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1976/03/15 第80回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第080回国会 法務委員会 第3号
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1976/03/15 第80回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第080回国会 法務委員会 第3号

#1
第080回国会 法務委員会 第3号
昭和五十二年三月十五日(火曜日)
    午前十時三十二分開議
 出席委員
   委員長 上村千一郎君
   理事 羽田野忠文君 理事 濱野 清吾君
   理事 保岡 興治君 理事 渡辺 紘三君
   理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君
   理事 沖本 泰幸君    小坂善太郎君
      木村 武雄君    篠田 弘作君
      坂田 道太君    中川 一郎君
      田中伊三次君    山崎武三郎君
      福永 健司君    西宮  弘君
      島本 虎三君    飯田 忠雄君
      日野 市朗君    中野 寛成君
      長谷雄幸久君    加地  和君
      正森 成二君
      鳩山 邦夫君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 福田  一君
 出席政府委員
        法務大臣官房長 藤島  昭君
        法務大臣官房司
        法法制調査部長 賀集  唱君
        法務省刑事局長 安原 美穂君
        法務省矯正局長 石原 一彦君
        法務省保護局長 常井  善君
 委員外の出席者
        大蔵省主計局主
        計官      岡崎  洋君
        最高裁判所事務
        総局総務局長事
        務取扱     矢口 洪一君
        最高裁判所事務
        総局人事局長  勝見 嘉美君
        法務委員会調査
        室長      家弓 吉己君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月十二日
 辞任         補欠選任
  日野 市朗君     上原 康助君
  長谷雄幸久君     岡本 富夫君
  加地  和君     田川 誠一君
同日
 辞任         補欠選任
  上原 康助君     日野 市朗君
  岡本 富夫君     長谷雄幸久君
  田川 誠一君     加地  和君
同月十四日
 辞任         補欠選任
  長谷雄幸久君     二見 伸明君
同日
 辞任         補欠選任
  二見 伸明君     長谷雄幸久君
同月十五日
 辞任         補欠選任
  日野 市朗君     武藤 山治君
  春日 一幸君     中野 寛成君
同日
 辞任         補欠選任
  武藤 山治君     日野 市朗君
  中野 寛成君     春日 一幸君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内
 閣提出第二二号)
     ――――◇―――――
#2
○上村委員長 これより会議を開きます。
 お諮りいたします。
 本日、最高裁判所矢口総務局長事務取扱、勝見人事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○上村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
#4
○上村委員長 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
#5
○稲葉(誠)委員 大臣が来たら、所信表明に対して若干質問したかったんですが、ちょっとおくれていますから、時間の関係上、この法案のことについて若干質問して、途中でまた入って続きます。
    〔委員長退席、横山委員長代理着席〕
 十五名ふやすということなんですが、これが出てくる数字の根拠はどういうところなんですか。
#6
○矢口最高裁判所長官代理者 判事補についてお尋ねだと思いますが、結局復活折衝の最終段階のときになりますと、裁判官の希望者の大体の数字が固まってまいります。それと欠員とのにらみ合わせの問題でございまして、大体、最大限度予定されます判事補希望者を採用できる数字という意味において、十五人という数字が出てきたものでございます。
#7
○稲葉(誠)委員 この統計は十二月一日現在ですね。その後情勢も変わってきているし、それから、特に三月の末になってくるとやめる人なんかもいるわけですね。それを踏まえますと、この資料にある「下級裁判所の裁判官の定員・現在員等内訳」、これはどういうふうに判事の場合などは変化してくるわけですか。
#8
○勝見最高裁判所長官代理者 判事補について申し上げたいと存じます。
 表にお示し申し上げましたように、十二月末現在判事補の欠員ゼロでございますけれども、十九期の判事補が今度任官いたします。その欠員が出てくるわけでございますけれども、一月二十日現在で判事補任官の志望締め切りをいたしたわけでございますが、その際に判事補希望者が七十六名、それから簡裁判事任官希望者が二名ございました。その後判事補任官志望の取り下げが一名ございまして、現在では判事補の任官希望者が七十五名、簡裁判事志望者が二名という数字に相なっておりまして、お手元に差し上げてございます資料でございますが、私どもといたしましては、四月十五日現在を推定いたしますと、判事補はこの数字で埋まるものというふうに考えておる次第でございます。
#9
○稲葉(誠)委員 今度判事補から判事になる人がいますね。それはいま何人ぐらいいるわけですか。それから、それを埋める判事補が、いま七十五名ですか、そうすると、その間の開きというものが出てくるんですか。
#10
○勝見最高裁判所長官代理者 十九期につきましては全部で六十九名おりますが、そのうち二名が六月八日と七月一日とちょっとずれておりますので、先日、新聞でも御承知かと存じますけれども、裁判官会議で再任ということで審議対象にいたしましたのは六十七名でございます。うち一名は再任願いが出ておりませんので、結局六十六名。したがいまして、四月十五日とお考えいただきますと、四月十五日現在で、私どもといたしましては、十九期から判事に任官する予定者が六十六名というふうに考えている次第でございます。
#11
○稲葉(誠)委員 そうすると現定員と現在員は、結局この法案が十五名通ったとして、どういうふうに変化をしてくるんですか。判事の場合には、依然としてやはり欠員があるというふうになってくるんですか。どのくらいになってくるのですか。
    〔横山委員長代理退席、保岡委員長代理
    着席〕
#12
○勝見最高裁判所長官代理者 ただいま申し上げましたのは判事補でございますが、判事補につきましては、いまの予定どおり判事補に任官いたしますと、結局判事補の欠員が四月十五日現在ゼロということに考えておる次第でございます。
 それから判事につきましては、昨年の十二月末現在の欠員が九十四名でございますが、このたび先ほど申し上げましたように十九期の判事補からこれだけ判事に上がりまして、判事の欠員は八月末現在で押さえますと、その間にまた退官者もございますが、欠員が一応五十三名ぐらい、五十名ちょっとというぐあいに私ども想定いたしております。判事につきましては、すでに稲葉委員御承知のとおりに、簡単に埋めるわけにもまいりませんで、給源が客観的に制約されておりますが、これから二十期、二十一期の判事補が判事に任官いたします数が相当多うございますので、この判事の欠員も来年あるいは再来年あたりにつきましては、さらに少なくなるというふうに見込んでおる次第でございます。しかし、判事補につきましては、先ほどから申し上げますように充足可能で、もういっぱいになるということでございます。
#13
○稲葉(誠)委員 そうすると、判事の定員と現在員とが完全に埋まって欠員がなくなるということについての段階的な見通しというか、それはないのですか。それはもうやむを得ないということになってきておるわけですか。
#14
○勝見最高裁判所長官代理者 判事につきましては、先ほど申し上げましたように、いわば給源というものが制約されておりますが、先ほど申し上げましたように、本年度十九期に続きまして、二十期、二十一期以降相当数の判事補がおりますので、判事の欠員はおいおい少なくなるというふうに想定しております。
    〔保岡委員長代理退席、委員長着席〕
ある一定の先におきましては、恐らく判事の欠員が十名を切る時点もあるのではないかというふうに見通しておりますが、これとても、退官者もあり得ることでございますので、正確な見込みというわけにはまいりませんが、ここ数年後におきましては、判事の欠員につきましては、いわば相当改善されるといいますか、相当充足の見込みがあるというふうに申し上げて差し支えないというふうに考えております。
#15
○稲葉(誠)委員 いまの話はよくわかるのですけれども、具体的な段階的、年次的なプログラムというかスケジュールといいますか、そういうふうなものはなかなか実際問題としては立ちにくい状況にあるわけですか、減少の見込みについては。
#16
○勝見最高裁判所長官代理者 事務的には定年退官者は確実に捕捉することができます。それから年次途中の希望で退官される方、これにつきましては正確には予測できないわけでございますけれども、大体過去の平均数字を想定いたしまして、その他各庁との交流とか、あるいはわずかでございますが、弁護士その他大学教授からなられる方の数字、平均的な見込み数字を出しまして、一応事務的にはその推定はいたしております。しかし、これとても相当将来のことでございますので、もちろん見込みが外れる場合もあるでしょうし、ただ一般的な申し上げようとしては、先ほど申し上げましたように、判事の欠員はここ数年おいおい埋まっていくというふうに考えている次第でございます。
#17
○稲葉(誠)委員 大臣おいでになったので、所信表明に関連して若干お聞きをいたしておきます。
 これは率直に言いますと、ロッキードの委員会やあるいはその他の委員会でお聞きすることもあるし、ここで聞くのも――別の機会に一般質問のときに聞くのが筋だ、こういうふうに思いますので、きょうは簡単にお聞きするだけですが、この所信表明の二枚目のところに「一方、立法の面について申しますと、まず、いわゆるロッキード事件再発防止策についてでございますが、その再発防止は、政府として方策を検討すべき範囲が多岐にわたりますので、」云々というふうに、こうあるわけですね。まず、このロッキード事件再発防止策というのは具体的にはどういうことを言っておるのですか。法律をつくれば、これはロッキード事件の再発防止策になるという考え方なんですか。これがまず一つですね。それから、方策を検討すべき範囲が多岐にわたる、多岐というのは具体的に言うと、もう少し説明するというとどういうことを言われるわけでしょうか。
#18
○福田(一)国務大臣 お答えをいたします。
 私が就任をいたしました直後でありますが、一月四日に総理大臣とお会いをいたしまして、ロッキード事件のようなことを再発を防止するためには、政府としても何らかの措置を当然とるべきであるということを話し合いまして、その結果、内閣の官房にこの問題――これは多岐にわたります。御案内のように、自治省の法律関係のこともあるでしょうし、法務省の関係のこともある、あるいはこういうことをもっと一般的に言えば、政治あるいは経済全般にわたる問題を含めて、日本の高度成長のやり方その他、いままでのやり方等についても反省すべき面があるというようなことになれば、非常に範囲は広くなるわけであります。したがって、そういう問題を含めて、内閣官房において関係省と十分連絡をとってやらなければいけない。特にまたロッキード問題では、運輸省の許可事項に大きく関係がございますので、運輸省の許認可などはどう整理したらいいかということもあるわけであります。そのようなことを踏まえて多岐にわたると申したわけでございます。ただ、当省、法務省としては、刑法の一部改正、それから日米犯罪人引渡条約の改定というようなものをさしあたり取り上げてまいりたい、かように考えておるわけでありますが、今後もひとつ、何らかの適当な措置があればこれは十分検討もし、実施に移していかなければならない、このように思っておるわけであります。
#19
○稲葉(誠)委員 そうすると、内閣官房でやるのでしょうけれども、中心となってやるのは一体どこがやるのですか。やはり法務省が相当大きなウエートを占めて、中心になってやらざるを得ないのじゃないでしょうかね。
 それから、多岐にわたるのはわかりますが、多岐にわたるので広範にわたり検討なさるべきものと考える、そのことはそれですが、その前にやはり法務大臣としては、ロッキード事件の再発防止、どうしてこういう事件が起きたのだろうかということについて一つの考え方を持ってないと、それに対処する方法というものも出てこないのじゃないかと思うのです。そこで、あなた自身が、なぜこういうロッキード事件というふうなものが起きたのだろうかということについて、どこにどういう原因があるという認識を持っておられるか、ちょっと承らしていただきたいと思うわけです。
#20
○福田(一)国務大臣 世界経済が順次拡大をいたしてまいっております。日本の経済も世界経済と大きなかかわり合いがあるのでありますが、その間において、いわゆる多国籍企業といいますか、そういうものが順次ふえてまいりまして、それが海外において、自分の国だけでなくよその国、他国においても自分の生産した製品を販売するということが行われておることは御案内のとおりだと思うのでございます。その場合において、非常に競争が激しくなってまいりまして、それを売り込むためにはいろいろの意味でリベートをするとか、あるいはまた値引きをするとか、まあいろいろの問題がありまして、その多国籍企業の競争激化の一つの形としてロッキード問題もあらわれてまいったのだと私は思うのでございまして、そういう意味では、これは国際的なこの多国籍企業というものをどう取り締まるかということが根本にありませんと、今後もこれを根絶していくということは非常に困難だと思っております。
 しかし、御案内のように、いま百五十八も独立国があるのでありますから、その国々とさしあたり何かするということは非常に困難でありますが、少なくとも、先進国と言われる二十数カ国、あるいはまたもしそれがどうしてもできない場合でも、アメリカ、フランス、カナダ、イタリア、西ドイツ、イギリス、まあこういうような国々との間だけでもこういうことをしないようにしようというような国際的な申し合わせあるいは規約ができれば、私は、非常にこれを防ぐことが可能になる、かように考えておるわけでございます。
#21
○稲葉(誠)委員 そうすると、しつこい質問で恐縮ですけれども、法律をつくっただけでこういうふうな問題がなくなるというふうにお考えなんでしょうか、これは聞くのもおかしいけれどもね。
#22
○福田(一)国務大臣 根本的には、私が先ほど申し上げたことがロッキード事件の再発を防ぐかなめになると思いますけれども、それは言うべくしてなかなか行い得ない状況にあることも御理解を賜ると思うのでございます。
 そこで、わが国としては、少なくともそういうことのないようにするための方策を考えなければならない。政治資金規正法を改正しまして、御案内のように、いままでは選挙に関して外国人から金をもらってはいけないというのを、今後は一切、選挙に関すると否とにかかわらず金をもらってはいけないということを、私が自治大臣をしておったときに実現をいたしたわけでございますが、しかし、同時にまた、そういうことがあった場合において、刑法の立場から見ても重罰を科する。今回の取り調べ等から見ても、刑を重くすることによってこの取り調べの期限が延びるというような利便もございますので、そういうことも含めて、今度刑法の改正を一応考えさせていただく。同時にまた、いまさしあたり日米の間で交渉いたしております犯罪人引渡条約についてもその促進を図ってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
#23
○稲葉(誠)委員 刑事局長、いまの大臣の答弁の中で、ちょっと私の聞き違いかもわかりませんが、何か多国籍企業取り締まりのためのいろいろな措置を講じたいという意味のことがあったようにとれるんですよ。それは法務当局としては具体的には何を考えているわけでしょうか。何かそういうような条約でもつくりたいとかなんとかという意味ですか。
#24
○安原政府委員 さしあたり国内立法として多国籍企業を取り締まる法律を考えておるということではございませんで、現在国連で、多国籍企業委員会等におきまして、多国籍企業による腐敗行為の防止のためにアメリカ案というのが出されて検討中のようでございますので、これにつきまして――これは何も罰則だけではなくて、およそ多国籍企業の倫理を確立するという意味において、企業のあり方の問題を含めまして提案がなされておりますので、法務省もそれには積極的に意見を申し述べるというようなことはしておりますが、要するに、結論として、多国籍企業を規制する国内立法を考えておるかと言われますれば、そういうものはまだ考えておりません。
#25
○稲葉(誠)委員 いま多国籍企業を規制する国内立法というのは考えていないという意味は、どうなんですか、技術的にむずかしいという意味なんですか、時期的に無理だということなんですか、あるいは対外的ないろいろな関係があってできない、こういう意味なんですか。
#26
○安原政府委員 事柄が腐敗の防止、いわゆる贈収賄というような犯罪行為の防止ということになれば、わが国の国内立法の刑法の規定で十分であると考えておりまして、何もそういう規定は必要はない。むしろ、犯罪以前の問題としてのモラルの確立とか企業のあり方ということになれば、これは商法その他企業の規制ということはあるのかもしれませんけれども、私の所管に属する罰則規定ということになれば、多国籍企業のために特に罰則を設けなければならないという必要は感じておりません。
#27
○稲葉(誠)委員 そこで、「ロッキード事件を初め国際的な犯罪の情勢にかんがみ、各国との間に逃亡犯罪人引渡条約を締結することが必要と考えておりますが、」こうありますね。「各国との間に」ということは、具体的にどういうふうなことを言っているわけですか。
#28
○安原政府委員 先ほど大臣も申され、稲葉委員も御案内のとおり、ただいま逃亡犯罪人引渡条約を締結している国は、わが国はアメリカ一国でございまして、そのほかには全然ございません。しかし、国際交流が活発になってまいりますと、そういう二国間における犯罪人の引き渡しということが必要になってくる場合が非常に多かろう。戦後四件ございまして、一つはスイス、一つはフランス、あと二件はアメリカというようなことでございますが、将来、ドイツとかヨーロッパ諸国との間等におきましてはさらに必要が出てくるものと思います。そういう意味において、できるならばそういう国との間に逃亡犯罪人引渡条約を締結することが望ましいと考えておるわけでありますが、そういう意味におきまして、検事を在外研究に派遣するなどして、ただいまヨーロッパ諸国における逃亡犯罪人引渡条約の実施状況等を調査させておりますが、将来は、これは相手のあることでございますので必ずとは申しませんけれども、さしあたりヨーロッパ諸国等との間においては逃亡犯罪人引渡条約を締結したいということで、基礎的な調査を着々進めておる段階でございます。
#29
○稲葉(誠)委員 「日米犯罪人引渡条約について、」「早急な改正を行うため、外務省とも協議して、その作業を進めております。」というふうにあります。これは私らも聞いておりますけれども、具体的には何を言っていて、目安はいつごろのことなんでしょうか。
#30
○安原政府委員 実は、これは何もロッキード事件が起こったから急に始まったことではなくて、昭和四十四年にむしろアメリカ側から、もう古いから改正しようじやないかというプロポーズがあったわけでございまして、その後われわれいろいろ研究をしておりましたが、たまたまロッキード事件に当たって、その引き渡し犯罪の罪種が非常に少ないということがある種の捜査の障害を来したことも紛れもない事実でございますので、そういうことで、アメリカ側とわが国との間には、罪種の拡大を含めてこれを改定しようという基本的な合意があるわけですが、やはり両国の中には、法律制度も違います、特に刑罰法規の末端になりますと、向こうでは罰するがこちらでは罰しないというものがございますので、その引き渡しの犯罪の種類の拡大をどういう範囲にとどめるかというようなことが基本で、去る二月二十八日にアメリカ側の司法省と国務省の人が参りまして、こちら側と予備的な意見の交換を行ったわけでございまして、これは私どもだけではできないので、外務省の所管に属することでございますが、外務省とも協力して、できるだけ早くこの実現を図りたい。基本的な合意はあるわけですから、といって、相手のあることでもありますので、いつということは申し上げかねますけれども、そう遠からずというふうに考えております。
#31
○稲葉(誠)委員 またこの法案に関連して聞くわけですが、法務省と裁判所との人事の交流のことについて聞くわけですが、裁判所から法務省へ転出する人が相当いるわけですね。私の調査では、資料によると、これは日本評論から出ている日弁連の編んだもので、「公正な裁判と裁判官不足」というものの資料の九十九ページ以下に出ているのですが、最初の段階では、裁判所から法務省へ転出するのは非常に少なくて、後からだんだんふえてきていますね〇四十六年が十一人、四十七年が十二人、四十八年が七人、四十九年が十六人ですか、こういうふうにふえてきておるわけですが、その後のふえてきておるものもある、こう思うのすが、この数字が間違っているか間違っていないかが第一ですね。それから、その後の数字がどういうふうになっているかということ、これが第二の問題なんです。それから第三に、なぜこういう現象が起きるのかということ、その必要性ということ。
#32
○勝見最高裁判所長官代理者 冒頭にちょっと先ほどの発言を訂正させていただきます。私、判事の欠員が十二月末現在九十何名で、このたびの判事補から判事への任官で欠員が五十三名、これは先ほど八月と申し上げましたら間違いでございまして、四月十五日現在で判事の欠員五十三名、もし私八月と申し上げておりましたら訂正させていただきたいと思います。
 ただいまの法務省への裁判所からの人事交流の問題でございますが、先ほどまず第一点の、正確かどうかという点でございますが、ちょっと私、大変失礼ですが一つ一つ突き合わせてまいりませんでしたが、一応数字を申し上げますと、裁判所から参りました数が、過去五年間とってみますと、四十七年が十一でございます。四十八年が六、四十九年が十五、五十年が十八、五十一年が十二でございます。
 それから、なぜこういう交流をするかというお尋ねでございますが、前局長からも稲葉委員からお尋ねがございましてお答え申し上げているとおりでございますけれども、まず法務省側からのいわば必要性といいますか、どうしても裁判官経験者が必要であるということがまず第一点であろうと思います。それにつきまして、私どもといたしましては、裁判官が裁判実務一本でいくという、もちろんそういう行き方もございましょうが、ある一定期間裁判実務を離れまして法律事務をとること自体も、りっぱな裁判官になるための一つのいい手段でもあるというふうに考えまして、必要限度におきまして、私どもの方から検事に転官させているということでございます。
 それから、先ほど一時期において非常に交流が少なかったではないか、最近非常に多くなったという御指摘がございました。確かに御指摘のとおり、ある時期におきまして交流の人数が少なかった時代がございます。これはむしろ法務省に参りまして、法務省の方へ長くおりまして、長くなり過ぎるといいますかということで自然、交流が行われませんと長くなってまいります。その期間における数字が御指摘の交流人事が少なかったということであろうかと思うのであります。先ほど申し上げましたような趣旨で交流をさせていただいておるわけでございますけれども、余り長くなることもこれまたデメリットがございますので、ある一定期間でまた裁判所に戻っていただくということで、一時期における交流人事の人員よりも最近は確かに多くなっているという実情は御指摘のとおりでございます。
#33
