くにさくロゴ
1975/05/13 第77回国会 参議院 参議院会議録情報 第077回国会 法務委員会 第5号
姉妹サイト
 
1975/05/13 第77回国会 参議院

参議院会議録情報 第077回国会 法務委員会 第5号

#1
第077回国会 法務委員会 第5号
昭和五十一年五月十三日(木曜日)
   午前十時十分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月十一日
    辞任         補欠選任
     寺田 熊雄君     小柳  勇君
 五月十三日
    辞任         補欠選任
     植木 光教君     斎藤 十朗君
     前田佳都男君     橘  直治君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         田代富士男君
    理 事
                大島 友治君
                平井 卓志君
                佐々木静子君
    委 員
                斎藤 十朗君
                橘  直治君
                林  ゆう君
                町村 金五君
                秋山 長造君
                小柳  勇君
                中村 英男君
                安永 英雄君
                原田  立君
                橋本  敦君
                下村  泰君
       発  議  者  佐々木静子君
   委員以外の議員
       発  議  者  白木義一郎君
   国務大臣
       法 務 大 臣  稻葉  修君
   政府委員
       法務大臣官房長  藤島  昭君
       法務省刑事局長  安原 美穂君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   岡垣  勲君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        二見 次夫君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○集団代表訴訟に関する法律案(宮崎正義君外一
 名発議)
○民法の一部を改正する法律案(佐々木静子君外
 一名発議)
○刑事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出、
 衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(田代富士男君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 寺田熊雄君、植木光教君が委員を辞任され、その補欠として小柳勇君、斎藤十朗君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(田代富士男君) 集団代表訴訟に関する法律案を議題といたします。
 発議者白木義一郎君から趣旨説明を聴取いたします。白木君。
#4
○委員以外の議員(白木義一郎君) ただいま議題となりました集団代表訴訟に関する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。
 欠陥商品、ヤミ・カルテルによる価格引き上げ等の一企業または数企業の違法行為によって無数の消費者が損害を受けているという現実があるにもかかわらず、現行民事訴訟制度は、原則的には、一対一の対等な当事者間の紛争を解決することを念頭に置いて紛争を解決するための手続を定めているにすぎないから、このような原則に基づく現行民事訴訟制度のもとでは、一対無数すなわち企業対無数の消費者の民事紛争を解決しようとしても、その訴訟追行は事実上不可能であります。すなわち、今日の消費者問題は、訴訟を通じては事実上解決できない状況にあります。これは、法制度が社会の進展に即応していないからであります。
 すなわち第一に、消費者各人の損害額が少額であるとしても、集団としての消費者の損害額は巨額になると思われます。消費者集団のこの巨額な損害の賠償を企業に対して請求することができる訴訟制度を確立することなしには、社会的経済的公正を確保することはできないのであります。
 第二に、企業と消費者との間には訴訟追行能力及び訴訟費用の負担能力の不均衡があるにもかかわらず、現行民事訴訟制度のもとでは、これを対等な当事者として取り扱っているため、訴訟による権利救済の方途はきわめて厳しい現実にあります。この現実を打破して、実質的に対等な当事者としてみずからの権利を行使できる訴訟制度を確立しなければならないと思います。このような訴訟制度の確立なしには、消費者主権は、裁判によって保障されない眠れる主権、幻の権利に終わらざるを得ないのであります。
 第三に、企業の違法行為による無数の消費者の損害は共通の原因によって発生し、またその損害額も一般的には定型化する傾向があります。このような実体について、消費者各人の訴えの当否を個別的に審理することは訴訟経済の観点からもむだだと思います。また、企業の違法行為によって発生した損害賠償をめぐる紛争は、事実上は企業対無数の消費者の紛争と思いますので、その紛争の解決は、消費者集団と企業との間で包括的に解決することが望ましいと思います。
 われわれは、消費者主権の確立のためには、このような困難を克服して、民事訴訟制度が真に機能する制度を確立しなければならないと思います。
 以上の観点から、非訟裁判による訴訟信託の設定方式を活用することにより、消費者の代表者が消費者集団全員のため企業に対して提起する損害賠償の一括的請求を目的とする訴え、すなわち集団代表訴訟を可能にするためのこの法律案を提出いたした次第であります。
 以下、この法律案の内容たる集団代表訴訟制度の仕組みにつきまして、その概要を御説明申し上げます。
 まず第一に、申し立てに係る共同の利益を有する著しく多数の者の少額債権について集団代表訴訟による紛争の解決が適当であると認められる場合に、非訟裁判により、除外申し出をしない限り債権を一括して訴訟の目的とするための信託が設定されたものとすることができるようにいたしております。すなわち、集団代表訴訟を追行させるため、除外申し出をしなかった少額債権者たる委託者から少額債権者の代表者たる受託者へ当該債権が信託的譲渡されたものとする信託であります。
 なお、少額債権者の権利を保護するため、信託の設定については公告するほか、非訟裁判所が代表者たる受託者を監督するようにいたしております。
 第二に、集団代表訴訟におきましては、職権証処調べを採用するほか、重要な訴訟行為につきましては、非訟裁判所の許可を要するものといたしております。なお、欠陥商品、ヤミ・カルテルによる価格引き上げ等に係る少額債権者全員の損害額の算定につきましては、推定規定を設けており総ます。
 第三に、各少額債権者は、受益者として、代表者たる受託者に対し、勝訴判決の最初の公告の日の翌日から二年以内に請求することにより、その債権の満足を得ることができるようにいたしております。なお、請求してこなかった債権者の分は、国庫に帰属するようにいたしております。
 第四に、代表者たる受託者は、集団代表訴訟の追行等に関して必要な費用につきましては、国庫により立てかえてもらうことができるほか、集団代表訴訟により得た財産をもって充てることができるようにいたしております。
 以上がこの法律案の提案の理由及び主要な内容であります。
 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
    ―――――――――――――
#5
○委員長(田代富士男君) 民法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 発議者佐々木静子君から趣旨説明を聴取いたします。佐々木君。
#6
○佐々木静子君 民法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 わが国においては、戦後、個人の尊厳と男女の本質的平等をうたった新憲法のもと、民法もこれに応じて改正され、家の制度を廃止し、男女の不平等を取り除く努力がなされてきました。しかし、現行民法にはなお男女平等を阻害し、家の制度の残滓を思わせる規定が温存され、古い因習や観念と相まって婦人の地位向上の隘路の原因となっている点が多く見受けられるのであります。
 したがって、男女平等に反する家族法規の改正こそ、まず、実現されなければならないと考えるものであります。以上の見地からこの法律案を提出するに至った次第であります。
 そこで、この法律案は、配偶者の相続順位を被相続人の兄弟姉妹の先順位とし、配偶者の相続分を引き上げることにより、妻の地位の実質的向上を図ろうとするものであります。
 この法律案の要点を申し上げますと、第一は、配偶者の相続順位に関する改正であります。
 現行法のもとでは、血族相続人として、第一に子とその代襲相続人、第二に直系尊属、第三に兄弟姉妹とその代襲相続人という順位があり、これら血族相続人と並んで配偶者は常に相続人となると定められていますが、最近は、被相続人と最も密接な家族協同生活を共にした生存配偶者の相続権に対する観念も改まり、生存配偶者は、相続上第一位の相続人として重視し、血族であるというだけで相続人となり得る親等の遠い非家族構成員に優先させることが新しい相続法の傾向に合致するものと考えられるに至っているのであります。
 そこで、被相続人の兄弟姉妹は、相続人である被相続人の配偶者、子及び直系尊属がない場合に相続人となることとし、配偶者の相続順位を被相続人の兄弟姉妹の先順位とすることといたしております。
 第二は、配偶者の相続分に関する改正であります。
 現行法のもとでは、妻の法定相続分は、子と共同相続する場合は三分の一、直系尊属と共同相続する場合は二分の一と定められているのでありますが、戦後相続法が改正された当時に比べ、現在は、家族構成が大きく変化しており、妻の相続分が子一人の相続分より少なくなるほど配偶者相続分について不合理な結果をもたらし、妻の地位の保護にも欠け、実質上の不平等を生ぜしめていると考えられるのであります。
 そこで、配偶者が被相続人の子または直系尊属と共同相続人となる場合における配偶者の相続分をそれぞれ二分の一または三分の二に引き上げることといたしております。
 以上が民法の一部を改正する法律案の趣旨であります。
 何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決されますようお願いいたします。
#7
○委員長(田代富士男君) 以上で趣旨説明聴取は終わりました。
 両案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
    ―――――――――――――
#8
○委員長(田代富士男君) 刑事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。稻葉法務大臣。
#9
○国務大臣(稻葉修君) 刑事訴訟法の一部を改正する法律案について、提案の理由を御説明いたします。
 刑事事件において無罪の判決を受けた者は、現在でも、刑事補償法により、未決の拘禁または刑の執行による損害について補償を受けることができますし、さらに、検察官の故意または過失により不法に公訴を提起された場合には、国家賠償法に基づき、これによって生じた損害の賠償を国に請求することができることとなっておりますが、これらの制度だけでは無罪の判決を受けた者の救済方法として必ずしも十分ではないと考えられるのであります。
 すなわち、罪を犯したとして公訴を提起された者は、公判廷への出頭を義務づけられるだけでなく、効果的な防御活動を行うためには弁護人を選任してその補佐を受ける必要が生じますが、そのためには相当多額の費用を要するのでありまして、被告人に対し無罪の判決が言い渡され、結果的には不当な公訴の提起を受けたことが確定した場合には、その者が応訴を余儀なくされたことによって生じた財産上の損害を国で補償することとするのが、衡平の精神に合致するものと思料されるのであります。
 なお、現行刑事訴訟法におきましても、検察官のみが上訴した事件において、上訴が棄却されまたは取り下げられた場合には、その事件の被告人であった者に対し、上訴審において生じた費用の補償をすることとされておりますが、検察官による上訴が結果的に不当であった場合と、公訴の提起そのものが結果的に不当であった場合とを区別する十分な根拠がないだけでなく、公訴の提起が不当であった場合に被告人のこうむる財産上の損害は、検察官の上訴が不当であった場合よりも大きいのが通常でありまして、上訴費用の補償を認めながら無罪の場合に費用の補償を認めないのは、法制度としての均衡を欠くとも言えるのであります。
 以上のような事情を考慮いたしまして、無罪の確定判決を受けた者に対し、公訴の提起から裁判の確定に至るまでに要した防御のための費用を補償することとする趣旨で、この法律案を提出することといたした次第であります。
 この法律案の骨子は、次のとおりであります。
 第一点は、国が費用を補償する場合の要件についてであります。無罪の判決が確定したときは、国は、当該事件の被告人であった者に対し、その裁判に要した費用を補償するものとし、例外として、被告人であった者の責めに帰すべき事由によって生じた費用あるいは被告人であった者が捜査または審判を誤らせる目的で虚偽の自白等をしたため公訴を提起された場合の費用については、補償をしないことができることとしております。
 第二点は、補償すべき費用の範囲についてであります。被告人であった者またはその弁護人であった者が公判期日等に出頭するに要した旅費、日当及び宿泊料並びに弁護人であった者に対する報酬に限って補償することとし、その額については刑事訴訟費用に関する法律の規定を準用するが、公判期日等に出頭した弁護人が二人以上あった場合には、裁判所は、事件の性質、審理の状況等を考慮して、弁護人であった者の旅費、日当及び宿泊料を一部の弁護人に係るものに限ることができることとしております。
 第三点は、補償の手続等についてであります。補償は、被告人であった者の請求により、無罪の判決をした裁判所が決定で行い、その請求は、無罪の判決が確定した後六カ月以内にこれをしなければならないこととし、さらに、補償に関する手続、他の法律による損害賠償との関係、補償を受ける権利の譲渡または差し押さえ及び相続人に対する補償については、この法律に特別の定めがある場合のほか、刑事補償法の例によることといたしております。
 第四点は、以上の費用補償の制度の新設に伴う関連改正であり、現行の上訴費用の補償及び上訴に関する訴訟費用の負担について所要の改正をすることとしております。
 以上が刑事訴訟法の一部を改正する法律案の趣旨であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
#10
○委員長(田代富士男君) 以上で趣旨説明聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#11
○佐々木静子君 それでは、いま御提案になりました刑事訴訟法の一部を改正する法律案の審議に入るに先立ちまして、実は私も傍聴はしておらなかったので、新聞報道で知る範囲でございますけれども、昨日の衆議院の法務委員会のわが党の委員の質問に対して、この直接の改正案の条項には当たっておりませんけれども、刑事訴訟法の問題の第四十七条について、法務当局からのかなり具体的な解釈というものが示されたように伺っているわけでございますが、まずお伺いしたいと思うわけですが、この刑事訴訟法第四十七条、この規定を、これは刑事訴訟法のいわゆる教科書的なところで調べてみても、余りいままで問題になっておらないわけでございますけれども、この「訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。」という規定、この「訴訟に関する書類」というものを、これはもうすでに論議されたことだと思いますが、法務当局とするとどのように解釈していらっしゃるのか、まず御見解を伺いたいと思います。
#12
○政府委員(安原美穂君) 「訴訟に関する書類」と申しますのは、犯罪の捜査、公判の手続におきまして、訴訟に関して作成された書類というふうに理解しております。
#13
○佐々木静子君 そうすると、犯罪の捜査、公判において訴訟に関して作成された書類、作成した作成者は大体どのようにお考えになっていらっしゃるわけですか。
#14
○政府委員(安原美穂君) 先ほど申し上げましたように、刑事訴訟に関して作成した書類が原則として入りますが、その場合にはいわゆる担当捜査官の作成したものあるいは捜査に関連して上申書等の形で関係人が作成したものあるいは公判手続においては裁判所の書記官が作成したものということになりますが、なお、この訴訟に関する書類というのは、もう少し広く訴訟に関連して捜査、公判手続に関連して捜査当局ないしは裁判所が入手した一切の資料たる書類も入るということになりますと、作成者は千差万別になると思います。
#15
○佐々木静子君 このように解釈しますと、というようなお話でございましたが、後の部分ですね、これは法務省はどのように解釈していられるのですか。
#16
○政府委員(安原美穂君) 先ほど申しましたように、当該訴訟のために直接作成された書類のみであるという解釈もないではないと思いまするが、私どもといたしましては、当該訴訟のためのみならず、当該訴訟に関連して入手した書類たるものは一切入るというふうに理解しております。
#17
○佐々木静子君 その問題は後に伺いたいと思いますが、この後の部分ですね、この四十七条後段の「但し、公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合は、この限りでない。」というふうになっておりますけれども、この部分について、この公益上云々という個所について、これはたとえばいま最高裁にお入りになっている團藤さんの教科書などを拝見いたしますと、これは訴訟に関する、主として裁判官とか裁判所職員に機密保持を徹底させるためにつくった規定だというふうな趣旨の解釈になっておるというふうに思うのでございますけれども、この立法趣旨とすると、どのようにお考えでございますか。
#18
○政府委員(安原美穂君) 立法の趣旨につきましては、私どもはたしか最高裁の判例にもあると思いまするけれども、要するに捜査に関する書類を公にすることは一面において人権を侵害するおそれがあり、他面におきまして捜査の書類でございますれば裁判官に予断を抱かせるおそれあり、公判開廷前において公にすることは、あるいは関係者に対して公判前に公にすることは、関係者に対して不当な圧力が加わるというようなこと、あるいは捜査中に公にすることは捜査の妨げになるというようなことを含めまして、人権を守り、かつ捜査、裁判に支障のないようにするために、原則として公判開廷前においては書類は公開を禁ずるということでございます。ただ、ただし書きにつきましては、それは捜査、裁判という広い意味での司法の利益と人権の擁護という利益を一面において守る本文の公益に対しまして、なおそれに優先する公益というものが認められるならば、それは例外として公にしてもよろしいということでございまして、例といたしましては、国政調査上の要請に場合によってはその方が優先することもあろうし、それからよく使われておりますのは民事訴訟、特に交通事件の被害者の民事損害賠償請求において、刑事の刑事捜査の過程でつくられた現場の見取り図とか、そういうものを民事訴訟の関係で提供するというのも、この四十七条ただし書きによる一つの適用例であるというふうに理解しております。
