容の変化を求めていかなければいけない点がたくさんあるのじゃないか、近代社会に適応した制度に変えていかなければいけないのじゃないかというふうなことを強く感じるわけでございますので、その点を御指摘申し上げたわけでございます。
 そういうふうな制度上の欠陥が非常にあるものを前提にいまの医療行為が行われている。それも、一部の方々に適用されていたものが、大半が今度は健康保険になり、いまはすべて皆保険になってしまった。それこそ経済的に大変恵まれないで、何しろ死にがけに医者に手を握ってもらえないで死んでいったような人たち、そういう人たちを何とか救済してあげましょうよということから誕生したであろう健康保険制度が、そういう目的でつくられたものそのまま適用されていま国民皆保険になった。そして、その要求というものは社会保障であり、人命尊重であり、近代医学に順応したそれでなければいけないという要求がある。そこにも大きな制度上の矛盾というものを私は指摘したいわけです。そういうふうな制度上の矛盾点の中に何らかの合理性を求めていこうとすれば、いろいろな矛盾点がそこにまたより重なっていく。それが結果としては、一体何が何だかわけがわからないけれども、はなはだ困ったことであるという結論だけは万人が同じ認識を持つ、そのようなものがここに現存してきているのじゃないかと感じるわけです。そういう意味で、もう一遍まず制度を完全に洗い直していくということ。
 それから、健康保険法そのものの中にも大変矛盾点があると思う。現在の医療というものは、生命の尊厳あるいは医師と患者の相互信頼というものなくして医療行為は行われません。ですから、問題は相互信頼であり、医師と患者の信頼感の上にのみ成り立つ仕事でございますので、そういう制度上の誤りが即そういう相互信頼を破壊に導くものであるとすれば、制度そのものが、たとえどんな理由があろうと悪いのだ、そういう立場に立って私どもは考えていかなければいけないのじゃないかというふうに考えるわけです。確かに、制度を一つつくれば、その中に長所、欠点が起きると思います。それから医療を担当する方々もやはり人間でございまして、神様ではない。しかしながら、医師が医師の使命感に燃えて自分の職業を遂行するときにのみ、私は医療問題というものは円満な運営ができていくのではないかというふうに思いますし、制度も運用されるだろうし、また国民の要求もある程度満足されていくのではないかというふうに考えるわけです。
 そういう意味から、いままでのように、医者が悪い、何でも医療が悪い。問題点が、いろいろ矛盾が出れば、これはすべて医療担当者が悪いのだというふうな問題の指摘では解決はできない。しかしまたそういう医者の面においても、私は反省しなければいかぬ点が多々あると思う。しかしその反省しなければならぬ点も、すべてそれでは医師、診療担当者個人にあるのか、あるいは診療担当者がどうしても制度の上で診療しなければいけないという矛盾の中から生まれてくるものなのかも、やはり真剣に考えてみる必要があろうと思います。問題は、診療担当者の問題あるいは医療従事者の問題、そういういろいろな問題を含めて、一たん病気になったときには一体だれを国民は頼ればいいかというと、はなはだ不満を持っている診療担当者以外にその問題を解決する方がないのです。そこに国民の不満と悲劇がまた生まれてくるのではないかと思います。おれはこれが気に入らないからこっちを選ぶのだという選択が国民に与えられていないわけです。そこに私は注目すべきだろう、こういうふうに考えるわけです。そういうことを含めてやはり洗い直していかなければいかぬ。健康保険法そのものをもう一遍近代社会に適応したように洗い直すことを改めて強調したい。
 たとえば具体的に二、三、例を挙げて申し上げます。これはどういうためにつくられたかわかりませんけれども、細かい問題は抜きまして、たとえば健保法の第四十三条ノ十三、こういうところに「保険医又ハ保険薬剤師が左ノ各号ノ一二該当スル場合ニ於テハ都道府県知事其ノ登録ヲ取消スコトヲ得」ということを書いてございまして、その第一として「第四十三条ノ六第一項ノ規定ニ違反シタルトキ」、あるいは第二番目に「第四十三条ノ十第一項ノ規定ニ依リ出頭ヲ求メラレテ之ニ応ゼズ」云々というふうなことがございます。これに類したことがたくさん書いてある。診療担当者に対する罰則だけは大変強制的に書かれている。しかし、これもやはり一つの制度を運用する上においては当然なくてはいけない罰則かもしれませんけれども、この罰則の、要するにこういう法の運用の適、不適がこの診療内容に大きな影響をもたらしていることを、私は診療担当を経験した人間として指摘したいわけです。
 たとえばそれ以外にも、四十三条ノ十に「必要アリと認ムルトキハ」というようなことが書いてございますし、あるいはその他「必要アリト認ムルトキ」という言葉がいっぱい書いてある。この「必要アリ」という言葉は、要するに片一方の罰する側にとって必要なのか、あるいは患者が診療を受けるときに必要と認めるのか、あるいは医師の立場に立って必要と認めるのか、一体何が必要なのかということは書かれていない。非常に抽象的な言葉で、必要を認めたときにはこうこう、こういうようなことで罰則を決めてある。だから、それを運用するやり方によっては、これは大変人権を、あるいは医師の権利というものを侵害している、あるいは行き過ぎてしまうというふうなこともあり得ると私は考えるわけです。逆に言えばその医師の医療行為というものを経済的な面からある程度抑制するためには、こういう項目というのは大変有効に働くこともあり得るわけです。けれども、医療というのはやはり人命が尊重されなければいけない。要するに、人命尊重ということは無形のものですから、だからどうすれば人命が尊重されるのかということを考えたときに、こういう罰則を決めて、その罰則によって人命が尊重されていると思ったら、それはぼくはとんでもない過ちだと思うのですね。
 だから、こういうふうな面も、医師の権利というものをもっともっと認めてあげなければいけない。なぜならば、医者は国家からその医師という資格を保障されているのですから。結局は医師と患者の一対一の中から生命が保全されていく形になるわけですが、そういう医師と患者の相互信頼という中へ、ばあんと健康保険法というものがはまり込んでしまった、それによって両方の対話をなくしてしまう、こういうことが、もともと言えばいわゆる国民の医師に対する不信感を盛り上げる一つの大きな原因にもなっているだろうし、不満の原因にもなっているのだろう。君に忠ならば親に孝ならずというような形で、患者さんによかれと思ってしてあげれば、今度は逆にそういう制度上のいろいろな面で制約を受けてしまうということもあるいは実際に起きているのではないか。そのために余分な忠告を受けたり、あるいは取り消されたりしたら大変だから、逆に患者さんの方を見ないでそういう制度の方だけ見てしまうという、人間的欠点も生まれてくるのではないかということも実際にはあるのであろうと私は思います。
 だから、そういうことを含めて、この健康保険法というものをもっともっと、どうすれば国民の人命が尊重されていく制度になるのかということを改めて検討してみる必要があるのではないかということを、まず第一番に私は指摘したいわけです。それが第一番であります。健康保険法の抜本改正というふうに言われておりますけれども、私どもが認識しておりますのは、制度の改正とかあるいは財源の問題をどうするかとか、そういう意味の抜本改正が主であろうと思うのですが、片一方においては、健康保険法という法律そのものを抜本的に洗い直し、見直ししていく抜本改正も必要なのではないかということを指摘したいわけでございます。
 それから二番目に、それに関連して、大臣が先ほど、大変膨大な予算を伴う医療費でございますので、十分そのむだをチェックするためにいろいろな手だてが必要というふうなことをおっしゃっております。それはごもっともな話でございますけれども、それも運用の仕方によっては、逆に人命をそういうところでてんびんにかけていかなければいけないのではないかという心配、あるいはそういうチェックすることが保険医に精神的な圧迫を加える。本当はこうすればいいのではないかと判断しても、いや、こういうことをやったらあるいは支払基金から文句を言われるのではないかというようなことがあったとしてベストを尽くさなければ、私はこれは人命軽視につながってしまうと思うのです。だから、そういう意味において十分配慮をした上でのチェックをお考えいただかないと、ただ経済的な面からだけチェックしていけばいいのだというのでは困る、ほかの事業と違いますから。だから、常に人命がどうなるかということを片一方のてんびんにかけながら一つのことをお考えいただくことが必要だろうと思います。その点、大臣、いかがでございますか。
#215
○渡辺国務大臣 一番大切なことは人命尊重、それはそのとおりだと私は思います。私が先ほど、医療制度の中にもいろいろな非能率的なものやあるいは改善すべきものもたくさんあるだろうということを申しました。だからといって、短絡的に経済学だけでチェックをかけるということを言ったわけでもないのであります。あなたの言わんとすることは、たとえば、今度の抜本改正ということによって健康保険法をもっと強化して、医師にいろいろなことを義務づけたり命令したり、そういうことをするなという意味なのか、よくわからないのだけれども、そうだとすれば、私はそれらについては、そんな義務の強化というようなことを特別にいま以上にいますぐやろうというようなことは考えておりません。それからむだの問題も、それは人命尊重とかけ離れるようなむだのチェックというようなことも考えておりません。両立するようにやらなければならぬ、かように思っております。
#216
○工藤(晃)委員(新自) 私が申し上げたかったのもその点でございまして、医療問題についてはむだというのは一体何なんだということを真剣にお考えいただきたかった。同時に、むだというものをチェックするためには、診療担当者を入れて、この医療の中でどういうことがむだなのか、どういうことが有効なのか、そういうところもひとつ実際に現場でやっていらっしゃる方々の意見を尊重していただきたいということを申し上げたかったからでございます。
 それで、少し本論のところへ入っていきたいと思います。
 けさほどから、医療の荒廃、それから矛盾点だけが非常に大きくクローズアップされている。一つ一つの問題が大変大きな問題だ。しかし、一歩下がって冷静に考えてみますと、そういう問題の指摘、あるいはその一つ一つの問題の解決が、果たして本当に解決につながっていくのかどうかというふうに考えますと、何となくそういう問題の指摘だけに終わってしまうのじゃなかろうかというような気もいたします。そこで私は思うのですが、良薬口に苦しで、国民に向いていいことばかりを私は言うつもりはさらさらない。また医者の立場に立って、医者だけの味方をするという気持ちにもならない。問題は、国民の医療、国民の生命尊重というものをどうやっていけばいいのかということ、その立場に立って私は考えていくべきだろうと思いますので、あるいはまたいろいろな意味でいろいろなところから、いまから申し上げることは御指摘あるいは御批判を受けることを覚悟して申し上げますけれども、しかしそれが本当を言えば抜本の医療の改革につながる出発点だと私は思うので申し上げます。
 そういうことからまず第一番に、国民が医療に求めているものは一体何なんだということですね。言葉をかえれば、高福祉高負担を求めるのか、あるいは低福祉低負担を求めていくのか、そこのところのコンセンサスというものをはっきり国民に問うべきだと私は思うのですね。要するに、医療の内容は非常に悪くてもいい、しかしわれわれは負担はしたくないのだという考え方なのか、あるいはまた、人の命はとうといから、おれはふだん元気なときには少々応分の負担はしていっても仕方がない、しかしながら病気をしたときだけは生命の保障はちゃんとしてもらいたいのだというふうな要求を国民は本当にしているのか、そこのところを私はやはりはっきりと問うていくべきじゃないか。それからまたもう一つは、自由主義経済社会の中における健康保険制度を考えるのか、あるいは別の体制の中における健康保険制度というものを論じるのか、そこのところもやはり国民にはっきりと、皆さんがどうお考えになるかというコンセンサスを求めていく必要があるのじゃないか。そういうところがぼやけてしまって、ぼうっとしておいて、何かそういうところへ入っていくことをタブー視してしまう、そういうことで末端的な、要するにそこから枝葉が分かれていく問題を取り上げていけばいくほど問題がわかりにくくなってしまうのじゃないかというふうに私は思うわけでございます。
 しかし、私が考えますのに、ただ国民に負担だけを強要していいという問題ではない。だから、国民が所得の中で負担し得る限界はどこまでかというコンセンサスをまず第一番に国民に求めて、それでどうにもならない部分に対しては国がどう保障していくかということを考えていく。あるいはまた負担し切れない層に対しては手厚くその人たちを看護してあげる、あるいは救済してあげるという方法を別途に考えていかないと、ある限られた予算を数多くの人にばっと全部同じようにばらまいてしまえば、全部が救済されない、人命軽視という形で矛盾点ばかりが指摘されてくるのじゃないかというふうに私は考えるわけでございます。そういう意味において、やはりそういう制度上のいろいろな矛盾点をはっきりと出して、どういう立場に立ってわれわれはわれわれの医療というものを制度化していけばいいかということを、改めて洗いざらい国民にはっきりと明示したらどうか。それで国民がどういう選択の道を選ぶかということは国民に決めてもらえばいい、そういうふうな気がするわけです。
 やはり自由主義経済の中では、健康保険というのは応分の負担をしていく、その応分の負担の仕方、その限界、またそれに対して国がどこまでならめんどうを見れるかというめんどうの見れる限界、そういうものをまず十分討議することも必要でしょう。何でも医療の無料化をしてしまえばいいのだというのならば、これは国民の税金からその分を余分にちょうだいしていかなければどうにもならない問題じゃないか。それは大臣も先ほどからおっしゃっているように、費用は、安くしろ、中身はよくしろと言われたってこれはできない、そのとおりでございます。だから最も簡単なことを私はもっともっと真剣に討議していくべきだろうと思います。そういうところを避けて、とにかく耳から入ってくるさわやかな感じだけを期待するような問題をここで百万遍論議してみたところで、私は解決の一つにもつながっていかないと思います。ですから、そういう面においての正しい選択をしていただくために、われわれがここで改めて謙虚にそういう資料を提供しながら、国民のコンセンサスを求めていきたいと強く感じるわけです。
 それからまた、そういうものを含めまして一つの日本の医療のビジョンというものを考えた場合に、やはり長期的な展望に立って将来どういうふうなビジョンをわれわれ考えていくかということ、それから二番目には、中期的にはそれをどう解決していけばいいか、あるいは短期的にきょうの問題をどう解決するか、こういうふうに期間の問題も私は必要だと思うのです。長期の中に解決しなければいけない問題をたったいまここでどうするかという論議をしても解決につながらないし、きょうの問題を長期の展望に掲げたってこれはナンセンスになってしまうわけですから。だからそういうふうに分類しながら、国民の方から見たときに、ああ、これはきょうの問題の解決なんだな、これは中期的な展望の上に立った解決方法なんだな、あるいはこれは長期に結びつけていけるのだ、連動していけるのだというふうなことが納得できるように、わかりやすくその論議を展開していかなければいけないのじゃないかと私は思うのです。
 そのためには、私自身は、自由経済社会の中で健康保険を考えた場合には、国民の応分の負担をしていただくということを離れて物を論じることはできないと思う。また、今後いろいろな諸物価の変動その他ございましょうけれども、その物価の上昇というものは避けられない。ところが一方においては、健康保険料というものは、不況の中であるいは低成長の中では増収を期待することはむずかしい。大変解決がむずかしいでしょうけれども、しかし、そういうむずかしいことを避けて通るのじゃなくて、そういう状態をはっきりさせて、その中でこの健康保険をよりよく維持していく、あるいはそのいけないところはもう抜本的にすぱっと解決して、要するにすかっとするような制度に切りかえていくためには、国民に対して言いにくいこともお願いしてみるということも必要だろうと思うのです。
 だけれども、その前にまずみずからの姿勢を正すということはもっと必要だと思う。そのためには、いままでやってきた一つの経過に対して、人間のやることですからいいことばかりはない、失敗もありましょうし、また間違った判断もあったと思う。しかしそれはだれの責任でもない、みんなの責任としてとらえて、そういうところは謙虚に直していく。
 そういうことで、いままでの長い歴史の中で矛盾点がたくさん指摘されたものを、どういうふうに解決していけば一番合目的かということの合意点をどうやって見出すかということが、私はいまからの問題として検討しなくてはいかぬ問題じゃないかと思う。また、国民の方もそういうことに理解を示してくれる時期になっていると私は判断します。ですから私自身は、この社労委員会が始まって以来、健保法を中心にした問題だけを中心に質疑を重ねてきたつもりでおります。なぜならば、これは一番大切だからです。同時にまた、同じことを何遍も繰り返すかもしれませんが、繰り返すところはやはり大切だから繰り返すわけです。それを一歩でも改善する方向へ進んでもらいたいという期待を込めて申し上げているわけです。
 そういう意味を含めまして、ひとつ大臣、この前から委員長にお願いしておったのですが、抜本改正の中身をお互いに出し合わないで、抜本改正をやりましょう、やりましょうと言ったって仕方がないから、一応ざっくばらんに、いまの体制の中においてどうすれば人命が一番尊重されていく制度がつくれるかということを土俵にしまして、その中で各党のコンセンサスをどうやって求めていくかということを考えればこれは必ず解決方法を見出し得るのではないか。なぜならば、土俵はつくれるのですからね。そういうことで社労委員会の中に小委員会を設けて、大臣もコンセンサスを得られれば積極的にやっていきたいというお考えのようでございますから、受けざらとしてぜひ具体的にそういうものをつくってみたらどうか。最初からあれはだめだよ、そんなこと言ったってむだだよ、できっこないよと言わないで、やはりつくってやってみるべきだと思う。やってみて失敗すればまた考えればいいじゃないか。その中で一つの目標を決め、一つの土俵というものをお互いに認識し合った上で話し合えば、解決の方法は必ず見つかるのではないかなというふうな感じを強く持っておりますので、そういう方法でもし小委員会を私が主張した場合には、大臣、そういう問題について積極的にそういうところへ参加いただけるのか、あるいはそれはやっぱりちょっとまずいとおっしゃるのか、そこら辺のところをひとつざっくばらんに聞かせていただきたいと思います。
#217
○渡辺国務大臣 私は国会議員ではございますが、いまのところ社労の委員でもございませんし、国務大臣でございますから、社労の委員会の中でそういうものをこしらえるメンバーに私が入るというわけにいかないのでしょう、私も制度上のことは詳しくは知りませんがね。だけれども、皆さん方がそういうふうな土俵をつくって、その中で抜本改正の具体案についてひとつ検討しようじゃないか、これは自民党の方も別に異議はないと私は思っています。そればかりでなく、党の間でつくろうじゃないかというような動きも実はあるようでございます。
 いずれにいたしましても、抜本改正はみんなが賛成しているのですよ。だけれども各論に入っていきますと、それが総論賛成、各論反対みたいなことになっても困るし、同じ象だ、象だと言っても、鼻の方をさすったのが象だと思っている人もあるし、しっぽの方をつかんで象だと思っている人もあるし、いろいろなことになっても困るということですから、それはやはり謙虚に医療の内容の充実ということであれば反対する人はいない。そうすれば、その財源はどうするのだというような問題は回避できないことですから、あなたがいまおっしゃったような考え方はその大筋において私も大体同じ意見です。ですから、それをどういうふうに実現をしていくかということについては、ぜひとも具体的にあなたも問題をひとつ提起していただきたい。私も十分に参考にしてまいりたい。委員会の席ばかりでなくたって結構なんです。工藤先生はお医者さんの中でもその方のベテランなんだから、われわれ役人の知らないことを何でも知っておるわけでしょう。ですからそういうようなことを具体的に御提案いただけば、厚生省としてもそれは真剣に検討させたい、こう思っておりますから、どうぞ委員会の席ばかりでなくて、ちょこちょこ厚生省の方へもお出かけ願って御教示を賜れればまことに幸いである、かように思っております。
#218
○工藤(晃)委員(新自) 私が参加してくださいというのは、要するに、そういうものがつくられていく素地ができました場合には、そういうものの意見を尊重し、なおかつそこへ積極的な御意見を逆に政府の方からも出していただいて、とにかくまとめていこうという姿勢を出してくれということを申し上げているので、委員会に入ってくださいとかなんとかということを申し上げておるわけではないのです。その点誤解のないように……。
 いろいろ総論的な話ばかりをしてまいりましたけれども、私が申し上げたことも、あるいは反対の御意見の方もいらっしゃるでしょうが、長年現場で患者を診ながら悩み続けた問題でもございますので、そういう意味において経験の一端を吸い上げていただけるようなものをぜひ国会でつくっていきたいと私は思います。
 それから、たとえばいまの問題、きょうは特に朝から薬づけの問題が出ております。大変重要な問題だと思いますし、一つ一つお説のとおりでございますけれども、ただそのときに一つ考えて頭の中に入れておかなければいけない点もあるのじゃないかと私は思いますので、そういう点を多少指摘しながら、もう時間が迫っておりますから終わろうと思います。
 たとえば、大臣もきょうおっしゃっておりましたけれども、薬価基準の問題で、今度は品目別に薬価を決めていこうというふうなお説がございました。ある意味においてまことに合理的なお考えでございますけれども、また逆の面も考えておかなければいけないのじゃないかという意味合いを含めて、ある程度御質問かたがた問題を展開したいと思います。
