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1976/04/26 第80回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第080回国会 法務委員会 第12号
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1976/04/26 第80回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第080回国会 法務委員会 第12号

#1
第080回国会 法務委員会 第12号
昭和五十二年四月二十六日(火曜日)
    午前十時十五分開議
 出席委員
   委員長 上村千一郎君
   理事 羽田野忠文君 理事 山崎武三郎君
   理事 稲葉 誠一君 理事 沖本 泰幸君
      小坂善太郎君    坂田 道太君
      篠田 弘作君    田中伊三次君
      福永 健司君    日野 市朗君
      飯田 忠雄君    長谷雄幸久君
      加地  和君    鳩山 邦夫君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 福田  一君
 出席政府委員
        法務政務次官  塩崎  潤君
        法務大臣官房長 藤島  昭君
        法務省民事局長 香川 保一君
 委員外の出席者
        大蔵省証券局資
        本市場課長   小粥 正巳君
        大蔵省証券局企
        業財務課長   森  卓也君
        中小企業庁計画
        部振興課長   竹内 征司君
        法務委員会調査
        室長      家弓 吉己君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月二十三日
 辞任         補欠選任
  飯田 忠雄君     正木 良明君
同日
 辞任         補欠選任
  正木 良明君     飯田 忠雄君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 社債発行限度暫定措置法案(内閣提出第四五
 号)(参議院送付)
     ――――◇―――――
#2
○上村委員長 これより会議を開きます。
 社債発行限度暫定措置法案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。長谷雄幸久君。
#3
○長谷雄委員 私は、公明党の長谷雄幸久でございます。ただいま議題となっております社債発行限度暫定措置法案についてお尋ねをいたします。
 この法案の提案理由によりますと、社債の発行限度を引き上げる措置を講ずる必要性は、「最近の経済状況にかんがみ、株式会社の長期安定資金の調達を容易にするため」であるとあります。
 そこで最近の経済情勢をどう認識しておられるのか、この点について提案理由説明によりますと、「企業の設備投資の活発化が強く要請されている」とありますが、特に本法案の作成作業を開始した当初、その時期は恐らく昭和五十年十月ごろと思いますが、そのころにおける社債発行限度の引き上げを要するとする状況について、それがどの程度あったか、その点をお伺いしたいと思います。
#4
○香川政府委員 私ども商法の所管省といたしまして、現実に限度いっぱいの社債を発行しておる、つまり今後社債発行の余力のない会社が相当出てきておりまして、そのような状況のもとで、今後経済といたしましては何としても景気浮揚を図らなければならない、さような意味から、いろいろの政策も合わせまして、景気浮揚の最も有効なと申しますか必要なものとして、設備投資の必要性が当然浮かび上がってくるわけでございます。
 それと同時に、現在の企業の財務内容は、高度経済成長のもとでの一般市中銀行、商業銀行からの借入金に依存しておる度合いが非常に高うございまして、さような意味の財務内容の健全化と申しますか、さような観点から、できるだけ借入金を長期安定的な資金に切りかえる必要があるというふうなことが言われておるわけであります。さような方法といたしまして、一番望ましいのは何と申しましても新株発行、増資による自己資本の充実でございますけれども、今日の経済事情のもとにおいては増資がきわめて困難であることは御案内のとおりでございます。そうなりますと、その自己資本の充実、つまり増資を可能にする基盤を醸成するためにも、長期安定的な資金調達手段としての社債発行がどうしても必要になってくる、そういう関係になるわけでございます。
 その場合に、商法の限度があるために、社債を発行したくても法律上発行できないというふうな事態になりましてははなはだ困るわけでございますので、さような財務内容の改善あるいは設備投資の活発化というような必要性にこたえるために、暫定的に商法の社債の枠の拡大を今日図っておく必要がある、かような趣旨でございます。
#5
○長谷雄委員 いま御説明がありましたそういう経済情勢というのは、昭和五十年十月ごろから、約一年半経過している現在、確かにそのころから経済情勢は変化しつつあるわけでございますが、現在でもなお同じ程度にその必要性がおありであるとお考えでございましょうか。
#6
○香川政府委員 必要性は、これは景気の問題もございますので、短期間的な、短視的な見方をすれば、ある時期には冷えましょうし、ある時期にはまたそれが熱くなってくるということもございましょうけれども、やはり少し息の長い数年先のことも考えての措置をとっておく必要があるわけでございまして、本年度について申しましても、現在は冷えておるというふうに言われておるわけでございますけれども、予算の執行その他のいろいろの政策の実施によりまして、どうしても本年度中にわが国の経済といたしましては設備投資の活発化というふうな方向に向かわなければならぬ要請が強くあるわけでございまして、そういう意味におきまして、それに備えて今日緊急的に社債発行枠を拡大しておく必要がある、かような認識でございます。
#7
○長谷雄委員 ただいまの御説明を承っておりますと、その趣旨は、社債発行限度の引き上げに関する財界からのたくさんの要望書が法務省の民事局に出されていると聞いておりますが、その内容といまの御説明はほぼ一致するものと承ってよろしいでしょうか。
#8
○香川政府委員 そのとおりでございます。
#9
○長谷雄委員 本法案は、社債発行限度暫定措置法案とありますように、暫定法案でありますが、本法案を暫定措置とした理由について、この提案理由説明によりますと、会社法の全面改正の際、「商法第二百九十七条の規定の改正が予想される」とありますが、もし将来会社法の全面改正の際にはこの暫定措置の取り扱いはどのようになるのか、そのお考えを承りたいと思います。
#10
○香川政府委員 現行の商法の二百九十七条のこの枠の規定それ自身は、恐らく法制審議会におきましては廃止するというふうな方向になることはほぼ間違いないだろうと思うのであります。しかしながら、現行の商法二百九十七条の規定の趣旨は、不十分ながらも社債権者の保護を図るためだということに相なっておるわけでございまして、したがって、その枠を撤廃する以上は当然社債権者保護を図らなければならぬ、さような措置を講じなければならぬわけでございますが、これはやはり商法の面において枠を撤廃すると同時に社債権者保護を図るというふうな条文を設けることではとうてい十分でないわけでございまして、やはり社債市場における自主的なと申しますか、そこての社債のランクづけあるいはディスクロージャー制度の採用、そういうふうなものが相まちまして社債権者保護が図られなければならない、さような状況が今日ではとうてい望めないわけでございまして、さような意味から、いま直ちに商法の枠を廃止する改正法律を考えることは行き過ぎだろう、こういうふうなことに相なるわけであります。しかし、さような自主的な社債市場における社債権者保護の措置さようなものが講ぜられることに相なりますれば、その段階におきまして商法における二百九十七条の枠を廃止する法改正が当然考えられる。その際にはもちろんこの暫定措置法は廃止するということに相なろうかと思います。
#11
○長谷雄委員 そうしますと、商法の全面改正の時期をいつごろと見込んでおられましょうか。
#12