#19
○佐々木静子君 いま伺いますと、法務省の見解としても、人権の擁護あるいは裁判の独立あるいは捜査に支障を来さない、その三つの点から四十七条が決められているのだということでございますね。
#20
○政府委員(安原美穂君) おっしゃるとおりでございます。
#21
○佐々木静子君 そのほか、公益上の事由として不起訴記録を民事事件に援用する場合というようなこともいまお述べになりましたが、主として国会に対する国政調査権との関係で公益上の問題というものがあるという御説明に伺ったのでございまするけれども、そのとおりでございますね。
#22
○政府委員(安原美穂君) 立法の過程におきましては、国政調査上の要求というものが一つの重要な例として考えられたことは事実でございますが、それが主たるものであるのでなしに、広く公益上の必要ということでございます。
#23
○佐々木静子君 この規定のこのただし書きの公益上の必要ということですね、この公益上の必要の有無ですね、それの判断権者というものについて法務当局はどのようにお考えでございますか。
#24
○政府委員(安原美穂君) これはあくまでも書類の保管者である。したがって捜査に関する書類であれば検察官、裁判手続にまいりますれば裁判官ということになると思います。
#25
○佐々木静子君 これはたとえばいまの不起訴記録を交通事故の民事事件に使いたいというような場合に、この捜査の重要性とそれから民事訴訟を遂行するための一方の利益、これはどちらが優先するかという判断を担当の捜査官がされるということは、これも時と場合によりまして私どもなども起訴事件の民事訴訟を引き受けた場合に、非常に捜査官のお考えというものが一方的ではないかと思うようなことに出くわすこともときどきはあるんですけれども、これはいわば全く違う職域というふうにも思わないので、捜査官の判断である程度常識的な判断というものができるんじゃないかと思われるケースもあるのじゃないかと思うんでございますけれども、実はこの国政調査権との関係ですね、いまこの三つの人権の保障と司法権の独立とそれから捜査の遂行という面について、どうしてもこの四十七条の前段が必要なのだというお話でございましたけれども、いまこの問題になっている例のロッキード事件につきまして、国民の人たちが一番何を求めているか、何がこれだけ大きな世論を呼んでいるかというのは、要するにだれが起訴されるかということに対する興味ももちろんないではないでしょうけれども、結局、これはもうどの新聞、どの雑誌あるいはまたどうした会合に出ても、だれが起訴されるか、だれが有罪になるであろうかという興味といいますか、それを知りたいというのではなくて、この汚い金をもらったのはだれかと、国民の関心というものはほとんどそちらにあるわけですね。その人が起訴されるとか起訴されないとか、あるいはそれを受け取った人に収賄罪に該当する職務権限があるとかないとか、あるいはそれを受け取ったのがもうすでに大分前で時効にかかっているから起訴されないとか起訴されるとか、そういうことよりも、むしろ結局その人に職務権限があろうとなかろうと、時効前であろうと、だれがその金を受け取ったのかという、むしろその政治責任というものに対して国民が大きな関心を持っているわけでございますね。そういう国民が大きな政治関心を持っている事柄についての判断を、書類の保管者である検察官がこれがするということについてどのようにお考え、当然だというふうにお考えですか、どのようにお考えでございますか。
#26
○政府委員(安原美穂君) 刑事訴訟法の規定にあります以上、検察官が判断するのは当然であると思っております。なぜならば、このただし書きの規定をごらんになりましても、ただし書きに該当することについて公開をしなければならないと義務づけられているわけではなくて、公開することも例外で認めますと、許容されますということでございまして、本来、捜査に関する、裁判に関する書類は、捜査、裁判のために作成され、収集されたものでございますから、やはり第一義的にはその保管者であり、捜査、裁判を担当する検察官なり裁判官がそれを判断するという意味で、優先して判断をさせる権限を刑事訴訟法の規定であるがゆえにやはり許されておるものだと思いますし、なおしかしながら、ただし書きの規定というものも許容される場合としてあるわけでありますが、検察官は、生意気な言い方でございますが、そうでくの坊でもございませんので、他の公益上の必要性の判断というものができないわけではないと思っております。しかしながら、あくまでも訴訟法の規定でございますから、訴訟の遂行ということが第一義的なやや優先する利益として考えられるという意味において、それを担当する裁判官なり検察官が判断をすると、第一義的に判断することとするこの制度は、それなりに理由があるものと思っております。
#27
○佐々木静子君 これはそれなりに理由がある――もっとも、それなりに理由がないと私も言っているわけじゃないわけです。しかし、これを判断する判断権者が、国民の関心というものがその訴訟の遂行と、これが起訴できるかどうかと、そういう関心も無論若干ありますけれども、それが主たる関心じゃないわけですね。特に、起訴した後、公訴が維持できるかどうかというようなことは、国民の大多数にアンケートをとったときに、恐らくそういうふうなものはかなり下の方に回ると思いますね。この主権者である国民自身とすると、これが時効にかかっていようが、職務権限がどうであろうと、ともかくこの金を受け取った人間はだれとだれなのかということを知りたいというのがいまの国民の関心であり、国民自身はその知る権利を持っていると思うわけですけれども、これに対して捜査官あるいは裁判官が全然その判断権限がないと私も言っているわけじゃないんですけれども、第一義的に権限があると――これは刑事局長も言われて、私も否定しているわけじゃないんですが、そうすると、ほかに権限のある人というのはどのようにお考えでございますか。
#28
○政府委員(安原美穂君) なお、前もってお断りしておきたいと思いますのは、いわゆる犯罪の捜査というものの目的は、あくまでも刑事責任の存否を明らかにするということでございまして、先ほど御指摘のような不起訴に、犯罪の刑事責任のない人のカテゴリーをいろいろお挙げになりまして、いわゆる政治的、道義的責任の存否というようなことに国民の大きな関心のあることはよくわかっておりますけれども、そういうことは検察官の責務ではないということも御理解をいただきますことによりまして、これが第一義的に検察官に判断権をゆだねておるということの意味も御理解いただけるのじゃないかと思いますが、と同時に、この判断に当たりましては、特にこの不起訴の場合におきましてはその保管者は検察官でございますが、検察官は御案内のとおり、独任制の官庁でありますとともに、検察官同一体の原則によりまして、上は検事総長から指揮をするという観点になっておるわけでございますから、そう非常識な判断はしないものと私は信頼しておりますし、御信頼いただいていいと思いますが、なお法律的な問題といたしましては、検察の行政、検察に関しましては、検事総長の上に法務大臣が指揮監督権をお持ちでございますから、検察官の判断というものが著しく不当であるというような場合には、検事総長その他検察官の上司から、また場合によりましては、法律的には法務大臣から指揮監督権を通じてその是正の措置がとられるものと思います。ただ、理論上の問題として、先ほど――昨日も申し上げましたら、いかにも法務大臣がそういう意味での指揮権を発動されることが現実の問題としてあるような新聞報道でございます。私はあくまでも、理論的にはそういうことがあり得る。そういう意味において、お尋ねに対しましては、法務大臣もその判断について指揮監督する権能はお持ちであるということを申し上げたいと思います。
#29
○佐々木静子君 これは検察当局がこの刑事捜査に非常に、まあそれが仕事でございますから、ウエートを置いてお考えになるというのはこれはごもっともな話だと思うわけで、またそうでなければならないと思うわけですけれども、事この国民の知る権利、これだけ大きな世論をもって、しかも起訴自身ももちろんのことながら、もっと大きな関心は、何度も言っているようにこの事実関係ですね、これを知りたいと、国民はむしろ刑事責任もさることながら、政治責任を追及したいと、この政治責任の所在についての判断をこれは検察官に――まあ今度の場合は検察官ですけれども――握られるということについて、これはやはり検察官自身にしても、まあいまお話にあったように指揮権発動の問題がございましたけれども、また検察官が非常に有能な方々であるということは私ももちろん否定はいたしませんけれども、ただまた一方で憲法上田権の一つであり最高機関であるとされているところの国会の、超党派によるところの決議まで出されている多くのこれだけの問題を、検察官自身の判断でこの公益上必要があるかないかということになってしまうと、これはまたちょっと行き過ぎのようにこれは刑事局長さん自身もお思いになりませんですか。もしこの国政調査権に対して、国民の世論あるいは国会の世論がここまできているのに、それを当該検察官が幾ら有能であったところで、やはり検察官の方は捜査をするのが御専門である、その方が公益上必要かどうかという認定の権限を原則的に、ごく特殊の場合を除いて、まず全面的に持たれるということになると、これは法理論的にはともかくとして、やはり非常に検察権限というものが当初予想されなかった以上に不当に絶大なものになってしまっているんじゃないか、いまの御見解だとすると。そんなようにお考えになりませんか。
#30
○政府委員(安原美穂君) 絶大とは思いませんが、まあ先ほど申しましたように、理論的には検察権の行使といえども、それが純司法的なものとして著しく独立が保障されなければならないわけでございますが、やはり検察権の行使も行政でございますから、行政権の行使につきましては法務大臣なり最後は内閣が国会に対して責任を持つわけでございますので、その当不当は内閣の責任を介して批判されるべきものでございますが、なお書類を保管する検察官としては、全身全霊公正な立場から、一党一派の利益に偏することなく公正な判断として、公益性はどちらが優先するかを判断するものであるということも御理解をいただきたいと思います。
#31
○佐々木静子君 これは実はこのアメリカから、いわゆる資料入手というものができたと。まあそのときの国民の世論とすると、これに対して政府間の取引であるというふうな厳しい批判が出てきたことは事実でございますけれども、また一面検察に対して大きな期待を持った、これはかつてないほど大きな期待を持ったというのも、また一面争われない事実だと思うわけでございます。そういう意味で、私もきょう質問をするに当たって、昨夜ここちょうど一月間の新聞のファイルを見てみたんですけれども、ちょうど一月前ぐらいのこの新聞の世論を拝見しましても、また国民の声がどんなに検察権というものに対して期待を寄せておったか、また検察当局としましても、これはもう連休の前後には必ず強制捜査に踏み切れるであろうというふうな発表が、御見解が随所に、新聞にもそうだれが見ても受け取れるようなお話のように載っておるし、また私どももそのように思っておったわけでございますが、いま検察庁の方が一生懸命やっておらぬと言うふうなつもりは全然ありませんけれども、当初国民が期待したようにはどうも進んでおらないように見受けざるを得ない。まあそういう点で、非常に最初これは証拠隠滅ではないかというふうに危惧されたことが、あるいは全部じゃないまでも一部本当だったのではないだろうかというふうな不安も国民は非常に持っているわけですね。いま検察庁が非常に鋭意御努力なさっていると私も思っておりますし、またそのように信じたいわけでございますが、捜査の状態、これは予算委員会で若干出てきておりますけれども、現在までに何人ぐらいの人の取り調べが済んでいるのか、その点をちょっと明確にしていただきたいと思います。
#32
○政府委員(安原美穂君) 先ほど来、五月早々には何か特段の動きがあるようなことが新聞に出ているのが、正確には発表しないまでも検察庁における発表ぶりから推察されたというお話でございますが、さようなことは一切ございませんで、国民の皆さんから真相の究明に対して検察に寄せられる期待の余りにも大きいことに検察当局としては恐縮しながらも、本当に全身全霊を傾けて努力をしておるわけでございまして、そういう努力、真相究明への目的を達成したいがために、なおいまの段階では言えない事柄が多々あるということで、いろいろ熱心な報道陣の方々から推測に基づく記事があることは事実でございますが、一切捜査の見込みなどは申し上げたことがないということもひとつ御理解いただきたいと思います。
 なお、真相の究明の過程でございますが、先般来、時効完成をさせないようにして児玉譽士夫の脱税ないしは外為法違反というものの起訴をやっておりまするが、そのほかにつきましては、なお児玉関係の外為法の違反の捜査、それから税法の脱税の捜査というものを国税当局と協力してやっておりますが、そのほかにも国民注視の的であるロッキード・エアクラフト・コーポレーションですか、ロッキード社の日本における不法行為の有無につきまして、その企業活動の全般にわたっていま鋭意調査、捜査を進めておるわけでございまして、先般来、先ほど御指摘のアメリカから入手した資料を綿密に分析をいたしまして、国内において収集した資料との検討を重ねておるまだその最中でございますが、先般一応の検討を終えて中間報告として最高検察庁検事総長に報告をしたということもございますが、そういう意味でなお強制捜査ということには踏み切ってはおりませんけれども、綿密な調査、捜査を進めておるわけでございまして、だれをいつということは申し上げかねますけれども、地検からの報告によりますと、すでに百人以上の関係人を取り調べて調査を進めておるという段階でございます。
#33
○佐々木静子君 予算のときにも大体百人以上というようなお話ですが、あれからかなり日数がたっているわけでございますけれども、大体その後何人ぐらいの方を参考人としてお調べになったか、それとその強制捜査をもうされているように若干伺っているんですけれども、強制捜査というのは身柄の方じゃなくて、場所に対する強制捜査ですね、それなどは何カ所ぐらいになっておるのか。
#34
○政府委員(安原美穂君) 捜索、差し押さえにつきましては、報告によりまして数カ所さらにつけ加えて捜索したということは聞いております。
 それから、百人以上という以上は、上は無限にまで連なるわけでございますけれども、したがって百人以上、その後やはり日がたっておりまするから、じっとしていないと申し上げた以上、数はふえていると思いますけれども、なお同じ人を何回も調べるということもございますから、数がどうしてもふえなきゃならぬとなると、延べ人員で申し上げなきゃいかぬのですが、そこまで正確には聞いておりませんので、この辺で御勘弁を願いたいと思います。
#35
○佐々木静子君 これは、全国の優秀な特捜の検事の方々がいま集まって集中的にやっていらっしゃるというふうに伺っているんですが、実動の検事の方々の数というのはどのぐらいの方が動いていらっしゃるわけですか。
#36
○政府委員(安原美穂君) まだ全国から応援検事を求めないで、地検特捜部の現有人員をフルに活用しておりまして、検事二十八名、事務官六十名でございます。
#37
○佐々木静子君 これは、実はけさの新聞で法務大臣のことを拝見さしていただいたわけなんでございますけれども、今度御担当になる七人の検察首脳というようなことがいろいろと新聞に大きく報道されておりまして、私ども直接存じ上げている方も大分でございますけれども、いろいろ週刊誌などでもその横顔なり、物語的にも述べられているわけで、非常に国民の関心が集まっているわけですけれども、いまおっしゃった二十八名の検事、この方々と、本件で問題になっている事件の容疑者となるであろうと国民が思っている何人かの人ですね。そういう人たちとのかかわり合いというか、そういうふうなことまで検察当局としたらよく調査した上でその事件に当たらせていらっしゃるのかどうか、そこら辺のところもちょっと伺ってみたいわけです。もちろん、仮にどのような関係があっても検察は検察だから、そんなことによって微動だにも動かされないというお話はあろうかと思いますけれども、ただ、国民自身とすると何か現在あるいは以前に関係があったとなると、やはりそういうことで検察の方がうまく進まなかったのではないかとか、あるいは大きくブレーキがかかったのではないかというふうに、これは疑惑というものを非常に持つわけでございますね。特に、こういう事件においては非常にそういう点がむつかしいと思うんですけれども、そのあたりはどのようにして人選を進められたわけですか。
#38
○政府委員(安原美穂君) およそ検察権の行使についての独立、公正が疑われるような事柄は一切避けなければならないことは、何も本件に限ったことではございませんので、そういう点についていささかも疑惑のないような人々が当たっているものと信じております。
#39
○佐々木静子君 無論、国民もそれを信じているわけですけど、刑事局長の立場となると信じるだけじゃちょっとなまぬるいのであって、実際そのようなところを十分にお考えの上で捜査に当たっていらっしゃるのか、もうどうせ検察官は厳正中立だから、どういう関係があろうとそういうふうなことは問題にならぬのだということで最初から問題外にしていらっしゃるのか、ちょっとその点を伺いたいわけです。
#40
○政府委員(安原美穂君) およそ、現在の具体的な特捜の検事について、いわゆる疑惑の対象になっているとされている人々と関係のある人はないと思いますが、検察の伝統といたしまして仮にも自分が取り調べをする対象者が自分と何らの関係があるものを上司から取り調べを求められましたら、進んで辞退するわけでございます。
#41
○佐々木静子君 これは、私も検察が不公平であるということをいま論議しているわけでも何でもないわけなんです。これはできるだけ検察庁にがんばっていただいて、この際、それこそ厳正中立にどんどんと処罰すべきものは処罰していただきたいということをバックアップする気持ちでこういうことを申し上げているわけです。そうしてまた、そういうふうな点もお考えいただかないと、これが後日公判になった場合にやはりこれは検察官と裁判官とだけで公判やるわけじゃなくて、弁護人がつくわけでございますし、被告人の方としても当然自分の立場に立って争うべきことは争うだろうと思いますので、そういうふうなことから考えますと、やはりいささかたりとも関係がある人がこの捜査に当たるということになると、せっかくの国民がこれだけ検察に期待を寄せているのを裏切るようなことになるんじゃないかということを懸念するばかりに言っているわけなんです。たとえば、これは現職の検察官のことで非常に私も申し上げにくいんですけれども、やはり例の今度の問題で大きく問題になっている小佐野賢治氏とかなり深い関係があったというような方も、やはりいまの検察官の主要なメンバーの中に現在おられるわけでございますので、幾ら厳正中立だとおっしゃったところで、また事実その方がどんなに厳正中立になすったところで、やはりわれわれが心配したとおりだというふうな気持ちが国民の側から起こってくるわけで、むしろこの際検察官一生懸命やっているんだというような話を私どもが、一生懸命やっていると思いますよという話をしても、かえっていろんなところから反論を出される、そういう状態でいま検察の御当局が若干そういう疑惑の中におられるということに対して非常に私どもは心配するわけなんです。そのあたりはいかがでございますか。
#42
○政府委員(安原美穂君) 検察官といえども人間でございますから、つき合う相手が犯罪を犯す者と思ってつき合っているわけではないんでございまして、そういう意味において人間としてのつき合いをするということを制限するわけにはいきませんが、先ほど申し上げましたように、いささかでも容疑の対象になったような人と関係のある人というものがあるとすれば、そういう人は事件の捜査からは進んで身を引くのが検察のモラルでございますし、もしそうでないとして、上司から言われるなどということは検察官の恥でございます。また、そういうことのないように、もしわかっておればそういうことについてはそういう者に捜査を命じないというようなことにもなろうかと思いますが、その辺の少なくともこれを担当する検察官の公正につきましては、ひとつ御信頼をいただきたいとくれぐれもお願いをいたします。
#43
○佐々木静子君 これは過去の田中彰治事件などを見ましても、公判記録に明白に担当検事といま名前挙げた小佐野との関係などというものはこれはもう公知の事実で、公判記録にちゃんと公判廷で立証されている、立証されたと言うか表に出されたことですので、私も申し上げるわけでございますけれども、そういうことがありますと、虎の門事件というものがいかに厳正になすったにしても、やはり後々これは話題になる。そういうことから考えると、やはり今度の事件については、御当局としても単に自分が潔白だと、厳正中立だというだけじゃなくて、客観的に見てもだれの目からも厳正中立であるという態度を保持していただきたいと心より希望しているわけです。それと同時に、これは本件に限りませんけれども、いわゆる選挙違反などで百日裁判とか、あるいはそのほかの贈収賄事件なんかでも、大抵これはいま法務省に言っても無理な話かもしれませんけれども、ほとんどこういう事件には、いわゆる検察官でかなり責任のある立場になっておられた方が、退官された後に弁護人につかれる。いわゆるやめ検と言われる方がもう全部顔を並べておつきになる。先日来の非常に結論を急がれている選挙違反事件においても、神戸地裁で元検察官のしかも上層部におられた方が弁護人につかれて、しかも引き延ばしのためだというふうにだれの目にも思われるようなかっこうで突如として弁護人を辞任される。そういうふうなことがこれは珍しいことではなくて、大抵、毎度行われて、しかもそういうことをなさる方が申し合わせたように検察官御出身の、しかも検察庁で非常に指導的な立場であった、私どもが非常に敬意を払って尊敬していた検察官の方々が、やめてそういうことをなさるということは、これは何も検察庁の悪口を言うんじゃなくて、非常に残念に思うわけですね。これはおやめになってからだから、後はもう関係ないというお気持ちだろうとは思いますけれども、そういうふうなことなど一つをとらえてみても、恐らくこのロッキード事件にも、いわゆる元検事長とか何とかいう方がまた起訴になればぞろぞろと、いまももうすでについていらっしゃるんだろうと思いますけれども、おつきになるだろうと思いますけれども、これはやはり検察権の厳正中立というようなことは口先だけじゃなくって、やはり国民の目からそれについての疑惑を持たれないだけの姿勢というものを考えていただきたいと思いますね。法務大臣はそういうふうなことについて、どういうふうにお考えでございますか。
#44
○国務大臣(稻葉修君) 佐々木委員のおっしゃられることはごもっともだと考えます。
#45
○佐々木静子君 これも昨日も議題になったようでございますけれども、私どもが今度の事件でこの高官が、いわゆる政府高官が起訴されるであろうかどうかということもさることながら、その政府高官がだれが受け取ったかということにウエートを置くというのは、やはり職務権限がなかなかむつかしいのではないかということを思うので、この受け取った人が職務権限があるかないかという考え方よりも、むしろあろうとなかろうとだれが受け取ったというふうに興味が走るわけなんでございますけれども、昨日の委員会のこれも簡単に要約されたことしか私はわからないわけでございますけれども、たとえば国民が非常に心配しているのは、一例を挙げますと防衛庁のPXLというような場合だと、職務権限というのはかなりはっきりするんじゃないか。しかし、民間企業の場合の職務権限というもの、一例を挙げると全日空なんかの場合は、非常にそのような金の動きというものが出てきても、職務権限の面でむつかしいのではないかというふうに大変に心配しているわけでございますけれども、航空法を見ますと、これは全く抽象論でございます――別に具体的にどうこうという話じゃなくて、全く抽象的な論議ですが、航空法によりますと運輸省の権限が、航空会社についてのいろんな免許権とか運賃の認可とか、そのほかいろいろ航空政策の立案とかなどについての指導もできるというふうなことになっているかのように私どもは考えるわけですが、そのあたり、たとえば全日空に対する運輸当局の権限というようなものを、これは法務省はどのようにお考えでございますか。
#46
○政府委員(安原美穂君) 実は全日空と運輸省との関係というものを法務省で検討して、職務関係があるかどうかを検討したことはございませんし、具体的な事件の問題でもございますので、仮にそういう検討したといたしましても申し上げるわけにはいかぬと思いまするけれども、一般論といたしましてきのうも衆議院の法務委員会でも申し上げましたように、いわゆる行政指導というものも、それが運輸省の設置法に基づく行政指導ということであれば、それはそれに関連する贈収賄がもしあるとすれば、それは当然に法律に明文はなくても、設置法上の根拠から行政指導ができるということが理解できる以上は、職務行為ということに関連してくるのじゃないかという一般論はきのう申し上げました。
 なお、捜査というものは、もう佐々木委員御案内のとおり事実だけではだめでございまして、事実に法律を当てはめるのが捜査でございますから、当然に贈収賄の成立につきましては、職務関係について綿密な法律上の検討を行うものと思っております。
#47
○佐々木静子君 いま運輸省設置法のことが述べられたわけでございますけれども、条文とすると特に運輸省設置法の何条というようなことまではお考えになっていらっしゃらないわけでございますか。それと航空法との関係はどういうふうになるんでございましょうか。
#48
○政府委員(安原美穂君) むしろこういう運輸省設置法の解釈等につきましては、運輸省当局から聞くというのが法務省で検討する場合においても前提でございますし、捜査の過程におきましてもそういうことは捜査当局において聞いて、法律解釈を確立するというのが通例でございましょうから、実はいますぐ私にお聞きをいただきましても、まず運輸省当局からでもお尋ねいただくのが適当ではないかと思いますので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
#49
○佐々木静子君 これは、きょうは法務省しかお越しいただいておりませんし、いろいろとお答えいただきにくい部分もあろうかと思いますので、これ以上お尋ねはいたしませんけれども、ともかく国民がこれだけ検察に期待を持っている、この期待というものを裏切ることがないように、一部ではかなり重要な容疑者が順々と何かの形で消えつつあるというふうな、国民が非常に落胆と疑惑を持っている、そういう声がかなりあるわけでございますから、そういうことが事実にならないように、ひとつくれぐれも今後とも検察当局はがんばっていただきたいと思うわけでございます。そのことについて、大臣いかがでございますか。
#50
○国務大臣(稻葉修君) 検察庁の綱紀はきわめて厳正だと私は思っております。したがって、ただいまいろいろ国会の調査権との関係で、国会側に御不満のあることもしばしば聞いております。そういう点についての理由も、十分正当性を認めないわけには私はまいらぬと思っております。ただ、一般国民がだれが一体黒い金を受け取ったのかそれを知りたい。それが時効になったから不起訴だとか、あるいは職務権限に関係しないから不起訴だとか、そういう法律的な知識はありませんから、受け取ったやつは全部クロでつかまえられるのだと、こういう考えもあるようでございましてね。私ども一般国民からときどき、国会は別に犯罪捜査するところではないから、みんな検察庁に任せておけばいいのにと、どういうんでしょうと、こういうふうに聞かれますから、いや、そういうわけにもいかないんだねというのだね、私はね。それはあなたは法律知識がないからそうだけれども、検察庁は刑事責任の追及の場所なんで、時効にかかったり、職務権限がなければクロにはならないのだからねと。そのクロにならない場合のことを国会は心配しているので、そういう点をやっぱり国会の調査権に基づくいろいろなことをやりたいという国会の立場というものは、国民はあんまり理解しておらぬようだけれどもと、こういう説明をしておる。あなたのおっしゃるようなことなんです。
 ただ、やり方によりましては、国政調査権のやり方によっては、クロのやつを逃がしてはかなわぬという気もあるわけですね。いわゆる灰色だとかシロだとかいうのは、法律上は軽い方――少なくとも法律上は軽いので、法律上一番重いやつはクロだと。これをきちっとクロをまずつかまえて、それから灰色とかシロとかいうのが出てくるので、その時点でひとつおやりになりませんかと、こういうのが私の気持ちです。そういうことで、どうも何となく犯罪、事案の解明に消極的なように誤解されるというと、私の真意ではないんですから、一生懸命なんですからね。まあとにかくクロというものが出れば、それは同時に政治的責任も道義的責任も一緒に負わされるわけですから、これが一番大事だと、私どもの立場から言うとこれを追っかけている段階ですな。そういう段階で、将来こういうことがあった場合を予想して、国政調査権に応ずるのか応じないのか、刑事訴訟法四十七条に、その担当の検事だけがそんな政治的な公益の判断はできないじゃないかと、そんなのに任してたまるかとおっしゃる佐々木さんの気持ちもそのとおりだと思うんですね。そういうときには、やっぱり上司に相談したり、検事総長に相談したり――検事総長もそういうことになれば、これは検察当局だけではいかぬなら、法務大臣に相談もあるでしょうし、法務大臣も、こういう点についてはやっぱり内閣総理大臣に報告をして、内閣全体の立場で、わが国の民主政治の崩壊にならないようにきちっとやらなければならぬ大問題だと、こういうふうに考えておるわけでございます。大体、佐々木先生じゅんじゅんと御質問なさった順序を追うてお答えしたつもりでございます。
#51
○佐々木静子君 どうも非常に力強い御答弁をいただいて心強く思っていますが、私どもも白い者までつかまえてくれいと申し上げているわけではもとよりないわけで、ただ黒いのは間違いなくつかまえてもらわないと困る。そして、小さな雑魚ばかりじゃなくて、やはり大きなのもつかまえてもらわないと困るということをここに重ねて申し上げて、今後の御奮闘をお願いしたいと思います。
 話は変わりまして、これから法案そのものの審議に入りたいと思いますが、いま大臣から御説明のありましたこの刑事訴訟法の一部を改正する法律案につきまして、残された時間若干お尋ねしたいと思います。
 これは、いま提案の御説明にもありましたように、無罪となった者に対して現在でも刑事補償の規定もありますし、あるいは国家賠償法というのもございますし、あるいは検事上訴による被害の補償というものも考えられているわけでございますけれども、やはりこれが非常に不十分だと。そういうことで、今度この法案の御提出になったというふうに思うわけでございますが、この法案提出になった経過についてちょっと当局から伺いたいと思うわけです。
#52
○政府委員(安原美穂君) この法案が提出されるまでにおきます経過と申しますと、法制審議会の経過以前にいろいろと国会で御議論があったということから申し上げるべきだと思いますが、かいつまんで申しますと、昭和四十二年ごろから国会の方面におきまして費用補償制度――現在、提案いたしております費用補償の制度と、それか拘禁補償ではなくて非拘禁の補償制度を新設すべきであるという主張が繰り返されておりまして、さらに社会党議員からは、第六十回、第七十一回、第七十五回と、三回の国会の機会に費用補償及び非拘禁補償の制度を新設する内容を盛り込んだ法律案が提出されましたが、いずれも審議未了となって廃案となっております。
 この間にありまして、わが法務大臣といたしましては、再三にわたりまして費用補償制度についてはこれを採用する方向で検討する旨を答弁いたしましたし、政府委員や説明員も、非拘禁補償については種々の点で困難な問題があるけれども、費用補償については十分検討したいというふうに答えてきた経緯がございまして、そのようなことで昨年の三月三十一日に法務大臣から法制審議会に諮問を発しまして、費用補償制度を採用することの当否を諮問して、そしてその結果、昨年の十二月の八日に法制審議会としては費用補償制度を採用すべきだということで、大体、今回提案しておりますような要綱の答申がございまして、このたび法案の提出に至った次第でございます。
#53
○佐々木静子君 これは私どもも非常に前向きの法案であるというふうに考えているわけでございますけれども、この中で、法律案を見ましても、この費用の補償の範囲が「無罪の判決」というふうに限定されているように思うわけでございますけれども、これはやはり免訴とか公訴棄却の場合も含むべきではないかというふうに考えられるんですけれども、そうしたところについては、どうしてこの無罪ということに限られたわけでございますか。
#54
○政府委員(安原美穂君) いま御指摘のように、免訴、公訴棄却の場合にも刑事補償法のように費用の補償をすべきではないかという議論が、法制審議会の過程におきましてもございましたが、結局、費用補償については免訴、公訴棄却の場合まで広げるべきでないという結論に達したわけでございまして、提案の理由としても、その点について御説明をやや詳しく申し上げたいと思いまするが、まあ御指摘のとおり刑事補償と費用の補償とは、被告人として訴追を受けまして無罪の判決を受けた者がこうむりました損害を国が補償する制度であります点は共通の考え方に立つものでございまするが、刑事補償の場合と費用補償の場合とでは、補償の対象となる損害の種類なり、補償をすることの趣旨においてかなりの相違があるのであって、その相違に着目すれば、必ずしも刑事補償と同じように免訴または公訴棄却の裁判を受けた者で、実際は無罪であると認められる者について補償すべきだというような刑事補償法の二十五条と同じように扱う必要はないんじゃないかということになったわけでありますが、さらに詳しく申し上げますと、刑事補償は、死刑を含む刑の執行あるいは未決の抑留または拘禁を理由として、無罪の判決を受けた者が刑の執行あるいは抑留、拘禁ということによってこうむった重大な損害について補償を行おうとするものでございまして、それがゆえに憲法四十条が刑事補償を受ける権利を基本的人権の一つとして保障しているものと思います。つまり、刑の執行あるいは未決の拘禁という重大な公益侵害であることに着目したのであろうと思われますが、これに対しまして費用の補償は、身柄拘束の有無にかかわりなく被告人が防御活動を行うために支出いたしましたもろもろの費用を補償しようとするものでございまして、損害の程度は比較的軽微である、身柄の拘束ということに比べれば比較的軽微であるということが一つの損害の程度、種類において違うということの意味でございます。
 その次に、補償する趣旨として考えられますことは、刑の執行を受けたり、または身柄を拘束されて刑事訴追を受けた者に対しましては、社会の一般がその者は犯人であるとの強い印象を持つのが通常でございます。したがいまして、刑事補償におきましては本人の名誉を回復するという要請が強くありまして、補償を行いますとともに補償の決定を公示することが定められておりまするが、これに対しまして今回の費用の補償におきましては、訴訟の勝ち負けに応じていずれの当事者に費用の負担をさせるのがいわば公平の精神に合するかという配慮が強く、有罪の言い渡しを受けた者は、被告人に訴訟費用を負担させておる現在の制度といわば表裏の関係に立つものでございまして、必ずしも被告人でありました者の名誉を回復させることを主眼には置いていないという点が、趣旨において程度の差ではございますが違いがあるのではないかというふうに思われるということのほかに、もう一つ実際問題といたしまして刑事補償法の二十五条は、免訴、公訴棄却の場合でも、実質的に無罪であると認められるのでございますれば刑事補償をするということにしておりますのは、先ほど来申し上げております損害の程度、それから補償の趣旨からくる刑事補償の特質に基づくものでございます。しかし、実際の運用におきまして、刑事補償法の二十五条の規定は、免訴、公訴棄却という形式裁判で事件が終了いたしました場合でも、補償の要否を決定することのために改めて有罪か無罪かの判断をしなければならないとしている点で、むしろ免訴、公訴棄却というような形式的裁判というべき趣旨になじまないものがあるように思われます。有罪、無罪の判断をするのには不相当に長期の審理を必要とするような場合も生じ得るのでございまして、このような不都合も刑事補償という重大な損害の補償の場合にはやむを得ない制約かとも考えられまするが、これと異なります性格の費用の補償につきましては、あくまでも迅速に補償するという制度の趣旨からいって、かように結論を得るのに不相当に長期の審理を要する場合が多々あるというようなものは、少なくともこの費用の補償の制度としてはなじまないのではないかという手続上の問題というようなことがございまして、議論はございましたけれども、刑事補償と同じように免訴、公訴棄却の場合を無罪の場合と同じように費用の補償までする必要はないというのが結論でございます。
#55
○佐々木静子君 これはまた他の議員からも御質問あろうかと思いますので、さらに続けまして、次にこの第二の点でございますけれども、この補償すべき費用の範囲でございますね、これを見ますと、被告人またはその弁護人にかかる旅費、日当、宿泊料及び弁護報酬とすることとなっておるわけでございますが、私はこれであるとないよりは結構でございますけれども、実際上の補償というものとはほど遠いことになってしまうんじゃないかというふうに考えるわけなんです。たとえば、以前にもこの法務委員会で問題になりました、特に無罪をかち取ろうと思えば綿密な記録の謄写というものが必要でございますけれども、その謄写料というものが含まれておらないわけですね。これは事件によりますと弁護人報酬よりも謄写料の方がはるかに多額になるという事件もかなりにあるわけでございます。特に、これで無罪ということになると、これは謄写に力を入れなければどうにもならないわけでございますから、やはり謄写料はどうしてもこの中に含める必要があるんじゃないか。その点についてどのようにお考えでございますか。
#56
○政府委員(安原美穂君) いまの点は、国選弁護人の報酬に関連いたしまして佐々木委員年来の御主張でございまして、私どもも決して無視しておるわけではございませんが、現在、御案内のとおり国選弁護人が記録の謄写料等訴訟の準備に必要な経費を支出いたしました場合には、その事情を国選弁護人に支給すべき報酬額の算定に当たって適当に参酌するということに、最高裁の刑事局長と経理局長の通達でそういうことによりまして運用されておりまするが、今回の場合も、私選弁護人が記録の謄写料を支出いたしました場合には、この費用の補償の観点から申しますと、費用補償の対象となる弁護人の報酬額の算定に当たってこの事情が考慮されることとなるものと考えております。なお、この問題は刑事訴訟費用の国選弁護人の報酬の問題ともからめまして今後検討すべき問題であるというふうに考えておりまして、法制審議会の審議の過程でも、今後の検討の課題とさせていただきたいというふうにお答えをした次第でございます。
#57
○佐々木静子君 これは局長もおっしゃったように、私はどうも謄写料のことばっかり言っているようにお思いになるかわからないんですが、実際私のいままでの未熟な経験で、引き受けた人が貧乏な人が多いせいか、なかなか謄写料のことで、いつでも弁護自身よりも謄写料の捻出のために困らなければならないというようなことがたびたびでございますし、ぜひとも謄写料のことにつきましては裁判所も考えてくださるということでございまして、非常にありがたいとは思うんでございますけれども、現実の問題として、裁判所は記録を得るのにじっと座っていても記録というものは入ってくるわけでございまして、弁護人が謄写料を得るために大変に苦労をしなければならない。被告人が謄写料が出ないために十分に謄写ができなくて、そのために困らなければならないということは身近な問題としてはなかなか裁判官にはわかってもらえないんじゃないかと思うわけです。ですから、国会でもくどいように取り上げているわけでございますけれども、そのあたり、今後法制審議会での議論の中にもぜひとも謄写料の問題を重点を置いて御検討いただきたいと思うわけです。
 それから、やはり事件ということになりますと、これは被告人の側からあるいは弁護人の側からいろいろな面で鑑定をしなければならないということも当然起こってくるわけでございます。これは捜査の御当局におかれても、裁判所に出すいわゆる公判でフルに使う鑑定のほかにも、やはりいろいろと特別な知識、専門職を持っている人たちの意見をお聞きになることも多いんじゃないかと思いますし、特にこのごろの刑事事件はいろんな専門的な知識を必要とする。たとえば公害事件一つを取り上げてみましても、とても普通の常識的な考え方だけで――常識といいますか、普通人の知識だけでは賄い切れない問題が大変に多いんじゃないか。そういうことから、特別の学識経験者にいろいろとその知識を提供していただかなくちゃならないというようなことが、弁護活動の中にも大変多くなってくるわけでございますね。御承知のとおり、この鑑定料というのもなかなかばかにならないわけでございまして、これは警察とか検察庁から鑑定をお頼みになるのは、常時あることでございましょうから、たとえばこれは法医学鑑定一つを取り上げてみましても、もういつも頼む法医学の先生がいるというふうなことでございましょうけれども、弁護人の方からあるいは被告の方から法医学の先生に鑑定をしてもらうということは、いわばそれ一件だけのことでございますので、なかなか引き受けていただくということも困難であって、かなりな鑑定料も――かなりといいますか、相当な鑑定料はお払いしなければ、これはそこの教室でも引き受けていただけないというようなことも起こるわけでございますので、これは鑑定料についてもひとつ御検討いただきたいわけなんですが、そのあたりはいかがでございましょうか。
#58
○政府委員(安原美穂君) 鑑定につきましては、一般には佐々木委員も御理解のとおり、裁判所に対しまして被告人の側から鑑定の申請がなされました場合は、もう申すまでもなく国の費用で鑑定がなされるのでございまして、通常はそういうケースが多かろうかと思いますけれども、御指摘のように、事案によりましては被告人の負担で特に鑑定を独自に委嘱することの必要な場合も絶無ではない、予想されないわけではございません。そのような場合には、やはり鑑定料につきましても先ほどの謄写料と同じように、現在の運用におきましては弁護人に対する報酬に含めて考慮されるべきものであるという現行制度では思いますが、将来の問題といたしましては、先ほどの謄写料と含めて検討の課題であると思っております。
#59
○佐々木静子君 それから、この被告人またはその弁護人にかかる旅費、日当、宿泊料というのがあるんですが、これは公判準備期日あるいは公判期日に要した旅費、日当、宿泊料ということになるんですか。弁護活動に要した旅費、日当、宿泊料ということになるんですか。どのようにお考えでございますか。
#60
○政府委員(安原美穂君) これは限定的で、公判期日と公判準備に要した旅費、日当でございます。
#61
○佐々木静子君 これは前の国選弁護の費用のときにも特にお願い申し上げたと思うのでございまして、まあいろいろと御努力はしていただいていると思うのでございますが、この公判期日にたとえば現場検証に行くとか、あるいは遠隔地にある証人を調べに行くというときに、初めてそこの地に行く弁護人というのはまずほとんどないわけでございまして、まあ検事側からの証人調べ、あるいは検事側からの現場検証の申請であっても、これはそれに応訴していくためには、事前に何回も足を運んで現地の様子もよく確かめて、あるいは供述調書と現地の状態が矛盾している個所がないかということを、これは十分に検討しなければ弁護活動ができないということは、私が刑事局長に申し上げるまでもないことでございますし、ましてや弁護人側の申請による証人調べとかあるいは現場検証ともなれば、こちらが案内していくわけでありますから、これはたとえば普通は一回の現場検証に対して、まあ普通数回ぐらいはそれより前に足を運んで、現地の状態はどうであるか、どの点を強く主張すればこの事実が違うということがわかっていただけるであろうかとか、あれやこれやとこれは事前に調査してこそ弁護活動になるわけでございますが、まあそういうことは何も釈迦に説法で私が申し上げるまでもないとは思いますけれども、これは役所にいらっしゃる方は、これは当然のこととして役所からそうした経費が出るわけでございますけれども、弁護人の場合は、これ被告が払ってくれるかあるいは弁護人が身銭を切ってやるかどちらかしか方法がないわけでございますので、そのあたりのところもこの法案をお出しになった御趣旨などから考えましても、ぜひその点も前向きで御検討いただきたい。この点はいかがでございますか。
#62
○政府委員(安原美穂君) まあ補償制度というものは、一般に国民がそこまではこらえて負担する限度というのはどこかという問題として、時代の移り変わりとともに相対的な問題であって、絶対的な限度というものはないと思いまするけれども、同時に、制度を考えます場合に、ほかの制度との均衡ということも考えなければならない。といたしますと、さしあたりこのような費用の補償については、刑事訴訟を提起されたために応訴を余儀なくされたことによって生じた直接の費用で、ほかの行政処分等の不服の訴え等において生じた費用とははっきりと一線の画せるような費用ということになりますと、やはり公判期日、公判準備という特殊例外の場合だけの費用に限らざるを得ないというのが、制度の趣旨でございます。先ほど申しましたように、絶対の範囲ではございませんけれども、現段階においてはまだそこまで、一切の費用というところまで広げるのには時期尚早ではないかというふうに考えております。
#63
○佐々木静子君 まあいま大変に法務御当局も御努力いただいているというふうに、私もそれはよくわかりますし、大変この法案をお出しになるについても御苦労なすったと思うわけでございますが、大体この法案をお出しになるについての年間の予算というものは、どのぐらい考えていらっしゃるわけでございますか。
#64
○政府委員(安原美穂君) 幸いにして最高裁の刑事局長が御同席でございますので、特に刑事局長からお答えいただいた方がいいように思いますが、よろしくお願いいたします。
#65
○最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 最高裁の刑事局長でございますが、御承認をいただければ御説明させていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
#66
○委員長(田代富士男君) はい。
#67
○最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) この費用補償に要する費用というものは、これはまあ今度無罪の裁判の場合に一体幾ら要るかという見通しは、これはまあ結局過去のその事件数、それからそのときに実際にかかった日数だとか、そういうものをいろいろ考えてやるほかないわけでございますので、昭和四十九年に無罪確定しました全事件につきまして、全部一々いまこの費用補償によって支給されるであろうという経費を計上いたしまして、全部足し上げたわけでございますが、そうしますと、大体一億円ぐらい年間かかるということでございます。それで、今度はこの費用補償に関する刑事訴訟法の改正は、成立してから九十日以内で政令で定める日ということになっておりますので、大体七月ごろからという見通しでもって、予算は七月から手当てする、したがいまして大体七千万円余を要求しております。
 以上でございます。
#68
○佐々木静子君 これは、国もいま大変に苦しい台所のようでございますけれども、やはり人権を守るということについて年間七千万とか一億とかというのは、全体の財政から見るとわずかなことになってくるんじゃないか、これは大変に法務当局も御苦労なことだと思いますけれども、ぜひ実質的に補償できるようにひとつもっと枠を広げていただくように今後御尽力いただきたいということを特にお願いしたいと思います。
 それから、第三の補償の手続でございますけれども、これを見ますと六カ月となっておりますね。これは検事上訴の場合がたしか二カ月でございますが、それから刑事補償の場合は三年というふうになっておるわけでございますけれども、六カ月というのはちょっとこれは時期的に忙し過ぎるのではないかというふうに私は考えるわけでございます。といいますのは、私以前にも当委員令で申し上げたことがあるのでくどいようでございますけれども、検事上訴の場合の補償というのも二カ月だから特に忙しいんですけれども、この国会審議で委員会でのやりとりを見ていますと、一片の紙切れを判を押して出しさえすればいいように、御当局もそのように受け取れるような御答弁をしていらっしゃるわけなんだし、また審議される委員の方の中にもそういうふうにお考えになっていらっしゃる方もあるいはあるかもわからないんですけれども、これは私がわずかにやった刑事事件でも、ここにも検事上訴の場合の上訴費用の請求書というのをここに幾つか私いままでの自分がやった分を、私がやったのは三件ぐらいですけれども、持っているわけですけれども、これは無罪で短いちょっとの間の事件で被告が一人というのは簡単にいきますけれども、このごろは特に集団犯罪が多くなって被告がたくさんいる場合、しかも無罪事件で行ったり来たりしているような事件ですと、これはなかなか上訴費用の場合だけででもこれは大変な、記録も全部見ないことには書類がつくれませんし、そういうことから考えますと、私も二カ月で書くのに大変往生したケースもございますので、さらに今度の場合も不拘束の場合なということになってくると、またそこで旅費、日当、宿泊料ということになってくると、何月何日に被告人はどうして弁護人はどうしてというようなことも全部日記的に過去にさかのぼって書かないといけない。このごろですと十年以上続いているような事件もたくさんあるわけでございますので、この六カ月というのをもう少しお考えになるおつもりはありませんですか、いかがでございますか。
#69
○政府委員(安原美穂君) その点も法制審議会で、特に弁護士会の選出の委員から長くせよという御意見がございましたが、刑事補償の場合は三年でございます。これにつきましては、先ほど来種々申しましたように、物質的損害のみならず、刑の執行なり身柄の拘束等によりますところの精神的損害を含む重大な損害でございますので、民法の不法行為の損害賠償請求権の消滅時効と同じように三年にする必要があったわけでありまするが、費用補償につきましてはそこまで重大な損害の補償でもないから六カ月が適当ではないかというふうに考えて、こうなったわけでございまして、実は六カ月ということを考える場合におきましても、いま佐々木委員からはコンブレインがございましたけれども、現行の上訴費用の補償請求の期間の二カ月について少なくとも立法当局としては、立案当局としては実務上期間が短過ぎるという苦情は聞いておらぬという前提でございましたが、ただいま佐々木委員から苦情がございましたので、よく考えなきゃいかぬと思いますけれども、まずさしあたり六カ月で大丈夫じゃないかというのが私どもの心づもりでございます。
 なお、不十分な点がございましたら最高裁からひとつ補足を願いたいと思います。
#70
○最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 裁判所といたしまして従来の実績から見ますと、上訴費用の補償でございますけれども、上訴費用の補償の場合二カ月の期限切れで棄却になったという事例は、過去二百数十件のうちで一件というふうな程度でございまして、ほとんど問題がないのじゃないかというふうに考えております。
 それから、六カ月という期間が問題になりますが、刑事補償の場合三年でございますが、この場合も大体六カ月以内に八〇%ぐらいはもう請求してしまっているということで、したがいまして、実績に徴すればそれほどの不都合はないというふうに考えております。
#71
○佐々木静子君 これは私は二カ月の期限切れになってだめになったのが二件しかないという、最高裁の刑事局長さんのお話でございますけれども、私は二件にしろ大変気の毒だと思うわけです。というのは、いまのは、これは検事上訴がむだであって、そうして結局補償を受ける権利を得た、私はこれをかねて言っている説なんですけれども、それはもう請求しないでも、そういうふうなものは皆国がむしろ積極的に補償していいんじゃないか、そういうふうな細かいことは。請求もそんなものはこれ以上いじめられて金なぞ要らぬという人も中にはいるかわからない。また、事実上訴費用の請求を現実にしている人は非常に少ないというふうに聞いているわけですが、これは金が要らないからじゃなくて、めんどうくさいからやらないわけです。やれやれ、もう裁判所でこういうふうな調べを受けることも終わった。また出かけていくのもかなわないというような気持ちから、どうせ金額もわずかだしということで請求しないのだろうと思いますけれど、むしろ、私はこういうふうな書類をごたごたと素人の、しかも疲れ切った無罪の判決を受けた元被告人につくらすよりも、むしろ、裁判所はどうせ判決を書くのに全部記録を読まなければ書けないのですから、そのときに一緒にそのぐらいのサービスはむしろしておいてくれていいくらいに思うわけです。判決を受ける方にしてみると、幾ら無実であっても必ずしも無罪になるとは限らないわけですから、まだ判決の出る段階に、刑事補償なり刑事訴訟の請求までは普通やらないわけですので、ですから無罪になったら被告も弁護人もまた記録を一から読まなければならない、全部すみからすみまで読む必要はないでしょうけれども、もう食傷で御免だという気持ちになっているわけですから、私はここら辺は二カ月の期限がおくれた人は二人しかないという感覚じゃなしに、せっかく請求したのに二人の人がその権利を行使できなかったのだというふうに、むしろ、私は裁判所が受けとめていただきたいというふうに思うわけです。無論、立法に裁判所が口を差しはさまれるわけにはいかないでしょうけれども、今後の動向としてぜひとも下々の者からお上にお願いを申し上げて、そうしてお恵みでいただくというようなかっこうじゃなしに、これは大体国家が間違えて上訴した場合ですね、いままでのケースだと。そういうふうな場合はやっぱり国がもっと責任を持ってやってあげていただきたい。そういうふうな方にもう少し法務省の方でも立法を進めていらっしゃるというふうにはお考えになれないわけですか、いかがですか。
#72
○最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 先ほど私の申し上げようが悪かったのかもしれませんけれども、二件というのは、正確には昭和四十年から五十年の十年間で、請求人員二百三十名中一件でございますので、その辺御承知おき願いたいと思います。
 それから、方式の点いろいろ記録お読みになったりなさらなきゃならぬということで、おっしゃる御趣旨まことによくわかります。しかし、裁判所の立場だけから言いますと、無罪の判決すぐ確定するわけではございませんので、それであらかじめやってしまうというわけにもいかないわけでございますが、それで請求の方式はこれはこの費用補償の場合も刑事補償の場合と同じようになるわけでございますけれども、これは一応書面ということで。しかし、その書面の方式というものは、別に法定のものがあるわけではございませんので、それで請求そのものは、それほど具体的に詳細に内容を一々書いた上でしなければならぬということはないというふうに考えておりますので、その点つけ加えさしていただきます。
#73
○政府委員(安原美穂君) 請求を待たずに支払ってはどうかという御提案だと思いますが、この点につきましては、国家の公権力の行使によって故意過失のある国家賠償の事件につきましても、請求権という形で、請求を待って論ずるわけでございまして、ましてや無過失の補償でございますから。しかしながら、なお憲法上の権利として刑事補償は認めておるということになりますと、やはり権利ということになりますと、請求権の行使という形をとるのが少なくとも現在の法体系ではそういう形になっておりますので、それを恩恵のような形で与えるということは、かえって国民の意思というものを尊重しない恩恵的福祉行政のような形になるのではないかと思います。まあ、それは立法論の問題でございますけれども、私どもとしては、権利として認める以上は請求を待って論ずるというのが正しい現在における法体系としては最も望ましい形であろうと思います。ただ、問題はその請求権の行使が容易になるように、できるだけの配慮はするようにすべきだと、かように思っております。
#74
○佐々木静子君 それから、この補償ですね、この併合罪の場合ですね。併合罪の場合の一部無罪という場合がよくあるわけでございますけれども、それについての認定はどのようにお考えに――恐らくその訴訟に要する費用というものは、これはまあ十起訴事実があってそのうち二つが無実だというような場合は、恐らくその公判過程においてはその二つの無実を立証することにほとんどの時間と経費がかけられると思うわけなんですけれども、そこら辺の補償の関係はどのようでございましょうか。
 それともう一つは、併合罪とならなくても一つの犯罪、あれはどうなるんですか、一個の行為で幾つもの罪名に触れるというふうなことになるケースですか、一部が無罪になる。そういうふうな場合は、たとえば、住居侵入と窃盗とで起訴された場合に、窃盗が無罪になって住居侵入だけは有罪になる、そういうふうな場合などの取り扱いはどうなるのか教えていただきたいと思います。
#75
○政府委員(安原美穂君) いまの御指摘の場合、いわゆる実質上の併合罪の場合の併合罪の一部について無罪の場合、あるいは観念的な併合罪、観念的競合の場合の一部についての、いわゆる一部についての無罪というような場合も含めまして、無罪となった者に必要となった審理に要した費用というものは補償するというのがたてまえでございます。問題は、どの部分が無罪になったものに要した費用かという判断の問題でございますが、これにつきましては実務の裁判例もいろんなのがあるようでございますが、私どもとしては裁判所の適切な御判断にまちたいというふうに思っておりますが、考え方としては個々の費用を見て、これは無罪になったものに要ったかどうかということがわかれば、それにこしたことはないと思いますが、識別不可能な場合には、やはりいまのように無罪になった部分に多くの審理の費用なり日数なり回数を要しておるというような判断をして、全体を案分して、そして無罪の部分というふうに考えて補償するということも考えられるんじゃないかと思いますが、詳しい実務の運用の例につきましては、できましたら最高裁からお答えいただければと思います。
#76
○最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 併合罪の一部についてのみ補償の要件を満たす場合の例といたしましては、行政費用の補償について三つばかり例がございます。一つは、これは福岡高裁の昭和四十九年の決定でございますけれども、この場合のやり方は、これは無罪に関係した事実について、無罪の事実についてだけ行われた証拠調べなり何なりその期日の費用だけを補償するという考え方でございます。
 それからその次は、高松高裁の昭和四十四年の決定でございますが、これは実質的に見て有罪部分以外の事実についての審理が行われた部分は補償するという考えでございまして、ですからその期日にほかの部分が入っておりましても、実質的にやっておればその部分は補償するという考え方。それからもう一つは、これは大阪高裁の昭和四十四年の二月三日の決定でございますけれども、これは全体包括的に見まして、そしてその中で大体これくらいが無罪関係、これくらいが有罪関係というふうにして、それで全費用に対する割合で支給するという、そういう三つの例がございますけれども、私どもといたしましては、最後の全体として見るかあるいは実質的に見ていくか、そのどちらかではないかというふうに考えております。
 それから、先ほどちょっと私補償の請求の方式につきまして書面を出していただく、通常は出していただくと申し上げましたけれども、口頭でもいいことになっておりますから、この点訂正しておきます。
#77
○佐々木静子君 これは今後の改正の方も口頭でもできるというわけでございますか。
#78
○最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) はい。今度のあれは、結局刑事補償によるということで、刑事補償が口頭でもいいことになっておりますから、ですから全部口頭でよろしいことになります。
#79
○佐々木静子君 それから、無罪でよく問題になるんでございますけれども、精神障害者による犯罪、心神喪失中の犯罪などで無罪になった場合に、これは補償するのはどうかというような声もまま聞くわけなんでございますが、私どもの考え方といたしますと、これは飲酒による事件というようなものは、大体において検察御当局においても、原因において自由な行為ということで起訴されている場合が多いし、裁判所も大体そのように認定されているケースが多いんじゃないかなと思うんですが、いわゆる精神病者でございますね。そういう人の犯罪の場合、これは精神病になりたくてなっている人はだれもないわけでございますから、精神病者の場合も、これは精神病者だから補償しないというようなことには、私はしていただきたくない。これは普通人よりもやはり精神病の人というのは、それだけ非常に条件で劣位に置かれているわけでございますので、不利益を受けることがないようにというのが私の希望でございますけれども、そのあたりは法務当局はどのようにお考えでございますか。
#80
○政府委員(安原美穂君) この点は精神病者、結局、責任無能力者といえども行った行為は犯罪行為に該当するのだから、そういうものを補償するのは国民感情に反するのじゃないかという議論も、法制審議会の過程ではございましたけれども、現行の刑事補償制度が、この場合は区別しないで一律に補償するということにしておりますことのバランスからいきまして、責任無能力の場合は補償しないとするまでの必要はないということで、一律にこのような場合も補償するということになっております。ただ、刑事補償を含めまして、佐々木委員のようなお考えもありますが、先ほど冒頭申しましたように、客観的に犯罪等に該当する行為を行っておるんだから費用補償をすべきではないかという議論もございますので、将来検討はしなけりゃならぬと思っておりますけれども、さしあたり現行の刑事補償と同じように補償するということでございます。
#81
○佐々木静子君 この精神病者に対する補償との兼ね合いでいつでも引き合いに出されるのが、それでは無罪の判決を受けた被告と比べて余りにも被害者が気の毒じゃないかという議論でございますけれども、かねてこれは、わが党もさようでございますが、被告者補償法というものを何とか法務省の方でも積極的にお取り組みいただきたいというふうにお願い申し上げ、またこれは日本弁護士連合会でも総会においてそのような決議もなされているようなわけで、これは恐らくわが党ばかりじゃない、各党とも被害者補償法の必要ということをいろいろと考えていらっしゃるんじゃないかと思うんでございますけれども、法務省とするといまこの被害者補償法ということについてどのように御検討中であるか、また立案を事実お進めになっていらっしゃるのかどうか、具体的に御説明いただきたいと思います。
#82
○政府委員(安原美穂君) かねてもう御案内のとおり、犯罪の被害者補償につきましては、現在事務当局におきまして引き続きこの制度に関連します諸外国の立法例やその運用状況などについて資料の収集、検討を行いますとともに、具体的に補償の要件をどうするか、原因、手続、それから実施期間をどうするか、それからほかの補償制度とのバランスはどうかなど具体的な内容を検討しておりますが、特にいま犯罪の被害者補償制度を実施するにつきましては、犯罪の被害者がどういう実態にあるかということを把握する必要があるというので、先般来全国の検察庁に通達を発しまして全国的に被害者の実態把握ということを進めておりますが、これが大体この夏ごろには調査の結果がまとまりますので、できますればこの秋ぐらいには関係各省の意見も聞いた上で法務省として法制審議会に諮問したいというふうに考えておる次第でございます。
#83
○佐々木静子君 そうすると、秋ですか、夏ですか、法制審議会の諮問に付されるのは。
#84
○政府委員(安原美穂君) いま申し上げました秋を予定いたしております。
#85
○佐々木静子君 そうすると、大体成案を得られるのはいつごろの御予定で法務省はかかっていらしっしゃるわけですか。
#86
○政府委員(安原美穂君) 成案を得る時期を秋と見て、そしてその成案を得るまでに関係省庁との意見調整、特に財政当局とか同じような制度を持っておる厚生省等とも意見の調整をすることのできるであろうのを秋ぐらいに考えておりまして、成案を得ますればできるだけ早くというのが目下の考え方でございます。
#87
○佐々木静子君 最後に法務大臣に、この法案もさることながら、被害者補償法について御見解をお述べいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
#88
○国務大臣(稻葉修君) 佐々木委員と刑事局長の質問並びにこれに対する答弁を伺っておりまして、今回提案をいたしました刑事訴訟法の一部を改正する法律案の内容は、不十分な点もあると。だが、いまの段階ではこの程度でやむを得ないのではないかと。いろいろ御指摘の点については刑事局長も申しておりますとおり、今後の検討にまちたいと。なお一層、国民の権利擁護に前進をしたいというのが私の感想であります。
#89
○佐々木静子君 被害者補償法についてもちょっと御見解を。
#90
○国務大臣(稻葉修君) 失礼しました。法務省では暴力的犯罪行為により死亡し、または重大な傷害を受けた被害者やその遺族に対して国が補償するという、いわゆる犯罪被害者補償制度を立法化するため、現在その具体的内容をいかなるものにするかについて鋭意検討しており、できる限り早急に結論が出されるものと期待しております。なお、先ほど詳細につきましては事務当局から答弁をいたしましたから御了承賜りたいと、こう思います。
#91
○原田立君 きのうの衆議院法務委員会でわが党の沖本氏から、国民の知る権利を尊重し、灰色の高官名を公表せよと、こういう問題について質問したのでありますが、沖本氏は、政治的道義的立場から事件の真相究明を求める国民の知る権利を含む国会の要求が刑事責任追及の立場から資料を秘密扱いにする公益よりも優先する最大の公益であると、こういう所信を述べたのでありますけれども、これに対して稲葉法務大臣はいがかお考えですか。
#92
○国務大臣(稻葉修君) 国民の知る権利、具体的にロッキード事件について言えば、一体だれが、出した方は大体疑いが非常に濃くなってきたが、受け取った方はまださっぱりわからぬと、これを知りたいと、こういう知る権利を擁護するのが非常な公益じゃないか、公益というのは多分あれでしょう、それが綱紀粛正、それから政治浄化、そういう民主政治の根本につながる重大な公益じゃないか、そっちの方がはるかに上じゃないかという意味の御質問なんです。それはもっともだと思います。そういう点について総理大臣もしばしば答弁しておりますように、この事件は法律的な面と政治的、道義的な面がありますから、両方追及し、解明しなけりゃ国民は納得しませんねと、そういう意味で、沖本さんの質問は、まあどっちかというと、私にはこういうふうにとれる――政治的道義的責任の方が大事で、刑事責任は、そんな、少しまあまあというような感じに受け取れましたもんですから、ああいうふうな答弁をいたしました、昨日は。ただ、先ほど佐々木委員の質疑、それから刑事局長の答弁を聞いた後の私の見解を述べましたとおり、決して政府は政治責任を追及すれば事足れりというのではないんでありますが、まず第一にクロというものをはっきりしなければ灰色もシロもはっきりしない。クロがはっきりした段階で、いわゆる灰色とか、そういうものが出てきた場合には、あの議長裁定にあるように、刑事訴訟法の立法の趣旨をも踏まえて最善の御協力を政府はいたしますと、こうなっておるんですから、政府のうち最も責任ある法務省として最善の協力をすることは当然でありまして、それがしかし、刑事訴訟法全体を貫く立法の精神、人権の擁護という重大な任務を法務省は持っておるわけでありますから、そういう点も踏まえて利益への比較考量を慎重かつ熱烈にやる段階が来ると、こういうことを申し上げた。いまは、まあひとつ、クロをつかまえることに一生懸命になっているんですから、ある段階まではひとつ御信頼いただいて見守っていただきたい、こういうことを申し上げたわけです。同じことを原田さんにも申し上げます。
#93
○原田立君 刑事訴訟法第四十七条の非公開原則の例外規定である後段の「但し、公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合は、この限りでない。」とする、いわゆるただし書き部分の「公益上」の判断については、検事総長に対して指揮権を持つ法務大臣及びこれを指揮監督する内閣総理大臣も理論上可能との判断をきのうの衆議院法務委員会で安原刑事局長は答弁なされているわけでありますが、確認の意味で伺いますが、いわゆる灰色高官名の公表は総理大臣または法務大臣の判断でできる、こういうことでしょうか。
#94
○国務大臣(稻葉修君) 理論上は、法律にあるわけでありますから、できるという昨日の刑事局長の答弁は、私も老のとおり正しいと思います。
#95
○政府委員(安原美穂君) いまの原田委員のお尋ねが、刑事訴訟法四十七条に基づく例外規定としてのただし書きの運用を法務大臣なり総理大臣ができるかというお尋ねでございますれば、これは書類の保管者が公開をするかどうかという実際のことをやるわけでございますから、あくまでも検察官が公開を、公にするかどうかをという実体的な行為をするわけでございます。ただ、これは検察の事務でございますから、きのうも申し上げましたが、そういうことを公開しろということを、理論的には、検察庁法十四条を通じて法務大臣が指揮することはできる、それをまた、内閣の首長であって検察権という行政権の行使の最高の責任者である総理大臣も、法務大臣を通じて法務大臣の指揮権の発動を指揮することもできるであろうということを理論的に申し上げたわけでありますが、実際にそうするかどうかということは別問題でございます。
#96
○原田立君 すでにアメリカ側の資料についても、一部を除き、捜査当局の手元にそろっていることと思いますが、また日本側の捜査についてもかなり進展している今日、被疑者の数はどれくらいに及んでいるか。先ほどは百人以上と佐々木委員にお答えがあったわけでありますが、大分日にちもたっているし、たとえば百二十人以上であるとか百五十人以上であるとか、そこいら辺のところを、時日が経過していれば何らかの御表明があってしかるべきではないんだろうか、あるいは捜査はどの程度まで進んでいるのか、その点についてお伺いしたい。
#97
○政府委員(安原美穂君) 重大な関心を持っていただくことはありがたいわけでございますが、先ほど大臣も申しましたように、いまの段階はまさに真相の究明をするということに目的があるわけでございますので、そういう意味において捜査の内容をできるだけ秘匿することが捜査の目的を達成するために利益であるというのが私どもの判断でございまして、そういう判断から余り具体的なことを申し上げることは御容赦願いたい、御猶予をお願いをしたいと思いますが、先ほど申しましたように、百人以上の参考人を、関係者を取り調べており、かつ、すでに明白になっておりますように、被疑者といたしましては、児玉譽士夫、それから警察当局が主としてやっております外国為替管理法の関係では丸紅の伊藤、大久保両名が被疑者ということになっておるわけであります。なお、それ以上の被疑者があるかどうかは、いまの段階ではひとつ御容赦を願いたいと、かように平にお願いを申し上げます。
#98
○原田立君 五日の新聞報道によりますと、灰色の政府高官名の公表について具体的手順、法的根拠、範囲等について検討は終了しているということが報道されているのでありますが、具体的に検討内容について御答弁いただければ御答弁いただきたいと思います。
#99
○政府委員(安原美穂君) まず、事実としてそういうことはございません。いまはいかにして黒白を明らかにするかといの方向に検察の全精力が向いておりまして、終わった後のことまで考えている、ある意味においては、余裕もございませんし、また、そういう事態もまだ予測する具体的な段階に達していないと思います。
#100
○原田立君 一部公表の対象についても、刑訴法四十七条ただし書きの立法趣旨と捜査、訴訟あるいは人権問題、国民世論等々、多方面からの配慮を検討して、資料のうち公表可能なものを取捨選択の上、形式は別にして何らかの方法で公表の道が開かれているということを聞くのでありますけれども、その点はいかがですか。
#101
○政府委員(安原美穂君) 具体的なロッキードの関係において、いま御指摘の資料というものの公表につきましては、まず、アメリカから渡されました資料につきましては実務取り決め、基本的にはフォード書簡から来る制約でございますが、捜査、調査、裁判以外には使用することができませんし一開示することもできませんので、国政調査権に基づく御要求がございましても、それを提供するわけにはいかないということでございます。なお、その他日本の捜査当局が入手いたしました資料につきましては、御指摘のように、刑事訴訟法四十七条ただし書きに該当して開示すべきかどうかを、その具体的な段階において判断をする。したがって、理論的にはそういうこともあり得るわけだと思います。ただ問題は、いまだかつて検察当局が入手した資料そのものを国政調査権の御要求があるからといって出した前例はございません。
#102
○原田立君 資料のうち、公表可能なものを取捨選択して、要旨としてメモ化して何らかの形で公表すると一部報道されておりますけれども、いかなる形で公表するのか、公表する場合には検事総長に対して指揮権を持っている法務大臣が行うのか、それとも総理大臣が行うのか、その点はいかがですか。
#103
○政府委員(安原美穂君) それは全くの推測の記事でございまして、事実としてそういうことはございません。そういう段階ではありませんので、そういうことも検察当局としては考えていないはずでございます。問題は、したがって一般論としてのいろいろな公表の仕方、いわゆる総理大臣あるいは法務大臣すべての方々は、資料の公開ということにつきまして、それが捜査上入手された資料に関する限りは、やはり総理大臣といえども、行政権の行使に関しまして検察官を監督する以上は、検察官は四十七条の規定の趣旨に縛られるわけでありますので、それを監督される総理大臣もやはり四十七条の規定の趣旨は踏まえていかなきゃならぬということはもう当然でございまして、その場合に、資料そのものを刑事訴訟法四十七条そのものとして出すということは検察官以外には考えられないわけでございますが、問題は、一部学者の議論にもありますように、法務大臣あるいは総理大臣は行政監督権を持たれる方としてその捜査の経過、結果の報告を求める一般的な指揮監督権をお持ちでございますから、捜査の経過、結果の報告を受けられました法務大臣なり総理大臣が、自分の判断において、つまり刑事訴訟法上の四十七条の資料の公開ということではなくて、みずから報告を受けた方として、その報告を受けた内容を四十七条の精神を踏まえて公表するということは訴訟法上の書類の公開とは別で、報告を受けた意味内容を総理大臣なり法務大臣の責任において公開するということは理論的にはあり得るわけだと思います。どういう場合にやるかということはいろいろあろうと思いますが、理論的には、そういう意味におきまして、お尋ねのように、総理大臣なり法務大臣がみずから公にするということもあると思いますが、それはどういう場合に、どういう形でなさるべきかは、これは法務大臣なり総理大臣がみずからお考えになることで、私ども事務当局が申し上げることではないように思います。
#104
○原田立君 公表内容及び公表方針については検察当局の独自の判断によるものと思いますが、その前提は、国会法第百四条の行政府への報告、記録提出命令あるいは議院証人法による検察首脳の証人喚問など、政府から検察当局への方法は、法務大臣の指揮権発動という形式になるのか、それとも従来行っている、法務大臣が国会答弁に当たって検察当局に捜査の概要報告を求めるという一般的指揮権ということになるのか、その点はいかがですか。
#105
○政府委員(安原美穂君) かつていわゆる造船疑獄というもののときのいわゆる指揮権発動の出されました事件につきまして、当時の検事総長なり検事正が国会に、いま御指摘の国会証言法の規定に基づきまして証人として喚問されまして資料の提出なり証言を求められましたときに、ある部分についてはともかくとして、大部分についてそれを秘密ということで、秘密に属するということで証言を拒否いたしました。その場合もございます。そういうことでございますから、前例がないわけではございませんが、その場合にも、先ほどの四十七条に該当する資料の公開ということであれば、四十七条を踏まえて、公にすることはできないということを秘密の観点から申し上げることもありましょう。そのときには国会の方では、法務大臣にその証言をするように、あるいは拒否するなら拒否するで理由の疏明を求めまして、そして法務大臣の拒否理由が不相当という場合には、いわゆる内閣の声明にいくというのが証言法の筋道でございます。そういう意味で、検察官の証人喚問のありました場合におきましては、お答えをするかしないかは、資料の開示ということに関しましては四十七条を踏まえて当該証人になった検察官が考えることと思いまするが、しかしながら、私ども法務当局の希望といたしましては、さような現場の検察官を証人に呼ぶということをすることは、将来における検察の運営、あるいは独立した公正な運営に支障を生ずるのではないかという意味において、できる限りそのような方法をとることを御容赦願って、むしろ、先ほど私の申しましたように、また、原田委員御指摘のように、指揮監督権に基づいて捜査の経緯、結果は法務大臣が承知するわけでございまするから、いわゆる国会法第百四条の国政調査権に基づく質問とかいうような形で、そのすべてを知ることとなる法務大臣に対する質問という形で、その内容について御質問をいただければ、やはり四十七条を踏まえて法務大臣が公益を比較して開示するかどうかということを判断の上で、公益上の必要ありとすれば開示されるというような方向で、ひとつ手続としてはお願いをしたいというのが事務当局の考えでございまして、その場合の公益上の比較につきましては四十七条の精神を踏まえて法務大臣がその責任において判断をされるということになろうかと思います。
#106
○原田立君 現在のロッキード事件を調査している捜査当局員の中で被疑者と何らかの関係があった場合にはどう対処なさるのか。今回の事件は国民も最も注目しているところでありますし、公平な捜査を行う上からもどうか。先ほどは、もしそういうふうな関係があるならばみずから辞退するというのが検察官の態度だというようなお答えがありましたけれども、再度お伺いします。
#107
○政府委員(安原美穂君) まあ、そういう事態は起こらぬと思います。仮に万一不幸にしてそういうことがあれば、みずから辞退するはずでございます。
#108
○原田立君 大臣にお伺いしたいと思うのでありますけれども、きのうの衆議院法務委員会でジ・ラインの株の買い占めに関連して現職法務大臣の稻葉さんと児玉譽士夫との関係についていろいろな討論がなされ、それでけさの新聞報道があったわけでありますが、当時三光汽船の河本社長に対して児玉から紹介依頼があり、仲介の労をとったとのことでありますけれども、ロッキード事件の捜査上の責任ある立場にある法務大臣が、現在最も事件に関係する黒幕と言われる児玉と関係しているということは、正直言って、一般国民の立場から見た場合、大変な疑惑を感ずるのは私ばかりではないと思うのであります。で、この点大臣はどう考えているのか。国民の疑惑にどう答えるのか。そういう意味においての御答弁をいただきたい。
#109
○国務大臣(稻葉修君) 何の因果か、このロッキード事件の一番の被疑者の中心である児玉譽士夫と、現在の刑事責任追及の最高責任者である検事総長のまた上に監督する法務大臣稻葉修とがね、向こうも私を知っており、こっちも向こうを知っておるということが新聞報道をされましたことは、それは重大な、国民に影響するところ大きいと、まことに責任重大だなと、こう思います。ただね、きのうの新聞に、十遍会ったなんて言うけれども、まあ見たというのが十遍くらいで、見たというのが。会って話をしたというのはね、まあ私の記憶では三回くらいですな。一度は、二十年くらい前に、春秋会という派閥がございまして、派閥の大将は河野一郎さん、この人のところへ彼が訪ねてきたときに、大ぜいいました中で紹介された、これが一度。それからその中では、ときどき彼は来ておったようですからね、そういう点で、見た回数はわりにありますな。口をきいたというところまではいきませんけれども。それから河野さんの葬式のとき。それから河野さんが死んで、春秋会が二つに分裂して、まあいわゆる中曽根派と森派というものになったんです。そのとき以来縁は大体切れましてね。ことに総裁選挙で佐藤総理三選のときに、いろいろその総裁選挙にこういう児玉譽士夫と仲のいい財界の人から干渉がましいことがあるから、これはもう縁を切ろうということで、そこで断ち切って、それ以来交際はなかったんです、全然。行き来なし。
 ところが、あのジャパンラインと三光汽船の業務協定をめぐる何だか争いありましたな。私、経済のことは知りませんけれどもね。株の売買とか、そういうことは知りませんけれども。そういう事件のさなかに、忘年会の席上へ女中がやって来て、児玉さんという人を御存じですかと言うから、知っていると。ぜひ至急に会いたいと言うて応接間で待ってますからと。それから行ってみたら彼なんです。それはね、大していままでそんなことについて話したことのない、そういう具体的な今度は事件についてね、あなた河本さんと非常に親しいんで、あなたから河本さんに言えば彼はうんと言わざるを得ぬ間柄であるということをおれ調べて来たんだというふうな調子でね、言うから、いやそれはおれに言うてもだめだねと言ったんだ。そういう商売のことはおれ全くだめなんだから、おれに言われてもだめだねと。じゃ紹介だけしてくれと、こう言うから紹介してやったと、こういうことでございます。そのことはね、まあこのロッキード事件が起きてから週刊文春というものに載っておりますわな。あのとおりなんです。稻葉のところへ行ったけれども、はしにも棒にもかからなくて失敗したと、そして別の人のところへ行った、それが成功したと、こういう記事、そのとおりなんです。そのとおり。
 しかし、こうなってきますとね、そういう事件があったことは事実なんだからな、そういうことが。そういうことで口をきいたと。彼は、そういうことが非常な彼のあれですな、活動の中心のようでございますね。会社の内部に入って、まあ総会屋と言っちゃ悪いけれども、それに近いような、そういう者と、そういう事件について会ったということがあるんだね。そうして今度の事件だもの。これは本当に何の因果かと思う、わしは。(笑声)まああれでね、済んだと思っておったら、きのう、あの文春でいろんな人が来たから、よく説明したんで、これで済んだと思ったら、また国会の法務委員会のその質問に出されてぎくっといったよ。
 これはあれだなと、とにかく私も政界人に長くいますと、いろんなのと会っていますわな。それから国民のうちには、私は全然知らぬ人で向こうが知っている人、それから向こうも私も知っている人、それから私は知っているけれども、向こうは知らない人、こういろいろあります。向こうも私も知っている人の中に、法務大臣と被疑者児玉譽士夫と、こうはまったからね、まことにざんきにたえないけれども、これ、そういうことなんでございまして、したがって、こういう事件がなけりゃ、まあそれはしょうないじゃないかと言われるかもしらぬけれども、こういう事件があると、しょうないじゃないかではどうもうまくないね、これは。ただ、こんなことで被疑者に同情したり、またそれがために被疑者に憎悪に燃えたり、そういうことがあってはならないというふうに私はいまの心境ではそういうことでございます。ただ、あれで済んでいたと思ったら、またあの旧聞を新聞に書かれる。旧聞を新聞に書かれるとは思わなかったんだ。だから、新聞社は旧聞社になったのかなと思うぐらいだ。閣議後の会見なんかでも、今度、新聞記者会見でなくて旧聞記者会見と言おうと思っているぐらいだ。そういうことでございまして、ざんきにたえません。ただしかしこれ、悪運みたいなものでございましてね、それがために、しかし世間一般から、あの法務大臣は怪しいやつだというふうに思わないでいただきたい。ことに同僚である国会議員の皆さんからは、どうかそういうふうに見ないでいただきたいとお願いするわけです。これから国民の皆さんにもそういうことなんだということを言うて、誤解を解いてまいりたい。罪滅ぼしだからね。罪滅ぼしって、おれは罪を犯す気持ちはなかったんだけれども、悪意はないんだけれども、何の因果かと言いたい。何の因果かこういうことになっちゃった。まことにざんきにたえません。
#110
○原田立君 最後に、まことにざんきにたえないと、こういう一言で、了解したいと思います。
 さて、法案に入りたいと思うんでありますが、今回の改正案の趣旨は、無罪の確定裁判を受けた者に対して、その裁判に要した費用を補償する制度を新設することになったわけでありますが、従来の刑事補償制度は、身体の拘束を要件とする補償に対して、改正案では、公判期日に出頭するために要した、旅費、日当、宿泊費及び弁護人に対する報酬について補償するもので、無罪の裁判が確定した場合の被告人に対する補償は当然のことでありますが、今回この点の制度化が行われたことは大変喜ばしいことであろうと思うんであります。しかし、内容については、先ほど佐々木委員も御指摘のあったように、本来の趣旨からかなりの後退が見られることはまことに残念であります。具体的質問の前に、制度化に伴う経緯並びにその理由、根拠等について御説明を願いたい。
#111
○政府委員(安原美穂君) 経緯は先ほども申し上げましたように、昭和四十二年ごろから国会方面におきまして、いわゆる今回御提案を申し上げました訴訟の費用については、無罪の場合には補償すべきではないか、それから刑事の訴追を受けて、拘束は受けなかったけれども、刑事被告人の立場にあった者で無罪になった者については、拘禁を受けなくてもその間における精神的、物質的損害については補償する、いわゆる非拘禁制度を設けるべきではないかということが国会の審議においてしばしば繰り返されまして、それに沿うような法律案が三回にわたりまして日本社会党から提出をされましたが、いずれも審議未了となっておりました。そこで、その間におきまして政府といたしましても、法務大臣あるいは政府委員から再三にわたりまして、非拘禁補償についてはなおいろいろな点で困難な問題があるけれども、費用の補償については、いわゆる前向きで検討したいという答弁をいたしまして、そして昨年の三月の三十一日に法制審議会に対しまして、無罪になった人の刑事訴訟に要した費用の補償をすべきかどうかということについての諮問をいたしまして、そういう制度を採用すべきだという法制審議会の答申が昨年の十二月の八日に行われまして、その答申の線に沿いまして今回の提案をしたというのが経緯でございます。
 それから、その根拠は先ほど提案理由説明として大臣から申しましたように、罪を犯したとして公訴を提起された者は、公判廷への出頭を義務づけられるだけでなく、防御活動を行うためには弁護人を選任してその補佐を受ける必要が生ずるが、それは相当多額の費用を要するので、少なくとも無罪の判決が言い渡されて、結果的には不当な公訴の提起を受けたことが確定した場合には、その者が訴えに応ずることを余儀なくされたことによって生じた財産上の損害については、これをその当該被告人であった者に負担させるのは公平の原理から言ってそれを耐え忍ぶ受忍をする限度を超すではないか、それは公平の精神からいってその限度の費用は補償すべきではないかというのが理由でございます。
#112
○原田立君 改正案に伴う予算措置とその内容はどのようになっているのか、あるいはまた本年度における費用補償制度の運用での補償を受ける者はどのぐらいと推定なさっておられるのか、その点はいかがですか。
#113
○最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) これは先ほど申し上げましたとおりに、年間の費用補償に要する費用としては約一億円と、そして本年は七月以降ということで大体七千万円というふうに見ておるわけでございますが、その根拠になりました数字は、これは昭和四十九年に無罪が確定した事件につきまして、この刑事訴訟法の改正法によって、費用補償によって支給されるであろう旅費、日当、宿泊費、報酬等をいずれも計算してそれを足し上げたことになっておりますので、その基礎になっておりますのは、四十九年の無罪件数約四百三十件ということでございます。ですから、この無罪件数というのは、年度によって変動がございまして、じゃことし四百三十件で済むのかという問題がございますけれども、そんなに変動はないものというふうに考えておるわけでございます。
#114
○原田立君 現行の刑事訴訟法が昭和二十四年一月一日施行からまる二十七年も経過しております。しかし、今日まで検察官上訴事件における費用補償の場合を除き、無罪の裁判が確定した者に対する費用の補償制度が確立されなかった理由は一体どこにあるのか、無罪の被告人に対する補償については、過去何度か指摘してきておるところでありますけれども、今回やっとこのような措置がなされた。余りに遅きに失するではないか、こう思うのでありますが、いかがですか。
#115
○政府委員(安原美穂君) その点は、先ほど提案理由にもございましたように、現行の補償制度では、いわゆる無罪となった者が拘禁を受けた、あるいは刑の執行を受けたという場合におきましては、憲法上の権利としてその拘禁による精神的物質的損害の補償をするということが、憲法上の制度としてはございます。なお、検察官その他の故意、過失によりまして公訴を提起されました場合におきましては、国家賠償によって損害が補償されるというのが現行の制度でございます。なお、そのほかに検察官のみが上訴をした結果、その上訴が取り下げられあるいは棄却された場合の費用の補償については、現在も補償の制度がございます。まあそれはそれなりに憲法上の権利あるいは不法行為による損害賠償ということで当然にそれは認められるべきものでございましたし、上訴の場合におきましては、いわば第一審の判決を尊重してみだりに上訴をしないという要請から考えますと、検察官があえてそれを上訴したが結局検察官の主張が通らなかった場合においては、そのような訴訟に要した費用を国民に負担させるのはその受忍の限度を超すというのが現在までの刑事訴訟で考えた考え方でございまして、要は補償するかどうか、まあいつも申し上げることでございまするけれども、民主主義の体制下におきましては司法制度というものもこれは国民のために国民が支えていく制度でございまするから、何らかの意味において国民はその運営については負担をしなければならないであろう。しかし、そこまで負担させるのは国民としての受忍の限度を超すではないかというふうに思われた場合に、補償ということを特別に考えるというのがこういう制度の行き方であろうと思います。そういう意味におきまして、そのどこまでが受忍の限度を超すかどうかということは時代とともに移り変わる相対的な観念であろうというふうに考えるのでありまして、今日の情勢におきましては、無罪になった者の刑事訴訟法の応訴について余儀なくされた費用につきましては、それを補償するのが公平の精神にかなう、逆に言えば、それを負担させるのは国民の受忍の限度を超すということで今日ただいまこれを提案をいたしておるというのがわれわれの考え方でございます。
#116
○原田立君 過去三年ぐらいの無罪の確定の人員と刑事補償の支給を受けた者の実態は一体どうなっているのか。また、この中で国選弁護人による事件はどのぐらいか、お答えを願いたい。私の調べによりますと、ここ数年間の無罪確定の人員は約五百人前後に対して、刑事補償の支給を受けた者の数は百件以下と非常に少ない数になっております。この点についての見解はどのように認識しているのか、あわせてお答え願いたい。
#117
○最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 最近の全部無罪の裁判の言い渡しを受けて確定した人員の数を申し上げますと、昭和四十九年は先ほど申し上げましたとおり四百三十名ということで、四十八年が四百六十四、四十七年が五百三十二、四十六年が四百六十四、四十五年が六百二十三、四十四年が五百二十一というふうになるわけでございますが、そのうちで刑事補償の請求をした人員というものは、これは地方裁判所で見ますと、四十七年に三十八名、四十八年に六十名、四十九年に四十七名となっておりまして、簡易裁判所では、四十七年なし、四十八年六、四十九年一。
 それでは、一体どれくらいの割合の者が請求しているかということになるわけでございますけれども、それをそのままずばりの統計ではないわけでございますので、推定するほかはございません。推定する場合には、結局無罪の裁判が確定した事件の受理時の身柄拘束率といいますか、身体拘束率ということを考えてみるわけでございまして、その身体拘束率を無罪の裁判で確定した者に掛けまして、そして大体これだけのものが請求できるであろうという数字をはじき出しまして、そして計算してみますと、大体平均しますと、地・簡裁平均して五三%ぐらいの者が刑事補償の請求をしておると、こういうことになるわけでございます。
#118
○原田立君 現行の刑事補償法第二十五条では、免許または公訴棄却の裁判の場合においても刑事補償を受けることができることになっておりますけれども、しかるに、今回の改正案では費用補償の対象となる者は無罪の裁判が確定した場合のみに限られており、条項から外されております。また、実質的に無罪と認めらるれような場合にも補償の適用から除外されております。これらの内容が入らなかった理由は一体どこにあるのか、その点お伺いしたい。
#119
○政府委員(安原美穂君) これは先ほど佐々木委員の御質問にお答えしたとおりでございまして、法制審議会の審議の過程におきましては、免訴、公訴棄却の場合も一律に補償すべきではないかという議論もございましたし、いま御指摘の刑事補償法二十五条と同じように、免訴、公訴棄却で実質無罪と認められる者について補償すべきではないかという議論もございましたが、まあ要するに、免訴、公訴棄却の場合、すべてを補償するということは、免訴、公訴棄却の理由にもいろいろございまして、たとえば免訴の場合におきまして、それは行為当時は犯罪であったが、その後の法令の改正で刑罰が廃止されたとか、あるいは大赦になったというようなことで免訴になったという場合、実質行為当時においては犯罪であったものについて費用補償するのは行き過ぎではないかというような議論も出てきますし、公訴棄却の場合でございましても、一審有罪であったが二審にいっている間に死んじゃったというようなことで公訴棄却になったというようなものについて補償するなどということは、行き過ぎではないかというようなことで、一律に免訴、公訴棄却の場合に補償するのは少なくとも行き過ぎであるというようなことでその議論は受け入れられなく、ほとんど少数の意見に終始したわけでありまするが、そのほかに、いま御指摘のように、刑事補償法二十五条と同様になすべきではないかという意見は、ある程度の支持は得たわけでございますが、この点につきましては、先ほど佐々木委員のお尋ねにお答えいたしましたように、刑事補償の場合は未決の拘禁なりあるいは刑の執行を受けた者が無罪であったということが確定した者で、身柄の拘束、刑の執行という重大な損害である。しかしながら、費用補償の場合は、要するに適法に公訴の提起があった者につきまして、その公訴を余儀なくされたことによって出た費用を無罪の者について補償するということでございまして、その応訴によって余儀なくされた費用の支出ということは、いわば損害の程度において比較的軽微ではないかということと、もう一つやっぱり身柄の拘束を受けたというようなことは、社会一般がその者が犯人であるという強い印象を持つというのが通常であるから、もし無罪であればこれはできる限り実態に即してその名誉を回復する必要があるというようなことで、免訴、公訴棄却の場合でも、無罪であれば刑事補償することによって、それを公にすることによって名誉の回復を図るということがより必要だ。しかしながら、費用の補償については、いわば訴訟の勝ち負けに応じましてどちらの当事者に負担させるのが公平かというような問題であるという意味において、名誉の回復というようなほどの意味もないというようなことから、趣旨から言って、損害の程度から言って、刑事補償の場合とは比較にするべく差異があるということと、もう一つは実際問題として免訴、公訴棄却という、いわゆる広い意味での形式的な裁判で終わったものについて、無罪であったかどうかということも明らかにするためには、また無罪か有罪かということを実質的に判断をしなければならない。それを裁判所の決定手続でやるということが、ねらいとするところと手続とマッチしないというようなことで、恐らく非常に時間を要するであろう。それも刑事補償のような場合、たとえば未決の拘禁とか刑の執行というようなことを受けた者の名誉の回復を含めて、損害の算定ということであれば、損害の補償ということであれば、ある程度長期にわたってもやむを得ぬが、適正、迅速にやることの要請の強いこの補償法の補償の場合にまでそれを広げるのは制度としては妥当を欠くのではないかというような三つの点から、法制審議会におきましてもこの二十五条と同様な規定を置くべきだという意見は、法制審議会における総会の採決におきましてもたった二票の支持があっただけでございまして、やはり原案が正しいというのが法制審議会の考え方でございましたが、それを受けまして私どもも政府案としてはその法制審議会、多数の御意見に従いまして、刑事訴訟費用の補償については免訴、公訴棄却の場合を含めるべきではないということで提案をいたした次第でございます。
#120
○原田立君 いろいろと説明があったわけでありますが、刑事補償法では免訴及び公訴棄却の裁判があった場合には補償することが明確に定めてある以上、今回の改正案の条項にも含むべきであると、このように私は思うのであります。さらに、その実態が無罪と認められるような場合についても補償の対象に入れるべきであることを強く主張しておきたいのでありますが、見解をさらにお伺いしたい。
#121
○政府委員(安原美穂君) そういう御意見があったことは先ほども申し上げたとおりでありまするが、費用の補償というものの性質にかんがみまして、そこまで行う必要はないということに結論としてはなったわけでございます。
 なお、先ほど申し上げましたように、刑事補償の実際の運用を見ましても、決して裁判所は免訴、公訴棄却になったものについて、有罪か無罪のことを判断を実質上の審理をしてやっておるわけではございませんで、結局は書面審理におきまして無罪であることが明らかな場合にのみ補償の対象になっていることは、従来の実績で明らかなわけであります。たとえば一審無罪であって二審が継続中に死亡したというので公訴棄却になったというようなもの、それは一審で無罪という実体的な裁判があったわけでありまするから、その書面を見ればある程度は簡単にわかるわけです。
 もう一つは、公訴を提起されて審理中に死亡して公訴棄却になった。しかしながら、共犯者がありまして、その共犯者の無罪が確定したという場合は、共犯者の実体裁判の結果をそのまま援用すれば無罪であることがわかるというようなこと。あるいは労働事件でございまするけれども、公訴提起中にほかの事件で、最高裁判所でそういうものが罪にならぬということがわかったので、公訴の取り消しをした結果公訴取り消しになったと、これももう明らかにその最高裁の判決があるわけでありまするから、簡単にわかるというふうに、書面の審理で簡単にわかるものだけが補償の対象になっておるというようなことから考えますと、必ずしも運用の実績におきましても、そういう規定を設けても決定手続の性質上、公平に補償をすることができないじゃないかというような議論もございまして、その確定判決がある場合だけ免訴、公訴棄却でも補償すべきではないかという議論も、ケース・バイ・ケースで他人の裁判によって影響を及ぼすのは不当であるとか、あるいは偶然的な要素で補償するかどうかが決まるのは相当ではないということで、そういう提案も支持されなかったというような経緯がございまして、現在の段階におきましては免訴、公訴棄却の場合の無罪と認められる場合にまで広げるという必要はないというふうに考えておる次第でございます。
#122
○原田立君 無罪の解釈と関連して、一部無罪についての問題についてはどのように判断するのか。刑事補償法の第三条二号には、「一個の裁判によって併合罪の一部について無罪の裁判を」受けた場合、裁量的に補償を除外ないし減額すべきものとしております。刑事補償法と改正案での費用補償の関係についてどのように対処されるのか、お伺いしておきたい。
#123
○政府委員(安原美穂君) いま御指摘のように、刑事補償法では拘禁の理由となっている事実の一部が無罪となりましても、有罪となった事実だけでも拘禁し得たと認められます場合がございます。このような場合にまで補償することは国民の感情に反するということで、御指摘のように刑事補償法の第三条二号は、補償の全部または一部をしないことができると規定しておりまするが、費用の場合につきましては、併合罪あるいは観念的併合罪で一部無罪がございましても、無罪の裁判のために要した費用と有罪となった裁判のために要した費用とは理論上は区別できるということから言いまして、区別できるものでございまするから、そういう一部無罪の場合におきましても、無罪のために要した費用については補償すべきだという考えでおります。
#124
○原田立君 今回の制度の趣旨は、刑事補償法の充実にあると思うんでありますが、刑事事件では捜査、公判記録の謄写など反証資料の収集など防御活動に多大なる努力と費用を必要とするわけであります。にもかかわらず、これらの費用は補償の中から除外されているわけでありますが、この点については先ほど佐々木委員も質問がありましたが、この種の費用のウエートはかなり大きなものであり、弁護人の報酬とは性格を異にするものであります。当然費用補償の中に含まれてあたりまえのものであると考えるわけでありますが、入れる意思はないのかどうか、また除外した理由は何であったのか、その点をお伺いしたい。
#125
○政府委員(安原美穂君) この点は、現在国選弁護人の報酬の支払いの場合におきましても、いまの御指摘の記録の謄写料等の費用は、その国選弁護人に対する報酬の中でそういうものがあれば、報酬額を定めるに当たって適当に参酌されるという扱いが最高裁判所刑事局長、経理局長連名通達によって運用がなされておりますので、これと同じ問題として、さしあたりはそういう費用がございましても、私選弁護人の報酬として――費用補償する場合に、そういう費用があれば報酬額の算定に当たって考慮すべきだという考えでおりまして、明文をもって別途それを費用補償の対象にする考えはなく、報酬額の中の算定に当たって考慮されるべき要素であるというふうに考えております。それは先ほど申し上げたとおりでございますが、国選弁護人の報酬額の関係において考慮される、結局刑事訴訟に関する費用法の内容の問題とも絡む問題でございますので、御指摘のように相当費用の要する事柄であり、かつ当然に必要な経費であるというようなことも考えられる点からいいまして、単に報酬額の中に入れるということでなくて、将来の制度改正の問題としては検討をするに値する重要な問題であるというふうに考えております。
#126
○原田立君 刑事裁判において無罪の判決を受ける被告人の最も大きなウエートを占める費用は、何といっても弁護士に関する費用であります。今回の費用補償制度の新設に伴い、どの程度まで補償されるのか。刑事訴訟費用に関する規定を準用することになると、国選弁護人並みの補償しか期待できないわけでありますが、これではこの制度の趣旨である刑事補償の充実という金看板からはほど遠い結果となり、余り意味がないのではないか、こういうふうに判断するわけであります。ちなみに、国選弁護人それから自分で頼んだ私選弁護人、その費用については非常な格差があります。それを国選弁護人並みではいまも申し上げたように刑事補償の充実という面ではほど遠い感じを持つわけであります。この点についてはいかがですか。
#127
○政府委員(安原美穂君) この法案では弁護人であった者に対する報酬の額といたしましては、御指摘のとおり刑事訴訟費用等に関する法律第八条2項によりまして「裁判所が相当と認めるところ」によって算定されることになりますので、したがいましてそのような算定につきましては実際問題としてはいま御指摘の国選弁護人を付されたときの被告人との均衡を考慮いたしますと、国による補償の額は国選弁護人の通常の報酬額を一応の基準として決定するのがむしろそういう意味においては公平にかなうものと考えております。問題は、したがいまして国選弁護人に支払われる報酬の額が相当かどうかということとの均衡の問題ということになりまして、根底におきましては国選弁護人の報酬額を引き上げるべきかどうかかという問題にも絡む問題でございますが、いまのところわれわれといたしましては国選弁護人の報酬との均衡において、それを基準として私選弁護人である今回の場合の補償の対象となる報酬額も決められるものと考えております。
#128
○原田立君 刑事局長、いまもお話ありましたように、国選弁護人のその費用は非常に低いと。これを上げることも検討しなけりゃいけないというような意味のお話ありましたけれども、それは近い将来には検討されるというふうに理解してよろしいですか。
#129
○政府委員(安原美穂君) 法律は相当と認める額となっておりますので、相当とは何かということも先ほど申しましたように非常に相対的な問題で、裁判所御当局では年々歳々この報酬額の引き上げには予算上の努力をしておられるわけでございまして、詳しくは岡垣刑事局長からその辺のいきさつをお聞きいただければ幸いと思います。
#130
○最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 最高裁判所といたしましては、国選弁護人の費用というものが御指摘のとおりに現在必ずしも刑事事件の担当の弁護人に対してどれくらいお支払いすべきかという観点からだけ見た場合に、決して満足すべきものではないということはよく承知しておりまして、できるだけこれを増額したいということで毎年増額には努力しております。しかし、まあこれ全般とのバランスということもありまして、なかなか刑事事件という立場だけから見た増額というものは一足飛びにはいかないわけでございます。まあ逐次目標に向かって努力するということでやっております。
 それからなお、確かに最高裁判所の方で国選弁護人に対して支給する費用ということで一定の基準を示してはおります。三開廷ぐらいなら大体これくらいと。しかし、まあそれはあくまでも基準でございまして、事件の困難さだとか、あるいは先ほどお話もありましたように担当された国選弁護人の方のいろいろな事前準備の大変な状況だとか、そういう個々の事件の補正に応じて裁判所が適当に裁量できるようになっておりますことをちょっとつけ加えさせていただきます。
#131
○原田立君 時間になりましたので最後にしたいと思いますが、また複数の弁護士を依頼した場合の補償はどうなるのか。第百八十八条の六に「裁判所は、公判準備又は公判期日に出頭した弁護人が二人以上あったときは、事件の性質、審理の状況その他の事情を考慮して、前項の弁護人であった者の旅費、日当及び宿泊料を主任弁護人その他一部の弁護人に係る者に限ることができる。」と弁護人の数を限定しておりますが、その理由は何か、また具体的には何人ぐらいまで認めるつもりでいるのか、その点をお伺いいたします。
#132
○政府委員(安原美穂君) 御指摘のように複数の弁護人がおられましても、それが当該事件の防御活動として必要かつ合理的なものと認められる限りは、いかに多数でございましても弁護人全員の旅費、日当、宿泊料が補償の範囲に含まれるべきことは当然でございますが、まあ事件のむつかしさ、やさしさ、あるいは弁護活動の実際の状況等を見て、多数の弁護人が同時に出頭なさることが必ずしも防御活動として必要ではなかったと認められるような場合、すなわちはっきり申し上げれば、不必要に多数の弁護人が出廷して、いわば過剰と申しますか、重複した弁護活動を行うというような場合も絶無ではないということを考えまして、そのような場合にはある程度補償の範囲を一部に限定することが国の行う費用補償制度の趣旨に合致するのではないかという配慮から、このような規定が置かれたわけでありますが、そういう意味におきまして、たとえば旅費、日当、宿泊料を刑事訴訟法の三十三条にございます複数弁護人ある場合の主任弁護人に限ると、あるいは一部の弁護人、たとえば副主任弁護人に限るというようなことにして補償することができるように配慮したのがこの規定でございます。
 なお、ついででございますが、これは旅費、日当、宿泊料だけでございまして、報酬につきましては先ほどの原則にかかりまして、多数人おられました場合にどの程度に補償するか、必ずしもその弁護人の数に掛けて報酬額を考えない。要するに、当該事件の弁護人に対する報酬として何が相当かということで決められるわけでありますので、特に報酬については「相当と認める」額という一般原則に従って算定されるということで、特に規定は置いておりませんが、要するに複数おれば複数の報酬ではなくて、「相当と認める」額ということで、複数弁護人の報酬についても算定がなされるものと理解をいたしております。
#133
○橋本敦君 最初に、法務大臣に一点だけただしておきたいのですが、刑事訴訟法の基本的な趣旨、精神について、現在しきりに基本的人権とか被疑者の名誉ということを重んずるという立場でのお話がございます。それがいまのロッキード事件の資料を公開しないということの一つの法務省側の支えになっている議論になっておりますが、刑事訴訟法の本来の基本目的は、第一条で基本的人権の尊重を図りつつも、実際にこの基本目的は「事案の真相を明らかにし、」真実と真相の解明だということは明らかではないかと思いますが、大臣いかがですか。
#134
○国務大臣(稻葉修君) 刑事訴訟法第一条を根拠としてのお尋ねは、まことにそのとおりだと思います。役所全体の機構等について、ごらんのとおり法秩序の維持と相並んで人権擁護局なんという局もあるわけです。それから、矯正局の所管する監獄法の執行事務、まあ将来の監獄法については改正案もどんどん進んでおりますが、これは非常に人権を擁護する方の方向に行っておりますことは御承知のとおりです。そういうわけでございまして、役所全体としては一方を、法秩序を厳正に維持する。一方は国民の権利の擁護。これは憲法第三章に、新しい日本国憲法に、旧憲法と違う最も重点でございますから、それを受けた刑事訴訟法でございますから、そういう点も軽視するわけにはいかないという意味で申し上げているんでありまして、人権擁護、擁護、擁護と言うて、真相究明の方がおろそかになるようなことは絶対あってはいかぬと、こういうことは申し上げることができると思います。
#135
○橋本敦君 まさにロッキード疑獄事件で問われているのは真相解明の努力でありますね。それはそれとして、先ほど児玉譽士夫との関係で、大臣は大変率直にざっくばらんに心境及び事実をお話しになりました。ざっくばらんなお方ですから私もざっくばらんにお伺いしますが、児玉の関係者である太刀川氏が中曽根さんの秘書としておられたという事実は、これはっきりしている。そういう関係で、この太刀川さんとも大臣は御面識があると思いますが、いかがですか。
#136
○国務大臣(稻葉修君) 彼が中曽根事務所におったころは知りませんでした。中曽根事務所へ来て、それから彼が中央大学に入学したいという希望を持ちました。そのときに中曽根康弘氏から紹介されて面識あります。
#137
○橋本敦君 その太刀川氏が児玉の関係企業に関係をする、あるいは児玉の実際上の秘書になっておるという状況になって以後、会ったことはありますか、ありませんか。
#138
○国務大臣(稻葉修君) ありません。
#139
○橋本敦君 ところで、もう一つ率直にお聞きをしなければならぬのですが、問題の人、小佐野賢治氏ですね、この小佐野賢治氏とお会いになったことはありますか。
#140
○国務大臣(稻葉修君) 一度も会ったことはございません。
#141
○橋本敦君 しかし、小佐野賢治氏は財界でいろいろな重要なことをやっておられますので、虎の門事件その他、この人の名前はつとに御存じですね。
#142
○国務大臣(稻葉修君) 名前は聞いて知っております。
#143
○橋本敦君 ところで、問題はこの小佐野氏が今度のロッキード疑獄事件で果たした重要な役割りに関する問題なんですが、これは言うまでもなく米上院のチャーチ委員会でコーチャン自身が明確に語っているわけです。これは私がここで繰り返すまでもありませんが、すでに公開された資料ですから捜査当局も御検討になっていると思いますけれども、コーチャンは、一つはこの児玉という人物はきわめて影響力のある、そして有用な日本の財界の人物である。この小佐野氏を児玉によって紹介されたこと、そして児玉と小佐野氏とたびたび日本で会って、そうして売り込みの戦略について何回も協議をした、はっきりこう証言しているわけですね。しかも、チャーチ委員長の質問に答えて、児玉に渡された工作資金の一部がこの小佐野氏に渡ったかどうかという問題について、彼は初めはその点についてはアイアム・ノット・サーティン、私は確かではありません、こう言っていますけれども、その後の中ではっきりと児玉から一部分手渡されたということについてアイ・ビリーブ、私はそう確信する、アイ・ビリーブ・イン・イット、こう言っていますね。だから、こういう関係から見ても、今度の口疑獄解明について小佐野氏というのは重要なかかわりを持っていることはコーチャン証言で明らかである。
 一方、客観的事実を見ますと、トライスターの全日空の導入が全日空で発表されたのが四十七年十月。その直前に有名なニクソン・ハワイ会談がある、八月の三十一日、九月一日。このニクソン・ハワイ会談で田中前総理がハワイの小佐野の所有するサーフライダーホテルに泊った事実は、これは、小佐野氏自身が予算委員会で認めているということですね。
 そこで、もう一つ重要なことは、その当時小佐野氏が航空界にどのような影響力を持っていたか、これを調べる必要があるわけですが、その関係で言いますと、小佐野氏の株の取得状況を見ますと、たとえば全日空の株で言えば昭和四十四年の九月の終わり、このころはわずか九万四千株であったのが、四十五年、四十六年――四十六年の三月には三十七万株で、個人株主第九位になっていきます。そうして、四十六年の一月からは全日空の社賓として待遇されるに至る。全日空の社賓とはどういうものか、私どもが調べてみますと、これは全日空の方で会社の設立に重大な貢献があった人及び当然役員とすべき大株主で、役員定数の関係で役員になれない人、それと同等の待遇にするということで申し合わせされている。現在、小佐野氏ほか十一名います。そして、この社賓という立場では会社に対して意見を述べ、助言をすることができるということが全日空内部の内規等で明文化されてはいませんが、慣行的にそうなっているということです。だから、四十七年のハワイ・ニクソン会談が行われたころには、彼は全日空の中でこれは四十六年一月にすでに筆頭株主に個人の中ではなっていますが、筆頭株主だけじゃなくて、社賓という立場で全日空に物が言える立場にあった。そしてニクソン・ハワイ会談に同行して、田中前総理を自分のサーフライダーホテルに泊めた。そして、児玉と小佐野氏と売り込み戦略をしきりに練ったとコーチャンは証言をしている。こうなりますと、このロッキード疑獄解明で、小佐野という人物を抜きにして解明することはとうていできないという状況がだれの目にも明らかになっている。
 さらに、もう一つ重要なことは、コーチャンがこの証言コピーの四十四ページの中で、ロッキードの売り込みが日本の政府のいろいろなレベルとの関係において重大な誤解を生じている。それがロッキードにとって破局的な事態を招きかねないときに、この児玉、小佐野両氏がこれを救うために実によくやってくれたということをはっきり言っている。これはどういうことかと私がワシントンでチャーチ委員会のレビンソン氏に聞いたときに、レビンソン氏は、それはトライスター売り込みのことなんだ。そしてコーチャンがそう言っているのは、このトライスター売り込みを成功させるために、この困難な状況を打開するすべての工作を、児玉と小佐野に決定的な判断権と工作のやり方をコーチャンが委任したということを意味しているのだとレビンソン氏は私にこう語っている。だから、チャーチ委員会もこの問題を公然たる公聴会だけでなくて、秘密公聴会も通じて集めた資料から小佐野氏が重要な役割りを果たした事実を認定しているという状況が明らかなんですね。
 そこで、私は捜査当局に聞きますが、このようなコーチャン証言、そして小佐野氏自身が国会でコーチャンに会ったことがあると認めたこと、ハワイ会談に同行したということ、筆頭株主になっていく経過、こういう一連の事情から見て、この小佐野氏から事情を聴取することは当然捜査当局としてやらねばならぬことだと、だれの目にも明らかになっているわけですが、小佐野氏から事情聴取をなさる方針があるのかないのか、その点についてお話を願いたいと思います。
#144
○政府委員(安原美穂君) まさにこれからの捜査の内容あるいはその方針にかかわることでございますので、具体的に申し上げることは御猶予を願いたいと思いまするが、いま橋本委員御指摘のとおり、二月六日の米国上院外交委員会においてコーチャン氏が証人となってロッキード社のトライスター売り込みに際して、小佐野賢治氏の紹介を受けて売り込みの相談をしたという証言もございますし、また小佐野氏自身が当国会においてコーチャン氏と会ったという事実を認める証言もあるわけでありまして、かような証言内容につきましては当然のこととして検察当局も重大な関心を抱いておるわけであります。要するに、抽象的で恐縮でございますが、ロッキード社の製造機売り込みに関する全企業活動につきまして、日本国内における活動につきまして、検察当局はその間に不正行為の存否を明らかにしようとすることを目的として捜査、調査を進めていることは事実でございますので、当然のこととして小佐野氏の行動に関しても重大な関心を持っているものと思います。
#145
○橋本敦君 いま局長がおっしゃったように、まさに当然のことであり、これを解明する必要があるということは客観的状況から明らかです。だから、捜査当局が小佐野氏から事情聴取をする必要があるというのはだれの目にも明らかだと私は言ったのです。すでにわれわれが知っている証拠からだけでも、捜査当局は重大な関心を抱いているというお話がありました。問題は、もうすでに事情を聞いたのかあるいはこれから聞くのかということを明らかにしてほしいということですから、これは私は児玉氏が、たびたび病床に検察官がお越しになってお調べになり、脱税あるいは外為法違反で追起訴をされているということで、どんどん明らかになっているのですね。だから、児玉の捜査をおやりになっていることは、これはもう隠された事実ではなくて、明らかになっている。小佐野氏も言ってみれば国会で証言台にまで立たれた人で、一定の状況事実をお述べになっておられるということで、私はこの小佐野氏について、全然名前が出てない人を新たに名前をお出し願いたい、聞かしてほしいという趣旨じゃなくて、当然こういう立場にある人についてはこれは事情を聴取する方針があるならある、そしてそれはいつごろだということはお話しいただいても捜査に特段の支障はないと私は考えて聞いておるんですが、その点局長いかがでしょう。くどいようですがもう一遍伺わしてください。ほかの人と違うということですね。
#146
○政府委員(安原美穂君) 先ほど申しましたように、重大な関心を持つ人物であることは認めるにやぶさかではございませんが、児玉氏の場合におきましても取り調べをしたかどうかということは実は検察当局から公表したことではなくて、新聞報道陣の熱心な取材活動がその事実を明らかにされて、いわばそういう結果やむを得ず公然としたことでございまして、検察当局の口からいまだ公になっていないだれを取り調べたかということを申し上げることは、やはり広い意味での捜査の運営に支障を来しますので、この際はどうかひとつ御勘弁を願いたいと、かように思います。
#147
○橋本敦君 重大な関心を持っておられると言うことで御勘弁願いたいということですが、積極的な真相解明のための捜査を国民が期待しているという立場で私は明らかにする時期が来れば明らかにできると。あの児玉の捜査だってもう発表なさらなくても明らかになっているんですから。ということを私は期待しておきたい。
 ところで、このコーチャン証言の裏づけということも非常に大事なんですが、堀田検事がアメリカにお行きになってコーチャン、ハルあるいはエリオット、こういった人たちに事情を聞く、あるいは日本の捜査のことで協力をするように御努力になっていらっしゃる事情はいろいろと伺っております。ところが、アメリカから打ち返してくる外電によっても、あるいは日本記者団の電報によっても、堀田検事のそのような要請をコーチャンもクラッターもエリオットもこれを拒否したという報道が送られてきているんですが、堀田検事のこのアメリカ側関係者に対する捜査協力要請の現状と、そしていまどうなっているのかということを御説明願いたいと思います。
#148
○政府委員(安原美穂君) 堀田検事も実は公然と捜査活動の一環でございますから出かけたわけではございませんが、これまた熱心な報道陣の取材活動によりまして露見をしたというのが実情でございますので、余り積極的に活動内容を申し上げにくいんでございますが、要するに堀田君はわが国の捜査官が米国内に居住しております関係者から直接会って事情を聴取するということの実現いたしますための種々の準備活動のために行っておるという、抽象的な任務だけは申し上げたいと思いまするが、その結果、いま御指摘のコーチャンとかクラッターとかいうような方々とのいわゆる面接が実現する運びになったかどうかということは、いわばこれからの捜査の内容に属しますので申し上げることは控えさせていただきたいと思いますが、一般論として申し上げますならば、わが国の捜査官が他の国――米国内におきまして米国人から任意の供述を得るということが決して容易なことではないということはひとつ御理解をいただきたいと思います。
#149
○橋本敦君 そこで、堀田検察官の御苦労も考えるんですけれども、日米司法取り決めと米伊の司法取り決めの中で重大な違いの一つに、米伊の司法取り決めこの中では取り決めそれ自体の中で相手国の司法官憲が事前に面接すべき人物、場所、これを通知した上で相手国内において要請国自身の司法官憲がその人物に面接調査、これをやることを政府間の司法取り決めとして同意をされていますね。これは明らかなんですが、これについてこの面接調査のために要請された国は便宜を供与するように協力をする、そして司法手続に基づいて証言、供述その他のドキュメントを作成して資料収集することに同意するということが出ているわけですね。わが国とアメリカとの司法取り決めにはこの点がない。もしこの点が入っていたならば検察官は米政府にこの取り決めに基づいて日本の検察官がコーチャンその他に会って事情聴取をするということ、これはもっと容易にまさに政府間のアグリーメントとしてできたように私は思います。その点について局長はどうお考えですか。
#150
○政府委員(安原美穂君) この点につきましては、実務取り決めというものがいわば資料、情報の提供という意味での捜査共助ということを中心にいたしましたものでございまするから、資料、情報を入手する方法としてのいわゆるいま御指摘の関係人に対する面接取り調べというようなことが直接にはその結果得られるものでございますが、少なくとも資料、情報そのものではございませんので、実務取り決めの対象にはしなかったわけでありまするが、交渉の過程におきまして、御指摘のように当然のこととしてそういう面接取り調べの必要が生ずる場合におきましては、アメリカ合衆国の政府の了解を得てやることでございますので、交渉の過程におきましてそういう必要が生じたときは米国側は任意の取り調べに関する限りこれを了解するという事実上の了解が日米両国間にあるわけで、そういう意味におきましてイタリアとの協定には書いてございますが、こちらには書いてございませんけれども、実質的には協定があると同じようなアグリーメントが具体的にはございます。なお、いま御指摘のように、そういう規定があればうまくいったのではないかということは、そういう意味におきましてイタリアの協定といえども結局任意取り調べを了承するというにとどまるわけでありますから、いま私どもが、また先ほど私がむつかしいと申し上げたのは、そういう主権同士、政府同士の、わが国の捜査官の活動という主権の行使についてはアメリカ政府は了解し、そしてそれが実現するように協力することは具体的には了解しておるわけですが、問題は関係人が任意の取り調べに応ずるかどうかということでございまして、このことは協定をおくといたしましても、少なくとも国際法上外国の捜査官が強制捜査して逮捕するなどということは認めないわけでございますから、任意の取り調べでございますから、結局ロッキード社関係者が調べに応ずることをアメリカ政府といえども強制できないわけでございますから、規定があるから容易で、規定がないからむつかしいということとは必ずしも直接には関係がないことと思っております。要は、橋本委員も国会議員の特派議員としてお出かけでございますが、要するに、具体的な面接を実現する、最終的な当該関係者が任意に応ずるかどうかという問題であるということを御理解いただきたいと存じます。
#151
○橋本敦君 それはわかっております。だから、したがって、イタリアとのような明文の取り決めにはなってないけれども、いま局長がおっしゃったように、アメリカ側があの交渉の中での同意条項として日本の捜査官憲が行って直接会えるように努力するという、その任意捜査については了解をし、協力するという合意はできていると、こう了解してよろしいですね。
#152
○政府委員(安原美穂君) 文書にはいたしておりませんけれども、当然のこととして了解しております。
#153
○橋本敦君 私は今度の司法協定でいろいろな資料が提供されたということですが、提供された以外にこちらで捜査を進めていくならば、もっとこういうのが欲しい、あれが欲しいという追加資料の要求ということもしなきゃならぬと思いますが、今日までに何回追加資料の請求をしたことがあるか、あるいはやってないか、これからの見込みはどうか、その点はいかがですか。
#154
○政府委員(安原美穂君) 現実問題として資料をその後いただくことになっておることは事実でございますが、余り詳しいことはこの取り決め自体が資料の提供に関する情報自体を秘密にせよという扱いがございますので、これ以上は申しませんが、その後も資料を入手したことは事実でございます。
 なお、この協定によりましても、この間渡されただけで終わりではなくて、将来ともに要請をし、そして向こうが入手しているものがあれば入手できるという可能性は取り決め上ございます。
#155
○橋本敦君 私は、コーチャンに国会へ証人として喚問に応ずるように国会が要請していること、そして、真相解明のために彼自身も十分責任があること、そういうことを考えれば、いまあなたがおっしゃった、文章にはなってないけれども政府間了解ということで捜査活動が了解されている事情のもとで、事情聴取に応じないという彼の態度については、私は国民の立場でいささか不満そのものであるわけですがね。
 ところで、この司法取り決めに関してもう一つお尋ねをしておきたいことは、アメリカ側から資料が提供されますね。ところが、この資料の使途については、明らかにこれはわが国内において刑事、民事、行政、こういった司法手続及び審理に関することだけに使うことに限られる、それ以外公表してはならぬという秘密の尊守義務が課せられておる。これは重大な問題ですがね。そこで、たとえば時効になったとか、あるいは起訴するだけに足りないとか、嫌疑はあっても起訴猶予にするとか、わが国民の独自の自主的判断に基づいてそういう処分をした場合に司法手続に使わないことが起こり得る。そういうことで起こり得た、つまり司法手続に使わなかった資料、これは一体どうなるのか、これについてはどうお考えですか。
#156
○政府委員(安原美穂君) これも協定を結ぶときの解釈といたしまして、いま橋本委員御指摘のとおり、「これらの資料は、専ら、法執行の責任を有する機関により行われる捜査・調査のために並びにこれに伴う刑事上、民事上及び行政上の裁判又は審理に関する手続においてのみ使用するものとする。」とありますので、このいま申し上げました捜査・調査あるいは裁判、審理手続に使用しないという判断に達した場合におきましては、これを提供をしたアメリカ当局に返却するというのが解釈でございます。ただし、いっそういうものが要らなくなるかという判断については、これは日本国政府の判断に任されておりますので、いつ要らなくなるかの判断並びにその時期については不確定でございますが、抽象的にはこの手続に使わないということになりました場合には返すというのがこの「のみ使用するものとする」ということの解釈として当然出てくることでございます。ただ、いま御心配のようなことは結局その資料に仮に高官の名前があって、その高官の名前のある資料を開示しろ、国政調査権のために出せと言われたら、この関係で使用できないということになりますが、その資料を端緒として何かわが国が捜査をした結果得たことは、これはもう協定の外でございまするから、こののみに使用することができるという規定の対象外になるというふうに私どもは理解しております。
#157
○橋本敦君 いま後の方でおっしゃった問題は、この司法取り決めの第十項でもはっきりと書いていますから、この手続によらないで入手する資料については、これはわが国の独自性の権利が確保される。だから、アメリカ側から提供された資料が端緒になって、それに基づいて日本の捜査当局が独自に捜査をして得た資料はこの司法取り決めの秘密遵守義務に係らない。これは局長いまおっしゃったとおり、それはそれでいい。ところが、いまもう一つおっしゃったことは私は重大だと思います。アメリカから提供された資料を、いま言ったように時効だとか起訴猶予だとか嫌疑不十分だとか、こういうことになった場合に返すという約束を米政府との間にしているというのは、これはこの取り決めには明白な文言として出てこない取り決めですよね、約束ですよ。いま、あなたは解釈としてそうだとおっしゃったけれども、これは向こうもそう解釈しておるわけですよ、そうでしょう。だから、そういう解釈が一致しているということで合意がなされている。こうなりますと、四十七条ただし書きで公判前でも明らかにできるかどうかという問題もあり、あるいは公判がなされない場合、不起訴になった場合どうするのか。いわゆる灰色高官名という問題で大議論を日本国民が国会でもやっておるときに、そういうものをアメリカに返してしまうのだということを、国会の審議はもちろんかからない、どこでも議論しないで、司法取り決めだけでそういうものを返してしまって、灰色高官が明らかになる道を米測資料自体からこれは閉ざしてしまうことになるのですよ、そういうことは具体的に言えば。そういう重大な内部的な解釈、合意があるということを私は知りませんでした。私はこれを幾ら読んでもそこまで合意しているとは思いませんでした。提供を受けたものがこちらの自主的な責任でもって所持し、保管をし、そして真相解明に使う。ただ、いつの時点で、この協定で決められた秘密を遵守するという義務が解除されるかということが、私はむしろ国民的課題だと思っていたんですよ。秘密が解除されるというどころか返してしまうということになりもすと、せっかくのアメリカ側の資料によって灰色高官名を明らかにすることはできない重大問題です。この点は時間がありませんから、私はまたさらに次の法務委員会で議論します。そういう内輪の合意が明らかになったということは、きわめて真相解明に支障になる重大な問題だということを私は申し上げざるを得ないということで質問を終わります。
#158
○政府委員(安原美穂君) ちょっと。内輪の合意ではなくて、この第三項の解釈から当然出てくるという解釈でございまして、合意をして新たにそれを創設したものではないというふうに私どもは理解しております。それと同時に、取り決めによってこれが秘密扱いをすることになったのではなくて、このようなことは基本的にはフォード書簡からくる考え方でございます。フォード書簡に基づく考え方が調査、捜査のために、公正を期するためにはそれ以外のものには使用しないという約束のもとに、この資料は提供しますというアメリカのフォード大統領書簡を閣議が受けて、その閣議の了解の枠内で、法務省よ行ってアメリカ司法省と取り決めを結んでこいということでございまして、取り決めによってさような制約を新たに生じたものでないということはひとつ御理解をいただきたいと思いますが、あくまでも合意というより解釈でございます。
#159
○橋本敦君 解釈が一致しているわけだからね、これは問題ですよ、解釈なんて一体どうするんですか、真相解明。これはまたやりましょう。そんな合意が解釈であったのは知らなかったな。
    ―――――――――――――
#160
○委員長(田代富士男君) 委員の異動について御報告いたします。
 前田佳都男君が委員を辞任され、その補欠として橘直治向が選任されました。
    ―――――――――――――
#161
○委員長(田代富士男君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#162
○委員長(田代富士男君) 御異議ないと認めます。
 橋本君から委員長の手元に修正案が提出されております。修正案の内容はお手元に配付のとおりでございます。
 この際、本修正案を議題といたします。
 橋本君から修正案の趣旨説明を願います。橋本君。
#163
○橋本敦君 ただいま議題としていただきました刑事訴訟法の一部を改正する法律案に対する修正案の提案理由を、ごく簡単に説明さしていただきます。
 第一条は、改正案の百八十八条の二の修正でありますが、改正案は憲法第四十条に基づく刑事補償制度を基本にいたしまして、この制度だけでは無罪の判決を受けた者の救済方法としては必ずしも十分でないということから、せっかく提出されたものであります。ところで、刑事補償法では無罪の判決だけではなくて、免訴または公訴棄却の裁判が確定した者でも、本来なら無罪の判決を言渡されるべきものと認められるものについては、無罪の判決が確定した場合と同様に刑事補償をすることが正義に合致するという立場で、刑事補償法第二十五条の規定が設けられています。実際の運用を見てみましても、被告人が死亡して公訴棄却になっていたのに、同じ事案で起訴された共犯者の無罪がその後確定したために、公訴棄却になっていた死亡者について刑事補償が認められた場合等もあり、重要な運用が裁判所によってなされております。
 改正案が、現行の検事上訴の費用補償だけでなく、費用補償制度の一層の充実を目指すもので、同時にこれが刑事補償の拡大につながるもので、人権保障に重要な役割りを果たすという観点をさらに一歩を進めますと、刑事補償法第二十五条の趣旨と同様に、免訴または公訴棄却の裁判が確定した場合においても、「もし免訴又は公訴棄却の裁判をすべき事由がなかったならば無罪の裁判を受けるべきものと認められる充分な事由があるとき」に対しても補償する旨の規定を設けることが一層人権保障に資するかと考える次第であります。
 第二点は、百八十八条の三の修正でありますが、改正案では、判決確定以後補償の請求期間を「六箇月以内」としています。しかし、この期間は短過ぎると考えるのであります。刑事補償法ではこの期間を「三年以内」として、民法の不法行為による損害賠償請求権の消滅時効と同じ期間を採用しています。この点については、刑事補償法と区別する特段の必要がないのではないか、同じ期間にしてもよいのではないかと考えるのが修正の理由でございます。
 何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。以上です。
#164
○委員長(田代富士男君) それでは、ただいまの修正案に対し、質疑のある方は順次御発言を願います。――別に御発言もないようですから、これより原案並びに修正案について討論に入ります。
 御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 まず、橋本君提出の修正案を問題に供します。橋本君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#165
○委員長(田代富士男君) 少数と認めます。よって、橋本君提出の修正案は否決されました。
 それでは、次に原案全部を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#166
○委員長(田代富士男君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#167
○委員長(田代富士男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時四十三分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト