くにさくロゴ
1976/05/18 第80回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第080回国会 法務委員会 第16号
姉妹サイト
 
1976/05/18 第80回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第080回国会 法務委員会 第16号

#1
第080回国会 法務委員会 第16号
昭和五十二年五月十八日(水曜日)
    午前十時二十九分開議
 出席委員
   委員長 上村千一郎君
   理事 濱野 清吾君 理事 保岡 興治君
   理事 山崎武三郎君 理事 稲葉 誠一君
   理事 横山 利秋君
      小坂善太郎君    篠田 弘作君
      二階堂 進君    福永 健司君
      島本 虎三君    西宮  弘君
      飯田 忠雄君    長谷雄幸久君
      安藤  巖君    鳩山 邦夫君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 福田  一君
 出席政府委員
        内閣法制局第一
        部長      茂串  俊君
        法務大臣官房長 藤島  昭君
        法務省人権擁護
        局長      村岡 二郎君
 委員外の出席者
        法務大臣官房参
        事官      藤永 幸治君
        法務省刑事局総
        務課長     吉田 淳一君
        法務省刑事局刑
        事課長     佐藤 道夫君
        法務委員会調査
        室長      家弓 吉己君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月十八日
 辞任         補欠選任
  正森 成二君     安藤  巌君
同日
 辞任         補欠選任
  安藤  巖君     三谷 秀治君
同日
 辞任         補欠選任
  三谷 秀治君     正森 成二君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 法務行政、検察行政及び人権擁護に関する件
     ――――◇―――――
#2
○上村委員長 これより会議を開きます。
 法務行政、検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。飯田忠雄君。
#3
○飯田委員 大臣が大変きょうはお忙しいということでございまするので、大臣にぜひお伺いしたい点から申し上げてまいりたいと思います。
 まず、憲法の三十一条の法定の手続の保障という問題が絶対的な保障だ。国民の基本的人権を守るこれがとりでであるということは皆さんよく了解されておるところと思います。それでこういう問題を中心としまして、人権保障の問題にわたりたいと思うのですが、初めからお伺いするという点がどうも途中のところになるので、大臣におわかりにならないかもしれませんが、御了承願いたいと思うわけです。
 まず、今度のロッキード委員会におきまするところのいろいろの問題、ことに、政府からのいわゆる灰色高官につきましての御報告、これを読ましていただきましたが、この問題につきまして、私ども非常にわからないと思います点があるわけでございます。といいますのは、これこれこれこれの人はロッキード関係からお金を受け取ったと思われる、だが職務権限がない、だから収賄罪は成立しないんだ、こういう御報告になっておるわけです。こういう御報告ですと、犯罪構成要件が成立しないということがはっきりしているのに、しかも、それにつきまして、金を受け取ったという証拠としてはきわめて抽象的に示されておるにすぎない、こういうことになりますと、明確に金を受け取ったという証拠が出されていないと同じだというふうに考えるわけです。そうしますと、これは刑法の名誉棄損罪が成立するのではないかと私は思うわけです。明確にこれこれで金を受け取ったということが証明されておれば、名誉棄損罪は成立しても処罰要件がありませんので問題はございませんが、そういうことがないということになりますと、これは問題だと思います。
 ただ、国会議員の場合は、院内における発言につきまして院外の無答責の規定がございますので、処罰にはならないと思います。しかし、犯罪を犯したことには間違いない、こういうことになりますし、また政府委員の場合はこれは無答責ではございませんので、責任を問われるのではないか。ただ、これも時効が来てしまっておるので、その点でただ訴追できないというだけだ、こういうことであります。
 ですから、金を受け取ったということの明確な立証ということは重大なる問題だと思いますね。つまり犯罪が――現在の政府、ロッキード委員、また政府委員の方々が名誉棄損罪を犯したか犯さぬかということを決定する重要な問題になりますので、こういう点につきましてどのようにお考えでしょうか、大臣のお考えを承りたいと思います。
#4
○福田(一)国務大臣 一つの問題点を指摘されたという印象を私は受けるわけでございますが、この灰色高官名を公表いたしましたときには、まず法務省の立場から言いますというと、これは秘密会でやっていただきたいということを前提として申し述べたわけでありますが、結果においては――結果といいますか、委員会の決定によってそれをそのまま公表することにした、こういう経緯になっておるわけであります。
 その場合に、今度は、いま飯田さんの御質問から言えば、政府委員が灰色高官名を出したときに、その灰色高官名を出しておるのだが、その灰色であるゆえんを立証するはっきりした事実を出しておらないというような場合はどう考えたらいいか、名誉棄損になるのではないか、こういうような御質問と私は受け取ったわけでございますが、金を受け取っておっても時効が完成しておる、金は受け取っておったとしても権限がない、こういたしましても、いずれの場合においても立証がはっきりしていないということであれば名誉棄損になるのではないか、どこでどういうふうにしてどうなったかということ、こういうことは出てくるのだと思います。
 私としては、両院議長が、刑事訴訟法の立法の趣旨を踏まえて十分協力しなさい、こういう裁定があるわけでありまして、したがって、道義的政治的責任を追及するための資料としてどれだけのものが提供できるかということは、ケース・バイ・ケースで考えるよりいたし方がないのじゃないかと思っておるわけであります。ということは、刑事訴訟法は決して公表ということを前提にいたしておりませんから、そういう意味からいって、前回、昨年の十一月四日に行われたあの灰色高官名の公表というのをどう認定するのかと言われますと、われわれとしては一応議長の裁定に従ったということでありますが、しかしその場合に、秘密会でということを申し上げておったのでありまして、秘密会でということを申し上げた気持ちは、特に慎重を期してやっていただきたいという意味を申し上げておったわけです。慎重を期するということは、たとえば委員会の責任においていろいろの質問あるいはまたいろいろの調べをした上で何らかの決定をなさるものというような考え方を持っておったわけでありますが、事実はそのまま公表されてしまった、こういうことになっております。
 したがって、この場合に、名誉棄損の問題が当然起きるではないか、政府委員としてこの場合にどう処置するかということになりますと、名誉棄損は親告罪でございますからして、そういうことがあれば、われわれとしてはそれに対する措置をとらねばならなくなると思いますけれども、このようなことは非常に例外的なことであって、相なるべくは、われわれとしては、この種のはっきりしない、いわゆる罪人にならない人の実情といいますか、罪状といいますか、そういうものは軽々に出すべきでないという考え方は持っておりますが、いま飯田さんの言われた、これは御質問に答えておるかどうか、私もはっきりいたしませんが、まあ感じといたしましてはそういう考え方を持っておるということをまず申し述べておきます。
#5
○飯田委員 実は私の御質問申し上げましたのは、証拠資料をお示しにならないのは少し困るじゃないかということなのです、つまり名誉棄損罪が成立するかどうかの決め手は証拠資料があるかどうかの問題でございますので。ところが、あの証拠資料を、米国側の資料によるだとか、あるいはほかの関係者の供述によるというだけでは、内容が示されておらぬですね。内容を示さないでおるということは証拠がないと同じことなのですから、そこで問題になると私は思います。
 そこで、この灰色高官というのは、御承知のように、これはもう犯罪者でないから灰色と、こう言っているわけですな。そうなると、その人に対して、ロッキード関係からお金をもらった、こういうことは現在非常に不名誉な内容として一般国民からとられております。こういうことを言う以上は、このとおり間違いないんだ、おまえもらったではないかということをはっきり言うていただかないと、その被害に遭った人は大変な迷惑をこうむると私は思います。それからまた、少なくとも、国会のいろいろの決議を左右するような材料を政府がお出しになる場合に、その政府からお出しになる材料があやふやであって、しかもそのあやふやなものに基づいて基本的人権を大変侵害するような事態が生じたということになりますと、これも大変問題になると思います。
 そこで、ここでどうしても明らかにしていただきたいと思いますのは、灰色高官、いわゆる五名の人、そのほか名前が示されないところの灰色高官と称された人、こういう人全般につきまして、本当にそういう金の授受があったのかどうか、この問題について明確な材料を提供していただくのが国民の知る権利にこたえるゆえんではないかと思います。現在では国民は国会に対して非常な疑いを持っております。国会議員に対して全般的に軽べつの目を持って見る。それはどこから生じたかといいますと、今度のような事件が真相が明らかにされていないというところにあるのではないかと思いますので、いわゆる灰色高官と称された方についての灰色であるゆえんを証明する資料の御公表をお願いいたしたいと思いますが、いかがでございますか。
#6
○吉田説明員 御質問が証拠資料に関することで、やや法律技術的な問題でございますので、私の方からお答えさせていただきたいのでありますが、政府といたしましては、先ほど大臣がおっしゃいましたように、議長裁定に基づいてできるだけの御協力をしなければいかぬ、しかしその場合には、刑事訴訟法の立法趣旨にのっとって御協力を申し上げるということになっておるわけでございます。その意味におきまして、御指摘の証拠資料というものについては、現在行われておりますロッキード事件の裁判の問題、あるいは今後同種の事件についての検察運営と申しますか、捜査に対する協力の確保の問題等々、刑事訴訟法の立法趣旨にのっとったいろいろな制約があるのはこれまたやむを得ないところでございます。したがいまして、国政調査にできるだけの御協力をしなければいけない立場にあるのでございますけれども、そういう制約もあることを御理解いただきたいと思うのでございます。そういう意味から、御指摘のような証拠資料を国会にそのまま提出するということは現段階ではできがたいと私どもとしては考えておるわけでございます。
#7
○飯田委員 私が申し上げましたのは、捜査書類そのものを全部発表してくれということではないのです。現在のいわゆる灰色高官として名指しをされた人――田中さんは公判中ですから除きましょう。少なくとも公判にかかってない人につきましては、この場合の証拠というのは、証拠資料の中からその人に関する部分だけを抜き出したものなんです。ほかの人に関するものは一切発表していただく必要はない。たとえば、名前が載っておるいろいろの人がございますね。あの人たちについての部分だけを抜き出して、このとおりじゃないかということをひとつ明らかにしていただかないと、これは結局、ロッキード委員会とか政府委員とか法務大臣が名誉棄損罪を犯したことになります。ただ処罰されないだけです。処罰されなくても犯罪は成立しているのですからそうなりますと、犯罪が成立して処罰されない者をもし灰色高官と名づけますならば、それが灰色高官になるじゃありませんか。そういう点で、灰色高官というものを明確にするためにも、その人たちに関する部分だけを抜き出していただくことは私は可能だと思いますが、いかがですか。
#8
○吉田説明員 起訴している人との関係とそうでない人とを分けて出せることができるんじゃないかというお話でございますけれども、中間報告等で政府が申し上げておりますように、ロッキード事件の捜査の過程で、ロッキード社から入った資金の流れを追うた捜査がずっと行われたわけでございます。その過程でいろいろな事実が発覚した。そのことを、国政調査に御協力するという意味で御報告申し上げたわけでありまして、その内容は非常に密接不可分でございます。それを分けてやるというのは、その証拠の資料の内容等を保管しております検察当局としては、とてもできがたいことであるということでございます。
 なお、この際、一言お断わりしておきたいのでございますけれども、先ほど大臣がおっしゃっておりますように、法務省なり政府といたしましては、いわゆる金銭の授受があったと認められた方々の氏名を、政府の立場あるいは法務省の立場として公表したことは一回もございません。あくまでも、先ほどの御指摘がございましたように、秘密会をお願いして、秘密会に国政調査にできるだけ御協力する意味での資料を提出したにすぎないのでございます。国会で公表するかどうかということを御判断なさって公表されたということでございまして、決して政府なり法務省当局の者が氏名等を公表したということではない。ぜひその点を御理解いただきたいと思います。
#9
○飯田委員 これは証拠が示せないということはないと思いますが、ロッキード委員会並びに委員長が御発表になったということは、別のこととしましていまここで論じでおるのです。ロッキード委員会が灰色高官の公表をされた。もしそれを証拠がなくてやったということであればロッキード委員会は名誉棄損罪になりますが、その場合に少なくとも政府委員の方でも共犯が成り立ちます。これは、たとえ政府委員の方で公表は意図していなかったとしても、共犯が成り立つことになります。ですから、この問題につきまして、処罰されるされぬは別の問題ですよ、名誉棄損罪が成り立つ、そういうことでは非常に不名誉ではないか。国会が名誉棄損罪になる、政府委員が名誉棄損罪になる、これは非常に不名誉なことなんです。この不名誉なことは、この際明確にして、名誉回復していただかないことには、ますます政治不信が起こると私は考えるわけです。
 それで、金銭の授受があったということを証明していただくわけですが、これができないということはないと私申し上げますのは、灰色高官というお方の捜査は恐らくなされたと思いますが、その捜査資料は、別にいま公判廷にかかっておる被告人の方の問題ではないのですから、別個の問題ですから、私は区別して出し得ると思うわけです。また、灰色高官の方の問題について、もしいまの公判中の被告人の方の証人がいろいろ証言しておるとしますと、その証言内容につきましても、灰色高官の部分だけを切り出すということは可能でございまして、この場合に、決していまの公判を妨害するとかいうことにはならないと私は考えるわけですね。捜査書類の中からその部分だけを引き出して、のけていただけばいいのですから、そういう意味におきましても、国会の名誉、政府委員の名誉、法務大臣の名誉を回復するためにも、どうしても金銭の授受があったという証拠を出していただくことが絶対条件じゃないか、こう思うのです。それで、もう一度その点についてお伺いいたします。
#10
○佐藤説明員 お答えいたします。
 ただいま刑事局の総務課長の方からお答えいたしましたとおり、この関係の証拠と申しますのは、すべて他の関係の証拠と密接不可分ということで、技術的に切り離すことがまず困難であるということと、それから、一般論でございますけれども、およそ不起訴にした事件につきまして、検察庁におきましては、関係人の名誉あるいはまた他事件の検察官に対する国民の協力度を確保するという観点からも、原則として公表しないというたてまえをとっておりますので、ひとつそういう角度で御理解いただければ大変ありがたい、かように考えるわけでございます。
#11
○飯田委員 最初に申し上げましたように、憲法三十一条の法定手続の保障は絶対的な保障でございます。これは今日の国民の基本的人権を守っていこうとする最後のとりでなんです。これを崩されたんでは、もう自由も民主主義もないことになると私は考えます。もう明らかにこれは独裁国家に突入することになります。どうしてもこの三十一条の法定手続の保障という問題は守っていただかなければならぬと思うわけですが、この点についてどうお考えでございましょうか、お尋ねいたします。大臣、どうですか。
#12
○福田(一)国務大臣 憲法三十一条の条章は、いま飯田さんがおっしゃったとおり、守らなければならないものである、不動の原則であると思っております。
#13
○飯田委員 そうしますと、政府の方でロッキード委員会からの要請に基づかれまして出されました報告書でございますが、報告書をお出しになるときにどういう法手続によってお出しになったんでしょうか。また、国会の方がそういうものを要請するに当たりまして、もし人権侵害にわたるような問題である場合に、どういう法手続に基づいてこの要請をしたかということをお調べになったかどうか、この点についてお尋ねいたします。
    〔委員長退席、保岡委員長代理着席〕
#14
○吉田説明員 ただいま御指摘の点につきましては、先ほど申しましたように、議長裁定に基づきまして、刑事訴訟法の立法の趣旨にのっとってでき得る最善の御協力をするという立場で、政府当局としては十分検討して、その線に沿って行ったわけでございます。したがいまして、先ほど申しましたように、ロッキード事件の政治的道義的責任に関する国会の国政調査に対しまして、私どもとしては、刑事訴訟法の立法趣旨にのっとりまして、その法律の許す範囲内において、捜査をしたことについて検察当局から報告を得たその確信に基づいて御報告をしたということでございます。したがいまして、私どもとしては、あとは国会の問題でございまして、国会御当局がそういう趣旨をも勘案されて十分に慎重なお取り扱いをなさり、そして御検討なさる。あとは国会御当局の御判断の問題でございますので、私どもとしてとやかく言うべき立場にはないというふうに考えております。
#15
○飯田委員 どうも私は御答弁が納得いかぬのです。私が質問申し上げましたのは、どういう法手続に基づいて問題を処理されたかということをお尋ねしているのです。法手続がないじゃありませんか。何か法律がありますか。
#16
○佐藤説明員 ただいまお尋ねの問題につきましては、国会の国政調査権ということで御要求がございまして、それに関する関係でお答え申し上げた、こういうふうに私どもは理解しております。
#17
○飯田委員 憲法には確かに国政調査権の規定がございますが、しかし、あれは手続規定じゃない。あのもとで、たとえば刑法の場合なら刑法というものがあり、刑事訴訟法というものがあります。しかし、この国政調査権につきましては何らその手続法が決めてありません。そうなりますと、三十一条に触れないことは自由にできます。三十一条に触れることはできぬはずなんです。今回の問題は明らかに人権侵害の問題を含むのですから、あれが本当に犯人だということであれば人権侵害性はなくなるでしょうけれども、犯人でない、犯罪は成立しないという報告になっておるのです。犯罪は成立しないという報告になっておって、しかも金をもらったということを言われたのでは、その言われた人は立つ瀬がないと私は思います。こういう問題については、言われた方の名誉のためにも、また逆に言いますならば、そういう報告をされた政府側の名誉のためにも、この証拠の問題、金の授受があったという問題はどうしても明確にしていただきませんと困ります。これは憲法の三十一条に触れる問題ですから、どの問題よりも強い要請だと考えます。どうですか。お願いします。
#18
○佐藤説明員 国政調査に関します法的手続ということに相なりますれば、議院証言法という法律がございまして、関係人の名誉等を侵害するおそれがある場合には、政府は資料の提供等につきまして御要請があってもこれを拒否できる。場合によりましては内閣声明という形で処理せざるを得ない場合も考えられますが、いずれにいたしましても、その法的な根拠というものは、憲法の国政調査権とあるいはまた議院証言法等がその根拠になるのであろう、こういうふうに考えております。
#19
○飯田委員 それではお尋ねしますが、政府の報告は議院証言法に基づく証言でございますか、どうですか。
#20
○吉田説明員 本来ロッキード事件は刑事課長が担当でございますので、刑事課長がお答えすべきことかもしれませんが、私、前刑事課長としてずっと国会の御答弁等に関与していたものでございますので、そういう立場で申し上げたいと思います。
 憲法上の国政調査権に基づきまして、政府に対しましてロッキード事件に関する報告をせよ、こういう御要求があったわけでございます。そこで政府といたしましては、いわゆる灰色筒官というのは私どもが決めるべき立場にはない、政治的道義的責任があるという者の概念が私どもとしてはこうこうだと言うべき立場にはない。そこで、国会においてまずその定義を決めていただきたいということをお願いしたわけでございます。で、過般、衆議院ロッキード委員会におきまして、その定義と申しますか、こういう者をいわゆる政治的道義的責任がある者と認めるという委員長の御提案がありまして、それについて委員会が御了解をされて、したがって、そのただいま萌した政治的道義的責任があると認められる者についての資料を提出せよという委員長からの御要求があったわけでございます。これに基づきまして、そういう具体的な、これも手続だと思いますが、その手続に基づきまして政府として必要な資料を提供したということでございます。したがいまして、先ほど刑事課長が議院証言法等を引用しましたけれども、もちろんそういうことも国政調査権と政府側が資料を提供するあるいは御証言するという場合の一つの根拠規定でございますけれども、さらに、国会法百四条に基づきまして国会が国政調査に基づいていろいろ政府側に報告を求める、そういう規定の根拠もあるわけでございます。そういう規定に基づきましてただいまのような手続と相なった、こういうことでございます。
#21
○飯田委員 どうもちぐはぐな御答弁をなさるので困るわけですが、私がお尋ねしましたのは、法手続の保障の問題に関連しまして、どういう手続によって政府は御報告をなされたか、こうお聞きした。ところが、それに対して議院証言法というものがあるとおっしゃるから、それによったとはおっしゃらないが、そういう法律があるとおっしゃるから、それならば議院証言法によるところの証言であるのか、こうお聞きしましたところが、いまのような御返事なんです。これは、私の質問に対して正確にお答えをなさろうとしない態度だと思います。こういうことでは困るわけですが、私がいまここで御質問申し上げているのは、そういう弁解ではないのです。現在現実に政府は報告書を出されておる。その出されておる報告書を見ますと、一方的に、金を受け取ったということをおっしゃるだけで、それについての証拠を提出しておられない。だから、それでは名誉棄損罪になりますので、証拠を提出していただきたい、こう申し上げているわけです。それに対しまして、証拠提出はできないという御理由が、捜査中のまた公判中の事件のものだからできないというお話ですが、私はそういう答弁は通らないと思うのです。私も捜査書類は何回もつくった経験を持つ者です。また被疑者の取り調べもやった経験を持つ者です。そういういいかげんな御答弁では承服できません。これは明らかにその部分だけ切り離して出し得る性質のものであることは、私はよく知っていますし、恐らく皆さんも御存じだと思う。ただここで何とかしてうまく言いくるめようということでお逃げになっているとしか私には思われない。そういう点につきまして、どうか誠意ある御答弁をお願いいたしたいと思います。
    〔保岡委員長代理退席、委員長着席〕
#22
○吉田説明員 決して言い逃れとかそういうことで申し上げているのではございません。先ほど申しているように、ロッキード事件の捜査の過程で資金の流れを鋭意追求して、捜査の過程で確認できたもので、かつ刑事訴訟法の立法趣旨にのっとってここまで御報告ができるもの、そういうものを御報告したのでございまして、その中で起訴をされている者とそうでない者とは区別がされるはずだ、こうおっしゃるのでございますけれども、実際にそうでないのでございます。事実関係、一つの不可分な流れとして流れている点がございまして、それは一々申し上げれば切りがないのでございますけれども、実際にそうでございますので、そういうことは技術的にも不可能だということをお願いしているわけでございまして、ぜひ御理解いただきたいと思います。
#23
○飯田委員 そういうことだと強いておっしゃれば、水かけ論になりますから、この議論はやめますが、ここで問題になりますのは、憲法三十一条に違反するという問題、これは非常に大きな問題だ。ほかのあらゆることは憲法三十一条に沿うようにやっていただかなければならぬ問題です。捜査中の事件だから、公判中の事件だから証拠資料が出せないとおっしゃる。そのおっしゃることは自由かもしれませんが、現におやりになっていることが憲法三十一条違反になる。そうでありますならば、正確にしていただかないと困るわけです。つまり、その御報告はどういう手続に基づいておやりになったのかということを私はお尋ねしているわけですから、それに対するお答えは、先ほどは議院証言法だとおっしゃる。これは議院証言法じゃないでしょう。また刑事訴訟法の四十七条のただし書きでもないでしょう。そういうものは手続にならないのです。そういう点で、誠意ある御答弁をいただかなければ、皆さん方の御報告によってもし冤罪をこうむる人がありとすると、これは大変なことだと思います。また、現にロッキード委員会あるいは大臣も犯罪行為者になってしまうじゃありませんか。犯罪行為者じゃないというためには、そうでないという証拠を出していただかなければ困ります。この問題は基本的人権に関する問題ですので、明確にひとつしていただきたいと思います。
#24
○吉田説明員 御指摘のように、非常に重要な問題であることを私どもとしても十分認識して理解しているつもりでございます。
 ただ、誤解をされていないと思うのでございますが、政府がいわゆる委員会の公表の場で御報告いたしましたのは、中間報告あるいは第二次の中間報告と言われている御報告の二回でございます。その第一回の中間報告の点が問題になっているわけでございますが、そこでは、具体的な人物の氏名等はもとより出しておりません。あくまでもそういうものは公表すべきではないという私どもの立場でございます。検察で捜査したものを、そのような氏名を特定して公表するというようなことは絶対やってはならないというのが私どもの立場であるということをぜひ御理解いただきたいと思います。
 それから、先ほど、国政調査に御協力したのは一体いかなる規定の手続かと申されましたが、国会法百四条の規定に明文の規定がございまして、その明文の規定に基づいて御報告申し上げたということでございます。
#25
○飯田委員 ロッキード問題に関する調査特別委員会の会議録第九号というのがございます。これは昭和五十一年の十一月四日の第七十八回国会の会議録でございますが、これを見ますと、これは政府から御報告になったものを委員長が読み上げておられるのです。その読み上げておられる内容は、時間がありませんから一々ここで読みませんけれども、具体的な人名を挙げて、その具体的な人名について政府からの御報告を述べられております。そして、それに対しまして十分間ずつ、いわゆる名指しをされた人の答弁をされる機会を設けておられます。これによりましても、名前を指摘して御報告なさったということは明らかなんです。
 この内容を見てみますと、どの報告書も「ロッキード事件の捜査の経過において得られた資料、すなわち、全日空関係者及び丸紅関係者の供述、米国における嘱託証人尋問の結果等によれば、」こう書いてあるのです。そういうことだけを一つの証拠として、だれそれがロッキード社から流入したお金の一部を「受領したと認められるが、」と書いてある。認められると言う以上は、認める根拠がなければならぬはずなんですが、その根拠が明白じゃないのです。たとえば、「米国における嘱託証人尋問の結果」、こう書いてありまするが、米国における嘱託証人尋問といっても、それが真実であるという証明は一つもないでしょう。また、「全日空関係者及び丸紅関係者の供述、」とありますが、これだって真実だという証拠は一つもない。うそかもしれません。すべて被疑者、被告人というものはうそを言うというのが多い事例でございます。従来から多いのです。私は全部そうであるとは言いませんけれども、そういうことが多い。そういうまことに不確実なものをもとにして、お金をもらったと認められる、こう決めつけておられるわけです。そこが私は問題だと思います。
