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1976/02/24 第80回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第080回国会 本会議 第7号
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1976/02/24 第80回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第080回国会 本会議 第7号

#1
第080回国会 本会議 第7号
昭和五十二年二月二十四日(木曜日)
    ―――――――――――――
 昭和五十二年二月二十四日
   午後一時 本会議
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)  及び租税特別措置法及び国税収納金整理資金
  に関する法律の一部を改正する法律案(内閣
  提出)の趣旨説明及び質疑
    午後一時十九分開議
#2
○議長(保利茂君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
#3
○議長(保利茂君) 内閣提出、所得税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。大蔵大臣坊秀男君。
    〔国務大臣坊秀男君登壇〕
#4
○国務大臣(坊秀男君) 所得税法の一部を改正する法律案並びに租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 初めに、所得税法の一部を改正する法律案につきまして申し上げます。
 所得税につきましては、最近における社会経済情勢に顧み、中小所得者を中心にその負担の軽減を図ることとし、現下の厳しい財政事情にもかかわらず初年度三千五百三十億円、平年度三千百六十億円の減税を実施することといたしております。
 すなわち、第一に基礎控除、配偶者控除及び扶養控除について、それぞれ現行の二十六万円から二十九万円へと三万円引き上げることといたしております。これにより、昭和五十二年分の課税最低限は、夫婦と子供二人の給与所得者の場合で、二百一万五千円となり、現行の百八十三万円に比べ、一〇・一%引き上げられることとなります。この引き上げ率は、政府の昭和五十二年度の経済見通しによる消費者物価の年度平均上昇率八・四%を上回るものであります。
 第二に、障害者控除、老年者控除、寡婦控除等につきまして、福祉政策等の見地から、その控除額を、それぞれ基礎控除等の引き上げ幅と同額の三万円引き上げるほか、年齢七十歳以上の控除対象配偶者について、老人扶養控除と同様、特別の配偶者控除を認めることとしております。
 以上のほか、勤労学生控除の適用要件である所得限度額を引き上げる等、所要の改正を行うことといたしております。
 次に、租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。
 まず、租税特別措置法の一部改正について申し上げます。
 租税特別措置につきましては、最近における社会経済情勢に顧み、利子・配当課税等の適正化及び交際費課税の強化を行うとともに、その他の租税特別措置の整理合理化を行う等、所要の措置を講ずることといたしております。
 すなわち、第一に、利子・配当課税等の適正化を図る見地から、利子・配当所得に対する源泉徴収税率を一五%に軽減する特例を廃止して二〇%の本則税率を適用することとするほか、源泉分離課税を選択した場合の税率を現行の三〇%から三五%に引き上げ、また、割引債の償還差益に対する源泉分離課税の税率につきましても、現行の一二%から一六%に引き上げることといたしております。
 第二に、交際費課税の強化を図るため、損金算入限度額の計算の基礎となる資本等の金額の一定割合を千分の〇・五から千分の〇・二五に引き下げるとともに、損金不算入割合を八〇%から八五%に引き上げることといたしております。
 第三に、その他の租税特別措置につきまして整理合理化等を行うことといたしております。すなわち、企業関係の租税特別措置につきまして、製品安全検査用設備の特別償却制度及び高精度工作機械等の特別償却制度を廃止し、公害防止用設備の特別償却制度の償却割合を二分の一から三分の一に引き下げ、また、価格変動準備金の積立率を通常のたな卸し資産にあっては二・七%から二・四%に、非上場株式等にあっては〇・九%から〇・八%にそれぞれ引き下げる等の整理合理化を行うことといたしております。また、登録免許税の減免措置につきましても、外航船舶の所有権の保存登記に対する軽減税率を引き上げる等の整理合理化を行うことといたしております。
 さらに、昭和五十三年度の自動車排出ガスに係る保安基準に適合する乗用自動車の早期普及のため、物品税の暫定軽減措置を講ずるほか、少額国債の利子非課税制度を少額公債の利子非課税制度に改め、その適用対象に公募地方債を加えるとともに、中小企業構造改善計画を実施する商工組合等の構成員の機械等の割り増し償却、開墾地等の農業所得の免税、老年者年金特別控除、住宅取得控除制度の適用期限を延長する等、中小企業関係、農林漁業関係、福祉関係、住宅関係等の租税特別措置について、それぞれ実情に応じ所要の改正を行うことといたしております。
 次に、国税収納金整理資金に関する法律の一部改正について申し上げます。
 現行の国税収納金整理資金に関する法律におきましては、毎年度の歳入に組み入れるべき国税収納金等の受け入れ期間の末日は、翌年度の四月三十日と定められているのでありますが四月三十日が日曜日その他の休日に当たるときは、当該受け入れ期間の末日を、その翌日の五月一日とする改正を行うことといたしております。
 以上、所得税法の一部を改正する法律案並びに租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
#5
○議長(保利茂君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。沢田広君。
    〔沢田広君登壇〕
#6
○沢田広君 私は、日本社会党を代表いたしまして、今回提案をされました所得税法の一部を改正する法律並びに租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法案などについて、総理、大蔵大臣に質問を行うものであります。
 そもそも税とは何かということであります。税は汗と血の結晶でありますが、現在、税とは、取りやすいところから取り、血税の上にあぐらをかくという表現は誤っているのでありましょうか。もとより、憲法で納税の義務があることは承知をいたしております。それだけに、正しさ、真実性が必要だと思います。税とは、古くて新しい問題であり、そのときどきの時代を背景として、それぞれの特殊な条件、目的に対応してきた歴史的動きを否定するわけにはいかないものと存じます。
 今日の日本は、内外ともに憂慮すべき条件の中にあり、一般勤労国民生活は重大な危機に直面していることは、多くの資料が示しているところであり、いまさら強調するまでもないことと存じます。加えて、わが党成田委員長の代表質問あるいは石橋書記長等の質問、もちろん各野党も口をそろえて、不況の打開、景気の回復、生活環境、教育の充実、失業者に仕事を、恵まれない人々に温かい思いやりを、内需の回復を、一兆円減税をと叫んできたことは、御承知のとおりであります。
 今日のこの条件の中で、あるべき税の姿は、これらに対応したものであり、かつ、公正、公平でなければなりませんが、どう思われておられますか、お伺いをいたします。
 また、きわめて卑近な例でありますが、いろいろな事件などに「運が悪い」、こういう言葉がよく使われるのであります。この言葉の底辺は何を物語るものでありましょうか。政治不信あるいは行政への不信あるいは不公正の反射表現でありましょう。中小企業その他の人々が重税を逃れることにどんなに知恵をしぼっておられるか御存じでありましょうか。これはひとえに納税あるいは政治姿勢に対する不信から、不公正あるいはばかばかしいという憂うべき風潮が底辺にないと言い切れないのではないでしょうか。その原因をつくってきたものが現在の自民党の本質を示すものであり、今日までの自民党の政治のあり方であったことを否定することはできないのではないでしょうか。(拍手)
 たとえば、高度成長時における土地成金をつくった分離課税、ロッキード事件における収受された汚れた金、あるいは大企業をもうけさせた現行の租税特別措置の数々、あるいは各種大幅準備金制度、株主の優遇措置、医師優遇税制等々、トーゴーサンピンと言われる不公正も御承知でありましょう。まじめな者が損をする政治を改める決意はあるのでありましょうか。お伺いをする次第であります。(拍手)
 税は、第一義的に支出、すなわち経費に充当することを、支出の内容の是非は別といたしまして、たてまえとするものでありましょうし、また、入るをはかって出るを制する会計原則も、古今の原理でもありましょう。これについてもどうお考えになっておられるかお伺いをするとともに、同時に、税には、さきに若干触れたように、第二義的あるいは主目的ともなる所得、財産の再分配、公正、福祉という位置づけと、産業の保護、資本の蓄積、輸出の奨励、消費の抑制あるいは拡大という立場で税のあり方が置かれる場合もあると思います。現行の案は、五十年度中期計画を引き延ばし、依然として大企業を保護し、資本の蓄積を助長し、景気の回復と言いながら、大衆に犠牲を強いつつ、公共料金の値上げ、わずかな減税、結局、勤労者、中小企業、農業従事者は実質生活に、実質所得で前年度より十数%も下回る結果になっておるではありませんか。
 総理は「日本丸」は沈めさせないと言われましたが、まさにローマ帝国時代、むちに打たれつつ、多くの人間が船底で櫓をこぎ、奴隷として使役し、使えなくなれば捨てられ、船上では美服をまとい、美酒に酔っていた状況がいまの「日本丸」ではないでしょうか。また、今日までの自民党の政策と言っても誤りではないのではないでしょうか。(拍手)
 また、前内閣より言われた「乏しきを憂えず、等しからざるを憂える」という税制、政策がいま求められているときと思いますが、いかがでありましょうか。具体的に示すべきと思いますが、お伺いをいたします。
 総理は、特に今回の施政方針演説の中で、婦人の地位の向上の問題に触れられました。国際婦人年の後だけに、その意義も大きいものがあると思います。
 そこで、妻の地位について、税制上どのように考えておられるか、お伺いをいたします。
 時間の関係もあり、一々民法の条項を挙げることは避けますが、民法第七百五十二条、七百五十八条、七百六十条等、夫婦の同居・協力・扶助義務、家事・債務の連帯責任、及び判例として、自動車事故等の場合の妻の収入算定は十三万ないし十八万となっており、家事労働に相当すると見ることが妥当と思われます。全く多くの一般勤労者と同じであり、かつ、ここにおられる先生方も、内助の功多大なものがあったればこそ、ここにおられるものと思うのであります。(拍手)
 言うならば、一勤労者であることは否定できないものと思います。これを税制で、配偶者控除ということでわずか二十九万円で処理するという発想はどこから生まれるのでありましょうか。
 四百万円の所得は、当然二分の一は主人、二分の一は奥さんで、両者で子供を扶養するというのが本来の税制から見ても正しいものではないでしょうか。事実、一般中小企業等では、それぞれ奥さんはりっぱな給与所得者で処理されていることは御承知のとおりであります。また、相続税の三分の一も、若干の問題があるにしても、財産、所得の家事労働の分配を意味すると解することが当然と考えますが、いかがでありましょうか。
 特に、総理が述べた婦人の地位の向上を図る立場からも、税制上配慮すべきだと思いますが、いかがですか、お伺いをいたします。
 わが党は、医師優遇税制について、不公正税制の最たるものとして改正を要求しておりますが、これは国民のひとしく指摘されているところであります。昨今来の総理の答弁で、若干の改正を意味するがごとく発言されておられるようでありますが、これはただし書きつきでありますので、全面的回答と受け取るわけにはまいりませんし、その時期もまた不明であります。本日、これらの是正はいつの時点でどのように行うものか、明確にお答えを願いたいと思います。
 また特に、今回、老人対策に一部改善が加えられましたが、今日の年金制度あるいは支給年齢から見て、七十歳は、いかに平均寿命が延びたとはいえ、余りにも高過ぎるのではないかと考えます。少なくとも六十五歳から適用すべきではないかと思いますが、いかがでありましょうか。
 また、きわめて少額の年金では生活が困難な今日、年金を退職金と同様分離して年金受給者の優遇を図るべきだと思いますが、いかがでありますか、お伺いをいたしたいと思います。
 なお、現行商法二百九十条の立場等による株主の優遇措置、額面と市場価格との差には相当の開きがあります。一例を申し上げるならば、三井物産の例でありますが、昭和五十二年二月一日一株五十円が額面でありますが、現状は市場四百六十六円であります。十万株で一千万円の無償配当ということになります。この利益は税がかかっていかない仕組みになっております。当然税の対象となるべきものと考えますが、いかがでありましょうか。何ら今日までこれらが考慮されなかったのは、一般庶民として納得できないものがありますが、当然課税対象とするべきではないでしょうか。
 要するに、これは一例であり、租税特別措置法に示される諸種の免税が、税の公正を欠く手段として使われて、ときには政治腐敗を招く要因にもなり得る要素を含んでいることを示すものであり、全面的見直し、内需喚起を主体として税制体系を改めるべきだと信じますが、いかがでありましょうか。(拍手)
 最後に、全野党がこぞって主張をいたしております一兆円減税について、総理は頑迷に拒否しておられますが、公共事業が点と線の景気回復の道であるならば、減税は面の景気回復であることは間違いないことであると思います。その速度も、この夏までにはこの効果があらわれるものであり、公共事業は年末、否、明春でなければ現下の地方財政の状況下では困難であると言って過言でないと思います。速やかに野党の主張を十分考慮し、弾力的に対処することが、当面する国民生活を救う道ではないかと思いますが、いかがでありましょうか、お伺いをいたす次第であります。
 なお、わが党は、具体策として次の税制改正の案を提出をいたしますが、それぞれ検討の対象としてその考えをお伺いをいたしたいと思います。
 すなわち、一千万円以上の高額所得者の一〇%の付加税、あるいは利子・配当課税を四〇%に、会社臨時特別税の復活、あるいは交際費課税を中小企業を除いて強めること、あるいは価格変動準備金の縮小、貸し倒れ引当金の縮小、減価償却の適正化、退職給与引当金の縮小、有価証券取引税の強化、予備費の減額、一般経費の節約等であります。これらについて善処される意思があるかどうかをお伺いをいたす次第であります。
 以上、今回提案をされました所得税法及び租税特別措置法などについてそれぞれ質問をするわけでありますが、明快な御回答を期待をいたしまして、質問を終わる次第であります。(拍手)
    〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕
#7
○内閣総理大臣(福田赳夫君) 沢田さんにお答え申し上げます。
 まず、税は公正を期すべきものであり、また、その機能についてこう考える、こういうお話でございますが、その御所見は私は賛成でございます。
 税は、あくまでも公正を期すべきものであります。また同時に、税の機能というものは、財政の財源を調達するにある、同時に他面、所得再配分の機能というものを持っておるのです。また、景気調整の機能というものも持っておる。そういうものでありますので、税制の扱いは、これはあくまでも慎重でなければならぬ、かように考えます。御説のとおり、乏しきを憂えず、等しからざるを憂う、こういう姿勢で税制に取り組んでまいりたい、かように存ずる次第でございます。
 そういうような趣旨で、今回提案しております改正案におきましては、特別措置の整理等も多々含んでおる次第でございます。
