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1975/05/18 第77回国会 参議院 参議院会議録情報 第077回国会 法務委員会 第6号
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1975/05/18 第77回国会 参議院

参議院会議録情報 第077回国会 法務委員会 第6号

#1
第077回国会 法務委員会 第6号
昭和五十一年五月十八日(火曜日)
   午前十時十九分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月十四日
    辞任         補欠選任
     橘  直治君     前田佳都男君
 五月十七日
    辞任         補欠選任
     橋本  敦君     近藤 忠孝君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         田代富士男君
    理 事
                大島 友治君
                平井 卓志君
                佐々木静子君
    委 員
                梶木 又三君
                林  ゆう君
                町村 金五君
                小柳  勇君
                原田  立君
                近藤 忠孝君
                下村  泰君
       発  議  者  原田  立君
   国務大臣
       法 務 大 臣  稻葉  修君
   政府委員
       法務政務次官   中山 利生君
       法務大臣官房長  藤島  昭君
       法務省民事局長  香川 保一君
       法務省人権擁護
       局長       村岡 二郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        二見 次夫君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○犯罪被害補償法案(原田立君外一名発議)
○刑事補償法の一部を改正する法律案(原田立君
 外一名発議)
○民法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
 議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(田代富士男君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 橘直治君、橋本敦君が委員を辞任され、その補欠として前田佳都男君、近藤忠孝君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(田代富士男君) 犯罪被害補償法案を議題といたします。
 発議者原田立君から趣旨説明を聴取いたします。原田立君。
#4
○原田立君 ただいま議題となりました犯罪被害補償法案につきまして提案の趣旨を御説明申し上げます。
 労働災害での労災保険、自動車事故での自賠責、一般の疾病、傷害、死亡での健康保険、厚生年金、公害被害での公害健康被害補償制度などのように、私たちが日常生活において生命、身体が損なわれた場合は、不十分だとはいえ、救済の制度が設けられています。
 ところが、通り魔的犯罪、無差別爆弾テロなどのいわゆるいわれなき犯罪によつて被害を受けた人たちは、どこからも特別な救済の手が差し伸べられず、精神的にも肉体的にも悲惨な状況のもとに放置されています。しかも、いわれなき犯罪は近年次第に増加する傾向を示し、福祉国家を目指すわが国としては被害者をこのまま見過ごしにしておくことはできないところであります。
 わが国における犯罪被害の救済は、現在のところ民法上の損害賠償制度による以外にありませんが、同制度は訴訟の長期化とそれに伴う経費の増大を避けることができないのであります。すなわち、同制度では犯罪被害者の窮状を速やかに救済することは実際的に不可能なのであります。
 仮に訴訟を起こしたとしても、加害者側に賠償責任能力に欠ける場合が多く、よくてわずかな見舞い金を受ける程度、悪くするとそれすらなく、被害者の大半は泣き寝入りしているのが実情であります。中には、加害者が不明あるいはつかまらない場合も多く、現行民法の損害賠償制度は、犯罪被害の救済に対し、ほとんど効果を上げていないと言つても過言ではありません。
 このように犯罪被害者に対する社会的救済措置が極端におくれている反面、犯罪者の人権保障は刑事制裁の緩和、社会復帰対策の促進、収容施設の合理化及び近代化など積極的に推進されています。犯罪者の人権保障の充実は憲法の規定に基づくもので当然のことでありますが、同時に犯罪被害者の人権保障もあわせて充実されるべきであります。犯罪被害者の救済を怠るならば、著しく社会的公正に欠けるとともに、刑事政策上からも片手落ちの観を免れないのであります。
 以上の観点から、犯罪によって身体または生命にかかわる被害を受けた場合に、国が速やかに被害者を救済する犯罪被害補償制度を樹立するため本法案を提案した次第であります。
 以下、この法案の内容の概要につきまして御説明申し上げます。
 第一に、この法律の目的は、犯罪によって人の身体または生命が害された場合における被害を国が補償し、被害者またはその遺族の生活の安定を図ることとしております。
 第二に、補償の対象となる犯罪被害は、日本国内における他人の犯罪行為に起因して、負傷し、疾病にかかり、または死亡した者の当該負傷、疾病または死亡としております。なお、外国人にあっては、日本国内に住所を有している場合に限り、補償の対象としております。
 第三に、補償形式は一時金形式をとっておりますが、その種類として、加療期間が二週間を超える傷病の療養については療養補償金を、療養による休業については休業補償金を、後遺障害についてはその程度に応じた額の障害補償金を、死亡については遺族の態様により千五百万円または千万円の遺族補償金を掲げております。なお、健康保険法、厚生年金保険法、労働者災害補償保険法等により公的給付が支給されることとなる場合にあっては、その額を控除して支給することとしております。
 第四に、扶養義務者等が加害者である場合においては、補償を行わないこととするとともに、被害者側にも犯罪行為の誘発等の責めがある場合、報復措置がなされた場合等においては、補償の全部または一部を行わないことができるとして、衡平な補償が行われるようにしております。
 第五に、補償機関としては、各地方裁判所の所在地ごとに、補償実施機関たる犯罪被害補償地方委員会を、法務大臣の所轄のもとに審査機関たる犯罪被害補償中央審査会を設置することとしております。すなわち、犯罪被害補償地方委員会は、三人以上九人以下の委員で組織する合議制行政機関であり、その権限及び所掌事務は、補償申請の裁定、補償給付の支給、加害者の賠償能力及び生活状況の調査等としております。また、犯罪被害補償中央審査会は五人の委員で組織し、委員は弁護士資格を有する者のうちから国会の承認を得て法務大臣が任命することとし、その権限及び所掌事務は、犯罪被害補償地方委員会が行った処分に対する審査請求の審査等としております。
 第六に、補償の申請は、その申請をすることができるときから二年以内に、犯罪被害補償地方委員会に所定の申請書等を提出しなければならないこととする等、補償手続等について規定を設けております。
 第七に、この法律の公布日前二十年間に行われた故意の犯罪によって被害を受けた場合も、公布日以後の補償事由について補償することとしております。
 以上が本法律案の提案の理由及びその概要であります。
 何とぞ慎重御審議の上、御賛同下さいますようお願い申し上げます。
    ―――――――――――――
#5
○委員長(田代富士男君) 次に、刑事補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 発議者原田立君から趣旨説明を聴取いたします。原田立君。
#6
○原田立君 ただいま議題となりました刑事補償法の一部を改正する法律案につきまして提案の趣旨を御説明申し上げます。
 現在の刑事補償法では、心神喪失等の責任無能力の理由によって犯罪が不成立とされ、無罪の判決を受けた者に対しても補償金が支払われることとなっています。
 刑事補償の本来の目的は、いわゆる犯罪行為を犯していない者に対する補償を行おうとするもので、現に犯罪行為を行い、かつ、責任無能力の理由で無罪となった者までをも補償する趣旨のものとは考えられないものであります。
 昭和四十三年に、殺人者が、心神喪失中の殺人行為であるとの理由で無罪判決を受けた後に、その殺人者が国に刑事補償金を請求してきた事例において、東京地裁は、決定文の中で、刑事補償金の支払いが、法律上、やむを得ないものと認めつつ、「現行刑事補償法の立法的な解決を期待する」と述べております。また、当時の法務省刑事局長も「健全常識から見て非常に非常識」と述べているのであります。
 速やかな立法的解決こそ望まれるところであります。
 しかも、さきにわが党が提案しました犯罪被害補償法案では、心神喪失等責任無能力の理由によって加害者が無罪となった場合においても、被害者等を救済することとしております。
 当該犯罪行為によって、被害者等と加害者の双方が国家から補償を受けるということはきわめて不自然なところであり、常識的にも納得できないところであります。
 そこで、無罪の裁判を受けた責任無能力者にかかわる刑事補償については、裁判所の健全な裁量によってその一部または全部をしないこととする必要があるため本法案を提案した次第であります。
 何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
#7
○委員長(田代富士男君) 以上で趣旨説明聴取は終わりました。
 両案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
 午前の審査はこの程度にとどめます。
 午後一時三十分再開することとし、休憩いたします。
   午前十時三十分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時五十六分開会
#8
○委員長(田代富士男君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。稻葉法務大臣。
#9
○国務大臣(稻葉修君) 民法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 民事法の分野における男女の平等及び人権の保障につきましては、理念上のみならず、実質的にも、また、制度の上においても、確立されるべきものであることは申すまでもありませんが、わが国の婚姻に関する実情や人権に対する国民意識の推移等にかんがみますと、妻の法的地位及び戸籍制度については、なお改善すべき点があります。
 そこで、この法律案は、妻の地位の実質的向上を図るため、離婚復氏の制度、婚姻事件に関する裁判管轄及び嫡出子出生の届け出をする者について改善を加えるとともに、国民のプライバシー保護の観点から戸籍公開の制度等を改善するため、民法、人事訴訟手続法及び戸籍法について所要の改正を行おうとするものであります。
 この法律案の要点を申し上げますと、第一は、民法の改正であります。現行民法第七百六十七条は、婚姻によって氏を改めた夫または妻は、離婚により当然婚姻前の氏に復するものとしておりますが、このことにより復氏する者に社会生活上の不利益をもたらす可能性もありますし、離婚後母とその養育する子との氏が異なることによる不都合を生ずるおそれもあります。
 そこで、離婚による復氏の原則を維持しながら、離婚後も引き続き婚姻中の氏を称しようとする者については、離婚後三月以内に戸籍法による届け出をすることにより婚姻中の氏を称することができることといたしております。
 第二は、人事訴訟手続法の改正であります。現行人事訴訟手続法第一条は、離婚等の婚姻事件の訴えは、婚姻の際氏を称した者の現在の住所地の裁判所が専属的に管轄することとしておりますが、現在の婚姻の実情を見ますと、夫の氏を称する婚姻がほとんどでありますから、妻が離婚訴訟を遂行するには、多くの場合、夫の住所地に出向かなければならない不便があるのみならず、証拠収集等の点からも必ずしも合理的ではありません。
 そこで、当事者の便宜及び証拠収集の容易さ等の観点から、裁判管轄を合理化するため、婚姻事件の訴えは、まず、夫婦の共通の住所地の裁判所、次には、夫婦の最後の共通の住所地の裁判所の管轄区域内に夫または妻が住所を有するときは、その住所地の裁判所、さらに、それ以外の場合には、夫または妻の住所地の裁判所の管轄に専属することといたしますとともに、具体的事案に応じた管轄の合理化を図るため、他の管轄裁判所へ移送する制度を設けることといたしております。
 第三は、戸籍法の改正であります。現行戸籍法第十条及び第十二条は、何人でも手数料を納めれば、戸籍及び除籍の閲覧またはこれらの謄抄本の交付を請求することができることといたしておりますが、個人のプライバシーが不当に侵害されることを防止するため、申請件数が少なく、市町村の手数もかかる戸籍及び除籍の閲覧の制度を廃止するとともに、他人の戸籍の謄抄本の請求をするには、一定の場合を除き、その事由を明らかにすべきものとし、請求が不当の目的によることが明らかなときは、市町村長はその請求を拒むことができることとし、他人の除籍の謄抄本の請求は、一定の場合を除き、相続関係を証明する等の必要があるときに限りすることができることといたしております。
 また、現行戸籍法第五十二条は、嫡出子の出生届につき父を第一順位の届け出義務者としておりますが、これを改め、母も父と同順位において届け出ができることとするほか、死亡届及び裁判に基づく戸籍の届け出について、可及的速やかに届け出がなされるよう、届け出人の範囲を拡大しております。
 さらに、戸籍及び除籍の謄抄本の交付について前述のような改正をすることに伴い、不正の方法で戸籍等の謄抄本の交付を受けた者に対し過料を課するとともに、戸籍届け出の遅延に関する過料額を引き上げる等所要の罰則規定を整備しております。
 以上が民法等の一部を改正する法律案の趣旨であります。
 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
#10
○委員長(田代富士男君) 以上で趣旨説明の聴取を終わりました。
 これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。
#11
○佐々木静子君 それでは私から、大臣のお時間が限られているようですから、先に大臣に対しまして質問をさしていただきたいと思います。
 いまお述べになりました民法の一部改正、あるいは人事訴訟法の一部改正、あるいは戸籍法の一部改正、いずれも去年の国際婦人年というものから、ことしは世界行動計画の第一年目である、国内行動計画もこの間ようやく草案ができたというような、この婦人の地位を向上しなければならないという機運の盛り上がりの中で、しかも政府がお出しになったこの婦人の地位向上のための第一号の法案としてこの法案が提起されたということに対しまして、多くの国民、特に婦人の人たちは、今度法務省がまず第一号の婦人のための法案を出してくだすったということに対して、大きく歓迎の気持ちを持っているわけです。ただ、実際問題としますと、もちろんこれは多くの婦人の長い間の願いの中のほんのごく一部分でございまして、もちろんこれで十分などとはとんでもないことですし、いろいろとこれからいろんな婦人の地位の問題に法務省でも取り組んでいただきたいと思うわけでございますけれども、その第一歩としてこうした法案が出されたことに対して大変に喜ばしいことだと思っているわけですし、また、戸籍法につきましても、たとえば婦人の地位というような観点から見ましても、いままで嫡出子の出生届けが父親だけに限られておったところが、憲法の精神から見ても当然のことながら母親にも届け出の権利ができたというようなことも喜ばしいことですし、さらに大きく人権問題ということから考えて、とかく個人の人権侵害と密接に結びついていままでかなり論議を呼んでおったこの戸籍の公開の問題についても、人権尊重の立場からこうした法案が提出されたということは、これは国民全体から見ても歓迎されているというふうに私ども受けとめているわけでございますけれども、大臣にまず伺いたいんでございますが、細かいことは後ほど民事局長に伺いますが、どういうわけでまず民法等の一部改正案あるいは人事訴訟法の一部改正案をお出しになるようになったか、これは政府の側からのお立場として簡単にお述べいただきたいと思います。
#12
○国務大臣(稻葉修君) わが日本国憲法施行後三十年を経まして、日本国憲法の最も重要な点は、憲法第三章、国民の権利及び義務という章であろうかとさえ思います。その中に、十四条であるとか二十四条であるとか、きわめて明瞭な規定があるにもかかわらず、これに矛盾する規定が民法の中に残っておりますことはいけないと、かねがねから法務省といたしましては民法、ことに身分法の点における男女の不平等性につきまして検討を加えてきたところでございます。昨年はおっしゃるとおり国際婦人年で行動計画の決議まで行われました。昨年の本委員会におきましても佐々木委員からたびたび御質問を受けました。これに前向きの答えをしてまいりました。幸いことしの二月、民事行政審議会の答申をいただきましたので、これに基づき鋭意法案の整備にかかり、本国会にこれを提出する運びに至りましたことは、私どもとしてはまだ不十分な将来の点は残っておりますけれども、今回は佐々木委員等の強い推進力も手伝ってここに至りましたことを感謝を申し上げるとともに喜ぶ次第です。以上でございます。
#13
○佐々木静子君 大変にそういうことで大臣も積極的に取り組んでいただいたということで私ども感謝もし、また敬意を表しているわけでございますが、いまも申し上げましたように、これは全くワンステップと、大変な御努力、御苦労だったと思いますけれども、まだこれから先が非常に多くの難問を、またそしてぜひとも解決していただかなくちゃならない問題を抱えているわけでございますけれども、こうした問題、たとえばこの問題がいま提案されております民法の一部改正、人事訴訟法の一部改正の審議が終わりましたら、次には法務省とすると婦人の地位の向上のためにどういうことを考えていらっしゃるか、次には政府案としてどういう法案をいま御準備中であるか、また御提案のめどなどについてもお伺いしたいと思うわけです。
#14
○国務大臣(稻葉修君) 引き続き取り組むべき問題は多々ありますけれども、詳細は民事局長から補足させますが、私のいま頭に残っておりますのは、相続法の改正――妻、配偶者の相続分の引き上げという点が一番当面の課題であるというふうに存じております。
#15
○政府委員(香川保一君) ただいま法制審議会民法部会の身分法小委員会におきまして、いま大臣お述べのとおり、相続法の全面的な再検討に取りかかっておるわけでございますが、その中でも実質的に妻の地位の向上につながる配偶者の相続分その他の相続関係を最優先順位に取り上げていただきまして審議を煩わしたいというふうに考えているところでございます。そのほかに夫婦財産制の問題とかあるいは寄与分の問題等もございますが、国民の御要望の強い相続法、特に配偶者の相続分の引き上げ等につきまして精力的に検討を進めていきたいと、かように考えておるわけでございます。
#16
○佐々木静子君 夫婦財産制の問題などもなかなかいろいろと議論の分かれるところだと思いますので、また後でお伺いしたいと思いますけれども、相続法の改正、これは実は今国会に私も提案者の一人としてわが党から提出しているわけでございますけれども、政府とすると、これはいつごろまでにこのいまおっしゃった成案をまとめられる御予定であるのか、そのことを伺いたいと思います。
#17
○政府委員(香川保一君) 御承知のとおり、法務省といたしましては、ただいま申し上げましたように民法のような基本法につきましては、大臣の諮問機関でございます法制審議会の答申を得まして法案の作成作業にかかるということに相なっておるわけでございます。したがいまして、この法制審議会の答申がいつごろされるかということが法案提出のめどになるわけでございますが、私どもといたしまして、従来、身分法小委員会におきまして、相続法の問題をいろいろ検討を積み重ねてきておられるわけでございますけれども、御理解いただけますようにこの問題はいろいろのケースを考えますと、そう簡単に結論が出ないというふうなこともございまして、残念ながら今日ではまだ結論を得ていないわけでございまして、ただいま社会党から御提案のような考え方もございますし、現行法どおりでいいという考え方もございまして、何と申しましてもこの妻の相続分を引き上げるということは、積極財産だけの場合はいいんでございますけれども、消極財産の借金の負担も背負わなければならぬということにも相なりますし、まあいろいろの場合を想定いたしますと、果たして二分の一とか三分の二とかいうふうな画一的なことで十分国民の御納得いただけるようなことになるかどうか、この辺もやはり多くの国民がどういうふうな意識を持っておられるかということが、何と言っても基礎になることでございますので、昨年の八月に法制審議会におけるこの相続関係のいろいろの意見を整理いたしまして、それを一般に公表いたしまして、特に関係方面からはこれについて御意見をちょうだいしたいということでお願いしておるわけでございます。しかし、問題が非常にむずかしいことも手伝いまして、今日現在の段階で各方面からの意見も余り参っていないわけでありまして、いずれの関係方面におきましても、いま真剣に検討中というふうな中間的な報告をちょうだいしている段階でございます。しかし、そういった意見を全部取りまとめてからということでありますれば、それだけ作業もおくれるわけでございますので、並行的に法制審議会の身分法小委員会でまず精力的にひとつ検討を進めてもらうということを極力お願いいたしまして、陣容もいろいろ強化いたしまして、今後精力的に審議を続けていただくという手だてだけやっておるところでございまして、いつごろまでに小委員会の結論が得られるか、さらには部会にかけ、法制審議会にかけなければなりませんので、ちょっとあと一年で全部終わりと、答申が得られるというふうなことをいま申し上げる段階でもないと思うんでありますけれども、何と申しましても、方向、考え方はいろいろ分かれておりますけれども、現行法のままでいいというわけでもございませんので、できるだけ早く結論を得るように、ひとつ法制審議会に力を尽くしていただきたいと、こういうふうにお願いしているところでございます。