 ところで、同じ構造式を持った同じお薬が品名が変わって、各メーカーからいろいろな多種多様な名前で出てきております。その中で、いまの薬価基準の中でも実際は薬の値段が相当違う。それをもっと実勢価格に即応した形で品目別に分けていくということになりますと、同じ薬がA社のものは二倍も三倍も値段がつくこともあり得るかもしれないということがございますが、厚生省としまして、そういう同じ薬の値段がメーカーによって全然違ってくるのだけれども、一体品質そのものはそういう値段が違うように違うものかどうか、その点についてどういう見解をお持ちになるか、私ちょっとお聞きしたいと思います。
#219
○八木政府委員 薬務局長がちょっとおりませんので便宜お答え申し上げたいと思いますけれども、現在の薬価基準に登載しております品目につきましては、いずれも製薬の許可を受けておるものでございますし、それから成分規格等につきましては一定の基準を決めておるものでございますから、品質につきましては厚生省として大丈夫であるというものを製薬の許可を与え、さらに薬価基準として登載しているということが言えようかと思います。
#220
○工藤(晃)委員(新自) 品質的に同じであるというふうな前提に立ちますと、これは消費する側からすれば、より安く、よりいいものを求めていこうというのはあたりまえのことなんです。そうすると、そこに自由競争という原則が失われていくのじゃないかということも一方で頭に入れておかなければいかぬ。
 同時に、お薬というのは、まず発売されるときが一番値段が高いのですよ。なぜならば、研究費から一切合財の経費をその中に含んできますから。しかし、その薬が多量販売できるようになりますと、ぐっとその利益率は違ってくるわけですね。そういうときに、果たしてメーカーがつくった薬がいまどれだけの利益率を持ってきているのかということをチェックするのははなはだ困難だと思うのです。そうすると、逆に言えば、あるメーカーは最初に高い値段をつけてもらった、それによってぼんぼん売れていく。今度は逆に看板で薬が出ていく、あるいは大企業のある意味においての資本力の違いからそういうお薬がどんどん出ていく。何を使っても同じであれば、使う方はそういうことについては配慮しない。安くていいものをというような選択はしていかない。ということになってくると、そういう特定の企業のつくる薬だけが今度は大変大きな利益、利潤を上げていくことになって、中小の製薬業界の方々は大変大きなあおりを食ってしまう。あるいは、一生懸命経営努力をしながらも、そういう資本力の違いでつぶされてしまうというようなことも起きることがあるかもしれないという心配を私は一方においてするわけですね。そういうこともございますので、ある企業がそのお薬のシェアを独占してしまうこともあるわけで、そうすると今度はすべてのものについて、薬メーカーサイドで消費者が支配されていくということも起きてまいりましょう。独禁法にあるいは影響してくることもあるかもしれません。
 そういうことも含めまして、ただ、こっちに悪い欠点があるからそれじゃこっちの方をとればいいだろうといって、単に短絡的にこちらの方法を選べばいいというふうに考えた場合には、やはりそれなりの長所と欠点というものがあるということを私は指摘しておかなければいけないと思うのです。そういうことも十分配慮して、そういうことの弊害、今度品目別に分けたときにどういう弊害が起きてくるかということまで十分御検討になった上でいろいろな手段、方法をお考えにならないと、大変大きな社会の混乱をもたらす危険性も出てくるのじゃないかということを私はここで指摘しておきます。
 ちょうど時間が参りましたので、まだあと時間の許す限り、いろいろな問題点を指摘しながら、よりよき国民の医療の向上ができますように努力したいと思います。きょうはこういうわけで、時間が参りましたので質問を留保しながら私はやめたいと思いますが、ひとつ今後ともに皆さん方の努力を期待します。終わります。
#221
○斉藤(滋)委員長代理 次回は、来る十七日火曜日午前九時五十分理事会、十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
   午後四時四十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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