 しかも、これについては、たとえばここに書いてあるのは元内閣官房長官二階堂進議員のことでありますが、この方については、「右金員は内閣官房長官としての職務に関する対価であることが認定できないために、収賄罪の成立は認められない。」とはっきり書いてありますね。収賄罪の成立が認められない、そういう人について、明確に証拠も示さないで、お金を受領したと認められる、こう言うのは、法手続、いわゆる憲法の三十一条に違反する報告じゃありませんか。そこを私はお聞きしているわけです。どういう明確な証拠に基づいておやりになったのか、こうお聞きしているのですから、その点についての御答弁をお願いいたします。
#26
○吉田説明員 お尋ねの中にございますように、検察当局の捜査というものは公の機関の捜査でございますが、もとよりそれで事実を確定するというものではございません。それは起訴という手続があった場合に、裁判が行われて裁判で認定して、公開の法廷で認定ができて、そのときに初めて確定力を生ずるというものでございます。したがいまして、そういう点では御指摘のとおりでございます。だからこそ、私どもといたしましては、検察当局の捜査の過程でいろいろ出ている認定あるいは資料、そういうものをそのまま国会へ御提出するというのは適当でないという立場で終始きたわけでございます。で、先ほど私が申しましたのは、中間報告という公の立場で申し上げたのは、そういう意味におきましても、氏名を申し上げているわけでは決してございません。
 ただいまの御指摘の委員会のことでございますけれども、その前に、先ほど言いましたように、いわゆる政治的道義的責任についての定義を委員会でお決めになりまして、これに該当すると思われる資料を提出せよという御命じがございました。で、それに基づきまして、刑事訴訟法の立法の趣旨を踏んまえて必要な御協力を申し上げたということでございます。私どもがいかなる資料を提出したかということは、私どもとして申し上げるわけにいきません。私どもは従来からそういう立場で参ってきておるわけでございます。
 そこで、そういうことでございますが、やはり政府側といたしましては、国会のロッキード事件の国政調査にでき得る限りの御協力はする、すべき立場にある、また私どもはそういう法的立場にあるわけでございます。そういう意味におきまして、その国政調査、刑事訴訟法の立法趣旨、そういうものの一つの接点として、私どもとしては法の認める範囲での御協力を申し上げたというふうに確信を持っておるわけでございます。
#27
○飯田委員 大分感情的になってきましたので、そこでちょっとほぐすために別の方面から少しお聞きいたしますが、この五人のお方の名前は出ましたね。ところが、ほかの部面についてはお名前をお出しにならない。たとえば児玉ルートだとかいろいろありましょう。そういう方面についてはちっともお名前をお出しにならない。そしてこのことについてだけ名前をお出しになった。これは何か理由がございますか。ほかのところでも国会議員何名といって書いてありますね。そういう発表をなさったことがありますね。ところが、それについてはお名前は出されないで、そしてこの五人についてだけ名前を特に発表された。しかも、証拠は実はあやふやな証拠であって、確実な証拠ではない。これは何か特別の理由がございましたか。
#28
○吉田説明員 先ほど来申し上げておりますように、いわゆる政治的道義的責任に関する国政調査を国会がおやりになって、その政治的道義的責任とは何かということを国会において決めていただきませんと、私どもとしては協力のしようがないという立場にあったわけでございます。
 ただいまの御指摘の点は、先ほど申しましたように、委員会でその定義をお決めになって、それに関する資料を提供せよという御命じがあったわけでございます。その他のものについては、定義をお決めになるという国会の意思決定はなされておらないわけでございます。したがいまして、私ども政府当局としてはそういうものを提出すべき立場にはないということでございまして、それだけのことでございます。
 なお、児玉ルートにつきましては、その後再三国会でも御報告をいたしておりますように、捜査した過程で国会議員に金銭の授受があったという事実の報告は聞いていないということは、再三お答えしているとおりでございます。
 なお、検察当局の捜査が確定力を持っていないということは、私、先ほど申し上げたとおりでございますが、しかし、検察当局として、捜査したものについて十分慎重に判断をして、その捜査の結果、確信を持って事実を認定する。で、起訴したものについては万全の公訴維持を図るという立場にあるのでございまして、いわゆる裁判と同じような確定力を持たないということと、捜査の内容が信頼できるかどうかということとは別問題であるというふうに考えます。
#29
○飯田委員 この五人の方についてお名前を発表になった、この場合は、委員会の方でこれこれの条件のものをということがあったからと、こういう御答弁でございました。ほかの、たとえば全日空関係などにつきましては、そういうふうに一々指定がなかったから発表しない、こういう意味でございますか。
#30
○吉田説明員 結論的にはそういうことになるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、いわゆる政治的道義的責任というものは国会で御調査なさる。法務、検察当局としては刑事責任の存否を調査、追及する、こういう立場にあるわけでございまして、政治的道義的責任がある主のというのは、一体どういうものについてあるのかという点は、検察当局が判断すべき事項ではございません。それは、まさしくその点について御調査なさっている国会でお決めいただかなければ事が始まらないわけでございます。したがいまして、政治的道義的責任があるものという御定義について御決定があれば、その上で刑事訴訟法の立法の趣旨にのっとって最善の御協力をするということを再三国会でも明らかにし、その上でただいまのような結果になっているということでございまして、たまたまそういう話があるかどうかで変わったということよりも、それは国会の御意思でお決めになって、それに従って政府としては行動をとっているというふうに私どもは考えております。
#31
○飯田委員 この灰色高官のお名前を公表されたことにつきましては、これについては私は悪いと申し上げているのじゃありませんよ。正式な法手続に基づいておやりになったなら構わない。しかし、法律の手続に基づいておられないじゃないかということ、先ほど来お述べになっている点は、これは手続には間違いないけれども、法律に書いてある手続じゃございません。法律には、おっしゃったようなことはどこにも書いてないと私は思いますが、書いてあればその条文をお読み願いたいと思います。が、私は、そういう意味においては手続によっていない、国会で、衆議院、参議院両方ともが議決した法律にはよっていないというふうに私は考えるわけです。
 それはそうとしまして、先ほどの問題に返りますが、いろいろの証拠によって、もらったと、こう検察庁では認定し、政府の方でそれを正しいと思った、こう言っておられるけれども、国民の側から見ますと、さっぱりわからぬわけです。皆さん方の主観的な判断ではわかっているが、客観的な証拠は一つもございません。全日空関係者、丸紅等の供述だとおっしゃるなら、その供述の中に、たとえば先ほど読み上げたから、失礼に当たりますけれども名前を読み上げましたので、ついでに二階堂さんの名前を使わしてもらうと、この人が金をもらった、そういう供述が、だれからいつどこでそういう金を二階常さんがもらったという供述がなされておるかという問題なんです。二階堂さんが金をもらったという供述が、ある人の供述の中にあったとしますと、その部分だけについておっしゃるのは、一向ほかの人に迷惑がかからぬのじゃないかと思います。たとえば、丸紅株式会社取締役伊藤宏から、ロッキード社から流入したいわゆるこれこれの金をもらった、こう書いてあるのです。しからば伊藤宏という人が渡したというそういう証拠、それは恐らく供述だと思いますが、その供述がある場合に、どういう供述をしておるか、そのことを報告なさっても、一向ほかの捜査に影響しないし裁判にも影響しないと私には思われるわけです。にもかかわらず、そういうことさえもおやりにならないということになりますと、何かほかの意図があるのではないかという疑いを持たざるを得ないわけです。この点はいかがでしょうか。
#32
○吉田説明員 再三の御指摘でございますけれども、私どもといたしましては、刑事訴訟法の立法趣旨の枠内で御協力するという立場でございます。個々の証拠の内容がどういう内容で認定をしたのかということにつきましては、先ほど申しましたように、現在行われているロッキード事件の裁判及び将来の検察運営等々に悪影響を及ぼしますので、そのことは刑事訴訟法四十七条の規定の趣旨からも十分うかがえるところでございます。したがいまして、国会法百四条に基づいて御報告をし御協力をすべき場合にも、そういう刑事訴訟法の枠の中で、その限度で御協力をする。それ以上のことを私どもがするということは、今後この種の刑事事件の捜査に関連いたしましても非常に、悪影響というのですか、禍根を残すというふうに考えておりますので、その点は、これ以上その個々の証拠の内容はどうだったかということを申し上げるわけにはいかない立場にいるということを、ぜひ御理解いただきたいと思います。
#33
○飯田委員 ただいま将来に禍根を残すとおっしゃいましたが、私はどうも禍根を残すというそのお言葉はわからないのです。どういう禍根を残すことになるでしょうか。これはむしろ善根を残すことになると私は思うのですよ。憲法三十一条を厳重に守って捜査が行われた、そのことを示すことは、ちっとも禍根を残すことにはならないと私は考えます。特にいまおっしゃっていることが――捜査資料をそのまま見せろということを私は申し上げているのじゃないのですよ。捜査資料に書いてある内容について、たとえば加藤議員だとかあるいは二階堂議員だとか、こういう人の部分についてそれを示されるのが正しいのではないか、それによって皆さん方が名誉棄損罪を犯したという疑いが晴れるのではないか、こう申し上げているのです。どうぞお願いします。
#34
○吉田説明員 再三の御指摘でございますけれども、私どもといたしましては、資料そのものばかりじゃなく、資料の内容の要旨等を国会に御報告すべき立場に現在ないということでございます。それで、刑事事件の捜査の過程でいろいろ明らかになったその要旨等を国会に御報告するということは、もちろん国政調査に御協力しなければならないことでございますけれども、やはり刑事訴訟法四十七条にございますように、公の法廷へ資料として提出し、あるいは証人として尋問をするということになればこれは別でございますけれども、それ以前についてはこれは非公開にするというのが基本的な原則でございます。刑事訴訟法四十七条ただし書きはもちろんそれについての一定の除外事由を認めておるわけでございますけれども、その場合に、それの判断は書類を保管している検察官が行うべき立場にある、それは通説でございます。そこは、「相当と認められる場合」に行う、その「相当と認められる」という判断は、やはりその書類を保管している検察当局の判断に属するものである。私どもとしては、御指摘の御要望に沿うことは、その相当性の範囲を逸脱しているやり方ということになると思います。そういう意味におきましても、法律問題としても解釈問題としても、私どもとしては十分妥当性を主張できるものであると考えております。
#35
○飯田委員 この問題はいつまでたっても議論が果てませんので、それでは別の問題に切りかえましょう。
 憲法の三十二条を御存じですか。憲法の三十二条、「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」とございますね。この権利は法律をもっても奪うことができないものでございましょう。憲法で「奪はれない。」と書いてある、絶対的な保障であります。たとえ時効が完成しておっても奪われない。私はこう理解いたしますが、いかがでしょう。
#36
○藤永説明員 憲法、刑事訴訟法の技術的な解釈の問題でありますので、私からお答えさせていただきます。
 飯田委員御指摘の憲法三十二条は、国民に裁判を受ける権利を保障した規定ではございますが、これは、刑事事件におきましては裁判以外の手続で刑罰を科せられないということを保障したものでございまして、時効が完成しているにもかかわらず、実際には無罪であるということを主張して、無罪の裁判を求める権利まで保障したものであるという考え方は現在ございません。そういう趣旨からも、三十二条は確かに刑事訴訟法よりも優越する規定ではございますけれども、無罪の場合あるいは時効が完成しておるにもかかわらず、なお自分に対して訴追を求める権利、これまで保障したものではないと考えております。
#37
○飯田委員 ただいまのお話は、憲法解釈をずいぶんゆがめておやりになったと私は思うのです。憲法は、刑事訴訟法によって左右されるものではございません。またいかなる法律によっても左右されるものではないので、憲法がもとなのでございます。そうしますと、憲法に書いてある文言は文字どおり読まなければなりませんし、文字どおり国民に対して保障した基本的人権であるわけです。この基本的人権を守る義務はすべての人にあると思いますが、特に憲法を擁護する義務を持つ政府のお方とか国会議員は、基本的人権についてはまことに厳粛な気持ちで守らねばならぬと私は思います。憲法三十二条の裁判所の裁判を受ける権利は、国が日本国民に絶対的な権利として保障したものであることはもう間違いないのですから、それをほかの理由でどうこう言うことはできないと思いますが、いかがですか。
#38
○藤永説明員 飯田委員御指摘のとおり、憲法三十二条が国民の基本的人権の一つを保障したものであること、またこの規定が刑事訴訟法よりは優越するものであるということにつきましては、私どもも同様な解釈をいたしておりまして、決してこの規定を無視するような態度をとっているものではございませんが、ただ三十二条の裁判を受ける権利というのが、刑事事件におきましては裁判以外の手続で刑罰を科せられることがないということを保障するものであるという解釈は、憲法学者いろいろございますが、三十二条の通説でございまして、決してゆがめた解釈をしているものであるというふうには私ども解しておりませんので、御了解をいただきたいと思います。
#39
○飯田委員 法律によれという問題は三十一条の問題なんです。三十二条は法律によるという問題じゃない。裁判を受ける権利があるという問題ですから、たとえば、ある犯罪の容疑を受けた人が起訴猶予になった場合でも、御本人が裁判を受けたいという願いがあるならば、当然できなければならぬわけです。今日そういう制度を設けていないこと自体が憲法違反だ、あるいは憲法軽視の疑いがあると思います。刑事訴訟法が公訴の時効の規定を設けたときに、その規定に並べて、ただし書きなり、あるいは憲法三十二条の要請に応ずる規定を設けるべきであったわけですが、それを落としております。これは憲法軽視の形が刑事訴訟法にあらわれておる一つの姿だと思います。これは当然刑事訴訟法の改正まで持っていかれるべき問題であると私は理解いたしますが、いかがでございますか。
#40
○藤永説明員 飯田委員御指摘のとおり、立法論としてそういう考え方も理論的にあり得るとは存じますが、公訴の提起というのは、御承知のとおり、検察官が当該刑事事件につきまして実体的な審理及び有罪判決を求めることでございます。いま時効が完成している事件につきまして、飯田委員の御趣旨は恐らく、その人が本当にシロ、無罪であるならば、時効が完成しておってもなおかつ自分に対して訴追を求めて無罪判決を得る方が有利なのではないか、その点について制度上欠陥があるのではないかという御指摘だろうと思いますが、時効が完成いたしますと、国家刑罰権というものはその限りにおきまして消滅しておるわけでございます。国家刑罰権がすでに時効の完成によって消滅しているにかかわらず、なおかつ無罪判決を求めて検察官に公訴の提起を許すというような制度はゆゆしき問題でございまして、立法論といたしましても、にわかにそのような制度を採用するということには問題があろうかと思います。
#41
○飯田委員 現在、いま述べられましたいわゆる法的解釈というものは、どの学者がおっしゃったか知りませんが、そういう学説があるといたしましても、憲法三十二条を左右することはできないと私は思います。現在の刑事訴訟法に書いてある時効思想に従ってすべてが決定されるのではなくて、憲法の規定に従って時効そのものも決定されてくると考えるのが正しいと私は考えるわけです。そこで、憲法三十二条の問題につきましては、政府の方におかれましてもぜひ御検討を願いたいと要望いたします。
 それから、それは要望でございますが、そういう刑事訴訟法の改正が行われる以前におきましても、憲法が保障した国民の権利は、当然国民は主張し得る、また要求し得ると私は考えるのですが、その点、いかがでしょうか。
#42
○藤永説明員 何度も申し上げますが、憲法が刑事訴訟法より優越するものであるという点につきまして、私どもこれを無視しておるというようなわけではございませんが、飯田委員の御指摘の立法論、時効が完成しておる、あるいは捜査の過程で有罪を立証するに足る証拠がないということが判明しておる場合にも、なおかつ検察官に無罪判決を求めて、あるいは時効完成の場合なら免訴の判決を求めて公訴提起を許すというような制度は、これはやはり憲法三十一条、三十二条の問題でなく、基本的人権の尊重をうたっております憲法全体の趣旨からも、制度として無理であろうというふうに考えております。
#43
○飯田委員 あなたのおっしゃることは逆じゃありませんかな。憲法の三十二条で裁判所の裁判を受ける権利を国民に絶対的権利として保障しておるのですよ。そうでありますならば、どうしてこれが憲法全体の精神からいって矛盾することになるのか、どうも私はわからないのですが、とにかくこの憲法の規定がすべての法律のもとであるし、また、わが国の国家体制というものは憲法の思想によってできておる、これはお認めになるでしょうね。憲法によって国家体制ができておるということであるならば、それがあらゆる法律の、法律思想のもとでなければならないわけです。ところが、いま御答弁になりましたところをお聞きしますと、どうも逆のように聞こえますが、時効の制度にしましても、これは現在の憲法の規定に従って時効の精神というものが生まれてくるはずでございまして、時効の制度があるから憲法解釈が左右される、そういうことはおかしいと私は考えるわけですがね。どうしてあなたはそういう私の考え方が間違いだとおっしゃるのか、その間違いだとおっしゃる根拠をもう少し明確にしていただきたいと思います。
#44