#18
○佐々木静子君 そうしたら、細かい話はまた後から局長にお伺いさしていただきたいと思いますので、大臣に先に伺いますと、この戸籍法の改正に関しまして戸籍が非公開になると、結婚調査その他に際して興信所の活躍というものが多くなるのではないかということに対して、興信所をいろいろ行政上規制していく、監督していく方向を考えているということを、衆議院の法務委員会で御表明になっているようでございますけれども、これについて具体的にどういう方法をお考えになっていらっしゃるのか、具体的なお話を伺いたいと思うわけです。
#19
○国務大臣(稻葉修君) 具体的なとおっしゃると、まあ一つ考えられるのは興信所の登録制です。それから、特に興信所の活動について、こうこういう行為は処罰しますよという処罰規定を設ける必要があるのではないか。まあ一般に名誉棄損にでもなればいまでもありますけれども、それ以外に、特に興信所の非常に行き過ぎたプライバシーの侵害みたいなやり方については、処罰規定を設けるということも一つの具体的な方策だというふうに考えております。
#20
○佐々木静子君 これは登録制にと。これは大体いわゆるどういうかっこうで登録するようにしようとお思いなのか。たとえば国家試験の制度にするのか、あるいはだれが所管――法務省人権擁護局がなさるのか、だれが登録の認可をするのか、そこら辺のところをまず伺いたいし、それから名誉棄損的な場合には刑事罰を設ける、そういう事柄になってくると、大体どういうふうなところでどういうふうな案をおつくりになるおつもりなのか、そのあたりも具体的に御説明いただきたいわけです。
#21
○国務大臣(稻葉修君) やはりこれ、窓口というか所管庁は総理府ではないかといまは考えている。そうして登録制にするには、その興信所の規模だとか、それから物的設備であるとか財産だとか、そういうものもやっぱり登録するには必要な条件ではないかというふうに思いますですね。
 それから、名誉棄損になれば、それは現行刑法で名誉棄損になるわけですから、それには触れないけれども、いかにもプライバシーを侵害する行き過ぎた調査の仕方、そういうことについて、どの程度を行き過ぎた調査とみなすかという事項も、きわめて重要な規制の対象となる事項だというふうに考えておる次第です。
#22
○佐々木静子君 これは法務省とすると、人権擁護局がなさるんじゃないんですか。総理府にということになるんじゃないかというお話のようですけれども、人権擁護局とすると、この問題について何かいろいろ御検討中と、具体的に検討しておられることはないんですか。
#23
○政府委員(村岡二郎君) 興信所、探偵社等の調査機関の法的規制という問題は、従来とりわけ同和問題に関連して論ぜられてまいりまして、と申しますのは、興信所が結婚調査の依頼を受けました場合に、相手方の身元の調査をする。その際に、同和地区の出身者であるかどうかというようなことを調査報告するという例がございました。これは申すまでもなく同和差別、部落差別ということは、万民平等を規定しております憲法の精神に抵触することでございまして、そのような生まれながらの身分差別に基づく、身分の違いに基づく差別待遇をするということは、これは絶対許すことができない。そういう差別を助長するような役割りを興信所が果たすということは何としても防止すべきであるというふうに論じられてきたのでございます。と同時に、部落差別一般についても法的規制を行うべしという意見も寄せられてきたのでございます。これにつきまして、同和差別ということはその差別意識という心理に根差すことでございまして、そういう心理的な差別というものを……
#24
○佐々木静子君 ちょっと、中身はまた後でゆっくり大臣おられないとき聞きますから、人権擁護局でどのように関与していらっしゃるのかというイエス、ノーの返事で結構なんです。時間がありませんから。
#25
○政府委員(村岡二郎君) それはそのように非常に広範にわたる問題でございますので、これは同和対策の窓口と言いますか、総合調整を行っております総理府の同和対策室が中心になりまして、関係各省の係官が集まりましてその協議をしておるところでございます。その協議会がただいままでに三回開催されまして、先ほど大臣から答弁のありました登録制の問題とかあるいは罰則による規制を加えるかどうか。登録制の場合にもいかなる規制を加えるか、そのいわゆる業法を興信所について設けるわけでありますので……
#26
○佐々木静子君 中身は結構です。関与していらっしゃるかどうかということを言っているんです。
#27
○政府委員(村岡二郎君) その同和対策室を中心に検討しております協議会の一メンバーとして、人権擁護局の立場から積極的に関与しております。
#28
○佐々木静子君 私の質問時間はずいぶんたくさんありますが、大臣は三十分しかおられないわけですから、細かいことはまた後で伺いますが、五月十四日の衆議院法務委員会の大臣の御答弁、これは新聞で見るところによりますと、法務省人権擁護局で興信所の登録制度をとることを検討したいというふうに大臣は述べていらっしゃるんですが、そうじゃないんですか。これは事実と違うんですか、そのとおりなんですか。
#29
○国務大臣(稻葉修君) 私の方は人権擁護の立場からということでございまして、従来の経緯があって総理府に同和対策室がございますものですから、それがずっと検討して登録制というようなことも検討しておりますね。それに対して私どもの方は人権擁護の立場から積極的にこれに協力して、人権擁護に遺憾ないようしたいという点から関与しておるわけです。
#30
○佐々木静子君 そうすると、この問題は法務省だけで決めかねる問題で、総理府の同和対策室がお決めになるということになるわけですか、どういうことになるわけですか。
#31
○国務大臣(稻葉修君) 同和対策を初めとし、人権の擁護につきましては総理府の同和対策室と法務省の人権擁護局との間に意見の相違は全然ありませんから、そういう点についてどっちが決めるとか決めないとかいうことではなくて、こっちの意見を全然無視して決められるわけのものではないというふうに私は考えておりますが。
#32
○佐々木静子君 そうだとすると、興信所の問題はこれは降ってわいた問題じゃなくて、これはもう長い間の法務省との折衝の間で、これは何十年といいますか、少なくとも十年以上の、これは主として部落解放同盟を中心とする人権を尊重してほしいという強い国民の要望と法務省との折衝の間で、法務大臣の答弁というものが出てきたわけでございますけれども、当然その事柄についていままで法務省としてもいろいろと具体的に検討していらっしゃるはずだと思うんですけれども、いままで検討された具体案ですね、どういうふうにやろうと思っていると。ただ検討したい検討したいじゃ話にならぬので、一体どこでどういうふうなことをやろうと、やることになっているのか、あるいはなりつつあって七分どおり話が進んでおるのか。そこら辺のところ、ただこれ、やぶから棒に法務大臣も無責任におっしゃったんじゃないと思いますので、具体的な話を説明していただきたいわけです。この御答弁いただいて非常に喜んでおるわけなんですが、これでは非常に漠然とした話で、もっと具体的にそれじゃだれがいつどこで何をやってくれるのかということがはっきり御答弁いただければ大変ありがたいと思うわけです。
#33
○国務大臣(稻葉修君) その衆議院法務委員会における答弁は、きちんとした根拠があって申し上げているんでありますが、その具体的内容についてはどこまでいっているか、それはやっぱり人権擁護局長が一番よく知っておりますから御説明させます。
#34
○政府委員(村岡二郎君) 先ほどお話しかけましたように、同和差別に対する法的規制ということは、かねてから強い要望があったわけでございます。ただ、一般的にいわゆる部落差別の言動を法律の強制力をもって取り締まる、防遏するということは、これはどうもほかにいろいろ弊害が出まして、国民の自由権の侵害ということもございまして、いろいろと対策を考えてきたわけでございますけれども、どうも非常にむつかしい。たまたま去年の暮れに問題になりました部落地名総鑑の出版問題というのがございました。これは全国の同和地区の地名をリストアップした本を販売したというきわめて悪質な差別事件でございまして、このように差別を商うもの、差別を商売にするもの、これは少なくとも法的規制の対象にすべきではないか。それに関連しまして、先ほど述べましたように、興信所がこの種の身分差別の調査の依頼に応ずるということ、これもきわめて悪質であるということから、この種の営利にかかわる差別、これは法的規制のもとに置くべきものという考え方に次第にまとまってきたわけでございます。それが昨年の暮れでございます。そこで同和対策室を中心にいたしまして、関係各省、これは通産省、それから総理府はもとよりですが、法務省、それから労働省、警察庁、こういった関係各省の係官が協議いたしまして、一体どのような方法によってこの差別を商うものの法的規制を実現すべきかという方策を検討しておるわけでございます。先ほど申しましたように、ただそういう営利的な差別行為を取り締まる、罰則をつけるというだけでは実効を期しがたいのじゃないか。この際、これは同和問題に限りませんが、この種の営業はこの性質上国民のプライバシーその他の自由権を侵害するおそれが多分にあるので、その業法を設けて、営業自体を一定の官庁の取締まりなり監督のもとに置くべきではないかという考え方が出てきたわけでございます。それが先ほど出ました登録制というもののアイデアだと思います。ただ、そうなりますと、これを所管する役所の問題が出てまいります。あくまでも自由の侵害、あるいは犯罪類似行為の取り締まりという観点から見ますれば、これは警察庁の所管ということになるかと思います。あるいは情報産業の一環ということで、この業界が正しい運営発展を遂げるように保護、監督、育成するというような面から見ますと、通産省ということも考えられるわけでございます。いずれにしても、そういう所管省の問題も含め、いかなる法的規制が最も効果的であるかということをいま精力的に検討しているところでございます。
 本日、先ほどまで衆議院の内閣委員会でこの同和問題についての和田貞夫委員の質問が行われておりまして、またこの後引き続き行われることになっておりますが、そこでもこの問題が出まして、総理府総務長官から、この立法のための作業は精力的に強力に進める所存であるという見解を先ほど述べられたばかりでございます。
#35
○佐々木静子君 それでは、もっと詳しく伺いたいのですが、時間もございませんから一応私の質問はこれで保留いたします。
#36
○委員長(田代富士男君) 速記をとめてください。
  〔速記中止〕
#37
○委員長(田代富士男君) 速記を起こしてください。
#38
○佐々木静子君 それでは法務省の方にお伺いいたしたいと思いますが、この民法等の一部を改正する法律案からお伺いしたいと思います。これはいまのお話でも大臣の御答弁にもございましたように、今度出される七百六十七条の規定のほかにも、この妻の法的地位の向上あるいは実質的な男女の平等を図るために、いろんなことをやらなければならないということが法務省においてもかねて御検討中でありますし、また多くの婦人からも強い要望として出されておるわけでございますけれども、先ほどお話にありました法制審議会における相続法あるいは夫婦財産制の問題のほかに、個別的に各条文について法務省として御検討なさっている個所はあるわけですか。それ以外のことは別にいまは検討事項になっておらないわけですか。
#39
○政府委員(香川保一君) 法務省としてと申しますよりも、先ほども申しましたように、法制審議会の身分法小委員会におきまして、親族法、相続法の分野を全面的に再検討するということで審議が始まったわけでございます。その中で、親族法の分野はいろいろ御議論がございますけれども、これも何ら結論的なものはまだ得ていない。しかし、国民の御要望から申し上げますれば、むしろ親族法よりも相続法の方が先に取り上げるべきじゃないかというふうに、方向転換と申しますか、そこで相続法の中で一番早急に結論を出すべきものということで、この前中間報告として発表いたしました事項、その中に妻の相続も含めた相続分の問題、夫婦財産制の問題、寄与分の問題というふうなことが主な柱として、それをともかく先に政府で審議する、こういうことになっておるわけでございます。それが結論を得ましてから次の問題に移るということになる段取りでございます。
#40
○佐々木静子君 この民法の分野のほかにも、かねて私が申しております国籍法なんかについて、これはいまどういうことになっているんですか。国籍法などの中には非常に男女差別の濃厚な規定があるわけですけれども、そのあたりについては全然検討していられないんですか。
#41
○政府委員(香川保一君) 国籍法の分野で男女平等の観点から問題になるのは、御承知のとおり父系主義と申しますか、つまり日本人男の子供が日本人になるということでございまして、たとえば外国人男と日本人女が結婚して生まれた子供は、母親は日本人でありながら日本国籍を取得できないというふうなところが問題になると思うのであります。この点につきましては、この前、佐々木委員からもこの点やはり再検討すべきでないかというふうな御指摘もございまして、現在外国の法制……国籍の問題はもちろんだれを日本人とするかということは、その国の専権事項でございますけれども、御承知のとおり国際私法、この国籍の国際的な考え方といたしまして、二重国籍になることは極力避けようということがあるわけでございます。さような関係での条約の動きもあるわけでございます。そうしますと、いま申しました例のように、外国人男と日本人女が結婚して生まれた子供を、わが国が日本人女の子供だからということで日本国籍の日本人といたしますと、その場合に夫である外国人男の属する国の方では自分の国の父親の子供だから自分の方でもその者をその国の国民にするというふうになりますと、二重国籍という問題になってまいるわけであります。さような関係は、本来、国籍の問題は、その国の専権事項でございますけれども、そのことが二重国籍になることによっていろいろその者に対する国際法的な不利益というふうなものも出てまいりますので、やはり外国の法制もよく見きわめながら決めていかなければならぬというふうなことで、現在検討いたしておるわけでございます。ただ、遺憾ながら、先ほど申しましたように、国際的な大方の国の考え方というのは二重国籍の防止という方向でいっておりますが、たとえばドイツなんかはそういったことを振り切って、いま申しましたような事例の場合に母親がドイツ人であれば、その子供もドイツ人にするというふうな立法もされておるようでございます。そういった考え方も十分ひとつ検討いたしまして、この問題の解決を急ぎたい、かように考えておるわけでございます。
#42
○佐々木静子君 これは国籍の問題に行き当たる人が、日本全体の国民から見ると数は非常に少ないわけでございますけれども、これは私どもの方にも国籍法が不平等だというお手紙なり要望が非常にいろいろあるわけです。それに行き当たった人から。そうして、こんな法律がいまの日本にあるのかというふうに、行き当たった人々がいまさらながらびっくりして、驚いているというふうなこともございますので、国籍法の改正ということにつきましても、これはぜひとも早急に取り組んでいただきたいということを強く要望しておきたいと思います。
 それから、国籍法の問題は一応離れますが、七百六十七条のこの離婚による復氏の問題でございますけれども、これは多くの婦人団体の一致した意見として、去年の秋以来強く法務省にもお願いしてきたわけでございまして、私どものお願いしてきたことをそのまま法案にして、いま政府案として提案されているということは非常に感謝にたえないわけでございますけれども、しかし、本来から言いますと、この氏というもの自身がどうもおかしいんじゃないか。この七百六十七条のこの一部改正というのは、まあいわば一時的な回避にすぎないのであって、やはり七百五十条が根本的な問題なのではないかという批判の声もずいぶん強く出ているわけでございます。また、全体の七百五十条を改正しようという要望は、これは全体の数から言うとまだ少ないかもわかりませんけれども、七百五十条自身を改正しなけりゃこれは人間の尊厳というようなことから考えて、これはもうここの改正をしなければだめなのだという強い意見があると、これは民事局長も御存じのとおりだと思いますけれども、この七百五十条について法務省とするとどのように考えていらっしゃるのか、これは私は恐らく法制審議会の中でも議論にはなっていると思うんです。その中で法制審議会の身分法小委員会に婦人の方もいろいろいらっしゃるとはいえ、数の中ではまだ過半数を占めているわけでもなし、議論の結果において七百五十条というところの改正まで話はいかないんだろうというふうに感じているわけですけれども、七百五十条自体について法制審議会でどのように検討されておるか。そして、法務省とするとどのように考えておられるのかお述べいただきたいと思います。
#43
○政府委員(香川保一君) 確かに七百五十条、つまりたとえば佐藤と山田という者が婚姻いたしました場合に、夫の佐藤の氏を称するか、妻の山田の氏を称するか、どちらかに決めてそして佐藤なら佐藤というふうに夫婦の氏を決めることになっておるわけでありますが、これの改正ということ、御要望のあるのはごく私は一部だと思いますけれども、その場合に何も佐藤というふうにしなくてもいいと。佐藤山田何子と、こういうふうにすればいいじゃないかというふうな御意見があるわけでございます。しかし、まあ不勉強であれでございますけれども、一体わが国の大方の国民意識、あるいは感情といたしまして、結婚した夫婦が従来の氏を二つこう並べて併記するような、そういうことを実際好まれるかどうかという、そこの問題もあろうかと思いますし、法律的に別にそうしたことによって絶対いかぬというふうな、そういう理論があるわけではもちろんございませんけれども、ただ、私どもの所管しておるたとえば民法の他の分野、その場合に子供の姓を一体どうするかと。子供が佐藤山田太郎と、こういうふうになるのがいいのかどうかというふうな問題もございますし、とりわけ戸籍法の分野で戸籍の技術的な問題でございますけれども、編製をどうするかというふうな、そういった技術的な細かな問題もたくさんあるわけでございます。しかし、何と申しましてもそういう意見は意見として、決して検討の対象にはしないというつもりは毛頭ございませんけれども、やはり先決問題として議論する基礎として、大方の国民がその問題をどうお考えになっているかというふうなこと等、それからまあ外国の立法例、これはその国の習俗等によりまして、必ずしもある国でそういう制度をとっておるから、日本でもそのまま持ってきていいというわけの問題ではないと思いますが、参考として外国の立法例の検討もいたしておるわけでございます。まあ細かくなりますが、ついでに申し上げますと、中国とか朝鮮半島におきましてはそういった両方の姓を冠するようなこともございますし、例がないわけではございませんが、一般的に申しましてイギリス、アメリカ、そういった法系のところでは、やはりどちらかに統一するというふうなことが大勢でございますし、スペイン、スランス系でもそういったことを原則にいたしておるわけでございます。ドイツ法では例外的に両方の氏を複合氏と言っておるようでございますが、そういうものを冠してもいいような立法活動もあるように聞いておりますが、そういったことも参考にしながら、根本的には先ほど申しましたように、国民感情としてそういうことがいいというふうにされるかどうか、それを十分把握いたしまして検討をしたいと、かように考えておるわけでございます。
#44
○佐々木静子君 これはいまさしあたり私も申し上げたように、国民の過半数が七百五十条を改正しなければならないと言っているわけではないということは私もよくわかっておるわけですけれども、これは社会の趨勢と申しますか、それから人間の独立、それぞれの、特に婦人の自覚心が高まる、あるいは社会的進出というものが高まってくるにつれて、これは当然に七百五十条はこのままであっては困るという要望は、社会の趨勢として当然にどんどん起こってくると思うわけです。それから、いま民事局長がお挙げになったアメリカとかイギリスとかあるいはフランスでどうこうというお話がございますけれども、これはいずれもキリスト教国であって、これは私のかねて伺っているところでも、キリスト教国ではキリスト教の思想から夫婦は一体なるべしということで、夫婦同一の姓の思想とか同一の姓というものが決められているわけで、これはむしろキリスト教の支配を受けない国、いま例示的にお挙げになった中国、朝鮮というような国、これは中国と朝鮮だけが特異なのではなくて、むしろキリスト教の思想を受けておらない国は夫婦別姓が原則であるというわけでございまして、これは私から何もるる御説明するまでもないわけですけれども、これは明治十年ごろの日本の世論から見ましても、なかなかこれは妻の地位が非常に低過ぎて夫の名字を唱えることができなかった。明治十年の朝日新聞を見ましても、結婚しなからには夫の氏を称させてくれという当時のウーマンリブが起こったと、ウーマンリブという言葉は使っておりませんけれども。だから、夫の氏を称するというのは義務というよりも権利として、そういう権利も認めてほしいというのが日本の明治初期までの庶民の感情であったところが、これがいわゆる改正前の民法、いまの民法が明治中期につくられて、そしてその夫婦同一の名字というものが一般化して普遍化したというわけで、歴史的に見れば非常に浅いわけでございますね。ですから、これは何も絶対的なものではなくて、きわめて流動的な規定じゃないか。しかも、非常にいまの日本の社会から見ると、結婚してから社会で働いている女性の数の方がもう過半数を超えているわけでございますからね、御承知のとおり。五〇何%という人が、結婚して家庭に入っているんじゃなくて社会に出て仕事をしている。だから、家庭の中だけ入っている人というのはむしろ少ないわけですから、そういうところから考えても、これから先はやはり七百五十条の改正ということにもっともっと取り組んでいただかないと、これはあらゆる問題が解決しないんじゃないかというふうに思うわけです。いま、戸籍法がそれじゃ困るというお話だけれども、それこそ本末転到であって、人間に便利なように戸籍というものがあるのであって、戸籍に便利なように人間社会というものがつくられているというわけじゃないわけですから、私はこの戸籍法の今度の一部改正に反対ではもちろんありません、賛成しているわけですけれども、どうせ改正するなら本当は戸籍法というものは一人一枚、一人ずつの戸籍法というものに改正しなければ、こういう中途半端な改正でまた何十年というものを経過するということは、それだけまた多くの人間が、特に婦人が困らなければならない。これはもう現実そうだし、火を見るより明らかなことなんですが、現実がそこまでいかぬということであるから妥協的に賛成しているわけですけれども、やっぱり過半数の支持がないからといっても、七百五十条がどうなっているか、こうなっているかというところまでは、なかなかいろいろな人がそこまで考えないわけで、むしろあたりまえだと、仕方がないんだと思っているからここに手がつかないだけですけれども、やはり七百五十条ということについてもっともっと真剣に考えていただきたいと思うわけですね。そのあたり、法制審議会の議論はどうなっているわけですか。
#45
○政府委員(香川保一君) 今回提案いたしました離婚復氏の例外措置の改正規定の審議を身分法小委員会でやりましたときに、そういった七百五十条の問題もあるということは論議がございましたけれども、これはなかなかそう簡単にはいかぬというふうな雰囲気でございまして、今後さらに検討されることでございますけれども、結論的なものは何も出ていないわけでございます。
#46
○佐々木静子君 これは一遍にはいかぬと思います。ただ、七百五十条について余り議題にならないということは、法制審議会の委員の考え方というものがやはり非常に古い考え方であるとか、いままでの社会観念にとらわれている方々が非常にたくさん出てきていらっしゃるというようなことじゃないかというふうに思うわけですね。これは七百六十七条の話をしましても、これはもう特に法律を勉強したとか、あるいは社会的に特に活躍しているという婦人の集まりではなくても、普通の一般のOLの方とか、あるいは工場に出かけていって工場で働いていらっしゃる婦人労働者の方にお話をしましても、この七百六十七条も変えるのは結構だけれども、やはり根本的に七百五十条をどうにかしてもらわぬことにはどうにもならないというのが現実のように思います。これは、七百五十条というのは全くどっちがどっちの名字に変えてもいいというふうに決めてあるのであって、全くこれは男女同権を阻害するものじゃないというふうにおっしゃるかもしれませんけれども、この法務省から今回の法律案の関係資料として出していただいているこの資料のうちの五ページの各種統計を見ましても、婚姻届で妻の氏を称している者はわずか一・五%にしかすぎないというような状態でございますから、結局名字を変えなければならないのは妻である、女の方であるというのが現実ですし、そうなってくると、やはり七百五十条によって非常に不利益を受けているのじゃないか。そこら辺のところを、まずもっと本気になって考えていただきたい。これはやっぱり法制審議会の委員の人選にも関係するのじゃないかというふうに思うわけですけれども、法制審議会の身分法小委員会の委員は大体何人で、どういう人がおられるのか。婦人が何%で、平均年齢が幾つぐらいなのか、どういう経歴の人が多いのか、それもお述べいただきたいです。
#47
○政府委員(香川保一君) 決して弱気を申し上げるつもりではないんでございますけれども、先ほども申しましたように、身分法の分野というのは非常に各人の世界観、人生観によってずいぶん考え方が違う面もございまして、したがいまして、法制審議会の身分法小委員会の審議におきましても、先ほど申しましたように、一つのこともなかなか容易に結論が出ない状況でございまして、まことにその七百五十条の改正問題もゆるがせにしていい問題とは決して考えておりませんけれども、そう一挙に何もかもひとつやれと、こういうことになりましても、結果的には中途半端なことになってしまうおそれもございますので、先生方の審議会の能力がないと私は決して申し上げる筋合いじゃございませんけれども、やはり国民の御要望の強いところから先にやはり結論を出して、所要の法改正を逐次やっていくということが一番現実的にいいのではないかというふうにも考えられるわけでございまして、この問題もやがては議論していただくつもりでおりますけれども、いましばらくひとつお待ち願わないと、何もかもやれとおっしゃいますと、何もかもできなくなるおそれのあることもひとつ十分御理解賜りたいと思うのであります。
 それから、この身分法の問題を検討しておりますのは、ちょっとまことに不勉強で申しわけございませんが、民法部会の中で身分法小委員会に属していただいておる先生方、現在十五人ぐらいだと思うのであります。その中で女性は現在三名なんでございますが、もう一人ふやしたいということで、近く発令を予定いたしております。それから、先ほど申しましたように精力的にやっていただくためには、やはりその道の専門家をできるだけ多くもう少し強化した方がいいのではないかということで、委員も少しふやしまして現在折衝中でございますので、数字がもう少しふえるかと思いますが、現在三名の女性のところへ一人追加いたしまして、これは確実に四名になるわけでございます。
 ただ、女性の方はたくさんいらっしゃるわけでございますけれども、なかなかこういう問題になってまいりますと、お忙しいせいもあるのかもしれませんが、適当な方が、いや勘弁してくれというようなことで、なかなかふやしたくてもふやせない現状も、先生、十分御承知と思いますけれども、もっと若い方で本当に社会的にも活動して、こういった問題を身近に感じておられる方も入っていただきたいんでございますけれども、皆さん、そういう方は比較的多忙な方が多くて、なかなか委員になっていただけないという悩みもあるわけでございます。
#48
○佐々木静子君 これはいま民事局長、精力的に法制審議会のメンバーの充実に力を入れていただいているということを伺いまして心強く思っているんですが、一度その名簿を資料として出していただきたいと思いますことと、それから、私は国の審議会の委員にぜひとも婦人をということは、これは私ども婦人議員の願いでもあり、かつ総理府にある婦人問題企画推進本部で今度決めました五つの目標の一つの中に、各種委員会にぜひとも婦人をというようなことも大きなテーマとして入れているわけですけれども、そういう議題が出るごとに私はいつでも自慢話に、法務省の法制審議会の身分法小委員会には一人どころじゃないと、かなりの数の婦人が入っているんだということをいつでもむしろこちらがPRしているわけなんですけれども、しかし、身分法小委員会という性質から考えますと、もっと婦人を入れなくちゃいけないんじゃないか。それと年齢の若返りということと、それからいま名簿を出していただきたいと思いますのは、学者としてどんなにりっぱな方であっても、書いていらっしゃることを見ると、非常にいいことを書いていらっしゃると思っても、実際の国民大衆と接触したときには非常に反発を起こさすような発言をなさるような感覚ではこれは話にならぬわけでございまして、幾ら書くものはりっぱであっても、そこら辺で国民の考えていることとかけ離れている方が机の上だけで議論なさるということではまずいと思いますので、できることならばできるだけ実務家を中に入れていただくということはぜひともお願いしたいと思います。
 それから、いま七百五十条の問題ですが、国民の大半が夫婦は同じ氏の方がいいと言っていると、私もそれは事実だと思いますし、その方がいまの日本の社会では便利だと思います。それから、生まれた子供がどちらの名字を唱えるかわからないから困るというお話ですが、これはやはり国民のいままでの間の培われた感覚で、夫婦は同じ名字で、生まれた子供も同じ名字だと。子供と親とが名字が違うのは、これは非嫡出子とか、あるいは何か婚姻で生まれた子供でない場合が多いとか、あるいは特別な事情の場合だというふうな、いままでの社会の習慣なり目があるだけのことであって、夫婦がそれぞれ別の名字を唱えることもできるということになれば、嫡出子で親と名字の違う子供というものも、これは中国でも朝鮮でもそれがあたりまえなんですから、社会慣習となれば何ら奇異とするに足ることはないと思うわけなんですが、しかし、別姓を唱えたいという国民もかなりいることはいるわけなんですね。ですから、それを過半数に達しないからということでだめだということにしてしまうというのも、人の一生は一回しかないのに、これは法律でその人の自由というものを非常に抱束してしまうことになるんじゃないかと思うわけですので、この資料の立法例にもあるように、たとえばソビエトなんかの場合ですと、同じ名字を唱えたい人は同じ名字、別の名字を唱えたい人は別の名字と、やはりそういうふうな道ぐらいはつくられてもいいんじゃないか。仮にそれを選ぶ人が全体の一割ぐらいしかなかったとしても、とりあえずは。それはそれでもいいんじゃないかというふうに思うのですが、そのあたりはもう少し議論はできないんですか。
#49
○政府委員(香川保一君) そういうふうにしたい人はそういうふうにする道を開いておいていいんじゃないかと、利用する人がゼロであったって準備さえしときゃいいじゃないかというお考えもあろうかと思うんであります。しかし、私のこれはその問題について認識が足りない、理解が不十分だという結果かもしれませんが、
    〔委員長退席、原田立君着席〕
さような道を開くことになりますと、いろいろの関係する分野でそれに対応した措置もまたとっておかなきゃならぬということになるわけでございまして、その辺のところがそういった道を開いてそれを利用される方の、言葉は悪うございますが、メリットと、それに伴ういろいろのデメリットというものをやはり比較考量しなきゃならぬ点もあろうかと思うのでありまして、何といっても国民の仮に女性の方の一割がそうしたいということになりますれば、これはやっぱり無視できない数字だと思うのでありますけれども、率直にまあお聞きしたいので、こちらがはなはだその実態の把握に欠けておって申しわけないのですが、一体現在そういうふうにしたいという結婚される女性が女性の一割もおりますでしょうか。私はもうそれはきわめて少ない人たちじゃないかというふうに思うのでございますけれども、これは別に全国の女性の方にアンケートをとったわけでもございませんので。しかし、考えられるメリットから考えますと、そういうことを強く希望される女性は、私は一割どころじゃなくてその百分の一もないのじゃないかというふうな、認識不足かもしれませんがそういうふうに思うのでございまして、そういうときにやはり国の基本法である民法自身に、まあ現在の民法は夫婦子供中心のものでございますが、それの特定する一つの呼称としての氏というものが、好きなようでいいというふうなことにするということが、やはり根本的には相当問題じゃなかろうかというふうに思うのでございまして、その辺まあ私どもだけの考えではどうにもなる問題ではございませんので、やはり十分法制審議会で将来検討してもらいたいということは考えておりますけれども、現在のところその問題を早急に解決しろということはちょっと負担が重過ぎることで、まことに申しわけないのでありますが、さように考えておるわけでございます。
#50
○佐々木静子君 これは総理府の統計から見ましても、夫婦が別の氏を称するようにすることができるようにしたらどうかという統計は、総理府でお調べになったところでは、余りいまのところではここ二年ほど前の統計では支持している人は少ないというふうに統計上は出てきておりますので、私もいま何も急にそういうふうにするべきだということを言っているわけではありませんけれども、
    〔委員長代理原田立君退席、委員長着席〕
しかし世界の趨勢から見ると、立法の動向はだんだんとこれは当然のこととしてそのように動いていっている。だから、やはりこれは一遍にの問題じゃないけれども、これは人間の意識の問題でもあるわけですから、だんだんと私は日本の民法もそちらの方向に変わっていかなければならないんじゃないか。これが三年先か五年先かというような問題はちょっといまのところわかりませんけれども、やはりそういうことも考えておいていただかないといけないんじゃないか。
 たとえば、それじゃ名字が変わるのがいやだから内縁関係でいると、そういう夫婦も世の中に幾らでもあるわけです、特に両方が働いている場合は。しかし、私の友人などで、これは実はあるかなり有名な病院を経営している女医さん、これは結婚したけれども、名字を変えると営業上非常な支障を来すから内縁関係でいる。その方が実は家庭裁判所の調停委員であった。そうすると、やはり結婚して内縁でいると、ちょっと調停委員さんが内縁ではというふうなことを、正式の話じゃないけれども、言う人もいるということになってくると、やはりなかなか社会的な活動とそれから自分のいままでの何十年と築いてきた社会的地位と、それから家庭生活のこれは人間の当然としての幸福追求の権利というものが女性の場合に限って成り立たない。これは女性の場合は非常にいろんな意味での社会的な制約が多い上に、さらにその名字というものがのしかかってくる。彼女の場合はそういう批判があって、裁判所に迷惑をかけてもということで、調停委員は結婚して内縁関係でまずければとみずからやめたわけですね。結局、そのまま数年いっていたけれども、やはりいろんな公職につく話があるごとに内縁関係ではということになってくるので、結局もう仕方がないから婚姻届けを出して名字を変わった。そうして医院の方は養子を――その前に跡を引き継ぐ人を見つけて、そしてそこの医院はその跡を譲って、彼女は婚姻届を出したと同時に、これは地方自治体の方ですけれども、いろんな公職がびっくりするほど舞い込んできたというふうなことを考えてみると、いまの社会では内縁関係というのは社会的にやはり非常に大きなデメリットになる。だから、男の場合だと問題にならない、婦人の場合は二者択一、どちらを選ぶかという問題になってくるということは、これはぶつかる事例は非常に少ないけれども、やはり七百五十条のこの規定は、これは非常に婦人にとって手かせ足かせの規定である。これは法制審議会に三人か何人か婦人がいらっしゃるか知らないけれども、法務省のいわゆる政策を決めるお役人はいまのところ目下全部男性の方ばかりなので、いま急に香川さん、あしたからほかの名字になりなさいと言われたら、やっぱり非常に困ると思いますね。まあ大抵のことは放ってでも、名字は香川でいたいとおっしゃると思いますね。これは普通男の人はだれでもそうで、そんなことは考えてもおらないからあたりまえのことだけれども、これは婦人の場合は大変な問題になってくるわけべすから、だからもっと七百五十条というものは人ごとみたいなことじゃなくて、みんなここで行き詰まっているんですから、七百五十条ということをもっと考えていただかないと、これは人間としての本質的な生き方の問題とまさに結びついている規定ですから、これはもっと今後考えていただかないといけないと思いますが、いかがですか。
#51
○政府委員(香川保一君) 現行法では、実態は先ほど御指摘のとおりもうほとんどが夫の氏を称する婚姻でございますけれども、妻の氏を称する婚姻も禁止しているわけじゃもちろんないわけでございます。まあ率直に申し上げまして、いま御例示のそういう非常に社会的に大いに活動しておられる方と私が結婚するといたしますと、私は喜んで香川の姓を捨てて、妻の地位をあれすると思うんでありますが、これは決して冗談ではなくて、まさにそこのところがやはり婚姻によっていずれかの氏を称するということの場合に、まあこれは決してどっちがいいとか悪いとかいうことじゃございませんが、妻の社会的な活動が非常に広範囲であると、その従来の、婚姻前の姓でもって妻が大いに活動しているというときに、やはり夫たる者がその妻の氏を称する方に妥協するというふう々男性方のつまり心根もないことには、幾ら民法のそういう氏の問題をあれいたしましても、夫婦は一体でなきゃならぬわけでございますから、結婚しながら別々でいいなんてことでは決してないわけでございますから、根本的にはそういったやはりお互いに相手の立場を考えて協力するという姿勢が男性の側にもなけりゃならぬ問題であるわけでございますし、そういうふうなことで多くの場合は私は解決されているんじゃないかと思うんであります。したがいまして、いましばらくそれはこの結論がどうなりますか、七百五十条の検討はいま直ちにということはとても私はお引き受けしかねるんでございますけれども、それまでの間、何と言っても基本である夫婦というもののあり方と言いますか、そういうもののことでこの問題必要がある都度、窮屈ではございますけれども、そういう運用と言いますか、ことで御しんぼう願う以外にはないんじゃないかというふうに考えているわけでございます。
#52
○佐々木静子君 これは、いまの法務省に七百五十条を変えてくれと言っても、私は一遍にいかぬということは十分よくわかります。ただ、この七百五十条を改正して双方の合意によってそれぞれの氏を称することができるという規定を第二項に設けても、これは夫婦の一体とかあるいは夫婦円満とかいうことを何ら阻害する問題ではない。これは現に世界の人口のうちから考えると、別姓と同姓の国の比率というのよくわかりませんけれども、人口から言うと私は別姓の夫婦の方が多いと思うんです。ですから、キリスト教国が同姓であって、だから別姓の夫婦は夫婦が一体でないかと言うととんでもないことであって、だから名字というのは単なる個人の呼称なんですから、これはやはり個人の呼称が、これは個人のそれぞれ便利なようにできるようにするのが、やはりそうあるべき法律の姿じゃないかと思うものですから、いま一遍にいかなくても、ぜひこの七百五十条というものについては将来の展望としてお考えいただきたい、これは政務次官いかがお考えでございますか。
#53
○政府委員(中山利生君) いま、民事局長からお答え申し上げましたように、いろいろこの問題につきましては、思想、信条、その他その国々の国情、歴史というようなものが絡んでおりまして、わが国でもいろいろな議論がなされているところでございますが、このためにどうも私も先ほどから佐々木先生のお話を聞いておりましても、特に女性の権利が侵害されているというような感じは持たないわけでございまして、そのほかにいろんな芸名だとかそれからペンネームだとか屋号だとか、そういうものを唱えることを禁止しているわけではございませんので、そういうものとうまくかみ合わせていけば、それほど現在の制度が女性の権利を阻害していると思わない。しかし、これから時代が変わりますと、またいろんな問題が出てくるかと思いますので、ただいまの民事局長が御答弁申し上げましたように、法制審議会等その他でいろいろと研究をしているそうでございますので、その結果をお待ちいただきたいと思うわけです。
#54
○佐々木静子君 ぜひ将来の展望として、このことも十分世界のこの立法の趨勢の中に、この問題も大きく入っていると思いますので、考えていただきたいということをお願いして、次にこの七百六十七条のこの経過規定でございますけど、これは非常に多くの方々から支持されまして、私のところにもいつからこの法律改正になるのだというような問い合わせが、毎日何人からも問い合わせがある。恐らく法務省の方にもいろいろとお問い合わせがあると思うんでございますけれども、この経過規定として、これは離婚後三カ月の期間ということになっておりますね。これが三カ月で十分にいまのこの法改正の婚姻中の名字に戻りたい人が、それによって十分に三カ月の間でその目的を達することができるかどうか、この法律の普及とかそういうふうなことなどから考えて、もう少し猶予を置かなければならないのではないかというふうな感じがするんですけれども、そのあたり三カ月というのは、どういうところから三カ月になったのでございますか。
#55
○政府委員(香川保一君) この三カ月に限定いたしましたのは、絶対的に三カ月以内でなきゃならぬというほどの強い根拠があるわけではございませんが、不幸きして離婚ということになりました場合に、妻なら妻が婚姻中の氏をそのまま称したいという必要性のある場合と申しますのは、御案内のとおり妻が婚姻中にその夫の氏、つまり夫婦の氏でもっていろいろ社会的な活動をしてきた。それが離婚によって当然氏が変わりますと、その社会的活動上不利益を受けるというふうなことが一つ考えられるわけでございます。もう一つは、現在の離婚の実態を見ますと、大体、五、六年のところで離婚するケースが圧倒的に多い。そして、まだ子供が小さいというふうなことから、子供が成人に達するまで母親がその子供の養育をするというふうなケースが半数以上占めておるわけでございます。そういう場合に、子供が大きくなってまいりました場合に、母親と子供の氏が違うということから、子供に対する心理的いろいろの悪影響も懸念されるわけでございまして、そういった不都合を是正しようということでございますので、こういう二つの必要性がほとんど全部だと思うんであります。そうだといたしますと、離婚する際に、母親つまし妻の方はその離婚によって当然実家の氏に戻るか、あるいは婚姻中の氏をそのまま称する必要があるかということの判断はすぐつくわけでございまして、したがって三カ月の期間に限定いたしましても、必要性のある場合には決して短い期間ではない、十分その措置はとれるはずでございます。
 他方、またこれは私は懸念だと思いますけれども、こういうふうに離婚しても従来の氏をそのまま称することができる。しかも夫の許可なしに妻たりし者が婚姻中の氏を称することができるということにすると、いやがらせ的にあるいは夫の再婚を邪魔するというふうなことで、悪用されるおそれがないかというふうな批判も一方には強くあるわけでございます。私はそういうことは懸念にすぎないと思いますけれども、そういう批判もあることは現実でございますので、余りこの期間を長くするということは、そういう批判に対してもこたえるゆえんではないというふうに思いますし、必要性のある場合に限ってそういうふうにされる、その措置をとる必要な期間を三カ月としても十分じゃないだろうかというふうに考えられるわけでございます。多くの場合は、離婚届を出します場合に、夫の氏を従来どおり称していきたいという届け出も妻の方からされるケースが、これまたほとんど大部分だと思うのでありまして、ただ、いろいろその間にトラブルというほどでなくても、この三カ月の期間内に、必要性はあるのだけれども婚姻中の氏を称する届け出ができなかったというふうなケースもなしとしないと思うのであります。その場合の措置といたしまして、これは私どもの直接の所管ではございませんけれども、戸籍法の百七条の氏変更の規定があるわけでございます。これは決してそういった離婚の場合に婚姻中の氏を称することを認めるためにできた規定ではもちろんございません。そのほかにいろいろの場合が考えられるわけでございますけれども、七百六十七条の今回の改正規定が施行されますと、百七条による家庭裁判所の氏の変更の関係も、離婚した妻が婚姻中の氏をそのまま称しておく社会的な必要性があるというふうな実態であれば、比較的容易にこの百七条を活用して家庭裁判所においても婚姻中の氏に変更することをお認めになるだろう、こういう期待をいたしておるわけでございまして、それと相まちまして先ほど申しましたような理由で三カ月に限定いたしましても心配することはなかろう、かような考えでおるわけでございます。
#56
○佐々木静子君 それと、問い合わせが一番多いのは、前に離婚した者がこの法律の恩典に浴したいという、この法律改正ができればこの恩典に浴したいという問い合わせでございますけれども、それは過去にさかのぼる分は、前にも質問をして最高裁の家庭局長にもいらしていただいたこともあるわけですけれども、やはりその氏の変更の手続以外に救済方法はないわけですか。どういうふうにお考えですか。
#57
○政府委員(香川保一君) 遡及適用の問題でございますが、この法律案の附則の第二項におきまして、いま申しました七百六十七条の改正規定が施行になりました場合に、その施行前三カ月以内、過去にさかのぼりまして三カ月以内に離婚した場合についても、やはり同じように適用するということにいたしておるわけでございます。これは、したがって施行後は三カ月以内に戸籍法の定めるところによって届けをしなければいかぬということにしております関係上、そのうらはらの問題としまして、遡及適用の関例も三カ月以内に離婚した者ということにせざるを得ないわけでございますが、先ほど申しましたように、これからの問題と同じように過去の施行前の問題、それは三カ月以前のものでありましても、先ほど申しました戸籍法百七条の規定の活用によって大幅に救済されるということに相なろうと、かように期待いたしておるわけでございます。
#58
○佐々木静子君 それから、いまの三カ月以内に婚姻中の氏に戻ることができるということですけれども、そうすると、いまあります離婚用紙、これは各市町村役場にございますね。用紙の中にそういう欄を今度設けるわけでございますか。どうなっているわけでございますか。いまのところは離婚届に氏を変えた方の者が離婚したときには、その戻るべき人の戸籍ですね、それが独立戸籍を新たにつくるのか、あるいはもと出てきた戸籍に復籍するのか。これはいろいろとみずから選択して選ぶ個所が印刷してちゃんとできているわけでございますけれども、そこにまた別の欄を、今度新しい様式をつくって婚姻中の氏を称するのか、もとの名字に復氏するのか。そういうふうな新たな欄を今度お設けになるのか。どういうふうな手はずに実務上はなっているわけですか。
#59
○政府委員(香川保一君) 先ほど申しましたように、どっちの氏を称するか、つまり婚姻中の氏をそのまま称したいという場合には、離婚届と同時にそういう届け出がされるということが大半であろうと、かように考えられますので、現在の離婚届出書の様式を改めまして、その中にさような欄を一つ設けまして簡便に手続ができるようにしたい。もちろん、離婚届と同時でない場合もございますので、そういったものは独立した一つの様式を考えるわけでございます。したがって、離婚届と同時にそういった婚姻中の氏を依然として称したいという届け出がされました場合には、戸籍の操作といたしまして、本来ならば離婚によって妻なら妻は実家の戸籍に一遍人るわけでございますが、それから婚姻中の氏を称したいということになりますれば、そこから抜け出て別戸籍――新戸籍を編製するということになるんですけれども、離婚届と同時に婚姻中の氏を称したいという届け出がされた場合には、実家の方に戻すことはやめまして、いきなり新戸籍を編製するという扱いにしたいと、かように考えております。
#60
○佐々木静子君 これ、本来ならば実家の方の戸籍に戻るというお話でございますけれども、私どもの扱っている場合は、むしろ離婚のときに独立戸籍をつくることを希望するのが非常に多いように思うわけです。そして、そういう離婚もあれば、また、もとの出てきた戸籍に復籍するというケースと二通りあると思うわけですけれども、いま、そこでお聞きしているのは、その復籍した場合には、一たん、名字がもとに復氏して、それからまた婚姻中の名字に、いまおっしゃったように新たな戸籍をつくるわけですけれども、その独立戸籍を最初から、これも私はかなり多いんじゃないかと思う。統計的に――これは役所の方でおわかりになりますか、戸籍の統計が。どういう籍の戻し方が一番多いかということ。
#61
○政府委員(香川保一君) 現行法のもとで離婚をいたしました場合に、当然、特別の申し出があれば妻単独の新戸籍の編製はできるわけでございますけれども、そのケースが全体のどれくらいあるかというのは、いま、ちょっと数字が持ち合わしておりませんので、調査した上でお知らせいたしたいと思います。
#62
○佐々木静子君 いま、特別の申し立てがあればと言われましたけれども、特別の申し立てじゃないでしょう、これ民事局長。離婚届に四つ条項があって、そして復籍したい、もとの籍へ戻りたい人あるいは独立戸籍をつくりたい人あるいはもう原戸籍がなくなっている人、たしか四つほど条項があって、それの最も希望するのにマルをつけるというので、特別の申し立てというものは独立戸籍をつくるのにいま必要としていないと思うんですよ。
#63
○政府委員(香川保一君) 私の申し上げましたのは、法律的に申し上げましたわけで、黙っておりますと当然実家の戸籍へ戻してしまう。現在の戸籍の届け出書には、そこのところうっかりして黙っておるという人もあるわけでございますので、つまり特別の申し出をしないと実家の戸籍へ入れてしまうということになりますから、うっかりしていると実家の戸籍へ戻りますので、そういうことをうっかりしてそうなったのでは気の毒な場合もございますので、戸籍の届け出書にはどちらを希望されますかということを書くことにいたしておりますので、どちらにマルをつけるかによって実家の戸籍に戻すか新戸籍を編製するかということになるわけでございます。
#64
○佐々木静子君 私は黙っていたら実家の戸籍に戻るというふうには理解してなかったんですが、それはそのとおりで間違いないんですか。
#65
○政府委員(香川保一君) 法律的には間違いございません。
#66
○佐々木静子君 そうすると、実家の籍へ戻った人の場合は、一たん復氏してまた氏が変わるということですけれども、独立戸籍をつくる人の場合、独立戸籍をつくる場合ですね、それは、復氏を希望しないという届け出と両方来た場合に、婚姻中の氏を称するんだという届け出が同時に来た場合には、これは名字はそのまま、婚姻中の氏のままの新しい新戸籍がつくられるのか。あるいは一たんもとへ戻って、そして新たにもう一つ戸籍謄本をつくって、そしてもとの婚姻前の名字に戻ったのは除籍して新たな戸籍謄本をつくるのか、その手続をちょっと教えていただきたいわけなんです。
#67
○政府委員(香川保一君) 離婚届と、先ほど申しましたように同時に婚姻中の氏を称するという届け出がございますと、婚姻中の氏のまま新戸籍を編製するわけでございます。離婚届の際にそういう申し出が何もなくて新戸籍だけ編製してほしいと、氏は婚姻中の氏を称するという届け出がなくて、しかし、戸籍は新戸籍をつくってもらいたいという届け出がございますと新戸籍をつくりますですね。そのときは離婚復氏しておるわけでございますから、実家の氏で戸籍はつくられるわけです。その後三カ月以内に婚姻中の氏を称したいという届け出がございますと、先に実家の氏でつくられている戸籍の氏を訂正いたしまして婚姻中の氏に書きかえると、こういうことになるわけですね。したがって、いまのケースの場合には、その新戸籍の面から見ますと、この方は婚姻によって一たん実家の氏を称して、その後に婚姻中の氏を称したいということで届け出されたということがわかることになるわけでございますが、離婚届と同時になる場合には、いきなりもう婚姻中の氏のままで新戸籍を編製いたしますからその経緯はわからなくかる、こういうことになるわけでございます。
#68
○佐々木静子君 それから、今度の七百六十七条の改正で、婚姻中の氏に戻った、たとえば母親の場合ですね。普通いままでは母親が、まあ父親の場合だって理論上はあり得るわけですが、実際は母親が多いのは、母親が親権者になって、そして母親だけは戸籍は別になる、離婚の場合。そして、父親と夫婦の子供が同一戸籍に残るわけですね。その場合に、親権者である母親がその子供を自分と同じ戸籍にしたい、あるいは同じ名字を唱えたいというときには、これはこの氏の変更を申し立てて家庭裁判所で許可を得れば、そのとき初めて親権者である母親のところに子供の戸籍がいくわけでございますね。これは親権者が母親であっても、この氏の変更の申し立てをしない限りは父親の戸籍に子供は残っているわけですね。ですから、この氏の変更の申し立てをしてその子供は母親の戸籍に入るわけですけれども、今度の場合に、母親が婚姻中の名字を唱えるという場合、その場合子供を母親の戸籍に入れる方法はどういう方法になるんですか。
#69
○政府委員(香川保一君) これは先生御承知のとおり、いわゆる氏論争の問題の一つだと思うんでありますが、今回の改正で考えております、離婚いたしまして母親が依然として婚姻中の氏を称するという場合には、厳密に申しますと、氏は夫の氏とは違う氏だけれども呼称が同じだと、こういうきわめて常識的にはわかりにくい理論があるようでございまして、そういたしますと、父親の戸籍に残っておる子供の氏というのは、これは全く父親の氏と同じでございますから、法律的に申しますと、したがって呼称は同じであっても母親が称しておる氏と子供の氏とは違うということになるわけでございますから、その問題は、現行法どおり子供の氏の変更の手続で母親の戸籍へ入れることができる、こういうふうに考えているわけでございます。
#70
○佐々木静子君 その点よくわかりました。
 そうすると、後でまたこの離婚による復氏の問題を私はちょっと後日追加してお伺いさしていただくようになるかもわかりませんけれども、次に人事訴訟手続法の方に質問を移らしていただきたいと思います。
 国際婦人年で世界行動計画というものを国内的に実現していくために男女の実質的平等を保障するために、形式的には男女が平等のようになっていても、実質的に男女が不平等にあらわれている最もひどいと思われる法律は何かということを、実は私は数十名の婦人弁護士の方にアンケートを求めたわけなんですけれども、その中で圧倒的にたくさんの返事が返ってきたのがこの人事訴訟手続法の第一条だったわけでございまして、この人事訴訟手続法というのが、法律実務に携わる者の目から見た場合に非常に男女の平等を阻害しているということがそのアンケート結果からも痛切に感ぜられて、法務省の方は今度この人事訴訟手続法第一条の改正に乗り出していただいたということは、大変に実質的平等保障のために喜ばしいことだと敬意を表しているわけでございますけれども、この裁判管轄の問題ですけれども、当初婦人団体などが求めておりましたのと比べますと多少政府案は変わっているわけでございますけれども、私は結論的に言いますと、今度の政府案の方がさらに合理的であろうというふうに思うわけでございますが、非常に難解な点もありますので、ひとつわかりやすく簡単に御説明いただきたいと思うわけです。
#71
○政府委員(香川保一君) 何しろ管轄の規定でございますのできわめて厳格に規定いたしておる関係上、非常に文章がかたくておわかりにくいかと思いますが、簡単に申しますと、離婚の訴えを提起いたします場合に、現にその訴え提起時に夫婦がある同じところで住んでおるという場合には、まず、その同じ住所を有するその土地を管轄する地方裁判所に離婚の訴えを提起する、これが第一でございます。
 ところが、通常は離婚の訴えを提起する実態から見ますと、その当時は夫婦が共通の住所に住んでおるということは余りないかもしれないわけであります。別々に住んでおるということがあるわけであります。そういうときに、いきなり別々の住所のいずれかに訴えを提起してもいいということにいたしますと、たとえば一方が鹿児島、一方は横浜というふうになっているときに、鹿児島でも横浜でもどちらでもいいということになりますと、必ずしも当事者の便利にはならない。しかも、鹿児島あるいは横浜自身が婚姻中の住所と縁もゆかりもない土地の場合には、裁判所の職権調査による証拠収集にも非常に時間がかかるというふうな弊害もございますので、そこで別れ別れに住んでおるときには、夫婦が最後に一緒に住んでおった土地の地方裁判所に訴えを提起するということにしておるわけであります。これはもっぱらというか、主として先ほど申しました証拠収集の便益から考えますとその方がはるかに容易でございますし、しかも最後の住所地でございますから、その地縁があると申しますか、それを全然離れて、全然縁もゆかりもないところに両方が住んでいるということはまずなかろうというふうなことも考えられますので、第二の順位としては、最後の共同の住所があったところの裁判所ということにしておる。それもないという場合にはやむを得ませんので、夫または妻が現在住んでいる住所地の裁判所ということにするわけでございます。ところが、極端な場合を考えますと、外国へ行ってしまっておるというふうに、その管轄内にその住所が全然両方ともない。それから外国で結婚して外国でずっと住んでおったというふうな場合は、日本に共通の住所がないわけでございますから、そういうふうな場合は夫または妻の普通裁判請求権を有する住所地ということにしておると、こういうふうな三段構えになっておるわけでございまして、こういうふうに当事者の便、不便、それから証拠収集の容易さ等を勘案して、こういうきめ細かい規定を設けたのでございますけれども、それでもなお現実に離婚の訴えが提起された場合に、妻または夫のいずれかにとってはなはだ不便だというふうなこと、あるいは証拠収集の難易かち言って非常に困難だというふうなケースも考えられるわけでございます。そういう場合には当事者に便利であり、したがって証拠収集も容易であるような、いま申しましたようないずれかの管轄の裁判所に事件を移送することにいたしまして、そして具体的に当事者の便、証拠収集の容易さということを十分勘案できるようにしようと、こういう規定にいたしておるわけでございます。
#72
○佐々木静子君 先ほどから話がありましたこの共通の住所とかあるいは夫の住所、妻の住所というその住所というのは、住民登録のある場所というふうに解釈していいんですか。どういうふうなことをもって住所地というふうにされるんですか。
#73
○政府委員(香川保一君) これはもちろん住民登録が基本になると申しますか、それになるわけでございますけれども、しかし住民登録といえども絶対に間違いがないということではございませんから、それが間違っておるということであれば、現実に生活の本拠としてあった住所地というものを基準にすると、こういうことになるわけでございます。
#74
○佐々木静子君 そうすると、当事者間の事実関係に争いがあるときには、最終的な夫婦の住所地というものが、これが違ってくる場合もあると思うわけです。たとえば最終的な住所はここであったと夫の方は言うけれども、妻の方はいやさらにここであったとか、あるいはそこに住んだ覚えがないとかいうようなものも起こってこないではないと思うわけなんですね。そういう場合に管轄が決まらないと、あるいは管轄がダブって、たとえばいまおっしゃったように、これは夫または妻の住所地というような場合に、別々の訴訟が係属する。管轄がダブる。ダブるために一つの婚姻事件について複数の訴訟が起こるというようなこともあり得るんじゃないかと思うんですけれども、そのあたりどのようにお考えなんですか。
#75
○政府委員(香川保一君) 事は裁判所の管轄権の問題でございますので、当事者がここが最後の住所地であったということで申し上げても、相手が、いや、そうじゃないということで争いになりますと、これは裁判所は職権調査、審理をいたしまして管轄を決めざるを得ないということになるわけでございます。
 それから、選択的と申しますか、夫または妻の住所地が競合的に専属管轄権を持つようなことにしておるわけでございますが、いま御指摘のとおりそうなると両方の裁判所に夫の方からと妻の方からとの離婚訴訟が係属することになりはせぬかという御懸念でございますが、そういうことがございますので、現行の人事訴訟法の一条は、専属管轄については競合しないような、ああいった先ほど御指摘がありましたような、結果的に見るときわめて乱暴でありますけれども、そういう懸念があればこそ単一のああいうことに規定いたしておるわけでございます。しかし、実際問題といたしまして、当事者は、つまり夫、妻の間での訴訟でございますから、よほどの変わった人でない限は、いやこちらで訴訟もやっているけれども向こうでも訴訟をやっているというふうなことを、裁判所に秘して両方の訴訟をお互いに係属していくなんていうことは、これはよほど変わったと言ってはあれでございますが、おかしなことなんでございまして、そんな不合理なことは世の中にはおよそあり得ないと思うのであります。だから、万一そういうことで二重に訴訟が係属した場合には、恐らく先に係属した裁判所、あるいは後に係属した裁判所のいずれかに一方から、すでにこの訴訟はどこどこ裁判所に係属しているという申し立てがあるはずだと思います。そうなればその裁判所は二重訴訟で訴えを却下すればそれで事が足りるわけでありますから、それくらいの手数はかかってもやむを得ないというふうな考え方に徹したわけでございます。
#76
○佐々木静子君 これは人事訴訟法についてもまたさらにお伺いしたいと思いますけれども、きょうは四時までということでございますので、一応このあたりにしておきます。
 一般的に民法の改正、いま相続法について御検討いただいているということでございますけれども、先日来新聞紙上で拝見さしていただきましても、いままた下村先生もお越しでございますけれども、実子特例法という事柄について、この間大臣が、今後この問題も取り組んでいきたいというお話をなすったということが新聞にも報道されておるわけですけれども、いま法務当局ではどのような取り組みをなさっていらっしゃるのか。これがどっちを向いて進みつつあるのか、そうしたこともちょっと伺いたいわけです。
#77
○政府委員(香川保一君) 二、三年前から実子特例法といいますか、さような名前で象徴される、他人の子供を実子として戸籍に入れて、その子供の幸福ひいては産んだ母親の保護と申しますか、そういうことを図るべきだという御議論がずいぶん強くなってきておるわけでございます。法務省としましてさような声が一般的に出る前に、法制審議会におきまして養子の制度と絡めましてこの問題が議論されたことがあるのでございますが、そのときにはいろいろの意見がございまして、どちらかというと消極的な方向で一応、結論は出しておりませんけれども、さらに検討しようということで打ち切られておる経緯がございます。これはまことにそういう御要望の趣旨はそれなりに十分理由のあることだとは思うのでございますけれども、私個人的な意見で恐縮でございますけれども、このような問題を現在でも法律上それを決して認知しているわけではございませんけれども、やはりいろいろの事情があり、子供の将来も考え、あるいは母親の将来も考えて、極端な言い方をいたしますれば実子でないのに実子だとして届けられている例というのは皆無ではないと思うのであります。むしろ、相当あるのではなかろうかというふうに私は推測いたします。それはそれとしまして、まあ正面切って言えば戸籍にうそを登載するわけでございますから、けしからぬと言えばそれまででございますけれども、一方さような必要性と申しますか、あるいは周囲のそれによっての平穏ということが保たれるなら、そのようなこともあながちそう取り立ててけしからぬということであばき立てる必要もなかろうというふうに思うのでありまして、さようなことがむしろ法律で正面からそういうことを認知するような立法よりも、いま申しましたような一応やむを得ないことで、隠れてと申してはあれでございますけれども、こっそりとそういう措置がとられているということの方がむしろいいんではなかろうか。つまり、そういうところに法律が介入して認知するような立法ということになりますと、やはりそれなりの戸籍での手続等も何らかの特別措置を考えなきゃならぬということになるわけでございまして、そういうふうな、その特別な扱いを少しでもするようなことというのが、将来その子供が大きくなりました場合に、どんなことでそういう、いわば秘密的なことを知ることになるかもしれないわけでございます。そうなりますとかえって恩があだと言いますか、子供の不幸にもなりかねない懸念があるわけでございまして、そういうことから、実はこの問題は民事局としては大いに検討しなきゃならぬ問題であり、いま参事官室で検討はいたしておるんでございますけれども、私の率直な現在の考え、気持ちを言えとおっしゃれば、そっとしといた方がいいのではなかろうかというふうな感じがいたしておるわけでございます。かような意味で、気持ちがそうだから決して真剣に取り組まないという意味では毛頭ございませんけれども、いろいろ考えてみますと、現在のところそういうふうな感じがいたしておるわけでございまして、もちろんこのような問題が起こる一つは、子供のそういう将来のほかに母体と申しますか、優生保護法の問題が一方にはあるわけでございまして、それはそれなりに、やはりそういう母親の身体を保護する、精神の保護にもつながる問題でございますから、でしょうが、優生保護法の分野でもう一度考え直す必要がなかろうかというふうにも思うわけでございまして、いましばらくひとつ結論的にどうということはまだ決まっておりませんので、なお慎重にこの問題は検討さしていただきたいというふうに考えるわけでございます。
#78
○佐々木静子君 それでは、きょうはこの身分法とそれから人事訴訟法を中心にしてお尋ねいたしましたけれども、このあたりで質問を一時休憩さしていただきます。
#79
○委員長(田代富士男君) 速記をとめてくださ
 い。
  〔速記中止〕
#80
○委員長(田代富士男君) 速記を起こしてくださ
 い。
 暫時休憩いたします。
   午後三時五十四分休憩
     ―――――・―――――
   午後七時八分開会
#81
○委員長(田代富士男君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#82
○佐々木静子君 それでは先ほどの質問に続きまして、戸籍法を中心にお伺いさしていただきます。
 このたびの戸籍法の改正は、国民の皆さん方の間でも、また新聞の論調などを拝見いたしましても、国民のプライバシーを守るために人権擁護という線で戸籍の非公開問題について行政が――政府が取り組んだケースとして好感を持って迎えられているわけでございますけれども、また一面、日本弁護士連合会などを初めといたしまして、この明治以来の伝統のある戸籍の公開ということに制約を加えるということは、これは本来の公証制度であるところの戸籍法の趣旨から言って、もっと考えなければならないのではないかといういろんな批判も出ているわけでございます。もちろん、一つの制度を考えますときに、その面のメリットとデメリットということが当然論ぜられると思うんでございますけれども、このメリット、デメリットをいろいろ法務省でも御勘案になった上で、この法案提出に踏み切られたと思うのでございますけれども、そのあたりの点を大臣に、どういうプラス面、どういうマイナス面をお考えの上でこの法案を提出に踏み切ったのかということをお述べいただきたいと思います。
#83
○国務大臣(稻葉修君) 人間として自分のこういう何といいますかね、身分というか門地というか、そういう点は人に公開せられないことを望む点がまだ日本には恥ずかしながらたくさんあると思うんです。仮にたとえば、あってはならない門地差別が現にあるんですから、これは日本の国際的水準から言うて国際的にも私は日本の恥だと思うんですよ、部落差別なんということが存在するということは。そういう点で戸籍法のようなところからでも、少し――そういう場合には婚姻の妨げになったりするような道具に公開が使われるということは好ましくないじゃないか、そういう点が今後少しでもなくなるということは非常なメリットだと私は思うんでございます。
#84
○佐々木静子君 公開が制限される点についての、大臣はそのデメリットという点についてはどのようなお考えを持っておられるのか、これを重ねて伺いたいのですけれども、それについていま御答弁なかったですから。
#85
○国務大臣(稻葉修君) 私は、デメリットということはあるだろうかというふうに疑問に思います。もし何か御指摘に言われれば、それは極力運用の面において工夫をして、御指摘いただければそういうデメリットは防止するというつもりで、私、いま、どういうデメリットがあるかという点については、むしろメリットだけじゃないかくらいにさえ思っておるわけです。
#86
○佐々木静子君 この戸籍公開の問題については、特に人権思想という点から見て、私も非常に総合的に見て歓迎すべき改正であるというふうに考えているわけでございますけれども、特にこれは、昨年ちょうどこの法務委員会で憲法問題が大変論議されたわけでございますけれども、その憲法制定の三十周年というこの記念すべき年に、しかも国際人権規約の発効というこの人権の年と言われていることしに、この改正法案が出されたということは大変に喜ばしいことであると思うわけです。そして、この日本の憲法の人権保障の規定あるいは国連での国際人権規約などから考えますと、この世界の水準から考えても自己の私事、家族あるいは通信に対してはほしいままに不法に干渉されたり、名誉及び信用を不法に攻撃されることはなく、すべての人はこのような干渉や攻撃に対して法の保護を受ける権利を有するという規定がうたわれている。そういうふうな国際的な規約あるいは憲法のもとで、この戸籍法というものがいままで法律上改正ということに踏み切れなかったわけでございますけれども、事実上は、これは部落解放同盟を中心とする多くの国民運動の力で、私も再三法務省の方にもお願いをいたしまして、事実上法律の規定とは別に非公開と、公開についての制限を、禁止するという措置を認めていただいていたわけでございますけれども、これが大体面積的に言うと日本のうちのどのぐらいの部分を占めておったのか。行政庁としてはどのぐらいの市町村がもうこの法律の改正を待たずに何らかの意味での戸籍の公開制限というとこまできておったのか、まずその点から伺いたいと思います。
#87
○国務大臣(稻葉修君) この点につきましては所管が総理府でございまして、その方からの調べを民事局長から答弁させます。
#88
○政府委員(香川保一君) 全国の市町村は御承知のとおり三千四百ぐらいあるわけでございますが、いま御指摘の問題で、何らかの公開制限的な取り扱いをしている市町村は約三百九十ぐらいあるように聞いております。
#89
○佐々木静子君 そうすると、いま私ども関西に住んでおりますと、もうかなりのところが事実上公開制限になっている。たとえば、私どもの大阪府でございますと、大阪府下の市町村は全部公開制限に一昨年からしていただいているというようなことから、実は、もっと広範囲に事実上の公開制限が行われているんじゃないかというふうに思っておったんですが、いま伺っていますと大体一割ぐらいの状態ということでございますが、せっかく法案の改正を出していただいて文句を言うとなんですが、いままでの部落解放運動を初め多くの国民の人権を守れという運動がこれだけ起こっていた割りにすれば、非常に改正がおくれたのではないか、遅きに過ぎるのではないかという感じがするわけですが、どういうわけでこのようになったわけですか。
#90
○政府委員(香川保一君) その部落問題を機縁にして、というよりも、その以前から戸籍公開の制度を悪用しての個人のプライバシーの侵害というふうな事例はあちこちで散見したわけでございますが、さような次第もございまして、法務大臣の諮問機関である民事行政審議会に戸籍公開の原則に対して何らかの制限を設けるべきかどうかという諮問がされまして、昨年の二月に、正当な事由がある場合に戸籍の謄抄本等の請求ができるということにすべきだ、という答申をちょうだいしたわけでございます。私どもといたしまして、先ほど申しました三百九十の市町村におきまして、現行の戸籍法十条一項ただし書きの、正当な理由がある場合には市町村長は戸籍の公開を拒むことができるという規定を根拠にしての、市町村の先ほど申しました公開制限の取り扱いがされておるわけでございますけれども、この問題につきましては、現に三百九十――これはいろいろ程度の差はございますけれども、一般的に申し上げまして戸籍法の十条一項ただし書きの解釈といたしまして、さような画一的な公開制限をすることが一体法律上許されるかどうかという法律上の問題があるのみならず、さような制限をすることが市町村の窓口事務の実態から申しまして相当無理があるのではないかというふうな懸念がありまして、さような問題も踏まえまして昨年の二月に民事行政審議会からの答申を受けて法案の改正作業に着手したわけでございます。私どもといたしましては、基本的に戸籍の公開の原則というのは、何もかにもとにかく絶対的に公開しなきゃならぬというふうな理論的な要請があるわけではなくて、戸籍制度の機能から必要がある者にそれを利用していただくということでございますので、他人のプライバシーまで侵害するとかいうふうな人権侵害のおそれのあるようなことにこの戸籍公開制度が悪用されるというふうなことは、当然内在的な制約として戸籍法で制限できるものだと、かような理論的な根拠に立ちながらも、ただ、市町村の謄抄本の交付事務の窓口の実態を考えますと、なかなかこれ、円滑な運用ということがむつかしいわけでございます。確かに、先ほど申しましたようにプライバシーの侵害等の悪用の事例はございますけれども、全体的に見ますればきわめて数が少ないわけでございまして、この数の少ないものをチェックするために一般的に手続的に厳格にするということは、一方戸籍制度を利用する、活用する面での国民に非常に迷惑をかけるおそれもあるわけでありまして、さような面と戸籍の実際の窓口事務の取り扱いが円滑にいくというふうないろいろの観点を考えて適当なところで調整せざるを得ない。この辺のところが先ほど申しましたように、昨年の二月に答申を受けながら法案がこの国会に提出するというふうに、おくれたと言われればまことにおくれたわけでございますけれども、さような事情がございまして、非常にこれはジレンマと言っては言い過ぎでございますけれども、一方のところを非常に厳格に運用することによって多数の者に迷惑をかけるというふうなことがなく、しかも戸籍行政として公開制限の適正、円滑な運用を図るということは相当法制面でも、また実際の運用面におきましても工夫をしなきゃならないむつかしい問題だと思うんでありまして、さようなことから、実際に戸籍事務を担当していただいている市町村の意向というものも私どもとしては十分しんしゃくしなきゃならぬというふうなこともございまして、今国会に提案するというふうなことになったわけでありまして、その辺の事情はひとつ御賢察願いたいというふうに思うわけでございます。
#91
○佐々木静子君 この戸籍と除籍ですね、この公開の制限について差が設けてあるわけですけれども、この戸籍と除籍の間にどうして段階的な差別が設けてあるのか。差があるのか。公開制限についての強弱があるのか。その点について。
#92
○政府委員(香川保一君) まあ戸籍の方は、これは現に生きていると申しますか、生存中のそれぞれの方の身分関係を公証しているものでございます。除籍の方は、いろいろの事由によりまして生きている方について戸籍から除くことはございますけれども、そのかわりに新しい戸籍の方に登載されているということもあるわけでありまして、大多数は死亡者の身分関係、いわば過去の身分関係を公証しておるというふうな機能の差があるわけでございます。さような点から考えますと、戸籍制度の身分関係の公証と申しましても、一番問題になりますのは何と申しましても現に生きている方たちの身分関係ということが一番利用面で大勢を占めるわけでございます。除籍の方の主たる機能は、つまりいろいろの官公署に対しまして相続関係を明らかにする。これはまあ決して好ましいことじゃありませんけれども、たとえば不動産の所有権の関係で、所有者が死亡いたしましても直ちに相続登記がされるというふうにはまいらぬこともございまして、どうしても過去のそういった相続関係を除籍簿によって明らかにすることによってそういう手続をするということが事例として大半を占めるわけでございます。そういうことから、まあ機能的にはそういう働きをしておることのほかに、率直に申し上げまして、現に市町村で保管中の除籍簿には必ずしも現代的な人権思想と申しますか、さようなことから再検討いたしてみますと、そういうことまで戸籍に登載しておく必要は現代的にはないというふうな事項もあるわけでございます。たとえば、御承知のとおり華族、士族、平民というふうないわゆる族称の記載というふうなものは、大正四年以前の戸籍には登載されておるわけでございますけれども、かようなことが一種の一つの身分的な差別ということに悪用されるおそれもないとは言えないわけでございます。それから、さらに、たとえば子供が出生いたしました場合に、現在ではその子供の出生地は最小行政区画、つまり市町村までしか記載いたしておりませんけれども、昭和四十五年以前は、まあ極端な例を申しますと刑務所の中で生まれた子供は何々刑務所内で生まれたというふうな、まあ出生の事実を明らかにするものとしてそこまで記載する必要もないようなことも、昔の戸籍には記載されておるというふうなこともあるわけでございます。
 そういうふうな意味から、やはり今日的な立場で考えますと、戸籍自体の記載において、いわば余分なことが書いてあるために、そのプライバシーを侵害するおそれにつながるというふうなことがあるものでございますから、しかし除籍簿から一切そういう記載をなくしてしまうような作業をやるとなりますと、非常にこれはたとえば関西方面でそういうことを真剣にやっていただいたところもあるわけでございますけれども、莫大な費用がかかるというふうなこともございますので、そこでまあ実際の公開の必要性ということを中心にしまして、除籍簿はできるだけ最少限必要な場合だけ公開するということにしぼった方が妥当ではないかと、かようなことで生きている戸籍と除籍との公開の制限に差を設けた、かような次第でございます。
#93
○佐々木静子君 この戸籍の謄抄本の交付について、今度の改正で、法務省令で定める場合を除いて、請求の事由を明らかにしなければならないというふうになっておりますね。この請求の事由を明らかにするという方法ですね。これは大体具体的にはどういうふうな方法でどのような程度のまあ疎明と申しますか、しなければならないのか、どのように考えておられますか。
#94
○政府委員(香川保一君) まあ率直に申しまして、この改正によるその戸籍の公開制限の中で、いま御指摘の問題がまあ一番実務的にはむつかしい問題だと考えておるわけでございます。この事由を明らかにするということにいたしておりますのは、つまりそれを足がかりにしてと申しますか、機縁にして、市町村長が請求の目的が不当であるかどうかを判断することになるわけでございまして、さような趣旨から申しますと、この請求の事由は、まあ具体的に正確に記載されることが望ましいことは言うまでもないわけであります。しかし、いろいろのこの戸籍の謄抄本を必要とする場合を考えてみますと、この請求の事由を余りにも詳細、具体的に記載を要求するということになりますと、逆に請求する方の立場上困ることもないとは言えないわけでございますし、また戸籍の謄抄本の請求される方の大半は、必ずしも法律実務家的な方ではない、一般の国民が多いわけでございまして、さような場合に統一的と申しますか、あるいは形式的な請求事由の記載を決めるというふうな運用になりますと、先ほど御懸念の、つまり公開制限によるデメリットも考えられないではないわけでございます。その辺のところが非常にむつかしいわけでございますが、この辺のところは、私どもとしてはこの法律が施行されますまでの間に、実際の窓口事務で苦労しておる市町村とよく協議いたしまして、これはまあ地域的な差があると申し上げてはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、やはり当該戸籍のそれぞれの記載事項によっても違ってくる問題があると思うのであります。たとえば、その当該戸籍を見ますと嫡出子ばかりであって、それが非嫡の子がいるかいないかというふうな、そんなふうにうかがわれるような請求がありました場合には、その請求に応じても戸籍の謄本自体からさようなプライバシーの侵害ということのおそれは、結果的にはないわけでございます。さようなケース、ケースごとに運用の妙を得なければ、一般の正当な目的による請求まで阻害するというふうなおそれもあるわけです。さようなことがあってはならぬわけでございますので、その辺のところはひとつよく具体的なケースを考えながら、窓口事務を管掌していただいている市町村と十分詰めて一つの運用基準的なものをつくってまいりたいと、かように考えておるわけでございまして、この点、市町村の意見を十分しんしゃくしたいと、かように考えております。
#95
○佐々木静子君 このいまの正当な事由を表示しなければならないのは、「法務省令で定める場合を除き、」というふうになっておりますね。この法務省令の中に定める場合というのは、大体どういうことを考えておられますか。
#96
○政府委員(香川保一君) これは、特に省令に法律で委任していただいている趣旨は、この改正条文の趣旨から考えまして請求が不当と、つまりプライバシーの侵害等につながるものでないことが十分他の面で担保されているという場合には、法務省令で除外事由を設けてもいいと、かような委任規定だと思うのであります。さような趣旨で考えますと、まず第一に考えられますのは、当然のことでございますけれども、戸籍に記載されている本人が請求する場合は、これはもう問題がないわけであります。さような戸籍に記載されている者あるいはその親族が請求する場合は除いてしかるべきだと。それから、国あるいは地方公共団体等の職員が請求する場合、これは守秘義務も当然ございますし、一つのそういう行政として必要があるわけでございますから、これは特に請求の事由を明らかにする必要もないと、そういうふうに考えるわけであります。そのほかに、たとえば弁護士の場合にはこれは弁護士法で職務上知り得た秘密は守らなきゃならぬという守秘義務が課せられておることと、それから弁護士業務の内容といたしまして身分関係あるいは相続関係を明らかにするというふうなことが当然必要でございますので、守秘義務がうらはらになっておりますこういうふうな弁護士というふうなものは当然除外していいであろう。それと同種の、準ずるようなものとして、職務上そういうものが必要になって、しかも法律で守秘義務が課せられておる司法書士とか土地家屋調査士とか、あるいは税理士とか海事代理士というふうな関係の業法によるそういった職務を行っておる方たち、この者は除外して差し支えないだろうというふうに現在考えておるわけでございまして、そのほかに、さらに当然この趣旨からいって法務省令で除くものがあるかどうか、さらに精密に調査して省令を制定していただきたいと、かように考えているわけでございます。
#97
○佐々木静子君 これはいろいろと戸籍を扱う必要のある自由業者に対しては、この法務省令で定める場合の中に入れていただけるという御答弁のように伺ったんですけれども、これは各種の団体からぜひともこれは明示してほしいという強い要望が出されているわけですので、いまの御答弁で弁護士、税理士、司法書士、土地家屋調査士、それからこれは税理士というと、公認会計士は当然中に入るわけですか。
#98
○政府委員(香川保一君) ええ。
#99
○佐々木静子君 それから行政書士はどうなるわけですか。
#100
○政府委員(香川保一君) 行政書士も、私どもの調査の結果によりますと当然職務上必要とする場合がございますので、これは法務省令の中でやはり除外例として決めるべきだと、かように現在考えております。
#101
○佐々木静子君 そのほか、どういう職業が法務省令の中に入るわけですか、もうそれだけでございますか。
#102
○政府委員(香川保一君) そのほかに、たとえば特許権の相続関係というような問題もございますので、弁理士というふうなものも考えられますし、いま、この法の委任規定の趣旨に反しない限り、弊害がないというものを各省とも協議しまして詰めておるところでございまして、いま例示いたしましたものよりもふえることはあっても減ることはございませんので、いましばらく最終的にどうなりますか、お待ち願いたいと思います。
#103
○佐々木静子君 ふえることがあっても減ることがないと聞いて安心したんですが、これは団体から非常に強い要望が出ていますので、これはいま少なくとも例示的にお挙げになったのは考えられるというだけじゃなしに、必ず法務省令の中に織り込んでいただくように、これはぜひとも約束していただきたいと思うわけです。これは入れていただけますね。
#104
○政府委員(香川保一君) いま例示いたしましたものは必ず入れます。
#105
○佐々木静子君 いま第十条について質問したんですけれども、第十二条の二ですね、これには第十条よりもちょっと表示が変わりまして、「国又は地方公共団体の職員、弁護士その他法務省令で定める者も、同様である。」云々の個所があるわけですけれども、ここの「その他法務省令で定める者」の範囲は、第十条と同じというふうに解釈して間違いないわけですか。
#106
○政府委員(香川保一君) 全く同じになると思いますけれども、この例示しております十二条の二の一項の「国又は地方公共団体の職員、」というほかに、たとえば土地改良区なんというのがあるわけでございますね、これは法律的には地方公共団体の枠内に入ると思いますけれども、それに準ずる公法上の団体があるわけでございます。さようなものも入ってくると、これは恐らくは十条の二項の法務省令で定める場合を除くというところにも当然入れなきゃならぬということで、さっき申しました業法上の問題は、いま、ここで全く同じだというふうに断言するだけの自信はないんでございますけれども、大方の考え方としまして、範囲は同じというふうに御理解願って差し支えないと思います。
#107
○佐々木静子君 これはいま申し上げたように、戸籍を扱う職業に関与する人が、自分たちの仕事がそれでいろんな不自由を受けるのではないかということを大変に心配しておりますので、重々この点を明確にしていただきたいということをお願いして、私の質問は一応保留いたします。
#108
○原田立君 佐々木委員より詳細に質問があり、答弁もあったわけでありますが、多少ダブる点もあるだろうと思いますが、詳細にお答え願いたいと思います。
 大臣にお伺いしたいと思うのでありますが、今回の改正案は婦人の地位向上を目的とした民法、人事訴訟手続法、戸籍法の閲覧制度の廃止などを中心にした三法を民法等の一部改正案として一括して提案されたわけでありますが、一括改正の理由及び改正に至る経緯、これらについて御説明を願いたいと思います。
#109
○国務大臣(稻葉修君) 私は、いまの三つの点は相互に非常に密接な関連がある。したがって、一本の法律で出したという大ざっぱな答えしかできませんが、もう少し詳細には民事局長から答弁させます。
#110
○政府委員(香川保一君) 今回の民法、人事訴訟手続法、戸籍法のそれぞれ一部改正を、一本の民法等の一部改正法律案ということで提案いたしました趣旨を申し上げますと、基本的なつながりは実質的に婦人の地位の向上ということで一本のブリッジがかかっておるというふうに考えておるわけでございます。民法の改正は、形式的に申しますれば離婚復氏に対する一つの例外措置でございますけれども、もちろん男性の場合も考えられるわけでありますけれども、実質的に申しますれば、もうほとんど全部が女性、妻の地位の向上という趣旨でございます。それから、人事訴訟手続法の離婚等の裁判官轄の問題も、婚姻による氏を称した方の住所地の裁判所という現行法を改めて、先ほど来御説明申しましたような、実質的にそういう現行法のもとでは妻の方が不利益を受けることが多大であるということに着目しまして、当事者の便、不便ということを証拠資料の収集という観点から実態的に妻の方に不利益がないようにという配慮での改正でございます。それから、戸籍法の一部改正の中には、端的なものは嫡出子の出生届が父親が第一順位になっておるということが、今回の改正によりまして父、母ともに同順位でその権能を認めるということ。
 それから、先ほど来御質問もございました戸籍の公開の制限の問題も、実際はプライバシーの侵害等によって不利益を受けると申しますか、人権侵害のおそれのあるような事象の生じておりますのは多くの場合女性でございますので、さような戸籍公開の制限によって女性のそういう不利益を緩和するというふうなことでございますので、したがって、形式的にはともかくといたしまして、実質的には女性の――婦人の地位の向上あるいは憲法に言う男女平等の具現というふうな観点から、それぞれ改正事項がつながっておるというふうに考えまして、内閣法制局ともよく相談いたしました結果、かような内容であれば三つの法案を一本の法律にまとめて提案して差し支えないということで提案した次第でございます。
 それから、第二の御質問の、この法案を提出した経緯でございますが、民法の改正と人事訴訟手続法の改正は、先ほども御質疑があったように昨年の国際婦人年ということもございまして、かねがね法務省におきまして法制審議会におきまして、相続法、身分法の分野で婦人の地位の向上ということも検討いたしておった経緯もございまして、その中で身分法の関係でこれだけは法制審議会の正式な全般的な答申がなくても、この方向の改正は何ら差し支えないという御了解を得た事項が民法の一部改正の内容でございますし、同時に、人事訴訟手続法の改正は、これは実は民法とは関係ないと言えばないんでございますけれども、事柄が離婚の問題でございますので、やはり身分法と関係があるということで、非公式に身分法小委員会、民法部会の審議を煩わしまして、かようなことをやっても間違いはないというふうな御答申を得てやった。それから戸籍法の改正は、先ほどもちょっと申し上げましたように法務大臣の諮問を受けまして、民事行政審議会でやはりプライバシーの保護、女性の地位の保護というふうないろいろの面から、戸籍法の当面する問題について御審議を煩わしまして、昨年の二月に答申を得て、その答申に従った法案を作成して提案したと、かような経緯でございます。
#111
○原田立君 大枠において婦人の問題、女性の問題ということは了解しましたけれども、三法ともその性質から見てもおのおの別の内容のものであり、説明を伺っていても十分理解できるものとは言えないと思うのであります。特に三法とも国民生活に密接な関係があることからも、個々の法案別に十分なる審議を尽くし法改正を行うべき性格のものであると思うのでありますが、この点、どのように判断されますか。
#112
○政府委員(香川保一君) 先ほど申し上げましたのは、民法と人事訴訟手続法、戸籍法、三つの法律の一部改正を一つの法案で提案した理由は何かというふうな御質問と承って御答弁申し上げたわけでございますが、これはまあ御理解いただけると思うのであります。個々の法案の中身につきましては、何と申しましても民法は国の民事関係の基本法でございますし、人事訴訟手続法は一つの裁判管轄の重要な問題でございますし、戸籍法は国民生活に非常に密接な関係を有するものでございますので、慎重に御審議願うのは当然のことだと思いますけれども、私どもといたしまして、いろいろ問題はあるけれども、これだけは早急にやはり立法措置を講ずる必要があるということで、国民の大多数の方には十分御理解いただけるというよりは、むしろ国民の多数の御要望に沿った改正法案の内容だというふうに考えておるわけでございまして、さような趣旨でひとつ御審議をお願いしたいというふうに申し上げるわけであります。
#113
○原田立君 民法は最も国民生活に密着した法律の一つであります。しかるに、今回の法改正案提出は半年もたたないうちに国会に提出されたのでありますが、このように短期間の提出は異例のことではないかと思うのであります。私は決してこの改正に反対をするというのではなく、このような短期間で国会に提出されたということで、果たして国民の間で十分なる議論が尽くされた上での改正かどうかという点を心配するわけでありますけれども、早くしたことについての何か理由があったのかどうか、この点はいかがですか。
#114
○政府委員(香川保一君) ただいま半年の早急な間に提案したというふうなことでございますけれども、法務省といたしましては、民法の改正、人事訴訟手続法の改正、戸籍法の改正は、何もいまから考えまして半年前から検討を開始したという問題ではないわけでございまして、離婚復氏の問題にいたしましても、過去に身分法小委員会においていろいろ議論されておったわけでございます。戸籍法の改正をとりましても、一昨年、法務大臣の諮問によりまして民事行政審議会で一年間積極的に精力的に御審議を願いまして、昨年の二月に答申があったものでございます。したがって、六カ月ぐらい検討して早急に法案を出したということではないのでございますが、おっしゃられる御趣旨が、この問題が早く立法措置を最小限これだけでもやれというふうな国民の要望が非常に強くなりましたのは、半年と申しますか、約十ヵ月ぐらいになりましょうか、法務大臣あてにもいろいろの要望書が参りまして、そのような時点から考えますと六ヵ月あるいは十ヵ月というふうなことに相なるかもしれませんけれども、問題それ自身は法務省といたしましては相当前から検討いたしておった問題でございます。
#115
○原田立君 民法改正案の趣旨は、離婚による復氏の原則を維持しながら、離婚後も引き続き婚姻中の氏を唱えようとする者についての、離婚後三ヵ月以内に戸籍法による届け出をすることにより、婚姻中の氏を称することができるという点にあるわけでありますが、民法七百六十七条では夫の氏を称する婚姻をすれば、離婚によって旧氏に復するのは妻であり、妻の氏を称する婚姻をすれば、離婚によって旧氏に復するのは夫ということになり、形式的には男女の不平等は全くないと思うんでありますが、しかし、わが国の実情は九五%以上が夫の氏を称する婚姻が行われている。その点が問題なんでありますが、その結果、今回の改正により夫の氏を称する婚姻を安定させ、そこに家長の意味を持たせることを間接的に援助することになる、そういうふうな意見があるわけです。そういう意見があるわけでありますが、この点についてはどのように判断なさいますか。
#116
○政府委員(香川保一君) 夫によるその家長の制度を安定させるというふうな御質問、さようなふうに批判する向きもあるという御質問のようでございましたが、私どもといたしまして、この離婚復氏の例外措置を設けることによって、どうしてそういうふうなことになるのか、端的に申し上げまして私にはよく理解できませんです。
#117
○原田立君 大臣、この夫の呼称を用いるのが日本国内においては九五%にも達していると、こういうことですね。これはどういうふうにお感じになりますか。
#118
○国務大臣(稻葉修君) やっぱり夫婦ですから、同じ姓の方がいいんじゃないでしょうかね。別に、どっちでなけりゃいかぬということは言いませんけれども、あなたの御質問は九五%も夫の方へ行く、それはどうもやっぱり男がいばってるんで、女は下に見られているように思う、そういうふうに外国人なんかから見たらそうなるんじゃなかろうかという御心配ではないかと思いますがな、それはそうかもしれませんね。
#119
○原田立君 今回の改正案によって、では、どれだけ婦人の地位向上があるのか、その点はいかがですか。
#120
○政府委員(香川保一君) まあ実態は約九八%以上、婚姻の際に夫の氏を称するという実態でございますが、これはまあさておきまして、婚姻中妻が十分社会活動をしておる、そのときに不幸にして離婚ということに相なりました場合に、現行の民法の七百六十七条では実家の氏に当然復してしまうということになるわけでございます。そのことはやはり婚姻中の氏でもって婦人が活動しておられた、その社会的ないろいろの活動の面において、これは不利益があるというふうなことは容易に理解できるわけでございまして、さような婦人の社会的な活動が離婚という不幸な事態によって当然復氏するということから不利益を受ける、つまり活動しにくくなるとかいうふうなことになることは、婦人の地位の向上には逆行するものだというふうに考えるわけでございまして、さような意味で離婚復氏の原則に例外を設けるということは、婦人の地位の向上につながると、かような考えでございます。
#121
○原田立君 戸籍法改正の歴史的経緯についていろいろと書物を見ますと、明治三十一年には公開の原則が明記され、今日に至っているわけであります。先ほども佐々木委員からもその面について質問があったわけでありますが、この公開の原則を明記した理由、これは一体どういうふうに理解なさるのか。それからまた今回改正して非公開と、こうする、また逆戻りする、これとの関係は一体どうなるのか。この点はいかがですか。
#122
○政府委員(香川保一君) 明治三十一年に戸籍法におきまして公開の原則を採用いたしましたのは、的確に文献等によるかくかくしかじかの理由に、あるいは経緯によるものだということは余り定かでないんでございますが、当然考えられますのは、民法典が制定されまして近代的な市民社会における民法ができた。それとうらはらの問題といたしまして、当然、民法におきましては人の行為能力あるいは法律行為の効果、あるいは身分行為の効果、あるいは取引の安全というふうなことで、人の身分関係というものが非常に重要な役割りを持つことになってきたわけでございます。
 さような意味で、そういったいま申しましたような身分行為の適正、あるいは取引の安全等の要請から、当然人の身分関係を公証する戸籍制度というものの利用が必要になってくるわけでございまして、さような趣旨から、戸籍がまさに人の身分関係を公証している唯一の制度でございますので公開した、かようなことがその実質的な理由だというふうに考えておるわけでございます。
 それは当然そういうことであるわけでございますが、今日におきましてもさような必要性は毛頭減少しているわけではないわけであります。しかし、今日におきまして、この戸籍のさような趣旨からの公開の制度をいわば悪用いたしまして、いたずらに人のプライバシーを侵害する、あるいは人権侵害につながる措置がされるというふうなことが、これはまあ一つには戦後における、新憲法下における人権思想の高揚とも関連する問題でございますが、さような制度本来の目的に背馳した、人の迷惑になるようなものの資料として使うというふうなことは、これは制度として当然やはりチェックする必要があるというふうに考えるわけであります。
 ちなみに申し上げますと、新憲法下におきまして、新憲法下と言ってはあれでございますが、戦後、昭和二十二年の新戸籍法の制定のときに、政府原案では正当な理由がある場合に限って公開するというふうな案が国会に提出されたわけでございまするけれども、その当時におきましてはまだいま申しましたような戸籍の公開制度を悪用してのプライバシーの侵害、人権侵害というふうな問題はさほど国民の意識には上っていなかった、さようなことから、国会におきまして政府原案が修正されまして現行の法のような野放しのと申しますか全面公開になりまして、そしてただし書きで、市町村長が正当な理由がある場合には公開を制限できるというふうなことになったわけでございます。それはそれなりの理由があったわけでございますけれども、ここ数年来、戸籍の公開制度を悪用することによるいろいろの他人の迷惑というふうな問題が、大きく国民的な関心を持って問題とされてまいりましたこともございますし、先ほど申しましたような戸籍の公開制度というのはそれ自体アプリオリ的に絶体そうでなきゃならぬというふうな理論的根拠があるわけではなくて、利用の必要性がある場合に公開されるということが本筋であるわけでありまして、それを悪用するというふうなことをやはり制度としてチェックできる根拠を法律上設けておくのが当然のことではなかろうかと、かようなことで民事行政審議会におきまして、先ほど申しましたように不当に利用する場合について公開の制限をすべきであるというふうな答申になった次第でございまして、それを受けて今回の改正法案を提案いたしておるわけでございます。
#123
○原田立君 戸籍法改正に伴い法制審議会の民事行政審議会、ここで答申がなされたというのでありますが、この事前の調査あるいは審議の期間、これらは慎重に審議なさったんだろうと思いますが、どの程度の事前の調査を行って、そして答申がなされたか、その点はどうですか。
#124
○政府委員(香川保一君) 民事行政審議会におきましては、大臣の諮問を受けまして約一年有余、きわめて精力的に十数回たしか御審議を煩わしたと思いますが、しかも民事行政審議会の構成メンバーは学者のほかに民間の有識人、それから市町村の関係者、それから弁護士会、司法書士会等の関係団体の代表というふうな国民各層の、いわばこの問題について十分慎重に審議をお願いできる方たちを構成メンバーといたしまして、月に多いときは二回のこともあったと承知いたしておりますが、きわめて精力的に審議をしていただきました。もちろん、民事局におきましても、その審議の参考になる資料はいろいろ作成いたしまして、実に身の入ったと申しますか、活発なしかも慎重な審議がされて答申がされたというふうに承知いたしております。
#125
○原田立君 大臣、今回の戸籍法の法改正に踏み切った動機は、先ほどから話がありましたように、主に同和問題に係る差別、人権侵害事件にあるようでございますけれども、同和問題の背景には制度以前に広く社会全体に巣くう誤った意識の存在があり、この意識を改めない限り単なる法改正のみでは何らの解決策にはならないのではないかと、こういうふうに思うのですが、大臣はいかがですか。
#126
○国務大臣(稻葉修君) 私も原田さんのおっしゃるとおりに考えます。単なる一片の法律で現在存するそういう部落差別的な――日本の恥だと思いますが、こういう状態が一遍になくなるなんてことは考えておりません。これはむしろ法以前の問題ですね。いろいろな啓蒙運動やなんかを通じ、また日本の文化を高めることによって、そういう野蛮な考え方を国民の間から放逐していくという運動が根強く続けられなければ解決できない問題だと思います。おっしゃるとおりだと思います。
#127
○原田立君 精神的には大臣の言われるとおりだと思うのでありますけれども、それでは今回のがいわゆる糸口に手をつけたというふうなことと理解し、第二段、第三段としてはどういうふうなことをお考えですか。
#128
○政府委員(香川保一君) ただいま大臣御答弁のとおり、この戸籍法の公開制限の問題で一つの人権侵害等の絶滅を期すると申しますか、さような大それたことを考えているわけじゃないわけであります。まさに差別現象等の人権侵害の問題は法律でもってどうというよりも、より人権の啓発活動を活発にやることによりまして国民の意識がさようなことのないように持っていくという、さようなところに本質的な、まあいわば精神的な改造をするというところにあることは申すまでもないと思うのでありますけれども、しかし、たとえばこの今回お願いいたしております戸籍の公開制限の問題等のように、国の一つの制度といたしまして積極的にそういった人権侵害等の事象をなくする。つまり、被害者の方の保護を図るということよりも、その人権を侵害するおそれのある、そういったものを事前にチェックすることができるようなやはり姿勢というものが必要だと思うのでありまして、まさに積極的な人権侵害の防止ということよりは、人権が侵害されるおそれのあるようなことを事前に防止するという制度が当然いろいろの制度に内在して必要なことだと思うのでありまして、さような限度における今回の戸籍法の改正でございまして、さらに積極的にそういうようなことがなくなるような国民の意識の、人権思想の高揚を図るということはもちろんこれはもう前提と申しますか、絶対的に必要なことだと思うのであります。さようなことは一つの制度の法改正というふうなことでできるものではなかなかないわけでありまして、私どもとしてはそういうことをやる場合に邪魔になる、さような被害者の方の保護というよりは加害者の方の防止というふうなことをそれぞれ制度的に考えていかなきゃならぬというふうなことで、今回の一つの方法として戸籍法の改正をお願いしていると、こういう考え方でございます。
 だから、第二段、第三段でどういうことをやるのかというふうなことは、さしあたり少なくともいろいろのことは考えられると思いますけれども、けさほども問題になりましたような一つのそういう営利的な他人の身分関係等を調査することを業としておる者の取り締まりというふうなことも、当然その一環として考えられるわけでございますけれども、戸籍法等の民事法の分野においてさような趣旨に沿うような法改正ということは、これは常時まあ検討しなきゃならない問題ではございますけれども、具体案としていま持ち合わせているということはございません。
#129
○原田立君 戸籍法改正案第十条の一項では「何人でも、手数料を納めて、戸籍の謄本若しくは抄本又は戸籍に記載した事項に関する証明書の交付の請求をすることができる。」とする一方、第十条二項では、「前項の請求は、法務省令で定める場合を除き、その事由を明らかにしてしなければならない。」としております。戸籍公開の原則により戸籍の公開と自由な閲覧は、各種の身元調査等広く利用され、国民の社会生活に多大な利便を与えたことは事実であります。一方、趣旨説明の中にもありましたように、個人のプライバシーの暴露等、人権侵害問題を引き起こしている悲しい事実も一部にありますが、このような点を考えますと、第十条一項と二項の公開の原則と規制の調整は非常に困難な作業になると思うのでありますが、この点の調整についてはどのように考えておりますか。
#130
○政府委員(香川保一君) 確かにこの公開制限の今回の法改正で一番問題なのはその点だと思うんであります。一般的に申しますれば、きわめてごく例外的少数の人権侵害のおそれのあるそういう公開制度の悪用を防止するために、一般的に厳格な方式規制をするということになりますと、まことに大多数の国民の迷惑至極な話になるわけであります。何と申しましても私は実質的には戸籍の公開制度をさような人権侵害につながることに悪用する国民は、きわめて少数だというふうに考えておるわけでございますけれども、しかし、現に現実の問題といたしまして、先ほども問題になりましたように全国の市町村で三百九十の数に上る市町村が、何らかの公開制限の措置を法律的には疑問がありながらとらざるを得ないという現実も無視できないわけでございまして、さような制限の必要性に現行法のままですと何ら法的根拠がないわけでございまして、それをやはり明確に法律の精神として根拠づけるということも重要なことだと思うのであります。
 問題は結局運用の問題でございます。この点については現実にかような戸籍公開の謄抄本交付等の事務を処理していただくのは市町村でございますので、市町村の意見も十分聞き、この法律の施行までに実務的に無理のない、一般の団民に迷惑をかけなくて、しかもこの所期の目的が達成できるようないろいろ知恵をしぼり切って、その運用の指針と申しますか、基準をいろいろ詰めてまいりたいと、かように考えておるわけでありまして、なかなかこれは口では簡単のようでございますけれども、実際問題としては非常にむつかしいことだというふうに思っておるわけでございます。まあ国会の審議によっていろいろの御意見も拝聴いたしまして、さようなことも踏まえて十分運用に誤りのないように尽力してまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
#131
○原田立君 国会の調査活動は、第十条二項の省令ではどのような位置づけをなされるおつもりですか。
#132
○政府委員(香川保一君) 先ほど佐々木委員の御質問にお答えしましたように、国、官公署等の職員が請求する場合には、この十条二項の「法務省令で定める場合」ということに該当するように法務省令を制定いたしたいと考えておりますので、したがって、除外例ということになろうかと思います。
#133
○原田立君 いま局長も話がありましたが、戸籍法第十条三項に、「市町村長は、第一項の請求が不当な目的によることが明らかなときは、これを拒むことができる。」と、こうされておりますが、「不当な目的」とは具体的にはどのような内容のものを言うのか。「明らかなとき」とまた法律にもありますが、これもまたどういうふうな意味を有するのか。その二点についていかがですか。
#134
○政府委員(香川保一君) 「不当な目的」と申しますのは、これはまさに「不当な」という一つの価値判断を伴うことでございますが、戸籍公開の今回の制限の法改正の趣旨は、先ほども申し述べましたように、戸籍公開制度を悪用して他人の人権侵害というふうなことに悪用される、そういうことを防止することにあることでございますので、さような観点から、本来の戸籍公開の制度をとっておるのを、その必要もないのに悪用して他人のプライバシーの侵害、人権侵害につながるような目的による請求というふうな解釈になろうかと思うんであります。
 「明らかなときは、」というふうに規定いたしておりますのは、先ほども申し述べましたように戸籍制度は国民の身分関係を公証する唯一の制度でございまして、これが取引関係、身分関係等にも非常に必要不可欠な資料になるわけでございます。さような意味から「不当な目的による」ということが必ずしもはっきりしないにもかかわらず、戸籍の謄抄本の請求を拒むというふうなことになりますと、戸籍制度のこの国民の利用を著しく阻害するということに相なりますので、市町村長におきまして不当な目的によることが明らかだという認定がついた場合に限って拒むことができる、かようにするのが妥当ではなかろうか、このような考えでございます。
#135
○原田立君 もう少し具体的にはどうですか。
#136
○政府委員(香川保一君) たとえば、ある男性の非行を明らかにする意味で、その男性には認知した子供、つまり本来の配偶者以外の女性に子供を産ましてそれを認知したものがどれだけおるかというふうなことを調査して、それを公表するというふうなことで謄抄本の交付請求が必要なんだ、こういうふうなことがあからさまになったといたしますと、これはまさに他人のプライバシーの侵害というおそれがあるわけでございますから、このような事例のときには市町村長としては当然拒むべきではなかろうかと、かように考えておるわけでございます。
#137
○原田立君 法改正に伴い制限措置を設けることになっているわけでありますが、窓口となる各市町村長の個々の判断には当然差が生ずることになり、窓口の事務がいたずらに混乱を招きかねないという心配が伴うと考えられるわけなんですけれども、この点に対する処置をどうするのか。たとえば東北方面、北海道方面、西日本方面、いろいろと場所によって違うし、先ほどの話も三百何件かの制限をしているのがあるというような話もありましたし、再度お聞きしたい。
#138
○政府委員(香川保一君) いろいろのプライバシーの侵害、人権侵害と申し上げましても、これは遺憾ながら地域によっていろいろの差があると思うんであります。たとえば、先ほど議論されましたような同和の問題にいたしましても、やはり地域的な差があると思うんでありまして、さような意味でこの公開制限の市町村長の窓口における取り扱いがある程度区々になると申しますか、その地域、地方の実情に応じて妥当な運用がされるということの方がむしろいいのではないか。これを全国一律に、まあ統制的と申しますかあるいは画一的に運用されるということは、かえって全体的には国民に御迷惑をかけるということになるのではなかろうかというふうな危倶を率直に申し上げて持っておるわけであります。この辺のところはまさに各市町村におきましてはわれわれ以上に戸籍の公開制度悪用によるさような人権侵害というふうな問題、痛切にそれぞれニュアンスの差はございますけれども持っておるわけでございますので、さような一線の市町村の一つの考え方と申しますか、おのずから地域差によるそういう、まあ結果的には具体的に妥当な取り扱いというものをやはり積み重ねていかなきゃならぬというふうに思うのであります。まあ市町村の御意見もいろいろございますが、ただいまのところ全国的にしゃくし定規的な画一的な運用ということは、かえってマイナスになるんじゃなかろうかというふうにいま考えておるわけでありまして、まあ市町村長とよく協議いたしまして、国民に御迷惑をかけない妥当な運用を図られるように、できるだけ工夫をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
#139
○原田立君 画一的にすれば確かに弊害が出るかなと、こういうような感じは局長の話の前にも持つわけでありますけれども、やっぱり一つの法律ですから、法律が誕生すれば一人歩きするわけなんですから、そういう意味で思うのでありますが、運用面での市町村長の判断についてこの点の判断が当然地域的な差が生まれることは避けられないと思うんでありますが、判断に伴うトラブルを防ぐための具体的対策をどのように行うつもりでいるのか。この点とあわせて、一般国民に対する啓蒙と言いますか、これをどう行うかによってかなりの混乱を避けることができるのではないかと思うんでありますけれども、この二点についてお伺いいたします。
#140
○政府委員(香川保一君) これは、法務大臣が戸籍行政については監督指導の権限をお持ちでございますけれども、かような監督とか指導とかいうふうなことではなしに、市町村それぞれのブロックの戸籍事務協議会というふうなものもございますので、そういった各府県の戸籍事務管掌の実際取り扱いをやっている人たちと十分協議する機会がございますので、さような機会で十分詰めてまいりたい。そして全国的に一般的に通用する今回の法改正の趣旨なり精神なり、しかもこの運用を誤るときの弊害も十分配慮したそういったことを、まあ抽象的な一つの通達を出しまして、その通達の実施基準として各法務局、地方法務局を中心にしてのいろいろのもっと現場と密着した取り扱いの基準をいろいろ相談して、それでも私はいろいろのケースが起こってまいりますので、十全だというわけにはまいらぬと思いますけれども、さようなことで発足いたしまして、いろいろの例を積み重ねていって、御心配のような弊害、行き過ぎというふうなことのないようにしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。しかし、問題は相当むつかしいということは十分覚悟いたしておるわけでございます。
#141
○原田立君 なお、くどいようでありますけれども、戸籍法の改正で最も問題となる点は公開、非公開の調整、それからもう一点が請求の理由の当否が各市町村長の判断によるところからトラブルの発生につながるという点、いま申し上げたとおりでありますが、第一点の公開、非公開については、今回の改正に伴い非公開への調整が強まり、国民の社会生活に対しての利便を奪う方向に進むものではないかと心配する声が一部に強いのでありますが、この点に対する今後の見通しについてお伺いしたいと思います。
#142
○政府委員(香川保一君) まことにその点は問題の一つでございまして、先ほどちょっと申し述べましたように、実は大臣の諮問機関である民事行政審議会の答申は今回の改正とはちょっとニュアンスが違っておりまして、戸籍の謄抄本の交付請求は正当な事由がある場合に限ると、正当な事由がなければ謄抄本の交付請求はできないと、こういうふうなことにすべきだという答申でございます。これは積極的に謄抄本を請求する正当な事由がある、積極的にそういう事由があるということでなければ、つまり交付請求ができない、こういう方向の答申であるわけであります。この点は、理論的にはさような考え方というのは十分理由があると思うのでありますけれども、ただいま御指摘のようないろいろの運用の実態をいろいろ心配いたしますと、さような、積極的にその正当な事由がなければ交付請求ができないという方向がいいのか、それとも、そういう積極的な正当事由の有無ということよりは、請求自身が不当な目的によるというふうな消極的面に力点を置いた制限の方がいいかということをいろいろ議論いたしまして、結果的にただいまの御懸念も十分考慮いたしまして、むしろ市町村長において窓口事務の処理として、積極的な正当な事由の有無ということを判断して交付請求に応ずるかどうかを決めるということは、むしろ制限が厳しくなるおそれがあって、つまり正当な事由があるかないかがわからぬというときには交付請求を拒絶することになるわけでございます。そういうふうなことになっては公開のその制度の趣旨が没却されるおそれもあるというふうなことで、不当な目的によることが明らかなときという場合にチェックするというふうなことに、形式的には今回の改正法案は答申とその辺が違っておるわけでございます。ねらっているところは同じだと思いますけれども、いま御指摘のような心配、懸念が少しでもないようにするには、むしろそういった方向の方が妥当ではないかというふうに考えまして、かようないわば積極的な正当の事由の有無は問題にしないで、そういうふうなものがなくても、つまり不当な目的によるということでなければ交付請求に応じていいというふうな形にいたしたわけでございまして、この辺のところを御理解願いたいというふうに思うわけでございます。
#143
○原田立君 大臣にちょっとお伺いしますけれども、去年の十二月十一日に鍛冶千鶴子さんという弁護士さんが読売新聞に論文を発表しておりますけれども、その中に「国際婦人年にあたって、男女の実質的平等の実現のためにやるべきことは山積している。そのような中で、政府がこの問題のみを切り離して取り上げ、しかも、従来の立法過程とはあまりにかけ離れた性急さでその実現をはかろうとすればするほど、私は、いっそう疑問を感ぜざるをえないのである。」と、こういうふうなことを結論として言っているわけなんです。この点についてはいかがお考えですか。
#144
○国務大臣(稻葉修君) 知識が不十分でございますけれども、ちょっといまお読みになりましたことを聞いた感じでは、賛成できないように、私個人としてはにわかに賛成しがたいなという感じを持ちます。
 なお、詳細は民事局長から答弁させます。
#145
○政府委員(香川保一君) 何もいたしません場合には、こういうことは最小限すべきだという意見が出てまいりますし、最小限そういうことをいたしますと、こんなことよりはもっと大事なやらなきゃならぬこともあるというふうな意見が出てまいりますのが世の常だと思うのであります。私どもは、そういう批判も十分今後のいろいろの問題を検討する際に参考にしてまいりたいと考えておりますけれども、やはり民法の改正とか戸籍法の改正等につきましては、これはいろいろ御批判あると思いますけれども、私どもとしてはやはり慎重にならざるを得ない国の基本的な法制でございますので、慎重にならざるを得ない。大方の方の御意見が御賛同いただけるというふうなところで法改正をお願いするというふうな姿勢にならざるを得ないことも、ひとつ十分御理解賜りたいというふうにお願い申し上げるわけであります。
#146
○近藤忠孝君 最初に大臣にお伺いしますが、この三つの法律の改正を一本の法案で出してきたことにつきまして、私も原田委員と同じ意見であります。先ほどの局長の答弁を聞きますと、また大臣の答弁も同じですが、相互に密接な関係にあり共通すると。しかし、聞いてみますと、民法と人事訴訟手続法、これは確かに妻の地位の向上というのでこれ一本で出してもあるいはいいかもしれません。しかし、戸籍法は先ほど来指摘されているとおり違いますよね。これはあくまでもプライバシーとの関係で戸籍制度における公開制の限界の問題を論じている問題だと思います。明らかに違うものを、先ほどの御説明ですと戸籍の公開も不利益を受けるのは多くの場合女性だと言うのですが、私の仕事の実績を見ましても、戸籍や出生がわかって男性が不利益を受けた例は幾らでもあるんですね。たとえば非嫡出子は女だけじゃなくて同じように男もおるわけですから。となりますと、共通しないものをなぜ一緒に出してきたのか、この点についてまず御答弁いただきたいと思います。
#147
○政府委員(香川保一君) 私どもは、それは民法と人事訴訟手続法の改正も、形式的に改正の内容を見ますと、これは必ずしも一本の法律で改正していいというわけにはいかぬという批判もあろうかと思うんであります。だから、結局は形式的な改正の内容のみならず、そのことによる実質的な事実上の問題点というものを踏まえて御検討願いたいわけでございまして、これは国会におきまして関連の全然ない法律の改正を一本の法律にして提案するということをできるだけ避けるべきだということは、つまりそうでない方が審議が円滑にいくということに尽きることだと思うんであります。この点、私どももいろいろ過去の実例を検討いたしまして、国会みずから議員提案でおやりになっている法案も参照いたしまして、現在の国会における審議の妨げになるかどうかという観点から、審議が慎重に円滑にされるかどうかという観点から見ますと、国会におけるいろいろの政府提案でない法案の、実際に成立いたしております法律の例もいろいろ検討いたしまして、この三つの法律の一部改正は基本的な、事実上、実質的なところでは当然ブリッジがかかっておるというふうに判断したのみならず、さような過去のいろいろの事例から見て、この程度のものは当然一本の法律案で提案しても差し支えないのではないかというふうに判断したわけでございまして、これだけを取り上げて戸籍法の改正の一部はつながらないじゃないかという御批判もあろうかと思いますけれども、その実際の、形式的な面だけではなくて、実際上のいろいろの改正の趣旨を踏まえてひとつ一本の法案で提案したところを御理解願いたいというふうに思うのであります。
#148
○近藤忠孝君 中身について私が指摘したような共通性のなさというのは、これは反論ないようですから、ちょっと共通性ないと思うんです。それからもう一つ、実質的な審議の面から見ましても大変差しさわりがあるのです。中身が、いま言ったとおり、片や妻の地位の向上の問題と、片や戸籍制度の根幹にかかわる問題だ。中身が違うだけじゃなくて、実際的な現在の段階における国民的な合意も違うんです。たとえば民法の改正案の場合には、これは国民的合意があると思うんです。多くの人々が歓迎しております。と同時に、特に女性の人が歓迎しておりますが、男であってもこれは反対する者はほとんどいないと思うんです。こういう国民的な合意があるんですが、しかし、じゃ戸籍法の方は、先ほどから論議されているとおり、いわば戸籍法の根幹にかかわる問題じゃないか、こういう議論もありますし、日弁連というこれは法曹の一角をなす有力なる団体が、これは大変強い反対をしておりますね。実際国民的合意ないんです。となりますと、私どもも実際検討してまいりまして、決して反対ではないわけでありますし、まあ衆議院では賛成しましたから、わが党も。ただ、実際このように戸籍の公開を制限することの是非について、社会的にもいまだ確たる合意がなくて、まだ調査をし解明し議論を尽くしていかなければならぬ、こういう問題があるのに、これを一緒に出して全体として賛否を求められる、大変迷惑なんです。私たちは、ここの部分はまだ社会的にこういう状況にある以上、現在では賛否の態度は留保したいです。これはきのう共産党の衆議院における質疑をごらんいただければおわかりだと思うんですが、この点についてはまだ実態も十分わからない、もっともっと学者の意見や弁護士の意見を十分調べた上で、その上で賛否を明らかにしたい、こういう意見を持っているんです。しかし、これ一つの法案ですから、一つしかないです、最後はね。この点どうでしょう、大臣としていかがお考えか。というのは、実際、大臣、これは四十九年の三月二十五日に衆議院の石特です、ここでこういう附帯決議があるんです。この場合には、電力用炭販売株式会社法、それから石炭鉱業経理規制臨時措置法、産炭地域における中小企業者についての中小企業信用保険に関する特別措置等に関する法律、この三つが出ましたね。その場合に、自民党、社会党、共産党、それから公明党、民社党、全政党一致で、これらの法案は石炭に関することについては同じですけれども、実は法律の提案をされた趣旨がおのずと違う、こういうような法案を一本で出すと賛否に各党とも非常に苦悩する状態であるので、十分留意をしろ、こういう附帯決議がついております。それを受けて、これは大臣もかかわりのある、所属しておられる派閥の中曽根国務大臣が、「御指摘の点につきましては、今後十分慎重に対処してまいりたいと思います。」と、こう答えているんです。それがまたここに出てまいるということは一体どういうことか。国会の附帯決議を全く無視しているのか、この点について大臣の御見解を賜りたいと思います。
#149
○国務大臣(稻葉修君) 御迷惑をおかけしておりますが、何とか一本でひとつよろしくお願いしたいと思います。
#150
○近藤忠孝君 ちょっと二の句が継げないのでありますが、実際こういったことは今後やらないという、こういうのが出ているにもかかわらず出て、実際こういう問題になっておりますと、これはもう少し考えてみるということが必要じゃなかろうか、いかがでしょうか。
#151
○国務大臣(稻葉修君) この経験にかんがみて、将来は考慮すべきものであるというふうに思います。
#152
○近藤忠孝君 この問題ばかりやっておっても時間が過ぎてしまいますので、実際の中身に入ってまいりますが、最初民法の問題でありますが、今回の改正案を出すに際してかかわりのある条文といたしますと、民法七百六十九条、離婚による復氏の際の祭具等の譲渡の問題ですね。これについては、同時にこれを削除するとか、この中身を変えるとか、こんな点は御検討にならなかったんでしょうか。
#153
○政府委員(香川保一君) 先ほども佐々木委員の御質問にお答えしましたように、この辺のところはいろいろ議論があるわけでございまして、法制審議会の身分法小委員会におきまして当然議論される今後の問題だと思いますけれども、これを完全に削除してしまうということがいま自信持ってやれるかどうかということについて若干異論もございますので、今回はこの点には全然触れてない、こういう経緯でございます。当然この面につきましても今後身分法小委員会において議論がされるというふうに承知いたしております。
#154
○近藤忠孝君 この規定のもとになる民法八百九十七条も同じだと思うのですが、この二つにつきまして学者のほとんどがこれはもう削除すべきだと、大体こんなことを法律に規定すべきことじゃないんだという意見が大勢を占めておりますので、そういった方向でぜひとも検討されることを求めたいと思います。
 それから、これは先ほど佐々木委員が触れた点でありますが、この復氏の場合、この期間、いま三カ月というのは短いんじゃないかと、実際短いというおそれがあるわけです。これは私どもの党の修正案ですと一年ぐらいの期間が必要だろうと、こういったことを言っておりますが、その場合にこれから離婚する人の場合には、まあまあ先ほどの答弁のとおり離婚届さえ出せばいいわけですから、ある程度の解決策があるかと思うのですが、問題は遡及の場合ですね、この場合もっと長い期間置く必要があるんじゃないか。同時に、この場合のそのための周知徹底、これについては一体どう考えておられるのか、この点いかがでしょう。
#155
○政府委員(香川保一君) この点も先ほど佐々木委員の御質問にお答えしましたように、まあ私どもの考えといたしましては、この離婚されました場合に、婚姻中の氏を称する必要性ということから考えまして三カ月の期間で十分ではなかろうかと、さようなことから遡及適用の関係もこの規定の施行前三カ月以内に離婚があった場合に同じような措置がとれるというふうに経過措置としてはいたしておるわけでございます。それ以前の離婚の場合におきましては、先ほども申し上げましたように、戸籍法の百七条の規定による家庭裁判所の許可ということによって氏を変更する、この規定の活用によって同様の結果が出るように運用されるであろうということを期待しておるわけでありまして、つまり民法におきまして、先ほども申し上げましたように、婚姻中の氏でもって社会的に活動しておった者が、離婚によって当然復氏することによる社会的活動にこうむる不利益というものを除去するというふうなこと、あるいは離婚によって母親が子供の養育をするときに子供の氏と母親の氏が違うことによる不都合というふうなものを除去するために、このような改正がされたといたしますと、同じような事由によって過去に、言いかえますればこの規定の施行前三カ月以前に離婚した者につきまして同じような事由、必要性があるときには、家庭裁判所におきましても戸籍法百七条の規定によって同様の結果が招来されるように審判されるであろうということを期待しておるわけでございまして、さようなことによって実質的には家庭裁判所の審判を受けなければならぬという手続のいわばめんどうさというものはあるかもしれませんけれども、まあそのようなことによって同様の結果がもたらされるということを期待しておるわけでございます。
#156
○近藤忠孝君 周知徹底の問題はどうですか。
#157
○政府委員(香川保一君) このような制度は戸籍の窓口事務を通じての問題のほかに、いろいろのPRの方法をやはりマスコミを利用いたしまして周知徹底いたしたい、かように考えております。
#158
○近藤忠孝君 これ、先ほどの佐々木委員の質問と関係しますが、離婚した妻が別の戸籍をつくって、そこに子供も同じ戸籍に入る――この場合にはこの氏の変更の手続、民法七百九十一条ですね、「家庭裁判所の許可を得て」入るということでありますが、この際もう一歩前へ進めまして、離婚の際、親権者が決まりますね、それが妻の方である。そして同じ氏である。氏を変えない。ここまででしたらば、この氏の変更につきましては何も家庭裁判所の許可を得ないで、届け出によって一緒に同じ戸籍に入れてしまうということの方が簡便であるし、また実態に即しているのじゃなかろうか、こういった点は御検討になったのかどうか、いかがですか。
#159
○政府委員(香川保一君) お説のようなことも当然検討いたしたわけでございますが、この辺が理屈だけではいかないと申しますか、いまの離婚の実態で先ほども申し上げましたように、約六割以上も小さい子供を母親が養育するという実態の場合に、まあ成年に達するまで母親が養育するわけでございますから、思い切って戸籍も母親のへ入れてしまったらどうだというふうに考える向きもあろうかと思うのであります。しかし、この問題はやはり父親の戸籍に置いておく、そして現実の養育だけを母親が成年に達するまでやるというふうなことが現在大多数行われておるわけでございます。その背景を考えますと、もちろん現行法のもとにおきましても、いま御指摘の百七条の規定を活用して、母親が婚姻中のいわば呼称の同一である氏を称するという道もないわけではないわけでありまして、さようにした場合に、子供も当然母親の戸籍へすべて入れておるかということに相なりますと、必ずしもそこはそうはいっていない。つまり、小さい子供の、幼児の将来を考えました場合に、どうせ養育する母親の同一戸籍に入れてしまった方が子のために幸福であると考えるか、あるいは現実の養育は母親の手元でするといたしましても、やはり戸籍上は父親の戸籍に入れておいた方が子供の将来、幸福かどうかというふうなところは、これは理屈では必ずしも解決できない、やはり当然離婚する父母が悩む問題だろうと思うのであります。したがいまして、離婚によって先ほど申しましたような二つの必要性から、母親が依然として婚姻中の氏を称するということにいたしました場合に、必然的にその子供を母親の戸籍に入れてしまう。いわば当事者の意思の有無あるいはどうするかの配慮も聞かずに、法律上当然子供を母親の戸籍に入れてしまうということは、ちょっと私どもとしてはちゅうちょされるわけでございまして、大多数のいろいろそういった国民の意識がそういうふうにしてもいいというふうになりますればともかくといたしまして、現在の状況では、画一的にそういうふうにするということはなかなかむつかしいというふうに考えるわけでありまして、実際そういうふうに子供を母親の戸籍に入れる、父親の戸籍から抜いて母親の戸籍に入れるというふうにする場合には、現在の民法の七百九十一条の規定によりまして、家庭裁判所の許可は要りますけれども、そういうような道も開けておるわけでございますから、そのような方法を活用していただきたい、こういうふうにいま考えておるわけでございます。
#160
○近藤忠孝君 現在、大多数が父親の方の戸籍に入っているから、そしてまたその方が何か一面プラスになるかのようなこういう御答弁のようでありますけれども、これは法律がそうなっているから仕方なしに母親も自分の戸籍に入れないわけですね。よほど考えまして厄介な手続でも裁判所の許可を得てやるという場合は比較的少ないというのは、厄介だからです。それが何も強制的、当然じゃなくて、手続――たとえば届け出という行為をするとかそういうことによって、私の言ったような状況をむしろつくった方が、これは生活実態に合うのじゃないかと思うのです。むしろ生活実態を反映するのが私は戸籍じゃないかと思うのですね。そういう点ではこれ十分考える必要があると思うんです。
 それからもう一つは、今回妻の氏の変更が容易になったわけです。いままで大変だったわけですね、子供と同じように。それにもかかわらず、今度子供の氏の変更また戸籍の変更が大変だとなりますと、これはやはり一貫しないのじゃないか。いままでは両方が家裁の許可が必要だったからそれはそれでいいんですが、今度は母親の場合には必要ないですから、今回の場合には子供の場合にもそれを保障を及ぼすということが必要だったのじゃないかと思いますが、この点いかがですか。
#161
○政府委員(香川保一君) 離婚いたしました場合に母親といいますか、従来の妻がどちらの氏を称するかということは、それは若干夫たりし者に影響はあるかもしれませんけれども、これは母親が自分一人で必要性がある場合にさような決断ができることでございますけれども、子供の場合には父親もおるわけでございますので、父親の意思を無視して母親が一人で自分の戸籍に子供を入れるというふうなことはちょっと問題ではなかろうか。ただ、百のうち七割、八割までがそうすることが子供にとってむしろいいんだというふうなことになりますれば、これは比較考量の問題でございますので、そういった制度も当然考えなきゃならぬと思いますけれども、私どものこれは不勉強というか、実態の把握が不十分かもしれませんけれども、そこまでちょっと一挙にやるにはなお抵抗があるんではないだろうかというふうなことで、今後この問題も先ほど申しましたように法制審議会で十分御議論願う予定にいたしておるわけでございます。
#162
○近藤忠孝君 この問題は、国民は戸籍上どうなっているかということまで詳しくは知らぬと思うんですね。離婚して親権者になった、そういう場合でも子供を一緒に自分の籍に入っていると思う人が恐らく大部分だと思うのです。この辺は今後調査されまして、その辺の国民の意識の状況と、それからそれが簡単に一緒になれるものだったら、戸籍も、そいつを望むかどうか、これはそういう実態調査をされて、やはり実際の国民の希望とまた実態に合う、そういう措置を今後御検討されるようにこれは要望したいと思います。
 そこで、今度は戸籍法の問題でありますけれども、先ほど来指摘されておりますとおり、今回のは七十年続いてきた日本の戸籍法の公開問題が大きく制限される、こういう問題だと思います。この点については今回改正の理由になったとおり、プライバシーの問題とか同和問題とか一定の制約が必要な部分があることはもちろん認めます。いまのような制約でいいかどうかは別問題として、ひどい例もありました。それはそういう制約が必要な面はもちろん認めますが、一面この公開性が大きく後退することによってマイナス面もあることも先ほど来指摘されております。特に、今後不当な目的の具体的な解釈としてどうしてもやっていくか。先ほどの答弁でも口では簡単でも実際むずかしいというんでしょう。どんなものができるか、これは大変な苦労をされると思うのですね。ということは、公開制の原則を、たまにしか発生しない事例のために大きく崩したことだと思いますね、そういうマイナス面があります。
 もう一つ、この今回のような方法によって、いままで同和問題で問題になったような事例が果たして解決するのか、プライバシー問題が片がつくのかどうかです。私はまたそれについても別な意見もあると思うんです。となりますと、これは本当に現在の段階では、先ほど申し上げたとおり国民的合意もないし、今後むしろ問題提起して弁護士会からも学者からも実際こういうことを経験している人々からも、意見を求めて、これから基準を十分に議論をして完全なものができてから法案として提起すべきだったんじゃなかろうかと。いまですと不当な目的という、あってもなくてもわからないような大変これは不明確なものです。これから基準をつくらなきゃいかぬ。しかも、その判断するのは現場の窓口の職員でしょう。実際戸籍事務を扱っている人はそんなに経験豊富な人ではないようです、実際行ってみますとね。入って一、二年の人がやっておる。そんな経験がない人々が、こんなむずかしい問題、日本の戸籍制度の根幹にかかわるような問題について判断をする事例が出てくるんですね。だとしたら、これはずいぶんそういう基準も明確でないうちにやってしまったというのは、やはり早過ぎたんじゃないかと、この点はいかがですか。
#163
○政府委員(香川保一君) 先ほど、基準を積み重ねて明確にしたいと申し上げましたのは、これは個々のケースごとの具体的事例に対処する具体的な実務の点で申し上げたわけでございまして、基本的な考え方というものは今回の改正規定におきまして十分はっきりいたしておることだと思うのであります。かような規定が窓口事務におきまして適正円滑になされる、実施されるようにするためには、よほどきめ細かいいろいろの問題点を検討して、基準的なものを積み重ねていかなければならぬというふうに申し上げたわけでございます。決してこの趣旨あるいは考え方というものが全く不明確だというふうには考えていないわけであります。それから、国民的なコンセンサスが得られてないというふうな御意見でございますが、その例として日本弁護士連合会が強く反対しておられるということでございますが、民事行政審議会におきまして、日本弁護士連合会のいわば代表として委員も参画していただきまして、いろいろ御議論願ったわけでございますが、先ほど申しましたような積極的な、正当の事由がなければ公開しないというふうな案に対して、審議会の委員が意見を述べておられることは十分承知いたしております。しかし、率直に申しまして、この戸籍の公開制度の悪用によるプライバシーの侵害という事例は、これは私は何とかしなければならぬというふうな意味で、国民的な一つの意見と申しますか、そういう方向では十分固まっておるように思うのでありまして、このままでいいのだというふうなことは、必ずしも国民の少数の方にはそういう御意見もおありになるかと思いますけれども、大多数の意見は現行法のままでいいというふうにはお考えになってないというふうに思うのであります。それはともかくといたしまして、本来公開の制度の中に、他人の迷惑になることまでその制度を悪用するというふうなことを、法制面においてチェックすることまでいけないというふうな意見は、これはないと思うのであります。問題は結局先ほど御指摘のとおりの精神は精神としても、運用面においてなかなかむつかしいことで、それが不当な制限ということになる心配もあるというふうな御懸念だと思うのでありまして、確かにその面はこの戸籍公開の必要性から考えまして、十分さようなことのないように配慮しなければならぬことではございますけれども、やはり窓口が市町村でございますので、そこのいわば事務処理が適正に円滑にされるようにいろいろ工夫を積み重ねていかなきゃならぬ。率直に申しまして、先ほど申しましたようなことで施行までに遺憾のないようなことがなされなければならぬというふうに覚悟はいたしておりますけれども、やはりいろいろのケースが出てまいることかと思いますので、行政先例の積み重ねというふうなこと、あるいは市町村の窓口におけるさような事務取扱のなれというふうなものが積み重なって適正な処理になるというふうなことは、これはある場合にはやむを得ないことではないかというふうにも思うんでありますが、しかし、施行と同時にさようなむしろ不当な制限という方ではなくて、ルーズな運用ということによっての国民のプライバシーの侵害の擁護が十分に果たされないというふうなことをむしろ私どもとしては心配いたしておるわけでございまして、その辺のところは十分趣旨を周知徹底さして、それに基づく運用は間違いのないようにできるだけの努力はしたい、こういうふうにいま考えているわけでございます。
#164
○近藤忠孝君 一定の制約が必要だろうということは、もちろん私ども考えておりますし、ただ問題は、今回のようなことでいいんだろうかということが私の指摘した点なんですね。そういう点では、衆議院の実際の質疑を見ておりまして幾つか気になる点があるんです。要するに、この公開制を制限することによって大変大きな問題が出てくるんじゃなかろうか。その一つといたしまして、政治家のことに関係して戸籍を調べることは、やはりこの場合には制約されるんだと、こういう答弁がありますが、その点間違いないでしょうか。
#165
○政府委員(香川保一君) 政治家の戸籍謄本をとるときに、この制限をかぶるというふうなことを申し上げた記憶は全くないのでありまして、たしか御質問の御趣旨は、ある政治家の子供の中に認知した子供がおるかどうかを調べたいというふうなことで謄本を請求すればどうなのかというふうな御質問だったと思います。で、私は……
#166
○近藤忠孝君 じゃその後聞きますからそれで結構です、答弁は。
#167
○政府委員(香川保一君) よろしいですか。
#168
○近藤忠孝君 時間がないから、その後をちょっと聞かなければなりませんから、それはそれでいいのですが、じゃ具体的にもっと端的に聞きますと、田中金脈の場合に幽霊企業がたくさんある、いわゆる田中ファミリーということですね。その田中氏とたとえばAさんBさんとの関係、こういったことを一国民が調べる、そんなことはどうなんでしょう。
#169
○政府委員(香川保一君) 御質問の御趣旨は、一国民が田中金脈を調べるということでございますか。
#170
○近藤忠孝君 もう一度はっきり言いますと、田中金脈を調べるために田中角榮氏とたとえばある幽霊企業の取締役をやっているAさんとのつながりとか株主のBさんとの親族関係、こういったものを調べるために戸籍謄本を要求した、そういう場合にはこれに入るのか入らないのか。わかりませんか。
#171
○政府委員(香川保一君) 会社と田中金脈との関係というふうなことは、これは戸籍の問題じゃないわけでありまして、たとえばある会社の……
#172
○近藤忠孝君 話をそらさないでね、Aさんと田中氏のだけですよ。
#173
○政府委員(香川保一君) ある会社の取締役が田中前総理と親戚であったかどうかということを調べることでございますか。そのような場合には目的が、つまり田中金脈とおっしゃいますけれども、一体親戚であったかどうかを調べて、その結果をどういうふうにされるかということによって、目的の不当かどうかということが違ってくると思うんでありますけれども、だから、私は田中総理とある人とが御親戚かどうかということを調べるということであれば、そのこと自身だけを取り上げて考えますと、別に請求が不当だというふうには判断しなくてもいいんじゃないかというふうに思います。
#174
○近藤忠孝君 しかし、いまの答弁では不当な目的と判断される場合もあり得ると、こういうことですね。そうでしょう。
#175
○政府委員(香川保一君) だから、その先が問題でございまして、親戚であると、したがってその親戚のこういうのがこういうことをするから、その親族であるこれこれはというふうに一般的に吹聴するといいますか、そういうふうなことになるといたしますと、これはたとえばある犯罪者がおって、その犯罪者とある人が親戚だから、これも犯罪者の血を引いているというふうなことで吹聴されるというふうなことと近似してくる場合もあるわけでございまして、その辺は非常にそのような形になりますと、やはり個人のプライバシーの侵害というふうなことにつながるというふうに考えられる場合もあると思うんであります。
#176
○近藤忠孝君 ですから、結局、大蔵省が脱税問題は守秘義務で一切言わぬとなりますと、一国民あるいは一国会議員として、具体的に田中氏とある幽霊企業の代表取締役やあるいはその株主とのつながりを戸籍を通じてずっと追及していくんです。政府が発表しないからこちらで発表しますよ。そうして国民の判断にゆだねるとなりますと、いまの場合にはこれはもうだめになりますね。そこで、これは具体的に私一昨年大蔵委員会で幾つかの幽霊企業の表をつくりまして、株主の、そうして田中角榮氏とのつながりも調べまして幾つか調べました。その結果どうもその人は自分が出したんじゃなくて、田中角榮氏の金であるというのを全部調べまして、その結果増資に関する金だけでも田中氏は一億近い脱税している可能性があるという事実を表をもって示したんです。その当時の国税庁長官それ見まして、こんなに多いとは思わぬという趣旨の発言をされましたけれども、表をつくらなければ一切しゃべらぬですからね。いまの局長の話では、そういったことがどうも制約される。大臣どうですかね、そんなことまで考えておるんですか。それは大蔵省が発表しなきゃ当然でしょう。国民の一人としてこれはあの幽霊企業はこういう関係で脱税の疑いがあると、脱税というのはこれは犯罪ですからね。さっきの局長の答弁のとおりこれはだめになるんですよ。ちょっと大臣の答弁を伺います。
#177
○国務大臣(稻葉修君) それは私だめにならないんじゃないかと思います。
#178
○近藤忠孝君 それじゃ局長の先ほどの答弁、これは訂正してください。
#179
○政府委員(香川保一君) 私は、そういうことを具体的に、ある脱税しておると、そのいまおっしゃる趣旨は実はある人の脱税であると、実質的にその人の脱税であるということを例証する意味で、いろいろそれと血族関係にある人たちのそういう脱税といいますか、所得を云々というふうなことでございますといたしますれば、これは別にその脱税自身がけしからぬことでございますから、それをある面において、たとえば告発するとかあるいは国会でそれを取り上げて論議されるというふうなことでありますれば、決してそれがそういうための謄本の請求というものが不当な目的だというふうには考えておりません。
#180
○近藤忠孝君 具体的なこういう問題を出しましたからそういう答弁になったんですが、しかし、その途中の局長の答弁では、やり方によってはそういったことでチェックされる可能性が十分あるんですよ。というのは、調査目的をそれほど明確に、おれは田中角榮の脱税問題をやるんだということを吹聴しながら調査するわけにいかぬですね。調査というのは、これはやっぱり隠密にやらなきゃいかぬです。そうでしょう。その場合には心ならずも目的をそのまんま正直に言えない場合だってあるんです。ですから、別の、先ほどの話では、チェックされるような、こういうようなものでやらざるを得ない場合だってあるんですね。となりますと、調査されりゃおわかりですが、調査というのは大変苦労するものです。そして、どんなぐあいに攻めていくのか、これはその人のやり方もありますし、またそんなやり方を一々国の方がこれはいい、あれは悪いというようなえり分けしましてはこれはできないです。ですから、その辺のところを、目的によっては、やり方によってはチェックされる可能性があるという、これはまさに公開性の弊害の一番大きな面なんですよ。
#181
○政府委員(香川保一君) ただいままた御質問聞いておりますと、あるいは私、先ほど御質問の趣旨を取り違えたのかしれませんが、私の申し上げましたのは、ある世間から糾弾されるべき人がおって、その人とある人とが親戚関係、だから親戚関係にある者はこれはけしからぬやつだというふうな意味で、その親族関係を調べるというのであれば、これはやはり親戚関係にあるからということで、論理的にそう結びつく問題でもないのに、そういうことを手段として戸籍の謄本を求めるということはいかがかということを申し上げたので、一般的にある人とある人とがおじおばの関係にあるとか、あるいは親戚関係にあるということを調べたいということで謄本を請求される場合に、親戚であること自身が何らこれはプライバシーの侵害でも何でもないわけでございますから、そういうことでありますならば、何もそれを不当の目的ということで拒否すべきだというふうに申し上げたわけではないわけでございます。
#182
○近藤忠孝君 ちょっと議論がすれ違うようでありますが、時間がきましたので、また後日……。
#183
○委員長(田代富士男君) 本案に対する本日の審査はこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後九時十二分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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