○香川政府委員 現在法制審議会におきまして株式会社法の全面的な見直し作業をやっておるわけでございまして、その面から申し上げますと、私ども事務当局の希望としては四、五年先に成案を得たいというふうに考えておるわけでございますけれども、その時点までに、先ほど申し上げましたような社債権者保護を図るための自主的な社債市場における規制と申しますか、ランクづけあるいはディスクロージャー制度の慣熟というふうなことがうまくいきますように希望しておるわけでございますが、ただ、それがなお十分講ぜられないということになりますと、商法の全面改正と申しますか、株式会社法の抜本的な改正の段階におきまして、二百九十七条の規定を全面的に廃止するということを同時にやっていいかどうかということは、その段階での社債市場における状況を見て判断されることだろうというふうに思うわけでございます。
#13
○長谷雄委員 ところで、株式会社はいわゆる物的会社の典型として、株主及び会社債権者保護の目的から、会社財産の確保、充実をすべきであり、そのためには資金調達の方法として、他人資本に頼らず自己資本によるべきであるのは当然であるわけでございます。その意味で、本法案における社債発行限度を引き上げようとすることは、先ほど申し上げましたように、株式会社の基本的なあり方に逆行するのではないか、この点どのようにお考えでございますか。
#14
○香川政府委員 先ほども申し上げましたように、株式会社の資金調達といたしましては、新株発行、増資によるのが最も望ましいわけでございます。しかし、御案内のとおり、現在の経済情勢のもとでは新株発行がきわめて困難である。これは結局配当率というふうな一つの慣行的なものに縛られておると申しますか、極端な言い方をすれば自繩自縛的になっておる、さような点が一つの大きな問題だと思いますけれども、いずれにいたしましても、なかなか景気が上向かない、収益力がついてこないというふうな状況のもとで、配当率を非常に重視する新株発行ということが困難なことは容易に想像できるわけでございます。しかも、現実に現在株式会社におきましては商業銀行からの借入金の比率が非常に高うございまして、さようなことはいい悪いは別としまして、現実にそういうふうな状況になっておるわけでございます。これをやはり徐々に、おっしゃるような意味の自己資本充実的な方向に是正していかなければならぬということになるわけでございますけれども、ただいま申しましたように一挙に新株発行によってこれを是正するというふうなことはとうてい不可能なわけであります。そういたしますと、次善の策といたしまして、借入金を社債に切りかえていくというふうなこと、あるいは長期の設備資金の調達といたしまして、借入金に依存することをやめて、長期安定資金としての社債の調達に切りかえていくという、いわば準自己資本的な社債というものによって財務内容の改善なり資金調達を図っていくという次善の策が今日において一番現実的であり、またその必要性が大きいというふうに考えられるわけでございます。
#15
○長谷雄委員 ただいま新株発行つまり増資が困難であるというお話でございますが、増資が困難であると言われる理由はどういうところにあるとお考えでございますか。
#16
○小粥説明員 お答え申し上げます。
 企業が株式市場で新株を発行いたしまして資金を調達いたします場合に、これが市場の状況あるいは企業の経営内容によりまして困難な場合がございます。基本的には、増資をいたしますと、当然企業は増資部分につきまして配当負担を負うわけでございます。したがいまして、配当負担に十分たえ得るだけの収益力を企業が持っております場合に増資が可能ということでございます。それからもう一つは、株式市場が増資を受け入れるだけの状況を持っていなければできない。つまり、たとえば株式市況が非常に低迷をしておりまして、これ以上新株の供給がふえればさらに株価に対して悪影響があるような場合には、市場としても新株の増加は引き受けにくいという状況がございます。基本的に企業の収益力、それから市場の状況、その両方の要素によりまして、企業が増資をしたくてもできにくい、こんな状況が出てまいるかと思います。
#17
○長谷雄委員 それではお尋ねしますが、公募社債を発行している会社で、過去五年ないし十年くらいの間において増資をしている会社の数はどのくらいございますか。
#18
○小粥説明員 昨年の九月末で調べました公募社債の発行会社は二百六十五社ございます。その会社がいまお尋ねの過去五年間に――これは年度ベースでございますが、過去五年度間に時価発行を行ったものを拾い上げますと、重複分を除きまして百四社という数字でございます。
#19
○長谷雄委員 その増資をしている会社について、増資の際の株式の発行価格は額面発行か、それとも時価発行か。趨勢として時価発行をしているのではないかと思われるわけですが、その点いかがでございますか。
#20
○小粥説明員 過去五年度間、昭和四十七年度から五十一年度までの全国上場会社の増資の状況を調べますと、増資全体に対しまして時価発行の割合というものが平均してかなり高まっているように思われます。多少細かい数字を申し上げますが、たとえば最近の五十一年度では、増資を行いました会社数が二百八十四社でございます。その増資払い込み額が八千二百三十四億円でございますが、そのうち時価発行をしておりますものが二百十四件、払い込み額にいたしまして五千二百六億円でございます。したがいまして、払い込み額を基準に増資中の時価発行比率と申しますか、これを計算してみますと、五十一年度では六三・二%とかなり多くのものが時価発行によっております。これは過去五年度間、年度によって相当に振ればございますけれども、全体的に申し上げますと、最近五年度間は、その前の数年に図べますと、時価発行比率というものはかなり上がっております。
 なお、先ほどお尋ねの社債発行会社で増資を行っているもの、これは時価発行を行っているものという基準で私ども調べたわけでございますが、重複分を除きまして五年度間に百四社、これは時価発行分でございます。
#21
○長谷雄委員 そういうお話を聞いておりますと、民事局長の方から新株発行、増資が困難であるというお話でございますが、新株発行が困難であるというその理由は、不況ももちろんありますが、不況だけではなく、株式発行の際に時価発行しているために株主つまり投資家にとっては余り魅力がないということにあるのではないか、このように考えるわけでございます。
 次に、世間では、増資をすることは社債発行の場合に比べて大変コストが高くなるのだということが言われているわけでございますが、コスト高と言われるその内容、内訳はどのようなものでごさいましょうか。
#22
○小粥説明員 社債と増資の資金コストの問題でございますが、まず社債について申し上げますと、社債の場合がコストには、社債権者に支払います金利のほか、担保の管理費用を含めまして、諸手数料がこれに上積みをされます。そこで、いわゆる発行者コストと言われておりますコストをこの四月現在で申し上げますと、たとえば企業担保つきの最も条件のよい会社の社債でございますと、ただいま申し上げました発行者コストは年に九・五九九%、これが電力債でございますと一般担保でございますから、もう少し下がりまして九・三六%、この程度のコストが社債の発行者コストと言われております。
 一方、増資につきましては、配当負担、それから配当に課せられます法人税その他の税負担を一応コストと観念いたしまして、若干の仮定を置きまして計算をしてみたことがございますが、これによりますと、現在一応安定配当率とされております額面に対する一割配当、これを仮定いたしまして、一割配当に課せられる法人税、地方住民税、さらに事業税、この諸税を計算いたしますと、一割の配当に対しまして年間八分六厘の税負担という計算が一応出てまいります。したがいまして、若干形式的な比較ではございますが、額面に対する比率で申しますと増資のコストは一八・六%という計算が一応出るわけでございます。ただ、これは申し上げますように、あくまで額面割当増資を行います場合を前提にしておりますので、前提いかんによりましてはこの数字がまた変わってまいります。
#23
○長谷雄委員 お話のように額面を基準にした数字であるということでございますが、それを額面ではなくて株価の現在値段、きょうの日本経済新聞を見ますと、たとえば日本航空は額面五百円の会社でございますが、きのうの終わり値が二千三百五十円となっています。先ほどのコストが一八・六%、大体二〇%近いわけでございますが、これを額面ではなくて、この二千三百五十円という時価に換算した場合には四%前後になるように思うわけですね。そうしますと、コストは必ずしも高いということにはならないのではないかと思うのです。
 そこでお尋ねしたいのですが、増資のコスト、特に法人税そのほか税金がございますが、この税金の税率が日本と諸外国と比べた場合にどのような状況でございましょうか。
#24
○小粥説明員 企業が支払います配当に対する配当課税の制度は、各国によってこれは必ずしも同じではございません。ただ、一般に、先ほど申し上げました配当に対する法人税をコストと観念いたしますときに、これは配当税制をめぐる議論で時に出てまいります意見でございますが、社債あるいは借入金利子と同様に企業の配当についてもこれをコストとみなして税制上損金に算入すべきではないか、こういう議論が行われることがございます。ただ私どもが承知しております限りでは、各国の法人税制を見ます場合に、企業が支払います配当に対しましてはこれを損金に算入するという制度はないようでございまして、各国の法人税率はそれぞれ若干違っておりますけれども、一般的に社外に流出いたします配当に対しては、利益処分とみなされて法人税が課せられるのが一般の例と承知しております。ただ、御存じのように、わが国では社内留保分と配当分については税率が違っております。すなわち配当分が基本税率でも若干軽減をされております。この配当軽減課税は西ドイツに同じような例がございます。そのほかの主要国では私どもの承知している限りでは配当軽課税制はないようでございます。以上申し上げましたように、日本及び西ドイツを主体といたしまして配当に対して若干の軽減を講じている税制はございますが、基本的に配当そのものに対する法人課税は先進国の例といたしましては一般的に行われているように思います。
#25
○長谷雄委員 そうしますと、増資のコスト、これが特に税制との絡み合いがあるわけでございますが、こうした税制があること自体が、増資つまり自己資本の調達をおくらせている原因にはなっていないのではないか、このように考えるわけでございます。同じような指摘をされている方、たとえば大蔵省の証券局長にもそういう御見解がございますが、その点と関連しまして、最近の日本及び諸外国における企業の自己資本比率、これがどのような状況であるか、数字で示していただきたいと思います。
#26
○小粥説明員 自己資本比率の各国比較についてのお尋ねでございますが、まずわが国では御案内のように自己資本比率は年々低下をいたしまして、国際的に見ましても非常に低い水準にございます。一番最近の五十年度の数字を法人企業統計によって調べますと、全法人の平均自己資本比率は一三・九%、大変低い姿になっております。
 そこで主要各国の自己資本比率を比較いたしてみますと、これは調査年次が必ずしもそろっておりませんが、たとえばアメリカにつきましては、一九七五年の数字でございまして、製造業を対象にした統計でございますが五三・七%、五〇%をやや超える比率でございます。それから英国につきまして、同じく主要製造業対象の一九七四年の数字でございますが四三・四%、やはり五〇%近い数字でございます。それから西ドイツ、これも一九七四年製造業の数字でございますが、やや下がりまして三〇%という数字でございます。しかしいずれにしましても、諸外国に比べましてわが国の自己資本比率は非常に低い姿となっております。
#27
○長谷雄委員 そうしますと、わが国における昭和の初期ごろから今日までの企業の自己資本比率の推移を示していただきたいと思います。
#28
○小粥説明員 昭和の初めからの連続した数字が必ずしもいま手元にございませんが、一つの基準といたしまして戦前昭和九年から十一年、この平均の数字がございますが、わが国でもこの時期には六一・五%、こういう自己資本比率を維持しておりました。なお戦後につきましても、たとえば昭和三十年には二七・五%という数字でございます。
#29
○長谷雄委員 そうしますと、こうした自己資本比率が低下しているその現在の傾向の中で、今回の法案は、現在の低い自己資本比率をますます助長することになるように思うわけでございますが、公募債発行の会社で戦後倒産した会社がどのくらいあるかお示しいただきたいと思います。
#30
○小粥説明員 戦後公募債につきまして元利払い不能に陥りました事実上会社が倒産状況になりました例は、最近では五十年度の興人の例、あるいはしばらく前四十年でございますか山陽特殊鋼の例が著明でございます。そのほか私どもが聞いておりますところでは、戦後八件の例を承知しております。件数としては大変少ない例かと思いますが、いずれも会社倒産当時公募債発行残高があった例でございます。
#31
○長谷雄委員 問題になったいま御指摘のその会社でございますが、その中でたとえば山陽特殊鋼の例を挙げられましたが、その山陽特殊鋼についてお尋ねしますが、その会社における倒産の際の処理でございますけれども、社債権者の持っていた社債、これがどの程度弁済を受けたのか、これをお示し願いたいと思います。
#32
○小粥説明員 山陽特殊製鋼の例についてのお尋ねでございますが、山陽特殊製鋼が会社更生法の適用を申請いたしましたのは四十年の三月でございます。その際に同社がすでに発行しておりました社債が二億円残高としてあったようでございます。この社債権の処理につきましては、この山陽特殊鋼の社債の募集及び担保の受託会社が、いずれも銀行でございますが三行ございまして、その三行が協議をいたしまして、社債権者から社債を理論価格で――理論価格と申しますのは、実際に社債を買い取ります期日の日割り計算によりまして元利を案分をいたしました理論価格で買い入れを行ったと聞いております。したがいまして、この段階で一般の社債権者はいわば社債権を先ほど申しました三つの受託銀行に譲渡をした形になりまして、その限りでは社債権者は損失を受けておりません。そして、譲渡を受けました三受託銀行は、その後同社につきまして会社更生法によります更生手続が開始されましたことに伴い、その債務の弁済計画によりまして、私どもが聞いておりますところでは、昭和四十三年から五十八年までの十五年間に弁済を受けることになっており、現在弁済計画が履行されつつあると聞いております。
#33
○長谷雄委員 それでは、一般債権者、これは下請業者たる中小企業者が大半であると思いますが、最の場合、その一般債権者が持っている債権の弁償はどの程度受けられているか、これをお示し願いたいと思います。
#34
○香川政府委員 更生計画によりますと、中小企業の更生債権の総額が二億一千万ばかりあったようでございまして、それの弁済計画は、利息だけを免除、つまりカットいたしまして、そのほかに株式の割り当てでいわば一部代物弁済的なことをやりまして、残った債権については、昭和四十三年五月から四十八年の十一月まで、十三回の均等分割により弁済するという計画になっておりまして、このとおり弁済されたというふうに承知いたしております。
#35
○長谷雄委員 いまの例は山陽特殊鋼でございますが、そのほかに興人等もありますが、その他の点についてはまた折を見て伺いたいと思います。
 以上の具体的な事実によりまして、社債発行限度の引き上げ、それによる企業の自己資本比率の低下というものは、企業の経営基盤を弱めることになり、倒産につながることは必至であると思います。倒産の際最も深刻な被害を受けるのはいまのような中小企業者であって、この社債発行限度の引き上げの法案は、そうした意味から大変疑問があるのではないか、このように考えるわけでございます。
 そこで、この法案が考えている社債発行の対象となる会社は事実上はどのような会社になるか、お示し願いたいと思います。
    〔委員長退席、羽田野委員長代理着席〕
#36
○小粥説明員 ただいまの先生のお尋ねは、この社債発行限度拡大法が成立いたしました場合に、実際にどのような会社が社債発行を増加させるのか、こういうふうに承りましたが、これは、実際に法律が成立をいたしました後で、限度超過分について起債希望を出すものがどの分野に多いか、こういうことかと思いますけれども、これは将来の予測の問題でございますが、私どもでただいま承知しておりますのは、現在の商法上の社債発行限度をすでに七〇%以上使用いたしまして上限に近くなっている会社を調べた調査がございますが、その枠をかなり使い切っている会社の多い業種、これを見ますと、たとえば私鉄、これは、現在公募債を発行しております十七社のうち十社が枠の七〇%以上を使っております。同じような意味で、紙パルプが八社中の五社、化学工業が四十二社中の九社、鉄鋼が十二社中の七社、輸送用機器が十九社中八社、このような業界別の分布になっております。したがいまして、仮にこの法案が成立しました後にこのような分野に属します企業からの起債希望が、これはもちろん業況ないし市場の状況にもよりますけれども、比較的多いのではなかろうかと推測をいたしております。
#37
○長谷雄委員 この法案によって公募債が発行できる会社の規模というのは、法律上の制限はないわけですけれども、事実上は起債会等によって制限を受けているような形になっているわけでございますが、どういう状況でございましょうか。
#38
○小粥説明員 ただいまのお尋ねは、現在公募によりまして社債を発行いたします会社につきましては、実際に公募を受け入れます市場におきまして、関係者が自主的な話し合いによりまして、一つのルールと申しますか、受け入れの基準をつくっております。その基準がございますので、実際には公募債を発行できる会社が限定をされる結果になっておりますが、その基準についてのお尋ねかと存じます。
 これを簡単に申し上げますが、ただいま申しました関係者、これは、公募債の引き受けをいたします引受証券会社、それから商法上の募集の受託及び担保附社債信託法によります担保の受託をいたします銀行、引受証券会社と受託銀行の両者が関係者ということになりますが、この両者の話し合いで、俗に格づけ基準と称されておるようでありますが、基準を設けております。これによりますと、この基準は、ちょうど現在適用になっている基準と聞いておりますけれども、公募債として受け入れ得る適債基準といたしますと、企業の純資産額が六十億円以上というのが一つの基準でございます。そのほかに、企業の財務内容につきましてのいわば質的な基準と申すべきものが数項目設けられておりますが、その項目を申し上げますと、純資産倍率、自己資本比率、使用総資本事業利益率、それから、企業が支払います金融費用に対して事業収益がどのくらいあるかを示しますインタレスト・カバレージ・レシオと称する比率、それに配当率、これだけの項目をいわば質的基準として設けまして、それぞれ一定の基準に達することをめどにいたしております。したがいまして、現実にはこのような基準を関係者が設けておりまして、起債希望のあります会社について、基準を適用いたしまして、いわば不特定多数の投資家から資金を調達いたします公募債について、万一社債権者に不測の損害が及ぼされることのないよう、いわば市場の自主ルールという形で運用がされていると聞いております。
#39
○長谷雄委員 そうしますと、企業の純資産額が六十億以上ということでございますが、六十億未満の純資産額の企業の場合は、公募債は発行できない、私募債だけになるということでございますね。
#40
○小粥説明員 ただいま市場のルールによりまして純資産額六十億円以上という基準があると申し上げましたが、これは現在適用されている基準と聞いておりますけれども、実際の適用に当たりましては、二年の経過期間を置くことによりまして従来からの起債会社につきましては純資産額がこれより小さくても考慮されるというように聞いております。したがいまして、私どもが承知しておりますところでは、実際には、現在公募債を発行しております会社で純資産額が最も小さいものは二十億円程度のものからございます。ただ、先生の御指摘のように、それより下の規模の会社につきましては、先ほど申し上げました公募債としては市場が受け入れておりませんので、関係者主体に発行いたします私募債という手段が残されることになります。
#41
○長谷雄委員 そうしますと、資本金一億円以下のいわゆる中小企業についてはどのような施策が講ぜられているのか。
#42
○小粥説明員 資本金一億円未満の会社につきましては、先ほど来の御指摘のように公募債として市場が事実上受け入れておりませんので、社債につきましては私募の形だけということでございますが、私どもの調べましたところ、法人企業統計によりますと、たとえば五十年度末では、資本金一億円未満の会社の社債残高は二百三億円ばかりございます。そういうことで、個々の詳細は私ども把握いたしかねておりますけれども、総額といたしましてはその程度の私募債は出しているようでございます。
#43
○長谷雄委員 いわゆる中小企業投資育成株式会社法による中小企業のある程度の助成があるようでございますが、現在、この法律による投資の実績、対象企業の平均資本額はどのようになっておりましょうか。
#44
○竹内説明員 投資会社の実績につきましては、東京、名古屋、大阪三社ございますが、これを合計いたしまして、五十年度末までに株式投資におきまして八百二十一件、百九十六億円、転換社債が三百二十六件、九十六億円、合計千百四十七件、二百九十三億円でございます。平均資本金規模は、全体の平均はちょっと数字の持ち合わせがございませんが、五十年度の新規分だけについて見ますと、転換社債で四千二百万、株式で四千七百万、これがその当時の資本金規模でございます。
#45
○長谷雄委員 中小企業の会社の数はいまどのぐらいだと掌握しておられますか。
#46
○竹内説明員 正確な数はわかりませんが、総理府の事業所統計で見ますと、全体の事業所数で大体五百万ございまして、そのうち法人形態をとっておるのは九十三万ということで、株式会社にいたしますと大体五十万程度ではないかと推定されます。
#47
○長谷雄委員 そうした数ということでございますが、不況による企業の倒産件数は一向に減少することなく、倒産時における負債額一千万以上の会社は毎月一千件を超えているということが報告されております。私、弁護士事務所を持っておりますが、私の事務所に倒産事件として持ち込まれる企業の中には、倒産時における負債額が、たとえば三十万円の手形を決済できないとか五十万円の借入金を返済できないなどというように、百万円以下のものがざらでございます。
 そこでお伺いしたいのでございますが、全国的に見て、倒産企業について、負債額一千万円未満を含めた倒産企業全体のうちこうした中小企業者の占める割合が何%ぐらいあるか、もし正確な資料がございましたら、なければおよその数字をお示し願いたいと思います。
#48
○竹内説明員 五十一年度の全倒産件数が、これは負債一千万以上でありますが、一万五千六百四十一件でございまして、そのうち中小企業が一万五千五百七十七件、全体の九九・六%という数字を占めてございます。そのほかに、負債一千万以下のものにつきましては、総数は正確には把握できませんが、東京、大阪、広島の倒産件数を見ますと大体六千件ぐらいございますので、この九九・六%の数字が相当まだ中小企業の大きい比率になるのではないかと考えます。
#49
○長谷雄委員 ところが、企業が倒産した場合において、大企業の場合でございますと、先ほどの山陽特殊鋼の例に見るように、会社更生法の適用などによって、また大手の銀行の介入により、さらにまた政治的な配慮によってみごとに再建の方法がとられております。しかるに、中小企業者に対してはほとんど救済手段らしいものが講じられていないというのが現状でございます。実はここが大変大きな問題であると思うわけでございます。これをたとえば東京都下の八王子市の場合について見ますと、八王子市における中小企業の数は、私の調査によりますと、昭和五十年事業所統計調査報告書による中小企業基本法に基づく従業員規模別中小企業を業種別に見ますと、鉱業が四、建設業千五十、製造業二千二百五十八、卸売業、小売業五千五百二十六、金融保険業百二十五、不動産業三百八十三、運輸通信業九十六、電気、ガス、水道、熱供給業が四、サービス業が二千百六十三、合計一万一千六百九、こういう数字がございます。これらの業種のすべてがいま例外なく厳しい状況におかれております。たとえば、いま私が申し上げました製造業二千二百五十八軒について見ますと、その中には織物、精密機械、木工業、皮革製造、紙など、きわめて多様でございます。こうした業界の方々の深刻な悩みを公明党の八王子市の中心者である白井常信君から聞きました。白井常信君からの訴えに基づき、私は去る四月二十日、こうした業界の代表者の方々にお集まりをいただき、同僚の衆議院議員三名にも同席をしてもらい、懇談をし、つぶさに実情を伺いました。生き残れるかどうかの瀬戸際で、差し迫った現実の問題として三十万円から二百万円のお金があれば倒産を免れ得る、そこでそれだけの融資を得たいと銀行などにお百度を踏んでも、金融機関はどこも自分たちの味方をしてくれない、こういう訴えでございます。政府系の金融機関だって幾つもありながら、こうした実情にある中小企業者に対しては現実には門戸を閉ざしているありさまでございます。どこからも融資が得られないというのが現状でございます。私の調査によります長製造業者のうち、織物業だけでも四百六十三軒ございます。その従業員数は二千三百八十人、そしてその家族を含めますと、実に七千人以上の数になります。織物業だけでも七千人を超える方々が、いまこの不況の中で大変苦しんでおられるわけでございます。こうした厳しい状況に置かれている中小企業は、もちろんこの八王子だけではございませんが、全国共通の問題であるだけに、事はきわめて深刻であります。これは解決を要するまさに政治の問題であると思うわけでございます。
 そこでお尋ねをしたいわけでございますが、先ほどの中小企業投資育成株式会社法による対象企業について、業種から外されている業種があるようでございますが、対象の業種を拡大する方向あるいはその他こうした方々に対する金融の方策について、何かお考えはございますか。
#50