○藤永説明員 憲法三十一条なり三十二条の解釈そのものを法務省の刑事局が担当しているわけではございませんが、解釈の態度といたしまして、すべての法律に優先するものであるという点は私ども十分理解しております。ただ、刑事訴訟法で検察官に公訴を提起する独占的な立場を認めまして、公訴を提起する場合に、すでに刑事訴訟法で定めております訴訟条件が欠けておるものあるいは有罪の確信が得られないものについてまでこれを起訴するということを認めることは、逆に公訴権乱用であるということで、この公訴権を乱用すること自体がやはり憲法三十一条に違反するんだという考え方も十分に成り立つわけでございまして、現にそのような主張をなさっておる学者もおられるわけでございます。
 そういう趣旨から申し上げて、私ども決して憲法と刑事訴訟法の解釈を逆にしているわけではございませんが、刑事訴訟法上公訴の提起が許されていないのにこれを許すという制度を設けること自体が、やはり憲法解釈との関連で問題があろうというふうにお答えしているわけでございます。
#45
○飯田委員 どうもお答えが、検察官の権限そのものを中心として憲法問題を理解しておられるように考えられてしようがないのです。元来、検察官の起訴主義にいたしましても、これはそういう一つの制度だ。現在の憲法下においてこういう制度を設けたらよかろうということで設けただけのことでございまして、もしそれが憲法条項に触れるような場合には、その起訴主義にいたしましても制限を受ける、これは当然だと思います。
 それで問題は、今度の灰色高官と言われた方で、明らかに無罪だ、こういうふうに政府も言うておられながら、金をもらったと称せられて迷惑を受けておられる方の人権保障の問題、これがあると思うのです。それからもう一つは、証拠も明確でないのに、金をもらって収賄罪が成立するが時効にかかった、こういうふうに言われて迷惑を受けておられる方、この方については、もちろん人権保障の問題もありますが、御本人が希望されるならば、時効完成という問題は別にして、当然その御要望に応ずべき政府の態度あるいは検察当局の態度が必要であろうと考えるわけです。それが憲法を擁護する立場にある国家公務員の義務ではないか、こう思うのですが、いかがですか。
#46
○吉田説明員 憲法上の保障が十分確保されなければならないことは御指摘のとおりでございます。しかし、先ほど来御指摘のいわゆる灰色高官というのですか、私どもはそういう言い方をしたことはないのでございますが、政治的道義的責任というものの所在について国会が国政調査をなさり、それについて政府として先ほど来申し述べている刑事訴訟法の立法趣旨の枠の中で御協力を申し上げている、そういうことでございまして、証拠があいまいなままにとおっしゃいますのは、決して検察当局の捜査がいいかげんなものだという御趣旨ではないと思うのでございますけれども、私ども確定力がないという意味では確かに裁判のような確定力は持っていないことは間違いないことでございますが、そういう捜査の結果認定できたことに基づいて御報告を申し上げた、それなりに確信を持って御報告を申し上げているということでございます。こういう場合に何らかの保障を設ける手続を考えるべきじゃないかというお話でございます。私どもの領域である刑事事件の領域の中でそのようなことを考えるべきだとおっしゃられましても、やはり刑事訴訟法は刑事訴訟法としての枠の問題がございますし、その枠の中で考えることは非常に困難であるというふうに思います。それ以外に、あるいはもっと広い立場から何か研究すべき検討すべき事柄があるかもしれませんが、法務省刑事局の立場から、その点について意見を具体的には持っておりませんし、その点について無責任な発言をすることはできませんので、それ以上のことは申し上げかねるわけでございますが、刑事事件の刑事手続の中で何かそういうものを解決しようというのは非常に困難であると考えております。
#47
○飯田委員 私は、ロッキード事件につきまして、捜査が厳重に進められ、また全容がもっと明らかにされることを希望するものなんです。そのことについて私は少しも抗議を申し込んでおるわけじゃありません。もっとしっかりやっていただきたいと思うものでございますが、同時に、証拠を明確にとっていただきたいということなんです。私が証拠が明確でないと申しましたのは、検察庁のやり方が悪い、そういう意味ではないことはもちろんです。この会議録に載っております言葉を見た限りでは証拠がない。「全日空関係者及び丸紅関係者の供述、米国における嘱託証人尋問の結果等」、こうだけありますから、これは証拠にならないでしょう。こういうことで有罪の判決ができるでしょうか。私はとてもできなかろうと思うわけです。私の申し上げていますのは、皆さん方が政府の方でこの問題についてしっかりとした証拠を国会に提出されるというのであれば、一遍に問題は解決するのでして、先ほどからるる論じておりますのは、そうした資料を明確にお示しにならないというところに問題があります。そして、そのために迷惑を受ける人がおられるかもしれませんし、あるいは国民の疑惑が国会に及んでおるのを晴らすことができないのかもしれません。それでお尋ねしておるわけです。ですから、こういう問題についてはどうしても明らかにしていただかなければならぬわけですが、議論をしておるのもなんですから次に行きます。
 いわゆる灰色高官と称するお方につきまして捜査をなされたことがございますか。
#48
○佐藤説明員 すでに再三御答弁しているとおりでございまして、ロッキード社から流入した違法な資金の解明という関係におきまして必要な捜査を行って所要の措置を講じた、こういうことでございます。
#49
○飯田委員 それでは、ロッキード社から資金が流入したものの行方についていわゆる灰色高官と称する人についての捜査がなされた、こうおっしゃいました。
 そこで、お尋ねしますが、この灰色高官と言われる人は全部不起訴でございますね、あるいは無罪でございますね。だから起訴はできないわけです。起訴できない人について捜査をされた資料がある、そういう場合に、その捜査資料をどういう理由であろうとも御発表になる形はいかがでございますか。その捜査資料から恐らくこれは政府報告として御報告になったと思います。しかし、こういう形の、犯罪があるかどうかわからない、非常に疑いだけ持たせるような形の報告をなさるという行き方は許されることでしょうか。法律上根拠はございますか。いわゆる無罪になった、もう起訴できないのだということが決定してから、その人についての捜査資料を御発表になった、その手続規定はどういう手続規定によってなされたのか、その点についてお伺いをいたします。
#50
○佐藤説明員 ただいまの件につきまして公に発表するという限界は、中間報告記載のような限度であろうというふうに考えております。再三申し上げましたとおり、秘密会に提出した資料はあくまでも秘密であるという前提で政府としては提出したものでございまして、明らかにできる、公にできる限界というものは、やはり中間報告の程度のものであろうというふうに考えております。
#51
○飯田委員 秘密会といいますのは、たくさんの人がいないところでございましょうか。たとえば秘密会といいましても、委員は少なくともおられますね。そうした委員の方に聞いてもらうためにいろいろの御報告をなさったんだろうと思いますが、その御報告をなさるに当たって、もうすでに無罪だとわかっている、犯罪構成要件を充足していないのだということがわかっている人、あるいは時効が完成して起訴できないとわかっている人、そういう人の問題について御報告をなさったが、その御報告をなさるについては手続規定が要るのではないか。つまり、憲法の三十一条によりますと、法律に定める手続によるのでなければ自由を侵害することができない、こうなっております。ですから、当然手続が要るはずでございます。何法に基づいてこういう報告をなさったのか、その根拠をお伺いいたしたいわけです。
#52
○佐藤説明員 先ほど議院証言法というふうに申し上げましたのは、一般論として申し上げたわけでございまして、本件の場合にはあくまでも国会法の百四条の資料提出要求ということで御報告を申し上げたということで、根拠規定というのはやはり国会法の百四条ということに相なろうかと思います。
#53
○飯田委員 国会法というのは憲法よりも効力は薄いですね。憲法の方が上でしょう。憲法の三十一条の精神というものをどのように理解しておられるか知りませんけれども、国会法で資料提出要求権が国会にある、だからやった、こういうお話ですが、もうすでに無罪なんですよ、それから起訴しない、起訴しない人についていかにも犯罪があったかのごとき印象を与える報告をなさるということは、これはどういう根拠に基づいてなされたのか。そういうことは、国会法で資料を出せと言っても、そういう出せないものをお出しになるということは困るのではありませんか。出せるものをお出しになるのはいいですよ。基本的人権を侵害するようなものをお出しになるというためには、何か根拠がなければならぬはずなんです。これは、たとえば現在犯罪行為があるとして疑われている人なら、まだこういうわけで疑われておりますといって御報告なさってもいいでしょう。そういうものじゃないのだから、全く構成要件は該当しない。この議事録によりましても、「収賄罪の成立は認められない。」こういうふうに政府では御報告になっている。それについて公表になっているわけだ。そういうところに大変いわゆる政治的な疑いを持たれる根拠があると私は思うのです。この点はいかがでしょうか。
#54
○佐藤説明員 先ほど申し上げましたとおり、公の立場で国会に御報告を申し上げるということにつきましては、やはり中間報告で申し上げた程度のことが限度であろう、こういうふうに考えておりまして、それ以上の問題につきましては、やはり国政調査権とその他の行政府との関係との比較考量の問題、その他をいろいろ考慮いたしまして結論づけるべき問題であろうかというように考えております。
#55
