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1975/05/18 第77回国会 参議院 参議院会議録情報 第077回国会 社会労働委員会 第5号
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1975/05/18 第77回国会 参議院

参議院会議録情報 第077回国会 社会労働委員会 第5号

#1
第077回国会 社会労働委員会 第5号
昭和五十一年五月十八日(火曜日)
   午前十時二十九分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月十四日
    辞任         補欠選任
     山本茂一郎君     森下  泰君
 五月十七日
    辞任         補欠選任
     星野  力君     野坂 参三君
 五月十八日
    辞任         補欠選任
     野坂 参三君     星野  力君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         戸田 菊雄君
    理 事
                玉置 和郎君
                丸茂 重貞君
                浜本 万三君
                小平 芳平君
    委 員
                石本  茂君
                上原 正吉君
                小川 半次君
                神田  博君
                高田 浩運君
                森下  泰君
                粕谷 照美君
                片山 甚市君
                栗原 俊夫君
                柏原 ヤス君
                沓脱タケ子君
                星野  力君
                柄谷 道一君
   国務大臣
       労 働 大 臣  長谷川 峻君
   政府委員
       労働大臣官房長  桑原 敬一君
       労働大臣官房審
       議官       細野  正君
       労働大臣官房審
       議官       吉本  実君
       労働省労働基準
       局長       藤繩 正勝君
       労働省労働基準
       局安全衛生部長  中西 正雄君
       労働省労働基準
       局賃金福祉部長  水谷 剛蔵君
       労働省職業安定
       局長       遠藤 政夫君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        中原 武夫君
   説明員
       法務省民事局参
       事官       吉野  衛君
       厚生省医務局国
       立療養所課長   吉崎 正義君
       労働省労働基準
       局労災管理課長  田中 清定君
       労働省職業安定
       局特別雇用対策
       課長       平賀 俊行君
       建設省計画局建
       設振興課長    中川 澄人君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律
 案(内閣提出、衆議院送付)
○建設労働者の雇用の改善等に関する法律案(内
 閣提出、衆議院送付)
○賃金の支払の確保等に関する法律案(内閣提
 出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(戸田菊雄君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 昨十七日、星野力君が委員を辞任され、その補欠として野坂参三君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(戸田菊雄君) 建設労働者の雇用の改善等に関する法律案を議題とし、政府から趣旨説明を聴取いたします。長谷川労働大臣。
#4
○国務大臣(長谷川峻君) ただいま議題となりました建設労働者の雇用の改善等に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 わが国の建設業は、国民経済に大きな比重を占めておりますが、雇用面につきましては出かせぎをめぐる問題を初めとして、数々の問題点が指摘され、早急に対策を講ずることが必要とされており、第七十四回臨時国会における雇用保険法案の御審議に際し、衆議院及び参議院の社会労働委員会でその旨の附帯決議をいただいているところであります。
 また、昨年には、関係審議会からも建設労働者の雇用改善対策の強化に関する建議等が政府に提出されております。
 政府といたしましては、このような背景のもとに、中央職業安定審議会に諮り、その答申に基づいて、この法律案を作成し提案した次第であります。
 次に、その内容の概要を御説明申し上げます。
 第一に、この法律案は、建設労働者について、その雇用の改善、能力の開発及び向上並びに福祉の増進を図るための措置を講ずることにより、その雇用の安定に資することを目的としております。
 第二に、労働大臣は、中央職業安定審議会の意見を聞いて、建設労働者の雇用の改善、能力の開発及び向上並びに福祉の増進に関する建設雇用改善計画を策定することとしております。
 第三に、建設労働者についての雇用管理の改善のための措置を講ずることとしております。
 その一は、建設事業の事業場ごとに、雇用管理責任者を選任させ、現場での雇用管理を適正に行おうとすることであります。
 その二は、建設労働者の募集を行う場合に、一定の要件のもとに公共職業安定所長に届け出をさせることにより、建設労働者の募集活動の適正化を図ることであります。
 その三は、建設労働者の雇い入れに際し、雇用期間、仕事の内容などを書いた文書を交付させ、雇用関係の明確化をすることであります。
 その四は、下請関係が複雑な建設工事において、元方事業主がその現場で建設労働者を雇用する関係請負人の氏名、作業期間等を明らかにした書類を備え、下請の雇用の実態を把握するとともに指導援助に努めるようにすることであります。
 第四に、政府は、雇用保険法による能力開発事業及び雇用福祉事業として、建設業の事業主に対して建設労働者の技能の向上、研修の実施、作業員宿舎の整備改善などについて助成を行うこととし、雇用促進事業団において、これらの助成事業のほか雇用管理研修の実施及び雇用改善指導員による相談業務を行うこととしております。
 また、これらの事業に要する費用に充てるため、建設業の事業主から徴収する雇用保険の保険料率を千分の一引き上げることとしております。
 なお、この法律案は、昭和五十一年十月一日から施行することとしておりますが、雇用保険の保険料率の引き上げに関する部分は、公布の日から三年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。
 以上、建設労働者の雇用の改善等に関する法律案の提案理由及びその内容の概要につきまして御説明申し上げました。
 何とぞ御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
#5
○委員長(戸田菊雄君) 以上をもって趣旨説明の聴取は終わりました。
    ―――――――――――――
#6
○委員長(戸田菊雄君) 賃金の支払の確保等に関する法律案を議題とし、政府から趣旨説明を聴取いたします。長谷川労働大臣。
#7
○国務大臣(長谷川峻君) ただいま議題となりました賃金の支払の確保等に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 賃金は、労働契約の基本的な要素であり、また、労働者とその家族の生活の源資でありますから、賃金未払いという事態は本来起こってはならないものであります。そのため、労働基準法におきまして、使用者の賃金支払いについて各種の規制を加え、その履行について労働基準監督機関が監督、指導を行ってきたところであります。現に、それによって解決された賃金未払い事案も少なくないのでありますが、企業の倒産により事業主に支払い能力がない場合は、どうしても解決ができなかったのが従来の実情であり、これに対する救済措置の創設が必要であるとされてまいりました。
 特に、第七十四回臨時国会における雇用保険法案の御審議に際し、中小企業の倒産による不払い賃金救済制度の確立について、衆議院及び参議院の社会労働委員会におきまして、附帯決議がなされた経緯もあり、また、昨今の景気の停滞は、その期間が長く、景気回復の足取りが弱いこともあって、企業倒産及び賃金未払いの発生は依然として高水準で推移しているという実情にあります。このため、政府といたしましては、この際、賃金の支払いの確保等に関する諸般の措置を講ずべきであると考えた次第であります。
 そこで、まず、企業の倒産に伴う未払い賃金の救済措置を創設することとし、あわせて、賃金の支払いは本来事業主の基本的な責務であることから、賃金支払いについての規制を民事的にも刑事的にも強化するとともに、事業主の責任で退職手当の未払い等を予防するための措置を講じさせる等、賃金の支払いの確保等に関する所要の施策を展開することとし、中央労働基準審議会にもお諮りした上、具体案を取りまとめ、ここに賃金の支払いの確保等に関する法律案を提案いたした次第であります。
 次に、この法律案の内容の概要を御説明申し上げます。
 第一は、貯蓄金及び退職手当の保全措置でありますが、これは、企業の倒産により、貯蓄金の返還不能、退職手当の未払いという事態が生ずることを防止するために、事業主に対して、所要の保全措置を講じさせようとするものであります。
 第二は、退職労働者の賃金に係る高率の遅延利息制度の創設であります。
 すなわち、事業主が退職労働者に賃金を支払わなかったときは、所定の方法で計算した高率の遅延利息を支払わなければならないこととしております。これは、賃金未払い事案のうち、その大部分を占める退職労職者に係る賃金未払いについて、民事的側面からその支払いの促進を図ろうとするものであります。
 第三は、未払い賃金の立てかえ払い事業の創設であります。
 企業の倒産により事業主から賃金を支払われない労働者に対して、未払い賃金のうち一定の範囲のものを事業主にかわって立てかえ払いをすることとしたものであり、政府は、この事業を今国会に提案している労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案による労働福祉事業として行うこととしております。
 なお、未払い賃金の立てかえ払い事業によって立てかえ払いされた賃金につきましては、今国会で改正されました租税特別措置法において課税上の特例措置が講じられることとされております。
 そのほか、この法律案において、船員につきまして所要の特例措置を規定しますとともに、その附則において、労働契約の締結に際し、賃金に関する事項については所定の方法により各人に対して明示することを義務づけ、さらに、賃金未払いに対する罰則を強化するため、労働基準法等において所要の改正を行うこととしております。
 以上、この法律案の提案理由及び内容の概要につきまして御説明申し上げました。
 何とぞ御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
#8
○委員長(戸田菊雄君) 以上をもって趣旨説明の聴取は終わりました。
 労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案、建設労働者の雇用の改善等に関する法律案及び賃金の支払の確保等に関する法律案を便宜一括して議題といたします。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#9
○片山甚市君 労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案に関してまず質問に入りたいと思います。
 御承知のように、業務上の労働災害についての補償についてでありますが、その責任というものは労働者側にあるのか、事業主あるいは使用者に全面的にあるのか、この責任のあり方についてまずお答えを願いたい。
#10
○政府委員(藤繩正勝君) 労働災害につきましてその責任がどこにあるかというお尋ねでございますが、御承知のように労働基準法におきましては労働災害に対しまして事業主のいわゆる無過失賠償責任というものを明らかにいたしておりまして、事業主が全面的にその責任を負うということを明らかにいたしておるわけでございます。
#11
○片山甚市君 そういたしますと、当該労働者が働けなくなった、そういうことから療養を続けなければならない、または労働の損失が起こる、そういうときにはたとえそれが生涯にわたることがあってもその責任は使用者が負うというように、事業主が負うというように考えてよろしゅうございますか。
#12
○政府委員(藤繩正勝君) 一般に災害を起こしまして、民事的に言えば債務不履行、あるいはむしろ不法行為というような形になるわけでございますが、その場合に、責任の有無を問わず事業主が責任を負うということで、先ほど申し上げましたような無過失賠償責任という理論が打ち立てられまして、それによって現在の法制ができておるわけでございます。ただ、問題はその責任がどの範囲に及ぶかという点でございまして、御承知のように労働基準法では必要な補償を規定いたしておりますけれども、非常に長期にわたるような療養の場合には、三年たって治らないというようなときには千二百日分の給付をいたしまして打ち切り補償をするというような一応の限度が設けられておるわけでございます。それがいわゆる無過失賠償責任の限度であるということでございます。
#13
○片山甚市君 そうすると、労働災害についても一定の期限が来ればその責任が解除される、こういうことで、三年ということで千二百日、こういうものによって事業主は責任がない、こういうように考えてよろしゅうございますか。
#14
○政府委員(藤繩正勝君) およそ不法行為に基づく責任につきましては、それぞれのケース、ケースによりまして、どこまで責任が及ぶかということは、最終的には訴訟になりますれば裁判の判断にゆだねられるわけでございますけれども、労災補償制度というものは、そういった責任の存在というものを一々吟味することなく、およそ職場において業務上の業務に起因して発生しました災害につきまして、一定の補償をするということでできました制度でございます。そこで、いま申し上げたような限界が設けられておりますけれども、個別、個別につきましてはなおそれ以上に責任が及ぶ場合もございましょうし、あるいはそこでとどまる場合もございましょうが、それは一般に労使それぞれの間において民事的に処理されるべき問題である。公的な制度としては一応のそういう限界があるということを申し上げたわけでございます。
#15
○片山甚市君 そういうことは、中小企業あるいは零細企業などがそういう事件が起こる。企業の支払いとしてのいわゆる補償を行っていくというときに、これが法律ができた理由というのは、全般的にそういう労働災害についての補償制度を法によって守ろうということで、個別企業を超えて労働者保護と、こういうように理解をしてよろしゅうございますか。
#16
○政府委員(藤繩正勝君) まさに先生いま御指摘のように、労働基準法では個別の事業主に責任を課してはおりますけれども、実際問題として特に中小企業のような場合には、ケースによりましてはなかなかその補償責任を全うできないという事例も起こり得るわけでございます。そこで、労働基準法発足と同時に、戦前からある程度ございました制度を継承いたしまして、これとうらはらに強制保険制度による労災保険というものが発足をいたしたわけでございます。そしてその後適用範囲も拡大され、また補償責任の補償の対象もいわゆる基準法の補償を超えて、年金化あるいは特別加入、通勤災害というようなふうにだんだん拡充をしてきて、おっしゃるようにできるだけ手厚い保護を実現できるようにこの制度が改善を積み重ねてきたということでございます。
#17
○片山甚市君 そういたしますと、いままでの労災に対する補償を改善するために今回提案をされたというふうに理解してよろしゅうございますか。
#18
○政府委員(藤繩正勝君) 結論はもとよりそういうことでございます。ただここ数年改正を積み重ねてまいりましたが、何と申しましても従来は給付水準をいかにして国際的なレベルに近づけるかというところに焦点がございまして、御承知のように昭和四十五年の改正、それから四十九年の改正というようなことが積み重ねられておりますけれども、ILO百二十一号条約の水準、さらには百二十一号勧告の水準というようなことで水準を上げてまいりました。今度も労災保険制度の改善でございますが、今度は焦点を水準のレベルアップよりも、たとえば年金受給者の扱いとか、あるいは長期傷病者の取り扱いとか、そういった観点、あるいは疾病の予防なり、社会復帰なり、労働条件の改善なり、労働災害をめぐります諸条件の改善というような点に重点を置けるような、そういう制度改善を今回御提案しているわけでございます。
#19
○片山甚市君 そういたしますと、ILOの精神に基づいていままでもやってきたと、こういうふうにせんだっての委員会と同じように御答弁がありました。そこで、日本の勤労者と称するのは大体三千六百万人ほど賃金労働者はおることになるんですが、そのうち千二百万人ほどが組織労働者と聞いております。ここで労働組合を結成しておる者たちが労働災害に対してこのような補償の関係については十分な水準を保つためには労働協約というようなもので保障されることが当然ノーマルな形だと省は考えられますか、政府は。いかがですか。
#20
○政府委員(藤繩正勝君) 労働条件はおよそ労使が、特に組織労働の場合、自由な団体交渉を通じましてその結実を協約の形にいたしましてこれを向上させていくというのが最もオーソドックスないき方でございます。したがいまして、およそ労災に限らず、労働時間、賃金その他そういった手法がとられるわけでございますけれども、いま先生お述べになりましたように、組織労働は全体の約三分の一でございますから、必ずしもそれだけで十分な労働者の地位の向上、保護が全うされないということから、国は別に最低基準としての労働条件を労働基準法その他で明らかにいたしまして、これをいわば権力的に事業主に守ってもらうというような形をとりまして、最低基準を確保するということはこれは言うまでもないところであります。労災につきましても、先ほど申し上げましたように、少くとも当初は労働基準法が最低基準として設定しているものを保険システムによって支えるということで出てまいりました。その基本的性格は今日もいささかも変わっておりません。さらにそれを上回るいろいろな改善について、年金とか通勤災害というものをこの制度でやってきたということでございます。しかしそれぞれの個々の労働者あるいはその組織が事業主と団体交渉をされまして、より高い水準を協約の形で結実させる、話し合いがまとまってそうなるということはこれは大変望ましいことだというふうに思っております。
#21
○片山甚市君 労働組合を持っておるところが当然このような業務災害上に関する補償、こういうことを協約を持つことは当然だ、こう申し上げるのは、やはり労使関係を安定させる、こういう意味においても大切だと思いますし、それは一つの法を制定する場合の基準として、いわゆる物差しになる。組織労働者の置かれておる企業というものは一つの社会の中核をなしておりますから、残りの三分の二になる日本の国にありますところの組織のないところに対して法が全面的に保護をする基準を示して労働災害に対する保護をするものと、こういうように理解をしておりますが、よろしゅうございますね。
#22
○政府委員(藤繩正勝君) 労災保険の場合は御承知のように強制適用でございます。しかも年を置いてその適用範囲が拡大をされてまいりまして、昨年からはごく一部を除きましていわゆる全面的な適用が実現したわけでございます。しかしながら今日、公務員関係は別の体系になっておりますし、それから三公社は国の事業ということでこの労災保険の適用はございません。そこで主として三公社の労使関係におきまして、いま先生がおっしゃいましたような労働協約による災害補償制度というものが実現をいたしておるわけでございます。
 そこで一般論といたしまして、およそいろいろな労働基準につきまして、労働組合と事業主との間の協約によって広くいろいろな水準が設定され、それが拡張適用され、さらにそれが成熟をいたしまして公けの制度になっていくということは、これはオーソドックスないき方であろうというふうに思います。この強制適用でございます労災保険制度におきましてもそういった意味も含めましてこの制度の改正あるいは運営につきましては、労・使・公益三者構成の労災保険審議会というものが設けられておりまして、そこでいろいろ論議をされまして進められるわけでございます。今度の改正案も三者の一致した建議、答申をいただいて今回国会にお出しをしておる、こういうわけでございます。
#23
○片山甚市君 労・使・公益三者の構成で今日の基準がつくられておる、しかも、今回改正されるに当たりましての問題として、一年半たちますと傷病補償金が年金制度に切りかえられることになりました。そうすると、三年たつと自動的に企業が解雇することができるようになったということで非常に心配をしておるんでありますが、今回の改正は年金制度をつくることによって解雇を自動的に認めることになったのですか、お聞きをいたします。
#24
○政府委員(藤繩正勝君) いま先生がおっしゃいましたところは、従来の長期傷病補償給付、今度の改正案の傷病補償年金にかかわるところであろうかと思います。通常、この労働災害の場合は、まあ職業性疾病の場合でもそうでございますけれども、被災者が医療機関に行きまして、そして療養をする、療養をするために働くことができませんから、その間賃金が得られないのでその措置をする必要があるというようなことから、療養給付あるいは休業補償給付というものが支出されるわけでございますけれども、統計的に言いますと、一年で約九七%程度の方が治って、そこでこの対象から去っていかれるわけでございます。問題はごくわずかでございますけれども、三年たってもなお治らないという方々がおられる、片方、非常に重篤な災害を受けられまして、一応症状が固定して治癒はいたしますけれども、足を失ったとか手を失ったとか、そういうような非常に重篤な状態で障害が残りました場合、これは障害補償年金という形で年金が別に出る、亡くなられました場合には遺族補償年金が出る、こういう体系になっております。そこで問題は三年たってなお治らない場合、しかも治らないわけですから障害補償というわけにいかない。そこで、これをどうするかということで年金制度の導入のときに、現在の長期傷病補償給付という制度ができまして、そして三年たって治らない場合に、政府が必要と認めるときはこれに対して年金を支給する、と同時に、その場合には同法十九条の規定によりまして、労働基準法上打ち切り補償を払ったものとみなされて解雇制限が解除されると、こういう制度であったわけです。
 お尋ねの点は、今度その長期傷病補償給付というものが傷病補償年金というものに変わりまして一年半の時点でそのような移行が行われると、こういう制度になったわけでございますけれども、しかしながら、解雇制限にかかわるところはこの条文にも明らかなように、従来どうり三年ということになっておりますので、その点は従来と変りがないということ。それから、長期傷病補償給付に移ります場合の基準は従来通達で出しておりましたけれども、今度傷病補償年金に移ってきます場合の廃疾基準というものもその通達の趣旨と全く同じものを今回つくってまいろうと考えておりますので、基本的にはこの制度の改正によって、いまおっしゃいましたような心配はないというふうに私ども考えておるわけでございます。
#25
○片山甚市君 従来、企業によりますと、三年たちましても引き続き雇用関係というか、業務関係を継続する向きもありましたが、今回の改正では、労働省としては年金制度をするんだからできるだけ早く解雇をしてやれと、こういうように大臣の方はおっしゃるようになっておるんでしょうか。
#26
○政府委員(藤繩正勝君) いま御説明しましたように、従来の長期傷病補償給付の制度におきましても、三年たってそういう措置に移れば解雇制限は解除されるわけです。今度も三年という点では変わりがございません。そこで、解雇制限規定が解除されたからといって実際に解雇をするかどうか、これはもう、いわゆる労使関係の問題でございまして、基準法ではそれを禁止しないぞというだけのことでございます。従来も三年たちましても企業によりましてはなおその雇用していかれるということも多々ございました。それはそれぞれの現場における話し合いによって円満に処理されるということが望ましい。今度の制度も全くその点は変わりませんので、これができたから、そこがどんどん、解雇が進むと、こんな懸念は全然私どもないと考えております。
#27
○片山甚市君 労働者が大変不安に思っておるのは、この制度ができるために新しく解雇が始まるんではないか、そういう不安からたくさんの質問を寄せられておりますから、私は念を押したのですが、先ほど労災に関して、業務災害に関して協定を結ぶ、労使協定を結ぶというのは、内容の問題は、それも積み上げる等のこともありましょうが、身分の問題や雇用のいわゆる終了の問題に関する話し合いというものが企業と労働組合、団体との間に取り決められていくことは望ましい。ですから、そういうことについての、労働省としてそれを進めるような指導があるかどうか、こういうことを先ほど聞きたかったのですが、労使間の安定が増すためにも、私としては特にそのことを要望しておきたいと思います。どうでしょうか。
#28
○政府委員(藤繩正勝君) 労使関係におきましては、先ほど申し上げましたように団体交渉を通じ、そしてその結果が協約として結実されて、それが遵守されるということは大変望ましいことでございます。ただ問題は、労使関係に政府が行政指導という形で介入をしていくということは、一般論としては余り好ましいことではない。春闘の場合にも、盛んに労働大臣にもそういう趣旨の御質問もございましたけれども、やはり原則としては、それは一応の線を引いておくべきだというふうに思います。ただお尋ねの点は、この労働災害という非常に深刻な問題について、そして特にケースによってはしゃくし定規にいかないというような場合、いろんな問題が生ずると思います。労使で十分話し合いをしていただきたいと思いますけれども、必要があれば、労働基準監督機関としても必要な助言、援助というものはこれをするにやぶさかではない。しかし、一般論としてはできるだけ自由な労使関係というものは政府の介入を避けた方がいい、こういうふうに考えるものでございます。
#29
○片山甚市君 私は労務災害、業務上の災害というものは一生涯雇用主や使用者が負うつもりで、ちゃんとせなきゃならぬことだと思う。先ほど、法律的に免除をしてあるということと、道義的にですね、そういうことについての配慮をすることとは背馳をしない、こういうように思いますから、これは意見を述べます。
 そこで、傷病補償年金に切りかえる場合の廃疾の範囲、一級から三級でございますが、この人たちにとっての給付内容については従来よりも悪くなるのかよくなるのか、すでに御説明はあるのですが、正式にお答えを願いたい。そして、年金に切りかえられるということは、企業との雇用関係が、先ほどから申したように不安定になる、年金に切りかえられることによって、先ほど三年たてば自動的に免除になる、こういうことになる不安はやはり非常に労働者にとって心配でありますから、先ほど申しましたように一級から三級の人たち、年金に切りかえる人たちの給付状況は従来と比べてどの点で改善される、こういうことになりますか。
#30
○政府委員(藤繩正勝君) 従来の長期傷病補償給付は、休業補償と同じように給付基礎日額の六〇%ということを基準にいたしております。今度はこれをそれぞれ一級から三級に分けまして、廃疾等級一級の者は八六%、二級の者が七六%、三級の者が六七%と、こういう給付率にしたいというふうに思っているわけでございます。
 そこで、それぞれ改善になるわけでございますが、問題は、従来この長期傷病補償給付六〇%に実は特別支給金というものが二〇%上乗せになっておりまして、実質的には八〇%であったわけでございます。そこで八〇%と比較をいたしますといささか問題が出てくるということでございますが、今度別にお願いをしております制度、今回お願いをしております制度改善に関連をいたしまして、いわゆるボーナスというものを特別支給金の形で私ども支出をしていきたいと思っておりますので、そこで今度の傷病補償年金はただいま申し上げましたような率でございますが、それにボーナスが上乗せになるということから、必ずしも従来の水準より下回るというようなことはないものと思っております。しかし、ボーナスというものは各事業場におきまして、それぞれケース、ケースによって違いますから、そこでもしそういうようなことが起こります場合には、別途特別支給金の形でその埋め合わせをしたいということを考えておりまして、少なくともいままでよりいかなるケースの場合においても下回るというようなことにならないように措置をいたしたいというふうに思います。
 解雇制限との関連は、先ほどもお伝えしましたように、御心配のないような措置をいたしておるつもりでございますが、運営につきましても十分慎重に対処したいというふうに思います。
#31
○片山甚市君 そうすると、法定の方は大体下がるが、行政措置の方がいわゆる福祉事業の方で支払うといいますか、特別加算をする方で埋め合わせをする。法律で決めたものは従来よりは悪い、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
#32
○政府委員(藤繩正勝君) 逆でございまして、法定のものは従来よりよくなるわけでございます。つまり従来は六〇%でありましたものが、いま申し上げましたように最低で六七、最高は八六まで行くわけでございます。ただ、特別支給金という措置が従来もありました。今度もありました。そこで話が複雑になるわけでございますが、少なくとも一般的には非常によくなる。ただ、ケースによっては問題がないわけでもないが、その点でも従来のものは十分補償できるような措置をとりたいと、こういうわけでございます。これはそもそも従来の制度がどっちかといえば休業補償の延長のような考え方でございました。そのために非常に一律でございました。しかし、先ほども言いましたように、普通の場合には一年で九七%の方が治癒されるというような実態から見ると、むしろこれはどっちかといえば障害補償年金の体系にさや寄せをすべきだ、そうすればいま申し上げたように、重篤の者にはより手厚い給付が可能になるわけで、そういうことで審議会でも非常に御議論がございましたけれども、今度の傷病補償年金、こういう制度に割り切った次第でございます。
#33
○片山甚市君 そういたしますと、一級から三級までの者については、給付は従来と変わらないし、悪くなってない、こういうような形で具体的な措置をとろうと、こういうふうにお聞きしました。
 そういたしますと、年金の切りかえに該当しない四級以下の人のことについてでございますが、これは従来とどのように変化なくやれますか。
#34
○政府委員(藤繩正勝君) 廃疾等級三級以上の者、三級までの者を傷病補償年金にするわけでございますから、それ以下の者で通常の場合は大体一年で先ほど申しましたように、九七・三%の方が治癒されるわけですけれども、例外的に労働が全くできないというようなほどではないが、しかしもう少し労災補償を続ければ治癒にこぎつけられるというような者があるわけです。それがいま先生がお尋ねの点だと思います。これは従来もそうでしたし、今度も必要な療養補償を続ければ――療養のために働くことができない、賃金が得られないというようなときには休業補償を出すという従来のとおりやってまいるわけであります。
#35
○片山甚市君 そういたしますと、休業補償プラス療養補償については継続をされて支給されるというように理解してよろしゅうございますか。
#36
○政府委員(藤繩正勝君) いまお尋ねのケースについてはさようでございます。
#37
○片山甚市君 そういたしますと、そのような者が打ち切られるときの状態はどういうときに、いま申し上げた休業及び療養補償についての打ち切られるときはどんな条件のときに打ち切られますか。
#38
○政府委員(藤繩正勝君) 打ち切られるというのは補償を打ち切られるという意味だと思います。解雇の意味ではないと思いますが、およそ労災補償につきましては、そのつどといいますか、症状がずっと変化するわけでございますから、その変化を常時見ておりまして、そのつどそのつどの症状に適応した最も適切な補償をするというのがこれは当然のことでございます。したがいまして、療養が必要ならば療養補償をするし、休業が必要ならば休業補償をしていくということでございますから、先ほど来重ねて申し上げておりますように、大部分の者は一年を待たずして治癒をしていくというのが現状でございます。しかし、場合によってはいまのようなケースも出てくる、それはやはり治癒していけば、それはもうそのときで労災の対象にならない。治癒というのは、言うまでもなく、症状が固定して、これ以上療養をしても治療効果が認められないというようなぎりぎりのところまで含めまして、いわゆる病気が治ったという場合に、これは治癒として認定をされるわけでございます。
#39
○片山甚市君 どうもわかったようなことばっかり聞くのですが、わかったようなことがみんな心配で、どうもこの法律ができれば首を切られる首を切られるといって、えらい心配をしているのですよ。本当なんです。そうして、とにかくこれは首切りのためにつくったし、年金をこしらえることによって排除されるのじゃないか、あしたでも労災の人たちが、職場からといいますか、生活の道を閉ざされるような心配をしておりますから、非常にお聞きになる方から見ると、そんなことも議員は知らないで聞いておるのかと思われるほど聞かなければならぬ。私の部屋などに来て、いろいろお聞きしますが、どうもそういうような感じを受けますから、明確にお答えを願って、演説はいたしませんから、一つ一つ答えてもらいたい。
 そこで年金に切りかわった者が今度、動けません、介護が必要でした、常時必要でありました人がよくなります、こういうことになったときに、再び休業補償や療養補償に戻る、症状がよくなれば戻るというお話であったと思いますが、そのように考えてよろしゅうございますか。
#40
○政府委員(藤繩正勝君) 従来も長期傷病補償給付に移行しましても、当然人によってはその後症状が軽くなりまして、年金は必要としない、しかし治癒までいかないというときには療養補償給付と休業補償給付を差し上げる、こういう体系になっておりまして、そういう通達がきちんと出ております。ただまあ実際問題として、それはレアケースであったということでございます。その点はしかし今度も全く同じでございまして、傷病補償年金に移られましても同じようなケースの場合には同じように療養補償給付、休業補償給付に移るということがあり得るわけでございます。
#41
○片山甚市君 今回、年金に関してはスライドの措置をとっていただいて一〇%の変動があればそれを変えていただくことになったのですが、休業補償の給付基礎日額のスライドについては従来どおり二〇%になっております。御承知のように厚生年金は五%、労災年金は今度の場合、年金の場合は一〇%でスライドするのですが、この休業補償給付がなぜ二〇%ということで据え置いたのかということについてお答えを願いたい。
#42
○政府委員(藤繩正勝君) 厚生年金のお話も出ましたけれども、御承知のように、厚生年金は物価スライドでございまして、労災の場合には賃金スライドということでどっちがいいかという御議論も審議会でございましたが、労災保険の場合は労働者の稼得能力を補てんするという制度の原則に照らしまして、やはり賃金スライドをすべきであろうという意見が一致いたしまして、そういう措置をとったわけでございます。年金につきまして二〇から一〇に引き下げたわけでございます。
 そこでお尋ねの点は、年金についてそういう措置をとったならば、なぜ休業補償給付についてそれをしないのかというお尋ねでございますけれども、休業補償の場合は年金とは相当性格を異にいたしておりまして、先ほど来申し上げておりますように、通常、けが、疾病というふうな場合には一年未満で大部分の者が療養し、そうしてそのために賃金が得られないときには休業補償が出て、そうして一年未満で治っていくという形でございます。一言でいえば非常に短期的な給付というのが休業補償の性格でございます。
 そこでそういう非常に短期的な制度だということが一つと、それからもう一つは、休業補償の性格は療養のために働くことができない、そのために賃金が得られない、だからそれを補てんするということでございますから、できるだけ身近な類似の労働者の賃金というものを参考にして、それに見合った補償をすると、こういうことでございますから、御承知のように事業場単位あるいは物によっては産業別単位ということで、年金のように全産業共通の指標によってスライドするというよりも、身近なものによってできるだけ類似の労働者の賃金に近いものを補償すると、こういう制度をとっておるわけでございます。そこで、そういう制度の場合にそういうものを景気変動や季節変動、あるいは事業経営上の事情に伴う賃金の一時的、短期的な変動ということもあり得るわけで、特に産業別あるいは事業場別というようなときには場合によっては賃金が下がる、特に時間外労働の場合の変化というようなことで下がるというようなこともありますので、やはり余りきめ細かくスライドをさせるということは不適当であるということが基本的にございます。そういうことで今回は現状のままに据え置いたわけでございますが、なおこの点については十分御議論もいろいろありましたし、それから先生御承知のように、この休業補償のスライドは労働基準法に規定がございます。そこで、労働基準法の問題でもあるわけでございまして、労働基準法につきましては現在労働基準法研究会でいろんな点を検討中でございます。そういったこともございますので、それとあわせて今後の課題として残したと、こういうわけでございます。
#43
○片山甚市君 厚生年金とこの補償とは条件が違うから職場の人々とよく条件の合ったような形にするのに考えておるんだと、こういうふうにおっしゃっておるんですが、ひとつこの労災に入っておらないと言われた公務員あるいは公共企業体のこと等がありますが、公務員や公共企業体、大企業では引き続き従来の職務にあるものとして賃上げや定期昇給を含めて大体みんなと同じように取り扱うのが業務災害の常識となっておるんですが、大体公務員あるいは公企体ではそのような状態だと思いますが、いかがでしょう。
#44
○説明員(田中清定君) 先生御承知のように、公企体関係は労働協約で決まっておりますので、それぞれ各公社ごとにその辺の基準が定められているわけでございますが、ベースには労働基準法の災害補償の規定、そこにございますスライドの規定が働いているわけでございます。それから公務員につきましては国家公務員、地方公務員それぞれの法律で定めがあるわけでございますが、所管ではございませんけれども、それぞれの法律等もスライドに関しては労災保険法に準じた定めをしておるわけでございます。
#45
○片山甚市君 実は先ほど申しましたように、公務員や公共企業体、いろんなところでも業災に関しては企業主の責任というのは非常に感じておりますから、余りそういうような人たちを、業務上の災害の人たちを排除したり不遇な思いをさせないようにやっておると思っております、私がそう思っておるんですが。そういう意味で、先ほど申しましたように、業務災害の方々に対する休業補償などについては格段とひとつ配慮をしてもらって、職場へ帰ってこれるような条件をつくってもらいたいと思います。お答えを願ったことについては承服するのに少し私理解ができませんけれども、大企業あるいは公務員、公共企業体等では引き続いてその職場におったものとみなすようなやり方でその人間が配置されておると、こういうふうに申し上げておきます。
 そこで、業務災害をめぐる認定に時間がかかった場合給与基礎日数を決める場合、診断の日にかかわらず直近の賃金情勢を具体的に判断して行うことはできませんでしょうか、いわゆる診断日ということで業務災害のときの手当が決まるんですが、それが認定がずっとおくれますと不利になるんでありますが、それはどのようにお考えいただきますか。
#46
○説明員(田中清定君) 一般的に業務災害が発生いたしました場合には、その直前の三カ月の賃金をもとに保険給付の算定基礎をはじくわけでございますが、疾病によっては、直前の状態と、あるいは疾病の経過によって、平均賃金の計算が計算の上で下がってくるというようなケースもないわけではございません。そこで現在でもじん肺患者につきましては、直前の平均賃金と、じん肺法による作業転換をした時点での賃金とを比較いたしまして、高い方を給付基礎日額とすると、こういうような取り扱いをしているわけでございます。
#47
○片山甚市君 そうすると、認定がおくれるというようなことはないという、比較的業務災害の場合は、おくれるというのは失礼でございますが、それでは届けをされてからどのぐらいの時間で、日にちで認定が裁定されてますか。
#48
○説明員(田中清定君) 労働者の請求がありましてから、その請求事案について業務上かどうかということについて事実を調査いたしまして業務上・外の判断をし、保険給付の支給、不支給の決定をするわけでございますが、大部分のケースはおおむね一カ月以内に結論を出しております。
#49
○片山甚市君 一カ月以内で大方ができておるというんですから、例外があるような場合にはやはり特別におくれた理由があれば一番近いところで賃金を、三カ月以内ですから決めてもらって、一番高いところというんですからやってもらいたい。診断を受けてから半年あるいは何カ月ということは、たちますと大変であります。いまそういう例外がないと、ないとは言いませんが、でありましょうが、そのようなことがないように、ここで例を申し上げてこういうことはどうかといまは聞きませんけれども、一番近いところでひとつ決めたときに、賃金の、災害を認定した時期と診断を受けた日が大きく食い違いがないようにしてもらいたいと思います。
 次に、今度の制度で特別加入制度が枠を広げられまして、外国に派遣されておるところの者についても災害補償を受けることになりましたが、その人は外国におったままいただけるんですか、日本の国へ飛行機で帰らすんですか。まずお聞きします。
#50
○説明員(田中清定君) 外国へ派遣労働者の特別加入につきましてはかなり長期の外国滞在ということが想定されております。したがいまして、けがをされあるいは病気になられて保険給付の請求があって、支給する場合には外国在住のままでも給付が行われをように送金その他の措置を講じて給付いたしたい、こういうように考えております。
#51
○片山甚市君 その認定はどういう方がされますか。
#52
○説明員(田中清定君) 業務上・外の判断あるいは給付の決定はもちろん労働基準監督署長の権限ということで、現地の実態あるいは情報その他を総合して判断をする、決定は監督署長が行い、本人に通知をして、必要に応じて送金その他の手続を講ずると、こういうことでございます。
#53
○片山甚市君 そうすると、その事業所のある、労働者を派遣した会社の事業所のある監督署がそういうふうに認定するんですか。
#54
○説明員(田中清定君) 派遣元の事業所の所在地を管轄する労働基準監督署長でございます。
#55
○片山甚市君 先ほどは症状を見ていろいろと給付を考えると、こうおっしゃったが、どのように症状を見られますか。
#56
○説明員(田中清定君) 外国在住者の場合には、御指摘のように国内の被災者と同じような意味で症状を把握するのはいろいろむずかしい点がございます。ただ、現在でも短期の外国出張者につきましては、出張先で事故が起こったというような場合には、それぞれその実情をいろいろな方法で調査をして給付の決定をしておりますし、また必要な場合には送金その他の手続も講じておるわけでございますが、症状につきましてはその療養の過程における主治医その他の医療機関の判断をいろいろな方法で把握をして、できるだけ適正な判断をしてまいりたいと、こういうことでございます。いろいろ困難は伴いますけれども、現在でも若干のケースがあるわけでございますので、そういう経験に徴して適正に処理をいたしたいと、このように考える次第でございます。
#57
○片山甚市君 それは日本の国の開発途上国などにおけるところの多国籍企業、日本の企業に雇用しておる人たちに対する適用はしないのですか。
#58
○説明員(田中清定君) 今回の海外派遣労働者の範囲につきましては、御承知のように国内の事業所に所属して海外に出張する場合には現在でもこれを適用の対象にしております。国内の事業の直接の所属関係から離れて現地の企業あるいは日本の企業の現地法人、いろいろな形の事業主体があると思いますけれども、そういう現地の企業に身分的に所属する、しかし御本人はやはり日本の国内の企業から派遣されていると、こういう関係がある場合に適用の対象にするわけでございますので、御指摘のような場合でも通常の場合には適用対象になるというふうに考えております。
#59
○片山甚市君 そうすると、現地の労働者と、こっちから派遣された労働者と、こちらから日本の会社を離れて他の会社に行った者と三つあるとすると、日本の会社に籍を置いて行っておる者だけに特別にこういう措置がとれる、こういうように理解してよろしゅうございますか。
#60
○説明員(田中清定君) 現地法人に現地の人々を直接採用する、現地採用の方も当然あるわけでございますが、こういう方々はもともと日本の国内法令の適用を及ぼすにはなじまないわけでございます。もともと海外派遣労働者につきましてもそういう特例的な措置として適用を及ぼすというわけでございますので、現地採用の方々までは日本の労災保険の適用ということはこれは実際問題として考えておりませんし、また制度上もできないであろうというふうに思うわけでございます。
#61
○片山甚市君 これは、一人親方などに対する適用について枠を広げてまいりました中でも、私たちが海外におるその人たちの適用を受けることに反対でありません、賛成ですが、この認定の仕方についてどのような形でやられるのかという疑問がありますからお尋ねしました。具体的に認定方法はどういう手続をとりますか、説明してください。
#62
○政府委員(藤繩正勝君) 先ほど管理課長からも御説明をいたしましたが、認定の場合の調査あるいは手続が、確かに国内で行われます場合に比べて非常にむずかしい、困難であるということはそのとおりだと思いますけれども、従来から出張等の取り扱いでやっておりますことであり経験もございますので、できるだけ完璧を期したいと思っております。具体的に申し上げますと、やはり請求書は当然でございますが、現地事業の証明書あるいは現地医師の証明書あるいは現地公務所――日本の大使館とか、あるいは現地の政府とか、そういうものの証明書を、先ほど申し上げましたように、出張元の事業を管轄する監督署長に送っていただいてこれを認定していくと。で、いろんな問い合わせば被災者、現地事業、現地医師、現地公務所への問い合わせをやる、あるいは出張元の事業に調査をさせるというようないろんな方法が考えられると思います。できるだけ完璧を期したいと思います。
#63
○片山甚市君 次に、職場復帰の問題でありますが、先ほどから、一級から三級については働くことができない条件の中で年金制度をいただいて一日も早く回復するようにと、四級以下の人は非常に障害を受けていますが、それぞれの条件で療養を受けておると、こういうことですが、神経性の疾患の者について軽度の労働につくことを通じ職場復帰を促進するとの基発第五九三号の通達でございますが、本法の改正後も従来どおり三年後の休業補償給付者に対し適用されることでは変わりがないか、それについての職場復帰ができるように指導することにはまた同じであろうか、質問いたします。
#64
○政府委員(藤繩正勝君) 長期傷病補償給付、今度で言えば傷病補償年金の受給者であってもなおできるだけ職場復帰を図るということが願わしいことは当然でございますが、特に、いま御指摘になりました神経症状を伴うむち打ち症等々の被災者でなかなか通常の期間には治りにくいという者につきましては、なお療養補償、休業補償を続けている事例があるわけでございます。それについてできるだけやはり社会復帰を進めていくということはこれは当然望ましいことでございまして、いまお挙げになりました通達の方針も今度の制度改正によっていささかも変わらない、従来どおりやっていきたいというふうに思っております。
#65
○片山甚市君 それで、ことしの、五十一年の三月現在で労災保険の財政は幾らになっておりますか。
#66
○説明員(田中清定君) 四十九年度でございますが、四十九年度の決算自体におきまする収支の統計を申し上げますと、収入といたしましては三千六百十三億二千四百五十一万七千円、それから支出の方は二千八百十七億五千百十二万円ということに相なっております。
#67
○片山甚市君 いまお話があったように、労災の財政状態は安定をしておるというか、しておるときです。そこで、これから特にこの給付について危倶が起こるおそれ、心配があるようなことはございませんか。
#68
○政府委員(藤繩正勝君) いま、労災保険の財政は大変安定しているではないかというお話でございましたけれども、実は、いま申し上げましたように、収支から見ますとかなりの差額があるわけですが、これは支払い備金という形で実は必要な準備金として用意をしております。と申しますのは、災害補償でございますから、特に年金の場合には長期にわたってこれから当然支出が予定されるわけですから、それも含めてわれわれとしては備金を用意し、それを含めて収支を見まするというと、ずうっと若干の赤字基調で参りました。ここ数年ようやく黒字に転化したというところでございまして、非常に余裕があるということではございません。しかしながら、労災保険につきましては、必要が起こればこれは労災保険審議会に諮りまして保険料の引き上げ等も行ってまいってきております。先般の通勤途上災害制度を実施いたしましたときにも保険料の引き上げをやりました。今度の改正では五十一年度は引き上げをしないでいきたいと思っていますけれども、五十二年度以降は十分その辺を検討いたしまして、必要があればそういった点も審議会にお願いをしなければならぬだろうというふうに思いますけれども、いずれにしましても、支出に支障を来たすというようなことは万々ないようにわれわれとしては取り計らっていくつもりでございます。
#69
○片山甚市君 実は、次の賃金の支払の確保等に関する法律案の問題に触れるんですが、今度は特に労災の方から五十一億円程度のお金を出して福祉事業を開拓したい、こういうようなことでありますから、相当余裕ができたんだなと、こういうふうに思います。ですから一応いま聞いたんですが、実は最近の企業倒産、賃金未払いの現状及び賃金未払いの解決状況はどのようなことになっておるのか。
#70
○政府委員(藤繩正勝君) 賃金不払いの現況につきまして御説明を申し上げます。
 賃金不払いの状態が全国的にどうなっているかということは、実はさっきからおっしゃいますように、三百万に近い事業場、三千五、六百万の労働者の状態でございますから、完璧に把握することは困難でございます。しかしながら、労働基準監督署で監督をいたしました結果、あるいは申告がありました結果、あるいは情報等を得て掌握するというようなことから一種の業務上の統計としてとっております賃金不払い統計というものがございます。これによって申し上げますと、ごく最近の時点といたしましては、昭和五十年の四月から五十年の九月までの六カ月の状態がございますけれども、この時点ではその前の期から実は不払い、未解決ということで七十億ばかりの不払い賃金を繰り越しておりまして、その期間六カ月中にまた新たにここに出てまいりましたものが九十七億ございます。計百六十八億の不払いをこの六カ月間に監督機関は抱えました。その間努力をいたしまして七十三億の不払いを解決をいたしております。しかし、どうしても事業主の方に支払い能力がないというような事情から、残念ながら二十九億を支払い不能、解決不能としてここから落としております。そうして、結果として六十六億ばかりのものを次の期に繰り越しておる、こういうことでございます。そこで、この二十九億のような状態、これをできるだけなくしていきたいということで、今度の法案を用意したわけでございます。
 なお、この数字につきましては不況を反映いたしまして往年の数字に比べればかなり大きなものになっているということは事実でございます。
#71
○片山甚市君 いま局長がおっしゃったように、去年からことしにかけての倒産状態から言うと金額が相当大きくなるだろう、五十一億円の予算を持っておるけれども、それで賄えるかどうか、これはひとつ十分にその事態になればまた特別に配慮を大臣の方でして、労働者が塗炭の苦しみに遭わないように御配慮を賜りたい。
 そこで、未払い賃金の立てかえ払い事業の対象となる倒産の範囲について、それは政令で定めるということになっておりますが、ここは委員会でございますから、どういう骨子で、どのようなことを政令として定めるつもりでおるか、これを御報告願いたいと思います。
#72
○政府委員(水谷剛蔵君) 立てかえ払いの対象とする範囲につきましては、当然「破産の宣告を受け、その他政令で定める事由に該当することとなった場合」というように規定いたしておるわけでございますが、その具体的内容につきましては、中央労働基準審議会の意見もお聞きした上で最終的には決めるということになろうかと思いますけれども、すでにある程度予算の積算の基礎等におきまして内容的に確定といいますか、内容的に検討されておりますのは、そういう破産とか、会社更生法とかいうような裁判上の手続のとられた倒産といいますか、あるいは会社更生法の場合には更生型の倒産でございますが、そういうような裁判上の手続がとられた場合が一つと、それから、それだけではわが国の実態からいたしますと、必ずしも十分な救済はできませんので、中小企業につきましては、いわゆる事実上の倒産といいますか、それについても範囲を広げていくというようなことで政令で定めることにいたしたいというように考えております。
#73
○片山甚市君 それで、実は事実上の倒産と擬装倒産というのとが非常に交錯をいたしまして、なかなかわかりにくいことが起こる、そういうときには政府はこの当該労働者の側の賃金不払いの状態を重視されるものと思いますが、いかがでしょうか。
#74
○政府委員(藤繩正勝君) 今度の制度をつくります場合に、実はこの制度は昔からこういう制度があったら非常にいいんじゃないかということが言われながら、今日までできませんでしたのは、それなりに大変むずかしい問題を含んでおったということでございます。ところが今回昨今の情勢からどうしてもこれはやらにゃいかぬということから、いわば緊急の措置として、大変、労災保険から金を出すというようなことが理想から言えば問題がないわけでもございませんけれども、緊急の措置としてわれわれはこれに踏み切ったということでございますが、もう一つの理由といたしましては、ヨーロッパで各国がやはりここ二、三年こういう制度を始めた、これが一つの刺激になっておるわけであります。
 そこで、ヨーロッパの場合を見ましても大体裁判所が介入します成規の裁判上の手続による倒産というものが対象になっておるのでございます。これはなぜかと申しますと、この制度がいままでできませんでしたいろいろな理由の中で、立てかえといいますけれども、結局立てかえた者が最終的にはどうなるかという問題がございまして、これはなかなか回収がむずかしかろう。そうするとやっぱり政府が最終的にある程度かぶるということを覚悟しなければできないわけでございます。そうなりますとこの制度を運営していく場合に一番考えなきゃならぬことは乱用防止ということでございます。これをうまいこと利用していわゆる乱用をされたのでは本来保護すべき労働者にとっても好ましくないし、それから制度の発展を殺してしまいます、この点に一番知恵をしぼらなければならない。そこでいまヨーロッパの例を申し上げましたが、乱用防止という観点からすれば裁判上の手続に限りたいところでございます。しかし、また反面、わが国の場合の倒産ということを考えますと、御承知のように、裁判上の手続によるものはせいぜい四、五%でございまして、大部分は事実上の倒産、こういうことになるものですから、そこで大変むずかしいことは承知の上で事実上の倒産というものを労働基準監督署長の認定にかかわらしめる、大変むずかしい作業を行政官庁としては背負うわけでございますが、これをやってまいりたい。そこで諸般の情勢等もよく見た上で監督署としては判断をいたしたいと思います。
 そこで、関係労働者の意見も十分聞くべきではないか、こういうことでございますが、もとより関係労使のいろんな情報を参考にしなければならぬことは言うまでもないわけでございますけれども、それからまた、全体の制度の運営ということになれば、中央、地方に労働基準審議会もございます。そこでいろいろな意見を拝聴するわけでございますが、ケースごとに直接それらの方々の何といいますか、申し立てを受けるということはいささか制度の運用上問題がありはしないか。やはり最終的に責任は監督署長がとる、その過程で必要があればできるだけ関係の情報を得ると、こういうことでまいりたいというふうに思うわけでございます。
#75
○片山甚市君 賃金未払い事案のうち、退職金の未払いが大きな比重を占めておりますが、第三条の「貯蓄金の保全措置」には強い義務規定をつくられおるのですが、第五条の「退職手当の保全措置」についてはなぜ努力目標にしておるのか。すなわち、社内預金等貯蓄をするということについては当該労働者に一たん賃金ということでいわゆる渡して、もう一遍会社を信用させてお金を預かる、こういうことになっておるわけです。ですから、これは少なくとも保障を別にして、貯蓄のことについては社内預金を勧めた労働省側の責任からそういうようにえらい力を入れておるのかわかりませんけれども、本来言うと、やはり労働者の退職金について普遍的に貯蓄した者としない者がございましょうが、むしろ、貯蓄じゃなくて、当然もらうものは先になるんじゃないだろうか。どうもこれはだれかに力を入れるためにどっかに遠慮をした形になっておるんじゃないかと思うんですが、なぜこういうような退職金の保全が努力目標になり、そうして貯蓄の方だけが厳しい義務的な規定になっているんでしょうか。
#76
○政府委員(藤繩正勝君) 社内預金の方よりも退職金の保全を重視すべきではないかという御主張でございますけれども、これはまあ考えようでございまして、社内預金は労働省が推進したからというお言葉もございましたが、労働省は社内預金を推奨してはおりません。言うまでもなく労働基準法十八条では労働者が労働契約に伴っていわば強制的に貯蓄をさせられるという、こういう制度については厳禁いたしておるわけでございます。労使協定その他一定の手続を経てある条件下にこの貯蓄金の受け入れということが容認されているにすぎないわけでございます。そこで、従来から山陽特殊鋼あるいは最近では興人等の場合にも、こういう問題が起こりましたので、私どもは従来から行政指導でやってまいりましたが、今回これを立法化して全額についてその保障を期したいということで、これを置いたわけでございます。
 一方退職金でございますが、確かに退職金の金額は賃金不払い統計の中でも相当な額に達しておるわけでございますけれども、実は退職金というのは額が月給に比べればそれはもう非常に大きい額になりますので、金額としてはどうしてもそうなりますけれども、件数としては何と言いましても圧倒的に定期給与の不払いというものが問題でございます。そういう点もございますし、それから率直に申しまして、私ども労働基準審議会に御議論を願ったときには、こういった規定もいわば義務規定として用意してどうだろうという御相談もしたわけでございます。そこで活発な労使の意見がございまして、そうして結論的に言えば、実は倒産という事態について今度の措置をとります場合に、審議会でも実は事業主の側の委員の方々から非常に強い反発がございました。つまり失業とか労災とか、こういうものについては事業主の責任、その意味の保険制度、事業主負担ということがあってしかるべきだけれども、一体この倒産というのはやっぱりその経営者が悪いんじゃないかと、最近の倒産事例などを挙げまして、あれはもう明らかに土地投資をしたからああいうことになったんだと、そのしりぬぐいをどうしてわれわれがしなきゃならぬのだという大変きついお話もございました。したがいまして、実は労災なんかでやらないで、基本的な制度をつくるべきじゃないかという御議論もあるんですけれども、それをやってますとなかなか本格的な私は制度は生まれなかったんじゃなかろうかと思います。ですから、そういう議論を右に置いて、まあ、とにかく緊急事態だからこれをやろうということで、今回合意が得られたんですが、その議論の過程でこの退職金につきましては、何と申しましてもマクロ的に見れば少数の企業にしか生じない倒産に備えるために、すべての企業について資金の確保を義務づけるということは、やはり資金の流動性という点から見て、相当企業に影響を与えるじゃないか。特にこういう倒産企業というようなことになれば、言うまでもなく中小零細企業でございますから、その辺はどうだろうかというふうなこと。それから、本来から申しましても政府は中小企業退職金共済制度あるいはいわゆる適格年金制度というような公的な退職金あるいは退職年金制度というものは推進しています。やっぱりそういうところに引っ張っていくべき問題じゃなかろうかというようなことからいろんな経過がありまして、審議会としては最終的にはこういうふうになったと。で、その間にいきさつがございまして、退職手当についても、しかし緊急の当面の三カ月程度のものは非常に大事なものだから、これは立てかえ払いの中に入れていこうと、こういうような経過がございまして、今日の提案になった次第でございます。
#77
○片山甚市君 実は、中小企業退職金の問題ですが、いまのようにこの立てかえ払いの問題が出たときをチャンスにして企業主に入るようにひとつ宣伝をしてもらいたい。そういうふうに入らずに労働者の権利は倒産をしたから知らぬ存ぜぬというようなことのないように、それを言うならわかりますよ。しかし貯蓄の方だけはずいぶんと一生懸命にめんどう見ますがと、こういうような片手落ちのことについては納得できません。今度の制度は少なくとも雇用保険をつくるときに議論があったことでありますから、そういうことで前進をしたものと認めて、さらに中小企業に対する格段の配慮をしてもらいたい。組織をしておる労働者というよりも無組織、組織がないととろに対して手厚くひとつ行政をやってもらいたい、こういうことを要望します。終わります。
#78
○浜本万三君 私は、建設労働法の関係についてお尋ねをいたしたいと思います。
 まず最初に、今回の建設労働者の雇用の改善等に関する法律が提案をされておりますが、その背景について要点だけひとつお答えをいただきたいと思います。また、この法律を見ますと、適用の範囲を非常に狭めておりまして、いわゆる建築労働者の重層下請の禁止でありますとか、建築業の重層下請の禁止でありますとか、労働条件の改善、安全、災害の防止などの労働者の雇用の安全と労働条件の改善という目的にはいささか遠いのではないかというふうに思われますが、その点についてお答えをいただきたいと思います。
#79
○政府委員(遠藤政夫君) この法律案を提案いたしますに至りました背景についてのお尋ねでございますが、わが国の建設業は今日の日本経済、社会の繁栄をもたらしたその基礎になりましたいわば基幹産業で、その重要な産業でございます。この建設業に従事いたしております労働者は約三百六十万と言われておりまして、わが国の雇用労働者の約一〇%に当たっておりまして、雇用という面からも非常に大きなウエートを占めております。こういう非常に重要な問題であるにもかかわりまぜず、建設業それ自体につきましてもいろいろな問題がございます。これがいわゆる屋外生産を中心にいたしております。また有期的な注文生産であるとか、それから建設業特有のいわゆるいま御指摘になりました下請請負契約によって作業が遂行される、いわゆる重層下請といったような実態を持っております。こういった建設業の特殊性からいたしまして、この三百六十万の建設業に従事いたします労働者につきましては、末端の下請業者に使われております労働者の分野におきましては雇用関係がきわめて不明確な面が多いと、あるいはこの三百六十万労働者の中で、季節出かせぎ労働者あるいは日雇い臨時労働者、こういった雇用関係の不安定な労働者が多数を占めております。そういったことからいたしまして、いわゆるいま御質疑にもございました賃金不払いとか、労働災害とか、他の産業に比較いたしまして非常にそういった問題が多いあるいは他の産業に比較いたしまして労働者の福利厚生面の施設、施策、こういった面も非常に立ちおくれておる、こういうふうに建設業全体につきまして、労働関係におきましては非常に多くの問題が包含されております。労働省におきましては、こういった雇用面、労働面のいろいろな問題につきまして、各種の法制を通じましていろいろな施策を重点的に実施いたしてまいっておりますが、必ずしも現行の法制のもとで、これを完全に改善をいたすことは非常にむずかしいような状態でございます。そこで、こういった既存の基準法なりあるいは安全衛生法なり雇用対策法なり、こういった現行の法制に加えまして、基本的な雇用関係を明らかにすることによって雇用の改善を進めていきたいということで、今回の法律案を提案いたしたわけでございます。なお、いろいろな法制面につきましても、今後この新しい法律案が成立いたしました暁におきましては現行法制と両々相まって、今後一層建設労働関係の雇用の改善等に資してまいりたいと思いますが、いま御指摘になりましたようにこの新しい法律案なり現行の法制に加えまして、こういったものが実施されることになりましても、重層下請の関係でございますとか、いろんな面でまだ建設業法によります建設業自体の改善、それと労働面の改善と両々相まって逐次、この改善を進めていかなければならないと、かように考えておる次第であります。
#80
○浜本万三君 そういたしますと、法律の中身について二、三お尋ねしたいんですが、まず二条関係の定義の中で、とりわけ事業主の定義が非常にあいまいだというふうに思うのです。いわゆる一人親方でありますとか、ダンプグループ請負あるいは労務供給事業とか、擬装下請とかいうようなところが非常にあいまいになって多少問題が出るのではないかというふうに思いますが、そういう点について、まず心配はないか、あるとすれば今後どのような方針と手続によって改善をしていくかなどについてお尋ねしたいと思います。
#81
○説明員(平賀俊行君) まず、この法律案の二条にございます「事業主」の定義について御説明を申し上げます。「事業主」とは、ここに書いてございますように「建設労働者を雇用して建設事業を行う者」、一人でも労働者を雇って仕事をする人、これが事業主でございます。
 御質問の中に一人親方という例示がございましたが、一人親方につきましては、場合によってはほかの事業主に雇われる場合もありますけれども、そういう独立して事業を行う方がほかの労働者を雇い入れる場合には、この法律の「事業主」という定義に当てはまるのでございます。したがいまして、この法律によります諸般の規定の適用も受け、また助成の対象にもなる、かようなことに相なっておるわけでございます。
 それから手配師あるいは労務供給事業をやる者、それは職業安定法によりまして厳重な規制措置が講ぜられておりますので、これはそういう関係法規に照らしまして適正な措置をとってまいりたい、かように考えております。
#82
○浜本万三君 一人親方の問題につきましては、後でまた少し確認をしていきたいと思います。
 次の項に移るんですが、建設雇用の改善計画の策定ということがこの法律で制度化されようとしておるわけですが、特に第三条第二項の二、三号などを忠実にやっていこうといたしますと、この法律では結局不備ではないかというふうに思われる節もあるわけであります。しかし、いずれにいたしましても改善計画の策定ということが必要であることは申すまでもないと思うわけであります。
 そこで、この改善計画というものの策定は今後どのように対処されるのか、また審議会等に諮ってこれを決定されるということになるならば、その時期などはいつごろと考えてよろしいか、以上質問をします。
#83
○説明員(平賀俊行君) 建設雇用改善計画につきましてでござますが、具体的な手続といたしましては、関係行政機関の意見を承って、その後に原案を作成いたしまして中央職業安定審議会にお諮りをしてそれで決める、こういう手続になっております。
 また決める内容といたしましては、御質問の中にありましたように、一つは建設労働者の雇用の改善についての政府の施策のいわば基本的な方向を明らかにすること、そしてまた、その前提として建設労働者の雇用の状態、労働力の需給の動向、こういったものを前提として基本施策の方向を定める。私どもはこの計画が建設労働者の雇用の改善のための一番基礎になる、また一番重要なものと考えております。
 また、その計画の時期は、その法律が通りましてからできるだけ早い時期にこの計画を策定するための諸般の手続を進めたいと、かように考えております。
#84
○浜本万三君 次は雇用近代化のための施策が幾つかこの法案の中に盛られておるんですが、その第一にお尋ねしたいのは、雇用管理者の設置が事業場ごとに義務づけられておるというふうに思うんですが、この場合、たとえば一人でも労働者を雇用しておるところには無論設置すると思うんですが、そのとおりかどうかということ。
 それから第二番目は、建設業の特性から暴力団等が管理者として配置される心配はないか、心配があるとすれば、その対策はどうするのか。
 それから第三番目は、管理者の質的向上と、その制度の性格から実効を確保しますために、むしろこれは罰則規定でも設けまして指導する方が、罰則規定を設けるようにして法律、制度化するのがいいんじゃないかというふうに思われますが、いかがでしょうか。
 以上お尋ねいたします。
#85
○説明員(平賀俊行君) 雇用管理責任者の選任につきましては、冒頭に局長が問題点として御説明いたしましたように、建設業の場合は非常に小さな規模の事業所が多く、その末端といいますか、複雑な下請機構の末端では雇用関係が不明確、こういった事情がありますので、こういった末端、小さな規模の事業所であっても人を雇う場合には雇用関係を明らかにする、これを目的として規定をした制度でございますので、御指摘のように一人でも人を雇う場合には雇用管理責任者を選任していただく、こういうことでございます。しかし、そういう小さな規模の事業所にこれが実行されて初めて効果があるということでございますので、現実問題としてなかなかこれを、この手続だけをもとにして罰則をつけるということは必ずしも実態に合わない、こういうことで罰則をつけておりませんが、雇用管理責任者の具体的な仕事の内容と申しますのは、たとえば労働基準法上の所定の手続をするとか、それぞれ強制力を持った規定の実施について事務担当者として責任を負うということでございますので、こういう関係諸法令の指導、監督と相まって実効を確保するようにいたしたいと考えております。
 なお、暴力団関係といいますか、たとえば職業安定法上の労務供給に当たるとか中間搾取とか、そういったものに当たるような事態につきましては、これらの法規の適用によって厳正に対処してまいりたいと思っております。
#86
○浜本万三君 次、第六条関係の募集の項の中で、特に指定地域での被用者による募集の届け出義務が定められておるようでありますが、この場合に被用者が必ずしも雇用関係のある労働者を意味していないというふうに思うんですが、そこで手配師等が排除できないというおそれはないだろうかという心配がありますが、この点いかがですか。
#87
○説明員(平賀俊行君) 被用者と申しますのは事業主と雇用関係にある労働者という意味でございます。したがいまして、募集だけを委託されて行うようないわゆる手配師というものは職業安定法の規定によって排除していく、こういう考えでございます。
#88
○浜本万三君 次は、第七条関係の雇用の項なんですが、雇い入れたときは速やかに本人に、必要な労働条件の内容を文書で出すことになっております。この場合、就労前と理解してよろしいかということ、また違反の場合、これもやっぱり罰則をつけなきゃうまくならないんじゃないかという心配がありますが、その点いかがでしょうか。
#89
○説明員(平賀俊行君) 雇用に関する文書の交付の七条の規定でございますけれども、この点につきましては、従来、関係審議会の御建議等によりまして建設労働者を雇用する場合に雇い入れ通知書という制度といいますか、これを行政措置で行っておりました。これを制度化するための規定でございます。したがいまして、この趣旨からしまして、雇用契約を締結してその雇用関係の内容を明らかにする、こういう趣旨でございますので、就労前にこの文書を交付することが望ましいと思っております。
 それから、現在御審議をいただいております賃金の支払の確保等に関する法律案によって労働基準法を改正いたしまして、労働条件の明示につきまして、賃金についてその文書の交付を義務づけるということになります。この新しく改正されます労働基準法の内容と相待ってこの規定も実効が上がるように、そういった強制力を持った規定と連結させて運用してまいりたいと、こう思っております。
#90
○浜本万三君 いまの点、なんですね、就労前に文書を提出するということが望ましいというお答えなんですが、望ましいじゃなしに、前に必ずやらせるというふうに指導してもらいたいと思うわけです。
 それから、書類の備えつけ義務がこの法律では定められておりますが、事業場の建設労働者数を五十人以上にしておるわけです、その場合に。そこで、大企業の下請管理は一応これでやりやすくなるかもわかりませんが、反対に、小さい事業場でありますとか丁場等は適用除外になる心配はないだろうかというふうに思われます。
 それから、元請と関係受請人に対する管理、指導、援助については行政指導でこれをやっていきたいというふうになっておりますが、行政指導では少しやっぱり弱いというふうに考えられますので、法律上の義務を課するようにすべきではないかというふうに思いますが、この点はいかがでしょうか。
#91
○説明員(平賀俊行君) この法律案の第八条第一項の適用になります事業場は、一番最後に御指摘にありましたように、労働省令で定める数以上の労働者を雇っている事業場ということでございます。これは建設工事が複雑な下請関係によって行われる場合、特に幾層かの下請負人があって、それで工事が施行されるということが多いという実態にかんがみまして、規模の小さい場合にはそういった重層関係も比較的少なくて済んでいるし、また人数も少ないわけですから、元請の事業主、元請のあるいは責任者がその工事現場の実態を把握するということは比較的容易でございますけれども、その全体として、ある一定規模以上のところになりますとその辺の把握がむずかしいと、こういうことで、一定規模以上、その規模についての考え方は、現在安全衛生法に基づきまして事業者が統括安全管理責任者を選任しなければならない規模、これが現に五十人以上の規模になっておりますが、その規模以上のものについて雇用関係の状況について下請がどうやってやっているかと、こういう状況を元請が把握することを義務づけたと、これがこの規定の趣旨でございます。もちろん、一般的に言いまして、元請の事業場が下請の雇用管理の状況について把握して、またそれが適正に雇用管理が行われるように指導、援助すべきことは言うまでもないことでございまして、私ども、建設省その他関係機関とも連携をとりながら、こういう点について遺漏のないように指導していきたいと考えておりますし、また、この第一項の規定が、実はそういった元請が下請の雇用管理について指導することについて実効を期するように担保するといいますか、そういう文書を備えつけることを義務づけて、これで下請の雇用管理の指導について行われるような基礎にしたと、こういうことでございます。
#92
○浜本万三君 福祉事業の問題についてお尋ねするんですが、建設労働者の福祉事業として三つほど挙げられておるんですが、この一部または全部を雇用促進事業団にやらせることになっておるんですが、話によると、労働省は、これは別の事業団をつくるべきだという考え方もあったやに聞いておるんですが、別な事業団をつくる考え方は今後ありませんか。さらにまた、事態の推移を見て検討する考え方はありませんか。この点についてお尋ねしたいと思います。
#93
○政府委員(遠藤政夫君) この法律案の中に明示されておりますように、この法律案によります福祉対策あるいは建設業における労働関係の雇用の改善対策、こういった各種の事業は雇用促進事業団をして行わせることにいたしております。確かに、御指摘ございましたように、昨年この改善対策の具体策を検討いたしております段階では、新しい法人を設立いたしまして、ここで建設の雇用関係の各種の助成事業、福祉対策、こういった施策を包括的に行わせる計画を進めておりましたが、諸般の事情から、現在あります雇用促進事業団を通して行わせる、こういうことになったわけでございます。
 建設労働関係につきましては、雇用促進事業団のほかに幾つかの関係団体がございます。将来こういったものを包括的に統一的な事業実施ができるような体制をとることは、これは方向としては望ましいと考えておりますので、事態によりましてはそういったことも今後の研究課題として検討してまいりたい、かように考えます。
#94
○浜本万三君 次は費用の問題なんですが、五十一年度は一応十五億円で整備をすると、それから、法律では、雇用保険料をそれぞれ千分の一上積みいたしまして五十億の費用でこれを賄うことになっておるんですが、今後の費用の見込みは大体どの程度になるのか、わかっておればお知らせをいただきたいと思います。
 それからもう一つは、省令で定めることになっておる事業とは一体どういうものが考えられるのかということ、また、この制度は雇用保険料に付随して徴収されることになっておりますから、したがって、大企業の場合にはメリットはあるけれども、零細下請企業の場合には負担が多くて余りメリットがないんじゃないかというような批判がございますが、その点はいかがでしょう。
#95
○説明員(平賀俊行君) この新しい事業につきましての将来の経費につきましては、五十一年度は十月から実施することとして約十五億円を予定しておりますけれども、五十二年度以降につきましては、それぞれ各年度の予算である程度その規模が決まるということでございます。現段階で具体的な額をお示しすることはできませんが、ただ、この法律案で建設事業の事業主の保険料の引き上げ、約千分の一というふうに規定しておりますけれども、千分の一に相当する額というのは現在のところでは年間で約二十五億円と計算されております。したがいまして、もし千分の一が徴収されれば十五億円と二十五億円を加えれば四十億円というような額になるわけでございますけれども、そういった状況を御判断いただきまして、今後どの程度の経費が見込めるかということを御承知いただきたいと、こう思っております。
 なお、省令で定める事業といいますのは、五十一年度の予算の場合にはその千分の一の徴収が行われておりませんので、その予定もございませんけれども、将来はこの雇用促進事業団でやります事業の中で、あるいはその必要に応じてそういったこと、たとえば技能訓練だとかあるいは福祉施設の整備だとか、そういったものもあるいは考えられますけれども、それはそのときの予算なりその状態において決めることになろうかと思います。また、具体的な事業の実施要領は雇用促進事業団が業務報告書で定めることになりますけれども、御指摘のように、中小企業に特に配慮をしてそういった運営要領を定めてまいりたいと思っております。
#96
○浜本万三君 いまの点は特にそういう中小企業の方々が心配しておられるようですから、特段の配慮を要望しておきたいと思います。
 次は、七項目ほどあと質問いたしまして、政府側の誠意のある御答弁を求めたいというふうに思います。
 まず第一番は、季節出かせぎ労働者の雇用安定についての問題でございますが、季節出かせぎ労働者は、居住地において募集人との間に労働条件等について雇用契約を締結し、出かせぎ地に赴くことになります。最近の景気後退を反映いたしまして、契約した雇用期間に達する以前に解雇するというケースが増大をしておるようであります。そこで雇用保険の一時金の給付も受けられないなどの現象が出ております。出かせぎ労働者の雇用の安定はとりもなおさず雇用契約期間中の解雇を当面なくすることであろうというふうに思います。この点について、今後出かせぎ労働者が被害を受けることのないように措置すべきであると思いますが、この点、いかがでございましょうか。
#97
○政府委員(遠藤政夫君) この一年間の不況の中で、確かにいま御指摘になりましたような、出かせぎの人たちがせっかく出てきて働こうとしながら、その意に反して途中で解雇される、こういった事態もなきにしもあらずであったようでございます。私どもは行政指導でこういったことがないように十分現地の監督機関を督励いたしまして、指導いたしてまいりまして、あちこちでうわさされたほどには実態はそこまでいかなかったように承知いたしておりますが、こういった問題が起こりますのは、そもそもはここ数年来指導を強化してきておりますいわゆる出かせぎの人たちが正常なルートを通らずに、いわゆるやみ手配師とか、裏のいろんな経路をたどって就労される。いわゆる就労経路が正常化されてないということ、それから就労の条件、雇用関係が不明確である、こういったことから間々起こりがちであります。そういったことから賃金不払いが起こったり、あるいは中途で解雇されて雇用保険の対象にならない、こういうような問題が起こります。そこで今回の法律案の主眼の一つもこの建設業における非常に大きな部分を占めております出かせぎの人たちの雇用の安定を図っていく、就労経路を正常化し、雇用関係を明確にしていく、こういうことによりまして、いま御指摘になりましたような事態を未然に防いでいきたい。仮に一つの事業が途中で挫折することによって解雇されざるを得ないような事態になりましても、雇用関係が明確であり、就労条件が明らかにされておりますならば、そこに救済の道が開かれる。こういうことになるわけでございますので、そういった点を今後明確こするために、今回の法律案の各条項が用意されておるわけでございます。この法律をもとにいたしまして、行政指導を強化してまいりたいと考えております。
#98
○浜本万三君 次は、建設退職共済制度の加入促進についてでございますが、建退共への加入促進を行って、建設労働者の福祉の向上を図ることはきわめて重要な事態になっておると思います。そこで、関係各省はこの努力を行っていると考えるわけですが、現場では全く実効のない制度になっておるとも言われておるわけであります。それは公共事業の指名入札の資格を得るために、特定元方事業主は建退共に加入しておる状況があるからだと思います。これら元方事業主は建退共適用労働者を全く雇用していないという状態もあるわけであります。したがって、入札資格を獲得するためにだけ加入をいたしまして、証紙を購入しておりますが、その後印紙や手帳は放棄されて、労働者の手には渡らないという状況もあるわけであります。そういう状況でありますから、関係各省は少なくとも公共事業で働いている労働者には、全部建退共の適用を図ることが必要だと思うわけです。また雇用関係を無視して特定元方が建退共に加入するような指導を改めて、労働者に実際に適用される実効のある措置を行うことが必要であると思います。また内容も全く劣悪であるために、労働者にとっては魅力がないというふうにも言われておるわけであります。したがって制度の内容について、今後抜本的に改善すべきであると思いますが、その具体的な方針と決意を伺いたいというふうに思います。
#99
○政府委員(藤繩正勝君) 退職金共済制度は言うまでもなく自由加入の制度でございまして、各種社会保険のような強制的な制度ではないわけでございます。したがいまして、何よりも当事者である労使の方々が、こういう制度を利用してでも労働条件の向上を図っていこうという意欲がまずなければ、制度の実効は期し得ないと思うわけでございます。そこで、こういった自由な制度でできるだけ事業主が加入をして労働者の福祉を向上させたいという考えから、一種の誘導策として、公共工事の入札参加資格ということと連動させるというようなことをやってまいりまして、建設省等にもお願いをしてきたわけですが、それがまた先生いまお述べのように、特定元方事業主が加入して、印紙だけは購入するけれども実際に下におりない、こういう問題が起こってきてしまっているわけでございます。
 そこで、これらの問題は基本的にはいまこの法案の中で論ぜられておりますような重層下請制度そのものに問題があろうかと思いますけれども、それはこういったことで漸次改善をしていただくということにいたしまして、このいま御指摘の点につきましては、実際に証紙が適正に貼付されるための履行確保につきましてさらに一層建設省その他の関係機関と緊密に連絡をとりながら、実際に証紙が交付されるような行政指導を重ねてまいっていきたいというふうに思うわけでございます。
 それから内容が魅力がないという御指摘がございました。これは建設業退職金共済制度そのものにつきましては、昨年御審議をいただきまして改正が行われました。給付の改善が図られましたわけでございますけれども、なお一層この制度を魅力あるものにするように、いま基本的な諸問題につきまして、関係審議会の場において検討されることになっておりますので、その重要な検討課題としていま御指摘の点を審議会にもお願いしてみたいというふうに思うわけでございます。
#100
○浜本万三君 それから時短、週休等の確立に関係することなんですが、建設業では非常に長時間労働が行われておると言われております。たとえば募集要項の賃金の額には残業が二時間含まれておるとか、それから労働時間に残業二時間保証などというような記述が一般的になっておるようであります。したがって、そうなりますと建設労働者の労働時間というものは十時間が常識になってくるわけでございます。社会党の調査によりますと、大清水隧道というのですか、そこの現場では二直二交替制なども発見されておるわけであります。この点について監督署が改善指導を行っていなかったというふうにも言われておるわけであります。しかも週休制も確立していないし、雨が降れば振りかえ休日にするというような、そういうやり方をしておるわけであります。もうすでに他産業では四直三交替制でありますとか、週休二日制が一般常識化しておる時期でございますので、建設労働者だけ先ほど指摘いたしましたように基準法すら守れないということになるとこれは大問題だというふうに思います。そこで関係当局は適切な指導を行うことが必要であると思いますが、その点についてどう対処されるか、その決意を伺いたいと思うわけです。また日曜休日に労働災害の発生が一番高いというふうに報告をされておりますが、もし日曜休日に災害が発生いたしますと、その日は病院も休んでおるというような状態で、手おくれになって死傷災害、死亡災害が起きるということになりますと大変だというふうに思いますので、厳重に監督指導すべきであるというふうに思いますが、その点いかがでしょうか。
#101
○政府委員(藤繩正勝君) 建設労働者の労働時間は屋外労働という特殊性や工期の制約などによりまして、他の産業と比較して一般的に長時間労働となっているほか、雨天により振りかえ休日も多く、休日が特定していないというような実情がございます。いま、先生が強調されましたように、労働時間の短縮、あるいは週休二日制の普及が一般化している情勢の中で建設労働者の労働時間についてもやはり特殊の観点から、いろんなそういうむずかしい問題があってもその適正化を図ることが望ましいことは言うまでもございません。特に、いま御指摘のように労働災害との関連、あるいは労働者の健康確保というような点からも時間問題は非常に重要だというふうに考えます。
 そこで、長時間労働を排除するということに焦点を置きまして、一定規模以上の建設工事を行う建設業者に対しましては、現場ごとに各下請の構内労働等の業務の就労に関しまして報告をさせ、常時監視に努めております。
 また、週休制の問題につきましても建設省と連絡をとりながら、使用者あるいは業界団体等に対して日曜週休制の確立を指導しておりまして、本年四月以降、完全日曜週休制が推進されるように指導を強化しておるところでございます。今後ともなお一層努力を続けたいと思います。
 なお、ただいまちょっと御指摘のありました、現場の実例等もお挙げになりましたけれども、確かに過去におきまして一部の基準法違反というようなものも見られましたが、監督署でこれを監督、指摘をいたしまして、是正を求めましたところ、現在では適法な状態になっておるという報告を受けておる次第でございますが、なお一層厳重な監督指導を続けたいと思います。
#102
○浜本万三君 次は、工事発注の平準化と申しましょうか、うまく仕事ができるように仕事を発注してもらいたいということなんですが、建設省の方はおられますですね。
 それでは、これ三つほどお尋ねをし、その決意を伺いたいんですが、まず第一は、建設工事の発注を、特にこれは公共工事というふうに考えていただきたいんですが、適切に行うことができれば生産の波動性は相当是正されまして、悪影響も同時に防止することができるんじゃないかと思います。そこで、工事発注の平準化について、今後具体的にどのように改善されようとしておるのか。その方針を伺いたいということが一つです。
 それからもう一つは、建設業の重層的な下請制度ははかり知れない弊害を惹起しております。そこで、不必要な下請についての規制を行い、業界の体質改善を図り、暴力団や手配師や労務供給業などの根絶を図るように厳正な措置をいたさなければならないと思います。その点については、これは特に建設省と労働省の方から御見解を承りたいと思います。
 また、もう一つは、建設業における賃金支払いの確保につきましては、先ほど基準局長から話がございました。ただ、この法律の中で心配をいたしますことは、建設業法の中では下請が賃金不払いを引き起こしたときには建設省の勧告で元請が、その賃金を保障することになっておると思います。つまり、出かせぎ建設労働者などは一〇〇%保障されておるわけでありますが、今回の法案では八〇%に後退をするおそれがございますので、その点は現状の条件を確保するように厳重に指導してもらいたいと思います。
 以上三点について、関係省庁からお答えをいただきたいと思います。
#103
○説明員(中川澄人君) ただいま先生の御質問三点につきましてお答え申し上げます。
 まず、発注の平準化でございますが、公共工事につきましては、いろいろな会計法規上等の制約がございますが、従来できるだけ平準化するような指導をしてまいっておりますが、なお今後も毎月の統計資料等によりまして将来予測される労働力、あるいは資材等の需要の予測を立てまして、関係省庁にお集りいただいて連絡調整するというような配慮もしていくようにただいま準備中でございます。
 それから重層下請の問題につきましては、昨年建設省関係の公共事業の執行につきまして、四月に事務次官通達を出しました際に、不必要な重層下請を排除するようにという注意をいたしておりますが、なお、そのことが実効が上がりますように、現在下請標準契約約款の改正、さらには特定建設業者の下請指導要綱の準備等をいたしておりまして、そこの中でさらに実効の上がるような手段を講じてまいりたい、こう考えております。
 それから最後の、建設業法の四十一条二項の立てかえ払いの勧告制度でございますが、これは現在提案されております法案は、先ほど御説明ございましたように、非常に限定された場合のことでございます。私どもの法律の運用が、そのことによりまして変更されるものとは考えておりません。
 以上でございます。
#104
○政府委員(遠藤政夫君) いまお話ございましたように、建設業が下請によって実施される、そういった特殊性から、御指摘のございましたような、いわゆる労働者供給事業的なもの、あるいはよく言われております暴力手配師、こういったものが間々見受けられますが、こういった点につきましては、現行の職業安定法あるいは労働基準法等によりまして厳重な規制を今後とも続けてまいりますと同時に、今回の新しく提案されております法律によりまして、募集関係あるいは下請を偽装した労働者供給事業、こういったものの規制を強化してまいりたい、かように考えております。
#105
○浜本万三君 次は、先ほど質問しました一人親方の問題なんですが、建設技能者、いわゆる丁場の大工、左官等の一人親方につきましては、この法案では具体的に触れられていないと思います。で、この種の一人親方は性格的には労働者の階層に属するもので、その数も非常に多いというふうに思います。したがって、法の精神から見て、この一人親方の対策は非常に重大だというふうに考えられます。そこで、今後この問題の対策を立てられる場合には、関係審議会の意見を十分聞かれた上で、間違いのないようにひとつやっていただきたいということを、これは特に希望し、労働省の方に何か見解があれば伺いたいと思います。
#106
○政府委員(遠藤政夫君) 一人親方の問題につきましては、確かにいろいろ問題がございます。実態は建設業で働く労働者と変わりがない場合が多うございます。形式的に言いますと、これはいわゆる自営業者、そういう形で働いておられる、こういうことでございまして、こういう人たちを、いろいろな法律の適用問題をどういうふうに処理していったらいいのか、これは非常にむずかしい問題を抱えております。一昨年成立いたしました雇用保険法の適用につきましても、これは関係組合といろいろ相談をいたしまして、三年間にということで、これから二年間でございますが、二年間に組合の方でもこういった一人親方の今後のあり方、こういったものについて抜本的に検討し直す、こういう約束をいたしまして、いま検討を進めております。
 今回の、この建設業に働く人たちの雇用改善の対策のための法律でございますが、これにつきましても、いわゆる一人親方が自営業者であれば、この法律適用ございません。仮にこういう人たちが雇用労働者としてだれかに雇われて働くということになれば、当然この法律の適用、助成の対象になるわけでございます。そういった関係で、今後この一人親方の扱いにつきましてはいろいろむずかしい問題がございますが、関係団体あるいは審議会等におきましても、特に中央職業安定審議会の建設労働部会におきましてこういった問題の検討を続けられておりますので、その結果によりまして、今後具体的な方策を進めてまいりたいと、かように考えております。
#107
○浜本万三君 最後は大臣の決意を伺う意味でお尋ねしたいと思うんですが、これは建設労働全体の労働条件などを改善する問題についての決意を伺いたいと思うんですが、建設労働は雇用の不明確さや不安定性、労働条件や労働環境の劣悪さ、労働災害の多発、福祉制度の劣悪など、およそ先進工業国にふさわしくない現状であります。今般、建設労働者の雇用の改善に関する法律が制定されることになりましたのはその改善の第一歩として評価することができると思います。しかし、日雇いでありますとか出かせぎ労働者などの雇用安定につきましてはきわめて不十分であろうと思うわけです。したがって、今後一層の改善が必要であると思うわけですが、その際、たとえば港湾労働法のように登録制を含めまして雇用改善を図るようにすることはできないだろうかというふうに思うんですが、この点につきまして大臣の方針と、それがだめならばほかの方法で全般的な改善はこうするんだというふうな決意を伺いたいと思います。
#108
○国務大臣(長谷川峻君) 先ほど以来御答弁申し上げましたように、三百六十万という建設労働者は日本の基幹産業の担い手でございます。おっしゃるように、いろいろな不合理なものがたくさんありましたので、こういう国会の場、あるいはまた審議会、こうしたところでいまから先も建設労働の改善の実を上げるために、各分野において施策の総合的なものを実施する必要がありますので、大いに研究してまいりたい、こう思っております。
 ただ、港湾労働者の例を引かれましたけれども、これは御承知のとおり、港湾関係のところは特殊地域というか、限定された地域であり、また、たしか関係労働者も三千人ぐらいでございます。こちらの方は全国にわたる数百万ということなのでして、直ちに港湾労働者の法律そのまま適用をするというわけにいかぬだけに大いに関係省庁並びに審議会の御議論、さらにまた、皆さん方の御意見を参酌しながら将来ともに総合的な施策に邁進してまいりたい、こう思っております。
#109
○浜本万三君 時間が参りましたので終わります。
#110
○委員長(戸田菊雄君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。
   午後零時三十二分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時四十三分開会
#111
○委員長(戸田菊雄君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。
 午前に引き続き、労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案、建設労働者の雇用の改善等に関する法律案及び賃金の支払の確保等に関する法律案を便宜一括して議題とし、質疑を続けます。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#112
○柏原ヤス君 建設業における労働力が主に下請企業によって賄われております。その最末端に近いところでは雇用関係があいまいなところが非常に多くなっております。そのために、たとえば賃金不払い、労働災害、このような事故に際して責任の所在が不明確になったり、また中間搾取、このような問題が生じております。建設労働者の雇用の改善に当たっては、まず優先されるべきことはこうしたことをなくすことから出発すべきであると思いますが、その点いかがでしょうか。
#113
○政府委員(遠藤政夫君) けさほど申し上げましたように、建設業に従事しております労働者三百数十万の中で出かせぎあるいは臨時労働者、日雇い労働者、そういった人たちが正常なルートを通らないで就労しているというケースが非常に多うございます。そういったことから雇用関係が下へ行けば行くほど不明確な点が多くなってくる、そういうところから契約が途中で解除されたり賃金不払いが起こったり、労働基準法や安全衛生法で労働災害の防止に非常に強力な指導が行われておりましても、やはりそういった点でまだほかの産業に比べると問題が多い、こういった点がございます。
 まず、出発点でございますが、雇用関係を明確にするというところから出発いたしまして、他の現行のいろいろな諸法規に照らして、こういった点を十分監督指導を強化していく、建設業の労働関係の改善に努めていきたい、かように考えているわけでございます。
#114
○柏原ヤス君 そこで、労使の関係がしっかりすればそういう問題は解決すると、こういうお答えですが、この労働条件、特に労働基準法あるいは労働安全衛生法、こういうものがあって、そしてそれを守らせればいいんだということが前提になっておっしゃっているわけですね。
#115
○政府委員(遠藤政夫君) まず、この労働関係が不明確であるということにいろいろな問題が起因して起こってまいりますので、そういった労働基準法なり、職業安定法なりあるいは労働安全衛生法なり、そういったものを守らせるには、まず基盤となる前提が大事でございます。その前提をはっきりさせようというのがこの法律案の一つの大きな目的でございます。
#116
○柏原ヤス君 この雇用関係がしっかりなればいいという、これは理屈ではそうですけれども、たとえそういう関係がはっきりしても私はいままでのずっと労働者の立場がこうした基準法があっても何ら守られていないという、そこのところをやはり考えなければだめじゃないか、この点はいかがでしょうか。
#117
○政府委員(遠藤政夫君) 御指摘のとおりでございまして、たとえば雇用関係が明確でないということは、労働者の実態にいろいろ問題がありましても一体使用者がだれなのか、その責任がどこにあるのか、そういった点が不明確なままでは、基準法を守らせようにもあるいは募集その他の関係で職業安定法を守らせようにもなかなか不十分な点が多い、そういうことから今回の法律案によりましてそういった現行の諸法規を厳重に守らせる、その基盤を育てていこう、こういう趣旨でございます。
#118
○柏原ヤス君 ちょっとお聞きしておきますが、労働者の名簿、賃金台帳の整備あるいは雇い入れ通知書の交付、こういうような監督指導は徹底されておりますか。
#119
○政府委員(藤繩正勝君) 建設業が他の産業に比較しましていまいろいろお述べになりましたような労働基準法、安全衛生法の面におきましても問題が多いということは事実でございます。ただ、私どもは、たとえば災害関係につきましても建設業が非常に災害が多いというようなことから、労働基準監督官はその制服をごらんになってもおわかりになりますように、ヘルメットをかぶり、作業ぐつをはいて腰に命綱をつけて歩くのが監督官の正規の服装でございます。それぐらい建設業に力を注いでおりますけれども、しかし、まだまだ理想から言えば非常に問題が多いということは事実でございます。
 そこで、いまお願いしております賃金の支払の確保等に関する法律案の附則におきましても労働基準法を改正いたしまして労働基準法十五条では労働契約をあらかじめ締結するときには労働条件を明示しなければならぬとありますけれども、単に口頭で明示するだけではいけないということで、賃金等については文書でこれをさせるというような改正も今回お願いをしているというようなことで、あらゆる面で一層の努力をしなければならぬということは御指摘のとおりだろうと思います。
#120
○柏原ヤス君 ですから、この法案が通ったとしても、決してこうしたあいまいな責任回避の事件、こういうものがやはり不明確になっていくという、こういう点は一層いままでの基準法あるいは衛生法を守らせるということ、また監督体制の強化をしなければならないということもやっていただきたい。この法律が通ればうまくいくんだなんというものではないということを主張いたしますので、それを確認したくてお聞きしているわけでございますが、一言お願いします。
#121
○政府委員(藤繩正勝君) ただいま申し上げましたように労働基準法に基づきます監督はなお一層やらなければならぬと思っておりますが、もう一つ非常に重要な問題のこの労働災害につきましても、実は昭和四十七年に御審議をいただきまして発足をいたしました労働安全衛生法という法律がございます。これはあらゆる産業を通じての安全衛生のための立法でございますけれども、中身を見ていただきますと、大半が建設業に視点を置いたものでございます。たとえば二十九条には元方事業主に対する規制がうたってございます。特に建設業や造船業の下請、港内下請につきましては総括安全衛生責任者の選任でございますとか、協議組織の設置運営等の措置でございますとか、注文者に対する規制でありますとか、あるいは作業主任者の選任でありますとか安全衛生教育の実施でありますとか、あるいはいわゆるアセスメントでありますが、計画の届け出でありますとか、工事方法に関する規制でありますとか、非常に焦点を建設業に置いて、この法律ができ上がっております。問題はせっかく成立させていただきましたこの法律施行後、やっとまあ三、四年でございますが、今後ますますこれを実際に成果が上がるように運営していくということがわれわれの責務ではないかというふうに思っています。
#122
○柏原ヤス君 次にお尋ねしますが、建設業における労働力の調達の仕方について、募集人を通して行われているいわゆる手配師という問題がございますが、この手配師というものに今回の立法はどういうふうに対応しているんでしょうか。
#123
○説明員(平賀俊行君) 労働者の募集関係につきましては、全般的に職業安定法の中に厳しい規制がございます。御指摘の手配師など事業主の委託を受けて労働者を募集するような場合については、全面的に職業安定法の規制を受けることになります。ただ、この法案では、従来自由に募集活動ができましたその通勤圏内における労働者の募集につきまして、都会地等で青空市場という形で日雇い労働者を募集する、その場合にその手配師等が出てくるという例がございますんで、そういう点の規制を従来以上に強めるために、ここで新たに事業主が直接雇用している被用者が募集する場合は届け出ると、逆に裏を返しますと、それ以外の場合というのは、まあ手配師のような疑いが濃い、いわば従来の職業安定法の規制をより効果的にするための追加的な条項を設けて手配師の排除、就労経路の適正化についてさらに厳しく監督指導を強める、こういう考え方でおるわけでございます。
#124
○柏原ヤス君 そこで、この手配師の問題をお聞きしたのは、このような手配師による労働力調整の方法が往々にして責任不在の不明確なトラブル発生の原因となっております。まあピンはねなどという問題を起こしているわけですが、これを厳しく規制するといまおっしゃいましたけれども、どういうふうに厳しく規制するんですか。
#125
○政府委員(遠藤政夫君) ただいまお答えいたしましたように、この募集の関係につきましては、職業安定法に現在規定がございます。この関係で募集につきましてはもちろん、それに類します労働者供給的なものも規制されることになっております。ただその中でいわゆる通勤圏内におきましてはいま募集の関係は自由になっております。そういったことからこの建設業等におきまして、日雇い労働者、臨時労働者の募集がいわゆるやみ手配師的なものによりまして調達される、そういう可能性が多分にございますので、そういった点を特に現行の安定法の定義上のものとして新たに今回の法律案の中に規制の条項を設けたわけでございます。この両方相まってこういったいま御指摘のような事態が起こらないように今後とも厳重に監督を強化していくつもりでございます。
#126
○柏原ヤス君 それでは〇〇組という名前で人を集めている、そうしてその人が建設現場では工事の作業を請け負うというだけの仕事をしているということは実際ございますね。この人を、いわゆる手配師というものを事業主に、またその人が現場で仕事を請け負えば事業主になるわけですね。その事業主はまた集めるという立場では手配師になっているわけです。同一の人物が集めるときには手配師だ、請け負った立場では事業主になっている、こういうのを認めるかどうか。
#127
○政府委員(遠藤政夫君) これは具体的なケースにつきまして検討いたしてみませんと、抽象的なお答えはできかねますけれども、いま御指摘のように、たとえば労働者を募集している、その人がいわゆる下請に請負人という形で事業を請け負っているという形式をとっておりましても、それが職業安定法四十四条に抵触するいわゆる労働者供給の仕事をしているんだと、請負の実態を持っていない、請負契約とはいっても実態がそれに伴っていないという場合には、当然これは労働者供給事業を行う者として禁止されておりますから、法律の規制の対象になります。その人はこの法律にいういわゆる建設業の事業主としての対象にならないわけで、むしろ安定法四十四条による規制の対象になる。したがって、その人が請負主として、下請人として募集をしておりましても、それは労基法違反の対象になりますと同時に、募集の方も規制される、こういうことになろうかと思います。
#128
○柏原ヤス君 私がお聞きしたいことは、今度のこの法案で雇用管理責任者というものを法律で決めるということが一つの星といえば星になっているわけですね。ところが、この雇用管理責任者というのは、建設労働者の募集をする、雇い入れをするという仕事をするわけですね。それはいままでいわゆる規制したいと言っている、自由に募集をやっていたいわゆる手配人、これを責任者にしてしまう、雇用管理責任者になってしまうということがあり得るのではないか、また、そうなるように私は思うんです。その点はいかがでしょうか。
#129
○政府委員(遠藤政夫君) いわゆる手配師とかやみ手配師とか、いろんなことを言われておりますが、実は私、二十数年前地方に在勤いたしておりましたときに、主として港湾関係で、こういった手配師の問題が非常に問題になったことがございます。私は何とかして、この手配師といったような、こういったものを排除したいということで、労働組合なり関係の業界といろいろと御相談をしながら、いわゆる労働者の募集に従事する人、これはやはり必要でございます。そういった人が中間搾取的なそういったものを業として行なうことは、これは禁止される。そういうところから弊害が出てくる。したがいまして、労働者の募集に当たる人たちを企業の事業主の採用担当者といいますか、採用担当の職員という形で、正規にそういう仕事をそれぞれの業界でつくってもらう。こういうことでいままで手配師が自由にそういった労働者供給なり募集なりの仕事をしておった人を企業の採用担当者というはっきりした地位と身分を与えることによって、やみ手配師的な存在をなくしていく、こういうことを企画して、またいろいろとやってまいったことであります。今回も、いわゆる手配師というものそれ自体が悪いのじゃなくて、そういう中間搾取を生ずるおそれのあるような、そういう形態を排除しなければならない。したがって、この新しい法律案の六条にありますように、企業に雇われてその企業の職員がその募集に従事する。そういう形で改められるならば、この法律案の趣旨に沿うわけでございます。したがいまして、そうでなくて、いわゆるいまおっしゃるような、御指摘になるような、やみ手配師的な中間搾取を業とするような、そういう手配師、こういうものはこの法律によって規制をし、正常な地位につけていきたいと、こういうふうな指導を強化していく。そういうことによって、いわゆる就労経路の正常化を図りまして、事業主と労働者の雇用関係を明確にしていく、こういうことから建設業における雇用の改善を進めていきたい、こういう趣旨でございます。
#130
○柏原ヤス君 その辺、何かちょっとはっきりしないのですけれども、そういう自由に募集していたと、それを今度は雇用管理責任者という肩書きをつけて、そしていいかげんなことができないようにするという、こういうことですか。
#131
○政府委員(遠藤政夫君) 募集担当者、募集に従事する人と雇用管理責任者とは必ずしも同一人である必要はないわけでございます。募集は募集、採用担当者であり、また同じ人が雇用管理責任者になる場合もあろうかと思います。特に、中小企業で企業規模の小さい場合はそれぞれのポストにいろいろな人をつけるわけにまいらないかと思いますので、同一人が募集にも従事し、雇用管理責任者でもあるという事例も出てくるかと思いますけれども、そうでない場合ももちろんあるわけでございます。雇用管理責任者と募集従事者とは制度的には別個のものである、こういうことになろうかと思います。
#132
○柏原ヤス君 制度的には別個であると言っても、事実はそういうふうに規制しても規制しても職業安定法でそういうことができないようにしているのに、もぐりみたいのが、いわゆる手配師と言われるのができているわけですね。今度はそれをまたできないようにすると。けれども、やはり労働省が資格でもきちっと決めて、こういう資格の者でなければ、雇用管理責任者にはできないとかというような資格を与えるとか何かじゃなくて、この雇用管理責任者というのは事業主が選べるんでしょう、簡単に。だからいままで重宝に使っていた手配師を事業主が選んで、そしてこれを雇用管理責任者としても、これは労働省としては手が出ないのではないでしょうか、選ぶのが事業主なんですから。その点をちょっと心配するわけなんですけれども。
#133
○政府委員(遠藤政夫君) 雇用管理責任者というのは、大企業も中小企業も一人でも雇っていれば雇用管理責任者を置きなさい、こういうことで法律で定められているわけでございます。いままでそういったものが置いてない――置いてあったところももちろんあるかもわかりませんが、これから新しく置こうとする場合、中小零細企業の場合は事業主自体がなる場合もある。それにこういう資格の人でなければならぬということを法律で定めることが、果たして現実に適切であるかどうか、またその必要があるかどうか、こういった点大変問題であろうかと思います。要するに、雇い入れの、たとえば法律に書いてありますように、雇い入れ通知書を交付するとか、雇用関係について責任を持つとか、そういった仕事をやらせる場合に、どういう資格が必要なのかということになりますと、資格問題ではなくて、そういうことをはっきりさせる、そういう体制をとるということがむしろ大事なことだ、それを法律で規制しようとしているわけなんです。したがいまして、いままで人に頼んで募集をさしていた、要するに、いまおっしゃるような手配師を使っていたと。その人をその事業主が雇って自分のところの雇用管理をやらせるための責任者として雇うというのであれば、それは私は結構だと思います。そういったやみ的な存在を正規のルートに乗せていく、こういうことであれば、それは私はむしろ望ましいことかと存じます。そういう方向で、私どもは今後新しい法律と職業安定法、基準法、そういった関係の法規を厳重に実施することによって、いま御指摘になりましたようなそういったあいまいさをこれからはなくしていきたいと、こういうふうに考えております。
#134
○柏原ヤス君 くどいようですけれども、とかくトラブルの原因になる、また中間搾取の問題を起こしているようなところにいる手配師というのを雇用管理責任者というお墨つきの、公認の資格を与えてしまうような結果にならないように、これは法律をつくった以上はそれがどのようによりよく実施されていくかというところに問題があると思いますけれども、そこまで労働者は監督をしていただきたいと、こういうふうに思うわけです。
 次に、建設業における雇用の安定のためには、建設労働者の常用化、通年雇用化を促進する必要があると思います。今回のこの立法にはこうした雇用改善事業がありません。これはどうしてですか。
#135
○説明員(平賀俊行君) 法律案の第九条では、雇用促進事業団が実施する事業として能力開発事業と、それから雇用福祉事業という形のもので建設労働者のために特別の事業として実施するものを規定しております。御指摘の雇用改善事業は、雇用保険法の中のいま申し上げました能力開発事業及び雇用福祉事業のほかに、もう一つ三事業として規定されているものでございますけれども、これは国が直接実施しているもの、現在でも通年雇用奨励金などという制度を実施しておりますけれども、これはいまの規定のままで建設業のためにそういった制度も実施されておりますので、今回の法律では特別に追加する必要な限度で規定を設けたと、こういう趣旨でございます。
#136
○柏原ヤス君 建設労働者にとって一番大事な雇用改善ということについて、こういう法律がつくられた。ところが、中身はこうした雇用改善事業がない。伺ってみると、そういうのは雇用保険の方にあるんだから、その雇用保険の方でやってると、こういうお答えですね。それじゃ、その雇用保険で具体的に雇用の改善はどのようにやっているのか、されているのか、それをお聞きしておきたいと思います。
#137
○説明員(平賀俊行君) 雇用保険の三事業の中で、従来から各産業を対象にしてといいますか、全産業を対象にしていろいろな事業をやっておりますが、その中で特に雇用の不安定な建設労働者等を対象にするものだけを挙げてみますと、御指摘になりました通年雇用奨励金などという制度がございまして、これは今年度約三十億円の予算を投じて事業を実施しております。それから、その他能力開発事業として行われておるものの中で、職業訓練とか技能検定とか、こういう一般的な制度でございますけれども、それは全体の中でほとんど半分ぐらいを建設労働のために実施している、技能検定などはそういう建設関係の職種を対象にして実施していると、それから福祉関係の事業でも、出かせぎ労働者のための援護措置とかあるいは特別の施設の建設等も従来からやっておるところでございます。
#138
○柏原ヤス君 この建設業の労働者の雇用の問題を雇用保険で改善していくということは、それはある程度はできると思いますけれども、私は問題があると思います。というのは、建設業の労働者の雇用の問題というのは一般の労働者の労働条件とか賃金とかその他非常に違ったものを持っていると、だからこそ建設業の労働者の雇用の問題というのは非常に問題になって、そしてまあ一応こういう法律が出されるようになったんですけれども、雇用保険で雇用の改善をするということは完全にできないと、むしろこの法案でこそ、この法案のできた趣旨から考えても、この法案でこそやるということが一番私はいいと、こう思います。にもかかわらず、内容は全くと言っていいくらいに建設労働者の雇用の改善というものは取り上げられてない。むしろこの法案の名前が建設労働者の雇用の改善と言っているけれども、むしろ建設労働者の雇用主の改善と、非常に建設労働者の雇用の問題の改善というのは直接的ではないと、間接的には改善にはなるかもしれないけれども、それも実際に指導が相当しっかり行われなければ改善にはならないと、こう思って建設労働者の雇用の問題はどこで本気になってやるのかと、雇用保険の方でやっております、どこやっているんだ、どうなっているのか、まだ足りないじゃありませんかと言うと、今度はこっちの建設労働者の雇用の改善等に関する法律がございますのでこっちでやっておりますと。こっちを言えばこっちを言い、こっちを言えばこっちを言って、まるで建設労働者の雇用のことには真剣に取り組んでいるように見えるけれども、実際の現場は一つもその恩恵に潤ってないということになりかねないというので私はお聞きしたわけでございますので、その点をわかっていただきたいんですね。
 それから雇用保険でやると、雇用保険の方に雇用改善の内容がございますと。じゃ雇用保険は一体どのぐらいの人が加入しているかと、被保険者はどのぐらいか――非常に加入者が少ないわけですね、昭和四十七年の調査ですと七一%。だから雇用保険でやっても建設労働者の、しかも保険に入ってないまた入れない人たちは依然として救われないと。だからこの雇用保険でやるということは私は効果が少ないと、こういうふうに思うわけです。御答弁は結構でございます。
 次に参ります。そこで、次は厚生年金、健康保険、雇用保険の適用についてお聞きしたいんですが、建設現場で働く労働者は常用労働者でさえもこれらの社会保険に加入してない者が多い。社会保険の加入状況というのは一体どうなっておりますか、その点お聞かせいただきたいと思います。
#139
○説明員(平賀俊行君) 建設現場で働いております労働者につきましては、御指摘のように常用という形で雇用されていない――臨時、日雇いあるいは季節労働者などが多いという問題もございます。それから事業主自体がその各保険の強制適用になっていない、強制適用になる規模以下の事業場の場合もございます。そういうことも含めて建設業に働く労働者の社会保険の適用度というのは必ずしも高くないというのは御指摘のとおりでございます。おおよそ大まかに申しまして、労災保険はほとんどの現場が加入しておるわけでございますけれども、雇用保険あるいはその他の保険関係につきますと大体建設業に働く労働者を三百六十万としましてほぼ半分といいますか、五〇%を前後しているという大まかな数字であるというふうに記憶しております。
#140
○柏原ヤス君 こうした社会保険の加入推進の対策というものもこの法律の中で取り上げていくべきだと思います。
 それから、そればかりじゃなくて、健康管理の現状も非常に悪い、健康診断の受診率が非常に悪いと、こういうような問題がいろいろございますが、これもこの法案の中に福祉事業等に関する項目が出ておりまして、その中に要綱の第九番目の(三)ですね、そこに「事業主等に対して、作業員宿舎の整備改善」、ここのこの三番目は「宿舎の整備改善」をいっておりますが、それに「その他建設労働者の福祉の増進を図るために必要な助成」というふうに出ておりますので、そこにこうした社会保険の加入、あるいは健康診断などについての援助をしてはどうか、建設労働者の福祉の増進を図るために私は非常にこれはやらなければならないことだと思います。助成をすべきだと、健康診断が受けられるような援助も含めて考えるべきだと思いますが、その点いかがでしょうか。
#141
○政府委員(遠藤政夫君) 先ほどから大変お叱りをいただいておりますけれども、建設業に働く人たちの雇用の改善、こういうことにつきましては先ほどお答えいたしましたように現行の雇用保険法によりますいわゆる三事業と言っておりますけれども、雇用促進事業団、あるいは国が直接やっております中でもいろいろな事業をやっております。しかし、御指摘のございましたようにそれだけでは足りないんだと、建設業における労働の実態というものは非常に問題がある。だからこそこの新しい法律案を御審議願いまして、これによってそういった雇用改善対策を進めていきたい。そのためにはいままでの経費だけでは足りません。したがって、建設業界から雇用保険料に上積みして千分の一をとって、その千分の一と国の経費と合わせて新しい事業を実施していこうということで、決して何もしないということではございませんので、その点はひとつ御理解をいただきたいと思います。
 それから、いまの助成の問題でございますが、確かに宿舎の整備の改善とか、そういう福祉対策もやりますと同時に、この中で特に問題になっておりますいわゆる出かせぎの人たちがいろいろ問題があります。そのために出かせぎに出る前に、就労する前に健康診断をやらせるとか、あるいは出かせぎに行った先で労働災害を起こさないように事前のいろいろ予備知識を与えるためのいわゆる職業の講習とか、こういったこともいま細々ながら現行でもやっておりますけれども、そういった点につきましては今度は組織的にこういった就労前の健康診断とか、あるいは職業講習だとか、こういったことをやっていただくように、そういった助成措置も考えておるわけでございます。
#142
○柏原ヤス君 そこで一般に建設業の雇用状態がよくないということは、この元請事業主である大手建設業が責任を持たないというところにあると思います。そういう意味で、政府としては、この法案の実施を契機としてこの大手に対してどのような措置をとるのか、またそういうことをお考えであるか。これをお聞きするのは実は時間がございませんので、はしょって申し上げますが、これはある大手の建設会社に勤めている人の実例なんですが、この方は昭和三十九年に東京支店の採用になって、そしていままで十年以上勤めている、いわゆる常用雇用となっているわけです。ところが、賃金などの労働条件についてどういう扱いをされているかというと、十年間口約束、そしてことしの一月に雇用契約書というものを初めてもらったんです。しかもこの雇用契約書の日付がないんですね。そして契約書の相手というのがその会社じゃないんですね。東京支店じゃないんです。現場の所長が契約書の相手になっている。そのほか現場が変わるごとに賃金水準が変わったり、ボーナスも金一封あればいい方です。これが大手建設会社の雇用労働者を扱っている状態なんですね。ここに資料がございますが、こういう大手のいいかげんなやり方を改善するというか、やめさせる、雇用の安定、これを下からやるということも大事ですけれども、こういう大手の無責任なごまかしのやり方を改めるということ、これは私はむしろ下をきちっと整備するよりもやりやすいんじゃないかと、できると思いますが、この点いかがですか。
#143
○政府委員(遠藤政夫君) 建設の現場で働く人たちの雇用関係、労働の実態につきましては、いま御指摘になりましたような雇用関係が不明確だ、はっきりしない、あるいは不安定だ、こういう実態、ございます。むしろ今回御審議願っておりますこの法律案は、こういった雇用関係が明らかでない、あいまいである、あるいは不安定だ、こういったことを明確にすること、雇用管理体制をしっかりしろと、こういう行政措置をとることがこの法律案の主眼の一つでございます。むしろ直接大手が現場で雇っている人たちについてももちろんのことでございますが、大手が下請、孫請に出している、そういった下請、孫請業者が使っている労働者についても、その雇用の実態というものを、十分大手の元請業者が把握しておく必要がある、こういうことを法律で規制する、こういうことによりまして、いろいろ問題のあります建設労働者の実態にメスを入れながら雇用の改善を図っていくということがねらいでございますので、御趣旨の方向に沿って行政指導を進めていきたいと思っております。
#144
○柏原ヤス君 時間がございませんので、まとめて次の問題をお尋ねいたしますが、潜水・潜函労働者の治療対策についてお聞きいたします。
 この潜水漁業の従事者というのは、潜水夫病、潜函労働者にとっては潜函病、これが非常に恐しい存在になっておりますが、これにかかったときには、高圧治療室に入れなければなりません。ところが、この高圧室を設置している病院が全国にございます。それを調べてみますと二十三カ所ございますが、これは間違いないと思います。その中で国立の湊病院がこの中に入っているかどうか。
#145
○政府委員(藤繩正勝君) 再任治療のための施設を整備する病院は二十三でございまして、いまの国立湊病院もその中に入っております。
#146
○柏原ヤス君 入っているとするならば、この国立湊病院の再圧タンクは使用ができるのかどうか、お聞きいたします。
#147
○説明員(吉崎正義君) 国立湊病院におきましては、ただいま御指摘のございましたように、静岡県の漁業協同組合連合会の依頼を受けまして、昭和四十二年度から潜水病の治療を行ってきたところでございますけれども、当該高圧酸素治療装置並びにそれを入れておきます建物が老朽化をいたしまして、安全基準に合わなくなりましたために、昭和四十九年度からは操作を中止しておるところでございます。
 なお、今後の取り扱いでございますけれども、設置の経緯等もございますので、地元の漁業協同組合連合会等と十分協議をしてまいりたいと考えておるところでございます。
#148
○柏原ヤス君 私が調べてみましたところでは、国立病院で再圧室を設置している病院がたった一つ、広島の呉病院だけになっているわけです。国立病院という使命から、あるいは潜水漁業従事者が多いという地域性、こういうものを考えて、国でこの治療体制の整備をすべきじゃないか。ぜひ整備してほしい。先ほどのお話ですと、いまそれをいろいろと取り上げて検討していらっしゃるようですが、いつごろそれができるんでしょうか、その見通しなどは言っていただけますか。
#149
○説明員(吉崎正義君) 御意見はよく理解できますので、いつごろとちょっと断言できませんけれども、鋭意関係者と協議を重ねてまいりたいと思います。
#150
○柏原ヤス君 鋭意などとのん気なことを言ってないで、人の命が一人でも損なわれないように、国立病院という使命に立ってやっていただきたい。これは大臣もいらっしゃるので、ひとつよろしくお願いいたします。
 以上です。
#151
○沓脱タケ子君 それでは最初に労働者災害補償保険法等の一部改正案からお尋ねしたいと思います。
 前回の改正に当たりまして、私いろいろと改善策等についてお尋ねをいたしたのでございますが、今回その幾つかが改善をされているということで、大変喜んでおります。それに関連をいたしまして二、三点お尋ねをしたいわけでございます。
 前回も私、質疑の中でぜひ実現をしてもらいたいということでお願いを申し上げていたのは、一つはスライド率の改定の問題で、従来二〇%ということになっていたのをせめて五%にするべきではないかということで意見を申し上げていたわけでございますが、今回改定をされまして一〇%ということで、一応の改善にはなったと思うわけでございます。ところが、非常に狂乱物価等の時期には、それは賃金のベースアップ等につきましても二〇%あるいは三〇%というふうなこともあろうと思いますけれども、いわゆる低成長の時代ということになってまいりますと、毎度毎度一〇%を超すというふうなベースアップあるいは物価の上昇というようなものも毎年はそうはならないであろうと。まあ五十年度等を見ましても、あるいはことしの春闘等を見ましても、ごくわずかで、一〇%を下がるというふうなことになるかもしれない。そういうふうになってまいりますと、やはり二年間据え置きになるということにならざるを得ない。そういう点では、やはり労働者を保護するという立場から言いまして、できるだけこのパーセントの幅というのは小さい方が望ましいと思うのですけれども、今後改善の方向でお臨みになるのかどうか、その点を最初にお聞きをしておきたいと思います。
#152
○政府委員(藤繩正勝君) スライドを活用いたしまして、できるだけ補償の水準、なかんずく年金の水準をアップ・ツー・デートのものにする必要があるということは御主張のとおりだと思います。そういう意味で、私ども、関係審議会の中でいろいろ御議論もありましたが、今回二〇%を一〇%に下げたわけでございます。御主張はよくわるんですが、ただ問題は、細かければ細かいほどいいということでも必ずしもないのではなかろうか。経済変動によって賃金水準が下がるというようなこともございますので、特に年金ということになれば、ある程度安定的な情勢変化というものを踏まえて、そして改定をやるべきではないかというふうに思うわけでございます。そういう意味で、審議会でも、厚生年金が物価スライドであると、労災年金がいかにあるべきかということで御議論がありましたが、やはり労災年金が稼得能力を補てんするというたてまえからいって賃金スライドであるべきだし、現状では一〇%というところでやむを得ないのではないかというふうに結論が出たわけでございます。ごく最近の確かに賃上げ情勢から言うと、いま先生御指摘になったような情勢でございますけれども、四十一年からずっとここにも数字がございますが、見てみましても、賃金上昇率は消費者物価上昇率をずっと上回っておるわけでございます。今回の改正が必ずしも妥当を欠くというふうには私ども思っておりません。ただ、将来のあり方につきましては、もとよりいろんな情勢を踏まえまして、関係審議会等においても十分御議論がなされるものというふうに思っております。
#153
○沓脱タケ子君 それと関連をいたしまして、これは前回にも強く要望いたしました一つなのでございますが、いわゆる給付基礎日額の最低保障額ですね、これは五十年度、五十一年度とも一日千八百円ということで据え置きになっているんですね。これはできるだけ上げてもらいたいということで、前回も実は私、御要望申し上げたわけでございますが、これはどうですか。これは二年、どうして据え置きになさったのか。改善の方途ですね。その点についてはどういうふうにお考えになっていますか。
#154
○政府委員(藤繩正勝君) 労災保険の給付はやはり原則的には労働者の稼得能力の補てんでございますから、やはり現実に給与を受けておられた賃金水準というものによるわけでございますけれども、しかしながら、最低のところは従来から他の社会保険との均衡等を考慮して一定の水準が画されておったわけでございます。いままでの経緯を申し上げますと、昭和四十五年に七百七十円でありましたものが四十七年に千円になり、四十九年に千三百八十円になり、そうして五十年に千八百円になったわけでございます。必ずしも毎年改定をしているわけではないのでございまして、私どもといたしましては、今後予算編成等を通じまして、雇用保険、その他の例等ともにらみ合わせながら今後また改善の努力をいたしたいというふうに思っております。
#155
○沓脱タケ子君 これはまあ私、具体例で具体的にと思ったんですけれども、きょうは大変時間が圧縮されておりますので触れませんけれども、そういう点では、これはいわゆる最低保障額というのを非常に上げてほしいという御要望というのはある層の方々には非常に強いわけですから、そういう災害を受けた労働者、被災労働者の要望というのを実現するためにはできるだけやはり毎年改定をして引き上げていくという努力をぜひお願いをしたい。
 私は、今回の労災法の一部改正で幾つかの改善がなされてきておるのを拝見いたしまして思ったのですけれども、特別支給金等の改善は当然のことだとは言いながらも、休業給付ですね、あるいは長期補償給付でもいいわけですが、全部平均賃金、その人の平均賃金の六〇%という点で六〇%のかんぬきをどうして改善していかないのか。これだけ多面的なこれは要望に基づいて改善をしていっておられるわけですけれども、本来もと働いておれば持っておった労働力を補っていくという点で考えますならば、これは基本的には一〇〇%補てんをしてしかるべきものだと思うわけですけれでも、いきなり一〇〇%ができないまでも、これはまあ六〇%から出発をしても、改善をしていくという方途の中ではぜひ七〇%、八〇%というふうに改善をされてしかるべきではないかと、この点を改善するということに少しも着手なさらないというのはどういうことなんですか。
#156
○政府委員(藤繩正勝君) 給付水準の改善につきましては、先ほどもお答えいたしましたけれども、実はここ数年、何回か労災保険法の改正をやっております。それはほとんど給付水準の改善に向けられてきたわけでございまして、四十五年の改正でILO百二十一号条約の水準に到達した、そうして四十九年の改正で勧告の線に到達した、こういうわけでございます。
 そこで、まあ、それでいいやということではございませんけれども、今回は労災保険の諸問題をずっと審議会で御議論いただきました中で、水準問題以外のいろいろ残してきた問題の集大成の結論が出ましたので、年金の改正を中心にそこに手当てをした。しかし、いま御指摘のように、国際水準とはいうもののヨーロッパの先進国に比べてみればまだ格差があるわけでございまして、今後の努力に待たなければならないというふうに思います。ただ、今回も、たとえばスライドを直しましたり、それから法律事項ではございませんが、ボーナスを特別給付金として加えようとしたり、あるいは細かいことでございますけれども給付基礎日額の算定の場合に、「著しく不適当」というときの「著しく」を抜きまして、現実に見合った算定をしようとしたり、いろいろ改善の努力をいたしておりますが、これも審議会で懸案事項になっております。今後とも努力をいたしたいと思っております。
#157
○沓脱タケ子君 私は特別支給金という形でいろいろな手当てを積み重ねて、そうして被災労働者の手取り分が上がっていくというのは、結果としてこれは生活を守っていくという上で必要な措置でもあり、それは当面望まれる措置だと思うのです。しかし、本来から言えば、給付自体の六〇%というのは他の社会保障とはわけが違いますからね、労災給付というのは。そういう点では、これは今後の課題としてぜひ御検討いただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 それから、そういうことを申し上げておりますのは、特に労災というのは、やはりいわゆる死病だとか、あるいは他の社会保障というのとはわけが違うという点がひとつ明確にならないと、他の社会保障も六〇%だから労災も六〇%でよかろうということになったのでは困るという点をこれは明確にしておきたいというふうに思うわけでございます。特に労働災害というのは、もう申し上げるまでもなく、企業の仕事の中であるいは通勤途上でということで起こってきている負傷であり、疾病であり、あるいは廃疾という状況になるわけでございますから、少なくとも、これは労働災害というのは出さない努力というのが一番大事だというふうに思うのです。私ども、データ等を拝見してちょっと驚いているわけですけれども、これは時間の都合もありますから細かくは申し上げませんけれども、二十数年ぐらいの統計を見ても、労働災害の死亡者というのが約十五万人ぐらいもある。こういう状況を見ますと、最近の二十七年間ちょっと概算して計算してみましたら約十五万人、さらに八日以上の休業給付を受けているという人たちの数というのは、その間には何と驚くなかれ一千万人になんなんとする。こういう状況を見ますと、労働災害を出さないということが一番大事だ、そのための対策というのが一番大事だというふうに思うわけでございます。いろいろと施策は進められていても現実には起こっているわけですから、その場合には、これは本人の責任で起こしているというわけではないわけですから、本人の責任でなくて労働災害にかかった場合には、これは労働者自身の体あるいは健康はもとに戻らないというのが大部分なわけでございますから、そういった点では、これは医療と生活を守っていく保障というのは十分やらなければならない。それがやはり労働災害保険の原則ではないかという点で私先ほどの六〇%の問題を申し上げたわけでございますが、そういった点、原則的な立場に立って今後拡充を、充実をしていかれるかという点ですね、これは基本的にはそうだと思いますけれども、そういった点の基本的見解をお伺いをしておきたいと思います。
#158
○国務大臣(長谷川峻君) 何と言いましても命と健康を守ることが最大の眼目でございます。災害を起こさせないこと。ですから、地方では労働基準局が時に事業主が一番こわいと言われるようなことでございまして、まあ、そうした努力によりまして労働者自身も自分を守るといういろいろな訓練などをしていることからして、年々歳々そうした人々が少なくなっているということだけは事実でございます。またおっしゃるように、先生のおっしゃった労働者を守る意味での災害補償の関係についての原則はおっしゃるとおりで、その方向に進めていきたい、こう思っております。
#159
○沓脱タケ子君 そうしますと、次には具体的な問題でちょっと二、三お伺いをしたいんですが、これは午前中から審議の中でもまた衆議院の審議の中でも集中して出てまいっております論議の中の一つに、職業病、特に神経性の疾患、これに関する問題というのが労働災害の中の新しい問題点として浮かび上っていると思うわけでございます。
  〔委員長退席、理事浜本万三君着席〕
 そういう点で、これは運用上の問題について、これはそういった疾病にかかっておられる労働者の皆さん方も大変心を痛めておるという点がございますので、二、三点お伺いをしておきたいと思います。
 その第一点は、いわゆる被災をして一年半で、一年半ということで労働不能で治癒をしていない場合に、今度の新しい制度としてはいわゆる傷病補償年金に移行するということですね。三年たちますと、いわゆる労働基準法八十一条が発動されて解雇制限が解除される、解除されるということの仕組みになっているんですね、法律が。こういう場合に、こういう法律の仕組みになっておる中で、たとえば一年半たって傷病年金に移行した、その後ですね。たとえば極端に言うたら二年くらいして症状が軽快をする、あるいは治癒をして三級以上に該当しなくなる。ところが休業補償給付に移行した場合にいわゆる治癒をしたという、軽快をしたか治癒をしたという場合にすでに八十一条が発動されて解雇されているということになったらもとの職場へ帰ることはできないわけですね。こういうことにならないかどうかですね。私はたまたま仕事の関係でおおむね全体の被災者の状況というのは感じることができるわけですけれども、一年半ないしは長くても三年未満でほぼ廃疾に認定をされるか、あるいは疾病の場合は治癒をするかという方々というのは八〇ないし九〇%の方々というのはそういう範囲内でおさまるだろう。ところが残された一〇%ないし一五%の人たちというのはこの期間で必ずしも治癒をするかあるいは軽快をするということがこれは保証できないという疾病がやはりあるんではないか、こういう人たちがもし法律のたてまえ上ばっちり当てはめられたら病気は治ったんだけれども、働こうと思ったら職場がなかった、こういうことになりかねないと思いますが、そういう点で、これはひとつ行政指導でこういった心配をなくしていけるようになさるかどうか、その点をひとつお伺いをしたいと思います。
#160
○政府委員(藤繩正勝君) 非常にこの点を御心配なさる向きが多いわけでございますけれども、基本的に従来の長期傷疾補償給付と、それから今度の傷病補償年金といま御指摘の点の扱いについては変わらないということでございます。
  〔理事浜本万三君退席、委員長着席〕
 ただ、どうしてしからばこういう制度を今度つくったかといいますと、いままではどっちかと言えば休業補償に準拠した、しかし三年たっても治らない者はどうするかということで、長期傷病補償給付というものが行われた、そのかわりそれは一律六〇%、特別支給金を入れても八〇%という水準にとどまった。そこでむしろこういった基本的な長期の療養というものは傷害補償にどちらかと言えばなぞらうべきではないかという議論が労災保険審議会の中でありまして、それによって特に重篤の者は障害補償一級と同じような水準の給付をそれぞれに応じてすべきだということで、かような措置がとられたわけでございます。元来、先ほどもお答えしましたが、普通の災害の場合は一年未満で療養休業が終わりまして治癒する、九七・三%の者が治癒しておるわけでございますが、中には特に最近に至りましていま先生御指摘の神経症状を伴うような疾病というものが台頭をいたしてまいりまして、これがむずかしい問題になっておるわけでございますけれども、現行の長期傷病補償給付では、通達を出しまして労働者が療養補償給付を受けていること、それから三年たっても治らないこと、これは当然でございますが、第三の要件として長期傷病補償給付を行う必要があること、すなわち当該傷病が治らないため労働不能の状態がその後長期間、少なくとも六カ月以上にわたって継続すると認められること、この三つの要件を満たしたときに、長期傷病補償給付に移すと、こういうことで通達を出してやっております。しかもその決定後においても特に第三の状態が消退した場合には、これはたとえ傷病が治っていなくてもこれを打ち切り、療養補償給付及び必要がある場合には休業補償給付を行うべきこととなるというのが四十七年の通達でございます。今度の傷病補償年金につきましても具体的にはこの扱いを一級、二級、三級ということで客観化いたしまして、同じように扱っていくつもりでございますけれども、この一級、二級、三級の中身につきましては今後審議会の御意見を聞いて決めていくわけですが、いま私どもが頭の中にありますのは、一級は、負傷または疾病が治らないで労働することができず、かつ常時介護を受けることを必要とする状態。それから二級は、負傷または疾病が治らないで労働することができず、かつ随時介護を受けることを必要とする状態。三級は、負傷または疾病が治らないで労働することができない状態。こういうふうにしてあるわけでございますから、その扱いは同じでございます。したがいまして、いまお話がいろいろ出ておりますが、傷病が治らないために状態として労働することができない状態にある労働者、これが傷病補償年金の対象になるわけですから、近い将来復帰できそうな状態まで回復している労働者、これは元来は傷病補償年金の受給者にならない、あるいは一たんなりましても傷病の回復によりまして休業補償給付に切りかわることになる、そういう点で基本的には従来と扱いは変わらないと私ども考えておりますので、御了解をいただきたいと思います。
#161
○沓脱タケ子君 お話はよくわかりますがね。私はやはり本来労働災害で健康を破壊されて、あるいは身体に負傷して、そうして就労ができないという事態が続いている以上、まあ法のたてまえがあるからということで、すぱすぱ解雇がされるというふうなことになったのではまさに労働者使い捨ての姿になってしまうので、そういった点はできるだけたてまえはたてまえといたしましても行政指導等を通じてそういったことのないように、ひとついまおっしゃったのは従来と同じだとおっしゃっておられますが、その点の行政指導を強めていただきたいということを特に申し上げておきたいと思います。
#162
○政府委員(藤繩正勝君) 私どもは従来と同じであると考えております。ただ、解雇制限が解除になった後の問題というのは、元来が労使それぞれの間で扱うべき問題でございますから、一般的にはそういった自由な労使関係に役所が介入するということは適当でございませんけれども、しかし、こういう事案について非常にその必要性が高い場合に必要に応じて労使それぞれに必要な助言、援助をするということもまた役所の仕事でございますから、適時適切な対応の仕方をしていきたいというふうに思います。
#163
○沓脱タケ子君 で、もう一点は、これは午前中も御質疑の中に触れられておったと思いますが、いわゆる労働災害の認定期間の問題ですね。期間を要さないで簡単にわかるという場合と、特に神経性の疾患の場合で認定――因果関係等をめぐりましての認定が非常に長くかかるという場合がしばしば現状ではございます。そういう点で、最近では、普通でも三カ月ないし六カ月もかかる、うかうかして不服審査でもしたら二年や三年すぐにかかってしまうというふうな事例も現実にはございますね。そういう点で、私は、認定されてもいわゆる八十一条が発動されて首がなかったというようなことにならぬように、これはどうなんですかね、いわゆる認定審査期間というのが解雇制限期間に入って算定をされていくということになると問題があるんじゃないかと思うので、一つはできるだけ早く認定作業というのは進めなきゃならないし、同時に長くかかる場合には、これは認定期間に要した期間というのは、いわゆる八十一条の解除に、三年に算定をしないというふうなことの扱いはできないもんなんでしょうか。
#164
○政府委員(藤繩正勝君) 認定をできるだけ早くしなきゃならぬというのはおっしゃるとおりでありまして、私どももできるだけの努力をいたしたいと思うわけでございます。解雇制限が解除されますのは言うまでもなく療養の開始後三年を経過した日において傷病補償年金を受けている場合、またはその三年を経過した日後において傷病補償年金を受けることとなった場合でございますが、この三年間という期間は療養の開始時から計算するものでありまして、監督署長が保険給付の支給決定を行った日から計算するものではないわけでございまして、これは従来の長期傷病補償給付も同じでございます。御指摘のように日にちがかかる、あるいは不服審査等で相当かかるじゃないかとおっしゃいますけれども、これは保険給付そのものは被災時にさかのぼって給付をされるわけでございます。また、逆に解雇はさかのぼって行われることがない。仮にその間に解雇というような行為があればこれは無効でございまして、取り消されるわけでございまして、その点はやはり制度のたてまえとしてはこういうことでいかなければならないのではないかというふうに思います。
#165
○沓脱タケ子君 それはたてまえ上なかなか困難だと思いますよ。そのことは、そういうことが起こらないように認定業務をできるだけ早くするということにかかっているというふうに思うんですよね。その辺は御理解をいただいて指導を強めてほしいというふうに思います。きょうはその問題には触れられませんけれども……。
 もう一点は、いわゆるこの職場復帰訓練、五九三通達と言われておる職場復帰訓練と言われておる問題がありますね。これは神経性疾患の方々に特に重要な内容になっておるわけですけれども、この五九三通達というのは治療の一環として見るのかあるいは就労として見るのか、その辺をひとつはっきり御見解を伺いたいと思います。
#166
○説明員(田中清定君) この通達で訓練的就労を促進するという趣旨は、被災労働者の社会復帰、職場復帰をできるだけ早く実現したい、そういう趣旨でございますけれども、そういう観点から行うものではございますが、就労段階におきましてはそこに具体的な被用、従属関係が形成される、そういう場合にはそれは一つの労働関係というふうにとらえておるわけでございます。
#167
○沓脱タケ子君 私、お伺いをいたしておりますのは、その五九三通達というのは、いわゆる神経性疾患の患者さんが職場復帰をしていくために段階的に就労訓練をしていくという、いわゆるリハビリテーションあるいはアフターケア、そういうものとして労働省はお考えになっておるのか、あるいは短時間の単なる就労だというふうにお考えになっての通達かと。この見解ですよ。
#168
○説明員(田中清定君) この通達の基本的発想は、あくまで職場に復帰することを促進するための訓練という角度から考えておるわけでございます。
#169
○沓脱タケ子君 そうしますと、いわゆるアフターケアとして広義の医療の一環として見ていくわけですね、どうですか。
#170
○説明員(田中清定君) 療養補償給付それ自体の内容となるような意味での医療ということではないと思いますが、労働能力の回復、さらには具体的な作業能力の回復を促進するという意味で、先生がおっしゃいますようにリハビリテーションの一環であるというふうに思います。
#171
○沓脱タケ子君 そうしますと、大阪の労基局で言われているのは、そういうならし訓練というのですか、そういうことで治療の一環としてやられるはずのいわゆる職場復帰訓練というのですか、そういうものが就労だと言われて、たとえば二時間ないし三時間ならし訓練に行く、これで賃金の支払いを指導されているそうなんですが、そういうことになってきますと、片方では一部就労一部通院というふうなことを認めておられるんだけれども、これは非常に被災労働者にとって不都合なことになってくるわけです、こういう状況になってきますと。具体例をちょっと簡単ですから言いますと、これはある労働者ですが、たまたま発病してから神経性疾患でずいぶん長くかかってことしで十一年目という方です。そういう方もあるんですね。その発病のときの平均賃金というのは千五百六円です。ですから、給付基礎日額というのは、この千五百六円の六〇%ですから九百三円六十銭なんですね。で、そういうことでいわゆる休業給付をもらっておられる金額が――いまそうじゃないんですね、発病したときはそういう金額であった。ところが、その後スライドをされたりあるいは特別支給金というのがプラスされて、しかもスライド率というのは二の十年間というのはずいぶんきついですから――百分の三百五十八ですから三倍半ですね。そういうスライド率になっておりますので、そのスライド率を掛けて特別支給金等をプラスいたしまして一カ月十万二千円の休業補償給付をもらっているわけですね。ところが、いわゆるならし訓練という形で五九三通達でならし訓練に入ったわけですね。で、三時間働いているわけですが、そうしますとどうなるかというと――現行もらっている賃金、現行の労働者の普通に働いている労働者の賃金の水準を計算をいたしましてその時間給を計算してくれるわけですね、当然。そうなりますと、たまたま、その職場では一時間給が六百二十五円なんです、一時間給が。三時間訓練をいたしますが、これについて就労として賃金を払えということで賃金をいただきますと、千八百七十五円になりますね、一日当たり。そうしますと、これは三十日働くわけにはいかないんですが、計算しやすいから三十日というふうに計算をしても、五万六千二百円ぐらいにしかならぬのですね。ところが、そのいただく三時間分の賃金の千八百七十五円というのが発病したときの平均賃金あるいは給付基礎日額よりも高いわけですよ。六割を超すどころじゃない。もうすでにその水準を超しているわけです。だから、休業補償給付は六割を超えたということで打ち切られるわけですね。そうなると、少々労働力が回復をしてきて、早く職場復帰をしたいと思って、ならし訓練に二時間、三時間入った。そうすると、十年もたちますと、そういう特に今度の、最近の十年というのは非常に経済変動が激しかったために、平均賃金もあるいは給付基礎日額の六割を超すどころじゃなしに、もう三時間働いただけでそれをオーバーするというふうなことになって、打ち切られる。そうしたらどうなるかというたら、労働力は回復したけれども、ならしに訓練に行ったら五万円そこそこになってしまうと。しょうがないから休んでいると、全日休んでいたら十万二千円はいただけると、こういうことでは、せっかくお出しになった通達の意味というのはなくなると思いますし、第一、職場復帰の意欲というのを労働者がなくすると思うんですがね。この辺の不利益な状況になるという点は御理解になっておられて御指導になっておられるんですか。
#172
○政府委員(藤繩正勝君) できるだけ療養補償、休業補償を受けておられる方が早く職場に復帰していただく。そのためには、先生専門でいらっしゃいますけれども、メディカルリハであるとかボケーショナルリハであるとか、いろんな手を打ちまして、できるだけその環境に順応させて早期社会復帰を図るということが必要なことは言うまでもありません。この措置も、一連のそういう目的ででき上がっておるわけです。ただ、何せ、先ほど来お答えしておりますように、通常の療養補償、休業補償というのは、まあ一年で九七・五%の人が治癒していくわけでございまして、私どもこの制度を考えましたときに、いまおっしゃいましたように、非常に長い方がそういう状態で出てくるということはちょっと考えてもおりませんでしたので、非常に例外的な事例としてそういう問題が出てまいりました。その点は、もう御指摘のとおり、制度の趣旨に沿いません。この点、やっぱり何らかの調整を要すると思います。検討さしていただきたいと思います。
#173
○沓脱タケ子君 やはり、職場復帰を目指している労働者の意欲が損なわれないようにひとつ検討して前向きに解決をしていただきたいと思います。
 で、私、二、三点の例を挙げましたけれども、やはりこの問題が出てくるというのは、労基法の八十一条、いわゆる解雇制限が三年というところに一つの問題点があるのではないだろうかという点を感じるわけです。といいますのは、労基法は御承知のように、昭和二十二年ですよね、制定されましたのは。で、昭和二十二年当時の労働者の労働の態様と現在の労働者の労働環境や労働の態様というのは非常に激しく変わってきている。現在では非常に新しい疾病が発生をしてくる、しかも長期化をするというふうな状態というのが新しい状態として生まれてきているという点を考えますと、これは労基法の八十一条の、三年で解雇制限の解除というのを検討し直す必要があるんではないかというふうに思いますが、そういう根本的検討というふうなことは、労働省としてはお考えになっておられないでしょうか、その点についてお伺いいたします。
#174
○政府委員(藤繩正勝君) 労働基準法八十一条の規定は、いわゆる「打切補償」の規定でございまして、療養開始後三年を経過しても治らない場合には平均賃金の千二百日分の打ち切り補償というものを使用者が支払って災害補償責任を免れるという制度でございます。これが現状にそぐわないという点では、いま先生いろいろおっしゃいましたような問題があるわけでございまして、私どもも打ち切り補償ということでは必ずしも適当でないということから、御案内のように労災保険では順次年金化というものを進めてきたわけでございまして、いま問題になっておりますその長期傷病補償給付、傷病補償年金、まさにそれでございます。で、労働基準法第八章の規定は、もう実際問題としては労災保険法がほとんど全面適用になりましたので、三公社等の国の事業、ごく一部の農林水産の事業を除いては、これは全部労災保険で賄われるという状態になっていることは御承知のとおりで、その点では打ち切り補償は年金化されたというふうに考えられるわけでございます。
 それと、もう一つは基準法十九条の規定で、いま先生がお挙げになったのはむしろそっちの問題だろうと思うんですが、打ち切り補償を支払ったときに解雇制限というものが解かれるということについて、それでいいのかと、こういう意味であろうと思いますけれども……、
#175
○沓脱タケ子君 間違いました。
#176
○政府委員(藤繩正勝君) 実はこの解雇制限のこの禁止の十九条の規定はヨーロッパでも大変珍しい、たしかオランダぐらいしかない非常に日本的な規定である。いいか悪いかの議論は別として、非常にやはり年功序列・生涯雇用的な日本的な規定だと私ども見ております。そういう意味で、基準法全体については、御承知のように、労働基準法研究会でいまずっと見直しが続いております。その中で、そういった制度の本来のあり方、それからまたいま先生が言われましたように、逆に疾病その他社会環境の変化、そういうものをあわせてやっぱり基本的にこれは検討すべき問題ではなかろうか。現在の改正では、従来の態度を変えていかないということで割り切ったわけでございます。
#177
○沓脱タケ子君 これは大臣ね、私は後でお聞きをしたいと思いますが、私たちいま日本の労働者が置かれている態様というのは非常に変わってきているということを、労働省でもいろんな資料ですでに御調査になっておわかりのとおりだと思うので、私たくさん申し上げようと思わないんですけれども、少なくとも労働災害、職業病等を出さないということの対策というのはきわめて大事なんですからね、そういう点をやはり力点として考えていくということが中心であって、この解雇制限を解除するとかなんとかいうところに力点が法のたてまえとしてあるということの方がおかしいと思うんですよ。
 で、時間の都合がありますから詳しくは申し上げませんけれども、五十年の八月に労働省でも国民の健康調査ですか、これをおやりになっておられますよね。労働者の健康状態調査というのをやっておられますが、これを拝見してみましてもずいぶんひどいですね。労働者の七割が疲労感を持っていると。疲労感の最も多いのは流れ作業に従事する生産技術技能職だと、これは七八%ですね。それから疲労の回復が翌朝まで持ち越す者というのが四割以上もある。それから持病として慢性の持病を持っているのが二六%。常備薬として薬をぶら下げているのが二四%。昭和四十九年の十月中に病気またはけがをした者が全労働者の三〇%だと。というわけですから、まあ大変な状態になっておるというのが御調査の結果で明らかになってます。私はこういった問題を解決をしていくためには、少なくとも労働災害や職業病をなくしていくというたてまえから言いますならば、これは労働条件の改善あるいは職場の合理化、生産性と合理化の問題等に労働省も目を向けて、少なくとも労働者の健康を守っていくと、健康と命を守っていくという立場から言いますと、メスを入れなければならない段階へ来ているのではないかというふうに思うわけですが、その点でどうでしょう、具体的に、たとえば労働条件の改善という点では労働時間の短縮、すでにまあ週四十時間制、あるいは週休二日制等は労働省としても推進をしておられますが、休憩時間の延長というふうな点を含めまして労基法の改正というふうなことを進めていくというお考えはないでしょうか。
#178
○国務大臣(長谷川峻君) まあ、おっしゃるように非常に態様が変わってきております。大体、産業構造がぐんぐん変わっておりますから、先生専門の、たとえば有害物質がアメリカでは二十分に新しい品種が一つずつ出てくる、こういうものがもう入ってくる時代ですから、何としてもやっぱり予防をすることがまず一番。それと同時に、また労働省では先生がおっしゃるもの全部やっておるわけじゃありませんけれども、最近はその産業医ですね、普通医もやっぱり産業のことを考えなければまずい、こういうことで、医師会には特別に産業医の養成なり講習なりをやり、それからこれはもう本当に自慢してもいいと思うんですが、とにかく産業医科大学というものをつくりまして、これは世界でたった一つでしょう。こういう中にはいま先生がおっしゃったようなものを全部ひとつつくると、世界のモデルとしてやってみようという感じ方で推進してまいりますから、いろいろまた専門的立場で御注意いただきますならば、それを意見を採用しながらやってまいりたいと、こう思っております。
#179
○沓脱タケ子君 労基法を改正してそういう方向を促進するというお考えはないんですか。
#180
○政府委員(藤繩正勝君) 労働時間短縮あるいは休憩、休日のあり方等が労働者の健康問題と非常に関連があるということはおっしゃるとおりでございますし、私どもも産業あるいは作業の変化に応じまして、いわゆる単調労働の問題なども専門家に集まって研究していただいたこともございます。そういう意味で時間短縮、週休二日等についてはいろいろ関心も持ち、行政指導もしてきたわけでございます。ただ、労働基準法を改正してというお話がよく出るわけでございますが、私どもも労働基準法が現状でいいとは思っておりませんで、研究会を設けていろいろ検討もし、また安全衛生法やその他必要な立法をときどきしているわけです。今度の賃金支払いの確保も基準法研究会の答申をいただいて動き出したものでございますが、そういうことをやってまいっておりますが、ただ四十時間制をいますぐどうこうするとか、特に週休二日制につきまして、御承知のように、自由主義諸国家で週休二日制を法律で実現をしている国はないのでありまして、これはやはり労使の慣行として積み上げられてくると、こういう傾向があるわけでございます。私どもはその辺はなお研究会の研究成果を待って慎重に対処したいというふうに思います。とりあえずはむしろ、たとえば基準法の三十六条の協定、特に三十六条ただし書きにありますような有害業務の時間制限あるいはいろんな形の就業制限、こういうものの監督指導をもっともっとやらなきゃならぬということを痛感いたしておるわけでございます。
#181
○沓脱タケ子君 私はそういう労働条件を改善していくということと、もう一つはやはり先ほども申し上げましたね、大臣はいわゆる労働医科大学ですか、でやるということをおっしゃっておられるのですが、これは日本の労働者というのはいかに激しい合理化の中で働いているかというのが、たまたま私、数字を見てちょっと驚いたのですが労働時間ですね、ヨーロッパ、欧米諸国と比べてみますと、労働時間というのはほぼ同じようなものなんですね。長くてもアメリカは四十・七時間、日本が四十二時間、フランスなどはこれは四十三・六時間となっているのですよ。ところがその中で一だから労働時間というのは余り変わらないわけですが、労働生産性というのは非常にわが国は高いですね。わが国の労働生産性を見ますと、これは一九七〇年を一〇〇といたしまして、七四年の指標を見ますと、これは「国会統計提要」なんですがね、それによる数字ですが、日本では一九七〇年を一〇〇として一四五なんです。アメリカは一一二ですから、労働生産性から言えばアメリカの約四倍近いですね、それから伸び率ですね、伸びの伸び方から言いますと、西ドイツとか比べますと、西ドイツは一二一ですから、二倍以上ですね、わが国が。フランスが一二七、イタリアが一二九、イギリスが一二〇ですから、ですから日本の労働生産性というのは欧米諸国の二倍あるいは二倍以上になっている。それから労働時間がほとんど変わらない。こういう状況でございますから、いかに単位時間内での労働密度が非常に濃厚かということをあらわしておりますし、そのことが労働者には新しい緊張状態というのをつくり出してきていることはもう明らかだと思うんですね。そういう点で、これは非常に大事な点ではないかというふうに考えるわけでございます。その点はひとつそういった合理化だとか労働生産性の実態ですね、そういったものについて、これはどういう角度でどう指導していく、あるいはメスを入れるかという問題は一挙にはいかないと思いますけれども、そういった実態というのは御調査でも進めていただく必要があるのではないかと思いますが、その点はどうでしょう。
#182
○政府委員(藤繩正勝君) ただいま労働生産性と労働時間の国際比較をお出しになったわけでございますが、大変釈迦に説法で恐れ入りますけれども、労働生産性は単位時間当たりの生産量でございますので、これはやはり技術革新の進展なりあるいはその装備の新鋭機械が入れば非常に生産性が上がるというようなこともありまして、必ずしも労働密度の濃密さだけを示すものではないというふうに思います。しかしながら、それはそれといたしまして、確かに、たとえば新幹線一つとりましても、往年の列車に比べて非常にスピードが速い、運転士の疲労が高いというようなこともよく言われるわけでございます。そこで、先ほどもお答えしましたように、たとえば私どもも単調労働専門家会議などを持ちまして、尾高先生などを中心にいろいろ勉強したこともあるというのはそういうことでございます。実はそういう問題をまさに抱えておりますがゆえに、先ほど大臣から産業医科大学のお話がございましたが、もう一つ「産業医学総合研究所」というものを実は労災保険法の附則で設置法を改正していただきまして、お認めをいただければ、これは東名高速道路の入り口の生田のところに装いを全部変えまして、いままでの労働衛生研究所と比較にならない内容を持ったものをいま完成して、この法律の成立を待っておるわけでございます。そこで、いろいろな職業病の問題がございますが、いま先生が御指摘になったような新しい形の緊張なりあるいは老齢化なり、そういった問題に伴う労働者の健康問題、これともひとつ取り組んでみたいというふうに思っておるところでございます。
#183
○沓脱タケ子君 私は産業医科大学だとか、総合研究所でこういった問題に焦点を当ててこれはぜひ調査、検討を進めていただきたい、そのことを申し上げたいと思って実は引例をしたわけですけれども、ぜひそれは進めていただきたいと思います。
 それから、ちょっと関連をいたしますが、労災病院ですね、労災病院のことに関連して、ごく簡単なことですけれども、一、二お伺いをしたい。
 それは全国で労災病院がいま三十四病院あるんですが、いわゆる看護婦対策として院内保育所をつくっているのは関東労災、大阪、関西、三カ所なんですね。それが看護婦さんだけに限定をされるということになっておるわけですが、そのほかに東京、長崎、東北、山陰、岡山というふうなところでは設置を非常に切望しているようなんですが、これはひとつ看護婦さんの対策としてもぜひ積極的におつくりになる必要があるのではないか。私、いわゆる国際婦人年で国内行動計画等の推進がやられておりますけれども、そこで、働く婦人の環境を整備するということのために保育所等の整備、増設などということが、これはそういったところでも非常に論議をされていますし、労働省のお立場でもそういったことが主張されているわけですね。そういう立場から言いますと、労災病院、直接――それは事業団に運営は任しているとは言いながら、労働省直轄の労災病院でそれもできてないということはちょっとぐあいが悪いんじゃないかな――これは、ぜひおつくりになっていただく必要があろうと思います。
 それからもう一つは、看護婦さんだけに限定されているということで、これは看護婦対策ということはわからないわけではないですが、そのほかにも女子労働者というのはいるんですね、当然病院ですから。その人たちの子供は、たとえば病院の官舎に住んでおる人が看護婦でない職種で、たまたま私が聞いた人はレントゲン技師ですよ、だから官舎に住んでいるんだけれども、看護婦でないから入れてもらえなくて、よその保育所へ預けに行っているという、ナンセンスを絵にかいたみたいな姿もありますので、そういった点はひとつ改善をしてもらいたいと思いますが、御見解をちょっと伺いましょう。
#184
○国務大臣(長谷川峻君) 二、三日前も日本看護協会の総会にも私出たんです。それから地方を歩きましても看護婦の足りないことわかっておりますし、いま御指摘の私の方の労災病院お挙げになったところには、なるべくひとつ看護婦養成のそういう学校などを置きたい、こう思っております。
 それから後の管理の問題は、そういうところがありましたら、ナンセンスを絵にかいたようなことをやられちゃかないませんから、適当に監視をしよう、こう思っております。
#185
○沓脱タケ子君 できるだけ早く実現をしてやってほしいと思います。
 それから、ちょっと引き続きまして、先ほど私、産業発展のテンポの中でいろいろな形の合理化が出てきているという問題を指摘いたしましたが、それと関連いたしまして、不況だと言われているけれども、そういう不況下で逆に非常に雇用の実態というのは変則的な形でまた広がってきているという実態を見受けるわけです。これはもう時間の都合がありますからごく簡単に申し上げますが、カラーテレビ等のいわゆる弱電メーカーですね、そこではカラーテレビ部門というのは非常にシェアが広がってきておって、たとえば大阪でも住道というところに三洋電機が新しい工場を増設するというような動きも出ているわけです。その中で私は非常に心配をするのは、これはたまたま三洋電機の例を引いてみますと、四十九年の一月には、働いている人たちの職員の状態というのは本工が二でパートが一の割合だった。それがことしの一月、二年間ですよ、ことしの一月を見ますと、本工が一でパートが三になっている。こういう状態というのが起こってきているというのが、これはまあ全体の業界に起こっているというふうには思えないですけれども、不況下だと言われておりながらそういう実態が起こってきているというのは軽視できないと思う。特にそういうところですからパートというのは六時間ですね。ですから本工は朝八時から五時十五分までで、休憩をとると、パートの人は朝九時から四時まで六時間労働だと。ところが賃金はパートの勤続というのがあるんですよ、パートの勤続一年以上は時間給三百四十円で、パートの勤続三年以上が時間給三百八十円、それから一週間ごとに皆勤手当を九百円つける。ところがその賃金は計算をしましても、いわゆる高校卒業の女子の最低賃金以下だと、そういう状態になっている。それから、忙しいから残業をするんですね。四時までが規定なんだけれども、一時間残業をしてくれといって五時まで働く。ですから七時間働くんですが、これは残業手当がつかぬ。――いや、もちろん時間給はつく、残業手当はつかない。確かにそれはもうお答えをいただくまでもなく労基法では八時間労働制ということで言われておりますから、八時間以内だから時間外手当という手当をつけないわけですね、そういう実態になっておるというふうなこと。こういうことを見ますと、これはパート対策というのはやはり労働省としてもこれは無関心ではおれないんではないかと思いますので、こういった点での大量長期のパートの雇用というふうな場合は届け出でもやらせるとか、一定の対策をおとりになる必要があるんではないかというふうに思いますが、その点についての御見解を伺いたい。
#186
○政府委員(遠藤政夫君) 不況の中で雇用調整がいろいろな形で行われております。その中で社外工とか臨時工、あるいはいまおっしゃるようなパート、――パートという概念にはいろいろなものがございまして、一概にどうこうと申し上げるわけにもまいりませんけれども、いわゆる通常パートと言われる人たち、こういった人たちが雇用調整の対象になってきます。そこで不況が次第に回復してまいりまして、ことしに入って雇用情勢も予想以上にかなり好転してきております。いまお話のように、住道町で新しい作業工場ができる、その中でいわゆる常用工とそういった臨時的なパート、――臨時と言えるかどうかわかりませんが、パートとの割合がパートの方が高くなってきているという御指摘でございますけれども、ことしの二月、三月有効求人倍率の中身を見てまいりますと、確かに不況の中で経過的にはいわゆる臨時、季節、そういったものの方の求人が高くなってきておる。それから本工、いわゆる常用労働者の求人が高くなってくる、こういうことになってきておりますが、二月、三月に入りまして常用工として含めた全体の求人倍率は高くなってきております。三月、四月にはむしろパートそういった臨時よりも常用の方が比率が高くなってきておる、こういう状況でございますので、私どもはいまお挙げになりました例が事実であるとするならば、これは確かにいろいろな問題を含んでおるかと思いますが、私どもは先ほど来建設労働の面でも指摘がありますように、いわゆる常用化、一般普通工の雇用ということに主眼を置いて雇用政策を進めてまいっております。特に今月末から来月に第三次の雇用対策基本計画を決定することにいたしておりますが、その中で問題になりますのは高年齢労働者あるいは身体障害者と並んで婦人労働者の問題が一つの大きな問題点になろうかと思います。主としてこのパートの対象になりますのは婦人労働者でございます。これからの婦人労働のあり方ということにつきまして、私も基本的にいま御指摘になりましたような問題もございますが、ただ、これをパートとして規制するとか、届け出をさせるとか、これは需要と供給の関係でございます。不況の中はそうでございますが、これからは労働の需要がいままでの高度成長時代みたいに需要がそう増大が期待できないということになりますと、一方ではまた労働条件の面でいろいろな制圧が出てくる。他方、今度は供給圧力がそういった面で加わってくる、こういうことから需要と供給の関係でパートの希望者がふえてくる、こういうこともあり得るかと思います。そういった点を十分諸般の情勢を勘案しながら、そういったもし仮にパートという名のもとに不当な就労条件が強いられるというようなことにならないように私ども十分配慮をしながら雇用政策を進めていきたい、かように考えております。
#187
○沓脱タケ子君 これは、きょうは中心的本題ではありませんから、それ以上申し上げませんけれども、しかし勤続一年以上、三年以上といって賃金が決まっているわけですからね、パートということではありますけれども、やはり常用化させていくという指導というのは必要だと思うんですよ。その点はぜひ含んで指導を強化していただきたいと思うのです。
 時間の都合がありますので、あと建設労働法について若干お聞きをしたいと思います。
 今度の建設労働法はいわゆる雇用審議会の建設労働問題に対する中間答申あるいは意見具申、そういったものに基づいておつくりになられたのでしょうか。
#188
○政府委員(遠藤政夫君) 今回の建設労働者の雇用の改善等に関する法律案は、いま御指摘の雇用審議会、中央職業安定審議会、いずれにも専門部会が設けられておりまして、かなり長期にわたっていろいろ検討が行われ、その検討の結果、答申をいただきましたので、その答申をもとにして法律案を策定したものでございます。
#189
○沓脱タケ子君 そうしますと、これはいわゆる雇用審議会の中間答申あるいは意見具申にも書かれておりますが、いわゆる「福祉の充実」というところでは「悪天候対策の検討」というようなことが言われているのですね。労働の実態から言いまして、そういった問題について具体化し検討していくということが非常に大事だと思いますが、雨が降ったら休まにゃならぬ、だから人が休んでいるときも働かねばならぬというふうな、やはり前近代的な労働の実態になっているという点は、これはやはり改善をし、有給休暇という形で改善をしていくという方途というのはきわめて大事だと思いますが、こういう点は今後御検討の方向でございましょうか。
#190
○政府委員(遠藤政夫君) 建設業におきますこの労働態様、それは建設工事が屋外作業がその大半を占めております。屋外作業を中心にして行われているというような関係から、いわゆる雨が降ったり、そういうような天候によって左右されることがきわめて多いわけでございます。そこで、この答申もいま先生御指摘になりましたように、悪天候下でも作業ができるような、そういう工法の開発だとか、こういった点も十分検討していく、こういうぐあいに検討していくと同時に、他方、こういった点について有給休暇制度、いろいろ、あるいは実際に慣行上、雨賃というような実態もございます。これを法律的な制度として悪天候手当というものをつくるのかどうか、果たしてそれがいいのかどうか、こういう点につきましては大変いろいろ問題がございます。仮にそういった制度をもしとるといたしますと、大変な行政事務量、これは外国にもそういう例がございますけれども、外国の場合にはそういった物理的能力を超える、それから大変非常に過大な経費の負担が必要になってくるということで、こういうことを実施したことによってその制度が崩壊した例もございます。うまくいった例はほとんど私ども承知いたしておりません。こういったことは、そういった工法の開発ということとあわせていわゆる労使慣行の中で賃金慣行なり、あるいは労働態様なり、そういった面から改善を加えていく必要があろうかと思いますが、いま直ちにこれを制度的に取り入れるということは全く考えておりません。
#191
○沓脱タケ子君 その点では、私はやはり建設労働者の実態から見まして、いわゆるよく昔から言われるじゃないですか、「土方殺すには刃物は要らぬ、雨の三日も降ればよい」というような、そんなことがいまの日本の労働状況の中でまかり通るというふうな実態を何とか早く解決せにゃならぬと思うのですよ。そのために、そういうことで、しかし生活を守っていく上で非常に苦労している建設労働者の方々もたくさんおるわけですから、そういった点については直ちに制度化できないという御意見ですけれども、今後の課題として、これはどういう方向でという形でも、これは今後の課題としてそういう嘆きを見せないようにひとつ検討を進めていっていただきたいと思いますが、いかがでしょう。
#192
○政府委員(遠藤政夫君) 私どもは、今回御審議いただいております法律案の主眼が建設業における労働慣行、雇用の改善ということでございます。その一つがいわゆる臨時、日雇いあるいは季節出かせぎといったようなものをできるだけ常用化を進めていこう、あるいは積雪寒冷地、そういったところでは通年雇用化を進めていこう、こういう従来の雇用改善対策を前提にしながら、これを一つの支えとしてこの新しい法律案を提起をしているわけでございます。したがって、そういうことでいまおっしゃったように「土方殺すには刃一物は要らぬ、雨の三日も降ればよい」ということですが、その当時の賃金といまの賃金は格段の差があるわけです。ですから、仮に建設労働者が月に十五日から二十日働いた。そう言われた時代の賃金といまの賃金と大きな差があります。そういう賃金面でも改善が加えられておりますし、同時に一般的な状態を見ますと、数年前といまではやはりそういった雇用の実態についてもかなりな改善が加えられている。これから新しい法律ができましたならば、これをてこにして、いろいろな現行諸法令あるいは制度等と相まって一層改善を加えていきたいと、こういうふうに考えております。
#193
○沓脱タケ子君 もう一つお聞きをしておきたいと思いますが、今度の建設労働法では原資として雇用保険で事業主から一%徴収することになっているんですね。ところが、建築業界の実態を見てみますと、これは先ほどからもいろいろな形で言われておりますが、資本金関係で見ますと資本金一億円以下の事業所というのは九九・四%でしょう。それから労働者三十人以下の事業所というのは九四%ですね。しかも建設労働者が三百六十万ですか、おられるわけでしょう。そうすると、この雇用保険を掛けるというのは一体どこが掛けるかということになりますと、九九%に近い、まあ九〇%以上の中小の小さい事業者が全部負担になると思うわけですけれども、そういう点は何とか勘案できないですか。たとえば、先ほども一人親方の話が出ていましたけれども、一人親方が仕事が見つかって一人人を雇ったらやっぱり掛けんならんわけでしょう。一億円以上の大企業というのはそういう常用労働者というのはたくさん雇う必要がないわけですね。いまの日本の建設業界の実態から言いますと、いわゆる重層下請制度で、りっぱな事務所はあるけれども、そんな膨大な労働者を抱えるという必要がないというふうな実態から言いまして、これは一%だということで大したことはないというふうにはちょっと考えにくいんですけれども、そういった点についての若干のすそ切りとかなんとかの改善策、そういった点はお考えはないんでしょうか。
#194
○政府委員(遠藤政夫君) この新しい法案によっていろいろな事業を実施いたします経費として千分の一の雇用保険料の上積みという形で経費を徴収する、こういうことでございます。この千分の一がほとんどが中小企業以下の負担になるのではないかという御指摘かと思いますが、私どもさよう考えておりません。したがって、これをすそ切りとか、そういった形で改めるべきだとは考えておりません。と申しますのは、雇用保険料ということで、それが労働者の負担になるとか、あるいは零細事業主自身の負担になるということであればこれは別だと思います。実はそうではございませんで、それは誤解だと思います。この雇用保険料の千分の一は、全部工事費の積算基礎に入ることになっております。したがって、人を雇っても、仕事をしないで人を雇っているというのであれば、それはもちろんそうなるかもわかりません。その工事金額の中に含まれることになっております。したがって、その負担がどこにどういうふうに帰属するかということは、これはおのずから明らかだろうと思います。ただ、問題は雇用保険料の、保険料自体が千分の一の問題でなくて、どういうふうに徴収の仕方をしたらいいのかという点については、これは従来からいろいろ問題のあるところでございます。むしろその一人当たりの賃金総額に掛けるのではなくて、たとえば労災保険と同じように労務比率制をとったらどうかと、こういう考え方がございます。そういった意味では、私どもは検討してまいりたいと思っておりますが、中小企業に負担過重になるからすそ切りをしろとか、大企業に負担をさせるようにしろとか、そういう考え方はこれは先生の誤解に基づくものでありまして、私どもそういうことは考えておりません。
#195
○沓脱タケ子君 それじゃあともう一点。
 不払い賃金の立てかえ払いの法案について一点だけお聞きをしたいと思うのですが、これは従来から言われておりますように、いわゆる労災勘定でやられるということについては労災のたてまえから言うと、これは将来検討する必要があるということはこれは衆議院でも附帯決議がついていますが、私どもその点については全く同感なんです。そこで、この法案について一つだけお聞きしたいのは、立てかえ払いの金額がいわゆる不払い賃金三カ月分のどの程度にするか。私ども伺っているのは政令で八〇%ぐらいの限度にするんだというふうなお話を伺っておりますが、これは私ども日常的に知っておりますのは、すでにあれですね、労働組合と労使の関係、あるいは債権者との関係等で一〇〇%確保しているというのがずいぶんありますね。あるいはその法律関係の訴訟の問題の場合でも、そういう点では一〇〇%を確保しているという事例がたくさんあると思うのですが、この点については一体この法案発足のときにはどの水準にしていくのか。できればやはり一〇〇%に近づけるような改善策、これをお考えになっておるかどうかをお尋ねしたいと思います。
#196
○政府委員(藤繩正勝君) けさほどの大臣の提案理由にもございましたように、賃金を支払うということはもう事業主の責任でございまして、元来賃金未払いということはあってはならないものでございます。労働基準法でも刑罰をもってこの履行を迫っておるわけでございます。しかしながら、実際はなかなかそうは申しましても特に事業主に支払い能力が全くなくなったような場合、どうしても不払いということが起こってしまう。そこで今回考えられたのがこの法案に盛られた措置でございます。そこで、この法案でも立てかえ払いだけではございませんで、まずもって労働基準法を改正いたしまして、罰則を従来の五千円から十万円に引き上げておるわけでございます。それから延滞利息という制度を設けまして民事的にもこれを追い上げていこうと、こういう手段をとっておるわけです。それから社内預金や退職金についてはいろんな保全措置も講じてもらおうと、こういうことでございまして、いままでとられましたありとあらゆる手段、先ほども建設業法のお話も出ておりますが、そういったものも含めましてあらゆる手段を講じて事業主に払っていただくということを私どもはやりたいと思っております。それでもどうしてもできない場合にやむなく一種の保険施設でございますこの制度で立てかえ払いをする、これは立てかえ払いと申しましても結局全部回収することがむずかしい性質のものでございます、これをやると、こういうことでございますから、そこでやっぱり最後の手段としてはどうしてもおのずから一定の制限が設けられるということはやむを得ないことだと思います。そこで、その対象もたとえば三カ月に見合う金額でございますとか、あるいはいま御指摘の八〇%でございますとか、あるいは上限を一定限度に限るとか、いろんな制約があるわけでございますけれども、八〇%といたしましたのは税金がこれは実質的に今度かかりませんし、それから各種社会保険料も事業主負担、事業主の納付義務がございますから、この立てかえ払い金からは取り立てないというようなことから手取りを保障するという考えでこういう制度にしたので、これがあるから従来のいろんな既得権が侵害されるというようなことはとんでもないことでございますし、また行政といたしましてもそんなことが絶対に起こらぬようにこれはやっていくつもりでございます。そういう内容でございますので御了解を得たいと思います。
#197
○沓脱タケ子君 それじゃ、その点ではぜひ私ども主張いたしておりますような既得権の侵害にならないように、せっかくの法律ができたために従来の闘い取ってきている権利が、既得権が侵害をされるということになったのでは非常にせっかくの法律としての効果がなくなるわけなんで、その点を心配いたしておりますが、まあお約束でもございますので、時間を短縮をいたしまして以上で終わらしていただきます。
#198
○粕谷照美君 私は賃金の支払の確保等に関する法律案に限って、社会党の持ち時間残されました二十五分間を質問したいというふうに思います。
 この法律案は長年強く要望があったものでもありますし、事業主、労組の意見両方ともよく闘わせながら慎重な審議のもとにできたというふうに思いまして、ここに至るまでの努力を心から敬意を表しつつも、しかしながらまじめに働いてきて倒産の憂き目に遭い、しかも塗炭の苦しみにあえいでいる労働者の立場から考えてみますと、まだまだやっぱり不満の面もあるというふうに思うわけです。しかし、こういう状況のもとではやっぱりこの法律案を成立をさせていくんだということを先行させていかなければならないというふうに思いますので、今後の改善に期待をし、どうしても附帯決議で確認をしておきたいということについて最初に質問をし、あとは細かな質問をしていきたいというふうに思うわけです。
 大臣に最初にお伺いしますけれども、未払い賃金の立てかえ払い事業というのは倒産した企業の未払い賃金を救済するという制度の趣旨と考えるので、深刻な不況のもとでこの法律案が成立後はできるだけ速やかに実施をすべきであるというふうに考えるんですけれども、大臣は衆議院において最初十月一日実施を今度は七月一日に繰り上げて実施をしてもよい旨の答弁をされておりますけれども、公務員労働者はこれも大変な作業だというふうに思いますけれども、そこのところを重ねて御見解をお尋ねしたいというふうに思います。
#199
○国務大臣(長谷川峻君) このたびの法律案に対して非常に御理解いただいておりますのに敬意を払います。
 何といたしましても、こういう経済不況のときでございますから、従来でも破産などがありました場合には賃金を先に確保するように労働基準監督などを通じて一生懸命がんばったことでございますが、どうしてもやはりこういう制度をつくるべきじゃなかろうかということが昨年以来参議院、衆議院の社会労働委員会などにおいてもお話があり、私はその際には五十一年度から一部施行しよう、五十二年度で完全実施という答弁もし、さらにはまたこの参議院においては中小企業中心にやれという御要望などもありましたので、このたびの法律案になったわけであります。その間、また労働組合四団体初め皆さん方からの意見等も聞きながらこの法律をつくったわけでございますが、十月一日実施ということでございますけれども、これを私はやはり皆さんの御要望がございますから七月一日という感じを持っております。そしてそのためには、何さま短期間にやることですから、省令の改正とか政令とか、あるいは労働省の役人の訓練とか、いろんな手当て、準備が非常に集中的にやらなければならぬ、それらをひとつ押し切ってでも労働省の諸君にがんばってもらって七月一日から実施したい、こういうことでございますので、ぜひひとつ御可決のほどをお願い申し上げたい、こう思っております。
#200
○粕谷照美君 最後の御答弁でよくわかったんですが、途中で、感じを持っているというような御答弁がありましたものですから、さあこれは大変だと思ったんですけれども、よくわかりました。ぜひそういうことで実施をしていただきたいというふうに思います。
 先ほどの片山委員の質問でも明らかになりましたけれども、倒産と賃金不払いは昨年非常に急増しているわけですね。この参議院の調査室の資料によりましても、二十四ページから二十七ページにかけてありますけれども、大変なものだということがよくわかるわけです。こういう実態から考えて、事実上の倒産については昨年来の倒産についても該当させるというこの経過措置をとるべきではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
#201
○政府委員(水谷剛蔵君) 先ほどの実はどういうものを対象にするかという御質問の際のあるいは私の答弁がお聞きにくかったかもしれませんが、事実上の倒産については経過措置で行うというのではなくて、中小企業につきましては事実上の倒産も政令で指定して対象にいたしたいという方針で現在考えておるわけでございます。したがって、先ほどの局長の答弁と総合いたしますと、諸外国等におきましては法律上の手続がとられたものに限定されているということもございますし、それからわが国におきましても法律上の手続をとるということが何らそう支障なく一般化すれば、その時点ではそういうような制度にすればこの制度としては多少すっきりするといいますか、制度を運用する側からすれば非常にやりやすくなるという面もございますけれども、しかしわが国の現状ではいま直ちに裁判上の手続をとったものだけに限定するということは適当ではないというように考えますので、現在のところは経過措置ということではなくて、事実上の倒産も対象にしてまいりたいというように考えておるわけでございます。
#202
○粕谷照美君 それで結構です。
 それではその次に行きますけれども、未払い賃金の救済について関係労働者の期待は非常に大きいわけです。労働省の言うように、一年余り前の適用は無理だというふうに考えましても、事実上の倒産の確認について弾力的な取り扱いをすることについていま御答弁をいただいたように思うのですが、それこそ法律を制定して発足をさせる、その目的に沿って運用があってしかるべきだというふうに思っているんですけれども、重ねて御答弁をお願いしたい。
#203
○政府委員(藤繩正勝君) この法律に定められておる制度でいきますと、たとえば更生手続をとる、あるいは破産の宣告があるという時点でこの対象になるわけですが、その前六カ月の間に退職をした労働者について、労働者としてはこれを対象にしていこう、こういうわけでございます。つまり破産宣告の申し立ての手続などがありましてから宣告まで大体六カ月かかるという考え方で、宣告自体があってから過去六カ月にさかのぼってその労働者を対象にする。それから今度はその労働者の未払い賃金をいつまでさかのぼるかというと、その労働者の退職時から六カ月さかのぼりまして、その間に生じた未払い賃金につき、限度は三カ月分でございますけれども、立てかえ払いの対象にしようということでございますから、一番極端な場合は一年さかのぼることもあり得るわけでございます。しかしながら、それはあくまでもある時点で倒産が確認されたということからこうさかのぼっての説明でございます。そこで、先生の御質問はむしろそういうことではなくって事実上の倒産の場合には、つまり裁判上の倒産、破産というようなことは、これはもう破産宣告ですから、きわめて客観的に明らかである。しかし、事実上の倒産は監督署長が認定をするわけですから、いつ倒産したかをどうやって認定するか、また、いつそれが破産同様の状態になったと認めるかという点については、これは事実上のやや弾力的な扱いが可能になるわけでございますけれども、私どもとしては、その辺のところをできるだけ過去の事情もよく調べまして実情に合った措置をとりたい。そこでいつまでの時点を調べるかということになれば、昨年の時点も調べたらどうかというような御議論もございましたけれども、仮に七月一日から適用するにいたしましても、なかなかその過去にまでそれぞれ現場でさかのぼって調べるということも困難でございますから、私どもとしてはことしに入ってからの時点はよくこれを調査して、そうしてできるだけ実態に即した取り扱いをしてこの制度の趣旨に合った運用をしていきたいと、こういうつもりでございます。
#204
○粕谷照美君 それでは片山委員からも質問がありまして、御答弁もいただいているのですが、もうちょっと納得がいきませんので質問をいたします。
 退職手当は労働者の退職後の生活にきわめて大きな影響を持っているというふうに思うわけですが、第三条で「貯蓄金の保全措置」は義務規定になっております。第五条では「退職手当の保全措置」については努力義務になっているわけですが、その理由をお伺いします。そして、この規定が罰則を伴わない義務規定であるということに、その実効性に疑問を持つ向きが非常に多いわけですし、わが党としてもそういう点についての質疑が交されたところです。支払いを確保するために、大臣はこの保全措置の実施について法律の趣旨が生かされるように、強い姿勢で臨まれますか、いかがですか。これは当然臨みますという答弁を期待してのことですけれども……。
#205
○国務大臣(長谷川峻君) 退職手当を中小企業がいつでも全部用意しているということになったら、とてもじゃない、これは大変な金額だと思うんですよ。それこそ仕事も何もできないんじゃなかろうかというきらいもあるわけでして、そういう意味からしまして、退職手当の問題は附帯決議等々もございましたから、その保全措置につきましては今後とも積極的な行政指導をしてまいりたい、こう思っております。
#206
○粕谷照美君 いままでの質問は、大体附帯決議に関連する質問をいたしておりました。
 では、やや細かな質問に入りますけれども、未払い賃金の立てかえ払い事業の対象になる倒産には、法律上の手続がとられる場合だけじゃなくて、事実上の破産の場合も含むと、こういうことになっておりますけれども、統計的に言いますと、どちらの場合の方が多いのでしょうか、そうしてまた、どちらの方がより重傷だというふうに判断をされますでしょうか。
#207
○政府委員(水谷剛蔵君) 事実上の倒産と、裁判上の倒産とのどちらが多いかということでございますが、これは当然といいますか、先ほどもちょっと申し上げましたが、わが国の現在ではまだ裁判上の手続をとるというのは主として大企業の特別な場合といいますか、そういう場合に限られておりますので、たしか件数で見た統計でございますけれども、九五%が事実上の倒産ということになっております。したがって、いずれを重視するかというのは、これはまた非常にむずかしい問題ではございますけれども、やはり同時に賃金不払いが伴うといいますか、賃金を払わないで倒産したというようなものは、やはり、いわゆる夜逃げ倒産的なものといいますか、中小企業によくある事実上の倒産で、経営者のところへ労働者が請求もできないようなものといいますか、そういうようなものがこの場合には主たる対象になるといいますか、そういうケースを想定してこういう制度が発足させられたというように考えております。
#208
○粕谷照美君 九五%も事実上の倒産があるということになるわけで、もうその実態は実にさまざまなものがあるというふうに思うわけです。
 それで、その事実上の倒産の確認はどういうふうにして行われるんですか、そうしてまた、労働者側のその際に不服の申し立て、あるいはそういう審査なども入れることがなければならないというふうに思いますけれども、この辺をどのように対処をされようと考えていらっしゃるんですか。
#209
○政府委員(水谷剛蔵君) 事実上の倒産の認定というのは、確かに先ほど局長が申し上げましたが、非常にむずかしい問題で、まず、事実上の倒産とは何かとこう言いますと、企業の事業活動が停止し、将来当該事業を再開する見込みが全くなく、賃金の支払いが不能であるというようなことを一応考えたわけでございます。
 どういう方法によってこういうことをやるかということでございますが、具体的にどこでやるかというのは、まず労働基準監督署で厳正に行うわけでございますが、その行う方法といたしましては、労使からの事情の聴取を行ってやるというようなこと、あるいは事業所への立入調査を行うことによって行うというようなこと、さらに事業所への立入調査をしまして、事業活動の停止の状況とか、賃金未払いの状況について確認を行うとか、あるいは取引金融機関、業界等からの情報、事情を聴取するとかそういうようなこと、さらに金融機関の取引の停止の状況であるとか、あるいは債権者集会の開催の状況とか、差し押さえ、強制執行の状況、さらに公租公課の延滞納の状況であるとか、場合によりましては電気料、ガス料、水道料、電話料金等の延滞納の状況であるとか、そういういろいろなことで、――もちろん全部を調べなければこれは一切確認できないというようなことになりますと、これは事務処理がおくれて労働者の方に迷惑をかけますので、その辺は状況によってでございますけれども、ただいま申し上げましたようなことを調査して、厳正に行うといいますか、そんな方法で事実上の倒産の確認をいたしたいと思っております。
 それから事実上の確認について、労働者に不服がある場合に、どのように処理されるかという御質問でございますけれども、もちろん事実上の倒産の認定でございますし、先ほど申し上げましたように、労働者の御意見も聞いてやるといいますか、そういうことでございますので、そういう不服があるというような場合は――余り想定いたしたくないわけでございますけれども、一応そういう場合といたしましては、その行政不服審査法の行政庁の処分に該当するというように考えられますので、この確認に不服がある方は、この行政不服審査法に基づきまして労働基準監督署長の上級行政庁である都道府県労働基準局長に対して、当該確認についての審査請求をすることができるというようなことになっておるわけでございます。
#210
○粕谷照美君 その状況のことについてはわかったわけですけれども、立てかえ払いの対象を退職した労働者に限定しているわけですね。この辺のところもちょっと問題があるわけですが、逆にまた倒産の確認が法的にされても、実態としては労働者は闘いを続けている場合がありますね。そういうふうに係争中の労働者の取り扱いはどういうふうにしようというふうに考えていらっしゃいますか。
#211
○政府委員(水谷剛蔵君) 倒産した企業であり、かつ退職した労働者というようにいたしておりますけれども、そのことにつきまして労働者が争うということはよくあることでございますし、そういう争っておる場合でありましても倒産というのは事業主の行う行為であり、退職というのは客観的に認定するといいますか、そういうことでもございますので、これにつきましては他の制度といいますか、たとえば雇用保険等にもそのような例もございますので、そういう制度を参考にいたしまして労働者の労働基本権といいますか、多少大げさかもしれませんが、労働者の権利について争うことをこの制度があるために制約するということがないような運用をいたしたいというように考えております。
#212
○粕谷照美君 原則的には大変いいというふうに思いますけれども、その間のことをもう少し配慮をするというような考えはありませんか。
#213
○政府委員(藤繩正勝君) いま部長からお答えいたしましたように、雇用保険等の制度の運用を参考にしたいということは、つまり解雇をされていると、しかしその効力について労働者が争っているということでございます。しかし、使用者の方は解雇したつもりでございますので、手続は進められまして離職票が安定所に出てくるというようなことでございます。そのときに失業保険金をどうするかという問題、場合によっては仮払いというような形をとるということもあるわけでございまして、私どももそういう場合にはやはり一応立てかえ払いをする。しかし、解雇が無効ということになって雇用関係が復活すれば、それはまた返していただかなきゃなりませんけれども、しかしそういうことで当面をつなぐというような措置はあっていいんじゃないかというふうに思っています。他の制度をよく見ながらまた研究したいと思います。
#214
○粕谷照美君 いまの御答弁で、場合によってはというふうにおっしゃったわけですけれども、とにかく労働者の生活が何とか成り立っていくように有利に解釈をしていくと、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
#215
○政府委員(藤繩正勝君) この制度自体がもう労働者のそういった状態に対応して、できるだけ保護を全くしようというねらいでできているわけですから、制度の趣旨に合った運用をしていきたいというふうに考えます。
#216
○粕谷照美君 立てかえ払いの定期給与のことについてですけれども、この限度額を十三万円にする、そして政令に後ゆだねるというふうになっておりますけれども、これを改善をしていくという考え方がありますか。もし改善をするとすれば、どのような形でというふうに答えられますでしょうか。
#217
○政府委員(水谷剛蔵君) もちろん、この十三万円につきましては一応今年度のといいますか、今年度のものとしては一応十三万円ということで予算的に積算いたしておるわけでございます。もちろん将来の問題といたしましては、将来の賃金水準の変動等に伴いまして当然改定されるということは考えられるわけでございますが、今年度につきましては一応十三万円ということにいたしたいというように考えておるわけでございます。先ほど来局長申し上げておりますが、やはり立てかえ払いでございますので、できるだけ多いにこしたことはないということがあるにいたしましても、おのずから一定の限度といいますか、そういうものが設けられてしかるべきではないかというようなこと、あるいはこの制度そのものが、何といいますか、外国で幾つか例はございますけれども、わが国におきましては長年の懸案であったものを実現したいというようなこと、それから乱用の危険といいますか、そういうようなことなぞを考えますと、やはりその辺はおのずから一定の合理的な範囲内といいますか、そういう範囲でまず発足させて、その運用を見た上でというようなことも考えられるわけでございますので、そんなことから一応十三万円ということを考えたわけでございます。この十三万円につきましては、すでに御承知かと思いますが、予算の積算をする時点といいますか、その時点における過去一年間の毎月動労統計の平均給与額に一定の伸び率といいますか、それを考えまして十三万円というのが大体全労働者の平均的な賃金に近い数字であるということから設けた数字でございます。
#218
○粕谷照美君 時間がないものですから、私も資料にそういうものが載っておりましたから、御答弁の中に含めなくても結構だと思いながら簡単な質問をしているわけです。あと四分ほどですので、まとめて最後に二つをいたします。
 賃金債権確保のための先取り特権の法制化について五十一年の一月二十七日、中企審答申は民事法上の弁済順位引き上げを早急に検討して実現に努めようと、こういうふうに答申をしているわけですが、非常に重要な問題ですけれども、検討すべきだと思うんですがいかがですかというのが第一。
 最後は、賃金支払いの確保は元請、親企業にも、下請企業、子会社と連帯責任を負わせるということが非常に必要だというふうに思いますけれども、立法化をしないで行政措置とした点は何か。行政措置で十分効力を発揮できるか。私はしなければならないというふうに思うのですが、その辺についてお答えをください。
#219
○政府委員(水谷剛蔵君) 先取り特権の問題は非常に重要な問題でございますし、前々から懸案のものでございましたし、またこの国会答弁の際にも、昨年の確認答弁の際にもその辺について研究をいたしたいということで大臣からも答弁申し上げておるわけでございます。この問題につきましては、私どもとしても今後とも引き続き労働基準法研究会等におきまして十分研究するとともに、法務省等関係官庁とも十分相談していきたいというように考えております。ただ、従来の商慣行といいますか、そういうものとも関連する非常に影響の大きな問題でございますので、その結論を待っておったのでは今回のこの法案といいますか、早急に発足させなければならないものが実現しないというような見きわめといいますか、その辺をつけまして、今回は引き続き検討する部分と当面実現させる部分とを分けて、とりあえずまずこの制度を発足さしたいということでございます。
 それから、元請とかあるいは親企業等の問題でございますが、これにつきましてもやはり民法とか商法とか、そういういろいろな問題との関連もございまして、建設業法等に多少の実例等もございますけれども、やはりこれを普遍化するということになりますと非常に影響するところも大きな問題でございますので、これらにつきましても行政措置である程度できる部分につきましてはできるだけのことをいたしたいとは思っておりますけれども、法律上の制度とすることにつきましてはやはりなお問題が多々ございますので、今回は研究課題といたしたいということでございます。
#220
○粕谷照美君 私ども先ほど申し上げましたように賛成法案でもありますので、本当にこの法律の趣旨が生かされますように労働省においても努力をされることを要望して質問を終わります。
#221
○小平芳平君 労災法関係につきまして、私の最初に社会保障制度審議会の一月二十七日の答申、この点について御見解を承りたいと思います。
 この答申は、御承知のように「おおむね了承できる」ということが最初でありまして、「おおむね了承できるが、労働者災害補償保険法は労働基準法を受けて出発したにもかかわらず、今日、同法との関係においてその性格に不明確な点が生じつつある」、そして「以下の点に留意されたい。」となっておりますが、こういう点について制度審議会ではこういうふうな見解を答申しておりますが、労働省当局としては何かそういうことについての検討をされましたかどうか。
#222
○政府委員(藤繩正勝君) 社会保障制度審議会では大変御熱心に御討議をいただきまして、いま先生おっしゃいましたように結論としてはおおむね了承すると、こういうことでございます。ただ「労働基準法を受けて出発したにもかかわらず、――同法との関係においてその性格に不明確な点が生じつつあると思料されるので、」という前置きで幾つかの点を指摘されておるわけでございます。
 個々の点につきましてはまたお尋ねがあると思いますので、その都度申し上げたいと思いますが、全体といたしましては労働基準法との関係に不明確な点があると、こうおっしゃっているわけでございますけれども、私どもは、先ほど来お答えいたしておりますように、労災保険制度はその発足の当初におきましては、労働基準法の規定によります事業主の無過失賠償責任を実質的に担保するための公的な保険制度として発足をしたわけでございまして、その本質は今日も一つも変わっていない、むしろその適用範囲もほとんど全面適用になりまして、名実ともに基準法を担保しておるものというふうに思っております。のみならず、保険給付の年金化あるいは通勤途上災害の導入、あるいは特別加入制度の新設等々が実現を見ておりまして、今度改正をしました年金の改善、あるいは労働福祉事業というようなことも、そのいわば最低基準としての労働基準法の責任を単に担保するというだけじゃなくて、その上を行こうという基本的な線の上に乗っかって展開をされているというふうに思っておりますので、私は基準法との関係はそういう意味では明確であるというふうに思っておるわけでございます。
#223
○小平芳平君 そうすると、「不明確な点が生じつつある」という指摘に対しては全くそうは思ってないという御答弁ですか。
#224
○政府委員(藤繩正勝君) まあ、労働基準法の最低基準としての事業主の無過失賠償責任を担保するということが労災保険制度の全面的な目的であるということであれば、それから乖離しつつある面もあるということはこれは認めなければならないわけでございますけれども、私どもはその点を担保することは基本的な性格ではあるけれども、しかし、労働基準法と労災保険とは全くうらはらでなければならぬというふうには考えておらないわけでございます。むしろ無過失賠償責任の原則はあくまで労働基準法において明らかにさるべき労働憲章的な原則であるというふうに思っておるわけでございまして、両者の関係はこれでよろしいのではないかというふうに思っております。
#225
○小平芳平君 まあ、その辺が制度審議会の審議はこういう、きょうのような一日限りの審議ではなくて、何日か何回かにわたって審議が行われてきたいろんな経過から考えますと、労働省当局と大変食い違っている点であるということであります。
 で、第一に、そうしますと、「特別支給金の問題は、実質的な改善ではあるが、その性格はなお明らかではない。」という、この点についてはいかがですか。
#226
○政府委員(藤繩正勝君) 特別給付金の支給は労働福祉事業のうち改正後の労災保険法二十三条一項二号の「被災労働者及びその遺族の援護を図るために必要な事業」として行われるものでございまして、他の労働福祉事業と同様に災害補償たる保険給付と相まって被災労働者の保護の実効を期そうとする趣旨のものでございます。したがいまして、その性格は災害補償そのものではなくて、見舞い金的なと申しますか、そういうような性格を帯びておりますけれども、しかしその支給事由、支給額等から明らかなように、保険給付に対し密接な関連を持ついわば加給金的な関係にある、その現実的な機能としては各保険給付と相まってこれを補うものであるということができると思います。なお、五十二年度から新たに支給されることを実は予定しておりますところのボーナスを基礎とする特別支給金でございますが、これも労災年金給付の算定基礎に含めるかどうかをめぐりまして、労災保険審議会等でも非常に御議論があったわけですが、結論といたしまして、種々問題もないではないが、適切な条件のもとにこれを算入することが妥当と思われるとの建議が出ましたので、そういう経過を踏まえまして、算定基礎そのものに算入するというよりも、むしろ他の制度との関連も考慮に置きながら特別支給金という形でこの問題を解決する方がより現実的であると考えたのでこういう方法をとったのであります。したがいまして、純理論的に言えば、ここで御指摘のように、改善は認めるけれども、その理論的性格はなお明確でないという御指摘もあるいはできるかと思いますけれども、私どもはいろんな経緯を踏まえまして、歩一歩と着実に現実的な進歩をさせていくという態度をとる以上、やはりこういうあり方もまたやむを得ないものではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
#227
○小平芳平君 その辺も非常に審議会の多数の意見とは平行線のように私は受け取ります。
 そして次に労働福祉事業、「四事業に区分されているが、実施を予想される内容についてなお明確を欠いている。」、こういうような四事業についても、いまここで詳細な説明を受ける時間のゆとりがないわけですが、結論としてこの答申では、「労働福祉事業については、その内容と費用区分について、関係審議会の意見を十分に尊重されたい。」ということであります。この点についてどうですか。
#228
○政府委員(藤繩正勝君) この社会保障制度審議会の御意見の中にございます「なお明確を欠いている。」という点でございますが、私どもは今度の法律の中で社会復帰事業あるいは被災者援護事業あるいは安全衛生事業、これは非常に明確であり、むしろ従来の規定が必ずしも明確でなかった点を明らかにしていると思います。ただ、問題は第四の「賃金の支払の確保、――その他適正な労働条件の確保を図るために必要な事業」を行うという点が、一つは先ほど来御議論がありますように、賃金の支払い、特に立てかえ払いという財源を労災保険に求めたことの必ずしも明確な理論構成がないのではないかという意味の指摘と、それからもう一つは、それ以外にどんな事業が予測されるかという点について必ずしも十分な準備がないじゃないかという意味の二つの意味で明確を欠いているという御指摘があったものと思っております。賃金不払いをなぜここでやるかということについてはもう繰り返しませんけれども、ベストのものとは私どもも必ずしも思っておりませんが、こういう事態の中で次善のものとしてこれを行ってまいりたいという考えでございますし、それから将来どういうことをやるかということについては、いまもお話がありましたように、非常に実はこの点をめぐりまして労災保険審議会、社会保障制度審議会でも御議論がございました。そこで私どもは十分こういう関係審議会の、特に労災保険審議会と十分協議をいたしまして、御意見を承りながら今後慎重を期してやってまいりたいというふうに思っておるところでございます。
#229
○小平芳平君 この十分に尊重されたいということに対して、十分に尊重しますということだろうと思いますが、十分に尊重するってどういうことですか、どういうふうにやりますか。
#230
○政府委員(藤繩正勝君) 今度の賃金不払いの問題を労災保険審議会にお諮りしましたときに、私どもは賃金不払いの対策でございましたので、労働基準審議会に実は小委員会を設けてやってまいりました。ところが、労災保険審議会の方にはその都度御報告はしてまいったわけでございますけれども、しかし、本来、財源を労災に求めるならば労災保険審議会でも真正面から議論があってしかるべきではないか、そういった手続に必ずしも十分なものがなかったんではないかというような御指摘がありました。今回は事情はわかったけれども、今後、この労働福祉事業、特に第四の新しい事業を行いますときには、あらかじめ十分案の段階で労災保険審議会に相談してほしいと、こういう御意向がありました。私どももその点はごもっともと思いますので、今後、――いま当面何をするという考えは私ども頭にございませんけれども、今後こういう事業の内容を固めていきます場合にはそういった手続を十分尽くして事を運んでいきたいと、そういう趣旨でございます。
#231
○小平芳平君 それから、この点については答申には触れておりませんが、保険給付のスライド制の改善について二〇%を一〇%に縮めるという点についても内部としてはいろいろ論議のあった点ですが、この点については答弁がありましたけれども、なおかつ改善するという意向はありませんか。
#232
○政府委員(藤繩正勝君) 長らく懸案のスライド率を今回二〇%のところを一〇%に変えたわけでございまして、私どもとしてはかなり思い切って引き下げたと思っておりますが、先ほど他の先生方からも御指摘がありましたように、最近の物価上昇率、賃金上昇率から見るとなお問題があるのではないかという御指摘もありました。今後の研究課題として審議会におかれましても検討されましょうし、私どもとしてもなお検討を、研究を進めてみたいというふうに思います。
#233
○小平芳平君 経済情勢が変わったという点も十分配慮してそういう点は取り組まれることと期待いたします。
 それから次に、労災補償の具体的な問題を一、二伺っておきたいのですが、一つはアルミ製造取り扱い作業従事者の職業性疾病、いわゆるガス斑という、これについて私が労働省にお尋ねしたところ、それは単なる皮膚障害であると。しかし、実際ガス斑の障害を受けていらっしゃる方は、ごらんになったことあるかどうか知りませんが、まず、海水浴に行ってもおふろに行っても人の前に出られないほど体に受けている人がいるんです。労働省からいただいた資料には「露出部に」となっておりますが、実際、こうした体自体もそういう斑点がもういっぱいできているというような人もおりまして、ただみっともないだけで済むのかどうか。実際上内臓疾患というような、あるいは極端にがんが発生しはしないかというような危惧を非常に抱いている方がいらっしゃるのですが、いかがですか。
#234
○政府委員(藤繩正勝君) アルミ製造業の従事労働者の皮膚障害につきましては、いま先生からきわめて具体的な実情の御紹介があったんでございますが、私どもは個別のケースについては遺憾ながら把握をしてございません。しかし、アルミ製造業における皮膚障害の発生の原因となりますところのタールピッチ、これは自焼成のカーボン電極あるいは電回路の構築などに使用されておりまして、生タールを使用するというふうなことが一つの原因になっているというふうに見られますが、そういう作業に従事する労働者の顔面、頸部あるいは前腕など露出部に後発する赤色ないし紫色、紫赤色の斑――ガス斑というものが発生するおそれがあるというふうに言われておるわけでございます。内臓疾患についてはこれまで実は例を聞いておりません。私どもとしましては、こういう皮膚障害を予防するためには、原材料の衛生学的な検討はもうもちろんでございますけれども、設備工程あるいは作業方法の改善、タールピッチ等の生体の接触をできるだけ避けること、皮膚の清潔を保持すること、あるいは場合によっては手袋その他の必要な保護具を用いることというようなことが必要ではないかと考えております。
#235
○小平芳平君 内臓疾患については何ですか、――私が質問している趣旨は、皮膚障害だけなのか、それとも、いまの医学では、皮膚障害というふうに従来の医学では判断をしてきたが、実はそれが内臓疾患にまで及ぶというようなことになりはしないかという恐れを抱いているということなんです。したがって、どう研究してもこれは皮膚障害どまりだということなのか、それとも、内臓疾患あるいは皮膚がん、そうしたもっと悪性な病状に進む可能性があるかどうか、それを検討するかどうかということをお尋ねしているんです。
#236
○政府委員(藤繩正勝君) 私ども、先生のこういうお話があるということで関係者にもいろいろ聞いてみたんですが、現段階では、内臓疾患につきましてもどうもこういう例がないということでございました。いま先生がそういうようなお話でございますから、なお、何と言いましてもこういうのは医学的な判断の問題でございます。専門家の意見も徴してみたいというふうに思います。
#237
○小平芳平君 次に、クロムと肺がんについて。これはクロムの作業に従事している方は、それが六価クロムであろうとも、あるいは、むしろ三価クロムならなおさら肺がんを起こすおそれがあるということになっておりますか、いかがです。
#238
○政府委員(藤繩正勝君) 昨年夏以来、いわゆる六価クロムの問題が非常に大きく取り上げられまして、それを機会に、私どもも部内に専門家会議を持ちまして、いろいろこの問題について斯界の権威にお集まり願って検討をいたしております。しかし、現段階におきましては、いわゆる六価クロムの特に精錬作業に従事した労働者に皮膚炎あるいは鼻中隔せん孔、それから肺がんというものが発症するということがはっきりいたしておりまして、先般、何回かの専門家会議の結果、一応の結論が得られましたので労災認定の基準を定めたわけでございます。たとえば六価クロムの精錬作業に四年間以上従事しておって肺がんになった者は、これはもう業務上の肺がんであるという認定をするようにという通達を出したところでございます。ただ問題は、いま御指摘の三価クロムについてやはり同じようなことがあるのではないかというようなお尋ねでございますけれども、ソ連の文献などにそういう指摘があったということも私ども承知をいたしておりまして、専門家会議にもその文献が提出されて検討されたこともございますが、現段階では、わが国の医学的コンセンサスとしては三価のクロムについてはそのような確認が得られない。いまのところ六価クロムによるものについてそういった判定を一応打ち出したと、こういう段階でございます。
#239
○小平芳平君 そうすると、六価クロムならがんが発生するが、三価クロムならがん発生はないと、こういうことですか。
#240
○政府委員(藤繩正勝君) いろんな学説が広くございましょうけれども、斯界の権威を集めました専門家会議の一応の医学的コンセンサスとしましては、六価クロムによるものはこれは認めると、しかし三価についてはそういう結論に到達しがたいというところでございます。
#241
○小平芳平君 その報告書はありますか。――その報告書を資料としていただきたいです。
#242
○政府委員(藤繩正勝君) クロム障害専門家会議の報告はプリントになってございますので、後ほどお届けいたします。
#243
○小平芳平君 そうしますと、労働科学研究所の佐野博士のこうした論文ですね、むしろ三価クロムもその難溶性のゆえに徐々に作用して発がんに関与する度合いはむしろ六価のものよりも強いと考える人もある、という指摘があります。あるいは、私がずっと以前の委員会で指摘したソ連の研究発表もありますが、これは御承知ですね、先ほどちょっと触れられた。そういうような点からして、じゃ、こういうことは現代医学の最高権威の労働省として意見を伺っている範囲では取り上げる必要がないということですか。
#244
○政府委員(藤繩正勝君) 私どもはそう承知をいたしております。
#245
○小平芳平君 本当にそういうことになるかどうかね。大変なことになると思いますが……。
 もう一つ、佐野博士はむしろがんになってからの認定では遅い、気管支炎のときから適切な治療が労災によってなされる必要があろうという指摘もされておりますが、これはいかがですか。
#246
○政府委員(藤繩正勝君) 先ほど申し上げましたのは、あくまでも、現段階においてとお断りをしておりますように、クロム障害専門家会議は中間報告を出しましたけれども、しかし閉じてございませんで、いわばスタンディングコミッティーと申しますか、絶えず集まって新しい情報、新しい事態を検討をしていただいております。したがいまして、それは現段階でのことでございまして、今後のいろんな問題については注意と観察を怠らないように私どもはしてまいりたい。また、専門家の先生方にもお願いをしてまいりたいというふうに思っております。
 それから、クロムによる肺がん等についてもできるだけ早くこれを把握して予防をまず心がくべきだということは当然でございまして、今度のクロム精錬作業従事労働者の業務上・外の認定につきましても、四年間従事していれば無条件にこれを認定していくという線を打ち出したのもそういうことでございまして、私どもとしてはできるだけ早くいろんな措置をしていきたいというふうに思います。ただ、問題は労災補償でございますから、業務上との因果関係がやはり明らかでなければならぬわけでございまして、その辺について見解を異にする場合もございますけれども、業務上の疾病であればこれはできるだけ早く措置をする、予防が第一だし、それから万一被災している場合にもできるだけ早く療養に専念するということが重要であることは先生のおっしゃるとおりだと思います。
#247
○小平芳平君 もっと具体的に、気管支炎の段階で適切な治療が労災によってなされる必要があろうという指摘に対してどう考えますかとお尋ねしているんです。
 時間の関係でもう一つ。その気管支炎の段階が第一点。それから第二点は、いま四年以上作業に従事と言われますが、そうすると、そこで六価クロムが出されているということがなければ、ただクロム作業をしていたというだけでは労災認定にはならないと、こういう趣旨ですか。以上二点。
#248
○政府委員(藤繩正勝君) 業務上の災害であれば、それはもう認定をしてどんどん療養をするということが必要であります。いま気管支炎の段階でと言っていらっしゃいますその意味が、六価クロムの精錬作業なのかあるいはその他の作業なのか、あるいは三価を含めて、さらにはアルミを含めての意味か必ずしも明確でございませんけれども、しかしそれぞれについて業務に起因する疾病であるということが明らかであればこれはもう直ちに認定をして療養に専念していただく。気管支炎や咽頭炎についても同じでございます。
 それから、現時点でのクロムについての認定基準は、これは先ほども申し上げましたように六価クロムについてのものでございます。
#249
○小平芳平君 そうすると、六価クロムがはっきりこの職場には排出されているということがない限り、四年以上勤務していても、肺がんになってもそれは職業上とは認めないと、こういうことですか。
#250
○政府委員(藤繩正勝君) 他にその業務上との因果関係が明らかになるものがございますれば別でございますけれども、肺がんというものも最近は非常に多発いたしておりまして、今日の喫煙が現代における肺がんの増加の一つの原因ではないかということが広く言われておるようなわけでございます。そういう意味で、肺がんと業務の起因ということとの関係はやはり非常に専門的医学的な領域でございます。そういう意味で慎重な検討をお願いして一応の認定基準をつくったわけでございますから、その認定基準によれば、六価クロムの精錬作業に従事している場合は、これはもう四年以上従事しておれば、肺がんであればそれがたばこによるものかどうかというようなことをせんさくせずしてクロムによるものと認定をすると、そういう意味でございます。
#251
○小平芳平君 余り局長も、――自信がありそうに答えたりですね、――それから、いま最後は、クロムによるとおっしゃったですね。
#252
○政府委員(藤繩正勝君) 六価クロム。
#253
○小平芳平君 六価クロムに限るという線を通すわけですね、現段階では。ソ連の研究にもかかわらず、あるいは労働科学研究所の佐野医師の指摘にもかかわらず、あくまで六価クロムで通すということを繰り返し答弁されましたが、私もそういう専門家ではありませんので、それに対して格別のいま反論をするというような時間もないし知識もありません。しかし私はね、きわめてきょうの局長の答弁は事重大だということを感じております。これはいつか必ずはっきりさせてもらわなくてはならない。
 それで、時間になりましたので最後に、前回、昭和電工大町工場でじん肺が多発しているという疑い、九割の人がじん肺の疑いを持たれたというそういうことについて問題を提起いたしましたが、同じく昭和電工今度は塩尻工場の方です。塩尻工場の方ではクロムがすごく多いわけです。職場ではなくて周辺に飛び散ってくる粉じんの中からクロムが何と八万ppm、周辺の民家、工場付近の民家の雨どいから採取された降下ばいじんからでもクロム八万ppmというふうなものが出ているというときに、工場内労働者はどうなっているだろう、六価が出ないから大丈夫だというようなことで塩尻工場は通れるものかどうか、非常に私たちは疑いを持っております。とにかく大町工場の場合は労働組合が告発をしてようやく問題が明るみに出た。こちらの塩尻工場の場合は周辺の住民が被害者同盟が告発をして幾らかずつ問題が明るみに出ようとしている。こういうような点、最後に労働大臣、きわめてこうした大企業、一流の企業だと言いながら八万ppmもの粉じんが外部に飛び出しておりながら、しかも労働災害の補償適用というものはほとんどないじゃないですか、塩尻工場の場合。しかもそれが片方は労働組合の告発、片方は周辺の地域住民の告発によってようやく会社も、あるいは監督署も動こうかというようなことでは相ならぬと思うのですが、いかがです。
#254
○政府委員(藤繩正勝君) ただいま先生、佐野先生の御指摘があるにもかかわらず、あるいはソ連の文献があるにもかかわらず、そういう態度を固執するのかというようなおしかりがございましたが、私はやみくもにがんばっているわけではさらさらございませんで、非常に専門的な領域でございますから、業務との因果関係が明らかでないものを労災認定として取り上げるわけにはいかないということだけを申し上げているわけでございまして、先ほどもお断りしましたように、クロム障害専門家会議は閉じておりませんで、絶えず新しい情報等を検討いたしております。また、ソ連の文献等も十分素材に供して検討した結果、現段階ではそうなっておるということでございます。今後の推移についてはなお十分注意をしてまいりたいと思います。
 それからいまお挙げになりました昭和電工塩尻工場でございますが、これは戦後において三十年から四十五年まで約十五年間いわゆるフェロクロムという三価のクロムを材料として鉄と合金させるものでございますが、これを中心とした製品の製造を行っておるわけでございまして、労働省としては従来から作業環境の改善、特殊健康診断の実施等を行ってきましたが、特に昨年六価クロム問題というものが起こったので特殊健康診断等も実施をいたしました。また、その後本省の医師も現地に派遣をしたというようなことでございます。その間、肺がん、鼻中隔せん孔等の障害は発見されておりません。じん肺等に対する認定がございましたことは、先般私どもの方の安全衛生部長から先生にお答えを申し上げたとおりでございます。なお、そのときにお答えしました疫学調査の結果でございますが、昭和三十六年以降四十九年までを観察期間とした疫学調査を行ないました結果、在職者及び退職者について全死亡及び全悪性新生物による死亡率というのが、実はいずれも日本人男子のそれと比較して低いという状態が出ておりまして、有意の差はございませんというのが実情でございます。
#255
○小平芳平君 大臣どうですか。
#256
○国務大臣(長谷川峻君) 昨年六価クロムの問題が起こったときも、私も現地なども素人でありながらも参ったわけでありまして、健康と命を守る私たちの立場からしますというと、そういうものには慎重に調査しながらフォローしてまいりたい。それと同時にもう一つはやはりこうしたものは専門家の皆さん方によく御理解いただきながら、そういう業務とまたいままでの業態等々をよく調査する必要がある。六価クロムの場合もそうでございます。いままで勤めた人たちは離職した人も全部健康診断をやったというふうな手配などもしておりますので、いまから先も慎重にありとあらゆる情報をとりながらこういう問題をフォローして追跡調査してまいりたいと、こう思っております。
  〔委員長退席、理事浜本万三君着席〕
#257
○柄谷道一君 三法案に対する質問が五十分に限定されておりますので、簡にして要を得た答弁をお願いをいたしたいと思います。
 まず、労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案について御質問をいたします。
 労災保険法は、御承知のように労働基準法第八章の「災害補償」を受けて出発したものであります。したがって業務上の負傷、疾病、死亡に際し、療養、休業、障害、遺族等の補償を行うことが本来の目的であると思います。しかし今日では、社会復帰事業、被災労働者などの援護事業、労働安全衛生事業等の労働者の福祉に関する各種事業が含まれる。また、今回の改正では、未払い賃金の立てかえ払いという労働者保護事業が加わってまいりました。使用者責任という視点から事業が逐次拡大してきたというのが実態であろうと思います。しかし、制度審議会も指摘いたしておりますように、ために労災法の性格というものが不明確になりつつあるのではないか、これまた指摘されているところでございます。本法の性格を労働基準法との関連においてどう理解しておられるのか、大臣の御答弁をお願いいたします。
#258
○国務大臣(長谷川峻君) 労災保険につきましては、御承知のように労働者の業務災害について労働基準法と同一の水準の保護をする保険制度として発足いたしまして、その後、年金制度の導入、あるいは特別加入制度の採用、さらにまた通勤災害保護制度の新設、あるいは給付水準の引き上げ等、逐次改善を重ねてきましたが、御指摘のように、それと同時に、労災病院、リハビリテーション施設の整備、あるいは各種援護措置の充実、安全衛生対策の強化等を図ってきたところであります。今回の改正において、保険給付の事業とあわせまして、労働福祉事業を行うことを明らかにしておってその積極的な推進を図ることとしておりますけれども、もとより労働者の業務災害につきましては保険給付を行うことが保険事業の基本的な使命であります。また、主なる事業内容にありまして、このことについては従来と格別違ったものはないと考えております。労働福祉事業の分野も使用者の納める保険料で賄われているわけでありまして、おのずから事業主が負担すべき事項あるいは事業主の負担になじむ事項に限られるということは言うまでもありません。このたびの未払い賃金立てかえ払い事業もまた使用者の賃金支払い義務を基礎とするものでありまして、御指摘の趣旨もあわせて今後ともその運営については関係審議会の御意見も参考にしながら適切にところを歩んでいくつもりであります。
#259
○柄谷道一君 質問時間を省略するためにあらかじめ当局にお伺いいたしましたところ、立てかえ払いを労災保険の資金によって行うという理由の一つは、本保険制度が使用者責任の保険であるということ、第二に、五十一年度は約五十一億円の予算規模であって、独立した制度とはなし得ない。この二つの理由を挙げておられるわけでございます。私は、ここに至る経過から見まして当面やむを得ない措置とは考えられますけれども、本質的には労災保険法によってこのような事業を行うということは妥当とは言いがたいのではないか、こう思っております。
 で、いま大臣も、審議会の意見を徴しつつ将来検討したいと、こう言われたわけでありますが、たとえば雇用保険法にも労使折半というもののほかに、三事業、特に雇用調整給付金等による失業防止事業、こういったものは事業主から別個の料金を徴収して運営しているわけであります。これも使用者責任の一部に属する問題であろうと思います。こういうことになってまいりますと、やはりこの際保険体系をもう一度労働省として総洗いをして、やはり理論的にも明確な保険体系というものをつくり上げていくことが要らざる疑念なり、誤解というものを解明しつつ労働者に対して安心感を与えるゆえんではないか、こう思うわけでございます。これに対する所見をお伺いいたします。
#260
○国務大臣(長谷川峻君) 未払い賃金の立てかえ払いを労災保険事業の一環として行うということはこれは本当にお互いが、御答弁を申し上げているように、緊急避難的に、そしてこういう事態に間に合わせる、また国会のそういう附帯決議、これを実行するということでございまして、今後につきましてはこの仕組みがいいかどうか、これは実績をひとつ見てみようと。同時に、おっしゃるように、労災保険制度のあり方とも関連して慎重に検討してまいりたいし、ただいま先生がおっしゃったように、こういう際に、また先生のおっしゃる御趣旨等々を体しながら、私たちも全体的な検討をする必要もあるんじゃなかろうか。こういうこともあわせて審議会等々にお諮りをするという気持ちを持っているわけであります。
#261
○柄谷道一君 労働省婦人少年局が昭和四十九年の十一月、約千九百人を無作為抽出いたしまして労働災害家族の実態調査を行っておられます。その内容を見てみますと、遺族補償年金が六十万円以下の者八四・三%であります。月額に引き直せば五万円ということであります。
  〔理事浜本万三君退席、委員長着席〕
公的年金、妻及び家族の就労による収入の合算、すなわち一カ月当たりの世帯収入は十万二千五百十一円となっております。さらに夫死亡時と比べ生活状態が苦しくなったと述べている者が六二・一%を占めております。労働省の調査でございます。また、労災基本問題懇談会に当局が提示した資料によりますと、労災年金が六十万円以下の者が六二・五%、飛びまして九十万円以上百五十万円以下の者が一二・一%、二百万から三百万の層はわずか〇・二%にしかすぎません。午前中の質問の中にも局長は年金給付の水準がILO百二十一号条約の水準に達したと述べておられるわけでございますけれども、こうした労働省の調査は現実問題として現行の水準というのが依然として低い。したがって、労災保険の目的を満たしていないことを物語るのではないか、こう思うのであります。大臣として労災給付の水準に対して現状をどう認識しておられるのか。現在不十分であるとすれば、その水準引き上げについてどういう抱負を持っておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。
#262
○国務大臣(長谷川峻君) 柄谷さん、私の方の婦人少年局の調査を引用されましたがね、それはちょっと古いんじゃないですか。その調査時点が前回の法改正による給付改善が行われる前のものだと私は思うんです。ですから、すでに四十五年の改正後は災害補償についての国際的な水準を示したILO百二十一号条約の水準に達しておりますし、また、一昨年の改正後はILO百二十一号条約を補足して、西欧先進国並みの水準の災害補償の実施を勧奨したILO百二十一号勧告の水準を満たすに至ったというふうに思っているわけでありまして、今回の改正法案におきましても、特に給付水準の引き上げを中心としてはおりませんけれども、今後とも他の各社会保険制度や諸外国の動向、経済社会の状況等に即しまして、労災保険制度が十分その機能を果たすように引き続き給付水準の問題については検討を進めてまいる、こういう考えでございます。
#263
○柄谷道一君 大臣のせっかくの答弁ではございますが、労災審議会は昭和四十八年と五十年の二回にわたり委員を欧州に派遣し、視察を行っております。五十年九月の視察報告書によりますと、フランスでは四十九年遺族年金の最低給付基礎年額は二万五千フラン、約百七十一万円で毎年スライドが行われております。西ドイツでは年間賃金の最低限度額は九千ないし一万二千マルク、九十九万円から百三十二万円となっていることをこの委員会報告では述べているわけであります。これに対して日本では、昨年度の給付基礎日額の最低額は千八百円でございますから、給付基礎年額の最低額は六十五万七千円となるわけでございます。私は幾ら欧州に視察団を派遣いたしましても、その報告に基づき外国の長所を取り入れて改善に役立てるということがなければ視察の意義は失われると思うのであります。特に遺族補償や障害の重度な者に対する最低補償につきましては、いま大臣も今回の改正には含まれていないと、今後前向きに検討すると答えられたわけでありますけれども、重点的にかつ早期にこれは洗い直しが行われてしかるべきである、こう思いますが、いかがでございますか。
#264
○政府委員(藤繩正勝君) ヨーロッパに調査に行っていただいておりますが、その成果を踏まえまして、実は最近たびたびいろいろな点を改正し、今回も改正をいたしているわけでございます。ただ、先生御指摘の点は最低額のところであろうかと思いますが、いまいろいろお挙げになりました西ドイツ、フランスの例でございますけれども、賃金比較という問題も一つベースにはあると思います。西ドイツの賃金水準はやはり現在でもかなり日本に比べてよろしゅうございますから、そういう問題もございましょうが、一般的にフランスや西ドイツがILOの水準以上にいいということは先ほども私お答えしたわけで、したがいまして、勧告の線に到達したからこれでいいというふうに私ども思っているわけじゃございません。今後とも努力をいたしたいと思います。ただ、労災保険の保険給付は元来稼得能力を補てんしようとするものでございますので、労働者の実態から余りかけ離れたものはやはり定めにくい、こういうふうに思います。ただ、最低額につきましては、先ほども御議論がありましたが、必要に応じて改定してきており、来年度予算編成に当たりましても、他の制度ともあわせ考えまして、十分ひとつ検討してみたいというふうに思います。
#265
○柄谷道一君 ぜひ成果のある検討が行われることを期待いたしたいと思います。
 次に、長期療養、障害、遺族等の給付に特別給与を基礎とする特別支給金を設けましたことは実質的な改善であろうと思います。しかし、これは給付水準の向上に役立つものとして特別給与を算定基礎に加えるという方法ではなくて、特別給与に関係する部分は保険給付としてではなく、労働者福祉事業から支出されるという変則的な方法がとられているわけでございます。これは恐らく私の推測でございますけれども、大蔵当局が他の社会保険に影響を与えたくないと、こういう意向を強く持っているために、労働省としてもやむを得ず苦肉の策をとったものと理解せざるを得ないわけでございますけれども、しかし本来的に言うならば、これは保険給付として支給すべきものではないか。他の保険と異なりまして、労働災害というもののその性格から考えまして、私は何も他の保険と同様の扱いがされてしかるべきとも必ずしも思わないわけでございます。ぜひこの点につきましては前向きの検討を引き続き求めたいと思いますが、御所見はいかがでございますか。
#266
○政府委員(藤繩正勝君) ボーナスを労災保険の算定基礎に入れるべきかどうかという点につきましては従来からの懸案でございまして、労災保険審議会でも非常に議論が戦わされました。結論としまして、昨年の暮れの建議では種々問題もないではないが、適切な条件のもとにこれを算定することが妥当だと、こういう言い方でございまして、その経過の中ではいろんな議論がありました。特別給与の性格、額のばらつき、変動状況というようないろんなことが指摘されたのであります。そこで、いまおっしゃいましたようなすっきりした考え方もございますけれども、いまこの時点でそのまま正規の給付基礎日額の算定基礎に入れるということにはやはりちゅうちょせざるを得ない。他の社会保険というような考え方も政府部内にいろいろございました。これも率直に申し上げてありますが、そういうようなことから今回はこういう措置をとったわけでございます。理想を申し上げれば、それはもうすっきりすべきものだろうと思います。しかし、いろんな経過があり、沿革があってのことでございます。今後の課題にさしていただきたいというふうに思います。
#267
○柄谷道一君 私の質問も、ただいま直ちに割り切れと言っているわけではなくて、審議会も問題がないではないが、今回はこうせざるを得ないという答申でございますから、いつまでも問題を残すということもいかがかと思います。大臣、この点につきましては次回の改正にはやはりもう一歩前進が図られますようにひとつせっかくの御努力を望んでおきたいと思います。
 次に、時間もございませんので、イエス、ノーで三点お答えを願います。
 まず第一は、長期療養の傷病補償年金は療養一年半後から支給されることと今回なるわけでございますが、すでに質問にも出ておりますように、解雇制限は現行と同様であると、こう確認してよろしゅうございますか。
#268
○政府委員(藤繩正勝君) この法案の十九条にも明らかでございますように、従来と全く変えてございません。
#269
○柄谷道一君 第二点は、傷病補償年金の支給対象者の範囲でございますが、現行の、政府が必要と認める場合とありますのを、省令で明確にしようというのが意図であって、範囲を決して狭めようとするものではない、こう理解してよろしゅうございますか。
#270
○政府委員(藤繩正勝君) 先ほど現行通達をお読みいたしましたように、今度定めようとしております廃疾基準も全く同じ考え方に立つわけでございますから、範囲も全く同じでございます。
#271
○柄谷道一君 第三点として、長期傷病特別支給金を、特別給与による特別支給金に改めるわけでございますが、現行より支給額が下回る場合は差額は保障されると、こう理解してよろしゅうございますか。
#272
○政府委員(藤繩正勝君) 現給は保障いたしたいというふうに思います。
#273
○柄谷道一君 それでは質問を次に移します。
 労災保険と厚生年金保険等との給付の調整につきましては、従来より緩和しようとする意図に今回の改正は発したものであることは評価いたします。しかし、社会保障制度審議会の答申にも言われておりますように、本来性格が異なる給付でございまして、これは基本的な立場から今後引き続き検討を要する事項だと私は理解をしておるわけでございますが、いかがでございますか。
#274
○政府委員(藤繩正勝君) おっしゃるように、今回調整方式の合理化を図りましたけれども、基本的な問題は残っておるわけでございまして、今後ともこの問題については各界の御議論を承りながら慎重に検討してまいりたいというふうに思います。
#275
○柄谷道一君 現在、労働災害の被災者に対して行われているリハビリテーション施策につきましては、職業訓練に関するものがほとんどありません。職業訓練、さらに社会復帰という道程において十分な施策が現在行われているとは理解しがたいわけでございます。したがって、療養面における施策を充実するとともに、真の社会復帰を可能とするという一貫した諸施策の整備充実が必要であろうと思います。さきにも触れました労災審議会の欧州視察団報告書の中にハイデルベルグ職業訓練センターの内容が含まれておりました。私はその報告を見て非常に感銘を受けたわけでございます。また、昨年九月、リハビリテーション研究会が、被災労働者に関する総合的リハビリテーションのあり方について中間報告を行っております。したがいまして、私はこれらの視察団報告、さらに中間報告等を踏まえまして、被災者が何とか暮らしていけばいいという姿勢ではなくて、底に流れる人間性への温かい思いやりといいますか、思い切ったリハビリテーション、社会復帰の施策というものがこの際樹立されてしかるべき時期にいま来ているのではないかと、こう思うわけでございます。日ごろ労働者の問題について非常に理解の深い大臣に対してこのことに対して抱負をお伺いをいたしたいと思います。
#276
○国務大臣(長谷川峻君) 私もヨーロッパ各国と比べるとリハビリテーション施設がおくれていることはよく認めております。そういう意味で、従来雇用保険等々でも訓練とかいろんなことをやっておりましたが、このたびの身障の法律などにそういうものも考えておりますし、何といたしましてもやはり社会復帰ということが中心でございますから、ただいまリハビリテーション協会等々にも御審議いただいておりますが、そういう建議なども踏まえながら、一層充実させたいと、こう考えております。
#277
○柄谷道一君 ぜひとも大臣、従来の慣例の上の延長線上にリハビリテーション施策を考えるというのではなくて、ひとつ発想豊かな施策というものが樹立されるように御努力を願いたいと思います。
 労災関係の最後の質問でございますが、労災保険による診療報酬の診療行為一点単価の問題でございます。昨年十二月の局長通達別表によりますと、単価一点十二円、ただし非課税医療機関は十一円五十銭と、こういう通牒が出ております。課税医療機関と非課税医療機関とにこのように差を設けられた理由は那辺にございますか。
#278
○政府委員(藤繩正勝君) 労災診療につきましては、通常の医療に比べまして非常に労災の性格上、医療機関に御苦労もおかけするというようなことで、労災の特殊性ということでいま言われましたような診療報酬を定めておるわけでございます。元来、労災保険の場合は、各診療機関と、都道府県労働基準局長が指定をいたします場合に、契約を結びまして、そしてそこで一種の慣行料金といいますか、そういうことで戦後ずっとやってまいりましたが、余り各県ばらばらでもいけないということで、昭和三十六年に、全国的に統一をしようということで医師会とも協議をいたしまして、現行の取り扱いを定め、以来それが慣行となってきておるわけでございます。いま御指摘の、それはいいけれども、民間医療機関と国公立の間に五十銭差があるのはどういうことかという御指摘でございます。これは、民間医療機関ではやはり課税上のいろんな問題もございまして、まあ国公立に比べて労災保険としていろんな診療をお願いする場合にやはりその辺がスムーズにお願いでさるようにということで、こういう差等を設けて従来から沿革的にこれでやってきておりますので、さほど何といいますか、問題意識を持たないまま今日に来ておるわけでございます。
#279
○柄谷道一君 きょうは時間が余りありませんので、私はこの問題に対して大臣に一つ問題提起をいたしまして、引き続き労働省でも検討を願いたい。また機会を改めて私は質問として取り上げたいと思います。
 その第一は、いまも局長答弁の中にあったわけでありますが、慣行料金を日本医師会と相談をしてと、こう言われたわけでありますが、この基本原則は日本医師会と労働省が協議して基準を定め、各県医師会と各県労働基準局が協議して決定するという手続が現にとられているわけであります。しかし、指定医療機関である非課税病院側とは何らの協議が行われておりません。ということは、手続上重大な手落ちがあるのではないかというのが第一の指摘点でございます。
 それから第二は、公共料金算定の基礎に法人所得税を含めているという例はないと思います。憲法八十四条の税の法定主義との関連におきましても、やはり収益に対して法に定めて手続をとって税金を徴収するということであって、あらかじめ公共料金の中に税を負担するか負担しないかの差を設けるということは、この税の法定主義にも抵触するのではないかと、こう思われます。
 また第三点としましては、百床当たりの医師、特に常勤医師の配置比率、看護婦、準看護婦の配置比率等の資料を私ここに持っておりますけれども、医療施設や技術者は公的病院の方に手厚く配置されているわけでございまして、診療行為の質とこの料金とはむしろ逆転をしているわけでございます。
 また第四点として、労災保険で個人病院の税金を負担するということになりますと、これは保険としての不当支出になるのではないか、こう思われるわけでございます。
 これらの点につきましては、まだ根強く関係者の中に大きな疑点として残っている問題でございまして、時間があれば資料を挙げながらその問題点を指摘したいところでございますが、冒頭申し上げましたように、本日は時間の関係でさらにこのことに対して深い質問をすることを避けまして、次回当局の説明を求め、さらに私としての見解を引き続き明らかにしてまいりたい。問題提起だけに本日はとどめておきます。
 そこで、私はこの改定案は、休業特別支給金の改善、長期療養、障害、遺族補償給付への年間臨時給与の導入、長期療養傷病補償給付の等級区分、スライド制における変動幅の縮小、他の社会保険との調整の改善、特別加入者に対する通勤災害等の適用、三十五年以前の打ち切り補償費受給者に対する改善等が骨子となっておりまして、おおむね了解できるものであります。しかし、私はいままでの質問で申し上げましたように、労災保険法の性格の明確化の問題、給付水準、特に最低補償の引き上げの問題、臨時給付の全面的保険給付への導入の問題、他の社会保険との給付調整の根本的検討の問題、さらにリハビリテーション施策の拡充の問題など、基本的な多くの問題が残されているわけでございます。これらに対して、今回の改定をもって事足れりとするのではなくて、引き続き意欲的に労働省としてこの問題に取り組まれることを強く求めまして、次の賃金の支払確保等に関する法律案の質問に移ります。
 私は昨年三月三十一日、予算委員会における分科会で、長谷川労働大臣に対しまして質問をいたしました。その際大臣は、賃金不払い救済制度を五十一年度より実施する旨の答弁をされたわけでございます。この法案がなお多くの不十分な問題点を含んでおりますけれども、将来の補強、改正を前提としてとにもかくにも提案までこぎつけられた努力に対して冒頭敬意を表したいと思います。
 しかし、昭和四十九年度倒産件数、これは一万一千六百八十一件でございますが、この中で倒産関係法による手続を行いました件数はわずか五百七十八件であります。利用率は四・九%にしかすぎません。これは現実問題として法定手続にはその実現のために多くの日時を要する、そのわりに債権の回収が必ずしも確保されない、こういう実態の中から法の手続を経ることなく、任意整理等によって処理された案件がいかに大きいかということをこれは物語っていると思うわけであります。したがって、こういう実態から見ますならば、今回の法適用の適否という問題がこの法律の目的を達するかどうかのかぎに私はなると思います。法律案の中には政令云々という字句が使われているわけでございますけれども、当然この政令制定に当たっては関係審議会の意見が十分徴されることは当然ではあろうと思いますけれども、いま私の申し上げましたような実態を踏まえまして、弾力的運用によって法の趣旨を生かすということが当然盛り込まれるべきであると、こう思うわけでございます。もちろんこれは乱用を防ぐという一側面を忘れてはならない問題でございますが、立法の精神がそれなくしては生かされないという結果になるわけでございまして、これらに対する弾力運用の基本姿勢について大臣の御答弁をお願いします。
#280
○国務大臣(長谷川峻君) 私が労働省に参りまして一番先に出たのが日本熱学のたしか倒産だったと思うんです。その場合に賃金をいかにして確保するかということが大阪の労働基準監督署が非常に努力をしまして、確保はできた。あるいは社内預金というふうな問題がありまして、その間にまた経済がこういうことになる、あるいはまた衆議院、参議院の委員会等々でこういうものに御要望があり、そして私は五十一年度から一部発足するというふうに申し上げたことでございますが、その後役所の方、あるいは審議会の皆さん方と御相談して、こういうときにこそ、とにかく皆さん方に――倒産が生まれないことが一番いいんですから、賃金未払いのないことが一番いいんですが、しかし、そういう場合に緊急避難的にとにかく五十二年度といわずに本年度から全部やろうじゃないかというところに踏み切ったことでございます。しかも中小企業が大部分であることは御承知おきのとおりでございますから、いままでるる政府委員から御説明申し上げましたその気持ち、そしてまた、私にあなた御質問のその気持ちを体しながら中小企業重点的な気持ちで推進してまいりたいと、施行してまいりたいと、こう思っております。
#281
○柄谷道一君 ぜひそのようにお願いをいたします。
 で、私はその際、労働基準法二十四条、民法三百六条及び三百八条、商法二百九十五条、有限会社法四十六条、保険業法六十七条、その他破産法、和議法などの実態を述べまして、一応現在の労務債権がそれらの法律の中でまだ完全に優先順位等も定まっていない、確立されていないことを指摘いたしました。その際、昨年末退官されました法務省の井関政府委員は、多少検討はおくれているけれども、なお十分検討するという答弁をされたわけでございます。その後、法務省として検討は進んでいるのか、いつごろにその検討を終わる目途を持っておられるのか、簡潔にお答えをお願いします。
#282
○説明員(吉野衛君) 労働者の賃金債権については、その司法的な見地、民法その他の司法上の見地から保護を図る方法と、それから行政的な見地からこれを保護する方法と二つ考えられるわけであります。
 ところで、司法上の見地から保護を図るべしという一つの意見としまして、労働者の賃金債権の先取り特権の順位を引き上げるとか、あるいは行使された抵当権よりも優先する最先順位に持っていくべしというような意見があるわけでございます。しかし、この意見に対しましては、果たして単に順位を引き上げることが労働者の賃金債権を実質的に保護することにつながるのかどうかという点について、かなりの問題というか疑問があるわけでございます。たとえば、資力のない企業者に雇われている者が、たまたま企業者が倒産したというときに、仮にその順位を引き上げてみたところで、見るべき資産を持たない企業主に対して労働者はその優先権を行使する方法を持たないわけでありますから、順位を引き上げたということだけではその実質的な保護を図ることはできないわけでございます。この点は、たとえば資力のない加害者によって交通事故を受けた被害者が、その損害賠償債権の実質的確保を図るためには責任保険制度によってその保護を図られているというのと一脈相通ずるわけでございまして、こういった企業主に雇われている労働者の賃金債権を実質的に確保するということを考える場合には、順位を引き上げるということじゃなくて、むしろ責任保険の導入というような問題を検討する必要があるのではないかというような意見が一つあるわけでございます。
 それからまた、逆に資力のある企業主に雇われている労働者について申しますと、その企業が円満に企業活動を続けているときにはもともと賃金債権の未払いということはないわけでございますから、こういう問題は生ずる余地はない。したがいまして、問題になるのは、その企業がやや左前になってきたと、こういうときにかなり問題になるわけでございますが、こういうときに、もしも行使された抵当権よりも優先順位に持っていくということになりますと、銀行その他の金融機関は、劣後する債権になることを承知しながら融資するということはとうてい考えられないというようなことで、逆に企業が弾力的な運用をすることができないということで、企業倒産の促進法になるおそれがあるというような疑問があるわけでございます。
 こういうような点もございますので、単に順位を引き上げるというようなことだけでこの問題は処理されるわけではない。要するに、この問題は、担保、法制全体の中で労働者の賃金債権をどのように位置づけるかと、もし優先させるとすれば、その行使をどのようにするかというような非常に解決困難のむずかしい問題があるわけでございまして、そういうことで、残念ながらいまのところまだ結論が出ていない状況でございます。
#283
○柄谷道一君 私は、ここで理論的に反駁しようと思いません。時間的にはその余裕もございません。しかし、私は本来未払い労務債権問題は当然労働者に支払われるべきものが支払われないことによって労働者の生存が脅かされるというものでありまして、憲法二十五条の生存権、憲法二十七条を受けた労働基準法二十三条にかかわる重要な問題であろうと思うのであります。一夕一朝にしてこの検討が終わるものとは思いません。また、この法の改正だけで労務債権が確保されるものだとも持っておりません。しかしながら、現行の法体系の中でこの未払い賃金というものの置かれている位置というものがやはり低きに置かれているということは争えない事実ではないかと私は思うのであります。したがいまして、今後法務省といたしましても、前回前向きに検討するというお答えをされたわけでございますから、この問題についてより有機的な取り組む姿勢を求めておきたい、こう思うわけでございます。
 時間もございませんので次の問題を移しますが、西ドイツでは一九六九年、雇用促進法の第三次改正法として破産不払保険金法を一九七四年七月十九日に公布し、翌二十日より施行いたしております。この法案の内容はすでに労働省御存じだと思いますので省略をいたします。
 しかし、この法案の発想というものは、今後のわが国の未来展望としての労務債権確保の法のあり方というものに対して一つの示唆を与えているものではないかと思います。また、私たち民社党も、恒久的施策として不払労働債権保証保険法の制定を提唱をいたしているわけでございます。今後、労働省といたしましても、今回この労災保険法を活用する方法によって第一歩を踏み出したとはいえ、この問題の解決のためにいかなる法体系と法制化が必要であるのか、これらについてはまた改めて大臣にも意見を述べる機会を持ちたいと思いますので、十分御検討を願いたいと思います。時間の関係からこれは問題提起にとどめておきたいと思います。
 次に、適格年金支払いの問題について質問をいたしたいと思います。
 今回の法改正におきましても、退職金はなるべく企業外に積み立てろと、こういう指導をしていくんだということを訓示規定ではありますが、うたっております。ところが、果たして適格年金というものが、企業外に積み立てた適格年金そのものが安全なのであろうかということになりますと、新しい問題が発生しておるわけでございます。
 これは昨年十月末、日本製麻という会社が国内企業の全面撤収を行いました。企業内にあります退職金は労使の話し合いによって確保されたわけでございますが、労働組合は、まさかこの適格年金だけは大丈夫であろう、こう思っておりましたところ、過去債務の償還期間が非常に長い。したがって、仮に私が三十年勤めておりましても、信託銀行に払い込まれているものは二年ないし三年にしかすぎないという事態が生まれてきたわけであります。しかも会社は言を左右にしてこの適格年金の未払い分の清算に応じようとしない。ところがこの適格年金制度は、税制上の優遇措置としてありますけれども、立法の基礎がない。したがって、信託銀行に強制取り立ての権限もなければ担保物件も設定されていない。したがって、せっかく企業外に積み立てましたその適格年金が、すでに納めた分にしか適用されないという問題点が発生してきたわけでございます。いろいろ大蔵省銀行局なり国税庁とも話し合ったわけでございますが、国税庁は、これを管理している局であって何ともしようがない。銀行局の方も、信託銀行に対して行政指導といっても打つ手にも限界があるということで、いまだ解決されておりません。私は、この労務債権確保という問題について、この適格年金という制度に案外の落とし穴があるんではないかということを実感をいたしたわけでございます。
 これも時間がありますならばさらにその内容も述べつつ改善の方策を述べたいと思うんでございますが、ひとつこれは大臣、閣議でも大蔵ともいろいろ話を願って、果たして過去債務の年限が現在でいいのか、それとも、そういう義務が履行されない場合にどういう担保を労働者として取ることがいいのか。これはまさに現在の盲点であろうと思うんですね。まあ、いろいろ聞きますと、適格年金を採用するような企業にはまさか倒産はあるまいというものも前提につくられた制度ではないか。こういう問題の予測がまずされていないというのが実態でございますので、これももっと述べたいわけでございますが、時間が制限がされておりますから、この問題もひとつ大臣に対する宿題という形で申し上げておきますので、改めての機会にまた政府の御答弁を賜りたいと思います。
 時間があと五分しかございませんので、最後に、建設労働法の問題について、これも残念ながら質問の時間が尽きましたので、あと五分で一括申し上げます。
 私は、この建設労働者の雇用改善につきましては、ただいままでの質問で出ておりますように、重層下請機構の存在、資本金一億円以下の中小企業が九九・三%を占めるという実態、受注契約、請負契約後の危険度を受注者がしわ寄せを受ける仕組み、発注体制の不合理、職人的零細経営の存在、手工業的技能を中心とした生産から大型機械の採用、新建材の開発、工法の改良等による大刑化の傾向がいま顕著にあらわれてきているという事実、都市公害等の問題による工事環境の変化、さらに第一次産業就業者の減少と高齢化、こういった現実を直視いたしますと、今回のこの法案によって一歩前進することは確かでございますけれども、建設労働者の雇用改善というものに対する決め手とはなり得ないと思うのであります。そうなってまいりますと、どうしてもここに長期的、総合的視野に立った産業の構造改善というところにまでメスを入れなければこの問題の解決はできないと思います。
 さらに私は、この問題は中小企業政策、農業政策、雇用政策、社会保障政策とも重大な関連が生じてまいります。また、審議会が答申しております計画化、工法、工期、工事費の合理的基準の設定ということなども考えますと、公共事業に関しましては、予算制度やその執行制度にまで私はかかわりの出てくる問題ではないかと、こう思うのであります。で、もちろん、現行職業安定法、労働基準法、労働安全衛生法の啓蒙、徹底と、その補強という問題が底辺となりつつ、これらの産業構造の改善と、そして国としても、現在の公共事業に対してやはりメスを入れるということが相まち、相並行しつつ雇用の改善という問題につながってくる、こう思います。といたしますと、今回の問題につきましては、労働省一省の取り扱うべき問題としては余りにも荷が重過ぎる。今回の法改正をひとつ契機といたしまして、建設省など、関係省庁との間に十分協議を深める体制づくりから始めて、これらの根本問題に対する改善へのメスを入れる、こういう姿勢を国務大臣である長谷川大臣に強く要望したいと思うのであります。これらに対する大臣の明確な答弁を求めまして、あと質問時間二分を残しますが、私の質問は終わります。
#284
○国務大臣(長谷川峻君) この委員会でずっと御論議がありましたように、三百六十万と言われる建設労働者は、日本の産業の中の基幹でございます。それと同時に、その中は、日本国じゅうに、ありとあらゆる非常に複雑な仕事に携わっているわけでありまして、それだけに、こういう低成長、それから従来の建設行政、建設労働政策そのものが非常に時にはおくれをとっておった。ですから、未払いが起こったり、行方不明があったり、いろんなトラブルが、ほかの先生方一人一人がみんなおわかりになっておることだと思うんです。まあ、こうした低成長の時代になりますというと、まさに私は労働省の責任が大きい。すなわち人間の面から各省に通ずるものがある。労働政策は労働省だけにやるにあらずして、内閣全体がやること、またそれを御支援いただく皆さん方の御意見、こういうものを背景にしてやるところに、このたびの建設雇用の改善の法案がようやく建設省等ともよく話し合いができた結果できたものだと思っております。これを一つのきっかけといたしまして、いままでありますところの古い秩序、古い法律、この新しい法律をきっかけにいたしまして、これらをずっと練り合わせながら、一つのここに慣行が生まれた、新しいものをつくる慣行が生まれたというところで御理解いただきまして、おっしゃる御期待、柄谷さんの御発言ではありますが、恐らくはかの委員の方々もあわせて同じお気持ちを持っているだろうと思いまして、その期待に沿えるように懸命に努力してまいりたいと、こう思っております。
    ―――――――――――――
#285
○委員長(戸田菊雄君) 委員の異動について御報告いたします。本日、野坂参三君が委員を辞任され、その補欠として星野力君が選任されました。
    ―――――――――――――
#286
○委員長(戸田菊雄君) ほかに御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#287
○委員長(戸田菊雄君) 御異議ないと認めます。
 それでは、労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案を議題とし、これより討論に入ります。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#288
○委員長(戸田菊雄君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
#289
○片山甚市君 私は、ただいま可決されました労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党、日本共産党及び民社党共同提案の附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
   労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の事項に関し所要の措置を講ずべきである。
 一、傷病補償年金制度については、職業性疾病患者の療養の実情に即して、適切な運用を図るよう努めること。
 二、給付水準については、スライド制、最低額の引上げ等今後ともその改善に努めること。
 三、長期傷病補償給付、休業補償給付等の受給者の新制度への移行が円滑に行われるよう十分配慮すること。
 四、厚生年金等との調整率を定めるにあたつては、受給者の保護に欠けることのないよう十分配慮すること。
 五、リハビリテーシヨンに関する措置を一層充実すること。
 六、特別支給金その他給付金については、今後ともその改善に努めるとともに、保険給付との関係について更に検討すること。
 七、未払賃金立替払事業のあり方については、今後、その実績に照らし、かつ、労災保険制度の建前とも関連して更に検討すること。
 八、職業性疾病の範囲について検討を加えるとともに、その防止について更に努めること。
  右決議する。
#290
○委員長(戸田菊雄君) ただいま片山君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#291
○委員長(戸田菊雄君) 全会一致と認めます。よって、片山君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、長谷川労働大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。
#292
○国務大臣(長谷川峻君) ただいまの附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、関係各省とも協議の上、善処してまいる所存であります。
#293
○委員長(戸田菊雄君) 労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#294
○委員長(戸田菊雄君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。
    ―――――――――――――
#295
○委員長(戸田菊雄君) 建設労働者の雇用の改善等に関する法律案を議題とします。
 沓脱君から委員長の手元に修正案が提出されております。
 修正案の内容はお手元に配付のとおりでございます。
 この際、本修正案を議題といたします。沓脱君から修正案の説明を聴取いたします。沓脱君。
#296
○沓脱タケ子君 私は、日本共産党を代表しまして、政府提出の建設労働者の雇用の改善等に関する法律案に対する日本共産党の修正案について、その提案理由及び概要を御説明申し上げます。
 今日、建設産業に働く労働者は、建設大手と言われる建設大企業を頂点とする重層下請構造のもとで劣悪な労働条件に置かれています。
 不安定雇用や低賃金、労働災害、賃金不払いなどの多発、休日制度もなく、労働保険、社会保険の未適用事業所が多く、やみ手配師の横行などは今日の不況のもとで一層深刻な問題となっております。
 このような事態に対して、政府案の内容は、雇用関係の明確化の措置として、雇用管理責任者の選任や「雇入れ通知書」の交付などを事業主に義務づけるなど若干の改善点もあります。
 しかし、末端労働者への実効が薄く、かつ、労働者の強い要求である悪天候手当などの各種手当は盛り込まれておりません。
 また、中小事業主にも大企業と同じ料率で雇用保険料を引き上げることはわが党としては賛成しがたい点であります。
 本修正案は、政府案のこれらの重要な弱点を取り除き、建設労働者の要求の実現と、中小事業主の経営を守ることを目的としたものであります。
 以上が本修正案を提案した理由であります。
 次に、その概要を申し上げます。
 本修正案は第一に、「建設労働者手帳」を交付し、悪天候手当、安全衛生教育手当、職業訓練手当、休暇手当、帰省手当などを労働者に支給しようとするものであります。
 第二に、これらの財源として、中小事業主の負担を現行以上に重くしないため、雇用保険料の引き上げを行わず大手建設業が負担する納付金制度を新しく設けるものであります。
 第三に、この納付金を財源として、労働者が参加する「事業団」を設立し、納付金の徴収、労働者への手当の支給、その他の業務を行おうとするものであります。
 以上でございます。
 何とぞ御賛同くださいますようお願いいたしまして、私の提案理由説明を終わります。
#297
○委員長(戸田菊雄君) ただいまの沓脱君提出の修正案は予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から本修正案に対する意見を聴取いたします。長谷川労働大臣。
#298
○国務大臣(長谷川峻君) ただいま御提案のありました共産党提出の修正案につきましては、政府としては反対であります。
#299
○委員長(戸田菊雄君) ほかに御発言もないようですから、これより原案並びに修正案について討論に入ります。――別に御発言もないようですから、これより建設労働者の雇用の改善等に関する法律案について採決に入ります。
 まず、沓脱君提出の修正案を問題に供します。沓脱君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#300
○委員長(戸田菊雄君) 少数と認めます。よって、沓脱君提出の修正案は否決されました。
 それでは次に、原案全部を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#301
○委員長(戸田菊雄君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
#302
○浜本万三君 私は、ただいま可決されました建設労働者の雇用の改善等に関する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党共同提案の附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
   建設労働者の雇用の改善等に関する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の事項について適切な措置を講ずるよう配慮すべきである。
 一、今後とも日雇労働者、季節、出稼労働者等雇用の不安定な労働者についての施策を充実強化するために、手帳制度の改善を含め引き続き検討を行い、その具体化を図ること。
 二、建設技術の高度化・多様化に対応できるよう職業訓練の充実強化を図ること。
 三、元方事業主の下請に対する雇用管理の改善の指導について実効を確保する方途を確立するとともに、不必要な重層下請制度の是正、労務供給のあり方等建設業の体質改善を積極的に進めること。
 四、雇用促進事業団が実施する事業については、特に中小企業が十分活用できるよう配慮する等、中小企業の実情に即した運用を行うとともに、費用の負担について、建設業の特質から中小企業のみにかた寄ることのないよう元請負事業主を含めてその負担の公正を図ること。
 五、小規模事業所における社会保険及び退職金共済制度の加入を促進するとともに、今後とも手続の簡素化等その内容の充実に努めること。
 六、建設労働対策の推進に当たつては、政府部内における連携を一層密にし、諸施策の総合的な運用に努めるよう特に配慮すること。
  右決議する。○委員長(戸田菊雄君) ただいま浜本君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#303
○委員長(戸田菊雄君) 全会一致と認めます。よって、浜本君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、長谷川労働大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。長谷川労働大臣。
#304
○国務大臣(長谷川峻君) ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、努力する所存であります。
#305
○委員長(戸田菊雄君) 建設労働者の雇用の改善等に関する法律案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#306
○委員長(戸田菊雄君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。
    ―――――――――――――
#307
○委員長(戸田菊雄君) 賃金の支払の確保等に関する法律案を議題とし、これより討論に入ります。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 賃金の支払の確保等に関する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#308
○委員長(戸田菊雄君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
#309
○粕谷照美君 私は、ただいま可決されました賃金の支払の確保等に関する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党、日本共産党及び民社党共同提案の附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
   賃金の支払の確保等に関する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の事項に関し所要の措置を講ずべきである。
 一、賃金支払の確保等について労働基準監督機関の監督指導を一層強化すること。
 二、退職手当の保全措置の実施について積極的な行政指導に努めること。
 三、未払賃金の立替払事業の運用に当たつては、迅速かつ適切な事務処理を行うなど倒産企業労働者の救済制度の趣旨をそこなうことのないよう措置すること。
 四、未払賃金の立替払事業については、今後、その実績に照らし、かつ、労災保険制度の建前とも関連して、立替払の対象及び未払債権の範囲、不服の救済等を含め制度及び事業のあり方について更に検討すること。
 五、立替払の適用に当たつては、今次不況による倒産企業労働者の救済のため特段の配慮をすること。
 六、下請負人、子会社等の賃金の支払に係る元請負人、親会社等の責任のあり方について、実態に即し更に十分検討すること。
 七、建設事業における賃金支払の確保については、労働基準法、建設業法等を積極的に活用し、その実効を期すること。
 八、賃金債権の弁済順位の引上げについて引き続き検討すること。
  右決議する。○委員長(戸田菊雄君) ただいま粕谷君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#310
○委員長(戸田菊雄君) 全会一致と認めます。よって、粕谷君提出の附帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、長谷川労働大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。長谷川労働大臣。
#311
○国務大臣(長谷川峻君) ただいま御決議なされました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、これが実現に努力する所存であります。
#312
○委員長(戸田菊雄君) 賃金の支払の確保等に関する法律案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#313
○委員長(戸田菊雄君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時五十分散会
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ソース: 国立国会図書館
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