 医師優遇税制は、これは御承知のとおり非常に重要な問題です。また同時に、複雑な背景を持っておる問題でございます。ただいま鋭意これが処置につきまして検討中である、かように御了承願いたいのであります。
 老齢福祉年金の支給を六十五歳から適用するようにしたらどうかというお話でございます。お話の気持ちはわかりますけれども、いま何せ財政が火の車というような状態でありますので、当面これを行うことは困難である、かように存ずる次第でございます。
 なお、沢田さんは、この際、一兆円減税を行うべし、また、社会党の提案を尊重すべしというようなお話でございますが、私もこの一兆円減税――一兆円どころじゃないのです。私はいま国民の生活のことを考えれば、私もまた胸が痛む。多額の減税ということも、これはもうできることならやりたい。しかし、国家国民のことを、全体を本当に考えるときに、この一兆円減税が果たしていいかどうか。いまわれわれが当面している問題は、これは景気にてこ入れをするということである。てこ入れをするということになれば、公共事業費の方が本当に倍もの影響力を持っておるわけであります。しかも、いま当面している問題は、これは雇用の問題です。とにかく失業者が百万人を超えるというような状態、減税でこの失業者に職を与えるということが果たしてすぐできますか。それは公共事業しかないですよ、皆さん。(拍手)
 私は、そういうことを考えるときに、これは一兆円減税は断行すべしというお話でございまするけれども、この考え方は、国家国民のことを考えますとさようなわけにいかぬ、かように考えます。(拍手)
    〔国務大臣坊秀男君登壇〕
#8
○国務大臣(坊秀男君) お答え申します。
 税制のあり方等につきましては、総理から御答弁がございましたから、私は差し控えさせていただきます。
 まず、御質問の第一点は、妻に対する税制でございますけれども、夫が給与所得者であって妻が家庭内におる場合につきましては、夫には基礎控除、妻には配偶者控除、いずれも今度の税制改正では二十九万円ということに相なっておりまするから、夫婦ともにこれは全く同格ということに相なっております。
 なお、所得の稼得に対する配偶者の貢献というものは、これはやっぱり尊重していかなければならないと思いますが、それにつきましては今日までいろいろなことをやるような方式がございまするけれども、それは夫婦というものには家庭を守っておる妻と、それから共かせぎの妻と、いろいろな態様がございます。そういったようなときにどう扱っていくかということも、ここに問題がございますので、これは非常に大事な問題でございますけれども、今後、相当きめの細かい検討が必要であろうと思います。
 それから、株式の含み益というものについてのお話がございましたけれども、これに対する課税というものは、まだ未実現の利益でございますので、これに対して課税をするかどうかということも税の基本に触れる問題でございまして、目下これは検討いたしておりますけれども、今日直ちにこの未実現の利益に対して課税をするかどうかということにつきましては検討を要する問題でございます。
 それから、交際費の課税とか、あるいはいろいろの引当金だとか、いろいろの準備金等に対しまして課税をするように、こういうお話でございましたけれども、この引当金というものは、これは会社の経理基準でも認められている。そして、法人税でもこれを認めておるというようなものでございます。準備金は準備金でまたこれは、法人の準備金というものは法人の利益を算定するに当たりまして、やはりそれによってこれを算定していくという制度でございますので、これを一概に全部廃止してしまうということは、これはちょっと無理なことであろうと思います。
 それから、医師の優遇税制につきましては、これは総理からお答えがございました。
 それから、一兆円減税につきましても、総理から詳細に御答弁がございました。
 以上、私に課せられました御質問に対してお答えいたしました。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○議長(保利茂君) 宮地正介君。
    〔宮地正介君登壇〕
#10
○宮地正介君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました所得税法の一部を改正する法律案並びに租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案について、総理並びに大蔵大臣に若干の質問を行います。
 私は、本日提出された租税二法について、結論的に申し上げれば、従来からわが党が国民生活を守るために、生きがいとバイタリティーある社会を目指して主張してきた減税や不公平税制の思い切った改革が全く実行に移されていないということであります。このことは、「協調と連帯」という総理の政治姿勢とも相反するものであり、国民の期待を裏切るものであります。
 最近のマスコミの世論調査において、発足当初の福田内閣に対する国民の支持率が二八%という、歴代内閣のうち史上最低であるというこの厳粛な事実を謙虚に受けとめ、反省する必要があると思うのであります。(拍手)
 以下、重要な問題点を申し述べ、質問をいたします。
 第一に、五十二年度の税制改正については、一兆円減税、借金財政からの脱出、不公平税制の解消が重要な国民的課題であり、また、現在の経済情勢から見て、税制の有効的、弾力的運用の本来のあり方を示すのが、われわれを初め、国民の要求であります。
 しかしながら、政府は、所得減税を超ミニ減税あるいは赤字国債の増額、また微調整の不公平税制に事足れりとし、当面する課題への回答を避けていると言っても過言ではありません。将来の税制のあるべき姿については、その糸口すら示そうとしていないのであります。
 このような問題の本質的な解決を避け、後回しにするということは、逆に国民経済の健全なかじ取りを深刻化させ、国民の不安を倍加させることになると思うのでございます。
 これは、たとえば五十二年度の赤字国債の発行が四兆五百億円であり、この赤字財政を解消するために、近い将来、政府は、現在の租税負担率をさらに三%の増税を考え、その裏づけとして付加価値税の導入を検討しているとも言われておりますが、わが国の国民所得の実態などから見るならば、まさに国民不在の政治的意図が隠されていると言っても言い過ぎではないと思うのであります。(拍手)「病には早期治療が最大の良薬」との格言のとおり、一日も早く不公平税制を是正し、国民本位の税制改革に踏み切り、その内容と計画を提示することこそが国民の期待にこたえ得る道であると主張するものであります。
 第二は、所得減税についてであります。
 総理、一兆円減税がぜひとも必要となった原因はどこにあるのでございましょうか。私は、政府の経済運営の失敗に最大の原因があると断言するものであります。(拍手)
 すなわち、五十一年度における中小企業の倒産件数は一万五千六百件にも上り、史上最大の不況をもたらし、さらに相次ぐ公共料金の値上げが引き金となり、高物価を来したのであります。さらに、減税ゼロの実質増税や社会保険料の引き上げなど、すべて政府の失政が国民生活にしわ寄せされ、実質所得がマイナスとなり、国民の家計はますます苦しくなってしまったのであります。
 この意味においても、政府は、国民生活を守るためにも、実質所得を保障する程度の所得減税を実施することは、総理の言われる「協調と連帯」を具体的に示す第一歩として必要なことではないかと思うのであります。
 しかし、政府の課税最低限一〇%引き上げの超ミニ減税では、賃金のベースアップがあれば直ちに実質増税となってしまうのであります。たとえば、五十年度の年収が二百万円の夫婦子供二人の標準世帯で試算いたしますと、ベースアップが五十一年五%、五十二年一〇%の場合、税金は六千九百円から一万六千三百円となり、九千四百円もふえ、その倍率は二・三倍になるのであります。また、両年度ともベースアップが一〇%の場合、税金は六千九百円から二万四千円となり、何と一万七千百円もふえ、倍率は三・四倍にもなるのでございます。
 このように、政府の所得減税の実態は、五十年度以降、賃金のベースアップがゼロという静止状態を仮定して初めて税金が軽くなるもので、その中身は実質増税にほかなりません。
 その上重要なことは、物価の動向についてその配慮は弱く、むしろ片手落ちになっており、物価調整減税とは言えないことでございます。
 消費者物価は、政府見通しでも五十一年度八・六%、五十二年度七・七%であり、その合計は一六・三%になります。比べて政府の物価調整は一〇・一%であり、物価調整とはなり得ないことは明らかであります。
 また、政府の物価見通しによっても、二百万円の所得を保障するためには、少なくとも物価調整額三十二万六千円が必要となるのであり、ここにわれわれが要求する一兆円減税の実施を望むゆえんなのであります。
 第三は、景気対策と所得減税の関係についてであります。
 私は、政府の公共事業拡大一本やりの景気浮揚策は、現在の稼働率が八七・一%、その上大きな需給ギャップがある現状、しかも、内容的にも生活基盤の拡充に比べて産業基盤の充実が優先されていることなど、基本的には高度成長期のパターンを踏襲するものであり、安定成長軌道への定着が要求される今日において、このような景気対策の手法はまさに時代逆行的なものと言わざるを得ません。(拍手)
 また、こうした景気対策に限界があることは、五十一年度の経済運営が期待したほどの効果が得られなかったことでも明らかであり、景気対策にきめの細かい運営という意味からも、所得税の大幅な減税や社会保障の充実が必要であります。
 第四は、租税特別措置法の改正及び不公平税制の是正についてであります。
 租税特別措置法の改正がいかに中途半端なものであるかは、昨年の改正に比べても項目数やその税収額が大きく下回っていることから見ても、明らかなことであります。また、利用状況から見れば大企業を優遇している各種引当金等については、全く手をつけようとさえしておりません。
 そこで、私は、このような不公平税制の解消こそ、五十二年度税制の最重要課題であると考え、租税特別措置の徹底した是正、貸し倒れ引当金、退職給与引当金、減価償却の縮小適正化、有価証券取引税の強化等を行い、一兆円減税を実施するとともに、赤字国債の発行を避けることを主張するものであります。
 第五は、政府が今回の税制改正で放置した社会的重要な問題についてであります。
 まず、昨年の企業倒産一万五千六百件のうち、上場会社はわずか二件であり、その大部分が中小零細企業であり、これらを守るための中小企業に対する税制の抜本的改革の必要であります。
 次に、高い家賃、返済に困る住宅ローンから住宅税制の改革であり、さらには、私立高校の入学一時金が平均四十五万円となっていることに象徴される学校教育費の高騰に対する教育費控除など、緊急に税制改正に盛り込むことを強く要求するものであります。
 私は、以上の観点から、総理並びに大蔵大臣に対し、次の七項目についてその所見を伺うものであります。
 まず第一は、租税二法について、撤回し、政府みずからの手で修正し、再提出する考えはないか。
 第二は、赤字財政から脱却するための税制改革の内容と計画を具体的に明示されたい。
 第三は、一兆円の所得減税の実施及びその方法について、低中所得者層の減税を厚くし、景気回復を図るため税額控除または戻し税方式の採用に踏み切る考えはないか。
 第四は、租税特別措置法の徹底した改廃など、不公平税制の是正を勇気をもって行うかどうか。
 第五は、法人税の各種引当金などの縮小適正化を行うべきと思うがどうか。
 第六は、不況から中小零細企業を守るため、中小零細企業の減税を思い切って実行する考えはないか。
 第七は、極度に家計を圧迫する住宅費及び教育費を軽減するための税制改革を断行すべきと思うがどうか。
 以上の点について誠意ある答弁を要求して、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕
#11
○内閣総理大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。
 今回の政府案はミニ減税であって、実質増税とも言うべきものではないか、こういうお話でございます。
 実質増税というのは何か誤解じゃあるまいか、そういうふうに思います。所得が上がりますれば、それにつれまして税率が上がるのでありまするから、これは当然増税になるわけで――増税というか納税額がふえるのであります。今度の税制はミニ減税とも言われまするけれども、その上がる額をもっと低くしよう、こういうことでありまして、これは減税は減税であるという点におきましては間違いはございません。(拍手)
 私は、皆さんから一兆円減税を行うべし、こういうお話を承りまして、私も私なりに「協調と連帯」、こういう立場からずいぶん考えたのであります。しかし、いまの財政の状態、これから言いますると、とても一兆円という多額な減税を行うことができない。金があるならば、もう職を求めておる人なんか満ち満ちておるわけですから、そういう人に職をつくる、これはやはり公共事業を興すにしかず、そういうふうに考えまして公共事業を行うということにしたのですが、それ以上の財源はなかなか見当たらないのです。(拍手)
 しかし、皆さんからそういうようなお話がありましたので、私も考えました。まあささやかと皆さんがおっしゃいまするけれども、ミニ減税とおっしゃるけれども、三千五百億円、地方を入れますると四千三百億円の減税を行う。そして、中小の所得者の負担を軽減するということを実行することにいたしたわけであります。
 いまお話しのように、これから赤字財政を脱却する、これはなかなか容易なことじゃないのです。この赤字公債だけをやめるということを考えましても、まだ二、三年はどうしてもかかりそうであります。そういうことを考えまするときに、一方におきましてわれわれは社会保障政策を進めなければならぬ、また、住宅だ下水道だ、社会資本の充実に努めなければならぬ。そういうことをまた考えまするときに、国の需要というものはますますふえるわけなんです。やはり国民に負担の増額を求めなければならぬというような状態でございます。
 そういうことでありまするから、そういう際に一兆円減税というようなこと、これは全く私には考え得られざることでございまするけれども、将来の税制計画につきましては、これはいま減税論がある、そういうような際でありますので、いまここで増税計画というようなことを言いましても、なかなかこれは御論議いただけない、こういうふうに思いますが、これから逐次検討してまいりたい、かように考えます。
 付加価値税を考えておるのじゃあるまいかというようなお話でございますが、どの税をどうするということは、ただいままだ結論を得ておりませんでございます。
 一兆円減税を行うべしという御議論につきましては、先ほども申し上げたとおりであります。私とても政治家です。一兆円でも二兆円でもやりたいです。やりたいけれども、国家国民のことを考えまするときに、さようなわけにいかぬ、かように考えるのであります。
 また、租税特別措置法を徹底的に整理すべきである、こういう御所見でございますが、これはお考えにつきましては私は同意見でございます。逐次現実的にその整理を進めてまいりたい、かように存ずる次第でございます。
 中小企業のための減税は考えられないかというお話でございますが、私は、いまとにかく中小企業につきましてはあの軽減税率を適用しておる、こういう状態でありまして、それ以上中小企業の税率の軽減ということはなかなか考えられないのじゃないか、そういうふうに思います。中小企業がいま一番求められておるのは何だというと、仕事でございます。その仕事を与えることを考えたい、かように考える次第でございます。(拍手)
 住宅費、教育費等について税制上何か考え得られないかというお話でございます。これは皆さんからそういうお話があるので、私も総理大臣就任以来特に考えたわけでございまするけれども、これは住宅費に軽減といえば特例になるわけです。あるいは教育費についてもそうなんです。特例は廃止せい、廃止せいとこう言われる、そういう中において、やはり税でそういうことを考えるよりは、歳出の方で私学の助成でありますとか、あるいは住宅ローンの金利の引き下げのための支出でありますとか、そういうことで考えた方が公正ではないか、こういうふうに考えましたので、税制にはこれを取り入れませんでしたということを申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣坊秀男君登壇〕
#12
○国務大臣(坊秀男君) お答え申し上げます。
 大体において総理大臣から御答弁がありましたが、私に残されておるのは、税額控除、戻し税の方式によって減税をしたらどうか、こういうお話のようでございますが、御承知のとおり、現在超過累進課税という方式をとっておるのは、これは所得控除ということと、まあ何と申しますか、その方式が不即不離の関係にある。そういうようなことから、これも直さずにあるいは戻し税、あるいは税額控除というものを適用いたしますと、所得の非常に下の方から累進度のカーブが非常に上がっていくというようなことがありまして、これはなかなか適当ではない、こういうふうに考えます。そこで、そういったような方式をとるのは、これは相当慎重に研究をいたしまして、無論大蔵省でも研究はいたしておりますが、そういう方式でもってやっていきたい。
 それからまた、戻し税ということになりますと、これは首尾徹底いたすためにはどうしても税でなしに、税の負担をしていないというような階層の方々に対しましては、これは予算の支出の上で何がしかの交付と申しますか、そういったようなことをやらなければ首尾一貫しないというようなことがございまするので、これは税の措置だけではなくて、歳出の措置ということも考えていかなければならないというようなことがありますので、これを総合的に考えていくためにはやはり相当の検討を要する。非常に大事な問題ではありますけれども、この点については相当考えていかたければならない、こういうことでございます。
 ほかには――大体私に残されたのは以上のようであります。(拍手)
    ―――――――――――――
#13
○議長(保利茂君) 高橋高望君。
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔高橋高望君登壇〕
#14
○高橋高望君 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま提案されております所得税法の一部を改正する法律案並びに租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案に対し、総理、大蔵大臣に若干の質問を行わせていただきます。
 私は、政府の述べるわが国経済が回復過程をたどっているとの考え方を否定するものであります。ほんの一部の業種に活況がありはするものの、実際問題としてふえ続ける企業倒産、そしてその倒産構造の変化、かつてのような放漫経営によるものではなくて売り上げ減による倒産の増加を見れば、あなた方が口になさる回復過程にあるとは、このことだけでも言えないと思うのでございます。(拍手)各種の指標も景気低迷を明らかにしております。
 総理にお尋ねしたいのですが、まず、あなたは昨年の経済施策の結果をどう考えておられますか。私たち民社党は、昨年度の予算編成に際して、景気の深刻さ、重大さを憂えて、いち早く五十一年度において大衆減税一兆円を提唱し、それによる景気刺激を訴えたことはまだお忘れにはなっておられないと思います。この要求に対して政府は、と言うより、実際には当時の経済責任者であったあなたは取り上げられなかったが、結果として出てきたものはどうでありましたか。十分に御承知のとおり、輸出の異常な好調に支えられて、と言うより、その輸出貢献産業の経営者すらあわてるほどの、いわば神風的な予期せざる状況によって、かろうじて年度目標五・六%を達成し得たのでありましょう。言葉を変えるならば、この神風が吹かなかったら、成長率は間違いなく二%台の成長にとどまった。また、このことは、過日の予算委員会において、わが党の河村委員の質問に経企庁長官もしぶしぶながらお認めになっておられるところでございます。神風に恵まれた、救われた、これが昨年の政府の偽らざる心境ではないのでしょうか。
 しかし、国民はそれでは余りにも不安であります。賢明な多くの国民は、今回の不況が何か不気味なものであることに気づいております。強いて歴史を振り返れば、一九二九年のあの世界不況の再現ではないかと恐れる者も出ているのでございます。政府の掲げる数値は努力目標値であってはならず、特に不況時にあっては、どんなことがあっても達成する最低限の数値であってほしいと思うのは当然の声でございましょう。総理、どうぞこの国民の声を改めてかみしめていただきたいと思います。(拍手)
 この立場に立ちますと、今年度の政府見通し六・七%は、私は不可能に思われてなりません。一体、昨年の年度中上昇率二%台に対して、五十二年度がどうしてこんなに大きな成長が期待できるのか、お尋ねをしたいのです。
 輸出面では、また設備投資面でも、それほど甘い環境ではございません。OECD全体の経済成長見通しですら、五%が三・七五%にダウンしているのですから、輸出が昨年ほど伸び得ないと見るのが常識でありましょう。神風は毎年は期待できません。ここに財政の果たすべき役割りが大きくクローズアップしてまいります。
 私は、民間部門に景気浮揚のリード役が期待できない以上、おっしゃるように、公共部門すなわち財政に期待せざるを得ません。それが、国税、地方税合わせても減税は四千三百億、あるいは百年一日のごとき公共事業中心主義、それも五十一年度の伸び率二一・二%をわずかに上回る二一・四%増では、政府の期待する景気浮揚の牽引車になり得るか、全く疑問であります。一般会計との関連を考えてみましても、一般会計が、五十一年度は、前年度当初比一四・一%増、公共事業費は二一・二%増であり、公共事業費は七・一ポイント上回っておりました。これに対して五十二年度は、それぞれ一七・四%増、二一・四%増で、四・〇ポイント上回るにとどまっております。表現を変えるならば、むしろ昨年の方が景気刺激型であったのです。それでも、実際の効果は余りなく、輸出の予期以上の増大によって、五・六%がやっと達成できたことを考えれば、昨年よりも比率として低い公共事業によって、果たして六・一七%が達成できるとお考えになれるのですか。
 さらに、私は、公共事業の質についても疑問が残ります。すなわち、公共事業の内容が高度成長時代と変わってきたことであります。十分御承知のように、かつては産業基盤投資が主流でありました。これによって製造業の設備投資が誘発されました。しかし、最近は公共事業が生活関連投資に重点が移って、設備投資の誘発効果が弱まってきていることを考えなければなりません。また、土地の値上がりによる買収資産の公共事業支出への圧迫、さらには貯蓄となって波及効果を弱める現実は、ただ単に工事の進展に伴う就労人口の拡大などと考える政府の姿勢だけで埋め切れるものではないと思われます。
 私は、改めて、公共事業よりも減税による消費の刺激をまず取り上げるべきであると思います。古い道学者がどう考えようと、現実にわが国にあっては、民間消費支出が国民総生産に対して六〇%に手の届くところまで達している以上、低迷が激し過ぎるのも経済を健全にするものではありません。しかも、消費は所得の関数であります。所得は企業利潤によって大きく支配されますから、消費低迷の原因の一つに、企業利潤の落ち過ぎも十分に考慮しなければなりません。このため、企業利潤を適正化するための景気政策を総合的にとる必要があり、特に景気のしわ寄せをもろに受けている中小企業に対し、格別の配慮が必要となると思われます。
 ここで、国民生活の現状について御一緒に考えたいと思います。
 昨年の国民生活の実態は、賃上げ平均八・八%にもかかわらず、消費者物価上昇率九%前後となっており、だれが考えても、賃上げは帳消しです。さらに、減税見送りによって実質増税となり、また、社会保険料の大幅引き上げや自動車税の引き上げ等を考慮すれば、勤労者の生活水準は一昨年より下回っております。国民経済がわずかでも上向きになっているにかかわらず、国民生活は昨年度は低下しているのが実態でありましょう。この状態を放置しておいてよいものでしょうか。物価調整減税だけでは実質の救済措置にはならないと思います。大体、物価値上がり分は減税で補給することは当然のことであって、改めて目玉にするようなものではないと思うのでございます。
 昨年、全国サラリーマンの平均収入世帯では、二十八万円が物価上昇で目減りしているのですから、それをわずか三千五百億円減税では政治にも行政にもならない、私はこう言いたのです。減税は景気回復に余り役立たない、総理あるいは政府の方は皆こうおっしゃる。それよりも公共事業に集中的に金を投入すれば効果も早いと言われます。しかし、大幅な減税をやったら、その金は宙に浮いているのではございません。消費に回って景気を刺激することは間違いなく、アメリカや西ドイツがその好例であることはもう十分に知れているところでございましょう。しかも、世界各国から、アメリカ、ドイツ、日本に対して、景気回復の先駆者たれと求められており、アメリカ、ドイツが大幅減税でこれに応じているのに、日本だけが公共事業のみを手段とするというようなことで国際的に協調できましょうか。当を得たものとは言えないのではございませんか。(拍手)
 ここで、現在の減税方法についてお尋ねをしたいと思います。
 限られた財源を減税に用いるのですから、その場合、当然中小所得者に厚くすることを考えるべきであります。ところが、所得税における諸控除引き上げ方式は高額所得者に有利な方式と言わねばなりません。たとえば、同じ一兆円減税を行うにいたしましても、旧来の政府方式では、課税最低限が、いまの百八十三万円から二百三十五万円程度に引き上がるにすぎませんが、税額控除方式にすれば、二百七十万円程度にまで引き上げられ、中所得者以下に有利な減税方法になります。これは政府の税制調査会においても、いまの人的控除方式を税額控除方式に変える点については、十分検討に値すると述べ、一年限りの時限的措置であれば可能であるという趣旨の答申を行っております。
 わが党は、この税額控除方式を本年度採用すべきであると思いますが、政府の御見解をお伺いいたしたく思います。(拍手)
 申し上げてまいりました質問の締めをいたしたいと思います。
 総理、今日に至るまで、いまだに公定歩合引き下げの発表もなく、大幅減税に対しても決断をなさらない。総理、重ねてお訴えしたいのです。一兆円の減税は、日本を支えてきた勤労大衆の声なんです。(拍手)ことしこそは実施してほしいし、また、しなければ悔いを千載に残すおそれがあります。決定には判断力を必要とすると同じ程度に勇気を必要とします。薬がまずくなければならない必要はありませんが、とかく良薬は苦いものです。同様に、決定が不愉快でなければならない理由はありませんけれども、しかし、大抵の効果的な決定はそう愉快なものではないようです。
 総理、わが党の提案を受け入れられる決断を期待して、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕
#15
○内閣総理大臣(福田赳夫君) お答えいたします。
 昨年の経済政策について御所見が述べられ、質問でございますが、昨年のわが国の経済は、世界経済があのような状態の中、つまり、石油ショック後三年目の年でありますが、大方の国が非常な混乱の状態である、その中においてわが日本、またアメリカ、ドイツ、この三カ国が際立った安定度を示したというふうに国際社会ひとしくこれを評価しておるわけでありまして、決して私は昨年の経済が悪かったというふうには存じません。ただ昨年は、経済見通しのとおり五・七%成長、これが実現される見通しでございますが、しかし、その成長が上半年に偏っちゃったのです。そこで、下半年になりますると、景気の停滞現象が生じてきておる。これは世界経済の状態、それもあるし、同時に財政特例法の成立の立ちおくれ、それから国鉄や電電の料金の引き上げ、そういうもののおくれ、また削減というようなこと、そういうことで停滞現象になったと私は見ておるわけでございまするけれども、そういう停滞現象を放置しておきますると、これは失速になるおそれなきにしもあらず、そういうふうに考えまして、いまここでてこ入れを必要とする、そのてこ入れといたしまして財政、これは補正予算です。それといま御審議を願っておりまする五十二年度の本予算、これが一体となってこれからの経済を順調な回復過程に持っていくものである、かように確信をいたしております。
 いま詳細に需要要因ごとにつきまして述べられましたが、公共事業費は今度は補正予算が一つあるわけなんです。それから同時に、五十二年度におきまして、政府の資本投資は実質で九・九%の増加と見ておるわけなんです。平均が六・七%の中で政府の投資需要、これが九・九%ふえる。これが何といっても機関車になる、こういうふうに見ておるのでありまして、輸出等につきましては、五十二年度はそう大きな期待をいたしておりません。着実な景気回復が実現されるし、それをやっていくことは国際社会におけるわが日本の責任である、かように考えておる次第でございます。
 なお、公共事業よりも消費刺激効果の多い減税をやるべきじゃないか、こういう御所見でございますが、定説として、公共事業は減税よりも二倍見当の需要創出効果がある、こういうふうに言われておるので、私どもはそういう考え方にのっとって今度の予算を編成する、こういうことでございます。
 企業、特に中小企業の利潤適正化のため景気対策を総合的にとるべきではないか、これはそのとおりに考えておりまして、官公需を発注するにおきましても、中小企業になるべくこれが回るように、また、政府金融機関の活動を通じまして、中小企業の助けになるようにという配慮をできる限りいたしておる次第でございます。
 最後に、一兆円減税を実施せよ、これは勤労大衆の声ではないかというお話でございまするけれども、私もそれをよく承知しております。承知しておりまするけれども、本当に親切に勤労大衆のことを考える、そういう場合に、私はその考え方には同調できない。いま財政が非常な窮乏な状態でありまして、先ほども申し上げましたが、これから二、三年の間に国民負担を三%ぐらいふやさなければ国の財政のやりくりができない、こういうような状態なんです。また、そういう状態でありまするから、当分の間、赤字公債を含めて多額の公債を発行しなければならぬ。その公債は一体だれが消化してくれるのですか。これが消化できなかったら、本当に日本社会の基礎を揺るがすようなインフレになってしまう。みんなそれは国民が貯金をして、そうして貯金を受けた金融機関が国民にかわって公債を買ってくださる、あるいは国民がじきじき公債を買ってくださる、それ以外に道はないのです。その国債を国民に、消化のために協力を願わなければならぬ。それはやはり国民が、何がしかの所得のうちからそういう協力をしてくださるわけなんです。そういう際に、さあ、景気をよくするためですよ、お使いください、政府はこういう政策をとったんですというような行き方は、どうも私は踏ん切りがつかないのであります。
 また同時に、アメリカ、アメリカといってアメリカのことをおっしゃいますが、アメリカは租税負担が三〇%と高いのです。わが日本は二〇%だ。そのアメリカにおいては減税ということが大きな意味を持ってくるし、また同時に、アメリカが減税しないかわりに今度は公共事業をするかというと、アメリカは社会投資がもう十分行き渡っておりまして、下水道にいたしましても、道路にいたしましても、あるいは住宅にいたしましても、公共投資というそういう種が種切れというか、そういうような状態でありまして、その辺は、これからいよいよ社会資本、われわれの生活環境を大いに整備しなければならぬという日本と非常に違うのです。
 それから、アメリカという国はあれだけの大きな国でありまするから、あるいはサンフランシスコで公共事業をやっても、すぐニューヨーク、ワシントンの景気には響かぬというような国柄でもあるわけで、アメリカ、アメリカといってアメリカに追随する、そういう姿勢はいかがであろうか、かように考える次第でございます。(拍手)
    〔国務大臣坊秀男君登壇〕
#16
○国務大臣(坊秀男君) 御質問に対しましては、やはり大体総理がお答えをいただきましたが、補足的な意味におきましてお答えをいたします。
 今度の減税は、これは実質所得の水準を侵すのではないか、こういうお話でございます。ところが、私どもの考えていま御審議願っております税制は、これは中小所得者の所得、これが、去年からことし、来年度にかけまして、実質的に減らないように、こういうような考えでもってやりました。そこで、標準家族の課税最低限が現行法によれば百八十三万円、それを一〇・一上げまして二百一万円ということにした趣旨は、これは御承知いただけると思うのです。
 ところで、実質所得というものはどういうことで決まってくるかといいますと、その人の所得とそれからそのときの物価の上昇、この二つが相関関係でもって実質所得が決定してくるということでございます。この実質所得がふえてきたものを、それに対して税がかかってくるということ、これを減税によって完全に調整しようということは無理なんですよ。それはこういうことを考えていただけばいいと思うのですよ。本年度三百万円の所得者があって、その所得者が五十二年度でも変わらないということになりますと、たとえば八・三%物価が上がりますと、この所得者は、去年からことしにかけまして二十三万円、これ、実質所得が減るということになるわけなんですよ。それに対しまして、この三百万円の所得者が五十一年度において払っておる所得税は八万円なんですよ。だから、その八万円が全部これは減税になりましても、目減りしておるのは二十三万円なんですよ。だから、税制でもってこの人の実質所得を、これの目減りを調整していくということは、これは困難なんですよ。無理なんです。しかしながら、われわれは中小所得者を何とかして負担を軽減いたしたい、こういうようなわけで、苦しい財政の中から今度の減税をあえて行った、皆さん方の御希望もあってこれを行った、こういうことでございますから、そこの点を御了承願いたいと思います。(拍手)
#17
○副議長(三宅正一君) 安藤巖君。
    〔安藤巖君登壇〕
#18
○安藤巖君 私は、日本共産党・革新共同を代表して、ただいま提案のありました所得税法及び租税特別措置法の一部改正ついて、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 国民はいま、戦後三十数年の中でも、深刻な不況の長期化、失業と中小零細企業の倒産の増大、農業、漁業の破壊の進行、物価の激しい上昇など、かつてない危機的状態に陥れられております。
 こうした事態が歴代自民党政府による大資本本位の高度経済成長政策の結果であることは、いまやだれの目にも明らかなところであります。
 ところが、福田内閣は、この国民的危機の根源であるこれまでの経済の枠組み、大資本本位の仕組みに全く手を触れようとしないばかりか、逆に幾多の公共料金の引き上げと福祉の切り捨てを行おうとしております。税制面でも事実上の増税によって一層国民に犠牲を押しつける一方、景気浮揚の名のもとにインフレを激しくする国債を一般予算の三〇%近くも発行することや、本四架橋三ルートを同時に進行させようとすることなどに典型的にあらわれているように、大企業優先の政策を変えようとはしておりません。
 わが党は、インフレを抑え、物価を安定させ、大衆減税を行い、実質賃金を引き上げ、福祉のための対策を強化することによって、国民の購買力を高め、国内市場の拡大を進めること、大型プロジェクト中心の公共投資を転換させて、生活基盤の整備、農漁業の再建、中小零細企業の振興に力を注ぐべきであることを一貫して要求してまいりました。そして、そのためには現在の大資本本位の税制、財政金融の仕組みを国民本位のものに抜本的に転換しなければならないと主張してきたのであります。
 わが党は、五十二年度予算について、社会保障の充実、地方財政の危機打開、公共料金の抑制など、生活安定と経済再建のための諸要求を政府に申し入れましたが、私はこの立場に立って、まず第一に、国民の減税要求をめぐる問題について、総理に質問をいたします。
 わが党は、国民の強い要望にこたえ、国民生活を防衛するために、五十二年度税制改正で夫婦と子供二人の標準世帯の所得税の課税最低限を、現行百八十三万円から二百八十万円に引き上げることを強く要求いたしております。自民党内閣は、不当にも今年度所得税の減税をいたしませんでした。その結果、事実上の増税となったのであります。五十二年度こそは大幅な減税をしてほしいというのが、全国津々浦々で起こっている国民の声であります。総理は、この国民の声にこたえるのかどうか、答弁を求めます。
 総理、あなたは減税をすると言いながら、出てきたのは、所得税でわずかに三千五百三十億円という、ミニミニ減税であります。
 たとえば、夫婦と子供二人で年収三百万円の家庭では、ことしの春闘で一〇%の賃上げがあった場合でも、所得税、住民税合わせて約二万円の増税となるのであります。これは決して減税ではなく、明らかに事実上の増税であります。総理は、この事実を認めるのかどうか、お答えをいただきたいのであります。
 わが党は、他の野党とともに、一兆円減税を強く要求をしているところでありますが、この要求はまさに圧倒的多数の国民の要求であり、いまや一兆円減税を要求する国会請願三千万人署名運動が全国的に強力に展開されているのであります。この要求にこたえることが、投資の流れを産業基盤優先から生活基盤優先に転換させることとあわせて、国民の消費購買力を増大させ、国民生活に基盤を置いた景気の回復を図る道であります。
 総理、あなたは去る二月十九日の予算委員会で、「国家国民のためになるならば、政府みずから予算案を修正することも当然ある」と答弁されているが、この国民の正当かつ切実な要求にこたえて、五十二年度一兆円減税をするのかしないのか、この際、はっきりとした答弁を求めるものであります。
 第二に、大企業、大資産家を不当に優遇する不公平税制を是正するかどうかという問題であります。
 現行税制のもとでは、東京都の調査によれば、所得税の実際の税負担率は、年所得一億円以上の大資産家がわずか二一・八%であり、月収三十万円弱の勤労者が二五%と、逆累進の結果が明らかであります。
 また、企業の実際の税負担率は、大蔵省の調査によっても、昭和四十九年度で資本金一億円以下の中小企業が三五・一%に対し、資本金百億円を超す大企業が三四・五%であり、ここでも逆累進の結果があらわれております。しかもこの傾向は、戦後二十数年間一貫して続けられてきているのであります。
 福田総理は、不公平税制の是正は賛成だと口では唱えていますが、今回提案された租税特別措置の是正は、全く見せかけのものにすぎません。
 大資産家優遇の悪名高い利子・配当分離課税も総合課税を先に延ばし、わずかに五%の小幅引き上げのまま固定化しています。また、大企業優遇の準備金、特別償却などの是正も小幅で、その上ほとんどが期限延長されております。さらに、わが党が繰り返し主張してきた引当金や配当にかかる優遇措置などには、根本的なメスが何ら加えられていないのであります。これでは逆累進の是正など、不公平の是正は全く解消されません。
 このような大企業、大資産家に恩典をもたらしている各種租税特別措置は、大企業に対する集積の利益とも言うべきであり、これに適正な課税をすること、せめて中小企業や一般国民の税負担率並みに、大企業、大資産家の税負担率を引き上げるべきであると思うがどうか、総理の明快な答弁を求めるものであります。
 わが党は、この不公平税制の是正をかねてから主張してきましたが、改めて次のことを提案いたします。
 まず、利子・配当の分離税率を当面五〇%にすること、この措置を実行に移すことは、総合課税移行の推進のてことなり、その結果課税の公平化は進み、単年度で約四千五百億円の増収となるのであります。
 また、重役減税と言われる給与所得控除の青天井をやめ、頭打ちを復活するとももに、不当に課税を免れているキャピタルゲイン課税にかえて、有価証券取引税を大幅に引き上げること、大企業の貸し倒れ引当金、退職給与引当金及び価格変動準備金の繰り入れ限度を二分の一に引き下げること、特に貸し倒れ引当金にあっては、都市銀行の貸し倒れ実績は昭和四十九年度で引当金合計額の千分の〇・〇二にすぎず、その不当性は、だれの目にも明らかであります。さらに、ほとんど大企業が使用している海外投資損失準備金を廃止すること、また交際費課税を強化し、支払い配当軽課措置及び受け取り配当益金不算入の制度をやめることは当然であります。