○稲葉(誠)委員 いま言っているように、さなきだに裁判官が少ないわけでしょう。少ないときになぜ裁判所から裁判官が法務省へ移って、法務省で何をやるかと言えば訟務でしょう。国側の代理人となって全部出てくるわけでしょう。全部とは言わぬけれども、それは訟務畑で、ほとんどが国側の代理人でしょう。そして、その人が裁判所へ戻って、今度は裁判をやるということになってみると、国側の代理人であった者が果たして裁判に戻って中立性ということが、それは保たれるのでしょうけれども、少しおかしいじゃないかという印象を一般国民が素朴に持つのも無理はないのじゃないか、こういうふうに思うのですよ。そこで、これはほとんど訟務畑でしょう。なぜ訟務畑の国側の代理人を少ない裁判官をもって充てなければならないのでしょうか。これは、ほかの人でもいいのじゃないですか。裁判官は裁判の本来の仕事に従事していった方が筋が通るのじゃないですか。
#34
○勝見最高裁判所長官代理者 先ほど法務省において検事として働いてもらっている方の数字を六十三名というふうに申し上げましたが、そのうち、御指摘の訟務局関係は現在三十二名でございます。
 稲葉委員御指摘の、裁判官不足ということを言われている現状において、なぜそういう人数を割いているのかというお尋ねでございますが、この点につきまして、戻った場合に国民から裁判に対する信頼というものを損なうのではないかという御指摘かと存じます。しかし、裁判官として仕事をする者といたしまして、裁判官になる前にどういう仕事をしておっても、あくまでも公正中立を保つべきであることは、もうこれは御指摘を受けるまでもないのでありまして、私どもといたしましては、訟務から裁判所に戻ったからといって、そのような世の指弾を受けるような訴訟指揮ないし裁判をやるというふうには考えておりません。いわば法曹、ひいて言いますと法曹一元ということも考えますれば、現在の裁判官と検事の交流といいますか、法務省との間の交流につきましては、世に批判を受けておりますけれども、私どもといたしましては決してそのようなことばないというふうに確信いたしておる次第でございます。
#35
○稲葉(誠)委員 だからぼくは素朴な疑問だというふうに言ったので、あれですが、裁判官から各法務局の訟務にも行っておるわけですから、それは検事出身でも、民事のことになれている検事もいるのだから、検事を充てればいいのであって、なぜ裁判官が不足しているときに、裁判をやらなければならない人がわざわざ国側の代理人という形になって訟務畑へ行かなければならないのかというのですよ。そこら辺がどうもよくわからないのですよ。普通の検事なりその他の者を充てればいいじゃないですか、なぜ裁判官をわざわざ持ってきて充てなければならないのかというのですよ。
#36
○藤島政府委員 実は訟務検事の仕事でございますけれども、御承知のように、民事行政事件について国を代表するわけでございますが、結局二年間の司法修習を終えまして検事を希望する者の相当数は、民事と刑事と比べますと、刑事関係の法令に非常に精通しておるといいますか得意としておる者が多いということと、もう一つは検事になる者の中にも民事関係の法令に興味を持っている者もございますけれども、検察庁の仕事は御承知のように犯罪の捜査というようなことが主体でございますから、どうしても検事の仕事をしているうちに民事関係の学説なり判例を見る機会が余りございませんから、うとくなっていくということがございまして、検事から訟務検事を希望する者の数が非常に少ないということと、もう一つは、仮に希望いたしましてもすぐに訟務関係について戦力にならないということもございます。それからもう一つ大きい原因は、検察庁の検事の欠員というものが依然として埋まりませんで、結局検察庁検事も充足できないような事情にございますので、たくさんの検察庁検事を訟務の方に持っていくという余力もない、こういうようなことで、民事に精通した裁判官に来ていただいて訟務行政の充実を図りたいという観点から裁判所にお願いしておる、こういうことでございます。
#37
○稲葉(誠)委員 別の問題に移りますが、修習生の問題で、特に外国人が司法試験に受かって、それが修習生を希望するということが前にもあって、私も質問したことがあるのですが、そこで一つお伺いいたしたいのは、ちょっと古いことなんですが、昭和三十年八月十日法律百五十五号、これは議員立法なんですが、弁護士法の一部を改正する法律というのがありまして、これは外国弁護士制度ですか、それを改正するために議員立法が行われたのですが、法務委員会では古屋さんという人が提案理由をし、本会議では法務委員長であった世耕弘一さんが提案理由を説明しております。昭和三十年七月二十八日ですね。こういうふうに言っておるのです。「外国弁護士制度は、旧法時代からありましたが、終戦、占領という特殊事情のもとに、その職務範囲が拡張され、その要件が緩和されたものでありますが、独立後の今日においては、一面、国際的視野に立ちながら、他面、独立国の法制としてふさわしいように改正する必要があると信じたのであります。すなわち、現行法におきましては、旧法と異なり、外国人であっても日本の試験に合格すれば」――これは司法試験ということでしょう。「日本の試験に合格すれば弁護士となり得ることになっており、従って、この意味においてはきわめて開放的になっておりますから、この上さらに現行法第七条のような外国人弁護士制度を認める必要はない」云々、こういう提案理由です。そうすると、最高裁当局としては、「外国人であっても日本の試験に合格すれば弁護士となり得ることになっており、従って、この意味においてはきわめて開放的になっておる」、こういうふうに理解をいまでもされておられるわけですか。
#38
○勝見最高裁判所長官代理者 昭和三十年の弁護士法の一部改正におきまして、御指摘のとおり議員立法だったというふうに理解しておりますが、その際の提案理由の説明の中に、そのいまお読みになった点があるわけでございます。現在私どもといたしましては、外国人が弁護士になり得ないという解釈はとっていないわけでございます。
#39
○稲葉(誠)委員 この二十二国会の衆議院法務委員会議録第四十三号というところで、これは、昭和三十年七月二十八日、同じ日の午前中ですか、その中にこういうのがあるのですよ。これは、提案者の古屋委員が、日弁連は、いろいろあって、「当委員会で審議されまする改正法案に対しては大賛成であるという意思表示をしております。裁判所並びに法務省もこれに賛成されておることを一応つけ加えまして皆さんの御審議、御採決の参考にいたしたいと思いまして申し上げた次第であります。」こう言っているのですね。ここのところが、議員立法で質問がないものですから、率直に言ってあれですけれども、この弁護士法の改正については裁判所も何か賛成されておるということをつけ加えたということになっておるのですが、この間の事情はどうなんですか。
#40
○勝見最高裁判所長官代理者 けさほど稲葉委員からその趣旨の御質問があるということで、事務方におきましてその点につきまして資料を調査いたしましたけれども、積極的に裁判所が賛成したということについての資料は、こちらに参上するまで見つけることができませんでした。ただ、この改正は、外国の立法例において、外国の弁護士資格を持っている人が他の国において当然弁護士になれるという法制はほかにはないという前提でこの改正が行われたのではないかというふうに私は考える次第でございまして、その限りにおいて、その改正について反対する理由もなかったのではないかというふうに、私なりに推測いたして申し上げているわけでございます。
#41
○稲葉(誠)委員 私はいま問題となっていることに関していろいろお聞きするわけですが、率直に言ってできるだけ前向きに善処してもらいたいという気持ちがあるものですから、質問も適当にやわらかくなるかもわかりませんけれども、私が四十九年の二月十九日に当法務委員会で定員法に関連して質問していますね。これに対して、これは矢口さんが最高裁判所長官代理者ということで答えているわけですね。それで、八ページのところですが、「修習生の採用にあたって外国人でもいいではないかというお尋ねでございますが、確かに日本人でなければいけないという趣旨の明文の規定がございませんので、現行法の解釈として積極、消極の両説が考えられるところでございます。」こう言っていますね。この「現行法の解釈」というのは、ちょっとよくわからないのですが、どれを言っているわけですか。
#42
○矢口最高裁判所長官代理者 当時私がお答えいたしましたのでお答えいたしますと、現行法といって特殊の法律を考えたわけではございません。主としては裁判所法でございますが、いわゆる司法法規と申しますか、司法の組織法全体として両方の考え方が立つのではないか、理論上の問題といたしましては両方考えられるのではないかということを申し上げたわけでございます。
#43
○稲葉(誠)委員 私もこの現行法という意味は、具体的にどの法律という意味よりも、むしろ一般的に言ったのだろうと思うわけですが、積極説というのはどういうふうな考え方なんですか。積極説だけ聞いているわけですよ。
#44
○矢口最高裁判所長官代理者 どちらを積極説と言うかということが実は問題ではなくて、国籍が要るという考え方と、なくてもいいのだという考え方と、両方立つのではないかという意味でございます。
#45
○稲葉(誠)委員 そうすると、昭和三十年の十一月二十六日に、何か最高裁の裁判官会議で国籍要件の確認をしたのですかね、これがよくわからないのですが、それとさつきの弁護士法の七条の改正のときの、私が読み上げましたね、きわめて開放的だということとの関連は、どういうふうに理解したらよろしいのでしょうか。
#46
○勝見最高裁判所長官代理者 御指摘の公告は、三十一年の十月に初めて国籍を要件とするように入れたわけでございまして、昭和三十年の公告には入っておらなかったわけでございます。入っておらないものを追加したというのは、当然最高裁判所の裁判官会議の決裁といいますか、御結論をいただいた上でそういう公告になりまして、自後ずっとその形で公告しているわけでございます。
 三十年の法改正との関連いかんというお尋ねでございますが、先ほど申し上げましたように、その改正は外国の弁護士資格を持っている者が日本で弁護士をやれないという趣旨の改正でございまして、このたびの問題とは直接はかかわりないというふうに考える次第でございます。
#47
○稲葉(誠)委員 直接かかわりはないかもしれませんけれども、文章を読むとそうはとってないですね。これこれを廃止する、廃止するけれども、日本の試験に合格すれば弁護士となり得ることになっておって、したがって、この意味においてはきわめて開放的になっておるというのですから、日本の司法試験に合格すれば弁護士になり得る。しかも、それは修習生を経由してなり得るんだということを言外に込めてこういうふうな提案理由がされたというふうに私は理解する、あるいはしたいのですがね。そこら辺はどうでしょうかね。
#48
○勝見最高裁判所長官代理者 先ほどお読みいただきましたように、法改正の提案理由は確かにおっしゃるとおりであったと思います。現にそのような趣旨の議員立法で、提案者はそのようなお考えであったというふうに考えるわけでございます。
 なお、昭和三十一年当時の裁判官会議は、先ほど矢口局長から申し上げましたように、いわゆる積極、消極両様考えられるけれども、やはり国籍を要件とすべきだというお考えに立ってそういう公告に相なったということであろうかと存じます。
 大変先を越して申しわけございませんけれども、この問題につきましては、先日の委員会の際もお答え申し上げましたけれども、裁判官会議におきまして改めて検討するというふうに申し上げてある次第でございますが、ただいまの現行法といいますか、あるいは改正になったときの事情といいますか、そのような趣旨も十分私ども事務当局といたしましては資料として申し上げまして、慎重な審議をいただきたいというふうに考えている次第でございます。
#49
○稲葉(誠)委員 それから国費で養成するということに関連しては、たとえば育英会の対象には昭和五十年度から外国人も入っていますね。それから厚生省関係、昭和四十三年の医師法の改正によって臨床研修医という制度が設けられて、これに対しても、外国人であっても厚生省から金が出ているんじゃないですか。この臨床研修医の給与などを決めるについては、司法修習生の給与が参考になって決められておるということですね。だから、いまの育英会の問題、臨床研修医、これは外国人であっても支払われているということは最高裁としてもつかんでおられるわけですか。
#50
○勝見最高裁判所長官代理者 一般論といたしまして、外国人一般にどの程度の資格ないし権利を与え得るかどうかという問題につきましては、非常にむずかしい問題があろうかと思います。その意味におきまして、いろいろな法分野におきまして、外国人に対して日本人と同様な処遇をするかどうかという問題は、すべての分野において起き得ることであろうかと思います。
 ただいま御指摘の二点につきまして、現在私ども必ずしも正確に把握しているわけでもございませんけれども、本当にやってもいいというと失礼でございますけれども、そういう一種の権利といいますか、利益を与えてもいいというジャンルも相当あるはずでございます。問題は、司法修習生ということに限定して考えた場合に、果たしてその国籍を要件とすべきかどうかという問題でございまして、もちろん裁判官会議で審議をしていただく際には、いま御指摘のようなほかの分野における利益の供与、権利の与え方等も十分考えていただきまして、この修習生資格の問題につきまして、先ほど申し上げましたように慎重に検討してもらいたいというふうに考えている次第です。
#51
○稲葉(誠)委員 司法官試補とそれから司法修習生との違いで一番大きなところは、どういう点が違うのでしょうか。司法官試補というのは、矢口さんなんか司法官試補かな、どうかな。
#52
○矢口最高裁判所長官代理者 司法官試補は、判検事に任命を予定いたしております公務員でございまして、身分も高等官待遇ということで、当初から公務員でございます。司法修習生はそういう意味の厳格な公務員ではないということが、一番大きな相違でなかろうかと思います。
#53
○稲葉(誠)委員 したがって、司法修習生のやっているのは公務の執行というか、たとえば昔は検事代理というのはちゃんとした発令がありましたよね、ぼくらもらいましたけれども。それでやったわけですけれども、いまは検事の取り調べを代行してやっているわけじゃないんでしょう。あれはどういう形になっているわけですか。
#54
○矢口最高裁判所長官代理者 現在はいわゆる検事代理の制度はございません。取り調べ修習というのは行われておりますが、これは稲葉委員御承知と思いますが、相島六原則というのにのっとりまして、一人前の指導検事が取り調べをするのを、率直に申し上げれば、事実上補助するということでございまして、自分の名前において、自分の責任において取り調べをするというものではございません。ただ、先走るようでございますが、裁判所においては、戦前戦後を通じまして、合議の傍聴といったようなこと、それから判決起案といったようなことは、これは司法修習生につきましても同様にやっておるようでございます。
#55
○稲葉(誠)委員 そうすると、国家公務員である場合の守秘義務といいますか、秘密を漏らした場合は刑罰に触れますわね。公務員法の百何条でしたか、触れますね。片一方の場合は、現在の場合は刑罰には触れないということですから、これ以上深く追いませんけれども、追うという言葉もおかしいので、聞きませんけれども、そこに差異があるということはお認めになるわけでしょう。
#56
○勝見最高裁判所長官代理者 仰せのとおりでございます。
#57
○稲葉(誠)委員 そこで前の、四十九年二月十九日の法務委員会会議録第六号、私の質問に矢口さんが答えておる最後のところで、いろいろ言っておられて、「こういった考え方につきましては、長い時間がたっておりますので、国籍ということを問題にするとしても、もっと広い視野から」云々、こういうことを言っておられますわね。これは最後のところですが、そうすると、いままで時間がたっておるということが一つですね。それからもっと広い視野から考えなければならぬということを二つ目に言っておられるようにとれるのですが、ここのところは、もう少し差し支えのない範囲で言われると、どういうことを意味しておられるわけですか。広い視野とか時間がたっているということは、どういうことを言われるわけでしょうか。
#58
○矢口最高裁判所長官代理者 当時私が主管局長でございましたので、当時の考えを率直に申し上げますと、このところで問題になりましたのは楊錫明という台湾の方でございました。御本人は帰化ということも十分お考えになったようでございますが、台湾の特殊な地位というようなこともあって、それも非常に困難ではないかということからこの問題が起こったわけでございまして、翻って考えてみますと、確かに国籍を要件とするということも少し狭過ぎるのではないかということも率直に考えられたわけでございます。慎重に検討させていただくということで、引き続きその問題の解決ができないような場合には、もう少し突き進んだ考え方をしていかなければいけないかもしれない。ただ、三十一年に国籍を要件としたということも、これはそれなりに理由のあることでございますので、それだけが障害であるならば、できるだけ国籍を取得していただくという方向で解決することも、それはまたそれで結構な解決ではないかというふうに考えておりまして、結局においては帰化されましたので、この問題を最終的に煮詰めるという段階に至らなかったわけでございます。そういう意味で、三十一年の決定といいますか、要件というものが今日まで生きてきておったということでございます。それはそれなりにやはり理由のあることであろうと思いますが、今度改めて新たな問題が出てまいりまして、今回のケースと前回のケースを比べました場合に、必ずしもすべてが同じケースであるとも言いかねる面がございます。そういう点も、先ほど人事局長が御答弁しましたが、裁判官会議で十分御検討いただく必要があるだろうと考えておるわけでございます。
#59
○稲葉(誠)委員 この問題については、私の申し上げたいことも大体おわかり願えたと思いますし、この程度にしておくわけですが、きょうの質問内容その他議事録の問題等、全体を含めて裁判官会議によく反映をさせていただく。反映というか、正確な言葉ではどういうふうに言ったらいいのでしょうかね。まあ反映をさしていただきたい。せっかく司法試験を通っているわけですからね。時間もたっているし、広い視野から問題の前向きの解決をぜひお願いいたしたい、こういうふうに私としては希望を申し上げて、これに関する質問は、これは金敬得の問題だということはもちろんおわかりだと思いますので、一応終わらせていただきたい、こう考える次第でございます。
 何かそれに関連して人事局長の方からお答えがございますか。
#60
○勝見最高裁判所長官代理者 前回の委員会におきましてもお尋ねをいただきまして、私から、委員会の席上で議論が交わされ御意見がありましたことを裁判官会議にも申し上げて、慎重に検討させていただくというふうに申し上げたわけでございますが、改めてお尋ねでございますので、ただいま御指摘のような問題につきましても、国会の委員会において議論されたことを十分御報告いたしまして、結論を出していただきたいと考えておる次第でございます。
#61
○稲葉(誠)委員 法案のことに戻りますが、簡易裁判所が法律上設置されておるのは五百五十七あるわけですか、実際にはそんなにないのだ、八つの庁は初めからなかったのだということを言う人がいるのですね。私は、そんなことを最高裁がするわけがないと思っているわけですけれども、そこのところはどういうことなんでしょうか。仮にそれは八庁として、八庁のうち二庁だけは、都島かどこかは看板だけかけたらしいけれども、そうすると、裁判所法の附則か何かを改正しなくていいのですか。
#62
○矢口最高裁判所長官代理者 御指摘の庁について、まだ開庁していないという状況があることは事実でございます。必要な敷地が得られないとかいろいろな状況からいまだ開庁するに至っておりませんが、最終的にもう不必要というふうに考えておるわけではございません。そういう意味で検討されました結果、それをもう置かないというふうにお願いした方がいいということにでもなれば、それは法律改正の問題が起ころうかと思いますが、現段階では未開設庁というふうに御理解いただきたいと考えております。
#63
○稲葉(誠)委員 何かよくわからぬのですけれども、どこか借りて二つ看板だけかけたところもあるという説もあるのですが、都島とどこかな。まあそれはそれでいいです、余り聞きません。そうすると、もう実際にはある程度で目安をつけざるを得ない、こういうことになってくるわけですか。
#64
○矢口最高裁判所長官代理者 いろいろな点から引き続き検討させていただいておりますが、簡易裁判所ができました当時の状況とは、交通事情でございますとか住民の分布状況でございますとか、そういうものも相当変わっておりますので、そういった観点からも検討されるべきだと考えております。
 大体、未開設庁と申しますのは、近接の大きな裁判所に非常に近いところでございますとか、大都会の中の独立簡裁というようなところでございまして、それが設けられてないことによってその地域の住民の方に全然御不便をかけてないかどうかということになりますと、それはそうも言い切れないかもしれませんが、まず御不便はかけないという状況で今日まで来ておる。しかし、その庁だけをやめるとかいうようなことを決めるべき筋合いのものではございませんで、やはり全体的な視野から見ていかなければいけない問題でございます。たまたま、先ほど申しましたように、庁舎を得がたいとかいろいろな状況がございまして今日に至っておりますが、まだどちらとも結論を得ていないというのが実際のところでございます。
#65
○稲葉(誠)委員 判事補を十五名ふやすというわけですね。判事補は十年間でしょう。その間、五年たつと特例がついたり何かするわけですが、三年ごとに何か研修みたいなことをやるわけですか。その辺のところは、十年間にどういうふうに研修その他をやっていくわけですか。
#66
○勝見最高裁判所長官代理者 判事補の研修につきましては、まず、新任の判事補を東京に集めまして、これは研修と申しませんで研さんと名づけておりますが、それをやっております。それから、御承知のとおり、少年事件につきましては、三年未満の判事補についてはやらせておりませんで、三年目の判事補については特に少年法を中心とした研修をやっております。それから、五年たちますと、これも御承知のとおり、特例がつきまして単独の裁判を担当することになりますので、そのために研修をやっております。それから十年目、いよいよ判事になるという直前におきまして、いわば判事になるための研修といいますか、そういうことを目標にしてやっております。そういたしますと、都合四回、司法研修所が主催する研修が行われているということでございます。
#67
○稲葉(誠)委員 判事補の間は全部給与は同じなわけですか、上がり方も。どこら辺になったときに上がる人と上がらない人との差異が出てくるのですか。
#68
○勝見最高裁判所長官代理者 判事補の場合は、よほどの事情がなければ、普通大体同格で上がっています。特に長期病休とかいったような場合には、その点もやや加味させていただきますが、判事になりますと、大体四号ぐらいからある程度の差をつけているような実情でございます。
#69
○稲葉(誠)委員 そこで問題は、どうしてその差がつくのかということなんですよ。これでよくこういう話があるのですね。所長から最高裁へいろいろな上申がある。何という名前で言ったらいいのか、考課表というのか何というのか知りませんけれども、俗に言う第二カードと称されるものがあるらしいですね。第二カードというのは何でしょうか。
#70
○勝見最高裁判所長官代理者 内部通達によりまして、御指摘の第二カードというものを私どもにいただいております。これは大体ほとんどを自分で書き込んでもらいますし、その後いろいろな、どこに転勤を希望するとかというようなことも書いてもらっております。それに対する所長、長官の御意見も書いてもらっております。
#71
○稲葉(誠)委員 それは裏側に所長の意見を書く欄があるんでしょう。これはひな形をもらいたいと思ったんだけれども、そこまでもらうのもあれかと思いますが、この第二カードというのは、現場のいわゆる判事補たちにとっては非常に大きな問題らしいように私ども聞くんですよね。どうも最高裁に聞くと、そんなことはないと言うんですがね。所長の意見というのがありますね。これは一体どこから所長の意見が出てくるんでしょうかね。私は、だから二つの問題があると思うんですよね。所長が裁判の内容に仮に関与してやったとするならば、これは司法権の独立の問題を侵すことになってきて、あの判事はできるとか、あの判事は訴訟指揮がいいとか悪いとかいろいろ書いてあるとすれば、そういうふうになればなってくるし、もう一つは、いろいろなことが書いてある。どういうことが書いてあるのか知りませんけれども、いろいろなことが書いてあるらしい。そうすると、それは不確実な情報に基づいて書いているというふうにもとれないことはないということの問題点があるらしいですね。私は、裁判官の成績というもの、いま言った四号になってくると離れてくると言うけれども、それ以前に、率直に言うと、エリートコースみたいなものがありますね。いろいろなコースがあって、あれはエリートコースだとかエリートコースでないとか言って、いろいろ話をしているのが耳に入るのですが、どうやって決まるのか。前にも何回も聞いたことがあるのですけれども、どうもはっきりしない。一つは、最高裁独自の調査でやるんだということを言うし、一つは、高裁の部長会議かあるいは長官の方であれするんだ、一つは、所長の上申だ、こういうふうに言う。大体三つ。裁判官の成績がどうとかかんとかというのは大体三つだと何となくわかるんだというふうなことをいつか答えたように思うのですけれども、大体その三つで何となくわかるんだ、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。ちょっとここでこんな質問をするのはおかしいと私も思うのですが。ということは、いま言ったように、所長の上申ということが非常に大きな意味を持っているようにとれるものですから聞くのですが。
#72
○勝見最高裁判所長官代理者 最初に第二カードの問題をお尋ねでございますが、先ほど申し上げましたように、第二カードには、任地それから補職希望、どういう仕事をやりたいというような希望も書いてもらっております。それに対する所長、長官の御意見というのは、大体九割方が、現任地相当あるいは本人の希望相当というようなことを書いてございます。あるいは本人の家族の状態、健康状態等につきましても、所長、長官がおわかりになっておれば当然書いていただいている。それなどを参考にいたしまして、一般の定期異動の資料などとしているわけでございます。
 それから、この第二カードに関する限りではございませんで、一般に、所長はやはりその所属の裁判官について、本人に直接会いまして、本人の希望なり意見なりというものを聞いてもらっていると思いますし、あるいは若い人であればその部の総括者から聞くこともございましょうし、第二カードに関する限りは、そういうような形になっているわけでございます。
 なお、考課一般につきましては、従来も稲葉委員から前局長にお尋ねがございまして、やはり裁判所でありましても、その裁判官の素質、能力、性質も含めまして、やはりおのずからなる評価というものが当然出てまいりまして、それはもう部の総括、所長、長官が把握できるその限度において、いろいろな御意見の根拠になるということはあり得ると思います。
 また一方、先ほど御指摘のように、事件を通しまして、中身を――中身と言うとおかしいのですが、事件を通しまして、その裁判官の能力、素質というものがわかる場合もございます。所長が当然に合議体の構成員になるわけでもございませんけれども、やはりその庁なりの部の総括等の意見というものがやはりおのずから所長に集中してくると思いますし、これが控訴事件になりますと、高等裁判所におきまして事件を通してその裁判官の素質、能力というものがわかってくるということもあろうかと存じます。それらの点をいろいろ総合いたしまして、私どもといたしましては異動計画その他を考えさせていただいているわけでございます。
#73
○稲葉(誠)委員 これは内部の問題ですし、私もこれ以上立ち入りませんけれども、ただ、どうも第二カードというものを非常に重視して、非常に神経をとがらかしている裁判官もいるやに聞くものですから、私もいま言ったような問題点があると思って聞いているわけです。
 私もいろいろ聞いていますけれども、これ以上ここで申し上げるのはあれですから、これ以上聞きません。
 終わります。
#74
○上村委員長 次に、長谷雄幸久君。
#75
○長谷雄委員 それでは、裁判所職員定員法の問題についてお尋ねをいたします。
 今回、裁判所の方では、定員の増加に対する要望が出ているわけでございますが、まず、裁判官の定員あるいは定員の増加に対する基本的なお考えを承りたいと思います。
#76
○矢口最高裁判所長官代理者 裁判官の定員が、ほかの場合と異なりまして、判事何名、判事補何名、簡易裁判所判事何名というふうに分けてはっきりと法律で規定していただいております趣旨は、やはり裁判官の任命の特殊性、任命資格の厳格性及び裁判官の地位の特殊性、そういったものからくるものであろうかと思います。私どもは、養成された法曹の方々の中から、できるだけりっぱな多数の方に裁判官におなりいただきたいということで努力をいたしてきておるわけでございますが、その年その年の増員と申しますものは、任命の資格を有する方の希望者がどの程度あるか、その結果どのような充足が可能であるかといったような観点から、必要な人数というものをはじき出しまして、毎年の定員法の改正という形で御審議をいただいておるというのが現状でございます。
#77
○長谷雄委員 そうしますと、その考え方というのは、他の省庁、官庁との違いはあるわけでございますか。
#78
○矢口最高裁判所長官代理者 他の官庁のことはつまびらかにはいたしませんが、一つの大きな行政目的等に向かって組織をどのように持っていくかという観点から、人員をはじいておられるものと思います。そういった場合に、一つの組織に何名の職員が必要であるかというようなことで全体の各省庁の定員というものができておる。したがいまして、その中の構成ということになりますと、事務官の方もありますでしょうし、技官の方もありますでしょうし、タイピストとか守衛等いわゆる行(二)の職員の方もおありになるわけでございますが、裁判官の場合は非常に任命が厳格でございますので、裁判における裁判官の必要性、仮に必要があったとしても、これを供給する人員があるかどうかといったような観点から、きわめて詳細にわたりまして人数の予想をはじき出しまして、それに見合う定員を要求しておる、こういう状況でございます。
#79
○長谷雄委員 ちょっと質問の趣旨がはっきり御理解いただけなかったのではないかと思うのです。要するに裁判所、特に裁判官という立場は、公平な裁判を行って人権の保障をやる、こういう司法権本来の機能があるわけでございますので、その立場から、必要な定員あるいは増員というものが当然割り出されてくるのではないか、こういうぐあいに私は思うわけです。そういう意味での明確な御答弁がなかったのがちょっと残念だったと思うのです。
 そこで、今回裁判所の方で定員増加、裁判官について十五名、裁判官以外の職員について五名、こういうことを出されておるわけでございますが、裁判所としまして実際に今回定員の増加を必要とする数というものは、この数と全く同じと考えてよろしいんでしょうか。
#80
○矢口最高裁判所長官代理者 慎重に検討をいたしまして、本年度はこの人数を必要とする、これでやっていけるという考えでございます。
#81
○長谷雄委員 私どもの調査によりますと、ちょっと違うのではないかと思うのです。毎年毎年裁判所の方では定員の増員を希望しておられるようでございますが、昨年は裁判官について四十五名、それに対して認められた数が七名、その前の年は二十六名に対して三名、こういうような数字があるように聞いておりますが、その点はいかがでございますか。
#82
○矢口最高裁判所長官代理者 長谷雄委員御承知のように、八月末をもちまして定員関係もひっくるめました予算の概算要求をいたすわけでございますが、その時点におきましていろいろと理想の形というものを組みまして、必要な人員というものを私どもとして可能であるならば増員をいただきたいという必要人員というものをはじき出しておるわけでございます。しかし、その後の裁判官の減耗――定年等でおやめになる方はあらかじめわかっておりますが、そういうことでなくて、急に家庭の御事情等で弁護士さんをおやりになりたいというようなことでおやめになる方もございますし、そういった減耗がございます。さらに年末になりますと、翌年の三月末をもって修習を終了する方々のいわゆる判事補希望というような人数がわかってまいります。そういったものをはじき出してまいりますと、八月の末現在で要求いたしました数というものが十分に充足できるだけの供給源があるかどうかということが出てまいるわけでございます。それに、弁護士さん等から裁判官に任官を希望されるような方、そういったような方の数も出てまいりますので、そういうものを勘案いたしまして、採用可能のぎりぎりの人員というものが現実の人員として出てまいるわけでございます。それが、来年度のいま御審議をいただいております問題でございますと、判事補十五名という数字で出てまいるわけでございまして、実はそれ以上の増員をいただきましても、この供給源がございませんので、欠員のままで放置せざるを得ないということになります。そういうことで十五名という数字を確定的なものとして増員をお願いした、こういうことでございます。
#83
○長谷雄委員 私が尋ねているのはそういうことじゃなくて、現実に必要性があって当初裁判所の方で増員希望の出された数が、いま私が申し上げたような数字に間違いないかどうかをお尋ねしているわけです。
#84
○矢口最高裁判所長官代理者 間違いございません。
#85
○長谷雄委員 そうしますと、当初裁判所で御検討されて増員希望を出された数、これに対して現実にこういう形で今度の一部改正ということで増員がいま審議されております数との差が出てくるわけでございますが、こうした差が出ることによって、将来裁判所におけるいろいろな裁判事務を含めて一切の裁判所の必要とする仕事、それについて何らかの障害があるかどうか。つまり当初裁判所が出された数といま審議している数との差があるわけでございますね。そのことについてお答えください。
#86
○矢口最高裁判所長官代理者 当初要求いたします人員というものは、その時点におきまして最も好ましいと思われる姿というものを一刻も早く実現したいという形でもって出してきた数字でございます。しかし、その人員を下回った増員の見込みしか立たないということは、その分将来に問題を残しておるということは間違いのないところでございます。しかし、私どもは常に理想を求めてきておるわけでございますので、仮にその理想が本年度実現できなかったとしても、これは次年度以降において逐次実現をしていかなければいけないというふうに考えられるものでございます。
 ただ、一つお断りを申し上げておきたいと思いますのは、やはり人数をどういう状況でも必要な人数を満たしさえすればいいんだというわけにもいかない。これは裁判ということでございまして、その国家意思を代表する裁判をする、しかも自己の責任においてやるというシステムを裁判というものがとっております以上は、やはりそこに裁判官としてなっていただく方というのは、やはりいろいろな観点からりっぱな方でなければいけないということで、どなたでも来ていただいていいというわけにもまいらない、そういった面もございますので、本年度の要求、当初の要求と現実の十五名との差というものは今後に期待せざるを得ない、こういうふうに考えております。
#87
○長谷雄委員 そうすると、当初の要求と現在のこの数の差がございますが、それはやむを得ない、あとは内部努力で賄っていく、こういう御趣旨でございますか。
#88
○矢口最高裁判所長官代理者 当初の要求を十分満たし得ない数字になったということは残念でございますが、現状としてはこれでがまんをして、その分は皆の努力によって補っていくよりしようがない、このように考えております。
#89
○長谷雄委員 当初の要求の数、増員数が本当に必要な数であるとするならば、それに見合うだけの努力をなさっているのかどうか、その辺は一番心配なわけです。といいますのは、私は数がふえることがいいか悪いかを議論しているのではなくて、本当に裁判所の側に立って、この司法権の独立を守る、人権保障を全うする、公平な裁判をやるというためにぜひともこれだけの数は必要なんだ、こういうお考えであって、そのために定員の増員を望まれるということであるならば、それに見合うだけの努力を、たとえば大蔵省に予算をつけてもらうというような形で努力をなさるのが筋ではないかと思うのですが、その辺の実際はどのようになっておられるのか、伺いたいと思います。
#90
○矢口最高裁判所長官代理者 増員の先ほども申しました意味での好ましい数ということは、私どもが当初要求で示したとおりでございますが、これは、大蔵省が予算をつけていただけないとか、そういう問題ではございません。むしろ、私どもは、基本的には大蔵省は、充員可能であるならば、私どもの要求をそのまま認めていただけるだけの御理解をお持ちになっておるというふうに信じております。ただ、問題は、判事補の供給源でございますが、あくまでもその年修習を終了した修習生の中に限られるという現実があるわけでございまして、この裁判官希望者の数というものが、結局私どもの希望といいますか、望みというものをどの程度に満たしてくれるかということにかかってくるわけでございます。ことしのいわゆる判事補任官希望者というものの数との関連において十五名の要求にとどめざるを得なかった、こういうことでございます。
#91
○長谷雄委員 ついでに伺っておきますが、今回の増員希望される理由につきましては、「下級裁判所における事件の適正迅速な処理」、こういう理由になっておりますが、こういう理由で毎年増員をされているのかどうか、その辺はいかがでしょうか。
#92
○矢口最高裁判所長官代理者 要求をいたします時点における最優先の問題がどこにあるかということによるわけでございますが、ここしばらくの間は、具体的な特殊の事件といったようなものをより適切に処理していくための増員ということで、大体本年度と同じような特殊の事件の分野というものを考えまして、その分野における事件処理要員というものを充実しなければいけないということで要求をいたしております。
#93
○長谷雄委員 ついでに、裁判官以外の裁判所の職員について伺いますが、今回の法案では要求数は五名でございますね。これはまた、さっきの裁判官と同じように、当初予定の数と裁判所が要求している予定の数とは食い違いがあるのではないか、同じように、昭和五十一年では三百九名の要求に対して十三名、その前は四百二十名に対して二十三名、こういうような数字を私どもの調査で確認しておりますが、その点に間違いないかどうか。また、あわせて、当初の裁判所の御要求の数字と現実にその認められている数字との食い違いがございますが、それに対して裁判所の方で、司法行政を含めた裁判所の一切の事務について支障が起きるかどうか、その点お伺いいたします。
#94
○矢口最高裁判所長官代理者 ここ二、三年の裁判官以外の職員の増員、当初増員要求数及び最終的に増員が認められた人数というものについての数は、御指摘のとおりでございます。
 それで、裁判官の場合と異なりまして、一般の職員の場合には、事務官でございますと、資格がそれほど厳格ではございませんので、供給源といったような問題は必ずしもないわけでございますが、ただ、一般の職員の場合には全体を通じまして相当數の欠員を抱えておりますので、その欠員を徐々に減らしていく、真の増員の必要性というところに限定をいたしまして、最終的にはそういったところも勘案いたしまして、一般職の職員の増員数というものを決めていただいておる。本年度はどちらかと申しますと、裁判官の場合に重点を置いておりますので、一般職の職員五名ということになったわけでございます。
    〔委員長退席、羽田野委員長代理着席〕
#95
○長谷雄委員 この関連について大蔵省にちょっとお尋ねしたいのですが、いまお見えになっていないようでございますので、後で伺います。
 そこで、裁判官の中で実際に裁判実務を担当している裁判官と、司法行政あるいはその他の事務に従事している裁判官とがいらっしゃるわけでございますが、これについては、司法行政に従事している裁判官の数は現在幾らか、あわせて裁判所以外の他の官庁に、現在は裁判官の身分がないかもしれないけれども、もともと裁判官出身であるという方が何名いらっしゃるか。それとあわせて、そういうところに裁判官を充てる必要性がどの程度あるか。そのことをあわせてお尋ねいたします。
#96
○勝見最高裁判所長官代理者 まず司法行政事務に携わっております裁判官の数は、最高裁判所事務総局におきましてことしの一月十日現在四十二名でございます。あと、高裁事務局長に充てられている判事は八名でございます。
 それから、先ほど稲葉委員からのお尋ねがございましたが、裁判官として任官いたしましたが現在法務省において検事として働いている方が六十三名でございます。
 法務省以外、内閣法制局あるいは公害等調整委員会等に出ております者は、やはり検事の身分で出ておりますが、六名ございます。
 その必要性というお尋ねでございますが、まず最高裁の事務総局を考えてみますと、裁判官会議が司法行政の主体でございますけれども、これらの事務の中には、裁判官の人事あるいは規則制定に関する準備、調査等がございまして、裁判官会議を補佐する事務総局といたしましては、裁判官の資格、経験を有する者がどうしても必要になっておるわけでございまして、司法行政の実を上げるためには、最小限度この程度は必要であるというふうに考えている次第でございます。しかし、御指摘のとおり、事務総局に必要以上の人員を置くことは、第一線の実務を担当している裁判官との関係におきまして、十分慎重に考えなければならないところでございますし、事務総局の中でも裁判官の資格、経験が必要でないようなポストにつきましては、できるだけ一般職の職員をもって充てているのが現状でございます。もう御承知かと存じますけれども、一応挙げてみますと、統計課長、監査課長、用度課長、これは従来から一般職員を充てておりましたが、比較的最近では、厚生管理官、営繕課長、管理課長、職員管理官、能率課長――現在兼務をいたしておりますが、あと公平課長、それから総務局第三課長、このようなポストは一般職員をもって充てているような実情でございます。高裁の事務局長につきましては、やはり高裁管内の人事もございますし、司法行政事務は裁判に非常に密接に関係しておりますので、高裁の事務局長は判事をもって充てているわけでございます。
 なお、法務省を主とする他の省庁に行っていただいている方につきましては、先ほど稲葉委員からのお尋ねがございましたので、繰り返しになりますけれども申し上げますと、やはり訟務は訟務で裁判官の経験を有する者が非常に必要であるということでございます。なお先ほど申し上げました内閣法制局あるいは公害等調整委員会等につきましても、裁判官の経験、資格を有する者がぜひ必要であるという御要望がございまして、そちらの方で働いてもらっているような実情でございます。
#97
○長谷雄委員 次に、裁判の本来の機能を果たしていくために、現在裁判官が一人当たり抱えている年間の手持ち件数、あるいは年間処理件数、これを民事、刑事別にもし掌握しておられれば数字を示していただきたいと思います。
#98
○矢口最高裁判所長官代理者 御承知のように、裁判所本庁と支部がございますが、支部に参りますと雑多な事件を一人でやっているということがございますので、むしろ本庁の平均で申し上げた方がいいかと思います。現在、年間の一人当たり負担件数、これは新受件数ということに相なろうかと思いますが、民事では百七十一件、刑事では百八十一件ということでございます。またいわゆるランニングストックと申しますか、手持ちになっております件数でございますが、これは民事では大体二百件、刑事では百件というのが全国の平均でございます。
#99
○長谷雄委員 問題はそうした件数を処理をしなければならないような、そういう裁判官のお立場でございますが、憲法には確かに裁判官の良心をうたい、憲法、法律に基づいてのみ裁判を行う。そして国民の信頼にこたえるべきである、こういう基本的なたてまえがあるわけでございますが、こうした手持ち件数あるいは年間処理件数というのが、憲法の精神に沿うような処理が数字の上からできるかどうか。特に私自身も実際弁護士としてある町に行ったときに、地方の支部では、その担当裁判官が民事事件もやり刑事事件もやり家庭裁判所の事件もやっている。そこの支部の庁舎では所長とお二人しかいない、こういうようなことでは満足な処理ができないのではないか。事件の早急処理だけに追われて、そのことによってかえって人権が十分に保障されなくなるのではないか、こういう危惧を私自身がそのときに持ったわけでございます。したがいまして、いま数字を挙げられましたが、こうした数字でそういう危惧が全くないと言えるかどうか、その点をお答え願いたいと思います。
#100
○矢口最高裁判所長官代理者 なかなかむずかしい問題でございまして、それぞれの事件というものが個性を持っておりますので、それを件数ということにひっくくってしまうことができるかどうかいろいろ問題であろうかと思います。また憲法の要請する裁判というものは、迅速、適正な裁判という言葉で表明されておりますが、迅速であると同時にあくまで適正なものでなければいけない、十分な審理を尽くしたものでなければいけないということになるわけでございます。それからさらに裁判をいたします裁判官もできるだけやはりりっぱな方がやっていただかなければいけない、どなたでもいいというわけのものでもない、こういった要素をかみ合わせてみますと、先ほど申し上げました数字で出てまいります手持ち件数なり負担件数なりというものが適正であるかどうか、これはなかなかむずかしい問題でございます。私どもは決して満足だとは申し上げかねますけれども、現在のところ各裁判官の努力によってその要請というものは満たしてきておるのではないであろうか。ただ個々に見てまいりますと、場合によっては非常に大きな負担をお持ちのところもございますし、非常に負担が少ないというところもございます。なかなかむずかしい問題で、いま直ちにこれで十分であるとか、これで十分でないとか、あと何件減らせばいいのだというふうにはちょっと申し上げかねる、そうい問題ではなかろうかというふうに考えております。
#101
○長谷雄委員 そういうお答えでございますが、その点につきまして司法行政上の監督権というものはそういうところにこそ及ぶのではないかということを私は考えるわけですね。したがいまして、たとえばそういう実態がどうなっているか。これにつきまして、最高裁として、各裁判官に対して手持ちの件数あるいは処理の状況、こうしたことを調査しても、決して司法権の独立には何ら干渉したことにならない、こう私は考えるわけでございます。そうした実態の調査あるいは把握というものを最高裁としてはやっておられるかどうか。特に裁判官には、やはり人間である以上能力の差というものはこれは否めないと思うんです。そうした場合に、その処理件数の面からいっても、またさっき御指摘のあった迅速、適正かつ国民の信頼をつなぎとめるようなそういう処理ができているだろうかということは、まさに最高裁としては司法行政上の問題として十分に把握をしてほしいな、こういう気持ちがあるわけでございますが、その辺を伺います。
#102
○矢口最高裁判所長官代理者 全国の三千人近い裁判官が、個々の場合に適正な手持ち件数を適正に処理しておられるかどうかということを詳細の点にわたって常時把握するということは、それ自体非常に困難な問題でもございますし、また、先ほど稲葉委員から御質問がございましたが、余りそれを突っ込んでやりますと、裁判の独立ということにも影響がしないわけではないという側面を持っておりますので、ここのところ非常にむずかしい問題でございますが、全体的な把握といたしまして、私ども統計的な数字の中から刻々の状態をできるだけ正確に把握するように努めておるつもりでございます。先ほど申し上げました地方裁判所本庁における負担件数、それから手持ち件数の平均件数といったようなものも、そういった統計的な数字から出てきておるものでございます。
 なお、個々の問題として、特殊な事情でもって御病気あるいはその他の理由で処理がおくれておる、あるいは負担が非常にたまっておるというようなところは、その庁その庁で裁判官会議全体がこれを把握いたしておりまして、負担を軽減するとか、あるいは配置を変更するとか、いろんなことで適切に処理されておるというふうに考えております。全国的な事件の伸び傾向あるいは減少傾向、これはいろいろとございますし、その全国的な伸びの傾向があるとしても、特定の庁で見ますと逆の方向を示すというようなこともございますので、現状の把握というもので大体そう大過はないのではないかというふうに現在のところは考えております。
#103
○長谷雄委員 裁判官がその事件を処理するに当たって、きわめて単純な事件ももちろんあるわけでございますが、非常に複雑で裁判官として非常に悩む事件も確かにおありかと思うんですね。そうした場合に、やはりいろんな資料を調べたりあるいは人間的に悩んでいく。それがまた裁判官の成長につながるものであると思いますけれども、それにはそれだけのやはり時間的な余裕も必要だろうと私は思います。特にまた、裁判官もやはり一市民でありますので、その市民としての生活もしなければならない。そうしたときに、現在のこの処理件数からいって、本当に裁判官が国民の信頼にこたえ得るようなそういう裁判ができるよう、どうしても最高裁としてはそういう司法行政を十分にやっていただきたい、これを要望します。
 次に、裁判官が国民の信頼にこたえ得るものでなければならないということは当然でございますが、最近鬼頭判事補の問題が起きまして、いわゆるにせ電話事件でございますが、私も大変残念に思っております。この事件で国民の信頼をある程度失っているのではないかと非常に憂慮いたしております。
    〔羽田野委員長代理退席、委員長着席〕
 そこで、私としましては、裁判所に対して、特に最高裁に対して望みたいことは、こうした問題が起きた、起きたということはたまたま鬼頭判事補一人だけであるならば――一人だけに終わってほしい、こういう気持ちがあるわけでございますが、もしこういう起きるような温床があるのならば、これは早く摘み取っていかなくてはならないし、ないとしても、こういう問題が起きたことに対して、国民に対して信頼を回復させるための最高裁としては何らかの努力をなさっているのかどうか、その点を伺います。
#104
○勝見最高裁判所長官代理者 鬼頭判事補の問題につきましては、御承知のとおり、現在弾劾裁判所で審理も終結したようでございまして、私どもといたしましては厳粛な気持ちで判決を持っている次第でございます。
 ただいま御指摘のとおり、鬼頭判事補の問題に関しまして、司法に対する国民一般の信頼が著しく損なわれたということにつきましては、本当に私どもといたしましても責任を感じている次第でございます。このようなことがあってはならないということでございますので、まず第一に、やはり裁判官全体が自粛自戒し合って、かかることのないようにしなければならないこと、まずこれが第一であろうかと思います。
 なお、御指摘の具体的な施策という問題でございますが、裁判官の仕事といいますのはあくまでも独立でございますので、私生活面につきまして規制するとか何かということになりますと、自然仕事の持っている性質と絡み合いまして、非常にむずかしい問題が生じてくるわけでございます。このたび問題になりました鬼頭判事補の行為というものは、職務外の行為であったわけでございますけれども、それにつきまして、第一には、先ほど申し上げましたように裁判官の自粛自戒、それから国民の前にすべての私的な行動も含めましてやはりけじめをつけるべきであるということであろうかと思います。残念なことに、昨年の年末にいわゆるゴルフ事件というものが大きく全国に報道されたわけでございますが、あのようなことにつきましても、裁判官とても、先ほど御指摘がございましたように、やはり私生活という面があっていいわけでございますし、休暇をとれないわけでもございません。しかし、休んで何かをやろうというときには、あくまでもけじめをつけた上でやろうということで、ことしになりましてから、全国の裁判所で、その種のことにつきましてはお互いはっきりした手続をとってやろうということになっておるような実情でございまして、今後このような事態がないように努めたいというふうに考えている次第でございます。
#105
○長谷雄委員 そこで、信頼される裁判官というものを前提にしてお尋ねしたいわけです。現在日本の制度で裁判官になるまでの制度には、大学教育あるいは司法研修所、こういうルートがあるわけでございますが、裁判官になるまでのいわゆる事前教育について裁判所として何か御検討なさる余地がおありかどうか、その点はいかがでございましょう。
#106
○勝見最高裁判所長官代理者 現在の修習生、司法研修所の制度は、あくまでも大学の法学教育を前提とした上で組み立てられている制度でございます。現在の大学における法学教育がどうであるかといういろいろな問題があろうかと思いますが、現在の大学制度が現状のままであるとすると、現在の司法研修所の制度は、まあ最善ということを言い得るかどうか別といたしまして、非常にいい制度だというふうに考えております。ただ、御指摘のように、その研修所に入る前のいわば教育といいますか、との絡みになりますと、裁判所だけで解決できる問題ではございませんで、非常にむずかしい問題を含んでいるわけでございまして、現在のところ裁判所といたしまして、大学における法学教育、研修所とのいわば結びつき、連結といいますか、その点につきまして具体的に検討しているという実情にはないわけでございます。
#107
○長谷雄委員 それでは、現在の制度で改革すべき点があるかどうか伺いたいのですが、その司法行政において、裁判官の独立に干渉したり、裁判官の意識を統一するというようなことはもちろんあってはならないわけでございますが、現在地方裁判所におきましては、裁定合議、法定合議事件とございますが、その合議制というものが国民の信頼にはきわめて近いところにあると思うのです。その意味からしますと、単独制というのはやはり一面批判もあるかと思います。つまり、合議制が単独制に比較して安定しているということは言えるのではないかと私は思うのですね。その意味で、直ちにその制度の是非を論ずるのではなくて、こうした制度のあり方について御検討なさるお気持ちがあるかどうか、お尋ねいたします。
#108
○矢口最高裁判所長官代理者 裁判の本質とも関連する非常に重要な問題でございまして、実は戦前の裁判所におきましては、区裁判所は単独事件でございましたが、地方裁判所は全部が合議事件、合議で処理をいたしておったわけでございます。戦後新しい現行の裁判所法になりましたときに、どういうふうな観点からこれを見ていくかということが一つの大きな問題として浮かんでまいりまして、最終的には、むしろ戦前と異なって単独制を原則とするという構成がとられ、今日に及んでおるわけでございます。したがいまして、地方裁判所におきましても単独が原則でございまして、特殊の事件に限りこれを合議で処理するということが考えられ、そういった前提のもとに裁判官の配置、養成が行われてきておるわけでございます。しかし、率直に申しまして、一人で考えるよりも三人で考えた方がいいということは、もうこれは当然出てくるわけでございます。その辺で、結局戦後の裁判所法の問題点は、合議率というものをどの程度のところに置くのが一番いいのかということで問題が論議されるに至りました。現在民事事件で申しますと――戦前は大体一審事件の二〇%が合議で処理されておったわけでございます。と申しますのは、区裁判所が八〇%を受け、地方裁判所が二〇%の事件を処理しておった。ところが、戦後は民事の合議は一審事件の五%でございます。そこのところが、もう少しやはり合議の率をふやしていかなければいけないのじゃないかということで議論をされておりますが、これまたやはり適当な裁判官の供給との関係でございますので、なかなかむずかしい問題であるということでございます。
#109
○長谷雄委員 この問題に関連をいたしますが、判事補はたてまえとしては十年までは一人で裁判できない。ところが、特例判事補、こういうような制度があるわけで、五年たてば単独制で裁判できる、こういうたてまえになっておりますが、この制度の、いま申し上げましたようなそういう趣旨から考えて、裁判所として何か御検討なさる余地がおありなのかどうか。
#110
○矢口最高裁判所長官代理者 やはりこの問題も戦前の裁判所との性格の比較ということにあるのでございますが、戦前、御承知のように、司法官試補を終わって裁判官になりますと、権限の上では、なりたての裁判官も定年間際の裁判官も何ら差がないという制度でございました。戦後、法曹一元というような考え方が強く導入されまして、一人前の裁判のできる方は、人格、識見、技能ともに十分完成した方でなければいけないということで、そういった方を想定して判事という制度をつくり、判事になって初めて一人前の裁判ができる。そのかわり、それとの関連において単独で裁判をやる、こういうふうになったわけでございます。しかし現状は、法曹一元とはほど遠いものでございまして、結局は修習生から判事補になり判事になるというキァリアシステムをとらざるを得なくなってしまいましたので、それでもなお十年間の修業ということは余りにも期間が長過ぎるということがございまして、現在五年でもって特例をつけ、一応一人前の裁判ができるというふうな暫定的な措置になったわけでございます。
 ただ、相当長期間にわたってこのような措置をいたしておりますので、お尋ねによっては、あるいはそれならばそれでもう五年で判事になれるようにしたらいいではないかというようなお考えにもなろうかと思います。私どもこれをあくまで暫定の措置として残してきておりますのは、やはり当初考えられました法曹一元的な考え方、そういったものは捨てたくない、これが戦後の裁判所法のやはり一つの理想である、そういう掲げた理想は捨てたくないということで、今日、長くはなっておりますけれども、職権特例判事補制度というものをなおかつ維持してきておる。いつの日にかやはり一人前の裁判のできる裁判官は判事以上の方であるというような方向に持っていけるものならば持っていきたいということで、今日に至っておるわけでございます。
#111
○長谷雄委員 いまの御答弁にもありましたように、やはり裁判は、本来、判事でやるというようなことのようでございますが、やはり第一審重視という立場からすれば、いまの御指摘は正しいのではないかと私は思うのですね。そうしたときに、これは仮定の話でございますが、さっきの単独制をもしやめた場合、あるいは特例判事補をやめた場合に、相当数の裁判官の増員が必要になってくると思うのですね。それは国の予算との兼ね合いで大変むずかしい問題もあるかと思うのですが、その点を裁判所として御検討なさる御用意があるかどうか。
#112
○矢口最高裁判所長官代理者 判事補の定員はざっと申しまして六百でございますが、十年の、二で割りますと大体三百というものが特例判事補でございまして、判事補であるにかかわらず、五年以上経過したということによって、一人前の裁判をいたしておるわけでございます。現状のままで移行するといたしましても、三百近い判事というものをふやしていかなければいけないということにこれはなるわけでございます。問題はその供給源が得られるかどうかということでございまして、残念ながら、現時点においては判事をそれだけ増員していくだけの供給源というものは、現実の計画としては得られないというのが実情でございますが、いつの日にか判事補を充実することによって、さらに判事の数をふやしていくという日ができるだけ早く来るように、私どもも念願をいたしておるわけでございます。
#113
○長谷雄委員 これで切りがいいので、大蔵省にちょっとお伺いしますが、さっき裁判官の増員と裁判官以外の裁判所職員の増員についての質疑をしたわけですが、御出席がなかったので、いま改めて概略申し上げますが、当初裁判所で要求された増員希望の数と、いま審議されている判事補十五名、職員五名、この数の差があるわけでございます。
 私がお尋ねしたいのは、裁判所からの増員希望があった場合、それに対して大蔵省の方で、予算の関係もおありでしょうから、いろいろな立場からどの程度認めるか、こういうことをお決めになると思うのですが、この認定の基準というのが何かございましたらお尋ねしたいのです。
#114
○岡崎説明員 先生御承知のように、裁判所の予算につきましては、これは財政法上からも特別な配慮をするように、国の一般の行政府の予算とは別の規定もございます。したがいまして、いまおっしゃられましたように、要求であるとか認めるとか査定をするとかいうようなそういうスタンスではなくて、九月以降、裁判所からいろいろお話を承りまして十分協議をして、最終的に、ではこの数字でことしの予算は国会に提出いたしましょう、こういうふうに長くお話し合いを続けてやっていくわけでございます。したがいまして、先生おっしゃいましたように、私どもが九月の初めに裁判所からお伺いする数字と、現在、政府案といたしまして御審議いただいておる数字との間にばかなりの開きがございますけれども、その間、私どもの方で一方的な物差しをもって、こういう基準にはめるから、よってもってこうであるというふうなことで数字を詰めておりません。裁判所の方から、それではこういう数字であればどういうふうな人員供給ができるかとか、あるいは私どもは私どもなりに、これは裁判所といえども国民の皆さんの税金によって立ち、仕事をしているわけでございますから、これは国全体として効率を図るという意味の御趣旨から、こうはできないだろうか、ああはできないだろうか等々相談いたしました結果として出てくるものでございますので、一律的、機械的な基準というものは持ち合わせておりません。
#115
○長谷雄委員 先ほどの裁判所の御答弁とはちょっとニュアンスが違うように思うのですが、裁判所としては、当初要求もそれなりの理由がおありのようでございますが、それが全部認められないということで、内部努力でそれを補っていくというようなお話があったわけですけれども、いま本当にそれが必要であるならば、必要の定員を確保することが、まさに人権を守り、公平な裁判を果たしていく裁判所に課せられた大きな使命を達することに必要なわけですから、それを達成できるようなそういう観点から、増員については大蔵省のもう少し慎重な御配慮を賜りたい、こう私も思っているわけです。
 それで、次に、裁判官になった後、裁判官に対しての教育と言えばおこがましいかもしれませんが、いわゆる事後教育の問題があると思うのですが、これについて、日本の国の場合、現状はどうなっておりますか、簡単に御説明いただきたいと思います。
#116
○勝見最高裁判所長官代理者 先ほど稲葉委員か、らのお尋ねにもございましたが、判事補につきましては新任判事補の研さんというものをやっております。これは東京地方裁判所に事実上お願いいたしまして、研修所が主体になってやっておるものでございます。あと三年目に、四年目から少年事件を取り扱う判事補がふえますので、特に少年事件を中心とした研修を三年目にやっております。
 それから、先ほど御質問がございました特例の問題ですが、五年たちますと特例がつきますので、単独の事件を処理しなければならない。そのための訴訟指揮その他に関することを主として研修をやっております。
 それから、いよいよ判事補十年になりまして判事に任官するために、いわば最後の仕上げといいますか、そういう趣旨で十年目の判事補の研修をやっております。そのほか研修所主催で各種研究会等を随時行っております。各裁判官が研修所に参集いたしまして、お互いに討論をやる。それから、これも御承知かと存じますが、最高裁事務総局におきまして、各種会同あるいは協議会という形で裁判官が集まりまして、それぞれ意見を交換するという場がございます。
 以上のようなことが、いわば裁判官の御指摘の事後教育といっていいものに当たろうかと存じます。
#117
○長谷雄委員 いまお話のあったその事後教育につきましては、これは主として実務の面から、法技術、裁判技術、そういう面に主体が置かれているのではないか。裁判官の人格形成といいますか、その点についてはどのような事後教育がなされているのかどうか。
#118
○勝見最高裁判所長官代理者 特に判事補の三回にわたります研修におきましては、そのカリキュラムの中に、単なる訴訟上の技術的な問題あるいは法律の解釈問題だけでなくて、やはり裁判官としての教養ないしあり方というもの等につきましても、講師を招きましていわば研修を行っている次第でございます。
#119
○長谷雄委員 ここで、諸外国における事後教育という問題――たとえばアメリカの場合ですと、連邦司法センターという制度があるようでございます。また同じくアメリカでは、各州の一審公判裁判官のためにザ・ナショナル・カレッジ・オブ・ステーツ・ジャッジという大学の設立があって、そういう趣旨に沿うような形をやっているようでございますが、そうした諸外国の事後教育のあり方、法体系が全く違う諸外国のそれを、そっくりそのまま日本に導入するということは、これはまた問題もあろうかと思いますけれども、そうした制度というのはやはり日本にとっても参考になるのではないか。その点についての御検討をなさる御用意があるかどうか、これをお尋ねいたします。
#120
○勝見最高裁判所長官代理者 アメリカにおける裁判官の事後教育につきましては、先ほど御指摘のような機関でやっているようでございます。大変残念でございますが、私自身それについての蓄積といいますか、知識を持ち合わせておりませんが、簡単なアウトラインを拝見いたしましても、確かに参考にすべき点もないではございませんが、先ほど申し上げましたように、わが国におけるいわば御指摘の事後教育につきましては、判事補十年間に、研さんを含めまして四回やっておるわけでございます。これもすでに御指摘のとおり、アメリカが完全なる法曹一元をとっておりまして、わが国における任用の実態が、法曹一元を理想としながらも、結局は、事実上はキャリアシステムになっていかざるを得ない現状でございますが、いずれにいたしましても、いわば法制といいますか、裁判官の任用制度の基本が全然違う両国間の制度を比較すること自体につきましては、確かに問題があろうかと存じます。しかし、先ほど申し上げましたわが国における判事補の研修をとってみましても、紹介されております、アメリカにおけるステート及びフェデラルでやっておりますいわゆる事後教育よりも、これはこんな席上で比較するのもどうかと思いますが、決して劣っていないのではないかというふうに、ひそかにいわば誇っているような次第でございます。
#121
○長谷雄委員 私がここでぜひとも望みたいことは、裁判官が、現在憲法で大変高い立場にあり、きわめて手厚い保護を受けて、司法権の独立を維持できるように制度的にはなっておるわけです。そこで、現実の裁判に当たっては、裁判官は法律によって死刑をも科すことのできる権限を持っているわけです。こうした裁判官が、国民の信頼にこたえ得る能力、資質を持った者でなければならないのは当然だ、これは国民のすべての願いであると思うのです。その意味で、その裁判官というのは、現在日本の法治国家、この法治国家のまさにかなめとしての存在がこの裁判官だと私は思います。その意味で、今後ともそういう憲法の理念に合うような裁判官をぜひともたくさん出していただきたい、こういうことを要望して、一応この問題は終わります。
 次に、法務大臣の所信表明に関しまして、刑法の改正問題がございましたが、この改正の要旨は、賄賂の罪の法定刑の上限を厳しくしているというところに尽きるわけですね。その点、そのように伺ってよろしいですか。
#122
○福田(一)国務大臣 お説のとおりでございます。
#123
○長谷雄委員 その法定刑の上限を厳しくするということだけでこの問題の政治腐敗というものが果たして防止できるのかどうか、これを十分とお考えになっているのか、もし十分でないというお考えがあるならば、具体的に何らかの措置をお考えかどうか、この点お答え願いたいと思います。
#124
○福田(一)国務大臣 先ほどもちょっとお答えしたところでありますが、ロッキード問題が起きまして、私が法務大臣に就任してすぐ福田総理とお話をいたしたのでございますが、何としてもやはりロッキード問題のようなことが将来起きないようにするための措置を各方面から見て考えていかなければならない、そこで内閣官房が中心になっていろいろの問題を取りまとめるということに相なっておるのでありますが、さしあたり、私の担当いたしております法務省としては、刑法の改正と、いま一つは日米犯罪人引渡条約の速やかなる改定交渉の締結ということを目途としてやってまいりたい、こういう意味でいまお願いをいたしておるわけであります。
#125
○長谷雄委員 御承知のように、公職選挙法の規定によりますと、公民権停止の規定がございます。賄賂の罪でその刑を受けた人に対しては、これをどのように処遇するかということは、きわめて重要な問題だと思います。その再犯防止あるいはさっき申し上げた政治腐敗の防止という点から考えた場合に、こうした方々の取り扱いについては、やはり日本の政治のあるべき姿を考えた場合には、この公民権の停止ということは当然考えていいことではないのか、このように私は思うわけでございますが、その点、賄賂の罪の中に盛り込むかどうか、別途特例法をつくるかどうかは別として、こういう立法のお考えがおありかどうか、お尋ねします。
#126
○福田(一)国務大臣 ごもっともなお考えでございまして、われわれがこの刑法改正の問題を党との間で審議する間におきましても、いまお示しになったようないわゆる選挙権の問題をどう取り扱うか、これは当然この姿勢を正すという意味において、選挙権というのは非常に大きなわれわれ個人に課せられた権利でありますけれども、それを制限するということによって政治の姿を正すべきではないかという貴重な意見が出てまいりまして、もっともな意見であるということで、ただいま自由民主党の方で政調が中心になってその取りまとめをいたしておるという段階でございます。
#127
○長谷雄委員 この問題については非常に重要な問題でございますので、刑法一部改正の問題の審議に際して、またお尋ねしたいと思います。
 時間もございませんので、これで終わります。
#128
○上村委員長 午後二時二十分から再開することとし、この際、暫時休憩します。
    午後零時五十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時三十五分開議
#129
○上村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。正森成二君。
#130
○正森委員 それでは、私は、午前中に引き続きまして、裁判所職員定員法の一部改正案について、日本共産党・革新共同を代表して質問を行いたいと思います。
 まず最初にお伺いしたいと思いますが、今回の法案の骨子は、裁判官を十五名、その他の職員を五名純増で増員することになっておりますが、記官、速記官、家裁調査官、事務官の配置は、裁判官の配置に伴ってどのようになされるわけですか。
#131
○矢口最高裁判所長官代理者 事務官等の純増五名でございますが、もう少し詳しく申し上げますと、減員するのが三十名余りございますので、それを足した三十数名というのが新たな配置をすることになっております。それは特殊事件でございますとか、差止事件でございますとか、交通事件でございますとか、そういうところに重点的に配置をいたしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
#132
○正森委員 先ほども言いましたように裁判官の十五名増員に対して事務官五名増員ということですから、算術的に考えても、少し事務官の執務量あるいは労働の強化ということになるのではありませんか。
 たとえば、単純に考えましても、昭和四十一年は裁判官の純増が二十七名に対してその他の職員は五十八名、四十二年は裁判官の七名に対して四十七名、近いところでは、五十年をとってみましても裁判官の三名に対して職員は二十三名、昨年は七名に対して十三名というように増員しているわけであります。
 そういうように、おおむね過去十年間にわたって、裁判官の増員よりも、常に補助者たる事務官、その中には速記官や書記官が含まれると思いますが、そういう人の増員の方が多かった。これは裁判所の職員の構成から言いましても、裁判官一人ふえると、書記官や速記官、事務官がどういうように要るかということを考えてみましても、ある程度理にかなっていると思うのです。そこで、本当はこういう点でもう少し増員する必要があったのではないかと思われますが、いかがですか。
#133
○矢口最高裁判所長官代理者 今回、事務官の増員を最終的に差し引きいたしまして五名ということに決まりましたのは、裁判官の増員分の十五名が、大体、適正な審理ということで非常にむずかしい事件の合議に回していくことを重点的に考えておりますので、裁判官がふえることに伴って必然的に書記官、事務官の増を来さないということが一つでございます。
 それから、数年前には、裁判所の裁判官以外の一般職員の欠員が三百名前後に及んでおりました。しかし、これは、いかに全国の役所の数が多いとはいえ、少し多過ぎる欠員数でございますので、充員状況の適正化を図るということで、逐次欠員状況をできるだけ少なくしていくという方向で考えてまいりまして、現在百三十一名という欠員まできております。この欠員の充足ということに全力を挙げることによって、現実の人員から見ますと、単なる五名の現実増ではなくて相当数の充員が図られるという見通しを得まして、今回純増五名ということにとどめた、この二つの理由からくるものでございます。
    〔委員長退席、羽田野委員長代理着席〕
#134
○正森委員 御説明を伺っていると、納得できるような納得できない点があるのですが、私どもの手元にあります資料では、裁判官以外の要求人員は当初百三十七名だったようであります。それが定員削減などを入れまして、結局増員は三十七名しか認められなかったので、純増は五名、こういうように私どもがつかんでいる資料ではなっているわけですね。ですから、いま矢口総務局長がおっしゃった理由を考慮しても、もともとあなた方の要求は百三十七名あったのじゃないか、こう思われますし、それに、実際は人員が欲しいんだけれども、欠員が多いのでまず欠員を埋めるのが先だということになりますと、自分たちのところが欠員があるということを理由にして、本当は欠員を埋めてなおかつ人員の増加が欲しいんだけれども、それを自主規制で言わないというような発想につながってくるわけで、これは実際に現場で働く者からすると、非常に不本意なことであろうというように思われるわけですが、そういう点をひとつ指摘をしておきたいと思います。
 そこで、具体的な例に移りたいと思うのですが、先ほど欠員の点が言われましたが、例を速記官にとりますと、速記官の予算定員は何名で、実人員は何名ですか。
#135
○矢口最高裁判所長官代理者 速記官の予算定員は九百三十五名、現在員が七百二十三名、欠員が二百十二名ということになっております。
#136
○正森委員 いま伺いましただけでも、速記官の欠員というのが非常に多いわけですね。単に三%とか五%というような人数でなしに、少し算術的に計算しましても三%に達しておる。しかも、人員が七百二十三名と言いますが、速記部の同窓会の会員名簿によりますと、六百六十五名しかいないはずであります。ですから、いま矢口総務局長が言いました人数というのは、現在研修中の者まで含めて言っているのではありませんか。
#137
○矢口最高裁判所長官代理者 研修所で研修をしております人数を含んでおります。
#138
○正森委員 私は、裁判官の定員の場合には、司法修習生の数は含んでおらないと思うのですね。ところが、速記官の場合には研修中の者まで含めて、それでなおかつ三〇%の欠員があるということは、結局いかに速記官が労働過重を強いられているかということに帰着すると思うのです。特に、実人員が七百二十三名と言われましたが、私がさきに指摘しましたように、速記部の同窓会の会員名簿は六百六十五名でございますし、そのうち書記官研修所速記部の教官が十名含まれているようであります。ですから、実際に現場で働いておる者は六百五十五名しかいないということになっておるわけですね。ですから、こういうような点を考えますと、速記官が非常に労働過重で、いろいろ是正すべき点が起こっておるように思われます。
    〔羽田野委員長代理退席、委員長着席〕
 定員につきましても伺いますが、九百三十五名ということでしたが、昭和三十九年に九百三十五名になりましてから、一名も定員そのものが増員されていないのではありませんか。
#139
○矢口最高裁判所長官代理者 三十九年以降定員の増はございません。
#140
○正森委員 いま私が指摘しましたように、そもそも定員が昭和三十九年以来約十三年にわたってふえておらない、しかもその定員をはるかに下回る実人員である、そして、その実人員の中には現在研修中の者及び教えている教官が含まれているということになりますと、いよいよ速記官が労働過重になるというのは当然のことである、こういうように言わなければならないと思うのです。
 そこで伺いますが、速記官のうち女性の速記官はほぼ何名で、何%占めておりますか。
#141
○勝見最高裁判所長官代理者 手元に正確な数字はございませんが、半数を超えているものと思われます。
#142
○正森委員 私どもの資料によりますと、約六百六十名の速記官のうち女性速記官は三百六十名ですから、半数を超えているのは事実であります。
 そこで、この女性速記官について伺いたいのですが、たとえば教職員にいたしましても、あるいは電話交換の事務に携わっている人にいたしましても、あるいは裁判所内でもタイピストなどにいたしましても、女性というのは当然結婚し、そして結婚すれば、次代の日本を背負う国民を出産するわけでありますから、産休の代替要員制度というのがどこでも認められているはずであります。そこで、本来、人権を擁護すべき最高裁においては、この過半数を占めている重大な裁判事務の一翼を担っている女性速記官について、産休の代替要員制度というのを設けておりますか。
#143
○勝見最高裁判所長官代理者 速記官につきましては、御承知のとおり、高度の技術を要しますし、直ちに他人をもってかえ得るような職種ではございませんので、現実の問題といたしまして、代替制度というものは設けていないのが現状でございます。
#144
○正森委員 いまの答弁の趣旨はどういうことですか。前向きに設けたいと思うが設けていないということですか、それとも余人をもってかえがたいから、本来、産休代替要員などというものはつくってはいけないのだという趣旨ですか。
#145
○勝見最高裁判所長官代理者 つくっていけないという趣旨ではございませんで、現実に速記官が産休で休んだ場合に、どういう形で埋め合わせをするか、速記官の産休に速記官ないし速記者をもって埋め合わせるかどうかという問題でございますが、現在のところそのような措置はいたしていないという趣旨でございます。
#146
○正森委員 そうであるとすれば、私は非常に重大な問題だと思います。速記官が余人をもってかえがたいというのであれば、速記官の研修生をふやせばいいわけであります。あるいはまた、大体女性というのは、統計をとりますと、年間何人が出産するというようなことがわかりますから、大体その人数だけの予備人員を持つということを行うのが当然であります。ところが、いま私が質問の中で明らかにしましたように、本来の定員すら三〇%以上下回った実人員しかいないというようなことになりますと、裁判の中で占める速記官の重要性というようなもの、その中で女性速記官がいかに大きな役割り、地位を占めておるかということについて、最高裁が非常に無関心であるというように言われても仕方がないと思いますが、いかがですか。
#147
○勝見最高裁判所長官代理者 まず一般論を申し上げたいと存じますが、速記官の定員に対する欠員の割合が非常に高いことは御指摘のとおりでございます。速記官につきましては、もうすでに御承知だと存じますけれども、いわば一人前の速記官に仕上げるには相当な年限とトレーニングを要します。しかも、特殊な職種でございますので、研修所に入所してから大分いわば脱落する方も出てまいるような現状でございまして、これもすでに御承知のとおり、従来内部採用で速記官の試験をやっておったわけでございますが、この欠員を補充すべく外部採用に踏み切りまして、おいおい欠員を埋めていこうというふうな方針を立てて現在やっておるわけでございます。何せ、先ほど申し上げましたように非常に特殊な職種で、しかも脱落していく方が多いというのが現状でございまして、なかなか欠員が埋まらないというのが偽わらざる現状でございます。しかし、前向きで外部採用にも踏み切ったわけでございますので、おいおい欠員を充足していきたいというふうに考えている次第でございます。
#148
○正森委員 外部採用に踏み切ったそうですが、外部採用は毎年何名ぐらいになっておりますか。
#149
○勝見最高裁判所長官代理者 五十年の四月に十六名、それから五十一年は三十名でございます。
#150
○正森委員 そこで、私が聞いておりますところでは、最高裁は、昭和三十五年ごろから速記官の採用というのに非常に消極的になって、人数の抑制を行い始めたというように聞いております。それが事実であるかどうかは後でまた御答弁願いたいと思いますけれども、現実にこういうような状況であるために、たとえば女性速記官には非常に重い負担がかかって、黙視することができない影響があらわれている。たとえば、統計によりますと、女性速記官の二六%が流産あるいは死産の経験を持っておるということが全司法労働組合の資料を見ますと出てくるわけであります。こういうような状況を避けるためには、妊娠した女性速記官の母体を守るための措置が講ぜられなければならないと思いますが、一般的に最高裁の基準といたしまして、一回の裁判における立ち会いですね、結局その期間内に速記を行わなければならないわけですが、それはどのぐらいになっておりますか。
#151
○勝見最高裁判所長官代理者 最高裁といたしましては、確定的な基準を立てているわけではございませんが、一週間に三時間立ち会いということをめどにしておるわけでございます。
#152
○正森委員 そのめどというのが必ずしも守られていないようであります。ここに統計がありますけれども、連続して一時間以上立ち会いをするというのが統計上は圧倒的に多い。一時間ないし一時間以上というのがありまして、中には二時間というのがあり、半日責任を持つというのがあり、まれには一日全部その人が責任を持つというのもあるようであります。
 そこで、妊娠がはっきりいたしますと立ち会い時間の軽減を行うというようなことをやっておりますか。
#153
○勝見最高裁判所長官代理者 速記官の立ち会い時間につきまして、一応一週三時間ということを申し上げましたが、現実に平均何時間立ち会っているかにつきましては、各庁ある程度差があろうかと存じますが、三時間まで目いっぱい完全に立ち会っておられる方が果たしてどのぐらいあるか、実は私どもの正確な資料はございません。
 それから産前産後の問題につきましては、法規で定められております産前産後の休暇以前、以後の問題であろうかと存じますが、その人なりの状況によって各庁で措置しているというふうに考えておる次第でございます。
#154
○正森委員 私どもが入手しました資料によりますと、立ち会い時間が軽減されたという女性速記官は、軽減されなかったという者が八〇・七%、軽減されたという者はわずか一九%であります。ですから、妊娠をいたしましても速記を行う立ち会い時間というのが軽減されなかったという者の方が圧倒的に多いということになっているわけであります。しかも、その立ち会いが、時間が減少いたしますとだれかがその埋め合わせをしなければならない。埋め合わせをしなければ他の男性速記官もしくは女性速記官に負担がかかってくるわけでありますが、それについて何か措置がとられたかというのについて、何らの措置もとられなかったという者が六七・七%、つまり三分の二を超えるということになっているわけであります。これでは速記官というのはある意味では踏んだりけったりでありまして、大体、定員はそもそも少ない、それに対して実人員はさらに少ない、産休代替要員はおらない。そして労働基準法でも、一般の労働者ならば軽作業に、職種なりあるいは勤労場所を変えてもらうことができるようになっておりますが、それすらほとんどない。そして仮に軽い方に変えてもらいますと、それに対する埋め合わせの措置は三分の二以上がとられないということになりますと、これは近代的な労働条件とは言えないというように思うのですね。これについて皆さん方のお考えを伺いたいと思いますが、一括して後でお伺いするとして、妊娠が七カ月、八カ月になっても、なおかつ出張尋問ということで、汽車とかあるいはバスに乗せて出張尋問の場所に連れていき、そして非常に緊張を要する速記をさせるという例が現実にあるようですが、あなた方は知っていますか。
#155
○勝見最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘のようなケースにつきましては、報告に接しておりません。
#156
○正森委員 報告に接していないということは、ないということではないのですね。私どもが報告に接しているところによりますと、私たちは公権的な報告に接したわけではありませんが、組合が調べているところによりますと、たとえば名古屋管内では、七カ月の妊娠の者が出張させられたというのが四例あります。また福岡高裁管内では、妊娠八カ月の者が出張させられたという例が三例あります。全国的に見ますと七カ月、八カ月で十二例もあったというのが最近のケースで報告をされているわけであります。こういうようなことになりますと、これは分娩に当たりましてもいろいろ異常分娩の例などがあらわれてくるのが当然でありまして、速記官の中では異常分娩を行ったという者が約二〇%出ておるということが報告をされているわけですね。たとえば、そのうち帝王切開が十例とか、早産が八例とか、鉗子分娩が五例とか、逆子が五名というような状況が報告されておるわけです。これは結局女性速記官の体質そのものに問題があるのではなしに、いま私が順次指摘しました労働条件の中にこういうような原因が胚胎しておると言って過言ではないと思います。
 女性速記官のいろいろの訴えによりますと、たとえば妊娠いたしますと女性はつわりが出る場合があります。その場合でも、立ち会いの中に入っておって、思わず嘔吐をする、そのときにそれを吐いてしまったのでは法廷に対して失礼だというので、それを口の中に含んで、思わず飲み込んだまま速記を続けるというような気の毒な例も報告されておるのですね。これは壇の高いところから見ておる裁判官にはわからないかもしれないけれども、しかし、壇の下で一生懸命速記をしておる女性速記官にとっては切実な問題であります。
 そこで私は伺いたいのですが、いまあなた方は実在員と定員との間にギャップがあるというのを、場合によっては部内から以外にも採用することによって埋めたい、あるいは埋めつつあるということを言われましたが、それにしましても二百数十名欠員があるわけでありますから、そういう点について、速やかにできるだけ早い期間に埋める意思があるかどうか。それから産休代替要員をやはり速記官についてもつくらなければならないと思いますが、それを前向きに考慮する意思があるかどうか、誠意ある答弁をお願いしたいと思います。
#157
○勝見最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたように、速記官の養成には客観的に制約がございますことはひとつ御理解いただきたいと存じます。これも先ほど申し上げましたように、前向きで欠員の補充を図っているつもりでございます。
 なお、産休の代替要員という問題でございますが、速記官が産休いたしました場合にまた他の速記官をもって代替するということになりますことは、結局は速記官の絶対数の多いこと、すなわち欠員の少ないことにつながることになろかうと存じます。前向きで欠員の補充に努めたいというふうに考えております。
#158
○正森委員 私はぜひ前向きに考えていただきたいと思いますね。たとえば小学校、中学校の教職員というのは、大切な子供たちを預かっております。その子供たちにとっては教師というのはかけがえのないものですね。しかし、その教師でも産休代替要員というのがあって、そうしてお産をした教師に対してかわって子供を教えるというようになっておるのです。そういう点からいいますと、速記官がいかに代替性が困難であるかというように言いましても、子供を教えるというようなのとは性質が違いますから、これは代替性は十分にあると思うのですね。ですから、そういう問題も前向きに考えてもらわなければなりませんし、なかんずく実数が定員をはるかに下回っているという状態は、速やかにこれは是正されなければならないということを強く指摘しておきたいと思うのです。そうでなければ、私はここに速記官の職業病の実態を大体調べてまいりましたが、昭和五十一年十月一日現在で、手や肩や背中等の痛みを訴えている人数は三十三支部四百九十六名中実に二百三十九名、四八%と報告されております。そのうち罹病者で通院している人数は七十八名以上ある、こういうようになっているのですね。もしこれだけの比率で裁判官が病気であるということになれば、これはもうゆゆしい問題であるということで速やかに何らかの対策がとられるはずであります。ところが、速記官の場合には、いま私が伺ったところでも前向きに考えたいという程度で、本年度の定員の問題にしましても何らの措置がほとんどとられておらないということは、やはり最高裁判所が、裁判を支えている知的労働者の労働条件の改善について余り関心を払っていないのじゃないか、あるいは予算の関係でどこかに遠慮されているのかもしれませんけれども、財政法上のいろいろの特例もあるわけですから、こういう点については、実態をお調べになって前向きに善処されたいというように考えておる次第であります。
 そこで伺いたいのですが、最高裁はかつて国会の速記者よりも待遇上不利益な扱いはしないというように言っておられたようですが、それが必ずしも守られていないのではないですか。
#159
○勝見最高裁判所長官代理者 速記官の待遇につきましては、裁判所部内において他の職種に比べますと相当優遇しているつもりでございます。
 なお、国会の速記官との関係につきましては、それぞれの勤務年数その他がございますし、的確な比較をなし得ているわけではございませんが、速記官の場合には先ほど御指摘のようなことはないというふうに考えております。
#160
○正森委員 差がないというようなことを断言されましたが、やはりいろいろ改善すべき点があるという認識があればそれから行動が出てまいりますけれども、そういうような差はないというように断言して開き直りますと、そこからは改善するという意欲が出てこないということになるわけですね。われわれでも、自分にはとがめられるべき、あるいは修養すべき点があると認識しているから修養に努めなければならぬ、国会で失言するようなことがあってはならぬ、こういうことになるわけですけれども、おれはりっぱなものだ、こういうように思っておれば、それ以上自分自身について研さんするという努力の余地がなくなってくるわけです。たとえば国会の速記官というのは、これは裁判所は道具があってぱちぱちたたくから、手で書くものとは違うとおっしゃるかもしれないけれども、いまここで速記の方を見ておりましても十分ごとに交代しておりますね。ところが裁判では原則として一時間、一時間以上というようになっておるという点一つを見ましても、やはり勤務態度の上で重大な差異がある。またあるいは給料の点等でも差異があるというように聞いておりますが、そこで裁判所速記官の等級別区分及び資格基準表というのを公表なさる意思はありませんか。また速記官の三等級への昇格を早急に実施し、二等級、一等級への昇格の道を開くという意思はありませんか、伺っておきます。
#161
○勝見最高裁判所長官代理者 先ほど差がないというふうに申し上げたつもりではございませんで、的確な比較がしようございませんので、特に私どもの速記官が国会の速記官に比して劣っているということを確言できないという趣旨でございます。
 なお、級別定数その他等の基準につきましては特に公表することは差し控えさしていただきたいと存じますけれども、先ほど申し上げましたように、速記官の等級別定数につきましては、すでに御承知かと存じますが、四、五、六等級に原則として格づけされておりまして、比較的他の職種に比べまして昇進が早いといいますか、昇格が早いわけでございますし、それで、いわば頭打ちの状態になりつつあることは私どもも十分認識しておりまして、三等級以上の高号俸の獲得に努力いたしたいと思っております。ただ一方、御承知のように、公務員法の給与体系におきまして、三等級以上ということになりますとなかなかむずかしいのが現状でございまして、もちろん獲得に努力はすることにやぶさかではございませんけれども、これを三等級さらに御指摘のように二等級というような格づけをするにつきまして、どのように速記官を持っていくかということについては十分検討さしていただいているつもりでございますが、なかなか実現が困難であることもこれもまたひとつ御理解をいただきたいというふうに考えております。
#162
○正森委員 速記官の方関係についてはこの程度にしておきたいと思いますけれども、私が特に申し上げたいのは、定員そのものが昭和三十九年以来増加しておらないで、しかもそれに対しては二百数十名の欠員があって、そして産休代替要員もないというような状況で、疾病が非常に多いし、速記官の中に非常な困難があらわれておるということはやはりよく認識していただいて、こういう点についての労働条件上の無理のないように、ぜひとも最高裁が前向きに考えるということを切に希望しておきたいというように思います。それはわかりましたね。
#163
○勝見最高裁判所長官代理者 速記官の職種の特殊性等にかんがみまして、ただいまの御指摘の点を十分前向きで検討さしていただきたいというふうに存じます。
#164
○正森委員 それでは次に、タイピストの職業病の点について若干申し上げたいと思います。
 タイピストの職務についておられる方も原則として女性が相当多いわけですが、人事院規則では、大体一日のうちに連続作業時間がどのくらいで、それからタイプを打つ時間がどれぐらいというように定められていますか。
#165
○勝見最高裁判所長官代理者 裁判所におきましても、人事院規則で定められておりますそれに基づく人事院通達の規定で定められておりますそれによっておるわけでございますが、これによりますと、「作業時間は一日三百分以内」、そして「連続作業時間は一回につき六十分を超えない」というようにすることとされているわけでございます。
#166
○正森委員 ところが、そうはなっていないというのが現場のタイピストさんの声であります。私がここに入手しております資料によりますと、タイプを打つ時間が七時間以上である、こう答えておるのが福岡、岩手、山形、岡山というような裁判所になっております。八時間以上というのが、これは明らかに、三百分というのは五時間でございますから、オーバーしておるわけですが、そういう超人的な働きをしておるのが千葉と高知であります。幾ら南国土佐で暖かいといいましても、八時間もタイプを打つ時間があるということでは、頸腕症候群とかそういう病気が出てくるのは理の当然であるというように言わなければならないと思うのですね。それからまた、連続作業時間が六十分以上であるというように答えておるところも非常にたくさんありまして、たとえば中部では九十三例とか、あるいは近畿では六十三例とか、四国では四十六例とかいうように報告をされているわけであります。これはわれわれが日常経験するところでございますけれども、われわれも、巡航速力といいますか、軍艦の場合でも普通十八ノットとか二十ノットぐらいで行っている場合には機関の故障もない、ところが戦闘速力で三十三ノットぐらい出しますと、機関の故障やあるいはスクリューの故障というのは非常に著しいのですね。人間は標準速力で働いている分には長生きできるけれども、余り能力いっぱいにやり始めるということになると、疾病が出るというのは、これは機械でも人間でも同じことなんですね。その限界を上回っておるというのがタイピストの場合でも非常に多いと言わなければなりません。
 伺いますが、仙台で五十一年の四月九日にタイピストが頸肩腕症候群と思われますが、それが悪化してついに自殺したという事件があったようですが、知っていますか。
#167
○勝見最高裁判所長官代理者 タイピストが自殺したという報告には接しております。
#168
○正森委員 私はここに手記を持ってまいりましたけれども、そのタイピストというのは平塚征子さんという方であります。この方は、十八年間非常に元気りんりんと仕事をしておられましたところが、昭和五十年に突如として発病をして、昭和五十一年の四月九日に、この方は川柳がお上手だった人のようでありますが、「永すぎた春に終止符ハネムーン」という辞世の川柳を残して亡くなられたということが報道されているわけであります。こういうように、やはり非常に無理がたたってこういうような状況があらわれてくるというように感ぜざるを得ないのですね。
 そこで、平塚征子さんというのは公務災害といいますか、公災認定の上申書を提出しているようでありますが、それについてはどういう措置がとられましたか。
#169
○勝見最高裁判所長官代理者 ただいまの点につきましては、遺族から公務災害補償の申し立てが出ておりまして、現在検討中で未済になっております。
#170
○正森委員 現在未済になっておるようでございますけれども、そういう点については公正な調べをされることが非常に望ましいし、遺族は、もう死んでしまってからいまさら何をという気持ちもあったようでございますけれども、しかし、もしも公務災害だということになりますと、それ相応の補償をしなければならないということは当然のことであると思います。
 そこで、その関係で一問伺いたいと思うのですが、昭和五十年の六月二十八日に全司法労働組合から災害補償審査制度の改善に関する申し入れ書というのが出ているはずでありますが、それは知っておりますか。
#171
○勝見最高裁判所長官代理者 申し入れがございました。
#172
○正森委員 その申し入れの趣旨については二点ありまして、災害補償審査委員会の委員の構成というのが必ずしも公正でないのではないかということと、災害補償審査委員会の審査手続について、それが人事院規則にも反するような扱いが行われているのではないかということの二点であったと思いますが、それについてどういうような対応をとっておりますか。
#173
○勝見最高裁判所長官代理者 現在の仕組みが違法なものであるとは考えておりません。
 それから、委員会の委員の構成につきまして公正を欠いているというふうにも考えておりませんで、むしろ公正を担保するために、第三者委員に委嘱いたしまして事案の処理に当たっていただいておるというのが実情でございます。
#174
○正森委員 私は、初めから違法であるとかなんとかいうように私からは問題提起をしていないのですね。労働組合からそういう申し立てがあったけれども、それに対してどういう対処をしているかというように私は聞いているだけですね。
 そこで、私から問題提起をしますと、現在の最高裁の災害補償審査委員会の構成というのは、間違っていれば指摘してください、委員長に最高裁の事務総局の家庭局長、委員には行政局の第一課長及び民事局局付、そのほかに労働保険審査会委員と東京国立第一病院、この五名から成っておるということですが、事実ですか。
#175
○勝見最高裁判所長官代理者 現在の災害補償審査委員会の構成員は、委員長が家庭局長である裾分、それから行政局第一課長の北川、それから労働省の労働保険審査会会長の大竹政男氏、それから国立病院医療センター委員長の小山善之氏、それから弁護士の工藤祐正氏でございます。
#176
○正森委員 二年前について若干改善されているようでありますが、たとえば国会図書館では、両院の議院運営委員長、それから当局側が二名、さらに組合側が二名、学識経験者中山伊知郎氏が一名という七者構成になっているんですね。国会図書館では、労働組合側の代表が二名入っておるという構成になっておるわけです。最高裁側から言いますと、五名のうち二名までがいわば当局だというように言えるような人であるというようなことも考えられますし、こういう点について、もう少し実際に仕事をしている労働者の意見が反映するようにすべきではないかという印象を私どもは受けるわけであります。
 さらに、災害補償審査委員会の審査手続について言いますと、期日指定の通知が本人のみにしかされないで、その代理人にはされないとか、あるいは質問時間が非常に一方的であるとか、本人の質問期日に代理人が意見を述べる機会が与えられていないというようなことが労働者側から主張されているようであります。こういう点は人事院規則の一三−三の第十四条とかあるいは第二条というのを見てみますと、「審査申立人に口頭で意見を述べる機会を与えなければならない。」あるいは第二条は、「代理人は、各自、審査申立人のために、当該審査の申立てに関する一切の行為をすることができる。」というようになっておるようでありますが、そういう点について十分に重視をするという姿勢が弱いように考えられるのですが、いかがですか。
#177
○勝見最高裁判所長官代理者 委員の構成につきまして、いわゆる組合側の委員を入れたらどうかという御指摘かと存じますけれども、私どもといたしましては、十分当該職員の事情もお聞きいたしますし、十分な調査をやっているつもりでございます。委員にいわば労働組合側の委員を入れること自体が意味があるというものでもないと思いますので、私どもといたしましては、現在のところ、より公正な第三者にお願いしてやっていきたいというふうに考えております。
 なお、最高裁の局長、課長が入っておりますけれども、この二名は、いずれも人事当局者ではないわけでございまして、あくまでも公正な立場で委員会を構成して、手続を進めてもらっているというふうに私どもは信じているわけでございます。
 なお、個々具体的な事案につきまして御指摘のようなことがあるということについては、確実な報告に接しておりませんけれども、人事院規則ないしいわば社会通念上おかしいというようなことがないように努めたいと思います。
#178
○正森委員 いまそういう答弁がありましたから、改善すべき点は改善してほしいと思いますけれども、たとえば、家庭局長というのは人事関係について折衝するポストではないという趣旨の発言ですけれども、しかし、事務総長の指導といいますか、そういうような範囲内にあるんじゃないですか。やはり最高裁の事務総局の一員でしょう。そうじゃないのですか。
#179
○勝見最高裁判所長官代理者 その点は御指摘のとおりでございます。
#180
○正森委員 ですから、私たちは、当局から入っておる者が人事上の権限とは全然関係がないんだと言われましても、やはりそれでは本当の公正さを担保できないのじゃないか。そういう方が二名も入っておられる場合には、実際の災害を受けておられる労働者の声をよりよく発言できるような人も入っておられるということが、例がないことではないのだから、必要ではなかろうかという問題を指摘しているわけです。そういうような点についても、御考慮が願えれば非常に率いだというように思っております。
 そこで、時間の関係で問題を変えますけれども、このたび最高裁判所は鬼頭裁判官につきまして訴追請求をされました。そしてこの問題が相当大きな問題になっておるわけですが、今回裁判所定員法で裁判官が十五名ふえるということになっておるわけでありますけれども、最高裁はこういう鬼頭裁判官のような裁判官がなぜ現職の裁判官の中から出てきたのかという点について、問題を分析し、反省すべき点は反省したことがありますか。あるとすればどういうような結論に達したかお答え下さい。
#181
○勝見最高裁判所長官代理者 御指摘のとおり、鬼頭判事補の問題につきましては、弾劾裁判所で審理され、もうすでに審理が終結して判決の言い渡しの期日も指定された模様でございます。私どもといたしましては、厳粛な気持ちでその判決の結果を待っているわけでございます。
 なお、このたびの鬼頭判事補の行為につきましては、職務外の行為ではございますけれども、司法一般に対する国民の信頼というものが非常に損なわれたということにつきましては、非常に残念に思いますし、また私どもも責任を感じている次第でございます。
 御指摘の鬼頭判事補がなぜこのようなことをやったか分析したか、こういうお尋ねでございますけれども、私どもといたしましては、こうこうであったからこういう行動に出たのであるというような形での的確な分析というものは、申し上げられるような分析はいたしていないというように申し上げざるを得ないと思います。かくなる上は、私どもがお互い裁判官全員が自粛自戒いたしまして、かかる裁判官がこのような行為に出るようなことのないように、裁判官一同大いに反省しなければならないというふうに考えている次第でございます。
#182
○正森委員 私は、鬼頭裁判官がなぜああいうことをやったかという心理的、社会的動機を鬼頭裁判官に限って聞こうとしておるのではないので、裁判官というものの中からなぜ鬼頭裁判官が出るようになったのか。裁判官のそもそもふだんのあり方ですね、あるいはその研修、教育のあり方について何か気づくことはなかったかという趣旨で申し上げたのですが、お答えの趣旨は、自粛自戒したいということに要約される答弁であったというように思います。しかし、自粛自戒されるのは大いに結構でございますけれども、その自粛自戒が間違った方向へ自粛自戒されますと、これは正しい結果を得られない場合もあり得るというように私は思うのです。
 たとえば、あなた方は昭和五十一年四月に「司法修習生心得」というのをお出しになった。これはまさに自粛自戒するためにお出しになったのだというように思われるのです。きょうは鬼頭裁判官に絡んで質問いたしますが、このことについてはすでにたしか昨年の七月ごろに当法務委員会でも問題になりましたから多くは申しませんけれども、しかし、この中に盛られておるあなた方のいわゆる自粛自戒ですね。「司法修習生心得」というわけですから、そういうつもりでお出しになったのでしょうけれども、それ自体に、鬼頭裁判官というような裁判官が、なるほどこういう心得で教育を修習生の時代からされたら出てくるのも無理がないのではないかと思われる点があり得るのです。その点をあなた方がお気づきかどうかという点をやはり一、二指摘しておきたいと思うのです。
 たとえばこれを見ますと、修習生の欠席というのを非常に厳格に取り締まりまして、修習生というのは忌引だとか分娩だとか選挙権の行使など以外には欠席の正当な理由というのはないのだ。たとえば「年次休暇に相当する欠席の場合は、原則として正当な理由なしとされる」、こういうように言いまして、「年次休暇は「事務に支障がない」場合に認められるのであるが、修習は非代替的なものであり一般的に「修習に支障がない」とはいえないからである。」というように書いておられるのです。これはいまでもそう思っておられるのですか。
#183
○勝見最高裁判所長官代理者 「修習生心得」につきましては、裁判所の内部のことでなくて、いわば修習生に対する一つの心得を伝えたということでございます。
 実は、大分前でございますけれども、私自身が地裁におりましたときに見まして、研修所はこういうものを出したのかと思いました。そのときのいわば第一印象といたしましては、やはり一個のプロフェッショナルとして、一人前の法曹人として巣立つためには最小限度この程度のことは心得ておくべきことだ。どうも中身を見ますと、修習生が知らないために結局自分自身がいわば被害といいますか、損失をこうむっているようなこともあるようでありますし、その点を事務局長名で、修習生にいわばこういうことなんだということを口頭で述べていたことをパンフレットにして渡した、このような事情にあるわけであります。
 なお、いま具体的な御指摘がございましたが、修習生についてはいわゆる公務員の年次休暇という制度はないわけでございまして、しかしそうであるからといって、たとえば本当に病気である場合にそれでも欠席で修習をしなかったという日数に計算することは、これはまた酷なことでございますので、そこを研修所としてどういうふうに扱っているか、また扱っていくべきかということを示したものでありまして、もともと公務員あるいは一般の労働者のように年次有給休暇という制度はないという前提に立って、修習生に休みのことを教えた、伝えたということに相なろうかと思います。
 なお、ただいまお読み上げになりました点は、修習生にとっても非常にシリアスといいますか、非常に身近な問題でございますので、十分誤解のないように研修所の方にも伝えてありますし、ほかの点もございますが、できればある程度の手直しということも考えるべきではなかろうかというふうに思っておるような次第でございます。
#184
○正森委員 いま手直しの必要があるということを示唆されましたが、私は、お直しになるべき点はやはりお直しになった方がいいと思われる内容がある、こういうように思うのです。修習生というものは、修習中の身でございますから、いわゆる年次有給休暇的な考えがそのままには適用されないということも事実でしょうし、あるいは自分の学習がおろそかになるわけでございますから非代替性のものであるというのも、それは考えとしては成り立つわけですけれども、しかしそうだからと言って、修習生にも、社会人である以上は、一定の条件のもとには休暇を認めてやらなければならないという事情はあり得ると思うのです。それをこういうように縛ってしまうというようなことをやりますと、修習の間からやはり普通の社会人とは違った非常にいびつな考え方を持ってくる可能性がある。しかも、ここで示された有給休暇の最高裁の考え方というのは、私は必ずしも肯定的に考えることができないのです。釈迦に説法ですが、労基法の三十九条の三項というのは有給休暇について、「但し、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。」というように規定されているのです。もちろん最高裁あるいは国家公務員には、この労基法の規定がそのまま適用にはならないということもよく承知しておりますけれども、この立法の経過から言いますと、事務に支障があるかどうかで有給休暇の時期変更権を認めるという考えに対して、休んだ場合に事務に支障がないなんていう労働者はあり得ない、そんな労働者があれば、その労働者は本来働かなくてもいいのだから、事務に支障があるかどうかではなくて、事業の正常な運営に支障があるかどうかということでこういうように立法がされたということは周知のことなんです。ところが最近では、たとえば経営者側などは、民間の労働者に対しても、こういう労基法上の明文があるのに、就業規則では、事務に支障がない場合には与えることができるというようにして、有給休暇請求権を狭めておるのです。それと同じ考えを最高裁がこういう「修習生心得」の中に引用して、そうしてさらにそういう有給休暇請求権も本来はないのだということで厳しく規制していくということを一方ではおやりになる。他方、別のページを見ますと、「教官の自宅又は事務所を訪問するときは、社会人としての礼節に欠けることのないよう注意すること。他人の家を訪れる場合、手土産を持参し、」云々というように書いてあるのですね。結局、教官のところに行くときには手みやげを持ってこいということを教官の方から心得として言う。これは実は社会人として非常におかしいのじゃないですか。そんなことを自分の方から、手みやげを持ってこいというようなことをぬけぬけと「心得」の中に書くというのが、そもそも社会人としておかしいのじゃないですか。こういうことをやっているから鬼頭裁判官のような非常識な人間が出てくるわけです。本当に教官が腹を打ち割って修習生を人格的にも向上させようと思えば、しかも私が修習生から実際に聞いたところでは、修習生は、こういう「心得」を出されたので、教官に対して恐る恐る、教官のお好みは菊正宗ですか、それとも月桂冠ですか、こういうふうに聞いて、ある教官は、おれは月桂冠だとかなんとか答えたというのですね。そういう教官には教官心得を出さなければならない、そういう教官じゃないですか。私だったら、もし修習生などが、正森さんのところへ行きたいのですけれどもお酒は何がお好みですかと、こう言ったら、おれは月桂冠が好きだなんて言わないですね。そんなことは心配しないでいい、話がしたければ幾らでもやってこい、しょうちゅうでもくみ交わしながら一杯飲もうじゃないかというように言って、胸襟を開いて語るというのが先輩たる者の役目じゃないですか。それに給料も少ない修習生に対して、行くときには手みやげを持っていけ、教官、お酒は何が好きですかと言うと、おれは月桂冠だというようなことを平然と答える、そういう教官が教育しているから、だから鬼頭みたいな者が出てくるというようになるのじゃないですか。ですから、私たちは、あなた方がこういう「司法修習生心得」というようなものを平然とお出しになる神経を改めなければ、鬼頭裁判官のような者が後を絶たないように思うのです。しかも、こういう心得を出すのにあずかりがあった教官は、一体どういうことをやっているかと言えば、これも従前質問がありましたから詳しくは言いませんけれども、たとえば川嵜というのですか研修所の事務局長、中山、山本、大石というような裁判官は、女性に対する非常に差別的な発言をしておるでしょう。これも当委員会で質問がありましたから私は多くも言いませんけれども、たとえば中山というのは、あなたも二年間は最高裁からお金をもらっていいけれども、二年たって修習を終えたら、判検事や弁護士になろうなんて思わないで、修習で得た能力を家庭に入って腐らせて子供のために使うのが最も幸せな生き方なのだよ、その能力を子供のために使えば、ここにいる男の人よりもっと優秀な子供ができるでしょう、こういうことを言う。最高裁から事情聴取があれば、腐らせると言ったのじゃない、堆肥として世の中に役立てるように考えなければいかぬと言っただけだ、こういう見苦しい弁明をする。しかし、女子修習生が法曹の道を進むつもりだと述べたら、日本はますます悪くなるねと、こう言ったというのですね。こんなのが裁判官におって、教官におって、鬼頭裁判官みたいな者が出てこなければ、出てこない方が不思議です。あなた方は、やむを得ず厳重注意をしたそうですけれども、厳重注意なんかで、大事な司法研修所の事務局長をまだ勤める、当分勤められるというようなことがそもそもおかしい。大石裁判官というのは、女性裁判官は、生理休暇などで休むから、他の裁判官に迷惑をかける、弁護士も迷惑をかける点では同じだ云々という発言をしておる。裁判官というのは、男女の両性の本質的平等で、企業などで女性に対する差別が行われても、そういうことは行ってはならないという判決をするのが裁判官じゃないですか。その裁判官の中で最も影響力を行使しなければならない教官がこういうことを言う。山本裁判官などというのは、これも去年の七月ごろ当委員会でお話がありましたけれども、君が司法試験に合格して御両親はさぞ嘆いたでしょう、研修所を出ても裁判官や弁護士などになることは考えないで、研修所にいる間はおとなしくしていて、家庭に入ってよい妻になる方がいい、こういうことを言う。それを聞いていた事務局長が、教官はこういうことまで教えてくれるからいいですねと、こう言うたというのです。山本というのは、君が司法試験を受けるときに御両親は反対しなかったのかとか、君の親はどういうしつけをしているのかとか、女性に対する本質的な平等という点からははるかに遠いことを研修所の教官自身がやっている。そういうところに、やはり知らず知らずに裁判官というのが、イギリスの法曹のように民衆の中にあり法律よりも社会的常識について非常にすぐれた識見を持っているという裁判官から離れて、鬼頭裁判官も、裁判官訴追委員会や弾劾裁判所に対して出席するとかせぬとか、それに対していろいろ法律の小理屈をこね回すとか、そういう点では、これは研修所でいろいろ習ったのかもしれないけれども、法理論を展開するけれども、一番人間として大事なもの、裁判官として大事なものが欠けておる。そういうことを行う素地というものが、この司法修習生の心得や、あるいは研修所の裁判官や事務局長の言動の中にあらわれておる、そういうように言わざるを得ないと思うのです。いま「修習生心得」についても見直すというような意味を述べられましたが、研修所の教官のあり方についても、技術だけではなしに、憲法的感覚を持った社会的常識の豊かな人、こういう点について考えるところはありませんか。人事局長なり総務局長から答弁をいただきたいと思います。
#185
○勝見最高裁判所長官代理者 まず「心得」の中の休暇の問題でございますが、労基法を引かれまして御意見を伺いました。先ほども申し上げましたように、修習生には、基準法に言うところの有給休暇という形のものはないわけでございまして、たまたま説明が有給休暇制度の時期変更権に形を借りたような説明をいたしておりますが、基本的には、修習生には年次有給休暇という請求権というものがないという前提であることをひとつ御理解いただきたいというふうに存じます。
 なお、手みやげ論でございますが、すでに正森委員御案内のとおり、クラスの教官のところに、修習生が自宅に訪問いたしまして、それこそ胸襟を開いて懇談するという機会のあることは、昔からまた続いているところでございます。現に、いわば教官の自腹で酒を出し、ささやかなんでしょうけれども、ある程度のごちそうを出して食い、飲みしながら話し合うというのが、いまの研修所のありようでございます。なるほど「心得」に、手みやげを持っていった方がいいという趣旨のことは、確かに言わずもがなのところであるかもしれません。この点もいわば当然――当然と言いますと、また言い過ぎであるというふうにおしかりを受けるかもしれませんけれども、果たして「心得」として、いわば印刷に付して渡すものとしては、いささかあるいは穏当を欠くというようなところがないわけでもないと思います。
 それから最後に、女性差別発言の問題でございますが、これにつきましては、十分私どもといたしまして、当該四人の教官及び事務局長から、その際の事情、前後の事情、それから発言の内容につきまして釈明を求めました。その点につきましては、すでに当法務委員会におきましても申し上げたとおりでございます。その結果、事務局長及び一人の教官に対しましては、書面厳重注意という形で処分をいたしたわけでございます。確かに御指摘のとおり、発言の内容につきましては、特に注意を受けた二人の発言につきましては、内容につきまして問題のあるところでございますが、私どもといたしましては、研修所はもちろんのこと、裁判所の中において、男女差別ということは一切やっておらないということを特に申し上げたいというふうに考えている次第でございます。ほかの職場をごらんいただきましても、比較していただきましても、いわば裁判所は男女の差別の問題ということが全然ないという随一の職場ではなかろうかというふうにむしろ自負しているくらいでございますが、研修所の教官の発言が、期せずしてこのような形で起こりましたことについては、大変遺憾だったと思いますが、今後ともそのようなことのないように、十分自粛するように伝えてありますし、研修所の教育方針といたしましても、決して男女差別というようなことをやっているわけではないということをひとつ御理解いただきたいと存じます。
#186
○正森委員 いま御説明がございました事務総局は一生懸命やっておられると思いますけれども、しかし、最高裁全体で男女差別がないと言いましても、その教育の集中的な表現である司法研修所で、たまたま一人の変わり者じゃなしに、二人ならず、三人ならず、四人までが、同じ時期にこの種の発言をするということは、最高裁の意識のあり方というものについて、考えてみなければならないものがあるのじゃないかというように思わざるを得ないんですね。
 それから勝見人事局長さん、考えてほしいんですけれども、もしこれが一般の私企業で新入社員の心得のところに、上役のところへ行くときには手みやげを忘れないことというようなことを書いて、そういうパンフをずっと出したということになれば、その企業は恐らくこれはおもしろい企業だなあということで評判になると思いますね。ところが、司法研修所ではそういうことを書いても余り問題にもならなかった、そういう意識だったという、そこに裁判官と一般の社会人との間の意識のずれがある。そういういずれが放置されておるから、非常に法技術的には判決の書き方はうまいかもしれないけれども、鬼頭裁判官のような、とんでもないことをしでかして、なおかつ自分が裁判官として大それたことをしたというようには思わないので、欠席をしたりあるいはインタビューをしていろいろ言うというようなことになってくるんですね。ですから、私は、鬼頭裁判官の問題を鬼頭裁判官だけだと考えないで、もう少し広い視野で考えてみる必要があるということを再度指摘しておきたいと思います。
 そこで、時間がもう残り少なになりましたので、もう一問だけ聞かせていただきます。
 矯正局長に伺いたいと思いますが、あの鬼頭裁判官の問題のうら、網走刑務所へ参りまして、宮本顕治氏の身分帳を写真撮影し、あるいはメモをした件につきまして、十月二十七日の当法務委員会で、たしか石原矯正局長が、程田元所長というのは、メモさせてくれと言われて、同席した南部悦郎庶務課長に庶務課に案内させてメモをとらせた。そして南部氏は、庶務課で電話で席を立ったときに、無断で写真を撮られていたので気分を悪くしたが、そのまま写させたという旨のことをおっしゃっていたと思います。
 ところが、二月二十日付の朝日新聞、あるいは二月二十五日付の同新聞、あるいはその時点の他の新聞の報道によりますと、鬼頭裁判官というのは、ここらがまた変わり者でありますが、このときにちゃんとテープレコーダーを持っていっておって、テープレコーダーの中に逐一程田氏とのやりとりが入っておるということで、その内容を一々時間がありませんから申し上げませんが、報道されておるわけですね。
 こういうことに対して、法務省側としてはどういうような見解を持っておりますか、あるいはどう調査されましたか。
#187
○石原(一)政府委員 御指摘のように、昨年十月二十七日、当委員会におきまして、正森委員御発言のようなことを申し上げました。これは当時までに程田前所長並びに南部課長から事情聴取した結果を赤裸々に申し上げ、かつ二人の間の供述に食い違いがあるが、その中から真実があるのではないかということまでつけ加えて申し上げたところであります。
 その後、国会終了後も二人の供述の食い違い等につきまして調査を続けておりまして、本年一月末までには、その調査の結果、差異が埋まるまでには至りませんでした。
 ところが、二月一日、鬼頭判事補が、訴追委員会におきまして、テープを持っていったということでございまして、それが翌日の新聞に報道されました。その後、私の方では、早速程田氏を呼んで調査いたしましたが、外形的にはその事実を認めたものの、いかなる理由、いかなる話し合いでそういうことになったかという事情は判明いたしませんでした。
 そのうちに、二月二十日に新聞報道がありまして、程田所長が自分の責任において閲覧をさせ、かつ写真撮影も許可しているという事実がわかったのであります。直ちに局面の変化に応じまして、私どもも調査しようと思ったのでございますが、当時、訴追委員会におきましては調査中であり、かつ東京地検においても捜査が続行中であるということで遠慮申し上げまして、来週にも両名の調査を続行したいと思っているところでございます。
#188
○正森委員 程田氏は前に法務省の課長クラスの人から事情聴取を受けたときに、あの鬼頭氏のテープレコーダーに入っておるような内容は、それほどはっきりではないが言うておるという趣旨の記事があるんですね。そうだとすると、程田氏は言っておったのに、法務省は必ずしも訴追委員会なりあるいは当法務委員会に、程田所長の言明どおりを報告していなかったのではないかという疑いが一部持たれているのですが、そういう点については、どうお考えになりますか。
#189
○石原(一)政府委員 御指摘のように、新聞記事にはそのようなことが書かれ、さらに法務省報告がどこでゆがめられていたかというような、故意に私どもが誤った報告をしたように書かれておりますが、はなはだこれは迷惑な記事と存じております。
 私どもは、昨年の十月二十一日に一部新聞に、某裁判官が網走刑務所において宮本委員長の身分帳を見た、その後、正森委員の同じ党の同僚議員の方から、それは鬼頭判事補であるということがわかりましてから、十月二十一日に程田所長を呼んで調べ、月曜日、二十五、二十六日と南部課長を調べ、たしか二十六日に同じように程田所長も呼んだろうと思います。その結果、程田、南部両氏の言うままのことを報告いたしたのでございまして、当時におきましては、私どもはその点について相当詳しく聞いたのでございますが、当時は、自分の責任において閲覧させ、写真撮影を認めたということは全然言っておりませんでした。この点は、先ほど御指摘の新聞の二十五日版に、このようなことを書かれた新聞が、程田氏は当時矯正局には言っていなかったという記事を書かれておりますので、実質的に二月二十日付の新聞の内容を訂正したものと私どもは見ております。
#190
○正森委員 それでは時間の関係で、最後に刑事局長に伺いたいと思いますが、いま石原矯正局長はそういうようにお考えになりましたが、鬼頭裁判官に対しては、例の三木総理に対するにせ電話を読売新聞に持ち込んだという事件以外の告発もたしか出ておったと思いますし、網走刑務所の身分帳を写真に撮り、あるいは写す、それが外部に漏れたのではないかという国家公務員法あるいは職権乱用という関係についても捜査をなさっておられるはずであります。
 そこで、自分が程田さんとやりとりしたあのテープが出てきた、そういう新しい事実の上に立って、どのように検察官が対処しておられるか、あるいは報道によりますと、この問題については起訴はしないとかするとか、そういう報道も一部新聞には出ておりますけれども、現在どういうような段階であるか、おっしゃれる範囲でお答え願いたいと思います。
#191
○安原政府委員 ただいま東京地検においては、御指摘のとおり、にせ電話事件、これは犯罪としては軽犯罪法違反被疑事件、これは検事認知でございまして、それと、それからいま国会の宣誓拒否、証言法違反、これは国会からの告発に基づくもの、それから最後に、いま御指摘のいわゆる網走刑務所の宮本委員長身分帳漏示そそのかし事件とでも申しますか、これは告発でございますが、結局、職権乱用と公務員法違反の罪ということ、三つの事件を東京地検では鋭意捜査中でございまして、いま御指摘の最後の件につきましては、程田所長等関係者につきまして鋭意調べておりますが、いずれにいたしましても、近く結論を出すという段階に来ております。
#192
○正森委員 その結論を出される場合に、もしテープレコーダーが事実だとしますと、治安関係の事件を研究している、司法研究というのに必要だという意味の発言をしておるわけですね。そうしますと、これを職務上の必要があったというように言ったととるかどうか、それはこの録音だけでは必ずしも認定できないかもしれませんけれども、関係者をお調べになった上で、これは鬼頭裁判官自身についても国家公務員法違反のそそのかしとか、あるいはあおりとか、何かそういうような問題の起こり得る余地が自分自身の提供した資料の中に出てきておる疑いがあるというように思われますが、いかがですか。
#193
○安原政府委員 いずれにいたしましても、いまのような事柄を踏まえまして、およそこのそそのかしの罪というのはどういう目的があれば成立するものか、いやそういう目的ということは関係なしにそそのかしの罪が成立するか等含めまして、いま、事実問題というよりも一種の法律の問題にも非常にデリケートな点がございまして、懸命に検討中であるというふうに聞いております。
#194
○正森委員 最高裁に一言だけ伺いますが、鬼頭裁判官に、職務上戦前の治安関係の事件の研究をしているとか、司法研究に絡んで何かを命じておるということはあったのですか。
#195
○勝見最高裁判所長官代理者 当時そういうことはなかったはずでございます。
#196
○正森委員 それでは、質問を終わらしていただきますが、法務大臣に一言伺いたいと思います。
 法務大臣は、ロッキード事件を初めとして、いま国民が非常に関心を持っている事件について、厳正に捜査する検察官の検察行政についてあずかる立場におありだと思います。そこで、そういう点に関連し、また今度の鬼頭裁判官の問題に関連して、たとえ相手がどういう人であれ、法を犯したという疑いがある場合には、やはり厳正な捜査をして国民の期待にこたえるべきであるというように思いますが、私は、ロッキード委員会やあるいは予算委員会等の発言についてはあえて申しませんので、私がいま質問をいたしました点について、御決意だけ承って私の質問を終わらしていただきたいと思います。
#197
○福田(一)国務大臣 ロッキード問題といわず、また鬼頭判事補の問題といわず、私は、法を犯した者に対しては、いかなる人であろうとも、厳正公平にこれを訴追、処断をしていくこの検察庁の任務というものを十分に果たす努力をいたさなければならない義務を持っておると思っております。
#198
○正森委員 ありがとうございました。
#199
○上村委員長 次に、加地和君。
#200
○加地委員 最初に、法務大臣の所信表明内容につきまして、若干質問させていただきます。
 この所信表明の中に、「公務員による汚職事犯が多発化する傾向にあり、」このように指摘をされております。私も、確かに、特に去年一年間は、ロッキード事件という大型事件を中心といたしまして、各地方公共団体において汚職事犯というものが多数摘発をされたことについて驚いておる次第でございます。特に、去年一年あたりにこの摘発が多く表に出たというのは、何か特別の原因でもあったのでしょうか。
#201
○福田(一)国務大臣 私は、ロッキード問題というようなことを契機として、やはり違法な行為をしておる公務員があった場合には、ひとつ厳重に処断をすべきではないかという社会的な一つの要請も加わって、かなりいままで秘匿されておった犯罪が表面に出てきた面もあると思っております。
#202
○加地委員 私も、ただいま大臣がおっしゃったように、このロッキード事件についての報道等が世論を喚起し、そして至るところで情報提供があったために摘発も進んだものだと思うのです。といいますことは、言いかえますと、まだそれよりももっと早く摘発されてもしかるべきものが眠ったままになっておったかもしれない。そうしてまた、去年のような世論喚起というものが続いていけば、まだまだ摘発されなければいけないような事案というものがあるのでなかろうかと思ったりするのです。
 そこで、大臣の所信表明の中には、立法面についてロッキード事件の再発防止策というのが書いてあるのです。ところが、公務員による汚職事犯に対する防止策、これはちょっと書いてないように思うのですが、現行法で十分に効果を上げ得るというお考えなのか、あるいはぼちぼちとこの面についても考えていかれるということなのか、それはいかがでございましょうか。
#203
○福田(一)国務大臣 私は、この汚職の問題というものは、公務員の場合であろうと、あるいは会社関係の背任とかいろいろの問題もあるかと思いますが、とにかく法を犯した者に対しては厳重な訴追並びに処断が行われることが必要であると思っております。
#204
○加地委員 特別の法的措置といいますか、立法措置というものは要らないというお考えですか。
#205
○福田(一)国務大臣 現在の法の運用でその面は十分に目的を達することができる、またそれに当たっておる人たちの心構えあるいは社会がそういうことを要請しておる。要請することによって、これは全部が全部、犯罪全部調べてあれすると言うても、なかなかそうはいきませんが、現在の法制で十分そればなし得るものであると思っております。
#206
○加地委員 私も公務員をしていたこともありますけれども、収賄などをする人というのは一定の権限を持つようになった人の場合が多いと思うのです。そうすると、おのずからそのときに、円満退職すれば退職金であるとかそういうものの金額等考えていくと、なぜこんなばかなことをやるのだろうか、数万円あるいは五十万、百万というような金額よりもはるかに大きな退職金なり公務員としてのいままでの貯金に該当する権利をすべて失ってしまうんですね。そういう意味において、特に公務員に対しての、これは非常にばかなことなんだという教育というか、通達というか、そういうことなんかについては、法務省あたり特に力を入れて、公務員の生活問題でもあると思います、また社会秩序を守るという問題でもございますけれども、特に何かなされたのでしょうか。
#207
○福田(一)国務大臣 公務員の問題につきましては、私は自治大臣をしておりましたときに、いま御指摘にあったような通達を出して、大いに自粛しなければならないということはいたしたことがございますが、法務省としては、公務員を対象にするということではなくて、犯罪一般についてわれわれとしては必要があればこれを摘発する、必要というか、そういう犯罪があればこれを摘発して、そして厳正公平に法を施行して、いわゆる世道、人心を正すという、このことがわれわれの目的であって、あえて公務員だけというような形でやることは、これは私は自治大臣とかあるいはその他のところでやればいい。法務省関係のものについてはもちろん当然これはわれわれの責任でございますけれども、いろいろな分野がございますからそこでやっていいのではないか、かように考えております。
#208
○加地委員 ロッキード事件の再発防止策について簡単にお尋ねしておきたいのですが、ずっと前の方の答弁等を聞いておりますと、収賄罪についての法定刑を引き上げるということと、それから公民権の停止というものと、大体その二つでしょうか、国内法関係については。犯罪人引渡条約関係はまた別として、法務省として現在なそうとしておられるロッキード再発防止策については、いま言いましたようなことだけでしょうか、考えておられるのは。
#209
○安原政府委員 御指摘のとおり、法務省の所管といたしましては、私ども考えておりますのは、収賄罪の法定刑の引き上げ、それと日米逃亡犯罪人引渡条約の改定ということでございまして、ただ、私どもこの法定刑の引き上げとか、逃亡犯罪人引渡条約における引き渡しを受ける罪の種類を拡大することだけがロッキード事件の再発防止策としてきわめて有効な手段だとは考えておりません。有効な手段の一環として何がしかの貢献をするだろうとは考えておりますが、と同時に、いま加地委員御指摘の収賄罪で執行猶予の確定判決を受けたという人についての公民権停止の問題は、これはむしろ法務省所管というよりも、役所の縄張りで言えば、自治省所管の公職選挙法の改正の問題でございますので、法務省としてはそのこと自体を立案当局として検討しておるということではございませんが、政府与党との連絡の関係におきまして、主として自由民主党の政調会で検討され、それが聞くところによれば、公職選挙法を所管する自治省に連絡されて、政府としても検討するということになっておる問題でございます。
#210
○加地委員 あっせん収賄についての新しい規定を設けられるということは考えておられないのでしょうか。
#211
○安原政府委員 あっせん収賄についての新しい規定ということは、恐らくは、法制審議会が答申をいたしました収賄罪に関する刑法改正の仮案の中に、現在は御指摘のあっせん収賄の罪というのがございますが、これはあっせんをした公務員が賄賂を収受するということでございますが、自分が収受しないで第三者にその賄賂を収受せしめるというあっせん第三者収賄罪というのが法制審議会の答申の中に入っております。したがって、今度改正する場合に、法制審議会が改正を可とした案をすべて取り入れるべきではないかということで、いま御指摘のあっせん第三者収賄罪の規定も今度の改正の中に入れるべきではないかという議論があることは聞いておりまするけれども、私ども、刑法の改正はできる限りただいま検討中の刑法の全面改正を待って改正を実現したいと考えておりますところ、今回ロッキード事件というものが起こりまして、再発防止の対策として何らか法務省所管の中でなすべきことがあるかということを検討しましたところ、刑法の改正ということもその対策の一環として有効であろうということで、緊急に立法するという必要を考えました場合に、どの範囲でその緊急の立法をとどめるべきかということを考えましたところ、先ほど私が申し上げておりますあっせん第三者収賄罪という規定がなかったために今度ロッキード事件の捜査処理に支障を生じたということはないという意味において、さしあたり緊急にそのような規定を設ける必要はないのじゃないか、むしろ法定刑を引き上げることによって、より厳重な裁判の実現と、それと同時に、法定刑の引き上げによって、今回のロッキード事件では時効にかかった事案が単純収賄等になりましたが、法定刑を引き上げれば時効の延長が図られるという意味において、さしあたりその範囲で緊急の立法をする必要があると考えまして、あっせん第三者収賄罪につきましての規定はさしあたりいまのところ改正案の対象にする必要はないと考えておる次第でございます。
#212
○加地委員 収賄罪関係につきましては無罪となる率もかなり高いということのようでございまして、その大きな原因は、公務員の職務権限についての立証がむずかしいというのが無罪が出てくる大きな原因のようでございますが、刑法改正案の第二次案百五十条別条あたりには、「職務の執行につき、密接な利害関係を有する者から、通常の社交の程度を越える財物その他の財産上の利益を収受し、要求し、又は約束したときは、職務に関して賄賂を収受し、要求し、又は約束したものと推定する。」という推定規定等も考えられていたようなんでございます。ロッキード事件の再発防止策に関し、このような推定規定を早急に設けたら有効でなかろうかと思うのですが、法務省の見解はいかがでございましょう。
#213
○安原政府委員 これは法制審議会の審議の過程におきましても、かような推定規定を設けるべきかどうかという議論がなされまして、結論といたしましては、設ける必要はないということで答申の中にも漏れておる問題でございます。しかしながら、御指摘のように、かような推定規定を設けるかどうかは、われわれ政府が刑法改正案を出すまでには結論を出すべき検討の課題だということにして目下検討中でございますが、何分にも推定規定を設けるということは、刑法におきましては、無罪の推定ということを破るきわめて原則を破る例外的な措置でもございますので、軽々に刑罰法規の中に推定規定を設けるべきではないという基本原則から考えますと、それを設けることの合理性と必要性ということについて慎重な検討が要るのじゃないか。特に推定規定につきましては、いま御指摘のように、職務上密接な関係を有する者というものが、公務員の地位が上がるに当たりまして、それが職務上密接な関係を有する者からの一つの贈与であるのか、友人としての贈与であるのかというようなこと、あるいは通常の社交程度を越えるということの判断というようなことで、判断自体にも非常にむずかしい問題があるということで、いまのところなお検討を要するということになっておる課題でございます。
#214
○加地委員 法務省刑事局から出しておられる改正刑法草案の解説に、いまの推定規定の解説とともに、この中に「国民からの批判も多い高級公務員の収賄については、このような規定」すなわち推定規定ですね、推定規定「を設けてもあまり役に立たない」であろうと。だから私は、法定刑を上げるとともに、推定規定をもう一つ設けたらより防止策になるのじゃないかと思って提案したのです。ところが、いろいろと無罪の推定論からそれば考えなければいかぬという御答弁。ところが、この推定規定を設けてもなおかつ高級公務員に対しては余りこれすら役に立たないだろうという解説が載っておりますために、ロッキード事件のような腐敗防止のためには、いまのような法定刑の単なる引き上げということでどれだけ効果があるのか、私は非常に疑問に思うのですね。お答えにくいかもしれませんけれども、どのくらいのどんな効果というものが考えられるでしょう。ただ、灰色高官の中で時効によって免れ得た人という、いわゆるきわめてまれなケースですね、これは網の目の中に入れ得るかもしれませんけれども、私は、刑罰がちょっと上がったから悪いことをするのをやめようかという犯罪抑止力というものはきわめて薄いものであって、小さな下級公務員はどんどんつかまって、高級公務員は逃れていくという現在の制度のあり方について、法定刑の引き上げ以外に何かほかにないのでしょうか。
#215
○安原政府委員 法定刑の引き上げがどれぐらい効果があるかということは、これはいわば刑法永遠の課題のようなものだと私は思うのでございますが、いずれにいたしましても、加地委員御案内のとおり、刑罰の威嚇力、特に激情犯ではなくて知能犯のようなものについては、法定刑が重い犯罪を犯すことによる不利益と犯罪によって得る利益を比較考量して冷静な計算のもとにどちらが得かということで犯罪というものは行われるものであろうという前提を置きますと、法定刑が重いということは抑止力として働くという一種の法的確信というものをわれわれは持っておるわけでありまして、実際にどれだけの効果が上がるかということの測定は非常にむずかしいと思いますけれども、たとえば、かつてばっこをきわめた覚せい剤の取り締まりにつきましては、覚せい剤の取り締まりのために法定刑引き上げによって非常に激減した。あるいは麻薬取締法についても同様であった。あるいは昭和四十三年でございましたか、自動車事故の防止のために刑法の業務上過失致死傷に懲役刑を入れるために法定刑を引き上げた結果、ある程度それがその後四十五年ごろから減ったということもございまして、やはり私どもは刑を引き上げることが犯罪の抑止力としての威嚇力を持つものだという法的確信は持っておるのでございます。
 ただ、冒頭申し上げましたように、ロッキード事件のような事件の、いわば高級公務員の贈収賄事件というようなものの防止策ということが、単に刑法の法定刑を上げるだけで完全に防止し得るとは考えておりません。ただし、先ほど申しましたように一種の威嚇力を与えるという意味において、その法定刑を引き上げれば裁判もまた厳格になり、いま非常に多い執行猶予の判決が減るということもあり得るだろうと考えておりまして、全然効果がないとは考えておりませんが、万能であるとも考えておりません。
#216
○加地委員 それじゃ恩赦のことについてちょっとお尋ねしたいのですが、恩赦のときにいろいろと政令で基準等を定めるわけなんですけれども、これの中心となってやられる作業は法務省が所管なんでしょうか。
#217
○常井政府委員 中心という意味でございますけれども、これは内閣でされることでございますが、その事務の手続の準備その他法務省でまたいたすように相なっております。
#218
○加地委員 この恩赦というものが一律に行われますと、せっかく裁判官が心血を削り、健康を害してまで判決を下した問題、あるいはまた大赦等がありますと、せっかく検察陣が心血を削って起訴にまで持ち込んだ問題等が一遍に、帳消しといいますか、消えてしまうという、非常に問題のある制度だと私は思うのです。いわゆる法による支配というものが一挙に崩れてしまう。常に裁判を長引かして、恩赦待ちであるとか大赦待ちであるとかいうような裁判遅延の弊害も伴ってくると思いますし、それからまた、第一線での裁判官あるいは警察官、検察官の士気も著しく低下させる弊害を持っておると思うのですけれども、大臣はこの恩赦制度についてどのようにお考えになりますか。
#219
○福田(一)国務大臣 いまあなたが仰せになったような面が最近は非常に重視せられまして、しばしば恩赦の話がございましたけれども、最近は行われておりません。いまあなたが御指摘になるように、せっかく警察とか検察とかあるいは裁判官が努力をして、そうして一種のみせしめというと失礼ですが、その本人の翻意を促すと同時に、世間一般に対してこういうことがあってはいけないんだという、そういう意味での効果というものが失われることがいいことか悪いことかということになると、私はかなり疑問があると思っております。したがって、どちらかと言えばそういうことがいいかどうか問題である。私も、自分がいま当事者ではございませんが、恩赦について私に意見を言えとおっしゃれば、よほど慎重に考えなければいけないことだと思っております。
#220
○加地委員 物の本によりますと、ロッキード事件も、いずれ年号が変わるときに、昭和という時代がまた別の時代に変わるころに大赦、恩赦で消えてしまうのでなかろうか、こういう不安の声があるのですけれども、大臣は、ロッキード事件などが大赦、恩赦の適用を受けるというようなことは考えておられるでしょうか。
#221
○福田(一)国務大臣 ただいまのところそのようなことは想定いたしておりません。
#222
○加地委員 それじゃ大臣にもう一問させていただきます。
 法務省の方で少年法の改正作業が多くの委員の力等によって大分進んでおるようでございますけれども、私は、この少年法関係についての賛成論、反対論、まあいろいろな資料を読む機会があったわけなんですけれども、現在制定作業が進んでいます新しい少年法というものが制定されれば、少年犯罪等は減るのでしょうか。
#223
○安原政府委員 まことにむずかしい課題でございますが、結論から申せば、減る方向に寄与しなければ改正をする意味はない、かように考えております。しかしながら、少年非行を減らすということは、単に法律の問題ではなくて、社会、教育あるいは福祉、文化、国民全体がともに協力して非行の防止に努めるべき永遠の課題であろうと思いますが、少年法も、非行化した少年の処遇をいかにして適正にして、いわゆる特別予防と申しますか、再び非行に陥ることのないようにするのにはどのような手続が適当かということで少年法の改正ということが考えられておるわけでございますので、これまた万能ではございませんが、適正な処遇を介して非行の再犯の防止ということに寄与するような少年法の改正を試みたいというのが法務事務当局の考えでございます。
#224
○加地委員 私は、どのような制度にも長所があり欠点があるものだと思います。完全な制度というのは少年法問題につきましても恐らくないだろうと思います。ところが、少年法の改正問題がやかましく言われておりますけれども、現在非行少年というのが非常に年齢が低下をしてきておりまして、しかも集団化してきておる。十五、六歳あるいは中学生あたりが多いという状態でありまして、これはむしろ今度の少年法というのが――いろいろな見方があります。少年に対する取り締まり強化なんだとか、あるいは教育的配慮を抜きにして、いわゆる保護主義、いわゆる処罰主義なんだとかいろいろな批判があります。ところが、年齢の低い少年に対しては、少年法の改正ということによって取り締まりになじむものではなしに、いまおっしゃったように、教育上の問題とかマスメディアの問題とかいろいろなところを解決していかなければ、法律をいじっても何にもならない。だから、少年法の改正が今度もしされても余り効果がないのじゃないか。ただ制度改正、制度改正で混乱ばかり起きちゃって、余り非行の防止の役に立たないのでなかろうかと思ったりするのです。ところが、法制審議会の少年法部会委員の幹事名簿等を見ますと、実際に現在の少年法を第一線で運用しておられる家庭裁判所の調査官であるとか、あるいは中学校の先生であるとか、高等学校の先生であるとか、そういうところの偉い人は入っておられるのですけれども、いわゆる現場で子供たちとじかに接しておられる方々というのが委員の中に入っておられないように思うのですけれども、この委員会構成について改善するお考えはないでしょうか。
#225
○賀集政府委員 法制審議会の少年法部会の委員のメンバーの中で、ただいま御指摘になりました、まず家庭裁判所関係の人でございますけれども、まず委員の方では、家庭裁判所の裁判官、それからもう一つは家庭裁判所調査官研修所の所長さん、それから家庭裁判所調査官を長くおやりになった方、委員の中には三名いらっしゃいます。幹事の中には、家庭裁判所裁判官一名と現職の調査官一名といらっしゃいます。教育関係では、委員の中にやはり教育関係の方がいらっしゃいます。
 そしてその構成でございますけれども、少年法部会はいろいろ多方面の方をお招きしております。学者では法律、心理、教育各界の先生方、それから法曹実務家、それから婦人層の代表者、それから言論人、そういう多方面の方をお招きをしておる関係上、先ほども申されました家庭裁判所関係の方、それから教育関係の方、そういう構成も全体のバランスからいいますと当を得ている、このように考えております。
#226
○加地委員 私は立場が違うせいかもしれませんが、ちょっと法務省、裁判所に偏り過ぎているのじゃないかと思うのです。またそういう声も別のところからいろいろお聞きになっているだろうと思いますので、参考として将来お考えいただきたいと思います。
 それから、大臣の所信表明の中に、不況を反映した各種財政経済事犯が各地で発生しておる、このような御指摘がございます。確かにわれわれのところへも、いわゆる暴力団が知能犯化して家屋敷ごそっと取られちゃった、あるいはごっつい借金を背負わされたというように、非常に財政経済事犯のために深刻な被害をこうむっておられる方がたくさんあります。そういう中で、警察の方のいわゆる対応というのが、経済事犯に対しては非常に手薄といいますか弱いのでなかろうかと思うのですけれども、大臣はどうお考えになりますでしょうか。
#227
○福田(一)国務大臣 私も国家公安委員長をしておったことがありますが、確かに警察官がそういう法律問題にまで、たとえば土地の売買なんかの問題とかいろいろな背任、何というか詐欺的なこととかいうことがあっても、それは警察では処理することが現在の段階で非常に困難な面が多いと思います。できないとは申しません。もちろんやっておりますけれども、いま御指摘のような困難さはあると思っております。
#228
○加地委員 大臣もいまおっしゃいましたように、捜査担当の方でも登記簿の権利関係の見方もおわかりにならない方が非常に多いと思うのです。私は、すべての警察官が、交通取り締まりをやる人も、ぎゅっと暴力団を押さえつける人も万能選手であれとは言いませんけれども、やはり現在のところ庶民は、駐車違反の取り締まり、スピード違反の取り締まり、あるいは暴力団が暴力をふるってくれたら、これはもう大丈夫や、警察がつかまえてくれる、そこまでは安心感があるのですけれども、いわゆる知能犯罪については、検察、警察ともにやはり陣容の強化、あるいは研修とかそういうとこら辺に力を入れなければいかぬと思うのですが、大臣はどう思われておりますか。
#229
○福田(一)国務大臣 私は、それもいま仰せになったような犯罪防止には役立つと思いますけれども、同時にまた、教育の面とかあるいはその他のマスメディア等を通じて、こういう犯罪があるから注意をしなさいとか、こういう場合にはえらい目に遭いますよとか、めったに判を押すと、保証人だと思って判を押しただけで大変なことをこうむりますよとか、私は、そういう意味での一般的な教養を、一つの犯罪に対する予防的な社会教育というものが何かもっと行われてしかるべきではないか、こういうふうに考えております。
#230
○加地委員 大臣のおっしゃることももっともなのですけれども、やはり社会教育と言いましても、情報はんらん時代でございますので、それにもかかわらず判こを押したり、だまされたりする人がいるわけなんですね。悪くない人で、善意でぼんやりしている人です。やはりそういう人らに対して――私らの経験でも警察、検察庁しか頼れなかったという事例があるんですね、証書は相手方にうまいぐあいに持ち去られて、かまどで焼かれてしまって、仕方がないから関係者を数名告訴したのです。そうすると、どうしたわけか、そのときは警察は二週間ほどで動いてくれまして、強制捜査じゃなしに参考人を呼ぶという形で呼んでくれましたですね、たくさんの中にはやはり本当のことを言う人がいまして、そのために家を一軒取られかけていた人がすぐに片がついたという、非常に効果があったという体験もあるんですよ。ところが、経済事犯に関して告訴しても、半年も一年もほったらかされてしまう。あるいは告訴しても告訴状にいろいろと難癖をつけられて取り下げをせざるを得ない。証拠が足りるとか足らぬとか、管轄がちょっと違うとかどうとかいうように、いわゆる経済事犯についての告訴事犯というものの処理が非常におくれておるのじゃないかと思うのですけれども、この点について大臣はどうお考えになりますか。
#231
○福田(一)国務大臣 私は、警察官に対するそういうような教育ですね、そういう場合には、こういう場合にはこうするといいんだ、たとえば、自分はそういう意思でなかったのだということを証明する証人をひとつ早く見つける必要があるとか、いろいろありますね。その防遏の方法、対抗する方法が。そういうようなことを一般的な知識として警察官に教えておくというか、警察官がそういう教育を受けるということは非常に効果があると思います。全部が全部でなくても、交番に三人いるうちなら一人はそういうことは少なくともわかるようなふうに考えていくということも必要かと思いますが、いまのところは警察もなかなかそこまでは十分な注意が行き届いておらないんじゃないかと思うのであります。特に、やはり法律関係になりますから、ある程度法律論を考えていないといけないんで、警官は一般常識的な法律論は持っていますけれども、そういうような詐欺とかそういうようなことになった場合の、どうしたらいいかという余りいい知恵が浮かばないんじゃないか。言うなれば、教育がその程度まで徹底しておらないんじゃないかということは私もよくわかります。
#232
○加地委員 検察庁あるいは警察一体となってこの知能犯についての強力なチームをつくって、交番の三人の中の一人が、そういう知識があるにこしたことないですけれども、そこまでしてくれとは言わないのです。とにかく一つの警察本部の中で、また検察庁の中で、いわゆる検察庁はまた警察との協力関係において、こういう暴力団が知能犯化してくるということは、これはもう病気と一緒で、こっちの体が弱いからばい菌がそれだけはびこっていくんだと思うのですね。だから、やはり警察、検察庁側にも対応のいわゆる手抜かりというものがあるんじゃないかと思いますので、今後強力にやっていただきたいと思います。
#233
○安原政府委員 確かにいままでの犯罪捜査におきまして、いわゆる強力犯的なものに対する捜査に比べて知能犯の捜査が十分であったかということについては、十分に反省をする必要があると思いますし、さしあたりこの暴力団の問題にいたしましても、本当にこの根絶を期するためにはその資金源を断つということが必要だ。資金源としてやられているものがいわゆる暴力的知能犯でありまして、高金利による金貸し業とか不動産業とかいうようなことでいわゆる庶民が苦しめられているということもございますので、検察といたしましても、暴力団対策といたしましても、また国民が本当に検察に期待するところは何かということになりますと、やはり知能犯の捜査というものを、もう少し技術、知識を向上させて、本当に国民の期待にこたえていくということが、ロッキード事件のような社会の耳目を引く事件に劣らず大事なことだということを考えて、知能犯の研修ということには非常に力を入れている関係がございますし、その意味において、われわれの持っている知識を警察官にも助言として与えていくということによって、検、警相まって知能犯捜査の徹底を期する覚悟でおることを御理解いただきたいと思います。
#234
○加地委員 次に、裁判所職員の定員法関係について質問いたします。
 多くの方が御質問されたのでございますけれども、一部分重なる点もあるかもしれませんけれども、何といっても裁判官の数の不足というものは、ただ一人一人の裁判官に重荷を負わして、健康を害したり、あるいはノイローゼ寸前の精神状態に追い詰めたりするだけではなしに、一つ一つの裁判について非常に粗雑なものになっていく危険性があるのでなかろうか。これは国民にとって非常に重大な問題だと私は思います。
 それで、日本評論社から出ている本を見てみますと、明治二十三年には裁判官の定員は千五百三十一名だったのですね。そのときに全人口は三千九百九十万。ところが昭和四十九年には裁判官の定員は、簡易裁判所の裁判官を含めて二千六百九十三名、二倍にもなってないのですね。同じように、全人口は三千九百九十四万ほどであったのが、一億九百十五万、一億人を突破しているという状態なんです。それからまた、明治二十三年には、いわゆる弁護士、裁判官、検事をひっくるめた法曹人口全部が三千三百五十七名。ですから、その当時裁判官が千五百三十一ですから、大体法曹人口の半分が裁判官であったわけなんです。ところが、現在昭和四十九年では、法曹人口は一万三千二百七十五名ですが、裁判官の数は二千六百九十三でございますから、まあ五分の一ということなんですね、全法曹人口の中で。
 私は、ここで考えていただきたいのは、たとえば争いごというものは一人だけでは、ロビンソン・クルーソーには裁判は起こらないと思うのです。二人になって、AとBとの関係で一つの人間関係、争いごとが出てくると思うのです。このAとBという二人が四名にふえた場合、二倍にふえて、A、BのみならずC、Dとなってきたときに、どれだけの人間関係になってくるかというと、二倍じゃないのです。AとB、AとC、AとD、BとC、BとD、CとDという関係ですから、一挙に六つの対人関係が出てきまして、争いごとというのが六倍にふえる可能性がある、こういうことも言えると思うのです。
 それで、鳩山委員とも一緒に、人口が二倍、三倍にふえれば対人関係はどれだけふえるのであろうかということを午前中いろいろと考えていたのです。そうしますと、鳩山委員なり私の考えでは、これは人口が二倍にふえれば二のの自乗、三倍にふえれば三の自乗になるということで、明治二十三年ごろと比べますと、いわゆる対人関係の複雑さは九倍になっている可能性がある、そうすると、争いごとも九倍になっている可能性もある。このように明治二十三年時代の裁判所の定員数と、現在のこれだけ人口がふえ、複雑化した世の中での裁判官の数、これとの関係について最高裁の方は、何か矛盾といいますか、問題をお感じになりませんか。
#235
○矢口最高裁判所長官代理者 非常に大きな面からの問題を御提起いただきまして、これは単なる裁判所だけのお答えでいいものかどうかという感じはいたしますが、私ども日ごろから感じておりますところは、人口がふえるということの、それだけの問題として直ちに争いごとが、いまおっしゃいましたような、幾何級数的にふえていくというものでもないような感じを持っております。その中には、やはり国民全体の繁栄の問題でございますとか、また各人の権利意識の問題でございますとか、国土の広さとか、そういった文化の発展の程度の問題でございますとか、いろんな問題がここに絡んでまいっておりますので、それだけではかるわけにもいくまいという感じがいたしております。また、具体的な事件数を見てみましても、実はこれは非常にある意味では不思議な現象でございますが、戦前の昭和五、六年から十年ごろまでの民事事件数と、戦後におきます現在の事件数と比較いたしましても、戦前の方が多いわけでございます。実は、裁判所に提起されます事件というものは、決して戦前よりは多くなっていないというような、事件数だけから見てみますと、そういうことも実はあるわけでございます。
 それからまた、一転いたしまして裁判官の数の問題でございますが、これもイギリスなどは治安判事を除きます純粋の裁判官の人口当たりの比率というものは非常に多いわけでございまして、日本などの倍ぐらい、人口一人当たりの数が多いということでございます。すなわち、一人当たり約十万以上の比率であるのに対して、日本は裁判官の比率が約五万ぐらいである、こういう現象もあるわけでございます。結局のところ、そういったどういうところが妥当な裁判官数であり、また妥当な法律の制度であるかということは、きわめて国民的な要素と申しますか、民族的な要素というようなものも入ってくるような感じもいたしております。
 現在のところ、戦後ただ取り上げて言えることといたしましては、やはり法律をおやりになる方の底辺が非常に広がってまいりまして、そういった広い底辺の中に法曹有資格者というものが出てきております。そして、そういう方々が年々ふえてきております。そういった幅広い底辺の中から、やはりそれにふさわしい方が裁判官になっていただく、こういう形でもって進んでいくよりほかしようがないんじゃないか。一つ一つの事件をとらえまして割合とかなんとかいうことも一つの見方ではございますけれども、それだけがすべてではない、こういうふうに現在考えておるわけでございます。
#236
○加地委員 同じ明治二十三年から、四十九年までの間に弁護士の数は、偶然かもしれませんけれども、やはり八倍になっているのですね。そうして弁護士で食えなくて首つったという方の話は余り聞きません。全然聞きません。ですから、それなりに仕事があるんじゃなかろうか。だから、やはり世の中に人間が多くなれば悩み事も多い。それが裁判所へかかったら大変なことになる、期間もかかる、経費もかかる、命の方が先にいっちゃうかどうかわからないということで、私は裁判所からの逃避という問題があるのではなかろうかということを強く指摘しておきたいと思います。
 それでは、今度は司法試験の問題についてお尋ねいたします。
 この前、日野委員の質問に対して、現在司法試験で年々採用される人が五百名ほどだけれども、六十倍ほどの倍率になっているとおっしゃいました。日野委員から、六十名のうちの一人が、六十名の二人になってもいいのじゃなかろうかという御指摘がありました。それに対し、やはり質を保たなければいかぬから、やはり五百しか採れなかったんだという御説明もあったのであります。ところが、私は、やはり司法試験に六十倍の競争、それだけ熱心な人があり、それだけある程度切瑳琢磨し勉強しているのでしょうし、ある程度採るのをふやしてもいいのじゃないかと思うのです。
 まず、それも聞きますけれども、順番に、臨時司法制度調査会の答申にかなり問題になるようなことが指摘されているのですけれども、司法試験に合格する人で在学生の合格者数がどんどん減ってきておる、卒業して何年かたった人しか受からないというようなことも指摘されていたんですけれども、最近の状態はどうなんでしょうか。大学卒業見込み者、すなわち在学生が合格する割合、それはまた年々の傾向としてふえてきているのか、減ってきているのか。
#237
○藤島政府委員 在学生の占める率でございますけれども、この司法試験制度は二十四年から発足いたしまして今日に至っておりますが、ちょっとその間の傾向を要約して申し上げますと、二十四年から二十七年まで、このころは合格者が約二百五十名で半数が在学生です。二分の一が在学生の合格者だったわけです。ところが、二十八年から在学生の合格者の率が激減をいたしました。これは二十八年から新制大学の卒業生が出始めた年でございます。そして二十八年からずっと合格者が二百五十人ないし三百人でございましたが、在学生の合格者が五十人から七十人、年によって違いますが、全体の約五分の一となったわけです。その後昭和三十年代後半になりまして受験生がふえてまいりました。それに応じまして合格者の数も四百人から五百人に増加いたしたわけでございます。在学生の合格者は大体百人前後ということで、全体の五分の一程度で推移いたしております。最近三カ年を見てみますと、合格者は百人をわずかばかり割っておりまして、全体の合格者は大体五百人前後でございますが、その五分の一ないし六分の一ということになって今日に至っております。
#238
○加地委員 かなり問題になるデータが出てきておると思うのです。臨時司法制度調査会の答申は昭和三十九年ごろに出たと思うのです。そのときにそれが指摘されたにもかかわらず、最近三カ年を見ると五分の一を割っているという結果じゃなかろうかと思うのです。これはやはり試験制度にもっと改善の工夫が必要なのでなかろうか。また、この合格者の平均年齢というのが二十六歳、二十八歳ぐらいでありまして、大学を普通に卒業してから五、六年しないことには合格しない。すぐに受かる人もあることを見れば十年かかって受かる人もあるぐらいですからね。
 それと、もう一つ問題なのは、臨時司法制度調査会の中に、大学での成績が中位以下の者で司法試験に受かっている人が多い。それで、上位の者はもうすでに早いこと国家公務員の上級試験の方へ逃げていくか、銀行とか商社とか一流会社の方へ就職していくのでなかろうかと思われるのですけれども、これ、大学での成績が必ずしも実力を反映するものでもなし、大学教育にも問題があるのかとも思います。しかし、少なくとも一つの基準になるいわゆる在学生の中での見込みのある有能な方を司法部、法曹関係の方に多く採用できるような工夫ということは考えられないのでしょうか。
#239
○藤島政府委員 ただいまの司法試験の合格者の大学の学業成績が中位以下の者が多いというような点がございましたが、司法試験管理委員会では最近そういう統計をとっておりませんので、その点は何とも申し上げかねるわけでございます。
 先ほど申し上げましたように、在学生の合格者が大体百人前後、五分の一ないし六分の一ということでございまして、平均の受験回数が四回ないし五回、平均年齢が大体二十六歳ないし二十七歳というのが現状なんでございます。そういうところから見ますと、おっしゃるように、若く優秀な人材が他の社会の分野に行ってしまっているのではないかということが確かに言えるんであろうと思うのです。
 こういう現象がなぜ起こってきたかということをいろいろ分析して見ておるわけでございますが、一番大きい原因は、司法試験と申しますものは判事、検事、弁護士になるために必要な学力と応用能力をテストするということで、結局法律科目が主体となった試験でございます。そうしますと、大学を卒業してからも受験勉強を続けた者に有利でございまして、学習期間の短い在学生に不利な試験である、こういうことが言えるわけで、その点は臨時司法制度調査会でも指摘をいただいたところでございますが、三十九年に臨時司法制度調査会の答申がございました際に、法務省は、法制審議会にもこの問題をかけたわけです。そうして、四十年の四十八回国会に司法試験法の改正案を提出しようという準備を実はいたしたわけなんでございますが、結局いろいろ反対の意見もございまして、提出には至らなかった。
 要するに、法務省の考えておりますことは、現在の司法試験というのは第一次試験と第二次試験がございまして、第一次試験というものは、学歴は必要でない、試験科目は一般教養ということで、それに合格すると二次試験が受けられるわけでございますが、第二次試験と申しますのは、大学の教養課程を終わっておると、一次試験免除になるわけです。そういうふうに第一次試験と第二次試験が分かれておりますけれども、第一次試験を廃止いたしまして、学力を問わないで、司法試験の科目の中に、第二次試験に相当する試験の中に一般教養科目を入れよう。一般教養科目をなぜ入れるかと言いますと、結局一般教養科目と申しますのは、勉強の期間にそう左右されない、あるいはまる暗記的な勉強が通用しにくいというような点があるわけなんでございまして、そういう一般教養科目を入れ、現在の法律科目の科目数を多少減らそう、そうすることによって在学生が受験しやすくなる、また合格しやすくなるんではないか、こういうことを考えたわけです。
 ところが、これに対しては、司法試験の本質から言って、それは本末転倒である、司法試験は法律科目中心の試験でなければならない、こういう強力な反対の意見がございまして、結局改正案を提出できなかった。そうして今日に至っておるわけでございまして、私どもとしては今日でもそういうことを考えておりますけれども、しかしそういう改正をすることは、いろいろ客観的に見て困難な情勢にあるように思われます。
#240
○加地委員 論文式試験と、それから学科についての口頭試問とございますね。これは採点のウエートは、論文が何割、口頭試問が何割というぐあいに決まっているんでしょうか。そこら辺のことが、司法試験全般についてまさに禅問答みたいなものですから、勉強する人にしても、どういう目標でもって勉強していったらいいのか、どこが自分が足りなかったのかということがわからぬままに、年に一遍の夏場暑いときに試験を受けて、だめやった、何でやろなというのがわからぬままに、意欲のある人がむだな労力を繰り返しておるという弊害が確かにあると私は思うんですね。ですから、一枚一枚の答案を公表ということじゃないですけれども、いわゆる論文と口頭試問なら、どういうウエートになっているのか。
 それからまた、一緒にお答え願いたいんですけれども、たとえば五百番の人――五百人採用のときに、一番ビリで司法試験に合格して入れたという人、仮に五百番としますね。その二倍にして、上から勘定して千番の人は、どのくらいの点数だったのか。五百番の人の点数と千番の人の点数ですね。こういうものは公表できるでしょうか。
#241
○藤島政府委員 司法試験第二次試験は、先生御承知のように短答式、論文式、口述、三つの関門があるわけでございまして、その三つの試験は、いずれも関連はあると言えばあるわけです。ということは、短答に入らなければ論文は受けられない、論文に入らなければ口述は受けられないということで関係はございますが、ただ、短答式の成績が後の試験に加味されるかというと、そういうことになっておりませんで、三つに分かれているわけです。だから、短答式試験を一番で通って合格する、しかし、論文を受けた場合に論文の試験の基準に達しなければ、短答が一番でも落ちるわけです。論文が一番で合格していても、口述を今度受けた場合に口述の基準に達しなければ落ちるということになっておりまして、そういう意味ではそれぞれ独立になっておるわけでございます。
 それから、五百人でたとえば千人になった場合に、それは何点ぐらい違うのかというようなことは、これは試験のきわめて機密に属することでございますので、公表を差し控えさせていただきたいと思うわけです。いずれの論文にしても口述にしても、考査委員会議で採点基準というものを決めてございまして、その採点基準で厳格に実施しておるわけでございます。また、最終の合格者決定会議、考査委員会議が行われるわけですが、これはそれぞれ答案をごらんになった先生方が集まっていろいろ討議されて合格者を決めるわけで、答案を実際にごらんになった先生方でございますから、この全体の大体の平均的な能力がどのくらいで、この試験の本質にかんがみて合格させる人数はこのくらいだということは、答案をごらんになった先生は大体わかると思うんです。そういう先生方がお集まりになって、大体この線ということをお決めになるわけで、私どもとしては非常にその点は適正に行われている、そう考えておるわけです。
#242
○加地委員 司法試験管理委員会と、いまおっしゃった考査委員会とはどんな関係にあるんでしょうか。私が聞いておりますところでは、司法試験管理委員会の方は、いわゆる事務的なおぜん立てのようなことをされて、それからその内容については百名ほどの試験委員の方が主導権を握っておられる、こう聞くんですけれどもね。私が強調したいのは、論文式試験というやつが、どこにこの問題なら採点基準があるのか。たとえば、一つの問題について五つのことを書いてなかったら、一つのことについていかに論理的にすぐれ、名論卓説を吐いていてもだめだと聞きます。まあ、五つ書いてほしかったら四つぐらいは書いてないといかぬ、そしてまた字もきれいでないといかぬ、あるいは論理も通ってないといかぬということで、さっぱりこの基準というものがわからぬために、在学生の優秀な方でも、おれはどこを目標に力を入れていったらいいのかということがわからぬままに、禅問答のようなことの繰り返しのために、有能な方を法曹分野の方へ吸引するのを逃がしておるのではなかろうかと思うのです。将来の問題として、できるだけ受験生についての努力目標というものが明確になるように、まただれは何点だということを発表しなくてもいいと思うんですけれども、自分は全体の中で何番ぐらいで落ちたのか、来年ぐらい見込みがあるのかどうかというような、これはやはり一生にとって重要なことだと思うんです。差し支えのない範囲で、やはり客観化あるいはいわゆるオープンな形で、いい人材が集まってくるように要望をいたしておきます。
 時間がありませんので、また次の機会にこの点詳しくやらしていただきます。
#243
○上村委員長 本案について他に質疑の申し出がありませんので、これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
#244
○上村委員長 引き続き討論に入るのでありまするが、討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。
 本案を原案どおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#245
○上村委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#246
○上村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
#247
○上村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時散会
ソース: 国立国会図書館
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