○竹内説明員 投資育成会社につきましては、昭和三十八年度に発足いたしまして、現在東京、大阪、名古屋、三社設けられておるわけでございますが、その活動状況につきましては先ほどお答えしたとおりでございます。当時、高度成長時代のあれを受けまして、投資育成会社が活動してきたわけでございますが、現在その経済基盤が安定成長期に移ってきておる、そういうこと、あるいは政府出資が優先償還株式になって、だんだん償還してきておるわけでございますが、間もなくその償還が終わる、こういう時点を踏まえまして、政府としてこの投資育成会社につきまして、今後のあり方についてどう考えていくのか、こういう問題につきまして、現在中小企業政策審議会におきまして、この経済基盤の変化とか政府出資分の変化とかそういう事態を踏まえまして、どうやっていくか、こういうことを検討中でございます。いま先生の御指摘ございました、対象業種の拡大等その他の問題点につきましても、この審議会において十分検討してまいる予定でございまして、私どもといたしましては、その結論をもって対処していきたい、こう考えておる次第でございます。
#51
○長谷雄委員 次に、社債発行限度額制限それ自体を撤廃せよとの意見があるようでございますが、それを受け入れるだけの周辺の諸制度は整備しているとお考えかどうか、その辺はどのようにお考えでございますか。
#52
○香川政府委員 法制審議会の商法部会におきまして、その点もいろいろ議論されたわけでございますが、現在の段階では、いま直ちに商法の枠を撤廃するというのは時期尚早であろう、それだけまだ社債市場の自主的な社債権者保護の措置が十分とられる体制にないというふうな認識でございます。
#53
○長谷雄委員 現在、諸外国で社債の発行限度の制限のないところもございますが、先進国の中にはこうした制限を設けている国もたくさんあるようでございます。さらにまた、発行限度をどうするかという問題につきましても、商法の二百九十七条というのが、いろんな見方があるようでございますが、社債権者の保護にあるというのが本来の趣旨ではなくて、社債権者はそれだけの保護を受けているわけでございますので、社債発行によって一般債権者の担保となるものがそれだけ少なくなるんだ。したがって、担保が少なくなることによって、一般債権者がそれだけ保護される可能性が少なくなってくる。その意味で、この二百九十七条というのは一般債権者保護の規定である、こういう見解もたくさんございます。この点についてどのようにお考えでございますか。
#54
○香川政府委員 商法の社債について考えますれば、御承知のとおり無担保社債の場合には一般の無担保の債権者と同列でございますので、特にその間にいずれを保護するというふうな関係は法律的にはないわけでございます。担保付社債の場合には、無担保の債権者に対して優先するのは当然でございますが、これはしかし、一般債権者と申しましても、借入金等について担保が提供されるということもあるわけでございまして、一概にその二百九十七条の規定が一般債権者の保護にあるというふうな考え方、趣旨は、恐らく商法のこの規定にはないんじゃなかろうかというふうに解しております。
#55
○長谷雄委員 本法案に見られる政府の姿勢というものは、実は昨年の電気事業及びガス事業会社の社債発行限度に関する特例法案の審議の際に付された「長期的には自己資本の充実を図る等一層経営の健全化に努め、」る、こういう附帯決議がございましたが、この附帯決議には沿わないように思われるんですが、どうお考えでございましょうか。
#56
○香川政府委員 自己資本の充実、これはすぐれて経済的な問題にウエートがあると思うのでありますけれども、
    〔羽田野委員長代理退席、委員長着席〕
ただいま法制審議会におきまして株式会社法の全面見直しをやっておる過程におきまして、商法の面から自己資本の充実を少しでも図る措置をやはり考えなければならぬということで、いろいろ議論されておるわけでございます。
 しかし、現実の問題といたしまして、先ほども申し上げましたように、現在借入金の依存度がきわめて高い、自己資本が一四%にも満たないというふうな状況でございまして、この現実を自己資本の充実の方向に持っていくにはどうしたらいいかという問題であるわけでありまして、直ちに新株発行によって自己資本の比率を上げていくというふうなことは、現段階ではとうてい経済事情として望みがたいという現実を踏まえますと、できるだけ自己資本に近い長期安定的な社債というものの発行を活発にいたしまして、できるだけ借入金の依存度を少なくしていくということが、次善の策として今日的な意味で当然とられなければならない措置ではなかろうかというふうに考えるわけでございまして、さような意味から、直接的に自己資本の充実ということには相なりませんけれども、これを基盤にいたしまして、できるだけ借入金を社債に切りかえていくというふうなことを通じまして、新株発行増資が容易になる基盤をつくり上げていきたいというふうなことでございますので、方向としては、決して自己資本の充実と逆行するとかあるいは矛盾するというふうなものではなく、むしろそれを将来充実するための方策として、現在的に十分意味があることだというふうに考えておる次第でございます。
#57
○長谷雄委員 冒頭にも申し上げましたように、株式会社は典型的な物的会社として、その会社財産の確保充実がきわめて重要であり、資金調達の方法においても自己資本によるべきであるというその原則を踏まえて、できるだけこの方向でこれからも進めていただきたい、このことを要望しまして一応質問を終わります。
#58
○上村委員長 次に、鳩山邦夫君。
#59
○鳩山委員 ただいま議題になっております社債発行限度暫定措置法案につきまして、若干の御質問をさせていただきたく思います。
 私たちが大学に入りましたときに、経済学の授業を受けるわけでありますが、当時、いまから約十年前でございますが、経済学の先生がマルクス経済学の先生と近代経済学の先生に分かれているといわれておりました。事実そういう傾向があったと思います。私はマルクス経済学を信奉するものではありません。したがいまして、近代的な経済理論、とりわけケインジャンレボリューション以降の近代経済学に興味を持ってきたつもりであります。ところが、今日のような物価高と不況が同時に起こる、いわゆるスタグフレーションというような状態、これは少なくともケインズは予想しておらなかった。そしてちょうど昨年のいまごろであったかと思いますが、アメリカで有名な経済学者の方が少なくとも最低二人は、おれたちの一生懸命考えてきた近代経済学は通用しなくなったと言って大学を去られ、隠居生活に入られたと聞いております。それだけ今日の経済情勢というものはわかりにくいものであり、私たちが学んだ近代経済学でも、今日の状態を予想することはできませんでしたし、また現に起こっている事態を理論づけることもできないように思えてなりません。この深刻な不況、明るさが見えかけたといってはすぐ中だるみといわれるような状態、経済が滅びてしまえば国は滅び去っていくと思います。何とかしてこの不況から脱出するために、また日本の経済力を増大させるためにいまどんな手を打つべきか真剣に考えなければなりません。
 私は、そうした観点から、この社債発行限度を二倍に引き上げるべきかどうかを慎重に委員の皆様方と考えていきたいと思います。
 そこで、基本的な質問だけ幾つかさせていただきたいと思います。
 社債は、一般市民、国民から会社がお金を借りる仕組みであります。一つの企業が何らかの設備投資のために外部から資金を調達しなければならない、その仕方は大まかに分けるとどんなものがあるか簡単にお教えいただきたいと思います。
#60
○香川政府委員 まず第一が増資新株発行によるものでございます。二番目が社債発行によるもの。三番目が、これは変則的なものだと思いますけれども、一般の商業銀行からの借り入れという、この三つが考えられると思います。
#61
○鳩山委員 そうしますと、これは言葉の問題で私よくわかりませんが、自己金融力というのでしょうか、自立金融というのでしょうか、自分でお金を調達する方法というのは社債だけであると考えてよろしいわけですか。少なくとも銀行からの借り入れという場合には、銀行という一つのものに頼るというような概念が当てはまると思うわけてあります。――それでは多少質問を変えますけれども、仮に増資による場合、これを社債あるいは銀行からの借り入れのような利率で考えることは多少換算がむずかしいとは思いますが、増資による場合、もし仮にこれを金利に換算するとすれば何%ぐらいのものを払わなくちゃならないのか、仮に一割配当なら一割配当と限定しても結構ですから、お教えいただきたいと思います。
#62
○小粥説明員 ただいまの先生のお尋ねは、社債のコストと増資のコストの比較の問題というふうに理解をしたわけでございますが、社債のコストは、大ざっぱに申し上げますと、応募者利回りに諸手数料を加えまして、現在たとえば企業担保つきの最も条件のいい企業の社債で九・五九九%、これがいわゆる社債の発行者コストでございます。一方増資のコスト、これをどう考えるかということでございますが、いま先生お示しのように、増資形態を額面株主割り当てで行ったという仮定を置きまして、安定配当率と考えられる一割配当、これを前提にいたしますと、この配当自体を企業のコストと観念をいたしまして、さらにその配当に法人税、法人住民税及び事業税という諸税が課せられますので、これを一定の仮定を置いて計算いたしますと、一応〇・八六というのが租税負担でございます。したがいまして増資の額面に対しまして配当及び配当に直接課せられます税負担を合計いたしますと一八・六%、この程度が通常増資コストと考えられているわけでございます。
#63
○鳩山委員 そうしますと、長期安定資金を調達する手段としては、一企業にとって社債による方が増資によるよりもはるかに有利であると考えてよろしいわけでございましょうか。
#64
○小粥説明員 ただいまお答え申し上げました社債発行者コストに対してほとんど二倍のコストがかかるという例でございますが、これはお断りいたしましたように、額面割り当て増資を前提にしております。
 ただ、最近の増資の状況を見ますと、従来からございます額面割り当て増資に対しまして、いわゆる時価発行増資のウエートがかなり増加をしております。時価発行増資につきましては、これは御案内のようにプレミアムを企業が取得いたしまして、直ちに資本に組み入れないのが普通でございますから、その場合には配当負担は額面割り当て増資の場合に比べましてかなり小さくなるのが通例でございます。したがいまして、時価発行増資をした直後を考えますと、これはただいま計算例で申し上げました増資コストよりもかなり低くなると思います。
 ただ、あえて付言をいたしますと、時価発行増資の場合にも、これは現在の株式市場の自主ルールというものがございますが、株主に対して一定期間内に企業が取得いたしましたプレミアムを還元してほしい、こういうルールがございまして、企業も市場のルールとしてこれを受け入れているのが現状でございます。ですから、一つのめどで申し上げますと、企業が時価発行で取得したプレミアムは大体五年間で主として無償交付の形で株主に返還をされるというのが市場ルールのめどでございます。そういたしますと、申し上げましたように、時価発行直後は先ほどの計算例よりコストがかなり低いわけでございますが、株主に無償交付という形で還元をしてまいりますと、その部分については当然配当負担がふえてまいりますので、次第にコストは逓増する、こういう形になろうかと思います。
#65
○鳩山委員 現在社債発行を希望しておる企業は主にどんな分野であるか、簡単に羅列で結構ですからお教えいただきたいと思います。
#66
○小粥説明員 昭和五十二年度の事業債、これは公募債でございますが、起債希望の調査がございます。これは公社債引受協会の調べでございますが、この内容を簡単に見てみますと、業種別に起債希望の金額の大きいものを拾いますと、電力会社はきわめて大きな分野でございますが、これは一般の事業債と通常区別しておりますので、電力会社を除きますと、鉄鋼、それから陸運業、それから化学工業、電気機器、輸送用機器、この辺の分野が現在当年度の起債希望として出されております中で金額の多い分野でございます。
#67
○鳩山委員 その公社債引受協会の調べはことしの三月ではないかと思いますが、その資料は私も持っております。それによりますと、確かに鉄鋼あるいは陸運業、電気機器あるいは化学工業あたりが非常に大きいわけでございます。
 そこで、私この資料しかありませんのでお尋ね申し上げたいのですが、たとえば鉄鋼業界は本年度の希望額は千五百七十億円でございます。昨年は千四百九十億円が希望額であったと思いますが、この千四百九十億円のうち実際に発行された額は幾らでございましょうか。
#68
○小粥説明員 鉄鋼業が昨年度、五十一年度実際に起債いたしました額は二百八十億円でございます。
#69
○鳩山委員 それでは同じ質問で、電気機器、そして陸運業についてお尋ね申し上げます。
 電気機器は昨年の希望額は千十五億円、陸運業は八百六十億円であったと思いますが、実際に発行されたのはお幾らでございますか。
#70
○小粥説明員 電気機器は実際の起債額が二百四十五億円、それから陸運業でございますが、四百三十億円でございます。
#71
○鳩山委員 そうしますと、昨年希望は大きかったけれども、実際にはその半分あるいは四分の一ぐらいしか発行できなかったということだと思います。
 ところで、たとえば鉄鋼の千五百七十億、本年度の社債発行希望額でございますが、これはこの暫定措置法案が国会を通過するということを見込んでの数字でございましょうか。
#72
○小粥説明員 ただいま申し上げました五十二年度の起債希望額は、先生も御指摘のように公社債引受協会の調べでございまして、その調査の内容といたしまして、この法案の関連については特に調査をしたことはないようでございます。
 ただ、私どもが承知しておりますのは、たとえばいまの御指摘の鉄鋼でございますが、鉄鋼会社のうち、公募債発行会社は十二社ございますが、十二社のうちで現在の商法上の社債発行限度、これの七〇%以上を使っておりますものが過半の七社ございます。したがいまして、私どもの推測といたしましては、起債希望を出しております鉄鋼会社の中で幾つかのものは、社債発行限度の上限に近くなっておりまして、この法案が成立いたしますことを期待いたしまして希望を出しているものは、これはかなりあるのではないかと考えております。
#73
○鳩山委員 私もいまお答えのように同様な情報を得ておる次第であります。
 それからこの公社債引受協会からの資料は、実はアンケート形式で各業界に質問をしたようでありますので、その回答率が六二%になっております。たとえば鉄鋼ですと、対象会社が十九社であって回答は十七社であります。あるいは電気機器でありますと、対象の企業が五十七社あるのに対して回答数は二十八社でございます。そうしますと、ほかにも社債を発行したいとは思っているけれどもアンケートに答えなかったという会社があるかもしれません。
 そこで、実際にはこの公社債引受協会の資料よりももっと大きな希望額を各業界は持っておると考えてよろしいわけでありましょうか。
#74
○小粥説明員 ただいま御指摘のように、公社債引受協会の希望調査は一つの調査でございまして、必ずしも網羅的なものではございませんし、それから、これも御指摘のように、回答率が必ずしも高くございません。したがいまして、ここに数字としてあらわれたもの以外に、発行希望を有しており、それからこの法案成立によって限度拡大を強く期待している業界、これは私どもが若干聞いておりますところでもいろいろあるかと存じます。
#75
○鳩山委員 ある大手のタイヤメーカーの数字でありますが、資本及び準備金が二百七十五億円、純資産額が一千百億円、したがって、現行の法制では二百七十五億円まで社債を発行できるということであろうと思います。ところが、その大手のタイヤメーカーは現在社債残高が十三億であります。ほとんど発行していないと言ってもよい現状かと思います。こうした業界と、この暫定措置法案が可決しないとのどを締められるような思いだと言っている業界とは、簡単に言えばどのような違いがあると言えばよろしいわけでしょうか。
#76
○小粥説明員 ただいま先生御指摘のある企業の例でございますが、これは私内容を直接に存じ上げませんが、恐らく財務内容の非常に優良な企業ではないかと思われます。最近の企業の内容を見ますと、これは少数でございますが、一部の企業は財務内容が非常によろしくて、金融機関からの借入金を逐次返済をいたしまして、事実上負債がないに等しいような、外部からの借入金がゼロに等しいようないわば超優良企業もあらわれているようでございます。したがいまして、自己資金で設備を含めました所要資金をほとんどすべて賄うことができる超優良企業におきましては、これは銀行借入金はもちろん、安定資金である社債も実際は必要がない、そういう企業は確かにございますでしょう。ただ、これは残念ながらきわめて少数の超優良企業でございますから、一般に社債は、先ほど御指摘の鉄鋼あるいは陸運のような、むしろ株式市場でもそれほど株価が高くつけられない、収益もそれほどに高水準ではない、安定的な収益内容を維持するのが、通常の装置産業に社債需要が一番多いと思います。したがいまして、先生のただいまの御指摘のような恐らく超優良企業の場合は、これは社債による資金調達の道を拡大する必要を現在は感じていない企業が確かにございましょう。しかしそれはごく少数でございまして、先ほど申し上げました鉄鋼以下かなり多くの企業は、この法案の成立による社債というチャンネルによる資金調達手段の拡大を非常に強く要請をしているところが多いと私ども考えております。
#77
○鳩山委員 私、実際には企業に関係したこともございませんし、まだ経済事象には疎い者でありますが、商法限度の中で述べられております資本及び準備金、そして純資産額のこの二つの関係を簡単にお教えいただきたいと思います。
 実は私、ある会社の方から聞いたのですが、純資産額というのは資本金と準備金と剰余金を合わせたもの、この三者の合計である。少なくともうちの会社の中ではそういう計算をしているのだ、剰余金といっても何も余っているお金という意味ではないのだということでございました。
 そこで、資本及び準備金よりも純資産額が多い方があたりまえのケースだと思いますが、資本及び準備金の方が純資産額よりも多い、こういうケースは会社がどういう状態にあると言えばよろしいわけでありましょうか。
#78
○香川政府委員 そのような事例というのはむしろ変則的なものだと思いますけれども、いわゆる資本欠損になっている、こういう状況でございます。
#79
○鳩山委員 そういうことではないかと私も一応解釈をいたしておるわけであります。
 先ほどのあるタイヤメーカーの数字は例外的なのかもしれませんが、この場合純資産額の方が資本プラス準備金のちょうど四倍あるわけであります。普通、社債を発行したいと希望している諸種の業界あるいは企業では、純資産額は資本プラス準備金の大体何倍くらいあるものなのか、大まかな数字でよろしいからお教えいただきたいと思います。
#80
○香川政府委員 大体の数字を申し上げますと、さして差はないわけでございまして、大体資本プラス準備金の二割弱くらいが純資産額というふうなところが平均ではなかろうかと思います。
#81
○鳩山委員 二割弱というのはどういうことですか。
#82
○香川政府委員 二割弱増でございます。
#83
○鳩山委員 そうすると、資本プラス準備金掛ける一・二くらいが純資産額になっているケースが多いということでしょうか。――わかりました。
 それから、この社債発行限度につきましては、諸種の特別法が存在をいたしておるわけでありますが、場合によっては商法限度の何倍という決め方をいたしておりますし、またある法律では資本プラス準備金の何倍というふうな規定のされ方が存在をしておるわけでありますが、これは立法の過程で何か特別な意味があるわけでございましょうか。
#84
○香川政府委員 的確な趣旨は定かではございませんけれども、本来は社債権者保護の見地から考えますと、一般的に申し上げれば、純資産額の何倍というふうな枠の決め方の方がより保護に厚いというふうに考えるわけでございますが、現在商法の特例を設けておりますのは、それぞれ金融とかあるいは電気、ガス等、そういった特殊なと申しますか、それぞれの業法によってさような枠の拡大の特例措置が図られているわけでございます。したがって、それぞれの業法におけるその業種の、いわば特殊と申しますか、さような現況を考えて、社債権者保護に基準としてどれをとった方がより保護に厚いかというふうなことで決められてきたというふうに考えられると思います。
#85
○鳩山委員 従来から転換社債を発行するに当たっては、大蔵大臣への届け出をしなければならなかったと思います。そしてこの暫定措置法案によりますと、今後商法限度を超えて担保付社債を発行する場合にも、大蔵大臣への届け出をしなければならなくなるわけであります。この意味は、証券取引法十三条に関連をいたしております目論見書の交付を義務づけていると解釈してよろしいわけでございましょうか。
#86
○森説明員 お答えいたします。
 先生御指摘のとおり、ディスクロージャー義務が課せられるということになりますと、当然投資家に対する目論見書も交付されるということになるわけでございます。
#87
○鳩山委員 きわめてプリミティブな質問になりますが、目論見書を交付する意味は何でございますか。
#88
○森説明員 お答えいたします。
 ディスクロージャーには二種類あるわけでございますが、一つは届出書ということで一般の投資家に対して開示をするということでございますが、それに対して目論見書は、有価証券を取得する者に対して直接開示をするという意味があるわけでございます。
#89
○鳩山委員 その目論見書の形式については、何らかの指導を行っておるわけですか。
#90
○森説明員 証券取引法上では、一応届出書のうちで軽微なものを除いた分をそのまま目論見書に記載するという規定になっておるわけでございます。
#91
○鳩山委員 私は、実は社債を自分で買ったことがないものですからわからないわけでありますが、仮に私がどこかの会社が発行する社債を買うとすれば、いつ目論見書をもらうことができるのでございましょうか。
#92
○森説明員 届出書が大蔵省に提出されましてから一カ月たちますと効力を生ずるわけでございますが、その効力が生ずるまでは仮目論見書という非常に簡単なものが証券会社の店頭に置かれてございまして、一カ月たちますと正式の目論見書が発行されるわけでございます。
#93
○鳩山委員 すなわちこの目論見書というのは、一般の国民が社債を買うに当たって、この社債を買っても大丈夫かなという判断材料ではないかと思います。そうしますと、目論見書がどこかに置いてあるのかどうかわかりませんが、皆さん方が見て、この会社は大丈夫だろうから社債を買う、そういう意味のために目論見書が存在していると考えていいわけでしょうか。
#94
○森説明員 御指摘のとおり、投資家は、目論見書を見まして企業の内容を判断いたしまして、取得するかどうかを判断するということになっております。
#95
○鳩山委員 そこで私申し上げたいのは、これは新日本製鉄が昭和五十年六月に転換社債を発行した際の目論見書であります。ところが、私のように経済に疎いものがこれを見ましても、何が書いてあるか全くわからないわけであります。それはおぼろげにわかるかもしれませんが、たとえば「第一 募集要項」「第二 会社の概況」「第三事業の概況」「第四 営業の状況」「第五 設備の状況」「第六 経理の状況」「第七 株式事務の概要」、非常にむずかしい書物であろうと思います。たとえば各証券会社が、国債を買った方がいいとか、社債を買った方がいいよ、あるいは財形貯蓄をやりなさいといって発行しているパンフレットのようなものは、素人が見てもわかる懇切丁寧なものであります。それに対してもちろん目論見書というのが、大蔵大臣に届けをするときの内容とほとんど同じ、つまりそういう公式のむずかしい内容を含んでいるとは思いますけれども、こんなものを見て社債を買うかどうか決めさせるというのは、私は国民に対して大変無利なことを押しつけているように思えてならないわけでありますが、いかがお考えでございましょうか。
#96
○森説明員 お答えいたします。
 確かに御指摘のとおり非常に専門的な用語も使ってございますし、それから経理の状況等につきましては正確を期するということでございますので、いわゆるそういう経理の状沢等に明るくない投資家、一般の大衆が見ましても、必ずしも先生御指摘のとおり直ちに理解されるかどうか問題かと思いますが、この経理の状況等につきましては公認会計士が監査証明を付しているというようなこともございまして、そういう点に着目いたしますれば、必ずしも経理内容を直接理解することができない投資家でも、この目論見書が信用するに値するかどうかという判断はつくようになっていると思いますし、先ほど申し上げましたとおり役所に提出されます届出書のうちの軽微なものを除いたものを目論見書ということになっておりますので、やはり役所に出ます書類が中心になっておりますものですから、どうしてもかたいものになるのはやむを得ないかと思っております。
#97
○鳩山委員 新日本製鉄は、昨年の六月に三百億の転換社債を発行したと思いますが、その際この目論見書がどれくらいの量発行されたのか。どれくらいの量というのは、何部という意味ではありません、大体積み上げるとどれくらいのものがここで配られたか、御存じでございましょうか。
#98
○森説明員 それは、恐縮でございますが関知いたしておりません。
#99
○鳩山委員 私、伝聞でありますからよくわかりませんが、三百億の転換社債を発行するに当たって、この目論見書が中トラックに八ぱい分積み上げられていたという話であります。中トラック八ぱい分と言えば、これはかなりの量でありまして、それを一生懸命配った。ところが、もらった方はほとんどわからないから、まあ両面に印刷しておりますので計算用紙やメモ用紙にもならないやということだったのではないかと思います。したがって、皆様方で今後大いに議論を積まれまして、もっと国民にわかる仕組みを、目論見書の形式のままでありましたら国民にわかる目論見書のつくり方というものをお考えいただきたいと思います。
 そこでどうしても議論に出てくるのは、わかりやすい格づけという考え方でございますが、アメリカで行われているような格づけというものは日本ではないと解釈してよろしいのでしょうか。
#100
○小粥説明員 先生お尋ねの格づけでございますが、これはアメリカが最も進んだ格づけ制度を持っていると言われております。ただ、アメリカの格づけ制度につきましては、これは法律と申しますか、実は制度上の問題ではございませんで、いわば市場が自然発生的に生み育てた、そういう性質のものであろうかと思います。御存じかと思いますが、純粋の民間機関でございますし、引受証券、受託銀行というような起債の関係者でもございません。中立の民間機関が格づけという形で投資情報を市場及び投資家に提供している、そういうことでございます。これに対しまして、日本の起債市場におきましては、いわゆる格づけはございます。ただ、この格づけは、いま申し上げました起債関係者である引受証券と受託銀行の両関係者が話し合って、企業の起債当時における信用度の判定、市場性の評価を行うために財務内容について一定の基準を設けまして、これを評価するものでございます。これはもちろん結果的には主として企業の財務内容についての情報に基づいたランクづけでございますから、投資家に対しても、結果としていわゆる格づけ、どの程度銘柄内容が信用できるかという情報にはなると思いますけれども、これはある意味では結果でございます。先生御指摘のように、アメリカの場合初めから投資情報として中立の機関が提供いたします格づけ、制度とあえて申しますと、そのようなものは、日本の場合にはまあ純粋な意味での格づけはないということかと存じます。
#101
○鳩山委員 先ほど長谷雄委員の御質問の中で、やはり格づけについて触れられた部分があったかと思います。そして御答弁の中で、純資産倍率、自己資本比率、使用総資本事業利益率、インタレスト・カバレージ・レシオ、そして配当率、これらが企業の質的な基準になるんだというようなお話がありました。これは銀行あるいは証券会社の内部でつくられておるものと思いますが、それによりますと、AA、A、BB、Bと、そのようなランクづけがされておるようであります。ところが、どうも大きな会社、すなわち純資産の大きな会社はいいランクにいくけれども、たとえば純資産が六十億、七十億程度だとどうしても低いランクになるというふうに私は解釈をいたしておりますので、このような格づけの方法ではとてもアメリカ的なものに引き上げることはできないように思えてなりません。そこで、格づけということにつきましても皆様方でいい案を出していただいて、正当性のある、そしてまた国民によくわかる何らかの方法というものを考えていただきたく思います。
 それから、いわゆる社債権者保護という点について最後に御質問をいたしたいと思いますけれども、担保付社債の場合の担保というのは物的担保であろうと思います。その企業が収益を上げているときはもちろん担保も大きな価値を持つと思いますけれども、社債を発行した会社が著しく経営が悪化して傾いてきた場合には、担保の価値もまた下がって役に立たなくなるのではないか、こういうおそれを私持つわけでありますが、いかがでございましょうか。
#102
○小粥説明員 御指摘のように、現在公募債に付せられております担保は、担保附社債信託法で認められております担保が主体でございまして、これはいずれも物上担保でございます。したがいまして、企業資産の物的価値に着目をした担保が付せられているわけでございます。ただ実際には工場財団等、財団を組成いたしまして、この財団を一括して評価をして担保に供しているわけでございますから、先生御指摘のように、企業の経営内容が仮に悪化をいたしますと、その一たん組成された財団内容の全体的価値が事実として低下をするということはあり得るかと思います。なお、これがさらに企業担保ないし電力会社等について認められております一般担保等になりますと、いわばゴーイングコンサーンそのものの価値、これがむしろ担保の価値ということになろうかと思いますので、経営内容の担保価値への反映がより強くなる、そういうことは確かにございます。
#103
○鳩山委員 日本では社債についてその発行限度を厳しく縛っておりますが、借入金はある意味で言えば無制限ではないかと思います。そうしますと、銀行からの借り入れをする場合にも当然担保がつけられるわけであります。したがって、借入金が無制限でありますと、社債における担保の意味が弱くなってしまうのではないかというおそれを私は感じます。同一物件を社債と借入金両方に担保として使うときには社債の場合を先順位にすることが受諾銀行の義務として判例化しているというふうに聞いておりますけれども、しかしながら、企業担保法による担保につきましては、社債も借入金も特定物件の担保をとらないようであります。いわば総財産について担保するような形になりますので、いま私が申し上げましたような、借入金が無制限であるために社債の担保としての力が弱まってしまう、そういう状態が起こり得ないか、こう思いますが、いかがでございますか。
#104
○小粥説明員 先生の御指摘のとおりでございまして、企業担保あるいは一般担保の場合には、特定の物件に着目をした担保ではございませんので、借入金がふえてまいりますと、いわばそれに見合った形で一般的な担保力が低下をする、これは御指摘のとおりでございます。
#105
○鳩山委員 社債権者保護のほかの方法として、企業にさまざまな財務制限条件、たとえば配当制限とか長期負債制限、そうしたものを設けるということはお考えにならないわけでありましょうか。
#106
○小粥説明員 この問題は、アメリカを含めまして諸外国におきまして、公募債が、担保のついているもの、ついていないもの、両方併存しておりまして、無担保債が場合によっては多いような状況とも言われております。ただ、海外市場で無担保債が出されます場合には、いま先生御指摘のようないわゆる財務制限条項を付しまして、社債権者が面接物上担保では保護はされておりませんでも、もし企業が当該社債発行後に他の負債を負います場合には、その負債に対して前に出されました社債が劣後しないように、あるいは配当その他によりまして不当に企業の内部資金が社外に流出しないように、いろいろな歯どめを設けている、そういう制度がかなり多く使われていると聞いております。
 わが国につきましては、これは前にも申し上げましたが、戦後は公募債につきましては有担原則が貫かれておりまして、事実上すべての公募債は担保つきでございます。したがいまして、先生御指摘のように、ときには企業の経営内容によりまして、せっかく付された担保の価値が必ずしも十分でなくなるような例があるいは出てまいるかとも思いますけれども、一般的には物上担保つきということ、そして受託銀行の十分な管理で、私どもは一般には社債権者は現状では十分担保によって保護されていると考えております。ただ、今後の問題といたしましては、あらゆる企業が担保をつける必要があるのか、たとえば資産内容の優良な企業であれば無担保の社債を認めてもよろしいではないか、こういう議論は確かにございます。ただ、もし無担保社債を発行することになりますと、担保にかわる社債権者保護の手だてが当然要請をされてまいりますが、その場合の手だての有力な一つといたしまして、いま先生御指摘の財務制限条項を付すること、これは十分検討に値すると思います。私どももそういう問題意識は持っておるつもりでございます。
#107
○鳩山委員 世界の中で社債の枠に日本のような形で法的制限を加えている国というのは、先進国の中ではどういう国でございますか。
#108
○香川政府委員 イタリーだけだと聞いております。
#109
○鳩山委員 スペインはいかがでございますか。
#110
○香川政府委員 承知いたしておりません。
#111
○鳩山委員 これで質問を終わりますけれども、先進国の中で日本のような形で社債の枠に法的制限を設けている国はきわめて少数であると聞いております。それはまたそれなりの大きな理由があるかと思います。銀行からの借入金が無制限であるのに対して社債にだけ厳しい枠を設けておきますと、金融資本の各企業に対する支配力というのが徐々に高まっていくようなおそれを私は禁じ得ない次第でございますので、そうした観点から、本法案に対しまして皆様方とよく議論をした上で判断をしてまいりたいと思います。
 以上で質問を終わります。
#112
○上村委員長 次回は、明二十七日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時六分散会
ソース: 国立国会図書館
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