○飯田委員 どうも議論がかみ合わないのでちょっと困りますが、私は、ここで特に申し上げておきたいのは、いわゆる灰色高官についての発表ということは、国民の知る権利の要請に応ずるものであったと思います。これは国民が知る権利を要求して国会に迫った、だから国会の方でも政府の方に言われてとられたと思いますが、この場合の国民の知る権利というのは、真実を知る権利なんですよ。真実でない、疑わしい灰色を知る権利じゃないのです。明確にしたものを知りたいからの問題だろうと思います。それにつきまして、明確でない、証拠をいいかげんにした発表の仕方をされたということは、国民の知る権利に対する冒涜であると私は考えます。ですから、この問題については、皆さん方がいろいろ何とかして証拠を出すのを逃れようとして陳弁これ相努めておられますけれども、これはやはり基本的人権の保障の問題として考えていただかなければならぬ問題です。なるほどいろいろな書類の中から拾い出すのは大変手数がかかるでしょうけれども、少なくとも、今日この問題について困っておられるのは、別に議員さん一人じゃないのですよ。家族全体も大変苦境に立っておられる状態です。そういう基本的人権を侵害することを、明確な証拠を示さないでおやりになることに対して、私は御質問申し上げているのです。そういうことじゃ困るじゃないか、だから明確な資料を出していただきたい。出せない理由はないと私は思います。それできょう御質問を申し上げているのですが、最後に、どうしてもお出しになることができないのかどうか、お答え願います。
#56
○佐藤説明員 これも繰り返しになりまして大変恐縮でございますけれども、いずれにいたしましても、公訴を提起しなかった事件についての関係資料を提示するということは、原則的に全く考えていないということを御了解いただきたいと思います。
#57
○飯田委員 原則的に提出することは考えていないとおっしゃいましたが、それはどういう根拠に基づいてそういうことをおっしゃるのですか。基本的人権の侵害になるんだとかあるいはいろいろの理由があるでしょう。その理由をお聞かせ願いたい。
#58
○佐藤説明員 刑事訴訟法の四十七条がその根拠になろうかと思います。
#59
○飯田委員 刑事訴訟法の四十七条の立法趣旨はどうなんですか。
#60
○佐藤説明員 四十七条につきましても再三国会で御討議がございまして、政府の見解も明らかにしておるところでございますが、いずれにいたしましても、被疑者の名誉、人権ということと、それに関連しまして、その資料を公開することによって得られるメリットとの比較考量の問題を保管者である検察官が判断して行う、こういうふうに考えておりまして、その立場で申し上げておるわけでございます。
#61
○飯田委員 この問題につきまして、四十七条の解釈、それでいいとしましょう。それならば、被疑者があるいは疑われた人がどうしても自分の名誉のために資料を公表してもらいたいということを要求すれば、これは基本的人権の侵害にはならないことになるでしょう。また、捜査関係にしましても、もうすでに捜査の終わった事件として、事件にならない事件ですから、これを公表しても一向に捜査の妨害にもならないし、また裁判の妨害にもならないでしょう、裁判しないのですから。それをどうしても拒否される理由はどこにございますか。
#62
○佐藤説明員 大変恐縮でございますが、再三申し上げておることをまた繰り返すようでございますけれども、検察官としては、将来検察権の円滑な行使ということはどうしても考えざるを得ない問題でございまして、その観点から、一つ一つの事件、たとえ御本人が希望するということがございましても、それをその都度公表していくということは、やはり将来の検察権に対して重大な支障を与えるおそれがあるというふうに考えております。
#63
○飯田委員 どうも皆さん方のお話は、私のまじめな質問に対してまじめにお答えになっていないと私は思います。何とかして責任逃れをしようということだけが頭にあってのお話のように聞こえてならないわけです。いまの御答弁でも、私はそういう抽象的な一般論を申し上げているんじゃないのです。
 具体的に申し上げます。一つの例を挙げますと、この会議録にございます。これは二階堂進議員のお話でございますが、それを見てみますと、「私は、丸紅の伊藤宏なる人物は全く知りません。会ったこともありません。伊藤宏は、保釈後、読売新聞社の記者に対し、私に金銭を渡した旨の全く虚偽の発言をし、その旨の新聞報道が九月十三日の読売新聞に報道されております。」こういうのがございます。それからまたいろいろ述べられました後に、「私は限りなく人権と名誉をじゅうりんされてしまっております。私の家内も東京におることができなくなりました。」こういうことも言われております。それから、自己の名誉は考えないから証拠を明確にしていただきたいということも言われております。こういうことを言われておるのに、これに対しまして、ただ聞きおくといった程度で放置されておる、こういう行き方は問題ではありませんか。これはなるほど国会における発言であるかもしれませんが、こういうことが言われております。こういう御発言があるわけです。それに対して、頭から無視して何一つ答えようとなさらない、そういう政府の御態度は問題ではないでしょうか。この点についてお伺いいたします。
#64
○佐藤説明員 ただいま先生が問題にされました資料の関係につきましては、先ほど申し上げましたとおり、秘密会を前提として提供したものでございまして、政府としては、その結論に至るまでのことにつきましては大変問題であろうかというふうにも考えておりますが、いずれにいたしましても、関係者の方々に対してそれなりの御迷惑が及んでおるということにつきましては、大変遺憾であろうかと思います。
#65
○飯田委員 そこまで感じておられるのなら、やはり名誉回復のための手段をおとりになることが必要ではないでしょうか。私はこの方たちが、たとえばこの四人の方が無罪であるということを主張しておるのではありませんよ。皆さん方の御報告の内容が法手続に違反するということを申し上げているのです。刑法ではどういうふうに規定されておるかということを思い出していただきたいわけです。刑法を完全に履行しないでこういう報告をなさるということ自体が、法定手続の保障の規定に違反するのではないかと私は申し上げているのです。それで現行法の手続をお踏みになるという問題は、国会法の問題だけを根拠にすればいいということじゃないのでして、そのほかに刑法も問題になります。そういうことにつきまして御考慮をなさっていないというふうに私は思うわけですが、この点についてどのようにお考えでございますか。
#66
○吉田説明員 私は、当時刑事課長として、この国会のいろいろの質疑に関与したものでございますので、そういう立場で私の方から申し上げたいと思います。
 先ほど来申し上げておりますように、政府といたしましては、あくまでも政府の立場で、起訴をされなかった方々のお名前等を公表するということは絶対に避けるべきであるという立場を堅持してまいったわけでございます。ただ、政府といたしましては、何度も申し上げますけれども、両院議長裁定に基づいて、政治的道義的責任に対する国会の御調査に最善の御協力をするという立場にあるわけでございます。それでその方法として、こういう者が政治的道義的責任があるのだ、こういう御認定を委員会でなされましたので、それでそれに関連する資料を提出せよという話がございまして、その結果、委員会の議事録にそのことははっきり出ております。当時の総理も出席しておりますが、それではその方法として秘密会をお願いしたいということをお願いして、秘密会で御協力を申し上げたということでございます。私どもといたしましては、起訴されなかった方々のお名前を公表するというようなことは政府の立場としてできることではないし、そのことは、御指摘の憲法上の問題あるいは刑事訴訟法の問題等々からいっても、あってはならないことであるというふうに考えておったのでございます。
 そこで問題は、国会でそういうことをお決めになったわけでございます。国会は国会の御自身の判断に基づいて御指摘のような手続をおとりになったわけでございます。その結果、御指摘のような事態が生じているから、政府は何とかさらに協力しなさいということを再三お尋ねになっておるわけでございます。それはそれでなるほどごもっともなことでございますけれども、私どもといたしましては、刑事訴訟法の四十七条等に認められておりますのは、本人の人権の保護ということはもちろん、さらに裁判とか捜査とかいうものに対しての影響を及ぼさない、基本的には、司法権と申しますか、司法の公正、独立と申しますか、そういうことを大きな基盤にしたそういう規定の立法趣旨ということに従わなければならない立場にあるわけでございます。そういうことで、それ以上、御指摘のようにそれの明確な理由なり証拠を言いなさいと言われましても、私どもとしては、先ほど来申しているように、現在行われているロッキード事件の裁判その他の理由から、これ以上のことは申し上げられませんということをるる申し上げておるのでございます。
 刑法の話は、私どもとしては決して政府として名前を公表している立場ではございませんので、いわゆる刑法に触れるというようなことを私どもがやっておるとは全く考えておりません。
#67
○飯田委員 このいわゆる灰色高官の取り扱いにつきましての問題につきましては、私の質問と答弁とかみ合いません。非常に不満足でございます。それでまた将来この問題については議論をいたしたいと思います。
 きょうはこの問題はこのくらいにいたしておきます。もっと重要な問題を実は最初にお伺いすべき点があったのを、大臣の御都合で変更しましたので、ひとつお尋ねをいたします。