 福田内閣は、これら不公正税制の根本的な是正に真剣に手をつけず、減税には赤字国債の増発しかないと強弁しておりますが、わが党のこの提案を実行しさえすれば、これだけで二兆円近い財源が確保でき、国民の要求する一兆円減税が可能になるばかりか、深刻な財政危機を解決し、国民の生活不安を取り除き、経済再建の一歩を踏み出すことができるのであります。
 総理及び大蔵大臣が、わが党のこの提案を実行されるかどうか、誠意ある答弁を求めるものであります。
 第三にお尋ねしたいことは、中期税制改革に伴う財源計画の問題であります。
 福田総理、あなたが企画庁長官時代に作成した「五十年代前期経済計画」は、租税負担率を五年間で三%程度、社会保険料や地方税を含めると、国民一人当たりの負担を、現行三十五万三千八百円から八十万七千四百円へと四十五万円も引き上げる大収奪を進めようとしています。この新規財源として、昨年十二月に出された税制調査会の中期税制の報告で、付加価値税が有望な新税として検討されていることも周知のとおりであります。付加価値税に対して、世論の反対運動はますます高まっております。
 わが党は、最悪の大衆課税であるこの税に、断固として反対するものであります。
 政府は、政府税調の審議にゆだねるとして、付加価値税の導入について態度をいまだ明らかにしていません。政府税調の答申は今年末でありますが、このような国民に重大な影響を与える付加価値税の導入を本当にするのか、絶対にしないのか、この国会でその態度を明確にすべきであります。総理、大蔵大臣の明確な答弁を求めます。
 最後に、税務行政の民主化について、大蔵大臣に質問をいたします。
 三月十五日の確定申告を目前に控え、多くの国民から、税金は正しく公正に取るべきだとの声が高まっています。ロッキード事件で児玉の大型脱税が発覚し、また、田中角榮及び灰色高官が受け取った賄賂に対する課税がいまだに行われないなど、悪徳な者たちや高額所得者に不当に甘い税務行政が続けられている一方、中小零細業者には、わずかな申告差でも、単に税務署員の心証一つで、厳しい立入調査や質問検査、不合理な推計課税が行われております。このような不公正な税務行政が依然としてまかり通っていることは、断じて許されません。
 大蔵大臣、あなたは、国税庁がみずからつくった「税務運営方針」で述べるように、一、税務調査に当たっては、理由開示と事前通知の励行に努めること、二、所得税法の基本原則である納税者の自主申告の権利を完全に守ることを、この壇上で明言すべきであると思うがどうか、明確な答弁を求めます。
 わが党は、国民の要望にこたえて、一兆円減税の実現と大企業、大資本家本位の不公正税制の是正のために力いっぱい奮闘する決意を表明して、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕
#19
○内閣総理大臣(福田赳夫君) お答えします。
 今回の政府提案は、これは実質増税じゃないか、こういうお話でございますが、これは大変何か誤解をされているんじゃないか、こういうふうに思います。つまり、所得税は所得に一定の税率をかけるわけです。その所得がふえるのですから、一定の税率をかけますればこれは納税額がふえるに決まっているのです。それを私どもは、そういうふうな状態には、少なくとも中小所得者についてはならせないように、こういうことで今回御提案を申し上げておるわけでありますので、何とぞ誤解のないようにお願いをいたしたい、かように存じます。(拍手)
 一兆円減税につきましては、これは私が予算委員会において新自由クラブの田川委員に対し、私もこれは十分検討はいたします、皆さんの御意見も承ります、そうしてその結論といたしまして国家国民のためにそうすべきであるというならば、私は自説にこだわるというようなことはいたさないということをはっきり申し上げました。しかし、財政の現状、それからこれからのインフレは一体どうなるのか、あるいは世界の中におけるわが日本の立場、そういうことを考えるときに、私は、一兆円減税というこの考え方は、これは国家国民のためになるとは思えないということをはっきり申し上げさせていただきたいのであります。(拍手)
 また、安藤さんは、減税の財源があるじゃないか、法人の特別措置を廃止すればいいじゃないか、こういうお話でありますが、それは観念的には考えられます。しかし、この特別措置というものはそれぞれ理由があってできておるわけでありまして、これを一挙に廃止するということになりますると、かなり秩序に影響するという問題も出てきます。しかし、根本的に、法人税の方からよけい巻き上げてその額を個人の所得減税に充てる、こういうことになるわけなんですから、さあ個人の方で、あるいは一家庭、三万円、五万円所得があって、そしてそれだけの購買力がつくということは、それは考えられます。しかし、同時に見なければならぬのは、法人の方だって、この不況の中で増税になる、そういうことになりますれば、それだけ法人の方でまた所得が減るのでございますから、その辺は、そういうやり方は、私は景気対策の見地から見るときには妥当でない考え方である、さように考える次第でございます。
 その他は大蔵大臣からお答え申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣坊秀男君登壇〕
#20
○国務大臣(坊秀男君) 今度の税制改正は非常にミニ減税であって、もっと課税最低限を引き上げろ、こういうお言葉、たしか二百八十万円ぐらいにしたらどうか、こういうお話でございますが、いま世界の所得税の課税最低限、これを一覧していただけばすぐおわかりのことと思いまするけれども、日本の所得税の課税最低限が、今度の改正によりますと、一番緩和されておるということをひとつ御承知を願いたい、かように考えます。
 それから、所得が――これは総理、御答弁になりましたが、とにかく所得税というものは所得に対して課税するものですから、所得が課税標準になりますから、そこで所得が上がれば所得税が上がるんだということ、もうこの点はひとつ御了解を願いたいと思います。
 それから、利子・配当所得の優遇をもう撤廃したらどうか、こういうことですが、直ちにこれをやりますと大変な混乱が起こってまいります。いまのところ利子・配当の所得者について十分把握をしておりません。そのときにこれを廃止したら、これはえらいことになるということもひとつ御理解を願いたいと思います。
 それから、引当金だとか準備金の廃止ということにつきましては、先ほどお答え申し上げましたから差し控えさせていただきます。
 それから、今後の税制改正に当たりまして付加価値税をやるか、やらぬか、こういうお話でございますが、無論今後の税制改正に当たりましては、所得課税、それから資産課税、それからいまおっしゃった消費税と申しますか、間接税と申しますか、そういった税全般にわたりましてこれを検討していかなければならぬということはもう当然のことでございますが、しかし、そういった税の中で何をどう取り上げていくか、大事な材料ではございますけれども、何をどう取り上げていくかということは、今後の税制調査会の審議、検討ともにらみ合わせてこれを決めていきたい、かように考えております。
 それから、税は、税そのものも公正でなければなりませんし、税の執行もまた公正でなければならないということは、もう痛感いたしております。
 以上でございます。(拍手)
#21
○副議長(三宅正一君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#22
○副議長(三宅正一君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時三分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  福田 赳夫君
        大 蔵 大 臣 坊  秀男君
 出席政府委員
        内閣法制局第三
        部長      前田 正道君
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ソース: 国立国会図書館
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