 これは一つは、国政調査権と法定手続の保障についてでございまするが、いま問題になりましたように、国政調査権一般についての明確な手続法が定めてございません。したがいまして、人権侵害に関するような問題について国政調査をすることが大変困難でございます。やれば、ただいまのように人権保障との問題が出てまいります。そこで、国政調査に関する手続法をぜひ私は国会において制定していただきたい、このように思うわけでございます。
 また、記録の提出要求権につきましても、先ほど、国会法に基づいて記録の提出要求ができる、こういうふうにおっしゃいましたが、できるというだけでは手続法は不完全でございます。どういう手続によって、どういう方法で提出要求をするのかということを決める手続法が必要でございます。記録には人権に関するものも含まれております。また、捜査書類も含まれております。法律で禁じた記録、あるいは民有記録もございます。そういうもの全部について国政調査のために国会は資料の提出要求ができるというのでなければなりません。ところが、これまでは手続法なくしてやっておりますので、ただいまのロッキード事件につきましての問題のように、人権侵害の問題がしばしば生じてくるわけだろうと思うのです。そこで、国会の国政調査をもっと強力に確実にやるために、こうした記録の提出要求権についての手続法も決めていただきたいと思うわけです。
 たとえば、参考人を呼ぶといたしましても、従来証人は困るが参考人ならいいということがよく言われます。しかし、証人については手続法として議院証言法がございますが、参考人については手続法がない。これは衆議院規則の中には書いてありまするが、衆議院規則は法律ではございません。それで問題になるわけでございます。
 そこで、憲法三十一条の法定手続の保障の内容はどういうものかということについて、ここで少しく政府の見解を承っておきたいのです。
 まず、憲法の三十一条に書いてある「法律」、これがいわゆる両議院の議決を経た法律であることはわかっておりまするが、「生命」、「自由」、「刑罰」、こう書いてある。この場合の生命とは何であるか、自由とは何であるか、刑罰とは何であるかということを明確にしておられないために、今度のような灰色高官の取り扱いのようなことが起こったのではないかと考えるわけです。
 私は、この憲法三十一条に言う「生命」というのは、命を取るという、あの命というだけの簡単なものじゃない、これは生命現象のすべてを指すのだ。生命というものは時間的経過があります。その時間的経過を含んだ生命現象全体について生命ということが言われておると私は考えるわけです。この点につきまして、政府の御見解を承りたいと思います。法制局長官おいででしたら……。
#68
○茂串政府委員 お答え申し上げます。
 ただいま大変御示唆のある御質問があったわけでございますが、憲法第三十一条は、「何人も、法律の定める手續によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」というふうに規定しておるわけでございますが、この規定の趣旨は、その文言から見ますと、確かに、刑罰を科するには法律で定める適正な手続によるべきであるということを定めたものであることは明らかでございますが、さらにこの規定の底を流れる憲法の法意というものを探求してみますると、確かに、単に刑罰を科するという分野だけではなくて、もう少し広い、たとえば行政上の強制その他国の権力的行為によって人の自由を奪う、あるいはその他の不利益を課するというような場合についても、これはもとより事柄の性格上、刑罰を科する場合とはおのずから合理的な差異があるにいたしましても、この規定の趣旨が押し及ぼされるものであるというふうに解するのが現在の通説でございますし、また当局としてもこのような見解を持っておるわけでございまして、単純な文言からだけ判断するのはどうかというふうにわれわれも考えております。
#69
○飯田委員 御趣旨はよくわかりましたが、この「生命」という言葉は、生命現象すべてについて言うのだというふうに私は理解いたします。
 「自由」につきましては、これは肉体的自由ばかりではなしに、精神的自由、それからそのほかあらゆる内容を持った自由を意味する。これは現在の法律で言われておる生命とか自由に拘束されるものではない。もっとその根源にある生命であり、自由だ、このように理解するわけです。
 また「刑罰」につきましても、この刑罰というのは刑法の第九条に掲げてあるあの刑罰を意味するのではない。あれば憲法に言う刑罰の内容の一部を示しているにすぎない、私はこのように理解をいたしておるわけです。ですから、この「刑罰」は、広い意味の自由制限、あるいは経済的損失を与える、あるいは何らかの不利益を与える、すべてが「刑」と「罰」という言葉で表現されておる、このように理解をしていかなければ、憲法がこの規定を設けた趣旨がなおざりになる、このように考えるものでございます。この点につきまして、もう一度法制局長官の御意見をお伺いいたしたいと思います。
#70
○茂串政府委員 先ほど憲法三十一条の趣旨をるる実は申し上げたわけでございまして、大体その内容から御判断をいただきたいと思います。
#71
○飯田委員 それでは、私の考え方に御賛同いただいたものと確信をいたしまして、この問題については質問を終わります。
 それで、こういう憲法三十一条の趣旨を踏まえた状態において、議員の院内発言あるいはいろいろの国政調査、こういうものにつきまして生じました院外における被害についての人権擁護ということが必要になろうと私は思いますので、こうした議員の発言によって院外において生じた人権侵害、これについての保障制度、これについてはどうなっておりましょうか、お伺いをいたします。簡単にお答えを願います。
#72
○村岡政府委員 国会におきます議員の発言について、いわゆる免責特権が認められておりますのは、申すまでもなく、国会における言論の自由を最大限に保障し、国会議員がその職務を行うに当たってその発言が制約されることがないようにしようという趣旨からでございまして、もとより、この規定があるからといって、国民の人権を侵害するような不当な発言が許されるという趣旨ではもちろんございません。そのような特権が認められているということは、その特権に沿う権限の行使がなされるということは当然期待されているものだと思うわけでございます。
 ただ、国会における議員の発言について、名誉棄損や人権侵害があり得るということを想定して、これに対する救済措置を講じたり、何らかの法的規制を行うということは非常に重大な問題でございまして、憲法に定める免責特権なり、議員のあるいは国政調査権のあり方にかかわる重大問題でございますので、これは国会自身において決定されるべき問題だと思量いたしまして、私どもの立場から意見を述べることは差し控えさせていただきたいと思います。
#73
○飯田委員 人権保障の問題につきまして、私は政府のお仕事だと思いますが、そうでないということでございます。まず国会で法律をつくれということでございます。この問題は、誤解を受けると困りますが、ただいま御答弁にありましたように、議員の院内における発言、これは憲法によって保障されております。院外においては責任を問われないということになります。しかし、院外において責任を問われないというその保護規定があるから、院外において被害か生じないということではありません。院外の人が被害を受けることはございます。たとえば特定の人を名指しで攻撃した場合、当然、名指しで攻撃された人は名誉を棄損されますし、またいろいろの経済的な不利益をこうむることもございましょう。こういう場合に、当然、政府としては、また国としては、一方において憲法で議員の発言の自由を保障しておるのでありまするならば、他方においてその自由を、どんなことまでも言える自由でありますので、したがって院外における人権侵害という問題が生ずる可能性もありまするので、そういうものに対する名誉回復の機構がなければならぬと思います。ところが、現在、これは政府のどこへそういう問題を持ち出して回復できるかということになりますと、制度が大変疑わしいように思われます。たとえば人権擁護局へ持っていきましても、人権擁護局では恐らく受け付けないでしょう。それではもうやられっばなし、被害を受けっばなしということになります。憲法の三十一条の法手続の保障という問題が崩れてきます。これは、憲法の三十一条の法手続の保障は、どのような自由制限も経済的圧迫も、法律の手続によらなければ一切許さないというわけです。ところが、議会における議員の発言の保障ということは法律手続じゃありません。保障をしておる保障条項でございます。そこに、現在では憲法の二つの条文の間から起こってくる被害救済というものが考えられていない。これについては、政府の方において考えていただいて、人権擁護制度をつくっていただけば、むしろ安心してわれわれは国会において発言ができる。いろいろ心配しながら発言したのじゃ十分な発言ができないわけですから、そういう点で私は、人権擁護制度を考えていただきたい、このように申し上げておるわけでございます。
 きょうは時間が参りまして、実は質問する順序が狂いましたので、私、初めから御質問しようと思ったことが大分抜けたり狂ったりいたしました。十分意を尽くすことができませんでしたが、時間が来ましたので、これをもって質問を終わりますが、きょう私が申し上げましたことをどうか素直に受け取っていただいて、御処置を願いたい、こう思います。
 どうもありがとうございました。
#74
○上村委員長 次回は、明後二十日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時十七分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト